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1959-03-24 第31回国会 参議院 内閣委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月二十四日(火曜日)    午前十時五十九分開会   —————————————   委員異動 三月十九日委員山本利壽辞任につ き、その補欠として酒井利雄君を議長 において指名した。 三月二十日委員大谷藤之助君及び田村 文吉辞任につき、その補欠として宮 澤喜一君及び中山福藏君を議長におい て指名した。 三月二十三日委員宮澤喜一君、笹森順 造君及び酒井利雄辞任につき、その 補欠として山本利壽君、佐藤清一郎君 及び大谷藤之助君を議長において指名 した。 本日委員苫米地義三辞任につき、そ の補欠として前田佳都男君を議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    理事            松岡 平市君            山本 利壽君            千葉  信君    委員            井野 碩哉君            大谷藤之助君            木村篤太郎君            堀木 鎌三君            前田佳都男君            増原 恵吉君            松村 秀逸君            伊藤 顕道君            矢嶋 三義君            横川 正市君   政府委員    内閣官房内閣審    議室長内閣総    理大臣官房審議    室長      吉田 信邦君    人事院総裁   淺井  清君    人事院事務総局    給与局長    瀧本 忠男君    総理府総務副長    官       佐藤 朝生君    内閣総理大臣  増子 正宏君    官房公務員制度    調査室長    宮内庁次長   瓜生 順良君    大蔵政務次官  佐野  廣君    大蔵省主計局給    与課長     岸本  晋君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   説明員    大蔵省主税局税    制第一課長   塩崎  潤君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選総理府設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○国家公務員共済組合法等の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送  付) ○国家公務員等退職手当暫定措置法の  一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付)   —————————————
  2. 千葉信

    理事千葉信君) これより内閣委員会を開会いたします。  委員長御所用のため、委託によりまして私が委員長の職務を行います。  前回以後の委員異動について御報告いたします。三月十九日山本利壽君が辞任され後任として酒井利雄君が委員に選任されましたが、昨二十三日酒井利雄君が辞任され山本利壽君が委員に復帰されました。三月二十日田村文吉君が辞任され、後任として中山福藏君が選任せられました。また、三月二十三日には笹森順造君が辞任され、後任佐藤清一郎君が選任せられました。  以上御報告いたします。   —————————————
  3. 千葉信

    理事千葉信君) それではこれより議事に入ります。  まず、理事補欠互選の件についてお諮りいたします。ただいま御報告いたしました通り山本利壽君の委員辞任に伴い、その後理事に欠員を生じているのでありますが、先日山本君が委員に復帰されましたので、この際山本君を再び理事に選任することにいた。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 千葉信

    理事千葉信君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。
  5. 千葉信

    理事千葉信君) 次に、総理府設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより本案の質疑に入ります。政府側出席方々は、佐藤総理府総務長官瓜生宮内庁次長でございます。御質疑のおありの方は。順次御発言を願います。
  6. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 総理府設置法のうちで皇居造営審議会に関連して、二、三宮内庁並び総理府総務副長官にお伺いしたいと思いますが、皇居造営について、位置とか、あるいは構造、あるいは予算、こういうような一応の目途をつけて、そして審議会に諮ろうとするのか、全然白紙で審議会審議に付そうとするのか、その点まずお伺いしたい。
  7. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 皇居造営に関する宮内庁としての一応の素案というものを、今鋭意まとめつつあるわけでありますが、皇居造営審議会が開かれますまでには、一応の素案、ほんの素案でありますけれども素案作りまして、御審議の際に、皇居位置とか、構造様式、規模をどれくらいにするか、あるいはその経費をどのくらいにするかというような御審議の参考にいたしたいと思っているわけであります。
  8. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今審議中とのことでございますが、大体位置については、おおよそどういう位置をお考えですか。
  9. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 位置につきましては、現在やっておりまする考え方といたしましては、やはり今の皇居地域内の広庭のところが宮殿位置としてはいいのではないか、お住居は今お文庫がございますので、そこにかりにお住いになっておりますが、その庭先のところへ増築のような形でございますがそういうふうに建てまして、そのようにお住居考えております。これはいろいろ検討してみたんでございまするが、やはり現在の憲法における天皇の地位から見て、国事行為もいろいろなさっておりますし、外国との父際その他いろいろ行事がございますので、やはり首都の東京都内がよかろう、そういうふうに考えまして、それではということで、都内のどこかといろいろ考えましたが、現在あります皇居のところに、相当な広さの土地がありますので、それを活用していくのがいいのではないか、また、いろいろあの付近には皇居前の外苑もございますし、自動車なんかたくさん来られた場合も、モータープールなんかについても便利でありますので、やはり今の皇居地域のところを考えたらどうかというように、われわれは考えておる次第でございます。
  10. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、構造とか様式等についても、大よそお考えは進んでおると思うのですが、まだ最終決定にはならないにしても、現在までどういう構造、あるいは様式考えておられるか、そういう点をお伺いしたい。
  11. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 構造様式関係は、これはいろいろ研究しておりまする一応の素案基礎になっておりまするものは、耐震耐火鉄筋コンクリート建物でありますが、その様式外国建築外国宮殿なんかを模倣するようなものではなくて、西洋建築耐震耐火鉄筋コンクリート建物でございますけれども、そこに日本的な味わいを出していく、そういうふうにしたらばどうか。外国からいろいろお客さんが見えまする場合に、外国のそれに匹敵する、たとえば大統領の公邸とか、そういうところを見て参りまして、それと比べてみて、まあ恥かしくないものをまねしようといたしますと、相当の金額もかかりますし、また、まねをしたのでは、日本的な感じも出ませんから、ここで日本的な味のある、従って屋根もつけるような形のものであります。で、中の作りもまあ清楚な感じ、簡素というのとちょっと違いますが、清楚な、さっぱりした感じ、ごてごてした感じでないものを作る、で、外国お客が見えても、やはりなるほど日本の宮殿であるというふうに考えられて、恥かしくないもの、そういうふうにしたらばどうか、こう考えております。
  12. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 民生の安定ということも十分考えられると思いますが、そういう点から、国が支出し得る予算の限度というものはあるわけですね。それと、やはり皇室民主化という立場から、今、位置とか建築様式、そういうものが考えられておるだろうと思います。そういう点について、いま一度お伺いしたいと思うのですが、まず、予算については、大よそどれくらいを目途としておられるのか、また皇室民主化ということが強く叫ばれておる折柄、そういう観点から、様式、そういうものをどういうふうに考えているか、そういう点について……。
  13. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 予算関係でございますが、それではどのくらい経費がかかるかという点の計算は、これはまだここに申し上げるようなところまでいっておりません。で、坪当り単価によって違って参ります。使いまする材料、あるいは構造のやり方とか、そういうものによって違って参りまするが、国会議事堂建物を調べますると、これは現在の時価にしますると、坪当り建築費が七十五万円、そういうのを基礎にして考えてみたり、あるいはもとの焼けました官殿の建物と、それから装飾から、中のいす、机を含んでございますが、その部分の中心になるところが、坪当り百万円、今の物価に直しましてですけれども。で、全部がそれだけかかるわけではなくて、それほど重要でない部分も出ますから、まあずっとならしまして七、八十万円ぐらい、そういうものをざっと考えておりますが、しかし広さの問題は、まだ今検討いたしておりまするが、先般衆議院の方の内閣委員会総務長官が、まあ一万坪ぐらいがいいのではないかということをちょっとおっしゃっておりましたが、これはいろいろやっておりますが、それ以下にはなっても、最高がそれだけというような考えでございます。そうしますると、先ほど申し上げました数字にかけてみますと、まあ数十億になると思います。しかしこれは作りようによって、もっと単価を落すとかいうような工夫の点はあると思いますけれども、ざっと考えてそういうことになるかと思うのでございますが、これは予算関係は、国の財政、民政の安定ということも関連いたしまするから、これはどういうふうにきめられるか、これも審議会で十分また御意見を聞いて、その御意見を承わりたいと思っておるわけでありまするが、またそういうものを作るにしても、何年間でやるかによって、一年間における負担も違って参りまするし、そういうようなこともこれはまだわれわれの方としても構想はきまってはおらないのでございます。  それから民主化の点でございまするが、この皇居については、新しい宮殿ができまするその機会に、今の門の出入りの工合なんかも非常に狭いところになっておりますが、坂下門あたりを以前の、江戸城の、前の坂下門位置はちょっと横にずれておったのを、また今の位置に変えておりますから、もと位置に持って参りますれば、文化財の保存というようなこともできまするし、また広く使えるということもございまするし、そういうような工夫もして、ある程度その宮殿が見えるところまで人がおいでになれますようにする。それから時間をきめまして、宮殿を使わないときに、宮殿参観を御案内する、宮殿の外観も、その外から見るだけでなく、中もある程度見えるような構造にしたらどうか、こういうこともいろいろ検討いたしております。なお、部屋の問題でございまするが、部屋も相当大きな部屋を作っておいて、何か大事な行事のある際は、多数の方が参列できるようにするということも必要じゃないか、現在の仮宮殿で今度皇太子殿下の御婚儀の祝宴なんかありまするけれども、あれはもともと事務室だったところを一時改造して作っておりまするから、小さい部屋がたくさんある、お客さんがおいでになりましても、小さい部屋があっちこっち分散しておる。それを両陛下皇太子殿下、妃殿下がぐるぐる回ってあいさつされ、ごあいさつも受けるということになっておりまするけれども、そういうふうなことでは非常にどうも、せっかく来ていただきますお客さんに対しましてもどうかと思われる点でございまするし、そういうことも考えまして、将来の宮殿としては、相当多数の方が、いろいろな方がおいでになれるように、部屋構造なんかもそういうふうに考えたらどうかということも、いろいろ検討いたしております。
  14. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 委員構成は二十五名ということになっておりますが、その構成をどうするのか、こうお尋ねすれば、必ず学識経験者の中から適任者を選びます、そうお答えになると思うのですが、従来政府で選ばれた学識経験者委員の中には、得てどうも特定の傾向がある人が一部に集まって、そういうような傾向があると思うのですが、私はここでお伺いしたい点は、皇居造営については、少くも国民各層代表からなる権威者をもって進めてもらいたい、こういうことなんですが、そのことについてお考えを伺いたい。
  15. 佐藤朝生

    政府委員佐藤朝生君) 皇居造営審議会委員のメンバーにつきましては、学識経験を有する者という建前で選考いたしたいと思っておりますが、広く政界の方、あるいは経済界の方、言論界の方、あるいは学者の方、あるいは都市計画関係の方、あるいは地方自治関係方等からお選びしたいと思っております。
  16. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この皇居は、大蔵省管理財産になるわけですね、この点は私はそういうらふうに解釈しておるわけですが、それについていろいろ造営費寄付とか、あるいは資材の寄付あるいはまた勤労奉仕と、いろいろの形で国民はそういうことに関心を持ってくると思うのです。こういうような点についてはどういうふうにお考えですか。
  17. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) できまする皇居建物は、おっしゃいましたように国有財産である、皇室用財産である、いわゆる国有財産でございます。その建築に必要な経費は、原則としては国の予算で組んでいただいて、国の予算でまかなっていただくということが建前だと思います。ただ一部について、純粋のお気持からこういうものを寄付したいというふうなことがあるのじゃないかと思いまするが、それはその一部の部分としてあるいはそういうふうなことをどういうふうにして受けるかどうかということは、これからの研究問題でございまするが、皇居造営審議会の際に、この経費関係のことをお諮りする場合においても、そうしたいわゆる純粋のお気持からの寄付をどういうふうに受けるかというふうなことについても、御意見を聞きたいというようなつもりでおるのでございます。
  18. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この皇居については、戦前・戦後を通じて、私も数回拝見したことがございまするが、皇室民主化という立場から、手軽に希望する者がいつでもこれを見られる、そういうことが今後望ましいと思うのですが、現在でもそう申し上げれば、時間を区切って参観さしておる、そういうふうにお答えになると思うのですが、なかなか手続等もめんどうだし、手軽に安易な気持でというところまではいっていないと思うのです。この点についてどうお考えですか。
  19. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 現在も午前が十時から千人以内、午後は一時から千人以内、一日二千人程度参観を御案内をいたしておるわけでございます。これは原則としては団体で申し込んでいただいて、団体代表者からそのおいでになる方の名簿を出していただいて、それに対して許可証というのを出して、それで御案内をしておるということでございまするが、その手続をもっと簡素化したらどうかというような御意見もあるのじゃないかと思っております。この点につきましては、皇居のそういう参観をやるようになりましたのは、五年前からでありますが、五年たっておりまするから、皇居造営審議会でもそういう問題も出るのじゃないかと思いまするので、それをどういうふうにさらに考えるかということも、再検討したいと思っておりまするけれども、現在のままで、もうずっと押し通すのだという考え方ではございませんが、しかしこうしますという結論は、まだ申し上げる段階には至っておりませんですけれども、考えてはみたいということでございます。
  20. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 昨年の暮れごろから、皇居開放すべきだと、そういうような国民の一部の声が盛んに出てきておるわけです。もちろん、賛否両論もあるわけですが、やはりこの際政府なり宮内庁としても、皇室に対する古い考え方をかなぐり捨てて、そういう考え方の上に立って、真剣にまた率直に検討することが必要であろうと思うのです。その点については、どういうふうにお考えですか。
  21. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) この皇居開放論というので世論などいろいろございまするが、その中には、もうあそこからどっかほかに移転されて、全面的に公園か植物園か何かにしたらどうかというような意見が一部ありまするが、それは先ほど申しましたように、現在われわれといたしましては、やはり皇居位置等もいろいろ考えると、あそこを活用されることがよろしいというふうに考えまするものですから、全面の開放は、これはどうも適当ではないとわれわれは考えております。しかしながら、皇居地域、現在の地域皇室用財産としては二十六万坪でございまするが、しかし普通世間皇居考えておられますものは、その皇居のほかに、公用財産の二万数千坪、それから大蔵省の管理する普通財産の四万坪くらい、そうすると三十二、三万、三十三万でございますか、その他お壕りの中全体を言うわけでありまするが、その全体をそのままにしておくということは、必ずしも現在あそこに働いておりますわれわれも考えていないのでございます。先ほど申しましたように、五年前から資格を問わないで二千人の方を御案内するのも、まあ一部開放考えがそこに出ておると思います。それから東地区といいますと、江戸城の旧本丸、二の丸、三の丸という方でございます。皇居に向ってずっと右側の大手門の一画でございます。これが約十万坪ございますけれども、その分は、現在清宮さんがお住みになっておるその一画のところでございます。それから、皇室のいろいろの、もと書陵建物があったり、楽部、雅楽の方の建物があったり、馬場があったりいたしております。そのほかには、恩給局建物があり、賞勲部があり、内閣文庫がある、それからパレス・テニスクラブテニスのコートがあるというような、雑然としたものがあるのでありまするが、その地域につきましては、現在におきましてもその関係の人は自由に出入りしているわけでございます。馬場の方も、国際乗馬クラブというクラブ組織がございまして、クラブ員方々は、宮内庁でその馬場を使う時間をあらかじめきめてありますけれども、自由に乗馬できるようにしてあるわけであります。それから夏は、小学校の児童、特に都心のからだのあまり丈夫でない児童の方のために、林間学校というのをその地域の林のある所でいたして、それをそういうことに利用していただいて開放してあるわけでございます。しかし、その東地区について、今申しましたが、清宮さんがまたそのうち御結婚でおいでにならなくなりますと、お住みになっている方もなくなりまするし、まあこの付帯施設のものはございまするけれども、しかし、その部分は普通の役所のようなものでございまするから、だいぶお住居とは違って参ります。従って、将来においては、この東の地区の所につきましては、もっと自由に利用できるように、現在あまり雑然としておりまするけれども、ある程度経費をかけてそれを整理して、以前の名園であった所も、経費関係であまり手入れがしてありませんけれども、そういう所も手入れいたしますると、いろいろ一般国民の方も散策をされてレクリエーションされるのにもいいんじゃないだろうかなというようなこともございます。従って、東地区部分については、進んでもっと自由に利用されるような方法をさらに考えたらどうだろうかというようなことを考えております。まあ、そう言いますと一部開放論になるかもしれませんが、その程度のことは考えております。それによって皇室国民との親愛感も一そう深まり、それが国のためでもあるというふうに思っております。
  22. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 皇室に対する尊敬皇居をどうするかと、こういう問題はおのずから別問題であって、これをややもすると混同されがちで、混同されると問題が非常に複雑になってきてこじれてくると思う。従って、あくまでも皇室に対する尊敬ということと皇居をどうするかということと別問題であって、これを混同したらいかんので、こういうことに対して、宮内庁としてはどういうふうにお考えですか。
  23. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) お尋ねの趣旨の点、はっきりつかめませんですが、こういうことではないかと思います。国の象徴国民象徴としての天皇並びに皇室のことについての一般敬愛心というものと、それから皇居をどうするかという、これはまた別に考えられる点がありはせんかという点だと思います。その点で、まあ一部の中で、今両陛下がお住みになっておる吹上御苑は、あるいは必ずしも御健康上よくないのじゃないか、だから両陛下のためにももっと健康的にいい所へおいでになったらどうかと、それによって、その部分開放されたらどうかというような意見があるのでございまするが、そういうらことに関連したことじゃないかと思うのでございまするが、その点は、御心配になられる方の気持はわかるのでありまするが、実際問題として、吹上御苑あたりが何か非常に空気が汚れておるとか、湿気が多いとかいうようなふうに考えられ、もっと健康的な所はどうかというふうにおっしゃっておるように見えるのでございます。しかし今お住みになっていらっしゃる吹上御苑の御文庫屋上衛生検査をやっておりましたが、これは東京都内の各保健所でやっておりますそれと比較して空気のよごれ工合というものを見ますと、御文庫屋上の指数は昨年の分は一〇でございます。一〇の数字は、東京都内におきます石神井と同じでありまして、麹町の一般の市街の所では二一ということになっております。たしか向島とかああいう所になりますと、三〇ぐらいになりまして、下町は空気がよごれております。青梅になると八です。青梅に比較すると御文庫あたりは幾らか悪いけれども石神井と大体同じです。従って八百万都民の住んでおられるところのいい地域と同じということで、特に悪いとは考えられないと思います。それから湿気の点についても、一般の市内と同じでありますが、湿気の点で誤解がありますのは、御文庫は数年前に改造しました。改造前は御文庫自体が非常に湿気の多い建物でありました。これは戦時中に大急ぎで、一トン爆弾のような爆弾が落ちても大丈夫だというようながんじょうな鉄筋コンクリートのものをお作りになったわけですが、その際、何か聞きますと、ちょうど冬であって、使った砂利が何か雪が混じっている砂利をそのまま使ったとか、大急ぎでやられたものですから、元来コンクリートの建物湿気が多いのでありますが、そこへ持ってきてそういう砂利を使ったので特に湿気が多い。そこで、数年前に穴をあけて水を取ったらドラムカンに三ばいもあったというようなことでございます。だから数年前にエアコンデションの機械を地下室に設けまして、温度と湿気の点は御健康上差しつかえない、自由に調節をいたしてやっておりますので、現在のお住いの所については、東京都内の普通の所よりも湿度もよろしいし、そう悪いという状況ではないのでございます。しかし、ずっと古いそういうことを御存じの方は、今もそういうふうだというふうにお考えになる。たとえば去年あたりから皇后陛下がおかぜを引かれたのは、どうもやはり湿気が多いだろうから、そういう所におられるからだろうということですが、それはそのためだけではないのでありまして、感冒がはやっているときに感冒にかかられたためでありまして、そういうことと結びつけて、特に湿気が多いのではないかと非常に心配をされまして、だからお移りになった方がいいのじゃないかというお考えも、皇室をないがしろにするという気持は全然なく、かえってよりよいことを考えてあげたいという意見でありまして、そういう点はただいま申しましたように、御心配になるようなところはないのであります。そういうふうでございますので、まず今申し上げたようなところが、やはりいいのじゃないかと考えております。なお、現在の国の建前上、一般国民との親密を一そう深めていかれるようにいろいろ工夫していくべきだと思います。位置としては今の所を考えて、そしてほかの一部の所はもっと自由にすべきだということを考えていったらいいと思います。
  24. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 皇室のあり方につきましては、憲法に明記はあるのですが、現在ただいま皇室のあり方については国民は納得しておる、こういうふうに私どもは一応見ておるわけですが、ただ、皇室は地理的環境によって幾ばくの影響も受けるものではない、皇室のあり方については国民の意思とともにある、そういうふうに私どもは信じておるわけでありますが、この考え方についてお伺いしたいと思います。
  25. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) どこへおいでになるかということと関係はないのじゃないかという御意見かと思いまするが、これは現在憲法上もいろいろ、特に公務としてのお仕事もいろいろお持ちでございまするし、交際関係その他がおありですから、やはりそのお仕事をなさるためには、お仕事をなさるのにふさわしいところにおいでになるということがやはり必要だと思います。そういう点では、まあ現在の皇居地域がいいと私は思っておりまするけれども、こういう点も皇居造営審議会で、皇后の位置という問題も御意見を聞く予定になっておりますので、いろいろ御意見を伺って、尊重すべき御意見があればこれは当然尊重されるべきと思うわけでございます。
  26. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 先ほど申し上げたような立場から、皇居開放されることによって、それが全部であるとか、一部であるとかいうことは別問題として、かりに一部と仮定しても、その一部が開放されることによって、さらにあの皇室のあり方が一段とよくなる、そういうことであるならば、進んで開放すべきでないか、そういうことが言えると思うのです。この点どうですか。
  27. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) その点は御意見通りと思います。
  28. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 御存知のように、皇居は東京都の中心にあるわけですが、しかも三十三万坪ですか、大体そういう広大な広さを占めておる。で、東京都だけの問題ではございませんけれども、一応東京都に位置しておる関係で、東京都の都市計画でいつも問題になっておるわけなんですが、この点について、いろいろ一部開放ということも考えられないではないと、そういうような御意図もあったようでありますが、この都市計画について、どういうふうにお考えですか。
  29. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 都市計画につきましては、百年の大計のような意見を、あまりわれわれとしては具体的には聞いておりませんのですけれども、しかしまあ、交通難の緩和とかいうようなことで、あるいは地下道を作ったらどうかというような問題、そういう問題については皇居地域の下は、どこの場所でもいいと言えません。大きな宮殿というものは、その下なんか相当建物が重いから、そういうところはいけませんけれども、そういう差しつかえない部分であればよろしいということを言っておるのでありますが、しかし、聞くところによりますと、都市計画も、ほんとうの根本的なものが東京都としてもまだ十分練り上っていないようでありまして、ほんとうに全体の都市計画として、百年の大計を立てられて、こうしたらいい、こうしたらこうなる、この場合皇居の移転はこういうふうだという相談がありますと、われわれとしても非常によろしいと思うのでございまするけれども、どうもそういう点が今のところはまだございません。
  30. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 ここで問題が二つあると思うのですが、激増する交通量のための障害となっておるということと、広大な土地が、ほかにいかなる点からでも利用されていないと、そういうような点に要約できると思うのです。大体これはもと江戸城下ですから、城は守るにやすく、攻めるにかたくということであるから、非常に周囲の交通が不便に遮断、そういう意味を当然城は持つと思うのですね。そういう点から考えて、当然進んできた東京都の現在の状況で、非常に交通壁の面から特に問題が大きいと思うのですが、従ってこれをどういうふうに解決するかということについては今後の問題ですが、やはり都のそういう面にも、宮内庁としても積極的に考える必要の段階は出てきたのじゃないかと思うのです。この点いかがですか。
  31. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) それは首都圏整備委員会ですか、あそこでそういうような問題をいろいろ検討されておるのですが、首都圏整備委員会の事務局長と会いますときに、いろいろお考えも聞いておりますけれども、しかし現在考えておられるところでは、一部に言われるように、皇居のあそこの縦断をする地上の道路とかというようなものは、必ずしも必要はないというふうに言ってておられます。一面ある程度広さがありまするが、交通の面ではロータリーのような役を、ずっと、回転道路ですか、ある程度ロータリー的な役割も果している。非常に交通が繁雑しているのは、祝田橋の方面、側面の方はそうでもありません。ちようど祝田橋その他二重橋の前のあたりの広い道路から前の方の、神田方面から、東京駅方面、銀座方面、あの辺が非常に混んでおります。そのあたりを緩和する方法は、必ずしもあそこへ道路を通したからといって緩和するのではない、その緩和の方法は別途考えなきゃいけない。前のあそこが混んでいるから、あそこを通れば緩和するというのじゃなくて、裏の方は必ずしも混んでいないのであります。その点も一般の誤解もあるということも聞いております。その緩和の方法についていろいろ研究をしておられるようでございまするけれども、その場合でありますると、結局皇居の他下道の利用の問題もすぐには出てこない、別途の何か計画によってそれを緩和することもできる、これに対して結局金がかかりますから、金をかければできるようでございまするが、そういう問題を検討されているということは聞いております。
  32. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 皇居が一部もしくは全部開放されることによって、国民との親近感が非常に増すであろうということは、次長もおっしゃっているところなんですが、そういう線に沿うて一つ旧宮殿跡に作られるにしても、そういう趣旨に沿うような造営がなされるべきであろう、そういうふうに思うのです。この点はいかがですか。
  33. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 今の御意見と同じでございます。で、この皇居の新しく造営の場合におきましては、この造営の機会に、一そう皇室国民との親密を増すようなふうないろいろ、工夫もしていかなきゃならないと思います。建物作り方についてもそういうようなふうなことをする、皇居のあり方についてもそういう工夫をするということを考えたいと思っておりますので、そういうところについても、皇居造営審議会でまた皆さんの御意見も承わっていきたいと思っております。
  34. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それから一部に皇居の移転という説もだいぶ出ておるわけですが、私ども考えるのには、皇居開放ということと移転ということはこれはおのずから別問題であって、移転については皇居を移転するのが必要があるのかないのか、そういう観点から決定すべきであって、おのずから開放論とは別問題だと思うのですが、こういう開放論と移転問題、こういう問題についてはどういうふうにお考えですか。
  35. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 先ほどもちょっと申し上げましたが、その全面的な移転ということと、全面開放論、ちょっとこれは結びついております。問題の観点は違いますが、そういう非常に結びついた関連を持っておる。しかし、他に移されるということにつきましては、先ほど申し上げましたように、そのいろいろの御活動をなさる手前、行事のあり方から考えまして、首都のところがいいということになりますというと、なかなか今そうあいているところはありませず、しかも、今活用化さるべきああいう土地はありませんから、やはりあそこがいいというふうに考えておりますので、従って移転についてはわれわれはまだ考えておりませんのでございます。
  36. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この皇居開放については主として位置関係から、東京都の運営上の問題としていろいろ問題になっておるわけですが、考えてみればこれはただ東京都だけの問題でなく、日本全体の問題だと思うわけです。そういうような立場から一つすべての国民が納得するような、そういうような線でこの際国民の意思統一をはかるべき段階に来ているのじゃないか、そういうふうに思うのですが、それで結論としてはだれもが納得するような線で踏み切るべきであろう。また、そういう段階に来ているのじゃないか、そういうふうに思うのですが、やはりそういう宮内庁としても積極的にそういう点と取り組んで、よりよき結論を出す段階だと思うのですが、その点いかがですか。
  37. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) その点は大体御意見通りでございまするが、まあ、皇室国民の総意に基いておありになるわけでございますから、単に東京都民だけの皇室でなく、九千万国民の総意が那辺にあるかということを十分検討した上で、皆さんの御納得のいくようなことで結論を得るように進むべきであるとわれわれも考えております。
  38. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 かりに国民の総意によって一部開放とか、そういうことがかりに実現しても、そういうまあ前提に立ってお伺いするわけですが、そういう暁には、やは自後の管理等については、十分心すべき問題がいろいろ残されていると思うのです。開放されたからといって、あそこにビルを作ったり、一般の市街地を作る、そういうことでは意味がないと思うのです。やはり東京都に欠けておるいわゆるあの自然美ですね。なかなか得がたいあの自然美を都民に、そして全国の国民に味わさせる、そういう面も非常に大事だと思うのですが、こういう点についてはどういうふうにお考えですか。
  39. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) その点も今おっしゃいました意見と大体同じでございまして、一面あの地域は文化財としても考えられることでございますから、文化財としての価値もそこなわないように、大きな東京都のまん中にああいうような家の密集していないところがあることは、大都市の美観上もいいように聞いております。外国の、ニューヨークあたりでも、もっと広い広場がまん中にあるそうですが、そういう点も十分考えていかなくちゃならないと思いますが、これは宮内庁だけの問題でなくて、皆さんの御意見でいろいろそういう点検討していきたいと思っております。
  40. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 時間の関係もありますから、最後に一点お伺いしたいと思うのですが、昨年あたり皇居内を見学さしていただいたときに感じたことですが、関連があるから申し上げるのですが、やはり三十三万坪くまなく参観させていただいたわけではございませんが、大体あのコースを通ってみて、ずいぶん荒れたところも相当見受けられたわけですけれども、やはりこの際この皇居造営とは直接関係ございませんけれども、やはり整備すべきところは整備する必要があろうと思うのです。そういう点については、今具体的には何かお考えがあるのかないのか、いつまでもあのままに放っておくのか、そういう点について最後にお伺いしたい。
  41. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) この皇居の中で、あまりきれいでない荒れている部分があるのは、事実であります。これは毎年少しずつはよくするように道路の汚ないのを直したり、あるいは樹木の手入れをいたしましたり、それから古くなっている倉庫なんかは、それをこわして別の新らしいのにするとか、そういうことはいたしておるわけでございますが、これもやはり国の財政との関係がございますので、あまり一ぺんによくするということはできませんので、年々よくするというふうにいたしております。皇居造営の機会に、それに関連したその付近一帯の付帯の施設等が出ております。その付帯の施設等もある程度整備されてきますので、あの中も今よりはもっと整備されると考えるわけであります。
  42. 横川正市

    ○横川正市君 関連して二、三点御質問申し上げたいと思いますが、皇室とそれから国民との関係が、今度の皇太子の御結婚を契機にして著しく内容が変更されてきたと思いまするし、それから一般国民の受ける印象もすべてこれは歓迎すべきできことだとして、この慶事を私は見ているのじゃないかと思うのです。そこで、皇室の内容が国民にそういうふうに印象ずけられておりますのに、宮城の形態が依然として昔のままで一般にやはり近親感というものはあまり直接に感じない。言いかえますと、内容は非常に民主化されてくるけれども、外見は依然として昔の形態が残っている、こういうふうに私は見れるのじゃないかと思う。それからたとえば宮城の周辺をずっと見てみましても、各門を一つの垣にいたしまして接触する度合いというのは、非常にこれは古いしきたりをそのままにいたしております。こういう観点から、私は今伊藤委員が言いましたように、宮城の中をいろいろ私は視察して直接感ずるのは、決してこれはいい意味では整備されておらないということよりか、天皇の意思もあるようにお見受けしたのですが、ほとんど天皇の身の回りについては実際上整備されておらない。こういうふうに私ども聞いておりまして、その点はわれわれとしてはもっとわれわれの立場から見てあげる点があるのじゃないだろうか、こういうふうに国会から見学に行って感じたわけです。それであの荒廃した内容を整備していくということは、昔のままの形態を作り上げるということではなしに、同じ金をかけるならば、もっと国民との近親感を増すような、いわばあの古いお城という形態がそこなわれないまでも、そこなわれないということを主眼にいたしましても、もう少し国民との接触点というものを今の内容に備わったような外見に変えていく、こういうことが必要ではないかというふうに思うわけなんでありますが、将来おそらくまあ大体この内容整備にそれぞれ着手されると思うのですが、その点は一体どのようにお考えになっておりますか。これは一つはあそこに入って参りまして、砂利道やら、あるいは土の道でありまして、車が通ればほこりがむんむんと立ち上るのを水車が通って、それを一時押えしているといったような状態でありますが、こういった点も早期に手をつけなくちゃならぬと思うのでありますが、今言ったような内容の備わった外見の整備というものについては、どのようにお考えになっているかお伺いしたいと思います。
  43. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) あの中をごろんになりまして、まあ陛下のお住まいの御文庫あたり吹上御苑に、草がぼうぼう生えているという感じをお持ちになった方もあると思いますが、吹上御苑あたりは、これは天皇陛下考えもあって、武蔵野の自然の姿を残しておいた方がいいということで、見ますと相当雑草などが生えておりますが、その雑草のようなものも、やはりそれぞれ武蔵野にあった現在も残っている草で、それをやはりなくしない方がいいというようなお考えもあります。ああいうふうに生えており、普通の方が考えられると、御文庫の前の庭あたりはずっと一面の芝生にでもして、きれいになっているかと思ったら、草が生えているとおっしゃるのだが、そういうようなお考えで、武蔵野の自然の姿をあそこへ残しておくというお考えもあってのことであって、それを楽しみに毎朝その草をごらんになって研究もなさっているわけです。そういう方面の特別の専門家はまたそこへ研究にも来ておられるわけで、われわれもそういう方面に専門じゃないものですから、あまりわからないのですが、専門の方から見ると、非常に趣きがあるらしいのでございます。そういう一角がございまするし、そういう意味でやはりこの武蔵野の姿というのは、東京の発展とともに消えていきますから、あの一角にそういうところが残されたというのもいいんじゃないかとも思うわけであります。  なお、道路の点とかその他の整備の関係、これは砂利道で、自動車が通ると砂煙がもうもうと立つというところは確かにありまするが、これは毎年この一部ずつを舖装をしております。今のところでは、ずっと坂下門から乾門のあたりの道路はきれいに舗装されておりますし、それから吹上御苑の横からずっと賢所に行かれる途中までの道路の舗装もされて、三十四年度にはその先をやるというので、財政の都合もあって、一ぺんにさっとやるのじゃなくて、年々やっているというようなことでございます。  それからなお一般国民との接触の関係で整備すべきだということ、これもごもっともなことで、本年の一月一日に参観者のための休憩所、これができたわけでありまするが、それは以前、吹上御苑の一角においてある、屋根のある、雨の降ったときに練習のできる覆馬場でございますが、覆馬場がございました。しかしその覆馬場を最近はあまりお使いにならないので、これを何かほかに活用したらいいじゃないかという意見もありましたので、吹上御苑とそれから一般参観者は桔梗門から入ってこられますが、桔梗門から入ってすぐその先のところへ、そのままではございません。覆馬場は粗末なものでございますが、その材料を使いまして参観人の休憩所というふうにいたして、この一月一日からそれを使っておりまするが、まあ国民との接触の関係について、われわれもいろいろ気は使っておるつもりでございますが、できるだけ今後ともそういう点は留意もしていきたいと思っております。
  44. 横川正市

    ○横川正市君 京都から東京へ遷都したときの状態からいけば、天皇が政治の中心であったからであって、そういう意味合いからいきますと、今は象徴として国民との間の敬愛と親愛を保っておるわけでありますが、政治とは全然切り離されておりますので、そういう意味合いからいきますと、この東京都の首都圏整備特別委員会といいますか、これとの関係もありますけれども、私は東京の場合には、非常に首都建設のやり方といろものが雑然をきわめて、しかも残しておきたいと思うような堀はこれをつぶしてしまう。お堀はどぶのようになってしまう。それからその周辺は木一本もないというような格好でビルが立つ、人家がある、道路が狭いところをお堀が門をするようになって、交通がひんぱんになる。この状態というのは、ある人からいえば嘆かわしい状態であって、こういうやり方に対しては非常に大きな反発を感ずる。こういう気持は相当たくさんの人が持っていると思うのです。そういう気持の人たちがこぞってこの皇居の存置についての意見をずっと見てみますと、関連性があって、少くとも東京という町はもう少し水をきれいにする、木をきれいにする、それから混雑を緩和する、そういう形の中に宮城というものを置いておくべきだ、皇居を置いておくべきだと、こういうふうに関連をつけて見ております。しかしまあ、そういう関連で、今一般の人の見方からはほど遠く、東京それ自体が混雑を来しているという状態、こういう状態を私どもは見た場合、もうこれを整備することはできないわけでありますから、皇居を東京の周辺のいずこかに移されて、そこにもっとおっとりとした静かな町が作られてくる、そういう感じの中に、政治とそれから天皇の国事との関係を私は二つに分けて並立させるような理想というものがあっていいのではないだろうか、ことにまあ、外国の例でいいますと、外国では古いお城その他はもうほとんどお住まいになっておらないで、やはり一つの観光的な形に変っていっているようです。それからお住居は、イギリスなんかの場合でもバッキンガムはそのまま、道路から私どもも全く接触できる目の前に宮殿があると、しかもそこには非常にたくさんの人たちが慶祝するとか、あるいはその他の行事のときには集って、非常に近親の心で会合が開かれている。こういう関係で、近代的にはだんだん変ってきているわけなんでありますが、そういう変り方を将来もとっていく必要があるのではないだろうか。そのことが主権在民にかわった新憲法下の皇室民主化された姿だろうというふうに私たちは思うのであります。そういうことから、たとえば一説には京都へ皇居を移されてはどうかという話もありましたが、これはもう非常に遠いわけでありますから、たとえば大宮御所を中心とした地域はどうだろうかという意見もあるようであります。で、この審議会は、私は必ずしも皇居をこのままの現在地にお建てになるということだけではなしに、そういう建てられる地域についても一応審議をされるのだと、こう言われておるようでありますから、そういう意味合いからいたしますと、私は今私が言ったような客観的な情勢がきわめて悪い状態になっておりますので、別に皇居を移されるということも考えるべきではないだろうか。そういう点から審議会では当然私は審議されるものと、こう思うのでありますが、これは省かれて、全然そういうことは問題外にして、皇居は現在地に建築きれる、こういうふうに大体宮内庁の皆さんお考えになっているのじゃないかと思うのですが、その点はどうでしょうか。もっと言えば、それも含めて考えておるんだというのと、それから客観情勢がこうなっているのだから、移転の計画もあるのだというのとでは、だいぶん私は違うと思うのでありますが、その点どのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  45. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 皇居造営審議会では、まあ第一の点が位置ということでございますから、従って位置の点についていろいろ十分御意見を聞くというつもりで、私が先ほどから申し上げましたのは、宮内庁で何か素案を作ってそういう場合の考え方はどうかということで、一応の何かそこに参考のものがないと、なかなか話が進みにくい、批判の対象がないと進みにくいのですから、批判の対象になる素案というものを考えておりますということを申し上げたわけです。しかし、それを一応作られるにおいても、いろいろのことを実は調べたことは調べたのであります。京都はまあ遠過ぎるのですが、何か富士山麓というような問題があったりしまして、これもやはりどうも……。ちょうどアメリカなんかのニューヨークが、これは一つの経済なんかの中心に、ワシントンは政治なんかの中心、ワシントンは静かですけれども、そういうふうな、どっか一画に皇居もあり、あるいは政府機関もあり、外国大公使館もあるというふうな静かな所がどこかにできれば、富士山麓も考えられないことはないのですが、ただ、皇居だけ持っていったのでは、御活動の上で特に不便ですし、特に政府機関で書類の裁可、認証なんかいただかれるにも不便でしょうし、外国の使臣も不便である。それでは目的が達せられない。大宮御所の所も検討してみたのですが、赤坂離宮を利用しろということを言っている方も一部ございますが、あの建物は大きな部屋はないのでありまして、いわば今の陛下の東宮御所として、お住居として作られたものですから、いろいろ多数の方をお集めになって行事をなさる広い部屋がない。これはどうも行事をする特別の宮殿には不適当である。あの辺の地域をずっと見ていきますると、広さは十数万坪ございますけれども、そのうち平地の部分は五万坪、そのほかは小山があり、堀があって、池があって、これも、これは紀州侯の名園だった所で、文化財的な庭園で、それをこわすことも、文化財保存という面もあり、東京の辺にこういうものがなくなってきておりますから残しておいた方がいい。平地の所になりますというと、今度東宮御所を作るので、もと貞明皇后様がお住まいになった所を選んだのでありますが、そこはまあ一番いいわけであります。まとまった広さがあります。そこへ東宿御所を作るということにしております。そのほかの所になりまするというと、あまり広くない、土地があちらこちらに散在しているわけであります。従って将来どなたか他の宮様の殿邸でも作る、そう広くなくてもいい殿邸でも作るとか、そういう所には利用されるのでありますが、どらも皇居というところには不適当だというようなことで、どうもそこも第一案にならないということでだめだ。新宿御苑はどらか。あのあたりは交通の非常に混雑している所であるし、だからあのあたりはそう適当ではない。特に現在あります家を、この部分をなくすればいいというようなこともありましたけれども、それはなかなか今の世の中ではむずかしいことであります。たくさんの家を立ちのきしてもらうというのは実際問題として無理ですし、結局回り回って、やはりもとの所へおさまったのでありますけれども、しかしながら、それは一応の素案でありまして、いろいろ御意見を聞いておって、なるほどこういうことであってこういう名案があるということであれば、それは尊重して参るということを考えておるわけであります。
  46. 横川正市

    ○横川正市君 大体私はお壕りそれから垣ですね、そういったもので遮断をされて奥深く住まわれるという、そういう思想というのは内容とともに私は改善していくべきではないか。そういう意味合いでは、現在地にかりに建てられるにいたしましても、その点は十分に御考慮になっていただきたい。そこで、この委員会は一カ年の時限立法でありますが、大体いつごろから着工されていつごろ完成される予定になっていらっしゃるでしょうか。
  47. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) まあ、これも皇居造営審議会の御意見によってきまると思うのでありまするが、三十四年度中にいろいろ御意見を聞きまして、三十五年度から着手する。最初はやはりまあ調査設計の段階で、そういう段階があってそれから今度具体的に建築にかかるという段階に入ると思います。これもやはり国の財政との関係がございまするから、ある程度の長い期間にやれば、年度当りの負担が少くなりますし、短い期間であれば、年度当りの負担が多くなる。まあしかしいろいろ考えましても、短くするといいましても、五年くらいはかかると思うのです。あるいはもっとかかるんじゃないかというふうにも考えます。
  48. 横川正市

    ○横川正市君 最後に一点衆議院内閣委員会では、宮内庁の宇佐美さんがおいでになって、まだ最終的には結論が出ておらないようでありますが、一世一元的な元号の問題ですね、これは法的にはおそらく何といいますか、太政官布告によって変えられていくようでありますが、それにしてもそれほど重要な根拠がこれにはないようでもあります。調査をして追って答弁をするということになっておりますけれども、大体元号をそのまま使っている国というのは、あまり私は近代国家にはないように思うんです。十分調べておりませんが。そこで、紀元を使うかそれとも西暦を使うかという格好になるのですが、全体としては漢字関係の整理にいたしましても、それから国民の生活の様式にいたしましても、逐次これはあまり日本的なものにとらわれないで逐次変っていっておるようです。そういうことから言えば、元号によって、これを呼び名にするというよりは、私は一般使われておるように、西暦一九五九年ですか、こういう呼び名で統一していくということの方が、単に便利主義ばかりではありませんけれども、非常にいろいろな意味で利するところが多いんじゃないかと思うのです。まあとるとらないということは別問題にいたしまして、こういうことについてその後宮内庁としてどのように御検討になったか。もし検討された内容があれば御説明願いたい。
  49. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 元号の問題は、太政官布告も根拠がありまするし、それから憲法改正以前の皇室典範にも一世一元の規定があって、新しい天皇が践祚された際には、直ちに新しい元号をどうするというのは天皇がおきめになる。結局事務はその当時宮内省が扱うときめられておったんですが、皇室典範が改正になりまして、現在のところその問題は宮内庁の所管事項ではなくなっております。これは政府の問題ということでありまするから、われわれといたしましてはそう深入りしてああすべきだこうすべきだということを、政府の問題ですから言わない方がいいんじゃないか。政府の方でお考えいただいていくべき筋のものであるというふうに考えております。
  50. 松岡平市

    ○松岡平市君 今ここで総理府設置法の一部を改正する法律案、特にそのうちの皇居造営審議会のことに関連して、今同僚伊藤並びに横川両委員から、やがてこの審議会ができればそこで論議されるであろうというようなところの論議を展開された。大体お聞きしておって、まあ皇居造営するんならばなるべく民衆ともっと親しめるような形にやったらどうだというような意見が開陳せられたわけで、この点については、私たちもまことに同感であります。しかしながら、そこで今述べられたところをじっと拝聴しておると、あの皇居を他に移転したらどうだということ、必ずしも決定的な御趣旨としてこれを両委員の主張としてお述べになったわけでもないでしょうが、そういうふうにそれの方が望ましい。あの皇居を移転する方がいいんだというふうに聞き取りやすい御意見が開陳されたようであります。私は必ずしもそれが全国民意見だとは考えておらん。私は移転せん方がいいという意見を持っている。せっかくこの委員会でそういうことを論議されて、移転せん方がいいという意見が一つも出ないということは困るので、私はその点を簡単に申し上げておきます。特に私傾聴したのは、横川委員から、東京都が、首都圏整備の法律もあり、それに基いていろいろやりながら、そこへ出てくるものは、首都が実に雑然、騒然、まことにつまらん計画だけだというふうに言われて、それとの関連において、皇居をこの首都からよそへ持っていけ、こういう御議論があったが、私は雑然、騒然とした首都圏整備計画が間違っているのであって、私はこれを訂正すべきものであると思う。率直に申しまして、たとえば外国人が来て、日本の首都東京の中で、ああきれいだと思う所は皇居周辺以外にどこがあるか。私はやはりこの雑然、騒然たる首都の中で、辛うじて日本人の伝統といいますか、日本人の、自然に対してこれをどう処理するか、住まいの上でもどう処理していくかという日本人の長い間の精神的な、あるいは感覚的な今までの日本人の態度というものを示し得るものは、東京であの皇居周辺以外にはないんだ、こう考えております。これが現状と変るということは、日本国民にとって非常な悲しみであると私は考える。交通の問題その他の問題がいろいろあるけれども、あれくらいのものを包容できないような交通を考えることが間違っている。あれくらいのものはちゃんと東京のまん中にあっても、別に混雑せんような交通を考えればできないわけではない。それを雑然、騒然たる現状から、せっかく残されておる日本人の、今言うように、精神的な遺産である皇居をいろいろと形を変えるということは、本末転倒であると私どもは考える。従ってこれをよそに持っていくということも、これもよろしい。でき得るならばよろしいけれども、とうていこれは十年、二十年の間は、現在の日本の実力からして、皇居を移して、そしてそこに別な都を作るというようなことは、現状においてはとうてい考えられぬ。従って私はあの皇居というものは、やはりあそこへ残すということの方が正しいんじゃないかと私たちは考える。そしてなるべく現状のあの美しさというようなものをそこなわない範囲において、一般民衆と十分接触できるようなことを考えられてほしいと思う。それは必ずしも不可能ではない。天皇あるいは皇后というものと国民との接触というようなことについては、これは宮内庁がいろいろと最近ではお骨折りであります。もう少しいろいろと工夫されれば、もっとうまくいくと思う。それから先ほど瓜生次長の答弁にもありましたけれども、新しい皇居についても、それからまた坂下門ですが、あれの改造等によって、一般国民の希望というものは、相当程度入れられると思うんです。私はあそこに皇居を残すということを、ぜひとも宮内庁当局としては強く主張していただいて、もうこの審議会がこうして法律に規定されてでき上った以上は、審議会意見というものは十分に尊重されなければならぬ。そのための審議会でありますが、しかし宮内庁側としては、私は現在の皇居というものを、東京都の雑然、騒然たる都市計画の犠牲に供するということについては、一つ十分これを守っていただきたい、こういう希望を持っております。このことについては、おそらく国民の間に両論があると思いますけれども、片方の側を代表して、そういうことを強く希望しておるということ、これは何も自由民主党の意見ではございませんが、少くとも私の強い希望であることだけをこの機会に申し上げて、そういう意見もあることをお耳に入れ、委員会の記録にとどめておきたい、こういうつもりで発言いたしたのであります。別に答弁は要りません。
  51. 千葉信

    理事千葉信君) 暫時休想いたします。    午後零時十五分休憩    —————・—————    午後一時三十九分開会
  52. 千葉信

    理事千葉信君) 委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、総理府設置法の一部を改正する法律案を議題として質疑を行います。政府側出席の方は、佐藤総務副長官、吉田総理府審議室長、佐野大蔵政務次官及び説明員として塩崎主税局税制第一課長が御出席でございます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  53. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 税制調査会に関連して二、三お伺いいたしますが、これは私が申し上げるまでもなく、岸内閣では前の総選挙の際七百億の減税を公約したわけです。ところが、三十四年度の予算を見ますと、地方税の減税などの公約が大幅に後退しておる。これはただ単に選挙対策であって、実質的には何ら公約を果していないと、こういうことが言えると思うのですが、そういう点について、これは本来ならば大臣にお伺いしたいところでありますが、きょうお見えにならないので、政務次官にお伺いしたいと思います。
  54. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) 仰せのように、選挙の際に公約いたしました減税の問題につきましては、そういうふうないろいろ御議論もあると思います。数字はお手元にあると思いますから一々申し上げませんが、税制調査会の問題についての御質問でございますからお答えいたしますが、この税のあり方につきまして、地方税と国税とのウエートの持ち方、割合、こういうものにつきまして、実は審議をいたします際に、諸外国の例等もいろいろ研究いたしまして、どういうあり方がいいのかということにつきまして、ずいぶん議論を正直なところいたしました。その結果がまあこういうふうなことになっているのでございますが、こういう点、あるいはまた間接税と直接税のあり方、ふういうふうな点を勘案いたしまして、今、議題となっておりますこの税制調査会というものを根本的に検討いたしたい、こういうふうに方針を立てたわけであります。従いまして、仰せのように、この当時の数字でいろいろ御議論が出ますと、必ずしも御期待に沿うようなことにならなかった面もあるかもしれませんけれども、根本におきましてそういう点で議論が分れまして、根本的に研究をしなくてはいけないということを、実は私ども考えた次第でございます。でありますが、大体この選挙公約という線におきましては確保いたしまして、平年度七百億というものは実現したと、こういう状況でございます。
  55. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 お言葉ではございますが、それに加えて、私鉄運賃の値上げとか、あるいはガソリン税の引上げ、あるいはまたガス料金の引上げも考えられておるようですが、こういうふうにして消費物価の値上げが強行されようとしている。こういう中で、七百億の減税の公約などはもう全くから念仏ではないか、こういう議論も相当あるわけです。こういう点については、当然責任を感じなければいかんと思うんです。そういう点はどういうふうに考えておりますか。
  56. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) この減税というお約束いたしました点につきましては、大体両方通じましてこのお約束を果したつもりでございますが、そのほかの税制一般につきまして、いろいろ均衡を失しておる点等もあったりいたしまして、増税というものも一部やらなくてはならないことにいたしたのでございますが、これは、物価と税との関係は、必ずしも一緒に考えるかどうかということも問題でございますし、議論のいろいろ分れるととろでございますが、政府といたしましては、因っておる人、こういうふうな方とか、あるいは一般大衆に対しましての社会保障の拡充実現、こういうふうな点に力も入れましたりいたしまして、かれこれ総合いたしまして公約の実現ということをやった、こういう次第でございます。
  57. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 現在の税制を見ますと、金持本位の税制であって、低額所得者の面については非常に不合理があると思うのです。たとえば、月収二万八千円くらい、年収三十四万、この程度の面については当然免税であってしかるべきだと、そういうふうに思うのですが、こういうふうな低額所得者中心の税制に改むべき段階ではなかろうかと、そういうふうに思うのですが、この点いかがですか。
  58. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) 今回の税制の改革におきましても、今まで二十七万円までの免税点が、三十二万七、八千円でございましたか、までに上げたという程度に今回いたしまして、この低額所得層に対しましての減税ということも実現をいたした次第でございまして、これは今回の税制の改正の際にお手元に差し上げてある通りでございます。
  59. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 政府としては、所得の改正を行う考えはないのかどうかということを具体的にお伺いしたいと思いますが、たとえば基礎控除については、現行は九万だと思いますが、これをさらに引き上げる考えはないか、それから勤労控除についても、現在は四十万までたしか二〇%だと思いますが、こういう問題。それから退職所得については、現在五十万であったと思いますが、これをもっと大幅に引き上げるというふうに、具体的に言えばそういうことですが、こういう点については緊急に改正する考えはないかどうか。
  60. 塩崎潤

    説明員(塩崎潤君) 税制の技術的な点でございますので、説明員の私からお答え申し上げたいと思います。  まず第一点の所得を直す考えはないかというお話は、そのあとの御質問から推測いたしますと、おそらく基礎控除の引き上げという意味ではないかと思いますが、御存じのように、今回の提案におきましては、基礎控除の九万円はそのままにいたしまして、扶養控除の引き上げに重点を置いたわけでございます。この趣旨は、私どもが何回も明らかにいたします通りに、最近の生計費の状況から見まして、基礎控除の引き上げと扶養控除の引き上げのいずれに重点を置くかということを研究したわけでございますが、扶養控除の方がバランス上まだ引き上げが足りない、こういう結論になっているわけでございます。と申しますのは、過去の累年の改訂では、基礎控除の引き上げに重点が置かれまして、扶養控除のたとえば四人目以下一万五千円という金額は、昭和二十六年以降据え置きでございます。そんなような関係からいたしまして、私どもは扶養控除の引き上げの方が減税を行うとすればより緊要ではないかという点を第一に考えました。第二には、今申し述べました生計費調査の結果ではありますが、やはり何といっても独身者よりも世帯持の方が生活の負担というものはかかるだろう、こういう点でございます。それから第三点といたしまして、私どもは、事業所得者、勤労所得者全部含めまして負担を考えました際に、現在個人企業と法人企業との間に負担のアンバランスがあると言われておりますし、また個人企業の中でも青色申告者と白色申告者の間にアンバランスがあると考えられております。このアンバランスの一番大きな原因は、家族労働者と申しますか、扶養親族の中で家業に従事しております者の労働報酬というものをいかに取り扱うかというところにかかっておるようでございます。帳簿のつけ方によりまして、法人企業になりますと給与所得になり、青色申告なら八万円までの専従者控除になり、白色申告者の扶養親族で家業に従事している者で四人目以下の扶養親族の場合には最低の一万五千円の程度にとどまるという点は問題じゃないか。先般来農業法人でしばしば問題になっておりますが、そんなような関係から見まして、なるべくならばその扶養控除を上げまして、その間の問題をできる限り解決したい、こういう意図もございまして、今般の改正といたしましては扶養控除の方に重点を置いたわけでございます。なお、配偶者につきましても、種々の最近の配偶者に対する見方も変って、単純な扶養親族と見るべきではない、配偶者につきましては税制上限界生計費の問題をまず考えるのが当然であるにしても、できるだけ基礎控除の方に近づけるという気持もあると思いますので五万円から七万円に上げる、こういうふうな考え方をとったのであります。そこで扶養控除を引き上げるが基礎控除はこの際がまんしていただくことにしたわけでございますが、今後の問題といたしまして、両者間のバランスがどうあるべきかは先ほど政務次官もおっしゃいましたように、税制調査会でなお検討して参りたい、こういうふうに考えております。なお、扶養控除の引き上げは、御存じの通り、控除の引き上げでございますので、低額所得者の方に減税の利益は多目にいくことは御存じの通りでございます。  第二点の、勤労控除を引き上げる意思はないか、こういう点でございます。ただいま御説の通り、四十万円まで二〇%、八十万円まで一〇%、最高十二万円の給与所得控除がございます。勤労者所得控除という名前では呼んでおりませんが、給与所得につきまして今申し上げましたような控除があるわけでございます。これにつきまして何といっても給与所得というものはガラス張りであって、源泉で待ったなしで取られる税金でありますし、現在におきますところの税務執行の実際の状況、あるいはまた事業所得者等におきまするところの課税の状況から見まして、所得の把握の差に着目して、その控除を引き上げるべきではないかという意見は強いわけであります。この点につきましては、種々税制懇談会においても検討を行われ、また今後においても検討を行うわけでございますが、一方ただいま先生がおっしゃいましたような勤労者控除という名前が出ましたように、中小企業者、あるいは農民についても働く者として控除を認めろという要求が非常に強いわけでございます。中小企業控除といたしまして、たとえば二〇%、最高六万円というふうな控除を認めろという意見があることは御存じの通りでありますが、このあたりどういうふうに考えていくか、非常にむずかしい問題でございまして、悪くいたしますと悪循環と申しますか、勤労者控除の、たとえば二〇%を二五%に上げますれば、また中小企業についても、あるいは農民についても二〇%の控除を認める、それではまた何のためにやったのかわからないということになりますし、その上減収額が非常に大きいということにもなりますので、これらは容易にとり得ないので、慎重に取り扱わねばならぬ。こういうようなつもりで、私どもといたしましては、今回の提案には給与所得控除の引き上げには、はかっていないわけでございますが、常々問題になります点でございますので、なお今後の税制調査会におきまして給与所得者、事業所得者、あるいはまた資産所得者、これらを通ずる税負担につきましてなお慎重に検討いたしたい、こういうつもりでございます。  最後に、退職所得控除について大幅に引き上げをはかる意思はないかという御質問でございますが、今回の改正につきましては、政府としては思い切って退職手当控除の大幅引き上げをいたしております。昭和二十九年以来最高の控除金額が五十万円でございますが、今度は最高百万円までというふうな控除金額の引き上げをはかっております。なお退職の原因が障害等に直接起因いたします際には、これに対しましてなお五十万円の加算というような若干手の込んだ控除の引き上げをいたしております。なお、この退職控除の引き上げの御趣旨が、おそらく先生の言われましたように退職所得というものは老齢者が今後の生活のために得る最後の所得である。そんなような関係から担掛税力がないというようなことで引き上げの要望が強いかと思うのでございますが、そんなような趣旨を加味いたしまして、年令が多くなってやめましたときには老齢者に多くの控除がいくような、たとえば四十才までの勤務年数につきましては三万円、五十才までは四万円、五十才をこえます勤務年限につきましては五万円、こんなような内容の特別控除の金額を設けたわけであります。今までは十年をこえますと一年ごとに単純な二万円でございました。そんなような配慮をいたしまして、退職手当につきましては倍程度の特別控除を行うことになったわけであります。これで足りるかどうかなお検討する必要があるかもしれませんが、現状におきましては退職控除につきましては相当な大幅な引き上げを私どもとしては御提案申し上げておるわけでございます。
  61. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次の法人税についてお伺いしたいと思いますが、中小法人に対する法人税の引き上げをさらに考えていないかどうか。たとえば五十万円以下の面については大体三〇%くらいにしようじゃないか、こういうふうに考えられるわけですが、そういう点はいかがですか。
  62. 塩崎潤

    説明員(塩崎潤君) この点も非常に技術的に税制上むずかしい点でございますので、私からお答えいたします。先ほども私が申し上げました説明の中に、税制上個人企業と法人企業間のバランスの問題があると申し上げましたが、現在、御承知のように、個人企業につきましては、ただいま申し上げましたような基礎控除、扶養控除を引いた後につきまして一〇%から二〇%の累進税率を適用することになっております。これが法人企業になりますと、大部分が給与所得になって、企業の所得がはずれまして、給与所得につきましては給与所得が認められましたほか、今申し上げました課税が行われる。なお、その残りの法人企業所得につきましては現行法人税法でございますと二百万円以下三三%、二百万円をこしますと三八%の法人税率を適用されることになっております。御存じの通り、法人成りという言葉がよく耳に入るわけでありますが、こんなような関係でどうも個人企業と比べまして法人企業の方が得になるのではないか、現在農業法人の問題がありますが、私は必ずしも農民が法人になった場合の方が税金は軽いとは思いませんが、場合によっては軽くなる場合がございますが、そんなような関係で法人企業と個人企業の形はなお問題でありまして、このような法人企業、いわば個人から転換しましたような法人企業について税率を引き下げることは、よほど慎重な考慮が必要であろうと思います。今回の事業税につきましては、個人につきましては十二万円の控除が二十万円に引き上げられる。法人事業税につきましては税率が若干軽減されておりますが、事業税一例を取り上げても、個人の方は二十万円差し引いた残りについて六%の事業税がかかりますが、法人になりますと、自分の役員の取る給与については全然事業所得税がかからない。こんなような関係から事業税をここに取ってみますと、どうも個人事業税の方が重いという関係がありまして、給与の取り方にもよりますけれども、軽々に法人事業税の下の方を下げるということは、よほど慎重な考慮がいるのじゃないか。今回御提案申し上げております税制調査会におきましては、企業課税のあり方といたしましては、法人企業と個人企業、青色申告者と白色申告者との関係等につきましては、根本的に一つ検討いたしまして、法律形態の差異による税負担のアンバランスをなくすることを御研究願うつもりを、政府としては持っておることを念のために申し加えさしていただきます。
  63. 千葉信

    理事千葉信君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  64. 千葉信

    理事千葉信君) 速記を始めて。  それでは政府委員出席の都合がありますので、本案につきましては本日はこの程度にとどめます。
  65. 千葉信

    理事千葉信君) 次は、国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律案国家公務員等退職手当暫定措置法の一部を改正す法律案、以上両案を一括して議題といたします。  両案につきましては、さきに提案理由の説明を聴取いたしたのでありますが、本日はまず両案の内容について補足説明を聞いた後、質疑に入ることといたします。  まず、両案の内容について説明を求めます。
  66. 岸本晋

    政府委員(岸本晋君) 国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律案の内容について御説明させていただきます。大体の趣旨は提案理由で申し上げました通りでございまして、今回のこの法律案の改正の眼目は、共済組合の長期給付制度を全国家公務員に適用する。昨年の国会で御採決いただきました共済組合法では、五現業の全職員と非現業の雇傭員にだけ長期給付制度を適用することになっておりましたのを、今回はそのほかの一般の公務員にも適用するということでございます。それに関連しての改正、その他技術的な改正を含めまして提案申し上げた次第であります、法律の形式といたしましては、この長期給付制度の全面適用に伴いまして法律が三つ、四つ改正を必要となりましたので、全部を一括いたしましての一本の改正法案という形で提案してございます。  まず第一条は、国家公務員共済組合法の一部改正でございます。この第一条のうちの、これが今回の改正法の一番の主眼点でございますが、国家公務員共済組合法の長期給付を全公務員に適用するという規定、これは三ページにございます。七十二条の改正規定でございます。七十二条の二項を、従来のしぼったときの範囲になっておりましたのを、全公務員に適用するとともに、一部の職員の方には適用しないということにいたしてございます。主として高給の特別職の職員の方につきましては、長期給付制度本来の目的から見まして適用を適当としないという観点から除いてございます。  第二点は、その附則で、警察職員等に対する長期給付の特例を設けたということでございます。これは十ページにございますが、本法の附則第十三条以下に新たにつけ加えられたものでございます。従来恩給法のもとにおきまして、警察職員等は十二年で年金がついていた、一般の公務員の十七年に対しまして年限的に短縮されていたわけでございますが、この措置をこの本法の適用におきましても当分の間の経過措置といたしまして、一般公務員の二十年よりは短く十五年ということで特別な年金の受給資格を作り、同時に支給率の上におきましても一般公務員よりある程度優遇するという措置を講じております。第一条のおもなる改正点は以上二点でございますが、その他この改正に際しましていろいろ従来の制度に若干手を入れたところがございます。その小さい技術的な改正の第一点は、公務災害に対します国庫負担の割合を引き上げたということでございます。これは現在の共済組合法の第九十九条の規定では公務災害によって廃疾になった場合の廃疾年金、あるいは公務災害によって死亡した者の遺族に対する遺族年金、これはともにその費用のうちの五五%は国が負担し四五%は組合員が負担する、こういういわば保険思想に相なっておりましたが、これの取り扱いを改めまして、第九十九条の第二項を改めまして、この改正法案の七ページでございますが、この九十九条二項を改めまして、公務災害に対する給付の国庫負担率を若干引き上げて大体全体の費用の七五%ぐらいに結果としては相なります。その程度の引き上げをはかったわけでございます。  第二点は、いわゆる退職年金の高額所得停止制度、これは現行の共済組合法にはございますが、いろいろ長期給付というものは保険的な性格を持っているという点にかんがみますと、やはりどうもそぐわない制度でございますので、この本法から落しまして施行法の方の規定に譲ることにいたしております。と申しますのは、現在の恩給法のもとで普通恩給の高額所得停止の制度がございますが、この制度を施行法の方に置きまして、過去に恩給公務員期間を有する方について引き続いて適用するという形に制限して、適用することにいたしたわけでございます。  第三点は、年金と一時金との関係が、いろいろ技術的に不備な点がございます。たとえば一時金の支給を受けてやめた、その後再就職して前後の期間を通算して年金をもらうという場合において、前の一時金をどうするかという措置が、若干遺族年金その他につきまして不十分な点がございますので、これをつけ加えたわけでございます。これは改正法の五ページの八十八条二項の改正がおもなるものでございます。以上がおもな技術的な点でございます。  なお、この国家公務員共済組合法に入っております地方職員の取扱いについて申し上げます。地方職員のうちで警察職員、教育職員及び都道府県の職員、この方々は現在この国家公務員共済組合法の附則によりまして、この国家公務員共済組合法に基く共済組合の組合員となるという形に相なっております。今回国家公務員につきまして退職年金制度を従来のいわゆる官吏及び雇傭員につきまして全員に適用するということになりましたために、地方職員についても同様の措置をとるかどうかということが問題になったんでございますが、地方職員につきましては、別途政府部内の総理府におきまして地方制度調査会というような委員会におきまして、この地方公務員の年金制度全体をどうするかということも今研究をいたしておる最中でございます。従いまして地方職員につきましての結論がまだ出ない、従って政府予算措置がとれないという関係で、地方職員につきましては、なお従前の通りの年金制度でゆくという趣旨のことにいたしてございます。つまり地方職員の雇傭員は長期給付の適用は従来通りございますが、吏員につきましては、なお従前通りの恩給法の準用あるいは条例による退職年金を支給するという形になっておる。それに伴いまして共済組合法の中の規定を適用するについてのいろいろな調整規定を設けております。これは四十一ページの以下にございます規定でございます。これが地方職員関係の取扱いでございます。  そのほかあとこまかい字句の修正その他ございますが、あまり細部にわたりますので省略させていただきます。  次に、この改正法の第二条でございますが、第二条は国家公務員共済組合法の長期給付の施行に関する法律の改正ということでございます。これは施行法は、国家公務員共済組合法は昨年制定されましたときに、その長期給付制度の、適用に伴って必要な経過措置を定める法律として制定されたものでございます。で、今回国家公務員のうちのいわゆる官吏に対しましての長期給付が適用となるということに伴いまして、この方々に対する経過措置がまず第一に必要になるわけでございます。この経過措置といたしましては、昨年五現業職員についてこの施行法の経過措置でとられたのと全く同じものを採用するという趣旨にいたしております。これは改正法の二十九ページに、「第八章を次のように改める。」として「恩給更新組合員に関する経過措置」というのが新たにできております。これでもって、五現業職員と全く同じ措置をとるということが規定してございます。同時にその章の中で、先ほど申し上げました警察職員等に対して特例の退職年令制度ができるということを申し上げました。それに伴いまして警察職員等につきましての特有の経過措置が必要になるわけでございます。この点も第八章の第二節以下でこまかく規定いたすことにいたしてございます。これは主として退職年金の受給年限が違うということ、支給率が違うというような点から、経過措置としても特別の規定が必要になるわけでございます。以上二点が第二条の施行法改正の重要な点でございますが、あとこの施行法関係におきましてちょっと問題になる点を数点申し上げます。  第一点は、先ほど申し上げました恩給法の例の普通恩給の高額所得の停止制度でございます。過去に恩給公務員期間を持っておられる方については、その高額所得の停止制度を引き続き適用するということにいたしてございます。これは、二十四ベージの施行法第十五条の改正規定の中に含まれております。  第二点は、共済組合の長期給付の決定をだれの名義でやるかという問題でございます。これは、四十四ページの、新しく施行法に設置しました五十七条の規定でございますが、共済組合の長期給付は元来共済組合で行う、共済組合連合会を組織しております共済組合につきましては、連合会の名義で行う、というのが建前でございます。しかし、今回は、施行法五十七条の改正規定によりまして、連合会の決定する長期給付については、当分の間その組合の代表者である各省各庁の長の名をもって決定することができる、つまり、年金証書の面の上に各省大臣の名前が出てくるという形にいたしてございます。これは、連合会は特殊法人でございます。一般の現業の共済組合でございますと、現業の共済組合の長は各省大臣でございます。その大臣名で年金証書が出るわけでございますが、連合会の場合はそれが入って参らないということで、いろいろ職員の方の気持もございまして、こうした制度にいたしたわけでございます。  次の点は、(長期給付の決定に関する事務の特例)で、その次にございますが、四十五ベージの施行法第五十七条の二という新設規定におきまして、やはりこれは連合会の長期給付の問題でございますが、連合会加入組合の組合員に係る連合会による長期給付の決定は、当分の間、総理府恩給局長の審理を経て行うことができるといたしてございます。これは、長期給付の決定権自体は、あくまで連合会自体にございますが、ただ、非現業共済組合員の場合に、過去に恩給公務員としての期間を持っておられる方が相当ございます。そういう方々の過去の恩給公務員としての期間に対する給付は、一応恩給法による既得権を尊重するという建前ででき上っております。従来恩給法の取扱いになれております恩給局の審理を経てあやまちなきを期したい、こういう趣旨でございます。  あとは、先ほど申し上げました地方職員のうちのいわゆる吏員の方については共済組合法の長期給付の規定は当分適用しない、先に譲るということにいたしました関係上、それに伴う必要な規定の改正を加えてございます。  その他、あとこまごまとございますが、これはすべて技術的な改正で、あまりこまかくなるので説明は省略させていただきます。  次に、改正法の第三条(国家公務員法の一部改正)が入っております。これは、御承知の通り、国家公務員法の第八節に、現在、恩給制度の規定がございます。しかし、恩給制度というものは公務員について今回の措置でなくなるということになりましたので、国家公務員法のうちの恩給制度の規定を改めて、新たに「退職年令制度」という規定を置いたわけでございます。公務員に対しては退職年金を支給する、その年金制度についてのいろいろな意見の申し出を、人事院が国会、内閣に対してすることができるというシステムにいたしてございます。改正法案の四十六ページにございます。この趣旨につきましては、公務員の新しい共済年令は、保険的な性格を持つ年金でございますが、しかし、他面、国家公務員という立場を考慮して、相当高いレベルのものが考えられるという面もございます。公務員の一つの職場の年金であるという意味や色彩を持っておるわけでございます。そういう意味で、公務員制度全体の立場からも、人事院としても何か意見が言えるようにしようというのがこの趣旨でございます。  以上、この一部改正法の本則にあがっております各条のごく大まかと申しますか、最も大切な主眼点だけを御説明申し上げたわけでございます。  なお、あと、この附則におきまして種々改正法の施行について必要な事項を規定いたしております。そのうちで最も重要なのは、五十七ページにございます改正法の附則第九条の(除算された実在職年の算入に伴う措置)でございますが、これは、御承知の通り、来年から、元の軍人、軍属等の恩給につきまして、その実在職年はすべて恩給期間に算入するという措置がとられます。従いまして、この共済組合の長期給付制度に取り込まれる方々も、過去の恩給公務員関係と同じ措置をとろう、旧軍人の経歴を持っておられる方については、実在職年は一切算入しようという趣旨の規定でございます。  以上、国家公務員共済組合法の改正の主要な点でございます。  次に、国家公務員等退職手当暫定措置法の改正の中身について申し上げます。退職手当法の改正の内容は、こういうことでございます。昨年国家公務員共済組合法が制定されまして、その長期給付の規定の通用を受けまする五現業の職員及び非現業の雇傭人につきましては、退職手当の支給率を約二割五分方引き上げることにしたわけでございます。これはどういうことかと申しますと、年金制度としまして、使用者としての国と公務員との折半負担という年金制度、いわば国の給与としての意味を持たない年金制度に改められたわけでございます。別途、退職時の給与としての退職手当の面につきましては、やはり民間並みにそのレベルを引き上げるという措置を昨年とったわけでございます。その引き上げ措置を今回長期給付の規定の適用になります非現業の官吏にも適用するという点が第一点でございます。内容におきましては、昨年の五現業の場合に引き上げたと全く同じやり方で引き上げておるわけであります。  第二点は、三公社の職員に対する退職手当の引き上げでございます。国家公務員等退職手当暫定措置法の適用対象は、国家公務員、公社職員ということになっております。国家公務員の退職手当の支給率を引き上げますとき、三公社職員の退職手当の支給率を同時に引き上げなければならないのであります。実は昨年の通常国会であるいは引き上げるべきであったのかもしれません。ただ、当時としましては、その引き上げ方についていろいろ意見が分れておりまして、最終の結論に到達しなかったわけでございます。今回措置法の改正法案に入れまして三公社の退職手当の支給率を引き上げるということにいたしておるわけでございます。その適用期日を五現業職員の場合と同様本年一月一日からということにいたしております。なお、この三公社職員の退職手当の引き上げ率は、若干五現業職員あるいはわれわれ一般公務員の退職手当の引き上げ率よりは下向きでございます。これは年金制度の面で公社の退職年令のほうが、五現業あるいは一般公務員の退職年令制度より内容がいいという点に着目いたしまして、退職手当のほうでは若干御遠慮を願うという筋にいたしてございます。  改正法案の中身は非常に技術的にごちゃごちゃいたしておりますが、主要な点は今申し上げた二点に尽きるわけでございます。
  67. 横川正市

    ○横川正市君 大蔵省の岸本給与課長出席されておりますが、第一段として実は国家公務員法の関係から、質問申し上げたいと思っておりましたので、その関係で答弁のできる方を、もし出席できる方がありましたら、この際要求しておきたい。
  68. 千葉信

    理事千葉信君) それではすぐ御要望の通りに取り計らいますので、差しつかえなければ、まず、岸本政府委員に対する御質問からお始め願いたいと思います。
  69. 横川正市

    ○横川正市君 まず、先ほどの補足説明の中にも出ておりましたが、国家公務員法の恩給制度の関係から、これを退職年金制度として法律の改正を行わざるを得なかったわけでありまして、この点では人事院の勧告が二十六年かに出されております。その勧告が政府並びに大蔵当局からは、おそらくこれは一顧だにされないまま、今度のこの改正法律案に形が全然変わってきたのではないかというふうに思うのですが、大蔵省としては、国家公務員法から関連を持っております公務員の恩給ないしは退職年金制度として、この改正事項で十分だ、こうお考えになっておるのでしょうか。その点をまず第一点としてお伺いいたします。
  70. 岸本晋

    政府委員(岸本晋君) 国家公務員法の規定と、それに基きます人事院勧告と、この新しい長期給付制度との関係をどう考えるかという御質問だったと思いますが、人事院勧告は昭和二十八年に出されました。その後政府はこれを放り出したわけではもちろんないわけであります。御承知かと思いますが、公務員制度調査会という調査会を政府の内部に設置いたしまして、この年金制度を含めまして、公務員制度全般をどうするかということを研究いたしたわけでございまして、その際に、この人事院勧告の恩給制度も、もちろんその検討の対象になったわけであります。ところが、その公務員制度調査会の答申として出て参りましたところは、公務員制度そのものが、建て方において、現行の国家公務員法の考えております公務員制度と相当異っておるわけでございまして、これを政府は一体どうするかということは、いろいろこれまで議論になったわけでございますが、公務員制度の根本改正という問題については、なお総理府においても目下検討中でございますので、これから先どうなるかという私の発発言は差し控えさしていただきたいと思いますが、年金制度自体につきましては、やはり今までのような恩給、共済組合という二本建ては、これはどうもむずかしい。特に現行の国家公務員法を前提といたします以上、この二本建ての年金を残すことはどうも意味がないということは、総理府としましても、大蔵省としましても、その点は意見が一致したわけでございます。そういう意味で年金制度の統一をはかる。その際、一体どういう形式の恩給で統一するかということは、もちろん議論の対象になりました。これは総理府あるいは関係各省と過去一年間にわたりまして、いろいろと研究いたしました結果、五現業あるいは公企体の場合と同様、共済年金にした方が公務員にとってはいいであろうという結論になったわけでございます。これに基きまして今回の法律案を提出いたして参ったのであります。人事院勧告を全然一顧だにもせず放り捨ててこれを出してきたという性質のものではございません。やはりこの間五、六年の間にわたりまして、いろいろな角度からの研究を行なって参りました結果としての法律案である、かようにお考えいただきたいと思います。
  71. 横川正市

    ○横川正市君 大体この法律案に対して、おもに性格上からくる反対意見がだいぶあるわけでありますが、これらの反対意見に対して、立案当局としてどう考えておるかという問題を二、三御質問したいと思います。まず第一点は、職員の身分の特殊性という点が非常に強く強調されておるわけであります。国家公務員法に定められた公務員の職務上、身分上の特殊の義務と、それから制限を受けておりますので、そういう関係から、一定期間非常に忠実に勤務しなければならない。しかも雇用主である国が使用人である責任と、それからそれに対する保障をするという、こういう立場からいきますと、互助組織のような、社会保険的なものでこれを実施するということは、これは従来の考え方からいきますと、間違いではないかという点が一点であります。  第二の問題は、この法律案が施行されることによりまして、今まで公務員が公務員としての職責を遂行する熱意の問題に対して、いささかこれは低調にならざるを得ない、こういう結果を招かないか。  第三点は、国家公務員法の先議の問題で、政府は今国会に国家公務員法を提出する、こういうふうに前国会では、相当責任ある立場から約束をいたしておりましたが、政府部内の意見の不一致等が災いいたしまして、今国会に国家公務員法が出されておりませんが、この国家公務員法が当然先議とされて、次に公務員の退職年金あるいは共済制度、恩給等の問題がいずれかに決するにしても、これは審議する、こういうふうにならなければならないのに、これが逆になっているが、この点についてはどうか。それから傷害、殉職、一般退職、こういうような問題等について、国が当然責任を負うべきであるけれども、これらをいわゆる組合にまかせてしまう、こういうことは間違いではないか。それから欧米等の先進国等で、国が使用する使用人に対する退職後の生活保障という問題は、今回政府がとろうとしているような方法はとられていないようだが、今度のこのような制度でこれを制定しようとすることは間違いではないか。さらに、政府が雇用する関係からいきまして、当然これは国が全額を負担をして実施すべきものであり、民間の会社等でも、全額その会社が負担をいたしまして、これらの老後の生活安定の制度というものを持っているんだが、国としては、当然これは民間会社等で行われておるわけでありますから、実施すべきではないか。  それから次には、財政上の問題でありますけれども、財政上の問題では、いろいろと理由があるにいたしましても、現行までは、恩給法によりますと、個人の負担が二%、その他はそれぞれ国が負担をいたしまして、三三・七%ですか、これを確立しておるわけでありますが、この掛金率の比率を最小限維持していくべきでありまして、今回の法案によりますと、その点が大きく個人負担の増額によってまかなわれておりますが、その点は国の雇用者としての責務と保障を、これを個人に転嫁をしたという結果にならないか。  最後に、新しい制度として、先ほど私がちょっと申しましたように、国家公務員法の百七条、百八条によりまして、人事院から勧告が出されておりますが、その勧告に従って、政府は少くともそれに全然似ても似つかない法案ではなしに、部分修正がかりにされましても、勧告の線に沿うてこれを実現すべきではなかったか、こういう点について、大体法案の提出に対する大蔵省の御意見を伺っておきたいと思います。
  72. 岸本晋

    政府委員(岸本晋君) ただいま御指摘になりました点でございますが、第一点の、国家公務員といろものは特殊な身分を持っておる、法律上特殊な義務あるいは法律上の制限を受けておる、こういう者に対する年金というものは、互助組織の年金ではいけない、国が責任を持つ年金でなければならない、こういう御指摘であろうかと存じますが、この年金制度というものを公務員制度と一体どう結びつけて考えていくかということになりますと、やはり年金制度も、国家公務員全体としての、公務員制度の一環であります任用でありますとか、給与であるとか、服務保障、身分保障、それからこうした退職金、そういうものを総合的に見まして、やはり公務員に対してのふさわしい処遇をする、その一環の役割を年金制度は果してもいいわけでございます。問題は、その場合に、一体互助組織という建前の制度がいいかどうかということでございますが、これは公務員に、おまえたち勝手にやれと投げ出したような制度で、掛金だけ集めてやったらいいじゃないか、こういう制度であれば、まさに国としては、やはり何か法で欠けるところがあるということになるわけでございますが、沿革的に共済組合というものは、互助組織ということで発達しては参っておりますが、昨年改正いたしました国家公務員共済組合法以後の共済組合制度というものは、やはり沿革的には互助組織であるが、中身としては単純なる互助組織ではないわけであります。国の負担もある、あるいはこれに対して、国の職員が、国の事務としてこの組織をやっている、あるいは国の施設の提供を事務所としてやっている、いわば国の行政事務の一部として、現在運営されているような形になっておるわけであります。そうした意味におきまして、国の国庫負担の面、あるいはそうした人的、物的の援助という面で相当肩を入れているわけでございます。同時に、これについて常に配慮を加えるという趣旨のことも、法律で規定いたしてございます。これは単なる互助組織というそれだけのものではもちろんないわけでございます。国としては、公務員の年金制度として、かなりの配慮を加えているということは申し得るかと存ずるわけでございます。  第二点の、こういう共済組合の互助組織の制度になると、公務員としての職員の能率が低下しはしないか、国が何か特別の年金を出す、そしてまた、よく長年忠実に勤務したら、俸給の何%の年金が出るという仕組みにしておけばよく働くのじゃないかということでございますが、先ほど申し上げましたように、公務員と職場の規律の維持とか、あるいはよく働いてもらうというような観点からは、年令制度だけに期待するのは、もちろん無理でございます。これはもともと根本の服務規律の問題にまでさかのぼる問題でございますが、それはそれといたしましても、一片の服務規律を前提にいたしましても、それに対する給与であるとか、退職金あるいは年金、あるいは身分保障、そうしたすべての公務員の処遇の点におきまして、一般の民間の勤労者等に比較して遜色のないものを作るということが重点になるわけでございます。そういう意味で、私どもは、この共済組合の今回の年金の内容というものが、公務員の特殊な服務規律の改正等において、非常に何かめんどうをみていない、非常にレベルの低いものをきめているというような考えは持っていないのでございます。内容としましては、かなり高度のものを持っております。実体的な、経済的な意味では、十分な保障はとれておると考えるわけでございます。ただ、共済組合という言葉の持つ語感でございます。何かこれからくる公務員の服務規律の低下ということを御心配になる向きもあるかと思うのでございますが、これは年金制度だけの問題ではない。これは恩給制度のもとにおいても、やはり同じようなことは別途考えられるわけでございます。ひとり年金制度だけの問題ではないと、かように私ども考えております。  それから、第三点の、国家公務員法の改正を政府としては予定しておるのじゃないか。それを済まさないうちになぜ共済組合の年金の統一問題だけを先に持ち出したかという御指摘でございますが、政府はどういう内容の国家公務員法の改正を予定しているか、あるいはそれをいつ提出するかという問題につきましては、これはまた、別途総理府の担当の政府委員の方からお聞きいただけば幸甚と存じますが、ただ、この共済組合の今回の年金制度を、この共済法によって統一するという考え方につきまして、これは一応総理府としての検討はむろん加えたわけでございます。ともかく年金制度としては統一する。しかし現状としては、こういう方法でいかざるを得ないということで、意見の一致は見ておるわけでございます。国家公務員法の改正が、これによってじゃまされるとか、先に延ばされるとか、そうした性質のものではないということは、総理府も確認いたしておるわけでございます。ただ、法案提出の形式的な前後はございますが、総理府の方で公務員制度の改正で予定いたしているものと、実体的には矛盾しない、かように考えまして提出いたしたわけでございます。  それから、第四点の公務災害の場合の傷害年金でございますとか、あるいは遺族年金、これは、共済組合の仕事としてやらせるのはおかしい、使用主として国がみずからやるべきじゃないかという御指摘でございますが、これは確かにそういう面もあることは事実でございまして、やり方としては、別途こういう場合の保障として、国家公務員災害補償法の制度がございます。そうした制度にこの年金を取り込むというのも一法かと存ずるわけでございますが、ただ、現在、国家公務員災害補償法は、一時金だけのものでございまして、これにこうした年金を織り込むということは、技術的にもなかなかむずかしい問題がございます。そういう関係で、今回は一応恩給を共済に統合する関係上、取りあえず共済の長期給付制度として取り上げるという形をとったわけでございます。もちろんその実行に当りましては、いわゆる公務災害の補償の実施機関であります各省各庁の長の意見というものを、十分尊重した上でやっていくということを制度的にもはっきりさせたい、そういう関係で、国が責任を逃がれて組合にまかせたのだということまでは、私ども言い切れないのじゃないかという感じでございます。国が、何もこれに対して負担をしないで、組合の相互の掛金でやりなさいということでほうり出したわけではないのでございます。やはり一応法律のワク内の制度として残しまして、それに対する国としての負担金も、先ほど申し上げましたように七割近く今度は負担することにいたしておりますので、実質的には相当なめんどうは、国としての配慮は加えておるということは、言い得ると思うわけであります。しかし、この点につきまして、制度的に共済法として将来残すかどうか、これは御指摘の問題もございますので、なお政府部内で十分に検討いたしたいと考えております。  第五番目の、こうした共済システムによる年金制度は、外国にはないのではないか、外国ではみな、国の特有な年金制度として、国が公務員のために特別な年金制度を作ってやっておるではないかという御指摘でございますが、これはまさにその通りでございます。しかしただ、外国と日本と異なりますのは、国家公務員の範囲が非常に違うということが第一、それが非常に大きな相違でございます。イギリスとか、ドイツあたりの年金制度を見ますと、公務員に対しまして無拠出の年金制度をやっておるというわけでございます。しかし、これは、公務員の範囲が非常に狭い、日本の現在の公務員でございますと、いわゆる昔の雇傭人、それから上は、一般職であります事務次官、そこまで引っくるめた全部の職員、いわゆる広い意味の公務員を対象にした年金制度を考えておるわけでございます。そうした広い意味の公務員年金制度を考えておるわけでございまして、そうした広い意味の公務員になりますと、そうしたうちの一部の職員を選んで、英・独等では、特殊な全額国庫負担の年金制度をやっておるわけでございます。それ以外の、日本のいわゆる昔の雇傭人の方あるいは、官吏の下の方に相当する方、こういう方に対する年令制度、これは社会保障制度として扱っておるというのが外国の実情でございます。そういう意味で、公務員制度自体が、非常に相違があるというのが、一つの点でございます。  もう一つは、外国では、公務員の福祉事業とかいう問題は、それほど年金制度に関連しては、問題になっていないのでありますが、日本の場合は、公務員に対するいろいろな病院でございますとか、保養所といったもので福祉事業をめんどうをみるとか、あるいは生活費の貸付をやるとか、こういうことは、国が雇用主の立場として、財政負担でやるということが、なかなかむずかしい状況にあるということは、御承知の通りであります。そうかといって、そういう仕事をやらぬわけにも参らぬのでございます。これは、そうした年金の積立金を使ってやっていくというのが、一番便利であり、また、確実な方法でありまして、その場合、共済組合という特殊互助組織をもってやっていくということは、どうしてもその面からは必要になって参るわけでございます。共済組合といいましても、先ほどるる申しましたように、国が責任をもって法律できめておる国の職員が、国の行政事務の一部として、厚生課とかあるいは会計課というところの仕事の一部としてやっておるわけでございます。名前は共済でございますが、実体は国営年金に近いものというふうにわれわれは、考えておるわけでございます。  第六点の、国が雇用主として、全額国庫負担の年金制度をやったらいいじゃないか、こうした折半負担というような年金制度でなく、全額国が持ったらいいじゃないか、民間会社でもそういう例があるという御指摘でございます。これはもちろん考え方の問題でございます。どういう年金制度を公務員に対してやるかということは、いろんなやり方はあると思いますが、しかし、これも、公務員の年金制度というものも、民間会社における一般の例というものをやはり参考にして考えるというのが妥当であろうかと思います。先ほど御指摘になりました民間会社で会社負担の年金制度というのがあるという御指摘でございますが、こういうところは割合数が少い、大多数はやはり退職金でまかなっており、年金制度としては、厚生年金保険等に加入させるというのが大多数でございます。それが一時金でなく退職金の形をとっております場合には、実際は退職手当の年金払いと申しますか、退職手当を一時に払いませんで五年とか十年に分けて払う、そういう形の年金制度というのが大部分でございます。そういうものと匹敵するものとしては、公務員の場合には退職手当の制度があるわけでございますが、これに見合う制度は、実質上の保証は公務員にもとられておるということは申し上げられると思います。年金制度は厚生年金保険に見合うところの保険制度としては年金保険、給与としての退職金は民間の会社でやっているのと同じような使用者負担のものを支給する、こういう考え方になるわけでございます。これは要するに年金制度の体系をどう直すか、何と申しますか、もう少しレベルの低いものにして、その代り国が全部持つということも一つの方法ではもちろんあろうかと思います。しかし、職員の掛け金を入れてももう少しレベルの高いものにしようというのも一つの方法でございます。私どもとしては、あとの方法をとっていきたいと考えております。  それから第七番目の掛け金が従来の恩給法では二%の納付金であったのが今回四%以上になる。非常に職員の負担がますのではないかという御指摘でございますが、確かにそういう問題はございます。掛金の負担というものは相当な公務員にとってのつらい問題ではございますが、しかし、これは先ほどと同じことを繰り返して申し上げて恐縮でございますが、年金制度は公務員の負担と使用者としての国の負担は相半ばする年金制度をとる。そのかわり退職金としては全額国庫負担という考え方で民間並みのものを出す、こういう建前にいたしたわけでございます。そういう関係上、年金制度というものはやはり折半負担という形をとらざるを得ない、退職手当を民間よりうんと下げる、その方だけを年金の方に国が注ぎ込んでいくという考え方ももちろんあり得ることはあり得るのでございますが、しかしこれは今の状態ではやはり退職一時金、退職金というものに対する需要が非常に強いのでございます。これのレベルを落して年金の方に回すということは、公務員の現実の経済生活の問題として不可能でございます。そういうことで掛金の、年金の方の掛金の引き上げはある程度がまんしていただく。その代り年金の内容もよくなる、同時に退職金も民間並みに引き上げる、こういう考え方に落ちつかざるを得ないのでございます。  最後の人事院勧告、公務員の年金制度の統一は人事院勧告の線に沿って立案すべきだ、勧告の中身に少々手を入れる程度で済むのではないかという問題でございますが、こうした方法ももちろん人事院勧告が出ましてから過去五年の間こうした観点からの検討ももちろんあったのでございます。しかし何と申しましても、人事院勧告通りにしたいという場合に支障のある問題は二点ございます。第一点はやはり退職金との関係でございます。非常に国の負担分が多い年金制度を出しますと、これはやはり官民のバランスという関係から退職金を民間より高いものに上げられないというのが一つの支障でございます。もう一つは、国営年金という形をとりますと、これは先ほども申し上げましたように、福祉事業に対する年金の積立金の還元という問題がやはりできない。これは共済という特殊法人組織によりまして、いわゆる財政法、会計法のワク外において運営していくということが必要になるわけでございます。一つは退職金との見合い、第二点は福祉事業との関連、こういう点から人事院の勧告を結果的に採用することができなかったと言わざるを得ないのであります。たとえば退職金の給付率、廃疾年金、こうしたものにつきましては、人事院勧告の率はそのまま採用しているということは申し上げられると思います。  非常に簡単で恐縮でございますが、以上のことを述べさせていただきます。
  73. 横川正市

    ○横川正市君 新しい制度を立案された趣旨が、現行法とそれから勧告とそれから三公社五現業の制度、これらとの関連で大まかにその性格がわかったわけでありますが、内容については、最初の国家公務員法との関連について質問申し上げてからあとで質問していきたいと思います。  そこで最初に国家公務員法との関係について二、三御質問申し上げたいと思います。これは最初におことわりいたしておきますが、私どもも必ずしも国家管掌でこういうようなものを作られることが歓迎すべきことだというふうには考えておらないのでありまして、あくまでも社会保険ないしは共済制度でその内容の充実をはかっていきたいということを考えているのでありますが、ただ法律の制定されている建前から見ますと、その点が非常に取扱い上政府として法律を無視した取扱いをしているのではないだろうか、こういうふうに思われますので、その点を御質問申し上げたいと思うのであります。  第一点は、国家公務員法が施行されてから十年たとうとしているわけであります。その法の下に人事院としての性格といいますか、この性格は、片やにおいては公務員としての身分上それから職務上、職責上支障ないような、少くともそういう環境を作ってやる努力、それから少くともその職務に忠実であったからということから将来の生活に対して不安なからしめるという、こういう措置をしなければならないということになっているわけであります。ところが、今もってこの点については、再々人事院とそれから一般行政との間では問題になりながら、これが取扱い上は事実上実施をみないで投げやりになってきた。その第一点は、人事院総裁と個別的に折衝を持ったときには、たとえば現在の制度上公務員という身分があって、その身分の下に事務員と事務官とに分かれて制度が作られている。これは規則によってそういうふうになり、定数によってその増減がはかられているわけでありますが、その元になっておりますのは、これは国家公務員法の趣旨にのっとりまして、現行実施をいたしております恩給法とそれから共済年金との関係から、共済年金適用者は事務員、恩給適用者は事務官という、いわばこの二つの法によって身分の区別をさせられたというのが、私は現行とられている非常に大きな矛盾ではないかと思うのです。そういう点から言いますと、人事院は勧告に基く、勧告をされた内容が政府において実施される、ことに政府の国会その他で口実として、公務員制度調査会を設けたことが、これがすべての口実になっているわけでありまして、その点は政府とともに公務員制度調査会の仕事の進捗、それからその結果というものがすみやかになされることは、これは責任上からいきましても当然のことだと思うのであります。これらがすべて現状解決されないまま今日に至っている。そこで制度調査室長にちょっとお伺いしますのは、国家公務員法に基きまして、二十八年に人事院が政府と国会に対して勧告をいたしております。その勧告をされました内容が、現在政府の手によっては全然国会への審議をする機会ないしは審議をするような方法をとらないで、公務員制度調査会の方へほとんど一任された形になって、あなたの方からの結論を待って政府はこれに対して善処をする、こういうことになっております。なるほど、一度制度調査会の方から公務員制度についての大綱は項目別に答申がされておりますが、全然これは実施をされるに至っておりません。そういう状況に放任されて今日に至っておるのでありますが、これは、あなたの方の怠慢なのか、それとも、別途それは理由があって今日に至っておるのか、その点を一つ明らかにしていただきたいと思います。
  74. 増子正宏

    政府委員(増子正宏君) ただいま御指摘のありましたように、公務員の退職年金につきましては、今までいろいろないきさつがあるわけでございますが、最初にこの問題につきまして一つの時期を画しましたのは、お話しのありました二十八年における人事院の勧告でございますが、この勧告の内容につきましては、すでに御承知のところだと存じますので、省略いたしますが、この勧告を政府として受けましてから、これに対する措置をいかにするかというのが実はただいまもお話しのありました公務員制度調査会の審議の一つの題目であったわけであります。すなわち、内閣といたしましては、公務員制度全般の問題と関連いたしまして国家公務員に対する退職年金についての具体的な対策というものを調査会の答申に期待をいたしたわけでございます。その結果、公務員制度調査会は、昭和三十年に一応答申をいたしまして、調査会はその後廃止されて今日に至っておるわけでございますが、調査会の答申は、退職年金につきましての考え方を示したところによりますと、実は人事院の勧告とは多少違ったことになっておるわけでございます。すなわち、公務員制度調査会の考え方といたしましては、現在国家公務員法に基きまして国家公務員とされておる政府職員の内を分けまして、いわゆる狭い意味の国家公務員と、それから、それから除外さるべき単純労務とかあるいは臨時職員というものを指摘しておるのであります。現在、国家公務員とされておる者を二つのグループに分けまして、狭い意味で国家公務員とされた者につきましては退職年金制度を設け、その内容は大体人事院の勧告を予想したものを思われるのでありますが、他方におきまして、国家公務員から除外される単純労務職員等に対しましては共済組合制度によって年金制度を行うことが適当であるという意味の答申をいたしておるわけでございます。すなわち、退職年金制度につきまして、現存の政府職員について言うと、二本立ということになるわけでございます。その点で、人事院の考え方あるいは現在の公務員法の考え方と非常な違いを示したわけでございます。政府といたしましては、この調査会の答申を受けましてから、その後鋭意全般的な問題とあわせまして具体的な改正法案の検討作業を続けて参ったわけでございますが、退職年金の問題と直接関係いたしますこの公務員の性格、範囲の問題が非常に困難な問題となってきたわけでございます。調査会の答申の趣旨に従いまして現行法におきましては一律に国家公務員とされておる者から国家公務員より除外すべき者を具体的に制度化いたしますことは、私どもも非常な困難を感じて今日に至っておるわけでございます。いろいろと作業いたしまして、それぞれいろいろな案を作ったわけでございますけれども、そのいずれにつきましても関係省と具体的な協議を重ねて参っておりますが、最終的な結論を得ていないわけでございます。従いまして、今日の段階で申し上げますと、調査会の考え方そのままによって公務員を二分するということは、実現は非常に困難だというような考え方をいたしておるわけでございます。そういう意味におきまして、退職年金制度も従って具体的にはそういう方向では手をつけかねたのが実情でございます。しかるに、一方におきましては、この退職年金制度の問題につきましては、御承知のように、三公社等の退職年令が独自の共済組合制度によって行われることになり、また、次いで先年の国会で御審議いただきましたように、五現業の職員の年金制度というものにつきましても焦眉の急として取り上げられて参ったわけでございまして、それらの具体的な経過につきましては、今さら申し上げるまでもなく、退職年金制度につきましては共済制度によるべしという御意見が従来非常に多数であり強くなって参ってきておりまして、そういう形の中に今回の改正法案が出るということになったわけでございます。従いまして、私どもといたしましては、公務員の退職年令制度の合理化といいますか、そういう問題につきましては、かねてからいろいろと検討し努力をして参ってきたわけでございまして、それを、今日に至ってもなお調査会の答申のそのままの案が出ないことがもし怠慢であるというふうにお考えになれば、あるいはそういうことになるかもしれませんけれども、政府といたしましては、いろいろな問題をあらゆる角度から検討し、そうして今日において御審議を願っているような結論に達したということに御承知をいただきたいと思います。
  75. 横川正市

    ○横川正市君 最初にどうも逆から質問を始めたものですから、少しおかしくなりましたが、人事院総裁が来ておりますので、総裁に二、三お伺いしたいと思うのであります。公務員法の百七条とそれから百八条によりまして公務員の恩給制度の目的がそれぞれうたわれておる。それによりますと、あなたのほうではその機能を十分発揮されまして、保険数理上も基礎的にも健全な内容を具備され、それから当面公務員に必要な制度として去る昭和二十八年にこれらの法案を整備されて国会にこれを勧告をされたのではないかと思うのでありますが、あなたのほうでは、その後もうすでに六年、七年という歳月を経ておるのでありますが、あの答申は生きていると、こういうふうにお考えになっていらっしゃるのですか、それとも、もう死んでしまって効力がないというふうに思っていらっしゃるでしょうか。現在の政府は、給与その他一般の問題については、人事院の勧告を尊重するという建前で運営されておりますので、人事院の建前が死んだと思っておられるならば、これは別問題でありますが、生きているということになりますと、政府とあなたのほうとの関係は、一体この長い年月どういうふうに処置されてきているものか、その点を一つ明らかにしていただきたい。
  76. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 人事院の勧告は、死んだとは思っていないのであります。これは、人事院が取り消さない限り、人事院といたしましては、あの勧告をまあわれわれに関する限り、いいものだと思って勧告いたしたわけでありまして、今日もなお勧告は生きておると私はさように考えております。もちろん、あれは勧告ではなくて、意見の申し出とか調査の提出とか、こういうふうになっております。これは実質上勧告も同じことであると思っております。
  77. 横川正市

    ○横川正市君 そうすると、現在の岸内閣以前から、人事院の行いました当然の法に基く政府に対する勧告を含めて答申された場合には、それは尊重するという建前に立って、現在までそれぞれ取り扱われてきておったと思うのでありますが、この制度の改変に対して、もうすでに相当長い年月をたっておるのでありますが、その間はこれは人事院としては拱手傍観、答申のしつぱなしという状態で現在になっておるわけですか。
  78. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 人事院の権限といたしましては、この公務員法にありますように、勧告をいたしたに終るのであります。しかし、もちろん勧告をいたしました以上、これを実現させるということは、これは人事院の使命でもございまするので、今回共済組合法によるこの退職年金制度が起って参りましたときに、私は特に岸総理大臣に面会を求めまして、人事院の勧告の線を申し上げ、考慮を願った次第であります。
  79. 横川正市

    ○横川正市君 大体この人事院の勧告が現在までその取扱いについて、政府考え方は、一面公務員制度調査会の仕事の一部としてその結論を待って、人事院の勧告を生かし、すみやかに公務員の退職制度に対しては確立したいと、こういう約束がなされておったと思うのであります。そこで人事院としては、あなたの方で調べられたものが、この法律をたてにとるわけじゃありませんが、非常に皆さんが持っております機能を相当発揮をされまして、自信をもってその内容を整備されて、その整備された内容が、おそらく建前からいいますと、事前に云々するということはありませんでしょうが、少くともこれは実施をされるであろうというある程度の確信をもって、政府にこれを出されておったんではないだろうか。たまたま公務員制度調査会では、公務員制度全体に対しての意見は出されませんでしたが、政府は三公社五現業、そして一般公務員と今度の場合には退職年金制度をこれを三つの段階に分けられて、相当日時をおいて現在最終段階に至っているように思うのであります。あとは地方公務員その他に関係がありますが、大体国家公務員の関係としては、これで全部が適用を受けるということになるわけでありますが、これに対しては人事院としてはほとんど意見という意見は持たずに、政府に対しおまかせをしておったと、こういうことになるわけですか。
  80. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 人事院の立場は勧告に出ておりますし、また、私も岸総理に対して人事院の立場を申し上げておるのであります。人事院の勧告と、今回出ております法案と最も大きな違いは、その一番根本な点にあると思うのであります。人事院といたしましては、永年在職の公務員に対しましては、国家の給付としての退職年金制度、これは恩給という名前であると何であるとを問わず、それが与えらるべきだと、かような立場に立っております。今回出ておりまする案は、公務員の相互扶助の観念に立っておるのでありまして、これは人事院の考え方が違っている。しかしながら、人事院はみずから法案の提出権はないのでありまするから、これは政府におまかせするより仕方がないと思います。人事院としては人事院の立場を、すでに勧告いたし、申し述べておる次第でありますが、違いはその国家の一方的給付としてみるか、あるいは退職年金というものを相互扶助の観念に立った共済組合方式によるか、これが考えの一番の違いであります。実際給付の内容として両者を比較いたしますればそう大差はない、もらうものはそう違いはないだろう、ただ掛金の方がこの法案の方が多い、人事院の方は少い。しかし、この法案は、同時に退職手当の制度を改革いたしまして、そちらの方をよくするという、こういう考え方が入っておりますから、内容としてみればこれは大した違いはないだろうと、こういうふうに考えております。
  81. 横川正市

    ○横川正市君 内容の関係は、私があとでいろいろ質問する問題に関係はして参りますが、要はこの国家公務員法の百七条ないし百八条に明確にうたわれておりまして、しかもその中には「人事院によって運用されるものでなければならない。」と、法は明確に定めているわけなんです。そこで、私はこの現在までの三公社五現業の実施段階では、三公社五現業の使用者側も職員側も、こぞって共済制度を実施してもらいたいということを国会にも陳情し、その点では積極的な行動もあったわけであります。そうなりますと、私の質問をしたいことは、法律建前で百七条、百八条にのっとって人事院は勧告をしたけれども、その後の客観的な情勢が相当程度変ってきた。しかも、もうすでに実施をされた段階では、非常に労働法としては、その適用を異にしておりますが、五現の場合には、明らかに人事院の任用その他の範囲内にあるわけであります。そういう範囲内にあるものが、人事院の勧告を、これのこのいわば前提にはあきらめがあるかもわかりませんが、実施をしてもらいたいという意思を投げ捨ててしまって、そうしてこの共済制度によるところの退職年金制度の制定を急ぎたいと、こういうことは、言いかえれば、これは今のこの法律事項であり、人事院の考えた前提条件としての国家管掌といいますか、その制度に対して、少くともこれは私は反対の結論になってしまう。それに対して人事院としては、依然としてあの勧告が生きているのだから、その勧告を実施してもらいたいということを政府に要望する、これにとどまるのか、それともこれらの問題については、もっと積極的に、人事院としての建前から、現行いろいろな面から意見があるわけです。政府内部にも私は二つ、三つの意見があると思う。それから事実上退職をされた公務員の皆さんからも意見があるわけです。そういう意見のあるものに対して、人事院としては、いわば新しい角度から、この問題に対して、明確な態度を表現する必要があるのじゃないか。そうでなければ、これは座して待って、いわば政府では人事院をなくしたいという意思が相当強いようにも見受けられるのでありますが、それを唯々諾々として受けてしまっている、こういうふうに伝えられても、考えられても、これはどうも抗弁できないのじゃないか、ことに人事院の建前からも、たくさんの公務員の皆さんが、相当期待と、それからいわば声援を送って、人事院の存続に対しては、過去はいろいろやってきているわけですから、そういう建前から考えてみても、私はこの際あなたの方では、この問題に対してはっきりした態度を表明する必要があるのではないかと、こう思うのですが、その点はどうですか。
  82. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 一番最初に仰せられました、国家公務員法によりますれば、新しい年金制度は人事院が運営しなければならぬ、人事院が所管官庁になっておる。しかし、この点は私はすでに衆議院におきましてもあまり固執しないと、私どもはこの人事院方式によるところの退職年金が与えなきゃならぬということは、国家公務員の利益のために言っておるので、人事院の所管を争っておるわけではないのですから、これはどこの官庁へ所管となりましても私はかまわないと、こういうことはすでに申しておるわけであります。ただ根本に違うところは、さいぜん申しましたように、国家の一方的給付か、共済組合の制度か、こういうことに帰着するわけであります。人事院といたしましては、以前勧告いたしましたように、国家の一方的給付の制度がいいと思っておりますけれども、これはいろいろ考え方の問題があるだろうと思いまするから、私はこれは最終的には国会の御判断に待つほかはないと思っておりまするから、これ以上人事院といたしましては、特に人事院だけでなるべく積極的にやろうというような考えは持っておりません。
  83. 横川正市

    ○横川正市君 そうすると、昭和二十八年に勧告をして相当年月棚ざらしになって、そうして事実上国会では一度の審議もされておらない。また将来これはされる見込みはないというその法律案を、まだあなたの方では生きておると称して、そうして依然としてそれを支持すると、こういうことで、まあ今の答弁からは理解されるわけなんです。そうではなしに、どのようにこの公務員制度が改正され、その中から人事院がどういうような改組をされるか、これはまあおそらく政府の次期国会等に出る公務員制度の改革案を見なければ明確ではありませんが、依然としてまだ人事院に対して多くの期待を持って、そうして少くとも政府機関からは独自な立場に立って公務員の一切を所管してくれる官庁として、まことに日本の行政事務に携わる多くの公務員の身分上の保障とか給与の決定とか、その他一切を、公平審議までを入れてあなたの方で担当しておるわけですから、そういう独自な機関というものが生きてこなければならん。私は言いかえますと、これは政令が、二〇一号ですか、あれが出て、公務員の全体的な職員としての団体行動、団体交渉権、罷業権等、これらを当時の歴史的な過程から取られてしまって、今はまあすべてよりどころとすれば人事院によりどころを求めて、今まで職員団体構成しながら、曲りなりにも雇用者たる政府との間で話し合いをしてきておるわけです。そういう立場に立っておる公務員に対して、私は改正の中の一部を見ますと、人事院の作られた経過はこれを抹殺してしまって、そうして人事院が政府との間に独自な立場をとって公務員側を守るという立場というものを、これを改正してしまう、こういう結果になりそうな気配もあるわけであります。それは私は公務員全体にとっては非常に大きな問題点だと思う。さらには、今まではむしろ判任官とか、高等官とか、勅任官とか、そういう制度があったに類似するような巷間伝えられる内容まで出てきて、いわゆるこの官吏制度の民主化というやつが逆行するのじゃないかという危惧まであるわけです。そうなってくると、いちずにこれは人事院に相当程度期待をかけて立ち直ってほしいという声も自然起ってくるのではないかと思うのです。あきらめてしまって、一般的にもうだめだというふうなことになっては、これはやはり相当重要な問題が介在するのじゃないかと、こう思われるわけであります。そこで、私はたまたまこの問題と関連をして、他の幾つかの政府が改正しようとする公務員制度の問題にもこれは当然影響する問題として、法律事項としての百七条、百八条がもう少し生きた形で運用され、政府がこれを認める、同時に公務員の福祉にもなる、こういうふうにもっていくことが正しいのじゃないか。そうなれば、あなたの方が六、七年前に考え考え方が当面入れられなくなってきているのだから、そういうことから新たにこれは考えてみる必要が当然現在では要請されているのじゃないかと思うわけなんです。そこで、その点について御質問したわけなんですが、もうその点は人事院としては投げてしまった、こういうふうにこの際あなたの方の答弁からとれるわけですが、そういうふうにに理解をしていいわけですか。
  84. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 御質問の中にいろいろな問題がありますのですが、第一に仰せられました人事院の改組云々という問題でございまするが、これは今日のところまで実現されていないのであります。これは人事院創立以来十年になりまするが、人事院の改組ということは、一度も今日まで実現していないのであります。これはただいまの御質問の中に将来の問題がございますが、これはわからないのでございますけれども、われわれといたしましては、将来といえども、人事院が国家公務員の保護機関としての職務が全うし得るような態勢を主張するということは、これは当然のことであります。  第二点といたしまして、何か公務員の民主化に反対するような傾向の改正がなされるやに聞くというようなお言葉がありましたが、さようなことはわれわれは知らないのであります。おそらくさようなことは実現の可能性はないように思っております。  第三番目の問題でございまするけれども、これは人事院といたしましては、従来通り国家の一方的な給付制度をよいと思っておりまするけれども、この国家公務員法の百八条の末項に掲げてありまするように、その成果を国会及び内閣に提出すると、これだけの権限しか人事院は持っていないということは御了承願いたいのでございます。これ以上をどうするかという問題につきましては、これは国会及び内閣で考えていただくより仕方がない。これ以上は人事院は主張する法的根拠がないのでございまするから、それでさように申したのでありまして、これで人事院はすべて投げてしまったとかなんとかいうことではないのでございます。
  85. 横川正市

    ○横川正市君 最後に簡単に客観情勢は、まああなたの方の案はおそらく精神的にも内容的にも事実上実現をされないまま、別の形で法律案が出てきているわけです。問題になりますのは、先ほどちょっと総裁がまだお見えにならない前に、この法律案に対しての反対の約七つか八つばかりの意向がずいぶん出ておるわけなんですが、その意向からいきますと、一部ではやはり国家管掌を要望するという声もあります。これはまあ退職された公務員の方々からの御要望だと思うのです。それはまあ私も無にするわけにいかないのであります。そこで全体的には政府機関は勧告、答申を無視するような内容のものが出てきている。それから一部ではこういうような、要望もある。しかし大勢は三公社五現業ともに共済制度でこれを実施している。こういうような客観的な情勢と、もう一つは、政府部内にもいろいろと私は意見があるのではないかと思うのでございます、巷間耳にするところではですね。ですから、そういう現状というものを把握いたしますと、勧告してからもう相当年月をたったものがなお生きておりますといって、これを主張するということで、人事院の持っております使命とか任務といったものが遂行されるのか。それとも客観情勢をもう少し別な意味から判断をしてもらう、時間もたったことですから。そういうことから人事院として新しい角度からこれらの問題に対して前回のやつが生きているとすれば修正をするのか。あるいはまた、新たな観点から一言ものを申すとか、こういったことがあってしかるべきじゃないか、ただこうやられたものをそのまま出されっぱなしで、現在棚ざらしになっておるんでは、それは生きておりますよというだけで、人事院として果して責任か何か果されたかどうかということを、非常に疑問に思っているわけです。それで質問しておるわけです。そういう点で一つ最後にお答えをいただきたい。
  86. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 結局、最後のお言葉を承わっておりますと、人事院は考えを変えろ、かように承わるのでありますけれども、われわれといたしましては、やはり従来から、この退職年金制度は国家の一方的給付と、こういう形で、これは技術的な問題はいろいろ考え方もありましょう。さようなことはまあ末端の問題です。最終的には、やはり国家の一方的給付がよいと思っております。しかしながら、ただいま仰せられたように、いろいろ共済組合制度が実現しつつある。従って、これはどちらがよいかということは、われわれとしてこれ以上申し上げない。この際人事院が態度を改めた勧告をするとか、あるいは何かするというようなことは、ただいまのところ考えておりません。もうその時期ではないのであります。すでに法案は衆議院を通過し、参議院の段階に移っておるのでございますから、これは国会において御判断を願うよりしようがないと思っております。
  87. 横川正市

    ○横川正市君 ここまでいくと、それでは私は、少くとも人事院としては現在出されておりますこの共済制度が、これは本心はあまり賛成しないのだけれども、もうここまで基礎ができてしまったのだからやむを得ない、やむを得ないということも、人事院としては国会に意思表示する何らの権限もないから言いませんといえば、それまでですが、大体人事院の機能としては、国家管掌でやりたかったけれども、事実上はもう国家管掌といってみても通らなくなったから、現在国会で審議されているものについては、暗黙にこれを了承するというか、認めざるを得ないというか、そういう態度ですか、こうとっていいわけですか。
  88. 淺井清

    政府委員(淺井清君) さように仰せられると、まことに身もふたもない話になってしまうのであります。われわれとしては、われわれの意見をさいぜんから申し上げておるのであって、何もこれを暗黙に承認するとかしないとか、そういうことを言っているのではないのです。人事院の考えはどうだということでありますから、われわれは、国家公務員法に従って、国家の一方的な給付でいいと、すなわち従来の勧告の線を今も変えていないということを申し上げただけであります。
  89. 横川正市

    ○横川正市君 まあ、人事院のお考え方は、少くとも私どもは、この法律案審議するに当って、法律事項として、当然人事院の勧告を政府は実施すべきだと、こういう建前から、強くこの点は主張して、ひいてはこれは将来国家公務員法改正の時期に相当まあ影響するところ大だと実は考えているわけであります。しかし、総裁の答弁の中からは、相当程度時勢の変ったことを大体認識をされたような答弁がありまして、まあ、身もふたもない質問はこれ以上続ける必要はないと思いますが、あとは一つ公務員制度調査会の方へ質問を譲りたいと思いますので、総裁にはこれでよろしゅうございます。
  90. 千葉信

    理事千葉信君) 横川君に申し上げます。先ほどから佐藤総務副長官出席を要求しておるのですが、まだお見えになりませんし、松野総務長官も外出中という御連絡ですから、本日は大体これで散会して、次回に譲りたいと思いますが、御異議ないでしょうか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 千葉信

    理事千葉信君) それでは、本日はこれをもって散会いたします。    午後三時二十五分散会