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1959-03-26 第31回国会 参議院 逓信委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月二十六日(木曜日)    午前十時三十八分開会   —————————————   委員の異動 本日委員最上英子君及び白井勇君辞任 につき、その補欠として近藤鶴代君及 び鈴木万平君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     手島  栄君    理事            新谷寅三郎君            松平 勇雄君            森中 守義君            長谷部ひろ君    委員            石坂 豊一君            黒川 武雄君            鈴木 万平君            三木與吉郎君            宮田 重文君            鈴木  強君            中村 正雄君            三木 治朗君            山田 節男君   国務大臣    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    郵 政 大 臣 寺尾  豊君   政府委員    大蔵省主計局長 石原 周夫君    郵政政務次官  廣瀬 正雄君    郵政省電波監理    局長      濱田 成徳君   事務局側    常任委員会専門    員       勝矢 和三君   参考人    日本放送協会会    長       野村 秀雄君    日本放送協会副    会長      溝上 けい君    日本放送協会理    事       前田 義徳君    日本放送協会企    画局長     春日 由三君    日本放送協会経    理局長     首藤憲太郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○放送法第三十七条第二項の規定に基  き、国会承認を求めるの件(内閣  提出、衆議院送付)   —————————————
  2. 手島栄

    委員長手島栄君) ただいまより開会いたします。  放送法第三十七条第二項の規定に基き、国会承認を求めるの件を議題といたします。  前回に引き続いて御質疑のある方はどうぞ御発言願います。
  3. 山田節男

    山田節男君 私、今回まで予算委員会関係上欠席しておりますので、もし私の質問が全委員質問と重複した場合には御注意願って、時間の制約上協力したいと思いますから、さようお願いします。  今回のNHKの五カ年計画、昨年度始まった五カ年計画についての初年度予算が、八十五円に値上げするという予想が実現できなかったために、非常な無理な収支予算を組まれた。少くとも三十億に上る赤字財政になっておる。そして今回第二年度に当って収支予算を組まれ、そして八十五円の値上げをしなければ、もう危機を越えることができない、こういう絶体絶命の状態におかれて、今度の予算案国会に出されたわけであります。大臣のそれに対する具申等を見ましても、おおむねNHKの五カ年計画における初年度財政の窮状、それから値上げをどうしてもしなくちゃならないということは、政府も認めて出しているわけです。それに関しまして若干質問したいと思うのですが、その前に、まず私恨本問題として郵政省一つお聞きしたいと思うことは、NHKが五カ年計画の主要な要素として、かつまた、八十五円に受信料値上げをしなくちゃならないという重大な条件として、まず第一に、五カ年計画においては教育テレビをも五カ年計画最終年度においては四十九局に増加するということをいっている。もとより教育テレビVHF帯周波数割当になると思うのであります。政府にお伺いしたいことは、このVHF帯周波数というものは、すでに窮屈とはいえないかもしれませんけれども、いずれこの問題は、これにつきましてはいわゆる住宅問題が苛烈になってくると思うのですが、NHKに四十九局のテレビジョン周波数を割り当てて、なおその上に現在は東京大阪民間教育テレビがある。なお将来それについてふやされる御意向があるのかどうか知りませんが、もしあるとすれば、そうすると、一体教育テレビ周波数NHKプラス民間放送教育テレビという、そういうたくさんな周波数を割り当てていいのかどうかという問題、御承知のように、この周波数帯は有限のものである。他に使用しなくちゃならぬ場合もある。これは政府としてNHK教育テレビの五カ年計画において、少くとも四十九の周波数は割り当て得る自信があるのかどうか、これを承わりたい。
  4. 濱田成徳

    政府委員濱田成徳君) 山田委員の御質問で、NHKが五年計画で四十九局の教育放送局を作る計画であるというお話でございましたが、これにつきましては、VHF帯周波数割当はきわめて窮屈でございます。NHKからも昨日お話がございましたが、昭和三十五年度までにNHKはいわゆる総合番組テレビジョンを四十九局作り上げてくる計画であります。それからその次に三十七年度末までに四十九局の教育放送局建設したいという希望でございます。これにつきまして、できますことならば、私どもの考えではVHF帯電波を割り当てたい、UHFVHF混淆はなるべく僻けたいという考えでありましたけれども、目下のところではその目鼻がつきません。今日のところでは十一チャンネルをフルに使い、それからその次の第十二チャンネルというものが考えられまして、大阪地区だけに割当が可能になったわけであります。その後につきましては、まだかいもくわかりません。この十二チャンネルを使いまして、同時にいろいろ技術的な研究を行いまして、    〔委員長退席理事松平勇雄着席〕 フルにVHF帯を活用するにいたしましても、たかだか十数局、十七、八局以上のVHF局しかできないという見通しでございますので、どうしてもその際には、先般新谷委員からも御指摘がありましたUHF帯を使う以外には、手はあるまいというふうなことをただいま考えております。
  5. 山田節男

  6. 濱田成徳

    政府委員濱田成徳君) それから御指摘民間放送テレビジョンは、先ほどお話しのように、東京専門局が一局、それから札幌に準教育局というのも一局、教育教養番組を五〇%やるということを計画している準教育局が一局ございます。大阪に二局、合計三局の準教育局建設されました。もっとも札幌はこの四月一日から電波を出します。そういうわけで、さような準教育局というような考え方を実施するに至りました理由は、わが国テレビ番組がもうすでに娯楽が過剰である。これ以上おもしろおかしい番組などをやる必要はなかろうという大方の御意見を総合しましたあげく、なるべく教育教養に重点を置いた番組放送するテレビ局を、今後は免許すべきであるという各方面の御意見の結果としまして、かような準放送局というものが生れたわけです。そういうわけでございまして、今後民間放送局を免許するような場合には、少くとも準教育局という形式のものが生れるようにしたい、そういう考えを持っております。しかし、先ほど申し上げました通りNHK教育放送を行うことは、これは至上命令と見るべきものであります。どうしてもNHK教育放送使命を完遂しなければなりません。それに割り当てる電波がもうすでに今窮屈であります。今後四十九局も、五カ年計画でやるということになれば、とても今後総合番組民間放送局建設は困難なわざであると思うのであります。けれども、民間放送局といえども、今後各地方々々において中継局等建設を希望する向きも相当ありますので、この電波割当は非常に窮屈であります。これにつきまして、UHFの併用を適当なところにもう認める情勢に立ち至るであろうことを今から想像し、いろいろ検討を続けておる次第であります。
  7. 山田節男

    山田節男君 NHKにお伺いしますが、今、電波監理局長が言われるように、教育テレビ五カ年計画四十九局設置について、VHF帯はもうきわめて窮屈である。UHFと混合しなければ実現できないということを明言されておるのです。それで、五カ年計画教育テレビ建設計画として、たしか二百億円ぐらい計上しておられたと思うのですが、御承知のようにVHFと今後UHFで、もし部分的に教育テレビ放送するということになると、機械が、受信の側におきましても、あるいは送信の側においても、VHFの場合とは相当費用がよけいかかる。だから今お出しになっているテレビの五カ年計画、ことに教育テレビの五カ年計画について、郵政省の方ではVHF帯はとても余裕はない。せいぜい十数局しかない、こう言うのですが、一体ここに現われた建設計画の数字というものは、UHFとの混合計画を勘案しての建設計画であり、また資金計画を立てておられるのか、この点を一つお伺いしたい。
  8. 首藤憲太郎

    参考人首藤憲太郎君) UHF帯、あるいはVHF帯の具体的な場所が、実はただいまわれわれとして、具体計画が立てられませんものでございますので、五カ年計画におきましては、建設関係の諸経費は、VHF帯建設費というのを標準にいたしまして、一応それで算定してございます。従いまして、場所によりまして、UHF帯による局がもしできました場合には、当然これは経費もかかることは想定されます。また同じパワーでございましても、機械類その他が価格が違うことも考えられますし、またUHF帯の場合には、同じエリアを求めます場合にパワーを上げなきゃなならぬというふう場合もあるのじゃないか。それらのことは、具体的な置局場所もまだはっきりわかりませんので、計画上は一応これはVHF帯による局を建設するということで算定してあるわけでございます。
  9. 山田節男

    山田節男君 今の政府が言うようにVHF帯がもう絶対に、せいぜい十数局しかない。あと少くとも三十局近いものはVHF帯じゃいけないということは、これはもうはっきりしているわけですね。これは、何といいますか、平井郵政大臣のときテレビチャンネルプランを立てて、これは濱田局長もおられたのだが、一体このチャンネルプランを、将来教育テレビもあるだろう、民間放送にも免許を許すという建前政府がとった場合に、このチャンネルフランをどうするかと、こういう教育テレビNHKが四十九局を出すということは、われわれも予想もしなかったわけです。けれども、VHF帯はこれはもうできるだけ節約しなくちゃいかぬ、従ってテレビの場合に、少くとも六大都市くらいはこれはUHF帯にすれば、もっとVHFのローカルに使えるものが余裕ができるのじゃないか。根本的にチャンネルフランを、VHF帯を非常に混雑しない前に、政府はそういう企画を立てろということを私は何べんも言ったのですが、それをほったらかしておいて、それで民間放送を入れれば五十数局のテレビジョンを免許して、周波数を割り当てて、今までずっとVHFで非常にイージー・ゴーイングでやっておられるけれども、今ではにっちもさっちもいかなくて、NHKはもう四十九局のテレビを出そうとしても、その周波数がないということですね。それじゃUHFでいくということになると、今までの五カ年計画の計数というのは、これは根本的に変えなくちゃならないわけですね。ですから、私は今、首藤君の言われる点で、政府はある程度のギャランティを与えなきゃ、こういうような財政計画が立てられないわけです。一体その間に電波監理局長は、これは郵政大臣の責任だが、NHKに対して少くとも四十九のVHF帯を与えるという確実な保証がなければ、こういう国会に出すような計算書は出ないと私は思うのです。これはどういういきさつですか。これはNHKの五カ年計画の重大なモメントになると思うのですね。そういうあやふやなことで五カ年計画を立てるということはもってのほかのことなんです。その点のいきさつをちょっと伺っておきたい。
  10. 濱田成徳

    政府委員濱田成徳君) 山田委員の御指摘UHFVHFの問題はきわめて重要なまた困難な問題であります。アメリカでは御承知のようにUHFVHF混淆問題で非常に悩んでおります。ある意味においてはアメリカはこの政策面において失敗したということも言えるのであります。で、わが国といたしましては、これにかんがみまして十分に前者の覆轍を繰り返さないようにというような考えをもちまして、いろいろ検討を続けつつあるわけでございます。けれども、UHF帯テレビジョンヘの利用というのは、理論的には、私は三年前に国会においても申し上げましたように、技術的には、理論的には可能である。技術の問題もそう困難な問題はない。わが国における開発がおくれているだけであるというようなことを申し上げました。で、いろいろ注意を喚起し、政府としてはとるべき方策をいろいろとっておったのでありますけれども、現実問題といたしましては、これを実施するには非常に困難があるのであります。そこで三年来、NHKに対しましてはUHF放送研究をしてもらうということをお願いし、その他いろいろな方策をとりましたけれども、このチャンネルフランを、UHFVHF帯を含めましてのチャンネルプランを作りますことは非常に困難でございまして、それでまことに遺憾ながら、山田委員の仰せられる通り、はなはだ遺憾ながらUHF帯を使いますチャンネルプランはまだできておりません。で、むしろUHF帯は手を触れずにとっておいてあるといってもいいくらいであります。四再七十メガサイクルから九百六十メガサイクル帯まで、これはテレビジョンに使えるバンドであります。ここら辺は使わずにとってあるといってもいいのであります。御承知のようにVHF帯というもの、テレビジョンに限らず非常に使いやすい重宝な電波でありますので、外国においては、たとえばイギリスでもアメリカでもそうでありますが、テレビジョンのような娯楽には使わないで、もっと重要な問題に使うがいいということを論ずるところもあるくらいであります。私の考えを端的に申し上げますならば、UHF帯VHF帯混淆はなるべく避けるようにしたいものだ、アメリカ覆轍にかんがみまして、できるだけVHF帯でもって全部カバーが行われるような配慮をおいていただく。言いかえますならば、VHF帯によって放送法精神が全うせられるように、NHKにやっていただきたい、そういう考えをもちまして、今日までNHKと御相談をして参ったわけでございます。けれども、先ほど申し上げましたように、UHF帯チャンネルプランの策定は非常に困難でありまするから、NHKに対しては、教育放送その他の計画を立てる場合に、このVHF帯を基準として、そしていろいろ財政計画あるいは地方計画等を立てて、そうして電波割当が困難な場合には適切なる方法、すなわちUHF帯をしかるべき適当なところにおいて使用するということもやむを得ない、そういう御了解のもとに今日まで進めて参ったのであります。    〔理事松平勇雄退席委員長着席〕 私の考えを申し上げますならば、将来日本娯楽放送のようなものは、むしろUHF帯でやるのがいいかもしれない。カラー・テレビジョンのごときはUHF帯の方が技術的によい結果をもたらすことも想像されるのでありまして、そういう意味におきまして、今後十年、十五年先におきましては、UHF帯テレビジョンヘの活用、応用が実現するだろう、そういう長期にことを考えまして、今後この三、四年間あるいは数年間はできるだけVHF帯でカバーできるように配慮して、適当なところはUHF帯で補い、放送法精神が全うせられるようにあらゆる努力をしよう、そういう考えで現在検討を続けておる最中でございます。
  11. 山田節男

    山田節男君 一応政府意向がこのVHF帯でやられるということはわかりましたから、他の問題についてはNHKにお聞きしますが、次にFM放送も、NHKとしては、これはむしろラジオイギリスBBCにおける第三放送的な機能を持たすために、五カ年計画として終局的には十九局持たす、こういうようにしているわけですね。これに対してFM周波数割当ということは、先ほど申し上げた意味において、NHKにこの周波数割当を保証しているのかどうかということと、それから第二には、周波数FM放送は、これは申すまでもなく、カバレージがきわめて小さい。放送用として使うことは、今のNHKでやっているようにむしろ第三放送で、この十九局のFM放送を始めても、聴取者が現在のFM東京大阪で約二万、五カ年計画終局においても五十三万しかない。それがために十九局のFM放送というものを作るというのですが、これはもちろん高度の教養番組ですから、イギリスの第三放送と同じように、数は少くても、質においては、これは非常に私は効果があることを肯定します。肯定しますが、政府としてこの周波数割当政策の観点からいって、FM周波数に対する需要が非常に多いわけです。今日北海道でようやく始まったいわゆるファクシミリによる新聞発行、これはおそらく各地方に今後非常にふえるでしょう。その他FMの他への利用するという度合い、それから特に官庁——防衛庁、あるいは警察、こういうところにおきましては、いわゆるFM使用を非常に欲している。これはやはり外国の例を見ればよくわかるわけです。そういう状況にあってFM周波バンドもこれはかなり窮屈な住宅問題を起しつつあると思う。またこれは案外UHF帯よりも早くどうにもならない窮屈な状態に入る。そういうこれは客観的な見通しの上において、NHKに第三放送的な、終局において五十三万の聴取者を目途とした周波数の十九局というものを政府として与える価値があると思っているのかどうか。またスペクトラムからいって余裕しゃくしゃくとして十九局に割り当てられるかどうかということをお伺いしたい。その点をお伺いしたい。
  12. 濱田成徳

    政府委員濱田成徳君) 山田委員FM放送についての御意見は、私も同じ方法考えておったものでございます。VHF帯によるFM放送テレビジョンと同様非常に窮屈であろうことは想像されます。それは通信とかその他の目的に非常に使用価値の多い周波数帯であるからであります。そういう意味で決して楽な割当作業ではないことは事実でございます。しかしわが国放送が中波から、場合によりますと相当なパーセンテージをFMによって置きかえなければならないような情勢に立ち至ることも予想せられますので、政府といたしましては八十メガサイクルから九十メガサイクルの間の電波FM放送に割り当てるという大体の構想を作りまして、その間の電波は、先ほど指摘のように通信その他の目的に使われております。けれども、それをだんだん回収いたしまして、FMの方にそれを持っていくようにいろいろな手配をいたしております。私は、NHK計画しておりますところの五カ年計画は、この周波数帯によって実現することが可能であると信じております。
  13. 山田節男

    山田節男君 もう一つNHKの五カ年計画について技術的な面をお伺いしておきますが、NHKの五カ年計画の重要な改善要素として、混信を、いわゆる外国電波による混信を避けよう、これはどうしたって増力しなくちゃいけない。増力計画は福岡の千キロワット、大阪の三百キロワット、それから東京の五百キロワットというふうになっているのですが、御承知のように民間放送増力をかなり申請してきている事実は私は認めるのです。NHKが、これはまあ放送法の第一条の建前から、あまねく放送受信できるようにするということは、これは公共放送使命です。今回のこの五カ年計画によるというと、増力計画というものが相当膨大なものがある。ものによりましてはいわゆるブースター級のものに対しても増力しなければならない。あるいはサテライト・ステーションに対しても同様である。この増力計画というものは、NHKとしたらこれは私は当然だと思うのですが、これに関連して民間放送がやはりほとんど増力を申請している。民間公共放送全体としての増力計画というものは、一体どういう腹がまえで、どういう施策で将来しようとするのか、この点を参考意見として伺っておきたいと思います。
  14. 濱田成徳

    政府委員濱田成徳君) 増力問題は確かにむずかしい問題でございます。電波電力はその当該の局だけを考えてきめられないことは御承知通りでありまして、広くは外国外来電波を出している局の電力考え、そしてその外来電波に影響されないように国内の放送局電力を定める必要がある。でありまするから、外国用放送局電力の比の問題であります。あるいは電界強度を十分計算し、研究する必要があるのであります。そのことが、国内的にもそれが当てはまるわけであります。従いまして、NHK増力をさせるような情勢になるとするならば、それは民間放送局電力もこれとバランスをとって増力するようにしないと結果は芳ばしくない、そうなるものと了解していいと思うのであります。たとえば、それがある地域々々でもってそのことが行われているのであります。たとえば、ある地域において今一キロの放送局があるとします。その局を十キロに増力するという場合は、それと地域を同じくする他の小さな局の電力もこれに応じてある程度増力しなければ均衡が破れて、その聴取者には不満足を与える、そういう結果になりますので、とにかく事業者よりも国民の、聴取者の利益を考えて、電力周波数割当をすべきだという見地から、かように均衡のとれた電力、よく聞えるような、外国との混信がないような、そういう割当をしなければならないと考えております。
  15. 山田節男

    山田節男君 もう一つNHK質問に入る前に、政府に確かめたいのですが、郵政大臣に御答弁願いたいと思います。NHKラジオについては現在第一、第二放送をやり、さらにFM放送で第三放送、これは準教育放送をやろう……。そうしてテレビにおきましては、これまた第一、第二放送を行なって、第二放送においてはいわゆる教育テレビ教育プロパーでやる、こういったような状況であります。それからすでに現在東京大阪に一カ所、さらに濱田局長の言明によるともう一つ教育、高度の準教育放送をやる。こういうことになりますと、さらにまた準教育放送を、一局でなくて、さらに民間放送の数局以上許すということになりますと、日本のいわゆる何といいますか標準放送テレビ放送において、教育テレビ教育放送というものがあまりにはんらんするのじゃないか。これはたとえば、外国の例を見ましても、BBCにしましても、これは今日テレビは一本しかやっていない。それで娯楽教養という目的を相当果していると思う。それが不幸にして、日本は非常にふしだらな民間放送を許してしまって、民放と公共放送の共存の形を許しております。教育の面において、これほどまでにはんらんさせて、それだけの一体テレビ文化的価値があるということになるのか。教育テレビインフレ教育放送番組インフレに対して一体政府はどこかでけじめをつけるという意思があるのかどうか、これはNHKの五カ年計画に重大な関係がありますから、政府の率直な一つ腹をお聞きしたい。
  16. 寺尾豊

    国務大臣寺尾豊君) このことは全く山田委員の御質問中にうかがわれます御所見に、私も非常にそのことを重大に考えておるものであります。今日、総合放送局といたしましての見通しとしては、百局にも近いものが考えられておる。従いまして、それとバランスをとるほとんどが、総合放送局として放送を、現に開局されたものが、順次そういうふうな娯楽放送等にも相当力を入れてやっていることはごらんの通りであります。従いまして先ほど局長がお答え申し上げましたように、こういったような多数のNHK並びに民間放送局がほとんど打ち揃ってそういったような放送が、もう満艦飾で行われているというようなことになりますと、やはり御承知のように娯楽放送娯楽番組に対する私は食傷ということも、すでにもうそういう兆候が出ているのじゃないかという感じがするわけであります。従いまして健全な家庭、その他子女を多く教育しようというような家庭におきましては、やはり教養番組というものが要求をされつつある、この趨勢に私はあると思うのであります。従いましてこれにこたえるには、まず公共放送としての使命を持っているNHKが、この使命を果すべきだという考え方を政府も持っているわけであります。しかし、これがイギリスあるいはアメリカ等の例をみても、あまりにも日本が乱雑に、こうした御指摘のような放送が行われているという事実は、私は否定できないのじゃないか、許可を、免許を与え、またそのおのおのの放送事業者が真摯な努力をしております限りにおいては、おのおのの放送業者が放送において使命も果し、また会社の経営も成り立つというようなことについては、あらゆる努力をしなければならぬというところに、政府の非常な悩みがあることも事実でございます。しかしながら、許可を与え、免許をしました以上は、これらをできるだけ合理化し、あるいはまた自然に落ちつくところに落ちつかせて、そうして将来安定をした、放送法に合致したところの高度の放送というものを完成をしなければならぬ、こういう考え方でありますが、ただこれらの多数の放送事業者が、果しておのおのが今後すくすくと伸びていくか、独立経営をもって伸びていくかということについては非常な努力を要する。またおのおの相協力し合って合理化をはかる、あるいはまた政府はそういう指導はいたしませんけれども、自然に落ちつくところに落ちついて、いわゆる系列化されるとか、お互いができるだけむだを省くことによって、優秀な放送番組に対するネットワークを組むとか、そういうふうなことがだんだんと経営の合理化がされて、そうして山田委員の御心配のような点が自然に片づき、また安定をするということになることを期待をし、また私どもはそういうことに対して側面的と申しますか、そういうようなことを希望をいたして、そういう方向に協力をしていきたいと、かように考えているわけであります。
  17. 山田節男

    山田節男君 今の寺尾郵政大臣の御答弁、これは経営の合理化とか何とかいう根本問題じゃなくて、一体教育テレビというものが、これは公共放送にしては金がかかり、民間放送、商業放送としては経営が成り立たない。これは寺尾郵政大臣は御承知通りアメリカにおいても、ことに教育テレビ放送については、これは予備免許も少いのです。ということは、結局経費がかかる。良心的なテレビ放送局であればあるほど金がかかる。でありますから、アメリカの最近のFCCの報告を見ましても、教育テレビに割り当てるチャンネルというものが消化し切れないほどです。この教育テレビ放送というものの経営はむずかしい。ですから、経営合理化とか何とかいうその前に、教育テレビとはいかにあるべきかということは、何かどうもNHKにしても政府も、あまり教育テレビについて甘過ぎている感じがある。私は非常に日本放送事業の無知から来たのだろうと思うけれども、何でもかんでも金がもうかるように思っている。教育テレビがもし金がもうかるようだったらこれは教育テレビでないのですね。ですから、そういう意味で、寺尾大臣の今の御説明では納得できませんので、もう一歩深めた見地からいえば、教育テレビというものは民間放送でペイするような、そういったような教育放送ではこれは困る。むしろそれよりも経費を度外視した公共放送一点張りにしていくといったようなことがむしろ堅実である、国民のために非常に有益になると私は思う。ですから、これは大臣なり電波監理の所管者である濱田局長あたりは、今後教育テレビチャンネルは窮屈になっていくのであるから、民間放送をするチャンネルは、これ以上ふやさないということで、これは根本的に腹を据えてもらわないと、NHKの今度の五カ年計画も、先ほどのような答弁では、土台からこれはくずれる危険性がある。何ら保証なくしてやっている。先ほどの砂上の楼閣のような案を出しているようなことになる、良識的に言えば。それを私は確めたいから、政府に特に質問したのでありましたが、この点一つ御了承願いたい。  次にNHK質問しますが、一体今回の八十五円、二割八分近くの受信料値上げするということ、これは出された資料を通覧しましてわかる点もありますが、一体このNHKとして今日までテレビ放送始める前は、ラジオの聴取料というものが経営の基本になっておったわけですが、これは今度の予算収支の説明にも現われておるように、一昨年が五十四万、昨年が三十万、今年が三十万、三十四年度においては十万余しかラジオ聴取者がふえないと見ておるのですね。こういうことは、これはすでに私も前々から申し上げておるのですが、今回の予算の収支、ことに五カ年計画を立てる場合において、一体NHKとしてラジオ経済をどう見るかという根本的な再検討が足りないじゃないかと思うのですね。すでにここに明らかに、ラジオ聴取者はもう頭打ちになっているということを説明されている。これは頭打ちじゃないのです。もうピークが過ぎてしまって、これから漸減の、下降の方向に向いつつある。ゼロになる、マイナスになるということははっきりしている。少くとも今日われわれが何べんも言っているように、放送法の三十二条の、あの聴取の受信料、聴取の契約条項というところから見ると、これはもうピークが過ぎるというのは間もない、こういうこと、これは明らかに収支計算上、ラジオ経済はもう次第にこれは凋落の一途をたどるということが証明されておるわけです。その上で、一体ラジオ経済をどうするとかいう、私は根本的な再検討を行わないというと、これまた今立てられているような収支計画というものが、これまた砂上の楼閣に類するようなことになるのではないかということを私は憂えるわけです。そういう見地から、私は質問しますが、この十万六千を三十四年度においてキープする、それだけふやして、いわゆる受信料の免除も最近若干ふえておりますが、それにしても、この十万六千という絶対数をあのまま守るということは、かなりあなたの説明によると、苦しい状況に追い込まれておると思うのですね。そういうときに、単に説明されたように、放送協会の職員をして盛んにPR、そうしてNHK放送の生死、生命を賭して、そして受信者を増加していくということを言っておりますが何べんも申し上げるように、民間放送が激増しておる今日、そういうことで聴取者がふえるということの限度というものは、もうすでに限界にきておるわけです。そういう見地から、私はこの一体ラジオ経済というものを、今後年々ちゃんと十万なり五万ずつ、五年計画の間確実にふえるという、これは神様ばかりしか知らないかもしれないけれども、われわれは過去と現在の情勢から見て、ラジオ経済というものをNHKというものは非常に甘く見ているんじゃないかと思う、数字的な根拠において。こういう点についての私は自信のほどをNHKにお聞きしたい。
  18. 野村秀雄

    参考人(野村秀雄君) 私はラジオ聴取者が減らない、メーカーなんかの報告を徴しても、ラジオを聞く者は非常にふえておるという事実から見ても、私はラジオ聴取者は減らない、ただその契約をしてくれる人が少くなっておるんだ、しかし私はどうしてもラジオ聴取者は減らしてはならぬ、NHKラジオは一時間でも二時間でも聞かねばならぬというような、いい放送をするように努力していかなければならぬということを考えまして、番組の編成にしても、また電波を送るにしても、良質の音でそうして内容のりっぱなもので、ためになるものを放送するようにしたい、せねばならぬということを考えておりますから、今までの聴取者を確保するはもちろんのこと、未開発の地域も相当ありますから、これらに対してもぜひNHKラジオを聞いてもらうように努力していきたいと思っております。なお、具体的の数字等については、他の参考人から御説明申し上げさせますが、私としてはラジオ聴取者は減らさないというような考えをもって、今後努力していきたいと考えております。
  19. 首藤憲太郎

    参考人首藤憲太郎君) 現在大体普及率八三%程度でございます。それで、ただいま会長が申し述べましたほかに、全国にまだ普及率が非常に低いところがございます。たとえば九州とか四国とかいうところがございます。ところによりましては六〇%、七〇%というところもまだあるわけでございます。それでこういうところにつきましては、なかなか普及しにくい事情もあるのでございますけれども、一方われわれから積極的にラジオに興味を持っていただく、聞いていただく、受信機を備えていただくという努力をすれば、まだまだ伸びる余地がある。現にここ二、三年来その方向に力を入れました結果、やはりそういう地域は幾分でも上昇しているわけなんでございます。従いまして、そういうところに対してまだ普及率を上げるという努力は残されているのだと、こういうふうにも考えているわけでございます。
  20. 手島栄

    委員長手島栄君) 大蔵大臣がおいでになりましたから、大蔵大臣に対する御質疑のある方は御発言願います。
  21. 鈴木強

    鈴木強君 大へん大蔵大臣お忙しい中を恐縮でございましたが、本委員会は、目下三十四年度のNHK予算の審議をいたしておりまして、月末も近くなっておりますので、審議の促進をはかる意味におきましても、御出席をいただいたわけであります。非常に時間——お忙しいようですから、私簡潔に三点だけお伺いをいたしますが、まず第一番にお尋ねをしたいのは、国際放送についてでありますが、御承知通りNHKは、放送を通じて日本の政治、経済、文化とあらゆる各般の実情を世界に認識をせしめ、放送を通じて国際親善に寄与する。さらにまた全世界にたくさんおります邦人に対して、なつかしい祖国の事情に触れしめる、こういう意味から参りまして、国際放送の意義がきわめて重要だと私は思います。これは放送法九条、三十三条、三十五条、これらの規定によりまして、政府が命令をして、この国際放送をせしめることができる、こうなっております。私たちこの予算を審議している過程で、これはことしだけのことではありませんが、毎年問題になっておりますのは、政府の協会に対する負担金が非常に少いということです。大臣承知通り、協会は本年から従来より以上に、日本の現状、当面する実情からして国際放送をさらに拡充強化しよう、こういう思想に立ちまして、現在十五方向、十五時間の放送をやっておりますが、新たに中南米向けの放送もふやして十六方向、一日二十五時間、こういう広大な規模の放送をやろう、こういう計画を持っているわけであります。そうしてそれの経費として、約五億円近い金がかかるそうでありまして、この全額の負担を、郵政省を通じて政府に要求したわけでありますが、郵政省の査定段階におきまして、約一億に削減されました。この二億の郵政省要求が、大蔵省段階でやはり九千四百万円にさらに削減をされまして、われわれこの審議に当って、少くともさっき申し上げましたような重大な使命を持っております国際放送、しかも政府が命令をしてやられる、こういう建前にある国際放送に対して、あまりにも五分の一以下に切るということは、これは大蔵大臣も、特にこの事業に対しては深い理解を持っていただいている方だと思います。ですから御努力をいただきましたことは、私たちは認めるにやぶさかでありませんが、この一兆四千億近い国家予算の中で、せめてこの程度の国際放送の費用が捻出できなかったか、非常に私たちは疑義を持っているわけであります。  先般総理大臣にもわざわざ御出席をいただきまして、この実情はつぶさにそう申し上げました。総理としてもわれわれの主張は是とされまして、本年度に非常にむずかしいわけでありますが、来たるべき年度においては、できる限りの努力をすると、こういう御所信も聞いているのでありますが、大蔵大臣として、直接この予算編成に携わったあなたが、どういう思想をお持ちになっておりますか、これを一つお聞きしておきませんと、議事進行できませんので、お尋ねするわけであります。
  22. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 鈴木委員の、ただいま国際放送についての御意見、私も実は全面的に賛成でございます。今回の予算編成に当りましても、いろいろな問題を郵政大臣から持ち込まれましたが、郵政大臣も、特にこの国際放送の現状にはあきたらないし、これが非常に効果のあるという意味において、何とか増額しろ、その増額も、飛躍的増額を要望されたのでございます。私も、かねてから国際放送、ことに海外に参りますと、非常にNHKの国際放送はなつかしいし、国によって聞ける所があるし、聞けない所があるし、こういうことでは非常に不十分だし、基本的な設備から増強する要もあるのじゃないかということも考えるし、そういうことを考えて参りますと、資金の不足ということはよくわかってはいたのでございます。しかしながら、総体の予算の割り振りから、今回国際放送についても、わずかにふやしたという程度でございまして、まことに不十分であることはよくわかっております。なかなか予算を飛躍的に増額さすということが困難でございますし、ことにNHKそのものといたしまして、非常に問題をたくさんかかえておる時期でございますので、そういう場合に、国の補助も、筋の立つことであれば積極的に支援すべきだ、こういうような考え方で、事務的に折衝もいたしましたけれども、十分御要望に沿うことができませんで、残念に思っております。しかし、この状況で満足すべきではございません。その効果のあります点も、御指摘になりましたように、国際親善なり、あるいは邦人系、こういう者が故国の実情を非常に鶴首して待っておる際でございますから、これは一そうこれが今後活躍できますように、次の機会におきましては、総理同様と申しますと、総理と大蔵大臣の責任は違いますので、大蔵大臣といたしまして十分考えて参りたい。かように思っておるわけであります。
  23. 鈴木強

    鈴木強君 大臣も非常に国際放送の趣旨は御理解をいただいているようでのりますが、それだけに私たちが申上げておきたいのは、NHKの経営については今私詳細には触れませんが、御承知通り十八円、約三割以上の聴取竹の値上げを余儀なくされておるわけであります。私たちはこの値上げには反対であります。要するに、九千万国民のほとんどが聴取をしておるこの放心協会の使命というものは、民放も発煙をしてきている現状において、ますよすその使命は重くなってくると思うわけであります。そこで、政府が公共事業として長い歴史の中でNHKに独占させてきた過去の歴史を見ましても、私は今日その使命は全然消えていはいと思う。むしろますます重要性がのると思うわけですね。ところが一方、聴取料だけに依存をしておる協会としては、経営上成り立っていかないしいうのが現状です。聞いてみますし、八十六億の固定資産の中で、六十億近いような減価償却も十分できないでおる。特別償却もそういう状態で、三十三年度の予算を私たち審議する場合にも、きわめて危険な経営状態であるということを強く認識いたしましたが、当時田中郵政大臣が料金値上げ等もほのめかしたようでありますが、ついにそのことはなし得ず、しかもそれにかわるべき措置というものがなかったのです。そういうことが蓄積をして、今日特別償却ができずして、古い老朽施設を使っておる。しかも、きのうも問題になったのでありますが、ソ連あるいは中共あたりからの強力な電波の発射がございまして、それによって混信が生じ、聴取が十分でない、こういう状態も時間的には出ておるわけであります。もっと出力を多くして、それに対抗するような措置も考えなければならない、老朽施設を取りかえていく、こういう非常に困難な状況でありますから、こういう中で、せめてこのNHKが期待をする国際放送、しかもこれは政府が命令をしてやらしておる、こういう建前からするならば、せめて私はこの三億程度の負担は政府がやるべきであるという強い信念を持っておるわけであります。ですから、協会全体としての経営の上に立って、もう少しく政府が積極的な施策をやらなければならない、こう思います。これはもうあなただけでなしに、前の大臣から、直接監督をする郵政大臣、大蔵大臣等、私たちのこの質問をすると努力をするということを言って下さるのですが、どうも内閣もかわりますし、質疑が十分いっているかどうか私わかりませんが、われわれの意に反するものしか出てこない。そうして申し訳なかった、また来年やりますというような釈明がされて、いつまでたっても、この問題が解決できないのです。ですから、これはまあ大蔵大臣、長くやられるならけっこうでありますし、おかわりになっても、これは一つ今の御所信、はっきりと確認をしていただいて、これは政府与党としても一体になって私はやっていただきたいと思うのです。そうでないと、もう協会がテレビの拡充その他非常に資金の必要なときでありますから、せっかくのこの放送使命を達成することができないような状態にありますことを御認識いただいて、できるならば大蔵大臣、どうですか、何とか差し繰りをして、今からでもこの程度の補正措置は私はできると思うのです。そういうふうなことはどうでございますか。
  24. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 予算は、御承知のように、衆参両院の皆様方にただいま御審議をいただいておりますが、あめ細工のようなわけにはなかなか参りません。そこで今NHK総体といたしまして、いろいろ計画しておられる事柄がございますけれども、社会党が放送料の値上げは反対だといわれておりますけれども、私はNHKの持つ使命の重大性、ことに公共放送といいますか、政府的機関とは申しますものの、非常に公正な放送をいたしておられますし、これは率直に申しまして、政府の、われわれが聞いて、ああいう放送NHKがするのは困るというような放送もございますほど、実は公正な放送をしておる機関でございます。私は、このNHKが、それぞれ中心になってこの放送をやっておりますことで、民放の発達もあると思う、その亀艦になるものが、今日のようなこの収支状況、これはまことにお気の毒に思うのでございます。なるほど一般的には国民の負担というようなことで、原則的には賛成ができないとは言われましても、NHK自身のこの経営がうまくいかないということになりますと、公共放送というものが基本的に乱れるというようなこともありますので、私は適正な聴取料の値上げ一つ御賛成を願いたいものだと思います。そういうような実情になって参りますと、このNHK財政状況というか、資金状況もよほど変ってくるのじゃないか、そういたしますと、もっと活発な活動ができる。なるほど政府自身も、必要なる出費に対して、政府がこれを補てんをすることは当然でございますが、政府自身が特別に補助する、こういう形のものであっては実は相ならないのじゃないかという感じがいたしておるのでございまして、まあそういう意味でも、今回のこの実費支弁の程度というか、政府が出す程度では思い切っての活動ができないといううらみがありまして、先ほど来、国際放送は、もう少し力を入れようじゃないか、そういう意味で事業の内容を拡大するような方向で、その必要な出費についての対応策を立てましょう、こういうことを実は申したのでありますが、NHK自身は、いろいろ国内の関係においても義務を負わされておるし、放送施設の整備の義務を負わされておるし、また御指摘になりますように、ソ連や中共等からの、海外の強力な電波のために、国内の聴取も、ずいぶんあちらこちらで混信混乱を来たしておるようでございます。そういうような面を、NHKの本来の使命として力を入れていただきたい、こう思うのであります。いずれにいたしましても、資金的に欠乏しておるがゆえに、鈴木さんは、ただいま政府がもう少し支援したらどうか、政府の出費の方が先じゃないか。こういう御意見だろうと思います。この点は十分御意見として伺っておきますが、政府がただいまのところ、聴取料を上げることを、これによりまして資金状況を改善していきたい、こういう考え方でございますし、またそれぞれの仕事につきましては、必要な面において十分今後工夫をいたしたいと思います。国際放送を拡大したいという、その気持は十分持っておりますが、ただいま今回の予算では、そういうものが異体化されておらない、この点は御指摘通り、まことに私どもも遺憾に思っております。
  25. 鈴木強

    鈴木強君 それで、私たちが料金値上げに反対していますがね。しかし、きのうからもずっとその前からやっておりますがね。とにかくNHKがどうにもならぬ事態になっているということは認識しているのですよね。ですから私は、まるまる政府が出資しろということは言いません。が、しかし、財政投融資等の面もあるわけですから、もう少し長期の借入金等は御配意いただいて、これは造船投資の利子補給なんかもありましたから、端的にいって、私たちはそういう法律案を作っていただいて、そうしてテレビラジオのもう少し拡充を考えていけば、今後四年、五年後にはもう少し余裕が出てくると思う。そういうときに転換していくような方法を、特別な措置をとったらできないこともなかろうという考え方を持っておりますからね。料金値上げに依存するよりも、そういう方法によって大衆の負担を下げていった方がいいんじゃないかという思想があるものですからね。私は現実にNHKが危機に立っているという認識をしているのです。何とかしなければ、これは運営ができなくなってしまうわけですから、そういう立場に立って、私たちはまた料金値上げに実は反対しておるわけです。時間の関係大臣のおっしゃった放送に関する考え方等は、やると長くなりますから、私はここでは触れません。  次の質問は、関連しますからお伺いしますが、この予算の中で、NHKに対する長期借入金は、ことしラジオにおいて六億五千万、テレビにおいて三十六億、合計四十三億程度のものが見込まれております。そこで、この長期借入れについては、できるだけ財政投融資の面から御配意いただきたいと私は思うのですが、まだどの程度の融資がしていただけるのか、私よく承知いたしておりませんが、現在どの程度の——おそらく去年も簡保からの借入れをやったのですが、これはまあ一つできるだけ配意していただきたいと思うのですが、一応現在大蔵大臣がお考えになっておる額をお示しいただければけっこうだと思うのです。
  26. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 今回の財政投融資には、実は見ておりません。見ておりませんが、これは一つ、まあ鈴木さんも全然御縁のないNHKではないように思いますから申し上げてみたいのですが、私は、NHKがこういうまあ性格であれば、民間資金を借り入れるとか、そういうことが自由にできて、そうしてまかないがつくということは、これもまあ当座の場合としては、これは必要なことだろうと思います。思いますが、やはりその基本的な大柱になりますものは、それは何といっても聴取料が根幹をなすものだ。田中郵政大臣の際に、いろいろの話がございまして、特に料金を上げることができなかった。そこで特別借入れをした。こういう事柄がやはり今日になってくるとまたその負担になってくる。やはりその時期を踏み切ることが一つ大事なんです。これはもうこの種の機関としては当然頼り得る一つの収入の道でございますから、それだけはもうがっちり一つしてやって、将来非常に加入者がふえるとか、あるいは聴取料金がどうなるとかというようなことも、もちろん計算には入れるべきでございますが、そういう点はNHK自身十分考慮して、やはり聴取料の問題と取り組んでおるわけであります。またこういう公共機関が料金を上げるということが、国民の負担になるとか、また国民からいろいろ批判を受けるということ、それをもう承知して上げざるを得ないというのはよくよくのことだということは、これはまあぜひ一つ御同情賜わりたいと思うのであります。同時に、かようなことを申しましても、やはり長期計画でないといかぬというこの点も御指摘通りでございます。そこで、この予算編成の際におきましても、まあ聴取料を幾らにするかという、郵政大臣や野村さんなどの、これはもう率直な御意見を実は伺ったのであります。ことにこの種の、まあ非常に今聴取率も高いNHKでありますだけに、これが料金を上げるということは、国民からの批判も非常にきびしい、なるべく避けたい、しかし、基本的な数字はこういうわけだということで、私ども苦心して結局それに踏み切った。かように踏み切りますと、やはり短期の資金に不足を来すようにどうしても考えられる。今回の料金の値上げをもって、これで当分大丈夫ですと左うちわとまではいかなくとも、もう重ねて御迷惑をかけなくともいいという状況ではないのです。そこで短期の資金を何とかしてくれというのが、ただいま郵政大臣から私の方へ相談を持ち込まれておるところなのでございまして、今年の財政投融資計画には載っておりませんが、私はこの料金の法律案、NHK予算が皆さん方の御審議を得て、これが承認を願えましたならば、さらにこの当座の問題としての資金獲得方法については、郵政大臣とまた、すでに申し込まれております点について、具体的によく相談をしてみたい、かように思っておる次第でございます。
  27. 鈴木強

    鈴木強君 まだ具体的な成案はございませんか。
  28. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) まだそこまではございません。ございませんが、実情については詳しく持ち込まれております。
  29. 鈴木強

    鈴木強君 それで今回の料金値上げは、いわゆるラジオですね、ラジオ値上げなのでありまして、テレビの方は月三百円、これは現状維持でいくわけです。ところがテレビの方は、カラー・テレビの方の問題もございますし、その他非常に急速に聴視者がふえております。従って将来の聴視者を見越していきますと、今直ちに最終的な採算というものの論議はできないと思いますが、発達過程でありますから、それだけ設備投資が非常にかかるわけであります。ですからこの長期借入の場合にも、昨年いろいろ御配慮いただきました簡保の融資等の問題についても、テレビについてはかなり御努力をいただいておるわけです。ですから、この辺の問題はラジオの聴取料と切り離してお考えいただきませんと、国民の期待できるテレビ放送というものはできないと思うのです。ですからこれらの点も十分配慮されて、なお、その利率その他も今私たちちょっと調べてみますと、七分五厘くらいの利息を取っておるようであります、昨年あたりのは。これらの点も最近の金利の引き下げその他のものから関連をして、多少これは色をつけてもらわなければ困ると思うのですが、その辺の大臣御配慮をいただけますか。
  30. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいま御指摘になるような点を郵政大臣がやかましく言っておるのでございます。私は今回の料率改正、それは基本的にはこれで一応の筋は立つとは申しますものの、今発達の途上にありますし、また、設備資金等を必要としているNHKといたしましても、これは非常な負担であることはよくわかっております。そういう意味からNHK、あるいは郵政大臣から、当座の問題としての短期資金の融資を一つ考えろ、こういう要望を受けておるわけであります。で、まあその点はもう少し、金額、方法、時期等はもう少し考えさせていただきたいと思います。金利が安くなったと言われますが、市中金利をわずかに一厘下げただけでございます。で、ただいま言われますように、七分五厘という金利は一般市中金融の機関から申しますと、非常に低利な、御承知のように開発銀行なども九分というのが本筋でありますし、一般の金融だと一割近い金利になっております。その点も考えまして、非常に低利でお貸ししているということであるのでございます。
  31. 鈴木強

    鈴木強君 協会は具体的にここに借入金の額を明示されているわけなんです。ところが政府の態度はまだきまっておらない。これじゃわれわれ予算審議に当って自信が持てないのですね。これは無理な注文かもわかりませんが、早急にきめていただきませんと、われわれ今明日中に何とかしようと思っているのですけれども、そういうことではわれわれ非常に審議上困るのでありまして、少くともここに一応予算案として計上されております額を完全に消化できるような、この保証だけはできますか。もちろんそれは全部に私は借入金をということではありませんが、いろいろその他のことも合わさっておるわけでありますが、いずれにしても、この目標額というものは完全に大蔵省としても一つめんどうをみてもらえる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  32. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 十分私も引き出されてこの委員会でお話を申し上げておるように、郵政大臣もおそらく今まで同じことをたびたび申されたに違いございません。NHKが十分仕事をやっていけるように、十分私どもは工夫して、その意味においてよく御相談をして参りたいと思います。
  33. 鈴木強

    鈴木強君 最後にお尋ねいたしますが、直接協会の事業と関連がこれはないわけでありません、かなりあるわけですが、御承知通り、ことしはITU、これは国際電信電話連合の総会もあるわけです。それから特にロスアンゼルスで、これも主管長会議等が今度ございますね。これらの会議は非常に重要な会議でありまして、特にロスアンゼルスで開かれる主管長会議は、今度カラー・テレビジョンの技術的な国際基準というものをきめようというわけで、今日本ではNHKとNTVが試験放送をやっております、カラーの。これも相当時間がたっておりまして、早く踏み切ってくれという意見もあるのですが、郵政省としては慎重を期して、これは会議の経過等を十分確かめた上で、将来悔いのない方針でいきたいということで、こういうことで今慎重な態度をとっておられる。私はそれは当然のことだと思う。従って、こういう国際会議は、電波割当やその他の技術的な問題を含めて、非常に大事な会議だと思うのです。ところが、こういう会議に出席する旅費等を、大蔵大臣はびたりぴたりと削ってしまう。これは非常にこの会議の重要性に対する認識が欠けておるから、私はそういうことになると思う。これはきわめて遺憾なことでありますが、これは総理もだいぶ弱った答弁をされておりましたが、これは何とか予算一つ差し繰って、せめて一つ郵政省が派遣したいという要員ぐらいはぜひ一ついろいろな差し繰る方法をやって、やっていただきたいと私は思います。いかがですか。
  34. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) この国際会議、これはもう御指摘になりますように、あらゆる国際会議はその機会をのがさないで参加していく、これは絶対に必要でございます。ことに今回は大事な理事というような問題もあるように伺っておりますし、そういう意味で、私どもが非常に気をつけて予算は査定いたしたつもりでございます。郵政大臣はもちろんやかましくそういうことを申しますが、過日も予算委員会で、この点について御意見がございまして、大蔵省は少し査定がきついじゃないかというおしかりを受けたわけでございます。別に国際会議を軽視しておるわけでもございませんが、私どもはこういう際でございますから、必要最小限度十分目的を達し得ると、かように考えまして予算は組んだつもりでございます。まだ実行に当りましてさらに相談に乗る。必要がございますれば、もちろん相談に乗るつもりでございます。大事な国際会議、これはもうのがさないでこの機会に顔を出すようにさしたいものだと思っております。今回も人員の査定が非常に少かったというおしかりを受けておるようでございますが、私ども一応事務的に相談した結果、あすこに落ちたのでございまして、別に大蔵省が威力を用いたわけではございません。なお、実施に当りまして非常な不便があるようで、その点は郵政大臣とよく協議いたした上、実行上支障のないようにいたすつもりであります。
  35. 森中守義

    ○森中守義君 ほかの委員会にいろいろ差しさわりもあるようですから、二問だけ簡単にお伺いいたします。第一は大蔵大臣も御承知のように、政府放送協会に対して研究命令をする、こういう条文があります。それから先刻鈴木委員が申し上げたように、国際放送に対しても実施命令を出す。ところがこういう命令は政府が費用負担しなければならないようになっている。そこで新らしいこの予算からいきますと、大体国際放送で協会予算が三億四千万円、それに研究費が四億一千万円、端数は省略いたしますが、こういう予算を計上しております。しかるに新聞で見たのですが、どういう経路をたどって閣議決定ということになったのかしれませんが、満場一致で八十五円、現行料からすれば二割八分の値上げといたしまして、これが閣議決定されたということなんですが、なるほど大蔵大臣指摘されたように、協会は受信料を中心にして事業を憎んでいくわけでありますから、そのことは別の問題としてお聞きしますが、やるべきことをしないで値上げとは、これは釈然としない。これが実はこの審議に大蔵大臣にどうしても出席を求めなければならない一つの理由であったのです。やるべきことをしないで八十五円の値上げを閣議決定した、これは一体どういうことですか。しかも、それが膨大に何千億になる、あるいは何百億になる、そのことが即国家予算に重大な支障を来たすということであれば、これはまた話は別です。しかし国際放送は三億、研究関係は四億、十億足らずの金を一体大蔵省はどういうふうに考えておるのですか。これは私は料金値上げを決定したという閣議の前に、どうしても法律によって協会に対して交付すべき金はないのだ、こういう点がもう少し配慮されてしかるべきではなかったろうか、こう思う。だから明らかにこれは政府が協会の八十五円の値上げ承認したという前提の問題としてやるべきことをやっていない。これが第一の問題としてお答えをいただきたい。  それからもう一つは、先刻来話の中にちょっと出ていたようですが、ラジオは要するにこれから先の聴取者の契約の状態というものは下降線にはいかないでしょう。やはり上昇線はたどるにしても、比較的緩慢な上昇線、こういうことが言えると思うのです。しかるにすでに三十数年を経った協会のすべての施設というものは、今や更新の時期にきている。従って内容のより高度な放送を提供しようということで、事業の支出が収入に対してどうしても多くなる、こういう実情からいくならばバランスがとれない。これが一体どういうわけで大蔵大臣の所管であるか、これは多分に問題がありますが、大蔵大臣としてこういうように支出と収入のアンバランスに対して、どういうふうにお考えであるのか。これが第二点。  それからもう一つは、大蔵大臣は御存じであるかどうかわかりませんが、協会は聴取料の免除をかなり広げております。これは放送法精神公共放送精神から言って、必らずしも非難したり攻撃をして否定をする筋合いのものではない。しかしながら、やはりこれは国家全体という観点に立てば、たとえば生活保護を受けている人、あるいは政府の交付金や補助金等で事業を営んでいる各種の団体であるとか、こういうのは岸内閣の看板である社会保障制度の一環として問題を処理すべきであろうと、こう思う。そうなると、この金額も五千万足らずの金ですが、一体これは政府として当然協会に対して交付すべき筋合いのものと、私はこう思う。これが第三。  それから最後に、減税が岸内閣の目標であるのに、私鉄料金の値上げをして、今また協会の料金の値上げをしようとしている。これは減税に対する料金の値上げというのは明らかに相反し相矛盾をする。しいて言うならば、間接税をこれはよけいとる、こういうことになる。勢い運賃の値上げであるとか、あるいはガスや水道、電気、こういうところにもこの問題は波及していくし、直接税は引き下げるといいながら、間接税で取り上げる、こういう矛盾点を大蔵大臣はどういうようにお考えであるか、これだけ私はお尋ねをしておきます。再質問をいたします。
  36. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 森中さんにお答えいたします。先ほど政府が直接NHKに対して負担をかけている、こういう意味で国際放送についてのお話をいたしました。今研究命令を出して研究をやらしておるじゃないか、その方はどうしたのか、こういう御指摘であったように思いますが、いわゆる研究命令というものは出しておりません。おそらくNKH自身、これは当然のこととして、カラー・テレビを初め、その他みずから進んで研究しておられることだと思います。
  37. 森中守義

    ○森中守義君 予算を持たぬから、研究命令を出さぬのだ。
  38. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) そこまで掘り下げないように、事実を率直に私は申し上げておるわけでございます。そこでこの問題はそういうことで御了承がいただけると思いますが、それにいたしましても、NHK自身が内容的に聴取料を収入の骨子にする、こういう意味で、それだけにたよることはいろいろ問題があるんじゃないか、これは確かに研究命令を出す出さぬは別として、そういう点は一つのポイントであろうと思います。しかし、公共放送というものに対して政府が特別な援助をすることが果していいのかどうか。おそらく放送の実態から見まして、それが公正である、中正であることを強く要望されるに違いないと思います。いわゆる民放と違った意味で。しかしながら、これは政府の機関ではないので、こういうことははっきりまた言えるのだと思うのであります。そういうことを考えて参りますと、政府の援助というものにはおのずから限度があるんじゃないか、やはり公共放送として国民全体がこれを育成していくという建前が望ましいんじゃないか、こういうことを実は考えるのであります。これはもちろん議論もあることでございますから、これはなるほど保守党内閣の時分は、保守党の機関のように考えられているかもしれませんが、天下が社会党になれば社会党で使えばいいじゃないか、政府がやるにしても、えらい負担じゃないじゃないかというような御議論もあるかと思いますが、いずれにいたしましても、その点はこれはもう少し私ども研究しないと、容易に政府がこれに対して積極的な多額の補助を出せという御議論には、まだ私どもは早急には賛成しかねる、これだけを一応御披露しておきたいと思います。  第二の問題として、施設の後退に対するこれの更改と申しますか、新しい施設に乗りかえる、これはもちろん必要なことだと思います。その意味においての償却ということが問題になるわけでございまして、この経営状態がい       いときでありますれば、十分の償却が見積れますが、経営状態が悪いとどうしても償却も思うようにやっていけない。そこで償却を食っているというような経営状況になる。NHKも長い間いろいろ苦労をし、ことに民放との競争といいますか、積極的な進出から、積極的にこれに負けないようにするためには、非常な努力をいたしている。それが冒頭の研究費にもなっておると思いますが、こういう意味で償却の面で相当欠くるものがある、この点が今回の料金改正の一つの問題でもある、これはそういう意味で御了承いただきたいと思うのであります。  第三点の政府のやり方として国民大衆についての負担を一体どう考えているか、こういうことでございますが、あるいはこの聴取料金の徴収免除ということをNHK自身がやっておる。それは本来政府自身が負担すべきものじゃないかという御指摘であったかと思います。私はこれらの点についてNHK建前自身から申しますならば、これはやはり採算制のとれるような仕組みであることが望ましい。しかしその場合に、やはり公共性という観点に立って、ときに料金を免除する者があってもしかるべきじゃないか。それは他の公社の場合でも、そういうことがあるのでございます。営業政策の面から運賃の割引もいたしますが、あるいはまた特別な必要によってのやはり運賃免除の方法考えておる、こういうことでございます。私はこの種の問題で、まあ生活扶助、あるいは社会保障制度というものが一面には非常に普及して、いわゆる低所得層に対する国家保護というもの、そういう意味で進めていくべきであろう。NHK自身がこの料金免除までやられたということは、私は非常にNHKとしては積極的に自分たちのその放送使命からみて、いずれのところにも聴取できるように、非常に積極的に配慮されている経営として、心から感謝すべき実は筋のもののように思うのでございます。国の政策として、国がその点を積極的に話し合って、こういう処置をとったらどうかというようなお話も出てくるかと思いますが、やはり聴取料の問題は、聴取料の問題だが、料金は一体どうなるのか。受信機そのものは一体どうなるのかというような問題もございますから、この点は、いましばらく生活保護を受ける人たちの徴収免除の問題は、これはNHKの自主的な処置として、私どももそのままその好意を承認すべきじゃないか、かように考えております。国自身が積極的にそれを補てんするということにまでは、まあ理論的に進めるわけにいかないのじゃないか、こういうふうに実は私恩っております。  そこで最後の問題ですが、NHKの料金を値上げしたり、あるいは地方鉄道の運賃を上げたり、バス料金を上げた、最近はさらに電力料金も上りそうじゃないか、こういう意味で大衆の負担が非常にふえるのじゃないか、こういうような御批判を一面でいただいております。しかし、私はこの必要なものとそれからまた助けるべき筋のものと、やはり両口で考えていかないと、大衆の負担が増すから料金値上げ反対だということになりますと、NHK自身がとにかく事業遂行上非常な支障を来たす、いわゆる低所得層に対する国の援護方法は、いわゆる社会保障制度の推進ということで、その方で補うべきで、この料金政策でとやかくすべきじゃないと、一応私は思っておるのでございます。今回の物品税の減税にいたしましても、これは物品税そのものからみまして、必ず大衆負担も軽減できると思いますし、あるいはきわめてわずかなことでございますが、入場税などが減税されても大衆が喜ばないというおしかりを受けるかわかりませんが、いわゆる納税資格のない人たちも、ひとしく実は入場税などが減額されれば、その恩典に浴するのでございます。従いまして、なるほど一つ一つを取ってごらんになると、一面において所得税の減税はするが、料金の引き上げはする、これは矛盾じゃないか。一面において地方税も減税するがまた物品税も減税するが、新税も課すじゃないか、あるいはガソリン税を値上げするじゃないか、こういうようなお話がございますが、これはやはり大筋としてごらん願わないと、下げる時期だから新しいものは一切まかりならないと、こう言われることは非常に窮屈で、政治の実態に合わないのじゃないか。ただ、問題は、負担過重ということを意に介しないでさような政策を無理押しをしているかどうか、その御批判をいただくことが実は根本であるように思っておるのでございます。これらの点についての御了承をいただきたいと思いまして、私の感じを一言申し上げる次第であります。
  39. 森中守義

    ○森中守義君 まだあとだいぶ言いたいこともありますが、一番最初の研究命令、あるいは国際放送の実施命令、これはいろいろ大蔵大臣が言われるようなことでは、何かしら金を出せば政府がよけいなくちばしを入れなくちゃならぬようになるのだ、こういったようにニュアンスとしてはとれる。ところが、放送法をよく一つお読みになって下さい。もちろん金を出したら政府が監督権を強化する、不当な干渉、介入をするということであれば、これはいけない。しかし、法律事項として、国際放送の実施命令や研究命令は出し得る、こうなっている。これは実行上不当な干渉、介入を加え得ずして出さなければならぬ筋合いのものなんだ。しかも金そのものとしてもそう大した額ではない。このくらいのことは当然私は政府としてやるべきことをやって、さらに、どうにもしようがないから、値上げをしたのだということならば、国民、聴取者も了解するでしょう。しかし法律に定めてある事項さえしないでいて、いきなり八十五円に値上げということは、これは筋が通らない。このことだけ一つとくと研究してもらいたい。それをもう一回——今すぐ条文を見なさいというわけにもいかぬだろうけれども、一番最初の答弁だとこれはどうしても納得できません。
  40. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 森中さんに重ねてそれではお答えいたします。  NHKにつきましては、内部的にいろいろの問題がございます。なるべく政府が、もう少し何かめんどうを見るべきではないか、それは具体的にこういう項目についてめんどうを見てはどうかということの御指摘でございます。これらの点について今回はそこまでの考慮が払われておらない、こういうことでまことに御不満のようでございます。NHKは大事な機関でございますし、政府もこれをまま子扱いにするつもりは毛頭ございません。そういう意味で、十分皆様方の御意見も伺った上で、今後の育成強化に一そう努力するつもりでございます。
  41. 手島栄

    委員長手島栄君) それでは一時まで休憩いたします。    午後零時十二分休憩    —————・—————    午後一時四十四分開会
  42. 手島栄

    委員長手島栄君) ただいまより再開いたします。  休憩前に引き続いて質疑を続行いたします。
  43. 山田節男

    山田節男君 前回の質問がちょっと中途でやめましたので初めから質問を繰り返します。先ほど質問は、ラジオ経済について再検討の要があるのじゃないか、こういうことの質問に対して野村会長からは、NHKは良質の放送をできるだけ多くの人に聞いてもらいたいというのがその使命だと、こういうような御意見があって、首藤君から補足的説明があったのですが、私が申し上げたいのは、今回の値上げの中心になったのも、結局ラジオ経済の行き詰りと、テレビは別会計、ラジオ聴取者というものが現行法の三十二条ではこれは行き詰りということが、三十二年においては、五十四万でしたか、三十三年度において三十万、これが三十四年度の予算計画においてはすでに十万六千という数字になっておる、これは一体何を物語るか。先ほど申し上げたように、民放と公共放送関係において、現行法の受信料のあの制度では、下降的な傾向というのは当然な趨勢なんです。で、これはすでにピークをいっておるのだ、十万という今日までかってない少い数、これを境に来年は二万あるいはゼロになるということを申し上げたのです。私はそういう考えを持っておる。しかるに今回の収支予算で三十四年度の計画をお出しになったものを見ると、ラジオ面においては増築、老朽施設の改善、近代化、番組の拡充、それに加うるに混信対策、さらに増力対策、増力をしなければならぬという非常に緊急な問題をかかえておる、しかも金が要る、そういうことが五カ年計画でどうしてもやらなくちゃならぬと言いながら、これが三十五年度、三十六年度、三十七年度ということになってきて、事業収入としてのラジオの収入が次第に減って参りまして、三十三年度でこれによると約三十数億の赤字が出ている。そうして今回八十五円にされますと増収が三十数億、大体これでまかなえるような数字になっておりますけれども、これでさらに三十五年度、三十六年度、三十七年度というふうに年度全体として考えてみると、ラジオの収入というものは漸滅の傾向にある、私はこれは宿命だと思う。そこから私は大体五カ年計画の第二年度の計画を立てる場合に、それをどういうふうに見られておるか、さっきも首藤局長から、九州だとかあるいは一部において六〇%くらいで聴取者率はまだ開拓の余地がありますと、開拓の余地はもちろんあるにしても、一方において大都会では幾何級数的に減ったとするならば、これはあなたとしても計画を立てる場合、最悪というものに、一つのポイントを置いてやらなければいかぬと思うのです。これはどうしても自主的な経営をやるということになれば、ただ金が足りなくなれば料金を上げればいいじゃないかということは、今朝佐藤大蔵大臣が申されたように、政府も干渉しないが、一方においては自主独立の経営をやるのが公共企業体の当然の使命なんです。そういう建前からラジオ経済というものを、ラジオ事業収入部面で当面の五カ年計画を遂行するにおいても、非常にこれは来年か再来年かにおいてラジオに関する限りの財政計画、あるいは一方で、やる仕事はふえて金はどんどんふえていくというふうな場合にはどうするのか、一億の借り入れだとか短期の金を借りるということでは、あなた方としては経営の責任者としてあまりに勝手ではないかという批判を受けることになる。そこを私はお聞きしたのであって、これはNHKにとりましては、テレビもありますけれども、ラジオはやはり大衆のための放送としては、どうしてもこれはNHKが中心になってやってもらわなくてはならぬ。財政の破綻を来たしちゃ、ほかに方法がなければ借金するか再び値上げするか。大体終戦以来私が見たところでは、NHKの聴取料というのは、物価指数の変動のために今度が八回目だと思います。あるいは七回目かもしれませんが、とにかく七、八回の値上げをしなければならぬということですね。それからこの間も御説明の中で、今回八十五円にしてもらったならば誓って、再びこういうような財政危機に陥るようなことはいたしませんという説明が、実は溝上君からあったわけですがね。それほどまでの確信をもっていらっしゃるのですから、私は、ラジオの事業収入というものについては、相当先を見通した基礎をもってこの数字をお出しになっているものだと、かように理解しておる。そうして読んでみますと、私が今申し上げたような不安がある。ただこれを開拓すればいいのだということでは、これは理屈であって、実際はどうなるかということをこっちは見ておるんです。NHKとして開拓すればまだ三〇%、所によっては四〇%も開拓の余地があるのだから、やはり二十万、三十万ふえますというような、こういうことは私は少し楽観過ぎるのじゃないかと思うので、この点今後の見通しを率直に私はお伺いしたいと思います。
  44. 首藤憲太郎

    参考人首藤憲太郎君) ラジオ受信者の将来の問題につきましては、お説の通り、非常に問題が多いかと思うのでございます。過去の増加傾向から見ましても、昭和三十年、三十一年ごろをピークにしまして、それからふえ方が下降線をたどっているというのが実際問題として出ておるわけでございます。それで、こういうふうに、なぜ頭打ちの状況に近づいてきているかという面につきましては、現在八〇%となっておりますが、残り二〇%ばかりのところの階層がますます経済的に負担力がないという所と、それから電灯がないとか離島とか、そういうふうな関係によりまして、実際問題としてラジオが聞けない地域というふうなものがあるわけでございます。で、地域的に電灯がないとかその他の事情によってラジオが聞けないという地域に対しましては、今後やはりそういう方面におきまして、これはラジオだけじゃなくて、電灯その他の施設もこれからやはり発展さして設備していくような方向にあるようでございます。従いまして、そういう実際問題として聞きたくても聞けない地域は、だんだんとやはり幾分ずつかは改善されていくんじゃないか、こう思うのでございます。  それからもう一つは、世帯がやはり、最近の国勢調査がございませんのではっきりいたしかねますけれども、前回の国勢調査では、大体世帯数が全国で千八百万ぐらいというふうなことになっておるわけでございます。その後の情勢がわかりませんが、私どもの推定では、やはり最近の傾向としまして、子供たちが結婚しますと親元を離れていくという傾向が昔よりふえておるわけでございます。従って、人口の増加は一応とまりましても、世帯の増加は幾分ずつやっぱりふえていくのじゃないか、こういう点がもう一点。  それから先ほど申し上げました電灯その他がないことによって聞けないという地域に対しまして、われわれ積極的に、たとえばトランジスター・ラジオを勧奨するとか、そういうふうな方法で普及に努力しているわけなんでございます。これらの結果を見ますと、やはり幾分ずつでも受信者はふえておるというような実績は上っておるわけでございます。ただ、そのふえ方は従来のように大きなふえ方がないという意がございます。  それからもう一つの現象としましては、新しくふえる受信者は従来数年前ほどではないにしましても、激減しておるというわけでも必ずしもございませんが、廃止をする方が多いという現象が最近顕著に現われているようでございます。最近の私どもの調べによりますと、ラジオを廃止された方の意見を統計してみますと、その中で二十数パーセントのものはテレビをつけたからラジオを聞かないのだという理由によって廃止しているという統計が出て参っております。従って、テレビができましてからラジオの廃止がふえているというのは事実なんでございます。私どもとしましては、今後の開拓という面につきましては、先ほど申し上げたような積極的な努力をすることによって、まだ開拓の余地は残っておるのじゃないか。それから一方、最も必要なことは、やっぱり廃止される方を防止するということではないかと思うのでございます。従って、私どものこの五カ年間の計算によりましても、廃止の率をここ両三年前よりも実績によりまして多少ふやしておるのでございます。これは、これだけ廃止されるだろうからということじゃございませんで、一応実績をもとにしましてこういう推定をしましたのでございますが、われわれの努力がやはり今後廃止を防止するというところに一番大きな努力をすべきじゃないか。そうしますと、純然たる増加が計画よりもふえてくるのではないか、こう思うのでございます。その廃止を防止するにつきましては、これはテレビをつけますとやはり珍らしいということで、当面はやはりテレビの方に聴取者が集中しましてラジオを聞かれないという現象が現われております。今までの私どものテレビ局を設置しましたところにつきましても、そういう現象が出ているのでございます。ただ、これがなれるに従いまして二、三年もたちますと、やはりラジオにはラジオとしてのよさというものがございますので、そういう人たちがまたラジオを聞くというふうな現象に戻っております。最近アメリカ放送界でなさいました調査を見ましても、やはり一ぺんテレビをつけたがゆえに離れた聴取者ラジオにまた数年たつと戻ってくるというふうな統計も出ております。私どもとしましては、そういうふうなことでございますので、一方そういう未開拓地域の普及に一そう努力すると同時に、先ほども申し上げましたように廃止をする方をやはりラジオにつなぎとめるという努力が必要なんじゃないか。  で、どういう方法ラジオ聴取者をつなぎとめるかということになりますと、これはやはりラジオそのものに興味を持っていただく。興味を持っていただくためには、その方法としまして、興味を持たれるいい番組を作ると同時に、積極的にPRをする。来年度の予算におきましても、たとえばおもしろい非常に興味のある番組地方に持っていって公開するとか、いろいろな計画を持っておりますが、それらの予算もこの中に計上しておるわけでございます。いずれにいたしましても、受信者の問題につきましては、仰せの通り、われわれとしても一番根本的な問題かと思いますので、今後とも一そう努力をしていきたいと、かように考えておりますが、ここに計画しております五カ年間の純増加というものは、それらのことをいろいろ考えまして、これはまず達成できる、また、達成しなくちゃならぬという数字を出しておるわけでございます。
  45. 山田節男

    山田節男君 今の御説明ですね、一応NHK側としてはわかるんですけれども、申すまでもなく、ラジオ経営を今希望通りに内容を充実したものを放送するというためには、何としてもやっぱり経済、ラジオの事業収入が安定していなければこれはできないことですね。先ほど申し上げましたように、それは首藤局長の言われることは、NHKとしては正当かもしれぬけれども、今日の状況は、昭和二十五年以前と違って、いわゆる商業放送が非常に盛大をきわめているのです。そういう条件の中においてその将来をどうするかということになれば、今の首藤局長のそういう御判断はやはり非常に甘いと思う。見ますと、来年度は三億何ぼですか、業務関係の費用をふやして、PRをやるとかあるいは食いとめ運動をやるとか、こういうことを言われますけれども、これは私は厳正に見て、今後の趨勢というものは、たとえ値上げを三年、五年ごとにしましても、これは、今日の受信制度では宿命的なラジオ経済の欠陥だ、こういうふうに私は考える。そこで郵政大臣にちょっとお尋ねしますが、今回の放送法の一部改正に際しましても、放送法の改正のための審議会の答申等を見まして、答申においては、この現行の受信制度が非常に重大でありますから、見送った形になっている。しかしNHKのこの三十四年度の予算なんか見まして、どうしても現行の受信制度では割り切れなくなってきている。これに固執するということでは、先ほど来私が説明申し上げているように、ラジオ経済は不安定になるということですね。ですから五カ年のうちの、これから四カ年の計画をせめてこの通りにでも着実に実行させるということになれば、ラジオに関する限りにおいては受信制度というものを根本的に検討しなくちゃならぬ、私はこういう見解に立っているわけです。ですからこれは郵政大臣が、まあ在任中にそういうことは不可能かもしれぬけれども、NHKがきらおうときらうまいとこれは大手術を政府がやりませんと、ほんとうに公共放送を健全に維持発達させるということは、これはもう早晩この問題は痛くても触れなくちゃならぬ大手術である、これはどうしてもやらなければいかぬと思うのですね。ですから、これは選挙でお忙しいだろうと思いますけれども、でき得べくんばもう一ぺん本格的な放送法の改革、従ってまた電波法の——これは私しろうとでよく知りませんけれども、あの制定当時から相当変ってきているのですから、大臣において、NHKに関しては受信料、国際放送の問題もありますけれども、根幹はやはり受信料の問題にどうしても触れなければならぬ。そうしないとNHKというものは値上げを、そうそう数カ年ごとに定期的に上げるということは、これは非常にむずかしいことであります。この点は一つ大塩の方で特に根本的な再検討をするという一応態度を確立していただいて、そうしてこれは重要問題でありますから、やはりそういう審議会等を設けられて検討させるということは、ぜひ一つ御在任中に緒につけていただきたいことを強くお願い申し上げておきます。  それから次にFMの問題ですが、今期、電波監理局長並びに大臣から御答弁がありましたが、FM放送NHK計画によるといわゆるラジオの第三放送式なものである、そういう内容を持たせるということがうたわれておるわけでありますが、現在すでに第一放送が一般のいわゆるゼネラル・サービス的なものである、第二放送教育番組を主体とするということをうたっている。ところが今度はFMで準教育放送、高等な、非常に高級な教育放送、五カ年計画の三十七年度五十三万というものを対象としてFM放送というものをやろうとしている。これは私、先ほど郵政大臣に御質問申し上げたのですが、御承知のように民間放送でも教育テレビができ、それからラジオにおきましてもやはり教育専門のものをやりたいという意向もあるわけです。しかしもう中波の周波数というものも行き詰まっている。FMはまだ中波に比べればそうでないにしても、今朝、電波局長が言われたようにFMにおいてもこれはすでに住宅問題が起きている。こういうような状況ですから、私はこのNHKFM放送を五カ年計画において十九局増局するという計画をお立てになっているのですが、政府はこの周波数に関してはきわめて窮屈だということを言っているのですけれども、きわめて公共放送としては忠実な計画ではありまするけれども、五カ年計画FM放送初年度において一億八千万のものを計上しておられるが、終局においてFM放送が十九局になった場合は、FM放送限りの一体経費はどのくらいと見積っているか。それから教育テレビが四十九局になった場合は、財政面において最終年度にどのくらい要るかという大体の目安の数字があるだろうと思うのですが、これを一つお示し願いたいと思います。
  46. 首藤憲太郎

    参考人首藤憲太郎君) FM放送につきましては一応十九局としてございますが、これはチャンネルプランがきまりましてからさらに具体的な決定をしたいという前提になっております。ただ私どもの五カ年計画におきましては、財政面その他を考えまして一応この十九局というものを計画したわけでございます。そしてその十九局を作りますために要する建設費でございますが、これは三十四年度におきまして二億八千七百万円、これは東京大阪を十キロに増力いたしまして、その他三局ばかりのところを着手する、そうしてその三局は三十五年度において完成する、これはいずれも十キロでございます。そうして三十五年度にはさらに二局ぐらい作る。そうしますと三十四年度における建設費が、ただいまお述べになりましたように約一億八千万、三十五年度の建設費が約一億八千万、その次の三十六年度になりますと一億七千万、それから三十七年度において一億九千万、これを建設費として考えておるわけでございます。そうしてそれをこの五カ年計画において計画しております。そのときにおける運営費につきましては、三十四年度におきましては、来年度でございますが、この予算におきましてはこの運営費が大体八千万円ぐらいでございます。それから三十七年度、五カ年計画の五年目におきましては、今のような局で運営します場合には、三十七年度におきましては大体一日八時間の放送をやろうという計画でございます。それをもとにしまして計算しますと、大体そのときにおける運営費が二億ぐらいになるだろう、こういうふうに考えております。  それから教育テレビでございますが、教育テレビにつきましては、建設関係につきまして御承知通りでございます。ただ運営費につきましては、これは教育テレビは、施設でございますが、直接の機械とか、そういうものを除きましては大体において総合テレビと併用いたします。たとえば建物も一つの建物の中に入れますし、それからアンテナも可能な限りは一つのアンテナから二重饋電するというようなことも考えられます。従いまして、教育テレビだけに要する、教育テレビプロパーの運営費というものはなかなか判然としません。そこで、私どもの計算としましては、教育テレビと総合テレビというものを一つに合せましてその運営費を計算しているわけでございます。そういたしますと、三十四年度は、この予算にも計上してございますように、運営費が五十五億七千万ばかりございますが、三十七年度におきましては百二十三億、こういうふうになるように考えております。
  47. 山田節男

    山田節男君 教育テレビの三十七年度の、最終年度の経営費は大体どのぐらい見込んでおりますか。
  48. 首藤憲太郎

    参考人首藤憲太郎君) 経営費は今申し上げましたように、総合テレビと一緒に計算しているのでございます。と申しますのは、教育テレビを切り離してやらなくても、共通部面が非常に多いのでございます。機械を直接操作します者以外は、人の面も共通部面が出て参りますし、それから電力その他維持費でございますが、そういうようなものがお互いに共通している面が非常に多いのでございます。そこで、教育テレビだけとしての運営費は、それをどう見るかによって変って参りますので、なかなか的確に判断できないのです。私どもとしましては、教育テレビと総合テレビというものを一つに運営するという考えでございますので、一つにした運営費を計画しているわけでございます。
  49. 山田節男

    山田節男君 このFM放送の功罪ですが、私はNHK計画でいっているように、最大限度五十三万という聴取者を目当てにしておりますが、実際問題はFM放送番組一体どうするか。高度の教養番組、それから音楽というようなことをうたっておられるようですが、これは第二放送先ほど申しましたように相当主力を注いでおられる。いわゆる第三放送としてFM放送を今度違ったなにでおやりになるのですが、実際問題としてFM放送番組というものは、これはアメリカの例を見てもわかる通りに、音楽、これが結局主になる。自然にそうなってくる。たとえほかの金を使って番組の内容をやられても、これは第二放送で十分まかなえるのではないか。また公共放送として波を乱費しないという意味からいえば、むしろ第二放送というものはテレビ教育放送でできるのですから、それこれと勘案すれば、これは私は何も苦しんでFM放送の十九という局に拡充する必要はないように思う。しかしこうして計画としてお立てになっているのですから、私は公共放送建前として、一応お立てになったということはわかりますけれども、しかしどうも全般的に見てNHKが何もかにも手をつける結果になると思う。極端にいえば、民間放送に負けちゃいかぬからあらゆるものに手をつけていくというのじゃないか、こういう少し私はあせりが見えてしょうがない。ただこれだけじゃありません。そうでなくても、これは公共企業体ですから、民放に許さなくても公共放送には許すという、これは当然国家的な処置ができるのでありますから、これは何もかも羅列してしまって、これも要るんだ、何も要るんだ、だからこれだけのものにしなくちゃいかぬのだというようなことでなく、もう少し僕は着実に、一体NHKとして何を整備し、経費を節約して、一体内容的にどういうように民間放送を抜きん出てりっぱなものができるかという、そういうプランの立て方、そういうものについてもう少し考慮が足りぬのじゃないか。これが先ほど電波監理局長周波数に対する御答弁、そうしてNHKの立てておる計画だと教育テレビ放送はできない。UHFならできるかもしれませんけれども、そうなると受信者の利益というものはどこにあるかということです。ですからここらあたりは、われわれはこれだけの金でやりますという、政府のギャランティもなくしてこうした計画を立てるということは、私は非常に危険だと思っております。同時に受信者の立場も考えなくちゃならぬ。FM放送は、中波でもわずかの金でアタッチメントをつければ聞こえるといいますけれども、これは私は国民の負担になる。こういう点から見てFM放送というものは過大評価されているんじゃないか。のみならず、国家的に見れば、このFM放送というものは、他の面に使用する需要が激増しているさなかですから、私はそういうことを申し上げているわけです。これは一体電波監理局はどうですか、今のFM放送、私は外国電波による混信は、増力する面もあるかもしれませんけれども、ことによったらFMでやるべきである。それは技術的にはよくわかりませんが、そうすべきじゃないかと思いますが、ヨーロッパの情勢は、それでFM放送になっている。それを勘案しますと、FM放送のこういう波を、さらに民間放送にも波を与えるということです。これは電波の周波の割当からいって、これは一つ郵政大臣なりあなたが、率直な点をここで御披瀝願いたいと思います。
  50. 濱田成徳

    政府委員濱田成徳君) FM放送につきましての山田委員のお考えは、非常によく私も理解できると存じます。FM一体何のために日本で開始しなければならないかと申しますのにこれは単に進歩した放送の形式であるから、中波の次になるべく早くやるべきだという考えは、簡単に私どもは賛成しかねる。ヨーロッパ各国においてすでにつぶさになめておりまするような混信妨害対策、そのためにまずFM放送考えるのが当然であろうと思うのであります。従いまして、この番組の面から申しますと、必ずしもFM放送を早くやる必要というものは認められません。もっともアメリカの例のごとく、アメリカは近来FM放送がまた盛んになって参りました。その理由は、アメリカ人が西洋音楽、まあアメリカも西洋ですけれども、音楽を非常に愛好する傾向が盛んでありまして、戦後特に盛んだそうであります。それでFM放送が再び勃興したというのでありまして、そういう意味で音楽愛好者のためにFM放送をやるということは一つ意味があろうと思うのであります。しかし番組の多様性に応ずるために、FM放送を早くやろうということは、必ずしも当を得ていないと私は考えておるのであります。そういう意味におきまして、FM放送日本で開始します理由は、第一に混信妨害対策、第二には教育、教養、音楽も含めてもいいと思いますが、教育、教養というような、あるいは報道でもいいと思います。そういうような特殊の専門番組のために、中波の足らざるところを補うようにまずこれを使いまして、そうしてこれを及ぼして、もし混信妨害が日本中に盛んになって、ヨーロッパの各国の例のごとく、どうしても中波では困るという事態になりましたならば、FMでだんだんこれを置きかえまして、そうしてその際には、いわゆるその総合番組放送するように、すなわち7日の中波の放送を置きかえるようにだんだん方針をとっていくべきであろう、そう考えております。さような意味におきまして、一刻も早くFM日本に実施をしなければいけないんだという、早急にFM放送を開始するという論をとるべきではない、かように考えております。
  51. 山田節男

    山田節男君 今の濱田局長お話を聞くと、NHKFM計画は、全く政府の十分なギャランティを受けてやつていない。これは今の濱田局長の御答弁は、全く私は正しい政策だと思うんです。ですからどうでしょうか、これは五カ年計画を立っておられるんですりれども、公共放送建前として免許するなと、そういう意味じゃないのですよ。これも郵政大臣に責任があるんだと思う。これは御承知のようにどの双にいたしましても窮屈です。しかもこれは国民の何といいますか共有領域といいますかパブリック・ドメイン、大臣もよく御存じの通りです。それを切り抜けるためには、これは郵政大臣は非常に苦しいかもしれないけれども、公平に、そして他の使用のためにもこれを保留されなければいけない。これはワシントンのFCCで、大臣お聞きになったと思うのですが、同じ悩みを今日やっておるわけです。ですから私は、このFM放送というものに、どうも新しい類を好む日本人の通弊といいますか、こういうことは、とかく身分も何も考えないでやりさえすればいいのだという、こういうやり方というものは、ことに電波行政において、これは放送ばかりではありません、昨日も警察庁、防衛庁の電波関係を呼びまして、警察庁あたりの電波はなるほどことし六億ばかりの予算を計上しているものですから、いろいろ聞いてみますと、なに、政府に話せば幾らでも周波数くれるのだと、こういうことを言っている。そんななまやさしいものではないのです。これは郵政大臣が事前に考えなければならぬ、将来防衛庁、警察庁、すべて必ずこれは電波監理局に転嫁するような時代ができてくるのです。ですからそれを事前に防止するために、こういう周波数割当、どの波であろうとこれはけちなほど私は保留さるべき態度を当然とるべきだと思う。こういったようなNHK教育テレビにおいてはVHF四十九、FM十九局やるのだ、それに民間ラジオ教育FMもくれというような、こういうことになりますとこれは際限がないということであります。従って周波数割当は全く無政府状態になってしまってお困りになるのは当局だということになるのです。私はこの点はもう厳に一つ郵政大臣以下監理局長は、もう憎まれようがどうしようが、この点については一つ厳然たる態度をとらぬと、非常に国として重大なこれは破局に導くと思うのです。この点は私特に一つ大臣の決意のほどをお願い申し上げたい。
  52. 濱田成徳

    政府委員濱田成徳君) 先ほどの私の山田委員に対する御答弁、ちょっと一付け加えさせていただきたいと思うのであります。それはFM放送について消極的であれという、その研究ないし実施方策について消極的がいい、ということを私は必ずしも意味しておりませんということを御了承願いたいと思うのであります。その理由は、先刻申し上げましたが、混信妨害対策としては中波の増力よりも山田委員指摘されますように、FMの方が徹底したものでございまして、そのために将来いつかはこのFMで音声放送の相当のパーセンテージをになわなければならない、という時代がくることを私どもは予想いたしまして、その対策を講ずる必要があるのであります。それにはやはり実験放送の範囲を拡大しまして、受信機が相当国民の間に普及するような施策をとらなければいけないのであります。そういう意味におきまして電波割当考え、またいかなる地区がFMの実験放送をやるのに適当であるかということにつきまして、いろいろ検討を加えているわけであります。そういう意味で、NHKにおかれましてもさような意味FMの伸展策につきましていろいろ案を立てて、そしてかような案を五カ年計画の中に織り込んだものと考えますので、その点御了承を願います。
  53. 山田節男

    山田節男君 私NHKにお伺いしますがね、この混信対策としての根本的な対策としては、増力を主にしておられるように思う。しかし、ことに今日外国電波による混信地区は、これはちょっとやそっとの増力では対抗できないのです。五百ワットのところを十キロにしてみたところで対抗できないのです。ですからこういう難聴地区のこれは近来の特質というべき混信状態を解消するのには、増力で対抗するなんということは、私はこれは全般的から言うと非常に不徹底であると思う。ですから、ここにFM放送の置局計画等が見えますが、大体外国電波による電波妨害地区が、これは何地区になりますか、十地区になるか十一になるか知りませんが、こういう難聴を解消しなければならぬ地区こそFM放送に切りかえて、NHKのよき番組をあまねく聞かせるという方策がむしろ賢策じゃないか。今日FM放送を急ぐよりも、その方が難聴地区の解消のためには喫緊じゃないかと思うのですが、どういう考えでそういう増力だけで解決できるというようなお考えがあるのか、この点一つ承わっておきたいと思います。
  54. 溝上けい

    参考人(溝上けい君) ただいまの御質問は、中波における増力の問題とFM放送との関連というふうにお伺いいたしましたが、まずFM放送から私の考えを申し上げますけれども、FM放送というこれは、技術の一つ方法といたしまして、現在の中波の放送に比べまして雑音が少い、混信が少いという非常に格段にすぐれた性能を持っておるものであります。従いまして、これが将来、まあ何年先、何十年先かわかりませんが、当然これは一つの世界的傾向でもありまして、中波に対してFM放送がいずれのときにか少くとも並行するか、置きかわるというふうな時代がくるのではないかという見解につきましては、濱田局長と同様に考えております。しかしながら、こういうふうに放送というものは受信の対象があるものでございまして、幾らいい方法がとられましてもこれが相手に利用されなければ何にもならない。従いまして、テレビの場合でも同じでございますが、受信機、受像機という問題がまず先決問題になるのでございます。そこで、当然将来といたしましては、これが混信対策として利用されるものとかりに仮定いたしましても、その段階として十分受信機を普及し、いい受信機が安く出回るという態勢を作っておきませんことには、なかなか実行上効果が出てこないわけでございます。それで一面われわれがこの第三放送という考えを持ち出しましたのは、これは決してFM放送が使えるから第三放送をしたいというのではなくて、従前から電波があれば、現在第一放送、第二放送の上でどうしても入らない、あるいはさらに高級な、例で申し上げますとBBCの第一放送といった式のものをぜひ送り出すメディアがほしい、こう考えておったところへたまたま戦後FM放送が活発になり、特に欧州でもこれが非常に盛んになりまして、将来FMの時代がくるのではないかというふうな予想もできますので、この両方結び合せまして、もって第三放送の形でFM放送受信機をなるべく早く普及したい。こういうふうな考えで始めておるのでございますが、ただFM放送に対しまして相当重大な問題を含んでおりますために、まだこれがどういうふうに将来利用されるかという基本的な、あるいは総合的なチャンネルフランというものがまだございませんので、今のところ一応御許可を得て実験放送の形式で進めておる次第でございます。  なお、それに対応して中波の増力の問題につきましては、これは中波の増力では全然見込みがないとまでは考えておりませんので、やはり電力が大きくて、まだ今の放送局全部を超大電力にすることは不可能でございますが、そのうちの数局というものを特に大きな電力にいたしましたならば、夜間はそれらが平均されて総合的に日本全土をカバーするということも可能でございますので、それに対して一々また向うから意識的に混信をしてくるとは考えられないので、そういう態勢を整えて、少くとも増力電波日本全国で平均に行き渡るというような方法がとられれば、現在よりはよほどいい状態が得られるのではないかというふうに考えております。
  55. 山田節男

    山田節男君 この混信による難聴対策というものは、これは私重大だと思うのです。というのは、これは私の体験した、わずか数日前ですけれども、十一時のNHKの第一放送を聞こうとしますと、同じ波長でNHK東京のまん中でのわれわれの受信よりも中国語の放送がより大きい声で入ってくるんです。もうすでに東京まで外国電波による混信が——これはまあ非常にいいコンディションにある空の工合だったと思うが、一体東京のまん中までもう外国電波による混信が及んでいるのかと思って、実は私はびっくりした。そういう点から見ましても、われわれがしばしば陳情を受けている外国電波による混信による難聴地区の解消については、これは増力をしたところで、相手が千キロ、千五百キロでやれば不可能なんです。これはNHKも十分御承知だろうと思う。そうすれば、それはまだFM受信機が普及しないとかなんとか言われるけれども、これは何もきょうやれと言うのではない。三年なら三年計画を立てて、将来NHKの少くとも第一放送のいい放送をお聞きかせ願いたい、FM受信機にしますからと、それこそそういうPRをおやりになれば、現在の中波に対してそれは多少の金を出してアダプターか何かつけて準備期間をおかなくちゃならない。根本的な混信対策として、われわれが数年前まで難聴地区解消をやれ、やれと言ったが、要するに、電灯がない、あるいは地形的に中継所を設けないと聞えないというのが難聴地区であった。これは、たとえば〇・一%が三億円かかってもやれということを数年前からわれわれ声を強くして言っているわけです。それをやったけれども、今度は外国電波混信でパーセンテージでは相当のものが聞えないんですね。この根本対策というものが、私はまだNHKとして増力くらいの甘いことではいかぬと思うんです。そこで、FM放送というものを、何も全国的な第三放送というものをやらなくても、そういうものに金を使うということをお考えになるべきではないか、こういうふうに私は思うんで、これに対して御意見を伺いたい。
  56. 溝上けい

    参考人(溝上けい君) この将来の問題といたしまして、FM放送が性能がすぐれ、混信がない、音質がいいということにつきましては、先ほど意見を申し上げた通りでございますが、ただ総合的に考えて、あまりローカルに、何といいますか断片的に、たとえばここに混信が起ったからこれをFMにするというふうなやり方では、混信状況がしょっ中変っておるものですから、FMをローカルに随時に利用するという方法よりは、何か総合的にFMチャンネルフランが組まれまして、それに応じて計画的に進めていくというふうにいたしたいという気がいたします。それにいたしましても、まず受信機を安く出すということが前提でございますので、今申し上げましたように、一応われわれはこういうふうな形で進めておりますけれども、将来これに対する基本方策がきまりまして、混信問題に対してこういうような計画で進めていくのだということがきまりましたならば、当然それに従って、今まで進めております受信機の成果を利用下だしまして、各地に混信対策として置くことに対しては、当然それに従うべきだと思います。
  57. 山田節男

    山田節男君 まだありますけれども時間をとりますし、これ以上は議論になりますから言いませんが、これは郵政省としても、この新しい事態の混信対策、これは中波であろうがFMであろうが、チャンネルプランは、今溝上副会長が言われたように、早晩この混信対策というものは、根本的にやはりFMに切りかえなければいかぬのではないか。これはヨーロッパの例とよく似ているのです、時期が十年おくれているだけで。  次に報道取材網の問題ですが、これはおそらく新谷君も前に予算の審議でない機会に言われたことがありますから、私は重ねては申しません。ただ、来年度の予算に、報道取材網の拡張として一億一千万ですか増額されて、外国に総局、支局その他のスタッフをふやすというような、こういう計画が立てられておるわけですが、たとえばBBCの例を見ましても、外国のニュースに対してはニュース・ロイアルティというものを払っているのですね。取材の放送記者というようなものは極力節減して経費の節約をはかると、こういうような、やはり放送事業ですから、新聞とか何かと違って直接映像で視聴させることができるのですから。NHKが従来報道取材網に非常に力を入れておられる、もとよりこれはいいのです。いいことだけれども、限られた財政で、ことにラジオに関する取材網が私は少しぜいたく過ぎるのではないかと思う。また、テレビにおきましても、これは私聞くところによると、NHKも協力して同盟テレビ・ニュース会社を作ったということを聞いておる。他の新聞社もそれにまた目をつけて、独立でそういうものを作るというようなことも聞いておるわけです。このNHKのこういったような報道網を非常に拡張するということは、これは私は一応再検討する必要があるのではないかと、さように考えるので、そういう立場で一つお聞きしますが、まあ国内のニュースですけれども、国会を初め、あるいは中央放送局の範囲に、地方にも取材網を作っているわけでありますが、これに対する人件費なり所要の経費というものは莫大な金になっているわけですが、一体放送事業としてこれほどまでの報道取材網を持つ必要があるかどうかということなんですが、従来の経験から、これほどの人員を配置しなくて——なるほどスクープ的なものも間々私はあると思うのです。ロンドンのBBCテレビ民間放送のITVとの差はどこにあるかということを聞いてみると、ことにTVの方はニュースに関するスタープをやるから視聴者がふえているということを聞いているのですが、そういう点から見て、公共放送建前もありますから、スクープをねらう必要はないと私は思うのですがね。  それから、海外の現在ヨーロッパ、アメリカにおいては、果してこの金が使われると有益であるかどうか。これは前にも古垣会長に言ったことがあるのですが、今後ますますこうして拡張されることについては、何かNHKとして利点がおありになるのか、その利点というのはどういう点か、一つお示しを願いたい。
  58. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) お答え申し上げますが、NHKとしては、新聞あるいは民間放送と競争するために、私どもが非常に拡充計画考えているという事実は、私どもといたしましてはございません。ただ放送法精神にのっとりまして、NHKのニュースというものは常に不偏不党でなければならな  い、そうして公正かつ迅速でなければならない。それからまたNHKのような放送組織では、少くとも全国的にもまた地方的にも、社会生活に必要な、また社会生活の水準を高めるようなすべての必要なニュースは、これはできるだけ完全に報道しなければならない。そういう責任感から、財政計画の中でなし得る最善の努力をすることが当然私どもの義務であると、こういう考え方に立って実はこの報道の拡張計画と申しますか、強化策をとつているわけでございます。  国内的に申しますと、現在私どもが持っております、この人件費と関連すす問題ですが、放送記者の数は、新聞協会の調査によりましても全国紙の持っている記者の三分の一以下でございます。将来も、御検討いただきました五カ年計画最終年度昭和三十七年度におきましても、おそらく新聞、全国紙に比べてその半分に達することは困難だと思っております。しかし私どもはこの少くとも五カ年計画最終年度における強化が達成されるならば、これで一応NHKの責任を果し得る段階に到達するだろうという考え方を持っている次第でございます。  それからまた海外の問題につきましては、ただいま御審議を願っております明年度予算におきましても、海外取材網をNHK自身の手によって、これをもっと端的に申し上げるならば、特派員をふやすとか、あるいは特派員の駐在する場所をふやすことによって強化しようとは考えておりません。従って御審議いただいている明年度予算の中でも、海外特派員に関する費用は大体七千万円あまりになると思います。で、その七千万円の海外支局の費用は報道通信ばかりでなしに、その他の番組交換、あるいは海外において番組を作る仕事、あるいは幾多の国際会議にNHKの代表としてそれを処理する費用、あるいはいろいろな海外の資料を集める費用、その他などが含まれております。従いまして、明年度の海外報道網の強化の方針はNHK自体の人間を、あるいは場所をふやすというのではなくて、今年度の限度で置かれている海外総支局の内容を、活動内容を高めようという方向で御審議を願っているわけでございます。  それからまたテレビ・ニュースにつきまして、NHKがイニシャチブをとって共同通信を中心としてニュース映画会社を作ったという事実はございません。共同通信礼から勧奨されたことはございますが、この点は十分に研究いたしまして、しかも今年度の財政状況、あるいは明年度に予定される財政状況を勘案いたしまして、またその上、放送法精神というものからも割り出しまして、遺憾ながら、共同の要望にもかかわらずこれに参加することができなかったというのが実情でございます。  それからまた海外通信社との特約につきましても、NHKといたしましては現在主要各国の大事な通信社とはことごとく特約いたしておりますが、これは共同通信を通じて特約するという形をとっておりますので、現在実は八つの通信社と特約しておりますが、その年間の総額は普通の全国紙の一カ月分のおそらく三分の一以下だというのが実情でございます。従って私どもといたしましては山田先生のお気持と全く同じ立場に立っているのでございます。しかしながらわれわれに課された責任をできるだけ完全に果したい、そういう限度で明年度予算におきましても私たちはその費用の最小限度を計上いたしまして、御審議をいただいている次第でございます。
  59. 山田節男

    山田節男君 これはまあ新谷君のおそらく質問があったろうと思うのですがね、私の見解としてはもう今の、  ヨーロッパに総局支局を置き、あるいはアメリカにも総局を置くということは、これはいわゆる戦争前より交通通信網の非常に発達した今日、無線電話でも用は足りる。テレックスでも用は足りる。こういうところに、私後ほど言いますけれども、NHKのこういう事務的なオートメーション化というか、オートメーション・リサーチというものを、電電公社にやかましく数年来私は言って、ようやく昨今オートメーション・リサーチということを経営調査室あたりで取り上げてくれたのですが、海外の情報網というようなことも、今、前田理事の言われたこともわかるが、もう支局というものは、全然距離というものを時間的には失っているのですから、ただスタッフがNHKにおりさえすればもう電話一本なりテレックスで用が足りるのです。実際モスクワあるいはロンドン。ハリ等に特派員が行って一生懸命やっていますよ、やっているが、また、前軍理事の占われるようなニュースの取材以外のいろいろな用があるということはわかっているけれども、しかし今は経営のやり方はちょっと考えなくちゃならぬ。ことにこういうせっぱ詰まった、値上げをしなくちゃならぬというような場合に、そういうことを根本的にやっているのかどうか。このニュースだけじゃない。他の方面においても総局、支局を置く必要があるということを言われますが、たとえばBBCとかあるいはフランスの中央放送局、それからアメリカ放送もこれは日本にもよこしていますよ。しかし一体そういったような海外のニュース取材について、それほど真剣にならなくてもいいのじゃないか。これは少し古い数字ですけれどもBBCの一九五五年の決算報告を見ると、国内ニュースに限ってはニュース・ギャランティ、これは、通信社から定期にニュースの割当を受けるための金額、ロイアルティが約十二万ポンドですから一億一千万円くらい、ニュース・ギャランティが考課状に載っているものはそれしかかかっていないのです。こういうきわめてBBCが堅実なやり方、日本とは違って地理的な有利な点もありましょう、ありますが、私は大体、一体今新聞社と比較されるけれども、新聞社の三分の一だろうが十分の一だろうが百分の一だろうが、それで私はいいと言うのです。いわゆる放送のニュースというものがそこまで乗り出したら際限がないと思う。テレビが普及しちゃってニュースを聞かすことによってラジオの寿命をつなぐというのならば、それなら私はいいと思う。しかし少くとも今日のラジオ番組においてニュースというものはわれわれはもう、その番組の編成のパーセンテージからいって、ニュースというものは、これは今、なま放送、海外放送もありますが、これは非常に金がかかっている、ありがたいことだと思うが、これについても、この前この委員会で新谷君がいろいろ批判をされておられたが、新聞社の十分の一であろうが五十分の一であろうが、これは当然だと思う。もしNHKが、将来テレビが普及しちゃってラジオはニュースくらいしか聞かないのだということになれば、そこで初めて切りかえ。ですからこれはもっと外国に総局、支局を増置してやることも一つの手だろうと思うが、今のラジオ番組という性格からいって、そこまでやる必要があるのかどうか。それは金がふんだんにあるならいいけれども、非常に窮屈な経済で、あれもこれもやろうという中において、海外の情報も国内の放送も、もう新聞社の半分くらいにならなければいかぬというような、そういう気がまえが果していいかどうか。これはわれわれ国会議員として、こういう案を見た場合に、やはり考えざるを得ないのですね。ですからこれはやはり身分に応じた、ことにラジオに関する点は何べんも申し上げますけれども、これは行き詰まりつつあると思うのです。ですから切りかえない限りは行き詰まる。そういうときに、どんどんそういう報道綱を広げておいては、これを縮小する場合には困難だろうと思うのです。これは前の古垣君が会長をしていたときにも私はこれは申し上げておいたのだが、これは整理するのに非常に困るというわけだったのです。ですからそういう見通しに立ちますと、確かに報道網を拡充されて正確、迅速にニュースを送る、その心がまえは非常にけっこうですけれども、何も寸秒を争ってやる必要はないと思うのです。そういうわけで、今の予算上における報道取材網の拡充ということにつきましては、私はこの経費を削れとか何とか申しませんけれども、やはりNHKとして必要な分であるけれども、しかしそれは限度があり、やり方があるのじゃないか。かように考えるわけですね。  それから次に国際放送の問題ですが、来年度からは十九方向、二十五時間ですか、かなり増強されてNHKの方が政府の交付金よりも三倍に相当する額を支出される。これはけっこうだと思うのですが、この番組編成につきまして、今回の予算に初めて、これはイギリスBBCをまねたのだろうと思うのですが、いわゆる全世界向けのゼネラル・サービスを始められるということは非常にいいことだと思うのです。ただ問題は、わずか限られた経費で今回十九方向二十五時間ということをお出しになった。これはきわめて有効に使わなければならぬことはもちろんですが、そこでこのBBCのやっておる外国放送、ヨーロッパ向け、それからその他の諸国の番組みの何を見ますと、重点的になっておる。それで私実情をよく知りませんが、現在の十五方向十五時間ですか、というものは一日に対して一時間パーでやってる。これは二十四時間で一時間しかその地域日本放送がいかないということですね。番組みの編成の仕方がいいかどうかという問題があると思う。と申しますのは、BBCはヨーロッパその他の国に海外放送する場合に重点的に置いておるのです。たとえばフランスについては一週間に三十五時間、それから西ドイツに対しては三十三時間、それからアメリカ向けはカナダを含めて五十時間、それからラテン・アメリカ、南米に対しては、スペイン語で四十時間、ポルトガル語で二十四時間、こういう工合に、たとえば日本に対しましては一週間に三時間半、そういう工合に重点的に海外放送をやっておる。これは非常に賢明だと思うのです。たとえば日本におきましては、アジア向けならアジア向けに対する放送を何倍にするか、北米、ハワイ、あるいは南米のブラジルについては一時間パーでなくて、三時間なり三時間半やるようにして、むしろ方向の多いことを競わずに、統一してNHKの国際放送として実質のある、これは一週間、たとえばかつてのように四十時間も六十時間もできればよろしゅうございますけれども、そうでない、今日は、むしろアジアあるいは北米、南米のブラジル地域、こういうものに重点を置かれて、そしてヨーロッパあるいは共産圏、こういうように時間を分配される方が、きわめて切り詰められた財政下における国際放送としては実績が上るのではないかと思うのです。そういうことに対するお考え一つ承わっておきたい。
  60. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) 私どもも山田先生のお考え方には全く同感でありまして、明年度以降はその方針をはっきり打ち出して参りたいと考えております。たとえばインドネシア、タイ、ビルマ向けは、私どもの予定では、ヨーロッパ向けの約三倍の時間をこれにつぎ込んで参りたいと考えております。  それからまた各方向にわたってその重要度を考えながら、すべての方向に同じ分量の時間を使うという考え方は持っておりません。ただ、このような新しい方針が予算の御承認をいただいたあとで大体緒につくのは、八月一日前後になるのではないか、こういうように考えております。
  61. 山田節男

    山田節男君 この海外放送、国際放送ですが、今おっしゃることは十分わかるのですが、建前として今回たとえばBBC式にゼネラル・サービス、これは四六時中ということですから、二十四時間放送し放しというのですか。
  62. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) それは率直に申しまして、明年度中にそのことが実現するかということについては、私どもはやはり一挙にやることは困難だと思っております。しかし、少くとも放送時間一日二十四時間のうち、四月初めには少くとも四時間、それからまた八月以降には五時間くらいを標準として、送信機その他の実情も考えあわせながら、適当にこのゼネラル・サービスの時間を全世界的に組み込んでいきたい、こういう考え方を持っております。
  63. 山田節男

    山田節男君 せっかく新規にゼネラル・サービスまで踏み切ったのですから、先ほど申し上げました番組一つの格差を設ける建前から、何と申しましても日本は東南アジアの一メンバー国でありますから、特にまた過去二回もアジアの放送会議をNHK主催で開いておりますが、同族という関係から見ても、ゼネラル・サービス以外に、アジア向けの、ロンドンで言えばロンドン・コーリング・アジアというアジア方面に主力を置いた放送をやっている。ゼネラル・サービスをやるくらいならば、ついでに東南アジア向けの、これは中共を含めてのそういったような一つのアジアにおけるゼネラル・サービス、これを設けた方がゼネラル・サービスを全世界に呼びかけるよりアジア全域の放送番組を私は組むべきだと思いますが、これは経費を云々という意味でなくて、一つの案として当然考えるべきだと思います。が、その点に対する御見解はどうですか
  64. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) その点につきましては、NHKといたしましては全く同感でございます。従って明年度は劈頭にまずアジア地域に五つの方向を考えまして、五つの方向全部を通じて一週間に千五十分間のニュース放送を行おうと思っております。そうして私どもの心組みといたしましては、この放送をアジアの声というように考えて参りたいと、こう考えております。
  65. 山田節男

    山田節男君 そういったような建前で今後放送されるについては、改正法案によって国際放送番組審議会というものができるのでありますから、企画は非常に重要だと思う、今日アジアは中国を含めて、イデオロギーの違った国が控えておる。それから全世界に呼びかける、ゼネラル・サービスのプログラムがある。ここに私はおのずから企画の態度といいますか、もちろん放送法によって不偏不党、国際親善を増大し国際貿易を振興しなければならないというワク内でおやりになるのでしょうけれども、この番組の編成については不偏不党ということ、その他放送法によって定められた使命を中心にしてやられるということはもちろんでありますけれども、番組審議会において、法制上いろいろの問題もあるかもしれませんが、日本人以外は正規の番組審議会に入れられないならば、やはりそれに対するアドバイスを求めると申しますか、国際番組審議会の補助機関を持つべきである。その例はロンドンのBBCのユーロウピアン・サービス、名前はヨーロッパのやつはイングリッシュ・アンド・イングリッシュ・ハイ・ラジオということになっておりますが、やはりこの番組は補助機関といいますか、正規のスタッフ以外にその国々、アジアなら十数カ国、近東を含めて十七、八カ国のうちで、主要なものについては在日のある地位にある者、出先の公館員でもいい、そういう地位にある人のアドバイスを受けて、最も適正な効果的なものをやる。こういう配慮というもの——今回新規に国際放送を従来よりも経費も数倍のものを費やしてやるということにつきましては、番組編成については、ただ単に法制上の番組審議会、NHKのスタッフだけできめてしまうということでなしに、やはり出先の公館の人でもいいし、実業界の人でもいい。そういう者にある特定の番組について、相談、と言っては語弊があるかもしれませんが、一つのサウンドをしてやるというだけの用意が必要だと思う。戦時におきましては、これはもちろん国の宣伝をやるのでありますから、そういうことは私は必要ないと思いますけれども、少くとも国際親善を増進するということになりますと、今の前田理事の言われるように、国際放送の編成について、放送自体についてもそれほどの決意を持っておられるならば、国際放送についても私はそれほどの万全の措置をとられるべきものだ、かように考えますので御研究願いたいと思う。またそういうふうな議論が今まで出たことはありませんか。外国例等を見まして……。
  66. 前田義徳

    参考人(前田義徳君) その点につきましては、私どもは従来も不十分ながら山田先生の御意見のような方法を実際的にとつて参っております。たとえば東京にある各国大公使館の意向をサウンドすることもございますし、あるいはその他一般旅行者の考え方をサウンドすることもございますし、それからまた貿易政策その他に関連しましては東京大阪その他に固定して運営をしている外国商社のいろいろな方に一応サウンドするとか、あるいはまた文化的な問題につきましては日本の大学その他に来ておる外国人教師、あるいはまたいろいろな各国が東京その他に持っている文化施設、文化会館その他の考え方を常時サウンドしておりますし、また新しい番組を企画する場合にもそういうサウンドをいたしまして、そうしてそれを事務的に事務当局が取捨選択し、そのすべてを番組審議会に御意見を伺う。そういう方法をとって参りましたが、今後一そう、国際放送の重要性にかんがみまして、そういう努力を一そう強化いたしたい、こう考えております。
  67. 山田節男

    山田節男君 このラジオ経済に対する質疑を終るに際して、私は一言御質問なり意見を申し上げたいと思うのです。  先ほどもちょっと触れましたように、この収支予算事業計画の中にも、経費の節約をして組織業務の合理化、標準化、要員の配置適正化、こういうようなことをうたっておられるのでありますが、これは私は電電公社にも先ほど申しましたように数年来やかましく言っておることは、やはりその経営というものを一ぺん根本的に再検討する必要がある。NHKは要員約一万人、年間の収支予算にしてもこういう莫大な数字になっておるのでありますから、これは少々私酷な批評かもしれませんけれども、NHKが創立以来すでに三十数年。電電公社が従来の電気通信省、官営から公社経営に移った場合にも、当時の梶井総裁、靱副総裁をここに呼んでこのことを私は戒めたのでありますが、問題は、経営の合理化ということを言いますけれども、これは単に思いつきじゃできない。私は、御承知のように電電公社がそのために設けた経営調査室のやることを見ましても、これはもう莫大な将来公社として利益を持たれる、能率が増進する。ですからNHKとしても三十数年の歴史を持っておられるのでありますから、われわれ第三者の立場から見るとどうもNHKマンというタイプができてしまって、一つのマンネリズムといいますかディレッタンティズムといいますか、因襲を破ろう破ろうとするけれども、なかなかこのからが破れないということは、これはもうこういう大きな組織でありますから必ずそういうジレンマに陥る。私少し酷かもしれませんけれども、NHKもそういう悪循環に今襲われておる。と申しますのは今から五、六年前でありますが、民間ラジオ放送が方々にどんどんできまして、東京のある有数のラジオの経営責任者が言うのには、もし自分にNHKを経営させれば今の陣容の五分の一くらいで今くらいの仕事をやってみせる、これは少しひどい言い方かもしれませんけれども、しかしその気持はよくわかる。何もNHKがぜいたくしておるとか何とか言うのじゃございませんけれども、経営全体の何から見ますと、このままではいけないのじゃないか。ことにこういったような苦しい財政状態を国家に訴えなければならぬという前に、やはり経営調査ということをしなくちゃいかぬ。ことにこういう機械使用し音波、映像を出す業務ですから、相当オートメーション化といいますか、科学経営の技術、施設、こういうものを設けることによりまして、経費の節約、能率の増進、こういうことが期待できるのじゃないかと思うのです。で、今日までこれは野村会長も会長に就任されて時間がそうだっておりませんけれども、どうもこういう古い組織にだれかメスを入れませんとなかなかこれはむずかしいものだ。しかしながらこれを放置することはできない。ですから少くとも現在の会長並びに理事諸君が、今の料金値上げということを考える前に、まず第一に経営をどうするか、首を切れというのじゃないのですよ、首を切らないで、それは配置転換もあるでしょう、そうじゃなくて、もっと流線型な経営の方法があるのじゃないか、これはわれわれ外部からそういうように考えるわけです。ですからことにこのラジオ経済が今後少くともこれより五〇%収入が増すということは、これはもう絶対にないのであります。そうすれば料金を上げるということも国民の批判の的になるということを考えれば、結局はやはり経営をもう少し流線化しまして経費を節約し、能率を上げる。これは私しろうとですから、また外部の者だからわかりませんけれども、この点にまだ多くの問題が潜在しておるのじゃないかという感じがする。ですからこの苦しい、弾力性あるラジオ経済の将来を見通す限りにおきましては、一つこれは理事者の諸君が一体NHKの経営というものに対して科学的調査をする調査室ぐらい設けまして、そうしてある期間を持たして根本的に検討をする、かように私は考えるのですが、これは会長、副会長の最高首脳部として、こういうものに対してまだ時期尚早であるというようにお考えか、あるいは近くこれをやらなくちゃならぬと思っているか。また、現在着手になっておれば、その計画の概貌でもよろしゅうございますから、お示し願いたい。
  68. 野村秀雄

    参考人(野村秀雄君) 私は、まことに申しわけないことでありますが、経営の才が全然ないというほどそういうことに対しての知識、経験を持っておりません。今の理事者に信頼して業務を運営いたしておりますが、しかし先ほど山田委員から仰せのように、ただ因襲によって運営しておってはいかぬ、ここにある一つの画期的と申しますか、新しい生命を開いてNHKの運営を活発にいたしたいと思っております。従ってこの経営の合理化というようなことは、私、他人のと言っちゃおかしいですが、外部の知識を借りてこれからやれるだけやってみようという考えを持っております。今のところは具体的にどうということは申し上げかねますが、私の考えとしてはそういうような考えを持ってやっております。もちろん経営委員会というものがありまして、経営委員会のいろいろの決定に従ってやるのでありますが、われわれが原案を作る上においては、さように外部の人のいろいろの批判やら協力をお願いして原案を作って経営委員会に決定を願いたいと、かように考えております。
  69. 山田節男

    山田節男君 次にテレビの事業計画について一、二質問してみたいと思います。  テレビはこれはラジオと違って、当面上昇の一途をたどっておるのでありますから、ラジオ経済に比べるとテレビ経済は非常に楽だと言えるわけです。ただし、お示しのように、建設資金というものは、これは初期でありますから非常な金が要るということなんですが、来年度が大体二百五十万、それから三十七年度、五カ年計画最終年度におきましては約五百万と、こういうようにおきめになっているのですね。つまり現行の月三百円という聴視料にしましても、伸びている間は少くとも五百万程度までは上昇の一途をたどる。ですからテレビの事業収入はふえる一方である。他面資金というのは、建設勘定がふえるのでありますから、少くとも今後の四カ年というものは建設勘定は新規に要るわけでありますから、そういう意味から私はお伺いしたいのでありますが、ラジオもすでに事業収入というものが限界に近い。テレビも今後四年経過するうちにはやはり限界というものがくる。これは従来の、今までのラジオとは違いまして、聴視料がラジオより高い、三倍半以上である。それから民間テレビが、これは都市においてはもちろんでありますが、大体各県に民間テレビ放送一つあるということになりますと、そういうテレビ放送の複数であるという点から、有料のNHKテレビを見ないでただのを見ていこうという、そういう気風がもしあふれた場合においては、今後四カ年の間におきましてもテレビの収入というものが予想したより少くなるんじゃないか、こういう私は心配があるのですが、そういう点の見通しはどういうように持っておられるか、お聞きしたいと思います。
  70. 首藤憲太郎

    参考人首藤憲太郎君) テレビ受信者は最近非常に順調にふえております。それで、ただいまふえております内容を分析してみますと、従来までふえております一番多いのはやはり大都市でございます。なかんずく東京大阪、名古屋というところの受信者のふえ方が多いということでございます。それであとは地方の新設局の増加ということでございますが、この大都市におきます増加状況を見ますと、従来はふえておりましたけれども、やはりその新しい受信者の階層というものは、高額所得者と申しますか割合に商いレベルのところが多かったのでございます。それが順次受信機の価格もだんだんと最近下って参りました現在、これが中間層に移っておるという現象が出ております。それで現在それから今後に都市でふえます階層が、中間層へずっと惨透してくるのじゃないか。こう考えますと、都市方面におきましても、今後まだ相当に従来と同じような程度の増加があるのじゃないかと思われます。それから地方に局を作りました場合には、やはり従来ともつけました初めには非常にふえますが、ちょっと中だるみになりまして、それから安定しましてまた一般的な増加にいくという傾向を見せております。ただ地方の場合には土地によりますけれども、受信者の対象の絶対数が少いために、やはり大都市に比べますとふえ方というものは限度がある。従って今後ともやはり当分の間は、大都市がふえてくる数においては非常に多い数を占めるのじゃないかと考えております。  それと、それから受信機の生産台数、現在の生産台数それから今後の見通しというようなものを考えました結果、ここに提示しておりますような五カ年間の増加目標を作ったのでございます。それで、三十七年度末には受信者の数は四百七十五万六千、こう考えております。しかしこれは私どもとしては非常にかたい数字じゃないかと考えております。それで、これからあとはどうなるかという面になりますと、これはやはりテレビジョンの価格の問題というものがやっぱり相当大きな要素になるのじゃないかと思います。テレビジョンの価格が非常に安くなりまして、もっと安くなった場合には、これは現在のラジオと同じように相当普及度が拡がるのじゃないかと考えております。従ってわれわれとしての問題は、今日はやはり国民生活の負担力の問題もございますが、やはりテレビジョンの価格というものが決定的なポイントになってくるのじゃないか。しかし少くとも五年後に約五百万程度のものは、これは間違いない。それで、それをもとにいたしましてこの五カ年間を考えますと、五カ年間におきましては財政状況は一応お手元へ差し上げてございますように収支は償っております。おりますが、これはその間におきまして非常に膨大な借入金が累積して参ります。これはテレビジョン建設資金でございますが、計画によりますと、三十三年度から三十七年度までの五カ年間でテレビジョン建設費が約二億円必要になって参ります。これはもちろんこの五カ年間には償還できません。この五カ年間に幾分とも償還していく計画は入っておりますが、これは現在までのテレビジョンの欠損金等は、これは借入金によってやっておるわけでございますが、それと、それから現在までの建設資金の借入金が多額にございます。それをなしくずしにこれを償還していくことになるわけでございます。それがこの五カ年計画終了後、なお四、五年この償還が続いていく。そうしまして、その次に今度は五カ年計画によるテレビジョン建設資金約二、三億円の償還期はその次に始まってくる。大体その時期を十年後ぐらいに押えております。十年から十四、五年ぐらいまでの間に一応これが終る。そうしますと、残るところは五カ年計画終了後にどのくらいの一体設備拡張があるかという点になるわけでございます。五カ年計画終了後に起ります設備拡張は、これは昨日もその話が出ましたのでございますが、やはりテレビジョンの中継局の建設というふうな面が新しい面になって出てくるのではないか。それともう一つは、ただいまこれを作っております設備の保守という面が出てくる。大体この二つじゃないかと思うのであります。その二つにしぼりました場合には、ただいまのこの計画で参ります場合には、ただいまの受信料三百円でそれらをやつていって、そうして借入金がなお十年ないし十五年間でこれが償還される。まあ大ざっぱに申しましてそのような考えを持っているわけでございます。
  71. 山田節男

    山田節男君 これは、われわれに出された書類を見ても、大体テレビの三十三年度の収入は七十六億円でございまして、そして所要経費を除いて約十六億円の利益がしる、こういう勘定になっているわけです。しかし一面においては、今御説明のように、建設勘定が非常に要るので、一応この十六億円をもって建設勘定に組み入れても、どうしても外部の資金をすでに六億円は借り入れなくちゃいかぬ、こういう計数を出されておるわけであります。ですから今のあなたのおっしゃることは、五カ年計画最終年度末において聴視者五百万、それを一人当り年間三千六百円八一としてのここに勘定があるわけです。先ほど私が申し上げましたように、ラジオと同じように、やはり解約者が激増するということも、これはやはり心においては準備してやっていかなければいけないことであります。そこで、もしそうなった場合に、もちろん建設勘定は今年度、来年度が一番多いのでございますから、ですからこういう状況になるのは無理はないと思います。今おっしゃったように、これを一応完成すれば、中継局なりあるいは新規の施設ももっと新しいものができて、老朽化したら取りかえなくちゃならぬ。テレビについてはむしろこの施設の寿命というものは非常に短かいのではないか。そういうように考えてみますと、この五カ年計画最終年度以降におきまして、そういったような新しい経費の支出というものがふえるのじゃないか。そういたしますと、まあ事実上五カ年計画の薫十四年度から本格的になる計数を出されておるわけでございますが、こういうようなことがずっと積み重なっていきますと、やはりそこにテレビ経済の悪循環が出てくるのではないか。テレビ受信料を上げなくちゃいかぬとか、あるいは借入金をふやさなくちゃいかぬとか、こういうような問題が起るのではなかろうかと思います。大体のその目安というものを、今経理局長がお答えになったことはわかるのでありますが、ラジオ経済で申し上げたような事態がもう当然くるものとすれば、もう少し私は、ことに経理関係のことは掘り下げて考えることが必要じゃないかと思うのですが、この点一つ承わりたい。
  72. 首藤憲太郎

    参考人首藤憲太郎君) 問題は、この五カ年計画が終了しましたあとの受信者のふえ方、これが一つのポイントではないかと思っております。私どもとしましては、五カ年間で一応五百万と押えておりますが、これで頭打ちとは考えておりません。なおそのあともふえていくだろう、それがどの辺まで伸びるかということにつきましては、これはいましばらく情勢を見ませんと、なかなかはっきりした結論を出すことはできないのでございます。問題は、その五カ年計画終了後にどれくらいの経費の膨張があるかということの関連を考えてみた方がいいんじゃないかと思うのでございます。それで五カ年計画終了後の六年度目から運営費が非常に膨張になってくるということになりますと、今度その膨張した経費と、それから新しい受信者のふえることによる受信料の増加というものとのアンバランスが起りますと、これは問題じゃないかと考えております。それで大体五カ年計画終了後におきましては、キー・ステーションが大体でき上るわけでございます。そうしますと、政策として、そういう面のおもなものは、五カ年計画経費が一応の目安になっていく。もちろんそれでとどまるわけではございません。それからあともふえて参りますが、それからあとにふえますのは、それからあとに建設しました局の運営費、そういうようなもり、それから先ほど申し上げましたような設備の更新というものがございます。しかしながらこれはすでに現在かつ計画的に償却を考えておるのでございまして、また御説の通りテレビにつきましては、特に命数が短かい面もございます。それに応じたこともただいまの計画において考えておるわけでございます。従ってそれが特に要因となって大きな欠陥が起るというようなことのないように配慮しておるつもりでございます。ですから問題は、六年目びらの受信者のふえる程度の問題と、それから先の運営費の増大する問題とりかね合いじゃないかと思っております。それで大体それをバランスがとれますような考えで償却のことも考えておるわけでございます。従いまして、ずっと先のことについては、これは断言申し上げるわけに参りませんけれども、一応バランスをとって運営をして参りたいというふうにただいま考えておるのでございます。
  73. 山田節男

    山田節男君 ラジオテレビの経済ということを考えて首脳部の御意見を聞いたわけですが、電電公社に私は常に申しておることは、非常に放送事業は、科学技術の進歩に影響されると思うんです。で、きょう新しかったものは、来年は老朽化した施設かもしれない。そういうような点から考えて、必ずしもNHKのような事業計画は、五カ年と区切る必要は私はないと思う。私はいわゆる生産性向上の役員として、わずかな知識しか持ちませんけれども、やはりこういったような公共企業体、しかも国民の生活、文化に非常な影響のあるものは、たとえば十年ないし十二年、これは十五年でもよろしゅうございますが、こういう事業の十五年というのは私は少し長過ぎるんじゃないか、せめて十二年の一つの大体のデベロップメント、事業の発達というラインというものを作って、そうして三年なら三年の小刻みで十二年間の大体ラフな案を作って、そうして次の三年というものは、実際にいろいろな条件から、大体これはどういうふうにしなくちゃならぬということは、現実問題としてかなり正確なデータが集まるわけでありますから、そうすれば十二年間というかりに長期の計画を立っても、三年間というものを当面の実施計画として、これは大体今日の科学経営の面ではそういうやり方をするのが近代的傾向なんです。そういう点から見ても、これも非常に異常な歩み方の五年計画ですが、四年間おやりになるとすれば、来年から発足して将来の十二年間、そうして四年間をまず第一期の実施計画とされ、それでこれは修正する面も出てくるのですから、そういうような一つの経営調査ということを申し上げるのですが、そういうようなことを一つ私はぜひおやりになる必要があるのじゃないかということを痛感するから、こういうことを申し上げる、一つぜひそういう点をやってもらいたいと思います。  それから、大蔵大臣の出席を求めて、委員会の質問大臣の答弁があったのですが、この五カ年計画の間におけるところの外部資金の借入問題、これは郵政大臣にお伺いしたいのですが、三十二年度のラジオテレビジョン建設資金において、政府は何ら財政投融資をしない、こういうように私は聞いたのですが、これは事実かどうか一つ。もしまたそうであれば政府は何か将来建設資金に対する保証を与えておるのかどうか、この点を一つ大臣から……。
  74. 寺尾豊

    国務大臣寺尾豊君) 御質疑のように政府としては三十四年度に対してのこのテレビジョンの施設拡充に対します財政投融資というものは、これを正式に何らの措置をいたしておりません。しかし、NHKの方といたしましては、この財政投融資というものをどうしても政府に要望したい、ぜひこれをなんとか心配してほしいということを私の方に申し入れがございまして、三十四年度の財政投融資が決定をいたしました閣議の席上におきましても、このことを私は閣議で発言をいたしまして、大蔵大臣NHKの方から財政投融資の融資の要望がきておる、ついては簡保資金等についても若干のこれに対する見通しを持っていることであるから、やがて大蔵大臣にこのことは相談をするつもりである、大蔵大臣はこのことについては、日本放送協会の三十四年度の資金計画については絶対必要不可決の問題であるから、そのことを一つ十分考えてほしいという発言をいたしまして、これに対しまして先ほど大蔵大臣が本委員会で答弁をいたしましたように、このことは十分考えて、これに対しての相談をしよう、こういうことになっておるわけでございます。
  75. 山田節男

    山田節男君 先般、予算委員会でも、これは大蔵大臣並びに電電公社の総裁に質問したのですが、電電公社の明年度の予算において、政府から出す簡保積立金十五億、その他財政投融資から、資金運用部から出すものは十億円、二十五億円しか出していない。そうしてNHKがこういう建設計画であって、今大臣の言われるような状況だとしますと、非常に私は遺憾なことだと思う。もちろん、これは郵政大臣として一生懸命に折衝されておることはわかりますけれども、けさの質問で大蔵大臣の答弁にありましたように、一体公共放送というものは国家的の一つの国家の代行機関的な役目を果しておる、零細な国民の受信料によってやっていくことであるから、番組に干渉するとか何とかいうのじゃなくて、やはり財政的には少くとも政府関係機関あるいは公社に対する、国鉄とか専売公社程度のものはなくちゃいかぬと思います。ところが、不幸にしてどうも郵政大臣の所管される電電公社なりNHKに対して政府が資金を融通する点においては、きわめて斉薔な態度をとっておる。これは私は決して寺尾郵政大臣の政治力を云々するわけじゃありませんけれども、一体、大蔵省に違いありませんが、こういうことに対する、もう少し関心というか、重要性を認識しなくちゃいかぬと私は思うのですね。たとえば簡保積立金のごときは一千億円の金が、今年度も財政投融資の五千二百億円の中に入ってきておる。それを電電公社にわずか十五億しか出さないという、これは歴代の郵政大臣の悩みだと思います。寺尾郵政大臣をもってすらこの十五億程度のことでは、まことに私は遺憾だと思う。この点は次に質問しますが、そういうことに袖を振られたというような格好で銀行借入金をやるなんということは、これは公共企業の経営としては本当に悲しむべきことである。こういう状態は私は政府として健全なる公共放送に対する政策とは思えませんですから、これは機会があれば、ぜひ一つこの点を大蔵大臣に、でなければ岸総理にも、あなた勇を振って一つこの点は諫言されることを強く要望いたします。  そこで五カ年の資金計画ですか、これを見ると首藤局長にお伺いするのだが、非常に長期の銀行の借入金に頼っている。むしろ放送債券というものを避けたい、そうして政府の融通資金はきわめて少い、一体こういうような資金計画、これは私はもう、しろうとから見ても健全でないと思います。今のような政府がああいう態度をとっておる以上は、やむを得ぬと言えばやむを得ぬと言われるかもしれませんけれども、銀行の借入金で融通資金を獲得するということが、これは先ほど申し上げたようなNHKの経営体として健全な歩みであるかどうか、多大の疑問を持つのですけれども、何か事情があれば、そういう点を御説明願いたい。
  76. 首藤憲太郎

    参考人首藤憲太郎君) これは放送債券を発行しませんで、長期借入金でやっていこうという趣旨でこのようなことを期待したわけじゃございません。実は、私どもとしましては、テレビ建設資金につきましては、これは昨年来お願い申し上げておりますように、膨大な資金が必要だ、しかもそれがこの五カ年間に一ぺんに必要になってくるという点と、それからもう一つは、先刻申し上げましたように、今後の長期計画に基きましてこの返済能力がだいぶ先になる、十年以上先になるという点が一つのポイントでございます。それともう一つは、返済期を早めるというためには、やはり低利の金でなければならない。金利が高いとそれだけ返済期もおくれていくという点ものります。それらの点を考えまして、テレビ建設資金につきましては、できるだけ多額の財政資金をお許しを願いたいというお願いは、昨年来しておるのでございます。そして三十三年度におきましては、幸いにして三十五億簡易保険積立金を拝借して順調にこの仕事を実行しておるわけでございます。それで一方私どもとしましては、全額これを政府の御厄介になるというようなことは、もちろん趣旨でございません。これは、われわれ自身としまして、できる最大能力を発揮しまして、これを自分自身で資金を調達するということが、もちろん根本的に必要だと思っております。そしてその資金の調達方法としましては、やはり安定的な計画的な資金を調達するのが本筋だと、経営上も、これが本筋だと考えておるわけであります。そうしますと、当然これは放送債券を発行して調達することが、一番安定した計画的な資金であるというふうに与えております。そこで私どもとしましては、今後も、そういうふうに調達する分は、主として放送債券によって調達する考えでございます。ただ、放送債券につきましては、これは起債市場の模様もございます。で、私どもが考えまして、その通りいくかどうかということは、これは起債市場の状況いかんによって、また変ってくるわけでございます。  そこで一応、外部資金という大きなワクの中におきまして、放送債券、それから銀行などの借入金というものを一つに取り扱っておるのであります。それに対しましては、予算総則の第十条で「本予算中資本収入において予定する長期借入金は放送債券にかえることができる。こういうふうにここで救済さしていただいておるわけでございます。従いまして、そういうふうに、まだ割合が未確定のものでございますし、今後の模様によって左右されるものでございますので、一応外部資金という考え方で、これを長期措入金ということで、予算項目に計上してございますが、私どもの本旨としましては、自分で調達するものは、やはり計画的な資金、すなわち放送債券を主として充てるという考えでございます。
  77. 山田節男

    山田節男君 今の首藤局長の御説明、大体わかったのです、というのは、今回、放送法の一部改正法によって、NHKの純財産の三倍までは募債能力を持たしておるわけです。この、たとえ短期といえども、銀行の借入金というものは、もちろん金利の点においてもふえていくことは申すまでもない。  それからこの募債ですがね、従来、NHK放送債券というものは、市場においては非常に評判がいい、ということは、額がきわめて限定されておる。それから、従来のNHKの事業収入というものが、きわめて確実であるという一般の認識から、そういうことになっておる。もとよりこれは、募債については、大蔵省の通貨政策、インフレということに対しての政府の制約を受けるだろうと思うのです。  今、寺尾郵政大臣が言われるように、政府財政投融資の融通が、きわめて窮屈であるとすれば、たちまち明年度において、ラジオにおいて六億五千万、テレビにおいては三十六億ですか、何か合計四十二、三億かの金が、どうしても要るわけですから、で、その当面の借入資金を、どういうふうに処理していくか、たとえば来年度のテレビ三十六億、ラジオを入れて約四十三億ですね、資金は明細に言うと、この融通の内容ですね、融通の額と、その種別はどういうようになるかお示しを願いたい。
  78. 首藤憲太郎

    参考人首藤憲太郎君) 計画としましては、このラジオの外部資金六億五千万は、全部放送債券で調達するつもりでございます。それからテレビの三十六億でございますが、これにつきまして、先ほど申し上げましたような財政資金のお願いをしております。これを、もちろん全額を全部拝借したいということではございません、できるだけ多額のものを拝借をしまして、あと、われわれが調達しよう、実は、そういう心組みで、額は、まだわかりませんでございますけれども、この実行方法につきまして、証券業者その他と、いろいろな瀬踏みの打ち合せをしております。もっとも金額がきまりませんことには、具体的なことはきまりませんので、やがて政府の方で御決定いただきました場合には、具体的な計画を立てたいと考えております。  それから放送債券は、仰せの通り非常に消化状況はよろしゅうございます。ただ従来は、発行金額が非常に少うございまして、それで改正前の放送法では、発行残高が三十億と限定されておりました。この程度では、従来ラジオのみならずテレビにおいても、建設資金をまかなうことができません。やむを得ず銀行借入金を主体といたしております。その金額は、すでに二十億をこしておるわけです。これらは順次、やはり放送債券に乗りかえていくということが望ましいと考えております。  ただ、放送債券につきましては、ただいま私どもの発行条件が年利七分五厘で、発行価額が九十八円となっております。これを年利にかえますと、大体九分弱、八分五厘から九分の間ということになると思います。一流債券の発行条件も、そろそろよくなってくるのではないかと思っております。私どもの放送債券を、次回発行します発行条件が、どうなるかという点については、四月発行分については、ぼつぼつその線が研究されておりますが、私どもとしましては、この予算が御承認得ました上で発行方法をきめようと考えておりますので、具体的な線は、きまっておりません。一方銀行の借入金にしても、だんだんと金融市場もゆるんで参っておりますので非常に利息も下っております。私ども、ただいま借りておりますのは、二銭前後のものでございます。その点においては、放送債券よりも利率の点においては有利でございますが、ただ短期資金でございます。不安定でございます。従いまして多少の利息というものを、われわれはやはり考えるべきではなくして、安定した金を調達するという意味において、放送債券にたよるのを本筋にすべきだ、こんなように考えております。
  79. 山田節男

    山田節男君 これは、まあいろいろ質問申し上げればありますけれども、一応予算成立後において、論議する機会もあると思うから、特に私、これ以上申し上げたくありません。  ただ最後に、いかにも討論的になりますけれども、私、今回郵政大臣を通じて出された説明、あるいは参考資料等を通覧しまして感じたことは、先ほど申し上げたように、計画そのものが非常に甘いというか、もう一つは、これはおそらく商業放送の拡大発展に刺激されたために、公共放送としての任務を、あまりに真剣に取り組まれたためになった結果じゃないかと思うのですが、非常に重点主義が多い、経営というものは、こういう重点主義があまり多くてはいけないのです。ソ連の七カ年計画にしても、重点は二つしかない、ましてや、こういったような放送事業で、競争者のある中において、公共放送としての使命を発揮するという、こういうように、いろいろあげれば、全部重要なことでありますけれども、限られた財政下において、しかもラジオ経済において、五年先は、あるいは現在よりも下るかもしれぬという、この見通し下において、おのずからそこに、重要なポイントの中に最重要なものがピック・アップされた計画でなければならぬ。  そういう点から私見ますと、非常に総花主義的であり、また、何と申しますか、間口が広過ぎる、何もかも手をつけておる、こういったような、非常に若々しくはあるけれども、経営としたらば、きわめて不健全な要素を含んでおる、こういう印象を受けたことがあります、率直に申し上げて。  なお、郵政大臣に重ねてお願い申し上げておきまするが、将来の公共放送テレビラジオ放送の経営ということにつきましては、今日、三十三年度の無理なやり方、三十四年度以降の、こういう収支予算計画等を見まして、これはやはりそのためには、どうしてもNHKに安定した経済的バックを与えなければならない。これはしつこいようですが、受信料の根本的改革ということを一日もすみやかにおやりにならなければならない。NHKは、次第に斜陽族に入ってくることも、これは私は何年か後にあると思う。そういうことがあってはいけませんから私は老婆心から申し上げますが、過日修正されました放送法案というものは、非常に末梢的である。重要でありますけれども、より重要なものを逸しておるという点につきましては、私は次の機会を待って、あの法律をそのままにしましたが、しかしながら、こういうNHKの三十四年度以降の計画を見ましても、そのガンはどこにあるかと言えば、この受信料の問題です。  このことは同時にNHKの最高首脳部に申し上げたい。業務関係としては、あれだけの人を使い、あれだけの経費を使って、なおまた、将来受信者を開拓するという努力のために人と金を使われることは、これは了とするところでありますけれども、しかし、しょせんNHKの経営を安定化していくということのためには、受信料というものを根本的に切りかえをしなければならない。大体、私は踏み切られておるのだろうと思いますけれども、大局的見地からすれば、これはもう、少くとも経営委員会あるいは執行の理事者側として、そこの考えを踏み切らぬといかぬと思う。そのことによって、郵政大臣の決意なり、あるいは法案の提案というものについても、踏み切りやすいと思う。ですから、この点は一つ、この予算案を見ましても、常に通覧しておって、つきまとう影は受信料の隘路です。この点は一つ、十分銘記されて、大局的な見地から、これを十分検討されて、むしろ政府に、そういう決意をもって追っていくという態度が私は必要だということを痛感いたします。  そういうきわめて抽象的な、意見のよう、要望のようになりますけれども、このことは、切に私は心からのお願いとして政府NHKの方々に、特にお願い申し上げます。  今回の本予算についての質疑は、これをもって打ち切ります。
  80. 森中守義

    ○森中守義君 質問に入ります前に、まだ私の手元には、この前郵政大臣にお願いをしておきました資料が届いておりません。どういうことになっておりますか。
  81. 濱田成徳

    政府委員濱田成徳君) 資料として作成するほどのものがございませんでしたので、本日、ここで口頭で申し上げたい、こう任じております。
  82. 森中守義

    ○森中守義君 法律事項にあることが、資料として提出するほどの中身がないということは、どういうことですか。
  83. 濱田成徳

    政府委員濱田成徳君) 中身がないと申すのは語弊がありますけれども、先日の御質問に対する御返事は、非常に簡単と申しますか、資料として作成する必要はあるまい、そう考えまして、それで本日、口頭をもって申し上げて御了承願いたい、そう思った次第でございまして、ここで申し上げさしていただいてよろしゅうございますか。
  84. 手島栄

    委員長手島栄君) どうぞ。
  85. 濱田成徳

    政府委員濱田成徳君) お許しをいただきましたので申し上げますが、この委員会で前々から御論議がありましたように、わが国の電子、電波についての研究、特に放送の送信、受信等に関する基礎的の研究は、外国に比べまして、非常に弱いことをわれわれは常々痛感しております。そういう次第でございまして、この方面の育成強化をはかるために、われわれは絶えず留意しておったつもりであります。従いまして、その方面において、最も大きな研究所を持っておりますNHKに対しまして、放送の送受信に関しまして、特にテレビジョン研究発展につきまして、研究を委託したいという計画をかねがね持っておりました。  先般、御質問昭和三十年から三十三年までの間に、どういうふうな研究を委託したかという御質問でございますが、これにつきましては、さような考えを持ちまして、この委託計画をいたしましたけれども、国家財政の緊縮という理由によりまして、そのことが実施に至りませんでしたことを非常に遺憾に思っている者でございます。しかし、ただNHK研究委託ができなかったから、そのままでよろしいというふうには、決して思っていないのでありまして、電波研究につきましては、郵政省にも、電波研究所というのがありまして、これの施設を強化すること、あるいは研究実験設備を増したり、研究費を増したりすることにつきまして、私どもは毎年強化策を計画して参りました。NHKに委託研究はなし得ませんでしたけれども、電波研究関係研究施設を増したり、実験設備を増すことにつきましては、完全ではありませんけれども、相当程度に、毎年毎年やって参った、かような次第でありまして、NHKに対する研究命令は出し得ませんでしたけれども、とにかく不満足ながら、電波についての、特に放送技術につきましての研究につきましては、政府としてやれるだけのことはやっている、こういうふうに考えている次第でございます。
  86. 森中守義

    ○森中守義君 私は政府機関としての電波研究所における研究状態がどうかということを承わっていない。つまり放送法三十四条に言う、この条項が、どのように具体化されているか、これが、私の質問の中心なのです。  そこで、今、濱田局長の答弁を承わっておりますと、少くとも今日、日本放送協会放送技術は、世界的な水準、最高の地位までに至っていない、要するに、さらに新しい技術開拓の面が、多分にあるということを肯定されているわけですね。しかも今のお話からいけば、そういう理想の状態に近づく意欲を郵政省はお持ちのようです。それで重ねて、資料が出なければ、ないものを出せというわけには参りませんが、一体、どういう状態を年々お考えになっていたのですか、その具体的な内容を私は聞きたい。
  87. 濱田成徳

    政府委員濱田成徳君) 御質問にございましたように、昭和三十年度におきましては、テレビジョン放送の実験研究に必要な経費というのを計画いたしました。この内容は、カラー・テレビジョン技術に関する研究NHKに促進していただきたい、こういう考えでおります。  これにつきましては、研究費は多額でありませんけれども、千二百万円くらいのものを出して、それで基礎研究をやってもらいたいというふうな考えを持ちましたけれども、先ほどのような理由で、このことが実現いたしませんでした。その次の年、昭和三十一年度におきましても、同様にこのテレビジョン放送技術の研究を、とにかくやらなければいけない、NHKといたしましては、ただNHKのみならず、全日本放送界のために、この研究を進めてもらいたいのだという考えに立ちまして、研究委託を考えましたが、三十一年度、三十二年度の雨年度は、計画を多少変更しまして、カラー・テレビジョン技術に関する研究でございますけれども、ごく小範囲にしまして、この際には、画質の研究、絵の性質、絵の品位の研究というようなものを研究していただくようにしようと考えました。額は、百七十万円くらいの少額にとどめたのでありますけれども、これもやはり、財政能力の点から実現するに至りませんでした。  三十三年度におきましては、その題目は、やはり先ほどと同じように、テレビジョン放送の実験研究に必要な経費というのでありますが、内容は、カラー・テレビジョン放送の実験研究の委託というのと、UHF電力放送の実験研究の委託というのを計画いたしましたけれども、やはり前に申し上げたような理由に基きまして、同時に、NHKの技術研究所に依存して、あるいは電波研究所との関連において、研究を進めることで満足せざるを得ない状態であろうという判断によりまして、この研究命令は実現いたしませんでしたことを非常に遺憾に思っております。
  88. 森中守義

    ○森中守義君 私は、大臣に今のことで、重ねて質問をいたしますが、電波局長の答弁からいって、国家予算の私は七割八割くらい占めるのじゃなかろうか、そう思っていた。とてもこういう法律にある実施命令であるとか、あるいは研究命令というのが、国家予算建前上できないとするならば、一兆四千億の予算のうちの七割八割くらいは、このために食うのだろう、それであるからできないのだろう、こう思っていた。  ところが、聞いてみれば一千二百万、こういうことですが、これは一体、国家予算の何%になりますか、大臣。一兆四千億の七割、八割くらいは出さなくちゃならぬので、とてもまかない切れぬのだ、こういうことだと思っていた、聞いてみたところが一千二百万、何%になりますか、どうぞ答えて下さい。
  89. 寺尾豊

    国務大臣寺尾豊君) これは、国家財政の都合ということは、これはおそらく、大きく話を考えれば、まあそういうふうになるかもしれませんけれども、出そうと思えば、出せない額では御指摘のようにないと思います。  でありまするから、これは要するに、こういう問題が、この法文もまた、できるというような、やってもやらぬでもいいというような、そういうことが、そもそも解釈をする側においては、絶対性ではないから、具体性が抜けておるからという、きわめて不認識な考え方から取扱われたのではないかと、かように思うわけでありますが、しかし、こうしたカラー・テレビジョンの実験放送というものに千二百万、あるいは三十一年、二年度は、わずかに百七十万、こういうものを要望したというのを、これを認めなかったというようなことは、私は政府としては、はなはだこのカラー・テレビあるいはこの放送法に示された実験研究というものを、これをきわめて軽視しておって遺憾きわまりのないことだと、こう考えるわけでありますから、ただ、今後におきましては、一つこの放送法に示された三十四条というもの、同時にその内容というものの認識を十分させる、そうして、この程度といったようなものについては、これを出したからといって……、国家予算の運用というもので、何ほどか見ていこう、こういう、御指摘のようなきわめて、もうパーセンテージにもならぬ、数字が出てこないような率じゃないかと思いますから、そういう点につきましては、全くそういうふうな御指摘をいただき、御質問をいただけば、所管の大臣といたしましては、遺憾しごくでありまして、申しわけがないと思います。  今後、こういう問題につきましては、必要な研究につきましては、極力、強力にその実現を期する、こういうことで進みたいと存じます。
  90. 森中守義

    ○森中守義君 私は、数代の大臣と、こういう問題で論争を交してきましたが、どの大臣も、同じようなことを言っている。大臣がかわれば、前の大臣が言ったのと同じようなことを繰り返される。  さっき国家予算の何パーセントになる、しかも国家予算の七割、八割、一千二百億もあるいは百二十億も出すのか、それなら、なるほど国家予算に影響があるだろうというので、だいぶ控え目に見ていたのですが、聞いてみると、千二百万円ということなんですよ。大体、大臣はこういうことが、話に出たことを知っていたのですかそれとも、どうもお話の端々をとらえるようで悪いですが、何か客観的な立場に立って、このことに対する論評を大臣が加えているような気がする、あなたは、論評を加える立場の人じゃないです。事態をどう解決していくかというのが、これは私は所管大臣の任務でなければならぬと思うのに、はなはだ遺憾であると思うとか、であったのではないかと思うなどというのは、これは大臣としては、はなはだ私は不見識だと思う。額は一千二百万円です。  ただ、出さないよりも、一千二百万した方がいいが、御参考までに協会の予算書をごらんになって下さい。ラジオで一億五百十二万、テレビ番組の調査研究、技術研究合計一億五千四百十六万、これだけの金を、協会は自主的に研究の費用として予算の中に組んでおる。もちろん協会の研究費全額を、これを、政府が負担しなければならぬという、そういう無法なことまでは私は言わない。しかし、少くとも三十四条に表現をされている意味というもの、そうして、そのよって立つ精神というものは、日本放送協会ではなくして、受信者即国民、わが国放送技術を、どこまで高めていくのか、その高まった技術をして、よりよい放送が、国の産業なり経済なり文化なり、あるいは政治なり、こういうものに寄与せしめんとするのが、とりもなおさず三十四条のよって立つ私は精神であろうと思うのです。だから、協会に金を出すので、あたかも政府と協会という、こういう錯覚を起しているところに、問題がある。協会に金を出すんじゃないんですよ。協会は、その行為を行う一つの団体なんです。もし郵政大臣が、そういう感覚をお持ちであるとするならば、これは一つ、この際極力、是正をしてもらわなくちゃなりません。  ともあれ、私は大へんくどいようですが、国家財政上、国家予算上、これができなかったという、その理由は、那辺にも発見できない。百二十億とか、一千二百億とか、そういう膨大な国家予算を、この協会に突っ込むというならば、なるほど、それは財政上支障もあろう。しかし一千二百万円が一兆四千億何がしの国家予算の何パーセントか、こういう質問を私はしておる。それに対して大臣は、なるほど数字としては、表現できないくらいの数字なんだと、こう言っているじゃありませんか。それが、できないんですか。まあ、これは本来ならば、佐藤大蔵大臣を私は一緒に並べて聞きたかった。しかし残念ながら、その他の言論の抑制のために、その機会を得なかったので、所管大臣である郵政大臣にこれを詰問せざるを得ない、大体、やったのですか、やらぬのですか。
  91. 寺尾豊

    国務大臣寺尾豊君) これは、もうほんとうに森中委員の御質問というものは、私としては甘受いたします。そしてあなたは、私がいろいろお答えしたことに対しても、さらにおしかりのようですけれども、私は申しわけないと言っております。どうも申しわけがない。他の大臣時代のことでも、私は自分の責任だと思っております。三十年の問題でも、三十一年の問題でも。  しかしこれは、やはり一つには、今局長がお答えしたように、NHKは、この研究することを一つ使命としておる、この条項は、まあ調査研究をさせることができる、こういう、まあ任意的な考え方と、これは、これからまあ、そういうことを解釈すれば、できる。一方、私の方が、特に真剣にやっているのは、郵政省電波研究所であります。私は、過日この局長に案内を受けて、この研究所を視察をしました。これは森中先生にも、一度ぜひ御視察を願いたい。真摯にやっている。そしてこれに対する本年度の、三十四年度の予算が三千百六十三万二千円というものを増額いたしております。それからまた他の協力者等もありまして、相当大きな研究をやっております。  従ってまあ、このことに、この三十四条には、はなはだ遺憾でありますけれども、そういう結果になっておりますけれども、そのことは、電波研究所で、まあ相当な研究も、予算の増額もし得ておる、まあ、こういうことでありますから、事情は、言いわけを申し上げまするならば、今申し上げた通りであります。しかし三十四条に、このことがはっきり、調査研究をすることができると、——「命ずることができる」ということであって、その費用は、国の負担とすると、まあこういうことが、きわめてはっきり載っておりますから、このことは、私どもといたしましては、ぜひこの条項を生かし、そして、これはNHKのためじゃない、やはり政府、国民のために、こういう研究というものを、新しい予算を確保すべきだと、これは、もう絶対だと思いますが、そして条項が「できる」とあっても、これはやるべきだ、そういう責任を感じておりますから、今後に対しましては、十分この点に注意して、予算の獲得に努力いたして参ります。
  92. 森中守義

    ○森中守義君 今の大臣のような答弁になりますと、これはやはり、わが国の科学技術の政策論になってくる。科学技術庁が、あるいは方々に研究所をもっている、こういったような複数的なわが国の科学技術の研究態勢がいいか悪いのか、これは一元化すべきであるか、これは、私は相当高邁な学識経験者あたりの意見を徴する必要もあるし、国策論としては、これは、別に私は論ずる機会もあると思うので、ここじゃ、そういうことは言いません。しかし、今の大臣の御説明からいけば、大体、協会には出せなかったけれども、自前の電波研究所には、三千何百万の予算増額をやった。これで、大体肩がわりができるし、むしろ郵政省電波研究所から、素材の提供なり、あるいは技術の公開等いたしまして、それで放送技術、放送文化の向上をはかるんだと、こういったような、まさに言いわけにとれる。ところが、問題は一千二百万という動かしがたい一つの事実がここに出てきた。そこで考え得ることは、八十五円の値上げといい、先般成立した放送法といい、こういうことが、こういう法案の審議の際に、どれほど問題になるかということは、これは郵政の事務当局といえども、郵政大臣としても、そのものずばりで、でんとこなければならない問題だ。七百万にしても、八百万にしても、一千万にしても、とにかくゼロ査定というのは、理屈が通らない。にもかかわらず、いけしゃあしゃあとして、八十五円の値上げでございというのは、一体、何ちゅうことですか。国会における協会予算の審議、放送法の審議に対して、果して郵政大臣は、どこまで誠実を尽して、やるべきことをやったかどうかということになると、相当、これは問題がありますよ。  国家予算全体の比率の問題、それと同時に八十五円の値上げという一転機に立った日本放送協会の協会予算の審議に当って、明らかに法律事項である——なるほど、これは条文そのものとしては、任意条項であるでしょう。任意条項であったにしても、さっきも申し上げたように、この法の意味するものは、協会をして国民の電波、国民の放送が、より高度なものになるために行わしむるという意思にあるのです。平年の協会予算の審議と違いますよ。千二百万くらいの金が、大蔵省と話がつかぬでは、大臣やめなさい。おそらくあなたは、このことを御存じであったかどうか、私は、はなはだ疑わしい。大蔵大臣とあなたが話しをして、廣瀬政務次官が、佐野次官、あるいは山中君あたりと話して、一千二百万の話がつかぬなんということはないのです。しかも、八十五円という値上げを前にして、これが郵政当局の政治性ありや、どうやという問題です。  私は、最後にこのことを言いたいと思っておりますが、こういう、やるべきことをやらない、国際放送にしても、今の理屈と全く同様です。それでいて、八十五円の値上げというもの、不当に、わが国の料金政策をあやまっている。減税をうたいこみながら、実は間接税を取り上げる、なっちゃいないじゃないですか、もう、そう言われても、仕方がない。要するに、岸内閣の愚策の結果もたらされた日本放送協会への不当なる犠牲の強要だと、私をして言わしめるならば、そういうこと以外には蓄えません。だからして、一千二百万をどういうところまで話をしたか、そうして八十五円値上けに対して、両院の審議に臨む態度、そういうものをあわせ含めて、大臣の心境を伺っておきたい。
  93. 寺尾豊

    国務大臣寺尾豊君) これはまあ、御所論としては、まことにごもっともであります。しかし、このことは私どもが、もう今後に努力をするという以外に、もはや過去のこととなって、三十年あるいは三十一年と、こういうような時代のことですから、これをいかに、森中委員に追及を受けましても、これは申しわけのないということ以外には、私は言葉を知りません。ただ今後努力する、今後、こういうことのないように努力する、そういうことの決意を新たにして、再びこういうことをしないような努力をいたします。
  94. 森中守義

    ○森中守義君 実際問題としては、なるほど、予算が衆議院で成立をして、もはやこの段階まできているんです。これを修正をする、どうするということは、なるほど困難であるかもしれない。しかし、どうにもしようがない、過去のものとなったということが、ここに協会予算をぽんと投げ出されたのでは、これはわれわれ審議の価値がないということです。何のために、われわれは審議するのです。過去のことがこうだから、かんべんしてくれ、やむを得なかった。そういうことならば、数日間連日、しかも数時間にわたって質問を展開しても、もはや協会予算に対しては、審議の価値はない、私は、そう言わざるを得ない。  それと、今度ふところから巻き上げられていく、巻き上げるといえば、表現が少しどぎつくなりますが、とにかく契約料を払わなければならない受信者の側、国民の側に立って、国会として、大胆がしようがありません、過去のことだから、かんべんをしてくれ、今から注意すると、それだけのことで、国民にわれわれは申しわけが立ちますか。受信者に申しわけが立ちますか。それを私は言っておる。  だからして大臣も、あやまらなくていいようなことをあやまってみたり、言われなくてもいいようなことを言われてみたりする前に、一千二百万円くらいの金は、なぜどうにかしなかったのか、こういうことを言っておるのです。しかし、はなはだこれも遺憾なことながら、大臣の言葉をそのまま受け取るならば、もはや協会予算に対しては、単に言うだけのこと、答えさせるだけのこと、何ら審議の価値はない、審議を放棄せざるを得ません、そういうことですよ。  そういう提案者の側の無責任な状態を審議するわれわれとしては、ただ答弁として受け取れないということです。一体何のためにわれわれは審議している。とにかく無責任な提案の仕方です。こういうようにきめ込まれてもしようがない。どうですか。
  95. 寺尾豊

    国務大臣寺尾豊君) この三十四条については、私は今申し上げたように遺憾であって、今後に対しては、一つこれは、条項は極力生かして、これを活用していくべきであるという御答弁を申した通りであります。  しかし、この条項そのものを法的に解釈するというようなことの、あなたが、理屈一点張りに私をいじめてくると、こういうようなことならば、これは、そういうことができるということによって、これをやらなければならぬ責任というものは、この三十四条には、私は示してないじゃないか。しかしこのことは、所管の大臣として「できる。」ということに、ここにできている以上、私としてはやるべきだという責任は感じるけれども、しかし政府によって、それが実現できなかった。しかしその条項を、三十四条をやってみるというと、そういう調査研究を命ずることが「できる。」という任意条項だ。あなたは、常に法律論を筋を通して、非常に明快に論ぜられるが、この三十四条の問題にしなければならぬという、これが責任条項だというような御所論はちょっと日ごろの筋の立つ、どうも森中先生の私へのおしかりとしては、私はやや御無理ではなかろうか。私はこのことは、自分の責任としてはやるべくやってきたけれども、それができない。まことにこれは申しわけがなかった、今後は、この点をやる、そうすればその内容はどうか、これは法的にいって、私は政府がつけなかったことは遺憾ではあるけれども、これを私は責むべきところのものは、やはり法的には生まれてこないのじゃないか。しかしそれはいいと、そういう解釈をしているということではないけれども、この三十四条というものは確かに、あなたもお認めになっておるような任意条項でありますから、しかし、けれどもこれは、私たちはやりたい。それがやれなかったということに対しては、遺憾であって申しわけがない。まあ、この辺で、どうか一つ御了承下さい。  この審議を放棄をするとか、これは審議の、どうこうということになってくると、これは、ゆゆしい問題であって、これは私は、そういうあなたにたてつくような所論をする意思もありませんし、そういう意味じゃないですけれども、この三十四条そのものの内容、これはやはり、筋を立てる森中先生としては、十分一つ、これは検討していただくようにお願いをしたい、まあ、こういうわけであります。   —————————————
  96. 手島栄

    委員長手島栄君) 委員変更についてお知らせいたします。  本日、白井勇君、最上英子君が委員を辞任せられまして、その補欠に近藤鶴代君、鈴木万平君が委員に選任せられました。   —————————————
  97. 森中守義

    ○森中守義君 郵政大臣、ゆゆしい大問題だというのは、今私が言っておる。あなたに、そんなことを言われる筋合いのものでない。  同時に、平素筋を通す私が、これは筋を通さんというようなものの言いようですが、あなたの今の答弁は、これは、——これで終りますが——事務次官、電波局長の答弁ですよ、それは。大臣が言われることではない。事務次官や電波局長や判事、検事、検察官が言うことです。あなたは、一国の政治をあずかる大臣です。しかも、私が何回も繰り返しているように、三十三条、三十四条の立法の精神を汲み取って、法律が任意条項であるから、してもいい、しなくてもいいというような、そういうことでは、大臣としては困る。そこを一つ考えようじゃないですか。事務次官やあるいは電波局長ならば、法律がこうですからというので通る。それは。しかし、大阪としては通りません。政務次官としても通らない。そういうところに配意を加えていって、立法の精神を巧妙に汲み取っていくのが、これが大臣や政務次官じゃないですか。そういうことが汲み取られていない。むしろ平素筋を通す寺尾郵政大臣が、このことについては、筋を通そうとしない。そういうことでしょう。  しかもですね、具体的に千二百万が一兆四千億の金の何パーセントになる。郵政大臣が、大蔵大臣と一回で話がつかないならば、二回三回やれば、この話はつきますよ。なぜ、閣議決定のときあたりに、八十五円の値上げで、これは、当然世論も騒ぐだろう、いわんや、全体の世論を代表する日本社会党の議員諸公も反対するだろう、一つこれは、なんとかせにゃいかぬということで、なぜ千二百万くらいつけない。そういう、やるべきこともしないで、つけるべきものもっけないで、さて協会予算を審議してくれとは、しかも意見書に、妥当であるなどというのは、これこそ、理屈が通らない。筋が通らぬということです。わかりましたか。——もうわかってもらえば、これ以上、実際としてこれをどうするという段階でないようだから、くどく言いません。言わないが、そこは一つ、とくと肝に銘じてもらって、大臣、政務次官の後任者に、これは譲ってもらわなきゃ困る、これは年来の懸案です。むしろ保険、貯金、放送、こういう案件を、無造作に成立をさせた寺尾郵政大臣の力禰からするならば、まさに、これはその千慮の一失というものです。肝に銘じておいて下さい。来年は、再度郵政大臣としておいでになるかどうか知りませんが、そういう機会に、再びこういうむちゃなことがないように、しかも、協会が、不当にそのことのために犠牲を強要されるようなことのないように、特段の配意を、これは、要請でなくて警告として、私は申し上げておきたい。  それから、今の問題で、もう一つ、実際の操作上のことなんですが、大体阻害している原因は、那辺にあるのですか。一千二百万要求して、それが、どうしてもつぶされたという原因を、一つこの際、明らかにしておいていただきたい。これは、大臣が、せっかく約束をされたけれども、来年また、こういうことになっちゃ困る。阻害をされた原因を明らかにして下さい。
  98. 濱田成徳

    政府委員濱田成徳君) どうして実現しなかったかと申しますのに、やはり一般的な財政能力の弱いこと、それに基くものだろうと、私どもは判断しております。詳しく申しますならば、先ほどの千二百万円というのは、昭和三十年度の計画であります。この際に、私どもの予算計画の中には、電波研究所でもってミリメートル波の研究をやるようにしたい、あるいは散乱波通信研究をやるようにしたい、あるいは建築が、非常におんぼろでありますので、これの改築をしたいというような、いろいろの項目が列挙してあります。で、大蔵省当局と私どもが折衝をいたします場合に、非常に長時間、それから何回も繰り返して議論をするのであります。重点順位といいますか、NHKに、テレビジョン放送の技術研究をやってもらうことも非常に重要でありまして、私どもも、絶えずこのことを忘れてはいないのでありますけれども、重点順位から数えますというと、遺憾ながら全体のワクからはみ出すことにならざるを得なかったということが、その経緯であると存じます。  そういうわけで、決してそれを仕方がないというのでなくて、何とかして、これをやりたいものだ、これをやることが、千二百万円くらいの金では買えないような大きな効果をもたらすものだということを信じながら、やはりこの全体のワクがきめられまして、たった千二百万円でもはみ出さざるを得なかった、千二百万円がたくさん重りますと、何億円となるわけであります。そういうわけで、はなはだ遺憾ながら、ほんとうに申しわけなく思いながら、残念ながら、さような事態で断念したようなことであります。
  99. 森中守義

    ○森中守義君 今、濱田局長の御答弁では、やはり国家財政などという、とほうもない話が出て参りまして、同じようなことを繰り返すことになる。同時にまた、的確に、阻害をされている、要因というものが、具体的に示されていない。  要求は出したが、大蔵省の主計官が、これをけったとか、何回交渉をして出したけれどもだめだったとか、そういう具体的な事実を私は聞いているのです。観念的な、国家財政がどうだこうだ——もちろん、国家財政ということになると、一兆四千億円何がしの予算の何パーセントになるのだ。こういうことになりますよ。だから、もう少し、具体的な事実を、経過を明らかにしていただくのが、来年のためにはいいと思うのです。その点一つ局長でお答えむずかしければ、荘君も見えているようですから、もう少し、予算技術の職人さんの方からでも答えて下さい。
  100. 濱田成徳

    政府委員濱田成徳君) この研究命令の計画を立てます前に、これを提出します前に、私どもの方では、礪波監理局の放送技術課、放送業務課等が主になりまして、NHKの技術局、研究所等の関係者と数回会合いたしまして、今年度は、この程度の計画研究を進めてもらえないかというようなことを論議いたしまして、そうしてその結果、これでよかろう、——私、昭和三十年のことはあまり詳しく覚えておりませんけれども、大体千二百万円、そのくらい……。ほんとうは、私どもの考えは、一応五千万円程度やりたいところであったのですが、しかし、とても今の日本財政能力では負担できない、要求をするのが無理だろうというふうに判断いたしまして、千二百万円にしぼりまして、大蔵省に提案いたしました。  ところが、第一次の査定で、これがだめになりまして、また復活要求をいたしましたが、またけられた、再度の復活要求をするということを、電波監理局長と経理課長その他関係者が、大蔵省の主計官に、再三再四面会をいたしまして、そうしてその事情をるる説明をし、その大事なことを、日本全体のために大事なことを説明してきたわけであります。そういうことを毎年繰り返しておったわけであります。  しかし、先ほど申しましたように、一言で申しますならば、やはり日本の国として負担する財政能力が十分でないという、まあ一般的結論によりまして、重点順位でもって、NHKに対する研究命令は、はみ出さざるを得なかった、こういうわけでございますから、この経過は、以上で御了承を願います。
  101. 森中守義

    ○森中守義君 郵政大臣が、先刻かたいお約束をされましたので、この項は、これで打ち切ります。  次にお尋ねしたいのは、郵政当局、郵政大臣は、なるほど日本放送協会は、法律によって、受信料を中心にして事業経営を憎むということになっております。その条文だけを中心にしまして、協会の主要支出、あるいは事業支出、それと収入が、どうバランスがとれなくても、とれなくなれば、値上げをすればいい、こういう御所見、あるいはそういう値上げの国民経済に及ぼす影響、国民所得に及ぼす影響、これらのものを考えてみて、一つの限界、あるいは時の情勢に応じてすべきである、すべきでないというように、コントロールをする御意思であるのかどうか。その点、——この八十五円の決定に当っては、田中郵政大臣当時からの懸案を、ここに実現したわけでございますから、相当長期にわたって、これは郵政当局のお考えになったことだろうと思う。いわんや協会も、その通りだろうと思います。ただし協会は、この審議に入る冒頭に野村会長が、値上げ一つの悪であるというような表現をされておりますから、協会の御意思は、大体わかる、ただ郵政当局の御意思がわからない、協会の事業経営の収支がアンバランスになった場合には、値上げさえすれば、それで事足りるという御所見であるのか、あるいは、それなりにコントロールをする、値上げをしなくてもいいように具体的に何らかの措置をやっていこう、そういうお考えであるのか。  それらの点について、大臣の御意見を承わっておきたいと思うわけであります。
  102. 寺尾豊

    国務大臣寺尾豊君) 協会が、その高い使命、これを果していく、その使命を完遂していくというところのものは、私が申し上げるまでもなく、いわゆる受信料によって、その経営が、資金計画その他がなされていくということは、申し上げるまでもないのであります。  しかるところ、今回三十三年度等の計画におきましても、そのときの協会の状態から申しまして、今お示しのように、値上げをしなければ、その運営というものが困難になってきた、しかし時の経済事情、また大衆への直接の影響、こういうようなことも考えまして、これを一年延ばして、借入金によってまかなってきた、その限度もついにきたので、この機会には、やむなく最小限度の八士五円、いわゆる十八円の聴取料の値上げをするというのが、今回の値上げになった大略の経緯であるわけであります。  しかし、この協会の経営は、あくまでも日本放送協会が、自主的に行うべきものである。しかも、これが足りなくなった、収支償わなくなった、どうしても値上げをしなければならぬというようなことは、協会自身が、合理化を行うことによって、値上げをしないで済むというならば、これは、まことにけっこうであります。しかし、それらの協会の収支決算の問題、あるいはそれが経営困難になった問題、それは私は、やはり政府としては、関心はもちろん持って参りますけれどもこれは、すべて協会の責任において、自主的に協会自身が、その経営をやっていく代任があろうと、こういうふうな考え方をしております。  従いまして、現実の問題として、協会といたしましての今回の八十五円への受信料値上げと将来の見通し、こういうことにつきましては、野村会長からもお答えがあったように記憶をいたしておりますが、まずこれで、特別の事態、経済事情が全く急変をした、あるいは何かの問題で貨幣価値の変動を来たしたというような特別の事態がなければ、まずこの値上げをもって、当分いける、まあこういうような協会としては将来の見通し、今後の見通しというものを持っておるようでありますから、これから協会が、この三十四年度の予算案並びに聴取料値上げの問題を御承認賜わるということになれば、その経営の点におきまして、あらゆる創意工夫をこらして努力をしていくということであれば、協会というものは、私は今後の運営というものには、特に非常に困った事態、大きく値上げをしなければならぬというような事態というものは、まずなくて済むのではないか、従って、協会の、この資金面ついての財政投融資の問題等も、これは当分また、政府が、これに理解をもって、心配をしていかなきゃならぬ面もございましょう、しかし、それらはすべて、私は、協会自身の責任をもって、そういったものを処理していくべきものだ、かように考えております。
  103. 森中守義

    ○森中守義君 大臣のせっかくの御答弁ですが、重ねて具体的に、今のことを私は反論するような意味でお尋ねしておきますが、非常に、将来の見通しについて安易な考えをお持ちのようです。  なんとなれば、協会が、「明日のNHK」、こういう資料をお出しになっている。この中の三十五ページに、「ラジオ関係建設計画支出見込」という表があります。その下に、「ラジオ関係設備資金計画」、これはラジオの面だけですが、この二つの表が出ております。しかも、協会の最大の理想とする設備の状態、すなわち電波に乗せて放送する状態が、どういう状態になっておるか、それが何年度にくるのか。それは協会側に詳しく承わらなければわかりませんが、少くとも三十七年までを一つ計画の区切りとして出された内容を、一見しただけでわかる。それは、この建設計画のために百十一億の金を必要とする、こうなっておるのです。この必要とする百十一億に対して、資金計画は幾らなのか。四十六億五千六百万、これが協会の資金計画、差引五十五億というものは、すでに三十七年において不足額を生ずる。  それでは、別に今度は、協会の事業収入はどうだといいますと、テレビは、この中に入っておりませんから、テレビの方は別です。ラジオは、先刻も大蔵大臣等に対する質問の中でも、あるいは関係者のお答えの中からも、明らかになりましたように、ラジオの契約の状態というものは、将来において、急に上昇線をただらないだろう、しかも、高度な契約状態まではいかないだろう、大体緩慢な傾斜線を描いていくということになると思うのです。今日千四百万の受信者、われわれは協会予算審議の際に、この受信者が、容易に二千万までふえるというようなお話を聞いたことがない。であるならば、大体千五百万を一つの基準として、三十七年度までくらいは、ほんとうに協会の事業収入をより健全な予算として立てていくには、その程度に落ちつけておくのが、まず予算の安全性を保ち得るのじゃないか、こう思う。それに対して、こういうようにどんどん建設計画をしなくちゃならぬ。それには百十一億だけ三十七年度まで要る、こういうのです。これに比較をして、資金計画は、減価償却をやってみたり、あるいは売却固定資産の代金、特別償却等の一切がっさいのものを入れてみても、四十六億五千六百万円にしか満たない、五十五億の不足を生じているじゃないですか。  これが、財政投融資に求められていくのか、あるいはまた、料金値上げに求められていくのか。とにかく国民の電波、国民の放送を、ある完全な状態にするには、百十一億というものは、必要な金なんです、それに対する四十六億——五十五億の不足をどうするつもりか。これは、単にラジオ建設計画だけを示したに過ぎない。あと詳細に三十七年度までの事業計画一切がっさいを含めていくならば、相当の額が必要じゃないか。もっとも、ほかのところを見ておりませんから発見できないが、この二表を見ても、五十五億の不足額を生じておる。そういうことになった場合に、一体どうするのか。それを大臣は、今のお答えからいくならば、まず八十五円が、大体において二区切りであって、将来料金の値上げ等はしないであろう、その必要もなかろうというような見当は、これこそ見当違いじゃないですか。  こういう重大な問題が、今、さしむき三十四年度の予算審議の際ですから、そこまで研究する必要はないかもしれないけれども、やはり受信料をどうするのか、将来の放送協会をどうするのかということを、だれしも考えるならば、やはりそれまで言及せざるを得ない。だからして大臣の見込みは、見当違い、非常に安易な見方である。私は、そう思う。そういう事態になった場合に、どうします。
  104. 寺尾豊

    国務大臣寺尾豊君) これは、私は、今テレビにしても、ラジオにしても、老朽施設を改善するとか、あるいはFM放送研究であるとか、あるいはまた難聴地域の解消であるとか、ラジオといえども、最後の二つの大きな費用の、要る際であるし、テレビジョンも、またこれから今が一番、建設費、施設費等が要るわけでありますから、こういうことに対する三十七年度、これはまあ詳細なことは、経理局長から御説明をさせますが、これは今、一番そうした資金を多く要するときだから、従って、このラジオの方については、やはり今度の値上げを通していただかなければならぬ。テレビジョンの方は、ラジオと違って、新しい契約者が伸びていくということは考えられます。三十七年度においては、大体五%見当というものが予想できる。そうするとテレビジョンの方の経営というものは、まず見通しとしてはさほど悪くあるまい。私は、ラジオ受信料についても、将来というような、そういうふうな長いことを申し上げておるのでなくて、今回の八十五円値上げを御承認たまわれば、まあここ当分は、これでいけるのじゃないか。こういうことがNHKの事業計画資金計画を打ち立てます際にも、NHK自身も、そのような線が出ておる、こういうことでありまするから、このことについては、一応、NHKが今後の経営については、今回の御承認をたまわれば、あとは、安易じゃなくて、NHKの責任において、この事業の合理化もする、あるいはいろいろの面におけるところの効率的な、エフィシェンシーの高い経営をやるということであれば、これは一応、今回が一つの契機となって、NHKの経営というものは、一応安定の形がとられるのではないか。従って、ここまでこの財政投融資等についての心配は、これはもちろん、政府としては行なっていくつもりでありますが、大きくNHKが、年々赤字を増していくというようなことは、まず見通しとしては、そういうふうなことにはらないのじゃないか。  だから今後の経営というものは、野村会長が中心になって、各理事、あるいは経営委員会、あるいは全従事員という人たちが、一体の形において、大きく努力をしていけば、特に政府が、これに対して赤字を補填するとか、赤字のことについて、特にまた近い将来値上げをやらなければならぬとかということはないという見通しを申し上げたわけでありますが、それらについてのそれを証明する内容の答弁につきましては、お許しを得れば、NHK側から詳細説明をさせたいと思います。
  105. 森中守義

    ○森中守義君 協会には、別の角度から承わりますから、今は、政府の所見を私は聞いておる。  やはり、大臣のお答えは、八十五円の、この予算が通るとすれば、八十五円の値上げ予算が通れば、当分は値上げはないというお考えのようですが、私は、この予算が通る通らぬという論議じゃなしに、ものの考えはどうですかと、こういうことが承わっておる中心なのです。  放送法により、郵政大臣意見書を出すという、その意見書が問題です。やはり政府が、ある管掌事項、管掌権を持っておるということです。そういう際に、協会は事業の拡大をやり、陳腐化した設備の改善をはかっていく、あるいは研究態勢を強化確立をする、それで国民放送をより高めよう、この意欲を持っているのに、反面基礎になる契約者は、ある膠着状態になっておる。そうすると収入と支出のバランスがとれない。とれない証拠が、三十七年度のラジオだけの建設計画資金計画の中にも、一目瞭然と出ておるのじゃないか。こういう十年、二十年先のことでなくて、三十七年という三、四年先においてすらも、こういう事態が予見をされるならば、とにかく収支のバランスが償いがとれないならば、償えるように受信料値上げに道を求めようというお考えであるのか、あるいは意見書という、こういう項目にかかってきて、その他の方法によって受信料を押えようとするのか、それはどうなのですか。ものの考えを聞いておるのです。  だから、むやみにこの協会予算の八十五円値上げが通る通らぬというような、そういう当面の論争じゃありません。将来、協会が困れば、受信料によって一切補いをつけるか、その他に政府としては方法考えるのか、そこがどうですか。こう聞いておるつもりなんです。おわかりですか。
  106. 寺尾豊

    国務大臣寺尾豊君) これは、私の今お答え申し上げたのは、一応、まあ今回の上げる上げぬは別として、今回の事業計画資金計画、三十四年度の、これで協会というものは、一応今までの、いろいろの問題点、これからの経営ということにおいては見通しがつく。こういうことを申し上げておる。  その内容、詳細な、それが内容の実態で、お示しの点、いろいろ疑問があれば、その点は、経理局長に御説明をさせる以外に、私はそういうことの詳細についての説明というものは、きわめて不十分ですから、これはNHK当局に説明をさせるということを御了承願い、今後、いろいろの問題に、資金の問題に逢着して、経営が困難になった場合に、何によって求めるかという、その端的な御質問は、これはやはり、私はそのことだけについて申し上げるならば、協会の経営というものは、受信料をもってまかなっておるという形において、これは、やはり受信料というもので考えていく以外にはない、しかしながら、このことは、    〔委員長退席理事松平勇雄着席〕 私は、将来の問題として、遠き将来というのでもありませんが、そういう事態を仮定しての御質問でありますから、そういうお答えをしますが、これらのことは、同時に協会自身が私に要請をし、私に、そういう事業計画資金計画を毎年承認を求めて参るわけでありますから、その出されたことによって、私がそれを検討する。そうして、いずれかを決する。  そういうことでありますが、今回の承認によって、私はまず、ここのところ、一応安定した経営ができる、こういう見通しを持っておるわけであります。
  107. 森中守義

    ○森中守義君 どうも大臣、同じところを堂々めぐりされておりますが、言われんとするところは、わからぬでもない。しかし、仮定の話だといっても、さっきも申し上げたように、十年二十年先のことを言っておるのじゃない。具体的に協会が、三十七年まで計画を持っておるのですよ。しかも、それを各年次ごとに数字を出しておるのですよ。その数字から出て、そうして五十五億という、建設計画に対する資金計画というのが、どうしても不足を生ずる、こういう事態を前にして、一体どうするのか。次から次に、金が足りなくなれば、料金値上げに道を求めるのか、その他の方法に道を求めるのかというのは、これは私は、郵政大臣としては、単に協会の責任だ責任だと、こういうべきものじゃない。  いわゆる政府は、物価政策である、即料金政策である、あるいは言論報道に対する干渉、介入という意味でなくて、高度な一つの政策が必要なんです。そういう政策として、どうするのかということを私は聞いておるのですよ。だからこれをどうするこうするは、経理局長だ、協会の責任だとおっしゃるけれども、やはりこれは、全体的な政策の範疇の中において、一応は検討される、一応の結論が出なければ、これは協会の責任においてはできない、これが政府の責任じゃないか、大臣の責任だろうと思う。そういう政策として、どうお考えになるのですか、こういう質問なんです。了解いきますか。
  108. 寺尾豊

    国務大臣寺尾豊君) どうも、あなたの非常に高い識見でお尋ねになるから、私には了解できない点があるかもしれませんが、協会の要するに赤字を、政府がどうこうするということの責任は私はないと思います。ただし協会が、その建設に必要な、いろいろの施設の増強その他に必要な資金面については、あらゆる努力において、これを政府が心配していこう、これは一つ財政的に、財政投融資その他を理解をもって協会の計画に対して、協力をしていく。それから今回の放送法の改正等において、たとえば今まで三十億しか放送債券が発行できなかったものが百四十億ほどのものが——三倍の放送債券の発行が可能になった、これも、この発行をどうするかということには、いろいろの問題もありますが、そういうふうに、協会は経営に幅ができた——財政的な資金的な幅ができた。しかも受信料というものは、今回は百円説もありました。しかし、NHK自体がいろいろ事業計画資金計画を立てられて、まず八十五円程度であれば、今後やっていける、こういう一つの目安もつき、その計画もなったということが、今回のいわゆる三十四年度の予算案として御審議を賜わっておる実態であります。  それですから、森中委員が御指摘のように、もう三十七年には、五十五億のここに不足が出てくるではないか、これに対しては、どういうような処理をするつもりかということは、協会から、これはもういさい御説明を申し上げることより私は方法がない、こう私は考えておるのですが、十分、関心は持ち、協会の育成というものは、政府としては、これはもう当然行わなければならない。しかし協会が、その経営において、赤字を出したからといって、政府が、それに対する責任を持つとか、これに対して、これを補てんするとかいう考え方は、これは、政府としては持つべきでないし、また持つべき筋でもない、かようにまあ考えるわけであります。  でありますから、結局、森中委員のいろいろの御質問の御要旨を、私が想像して、あなたの質問に、私が合っていない答弁かもしれませんけれども、そういう私の説明に対して、不審があるじゃないか、郵政大臣の言っておる通りにはいかんじゃないかという御指摘であれば、それは経理局長なり、NHK会長が、詳細な御説明を申し上げて御了承が得たい、こういうわけであります。
  109. 森中守義

    ○森中守義君 大体、今の答弁は、少しピントが合ってきましたけれども、それは実体論として、あなたはそんなことをおっしゃらなかったようですが、前の大臣あたりは、協会が言う前に、みずから率先をして百円の料金値上げだ、こういってやっておるじゃないですか。そういうところに矛盾がある。実行上の問題として、協会がやるべきことを——今、大臣のお言葉を、そのまま尊重すれば、    〔理事松平勇雄退席委員長着席〕 協会がやるべきことを——政府が率先して言っておるのです。そういう、もろもろの要素から判断をするならば、私が言わなくても、いい得ることであるし、同時にまた、一つの政策論として、協会にしてもその他のところでも、これはもちろん、経済企画庁や大蔵省との関係もありましょうが、やはりむやみに料金を上ぐべきかどうかという問題は、私は帰するところは、政府に責任がある。端的に言って、そう言わざるを得ない。  だから五十五億の不足が出る、建設計画でも、それだけ出るのです。出る予定が立っておる。あと、今度は事業計画から出た場合には、また料金値上げをやるとか、その他に方法をつけるとか、そこのコントロールは、やはり私は、国全体の経済的な問題としての責任があるのではないか、こう思うので、よしんば、協会が金が足りなくなったから、八十五円から百円に来年度は上げてほしい、再来年度は百二十五円に上げてほしい、そういうような場合でも、それはよろしかろう、それは協会の責任だからやりなさいというようにしておいでになるのか、いや、それは困るから、ちょっと待て、ほかに何とかしょうというような、そういうコントロールをするのかしないのか。ただ私が、一応安心したのは、八十五円が一応、現在から将来のある期間まで——いつまでかわかりません、それは大臣おっしゃらないから——しかし、ここ当分は八十五円でいくのだ、こういうことですから、そのことに限っては了承できます。  しかし、繰り返して申しますように、また値げということで協会の責任において、それをやるというなら、それはよろしいということになるのかどうか、その点を明らかにしておいていただきたい。
  110. 寺尾豊

    国務大臣寺尾豊君) 私も、だんだん御質問の点がわかって参りました。ようやくピントが合ってきました。  要するに、三十七年度までは建設建設を重ねていくから、五十五億とかいうような借金もふえるでありましょう。しかしその反面、また今まであまり行わなかった特別償却ですね、こういうようなものも、だんだん三十七年度ごろまでには、この償却もできるということであれば、その辺から、その五十五億の御心配賜わっておる方の返済も、特別償却が終ってしまえば、その返済の方にも回すことができる、こういう点もあるわけです。すべてがそういうことじゃないですけれども——であって、ここしばらくは、値上げの必要はない、私はさような見通しをいたしておりますし、そのような方向に、ぜひNHK理事諸君、また従事員皆さんが努力していくと、またさような決意をいたしておりますから、このことは御信頼を賜わってけっこうだと、かように存じております。
  111. 森中守義

    ○森中守義君 もう一つのコントロールは……。
  112. 寺尾豊

    国務大臣寺尾豊君) コントロールは、私といたしましては、する意思がございません。
  113. 森中守義

    ○森中守義君 だいぶ先々のことまで触れ過ぎたようですが、一応、まあ正確に会議録にも残っておりますし、将来、そういう問題について、常時お尋ねする機会もあるかと思いますから、一応、この問題については、それで終っておきたいと思います。  それで、協会の方に少しお尋ねをしておきますが、その第一は、職員の処遇は、どういうことになっておりますか。具体的にお尋ねしますと、日放労の賃金の要求は、幾らですか。
  114. 首藤憲太郎

    参考人首藤憲太郎君) 日放労からは、昨年から協会に対しまして給与につきまして要求しております項目のおもなものを申し上げますと、現在の本給を一割上げてくれと、そして、さらにその一割上げた上に、千円を加算してくれと、こういうことでございます。すなわち、一割はこれは本給に対する一割、あと千円は一律に千円と。それから、地域差は、地域給支給率を、現在一五%地域を二〇%にし、現在一〇%地域を一五%にしてくれ、そういうことでございます。それから、社宅を支給されております者以外の者に対しまして、すなわち自分の家とか、あるいは自分で家を借りておる者、そういう者に対して、住宅手当を支給してくれと。その住宅手当は、扶養家族のある者は、月額二千円、それ以外の者は月額千円。それから夏期手当、年末手当、すなわち賞与に相当するものでございますが、これは、三十四年度において平均基準賃金の少くとも三カ月分は確保してくれと、大体以上が大きなものでございます。  それからそのほかに、退職手当につきまして、三十年勤続の者を、大体現在の倍額にしてくれ、それから勤務年数の中において、中の方が中だるみになっているから、そこをやはり引き上げて是正してくれと、これが大体大きな項目でございます。
  115. 森中守義

    ○森中守義君 この予算書によりますと、平均千二百円の調整原資が確保されておるようです。この千二百円というものは、全体の予算から逆算をしたのですか、それとも実質賃金としてのべース・アップを意味するのですか、これはどちらになるわけですか。
  116. 首藤憲太郎

    参考人首藤憲太郎君) これは、考え方としましては、ベース・アップと申しますか、全体的な給与の低水準を是正しようという考えでございます。そして、この千二百円につきましては、実は私どもとしましては、社会水準に達しますためには、これでは実は不足かと考えているわけでございますが、やはりこの財政のワクというものを考えまして、それから今後において、またこれを是正する機会が適正な方法において、もしあれば、それをしたいというようなことも考えまして、千二百円の原資をここに計上さしていただいたわけでございます。
  117. 森中守義

    ○森中守義君 ずっと以前のこの委員会で、鈴木委員と私と二人であったかと思いますが、どうも関連産業としての朝日、読売、毎日、こういう三社に対して、もちろんそういう新聞関係は、いうところの商業新聞ですから、協会とは、性格においては多少違うにしても、大体職員構成、勤務の態様、こういうものが、ほとんどいっていいくらいに類似しておる。そこで、当初は三千二、三百円の価格差があったのに、漸次この格差が広がってきて、今日においては、六千円近い格差が生じておるようです。従って、少くとも関連産業との格差を縮める必要がある。しかも、協会職員の処遇の問題は、そのこと自体が、協会の一つの発展、繁栄を意味することであるということで、私は、努めて三社並みに持っていくべきであろう、格差を縮めなければいかぬ、こういうお尋ねをしまして、しかも要望いたしました。これに対して、当時協会の方から、善処しますと、努めて努力しますと、こういったようなお答えをいただいておる。  しこうして、この千二百円というのが、そういったような質問及び答えという精神が入れられておるものかどうか、それをお尋ねしたい。従って、今、首藤理局長のお答えをいただきますと、どうも、これは全体の予算を逆算して千二百円を出したというような印象を受けるのです。実質的に賃金を積み立てていって、それで千二百円という調整原資が必要であるという、そういったようには受け取れません。その間のお考えは、どういうことでございましょうか。
  118. 首藤憲太郎

    参考人首藤憲太郎君) 国会におきまして、いつも御意見をちょうだいしておるわけでございます。私どもとしましても、同じ考えでございまして、従業員の処遇は、やはりよくいたしまして、十分な能力を発揮いたしたいという考え方を持っておるわけでございます。それで、この見地から申しまして、前国会におきましても、御要望に沿いたいという考えを申し上げたわけでございます。それが、お説の通りに、十分に、これによって達成されたとは、私ども考えておりません。もちろん、まだこの程度の是正をいたしましても、なおかつ、一流企業に対しまして、かなりな格差があるということは事案でございます。  ただ、私どもとしまして、これはただ予算から逆算したという面ばかりではございません。もちろん、財政の規模によりまして、許されるならば、これは十分なことをもう少しいたしたいという気持を持っておるわけでございますが、できれば他企業のいいところと同じ程度までは持っていく、少くとも同じところまでは持っていきたいという気持は現在持っております。今後、その目標に向いまして努力いたしたいと考えておるわけでございますが、現在の情勢におきましては、これだけでも、やはり近づくのだと、そうして今後、やはり近づける努力をいたしていきたい、かような考え方でございます。  もちろん、財政的なワクから制約を受けていることもございますが、単純に、それだけによったというわけでもございませんので、問題は、今後一つ、一そうの努力をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  119. 森中守義

    ○森中守義君 それから、年間の昇給は、何回あるのですか、定期昇給は。そうして、今、一回の昇給は幾らですか。
  120. 首藤憲太郎

    参考人首藤憲太郎君) 年間の昇給は、一回でございます。そうして、この予算書にも計上してございますが、四一%の原資を取ってございまして、その四・一%の原資におきまして、昇給をさしております。
  121. 森中守義

    ○森中守義君 大体百パーセント、昇給は行われているということですね。
  122. 首藤憲太郎

    参考人首藤憲太郎君) そうです。
  123. 森中守義

    ○森中守義君 そこで、ここ数年の間、数年といっても、二、三年の間ですが、どうしても給与総額に不足を生じて、予算総則の七条、弾力条項の発動をしたような実例がございますか。
  124. 首藤憲太郎

    参考人首藤憲太郎君) 弾力条項の発動は、最近数カ年間において実行しております。ただ金額におきましては、その年度の成績によりまして、いろいろ違っておりますけれども、増収、その他事情の許す限りにおきまして実行しております。
  125. 森中守義

    ○森中守義君 それから予算総則の中、七条に、予算外収入というようなことがありますが、ここ二、三年の閥、いわゆる予算外収入はどのくらいですか。
  126. 首藤憲太郎

    参考人首藤憲太郎君) 昨年度について申し上げますと、協会の収入は、これはもう、ほとんど受信料収入でございますので、予算外収入と申しますのは、これはほとんど全部、受信料の予定以上の収入でございます。三十二年度におきましては、ラジオ経理におきまして約一億四千万円、それから三十一年度におきましては約七千万円弱、このようになっております。
  127. 森中守義

    ○森中守義君 それから同じく七条に、事業量の増加というようなことをいっておりますが、これは今言われたように、テレビ、あるいはラジオの視聴者の増加、これだけですか、ほかに何か収入の方法があるのですか。
  128. 首藤憲太郎

    参考人首藤憲太郎君) 事業量の増加と申しますのは、やはり先ほど申し上げましたように、協会の収入がほとんど受信料に依存しておりますので、やはり受信者の増加ということになります。そのほかに、多少のものはございます。たとえば雑収入に入るようなものもございますけれども、これは、わずかでありまして、そのほとんど大部分は、受信者の増加である、こうなっております。
  129. 森中守義

    ○森中守義君 さっき住宅というお話が出ましたが、この住宅は、管理職員の住宅の数と、一般職員の住宅の数は、どういう比率になりますか。
  130. 首藤憲太郎

    参考人首藤憲太郎君) 現在、協会施設としての住宅が、大体二千四百ございますが、そのうち管理職用のものが、約、大体六百でございます。
  131. 森中守義

    ○森中守義君 そこで、この予算総則の七条を、三十四年度でどの程度、いわゆる予算外収入があるのか、今のところ、私も詳しく承わろうとは思いませんが、大体、昨年の協会予算を詳しく承わったときと、本日、ここに提供されている内容からいけば、一千二百円の調整原資というものは、昨年のそれに比べて、そう大した変化がありません。従って、これは無責任なある部分の人たちの御意見のようですから、そのことを、何もここで問題に供するというのじゃありませんが、何かしら今度の八十五円の値上げが、日本放送協会の職員の賃金値上げのために、これをやるのだというようなことが言われているやに聞いております。私は実際問題として、これを審議に当って、はなはだ遺憾に思う。むしろ、例年この程度の調整原資というものは、毎年出ておる。だから、受信料を高くして、協会職員に一種の配分という形に行われることは、これは許されない。許されはしませんが、どうも、やはりそういう一面の見方をされながら、協会の方では、少し控え目に過ぎてはいないだろうかというようなふうな意見を私は持つ。これは私の見解です。  従って、例年この程度の協会職員の処遇改善の問題が、予算として出ておる実情に徴しても、これは決して、私は当然な調整原資だとは思えない。従って、事業外の、予算外の収入が幾らあるかわかりませんが、これは、やはり協会職員の意欲をさらに高揚させ、しかも協会のほんとうの任務を果していくには、野村会長や、あるいは各理事さんだけの力によって私はできない。やはり全国に配置をされている第一線の取材記者、あるいは機械の保守に当っている人、こういう人たちの日夜を分たない努力によって、初めて私は協会の任務は完遂できる、こう思うのです。  従って、予算外の収入がどの程度かわかりませんが、一千二百円があまりに控え目に過ぎる。内輪目に過ぎておる。のみならず、この一千二百円の調整をしてみても、さっき申し上げた朝日、毎日、読売、この関連産業との格差は縮まりません、こういうところに協会職員の、不満もあろうし、また、そのことによって、協会職員の勤労意欲が低下するとも思わない、思いはしませんが、もう少し、その点に思いをいたして、予算外の収入があるならば、ほんとうに必要と認める日放労等の主張があるとするならば、大胆率直に、この点については、協会としては特段の配意が私は望ましい、こう思います。  同時にまた、住宅についても、先刻の経理局長お話からいけば、やはり管理職員の数に対する住宅の数、一般職員の数に対する住宅の数は、どうもやはり比較にならない。しかも、山間の中継所にいたり、あるいは勤務の態様が、不規則な勤務条件の人がたくさん協会にはおいでになるようであります。こういう人たちのためにも、もう少し住宅を何とか考えていただきたい。同時にまた、それが急に実現できないならば、先刻お話にあったようですが、ぜひ何がしかの住宅手当は、これは当然の労働に対する対価として保障すべきであろう、こういうことを私は意見と同時に、要請をかねてお尋ねしたいと思うのです。  これに対して、会長どういう御所見ですか。
  132. 野村秀雄

    参考人(野村秀雄君) 昨日でしたか、一昨日であったか、鈴木委員からも、そういう職員の待遇の改善についての御質問がありましたから、私は繰り返して申し上げるようでありますが、このNHKの大きな仕事を運営しておるのは、NHKに職を奉じておるすべての人である。従って、この人々が安んじてその職に精進し得るように待遇を改善していきたい、また厚生施設についても、できるだけよりよいものにいたしたい、かように考えておりまして、明年度の予算においても、待遇改善、ある程度の待遇改善はいたしましたが、NHKの今後の運営を円滑に、健全にいたす上において、できるだけの改善は将来いたしていきたい、かように考えております。
  133. 森中守義

    ○森中守義君 ぜひ、今会長の御発言を、私はこの際、信頼をしたいと思います。  それで、もう一つ、そういうような関係のことで経理局長にお尋ねしますが、この予算の特色として、ラジオあるいはテレビともに、非常に充実をしたいという意欲を盛られております。しかも、それが具体的に内容としてある、そういう際に、人員はわずか一千三十八名の増加にすぎない。ことに建設部門等は、相当大幅な予算がとられておりますが、この一千三十八名という人員の増加で、果して完全に年間の建設計画その他事業計画の遂行ができますか、ことに、こういうむずかしい論議の中から、審議が発展をしている協会の予算に、もしも建設勘定等において、次年度への繰り越し等ができるとするならば、これは、私は大変な問題だと思うのです。どうしても年間に所定の計画を促進をしていただかなければ困ります。そういう繰り越しをしないという二つの原則、この一年の間、大へんなことだと思うのです。そういうことを考え合わした場合に、果して一千三十八名の人員の増加でやっていけるかどうかというのが経理局長にお尋ねをしたい第一の問題です。  さらに次の問題は、現在、臨時職員あるいは嘱託、こういうきわめて変則的な雇用条件の職員がだいぶおいでになる。しかも、そういう皆さん方がやっておいでになる業務の内容というものは、一般の職員の皆さんと、さして大差のない複雑にして高度な仕事をやっておいでになるようです。もちろん所管庁、国家行政機関においては、定員法というむずかしいワクがありますが、協会に、そういう定員法等が適用されているはずがない。また、協会自体の定員制をお持ちになっているかどうか存じませんが、やはりこういう画期的な一つの事業形態に入ろうとするときには、こういう人の面の配慮、ことに実際問題として、臨時、嘱託という二種類に大別できる職員がおいでになりますが、こういう人たちに支払っている人件費と、その人たちを本務者に切りかえた場合の人件費は、そうそう私は大幅に格差があるとは思いません。  従って、こういう人たちも本採用にすべきではなかろうか、こう思うのですが、こういうことに対して経理局長はどうお考えですか。
  134. 首藤憲太郎

    参考人首藤憲太郎君) お答え申し上げます。  初めの方の建設関係のことでございますが、お説の通り、明年も非常に建設関係が、仕事が加重して参っております。従いまして、建設関係の要員は、充足することはもちろん必要だと考えております。  ただ建設関係につきましては、五カ年計画でもごらんいただきますように、主な大規模な建設は、これは五カ年間でやります。そのあとは、今度は通常の状態に戻っていく、こういうことでございます。従いまして、ここで建設関係のみの専用的な人員を無計画に五年間に限りましたものを、仮に採用いたしますと、これが一段落しました五年後に、この要員が実は余ってくる、あるいはそれだけの仕事がちょっと減るのじゃないか、こういうふうに思います。従って経営上これはよほど考えなければならん点だ、そう考えます。  そこで、それを労働過重をさせませんで、しかも、その辺を調整した適当な要員を充足していくということを実は研究したのでございます。その結果、採用しましたのが、たとえばNHKにおいては、従来局を建設するとか、そういうことにつきましては、建物から機械とか、そういうものにつきまして、自分で設計しまして、自分で実はやっておったのでございます。ところが最近におきましては、機械につきましても、メーカーの技術が発達して参りまして、一つの仕様書と申しますか、大筋のものを提示いたしますと、これは、NHKと従来一緒に仕事をしておりますので、メーカー関係の方で、それに応じたものは、完全に作ってもらえるという状況になって参りました。それから建物その他の施設につきましても、これを一から十まで、やはり協会自身の手によって設計するというふうなことをいたしますと、これは、幾ら人があっても足らぬわけでございます。そういうものの中で、特に重要な面、協会としましても、スタジオとかそういうような面は、一番重要でございますので、特に重要な面は協会自身でいたす。そのほかに、一応外部の設計者によってできる面につきましては、外部の設計者に、これを依頼するというふうなことをいたしますと、一応計算上、必要として算定されます要員は、採用しないでもいいということになるわけでございます。従って、そういう工夫をいたしまして、建設要員につきましては、適当な人件費を計上しているわけでありますが、一方、そういうことによりまして、労働過重を避けるという工夫をいたしたいと考えております。  それから、その次の臨時、嘱託要員のことでございますが、これは、臨時職員あるいは嘱託というのは、趣旨としましては、臨時的に必要な仕事をやらせるための短期要員だということでございますけれども、採用して仕事をやらしております者の中には、なかなか有能な人間もいるということでございます。従いまして、それらが、やや長期化しているということでございます。従って、それらの者の中で、協会の職員としての能力を持っているというものは、職員に採用しまして、十分な能力を発揮させるという手段を講じておりますし、今後も、そういうことでやって参るつもりでございます。
  135. 森中守義

    ○森中守義君 最後に一つ、お尋ねいたしておきますが、電波関係の国際会議が、今年だいぶあるようであります。これに対する協会としての態勢は、完全にできておりますか。
  136. 溝上けい

    参考人(溝上けい君) お説のように、だいぶ国際会議が多いのでございまして、ごく最近も、アメリカのロスアンゼルスにCC—Rという会議がございますが、なお、さらに来年度になりましてからは、二つばかり大きな会議がございます。  さしむきのアメリカの会議に対しましては、先般人を定め二名派遣することにしまして、すでに出発いたしました。来年度の問題につきましては、来年度の予算の中で、具体的に決定をいたしますが、われわれといたしましては、できるだけ必要な人員を出しまして、これは政府を代表されて行かれるわけでありますから、御協力する用意と覚悟を持っております。
  137. 森中守義

    ○森中守義君 よくわかりました。  それから放送法審議の際に、だいぶ問題にしたことですが、例のアジア放送会議ですね、これを、私は岸総理に対して、郵政省、外務省が後援で協会が主催であるならばやはり政府としても関係がある。従って中共との電波協定あたりも、今や喫緊の問題になっておる、従って協定を締結する一前段として、アジアの放送会議に、中共あたりを招致する意思が政府にありやいなや、こういうお尋ねをしたところが、岸総理は、非常に答弁があいまいでして、その際に協会側の御意向を一応聞いてみたい、こういったような内容でありました。おそらく本年も同様な会議をお開きになると思います。これに対して、中共に参加するように呼びかけをされる御意思がありますか。
  138. 野村秀雄

    参考人(野村秀雄君) この問題も、昨日でしたか、一昨日でしたか、山田委員から御質問がありまして、お答えいたしたのでありますが、今お話のように、このアジア放送会議は、NHK主催で、郵政省、外務省の後援と、また民間放送の後援のもとに、一昨年第一回を開き、昨年その第二回を開いたのでありますが、昨年の第二回は、開催地として、また主催者として、アジア・オリンピック大会が、東京において開催せられるから、ぜひ、便宜上NHKで再び主催してくれという要望がありましたから、昨年、第二回の会議を東京において開催いたしたのでありますが、次の第三回の開催地をどこにするかということについては、各国いろいろの議論があって、なかなかまとまらないような状態で、ぜひ、NHKの主催で第三回も東京でやってくれというお話がありました。  しかし私は、一回も、二回も、NHKが主催したのであるから、三回目は、どこかほかの国でやってもらいたい、持ち回りでやることが、この会議を円満に進めるゆえんであるからということを申しましたが、各国それぞれの事情があって、なかなかまとまらないのであります  それで、私はさらにNHKが主催して、すべて東京でやるというようなことになると、何かNHKが、日本がこれを支配するようなふうに見えてもおもしろくない。従って会費を各国で分担して、これは自分らの会議である、NHKの会議ではない、お互いの会議であるというような考えでこの会議を盛り立てていってもらいたいということを切に申して、各国においても、しからば各国で会費を分担しよう、しかし、こういうように開催地について、各国それぞれ意見があるのだから、もう一回、NHKの主催で東京で開催してもらいたい、こういう切なる要望があって、第三回の開催をNHK主催のもとに、東京で開催することに決定したのであります。  かように、開催地の問題において、各国それぞれの意見があるような状態でありますから、ここに、新しく国を加えるとか何とかということになると、この運営委員会において、相当議論があり、放送会議そのものに大きなひびがきやしないかというおそれを私は持ったのであります。従って、この問題はできるだけ一気に問題を解決することでなしに、漸次、そういうような機運が展開するように働きかけていったらどうか、かように考えておりまして、この第三回の会議は、秋ごろになろうと思いますが、その第三回の会議には、新しい国を加えて開催するということは、むずかしい情勢であることを御了承願いたいと思います。
  139. 手島栄

    委員長手島栄君) 他に、御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  140. 手島栄

    委員長手島栄君) 御異議ないと認めます。  ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  141. 手島栄

    委員長手島栄君) 速記をつけて下さい。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  142. 森中守義

    ○森中守義君 私は、ただいま議題となりました日本放送協会三十四年度予算について、日本社会党を代表し、放送法第三十七条第二項の規定に基き国会承認を求めるの件について反対の意見を表明するものであります。  本案の内容は、ラジオ受信料値上げを正眼としており、現行の月額六十七円を八十五円に改め、三十三億四千万円の増収をはからんとしております。しかして政府及び放送協会は、その値上げの理由として、昭和三十二年度以来、ラジオの普及が頭打ちとなって、三十三年度は三十万、三十四年度は十万六千程度に落ちたので、事業の拡充改善はもとより、経常費さえも不足する経営上憂うべき状態に立ち至ったというのであります。しかしながら、本委員会の審議においても明らかになりました通り、本案の内容を詳細に検討いたしてみますと、政府及び協会の説明が、値上げの理由とならないことが指摘できるのであります。私は、そのおもなる点について申し述べたいと思います。  協会の多年の努力によって、ラジオは、広く全国的に普及いたして参り、その割合は、全国総世帯の八二%に達しましたので、今後は、その伸びが悪くなることは当然予想できます。しかし各県別の普及状況を見ると、九〇%ないし九五%のところもあるが、六〇%ないしは七〇%のところも相当多くあるのであります。この際、これらの低率地域の普及に努力せられて、八二%程度まで引き上げられるならば、少くとも十億円程度の増収が期待できるのであります。さらに私が、奇怪に思いますことは、三十四年度新規契約者の増加が百三十五万、契約の廃止百二十四万と予定していることであります。もし、これが事実であるならば、まことに驚くべきことでありまして、さながらざるで水をすくっていると同様の愚をいたされておることになります。新規契約者の獲得には、多大の経費と努力を必要としますのに、これが、ことごとくむだに終るものとするなら、新規契約の開発は、愚策もはなはだしいと言わなければなりません。新規開発の困難になった今日においては、既契約の確保が最重要の問題と言わなければなりません。かような膨大な契約が消滅することを承知しながら、何ら積極的な防止対策を講じないで、ただ座視している態度は、私のとうてい了承し得ないところであります。私が指摘いたしますように、協会が新規契約の獲得と、既契約維持のために最善の努力をいたさるべきでありまして、これによって十億円以上の増収を期待することができるのであります。次に、国際放送の拡充についてであります。その所要額は、総額三億三千万円を計上いたしております。そもそも国際放送は、国策として政府が行うべきものでありまして、これに要する経費は、すべて政府の負担でなければならないことは、放送法の明記するところであります。国内受信者の負担すべきものではないことは申すまでもありません。当委員会におきましても、かねてから、しばしば協会負担の不当を指摘したのでありまして、政府も、またその不当を認め、増額を確約しておるにもかかわらず、本予算においても、ついにその実現をいたさなかったのは、遺憾しごくと言わなければなりません。佐藤大蔵大臣も、国際放送の重要性を率直に認め、予算増額の必要と、その考慮を言明しているのでありますから、直ちに政府において全額負担の措置を強く要求するものであります。また、協会は各種学校、生活保護者等に対し、受信料を免除するものとして、その数は、昨年度までに五十五万世帯に及んでおり、本年度は、これを六十七万世帯に拡大をせんとしておるのでありますが、学校教育を助成し、生活困窮者の家庭放送の恩恵を及ぼさんがために、受信料を免除せんとすることは、まことに適当であります。しかしながら、その免除総額六億円を、あげて協会の負担としたことは、不当の措置と言わなければなりません。申すまでもなく、学校教育などは国の事業であります。生活困窮者の救済は、政府みずからこれを行うべきであるのであります。協会が財政の危機と称して、料金の値上げを強行しているのに、その資金を事業目的外に使用することは、受信者を偽わるものと言わなければなりません。かかる意味において、政府の責任の回避により、協会は、国際放送経費三億三千万円と合わせて十億円に及ぶ無用な支出を強要されているわけであります。  また、協会の事業計画によりますと、ラジオにおいては、放送番組の充実、中波放送網の完成、老朽施設の改善、FM放送の開設、職員の待遇改善、研究機関の充実などをあげておりまして、その計画は、きわめて適当であり、私もまた、賛意を表するものでありますが、これに対する資金計画は、一部不適当と認められるものもあるのであります。まずFM放送の開設のため一億円を見込んでいることであります。協会は、FM放送を第三放送として全国に普及しようと計画いたしておりますが、FM放送は、混信防止のため、特定地域に実施せらるべきもので、しかも今日、未だ実験段階にあるに過ぎません。全国普及は不急の計画であり、これに関する予算は無用であります。  私が最も驚くことは、老朽設備の改善のために、十六億円を予定していることであります。協会資産のうち、償却を要するものは、総額七十九億円でありますが、これを三十七年度までの四カ年間に全額を償却することとし、三十四年度十六億円を充当しております。協会の説明によれば、昭和二十九年以前の設備機器は老朽化したので、特別償却をいたす必要があるというのでありますが、二十九年以前においても、償却は行われていたのでありますから、今日、突如として一挙にかかる巨額の償却を行う理由のあるべきはずがありません。協会が国民の事業体として、国民のために善良なる経営管理をいたしているならば、かかる事態を発生することはあり得ないのであります。もとより設備の近代化、能率化は、これをはからねばなりません。かりにこのことが事実とすれば、受信料値上げの愚をもってせず、よろしく政府財政資金など低利の資金をもって充てるべきであります。  以上、私の指摘したところに従って、政府及び協会が、相互に誠意をもって収支の検討、調整をするならば、現行料金をもって、おおむね十分に運営ができるのであり、すなわち値上げの必要はないと断ずるのであります。  言うまでもなく料金の値上げは、運営の実情と社会の反響を慎重に考慮して、これを行うべきものであります。特に受信料値上げは、受信者の納得を得ることがきわめて困難であります。今日においてさえ、料金の収納に摩擦があるのであります。ましてや値上げをすれば、ますますその度を強くするのであります。値上げをする前に、よろしく協会は、広く世論を聞き、その使命を反省し、慎重にその運営のあり方を再検討せられるべきであります。また政府は、その当然の負担である経費をすみやかに協会に交付するとともに、新規拡充資金の融通を極力あっせんすべきであります。  以上、私は理由を明かにいたしまして、反対の討論を終りたいと思います。
  143. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 ただいま議題となっております放送法第三十七条第二項の規定に基き国会承認を求めるの件につきまして、私は、自由民主党を代表して承認を与えることに賛意を表するものであります。  本件の内容であります日本放送協会昭和三十四年度収支予算、事業計画及び資金計画は、郵政大臣意見書にも述べられました通り昭和三十三年度を初年度とする五カ年計画にのっとり、企画立案せられたものでありまして、その内容は、協会が放送法の定めるところにより、ラジオテレビ、両事業にわたり、その使命を達成するため必要とするものでありまして、いずれも適当であると認められます。  ただ、右の予算案中、特に問題とすべきことは、ラジオ受信料を月額八十五円に改定せんとする点にあるのでありますが、一面において難聴地域を救済し、全国を百パーセント、カバーする放送網を完成することや、老朽施設の改善をはかることや、放送内容の充実向上をはかることを、きわめて緊要とするにかかわりませず、他面、ラジオ受信契約者の増加による収入増加が、今後期待しがたい状況にある事実を彼此勘案いたしますと、この程度の受信料の改定は、この際やむを得ない措置であると考えられます。  ただ、この際協会に対し、特に要望したいことは、本件について国会承認が得られれば、協会の財政基礎が確立し、ラジオテレビの五カ年計画実現の確信を得られることと思いますが、問題は、今やわが国は、放送事業の異常な、急激な発達によりまして、ややもすれば社会に与える悪影響が顕著ならんとする傾向につきましても、種々論議されている際でありますから、協会が、世界各国にもあまり例を見ない全国民を対象として、ラジオテレビ放送を行わんとする公共機関である点にかんがみましても、いかにして、すみやかに全国放送網を完成し、かつ、その放送内容を充実して、社会の教育、教養水準を高め、国民文化の向上に資すべきかに、常に十分な考慮を払い、その、あらゆる機能を動員して、法律の期待する目的の達成に万全を期すべきだと考えます。  なお、教育テレビをすみやかに全国的に普及せしめるため必要とするUHF帯周波数についての研究、及びそれに伴うUHF帯VHF帯との混合放送により生ずべき各種の障害除去のための研究並びにラジオテレビを通じ、微電力局を無人操作するため必要な技術的研究等につきましては、協会は、その独自の立場から、格段の努力を払うべきであると考えます。
  144. 長谷部ひろ

    長谷部ひろ君 私は、無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となっております放送法第三十七条第二項の規定に基き国会承認を求めるの件に対し、賛成いたします。  その理由を簡単に申しますと、私どもは、ラジオテレビが、国民の教育、教養に寄与する役割のいかに大きいかを認識し、教育ラジオ教育テレビの必要を強く感じておりますが、全国あまねく、ラジオテレビのサービスを提供すべき公共的使命をになったNHKが、施設面においても、番組面においても、今後、最も力を注ぐべき分野は、やはり放送を通じて、国民の教育、教養に資する面にあることでございます。  本案の内容を検討いたしますると、NHKは、三十三年度を初年度とする五カ年計画を定め、この間に、中波放送網の完成、テレビの全国普及、FM放送の開設、国際放送の拡充、教育教養番組の強化等をはかり、その一環として本年度は、ラジオの老朽施設の改善、放送番組研究活動、国際放送の充実、テレビの普及等に重点を置いて、NHKとして当然なすべき任務の推進に努力しようとしているのであります。またNHKは、公共放送として、ある場合には収支の採算を度外視しても、なすべきことをなさねばならぬ責務をになっているものと、私たちは思っております。今回の予算案は、ラジオ受信料の引き上げを含むものではございますが、全国どこでも、ラジオを聞くことが可能になり、また番組の内容においても、さらに一そう、よりよき放送を実施してもらえるものならば、月額十八円程度の値上げもやむを得ないものではないかと思っております。  最後に、私はNHK当局に対しまして、今回の料金値上げによって、国民は新たに負担が増すのであります。しかし国民は、NHKのよりよい放送を提供されることを強く期待しているわけでございますから、この国民の期待にこたえるよう、最善の努力をされますように要望いたしまして、私の賛成討論を終ります。
  145. 手島栄

    委員長手島栄君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めて、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 手島栄

    委員長手島栄君) 御異議ないと認めます。  これより採決に入ります。放送法第三十七条第二項の規定に基き、国会承認を求めるの件を問題に供します。  本件を原案通り承認することに、賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手]
  147. 手島栄

    委員長手島栄君) 挙手者多数と認めます。よって本件は、原案通り承認すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  148. 手島栄

    委員長手島栄君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。
  149. 寺尾豊

    国務大臣寺尾豊君) ただいまは、日本放送協会昭和三十四年度収支予算、事業計画並びに資金計画につきまして、連日の真摯なる御審査の結果、御承認を賜りましたことを深く感謝を申し上げます。厚く御礼を申し上げます。
  150. 野村秀雄

    参考人(野村秀雄君) NHKを代表いたしまして、御礼の言葉を申し上げたいと思います。  NHK昭和三十四年度収支予算、事業計画及び資金計画について、国会の御審議をお願いいたしまして、本日御承認をいただいたことを、まことに感謝にたえず、厚く御礼を申し上げます。三十四年度の予算、事業計画資金計画は、平年度のそれと異なって、ラジオ受信料金の値上げを内容としたものでありますために、国会において、いろいろ御議論、御意見があることは、まことにごもっともと存じます。私どもは、終始これを謹聴いたしておりました。いろいろの御議論はありましたけれども、NHKに対する深い御認識と、暖かい御同情とをもっていたされたものでありまして、私どもは、この御議論を、よく拝聴して、今後の施策の上に、大きなる参考といたし、NHKにかけられた大きな使命を果していくようにいたす所存であります。決して、この受信料値上げの上にあぐらをかくようなことなしに、われわれの最善を尽して、最大の効率を上げて、国民の皆さまの御期待に沿うようにつとめることをお誓い申し上げまして、お礼といたしたいと思います。  なお、こういう機会に申し上げていいか悪いかわかりませんが、私の心持ちとして抱いておることは、地方選挙も間近に迫り、また参議院半数改選も近くあって、国会の内外、すこぶる多事のときにかかわらず、皆さまが、連日熱心、慎重に御審議下さった、その御労苦に対して、まことに感激にたえません。私どもは、この皆さまの御厚情に対し、深く心に銘じて、今後の運営に力を尽していきたいと思いますから、どうか、今後ともよろしく御鞭撻、御督励下さるように、切にお願い申し上げます。
  151. 手島栄

    委員長手島栄君) これにて、散会いたします。    午後六時十七分散会