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政府委員(藤井貞夫君) 先刻来、
政務次官からも御
説明を申し上げておるのでございますが、現在、地方団体の財務会計の制度につきましては、
一つは、自治法が根幹の
規定に相なっておりまして、第九章「財務一以下に、それぞれ相当詳細にわたって
規定をいたしておりますと同町に、自治法の施行令並びに施行規則に基きまして、様式その他について一応のことは
規定をいたしておるのであります。ただ本問題は、事柄の性質上、きわめて
技術的な
事項でございますることもございまして、戦後における地方制度の改正がございました際にも、実は、この点についてのわれわれの
研究も間に合わなかったというような点もございまして、実は、明治の市制、町村制あるいは府県制が踏襲をいたしておりました建前を、大体においてそのまま踏襲をしてきておるというのが現状でございます。もちろん、その後の制度改変に伴いまして、ある程度即応しなければならない面については、部分的な改正は加えてきておるのでありますが、骨子におきましては大体まあ変らずに今日まできておるわけでございます。問題は、事業団体とは異なりまして、地方公共団体につきましても、これは住民の租税負担ということをもって経理をなされていきまする公金の財務経理でございまするので、いやしくも、やっぱり誤まりのなきょうに期して参らなければならぬという根本的な建前がございます。現在、それでは、いろいろ言うけれども一応ちゃんと動いておるではないかという点でございます。なるほど、戦後におきましても、現在の建前でもってまずまずそう大過なく動いてきておることは事実でございますが、他面、やはり時代の変遷、あるいは制度改正に伴いまして、いろいろ具体的に問題点が起ってきておるのでございます。若干その点について具体的に触れていきたいと思いますが、まず
一つの例といたしましては、現在、地方の公営企業がございます。これは電車とかバス、あるいは水道、ガス事業等について適用されておるものでございまして、その根本には、地方公営企業法がございますが、これらにつきましては、御
承知のように、民間企業におきまする発生主義の経理方式、いわゆる複式簿記の制度が採用をせられておるのでありますが、地方公共団体の会計一般につきましては、そのような方法は認められておらないのであります。一般の制度について全部複式簿記を採用するということは、私もこれは行き過ぎではないか、また、その必要もないのではないかと思いますが、たとえば、具体的に申しますれば、市町村が農業災害補償法に基く共済事業というものを実施をいたしまする場合に、農業共済組合がとっておりますると同様に、市町村におきましても、複式簿記の制度を採用いたしますることが、事業の性質上、それぞれ災害が発生したそのつどに、いろいろ給付原因その他が発生いたして参りまするので、事業の性質上必要ではないか。しかし、現行法上、そのような建前がございません。制度上認めておりませんので、事務処理上につきましても支障を来たしているというような面がございます。複式簿記の制度をどの程度取り入れるかという点については、いろいろ
検討の
範囲が多いかと思うのでありまして、一般的にこれを採用すべきものだとはわれわれも考えておりませんが、どの程度のものにこれらの点を採用していくがいいかというような点につきましては、さらに専門的に掘り下げた
検討が必要ではないかというふうに思われるわけでございます。
次に、たとえば公共事業の補助事業がございますが、これらの経理は、これらも御
承知でございますように、工事費、付帯工事費、あるいは機械器具費、工事雑費等の設定科目によって精算をしなければならないということになっておりまするが、一面、公共団体におきまする歳出
予算の経理、これはこれとは全然別個の自治法施行規則の定めておりまする節がございまして、四十三現在ございますが、この節によって行われておりまするために、設定科目をさらにこの節に組みかえをいたしまして、
予算決算上の経理をしなければなりませんために、事務処理上きわめて能率が悪いという批判があるわけでありまして、これらの点につきましては、現在の地方団体の
予算の様式についても再
検討を要するのではないかと思われるのであります。
さらに、先刻
政務次官からもお話がございましたように、公共団体の契約なり、あるいは財産なり物品管理なり、あるいは債権管理に関しまする事務処理の方法につきましては、自治法上も若干の規制は現在ございます。しかしながら、その
内容につきましては、あげて公共団体の条例、あるいはまた規則に譲られておると申してもよいのでありまして、国の会計法なり、あるいは国有財産法、物品管理法、国の債権の管理等に関する
法律等を参考にしながら、何らかの形におきまして、公共団体のよるべき最低限度の基準というものを明らかにいたしますることが、事務処理の公正、効率を
確保するゆえんではないか。その他に、いろいろ公営住宅の家賃、
病院の入院料等の問題その他がございます。いろいろこまかい点はございますが、総じて申しまして、旧来の財務会計の方式というものが新しい情勢に適応し得ない、あるいは、きわめて不適当であるという部面がたくさん出てきておるのではないかということが指摘をせられておるのでありまして、この点は地方の財務
関係の担当者、あるいは出納、収入の担当者等からも面々から強く要望が出されておる点でもございまして、われわれといたしましては、これらの点も考慮いたしまして、
一つ、この際、専門家に委嘱をいたしまして、細部にわたって、会計財務制度の根本的な建て方の問題についていろいろ御
検討を願い、これをもとといたしまして、財務会計制度の
一つ改善を行いたい、かように考えて本
法案を
提案をいたしたような次第でございます。