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1959-02-12 第31回国会 参議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月十二日(木曜日)    午前十一時十九分開会   —————————————   委員異動 二月四日委員近藤鶴代辞任につき、 その補欠として苫米地義三君を議長に おいて指名した。 二月九日委員安井謙辞任につき、そ の補欠として山本利壽君を議長におい て指名した。 二月十日委員山本利壽君、横川正市君 及び高瀬荘太郎辞任につき、その補 欠として野本品吉君、江田三郎君及び 森八三一君を議長において指名した。 二月十一日委員野本品吉君、江田三郎 君及び森八三一君辞任につき、その補 欠として山本利壽君、横川正市君及び 高瀬荘太郎君を議長において指名し た。 本日委員宗雄三辞任につき、その 補欠として井野碩哉君議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    理事            松岡 平市君            山本 利壽君            千葉  信君            田村 文吉君    委員            大谷藤之助君            佐藤清一郎君            堀木 鎌三君            松村 秀逸君            伊藤 顕道君            矢嶋 三義君            横川 正市君            八木 幸吉君   国務大臣    文 部 大 臣 橋本 龍伍君    国 務 大 臣 高碕達之助君   政府委員    内閣官房長官  赤城 宗徳君    内閣官房長官 鈴木 俊一君    憲法調査会事務    局長      竹岡 憲一君    科学技術政務次    官       石井  桂君    科学技術庁長官    官房長     原田  久君    科学技術庁企画    調整局長    鈴江 康平君    科学技術庁調査    普及局長    三輪 大作君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   説明員    憲法調査会会長 高柳 賢三君    日本学術会議会    長       兼重寛九郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠互選科学技術会議設置法案内閣提出、  衆議院送付) ○憲法調査会法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 千葉信

    理事千葉信君) これより内閣委員会を開会いたします。  委員長御所用のため、委員長の委託によりまして、私が委員長の職務を行います。  委員異動がございました。去る二月四日近藤鶴代君が辞任され、後任として苫米地義三君が委員に選任されました。  また二月九日、安井謙君が辞任され、その後任山本利壽君が選任されました。以上御報告申し上げます。   —————————————
  3. 千葉信

    理事千葉信君) それではこれより議事に入ります。  まず、理事辞任の件についてお諮りいたします。  去る二月九日大谷藤之助君より、文書をもちまして、都合により理事辞任いたしたい旨お申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 千葉信

    理事千葉信君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  つきましては、この際理事補欠互選を行いたいと存じます。互選方法は、前例によりまして、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 千葉信

    理事千葉信君) 御異議ないと認めます。それでは理事山本利壽君を指名いたします。   —————————————
  6. 千葉信

    理事千葉信君) 次に、科学技術会議設置法案を議題といたします。  本案につきましては、さきに提案趣旨説明を聴取いたしておりますので、これより本案質疑に入ります。  政府側からは、科学技術庁長官並びに石井政務次官出席されております。その他原田官房長鈴江企画調整局長三輪調査普及局長出席をされております。  御質疑がおありの方は、順次御発言を願います。
  7. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この法案について二、三お伺いしたいと思いますが、日本学術会議は、この法案の前の法案が出されましたときには、相当強い反対の態度を、また意見を示しておったわけです。その意見については、私どもも幾つかの共鳴点を持っておったわけでございますが、この学術会議意見を前の法案にどのように取り入れたか、具体的に承わりたいと思うのです。
  8. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 前に提案されたときに、日本学術会議反対意見があったことは事実でございます。今回の私ども提案いたしております科学技術会議というものは、もっと広い範囲におきまして、田全体の意見を総合的に調整いたしていきたいというのが趣旨でございます。もちろん、日本学術会議の御意見等は一番重要なる御意見としてこれを採用してそれを審議するということが目的であるわけでして、いろいろ今まで日本学術会誌方々とも技術的に事務的に折衝いたしました結果、今日においては大体御了解を得ておるようでありますが、なお詳細の点は、政府委員から御説明申し上げたいと思います。
  9. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 御説明申し上げます。学術会議の方で反対をされました理由といたしまして、この科学技術会議議員といたしまして、学術会議の方から出る方が明記されていないという点でございます。その点が第一点でございます。その第一点について申し上げますと、その後向うといろいろ話し合いました結果、やはり学術会議会長議員にした方がいいだろうというお話がございまして、政府側もそれを了承いたしまして、今回法律第六条の第五号でございますが、日本学術会議会長というのを議員として入れることに明記いたしたわけでございます。その点が一点でございます。  それから第二点といたしまして、第二条の第一項第四号でございますが、前回におきましては第四号の条文のまくらに、「前三号に掲げる事項に係る日本学術会議への諮問及び日本学術会議答申又は勧告に関すること」ということになっておったわけでございますが、学術会議の御意見としまして「前三号に掲げる」ということであっては、やはり範囲を限定されるおそれがある。従ってこれを「前三号に掲げる」ということを除きまして、広く学術会議への諮問及び学術会議答申勧告に関するものということを入れていただきたい。ただそのうちきわめて事務的なものもございますので、そういうものは除きまして、従って「重要なもの」と限定いたしましたけれども範囲を広めるということに意見が一致いたしまして、「前三号に掲げる」という字句を取りましたわけでございます。条文といたしましては、この二点でございます。  なお、学術会議側の御意見として、さらに運用の面に当っても、学術会議と密接な連絡をとるような機構考えてもらいたいという御意見でございましたので、いろいろ考えました結果、この会議には専門部会を置くことができるようになっておりますので、その部会一つといたしまして、学術会議との連絡に当る部会を置くということにいたしたいと思っておるわけでございます。この措置につきましては、先般、現在ございます科学技術審議会におきましてその方法を諮りましたところ、科学技術審議会意見の一致をみたわけでございます。その科学技術審議会委員といたしましては、総数二十七名のうち九名が学術会議から選出された委員でございます。学術会議の各部長が入っておりますし、また、学術会議会長も入っておられます。こういう方々が全員御賛成になっておりますので、その方法が最もよいのではないかというように考えた次第でございます。
  10. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この科学技術会議構成を見ますと、総理議長で、以下議員には大蔵、文部とか、経済企画庁長官科学技術庁長官、それと日本学術会議会長が今御説明のように入っているわけですが、最後の「科学技術に関してすぐれた識見を有する者」これは総理が三名任命することになっておりますが、こういう構成と、たとえば原子力委員会、これとちょっと比較してみますと、原子力委員会常勤がたしか四名だったと思う。この場合には、常勤が二名になっているわけですが、そういう常勤が二名くらいで所期の目的を十分達成することができるかどうかという点、これが一点、それから三名の議員の選任については、全国民的な視野で任命されなければならない、こういうふうに考えられるのですが、この任命についてはどういうふうな心がまえでやるのかということと、それから常勤任命の二名の議員処遇、これは国家公務員法規定する各種委員会委員になろうと思うのですが、それで間違いないかという点、この三つの点についてお伺いしたい。
  11. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 原子力委員会は現在全部常勤ではございませんで、非常勤の人もおるわけでございます。それで、この科学技術会議の方は、当初学識経験者四名といたして、そのうち二名を常勤、他を非常勤という大体原子力委員会構成と似たような考えを持っておったのでありますが、先ほど申し上げましたように、学術会議会長任命してもらいたいというようなお話がございましたので、非常勤の一名を削りまして日本学術会議会長といたしたわけでございます。この非常勤議員任命につきましては、これは長官からお話があるかと思いますけれども、私ども科学技術に関しまする最高の権威を持った方、やはり科学技術そのものの、希望といたしましては科学技術に関する一つの深い分野も御承知であり、しかもまた、科学技術の全体についての見識をお持ちになっている方、そういったような方をお選び下さることを希望しているわけでございます。  それから、ただいまの処遇の点のお話がございましたですが、給与につきましては、常勤議員につきましては特別職給与に関する法律によりまして規定されておるわけでございますが、一カ月七万五千円ということになっております。非常勤の方につきましては、一日三千円ということになっております。
  12. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 政府では、重要施策一つとして、科学技術振興ということを揚げたわけですが、かつて予算編成に当っては、閣議においてあまり熱意がなかったというふうに漏れ聞いておるわけですけれども、そういうことであったのかどうかということと、これを設けて一体どれだけの実効をねらっておるのかということ、こういう点をお伺いしたいと思います。
  13. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私は実はごく最近兼任いたしたわけでございますが、当時の閣議模様等におきましても、これは非常に必要性があるということは、私どもも確認した一人でございます。必要性のいかんということは、今日まで科学技術というものについて、政府としてはあまり理解が深くされていなかった。ただ経済の一部分での科学技術、こういうふうな認識が一般に深かったのでありますけれども、最近の科学技術進歩というものは、非常な勢いで進歩している。これはやがては科学技術というものが政治原動力になり、経済原動力にもなる、そういうふうなことから、これをもっと国全体として強く取り上げていかなければならない。それには、基本的の研究大学でやっておる、そのほか研究機関等もあるが、これらの研究機関等大学研究機関等も総合的に基本的にやること、そうしてもっと長期的に計画すること、それでその中の相互関係を調節していかなければならぬ。それには、科学技術庁が現在持っておるところの科学技術審議会等ではこれはだめだ。これはやめちまって、これは内閣に置いて、もっと強力なものとして進めていこうじゃないか、こういうことで一千万円の予算をとりあえず計上いたしたわけであります。
  14. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この科学技術会議が設置された大きなねらいは、行政施策総合開発総合調整、そういうことであったと思う。しかし、このことは、従来の科学技術庁所管権限としても当然なされてこなければならなかったかと思うのですけれども、従って、科学技術庁に、前に審議会があったわけですが、科学技術審議会運用上で特に問題でもあったのかどうか、そういう点をお伺いしたいと思います。
  15. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは、各省大臣なり、特に大蔵大臣、そういう方面方々もよくこれに入ってもらわなければならぬ、そういうことで、今度各省関係大臣議員に入ってもらう。それがためには、これは科学技術けが主管するよりも、むしろ内閣に置いて範囲を広くする必要がある。これは主として予算関係等が伴うものでありますから、そういう意味で、従前の科学技術審議会をかえて、これにしたいと思うわけであります。
  16. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 科学技術会議が発足した場合ですね、長期的かつ総合的な研究目標としてまず何を取り上げて、どういうふうに具体的な構想を持っておるのかというこの点、まだこまかい点についてはきまってないでしょうが、大体の大綱について承わりたいと思います。
  17. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) それは主として大学なり、それからただいま現存しておりますところの日本学術会議等関係をよく持って参りまして、その方面から提出されたものを、今回成立いたしますところの科学技術会議にかけまして、そこにおいていずれを重点的に置くか、いかなる方法でやるかということは、科学技術会議において決定していきたいと存じておるわけであります。
  18. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 科学技術会議目標が確立されて、それと同時に各省庁の専管事項としての研究目標があろうと思う。この各省庁の専管事項としての目標、この関連はどういうふうに考えておるか。また、その推進はどういうふうにしようとするか。
  19. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 科学技術会議においては、各省専管事項は取り扱うわけではございませんで、各省にまたがる問題につきましてその調整を行うのが任務でございます。しかしながら、現在の科学技術の進展を見ますると、一つの問題でありましても、なかなか一つの省だけで推進することができない問題が非常に多いわけでございまして、各省に非常に関連のあるものが多いわけであります。これらを総合的に促進するということになりますと、どういたしましても、各省調整をはかりますには、共同歩調をとってそれを推進するということになるわけでございますので、従いまして、この会議にかかりまする研究課題が非常に多いのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  20. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この科学技術振興政策推進していく場合、その基本策定の力点を、一体どこに置くかということ、それとまた、予算的な裏づけですね、特に予算編成の際どの程度にこれは考えられておったか、そういうような点は非常に大事な点だと思う。こういう点についての所見を伺いたいと思う。
  21. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) ただいま科学技術庁で作業いたしておりまするが、私ども考えといたしましては、やはり経済再建あるいは社会福祉というものをねらいといたしまして、現在の産業構造なりあるいは現在の研究分野において、いかなるものをもっと伸ばさなきゃならんかというようなことを、ただいま検討しておるわけでございます。なお、日本学術会議におきましても、基礎研究振興という立場から、基礎研究振興をさせるために、どういった機関をさらに作らなきやならんか、あるいは、どういう方面を伸ばすべきかという意見を持っておるわけでございまして、こういったそれぞれの意見をこの会議にかけましてこの間の調整をはかって、国としての一本化いたしました計画に持っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  22. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 一昨年来、西欧陣営においては、科学力のプールということが問題になっておると思う。特に軍事科学の面においてこういうことが強調されておると思う。そこで、具体的には、この科学技術会議運営について、たとえば、自衛隊で開発研究を進めておるGM開発ですね、こういうような点との関連はどういうようになっておりますか、この点を伺いたい。
  23. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 防衛兵器そのものに関しては、これは防衛庁専管事項でございますので、この科学技術会議において審議はする必要はないと思います。ただ、今お話がございましたGMの問題につきましても、一方、平和目的といたしましては、地球観測の問題もございますし、あるいは、高層の気象の観測等からいいまして観測機の問題が今必要に迫られております。そういたしますると、結局、高速飛翔体というような見地から、それに対します推進、あるいは流体力学空気力学といったようないろいろな問題があるわけでございまして、そういった共通的な分野は、大学においてなり、あるいは科学技術庁の航空技術研究所なり、あるいはそれぞれのところで研究をやられておりますので、そういったものを総合的に研究をするというときには審議されるわけであります。ただ、それを兵器に使うかどうかということにつきましては、これは防衛庁の問題でございまして、科学技術会議の問題にはならないと思っております。
  24. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 昨年旧法案が廃案になりまして日本学術会議との折衝の結果、学問の自由の保障ということが問題になったと思うのです。また、昨年たしか九月だったと思いますが、そのころの開議学問の自由を尊重する、そういう閣議了解がなされたと思う。ところが、結局憲法も、教育基本法においても、学問の自由の保障に関する規定があるから、この法案には特に規定を設けないでもいいんだ、そういうふうな結果になったことと思う。しかし、このことは非常に重要な点であることだし、明確な規定を設けた方がよろしいのではないか、こういうふうに私も考えるのですが、この点についての考え方を、大臣にお伺いしたいと思います。
  25. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは閣議で、科学技術運営に当っては、大学学門研究の自由を尊重するということを閣議で決定しております。この法文には出ておりませんが、趣旨は私は科学技術というものの根本の方針である学問の自由ということは、もちろんでありますし、同時に私どもが叫びたいことは、技術研究世界的にやはり公開されるべきものであるということは、これは私ども理想として進んでいきたい。経済問題とかいろいろな点でできないことでありましょうが、私どもはやはり学問というものは自由、世界的の技術というものに関する限り科学技術というものは公開さるべきものである。そうして共通であるべきものだ。こういうことの方針でもって進みたいと存じております。
  26. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 民間における科学技術開発の、また振興方向ですね。こういう点との関連も十分考えられなければならない。そういうことになりますと、結局産業技術水準推進、こういうことも非常に大事なことと思う。そこで、これらの関連性については、どのように考えておられるか。
  27. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは各省関係大臣科学技術会議の中に入っておりますから、それらの意見をよく聞くことになっておりますが、できるだけ民間研究機関とも連絡をとって、そうして国全体としてこれを一本に考えていって、総合的に考えていきたいと、こういうふうに思っております。
  28. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今申し上げたことと同時に、国民全般科学に対する水準を高めていく、こういうことも今非常に大事な問題になっておるわけですけれども、従来世論をかもし出す政策がほとんど考えられていなかったように、私ども考えておるのです。今後この点についてどのように考えられておるのか、こういう点をお伺いしたい。
  29. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) もちろん科学技術振興というものは、政府だけがやっておっても、これはとうてい推進することはできないのでありますから、国民全体にこの科学技術の必要だということをよく了解せしめて、そうしてこれの推進国民全体が当るという方針を持っていきたいと思っております。
  30. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 これは諮問機関でありますけれども諮問のない場合ですね。絶えず研究していくために、常勤二名と専門員というようなものが設けられていると思うのですが、こういう点についていわゆる諮問のあったたびに並行して、やはり常時常勤二名等を中心にいろいろと検討はなされるのか、諮問だけにただ答えるだけなのか、そういう点について明確にお答えいただきたい。
  31. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) もちろんこれは行政上から申しまして、総理大臣諮問機間になっておりますけれども、これは各方面意見をよく総合いたしまして、常勤議員は、常に国全体の科学技術振興についてよく心がけて推進していくということは当然であると思います。
  32. 横川正市

    横川正市君 まず第一に大臣にお伺いしたいのでありますが、科学振興について、古い時代においては、防衛産業中心にして日本産業発展というものが、一つの戦争というものを区切りとして発展をしてきた。これは世界の例もその通りなんであります。ですから、私たち科学振興というものが、そういう国のエネルギーというものを全部投入して、そうしてただ勝つことに目的を持たせる。こういうところに科学振興があったということは、これはやはり改めるべきだろうということを考えるわけなんであります。そこで、ことに日本の場合には、平和産業の興隆、これは中小企業中心として平和産業を興隆していく、それから観光事業をもっと活発にしていこう、あるいは私はもっと一番大切なのは、後進国の非常に多いアジア、東南アジア等を含めて、技術輸出日本がその役割を果す。こういうふうな方向に、日本科学技術発展というものを期していかなければならぬと思いますが、そういう考え方から、今度のこの科学技術会議設置法の性格その他を見てみますと、どうもやはりそこ生で本腰を入れておらないという気がするのでありまして、大臣としては科学技術庁なんというような、こういう機構上の問題で機構いじりをするのではなくて、本格的に省に昇格をさせて、そうしてこれらの大きな使命を果そう、こういう考え方があるのかどうか。もしあるとすれば、その点についてお答えを願いたいと思います。
  33. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お説のごとく、現在の世界科学技術振興の根源をなしておったのは、防衛産業というものがいつも先頭に立って、それが科学技術進歩を引っぱってきておったという事実はあるわけでありますが、今後わが国といたしましては、平和ということを第一に置いております関係上、世界の進んでおるところの科学技術を、いかにして平和産業へこれを導入すべきかということにもってくる一方、現在までの科学技術というものは、明治、大正を通じて外国の技術をそのまま持ってきて日本産業振興するという経済的の目的が大であったようでありますけれども、これにも誤まりがある。そうしてその当時十分の基礎研究をする学者たちを対象にして、これを象牙の塔に閉じこましめて、あるいは本人もそれに閉じこもるというふうな状態であったということは、まことに悲しむべき現象でありまして、今後の科学技術というものは、平和目的のためにいかにこの進歩しつつある科学技術を取り入れて、それが政治のもととなり、それが経済のもととなるというふうな遠大なる思想をもって進んでいきたい。これの第一歩といたしまして今日科学技術庁はあるわけでありますけれども科学技術庁等はこの進運につれて逐次省にもしていきたい、こう存じておりますが、何しろ問題は内容を充実するということが第一でございまして、その内容を充実するためには、相当の予算を取らなければならぬ。そういうふうなことのためには、今度の科学技術会議内閣総理大臣のもとにおいて各省の連中も皆入って、そうして大理想に向って進んでいく一つの端緒を開きたい、こう存ずるわけなんでございます。
  34. 横川正市

    横川正市君 方法的に、一つ目的があって、それに近寄るために今回の措置がとられたというふうに御説明があったわけでありますが、私は今度の設置法の要綱の各条を、ずっと現在各省に分散をいたしております科学技術関係の部門について、これを照し合せながら見てみますと、どうも今度のこの科学技術会議というものは、各省間にあるセクト性を少しばかり地ならしをして、そして幾らかためになるような上部機関というようなものを作ろうと、こういうような非常にこそくな考え方で作られたのではないだろうかというふうに受けるわけなんです。その第一は、目的及び設置の中に、総理府に附属機関として科学技術会議を置くのだというのが、これがまあ目的になっておるわけであります。これは私は他の同じような性格のものから見ますと、たとえば防衛会議なんかのものは、これは防衛庁設置法四十二、四十三条にのっとって防衛会議が持たれた。その防衛会議の持っております性格を見てみますと、国の防衛に関する項目五つが、それぞれ防衛会議できめられて、国の大本がきまっていく。これは私はその形からいきますと、この設置法そのものもこういう格好にならなければならないものではなかろうか。ですから省に昇格させるということが、現在の段階で非常に無理だといたしましても、私はこの政府の熱意の入れ方が、科学技術庁の中に、少くとも設置法の改正を行いまして、そして総合的な施策が、小さいなりにもまとまった方向というものを出していく、これが私は一段階進めていくとすれば、その方向をとるべきではないか、こう思うのでありますが、大臣はどうお考えになっておられますか。
  35. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 今回のこの科学技術会議設置法案等は、お説のごとく、こそく的だということは私ども同感でございます。しかし、まずこれをもって発足して一応総合的にやって、さらにこれはもっと大きくする、もっと強力にするやはり一つの第一の階梯としてこれはある方がいいだろうと、こう存ずるわけでございまして、これをもって私は今の私ども理想が実現できるとは考えていないわけなんです。
  36. 横川正市

    横川正市君 大臣が認めておるような段階だから、漸進的に完全なものにしていきたいということで持たれたのだといたしましても、これは改正の法律なんですから、科学技術庁設置法を改正して、その中に少くとも系列のはっきりした形で科学技術振興をはかっていく、そういう機関を持つべきじゃなかったかという私の質問なんですが、その点についてはどうですか。
  37. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) ただいま大臣が申し上げましたように、現在の科学技術庁機構におきましては、まだ不十分な点が多々あることは、私ども非常に感じておるわけでございます。けれども、しかし各省といたしましても、それぞれ科学技術に対しまする振興ということをやっておりますので、これをまず総合的にいたしまして、ばらばらでなく、総合的な目標に向って協力一致の体制を作るということによりまして相当改善し得るのではなかろうか。まず、この点に向ってこの会議が非常に効力を発揮していけるというふうに感じておる次第でございます。
  38. 横川正市

    横川正市君 ちょっと納得いかないのは、たとえば文部、通産それから予算関係大蔵というような、そういう各官庁に科学振興の問題について協力をしてもらわなければならないから、その上に総理大臣一つ乗っけて機構を作っておけば、大体あまり文句も言わせないでまとまっていくだろうという、こういう考え方が、この設置法の中に非常に強く出ておって、本来の科学振興のためのまとまり方というものについて、どうもやはり政府のものの考え方というのが、この設置法について出ておらないのじゃないか、そういう点をお聞きしているわけなんですが、これはおそらく大臣からお答えしていただいた方がいいと思います。
  39. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) まず、なんでございます。今のお説のごとく、やはりこの科学技術庁というものがもっと主導権を持って、そして今の理想を貫徹するようにいくということも必要でございましょうが、まず最初、大学大学でやっておる、ほかの官庁はほかの官庁でやはり同じようなことをやる、こういうものを一応国として全体に取りまとめていって、必要性を感じたときに今度は予算措置が必要であると、こういうまず総合的にやろうというのが、今回のねらいであります。それの第一歩としてやっておる、こういうわけであります。
  40. 横川正市

    横川正市君 今の説明でも私はちょっと納得しませんが、これは私の言っておることをおわかりになっていただけるなら、私はやはり何かこうぼうばくとでっかいものを作れば、それで意見がまとまるだろうというような作り方でなしに、やはり科学技術庁という単独の機関が作られておるのでありますから、その機関に、たとえば文部省の関係であれば人材をどういうふうに養成してもらいたいというようなことは、私は文部省といろいろ話し合いで作られていくんじゃないか。予算の問題もそれなりに国の方向がはっきりすれば、大蔵大臣との間でいろいろ解決もつくものであろう。ことに、通産省のよりよいものを作りたいということでいろいろ個々に行われております研究機関その他というものがありましても、これは私は技術庁の研究したものを、これをそういうような小さい個々に行われておるものに協力してやるような考え方があれば、私は大体連係その他というものはうまくいくんじゃないか。ただ、根本問題は、科学技術そのものが国のエネルギーを全部投入して、そして防衛産業によらざる平和産業の中で進歩というものをはかっていくという考え方が、一体政府にあるのか、この点が重要問題だ。そうなれば、機構だけを作るのではなくて、単独省の中に不十分であっても、しっかりした系列のものを作って、そうしてそこで研究をし、振興をはかっていくと、こういうことでなければ、実際上作ってみたけれども、忙しい人たちがおざなりにいすに坐っただけで、実際上うまくいかないのじゃないだろうか、こういう懸念を私は持っておるわけです。だからそういう点で、さらに一つ政府においても検討していただきたい、こう思います。  それから第三の問題は、これは技術会議の兼重さんの方から出ております問題でもありますが、私は研究に対してでき上ったものをどうこうするということよりか、作る前にあらゆる頭脳を動員して、アイデア、研究の究極をきわめていくことは非常に大事でありますから、つかまえどころのないところに、相当いろいろなあたたかい思いやりというものが必要だと思うのです。同時に、これは人材の養成の問題が、これはまあ個人の努力によって、そして持ち出した頭脳を持っておる者だけがある段階から、ぽつっと科学関係の部門に入ってくるんだと、こういう人材養成でいいのか、それとももっと根本的に、三才にして人間の性格ができるとかいわれるくらいなんでありますから、科学技術について本腰を入れるとすれば、人材養成というものはもっと根本的な施策が必要ではないかと、こう思うのでありますが、その点について大臣の御意見を承わりたい。
  41. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私は考えますのは、やはり何をやるにしても、人間というものがもとでなければならぬ。ところが、今日まで日本の進み方につきましては、官庁といわず、民間といわず、科学技術研究する、特に基礎的な研究をする人たちが黙々としてやっておる、これをよく認めなかったということが、非常にたくさんあると存ずるわけでございまして、そういう意味から申しましても、また技術者諸君が、実際社会に出たときにおいて、ほんとうにその努力に対する報酬が正当に払われておるかどうかということを考えてみたときに、今まで技術者はほんとうに報いられていなかったという感じがするわけでございます。学校教育にいたしましても、ソ連が今日理工科の方が七に対し、文科系統が三であるというにもかかわらず、日本においては、理工科がわずか二であって、文科系統が八になっておる、こういうふうなところにも、やはり相当誤まりがあるかと思っておるのですが、そうすれば多数の科学者が、学校から出て、大学から出てきたときに、社会がほんとうにこれを受け入れるかどうか、それだけの態勢ができておるかどうかといったことが、また問題になる点でありますから、今回はこの設置法におきましてこういう機関ができますれば、それでよく検討いたしまして、学校の教育はどういうふうにすればいいか、あるいはまた待遇等におきましても、技術者の待遇は、文科系統の人は課長になれる、局長になれるが、技術者はなれないということになれば、その役付に対する同じような待遇をし得るように、今後、科学技術庁中心になってやっていくというように、人というものを根本的に考えてやっていきたいと思っております。
  42. 横川正市

    横川正市君 大体、文部大臣の所管にも関係するわけでありますから、私はあとで文部大臣出席されてからお聞きしたいと思いますが、要は、一番最初に申し上げましたように、日本のこれから当然とらなければならない施策として科学技術の問題と、それから今度のこの設置法の持っておりますこそくな一つの段階だけを踏むことによって、おそらく満足はしないでありましようけれども、当面はこういう形で出されたということに対して、私どもとしてはもっと国の方向として根本的な問題を出してもらって、そうして、こういうことは私ども反対すべきものではないのでありまして、全面的に協力すべきものであると思っておりますから、そういうことで政府としても努力をしてもらいたい、こう考える次第であります。以上で質問を終ります。
  43. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私は科学振興ということの必要性は、むろん認めておるわけであります。同時に行政機構がいたずらに複雑になるということには賛成できない、問題は実効を上げさえすればいい、こういう観点でお尋ねする次第であります。今回の科学技術庁設置法を改正して、科学技術会議を設けて、四人の民間人をこれに加える、こういう法案でありますが、先ほどからの質疑応答を伺っておりましても、長官は、科学技術振興ということには、非常に必要性をお認めになっているということはよくわかるんですが、この民間人を入れた会議をなぜ作らなくちゃならぬかという点については、ただ引き継ぎ事項といったような印象を実は受けるわけなんであります。と申しますのは、元来科学技術庁そのものが、総合調整機関として生まれたものでありまして、御承知かとも存じますが、科学技術庁設置法の第三条には、科学技術に関する行政を総合的に推進するというのが、この技術庁設置の本来の目的であるわけであります。ところが、この総合調整機構としては、すでにこの科学技術庁の中の機関として科学技術審議会というものが、現在すでに設置されております。それから事務的の機構としては、企画調整局という事務局が中にございます。この法案と多少違いますけれども、第二十八国会でこれが提案されたときの経過を顧みますと、そのときのこの審議の経過で私が受けた印象では、文部大臣をこの会議のメンバーに入れて、そうして大学関係をスムースにやろう、大蔵大臣一つ加えておいて、なるだけ予算を取るのに便利にしようといったような、つまり逆に申しますと、大臣政治力が非常に弱いから、こういうもので補強工作をして、結局においては科学技術振興のために力をいたそうといったような、政治目的的な意図が多分に実はうかがわれたわけであります。しかし私どもとしましては、これは屋上屋を架するものである、行政簡素化の趣旨に反するものである、まずこういう考えを持っておったわけであります。それから私の申し上げたいことは、文部大臣なり、大蔵大臣なり、あるいは経済企画庁長官なりがメンバーになるというなら、内閣の中に、科学技術に関する閣僚懇談会をお作りになって、そうして当面の責任者である技術長官が熱意を示して、閣内のことはそこで一つおきめになる。それから民間人の意見を聞くならば、科学技術庁には顧問制というものがあるのですからして、顧問に任命する、これは非常に大きな……、法文に書いてあるのですけれども、要するに常勤民間人を二人入れるということなんですから、その二人を顧問に任命して、そうして主体は科学技術関係閣僚懇談会で大綱をきめる、そうして内閣が責任を持つという点にウェイトを置いたならば、あえてこういったようなぎょうぎょうしい、屋上屋を架するような機関を設置しなくても、目的は十分達することができる。この三十四年度の予算は一千六百数十万円でありますけれども、その金は、むしろ科学技術の方の末端の研究費の足らぬところへ、少しでもよけい予算を回してやるという方が、究極において目的を達するのじゃないか、初めからこれは高碕さんがこの方の担当大臣であられるなら、こんなことは実はお考えにならなかったのじゃないか、途中で引き継がれたから、仕方なしにやっていらっしゃるけれども、もっと実業家的な有効適切な金の使い方なり、機構のあり方があるのじゃないか、先ほどもお話しになりましたように、この機関を作れば、閣内における科学技術のPRになる、また、国民に対しても、一つのPRの効果があるというふうなお話がありましたが、私はその効果はなるほどあるだろうということは考えますけれども、本来からいえば、科学技術庁のために予算を取って、それを末端で実際に、第一線でやっているという人に金を回してやるということの方が、そうしてその大綱は、内閣の中で責任をもっておきめになるということで十分じゃないか。それでこういう会議を作って、何か科学技術振興されたように思うのは、これは官僚の考え方であって、単刀直入にものを長くおやりになった高碕さん自体の考えらしくないという感じを、実は私は持つのでありまして、そういったような屋上屋を架するようなものは、なるたけやめて、もっと実効の上るような方向にやった方がいいのじゃないかというような考えを持つのですが、ごく体系的な御答弁でけっこうですから、私の考えに対してお答えをいただきたいと思います。
  44. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私自身よりももっと深くこのいきさつを御存じの八木委員からの御質問でありますが、私はこう考えております。今回のこの科学技術会議というものは、屋上屋というお話しでありますが、これが発足いたしますれば、従前科学技術庁の所管でやっておりました科学技術審議会というものは、これは当然解散してしまうべきものである、ところが、今まで審議会というものをいろいろながめてみますと、ただいすを作って、各方面の人に来てもらって、そうしてただそこでおざなりの審議をするというだけにすぎない、多数の人がただたくさん寄るだけの話で、実際の仕事はできていない、こう思うのでありますから、その意味から申しまして、今度はきわめて少数の人でほんとうの仕事をやってもらおうじゃないか、その点につきましては、私はこれは非常にいいと思っておりますことと、それから第一の問題は、予算とか何とか言いますけれども大学との関係、文部省との関係というものは、これはよほど私は必要だと思っておりまして、何としても基礎的の研究はやっぱり大学だ。これは人がいるのだから、人間がそこにおられるのですから、これを十分活用して、これとの連絡をやはり科学技術庁はとらなければならぬ。こういうふうな意味から申しまして、これは文部大臣に入ってもらい、また大蔵大臣にも入ってもらい、必要に応じて通産大臣にも入ってもらい、農林大臣にも入ってもらうということにして、内閣総理大臣がこれを主宰するということで発足するということは、これは私は、これが一番いいと思っております。ただしこれは、あなたこういうものを作っても運営をうまくやらなければ何もならならないことですから、ときどきやっぱり役所というものは、こういう会議だけを作っておいて、さっぱり運営をよくやらぬという例があるものですから、なるたけこれは運営をうまくやっていきたいと思っております。
  45. 千葉信

    理事千葉信君) 矢嶋君に申し上げますが、兼重学術会議会長は十二時半ごろお見えになるそうです。文部大臣は、今文教委員会で討論中だという先ほど連絡がありましたが、ただいまの連絡では、その委員会から退席されましたので、急遽連絡中だという連絡がございました。
  46. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 本法律案は、採決されるまでに、学術会議会長と文部大臣はおのおの十分間程度でよろしいのですから、ぜひ顔を出すように御配慮願いたい。  科学技術庁長官にお伺いいたしますが、現在のわが国の科学技術振興をはかるに当って、一番の欠陥、隘路となっているのは、どういう点だと把握されておりますか。
  47. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私はやっぱり一番の欠陥は、人間を得る、人を得る、研究する人が欠陥、隘路だと、こう見ております。
  48. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 先ほどから承わっていますと、私は、岸内閣では最右翼の、最も優秀な、私の尊敬する大臣でありますけれども、今の日本科学技術行政の全般とか、この案自体に対しては、十分おわかりになっていないような感じが私はするのですがね。その第一番に、今の質問を発してみたのですが、常識論としてのお答えとしては、それも確かにそうですけれども、十分でないと私は失礼ながら思うのですけれども、私も今のこの社会の科学技術の進展状況からあせりを感じている日本人の一人です。それでいろいろまあ私も考えているわけですが、そういう点を的確につかんで政策というものを打ち立てていかなければならぬと思うのですがね。そういう点の把握が不十分で出ていることは、時間と経費の浪費になるおそれがあると私は思う。私は他の委員のきょうの質疑を承わっておって、ますますこれは慎重に審議しなければいかぬなという感慨に襲われているものです。この科学技術会議の問題が議論されるようになってからもう二、三年になるわけですがね、本委員会で連合審査は一回やりましたけれども委員会として審議するのはきょうが初めてなわけです。これは立法府に議席を置く一人としても、私は責任を感じているのですが、一つ、行政府の長にお伺いいたしますが、これだけ世界各国の科学技術の進展というのは、日進月歩の時代になり、日本もあらゆる情勢からその推進をはからなくちゃならぬというこういう状況下に、まあ行政府については行政府の何がありましようけれども、立法府に対して行政府はどういう御希望を持っていらっしゃるか。私は具体的に申し上げますが、私は、立法府に議席を置く一員として、今のわが国の科学技術に関する法案審議並びに調査を、調査権の発動に基いてやるに当って、衆議院では科学技術特別委員会というものを毎国会設けているようです。私は、特別委員会を毎国会設けるというのはおかしな行き方だと思うのです。私ども参議院では、特別委員会を原則として設けないという立場から、特別委員会がないわけです。従って、科学技術関係に関する審議並びに調査は、私の院では、あるいは商工委員会、あるいは文教委員会、あるいは当内閣委員会等で審議、調査をしているわけです。まあ立法府に議席を賢く私としては、私の意見がありますが、行政府側から見た場合に、法案審議していただく、あるいは科学技術行政に関する調査をしていただくに当って、今のようなわが参議院における商工、内閣、文教各委員会で審議、調査をするというような形で調査、審議を十分立法府にお願いできる、こういうふうに行政府としてはお考えになっていらっしゃるか。それとも、他国の例を引くまでもなく、願わくば、立法府においては、ここに特別委員会というような形でなくて常任委員会に、一つ科学技術に関する、名前はともかくとしてそれらに関するものをプロパーにこれを審議し、あるいは調査するところの委員会というものを設けていただくことが適切であるというような希望を持たれているかどうか。そういう点、立法府としては立法府の考えがありますけれども、行政府の長にどういうお考えを持っていらっしゃるかということを伺いたいわけです。それと行政府における機構というものが問題になってくると思うのですが、その点については、この科学技術会議法というものが現に出てきていますから、これを中心に伺っていきたいと思いますが、まず、その点についてお答え願いたい。
  49. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 率直にお答え申し上げます。私は、実はきわめて短期でありまして、科学技術庁長官を拝命いたしまして、内容機構等についても十分検討をいたすまで進んでいないわけでございます。これだけははっきり申し上げます。が、しかし、お説のごとく、私はどうしても科学技術というものは必要である、何をおいても強力にやらなければならぬ、強力にしなければならぬ、こういう意味から申しまして、行政の担当長官といたしまして、立法府におきましても、ぜひともこれは科学技術の特別委員会というものを、やはり参議院においても置いていただきまして、十分御審議願いたいという希望を持っております。
  50. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この法律案を中心に伺って参りたいと思うのですが、この科学技術会議というものは、念のために承わりますが、諮問機関ですか。それとも行政執行機関諮問機関とを合わしたものですか。それとも行政執行機関ですか。いずれなんですか。
  51. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 諮問機関でございます。
  52. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そうすると、さっきの御答弁の中に、各省にばらばらになっているのを、今後総合的にこれをまとめてしっかりやっていこうと思うと、こういう表現をされていましたが、諮問に答えることをしっかりやっていこうというわけですか。常勤の職員もあるようですが、若干行政執行的な実質的な内容面を含んでいるものじゃないですか。その点はどうですか。
  53. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) これは純然たる諮問機関でございまして、行政機関ではございません。しかし、まあ構成がこういった非常に権威のある方々がお見えになりますし、また、各関係大臣もお入りになっておりますので、そこで審議をされました結論というものが、非常に尊重されるということは期待しておりますし、また法律にも、総理大臣はこれを尊重しなければならないというふうに書いてございますので、効果は相当強く上り得るものと期待しておりますが、しかし、機関といたしましては諮問機関でございます。
  54. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 長官に伺いますが、三十四年一月二十二日に、行政審議会の河合会長から、行政管理庁長官行政機構に関する答申がなされておりますが、これは山口行政管理庁長官の言葉をかりてすれば、閣議で披露して話をした、それに対して賛否両論、いろいろ議論があった、こういうことですが、あなたは、去る一月二十二日、行政審議会会長から管理庁長官答申があったのを御承知になっておられますか。
  55. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) あらましは、存じております。
  56. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その中に、審議会等の整理という点について答申がなされているわけですが、この点については、この答申長官はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  57. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) どうも必要でない方面審議会がいろいろたくさんあるようでありますし、これは当然整理すべきもので、必要なものに重点的に持っていくべきである、必要でないものは取り消すべきである、こう存じております。
  58. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 まあ、それはその通りでしょう。時間がないですから、この答申の中に直接関係のある点にしぼって申しますと、行政上の諮問機関たる審議会委員には国会議員は出るべきでない、この項目ですね、それから審議会等の会長には主管大臣を充てるべきでない、行政機関諮問機関である審議会のその会長に主管大臣がなっているものがたくさんあります。その点をこの審議会が指摘して、審議会会長には主管大臣を充てるべきでないと、幾つかの項目の中にこういう項目があるのですが、この二点については、長官はどういう御見解を持たれますか。
  59. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私は、審議会というものは、やっぱり長官と離れた諮問機関として立たすべきだ、長官意見がそれにあまり入るということは、公正なる判断を誤ると思いまして、これは入れない方がいいと思いでおります。
  60. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 入れない方がいいのに、入れておるのはおかしいですね。これは諮問機関で、あなたも入って、その長は総理大臣になって、総理大臣総理大臣答申するという形になっているのですから、この答申趣旨に反するし、あなたの今の答弁と反するのですね。これはどういうふうにとったらいいでしょう。
  61. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは科学技術会議でございまして、審議会と違うわけでございます。
  62. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 審議会でも科学技術会議でも、諮問機関だという大前提になっているのですね。これは審議会というものは、みな諮問機関です。そういうものが総理府の附属機関としてあるのですね、離島振興審議会とか何とか審議会とかある。これは全部諮問機関です。そのいずれの規定を見ましても、全部有識者をもってあるいは国会議員で構成しておる。そして諮問に答えたり建議すると、こうなっておるわけですね。そういうものに、予算審議権あるいは法律審議権を持っている国会議員が入ることは好ましくない、行政と立法を明確にするためにですね。そういう一項をうたい、また行政府の長がそういう諮問機関に入ってあるいは会長になるというのはおもしろくない。ましてや大臣がその長になるのは何だということを言っているわけです。名前は審議会といっても科学技術会議といっても、これは諮問機関です。そうなると、岸総理大臣がこの諮問機関会長になって、総理大臣答申する、諮問に答えるということになるのですから、これは明らかにこのよしあしは別ですよ、この審議会の一月二十二日の答申と反するものですね。しかも前提に今、長官は、この答申を支持すると、こういうふうに御答弁がありますとね、この法案と矛盾すると思うのですがね。
  63. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) ただいま行政審議会答申にございましたように、まあ各省長官が、足らざる知恵をほかから借りるという考え方でございますと、確かに大臣が入るのはおかしい、長官が入ることはおかしいということが考えられるわけでございますが、この会議におきましては、各省のやっております行政総合調整でございますので、それぞれの責任者が入って、十分話し合う。十分話し合って納得いたしますれば、それを実現するという点にこの主眼が置かれておりますので、やはり全然それに責任のない方が入ったのでは、それをまた主管大臣がそれぞれそれを納得するというのには、相当なまた時間がかかる。それよりはやはり学識経験者意見を十分聞きながら、責任のある人々がそれぞれ十分意見を出し合って納得のいくまで話し合っていただきまして、そしてそれが妥当な結論を得ますれば、それが答申になり、それがまた直ちに実行できるという点に、この会議の特徴がございますものですから、ぜひこれはそういった科学技術庁長官に入っていただきたいと思うわけです。なおまた、学術会議からいろいろ政府勧告がございます問題も、この会議で取り扱うわけでございますので学術会議意見政府がどうやってそれを具体化するかということを話し合う場といたしては、それぞれの責任の長官がお入り下さった方が実効が上るというふうに考えておる次第でございます。
  64. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 優秀なる政府委員がそんなことを言ったらだめですよ、それは答弁しなければならぬから、言っているが、めちゃくちゃですよ。これはあなた、行政審議会考え方と全く別個ですよ。あなたの言ったのは、実質的な運営面です。法律上きめるのは、八木さんの言った閣僚懇談会できまるわけです。そこに学識経験者意見を参考に聞いて、それで打ち出せばいいので、法律でいったら、あなたの言うことは、全くめちゃくちゃです。答弁しなければならんから答弁しているんでしょうが、大臣の答弁するのを横から取って答弁するから、よっぽどいいことを答弁するかと思ったら、めちゃくちゃですよ、そんなことあるものですか、どうです大臣
  65. 石井桂

    政府委員石井桂君) 私ども、一般の諮問機関でなくて、特に科学技術会議は、関係各省総合調整をやる任務を主としておりますので、やはり特別にお考えいただいても支障ないのではないかと存じております。
  66. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 だから僕は最初に、諮問機関か何か普通の諮問機関と違うかどうかという大前提に立って言ったのです。総合調整といったら、行政執行の面に入っていっているんです。だからさっき大臣が、今までばらばらのを、まとめてしっかりやっていきたいと、こういう答弁をされておるのです。そこのニュアンスは、これは単なる諮問機関ではなくて、行政執行面も入っているんだというニュアンスが出てくるわけです。実際そうです。それで前提に諮問機関云々と聞いたので、それを答弁していけば、普通の諮問機関とちょっと違って云々となれば、これは政務次官ナンセンスですよ。筋が通らぬですよ。  まあ時間の関係もありますから、あとずっと聞きたいことがありますからとめておきますが、それでは今まで何ですか、日本科学技術行政に関する推進、立案し、これを実行するに当っては、行き当りばったりにやったわけはでない、やはりどっかに諮問するなり意見を聞いてやっておったのですが現行では諮問をする機関はどこですか。
  67. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 現行では、科学技術審議会というものを科学技術庁で持っておるわけですが、それを大体主体にしておったわけでありますが、これだけでは総合力にできない、こういうことで今度の科学技術会議というものに範囲を広げたわけでございます。
  68. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 科学技術審議会では総合的にできないので云々だと、それでは科学技術審議会では総合的にできないから格上げと、こういうふうに了承していいですか。
  69. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 科学技術審議会は、科学技術庁諮問機関でございますが科学技術庁の権限といたしましては、御承知のように大学研究に関するものを除くというふうになっておりますので、従いまして科学技術審議会諮問いたします場合には、大学との関連の問題を御審議願うわけにいかなかったわけであります。今回はそういったものも含めまして、全般的な科学技術振興政策についての審議ができるということになりますから、範囲を拡大したというふうにお考え願いたい。
  70. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そこです、大臣の答弁ちょっと不十分だと思います。総合的にはできないというのは大へんな御答弁だと思うのです。あなたが長である科学技術庁設置法の第三条には、「行政を総合的に推進する」ということが主なる任務と規定しているのですから、その大臣から総合的にやれなかったからという答弁があったら大へんだと思う。その科学技術庁の附属機関として科学技術審議会があって、そうして諮問をやっているわけですね、しかし、これは政府委員が指摘しましたように、大学における研究を除くとなっている。だから今度の科学技術会議は、今まで除かれておった大学を含めて、そして科学技術庁の附属機関であった科学技術審議会科学技術庁の畑から飛び出して、そして総理府の附属機関となったのだから、だから格上げしたわけでしょう。どうですか政府委員
  71. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 格上げという方があるいは適切な答えだったかと思いますが、総理府よりももう一段上の総理大臣諮問機関になっておるわけでございますから、お話しのように、格上げというふうに考えてよいと思います。
  72. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 もう一ぺん繰り返して聞きますが、日本科学技術関係をやるに当っては、文部省を除いた科学技術審議会諮問機関であり、これが中枢で、日本科学技術というものは推し進められて参ったのですか。そういうふうに了承してよろしいのですか。
  73. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) ただいま申し上げましたように、科学技術庁の任務といたしましては、大学研究に関するものを除きまして、しかもまた、人文科学関係に関するものを除きましたそういった範囲科学技術につきましての各省行政総合調整をして参ったのでございます。従いましてそういったものを除きましたものにつきましては、科学技術庁総合調整の責任があり、連絡なり、諮問いたします、そういう問題についての諮問は、科学技術審議会でございましたので、科学技術審議会が一応そういったものの中枢的な審議機関というふうに考えていいのじゃないかと思います。
  74. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私はそれは大きな異論があるのですが、それで伺いますが、大臣は何ですか、日本学術会議というものをどういうようにお考えになっていらっしゃいますか。存在価値並びに今の実情というものを、どういうふうに見ておられますか。
  75. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは私詳細なことは存じませんが大体から申しまして、学者諸君が寄って、そして世界的の研究なり、そういうものの連絡をとる。そして日本の学術を振興するということについて御協議願っておる、こういうように私は存じておるわけであります。
  76. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 重ねて伺いますが、大臣日本学術会議というものは存在価値がある。これはますますその任務が十分遂行できるように推進していかなければならぬというような、そういう極的な角度から日本学術会議を見ていらっしゃるのですか。それとも別の見方をなすっておられるのですか。どういうふうに日本学術会議というものを見て、またこれを評価しているかという点を伺いたい。
  77. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私は非常に有効であり、また必要なる存在だと存じております。
  78. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 従ってこの法律案を国会に出すに当っては、日本の今後の科学技術の進め方、行政の進め方という立場から、日本学術会議というものに十分な研究と見識をもって出てこなければならぬと思うのです。私は先ほど日本科学技術の問題は、諮問なりまた考え方からいって、どこが中枢で進んでいったかという点をそれで伺ったわけです。科学技術庁大学を除く職務内容を持った科学技術審議会という意見は、私は間違いだと思う。そんな点じゃないと思う。これは日本学術会議というものは、日本学術会議法からいっても、何といっても日本の頭脳的なイニシァをとっていく中枢でなければならぬと思う。これは時間がないから読みませんけれども内閣総理大臣の所轄であり、第一章、第二章を読めばわかりますけれども、これは大きな指導性と影響性を、わが国の科学技術の問題に関する限りは持たにゃならぬ、また持たさなければならない、尊重しなければならないという建前に立っているわけです。この点肯定しますか、否定しますか。
  79. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私は全く同感であります。肯定いたします。
  80. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そこで、本法案を裏から見て批判的になりますけれども、ちょっと意見が出ますけれども、ほんとうに日本科学技術というものを日本人の知能、英知をしぼって推し進めていこう、それにはどういう政策推進していけばいいか、こういうことを諮問し、また方策をつかむためには、私は今の学術会議というものの運用を強化して、そうしてそこから積極的な権限を求めるとともに、そしてこれに諮問して、その結果を閣議に持ってきて、そしてこれをどういうふうに行政に反映させるかという点を、閣議なり関係閣僚懇談会で十分討議してやっていけば十分できるように、これはなっておる。ところが、私が見るところでは、最近日本学術会議と保守政権との間がここ数年うまくいっておらない、遺憾ながら私はそう見ておる。それで吉田内閣の末期ごろから、非常に煙たがり出しておる、日本学術会議の動向を。それで日本学術会議から来る意見書というものを軽視する傾向が、非常に顕著になってきた。それからもう一つは、文部省直轄の日本の国立の研究機関、さらに具体的に言えば大学の教授団、全部とは言いません、そういう方々の動向と申しますか、それもまた悲しいかな、ここ数年日本の保守政権との間がうまくいかない。で、保守政権の方々は、大学教授には赤がおる、ああいうものでは話しにならぬというように、ときには軽蔑するようなこともありますが、その内容には触れませんけれども、どうも科学技術についての研究テーマをわれわれの思う通りになかなか取らない。防衛産業推進しようと思えば非協力である、こういう大学の教授団、国立研究所、日本学術会議、これらを毛嫌いしてこれを無視するという傾向が、最近日本の保守政権によって出てきたことは否定できないと思う。これはどちらがいいとか悪いとかということは、ここで言いません。そこで、今度出てきたのは科学技術会議、これは将来振り返って見た場合に、明確にそういう評価ができると私は確信をもって、少くとも数カ年の日本の学界やら行政の動きを見てきたものとして確信をもって言うわけです。だから学術会議で心配がされるわけです。そういう点では、これは八木委員が指摘されるように、こういう機構整備改革をやらなくても、別に方途はあるわけです。かりにこれが成立したという場合に、あくまでも学術会議との連絡学術会議をつぶすとか、押えるとかいうのではなくて、これは総理大臣に直轄するものであって、十分これに予算を与え、日本の学術の最高機関としての学術会議予算の裏づけもし、これを育成強化して、そうしてこの意見を十二分に行政に反映できるように取り運ぶということが、私は絶対大切だと思うのですよ。それで学術会議会長から政府に対しての質問書に対して、当時の三木長官は、連絡は十分とる云々ということを答弁していますが、そういう意思がほんとうにあるのかどうか。その連絡というものはどういう機構連絡をとろうとするのか、やや具体的に一つお答え願いたいと思います。
  81. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 矢嶋委員からいろいろ御指摘がございましたが、私学術会議関係を前から若干知っておりましたから申し上げたいのですが、学術会議があれば科学技術会議というものは要らないのじゃないかと言われるのでありますが、また、学術会議日本科学技術の中枢機関であると言われましたが、私ども学術会議日本におきます科学者の一番最高権威のある機関であり、また科学者の代表機関であるということは、当然そうあるべきであり、また、私どももそういうことを考えておる次第でございます。ただ、学術会議の方でいろいろ意見を出すなり、あるいはまた政府に対する具申等もいたします。そういったものを実現いたします場合は、すぐに閣議に持っていった方がいいかどうかという点なのでございますが、そういう点につきましては、学術会議ができました当初、御承知の通り学術刷新体制委員会、学士会、学術研究会議というものを再編成いたしました学術会議というものは、科学者の海外に対する代表機関であり、またその会員というものは科学者の選挙によって選ばれるものである。従いましてそれによって出まする日本学術会議意見というものは、政府学術会議それ自身は総理府の機関でございますけれども、それの意思というものは、必ずしも政府と同じものではなくて学者の意見である、代表機関としましての学者の意見であるということでございますので、それを政府の方の施策として具体化いたしますためには、その前に一度政府学術会議と話し合う一つ機関を作りまして、それをどうやって実現するかという政府の立場から、もう一度見直す機関が必要であるということで、かつて科学技術行政協議会というものが同時に生れたわけでございますが、それを科学技術庁科学技術審議会として引き継ぎ、さらにこれを科学技術会議が引き継ごうというわけでございますので、やはり直接閣議にいくというよりも、そういった審議機関が必要であるというのは、前からのいきさつもあるし、その必要性もあるということを私ども考えておる次第でございます。そういうようなことで、この科学技術会議学術会議の御意見をいかに政策に具体化するかという点で、学術会議と大いに関連があるわけでございますが、その点では先ほど申し上げましたように学術会議会長議員としてお入りになり、また、学術会議との連絡を密接にいたしますために、科学技術会議の下部組織といたしまして学術会議政府側との連絡を緊密にいたします部会一つ置いていきたいというふうに考える次第でございます。
  82. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は法制上問題があると思うのです。これは会長もおいでになりましたからあとで承わりますが、今政府委員が答弁されたから、それに反駁的な立場から私は伺いますが、学術会議での意向を行政に反映することは大事だ。それを直ちに閣議に持っていくのは云々と言えば、方法はあるじゃないですか。学術会議政府諮問することができる。学術会議政府勧告することもできるわけでしょう。それであなた方が今度われわれの審議を仰いでいるこの科学技術庁設置法の一部を改正する法律案の中に新たに盛られたものによると計画局と名称をかえてこの四号に、「日本学術会議への諮問及び日本学術会議答申又は勧告に関すること。」とあって、行政機関のそこを濾過するようになっている。あなた方は諮問とか、勧告とかをここで濾過して、学者たち意見がこうだとなるならば、あなた方の専門的意見を加えて、そして所管大臣がそれを閣議に持ちこんでもいいじゃないですか、私はそういう方途はりっぱにあると思う。それに今度学術会議会長が入るというと、学術会議を尊重したという二面も見られますが、裏から見たら逆にいきますよ。私は総理大臣総理大臣答申する、あるいは諮問に応ずるような、そういう機構自体がおかしいと思うのです。行政府のそういうところに学術会議議長が一緒に入って、かりに採決をすれば数ははっきりしている。そして一つの結論を出すと、学術会議会長というものは、学術会議を代表すると法制上なっているわけでありますから、だからそこに学術会議というものは巻き込まれることになってしまう、そして責任を分担しなければならぬことになってくる。私は法制上としてはそういうことはとるべきじゃないと思う。学術会議はさっきも言うように、国家としてはどの国でもそういうことは十分尊重しなければならない、強化していかなければならない。そこで学術会議に出た意見を、行政府はこれを行政に反映されるように、百パーセントまではいかなくても、あらゆる角度から十分これを尊重していく、日本人の英和、知能というものをそこに結集して、それを政治的、経済的な角度からこれを取捨選択していく、そういう行政の進め方が筋が通り、責任の所在が明確に私はなってくると思う。そういう点からながめますと、この科学技術会議というものは、私は日本科学技術行政を統合的にやる、凹凸のあるのをある程度調整して、そして総合的に日本科学水準というものを上げる、威力が発揮でき、成果が上る、そういうようにしなければならない。そういう考え方は全く同感で必要だと思う。しかし、先ほどから若干触れましたように、こういう科学技術会議を設けてこういうことをやるという点においては、やはり法制上からも、運用の面からいっても問題点があると思う。それでかりにこれが成立した場合に、運用面が重要であるというので二段階で承わっているわけです。時間がありませんので、意見を言うのをやめて、会長さんがお見えになったようですから、ちょっと伺いたいと思いますが、先生に私が申し上げることは釈迦に説法になると思うのですが、日本学術会議会議法に明確に書かれている通り、この法に基いていろいろと御研究、御善処をいただいている点には、私は感謝をいたします。しかし最近数年間、日本学術会議の御意向というものが、時の政府によってあまり尊重されない傾向が出てきているのではないか、行政面への影響というものが、行政の面に移されていくという点が非常に少くなってきているのではないか、私はそういう見方をしているのですが、学術会議側としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、これは率直に承わりたいと思う。私はこういう会議を設ける前に、学術会議あたりの予算なんかは、もう少したっぷり出すべきであると思う。調べてみますと、三十三年は一億一千万円、三十四年は学術振興財団に一億四千万円程度補助しております。これだけ世界科学技術推進は日進月歩で、日本の置かれている客観情勢からこれを推進しなければならぬという関係で、総理も多く政策の中に取り上げているときに、日本人の英知とか知能というものが結集されるところが、私は学術会議だと思う。そういう点で政治家の見る学術会議というものは、不十分なものがあると思う。それでそういう点をまず伺いたいと思うのですが、御所見を承わりたいと思います。
  83. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) ただいまの御質問の御趣旨は、私どもの方にとりまして、大へんありがたい意味を含んでおる御質問と承わります。時間もございませんので、簡単にお答えいたしたいと思います。最近になって、学術会議から勧告をいたしましたことが、だんだん軽視されてくるというふうな傾向は、私ども感じておりません。五年ばかり前に学術会議の存立に関係するような事態が起りかかったときがございますけれども、そのときはここにおいでの諸先生方の中にも、お骨折り願った方があるかもわかりませんが、そういうようないろいろなことが関係いたしまして、その事態を切り抜けました以後は、徐々にではございますけれども学術会議から出て参りますいろいろな希望は、むしろ取り入れられてくる傾向になっております。もちろん、そういうことが私ども十分満足するほどにいっておるとは申せませんけれども学術会議の希望の通りにすることが、全体的に見ていいか悪いか。また、これは多少別の立場から判断を受けることもやむを得なかったと考えておるわけでございます。従って、予算のことなどももう少し豊富に活動のできるようなふうになることが望ましいのでございますが、この点は現在の学術会議法が審議機関であるということをあまり強く出し過ぎておりますために、予算折衝の時期などに、多少困難を感じておる点もございます。そういう点では、学術会議の性格についても、なお今後検討を加えたいとは思っておるわけでございます。しかし、それにいたしましても今矢嶋先生のお話しになりますように、もう少しその点で活動ができるようにしてほしいというのが、いつわらざる私どもの希望であります。
  84. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 法令上の問題が出ましたから、いい機会でありますから、法制上の点を一言承わりますが、学術会議の意向というものは、政府答申したり、あるいは勧告することになっているのですが、と同時に、国会にも意見書として出すとか、報告するとか、こういう形に私は日本学術会議法というものは改めていくべきじゃないか、それを常々感じているのですが、そういう点については、学術会議側としてはどういう見解を持っておられますか。
  85. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) 学術会議ができます前に、その準備の会議を半年以上にわたってやったことがございます。そのときにも、新しく生まれるこういう学術団体が、行政府と立法府とどちらに密接に結びつくことがよかろうかということは、ずいぶん議論をいたしました。その結果、現在のような方法が、当時としては一番適当だという結論になりまして答申を出したのでございますが、今仰せになりましたように、国会との連絡はまた密にする必要があることも、当時から気づかれており、その後そういうことがますます強く感じられてきましたので、こういう法律的な根拠はございませんけれども、一昨年の秋ごろから、両院の有志の方という形で、ときどき会合をしていただくような機会を作ることをお願いいたしまして、今便宜それを学術連絡協議会と申しまして、私どもの方と国会側とに両方幹事役をきめまして、一年に三、四回くらいの会合をしております。ただ、それが今のような両方とも有志の形でありますために、そういうふうなことが何ら、表立ったことにならないのは、これはやむを得ないことかと思っております。実質的にそういう御連絡を密にしたいという気持は持って、私どもの力の及ぶ範囲ではやっておるつもりなんでございます。
  86. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私の見るところでは、あとで若干私は具体例をあげて伺いたいと思いますが、日本学術会議の意向というものは、最近だんだんと行政面に反映せぬようになってきておると思います。政府に十分取り上げられていないと思います。こういう状況では、これは日本科学技術水準というものは、世界水準に追っついていけない。追っついていけないだけでなく、かえって落伍してしまうと思うのです。だから私は伺っておるわけです。それで法制上、その学術会議の意向を政府勧告するとか、諮問答申することだけでなく、国会の方にも報告する、意見を出すというように改めるべきじゃないか。そういう審議会のようなのは他にありますよ。ちょうど、くしくもあなたから、実質的には国会と連絡をとって、学術会議の意向が国会に反映するようにしているということなんですが、これは先生非常な間違いですよ。認識不十分ですよ。私ちゃんと資料を持っておるんですが、第四十四委員会学術連絡協議会というので、いつどういうふうに開会されたかという資料を持っております。これであなた方は学術会議の意向が国会に反映していると思ったら、とんでもないですよ。法制上でないから、有志にしてもどういうふうに選ぶかあなた方の自由ですが、国会だったら、超党派的にやはり各党のあるいは理事、あるいは国会の文教委員長とかにおいで願って懇談するなら、あなた方の意向というものは国会にはね返ってきましょう、これでは、わが参議院はこんな会合を何べん開いても、学術会議がどんなことをお考えになっているかということは、少くとも国会の場を通じては何ら影響しておりません。わかりません。偶然私が資料を持っているから申し上げるんですが、どういうようなお考え方を持つか、あなた方の御自由ですが、とにかく私は学術会議の意向というものが、政府にも反映するとともに国会にも、私は日本人としての知能、英知を結集した学術会議の意向というものは、わかるように、反映するように法制上すべきではないか。また、あなた方も努力すべきではないかということを前提として伺いたいと思うので、もう一ぺんお答え願います。
  87. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) ただいま申します学術連絡協議会でうまく連絡がいっておるという意味で申したのではございません。仰せのように、それが非常に靴を隔ててかくような感じでありますことは、私も感じておりますが、努力をしておるということを申したのであります。
  88. 千葉信

    理事千葉信君) ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  89. 千葉信

    理事千葉信君) 速記始めて下さい。
  90. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 できるだけ簡単にやります。初めてで非常に大事な点でありますから、先生にお伺いいたしますが、たとえば、十分政府側とうまくいって反映していると言いますが、例をあげますと、科学技術庁とか、よく科学技術の背景にある日本産業界等は、どうしても科学技術の速成というものをあせるわけです、速成というものを。あなた方は科学技術振興するのには、基礎的なものをみっちりやらなければならぬということを主張されているはずです。ところが、その点はどうしても取り上げられないで、速成というものがどんどん出てくるんだから、振り返ってみたときは、時間と経費の浪費があって発展性がない。たとえば原子炉にしてもコルダーホール型を輸入するにしても、耐震性とか、経済性とか、安全性とか、学術会議はいろいろなものがあるんだけれども産業界の要望というものは、先にぽっと進んでいくという傾向があるんですよ。また、今南極観測にあなた方は代表を出されているわけですが、ロケットにしても、高空観測のロケットの開発、これは非常に大事だと思う。今日本は秋田の海岸で若干やっているようですが、しかし、このロケットにも少くとも私の聞いているところでは、着想とかいう点はこれは外国の水準にいっているけれども、実験とか施設というそういう点については、少くとも十年ぐらいおくれているだろうということを聞くわけです。だからロケットの開発については、あなた方としては非常に主張しているはずです。しかし、そういうものは一つも情勢に出てこない。出てくるのは何が出てくるかというと、ロケットの中でもロケット兵器の方が先に出てくるわけです。それでスイスからエリコンを持ってきているわけですね。これは気象観測とか、そういう点のロケットさえ、これは大へんなんでしょう。私、しろうとだからわからぬが、その開発は大へんなんでしょう。それをロケット兵器にするには、それを方向づける誘導弾をつけなければならぬということを聞いているわけです。今、防衛庁研究所では、有線誘導をちょっと試作しているということを聞くわけですが、これができたら新島で試射しようというらしいのですが、そういう点ですね。その大事な点をおろそかにして、しかもその平和的な利用といいますか、その高空の気象観測に当るロケットなんかの研究なんかは、先走って、ロケット兵器の方に突っ走っていく、こういうようなところは私は学術会議と、再軍備政策を一応目標としている今政権を持っている岸内閣科学技術開発、そういう点に私は原因があると思う。そういう点に十分反映しなくちゃならぬ、基本的なものが。また、核融合反応についてもそうでしょう、動力面の問題から核融合反応の研究開発は非常に焦眉の急だと思うのです。もう外国では大へん進んでいるが、こういう点についてはあなた方は相当の要望があると思う。しかし、現在核融合反応の予算が、どれだけの計画が今、立っているか、こういうような点については、一体学術会議の基本的な問題については、一つ行政の上に現われてきていないと思うのです。こういう点、お認めになりませんか、いかがでしょうか。
  91. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) 今の御指摘のような点は、現在非常に不十分な状態であることは、私もその通りだと思います。先ほど申しましたのは、数年前に比べてだんだん改善の傾向にあるということを申しましたので、このごろは非常によくその通り認められておるというふうに申したわけではございません。ただいま御指摘になりましたようなことは、かねがね私も機会あるごとに申しておることでございますが、それが今うまくいかないのは、あるいは政府全体あるいは内閣全体ということかと思いますが、今、私ども一番じれったく思っておりますことは、これが文部省の関係予算であります関係上、それがどうも伸びにくい現状でございます。それのもとがどこにあるかということは、なかなか私どもにわからないのでございます。
  92. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 二点だけお伺いいたします。いろいろたくさん伺いたいことがあるのですが、時間がありませんから、二点だけお伺いして参ります。そこで、昨年は学術会議は、成立を望まない、こういう総会の決定をして、その後、政府といろいろ交渉がありまして、会長さんが委員に入るということに若干の修正ができて、学術会議の表面の決定としては、まあいろいろ条件がついておりますが、賛成だということになったということを承わっているわけです。それでその中で一番大事なことは、学術会議の意向は十分反映するようにしてほしい、連絡を緊密にしてほしいという要望が強く出ているわけです。これは私は大事なポイントだと思うのです。それに対する具体的な政府の意向というものは表示されていないわけですが、学術会議としては、その点どういう御希望、意見を持っておられるのか、お教えいただきたいと思います。
  93. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) 先ほども矢嶋先生からお話がございましたが、ただ一人の学術会議会長が入っても、多数決できめられれば、むしろ責任を負わされるだけではないかということがございました。形の上では確かにそのようなことになっておるようでありまして、その点は学術会議でもやはり問題にいたしました。しかし、個人として学識経験者の一人として入っておるのと違って、今度は学術会議会帯という資格で入ります。それで、これまでのああいう会議は、前の科学技術行政協議会の時代、あるいは近ごろの科学技術審議会の場合でありましても、たとえば学術会議会長のようなものが主張することが、多数決で否決されるような事態は、一度も遭遇したことはございません。従って今度の場合、どういう運用の仕方をされますか、確実にはわかりませんけれども、これまでこの法案の立案の担当者などに質問しましたところでは、大体多数決というふうではなく、やはり全会一致の形をとりたいということでございますから、自分の思う通りにはさせることができない場合はありましても、少くとも自分が非常に好ましくないと思うことを防ぐ手だてはあると思っています。私がかりに、今、会長でございますから、これができまして委員になるような機会がありといたしまして、兼重個人はこれは微力であろうと思いますけれども学術会議会長という資格で入ります上は、そう弱いものではないと、こう考えております。それが多数決でただ責任だけ負わされるようなふうなことになったときは、またそのときに考えることと思っておりまして、この答申に申しました、今度の改正でこれが成立することを望まないというのは撤回いたしました。これでできることはけっこうだというふうに申したのは、その通りでございます。
  94. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大臣に伺いますが、ただいまの学術会議会長の御意見、この法が成立施行された場合を予想していろいろ述べられているようですが、その御期待に沿うような運営をやるお約束ができるかどうかということと、それからさっき私が質問いたしましたように、学術会議意見政府は今以上に尊重するのか、あるいは学術会議が十分にその機能を発揮できるように、その予算化等についても科学技術振興という立場から、今後も努力されるかどうかという点を合せて、ちょうど今会長さんがおいでになっておられますが、この十条に秘密を守らなければならぬという規定がありますが、これは研究の民主、自由、公開という三原則を侵すものではない、こういう確約ができるか、その点お答え願いたいと思います。
  95. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 先ほど来、学術会議というもののいきさつにつきまして、詳しく承わりまして、非常に私啓蒙されたわけでございます。少くとも学術会議を非常に尊重する以上は、これにつきましても今兼重先生のおっしゃったごとく、これをいやしくも多数決でもって決していくというふうなことはせずに、その運営に当りましては、全会一致で結論を得るという方に運営を進めていきたいと存じております。
  96. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 予算と第十条との関係……。
  97. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) もちろんこれは先ほど申しました科学技術というものは、どうしてもやはり公開すべきものという原則は破られることはないと存じております。
  98. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それからこの科学技術庁設置法の一部改正法律案から見ますと、総理府の附属機関である科学技術会議の事務は、総理府の外局である科学技術庁の計画局で扱う、こういうことになると思うのですね。これをその通りかどうかという点が一つ。それから今までの科学技術審議会は、科学技術庁の附属機関であったが、しかし文部省関係大学関係は除かれておった。今度は科学技術会議がそれに入ってくる。そうして科学技術庁にその事務局が移って、そうしてああいうメンバーの大臣でこれを構成していった場合に、きょう文部大臣が来ておりませんが、この点聞かなくちゃならぬのですが、文部省の大学の学術関係というものは相当今後私は変ってくると思うのですね。この点は大学科学技術関係予算の確保、それから研究の自由に影響してきやしないか。たとえば、私が先ほど言ったように、日本は今ロケットの開発というものが非常に大事だ。それだのに日本のロケットは、こんなものはこれはおもちゃみたいだ。これを急速にしなければならぬということになれば、莫大な金が要りますよ。莫大な人が要りますよ。もし学術会議でそういう方針を打ち立てれば、日本の財政にワクがあれば、他の平和的な生物科学とか何とかいう非常に基本的な研究方面予算というものは少くせざるを得ないと思う。その科学技術会議における文部大臣の抵抗というのは弱くなってくる。そうすると学者は研究費ほしさに、ロケットとかそういうものの研究に頭を突っ込んでいかざるを得なくなって、科学技術の全分野における研究というのは非常にアンバランスになってくる。軍事科学が優先ということが出てくる可能性が私は相当にあると思うのです。そこで、この事務局を科学技術庁で全部やるのか、これについては文部省と十分了解がついているのか。またそうなった後における、今までは文部省はあなたのところの所管からは別だったわけですね、新たに入るわけですから。だから今後の運用についてはどう配慮をされるのか。まずその機構技術面についてあなたのお答えをいただいて、それから所管大臣の確約を得ておきたいのです。
  99. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 科学技術会議の庶務の問題につきましては、科学技術庁といたしまして非常に関連の多い事項審議していただくわけでございますので、科学技術庁としてもこれの庶務に当りたいと思っております。そしてその科学技術庁の内部といたしましては、計画局が当りたいと思っておるわけでございますが、しかし、今御指摘のように、大学研究に関するものに関しましては、科学技術庁の所管外でございますので、私どもだけで庶務をいたしますのもどうかということを感じております。従いまして文部省と緊密な連絡をとり得るような態勢に持っていきたいということを考えておりまして、文部省と相談をしておる段階でございます。
  100. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまお答えした通り、文部省とよく連絡をとりたいと思っております。
  101. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 文部大臣とはその間の話はついているかどうか。これはあとで最終的には文部大臣とあなたの立ち会いの上で、十分ただして明確にしておきたいと思うのです。でなければ、それは何とここで言おうが、これは発足して滑り出してごらんなさい。法律はじゃんじゃん走いていくのですから、文部省なんかは政治力が弱いし、あれよあれよという間に、一方に引っ張られていってしまうから、この点は両大臣そろったところで明確にしておかなければならぬ。その点はあとに保留しておきます。  時間が大へんないから、最後にお伺いしますが、それは兼重先生にお伺いいたしたいですが、三十三年の十月に第二十七回総会において基礎科学振興に関する声明をおたくでされておられますね。わが国の基礎科学技術研究の現状では、ここ数年で危機に陥り、世界水準から落伍してしまう、そして核融合反応とか、あるいは素粒子論ですか、そういうものを出されて、これを学術会議としては政府にどういう意思表示をされて、政府にどういう反応があったのか。それからまた、科学技術庁長官としては、この声明、申し入れというものをどういうふうに受けて、どういうふうに具体化そうとしているのか。その点と、それから科学雑誌「自然」というこれに、東京大学伝染病研究所の野島徳吉というお方が、科学技術会議反対するという論文を載せられています。この方は学術会議の会員のようです。これは非常に啓発されましたりっぱな御意見を述べられていますが、この論文を兼重先生ごらんになったことがあられるかどうかという点と、それから科学技術庁長官もその点をお答え願うとともに、私は前軍先生並びに所管大臣にお願いしたい点は、かりに将来この法律案が施行されるような場合があったら、この野島という人は私はどういうお方か知りませんけれども、こういう論文は、一応やはり目を通していただきたい。これはお願いですけれども、先ほどもお尋ねした点にお答えをいただきたいと思います。
  102. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) ただいまの野島さんの論文、私まだ拝見しておりません。さっそく読ましていただくことにいたします。  それから先ほどの基礎科学振興に関しますことは、声明の形にいたしまして特に政府への申し入れにはしておきませんでした。しかし、私はそのものを昨年の暮れ総理大臣のところへ持って参りました。それで、こういう実は基礎科学関係者がこのごろ欧米に出ていきますと、十人出れば十人みんな同じ感じで、一種の危機感のような感じを持って帰るのでございます。このことも説明しまして、ぜひ早くこれについての考慮をしてほしい。で、現在大学研究費が、もう十分ご存じでございましょうが、戦前の三分の一とか、四分の一とかいうふうな程度でございますから、これをできるだけ早い機会にせめて戦前の水準までは返してほしい。それを一ぺんにということは無理でありましょうから、何年かかるかはやむを得ないとして、計画的にやってほしいということを申しました。ですが、まだ今日までそういう計画的には参りませんが、三十四年度の予算では、大学の教官の研究費が前年に比べて二五%ふえたんでございます。これは最初の大蔵省の第一次査定の内示はわずかに三億円足らずでございましたけれども、何か聞くところによりますと、最後の閣議の段階で、総理の特別な配慮で総額が十億円ほどの増額になったと聞いております。それで私も、初めに、幾らか最近聞かれるようになったと申しましたことも、そういうことを幾らか頭に置いて申しておるわけでございます。何億円という程度では問題になりませんけれども、しかし今までなかったことが芽を出したので、実はこの次三十五年度あたりには、何年計画というので進んでもらいたいと、こう考えておりますが、これは今もちろん準備段階で、何も申し上げることはできません。
  103. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 新任早々でありまして、率直に申しましてまだ日本学術会議からの基礎科学研究に対する意見等は、私自身はまだ見ておりませんです。また野島さんの御意見等も、ただいま拝見したばかりでまだ見ておりませんが、十分勉強したいと思っております。
  104. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 会長さんにちょっと御要望申し上げておきますが、政府側予算配分をするときは、総花的でちょっちょっとばらまいて不平を抑えるというわけでして、日本科学技術振興に五億や十億ぐらいふえてもどうにもなることでないから、やはりあまり感謝したり、感激したりしないで、日本科学技術振興を、十年あるいは二十年の計画ぐらい科学技術会議では立てられて、国費困難な折ながら、少くともこの程度の計画をもってこの程度、年々予算化していかなければ、日本技術革新、経済の基盤強化というものはやっていけないのだという見解を開陳されて、われわれ政治家を一つ啓蒙をしていただきたいということを、特にお願い申し上げておきます。
  105. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 兼重会長に二点だけお伺いいたします。  第一点は、二十八国会では科学技術会議の設置に反対、現在では賛成。その理由は、議員日本学術会議会長という名前があるか、個人の資格であるかという点が主たる点であったと思います。ところが、この技術会議議員は、半数が政府側行政長官、あとの半数が民間人、その中に学術会議会長を含んでいるという格好でありますが、全会一致を希望しておられ、かつそうなるであろう、また、会長の資格で議員になれば、学術会議考え方行政に強く反映するだろう。こういう点が今度賛成された主たる理由のように承わったのですが、申すまでもなく、この科学技術会議設置法法律でありますから、もし運用されまして最初の考えと違った方向にこれが運用されましても、法律の改正がない限りは、議員を辞職することができない。ただそれに反対するには、欠席するよりほかに方法がないという考えは、十分お考え願っておられるかどうかという点が一点。  それからもう一点は、学術会議独自の立場でいろいろ意見を発表されて、それが行政に反映できぬというほど、学術会議というものは一体微力なものであるか。こういう考えであるかどうか。学術会議が独自な立場で意見を発表していただくということが、行政に反映されないから、初め反対しても、ただ肩書きがあるだけで賛成するというようなことは、逆に個人の立場でお入りになる方が、学術会議の独自性から考えていいのではないかと思いますが、その二点について簡単に御意見を拝聴したい。
  106. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) ただいまの御質問でございますが、前の成立を望まないというのを今度変えましたのは、第一の点はただいま御指摘の通りで、もう一つは、ここにかかります、取り扱う事項範囲が、前の場合よりも学術会議の希望する方向に修正されているということの二点ございます。そこで、ただいまの会長の資格で一人入っても、法律上全会一致のことが保障されていないから……、それは仰せの通りでございますが、これまでの経験からいたしまして、そういう運用をするということを特に申さない場合でも、これまで十年の間は、そういうことを経験して、つまり全会一致的なやり方で運用されていることを経験いたしております。従って、今後もそれが特に変わるというふうに推察されるところは何も感じておりませんので、現在のところ、それに特に懸念は感じておりません。しかし、そういうようなことが起った場合にどうするかという御質問に対しては、今直ちにお答えする用意がございませんが、それはただいま御指摘の欠席するより方法がないというようなことがあるのかわかりませんが、そういうような非常のときは、何も学術会議だけの問題ではございませんで、それをそのまま放っておくことはないとこう思っております。
  107. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 学術会議というものは、独自の立場でやれば力が弱いか。
  108. 兼重寛九郎

    説明員兼重寛九郎君) その点は、今まで意見を申して、申しぱなしでは、なかなかこれは具体化いたしませんで、学術会議を設けるときにも、おそらく戦前の経験から、科学技術行政協議会風なものが必要であるという結論を出したのは、そういう経験からだと思うのであります。このことは、日本行政機構と申しますか、こういうものが現状である限り、やはり即急に変らないものではなかろうかと思いますので、そういうことについて、今のところこういう科学技術会議ができることがじゃまになるよりも、助けになる方が多いであろうという気持から、今賛成しているわけでございます。
  109. 千葉信

    理事千葉信君) ただいまから休憩に入って、午後二時三十分ごろ再会いたします。    午後一時二十六分休憩    —————・—————    午後二時五十五分開会
  110. 千葉信

    理事千葉信君) それでは委員会を開会いたします。  本日重宗雄三君が辞任されまして、後任として井野碩哉君が選任されました。以上、御報告いたします。   —————————————
  111. 千葉信

    理事千葉信君) 休憩前に引続き、科学技術会議設置法案を議題として質疑を続行いたします。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  112. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 官房長にお尋ねをいたしたいと思います。科学技術会議を設置しましたら、文部省の関係、ことに大学研究の結果を利用する上において便利である、こういうような先ほどお話がございましたが、その意味を伺いたいのですが、おそらくこの技術会議のメンバーに文部大臣がおいでになるから、そこで文部大臣を通じて大学研究結果が利用されるから便利だ、こういう意味じゃないかと思うのですが、さようでございますか。
  113. 原田久

    政府委員原田久君) 科学技術会議設置法案によりますと、大蔵大臣、文部大臣経済企画庁長官科学技術庁長官がそれぞれ議員として参加しておりますから、従いまして、ただいまの御質問のように、大学研究に関することにつきましては、主として文部大臣からいろいろな御意見の御発表があり、またそれを中心として関係閣僚、それから学識経験者議員の方のいろいろ御審議が行われるかと思うのでございます。その御審議の結果につきましては、科学技術会議総理府の長官である総理大臣諮問機関でございますから、その意見総理大臣に向って答申されると、こういうふうに期待しております。それは総理府の長官としての総理大臣に対する答申でございまして、次の段階といたしまして、これを内閣において検討される、いわゆる閣議の段階における御検討を経て行政に移される、そういう期待は持っております。従いまして、大学研究の問題につきましては、その場を通じて反映させられるというふうに期待いたしておる次第でございます。
  114. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私は、この科学技術会議がなくても、大学研究の問題については、科学技術庁長官から文部大臣に、閣議なりあるいは直接お話になれば同じ結果が得られる、従って、特に大学研究の問題があるから技術会議を作るのだという積極的な理由にならない、文部大臣科学技術庁長官との関係であるから、それは同じじゃないかと思うのですが、何か特殊な違うところがございますか。
  115. 原田久

    政府委員原田久君) 科学技術会議構成員には、設置法案に記載してありますように、関係閣僚のほかに、学識経験者五名、学術会議会長から構成されております。そういう会議体でございまして、その審議というものにつきましては、さらに必要があれば専門委員を相当多数下部組織として配置し、それと十分検討した上で、議を尽して答申をするという段階になるかと思います。現在の行政組織で申しますると、文部大臣大学研究について十分御検討をされ、閣議においていろいろ御発言はなさるかと存じますが、しかし、その検討される場の広さと申しますか、その観点から申しますと、やはり科学技術会議のような学術の専門家も入った場において、高度の観点から検討をされる場のあることが、一そう科学技術振興のためには望ましいのではないか、そういう意味でこの科学技術会議設置法を赴くゆえんがあろうかと存じておるのであります。
  116. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 現在の科学技術庁設置要綱の任務並びに権限の三には大学における研究は除かれる、こういうことがきまっておることは御承知の通りでありますが、そういたしますと、防衛庁研究所の研究と、科学技術庁との関係は現在どうなっておりますか。
  117. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 科学技術庁におきましては、大学研究関係は除かれておりますけれども、それ以外の研究については、調整をいたす権限がございます。防衛庁研究いたしまする衛防庁の施策につきましては、やはり調整を行なっているわけであります。
  118. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 文部大臣に簡単に伺います。大学学問研究はもちろんのこと、一般に学問、学術の研究は民主的であり、自由であり、公開である、この三原川を堅持すべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  119. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) さように心得ております。
  120. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 このたびの科学技術会議を拝見いたしますと、従来大学は除かれておりました科学技術審議会を廃止して、それを包括することになります。そうして総合調整等をやることになるわけであります。しかもその事務局は科学技術庁の、改称されるであろう計画局の所管となって参るわけです。こうなりますと、文部省所管の科学技術関係が、ややもすれば科学技術庁方針に引きずられるようになって参るのではないか。大まかに見て、文部省は何といっても大学を控えて、学問、学術の研究をやっておりますから、基礎的なものを非常に重く見て、そちらの方から手をつけて参ると思うのです、一般には。ところが科学技術庁になりますと、どうしても科学の速成、応用面に走りがちである。産業界の要望等もあって走りがちである。そうなりますと、日本科学技術推進に当ってイニシアをとるのは、科学技術庁関係がとるようになって参ります。そうなると支障があるのではないか。もちろん議員には文部大臣が入っておるわけでありますが、この法の成立後において、いささかの懸念もないのかどうか、議員の一人として文部大臣が入るわけですが、どういう運用を心がけておられるのか、この点を聞きたいと思う。それとあわせて聞きたいことは、この三十三年九月十六日の閣議了解では、科学技術会議においては関係行政機関の専管に属する事項のみは対象としない、専管のものは対象としないというのですから、この原則からいきますと、科学技術会議の事務、庶務を担当するのは、科学技術庁というような一つ省庁の事務局が扱うというのではなくて、科学技術会議というものができると、そのプロパーの事務局ができて総合調整という立場から運ばれるべきではないか、私はこう思う。ところが実際は、今度科学技術庁設置法の改正を見ますというと、科学技術庁の計画局でこれを扱うということになりますと、私はどうしてもここに文部省との関係がうまくいかないで、うっかりするというと、基礎をおろそかにして応用方面に走り、しかもいずれの国でもそうでありますが、軍事科学がどうしても優先して、牽引力となって参りまして、そちらの方に片寄っていくおそれがあるのではないか。特にわが国は科学技術振興というものが強く要請されておると同時に国家財政が貧困でありますから、科学技術振興関係予算を編成する場合に、その予算面から一般学問等の研究がそういうある特殊な科学技術研究の方に、さらに極端に言うならば、午前中もちょっと触れたのですが、ロケット兵器とかそういう火急な——今の政府の立場で考えられれば火急な、そういう方面予算的に研究が引っぱられていくのではないか、そこに日本の学者の学問研究の自由というものが制約される、予算はひもつきになるおそれがある、これは決して私は杞憂でないと思う。どういうふうに文部大臣はこれをお考えになっておられるか。もしこの科学技術会議が発足した場合に、文部大臣としてどういう運用に心がけるつもりか、その点承わっておきたいと思います。
  121. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) ただいま矢嶋委員から御質問のありました点は、この科学技術会議のことが問題になりました当初から、最も重要な問題として論ぜられて参ったところでございます。ただいまお話のございましたように、この科学技術進歩のためには不断の基礎研究というものに、これは当面何に役に立とうが立つまいが、非常な精力を集中していくということが非常に必要なことだと考えておる次第でございます。そういう観点から参りますると、何と申しましても大学におきます研究というものが、従来も最も基本的なものでございましたし、今後でもやはり大学におきます基礎的な研究というものにほんとうに力を入れていくのが、私大切なことだと考えておるのであります。この会議の問題がありました際にも、私自身、日本学術会議の国会側との連絡会議に毎月出て参っておりまして、学術会議の方でもそれを御心配になりましたし、私も全く現在までの何年かのやはり科学技術関係の問題に関しまする世の中の動向というものを考えてみましたときにでも、あるときに非常に原子力の問題というものがはやされて、ジャーナリスティックに科学技術予算をみんな原子力にやりさえすればいいという風評なきにしもあらずでありまして、私は矢嶋さんの御心配は私も杞憂でないと思います。で、科学技術会議のメンバーとして入りましても、不断に基礎研究というものが必要だということを、常に第一の前提として主張して参るつもりでありますし、科学技術会議が開かれました際に、時々の問題というだけでなしに、やはり科学技術問題に対する一般的な心がまえといったのを最初やはり考えてみたいと思います。その中には、十分最初から終始一貫した方針として織り込んでいくべきものだと考えております。具体的な問題につきましては、事務局のやりよう等については、いろいろなやり方があると思います。御指摘のございましたように、この事務局を特別に設けるというような方法もあると思いますが、いろいろ相談をいたしました結果、本法のような仕組みになっておりまして、庶務については政令で定めることになっておりますが、一般的には科学技術庁会議の庶務を扱いまするが、大学における研究にかかる事項に関しましては、科学技術庁と文部省とが共同して処理することとなるものと了解をいたしておる次第でございます。  で、ただいま御指摘のございました点につきましては、どうするつもりかという点につきましては、私ただいまお話のありました趣旨をこの科学技術会議というものが開かれて、そして具体的ないろいろな問題が処理されて参ると思いますが、そもそもやっぱり科学技術会議としてのあらゆる問題に当る基本的な態度として、基礎研究の尊重という点は、もう初めから、何と申しますか、基本精神としてきめてかかりたいと考えております。
  122. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その点に関する限りは了承しましたが、高碕長官に伺っておきたいと思いますけれども、今の文部大臣の御答弁に関連するわけですが、この会議が発足した後に、庶務はあなたのところの計画局でこれを扱う、その場合にも文部事務当局と十分連絡をとりながら、文部事務当局の意向も参酌し、十分連絡をとってこの事務を取り扱っていく、こういう点お約束できるか。その点お答え願うとともに、それから両大臣に伺いたい点は、昨年の十月ごろでしたか、前の三木長官科学技術振興については、小、中学校の理科教育の規定から立て直さなくちゃならぬ、従って、理科教育の内容についても云々という、あたかも科学技術庁長官が、この科学技術会議において、義務制の学校段階における理科教育の内容まで議せられるのかと私は印象を受けるような発言をされたことがあるのです。そういう考えがあるのかどうか。もちろんこの第二条のうちには「科学技術一般に関する基本的かつ総合的」という言葉があるのですが、この中に含ませる考えなのかどうなのか、これは学校教育の問題でありますが、この点について、科学技術庁長官と文部大臣意見を承わっておきたいと思います。と同時に、まあ文部大臣の所管にもこの原子力研究関係があるわけですが、原子力関係は、原子力委員会委員長のもとにこれを取り扱っているわけですね。しかし、この法文を見ますというと、科学技術会議が発足いたしますというと、原子力に関する限りは、この原子力委員会科学技術会議の分担が不明確で、ダブリ、混線するのではないか、かように思うのですが、その点はどうなっているか、以上の点について、両大臣からお答え願います。
  123. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 先刻文部大臣からお答えいたしました通りに、本会議の庶務は技術庁において処理いたすことにしておりますが、すべてのことは文部省の事務当局と十分協調を保って、その間に何らのそごを来たさないように決していきたいと存じております。  それから学校教育の問題についてもお話がありましたが、この点につきましても、これは文部大臣ともよく協議をしてお答え申し上げたいと思っております。
  124. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 理科教育の問題等に関しましては、これはもう文部省の方で所要の審議会等にお諮りをしながら考えていく筋のものであると思います。ただ、何と申しますか、実験というようなもの、あるいは観察というような面について、子供のころから日本人はあまりなれておりませんから、そういう面をなるべくならしてもらいたいといったような要望みたいなものは、自然こういうものを議論している間に出てくるかと思いますけれども、これは直接理科教育の内容の問題というものは、ほんとうにやはり文部省が真剣に考えて参るべきものでありまして、この科学技術会議におきまする議論というものは、そういうところまでは私は及ばない筋のものだと考えております。
  125. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 最後に、さっきの原子力委員会科学技術会議関係はあとで事務当局から答弁いただきます。文部大臣、急いでいるようですから最後に両大臣に要望申し上げておきます。私は、科学技術会議のこれを提案するに至った皆さん方のお気持というものはよくわかります。大切だと思うのです。しかし、私は午前中ちょっと触れましたように、これはいろいろ問題点もあるし、またこの出てきた私は一部には、次の大きな理由があると思う。これは矢嶋のじゃけんだという人があるかもしれませんが、私は確信をもって申し上げます。それは、日本学術会議並びに日本大学の教授の方々、こういう方々に全面的に満足していない今の政府与党の方々が、学術会議大学の教授団の意向というものをある程度無視し、チェックする私は魂胆が底にある、私はこれは否定できない。具体的に言うならば、たとえば今の再軍備を指向しているあなた方が、この科学の点について兵器研究を相当徹底的にやろうとしても、平和利用平和利用というて、日本の学者がなかなか協力しない、こういうことはよくあなた方の陣営の人が口にするところです。従って、私は当面具体的なあなた方の要求として強く出てきているのはロケット関係だと思う、ロケット兵器関係だと見ている。うそかうそでないかは三、四年たてばわかると思うのですが、そういう点に平和々々というて学術会議大学の教授連中がどうも協力しない、だからそれをある程度チェックして、一つのあなた方の政策のもとに予算の裏づけ等をもって進めていくためには、こういう会議というものが必要だ、意識するとしないとにかかわらず、これが一部にひそんでいると、私はそう見ております。そこに非常に危険を感ずるわけでありますから、この会議が発足後においては、私の今申し上げたことが杞憂に終るように配慮願いたい、こういう意見と希望を矢嶋は持っておるということをお含みおきいただきたい、これは申し上げるだけでございます。
  126. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) 原子力委員会関係についてお答えを申し上げますが、原子力委員会は、御承知のように原子力の平和利用に関する政策の問題とかあるいはこれに関しまする各省行政総合調整といった問題について審議をいたします機関でございます。従いまして、原子力委員会は、原子力プロパーの問題につきまして審議をいたしますわけでございますが、しかし一面、科学技術の全分野にわたりまして、原子力をいかに発展させるか、つまり原子力と他の科学技術行政との調整というものが別に起るわけでございます。その他の科学技術分野の問題につきましては、原子力委員会の所掌事務でございませんので、これは科学技術会議の問題になっているわけでございます。従いまして、原子力委員会の方で、たとえばある一つの原子力利用の方の見地からの意見が出まして、それは同じく総理大臣答申がいくわけでございますけれども、それをさらに他の科学技術分野において調整をする必要があると総理大臣が見た場合には、科学技術会議にあらためて意見を問うことになると思います。その間、しからば意見の食い違いがあったらばどうかということでございますけれども、この点は、私ども科学技術の問題でございますれば、十分話し合われれば、そこで意見調整がつくのではないか。しかも原子力委員会委員長は御承知のように科学技術庁長官でございまするし、同時にまた科学技術庁長官科学技術会議議員でございますので、その間の調整は内部的につくのではないかと考えている次第でございます。
  127. 千葉信

    理事千葉信君) 他に御発言もなければ、これにて本案質疑を終局することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 千葉信

    理事千葉信君) 御異議ないと認めます。それではこれより討論に入ります。  この際、共同提案にかかる附帯決議案を、便宜私から御披露申し上げます。案文を朗読いたします。    科学技術会議設置法案に対する附帯決議案  科学技術会議運営に当っては  一、基礎研究を重視すること。  一、学問研究の自由を確保すること。  以上であります。  それでは、ただいま提出いたしました附帯決議案を含めて、御意見のおありの方は順次御発言を願います。
  129. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私は本案反対であります。その理由は、先ほど質疑の段階でも若干意見を申し述べておきましたので、きわめて簡単に申し上げます。科学技術振興目的は、私は必ずしもこの会議を作らなくても達成できると、こう考えるからであります。それは第一に原子力委員長を含めて科学技術関係の閣僚懇談会を作り、この科学技術会議のメンバーに予定されておる民間人四名は科学技術庁の顧問にこれを任命し、また日本学術会議科学や学術に関する意見はこれを重視するということで、目的は私は達せられるのじゃないか。ことに国防に関する技術科学振興のために非常にこれを促進しているということはまぎれもない事実でありますのに、この科学技術会議には防衛庁長官はメンバーの中に入ってない。しかもメンバーに入れなくても、現在の機構で十分防衛庁技術研究本部なり防衛研修所の研究結果は、相互調整できている。こういう今の政府委員の御答弁から伺ってみましても、これは内閣さえ科学技術振興に対して十分の深い認識を持ち、予算を取り、熱意を示せば、こういう会議を設置しなくても目的を達せるのであって、問題は、政府科学技術振興に対する熱意いかんにあって、機構の問題ではない。かように考えますので、行政簡素化の趣旨にも反することになるし、私はその必要を認めないのであります。
  130. 山本利壽

    山本利壽君 私は自由民主党を代表しまして、附帯決議案を含めた本案に賛成いたします。  科学技術振興ということが必要であり、それを国家全体としても一般の国民としても要望しておるということは事実でございます。それがために本案のごとき科学技術会議が設置されるということは、いささか機構を増すというきらいもありますけれども、そういう専門の機関があることによって、さらにこの科学技術というものは確かに振興方向に進んでいくものと考えます。しかしながら、審議の過程においていろいろ議論、質疑応答のありましたような点について懸念もありますけれども、各関係大臣及び係官から明快な答弁があり、しかも基礎研究を進めるように、あるいは学問の自由をそこなわないようにという附帯決議までつけられたことでございますから、日本科学技術の進むことを念願して、わが党は本案に賛成するものであります。
  131. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 日本社会党は本案に賛成でありまして、その意思を表明いたします。しかしこの際に賛成の態度であるわが日本社会党の立場を宣明いたしたいと思います。  まず日本科学技術水準というものは、理論的には、あるいは着想的には、世界のある面においては最高水準に、ある面においても相当の水準に行っておりまするが、しかし、国家財政との関連がありまして、これが実験面あるいは実用面に参りますというと、非常におくれている。しかもせっかく保持している科学技術というものを百パーセントこれを発動するに当っては、各分野におけるところの水準調整されていない。ある面は非常に水準が高い、ある面は陥没している、こういう凸凹があるがゆえに総合的に日本科学水準の力が発揚できない。こういう欠陥があると私ども考えている次第でございまして、日本の乏しい国家財政の中に、一つの国策として可能な最大限の国家財政、これを投入し、そうして日本科学水準世界水準を凌駕するところに持っていき、技術革新をはかり、それによって日本経済力を強めていくというような政策を進めるに当りましては、相互調整を要するという点は、当面非常に緊要な問題だと考える次第であります。従って、そういう意味において、何らかの機関を作り、それを運用していくということは大切だと思います。そういう意味において、そういう趣旨のもとにこの科学技術会議というものが提案されたことは、きわめて妥当であると考える。  しかし、先刻来質疑いたしましたように、これを法制的に考えるならば、ずいぶん疑問の点がある。これらは将来運用にかかるわけでありまして、運用に当っては特に配慮していただきたい。わが日本社会党は、行政部の行政諮問機関の長に大臣が就任するあるいは総理大臣がその責任者となり、その諮問機関総理大臣答申するというような、こういう形態の諮問機関というものは好ましくないという見解を持っておりまするので、運用に当っては特に配慮をしていただきたい。  なお、次に申し上げたい点は、日本科学技術推進していくに当っての知能的中枢の役を勤むべきは、何といっても日本学術会議でなければならない。最近政府日本学術会議の意向を軽視する傾向にあることは非常に違憾だと考えます。今後も日本学術会議運用に当っては、予算面等あらゆる面に便宜をはかり、これを強化して、その使命が十分果されるように政府は便宜を与えるとともに、日本学術会議の意向、結論というものを十分尊重する立場において、科学技術会議運用すべきである。その意味において科学技術会議日本学術会議との間の連絡機関というものは、しかるべきものを設置していただきたい。また設置すべきである。かように考えるわけです。そういたしますと、先ほど附帯決議にありましたように、学問研究の自由は保持され、また基礎研究が軽視されるというような事態が起らずに、附帯決議の線に沿い得るものと私ども考えている。  次に特に指摘しておきたい点は、いずれの国でもそうでありますが、科学技術開発研究に当って、平和利用、平和利用と口にいたしましても、古今東西を問わず、これが軍事と結合しない場合というものはきわめてまれであります。そうしておおむねそのときの世界の情勢にもよりますが、軍事科学というものがどうしても優先するきらいがある。そういう意味において、あくまでもこの法を運用するに当っては、十条に秘密を守るということもありますけれども研究の民主的であることと、自由、公開であるというこの三原則を守り、いやしくも軍事科学優先というような運用があってはならないことは、この科学技術会議の提案理由にも明記されておりますので、特に注意を喚起いたしておく次第でございます。  なお、この法案においては、人文科学を除くとなっておりますが、これはいろいろ運用面もあり、人文科学は他の面でやるという考えでかように条文にうたったと思いますけれども、自然科学以外の科学部門を軽視してはならないことは、あらためて指摘するまでもないことであります。  それから次に、ささいなことでありますが、指摘しておきたい点は、議員の中に三人は、国務大臣あるいは学術会議議長以外から選ぶことになっておるわけでありますが、かりそめにもこういう三人を、よく政府がやるように、落選議員の救済機関に使うようなことがあってはならない。こういう三人は、学術会議等の意向も聞き、ほんとうに適格者を選任すべきである。あえてなぜこういうことを言うかと申しますというと、当初政府から提案されたものには、政党の役員等は任命することはできないという条文があったのに、衆議院の審議段階においてそれが削除、修正された。そういう点から、私は特に日本社会党の立場としてそういうことを申し上げておきます。  で、最後に申し上げておきたい点は、質疑の段階でも指摘したわけですが、事務局の設置、運用に当っては、科学技術庁の独走にならないように、法の精神に従って、十分関係各省庁と連絡をとって運用していただきたい。ただ運用するのみならず、根本は科学技術会議が発足したならば、日本経済力その他あらゆる日本の持っている条件、それから世界の情勢等に思いをいたし、ここ十カ年あるいは十五カ年の長期にして広大なる、遠大なる国策としての政策を打ち立てて、そうして科学技術振興をはかるように、そういう大きな点に科学技術会議は配慮していただきたい。こういう点を特に要望し、以上、日本社会党の賛成する理由を申し上げて、賛成の討論といたしたいと思います。
  132. 田村文吉

    ○田村文吉君 緑風会を代表いたしまして、附帯決議案を含めて、本案に賛成したいと思います。ただし、先刻も八木委員からお話しがありましたように、今日はきわめて行政が複雑化してきておるということについては、まさしく政治の通弊であると考えます。その点から申しまするというと、できるだけかような会議とかあるいは審議会とかというようなものは、あってもなくてもいいようなものだと言っては悪いのですが、そういうようなものは、できるだけ一つなくするというむしろ方針に進むべき時期である、かように考える。ただしかし、科学技術会議という非常に広大な題目のもとに出発するこの技術会議でございまするが、私は日本の民族の勃興あるいは人口問題の解決、かような点は、かかって今後の日本民族の科学技術進歩いかんにある。こういうような重要な問題でありますがゆえに、あえて今簡素化に反する技術会議、またややもすれば政府会議あるいは審議会に名をかりて、政府の責任を軽くしよう、こういうふうな態度に出るおそれのあるいろいろの会議等に対しては反対しておりまするにかかわらず、深い重要な意義を考えて、この科学技術会議の設置に賛成したわけなんです。従いまして、今後の運用でありまするが、いわゆる机上の形だけのものに終ることのないように、実質を十分におさめるように、運用の妙を尽していただきたい、かように希望いたしまして、本案に賛成いたします。
  133. 千葉信

    理事千葉信君) 他に御発言もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  134. 千葉信

    理事千葉信君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。科学技術会議設置法案内閣提出衆議院送付)全部を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  135. 千葉信

    理事千葉信君) 多数と認めます。よって本案は、多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、討論冒頭に委員長から提出いたしました共同提案にかかる附帯決議案を議題といたします。本附帯決議案を本委員会の決議とすることに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  136. 千葉信

    理事千葉信君) 多数と認めます。よって本附帯決議案は、多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  この際、本附帯決議に対する政府の所信をお述べ願います。
  137. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 今回提案いたしました科学技術会議設置法案につきましては、きわめて熱心に適切なる御意見を承わりまして、まことに私ども啓発されたことをここに厚く感謝いたします。つきましては、本附帯決議としての「基礎研究を重視すること。」、これはもともと私どもの希望する点であります。また、「学問研究の自由を確保すること。」、これももともと私どもの希望と全く一致しております。この附帯決議を十分尊重いたしまして、今後の執行に当りましては、各委員から御希望のありました点につきまして、運営につきましては誤まらぬように処理いたしたいと存じます。ありがとうございました。
  138. 千葉信

    理事千葉信君) それでは議長に提出する審査報告書の作成につきましては、慣例により、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 千葉信

    理事千葉信君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。   —————————————
  140. 千葉信

    理事千葉信君) 次に、憲法調査会法の一部を改正する法律案(内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  本案につきましては、さきに提案理由の説明を聴取いたしておりますので、これより本案質疑に入ります。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。  なお、ただいま赤城官房長官、高柳憲法調査会会長、武岡憲法調査会事務局長、鈴木官房副長官出席されております。
  141. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 高柳会長にお伺いいたします。あなたは憲法調査会の会長でありますが、会を運営するに当っては、自主的な立場で運営できておりますか。それとも何らかの、陰に陽にの制約を受けておりますか。いかがでございましょうか。
  142. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) 会の運営につきましては、全く自主的に運営いたしておりまして、あるいは内閣とかその他からの制約というものを受けたことは一ぺんもございません。
  143. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 だいぶ会議もなさっておられるようですが、そのつど速記録をいただいて拝見いたしております。推察するに、日本憲法のどういう点が問題である、改正をしたい、で改正するのはいかように改正したらよろしいか、こういう角度で御研究をされておるように私は拝察するわけですが、いかがでございますか。
  144. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) 私の会長として職務を行うようになりましてから、調査会は憲法の改正ということを前提として運営さるべきものではなく、憲法関連する諸問題を客観的によく研究して、そしてその結果を内閣及び内閣を通じて国会に報告するというのが、法律でわれわれに委託された職務だと、こういうふうに理解しておりまして、大体今までやりましたのは、総会でもって三十二年の八月から現在まで二十五回開いておりますが、一回から三回までは憲法調査会の運営と調査、審議の進め方の基本方針を論議いたしました。それから四回から十回まで、日本憲法制定の経過について検討をいたし、それから十一回から二十五回まで日本憲法運用の実際について、そして裁判の関係が六回、国会の関係が六回、行政運営関係がまだ始めたばかりで一回、こういうふうに運営しております。それから憲法制定の経過に関する小委員会というものができまして、三十二年の十二月十八日に設置されまして、三十三年の一月から現在まで十六回ほど開催いたしております。それからさらに委員会というものが三つできまして、第一委員会は国民の権利義務及び司法に関する事項、これが所管事項になっておりまして、委員長は前の最高裁判所の裁判官の真野毅君がなっております。第二委員会は国会、内閣、財政及び地方自治、これを所管事項としておりますが、委員長は坂千秋君がなっております。それから第三委員会は、所管事項は前文、天皇、戦争放棄、改正及び最高法樹に関する事項委員長は岡田元三郎委員がなっております。これらの委員会は、所管事項につきまして総会から付託を受けた調査、審議を行うということになっております。さらに地方の公聴会というものを行なっておりまして、三十三年十一月から現在まで五回、大阪と金沢と名古屋と仙台と福岡で開催いたしました。近く高松、広島で開く予定になっております。会の運営方針運営委員会で一応きめまして、さらに総会に諮って決定するということになっておりまして、これが三十三年の八月から現在まで三十七回開催いたしております。さらに海外調査団を派遣いたしまして、三十三年の十月から十二月まで欧米に派遣するというようなことをやっております。ちょっと言い漏らしましたが、運営委員会の委員会長、副会長、それから運営委員は衆議院から稻葉修君、古井喜實さん、それから中村梅吉さん、それから参議院から村上義一さん、それから先ほどまで木暮武太夫さんがなっておられましたが、これは参議院の予算委員長に就任のために、委員たるの資格を失なったのであります。  それから学識経験者委員としては、大西邦敏君、それから坂千秋君、高田元三郎君、細川隆元君、それから蝋山政道君、これだけが運営委員として運営方針をきめることになっております。  さらにこの委員会の委員長真野毅君と坂千秋君と高田元三郎君は、ことにその中で真野君は運営委員に入ってないのですが、運営委員会にご出席願って、御相談にあずかることにいたしております。  そして憲法の調査研究につきましては、先ほど申しましたように憲法の制定の過程、これは日本の制定の過程は非常に複雑な過程を経て成立したのでありまして、これにつきましては、とにかく憲法調査会で十分に後世のために正確な記録を残していくということは意味があるんじゃないかという意味で、第一に制定過程の問題を取り上げたのであります。しかし、制定過程の問題が一番大切な問題であるという御意見委員の中にはありますが、また制定過程はまあ一応検討する価値が十分にあるが、大切なのは今の憲法というものが実際においてどういうふうに運営されておるか。で、日本政治経済、社会、非常に広い範囲にわたって、新しい憲法というものは、いわば社会革命を起しておる。で、それらがどういう波紋を描いておるか。そうしてそれと同時に、今の運営のやり方というものは、果して新憲法の基本原則であるところの民主主義というものを育てるような仕方で運営されておるか、あるいはこれを破壊するような方法運営されておるか。そういうような見地から、現実の日本政治経済社会というものを検討していく。こういうのが一番大切な点であって、それらの運営に照して、最後に、現在の日本憲法のテキストに修正を加える必要があるのかないのかということを考える。日本の民主主義を育てていく上において、憲法運用、このテキストまで手を入れる必要があるのかないのかという点を、最後の段階においては検討するようになると思います。第一と第二はすでに総会で決定されておりまして、やっておるのであります。第三の点はおそらくそうなるのだろう。まだ決定はしておりませんけれども、そういう見通しでおります。
  145. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 会長は、憲法調査会法の国会に提案された場合の提案理由でですね、これは議員立法でありますか、筆頭提案者は岸信介君。この議員提案の提案理由並びに本会議でこれが成立した場合の委員長報告ですね、こういうものを読んでいらっしゃいますか、どうですか。
  146. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) 一応読んでおります。しかし私自身の考えでは、この憲法調査会ができるに至った経緯、歴史的背景というものを離れて、全体、憲法調査会法はわれわれにどういうことをすることを命じておるのかということを考えて、法律で委託されたることを忠実に行う。私の理解するところによりますといろいろ日本憲法改正問題というのは、第九条をめぐって政党的な闘争があって、社会党の反対、成立に対する反対というものがありまして、そして成立した、こういう経緯が背景にあるのであります。しかしながら、憲法調査会というのは、そういうことを検討するのが目的ではなく、もう少し広範な範囲にわたって、日本に築き上げられた民主主義というものが健全に育成されるようなふうに動いているかどうかという点が一番大切な問題だと思います。御承知のように民主主義は非常にむずかしい、国家の運営のやり方、非常に精緻ないろいろな部分があって、そしてよほど上手に運営しないというと、民主主義自体が破壊されて、結局独裁主義に移っていく、あるいは右翼独裁になるか左翼独裁になるか、これは世界の従来の経験の上から、憲法にどう書いてあろうが、運用を間違えばこれは民主主義それ自体が破れちゃう、そういう歴史的経験は、これまでもずいぶんございます。そういうようなわけでございまして、現在われわれがやっておりますどういのふうに動かされているのだろうという点、これが非常に大切な点ではないかと、こういうふうに考えております。
  147. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私今お伺いしているのは、司法の第二条には「関係諸問題を調査審議し、」と、まあこういうふうに書いてあるわけですね。しかしこの法律が成立するに当って、提案理由というものがあるわけです。だから提案者に対しての質疑応答が一方で行われるわけですね、それを集約したものが委員長報告として本会議でなされて、そして採決をされて、これが可決され、公布施行される、かようになっているわけですから、その法律に基いて調査会長に就任されて、調査会を運営していかれる会長とされては、当然その提案理由、さらに審議過程における提案者の答弁、それから本案が立法府において採決されるに当って報告された委員長の報告というものは十分尊重して、それに即応して法の運用はなさるべきものだと、かように私は考えますので、そういう点、お認めになられますかどうかということをお伺いしているわけです。
  148. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) これは提案の理由、あるいは議会におけるいろいろな意見の発表、そういうようなことは一応は見ておりますけれども、法の解釈というものは、提案者の意見を離れて、法それ自体の精神というものによってこれを運営しなければならぬ、こういうふうに考えておりますので、一応は拝見しておりますが、しかしながら、それよりも大切なのは、法が何をわれわれに、要求しているのか、われわれの理解するところでは、憲法調査会というものは、超党派的でなければならぬ、われわれは長い目で見た日本国民から委託されて憲法のことを調査する、こういうのが憲法調査会法の精神である、こういうふうに理解しておりまして、これをだれが提案したとかというようなことは背後にかくれちゃって、法ができた以上は、法の精神に基いて最も妥当なる運営方法を行う、これが法の解釈としては正しいのじゃないかと、こういうふうに考えております。
  149. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 質問を続けます。確かにあなたがお答えになりますように、憲法調査会は法の改正を目的とするものではない、あらゆる角度から憲法そのものを調査審議するのだ、かように答弁しております、その点、会長のお答えになる通りであります。そしてさらに会長が答弁されましたように、この憲法の成立過程ですね、それと、それからその運用面、国情に沿うかどうかという点を、まず検討するんだということを述べられております。そこであなたにお伺いする点は、確かに今の日本国の憲法を検討するに当っては、その運用がうまくいっているかどうか、あなたが申されるように、平和主義、民主主義という立場で運用するに当って支障はないかどうか、この実際の法の運用状況を客観的に研究するということが一番大切だと思うのです。その結果によって、まあ次の段階が分かれてくるかと思うのですね。そういう立場から考える場合ですね、この十月十六日から約七十日間にわたって欧米を視察されておりますが、まあアメリカへ行かれた点はちょっとあとに残します。欧州各国をずっと回られておりますが、それはどういう目的で行かれたのか、私は理解しかねるわけですがね。それは行かれることよりは、平和主義、民主主義に即応して日本憲法運用されているかされていないか、運用的にどこか欠陥があるかという点を徹底的に調査審議されて、そうして悪い点があれば欧州各国ではどう憲いう法があって、どういうふうに運用されているかそれを見よう、そうして次に問題が発展した場合に、参考になる点があったら参考にとっておこう、こういうことがあるかと思うのですよ。ところが、国内の、現実に今の憲法運用がどうだという点の究明を徹底的にやることなく——アメリカに行ったのは別に指しますよ——。欧州各国をこういう、ふうに視察されるのは、どういう目的があったのか、これを御説明いただきたいと思う。これを見た場合に、私はやっぱり口先では憲法改正を目的としないと言いながら、もう改正の必要というものを考えられて、よそにはどんな憲法があるだろうか、そうしてどういうふうに運用しておるだろうか、そうしてどこかいい参考になるものはないだろうか、それを視察に行かれたようにとらざるを得ないわけですね。私どもしろうとから考えると、それをどうしても理解できないわけです。しかも来年度、昭和三十四年度の予算要求を見ますと、また五百一万八千円の海外出張旅費を要求されているわけですね。それで、私はこの点を明確に、納得できるように御説明いただきたと思います。
  150. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) 欧州に行く前に、実はアジア・アフリカ法律諮問委員会というのがカイロでもって開かれまして、二週間ほど会議出席いたしたのでありますが、これは去年はニューデリー、ことしはカイロ、こういうことで、これは私が——各国一人ずつ法律家を指名して、それが委員会を作ってやる会なので、各国から諮問されたる事項に答えるという会なのですが、これに二週間ほど前からこの約束があって参らなければならないので、二週間ほどカイロに行くことにして、それから実は行くおもな目的は、アメリカにおいてこの制定の経過について、これはあとでもってまた御質問があると思いますが、調査ということが主たる目的であったのでありますが、その間、一カ月の間に、一つ将来日本憲法運用研究するに当って、比較的にやはり検討していくということが必要である、それからまた研究いたしますについて、いろいろな学者とか、あるいはいろいろな研究機関というものと連絡をとって、将来の研究の準備をしていく、そういうようなことが非常に望ましいと思いまして、同時に、各国を回りますから、各国の憲法についてそれぞれの国の政治家とかあるいは学者とかというような人といろいろの意見を交換して、またこの憲法調査会のようなものを運用するには、どういうふうにして運用したらご番効果が上るのかというような点についても、各国のそれぞれの経験者の意見も聞いて参考にしたい。さらにもう一つは、稻葉委員が主として関係したのですけれども、ドイツの制定過程のことが憲法調査会で問題になっておるわけでありますので、ドイツの制定過程を関係した人に聞く、こういうような目的で欧州は回ったのであります。おもな仕事というのは、大体将来に対する準備ということが目的であったのであります。
  151. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は了解いたしかねます。断じて了解いたしかねます。憲法調査会の委員選定に当っては、それぞれの有識者、わが国におけるハイ・レベルの人を任命してあるはずです。わが国の憲法が民主主義に即応し、平和主義に即応して運用できているかできていないかを判断できないような方は、私は任命されていないと思うのです。国内の現行法の運用面を徹底的に究明することなく、欧州各国を視察されるということは理解いたしかねる。これはもう愚法改正の意図を持ち、いい材料を探しに行ったとしか思えない。しかも会長さん、何んですか、三人の方が行かれるのに、ばらばらに出発されて、不謹慎じゃありませんか。それだけの必要があるならば、三人——あなたと稲葉さんと高田さんは同じような行動をとられて出張されたらいいじゃありませんか。あなたは十六日、稻葉委員は十月二十二日、高田委員は十一月七日に出発されている。そうして視察された。国は、高田委員は米国だと、あなたと稻葉委員は皆違う。これは不謹慎ですよ。私は了解しかねる。少くともこれは意見の相違になるかもしれませんが、そういう意味の海外出張はやめていただきたい。三十四年度に五百一万八千円要求されているのですが、この運用については、会長として国民の心を心として、十分配慮してやっていただきたい。また立法府にこういう意見があったということを、総会に機会があったら発表していただきたい。先ほど言いました第一段階と第二段階の究明が十分尽されて、そうして次の段階に必要を感じて云々となれば、それは国家、民族の永遠にわたる重大な問題ですから、そういう必要が起ってくると思うのです。しかし、このたびのああいう段階に、ああいうことは——出張に行かれる、しかも三人の方がばらばらに行かれた、こういう行き方は了解しかねる。しかも行かれるならば、私の私見を言うことを許していただくならば、ほんとうに専門で、責任をもって取っ組んでおられる会長さんのような方がお行きになるのはいいのであって、今後また五百一万円あるが、この金で政治家がほかの視察とあわせて行かれるようなことは容赦できない。この点は、あなたと若干意見の相違になるかとも思いますが、一応私の意見を申し上げて、次に移ります。  アメリカには、調査目的憲法制定の経過を明確にするためにおいでになった、こういうことだと思うんです。これは私一つ目的があると思うんですね。そこで私伺いますが、この経過は、日本人の自由意思がある程度制約されて、平たい言葉で言えば、押しつけられてそうして憲法ができたという、そういう経過がわかった場合と、いやそんな押しつけというものはなかったんだ、こういう経過が現われた場合とによって、今の日本憲法を改正するとかしないとかいう問題と関連がありますか、ありませんか、どうですか。
  152. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) そういういわゆる押しつけられたる憲法であるから改正しなければならぬというふうに考えている人もある。それから押しつけられようが、押しつけられまいが、内容がよければいいじゃないか、こういう考え方の人もある。私自身の考えは、憲法を改正するとかしないとかいうような問題とは関連性がない。そういうふうにわれわれは考えております。ただ、この日本憲法というものができたのは、御承知のように、アメリカ人と日本人とが協力してああいうものが成立したということは否定できないのである。そこで、まあ占領下においてポツダム宣言に沿うような憲法を作るということが、日本に課せられた義務である。そこで、先ほど申しましたように、なるべく将来の日のために正確な記録を残す。この制定に関係した人も、相当な年配の人がおりますから、だんだんとなくなってしまうというようなこともあるわけであります。それらの人を呼んで日本でいろいろ調べて、その調査の結果というものは、日本側あるいは政府の人がどういうふうに考え、どういうふうにふるまったかということは、大体日本でわかる。しかしながら、問題はアメリカ人がどういう考えでふるまったか、こういう考えでふるまったというような点は、全部推定でありまして、向うの言うことを聞かなければわからないわけなんであります。それでありますので、アメリカに参りましたのは、日本で調べてどうしてもわからない、文章を見てもわからない、それから参考人の言うこことを聞いてもわからない、そういうことを調べるのと、もう一つは、アメリカ人がどういうつもりでどういう行動をしたのか、国務省はどういう考えであったのか、司令部はどういう考えであったのか、そういうことを日本では調査できない、そういう問題を向うへ行って調査するという意味で行ったのでありまして、これは憲法改正の問題には、私の考えでは、直接には関係しないということに考えております。
  153. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 あなたは会長として次の事柄を承知しておりますか。それは、この法律案の提案理由が述べられた場合に、現行日本憲法は、占領下に、この抑圧され、制約されて、押し一つけられてできた押しつけ憲法である。だからこれを再検討しなければならぬということが、提案理由に非常に強調されたという事実、それから当時の担当吉野国務大臣が、委員の質問に対して答弁しておりますが、その中に、第一は占領軍の制約下においてこ一の憲法はできたという点を調査する。第二点においては、日本国の国情に沿うか沿わないかという点を調査するのが目的である。特に、特にです、政府としては第一点に重きを置く。占領軍の制約下にこれが押しつけられた憲法としてできたという点に特に重点を置いて調査する考えであるということをはっきりと国会の速記録に、当時の吉野国務大臣が残されておりますが、これはあなた承知しておられますか。
  154. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) はっきり今その文字は記憶しておりませんが、そういうようなことがあったかもしれません。しかしながら、先ほど私申しましたように、法律になる前のいろいろな政府の提案というもの、それに、たとえば独立に運営をする憲法調査会が従わなければならぬなんという理由は、私はないと思う。法律ができた以上は、法律の精神というものに照らして日本国民のためにわれわれは仕事をするのだという気持でやるべきものである、特定の提案者がどういうふうに言ったかとか、言わないとかというようなことによってわれわれは拘束を受けないものと、こういうふうに私自身は考えております。
  155. 横川正市

    横川正市君 ちょっと関連質問。私たちは、法律の解釈というか、そういった点で、今のあなたの答弁では非常に納得しかねるわけなんですね。もっとも、そのでき上った法律が一人歩きをして、運用について拡大あるいは過小運用されるという場合は、これは最高裁判所の決定によっていろいろあると思うので……。しかし、国会で審議をされる過程に、提案者の提案の理由が法律の少くとも大半の精神であるというふうに私ども考えて、それに対して賛否の意見があり、賛成し、反対をする、これは立法府としての法律制定までのわれわれの努力なわけなんであります。ところが、あなたの今の説明でいきますと、法律は、できてしまうと、作られたときはどんなことを言っていたか、わしは知らぬ、作られた法律の文面だけを見て、あなたの解釈でこうだと思うと、それに従って仕事をするのだというまあ答弁なんですが、それはどうもいささか私たちとしてはふに落ちかねるのですが、もう少し具体的に説明していただきたいと思う。
  156. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) この法律のできるまで、いろいろ議論がありまして、この議論があった、あるいは提案がなされた、それに賛成する人も、そこに提案された理由で賛成したのでない人もある、理由はボート——投票する場合に、いろいろな動機から賛成する、そこで、法律ができてしまいますと、それらの議論というものは、参考にするのはいいけれど、それによって拘束を受けない。私はイギリスの法律をやっております。それで、イギリスではやっぱりそういう提案理由とか、国会における議論とか、そういうものは一切見ないで法律は解釈しなくちゃいかぬ、そういうものをなぜ投票したかということを一々調べるというわけにもいかない、それでありますから、やはり法律ができた以上は、その法律の精神というもの、これは良識を持って守っていく、そうしてそれに基いて解釈する、そうしてその運営をどういうふうに具体的にするかは、政府の、内閣の意向によるのじゃない、これは調査会が自主的に運営する、こういうふうになっておるのでありまして、提案理由というものは、その法律運用する人を拘束するというふうには、われわれは考えておらないのであります。そういう意味で、私は自主的な運営という意味で、私の考えているように今の調査会は運営されておると考えております。
  157. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その点は私もかつて法律の専門家から聞かされたことがあるのです。私たちしろうと考えでは、私も横川委員も同じ気持なんです。しかし、純法律的に解釈すれば、今先生が述べられたようなこともあるということを私聞いたこともありますし、また一部うなずけないことではない。しかし、それはあくまでも限度のあること、良識ということがなければならぬと私は思う。  それで、それと関連して具体的に伺いますが、たとえばはっきりした一つの例をとりますよ、あなたの報告とも関連してきますから。憲法九条ですね、こういう憲法九条の解釈は、Aの時代の内閣と、Bの時代の内閣、そういう場合によって変ってよろしいものか、よろしくないものか、あなたの御見解を承わりたいと思います。
  158. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) これは政府がどういうふうに解釈するかというふうな問題もありますが、たとえば裁判所が解釈するという場合もあります。政府が解釈する場合に、いろいろいわゆる事情変更によって解釈が変ってくるというのは、法律の解釈の常道でありまして、法律は抽象的にあるのでなくして、具体的生活と結びついてあるものである。であるから、法の解釈は時代順応性というものが一つの要素になっておるわけであります。それでありますから、時代が変れば解釈も変ってくるということもあり得るわけであります。  それからたとえば第九条は改正する必要なしという意見、これは……。
  159. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 いや私のお伺いした点だけをお伺いしたい。
  160. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) 今まででよろしうございますか。あるいはほかにもう少し補充して説明しましょうか。
  161. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 さらにそれを掘り下げて具体的に伺いますが、例が出たから憲法九条を例にとります。憲法九条の当時のアメリカの関係者の意向を、かりにあなたが確かめた、あれはどういうつもりで憲法九条をああいうふうにうたったのかと。それでその人が、これはこういうつもりであったと、こういうふうに答えたとしますね。それによって、今の日本憲法九条の運用というものは、今後変るのですか、変らぬのですか。関係ありますか、ありませんか。
  162. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) これはちっともそれによって影響を受くべきものじゃないと思います。どういうふうに考えておったかというような歴史的事実であって、今後それをどう解釈するということは、これは日本国の主権に属するもので、彼らがどういうふうに考えておったかということは、非常に参考にはなるし、歴史的な興味はございますけれども日本憲法の解釈ということは、これは日本人がやるべきことで、アメリカ人がやるべきことじゃない、こういうふうに考えております。
  163. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 さらにその点を掘り下げて明確に承わりたいと思うのですが、あなたの報告に関連があると思う。この憲法九条のあなたの報告のところを見ますと、幣原さんがまずイニシアチブをとってそれを出されて、それでマッカーサーは驚いたと、しかし、幣原さんの考えを受け入れて、憲法九条を幣原さんの考えに同調さした。ところが幣原さんは非常に喜んだ表情をしたと、そして憲法九条は自衛のためには戦力は持てるのだ、こういうようにマッカーサーは当時解釈しておったのだということは、ここにあるわけですね。こういうように報告されております。  そうすると、今の日本国の憲法九条は、自衛のためには、戦力は持てるのだ、これが確定解釈だ、こういうように国民に受け取られる影響力をこれは持っておると思うのですね。ところが、御承知のごとく憲法制定の国会において、当時の吉田総理は、憲法九条は自衛のためにも戦力を持てないのだ、今までの歴史をひもといてみれは、自衛のためというので戦力というものを持ち、自衛という名において戦争というものが起った、だからかりに自衛のためといえども戦争はやらないのだ、戦力は持てないのだということを、時の吉田総理大臣は速記を御承知の通りに残しておる。そうして今この時代になって、マッカーサーはどう言おうがこれは勝手です。しかし、その流れをくむ同じ保守政党の責任者が、自衛のためには戦力を持てる、攻撃のためには戦力は持てないが、自衛のためには戦力を持てるという解釈をされ、憲法運用されるということは、これは法律学者は勝手かもしれないが、国民の立場から立った場合には、非常に私は理解しがたきものがあると思うのですね。こういう私は法の解釈、運用というものはあり得るものかどうか。そういう点については、私は平和主義、民主主義にほんとうに法が運用されているかということを検討する憲法調査会としても、私は検討さるべきじゃないかと考えるのですが、それらの点について御所見を承わりたいと思います。
  164. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) 憲法調査会の渡米の目的は、新憲法の成立の過程を客観的、歴史的に検討するということでありまして、政策の問題には関係がないのです。政策の問題は日本人がきめるべきものであって、アメリカ人がとやかく言うべきものじゃない。これはアメリカ人もわれわれの会ったアメリカ人は、憲法を改正するかしないか、そんなことはわれわれの言うべきところじゃない、これは日本人がきめるべきものだと言っておる。でありますから、われわれが向うでもって調べた結果が、ある政党には都合が悪いようなことになっても、ある政党には都合がいいようになっても、そういうことは、歴史的研究においては仕方がない、真実を語るというのがわれわれの立場、歴史的研究の立場でありまして、その結果はどうということを政策的に考えるのは邪道だと、そういうふうに考えております。従って、初めマッカーサーがどういうふうに考えておったか、これは九条の歴史というものが、今度の研究に行きまして非常に複雑多岐で、われわれ驚いたのであります。米国政府は九条のようなものを入れるなんていうことは考えておらなかった。幣原さんとマッカーサーが会って、そこでどっちが言い出したかということは別にして、大きな政策が——そしてそれは一九四六年の二月にマッカーサーが民政局の人たちに起草を命じた際、三原則というものを示した、この中の一つが九条でありますが、この九条の意味というもの、これがマッカーサーというものが書いたのは、自衛のためにも軍隊は持てないということがはっきり出ておる。しかるに事務当局の法律家がこれを受けて、これはおかしいというので、自衛のためにというやつを消してしまって日本政府に渡された司令部案には入っておらない。それから司令部の法律家は皆これはおかしいというので、自衛のためにも軍隊は持てないというのはおかしいというので、日本政府との交渉において、たびたび文字の改正が行われた際にも非常に柔軟的な態度をとって日本政府の言うなりになった。それから例の豊田修正が出たときも、これでは自衛のためには持てることになるのじゃないかということを、ホイットニーのところに、ある委員が行ったところが、「それでけっこうなんじゃないか君。君はどう思うね。」というような問答があった。まあそういうようなわけで、九条の成立過程というものは非常に複雑になっております。それから幣原さんとマッカーサーの会談というのは、通訳が何もおらない、二人きりの話で三時間も続いた。このときにどういう高等政策についての話し合いがあったか、これはわからない。いろいろな資料がさらに最近出てきまして、あれは幣原さんが立案したのだ、その理由は、幣原さんは日本の天皇制というものを維持するということに最大の関心を持っておった。それには、当時の国際情勢というものは、非常にきびしい。天皇制廃止論が非常に強い。そこで先生がいろいろ考えて、そうして第九条のような規定を入れなければ、天皇制は吹っ飛んでしまう、こういうことを非常に心配されて、先生は九条を考えついた。あれを憲法に入れるということが、当時の国際情勢の中で日本を守るゆえんだと幣原さんは感じられた、そうして入れた。こういうような証拠も出ております。この歴史的関連においても、まだ調査会の調査は完全に済んでいるわけじゃないのでありまして、米国側のいろいろな意見を聞いております。しかし、それらを総合して、そうして結論を出すのは、まだすぐというわけじゃない、そういうふうなわけで、客観的研究においては、どこまでも歴史家的立場で検討する、その結果がどうあろうとも、それは正しいものは正しい。しかしながら、これと日本法律の解釈とか、そういうふうな問題とは別個の問題であって、解釈あるいは改正するとかしないとか、これは日本国民の完全なる主権に属するのもだというのが私の立場であります。
  165. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そこであなたがアメリカでずいぶんいろいろの人にお会いになったようです。非常に御苦労さまだったと私思うわけですが、この報告をつぶさに二度、三度と読ましていただいたのですが、これを読んだ結論として、つかんだことは、この憲法調査会法の提案の中にも、さっきお認めになったように、非常に押しつけ憲法だ、だから独立したのだから日本人みずからの手で作らなければならぬ、感情的にまで押しつけ憲法というのが表面に出てきております、提案理由にも。と思っている国民も相当多数いるわけです。このあなたの報告を熟読しますというと、あなたがいろいろな人に会って話を聞いた。それをあなたが客観的に判断した場合に、日本人が神しつけ憲法で押しつけられたのだ、制約されたのだというが、それはあなたの言葉をもってするならば、根拠はない、ただ日本人が押しつけられたというような印象を受けたことは事実であろう、要約するならばこういう報告になっていると思うのですが、そうですね。
  166. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) いわゆる押しつけられた憲法論というのは、憲法調査会法が、できる前にだいぶ盛んだったのですけれども、これらの人たちは、いろいろなアメリカの事情などをちっとも調べないで、日本の材料だけでもってそういうふうに判断されたのだろうと思います。それでありますから、そのときに言われたことは完全なる調査に基いてそういうことを言ったのじゃない。だから押しつけられたというと、アメリカ政府が何か憲法条文でもこしらえておって、ぱっと押しつけたように考えられるでしょうが、そういうことは完全に間違いだ。それからアメリカ政府はポツダム宣言に合致するような憲法の改正を行うのは、日本側が自発的にやらなければいかぬ。ポツダム宣言は、これは押しつける権限が認められているけれども、押しつけるようなことをしてはいかぬ。これは繰り返し繰り返しアメリカ政府政策として、マッカーサー司令部に伝えられておる。マッカーサー司令部もそれに従って一月の末ごろまでは、そういう日本側の松本委員会の成果を待っておった。ところが、松本委員会は、極東委員会、米国政府などの承諾しないような案を持ってきた。ポツダム宣言の趣旨に反するようなものを持ってきたという認定のもとに、しかし、それかといってこの際急いで何とか憲法ができなければ、日本は混乱に陥る、当時の国際情勢のもとで、どうしても急がなきゃならないというのでできたマッカーサーの政治的、あるいは幣原・マッカーサーの政治的考慮というのでああいう事柄が起った、こういうふうに見るのが正しい、われわれの調査の範囲内においては正しい。だから押しつけられたという意味は、たとえば敗戦の結果ポツダム宣言受諾を余儀なくされた、ポツダム宣言は日本政治機構の改正ということを予定しておる。それは憲法をも含むという意味でありまして、そういう意味で、憲法は結局敗戦の結果押しつけられたのだ、こういうふうに言えばいえないことはないわけです。しかしながら、具体的にアメリカ政府が押しつけたのだとか、あるいは初めからマッカーサー司令部が押しつけるつもりで用意しておったんだとか、そういうようなことをときどき聞くのですけれども、そういう意味では押しつけられたんじゃないということがはっきりしたわけです。
  167. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その点はあなたの今度出張された調査結果の中で、一番眼目をなす点だと思うのですがね。あなたの報告を見ますと、「極東委員会は日本憲法の改正について最高の政策決定権を持っていたが、実際上日本憲法制定については、ほとんど影響を及ぼしていない。」極東委員会はそう押しつけたのじゃない、さっき申されたようにポツダム宣言の精神に即応するものを自発的に出すことを期待しておったところが、これを出しておれば、アメリカ側は案を提示しなかったのでありますが、出さないものだからそれで司令部側としては一つの案を提示したのだ、そういうふうにあなたは述べておられる。そしてその案もアメリカから作って持ってきたものでなくて、日本における司令部でこしらえ上げたもので、それをのまなければ直ちにどうするという脅迫じみたものではなかったと調査の結果判断される、こういうふうに私は読むのですが、そうじゃありませんか。
  168. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) 大体そうですね。
  169. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この憲法調査会法の提案者は、さっき申しましたように、今の総理大臣岸さんが筆頭発議者で、保守党から出ているわけですが、そういう方々の提案理由の一番骨子をなし、また、町の国務大臣吉田さんが答弁された、制約下において押しつけられた憲法であるからこれを再検討する、これに重点を置くという言葉で答弁されているわけですね。その一番根源をなすものは、どこからそういう考えが出てきたかというと、それは一九四六年二月自由党憲法調査会における松本博士の口述が非常に影響をしているわけですが、この松本博士の口述に対して、あなたの報告を見ますというと、明らかに誤謬の点が含まれている。たとえば国の公用徴収権のような点は明らかに誤謬であり、非常に尊敬する自由主義者、穏健な保守主義者の松本博士ではあったが、相当感情にとらわれて、学者としては相当不用意な発言をされているように見える、こういうふうに報告されておりますが、これは確認いたしたいと思うのですが、あなたの調査結果では、こういう結論が出るわけですね。
  170. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) つまり、松本さんのあの講演は、ニューヨークでも再びよく読んでみたのであります。それはホイットニーが言った言葉、このラインで日本政府憲法草案を作らなければ、天皇の進退を保障しないと言ったというのです。その解釈は、もしこれをのまなければ天皇を戦犯にして出す、のめば出さない、こういうように松本氏は解釈しておられる。それはわれわれは調査の結果、どうもそうじゃない、そこにおった人、ホイットニーがこれを否定するのみならず、そこにおったハッシーでもラウエルでもみな否定しているし、日本人でもこういうことは忘れているというので、どうも私はちょうどそのころ戦犯のことをやっておりまして、マッカーサーの戦犯に関する考えを相当調査した。どうもこれは松本さんの考えはおかしいなと思った。マッカーサーの代表がそんなおどかしをするなんて、おかしいと考えておったのですが、そこに出た人の証言によって、どうもそれが間違いだというふうに認定した。それから同時につけ加えて申したのは、松本さんのあのときの口述というのは、ずっと読んでみて、やはり誤謬がある。先ほど土地国有と書いてあるというのですけれども、読んでみると公用徴収権が書いてあるだけだ。そのほか相当感情的になっている部分が、この新憲法というものは読むのもいやだ、見るのもいやだというような、これはもっともだろうと思う、先生の立場からいえば。しかしそういうのでありますが、それが非常に影響するということになるというと、これはいかぬというので、このドキュメントを読んだ私の意見というものをつけ加えて、それはあの文章が非常に重要なだけに、将来の研究においては、それだけ注意をして読んでいただくということが必要だ。その中にもいろいろわれわれが知らないことを教えられている点がたくさんあります。しかし、そういう文章であるということを指摘したのであり、調査の結果としては、これをのめば出さない、のまねば出すと、こういうふうな松本博士の解釈はどうも間違いだ。向うは客観的に当時の国際情勢のいかにきびしいか、まごまごしていれば天皇制が危ないぞ、天皇身柄も危ないぞということを警戒しておったのであって、そういう司令部の意思を表明したのじゃないというふうに解釈するのが正しいというふうに、われわれ三人とも一致したわけです。
  171. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 時間がないからもうちょっと伺いますが、今度官房長官に伺います。この憲法調査会法の所管大臣は、岸内閣総理大臣であります。しかも、岸内閣総理大臣は、本法の議員立法の筆頭提案者になっておりますので、私はぜひ御出席願いたいと要望したわけですが、総理大臣おみえにならないことは遺憾であります。かわって官房長官がおいでになったので、官房長官に一応伺っておきます。高柳会長さん、御苦労にも視察されて帰ったわけですが、その報告は、あなたもっとに御承知だと思います。その一、二の点について私、きょうお伺いしたわけですが、お聞きの通りの御答弁です。確かに占領下で、若干の精神的その他の制約はあったでしょう。しかし、その後日本人に伝えられているもの、特に憲法調査会法を発議いたしましたあなたの所属する政党の方々は、その提案理由にも明確に現われているように、また、時の国務大臣の答弁にも明確にあるように、これは戦争勝利者と敗北者の関係において制約されて無理やりに押しつけられたのだ、これをすぐのまなければ天皇制を破棄すると迫られて強迫をされて、そうしてのんだ憲法だ、こういう言論は、衆参の本会議場においても、あなたの所属する保守党の諸君から述べられた言葉です。ところが、実際においては今の会長は責任を持って報告されると思うのですが、お聞きの通りです。一体この憲法ができた当時は、芦田さんなんかは特別委員長だったのですよ。涙を流して喜ばれた。芦田均さんは前文から読まれて涙を流して喜ばれたものですよ。私はあのとき映画を見たのです。そうして後になってこれは押しつけられたものなんだからというのは、会長の報告を前提とすれば、アメリカ人と日本人という立場から考えるならば、私卑見にわたると思うのですよ。そこで、あなたにお伺いしたい点は、まず、この法律案が提案された場合に、岸さんにかわって答弁した人は、何と答弁しておるかというと、反対の立場の人々も参加をぜひお願いして慎重にこれを審議していきたい、こういうことを言っております。ところが、反対党の社会党は、御承知のごとく理由は申し上げませんが参加していない。これは会長自身も非常に運用上満足できない、工合の悪い点も私はあろうかと思うのですが、そういうことも起っておる。それから一番大きな理由としては、少くともあなた方がとられておったような押しつけでなかったということは、もうすでにこの調査で明確です。だから残った問題は、民主主義、平和主義に即応して、今の憲法運用すべく努力する、幾ら努力しても、工合が悪い点はどこにあるかということを研究すれば、それでいいと思う。従って一応私は憲法調査会の運用をストップすべきである、こういうふうに私考えるのですが、お考えはどうか。さらに具体的に一歩掘り下げて、来年度の予算要求外国旅費五百一万八千円というものが出ておるのですが、私は今活字を画して出しかえよとは言いませんが、予算審議に当って、これをこの数字の活字のまま一応成立しても、私は運用面からして心がけて、使うべきではない。先ほど申し上げたように、欧州に行くことはないですよ。国内的に現行憲法運用を客観的に徹底的に研究したらいいじゃないですか、やるならば。何も欧州に行く必要はない。それからアメリカは、もうすでにこの第一段階の大体結論は私は出ておると思う。二カ月にわたって視察したものですから出ておると思う。だからそれらの運用について政府側としてはどう考えるか、予算案はあなた方が出したのですから、編成権を持って出したのですから、だからそれを審議する審議権を持っておる私が、予算を出したあなた方にお伺いすることは当然できるわけですから、お答え願いたい、二点
  172. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 最初のお話しのように憲法調査会の委員に社会党の方々が入っておりませんことは、まことに遺憾であります。で、去年委員の更新される時期が来ました場合にも、高柳会長と諮りまして、ぜひ社会党からも参加してもらいたいということで、社会党の詳記長まで申し入れたのでありますが、結果はやはり参加を得られなかったということでありまして、これはまことに遺憾であります。しかし、社会党の人々も入ってはおりませんけれども、先ほど高柳会長から申し上げておりますように、憲法調査会の運営については公正適切に自主的に運営をいたしております。でありますので、いろいろお話もありましたが、調査も相当進めておりまするし、ただいま高柳会長の話でもありましたように、憲法調査会としての機能を十二分に発揮しております。なお、日本憲法のもとにおいて政治を行い、生活が守られるといいますか、そういうことでありますので、日本憲法の検討、関係諸問題の調査審議ということをストップを今するという考えは持っておりません。なお、十二分に憲法調査会を活用して検討、調査を進めていきたい、こう考えております。  第二点に、海外において調査をするという費用の計上が三十四年度予算に載っておるけれども、これは不要ではないか、あまり効果はないのではないかというお尋ねだと思います。お聞き及びの通り、高柳会長が、アメリカに行きまして、当定時制の経緯等を調査して、松木博士の言われたことなどとも、事実違っておるというようなことなどもわかってきておるようなことでありますので、いろいろの点で調査をする必要があると、こう考えまして計上いたしましておるのでありますけれどもお話しでもありますので、予算が成立いたしましてからでも、その費用は有効適切に使いたい、こう考えております。
  173. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私はこの報告を読み、きょう承わって、社会党が参加するどころでなくて、ますます憲法調査会に参加する必要がないという自信を強めて参っておるわけです。これはまあ勝手な私の意見ですが、私は自分の希望としては、私の尊敬する高柳先生も、この第一段階の調査審議の結果を早くまとめられて、これを国民に広く披露されて、憲法調査会長をおやめになって、同僚諸君のやっている憲法研究会の方にお入りになって御研究いただいたらありがたいのだと、失礼ながら私の希望を述べさしていただくならば、私はそういう希望を持っているものであります。  それで高柳先生にさらにもう一、二点伺いますが、それはあなたの報告を見ますと、自分がアメリカに行ってマッカーサーとホイットニーから会見を拒否された。それについて国内でいろいろと議論をされた、正確な資料に基かんで議論されているが、私は民主主義の危機を感ずると、非常にやや誇張された印象を受けるようにまあ群がれております。私もここで議論して、そうして官房長官から資料を出させた一人です。で、出させてみたところが、出発するのにばらばらに出発して、行った国もばらばらだと、これはことに稻葉委員なんか代議士だから、ほんとうにまあ高柳会長と同じような気持で、調査する気持で行ったのだろうかどうだろうかというような感じも、抱かなかったわけではなかった。しかし、外電で伝えられたのは、当時の私は新聞を取っているのですがね、私がきょう持ってきているのは共同通信だけですが、共同通信の記事というものは、これだけのものを伝えているわけですからね。マ元帥高柳会長と会わず、憲法制定のいきさつ、無礼な質問条項、ホイットニー少将回答と、これを一号活字でこれだけ出ているのですね。いかがでしょうか。高柳先生出発されるに当っては、マ元帥とかホイットニーとかいうのは当時の責任者ですが、こういう人に、こういう用件で行くが会っていただけるかどうかということを、在外公館を通じて確かめてから、私は出発するだけの用意があってしかるべきじゃないか。向うに行かれて、誤解か何か知りませんが、あなたの報告を見ても、ホイットニー氏の断り状はずいぶん激越な文句があったと報告されているわけです。そうしてともかく会っていただけなかった。あとで手紙を往復するうちにだんだんやわらいだけれども、結局は会われないで、手紙をいただいた。手紙をいただくなら、アメリカに行っていただかぬでも、日本におって手紙をいただいたら、それで航空便でりっぱに届くと思うのですよ。だからこの点については、やはり不用意さがあったという点は、あなたと言わなくても、あなたをめぐる事務当局が結局そうだと思うのですが、不用意さがあったという点は、私はお認めになられた方がいいのじゃないか。今度また果してどういう運営をするかわからぬが、五百一万八千円で第二陣が外国に行って、またこういう報道がされたら、国民はわずか五百万円程度の金ですが了解できませんよ。それはできない。私が申し上げたように、まず運用面を国内において徹底的に検討して、そうしてこれはどうも工合が悪い。よその国はどういう憲法があって、どういう運営をされておるのか。皆さん博識であるから知っております。これは現地において聞き、調査をしようという、そういう段階になったならば、国民は喜んで税金を差し上げると思うのですが、今の段階で行かれて、しかもマッカーサーとか、ホイットニーあたりに断わられた、こういう記事が出るのは当然だと思う。こういう記事が出ておるからといって、日本の民主主義が危機だなどと誇張されてはいかがかと思うのですが、先生の御所見を承わっておきたい。
  174. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) 向うに参りましたのは、こちらでわからない事項がちょうど四十九あった、向うで調べる事項が。その中マッカーサーに聞かなければならないのが四項目、マッカーサーに会わなければ、ある問題はわからないのですけれども、しかし、あちらにネゴシエィションに行った、交渉に行くというなら、会わなければ全部ゼロになってしまいますが、ネゴシエイションに行ったのでなくて、一定の事実の調査に行ったのですから、書面で回答をしてくれても口頭でやってもいい。口頭でやったなら、もっといろいろなことがわかるかというと必ずしもそれほど英語の力もなかなかないでしょうから、はっきりと書いてもらった方がいい。一番初めに言ったのは、誤解に基く——というのは二つの誤解です。一つの誤解というのは、憲法調査会というものが、これは改憲のための調査会である。国内には改憲反対の気運もある。それで改憲のためである。それから、従ってこれらの調査団がアメリカに来たのは、改憲に都合のいいような、いろいろ占領施策の欠点とか、押しつけたとか、そういうようなことを材料を探しに来て、改憲に便利な調査でもやるのだというような、こういうような二つの誤解に基いていることは、ホイットニーの手紙からはっきりしている。それから私は、憲法調査会の運用の実際というものを、法的根拠と実際を詳細に書いてマッカーサーに手紙を送った。ホイットニーにも、あなたは少し誤解をしているようだから、マッカーサーに出した手紙を読んでくれというので手紙を出した。そうしたら雪解けがしてきて、そうしてマッカーサーみずから進んで、こっちがあなたに会ったらこういう四つの質問をするのだ、それにちゃんと答えてきてくれた。それでもってそれ以上マッカーサーに会ってどうしようという必要も大して感じなかった。そういう書面で答えてくれ、しかも幾らでも質問があるならばお答えする。こういうのですから、こちらも無理に面会を求めなかった。しかし、調査の目的からいえば、会ったと同じ、あるいはそれ以上の効果はあった。それから同時にあちらに行って、将来の調査の場合に、いろいろな人にわからないことを問い合せることができるようになってきておる。そういうような点で、あちらで、マッカーサーに会わなかったということは、途中のちょっとしたつまずきであると、これはよく話せばわかる。よく手紙で説明すれば誤解を解くと思って、手紙をやったら、果してすっかり態度を改めてきてこっちに答えると、向うとしては何も答えないことも自由なんですから、誤解が解けなければ答えない。答えたということは、こちらの言うことを信用して答えてくれたと思うのでありまして、これは少しも、それが日本で騒がれたほど向うで重大問題とはわれわれ考えておらなかった。とにかく四十九問の中の四問だけですから。  それからさらにちょっとつけ加えて一言しておきたいのは、先ほどからヨーロッパのは無意味である、こういうお話しでありますが、運用の実際ということは、もうすでに憲法調査会でも問題となって、いろいろな点で問題があることがわかっておるので、それありまするから、たとえば日本で問題になっておる点の一つは、基本的人権と、公共の福祉の限界といくのはどこで引くのか、いつもその問題が起るというと、法律を出す方は、これは公共の福祉に基くのだ、片方はこれは基本的人権に反する、これでもって水かけ論でおしまいになっちゃうことが多い。裁判所もなかなか判定をしてくれない。そういうようなので、限界の問題というのは、やっぱり憲法において非常に重要な問題、で、日本憲法と同じような性格を持つインドの憲法、イタリアの憲法、それから西ドイツの憲法、それらにおいて実際上どういうふうに限界を引いているのかということを研究することは、これは日本の問題を研究するときの参考資料になる。そういう意味で、実はインドに行きまして、インドの有名な法律家、憲法学者、ベイシューという人、それからイタリアではイタリアの学者、それから西ドイツでは元の憲法裁判所の裁判官、それらの人に実際の運用を検討していただく。こういうようなのは、運用の実際に関連する参考資料で、日本人が研究すれば、日本の比較法学というものは、忌憚なく言えば、それほど進歩しておらない。私も比較法学専攻ですけれども、率直に言って、ぽっと日本の学者に聞いても、本を開いて答えるほかない。実地調査も何もしないで、答えるよりほかない、それがどこの国へ行ってもそういうような状態でありますけれども、まだ日本学問というものは、それほど進歩しておらないのです。であるからやはりある問題が非常に重要な場合においては、やはり向うの現地に行って、向うの学者と打ち合せたり、実情を視察したり、そうしてこれを研究するということが必要なのでただ本に書いてあることを報告するような研究であったら、ちょっと参考にならないというので、どうしても運用の実情を比較研究するに当っては、向うに行って、人を派して、特定の問題を研究させるということが必要であろうと思う。現在すでに制定の経過は、総会では終りまして、運用の実際、司法、それから国会、それから行政面の憲法問題ということの研究に入っている。実際の運用面に入っておるのであって、それが将来は言論の自由の運用ですね、あるいは学問の自由とか、あるいは宗教の自由、あるいは労働問題、経済問題、非常に広範な基本的人権を中心とする問題、政府の行動とは別に検討しなければならないことがたくさんあると思う。それらの問題について十分なる比較研究をするのには、やはり広く向うの学者と連絡し、あるいはこちらから人を派して、こちらの要求するようなことを知るということが、必要だと思いまして、あの予算では非常に少な過ぎるようにわれわれは考えるわけであります。少くもあの程度の予算、海外出張の予算は必要だと憲法調査会長とし、そういうふうに考えておることだけをちょっと申し上げておきます。
  175. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 最後に伺いますが、この審議、調査が進んでいるということですが、この法案審議された当時を振り返ってみますと、調査、審議された改正の結論を実施に移す時期はどうかという質問に対して、時の担当国務大臣は、憲法の問題は、最も重大問題であるから、その審議に相当の年月を要することはもちろん、改正の結論が出たとしても、これを実施に移す時期については客観情勢を十分に考慮し、慎重に検討し云々、というように答えているわけですが、私お伺いしたい点は、あなたの御答弁を聞かしていただいて感じたことは、今の調子でいくと、やはり十年ぐらいかかるなという感じがしたわけです。で、憲法調査会の内部で、会長、いつごろまでに一つ結論を出すということでやろうではありませんかというような、そういう運営についての意見が、会長に対して寄せられているのかどうか。また会長自身は、目途というものを持っているのか持っていないのか、ともかく真実を追求する、研究するというその一点で、それが三年で済もうが、五年になろうが、十年になろうが、そういう期間にとらわれず、徹底的に真実の探求、研究という立場からやるというようなお考えでおられるのか。調査会の内部の雰囲気とあわせてお答え願いたいと思います。これで質問を終ります。
  176. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) これは政府からいつまでに研究を打ち切れというような希望も何もないのです。それで自主的に運営をしているわけでありまして、ほかの委員方も、いつということをはっきり言うことはむずかしいだろうと思います。なるべく効果的に研究が進められるように、委員会を設けて、大きなことは総会でやるが、小さいいろいろこまかいことは委員会でやるという方針が立ちましたので、三つの委員会が同時に働いていくということにしますれば、その促進にはなると思いますが、しかし、大体あと三、四年ぐらいじゃないかと思います。つまり、やるべき仕事だけは、憲法調査会として運営の実際などの問題については、相当時間を食うんじゃないか、しかし、これをやらないで、憲法を改正するとかしないとかいうことを議論するのは、前科学的だと私は思っておりまして、改正の必要が実際に照らしてあるのかないのかということを十分に検討するのには相当長い期間を運営の実際ということにかけなければならぬと思います。しかし、それかといって、これを百年計画というのは、学界ならいざ知らず、こういう会でそういうことは非常識でありますので、なるべく早く済ませて、私もやめたい、いつまでも生きているわけじゃないですから、なるべく早くやって、ごめんをこうむりたいと思っております。しかし、少くとも、やはり三、四年はかかるだろう、そうして最後に報告をするわけです。これは必ずしも改正するとか、しないとかという報告だけじゃなく、この運用が間違っている、たとえば言論の自由というものについて、今の状況は非常に間違っている、こういうふうに運用すべきだというような点の報告も、おそらくは中に含まれるんじゃないかと思います。必ずしも、憲法を改正するという報告に限られるわけじゃないだろうと思います。であるから、改憲のための委員会というフィロソフィーでわれわれは動いておるのじゃないということを十分にお考えに入れて、そうしてあらゆる意見を聞く、どんな意見でも聞く、そうして多数で押すようなことはしないというのが、われわれのやり方ですから、これは一つ社会党さんもお考え直して、(笑声)これならかえって大いにやろうじゃないかというふうな、前の九条問題で争った時代の、ああいう酔っぱらったような気持でなく、すっかりさめて、もう少しそういう大局をのぞいて、そうして、こういう憲法調査会なら入って、大いにわれわれの議論を一つしよう、それからみんなの言うこともよく聞いて、議論を戦わそう、こういうような気持におなりになるということを希望します。そうして日本憲法のこの調査の問題というのは、第九条問題で邪道に入っていると私は歴史的に観察しておる、九条問題ばかりで両方が対立しちゃって、政党的な争いになってしまったので、共同研究というものが非常に困難になってしまった。しかし、われわれはやはりこの憲法というものが十三年も運用されております今日では、十分にその運用のことを研究して、テキストに手を入れる必要があるかどうかということを国民のために研究するということが必要だろうと思うのでありまして、この点については、憲法調査会のやり方というのは、ちょうどイギリスのローヤル・コミッションのやり方、つまり、なるべく委員はものを言わないで、そうしてよく研究しているような人に来てもらって、その人に話してもらって、それに質問応答をする、このローヤル・コミッションは、なるべくウィットネスをたくさん呼んできて、その結果を見て、それから法律を改正する必要があるのかどうかということを検討する、イギリスの有名な社会保障の大家のビバリッジとオクスフォードで会いましたが、それが一番必要なんだ、実際を研究しないで、法律を改正するのがいいとか悪いとか言う、そういうやり方は、大陸ではよく行われているけれども、イギリス人はそういうことはしない。やはり実際に行われているところを十二分に検討した上で、法規が正しいかどうかということを考えなくちゃいかぬということを言われたのです。これはオクスフォードで、ビバリッジとマーシュー、この両氏と話しているときに出たのですけれども、これはまさに憲法調査会のフィロソフィー、今現に行われている憲法調査会のやり方だろうというふうに私は考えておるのでありまして、そういうわけですから、社会党さんもこの際大いに一つ考え直してお入りになることを希望します。
  177. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 時間がだいぶ切迫いたしましたので、簡単に私伺いますから、簡単にお答えになっていただきたいと思います。第一点は、今、高柳先生のアメリカの報告を私まだ拝見しておりませんけれども、矢嶋委員との質問応答でわかりましたことは、この憲法は押しつけられたものでないという結論を得られたというふうに伺ったのですが、私は、少くとも松本案が司令部によって拒絶された、占領期間中であるというこの大きな事実から見まして、押しつけられたものでないという説には、先生の報告をまだ拝見しませんけれども、拝見してからまた考え直す点もあるかもしれませんが、現在の段階での私の考え方は、押しつけられた憲法である、ごう私は考えております。その点はそれだけにしておきまして、ただ一点だけそれに関連して伺いたいのは、アメリカの「ポリティカル・リオリエンテーション・オブ・ジャパン」、これの報告の中に、マッカーサーが部下に指令したというもので、「国の主権の発動として行う戦争は廃止する、日本は国家の紛争を解決する手段としての戦争及び自己の安全を保持するための手段としての戦争、それをも放棄する」こういう原文があって、それがさらに昭和二十一年の二月十三日に総司令部から政府に非公式に示された案文の憲法草案の第八条では、国の主権の発動として行う戦争は廃止する、武力による威嚇または武力の行使は、他国との間の紛争を解決する手段としては永久に放棄する、陸海軍その他の戦力は決して許されないし、いかなる交戦権も決して与えない」、最初私の読みましたこの原文は、先生の研究では否定されるのでありますか、これは肯定されるのでありますか。
  178. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) 第一の点ですが、押しつけられた憲法であるかどうかという点ですが、これは私は非常にこまかく報告しているわけなのですが、そういう押しつけられたとか、ぼんやりとした表現はいかぬ、事態をはっきりつかまなくてはいかぬというのが、私の報告のねらいなので、ある意味では押しつけられた憲法であるし、ある意味では押しつけられない憲法であるというふうに、もう少し柔軟性を持って考えていただきたいと思います。  それから第二点は非常にむずかしい点なのです。ポリティカル・リオリエンテーションというのは、ハッシーというのが書いたのですが、ハッシーにも会っておりますが、非常によく正直に内部のことを書いて、上の方でもってよくあれをオーケーしたと本人が言っているほどなのですが、大へん正確なのですけれども、その中に先ほどおっしゃったマッカーサーの第九条に関するテキストが載っている。マッカーサー・ノートと称せられる第九条に関する、あれは解釈のところが、非常にむずかしいのです。つまりこういう、これは三人の合同意見じゃなく、私自身の個人的の感じから申しますと、それもいろいろな資料から推定するのですけれども、幣原さんとマッカーサーとの話し合いという、これはやはり幣原さんは、天皇制というものを残すのには、強い平和への意思を憲法の中に入れなくてはいかぬ、憲法に入れるのには自衛のためにも持たないというところまで、軍隊を持たない、一番強い表現になるわけであります。軍隊を持たないというだけでも憲法の中に書けば、強い平和支持を表現するわけです。これは幣原さんの考えでは、このくらい強い表現をもって世界に対して日本の平和支持を書かなければ、日本の天皇制は維持できない。こういうふうに、つまり天皇の人間宣言というものが一月一日に出ましたが、これは、さきに幣原さんが英語で書いて、それを日本語に訳して出した、幣原首相は、英語で書くというのは、諸外国に対して、日本の天皇制に対する誤解というものを解消するという目的でやった、同じねらいというものを憲法にこれを入れるというので、マッカーサーと話し合って、そうしてでき上ったのが、マッカーサー・ノートにおける非常に強い表現となって現われた。これはマッカーサーは法律家じゃない、そういう意味で非常に政治家で、その政治的な面、ラインというのが幣原・マッカーサーライン、それと今度は松本、ホイットニー、ケーディスというのは、事務系統なのです。法律家と法律家の接触の面、その上に政治的な折衝というものがあって、おそらくはああいうふうに急いで憲法を作るとか、それから九条を入れるとか、そういうことはハイ・ポリティックス、幣原・マッカーサー、ラインのハイ・ポリティックスできまった。そうしておそらくそのときは、これは想像ですけれども、幣原さんがあのころよく言われた自衛権の名において侵略戦争になるというようなことの話し合いがあり、それで結局あのテキストを書いたのは、私の判断ではマッカーサーだと思います。マッカーサー・ノートのワーデング、それで自己保存のためにも持たないということがありますから、これほど強い表現はないと思いますけれども、これは冷静な法律家から見るというとナンセンスだというふうに事務当局が感じた、これは事務当局がそういうふうに言っているわけです。でありますから、あれは多分に連合国に対する対日感情というものをやわらげる、ことに天皇制に対する反感、天皇制がすなわちミリタリズムの根源であるというふうに向うの人たち考えておったのですから、だからそれをやわらげる、将来こんなことはない、再び侵略などはしないのだという趣旨を強く出すというのには、宣言なんぞしたのではだめだ。憲法の中に、しかも不戦条約のように、ああいうことなら何も自衛のためならできるというので、それでは軍隊を持たないということに言い切ってしまえば、これほど強いことはない。だけれども、それは司令部のケーディスやハッシーやラウェルから見れば、これは上から来たけれどもナンセンスである。自衛のためにも何もできない、軍隊も持てないというようなことはない、こういうのでマッカーサー・ノートのその条項を削っちゃって、その後の態度というものの中にも、あの点はおかしいというので、先ほどちょっと申し上げたような事務当局の動きがあったのであります。あなたの御質問になった一番のマッカーサー・ノートというのは、そういう非常な対外的政治的ゼスチュアというものが含まれている、それには非常にマッカーサー式な強い表現というものが書いてある、こういうふうに見るのが、私自身の今までの調査したところからいうと、実情はそうであったのじゃないかというふうに思うのであります。非常に法律的にあれは考えて響いた文章ではない、こういうふうに思います。
  179. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 このマッカーサー・ノートに対する先生の気持はわかりますけれども、幣原さんはすでになくなっている、それからマッカーサーとはお会いにならない、現実にここに現われているのはこの文章なんでありますから、最初のマッカーサーの動機はどうあろうと、先ほどの法律の解釈ではありませんけれども、動機はどうあろうと、マッカーサー・ノートを承認されまする以上、マッカーサーの意思としては自衛戦争も否定するのが憲法第九条の最初のマッカーサーの指令であった、これはお認めになりますか。
  180. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) これはマッカーサー自身が私にくれた手紙の中には、第九条はどういう趣旨でああいうものを憲法の中に入れることを日本政府にレコメンドしたのかという質問に対して、それは二つの趣旨がある。第一は、各国に対して日本は従来のような侵略戦争を再びしないという意思を表現するということと、第二は、世界に対して精神的なガイダンス、指導を与える、そういう二つの趣旨であれは書かれているのだ、こういう返事でありまして、第一の点については、あれはあの九条が制定された当時において、自衛、外国から日本が侵略されるような場合でも、日本の安全というものを守るために日本がいかなる、またすべての措置をとり得るということを規定する趣旨で書いたのではない。つまりこれはマッカーサーも初めはそういうふうに考えておったのだけれども、朝鮮事変だの何かが起ったので、心境の変化をきたしてああいうふうに解釈を変えたのじゃないか、こういうような推定もなされているわけです。これは日本人の間だけでなく、アメリカ人の間でもそういう意見があるわけです。それに対してマッカーサーは、これは初めから自衛のためにはできるという趣旨であったと言っているのであります。それからさらに、これは第四の質問に対して、あれは幣原さんとあなたが会って、幣原さんがああいう平和支持のことをあなたと話し合って、あなたが非常に同感して、そしてあれを書いたのは、あなたではなかったのか、あるいは幣原さんの発議でああいうものができるようになったのか。世界で今これを知っておるのはあなた一人だ。多くの人はみなまた聞きなのだ。だからこれは歴史的真実のために、あなたからはっきりと言っていただきたい、こういう趣旨を申し上げたのに対して、これは幣原さんが言い出した。そしてそのときの状況を割合簡単に説明されておられる。そういうようなわけで、幣原・マッカーサー会談のところは、先ほど申しました、天皇制維持のための第九条というようなことに関連いたしまして、非常にまだ研究は完全にはいっていないので、ただ先ほど申し上げたのは、従来の資料から私が得た感じだけを申し上げたので、その点御了承を願いたい。
  181. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 一点だけ、簡単に御答弁いただきたいと思います。つまりマッカーサーは、最初は自衛戦争も、自衛戦力保持も否定するという考え方であったということを肯定なさいますか、否定なさいますか。
  182. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) 先ほど私が申しました理論が正しいとすれば、初めからそういう含みはなかった、そういうつもりはなかった、これは対外的のレトリック、対外的のゼスチュアというところに重点があったのであって、こまかく法律的に考えたのでないということは、私の解釈であります。これは私個人的の意見ですから、今度の調査団とは関係ありませんから、その点をお含みを願いたい。
  183. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私の伺うのは、先生のこの前の御答弁では、最初は自衛力を否定するというつもりでマッカーサーは請いたけれども、朝鮮事変その他の問題で国際情勢が変ってきたので、自衛戦力は持てるというふうにマッカーサーは言うたのではないか。アメリカでもそういう説をする人がある、こういう御説明でありましたが、そこで私の伺うのは、最初にマッカーサーが考えたことは、自衛戦力を否定する、そういうことをポリテカル・リオリエンテーション・オブ・ジャパンに書いてあることは、その文句は、その動機は、極東委員会その他いろいろな例があるとしても、書いたこと自身は自衛戦力も否定する、これがマッカーサーの書いたときの成文化された結論である、これをお認めになるか、お認めにならぬかということです。
  184. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) そういう文字があることは認めますけれども、その意味は先ほどたびたび繰り返して申しますように、これは対外的なゼスチュアが主なものであって、そこに重点を置いてこれは解釈しなければならぬ。そうして憲法といいましても、憲法のようにレトリックという、憲法における論理とレトリックという論文がありますけれども、レトリックというものも相当にあるので、ただ法律家から見ると、そういうレトリックはなるべく避けて、文字通りに解釈できるようにしたいという気持もよくわかるのでありますが、初めから、つまりマッカーサー・ノートのあれはむしろ私はレトリックだろうと思います。
  185. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 先ほどの憲法調査会法案の法の解釈に当時の政府の担当大臣の言明も、提案者の言葉も、それは単に参考にはなるけれども法律家の法の解釈としては法文そのものによってわれわれは判断する、こういう強い最初のお話がございました。ところが、今のマッカーサー・ノートにすれば明らかに自衛戦力は持たないということは書いてあるけれども、やはりこれはただこう書いてあるだけの話しで、その裏の方にわれわれは重点を置くというのは、政治家はこんなことよく言いますけれども法律家であられる先生のお言葉としては、アメリカの調査の結果ではありましょうけれども、私は非常に実は納得ができないのですけれども、これ以上議論になると私はやめますが、私はやはり成文化されたものをまず第一に置くのが、法律常識じゃないでしょうか。
  186. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) マッカーサー・ノートにあるやつはまだ成文化されない段階なんですね。これはいけないというのでイーブン・フォア・セルフ・プリザベーション、自己保存のためにもという文字を削っちゃった。ですから、そうして司令部からいわゆるマッカーサー草案ですか、あの中にはそういう文字はないのです。そうしてそれをマッカーサーも認めたわけですね。だから、また日本憲法が制定されたときには、マッカーサーは事務官僚の法律家の議論を採用したのだというふうにも解釈できると思います。ただ、先ほどのマッカーサー・ノートというのは、まだ法律の段階でないのでありますから、ただマッカーサーがそういうふうに書いて渡したもの、ドキュメントだけなんです。
  187. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 時間を取りますからもう一度だけ……。それでは憲法九条第二項は、戦力は自衛戦力不保持を規定するのか、自衛戦力は第二項から除外されているとお考えになるのか、先生個人のお考え方を伺いたい。
  188. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) これは私はかつて雑誌に書いたことがあるのです。これは今度の現に憲法調査会ができるずっと前なんですけれども、第九条のごとき規定というものの解釈、憲法の解釈についても規則の解釈ですね、規則。何日にとか、そういう規則がある。それから規則というものはもう憲法改正をしなければどうにも動かない。それからスタンダード、基準ですね。基準に関する規則、これは非常にフレキシブルな時世によって変る、それから非常な理想を現わした、たとえば南阿憲法第一条に連邦の国民は神の主権のもとに立つと書いてある。神の主権というのはどういうことを実際言うか、われわれはキリスト教国ということだけだろうと思います。そういう理想を現わした条文、こういう三つの、少くとも三つのタイプの規定がありまして、憲法を解釈する場合に規則の解釈のテクニックを使って理想を判断したり、あるいは基準を計ったり、そういうことは間違いである。これは法律学の初歩的原理、特に憲法解釈の、ことに憲法の解釈と刑法や商法の解釈をごちゃごちゃにして、商法の解釈のような態度で憲法というものの解釈をする、これが根本的に間違いだということはアメリカの有名なマーシャル判事がアメリカ憲法の、これが、われわれが解釈しているのは憲法ですよというこの言葉が、今のアメリカの法曹に非常に強く影響している。単に文字を検討するのじゃだめですよ。たとえば九条のような場合の解釈について国際事情を何も考えないで、こうやって机の上でもってロジックをあやった解釈なんか憲法解釈としては無価値だ。こういうふうにわれわれは、やはりマーシャルの態度というのは憲法解釈には正しいのだ、こういう考えを、私はアメリカの憲法を約二十数年研究しております、判例なども読んでおりますから、日本のあの憲法の解釈についても、やはりたとえばあの条文、非常な理想を現した。しかし、その解釈については、これは現実の社会情勢、社会情勢というのは国際情勢、これは世界というものと対比して解釈するというのがいわゆるマーシャルの憲法解釈の原理です。そういうふうにわれわれは、私自身の考えはそうなんです。しかしそれは、かつて私が東大でも講演をして、あれはジュリストの中に意見を述べております。ですからあれはポリティカル・マニィフェスト、政治的な宣言、そういうふうに解釈しなければならない。これは最近の研究でもって、つまりマッカーサーと幣原さんの当時の情勢に照して、世界に呼びかける、そういうことは何も知らない。あの憲法条文だけを読んで私はそういうふうに解釈した。これには日本憲法学者は一人も賛成者はいない。いないけれども、私はアメリカ憲法は相当に長く研究しております。マーシャルのやっぱり言葉が憲法解釈のやり方としては正しいのだ。これはそういうふうに理想は高く掲げ、現実の生活は現実に即して解釈する、こういうのが正しいのじゃないか。しかし、これは私自身の問題でありまして、憲法調査会とは何も関係がないのですから、その点は御了承願います。
  189. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 結論はどうですか。先生のジュリストの論文は、前に私拝見したこともあるが、忘れてしまいましたけれども、結論は、憲法第九条第二項は、これは自衛戦力は不保持の規定であるが、保持しても差しつかえない。制定当時は、いかなる戦力も、自衛であろうが侵略であろうが、条件なしに戦力不保持であり、交戦権の否認である、こういう規定であったけれども、その後国際情勢の変化によって憲法の解釈も変るのは当然であるから、今は自衛戦力は持てると自分は解釈する、こういう先生の結論ですか。一言でけっこうです。
  190. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) そうじゃなく、時勢が変ったからじゃなく、ああいう条文を、つまり非常に高い理想憲法に掲げた場合、それはそれを文字通りに解釈したら何のことだかわからなくなってしまう。つまり、だから私がちょうど司令部の法律家がマッカーサー・ノートを見て、これはナンセンスだ、これじゃと感じた通り、同じ感じを私は持っている。どんなに法律で、憲法で書いても、それは必ず行われるとは限らない。だから、そういう点であなたのおっしゃるように、こういう規定は実際には行われない。ただし、世界全体がこういう原則をとれば、この規定は文字通り生きていく。また将来の世界においては、これが文字通りに行われるようになるのじゃないか。原子力なんというものができた以上は、どうも戦争、冷戦、今の戦争などはできなくなる。結局あそこに書いてある文字通りのことがほかの国にも起ってくる。おそらく世界連邦というようなところへ、ちょうどアメリカの各州が武器を持たないように、武装しないように、世界連邦だけがほこを持つというようなことが案外近く来るのじゃないか。そうなれば、日本憲法世界の模範となる。こういう意味合いがそこに含まれていると、こういうふうに解釈する。
  191. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私、どうもよくわからないのですけれども、時間がございませんからもう一点だけ伺います。あとは明日に留保しますが、つまり憲法九条第二項の法律解釈としては、自衛戦力保持を許しているとお考えになっておるのか、許しておらぬとお考えになっておるのか。どちらかそのうちの一つをお答えいただきたい。
  192. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) 文字の上からいえば、持てないと書いてある。
  193. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 その書いてあることに先生は賛成ですか。
  194. 高柳賢三

    説明員(高柳賢三君) 規制ならそういうふうに解釈するだけです。私は規則だと解釈しないから、そういう結論は生じない。
  195. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 よくわかりませんけれども、あとは明日の委員会に留保しまして、これで私の質問を終ります。
  196. 千葉信

    理事千葉信君) 本法律案に対する本日の質疑は以上にとどめ、あす午前十時より委員長理事打合会を開き、その終了後、内閣委員会を開会することにいたします。  本日は、これで散会いたします。    午後五時三十五分散会