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政府委員(
賀屋正雄君)
お答え申し上げます。御
質問の、民法の
規定さえあれば十分であって、特に特別法を作る必要はないではないかという御
質問でございますが、この点につきましては、たびたび申し上げておるのでございますか、接収貴金属は、連合国占領軍が管理中におきまして、インゴットだとか、一部の美術品を除きまして大
部分のものを溶解混合いたしたのでございまして、まあ私どもこれらのものを不
特定物と呼んでいるのでございますが、このような不
特定物は数人の人の共有
関係にあるわけでございまして、その分割の
方法につきまして、民法の
一般原則で
処理いたそうといたしますと、なかなか複雑な
手続が必要であるというわけでございます。と申しますのは、民法の原則で申し上げますと、このようなものはいわゆる混和の状態にあるのでございまして、それを分けるに当りましては、その物に対して所有権を主張する
人々か全部集まりまして、どういうふうに分割するかという協議をいたし、その協議が成立したところによって分割するわけでございますが、御承知のように、
本件は相当の年数もたっておりまして、その間に所有権の移動ということもありますし、
関係者も非常に多数でございまして、全国に散らばっておるというような
関係で、だれとだれとが
一体協議すればいいのかというような点もなかなかわからないわけでございまして、従って、結局はその所有権を主張する人たちか、裁判所に対して訴えを起す、そうして裁判所にしかるべき
方法によって分けてもらう、こういうことにならざるを得ないと思うのでございます。まあ、訴訟が提起されますと、裁判所はいやでもおうでも何らかの
結論を出さざるを得ないわけでございます。しかしながら、所有権というのは絶対的な権利でございますので、一度そういった数人の人たちの申し出によりまして分割の
方法がきまったといたしましても、またあとからその物に対して所有権を主張するという人が出てこないとも限らないわけでございます。そういう人がまた新しく名乗り出た場合には、結局また裁判のやり直しをする、また前に分割を受けた人に対して不当利得の返還請求をするというような複雑な
事態が生じてくる。問題はいつまでたっても片づかない。こういうことで、ただいま御
審議願っておりますような、一定期間にその物に対して所有権を主張する人方に対して、全部にその返還請求を出していただきまして、その請求の出そろったところで、いろいろな証拠資料等を突き合せまして審査をいたしまして、
法律で定めました、この特別法で定めました一定の
方法によって
処理をしてケリをつけよう、こういう趣旨でございます。
それともう
一つ、民法の
規定だけによって
処理をいたそうといたしますと、不合理な結果が生ずるという点につきましては、先ほど申しましたように、分割の裁判に当りまして共有者の一
人々々の持ち分が判然としておらないという場合におきましては、民法の
規定によりますと、各共有者の持ち分は相ひとしきものと推定すると、こういうことになっております。接収されました貴金属等につきましては、品位等がはっきりしないもの等もございますので、裁判所が正確な割合いでこれを分けるということかできない場合も多いのでございます。その場合には、この
規定によりまして、国の持ち分も
一つに
勘定するし、それから、A、B、C、それぞれに対して所有権を主張するほかの数人の民間人かあったといたしますれば、そのおのおのがまた一という工合に、国は
一つと見て、あとおのおのの請求権者の持ち分と対等に分割する、こういうふうな結果になるわけでございます。
大体以上のような、
手続的にもなかなかいつまでも片づかない、また裁判においても不合理な裁判が行われる結果になるというような点からいたしまして、特にこの
法律を作りまして、一定の
方法によりまして、民法の原則の
規定に対する例外といたしまして分割の
方法を
規定して、統一的に最終的な
処理をしようということでございます。
なお、特にこの
法律か必要なわけといたしましては、この民間に返還いたします
部分につきましては、国が連合国占領軍から引き継ぎまして以来今日まで、それから返還をし終りますまで、管理をいたしておりますに伴いまして、必要と認められる費用を償う
意味におきまして、一割の
納付金をとるということにいたしておりますが、これなども
法律の
規定が必要かと思われます。
それから第三番目の理由といたしまして、戦時中
政府にかわりまして、金、銀、白金、ダイヤモンド等の回収を担当いたしました交易営団あるいは中央物資活用協会、そういったような機関が回収をいたしまして、まだ国に引き継がないうちに接収された貴金属があるわけでございます。そういうものは、すでに
国民の手を離れまして中間の代理機関あるいは
委託機関の手元にあったものでございますか、実質的にはもう国に所有権が移っておると見るべきではなかろうかと思うのでございます。ただ、形式的にはそういった国以外の機関に所有権があるわけでございますので、これらを国に帰属させますためには、やはり
法律の
規定が必要になってくるわけでございます。
大体以上申しましたような点から、特にこの
法律を制定いたそうとするものでございます。