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説明員(荘宏君) 今回の
放送法改正案を立案するに当りまして、確かに受信料制度の問題も大きな問題であるということで、私
ども慎重に
検討をいたしました。その結果は、ただいま
大臣からも
お話しがございましたように、現在の制度にとってかわるべき名案がどうしても出ないということで、現在のところ、今までのまま据え置くということにいたした次第でございます。
それで、今までの
臨時放送法審議会の答申はどういうものであったか、また、どういうふうな案を
考えたかという点についてお答えを申し上げますと、まず審議会の方の答申は次のようなものでございました。
臨時放送法審議会といたしましては、三十一年の七月十三日付の答申においてこのように申しております。すなわち、
NHKの
収支予算等は、これは、ただいまは
国会にお出しして御承認をいただいておるわけでありますが、少数
意見としては現行法の
通りすべきであるという
意見もございましたが、多数
意見としましては、
協会の
収支予算等は
郵政大臣の認可事項とすることが適当であるとしております。そして、これに受信料が関連をしてくるわけでございますが、現在の
法律によりますと、受信料は
国会に
収支予算等をお出しして、それを御承認願うことによって定まるということになっておりますが、ただいまの答申のように
収支予算等は
郵政大臣の認可事項といたしました場合には、受信料がどのようにしてきまるかという点が問題になるわけでございます。この点について答申におきましては、かように印しております。「現行法においては、受信料の額は、
国会が
収支予算を承認することによって定めることとなっており、
事業年度ごとに新たに決定されるのであるが、これは予算
編成の基礎を不安定にし、
事業の
運営上好ましくないので、
収支予算とは別に決定すべきものと
考える。」、すなわち予算と受信料の額というものは別にきめるという立場をとっております。そうしてそのきめ方については次のように申しております。「また、受信料の額の決定は、国民生活に対する影響を考慮し、慎重に
検討すべき問題であるから、
法律をもって行うことが適当であると
考える。」、かように申しまして、受信料の額は予算と切り離し、
法律をもってきめていただくと、こういうふうにするがよろしいと、こういう答申でございました。
さて、今回の
改正案を作るに当りまして、私
どもにおいて
検討いたしましたところは、次のような工合でございました。現在の
放送法の第三十二条によりますと、「
協会の
放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、
協会とその
放送の受信についての契約をしなければならない。」、かようになっております。このくだりの前半分、すなわち「
協会の
放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、」というとり方を、このままにしておくのがよろしいか、あるいは、およそ
日本国内において
放送の受信設備をした者はどこの
放送が聞けようと、とにかく受信設備をした者はというように、すべての者に広げるかという点が、この前半分で問題となるわけでございます。それからあと半分は、
協会と契約をしなければならないというふうになっておりますが、これについて、イギリスでやっておりますように、国に納めるというようなやり方をしたらどうかという
考えが
一つございます。それからまた、
NHKに納めなければならない、契約をしなければならないではなくて、
NHKに金を納めなければならないというふうにやったらどうかというような
考え方があと半分にあるわけでございます。それで上二つ下二つのいろいろの組み合せ方があるわけでございますが、そのうちの主要なものについて申し上げますと、欧州各国等において行われている一番代表的な制度は、あらゆる受信設備をやったすべての人は国の許可をもらわなければならない、受信機設置の許可をもらわなければならないといたしまして、その許可を受けた者は年に幾ら幾ら払わなければならないという許可料の制度にすることでございます。そのやり方によりますと、大前提といたしまして、あらゆる受信機を設置した人は国の許可を得なければならないという新たな制度を起す必要があるわけでございます。
日本におきましても、
電波法が施行される以前におきましては、すなわち無線電信法の時代でございますが、当時におきましては受信機の設置も自由でなくて、すべて逓信
大臣の許可を要するということになっておりました。それが
電波法によって、受信設備の設置は自由であるということになって今日に至っておるわけでございます。この受信機設置の自由をもう一度
昭和二十五年以前の状態に便して、国の許可にかからせるということは、国民の間に非常な抵抗があるのではなかろうか。現在そこまで制度を戻すということは、言うべくして行いがたいのではなかろうか、かように
考えたことが、そのやり方についての
一つの難点でございます。
それからもう
一つ、そのやり方をやりますと、金は一応国庫の収入に全部なってしまうわけでございます。その国に入った金を
NHKに対して交付して
NHKの
経営をまかなう、かような姿になるわけでございます。そういたしますと、いわば
NHKは財政的には国のまるかかえという格好になるわけでございます。もちろん、イギリスのBBCのごときはそのやり方でやっておるわけでございますから、世界に例のない制度であるというようなことにはならないわけでございますけれ
ども、わが国においてそのようなやり方をとることが、果して適当であるかどうかということにつきましては、まあ言論報道機関としての
NHKの
自主性を努めて維持すべきであるという見地からしましても、いささか問題がある。かように
考えまして、この制度はやはりこの際とるというところまで踏み切れなかったわけでございます。
それからもう
一つのやり方といたしまして、
NHKの
放送を聞き得る設備をなした者あるいは受信機を設置した者は
NHKに受信費を納めなければならない。契約をしなければならないというのではなくて、納めなければならないというところまで踏み切ったらどうか、こういうことも
考えてみたわけでございます。かようにいたしますと、この場合には、納めなければならないと言い切っただけでは
NHKには金は入ってこないわけでございます。と申しますのは、受信機を設置した人は、自分が受信機を設置した、これははっきりしている。それから納めなければならないということもわかっている。しかし、取りにくるまでは納めないでほうっておけばいいということにこれは当然まあなると覚悟しなければならないわけでございます。そうして
NHK側としましては、どこに受信機ができたかということを知る手だてはない。従って、金を取りにいけないということになって、
協会の財政ががたがたになるというおそれが
考えられるわけであります。従いまして、納めなければならないという制度を作りました場合には、少くとも受信機を設置した人は、国または
協会に届出をしなければならないということを、どうしても制度として組み立てなければならないわけでございます。そういうふうになりますと、先ほど申しました許可制度の場合と非常に似て参るわけでございまして、現在自由にその受信機を設置している者が届出をする。結局、許可をもらうと同じようなことになりまして、そこらあたりにもいろいろ問題がある。
それからさらに、
法律的に申しますと、現在の二十二条は、契約を強制している。もちろん契約締結の強制になりますが、納めなければならないということにいたしますと、契約強制よりももう一だん強い、直接の負担が国民の上にかかって参るわけでございます。その点につきまして、
法律的に果してそこまでやれるかどうかということも、もちろん疑問が
相当ございました。また、このように納めなければならないとした場合に、その金というものは、
法律的にいかなる性質のものであるかというようなことについても、なかなかむずかしい問題があったわけでございます。そういうようなことを
考えまして、ただいま申し上げました、まあ代表的な二つのやり方は、いずれも現在のやり方に比べてまさるものだ、これならばよろしいというところまでどうしても踏み切れなかったというところでございます。さらに現在の……。