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政府委員(高橋衛君)
日本てん菜振興会法案につきまして、その
提案理由の御
説明を申し上げます。
わが国における畑作農業の
振興と
農家経済の安定をはかるとともに、海外からの輸入に対する依存度の高い砂糖の需給事情を改善することによって外貨を節約し、国際収支の改善をはかり、ひいては国民経済の安定に寄与する
ためには、この際、国内甘味資源の自給度の向上、特に最近において急速な発展を見せておりますテンサイ生産及びテンサイ糖工業につき、その健全な発展を確保することが緊要でありまして、この
ため、
政府としては、今回テンサイの
振興に関する一連の
措置を講ずることといたしたのであります。
今、このてん菜
振興措置の主要な内容を申し上げますと、まず第一には、原料テンサイ栽培の長期
計画の樹立、原料テンサイ価格の安定集荷区域の調整並びに新設工場設置の調整等を行うことによってテンサイ栽培の基礎を固めることであります。
第二には、関税税率及び砂糖消費税率の適正化によって、テンサイ糖工業の自立を促進する条件を作り、さらに、原料価格の安定及びテンサイ糖工業の自立の促進の
ため、てん菜生産
振興臨時
措置法に基く今後の
政府買い入れの具体的
方針を明示いたすとともに、糖価の安定をはかる
ため砂糖の輸入の調整等の
措置を講ずることであります。
第三には、新たに
日本てん菜
振興会を設置し、テンサイの試験研究等を強力に推進いたすことであります。
第四には、関税及び消費税の改訂
措置によって特別な利益を生ずるてん菜糖製造業者から
法律に基いて納付金を徴収することであります。
第五には、
北海道以外の地域についてもテンサイ
振興の
措置を講ずることであります。
以上のテンサイ
振興の
ための具体的
措置方針に基き、今回
日本てん菜振興会法案を国会に
提案し、その御審議を願うことといたしたのでありますが、以下この
法案について御
説明申し上げます。
テンサイの生産の
振興の
ためには、試験研究及び生産奨励体制を急速に整備し、その強力な推進をはかることの必要なことは言うを待たないところでありますが、テンサイの生産とその試験研究の特殊性を考慮して、特別法人を設立し、
農民及びテンサイ糖製造業者等の
意見を十分に反映させ、試験研究と生産奨励事業とを一体的に運用することが最も適切と
考える次第であります。この
法案は、このような目的を
達成する
ために設立する特別法人
日本てん菜
振興会の組織、業務、管理等に関する事項を定めたものでありまして、そのおもな内容としては、おおむね次の
通りであります。
まず第一に、この
振興会の資本金は、当初一千万円とし、
政府がその全額を出資することとし、その後必要に応じて
政府より追加出資ができることといたしております。
第二、この
振興会のおもな業務は、テンサイの試験研究、テンサイの原原種及び原種の生産及び配布、受託して行う優良なテンサイの種子の生産及び配布、委託して行うテンサイ糖の製造に関する技術の企業化の試験研究並びに国内産のテンサイ糖の消費の増進をはかる
ための普及等であり、さらに以上の事業のほか、
振興会は、テンサイの生産の
振興及びテンサイ糖工業の健全な発展に寄与する
ための事業を農林大臣の認可を受けて行うことができることといたしております。
第三に、この
振興会の組織といたしましては、役員の定数、任免等についての規定を設けるとともに、広く
関係者の
意見を聞き、業務の円滑適正な運営を期する
ため、学識経験者十人以内で組織する運営審議会を設け、業務の運営に関する重要事項を調査審議させることといたしております。
第四に、
振興会の財務及び会計につきましては、収支予算、事業
計画等につき、あらかじめ農林大臣の認可を受けることとし、その他借入金をすること及び余裕金の運用等についても所要の監督規定を設けることといたしております。
第五に、
振興会を設立する
ため必要な手続規定を設けております。
以上、テンサイの
振興につきましての今後の
政府の具体的
措置について申し上げますとともに、その一環としての
法律措置であります
日本てん菜振興会法案のおもな内容について御
説明申し上げましたが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さるようお願い申し上げる次第であります。
次に、
臨時てん菜糖製造業者納付金法案につきまして、その
提案理由の御
説明を申し上げます。
畑作農業の
振興と
農家経済の安定をはかるとともに、国内の甘味資源の自給力を強化する
ため、
政府は、今回テンサイの
振興の
ための一連の具体的
措置を講ずることといたしたのでありますが、その具体的
措置の一環として、国内産テンサイ糖の保護に資する
ため大幅に砂糖の関税率を引き上げ、砂糖の消費税率を引き下げるごととしたのであります。
この
措置によって今後国内テンサイ糖製造業者は自立が可能となると
考えられるのでありますが、この振替
措置は、大
部分のテンサイ糖製造業者が自立できるよう、適正な利潤を見込んだ新設の工場の標準生産費を基礎としております
関係から、その固定資産の償却が著しく進んでいる特定のテンサイ糖製造業者につきましては、この振替
措置の結果、反射的に特別な利益が生ずることとなるのであります。すなわち、固定資産の償却の著しく進んでいる特定のテンサイ糖製造業者も従来の関税及び消費税の体系のもとにおいては、一般市場に販売することができなかったので、勢いてん菜生産
振興臨時
措置法による
政府の買い入れに依存する以外に
方法はなかったのであります。この場合、
政府の買い入れ価格は、その生産費を基準として定められることになっておりますので、他のテンサイ糖製造業者に比較して特別な利益を生ずる余地がなかったのでありますが、今回の振替
措置の結果、適正な利潤を確保し得て自立できるのみならず、その固定資産の償却が進んでいることからする低額の生産費に応じ、今後におけるテンサイの生産により特別な利益が生ずることとなるのであります。この特別の利益は、関税の引き上げ、消費税の引き下げという制度の切りかえによって生ずるものであって、これをそのまま放置いたしますならば、テンサイの生産の現状とテンサイ糖工業の特殊性から、テンサイ糖製造業者間における公正な競争の基礎が失われることになるものと
考えられます。
また、このような特別テンサイ糖製造業者が今回の振替
措置によって他のテイサイ糖製造業者に比し著しく有利な立場に立つに至った事由の
一つは、てん菜生産
振興臨時
措置法に基く
政府の買い入れ
措置によるものであることも事実であります。従って今回
法律措置によってこのような特別利益を国庫に納付させることによって利益の調整をはかり、もってテンサイの生産の
振興とテンサイ糖工業の健全な発展に寄与しようとするものであります。
以下、この
法案の概要について御
説明申し上げたいと存じます。
まず第一に、この
法律によって
政府に対し納付金を納付すべき著すなわち納付義務者は、第二条に規定するところでありますが、てん菜生産
振興臨時
措置法施行以来、すなわち
昭和二十九年から
昭和三十三年まで、毎年引き続いてその製造したテンサイ糖の全部または大
部分を
政府に売り渡していたテンサイ糖製造業者が本年一月一日現在テンサイ糖の製造の用に供していた製造場についてこの
法律施行以来テンサイ糖の製造を業とする者であります。具体的にこの規定を適用いたしますれば、納付義務者の範囲は、
日本甜菜製糖株式会社が現に所有する帯広、磯分内、士別の三工場について今後テンサイ糖の製造を行う者となるのであります。
第二に、納付金の額でありますが、このような特別テンサイ糖製造業者が前記の製造場において製造したテンサイ糖を
昭和三十四年十月一日から
昭和三十九年九月三十日までの五年の製糖期間において、その製造場から移出したときは、その移出した重量に応じ一キログラム当り六円の割合で計算した金額を毎年一カ年分をまとめて十月三十一日までに
政府に納付させることにいたしております。
第三に、その製造場が
災害によって著しい損害を受けた場合または長期にわたり砂糖の価格が異常に低落した等の場合には、納付金を軽減または免除することができることとするとともに、砂糖の価格が政令で定める価格水準より低落した場合等には、政令で定めるところによって五年を限り、その納付金の徴収を猶予することができることとしております。
第四に、その他の納付金の徴収及び督促等についての手続規定を設けるとともに、納付期限までに納付せず、さらに督促状に指定する期限までに納付金を納めないときは、国税滞納処分の例によりこれを処分することとしております。
以上、
臨時てん菜糖製造業者納付金法案のおもな内容について御
説明申し上げましたが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さるようお願い申し上げます。
次に、
酪農振興法の一部を
改正する
法律案の
提案理由を御
説明申し上げます。
戦後わが国の酪農は、農業
経営の近代的改善等をはかるとともに、また国民食生活の改善に資する
ために最も緊要なものとして、目ざましい発達を遂げてきたことは御承知の
通りであります。牛乳及び乳製品に対する需要もまた著しく伸長し、時にはその増産にもかかわらず品不足という現象が生ずることすらあったのであります。このような酪農事情のもとに
昭和二十九年酪農を急速に発達させることを目的として
酪農振興法が制定され今日に至っております。
同法は、酪農の合理的な発展の条件を整備する
ため、農林大臣による集約酪農地域の指定及びその地域についての都道府県知事による酪農
振興計画の制度並びに生乳等の取引の公正をはかる
ための契約文書化等に関する
措置その他を定め、酪農の急速な普及発達を期することを内容といたしております。
法律施行後、現在までにおいて二十六道県において、七十五の集約酪農地域が指定され、この地域における乳牛の頭数は約三十万頭、牛乳生産量は年間約五十万トン(約二百七十万石)と飛躍的に増大し、その他の地域におけるものを加えますと、全体では乳牛約七十四万頭、年間生乳生産量約百五十五万トン(約八百四十万石)に達するに至ったのであります。
この間、牛乳及び乳製品の消費もまた若干の波こそあれ生産の伸びと並行して急速に伸長して参りました。
しかしながら、最近に至ってこの消費の伸長率もようやく鈍化し、一般経済情勢の影響もあって牛乳乳製品の過剰化の傾向が逐次現われるに至り、特に昨年度におきましては、乳業者から夏乳価の引き下げが生乳生産者に通告されるような事態が生じ、これを契機といたしまして、乳価、牛乳乳製品の需給、牛乳の取引、牛乳乳製品の消費等の各般にわたって酪農に関する困難な問題が顕在化して参ったのであります。
政府といたしましては、このような事態に対し、
関係業界の自主的な
努力を期待するほか特に牛乳乳製品を学校給食に振り向けること等の緊急
対策を
実施いたしたのであります。また第二十八国会において成立した
法律に基く酪農
振興基金の業務も開始せられております。この緊急
対策等の効果を維持し、さらに酪農を健全に発展させる
ためには、酪農
経営の改善
合理化を
計画的に進めるとともに、生乳取引の公正化をはかる
措置を一段と強化し、また牛乳乳製品の消費を増進し、過剰乳製品について適切な
計画保管を行う道を開く等
実情に即した
措置の制度化を進めることが緊要と認められる次第であります。
以下、この
法律案の主要な内容を御
説明申し上げます。
第一に以上申し述べた基本的理由に基きまして、牛乳及び乳製品の生産から消費に至るまでの各
段階を均衡させつつ酪農を健全に発展させるようにこの
法律の目的を改めることといたしました。
第二は、市町村長による酪農
経営改善
計画の作成と、その
実施に関することであります。すなわち集約酪農地域内はもとより、地域外の適当な酪農地域について当該市町村長は、その区域内の酪農経
営農業者や
農業協同組合等の
意見を聞いて酪農
経営改善
計画を作成することとしたのであります。この
計画の作成に当りましては、都道府県が助言、勧告その他の援助を行うこととし、またその
実施につきましては、国が必要と認める
経費の補助を行い、必要な
資金の融通のあっせん等を行うことといたしました。また
計画に含められるべき事業中特に重要な草地改良事業につきましては、市町村、
農業協同組合または同連合会がこれを
実施する場合にも、都道府県が酪農
振興計画に基いて
実施する草地改良事業に関する規定を準用することといたしております。
第三は、集約酪農地域にかかる酪農事業
施設についての都道府県知事に対する届出制度を設け、その配置を適当なものとする
ために都道府県知事が勧告を行う制度を設けたことであります。
第四は、生乳等の取引をより一そう公正化し、または、その安定に資する等の
ために次の三点について規定を追加いたしたことであります。
従来の生乳等の取引契約の文書化等に関し規定してあることのほか、契約内容中の価格数量等の重要事項につき、期間開始前に十分協議して約定することを努めさせることといたしました。
生乳等取引に関し、生乳等の販売事業を行う
農業協同組合等の乳業者に対する生乳等取引に関する契約または団体協約の交渉申込について応諾させる
ために農林大臣または都道府県知事が必要があると認められる場合、勧告することができる制度を設けることといたしました。
さらにまた生乳等の取引に関する紛争のあっせん等について、現行制度を改め、地方及び中央においても紛争のあっせんまたは調停ができることといたしました。地方において、知事はみずからあっせん及び調停を行うこととし、さらに一定の場合には、農林大臣が中央生乳取引調停審議会の
委員の中から調停員を選び、調停を行わせることといたし、これらに関する規定を設けました。
第五は、酪農の健全な発達に資する
ため国内産の牛乳及び乳製品を学校給食用に使用することを促進して消費の増進をはかる
ための
措置を講ずることを法定するとともに、その他の消費増進に関する
措置についても、あわせて規定することといたしましたことでございます。なお、国は学校給食にかかる
措置の
実施に要する
経費を補助することができることといたしました。
第六は、緊急の場合における乳製品の
計画的保管に関する規定を新設いたしたことであります。この場合には、農林大臣は文部大臣に協議し、かつ酪農
振興基金の
意見を聞いて学校給食に供し得られる乳製品を乳業者が保管する場合の
計画を定めることといたしました。この場合におきまして国に保管に要する
経費を補助することができることといたしております。
第七は、以上の各
改正に伴い、農林大臣または都道府県知事の報告徴収及び立入検査の権限につきましてその適用の場合及び
対象を広げることといたしたことであります。
以上がこの
法律案のおもな内容でございます。何とぞ慎重なる御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。