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国務大臣(
愛知揆一君) ただいま御
質疑の問題は、法務
委員会におきまして、ただいま当該の法案を十分御
審議願っておるわけでございます。それで、その点を私今詳しく申し上げますと
相当時間がかると思いますから、簡単に要点だけまずお答えをいたしたいと思うのであります。その第一は、裁判官の報酬についての
法律案の作成の途上におけるいろいろの経過が、私ここで裁判官諸君が出されたその
意見書に対してとやかく
意見を申し上げるわけではないのでありまするが、十分に
政府といたしましては、
検討に
検討を加えまして、裁判官の立場というものも十二分に尊重をして、そうして事務的には最高裁判所事務総局との間に完全に
意見の一致を見て、その意思表示が最高裁判所の裁判官会議で了承を受けて、手続的にも何らのそごなく法案の提出に至ったわけでございますから、その間の経緯が、事直に申しますると、事務総局側から第一線の裁判官の諸君に、その苦心の存するところが十分に浸透していなかったのではなかろうかと思われる点もあるわけでございまして、ただいまお読み上げになりました点は、その経過や立案の趣旨というものに、非常な誤解というか、あるいは御存じなかった点を一方的に誤解なさっている点があるのではないかと私は思うのであります。
それから報酬の
内容の問題につきましては、従来は、御承知のように実額も、
判事と検事は天井が一本になっておった。他面において、一般国家公務員の天井と検察官の天井とも、今回はまた天井が同じ額になっておったわけでございます。従って、
判事と検事だけの
関係を
考えれば、あるいは最初立案の途上における一案というものが、
判事と検事が同額になってしまって困るではないかという
意見もあったことは、これは当然に無理からんこととは思いますけれども、同時に、
判事と検事だけの開きということを強調するのあまり、検察官の方が一般国家公務員よりも逆に下に下げられるというようなことになっては、これは、そういうような意味においては、検察官の立場においても了解ができないということにもなろうかと思うのであります。従いまして、
昭和二十六年以来のやり方を改善いたしまして、裁判官については、検察官や一般国家公務員の到達し行ざるところの特号俸というものをそれは差は二千円にすぎませんけれども額を上に上げて、そうして
判事の、何といいますか、優位性ということを保つということにいたしたわけでございます。
それからその
判事さん
たちの書かれたものについては、先ほどお読み上げになったようなふんまんを漏らしておられるのでありまするが、実は、
法務省が、検察官がおさまらないからというてそういう案を作ったのではなくて、財政当局の立場からいっても、特号というものを特に
判事のために作る、これが
法務省の
意見だったのでありまするが、その際は、何とかして
法律の上で、
判事は優位であるにしても、たとえば六十三才以上の者とか、一号俸二年以上の者とかいうことを、むしろ
法律の上に書いてもらいたいというのが、財政当局の意向でありましたものを、
法務省が中に立ちまして、そういうものを
法律の上に付くというのは穏当ではないという
見解のもとに、これは
法律の上に書くことはやめた。それが
政府の意向ということになって、
法務省の係官から事務総局の方にそういう話が行ったことが、
法務省は検察官のことばかり
考えているから、そういうことになったのだという誤解があるのじゃないかと思うのであります。私、今日でもそう思うのでありますが、その請願書でありますか、決議書を書かれる前に、むしろできれば
判事諸君と私が
責任者として十分その経過その他私どもの
考え方を聞き取るだけの心の余裕、時間の余裕をお持ち下さいましたならば、こうやって開会に御迷惑をかけることがなくて済んだのじゃないかと、私はこう思っているので、その点は非常に残念に思うのであります。
それから、これに関連して
法律の
提案権の問題が、御
質疑の中にあるわけでありますが、これは前の当
委員会において
津田政府委員から申し上げましたことが、
政府としての確定解釈でございまして、ここに繰り返して申し上げることは省きたいと思いますが、私はこれは裁判の独立といいますか、司法権の独立という点、それから新憲法によりまして最高裁判所には、
法律等が憲法に適合するかしないかを決定する権限、いわゆる違憲の審査権が与えられているという点から申しますと、新憲法の精神というものは、裁判所が何らかの形で国会の立法活動に参与するという法制は、新憲法の錠前からとるべきでない、こういうふうに
考えるわけでございます。
それから全体に通じて私の所見を率直に申し上げますならば、今回の経緯にもかんがみまして、
法務省としては少くとも最高裁判所の事務総局との間に、感情を抜きにした、もっと融和した話し合いというものをできるようにしてやっていかなければならないと、これは私は痛切に感じたわけでございます。今後におきましては、
法務省が司法の両翼ともいうべき裁判と検察との間の少くともアドミニストレーシヨンというような
関係におきましては、十二分に感情を抜きにしました率直な話し合いをもっともっとすべきじゃなかろうか。私は
自分がこの地位におりますから言うわけじゃございませんが、
法務省は御承知のように
検察庁だけを代表しているのじゃございませんで、法務
行政の全般を担当いたしているわけでありますから、私の今後においてとるべき道は、少くとも事務総局との間にもっともっと緊密な
連絡をとらなければならない、そうして政治的な立場におきましても、この両者がほんとうに緊密一体となって、いわゆる予算とか、給与とか、営繕とか、そういったようなことに裁判官諸公もわずらわされないで、
法務省に十分話がしてあるから
法務省を信頼できるという立場において、
国民の信頼を受け行るようなりっぱな裁判に専念してもらう、特に当面のところにおいては、裁判の遅延を解決するというところに裁判官諸公の
努力がこの上とも集中されるようにしたい、これを私は今回の経験にかんがみまして、最も
重点を置いてやつて参りたいと、かように
考えているわけでございます。