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1959-03-31 第31回国会 参議院 大蔵委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月三十一日(火曜日)    午前十時二十九分開会   —————————————   委員の異動 本日委員紅露みつ君、上林忠次君、西 岡ハル君、宮澤喜一君、前田佳都男 君、木暮武太夫君、梶原茂嘉君、野溝 勝君及び椿繁夫君辞任につき、その補 欠として青木一男君、石坂豊一君、松 平勇雄君、森田義衞君、新谷寅三郎 君、松野孝一君、廣瀬久忠君、柴谷要 君及び小林孝平君を議長において指名 した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     加藤 正人君    理事            土田國太郎君            山本 米治君            大矢  正君            平林  剛君            天坊 裕彦君    委員            青木 一男君            江藤  智君            梶原 茂嘉君            迫水 久常君            佐藤清一郎君            塩見 俊二君            新谷寅三郎君            西川甚五郎君            廣瀬 久忠君            松平 勇雄君            松野 孝一君            森田 義衞君           小笠原二三男君            小酒井義男君            小林 孝平君            柴谷  要君            杉山 昌作君   国務大臣    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君   政府委員    大蔵政務次官  佐野  廣君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君   説明員    大蔵省主税局税    関部長     木村 秀弘君   参考人    日本自動車会議    所税制委員   小野 盛次君    大和自動車交通    株式会社社長  新倉 文郎君    全国旅客自動車    労働組合連合会   中央執行委員長  伊坪 福雄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○揮発油税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○関税定率法の一部を改正する法律の  一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○租税特別措置法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○所得税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○法人税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 加藤正人

    委員長加藤正人君) ただいまから委員会を開きます。  議事に入る前に、参考人の方に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多忙中のところ出席いただきまして、委員会を代表して私から厚く御礼を申し上げます。  揮発油税法の一部を改正する法律案につきましては、昨日運輸建設委員会連合審査会を開きまして審議を行いましたが、さらに明日も引き続き、同連合審査会を開会する予定になっておる状況でございます。このように、本院におきましてはこの法律案について慎重に審議を進めておりますが、何分にもこの法律案はその影響するところが大きく広く、建設省で立案されておる道路整備五ヵ年計画とも関連がありますので、さらに慎重に審議を重ねるため、本日ここに参考人方々にわざわざ御足労を煩わし、種々御意見を拝聴することにいたした次第でございます。  これより本法律案について御意見を述べていただくわけでございますが、今日は非常に議事も輻湊しております関係上、まことにおそれ入りますが、御一人約二十分程度以内で順次御意見を開陳願いまして、その後、委員質問があればそれにお答えを願いたく存ずる次第でございます。  では、まずまっ先に、小野参考人からお話を願いたいと存じます。
  3. 小野盛次

    参考人小野盛次君) 私は日本自動車会議所小野盛次でございますが、本日は先生方お忙しい中、われわれ参考人を呼び出し下さいまして意見を述べさせる機会をお与え下さいましたことを、厚くお礼申し上げます。  私たち政府がこのたび提案されました揮発油税法の一部を改正する法律案につきましては、昨年九月以来、約半年にわたって政府に陳情、あるいは与党の方々、社会党の皆さんにも陳情申し上げてここでくどくどしく申し上げることは省略いたしますが、二月の十八日の衆議院予算委員会及び衆議院大蔵委員会で、しばしば大蔵大臣運輸大臣原主税局長が述べられました今度の増徴案に対する御意見に、いささか意見を異にしておるので、その点につきまして私の意見を申し上げてみたいと思います。  政府当局の御説明を要約すれば、第一に、揮発油税アメリカを除く諸外国より低率であるから、これを引き上げても不当でないというふうに御説明されておるのであります。第二番目は、揮発油税を五千五百円引き上げても、自動車運送業界に及ぼす影響は微々たるもので、二%ないし二三%で、運賃料金の引き上げの理由にはならない。また、予算委員会で、運輸大臣運賃値上げをする意思はないと、かように御説明されておるのであります。第三番目は、道路整備によって自動車の受ける受益というものは非常に大きいので、それはやがて業者に還元されるから、今度の増税案道路整備とからみ合ってどうしてもやらなければならぬというふうに御説明されておるのであります。この点について、私の私見を述べさせていただきたいと思います。数字が多少ありますので、お手元に要旨をお届け申しておりますから、それについて逐次申し上げてみたいと思います。  第一に、揮発油税率についてでありますが、自動車用揮発油というものは唯一の原動力であって、ガス電気と同様のものでありまして、ガス電気の一〇%に対して、現在の揮発油税を従価で換算いたしますと約一五〇%で、今度の増徴案がもし実現するとすれば約一九〇%という、他にかような高い税率はないので、日本一高い税率になるというのも過言でないと思うのであります。  その税率内容について申し上げますならば、酒の二級酒の税率が七一%、あるいはたばこの光の税率が一七〇%、真珠入りの指輪、ダイヤモンド等が二八%、ゴルフが五〇%、電気冷蔵庫が四二%、ガス電気が一〇%というふうになっておりますが、先般の衆議院において物品税修正を見ますというと、ゴルフ用具なんというものは、もう奢侈品として一〇〇%あるいは二〇〇%かけても負担力は十分あると思うのでありますが、製造業者の現在の五〇%を小売業者の二〇%に落している。高級織物税金を一応政府が提案されましたが、これも撤廃になってしまう。あるいは猟銃用のたまの税金を全廃するというようなこと、あるいはことに書画骨董税金の一〇%を三%にする。国民生活に何ら影響のない税金はかように下げておるのに、われわれ自動車関係としてなくてはならない揮発油税を大幅に引き上げるということは、一体政府は何を考えておられるのか、はなはだ了解に苦しむものであります。  御承知のように、自動車には揮発油税地方道路税軽油引取税自動車税軽自動車税自動車物品税自動車取得税道路損傷負担金道路受益者負担金有料道路使用料等、十指に余る税金が課せられて、この額は三十三年度で概算一千億円と推定されるので、かように幾多の税が課せられておるのにかかわらず、さらにこのたび増税されるということに対しては、私たちは断固反対するものであります。  運輸大臣大蔵大臣説明された、揮発油税率が低いから世界水準まで引き上げるということは、はなはだもってわれわれは納得できない。なぜならば、国民所得あるいは国民生活水準というものを考えずに、単に机上税率のみを同率にしようという考え方に対しては、非常に間違っておると思うのであります。欧米自動車は、御承知通り、九〇%が自家用乗用車でありましてこれは運転手なし、みずからハンドルを持つ純粋の自家用車であって、それに引きかえ日本は、普通車以上の大型車に至るまで、揮発油消費量の多い車はほとんど営業車である。小型三輪あるいは小型トラックの小さな車は、中小企業の使用されるいわゆる業務用自家用自動車であって、この消費量も非常に大きな数字になっておるのであります。この点については後刻申し上げますが、自動車のいわゆる所有ということについては、日本欧米とは著しく違っておる。欧米自動車所有者は、一人で二両ないし三両の車を持って、それぞれの用途に向って車を使っておる。いわゆる欧米人自動車所有というものは、日本人が自転車を所有するよりも容易であるほど生活水準が違っておる。このことは先生方承知と思いますが、こういうことを何ら念頭に入れずに、ただ税率のみを云々されることについては、私は本委員会において特に御検討をお願いしたいのであります。  税率については、御承知通り日本は、大蔵省発表によりますというと五三・八二%、アメリカが二七・八六%、イギリスが五九・五二%、フランスが六八・三〇%、イタリアが七六・六二%、かようになっておりますが、国民所得を見ますというと、日本の一人当り所得が、一九五七年ではありますが、八万二千五百二十四円に対して、アメリカは七十三万五千、イギリスは三十二万二千、フランスが三十三万、イタリアが十三万七千、かようになっておりますが、これを国民所得に換算した税率にいたしますと、これは運輸省調査によりますと、日本を一〇〇にいたしますと、アメリカが五・一四、イギリスが三八・三五、フランスが七一・九七、イタリアが多くて二〇九・八四、かようになっております。  この税率について、揮発油税を納めておる諸外国の歴史あるいは道路発達史等を見ましても、欧米人はみずからハンドルを持って、身の安全と快適ドライブという面から、この区間の道路を直せ、こうしろ、ああしろといろいろの要求をされて、それがため寄付金を多額に出して道路整備費に充てたことから、欧米揮発油税というものがだんだん高くなってきたのであります。御承知のように、日本の現在舗装されている道路というものは、わずかに七%程度であるのに対して、諸外国の比率というものは、非常に高い。五〇から九〇%まで高く舗装されておる。その舗装された道路をさらによくするためには、それぞれの揮発油税収で高級な道路施設というものを改良され、あるいは建設される。それがため揮発油税をたくさんとられても何ら不服がない。特に余裕ある自家用自動車方々負担である。こういう点と、日本の微々たる営業の立場にあるもの、あるいは営業用に使ういわゆる業務用の三輪トラック、あるいは小型自動車等中小企業に属する人たちは、零細な企業の中から多額の税金を納めるということになって、これは国状が全然違うということを、まず御念頭に置いていただきたい。従って、税率世界水準に持っていくという点については、私たちは絶対に納得ができないのであります。  その次に、二番目には、五千五百円引き上げても業者に及ぼす影響は微々たるものだという御発言でありますが、これは非常な大きな間違いではないかと思うのであります。現在、自動車運輸業界実績はどうかということについて、運輸省の御調査によりますというと、三十一年度の自動車業種別一両当り収支を見ましても、タクシーハイヤーが、これは全国平均でありますが、東京は相当利潤がありますが、全国平均して、タクシーハイヤーが十二万一千六百八円、バスが十万六千九十三円、トラックが二万七千九百五十三円。三十二年度に、揮発油税地方道路税を含めて、五千三百円の増税になりまして、経費は増大いたしましたが、営業収入相当にふえたので、三十二年度においては大体三十一年度程度収支であると、運輸省説明されておるのであります。私たち三十二年度の実績がまだ手に入りませんので、一応古い数字でありますが、三十一年の運輸省の御発表をそのまま引用しておるのであります。  しかし、政府案の五千五百円が増徴された場合の影響というものはどうなるかと申しますと、タクシーハイヤーが一年一両に使用する消費量が約十二キロになります。金額にして六万六千円、バスが十キロ、これが五万五千円、トラックが九キロないし十キロであって、一応九キロと計算いたしまして四万九千五百円、前のいわゆる三十一年度の利益タクシーの十二万一千六百八円が、今年度の増徴になりますというと、五万五千六百八円、バスの十万六千九十三円が五万一千四十三円、トラックの二万七千九百五十三円が二万二千四百五十三円の欠損になるのであります。この欠損につきましては、最近日本トラック協会がお調べになりました全国八十七社の平均収支率を見ますというと、赤字が一両年間二万三千五百三十三円——お手元に配付した資料の最後に貼付してあります二万三千五百三十三円の赤字になるということを示されており、私が全国的に調査した数字とほぼ同じであります。かようにタクシーハイヤー及びバス利益が半減される、トラックは莫大な赤字になるということになるのであります。これを見て影響が微々たるものでないことは、これは数字がはっきり証明しておるのであります。  御承知のように、自動車運輸事業というものは、事故という全く危険性の多い事業であって、利潤というものは相当になければならないのでありますが、平均利潤トラックを除いては約五%の利潤にしかなっておらないのであります。御承知のように、車の激増から、あるいは輸送状況の変異から、最近には神風トラックあるいは神風タクシーというような問題も起って、業者といたしましては、従業員の待遇の改善、あるいは設備の改良とか、あるいは車両の整備とか、いろいろな方面に投資しなければならない経費の増というものがますますふえていく現状から見まして、かような数字で今後自動車運輸事業というものが健全な発達をするかということを非常に心配するものであります。  三月二十七日、衆議院大蔵委員会において、横山利秋委員質問に対して、佐藤大蔵大臣は、五千五百円を上げた場合だれがこれをのむのかということに対して、これは業者にのんでもらわなければならない、かように御説明されておるのであります。また、言葉をかえて、今までの揮発油税増徴に際しては、もちろん業者も吸収したが、何ら影響というものは見られなかった。また、石油業界もある程度まで吸収したから、そういうことになるではないかというようなことも漏らされておるのでありますが、現在石油業界揮発油価格値上げに対して強硬な意見もあり、すでに昨年来二千円ないし三千円の値上げがもうすでに実施されている。かようなときに、石油業界がのむとかあるいは運送業界負担力があるとかいうことは、もう少し実情を把握して御発言を願いたいのであります。中小企業に属する三輪車あるいはスクーター等のいわゆる自家用自動車使用量というものは、ほとんど全消費量の半分に近いものになっておるので、この増税が実施されると非常に大きな影響を与えてくる。自由民主党減税公約だと申されて、事業税個人企業が六十五億円、法人企業が十五億、約八十億の減税をしたといって約束を実施したといわれますが、その反面、これ以上に大きな揮発油税負担をかけるということになりますと、減税よりむしろ増税になる、かような結果になると思うのであります。従いまして、大蔵大臣の申されるように、影響が微々たるものとか、あるいは担税力があるとかということは、われわれは全く空虚な御意見だと思うのであります。  第三番目に、自動車道路整備による受益ということをいわれますが、この点につきましては、自民党政調会建設部会部会長から発表された御意見を拝聴いたしますと、五ヵ年計画完了後の初年度において約七百億円程度受益ということが推定される、かように申されておる。五ヵ年計画完了後の初年度、いわゆる三十七年度に五ヵ年の計画が終りますれば、三十八年度においては七百億円程度受益になるということを建設部会長は申されておるのでありますが、これもやってみなかったらどれほど整備がされるか、その道路整備状況において受益というものが決定するので、私たちは、今直ちに受益云々ということをここで申し上げるには、まだ時期が早いと思うのであります。一体わが国道路状況を見ますと、これは建設委員の方は御承知でありますが、日本幹線国道、都道府県の道路というものが約十五万キロありますが、そのうち整備されたものはわずかに七%で、現在舗装されておるのは一万一千五百キロであります。それを五ヵ年間の今度の計画において六千五百五十キロ整備する。合計一万八千五十キロ、これは約一二%、全幹線道路の一二%に当るのであります。従って、ドイツ並みにかりに五〇%が整備されるとするならば、五ヵ年計画を三年繰り返して約十五年間によってこの目的が達成される、かように私たちは考えており、また専門家もかように御説明されておるのであります。道路整備ということに対しては、これはわれわれも満腔の敬意を表して、一日も早く整備されることを要望するものでありますが、五ヵ年計画初年度からこの受益として大幅なを徴収することには納得がきないのであります。  道路建設の途上においては、私たち受益ということよりも、むしろ被害者であるということを特に御了解得たいのであります。と申しますのは、二十九年度東海道の道路工事の最中に、私は愛知県のトヨタ自動車の挙母から横浜の日産自動車会社間を十数回往復運行いたしまして、つぶさに体験したのでありますが、道路工事の間においては土盛りもあり、片側通行もあり、砂利敷きもあり、そういう工事中に自動車がその上を走って、そうしてロードローラーのかわりに地固めをする、かようなために車がいたむとか、あるいは燃料消費量が多くなる、タイヤの損耗が多いとか、いろいろなものを体験したのでありますが、ちょうど道路整備五ヵ年計画において全国的に道路工事が始ったこの期間中においては、われわれは受益どころか、全く大きな被害者になるということをまず御念頭に置いていただきたいと思うのであります。ことに、横道にそれますが、私は道路調査会自動車速度試験部長といたしまして、昨年来関門隧道に三日間、あるいは伊香保道路、あるいは濃尾大橋等の、いわゆる有料道路においていろいろの調査をいたしまして、舗装された場合の受益とか、あるいは今後の自動車速度がどうあるべきかということを二ヵ月にわたって、約二千人の動員をいたしまして、いろいろ試験した体験から、私は非常にこの道路整備受益という問題については関心を持っておる一人であります。  日本道路舗装状況が七%と申し上げましたが、これを諸外国に比較して一応御参考に申し上げますと、イギリスが約九六%は舗装されておる。アメリカが七〇・三八%、ドイツが五〇%、フランスが三〇%、かように諸外国舗装状況がよろしいので、先ほども申し上げましたように、自動車の運行による受益というものは、道路がよくなればなるだけこれは恵まれてくる。しかし、日本においては営業車が大半を占める、あるいは中小企業に属する、いわゆる業務自家用車がふえていくということになりますというと、自家用車は多少その経費は節約されると思いますが、営業の面においては、運輸省原価計算によって、道路がよくなれば運賃料金というものにおいてこれは相当減額される。これはいわゆる原価計算を基礎にして絶えず運賃をきめられるのでありますから、受益という問題よりも、今度逆にその利益によって運賃というものが左右されてくるということもお考えおき願いたいのであります。  日本運賃という問題と、諸外国運賃という問題とを一応検討いたしてみますと、日本は最低の運賃で今定められておるので、外国運賃がどういうふうになっているかということを比較する一例といたしまして、運輸調査局資料によれば、バスの一人一キロ当り運賃と、揮発油価格との関係は次の通りであります。イギリスにおいて揮発油一リットルの価格が四十六円七十銭に対して、バスは五円七十五銭、それからアメリカ揮発油価格が三十円、これに対して七円四十二銭、日本揮発油価格が三十四円、これに対して三円三十六銭。この収支率を一応調べてみますと、イギリスが一八八、アメリカが五〇六、日本は一一・一という、非常な低額になっておるのであります。かような点から見まして、政府の申されるように、影響が微々たるものであるとか、あるいは受益がどうなるかということは全くの机上論であり、また極端に言うならば、これは詭弁であると結論いたしたいのであります。  私たちは今まで、自由民主党増税案に対して、たびたびお話しされたいわゆる党の公約というものに対して非常な信頼感を持っておったのであります。三十二年度の揮発油税増徴に対しても、最初の大蔵当局の一万円がいわゆる四千八百円までに修正された。いわゆる修正に次ぐ修正をされたのでありますが、ことに一月の二十六日閣議決定がなされる前に、一月九日、自由民主党政務調査会税制改革特別委員会合同審議会において一月九日に、「揮発油税を半額程度引き上げるが、これと同額程度一般財源より支出する」、かように出された案が、一月十一日に修正されて、次のごとく発表されたのであります。「揮発油税に対する課税は若干引き上げるが別途これと同額程度以上を一般財源より支出するものとする」、これは私たちに示されたものではありませんが、この決議というものは、今後われわれは揮発油税に対しては一般国費が出るものと非常な大きな期待を持っておったにかかわらず、これが完全に無視されたのであります。いわゆる三十二年度においては、わずかに三〇%程度しか出しておりません。今度の五ヵ年計画におきましても、千六十八億の増税に対して、わずかに三百十七億という金が国から出る。昨日もこの合同委員会において、大蔵大臣は、三割程度国が出しているじゃないか、かように申されましたが、その内容はインチキきわまるものであると断ぜざるを得ないのであります。千六十八億の増税をして、国が三百十七億を出すというがそのうち三百十二億は道路公団に出資される金で、ほんとうにわれわれの期待する、一般に公開する国道整備費として、五ヵ年でわずかに五億円、かような数字がもし世間に公表されたときに、自由民主党道路政策というものは欺瞞政策だというそしりを受けても、大蔵大臣としては答弁できないんじゃないか。この点につきましては、予算委員会でも相当の御意見があったように伺っております。  私たち全国一千万の自動車関係者が立ち上って、そうしてこの政府案に反対するのも、いかに数字権威者である大蔵省といえども、理論の上においては勝てないんじゃないか、かように考えるのであります。従って、今回の五千五百円という増税に対して、五ヵ年千六十八億の増税を必要とするならば、国が国費相当に出して、いわゆる一月十一日の決議に基く相当額以上を出すということになるならば、増税の必要は全然なくなってくる。二月二十六日衆議院大蔵委員会において、道路政策権威者である東大の教授今野源八郎氏も、国費相当に、倍額程度ふやすべきだということを述べられておる点も、現在の大蔵当局一般財源の支出をちびっておる、揮発税のみに依存しておるということに対しての反対のお話であったと私は承知しておるのであります。岸総理は、国会において、道路整備は国の産業経済の発展のため、重要かつ緊急の問題であると述べられているが、私たちもこの説には賛成でありますが、しかし、それほど重要な道路整備をするならば、なぜ国費をもう少し大幅に出さないか。自民党公約というものは一応別といたしまして、飛行場の建設とか、あるいは港湾の整備とかということに対しては、全部国費が出ているにかかわらず、ひとり道路だけは揮発油税に九〇%以上を課せられるということに対しては、あまりにもやり方が不公平である、かように考えるのであります。  佐藤大蔵大臣は、国会においては、幾たびか、民主政治である以上は国会の御審議に従うということを言われておりますが、かようなことは一回でも実現しておらない。過去においては、衆参両院の運輸委員会決議もあり、昨年十二月の二十二日の参議院、また本年に入って三月十九日の衆議院運輸委員会でも、やはり相当国費を出せ、揮発油税のみに依存するなという決議をされておることは先生方承知通りであります。日本道路公団についてはそれぞれの意見もあり、昨日運輸委員の大倉先生からも御発言があったのですから省略いたしますが、いわゆる多数党の自民党は、理屈は何でも、数でこれを押し切ろうとする傾向があるやに私たちは思うので、まことに民主政治の立場から、かようなことは許されない問題ではないかと考えるのであります。  以上、はなはだ簡単ではありますが、どうか私たちの申し上げることを御一考願って、最も公平に、かつ、御熱心に当委員会において政府案に対して十分に御検討をお願いし、私は絶対反対をいたしておりますが、私個人の意見といたしましては、次のことをぜひ御一考願いたいと思います。すなわち、三十二年の一月の二十六日、自民党閣議決定において六千五百円の増徴案をきめて、それが五千三百円に修正されたのでありますから、同じ岸内閣が、道路整備の重要性から見てこれを増徴するならば、その差額の千二百円が最大限度だと私は考えるのであります。道路建設というものに対して、揮発油税は目的税であるからということを大蔵大臣はしばしばおっしゃるが、これは非常に間違ったお考えで、揮発油税の目的税の趣旨は、揮発油税道路費以外に流用してはならないということで、道路整備費揮発油税で全部まかなうんだというような錯覚を起させるような御答弁は、ぜひこれは当委員会から大蔵大臣に申し入れていただきたい、かように私たちは考えて、ここにつつしんで先生方の公平な御判断において本案に対する大幅の修正をお願いする次第であります。  長い間いろいろありがとうございました。
  4. 加藤正人

    委員長加藤正人君) ありがとうございました。  参考人お話に対する質疑は、御三方のお話が済んだあとにお願いしたいと思います。   —————————————
  5. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 次に、新倉参考人にお願いいたします。
  6. 新倉文郎

    参考人(新倉文郎君) 一昨年、ガソリン税を五千三百円増徴決定の際に、当参議院の大蔵委員会先生方に特段のお骨折りを願って、そうして委員会におかれましては、さらにそれが修正された。その点につきましては、自動車関係業者としては、まことに生涯忘れ得ない一つの記憶であります。私はこの同じ会議室でその姿を拝見しておりまして、そうして今でもまざまざとそのときの御審議の実情を思い出せるのであります。しかも、その委員会修正を決定いたしまして、それがいつの間にか本会議のかり出しによって、そうして再び五千三百円の衆議院案に直されて、それで決定した。委員会決定がくつがえされておるというこの審議の過程を、私どもは何といたしましても納得のできない国会審議のあり方だと、今でもこれも忘れることのできない一つの姿であります。この二つを一は感謝をし、一は生涯納得できない問題ですよということをここに発表いたしまして、次の反対を申し上げたいと思います。  当時、委員会の御審議の姿、並びに五千二百円が四月に入って約一週間経過したときにようやく決定を見ました。そのときのいきさつ及びその間に政府の首脳部の皆様方とも話し合ったときの記憶等から見まして、二たび三たびかようなガソリン税の大幅増徴というものが政府において強行されんとする今回の五千五百円増徴案というものについては、私どもはあぜんとして言うところを知らぬのであります。そうして反対の点を明確に申し上げてみたいと思います。  第一は、当時から大蔵当局は目的税なるがゆえに増徴やむなしと、こう説明しておったのが記憶にあります。目的税とは何か。目的税とは国会がおきめになったのでありますが、目的税は道路臨時措置法でもうすでに経過しておりますから、今日では通用していないと思います。そのときのいきさつは、当時ガソリン税の総収入は約百億内外だったと思うのであります。それに対して道路に支出しておった総額は、北海道の特別道路費を加えまして九十億内外だった。だから、ガソリン税の総額よりも内輪で道路計画がなされておりましたというのが、これが五年前の姿であります。まことに道路問題に対して私どもは遺憾にたえなかった姿でありますが、そのときは、せめてガソリン税収入の総額は少くとも道路に使わねばならぬという意味の決定が、あの目的税らしいものになったと思うのであります。当時、大蔵委員会並びに大蔵省の皆様方は、猛然として、いわゆる目的税という性格に向って反対をなされたわけであります。それが急に決定をしてしまった。それに対して私どもは、目的税なるがゆえにガソリン税を上げてやる、道路に費用がかかるならみんなガソリン税で取り上げるのだ、こういうような大蔵当局お話は、反面におきましては、これはあの目的税が決定されたために、大蔵省の会計当局としての不平から、これは報復的に目的税々々々ということを言うて、いわゆるガソリン税というもので報復をしてくるあり方である。だから、私は報復的増税である、こういうふうに論断したのであります。今日は特別会計になっておりまするが、特別会計とは何でしょう。これは道路公団とかああしたものと同様な性格を持って参りましょうから、そこには特別の道路計画に対する財源ないしはこれが経費の支出ないしは計画というものをなされるべきでありまして、そうして今日、昔の、五年前のことを考えて、なおかつ目的税だからといってガソリン税のみによって道路特別計画を立てるということは、これは相ならぬことと信ずるのであります。  先ほど小野君から申し上げましたが、各国のガソリン税から見て、日本が幾らか低い。あるいは低いかもしれません。しかしながら、一方において各国の自動車運賃、ことにタクシー料金などは、日本の、東京の倍額であります。運賃の倍額という金額がどれだけ大きな金額かということは、それはそろばんをはじき出したら驚くべき数字であります。一回について十円高いといったような金額でも相当大きな金額になりますが、それが倍額であるということが果して何を一体物語っているのか。これは国民所得とかいろいろな問題がございましょうが、いずれにしましても、ただ税率が幾らか今のところ低いような気がするというだけで、欧米自動車タクシー運賃がわが国の倍額であるという現状を、これを見のがしてはならぬと存ずるのであります。  しかして、道路整備が完成した、まあ十年後でありましょうが、十年先でありましょうが、その整備によるところの自動車の運行コストが下る、従って、その利益自動車業者に還元するのである、受益者は自動車業者である、こういう御説明ないしはお話は、私どもは尋常一年生か何かのごまかしの話としか受け取れません。自動車業者は、道路がよくなった場合には運賃が下るのである。決してそれによって利するものではございません。運賃が下って、自家用がふえて、そうして生産者は荷作りがなくなって、あらゆる生産が豊かになるというだけでありまして、利するものは国家産業であります。自動車業者が利するという理屈は、現在の運賃で現在の荷物をそのままに固定せしめて、そうしてこれを十五年も二十年も先物を契約して、そのままいい道を走って運行するならば、幾らか利益がはね返るでありましょうが、利益のはね返りは国家産業であり、国家文化の向上である、こういうふうにはっきりと出てくるのであります。  むしろ、自動車業者被害者である。自動車業者被害者である。私は、先取りをしたガソリン税によって道路を大改修をする場合に、その何年間の間運行が阻止され、そうして非常な大きな費えをいたしまする自動車業者のこの損害というのは、一大被害者でありまするから、その一大被害に対する補償を一体どうするのかということを深く今検討しつつあるのであります。少くとも道路が完成するまでの間は自動車業者は一大被害者であるから、その被害を考慮して、その間自動車業者の諸税はこれを停止しようということぐらいは、当然国の措置としてなされべきだと信ずるのであります。なおこの問題につきまして深く検討いたしますれば、決して自動車業者というふうなものがこれに対する受益者でないということがおわかりになると思うのであります。  増税負担力問題につきまして東京、大阪等のタクシーハイヤーを引例され、そこの業者の転業する者が売っていくところの車両一台価格が二百万円になるということで、ナンバー権二百万円は大きな負担力を物語るものである、こういうことを説明されていることを承わるのであります。私はまことにその点が納得できない点でありまして、かりに銀座なら銀座のいい店を持っておりまして、それが土地も家も営業権も、それから店の者も、みんな始末をして転廃業していく、いわゆるやめていく場合に、一坪当りそれが二百万になったからといって、一体何が高いのである。それが負担力があるということでありましょうか。それも二十年も十五年もやっておりましたその事業を捨てていく場合のその補償が坪当り二百万円になったからといって、これを高いとだれがいえるでありましょう。自動車業者が売買をする場合には、その営業を捨て、その立場を捨て、社員である従業員にはすべての退職手当を払って、借金を始末をしていったそのしりぬぐいの金額が、台数に当ててみたら一台二百万円になった、こういう計算を物語っているのであります。これを売らずしてその店を経営し、売らずにそこに住んでおり、そこで事業をしている者から見たらば、一体何の価値があるでありましょう。これは十年も二十年も三十年も永続して、その土地によって経営し、その場所によって事業を営み、それによって税を負担しているところのまじめな業者でいうならば、何が一体そんな大きな価格を持っておりましょうか。売り買いのものではないのです。転廃業の場合におけるすべての退職手当とか借金とか、あらゆるすべてを放棄していくところの補償金額が一台二百万円についたからというて、それをもって大きな利権であり大きないわゆる負担力があるというふうなことは、まことに当らぬものであると思うのであります。かりに二十年前に東京なら東京のどこかこの辺の地所を坪三万か五万で買っておいた方が、今日百万円になったからといって、大きな不当な利益があるということと同様な見解になるのでありまして、さようなことは、私は時と物価と、そうして転廃業による補償というものが何であるかということもおわかりにならぬ話であると、こう存ずるのであります。  なお、ガソリンの使用の姿を見ておりますと、ガソリンの消費量の伸張、伸びでありますが、それが非常に大きな数であります。政府は本年度の予算において一一%幾らといいますか、強のいわゆる伸びを勘定して予算を作っておるようであります。これは見込みでありますから、違うと言えるでありましょう、また少いと言えるでありましょうが、現実に過去五ヵ年間のなべ底景気であったときに平均一五%の伸びを示しておるのでありますから、これから産業経済が進展せんとする向う五ヵ年間の計画は、少くとも過去の不景気のときの伸びの一五%以上を計上すべきである。そういうところにもまことに過少評価をし、少い見積りによって幾らかずつ稼ぎ出そうとするところのずるさがあると私どもは見るのであります。  なお、昨年の秋からこの春にかけまして、通産省内にいわゆる石油協議会なるものがございます。これは石油カルテルだと私どもは信じておりますが、それが値上げを強行して参りましてその値上げに応ぜずんば品物をとめてしまうのでありますから、いわゆる食道を断たれるわけであります。その結果、いわゆる三千円の値上げをすでに確保いたしました。そうすると、今回のガソリン税五千五百円を加えますと、八千五百円のいわゆるまさに値上りになるのだ。これを一体負担していく場合に、何にも響きはないのだ、運賃にも響かなければ、何ものにも響かない。それはだれが負担するのだというような無責任な話は、これは私どもの受け取れないところであります。ガソリン税のその増徴運賃には影響ないというお話があるということを、小野君から説明しておりましたけれども、運賃に響くところは少いのだ。五千五百円、値上りを一緒にして八千五百円、いわゆる一万円近い値上りが運賃に響くところが少いというのは、どういう計算か私にはわからないが、少いと思いますと、こういうことだと思います。けれども、それが響きが多ければ運賃値上げもやむなしという腹を中に含んでおると私は思う。今のところ上げようとは言えない、上げていいとは言えない。けれども響きが出てくれば運賃でカバーすること以外に方法がないということを、反面説明している言葉だと思うのであります。それだとしますと、これは重大な問題になる。ここに私どもは、ガソリン税というものの、いわゆる大きな、自由民主党政府の政策上の破綻が、こんな大きな落し穴があったということをここに見出すべきであると私は思うのであります。反省すべきであると思う。  第一、ガソリンの消費はどこで一体消費しているかというと、業者が少いから、一業者当りは、まさにタクシーハイヤーが多い。それだから、つらくはあるから、それが先に立って騒ぎますけれども、全ガソリン消費の半数をこしておるのは、それは中小零細企業であります。農漁村の機械化によるところの燃料消費、都市における零細企業と申しますか、魚屋、肉屋、八百屋、それからしてあきびん屋、印刷屋、クリーニング屋、そうしたあらゆる方面の人たち業務用として小さな車を使っておりますが、その小さな車の消費量が全ガソリン消費量の半数をこす姿である。そうすると、今回の増税によって約二百億円の増徴をされるということになりますと、その百億は零細企業がこれを負担することになりましょう。その零細企業負担する場合に一体だれが負担をしますか。その負担をする場合に、事業税を減額してあげた。それは幾らか。六十五億でありますから、これを小さく勘定すれば、六千円もらって一万円とられたという、奪いとられたということになりますから、まことに欺瞞的なおだましにひっかかったということになる。  そこで、それをどうして補うか。一年の末になったらそれだけ負担がふえるのだから、必ず小さな業者は参ってしまいます。それはどうするか。それは上げてはならぬということを勇敢に言い切れますか。物の値に転嫁してはならぬ、上げてはならぬということを政府ははっきり言えますか。それだけ費用がかかって、実際上の業務用の燃料が増徴されたためにやり切れなくなったものを、物価にこれを転嫁してはいけないのだということをどうして言える。それは、そのあとは何で補償しますか。また、しからずんば、上げてよろしいというのだったら、肉も魚も八百屋のものも、総菜も、何でも上げてよろしいということを、勇敢に政府は言い切れますか。ガソリンの増徴によって苦しいところの零細企業者は、やり切れない。これから先そういう品物を全部その金額を相当見込んで上げなさいと、生活必需品もみな上げなさいということを、これを勇敢に自由民主党内閣は言い切れるなら別ですよ。言いきれますかどうか。この点を考えて参りましたときに、私どもはこういう八百屋、魚屋、肉屋ないしは農村の方々と相携えまして、この増税案がいかに国民大衆をしいたげ、その犠牲によって道路を一部直そうとしているかということに気がつくのであります。この問題につきましては、私はここに伏兵あり、ここに大きな政治上の誤まりがあったということを、おそらく気がつかずにやった。  騒ぐやつらは自動車屋であるから、自動車屋だけごまかせば、それで済むだろうという、安易な気持であったとするならば、私どもは、自動車業者もつらいけれども、われわれ中小企業、ことに運転をする者にしわ寄せされていって、どこかでこれを負担してしまえというふうな押しつけを食うものにつきましては、同病相あわれみ、同類相助け合う意味から、この方面と相提携して一大国民運動を起さずにはなりません。私は、重税、かような問題が通るならば、政府の政策に対してうらみを持ち、ただ今回このガソリン税の法案が今国会で成立するかしないかの問題ではなくて、それがこの重圧をしいられるならば、その圧力に対して、将来に向って永遠に戦いを宣するものであります。永遠にこの点は戦うべきである。この問題は、ほんとうに火をつけてやりますれば、どこまでいくかということをお考え願わなければならない重大な問題であると思うのであります。  なお、政府が税制特別改革委員会の、あれは小笠原先生が委員長でございますか、そのときにおきめになって発表されたやつは、これは党の方針なんです。その党の方針を幾たびも幾たびも変えてきて、あれは委員会であったから仕方がない、あれはだれか一部の人が言ったのであろうといったようなことを言いながら、何回も何回もそうした詭弁によってものをごまかしながらやっていこうというふうなことは、これは長い政治の過程から申しまして必ずぼろが出てくる、こういうようなことを本日痛感するのであります。今日国民大衆とともにこの問題を戦わざるを得ない姿に追い込まれました私どもといたしましては、ようやく長きにわたって多数が安座をしておりました、いわゆる各眠をむさぼっておったようなこの法案が、本増税案によってはからずも爆発するの運命に逢着したということを考えまして、根底から反対をし、将来この問題のあり方によっては戦いを宣するものである。  しかして、私どもは断じて、承服のできないことは承服できません。こういうふうなばかばかしい法案というようなものが、わずか千円かそこらごまかして、四千円見当ではどうだというようなことで、これをきまりをつけることにつきましては、絶対に承服相ならぬということをはっきり申し上げまして反対の理由を結びたいと思います。
  7. 加藤正人

    委員長加藤正人君) どうもありがとうございました。   —————————————
  8. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 次に、伊坪参考人にお願いいたします。
  9. 伊坪福雄

    参考人伊坪福雄君) 揮発油税法の一部を改正する法案について意見を開陳したいと思います。  まず第一に、今回の法律改正については、ここ二、三年来の揮発油税引き上げの経緯から考えても、絶対にわれわれとしては理解せられない点がたくさんあります。以下反対の意見を逐条申し述べてみたいと思います。  佐藤大蔵大臣衆議院予算委員会における答弁の要旨等を見ますると、諸外国に比して日本税率が低いから、キロ当り五千五百円引き上げについては不当な処置ではない、こう言い切っておる。第二に、税の五千五百円引き上げた場合、自動車運輸業界に及ぼす影響は微々たるものである。第三に、道路整備による自動車利益は運行費の軽減で還元されると述べております。  第一の諸外国との対比について申し上げますならば、わが国の国民生活と諸外国との比較から判断しなければならないと思うのであります。運賃収入等も多大に考慮しなければならない。運輸調査局資料を私たちが見まするというと、さいぜん小野参考人も申し述べましたが、イギリスアメリカ日本の比較によりますならば、バス一人一キロ当り運賃イギリスが五円七十五銭、揮発油一リッター当り価格が四十六円七十銭、アメリカは七円四十二銭で一リッター当りが三十円。日本の場合は、一人一キロ当り三円三十四銭、一リッター当りが三十四円という統計の示すごとく、運賃を低く定めているところに、揮発油自体の値段を考慮せず、税の引き上げはいたずらに私は混乱を増すのみである。このような解釈をとっております。一事業体としての打撃をこのような状態において多大にこうむることになり、さなきだに賃金労働者にその責任の転嫁というものを常に押しつけている経営者に、一そうの逃げの手を打たせ、ひいては賃下げ、首切りの方向に向わせる原因をもたらすものと思考いたします。  第二に、税の引き上げ五千五百円の影響はほとんどないにひとしいと言うに至っては、常識ある政治家の発言と受け取ることは絶対にできません。引き上げ率は三〇%であり、それがために賃上げ要求に対しても回答保留の状態は、影響なしと片づけべき問題ではなく、労働者の死活問題として私たちが重視する点がここにあると言わなければならないのであります。  第三に、道路をよくすることは国民の希望であり、道路がよくなれば自動車の受ける利益は増大する、従って引き上げがかえって大きく利益を得るのだと、このように言っておりますが、道路五ヵ年計画というかけ声のみで、いずこの地をながめても悪路の連続であり、常にわれわれとしては悩んでおるところであります。それのみか、五ヵ年計画の地域的計画発表されず、仮定の上に立っての説明に対してはわれわれとしては納得できない。中小企業の集団ともいえるところのハイヤータクシー事業は大幅な税の引き上げによって働く労働者にあすとはいわずきょうよりこの影響が甚大であることを強調いたしたいと思います。  第四に、ハイヤータクシー事業は大幅な揮発油税の引き上げにより利益率の低下に伴い、そのしわ寄せというものが必然的に労働者の上に一方的な圧迫となって表面化されることは、過去の姿を見ても歴然としておるのであります。現今、いまだ満足すべき状態に置かれていないところの自動車運輸労働者が、あげて、適正なるところの労働条件の確保に全力を私たちとしては集中しているとき、かかる増徴案は、昨年政府機関であるところの内閣事故対策本部より打ち出されたところの神風タクシー追放の趣旨を無視するばかりか、ひいては私たち労働者の生活権を脅かし、利潤の追求のしわ寄せとして過酷なる労働を強制される結果となるのであります。  ハイヤータクシー並びにトラックの労働者の過酷なる労働の実態を参考ために申し上げたいと思います。北海道、宮城、関東、静岡、愛知、京都、大阪、こういう組織の中の賃金の実態を参考ために申し述べますというと、扶養家族が二・九、三人弱でございます。北海道の場合のハイヤータクシー平均賃金は一万七千八百十三円、宮城の場合は一万七千四百五十四円、関東の場合は二万九千八百五十二円、静岡が一万八千百六十六円、愛知が二万三千二十七円、京都が二万四千二百二円、大阪が二万三千二百九十五円、三人の家族をかかえてとのような賃金しかとっていない。しかも、ハイヤータクシーの場合は、一年のうちに半分は自宅に帰れないというような長時間の労働というものをしいられておる。政府がいうハイヤータクシーなり運輸業者は幾らでも税を負担する能力があるというならば、とのような長時間の労働と、このような低賃金からのその利益といいますか、むしり取っている所産が、業者利益を得ているといろ姿になっている。そういう実態があるからといって、利益があるというようなことは、この比率の中からも御理解願いたい。だからといって、業者の方がこれは幾らでも税を負担する能力があるというならば、これはきわめて私はあさはかなる政府の考えである。このような考えを持っております。  次に、現在のわが国の自動車走行キロ当りの交通事故率は世界最高である。死者が八千余名、傷者四万数千名といろ犠牲者を出しているということが当局によって発表されているわけです。これは一体何に基因しているか。内閣交通事故対策本部はこの問題に対しては周知のはずでありまして、政府揮発油税増徴によって、そのしわ寄せが労働者に来て、そうして事故を多発するところの大きな要因を作り出すのではないか。私は、尊い人命が失われていくというこのような事態に対して、何ら考慮が払われていないこの面に対して、きわめて遺憾の意を表明したいと思います。  次に、このような交通事故の原因ともなるところの前世紀的な道路整備していくということは、一日たりともゆるがせにすることのできない至上命令でなければならない。しかしながら、歴代政治の貧困によって生じたところのその穴埋めというものを、自動車運輸業者あるいはその労働者に一方的にしわ寄せして参るというところのこの政治の暴挙に対しては、私たちは絶対に納得できません。従いまして、私たちはこの問題に対しては、労働者側の立場から、この増徴によってどのように私たちにしわ寄せられてくるかということを考えるときに、この増徴案がいかに無謀なものであり、再考をわずらわさなければならないものか、こういうような面から、絶対にこの問題に対しては反対せざるを得ません。  以上をもって公述を終りたいと思います。
  10. 加藤正人

    委員長加藤正人君) ありがとうございました。   —————————————
  11. 加藤正人

    委員長加藤正人君) これより各委員の質疑に入ります。どうぞ御質疑のある方は……。
  12. 小酒井義男

    小酒井義男君 小野参考人にお伺いしますが、自動車会議所というのはどういう——幾つの業種が集まっておって、大体それぞれの団体の加盟数というのはどのくらいになっておりますか。概略でけっこうですが……。
  13. 小野盛次

    参考人小野盛次君) 日本自動車会議所の構成メンバーは、自動車の製造販売、あるいは自動車運輸、タイヤ、部品、石油、あらゆる自動車関係の二十七団体が構成メンバーになっておるのであります。ですから、自動車関係のある仕事をされておる中央団体は、全部、自動車会議所のメンバーでございます。
  14. 小酒井義男

    小酒井義男君 私の聞き方が悪かったんですが、ガソリンを消費する、いわゆる増徴の被害を受ける団体ですね、これは幾つありますか。
  15. 小野盛次

    参考人小野盛次君) 直接揮発油を消費する団体といたしましては、日本トラック協会日本乗合自動車協会、全国乗用自動車協会、日本乗用自動車連合会、それから全国自家用自動車協会、それからそのほか小型自動車を持っておる団体等、いわゆる輸送団体が主として揮発油の消費団体になっております。申し上げましたように、これには自家用も全部含んでおるのであります。
  16. 小酒井義男

    小酒井義男君 数の上でずいぶん大きいと思うんですが、自動車の台数にして、それらの消費団体の総車両数というと、どのくらいになりますか。
  17. 小野盛次

    参考人小野盛次君) これは今申し上げましたように、自家用が大部分占めておりますが、全体でまあ、運輸省の御統計にありますように、二百万を突破しておるのであります。
  18. 小酒井義男

    小酒井義男君 今度のガソリン税増徴の反対の声を、まあ私ども院内におって受け取る印象としては、運輸業者が非常に強くて、一般の消費者といいますか、小さい車を使っておるようなころの反対の声というのは聞かないんですが、それは与える影響が少いからそれがわれわれの方の耳に入らないのか、こういうことになる影響内容がわからないからこちらへはね返ってこないのか、あるいは組織化されておらないからそういうことがないのか、どういう事情にあるんでしょうか。
  19. 小野盛次

    参考人小野盛次君) 御指摘のような結果になっておることは、まことに遺憾でありますが、昨年の九月、全国揮発油税反対同盟を作りまして、そして先ほど申し上げました日本自動車会議所の構成メンバーが全部これに参加しており、また、各地方の都道府県には実行委員会というものを作りまして、府県単位でもこれが反対の実行委員会を作っておるのでありますが、何分にも揮発油を直接消費するユーザー団体が主とならなければならないということで、反対同盟の幹事は主として輸送業者が中心になり、これに石油製造販売の方々も参加しまして、自動車の製造だとか、販売だとか、あるいは部品だとか、整備だとか、それぞれのメンバーの方々は中央団体に一応おまかせ願って、そして活動のいろいろな方法については逐次連絡をいたしておりますから、直接には中央団体が活動をいたしておりまして、全部がこれに参加していないというわけではありませんが、名前は反対同盟の名前においてやってきたのであります。  ただ、ここに非常に申しわけ的になりますが、実はこの揮発油税については、衆議院が主としてこの問題を取り上げておられたので、反対のいわゆる主力というものを衆議院に向けておって、参議院の先生方に御連絡が非常に薄かったという点については、まことにわれわれとして申しわけないのでありますが、衆議院がすでに本会議を通過した今日のケースでは、どうしても参議院の先生方にお願いしなければならぬという段階になったので、事前にお願いが不十分であったということは、ここであらためておわび申し上げます。
  20. 小酒井義男

    小酒井義男君 新倉さんにお尋ねをしたいのですが、先ほどのお話の中で、自民党の幹部といいますか首脳部といいますかと、いろいろ折衝をされたというようなことが、ちょっとそういう意味にとれることがあったようですが、また、その折衝で相当この引き上げ率が是正をされるかというような空気が若干でもあったのでしょうか。
  21. 新倉文郎

    参考人(新倉文郎君) お答え申し上げます。小野参考人から申し述べたらち、御質問のポイントからちょっとはずれている点がありますので、その点補足して、なおお答え申し上げたいと思います。  業務用自動車小型ですが、それが非常な大きな影響を受けてきて、問題がそこに出てきた、こう説明しているのですが、その方面の反撃なり反対が、まだ聞えてこないのはどうかということでありました。それは八百屋とか魚屋とか、そういうふうなものが、市場へ取りに行ったり、あるいは産地に取りに行ったり、肉を運んだり、あるいはおろしたりというために、業務用自動車を使い出したのはきわめて最近であります。この点は、二百万台をこす小型を中心とする自動車の増加は、ここ一年間の大きな足どりであります。でありますから、自動車を持ったということで非常に能率的になったという喜びで、油の価格がどういうふうに自分たちの扱う商品に響くかというようなことを考えていなかった方々が多いし、そういう方面の零細企業の組織が貧弱であるということがいえると思います。その点は、私どもが一番当面の被害者として、まず最初に呼びかけ、その組織を供与し、全国的に津々浦々に向ってこれを説明すべきであると信じている、こういうふうに申し上げていいと思います。問題はこれからであります。  それから、私が申し上げたうちに、一昨年のガソリン税増徴のときには、主として政調の松野頼三副会長先生にお話をした。これは政調の部屋で、あかりが消えてしまうまで残って話をしましたが、私は、当時、政府の言う理由のうち、まあ十あるとして、そのうち三つでいい、三割でいいから納得できるものがあればいさぎよく賛成いたしますよということを申し上げて、検討したのですが、いずれも納得するものがなかったことは、今日と同様であります。また、今日かような状態を、各方面に響く、いわゆる国民生活の、大衆に一大課税をしていく結果になるんだということは、これはとれほど大きいとも当時は考えておりませんでしたが、その結果がそこへ出てきたということは、これは当然の帰結だと私は思う。  それからして、今回の問題について、首脳部の方とお話をちょっといたしました。それには、私は大ざっぱに、とりあえず半分以下になすったらある程度納得できましょう、こう申し上げたのは、計算の基礎を明確にしているわけではないが、今の零細企業が持ち出さずにすむ限度、これが半分であります。五千五百円を半分にした場合に、今の零細企業減税されるものと増税されるものと大体ペイするから、持ち出しにはならぬ程度というと半額以下であります。そこで、とりあえず半額以下ということをお話しして、これは政治ですよ、この際理屈を抜きにして、政治ですよという話をした。おおむねの方は、ごもっともだというようなことで、かなり納得されておりましたから、参議院の皆さん方、先生方によって十分御検討を願いますと、その線は少くとも打ち出されてくると信じます。  お答え申し上げました。
  22. 小酒井義男

    小酒井義男君 もう一つ、あなたはこの自動車業の経営の立場にある方として、ガソリン税のこれだけの値上げ政府案に近いもので成立をした場合、今、昨年、一年前から運転手の諸君の労働条件が少しずつ改善をされるといいますか、まあ従来の過酷なものからは少しずつよくなりつつあるのですが、こういうことになった結果、交通の安全、いわゆる事故をなくして、運転手諸君が正常な労働条件の中でそれぞれの職務を遂行していく、こういうことに対して、前進は非常にむずかしくなると思うのですが、むしろ後退するような面ができてくる心配が出てくるのじゃないかと、先ほど伊坪参考人からそういうようなことがちょっと触れられたのですが、経営の面からいってもやはりそういう心配がありますかどうか。
  23. 新倉文郎

    参考人(新倉文郎君) その通りでございます。御質問通りであると思います。伊坪参考人お話を聞いておりまして、まことにそういう結果になることを憂えまするし、また、この増徴によってそのままでは済まされぬということは、当然、給与、施設等の改善をせんければならぬことが多々ますます必要でございます。従って、それがためには、運賃相当額値上げというものが当然不可避の姿になってくると信じております。
  24. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 三つばかりお尋ねをしたいのですが、一つざっくばらんな御答弁を願いたい。  先ほどのお話でもありましたが、衆議院段階で一生懸命これが減税なりまた法案の通過を阻止するためにお働きになっているということですが、どうしたことか成功しないで、原案のまま参議院に今日この法案が送られましたが、衆議院段階で最終的にどうにもならなくなって通過した際に、自民党との話し合いでは、参議院でどういうふうにするというお話し合いを承わっておるのですか。ざっくばらんに……。
  25. 新倉文郎

    参考人(新倉文郎君) お答え申し上げます。いろいろとこの問題について御相談を願いました衆議院先生方お話、及び相当ないわゆる首脳部のある方々から、総務会等で、この問題は一応原案のまま衆議院段階は通すが、あげて参議院における一大修正を含みとして、一応衆議院は通していこうということであったということをかたく承わっております。ですから、衆議院ではみずから手をつけないで、あげて参議院へこの修正をお願いするというふうなことをちゃんと了承の上で通ってきておると、こう聞いておりまするが……。
  26. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 自民党の山本理事に伺いますが、そういう話が党首脳部の方からあなたのところまで伝わってきておって、十分理解されておりますか。
  27. 山本米治

    ○山本米治君 私は、直接には聞いておりません。
  28. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 その程度のあやふやな話の程度に、衆議院段階で自民党首脳部との話を聞いたのですか。
  29. 新倉文郎

    参考人(新倉文郎君) お答えします。もっとはっきりしておりまして、総務会が幾たびもこの問題を取り上げて、反対が非常に多くて、総務会でも一応決しかねた。ところが、衆議院は予算を全面的に一応認める段階になってきたから、その関係でこの際はいじくらずに、参議院へ行って社会党との共同修正をするということが、予算の次の措置についてきわめて安易であるという話を承わっておりまして、その点はごもっともだというふうに了承いたしました。
  30. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 では、もっと詰めてお尋ねしますが、われわれにも伝わってきている部面がありますが、金額的なことになりますと、どの程度に話をしたのですか。自民党首脳部としてはどの程度まで折れるということを皆さんににおわせていますか。
  31. 新倉文郎

    参考人(新倉文郎君) どの程度に折れて参議院の修正を期待するとお話があったか、そのいわゆる具体的な数字は聞きませんが、私が申し上げましたのは、先ほどのその方面に向って、とりあえず半額以下ならばという話を私が申し上げて、それがある程度中心的な話題になっておったとも信ずるのであります。
  32. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 次にお尋ねいたしますが、小野参考人は前回の改正原案が修正減額されたその差額千三百円程度という主張をなさっておりましたし、新倉さんは半額程度といいますか、半額以下といいますから結局二千七百五十円ですか、千三百円と二千七百五十円では相当これは開きがあるのでありますが、統一的に運動をなさっている皆さん方全体の御意向としては、どちらをわれわれは尊重して考えればいいのですか。まちまちですから、この際はっきりと皆さんの意向を示していただきたい。
  33. 新倉文郎

    参考人(新倉文郎君) ごもっともなお説でして、小野参考人の申し上げたのは、昨年の計画であった政府原案が、六千五百円を五千三百円にして、千二百円減らされた。それが道路計画に及ぼす影響が大きいのであるからというのなら、その部分だけは今年直ると、こういうことならわかる、こういう話であったと思います。しかし、私どもは全然しろうとではございますが、政治を深くお察し申し上げます。政治のあり方というものをお察し申し上げます。従って、今度の五千五百円という線が出ました現実を中心にして考えますならば、今申し上げたように、半額以下なら不承々々一応考えてみる段階に来るかしら。要旨は、絶対にかような道路部面には課税すべきでないという根本の精神は変っておりません。だから、半額以下であって初めて話に応ずる余地があるが、もしそれよりも上であるならば、私どもは断然将来に戦いを宣するものである、こう考えております。    〔委員長退席、理事山本米治君着席〕
  34. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そうすると、新倉さんの御主張は業界全体の御意向と承わりますが……。
  35. 新倉文郎

    参考人(新倉文郎君) けっこうです。
  36. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そのことは、厳格にいうて、二千七百五十円なら二千七百五十円の程度のことであるならば、運賃部分には影響しない、運賃値上げを業界から当局には出さない、出さないでも済む、こういうことですか。
  37. 新倉文郎

    参考人(新倉文郎君) お答えします。それが幾らできまりますか、二千七百円以下のどの程度でありますかによって計算が違いますが、絶対に運賃値上げは……。増徴になったときにも運賃値上げを一銭もせずに済むとは、今断言できません。これは石油価格の値上りがありますので、別に三千円という値上げがございますから、相当大きな金額になりますので、それとあわせて考えるべきだと思います。
  38. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 じゃ、今までのところ二点伺いましたが、最後にもら一つ伺います。前回も業界では非常に猛烈な運動をいたしました。全くここ何年間かは年中行事的です。そこで、ちょっとお伺いしたいのですが、皆さんこれだけの運動をするのに、資金計画としてはどのくらいこの運動に使っているか。
  39. 小野盛次

    参考人小野盛次君) 揮発油税反対同盟は中央団体から費用を出していただいて、その予算は約百万円、こういう少額なものであります。これは日本自動車会議所の中に全国揮発油税反対同盟というものを作りまして、そうして中央団体にそれぞれの御負担を願った。総額約百万円であります。
  40. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それはずいぶん少額なものでありまして、ほんとうに何千億という影響のあるものを百万ぐらいの運動費で仕上げようというのだから、ずいぶん皆さんも倹約しておられるようですが、では、その種の団体が今日までの間に政党献金をしておった事実がありますか。
  41. 小野盛次

    参考人小野盛次君) さような事実は全然ございません。ただ、小笠原先生の御質問の中で、私は中央団体のことを申し上げましたが、東京地区においてはそれぞれのタクシーの団体もございますので、これは別に運動資金を設けてやっておられるのでありまして、われわれの方とは別個に……。タクシー団体においては、反対運動の基金を集められて運動されております。重ねて申し上げますが、これは政党に対してはたばこ一個の提供もいたしておりません。
  42. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 自民党との窓口になる団体は、あなたの団体ですか。
  43. 小野盛次

    参考人小野盛次君) 正式な反対運動の中心はわれわれの所属しておる反対同盟でありますが、別に各府県に実行委員会というのがございまして、東京は東京にあります。全国に数地区を持っておりまして、そこはまた地方選出の先生方に、またあるいは中央の先生方にお願いしておるので、運動方針としては、反対同盟本部と各都道府県の実行委員会と、二つによってやっております。
  44. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私の聞いておることは、何か皆さんの方誤解を受けて、従っているような感じで答弁をしようというふうに受け取れるのですが、私は、国民の立場に立って国会にあらゆる運動を、大っぴらであろうが、派手であろうが、粗末であろうが、ちっぽけであろうが、おやりになることは自由だと思う。大いにおやりになってけっこうなことだと思います。ですから、そういうことをとやこう言うのではありませんが、ただ、われわれ国会におってさまざまなうわさ話として聞くと、この種の税値上げは、大幅な値上げ案を政府自民党は出す、そうして常に大幅に負けてやる、そういうことをやるたびにもうかるのはそういうことをした方のあれなんだ、業界から相当金をとるのではないか、そういうことの繰り返しなんだというふうに見られるといううわさ話を、端的に私は申しますが、聞くのです。こんなことは運動する皆さんにとっては迷惑でしょうし、またそう見られる自民党の諸君も迷惑だと思う。けれども、そういうことが事実話としては出ておるのですね。ですから、私はそういうことはお互いのためにも望ましいことではないでしょうから、まあそういううわさの種になるようなことは自粛されたがよかろうという念願でお尋ねしておるわけです。皆さん、痛めつけられるというようなことは絶対ないので十ね。
  45. 新倉文郎

    参考人(新倉文郎君) ただいまの御質問にお答えします。いろいろな御注意でまことに感謝を申し上げますが、会議所はまあ中央の締めくくりだけでありますから、費用も少いようであります。その費用の不足分等は各組織が持ち出しておると思います。また、各組織部隊は、おのおの業者同士の拠出によって運動を続けているわけでありまして、それらにつきましては、今途中ですから、どの程度いっておりますか、よくわかりませんが、場合によりましては、どういうふうな運動費を集めて、そうしてどの程度使っているかということを公開しても差しつかえないと思います。
  46. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私の申し上げておるのは、くれぐれも申し上げますが、た揣摩憶測で追究する立場で御質問をしたのではない。そういうことは国会と運動組織体とは明朗な立場で大いにやっていただくということを念願して、お尋ねしたことです。そういうことが絶対、業者といかなる政党間においてもあり得ないということが明らかになったので、われわれも安心したわけです。大いにがんばっておやりなさい。
  47. 柴谷要

    柴谷要君 新倉参考人にお尋ねをしておきたいのですが、一体業界の一致した見解として、現在政府が示しております五千五百円の半額ということなら手打ちをやろうといろ決定をしたように聞いているのですが、それはいかなる機関で決定をされ、いかなる運動の中にそういうことを御議論になっておられたか。私は今初めて聞くのですが、その経緯について一つお聞かせ願  いたい。
  48. 新倉文郎

    参考人(新倉文郎君) お答え申し上げます。半額程度の話ならば手打ちをしようというふうなことを決定した、最後案であるというふうにお聞き取りになったようでありますが、この話は、とこまで来た問題が、一体どこでおさめようとする段階まで来るかという話を、会議所の首脳部間で話をしましたときに、半額以下のときに初めて考慮に値するであろう、こう申し上げたのであって、半額以下の金額がどう出て参りますか、また、それこれに伴うて自動車及びその他の方面がどういうふうにこれを事業を育成するために約束づける政策を要求するかといったような問題は、付帯的に考えられておるわけであります。この点についてはこの委員会ではお話をいたしませんでしたが、かりに事業でいうならば、事業のいわゆる育成のためにどんな行政が望ましいか、あるいは零細企業に対しては、別に持ち出しはないけれどもどうこれを育成していくかというふうな点については、別に考えるべきだ、こう考えておるわけであります。
  49. 柴谷要

    柴谷要君 今のお話のように、もし政府が現行の半額ということになるならば、トラック業界の代表である小野さんにお聞きしたいのですが、このあなたがお示しになっておりまする昭和三十四年度のつまり増徴額、三十一年度の利益額を基準にして三十四年度の利益額を換算してみるというと、この示しているのは四万九千五百円と出ておるが、これを半額とすれば二万四千七百五十円、依然としてこの三十四年度の利益というものがなくて、マイナス二千二百九十七円という数字になるわけです。それでも、あなたの方の事業はりっぱにやっていけるという確信がある課税の対象になったわけかどうか、小野参考人の見解をお聞きしたい。
  50. 小野盛次

    参考人小野盛次君) 私は、先ほど申し上げましたように、今回の増税案は絶対反対である。しかし、最後に私が申し上げました個人的意見として、どうしてもこれを大幅に修正するならば、三十二年の一月二十六日に閣議で決定した六千五百円という線を一応基準として、千二百円程度ならば大体納得できるだろうということを最後に一言申し上げたのでありますが、トラック事業赤字がほとんど二万二千四百五十三円という一応の数字になりますが、これはトラック事業は最近ディーゼル自動車相当使用量もふえて参りまして、揮発油単独で使う車というものが割合に減る傾向になっているので、千二百円程度増徴ならば、トラック協会の関係トラック事業もこの欠損が半分——二万二千四百五十三円のうち千二百円程度ならばやむを得ないじゃないかというふうに考えたのでありますが、先ほど申し上げましたのは私個人の意見でありまして、これがトラックに千二百円の増徴になった場合にどういうふうに響くということは、さらに検討しなければならぬ点が残されております。しかし、衆議院が無修正で参議院に送付されたこの案に対して、どの程度まで先生方の御努力で原案を修正されるかということの非常に大きな悩みの上から、まあ千二百円程度ならばということをばく然と申し上げましたので、この点については直ちに計算をいたしまして、柴谷先生の方へお届け申し上げたいと思います。それで御了承願います。
  51. 柴谷要

    柴谷要君 重ねてお尋ねしますけれども、政府は、五千五百円のいわゆる増徴をしても大して影響がない。大して影響がないということは、いわゆる運賃引き上げまでには及ばない増徴である。しかしながら、それは政府の言い方であって、実際に事業を担当されている皆さん方が、これを上げられた場合には、それではその穴埋めをどこに求めようと現在考えておられるか、その穴埋めの考え方を一つ御披露願いたいと思います。小野参考人並びに新倉参考人、御両氏にお願いしたいと思います。
  52. 新倉文郎

    参考人(新倉文郎君) 先ほどからお答えしておりますように、ガソリン税が、よし小さな幅に落ち着きましても、ガソリンそのものの値上げ相当大幅に来ておりますので、運賃を考慮すべき段階に来ていることは当然である。ガソリン税の値上げそのものがどれだけ運賃に響き、ガソリン価格の引き上げがどれだけ響くかということは、これは直ちに計算すればわかるわけでありまするが、当然、今日の段階におきましては、いずれにいたしましても、運賃を何とかせねばならぬという段階に来ていると信じております。  なお、トラックのことは私専門外ではありまするけれども、トラック運賃は、現在許可運賃をそのまま実施しておりません。少くとも許可をされている運賃のぐっと内輪で商売をされていることと存じておりますので、これは許可面から申しますれば、運賃の実質上の値上げはいたしましても、これを直すという段階には来なくても済む姿だと見ているのであります。
  53. 柴谷要

    柴谷要君 先ほど新倉参考人お話で、衆議院は無修正で通過をさせ、参議院に送り込むけれども、参議院の審議の場を通じて社会党と共同修正の上でいきたいということを漏らされた、かような御発言がありましたが、その際に、社会党が共同修正に応ずるとあなたはお考えになりましたかどうか、そのときの心境を一つ。
  54. 新倉文郎

    参考人(新倉文郎君) 私どもは、政治上の国会対策等でなさいますお話し合いの場はよくわかりません。わかりませんが、自由党の先生方からお話を承わったときに、共同修正でいった場合に、予算面にいかなる響きを持ち、ないしは予算の組みかえ等の問題を社会党から要求された場合に、非常に窮地に追い込まれる自由党の立場から、共同修正ならば、こういうことを言うたのだろうと思うのです。これは私どもの常識判断であって、政治上のいろいろな話し合いは、私どもの想像の以外であります。どうぞその点は一つ。心境といたしましては、それならばすなおに通るのかなという感じは持ちました。
  55. 柴谷要

    柴谷要君 最後に、伊坪参考人にお尋ねをしたいのでありますが、このガソリン税の引き上げという問題が俎上に乗ってから、いわゆる組合側としては春闘の中で賃金要求をされている、あなた方果敢に戦っておられるようで、その経緯について、ちょっとお尋ねしておきたいと思うのだが、このガソリン税が出されたために経営の内容を、もしこれが完全に実現された場合には、経営の内容も少し変えなければならぬという経営者の立場に立って、現在賃金の要求には、この決定がきちっとしない限りは、あなた方に回答ができないと経営者は言われているという話を聞いているのであるが、事実であるかどうか。団体交渉の経緯について少しくお話を願いたい。
  56. 伊坪福雄

    参考人伊坪福雄君) 団体交渉の経過の中からは、結局このガソリン税の問題が上るのだから払えないという答えは、一様に経営者の方から聞いております。  それから、もう一つは、このガソリン税が増徴になった場合、必らず労働者の中にしわ寄せされてくるという一つの例をあげますと、現在東京都内においては、陸運局長権限において三百六十五キロに規制されている。三百六十五キロに規制された場合、そのはけ口というものを一体経営者はどこに求めたか。このガソリン税の増徴と私は関連があると思う。三百六十五キロに規制された。過去においては、四百キロから、多いのは六百キロも走らした。業者間における限りなき競争というものが、運転手にしわ寄せされておった。それが、キロが規制になると、どういうことを経営者が考えたかというと、今度は、キロ歩合というものに結びつけておるわけです。空車の率を少くして、お客を乗せる間を多くする、それに歩合を結びつけたキロ歩合というものを強制しておる。従って、一つの例をあげると、今までは、丸の内あたりでお客を乗せて五反田方面に行った、そうすると、過去においては、お客がないというと、ぱあっと帰って、また丸の内からお客を拾うという形が出たのでありますが、最近ではキロ歩合と結びつけているので、そんなことをしておると飯の食い上げになってしまう。従って、五反田あたりでつけておって、お客を拾う。これは、実車率をよくするということでしております。これに歩合が結びついておる。こういうことを業者が考えてきておるわけであります。従って、私は、ガソリン税が増徴になった場合においては、当然、運賃値上げなんという問題ではなくて、これは相手のあることでありますから、業者といっても強くありませんから、値上げなどということはとてもできない。従って、一番弱い労働者の方へ大部分しわ寄せが来るのじゃないかと思っております。従って、現在でもハイ・タクの問題においては、労働争議が、東京都内においても一番多いわけであります。つまり、ガソリン税の増徴によって、そのしわ寄せというものは必ず労働者の方へ参りますから、これは過酷なる労働争議がだんだん激しくなってくるのだ、こういうように考えております。
  57. 柴谷要

    柴谷要君 そこで、経営者の筆頭である新倉参考人にお伺いしたいのですが、これが実現された場合、今、労組側から言われた、運賃値上げ運輸省は認めない、これは運輸大臣は公開の席上で言っておりますが、運賃値上げはおそらくできない。そうなると、しわ寄せは、やはり伊坪参考人の言われたように、経営の面に来る。経営の面に来るのは、一番何に行くかといえば、労働者階級の賃金の面に結びつけて、上げるどころか、逆に後退させるというような考え方をとらざるを得ない、こう思うのですが、こういうようなお考えで経営をやる御自信がありますか、それをお聞かせ願いたい。
  58. 新倉文郎

    参考人(新倉文郎君) ただいまの御質問は、私承わっておりませんですが、運輸大臣が、運賃値上げには響かないと、こう説明されたのかどうか知りませんが、認めない。運輸大臣がなんとおっしゃったか、私も存じ上げておりませんが、私鉄運賃等は値上げをさせない。させないと言っておったって、もうみなさせてしまっておりますし、伊坪参考人お話によりますと、業者が弱いから当局を相手に運賃値上げはできまいとおっしゃっておりますが、私は、こういう事態において、終戦後運賃値上げだけしたが、タクシーハイヤーはいまだかつて一銭でも上げたことがない。業者が、かようなあらゆる面からこれを検討いたしまして、運賃を是正することにおいて大してむずかしい問題ではない。運輸大臣が何とおっしゃったか知らぬけれども、さようなことはそれほど困難な問題じゃないから、運賃を考慮すべき段階に来た。従って、値上げする場合においては、容易にこれができるものであるという確信を持っております。
  59. 平林剛

    ○平林剛君 最初に、小野参考人にお尋ねします。今回の揮発油税増徴について、政府の考えは、これは道路をよくする、あるいは、先ほどお述べになりましたように、税率が諸外国と比べて低いということ、また、先般も揮発油税増徴したけれども、今回においても影響は微々たるものだというようなお話が述べられました。しかし、もう一つ政府は理由があるのではないか。これは先般も資料を調べてみますと、自動車業者利益率、それが全産業と比較して高い、これはなかなか有力な考え方になっておるように見受けるのでありますが、たとえば、全産業が昭和三十一年上期にあげた利益率は三・九三%、下期で四・三九%である。昭和三十二年の上期になりますと、これが四・二六、下期でも三・六三%。これに対して道路運送業においては、それぞれ五・八四%から三十二年の下期は六%あげておる。高い水準を示しておる。と同時に、これを法人企業統計で見ましても、全産業はいずれも同期で、高いときは四・〇一%、低いときは三・三八%であるにかかわらず、自動車運送業におきましては、最高は六・一四%だ。こういう工合に、政府資料によりますと、かなり高い利益率を上げておることがわかるのであります。そこで、同じ道路を直すならば、全産業と比較をしてかなり高い利益率を上げておる業界に対して多少の負担をさせるというのは、裏に隠された一つの理由になっておるのではないか、かように思うのであります。  本日、あなたからお話しになりましたタクシーハイヤーバストラック、それぞれ業種別の利益は一車当りということで説明がありまして、この増徴の結果についての数字が述べられましたけれども、この政府の一つの資料に対して皆さんはどういう反駁的な意見を持っておられますか、これをお聞かせ願いたい。
  60. 小野盛次

    参考人小野盛次君) 私が申し上げました収益の数字は、資料としては非常に古いので、三十一年度の運輸省発表された数字を引用したのでありまして、三十二年度は運輸省がまだこれを発表しておりません。運輸当局に再三この点について御相談を申し上げたのですが、大体三十二年度は、揮発油税も五千三百円上って負担増になったが、逆に収入もふえたから、大体同じであろうというふうに自動車局ではお話がありましたので、一応ばく然と三十一年に比較して、今度の五千五百円が増税されるとかようになるということを申し上げたのであります。  平林先生のお話利潤の問題については、大体私たち収支率は五%ないし六%で、ほかの産業よりもややいいという点もあるかと思いまするが、しかし、自動車関係は、隠された事故というもの、それから労働条件というものが非常に低いために、今後タクシーにしても、バストラックともに、労働条件をよくするとか、あるいは事故防止のためには、それぞれ車両の整備とか施設という面に相当の資金が要るのではないか、いわゆる経費増というものが、今までより以上に大きくなることは当然だと思います。従って、利益歩合もこれからさらに落ちてくるということを申し上げているのであります。
  61. 平林剛

    ○平林剛君 新倉参考人に伺います。ただいま私が指摘しましたような利益率ですね、全産業から比較いたしますと自動車業界の利益率は高い、そこが政府のつけ目なんですね。そこに先ほど伊坪さんからのお話があり、またわれわれも現在の実情をながめますと、自動車関係者、労働者の労働条件はきわめて低い。これはもう、最近ひんぱんに起きているタクシー運転手の争議を見ても明らかなことである。そこで、私はあなたに見解を伺いたいのでありますが、こういう高い利益率を得ておる裏には、やはり関係者の労働条件が低いということと、それから事故防止のため経費というものについて、今日まであまり見られないということが、その裏にあるのではないか。ただいま小野参考人は、利益率は高いけれども、今後は労働条件を高くするとか、事故防止のため経費を増加させるから、利益率はそんなに高くなりません、そういうお考えを述べられました。あなたも、今ここで考えてみますと、今日まで政府の方から揮発油税のいい財源と目されておるのは、結果的に見て、こういう労働条件、事故防止などについて十分でなかったために、つけねらわれたのではないか。もし労働者の条件をよくしておいたり、あるいは事故防止について多少でも業界みずからが積極的に乗り出しておるということがあったならば、高い利益率にならず、かつ、多額の揮発油税増徴される財源に目されるというようなことはなかった。顧みてみますと、私は皆さんがこういう面について配慮しておけば、何回も何回も揮発油税増徴というものがなかったのではないかということも、逆説から言えるわけです。  そこで、私はこの機会にあなたにお伺いをしたいのです。今後運賃値上げその他もあるかもしれません。そういうことより、まず自分の関係者の待遇をよくしたり、国民全般に対しても事故防止が業界みずから積極的にやるという努力をぜひなさっていただきたい。そうすることが、間接的に今後の揮発油税増徴の防止策にもなるのではないか、こう思うのです。あなた、経営者の代表であり、かつ、今回の反対運動を進めておる経営者の方々は、こういう問題についてどういうお考えを持っておるのか。私の希望するようた方向に向って、この際何か努力をしようという気がございますか。
  62. 新倉文郎

    参考人(新倉文郎君) まことにごもっともなお話承わりまして、その捕りだと存じます。なお、この利益率が幾らか大きくなっておるという統計を示しておるということでありまするが、あるいはそれがそうだろうということを小野参考人も申しております。ただ、私はこういうふうに見ております。この事業が非常な危険性を持っておりまするために、その危険を防止する上から、働く者の安定ないしは施設の完備、整備といったようなものが絶対急務でありまして、そこまで手が届かなかった姿におきましては、過去のこの事業利益を出していなかったということは、つい数年前まで東京三百社のうち百六十何会社が不渡り手形を出す運命に置かれておったという事実が、これを物語っておると思います。それからしても、収益率が高いように見えるのは、いずれにしましても、この事業が陸運局、陸運事務所から毎月々々報告を求められております、その報告の資料によってできたものと思いまするが、これは大体信じたい。ところが、それは昨年以前のものである、こう存じます。  そこで、今までガソリン税も上ったのですが、それをどうしてやってきたかというと、伊坪参考人に言わしめれば、これは労働者のあらゆる利益を害することによって補っておったのである、こういう御説明でありますが、半面におきましてはそういう理屈も成り立つと思います。これは昨年の夏までは走行キロ等が非常に多くて、そうして薄利多売ということではないが、固定費をそのくらいに見まするから、非常な大きな走行を続けておったわけであります。従って、危険も多かったし、またいろいろな弊害を持っておった。それが三百六十五キロに押えたために、ぐっと状態は変ってきております。ですから、古い数字というか、昨年の新しいのですか、八月以前の数字というものは、それによってカバーしておったのは、低運賃になりまして漸次運賃を下げておりましたから、それが走行キロを多くするという結果にも相なっておったと思います。やはり幾分の収益率が高いように見えるのは、この事業こそほんとうのまじめに報告しておる数字に基くものであって、同時に、これはほんとうに零細企業であります。全国的な平均を見れば、三台とか五台とかいう小さな事業でありますから、そこらの八百屋さんや魚屋さんと同様な計算点に立っておると思いますが、そういうのが今まで計算をしてほんとうに出しましたらば、それは五分や六分の利益というものがなければ、この危険に耐えながら、このいわゆる非常な変転きわまりない事業というものは継続できないのじゃないか。従って、ガソリン税等が安定をし、そうして事業の育成ができるならば、その方面に手をつけまして、やっておりまするし、まだ手がついたばかりでありまするから、完全に給与の引き上げ、ないしは施設その他の諸設備の改善というものは完了はしておりませんが、順次その成果を上げておりまして、東京全体のタクシー会社等をごらん下さいますと、よくその点は、現われは看取できると存ずるのであります。
  63. 平林剛

    ○平林剛君 今日、かりに全産業と比較して、自動車運送業あるいは道路運送業などの利益率が赤字であるとかあるいは非常に低いということであれば、政府も今回のような多額の揮発油税増徴を有力な財源に考えるようなことはなかったのじゃないか、この点を皆さんよく反省してもらいたい、その犠牲になっておるその労働条件あるいは今後の事故防止等のため経費増ということを考えれば、これは高い利益率だけでなくて、こちらの方に力を入れる、従来も入れておれば、そうすれば今度のようなことにならなかったのじゃないかということも、私はやはり考えておいて、今後の運営に当ってもらいたいということを希望するのです。これは皆さん、現実の立場に立って十分御反省になった点だと思いますけれども、どうせあれするならば、関係者をよくしてやった方がよかった、こういうような考えで今後は一つ臨んでもらいたい、これは私の希望であります。  それから、小野参考人にもう一度お尋ねしますが、まあ今回の揮発油税税率につきましては、多少手直しをするということは、大体の空気が出て参っております。皆さんの運動並びにその理論は、これは政府といえども無視することができない。一たん出したけれども、やはり考えなければならぬという点は、各委員が共通した考えである。これは皆さんの一つの運動の成果でもあるし、また国民の世論というものも漸次、その全貌については、ある程度深い浅いの違いはあっても、理解しつつあるのです。これはまことにけっこうなことでありますけれども、しかし、そうかといって、理屈がなく半分にするとか、これはこの程度だというようなことも、またどうもわれわれ実際審議に当っていくときには力のないものですね。そこで、小野さんは専門的に御検討になって、先ほど数字を言われましたけれども、もっと修正する場合の具体的根拠をどこに置くか、先ほどおあげになった以外にあるかどうか、先回の修正のときは、たしか一年間に消費するガソリンの量、この見通しの上から、多少手直しをしても政府の税収には関係がないという点から、一部修正をされまして、私どもこの委員会でさっきお話しになったように修正案を提示して、本会議では否決されましたけれども、かなり議論をしたことがございます。去年あたりから、先回行なったような消費量の見通しから是正をするということが、今度はなかなか困難なように思われます。そこで、皆さんの方で専門的に検討して、具体的根拠について、先ほどお述べになった以外に何かお考えがあれば、この機会に聞かしてもらいたい。これが一つ。  もう一つは、実際問題として今日まで、非公式ではありますけれども、ガソリン税の修正については七百円から千五百円くらいの幅で考えたらどうかというような、非公式な意見もあるのですね。一部ではありますけれども、それが検討されておることは事実であります。新倉参考人は、さようなことであっては知事選、参議院選には協力し得ないというような強硬な意見自民党に漏らされているというお話でありますけれども、これは別にいたしまして、小野さんは専門的に検討されて、私が今具体的にあげた数字で、一体どういうところを根拠に政府は考えているのだろうなというあてがあったら、聞かしていただきたい。    〔理事山本米治君退席、委員長着席〕
  64. 小野盛次

    参考人小野盛次君) 平林先生の御質問にお答え申し上げます。私は、先ほど申し上げましたように、今回政府増徴の理由としては三つを掲げておると、要約して申し上げたのでありますが、税率の問題、負担力の問題、道路受益の問題、この三つに要約される。税率の問題については、先ほど来詳しく申し上げたように、絶対承服できない。第二番目の負担力の問題については、大蔵大臣トラック事業に対してはまことにお気の毒だということで、トラック赤字経営ということは大蔵大臣もお認めになっていらっしゃいます。バスタクシー等については、先ほど申し上げた通りであります。第三の、道路整備については、私は本委員会で特に御発言を願いたい。  と申しますのは、原主税局長もたびたび言われておるのですが、道路整備による受益は一キロ十円程度で、これは十一年経てば四倍になって返ってくるというようなことも大蔵委員会で述べられておるのですが、今度の道路整備五ヵ年計画は、一体何県から何県に至る何キロの整備をするかというようなことは、全然出しておらないと思います。漠然と一級道路が幾ら、二級道路が幾ら、お手元資料に掲げてありますように、一級道路の舗装が三千二百七十キロ、二級が千八百二十キロ、主要地方道路が千四百六十キロ、合計で六千五百五十キロを五ヵ年間に整備をするのだといっておりますが、これは私が、交通量によって受益が算出できるなら、これは数字については大蔵省の専門で、いろいろの魔術的の数字もお使いになるでしょうが、山の中を通る道路あるいは非常に交通量の多い道路というような点において、これは受益が全然違ってくる。そういうような道路整備五ヵ年計画の地域的説明が何にもつかずに、ただ漠然と八千百億円の事業費でやるのだというような、こういう予算要求を、建設部会あるいは大蔵委員会でよくおのみになった。これは私非常に不思議な問題だと思うのです。何県から何県に至る道路の幅員を幾らにして、総延長キロが幾らで、そうしてこれによる、道路整備による年々の受益が幾らということをお出しになれば、一応われわれもそれを基礎に検討いたしますが、そういうことなしに、五ヵ年計画とばく然として国会に提出されて、それが衆議院で無修正で通ったということに、私は大きな疑問を持っているのです。少くとも道路整備による受益として大きく大蔵省が掲げられているならば、そこまで明確にしておらないで、まあ当参議院の大蔵委員会においては、おそらくその点をつかれると思うのでありますが、私の知る範囲においてはそういう明細書が出ておらない、御審議の対象になる資料がないと、かように考えております。先ほど来、るる申し上げましたように、少くとも五ヵ年計画を完成して後に、これだけ道路がよくなったのだから増税をするというなら、一応ごもっともですが、五ヵ年計画ということは三十三年から三十七年にわたる——その三十三年はきょうで終りますが、その三十三年度に遡及して大幅な増税をもっていくならば、予算措置は一体どうするのだ、私はしろうとですからよくわかりませんが、そういう疑問を持つものであります。できるならば三十四年から三十八年の五ヵ年計画に直すならば一応筋は通るが、一体予算措置がどういうふうになっているのか、その点も私、しろうとながら、非常に疑義の念を持っているものであります。  以上申し上げましたことを重ねて申し上げますと、一の揮発油税率に対しては大蔵省の主張は根拠がない、二番目の五千五百円引き上げても業界に影響がない、これも空論である、第三番目の道路整備については相当に検討すべき点がある、かように考えるのであります。
  65. 平林剛

    ○平林剛君 私のお尋ねしたのとちょっとお答えは違うのでありますが、まあけっこうであります。これは私の方でよく検討いたしまして、今後考えて参りたい、こう思っております。  最後に、一つお尋ねをいたしたい点は、現在揮発油の卸売価格は幾らになっておりますか。一キロリットル当り、東京の卸売でけっこうであります。
  66. 新倉文郎

    参考人(新倉文郎君) お答えいたします。卸売と申しますと、元売りのところでしょうか、メーカーから特約店に出す金額、それから大量消費者の使う金額、そうえらい幅はないと思っておりますが、あしたからガソリン・スタンドその他に向って、石油価格幾ら、それから税金幾ら、両建に定価を示すそうであります。その準備が完了しております。それによりますと、現在の揮発油価格は大体、平均で申しますと、一万四千円という金額になります。そうして税金が一万八千三百円でありますから、三十二円三十銭、まあ三十二、三円の間になる、こういうふうになると思います。
  67. 平林剛

    ○平林剛君 この揮発油の卸売価格は大体一万四千円というお話がありました。言うまでもなく、揮発油税その他の税金を除いての価格であります。そこで、昭和二十九年当時、この揮発油は一キロ当り大体一万八千四百四十六円であった。これが三十年になりますと一万七千九百十七円、三十一年は平均して一万五千八百四十二円、だんだん値段が下ってきておるわけです。ことし三十三年に相なりますと、一月あたりは一万三千五百三十三円、二月、三月、四月に入りますと、これがさらに一万一千七百円、さらに去年の秋は一万一千七百円、こうだんだん安くなってきている。それで、今日は少しまた値上りを示したけれども、一万四千円程度である。まあ揮発油が卸売において安くなったのに比較するに、ガソリン税の増徴がはかられておるわけです。御承知のように、昭和二十九年、それから三十二年、こういう工合にだんだん揮発油は下ってくるに従って、逆にその差益だけ、二十九年当時一万八千円と比較すると、今日では五千円違うでしょう。去年の秋ごろになると、七千円以上違ってきている。その分だけ揮発油税で上ってきているのですよ。そうすると、何だか、これはあとで政府にも聞いてみようと思っておるのですけれども、揮発油の値下りが同時に揮発油税増徴という因果関係になっている。皆さん、このことについては何か御意見がございますか。
  68. 新倉文郎

    参考人(新倉文郎君) 今のお話には少しズレがございまして、揮発油価格が下る分だけずつガソリン税も増徴しておって、その見合いをつけておるような因果関係が偶然かどうかできておるが、何と考えるかというお話のようでございます。それはちょっと違っておりまして、揮発油税増徴が国会で議せられることになりますると、石油業者はこぞって値上げをして参ります。これは税金がかかった場合において売るときに幾らか骨が折れるものですから、今のうちに早く上げておかなければいかぬということで、値上げをしておりますから、すでに昨年以来三千円の値上げをしておるわけであります。下りましたのは、これは先ほどから申し上げましたが、石油使用量の非常な伸び、あるいは同じ外貨を少し余分にもらいますると、それによってあらゆるコストが下りまするし、経費が節減できますので、競争の結果値下げをしておりましたが、それがすぐ直されまして、そして一万四千円ぐらいになる、こういうふうになるのでありまして、油が下っているようだから税金をというふうなこととは関係がないようにも存じ上げております。
  69. 平林剛

    ○平林剛君 ガソリン税が引き上げられることになりますと、あなたの見通しでは、石油の卸売価格、まあガソリンも同じように上ると見ておりますか。
  70. 新倉文郎

    参考人(新倉文郎君) 昨年の暮から本年の春へかけまして、合計して三千円の値上げを強要したわけでありますが、かなり強い態度でわれわれに対しても文書をもって、これに応諾せずんば何月何日より出荷を御辞退申し上げるという文書が参っております。そういうことで、やむにやまれず値上げをいたしましたのが三千円でありますから、その三千円が済んでおりますから、ここで急に値上げをするとは考えられませんし、伸びの点等を考えますと、これは値上げせぬでも、むろん石油会社は利益相当伸びてくると存じ上げます。また、伸びの点について、政府の一割一分幾らというもの、いわゆる一一%幾らというものは、われわれは最低一割五分だと押えております。それが累算されますと、五ヵ年計画では大して増徴する必要がなくなってくる。ましてや、道路公団等に流用する金を排除すれば、それは初年度においても千五百円内外で済むという計算は直ちに出てくると存じ上げます。
  71. 小酒井義男

    小酒井義男君 最後に一点だけ。小野さんからお答え願った方がいいと思うのですが、私ども揮発油税に対してはいろいろな反対の陳情を受けておるのですが、経済政策研究会という名前で来ておるのに、「昭和三十二年度予算案の審議に当って、地方道路税分とを併せて一軒当り五千三百円の増徴を決定する際に、今後は、揮発油税を再増徴しないからということを公約している」、「事実を全く無視している」、こういう内容があるのです。これをずっと目を通してみますと、終りの方にいって、「われわれ党員と共に先ず反省しなければならない」というところで結んでありますから、おそらくこの研究会は自民党関係の方がお作りになっているのじゃないかと思うのですが、こういう書類が来ておりますのと、もう一つ、小野さんが出されたあれですね、意見書の中で、昭和三十二年一月十一日の、「揮発油税に対する課税は若干引上げるが、別途これと同額程度以上を一般財源より支出するものとする」という自由民主党の政調会と税制改革特別委員会との決議ですね、これはやはり政党政治ですから、やはり党の政策がいろいろな法律等の形でこう出てくることになるのですが、ただ、決議というものはその際はそう考えたのだというだけだというふうにいわれる——決議じゃない、そういう説明をされるということが考えられないかどうか。あなた方もやはり、こういう決議というものは引き続いて守られていかなければならぬというか、その当時、従来も将来もこういう形で道路というものは整理されていくというふうに受け取っておられるか。あなたの資料にありますから、あなたから一つお答え願いたい。
  72. 小野盛次

    参考人小野盛次君) お答え申し上げます。自民党の政調会と税制改革別委員会、先ほど新倉さんからもお話がありましたように、税制改革特別委員会委員長が小笠原三九郎さん、それから政調会長が水田三喜男さんでありまして、当時私も傍聴しておりました。一月の九日の決議を、さらに十一日に今先生からお話しのように修正されたので、この席には参議院からは大谷贇雄先生が御出席になりました。私の承知しているのは、衆議院では永山忠則先生が中心になっておやりになったので、少くとも自民党の政調会という最高機関でおきめになったことだから、これは自民党の私たちは方針だと、さように信じ、またそれに非常に期待しておった。ところが、二月の十八日の衆議院予算委員会で、自民党の先生の御質問に対して、大蔵大臣は、そのようなこともあったかもしれないが、すでに閣議決定をした以上は党議としては取り上げない、といって御答弁されておったのでありますが、私は自民党を信じ、特に当時の政調会長があれほど強く主張され、現幹事長の福田さんが副会長の当時、いまだに自民党の幹部の方々がおられるので、三十二年の一月十一日の決議は必ず党の公約として実行されると私たちは固く期待しておったのであります。それが裏切られたことを非常に残念に思うので、そういう申し合せというものがどれだけ政治力があるかということは、これは別の問題で、自民党の全部の人たちの御決議で、さらに文書を出されたその原文も私は持っております。一月九日、一月十一日と、この決議はわれわれにとっては非常にありがたい手形と今でも信じておるので、この点に向っては自民党方々にも強くお願いしているようなわけであります。これが政治的にどれだけの効力があるかということは別問題として、以上お答え申し上げます。
  73. 天坊裕彦

    ○天坊裕彦君 ガソリン税と軽油引取税とのバランスですね、これについての意見を一つお聞きしたい。
  74. 小野盛次

    参考人小野盛次君) 軽油引取税は、政府原案が四千円でありましたが、これを地方行政委員会で二千四百円に修正されて、参議院の方へ御送付になっておると思いますが、大体軽油引取税は前回のときにも相当に問題になったので、今度四千円というものは非常にガソリン税に便乗したというきらいが相当にあると思うのです。で、これは地方行政委員会の理事の自民党方々から強く反対があったと私は見ておるのであります。従って、衆議院修正されるときにも社会党は反対でありました。もう増税の必要ないといって主張されたのでありますが、自民党の先生の御提案によって修正された。これは揮発油税とは全く性格が違っておる。  しかし、揮発油税についても私大きな期待を持っておるのは、昨年の十二月二十五日、自民党の有志の先生方が御決議されて、揮発油税のみにいっちゃいけないと、道路公債も発行しろ、国費も投入しろということで御決議されて、現在百五十四名の御署名をされたのを拝見しておるのでありまして、自民党先生方の内部においても、揮発油税の大幅増徴には軽油引取税同様大きな疑問を持っておられると。私たちは、これは政治効力がどのくらいあるかは別として、有志議員百五十四名の御署名を見ても、実に私たちは公平な御判断をされておると、かように考えておるのでありまして、軽油引取税が三割でとどまったということで、揮発油税も三割程度になるのじゃないかというような甘い考えはわれわれは持っておりませんので、先ほど来申し上げますように、揮発油税はもらすでに限度を越しておるから、軽油引取税関係なしに、これは全部増税は撤廃していただきたい、現行据え置きにしていただきたいとお願いしておるのであります。  天坊先生からの御質問にちょっとピントがはずれましたが、軽油引取税揮発油税とは性格が違うと私は考えております。
  75. 天坊裕彦

    ○天坊裕彦君 やっぱりピントが違っておるのですね。税を払う側からいって、あるいは現在の税金軽油引取税とガソリン税とは違いがありますね。それが均衡論からいって、公平だとお考えになるかどうかということ。それから、政府の原案は、片方は四千円、片方は五千五百円というように、やや差を詰めようという意図が現われておると思うのですが、そういう格好で大体バランスがとれるとお考えになるかどうかということを、お聞きしたいのですがね。
  76. 小野盛次

    参考人小野盛次君) 非常にむずかしい問題でありまして、私たちは、揮発油税の現行税率がもうすでに最高に来ておる。軽油の方は、これから石油業界がどういうふうになりますかわかりませんが、原油から精製される軽油の歩どまり等から見ましても、軽油の価格修正された二千四百円についてはやや、満足ではありませんが、やむを得ないというふうに私たちは考えておるのであります。従って、揮発油税についてはわれわれは全面的反対をする。その理由は、先ほど来申し上げますように、もらすでに税率の限度を越しておる、これ以上げられたならば業界ばかりでなく中小企業の弱小業者にまで大きな影響が加えられるので、ぜひ据え置きにしていただきたい、かように存ずるのであります。
  77. 天坊裕彦

    ○天坊裕彦君 もう一ぺん、よく申し上げますが、揮発油税軽油引取税が差があるのが当りまえかどうか、当りまえなら、どのくらいの差があるのがいいかという点の御意見を聞きたい。
  78. 小野盛次

    参考人小野盛次君) これはまだ、業界のほんとうの声を聞いておりません。私は自動車会議所というところに所属しておりますので、軽油をたくさん使っておるトラックバス方々とも十分検討してみたいと。揮発油税にあまり主力を置いたために……。天坊先生の御質問にお答えできないのは非常に残念でありますが、軽油引取税については揮発油ほど大きな影響がないのじゃないか。業界の有数の人たちにういろいろ意見を聞いたが、この程度までの増税ならやむを得ないじゃな、かという御意見相当に伺ったので、軽油についてはこの程度ならやむを得ないというふうに私は考えております。繰り返して申しまするなら、揮発油と軽油の引き上げのバランスについては、全然違うので、揮発油はもう絶対上げてもらいたくないというお答え以外に、答弁のしようがないのであります。
  79. 加藤正人

    委員長加藤正人君) では、この辺で、午後の日程もございますので、とどめておきたいと存じます。  参考人方々、御多忙中御出席をいただきまして、率直な御意見を開陳していただきましたことについては、厚く御礼を申し上げます。非常にわれわれとしては啓発されるところが多かったのでございます。ありがとうございました。  これをもって休憩いたします。    午後一時一分休憩    —————・—————    午後二時二十三分開会
  80. 加藤正人

    委員長加藤正人君) これより、委員会を開会いたします。  まず、委員の異動について御報告いたします。紅露みつ君、椿繁夫君、野溝勝君、西岡ハル君、宮澤喜一君、前田佳都男君、上林忠次君が辞任されまして、その補欠として青木一男君。小林孝平君、柴谷要君、松平勇雄君、森田義衞君、新谷寅三郎君、石坂豊一君が委員に任命されました。   —————————————
  81. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案、以上四件を一括議題といたします。  御質疑のある方は、順次、御発言を願います。
  82. 小林孝平

    小林孝平君 私はこの際、関税定率法第二十一条の規定に関連いたしまして、輸入映画の検閲の問題について質問いたします。  税関は、輸入映画を、現行関税定率法の第二十一条の規定によって検閲を行なっておるわけであります。この問題が非常に問題になりましたのは、昭和三十一年に、フランス映画で「夜と霧」という映画が輸入されようといたしました際に、ナチの収容所における光景を写したものでありますけれども、これがきわめて残虐であるというので、この輸入を禁止いたしました。その際にも非常に問題になったわけであります。その後最近に至りまして、同じくフランス映画の「恋人たち」という映画が輸入されまして、この映画は御承知のように、監督ルイ・マルの作品であって、ベニスの映画祭におきまして最高優秀監督賞を受けた、非常に芸術品として賞賛されておる映画であったのであります。これが輸入をされましたところ、税関では、先ほど申し上げました定率法の第二十一条の規定に基いて、これを検閲をいたしまして、その相当部分をカットいたしました。  それで、この際、御承知かと思いますが、念のため申し上げますと、定率法の第二十一条は「左の各号に掲げる貨物は、輸入してはならない。」という規定がありまして、その三号に、「公安又は風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品」となっております。この規定に基いて、これを税関では検閲をしておるわけであります。そうして検閲をいたしまして、これが非常に色っぽい映画であるというので、相当長い時間にわたってカットしたわけであります。そこで、そのカットした部分が、そういう風俗を害すべきものであるかどうかという議論が起きて、これは芸術品であるという説と、エロ映画であるというような議論がありましたけれども、最終的に切られた。カットされた。私は、これが芸術品であるかどうかという議論は、ここでやろうとは思わないので、その前に、税関で、この規定によってそういうものをカットしたり輸入を制限したりすることが、憲法の第二十一条の規定、すなわち検閲はしてはならないという規定に違反するのではないか。明らかにこれは検閲であって、憲法の規定に違反するものであると私は考えるわけであります。そこで、この点に関して大蔵当局の御所見を承わりたいと思います。
  83. 木村秀弘

    説明員木村秀弘君) ただいま仰せになりましたように、関税定率法二十一条では、公安、風俗を害する文書、図画その他の物品について輸入を禁止いたしております。なお、関税法の六十七条におきましては、貨物を輸入しようとする者は、その貨物について税関に申告をして、検査を経た後許可を受けなくちゃならぬ、こういう規定に相なっております。税関で現在行なっております、たとえば今度問題になりました輸入映画のフィルムにつきましては、われわれといたしましては、これは検閲ではなくて、関税法第六十七条にいう検査である、貨物の検査であるというふうに解釈をしているわけでございます。それで、今のこの規定が生きております限り、もちろん、これが最高裁判所等で違憲であるという結論が出ますならば別といたしまして、現在こういう実定法があります限りにおきましては、税関といたしましては、この法律の規定に従ってフィルムの検査をいたしておるわけでございます。  ただ、この規定が違憲であるかどうかという点につきましては、ただいまおっしゃいましたように、これは違憲であるという御意見も一部にはございます。また、これは違憲じゃないんだ、合憲であるという有力な意見もございます。われわれの解釈といたしましては、このフィルムの検査につきましては、この表現の自由並びに検閲の禁止の規定につきましては、これはあくまでも日本の国内における表現の自由を確保し、そして検閲を禁止する、一定の思想が発表せられる前に検査をいたしまして、それがけしからぬとか何とかということで、その表現を禁止するということを絶対にやっちゃいかぬという規定だと解釈いたしておるのでありまして、外国において表現せられました思想、たとえば今度の映画のようなものを無制限に国内に持ち込んでもいいという規定ではないと信じておるのであります。たとえば、出入国管理令におきまして、一定の資格要件を備えない者の入国を禁止するという規定がございまして、これが最高裁判所の判例によりますというと、外国人が無制限に入国することを認める憲法の規定じゃない、許可するかいなかということは、当該国、日本の実情によってきめればいいんだという解釈も下されております。  御承知のように、外国日本ではいろいろ風俗の違い等もございますし、輸入された映画が一般の映画館に上映されまして、公衆の観覧に供せられるということになりますというと、はなはだ困るようなものも相当ございます。今御指摘になりました「夜と霧」のようなものは、非常に、もちろん扇動的な意味をもって作られた映画ではございませんけれども、しかし、その内容は非常に残虐なものでありまして、たとえば、人間の体を三つに切って、それが死屍累々としておって、ブルドーザーでもって穴の中へ押し入れるというような、非常に残虐な内容を持っておるものでありまして、これを一般の青少年あるいは婦人が見た場合に受ける恐怖感というようなものを考えますと、必ずしも一般に公開するのは適当じゃないんじゃないか。また、ただいま御指摘になりましたフランス映画の「恋人たち」というフィルムにつきましても、もちろん……。
  84. 小林孝平

    小林孝平君 委員長、ちょっと発言中ですがね。税関部長は無制限でないというのです。私は、本日は政府委員質問したいんです。それから、必要があれば参考人質問します。  それから、私が今尋ねておるのは、そういう今——そういう趣旨でありますが、さらに私が質問をしている以外のこともお答えになっております。発言中でありますが、私は政府委員にお尋ねしているのです。
  85. 加藤正人

    委員長加藤正人君) だれですか。
  86. 小林孝平

    小林孝平君 主税局長です。
  87. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 主税局長、かわって下さい。
  88. 小林孝平

    小林孝平君 その前にちょっと。先ほど申し上げましたように、私はこの映画が残虐であるかどうか、あるいは風俗を害する色っぽいものであるかどうか、そういうことをここで聞こうと思ってるんじゃないのです。この規定が検閲ではないか。明らかに検閲だ。そうして本来ならば、この関税定率法から、これに移るとき、当然憲法の規定に基いてこれが削除されるべきはずのものがそのまま残っている、こういう性質のものではないかという質問を私はまずしているのです。それに対する政府の見解を。
  89. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 税関部長がお尋ねよりもよけいのことをお答えしたと思いますが、お尋ねによるところの答えは、税関部長の今の答えの中に入っておると思いますので、最初の質問はそれで御了承いただきたいと思います。
  90. 小林孝平

    小林孝平君 これは明らかに検閲だと思うのだけれども、検閲でないという理由はどこにあるのです。それから、検閲であるという説もあるし、ないという説もある。というのは、あるという説はだれが言っておるか、ないという説はだれが言っておるのですか。
  91. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 憲法第二十一条第二項の規定は、ただいまも申しましたように、国内における思想の発表を押えないということであって、外国からいろいろなものが来るというものについて、全部フリーだというところまでは考えていないという考え方を私どもはとっております。しかし、それについて憲法違反であるという議論があるというのは、私の承知しておる一番代表的なところは宮沢俊義教授であります。
  92. 小林孝平

    小林孝平君 どうしたのですか、途中で。
  93. 原純夫

    政府委員(原純夫君) むしろ、その宮沢教授の説に対する反対説の方が痛切であるように私は承知しております。
  94. 小林孝平

    小林孝平君 国内のものにだけ限るというのは、どこからそういう議論が出てくるのですか。これは映画を作って、そしてそれを今度上映しようとしておるものは輸入業者なんです。だから、これは外国人じゃないのです。その人の責任でこれが上映されるのですから、それが国内でできようが外国でできようが、同じじゃないですか。
  95. 原純夫

    政府委員(原純夫君) ただいま申し上げましたように、これは日本国内においてのことであって、国際的な、そういうよそからの思想なりあるいは表現というものが入ってくる場合までもフリーだとは考えておらない。たとえば、住居の自由というようなことにいたしましても、出入国管理令で入って来る人について、特定の欠格要件と申しますかを設けて、そういう場合には入れてはならないという規定をいたしております。こういうことは、常識的に考えてもそういう必要があると私は思いまするし、従来それにつきまして憲法論が裁判上問題になりまして、これが判例として憲法違反でないという判例がございますが、相通じたものであります。そういうベースに立ちまして、私どもはこれは憲法違反ではないというふうに考えております。
  96. 小林孝平

    小林孝平君 今、例を引かれました住居の自由についての問題と全然違いますよ。だから、そういう違うものを例に引いて、そうしてこういう例がある、これは違憲でないという判例があったということで、説明できないと思うのです。そういうことなら、あなたの方が自信があるなら、昭和二十七年に、これはあなたは法務府に、これが違憲であるかないかという意義をただしているわけなんです。そんな自信があるなら、当時だってそんなことを聞かなくてもいいのですよ。私はこういう重大な問題を、勝手にもうそういう規定があって、現にやっているからといって、答弁されようというそういう態度は、この検閲を漸次広く広げ、解釈して、広範に行われるおそれがある、こういうふうにもう心配するから、お尋ねしているのです。
  97. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 法務府に照会いたしましたのは、私どもとして念を入れた解釈をとるという意味で、適当だと思ってやったことであります。なお、この人が入る場合にはそれはいいが、物が入るあるいはいろいろな表現が入るという場合にはいかぬ、こういう御趣旨でありますが、私どもそれはやはり相一連のものではなかろうかいうふうに思っております。
  98. 小林孝平

    小林孝平君 あなたは、先ほど税関部長の言ったことも一部説明になっているというから、お尋ねいたしますが、それほどそういう必要があって、こういう規定があるならば、国内で作ったものに対して同様にやらなければならぬはずじゃないですか。ところが、国内のものには全然フリーになっているのに、輸入映画に対してやるというところがおかしいじゃないですか。あなた、税関部長は一々ひそひそ言わぬでいいのです。あなた、そっちに行っていなさい。そういうことであるならば、これは答えられないなら答えられないでいいのです。そんなに事務的にちょいちょい入れ知恵されて、ぼつぼつおっしゃられるなら、これはあらためて、きょうは答えられないから、この次にやって下さいとか何とか言えばいいのです。ちょっと税関部長、あっちに行っていなさい。
  99. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 税関部長、ちょっと席を隣からはずして下さい、質問者から……。
  100. 原純夫

    政府委員(原純夫君) お願い申し上げますが、恐縮ですが、それでは次の機会に御質問をお願いしたいと思います。それで、ちょっと言わしていただきたいと思いますが、大へん申しわけないのですが、私勉強不足なんです。今回の税改正非常に大きな改正でありまするし、まあ非常に忙しく、私は毎晩十一時、十二時まで残ってやっておりますが、力足らずして税関関係の仕事まで全部見切れないので、税関は幸い税関部いうものがありますので、税関部長に大部分お願いするということにいたしております。まあ、この問題は、前からありましたので私も気をつけて、こういう機会に備えて勉強すべきだったと思いますが、私の怠りでそこまでやっておりませんで恐縮ですが、ただいまのような御趣旨でありましたら、私、念を入れて勉強してお答えした方がよろしいと思いますから、次の機会にお譲り願いたいと思います。
  101. 小林孝平

    小林孝平君 そうはいかぬ。というのは、あなたがほんとうにそう思っていたら、初めからそう言えばいいでしょう。こういう重大な違憲の疑いがあるじゃないか、こういうことを聞いておるのに、そこでこそこそと聞いて断片的な答弁をしておる。大体、そういうことで今までは切り抜けたから、今度もそろだろうと、こういうことであったのではないかと思うのです。そういう態度は、すべて一たんきまった、あるいは書いてあることは、もう万全のような考え方でやるからおかしいと思うのです。私はだから、そういうことは簡単に、だめだ、答えられませんと、こう一言言って、そのくらいなら初めから言ったらどうです。すべてこの委員会審議は、そのたぐいじゃないですか、委員長どう思いますか。
  102. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) ちょっと一言発言さしていただきたいと存じます。これも私、少し通俗的なことのようでおしかりを受けるかと思いますが、大蔵省といたしましては、この問題の違憲問題というのはごく最近、特に小林先生がそういうものを新聞に御発表ですか、スクープでございますか、ということもごく最近聞きました——一両日というか、きょうといっていいでしょうか——大蔵省といたしましては、憲法問題などということになりますと、ほんとうに違憲の問題でありますならば、これは事きわめて小林先生がおっしゃられるように重大な問題でございます。これもおしかりを受けるかもしれませんが、大蔵省といたしましては、関税法並びに関税定率法によりまして別に特別な異議を差しはさまないままにやってきましたので、大蔵省当局は、憲法問題についての議論になりますと、それはほんとうにおわかりもいただけると思いますが、これはとても大へんな問題だと思います。これを仰せられましたことを聞きますと、なるほど憲法違反になるのじゃないかなというようなことも感ずるし、また多数の学者の意見、社会通念等から、そうでないということもお聞きしておるという状況でございますので、この点は、私これで答弁を逃げようとは思いませんが、その点は一つ御了承の上で、従来の取扱い等につきましても、補助員等の意見も一応お聞き取りを願いたいという衷情を披瀝申し上げましてお願いを申し上げます。
  103. 小林孝平

    小林孝平君 せっかく佐野政務次官の御答弁ですけれども、あなた何をおっしゃったのかよくわかりませんな、というのは、憲法のことはこれは重大だからよく大蔵省としては……冗談じゃありませんよ。ここにたくさんの法律を提案されておりますが、このすべては、憲法の条章に違反するかしないかということがまず最大の問題なんです。従って、今の佐野政務次官のお話等によりますと、ここに提案した多数の法案はすべて憲法との関係は考えなかったのだ、こういうことになる。冗談でないですよ。あなた、まずすべての行動は憲法に違反しないということが一番大事なんです。根本にそれを考えなければならない。そういうふうに軽々しくやるから、こういうふうに、これはおそらくこの関税定率法が新たに書きかえられるとき、これはうっかり落すべきものを落さなかった、で入ったのです。それを合法化して、今いろいろ言われているのです。だから、佐野政務次官が御発言になるなら、あなたは政治家として事務当局と違うのだから、これは明らかに憲法違反の疑いがある、十分検討いたします、そう言うならわかっておりますよ。あなた、さっき言ったのは何ですか、わけのわからぬことを長々と言われて……。
  104. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) 長々と申し上げましたが、私さっき申し上げましたように、小林先生の御意見を聞いていると、「検閲は、これをしてはならない」と、こう書きおろしてある。こんなことを見ますと、なるほど憲法違反になるおそれもあるかなと、こういうふうなことも感じます。が、同時に今もろもろのこの法律をやっておりますが、一応私どもはこれを憲法違反にならないという前提のもとに、まことに素通りしているということも言い得ますのでございます。従って、この先般の映画の検閲、映画のカットの問題にいたしましても、そういうふうな前提で一応処理しておった、これがまあうかつであったということも言えるでございましょうが、私どもがこの法律を今いろいろたくさん審議をお願いしておりますが、大体憲法に違反をしないものという大前提のもとでやっておりますので、この点は御了承いただけるのじゃないかと思います。新しき大きな事態でございますので、しかも憲法問題と相なりますとなかなかこれは大へんな問題だと、こういうことを率直に申し上げたところでございます。
  105. 小林孝平

    小林孝平君 私が問題を簡単に投げかけただけで、さすがあなたは政治家として直ちにこれは憲法違反の疑いがあるというようにお感じになったのは、やはり政務次官は大蔵省に置かなければならぬという理由の一つであると思う。そこで、もう一度あなたにお尋ねいたしますが、この映画というのは「夜と霧」が禁止になりましたが、「夜と霧」と同じ映画を日本で作った場合は検閲することができないのです。ところが、輸入した場合には——佐野さん、よく聞いて下さい、聞いておればわかる——それを輸入した場合に税関が——税関というのは大体税金を取ればいいんです。国内で同じものを作った場合には押えることができない映画を税関が押える、こういうことは矛盾していないですか。あなた、よくお聞きになれば、これは憲法に違反しているということがおわかりになると思う。どうですか。
  106. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) 国内でエロ映画を作って、私、条文を知らないから何とも今的確なことが申し上げられませんが、国内でも私は公安風俗を害する映画を作ってはいけないというどこかに私は必ず規定があるんじゃないかと思います。日本の映画だけがそういう制限を受けるというふうには私考えないのでございますが、その条文がありませんので、立証はいたしかねますが、さように私は解釈をしておりま  す。
  107. 小林孝平

    小林孝平君 その条文は、あの刑法第百七十五条にあるのです。エロ映画を作ったり、販売目的として所持したり、そういうものは二年以下、今五千円以下の罰金、そういう罰金刑があります。ところが、それは現に製作してそれを売ろうとしたり、あるいは販売目的として持っておった場合に刑法の適用を受けるのです。製作の途中に押えることはできないのです。それが検閲なんです。検閲というのはそうなんです。できたものを検査するのではないのです。ある意図をもって売ろうとしているのをあらかじめ押えるのです。あるいは図書でもそうです。これから売ろうとしておるものをあらかじめ検査することが検閲なんです。そういうエロ映画とかエロ本というのは、販売される、そういう段階にきて警察に押えられるのです。それを、今こういうものを売ろうとしておるというところで、そういう段階で押えるのが検閲なんです。それが問題になっているのです。検閲というものは、そういうものはちゃんとありますよ。それとは性格が全然別なんです、検閲というものは。そういうことになっているのです。そういうことをお考えになれば、先ほどあなたが、私の質問に答えられたこと、どうです、これは憲法違反にならぬということはますます強く考えられるのですか。(「答弁々々」と呼ぶ者あり)
  108. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) 私は、これが憲法違反になると思うと申し上げたのではございませんが、お聞きをいたしておりますと、憲法上の問題として、憲法上違反になりはしないかということを私は考えみることも、政治家として考え得られる、が、しかし、現在この関税定率法、あるいは関税法等で、長い間日本にも通用しておるこれも法律であり、外国等の例を見ましても、いずれもこういうことは行われておるという状況、これから見ますと、憲法違反でないのじゃないかということも思えるということを申し上げましたので、一応の良心的な反省の形を申し上げた、かような点でございます。
  109. 小林孝平

    小林孝平君 外国の例とおっしゃいますが、どこでどういうふうにやっておるかということをまずお尋ねします。それからもう一つは、長い間やっているからいい、そういうことはおかしいのです。長い間やっていたけれどもおかしかったということを今指摘している。やったから仕方がないという、そういう考え方はおかしいと思うのです。しかも、これはあなたの今の御答弁からいくと、ますますこの規定というものは、前の関税定率法を書きかえるとき、当然新憲法のもとにおいて、これが違反になるから、これは削除しなければならなかったはずのものが惰性で残ったと、こう考えなければならぬのです。どうです。
  110. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) これは小林さんにしかられるかもしれない私言葉だと思いますが、私の率直な気持を申し上げて恐縮でございますが、今、私、長い間この関税定率法なり関税法で取り扱われておった、それでただいま、この間「恋人たち」という映画に、カットされたという具体的な事例が出まして、そこで小林先生が非常に深い造詣のもとにこれを憲法違反の疑いありとして御指摘に相なったということは、ある意味で、これは関税定率法なり、あるいは関税法に一つの示唆を与えたものじゃないかと、かように考えます。で、これは全く、ただいま具体的に出てきたところの重要な事実でございますので、これはかなり慎重に検討を加える必要があると思います。しかもこれは、ただいまこの関税定率法の改正の問題の際でございますから、きわめて、お取り上げを願って、検討を加える機会をお与えいただいたと思いますけれども、しかし、その法律自体に関しての、これは将来に関しまする問題でございまするので、今直ちに、ここでどなたが御答弁にお立ちになっても、直ちに憲法違反として、そういうふうな反省はする人がありましても、憲法違反として直ちにこれを取り上げていくということには、かなりの慎重さを要するじゃないかと、かように考えるのでございまして、ここで逃げを打つわけではございませんが、この問題はきわめて重要であり、根本的な問題でありますので、本日のところでは、私の率直な気持でございますよ、お見のがしをいただきたい。かように考えます。
  111. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 関連、今の政務次官の答弁は、政府を代表しての答弁ですか、佐野君個人のこれは御批評を承わせられたのですか。何なんですか。
  112. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) これは、一応大蔵政務次官として御答弁を申し上げた次第でございます。
  113. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そうすると、大蔵政務次官も主税局長同様に、本日はごかんべんをというのが結論ですか。
  114. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) 率直に申し上げまして、この憲法違反になるかならないかという一点につきまして、深く反省をいたしますが、さようでございます。
  115. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 私が申し上げましたのは、お答えしてもよろしうございますが、私が補助を使わずに答えろという御要求でありますから、これだけの大きな複雑な問題を、私補助を使わずして、速記に残る答弁に十全を期し得ないと思ったから、その制限を除いていただくか、あるいは補助を使わずしてお答えできるように私がなるまで、そう時間はかからないです、あしたやっていただくというなら、私今晩夜通し勉強して、お願い申し上げる、そういうことをお願いしたわけでございます。
  116. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 政務次官は、本日はかんべんしてくれといい、主税局長も、補助なしに、あすならもうやれるということなのですから、じゃあ政府側の要求ですから、そういうことに私は賛成していいと思います。これは十分な準備をせられておやりになることだからいいと思います。もう一度念のために、それでようございますか。
  117. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) 統一した見解を申し上げますが、憲法選反であるかどうかということの問題は、あしたやりましても、あさってやりましても、これはなかなか私は結論の出ない大問題であると思います。ただいま提案になっております法律につきましては、これは不行き届きがありますれば、あしたでもやれると思いますので、これは憲法違反になるかならないかという問題は繰り返して申し上げますが、小林先生の造詣深い御意見を拝聴すると、反省してみるの余地がございますけれども、これで結論をつけるということは、私は日をよほどかけないとできない。かようなことの見解を申し上げている。従いまして、これも少し、小林先生の御質問にはよけいなことでありますけれども、(「よけいなことは言わぬ方がいい」と呼ぶ者あり)御審議は継続していただきたいと、かように考えております。
  118. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 この今の議事の取り運びは、委員長が休憩前に引き続いて再開せられて、この関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題として、これに対する質疑を行なっている。調査案件として独自に議題を提供して小林君がやっておるのじゃない。従って明日に憲法論議であろうが扱いの問題であろうが、延ばしてくれということであれば……この四件はあすわれわれはやる。本日はどういう取り運びになっておるかしらぬが、政府答弁ができない限りは、あすになる。調査案件ではないのです。法案が議題に提供せられて質疑に入っておるのですが、答弁がないとあればあすになるので、私は佐野政務次官のために友情もだしがたく、それでようござんすかとさっきから尋ねておる。それはそれ、審議審議、別個で扱ってくれなんということは、この委員会の今の運営からいったら、できない。
  119. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) これは、それだから私率直に申し上げるとお断わりしたのでございますが、実際問題として憲法違反になるかならないかということは、これは率直に申し上げて、学者にも二説あるような状況でありますから、これに結論をつけよと仰せられましても、つかないということを申し上げました。それから先は、まあ皆さんの御判断におまかせするよりありませんが、それに、なお、さっきよけいなことは言うなとおっしゃったけれども、審議とはこれは別にということをお願いするのは、政府としてまことにおこがましい限りでございますことも承知をしながらお願いを申し上げておる。これはちょっと憲法違反問題は、これはとても解決できないという前提に一応立っておりますので、御了承願います。
  120. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それはよくわかる。政務次官のお話、そういう結果になるかもしらぬ。しかし、それは質疑を尽してみて、そして一応の落ちつくところに落ちつく。あるいはこれはなかなか容易でない、今後調査案件として残す、こういうような委員会の扱いになるという場合においては、われわれ協力しますよ。ところが、もう答弁はできないのですよ。あすにしてくれ。全然質疑に入らないという状況においてなら、われわれもこれは居すわりせざるを得ない、そういう意味のことを申し上げておる。結論が出るまで質疑は繰り返すのだという、それまでこの法案は上げられぬのだ、そんな乱暴なことを私は申し上げておるのじゃない。
  121. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) ちょっと私の申し上げ方が、憲法違反の問題で反省を加えるということを数回申し上げましたので、少し誤解を持たれたかと思いますが、しかし、大蔵省といたしましては、一応憲法違反にはならないという前提に立って取り扱っておったということは事実でございます。その前提に立っておる、憲法違反にならないという。ただ、今小林先生からきわめて重要な御発言をいただきましたから、反省をしておるというのでございまして、これで、今までの取扱いを憲法違反の疑いのあるままにやっておったと、こういうことじゃございません。一応憲法違反にはならないという前提に立って、すべての法律審議をなおお願いをしており、取扱いをいたしておる、これに間違いはございません。ただ反省をしておるということでございます。
  122. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それでは、憲法違反にならないという前提で物事を処理してきた、反省もしておる。こういうことですから、質疑を続行していただきたい。小林君。
  123. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) ありがとうございます。
  124. 小林孝平

    小林孝平君 質疑をする前に、私ちょっと申し上げたいのは、佐野政務次官は、先ほどから、私がちょっと一言申し上げたら、すぐ、これは憲法違反であるかもしれぬ、これは重大な問題だと、こういうふうに言われたのです。それほどこの問題は非常にあやふやな問題なんです。そこで私は、これはそういうことがあってはいかぬというので——私は何も大蔵省を困らせようと思って言っているわけじゃないのです。それを、先ほど、税関部長かの話は、高飛車に、これは憲法違反でないのだと——政務次官は、一度言ってもすぐそのようにおわかりになるくらいのことをですね、もうこれは絶対憲法違反でないのだと、そうしてその質問をしないのに、いや、ナチスの収容所の、これが残虐であるとかないとか、いろいろのことを言われるから、つべこべ言われるから、私は、そういうことではかえって主税局長の答弁が誤まると思って、私はそんなことをやったことはないのだけれども、ちょっと向うへ行けと、こういうことを提案をしたのです。そこで、そういう私は委員会における態度、これは改めてもらわなきゃいかぬと思うのです。こういう態度は、これは多くの人が疑義を持っているのですよ。そうして泣き寝入りになっている。こんなことで裁判で相争っていては、もう映画が損するから、とにかくカットしてもらった方がいいというので、泣き寝入りになっている。そうして、これが将来の検閲制度復活の前提にも——こういう一角からくずれてくる。今の憲法論議と同じように、だんだんなしくずしにされるおそれがある重要な問題だからというのでやっている。それを、さっきのように、高飛車な態度で説明員が言うから、私はやったんです。それをまあ了解されて、御答弁になるならなったらいいと思う。
  125. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) その問題は、政府委員でないという資格はございましたが、これも慣例によってやりましたので、御了承を願います。別に悪意があったわけで小林先生に御説明申し上げるという意味でもなく、ただ、今御質問に対しての御答弁を熱心に申し上げたというだけのことでございますので、御了承を願います。
  126. 小林孝平

    小林孝平君 そこで、主税局長にお尋ねいたしますが、こういうことをやる必要があると——そういう憲法の規定はともかくとして、やる必要があると、こういうことで言われておりますけれども、大蔵省の主税局、あるいは税関というものは、そういうことが本職なんですか、大体。税金を取るのが、徴税事務をやるのが本職なんでしょう。あんたたちが要らぬことをして、公安または風俗を害すべきものは云々とかというようなことを、あんたたちが大体考える必要はないのじゃないですか。というのはですね、あんたがたまたまこれをやっても、先ほど言っているように、国内で生産されたものは野放しなんです、さっきから言っているように。「夜と霧」の例で言えば、日本でそれと同じものを作った場合には検閲することができないのです。それを、ほんの一部分をやって、そうしてそれは憲法に違反しないとか何とか言ってみても、つまらぬことじゃないですか。こんなつまらぬことをやっているから、先ほどもお話があったように、肝心の質問に忙しい忙しいと言って、勉強ができないとか、答弁ができないとか言われるけれども、こういう要らないことをやっているから忙しくなるのじゃないですか。
  127. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 税関は、お話通り、関税を徴収し、また内国消費税を徴収するという勤めも持ちますが、同時にこの輸出入についての取締りもする。為替管理の関係の取締りもする。いろいろな任務を持っておるわけであります。
  128. 小林孝平

    小林孝平君 そこで、先ほど言っているように、あなたはそういう、この第三号の規定で、こういう目的でやると言われるけれども、国内の生産されたものについては、何らのその検閲の規定がないのにもかかわらず、かりに検閲という言葉を使うのですが、ないのにかかわらず、輸入の分の、ごくわずかのものについてそういうことをやったって、全般の大勢からいえばナンセンスじゃないですか。そういうことに当然疑問を持って検討されるのが至当じゃないですか。
  129. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 先ほど来、税関部長少しよけいといいますか、答弁が適当ではなかったという何があるかと思いますが、ただいまのお話にお答えをいたし、またこれからお答え申し上げるのに、私、小林委員にお願いですが、税関部長をそばに置いて、補佐を受けてお答えをしたいと思います。事柄は憲法違反問題にからまる問題であり、かつ、ただいまお話のように、国内刑法の適用をどういう関係にいたすかというような、かなり法技術的にもむずかしい問題でございます。そこで、私は先ほど申し上げましたように、大へん恐縮でありますが、本日そこまでの答弁を私自身で、私だけで申し上げる用意をいたしておりませんので、国会の質疑応答としては、もっと万全を期したお答えをいたしたいと思いますので、そのお許しを願えれば、ここに呼んで相談をし、お答えをいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  130. 小林孝平

    小林孝平君 私は国会の常任委員会の運営について、かねがね意見を持っておるものです。はなはだ恐縮ですけれども、それを申しますと、この常任委員会における論議は、高度の政治的なものを取り扱うのが本筋であって、事務的な軽微な問題をあまり論議するのはどうかと思っておるのです。これはいろいろ考え方が多々あると思う。従って、私は、国会に出席するのは政府委員に限って、その他は役所におって仕事をやったらいい。というのは、最近国会にみんな呼ばれるから仕事ができないで困る、国会などは三月くらいやればいいんだというような声が役人の中に強い、これは来なくともいいものが国会に来ているから、仕事がはかどらんので、そういう人が役所におれば、どんどん仕事がはかどる、従って、私は大体国会には政府委員だけ出席するようにかねがね主張しているものなのです。そこで、私は原さんに、あなたに聞こうと思っていることは、そういう軽微な、税関部長の助言を必要としなければならない問題を聞こうとは思っていない、そういう建前なんです。もともとあなた、俊敏をもって鳴る原主税局長が、そんなことはわからないはずはないのです。また、わからないようなことを私聞きません。だからあなたは、税関部長などはすみやかに税関に帰して仕事をさせたらいいじゃないですか。それで委員長委員会の運営について、今私が申し上げたようなことを参考にしてやっていただきたいと思う。  そこで、私は今申し上げているのです。政治的な……政治家としての佐野政務次官に尋ねたら、私が提案しましたこの問題は、一言聞いて、明敏な佐野さんは憲法違反の疑いがあると、こう言われた。そこで、事務官僚として最も俊敏を誇る原主税局長、どうです、私の言ったことに対して、国内で生産したものは野放し、外国から入ってくるわずかなフィルムは検閲が行われる、その検閲をやるのがいいか悪いかは別です、いいか悪いかは別だけれども、そういう趣旨なら国内で生産したものもやるべきじゃないですか、どうです。
  131. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 再びお願いでございますが、私がいろいろ参考書を見てお答えをすると——税関部長は私の部下であります。で、私申しわけないのですが、非常に忙しいものですから、部長でもありますし、税関関係相当関部長にやっていただいておるわけです。それをお許し願えないでしょうか、事柄は非常に、ぎりぎりした法律論になるわけですから、一つお許しを願います。
  132. 小林孝平

    小林孝平君 私は先ほど言っているように、こまかい事務的な、税関部長でなければわからないような問題は、もともと委員会では聞かぬことにしている。従って聞いていることは、政府委員として、われわれが、国会で承認を与えている人に聞こうというのが私の念願なんです。そこで、大臣がせっかくおいでになりましたから、大臣にお尋ねいたします。大臣はときどき映画をごらんになっているから、非常に御理解がおありだと思いますが、繰り返して申しますが、外国映画は税関で検閲をやられているのです。それは、関税定率法の第二十一条に「左の各号に掲げる貨物は、輸入してはならない。」とございまして、その三号に「公安又は風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品」とあり、これによって検閲をやっているのです。そこで、この外国の輸入映画は、これによって検閲がされているのです。これは、いろいろ検閲でないというあれがありますけれども、これは明らかに検閲なんです。事前に検閲をしているこういうことがこれは憲法違反ではないかという議論が前々からあったのです。最近特にありましたのは、昭和三十一年に「夜と霧」というナチスの強制収容所のありさまを写した映画、それからごく最近は「恋人たち」というフランスの映画、こういうものが検閲を受けて、前者は輸入禁止、後者は相当長尺カットされているのです。そこで私は、これは憲法違反ではないか、こういうことを申し上げているのです。というのは、御参考までに申し上げますが、国内でかりに、この「夜と霧」と同じ映画を国内において生産された場合は、検閲できないのです。ところが、輸入映画の際は、これが検閲ができるのです。これはもう、明らかに不合理じゃないですか。もし、そういう必要があれば、これは映倫で自主的にやられたらいいだろう、こういうことをお尋ねしているのです。  それからもう一つ参考に申し上げますと、この規定は、当然新憲法のもとにおいて、この関税定率法が書きかえられるとき、削除さるべきはずのものであったのですが、おそらく当時の早々の間において、このままこれが盲点として残ったものではないか、こういうふうに私は思うのです。事務当局は、これを合法化しようとしていろいろ答弁されますけれども、政治家としてのあなたは、当然これは憲法違反であるというふうに考えられると思うのですが、いかがです。
  133. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) なかなか憲法論議になって参りますと、むずかしい議論でございますから、よほど慎重に政治家も研究した上でお答えしないといかぬと思います。  そこで私は、この関税定率法で、二十一条に規定いたしておりますが、立法の際におきましては、当然ただいま憲法違反ではないかという論点については御審議があったものだと、かように考えます。どういう議論があったか私は承知いたしておりませんけれども、まあ最近、昭和三十三年、前年にもこれは改正しているようですが、たびたび改正いたしておりますので、十分過去においても審議が尽されて、そうしてこの法律ができているのじゃないかと思います。そういう意味で、あまり憲法論議そのものに真正面のお答えではございませんが、「公安又は風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品」となっておりますと、やはりこの法律に基いて、税関としては忠実にやらざるを得ない、こういうように私は考えます。ただ問題は、いわゆる昔の検閲制度というようなのはないのだと思いますから、その扱い方が、いわゆるどういう扱い方をいたしますか、法律そのものの問題でなしに、現実の処理、それにおきまして十分尊重すべきものを尊重していない、こういうことがあるかどうか、その方で一つ判断させていただきたい、かように考えます。
  134. 小林孝平

    小林孝平君 これは、大臣もこういう規定があるから、これを尊重して税関でやっている。これは法律でありますから、税関でやられるのは、それはやられるでしょうけれども、法律規定それ自身が、今、憲法違反であるというお話をしているわけなんです。そこで、これは過去において問題に、国会ではあまりこの問題は論議されておらなかったと思うのです。そこで、非常に新たな問題として、私はここに提起しているわけなんです。  それからもう一つ申し上げたいのは、大臣は取扱いの問題だと、こうおっしゃるのですが、取扱いの問題なら、映倫というものがあって自主的にやっているのですね。従って大臣が取扱いの問題だとおっしゃるなら、それは映倫で当然やられたらいいんです。
  135. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 映画につきましては、ただいま申す関税定率法に基いていろいろ取調べました結果、輸入映画審議会、これにかけまして、そうして最終的処置をとるようであります。この輸入映画審議会、これには学識経験者として、ただいま御指摘になりますように映倫からも五名入っておるということのように伺っております。
  136. 小林孝平

    小林孝平君 先ほど申し上げたでしょう。税関部長がいろいろ言うから、大臣の答弁が間違ってくるのです。そういうことを言っているのです。輸入映画審議会なんというのはわかっておりますよ。その審議会なるものは、これがあるから、これに基いて東京税関長かあるいは税関部長か知らぬが、そういうものが勝手に作り上げたもので、何ら権威あるものじゃないのです。そういうものを——大臣はおいでにならなかったけれども、私は、税関部長が入れ知恵をすると、大臣の答弁あるいは主税局長の答弁がゆがめられて、かえっておかしくなるから、発言をやめさしたらどうです。委員長、どうですか。そういうことやっちゃいかぬ。大臣が間違った答弁をする。こういう、何ら意味のないものですよ、この輸入映画審議会なんというものは。こんなものは普通の審議会でも、政府がこれをたてにして、民間の意見を入れたというような形をとるというので、問題になっておるのだけれども、ここにある輸入映画審議会のごときものは、昭和三十二年に東京税関長の通達か何かでもってできておるのですね。私はそんな事務的なことをあなたにお尋ねしようと思っていないのです。
  137. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) これは別に、税関部長から入れ知恵というようにお考えになりますと間違えますが、とにかく知識のないものには一応の知識を、実情を知らしていただきたいのでありまして、その意味で税関部長は話をしておるわけでございます。その辺についての結論は、私が大臣として考えて私の意見を実は申し述べておるのであります。ただいま先ほど申しますように、この関税定率法の規定によりまして税関が十分に調査をするということは、これは法律を守る税関官吏としては当然やらなければならない。ただその場合に私どもが心配いたしますのは、役人の独断専行によりまして、特に意見が、権利が尊重されない、こういうような事態が起りますとこれは問題が起る。そういう意味で、みずからがきめるということなしに、やはりその道の専門家で十分判断していただく、こういう意味でこの輸入映画審議会を設けた。そしていわゆる民主的に多数の方の御判断によりましてその処置をきめておる。これは私は非常に民主的なやり方で、むしろ望ましいことじゃないかと思います。そこで、この輸入映画審議会、これは一体どうしてできているかといろいろ聞いてみますと、ここはやはり知識のうちになるわけでございますが、税関長自身もみずからがこの関税定率法で処断することは、これはいろんな批判を受けるということで、みずからの税関長の達で、この輸入映画審議会というものを設けて、そうして各方面の意見を聞いて結論を出しておるということでございますので、実際問題の処理といたしましては、いわゆる私権侵害ということは、こういう意味においてはまずあまり心配なしに運営されておるものではないかと、かように考えます。もちろん私自身大蔵大臣といたしまして、部下、税関その他の行動といいますか、言論等につきましては、もちろん責任をとらなければならないことでございますが、特に悪意だとかあるいは非常な権力的な処置をしておるという事例がございますれば、十分戒告もし、必要な処置もとるつもりでございますし、またそういう意味で間違いのないように私も十分指導して参る考えでございます。
  138. 小林孝平

    小林孝平君 私はこの輸入映画審議会がどうこうということを言っておるのではない。大臣の御答弁はもう少し、この二十一条の規定がこれは肯定的なものである、こういう前提で、お話しになっておる。そういう場合なら、それはこの規定によって役人がやるのは当然でしょう。そうしてそのやり方はいろいろのやり方があるでしょうし、一つのやり方として、輸入映画審議会というようなものがやるということもあり得るのですけれども、今問題は、この二十一条の規定それ自身は、三号の規定それ自身が憲法違反でないか、こういう問題なんです。これは憲法二十一条に検閲をしてはならないという規定があるのです。それに明らかにこれは抵触しておるのだ。これはいろいろの、その後こういう規定があるから、これを合法化するためにいろいろのことを言われておりますけれども、何て言うても検閲を全面的に認める一つの突破口になるおそれがある。従って、大臣もいつまでも大蔵大臣をやっておられるわけではないのですから、この今ある法律の条文にとらわれることなく、もう少し大局的に判断をされて御答弁いただくようにお願いいたします。どうですか。大臣に念のために申し上げますが、佐野政務次官は、私が一言申し上げましたら直ちに御理解下さいまして、これは違憲の疑いがあると答弁されておるのです。あなたはそんな、主税局長や税関部長の話を聞いて、これを合法化するというようなことをやめて、もっと率直に御答弁なすったらいかがです。御参考までに申し上げておきます。
  139. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 事柄は憲法違反かどうかということでございます。従いまして十分検討した上で御返事をするのが私最も親切なことだと思います。これは十分法制局長官の意見も聞き、政府としての考え方もまとめた上で御返事を申し上げるべきだと、かように考えておりますから、冒頭に申した通りでございます。
  140. 小林孝平

    小林孝平君 そうすると、大蔵大臣もともかくこれは現在の段階では疑いがあるかもしらぬ、そういうふうにお認め願っておるわけですね。
  141. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 今、法制局長官の考えとしてここに参っておりますものは、こういう言い方をしております。趣旨といたしましては、憲法そのものは、日本国内での表現の自由に関して適用されるものだという考え方が根本にあると思いますが、輸入映画は外国で作製されたものであって、外国人が完成した表現の自由という問題はあるが、これをそのまま主張することまでを日本の憲法で保障するものではないと考えておる、というのが法制局長官の言い分でございます。いずれにいたしましても、これはもう少し、いろいろな御意見があると思いますから、きょうのところは、私は明確に右とも左とも申し上げかねますから、少し研究さしていただきたいと思います。
  142. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 今の法制局長官の御意見を御披露になりましたが、御披露になったものが、政府が支持する意見だということになるわけですね。速記に載せて言いっぱなしを言われて、われわれ質疑することなしにこれをやめるわけにいかぬ。どういう意味の披露なんですか、それは。きょうは少しねじれておるのですよ、こっちは。
  143. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 今、私が申し上げますように、ただいま申しましたものは、法制局長官の大体の趣旨のように伺っておるのであります。しかし、私は大事なことは、ただいまの点を御披露はいたしましたが、事柄は重大でございますから、なお私が十分検討いたします。きょうのところは、右とも左とも申しかねますから、しばらく預からしていただきたい。これがほんとうのところでございますから、さように御了承いただきたいと思います。
  144. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 じゃ、私、あとあとの論議のために二、三質疑の過程に出てきた事柄から御意見を承わっておきたい。全然私も憲法論議などしろうとでわからぬのですから、まあわかる範囲で御答弁願いたい。どなたでもようございますから、私の方の答弁は……。説明員だけはいけません。それは日本国憲法は、外国人の表現あるいは外国人にはこれは適用されないのだという大ワクのようでありますが、さっき住居の制限等の問題もあるから云々ということでしたが、しからばある外国人がアメリカにおって自由な表現をする場合は、それは日本国憲法の及ばないところですが、日本国内に住居を持つ外国人が各種の表現をする場合には、それは日本国憲法において、やはり日本人同様にこれは保障されるものと私は考えるのだが、そうはなっていないのですか。大臣が答えるまでもない、おそれ多いから……。
  145. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 外国人でも日本におって日本の何といいますか、統治に服する。日本におるという場合は、おっしゃる通り憲法の各般の保障は受けるというふうに私は考えます。
  146. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そうですから、さきに言う住居の制限云々というものと対比してこの問題を考えるということは、別な面においては対比できない要素もあるということに逆に私考えるのです。それでもう一つは、それなら監督がフランス人で、フランスにおって、そこで製作したものは、これは日本に持ち込む場合には検閲を受ける。そのフランス人が日本におって、日本で共同製作というような形で自由に表現をして出てきたものは、これは検閲をしますか。
  147. 原純夫

    政府委員(原純夫君) この定率法の二十一条は、これは検閲をしますというのじゃなくて、税関が外国からものが入ってくるという場合に、ものを検査しますというのが関税法にあって、そしてそのうち、公安または風俗を害すべきいろんなものについては、輸入してはならないという規定を働かすわけです。規定の適用を、その場合に判断してやるということですから、検閲しますというのではない。かりに検閲だということになりましても、それは今申したように、日本国における自由というものは保障する。ただし、外国との関係において、外国から入ってくるものについて、各般の表現についてすべて自由であるというところまでの保障はしていないのだ。まあ出入国管理令の例を引きましたのは、それはおっしゃる通り必ずしもぴたり同じでないですから、違うニュアンスがもちろんあると思いますけれども、まあそういう面でも、人については、この管理令のいろんな要件を規定して、要件に合わない人は入れないということは、憲法違反でないという例がございますということを申し上げたわけで、決して同じだというわけではないのですが、かなり類似の一連の事柄であると申し上げたわけでございます。左については、こまかい議論としては、ニュアンスを考えなければいかぬということはごもっともだとは思いますけれども……。
  148. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 主税局長に注意してやって下さい。私の質問したことに答えていただければいいので、今言われたことは、私質問しておることでない。私はフランス人の例を引いて、こういう場合はどうだということを聞いたのです。
  149. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 外国人が日本におって、まあどういうふうに呼んだらいいのですか、日本の統治権の対象として生活するという状態のもとにあっては、それは憲法の保障の対象になる、もちろんその場合、ただいまの出入国管理令違反で入ったというような場合に、おそらく若干の例外はあると思いますけれども、平穏にいるというような場合はその保障があるだろうと思うんです。ところが、外国人あるいは外国の会社というようなものは、日本にいろいろなものを入れてくる、あるいは思想なり、いろいろな表現なり、そういうものを入れてくるという場合においては、この憲法のそこまでの保障はないということが私どもの解釈でございます。
  150. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私の質問していることに答えさしていただきたい。あなたの好きなように、原さん、御自由にお話しなすっているというと、あなたの願っている法案の上るのは時間がかかりますよ。
  151. 加藤正人

    委員長加藤正人君) ちょっと主税局長に申し上げますが、今、小笠原委員の言われたことに答弁がはずれているというんですが、はずれているかどうか、私はよくわからぬのですけれども(小笠原二三男君「よく聞いて下さい」と述ぶ)聞いても何を言うか、私にはわからぬ。原主税局長も非常に練達の士でありますけれども、勘違いということは人間によくあることですから、あるいは勘違いで答弁しているかもしれませんし、あるいはあなたの言い方が正確でないということもあるかもしれません。そういうこともあり得る。人間同士ですから間違いもございます。原主税局長……。
  152. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 ようございます。原さん、連日のあれでお疲れのところをはなはだお気の毒ですがね。私は今憲法論をやっているのじゃないんです。具体的な仮定の問題を掲げて、これはどうだ、これはどうだと聞いている。だから、端的にそうです、違いますでいいんです。私の申し上げているのは、ここにフランス人の監督がフランスにおいて自由なアイデアをもって表現された映画が日本に輸入されるという場合においては、検閲か検査かわからぬが、私は検閲だと思うんです。なぜなら、あらゆる映画、物品の入るものは全部それは見なくちゃいかぬのですから、あるものはピック・アップして、別にあるものはフリーでパスする、こういうことはないんですから、そういう意味においては、私は検閲だと思っておりますが、そういう場合には、今の法律でやっている。ところが、そのフランス人が日本に来まして、日仏合弁の映画を、それは同じフランス人のアイデアなり、芸術的な良心で作って、そうしてこれは共同製作としてある配給会社を通して上映になる。こうなったら、上映後それは風俗云々というようなことで、刑法上の問題になるかもしらぬが、事前の検閲とかいうような方は、映倫の自主的な、何と申しますか、支配外にはこれはできないのではないか。ですから、いる場所によって、同じ製作が外国人でありながら、一方は検閲的な措置は受けないし、一方の場合は受けるのだ、こうなりますかと聞いているんです。その通りならその通りでいいんです。
  153. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 結果として、そういうことになると思います。ただ、入ってくるものを検閲するというような、大上段の気持でやっておるのじゃなくて、検査をやっておるわけです。そして、悪いものは輸入しちゃいけませんよ、ということでございます。それを検閲だと言えば、おっしゃる通り、国内で表現を発表するというものについては検閲はないが、入ってくるものについては、これを定率法第二十一条の各号に当れば輸入しちゃいけないということを申し上げる、こういうわけでございます。
  154. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私、後段のことは全然聞いてないのですから、前段の方の御答弁で、そうですと、結果としてそうですということだけでいいのです。蛇足的につくから時間がかかってくる。  じゃ次にお尋ねしますが、日本人がアメリカに行って、アメリカ人の表現した映画を買って、これを持ってくる。その場合は法律によって措置されますね。
  155. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 措置されますです。
  156. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そういうふうに、端的にやっていただけば一番いい。  それは、国内であれば日本国憲法が適用されるのですね。
  157. 原純夫

    政府委員(原純夫君) その通りであります。
  158. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そうすると、その人が羽田に着いた、税関に入った、ここは日本領土ではない。
  159. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 日本領土であります。
  160. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そうすると、そこが日本国憲法の及ぶ範囲のところですか、範囲外ですか。
  161. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 範囲内であります。
  162. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そこで、表現の自由を侵害するということは憲法違反でないですか。
  163. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 先ほど来申し上げておりますように、外国から来る各種の表現物については、憲法の保障はないと申しておるわけでございます。
  164. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それじゃ、空間的なところでは保障はないだろうが、羽田へ着いたら、日本国内の憲法の規定に従って措置されるというのが筋じゃないですか、違いますか。これはしろうと論議ですよ、前もって申し上げておきますが。
  165. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 私は、それは違うと思うのです。その場合になると、先ほど申し上げた出入国管理令違反の人が入ってきたと、それで羽田で地べたへ降りた、まさに日本におるわけです。入っちちゃったらいいのか、居住の自由があるのかといえば、それはいけませんというのと同じだろうと思います。
  166. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それでは、さっき前段で申し上げた例ですね、フランス人の例、そういう例等について何ら不公平でない、不公平でないということよりも、何らそれはおかしくないのだ、当りまえのことなんだというふうにお考えですか。ちょっとどうもだんだん突き詰めていろいろな例をあげて考えてくると、不備というか、あるいは何と申しますか、すっきりしないという、そういう疑いの面は全然ない、当りまえのことだということになりますか。
  167. 原純夫

    政府委員(原純夫君) その点については、学者の中でも必ずしも一本に説がまとまっているのでないということがあるというような事情もあるわけでありますから、私ここでもうきわめて公理のようなものだというようなことを申し上げません。議論はあり得るところだと思いますが、私どもは、先ほど来申し上げておりますような解釈で、やっておりますということであります。
  168. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 ちょっと速記をとめて下さい。
  169. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  170. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 速記を始めて。
  171. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それでは、委員長が言われますから、私はもうやめます。あとで検討して御答弁になられるそうですからやめますが、さっきから私申し上げているように、この点はしっかりした見解をお述べになれるように、私として期待いたします。
  172. 小林孝平

    小林孝平君 大蔵大臣にお願いしておきますが、先ほど大蔵大臣はいろいろお話しになりましたが、それはあくまでもこの二十一条の三号の規定は、これは削除しては困る、こういう考え方に立って御答弁になっていると思うのです。大臣は、それほどお考えになっていないかもしらぬが、事務当局はそういう希望らしいものだから、そういうふうに御発言になっていると思うのですが、私はこの関税定率法が、この規定を除けば骨抜きになるとか、関税定率法のこれが根幹をなすものであるというなら、話はわかるのです。これは関税定率法の本質から言うと、大した問題じゃないのですね、しかも、それが今憲法違反のおそれがある、そうしてこういうことを一つの突破口として、検閲制度というものの復活のおそれがある、しかも、この規定がなくても、映倫その他でもって十分やれる。こういう状態ですから、ここは大臣は、今後検討されるのに際して、そういうおつもりで事務当局を指導して結論が出るように、お取り計らい願いたいと思うのです。幸いに先ほど申し上げたように、佐野政務次官は、これは憲法違反の疑いがあるというので、非常にものわかりのいいところを示されたのですから、大臣も一つこの一般国民の世論にこたえるような結論を出されるようにお願いいたします。
  173. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 私も官僚出身ですから、一たん出ている法律について、これはやはり、いきなり憲法違反だと言われますと、よほど疑いを持って、おそらく作るについては十分審査しているから、憲法違反などの法律はないだろう、こういう感じが実はしておるのでございます。そこで、先ほどもあまり権威のない、そういうような感じでこの法律を扱うことは不適当だと思いますし、皆さん方のお話もそういう意味じゃなしに、とにかく理論的にいろいろ疑義があるんじゃないかという点を御指摘になっておる、かように考えますので、よく法制局長官とも相談をいたしまして、意見をまとめた上でお答えをさしていただきたい、かようにお願いしておきます。その際に十分調べまして、そうして御納得のいくようにお答えをするように準備をするつもりでございますから、どうかお許しを得たいと思います。
  174. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 小林委員、よろしゅうございますね。それではこの問題は……。質疑のある方は……。
  175. 大矢正

    ○大矢正君 私は税法全般について、大蔵大臣にまず質問いたしたいのですが、前に国税徴収法案がすでに通過をいたしましたけれども、この法律をいろいろ私ども当委員会で検討いたしました際にも、多少議論になったのでありますが、今の法律の書き方というものは、非常に字句の使い方にしてもむずかしいという議論です。大蔵省の専門にやっている人が、私どもに説明するのに、条文を読んでも、先生方もなかなかおわかりにくいでしょうという前提で説明をされるわけですね。これは単に国税徴収法に限った問題ではなくて、今の税法全体に現われていることじゃないかと私は思うのです。大蔵大臣だっておそらく、たとえば今度の所得税法の改正案が出されている、その所得税法の改正案の中の退職所得の、いわば税制の改正部分について、かりに大蔵大臣に私が質問してみたところで、税法を読んで私に答弁をしようとすれば、おそらくできないだろうと思うのです。そのくらい非常にわかりづらいものでありますし、国民の側から考えれば、これは税法を読めばすぐははあ、なるほどとうなずかれる税法というものは当然じゃないかと思うのですね。税法というものはすべての国民に適用される法律ですから、あらゆる法律よりもむしろわかりやすく書かなければいかぬし、わかりやすく作り上げなければならぬと思うのですが、大蔵省人たちは非常に頭のいい人たちばかり集まっておいでですから、簡単に自分で書いてもこの程度はわかるだろうというふうにお考えなのかどうかわかりませんけれども、とにかく私どもとしてみれば、非常に読んだだけではわかりづらいから、出かけて行って聞かなければ、実際にその法律内容というものがわからないというようなことで、特に最近雑誌たんかを読んでみましても、税法は非常にむずかしいという議論が非常に多いのですね。そこで、大蔵大臣としては、こういうような税法の問題について、どういうようにこれから対処されていこうとしておられるか、私としては、こまかい問題ではありますけれども、対国民的な視野から考えれば、なかなか小さい問題ではないと思うので、大臣の見解をこの際承わっておきたいと思います。
  176. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 大矢さんの御意見、しごくごもっともでございます。法律は、私ども若い時分に習ったときの法律は、今よりもっとむずかしい書き方がしてございました。最近は、よほど戦後の法律はわかりやすく書いたとは申しましても、権利義務というか、権利に関する事柄でございまするし、いろいろあらゆる場合を想定して書いておりますから、なかなかむずかしいのでございます。これは非常にわかりやすくするとすれば冗漫に流れるというか、そういうことで、非常に立法技術がむずかしいのだろうと思います。法制局長官など、それから法制局において審議いたします場合も、とにかく法律を十分国民大衆に知っていただくというか、なじみを持っていただくということで、これは工夫はいたしておるのでございます。先ほど国税徴収法の話が出ておりましたが、これは大へん失礼な、おわかりにくいでしょうというような、失礼な表現をしたということでありますが、おそらくこれは書いてある字句そのものよりも、民法その他の法律との関係においてむずかしさがあるということを、係の者としては御指摘したんではないかと私は思うのであります。国税徴収法の原案を作成いたします場合も、私も二、三回その会議に参りましたが、これはもう担保やその他の抵当、そんな話になって参りますと、事実むずかしいので、大蔵省と法務省関係でずいぶん議論をし、いろいろやっておりますが、これは権利の基本に関する問題で、それらのむずかしさがあるように思います。あとの所得関係法律になりますと、これは比較的、ただいま申すような法律論的なものはあまりないのでございますから、ただその各場合場合を想定をいたしまして、漏れなく規定を書くと、こういう意味の表現のむずかしさがあるだろう、かように思うのであります。どうも法律にはそういうようなのがつきまとっておりますが、御指摘のように、とにかくわかりやすくするということがもう絶対に必要だと思います。ことに税法であります限り、国民が一読、直ちにわかるというような状況であれば、もうそれにこしたことはないように思うのであります。ちょうど三月の十六日が、確定申告する日であったように思いますが、私がよく申すのですが、どうも国民から税法そのものを自分で理解していただけないんじゃないのか、われわれ代議士でも自分の所得を申告するに際して、なかなか書き方が——書き方がわからないということはございませんが、この税法を正しく理解するならば申告しなくてもいいものがあったり、またどうしても申告しなければならないものがあったり、税のかけ方においても、そういう意味で法律を知らないために、知らず知らずよけい納めておるような場合もあるようであります。そういう意味では、困るんだ、だからそういう意味でとにかくわかりやすい方法を一つとってくれ、だから確定申告をする書式をお勧めするにしても、大衆にわかりやすいように、また税務署においては、そういう意味でよく親切な指導が願いたいということを注文をいたしておりますがどうも御指摘のように、立法いたしてみますと、いろいろのケースを考えた結果、表現が非常にむずかしくなっておる、こういうように思います。これは本筋ではないと思いますが、事柄の性質上やむを得ないのかと思いますので、御了承いただきたいと思います。
  177. 大矢正

    ○大矢正君 大蔵省の人だって、私になかなかわかりづらいでしょうということは、決して私をひやかして言っているのではなくて、好意で言ってくれていることだと思いますから、私はその通り考えておるわけですが、やはり新聞その他でもっていろいろ、確かに大臣が言われる通り、国税徴収法なんかのように明治時代の立法などはとうていわかりませんし、それから比べるとずいぶんわかりやすくなったじゃないかといえばその通りなんですけれども、まだ今の段階では相当むずかしいんじゃないかと思いますし、一つ大臣もそういう立場で、いつも法律を見続けておる人はマンネリズムになって、さほどむずかしくないと思っても、事実それが大衆の中に入りますと、ほんとうにわかりづらいことになりますから、どうか大臣としては、そういう点について御留意をしていただきたいと思います。  それから次に、租税特別措置と法人税との関係について大臣に承わってみたいと思うのですが、昨年の税制改正で法人税の引き下げが二%、二百万円以下と二百万円以上に分けて行われましたけれども、この法人税の二%引き下げの行われるに当りましては、これを契機にして租税特別措置については大幅にこれを削除する、削減をするという答弁が、当時はなされていたと思うのであります。まあ整理をしなければならない、とにかく特例処置をいつまでも残しておくということは好ましいことじゃないので、税率を引き下げると同時に、租税特別措置も整理を行う、ついては昨年はまだなかなか時期的に間に合わないので、三十四年についてはこれを考慮するという話があったのでありますが、今回の租税特別措置の改正内容をながめてみましても、大幅に整理されたというようなことは、とうてい考えられないわけでありまして、その点について一体どう考えておられるか、大臣のお答えをいただきたい。
  178. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 三十二年度に特別措置を相当大幅に整理をしたことは、御記憶に存することだろうと思うのであります。その間に税率を引き下げて、まあ結果から申しますと、これは跡始末というように御了承をいただきたいと思うのでございます。それでまあ、今回の措置は一応それで済みますが、租税特別措置につきましては、いろいろ内容的に見まして、問題は非常に多いと思います。今後の問題といたしまして、私どももこれはもう大きな宿題を預かっているつもりで、この問題と取り組んで参るつもりであります。これは確かに御指摘の通りに、ずいぶん特別措置ということで措置されているだけに、非常に問題が多い。これはよく承知いたしております。
  179. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 大矢君、ちょっと御質問の途中ですけれども、四時になりましたので、この大蔵大臣に対する質問は……。大臣に申し上げますが、あなたを要する法案がたくさんあるのです。だから、今後こちらから催促せぬでも、自発的にこちらへ来るように、お考えを願いたい。
  180. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) もう予算がきょうで成立いたすでございましょうから、大蔵委員会にうんと顔が出せることと思います。
  181. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 速記とめて。    〔速記中止〕
  182. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 速記つけて。  しばらく休憩することにいたします。    午後四時六分休憩    —————・—————    午後五時四十三分開会
  183. 加藤正人

    委員長加藤正人君) ただいまから、委員会を再会いたします。  休憩前に引き続き、四法案について、質疑を続行いたします。  御質疑のある方は、御発言を願います。
  184. 大矢正

    ○大矢正君 大蔵大臣に具体的な質問に入る前に、ちょっと参考ために聞いておきたいのだけれども、予算がまあ本会議では通らないにしても、委員会で討論が終って、そうしてそのあとから初めてこの税法に対する総括質問をやるというのは、これはいいことだろうか、悪いことだろうか……。
  185. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 政府当局でございますが、私もバッジをつけておりますから、その資格においてお答えしたいと思います。私の意見を。国会の審議が第一でございますので、国会の方におきましていろいろ審議をおきめ願うという建前が筋であろうと、かように考えます。
  186. 大矢正

    ○大矢正君 今度この税法が衆議院から参議院の私どものところに送付をされましたのは、例年に見ない、とにかくおくれているわけですね。実際問題として今日まで、もう税法については本格的な質問に入ることすらできなかった。特に国税徴収法などという膨大な法律がありましたが、これは国民の権利を守る法律ですから優先的に通さなければならぬということでもっとほんとうは議論を十二分にしなければならなかったのだが、私どもとしては法の趣旨とするところを了承して通したような次第なんですが、とにかくそういうことはまた別としても、衆議院がもう今日のように非常に税法の通過がおくれたという責任は、一体これはどこにあるのですか。
  187. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) もちろん、審議がおくれましたことにつきまして、私ども政府にももちろん責任があると思います。私ども極力審議に協力して参りましたが、とうとうおくれた実情でございまして、政府としても大へん困った次第でございます。御了承いただきたいと思います。
  188. 大矢正

    ○大矢正君 まあ大蔵大臣は、予算さえ通れば、あとはどうでもいいというお気持があるのだろうと私は見受けるわけですが……。
  189. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 絶対にございません。
  190. 大矢正

    ○大矢正君 どうも、私どもはひがみで見るわけじゃないけれども、予算さえ通ってしまえばあとはもうほうっておいても、三月三十一日の時間切れになればしょうがないから通してやろうということでおさまってしまうだろうというような、安易にものを考えておられるようだし、どうも大蔵大臣の今日までの態度というものは、私どもとしては衆議院偏向といいましようか、また予算委員会中心主義で、非常に参議院の大蔵委員のわれわれを冷遇しているのですが、私どもはいつまでもそういう態度をとられるならば、われわれとしても考えなければならぬので、三月三十一日に絶対に税法を通さなければならぬという理由は何もないので、そういう点では一つ大蔵大臣のはっきりしたこれからの態度を、私はこの際聞いておきたいと思うのです。
  191. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 先ほど来申し上げますように、私も国会に議席を持っておりますが、同時に政府として、政府の責任者といたしまして、審議ができるだけ早く、同時にまた円滑にと、かように期待いたし、あらゆる努力もいたして参りました。しかし、国会の運営の方から申しますと、私が希望しないと申しては言い過ぎでございますが、予算委員会においてはいつも足どめをされまして、思うように皆様のところへも顔が出せず、十分私の真意を伝えることができませんで、まことに遺憾に思っております。今回の予算並びに各法案につきましては、私が不なれでありますために、いろいろ御迷惑をおかけした点も多々あるのではないかと、みずから顧みて恐縮いたしておる次第でございますが、私自身ただいま御指摘になりましたように、委員会を軽視するとかあるいはまた参議院を軽んじておるとか、さような考えは毛頭ございません。ことに私の率直な気持を申さしていただきますならば、私は大蔵委員会に入って参りますと、実は自分のところへ帰ってきたような気持がいたしまして、その意味では非常に解放されたような感じがし、ここへ参りますと、意外に私、伸び伸びと自分の意見も申し述べておるような次第でございます。どうかその点も一つ御理解いただきまして、従前何かと御不便、不都合を生じた点がございましたら、ただいま申し上げるような点で御了承いただきたいと、心からお願いいたします。
  192. 大矢正

    ○大矢正君 衆議院の大蔵委員相当さむらいが多くて、参議院の私どもは、まあどっちかというと、英国型の紳士ばかりですから、話をするのも非常に穏やかだし、あまり無理も言わないし、まあどぎついこともやらないし、そういう点では、参議院の大蔵委員は適当にしておけば何とかなるだろうとお考えになっているかもしれませんが、そういうことがあったら、これからぜひ直していただきたいと思います。  きょうも時間ぎりぎりで、一時間で大蔵大臣に対する質問を全部終るという話で、大蔵省の立場もありますから、そういうことで御協力申し上げたいと思います。私の質問の時間が三十分だということで、これまた時間制限されましたから、その範囲で重点的に質問をいたしたいと思います。  まず第一には、所得関係大蔵大臣にこの際承わっておきたいと思うのですが、最近においても法人なりが非常に多いという現況は、先般当委員会大蔵省からいただいた資料の中でも明らかであります。もちろん、個人の企業が法人になるということでは、信用の度合いとかその他いろいろ金融の道等の考慮もありますから、その点では考えられない面もありますけれども、それ以上にまた一つ問題なのは、やはり何といっても、いまだに法人になれば普通の申告所得よりは税金が安くなると、こういうことが非常に言われておりまするし、これは単に大蔵省は認めないかもしれませんけれども、一般の人が言うにとどまらず、専門家の税理士とかいう人もこういうことを明らかに認めております。こういうことを考えてみますと、今度多少扶養控除の引き上げで、あるいはまた十万以下の税率の調整ということが出ておりますが、これでは実際の問題として、法人税と個人所得者に対する所得税との均衡が私はとれないのじゃないかというふうに思うのですね。もっとやはり申告所得者に対しては、あるいはまた給与所得者に対しては、源泉徴収等を通じてもそうですが、考慮を払わないと、法人税との均衡がとれないためにどんどんどんどん個人企業が法人なりにしていくという結果になると思うのですが、こういう点について、大臣どうお考えですか。
  193. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま御指摘になりますように、まあ年々五万に近いものが法人になるということでございます。いろいろな理由があるだろうと思いますが、私は最近の農業法人なり等の場合と同じような理由が中小企業の場合にあるのじゃないかと思うのであります。これが主として世帯員の専従者、これに対する扱いということが問題で、そういう意味で比較的法人なりが喜ばれているのじゃないかという感じがいたします。しかし、私どもが計算してみますと、所得が、年収でしょうが四百万円ぐらいまでは青色申告の方が法人なりよりも楽なのじゃないか。青色申告をいたしますならば、四百万円までなら、個人の場合の方が軽いのじゃないかという計算も実はできるのであります。御承知のように、青色申告だとか、白色申告だとか、あるいはまた法人についての課税と、個人所得についての課税とそれぞれ趣きを異にしておりますので、いずれが得だということはなかなか言えないと思います。結局いずれにいたしましても、法人なりといいますのは、税が高い、こうすれば税が安いのじゃないかという意味でやられるに違いない。私どもの方としていつも考えておりますことは、給与所得者やあるいは企業の課税のあり方が一体均衡がとれておるかどうか、また個人の場合と法人の場合とがどうであるか、あるいは青色申告と白色申告の場合がどうなのか、そういうことで公平不公平のないようにしたい、いろいろ努力はいたしておりますが、現在のところ、まだなかなか税の公平が、負担といいますか、言うところまで結論が出ておらないのでございます。いろいろの問題があると思います。問題は総体の税が高いところにも問題があるわけでございます。そんな点を考えまして今のお尋ねの点ではないかと思いますが、もう最近の状況では、とにかく税制そのものについて基本的に調査して、手直しして体系を整えるというところにきているのじゃないか。だからこそ、ことし法律に基く税制調査会を設けて、ただいま指摘いたしましたような各関係の調整もはかって参りたい、こういうことをいろいろ考えておる次第でございます。あるいはお尋ねに対するぴったりしたお答えではないかもわかりませんけれども。
  194. 大矢正

    ○大矢正君 大蔵大臣は、法人税とそれから所得税の均衡がとれているというようなお説ですけれども、もしそれが事実であるとすれば、この間のような農業法人のような問題は出てこないと思う。やはり個人でやるよりは法人になった方が税金の面で安くなるという前提があるから、その点ではやはり法人になるという方向が農業法人の場合は出ていったと思います。それから、大蔵省が農業法人は認めないのだといって、やっきになって反対したというのも、やはりそれは法人税の方が個人の所得税の場合よりも安くなるということがあるから、税収全般の面で低くなるということを考慮しておそらくやられたことと私は思います。しかし、この議論をいつまでもやっていては時間がなくなって、ほかの質問もできませんからいたしませんけれども、やはりもう一つ問題になるのは、今の税金というものは、生活費の中に必ず食い込んでいるということが、一銭でも税金を安くするような方向でやっていきたいという考え方を生ぜしめている私は原因だと思うのです。実際問題として税金というものは、直接生活費の中まで食い込まないような形であれば、税金を払う方もそんなに私は心配はないと思うのでありますが、実際問題としては、今日の税制のもとにおいてはなお税金というものは、基礎控除、扶養控除を引き上げられても、事実において生活費の中に食い込んでいるというところに最大の原因があるのじゃないかと私は思いますが、この議論は別としても、もう一つお尋ねをしたいのは、今度扶養控除が大幅に引き上げられたというようなことを大蔵省は言っておりますが、事実五万円が七万円になりますから、この面では確かに多いわけでありますし、二人目、三人目は五千円でありますけれども、四人、五人となって参りますと、今度は一万五千円から三万円ということになりますから、中が低くて両方高いという扶養控除が出てくると思います。そこで今、家族構成の内容をながめてみますと、農村、すなわち農業人口の面では家族構成が五人以上になっている。それから一般商業、町の商店その他の構成では三人半程度じゃないかと私は記憶しておるわけです。それから、給与所得者はまだ落ちて——私確実な数字はつかんでいないのですが、落ちているという話だそうです。こうながめてみると、今度の場合の扶養控除の引き上げというものは、結果において全部の人間に利益を与えていると申しますけれども、特に農村が一番恩恵に浴するという結果になるわけです。そうすると、税の負担の総体的な面では、非常に不均衡が生じてくるのじゃないか。特に考えられているように、配偶者が二万円引き上げの一番最高の控除を受ける。それから比較的中の、給与所得者も扶養家族を持っている、たとえば二人目、三人目は五千円しか引き上げがない。さらに農村なんかのように五人、六人という扶養家族の多いところは一万五千円から三万円になる。そうなってくるとますます開きが出てきて、総体をながめてみると、優遇策の面で、一番取得がつかみやすい、赤裸々に税金がとられるような給与所得者が比較的恩恵に浴さないで、農村ないしは商工業者の方に減税が片寄る、こういう結果が出てくると思うのですが、大蔵大臣はこういう不均衡をどういうふうにお考えですか。
  195. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 御指摘のように、今回の税制改正に当りましては、扶養控除を特に処置いたしましたから、子供というか、家族の多い者が非常な恩典を受ける、これは御指摘の通りであります。やはり所得税の軽減の方から申せば、基礎控除の方に重点を置くと、これは非常にはっきりして参るのであります。過去において基礎控除をいたしまして、比較的その方は緩和されたと、今回は家族持ちの人に対しても、まあ同時にこちらからも国の措置としてもう少しめんどうを見たらということで、その扶養控除ということを考えたのでございます。これはもう御指摘の通り、今回の減税は家族持ちに特にまあ幸いするような処置になった。しかし、基礎控除は前回の改正の際に一応取り上げたということで、まあ今回はそれを地ならししている、こういうような意味を持つものでございます。
  196. 大矢正

    ○大矢正君 時間がないから、項目を追っていく以外にこれはないと思うんですが、次に扶養控除の中で、たとえば配偶者の問題について承わりたいと思うんですね。  大蔵省は、今度の改正で名称を変えてますね。控除のうちで、不具者控除を障害者控除というのですか。これは非常にいい思いつきで、やはり不具者なんていう言葉は、これは好ましい言葉じゃないと思いますから、そういう点はいいと思うんですが、そこでもう一歩考え方を進めて、これを扶養控除の中から配偶者については、配偶者控除ということを特別に取り上げてやったらどうかというように考えるんですね。なぜ、こういうことを言うかといえば、これはもうたとえば一家の主人が働いて給料をもらうということ、たとえば給与所得者の場合、給料をもらうということ、たとえば商店の人についてもそうだと思うし、農村の人についてもそうだと思うんですが、たとえば、配偶者というのは扶養されているという立場では私はないと思うんですよ。お互いに、給与所得者にしても、働いている人が働きやすいように、いわば協力をしている段階であって、それが子供やそれから一切扶養されている老人その他と一緒に扶養控除というふうに考えるのはどうも私納得いかないんですね。やはりこの際、明瞭にそれは扶養控除でなくて、配偶者控除なら控除というように明らかにすべきであると思いまするし、それから憲法上の立場からいったって、また女の権利を尊重する立場からいったって、女は扶養されているんだということを税法の中で認めるということは、これはあまりいいことじゃないんじゃないか。お互いに、やはり一家の位置を持つのでありますから、お互いに働いて、働き場所が違いますれども、子供を養い、老人を養うという立場が税法の中で明らかにされるべきだと思うのでありますが、この際その不具者控除を障害者控除と改めたのだとすれば、あと扶養控除についても考慮すべきじゃなかったかと思うんですが、大臣のお考えはいかがですか。
  197. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 大へんけっこうな御指摘のように思います。私どももこれはいろいろ考えていいことでありますので、今回はこのままで、将来の問題として考えたいと思います。
  198. 大矢正

    ○大矢正君 それからその次に、租税特別措置に関連をして、大臣に承わらなければいかぬと思うんですが、租税特別措置法関係をして、今度まあ従来までの利子所得の、特に長期性の預貯金に対する利子の従来までの免税というのが一割になったと、まあこの点は私どもが常日ごろから主張しておりましたように、利子所得免税というのはおかしいじゃないかということが前進をしたという意味では、大蔵省の今度の改正案について私は賛意を表しますけれども、しかし、なおかつ一〇%という軽減税率がなされて、しかも、これは総合課税が行われないで、分離課税であるということは非常に理解がしにくいわけですね。ご存じのように、今日日本の金融機関の動向をながめてみましても、預貯金の面ではもう大幅な、いわば預貯金の増額が期待されておりまするし、決して終戦後以降のように、積極的に貯蓄奨励をやらなければならぬというほど問題がないと思いますし、すでに購買力が限界を示しているのでありますから、かりに預貯金をしない金が購買力に回ったとしても、決してそのことが問題ではないと、私はこういうふうに考えるのでありますが、今日において百億という三十四年度の見積りでございますが、百億もとにかく利子の減税をし、かつ、総合課税にしないという根拠はどこにあるのですか、大臣にこの際承わりたい。これはもう一番大きな問題だから、おそらく大臣は十分御了承のことだと思いまするので、御答弁願いたい。
  199. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) この点は、実は私ども積極的に取り組んだ一つでございます。しかし、長い間特例が設けてございますので、これを廃止するというか、幾分かでも課税するということ、これはなかなか、今まで無税でありましただけに、各方面からいろんな批判があったのでございます。その一つは、やはり何と申しましても現在なお、貯蓄奨励の時期である。この種の事柄が、やはり貯蓄する人に与える影響等から、やや早いんじゃないかという意見相当ございます。そういう点を十分考えまして、今回は本法による税率によらずして、特例による一割の税率にし、しかも時限立法にして、これを二ヵ年という措置をとったのであります。もともと、いろいろ最近の預金状況も変っております。大へん急いでいる際に時間をとりまして恐縮でありますが、昔は零細な貯金というものは郵便貯金が非常に多かったようでありますが、最近は積立貯金その他をいたしまして、ある程度の金額になりますと銀行を使う、こういうような向きも多分にあるのでございます。そういうことを考えて参りますと、預金の性質にもいろいろあるのでありまして、零細な金、それもようやく積み立てて銀行に預け、それが免税点以上に預金がなっているというような場合に、その人たちの過去の苦心なり努力というものに対しても、いきなり本法のままの税率を課し、総合課税をかけることは、やや現状としては急激な変化を与え過ぎるんじゃないかという意味で、今回は一割にし、総合課税の点を遠慮し、時限立法二年としてやったわけでございます。もちろん、今後の情勢によりまして、特別な優遇措置を考えなくてもいいような時期になりますれば、当然これはもう本筋に返して参るという考え方でございます。   —————————————
  200. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 途中でありますが、委員の異動について御報告いたします。  ただいま木暮武太夫君、梶原茂嘉君が辞任されまして、その補欠として、松野孝一君、廣瀬久忠君が委員に選任されました。   —————————————
  201. 大矢正

    ○大矢正君 この利子所得に対する非課税という問題は、証券業者なんかから非常に反対があって、これじゃあ配当所得との均衡がとれないじゃないかというような一部の意見があったということは、昨年来私もよく知っているわけです。そうすると、配当所得に対する現状までの優遇策というものは、そのままの形で残して、そこで特段、特別な優遇をしていると思われる利子所得については、とりあえずは一割だけこの際課税をする、こういうような、ものの考え方のもとに私は行われたのじゃないかという気がするのです。抜本的に今、今日この段階でもってなお利子所得に対しては一〇%の軽減税率でいいなどという議論は出てこないので、こういう点では大蔵大臣の答弁は、これは私非常に理解できないのと、それからもう一つ、これはおそらく全体として利子所得に対するいわば課税の減税ということは、配当所得との関係で考慮されたものと思うのです。配当所得を全然考慮しないで、利子所得だけ一方的にやることは、おそらくこれは現在の金利体系や、配当の利回りから見てできないことですから、必ずこれは関連を見てやったことと思います。そうしますと、この両方で百五十億円の減税をするということは、今の、たとえば会社の現況、それから前々からこの委員会の問題になっている株高の現況等から考えても、今のような膨大な、想像もできなかったような株価の中で、とにかくなお配当に対しては考慮しなければいかぬ、配当に対して考慮するから、さらに長期の預貯金に対する利子所得の面についても考慮をしなくちゃいかぬということは、これはもう実際問題として私はどうも理解できないわけですが、こういう時期にこそ思い切って配当所得に対しては明確にぴしっとした線を出して処置をすべきだし、それをやると同時に利子所得の問題についても、これは並行的にやる。こういう態度が今一番必要な時期じゃないかと、私はそう思うのですが、今日なおかつそういう減税措置をやるということは、今の大臣の答弁ではどうも理解できないですね。
  202. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) もちろん、預金利子所得に対する課税の問題、それから配当所得に対する課税の問題——ある程度の権衡を考えていかなければならぬことは御指摘の通りであります。  しかし、一番問題になりますのは、預金利子所得というものは、まあ配当の場合でございますと、配当控除があり、また直接にそれが企業の経営に参画しておるという意味も持つわけでありますが、この預金利子の場合は、いかにも銀行に金だけ預けて、その利子で食っている左うちわという感じが、一般の額に汗して働く勤労階級から見まして、これをいつまでも無税でおくということについては議論があると思う。そういう意味で、これに対する課税をしろ、こういう強い要望があり、私どもも均衡上から見て税を課すべきだ、こういう考え方はするわけであります。  そこで、この預金利子課税の場合に、これは一体どういうようになるのか。預金は、申すまでもなく銀行を通じて今度は企業に参画している、こういう事情でございますから、まあ預金者というものが間接には事業を育成しているということにはなるわけでございますが、その利子をそのままにしておくことはいかにもまずそうだという感じがするので、これを税法のもとへいきなり返しますと、相当高いものになります。今日これは無税でありますために、相当銀行の預金もふえてきている。そういう意味では、金融機関としての融資ワクが拡大されているという状況でございますが、これにいきなり課税をして、そうして預金が他の方向に伸びていくことは私どもとしては必ずしも賛成しないのであります。  それから、次の配当所得の問題は、これは主として事業に参画しておると、かように見ていいと思いますが、今日の株高の面における資金というものとはやや性質を異にしておるのではないかという見方を私どもはするわけであります。今日の株高の問題になりますが、いろんな理由で今日の株は高くなっているということは言えるでございましょう。そのうちの一つに、預金やこういう資金に比較的よく似たものとして指摘されるのが、いわゆる投資信託の金が非常にふえているのではないか、こういう点にあるようでございます。まあ、証券界においての投資信託の今後のあり方というものは、そのものとして一つ考えていかなければならぬ、課税の問題とは別個の問題としてこれは考えて参りたいと思うのであります。投資信託は、基本的に銀行預金の場合と違っておりますことは、元利の保証はされておらない。元金は保証されておりませんが、しかしながら、投資信託を奨励する方から申せば、七分に回すとかというような広告をして、それだけの義務を負って運営しておる。こういうところにある程度の魅力を感じておるのじゃないかと思いますが、投資信託が現在の株価についてはある程度影響があるだろう——これはどの程度ある、こういうことはなかなか申し上げかねますが、必ず影響があるだろう、かように考えますので、証券界のあり方としての今後の措置としては、投資信託は一つの問題としてこれを取り上げてみようという考えでございます。分離の方向でただいま研究しているというのが実情でございます。
  203. 大矢正

    ○大矢正君 時間がなくて議論ができませんから、次に進みますけれども、次に三十三年度の租税特別措置による減収額というのは、私の記憶ではたしか八百億をわずか五、六億円しかこえないような限度で、三十三年度の当初の予算見込みは作られたと思うのですが、今度新しく、たとえば利子所得に対する免税を一割ですが課税の対象にするとか、配当所得についてもそうですが、そういうような手心を加え、また交際費に対する問題で、損金不算入の限度の問題についても考慮をするというようなことでいろいろ考慮を加え、なおかつ三十四年度の、いわば法律改正以降の措置による減免税額というのは九百九十億という数字が出ておりますね。私は今、三十三年度と三十四年度の所得税、法人税等の総体の税収の伸びをながめてみましても、どう考えても、これはもちろん法人、個人の所得がふえるのでありますから、法律がある限りにおいては、適用される減税特別措置によって減税額というのがふえるのは仕方がないとしても、百九十億も昨年からふえるということは、租税特別措置の整理じゃなくて、むしろ奨励というような形が数字の上に現われてくるのじゃないかと私は思うのですよ。これはやはり、もっと徹底的に昨年の八百億程度で——かりに税収が総体的に伸びて、所得の増加によって租税特別措置による減税額がふえるにしても、金額の面においては昨年並みに押えるというところでやって初めて整理をしておるという理屈が出てくるのだけれども、百九十億円も多くなって、それでなおかつ整理したとか何とか言われても、とうてい私は理解できないのだけれども、大蔵大臣はどう考えるか。
  204. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) なるほど金額的には御指摘の通りです。ふえておる。しかし、今回は十項目整理したのでございます。経済そのものが伸びて参りまして、税額自身がふえておる。こういうことで、これはやむを得なかったと思いますが、私は皆様方の御要望によりまして、項目別に羅列されてあります特別措置のうちから、十項目を整理したということは、相当大きな整理であったろうと思います。これはまあ金額で押えるわけにはいかないので、やはり項目別に押えていくということ以外に方法はないだろうと思います。この上とも努力していきます。
  205. 大矢正

    ○大矢正君 時間がちょっと超過したのですが、もう一つ。佐藤大蔵大臣のやったこと言ったことに文句を言うわけじゃございませんけれども、三%の貯蓄控除というのをやりましたね。ことしやるのじゃなくて、前にやりましたね。当時の大蔵大臣は一萬田さんですが、そのときにこの三%、最高限度六千円という範囲で貯蓄控除をやるということについては、このことによってどれだけの一体貯蓄の増加を望むことができるのだという質問をいたしましたら、千八百億は貯蓄増加を望むことができるというのが当時の大蔵大臣の答弁なんです。ところが、今日その最も近い最近の数字を見ると、これは私の調べに違いがあるかどうかわかりませんけれども、当初の予定の一割にも満たないような金額にしか終っていないのですね。有能な大蔵省のお役人さん方があとについておって、千八百億という金が一割にしかとどまらなかったというようなことでは、これからもう大蔵大臣の——これは佐藤さんに言うわけじゃないのですよ、大蔵大臣の言うことに信が置けなくなるのですよ。これはもう、佐藤大蔵大臣はとにかく先行きの明るい人だそうだから、そういう間違いはないかもしれませんけれども、とにもかくにもこういうばかげたことが現実に起っておる。これは私は、無理があるのじゃないかと盛んに言ったにもかかわらず、これは絶対千八百億ふえるのだから貯蓄増強に大きな貢献をするからといって、一枚看板の減税貯蓄をやった。結果としてはこうなっておる。これは歴代の大蔵大臣に対して、一人の大蔵大臣がこういう失敗をやったために非常に尊敬の念がなくなってきますよ。信用して話を聞こうという気持がなくなってきますよ。これは佐藤大蔵大臣どういうふうにお考えになりますか。
  206. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 金融通をもって任じておられる一萬田さんが計画されたことでございますが、千八百億の目標でこの制度を始めると言われた、その点はそうですが、なかなか思うようにいかない、成績が非常に上らなかった——ときに見通しの違うこともあるのでございます。まあ専門家であってもこれは間違うのでございますし、私などはおそらくずいぶん間違うだろうと思いますが、私はできるだけ注意いたしまして、国民に迷惑のかからないように、一そう勉強するつもりでございます。
  207. 大矢正

    ○大矢正君 これはもう、最後に一つ大蔵大臣に、明年度はまた大蔵大臣佐藤さんやっておられるかもしれませんが、予算編成のときに、あるいはまた税法審議のときに、どうか一つ予算の通ったあとで税法の総括的な質問をさせるようなことのないように、これはぜひ私はお願いしておきたいのですし、私もこれはまあきょう質問は最低二時間をもらいたいと主張しておったのですが、これはまあ今言った通り、ずっと個別ごとに、ただこれだけ言いっ放しに言っても三十何分も四十分もかかっておる。どうか一つこの点については、国民の方としても十分関心を持っておる問題ですから、明年度からはこういうことのないように、大蔵大臣特にお願いしておきます。
  208. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 承知いたしました、十分注意し努力いたします。
  209. 平林剛

    ○平林剛君 私は関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案、これについてお尋ねいたします。  この法律案による昭和三十四年度関税の減収見込額は総額で三百五億円であります。こういう意味でも大へん重要な法律案と相なっておる。また、その性格も、これは先般も議論したのでありますが、租税特別措置法と大体性格は同じものである。国民の批判も大へんひどいのであります。そこで、若干内容についてお尋ねをしますが、きょう私が特に重点を置くのは、重要機械類、この法律で免税を受ける重要機械類は総額で五十億円に達しておるのであります。一体この重要機械類というのはどういうものか、これをお尋ねいたします。
  210. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 新技術導入の関係からこの重要機械ということを申しておるのでございます。具体的には局長から説明いたします。
  211. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 新式または高性能の産業用の機械で国産困難なものであるという条件、それからわが国の経済の自立達成に資するものであるという二つの条件を満たすものについて免税することになっております。
  212. 平林剛

    ○平林剛君 ただいまお話のように、この法律で免税を受ける重要機械類の定義は、関税定率法の付則によって定められておる二項目、しかし、新式または高性能の産業用機械、本邦で製作することが困難なもの、これはだれが判断をしましてもわかります。ところが第二号の「本邦の経済の自立達成に資する産業の用に供する機械類であること。」これは際限がなく広がるのですよ。どういうようにでも考えられる。私は大蔵大臣にお尋ねしますが一般会計収入において、関税の品目の中で約五十九億七千万円の、機械類が関税をかけられてその収入がただいま示しました金額に相なっておる。この機械類と、関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案でいう重要機械類とは、どういうふうに判断をしてあなたは予算書の中に書き込んだのかどういう根拠、どういう定義でもってこれを区分したのか、これを聞かしていただきたい。
  213. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 政令等、告示で指定いたしました。それによってただいま区分しておるわけであります。
  214. 加藤正人

    委員長加藤正人君) もう一度、聞えなかったので、どうぞ。
  215. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) これはまあ大蔵省と申しますより、各省関係と十分打ち合せをいたしまして、そうしてそれを政令できめまして公布するという趣旨のものでございます。
  216. 平林剛

    ○平林剛君 大蔵大臣は答えられないのですよ。これは政令できまったものというけれども、ちっともそれじゃわからないじゃないですか。私の聞いているのは、一般会計では関税で約五十九億七千万円の機械類に、機械類に対してこれだけの関税をかけている。だから関税をかける機械類というのがあるわけですね、そのほかにですよ。この関税定率法の一部を改正する法律案で免税を受ける重要機械類、私はこれはわからないのですよ。一体どういうふうにして区分けしているのか。政令って一体どういうことを書いてあるのか、それが、私は、こういうはっきりした定義がなくてですよ、免税をするのはけしからんと、こういうことなんです、結論はですね。
  217. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま、先ほど局長が御披露いたしました基礎によりまして各関係省と十分協議をいたしまして、この条件に合っているかどうかということを相談の上、この事業と品目を指定している。こういう処置をとっておりますということを申したわけです。
  218. 平林剛

    ○平林剛君 その基礎になるのが第一段の新式または高性能の産業用機械、本邦で製作することが困難なもの。この定義は、私は各省各庁で相談してもわかると思うのですよ。しかし、第二号の、「本邦の経済の自立達成に資する産業の用に供する機械類であること。」これは一体どう区分けするのか。こういう区分けが困難な、実際上は各省各庁で寄り寄り相談をして、これは重要機械類だ、これはそうじゃないものだと、よくそんな芸当ができるものだと私は感心しているのですよ。こういう法律案は削除してですよ、あらためてこういう免税なんかやらぬというふうに言明をすれば別ですけれども、それは一体どういうふうにして分けるのか。
  219. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 各省のらち、生産担当省とでも申しますか、その方面の担当の役所がございますから、その方と十分相談の上で決定する。こういうことでございます。その方で十分に実情に合わないとでも申しますか、自立達成あるいは国内産業に圧迫を加えるかどうかということをその省で判断をして、大蔵省としてはその意見と、まあ協議の上きめると、こういうことでございます。
  220. 平林剛

    ○平林剛君 そんなことではだめなんですよ。これは私は、大蔵大臣はよほどしっかりしなきゃだめだと思うのだ。こんなでたらめな法律なんていうのは、私もっと時間があればとことんまで突き詰めて、機械と照合して、一体このものになるのと、一般予算に書かれている、関税をかけられている機械とどういうふうに区分するのかと——これは大蔵大臣答えられなくなっちまう性質のものですよ。各省各庁の、それぞれこれはうまい汁になっているのだ、私に言わせると。そうして、このために五十億円の免税を受けるということになる。どういう会社がこの恩典にあずかっておるか、会社の名前をあげてもらいたい。ベスト・テンでもいい。
  221. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 私、今ここに資料を持っておりませんので、後ほど申し上げますが、大きなものですと、たしか昨年度の指定の中には、製鉄関係、それから発電関係、製鉄ですと、新しいストリップ・ミルとか、ああいう設備や、一連の大きなものが入ってくるというものがあります。発電関係では新鋭火力というようなもので、かなり大きなセットが入ってくるというようなものがございます。そういうのが特に大きなものの代表的なものであるというのが、私、今資料なしに思い出すものとしては、大きなものはそういうものがございますが、なお後ほど調べまして申し上げるようにいたします。
  222. 平林剛

    ○平林剛君 私は租税特別措置法でも言いたいことたくさんあるのでありますけれども、この法律案では重要機械類というものに目星をつけて、大蔵大臣にも再検討してもらいたいと——きょうは時間がありませんから、それじゃ、この法律で重要機械類として免税を受ける会社ですね、法人は、その重要なもの、少くともベスト・テン程度、金額はどのくらいだかというようなものを資料で出してもらいたい。そして、きょうは資料で出してもらうことだけにしますが、大蔵大臣もこれは一つ真剣に検討してもらいたいということを要望いたしておきます。
  223. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 先ほど申しましたように、重要機械類の別表甲号というものがありまして、詳しくこの中にその機械類が一応は載っております。問題は、その国内に類似な産業があるとか、あるいはもう国内で自立できるようになっているとか、こういうような事柄があるのではないかと思います。従いまして、今後この別表は別表でけっこうですが、これを適用いたします場合に、国内の調査を十分にいたしまして、国内産業に圧迫を加えたり、あるいはまた国内においてりっぱにもうできるような状況になっておるようなものがございますれば、もちろん免税などさすべき筋ではないと存じますので、ただいま御指摘になりましたように、この問題は問題として一つ預からしていただきまして、今後決定するときに十分注意をいたしたい、かように思います。
  224. 平林剛

    ○平林剛君 次に、この法律案の中に、事務管理の向上に資するためという名前で電子計算機ですね、これを課税の免除品目に追加をいたしておるわけでおります。この電子計算機の課税免除額による減収は総額八億円です。これを使用する会社はどういうところです。それから一台当り価格は幾らになりますか。
  225. 木村秀弘

    説明員木村秀弘君) 電子計算機につきましては、銀行、会社等、そのほかに、たとえば日立製作所のようなメーカーもございます。それから一台当りの額でございますが、これは中型、大型、あるいは小型といろいろ型によって値段が非常に差別がございます。
  226. 平林剛

    ○平林剛君 きょうは時間がないから、こまかいことは聞きませんけれども、大蔵大臣にお尋ねいたします。この電子計算機を入れることによって事務管理上の向上が期せられるわけですね。一体だれが利益になると思いますか。
  227. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) これはまあいろいろ、電子計算機、ただいま申し上げました銀行等におきまして、これはもちろん使用者が利益するでしょう。また非常に大きいものになりますと、統計局等役所でも使っておるものもあるのでございまして、一台で十億前後というものもあるようでございますし、これは……。
  228. 平林剛

    ○平林剛君 今度は八億円ですよ、総額で。
  229. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 大きいもので、入って、据えつけまで、大、中、小とあるようですが、そういうようなもののように思いますので、結局非常に金のかかるものでありますが、これを据えつけることが経営者としては非常に利益を受けるものである、かように私は考えます。
  230. 平林剛

    ○平林剛君 私もそう思うのです。事務管理の向上によって一体だれが利益を受けるかというと、大蔵大臣がお答えになったように、私は経営者、電子計算機を入れることによってその会社の能率は向上するだろうと思うのですね。能率が向上すれば、従って、企業成績というものは私はよくなるのではないか。私はこまかいことを聞きませんけれども、銀行とか日立だとかそういういわゆるメーカーがこれを入れる、それで事務管理は向上が期せられる、企業も能率は上っていく、そのため利潤を受けるのは会社です。これを、こまかいことは聞かなかったからわかりませんけれども、電子計算機を備えつける会社は、私は現在の経理面においても、これを入れることによって会社がつぶれてしまうとか、会社が大幅な赤字になるとか、それを入れるだけの能力がないというような会社じゃないと思う。あくまでも事務管理の向上に資し、将来企業利潤を上げていかなきゃならぬ、そういうために入れている会社である。そういうところに総額八億円の免税を行うということは、だれが考えたって私は不当だと思う。今日、揮発油税の引き上げの問題について、政府は何と言っていますか。大蔵大臣も各委員会においていろいろお話しになったときに、揮発油税を引き上げても、道路がよくなることによってその関係者は利益を受けることになる。だから、この程度のまあ揮発油税の引き上げは必要なんだ。そうでしょう、大蔵大臣。同じ筆法で言えば、日立やその他こういう大メーカーが自分の企業の能率向上のために、これによって企業成績が上る。こういうようなために買い入れる電子計算機を、これは関税を免除するというのはどうも揮発油税と比較いたしましても矛盾があるんじゃないか。あべこべだ。私はそう思うんでありますけれども、この矛盾についてどういうお考えをお持ちです。
  231. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 電子計算機の関税免除、これはいろいろの理由があるだろうと思います。なるほど、経営者が利益するということを申しましたが、経営者が利益する、その結果は一体どうなるのか。おそらく国際的に競争のできるような品物もできるようになるだろうと私は思います。これはまあ、いろいろな理由があり、わが国の事情で事務能率が悪いという、これが技術は非常にすぐれても、事務能率の点で外国と競争ができないということは、あらゆる場合に指摘されておるところであります。そういうように考えて参りますと、やはりその事務能率を向上さすということは、これは基本的な経営の要素だと、かようにも実は考えられる。さように考えますと、その会社が事務能率が上り成績が上る、これは直ちに配当に云々と、こういうように経営者に還元すると考える前に、やはりそこの製品が外国に出てもやはり競争できると、こういうものだということも一応御理解をいただきたいと思うのであります。同時にまた、この種の機械が一応入って参りまして、わが国においてもこの種の機械を作るようにだんだんなってくると、こういうようなこともあるのではないか。私、かように考えます。
  232. 平林剛

    ○平林剛君 政府与党は数が多いんですから、何と答弁しても多数決でやれば通るんです。だから、そんな無理な答弁をなさらなくてもいい。これはまことに矛盾のある法律案であるということだけを、あなたはよく頭に入れていただきたいんですよ。  お話のように、日立とかその他いわゆる工業用の品物で外国との競争をするという会社ならば別ですよ。今お話のように銀行に入るんですね。銀行でもこれを使うわけです。銀行がそれじゃ国際競争で、あなたの今の弁でどういうような関係があるのですか。ちょっとそれを答えてみて下さいよ。率直に頭を下げるなら下げるでいいですけれども、どういうような関係がある。
  233. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) やはり銀行が事務能率が上りますと、これはコストが下るということにもなろうかと思います。
  234. 平林剛

    ○平林剛君 まあ、私はこれ以上追及しませんけれども、(「もっと追及しろよ」と呼ぶ者あり)大蔵大臣は税法の番頭なんですよ。お互いに国民というものはその所得税法やその他の税法によって、あなたよく聞きなさいよ、お互いに重税に耐えているときです。その税法の建前をくずして、あるときは租税特別措置法、あるときは関税定率法ということで、その税法の原則を破っておる。しかも、それがほんとうに国民全般の納得する減免措置であるなら、私どもこんなことを言わないです。しかしですね、こういうその税法が多数存在しておるということは、大蔵大臣が悪いんですよ。もっとその各省、各庁ににらみをきかして税法の建前をくずさせないというような政治をやってもらわなければ困る。  そこでもう一つ、次の問題について申し上げますが、原油及び粗油に関する関税の減税額についてお尋ねいたします。これもこの措置によって総計約百億円が減免税を受けることに相なっております。これは、私はこの委員会で議論をするのは二回目です。先般も原油が基礎的な原料である、こういう理由で基本税率の軽減をはかっていることに対して、私は攻撃的な批判をかつて加えたことがある。また、原油を輸入して国内で精製をしておる会社、これは日本石油にいたしましても、シェル株式会社にしても、日本にあるたくさんの石油会社は、ことしの経理内容を調べるまでもなく、相当利潤をあげている。そしてその会社の資本構成を見ると、日本人ばかりでないんですね。資本構成の内容を見ると、外国人も相当重役その他に入っているんですよ。こういう基本税率を破って軽減をして、一体だれを太らしているかというと、私に言わせると、外国資本を太らしておるという結果に相なっておる。しかも、この基本税率の軽減は、一年延ばしに、毎年々々政府は提案をしてきておるのでありまして、これはきわめて不当である。私は、この点については今も少しも考え方は変っておらないのであります。  そこで、お尋ねをいたしますが、ここ二、三年、昭和三十年以降の原油の輸入価格はどういう変化を示しておりますか。これは大蔵大臣でなくてもけっこうです。原油の輸入価格がどういう変化を示しておるか。中東地域、あるいは南方地域、北アメリカ地域、まあ地域別にわかればけっこうでありますが、わからなければ、大体比較できるように、一キロリットルを単位にして換算をして、その変化をお知らせを願いたい。大蔵大臣には、今日なお原油やB・C重油の関税を軽減をしている諸般の事由とは一体何か。提案理由の中に、諸般の事情によってなお引き続きこれを行うと書いてありますけれども、諸般の事情とはどういう事情でございますか。これは大蔵大臣の方からお答えを願いたい。
  235. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 原油並びに重油につきましては、ただいま御指摘のように、免税をしておる。長い間やってきておりまするので、これを変えるということはなかなか困難だというのが、今回の理由だと思います。  そこで、なるほど、原油、重油、いわゆる石油業者と申しますか、その中には、外国資本がたくさん入っておる。完全にわが国だけの独立資本でやっている製油業者というのはきわめて少いと思いますが、まあ一社か二社程度。きわめて少い。これはまあ戦後の油の関係で、設備の必要から外国資本の協力を得ているというのが現状だと思います。御承知のように、発電、鉄鋼等重要産業の原料、まあガス等もありますが、その燃料になっておる、こういうような意味から、特に関税を減税している。そうして産業の面でこういうものができるだけ安く入るようにと、こういう政策が今までとられてきたということでございます。今回も同様の考え方をいたしておるのでございます。
  236. 木村秀弘

    説明員木村秀弘君) ただいまお尋ねの、原油の輸入価格の推移を申し上げますと、昭和二十七年が一キロリッター当り八千六百円でございます。これは全部CIF価格でございます。それから、二十八年が七千三百円、二十九年が六千五百円、昭和三十年が六千三百円、三十一年が六千九百五十円、三十二年の一月から六月までが八千円、それから七月が七千八百五十円、八月が七千七百円、九月が七千六百五十円、十月が七千五十円、十一月、十二月が七千百円、こういう経過になっております。
  237. 平林剛

    ○平林剛君 私は、この問題について、こまかくきょうは時間がありませんから言えませんけれども、何か、この関税を基本税率に戻すためには、国際的なはね返りというようなことを考えてできないものか。それとも、邪推かもしれませんけれども、一部の独占資本に利潤を与えるために、これが押し切れないのか。そんなことはないと思いますけれども、国際的な関係でこれができないというような事情が何かあるのですか。
  238. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 国際的な制約はないと伺っております。最近の問題として、油に対する政策、まあ在来の免除しておりますものを、課税をもとに返すということは、なかなか問題があるわけでございますが、私ども、油については、最近、国内の石炭との関係でいろいろ頭を悩ましておる問題もあるのでありまして、今回の外貨割当等におきましても、実はその点を一応考えて数量的に検討いたしております。しかし、それは関税の問題とは別でございます。
  239. 平林剛

    ○平林剛君 原油で輸入したものが国内の石油精製会社によって石油製品として卸売される場合の価格は、私ども、毎月石油連盟から発行する石油資料月報で承知しておるのでありますが、これによりますと、揮発油の卸売価格は、昭和二十九年当時、大体一キロリットル一万八千四百四十六円であったところが、昭和三十三年になりますと、平均して一万二千百四十二円、大体六千円以上下っておるわけですね。これは私、まだよく検討していないからわからないのでありますが、一体、下ってきたというのはどこに原因があるのか。それから、揮発油はこのように下っておるにかかわらず、同じ減免税を受けておるA重油、B重油、これは昭和二十九年当時の一万三千円と比較して、現在もそう価格の値下りがない。こっちの方は一体どうして下らないのか、疑問に思っておるのでありますけれども、どういう事情でございますか。
  240. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 私もあまり精細には知らないのでありますが、大体、原油というものが入っていろいろな油に分れるその分れ方が、揮発油を一割五分とるのも、二割五分とるのも自由にできれば、ちょうどいいように分れるわけなんでありますが、例の得率というものがございまして、原油から分れる分れ方というものは大体きまっておる。きまった分れ方でそれぞれの品物の供給がきまってくるわけでありますが、需要の方はなかなかその通りに伸びないということがあるようです。その間、近年においては、揮発油は割合そういう意味では供給の方がどうも豊富になりつつあるようなことが、近年の趨勢であるように思います。そのほかについても、大体そういう需給の関係というものが大きく支配するというように私は承知しております。
  241. 平林剛

    ○平林剛君 私は、これは原油の価格、最近の動き、それから原油を輸入してわが国において精製をする会社の経理内容、つまりどの程度利潤をあげておるかというような資料を、一つ、後でけっこうでありますから提出してもらいたい。大蔵大臣は、私はもう一回これをやりますよ、よく検討して明確なものを、一年延ばしに延ばすようなことをしないで、一つ政府部内においても再検討してもらいたい、こういうことを要望いたしておきます。  もう一つ、この問題については最後のお尋ねをいたします。関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案、大へん長い名前ですが、この根拠となる法律、根拠になっておる法律は、関税定率法の付則ですね、付則が根拠となって、付則を改正するためにこういう長ったらしい名前の法律案に相なっておる。私はこの法律案はどうも名は体を表わしていない。大体、法律というものは、中身がよくわかるようにして初めて名は体を表わしている、こういうことにいかなければいけないわけです。しかるに、この法律に関してはちょっと読むのに舌をかむくらい長い法律案である。なぜこういうような法律案にするか。むしろ、関税定率法の特別措置なんだから、関税定率法の特別措置法とでも、何か名は体を表わすようないい法律案で提案をしてくるべきではないか。こういうわからないことをしておくから、法律案を見ても内容の重要性が国民にわからないのですよ。これが単独の法律案で出されてくれば、私は、こんな法律はもう存在しない、一年延ばしにして下さいなんて言ってこない内容の性格を持っている、こう考えておる。ところが、非常に長いから、めんどくさい、大したことなかろうというような……。中身はどっこい三百何億円という減免税、その中身はしかも不当な減免措置になっておる。こういうことに相なっておるので、私は大へんばかげた法律案だと思う。次回はどうですか、これを名前を変えて、中身がわかるようにして国会に提出するという考えに立ってもらいたいと思いますが、大蔵大臣、いかがでしょう。
  242. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 何か理屈があってこういう名前になったんだろうとは思いますが、なるほど、御指摘になりますように、私にもなかなかわかりにくい法律でございますから、よく名は体を表わすようにこの上とも研究いたしたいと思います。
  243. 平林剛

    ○平林剛君 今度すると、こういうわけですね。
  244. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) この次の機会が参りましたときには、十分考えて御希望に沿うように努力する、こういうことです。
  245. 平林剛

    ○平林剛君 了解しました。  それじゃ、今度は租税特別措置法について少しお尋ねします。  この租税特別措置法につきましては、先ほど大矢委員お話しになりましたように、質問していけば三十分や四十分で尽くる内容でございません。先回私は、特に租税特別措置法の中で将来検討してもらいたいという点で、重要物産ということと、それから交際費の問題について問題を提起いたしておきました。われわれ信頼をする政務次官が、十分私の意向をいれて検討することを約されておったのでありますけれども、大蔵大臣はいかがでしょうか。予算委員会では、租税特別措置法についてはいろいろ問題がある、そして今後も引き続き検討すると言われたのでありますが、言葉だけでなく、実際的に実行に移してもらいたい、私はそう思っておるのであります。そこで、今後も引き続き検討するというお話を一歩進めて、今後は一体どういうところに重点を置くかというお考えがございましたら、この機会に聞かしていただきたいのであります。
  246. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) いろいろ特別措置には、それぞれの理由があって、これが取り上げられて特別措置をとっておるのでございます。そこで、先ほども関税の問題でいろいろ御議論、御意見を伺いましたように、やはりほんとうに免税の効果があるという方向のものでないと、いわゆるまあ特別の理由というだけでこの種の特別措置を講ずべきでない。言いかえますと、非常に単純な免税というか減税になっておりまするものについては、これはいろいろ問題もあることだろうと思いますから、そういうものから片づけていくのが本筋かと思います。いずれにいたしましても、基本法がありまして特別措置を講じておるのでございますから、こういう例外的措置がいつまでも長く続けられるとか、またその範囲が拡大されるというようなことは望ましくないことだと、かように考えますので、十分今後研究して参りたい、かように思います。
  247. 平林剛

    ○平林剛君 範囲が拡大されることは望ましくないことだとお話がございましたけれども、私は、重要物産については免税総額において四十五億円。しかも、先ほど指摘したように、重要機械類と大体同じような性格できめられているのです。しかも、資料をもらいましたところが、この重要物産免税の適用会社を調べてみたのです。たとえば、重要物産だということで肥料用の尿素が免税になっておりますね。会社はどこかというと、昭和電工、日本瓦斯化学というような——まあ日本瓦斯化学の方はあまり詳しくありませんが、昭和電工といえば相当利潤をあげておる会社のように承知をいたしておる。それぞれ、主要免税の適用会社を見ますというと、今日の状態においてかなり利潤をあげておるところである。そういう会社に、さらにおまけをしてこういう免税を、総計において四十五億円もやるというのは、まことにけしからぬ話だ。これは十分、先ほどの重要機械類と同じように、慎重にやってもらいたいと、こう考えておりますけれども、大蔵大臣はいかがですか。
  248. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) まあその会社がどうだとかこうだとかいうことじゃなしに、ただいま御指摘になりましたように、十分慎重にやれというその御趣旨には、私ども全面的に賛成でございます。
  249. 平林剛

    ○平林剛君 私の希望に全面的に賛成である、そういうふうにやるという大臣が、今度は、四月一日から新たに重要物産免税に約五品目の物資を指定をしておりますね。国会においてしばしば、そういう方向に拡大するようなことはなるべく阻止する、なるべく縮小するように努力をすると言う大蔵大臣がおるにもかかわらず、実際には、今度四月一日から合成ゴムとブタジエン、これは合成ゴムの原料だそうですが、ブタジエンとチタン、チタン合金の加工品、三塩化シランを原料とする高純度シリコン、こういう品物を新たに重要物産免税に指定をした。私はどういう点でこれが重要物産だか見当がつかないのでありますが、新聞の報道するところによると、大蔵省は指定に反対をしておる、話し合いがつかない、そうして三十日に最終折衝を行なって、三十一日の閣議で政令をきめるのだ、こう言っておるんですが、これは一体どうなったんですか。
  250. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) まだきまってはおりません。その種の免税を強く要望されておることは事実でございます。十分検討しておる最中であります。御承知のように、私は総体としてこれを拡大しないという気持ではございますが、最近は新しい技術なり新しい製品が出て参りますから、そういう意味においては、過去のものが整理され新しいものが追加される、こういう事態の起ることは御了承おき願いたいと思います。別に私矛盾したことを申しておるのではないつもりでございます。
  251. 平林剛

    ○平林剛君 この新たに重要物産免税として指定される会社はどういうところだか知りませんけれども、こういうものの法律を存在さしておくというと、もう阻止することはできないのですよ。どっかでふんぎりをつけなければ、いつまでたったって清算できないです。私は、こういう意味からいって今度の国会では特に各委員から租税特別措置法の中で問題点の多いことが指摘をされておるわけですから、どっか決心をつけて、これ以上は認めない、こういうようなやり方をとらなければ、ずるずるべったり、いつまでたっても整理できない。大蔵省でも、適用を拒む手がないために、結局認めざるを得ないことになっちまう。やっぱり何かどっかでそういうきめ手をもってそうして押えていくという以外に、私、ないのじゃないか。大蔵大臣はこの点は慎重に一つ今後は決定をして、きめ手がないということだけで各省、各庁の自由を許さないでもらいたい。これは議論が非常に多いと思う。十分注意をしてもらいたいということを要望します。  最後に、所得税法について一つか二つ質問することをお許し願いたいと思います。時間がないのはまことに残念でありますが、所得税法の一部を改正する法律案について基本的なことをちょっとお尋ねいたします。  減税七百億円というのは、これは自由民主党公約であります。減税の規模は、国税、地方税を含めて、公約にもかかわらず五百億円程度になっております。ところが、自民党公約というものは、私の承知しているところでは、初年度とか平年度とかという区別がなかったように思うのであります。しかるに、こういう結果になったのは、私は、しいていえば、選挙に勝つため国民を欺瞞したものだと、こういうふうに考える。せっかくの減税法案に対してあまり国民が関心を示さないというのも、私は、このことが、いろいろ専門的に説明すれば理屈はあるだろうけれども、国民が、政府のいつものごまかしだということで、割り切れない感じをもって不信感を持っているということが言えると思うのであります。この委員会におきまして、政府も、この法律案の提案説明と補足説明を行なった際に、この改正案はいわゆる自民党公約に基くものだと、こう前提をして解説を加えたのでありまするが、自民党公約は、初年度、平年度と断わっていなかった。私、直接読んだわけじゃありませんけれども、自民党の昨年五月に出した選挙演説資料「わが党の新政策」という本の中で、自民党の税制特別調査会副会長の野田卯一さんが、三十四年度の財源見通しを書いたあとで、従って七百億減税の財源は十分まかなえる、こう書き添えてある。この文面から見て、三十四年度に七百億円の減税をやる、こういうようにしか読みとれないのでありますけれども、実際はこれと違っておる。自民党公約と反すると私は思うのでありまするが、いかがでありますか。
  252. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 私は自民党の人間ですが、公約と合っておるように実は思うのでございます。この点は、お言葉を返して大へん申しわけございませんが、自民党でこの公約事項を作った三木君は……。私など実は作った方でございまして、当時におきまして、もちろん、七百億減税と申しますと、これは平年度の減税だと、こういうような感じで私どもは実は作ったのであります。しかし、ただいま御指摘になりますように、これはやはり平年度、初年度と区別することの方が親切であったかと、かようには思います。思いますが、大体減税の幾らと申すと、それは平年度のことだというのが普通の考え方でございます。従いまして、私ども、別にこの公約には違反しておるとは思いません。  ただ、この前にも補充をいたしたと思いますが、私どもも、ややその予想を裏切ったといいますか、構想に変化を来たしたと申しますものは、地方税の面においてもう少し減税が可能ではないかという感じをいたして原案を作ったのでございますが、地方税の方の減税計画通りに進めることができなかった。そこで、途中から、国税の方の減税によりましてともかく七百十七億という減税案を最後に作り上げたということでございます。金額としては、納められる国民の方から考えますれば、それは地方税と国税と区別はされないのでございますから、国民負担という面から見れば、なるほど七百億でいいかと思いますが、それにいたしましても、地方税の納税資格者とそれから国税の場合とはおのずから違いますから、そういうことを考えてみますと、やはり正確に申せば、地方税においての所定の計画を進めることが望ましかったと、かように思っておりまするが、まあこの点が計画とそごした点だと思っております。
  253. 平林剛

    ○平林剛君 減税公約した当時、三十四年度の経済成長率は六・五%と見ておるようなんですが、そして自然増収も、大体当時は一千億円以上を予想しておったようであります。そこで、減税七百億が打ち出されたと私どもは理解いたしているのであります。ところが、今年の予算案において政府の経済成長率の見込みは六・一%と是正をされているわけであります。自然増収の見込みについては現在どういうふうにお立てになっておりますか。これは政府委員からでもけっこうでございます。
  254. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 大体、選挙の前に立てました公約の際は、今の成長率は御指摘の通りであります。大体、自然増収は一千億を上回るだろうというような感じ、これははっきりしたものではなかったように思いますが、あるいは人によりましては千二百億だということを言った人もあるかもしれませんが、とにかく一千億を下らない、それを減税に向け得るのだという、七百億を向けたあと三百億ないし四百億は積極的に新政策の方に振り向け得るというふうな、非常に大まかなものを盛ったのでございます。そこで、三十三年度の実績といたしましては、大体千八十六億というふうな今数字のように思います。来年度です。それで、三十三年度は大体百億程度ふえているということでございます。だから、三十四年度は千八十六億という計算でございます。
  255. 平林剛

    ○平林剛君 今年は、また来年は、自然増収の点では大体数字が似かよっているのでございますが、この見込みについてはいろいろ説がありまして、政府が予定するほど出ないのじゃないかという見方も行われているのであります。私、最近各方面の意見をずっと拾い上げてみましたが、多く見ても九百億程度にしかならないのじゃないかという見込みや、あるいはもっと極端な意見は、政府の考えている半分程度しかないぞというような見解も行われているのであります。これは先ほどの大矢委員質問に答えた大蔵大臣の見通しの信憑性ということに相なってくるのでありますけれども、これは別にいたしましても、これから来年の予算を編成するというようなときに、ほんとうに財源が困るのじゃないかということを、前回、予算委員会でも私は指摘しておいたのであります。このために、第一は租税特別措置法というものの再検討を行う、第二には補助金の再検討を行う、第三には国有財産、国有財産の一つ検討を行なって、そういうところから財源を得るような配慮をしたらどうか、第四は防衛分担金の問題で、これは意見が違うということでございましたが、いずれにしても、その努力をしない限りは、今回の予算編成のような経済基盤強化資金の取りくずしもないし、逆に国民年金制度の創設に伴う経費が恒久的に増大するということを考えますと、今年は減税をやったけれども来年は何か増税をしなければならないという結果になりはしないか、こういうことを私は心配いたしているのであります。大蔵大臣は、かりに大臣をおやめになりましても、自由民主党の重鎮として、国民に対して絶えず約束し、また公約を果すという立場になることは、こういう点では変りはないと思います。そこで、今年七百億減税を、いろいろ中身は違うが、そういうことをやったが、来年は増税するというようなことにならないかどうか、ぜひそういうことがあっちゃ困るのでやらないというような御言明を一ついただきたい。
  256. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 政治の目標は、もうあらゆる機会に国民負担を軽減することにあるのでございます。従いまして、私どもは、減税についても努力はいたしますが、増税などは考えるものではございません。本年の収入見込み、これはまだ立てるのが非常に早い状況でございます。しかし、私どもが今予想している経済成長率等から考えてみますと、義務的支出の増加はございましても、増税などしなくても三十四年度の予算は編成し得る、かような見通しを一応持っているのであります。しかし、私は、増税という問題については、これはもう国民として一番困る問題ですから、そういうものには手を触れたくないというのが私の考え方でございます。
  257. 平林剛

    ○平林剛君 まあ、ただいまのお答えは、ことし減税をしておいて来年ふやすような、そういうようなことはおやりにならないという御答弁として、私は議事録にも残し、政府もそういう考えで責任を持って今後の執行をしていただきたい。この点は、来年のことに備えて、くぎを刺しておきたいと思います。  まだいろいろ質問をしたいことがありますけれども、先ほど大矢委員が言われたように、この委員会の運営はきわめて不満でありまして、質疑は残っておりますが、約束の時間がありますから、この程度にいたします。
  258. 小酒井義男

    小酒井義男君 時間の関係で要点だけをお尋ねをしますが、所得税法の改正で、確かにいろいろな点で減税にはなるのですが、その後運賃に端を発した諸物価の値上りが次々と出てきております。そうすると、減税の効果というものは非常に失われる結果になると思うのですが、大蔵大臣、それをお認めになりますか。
  259. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 一部、あるいはバス、あるいは地方鉄道、その運賃が上ったとか、あるいは新聞、ラジオ等で国民生活負担が過重される、こういうことを言われていることは私どもの耳にも入っております。しかし、経済全般としての一次産業面、あるいは三次産業面でどういう傾向をたどっているか、こういう総体として批判してみないと、ものによりましては上っているものもあるし、ものによっては下っているものもあると、こう考えて、やはり総体でどういう負担になるかということを考えなければならぬと思います。上っている方だけを御指摘になれば、これは確かにそういう事実がございますから、それだけは負担増だということはいえると思いますが、今日の状況では、私は国民生活全般の問題としては、この負担増は比較的軽微なものではないかというふうに考えております。
  260. 小酒井義男

    小酒井義男君 これは議論しておれば切りがありませんが、やはりそれぞれの個人々々の減税の額によって、あるいはその減税の余地がまだある者も、あるいは減税ぎりぎり一ぱいが生活費の増嵩によって失われる者もありましょう。しかし、減税にならない、非常に低額の所得よりない国民が、日本の場合は非常に多いわけなんです。そういう層でも、たとえば運賃であるとか、ラジオの聴取料であるとか、そういうものは、これはやはり現在の日本国民生活の最低としてもそういうものだけは必要だと思う。そうすると、減税にはならないが、そういう層は負担だけがふえてきたということに結果的には私はなると思うのです。そういう点を考えると、やはり減税政策というものと低物価政策というものを並行して進めなければ、一方ではなるほど減税によって救われる者もあるが、そうでない低所得者というものは、非常に生活がさらに困難になる、こういう非常に欠点が出てくると思うのです。こういう点を大蔵大臣はどう考えておられるか。
  261. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) まあ減税、これは税を納める者にしか利益がかからない、これはもう御指摘の通りであります。そこで、低物価政策というものが非常に一般国民というか、税を納めない者に役立つということをいわれますが、この低物価政策の裏づけといいますか、この中身、このあり方いかんでは、これは必ずしも皆が仕合せになるものではないだろう。たとえば、米価なら米価というものを一つとってみても、米の値段が安いことはいい。これを二重価格を設定して消費者米価を安くしておれば、これは別に負担はないようで、いわゆる税を納める人たちだけがまかなうようでありますが、しかし、この生産者米価とつり合いのとれた消費者米価というものを考えて参りますと、やはりこの意味では、必ずしもいわゆる低物価政策は貫き得ないかもしれません。あるいはまた、この生産の面においての、石炭にしても、鉄にいたしましても、あるいは紡績関係のものにいたしましても、安いことは非常にけっこうだが、それがもしも低賃金ということを意味した低物価であったならば、これは社会全体の幸福だとはいえない。かように私ども考えますので、そういう場合において、やはり能率が向上されて、そうして生産費そのものが、賃金カットでなくて安くなっていくというような低物価政策、これが採用できるならば、これは非常に仕合せなことだと思います。  そこで、全体の産業を育成していくという場合に、ただいま申すような賃金カットなどを招来しないように、これが能率的な方向において生産費が、コストが安くなってくるということを工夫してもらい、そういう意味の低物価を私ども心から歓迎もし、進めて参るわけであります。  それでも、なおかつ、このボーダー・ライン以下のところでは、非常に救済されない者があるだろう、そういう者に対しては、やはり就労の機会を多くするといいますか、やはり賃金収入を得る道を開くとか、あるいはまた、それでもなおかつ足らないものに対しては、社会保障制度を推進していく、こういうことで全体のその経済を伸ばし、生活を向上さし、しかも一階級の犠牲においてそういう事態を招来しないように、これがまあわれわれの保守党の政治のあり方として考えておるところでございます。従いまして、非常に簡単な表現をなさいますが、減税はすぐわかりますけれども、この低物価政策というものについてはいろいろの意味がありますから、誤解のないような低物価政策というものであれば、これは私は非常に歓迎するということをこの際申し上げておきます。
  262. 小酒井義男

    小酒井義男君 大蔵大臣、この米価を例にあげてそういう反論をなさるので、非常に低物価政策というような抽象的な表現では、議論はやはり私はできぬと思うのですが、それじゃ、もっとこまかい点で議論を私はしたいのです、そういうことでしたら。が、それじゃお困りになるでしょうから、この問題はあらためて、まだほかの法案の関係がありますから、その際に議論をします。  そこで、もう一つは、今度は、あまりけちばかりつけてもいかぬのですが、あなたの方の減税で退職所得の控除を非常にふやされたことは、これは私非常にけっこうだと思うのです。少しくらい賛意を表しておきたいと思うのですが、ただ、この検討をしてみますと、いろいろなケースが出るのです。出るのですが、私は、これも時間の関係上、極端な例を、両極端をあげてお尋ねをしますが、たとえば、中学校を出て十六才で就職をしたとしますね。そうして一般の会社の今退職の年限というのは大体五十五才だということを目安に置いて考えますと、四十年間勤続をして、そうして今度の法律改正が一〇〇%これに対象することになりますと、百四十万の控除ができることになる。ところが、これは百万で打切られておるのです。頭打ちをしておる。で、今度は、これは例外かもわからぬが、私極端な例としてあげますと、たとえば、五十才までは個人で商売をやっておった。で、何かの理由で、五十一才から会社に入った、そうすると、その人は七十才までその会社に勤めたとしますと、百万円控除されるのです。  それで、二十年で、しかも七十才以後の生活に必要な経費というものと、五十五才でやめて——一まず五十五才でやめたら、就職は現在不可能でしょう、そういう人の生活に必要な費用というものは、非常に違うと思うのですね。で、この七十才でやめても百万円の控除を受けられるのだが、十六才から五十五才まで働いて、まだそれから相当年数生活しなきゃならぬ者は、四十万打ち切られて、百万の控除だということは、少し実際上問題があるのじゃないか。  それで、私はほんとうはそういう点を修正したかったのです。したがったのですが、今日のような状態ですし、百万円に引き上げた、こういう現状でありますから、政府の方でそういう点については検討をして、不合理な点は是正をすると、こういうことであれば、近い時期に——近い時期といいましても、来年度の予算を組むころまでには、そういうことを一つやるということがお約束を願えれば、それでまあ、現在のところはこれで通してもいいんじゃないかという気がしておるのです。そういう点について、一つ、大臣から御答弁をいただきます。
  263. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 御趣旨はまことにごもっともでございますし、御趣旨は私どもにも理解ができるのでございます。今回この五十万を百万にいたしました場合に、退職金というような金について思い切った控除をすべきじゃないかというので、実は五十万を百万に上げました。もちろん、この百万でも、今の状況なら、控除限度としてはまだ少額だという御議論もあろうかと思いますが、今まで五十万が控除限度であったというところから見ると、これを思い切って倍額にしたということで、この意味では御了承がいただけるかと思います。  ところで、いろいろのケースを探し出して参りますと、今、最初からお話しになりますように、両極端を一つ披露するとおっしゃいますが、いろいろなケースを出して参りますと、私どもの意に満たないものというか、もともと退職金だから特に優遇したいと、こういう考え方でこの制度を考えるのだが、このせっかくの気持の恩典を十分に受けない方も時にできてくる、そういう者をいかにしたらいいか、ただいまそういう意味の御指摘があったと思います。なかなか技術的にはむずかしい問題でございます。大蔵事務官僚、なかなか頭のいい連中ですが、個々になりますと、だいぶ苦心をいたしたものでございます。しかし、これは技術的にむずかしい、あるいは相当複雑だというだけで、今のような点を無にしておくことも、これは話の筋がわかりますだけに、私どもとしても何とかしなければならぬ、かように考えますので、今後の問題として、御趣旨をくんで十分に一つ検討をしてみたい。技術的な困難さ、その複雑さをどれだけ克服することができますか、一つ私どもの方で十分検討することにいたしたいと思います。
  264. 小酒井義男

    小酒井義男君 一つ、これは私は要望ですが、具体的に検討をせられて、高額の所得について税率をまた考えるというような方法の必要も出てくると思うのです。総合的に考えて、一つ来年度の予算のころまでには、やはりこういう実情に合うような是正をされるように、強く要望をしておきます。
  265. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案外三件に関する質疑は、これにて終局することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  266. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 御異議ないと認めます。  これより順次、討論、採決を行います。  関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案の討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  267. 平林剛

    ○平林剛君 私は、関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に対し反対をいたします。  反対の理由は、先ほどの大蔵大臣との質疑応答に尽きるのであります。第一に、関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案とは、関税定率法の付則を改正する法律案でありまして、根拠法規が付則という変則的な法律案であります。しかも、この法律による関税の減収見込み額は三百五億をこえるきわめて重要な法律案でありまして、その性格も租税特別措置法と同じものであります。なぜ一体こういう長い名の法律案を作ったか、私はここにも法律案の持っている隠れたる性格を見出すのでありまして、賛成し得えない第一の理由であります。  内容についてこれをながめましても、先ほど質疑応答いたしましたように、まず、五十億円をこえる重要機械類の免税であります。これは、関税定率法の付則に掲げてあります目的をしさいに検討いたしますと、幾らでも解釈は拡大をされて、政令において国民がわからない間に不当なことが行われましても、これを制限することができない。大蔵大臣はこれを慎重に取り扱うというお答えはありましたけれども、私は、こういうその定めが存在することが、慎重に行うといいましても、なかなかできがたいガンになっていると思うのでありまして、かかる疑点についてはすみやかに整理をする必要がある、こう考えるの再あります。また、免税額約百億円に近い石油及び粗油に対する免税につきましても、先ほど指摘いたしましたように、かなり検討すべき要素が含まれております。私は、この問題についても、政府が全般的な情勢を検討してあらためて考え直してもらう、こういう措置が必要であると考えるのであります。ことに、電子計算機のごときものに対しての免税は、まことに不当なものでありまして、これまた断じて許すことができない。内容をあげれば、各品目について私はこれを具体的に指摘をしなければならないのでありますけれども、政府は、次回は関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案という名称を変えてわれわれに提案をする、そういう検討をなさるというお話でございましたから、そのときは一つ、今日私どもが反対をした理由をしさいに検討しまして、そうして善処せられんことを希望いたすのであります。  以上、私どもの反対の理由を申し上げて、政府の善処を要求いたしておきます。
  268. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 他に御意見もなければ、これにて討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  269. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 御異議ないものと認めます。  これより採決に入ります。関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  270. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 多数でございます。よって本案は、多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては、先例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  271. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案及び所得税法の一部を改正する法律案、以上二案の討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  272. 大矢正

    ○大矢正君 私は、社会党を代表して、この二つの法律案について反対の立場を明らかにするものでありますが、きょうは相当時間もおくれておりますし、いろいろの理由がありまして、本会議での反対討論は行わないことにいたします。従って、この委員会で私どもの反対する立場を特に明らかにしておきたいと思います。  基本的な問題について、三点私はまず反対の討論をいたしたいと思うのでありますが、ますその第一は、今度は法人税法、それから所得税法の一部改正等提案がございましたけれどもどうも考えてみますと、今まで年々法律の改正が行われて参ってはおりますけれども、その改正案というものが非常にばらばらでありまして、体系的にはどうも均衡がとれないというきらいがあります。先ほどの委員会の中でも私は明らかにしたように、かりに法人税法を検討して、その税率の引き下げを一つ行おうといたしますれば、当然これが個人所得者への影響がありますから、税法というものは総体を考えて改正しなければならないのでありますが、昨年は法人税法が改正されたが、ことしは今度は所得税法という形で、非常にばらばらの面が見受けられるのでありまして、こういう点では、まず非常に私は遺憾だと存じております。  それから、第二点の問題といたしましては、特にこれは所得税法との関係でございますが、生活費に食い込まない税制の確立ということを特にこの際強調しなければならないし、こういう立場からも反対の討論をいたさなければならぬわけでありますが、かりに月三万円で二人の扶養家族を持っている人の今度の所得税法減税による結果というものは、どういうものが現われるかといいますと、私の計算では、三百円前後にしか減税の額はならないわけであります。一日に計算をすれば約十円であります。これだけの減税にしかならないのにもかかわらず、かつては私鉄の運賃値上げを行い、さらには今度は揮発油税その他の値上げを行うことによって物価のはね返り、こういうものを考えると、事実法律それ自身では減税はされておりますけれども、国民の総体に与える影響の面では、生活がむしろ低くなるということが考えられるのではないかと私は思いまするし、そういう面では、私鉄の運賃値上げを了承したり、揮発油税の引き上げを強行する政府の態度については、税法上の関連からいって私は非常に納得ができないのであります。  それから、第三点目は、行政をするために租税を徴収しなければならないということは当然の理であります。しかし、翻って考えてみますると、もしそういう立場から公平に租税が徴収をされ、そして行政をされるとするならば、私はやはり政府がこの行政について十二分にその効果を考慮しなければならないのじゃないかと思うのでありますが、大蔵大臣の提案によることしの予算書をながめてみますと、千五百億円をこえるような膨大な再軍備の予算が盛り込まれております。この論議は今ここでする気はありませんが、かりに千五百億円をこえるような膨大な再軍備の予算をぜひ作らなければならないのだとするならば、私は、そういう面では明かに一般の低所得者階層の保護というものがなおざりにされているのでありますから、この際徴税の公平を期するという意味では、租税特別措置ないしは今議論になりました関税関係法案等で非常に多額の減免税を行なっていることについては、これはやはり法律通り一部のものを除いては徴収をして、その金を低所得者階層に対する社会保障の問題その他の問題に振り向けるべきではないか、このように私は考えまして、租税の公平の原則というものはこういうところから考えてこなければならないと、かように考えて、基本的に私は反対をいたしたいと思います。  それから、具体的にわたりまして、所得税法の改正の問題で特に控除の額が非常に少いということは、先ほどの一ヵ月三万円の例を申し上げた通りでありますが、先般大蔵省から出されました資料をながめてみましても、わが国の扶養控除の金額というものは、米国、英国、さらに西独等と比べまして、非常に些少である。これだけでは、とうてい生活費に食い込まない形で今後国庫が負担をしていくということは不可能であります。従って、私どもは、何といってももっと大幅に扶養控除は引き上ぐべきでありますし、それから大蔵大臣も先ほど私の質問に対してある程度御了承をしておったと思うのでありますが、特に配偶者控除につきましては、これは扶養控除とは切り離して、大体基礎控除と同額程度の控除をすべきではないかと考えておりますし、先進欧米諸国その他の税法関係をながめてみましても、大体そういう傾向であります。こういうことが改正をされないということは、まず所得税法の反対理由として私は申し述べなければならないと思うのであります。  それから次に、租税特別措置法でございますが、これも先ほど委員会質問をいたしました通り、三十三年度の見込みは八百億円のこの措置によるところの減免税である。ところが、三十四年度においては九百九十億円にはね上っておる。これはまことに遺憾なことでありまして、大臣の説明によりますと、大体数項目にわたるところの整理が行われているやに承わりますけれども、しかし、整理をして、かつなお、百九十億円もの膨大ないわば減免税がふえるということは、税法の原則からいってこれはもう賛成がいたしかねる問題でありまするし、さらにまた、私は終戦以来、もちろん三十二年には全面的改正は行われておりますけれども、この種の特例措置というものがいつまでも継続されるということについては納得がいきません。十年も十五年も続くような特例ないしは特別措置というものはあり得ないので、そんなに長期間にわたる特例措置や特別措置をしなければならないとするならば、本法にうたうべきであって、こういう特例の措置を設けるべきではないと私は考えます。  なおまた、預貯金利子に対する減免税の問題をとらえましても、配当に対するところの課税の問題につきましても、今がこういうものを打ち切る最大のチャンスであると私どもは考えておりまするし、この際にちゅうちょして、これを多少の手直し程度でとどめるということは、これまた理解できないところでありますし、先ほど申し上げましたように、こういうものこそ今打ち切って、これらの百五十億円に上る金額を社会保障の充実や低所得者や貧困な人々に対するところの保障の金に振り向けるべきであると私は考えておりますし、さらにまた、国内の金利というものは、外国金利に比べまして非常に高額でありますから、そういう意味では、わが国の銀行預金というものは決して外国に比べて劣悪な状態に置かれておるとも限りませんし、また通貨管理制度の現況のもとにおきましては、外国へ預貯金が流れていく危険性もおそらくないと思う。かりに、よしんばあったとしても、日本の金利の方が高いという現況からいたしましては、これ以上預貯金に対するいわば優遇策をとる必要はないと考えております。  その他、輸出所得等に対するところの減免についてはいろいろ議論がございますが、時間の関係がございまして、以上をもって私の反対討論を終ります。
  273. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 他に御意見もなければ、これにて討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  274. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 御異議ないと認めます。  これより採決に入ります。所得税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案を問題に供します。右両案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  275. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 多数でございます。よって両案は、多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては、先例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  276. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  最後に、法人税法の一部を改正する法律案の討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もなければ、これにて討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  277. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 御異議ないと認めます。  これより採決に入ります。法人税法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を衆議院送付案の通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  278. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって衆議院送付通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては、先例により、これを委員長に御一任願いたいと思います。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  279. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  これにて散会をいたします。    午後七時三十九分散会