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1959-02-10 第31回国会 参議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月十日(火曜日)    午前十時五十八分開会   —————————————   委員異動 二月五日委員大谷瑩潤君辞任につき、 その補欠として堀末治君を議長おい て指名した。 二月九日委員堀末治辞任につき、そ の補欠として大谷瑩潤君議長おい て指名した。 本日委員野本品吉君、森田義衞君及び 江田三郎辞任につき、その補欠とし て山本利壽君、迫水久常君及び横川正 市君を議長おいて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     古池 信三君    理事            大川 光三君            一松 定吉君            高田なほ子君    委員            大谷 瑩潤君            迫水 久常君            山本 利壽君            吉野 信次君            亀田 得治君            北村  暢君            横川 正市君   国務大臣    法 務 大 臣 愛知 揆一君   政府委員    警察庁刑事局長 中川 董治君    警察庁警備局長 江口 俊男君    法務大臣官房司    法法制調査部長 津田  實君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    法務省人権擁護    局長      鈴木 才藏君         —————    最高裁判所長官    代理者    (総務局総務課    長)      海部 安昌君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務大臣官房司    法法制調査部付    検事      貞家 克巳君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○裁判官報酬等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣送付予備  審査) ○検察官俸給等に関する法律等の一  部を改正する法律案内閣送付、予  備審査) ○下級裁判所設立及び管轄区域に関  する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (東京都荒川区における通り魔事件  に関する件)  (静岡県下における全逓労組員逮捕  問題に関する件) ○派遣委員の報告   —————————————
  2. 古池信三

    委員長(古池信三君) それでは、ただいまから法務委員会を開会いたします。  最初委員異動について報告いたします七  本日江田三郎君が辞任され、横川正市君が選任されました。   —————————————
  3. 古池信三

    委員長(古池信三君) 本日は、都合によりまして、最初裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案並びに検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案、以上、いずれも予備審査でありますが、この両案を一括して議題といたします。まず提案理由説明を求めます。
  4. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいま議題となりました裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律等の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して説明いたします。  政府は、人事院勧告趣旨にかんがみ、一般政府職員給与改訂を行い、あわせて現行暫定手当一定の額を俸給に繰り入れる措置等を講ずることとし、今国会一般職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律案を提出し、御審議を仰いでおりますことは、御承知通りであります。この裁判官報酬及び検察官俸給に関する両法律案は、一般政府職員給与改訂に伴い、裁判官及び検察官報酬または俸給の号及びその月額等改正しようとするものであります。以下、改正の要点を説明いたします。  まず第一に、一般政府職員については、初任給の引き上げ及びこれに伴う俸給月額改訂を行い、また、一部の俸給表一等級について二つの号俸の新設を行うことといたしておりますので、裁判官及び検察官につきましても、これに準じてその報酬または俸給の号及びその月額を改めようとするほか、判事について、判事一号の報酬月額をこえる特別の報酬月額規定を設け、特別のものに限り、当分の間これを適用しようとするものであります。  この改正は、一般政府職員の場合と同様、昭和三十四年四月一日から施行されることとなっております。  第二に、一般政府職員の例に準じ、昭和三十四年十月一日から、判事判事補及び簡易裁判所判事並びに検事及び副検事について、現行暫定手当一定の額、すなわちいわゆる一級地に在勤する者に支給される額に相当する額を報酬または俸給の各月額に繰り入れる措置を講じようとするものであります。  第三に、他の特別職職員の例に準じ、最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官並びに検事総長次長検事及び検事長については、諸般の事情にかんがみ、さきに述べました暫定手当一定の額を報酬または俸給の各月額に繰り入れる措置は、これを行わないこととなりましたので、昭和三十四年十月一日から、その暫定手当一定の額を報酬または俸給とみなし、恩給、退職手当及び寒冷地手当等の額の計算の基礎としようとするものであります。  以上が裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律等の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますよう、お願い申し上げます。
  5. 古池信三

    委員長(古池信三君) 以上の両案につきましての本日の審査はこの程度にとどめ、あとは次回に譲ることといたします。
  6. 一松定吉

    一松定吉君 ちょっとお願いですが、これは今度の改正案ですか、この俸給の金額は。
  7. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) はあ。
  8. 一松定吉

    一松定吉君 それならば、旧の俸給の表を次回に御提出願って、比較して研究したいのですから、旧の俸給対照比較表、それを一つ御提出願いたい。
  9. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 承知いたしました。
  10. 横川正市

    横川正市君 ちょっとお聞きしますが、勧告に基いて行われる裁判官検察官俸給等に関しての諸法律は、内閣委員会担当委員会になるのじゃないかと思うのですが、法務委員会へかけられた趣旨はどういうわけですか。
  11. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは、前に、本件について改正をいたします法律案の御審議を願いましたときの先例も法務委員会でございましたのと、それからその趣旨は、当時から司法制度改正は問題であるということで、法務委員会で取り扱われることになっておるように承わっております。その例に従いまして、法務委員会に御審議をお願いすることにいたしたのであります。ほかに他意はございません。
  12. 横川正市

    横川正市君 これは、議運を通して委員会に付託されたものですから、私の方でもちょっと調べて、後刻質問したいと思います。   ━━━━━━━━━━━━━
  13. 古池信三

    委員長(古池信三君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日野本品吉君が辞任され、山本利壽君が後任に選任されました。さらに森田義衞君が辞任され、迫水久常君が選任されました。   ━━━━━━━━━━━━━
  14. 古池信三

    委員長(古池信三君) 次に、下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案、以上を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  15. 大川光三

    大川光三君 今回の改正によりまして、広島豊田瀬戸田町は、竹原簡裁管内から因島簡裁管内変更されることになるのでありますが、その結果といたしまして、裁判所への所要時間が従来の半分以上の短縮という、地元民のためには非常な利便が与えられると思います。かような利便というものは、もっと早くから考慮に入れなければならなかったのじゃないかと存ずるのでありますが、ようやく今日に至って変更をしようという理由を伺っておきたいと思います。
  16. 貞家克巳

    説明員貞家克巳君) 瀬戸田町の区域を、因島簡裁の方が便利であるならば、もっと早くから管轄変更すべきではなかったかというお問いでございますが、この下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律が制定されました昭和二十二年当時におきましては、主として多く、市とか郡とかという単位をもって各管轄区域を分けたのでございます。その当時、因島はまだ市制がしかれておりませんでしたけれども、当時は、昔の備後の国でございまして、御調郡に属しておりました。それに対しまして瀬戸田町の方は、豊田郡という別の郡に属しておったという関係から、当時各方面意向が、豊田郡に属する瀬戸田町の方は竹原簡易裁判所の方がよかろうという結果になったものと存じます。その後におきましても、政府といたしましては、市町村廃置分合というようなことがございまして、管轄区域が変動するというような場合には、それに関連のあるような土地につきましては、いろいろ地元管轄変更希望というようなものを聞く機会がございますけれども、積極的に、この瀬戸田町につきましては、地元から管轄変更をしてくれという意向を聞かなかったのでございます。それが、昨年の八月に至りまして、地元希望検事正を通じまして政府の方に上申がございましたので、それを契機にいたしまして、各方面意向を聴取いたしました結果、各方面も、交通が便利であるから、因島の方に管轄変更してもらいたいという希望に一致いたしました。それで、今回のこの機会に、管轄変更をいたしたいということになった次第でございます。
  17. 大川光三

    大川光三君 ただいまの御説明で、事情はよくわかりました。しかし、また一面、市町村廃置分合に伴って、管轄裁判所変更されることになる結果、あるいは従前に比して、地元民に逆に不便を与えるような場合も予想されるのでありますが、そういうような、市町村廃置分合に伴う管轄裁判所変更ということと、地元民に対する便不便ということについての、ことに地元民に不便を与えるというような例はないのでしょうか、伺わせていただきたいと思います。
  18. 貞家克巳

    説明員貞家克巳君) 御承知のように、下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律規定によりまして、市町村廃置分合等がございますと、それに伴って、当然に裁判所管轄区域が変動になる場合がございます。今回の改正案におきましても、十数個所そういった個所があるかと存じます。しかし、この場合には、法律管轄区域変更が起ったからといって、それを当然に妥当な状態であると認めるわけではございません。と申しますのは、今お尋ねがございましたように、それによって、管轄区域を当然に変更されたままにしておくことが、かえって住民の不利になるという場合が絶無ではございませんから、そういったことを考慮いたしまして、そういった法律上当然の管轄変更がございますと、そのつど、政府といたしましては、最高裁判所、それから各地元の検察庁に照会いたしまして、さらにそれらを通じまして、地元町村関係弁護士会そのほかの機関の意見を聴取いたします。そういたしまして、その結果、そのうちに、これはもう一度もと通りに戻してもらいたいというような意見がございました場合には、あらためてその意見が生じました原因等について詳しく調査いたしまして、なお疑問があれば、現地に出張して調査するというような方法を尽しまして、十分各方面意見の基く原因というものを調査いたしまして、調整をはかった結果、やはりもと通りに再変更すべきだという結論に達しました場合には、一たん法律上当然に管轄変更がございましたのにかかわらず、再び変更する、あるいは法律規定によりまして当然変更したままでよろしいという結論に達しました場合には、その結果を法律案に織り込むという態度で立案いたしておりますから、仰せのような住民不便不利益ということは、今回の改正案におきましてはないものと考えております。
  19. 大川光三

    大川光三君 ちょっと、それに関連してのお尋ねでありますが、市町村廃置分合ということは別にいたしまして、現に地方の状況交通上の環境から、現在の簡易裁判所変更してもらいたいというような要望がある実例はあるのでしょうか。もしそういう要望があれば、当局はどういう処置をせられるか、伺っておきたい。
  20. 津田實

    政府委員津田實君) ただいまのお尋ねでございますが、ただいまのところ、要望のあるものは、この法案に織り込んでございます広島県の生口島関係、それから熊本県の三角関係二つでございます。そのほかには、ただいまのところ、さような要望は聞いておらない次第でございますが、要望がありますれば、必ず調査をいたし、早急に結論を出しておる次第でございます。
  21. 大川光三

    大川光三君 ちょっと、ただいまのを聞き漏らしましたが、どことどこですか。
  22. 津田實

    政府委員津田實君) 広島県の、瀬戸内海にあります生口島、それから熊本三角半島関係でございます。
  23. 大川光三

    大川光三君 私の聞いておりまする範囲では、さきに、秋田森吉町では、米内沢簡易裁判所を設置してもらいたいという請願が出まして、それが採択になっておるにもかかわらず、これに対して当局としてどういう態度をとっておられるのか。もうすでにできたのですか。請願で採択されながら、その要望を満たしていないのか。その点を伺いたい。
  24. 津田實

    政府委員津田實君) ただいま申し上げましたのは、現在存在いたしまするところの簡易裁判所管轄変更の問題についてお答え申し上げたわけでございます。  問題は、この新設要望の点でございますが、これにつきましては、ただいま御指摘のような、秋田県北秋田森吉米内沢簡易裁判所を設置されたいという請願がございまして、第十六国会おいて採択いたされていることは、御指摘通りでございます。これにつきましては、その後も陳情等がございましたわけでございますが、その請願に対しまする、あるいは陳情に対しまする政府態度といたしましては、この米内沢地区に設置を要望されている部分は、非常に面積広大であるという点は、まことにその通りであるわけでありますが、人口は必ずしも多くございません。約四万余りでございます。それから事件数を申しますと、昭和三十二年度におきましては、民事訴訟が六十三件、刑事訴訟が二十五件、三十三年度におきましては、七月までの統計でございますが、民事訴訟が三十四件、刑事訴訟十二件というような状態でございます。全国簡易裁判所事件数順位から考え、事務の繁閑の順位から考えますと、大体四百五位ぐらいの程度になる。全国簡易裁判所五百七十個所ありますが、そのうちから申しますと、非常に下位に属しているわけでございます。あるいは御承知かと存じまするが、簡易裁判所のあり方につきましては、ただいまのところ、非常に問題があるわけでございます。これは、ある程度統合を要するのじゃないかという考え方があるわけでございます。その統合を必要とする理由等につきましては、いろいろあるわけでありますけれども、これを設置いたしました当時から見ますと、交通事情が非常に変っているというようなことがございますのと、分散した個所裁判官その他の職員を配置いたしますることは、全体といたしまして事務の能率上の問題がある。ことに現在におきます裁判官の数等の十分でありません時代においてはなおさらだというようなこともございますので、簡易裁判所整理統合ということは当然考えるべき問題であるということになって、十分政府におきましても調査いたしているところでございますが、そういう問題があります際におきまして、非常に事件数おい下位であるというような所に設置するのはいかがなものであろうかということが考えられます点と、設置いたしますにつきましては、相当の財政的な負担も要するわけでございます。ただいまのところは、この米内沢にすぐに設置すべきであるという結論は出し得ない状況になっている次第でございます。そのほかにおきましても、若干の地区要望がある場所もあるにはあるのでございますが、切実な要望として考えられている所は今のところないわけでございます。
  25. 大川光三

    大川光三君 ただいま御答弁のうちに、簡裁整理統合というお言葉が出ましたが、私ども、実際に裁判所関係の仕事をいたしますものとしましても、これは整理統合は思い切って早急にやるべきだという一つ考え方を持っておるのであります。と申しますのは、現在簡易裁判所でありながら、民事訴訟事務の取扱いを停止されているものが四十三カ所もあるやに伺っております。しかも、それらの民事訴訟事件の停止をされた分についての事務というものは、地方裁判所または支部所在地にある簡易裁判所が取り扱っておる、地裁または支部所在地にある簡裁が、これらの事務を取り扱うということが、いわゆる「当分の間」ということになっておるのでありますが、その「当分の間」がずいぶん長い間これは継続されておると思います。一体「当分の間」はいつで打ち切るのかという疑問がございますので、それを機会整理統合へ持って来なきゃならない、かように思うのでございますが、ことに、事件状況及び地元民のこれに対する不満等も起ってきょうかと思うのであります。簡易裁判所が開店休業しておって、少しも間に合わないということなら、いっそそういうものは廃止してしまって、本格的に整理統合すべきだと私は考えておりますし、地元でもそういう要望があろうかと存じますから、これに関する御見解を伺っておきたいのであります。
  26. 津田實

    政府委員津田實君) 第十九国会おいて成立いたしました裁判所法の一部を改正する法律によりまして、民事訴訟に関する裁判権範囲が拡張いたされましたに伴いまして、同法の附則によりまして、当分の間、御指摘のように民事訴訟に関する事務簡易裁判では行わないで、他の簡易裁判所で行うということの法制を施行いたしておりまして、現在に及んでおることは御指摘通りでございまして、ただいま御指摘のような数の裁判所におきましては、そのように取り扱われておるわけでございます。これにつきましてはやはり何と申しましても簡易裁判所判事の数の問題、ことに、民事訴訟を取り扱うに適する判事の数の問題というのが、大いに影響するわけでございますが、少数にして十分であれば、これを復活するということはもちろん可能であると考えられるわけでありますが、さしあたってさような見込みはないと考えられるわけでございます。そういたしますと、ただいま御指摘のように、簡易裁判所統合いたしまして、数は少くするが、充実した簡易裁判所を置くというのが建前になったというふうにも考えられるわけでございまして、そういう御指摘のような点から見ましても、簡易裁判所統合につきましては、ただいま鋭意検討を進めている次第でございます。
  27. 大川光三

    大川光三君 最後にもう一点。この簡易裁判所の中で、昨年当初未開庁のものが六、七庁あるというように御説明を伺った記憶があるのでありますが、その後これらの未開庁のものは、どうなっておるかという点を伺いたい。  いま一つ、これも前回で問題になりました、大阪都島簡易裁判所都島簡易裁判所は、都島区という地区にもない。ただ裁判所法の三十八条によって、事務移転だという御説明で、現実都島簡易裁判所は実在しない。ただ他でこれを事務を取り扱わしておるというようなことで、名称があって実体がないというような感じが今もいたすのでありますが、その点も合せて御説明をいただきたいと思います。
  28. 津田實

    政府委員津田實君) 簡易裁判所のうちで、未開庁なものは現在八カ所ございます。これは昨年の場合と実情は少しも変っておらないのでございます。いかなる事情によりまして、未開庁であるかということにつきましては、裁判所側から御説明をいただくのが相当であると存じます。  なお、都島簡易裁判所の問題でありますが、これは前回も当委員会で御質疑がありました次第でございますが、この都島簡易裁判所事務は、大阪地方裁判所裁判官会議の決定によりまして、大阪簡易裁判所事務移転をされているわけであります。大阪簡易裁判所は、大阪市北区に設けられているわけでございまして、大阪市北区には、もちろん簡易裁判所庁舎はありますが、庁舎の狭隘その他他に庁舎を同区内に求めることが不可能であるというような事情から、東区に現在庁舎を設けて、事務をとっているという次第であります。その東区の庁舎におきまして、都島簡易裁判所関係事務移転された事務も取り扱っているというのが実情のように考えているわけでございます。問題は、大阪簡易裁判所が本体は北区にあり、現実事務をとる場所の多くは東区であるという点が、法律上若干問題になるということになるかもしれないと思うのでありますけれども、まあ、大阪というような大都市の関係等から、庁舎確保難ということはやむを得ないところと考えられます。幸い東区は大阪簡易裁判所管軸区域内であり、北区にも隣接いたしておりますので、そこに分室を設けて事務をとるということは、これはやむを得ないところとして、違法とは申せないというふうに考えております。なお、都島簡易裁判所事務を、都島簡易裁判所として大阪簡易裁判所庁舎おいてとるのが相当か、あるいは大阪簡易裁判所事務としてとるのが相当かという、裁判所法の三十八条の解釈の問題につきまして、これは二様の解釈が立ち得ると思うのであります。それで大阪地方裁判所といたしましては、大阪簡易裁判所おいて、都島簡易裁判所として事務をとるというのが相当であるという解釈もとに、現在そのように事務をとっているものと考えられますので、これまた二様の解釈は立ち得る余地がありますので、大阪簡易裁判所事務として取り扱わなければ違法であるというふうにも言い切れないというふうに、政府としては考えている次第であります。
  29. 大川光三

    大川光三君 大体よくわかりましたが、御説明を伺っていると、また疑問が起るのであります。なるほど法律的には、ただいま御説明のように、裁判所法の第三十八条の解釈によって、大阪簡易裁判所事務を、東区の方で扱うということも、法的にはそれでよろしい。しかし、地元民利益というところからいきますと、全然これは無視している。今回の改正案というものは、冒頭に御質問を申し上げましたように、因島簡易裁判所内に変更されるということが、たまたま地元民のために非常に便利だというところに、私どもはこの改正案は御賛成を申し上げたのであります。ところが、都島の場合は、何と説明なされようと、地元民利益という点から申しますと、これは当然大阪簡易裁判所でお扱いになるのか、いわば都島ないしは北区で事務をとっていただくことが地元民利益であるが、法律解釈に窮して、法律に適合するようにやろうというのか、地元民利益を主眼にしてものをお考えになっておるのか。もし、地元民利益ということであるならば、重ねて申し上げますが、思い切った整理統合が必要だという感じを私は持つのでありますが、その点に対する御見解をお願いしたいと思います。
  30. 海部安昌

    最高裁判所長官代理者海部安昌君)  都島簡易裁判所の問題につきまして、前回から当委員会に引き続き、いろいろ御質問をいただいておりまして恐縮いたしております。ただいま御指摘のございましたように、地元民利益、便宜という点から考えますと、なるほど御指摘のような点もあろうかと考えます。しかし、開設庁舎、未開設簡易裁判所の問題も、これも先ほど来御指摘のございます簡易裁判所整理統合の問題にも関連いたして参っております。最高裁判所におきましても、その点に調査研究を進めておりますので、それとの関連おいて善処さしていただきたい、かように考えております。
  31. 古池信三

    委員長(古池信三君) ほかに御質問ございませんか。
  32. 高田なほ子

    高田なほ子君 一つだけお尋ねいたします。法律附則面をごらんいただくと、「この法律は、昭和三十四年四月一日から施行する。」となっております。ところが、「この法律の施行前に従前管轄裁判所で受理した事件は、その裁判所で完結する。」こういう条文がありますが、そういたしますと、たとえば二俣が天竜簡易裁判所というふうに、今度名前が変るわけですね。今の御質問の中にもあったように、民事を取扱うという場合には、かなり長い年月が費されるわけですね。平均十一・一カ月ということになると、一年も元の裁判所がそのまま使われるということになりますが、こういう事務というのは、かなり輻湊してくるというように考えられますが、どんなふうにこれは取り扱われるのですか、具体的に……。
  33. 海部安昌

    最高裁判所長官代理者海部安昌君)  ごもっともな御質問でございますが、はっきりここにあげてございます平均十一・一カ月、これは地方裁判所事件でございます。簡易裁判所事件は、もっと何分の幾つかの短かい期間で済む事件が多いわけでございます。それから管轄を移転いたします、たとえば今の二俣の問題でございますが、ここに起きます訴訟事件は、これも二年なり三年なり、あるいは資料を持ちませんが、ごくわずかの事件でございますし、短期間のうちに解決がつく。住民に不利益を及ぼすことはあるまい、かように考えております。
  34. 古池信三

    委員長(古池信三君) ほかに御質疑はございませんか。——御質疑がなければ、質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 古池信三

    委員長(古池信三君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  36. 大川光三

    大川光三君 私は自由民主党を代表いたしまして、本改正案に賛成の意思を表明いたします。  改正案の内容はきわめて事務的なものでございまして、かつ必要なものばかりであります。ただ、この改正案の賛成に付加いたしまして簡易裁判所整理統合をすみやかに断行せられんことを要望いたしまして賛成をいたします。
  37. 古池信三

    委員長(古池信三君) ほかに御発言もなければ、討論は終局したものと認め、これより本案の採決を行います。  下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を、原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  38. 古池信三

    委員長(古池信三君) 全会一致であります。よって本案は全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 古池信三

    委員長(古池信三君) 御異議ないと認めます。   ━━━━━━━━━━━━━
  40. 古池信三

    委員長(古池信三君) 次に、検察及び裁判運営等に関する調査といたしまして、初めに東京都荒川区における、いわゆる通り魔事件について、警察庁当局からその後の経過について御説明を願いたいと存じます。
  41. 中川董治

    政府委員(中川董治君) ただいま調査の対象になっておりますいわゆる通り魔事件状況並びに今日までの捜査の概況につきましてお話をしたいと思います。  この事件は、当委員会でも現地を御視察になりまして一応お詳しいわけでありますが、昨月下旬に、ことに二十何日の目に十人の被害者があった事件でございまして、その後警察当局におきまして、類似の事件をたんねんに調べておりましたところ、合計二十一名の被害者がある。被害の状況はうち一名は死亡で、あとは傷害一週間程度のもの、ないしは全然その身体には影響ないが、着物を切られたというものを含めるのでございますが、二十一名の被害がある状況でございます。  本件は、御案内のごとく被害者と直接の関係のないと認められる者が被疑者と認められる、いわゆる通り魔的犯罪でありますので、捜査につきましては、非常に苦心をいたしておるのでありますが、捜査のやり方といたしましては、本件事件に関しまして、何といいましても、被害者の目撃がございますので、その被害者の記憶、目撃したところの記憶等をたどってずっと捜査を進めておるのでありますが、大体二十六、七才から二十才前後の男子が被疑者であろう、こういう立場に立ちまして捜査を続行しております。  こういう角度から、いろいろ関係住民の方々の御協力をいただきまして、いわゆる怪しいと申しますか、被疑者でなかろうかと想像されるような人物の申告等もございまして、いろいろな角度から、その資料を集めておるのでありますが、捜査といたしましては、何といいましても証拠に基いて捜査をするのがことの本質でございますので、的確な証拠がない者につきましては、直ちに逮捕とか何とかすべきでたいという根本原則に基きまして捜査を進めております。  この間、二月五日の日に、新聞によればW少年が一応被疑者の線上に出たごとく新聞記事があったのでございますが、これは被疑者として取り調べたのではないのでありまして、先ほど申しましたいろいろな角度から情報がありまして、その情報のもとに、人相書が被疑者とよく似たという人間は、警察で把握しておりまして、その動向をしさいに調べておるのでありますが、そういうことで被疑者と仮定とまでいかなくても、容疑が相当濃厚だというので、このW少年に当ったのでなくして、近所のうわさで、そのW少年がどうも被疑者の人相とよく似ている、こういううわさが非常に地元に出まして、報道関係者等が非常にそのうわさを克明に調査なさって、被疑者の方はいたたまれないというので、自分の子供が被疑者のごとく世間に誤解されているので、一つ警察でよく調べてもらいたい、こういう申し出等もございましたし、それからことにW少年の家族、家庭には、報道関係者を含めて訪問客が一ぱいである、こういう状況でございましたので、お父さんの申し出によりまして宿所をあっせんして警察の寮にお泊り願って、家に来るいろいろな迷惑を避けていただく、こういう措置をとったのであります。  そこで、この少年が、御案内のごとく、全然被疑者でないということを確定することは大へんむずかしいことなんでありますが、お父さんから言えば、被疑者でないということを一つ確定してもらいたい、こういう希望があったのでありますが、われわれ警察といいますか、捜査当局といたしましては、被疑者として確定することも大へんむずかしい状況でございますが、被疑者でない、白であるということを確定することも、それ以上にむずかしいことでありますので、非常に苦心をいたしたのでありますが、現在までのところ、そのW少年が本件事件を起したと、こういう証拠が認められませんので、その状況を新聞者等にも話しまして、二月五日の夕刻W少年に自宅にお帰り願った、こういう状況であります。まあ、そのW少年が、いろいろ人相が似ているとか、こういうことも一つあるのでございますが、それ以外に、われわれ捜査に当っております者といたしましては、当時、罪を犯した者と大体人相がよく似ていると、こういうような者を、これはほかの捜査にもよくあるのですが、数人あげ得るわけです。その数人中に、必ず被疑者があるとも限りませんけれども、そういう方法で、具体的の資料、目撃者の記憶をだんだん呼び起すとか、あるいは風聞その他を集めて捜査を続けておりますけれども、本日現在被疑者を確認すると、こういう段階に至っておりません。また、この被疑者の検挙がおくれる関係で、いろいろ住民の方々の不安も多いでございましょうし、警察当局としては、一日も早く被疑者を確定して、いわゆる検挙に持ち込みたいと努力いたしまして、現地の警察はもとよりでございますが、警視庁といたしましても、七十名ばかりの専従員をあそこへ向けまして、それ以外にいろいろな機動力と申しますか、パトロール・カーその他をそこへ集中いたしまして、たんねんにいろいろな資料を収集して、捜査の幅を狭めていっていると、こういう状況でございます。
  42. 古池信三

    委員長(古池信三君) ただいまの中川刑事局長の御説明につきまして、御質疑の方は、御発言を願います。
  43. 高田なほ子

    高田なほ子君 通り魔事件は、最近の私どもに与えた大きな恐怖を持つ事件で、当委員会としても視察に参りました。ただいまの御報告で、警察当局の御苦心もよくわかり、また現地に参りまして、民間人も大へんに心配をして真剣な協力をしている点もわかりました。また、各報道陣も、報道というだけではなく、何とかしてこの不安を除きたいというような、かなり真剣な気持でやっておられるという点も、私どもとしては実は了承しておるわけであります。しかし、これらの三者の善意というものを十分に認めながら、ただいまの御報告にもあったように、十六才の某少年が有力容疑者として保護をされた点であります。この保護の点について若干お尋ねをしておきたいのでありますが、当局はこれを新聞発表する際に、かなり注意をされて新聞発表されているように出ておるわけですが、任意同行ではない。今の御報告のように、大へんにいろいろの者がうちの中へ、いろいろなことを聞き込みに来るので耐えきれない、従って保護をしてもらいたいというようなことから保護をしたと、こういうことになっているようですが、実際は、保護をするという場合に、捜査官を四人も派遣して保護するために同行するということは、これはどういうことなのでしょうか。こういうふうに興奮している状態の中では、やはり保護するときには保護するような方法が必要であるように思うのですが、常識として、これは四人も捜査官が行ったということは適当でしょうか、どうですか。
  44. 中川董治

    政府委員(中川董治君) ちょっと具体的に申し上げたいと思うのですが、実は二月の四日の午後九時三十分に、荒川警察署にお父さんから、捜査本部から何回も電話があったので来たと、こういう申し出があったのですが、実は捜査本部ではWさんのお父さんには電話いたしていないのです。大体想像いたしますのは、警察官以外の者がいろいろ事情を知りたいために電話しておるのじゃないかと思われるのでありますが、それでまあお父さんがおいでになりましたので、お父さんから事情を聞きますと、うちへいろいろな人がたくさん来て困ると、こういう状況であったのであります。そこでまあ、報道関係者も含めて、いろいろ家の近所が相当混乱しているようでございますので、まあ、家の近所が混乱しているいろいろな状況がございますので、整理と申しますか、いろいろ混乱を防ぐということも警察上の要務でございますので、整理要員等も相当警察官を出しておりますので、それでただいまお尋ねの、少年をなるべく新聞社の方々その他に、ことに少年でございますので、顔その他をたくさんの人たちに見られないように工夫するためには、相当交通整理を含めて職員がおったと思うのでありますが、いろいろ細心の注意を用いて当該少年に与える心理的影響を少くしようという努力のために、相当警察力を費しておることは事実でございますが、御承知通り、お宅の近所は相当カメラマンが行ったとか、ないしはあちこちに当該少年がどこへ行ったろうと探しに行く人たちが相当おりますので、それを防ぐという意味で相当警察力を使っておりますが、目的の要点は、当該少年に与える心理的影響を少くしよう、こういう角度から非常に努力しておるのが、現場の状況であったようでございます。
  45. 高田なほ子

    高田なほ子君 私どもの参りましたときに、少年というところにしぼられておるので、これの捜査については、相当慎重になさらないと、相手が少年でありますから、精神的の打撃を受けた場合に立ち上ることのできないというようなショックを受けることもあり得ると、従ってこの点については十分に御注意を願うようにというようなことで御意見も申し上げてき、また、当局としてもただいまの御説明のようにずい分細心の御注意はあったようですけれども、結果においては、寺本捜査課長談として新聞に載っているように、まことに相済まない結果になったというようなことが出ているわけであります。私は警察当局の行き過ぎということを、ここで追及するつもりはいささかもありませんが、結果として、こういうようなおわびをしなければならないというような状態になったのについては、やはり何かここに欠けるものがあるのではないかという点からお話を申し上げているわけなんです。従いまして、この保護の状況について、捜査員が四人も行ったということは、今御説明があったのでありますが、私をして言わしむるならば、できるだけこれはわからないようにして、捜査員も四人も五人も行かなくてもやれたのではないかという気がするわけです。これはまあ意見の違いということになりますから、これでどうだこうだということは申し上げませんけれども、その次の新聞発表の方式については、御注意があったようにも思われますけれども、どうも警察当局の発表に一貫性が欠けているのではないかという点が指摘されるわけです。なぜならば、二月六日の十一時半の発表で、犯行は否認していると、しかしアリバイが食い違っている、こういうような発表の仕方は、これは保護したということよりは、むしろ有力容疑者として調べているのだという印象を、新聞記者諸君に与えたのではないか、こういう点が指摘されるわけです。午後一時になってから、アリバイがどうしてもとれないのだと、少年がナイフを持っていたのだというような具体的な問題を新聞記者に発表しているということについては、この発表の仕方は行き過ぎているのではないか。保護なら保護であるように、こういう具体の問題については、発表は避けなければならないのではないか。同時に、午後四時になってから、アリバイがあったというような発表を記者の方にしているようであります。毎日新聞の記事が正しいとは私申し上げませんけれども、相当これは毎日新聞が詳しい時間的な発表をわざわざずっとこう示してくれている。従いまして、少年を保護すると、こういうような場合、特にこういう興奮した中では、警察が新聞に発表するに当っては、あくまでも一貫性を持って、保護するのであれば保護するような一貫性を持って、かかる具体の事実をあげて有力容疑者であるというような印象を与えるような発表の形式は避けなければならないのではないか、こういう考えを持っているわけなんです。従いまして、お尋ねしたいことは、新聞に発表するような場合に、どういうような統一的見解をおとりになっておったのか、これをお尋ねしておきます。
  46. 中川董治

    政府委員(中川董治君) これは、御指摘になりましたように、正常の場合におきましても、被疑者、被告人の名誉を常に考えるというのが、根本原則でございますが、とりわけ、少年法に規定されておる精神からいいまして、少年に与える影響ということを常に念頭に置くということが、少年取扱いの根本原則であると心得ております。従いまして、当該いろいろうわさに上った少年につきまして、その少年がなるべく心理的に困らぬようにということにつきましては、細心の注意を警視庁では払っております。ただいまお尋ねの、新聞発表の文字等について、いろいろ御意見があったのでありますが、実はわれわれ日常いろいろ報道関係者の方々としょっちゅう会っている体験から申しますと、警察でいろいろ言うことは、相当本人の名誉その他を考えて非常に慎重に言うのでございますが、やはり報道関係者は、これを事実として知ることがまた一つの重要な目的でございますので、警察で話したこと以外に、報道関係者が自分たちでいろいろ事実を発見なさる御努力を大へんなさるのでありますが、その発見なさった事柄と発表との関係がきちっと明確な線が出てこないということが、比較的多いわけでありますが、本件の場合につきましても、私が承知した範囲におきましては、当該少年が非常に犯罪の容疑が強い、こういうような意味にとれる発言はしていないのですが、とは申せ、先ほど申しましたように、白であるということを明確に言うことも、これまた非常にむずかしいということでありますので、白であるということを明確に言わなかったことは事実であると思います。従いまして、新聞報道関係者等で事実を発見なさるという意味で、いろいろ現場で町のうわさをお聞きになりましょう、被疑者の人相もいろいろお聞きになりましょう、それから当該少年の行く先、アリバイ等についても、みずからお調べになるようなこともあると思いますので、そういうみずからお調べになったこと等が新聞記事に出まして、ただいま御指摘になりましたような誤解を受けている面があるのではなかろうか、こう思うのであります。私、率直に申しまして、いろいろ本件の捜査の大筋すべてにつきましては、報告を受けておるのでありますが、そこの報道関係者と面接の模様を一問一答式に報告を受けておりませんので、明確にお答えはできないのでございますが、われわれ報道関係者といろいろ本件問題等について話し合って参りました場合におきましては、捜査当局と申しますか、そういう捜査に当ることを職務とする人間は、いろいろ各方面の、ことに少年の場合には、少年の名誉保持を常に考えて話をすることになるのでありますが、報道関係者の悪口を決して言うわけではありませんけれども、報道関係者は、別に事実をなるべく報道したいという公共の目的がございますので、警察の言うことばかり聞いておれば記事にならぬということが一つの要件だろうと思いますが、みずから調査に当る、その調査の結果が報道に出るという場合が少くございませんので、そういう状況等もありますので、いろいろ当該少年に迷惑をかける点が自然と多くなる、こういう結果になると思うのでありますが、これはむずかしい点で、われわれ日常苦心しておるのでありますが、警察とか、捜査当局から言えば、被疑者の名誉保持ということを考えて報道するのが本則であろう。また、報道関係者の使命等から、報道関係者の立場になって考えてみますと、警察の言うことを公けに書くということも一つのニュースでございますが、それ以外に、警察の発表記事ばかり書きませんで、発表記事も書きますけれども、そのほかに自分の足で、報道関係者の耳でお聞きになりましたことも報道する。警察の発表と報道関係者の御努力の結果の事実の発見とせっ然と区別した記事は、割合世の中には少いのでございますので、そういった関係等もあわせて御了解いただきたいと思うのであります。
  47. 古池信三

    委員長(古池信三君) この際ちょっと申し上げますが、法務大臣がやむを得ない用件で、時間の御関係があるようでありますから、大臣に対する御質疑があれば、これを最初にお願いしたいと思います。
  48. 高田なほ子

    高田なほ子君 大臣に質問いたす前にもう一つお尋ねしなければならぬのですが、これは私は新聞記者が勝手にこういうことを書いたという考え方で申し上げているのではなくて、警察の十一時甲の発表、午後一時の発表、午後四時の発表、この三つの発表の中で、少年を保護するという繊細な親切が欠けていたのではないかということを指摘しているのです。アリバイがとれないとか、少年がナイフを持っていたとか、犯行は全部否認しているのだ、アリバイが食い違いがあるのだ、こういうような新聞発表は、新聞社が勝手に書いたのではなくて、警察の発表をそのまま報道陣が載せられたと見なければならない。だから、発表の仕方については、相当注意をしなければならないのではないでしょうか、こういうふうに申し上げているので、やはりそういう点は率直にお認めになって、善意を善意として生かしていくというような心やりが必要ではないかと、こういうような考え方を持つのです。  これについてお考え方があれば、またあとで聞かしていただきますが、大臣がお時間がないようですから、大臣にお尋ねするのですが、多分前々国会であったと思いますが、街灯が非常に暗いという問題で、少年犯罪の問題とからみ合せて御質問申し上げたことが実はあるのです。今度事件の起ったところに参りますと、昼間参りましたのですけれども、街灯というのは非常に少いようですね。それから、事件の起ったところは、街灯があっても向うの方を向いているとか、それからもうこの街灯はつかなくなっているのですというようなところで事件が起っている。これは何もあすこの問題のあるところに限らないので、防犯協会等があって、街灯の問題については御心配になっているようですけれども、やはり商店街の方におもに注意して、路地裏の方についてはずいぶん暗いところが多いわけです。私どもの近所などでも、年中変な者が出てきては、女の子が飛んで帰るというようなことがあるので、警察の方に御連絡をして、何とか措置をしてくれないかというようなことがあるのですが、予算がないということで手がつけられない。事件が起ってからばかり騒ぐのではなくて、ほとんどあかりがつかないという路地の街灯、特に新しく開けてきた地区における街灯、これはどんどんやはり、変な人間が暗がりを利用していろいろな意味でいたずらをする者がふえてきているので、特にこの街灯を、現在のままで地方自治団体におまかせするというだけではなくて、国自体としても、防犯対策の意味から、これに対する積極的な手をお打ちになる必要があるのではないか。前法務大臣は、私の質問に対して、大へん大切なことで、この点について十分の注意が行き届かなかったから、われわれとしても検討いたしましょうと、こういうような御答弁をいただいたわけです。どうかこの通り魔事件は、単に犯人をあげるというだけではなくて、なくなった少女、それから傷つけられた少女、このような大きな犠牲を生かすという方向に持っていくためには、ほとんど問題にされていない街灯の暗さ、この問題についても建設的な御研究をわずらわしたいというふうに考えるわけです。この際大臣の御意見を承わっておきたいと思います。
  49. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 全くごもっともな御意見でございまして、実は今回の通り魔事件が発生いたしまして、この事件に対するたとえば警視総監の所見にも、ほとんど第一にこの点が指摘されておるわけでございます。この点については、前々から注意はいたしており、研究もいたしておったのでありますが、これが間に合わなかった点については、非常に遺憾に存じておるわけでございます。問題の所在といたしましては、実は自治庁等にもお願いをして、検討を続けておるのでありますけれども、たとえば街灯の電灯料金が他の料金と全く同じであることとか、あるいはまた、いわゆる受益者負担の関係などがあったりいたしまして、関係方面が多いために非常に措置がおくれておったのであります。場合によりますると、通産省や電力会社等にも積極的な協力を求めなければならない問題でございまして、これらについては、ただいまお話の通り、こういった不幸な事件を契機にいたしまして、早急に関係方面の関心を高揚いたしまして、すみやかに処理できるように、なお一そうの努力をいたしたいと考えております。
  50. 高田なほ子

    高田なほ子君 大へん積極的な御意見を承わりまして、ありがたく思います。特に子供に対する愛情が政治の中に見出されないときに、この政治は民主主義の政治ではないというくらいに、諸外国でも子供に対する深い愛情というものが政治の上に現れてきておるわけであります。われわれ法務委員会としても、あそこに参りましたのは、ただ単に警察にハッパをかけるというような意味ではなくて、子供たち、特に犠牲になったこの少女たちのほんとうの意味の冥福を祈るために、われわれは何をすべきかというような使命感に燃えて行ったわけでありますので、この点についてはどうぞお言葉の通りに十分の御尽力をわずらわしたいと思うのです。  もう一点でありますが、民間の犯罪捜査に対する協力の問題であります。特に今度警視庁では、変質者の監視態勢の準備をするということを、このごろ新聞で発表されておるようであります。町に放置されておる変質者を監視する態勢を整えるということについて、私は、さらさら異存を持たないのであります。しかし、この準備については、相当細心の注意をする必要があるのではないか。たとえば、先般兵庫県での問題で、内々お調べを願った事件があるのですが、学校当局にいろいろ少年の素行調査を依頼しているような問題、これは、ある意味においては協力になるかもしまれせんが、単に一方的な見解で、この少年は親に口答えするとか、反抗するとかいう理由で、何か変質者のようなレッテルをつけられて、しかもそれが警察のリストに載るというような段階になったとすれば、これは容易ならざる問題ではないか。われわれ長い間、二十五年も教員をしていますと、相当あばれん坊で反抗するような子供が、むしろ今は相当りっぱな者になって、消極的でおとなしい子が、何だかどうもわけのわからぬというようになるので、少年の素行を調査するという点については、相当注意しなければならない問題で、変質者の監視態勢の準備というものは、一体どんなふうに準備されているのか、特に精神医学者との連携というような問題は、しかく重要な問題であって、警察官が変質者であるかないかというような判定を下すということは、まことに危険なことであると考えますから、この準備がどういうふうに行われているのか、また、変質者に対する今後国としての方針はどういうふうにお進めになっていくつもりか、この際、大臣にお尋ねをしておきたい。
  51. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これまたまことにごもっともな御意見と存ずるのでございますが、まず、考え方といたしましてこの種の問題については、愛情と同時に科学的でなければいけないと考えるわけでございます。たとえば、少年の資質がどういうものであるかということは、でき得るならば、純粋に、科学的に、第三者的に調べていかなければならないものであって、調査に当った者が、主観的にその好みによって云々するというようなことは、かりにもあってはならないことと考えます。そこで、前の国会のときに、当委員会でも詳しくお聞き取りをいただいて、まことに私も感激したのでありますが、私どもの考え方といたしましては、たとえば、グリュック方式というようなものを積極的にさらに勉強いたしまして、科学的に少年の犯罪の予測をしていくということを根本義にいたしたいと思いまして、各方面の非常な御協力と御理解のもとに、今回の予算あるいは法務省設置法の上におきまして、法務総合研究所を作っていただくことになりましたわけで、ここに専門家を集中いたしまして、青少年の犯罪の予測及び予防ということについて、特に科学的な方法を近代的なやり方でやっていくようにいたしたいと考えておるわけでございます。そこで、根本の考え方や機構はそういうふうにようやく体をなしてきつつあるわけでございますが、具体的のやり方といたしましては、私は、当面のわが国の状況おいては、青少年の再犯の防止ということに、とりあえずの最重点を置いて参りたいと思っております。御承知のようにグリュック方式なども、見ようによってはこれは非常におそろしいものでありまして、たとえば、少年が四つか五つのときにすでに反社会性を持つというようなことが言われておりますが、そういったようなことよりも、今の日本で一番必要なことは、たとえば、小松川事件に現われましたように、ある少年が何べんも警察の門をくぐっておった。しかし、その調査あるいは保護観察のやり方が科学的でなかったために、みすみすああいう大罪を犯すことになったというようなことは、非常に残念でございまして、私どもの気持とすれば、いやしくも警察で補導された者、あるいは何か事件を具体的に起した者について、十分科学的な診察をいたしまして、特に反社会性が濃厚と思われるような者について、特別の教育なり保護観察なりを施していくようにいたしますれば、行政上の経済的な効果からいっても非常に違ってくるのではないか。まあ率直に申しまして、今までのやり方が非常にマンネリズムになっておりまして、保護観察所等にいたしましても、職員、教官が少い。対象となる人間が非常に多い。そうすると、たとえば、一年に一回おざなりに、役所へ出てきて顔つきを見ただけで、こいつはだいじょうぶそうだといって帰すというようなことでやっていたのではいけませんので、科学的な方法が発見されれば、今までは千人を相手にやっておったことが、たとえば、八十人なり百人に限定されてくる。その子供たちに対して犯罪を犯さないようにということを、いろいろの、これは家庭にもお願いをしなければなりますまいし、学校の先生にも十分な御指導を願わなければなりませんが、そういうふうなやり方をすれば、この再犯防止ということは相当の効果が上がるのではないか。これを私は差し向きの重点にしていきたい、こういうふうに考えるわけでございまして、全部の児童に対して動向調査をするなどということは、まあずっと先の問題、あるいは性質の違う問題ではないか、こういうふうに考えております。
  52. 北村暢

    ○北村暢君 関連して。今の変質者の決定をするときに、非常に慎重にやらなきゃならないということは当然なんですけれども、今、大臣の言われる再犯の防止をする、保護をした者を観察を十分にして、それから矯正が完全にできたというところで出すのがいいんですが、最近の科学的な診療なり何なりによって決定をするというなら、今までのやり方は非常にマンネリズムだった、これがやっぱり大きな原因をなしているのではないかと思うんです。今やっているのは、やっぱり科学的じゃない。しかも、非常に事務的に、何カ月たったら、あとから来るからもう置こうといったって置けない、予算上もこれしかだめだ、こういうような形が現実にはあるのじゃないか。これは実際問題としてはあるのじゃないかと思うんです。こういうことが、今、大臣のおっしゃっておられる科学的診療に基いて実際にそれをやるとすれば、そういうことはあり得ないはずなんだけれども、実際の問題としては、やはり事務的に処理されているというのが実態であろうと思うのですよ。ですから、今の大臣の考え方は非常にけっこうなんだけれども実際には実施されておらぬというのが実情ではないか、こういうふうにいわれておるのですよ。これは、私実際に事実どうだということを今申し上げるまでの余裕はないのですけれども、そういうことが相当これは批判として出ておるわけなんですよ。ですから、その点について今の大臣の考え方は非常にけっこうなんだけれども、それが実施されていな  いということについて、今後その予算的な措置なり、それからまた方向としてどういうような今までと変った措置がとられているのか、ここら辺について、もう少しお伺いしたいのですが。
  53. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 全くごもっともでありまして、今回の予算等につきましても、相当乏しい中でも、こうした関係については経費を計上いたしておるのでありまして、お話のように、たえとば収容いたします場合に、悪いことをした少年が鑑別所に送られる。ところがその鑑別所で本来は静かな状態に置いて、とっくりその子供の精神状態その他を調べるべきなんでありまして、一応の制度はできておるのですけれども、私も現場を見ますると、先につかまったもっと悪い、いわば悪質の度が強い者と、場合によると一緒の部屋に収容しておる。これは物的設備が足りなかったり予算の関係がありますが、そうすると、せっかくその子供の状態をよく調べようと思ったのに、もう先生が調べるより前に、同室のさらに悪い先輩から悪いことを教わってしまうというようなことがあることも、私もしろうとながら非常にそういうことを発見いたしまして驚いたわけでございまして、こういう点は、確かに物的設備が足りませんので、この改善をおそまきながら大いに今回も力を入れたわけでございます。それから必ずしも先ほど申しましたのは、身柄を収容するというわけではございませんで、たとえば今ここに的確な数字を持っておりませんが、保護観察に付される少年というのは、皆うちにおるわけでありますね。それに対して、先ほど申しましたように保護観察の対象になると、たとえば一年に一ぺんとにかく役所に出て来い、そうして顔つきなり素行を調査するわけですが、私は、個人的な見解なんでありますが、今保護観察に付されている少年が、全部が全部相当な反社会性を必ずしも持っていない。中には、先ほど高田先生からお話のように、非常にあばれ坊主で、大した反社会性はないが、悪いことをして保護観察に付されたという者も私はあろうと思うのですが、そういう者がその程度であるということがわかれば、こんなのはもう一年に一回呼び出すくらいで私はいいと思うのですが、その対象になっている中の非常に危ないのが必ずいるわけなんです。その比率は必ずしもそう多いものじゃございませんから、現在その衝に当っている当局職員に対しましても、そういうところへ集中して観察の目を十分働かせるようにしますと、これは相当な効果が上るのじゃなかろうか。これは抽象論だけでなくて、現実にその衝に当っている人たちの今までの実績から見まして、そういうやり方ができれば相当の効果が上るというような見通しが出るわけでございますので、先ほど申しましたようにまず研究所で、それも大学の教授の研究のようなやり方ではございませんで、実際の矯正に当る人間とそれから科学的な勉強とを一緒に総合してやろう。それで、本来はこういったような刑事学というようなものについて、わが国ではどこの大学にも専門の講座一つもないような乏しい状態で、その方はその方で私は別に大いにやらなければならぬと思いますが、法務省として今やろうと発足をしかけておりますものは、たとえば機構としても事務次官がもう制度上そこの所長であるということにいたしまして、実際の犯罪の予測から犯罪の捜査からあるいは裁判を経てそうして行刑になって、それからそのあとのアフター・ケア、こういう一貫したあれにどういうようなメソッドでやったらいいか、どういう考え方でやったらいいかということを、この研究所で——材料は何ぼでもあるわけでございますから、これを整理し、かつ学理的な研究もして、これをどんどん実際の面に移し植えまして、たとえば保護観察所の職員などにもこういうやり方で、こういう考え方でやれという、いわゆるリーディング・プリンシプルとでも申しますか、それを見れば、その衝に当っている人たちも新しい意気込みで大いに、何と申しますか、感奮してその衝に当ってもらえるようになるのではないか、そこをねらっておるようなわけでございます。
  54. 古池信三

    委員長(古池信三君) 法務大臣に対してはよろしゅうございますか。——それではどうぞ。
  55. 高田なほ子

    高田なほ子君 どうですか、発表の一貫性の問題について、やはり私疑義が残るのですよ。新聞社は新聞社で取材したものを報道なさるというのは、報道の自由だからそれはけっこうだと思うのですが、新聞社の方としてもやはり人権の侵害にわたるような問題は、極力お避けになっているのが常識だと見なければならない。正田美智子さんの御婚約発表のときなんか、ずいぶん報道陣は協力されたのでありますが、私は、やはり協力するような態勢を作るような仕向け方をしていったからそうなったのだろうと思います。今度の警察の発表は、先ほどから指摘しているように、あまりこう具体的なことを——保護しているというのに、きめ手がないとか、それからアリバイがとれないとか、刃物を持っていたというようなことは、これは避けなければならないのじゃないか、こういう考え方なんです。この考え方は私正しいと思うのですが、あなたは、私の考え方は正しくないと思っていらっしゃるのですか。
  56. 中川董治

    政府委員(中川董治君) ただいまの高田委員考え方は、私全く同感でございます。警察当局もそういう考え方に基いて報道関係者に接触しておるということの前提でお話しておるのでございますが、いろいろ新聞社も警察上のことになると、いろいろこまかいことまで発表したというようなお話のようですが、その点、事実はそうでないように思うのです。しかし、さらに調べてみたいと思います。
  57. 高田なほ子

    高田なほ子君 これの前提として、十名の少年が刃物を持っていたという理由当局の取調べを受けている報道があるのです。この取調べはどんなふうにして行われたかということが一つ。それからもう一つ、民間人の協力という問題がある。ずいぶんあそこの町では民間の人が協力しているようなんですが、協力の仕方などについても、警察の方としても少しは御指導になる必要があるのではないだろうか。たとえばトビロを持って騒いでいらっしゃるようなことはどうかと思うのですがね。トビロまで持たなくても協力できるのじゃないかという点があるわけなんですが、こういう点についてはどういう御指導をされたのですか、今度の場合。この二つの点についてお答えいただきたい。
  58. 中川董治

    政府委員(中川董治君) 警察といたしましては、何といいましても、根本的に、犯罪捜査にいたしましても警察活動すベてが、関係者なり民間人の方々の御協力をベースにして動くべきものだと私は考えます。それで、いろいろ土地の方々が非常に御心配になって、いろいろ防犯上の措置をなさる、こういうこともけっこうなことだと思います。ところが、そのやり方等でどうかと思う、こういうような場合においては、これは話し合いでございますが、たとえばトビロなどを持っているのは必要なかろうと私も思いますが、現実おいてもそういうような指導をしていると思うのでありますが、われわれは国民——関係住民の方々の協力のもとに警察活動をやっていきたいということを根本原理といたしまして、その協力が常にコモンセンスといいますか、常識のもとおいて行われる、これを根幹として、いろいろ関係者の指導といいますか、話し合いといいますか、こういうことにしてやっていきたいと思っております。
  59. 高田なほ子

    高田なほ子君 今度の場合は民間人の協力に対して、具体的にどういうような御指導がされたのですか。十人の少年の取調べというのは、どんなふうに行われましたのですか。そしてその取り調べられた少年というのは、取り調べられてからどんなような状態にあるのですか。おわかりにならなければわからないところはよろしゅうございますが。
  60. 中川董治

    政府委員(中川董治君) 取調べという言葉の問題でありますが、いろいろ事情を聞くということは確かに当該少年につきまして行なったことは事実でございますが、いわゆる強制処分は物に対しても人に対しても一切やっておりません。それからお宅に帰られると大へん訪問客等が多くなってお困りの状態でありましたので、お父さんと本人の御希望によりまして、宿所をあっせんして、そこでいろいろ事情を聞いたと、こういうことでございまして、事情を聞いた内容を、きょうは何を聞いた、きょうは何を聞いたということをこまかく言うことは、また当該少年の心理的影響等もおもんぱかって、まあこの少年は、一応向うの申し出がありましたので、某所に就寝させているという旨を発表したということは事実でございますが、こまかいことまで新聞社の方々にいろいろ発表はしていないと、こういうふうに、われわれ報告では承わっておるのであります。
  61. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちょっと私の質問からそれているのですよ。私は十六才の一番迷惑をこうむった少年のことは一応これで大体事情がわかりましたからいいんですが、十人の少年が刃物を持っておるという理由で、当局の取調べを受けたという報道があるのです。
  62. 中川董治

    政府委員(中川董治君) 十人ですか。
  63. 高田なほ子

    高田なほ子君 十人の少年。この十人の少年がどんな取調べを受けたのですかね、私は心配なんです
  64. 中川董治

    政府委員(中川董治君) まことにうかつですが、十人の少年が刃物を持ってということは、ちょっと私今存じませんので、調べましてお答え申し上げます。
  65. 高田なほ子

    高田なほ子君 それから私どもが現地に視察に参りましたときに、あの現場から押収した刃物ではないかもしれませんが、飛び出しナイフは相当われわれに見せていただいた。数が多いのですよ。あの現場から持ってこられたのかどうかそれはわかりません。多分刃物を持っていたといわれる十人の少年を取り調べたというのでありますから、それらから押収されたものもあるのではないかと思いますが、どうなんですかね。またあんなに真新しい飛び出しナイフというものが民間でたやすく子供が手に入れられるようなしかけになっているのでしょうか。聞くところによるというと、飛び出しナイフというのは発売を一応規制されているというふうに聞いておりますが、現状はどういうふうにあれはなっておるのでしょうか。
  66. 中川董治

    政府委員(中川董治君) いわゆる飛び出しナイフのことでございますが、実は飛び出しナイフは昭和三十年までは法律上の規制がなかったのです。ところが昭和三十年に、私、当時政府委員でその法律案説明したのですが、銃砲刀剣類等所持取締法の一部改正法律案を当院に提出いたしまして、そのときに、飛び出しナイフは一切所持を禁止するというのが政府原案だったわけです。当院で御審議いただきまして、地方行政にかかったのですが、御審議いただきまして、とにかくその提案理由はわかるけれども、ものには程度があるからというので、常識的な判断でございますけれども、当院で修正がございまして、五・五センチをこえる飛び出しナイフを規制の対象にしよう、こういうふうに相なったのであります。従いまして、自来、法律上は刃渡り五・五センチをこえる飛び出しナイフは犯罪である、所持をしておれば。製造も販売本禁止。輸出は別ですけれども。五・五センチをこえない小型のものにつきましては合法である、こういうふうな現行法でございます。それで、法律はその通りでございますけれども、これは刑法で参りましても、殺人があるのと同じような意味で、法律はきちっとしておりまして、それによって取締りは厳重にやっております。それで、各地で五・五センチをこえる飛び出しナイフを持っておるといった理由で検挙もいたしますし、当該物件は押収し、最後に裁判所で没収するという努力を警察は続けておりまして、いわゆる飛び出しナイフの取締りというものは相当進んでおります。従いまして、警視庁で飛び出しナイフを押収したという事実は相当ございます。そこで五・五センチ以上の飛び出しナイフがあるという二とが発覚すれば、警察ではどしどし押収するということを続けております。ところが、ピストルも所持禁止ですけれども、民間にピストルがあるということは、これまた事実でございますので、こういう法律規制を受けるものがまだ民間にあることは危険でございますので、法律の励行と申しますか、不用意にお持ちになっておられる方もございますので、一面広報活動によって、どしどし提出して下さいという広報活動をやる反面、不法に持っておられる方に対しては、取締りを厳重にやっていく、こういう方向で危険物である飛び出しナイフの取締りに努力をしている、これが現状でございます。
  67. 高田なほ子

    高田なほ子君 私どもが見たのは、刃渡り五・五センチぐらいだったのです。それがたくさん押収された現物だと言って見せて下さったのですが、そうすると、五・五センチ以下のものは警察としては押収してはいけないことになるわけですね。もしかりに十人の少年から押収したものとするならば、それはまた子供に返さなければならないことになりますね、法律違反ではないから、小さいのだから。それはどうなんですか。
  68. 中川董治

    政府委員(中川董治君) 五・五センチメートル以下のものは合法でございますので、こういうことがやれるわけですが、合法のものであっても犯罪の用に供したら、━━これは出刃ぼうちょうなんかそうなんですが、出刃ぼうちょう自身を持つことは合法でございますが、それを犯罪の用に供したというようなものでありますれば、これは押収の対象になる、こういう面もありますので、五・五センチメートル以下の飛び出しナイフは、取締りの規制においては合法である。ただし殺人、傷害の用に供した場合におきましては、これは殺人、傷害の証拠物件になるし、当該物件は押収の対象になる、こういうことに相なろうと思います。法律論といたしましては。それで、われわれ警察といたしましては、五・五センチメートルをこえるものにつきましては、今一生懸命取締りをするということと、五・五センチメートル未満のものにつきましては、犯罪の用に供した場合は押収その他の措置を講じますが、犯罪その他の用に供しないものは、行政指導で、危いからお母さんに持っていてもらいなさい、お宅に預けなさいという指導をやっていることは事実です。で、これはお伺いしたいのですが、高田先生がごらんになったのは五・五センチをこえるものではなかったかと思いますが、事実を調べてみます。
  69. 高田なほ子

    高田なほ子君 ただ、私は警察当局のことを根掘り葉掘り迫ろうとは思わないけれども、要するに今度の問題は、少年というところにしぼってきているので、今後もこの少年に対する取調ベ、あるいは民間からの協力でいろいろな捜査が行われるだろうと思うのです。この場合、相手が少年と目ぼしをつけたからには、相当これは当局としても民間人に対する協力の態度、協力のやり方、こういうものについては、よい指導がされなければならないし、当局としても重ねて言うように、相手が少年である場合には、特段の注意をわずらわしたいという、こういう点から今までの質問を申し上げたわけでありますから、私の意のあるところをよく理解して下すって、今後捜査に熱心であることはけっこうでありますが、行き過ぎ等がないように、特に少年に対して人権じゅうりん等のことが起らないように、十分の御留意をわずらわしたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  70. 中川董治

    政府委員(中川董治君) 全く同感でございますので、御趣旨のように努力いたしたいと思います。
  71. 一松定吉

    一松定吉君 ちょっと中川局長にお伺いする前に、問題だけをあなたに申し上げて、この次の機会一つその調査した結果を話してもらいたい。新聞の発表によると、二十七日だけのアリバイを調べたように思うのだが、ところが本件は、あなた御承知通りに、二十一日から始まっている。二十一日が二カ所、二十二日が凶行がない。二十三日が二カ所、二十四日が三カ所、二十五日がまた三カ所、二十六日が一カ所、二十七日が十カ所、新聞の報道によると、今の保護した少年のアリバイについて立証ができたというのは、この二十七日の十カ所の事件のことだけのアリバイができたように新聞で見たのだが、その点をどうであったか。それを一つ実地についてお調べして、その結果を次までに報告して下さい。二十一日、二十三日、二十四日、二十五日、二十六日のアリバイはどうであったか。それから時間がこれはもう五時から七時までに限られておる、五時半から、毎凶行の時間が。そうして見ると、これはどこか就職していて、帰りにやったのだと私はにらんでいる。ところが、二十三日の保護された少年は、うちで炭屋のお手伝いをしているというだけであって、何も五時半から七時までに限って出なければならぬことはないのだから、この点もよく調べたかどうか。私は、どこか就職している者が、五時過ぎに仕事をやめてうちに帰るときの凶行ではないかと見ている。そうでないと、五時半から七時までの間に、ずっと毎日々々時間はそれですから……。その点。それから、これは尾久町や三河島と、これだけの区域内をやっていることなんだから、この付近に住んでいる者であるということ。それから同じ場所ばかりやっているのだから、よほど地理に明るい者であるということ。それから自転車の中古というものを持っておるということ。それから、うしろから突き当って通り過ごすときに被害者の左の胸部に害を加えたという事実が多い。あるいは前から来た時分には、うしろから来て、前に回って、前から害を加えたということが、この調査の結果を見ると多い。そうすると、これはとにかく一方の手で運転をし、一方の手で凶器を持ってやることができたのだからして、両方の手で運転しないで片方の手だけで運転していくという技能を持っておる者であるということ。それから少年は十七、八才から二十才までということ。これは異口同音に被害者が言っているから。それから身長はあまり長くない小男であったということ。服装は黒のジャンパーを着ておったということ。帽子をかぶっておったということ。それで物取りでないということは明らかだ。そうしてみると、精神異常者あるいは身心耗弱者であるということ。そうでないと、こういうことを連続してやるはずがないのですから。そういう意味において、あるいは不良少年であることはきまっているでしょう。つまり、物取りでなく、ただ人に害を加えるということをもって趣味としておるから、不良少年である。そういうようなものについての学校の成績とか、素行とか、家庭の事情等は調べたかどうかということ。  こういう点について詳細に調べをして、その結果、保護の名において——私は保護の名のもとにと言う。保護の名において一晩連れてきて調べた。この少年だけをやったということは、少し早過ぎたのじゃないか。今私の言うようなことを全部調べ上げて、それにこの保護した少年が全部当てはまっておって、警察に連れてきて、一晩置いて調べたのかどうかというようなこと。こういう点を、もう一ぺん中川さんからよく関係当局に調べて、そういう点がことごとく一致しておって、そうしてしかもアリバイが二十一日、二十三日、二十四日、二十五日、二十六日、二十七日、全部アリバイが立証されたということなら、これは疑いがすっかり晴れてしまったわけです。そうでなくて、二十七日だけのアリバイだけは証明ができたということだけでは、今私の言ったようなことが全部調べられていないということであると、これを連れてきて——保護の名のもとに連れてきて調べたということ自体が早過ぎたということが一つ、それから調べた結果を一々新聞社に時間的に報告するというようなことは、証拠隠滅をはかる方法なんだよ。その新聞の報道によって、今おれのことを調べた、アリバイを作ろう、今おれのことを調べた、服装を変えようということで、証拠隠滅になるのだから、そういうことは捜査官というものはすべきものじゃない。それがために、結局この問題は今の疑いを一ぺんかけた人間は釈放してしまって、あとはもう恒久捜査になって、果してあがるかあがらぬかわからぬというようなことはよくないから、そういう点を一つ中川さん今度よく関係当局について調べて、詳細なる一つ報告をこの次の法務委員会で私お尋ねしますから、そのときお答えができるようにしていていただきたい、おわかりでしょうね。夕方であったのだからして、これは一軒のうちの、炭屋の自分のうちへの就職ではなくて、どこかに就職しておった者が、その仕事が終りになって、帰りになってやったものではないか、方向がいつも同じであって、しかも同じ区域であるから、地理に明るい者ではなかろうか、中古自転車を持っておったということは、もうほとんど異口同音に唱えられておるから、そういう自転車を持っておる者であるかどうか、自転車を持っておるならば、その自転車を運行するについては、左手でも右手でも片方の手で運行が自由にできるような者であったかどうか、それからナイフをいつも持っておった者であるかどうか、ナイフを持っておった者であるならば、ナイフのどこかにその血液が根元の方へでもついているというようなことを調べたかどうか、服装は黒のジャンパーを着ておった者であるかどうか、帽子はいつもかぶっておったということ、窃盗でないことはわかっておるから、精神の異常者、もしくは精神の耗弱者というようなことで、近所の人の評判になっているような者であるかどうか、あるいは警察で前科者もしくは要注意人物として注意をしておったようなことがあったのかどうか、それからその疑いをかけた少年の学校の成績はどうであったか、家庭の事情はどうであったか、平素の素行はどうであったか、付近の評判はどうであったかというようなことを、一つ十分調べた結果あれを連れてきてやったのならこれはいいだろうが、そうでなくて、ただ、今言うこのうちの三、四が適合しているといって、保護の名において連れてきて保護したように、名前は親が保護を求めたとか何とか言うけれども、そのうちに四人も五人も家宅に行って、家宅を調べ、衣類を見たのだということからいえば、名前は保護であったけれども、捜査でやったことは、専門家のわれわれから見れば議論のないところだから、これはとがめない。早く検挙ができればいいということに主眼を置くのですから。今のような点を十分調べて、そういうことで一つこれから捜査をやってみて、あるいはそういう点に符合して、今の釈放した人間でも、あるいは二十七日以外の、二十一、二十三、二十四、二十五、二十六のアリバイが実証できないということになってくれば、やはり疑いが出るわけなんだから、そうしてみると証拠は十分でなくても、一応逮捕状で起訴だけしておいて、そうしてあとは証拠十分でないということで無罪になっても、これは仕方ない、そういう点を一つ調べてみて下さい。それをお願いして、きょうはこの程度に私はとどめておきますから、どうぞよろしく。
  72. 大川光三

    大川光三君 一松先生から、いろいろ御専門の立場で捜査に協力するというお含みがあっての御質問かと考えます。そこで私も一つ協力いたしたい。私かつて大阪における第二小平事件、十六才未満の少年が多くの女性を殺した事件であります。いま一つ昨年十二月に大阪で起った、これも成年になりたての若い者が、主として小学校の女生徒に対するわいせつ強姦をしきりにやった、たまたまこの事件二つながら関係をいたしまして、二つのこの事件に共通する点として、一つは、非常にこの子供は二人ともおとなしい、おそらく近所では、あの子供が、というほどおとなしい子、あるいは内気な子供であって、近所隣りはおそらくそういうことは想像もし得ない性格の持ち主であったということが一つ。いま一つは、これはこの事件二つともそろいもそろって蓄膿症を病んでおりまして、蓄膿の子供である、それが頭に上っておって、先生のおっしゃっている精神耗弱のところにきているのだろうと思いますが、その精神耗弱の原因が、二つとも蓄膿であるということが私はわかりまして、何か犯罪捜査の上にお役に立つのじゃないか、こう考えますので、この点を特に申し上げまして協力の一端にいたしたいと、かように考えております。
  73. 中川董治

    政府委員(中川董治君) ただいま非常に協力的な御発言で、まことに感謝するわけでございます。お話がございました点に基きましてよく調べますが、一言だけお答えしたいのですが、いわゆるW少年につきまして、一松先生が御指摘になりましたように、犯罪捜査のいろいろな角度から調べて最後に逮捕ということでなく、本人に事情を聞く、これが常道だと思います。本件の場合はそういうことができなかったのです。と申しますのは、いろいろな角度からずっと調べるのではなくて、民間の方から、この人がおかしい、この人がおかしいといううわさが一ぱい出て、そこに新聞社の方が一ぱい押しかけて行って、お宅で困られて、これは大へんだから一度警察で調べてくれ、こういう申し出があったのです。それで、警察では、むしろ向うからそういう、うちでこんなにうわさがあっては困るから調べてくれということなんで、一松先生のおっしゃったように、いろいろな角度からいってこの人が怪しいというので、逮捕はしないまでも、本人から事情を聞くのが正しいと思うのです。本件の場合はそういうことができなかったという情勢で、できなかったと申しますのは、住民の方々がおかしいといって、新聞社の方がずっと行って、カメラをとってきて、一ぱいとってくる、それで大へんだというので、そこで整理するために警察にも行ったから、そういうことの状況であったということだけ申し上げておきます。お話の点はよく調べます。
  74. 古池信三

    委員長(古池信三君) この通り魔事件に関する調査は、本日はこの程度にとどめたいと存じます、捜査当局におかれましては、この問題が発生して以来連日連夜非常な御苦心、御労苦を払っておられることについて深くこれを多といたします。しかし、なお、一般における不安が消えておりませんので、どうか今後一そう御努力あって、しかも各方面にわたって、たとえば人権等に対する細心の御注意も払っていただいて、一日も早く犯人を逮捕し、国民の不安を一掃せられますように委員長として切望いたします。   ━━━━━━━━━━━━━
  75. 古池信三

    委員長(古池信三君) それでは、次に、昨年十二月に実施いたしました高知県下における集団暴行事件について、派遣委員の方から報告を聴取することにいたします。
  76. 大川光三

    大川光三君 それでは、私より、派遣委員を代表して御報告を申し上げます。  昨年十二月二十三日から二十六日までの四日間、北村暢委員及び私、大川委員派遣委員と相なりまして、久保調査主事を伴い、検察及び裁判運営等に関する調査の一環として、高知県高岡郡仁淀村森地区における日教組小林委員長等に対する集団暴行事件について、事件の概要、発生原因、経緯、状況事件発生前における森地区の勤評闘争の状況及び民心の動向、事件発生前における現地の警察並びに検察庁の活動状況等につき、主として人権擁護の立場から調査して参りました。  まず、本事件調査に当って、実情を聴取した関係者を申し上げますると、高知県知事、高知県警察本部長、佐川警察署長、高知県教育委員会教育長高知地方検察庁次席検事、高知地方法務局長、高知県教職員組合委員長、仁淀村長、仁淀村教育委員会教育長、仁淀村議会教育対策委員会委員、現地駐在巡査、父母会代表、非盟休側父母代表、森小学校長及び同校教職員等であります。  以下、調査事項について順次御説明申し上げますが、時間の関係もございまするので、なるべく簡単に申し述べまして、具体的な事実関係等に関する詳細は、必要に応じて御説明申し上げることにいたします。  まず第一に、事件の概要を説明いたします。昭和三十三年十二月十五日午後四時ごろ、小林日教組委員長、東元県教組委員長、和田情宣部長の一行は高知を出発し、午後七時ごろより仁淀高校階下柔道室において、吾川村、仁淀村両村の小中学校の教諭、父兄約四十数名を交えて、仁淀村森地区における勤評闘争に関し、小林委員長をかこむ懇談会を開きました。が、間もなく父母会会員が徐々に仁淀高校に押しかけ、険悪な空気が認められたので、右懇談会も午後七時三十分ごろ、会場を二階に移しました。午後八時十分ないし三十分ごろ、父母会会員数十名が会場前の廊下に集まりまして、中越会長を先頭に、五名が無断で懇談会場に侵入し、小林委員長に対して懇談会の傍聴を要求いたしましたが、会合の性質上傍聴は許せないといってこれを断わったため、さらに中越会長は話し合いの場を持ちたいと申し込み、一方子供を守る会━━これは非盟休組の父兄会であります━━の五藤義高氏から、子供を守る会と父母会との代表者間で話し合いたいとの提案がなされましたが、これは不調に終り、これがため、父母会会員の興奮状態はますます強くなり、そのうちに何者かが電灯のスイッチの点滅を始めるとともに、午後十時四十分ごろより袋入り石灰、椅子、火鉢、ミシン等を懇談会場へ投げ出したり、廊下に備付の消火器の消火液を浴びせたり、棒で殴打する等により、小林委員長ほか約三十名に対し、暴行、あるいは傷害を加え、また窓ガラス、洋服だんす、火鉢などに損害を与える一方、矢野森小学校校長を別室に連れ出し、強制的に辞表を父母会会長あてに書かしめた後、午後十一時三十分ごろ引き上げていきました。一方、十二月十六日午前零時過ぎ、森小学校に押しかけた十数名の者が職員室に侵入し、宿直勤務の同校中内教諭の腕をつかんで廊下に引き出し、廊下及び校庭において殴打し、もって全治二週間の傷害を与えたのであります。  以上が本事件の概要であります。  次に、事件発生原因について申し上げます。元来事件の因果関係なるものは複雑かつ交錯的なものがありまして、何をもって決定的事件発生原因なりとなすべきかは容易に判定することができないと考えまするので、調査の資料、関係者の意見等に基いて、発生原因とおぼしきものを列挙して委員各位の御参考に供したいと思います。  (一) 仁淀村は高知県下でもはなはだしい僻地にあり、村民は純朴である反面、旧弊なところがあり、時代の変転に対する適応性に乏しく、従って現代思潮の理解に欠けた点があること。  (二) 勤評問題の本質の理解の点において、地元教員側、父兄側ともに見解を異にしたため、お互いに感情闘争に走り、妥協の道が見出せなかったこと。  (三) 森地区が(一)において述べましたように、封建的思想の強いところであるにもかかわらず、オルグ活動が行われたため、ことさらに住民を刺激する結果となったこと。  (四) 六月二十八日、校長と父兄側との間に「今後闘争のため児童を犠牲にしない」との協定が結ばれたにもかかわらず、昨年十月二十八日の闘争によって教員側が一方的にこれを破棄したことが父兄側の憤激を買い、父母会結成の因をなしたこと。  (五) 事件当日の小林委員長来村を総評の勤評対策本部設置の下準備と憶測したり、あとからオルグ団がトラックでたくさん来るとの流言飛語が行われたこと。  (六) 当日は隣部落の神祭で飲酒した者が多かったこと、等であります。  次に、事件発生前における森地区の勤評闘争の状況について申し上げます。  高知県教組は、勤評反対の目的を達するため、現在までに十次にわたる休暇闘争を行なってきておりますが、森小学校においても、六月二十六日以後十月二十八日までの間に五回にわたり一斉休暇を行なっております。これに対して、同小学校の校下民は、そのつど学校当局に対し、一斉休暇を思いとどまるよう懇願してきましたが、聞き入れられなかったので、父兄側においては、勤評反対のため団体行動をとっている教員たちから児童が教育を受けることを拒否するために、十月二十九日児童の盟休を実施し、次いで同月三十一日校下民約七百名をもって父母会を結成し、別途に授業の方法を講ずることとし、同日村教委に校舎の借り入れを申し入れましたが、村教委は、学校校舎の管理権は校長にある旨を回答したので、父母会側は十一月五日校長に対し校舎借り入れの申し入れをしたが、拒絶されたため、再び村教委に申し込んだ結果、村教委においては、一時の手段として、校舎の一部に父母会側の子弟を収容するようにとの通達を出しました。翌六日、七日登校を阻止された同校教員は、七日夜高知市へおもむき、高知県教育委員会あっせんのもとに、村教育委員会と話し合いをいたしました結果、(一)同盟休校の長期化は違法である。(二)正常登校の児童を阻止することは不法である。(三)教師の登校を阻止することは不法である。(四)学校を占拠することは不法である。(五)学校の管理権は校長にある。(六)臨時の者を雇い入れて自習の管理をすることは法的に見て不法であり、何らの効力を持たない。という六項目を双方が承認いたしました。次いで、同月十一日、学校側と村教育委員会との間で話し合いがなされましたが、結論を得るに至らずして散会し、翌十二日、村教育委員会は独自の考えで、学校管理権は村教育委員会にあることを決議し、西校舎の管理権を校長に委任することにしたので、一つの学校において、非盟休児童は西校舎、盟休児童は東校舎と二組に分れ、変則的状態のまま事件当日を迎えたのであります。  次に、事件発生前後における警察の活動状況について申し上げます。なお、以下警察の活動状況についての報告は、高知県警察本部の報告を基礎にいたしております。  昨年十月二十八日の休暇闘争及び同月二十九日の盟休突入以来両者の対立は激化し、十一月五日から十一月二十三日までの間に八回にわたって警察官を現地に出動させ、闘争による混乱の予防鎮圧に努めましたが、その警察官の延べ数は四百六十四名に及んでおり、父母会側において暴行傷害の被疑者として書類送庁された件数は十三件に上っております。しかし、十一月二十四日以後、オルグ団の派遣中止以降は特別の事案もなく、変則的状態ではあるが、一応村内は平静であり、警備上憂慮すべき事態の発生は見られなかった模様であります。  かくて、十二月十五日事件当日午後二時四十分ごろ、小林日教組委員長、東元県教組委員長が県警察本部を訪れ、教組の県教委に対するカン詰事件についての教組幹部の逮捕について、釈放方を要求いたしました。その際、「今明日中に森地区へ行くかもしれない」との発言があったが、別に警備は求めていなかった旨、土居秘書室長が了承しております。県警本部としては、小林委員長等一行が十二月十五日午後四時ごろ高知を出発して森地区に向つたとの情報を得たので、直ちに所轄警察署を通じて、現地駐在巡査、すなわち名野川は山中巡査、別府は飯尾巡査に対し、その旨を通知しました。  以下、事件発生前後における警察側の具体的行動について、その概略を申し上げますると、別府駐在所の飯尾巡査は、同日午後六時二十分ごろ、仁淀高校正門前で乗用車から三名の者が下車し、教員宿舎に入るのを見届けた後、午後七後ごろ別府駐在所へ帰り、午後九時三十分ごろ山中、飯尾両巡査は仁淀高校に警らに出向き、二階教室で会合が行われているのを認めた後、両者は別れて警戒に当りました。間もなく飯尾巡査は、地元民から仁淀高校前に置いてある乗用車のタイヤの空気が抜かれている旨の届出を受けたので、これが調査に当りました。その後飯尾巡査は、仁淀高校の会合に出席していた婦人六名を森地区まで送るため一緒に仁淀高校を出発し、午後十時四十分ごろ駐在所に帰所したが、飯尾巡査は、妻から、仁淀中学の中平教諭から状況報告があったことを聞き、直ちに本署、佐川署に状況を報告した後、仁淀高校に向け出発したのでありますが、途中妻からの連絡で、森小学校の中内教諭から身の危険を感ずるからすぐ来てくれとの電話連絡があった旨を聞き、行く先を変更して森小学校に向ったのであります。一方山中巡査は、午後十時ごろ腹痛のため名野川駐在所へ帰所につきました。午後十時十分ごろ、名野川駐在所へ地元民から、仁淀高校への救援依頼があったので、山中巡査はこの旨を午後十時三十五分ごろ本署へ報告するとともに、午後十時四十分ごろ名野川駐在所を出発、森地区へ向いました。そして午後十一時ごろ山中巡査は森小学校を警戒中の飯尾巡査と合流し警戒に当り、午後十一時四十分ごろ両巡査は森小学校の警戒をとき、別府駐在所へ引き揚げたのであります。  一方、午後十時三十五分ごろ佐川署では、仁淀中学の中平教諭から救援依頼を受理し、直ちにその準備をして、午後十一時ごろ岡林警部補以下六名を佐川署から出発させるとともに、県警本部へ報告をなし、午後十一時五十分ごろ本署、佐川署から両巡査に対し行動を共にするよう電話連絡をなしました。十六日午前零時三十分ごろ岡林警部補等一行は両巡査を共にジープに同乗させて仁淀高校に到着し、事件の処理に着手しました。午前零時五十分ごろ事件の発生と被害状況を本署、佐川署へ報告し、本署では事件の概要を県警本部へ報告するとともに、午前一時ごろ西山次長以下十一名が出発し、午前二時三十分ごろ現地に到着いたしました。県警本部では直ちに刑事部長、警備課長等を現地に派遣し、午前三時ごろ現場に到着、特別捜査本部を開設いたしました。なお、本事件については暴行事件容疑者として十二月二十四日現在六名を検挙しております。  以上警察の行動を総合的に検討いたしてみまするのに、現地の山中、飯尾両巡査の行動には時間的に見て多少の疑問がありますが、佐川署と仁淀高校との距離は、自動車で一時間二十分の行程であり、佐川署において救援依頼を受けてから現場到着までの所要時間等については大むね妥当であると思われ、この間ことさらに遅滞ありとすることはできないと考えます。また従来日教組は、高知県教委カン詰事件についても警察の出動を常に非難し、現場の警戒に当った警察官はしばしば組合員によって不当干渉なりとしてつるし上げにあった事実もあり、県教委側等の警備要請には常に消極的になりながら、日教組側の警備については、要請をまたずしてあらかじめ警備をつけるというわけにはいかないと、県警本部は説明いたしておりました。また事件当時小林委員長に同行した東元県教組委員長は、地元の情勢については十分理解いたしているはずであり、従いまして事件の発生は、被害者側においては全く予見し得なかったところであります。  次に、検察庁関係について申し上げます。高知地方検察庁十二月二十四日現在の報告によりますと、十二月十六日午前二時半ごろ、当庁次席検事に対し警察より事件発生の報告があり、さらに午前五時半頃概要報告があったので、ただちに次席検事を現場に派遣するとともに、当庁須崎支部検察官を現場におもむかしめ、翌十七日には検事正を、十八、二十一の両日には次席検事を現場に派遣する等、また二十二日には検事正みずから現地に出張して直接捜査の指揮に当りました。なお二十三日勾留状の発せられた被疑者六名については、現在取調べ中であります。  次に、高知地方法務局の人権思想のPRについて申し上げます。高知地方法務局においては、仁淀村における勤評闘争の激化に伴い、十二月四、五の両日には今井人権擁護課長を現地に派遣して実情調査するとともに、マイクを通じて数回にわたり、十二月十日が人権デーでもあり、お互いに暴力行為による不祥事を起さないよう努力するよう呼びかける一方、村長、助役に対しても口頭をもって不祥事の起らぬよう万全の措置をとるよう強く要望しております。なお十二月十五日の事件については直ちに調査に当っていますが、いまだ結論を出すには至っていないとのことであります。  以上で私の報告を終ります。
  77. 古池信三

    委員長(古池信三君) 御質疑のおありの方は御発言を願います。
  78. 高田なほ子

    高田なほ子君 議事進行について。  ただいま御報告を伺わしていただきまして、私どもとしても、いろいろ御質問申し上げたい点があるわけですが、すでに時間も一時になっておりますので、委員長におかれては、この御報告の速記録を早急にわれわれの手元に渡るようにおとりはからい下さり、その御報告を詳細にわれわれとしても研究さしていただいて、次回にでも御質問さしていただきたい、こういう運び方にお願いしたいと思います。
  79. 古池信三

    委員長(古池信三君) 承知しました。
  80. 横川正市

    横川正市君 私は、二月三日静岡地裁に起訴をされた起訴事件について御質問したいと思うのでございますが、これまた時間がないようでありますので、事件の概要だけ御説明願いたいと思います。関係の方はどなたが出席されておりますか。
  81. 古池信三

    委員長(古池信三君) 江口警察庁警備局長が出席しておられます。  ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  82. 古池信三

    委員長(古池信三君) 速記を始めて。
  83. 横川正市

    横川正市君 事件の起ったのは十二月の六日、静岡県の安西郵便局で起っておるわけでありますが、その後、二月の三日に担当検事の沖永さんが静岡地裁に起訴をいたしております。この事件の概要について御説明願いたいと思います。
  84. 古池信三

    委員長(古池信三君) ただいま横川委員からの御質問の件であります、すなわち静岡県安西局に起った事件につきまして、政府からその経過について御説明を願うわけでございますが、本日は警察庁からは江口警備局長、法務省の方からは竹内刑事局長が御出席になっております。関係の点について御説明を願います。
  85. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) ただいまの御質問事件につきまして、われわれの方に報告が参っておりまする限りにつきまして御説明を申し上げます。  事案の概要は、全逓の静岡地区本部の中闘指令によりまする年末闘争等に対しまして、オルグを派遣して下部組合に対して圧力をかけ、強引な闘争を行なったことから組合内部に批判が高まりまして、特に全逓駿河支部、これは静岡市と、清水市、庵原郡安倍郡下の特定局五十三局、九百二十六名の従業員がございますが、その駿河支部従業員中には不満を表明する者が多数に上りつつあったことから、静岡市の大谷特定郵便局員の前駿河支部書記書繁元三十七年等は全逓を脱退しまして新組合を結成せんと、同支部傘下特定郵便局長及び局員等に対し、穏密裏に説得活動を進めていたところ、約十三局がこれに同調し、新組合が結成されようとしていたようであります。右のような情勢を探知しました静岡地区本部では、脱落防止のために組合員に対して説得活動を行い、一方局長に対しましては点検闘争と称して圧力を加えようとして、十二月五日より静岡市内冬特定郵便局の点検を実施いたしておったのであります。犯罪になりはしないかということで調べました事実は、静岡地区本部の書記長鈴木昭司以下七人でございますが、被疑者らは共謀の上、点検闘争と称し、昭和三十三年十二月六日午後零時十五分ごろ静岡市の安西三丁目六十四番地所在の安西郵便局に至りまして、郵便局長伊藤淳平が両手を拡げて繰り返し事務室への立ち入りを拒否したにもかかわらず、これを押しのけ、ゆえなく同局事務室に侵入し、なお前日同時刻ごろ同じ場所おい事務机に向って坐っている伊藤淳平を取り囲んだ土、同人に対し「このやろう全逓を甘く見るな」「特定局長の不当労働行為は確証がある、お前がさせたんだろう」などと申し向けたのち、机上にあったそろばんで机をたたいたり、腕章で机をたたきながら気勢をあげて同人の身体に対し危害を加えまじき態度を示して脅迫し、さらに同局長に対し「出勤簿を出せ」と迫り、拒否されるや、「このやろう、どうしても見せないのか」と指先で同局長の顔をこずき、あるいは両手でその右腕を強く引っ張る等の暴行を加えた上、「おれたちは体を張ってきたのだ、命なんか惜しくない。話がつかなければいつまでも対決する」と脅迫し、最後に同局長の所持する出勤簿を抜き取って床の上に投げつけ、これを拾い上げようとした同人を阻止するため、その前後より体を押え、両手首を握る等の暴行を加え、もって被疑者七名共同して暴行脅迫をしたものである、というのであります。  これに対しまして警察のとりました措置は、右事件当日の十二月六日午後一時ごろ、被害者である局長の妻伊藤君枝、この人も局員であるようでありますが、この妻の伊藤君江より所轄静岡中央署に電話急報があり、直ちに係員が現場におもむき事情を聴取したところ、暴力行為並びに住居侵入の容疑が明白であったので、直ちに現状の実況検分を行い、被害者及び参考人の供述調書を作成しまして証拠品を領置し、事後捜査を続け被疑者を特定するに至りましたので、十二月十二日、前記七名の被疑者に対し任意出頭を求め取り調べましたところ、全被疑者等はいずれも点検闘争のため現場へおもむいたことは認めましたけれども、右の犯罪事実につきましては否認をいたしました。しかし警察では被害者及び参考人の供述で証拠十分と認めまして十二月十八日地検に書類を送検いたしたのであります。その後はもちろん地検におきまして独自の立場から同事件の検討を進められておるのでありまして、ただいま申されたような結果に相なったものと思います。なお先ほど申し上げました郵便局に局長の拒否にもかかわらずゆえなく室内に侵入したというあとで、前日前場所おいてと申し上げましたのは前日ではなく、それに引き続いてという問題でございまして、同じ日、その所でということでありますから訂正いたします。
  86. 古池信三

    委員長(古池信三君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  87. 古池信三

    委員長(古池信三君) 速記をつけて。
  88. 横川正市

    横川正市君 今の報告書の中にもはっきりしているように、警察当局では現地におもむいて現地認証をして、その被害の実情を実査した上で任意出頭で調べている。任意出頭の結果書類送検という格好になっておるわけですね。それから、そのあと地検は逮捕状を執行して七名を逮捕いたしまして、その逮捕の結果事実上の取調べが了しておらないということから拘置請求の準抗告をいたしましたが、これは裁判所おいて却下されておるわけです。その後一つの取調べもしないで起訴状が作られておるわけです。そういうふうに今の報告の中からもはっきり受け取れるわけなんですが、その間の事情を、もう少し調べておいていただきたい。  それからもう一つは、この事件と前後いたしまして家宅捜索を行なっておりますが、家宅捜索を行なっている事由は、一番先に言われております全逓中闘指令に基く強力な闘争から組合の脱落者が出て第二組合が作られそうだったので、その防止のために点検闘争云々ということが調査の事項の中に載っておりますが、警察の調べはそうではなしに、これは十二月の六日の日の事件の起った当日午前に、これは申告によりまして局へ組合員が出向いて行ったのでありまして、この事前に中闘指令云々というようなこととは、事件の概要では全然これは該当いたしておりません。そういう警察の取調べになっておるようでありますから、その点も十分調べていただきたいと思うのであります。  それから第三番目は、これと事件をあとにいたしましてから同局局長並びに妻、それからこの問題に関しては局長と、同じ局員であります妻が告発をされております。その告発された内容は、現在まで行政処置としてはおそらく局長の職にたえざるものとして部外追放をされるような事件内容を非常にたくさん備えている。この事実があるから組合の幹部が出向いたということになっているのでありますが、そのことについてのあなたの方の取り調べもはっきりしていただきたいと思います。  同時にこの安西局の局長は、これは全逓の団体交渉側の相手局長でありまして、全逓の団体交渉を受ける側に立っているわけであります。これは全然その公企労法によるところの団体交渉を受ける代表者から除かれた局長ではなしに、団体交渉を受ける側の局長の代表者にもなっているわけであります。その点の事実について取り調べたかどうか。この点を四点目として十分調べていただきたいと思います。  そのほかたくさんありますが、私はこの起訴状というものを見て、非常にふに落ちかねるのは、事件におもむいたのが午後零時十五分でありますから、これは執務時間ではありません。いわゆる休憩時間であります。それから団体交渉をする相手側でありますから、組合の幹部が局所に入っていくことはこれは通例どこででも行われていることであります。ことに面会人が来て、面会所が特設されておらない場合には、事務室に直接入っていって局長に面会を求める、こういうふうになるのが通例であります。そうすると、局長はそのとき大体執務中でありましたので、執務が終ってからといって、これは執務の終るのを待っておりました、事実上の調べ上ですね。そういう段階で、今言われたように、「このやろう全逓をあまく見るな」という言葉が飛び出してきて、そのあたりに「特定局長の不当労働行為は確証がある。お前がさせたのだろう」というこの文章は、これは大体その文章を書くつもりで書いたのか、殺しか、たたきを引っ張り出すために書いたのか、まことにこれは起訴状として、私は現場から言って、ふに落ちかねるものであり、しかも国会でこんなことが表現されるということは全く品位にも関係する問題でもあろうと思うのでありますが、そういうように執務中を避けて休憩時間に行われているということ、それから出勤簿を見せていただきたいということは、これは三番目に申しました局長の不正事実が出勤簿の中に明確に現われておりますから、その出勤簿でどうですかということを質問しようとして出勤簿を見せてくれということをやっているのですが、この間の時間は十分か十五分であります。十分か十五分というのは、これは警察が明確に認めた点であります。この十分か十五分の間に、起訴状によるところの、この命なんか惜しくない、何ですか、ちょっと印刷があれですが、いつまでも対決する云々というようなことで、罪名からいきますと、暴力行為等処罰に関する法律、同法第一条第一項が適用されている。まあこういうことになっているのです。この起訴状の中に私は非常に大きな問題としては、警察が任意出頭で調べて、警察当局は、たとえばそろばんで机をたたいた、腕章で机をたたいたということは相手を脅迫する行為だと私の方では考えました。しかしそのことが、こういうその事件に達するというふうには警察当局は考えないのですから、書類送検を行なった。書類送検を行なったところが検事は七名の逮捕を行なった。しかもその逮捕も任意出頭を——十九日の日の午前にこれは事務官が出向いて来ておりますが、そこで二十二日の日に出頭いたしますと、そういうふうに出頭することを確約し、しかもそれを今度はその事務官が帰ったあと、さらに検察当局へ担当者から、十九日からこれは会議のために出席できないということを言って、二十二日には出席するということをさらに確認をいたして、回答をいたしておりますが、それにもかかわらず二十日の日の早朝七時何分かに大挙自宅へ立ち入って逮捕しておるという事件なんであります概略は。そういう任意出頭をこれは認めて、任意出頭に応ずるということを回答しておるのにこういうことになったということは、この起訴状の中からも全然見受けられておらない。私はこれはでっち上げをされているようなところが非常に多いと思うのです。それは第一番先に言われたように、全逓の闘争の中に一環として行われたという筋書を作り、そうして警察は任意出頭で調べたのだが、検察当局はこれを逮捕で調べるという威嚇、脅迫を行なって、事実の問題からこれを何か意図して拡大するという、こういう事件の扱いが非常に明らかだ、こういうふうに——私どもはこの案件を現地に行きまして、警察当局それから検事正、不幸にして内田主席検事には会えませんでしたが、検事正、さらに拘置、それから準抗告等の問題等で裁判所というふうに当ってみて、結果的にこの案件それ自体がきわめて検察当局の何といいますか、強硬な手段に出なければならなかった事情というのは、事件ではなしにその背景に何かあることを予知して捜査された。しかもそれには不当逮捕をもあえて行なってこれをでっち上げようとしたという事件の概要をわれわれとしては見れるわけなんです。同時にまた検事正に会ってこの点についていろいろ質問したときに、検事正は、事件の概要を聞きながら、私どもに非常にあいまいに、どうも私がやればこういうことをしないのだというような言い方をする答弁をしているわけなんです。ですから私どもは事実上犯罪が起っている、そういう事実を認めているのならば、なぜ局長側の犯罪について、あなたたちは現地認証をしないで、そこに行って、まだ話し合いもしないうちに起った行為に対してこういう行為をとったのか、という点については、これは全然言葉をあいまいにして答弁をしておらないという状況でした。ただ私は、この事件は、今あなたの概況と、それから起訴状によるところの内容とはおよそ違うものである。こういう事実をるる申し上げたのでありますが、そういう点から今申した四点について十分調査をした上で、次の委員会では私も明らかにしていきますから御答弁願いたい。
  89. 古池信三

    委員長(古池信三君) 本件の調査につきましては、次回に続行することにいたします。
  90. 亀田得治

    ○亀田得治君 私ちょっとこの前警察庁に要請いたしまして出していただきました書類について、再度一つ警察側で調べることをこの際求めておきたいと思います。それは大教組の事件について、二月一日授業の打ち合せに行った際にそれを会わさなかった問題ですが、警察側の報告文書によりますと、同日午後四時ごろ教頭が弁護士と一緒にやってきた、こう書かれておる。この点が私は非常に大事だと思うのです。事実関係が私が報告を受けておるのとは全然違う。こういう報告書にあるようなことであれば、これは相当事情が違った判断が出てくると思います。しかし当日は、真相は朝早くから東成署に行っておったのです。時間が全然違う。これは重要なことですから、そういう事実関係の確認書というものを、当時ずっと立ち会っていた市川弁護士からも、特に本人の判を押さしてもらっている。だからこの点が決定的な点ですから、これは一つ再度調べてほしい。その上で一つ議論をしたい。それから早朝に行っておって、もし会わさなかったことが事実なら、私はただではこれは放置できない。しかしあなたのおっしゃるような書面の通りのことであれば、これは私も少し考え方があろうかとも思います。どうですか、この点。
  91. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) わかっておる限りお答えいたします。  私のところでもいろいろ疑問がございましたので、何べんも問い合してそういう書類になっておるわけでありまするが、亀田委員のこの前おっしゃった通り、正規な校長先生の依頼書といいますか、面会さしてくれという書類を教頭さんが持ってこられた時間はこれに書いた通りであります。その前に書類はだれかほかの人が持っておるけれども、こういう話があったから会わしてくれないかと言われたのは、その前に午後一時二十分にそういう話が出た事実はあります。しかしながら、それは係員が南署にある捜査本部の責任者のところにこういう申し出があるということを伝えたところが、しかしそういうのをほかの人が持っておるというだけでははっきりしないじゃないかというようなことや、現在取調べの最中だから、もうちょっと待ってもらえという指示を受けて、その際はやっておりまするけれども、これはしかしこの前亀田委員がおっしゃったように、書類を持って教頭がやってきたというわけじゃなしに、だれかが持っておるということをそのとき言われたようであります。午後四時というのは、この前御指摘のように、ちゃんとした校長の公文書を持って交渉に来たという時間でございます。
  92. 亀田得治

    ○亀田得治君 それでは、その午後四時に至るまでのやつを一つ書いて下さい。こういうことはちょっとしたことですから聞き違いがあってもなりませんので、警察ではどういうふうに言うておるのか、その辺、たとえば文書があとであってもそういう授業の打ち合せの申し出ということがあれば、当然これは善処すべきものだと思っております。別に授業を担当されておる教師であるということを知らぬわけでもないから、そんなことでうそをつけるわけでもない、隠せるものでもない。だから議論はあとにして、午後四時以前、突然午後四時に出てきたことではないということはあなたも今おっしゃっておるようですから、ともかく二月一日の経過、午後四時までの経過をも一つどういうふうに警察が把握しておるのか出してもらいたい。
  93. 高田なほ子

    高田なほ子君 先ほどの静岡県の安西局事件について、二月六日に全逓の労組の静岡地区本部の書記長の鈴木昭司さんから静岡地方検察内河野博さんに対して質問状が出ているわけです。その質問状について回答がされておらないように聞いておりますが、もしこの静岡地方検察庁が書記長鈴木昭司氏の質問状に対して回答があれば、それらの資料を御調査の上ちょうだいしたいと思います。
  94. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 先ほど来御質問の点は、私の方の所管に属する事項のように思います。ただいまの点調査いたしまして、次回にお答え申し上げます。
  95. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと私も、ぼつぼつ資料を要求するのはなんでしょうから、追加して求めておきたいと思います。  先ほどの横川君から提起された問題ですが、この犯罪正否の実態の関係はこの段階では何といいますか、裁判所の問題になろうかと思うのですが、一番私遺憾に思うのは、警察では任意捜査をやって、そうして関係者が出ていって供述もしておる事件、それを検察庁の呼び出しがかかってきて、そうしてこちらの調べによると、十九日に来てくれと検察庁が言うてきた、十九日には組合の会議があるから二十二日ごろにしてほしいというふうに返事をしておる、そういう事件について逮捕状を執行するということは、これは私は間違いだと思います。警察段階ですら任意捜査をやってきておる、そうして供述までちゃんとしておるものですから。こういうことをやるから事件そのものよりもとかくいやがらせと弾圧という印象を外部に与える。私はこの理由一つ解明してほしい。ほんとうに強制捜査やるなら警察の段階から始まりますね、普通は。これは理由と言えばおそらくいろいろ理由はつけられるでしょうが、どうも私はこの一点がこの事件では非常にはっきりしない、どうぞ一つ一緒に解明していただきたい。
  96. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 先ほど横川委員の御依頼の点もございますし、ただいまの御依頼の点も合せまして、十分調査いたしまして、次回に答弁さしていただきたいと思います。
  97. 古池信三

    委員長(古池信三君) それでは次回の予定を申し上げておきます。  次回は二月十七日火曜日午後一時から開会いたします。  議案としては、裁判官報酬等に関する法律の一部改正案検察官俸給等に関する法律の一部改正案並びに裁判所職員定員法の一部を改正する法律案、以上についての質疑を行いますと同時に検察及び裁判の運営、等に関する調査を行いたいと考えます。  なお、零時五十分より委員長及び理事打合会を開く予定であります。  それでは、本日は、これをもって散会いたします。    午後一時三十九分散会