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政府委員(
緒方信一君) 提案理由の趣旨を少し敷衍いたしまして、ただいまの御
質問にお答え申し上げたいと思います。
この
学校教育法等の一部を改正する
法律案の中で一番重要な部分を占めますのは、専科
大学制度を新設するということでございますけれども、この問題の出発点は、現在の短期
大学についてこれをいかに改善するかという
観点から出発をいたしております。そこで、この短期
大学でございますが、御
承知のように、
学校教育法第百九条によってその制度ができております。御
承知のように、新しい新学制のもとで新制
大学が
発足いたしましたときに、旧制の
高等学校、
専門学校、あるいはそのほか
教員養成の諸
学校等が
大学として昇格をいたしたのでございますが、そのときに
施設、設備、あるいは
教員組織等が必ずしも十分でなく、直ちに四年制
大学に移行をすることが困難であったものが相当あったわけであります。これをどう処置をしていくかということに
一つの問題がございまして、それからもう
一つ、やはり女子
教育の面でございますけれども、その四年制
大学、高等
教育、いわゆる四年制
大学一本でいいかどうか。もっと短期の女子
教育の
高等学校があれば——これはあるいは男子についてもそういうことがあったかもしれませんが、主として女子
教育につきまして短期の高等
教育を施します
学校制度があってもいいのじゃないか、こういうことが
議論がございましたのでございますが、当時占領下でございまして、新しい
大学制度を作ります際に、高等
教育制度を作ります際に、占領軍当局としましては、高等
教育としては四年制
大学一本でよろしい。これに例外を設けて短期の高等
教育機関を作るということにつきましては承認しなかったという経緯があったわけでございます。しかし、いろいろ折衝の結果、まあ当分の間ということで暫定的な制度として二年または三年の修業年限を認める。しかし、これは
大学のワクの中でそういうことをとりあえずやろう。こういうことで、今の百九条ができました。これに基いて現在の短期
大学の制度が
発足いたしたわけでございます。そこで、まあしいていえば、その当時からこの修業年限の二年または三年の高等
教育の機関としてのはっきりした性格は持っていなかったのでありまして四年制
大学のほんの特例だという形でこれができたわけでございます。本来ならば、そのときに二年または三年の
学校制度として
教育目標もはっきり掲げた制度で出発すれば問題はあるいはなかったかもしれませんけれども、非常に不明確なままで出発をしたというところに
一つの問題があると思います。その後、暫定制度ではございましたけれども、今日まで二百六十九の短期
大学ができております。そのうち大部分、八割は私立の短期
大学であります。ところが、この短期
大学の実績に対しまして、これは女子
教育の面は別でございますけれども、特に工業
関係とかあるいは
法律、経済、いろいろ
内容はございますけれども、やはりそれに対しまして批判が起って参りました。制度が不明確な点もございますけれども、
教育の
内容としても中途半端に、四年制
大学の修業年限の半分の形でありますから、しかもその目的としましては
学校教育法第五十二条をかぶっておりまして、つまり「
学術の中心として、広く知識を授ける」というその五十二条のワクの中にありますので、修業年限が半分であっても四年制
大学と同じような目的を追求していくという建前になっておりまして、短期の高等
教育として必ずしも十分な効果が上っていないという批判が出てきたわけであります。と申しますのは、専門的に大へん学力が中途半端だというようなことで批判が出て参りまして、これを何とかもう少しはっきりした
学校制度にしたらいいじゃないかということが言われて参りました。また一面、短期
大学当事者の方面からは、
最初申しましたように、非常に暫定的な特例として出発したこの制度を、もうそろそろこの辺で恒久的な制度にしたらいいじゃないか。暫定的制度だということでありますと、卒業者の就職の面等にも不利であるというような
お話が出て参りました。これらの
意見をあれこれ勘案いたしまして、
文部省としましては短期
大学の改善、この制度をどういうふうに持っていくかということにつきまして問題を取り上げまして、中教審に諮問をいたしましたり、あるいは各方面の
意見を徴しましたりいたしまして、この
法律案をまとめた。こういう提案までの経緯でございます。中教審の答申等につきましてはお手元に、この前の
委員会でございましたか資料を差し上げてあります。その中教審の答申を中心にいたしましてこの
法律案をまとめたわけであります。
そこで今お尋ねの、それでは専科
大学という制度を作って、短期
大学はこれにいわば制度として切りかえていくということになる。といいますことは、専科
大学は修業年限二年または三年、短期
大学をそのまま受けております。
原則として二年とする、必要がある場合には六年まで延期することができる、こういうことになっております。そうしてその専科
大学の
教育目的としましては、職業または実際生活に必要な能力を育成する。これをはっきりと掲げておるわけであります。従来の短期
大学の目的とされました、現在
学校教育法の中に規定されております五十二条と別に、この専科
大学の制度の
教育目的をはっきりと掲げております。そうして短期
大学というものは、これからは新設を認めないということにいたしたいということでございます。しからば既存の短期
大学、先ほど申し上げましたように二百六十九もございますが、この扱いをどうするかということにつきましては、これは当分の間存続することができる、このようにいたしております。でございますから、制度としましては専科
大学ができました場合に、これから
あとは短期
大学の新設を認めません。しかし、現在までありますものは、経過的な取扱いといたしまして、当分の間存続できる、かようなことにいたしておるわけでございまして、既存のものが、そのまま当然専科
大学に吸収されるということにはならないわけでありまして、その短期
大学当事者の意向に従いまして、専科
大学に転換するものは転換する、そのまま存続したいという希望のものはそのまま存続することができる、かような組み立てになっておるわけであります。