運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1959-03-12 第31回国会 参議院 地方行政委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十二日(木曜日)    午前十時四十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     館  哲二君    理事            大沢 雄一君            小林 武治君            占部 秀男君            鈴木  壽君    委員            郡  祐一君            小柳 牧衞君            田中 啓一君            成田 一郎君            本多 市郎君            成瀬 幡治君            森 八三一君   衆議院議員            纐纈 彌三君   政府委員    警察庁長官   柏村 信雄君    警察庁長官官房    長       原田  章君    警察庁警備局長 江口 俊男君    自治政務次官  黒金 泰美君    自治庁選挙局長 松村 清之君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    法務省人権擁護    局長      鈴木 才藏君    公安調査庁次長 關   之君   説明員    自治庁選挙局管    理課長     桜沢東兵衛君    会計検査院事務    総局第二局長  保岡  豊君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国会議員選挙等執行経費基準  に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○警察官協力援助した者の災害給付  に関する法律の一部を改正する法律  案(衆議院提出) ○地方行政の改革に関する件  (警備警察に関する件)  (選挙違反事犯の処理に関する件)   —————————————
  2. 館哲二

    委員長館哲二君) これから委員会を開きます。  本日は、まず国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  本案に対します説明は、すでに聴取いたしておりますので、これから質疑に入りたいと存じます。御質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたします。
  3. 鈴木壽

    鈴木壽君 いただきました資料ですが、「基準法改正案による増減額調」、こういう資料と、それからそれに関連してちょっとお伺いしたいのですが、この基準額がいわゆるその経費として計上される場合には、附則によって五%減という形で計上されてくるわけなんですね。この資料だけでなしに、今度の予算に載っております参議院の選挙等に必要なあの金全部が、そういうふうな形で五%減、すなわち九五%の額で計上されておると、こういうことなんですか。
  4. 松村清之

    政府委員松村清之君) 五%減になっておりますのは、この基準法附則に基きます分だけでございます。
  5. 鈴木壽

    鈴木壽君 これだけですね。そうすると、予算計上されております十七億何がしという額ですね。この中にも当然これは含まれておるわけなんでございますが、全部でなくて、この分に関するだけ五%減と、こういうことなんですか。
  6. 松村清之

    政府委員松村清之君) さようでございます。
  7. 鈴木壽

    鈴木壽君 この基準額そのもの、まあいろいろこれは実情に比べますと安いもんだろうと思うのです。いろいろな規定等によって算出されるのですから、そのものについては、いろいろ個々の問題があるにしても、ともかく現状においては安いもんだろうと思うのですが、さらにそれが五%減額になって、九五%という額で押えられてきますと、ますますもって実情に合わないというようなことになり、場合によっては、地方団体持ち出しを必要とするというようなことにもなりかねないと思うのですが、そこら辺はどうでございましょうか。
  8. 松村清之

    政府委員松村清之君) お説はごもっともでございますけれども政府全体といたしましても、経費について節約方針をとっておるわけでございまして、この経費につきましても、そういう経費節減の一環といたしまして、節約することはやむを得ないことであろうと思います。従いまして、与えられました経費範囲内におきまして、十分能率的に合理的に選挙が執行されるようにやっていくように配慮いたしておるつもりでございます。
  9. 鈴木壽

    鈴木壽君 これは、政府全体の経費節約というような観点からそういう建前をとっておる、それはそれで一応やむを得ないと思うのです。ただ、今申しましたように、これらの基準経費そのものがいわゆる節約余地があるものかどうか。私は、さっき言いましたように、現実からすると、いろいろな面で安過ぎる、これはいつでも言われていることなんで、そういうものをさらに、五%であれ、節約する余地があるものかどうか。むしろ何かの形で五%ぐらいをふやしてやるということならわかるのですが、ですから、国の方針としてはやむを得ないと言えばそれまでなんですけれども、私は、やはりものによりけりで、すべてのことにいわゆる節約が可能なものかどうかというような一つの検討からしないで、何でも五%減であるからというような形でやることは、非常に私は、場合によっては地方負担増となったり、持ち出しとなったりするようなことがあるのじゃないか。純然たる国のいわば仕事であって、これが府県なりあるいは市町村持ち出しをさせるというようなことがもしあるとすれば、私は、これは困ったものだと思うのです。そこで、今言ったようなお尋ねをしたわけですが、実際に地方団体で、その経費でもってはやれないために、幾らか付け足しをしておるというような例がないものなんですか。
  10. 松村清之

    政府委員松村清之君) ただいまお話のような、地方団体においてこの経費不足分持ち出しているという事例はございません。
  11. 鈴木壽

    鈴木壽君 ないですか。
  12. 松村清之

    政府委員松村清之君) はい。
  13. 鈴木壽

    鈴木壽君 持ち出しがないとすれば、私の心配したことがなくなるわけですが、しかし、持ち出しがないということが、地方においてこういう仕事をやるために、先ほどあなたがおっしゃったような、能率的に効果的にやっておるかというと、私はやっぱり、さっきも申しましたように、いろいろな面で、たとえばいろいろな人件費的なことなんかにも非常な、何といいますか、失礼だと思うような額しか上げられないということで困っているわけなんです。こういうふうにきまっているから、これでがまんしてくれというようなことで、また、実際そういう金をもらう人たちも、金の額はあまり言わぬかもしれないけれども実情は安いのだ、安過ぎるのだということは、これはどこでも聞かれる言葉なんで、むしろこういう仕事に奉仕的な、より必要以上の奉仕的な立場において協力を求めるより、もっとやはり出すべきものは出してやらせるべきではないかと思いますが、今後こういう点について、やっぱりどこまでも今のような建前でお進みになるわけなんですか。
  14. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ちょっとそれに関連して。今のあなたの全然持ち出しがないということは、人夫賃はあなたの方の基準の五%ですね。演説会場等もやっている。あるいは事務費、いろいろなものがあるのを、全部五%ずつ引き下げてやっていると、そういうことなんですか。
  15. 松村清之

    政府委員松村清之君) ただいまのにお答えいたしますると、この経費は、総合的に運用する建前になっておりますために、人夫賃単価として幾ら費用弁償額幾らとなっておりますけれども、必ずしもそれに拘束されなくても、ほかの経費やりくりでもって支弁することが可能なようになっておるのです。(成瀬幡治君「何でそれでは経費を縮めておるか、要らぬ経費だったら落せばいいじゃないか」と述ぶ)  それから、さっきのお話でございますが、私どもも、むろんこの費用弁償額人夫賃嘱託手当等単価は、実情に即していないというふうにも見受けますんで、今回この御審議におきましても、その単価引き上げを御審議願っておるわけでございますが、国の財政と見合いまして、できるだけこの経費実情に即するように、国の予算計上されるように努力はして参っていくつもりでございます。
  16. 鈴木壽

    鈴木壽君 これは私は、考え方として少しおかしいじゃないかと思うんです。まあ込みで、あるまとまった額、それの五%減にして、その中でいろいろやりくりをするんだ、こういうお話のようですが、五%減でできるもんだったら、私は、最初からそういうものは五%減にしておくべきだと思う。一律に、何かこうちょん切ったような形の経費計上ということは、私はある意味においてはずさんな計上の仕方だと思うのです。ですから、たとえば、今こちらからも指摘されたようなこと、そういうことは、五%減じゃないんだというならばそういうものと、それから、もし節約可能であるとするならば節約可能なものについてのものと、やっぱり私は分けて考えてもらわなければいけないと思うし、また、そういう私ども説明がほしいと思うのです。一緒にしておいて、しかしこれは五%減だと、こういう資料をもらうと、一切のものが五%減ということでやりくりされるというふうにも考えられますし、従って、私心配したように、そう  いう経費計上が少いために、地方団体のつけ足しが必要になるというふうなことが私想像されますものですから、何かそこら辺、もう少しすきっとしたやり方が今後私望ましいと思うのです。
  17. 黒金泰美

    政府委員黒金泰美君) 今、だんだんのお話しでございますけれども、あまりこまかくいたしましてもかえっていかがかと私ども考えております。今お話しございましたように、これをほんとう節約余地があって、五%高い現状が悪いんだというくらいならば、法律改正いたします。しかし私どもは、今の額で決して高過ぎるとは思っておりません。むしろ安いんじゃないかという見方をしておりまして、何とか本則に帰したい。ただ、国の財政の上の問題で、毎年予算の折衝のたびに問題にいたしますけれども、まだ本則に帰らないで、まことに残念に思っておりますが、そういう際でありますから、ある場所によっては会場費が安く上るところもありましょうし、あるいはまた、うまい工合に安い金で人夫賃の払える所もありましょうし、やはりあまりこまかく、たとえば人件費はしないで、物件費だけでもって一割節約して、全体として五分にしろとかということを申しますと、かえって窮屈になりますので、その土地々々の実情に合せまして、標準ではじいたものを交付いたし、この範囲でなるたけ能率的にやってもらいたい、本則からいえば、もっと上げるべきだけれども一つ節約して能率的にやっていただきたいということで今やむを得ずやっておる次第でございます。御指摘のように、できるだけ早い機会本則に戻す。あるいはそれでも実情に即してないかもしれないと思いますが、あるいは今回の人夫賃なり、管理者費用弁償額を多少上げておりますが、これでも、率直に申せば、まだ安いという気が私いたします。ただ、実際問題として、国の予算とのかね合いで、ここまでしか参りませんでしたので、漸進的に引き上げて参りたい、そういう考えでおりますので、御了承願いたいと思います。
  18. 鈴木壽

    鈴木壽君 今、政務次官からお話がありましたが、私も何も、質問の本旨は、一々こまかく、人件費はそのまま、何と言いますか、その他の事業費なんかというものは五%減でいいとか、七%減でいいとかいうつもりでなかったのですが、お話通り、たまたまそういうことも言えるのじゃないかということなんで、やはり全体的に引き上げるということが一つと、さらに、変な五%減というようなワクのかからないような、今後やはりそういう計上の仕方をすべきじゃなかろうか。かりに今のそれをまた少しずつ上げていっても、決してこれは今次官のおっしゃるように高いというのじゃなくて、なおそれでも低いというのが、全部の関係者人たちのこれは声なんですから、そういうことも一つ考えて、今後努力していただきたいと思います。
  19. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 一体今度上げたのは、どうして上げたんですか。単価、たとえば人夫賃とか、立会人とか、そういうものの手当……。
  20. 松村清之

    政府委員松村清之君) これは、先ほども申しましたように費用弁償額人夫賃手当というものが実情に即しない。それで私どもできるだけ、これはまあ、今御審議をわずらわしておりますこの額でも、実情から離れておると思いますが、来年度は一つこれだけくらい上げたい、こういうことで予算計上してもらっておるわけであります。
  21. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、まあかりに人夫賃を上げましたね。そうして五%落しますね。それだけ逆に言うと事務費に食い込んでくるわけですね。そういうことですか。
  22. 松村清之

    政府委員松村清之君) その通りになろうかと思います。
  23. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、事務費はまだ余裕があるのですか、そういうふうに減らすというだけの合理化々々々と言われるが……。
  24. 松村清之

    政府委員松村清之君) これは結局、先ほど申しましたように、一般的に節約方針をとっておりますので、まあやむを得ないことかと思いますけれども、そうせざるを得ないかと思います。
  25. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 あなたは今そこで、地方では金を全然持ち出しをしておらぬと、こう断言をされた。自信ありますか。
  26. 桜沢東兵衛

    説明員桜沢東兵衛君) ただいまのお尋ね地方実情でございますが、人件費につきましては、御指摘のように、高く払っておる所もあるのでございます。ただ、全体の経費を操作いたしまして、その範囲内でやってもらっておりまして、特に大都市の場合が若干持ち出しをしておるかのごとく聞いておりますが調査いたしますと、実際は支出をしておらないのであります。
  27. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、あなたが実際調査してみたら、持ち出しをしておる所は一つもない、実際調査してみるとない、こういうふうに自治庁としては把握しておられるわけですね。
  28. 桜沢東兵衛

    説明員桜沢東兵衛君) 町村全体については、府県の方の意見を聞いて、われわれの方でも、個別に調査いたしておりませんが、出かけて参りまして、選挙の終った直後に、昨年も数カ所抽出いたしまして調査いたしておりますが、その調査範囲内では、この経費範囲内でやりくりをしていたように思います。
  29. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、百分の九十五に落しておることは、政府としては、正しいことだ、持ち出しておらぬ、それでやりくりをやっておるのだからいいことだ、そういうことになるわけですね。何も余分なものは必要ないですよ。
  30. 桜沢東兵衛

    説明員桜沢東兵衛君) この経費は、小さい団体、ことに町村に参りますと、投票所経費などは決してゆとりのあるものではございませんが、まあ全体の経費の上から、この範囲内で委託をしておる関係上、町村におきましても、やむを得ないものといたしまして、全体をやりくりをして実は執行してもらっておるのであります。ただいまのお話のように、余裕があるからというわけではなくて、この範囲でやっていただきたいということで委託をしておりますので、町村の方でも、その範囲内でやりくりをしてやっていただいておるというのが実情のようでございます。
  31. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 あなたはやりくりやりくりという話ですが、やりくりという言葉は、やるべき仕事をやらずにおったというわけにはいかぬと思うんですよ。ですから、最小限にやっておるということ、あるいは、ほんとうなら人夫賃も二百八十円を払わなければならぬのを、二百五十円でしんぼうしてもらって協力してもらっているというやりくりなのか。それとも市の方で、たとえば弁当代というような、ほかの名目によって支出をして、そうしてやりくりをやっているのか。私はやりくりが二つあると思う。だから、なるほど形の上で国の方でこれだけ持つと言っているから、市町村がそれに対して半額持ってやっておるんですが、それだけではなくて、実はプラス・アルフアーを出して、名目は別な名目やりくりをしておるというのが私は実情じゃないかと思う。ですから、調べられれば、調査したときはどうかといわれれば、国が半額持ってやっております。ところが、まだほかにも選挙関係予算市町村が持っておる。それを横に流してやっておるのではないかというふうに実は心配しておるわけです。そこで、しかも百分の九十五をつけたときは、今から何年か前やらには、全部こういうことをしようじゃないかという、過渡的な、臨時的なものであって、これが三年も四年も、あるいは五年も続いてくるとは、だれも予測は実はしていなかった。ですから、早くこういうものははずされてしかるべきじゃないか。ところが、今の御答弁を聞いていると、いや、これでやりくりをやっているから、これが正しい、この改正をする必要もないんだというような話なんで、しかも、人件費を上げているから、事務費はなお余裕が今までもあったんだというような結論に聞えてくるわけです。あなたの方の考えておられるのは一体何なのか。
  32. 黒金泰美

    政府委員黒金泰美君) ただいまの御質問の点、まことにごもっともと思います。やりくりでありますから、いろいろなやりくりがあると思います。決して私ども、これでもって十分な金だとは考えておりません。同時に、今附則でもってなおしておりますようなことで、先ほども申し上げた通り、今お話通りに、これはほんとうに臨時的なものである。決してこれが本則だと考えておるわけではございません。従いまして、毎年予算たびごとに、これを少くとも本則に戻したいということをいたしておりますけれども、全体の物件費につきましての節約がいまだに全般的に元に戻っていないということで、やむを得ずにこうやっておりますような次第で、御意思を体しまして、できるだけ早い機会に少くとも本則に戻すように今後とも努力をいたします。御了承願いたいと思います。
  33. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私は、想像なんですけれども、九十五というものははずしたい。ところが、なかなかついていけないから、一つ単価引き上げというようなことならできるだろうというようなことで努力して、これだけ引き上げられたんだろうと、これは私の想像であって、ですから、あなたの方に費用というものがわかるなら、私は、少くともやりくりをやっているからいいということではなくて、しんぼうしてやっているんだが、努力をしなくちゃならぬというようなことにしていただかぬと、どうも実際予算計上で九五%に落していくのは、いかにもこれが正しいんだ、これが合理的である、科学的であるというふうに聞えるのは実に心外だと思います。だから、そういうことを言っているわけです。
  34. 松村清之

    政府委員松村清之君) 決して私どももこれでいいとは思っておるわけではございません。ただいま政務次官のおっしゃいましたように、私どもとしては、なるべく早く本則に戻したい、そういうことで努力をしておるわけでございますが、現状はそのように参りませんので、これからも一つ機会あるごとにそういう努力をして参りたいというふうには考えております。
  35. 館哲二

    委員長館哲二君) ちょっと速記をやめて下さい。    〔速記中止
  36. 館哲二

    委員長館哲二君) 速記を始めて。  他に御質疑もありませんでしょうか。——発言もないようでありますから、質疑は終局したものと認めまして、これより討論に入りたいと思います。  御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御発言もありませんければ、討論は終局したものと認めて、直ちに採決に入ります。  国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の諸君の挙手を求めます。    〔賛成者挙手
  37. 館哲二

    委員長館哲二君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 館哲二

    委員長館哲二君) 御異議がないと認めて、さように決定いたします。   —————————————
  39. 館哲二

    委員長館哲二君) 速記をとめて。    〔速記中止
  40. 館哲二

    委員長館哲二君) 速記を始めて。  次に、警察官協力援助した者の災害給付に関する法律の一部を改正する法律案衆議院提出)を議題に供します。  先般提案理由説明を聴取したのでありますが、内容もきわめて簡単なものでありまするので、詳細の説明を省略いたしまして、直ちに質疑に入りたいと存じます。質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたします。
  41. 鈴木壽

    鈴木壽君 今回こういう法改正をする、一部改正になっているわけですけれども、しかし名称等も変るようになるわけなんですが、こういうふうに変えなければならかった理由、まあ一通りお聞きしましたのですが、従来の法でどうもうまくない、こういうふうな事件が、事件というと言葉は変でございますが、どの程度あったものでございましょう、これは。たとえば、先般東京で何か自動車に……何ですか、犯人を捕えようとして死んだとか何とかということがありました。ああいうことは最近の事例として私ども承知しております。そのほか全国的にそういう事例が幾つかあったものかどうかですね。
  42. 纐纈彌三

    衆議院議員纐纈彌三君) ただいまの御質問ですが、実は、こういったケースはきわめてまれでございますが、しかし、絶無とは言えないことでございまして、ことに昨年ですか、渋谷でそういう事件があって、生命を落したということについて、この協力者に対して、その災害給付ができないということが新聞等にもあれされましたし、だんだん犯罪も非常に行われて参りますし、同時にまた、民間の人が警察協力するという傾向も非常にふえてきておるということからして、今後やはりこういった事件がある程度起るのじゃないかということも予想されるわけでありまして、たまたまああいう事件がありまして、壁にぶつかったものですから、やはりそういうものを救済する方法をとらなければならない、こういうことで、今度の改正をしようとした次第であります。件数その他につきましては、事務当局から、わかっておれば、御説明さしてもいいと思います。
  43. 原田章

    政府委員原田章君) かような事例は、昭和二十九年からの統計によりますると、死んだ者が二件、それからけがをした者が三十七件ということになっております。従いまして、年間平均といたしますると、死んだ者が〇・五件、傷ついた者が十件ということになっておりまして、ケースは少うございますけれども、こういう場合に、死に損だということで、せっかくそういう場合に、民間の方が協力して事件を解決しようという場合の障害になろうかと思いますし、そういう献身的な方に対しまして、何らか制度的に慰謝申し上げるという道ができますことは非常にけっこうだと思います。
  44. 鈴木壽

    鈴木壽君 私、趣旨については何も問題があるのじゃなくて、非常にけっこうなことだと思いますし、いいのですが、一つただ、警察官職務協力するということで、警察官等がおらない場合の——こういうことも予想しているわけですから、おらない場合の、何といいますか、判定といいますか、こういうことでは、やっぱりいろいろ問題が出てくると思いますね。いわばだれも見ておらない。あるいは見ておっても、きわめて少くて、そういうはっきりした立証なり、何かということはなかなかむずかしい場合があるのではないかと思うのですが、こういうことに対して、そういう事例があった場合には、いろいろ各方面から聞くなり、調査ももちろんするでございましょうが、そこらあたり、一つ問題があるのではないかと思うのですが、この点どうですか。
  45. 纐纈彌三

    衆議院議員纐纈彌三君) お説の通りでございまして、こういう救助の方法が考えられますと、勝手にやるという者がありはせぬかというような問題が一応考えられますが、その点については、たとえば、警察官が当然職務執行すべからざる所、たとえば大使館前であるとか、そういう治外法権的な所において起った場合には、当然これから除外されますし、また、家庭内において、ほんとうに私的な関係でそういう問題が起った場合も、これは大体常識論から見て不適当だというような問題は、これを除外いたしておるわけでありますが、そうしてまた、実際警察官がおらない場合にそういうことをやった点につきましては、十分それが警察職務関係して、しかも、警察官がいないときに進んでやったということがはっきりしたものに対してこれを施行するという大体趣旨でいたしたいというふうに考えております。
  46. 原田章

    政府委員原田章君) 現行法に規定しておりますように、警察官が現場に、まあ現行法の場合は、大体警察官がおるわけでありますが、それに比較いたしますと、認定はやや困難であるということになろうかと思いますけれども先ほど纐纈先生からお話のありましたようなしぼりもかかっておりますし、また、被災者の立証、災害を受けた者の立証とか、あるいは、被害者、加害者の証言によりまして、ほんとう警察官協力したものであるかどうか。警察官職務協力したものであるかどうかということはわかると思います。これは、犯罪を非常に広げますと、不明確になることも考えられますが、今回の場合は、生命、身体、財産に危害があったというような、たとえば殺人とか強姦とか、そういうようなもう有形的な、非常に明白な犯罪の場合でありまするし、そういうところからもはっきりしますし、もう一つは、これは警察が当然捜査に当るわけでありますから、捜査の過程におきまして、その事件を固めるためにいろいろな証拠を収集いたしますので、そういうところから、その被災者が警察官職務協力したがためにけがを受けたかどうかということは、さほど困難もなしにわかるのではないかと思います。従いまして、それに基きまして実施機関が認定をするということになろうかと思います。
  47. 鈴木壽

    鈴木壽君 それから、従来の法で、従来というよりも現行法でずっと、何か格闘して殺されたという場合の給付ですが、最高六十万円になっておりますね。この最高の額について、これは一つ何か、今の金からして、もっとできないものかというふうに思うのですが、その点、これと直接は関係がございませんが、そこら辺、私、ほかの方の災害等の補償の金高をよく承知しておりませんが、どうでございましょうか。
  48. 原田章

    政府委員原田章君) お話のように、経済がだんだん発展して参りまするところから考えますると、もう少し上げてもいいのじゃないかという感じはいたしますが、そのことにつきましては、まだ今後鋭意研究しなければならぬと思います。この警察関係の現行法に対応しますものが海上保安庁にありますが、その関係もさようになっておりまするし、そういう関係方面等の例もあわせ考えまして、その点は検討しなければならぬと思います。
  49. 鈴木壽

    鈴木壽君 せっかくこういうふうに法の改正も行われるのだし、その趣旨にわれわれも賛成でございますが、と同時に、やはり出す給付の額についても、今の金で命を落して最高で六十万、これではちょっと気の毒過ぎるのじゃないかと思うものですから、これは、そんなに多くあることじゃないと思うのですが、従って、それだけ金の額も、総額を拾ってみても、そんなに大きな額になるとは思われませんし、ぜひこの法なり、あるいは改正法を生かす意味においても、今後そういうふうな改正のための御努力一ついただきたいと思いますが、そういう意思も今のお話ではおありのようですが、重ねて一つ御検討願えるかどうか、お答えいただきたいと思います。
  50. 原田章

    政府委員原田章君) 私ども関係だけからしますると、経済の趨勢にかんがみまして検討する必要があると思います。ただ、いろいろな関係が出てくると思います。自動車損害補償の場合もこれは問題になるわけでありますが、死にましても三十万円というようなこともありますし、いろいろな関係から検討していかなければならぬというように思います。
  51. 鈴木壽

    鈴木壽君 ですから、これはこれだけというわけにはいかぬと思います。ただ、人間の命でございますから、それは、何もここで私、正確に金に換算してどうのこうのという、そういう意味じゃございませんけれども、ただ単に涙金程度のことでやったんでは済まないことじゃないだろうか。従って、他のいろいろな、今の自動車関係のそういうこともあると思いますし、また、そのほかのこういうことに類しない災害補償等のこともあると思いますから、これだけ一つ抜き出して今すぐというようなことは、私そうは、言い切れないと思いますから、そういうことも含めて、一つ今後も検討すべきではないだろうかと、そういう趣旨なんでございますので、一つ努力をお願いしたいと思います。
  52. 占部秀男

    ○占部秀男君 ちょっとお尋ねしたいのですが、それは、現行法によると、実施機関の問題なんですけれども、政令等では、この実施機関が該当さるべき災害であるかどうかということや、それから、それに対して給付を行うべきかどうかということや、そういうような根本的な点を決定することになっておるわけですね。そこで、その実施機関は条例によってきまるということになっておるわけですが、そうすると、各地でどういうような形でその実施機関が構成されて、構成はおかしいですが、持たれているか、こういう点についてちょっとお伺いしたいのです。
  53. 原田章

    政府委員原田章君) 国の場合は、警察庁が実施いたしますが、府県の場合には、条例できめておるわけであります。大部分の府県では、警察本部長になっております。ごく一部、一県だけだと思いますが、知事さんになっております。それから、あとも一県だと思いますが、公安委員会ということになっておると思います。
  54. 占部秀男

    ○占部秀男君 そこで私は、趣旨としては、これは当然のことであって、おそ過ぎるくらいに考えておるんですけれども、ただ問題は、先ほど鈴木さんも言われたように、そういうことはないとは思うのですが、いろいろ該当さるべきであるとかないとかいうような問題が起ってこやしないかという心配もあるわけですね。そこで、実施機関といいますか、こういう問題については、やはり知事あるいは県警本部長というような形、もちろんそれが入ることは当然なんですけれども、もっと形を広くしたような、何かこの法の施行に伴うところの審査機関というとおかしいですが、民間の学識経験者の方を入れた審査機関的なものを設ける必要が、実際は今後は出てくるんじゃないかというような感じがするのですが、そういう点について検討されたことはないですか。
  55. 原田章

    政府委員原田章君) 従来、現行法におきましては、警察官が現場におるわけでありますから、はっきりいたしますので、認定に困難を来たすことはないと思いますが、誤まることはないと思いますが、今回の改正案によりましては、警察官がおらない場合でございますから、認定につきましては慎重でなければならぬことはお話通りでございます。従いまして、この認定に当りましては慎重にしなければならぬ、そういう点で、立案者の方から、工夫した方がいいんじゃないかということでお話がございまして、政令段階におきましては、従いまして、そのものの逮捕あるいは救助に当った行為が警察官職務協力援助したものに該当したかどうかということについて、はっきりしたものは別でありますけれども、疑わしいものについては、都道府県公安委員会において認定するというふうにしたらどうかというお話になっております。
  56. 占部秀男

    ○占部秀男君 それから、もう一つお伺いしたいことは、たしか現行法によると、請求の時効があったわけですね。あの給付を受ける問題について、給付を受ける権利が二年間たつと、時効にかかって消滅するというような規定があったわけですね。それに伴って、二年間という一つの、何というか、期限があるので、どうも自分は確かにそれに該当するんだけれども、該当させないのはけしからんということで、訴訟的な問題が私は起ってくるような心配がありはせぬかと思うのですが、そういうふうな点については、今度のあれをやる場合に検討されたことはございますか。
  57. 原田章

    政府委員原田章君) 二年以内に請求することになっておりますが、まあその二年がたちましたならば、請求できないことになるわけであります。二年以内の場合には、この面の請求もし、また、それの決定に対しまして不服な場合には、行政訴訟は今ございませんから、地方裁判所に訴訟をするということになるわけでございます。
  58. 占部秀男

    ○占部秀男君 どう裁判するというのですか。そういう点は、公安委員会が扱っていくということになると、そういう点はまああまり出てこないじゃないかと思うのですけれども、公安委員会の方で審議されますような場合にも、なるべくそういう問題が起らないような、何というか、条件といいますか、審議基準的な問題はいろいろあると思いますが、そういったことも一つあわせて検討しておいていただきたいと思うわけです。これは要望です。  最後にお伺いしたいことは、今度の改正の第二条の中で、「殺人、傷害、強盗、窃盗等人の生命、身体若しくは財産に危害が及ぶ犯罪の現行犯人がおり」とかというような形で、警察官がそこにいなくても、今原田さんが言われたように、対象がはっきりしておるというて——こういう点は心配ないとは思うのですけれども、かりに大衆的な問題が起きた、そこで傷害事件が起きた場合に、一々何かその中へこの問題を取り入れられてしまうようなことになると、これはまあ専門的にやる人はないとは思うのですけれども、どこか、どうも日比谷で何とか反対の運動が起った、この会場を少しアジって混乱さして、それでもってやったところで、こっちは六十万円もらいたい——どこまでもらえるか知らぬけれども、もらえるんだというような傾向になると、非常に私は大きな問題になってくると率直に思うのですが、もちろん、纐纈さんや、これをあれされた方はそういうことは考えてはいないと思うのですけれども、そういう点については、この問題はいわゆる、何といいますか、限定された刑事事件のような、そういうような問題にだけこれはやはり適用されるという考え方であろうとは思うのですけれども、そういう点を一ぺん聞きたいと思うのです。
  59. 原田章

    政府委員原田章君) この点につきましても、立案者の方からお話しございまして、まあ犯罪がしぼってあるから、威力業務妨害犯とか、その他のそういう公共の秩序に関する犯罪は該当しないということだけれども、その他考えられる面について、これもはっきりした方がいいということでお話がございまして、法制局とも、そういう細部の点につきまして打ち合せましたのでありますが、そういう趣旨からいたしまして、加害行為を——加害行為と申しますか、当該犯罪を誘発したものはいけないとか、それから、そういう傷害事件というものがあっても、それは警察官職務協力したものとは認められないものというものは、これは除くということで、しぼりをかけて参ることにいたしております。まあ大衆運動の場合には、加害者でありあるいは被害者である場合もありますし、それからまあけんかの仲裁のように、仲裁でありまするけれども、これは被害者であったり加害者であったりします場合とか、それからまた、そそのかされる場合もありまして、そういうものは除くことになっております。
  60. 占部秀男

    ○占部秀男君 念を入れますけれども、除くことになっておるというような問題ですけれども、これは、やはり法案がきまってしまうと、この法自体が御存じのように動くのであって、あとでその法を拡張解釈してやられる場合も、これはあり得ないとは言えないわけですね。そこで、公安委員会なら公安委員会等で審査をするという場合に、その審査の中にそうした問題をはっきりさせるようなうたい込み方も、これはできるのじゃないかと思うのですが、これは、できればそういう形で、誤解のないようにしてもらわんと、国会の中ではそういうことがきまりますよ。ところが、いざ地方になってきますと、なかなか国会の中で考えたような形が地方にそのまま実税できるということは、過去の歴史から見ても、実際の姿から見ても、行き過ぎの点が出てくることは御存じの通りなんです。従って、各地方に、どれがそれに該当するものであるか、従って、該当する場合には、どういうふうな給付をするか、こういう決定をする実際の機関のそうした認定をする条件的なものの中にそうした点をはっきりしていただくと、非常に間違いが起らぬような形になるのじゃないかというように考えておるのですが、その点についてはいかがですか。
  61. 原田章

    政府委員原田章君) この点につきましては、立案の御趣旨を体しまして、お話通りに、誤まりのないようにしなければならぬと思います。先ほど申し上げました昭和二十九年から最近までの事例におきましても、これは全部、義侠的に助けようということで、死んだりけがをされたりした例でございます。それだけのものを考えておりますけれども、そういう趣旨がよく徹底いたしますように、基準の作成なりあるいは通達なりにおきまして、徹底をいたしたいと思います。
  62. 占部秀男

    ○占部秀男君 けっこうです。
  63. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ちょっと途中失礼したので、話がダブっておったら、一つ注意していただきたいと思います。  第一点として、金額はきまっておるわけなんですが、基準は何によられたのか、まあわれわれ普通言うような場合には、少くとも善意に基いてこういうことをやったことに対する協力なんですから、国がやられるとするなら、たとえば、労働基準法に基くとか、何かあっていいのじゃないかと思うわけですが、どういうところから作成されておるのですか。
  64. 原田章

    政府委員原田章君) 公務災害補償法に準じてきまっております。
  65. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 次に、この提案趣旨の説明の中にございますが、この法律の対象から除くこととした場所及び人についての細則は政令で定める、こうなっておりますが、これは相当こまかく私は規定されると思っておるのですが、今用意されておると申しますか、少くとも検討されておるものがございましたら、こんなことがここに挿入されるのだというのがございましたら、一つお知らせ願いたい。
  66. 原田章

    政府委員原田章君) まあ外国公館の関係でございます。それから駐留軍関係の施設、それから国会、法廷、そういう場所は除くことに、これは、警察官は通常入ることになっておりませんから……。それから、人の関係につきましては、これはお手元にお配りしてもいいと思いますが、被害者その他の関係で、これはほんとうに義侠的にやったんじゃなくて、本能的に助けたという、たとえば、家族の者がそれを助けようとしてけがしたということは、これはまあ義侠的にと申しますよりは、むしろ本能的に助けようとするというわけでありますから、そういうものは除くわけでございます。それから、先ほどお話のございました、現行犯人のその犯罪を誘発して被害を発生させたものとかという不適当なものにつきましては、これを除外するということにいたしております。
  67. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 たとえば、汽車に乗っていて、酔っぱらいが何かやったような場合、それからバーでけんかをおっ始めた、それに入っていってやった場合に、相当なけがをされたというようなところは、どうなりましょうか。
  68. 原田章

    政府委員原田章君) 列車の中で酔っぱらって人を傷つけようとするのを、第三者が義侠的にそれをとめようとして、あるいは被害者を救おうとして、あるいは現行犯人を逮捕しようとして傷ついた場合は、適用になるわけです。バー等でけんかがあって、それをとめようというものが純粋に義侠的に出たものであれば適用になりまする  し、それがぐれん隊等でありまして、ほんとうの第三者の義侠的な救助というものに当らないという場合には、適用になりません。それが公安委員会の認定で問題になるわけでございます。
  69. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 それじゃ、酒をみんな一緒に飲んでおって、そこでけんかが始まった、それを中の一人がとめた、そういうような場合はどうなりますか。
  70. 原田章

    政府委員原田章君) それが、直接の被害者でありませんけれども、被害者の一味であって、第三者の義侠的なものとは言えないという場合には、これは適用することはできないことになります。
  71. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 まあそういう判定が非常にむずかしいのですが、公安委員会で判定が出てしまうと、これは論言汗のことしのようなもので、どうにもならぬものか。もし、その判定に被害者と称せられる人が不服であったとしたら、どういうことになるのですか。
  72. 原田章

    政府委員原田章君) ただいまの訴願法によりましては、公安委員会の上級官庁というものはございませんので、その道は開かれておりません。でありまするから、行政裁判で争うという道よりないと思っております。
  73. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、相当こまかい点を、あなたは義侠的だという言葉を盛んに使われて、何か浪花節調的なところがあるのですが、そういうふうな認定について、公安委員会が相当こまかい細目も私はお作りになると思うのです。そうしてやられるのも非常にいいことなんです。いいことをおやりになっているのですが、そういう判定に対して不服だといって訴訟を起されるときに、訴訟を受ける方の対象は、公安委員会がなるのか、それともそのときの署長が対象になるのですか。
  74. 原田章

    政府委員原田章君) 各府県の条例によりまして実施機関をきめておりまするので、ただいまも御質問がありまして、お答えいたしましたが、ごく一部の県を除きまして、大部分が警察本部長になっております。従いまして、警察本部長に対して……、法律的には地方団体府県知事が対象になり、被告になるわけでございます。地方団体の責めになっております。
  75. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私は、諸外国にもこういう立法例があると思うのです。それは、やはり今申しましたように、訴願ということはなるほど上級者まで行っていない、従って、訴訟でそういうことが争われるようになっているのか、これは日本だけのこういう立法なのか、その辺、各国の例はどうなっているのですか。
  76. 原田章

    政府委員原田章君) 諸外国の例ももちろん調べておりますが、現行法に当るものは相当ございます。それから、今度の改正しようという面につきましては、範囲がすっきり合っているものがございませんが、それに似たようなところがございます。そこで、お話の細部の点につきましては、外国立法例にもはっきり出て参りません、訴訟を提起する道とかというような面につきましては。
  77. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、この立法に当ったと言っちゃおかしいが、これは両党で話し合ったことですから、私ども、趣旨には賛成なんですし、どうということはありませんが、少くとも訴訟が起きるということは用意して立法されたというふうに了承していいのですか。
  78. 纐纈彌三

    衆議院議員纐纈彌三君) その問題につきましては、実は両党の話し合いのときには、そこまで出ておりませんでございます。そういうことを予想されるけれども、あまりその問題については、提案の方の打ち合せには出て参りませんでした。しかし、これはおいおい問題として考えなければならぬと思いますが、提案の経過におきましては、その問題はあまり問題にならなかったように思います。
  79. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私は、これは一つ法律として、今までのように、何といいますか、一つのお見舞金式的なものが出るなら、これは権利義務がないわけです。ところが、今度こういうことになると、ここに権利義務という形で出てくる。従って、訴訟というようなこともあって——まあこういうことは好ましくないことでありますが、あまりたくさん出ろとも思いませんが、出たら大へんな問題になるのじゃないかと、その点を実は心配しているわけです。従って、公安委員会が最終決定をされる場合には、相当なこまかい規定を作っていただいて、そしてそれらがやはり明示されている、内規というような形ではなくて、施行令に入っているとか、政令に入っているとか何とかというふうにしておかないと、うるさいと思う。そういう点については、やはり当局として、今後十分注意されると思うが、どういう格好にした方がいいか、そのことも自分としてはわからないが、とにかくいいことだから、訴訟というような、あまり好ましくないようなことが起きないような用意を十分していただきたいと思います。これは要望しておきます。できるだけ一つやっていただかないと、せっかくの立法が思わしくないところにそれていって、こういうときはもらえると思って協力したが、もらえなかったということで、恨まれてもどうかと思いますから……。そういう点であります。
  80. 大沢雄一

    ○大沢雄一君 私、ほんの一、二点だけお伺いしますが、すでにお尋ねがあったかもしれませんが、乱用を防止するために、いろいろとしぼっているようでございますが、この受ける資格といいますか、権利といいますか、それを立証するのは、これはだれが責任があるわけなんですか。警察官がいない所で、ということになっておるので、傍観者か、あるいは犯人か、どっちかがいなければ立証はできないように思うのですが、その点はどういうふうにお考えですか。
  81. 原田章

    政府委員原田章君) 明白な犯罪に限っておりまするという点と、それから、そういう明白な犯罪を警察といたしましては捜査をするわけでありますから、捜査の過程におきまして、被災者の立証とか、あるいは加害者、被害者の証言等もしんしゃくし、また、傍観者等の立証にもよりまして、これは、抽象的に考えますると、認定がなかなかむずかしいようでありますけれども、事実問題としましては、私は、認定は問題なくできるというふうに考えます。
  82. 大沢雄一

    ○大沢雄一君 そういたしますと、この給付はこれは報償的なもので、何といいますか、受ける権利があるというような考えじゃない、報償的なものと考えていいわけなんですね。そういう性格のものなんですか。それともまた、これに該当するものは、これを受け得る権利がある、こういう立場のものなんですか。その点はどうなんですか。
  83. 原田章

    政府委員原田章君) これは、従来やっておりましたのが、お見舞金のような考え方でございましたが、それでは誠実も期せられませんし、また、恩恵的なにおいが残りまするので、これを制度として確立をしようということでございますので、権利義務の関係が生ずるということでございます。
  84. 大沢雄一

    ○大沢雄一君 そうしますると、やはりもし警察の方で発動的に給付しないという場合には、それに該当すると思う場合には、要求をすることができるわけなんですね。それについては、そうすれば、要求する者が立証をする、こういうことになるわけだと思うのです。ところが、警察官がいないというような場合、その場合には、傍観者等の立証に持っていくことになるわけですか。傍観者もいないというような場合、また、本人がもし死んだような場合には、おかしなことになっちゃって、死人に口なしと、犯人がまさか自分から立証して出るわけはないでしょうから、あまりしぼりをかけますと、結局、せっかく規定は作っても、ほんとうに気の毒な場合、だれも見ている者がなくて、義侠心から敢然当って行ったというような、一番保護しなければならぬような人がかえって受けられないというようなことになるおそれがあるのじゃないかということを私は心配するわけなんです。それはどうなるのですか。
  85. 原田章

    政府委員原田章君) 立証しなければならぬ人は、まず第一には被災者でございますが、死んだ場合には、それは立証できないわけであります。その場合には、まず被害者でございますね。それから加害者、その他第三者の証言等を参しゃくいたしまして、決定をいたすということになろうかと思います。
  86. 大沢雄一

    ○大沢雄一君 そこで、乱用を防止するために、いろいろしぼりをかけるのもけっこうでございますが、そういう点を考えて、あまり乱用防止というようなところばかり重点を置きまするというと、今のようなことで、一番必要のある者がそこから抜けるというようなことにもなりますので、十分政令を作るときに考えていただきたいと思います。これは要望です。  それから、それと関連して伺うのですが、米軍の施設内のような所ですね。日本の警察官職務を行なっていない場所を除くと、こういうことになっておりまするが、それはどうもちょっと適当でないと思われるのですが、日本の領土内であれば、どうもこれを一概に除外しちゃって果していいのかどうか。むしろ米軍の施設内のさびしい、ああいう演習場みたいなところは、かえってこういうことが起りやすいので、アメリカの方がいいかげんにしておると、率直な話ですが、米軍等がもしやらないとも限らないのですね。そういう場合に除くというのでは、かえっておかしいように思うのですね。どうお考えになるか。
  87. 原田章

    政府委員原田章君) 米軍の施設内におきましては、警察官はおりませんので、そういう所におきましてどういうことが行われたかということについてははっきりいたしませんし、また、それがために地方団体にこの責任を負わせることは無理であるということから、除く、こういうことにいたしたわけであります。
  88. 大沢雄一

    ○大沢雄一君 もともと、これはしかし、警察官がいないことをまず前提としているのだから、米軍の施設内の警察官がいないということは、私は理由にならぬように思いますがね。
  89. 原田章

    政府委員原田章君) もちろん警察官がいない場合でございますが、警察官が入ることはできないわけであります。警察官がそこで職務執行を行うことができませんので、従いまして、そこで事件があった場合には警察官職務にかわってやったということはできないと思います。
  90. 大沢雄一

    ○大沢雄一君 それはそうなんでございますが、しかし日本の領土内でございますし、やはりその中においてそういう公安を維持しなければならぬものは、それは米軍であるかもしれません。しかし、この趣旨からいえば、それをどうも除外するということが何だかおかしい。米軍の施設内では、米軍が非常に完全に、これはいかなる場合でも保護というか公安の維持というか、そういう責任を負うものだという前提の上に立っているようで、ちょっと日本の警察と米軍の施設と、何かどうも向うの方が少し高く評価しているようなふうに思われるので、何か少しどうも、立法の趣旨からいって足らないような気がするのですが……。
  91. 原田章

    政府委員原田章君) この場合は、たとえば、工場の守衛が守衛に回ったときに犯罪が行われて、犯人を逮捕しようとして傷ついた場合には、労働基準法で補償が行われまするように、米軍施設内におきまするそういう事案に対しましては、労働基準法に準ずるものがありまして補償は行われるだろうと思います。
  92. 大沢雄一

    ○大沢雄一君 それから、それを都道府県警察と、自治体警察ということで、府県の負担にこの法律がしているのだと思いますが、しかしこれは、本質から言うと、公安の保持とか、善良なる風俗の保持という観点からなんでしょうから、これはやはり国家負担に、国家の問題ですから、するのが相当じゃないのですか。それについては、どういうふうにお考えなんですか。
  93. 原田章

    政府委員原田章君) 警察費の区分からいたしまして、国庫補助金と府県費負担ということによって処理をすることになっておりますし、また、これが妥当だと申しているのであります。
  94. 大沢雄一

    ○大沢雄一君 それはちょっともう少し法文をはっきり言ってくれぬと、どれでどういうことですか、今のは。国庫補助金と府県費負担でやるのが相当であるということでは、お伺いに対する答えにならぬです。どういうわけでそうなるのですか。私は、むしろこれは、国の負担にすべきものじゃないか、性質からいうて。端的な、公安の保持あるいは善良な風俗というような観点からの問題ですからね。これをどうして本質的に府県の負担にして、国がそれに補助するということになるのですか。そこをちょっとお伺いしているわけです。
  95. 原田章

    政府委員原田章君) 警察官がこういう事案によりまして死んだり、けがをした場合には、府県費で補償されるわけであります。府県警察の管理は府県の責任になっておりますので、その公安委員会、従って、その所属するところの地方団体が責めに任ずるのが適当ではないかと思います。
  96. 大沢雄一

    ○大沢雄一君 警察仕事、それをかわってやった、こういう観点から出しているわけですね。何かどうも府県の方に……。これは自治体警察市町村の方に、こういう場合ならまた何ですが、今のように、国家警察府県の自治体警察と、こうなってきた。むしろ国家の警察の観点からの方が、むしろ仕事の性質がそちらに近いのじゃないかという気がするのですが、そうじゃありませんか。
  97. 原田章

    政府委員原田章君) 府県警察を維持しますのが府県でございますし、また、府県警察にかりにかわってかようなことをやったということでございますから、府県が責任を持つのが一番いいのではないかというふうに考えております。
  98. 館哲二

    委員長館哲二君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めてよろしゅうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 館哲二

    委員長館哲二君) それでは、質疑は終局したものと認めまして、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御発言もなければ、討論は終局したものと認めて、直ちに採決に入ります。  警察官協力援助した者の災害給付に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の諸君の挙手を求めます。    〔賛成者挙手
  100. 館哲二

    委員長館哲二君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定をいたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、慣例により、これを委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  101. 館哲二

    委員長館哲二君) 御異議ないと認めます。さように決定いたします。  午前は、これにて休憩いたします。    午後零時十五分休憩    —————・—————    午後一時五十六分開会
  102. 館哲二

    委員長館哲二君) それでは委員会を再開いたします。  午後は、地方行政改革に関する調査議題にいたします。  成瀬君から警備警察について、それから鈴木君から選挙違反事犯の処理について、それぞれ質疑の要求がありましたから、順次これを許可することにいたします。
  103. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 最初に、会計検査院関係の方に伺いたいと思います。  報償費というのですか、謝礼金というのが出ておりますが、一体それを監査をされるのに、どんなふうにして監査をされるのか、おわかりになりますか。
  104. 保岡豊

    説明員(保岡豊君) 報償費つまり捜査費でございますが、これは、書面検査と実地検査をいたしております。書面検査では、支出官が取扱い責任者に支出いたしまして、取扱い責任者の領収書をもって計算証明として会計検査院に月々送って参ります。その月々送って参りましたそれによりまして、支出官から取扱い責任者に出したということを書面検査として確認いたします。それから、実地検査に参りましたときに、取扱い責任者が取扱い者に、たとえば警察で申しますと、本部の部長であるとか警察署長であるとか、そういう取扱い者にこれを交付いたします、その取扱い者のおります官庁に検査に参りましたときに、そこに実際に渡しました人の署名捺印があります受取がございます。それを見まして、その報償を受けるべき人に渡っておるということを確認いたします。そこまでの検査をいたしまして、その報償費なり捜査費なりが予算目的に使われているということをもって検了といたしております。
  105. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうしますとですね。かたくやっておられるようですが、報告がなされるのは、これは何カ月後になるのですか、普通。
  106. 保岡豊

    説明員(保岡豊君) その決算をいたしました月の一ヵ月後、また、中央を通って参りますときには、四十五日ということになっておりますが、原則として一ヵ月後に参ります。
  107. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、大体取扱い責任者というのですか、支出責任者というのは、大体そこの署長さんなら署長さんがあなたの方に報告を署長名で出す、そういうことですか。本部長ですか。
  108. 保岡豊

    説明員(保岡豊君) 取扱い責任者というのは、本部長でございます。
  109. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、本部長が公告をする。そうして取扱者が大体署長になっておって、そうして実地検証されるような場合には……、その辺のところをもう少し名前で言っていただけませんか。
  110. 保岡豊

    説明員(保岡豊君) 公告をいたします計算証明の証拠書類を会計検査院に提出いたしますのは支出官でございます。支出官が支出する相手方、これが本部長でございます。で、支出官が本部長の領収書を証拠書類としてつけて参ります。そうして本部長がその下の取扱者にこれだけ渡したと、受け払いをそれにつけて参ります。
  111. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうして実地に行かれる場合に、署名捺印してある領収書、そういうものが正当に渡っていると、一体これに対して、報償費なんか過大に出しておるのか、正当に支払われておるのかというような、一応基準といいますか、何かお聞きしますと、これは事後承認的なものだというふうに聞いておりますが、基準と申しますか、あなたの方は、正当な支出であるか、過大な支出であるか、過小な支出であるかというようなことについての判断と申しますか、そういうことはどうなっておりますか。
  112. 保岡豊

    説明員(保岡豊君) その額について、多少、一万円とか二万円とか多くなって参りますものについては、その説明を求めます。ただ、説明を求めまして、それでなるほどということを認めたときには、それで検了するということになっております。
  113. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 大体報償費の出ておるのは、内閣調査室、警察あるいは公安調査庁、そこら辺のところと見てよろしゅうございますか。
  114. 保岡豊

    説明員(保岡豊君) ただいまおっしゃいましたところがおもなものだと思います。私の担当以外のものは、今おっしゃいましたうちで内閣でございます。それで、私の担当では、今おっしゃいました公安調査庁を含む法務省関係警察関係、それから防衛庁にもございます。
  115. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 大よその検討なんですが、年間一体、あなたが担当になっておる公安調査庁とか、あるいは警察というのは、どのくらいこういう報償費というもので使っておるか、そういうことはおわかりになりませんか。
  116. 保岡豊

    説明員(保岡豊君) 予算で申しますと、公安調査庁は四億くらいだと思います。それから警察の捜査費も大体三十二年度の決算といたしまして八億ばかりでございます。
  117. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 あなたのおっしゃる捜査費が大体報償費と見ていいわけなんですか。梓通いうと、捜査費は、警察関係でいうと、もう少しいわゆる捜査ということになると私は多いと思うのですが、捜査であるが、実質的には表彰的なものだということなんですか。どういうことなんですか、その捜査費ということは。私は報償費のことを聞きたいのですが……。
  118. 保岡豊

    説明員(保岡豊君) 報償費もございます。報償費は、そのうちの五五%くらいが今申しますような情報関係に使われております。それから捜査費は、全部今のような、私先ほど申し上げましたような検査の仕方をしております。報償費のうちのあと残りましたものは普通の証明でありまして、これは表彰をするというものが入っております。
  119. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 五五%とおっしゃいましたが、大体警察関係でいうと約四億四千万円それから公安調査庁が二億二千万円、これは報償費としては相当額が多いわけですが、一件に非常にたくさん出されておるのですか。員数が非常に多いということになるのですか。かりに一人一万円ということになれば、莫大な数字になるわけですが、非常に金額の高いのがあってこういう金になるのか、それとも件数が多くて非常に伸びていると、たとえば一万円か、十万円とか、三十万円というような金のかかっているものがあるわけですか。
  120. 保岡豊

    説明員(保岡豊君) 十万円くらいのものは、一人じゃなくて、やはり団体かとも思います。そのどの件にどうということは、私は今ここに持っておりませんし、このことは、ちょっと私の方から申し上げられないかと思います。ここに資料がございましても、むしろこれは、どうぞ警察の方から何していただきたいと思います。その官庁の方から。これは実は、今のような証明の仕方をしておりますものも、やはり行政の執行といたしまして、普通の証明のように検査院に出しますと、どうも行政の執行がうまくいかないということで、そういう取扱いをしているものでございますから、その点、私どもの方の証明に来ているところでは、それについても、どこの本部長へどののくらいということは、一々警察庁なり何なり、相手方の方に打ち合せてから申し上げております。
  121. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 行政の秘密があるということは、私もほんとうなら好ましいことでなくて、もう少し、国民の税金が使われるんだから、あからさまにしていただきたい。しかも、うまくやらないと、人権の問題もからんでくる問題ですから、少くとも特にこういうところに秘密があってはならないと思いますけれども、しかし、立場上あるということも、百歩譲るわけじゃなくて、少し譲れば、まあこれも認めざるを得ないと思います。とするならば、こういうふうにお尋ねしたら一つお答えいただけましょうな。たとえば、最低千円出している、二千円出しているという、そういう数が非常に多いのか。一万円を単位としたのが数が多いのか。そういう大ざっぱにお答えいただけませんか。
  122. 保岡豊

    説明員(保岡豊君) やはり一万円以下が多いように私聞いております。
  123. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 まあそうしますとですね。相当な件数においてまあそういう報償費が出されているということで、あなたの方が発表される場合と申しますか、そういうような場合には、やはり検察庁、警察と打ち合される、あるいは公安調査庁と打ち合されるということになれば、それを法的にこれはとめられているのかどうか、やはり行政の秘密をある程度保持しなければならぬういうような内部における一つの約束ごととしてやっておいでになるのか、その辺はどんなものですか。
  124. 保岡豊

    説明員(保岡豊君) これらの予算につきましては、これらの予算を執行するのに、会計検査院がじゃまをするようでは困る。そういうふうな執行がうまくいくようにという考え方でわれわれやっております。相手方と協力して検査をするという考えでございます。
  125. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 まあそうしますと、たとえば実地検証なんかおいでになるときでも、あなたの方の主任官とか、あるいはそういうふうな方が一人なら一人で帳簿を見て、これで領収書があり、そうしてこんなふうに使われたというような説明もつけられて、なるほどと、こう思えば、これで了承すると、大ぜいで討議して、間違いだったかどうかということは論議されない、こういうことですか。
  126. 保岡豊

    説明員(保岡豊君) 大体先生のおっしゃる通りでございます。
  127. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 次に、人権擁護関係の方についてお尋ねしますが、最初に、この前のときに亀田君が本会議で質問をいたしましたことに対して、これは平野署の問題なんですが、一応調査中であるから、近日中にお答えが出るというような本会議場の答弁であって、内容は留保されたというような形なんですが、その後何かあなたの方に対して地方の方から報告なり、あるいはあなたの方からじきじきに調査されておったのか、どんなふうになっておりましょうか。
  128. 鈴木才藏

    政府委員鈴木才藏君) 人権擁護当局の鈴木でございます。本件につきましては、先ほどおっしゃいましたように、亀田さんの質問に対しまして、法務大臣から次のようにお答えしたと思うのです。その事件については、本省の方から大阪の法務局に対して、人権侵害事件として一応取り上げ、そうして徹底的な調査をするように指示をしたという、こういう御答弁があったと思うのです。その後大阪法務局におきましては、相当これは急いだようでございますが、いわゆるこの人権を侵害されたといわれる上田さんといわれる方及びその関係人等二十数名について調査をしたのでありますが、その後大体の事実が認定されたとして、私の方に大阪法務局から報告があったのであります。その報告によりますと、上田利男という方でありますが、これはいわゆる平野警察署の協力者といわれる人でありますが、その方について、新聞なんかでいわれたような結婚の妨害という事実は認定しがたい。しかし、もう一つの問題点である、警察官協力者である上田利男氏に対しまして、共産党に入党することを強要と申しますか、本人がどうもいやがるのをやや強要した、こういう点については相当の疑いが認められる、こういうふうな報告になっておるのであります。ただ、御承知のように、この人権侵害問題につきましては、刑法の犯罪のように、しっかりとした法律による公訴要件というものがございませんので、こういうふうな警察官による結婚妨害あるいは共産党への入党の強要、それは情報を取るためでありますが、こういう事実が人権侵害となるかどうかということにつきましても、よほどその事実を確かめまして、そうしてまた、警察の警備情報活動というものとにらみ合せまして、よほどよう検討いたしませんとしっかりした結論が出ないのであります。それで、私の方としましては、大阪法務局から送って参りました調査資料に基きまして、その事実の認定が妥当であるかどうか、その認定された事実について、どういうふうにこれを人権擁護上処置するか、こういう点につきまして、ただいま鋭意検討中でございます。私としましても、相当むずかしい問題であります。また、一つの私の方の意見か、また他の官庁に対しましても相当の影響を及ぼす先例となると私考えますので、私自身、局長といたしましても、相当慎重に今検討をいたしておる次第であります。
  129. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 結婚妨害については認定しがたい、共産党への入党の強要の問題については相当な疑いがある。これは北村巡査がやったという断定なんですか。それとも辻井とか何とかいう警部補がやったんですか。その辺は、名前でいうとだれになりますか。
  130. 鈴木才藏

    政府委員鈴木才藏君) その点につきましても、資料に基きまして、だれが最終的な責任者であるかということは、少し認定しがたい問題があるのであります。結局私の方では、平野警察署の辻井警部補でございますか、その責任者であります。やはりそれとの一種の関連的な行動ではないかとも考えております。
  131. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうしますと、これは、直接にやったのはどうも北村という巡査で、係長が辻井さんですから、辻井警部補と共同でやったんじゃないかということですか。それとも署長が十分承知しておって、共同謀議と言ってはおかしいんですけれども、その辺の範囲は疑いがあるといわれるんですが、事の事実じゃなくて、私は、警察関係の者では、だれがそれについてやった人で疑いの範囲があるかという点は、今お聞きしますと、どうもわからないじゃないかとおっしゃるが、それでは全然わからないのか、いや、署長か、あるいは辻井さんと北村さんだけに限定されるかというような点におわかりになりませんか。
  132. 鈴木才藏

    政府委員鈴木才藏君) その点は、この警備情報活動の実態については、私の方もよくわかりませんけれども、その辺もよく調査いたしまして、一体平野警察署自体の方針のもとにやっておったのか、あるいは別個の指示のもとに辻井警部補が責任者としてやっておったのか、私の方では、まだその点を確認いたしておりませんが、また、確認しなければならぬ問題であろうとは存じますが、今調べております。
  133. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私は、人権全体の問題としては、今の問題もお尋ねしなければならぬと思いますが、そういうことは時間的な問題で省略しまして、一つ協力者を得まして個人のことをやれば、これは確かに人権侵害が出て参りますが、団体調査し、あるいは個人の動向を調査するというようなことは、やはり人権が侵害されたことになるんですか。ただ単に入党をどうこうするというんではなくて、署がそういうことをやつておれば人権を侵害されたと、こういう解釈はできませんか、できましょうか。
  134. 鈴木才藏

    政府委員鈴木才藏君) 私が一番悩んでおるのはその点なんです。実は、この警察の警備情報の活動の範囲、国家公務員として行います警察官の情報改集の限度と申しますか、それは一体どこにあるか。それはいろいろ、警察法の二条その他から、警察の本来の職務からいろいろ解釈論が出てくると思うんです。今私が責任を持って、これが、先生のおっしゃいましたようなことがすぐ人権侵害となる、これは今断定しがたいのであります。
  135. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 まあものさしをあなたの方の役所が持ってくれなければ、だれもものさしを持つ人がないわけです。少くとも基本法としては、憲法あるいは警察法あるいは破防法の公安調査というものからにじみ出してきた場合に、いや、こういうことは警察警備警察としてやるのは当りまえだというなら、もし逆な結論であるとするならば、これは大へんなことになる。少くとも好ましいとか好ましくないといったら、私は好ましくないということがすぐ出てくる。これも私は、あなたのおっしゃる人権侵害そのものがずばり当てはまるかどうかということになると、ケース・バイ・ケースによって判断が違ってくる。しかし、大方針と申しますか、基本は、困っておると言われたら、それは私の方が困っちゃうのです。ですから、あなたの方は大方針、基本的な態度だけはしっかりしておかれなければ困る。それまでお逃げになるということは、そういうつもりじゃないかもしれませんが、根本まで全然ないということじゃないでしょう。大方針だけはあるのでしょう。ただ、個々の問題になると非常にきめにくい、こういうふうに受取れますが、どうですか。
  136. 鈴木才藏

    政府委員鈴木才藏君) 私は、今、先生の御質問に対しましてお答えいたしましたわけで、先生の御質問が、個人の警察官あるいは警察署なり官庁が、個人なり団体について情報を取ること、それ自体が人権侵害ではないか、こういうふうな御質問だと思いましたので、それでやはり、どういう情報であるか、あるいは対象によりましていろいろ違うのじゃないかと思います。一般的にそういうふうな御質問に対して、私が今確信を持ってお答えすることは今のところちょっとできにくい、こういうふうにお答えしたつもりでございます。
  137. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 まあ非常に厄介な問題だと思いますが、これはかりに個人が警察官と、こうなったり、あるいは公安調査の人という一つの肩書きをくっつけると、非常に問題がむずかしくなると思います。かりにある個人が一個人のいろいろのこと、動静を調べるという点は、これは、これを何も知らせずにそのまま持っておれば、これは何も人権侵害にはならぬと思います。これを出して使うからこそ初めて人権侵害になると思います。その場合に、警察なり、警察という一つの組織か、公安調査庁という組織があって、組織として、全体のものとして今やっておるから非常にお困りじゃないかと思います。そして、しかもこういうものを使うわけですね。ですから、ただ断定に困難だとおっしゃる。そのこともわかるが、私は、少くとも人権擁護局はあるものさしを持っていただかないと、人権を侵害しっ放しですよ。あなたがそんなことを言っておられると、警察官がどんどんやりますよ。だから、それだったらどういうことになりますか。非常に、なんぼでもやられちゃって、今お話を聞いておっても、ちょっと聞きましたが、八億という捜査費のうちの五五%が報償金に使われるという話がありましたが、これは相当な件教であるのだと思います。これはやりっ放しになってしまいますが、どういうことなんですか。断定しかねる、私としてはちょっと断定しかねる、こうなのですか。私は、相当議論をされておると思うのです。そうして議論されたけれども、今のようなことかもしれません。それじゃ好ましいことであると思われるか、好ましくないと思っておるのでありますか。
  138. 鈴木才藏

    政府委員鈴木才藏君) 先生も、大分これは問題がむずかしいということは、御了承いただいているのでございますけれども、その入手いたします情報の種類、どういう情報を入手するのか、それから、その対象がどういうも  のであるか、こういうことによって非常に結論が違ってくるのじゃないかと私思うのであります。一がいに、今おっしゃいましたように、国家機関が、あるいは警察なり公安調査庁が個人あるいは団体の情報を入手することは、相当の報償費を使って情報を入手することは、好ましいことであるか好ましくないことであるかという御質問でございますけれども、どうも私は、そういうふうな抽象論に対しましては、ちょっと今お答えができないと思うのであります。
  139. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 今押し問答してもしょうがないと思いますから、とにかく国民は、非常に人権擁護局に人権を守ってくれるものと期待しておりますから、その国民の期待を裏切らないようにしていただきたい。あなたの方がズロースを脱げば、脱ぎっ放しになってしまって、国家警察が独裁国家になり、暗黒国家になると思いますから、少くともこの点については御考慮いただかなければならぬ。  それじゃ、こういういわゆる世に言うスパイ、平野事件は、世にはスパイ事件という、そういうような関係で何件ぐらい受理されておりましょうか。これは初めてでございますか。
  140. 鈴木才藏

    政府委員鈴木才藏君) ちょっと質問を許していただきたいと思いますが、警察協力者を使ってある者の情報を入手する。そういう事件が人権侵害として申告されたり、あるいは他の資料によりまして私どもの関知した事件の意味と思いますが……。
  141. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうです。
  142. 鈴木才藏

    政府委員鈴木才藏君) 三十三年度、約十件ぐらいの事件が受理されております。
  143. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 三十三年度で十件ですか。
  144. 鈴木才藏

    政府委員鈴木才藏君) はあ。
  145. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 普通、あなたの方で資料としてもらっているものがあるわけですが、逮捕勾留捜査、押収、自白強要、暴行、武器使用その他の事項ということになっておりますが、その他の中にこれは入っているわけですか。
  146. 鈴木才藏

    政府委員鈴木才藏君) さようでございます。
  147. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 一応この十件について、どんな内容であるかということについて、またの機会でよろしゅうございますが、資料として一つ御提出が願いたいと思いますが、いかがですか。
  148. 鈴木才藏

    政府委員鈴木才藏君) 至急に内容を調べまして、御報告申し上げます。
  149. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 次に、二俣事件の問題ですけれども、これはどんなふうになっているか。それとも、あなたの方としては、まだ手をつけておいでになりませんか。何も見えておりません。どういうふうになっておりますか、警察関係として。何もやっておいでになりませんか。
  150. 鈴木才藏

    政府委員鈴木才藏君) その事件につきましては、静岡の法務局の方で一応の調査に着手いたしました。その事件が起きました後におきましても、それからまた、日本弁護士連合会の人権擁護委員の方が乗り出しまして、そうしてまた、相当むしろその方に重点を置きまして調査されたようでありますが、私の方といたしましては、その二俣事件についての拷問でございますか、紅林警部補でございますが、その方の人権じゅうりんの問題について  は、結論には達していないように思います。
  151. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これは、調査しているのだけれども、まだ結論を出す段階になっていない、こういうことですか。それとも調査に入って、時間が余りないから、途中であるという意味ですか。調査は全部済んでしまって、しかし結論が出るのが……まだ調査の段階ですか。
  152. 鈴木才藏

    政府委員鈴木才藏君) それは、私が就任いたす前の事件でございますしたが、一応調査に着手いたしましたが、刑事事件となりましたために、地方法務局におきましては、その拷問の事実の有無につきましては、厳格に徹底的な調査ができなかったようでありまして、むしろそれは、法廷においてその供述の記録を述べることに関連して、法廷においておそらく問題が出されるだろうというので、中止をしておったような傾向に私は見受けたのであります。
  153. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ところが、もう法廷の問題は済んでしまって、結論が出たと思うが、そうしますと、今度あらためて、もう法廷の結論が出ているか、よくわかりませんが、早急に結論を出されると了承していいのですか。
  154. 鈴木才藏

    政府委員鈴木才藏君) 当時、あの二俣事件を扱いました警察署におきましては、二つめの幸浦事件がございます。またそれを調査いたしましたのが、同じ紅林警部補と私どもは了解しておるのであります。私はこの事件の起きました当時に、まだこの職にはついておりませんでしたが、従来、人権擁護局の方針というものが、ある人権じゅうりんに関連して刑事で起訴されました場合には、むしろ人権擁護局においては、協力的な立場においてその事件調査すべきではないか、もしも下手に動きますというと、人権擁護機関の職員が裁判の公正を妨害するような結果になりはしないか、そういう憂えがあったと思うのであります。私の局長としての現在の考えでは、やはりこういう刑事事件の捜査にからみます人権じゅうりん事件、ことに警察官の拷問等の場合につきましては、やはり公正な立場から積極的に拷問の事実ありやいなやということを調べていった方が、結果的には一つの裁判の公正を保つゆえんではないかと、こういうふうに考えまして、私は従来の局の方針を改めまして、今後は裁判を妨害しない限り、むしろその公正を保つような方向において徹底的に事件中においても調査すべきではないかと、こう考えております。この事件につきましても——二俣事件、あるいは幸浦事件につきましても、やはり裁判の判決の上におきましては、事件によりますと、明白に警察官が捜査中に暴行を加えたというふうな事実があげてあるのもあり、ないのもございますが、そういう判決例なりあるいは調書を再検討いたしまして、やはりこの警察官のもし拷問の事実が認められるならば、今後のためにも何らかの勧告等の措置もやらなければならぬと、かように考えております。
  155. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 まあ幸浦事件を高裁がどういう態度を決定するか、私は近々のうちに決定されて、ある結論が出ると思いますが、少くとも二俣事件の方は結論が出ておると思います。それについて、これは「べにばやし」というのですか、「くればやし」というのがほんとうだそうでありますが、二俣事件の方が早く結論が出るのではないかと思いますから、一つ早急に調査していただきたいと思うのです。  ちょっと前に戻りますが、先ほど三十三年に十件あるということでありましたが、これは大体本人の申告に基くものか、それともあなたの方で十件というものが現われてきたのか、伺いたいと思います。
  156. 鈴木才藏

    政府委員鈴木才藏君) 大体は本人の申告による場合が多いのでございますが、まま新聞にそういうふうな記事が出る場合、それに基きまして調査を開始する場合があります。今あげました十件のうち何件が申告で、何件が他の情報探知か、それは今手元に数字がございませんが、その点は追って御報告申し上げます。
  157. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 先ほどお聞きになっておったと思うのですが、大体警察は、かりに一万円単位といたしまして、年間件数として、一人何万円出すか知りませんが、とにかく四億四千万円くらいこれに使っておる。これは相当なものだと思いますが、氷山のほんの一角しか出ていないのですね。ですから、私は相当なものが隠れているのではないかと思う。たとえば、北陸の問題で、ここにちょっと資料がございますけれども、これも何か国鉄のある執行委員に対して一つの犯罪容疑というものがあって、それと取りかえに情報を提供してくれというようなことを言ったらしいのですね。本人もそれを認めておるわけです。もしそのことがほんとうならば、非常に私は、悪質というのですか、このくらい陰険なやり方というものはないのではないかと思うのですが、あなたの方から十件出まして、その資料がこうだとおっしゃるならば、その資料のうちへこれは入っているかもしれませんが、あるいは入っていなければ、また一つこういうものがあるというふうにお出ししてもらいたいし、あるいはまた三重県の亀山で問題が起きておりまして、ここに私も資料を持っておりますが、これは、あるいはこの地方行政委員会でなくて、法務委員会の方の所轄問題かもしれませんので、私があまりかれこれ言うのもなんですから、大体今申しましたようなことで、私の事件関係質問は終らしていただきます。
  158. 鈴木壽

    鈴木壽君 局長さん、ちょっと今の成瀬さんの関連という意味じゃございませんが、お仕事の上でのお尋ねをしたいと思うのですが、地方の法務局の方の人権擁護の方へ、まあ何といいますか、申告といいますか、提訴というのですか、私は正しい言葉の使い方はわかりませんが、そういうことがあったものにつきまして全部、こういうことについて提訴があった、あるいは申告があったというようなことがあなたの方へ回りますか。それとも、向うは向うでそういう受付をして、いろいろ調査なり審査なりをするだろうと思うのですが、その結果をこちらのあなたの方へ、処理状況、結果等について報告をすると、こういうことになるわけですか。
  159. 鈴木才藏

    政府委員鈴木才藏君) それではちょっと御説明をいたします。この人権侵害を受けたとして、法務局、これは全国に八カ所ございますが、法務局の人権擁護課、あるいは地方法務局の人権擁護課、そういうところに申告がございますというと、私の方からの前々からの指示によりまして、これこれの事件というものは受理報告を大臣あてに必ず報告するようにという事例があげてあるのであります。それはおもに現在日本において重要視しなければいけないと思われる類型の人権侵害事件であります。それは、主として国家公務員による人権侵犯の申告、それからまた私人に対する人権侵犯のうちでも、特に村八分とか、それから人身売買、これは今手元にございませんけれども、いろいろな類型を掲げまして、そして、こういう事件は必ず報告するようにと、こういうふうになっておるのであります。それに当りません事件でございますが、これはおそらく御理解できないくらいにあらゆる種類の一つの国民の不平というものが、人権問題として私の方へ訴えてこられるのでありまして、私の方が指示いたしました類型に属さないもの、あるいはその類型に属するものでも非常に軽微なものであるという場合は、一般事件として受理いたしまして、本省の方には報告が参りません。それは、現在は監督法務局の方へ一応一般事件として申告をしておるのであります。それから、法務局、地方法務局の人権擁護機関で受理をいたしまして、大臣あてに報告をして参りまして、その事件をさらに調査した結果こうういふうな処置をしたと、こういうまた処理報告が私の方に参るのであります。そのうち、勧告をするという場合には、必ず本省の方の許可と申しますか、指示を受けてすることになっておるのであります。従いまして、大体の、このおもな地方に起きました人権侵害事件というものは、ほとんど私の方に報告されて参るのでありますけれども、やはりこの地方機関の認定によりまして、単なる一般事件として受理したようなものは報告はないのであります。
  160. 鈴木壽

    鈴木壽君 大体わかりましたが、たとえば、必ず本省の方に報告をしなければならないとして、事例をあげてお示しになっているのは、国家公務員による人権侵害の問題とか、あるいは人身売買、こういうような問題がそうだというのですが、警察官の取り調べに当ってのこういう問題も当然それじゃこの中に入ってくるのですね。
  161. 鈴木才藏

    政府委員鈴木才藏君) 現在では、国家公務員の人権侵犯で一番重視いたしておりますものは、警察官による、あるいは検察事務官等による人権侵犯事件であります。
  162. 鈴木壽

    鈴木壽君 それで、これは私はきょうはあなたにお尋ねしようと思っておらなかったものですから、まだ前もって通告しておかなかったのですから、今言われてもあなたもお困りだろうと思うのですけれども、そうしますと、たとえば昨年の春の総選挙の際の選挙違反の問題にからむ取り調べの上でのいわゆる人権侵害だということで、その地方の人権擁護委員会なり、あるいは法務局の人権擁護課の方へ申し出たりあるいは提訴したりしたようなことは、当然こちらの方に、結末のいかんにかかわらず、事件ならば事件として、こういう事実があった、提訴があったということだけは、きているわけですね。
  163. 鈴木才藏

    政府委員鈴木才藏君) 大体は、きております。
  164. 鈴木壽

    鈴木壽君 ああそうですか。それで、ちょっとお願いをしておきますがね。秋田の、昨年の十一月十八日だったと思います。鎌田徳治ほか十名から、この人たちに対して、選挙違反があるというので逮捕され、取り調べを受け、起訴された事実があるのですが、これの逮捕そのもの、それから取り調べの状況等からしまして、人権侵害である、あるいは不法な勾留であるというような幾つかの事実をあげまして、秋田の方へこれは提訴している事実があるのでございますが、これについての報告があったら、あとでこれは来週でもまたお願いしたいと思いますが、それからもう一つは、これについて、一つその後どうなっているのか。これを一つお知らせ願いたいと思います。なお、今公判が行われているのですが、こういうまあ訴えなり提訴なりがあった場合のいろいろな審査と申しますか、そういうような事柄は、公判の進行とは関係なしに行われるものかですね。一方は、公判が何べんか進められている。しかし、今言った提訴を受けた、これは公判のあるなしにかかわらず、それとは別個に、内容等の調査、検討がなされているのか。こういうことはどうでしょうか、一般的に言って。
  165. 鈴木才藏

    政府委員鈴木才藏君) 今、成瀬先生にちょっとお答えしたように、選挙事件で公判中の人権侵害問題や、公判にかかっております事件に関連する人権侵害問題というものは非常に調査が困難であります。これは正直に申しますと、場合によりますと弁護士の方なんかが、あるいは自己の事件を有利に導くために、人権擁護局を利用される、そういう意図のみではございませんけれども、中にはそういうような意図もうかがわれる場合があるのでございます。私の方では、本則といたしましては、この刑事事件の裁判と人権侵害事件調査とは全く別個の観点からやるのですが、そのやり方につきましては、相当慎重を期しませんと、かえって裁判の公正を妨害するようなことがございますので、私の現在の方針といたしましては、問題が違うのでありますから、別個にやってしかるべきものと思うのであります。ただ、人権擁護機関の調査方法なり態度については、よほど慎重を期さねばならぬと、私はこう考えております。従いまして、非常にひどい人権侵害が認められるという場合は、これは公判進行中でありましても、やはり積極的にやらねばならぬのじゃないかと、私はかように考えております。
  166. 鈴木壽

    鈴木壽君 先ほど申しましたように、今、急な問題で、実はきょうあなたにお尋ねしようということの予定の問題じゃなかったものですから、あとでいずれ先ほどのお願いしましたことにつきまして、おわかりの点について、こういう機会にでもまたお願いしたいと思います。
  167. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 公安調査庁の方にお尋ねしたいのですが、今、会計検査院の方からお伺いしますと、大体四億ある。そのうち約五五%といわれるから二億二千万円が大体報償費に使われている。今どんなことをやっておいでになるのか。概略一つ承わりたいと思います。報償費関係ですよ、大体二億二千万円がどう使われておるかということですね、逆に言えば。
  168. 館哲二

    委員長館哲二君) 速記をとめて。    〔速記中止
  169. 館哲二

    委員長館哲二君) 速記を始めて。
  170. 占部秀男

    ○占部秀男君 今お話成瀬さんの質問の中で、局長の言われるのは、入党を強要したかどうかという点については疑わしい点があるけれども、まだはっきりとしていない。こういうような答弁であったと思うのです。これは実際本物か、うそ物か、まあ別にして、大阪の、落した書類なるものをずっと通覧して見ますと、その強要したということが、単にある日ある所で偶然的に会ってやったというのではなくて、署長、それから係長ですか、そうした形から私の見たところでは、約三ヵ月にわたって、入党をさせるようにこうしろ、こうしろ、こうしろというような内容の、これはうそかほんとうかわからぬけれども、書類があるわけなんですね。しかも、その書類の中を見ると、それは単に平野署でしたか、その警察署の範囲内だけでなく、本部からの指示によってという形でそれがなされておるのですね、この内容を見ますとね。本部からの指示の内容なんですがね、指示の内容について、個別的にその人間を入党させろという指示ではないのですけれども、それを早く対象を作れという形で、何といいますか、こっちでは協力者といいますか、スパイを作れという形でそれが出ておる。そういうように、単に警察だけじゃなく、本部というのは、たぶん警察署じゃない、県警本部だろうと私は思うのですけれども、この県警本部からそれが指令してある。そういうふうに体系的にずっとこうなってきているんですね。これがもしあなたの方の調べによって事実であるということになると、これはまあ政治問題は別にして、人権擁護の立場からもこれは非常に大きな問題になってくるわけですね。それで、そういうようなことになると、これは単にある警察官が入党を強要したというような問題だけではなくて、これはもう全体、その一つの大きな機構全体が、まあいわばある県の県警の政策自体がこういうものを作り上げようということになるわけなんですね。そういうようなことは今後のあなたの方の調べによってだんだんわかってくると思うんですが、かりにそういうような調べが事実であるというような場合には、個人の警察官がどういう行動をとったかは別にして、ともかくも命令的にそれが行われたということで、これはもう個人の警察官自体がそういうことをあまりやるのはいやだから、とか何とか、調べの中ではおそらく出てくると思いますが、そういう個人の関係の形だけではなくて、これはもうそういう一つの体系的な筋がはっきりするということになると、これは個人の警察官の問題だけではなくて、もう一連の関係から強要をされたという、強要をするという形が押しつけられているという、客観的な私は傍証になるんじゃないかと、こういうふうに考えるんですけれども、その点については、これは仮定の問題のような形になりますけれども、こういう点はどうですか。あらかじめちょっと伺っておきたいんですが。
  171. 鈴木才藏

    政府委員鈴木才藏君) 大阪法務局の大体の認定しました事実は、やはり今、占部委員のおっしゃいましたように、諸般の事情から上田氏に対して共産党に入党することを強要——強制と言いますか、強要したことについて相当の疑いが認められるというように見られておるわけであります。ただ本件につきまして、上の方からの一貫した一つの指令のもとにそういうふうに入党工作がなされておったかどうか、それはまだ私どもの方では確信を得るまでの調査ができておりません。それから私が今慎重を期しておりますのは、今お手元にもお持ちのような、この総評かどこかから出ております警察官が落したという書類、これは率直に私は申し上げるのでございますが、その書かれたことそれ自体が全般的に警察官のやった行為であるか、あるいは一つの報告文書であるか、その点、非常に認定するのに私どもも困難を来たしております。それで関係者を当ってみておりますようなわけで、やはり答えられる方が非常にまちまちなんで、もう少し、これは相当重要な問題でありますので、慎重を期して調査いたしたい。今おっしゃいました御趣旨はよく考慮に入れまして調査をいたしたいと思います。
  172. 關之

    政府委員(關之君) 公安調査庁の今の費用は、予算名目では調査活動費ということになっております。報償費とはその性格において異なるというふうに考えて、要するに調査の活動費である。そこでその何に使っておるかというお尋ねでありますが、要するに破防法についての破壊的容疑団体調査に使っておる、こういう形に相なるわけであります。まあ破壊的容疑団体として、たとえば日本共産党の問題を申しますと、とにかく現在においてその基本的性格は変らぬ。しかもその内容においてかなり問題がある。しかも、出てきてこれがあのことを聞きたい、このことを聞きたいと言っても、なかなか言わない。いろいろここに苦心することがありまして、情報資料の収集その他に、やはりもちろん全然そういう金を払わずに御協力いただいている方もありまするが、御協力いただく方も相当の出費、各種の費用なり、あるいは苦心をされるわけでありますから、それに対してお礼を差し上げている、こういうことに相なるわけであります。
  173. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 まあお礼を差し上げていると、こうおっしゃるのですが、大体あなたの方で言うと、これは、容疑団体は共産党のみでありますか、今のところ……。
  174. 關之

    政府委員(關之君) 一応まず共産党を筆頭といたしまして、北鮮系の朝鮮総連、そうして若干右翼の方にその容疑を持つ団体が今あるわけであります。
  175. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、共産党と総連と、それから右翼団体だのを調べている。そうして金を出しているというが、何人くらい一体やっておいでになりますか。かりに二億二千万としまして、千円にしちや件数が二十二万件になるから、少し大へんだと思いますが、何件くらいになりますか、件数は……。
  176. 關之

    政府委員(關之君) 今のお尋ねは、こちらの手のうちのことになるわけでありまして、ここではどうも詳しくお答えいたしかねますが、先ほど検査院の方が答えました金額の問題、大体一万円前後のものが多かろうと思います。まあそんなところでお察しいただきたいと思っております。
  177. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 結局そうすると、共産党が一つの容疑団体だと、あるいは総連が容疑団体とか、あるいは右翼が容疑団体とかいうふうにあなた方が認定されて、そうしておやりになるのですが、それはそのものずばりでおやりになっているのか、相当周囲関係まで洗って大体調査されているわけですか。
  178. 關之

    政府委員(關之君) 実はまず第一はそのものずばりで調べたい。従ってできるだけ周囲に御迷惑をかけることを極力排除する、こういう点が私どもの根本の方針でありまして、一番私たち幹部の心配とするところはそこでありまして、もう、そのものずばりでやる。まあ周囲にいろいろの面で、国会の破防法の審議の際、その他を通じましても、御迷惑のかからぬようにという御注意の言葉がありましたから、よくその趣旨は尊重して、できるだけの努力はいたしているのであります。
  179. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 情報交換のことが第二十九条にあるようですが、どんなことをやっておいでになりますか、警察との……。
  180. 關之

    政府委員(關之君) これは破防法の「暴力主義的破壊活動」というのが、要するに刑法の規定をとっているわけであります。破防法第四条の……。ただ、それにたとえば政治上の目的であるとかいうものをかけて、それが団体の行動としてもかけて、内容的に見ますと……。個人的の面から見ると刑事上の犯罪ということになれば、従って私の方の調査の線から警察の参考になることもございましょうし、あるいは警察側の調査で私どもの方にきわめて参考になることがある、こういうわけであります。それは実際に申しますと、各地方の公安調査官の責任においてやったり、あるいは地方におきましても、私ども幹部の間の相互の協調、連絡によっていたしているような次第であります。
  181. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ちょっとあなたは容疑団体として共産党あるいは総連、右翼をあげられました。これは容疑なんですね、容疑を調査することが、たとえば破防法なり、第一条なりに出てくるが、あれには「行った」と、過去の形になっているように記憶しているのですがね。
  182. 關之

    政府委員(關之君) その点はだいぶん国会審議のときにも問題になりました点でございますが、破防法の方では次のようにいたしております。それはどういう団体を規制するかという問題が根本問題でありまして、まあ過去の治安維持法、その他の立法の実績、そうして、そのどういうところに実害があるかというような問題をよく検討いたしました結果、要するに「暴力主義的破壊活動」がその団体の性格化したもの、ただひょっとやったというのでなくて、その根本においてそういう性格をもっているもの、そういうふうに取り上げて見た方がよろしかろうと、こう考えるのであります。そこで今の五条以下の規定の仕方として、過去においてとにかく破壊活動を一回する、これだけでは規制しない。破壊活動を一回しただけでは規制されない。その破壊活動を継続あるいは反復してさらにこれをやる可能性がある——その可能性というのは、これはもちろん、やるであろうというような諸般の事情から見て、そこにそういう性格があれば、そのことをその可能性と認め、そしてそういう可能性のある間はその団体についての調査をいたす、こういうことになるわけであります。これが破防法の立法で最も御議論をいただいた点で、そういうことに相なっておるわけでございます。
  183. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 まあ私も關さんとここで破防法の議論なんかやろうとは思わない。あまり拡大解釈をあなたにしてもらっても……あなたの話をどんどん聞いておると、だんだんだんだんとあなたの方の都合のいいように話が曲っていって、レールがとんでもないところにいくということを心配するので、少くとも一条なり二条なり三条なりやってきて、どう考えてみても容疑団体というものをあなたの方が調査してみて、勝手に認定して、そしてやるというのは、私は、少し行き過ぎではないか。しかもその情報等を集めるのに、まあ労働組合関係あたりに働きかける。そこで少し、わしの方がやると、第三条の第二項で特に規定をしてあるから、これを警察の方で一つ情報をやってくれということで、つうつうでやってお見えになるのではないかと疑っておるのですが、その辺はどうですか、絶対にありませんか。
  184. 關之

    政府委員(關之君) いや、そういういわば法律の穴といいますか、できないところを警察にお願いするとか、あるいは警察ができないところを私の方でやるということはございません。二つの役所はそれぞれ独立の責任を持っておるものでありまして、それぞれ私の方は破防法、警察の方は警察法に基いて厳格に行なっておる、こういうことに相なるわけでございます。
  185. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 まあ所管が法務省関係でございますからとやかく言うわけではありませんが、このごろよくニュースに出るように、スパイ活動で共産党におとり入党をさして、そしてやるというような、非常にまあいわば資料を集める側の方では苦労をされておるということになるんでしょうが、片一方の方から見れば、極端なこれは人権侵害であり、しかも悪質ですよ、人間としてなすべきことじゃないわけです。手段を選ばずというような格好になる。あなたの方が捜査をされるのに、私はどういうテクニックを使ってお見えになるか知らんけれども、相当な、あるいはこんなことでもやらなければ、あるいはそれはできないかもしれない、それがもし、つうつうに洩れるようなことであるならばそれはなかなか破壊活動というのは実際できないことになる、よほどこれは秘密結社的なものにしなければならない。そういうことになれば相当かたいものになる、相当秘密的なものにしてくる。またそれをとるには相当なおとり捜査になる、こういうふうに悪循環してくる。ですから私は、あなたの方はどうやって情報をとるのか、それは手のうちだから言えんと言うが、それは相当なことをやっているのではないかと思うのです、人権侵害の方から言ったら。
  186. 關之

    政府委員(關之君) その点は、まあ大体のところは、破防法の規定によりまして強制権は私の方は全然ないわけでございます。ごらんいただけばわかる通り強制権は全然ない、二十七条によって。必要な調査をするという、まあいわば任意の調査、相手方の御承諾によって調査をする、こういうことになっている。いろいろな調査をいたしますが、根本的には、相手方の御承諾を得て、積極的な御承諾のもとにいろんな協力者の御協力を得てやっていく、こういうことになっておりまして、まあ一般的な問題で破防法審議のときに私どもお答えいたしましたが、まあ新聞記者の探訪活動に類似するであろうと、こう申し上げましたが、数年間の実施の上から見ましても、私どもそういうふうなところを中心に動いているということに相なるわけでございます。
  187. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 まあたとえば労働組合なんかにも、よくあなたの方のお方が遊びに見えまして、やっておいでになるのですが、これはここに規定してあることには、私、違反するとは思わないのですけれども、まあ、みんなして初めてではない、顔見知りであるということで、やあやあということで話をするのですが、ちょいちょいそういうところへお見えになるのですね、勤めてはおいでにならない……。
  188. 關之

    政府委員(關之君) これは調査の上で労働組合をおたずねするということは、私の考えといたしますれば、その中に共産党員がいるだろうとか、あるいは共産党の積極的な働きかけがあるということを、その労働組合の幹部の方にお話をしていただくとかいうような場合以外は、ちょっと考えられないのでございます。特に、二条、三条の規定から申しますと、組合の活動には厳に注意するようにということで、そのまあ薄氷を踏むようなつもりで、それを考えておるわけでございまして、おそらくそういう場合にはその問題は起っていない。そうちょいちょい組合に私の方から出かけて行って、いかにも調査がましいことをいたすことはやっておらないと思いますが、一つ事情を御了承願いたいと思います。
  189. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そういたしますと、まあちょいちょい伺われるということになると、共産党の細胞があるという嫌疑があるわけですかね。実際はちょいちょい伺われるんですよ。私は他府県のことはわかりませんが、愛知県では、たとえば県評とか各単位組合に対して遊びに見えまして、それを断わるわけでもないですよ、みんなよく知っておりますから。ですから、そう目にかどを立ててここで力説するほどのことはないですが、ともかくあなたの方で、私は若干そういう問題については、あなたの方の立法過程におけるいろいろな議論もあったと思います。十分注意してくれと。それで第一線の方では少し点数をあげなければならぬからというので、まあ、とめられぬ限りにおいてはちよいちょい入って行くということになっておるのですから、まあ立法過程にかんがみまして、一つあまりそういうところには行かないように、あなたの方から指示してもらえんかね、これは。
  190. 關之

    政府委員(關之君) 御趣旨は十分に拝聴いたします。実はよく、この種の言論であるとかあるいは集会というような問題についての調査という問題は、非常に実はむずかしい問題であります。いろいろ過去の戦前のことに対する御批判なども十分に私は尊重いたしまして、卒直に申しまして、私ども自身の一番の中心点は、そこの点を最も被害をまあ絶無にとどめる。これはなかなかむずかしい問題でございますが、その破壊活動容疑団体だけの活動をなんとかして浮かし彫りにいたしたいというのが、私どもの破防法運用の一番苦心しておるところでありまして、いろいろただいまのような御注意は十分に尊重いたしまして善処いたしたいと思っております。
  191. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 最後に、こういう調査をいつまでかかっても調査をされるのか。あるときに結論をお出しになるのか。あるいは共産党はどうだ、あるいは総連はどういうものだ、こういうものだという、経過的な、あるいは右翼でこういうのがあるというような、これはどこかへ報告されるものか。あなたの方が調査されて、たとえば法務省ですから法務大臣等に報告され、法務大臣から閣議等に報告されてしまっておるものか。最終的にはこれはどういうことになりますか。
  192. 關之

    政府委員(關之君) 調査の結果の措置についての手続上の法律の規定は次のようになっておるのであります。公安調査庁長官が法務省の外局である公安審査委員会というものに規制の請求をする。こういうことになっておるのであります。これが手続でありまして、もちろん長官としては法務大臣に御報告申し上げ、その御指示のもとにその措置を決定する。請求するかどうかの措置を決定する。こういうことに相なろうかと思います。これはまあ法律上の手続でありますが、さて具体的に問題を処理するという場合に、そのそういう規制措置をするのがこの段階において適当であるかどうかという、こういう問題は、広い各種の広範な内外の公安情勢の上から見ての判断となるかと思うのでありまして、それらのことを考えて現実的な措置をする。こういうことになるのであります。
  193. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 それから公安調査庁の方たちの職務を執行されるといいますか、そういうようなのは、何か警察官職務執行法ですか、そういうものに準ずるとかなんとか、そういうものがあるわけですか。
  194. 關之

    政府委員(關之君) 基準を定めたものがございます。
  195. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 続いて警察関係の方にお願いしたいんですが、長官にお尋ねしたいのは、相当スパイ事件があるわけなんですが、スパイの話は別として、最初に二俣事件のことでお尋ねしたいのは、紅林という当時の警部補が、今、警部になっているわけですが、やはりそのままになっているわけですが、警察の方としてはこういうことに  ついて何にも……、まあ当り前のことだ、警官としてはああいうこともあり得ることだというふうにお考えになっておるのかですね、どういうふうにお考えになっておるのか。
  196. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 二俣事件につきまして結論がああいうことに相なったわけでございます。その間に、捜査上の不徹底と申しますか、不行届きという問題はあったかと思いますが、自白の任意性を疑われるというような問題で、拷問とか、そういう処分と申しますか、に値いするような、はなはだしい非行ということは、警察としては考えられなかったのではないかと思います。従いまして、もちろん刑事の係からは、はずしましたが、その後、警部にまで昇進しているという状況であります。
  197. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 警察としては何らこれは責任もないし、反省する必要もない問題だ、本人にももちろん手落ちはないのだ、こういうように見ているのですか。
  198. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 先ほど申し上げましたように、何らの手落ちがないということではございません。確かにああいう結果になったということについては、その最初に着手をいたしました警察として、また検察庁に送った内容について十分な証拠というものがそろっていなかったということで、まあ検察庁でもこれを起訴し、第一審、第二審では有罪と判決したというようなことで、そこまでみんな間違いということになれば、みんな間違ったということになるのだろうと思います。従いまして警察に責任が全くないということはありませんし、そのときの捜査に当った警察官というものが不十分であったということは申せると思いますが、特に厳罰に処するというほどに責任を追及すべきものではないというふうに静岡で考えておるのだと思います。
  199. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 少くとも、まあそれはあなたがおっしゃるように、検察庁も告発したじゃないか、それから裁判も一審、二審とも有罪になったと、しかし四人ですか、この方、容疑者というのですか、被疑者というのですか、約十年間閉じ込められて、結論が出れば国家賠償等の問題もあるでしょうが、しかし本人の立場に立ってみれば、なかなかえらい問題たと思うのです。一生ということではなくても、家族まで大へんな問題であり、親戚一同までえらい迷惑がかかった。しかも二俣事件だけではなくて、幸浦事件というのか、私はよく知りませんが、同じその刑事主任の紅林さんというところで起きている、なるほどこの幸浦事件の方はまだ結論が出ていないのですけれども、およその見当は大体出ちゃっている、方向はわかるわけです。私は、こういう問題はそのままにいたして、そして警察官には何ら責任がなくて栄進もしていく栄転もしていく、何にもないということにして取り扱うということになると、何かそこには少し、人民の味方である、国民の味方である、国民を保護するのだという警察官としては、捨てておかれるというのは何か遺憾に思うのです。あなたの方としては、まあ人権擁護局で調べて、そこで調査が出てきたら、その結論に基いてやるのだ、従って警察の方はこれでおしまいだ、こういう態度ですか。
  200. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 警察といたしましては、ああいうふうな結論になったということについて、もちろん責任も感じまするし、十分に反省して参らなければならないと思っております。ただ、たまたま紅林君がその捜査の主任に当ったということで、これを特にこの段階において厳に処分するということは妥当であるかどうか。その辺が私ははっきりと申し上げかねるようなものがあるのじゃないかと思います。ただ先ほど申し上げましたように、本人がまあ静岡では捜査のベテランと、こう言われておった人間でありまして、たまたま、ああいう事件が結果を生んだわけでありますので、これを捜査の担当からはずして、別の人間をもって慎重なる捜査をするようにというような反省はいたしておるわけであります。これも紅林君にとってはやはりある意味の措置がとられたということになるのではないか。もちろん被疑者の不幸と申しますか、不利というようなことについては、非常にお気の毒にもたえないし、警察でもそういう結果になったということについては反省を大いにしなければならぬというふうに考えておりますが、これを紅林君一人に帰して処断するということをするには至らなかったというふうに考えております。
  201. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 いや、たまたまこの紅林という人がその場に居合せたとか何とかいうのじゃなくて、そうあなた、殺人事件というものはたくさん起きていないのですよ。静岡に何件起きたかしりませんが、二つなんですね。まあ公判最中である、裁判中であるから、人権擁護局の方としては手控えをしておったという点も私はわかりますし、あなたの方としてもわかる。しかし本人を刑事主任からはずしたということも、本人にとってある意味では罰に類するなんて、私はそんなことは考えてない。こんな不適任な人は当然はずすのは当り前なんで、これこそ警察行政として第一にやっていただかなければならぬことであって、それが本人に対する責任じゃないと思う。そしたらやはりこういうことについては、民主警察としてはある程度何とかしていただかなければ国民が不信を抱くのじゃないか。あまり私もこんな問題で長く言いたくないのですよ。何とかあなたの方で私は適切な関係者の処断というものをされてしかるべきだ、当り前だ、こう思っている。当然だと思っている。それが何か警察の士気として、いや、それくらいのことを、拷問等をやらなければ悪いやつだから白状せぬのだ、これを罰してしまったら警察の士気に関するからやらないというようなことが、万が一にもあなたたちの心の中にあったとしたら大変なことだと思う。私は何とかまあ一つ、あなたの方がどう善処されるか、その結果を見さしていただくことにして、これ以上、私はこの問題については申し上げません。  次に、報償関係の問題ですが、一体どういう処置で、たとえばここに出てきた平野署事件とか、あるいはまだほかにありますが、どういう目的でやっておられるのですか。
  202. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 先ほど公安調査庁の關次長からも話がありましたように、われわれとしては、共産党は合法政党ではございまするけれども、完全に暴力革命方式を捨て切っておるというふうには考えておりません。また共産党自身も、第七回大会におきまして、平和的な方式をとるか、暴力方式をとるかは、情勢いかんによってきまるのだということを言っておるような状況でありまして、これはやはり暴力革命を激成するおそれのある段階であるというふうに考えざるを得ないと思うのであります。なおまた、この共産党は、各種大衆団体等に浸透いたしまして、そこに細胞を組織し、またこれを中核としまして大衆運動を激成し、革命の方向に持っていくという考え方であることは、これは間違いないところであろうと思いまするし、また、そういうことによって、いわゆる激越な、大衆的な不法事犯というものが起っている中には、多くの場合において、共産党の党員の暗躍というものがあるわけであります。そういうようなことで、現実に治安を維持する面においても、また将来の治安を確保していく上におきましても、共産党について、必要かつ妥当な範囲内において調査を進めて参るということは、警察の当然の責務であるというふうに考えております。
  203. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 承わっていると、共産党の者は、とにかく調べなければならぬ、またそういう者がある以上は、警備活動といいますか、そういうことをやるのはあたりまえじゃないか、当然だ、こういうことであって、共産党がなくなるまでは、大体おやりになるわけですね。あるいは、共産党の運動方針が、情勢次第だということじゃなくて、もうやらないんだということになるまではおやりになるつもりですか。
  204. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 共産党員であれば、だれでも、これをつぶさに視察の範囲内に入れようというわけではございません。しかしながら、共産党の基本的な方針というものが、先ほど申し上げましたようなものである限り、共産党が、どういうことを考え、どういうふうな行動を企図しておるかということについては、よくこれを視察し、突発的な事態というようなものについても対処し得る態勢を、日ごろ作っておく必要があるというふうに考えております。
  205. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 破防法に基く公安調査庁というものは、あの成立過程からみて、確かにそういうような点で議論されました。従って、警察の方が、捜査費からいいましたら、これは非常に多いのです。これは、約数倍というものを使っておられるということになるのです、金の額からいいますと。その辺はどういうことなんですか。警察が、いわゆる警察法の第二条に基いてやるというのと、公安調査庁が、破防法の第  一条、第二条、第三条に基いてやるというのと、おのずから違うと思うのですがね。もう一度聞きますが、それは、警察法の第一条の目的、あるいは第二条の警察の責務、こういうものから出てくるのですか。
  206. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) お話のように、警察法の第二条の責務から出てくるというふうに考えております。それからまた、公安調査庁が、破壊容疑団体と考えており、そうして調査を進めていくということは、とりもなおさず、破壊活動を起すおそれがあるという意味において調査をしておるわけです。過去において破壊活動をし、それが継続あるいは反復して行われるおそれがあるということで調査をしているわけでありまして、その行われる行為自体は、犯罪行為であります。そういう意味において、これは、私は、犯罪行為であれば、日ごろから、すべてくまなく予防的にこれを視察しなければならぬというふうには考えておりませんが、その非常に単純なものについては、結果をとらえてやることもできましょうし、また、激しい犯罪においても、非常に大がかりな企図のもとに行われないようなものについては、ごく直近の、いわゆる事前にこれを推知するということも可能でありましょうが、ああいうふうな特殊な団体において、継続して、ある政治目的によって暴力革命というものを企図するおそれがあるというものについては、相当早くからこの動向というものを察知しておかなければ、とうてい大がかりな刑事事犯等に対しての措置、対策はとれないというふうに思いますので、共産党については、警察法第二条の公安の維持という見地に立って、十分に視察をして参りたい、こう考えております。
  207. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、あなたの方が調査をされておるのは、共産党のみと限定していいですか。
  208. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 共産党のみということではございませんが、そういうふうに継続してやっておるのは、共産党でございます。それから、先ほど關君からもお話がございましたように、右翼団体等についてやはり同様の——これは、規模は必ずしも共産党ほど大きくございませんけれども、同様に十分注意を要するものがあるわけでございます。ただ、一般の大衆団体等につきましては、平生からそういう視察、内偵をして、この団体がどういうことをやるであろうというようなことを調べるということはございませんけれども、実際に犯罪を犯したり、あるいは犯すおそれが非常に濃厚であるというような場合におきましては、必ずしも共産党に限らず、これについて必要な情報をとるということは、一般犯罪捜査の面と同じに考えております。
  209. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、あなたのお話を聞いていると、共産党でなくて、犯罪を犯すおそれのあるものは、みなやるということですか。それで、そういう認定は、たれがするのですか。それは、警察官のうちの、たとえば警備課の人が、個人判断でこれをやるのか、署長がこれをやるのか、どういう系統でそういう認定が行われるのか。ただ、一応の自分たちの認定で、第一線の警察官がそれをやるということになるのか。それはどうなんですか。
  210. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) これは、犯された犯罪、あるいは犯すおそれが非常に濃厚であるものの態様によって、個々の警察官によって、主として個人的なものでありますが、こういうものは、個々の警察官が捜査の目を光らしてこれを調査するということもございましょうし、また、少し大がかりなものでありますれば、判断の低い警察官にまかせることなしに、署長なりあるいは本部長なりの指揮によってこれを行うということになろうと思います。
  211. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうしますと、その第一線の任務を帯びた警察官は、たとえば署長なら署長の命令によって、あるいは署長の指示を受けてやる人は、警察官職務執行法に基いてやっておるわけですか。
  212. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 警察官職務執行法に基いてやることが建前でございますが、これは主として即時強制の強制手段を伴うものについての規定でございまして、全く任意に調査活動をするという場合におきましては、警察官職務執行法に規定はされておりません。これは二条から直接出てくるものと考えております。
  213. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、警察官職務執行法は、第一条の目的というものでやるべきものであって、今のように二条から出てくるということであれば、これは二条にある以上は、警察官としては当然課せられた責務であるから、これから割り出してやるのだという解釈だとするなら、警察官個人の認定に基いてやれるということになるのですか。ちょっとその点を。
  214. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 先ほどから申し上げますように、事案の大小、進度等によって、個人で判断するような軽微なものもあるし、署長の判断によらなければならないものもあるし、あるいは、本部長の指示に従わなければならぬものもあるというふうに、先ほど申し上げたように考えております。
  215. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これは、私は、警察だけの問題でないから、委員長にお願いしたいのですが、考えてみれば、共産党と総連というもの、それから右翼団体というものがあるのです。公安調査庁から調べる、それから警察がまた調べておる、二重、三重のことをやっておるのですが、国家の機構からしてもおかしいことで、これは総理に……、どこでやるのかなあ。これはおかしいですよ。大体私は、破防法ができた以上は、そういうものは破防法で、これは委員長質問するというのもおかしいのですが、そちらの方で、公安調査庁でやる、それが今度は警察の方が、おれの方は第二条からなんぼでもやるのだと、こうやってきておる。私は、やることの是非善悪は別として、国費を乱費されるのですよ。つまらぬことですよ。こんなことに六億も七億も使っておって、つまらぬ話だと思う。こういう問題についてはちょっと私は総理か何かに、機構の上からいっても明確にしたいから、委員長一つどういうふうに尻ぬぐいしていいか、理事会で相談していただきたいということを要望しておきます。
  216. 館哲二

    委員長館哲二君) 委員長は、ここで今まで聞いておりましたところでは、まあ公安調査庁の方は破防法の関係でやつているのだ、警察庁の方は警察法に基いてやっておるのだ、こういう根拠規定に基いてやっておるのだから差しつかえないと私は思って聞いておりましたがね。
  217. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これは議論になるわけですけれども、少くとも第二条でいえば「不偏不党」ということがありました。やはり共産党が合法政党である以上は——容疑のあるないは別として——ある以上は、少くとも警察そのものでやるというのは間違いだ、破防法の方で云々ということは、これは破防法でやるのもおかしいと思うのですが、あの成立過程からいろいろと議論されておるところであるから、私はそっちの方に譲って言っておるのです。それが警察の方でやるということは、憲法から出ておって、少くともここに、思想、信教、結社の自由があるのですよ。思想がどういう思想であろうと、どういうことを考えて結社しょうが、それまで警察がやるというのは少し行き過ぎじゃないか、それがいいのだ、これから出てくるのだ、こういうことになり、これは私は少しおかしいと思うのですよ。
  218. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 警察といたしましても、思想、信教、結社の自由というところに介入していくなどということは毛頭考えておらぬのでありまして、彼らの企図する不法越軌の行動、それは行く行くは彼らの企図する暴力革命につながるものというような犯罪行為というものについて、その企図を事前にすみやかに察知しておくということでございまして、団結権とか思想とかというものを直ちにわれわれの視察の対象にいたしておるわけではございません。
  219. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 それでは、第二条の第二項に「その責務の遂行に当っては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、」こうなっているわけですね。「不偏不党」とここで書いたということは、少くとも私は、当時の政党というものは、どういうものがあるかということを予定をして、そこに入れたものと考えるわけですよ。いやいや、そうではなくて、これは言葉のあやとして公平中正のためにそういう言葉をここへ持ってきたのではなくて、その時にあった政党がどういう政党であるということを予定して、そこにそういう言葉が挿入されたと私は解釈する。ですから、少くとも警察法から出てはこないじゃないか、という解釈をとると私は思っているのです。
  220. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 「不偏不党」と申しますのは政治的な意味においてどちらに片寄るかということで、その政治的な団体ということについてとやかく言っておるのではない。その政治的な団体が企図する犯罪行為、そういうものが大規模なもので行われるおそれがあるから、これを事前に注意して、これについての対策を講じておかなければならないという問題でございます。
  221. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これは第二条の第二項をめぐっての解釈ですが、私は、警察法の改正もありましたし、この審議過程を通じまして、少くとも……。あるいは破壊活動防止法ができるときを通じましても、警察としてはそういうことはやり得ないのだ、従って破壊活動防止法というものが必要であって、そうして公安調査庁というものもおのずから必要だ、こういうふうに聞いておる。またそういうふうに記憶しております。それが今お聞きすると、いや、そうではない、破壊活動をやる用意として共産党員はあるのだから、これもおれの方でやっていかなければならぬ、こういうことになれば、破防法がなくたって、けっこうやっていけるようなことになってしまう。ですから、その辺、これは水かけ論だと思いますが、おかしな話ですね。
  222. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 破防法に基いて、公安調査庁が団体の規制に関する調査をする。われわれの方は団体そのものをどうこうしようというのではなくて、その団体が企図する犯罪を予防し、あるいは早期に鎮圧するという責務があるということから、先ほど来たびたび申しておりますように、平素からその企図をよく察知していなければならぬ。現にまた、その暴力革命というところまで突き進んで参らないにいたしましても、先ほども申し上げましたように、相当大規模な大衆の不法越執行動という陰には、共産党がこれを指導し、リードしているという場合がきわめて多いわけです。従って、細胞を結成しておるというような場合におきましては、たとえば和歌山で、大阪の全逓におります共産党員が和歌山事件についての相当な策動をしたという事実もつかんでいるわけでありまして、そういうことで、日常の治安維持の問題についても必要な場合がございまするし、さらに大規模な企図というものがもしあるようであれば、これに対して十分な備えをしておかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。ちょっと公安調査庁の団体規正と……もうこの団体はやめてしまって、あるいは解散をすれば、今度その団体を再建したり何かするということがみんな犯罪になってくるわけです。そうなってしまえば、これはまた別の問題ですが、そういうようなことをわれわれとしては考えるのでなくて、それはもっぱら破防法に基いて公安調査庁が調査する。しかし、われわれとしては、いつ何どき大きな問題が起らないとも限らないということであれば、これについて綿密に調査を展開していくということは、どうしても責任上果さなければならない、こう考えておるわけです。
  223. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 何とおっしゃっても、それは私が納得できませんし、それはおかしい話です。だから、あなたの方としては共産党のものはやるのだということで、共産党、あるいは共産党の細胞があれば、そこを調査するというのか、一つの大衆行動が企図されておれば、それがどういうことになるかしれないからというので、どういう団体に入っても、それを調査しようとされるのか。
  224. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 平穏な状況におきまして大衆団体等を調査する、それ自体を調査するというようなことは毛頭考えておりません。
  225. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 あなたの方は、先ほどちょっと聞いておりますと、約十件ぐらい警察関係のスパイが出ていると、こういうことですが、このスパイを使うというか、作るというか、そういう場合に、ここに一つ国鉄の資料を持っておりますが、本人が警職法反対闘争のときに若干何か公務執行関係であげられたらしいのです。それで、お前は不起訴にしてやる。従って、そのかわり今後いろいろな問題について一つ協力してくれ、こういうことを言っておるのです。こんなけしからぬ話は私はないと思うんです。これをやったような人は警察官として不適当じゃないですか。
  226. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 協力者を得るためには、あくまでもその協力者の自発的な発意によって協力していただくということでなければならないと思います。従いまして、ただいまのお話のように、犯罪を大目に見て協力させるとか、あるいは強制して協力者に抱き込むというようなことは、あってはならないことと考えております。
  227. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私は行為が不都合だと言うんじゃないんです。こういうことをやる警察官が不適当じゃないかと言うんです。
  228. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 犯罪を種にしてそうした協力者を求めるといったような人間は不適当だと思います。
  229. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 あなたの方はこれは指示を出して大体お見えになっているんですか。たとえば国鉄の亀山でやっておるのは、派出所の巡査の方が、まあ駅長さんあるいは区長さんといいますか、そういうところに行って、名簿を出してくれと、こういうことを言ってお見えになって、そうしてそれを持っていったわけです。で、何をやったんだというと、いや、それは僕個人の考え方だということで済んでおるというか、そういうことに話はなっておるんですが、いろいろとわれわれが聞いてみますと、各地でこういうことをやってお見えのようなんでありますが、警察庁長官も訓示の場合にはこういうようなことを大がかりにやるように、あなたの方では何かしてもいいからこういうふうにして協力者を得るんだというような、こまかい指示までしてやってお見えになるんですか。
  230. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 一般的に有能な協力者を得ることには努力いたしておりますけれども、今のお話の国鉄の名簿を集めるとか、それから詳細にどこの県では何人くらいどういうふうにして協力者を得るようにしたらいいというようなことは、中央から指示いたしておりません。
  231. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 あなたは自発的な協力者を得ることが望ましい、そういうものを一つ得るように努力せよということを、長官が本部長会議かなんかで訓示されたんですか、あるいは書類で指示されたんですか。
  232. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 私自身訓示も指示もいたしたことはございませんが、共産党についての調査を的確にやるという意味においてそういうことは当然行う筋であろうという意味において申し上げたのであります。
  233. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、適切な協力者を、自発的なそういうものを得ればいいということは、長官はそこで思っただけの話であって、そういうことは、こういう何かの会議等で出ておるわけですか、話が。そうじゃなくて、本部長が善処して大体やっておるものと、あなたは信じておられるのですか。
  234. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 私はここで思いついたというのでなくて、終始そういう考えを持っております。従って私の長官としての訓示や何かにはそういうことまで申しておりませんけれども、あるいは警備担当官の間においてそういう相談があったり、あるいは本部長が自発的にそういうことを考えるということは当然あり得ることだろうと思います。
  235. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 あなた、いろいろなことを言うと、共産党だけがと言うと共産党だけじゃない。いろいろな話を持ってくる、と共産党だけに話をしぼって、なかなか要領のいい御答弁をいただいておるわけですが、少くとも、どんなことにしろ、一応個人の思想なり、あるいは結社とか、そういうものの自由を私は侵害するようなことになると思うんですよ、よほどあなたの方が合理的におやりにならないと。しかもそれが警察に自発的に協力するなんという人は、日本人には私はそう多くないだろうと思います。あるいは広いことだから数あるかもしれませんが、好ましい情報提供者というような人はないんじゃないかと思っておるんです。だから、あなたの方でお作りになるということは、それ相当な無理をしておいでになると思うんです。だからこそ国鉄の方は一つの例として出しておるわけですが、あるいは大阪の上田という人に対しても相当な働きかけをしてやっておるわけです、あるいはそうじゃなくて、このノートを見ると、学大の生徒にも何人かに働きかけていろいろな資料が出ておるんです。こういうようなことは私は好ましい姿とは実は思いません。ですから、こういうことをやめられたらどうです、こういう協力者を得てやるなんという、そういう方針を改められたらどうでしょうか。
  236. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 先ほどから申し上げておりまするように、協力者は決して強制にわたるとかいうことなしに、全く自発的な協力を得るということに十分注意をいたしておるわけですが、今後ともそういう点は特に戒めて参りたいと思いますし、今お話がございましたけれども、現在の段階においてこの協力者による調査というものを全然捨てるということは考えられない次第でございます。
  237. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 大体警察法を改正する昭和二十九年のときに、まあ警察は機動力を云々して、そうして警官を三万名減らすと、それがいつのまにかやめになっちゃって、今度は逆にふえるようになった、それはあなたのときではなくて、斎藤国警長官とかが詭弁を弄して世の中を惑わして、いかにも合理化されたような形で警察法というものは無理やりに通されたと思うんです。そうして今度はどうなっておるかというと、人員はふやしてきた、また聞くと、警察庁の内部の機構も改正されて、そこに何というんですか、こういうものを扱う一つの局を設けられたことになると思う。で、私は人間をそれがためにふやすというわけではありませんが、少くともおとり捜査になるようなことに……どんなに言葉は美しくあなた方ここでお飾りになっても、やはりおとり捜査ということです。そのために予算を八億四千万のうち約五五%をそういうものに出して使っておるということは、私は警察行政の姿からいって、本来の姿からいって正しい姿勢とは思えんです。こういうことをやめるということでなくて、これが年々ふえてゆくというのは非常に遺憾な格好だと私は思うんです。ですから、これを廃止というんですか、なくするというんですか、そういう方向に持ってゆくという努力はできぬもんですか、やめるつもりはないということではなくてですね。
  238. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) もちろん警察官の独自の捜査によりまして事態が十分に知悉し得るような状況でありますれば、何も多くの金をかけて協力者を求めるということの必要はないかと思いますけれども警察官自体の捜査ということも、これは非常に力強く推進はいたしておりますが、そのほかに、たとえば共産党員の中で、共産党の行き方にあきたらないということで、協力してこられる方もあるわけでありまして、私どもとしては、やはり先ほど来申し上げましたように、暴力主義的な方針を全く捨て切らない限りにおいては、やはり困難を克服して、また優秀な協力者を得てやってゆくという今の方法を、それは比重の問題はいろいろございましょう、ございましょうが、これを捨てるということは、どうも現段階では考えられない。それからまた捜査費の額のお話がございましたが、警察としては捜査費の大部分は警察官自体の活動の費用でございまして、そのうち大体二億余りが協力者の謝金ということに相なっているのではないかというふうに私は考えております。
  239. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 あなたの方は警察のこういう数字はやはり機密に属することで、あまり正直におっしゃらない、だから私は会計検査院の方に伺いまして、大体八億四千万のうちの約五五%、ですから大体四億六、七千万ですか、それが使われておる。一件にしてどのくらい払うか知りませんが、かりに二千円にしましても二十三、四万件ということですね、それだけの件数を扱っているというのですから、警察はとにかく国民に四、五億の金を出してスパイを使っているのだと、その件数はどのくらいか知らぬけれども、一件平均して二千円だとかりにすれば、二十二、三万人の人間が警察のかわりの役目をやっているのだ。もう少し周囲を気をつけておれということが国民の前に明らかになってくればいいと思うのですよ。これでは実際秘密警察ですよ。スパイ警察みたいなものですよ実際。私は情ないことだと思っております。やはり警察官は制服制帽を着用して正々堂々と親しまれる人であったらいいのですが、これではまるで国民は何かそのうちにすぐやるのではないだろうかというような、まるで敵にしたようなやり方というのは不明朗だと思うのです。だからそういうのは当然やめてしかるべきじゃないか、若干はやむを得ぬかもしれぬが、あまりにも多過ぎると思います。とにかく柏村さん、どんなに見たってほめたことじゃないですよ。いい格好じゃないですよ、こんな格好は……。
  240. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 先ほど会計検査院の方が申されたのは報奨費についてでございまして、この警察における報奨費というのは優秀な警察官であるとか、あるいは警察職務協力した民間の人に対する謝礼といいますか、報奨であって、これは全く性質が違うもので、今のいわゆる警備の協力者に対するものではございません。ここで報奨費という費目が二千八百八十万で、そのうちの協力者の報奨が千五百万、約五五%にこれはなっておる。われわれの警備活動あるいは刑事活動等に使いまする捜査費というもの、これが三十三年度七億四千万ですか、このうちの協力者の謝金が大体二億と、こういうことになっております。
  241. 占部秀男

    ○占部秀男君 関連して。今の長官の答弁によると、報奨費というのは警察官に対するものや警察官協力した者、さっき通した法律案のようなああした君たちに対するものであって、いわゆるわれわれが一言で言っているスパイ活動をさせるとか、そうしたものに対する報奨ではないというお話なんですが、そうすると警察関係費用の中にはそういうものは全くないのでありますか。
  242. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) ただいま申し上げましたように、報奨費という費目はそういうものには使わない。捜査費、旅費というのがございますね、それで捜査費は捜査活動に要する経費、そのうちの一部を協力者の謝金に充てておる、こういう状況でございます。
  243. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これは諸外国もこういうスパイを使って実際やっておるのですか。
  244. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) こういう協力者を求めてやっていない国はほとんどないのではないかと思います。
  245. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、みんなそれに謝金を出し、報奨金を出してやるというのがこれが、警察の本来の姿ですか。
  246. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 非常に神様の国のような形になれば別でございましょうけれども、現在のように非常にこんとんとした社会情勢において、しかも国際的強力な革命体制というものが推進されておるというような状況におきましては、こういうふうな警察活動というものが行われるのが通例だろうと思います。また共産主義国におきましては、膨大なそういう意味の要員がちゃんとおるわけでありまして、これはとうてい自由主義国の比ではないと思います。
  247. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 それは独裁国というものは警察国家ですから、当然そういうものがたくさんあると思います。そういう金もたくさん出ているだろうと思います。日本の国もかつては相当なものだったと思います。ところが新しい憲法下における新しい日本の姿としては、とにかく何にしても情ないことだと思います。警察がスパイみたいなことをやっている、スパイを作っているということは、やっている本人が大体気持のいいことか悪いことか、私はいやなことだと思います。喜んでやるというのは性格異常者ですよ。よき協力者などとあなたの言葉はいいが、そういうことを警察が進んでやっていくというのは社会をやはりゆがめていくし、人間を悪くしますよ。良心に恥じるような行為を警察がやらせるということは間違っていることですが、それに、しかもわれわれの出した税金が払われるということはどう見たって好ましいことではないと思います。やむを得ない、当り前だというような態度というものは私は非常にいやですよ、不愉快です、そういう話を聞くのは。ですから一つこういうことはやめて、あなたの方がもう少し科学的にやるとか、あるいは私はくどいようですけれども、破防法のときの一つの経過から見て、警察はもう少し民衆の警察として科学的な犯罪防止、そういうことに全力をあげられて、足らない人員があるならそちらの方を補ってやっていくべきじゃないか。一体どれくらい公安関係ですか——あなたの方は警備関係とおっしゃるかもしれませんが、どのくらい予定しているのですか。
  248. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) よく成瀬さんのお話はわかりました。私もお気持はわかると思いますが、どうもたびたび繰り返すようですが、こういう国際情勢、国内情勢下においては協力者を求めてやるということはやむを得ざることだろうと思いますし、またスパイという言葉から受ける印象が非常に悪いのであって、やはり治安の維持のために進んで協力するという人があることは、何もそうおかしいというふうに考えられなくてもいいのじゃないかというふうに思います。公安関係は大体外事も含めまして八千人ぐらいだと思います。  それから先ほど新しいこういうことをやる局を作ったと言われましたけれども、今は警備局、警備部というのは前々からありまして、この前に昨年の四月増設したというのは保安局で、これは交通とか防犯とか警らとか、そういういわゆる民衆接遇と申しますか、市民サービス的な局でありまして、そういう方を拡充したということでありまして、警察が警備だけやっている、しかもスパイ工作だけをやっているような印象を受けておられるのかもしれませんが、これは全く警察のごく一部でやっているものと御理解願いたいと思います。
  249. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、ごく一部というのが約八千名に当るのですか。
  250. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 全国です。その八千という数字は必ずしも厳格ではございませんが、大体の目安を申し上げたので、全国的にはそれくらいだろうと思います。十二万五千のうち。
  251. 鈴木壽

    鈴木壽君 ちょっと関連して。長官、今のあなたのお話に、スパイというと言葉が悪いのだが、しかし協力してくれる、それもあまり悪いものと考えなくていいじゃないかというお話でしたが、私も協力して情報を提供したりするほんとうの意味でのそれだったら、あり得る場合もあると申し上げる。何もまださして非難すべき問題じゃないと思う。いわゆる協力してくれるという人たち、それはむしろこちらでそういうふうに仕向けていろいろな方面に使っているのだと、こういうのが大部分だと思うのです。いわゆる進んで情報を提供し、ほんとうの意味での治安に協力するというのであれば、これはお話のようにさしたる言うべきことでもないと思うのですが、そうでなしに、いろいろな形においてむしろそういうふうに仕立てていくのだ、組織の中にもぐり込ませたり入り込ませて、特に金を与えてもぐり込ませておるところに問題があると思う。なるほど今お話のように、あなた方の役目として、好ましいことではないが、いろいろな情報をとるということはあり得ることだと思うのですが、話をそのままに聞きますと。しかしそれが単に今お答えになったように、善意の協力という問題とか、情報の提供者であるとかということでなしに、むしろ、何べんも申しますように、あなた方警察関係の方でこれに仕立てて、それに入れてやっていろいろな情報をとると、こういうところに私はやはり今成瀬さんの言うように心配される向きもあり、また賛成いたしかねるものがあるのじゃないか、だから私は問題はそこだと思う。たとえば私がたまたま何か知り得えことについてあなた方のところに行って、どうもこういう不穏な企てがあるとこう言ってやるなら、これはほんとうの私は善意の協力であろうと思うのです。情報の提供者であろうと思うのですが、今のあなた方の全国的にやっておる仕事を見ましても、そういうものはきわめてまれなんです。むしろ仕立ててスパイ活動をさせておる、金を与えておるのだと、それに対してまた報奨という言葉があるかどうか知らぬけれども、慰謝料を出しておると、こういうことだと思うのです。そういうことが果して警察の本来の使命であり役目であるのか。またもう一つ懸念されることは、人心に与える影響といいますか、そういうようなものもそれでいいのかという問題に私はなると思うのです。こういう点あなたは何べんもきれいな言葉で、いわゆる善意の協力者あるいは情報提供者というふうにおっしゃっておりますが、それとは現状は違うのじゃないか、これは全国で何人おるか私もわかりませんが、いろいろな事件にそういうふうなものがからまってくることは、これは過去のいろいろなことからいって明らかだと思うのです。こういうことに対して私は考えてもらわなければいけないと思うのですが、どうでしょう。
  252. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 確かにお話のように、全く自発的な協力者ということでなければならないとわれわれも日ごろから考えておるわけであります。従いまして、強制にわたるとか、あるいは威迫によるとか、あるいは何といいますか、陥穽を設けるとか、そういうふうなやり方でそこに追い込まれていくということによって協力者を作るべきじゃない、私もそういうことは深く考えておるのであります。今お話のような御趣旨は十分考慮して参りたいと思います。
  253. 鈴木壽

    鈴木壽君 私は警官自身がある組織の中にもぐり込んだり、いろいろなことをしている事例が過去にあったということを聞いておりますが、ある程度これはやむを得ない場合もあると思います。しかし今言ったように、またあなたもお認めになるように何か仕立てて、そうしてこっちへ使っていくというような方法ですね。これはやはり現になされておるのではないか。  いま一点それに関連しまして、それはあとで法務省の方にもお尋ねすることと関連するのでありますが、現に自分が悪いことをやって、一緒にやった仲間のことについて、警察に自分のことももちろんこういうことをしたのだということで、仲間のことをいろいろ言って、そうしていわゆる協力といいますか、情報提供をいたしまして、そういうことが行われる。しかもそれが自分の犯したことは、ほかの人たちは起訴になって今公判の途中なんですけれども、自分は不起訴になった、こういうことがある。これは最初からあなた方が使ったわけではないでしょうが、私はやはり人間の何といいますか、今の警察でやっているスパイ活動、言葉は悪いが、あなた方はおきらいになるかもしれませんが、そういうことから今の私申し上げましたような事柄がどうも必ずしも全然関連がないとは言えない、気持の上からいって。こういうことになると、私は非常に困る問題になりはしないか。むしろあなた方が国の公安を維持したいためにやる、そういう事柄がかえって別の意味において人心を悪くするということ、私はそういうようなことも心配されるのじゃないかと思うのですが、こういう点について、全く現在までやっておるそれを全部捨てるということは、私はあるいは現実の問題としても不可能だろうかとも思います。あなたがしばしば言っておられますが。しかしこれを当然のことであり、将来もやっていかなければいけないのだというふうなもしお考えだとすれば、スパイだけは是正していただきたい。予算なんかを見ますと、予算関係であなたもおっしゃっていたように相当な額をこれに使っておる。これは単に善意の意味の協力者に使う金ではこんなに大きな使い方はないのです。明らかにこれはやはり見えざる一つの組織として、お互いの間の連絡はどうか知らぬけれども警察を中心としたそうした一つの仕組みが私はあると思う。私は困った問題だと思うのですが、いかがでございましょうか。
  254. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 先ほどから御心配いただいておるような点は十分注意しなければならぬことだと思いますが、たびたび申し上げて恐縮ですが、現段階においてこれをやめていくということは困難であるというふうに思います。
  255. 占部秀男

    ○占部秀男君 今の鈴木さんの問題について、関連をして二つだけお伺いしたいのですが、第一番目は協力者の問題で、第二の問題は警察のそういった方面についての捜査活動の範囲の問題なのですけれども、第一番の協力者の問題ですが、今長官は、自発的な協力者についてはあれだけれども、仕立ていくような方法はこれはやめたいというようなお話があったのですが、私はもっともだ、そう言ってもらわなければならぬと思うのです。ところが今度の何と言いますか、平野署、あれを落したということを見るといかんながら、大阪の府警だけがそうであるか、僕はその後の経過は知りませんが、現われた文面から見ると、長官の考え方とはまるっきり反対に、積極的に仕立てるために長いことかかっておる。しかもある程度仕立て上った協力者、スパイという言葉は僕は使いません、協力者ですね、いろいろあります協力、その協力の仕方まで警察の方から指示されて、しかも当人に、密告するのをぐずぐずしているというのを入党しろ、そして情報を提供される、その提供される情報をキャッチする方法、そういうところまで警察の側から強要されておる。こういうふうなこと、私はこの調査ですか、これはこのまま信用してないですけれども、あり得ることだと私は考えておるのです。これは昔から、終戦前からわれわれもこういう点については二、三知らないわけでもありません。私ひどい目にあったことがあります。スパイ的な協力された人は、それはまあ自発的に出てきた場合ならいいけれども警察の方でそういうふうに仕立てられた人の将来というものを一ぺん考えてみてもらいたいと思うのです。そういう人たちは、今日みんなそのことがやはりお互いにわかる、あるいはいろいろな形でそれが暴露されてくる。こういう中から非常にさびしい人生の動き方を死ぬまでとっている人たちが何万人といますよ、率直に言って。そういうようなことを考えると、これは治安の問題であるから大事ではあるけれども、これは大きな人道上の問題です。こういうことは非常に長官はまあよく御存じだから私は言いたくないですけれども、そういうような意味合いからいって、やはり今日の社会のもとにおいては、自発的にやるものはこれは別ですが、無理に作り上げていくというような形ははっきりと警察署の方で、そういう点はかりにこの問題が明らかになれば、一つの契機になるわけですから、具体的にそれを明示してもらって、そういうやり方が今後行われないように何らかの形ではっきりした態度を打ち出してもらいたい。かように考えるんですが、これはまたあとに関連しますから、またあとでこの問題の進行に従って私の方からも質問をしたい、かように思うのですけれども、一応その点についてはいかがですか。
  256. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) まあ自発的な協力者ならやむを得ないが、仕立てるようなことはおもしろくない、私、その「仕立てる」という言葉にいろいろあると思うのですが、たとえば先ほど来申し上げておりますように、強制にわたってやるとか、あるいはおどすとか、またはそちらに落し穴を作ってはめ込むというような悪らつなやり方でやるということは、これはやるべきでないということを申し上げておる。まあ仕立てるという意味においては、そういうふうなことで協力者を得るということは、これは好ましくない。しかしながら自発的に協力する人に対して、情報をよりよく、より正確に、またより隠密にと申しますか、得るというような技術的なことに対して相談に乗り、これの能力を高めていくという意味の仕立て方というものは、私はこれは必要だろうと思うわけでありまして、そういう意味で、もし先ほど私が仕立てることがいけないと言ったとすれば、二つの意味があると思いますので、その点御了承を願いたいと思うわけであります。  それからお話の、もしそれが自発的でなくて、そうしてまあ今度の場合におきましては、私はむしろああいうことをやっていたこと自体ということを非常に問題にされておりますが、協力者がまあ暴露されたというようなことは、やはり非常に大きな問題だというふうに考えておるわけでございますし、もしそれが強制されたり、あるいは威迫されたりということによってやむなく協力し、そうしてそれがいずれの日にかまた離れていって、さびしい生活を送るということも、これはおそらくないとは言えないと私も考えておるわけであります。今後もこういう協力者の取扱いということについては、十分に慎重に注意を怠らないようにいたしたいと考えております。
  257. 占部秀男

    ○占部秀男君 今の長官のお話で第一、第二という形ですが、それについても私は私なりの異論があるんですけれども、しかしそんなことを言ってもここのところはしようがないですから、具体的にこの問題がけりがつくまで、われわれの方としてはそれ以上は深くは追及しないつもりです。  それから第二の調査活動の範囲について、念のためにお聞きしておきたいのですが、この文章的なこの内容から見ると、組合の幹部なら幹部、あるいは特定の人間について尾行をしているわけですね。尾行をして、しかもその作業カードをしさいに検討すると、まるで何月何日に彼はどこへ出て行って、どこへ行ってどういうことをやった、服装はこういう緑色で、何かネズミ色のオーバーを着て、こうしてこうして、どこへ上って行った、まるっきり既定の犯罪者を対象にしてするような作業カード、これは実際こんなことかどうか知らぬけれども、そういう作業カードになっておるのですが、そういうようなことまでいくことが、やはり調査活動の範囲の中に入るのですかどうか。その点を念のためにお伺いしておきたい。
  258. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 調査活動、先ほど調査はやむを得ない、協力者による調査もやむを得ないということを申し上げましたが、これはあくまでも任意な形におきまして、しかも正当にして必要な限度ということを守っていくべきだと存じます。たとえばこの前のトラック部隊の場合であるとか、人民艦隊の場合であるとかいうときには、ずいぶん長きにわたって容疑者またそれにつながる者というふうなものの尾行とか張り込みとかいたしまして、そうしてずいぶん長い期間かかってあそこまで解明したわけで、そういう事態が深刻なものであり、悪質なものであるものについては非常に精細にやらなければならぬ。しかしながらそういうことでなくて、ただどんなことをしておるだろうということで、別に犯罪と関係ないような人についての調査をやるというようなことは、私は適当なことではないと思います。
  259. 占部秀男

    ○占部秀男君 私の申し上げることもそうであって、何らかの事件が起って、その捜査のためにこうやったという場合には、相当しさいに検討してもこれはしようがないと思うのですが、一般的な調査のときにそういうようなこまかい点まで書き上げて、そうして調査をしなければならないかということには非常に私は疑問を持つわけですが、そういう点からいって、今度の事件からいっても、一つ警察庁の方でも一ぺんしさいにそういう点検討してもらって、またあとで私は質問いたしますが、検討を一つしてもらいたいと思うことが一つと、それからもう一つは、写真の問題なんですがね。これはこの通りかどうか知らぬですが、調査をするときに、事件が起ったときに写真をとるというようなことがありますね。ところが事件が起らないときでも写真をとって、それは隠密のうちに写真をとるように——たとえばデモならデモをやっておる、それを写真にとるときには、普通のデモだから見られてはまずいので、隠密のうちに写真をとれというように指示しておるように私は見受けるのですが、かりに写真なんというものは事件が起らなくても何でもかんでも写真をとっていくということになれば、とられた人間は何にも知らないうちに自分の写真を警察庁の方に保管されていて、いざというときに間に合うというような形で、昔の姿そのままの実際上は問題が出てくるのじゃないかと考えるのですが、こういう点なんかは警察庁の方としては調査範囲は指示しておるのですか、どうですか。
  260. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 写真は、たとえば大衆的な暴力事犯等について、一つの手段としてとるということはこれはやっております。その際も大っぴらにとるのがいい場合もありましょう。しかし非常に暴力的な場合には、写真をとられることによって、自分が今現に犯罪を犯しておる、写真をとられるので今度はそれに襲いかかってくるというようなことがあるので、暗々裏にとる場合もございます。しかし一般的に堂々たる行進や何かを、これは交通整理のやり方とか何とかということで、全く顔とか何とかいうことでなしにとる場合は、これはございましょうけれども、別の目的で、先ほど国鉄の問題もありましたけれども、組合員の名簿を作るとかそれに対してだれだれの顔はこうだといって写真まで詳細に集めておくというような必要はないし、またそういうことでは非常にむだも多いことになるのじゃないかと思います。
  261. 占部秀男

    ○占部秀男君 もしもそういう問題がかりに起ったとした場合には、これは警察庁の立場から見ても行き過ぎであるということになり得るわけですか。
  262. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 警察の本来の任務に沿わないようなそうした行為は、適当な行為ではないと、こういうふうに考えております。
  263. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私はもう一度お尋ねしますが、警察官職務執行法でやっぱり第二条を受けてやっておるんですから、犯罪の予防という形で私はおやりになると思うんですよ。ですから、やはり警備課の方たちもこの警察官職務執行法に基いておやりになるものと考えていいですか。
  264. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 先ほども申し上げましたように、即時強制的行為にわたるようなものは、必ず職務執行法に準拠しなければならない。しかしながら、任意に、一般の市民でもできるような方法でやる行為というものは、必ずしもそこに明文の規定を要しないものというふうに考えております。
  265. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、あなたの解釈で言うと、警察官というものは何をやってもいいんじゃないかということになってしまうんですよ。私は、この警察官職務執行法というものは、警察官職務を執行する上においての基本法なんだ。ところが、あなたの話を聞くとそうじゃなくて、スパイを使おうが、どこへ行って何をやろうが、警察官というものは勝手にやってもいいんだ、それは緊急を要さないような場合はやってもいいんだというふうに、そういうふうに聞えるんですが、それでいいんですか。
  266. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 強制にわたるような場合においては、明文の規定を要する、しかし、そうでない任意な警察活動というものは、明文の規定を要しない。しかしながら、これを警察活動として行う場合におきましては、先ほど来申し上げますように、正当かつ妥当な範囲ということの良識に従ってやっていかなければならないというふうに考えます。
  267. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 だから、その妥当な、正当なという言葉を使っておるようでありますが、それは警察官の個人認定でそしてスパイ行為をやっていい、そういうことになるんですか。どうも私は少くともこれは犯罪の予防の一つだと、従って、なるほどそれは強制じゃないかもしれない、緊急じゃないですから強制じゃないかもしれない。しかし、警察はそういうことについて年次計画の予算まで計上しておるということになれば、やはり警察官職務執行法の、たとえば第五条、第六条というようなものが基本になって、そういう心がまえでやっていかなくちゃならぬと思うんですよ、私は。それをあなたは、強制じゃないんだと、任意だと、だから何をやっても、スパイ的なことをやってもいいんだというふうに聞き取れるんです、私それはちょっと違うじゃないですか。少くとも警察法に基いて、警察官職務執行法、これを柱にしてやっていく、これを上回るような警察官の活動と申しますか、行為というようなことは、逸脱する行為ではないか、こう考えるんですが、どうですか。
  268. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) どうもたびたび申し上げて恐縮ですが、警察官職務執行法は、即時強制的な行為にわたるものについて明文の規定をもってこれを制限いたしておるわけでございます。警察法第二条に申します警察の責務を遂行するやり方というものは、いろいろあるわけでありまして、そうした強制にわたらないようなことについては、二条の任務、一条の目的というものに沿って、必要、妥当な限度においてこれを行うということが正しい行き方ではないかというふうに思うのでありまして、これが個人の認定にまかせられるものであるか、あるいは上級の者の判断にゆだねるものであるかということは、対象の状態によって私は違ってくるものと考えるわけであります。
  269. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私は、あなたが何とおっしゃっても、第一条の一項、二項を読めば、あなたのような解釈は出てこないと思います。「犯罪の予防、公安の維持並びに他の法令の執行等の職権職務を忠実に遂行するために、必要な手段を定めることを目的とする。」、前を受けておるわけですけれども。そういう解釈では少しおかしいじゃないか。警察官というものは、警察法の第二条にある。だから、それは一般任務としてあるのだ。私は任務のことはわかります。しかし、それを遂行する場合には、こういう執行法に基いてやるのが本筋じゃないか。私の考えは違うんですか。
  270. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) どうも先生にそういうことを申し上げてはどうかと思いますが、ちょっとやはり違っておられるように思います。
  271. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私は、大臣もきょうお見えになると思っておりましたところが、大臣もお見えにならないようですが、少くともスパイということは、私は少し自分としてはおかしいわけですから、大臣も来ていただいて……。
  272. 館哲二

    委員長館哲二君) また、あらためて、大臣が出席されましてから質問を願ったらどうですか。
  273. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 基本的な問題は、長官とあまりやっても……。  それから一つ資料で、警察大学校というのですか、一体、この時間表というようなものは、これは秘密ですか。承わると、あまり実地ばかり多くて、教養科目が少いというように聞いておるのです。時間数をできたら……。
  274. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 警察大学校における教養の時間割当というようなものにつきましては、常に検討をいたしまして、そうして十分に正確に示しておるわけでございますから、あれは別に秘密にする筋のものではないと思います。  それから、ただいまお話しのように、術科が非常に多くて、教養面といいますか、いわゆる人格の陶冶というようなものについて少いのではないかというお言葉でございますが、この点も、従来の実績にもかんがみまして、できるだけそういう品性の陶冶、いわゆる民主警察としてのあるべき姿というような訓育方面とか、そういう教養科目をできるだけ多くするように、私も注文をつけておりまするし、今ここでどうということを申し上げかねますが、あれは非常にいろいろな科目があるわけです。警察大学の本科とか専科とかございますが、代表的な、たとえば本科一年間の時間表というようなものはお示しできると思います。
  275. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 警察法改正のときに、ある警察官の方が証言をされたのによると、金庫のあけ方ですね、また締めておく、錠のかかっておるところをあけるとか、封筒を、信書を開封して、また戻しておく、そういうことをかつてやった、こういう話ですが、そういう訓練を今もやっておるのですか。
  276. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 確かにこの前の警察法の改正の際に、そういう話が出たことを、私はそのとき警察庁におりませんでしたが、聞いております。現在はそういうふうな作業といいますか、訓練はやっていないと私は聞いております。
  277. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、昔はやったのだが、今はやっていない、こういうことなんですか。
  278. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) そういうふうに理解されます。   —————————————
  279. 鈴木壽

    鈴木壽君 おそくなってすみませんが、実は選挙違反容疑にからむ問題ですが、事件のあらましを最初に申し上げておきたいと思います。これは昨年の五月の衆議院選挙の際に秋田で起った問題ですが、ある候補者の運動員Aが同派の運動員であるB、Cに同じ日に同じ場所で金を一万円ずつ渡したと、こういうことに関連して起った問題です。これは五月十七日にB、Cに金を一万円ずつ渡してあると、で、そのうちのCはあとで警察へこれを届け出たといいいますか、あるいは訴えたと申しますか、いずれそういうことで情報提供をしたために、AもBもその他九名が興収容疑の共同謀議というようなことで十一名逮捕された。その場合にCだけは入っておりません。で、五月二十三日に逮捕され、六月十四日に起訴されておりますが、従って入っておらないCは起訴されなかったわけですが、Cは六月初めに別に一人逮捕されまして、二日間の拘留で釈放になって、他の十一名は六月十四日に今申しましたように起訴されておりますが、Cだけは不起訴になっております。この事件について、地元では相当新聞等にも取り上げられまして問題になった事件なんですが、これに対して二、三お聞きしたいと思いますのは、こういう事実をあなたの方でどの程度的確におつかみになっているかわかりませんから、一般的な論になると思いますが、そういう意味でお聞きするわけです。今申しましたように、Cは明らかにBとともにAから金をもらって、これはCも認めておるし、BもAも認めておるところです。しかも五月十七日に金が一万円渡される以前にもしばしば金の請求に行っている事実がある。これも本人並びに関係者が認めておるところなんです。ところがCは金をもらったあとで警察へ届け出をし、なおかつその選挙のいろいろな問題について情報を提供した。その提供された情報に基いてA、B並びに他の九名が逮捕となったので、そうして起訴になっている。Cだけが起訴にならなかったわけなんですが、こういういわばざっくばらんな言葉で申しますと、同じ悪いことをして、買収のための金をもらっておって、情報を提供したということだけでCが不起訴になるというようなことがあり得るものかどうか。さっき申しましたように、そういうようなことについておかしいじゃないかと地元の新聞なんかにも盛んに出ておりますし、新聞の普通の記事としてでなしに、読者欄といいますか、投書欄等にもいろいろこれは取り上げられて、もっとこういうことに対しては公正な取扱いをすべきであるというような論が出ておるわけなんですが、先ほど申しましたように、一般的なことであるいは答えにくいかもしれませんけれども、こういうことがあり得るものかどうかですね。ちょっと御意見をお聞きしたいと思います。
  280. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ただいま特にA、B、Cという仮の名前でおあげになりました事件で、この事件につきましては私も具体的によく承知をいたしております。A、B、Cでお問いになりましたので、A、B、Cでもってお答えを申し上げるわけでございますが、まず情報を提供したという理由で、犯罪が成立するにもかかわらず不起訴にすることがあり得るであろうかという御疑念でございますが、これはそういうことのために、犯罪の成立があるにもかかわらず不起訴にするというようなことは、一般的に申しまして、検察庁としてはそういう処置をとったことはないわけでございまして、本件につきましても、そういう意味においての不起訴ではないというふうに考えております。
  281. 鈴木壽

    鈴木壽君 そういう意味でないとすると、そのCがAから金をもらっている、そこでAの起訴の事実の中にCに金を渡した分だけはこれまた余罪として除かれているわけですね。私はこの関連からすると、今あなたがおっしゃったように、私が言ったような理由でないのだ、こういうふうにおっしゃるのですが、どうもこの二つの問題が、特にCを不起訴にするために、AからCに金を渡した部分についての取り分だけをいわゆる余罪として取り扱って、起訴のいろいろな事実の中に加えておらないというような取扱いというものは、これはおかしいことじゃないだろうかと思う。この点はどうです。
  282. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) この件につきましては、Aから、御承知だと思いますが、御質問のような趣旨において、いかにも処置不当ではないかということで、秋田の検察審査会に不服の申し立てをいたしまして、その審査会で審査の結果、これは起訴すべきものだという結論を出しております。それに基きまして、ただいま高検の秋田支部検事が主任になりまして、再捜査をいたしておりますので、その結論を見ませんと、的確にここでお答え申し上げかねるのでございますが、従いまして、これから申し上げますことは、私の私見にわたる点もあるかと思いますが、今の御疑念にいささかでもお答えし得るかと思いまして申し上げる次第でございますが、かりにCが警察にまあ情報を提供した、その情報提供の仕方でございますけれども先ほど来御議論になりましたように、スパイとか何とかいう関係では私ないと思いますが、前からこのCなる者が選挙運動等に相当顔がきいて動き回っている形跡があるのでございまして、そういう意味からして警察側で、もし動きがわかったら知らしてくれるということで話し合いがあって、そうして実は今御指摘のように五月十七日に一万円の金をもらったということでまあ訴え出たという場合を想定いたしますると、その場合に考えられますことは、供与という犯罪はまあ公職選挙法の二百二十一条の一項四号になりますが、供与を受けということになりますと、その金を自分のものとしてもらい受けるという意思が要るわけでございます。初めからまあ情報を提供するというか、そういう考えで、くれるのをまあもらうような顔をして受け取ってきたということがもし実体でございますならば、供与を受けるという意思のもとに受けているのではないということになるのじゃないか、そういたしますと、この場合には金の受け渡しはございますけれども、同条のいわゆる供与を受けという法律上の解釈には証拠上困難になってくるのでありまして、従って検察庁としては、公訴上そういうような事情がもし伏在するということになりましたならば、これを起訴することは困難になるのであります。従ってそれの関係部分の、いわば一種の向い合った共犯関係になるわけでございますが、こういう場合の相手方の部分をはずして起訴をするというようなことも、これは実務上あり得ることでございまして、私はその点をはずしておるということが、これは事実のようでございますが、そのことの当否につきましては、今申しましたような高検の検事の再捜査の結果を待って、法務省といたしましても最終的な考え方をきめたいと思いますけれども、第一審の地方検察庁のとった措置として今一応考えますところは、そういうような観点からその部分をはずしたのではないかというふうに考えられるのでございます。
  283. 鈴木壽

    鈴木壽君 いわゆるA、B、Cで申し上げておるのですが、そのCは当初から警察とまあしめし合わせて、もっといえば警察協力者であり、情報提供者として動いておったというような事実はないようでございますが、そういうことがあるからけしからぬということになっておる。それは当初からこの派の運動者として、特にAあたりからいろいろなことを頼まれて、事務所にも出入りをするんだ、また実際運動もしたんだ。こういうことでCは一万円を単にスパイ的な気持でもらったということでなしに、これはおれは日当として当然もらったんだ、こういうことも言っているわけです。いわゆる買収費としての点は否認はしているけれども、日当として当然これはもらったんだと、こういうことを言っているので、あなたのおっしゃるような、いわゆる協力者として、情報提供者として、初めから意図して、そういう意図のもとに動いておった人でないはずなんです。ですからいろいろ問題があるので、当初からそういうことでいわゆる仕組まれたような事件であるならば、これはまあ私さっき警察庁との関係もいろいろあったのですが、予想できないこともないのですけれども、そういうことでなかったのですから私はお聞きするので、それからまた地元でもいろいろと問題になっておるわけなんです。従ってそういうことじゃないんだ、一たんはもらい、その金はどう使ったかわかりませんが、これは返した事実はないようです。そういう者が情報を提供した、協力したという点で起訴を免れるとするなら、これは変な問題ではないか、こういうことなんです。それからお話のように、検察審査会の方にこれを持っていって、これはどうも不当だ、こういう議決がなされているわけですね。Aに関する起訴の中で、いわゆるCに対する分を余罪としたということについても、それからCの不起訴の問題についても、両方ともこれは不当だという議決をして、これを検察当局に勧告をしたはずなんですが、もちろん私は最後的な結果については、いずれが正しいかについては、これはまあ高裁等におきまする決定を待たなければならぬと思いますが、ただ検事局の問題の処理としては、どうも納得しかねる点があるのではないだろうか、こういう点なんです。
  284. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 御疑念の点はまことにごもっともでございまして、私どもも若干そういう感じを持たぬでもないのでございます。率直に申しましてそういうふうに感じます。この検察審査会でCが述べております点も、今御指摘のようなふうに述べておるようでございまして、そうして警察あるいは検察庁でCが述べましたことも、犯罪事実を自供しておるのでございますが、他面において何と申しますか、実はそうでないんだという裏の言葉もあるようでございまして、そこの実体が、果して裏の音葉の通りが事実であって、表面に述べておるのと事実とが食い違っておるのかどうなのか、もし表面に述べておる通りで、供述も実体も同じであるということでありますならば、これは犯罪が成立するわけなんで、それを特に不起訴にするということは、これはもう適当な措置でないことは、もう言うを待たないのでございます。まあCのその地方における——Cという者をよくつまびらかにいたしませんが、おそらく表面になって参りますと、自分の真意というものも、公けの席で述べかねるような事情もあるかもしれませんが、そこは検察庁としましては、突き詰めたところまでその真意というものを確かめまして、事実を確定した上で判断しなければならぬと思うのでございますが、一審の取扱い方は、今の供述は供述であるけれども、真意は陰の声というか、ほんとうなのは表面に出ておらないけれども、実はこうであったというところがもし実体であるならば、もし起訴すれば、おおそれながらと公判へきて事実を述べる。事実を述べれば犯罪にならないことは明白でありますので、そういう点を考慮したんじゃないか。まあ私の憶測でございますが、そういうふうに思って先ほど所見を述べたわけであります。しかしながら実体がそうじゃなくて、もらっておいて、あとはもらったことを言い逃れをするために警察協力するような顔をして出てきた、そうして警察がまんまとそれに乗っているんだ、しかのみならず、検事までそれに乗っているんだ、もしそういうようなことでありますならば、これは失態だと思います。従いまして、それらのことは高検の検事をして十分徹底して捜査をしてもらった上で、その処理の時期を判断いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  285. 鈴木壽

    鈴木壽君 もし最初からいわゆる協力者として、あるいは情報の提供者として存在して、警察との間に関係があったとすれば、これは警察はこの男について逮捕したり何かする必要はないじゃないかと思うんですよ。この点どうでしょうか。
  286. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) その点は私どもの報告で聞いておりますところは、検察庁はそういう協力をしている人だということは知らずに事件を受理しております。受理をしてみますると、一万円もCはもらっておるのに、身柄は在宅になっておる、取扱い上妥当を欠くじゃないかというので、逮捕して処理すべきものであるという判断をいたしまして、警察に逮捕状を出して逮捕を命じたわけです。警察はそれの命によりまして被疑者を逮捕した。それが五月二十九日に逮捕しております。三十一日に逮捕した状態で身柄を検察庁へ連れて来ております。で、検察官が調べますと、先ほど申したような協力をしておったので、真実自分はもらい受ける意思がなかったんだといようなことをそのときに言っておるようです。それについて警察にもうその意向を問い合せてみたところが、警察もそれに照応するような話をするというようなところからして、まあそれではこれ以上身柄を拘束しておく理由もないというので、いわゆる勾留請求をせずして身柄を釈放した。その後さらに供述内容を確かめるために若干の捜査をしたようでございます。で、結局結論といたしまして、犯罪が形の上ではございますけれども、実体がもし違うということになりますと、起訴をしても維持をすることができないというような判断になって不起訴、こういうことになったようないきさつに報告されております。
  287. 鈴木壽

    鈴木壽君 これは、私も自分の足で、あるいはこの目で実際のそれを見たわけではありませんし、ただ関係者からのいろいろな話なり、新聞の記事、地方におけるうわさ、こういうことしかわかりませんが、何かあなた方の方に対する報告というものは、自分たちのやったことを合法化するためにやったのじゃないか。地元の話なり関係者の話なりからしますと、これは全くのいわゆる協力者に対する論功行賞なのだ、こういうことで、もっぱらのうわさのわけなんですよ。何べんも申しますように、Cは何といいますか、Aとかいろいろの人が行って、あるいは自分が来て、ほんとうに心からやっておったのだ、こういう人らしいのです。ですからこれはあなた方とすれば、今地元からのそういう報告をもとにしてお答えになるしかないと思いますが、ただ私一つやはり問題になるのは、検察審査会で先ほど申し上げましたように、またあなたも御承知のような一つの結論が出されている。これは相当ここでも慎重な検討をするなり、審査がなされたものと私は思うのですが、こういうものからしましても、単に私の今申し上げますことは、想像とか、うわさ話ということでなしに、やはり相当な根拠をもってこういう決議になったと思うので、そういう点からしますと、私はやはりこの問題はもっとあなた方の立場からも、これは一つ御検討いただきたいと思うのです。どうでしょうか。
  288. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 検察審査会の審議に慎重をきわめておると思いますし、私どもはこの審査会の結論に対しまして、全部が全部これに服従したということではなくて、反駁すべきものは反駁して、検事の最初の処断を維持するというような処置をとったこともたびたびございますが、またこれに服すべきものは進んで服するという態度を堅持しております。しかも選挙違反は一般的に申しますと、一々法務大臣に報告するというような取扱いにいたしておりませんが、いやしくも検察審査会にかかりました事件については報告をすることになっておりまして、私もこの検察審査会の方の報告によって本件を知ったような次第でございます。で、この審査会の取扱いにつきましては、法務大臣はもとより、検事総長もこれを知っておるわけでございまして、この処置につきましては、今度は法務大臣も検事総長も成り行きを見ておるわけでございます。従って先ほど申しましたように、高検の秋田支部検事が主任としてこの事件の再捜査をいたしておりますので、その結論につきましては、私どもも十分検討いたしまして、一般の御懸念が、もし事実にそぐわないものであるならば、納得のいくような方法を講じなければならないと思いますし、また御懸念がまさにその通りであるならば、これはまあ恥も外聞もない、進むべきであるということで処置する、かように考えております。
  289. 鈴木壽

    鈴木壽君 Aに対して、Aは起訴されているわけですが、Cに関する分について余罪として取り扱われているのですがね、やっぱりこういう場合に、そういう金が、ほかにも相当四、五万の金が使われている。そのうちの一万がCに行っているわけですね。そうしますとちょっと見たところ、私ども一万円くれてやったこと、あるいはもらったことが余罪というような取扱いで済むものであるかどうか、ほかの十何人に対しての全部の総額が四万数千円なのです。そのうち一人のCが一万円もらっている。こういうことがいわゆる余罪というものの取扱いで済むものかどうか、もちろんこれはさっきお話があったように、いわゆる情報提供者あるいは協力者というふうな観点から取り扱ったとするならば、またあるいはそういうことかとも思うのですが、どうもやっぱり割り切れないところが出てくるのですが、その点一つと、その余罪というものは一体どういう程度のもので、私どもふだん考えておる起訴がきまったとか、何か一つの結論が出たその後とか、それに関連することで、いわばそれより小さい何かのことが余罪として処理されると、深いことは知りませんが、こういうことが常識的な余罪の取扱いであるように聞いておるのですが、そういうことからすると、どうも余罪というふうな取扱いは、あくまでもCというものを不起訴にするための何か一つの苦しまぎれの処置じゃないかというふうなことを感ずるのですが、その点について一つ。  それから審査会で一つの結論が出、不当であるという議決がされまして、これが検事局の方に勧告される、こういった場合の、今のお話で再捜査が行われているということで、私今それはそれでけっこうだと思う。一般的に言って勧告の効力というか、某検事は新聞紙上によると、どんな勧告をされたっておれの方はおれの方で考えがあるのだ、変えるつもりはないのだ、新聞の記事ですから、どの程度正しいか私よくわかりませんが、そういうことを言っている。それから一体審査会における議決されたことについての勧告というものが、実際にどの程度の効力を持って検事局、検事正なりを規制できるものかどうか、これはもちろんあくまでも一般論としてでございますが、この審査会の法律を見ましても、その点どうもはっきりしておらないようでございますから、四十二条に「勧告をすることができる。」とあるが、どうもこういう点からはっきりしない点があるわけですが、そういう点どうでしょうか。
  290. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 余罪という概念は、ただいま鈴木先生の御指摘通り、私どもも余罪というものの考え方なり扱い方なりは、御指摘通りに私どもも考えておりますし、取り扱いもそうなっております。ことにAに  つきまして、余罪だからその部分を起訴状からはずしておるのじゃないと私は思います。つまり供与というのは相手方に渡してしまう、そうしてもらった、供与を受けた方が自分の金としてそれを使い得る、そういう状態におくことなのでありまして、相手方がそういう状態でなく受け取ったということになりますと、供与罪にもならないわけなので、そういう点などを考えましてその部分をはずしたのだろうと、これは想像でございますが、思うのでありまして、それは余罪という考え方からはずしたというのではないと思うのでございます。それから、また検察審査会の議決の拘束力の問題でございますが、これは法律によってきめられておりますように、検察庁に対する議決の通告は、検察庁をそれによって拘束する、つまり起訴すべきものと決定した場合に、起訴しなければならないというふうに拘束力を持つものとしては規定いたしておらないのでございます。そういう意味において、審査会の議決があろうとも、あるいは検察庁は独自の考えを貫くこともできるわけでありますが、先ほども申しましたように、取扱いとしましては、この審議の経過というものにかんがみて、検察庁にも抜かっておるところはないわけじゃないのでまたその起訴、不起訴ということになりますと、単なる法律上の解釈だけでなくて、諸般の情状から起訴すべきものと考える場合があるわけなので、そういう考え方において、検察官が非常に狭い視野のもとにものを判断するという場合もあり得るわけで、それがこの検察審査会というようなところで論議された結果得られた結論でございまするので、これを尊重するということは当然でございます。現に尊重いたしておるのでございますが、特に本件につきましては法律上の問題が私はあると思うのでございますが、その法律解釈をいたします前提となっておる事実関係について、先ほど来申しますように、固まっていない面があるのではないかと、そういう意味において高検の検事を特に指名をして再捜査をさしておるのでございまして、その事実関係が固まって、一審の検察庁が判断したように裏の声が真実であったということになりますれば、これは法律解釈上、供与罪は成立しないということになりますので、不起訴にならざるを得ないことになると思いますが、その事実関係が違って参りますれば、これはまた違った見解に到達することは当然でございまして、そういう意味において、審査会の決議というものが道義的に非常に大きな影響力を検察庁に及ぼすものであるということは、私どもかねがね考えておりますし、また、この制度の意義もそういうところにあるというふうに考えております。
  291. 鈴木壽

    鈴木壽君 今の私お聞きした、そしてあなたのお答えになったあとの問題、いわゆる審査会の議決に基く勧告の持つ拘束力ですね、その点については法の上でも、またあなたのおっしゃるように、またそれはそれでいいと思うのですけれども、今回のことにつきまして再捜査をしておるということは、勧告の趣旨を、起訴はしなかったけれども、あらためて捜査をするのだというようなことで、私それでいいと思うのですが、ただ審査会の出した結論、地検の方からもいろいろもちろんそれまでに至る取扱いの事情等もこれは聞いておるはずですが、その中で地検の見解は、いわゆるAが運動員十四名に十四万六千円を供与した事実を指摘されていながら、Cにそのうち一万円を提供したというのは、単なる余罪だから訴追する必要がないとしておる。あくまでも検察当局はそういうふうなことであるようです。だからこの件については、単なる余罪じゃないのだ、むしろ本人が、あるいは逮捕勾留されるようなことをおそれて一切を自供し、そうしてまた一種の協力をしたのだ、こういうことであって、どうも従って今の地検当局の見解には賛同しかねる、こういう結論を出しておるようです。この点ここで一般論をやっておっても仕方がない、せっかく再捜査をしておられるというのですから、ただ私心配したのは、地元でもいろいろあって、私どもにもいろいろな意味のこういうものがくるのですよ。そこで新聞なんかを見ましても問題になっており、何か悪いことをしても警察にその後協力すればあるいは罪を免れる、起訴もされないのだというようなことがもし行われるとすれば困った問題だと、こういうことが一般に言われておるものですから、そういう意味で、私今そういうことが果してあっていいものかどうかというような気持でお聞きしたわけなんでございます。一つ今後また機会がもしありますれば、その後のいわゆる再捜査の結果等についてもお聞かせ願えればありがたいと思いますので、本日はこの程度にして終りたいと思います。
  292. 館哲二

    委員長館哲二君) 質疑はこの程度にいたしまして、散会いたします。    午後五時五分散会