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国務大臣(
橋本龍伍君) 戦後今までの間、
文部省がどういった態度できたかということにつきましては、私、具体的なそれぞれ事実はまだよく存じません。私、今日考えておることを申し上げたいと思っておりますが、ただいま竹下
委員から、るる
お話し下さいました問題は、戦後におきまする日本国民思想の問題で、きわめて重要な
一つのポイントに触れておると思います。従来、天皇の大権というものを中心にした明治憲法下におきまする国家国民のあり方というものに対して、戦後とにかく個人の尊重という点を非常に強調されたことは、確かに事実でございまするし、それはそれで私は戦前の
状態に対して必要だと思いまするけれども、しかしその間に
おいて、
一つには、まあ占領下に
おいて、日本人に国民意識というものを非常に低調にさせようという占領政策もございましたろうし、まあいろいろな点から関連をいたしまして、国民の国家意識というものが、非常に私は低くなっておる点があると思います。で、その点に関しましては、単に人間が社会人として生存をしているというだけで決して満足な発展ができるわけじゃないので、国家というものを十分に国民は考えていかなければならぬわけでございます。今日の世界の情勢を考えてみましても、何といいますか、民族の独立というような点については、戦前に比べてますます進みつつある。今日世界中を見ましても、昔のような帝国はだんだんに姿を消して、それの民族が独立の国家をかまえながら、つまり上下の関係はかんべんできないけれども、横の連携はとるという形で、つまりそれぞれの国民が自分の国の歴史と伝統に非常に目ざめた形で、独立意識をますます強くしながら、新たな国際協調が生まれている
状態でございます。従いまして私は、竹下
委員御
心配でございましたけれども、私は国家意識というものを、今日の時代におきまする国家というものを正しく把握するということが、決して保守反動でもなければ、国際協調に反する問題でもないので、むしろ常に正しい国家観念を養成し、国家意識というものを認識いたしますることが、ほんとうにやはり国際協調のもとになっておると考えるのであります。で、今日の日本の実情を見ます場合に、まあ占領下から引き続いたいろいろな
状態から見まして、確かに社会人としての生存ということのほかに、今日の世界に
おいて、国民が国家というものの中で発展しつつあるという
状態についての認識、また意識というような点が、私は多少正しいあり方から見て、動揺であるとか、何とかいう不満足な点が私はあろうかと思います。そういう点について私はあらためて何か学者の議論を聞く必要もないので、これは要するに、私はやはり国民の日常活動におきまして、日常活動の基礎になります青少年の
教育の点につきましても、私はやはり今日までの歴史と伝統というものに対する正しい認識を持ち、そしてそこに誇りを持って、そして正しい国家意識、国民意識を持つということが、むしろ私は今後におきまする、つまり戦後ここまでいろいろ物質的にも発展をいたして参りましたし、あるいは文化的、社会的にも発展をして参りました日本を、
もっともっと発展させるために、私はやはり正しい意味における国民意識というものをはっきりするということは、単に社会人として生存していく以上に非常に大切なことであ
つて、けつこうなことであると私は考えております。ただそれだからといって、政府として何かきわだった、特別に何か行事をやるとか、あるいは
委員会を作るとか何とかしなければ、それがはっきりしないというようなことはないんじゃないか、むしろ日常私どもがそれぞれの仕事をやる部面に
おいて、そういう面を腹の中に考えておればいい。ことにこの
教育の面につきましては、人間が単に社会人として生存していくということだけでなしに、今日われわれ歴史的な存在で、祖先から引き継いだ経済的な、文化的な、社会的な遺産の上に今日は栄え、今後も栄えつつあるという、やはり歴史と伝統に対する認識を持ち、誇りを持ち、その上に将来の発展を考えるということについては、今まででもだんだんに骨を折られてきたと思いますけれども、今後に
おいても骨を折
つて参りたいと考えております。私は誤解を避けますために、繰り返して申しますが、正しいやはり国家観念を持つということは、私ぜひ必要だと思います。決して五十年前、百年前の国家主義といったような点を考えているわけではありませんので、今日でも、中央ヨーロッパにおきまするドイツ、フランス、イタリー、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグという六ヵ国が、いわゆる欧州共同体を作
つた、あの西洋史の上で何べんも血みどろな戦争を繰り返した国が、十七カ年間に関税の障壁を撤廃し、十七年後には資本も労働も自由に利用できるようにしようという
協定を結んでおる今日に
おいては、従来のいわゆる古いネーション、ステートの観念というものは変
つて参っておるのでありまして、ただし共同体の
状態を見ましても、みんなやはりドイツ人はドイツ語を話し、ドイツ文化を誇りながら、新たに六カ国二億何千万の共同を考えるという形であります。そういう平和の維持、生産力の拡大というための国際協調をますます進めつつある今日の
状態、人類は、とにかくやはり苦しみながら漸次成功しつつあると私は思っております。そういう、要するに平和の維持と生産力の拡大に対する国際協調の面の拡大ということを、人類の悲願として努力しつつある今日の国家というもの、その国家というものの中の国民として、まず第一にわれわれが動いていくということについては、単なる社会人として生存するということのほかに、十分な認識を持たなければなりませんし、また、青少年
教育の方面でも持たせなければならないと思います。私は特別きわだ
つてどういう仕事をするということでなしに、やはり常に世界の
現状に対する認識を持ち、また、将来あるべき方向に対する努力を怠らないと同時に、総体的な心がまえで、やはり
教育の場に臨む、あるいは
教育以外の行政の場に臨んでいく、そういったような態度でいくべきものだと考えておりまして、私が所管行政を担当するに当りましても、なお私検討してみます。これだけじや足らぬところがあるのだというならば、何らかの
措置を考えてみます。当面のところでは、そういったつもりで、あらゆる行政の場に臨んでいくというつもりで見て参りたいと思います。