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1959-02-17 第31回国会 参議院 農林水産委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月十七日(火曜日)    午前十一時六分開会   ―――――――――――――   委員の異動 二月十三日委員田中茂穂辞任につ き、その補欠として井上知治君を議長 において指名した。 二月十四日委員井上知治辞任につ き、その補欠として田中茂穂君を議長 において指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     秋山俊一郎君    理事            雨森 常夫君            堀本 宜実君            清澤 俊英君            北 勝太郎君    委員            田中 茂穂君            仲原 善一君           小笠原二三男君            河合 義一君            棚橋 小虎君            戸叶  武君            千田  正君            北條 雋八君   政府委員    外務省アジア局    長       板垣  修君    農林政務次官  高橋  衛君    農林省農林経済    局長      須賀 賢二君    水産庁次長   西村健次郎君    海上保安庁長官 安西 正道君   事務局側    常任委員会専門    員       安樂城敏男君   説明員    農林省農林経済    局金融課長   太田 康二君    林野庁指導部長 茅野 一男君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査の件  (漁業振興に関する件) ○農林漁業金融公庫法の一部を改正す  る法律案内閣送付予備審査)   ―――――――――――――
  2. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) それでは、ただいまから農林水産委員会を開きます。  漁業振興の件を議題といたしまして、日韓関係の現況、これがわが国の漁業及び漁民に及ぼす影響並びにこれら事態に対する政府措置等について、関係当局の御説明を願うことにいたします。  本日は、外務大臣及び農林大臣の御出席を要求いたしましたが、やむを得ない事情のために御出席が得られませんので、ただいま高橋農林政務次官外務省アジア局長水産庁次長及び海上保安庁長官の御出席を得ております。  まず、外務省から外交関係について、次に、水産庁から漁業関係について、さらに、海上保安庁から警備関係について御説明を伺います。  なお、説明に対する御質疑は、説明が一通り終ってからお願いいたしたいと存じます。
  3. 千田正

    千田正君 ただいま委員長から提示された本日のスケジュールその他に対して、十分政府側責任のある答弁をわれわれは期待するわけでありまするが、ただいまの説明員政府代表諸君説明された後にわれわれが質問しますが、責任ある答弁をやってもらえるかどうか。本日、われわれの手元に配付されておりますところのこれらの議題の中には、閣議において決定した事項報告ということだけでかかっておりますが、われわれが質問するとするならば、少くとも現政府責任についての質問をいたします。それで政府側諸君は、途中において、これは大臣責任だから、われわれは知らぬとか、われわれはそれを実行できないとか、そういうような簡単なことではこの問題は解決できないと思いますから、私どもが聞く以上は、少くとも責任のある答弁をしていただきたいということを、前もって注文しておきます。
  4. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) それでは外務省アジア局長から御説明を願います。
  5. 千田正

    千田正君 われわれは、新聞で見た程度報告なら聞く必要はないんだから。
  6. 板垣修

    政府委員板垣修君) まず、現在までにおきまする日韓交渉現状を簡単に御説明申し上げますと、御承知のように、日韓交渉は、昨年の四月十五日から全面会談が開かれまして、途中一時停頓いたしましたが、十月一日から再開をされまして、昨年の暮れまで続きました。御承知のように、この日韓交渉のうちで最も大きな問題は、一つは、李ラインの問題でありますし、もう一つは、現在問題になっておりまする在日一部朝鮮人北鮮帰還問題、この二つが非常に大きな障害になっておったわけでございます。それでいろいろな請求権委員会なり、あるいは文化財の委員会なり、あるいは船舶返還委員会、そういうものにつきまして、数多く委員会が開催されましたけれども、結局、この二つの問題に関連いたしまして、事実上、日韓交渉そのものは、あまり進展をみなかったということは御承知通りでございます。それで暮れになりましたので、一まず、年末年始ということもありまするし、一時休会をいたしまして、一月の二十六日から再開しようということになっておった次第でございます。  そこで、今申し上げまする一番大きな問題であるところの在日一部朝鮮人北鮮帰還問題でございまするが、これはまあ数年来この問題は実は日韓間に解けがたい問題として存在していたわけでございます。しかしながら、一昨年まではそう数多くの朝鮮人が帰りたいという意思表示もありませんでしたし、便船の問題などもございまして、事実上大きな政治関係にはならずに済んだのでございますが、昨年の一月、抑留者相互釈放に関連しまする連絡会議、続いて全面会談が開かれまして、在日朝鮮人の国籍なり、あるいは職務の問題を議論するということになりまして、この問題が非常に大きな問題になったのであります。そもそもこの問題が大きくなりましたのは、大村収容所におりまする戦後日本に不法入国した者の送還問題というものに関連して、この問題が大きくなったのであります。韓国側といたしましては、日本におりまする朝鮮人は全部韓国人である、従って、この不法入国者を送還させるについても、全部韓国に渡せば引き取る、こういうことを主張して参りました。私どもも、建前としてはそれに異存はないのでありまするが、実際問題といたしまして、当時、大村収容所に収容されていました朝鮮人のうち、九十二名がどうしても自分南鮮に帰るのはいやだ、どうしても北鮮でなければ帰らないという点から問題がもめまして、日本側といたしましては、理論的にはやはり個人意思の自由を尊重すべきである、いやがる者を手足まで縛って南鮮には帰せないというので、両方の意見が完全に対立したのでございます。それで、日本側が無理を通しますれば必然的に全面会談も開かれませんし、釜山に抑留されておりまする漁夫の問題にも関連いたしますので、日本側としましては、やむを得ずこの問題はたな上げして一年間進んで参ったのでございます。しかしながら、いよいよ現在になって参りますと、御承知のように、昨年の夏ごろから大村収容所におる北鮮系朝鮮人のみならず、一般に自由に日本に住んでおりまする朝鮮人の一部が、この際、日本でもちょっと生活の道が立たないから、どうしても自分たち北鮮に帰りたいということを言い出しまして、そして非常に大きな集団運動、全国的な運動になってきたのは御承知通りでございます。これに対しまして、日本政府といたしましては、やはり日韓会談の問題、それから特に釜山におりまする日本人漁夫運命の問題に関連いたしまして、この問題の決定をずっと今まで押えに押えてきた。ところが、今の国内情勢からいきますと、これ以上、日本政府といたしましては、帰りたいという運動をとめる理由が全然ないのみならず、また、とめることができない情勢に立ち至ったということでございます。とめる理由がないと申しますのは、御承知のように、世界人権宣言とか国際赤十字の原則というところから見ましても、やはり個人自分の住むべき地を選択する自由があるということは、これは大体国際常識であろうと思います。それから日本国内法制からいいましても、出入国管理局出国手続という問題があるだけでありまして、帰りたいという者を無理にとめるという日本法制的根拠は全然ございません。ただ、現に国際赤十字からも従来しばしばこの問題につきましては関心を持って、もし日本政府が承諾するならば、この一部朝鮮人北鮮帰還問題についてあっせんをする用意があるということを言って参りまして、間接に日本政府の注意を促してきた事実もございます。従って、こういうような内外理由からいいまして、どうしてもこの問題をこれ以上制限することはできないという非常事態に立ち至ったのでございます。  一面、日韓交渉の関連からいうと、確かに私ども釜山日本人漁夫運命というものにつきましては、一番心配であったのでありますが、この問題につきましては、過去一年間、私どもといたしましても、この問題は交渉議題となるべき問題でない、純然たる人道問題であるからして、昨年の一月以降、少くとも刑期の満了した者、できれば全部政治問題と切り離して帰してくれということを、しばしば外交交渉において、韓国側に申し入れたのでございます。しかしながら、遺憾ながら韓国側といたしましては、何らか政治交渉と関連いたしまして、絶対帰さないとは言いませんが、事実上、一年間帰ってこないという事実、従って、北鮮帰国問題はかりに延ばしましても、今、すぐ釜山抑留者が帰ってくるという見込みはちょっとないのであります。従って、私どもといたしましては、むしろこの日韓交渉に横たわる二大問題の一つ李ラインは、どうしても日韓間の交渉で片づけなければならぬと思いますが、それと、われわれから見ますと、政治問題と関係ない人道問題、これが事実上の日韓交渉の大きな障害になっておる。これを片づけた方が、むしろ日韓交渉はしばらくの間あるいは中断するかもしれないけれども、かえって交渉のほんとうの解決を促進するゆえんかもしれない、そういうような奥地からいいまして、そうなれば抑留漁夫が帰る問題も、あるいはかえって早道になるかもしれない。これは多少希望的な観測に陥るかもしれませんが、こういうような考え方も手伝いまして、この際、この返還問題につきまして御方針決定があった次第であります。しかしながら、御承知のように韓国側は相当非公式には、釜山抑留漁夫は絶対に帰さぬというようなことを言っております。従って、われわれといたしましては、再びこういう新しい事態に立ちまして、必ずしも日韓交渉をわれわれの方から打ち切る必要はありません。なお、韓国との間に交渉を続けますが、さらに本来の問題、性質に立ち返りまして、まず第一に、赤十字国際委員会に依頼するという方法考えられましょう。新たな情勢の推移によりまして、さらに国際的な方法をもってこの日本人漁夫引き取りを促進するということを考えざるを得ないと考えておりますし、現に、いろいろとただいま検討をいたしておる次第でございます。この点につきましては、外務省といたしましても、あらゆる努力を傾倒いたしていく考えでございます。  一応簡単に今までの経過を御説明申し上げました。
  7. 千田正

    千田正君 私は順々に皆さんの説明を聞いて伺おうと思いましたけれども、全部聞いてからにしますか……。私は、今のお話からいいまして、委員長一言注文をしたい。ということは、今のアジア局長お話からいいましても、この間の閣議がいわゆる北鮮に帰す問題についてのみの閣議であって、国外に抑留されておるところの日本人漁夫の帰還問題については、閣議は何も決定しておらない、相談をしておらないじゃありませんか。一方には、北鮮への帰還問題を討議しながら、一方には、一番悲惨な立場におるところの日本漁夫の抑留問題に対して、閣議の問題について何も触れておらない。だから、私は大臣出席を要求するのは、そういう理由ですよ。一体閣議で少くともこういう重大な国際問題を引き起すような、こういう問題を一方において決定すると同時に、国内において起きておるところの長年にわたってまだ解決しないところのこういう問題に対しては、閣議一体どういう決定をしておるか。私はそういう面において大臣出席を求めて、閣議におけるところの日本人抑留漁夫の問題も、同時に表裏一体として解決しなければならない問題ではないか。そういう問題については、この間の閣議では触れておらない。少くとも報告するだけの範囲内においては触れておらないと私は思います。われわれは農林水産委員立場からいいまして、われわれの国内にかような悲劇が惹起されておるという立場から考えますときに、どうして閣議でこういう問題を決定的な問題として結論を出さないか。その点は私は責任ある答弁を求めたいから、先刻から大臣出席を求めておる。アジア局長において、閣議の問題について、そういうことが答弁できないでしょう。できますか。
  8. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 実は、全部の説明が終ってからと思いましたが、ただいまの御発言がありましたので、その閣議関係する問題はアジア局長から御説明を願います。
  9. 板垣修

    政府委員板垣修君) その点を御説明申し上げます。当然私どもといたしましては、北鮮帰還問題を決定するにつきましては、その背景なり、いろいろな問題、これは当然考慮に入れておりますし、実は事務当局といたしましても、いろいろと問題点をしぼって検討した次第でございます。ただ問題点は、  この在日一部朝鮮人の帰還問題を決定した際に、韓国側がこれに対してどういう態度に出るか、どの程度まで出るかという点は実は予測がつかない問題であります。これを事前に憶測をいたしまして抑留漁夫あるいは李ライン内における出漁の問題、こういうような問題につきまして、これを先に決定をいたしまして、しかも、それがはっきりと日本政府方針といたしまして閣議決定までするということは、これはかえって先方を非常に刺激いたしまして、予想以上の悪影響を連鎖反応的に起すというようなことでございますので、この点はいわゆる閣議で了解なり決定という形でやりませんで、それが発表されなかったわけでございます。しかし、実際問題といたしましては、閣議におきまして、外務大臣から釜山におる抑留漁夫の問題のみならず、その他につきまして、あらゆる問題点発言をされまして、この点に対しまして将来起るべき事態に対してとるべき対策という点につきましては、十分討議はされております。ただ、今申し上げましたことによってそのことが発表されていないという事情はございます。
  10. 千田正

    千田正君 今のアジア局長のあれに対しては、非常に不満であります。閣議決定の問題は、世界人道上の問題として世界に訴えようというのが閣議決定の根本をなしておる。人道上の問題をわれわれが主張するならば、自国のこうした立場にあるところの人道問題はより以上に大切でなければならない。日本の抑留された漁夫が三年も四年も帰れない。戦争がすでに終った今日において、平和の時代において、今もって敵国にあらざるところの韓国に抑留されている問題は、これこそ人道上の重大問題じゃございませんか。他国の人間を人道上の問題で帰さなければならないということを言う前に、われわれ国民の人道上の問題として世界に訴えなければならない問題がこのように山積しておるにかかわらず、その問題を解決しないで、ほかの国の問題は人道上の問題だから帰す。そこに矛盾を私は感ずる。あなたは日本人としてどう考えますか。
  11. 板垣修

    政府委員板垣修君) もう私どもお説の通り考えておるわけでございまして、ただその方法手段等につきまして、今すぐそれを、政府方針を発表して刺激するよりは、むしろこれは実行的に釜山におる日本人を取り返すことが目的でございますので、その辺の見通しにつきましては、なお、短かければ四、五日、あるいはもう少し様子を見てやってもおそくはないという判断に基いたわけでありまして、要するに、釜山における問題は人道問題ということは、過去一年間も主張しておりますし、今後もそういう方針でもって進むわけであります。その点につきましては、私ども全然同じ考えを持って進んでいるわけでございます。
  12. 千田正

    千田正君 あとから質問いたしますから、各省の諸君から聞きます。
  13. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 次に、水産庁から、最近の状態につきましての漁業状況及びこれが処置に関する状態を御説明願います。
  14. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 問題の水域に関しまする水産庁としての関係事項を御説明申し上げます。すでに御承知と思いますけれども、問題の水域につきましてなされておる漁業は、トロール漁業、これは現在四十九隻でございます。それからいわゆる以西底びき網漁業、これが東海黄海に出る、これが七百六十七隻でございます。これは二そうでやり、あるは運搬三そうでやったりしますので、たしか許可トン数は三百八十三ぐらいだと思います。そのほかにいわゆる中型底びきという底びき網が大体百隻程度、これは東寄りの方でございます。それからなお長崎あるいは山口、福岡あたりを主体としますサバ、アジのまき網漁業、これが現在まあ出漁関係水域出漁しておりますのは、大体百五十ないし百八十、こういうふうに踏んでおります。そのほかに、先般も二月四日に拿捕されましたように、非常に小さい漁船、たとえば、対馬とか、あるいは壱岐、あるいは佐賀県、長崎あたりから出ます五トンあるいは十トン未満の小型漁船、この数は全部で千五百隻程度あるというふうに踏んでおりますが、まあ常時大体千五百程度。そのうちに、これは後ほど申し上げますけれども、全然無線も装備してないものが大体五百程度ではないか、こういうふうに踏んでおります。これらの小漁船は、サバ釣とかイカ釣、あるいはブリを釣ったり、そういったチキンボ、そういう漁法をしております。  日韓問題につきまして、ただいま外務省アジア局長からいろいろ御説明がありました。私どもとしましては、これは、漁業立場からこれに対して重大なる関心を持っております。昨年来の日韓全面会談におきます漁業委員会におきまして、私としても累次、いわゆる政府代表の一員としまして、この交渉にずっと参画して参ったわけでございます。不幸にして、これが何ら発展の方向に向かないうちに現状に至っている、こういうことでございまして、この交渉内容等は、過去におきましても御説明したと思いますけれども、もし必要であれば、後ほどまた御説明してもよろしいかと思います。  ところで、現在、抑留拿捕されております乗組員なり、漁船の数というようなものをこの際申し上げますと、漁船は全体で、まだ帰ってこない船が百五十二はいございます。それから乗組員は、昭和二十二年から拿捕が始まりまして、自来今日まで総計で、拿捕されました人数は三千二百四十八名でございます。現在までに三千八十七人帰っており、そのほかに死亡者八名おりますので、残りの百五十三名がまだ帰還しておらない。そのうちには、去る二月四日につかまりました浜久丸乗組員も入っております。この百五十三名のうちには、古い人には昭和三十年に拿捕された人も一人おるというような状況でございます。御承知のように、一昨年の暮れの日韓の覚書によりまして、相互釈放――相互送還と申しますか、ということで、当時九百何名おりました漁夫が大部分帰ったのでございます。大体におきまして、その後におきます拿捕によりまして、これらの百五十三名という人が現在残っておるわけでございます。私どもとしまして、これらの抑留漁夫につきましては、従来から、昭和二十八年の暮れですか、見舞金留守家族の方に差し上げる。それから差し入れ品、これを、収容所の方に送る金を補助いたす。あるいは現地においてなくなられた方、あるいは帰って一月以内になくなられた方に対しましても、これは弔慰金を差し上げる。さらに帰られて病気でおられる方に対しましても、入院料あるいは通院料というようなものを差し上げております。もちろん、この額はいろいろ、留守家族の方は少いというような御不満もあろうかと思いますが、私どもとしては、諸般の事情を勘案して、財政当局にできるだけの無理をお願いして、現在の程度に至っておりますが、これについては、また、あるいはなお全般的に考慮する必要があるかとよ思っております。  なお、先ほどからここで当面の議題となっておりまする北鮮帰還に関連しまして、一体、現在の漁業はどうなっておるかという点でございますが、これは、あるいは違った面からの、海上保安庁あたり情報というものがさらに的確かもしれませんが、私どもとしましては、特別に今のところ、変った情勢はこの二、三日来は受け取っておりません。福岡の事務所から、変ったことがあればすぐ連絡するように言ってありまするけれども、特別にはないようでございます。ただし、昨年の暮れあたりから、向うの監視艇動きが活発になったというようなことを聞いております。しかし、いずれにしましても、韓国側が従前にも増して拿捕というようなものに対して積極的な意図を見せるということは考えられまするので、私どもとしては、これに対して急速に対処していかなければならない。その一つとしましては、先ほど申し上げました小型漁船、これにつきまして、無線電話を装備するということも何とかして至急に実現して参りたい、こういうことで目下、その事務的折衝を進めております。大型の船につきましては、これは従来から無線がありまして、情報のキャッチができますので、これにつきましては、なお今後とも、より慎重にやっていくということではないかと思います。ただ先ほど陳情の方もありましたように、これについて海上自衛隊というようなものをあるいは出す、そしていわゆる保護出漁というようなことも一つ考えとしては考えられましょうが、私どもとしましては、漁業の面からいいますと、これは漁業者も同じ気持と思いますけれども、要するに、やはり漁業生産を上げたいということが一つ考えられます。その辺との関係において、その情勢判断というものはきわめて慎重にすることが必要ではないか、こういうふうに考えております。  それから監視船、私の方で申しますと監視船でございますが、これは現在私どもは常時六隻配備しております。これはおおむね、あちらの天候の関係等もございますので、小型監視船では用を足しませんので、三百トン級の捕鯨船をチャーターいたしまして、現在六隻配備いたしまして、常時、そのうち四隻が絶えず問題の水域――これは朝鮮海峡のみならず、黄海東海の方にまでわたって保安庁と協力しつつ保護に任じておるのです。  とりあえず、私どもとして御説明するのは以上の点でございます。その他はまた後ほど。
  15. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 次に、海上保安庁長官から、同海域における警備状況等について御報告を願います。
  16. 安西正道

    政府委員安西正道君) 現在、あの水域に出動させております私の方の巡視船は、昨年の十月まで常時三隻をあの海域に置いておくという方針でございまして推移して参りましたが、昨年の十一月以降に対馬の周辺が盛漁期になりましたので、特に一隻を増強いたしまして、常時四隻を配備しておくという方針で今日に至っております。水産庁漁業監視船と一緒になりまして、まず私ども巡視船任務といたしましては、韓国警備艇出動状況をはっきりつかむということに重点を置きまして、これをつかみまして、管区本部通信施設を通じまして漁船に警報を出すという任務をまず第一の任務にいたしております。最近におきまして、あの閣議決定がございます前後から、韓国警備艇がどのように動いているかということがわれわれの最近最も注目しておる点でございますが、この点につきましては、韓国警備艇動きは、毎日平均大体二隻程度警備艇が出動しておりますような状況でございまして、従来に比較いたしまして特別に目立った動きは、今のところ、示しておりません。  それから韓国側動きでございまするが、韓国側といたしましても、海上警備隊を動かしましてわれわれの漁船拿捕に来るというようなことでございまするが、今までのところ、海軍艦船を動かしまして直接日本漁船拿捕するというようなケースはございません。その点につきましては、あくまで警備隊を中心といたしまして、警備隊が直接当る、海軍艦船が出ましてもそれは日本漁船出漁状況を視察して警備隊に教えるという程度でございまして、従いまして、直接は日本側漁船拿捕に当らせないといったようなきわめて慎重な態度をとっているように考えられます。  今後におきましてどうなるかということは、慎重に韓国警備隊の動勢を把握して参る必要があるかと考えまするが、この点につきまして、われわれといたしましては、韓国側も非常に慎重であって、警備隊動き等につきましても、たとえば巡視船報告を受け取りますところによりますと、日本側巡視船韓国警備艇が洋上におきまして出あうというようなことになりました場合におきましては、向う側も回避していくというような状況でございまして、非常に目下のところは慎重な態度をとっているのではないかというふうに考えられます。  そこで、われわれの対策でございますが、この点につきましては、もちろん将来におきまして巡視船を増加するとか、あるいはまた監視船を増加していただくというようなことも考えておりますけれども先ほど西村水産庁次長から御説明がございましたように、通信機のない漁船にできるだけ早く通信機をつけていただきまして、われわれの警報が十分に徹底できるように増強をお願いしている次第でございます。  大体以上でございます。
  17. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) ただいまの説明に対しまして御質疑を願います。
  18. 千田正

    千田正君 外務省アジア局長にお伺いしますが、国際公法上、国際私法上から見ましても、国際法の立場から見ましても、現在韓国の大統領李承晩が宣言したいわゆる李承晩ラインというものは何人も承知できないラインだと私は思う。ことに日本立場からいいますと、国際法上から、全然ああいうラインが妥当であるということは認めがたいし、認むべきじゃないと思いますが、まず外務省からこの点をお答え願います。
  19. 板垣修

    政府委員板垣修君) 外務省及び関係各省、政府一致の方針といたしまして、ただいまお話通り方針を堅持いたしまして、従来、日韓交渉を進めてきておりますし、今後もこの点につきまして譲歩をすることは不可能と考えております。
  20. 千田正

    千田正君 そうだとすれば、当然安全操業をするためには、日本が公海と信じている、いわゆる公けの海として信じている所において、日本の漁師が漁業をすることは当然のことであり、何人もこれに対しては異議を差しはさむべき余地がないのであって、それは当然やり得る問題である。それで現実にやれない。こういうところに大きな問題が結論としては起きてきている。この点についてはどういうふうに考えますか。それに対して、国内措置としては、今、水産庁並びに運輸省の海上保安庁立場から、いろいろなことを申されましたが、ああいうことで実際日本の漁師が公海において自由な操業ができる、こういうふうにお考えでありますかどうか。これは農林当局並びに海上保安庁から伺いたいと思います。  それに対しまして、それだけではお答えがやりにくいと思いますが、今までとってきたような程度でやっていけるかどうか。少くとも戦争の跡始末としましては、現在いまだ帰らないところのいわゆる未復員者あるいは未帰還者というものは相当多数いる。それに対しましては、国内処置として厚生省が行政官庁として未帰還の留守家族に対する法律を作って、一応それに対してはしばらく待てと、待っている間の生活の保障という面についてはやっておる。これはいささか少いでありましょうけれども、国力に相応した、経活力に相応した立場において予算を組んでおるのであります。しかしながら、今のような戦争ではない、平和時において、しかも、公けの海において、理由なくして拿捕されておるような危険水域が今日まで存在しておる、そしでなおかつ、百五十三名の邦人が抑留されておる、こういうような事態を繰り返しておる今日において、水産庁としては、単なる今の海上における操業に対して無線をつけるとか、あるいは監視船を増すとか、そういう程度だけで一体安全に操業ができるかどうか、同時に、抑留されておるところの留守家族はこれで数年待っておる、あるいは今度の問題が発生すると同時に何年待たなければならないかわからない、ちょうど戦争の後における―戦争で捕虜になった人たちの留守家族と同じようなところまで追い詰められておる現今のこの漁業者及び漁民の生活に対して、今までのような程度で、一体あなた方はそれで満足できるかという点について、私は満足できない。もう少し真剣に考えていただきたい。きょうは次官がお見えになっておりますからお伺いしますが、この間の閣議におきまして、これは外務省立場からは共ほどアジア局長がるる述べられましたが、農林省としましては、あるいは水産庁立場から、閣議においてこの問題について十分大臣から各閣僚に伺つて了解をするだけの発言をしているかどうか、私ははなはだそういうところに行っておりませんから、単なる風説でありますけれども、あまり三浦農林大臣閣議において、この問題については熱がなかった、こういうふうに私は承わっておりますが、どういう発言をしているか、そういう点について一応伺いたい。国内における対処方針。今後この事態は未解決のまま何年続くかわからない、これに対してどういうふうな指導方針をとり、あるいは漁師の留守家族の安定処置をとるか、監督官庁としての、行政官庁としてのあなた方の方針一体どう考えているか、この二点をお伺いします。
  21. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) お答えいたします。最後の点につきまして、これはあるいは私からお答えするのはどうかと思いますけれども閣議につきまして、閣議発言内容等、私が漏らす理由はございませんけれども閣議の性質上、そういうものではございませんけれども、これは私の承わっているのは、十分具体的に大臣から発言されたというふうに伺っております。  それから他の二つの点につきまして、第一の点につきまして、多少私は誤解しているかもしれませんが、その場合にはお直し願いたいと思いますが、今後の、と申しますか、当面の出漁対策として、大体小型無線機をつけるくらいで足りるのか、現実の操業の安全をはかる上において。こういう御質問であると思いますが、これにつきまして私どもとして、もちろん関係各省、これは内閣が中心となりまして、今後十分時宜に即した対策を練る、こういうことになっております。ただ私が申し上げましたのは、小型漁船につきまして、通信設備をつけるということがいかにもこれが大事なことで、これをまずやるということが必要である。それから大型につきましては、従来から通信施設は完備しております。それだけでは足らないのじゃないかということでございます。その点につきましては、これは漁業立場から申しまして、先ほどもちょっと触れましたように、たとえば、ここに極端に申し上げれば、いわゆる保護出漁というような武力の背景と申しますか、保護を持った船団の出漁というようなものも考えられよう、いずれにしましても、そういった場合におきまして、漁業立場から見た場合には、魚はとれないという場合も相当考えられるのじゃないかということで私は慎重に考える必要があるということを申し上げたわけであります。私どもただラジオを小型船につければそれで足りるということでは毛頭ございません。先ほども申し上げましたように、監視船なり巡視船の増強につきましても、私どもとしましても、できるだけのことをしており、なお海上保安庁と十分連絡をいたしまして、海上保安庁にも増強をお願いする、そういうことで保護の態勢の万全を期して参りたい。もちろん、これは情勢の変化、発展によりまして、いろいろ考え方なり、措置は変っていく性質のものである、こう思っております。  それから第二の点につきまして、一体、何と申しますか、援護態勢は足りると思っているかという御質問だと思います。これは先ほどの李承晩ラインというような、国際法上認められていない、本来公海自由であるべき所において拿捕されたものである。これに対して国家としてはどういう措置をとるべきかというような問題でございます。私はその方の専門ではございませんので、そういう場合に、一体国家賠償責任というものが直接的に出てくるかどうか、これはきわめて疑問と思っております。しかし、現実の問題としまして、そういう議論を離れまして、私どもとしては、留守家族なり、あるいは抑留漁船乗組員の困窮な状況はよく承知しておりますので、先ほど申し上げましたような見舞金―一括して申し上げますれば見舞金というようなものを差し上げておる、こういうわけでございます。その額の多少、あるいはやり方というようなことにつきましては、批判もあろうかと思います。その点が千田委員の非常に不満とされるところかもしれませんけれども、これは他のそういった同種のものというようなものとの勘案というようなものもありますし、私どもとしましては、できるだけのことをまあ現在としてはとっておる所存でございます。なお、今後とも十分この点については検討して参りたい、こう思っております。
  22. 千田正

    千田正君 三十二年で大体韓国に抑留された漁夫は釈放されて帰ってきた、その後において数十名の人たちが拿捕されているのは、おそらく当時の新聞の発表がうそでないとするならば、李承晩ラインと称するライン外の出漁にかかわらず、韓国側から拿捕されている、こういう点が非常に多かった。あるいは、はなはだ分明でない、どっちか境がわからないという接触点において拿捕されておるのがあるでございましょう。しかし、あなた方の指導がきいておるから、おそらく李承晩ラインと称されるラインにおいて無謀な操業をしておるはずはない、その後にとらえられておる人たちは、ライン外において操業をしておってとらえられておる人たちが大多数であると私は考える。もしそうでなかったとするならば、あなた方の指導が行き届いていないということであって、このライン外においてとらえられておるというこの現象に対しては、あなた方はどういうふうに考えますか。
  23. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) ちょっと御質問の趣旨があれでございますが、先ほどアジア局長から申し上げましたように、ラインというものは、日本は認めておりません。従いまして、ラインの内外ということは、内であっても、これはわが国にとっては国際法上認めざる対局的行為であるということにおいて、両方とも同じであると、こういうふうに思っております。ただ、ラインの内外か、どうであったかという問題につきましては、もし要すれば後ほどあるいは答弁したいと思います。
  24. 千田正

    千田正君 西村次長の考え方は、私は詭弁だと思う。ということは、ライン内外ということは、日本では認めておりません、その通り。しかしながら、向うはラインを宣言した以内に入ってきた者は、自分の領海侵犯であるから拿捕するのだという一方的宣言ですよ。向うは一方的に自分の方のラインを決定しておいて、その中に入ってくる者は、ライン内に、いわゆる自分らの領海に入ってくるのだから拿捕するのだと宣言しておる。あなた方はそれでは、今までの日本では、そんなことはおかまいなしにどんどん沖まで行ってとってこいと言って指令しておりますか。そうじゃないでしょう。そういう国際紛争を起してはいけないから、そういう所までタッチしてはいけない、ライン外で操業しろということを指導しておるのじゃないかと思う、私はそう思っておりますよ。われわれとして認められないラインである、認めちゃいけないラインである、しかしながら、無法なやつが勝手なことを宣言して、そうして来た者はぶんなぐるぞという、要するに危ない所に近寄るなということは、私は温情的な水産庁の指導でなければならないと思う。そうじゃないですか。われわれは認めないのだから、どこまではいいのだからやれということをあなたたちは指導しておりますか。もしそうだとすれば、あの残っておる百五十三名という漁師の諸君は、あなた方のような観念によってどこでもかまわず漁をしておったためにとらわれたということになるのですか。私はそうじゃないと思うのです。どうですかそれは。
  25. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 今の問題につきましては、非常に御説明がしにくい、デリケートだと思われますので、もしできれば速記をとめるなり、あるいは秘密会にしていただければ、もう少し突っ込んで御説明できるかと思います。
  26. 千田正

    千田正君 その必要はないと思いますから、そうならば私は別の論法をもちまして申し上げます。いずれにしても、現実百五十三名という者がとらわれて帰ってきていない。これは早急に帰されるという見込みが立っていない。それならば今日この問題を、いわゆる北鮮に帰すべき人々の問題を海外に宣言すると同時に、この国内的に起きておるところのこうした悲惨な問題を同時に人道上の問題として国外に訴えるとともに、国内において、どうしたならばこういった家族の人たちを慰めつつ、この問題の早急な解決をどうするかという問題が今残されておる、国内のそれが処置でしょう。その点に対して、あなた方はお見舞金をやったのだ、あるいは恩典をつけるのだと、そんなことで留守家族にしろ、われわれ農林水産委員諸君にしても満足しない。もう少し積極的に国内方針をまとめる意思があるかどうか、その点を一つお伺いしたいと思います。―それじゃ西村さんとしてはお答えにくいかもしれませんが、というのは、私の質問がはずれていたかもしれない。水産庁の今のやり方だけでは満足していないということです。拿捕されたからといってお見舞金をもらう、あるいは生活が苦しいだろうからといって一部の生活補助金を一時的に何とかして工夫してやる、その程度ではこの問題は国民としては納得いかないのだ。国の力の十分及ばない結果こうした問題が起きたとすれば、国として一応の恒久的な、少くとも帰されるのはいつ帰されるかわからぬ。臨時的な措置ではなく、何かしら生活の基準を考えてあげるのが妥当じゃないか。そういう問題については十分やっているのかどうかということを私はお聞きしておる。  ついでに私は申し上げますが、一体日本漁業の行き方はどうなのか、水産行政は曲りかどにきているのじゃないか。李承晩ラインばかりではありませんよ。太平洋においては原子爆弾が実験されて漁もできない。また日米カナダ条約で日本の船は行けない。北洋はソ連によって圧迫を受けている。どこに一体日本漁船、漁師は行ってやればいいのだ。その操業する立場も圧縮されて、沼や池でとるような方面にまで押し込められてきている。こういうような国際的な漁場の圧縮とともに、国内的な問題としての処置も考えなければならない。その一番刺激的な問題は、現在起きているところの、拿捕されているところの問題、中国と朝鮮との間に境する漁場の問題でしょう。こういう問題に対して、しぼって一体善処の方法考えているのかどうかということを私はあえて言いたいのです。あなたの方の立場をもっとよく、私は抑留された漁夫のために、あるいは日本の水産行政のためにも、外務省一体となってこの解決を真剣になってやっていただきたい。単なる国内の処置のお見舞金程度では、私は話がつかないのじゃないかと思う。
  27. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) ただいまの千田委員の御質問でございますが、国内の、たとえば抑留漁夫の援護の問題、これは私どもとして、先ほど申し上げましたように、あるいは千田委員は御不満かもしれませんが、私どもとしては、許す限りのことは今までやってきたつもりでございます、財政上。ただ、こういうことはできたあとの、そう言ってははなはだ悪いのですが、処置であります。今まで現状のままほうっておけば、いつまでたっても同じことを繰り返すというおそれはあるわけであります。従いまして、もっと抜本的な問題を考えなくてはならない、こういうことは全く同感でございます。しかし、事、日韓関係について考えてみます場合において、これはやはりどうしても私は漁業問題、李ライン問題というものを解決しないと問題は解決しないのじゃないか、こういうふうに考えております。  それで、民間には、これは私は別に証拠があるわけではございませんけれども李ラインなんというものは、李承晩ががんばるなら、あるいは体面上認めてもいいじゃないか、そのかわり、あそこに日本漁船が入ればいいじゃないか、たとえば向うとの合弁とか、向うの許可を得る、そういう格好でやれば今のような拿捕がなくて日本漁船も入れるじゃないか、そういう議論をする人もあるやに聞いております。私どもとしては、それは一見、その入れる漁業者につきましては、いいことでありますけれども、そういう漁業の専属的管轄権、公海上に広範な海域を認めるということになりますので、これはもう世界のあらゆるところにつきまして、それと同じようなことをやられた場合に、日本はもはや対抗できない、こういう意味で、私どもとしては、非常にあの問題につきましては、当面、現地の漁業者は非常に困難な地位にありますけれども、やはり国として、そこは許すべからざるところであるということで、私どもはこの問題をやはり一刻も早く片づけるということが、問題を根本的に解決する近道であろう、こういうふうに考えておるわけであります。  そこで、もう一つ、あるいは千田委員は示唆されたことかもしれませんが、それでは李ラインなんというものを、もうどうせあんなものは解消しないのだろうから、李ラインというものは既定の事実として、事実それでは少し漁場を転換するなり、漁船をつぶしたらいいじゃないかというような議論も出ます。これも実際問題としまして、いろいろ困難が伴います上に、日本漁業なり、あるいは公海の自由に対します立場というものは失われると申しますか、そういうような不法は、国際法上認めざる行為を容認するような格好になりますので、私どもとしては、そういう措置もとることはいかがなものであろうか、こういうふうに感じております。  それから、先ほど私は千田委員の御質問に即応しなかったのでありますが、ラインの問題で、ラインの外でやれ、国際紛争に巻き込まれないように、そういう指導をしていただろうかということでございますが、それは私の方が、李承晩ラインから外でのみ漁業をやれということを、政府としては私は指導いたさないし、すべからざるものであると思います。そのことはとりもなおさず李承晩ライを政府は認めており、認めるということになる。しかしながら、実際問題としては、危険を避けるという意味におきまして、現在は海上保安庁―これは主として、あそこの七管区の保安本部の非常なお骨折りを願っておるわけでありまするけれども―と緊密な連絡をとりつつ、安全に操業できるという面については、相当な努力を払っておるつもりでございます。その問題につきましては、なお今後の操業につきまして、よりよい方法があればそれをできるだけ早く取り入れてもらいたい、こう思っております。
  28. 千田正

    千田正君 海上保安庁にお尋ねしますが、海上保安庁では、そう問題の起らないように指導しておる、実際にもあまり衝突しておらないと言う。まあ衝突はもちろん避けなければならないのですが、万全を期して海上の治安に当っておる、こういう御説明のようでありましたが、そうであったならば、なせここでこういうような問題が起きるのか、なぜ起きるのか、この点です。どうしたためにこういう問題が起ったか。あなた方の御説明であったならば、安全操業に、十分保護しておるのだという御説明でありましたが、なぜこういう問題が起きたのか、この点お尋ねいたします。
  29. 安西正道

    政府委員安西正道君) ただいま千田先生からの御質問でございまするが、もちろん私どもといたしましては、いわゆる李ライン周辺における拿捕の万全を期して、一生懸命巡視船には努力させておる次第でございます。ただ先ほど千田委員からお話がございましたように、漁船がみずから、いわゆる李ラインの外におるというように考えまして操業していったところが、そこへ警備艇がやってきてつかまえたというような場合もございます。それからまた、向うの警備艇が近くに近寄っておりますので、漁船に退避をお願いしても、通信施設がない関係情報がキャッチできなかったというようなことで、やむを得ずつかまるというような場合もございます。また非常に小さな小型漁船出漁いたしておりまして、相当警戒警報やあるいは各種の警報が長く続き過ぎる、従って、どうしても生活上の面から出漁せざるを得ないというような事情に迫られて出漁してつかまっておる、こういうような場合もございます。もちろん巡視船としては、できるだけそういう現場に急行いたしまして、できるだけ拿捕の防止に当るという努力はさせておりますけれども、何分、巡視船艇の数も常時四隻程度で、あの広い公海を警備しておる状況でございますので、多少そういったようなやむを得ざる拿捕が発生するというような状況でございます。
  30. 千田正

    千田正君 最後に一点だけ。これは総括的に要望しておくのでありますが、外務省としては、外交問題として、当然この問題は今後とも大きな一つ日本立場を主張する面において、真剣に取り上げなければならない問題であると思います。それで、さっきも何回も申し上げました通り北鮮の人たちを帰すということは、これは人道上当然であるという結論は、われわれも賛成であるが、同じ人道上の問題を主張するならば、国内において、もっと悲惨な立場にあって今日なお帰されない、いわゆる朝鮮に抑留されておる。韓国に抑留されておる人たちの解放の問題も、これも世界的に訴えて解決すべき問題ではないか。同時に表裏一体として、この問題は解決すべき問題ではないかということと、国内における措置は、今の水産庁次長並びに海上保安庁からの説明がありましたが、これは外交上の問題と表裏一体として考えましたときに、すぐにも解決する問題ではない。ないとするならば、国内的な処置にもっと力を入れなければならないじゃないか。そういう意味において大臣一つ、この問題について閣議にかけるくらいの熱意をもってこの問題を解決せられるよう、私は強く要望しておきます。  ほかの委員の御質問もありますから、私はこの程度でとどめておきます。
  31. 清澤俊英

    清澤俊英君 一、二点お伺いしたいのですが、まず、こまいところからお伺いしていきますが、先ほど陳情者が泣いて、抑留者のところへ毎月一万円の金を送らなければならぬ、なお、西村さんのお話によりますと、この抑留者に対して見舞金を出している、当然そういうことでありますと、よほどひどい待遇を受けているであろう、こういうことは想像できますが、その詳細はどういう方法でそれを知っておられるか、向うの取扱い方を伺いたい。この探り出す方法は、もちろん水産庁というよりは外務省が中心であろうと思いますので、外務省はそういう情報をどういう方法でどれくらいの努力をしてどういう確証を握ることに努力して集めておられるか、この点について伺いたい。
  32. 板垣修

    政府委員板垣修君) この点につきましては、御承知のように日本政府の機関が全然南鮮の地域にございませんので、日本政府といたしまして、正式に直接の資料は持っておりません。しかしながら、二年ほど前に、国際赤十字が現地を視察したときの報告書がございます。これは古いものでございますから、現在は妥当しないと思いますが、最近、私どもの持っております資料としては、昨年の四、五月にかけまして、釜山抑留者の一部が帰って参りました。その方々の報告書というものが、現在持っております唯一の資料でございます。この点につきましては、私どもいろいろ向うの待遇が悪いという情報がございますので、しばしば韓国側に対して申し入れもし、それから部分的に不足する品物の差し入れも要求し続けております。しかしながら、公式に韓国政府は、朝鮮人と比べて待遇は悪くないということを申しております。従って、それをどちらがいい悪いと反駁する政府としての資料はないわけであります。しかしながら、向うで現実に体験した帰還抑留漁夫の資料というものは相当尊重すべきものと思っております。その点につきまして、従来、韓国側にも要求しておりますが、今後はこういう事態になりましたので、実現性については、若干まだ疑問もございますが、かりに、今後情勢動きによりまして、釜山抑留者の釈放問題につきまして、国際機関のあっせんを求めるということになりますれば、この方面についての資料を集めることに努力したい、このように考えております。
  33. 清澤俊英

    清澤俊英君 国際的に外交には諜報機関がつきものじゃないかと思っております。日本にはそういうものはないのですか。そういう他国の情勢等探ることは外交上何ら要らないですか。これは重要問題だと思いますけれども、そういうものはちっとも考えておられないのですか。日本の国際関係の外交をやっておられる上に全然ないのですか。
  34. 板垣修

    政府委員板垣修君) 諜報機関というと語弊がございますが、普通通常の国においては、いろいろ情報を集める手段を講じております。ただ韓国の場合には、遺憾ながら新聞記者も一人もおりません。そういう関係日本政府が依頼するような機関は置けないような事情になっておりますが、その他の関係におきまして外交関係を通じた情報であるとか、外人記者を通じた情報であるとか、そういうものはないことはございません。しかしながら、これは政府として公けな確実な資料として使うわけには参らないわけであります。しかし、あらゆる努力はしておる次第でございます。
  35. 清澤俊英

    清澤俊英君 これは、私らずぶのしろうとが外交のそういう機微な問題にまで突っ込んでは、どうかと思いますが、二十二年から問題が起きているんですね。今日起きた問題じゃないんです。そして、今もうこの問題を解決するには、日本の国としては武力はもちろんできません。防衛庁が幾らぎゃあぎゃあ言ってみたところが、今言われる答弁以上のことはできない。そうしてみますると、気違い相手にしても話がつかぬ。結局しまするならば、世界に向って不法なることを宣伝して、世界の世論を高める。国内に向っては国民の全部の世論を高める。白洲君が言う通りだと思うんです。両面の宣伝が私は解決の道じゃないかと思う。そうしてみまするならば、こないだも、国内におきまするところのスパイ問題が出ました際に、自治庁の長官は、共産党がどうだとかこうだとか、そういうようなことを申されると同時に、国内の諜報機関としても、七億円も持っている、そういう中から出しているんだ。いわんや、日本運命を決するような外交問題をきめる上に、そういう金がないとは考えられない。今、おっしゃっているようなことばかりでは、おそらくはやっておられないんだと思う。そうしてみまするならば、十分の機関を動員して、不法の取扱いがあるなら不法の取扱いをするようなものを、写真でもなんでもさらけ出すぐらいにして、もっと私は国際的な人道問題に宣伝が要るんじゃないかと思う。これはだれしも考える私は一つの解決の方法は、その辺よりはないであろうと思う。そういう点は、少しも考えて今でもおられぬのですか。
  36. 板垣修

    政府委員板垣修君) その点につきましては、もう初めから、過去数年来考えておるところでございまして、外務省方針としては、それは持っていたわけであります。ただ、私どもといたしましては、国際宣伝をやったり、国連に提訴したらすぐ解決するという問題でなくして、問題は、やっぱり友好を実効的に取り戻すということが主眼でございますので、幸い、日韓全面会談も開かれておりまするし、どうしてもこれは抑留しておる韓国政府の問題でございますから、日韓間で話し合いがつけば、一番早く、かつ簡単に問題が解決するということでありまして、日韓間の話し合いがずっと進んできて、これに対して期待を持ちながら、過去、少くともこの一年間、あらゆる努力を続けて参ったのでございます。それより前に、日韓間の話し合いの最中に、妙な宣伝をしてしまうということになりますれば、日韓間の相互同士を切ってしまうということでありまするから、しかも、それがまだ解決をしておらぬということになって、それじゃできるだけ当事者同士で話し合いをして、あらゆる努力をしようということで進んで参りました。その結果、国際的宣伝というものはあまりやらなかったのはその理由でございます。しかしながら、裏面におきましては、あらゆる各国にこの状態につきましてはいろいろ説明はしております。しかし、いわゆる宣伝によって、国際世論の圧迫によって解決するという手段は、確かに今まではとっておりません。というのは、そういったような考慮からでございます。しかしながら、今後、こういう事態になりまして、今後の情勢推移いかんによりましては、そういう方面につきましては、今後とも全力を尽さなければならぬという事態もあるかもしれません。しかし、それでもまだ、ただいまの現状におきましては、日韓のまだ交渉は切れておりません。従って、韓国側と両方で話がつくということならば、何も好んでこの道を閉ざす必要はないというのが、現在の情勢でございまして、あと十日なり一週間なり、向うの出方をしばらくお待ちを願いたいというふうに考えておるわけでございます。
  37. 清澤俊英

    清澤俊英君 何べん同じことを言っているんです。この問題は今年初めてここへ出た問題ではない。今も言うてる通り、二十二年から始まっているんだ、あなたが言うてる通り。もう四、五年前から始終問題になっている。同じことを何年もやっていて、それで片づくんですか。そして、今お聞きしますと、北鮮の希望者を帰すという閣議決定に対しましては、一応それの対策に対して、国際的に云々するということも考えておられる、こういうお考えであるということを発表なさっておる。もし、これが予測できないとしましたならば、そこまで踏み切る準備と用意がすっかりできておるか、これがまず第一点。と申しますことは、私はそういう点に対しては、非常に外務省のものの見方は甘いのじゃないかと思います。と申しますのは、韓国ノリの問題が、これは三十年か三十一年の年に問題が出まして、そうして一億枚のノリを入れるか入れないかというので、非常に紛糾しました際に、当時のアジア局長は、こういうことをして一つも入れないというようなことで参ったならば、日韓交渉の上に障害がないのだろうか、障害にならないか、こういうお伺いをした。そんなことは心配ありませんということだった。ところが昨年、やはりノリの問題が、今度一億二千五百万枚入りまして、そうして紛糾した際に、これをなぜ入れたのだ、こういう議論が出ましたときに、いろいろ日韓交渉等にも支障があるから、これを入れました、こういう御答弁があった。何を言っているのか、わからないのです。われわれから見ますと、おっしゃっておることが、一年見ないうちに、ぐるぐるっと変ってしまった。これは見通しの見違いかもしれませんが、この日韓問題の李ラインの問題は、私どもの党の安部キミ子さんなどは、年に三回は必ず農林大臣外務大臣、首相の出席を求めまするけれども、まだ一ぺんも出られないで、非常に憤慨しておられる。やっておられるが、毎年同じで、結局すれば、局長では解決がつきません。私は解決つかぬと思うから、これはある程度までやって、どの付近で、どういう形になったら、別の方針で踏みかえる、いわゆる切りかえるという腹がきまっておるかどうか。これは閣議決定なり、外務省の重要なこういう問題の御相談の際に、少くともそれには局長は参加しておるだろうと思うから、綱が切れぬとかなんだとか言って、綱が切れてしまってから初めてするということになったら、いつになったらきまりがつくか、わけがわからない。どの程度までいったら、もう大体相手にせずならせず、積極的に国際問題として国際人道に訴えて、これを積極的に解決する。そのときには当然、私ども不満でありまするのは、日本の国民にさえ、義憤を感ずるほどまだ詳細のものは宣伝してありません。日本拿捕がこれだけあるとか、拿捕せられておる抑留者が非常に苦難をしておるとか、ぐらいのラジオやテレビの放送がありましただけで、実際、日本が国際の世論と感情を高ぶらせるために、意識的にも宣伝しておるなんということも見受けられません。内外相待った立ち上りによって解決するより私は方法がないと思う。そういう予算は見ておられますか。三十四年度の予算に、そういうことの予算はどれくらい考えておられますか。使う金はどれくらいありますか、お伺いしたい。
  38. 板垣修

    政府委員板垣修君) まあ、この問題に限らず、日韓交渉は、御承知のように、過去数年えんえんと続いたわけであります。思うような成果にはまだ至っておらないことは、非常に残念でございます。この交渉当事者といたしましては、もちろん韓国側はああいう、われわれから見ますれば、相当非合理な立場で主張して参っております。従って、われわれとしては、見通しその他について甘いということは、われわれ自身も知っておりながら、しかし、何か一縷の望みをつなぎながら、今日まで何とかしてこの交渉を妥結することに専念をして参ったのであります。また、その交渉を妥結しなければ、この日韓間に付随しておりますいろいろな問題は、抜本的に解決しないのであります。従って、この日韓交渉そのものを妥結することを第一義として考えております。しかし、見通しにつきましては、遺憾ながら早急な解決を見ず、数年を経ておる。最近の情勢を見ましても、一年を過ぎたという実情でございます。しかしながら、日韓交渉を離れまして、その他の手段に訴えるということは常に最後の手段であります。最後の手段という、何か千分の一なり、万分の一にも何らか期待が残っておる間はやっぱりその方に努力をすべきであって、踏み切るのはいつでもできます。従って、われわれはそういう態度をもって今日まで進んで参ったわけであります。今日の事態は、非常に一時から比べますれば相当な事態になりましたが、なおまだ残っておるか残っておらないか、この点は今後数日間の韓国側の出方とも関係いたしますが、そういう情勢を見まして処置をしておそくはないと思います。しかし、ただいま御質問の方向につきましては、すでにわれわれとしましては、考えとしては完全にきまっております。  予算の点につきましては御心配はありません。
  39. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 一点だけ伺いたいと思いますが、日韓交渉、すなわち、外交上の問題が長く続いて非常に困難な問題であることは、われわれもよく承知をいたしております。そこで、これらの複雑な問題の中で、政府は十三日に閣議決定在日朝鮮人のうち北鮮の帰還希望者を送還しようということの了解ができましたことは、これは一面、人道的見地から当然の処置であると思うのでありますが、この場合に、すでに百五十三名という未帰還者がおられます、抑留されておりまする人たちがおられまするが、この問題を、北鮮に帰すというときに、釜山で抑留され、すでに無期抑留に近いような、三年、四年の長年月抑留されておるという人たちもおられる。そういう人たちのことを当然考えに入れてこの問題を決定されなければならないはずだと私は思います。ただいま伺いますと、そういう問題も考えておる、そうしてその焦点が私は非常にぼけておると思うのでありますが、一体それを考えたというなら、どういうふうに考えておるのか。外交上の問題で、この席で発言ができないというのか、ただ考えておるが、向うの出方を四、五日待って、また、ここ数日間の様子を見てでなければ発表できないというのか、要するにこの話し合いというものを、日韓間の話し合いが全般的につかなければこの問題を取り上げないということは、私ははなはだ手落ちな、つまり一方的な考え方だけに重点を置いて、この問題が北鮮の人たちを帰すということにおいて、日韓との交渉が容易にいかれるかもしれないという、一つの望みも持っておいでになったようでありますが、私はさようには考えておりません、これは考え方の相違でありますが。その方針を、しかも、国際的な人道問題としての立場からこれを考える。しかも、この問題だけを切り離して、百五十三名の人たちは別に切り離して考えるという考え方はございませんか。
  40. 板垣修

    政府委員板垣修君) そういう考え方も確かにございます。従来、私どもとしても過去一年間その点をめぐって議論をしておりました。要するに北鮮帰還問題を決定するにつきまして、今日まで一年以上たちまして、方針は初めから変らないわけでございますが、この決定があったということは、やはりこの釜山にいる日本人漁夫の問題とも関連をしておりますために、決定がなかなかできなかったという事情もあるのでありますから、当然私どもとしては、釜山にいる日本人漁夫のこの問題を優先的に考えたわけでございます。ただこの措置としましては、先ほどからしばしば御説明しておりますように、先に国際赤十字に訴えてしまうという切り札を出してしまっては、日韓間で話をする道をみずからこちらから閉ずるわけでありますから、その点につきましては、交渉当事者におまかせ願いたいということを御説明申し上げておるわけであります。この点が三日、四日と言うことは語弊がありますが、この点はわかりませんが、日韓交渉を片づけなければ、この問題は取り上げないということは毛頭考えていない次第でございます。
  41. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 私はこう思うのですが、この問題は日韓交渉外交によらなければ解決がつかない、この問題も含めたことで解決するということのようでありますが、かくのごとき不祥事をまず第一に未然に防ぐという手段が必要なのであります。未然に防ぐ手段としましては、先ほど水産庁あるいは海上保安庁あたりからお話しになりました問題、これは私の若干要望も含まれまするけれども、外交上の手段によって話し合いをするというのでありまするけれども、いわゆる李ライン内に出漁をいたしまする人たちが安全操業ができまするような無線の、つまり整備あるいはまた監視船巡視船の増強、こういうことをやりますることは当然であります。また、抑留家族に対しまして手厚い保護をなお一そうする必要があることも認めております。これらは各委員から要望されたことでございまして、当然政府当局においても考えられることだとは思うのでございますが、これらに対しましても、単に言葉のあやだけでなしに、現実に手厚い保護をする、あるいは監視船巡視船の増強をするということが必要なことだとは思うのでありますが、そういう問題でなしに、北鮮の人たちを帰すということが人道上の立場に立ってやったというのならば、人道上の立場に立ってこれだけを切り離して、たとえば、具体的に申しましょう。赤十字の国際委員会の仲介を要請する、これも一つ方法だろうと思いますが、私はしろうとでよくわかりませんけれども、そういう国際的な機関に訴えてこれだけを別に切り離してやるということは、われわれ国民としては当然多年要望いたしているのであります。しかし、総合的に解決をすることができるかどうかということのめどが完全に立っているものならいざ知らず、今の一縷の望みというか、全く望みが果てたような外観をいたしております日韓交渉なり、あるいはここ数日来の韓国の発表等を考えたときに、これは少くとも当然すみやかに切り離して、国際関係に訴えて、そうして早くこれだけを切り離して処置をするということが、北鮮人道上の問題で帰すということと相関連する問題ではないかと私は思うのです。重ねて御意見を伺います。
  42. 板垣修

    政府委員板垣修君) 実は、私どもも今お話と大体似たような考え方でございます。ただ、今全然切り離してやるか、あとでやるかという点につきましては、もう少しわれわれとしまして情勢判断を持ちたい。しかし、そのもう少しというのも、二カ月や三カ月という問題じゃございません。大体、一縷の望みとさっきも申しましたが、現在の情勢判断については、まあお話の趣旨とほとんど私ども同じような考え方でございますけれども、まだ韓国側日韓交渉を打ち切っているわけでもございません。しかし、それは私が、日韓交渉を打ち切っていないから全般に話し合うというのじゃございませんで、少くとも抑留者釈放の問題だけでも切り離して話し合いをする道があるかもしれず、従って、その点をもう少し見きわめたいということだけのことでございまして、大勢の判断は、別に私ども変りはございません。
  43. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 もう一つ簡単に伺いますが、日韓交渉は打ち切ったという宣言はされないが、現実の問題としては、打ち切ったとわれわれ国民は印象を深めておりますが、その点。  それから先ほどこれを切り離すということについては考えているが、しかし、それを今決定する時期ではないということのようであったと思いますが、北鮮に送還をいたしまする北鮮の人たちの輸送の方法等につきましては、国際赤十字に依頼をしたということも新聞で見ますが、これはまだ依頼はしてはおりませんか、しましたか、あるいはする意思か、そういうことに関連をしたと同時に、日本の百五十三名という者の送還を依頼するという方法はできませんか。
  44. 板垣修

    政府委員板垣修君) 政府からもすでに日本赤十字を通じまして国際赤十字に本問題の解決に関するあっせんを正式に依頼をしております。近いうちに日赤から人を派遣いたしまして、赤十字国際委員会と今の配船の問題もございますが、さらに、自由意思の確認の問題とか、その他いろいろな問題につきまして打ち合せを開始する考え方になっております。それと同時に依頼するかどうかという点が、先ほどから申し上げましたちょっとタイミングの問題があるわけでございますが、それが非常に間があるものと私は考えております。
  45. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 ここは外交委員会でないのですし、われわれもしろうとですから、たくさんなことをお聞きしようとは思いませんが、ただ皆さんの質問に対するアジア局長のお答えを聞くと、外交担当の当時者としては微妙な関係があるでしょうから、そう言わざるを得ない段階でもあろうということはよくわかるけれども、国民の立場で聞くと非常に冷たく聞える。それは事務的にはまとまりがあって、それはそれなりでよかろうとは考えますけれども、少くとも皆さんがおっしゃっておられるように、人道上、在日朝鮮人北鮮帰国をぜひやってあげたいという、そういう立場から、日本政府としてその態度をきめて、きめる限りにおいては、従来の韓国全面会談の経緯等からいい、また向うの国内情勢からいって、反撃してくるであろうことも、これは常識上だれもわかっておることで、わかっておることでありながら、なおかつ、北鮮帰還を押し切ってやるという政府の強い決意があって、この了解事項となるというためには、この日韓全面会談は最悪の事態においてはまた打ち切られるのであろう等々、幾多の諸条件も十分部内で討議されたことだろうと思う。その場合に、この百五十三人の方々の帰国ということについては、前々から交渉しておって、なお、らちがあかない、まして、こういう事態において情勢の変化からほとんど不可能になる、これぐらいの判断は外交当局としてあったろうと思う。そういうことはないのだということであるなら、これはまことにまた冷たいと言わざるを得ない。そこで、もしも百五十三人の帰国がおくれるであろうということになれば、国民の立場に立てば、北鮮帰還問題が起らなかったら、そして全面会談が誠意が尽されていくということであれば、自分の家族たちは、あるいはあすにも帰ってこれるようになるかもしらぬ、この春までには帰ってくるような話になるかもしらぬ、そういう期待を持っておったものが、このことをもってもう道が閉ざされる、いつの日かこの帰国が許されるかわからぬという暗たんたる、やはり泣くに泣けない気持というものは、その関係者にあると思うのです。そういう方々の立場というものは、われわれ国民として、すなおにそうであろうと思う。大きな人道的な立場北鮮帰還ということを一方やるようなそういう非常にけだかい行為をあえて決意した日本政府が、反面、日本国民百五十三人の帰還が、ここ一、二カ月で話がつけば帰ってきたものが、もうこのことがいつのことになるのか全然見通しがなくなったというような形にある人たちに、日本政府としては、深い同情と、その犠牲に対していろいろ心やりがあってしかるべきものだと私は思うのです。たとえば、これもアジア局長関係したことでございましょうが、日中関係の貿易等の問題にからんで、中国において見本市が開かれた。しかし、日本政府が敵視政策だということで、向うからこれがけられて、一切の費用負担というようなものが日本業者において負担される、こういう事態になったとき、彼らの運動に対して、あなたたち自身も当時の内閣がちゃんと予算上その損失を補てんするような措置をとったのですから、私は一点にしぼって、今後の見通しいかんとかなんとかいうことはお尋ねしません。ここ四、五日のことだということは、ただ形式だけのことであって、見通しとしては、これは全面会談は打ち切られるであろうということは、もうだれでもわかり切ったことなんです。わかり切ったことです。あなたは国会答弁としてそう言わざるを得ないという事情はわかるけれども、そういう事態においてこれはどなたかもお尋ねしたと思いますが、農林当局はそういうことになれば、この百五十三人はこうなるぞというような点で、外務当局との間でどれだけの下相談をし、この百五十三人の家族援護等に対してどういうふうにやっていこうという、そういう下話をせられて、そうしてこの一種の犠牲ですから、この方々がいよいよもって取り残されているということは一つの犠牲なんですから、どうしようとしておられたのか、その対案というものをお聞かせ願いたい。さっきから西村さんは、従来手厚くやっている、見舞金を出しているというようなことを言っておられましたが、従来のその措置とこの方々に対する措置とは、国の方針決定から当然引き起ってきた問題ですから、皆さん、アジア局長を中心としていかほど今後努力しても、その努力ができない、道が閉ざされるということが明らかなのですから、そういう国策的なものの犠牲であるこういう方々に対して、具体的にどういう援護措置と、どういう対策を立てようとしたのか、そういう協議が十分なされもしないで、高らかに人道上ということだけ言うということであれば、これは非常にかたわなことだと思うのです。私たちは北鮮帰還の問題については、もう政府決定については、日ごろの岸内閣に似合わないりっぱなことをおやりになったと、その決断に敬意を表する。しかし、その反面に立った百五十三人のこういう家族の方々のことは、なお当然のこととして、具体的にこの関係者に日本政府が了解を願うという形において、しっかりした対案を持つべきであったろうと思う。むろん私は持っているものと信ずる。そういう点をお聞かせ願いたい。その点だけしぼってお尋ねします。
  46. 板垣修

    政府委員板垣修君) ただいまの私の釜山抑留漁夫の帰還問題についての答弁が、非常に冷たいというお話でありましたが、これはもう全く逆であります。私どもはいかにして最も有効な、時間的にもう二、三カ月で帰るということは考えられませんけれども、少くとも比較的早い時期に帰してもらうかというためには、どういう方法をとるのが、どういう時期でやっていくのが一番最善の方法であろうかということを考えてやっているわけであります。しかし、この点は、外交交渉の、日韓交渉の今後の見通しとか、いろいろな情勢判断を詳しく申し上げないと、おわかりにならない点も確かにあるかもしれません。その点をこの国会の席上で申し上げることはできません。しかし、先ほどから御意見を伺いますると、大体、日韓交渉はだめであると、従って、両国間で話し合いをする道はないという御判断でありまするし、従って、最後の手段である国際機関に依頼するという方法をとるべしという御意見は多数のようであります。私ども情勢判断としても、そうなのであります。しかしながら、私ども外交当事者としては、先般向うの柳公使が山田次官のところへ参りまして、もう日韓交渉はこれで中断する、あるいは打ち切るということは言っておりました。しかしながら、翌日沢田代表に対して正式に打ち切りの通告をするということを言っておったのが、まだしておりません。急遽本国へ帰っているわけであります。従って、われわれ事務当局としましては、打ち切られたのかどうか判断し得ないわけであります。常識としましては、大体見込みがないということは、われわれも同様な疑義を持っております。しかし、私が先ほど少しこまかいような議論を申し上げたわけであります。考え方としては、もうほとんど私ども変りはございませんし、その点につきまして、われわれとしましては、方針もきまっておりますし、やり方もきまっているような次第なのでありますからして、御承知のような方向で進むことになろうということだけを申し上げておきます。
  47. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 釜山に抑留されております漁民の帰還の問題につきましては、これはわれわれとしましても最大の関心一つでございます。これがいかに実現するかということで、昨年からずっと続いておりました日韓会談の運び方の上におきましても、それは絶えず私どもとしては念頭を去らない問題でありまして、外務当局とその点につきましては緊密な連絡をとりつつやって参りました。もちろん、今回の問題につきましても、事前に外務当局から十分な御連絡がありました。私どもとしても諸般の情勢考えまして、ただ、私、あるいは個人と申しては語弊がありますが、実は、昨年も韓国代表とごく非公式な場合に、私もそのときいろいろな話のうちに、お前たちも大乗的見地であの漁民を帰してもらいたいということを言ったときも、それをやりますと、実は李承晩ラインをみずから否定するようなことになりますからということを、私ちょっと会話の途中において伺いました。これは多少、ちょっと話はそれますかもしれませんが、韓国側としまして、この北鮮の問題が起きなければ、あるいは近い、すぐに帰還が実現するというような望みがあれば、それはまたおのずから別でございます。考えようによりましては、別段この北鮮の問題が、特に帰還の問題について、絶望的なものにもっていくというようなことは毛頭ないのじゃないかというふうにも考えられる、こう思っております。いずれにしましても、私どもとしまして、百五十三名の漁民の方あるいは留守家族の方というものの苦しさというものは、十分肝に銘じておりますので、その点につきましては、いろいろ私どもとしましても、外務当局と御相談した上で、今回の外務当局の措置と政府の措置ということになったわけです。
  48. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 今のアジア局長の御答弁の趣旨と西村さんの御答弁の趣旨とでは、見通しの点において非常に食い違いがある。アジア局長としては、非常な困難な事態になるかもしらぬということは十分予測しつつ、北鮮帰還問題を決定し、そうして今後の推移を見て、実際上はもう会談が途絶するということになるかもしらぬが、まだはっきりしたところにはなっていないという程度の話、ところが、西村さんのは、外務省とのいろいろな打ち合せ、交渉等の過程においては、北鮮帰還問題がこの抑留者の引き揚げの交渉にそう影響がないような、そういう見通しであったやのような、そういう甘い見通しであったというようなことをおっしゃるなら、私は重ねてお尋ねしたい。
  49. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 私の実は今の答弁がはなはだ言葉が足らなかったと思います。これは私率直に考え体して、私の先ほど申し上げた意味は、この北鮮問題が起らなくても非常に見通しは暗い、こういう意味で申し上げた意味でございまして、もちろんアジア局長の言われるように、もし日韓会談全面会談というものがしり切れトンボになりますと、これで中断しますと、それは唯一の道というものが閉ざされるという意味では、全く私も同様に考えておりまするけれども日韓会談が、従来のごとく李承晩ラインというものを根底にしつつ向うが主張する限りにおいて、なかなか日韓会談を継続しておっても、この問題は非常にそれ自体としては暗い、私はそういう意味で申し上げたつもりでおったわけであります。はなはだ言葉が足らなかったので誤解を生じたかもしれませんが。
  50. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それで、十分そういうような見通しも持っておられる、いよいよもって困った事態になるということについては、これは政府部内も一致した見解であったというようなふうに聞き取れる。いいですか、この日韓会談が途絶し、また途絶しなくても困難なのだから、途絶したらなおのこと抑留者の帰国問題については、もう話をする窓口がなくなれば、いよいよもって容易でない、そういうことが十分政府側としてもお考えになっておられたということであれば、人道上、北鮮帰還問題を決意した日本政府として、そういう事態になってしわの寄ってくるこの百五十三人の抑留者、家族その他に対して、どういうふうに皆さん方は了解を願い、がまんしてもらう、そういうあたたかい行政、思いやり、そういうものをお考えになっておったのか。政府側にどういうことなんですと、この当事者の方々に尋ねられた場合に、政府側としては、懇切丁寧な御答弁をもって、そうして安心もさせ、希望も持たせ、納得させるというお考えであったのか、この点をお伺いしたい。  それからそういうことの見通しが暗い、いよいよもってもう容易でないということになるであろうということさえも、押し切ってやろうときめた政府なんですから、従って、この百五十三人の関係家族に対しての援護対策はどうするのだということをおきめになっておられるのか、きめていません、これから検討します、これでは片方の方だけをとって大いに遂行するということのために、片面の方はほったらかしだということになるわけなんで、私はそういう行き届いた行政のないような、そんな国策なんというようなものは考えられない。いかに岸政府よろめいているといっても、そのぐらいのことはきちんとやって下さっていると思うので、援護対策を御披露願いたい。
  51. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 援護対策につきましては、こういう事態が悪化するということが十分予想される場合に、かりに従来援護対策を講じていない場合でも、もちろん政府としましては、そういうことは当然やるべきである。しかしながら、先ほどから申し上げましたように、私どもとしましては、諸般の他の援護対策との比というものと関連しましても、それと諸般の他のものと比較しまして、あるいは財政的な面からできるだけのことを今しておりますので、これは従来からの抑留漁民についても出しているのであります。これをやって参る。ただし、先ほどから申しましたように、あるいは留守家族の方は非常に不満の点もあるというふうには承わっております。私どもとしまして、もし現在の援護対策というものについて改善すべきものがあれば、その点につきましては改善して参りたい、こういうふうに考えております。
  52. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私は一つ、かりの例として、これは望ましい例ではありませんが、あえて例を申し上げますが、政府の措置のために、もう自分の夫は帰ってこない、もうここ一両年帰る見通しを失った、将来に希望が持てない、子供をかかえて援護、見舞金その他では暮していけない、そういうことで前途に希望を失って、もし不祥の事が起るような一家庭でもあったら、これは政府には責任がないと言えますか、それだけはっきりお尋ねしておきます。こういう政府の措置から、関係家族の中に将来に希望を失って不祥の事が起るというようなのがたった一つの家庭でも起ったということになったら、これは私たちやはり国民の立場で、国会に出てきておる者として、行政を監督する立場からいって非常に相済まぬという気持を持ちます。私は持ちます。政府はどうですか。そういうことのないように絶対いたします、という援護対策であるなら、西村さんおっしゃるようなそういう抽象的なことも、私はそのまますなおに受け取って、しっかりおやり下さいとお願いします。そうでないなら、今までやっておったことだとは言いながらも、それやこれや足りない部分があるというふうなことが熟慮検討されて、至急具体的に、やはり海上保安庁が警備の関係のマル秘対策を作ったりするのと同じに、真剣に水産庁当局も関係各省と相談せられて、具体的な対策を立てて、やはりこういう文書にしてわれわれにお示し願いたい。まず、前段のことについて、大丈夫です、という御答弁があるなら、私はもうあとはお尋ねしたい。
  53. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 今の小笠原委員の御質問は、私、あるいは多少はっきりしない点もありましたけれども、かりに、その留守家族に不祥の事が起った場合に、それは政府責任がないと言えるかという問題でございます。これは援護対策の問題じゃないと思います。その部分もあるかもしれませんけれども。必ずしもその起る現象というものが、あるいは抑留ということに基くものである、根本的にですね。そこで、私は当初ちょっと申し上げましたけれども、それじゃさかのぼって、李承晩ラインという国際法上認められないもののラインのあるのを日本が実力で排除できない、日本政府が。そこに根源はある。しからば、それと因果関係において、一体政府がそういうものについて責任を負うということ、これにつきまして、私は法律的にそこにはっきり今小笠原委員の指摘されたように、責任というふうになりますか、私はそこの専門じゃございませんけれども、これはまあいろいろ問題があると思います。ただし、私としましては、われわれといたしましては、できるだけ留守家族の方、あるいは抑留漁民の方が困窮の場面に遭遇しておりますそれに対しましては、できるだけのことをしたい。それで従来もやってきたわけでございます。なお足らない面がありますれば、その点についてはとくと考慮して参りたい、こういうことを申し上げたわけであります。  それからもう一つ、今後の事前の何と申しますか、事故の発生を防ぐ対策としまして、一つどういうことを……ちっともないじゃないかというお話でありますが、私どもとしましては、先ほどから申し上げましたように、小型漁船については、無線をつけることにつきまして、目下至急具体化するようにという事務的な折衝を進めております。それからわれわれの方といたしましても、監視船を従来六はい出しております。そして常時四はいあの辺をずっと回っております。この点につきましては、海上保安庁の方も増強しているからお前の方も増強しろということもあろうかと思いまするけれども、私の方としましては、全部船が大型であります関係上、今チャーターしておるわけでありまして、さらにこの際、チャーター船でやるのはいろんな問題が起った場合にいかがであろうか、従って、私の方としては、この際、海上保安庁の方にお願いしたいというようなことで、海上保安庁とは常時連絡をとりつつやっております。そういうふうに御了承を願います。
  54. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 じゃ、もうこれで質問をやめますが、私、アジア局長に冷たいということを言った。不満だということでしたが、西村さんの御答弁でも、アジア局長の御答弁でも、総体として私たち聞いて受ける感じは、右をしたなら左になるという結果がはっきりわかっておるような事態のことをやっておいて、そして、出てくることに対して、予想されることに対して、確信を持ってこれこれしかじかをやります、ということが言い得ないような、そういう点が私は関係者にとって冷たいというふうに受け取れるということを申し上げておる。たった百五十人ぐらいのものという感じは全然ないにしても、そういう感じに聞けば聞くほど受け取られる。弁明でなく、弁明がましいことでなくて、事こうなったらこうなります、こうならざるを得ません、従って、残念ながら手の尽す限りにおいて、将来の見通しはこうこうで暗いのです、ですから、その間、われわれとしては、こうこうやっていきたいし、こういうことで留守家族の皆さん方もがまんして、しんぼうしてもらいたいと、やっぱり責任を持って積極的にものが言えるだけの裏打ちがあってしかるべきだ、そういう点を私は遺憾に思っておるんですよ。それは、やっぱり政治は思いやりがなくちゃならぬと思うんです。なに、従来も援護やってきたんだから、従来の通りの援護をやります、これでは言葉としてだけでも、関係当事者はあきたらないものがあるだろうと思うんです、こんなことがなければあるいはという期待があったんですからね。その期待がまっこうから粉砕されてしまった現状というものがあまりはっきりしておるのですから。そういう中で私は、局長や西村さんにお尋ねする限りでは、それ以上の答弁がないのは当然かもしれません。しかし、これは私は、政府そのものにもっとお尋ねしたいと思う。政務次官も、きょうは低姿勢でじっとしておりますから、積極的な発言がないのだと思う。私は関係議員が、ぜひ農林大臣なり外務大臣を呼んで、政府責任ある措置というものについて、明快に、各種の対策を交えて善処される方法について御説明になるような機会を作っていただくことを要望します。単に事務的な答弁あるいは処理、こういうことだけでは、私は思いやりがないということを指摘しておきたいんです。それで西村さん、そうすると援護対策上は万般の措置が講じられていくのだ、そういうようなことが、生活苦という、そういう原因を引き起すということはおそらくないんだというようなことで、私たちは安心していいわけですね。  それから、あなたは、さっきの答弁の中で、抑留という事態から起ったのかどうか、不祥なことがといったっていろいろの考え方があるというようなことや、それが国の責任に、どだい拿捕そのものがなるのかならぬのかというようなことまで言うたが、ああいうことを言われれば言われるほど、私は逆に冷たいという感じを持つ。日本政府が、日本人である者の生命、財産を正常な状態において守るということは、これは大きなる義務ですよ。これは国民のまた憲法上の権利ですよ。だから、朝鮮海峡において、李承晩ラインはあなたたち認めないと言っておるのですから、認めない限りにおいての操業は正常な操業といわざるを得ない。しかも、海上保安庁その他が指導して操業しておる。その中で拿捕される。これ自身は、これはやはり日本政府としての責任と感ずるからこそ、アジア局長等がその不当性を鳴らして帰国促進のために奮闘しているんじゃないですか。だから、法律論はともかくとして、大局的には、これはやっぱり国の責任としていろいろな措置を講ぜられるということが正しい政治のあり方だと思う。そういう意味では、私はあなたたちが、抑留されている人たちに、国としていろいろな物資を供給したり、あるいはできる限りの措置をとろうとしておるのも、やはりその責任を感じておるからそういうことをやっておるのですよ。恩恵としてやっているということなら不届きなんです。そういう意味で、もう少し諸般の問題を全体的にこの際お考えになられて、私は外交交渉のこの行き詰まりという……韓国側のあの態度からすれば、当然起ってくる問題として、援護対策については十分な御研究を願ってやまない。もうそれだけにしておきます。
  55. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 私は法律的な面を申し上げましたもので、多少誤解を招いたと思います。私は、大きい意味の、先ほど小笠原委員責任はどうだと言われますので、その法律的なことだけを申し上げた。もちろん政府としまして、国民を保護するということは、十分大きなあれでございます。それだからこそ、いろいろな対策も講じ、あるいは見舞金等もしているわけであります。ただ、それともう一つ、私が先ほど申し上げましたのは、この問題は、やはり見舞金の額を幾ら多くしても留守家族の方なりが助かる問題じゃない大きな基本的な問題を含んでいるのだ。そこには、一刻も早くやはり抑留漁民の帰還、それから今後においてこういう事件が発生しないように抜本的な解決に一歩も早く近づくということが必要である、こう思っている次第であります。もちろん、先ほど申し上げました現在の援護措置が、もう万全のものであるというふうに私は申し上げることはできませんけれども、いろいろな事情から、できるだけのことはいたしておると思っておりますが、なおこれにつきましては、私どもで十分また検討して参りたい、こういうふうには考えております。
  56. 清澤俊英

    清澤俊英君 わしね、もう大体結論も出たと思いますので、資料を要求しておきます。大体の、西村さんの救援の範囲においては、まあ大体というようなお考えも非常に多いようですけれども、陳情書を見ますと、一家の首長を失った私たち留守家族の悲嘆と困窮はその極に達し、生きる望みを失っております。非常に悲壮な文字であります。だから適当な救援はしてないと思う。してあるかないかは金額の問題だと思いますので、従いまして現在の救援の実情並びに救援金等の詳細な一つ資料を提出していただきたい。  なお、できまするならば、これは政務次官に、もしこれで不十分であるなら対策を立てる、もちろん予算の問題もつきますので、そういう点で要綱のようなものができますならば、要綱までなくても、目標がつきまするならば、それらも一緒につけてちょうだいしたい。その結果を見まして、農林大臣、場合によりましたら総理大臣、大蔵大臣等から、出席を願ってこの資料に従って検討したい、こう思いますので、その点は委員長から一つその際は十分な御努力をお願いしたい。資料を見た上でなければ、やるかやらぬかこれはわかりません。ということは、私は法律に従って、現在救援の範囲がこうなんだというので、非常に冷遇せられる場合が多いと思うのだ。ここにも一ぺん、水産の問題で、インドネシアにおいて、日本のたまたま室戸岬の漁船が、インドネシアの漂流船をつかまえた。そこで、これの処置について外務省へどういうふうな処置をしたらよかろう、こういう伺いの無電を打ちましたところ、何々の港に入れと、指示せられた通り入りますと抑留せられた。えさは全部腐ってしまう、数日間の抑留をやって、もうほとんどその後の操業はできないというような非常に困窮な立場に立って、しばしばここへ陳情に来ました。だが、現在の日本の法律としては、そういうものを擁護する方法はないんだから、何とかして融資くらいしてやっていこうくらいの話で、うやむやのうちにけりがついてしまった。これでは私は全く問題が、法律に縛られて国民を放置する、こういう形が残るのではないかと思う。実際、入り用だったら法律なんて作ればいいのです。  それから、私どもはこれを申し上げまするならば、場合によりましたら、この資料に従ってわれわれが納得せられぬものなら、もちろん自由党も賛成せられぬだろうと思う、自由党の委員の人たちも議員立法でも何でも一つ出して、完全な一つ救援ができるような方法考えてみたいと思います。従いまして、出す資料は詳細をきわめたものをちょうだいしたいと思います。
  57. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) ただいま要求の資料よろしゅうございますね。
  58. 千田正

    千田正君 一点、時間もありませんから最終的に外務省にお伺いしておきます。これは重大な問題ですからよくお答え願います。あなたはお答えできないかもしれません。というのは、さっき来のお話で、大体外務省考え方はわかりましたが、日韓会談が再開されるだろう、あるいは韓国との問題は何とかよりを戻して解決しなければならぬ、何百分の一かの可能性かないかもしれませんけれども、それを望んでじっとこらえているんだというのが外務省考え方のようですが、今後韓国側がおそらく再び日本との会談を要求してくる、あるいは日本の要請によって応ずるという場合に、最初に持ち出す問題は、この問題が出てくるだろうと、私のはなはだ杞憂かもしれませんが予想されるのです。ということは、北鮮への帰還をやめてくれ、そのかわり日本の漁師は帰そうじゃないか、日本の漁師は釈放するが、その条件として北鮮への帰還は停止してくれというような問題を、日韓会談の再開の劈頭にそういう問題を掲げてきた場合に、日本政府はどう考えるか、外務省はどう考えるか、これが私は重大な問題として現在はなはだ杞憂を持っております。こういう問題が起きてきた場合において、外務省の心がまえはどうなんですか。
  59. 板垣修

    政府委員板垣修君) この自由意思による北鮮帰還問題は、従来の日本政府の基調として、これは完全なる人道問題であるから、個人の自由問題であるから、政治問題なり日韓交渉と切り離して処理すべきであると主張しております。これが今度方針として決定されたのであります。片や釜山におきまする日本人漁夫の釈放問題、これは完全なる人道問題でございまして、今後のわれわれの立場といたしましては、両方とも人道問題といたしまして、政治問題なり日韓交渉とは切り離して措置せられるべきであるという主張を変えません。従って今後そういう申し出が、あるいは日韓交渉再開の条件として持ち出されたとしても、私ども人道問題を、政治問題なり両国間の交渉のかけ引きにするということは受け入れられないという態度を持って進む方針でございます。
  60. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 本件は非常にデリケートな問題を含んでおります。北鮮帰還の問題を契機といたしまして、日韓会談の将来についても危惧する点が非常に多くなって参っておるのでありまして、ただいま本委員会の各委員が質疑を重ねられたところは、これは日本国民の声として政府当局は聞いていただきたいと存じます。従いまして今後の推移もございますが、十分慎重に検討せられまして、この問題に善処せられんことを私から要望いたしまして、本日は、この程度で本問題を打ち切ります。  これにて休憩いたします。    午後一時十一分休憩    ―――――・―――――    午後二時五十三分開会
  61. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 委員会を再開いたします。  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣提出、予備審査)を議題にいたします。  この法律案につきましては、去る二月五日の委員会において提案理由説明を聞いたのでありますが、ただいまから予備審査を行うことにいたします。まず補足説明を求めます。
  62. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) ただいま議題となっておりまする農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律の提案趣旨につきましては、前回御説明を申し上げた通りでございますが、さらに補足をして御説明をいたしますと、今回の改正点は二点ございまして、第一は資本金の増額でございます。現在の農林公庫の資本金は六百二十六億七百万円でございまするが、昭和三十四年度におきまして、一般会計から七億円、産業投資特別会計から七十億円を新たに出資をいたすことと相なっておるわけでございます。従いまして、この両者合せまして七十七億円が新たに公庫の資本金に加わるわけでございます。その点に関しまして、現在の六百二十六億七百万円を七百三億七百万円に改めるわけでございます。  第二点は、造林に必要な資金の貸付条件の変更をいたすわけでございます。造林につきましては、その事業の性質から考えまして、さらに公庫融資の条件を現行のものよりも緩和する必要があると考えましたので、現行の貸付条件は法律の別表に定めてありまするように、利率の最高は年七分、償還期限が二十年、据置期間が五年と相なっておるのでございますが、これを改めまして、利率の最高は現行通り年七分、償還期限が十五年、据置期間が二十年と、据置期間を大幅に延長いたすわけでございます。そのために法律の別表を改正いたすわけでございます。  以上の二点が今回の改正点でございます。
  63. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) ただいまから審査に入ります。まず質疑を行います。御質疑の向きは御発言を願います。
  64. 田中茂穂

    田中茂穂君 局長にお伺いいたしたいと思いますが、昨年の公庫法の改正で、たしか全国に五カ所の支店を設置された法律改正をお出しになって、すでに支店が業務を始めてから約半年くらいになるんじゃないかというふうに考えておるわけですが、その支店設置の目的として債権の保全管理を円滑にやるということと、貸し出しの促進をはかるんだと、こういう理由で初めて公庫の支店を設置されたわけでございますが、そこでお伺いいたしたいことは、支店設置されて以来一年もたっておりませんけれども、その目的であった債権の保全管理並びに貸し出しというものは、現状において支店を設置されなかった当時から比較しまして、業務的にそれらの目的に沿うような方向に進んでおるかどうかということを、まず最初にお伺いいたしたいと思います。
  65. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 昨年の国会におきまして、法律の改正を御審議いただきまして、三十三年度から公庫の支店設置をいたしたのでございます。支店は東京における営業部の新設、それから札幌、福岡、仙台の三支店を設置をいたしまして、昨年の秋にそれぞれ業務開始をいたしたわけでございます。業務開始後は支店設置に伴いまして、当初計画をいたしました考え方に基きまして、それぞれ支店において、従来中金その他に委託をしておりました債権の管理、またみずから直接貸しを行いますものにつきましては直接貸しをいたしますように業務の運営を始めたわけでございます。まだ支店設置後日数も浅うございまするので、それぞれの実績等につきまして計数的に御説明を申し上げるまでの用意が整っておりません。当初意図いたしましたような方向によりまして、支店の業務が円滑に運営されまするように、私どもといたしましても、公庫当局を指導いたしておるような状態でございます。
  66. 田中茂穂

    田中茂穂君 たしかその支店設置に伴う法律改正の、委員会で可決するときに、付帯決議がついておったと思うのでありますが、その付帯決議の内容は、農林金融体系が支店設置によって混乱を起すようなことのないように、まあ十分留意すべきである、特に農林中央金庫が従来行なっておった長中期的な貸付業務というものも、相当公庫の方に移る傾向にあるので、その辺の農林中央金庫の貸出業務と重複にならないように、十分調整をすべきである、それがまず第一点。  それと第二点として、現在の農林金融の体系というものが、再検討すべき時期に来ておるのじゃないか、これらについて早急に十分審議をして、検討をされて、そして現状に即する農林金融体系というものを再確立すべきである、こういう意味の付帯決議がついておったと私は記憶いたしておるのでありますが、これらについて、その後農林省としてはどのようなこの付帯決議に対する措置をおとりになっておられるか、その点についてお伺いいたしたいと思います。
  67. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 公庫の支店設置に伴いまして、従来農林中金に委託をいたしておりました業務との調整につきましては、中金当局と農林公庫との間で、緊密に連絡をとりまして、相互に話し合いをいたしました結果、それぞれ両当事者十分なる了解のもとに業務の承継をいたしております。従いまして、この支店設置に伴いまする両金融機関の間の業務の調整につきましては、目下のところ、特別の支障なく進行いたしておるわけであります。  次に、公庫法改正の際、付帯決議としておきめをいただきました問題につきましては、昨年の夏以来、農林省の内部機構といたしまして、農林漁業金融協議会を設けて検討にかかって参っておる次第でございます。それぞれの関係の専門の方々に御参加をいただきまして、昨年の八月以来、相当回数を重ねまして、検討を進めて参ったわけでございます。現在の各種農林金融の実態の分析から始めまして、今後の系統金融、制度金融等を通じましての農林金融のあり方等につきましてしさいに検討を進めて参ったのでございまして、ほぼ大筋の考え方と申しますか、方向につきましては、昨年の暮れに大体の中間的な考え方の取りまとめをいたして参ったわけでございます。ただ一方、現在の農林金融の機構と申しますか、制度に関しまして、さらに検討を要する点が残っております。その問題を今日なお引き続き検討を続けておりますので、そちらの方の問題につきましてもある程度の方向が出て参りますれば、両者取りまとめて適当な機会に具体的に御報告を申し上げたいと、さように考えております。
  68. 田中茂穂

    田中茂穂君 ただいまのお答えで、大体の農林省のその後の御検討されました結果についての方向というものも承わったわけでありますが、そこで重ねてお伺いいたしたいことは、御承知のように、農林金融というものは非常に多岐にわたり、また、きわめてこれが農業振興の上からいいましても、また生産力を高めるという意味からいいましても、農林金融の問題はきわめて重大な内容を包含いたしているというふうに私ども考えておるわけでありますが、公庫の機関というものは、将来ますますでき得る限りの原資をふやして、そして長期にわたる資金で、しかも低利の資金を最も重視しなければならない金融機関であり、これは政府の農業政策の裏づけになるべきいわゆる資金の手当と申しますか、そういう機関として、農政の裏づけの金融機関として、今後ますます原資をふやしていってもらわなければならない、こういうふうに私ども考えております。でありまするから、従来農林中央金庫が融資する内容におきまして、そういった長期低利の政策の裏づけになる融資というものも、過去においては、現在も一部ございますが、業務の中に持っておったわけでございますが、この際もうはっきりと制度金融機関としての農林漁業金融公庫と、それと一面農林中央金庫の性格というものは、現状からしてもうすでに大きく内容を組合金融のいわゆる系統金融の頂点としての金融機関たるべき内容に切りかえていかなければならない、そういうふうに私は考えておるわけでございまして、現行農林中央金庫法が現状に即してきわめて矛盾した、また時代に沿わない、いわゆる農林省の、政府の厳重な監督のもとに置かれておる農林中央金庫というものは、早くこれは民主的な組合金融の頂点の金融機関として性格もかえていかなければならない、こういうふうに私ども考えておりまするし、またこの系統金融の関係あるものとしましても、全国的にほうはいとした農林中央金庫法の改正という問題を、過去十年あまりの間叫び続けてきたわけでございますが、この農林中央金庫法の改正につきましては、今御答弁の中にありましたように、昨年来農林省の中に設けられた農林漁業金融協議会の線でいろいろと御検討なさっておるということを承わって、非常に賛意を表するものでありますが、一応の私が聞くところによれば、結論めいたところまで一応の話し合いができたというふうに承わっておりまするので、それらについてもっと具体的に局長から承わり、この国会に提案するところまで私どもは持っていっていただきたいと思うのです。また、この農林漁業金融協議会の御意見としても、ぜひともこの国会に提案せしめたい、こういう御意向のようであるにもお聞きいたしておるのでありますが、その見通し等につきまして、またどういう、もしこの国会に提案できない事情があるのであれば、その事情もお聞かせ願って、さらにお尋ねをいたしたいと思います。
  69. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 農林漁業金融の中枢的な機関でありまする農林中央金庫の今後のあり方等の問題につきましては、ただいま御質問のあった通りでございまして、過般来、団体側及び農林省側でもともに検討を進めておるわけであります。昨年の暮れ以来、農協並びに森林、水産等の地方機関の関係者と数次この問題の検討会を重ねまして、一応の考え方と申しますか荒筋だけを御整理をなさったわけでありまして、その検討の材料を中心といたしまして、われわれも過般参加をいたしまして、役所と団体側と共通の場で自由に話し合いをする機会を持ったわけであります。その結果、団体側といたしましてもさらに検討をされまする部分が出て参りました。また言葉をかえて申し上げますれば、検討を要する面が残っておるわけであります。さらに団体側で検討を続けておられますのでございます。おそらく近い機会に、重ねて団体側のその後のまとまった考え方を政府の方に、農林省の方に御連絡をいただくものと思っておりまするが、その段階でその考え方に即しまして、さらにその考え方につきまして、政府におきましてもさらに検討をいたしまして、この問題の今後の扱い方をきめて参りたい。ただいまこの国会に提案するかどうかというようなお尋ねもございましたが、われわれといたしましては、目下のところではこの国会でどうというところまでまだ問題が進行いたしておりません。今後の検討の状況によりましてその間の取扱いもきめて参りたいと、さように考えております。
  70. 田中茂穂

    田中茂穂君 この国会に提案するところまでまだ最終局の結論が出ていないやのお答えのようでありますが、私が聞いたところでは、大体団体側の意見としては、もう結論は出しておるのだ、それを農林省の方で受け入れるにまだ若干問題があるようなんで、要は農林省の考え一つなんだ――この農林中央金庫はあらゆる金融機関の現状からして、農林中央金庫だけが政府の干渉、強い干渉を受けておる金融機関でありまして、他の中小企業金融公庫にいたしましても、商工中金にいたしましても、そのような強い政府側の干渉というものはないわけなんです。そういった現在のまあ時代にそぐわない金融機関としてただ一つ残っておるのが農林中央金庫でありまするから、私が聞いたところでは、農林省の内部でこの農林中金の民主化に対して反対をしておられる向きがあるやにも聞いておりまするし、そういう抵抗によって今国会に提案することがおくれておる、このように私は聞いておるのでありますが、その点について、局長として責任のある一つ答弁を願って、もう結論は出ておるのだというふうに私は聞いておりますだけに、何がゆえにまだ提案するところまで参らないのか、率直にその辺の事情をお聞かせ願いたいと思います。
  71. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 結論が出ておるにかかわらず、農林省で事の取り運びを渋っておるというような御趣旨のように承わったのでありますが、これは前回の団体側及び農林省も加わりました検討会の経過等をお聞きいたしましても、なお実質的に考え方を整理いたさなければならない問題が重要なる点につきまして二、三残っておるわけでございます。その間の団体側の考え方の整理を今待っておるわけでございます。別にわれわれの方の考え方なり態度といたしまして、今国会に提案をしないとか、あるいはするとか、そういうことをまずきめて、この問題を扱っておるわけじゃございませんので、経過によりましてきわめて率直な気持でこの問題は今後処理して参りたい、さように考えております。
  72. 田中茂穂

    田中茂穂君 最後に、それでは重ねてその問題についてお伺いいたしたいと思いますが、農林省自体が現行農林中央金庫法が時代にそぐわないという点を率直にお認めになっておるとすれば、この国会にぜひとも改正法案を提案するという腹がありさえすれば一、二残っておる問題等も早急に解決できる問題だと私は考えるのですが、農林省自体が今国会に提案することを非常に気が進まないというようなことであるから、今のお答えのような現段階になっておるのだと私は思うのですが、どうか一つ民主的な農林中央金庫法に改正するように、残された一、二の問題を早急に解決をすることに努力をされまして、まだ会期も相当長いわけでありますから、この国会にぜひとも改正法案を提案されるように一つお骨折りをお願いをいたし、また、政務次官も御同席でありますので、この点一つ十分御考慮願いまして促進方をお願い申し上げたいと思います。  それと、農林漁業金融公庫の支店設置の問題ですが、これは前々国会で五カ所設置されたわけでありますが、新年度において新しく支店を設置するお考えであるのか、設置するとすればどこにされようとするのか、その点お伺いいたしまして、私の質問を終ります。
  73. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 三十四年度におきましては、先般予算編成の際に種々検討を加えました結果、岡山及び京都の二支店を三十四年度に新設をいたしたいと思います。
  74. 田中茂穂

    田中茂穂君 今の要望に対して何か次官から一つ
  75. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 先ほど来の田中委員の御質疑の中にありました、農林中央金庫の法改正という方向につきましては、政府といたしましても、かねてからそれぞれ検討いたして参っておる次第でございます。また十分に成案を得る程度に至っておりませんが、御意見の通り、非常に重要な問題でもありまするし、また、じんぜん日を送らしている問題でもございませんので、従って、熱意をもって、できるだけ早期に、この問題についてはっきりした線を出せるようなことにいたしたい、こういうふうに考えております。
  76. 仲原善一

    ○仲原善一君 造林金融の問題でお伺いいたしたいと思うんです。造林の問題で、民有林と国有林と公有林と、大体三つに分けて考えます場合に、国有林の方は、国の遠大な計画と申しますか、非常に施業計画なんかもがっちりしてりっぱな運営をやっておられまするし、それから民有林の方も、相当造林は進んで、うまくいっているように思います。一番盲点になっておりますのが公有林であります。で、一番荒れておるのが、やはり公有林でございますが、今度の公庫法の改正で、公有林の造林というものについて特に御配慮が願ってあるかどうかということでございます。具体的に申しますと、従来だと、いわゆる市町村、地方の公共団体が造林する場合には、起債等によるほかにはなかったのでありますけれども、起債がなかなかそういう方面にできない。結局、金融面で非常に行き詰まっておったわけでございますが、今度の公庫法の改正によって、貸付の対象が市町村にできるかどうか。市町村が造林のための資金を借り受けて造林できるかどうか、この点を第一にお伺いいたしたいと存じます。
  77. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 林野庁の長官がお見えになりますので、詳しくは林野当局からお答えいただきますが、今回、造林関係の資金の裏づけをいたしましたこととも伴いまして、市町村の行いまする造林事業に対しては、公庫から融資をいたすことを考えております。
  78. 仲原善一

    ○仲原善一君 ただいまのお答えで、この公庫法の改正を伴わなくても、現在の法律なり規則で、市町村に貸付の対象として融資ができますか。
  79. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 私のお答えの仕方が不十分でございましたが、現行農林金融公庫法によりまして、市町村に造林資金を供給することはできると解釈をいたしております。
  80. 仲原善一

    ○仲原善一君 そこで、今度の七十七億の増額になっておりますけれども、この中には造林のための融資のワクがふえておりますか。
  81. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 造林資金につきましては、七億円を増額をいたしたわけでございますが、前年度の四億九千万円から十一億九千万円に三十四年度はいたしておるわけでございます。
  82. 仲原善一

    ○仲原善一君 貸付の条件が多少変ったようでございますが、今度の改正によって、林業経営と申しますか、そういうものの収支と、償還のやり方というものが、うまく調和しておるかどうか。たとえば、十五年の期限にして、据置期間二十年ということになっておるようでございますけれども、これは造林関係で、経営の面から見てうまくマッチしているかどうかと、そういう点をお伺いいたしたいと思います。
  83. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 今、林野庁から参りますから、ちょっとお待ち願います。
  84. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 その間に一つ。これは田中さんの御質問で大体了承したのでありますが、農村金融に関係して、農林漁業金融公庫と農林中金、この二つがあるのですね。そうして、これらの問題、それだけじゃありませんが、そういうものを含めた交通整理というものが最近研究されておると思うのですが、私は、たまたま十一日、二日に、九州で団体の大会がございまして参りましたときに、要望された事項がございますので、この機会にお願いを申し上げ、お尋ねをいたしたいと思うのでありますが、去年、五カ所支所ができまして、今年は、三十四年度は二カ所のようでございますが、これを各県に中金の支所がありまするように、支所を順次、年を追うて増加される御意思があるのかどうかということでございます。  それから、これらの資金が、私の承知いたしておりまするところによりますると、全部のものじゃございませんが、一部分、あるいは公庫の直接貸しをしない、直接、農林中金を経由して出していく手続の問題がございまして、地方の農林中金の支所を経由して、そうして、この農林中金に参る、それの資金の貸し出し等についての手続事務が、農林中金から公庫へかわっていく、こういう経過をたどっておるようでございます。そこで、その大会には、公庫は、農林漁業の生産力を維持増進せしめ、そうして、それのために必要な長期低利の資金を融通するということが目的であるのにもかかわらず、非常に手続が煩瑣である、そうして、中継所があるということにおいて、どうもそこの間の調節といいますか、非常に無責任といいますか、そこでちゃんと指示して直していけばいいものを、直接、また、そのまま送り出す、そうしてまた、訂正個所があるとかなんとかいうことで、農業にとっては、直接貸しで窓口が地方にあってすら、なかなか金を借りようという場合に、担保物件の少い農村には非常に困難なことであるのにもかかわりませず、それが中央へ送られてきて、しかも、農林中金を経由しなければ、農林金融公庫の金が使えないという、非常に複雑な手数を要するということが言われたのでありますが、そういうことについて、何かお考えがございますか。
  85. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 公庫の下部機構につきましては、目下のところは、ただいま計画をいたしておりまする各ブロック単位の支店を今後必要数増設をして参る、おそらく来年度に二カ所新設をいたしまして、三十五年度に、あと二カ所程度設置いたしますれば、現在のブロック単位での下部機構といたしましての支店の設置は終ると考えているわけでございます。ただ、ただいま御指摘がございましたような、いわゆる公庫業務の利用者の立場から見ました便宜から考えまして、公庫の下部機構をさらにこまかく整備すべきではないかという問題も確かにございます。また同時に、農林中金の方でもこの公庫業務を現在委託を受けてやっているわけでございますが、これを将来、農林中金の本来の業務との関係におきましてどういうふうに調整をして参るかということが、やはり一つの問題となっているわけでございます。従いましてこの問題は、利用者の便宜の問題と、公庫及び中金の能率と申しますか、いわゆる業務としての経済性の問題もあるわけでございまするので、これらを総合いたしまして、先ほど私がお答えいたしました農林金融協議会の、いわゆる農林漁業金融機構の問題としても取り上げられておりまする問題でございます。従いまして、そちらの方の検討とも並行いたしまして、さらに今後の公庫の下部機構の問題につきましては、われわれといたしましても検討してみたいと考えております。
  86. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 手続の問題をもっと簡素にするということには計画なり、意見なりありませんか。
  87. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 公庫の貸付業務につきましては、いろいろ複雑な手統を要するものもまだ一部残っているようでございます。公庫が業務開始をいたしまして以後の経過を繰ってみますると、相当その面につきましては改善を加えて参りました努力は見られるようでございまするが、なおできる限り可能な限度におきまして簡素にいたしますことはもちろん必要なことでございまするので、われわれの方でも、当局とともになお検討いたしてみたいと考えております。
  88. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 私はごく最近、現在もその問題にひっかかっているのでありますが、具体的なことは申し上げませんが、非常に貸し出す方と借りる方との考え方が、金を借りるということに―担保物件の少い農業、漁業、あるいは森林事業に貸しますることは慎重を要しますことだけは私も認めるのでありますが、中金を回っていきます関係のせいか、非常に手続がめんどいのですね。めんどいというよりも、めんどいのはほんとうだが、もっと親切さを持ってやってもらえるようなふうに、一つ特段の御配慮をお願い申し上げたい。できれば中金と公庫との関係の整理―交通整理といいますか、そういう点についても早急に実施を願いたい、こういうふうに思っております。  最後に、説明の中にもあったと思いますが、融資残高が千五百億あるということのようでございますが、この融資残高というものは―私はしろうとでよくわからないのですが、その意味と、それから実需要といいますか、要求額―地方から要求する金融の要求額というものと、それにこたえられる実際の資金額との比較というものがわかっておりましたら、一つ説明を願いたいと思いますが、ありませんか。
  89. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) ございます。融資残高と申しますのは、公庫が業務開始をいたしまして以来、累次貸付を進めて参りまして、現在公庫が貸付をいたしておりまする額の総計でございます。それが昭和三十三年十一月三十日現在で千三百七十二億と相なっておるわけでございます。これが千三百七十二億でございます。これと、現実の資金需要との関係はどういうことであるかというお尋ねでございますが、現実の資金需要というものは、これは計数的に把握をいたしますことが必ずしも簡単ではないわけでございまして、大体年度当初に各業種別に貸付の計画額が決定をいたしますと、その計画額によりまして、現地需要とにらみ合せながら、現実に消化をいたしておるわけでございます。従いまして現在の、目下のところ公庫が運営をいたしておりまする実情から見ますると、そう大きく現地の需要額と隔たっておるということはないと考えておるのでございまして、大体計画額に基きまして、それを年間、四半期ごとに消化をいたして参っておるような実情でございます。
  90. 仲原善一

    ○仲原善一君 林野庁、お見えになっておるようですから、先ほどの御質問を申し上げた点をかいつまんで申し上げますと、今度の貸付条件が、据置が二十年で、償還期限が十五年というふうな取りきめになっておるようでありますが、これが林業経営の上から見て、経営とマッチしたそういう年限の取りきめになっておるかどうかですね。たとえば間伐なんかが入ってきて、それの収入でだんだんペイしていくような形に、そういう点を考慮になっておるかどうか。具体的にいいますと、この十五年と二十年という期間、据置期間を設定された根拠ですね、そういうものがあれば御説明願いたいということです。
  91. 茅野一男

    説明員(茅野一男君) ただいまのお尋ねでございますが、実は従来の造林金融でいきますと、五年据置の、六年目から返還するというようなことになりますので、造林者は資金の融通を受けましても、収入の上らない六年目から順次返していくということになっておりまして、非常に借りかえだとか、そういうことによって、利率も上るというような状況もございまして、大へん融資が伸び悩んでおったわけでございます。造林の性格からいいますというと、大体最近は短伐期のものが大へんふえて参りましたので、二十年以降にはもうぼつぼつ間伐を進めるというような経営の仕組みになって参りますので、大体二十年以降になりますと、間伐収入が入って、ぼつぼつ借りた金を一部返していけるというのが実態でございます。そこで私ども前から、二十年の据置で十年償還くらいでございますと、非常に林業経営に適当した金融じゃないか、こういうような考えを持っておったのでございます。もちろん長ければ長いほどよろしいのでございまして、外国の例なんかでは、五十年というような長期の金融もやっておりますけれども、今の日本の財政状態では、三十年が大体常識の線じゃなかろうか、こういうことで、今度公庫法の改正をお願いしたわけでございます。これによりまして、私どもの見込みといたしましては、民有林の造林がずいぶん促進されるのじゃないか。特に公有林についても同じような措置をいたしますので、造林が推進されると、こう考えております。
  92. 仲原善一

    ○仲原善一君 先ほど経済局長お話して、何かまだ納得がいっていないのですけれども、現在この公庫の方で公有林の造林に貸付を従来やっておったかどうか。具体的に申しますと、市町村が公庫の金を借りて造林できる仕組みになっておったかどうか、そういうことを従来やっておったかどうかという点ですが、この点お伺いいたします。
  93. 茅野一男

    説明員(茅野一男君) これはいろいろ複雑な経過がございまして、農林漁業金融公庫で、正式に、まっすぐに町村に金融するというのはなかなかむずかしゅうございますけれども、いろいろな形で、実態的には多少公有林が農林漁業金融公庫の融資によって造林を行なっておるというような経緯はございます。ところが、それだけでは、森林組合の弱体のところが多うございまして、また法的にも完全な方法ではございませんので、なかなか公有林の造林が全面的には行われがたいということで、今回新たに自治庁の方で造林の起債を認めまして、別の方法でそういう公有林の造林については、積極的に造林を進めるということを承知されたわけでございます。今回の予算措置につきましても、一部民有林と同時に、公有林を正式に、まっすぐに農林漁業金融公庫で融資をするということになったわけであります。
  94. 仲原善一

    ○仲原善一君 ただいまのお話で大体わかりましたけれども、自治庁の方でも、市町村の、地方自治体の造林のための起債は認めるということになったのですか。それが一つと、もう一つは、公庫法で直接市町村に造林のために金融できるかどうかですね。それは法律改正を伴わないで、現行のままでできるかどうか。お話通りに、森林組合とか、何かそういうものを間接に使ってやるやり方はあろうと思いますけれども、簡明率直に、直接市町村が農林漁業金融公庫から金を借り受けて造林できるかどうか、その点明快に一つお願いいたします。
  95. 太田康二

    説明員(太田康二君) ただいまの御質問にお答えいたします。起債には、一般に広く公募するものと、それから公庫からたとえば市町村が金を借りた場合に、借金の証拠として証書を出す、そういう意味の起債があるわけでございまして、今回われわれの方の農林漁業金融公庫から貸し付ける場合の起債といいますのは、まさに公庫から幾ら借りたという意味の借金の証書としての起債、そういう意味で今お尋ねの起債は、後者の方の起債をさしておるわけでございます。  それから農林漁業金融公庫も市町村に貸せるかどうかという問題でございますが、現在の公庫法の十八条で、「林業、漁業若しくは塩業を営む者又はこれらの者の組織する法人」と、こう書いてあるわけでございますが、営利事業として林業を営むということにつきましては、地方公共団体が行うことを現行の地方自治法上、はっきり認めております。従いまして、公庫法十八条の「林業を営む者」という中には、当然地方公共団体が入るという解釈が法制局の方で確定いたしまして、現行法上、何ら改正を要せずして地方公共団体に公庫から金を貸せるということにはっきりいたしたわけでございます。
  96. 仲原善一

    ○仲原善一君 了解いたしました。
  97. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 他に御質問はございませんか。  ちょっと速記をやめて下さい。    〔速記中止〕
  98. 秋山俊一郎

    委員長秋山俊一郎君) 速記をつけて下さい。  この法律案は、ただいま御懇談の通り予備審査はこの程度とし、本付託の上は、事情に変りのない限り、直ちに討論、採決を行います。  本日は、これをもって散会いたします。    午後三時四十五分散会