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説明員(磯崎叡君) ただいま
委員長からお話のございます件につきまして経過並びに結果について御
説明申し上げます。
昭和三十二年度から運賃を改訂いたしましたのでございますが、その際には御記憶の
通り旅客運賃につきましても、また貨物運賃につきましても一律の
値上げをいたしたわけでございます。戦後数回にわたって運賃
値上げはいたしましたが、いずれもそのつどいわゆるフラット・インクリースというような形でもって平均的な運賃上昇をやって参ったのでございます。その基礎になっております運賃制度あるいは等級制度というものは実は
相当古いものでございまして、御
承知の
通り、最近のいろいろな科学技術の
発達に伴いまして種々新しい製品ができる、その新製品のできることによりまして、昔のものの
経済観念が変ってくるというようなことも種々ございまして、貨物運賃の制度あるいは旅客運賃におきましても、たとえば定期券の割引の問題、あるいは各種の割引の問題、種々そのつどそのつどの社会情勢によりまして、変更いたしております。これらにつきまして、
根本的な運賃制度の不均衡、あるいは不合理を是正するということは大へん必要なことでございまして、その点につきましても、この前の三十二年度の運賃改正のときに、そういった国鉄の運賃
体系全般の問題につきましては、別途
委員会を設けまして
調査検討いたしますということを申し上げたわけであります。それによりまして、昭和三十二年の十月に国有鉄道の運賃制度
調査会というものを作りまして、会長は原安三郎氏でございます。会長以下二十五名の
委員に、全部部外の
委員ですが、御委嘱いたしまして、国鉄運賃の
——もちろん貨物運賃だけでなくて、旅客運賃、貨物運賃全般にわたる運賃制度につきまして、運賃制度の
根本から御検討を願っておるわけでございます。現在までにその
調査会はちょうど昨年の三月一ぱいで総会を十回開きまして、その総会におきましては、もっぱら運賃の
決定原則、いかなる原則によって運賃を定めるべきかということにつきまして、各方面から
相当深刻な論議が戦わされました。その後、昨年の四月から旅客運賃に関する部会、貨物運賃に関する部会、さらに運賃理論に関する専門
委員会、この三つの専門
委員会を設置されたわけでございまして、その後、昨年四月以降最近まで約二十回にわたりまして、旅客運賃制度、貨物運賃制度、及び運賃理論につきまして詳細な検討を続けておられるわけでございます。現状におきましては、大体旅客運賃におきましては、おおむね問題点が、どういう問題点があるかというような問題、その問題点をどういうふうに
考えていくかということにつきまして、中間的な皆さん方の
委員の方々の御意見の取りまとめが徐々に行われつつございます。また貨物運賃につきましてもおおむね同じようなペースで進んで参っておりまして、実は今週の月曜日から、さらにその上に総論部会という部会を設置いたしております。これはたとえば、先ほど申しました運賃の
決定の原則の問題、あるいは現在よく言われます旅客でもうけて貨物で損しているといったような、旅客、貨物における鉄道運賃の配分の問題、あるいは運賃の
決定機構の問題、あるいは将来この問題をどういうふうに具体化していくかという問題、ことにたとえば、ことしも九十五億という膨大な予算で建設線をやっております。建設線ができますたびに、利子も払えないような
経営状態でもって建設線をやっておりますが、その建設線がふえていくに従って、運賃というものは一体いかにあるべきかというような問題、そういう旅客貨物全般にわたります総論部会が今週の月曜日から設置されました。さらにその部会におきましては、今まで旅客部会、貨物部会で論議されましたことにつきまして、総合的な立場から、旅客貨物を通ずる検討を今後なされる段階になっております。さらに貨物につきましては、先ほど申しました
通り、貨物等級の問題があるわけでございます。この等級につきましては、昭和二十八年貨物等級の改正をいたしたわけでございます。貨物等級というのは、御
承知の
通り、国鉄で現在運んでおります貨物は、種類から申しますと、大体七千品目くらいの種類がございます。この七千品目くらいの種類のものを約二千品目にこれを圧縮いたしております。その二千品目を十五の分類に分けまして、そして各分類ごとに運賃を定めております。これが貨物の等級制度でございます。この貨物等級につきましては、先ほど申しました
通り、新しい製品ができる、主として現在貨物等級のその分類の仕方は、各貨物の
価格によって分類をしておるわけでございます。この点はトラック運賃につきましては、御
承知の
通りトラック運賃は全部一本の運賃でございます。現在
日本全体の貨物の輸送量の約六割五分を占めますトラック運賃につきましては、あらゆる品目は全部一本運賃でございます。御
承知の
通りでございます。ただ、たとえばかさ高の品物とか、あるいはよごれやすいといったような、貨物の物理的な性格による運賃の差はございますが、貨物の
用途別とか価値別の差はないのでございます。それに対して現在の鉄道の貨物運賃と申しますのは、貨物の
用途と申しますか、貨物の
経済的価値によって運賃が分類されております。端的に申しますと、ものの
値段の高いほど運賃が高い、ものの
値段の安いほど運賃が安いという分類になっております。ものの
値段の高いものの運賃で安いものの運賃の
値段をカバーする、こういうようなのが現在の貨物運賃の制度でございます。その運賃制度につきましても、昭和二十八年に現在の等級を作りました。その後、最近いろいろ新しい品物ができる、あるいは新しい品物ができることによりまして、現在あるものの
経済的価値が違って参ります。たとえば、ことに化学製品の進出によりまして、ずいぶん今までの、たとえば繊維類等の価値が下っておる。こういった
価格の
変動による等級の分類などの問題が当然出てくる、さらに最近の道路の
発達及びトラックの激増によりますところの貨物輸送の分野の変更が
相当あるわけでございます。端的に申しますならば、近距離、大体百キロから百五十キロくらいの貨物運賃はトラック運賃が、先ほど申しましたように一本でございます。トラック運賃の万が安いわけであります。遠距離の方は鉄道運賃が安いということになりますので、輸送の分野が非常に変ってきております。と申しますことは、私の方で運んでおります貨物の平均の足がどんどん伸びている、裏から申しますと、近距離貨物はどんどんトラックに転化している、また高級品、低級品と申しますか、先ほど申しましたように、ものの
値段の高い貨物は運賃が高うございますので、自然一本運賃である場合には、安いトラックの方に流れている、従って全体の輸送の分野の趨勢といたしましては、距離は、近距離貨物はトラックに移る、また等級の高い貨物はトラックに移る、こういうような情勢になっております。こういった貨物の種類の増減によります変更、輸送分野の変更によります変更、この二つの見地から、大体貨物の等級制度というものは五年ないしおそくとも十年に一回くらい
根本的にいじるのが今までの通例でございますし、またこれをいじりませんと、いろいろ荷主の側からのクレームが出てくるわけであります。そういう作業をぜひやらなければいけないということになりまして、現在は貨物等級の専門
委員会を作っております。これは先ほど申し上げました運賃制度
調査会の専門
委員会でございます。その専門
委員会の
委員には、通産省、
農林省及び
経済企画庁
関係官のほかに、私の方で荷物をお預かりしております荷主の中の、非常に大きな荷主といったような方々を約四十名お集まり願いました。現在、貨物等級制度の専門
委員会は、去る二月から二回開催いたしておりまして、現在その小
委員会を開催中でございます。これは大体、先ほど申しました、全体の
調査会の結論と申しますか、答申が出ますのは、大体六月ごろかと思います。これはもちろん
調査会の問題でございますので、私どもはいつということは申し上げられませんが、今の進行状況を拝見しておりますと、大体六月ごろには答申が出るのではないか。その際に、貨物等級の問題は、いつ出るかということは、これも小
委員会の次第でございまして、いつということは確定的に申し上げられませんが、それより若干日にちがおくれてこの答申が出る。うまくいけばそういうふうになるのじゃないかというふうに
考えております。そういう段階でもって、私どもといたしましては、国有鉄道、あるいは鉄道運賃のあるべき姿というものを現在
調査研究中でございます。そういう
調査研究いたします際に、私どもの知恵だけではとても足りませんので、先ほど申しました
調査会を設け、また専門
委員会を設けまして、各界の専門家の方々にお集まりを願いまして、種々御意見を承わって検討しているのが現在の段階でございます。従いまして、現在、先ほどからのお話でございますが、今ここですぐ運賃を変えるとかいうようなことは毛頭
考えておりませんし、今まで申し上げましたことは、旅客運賃につきましても、貨物運賃につきましても、これがどういうふうに
実現されるかということは、まだこれからの問題でございます。もちろんその中には、先ほど
委員長のおっしゃった、国有鉄道運賃法を当然改正すべきものもございますれば、そうでないものもございます。ことに貨物運賃につきましては、現在の賃率表が国有鉄道運賃表の別表にあるわけであります。この賃率表をいじる場合には、当然国会の御審議を得ることになっております。私どもといたしましては、種々責任上の立場から、国有鉄道の運賃が現在の輸送分野の
変動に応じていかにあるべきか、貨物の
変動に対していかにあるべきか、定期旅客がどんどんふえていく、こういった場合に対しまして定期の運賃はいかにあるベきか。こういったいろいろ国有鉄道の運賃問題のおもな点について、真剣な検討を現在続けていきたい。それをいかに
実現するかはおのずから別問題であるし、またおのおのそれによって定められたところに従って、その改正を進めて参りたいというふうに
考えております。まだその具体的な結論を得るに至っておりませんので、中間的な現状の御
報告だけ申し上げます。