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1959-03-06 第31回国会 参議院 大蔵委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月六日(金曜日)    午後一時五十八分開会   —————————————   委員異動 本日委員井上知治君及び小酒井義男君 辞任につき、その補欠として田中啓一 君及び島清君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     加藤 正人君    理事            土田國太郎君            山本 米治君            大矢  正君            平林  剛君    委員            江藤  智君            木内 四郎君            迫水 久常君            田中 啓一君            西川甚五郎君            廣瀬 久忠君            宮澤 喜一君           小笠原三九郎君            島   清君            椿  繁夫君            野溝  勝君            杉山 昌作君   政府委員    大蔵政務次官  佐野  廣君    大蔵省主計局法    規課長     小熊 孝次君    大蔵省管財局長 賀屋 正雄君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君   説明員    宮内庁管理部管    理課長     本郷 定男君    大蔵省管財局接   収貴金属管理官  池中  弘君    農林省農地局建    設部長     清野  保君    水産庁漁政部漁    船保険課長   杉田 隆治君    建設省河川局次    長       曾田  忠君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国有財産法第十三条第二項の規定に  基き、国会議決を求めるの件(内  閣提出、衆議院送付) ○特定多目的ダム建設工事特別会計法  の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○漁船再保険特別会計における給与保  険の再保険事業について生じた損失  をうめるための一般会計からする繰  入金に関する法律案内閣提出、衆  議院送付) ○接収貴金属等処理に関する法律案  (内閣提出)   —————————————
  2. 加藤正人

    委員長加藤正人君) これより委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  三月六日付をもって、小酒井義男君、井上知治君が辞任されて、その補欠として島清君、田中啓一君が選任されました。   —————————————
  3. 加藤正人

    委員長加藤正人君) まず、国有財産法第十三条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件を議題といたします。
  4. 大矢正

    大矢正君 これは、これ自身、例年ほとんど皇室財産がふえるたびに出てきている問題だし、国有財産法で三百万円以上云々という形で規定されている問題ですから、特段、取り立ててこのことについての可否を論ずる気はないのですが、前もこの委員会でいろいろ議論があったと思うのですが、今の皇居開放するか何かして、そうしてイギリスのように、宮殿を作って集約をする必要性があるのじゃないかというような強い意見があった。それに対して、宮内庁からも、現在のところそういう点について検討している段階であるというようなことをお答えになっているわけでありますけれども、きょうは宮内庁の方どなたかお見えになっているはずだから、もしその後の経過について何かお考えがまとまった点があったら、この際参考のために伺わしていただきたいと思います。
  5. 本郷定男

    説明員本郷定男君) お答えします。先般来いろいろ宮内庁長官以下がお話を申し上げている以上に、別に具体的なものも進んでいないのであります。やはり、東地区と申しまして、先年も当委員会の方々の御視察を願った東部地区と申しております方面でございますね、ああいう方面につきましても、今後、必要な皇室用財産の所在しておる部門など、それからその他整備する必要があると認められる建物などにつきましては、今後どうするかということにしまして、かなり土地整備をいたしまして、一般にもっと自由に国民利用ができるようにということを計画をしておるわけでございまして、先年、当委員会でもいろいろ御承認願いました東地区に、皇居参観者の、毎月数万の国民皇居に御参観になる際の御休憩所というものが非常に不完全であるというようなことから、三百坪ばかり、そのほかその周辺を非常に美しく庭園化しまして、今年から、この一月から使用いたしておりまして、こういったような土地整備建物整備をはかって、多くの国民の御利用に供するというようなことにまず着手をいたしておりますが、こういったような意味合いで、いろいろ従来から雑然とした建物のあるものも順次これから改革していきたい、このように思っておる次第でございます。  そのほか、土地整備と申しましては、道路補修云々という問題で、去年も今年も御審議を願っておるわけでありますか、かくしていろいろ整備されていくだろうと思いますが、今お答えする範囲では、そういったことで御了承を得たいと思います。
  6. 大矢正

    大矢正君 あなたも御存じのように、最近新聞なんかでは、特に皇居を移して、今の皇居の跡を開放すべきじゃないかというような意見が出たら、またこれに対する反対意見があったりして、ある時期には相当新聞などにおいても議論が多かった問題なんです。宮内庁としては、こういうような国民の間における議論というものを真剣に取り上げたことがあるのですか。
  7. 本郷定男

    説明員本郷定男君) そのことにつきましては、本年から、皇居宮殿再建という問題とからみまして、宮殿造営審議会というものが開かれる予定になっておるようでございますが、このことにつきましても、十分この審議会に諮りまして、論議の帰趨をわれわれもキャッチしたいと思っておりますが、いろいろ御意見の点は、いろいろの資料でわれわれも随次検討いたしておるわけでございますが、今のところ、先般も長官からも御回答があったようでございますが、皇居再建というような問題は、皇居を移転するというようなことについては、今のところ別に考えていないというのが宮内庁意見でございますが、そのほか、その土地を合理的に利用するというような問題、あるいは開放するにつきましても、どう問題を把握していかなきゃならぬかということにつきましては、関係筋で熱心に研究いたしておるわけでありますが、それに対する決定的結論というものはまだ出ておりません。
  8. 大矢正

    大矢正君 どの程度のものかわからないのですけれども、新聞等がやはり大幅にこの皇居開放問題等について取り上げているということは、そういう声が国民の中にあるということですから、必ずしも開放するかしないかは別問題としても、そういう議論に対しては、宮内庁としても答える意味において、審議会に対する答申事項として、皇居開放とか、また移転等を、総体を含めて、まあ意見を出させるような方向に私はすべきじゃないかと思うのですがね。それは必ずしも、その結果開放すべきであるとか、あるいはしない方がいいとかといって限定された結論をもってやる場合じゃなくて、やはり国民に対して、確かに国民の一部からそういう声が出ているけれども、しかし、今日の段階では、まあこういうような理由もあるから、この際当分の間はそういう点についてはまあやめた方がいいじゃないかというように、やはり答えてやる必要性があるのじゃないですかね。そういう意味では、どうですか、審議会などに諮問をする考えはありませんか。
  9. 本郷定男

    説明員本郷定男君) もちろん、そ特国民の声につきましては、われわれはお答えするために十分の研究をいたしておるわけでございますので、決して国民の声を聞かないふりとか、あるいはお答えしないというような考えは毛頭ございません。
  10. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 他に御発言もなければ、これにて質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もなければ、これにて討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 御異議ないと認めます。  これより採決に入ります。国有財産法第十三条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件を問題に供します。本件異議ない方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  13. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 全会一致でございます。よって本件は、全会一致をもって異議ないと議決いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては、先例によりまして、これを委員長に御一任を願いたいと思います。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。   —————————————
  15. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 次に、特定多目的ダム建設工事特別会計法の一部を改正する法律案議題といたします。  御質疑のある方は御発言を願います。
  16. 大矢正

    大矢正君 この法律案そのものは、別に悪い法律じゃないし、特段取り立てて絶対反対という立場もないのですが、ただ、私考えてみて、こういうことは前の会計法を作るときにすでに考えられたことではないかと思うのですが、それが今日やっと一部改正で提案をされるというのは、どうもまあ理解ができないので、大蔵省人々や、直接これに携わる建設省人々の思慮の浅さから、今日までこういうものに気がつかなかったのかどうか、この際一つ、念のために聞いておきたいと思う。
  17. 小熊孝次

    政府委員小熊孝次君) ただいまの御質問、まことにごもっともな御質問でございまして、ただ、この特別会計は三十二年度からできたわけでございますが、三十二年当時におきましてはそういうことが一応予想されなかったという事情かございます。それで、この当時できました特別会計といたしましては、同時にてきましたのは特定土地改良特別会計で、この特定土地改良特別会計におきましては、これは受託工事というものができるように当初からなっておりました。この特別会計と、それから特定多目的ダム特別会計というものは同時に提出されたわけでございますが、一方の方は、その当時予想されなかったものでございますから、まあ受託工事というものを入れないで進んだと、こういうような経過になっておるわけでございます。  ところが、三十三年度におきましてそういう必要性が生じまして、そうして事実上の問題といたしまして、そういう本体の工事と密接不可分な受託工事というものが出て参ったというような関係もございまして、そうして一応歳入歳出外として処理してやっておるわけでございます。このやり方は、結局、ちょっと御説明にわたる次第でございますが、一応工事請負業者特定業者契約を結ぶわけでございますが、その場合、受託工事に相当する部分につきましては、その委託者に相当する者から直接金を支払う、こういう形で事実上処理したわけでございます。ただ、そういたしますと、工事設計監督というようなものはやはり一体としてしないと、こういう性格の工事でございますから、適当でないわけでございます。そういうような関連もありまして、御指摘のように、おくればせではございますが、今回特別会計法を直しまして、はっきり受託工事ができると、こういうことにいたしまして、そうして工事一体的な円滑な遂行に資しよう、こういうことで御審議を願っておる次第でございます。
  18. 大矢正

    大矢正君 あなたは、私の質問の答弁でなくて、どうもはぐらかしておるようだけれども、前の法律案そのものを出すときには、こういうような受託工事に対する会計の内容は明らかにすべきであるとした方かいいという考え方はなかったのですか。
  19. 小熊孝次

    政府委員小熊孝次君) その点は、先ほど触れましたように、その当時としては一体として処理しなければならぬというような実態がない、こういうような予想のもとに進んだわけでございます。
  20. 大矢正

    大矢正君 この受益者負担金と、それから委託者受託工事に関しての納付金の問題ですが、これは仕事をする前に納付金負担金というものを徴収するのか、事業が完成をして、そうして引き継いだあとに受託工事費を納入させるのか、あるいは受益者負担金を納入させるのか、この両方についてお答えをいただきたい。
  21. 小熊孝次

    政府委員小熊孝次君) ただいまの御質問でございますが、工事をやります場合の資金繰りの問題になると思いますが、受益者負担金あるいは受託工事の場合の納付金につきましては、これは工事進捗に応じまして、その工事進捗に応じてなされます場合は、支払いに支障のないように納付していただく、こういうことでございます。これは、この特別会計法建前からいたしましても、これは工事別支払い元を設けまして、そこに一般会計負担金あいるは地方負担に見合うところの借入金、それから受益者負担金というようなものを入れまして、それによって業者に対する支払いというようなものがそこから出て参るわけでありますから、その一つでもおくれますと支払いができないということになりますので、工事進捗に応じて、業者に対する支払いなら支払いというものが可能なように取って参る、こういうことになっておるわけでございます。
  22. 大矢正

    大矢正君 そうすると、かりにダム建設を行なっていく過程で、発電取水品とか、そういうものが、付随して行われて、かりに発電取水口政府に依頼してやってもらった業者が、あるいはその団体が、納付金を納めない場合、その工事は途中でとまっちゃうわけですか。
  23. 小熊孝次

    政府委員小熊孝次君) ただいまの取水口の問題でございますが、そういう場合におきましては、あらかじめ事業計画を立てまして、そうしてあらかじめ業者との間に話し合いをつけまして、いつ納めるということをきめまして、事業に着手するわけであります。従いまして、その約束を履行していただくというのがこれは建前でございます。まあ、ただいまのお話で、もしそれがおくれたということになりますと、取水品工事はもちろんでございますが、その工事進捗かおくれるということは当然なことになりますので、従いまして、電気会社の方としても計画があるわけでございますから、それはなるべく努力をして納めると、こういうことになると思います。また、そういう建前にいたしませんと、取水口工事はできた、しかしながら納付金を納めない、委託納付金を納めない、こういうようなことになっては非常に困るわけでございますので、そういう建前で進んでおります。
  24. 大矢正

    大矢正君 それは、あなたの言うのは原則論だから、原則論はわかるんだけれども、法律解釈はどうかということになれば、それはそういう解釈が出るだろうけれども、私の質問はそうじゃなくて、こういう法律があるけれども、事実において地方自治体あるいはまたその他電力会社というような事業体団体が頼んで、委託をして、工事をやってもらってはいるのだが、実際に金が払えない。特に、地方自治体なんかの場合には赤字が多いので、かりに道路をつけてもらうような場合についても、なかなかそれが財政上困難であるというようなことで、事業進捗するけれども、それに付随した金の支払いが困難だという場合には、もうきちっとそれ限りでもって仕事をやめちゃうのですかどうかということを聞いているのです。納付された金額だけの仕事はやるけれども、納付されない部分仕事をとめちゃうのかどうかという、そういう具体的な、現実的な問題を聞いているのです。
  25. 小熊孝次

    政府委員小熊孝次君) まあそういうことはあまりないとは思いますけれども、そういう場合が起った場合にどうするかという問題でございますが、そういう場合には、業者仕事を進めていくかどうか、金の支払いは行われないけれども、請負業者なら請負業者仕事を進めていくかどうかと、こういう問題が出てくる、こういうことになると思います。業者といたしましては、前金払いをいついつにしますというようなことで進んでいるわけでございますが、しかしながら、納付金が納められない、あるいは納めないといったような場合におきまして、請負業者側といたしまして、まあ若干おくれても仕方がないということで仕事をどんどん進めていくか、あるいはそこで払ってもらえないからということで仕事をストップするかと、こういうような問題で、またお互いに話し合いをして、どう解決するかという問題になるだろうと思います。
  26. 大矢正

    大矢正君 あなたの言っているのは、この法律を作る前の話ですよ。この法律を作る前に、業者委託者との間にいわゆる決済が行われている段階では、これは確かにあなたの言うことはその通り進むかもしれぬけれども、この中に今度は特別会計というものか法律のもとに作られて、そうして国がその間の収支を経理するということになった場合には、結局、工事委託者業者との関係じゃなくて、その間に国が介在をするのですから、結局、直接業者との話し合い国対業者ということになるのでしょう。その場合にどうなのかという問題なんです。
  27. 小熊孝次

    政府委員小熊孝次君) その場合には、国といたしましては、業者対国の問題でございますので、これはあくまでも債務を履行するということでございますから、支払わなければならぬ。しかしながら、国としてはその受託工事の方の勘定納付金が入っていなければ会計法上は支払うことができない、こういうことで、これを支払うということは会計法上はできませんから、それですから、それを支払うということができないということになって、業者に対する関係では債務不履行の問題か出て参ります。しかし、それかといって、会計法上の規定に反して小切手を切るというわけには参りませんから、そこで進退きわまる、こういう問題が出て参りますので、従いまして、国側といたしましては、確実に委託者が払えるというような保証のもとに受託工事をやる、こういうことにせざるを得ない、こういうことになると思います。
  28. 大矢正

    大矢正君 かりに業者と国が工事の取りきめをする場合に、着工するときには幾ら、それから途中で幾ら、それから最終的に完成して引き渡すときに何分の一と、こういうようにして、いわゆるこの工事を直接やるのは国と業者との間なんだから、だから、国と業者との間に当然支払いの取りきめが行われるのだから、ですから、左の方から入ってこないといって国が業者に金を払わないということは現実にできないでしょう。だから、それをどうするのかと聞いているのです。
  29. 小熊孝次

    政府委員小熊孝次君) そういう場合に、一応受託でございますから、これは大体におきましてまあ私法的な関係だろうと思います。従いまして、そういう場合になりますと、どうしても相手が約束をしたものを払わないと、こういうことになりますと、これはまあ訴訟で取るとか、そういう方法で取るよりほかないのだろうと思います。これは分担金とかそういうものでございますと、この多目的ダム法にもございますように、強制徴収規定がございますので、滞納処分でやる、こういう方法も許されておりますが、一応受託ということでございますので、それにつきましては、ただいま申しましたような方法によって最終的には解決せざるを得ない。従って、国側としては確実にその委託料を取れるかどうかということを確かめた上、しかもその支払いに対業者との関係国側債務不履行を起さないように、そういうような配慮を払いながらこの手続を進めていく、こういうよりほか仕方がないのじゃないか、こういうことでございます。
  30. 大矢正

    大矢正君 この法律をわざわざ改正をして、業者とそれから仕事をしてもらいたいいわば地方団体その他の、従来までのいわばやり方では、いろいろと債務不履行というような問題も起るから、国がこれを特別会計の中でやることによってある程度債務に対する裏づけができ上るのだから、だから、そういう意味では、工事が片ちんばになって、さっきの話じゃないけれども、堰堤はできたけれども取水口ができないから、完全な発電能力が生まれてこないというような事態が起らないだろうか。だから、そういう意味では、この法律改正によって、従来まで行われていたようないわば工事委託する者と業者との直接取引、取りきめじゃなくて、国がやるようにすればいいんじゃないか、こういう思想のもとにこれはできたのじゃないでしょうか。
  31. 小熊孝次

    政府委員小熊孝次君) ただいま先生のおっしゃいましたように、やはり時期的なそごが生じたり、それから一体とし監督し施工しなければならぬものが特に分れるということによって、全体としての姿が、でき上りがうまくいかない、こういうようなことのないようにしようと、こういう配慮からできておるわけであります。
  32. 大矢正

    大矢正君 そうだとすると、あなたは理屈一点張りで、債務不履行とか何とか言うけれども、事実の問題においては、工事を依頼した側の方で金を払わない場合でも、工事を請負った業者に対しては国が立てかえて金を払わなければならぬという事態があるのでしょう、こう僕はさっきから聞いているのです。
  33. 小熊孝次

    政府委員小熊孝次君) 立てかえて払うという意思は別にないのでございまして、結果として、たとえば前金払い全額最初に取ってしまいまして、工事進捗のいかんにかかわらず委託のときに全額を、委託料全部を払わしてやるか、あるいは業者との関係で前払いなり何なりしなければならぬというような場合に、その時期に即応して取っていくかという、問題は二つあると思います。絶対確実な方法といたしましては、委託契約を結んだときに全額取り上げて、そうしてそれを受託工事勘定の中へ入れておきまして、それで国の方がその状況に応じまして、業者との支払い関係債権債務関係に応じて払っていくという方法、これが考えられる。そういたしますれば、これは一番確実な方法だと思います。しかし、地方団体等にしてみましても、従来の建前から申しますと、この業者に金を支払う場合におきまして、これはやはり出来高に応じて払っていくという条件よりも非常に酷になるわけであります。そういたしますと、大体われわれの考えておりますのは、これは具体的に受託の場合の条件をきめる場合、建設省と御相談しまして具体的にきめなければならぬと思いますが、やはり大体従来と実情は変らないような程度で、そうして業者との関係支払いをする場合にそれに応じて納めてもらう、こういうのが大体筋じゃないか。ただ、そういう建前をとりますと、ただいま先生がおっしゃいましたように、じゃ、そのときに払わなかったらどうするかという問題になりますと、結果といたしまして立てかえという問題が出てこないかという、こういうお話でございますが、しかし、その場合でも、会計法建前としては、業者に対する関係では国が債務支払い処理ということになりますが、会計法上は小切手を切るわけにいかぬ、こういう事態が出て参ります。そういうことになっております。
  34. 大矢正

    大矢正君 だから、そういうことになると矛盾が起きてこないですか。必ず一つ矛盾に僕は直面すると思うのですよ。かりに、その工事のいわゆる実施については国が業者と行うのですから、この面では明確に債権債務というものが発生をしているのでしょう。ところが、会計法それ自身ではそういうものを負担する何ものもないということになった場合に、そこに矛盾が起きてこないか、私はそれを心配するのです。
  35. 小熊孝次

    政府委員小熊孝次君) ですから、そういう場合には矛盾が起って参りますので、実際の取扱いといたしまして、一時にその委託をしたら全部完全に、委託契約をしたときに払えというのは非常に酷になる、こう考えますので、その進捗状況に即応いたしまして円滑に支払いが行い得るように、やはり事前十分話し合いをつけて、そしてやっていくということにならざるを得ないだろうと思いますが、ただ、そこにはどうもやはりどうしても危ないという場合であれば、これはやはり事前に相当の金額を納めさして、そして受託工事勘定にプールしておきまして、そうしてそれから払っていく、こういうことにせざるを得ないと思います。
  36. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 私も、じゃあ一つ例をあげて、どういう支払い関係になるのかお尋ねしたいのですが、ここに出ておるのを見ると、二級国道ですが、大船渡・本荘線、これが関連事業でやられるようですが、このダムは石淵ダムだと思います。ところが、石淵ダムは数年前にもう完成しておる。それなのに、このダムにこの二級国道がなぜ関連事業として成功しなければやっていけないのか、この理由をまず承わりたい。
  37. 小熊孝次

    政府委員小熊孝次君) ちょっと、具体的な内容ですから、建設省の力からちょっとお答えしていただきたいと思います。
  38. 曾田忠

    説明員(曾田忠君) お答えいたします。今の資料に出ております国道大船渡・本荘線道路改良工事、これは湯田ダムに関連いたしまして……。
  39. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 湯田ダムですか。そうすると、湯田ダムに関連して、五千六百五万円の三十四年度の仕事ですか、その道路道路特別会計の方とは関係がございませんか。
  40. 曾田忠

    説明員(曾田忠君) この線は、ちょっとはっきり覚えておりませんが、道路の補助事業として補助が別についておるのじゃないかと思っておりますが、そういたしますと、道路特別会計関係があると思います。
  41. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 それで、この多目的ダム特別会計道路特別会計と、どういうふうにその預金部資金が運用されておるのか。具体的な一つの対象に対して、片方の会計も使われ、片方の会計も使われるということになるのじゃないですか。
  42. 曾田忠

    説明員(曾田忠君) 道路特別会計におきまして、補助事業でございますから、特別会計から国の補助金が出るわけでございます。実際の工事は県の工事になりまして、県からこの特別会計委託を受ける、そういうことになっております。
  43. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 そこをもう少し丁寧に、私のみ込みが悪いものだから、お聞かせを願いたいと思います。そうすると、このダム特別会計道路特別会計から回った金が、ぐるっと回って県から入ってくると、こういうことですか。
  44. 曾田忠

    説明員(曾田忠君) 道路特別会計によります補助金と、それから県の負担いたします負担分と合わしたものが道路改良の工事費になるわけでございますが、合わしたものをこちらが委託を受ける、そういうことになると思います。
  45. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 それで、県の方が結局、何と申しますか、起債なら起債を求める、その分を道路特別会計が立てかえる、預金部資金の方からそういうような形があるのじゃないですか。そうしてあとから金は県が納付する。そういう金が多目的ダム特別会計の方にどういうふうに入るのか。
  46. 曾田忠

    説明員(曾田忠君) 多目的ダム特別会計は直轄事業だけでございますが、道路特別会計におきましては、直轄事業と補助事業の国費負担分、従いまして、今先生がおっしゃいました点は、直轄事業につきまして、その直轄事業地方負担分、補助事業でございますから……。話が違ってくると思います。
  47. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 それでわかりましたが、もう一つこの際、ほんとうは政務次官にお尋ねすればいいところですが、一応法規課長に伺っておきますが、この道路でも、多目的ダムでも、去年も道路特別会計法律案が出た際に問題にもし、予算委員会でも問題にしたのだが、県の負担金納付ですね、その利払いの関係ですね。特別会計は安い金利の金を使ってやっておるのに、県の借りたのは高い利子のを借りて、高い利子だけで特別会計の方へ払う。こういう形になっているのがどうにかならぬか——、特別会計がよけいに取り過ぎるのじゃないか、この問題について論議があって、建設大臣と。今後総体的な問題として考究しますなんといういい加減な答弁をしておったんですが、何ら検討していないんですか、不合理だということにならぬのですか。
  48. 小熊孝次

    政府委員小熊孝次君) 私、直接担当しておりませんが、その場合、私の伺っておりますところでは、建設省、それから自治庁、大蔵省と検討を続けまして、あの問題は三十三年度に起きた問題でございますから、これから三十三年度の分につきまして……。地方債の納付というのは三十四年度の初めに行われますので、それに間に合うように今検討いたしているということを伺っております。
  49. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 そうすると、三十四年度のやつは三十五年度の支払いになるんですが、なおのこと、この問題については何らかの結論を得られるものと期待しておっていいわけですか。
  50. 小熊孝次

    政府委員小熊孝次君) 何らかの結論は出るというふうに考えていただいてけっこうだと思います。
  51. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 理論的には不都合であるという認識は一致しているんですか。
  52. 小熊孝次

    政府委員小熊孝次君) 理論的な問題でございますが、これにつきましては、直轄でやった場合に、地方の負担金を地方債で納付する。こういうものはこの道路だとか、そのほか特別会計関係以外にも、一般会計でもございます。ですから、六分五厘——そのものが高いか低いかという問題は別といたしまして、その特別会計が借入金を六分でして、そうして六分五厘の負担金をとることはどうか、こういう問題があるわけでございます。一般会計では借入金をやりませんで、直轄をやって、そうしてその負担金を六分五厘の地方債でとっている、こういう問題があるわけでございます。私の伺っているところでは、そういう理論的な問題というよりは、地方財政の状況考えて、どの程度まで歩み寄るかということが焦点になっているというふうに私は伺っているのでございます。
  53. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 佐野政務次官にお願いしておくんですが、いつの委員会でも、早晩結論を得られたら、その件についてお知らせを願いたい。
  54. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) 承知いたしました。
  55. 野溝勝

    ○野溝勝君 農林省の係官が来たところでお伺いすれば、私の質問せんとする点が非常に便宜だと思いますが、まだ見えません。それでは、その際にまた重複するようでございますけれども、関連して質問することにいたしまして、最初に河川局次長さんの方から願いたいと思うんです。  昭和三十二年、特定多目的ダム法がもとでございますけれども、右多目的ダム法ができるときに、私はあらかじめ、警告を申しては失礼でございますが、注意を促しておいたわけです。と申しますのは、この多目的ダム法というのは、従来の河川法ではなかなか複雑な事態が起ってきて処理できないから、今後の運営上、河川法はこれを廃し、この多目的ダム法にするという建前説明をされたわけですが、しかし、今日この多目的ダム法ができ、それに関連して、ただいま議題になっております特別会計法とからんで、経理負担等で問題が起っておるのでございます。とりあえず、このダム法に関連して問題の起っておる個所が何件くらいあるか、この際一つ当局からお答えを願いたいと思います。もし、あなたの方で何もないと言うなら、私の方から申し上げますけれども……。
  56. 曾田忠

    説明員(曾田忠君) お答えいたしますが、どういう点で問題になっておるかという点が……。ちょっとお教え願いたいと思うのです。
  57. 野溝勝

    ○野溝勝君 もっとざっくばらんにいえば、農林省の係官が来てからの方がいいと思うのですが、負担金の問題で各地に問題を起しておるのです。たとえば、山形県などにおいても県会で問題になっておるし、富山県なんかにおきましても、黒部渓谷のダムの問題で、射水郡で問題になっておるし、私の長野県等におきましても、まあ一部問題になっておる。それから愛媛県におきましては、先般道前道後の農業改良区につきまして、大きな問題が起っております。こういうふうに負担金の問題について紛糾しているのですが、これはおもに農林省当局の方がおわかりになってると思いますので、その問題は、農林省の係官が来てから、お答えを一緒に願うことにいたしましょう。  最初にお尋ねをしておきたいのは、私は、この多目的ダム法ができたときに、一体それを対象とするものは何かという質問をしたときに、その点がどうも明確になっておらない。この法律から見ると、農民には関係があるようなないような、あいまいなものでございまして、ただ用水の問題等において、受益者負担をしなければならないと解釈される危険性がございますので、その点を尋ねたところが、それはさようなことになるという答弁でございました。この点、一体農民に対しましては、どういう点が具体的に負担の対象になるのか、この際一つ明らかにしていただきたいと思うのです。
  58. 曾田忠

    説明員(曾田忠君) お答えいたします。多目的ダムの目的といたしましては、洪水と、それから発電、農業水路、あるいは工業水路、上水道、用水、そういういろいろございますが、今お話しの農業につきましての負担金の問題でございますが、御存じのように、発電あるいは工業用水、上水道等につきましては、受益者負担金をとっております。しかしながら、農業用水につきましては、原則といたしましては負担金はとっておりません。これは簡単に申し上げますと、不特定多数の人の利益になる、そういうわけでございまして、受益の算定が困難になる、そういう意味におきまして、原則といたしましては、多目的ダム建設については農業関係負担金はとっておりません。  ただ例外といたしまして、特定の専用施設、つまりダムから特別に水路を開きまして、ある特定土地だけにつきまして灌漑用水を供給するという場合におきましては、普通の場合に計算いたしました受益金の大体十分の一と、その程度のものは負担金としてちょうだいするということになっております。これは土地改良区におきまして、御承知のように、農林省所管の灌漑用水のみのダムを作る場合におきましては、土地改良区に大体二割程度負担金をとっておる、それと同じような思想に基きまして、納付されておるものでございます。
  59. 野溝勝

    ○野溝勝君 私は前回も、今あなたの答弁のように解釈しておったので、これじゃ農民負担はたまらぬということで、当時河川局長に質問したときに、河川局長の答弁の中には、専用施設を設けた場合でも、現在工事中のもの及びすでに実施中のダムについては農業の受益負担をとらないと、こういう答弁をされておる。そうすると、あなたの言われた今の答弁は、局長答弁と違いまして、理解できない点が出てくるのですが、この点はどういうふうに一体割り切っていいのか、この点一つ具体的にお答え願いたいと思います。
  60. 曾田忠

    説明員(曾田忠君) お答えいたします。ただいまのは特定多目的ダム法の原則を申し上げたわけでございますが、契約金といたしまして、ただいま先生のおっしゃいましたような現在工事中のものにつきましては、ただいま申し上げました十分の一程度負担金をとるという規定は適用しない、そういう法文になっております。
  61. 野溝勝

    ○野溝勝君 そうすると、私はもっと具体的にお伺いするが、かような場合はどうでございますか。山形県で問題になった赤川水系、公共事業負担として県会の問題にもなりました。しかも、荒沢ダムの場合、農民が利益するような灌漑水路など、いわゆる専用施設が設定されておらないのです。従って、幾ら河川法、もとの二十九条ですね、規定してあったとしても、直ちに受益者負担として農民に課するということは、これは不可能なことじゃないか、それが一体どうして農家に負担をかけるのかということが問題になっておるのでございますが、これに対しては調査かないしは県の河川課の方から本省河川局の方に意見具申がありましたか、照会がございましたか。あるいは、これに対して調査したことがございますか、したことがありませんか。その点を一つお伺いしたい。
  62. 曾田忠

    説明員(曾田忠君) ただいまお話しの山形県の赤川の荒沢ダム、このダムは昭和三十年度に竣工したと思うのですが、だから、そういう何といいますか、特定多目的ダム法ができましたのは昭和三十二年でございまして、そういう問題はなかったかと思うのですが。
  63. 野溝勝

    ○野溝勝君 次長さん、昨年の県会で問題になってもめているのですよ、山形県の県会で。そこで、当局の答弁も慎重にやりたいと思うという、中央当局と打ち合せて慎重に善処したいと思うということでケリをつけているのです。というのは、県は、ダム設置は各町村に対し恩恵があるからというわけで、町村を相当勧誘したわけなんです。ところが、各町村はこんな十分の一になるような負担がやってくると思わぬものだから、最初賛成したわけなんです。ところが、いよいよ特定多目的ダム法というものができたことによって、莫大なる負担を負わされることになったので、びっくりして騒ぎ出したということなんです。その問題が今なおずっと騒いでいるのでございますが、そういうことについては、ただあなたが、昭和三十二年前にすでにできておったダムであるから、問題はないと思うと言うだけでは、私は済まされない。現実にそういう問題があるのでございます。これは、私はきょうここでどうという回答を求めるわけではございません。現実にそういう問題があるのでございますから、一応山形県の方に至急問い合せまして、そうして後日また私が質問をした節に、あなたからその結果をお答えいただきたいと思う。
  64. 曾田忠

    説明員(曾田忠君) 私もまだよく聞いておりませんものですから、十分に調査いたしましてお答えいたしたいと、そういうように考えております。
  65. 野溝勝

    ○野溝勝君 河川局次長さんのおるところで、好都合だから、農林省の係官を呼ばれたのですか。
  66. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 今手配は済んでおります。
  67. 野溝勝

    ○野溝勝君 それでは、関連がありますから、暫時休憩を願いたいと存じます。
  68. 加藤正人

    委員長加藤正人君) では、本案に対する質疑はあと回しにいたしまして、ちょっと……。
  69. 野溝勝

    ○野溝勝君 あと回しといっても、あしたでもあと回しになるから、はっきりしてほしい。
  70. 加藤正人

    委員長加藤正人君) きょうです。   —————————————
  71. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 次に、漁船再保険特別会計における給与保険の再保険事業について生じた損失をうめるための一般会計からする繰入金に関する法律案議題といたします。  御質議のある方は御発言を願います。
  72. 大矢正

    大矢正君 これは大蔵省の方にお願いしておきたいのですがね、私どもは提案理由を聞き、そして補足説明を受けたときに、本来であれば資料の要求をするのが当然かと思いますけれども、前にも私このことを言ったつもりでいるのだが、要求をされてからしぶしぶ資料を作って出されるということになると、かりに一日で上るものか二日なり三日かかるということになりますから、言われなくても、頭脳明晰な大蔵省の官僚の方々だから、わかるのだから、大体の資料はこれから付随して、提案理由とともに出してもらいたいと思うのです。たとえば、今度の再保険の問題についても、やはり現在の組合の状況というのはどうなっているのか、あるいはまた、たとえば保険会計の年度の収支じりというのはどの程度になり、一般会計からの繰り入れが今日までどのように行われてきたのか、あるいはまた、拿捕されて実際に給与保険の対象になって給与を払っている人々の推移はどうなのかというようなことは、別段私たちが資料を出してくれと要求しなくても、これはこの際一つ出すように努力をしてもらいたいと思うのです。幸いにして、非常に優秀な大蔵委員会の調査室の人がおりますから、黙っていてもちゃんと資料を出してくれたんでわかるのですけれども、どうか一つそれだけの親切味をもって委員会に来ていただきたい、私はそう思います。  そこで、一つ、調査室の資料によると、今の漁船保険組合というのは全部で五十三組合であり、そしてそのうち地域組合が四十六と業態組合が七つだ、さらにその中で給与保険を取り扱っている組合は二十八組合だという内容でございますが、これは間違いありませんか。
  73. 杉田隆治

    説明員(杉田隆治君) 給与保険の取扱いをしている組合は二十八件で、間違いありません。それから、先ほど御質問がありました業態組合が七つ、それから地域組合か四十六、これも間違いありません。
  74. 大矢正

    大矢正君 この組合それ自身の収支の状況会計の内容はどうですか。これはどんなふうになっていますか。
  75. 杉田隆治

    説明員(杉田隆治君) これは給与保険に限らず、一般の保険の組合の状況を申しますと、比較的大型漁船を持っている組合は、保険料が大きいために、組合の内容も非常に裕福なわけです。それは申しますと、付加保険料が大型漁船については二〇%、小型漁船については三〇%という割合で、事務費をとっておるわけでございます。それで、大型漁船はどうしても保険料が多くなります。自然に組合の事務費の内容はよくなるわけです。それで、組合のまわりの条件によりまして、小型漁船の多い組合はどうしても、大型漁船の多い組合に比較して、経営は困難なんであります。ですけれども、全国的の組合を見ますと、赤字組合というものはほとんどございません。そういうような状態でございます。
  76. 大矢正

    大矢正君 この再保険勘定——再保険勘定という勘定ではないんだが、とにかく再保険の方では膨大な赤字が出るけれども、単位の組合においてはあまり赤字が出てこないし、全国的に見て赤字の組合がないと。それは何か、操作か何かやっているんですか。
  77. 杉田隆治

    説明員(杉田隆治君) 給与保険と特殊保険、それから普通損害保険、この三つの保険の勘定ができておるわけです。それで、給与保険におきましては、これは国際的な関係で国が相当の援助を覚悟してできたものだと思うのであります。そのために、給与保険は非常に赤字になるんです。それで、普通損害保険の方は黒字になっておるのであります。それで、特殊保険は従来赤字でしたが、この二、三年拿捕がだいぶ少くなりましたので、本年はわずかに黒字になりました。ただし、給与保険におきましては、ただいまの毎月の支払いが二百二十万円ほどに達しております。それで、入って参りまする収入、再保険料は百万円程度でございます。今の料率から申しますと、給与保険におきましては、給与保険を独立採算制でやったというようなことにしますと、今の料率を四倍近い料率にしませんと、この収支は償わないのであります。こういうような関係になっております。
  78. 大矢正

    大矢正君 政務次官に聞かなければわからぬ問題ですが、あなたも御存じのように、昭和二十七年度はまあこれは黒字になっておるわけだけれども、二十八年には七百万円一般会計から繰り入れ、さらには二十九年には千五百万円と、以下ずっと毎年赤字で繰り入れをやっておるわけですがね。本来こういう会計については、政府から、事務費の一部かあるいはまた保険金の一部かは別といたしましても、相当なものはあらゆる保険で助成をするなり補助をしてやっておるわけですが、この漁船関係の保険と給与の保険については、そういう政府の措置というものはないんですか。
  79. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) ちょっと一つ、担当者から報告さしていただけませんでしょうか。
  80. 大矢正

    大矢正君 けっこうです。
  81. 小熊孝次

    政府委員小熊孝次君) 漁船の特殊保険、それから給与保勘定における赤字につきまして、これをどうするかという問題でございますが、これは御承知のように、国際的な関係もいろいろございまして、そのときどきの状況を見て一般会計から填補していくのが適当な措置ではないか。相当動きがあり得るわけでございますから、本来ならば、先生のおっしゃいますように、一定の危険率というようなものがかりに考えられるならば、これにつきまして一定の率というようなものを考えまして、これを社会保障的な見地、その他保険の見地から、一定の額を、あるいは一定の率を繰り入れるというようなことが、一応考えられてくるかとも思うのでありますが、しかしながら、これは国際的な関係によっていろいろ事情が違って参りますので、その年度々々の収支の状況を見ました上で、まあ毎年度御審議を願って繰り入れていくと、こういうのが政府の従来の態度であったわけであります。
  82. 大矢正

    大矢正君 これは政務次官に答弁してもらわなければならぬのだが、この組合の運営はもちろんだが、事務費なんかについては、これは付加保険料として、これまたさっき言われた通り、二割から三割徴収されておるわけてすね、事務費その他について。少くとも国際情勢の反映によって拿捕の数が多くなったという、抑留船員が多くなったというようなことで、年度ごとに給与の保険金それ自身の高が出てくるんでしょうけれども、事務費に該当する費用というものは、当然国がこれをまず補てんをするという補てんというか、前もってこの会計に繰り入れるという必要があるんじゃないかと思うんですが、そういう形はほかの保険なんかの場合でもとられていると私は思うんですが、その点いかがですか。
  83. 杉田隆治

    説明員(杉田隆治君) 先ほど私、少し言葉か足りなかったので……。付加保険料の事務費が大型漁船が二〇%、小型が三〇%と申しましたが、これは普通損害保険の場合でありまして、給与保険におきましては一割でございます。
  84. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) 大矢委員のおっしゃいますのは、これ以上にというお話かどうかわかりませんが、この再保険事業の業務の執行に要する経費に相当する金額を、毎会計年度の定めるところによって、一般会計から特別会計に繰り入れるというような規定になっておりますが、大矢委員のおっしゃいますのは、現段階において繰り入れている以上に繰り入れるという御趣旨でございましょうか。
  85. 大矢正

    大矢正君 それは、私の言うのは、もう固定して繰り入れる必要性があるということを言っておるわけです。漁船再保険会計、それから乗組員の給与保会計に赤字が生じたら、その部分についてどの程度繰り入れるという形じゃなくて、最初からもうそれに相当する金額を繰り入れていくという行き方はないのかということです。
  86. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) これは、小熊課長から先ほど御答弁申し上げましたように、国際的ないろいろな事情から見まして、赤字になった際に、その実情に応じて繰り入れるという方法をとっているというふうに御答弁申し上げましたことで、御了承願えませんでしょうか。
  87. 大矢正

    大矢正君 それはわかっている。だから、そういうことで変動があるということはわかるけれども、その給与の内容の問題は別としても、固定したものはやはり年々きめて入れておく必要性がないのかということです。——それじゃ、それはいいですよ。  それじゃ、これからもずっと今のままでいくと。特に給与保険の関係は赤字が出てくるわけですがね。これはこのまま継続していくわけですか。そして赤字の部分政府一般会計から繰り入れをする、こういう方向をこれからも継続されるわけですか。
  88. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) その問題につきまして、統一した見解がまだできておらないわけでありますが、逐年こうして赤字になっておりますので、現段階におきましてはそういう方法でやっておりますが、これが今仰せのように年々こうして赤字になっている実情から見まして、これはそういうふうなことを考えなくちゃいけない時期が来るかと思いますが、ただいまのところ、そういうふうなところまで考えておらない、こういう現状でございます。
  89. 大矢正

    大矢正君 これは、比較的赤字になる原因というものは、保険の加入者が非常に少いというところに最大の理由があるのか、国際情勢か反映をして、非常に拿捕をされる人々か多いというようなことで、こういうように結局なっているのか、この点、ちょっとお答え願いたい。
  90. 杉田隆治

    説明員(杉田隆治君) 保険は加入が多ければ多いほど危険分散ができるので、当然全乗組員が加入をするということになれば、もう少し赤字は少くなると思うのでありまするが、これは強制加入ではなく、任意加入のために、また、経営者の経営の内容によりまして、いろいろ入る希望の者もあるし、また危険の範囲に行かないところはなかなか大丈夫だろうというようなつもりで出かけていく。それで、やはりつかまるというようなことになりますので、これはまた強制加入ということになりますと、これはまたちょっと矛盾するのでありまして、国の方がそういうような危険海域へ出てゆくという結果になりますので、強制加入はちょっとできないかと思います。  それで、先ほど申しましたように、今の料率は普通の場合の四分の一の料率できめているのでありますので、また、これが北海道方面では非常に零細な漁業者も多いのでありまして、この料率を上げるということはできません。やはり加入がたとえ相当多くなりましても、料率をそう下げるということはできないのじゃないかと思います。
  91. 大矢正

    大矢正君 その最も近い三十二年度の給与保険の支払総額と、それから、その中に占める国の損失補てんとしての一般会計からの繰り入れのパーセンテージは、どのようになっていますか。
  92. 杉田隆治

    説明員(杉田隆治君) 三十二年度の再保険料は一千四百八十七万九千円、それから支払いの再保険金が一億一千七百六十四万九千円ということになっております。
  93. 大矢正

    大矢正君 そうすると、三十二年度の実績においては、もう圧倒的な部分が平常考えられる保険的性格のものじゃなくて、国のいわば裏づけによって行われているわけでしょう。そうすると、本来これ自身はもう保険の意味はなさないのじゃないですか。そういう点では、あなたの事務的な答弁ではむずかしいようだから、政務次官からお答えいただければ幸いなんだが……。
  94. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) 大矢委員の御指摘のようなことに現在なっているようでありますか、一応今のところ、保険は保険として、一つこれをいろいろな状況の変化等もあることと思いますので、一応保険は保険として考えていきたいというのが現段階でございます。
  95. 大矢正

    大矢正君 その保険的性格というものがこの中で実際に現われていれば、確かに保険を継続するという考え方も納得いくし、それから将来料率の変更とか、あるいはまた国がきまって一定の金額を補てんすることによって裏づけができるとか、あるいはまた、もっとせんじ詰めていけば、加入者をいろいろな条件によってふやすことにより保険らしき性格を打ち出していくとかという方針が明らかであればいいんだけれども、そういうものが一切なくて、ただ保険だ保険だといっているのでは、私は、非常に保険制度そのものの矛盾があるんだから、今のような制度は保険でなくて、いわば抑留された船員その他に対して政府がある程度、国際的な今の情勢から補償してやっているいわば補償的な性格であって、保険的な性格はないのじゃないかと思うのですね。そうだとすれば、保険だとかいって、ささやかな金をとってどうのこうのしないで、明確にこの際、そういう抑留された者に対する給与の問題だけは切り離して、何らか政府が措置をするということの方がいいのじゃないか。  特に、結局抑留され、拿捕されるということは、日本の国の現在の政府の、あなた方の外交政策の矛盾がそういう形になって現われているのですから、国交回復というものが完全に行われて、あらゆる国と、特にここに列挙されたソビエト、韓国、中共等の間において条約上の取りきめができ、あるいはそれに基いて不法な行為が行われなければ、こういう問題が出てこないのですから、当然その段階においては、その部分だけは政府か切り離して責任を明確に負うのだという体制を作ってやるのが妥当じゃないかと、私は思うのですがね。
  96. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) 大矢委員のきわめて示唆に富んだ御意見でございますが、保険はやはり保険料の問題等にからんでくるわけでありますし、今のお話でございますと、かなり保険というものの根本的な性格の問題にも触れるじゃないかと思います。政府の施策が悪いというふうなお話でございまして、おしかりを受けたわけでありますが、この問題は、別途にただいまのところでは方途をいろいろ講じつつあります。抑留者に対しまする手当等についてもやっておるわけでありますが、保険という建前からいいますれば、これは現在のところで、この料率あるいはその他の問題について検討すべきものは十分検討を将来も続けていきたいと思いますが、今のお話を全般的に見ますと、この保険ということから少しかけ離れた問題もあるように思います。従って、保険としまして十分今後検討していくことにつきましては、御意見を尊重していきたいと思います。
  97. 大矢正

    大矢正君 私の言っているのは、今の日本の外交政策がまずいから抑留されている漁夫の人々が多いのですから、これは過度的な段階、一時的な現象といえばいえるのですから、ですから、そういうものをつっくるめて保険でもって処理しようという考え方でなくて、そういうことから現われてきたところの抑留漁夫に対する見舞金の問題はもちろんでありますけれども、ある程度補償するというものは、これは政府の政策として、保険にたよらないで、切り離して、別個にして、それ以外の平常のもので問題を処理する方が正しいじゃないかということを私は主張しておるわけです。だけれども、なかなかわかったようなわからないようなところだというお話では、これはのれんに腕押しだから仕様がないけれども、次に見舞金の問題ですがね。  見舞金の問題については、政府か今やっておることの裏づけをしているのと同じことなんですね。漁夫の保険に入っていない者、あるいは加入している者を問わず、ある程度算出根拠に基いて見舞金を支給しているわけです。でありますから、見舞金の金額の問題で解決すればできるのじゃないかと思うのですがね。だれも、一万円やそこそこの金をもらったからといって、わざわざ拿捕されに行くばかもいない。ですから、結局その程度の裏づけ、保険金程度の裏づけをすることは、今の予算の中でも可能なんだから、それは切り離してやるべきだと思うのです。特にこの見舞金の中でも、保険の加入者と非加入者との間に大きな見舞金の金額上のアンバランスがあるわけだが、こういう点については、何か矛盾は感じませんかね。農林省の方はどうですか。
  98. 杉田隆治

    説明員(杉田隆治君) 見舞金につきましては、保険へ加入している者は、大体一人に対して一万円というようなことになっておるのでありますが、保険に加入している場合には、その差額は保険の方から持つということになっているのでありまして、この点やはり保険の加入者と非加入者が拿捕された場合のちょっと矛盾したような感じはあるわけであります。それで、これにつきましては、また国の方としましても、水産庁全体として、いろいろ検討を続けているのでありますか、私、直接の担当者ではないのでありますので、この程度お答えしかできません。   —————————————
  99. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 農林省の係官が来られましたから、逆に戻りまして、特定多目的ダム建設工事特別会計法の一部改正の問題に入ります。
  100. 野溝勝

    ○野溝勝君 先ほどから、特定多目的ダム建設工事特別会計法改正に関連して、実は質問をしているところでございますが、最初に曾田次長さんに、農林省の関係者が来ましたから、関連して御質問するのですが、先ほど私が荒沢ダムに関する質問の際、これは国直轄の事業と思っておりましたところ、書類を調べてみたところ、これは国の補助ダムになっておるのでありまして、当然国が責任を負わなければならぬと思うのですが、しかし、三十年度に完成をしたのであって、今負担金をとるのはおかしいという御答弁であります。しかし、実際は昨年負担金を取り立てにかかっておるのでございますから、こういう点については、理論上間違っておりますし、当局もさような点を認めておりますので、その点に対して調査方を願うということが一つでございます。  それから第二の点は、荒沢ダムは専用施設はないのであるが、これに対して負担金をかけることは法理論上から間違っておると思うのでございますが、これに対してはどういう解釈をもって負担金をとらんとするのか、この点を一つ次長さんに具体的にお答えを願っておきたいと思います。
  101. 曾田忠

    説明員(曾田忠君) お答えいたします。先ほどの御質問に対しましてもお答えしたわけでございますが、先ほどは一般的に直轄の多目的ダムの問題でございまして、ただいま先生言われましたように、山形の荒沢ダムは実は補助事業でございまして、若干前の法律的な問題と話か違っておりますが、その点あらためて訂正をいたします。  で、直轄事業につきましては、先ほど申し上げましたように、多目的ダム法におきまして、多目的ダム法ができました三十二年当時に工事中のものを除きまして、農業用水のために特定の専用施設を作る場合におきましては、十分の一程度負担金をとると申し上げたわけでございますが、補助事業につきましては、別段そのようなことがございませんで、いろいろどういう理由で山形の方で負担金をとるようなことになっておりますか、十分承知しておりませんものですから、十分調査の上お答えいたしたいと、そういうふうに考えております。    〔委員長退席、理事山本米治君着席〕
  102. 野溝勝

    ○野溝勝君 建設部長さんにお伺いいたします。先ほど特定ダム関係をいたしまして、関連の質問をしておったのでございますが、農林省係官が見えないのでおくれたのでございますが、一体、私は、このダム法のできるときに、農民が負担をさせられるということになるというと、非常に経済的影響が大きいのであるが、特に農民がほんとうに灌漑用水に必要であるかどうかということが重大な問題なんでして、その点がはっきりしないと、とんでもない負担を負わされて、農民はとたんに苦しむ。電気業者や工業資本家といいますか、事業家と違いまして、一反から何千円というものを年々とられたら、農民は生きていかれないんですよ。そういう点について、ダム法のできるときに、あなた方の方では建設省と十分打ち合せをして了承されたのですか。これは閣議決定で法律になったと思うのですが、大体多目的ダム法のできたことによって各地にいろいろ紛糾しておるのでございますか、特に所管の部長さんはそういう点を御承知ですか。
  103. 清野保

    説明員(清野保君) 特定多目的ダム法の成立に当りましては、もちろん、農林省にも十分その法案の内容につきましても協議がございました。また、この運用につきましても、建設次官並びに農林次官との間に種々の覚書あるいは協定等が結ばれて、法律の中で農業に関係ある部分につきましては、特に基本計画を作成する場合には農林省に十分協議をしまして、その内容を了解した上でやっていただく、こういうふうに話もできておりますのであります。  なお、ダム法によるところの農民負担の問題につきましては、建設省と大蔵当局の間でもってそういう話がまとまったというふうに聞いておりますが、この点につきましてもわれわれは承知しております。
  104. 野溝勝

    ○野溝勝君 どうも、まとまった、承認していますというだけでは、これはお役人さんは通るのですけれども、直接農民は苦しんでいます。県並びに町村という下の方へ行くほど、なかなか問題が起って困っておるのですが、特に、私は多くの例を省略いたしまして、一つ例を申し上げますから、それについてお答え願いたい。と申しますのは、愛媛県の道前道後の農業開発事業に対して紛糾しておること、御承知ですか。また、経過についてもあらかじめ御承知ですか、その点、一つお伺いしておきます。
  105. 清野保

    説明員(清野保君) 愛媛県の道前道後のダム建設につきましては、愛媛県当局、農林省の岡山農地事務局並びにダムの仁淀川の下流にありますところの高知県当局と協議をいたしまして、ダム建設に遺憾なきょうに仕事を進めておるわけでございますが、今の御質問のありました地元の紛糾しておるという事実は、補償問題以外につきましてはあまり詳しく存じておりません。
  106. 野溝勝

    ○野溝勝君 昨年の年末に、愛媛県の周桑郡丹原町、小松町、壬生川町の農民が百数十名県当局に押しかけて、この施設計画が農民の承知ならぬやり方である、特に負担が反当り五千円もかかるというようなことでは、最初の計画と全然違うということで、大問題を起しまして、私どもも参ってたまたま県と折衝いたしまして、ようやくその間を取りもってきたのですが、それについて県当局の農林部長は、本事業は中央の農林省の方針であるから、この方針は推進するということを答えております。その際に負担金が五千円かかるというようなことについては、われ負黒割がふえわれは今さようにかかると思っておらぬが、この点はいずれ農林省とよく打ち合した上に具体的な数字を発表したいと思う、こういうことを言ってその場は逃げておられるのでございますが、その後において農林省との間に話があったと思うのでございますが、その負担金等についてはどういうような一体負担をかけようとしておるのか、どんな内容であるか、この際一つ具体的にお答えを願いたいと存じます。ここにおられる椿議員も一緒に参りましたから……。
  107. 清野保

    説明員(清野保君) あいにく詳細の資料の持ち合せがございませんので、詳しいことはお答えいたしかねますが、道前道後の国営の農業水利事業につきましては、土地改良法によりまして、地元の三分の二の同意を得まして、法律に基くところの適否の決定並びに縦覧工事をいたしまして、それに対する意見をとった上で着工する、こういうような段取りをいたしておるのでございます。  なお、反当農民負担が五千円、こういうようなものにつきましては、私、現在資料がございませんので、お答えできませんが、原則といたしましては、土地改良事業を施行する場合には、農民の負担の可能な限度ということを一応頭に置きまして、設計をいたしておりますので、それらの点につきましては、さらに取り調べた上でもって、後刻お答えをしたいと思います。
  108. 野溝勝

    ○野溝勝君 清野さんの慎重なるお答えには、私、相当信頼を持てるのですが、しかし、そのお答えの中で、可能な限度ということがどの程度が可能の限度か、私にはわかりません。あなたの考えておる可能の限度ということについてお答えを願いたい。  それから、第二の点は、もう約四ヵ月にもなっておるのですが、その点がまだよくわからぬというのは、これは黒河内農林部長はうそをついたということになるのです。まさか、そんなことを今ここで責める気になりませんけれども、その点についてはざっくばらんにお答え願いたいと思います。
  109. 清野保

    説明員(清野保君) 農林省でもって国営工事または県営工事を実施する場合の採択の基準といたしましては、そこの事業に投資します投資額と、その地区から生まれますところの生産効果とをにらみ合せまして、いわゆる妥当投資額をはじきまして、その妥当投資額とその事業の経費とを比較いたしまして、その比が一以上の場合にはこの事業は採択が可能である、こういうふうに判定をいたしておるのであります。  なお、妥当投資額を計算する場合には、作付増、いわゆる開墾をいたしますとか、あるいは従来の畑を灌漑するとか、そういうふうに作付が変ります場合には、その純益率を三〇数%に考えております。なお反収増、いわゆる土地に灌漑をいたしまして、土地から直接生産が上る、いわゆる土地に何ら加工を加えないでそのまま生産が上ってくるいわゆる反収増の場合は、その純益率を七〇数%に考えまして、その妥当投資額を計算するのが一般の例でございます。  従いまして、その妥当投資額を計算する場合には、当然農民が負担し得る限度というものを勘案いたしましてやっておりますので、われわれとしましては、その事業の負担の範囲というものが当然妥当投資額の中に入ってきておる、つまり、妥当投資額が事業費を上回っておる、つまり比率が一以上の場合には、一応農民負担は可能である、こう考えております。ただし、受益の限度というものが地区の事情によって異なっております。つまり、旱魃を受ける程度、水を補給しますその数量によりまして、受益の程度が違っておりますので、農林省といたしましては、土地改良区の地元の受益者負担に対しましては、そういう受益の限度において負担を課するように、そういうふうな指導をいたしております。
  110. 野溝勝

    ○野溝勝君 そうすると、こういう場合はどういうふうに調整されていくのでございますか。特定多目的ダム法によるというと、大体一切がっさい合せて、全資本の全部、すべての十分の一負担ということになっております。そうすると、今、農林省の方のその負担の取扱いについては、これは別個に妥当投資額を基準にして、それを可能な限度において負担をしてもらうというように私は受け取っているのでございますが、そうすると、その間の調節をどういうようにやっていくつもりなのですか。農地灌漑ですけれども、そのダム法とのにらみ合せはどうやっていきますか。
  111. 清野保

    説明員(清野保君) 特定ダム特別会計によりますところの農民負担は、先ほど建設省から申し上げました通り、農業関係に対しては一割の負担をしておる、こういう事実がございます。農業の場合には、御承知の通り、五割八分を国が出しまして、あとの四割二分を資金運用部資金から借り入れまして、その資金運用部資金によるところの返済を、工事完了後金利六分で十ヵ年間で返しております。ただし、その場合には、四割二分の借入金のうち、その半分、二割一分を地元つまり農民が負担し、残りの二割一分を県が負担しておるというのが一般でございます。  ただいま御質問になりました、ダム特別会計との関連についての御質問でございますが、農林省で、従来からいわゆる受益者負担といたしましては、そういうような方向をとって参ったのでありまして、特定多目的ダム特別会計受益者負担が、従来なかったものが、今回、法律の制定に伴って一割になったという事実もよく承知しておりますが、その間の、農業対多目的ダムのいわば不合理といいますか、多少言葉が悪いのですが、矛盾につきましては、農林省といたしましては、この問題は、大蔵省ともいろいろ今後交渉を持たねば、私どもとしましてはお答えいたしかねる問題であると思っております。  なお、農林省側の立場は、従前から、県営並びに土地改良事業一般につきまして、かような方針をとっておりまして、いわば特定した受益者の負担、つまり土地改良法によるところの地元の申請によってかような方法をとっておるのでございまして、その点、建設省側の方法とは若干異にしておるというふうな考えを持っております。
  112. 野溝勝

    ○野溝勝君 そこが非常に重大な点なんですね。本会計法ができたことによって、土地改良は農民に負担一割がふえ、さらに建設省の河川局次長の答弁では、多目的ダムによる土地改良については二割の負担をしてもらおう。そうなってくると、農民の犠牲のしわ寄せというものが多くなるのだ。私は、こういうことを抽象的に蒸し返そうといたしません。これはやっぱり、独占資本の政策を遂行するために、農村へのしわ寄せをだんだんとやってきているんですから、それは一つの現われです。実際問題として、農村は全くやっていけないことになるんですよ。  そこで、道前道後の問題なども、実際に灌漑の必要のある場所は、ダム施設をしてもらうということに対しては賛成、ただ負担の重いということは反対。それから、実際に何ら恩恵のない、必要のないところまで負担を負わせるというような動きがあるので、農民が憤激しておるわけなんでございますが、こういうような点について、一つ建設部長さんは具体的な調査をされて、愛媛県の農民の目下問題になっておる農業開発について、至急納得のできるような措置を私は講じてもらいたいと思うのです。特に、今お話しになったような数字的負担の割合等々に対しましては、農民には十分徹底しておらぬようでしたよ。こういうような点は、ざっくばらんによく徹底させることが必要だと思いますので、この際、私は当局の意見を聞いて、さらにまた、愛媛県の農民に対し、負担そのものの理解につとめ、納得の措置をとられるよう希望し、その結果の答えを願いたいと存じます。御所見を承わりたい。
  113. 清野保

    説明員(清野保君) 農業負担の問題につきまして、農林省当局が地元に対する啓蒙宣伝がもし不十分だとするならば、お話の通り、徹底的な内容の了解を得るように十分努力をいたしたいと思います。  なお、農民負担の軽減等についての御意見につきましては、愛媛県当局側と十分協議いたしまして、ただいま申し上げました問題の周知徹底並びにその措置につきましては、十分検討をいたしたいと思います。
  114. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 ちょっと、法規課長にお尋ねしますが、さっきの私の例としてあげたのは補助事業の場合でしたかね、直轄であるもの等が起ってくる場合には、やはりこの多目的ダム特別会計でやる場合もあり得るのですか、道路や何かの場合。例示されておるのにはないのですが。……
  115. 小熊孝次

    政府委員小熊孝次君) 先ほどのには、河川局の次長からお話がありましたように、国の補助事業の場合でございまして、国の補助の対象とならないような、たとえば市町村道とかそういうものでも、ダム建設に関連しまして生じてくる場合があると思います。たとえば、まあ従来あった既存の道路をつぶしてしまう、そうすると、それは補償道路として、これは道路というよりは多目的ダムの方の補償費として出ます。それによって建設するわけですが、その際、市町村としては、非常に従来の道路が、何と申しますか、幅が狭い。この際あわせて拡張するということが、拡幅するということが最も適当な措置であるといったような場合におきまして、その拡幅する分は、これは市町村か自己財源でまかなうべき部分でございますが、その部分だけ切り離して工事をするというわけには参りません。また不合理でございますので、そういう場合には、補償費に相当する部分、まあ補償費に相当する、すなわち従来の既存の道路の身がわりになる部分と、あわせて、拡幅の工事をするためにその拡幅部分に相当する分を特別会計に納付していただきまして、そうしてその拡幅工事も合せた復旧工事といいますか、そういうものを行う、こういう場合が出て参るかと思います。
  116. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 これは方針としては大いに利用していこうという考え方ですか、こういう建前を。それともまた、もう限られた、必要やむを得ないものにだけこの種の措置をとっていこうとするのですか。
  117. 小熊孝次

    政府委員小熊孝次君) こういう受託工事の実態そのものにつきましては、すでに建設省のこれは一般的なルールでございますが、建設省の設置法にもございまして、外部からの委託を受けて行う工事というものにつきましては、本来建設省がプロパーで行うところの工事そのものに伴いまして必要なものと、あるいはその工事と非常に密接な関連があるものと、こういうような制限がついて、そういうものだけに限って行い得ると、こういうことになっておりますので、まあその範囲内におきまして、実情に即して運用していく、こういうふうになるかと思っております。
  118. 山本米治

    ○理事(山本米治君) 他に御発言もなければ、これにて質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 山本米治

    ○理事(山本米治君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もなければ、これにて討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 山本米治

    ○理事(山本米治君) 御異議ないと認めます。  これより採決に入ります。特定多目的ダム建設工事特別会計法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  121. 山本米治

    ○理事(山本米治君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては、先例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 山本米治

    ○理事(山本米治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。   —————————————
  123. 山本米治

    ○理事(山本米治君) 次に、漁船再保険特別会計における給与保険の再保険事業について生じた損失をうめるための一般会計からする繰入金に関する法律案議題といたし、先ほどからの質疑を続行いたします。
  124. 大矢正

    大矢正君 与党の先生方、だいぶしびれを切らしているようですから、最後に一つだけ、政務次官に考え方の発表を願って、私の質問は終りたいと思うのですか、それは、政務次官も御存じのように、昭和三十三年度拿捕漁船乗組員救済費補助金交付要綱という要綱に基いて、現在、保険に加入をしていない人々の拿捕に対して見舞金を支給しているわけなんですが、これと保険加入者との関係において、どうも矛盾があるわけであります。本来、この法律の提案理由である給与保険に一般会計から繰り入れをして損失を埋めるとか、そういうようなことをやらないで、政府がこれを負担するということについては反対をする何ものもないのですが、今申したような見舞金との関連においては、どう考えても矛盾があるわけです。たとえば、見舞金の金額は、もらう保険金の金額を差っ引いて、その上ずみの部分だけ見舞金を出すということは、せんじ詰めていけば、まあ幾らかの、もらう受け取り金額に相違はありますけれども、何のために保険をかけたかという議論か出て参りますし、そういうことが将来保険会計を行き詰まらせる原因にも私はなると思うので、この際政府としても、見舞金とそれから保険給付との関連については、十分考え必要性があるのじゃないか。見舞金を出すなと言うのじゃない。見舞金はどんどんもっと値上げして出してもらわなきゃならぬのだが、それと保険金との関係においては、やはり今のような算定の仕方、今のような算出の仕方には、私はどうも矛盾があるので、政府はできる限り早い機会にこういうものの矛盾を是正するために考慮をすべきじゃないか、私はこう思うのですが、その点、政務次官の御見解を承わりたいと思います。
  125. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) この見舞金の問題は、一昨年でしたか、私も、社会党の吉田法晴先生なんかと一しょに、下関から長崎に至るまでの実情を調査をいたしまして、帰ってその報告に基いてこれをやった記憶を今思い出したのでありますが、仰せのように、この見舞金をなるべく増したいということは、当時、私、下関その他において家族の方々と会いまして、その実情を聞きまして、同情に涙をした一人でございます。従いまして、この金額を、一万円とかあるいは被保険者に対して一万五千円とかというようなふうに決定いたしました際にも、実は私、今政府側で何だか押えておるような格好になっておるように仰せておられますけれども、この増額につきましては、金額につきましては、私も当時非常に努力した記憶があります。そうして、また被保険者と、保険に入っていらっしゃる方といらっしゃらない方との問題につきましても、当時いろいろ議論をいたしたのであります。努力いたしたのでありますけれども、まあ諸般の情勢上こういうふうに落ちついたのでありますが、まあできるだけ、危険のある漁船のことでございますし、いろいろ政府の施策の上におきましても至らぬ点もあると思います。が、こういうことは、現段階におきまして一挙に解決できないことでもございますし、国際情勢のこういうふうな今日におきましては、できるだけ加入していただきたいということも当時私どもお願いをいたしたのでございます。  経過はまあそういうふうでございますが、しかし、大矢委員のおっしゃいますように、この見舞金の金額にいたしましても、また保険との関連におきましても、できるだけ今後政府におきましても考えます。と同時に、この漁船の方の方々におきましても、一つ十分御配慮を願いまして、両々相待って一つ今後とも万全の措置を講ずるよういたしたい、かように考えまして、大矢委員の御趣旨につきましては十分今後配慮いたしたい、かように考えます。
  126. 山本米治

    ○理事(山本米治君) 他に御発言もなければ、これにて質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  127. 山本米治

    ○理事(山本米治君) 御異議ないものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もなければ、これにて討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 山本米治

    ○理事(山本米治君) 御異議ないと認めます。  これより採決に入ります。漁船再保険特別会会計における給与保険の再保険事業について生じた損失をうめるための一般会計からする繰入金に関する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  129. 山本米治

    ○理事(山本米治君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては、先例により、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  130. 山本米治

    ○理事(山本米治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。   —————————————
  131. 山本米治

    ○理事(山本米治君) 次に、接収貴金属等処理に関する法律案議題といたします。  昨日に引き続き質疑を行います。質疑のおありの方は、順次、御発言を願います。  ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  132. 山本米治

    ○理事(山本米治君) 速記を始めて。
  133. 島清

    島清君 御質問に入りまする前に、ちょっと一言お断わりをしておきたいのでありますが、この法案は五年越しの法案でございまして、いろいろと各角度から各委員質問があったと思っております。そこで、そういったようないわくつきでございますので、あるいは重複する点が多々あろうがと思いますけれども、そのことについては、あらかじめ御了承願いたいと思います。こういうふうに思うわけであります。  そこで、政府の提案の理由を承わってみまするというと、接収したものは所有権が移動したのではない、従って、その所有権者の方に所有権を返還しなければならないと、こういったような、もっとも現行民法の思想に基いているようでございますが、もしかりにそういったような現行民法の思想に基いてこの案が立案されたといたしまするならば、何を好んでこの特別の立法が必要であるか、こういうことを理解するのに私は非常に苦しむわけでございます。それは何であるかといいますと、ただ単に所有権をもとの所有権者に回復してやるんだということだけでありまするならば、現行民事訴訟法で十分やれるはずでありまするし、さらに、これが国家の意思によって国家の占有にあるというところの事例だけで、所有権者がこれを民事訴訟法等に訴えて所有権回復をしたいというならば、いつでも返せるから、所有権回復の申し立てをすればよかろうという公示をするだけで私は足りるのではないかと、こういうふうに思うわけでありまするが、その辺の考え方はどんなふうでございましょうか、お聞かせをいただきたいと思います。
  134. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) お答え申し上げます。御質問の、民法の規定さえあれば十分であって、特に特別法を作る必要はないではないかという御質問でございますが、この点につきましては、たびたび申し上げておるのでございますか、接収貴金属は、連合国占領軍が管理中におきまして、インゴットだとか、一部の美術品を除きまして大部分のものを溶解混合いたしたのでございまして、まあ私どもこれらのものを不特定物と呼んでいるのでございますが、このような不特定物は数人の人の共有関係にあるわけでございまして、その分割の方法につきまして、民法の一般原則で処理いたそうといたしますと、なかなか複雑な手続が必要であるというわけでございます。と申しますのは、民法の原則で申し上げますと、このようなものはいわゆる混和の状態にあるのでございまして、それを分けるに当りましては、その物に対して所有権を主張する人々か全部集まりまして、どういうふうに分割するかという協議をいたし、その協議が成立したところによって分割するわけでございますが、御承知のように、本件は相当の年数もたっておりまして、その間に所有権の移動ということもありますし、関係者も非常に多数でございまして、全国に散らばっておるというような関係で、だれとだれとが一体協議すればいいのかというような点もなかなかわからないわけでございまして、従って、結局はその所有権を主張する人たちか、裁判所に対して訴えを起す、そうして裁判所にしかるべき方法によって分けてもらう、こういうことにならざるを得ないと思うのでございます。まあ、訴訟が提起されますと、裁判所はいやでもおうでも何らかの結論を出さざるを得ないわけでございます。しかしながら、所有権というのは絶対的な権利でございますので、一度そういった数人の人たちの申し出によりまして分割の方法がきまったといたしましても、またあとからその物に対して所有権を主張するという人が出てこないとも限らないわけでございます。そういう人がまた新しく名乗り出た場合には、結局また裁判のやり直しをする、また前に分割を受けた人に対して不当利得の返還請求をするというような複雑な事態が生じてくる。問題はいつまでたっても片づかない。こういうことで、ただいま御審議願っておりますような、一定期間にその物に対して所有権を主張する人方に対して、全部にその返還請求を出していただきまして、その請求の出そろったところで、いろいろな証拠資料等を突き合せまして審査をいたしまして、法律で定めました、この特別法で定めました一定の方法によって処理をしてケリをつけよう、こういう趣旨でございます。  それともう一つ、民法の規定だけによって処理をいたそうといたしますと、不合理な結果が生ずるという点につきましては、先ほど申しましたように、分割の裁判に当りまして共有者の一人々々の持ち分が判然としておらないという場合におきましては、民法の規定によりますと、各共有者の持ち分は相ひとしきものと推定すると、こういうことになっております。接収されました貴金属等につきましては、品位等がはっきりしないもの等もございますので、裁判所が正確な割合いでこれを分けるということかできない場合も多いのでございます。その場合には、この規定によりまして、国の持ち分も一つ勘定するし、それから、A、B、C、それぞれに対して所有権を主張するほかの数人の民間人かあったといたしますれば、そのおのおのがまた一という工合に、国は一つと見て、あとおのおのの請求権者の持ち分と対等に分割する、こういうふうな結果になるわけでございます。  大体以上のような、手続的にもなかなかいつまでも片づかない、また裁判においても不合理な裁判が行われる結果になるというような点からいたしまして、特にこの法律を作りまして、一定の方法によりまして、民法の原則の規定に対する例外といたしまして分割の方法規定して、統一的に最終的な処理をしようということでございます。  なお、特にこの法律か必要なわけといたしましては、この民間に返還いたします部分につきましては、国が連合国占領軍から引き継ぎまして以来今日まで、それから返還をし終りますまで、管理をいたしておりますに伴いまして、必要と認められる費用を償う意味におきまして、一割の納付金をとるということにいたしておりますが、これなども法律規定が必要かと思われます。  それから第三番目の理由といたしまして、戦時中政府にかわりまして、金、銀、白金、ダイヤモンド等の回収を担当いたしました交易営団あるいは中央物資活用協会、そういったような機関が回収をいたしまして、まだ国に引き継がないうちに接収された貴金属があるわけでございます。そういうものは、すでに国民の手を離れまして中間の代理機関あるいは委託機関の手元にあったものでございますか、実質的にはもう国に所有権が移っておると見るべきではなかろうかと思うのでございます。ただ、形式的にはそういった国以外の機関に所有権があるわけでございますので、これらを国に帰属させますためには、やはり法律規定が必要になってくるわけでございます。  大体以上申しましたような点から、特にこの法律を制定いたそうとするものでございます。
  135. 島清

    島清君 ただいまの政府委員説明では私は了解はできないのでありまするけれども、議論にわたりまする部分を省略をするという意味において、今の説明をそのまま聞き放しにいたしまして、質問を進行するわけでありますが、あなたたちは、これが非常に複雑な扱いにくい性質を持っておるから、こういったような特別な立法処置か必要である、こうおっしゃいまするけれども、自体これが無理でございまして、私は、接収をされた方々も、ほんとうの気持は、これを返してもらおうという考え方は毛頭ないと思うのですね。その毛頭なくて、没収されたのは要するに没収されたのだというような考え方であきらめておる、こういう人々に親切に返してやろう、こういうような親切な気持はわかりまするけれども、しかしながら、これをあえて返してやろうというところにこの問題の複雑性があるのでありまするから、その複雑であるがゆえに立法的な処置が必要であるということについては、私たちはどうしても了解できません。  だが、お断わりを申し上げた通り、私は議論になると思われる部分は省略いたしまするから、これは質問いたしませんけれども、あなたたちは執拗に五年越しにこの立法を実現制定させようといたしまして、十九国会からですか、それから繰り返し繰り返し根気よくやっておられるわけですが、今期国会における提案の理由の説明を承わっておりますというと、すでにこの貴金属処理法案が成立するものとの仮定の上に立って国庫への収入を見込まれておるようですが、これは毎回そういう工合に国庫に入る収入を見込まれて法案を提案されておるわけなんでございますか。今回だけでございますか。
  136. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 従来におきましては、予算上歳入には計上いたしておらなかったのでございます。今回初めてでございます。
  137. 島清

    島清君 従来はそういうふうに見込まれないで、今回に限って見込まれたというその理由は、どこにあるのですか。
  138. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) これは予算の編成の問題でございまして、私、責任ある答弁はいたしかねるのでございますが、昭和三十四年度の予算の編成に当りまして、一般の財政需要をまかないますために必要な財源といたしましてこれをあげたわけでございます。
  139. 島清

    島清君 それは責任ある御答弁ができないのは、私は当りまえだと思うのです。と申し上げますのは、五年越しに毎回国会の方へ出されて、なおかつ廃案になっておりますこの法律案が制定されるということは、よほど神ならぬ身では見通しがつけられないと思うのです。一歩を間違いますというと、これは国会審議権に影響を持ってくる考え方だと思うのです。少くとも、審議権を無視しなくても、国会審議権を軽視しておるというそしりは私は免れないと思うのです。ですから、これは大蔵大臣に質問をして、その政治的見解をあとで確かめたいと思うのでございまするけれども、それは事務当局といたしましては、こういったような成立をしない法律を前提にして予算化するということは、非常に私は国会審議の権威の建前からして厳に慎んでもらわなければならないと考えておるのです。それは、逆に予算を伴いまする、それに関係をする法律案を準備するということであれば、わからないこともありませんが、まだ海のものとも山のものともつかない未定な法律を前提として、これが成立するということの上に立って予算化するということは、非常に不謹慎であると思うのですね。ですから、まあこれは責任ある御答弁はできないというのが当りまえだと思うのです。  それでは、一つ方向を変えまして、私が先ほどお尋ねを申し上げた中で、接収をされた人々は接収という法律の概念と、没収という法律の概念とは、これはもう非常に違うということでございまするけれども、しかし、接収をされた諸君は、法律概念がどうであろうとも、とにかく没収されたんだ、こういうふうに考えておると思うのです。そこで、これももう仕方がない、敗戦のしからしむるところであってやむを得ないことだと、私はあきらめておると思うのです。それを、ことさらにこういったような複雑の問題を、そうしてあきらめておる人々、敗戦のしからしむるところであるからやむを得ないことだというてあきらめておる諸君に、この複雑な問題を投げかけるということは、何といいましょうか、この敗戦の傷跡といいましょうか、それをほじくる格好になりまして、私は必ずしも、国民思想の面からいいましても、はたまた財産上的立場からいいましても、政府が御期待をされておるような結果を私は招来するものでは必ずしもない、こういうふうに考えるわけであります。政府当局におきましては、こういったような敗戦の傷口にことさらに触れて、そうして痛みを感じさせるというようなわれわれのこの考え方について、思いをいたして考慮をされたことかあるかどうか、この点を御説明をいただきたいと思います。
  140. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) 私、ちょっと中座いたしておりまして恐縮でございました。今のようなお話は、しばしばこれまでの論議のうちにも出ておりましたが、しかし、認められております所有権につきましては、できるだけこれを保護するという考え方もまた大切なことじゃないかと思います。今のお話のように、当時接収された人々はあるいはそういう気持の方もあったかと思います。しかし、これは権利を保護するという建前に立ちまして、理屈のつきますものは、戦争中に犠牲を払われた方々にはあるいは納得のいかない点もあるかと思いますけれども、権利を保護するという建前に立って、できるだけこれを救済するということを年来考えてきた、こういう次第でございます。
  141. 島清

    島清君 先ほどから、その親心といいましょうか、その考えておられることはわからないわけでもないんですが、ですから、そういうことは特別の立法を必要としないで、民法で定めております諸手続によって可能ではないか、こういう私の質問に対して、いろいろと三つばかりの条件をあげられて、それは可能性が乏しい、こういう御答弁でございますけれども、私は、いかに問題が複雑であめろうとも、一応今の民法の諸規定によってそれが必ずしも不可能ではないということであるといたしますならば、それはやはり裁判上の問題としてやるべきであると考えておりまして、根本的な思想といたしましては、現にありまする法律をもってやり得るという少しでも可能性があるといたしますならば、岸内閣はいつでも、岸さんは順法精神ということを言っておられまするから、現行法に基いてそれが処理されるという建前をまずとらなければならないと思うんです。そうして、やってみてできない場合には、これはまた特別の立法が必要であるかもしれません。ですから、現行法に基いてものを処理するということを、所有権を明確ならしむるということは、これは裁判の問題でありますから……。私は、必ずしも裁判ということは、原告があって、被告があって、その争いの中に国家意思によって裁判が行われるということだけが司法権であるとは考えておりません。司法権というものは、現行法のもとにおいて国民の権利義務というものを規定し、保障し、そうして争いあるならばこれを明確に判定をするというのが、私は司法権である、こういうふうに広く解釈をいたしておりまするので、この広い解釈がかりに政府当局において肯定をされるといたしまするならば、私はあえてこういったような特別立法をするということは、広い意味においては、むしろ司法権の侵害にまでなるのではないか、こういう考え方を持っているのですが、これについてはどのようなお考えでございますか。
  142. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 最初の御質問に対して御答弁申し上げましたように、民法の規定によりますれば、なかなか最終的な処理がつかない、裁判を何度も何度もやり直しをしなければならないという点と、また、かりにその裁判をいたしますにつきましても、国のもし持ち分が判然としない場合には、国の持ち分も各民間人の持ち分もすべて同じ位置とみなされるという不合理な結果を生ずるということを申し上げたのでございます。  幾ら日にちがかかっても、民法の原則によって訴訟を提起させる、その裁判の結果を待てばいいのじゃないかという御意見でございますが、まあ私ども、戦争のあと始末というような意味からいたしましても、もうすでに接収されましてから十三年、あるいは日本政府に引き渡されましてからも七年という長い年月がたっております。これをいつでも今後民法の一般の原則によって訴訟の提起に待てということは、民間人も非常に迷惑でありましょうし、国もその裁判に一々応ずるというようなことも、時間、経費ともに浪費をするわけでございます。また、早くこの接収貴金属をおのおの所有のもとに返しまして、これを国家的に有用に活用するということも必要なことでございますので、こういうふうな特別法を制定いたしまして、これによってできるだけすみやかに最終的な処理をはかろうというつもりで御提案申し上げたわけでございます。
  143. 島清

    島清君 金属を日本の経済活動に活用した方がよろしいと、こういう御意見に対しましては同感でございます。その意味において、あなたが本委員会において御説明されておりまする中で、二件の処理を報告しておられますか、この二件の処理と、さらに今度の立法との関係においては、私は矛盾するような気がするんです。なぜ、あのときは何も立法に待たずにできたのに、自余の部分についてはこういう特別立法をしなければならないか。立法に待たなければその処理が絶対に不可能であるといたしまするならば、あの二件の処理もそれに待たなければならなかったはずなんです。あれがやれてこれがやれないということは、非常に矛盾があるのです。その間の事情を、納得のいくように一つ説明を願いたいと思います。
  144. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 二件の処理と仰せられますのは、昭和二十七年にわが国がIMFに加盟いたしました際、その出資に必要な金十五トンを処理したというのがその一つであろうと思うのでございますが、これは日本銀行の所有の金が接収されておったものでございますが、まだこの法案が制定されます前に処理いたしたものでございます。しかも、その金は、あらゆる証拠資料等、あるいは政府の持っております記録等からいたしまして、明確に日本銀行の所有のものである、接収されたときと同じ形で残っておったものでございまして、これはいわゆる特定物といたしまして、もとの所有者に返しましても、ほかの権利者に絶対に影響するおそれがないということを確認いたしまして、その返還措置を講じたのでございます。  それから、第二の処理といたしまして、昨年四百三十六トンの銀塊を、これはすべて政府の所有しておったものでございますが、処理いたしたものでございますが、これは、時期といたしましては、接収貴金属の法案が、解散の関係がございまして、一時廃案になりまして、ブランクの状態にある間に、ちょうど百円硬貨の製造をいたしますための原材料の銀が払底いたしまして、その百円硬貨を作るという国家的な別の要請に基きまして処理したわけでございます。しかも、この銀は、当時非常に綿密な調査をいたしまして、いろいろな資料等を持ち寄りまして、かつ、同時に、会計検査院、あるいは裁判所、弁護士、あるいは大学教授等の方々の立ち会いも願いまして、明確にやはり政府に属する特定物であるという確認をいたした上で処理いたしたものでございます。  そのように、この二つはいずれもはっきりと、所有権の存在につきまして、法律関係も技術関係もきわめて明瞭になっておるものでございます。  しからば、そういったものはこの二つだけに限るかと申しますと、これはまたそうではないのでございまして、現在でも、これ以外、政府が保管しております接収貴金属の中にも、これ以外に特定物といたしまして、民法の規定によって返還をいたそうとすればできるものもあるわけでございます。しかしながら、せっかくこの法案を御審議いただいておる際でございますので、できるだけこの法案の成立を待ちまして、法案の成立後におきまして、法の定める手続によって処理をするというのか、国会を尊重するゆえんであろうということで、たとえばそういうものがございましても、できるだけその処理は差し控えておるわけでございます。法律的に申しますと、そういうものがかりにありまして、民法の規定によって処理をしようとすればできないことはないわけでございます。  先ほど、銀を返還いたします場合に立ち会いをしていただきました方々のうちに、裁判所と申しましたが、法制局、民事局等でございまして、そのほかには先ほど申しました会計検査院、それから東大の先生、弁護士、こういう方々のお立ち会いを願いまして、資料を綿密に調査していただきまして、これははっきりと政府に所属する銀塊であるということを確かめた上、返還措置を講じたのでございます。
  145. 島清

    島清君 国会を尊重して、なるべく特別の立法措置を講じてから、所有権の確定をしていきたい。このことについて国会を尊重されているということについては、国会に名を連ねている者としては、まあ心地よい響きを与えるわけですが、しかし、前二者については便宜的な処置を講じておいて、どういう矛盾と不合理性を感じられ、こういう立法処置を考えられたかしれませんが、二十七年の十五トンという金については、法案の提案前であったからそういう処置をした。しかし、百円銀貨を鋳造するためには法案の提案後ではあったけれども、しかし、別のまた国家意思がそれを要請したからそうしたのだということは、一向に私は説明にならないと思うのです。一応のあなたたちの立場からしますならば、説明をされたつもりであるかもしれませんが、聞く側からいたしますというと、この両者の間には非常に食い違いがあるのです。これは説明にはならないと思うのです。便宜主義でいくならばどこまでも便宜主義で、今御答弁がありましたように、現行法律でやればよろしいのであり、しかし、この便宜主義がどうもいけないというならば、この前二者についても合理的に一貫して説明ができるような形でなければ私はならないと思うのです。この点についても、いずれまた大臣から説明を承わりたいと思っておりますが、  残余の貴金属についてこういう処置をするならば、政府の所有権が明確にされるという確信を持っておられまする種類が、量がどれくらいあるのでございますか。あるいは白金につき、あるいはダイヤにつき、いろいろの貴金属について、分類別にその量はどのくらいあるのですか。
  146. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 政府に返還される見込みの貴金属の分類別の数量は、別に資料としてお出しいたしておりますが、これはあくまでも見込みでございますが……。今の御質問は、政府に返る分だけですか。
  147. 島清

    島清君 そうです。もし御理解を願っておらなければ、もう一ぺん説明してもようございますけれども、今こういう処置をされてですね、十五トンも、それから百円銀貨を鋳造したのも、そういう処理をされたのですね。これは明確に政府のものであるというその認定ができた。そして自余の部分ですね、残っておりまする貴金属についても、そういう処理の仕方をすると、政府のものであるというて確認できまする種類と分量がどれくらい残っておるかということなんです。
  148. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) そのお尋ねの点につきましても、資料を提出いたしておりますが、この点について簡単に申し上げますと……。
  149. 島清

    島清君 ちょっと待って下さい。平林委員要求の資料というのと、大蔵省の出されたのと、二つあるのですが、どっちですか。
  150. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 二月の十九日付の平林委員要求の一でございます。
  151. 島清

    島清君 どうぞ。
  152. 山本米治

    ○理事(山本米治君) 簡単に説明して下さい。
  153. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) この表にございますように、現在政府が保管いたしております接収貴金属のうち、過去に処理いたしました金十五トン、銀四百三十六トンと同じように、確信をもって政府の分であるという認定のできますものは、一般会計に帰属見込みの銀約二百三十トン、これは価額で申し上げますと約二十四億になるわけであります。しかしながら、そのうちには、先ほどちょっと御説明申しました回収を担当いたしました機関であるところの中央物資活用協会に所有権が形式上ございますが、この法律によりまして国に帰属すると認められます部分百五十トンを含んでおります。それから貴金属特別会計に帰属すると見込まれます金約二トン、金額にいたしまして約八億円でございます。同じく銀が約一七トン、金額にいたしまして約二千万円でございます。以上が政府の帰属になると見込まれます金、銀等でございます。あとは御参考までに民間に帰属いたします分と日銀に帰属いたします分を、あわせて掲げてございます。
  154. 島清

    島清君 ただいま民間に帰属見込みの銀は二十二トンで、価額にすると幾らぐらいになりますか。
  155. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 約二億円でございます。それから日本銀行売り戻し条件付金製品約〇・七トンとございますが、これは約三億円になるわけでございます。それから、その上の日本銀行に帰属見込みの金約六十二トンでございます。これは約二百五十億円。
  156. 島清

    島清君 そうしますと、この法案の提案の理由といたしましては、ぎょうぎょうしく、これのすべてのものを含んでこの特別の立法を必要とするのだ、こういう説明でありますが、せんじ詰めて参りますと、民間に帰属見込みの銀二十二トン、金額にいたしまして二億円、まあこのもののために特別の立法を要請しているんだと、こういうふうに解釈できないこともないわけなんですが、そのように解釈いたしますと、もちろん、あなたたちの方から言い分が、物言いがついて参りましょうが、しかし、前二件についてはそのように処理をしておるのでありまするから、そういう観念とそういう方法をもっていたしますならば、必ずしも一般会計に帰属見込みの銀二百三十トンは処理できないわけでもないし、その他日本銀行に帰属する見込みのものだってできるわけですから、帰するところは、民間に帰属見込みの銀の約二十二トン、こういうふうにせんじ詰められるわけなんですが、これに対して、私のように解釈できるものに対して、もっとそうではないという説明を聞かして下さい。
  157. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) ここに掲げました表は、国あるいは日本銀行、また民間関係の現段階におきまして特定されると思われるものを掲げたわけでございまして、これ以外に不特定物もたくさんあるわけでございます。その不特定物もまた、今後の調査いかんによりまして、だんだん特定してくるものも出てくるわけでございます。まあ私どもは、一応ここにありますように、特定されるものがございますが、これを民法の規定によって返そうと思えばできるのでございますが、そこは念を入れまして、この法律の成立を待ちまして、法律に定める慎重な手続、たとえば貴金属処理審議会に諮るというような処置をとりました上で、返還するのが適当であるというふうに考えまして、一日も早く法案の成立することを願っておるわけでございます。  また、かりに、ここにございますように、民間特定分二十二トン、それは法律を必要とせず民法で返してもいいんじゃないかという御議論にもなろうかと思いますが、まあこういうふうな、特定しておるか、特定していないかということは、民間の人からいいますれば、偶然の事柄でありまして、Aという人のは接収されたときと同じ形で政府が保管していてくれる、B、Cの人のはそれは溶解して不特定の、形を変えてしまった、こういうようなことによりまして、ある人にだけそのものが無条件で返る、ある人は複雑な裁判の手続を経なければならないということでは、不合理である。また、この法律によって——それは法律の通らない場合でございますか、この御審議を願っておる法律によって処理するにいたしましても、ある人の分を先に返還いたしまして、一割というような納付金もとらずに返す、そうして残りの不特定物につきましては一割をとるというようなことも、非常に均衡を失することにも相なりますので、こういうふうに二十二トン、はっきり、ただいまの段階政府が見たところで、民間に帰属する見込みの銀も、できるだけこの法律の成立を待ちまして、他の不特定物と一緒に処理をして、同じ割合で納付金を払っていただいた上返還する、こうするのが適当ではないかというふうに考えるわけでございます。
  158. 島清

    島清君 ですから、今の説明はわからないわけでもないんですが、結局、常非に大げさで、すべての政府が保管をしておりまする総量の貴金属に対しまして、この法律が制定をされなければ処理ができないような説明の仕方なんですが、私がお聞きをしておりますることは、二十七年以来二回にわたって、非常な慎重な態度で政府の所有権を確定をされて、その貴金属を日本の経済活動のために活用をされておるので、そしてそういうことがどこからも非難が出ていないんでしょう。非難が出ていないといたしまするならば、その前者の例にならって、この残余の部分についてもできるはずだ。それで、新たな議論を発展をさせて、非常に不特定のものであるから、それはなるべく特別の立法を待ってやった方がよろしいとおっしゃるならば、百歩を譲ってあなたの議論に傾聴するにいたしましても、民間のこのわずか二十二トンの二億円の部分でしかないじゃないか、私はそういうことを申し上げておるわけなんです。
  159. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) ここに掲げております分は、まあ特定分でございまして、この部分に関しまする限りは、法律的な問題といたしましては、特に立法が必要ではないということが言えるのでございますが、ここに掲げております分を全部合計いたしましても、二百八十七億円でございまして、まだこれ以外に不特定分といたしまして政府が保管しております分が三百八十七億という数量に上るのでございまして、民間帰属の見込み分はここには二億特定すると申し上げておりますが、これ以外に民間の分といたしましても四十億程度のものがあるわけでございます。先ほど申しましたように、二億だけ早く返して、あとのものをいつまでも処理をしないでおくということは不合理である、また政府のものだけを処理して、民間の明白な分の二億を返さないということは、これも政府の分だけ処理するということは穏当を欠く、こういうふうに考えるわけでございます。従いまして、こういったものも含めまして、全部を一括して接収貴金属等処理に関する法律によって処理をしたいというのが、政府考えでございます。
  160. 島清

    島清君 あるいは私の質問の仕方が私の意思を表明していないのかもしれませんが、ですから、私は先ほどの質問で、政府が今までやりました慎重な方法をもってすれば、明確に政府のものであるということが判定できる種類のもの、それから分量、ダイヤが幾らであるとか、あるいは金が幾らであるとか、それから白金が幾らであると、こういう種類によって御説明を願いたい、こう申し上げたんですよ。そういたしましたら、こういう資料かあるというので、資料を拝見いたしましたところが、結局のところ、二十二トンだけじゃないか、こういう御質問を申し上げたわけなんですが、自余の部分、今申された三百八十何億ですか、その部分の種類とその不明確な量というのは、どういうふうな割合になっていますか。
  161. 池中弘

    説明員(池中弘君) お答えいたしますが、現在接収貴金属……。
  162. 島清

    島清君 ちょっと、それ資料がありますか、そういうものはないのですか。資料がなければ、またないでいいのですが。
  163. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) ただいままでお配りいたしております資料に、接収貴金属等返還見込調、これは接収貴金属の種類別と返還先別に記載したものはございます。それとただいま御説明いたしておりますものと、両方ごらんいただきますれば、この特定分を引いたものが結局不特定分ということになるわけでございまして、不特定分の明細を記載した表はお出しいたしておりませんが、全体の分と、そのうち特定とするものはこれだけと、この二つの資料によってごらんいただきたいと存じます。
  164. 島清

    島清君 それで、今説明して下さい。私が御質問を申し上げた点について、この資料に基いて私のお聞きいたしましたこと……。
  165. 池中弘

    説明員(池中弘君) お答えいたします。現在保管しておりますものの総額は、接収貴金属等返還見込調の左の欄にあります合計欄であります。金額にしますと六百七十四億円で、金が百二トン余り、それから銀が千七百三トン余り、白金が一トン余り、白金族二キロ、それからダイヤモンドが十六万一千カラット、その他三億円、こういうことになっておるわけでございます。  このうち、金百二トンのうち、国のものは合計はどうなるかという御質問だと思いますが、日本銀行と民間の分を差し引きますというと、百二トンのうち国の分は二十四トン何がしになるわけでございます。それから、このうち現在の段階特定すると見込まれるものは幾らかと申しますというと、二トンでございます。全体が百二トンのうち国の分が二十四トン、そのうち国のものとして特定するであろうと現在の段階で見込んでおりますのか二トンであります。銀につきましては、全体で千七百三トンのうち、日本銀行と民間の分を差し引きますと、千四百二十三トンであります。そのうち国の分で特定すると見込まれますのが三百三十二トンでありますので、差し引きますと、現在の段階で不特定と見込まれるのか千百九十一トンということになります。それから、白金は一トン六キログラムでありますか、民間の百三十四キログラムを引いた八百七十二キログラムが国の分でありまして、これは現在の段階特定しておりません。それから、白金族は全部国の分でありまして、これも特定しておりません。ダイヤモンドは十六万一千カラットのうち民間の四千カラットを引きますと、十五万七千カラットで、これも特定しておりません。以上のような状況であります。
  166. 島清

    島清君 そこで、まあ考え方の相違といいましょうか、それから発しまする立場上によっての意見の相違というものがあるわけなんですが、私の質問をいたしております要点は、前二者にとられた態度で国家がこの貴金属の処理をおやりになるならば、残余の部分についてどうしもこういったような特別の立法を待たなければ処理ができないというときになって初めて、私はこういったような特別の立法をすべきであって、前には便宜上やったけれども、今度はそれはいやだというようなことは、何か理論的なものについても納得いたしかねるし、また、実際提案者が何で、より悪く、審議会等を経て複雑のような形にしてこういう問題を処理していくのかというような疑惑が起ってくるわけです。おそらく、審議会をお作りになって、この問題が持ち込まれた場合には、てんやわんやで大騒動になると思うのですが、むしろこういったような政府のものであるというて特定されるという見通しがあるならば、そういうものは前二者にとられた態度でこのものの処理をされて、そうしてどうしてもできないという部分についてのみ、私は特別の立法処置が必要であるような気がするのです。繰り返してくどいようでありまするかもう一ぺん御説明を願いたいと思います。
  167. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 特定物がここにあります通り二百八十七億で、全体の四〇%程度のものでございまして、あとは不特定物でございます。その数字的な現状はおわかりいただいたと思うのでございますが、かりに、この特定物だけを処理いたしますという場合におきましても、政府の分だけを処理するというわけにはいかないと思います。政府特定物を処理いたしますれば、民間の分も当然処理しなければならない。その場合におきまして、民間の人たちが、たまたま特定したものだけ先に返してもらうという不合理があるということも、先ほど申したのでございます。また、特定物だけを処理して、あと不特定物をいつまでも放置しておくわけにもいかないのでございまして、御質問によりますと、その必要が起るときまでほおっておいたらいいじゃないか、こういうことでございますが、現に、民間人の方からは返還の要求も出ておりますし、また訴訟も提起されておるというような状況でございまして、私どもは特定物だけを切り離して処理するという考えは持っておらないのでございます。いわんや、また、政府特定物だけを先に処理するということは、行政措置といたしましても不合理であるというふうに考えておるわけでございます。
  168. 島清

    島清君 その返還要求の要請であるとか、あるいは裁判上の訴訟であるということは、いつごろから、どういう人によってなされているのですか。
  169. 池中弘

    説明員(池中弘君) お答えいたします。返還要求がいつごろからなされているかということでございますが、民間からは、いろいろ書面であるいは口頭でもって、来ておるのがございます。  それから、訴訟は、いつ、どういう人から訴訟が起きているかという問題でございますが、昭和三十一年の十月二日に東京地方裁判所に提起されておりまして、現在も手続中でございますが、個人で銀塊や銀製品を接収された人から、所有権に基いて返還の請求が東京地方裁判所に出されております。
  170. 島清

    島清君 訴訟はわかりましたが、返してもらいたいという要請は、文書によっていつごろですか。
  171. 池中弘

    説明員(池中弘君) 二十九年八月十一日から記録がずっとありますが、国会にもその資料を提出してあります。
  172. 島清

    島清君 その要請者はだれですか。
  173. 池中弘

    説明員(池中弘君) いろいろございますが、二十九年八月十一日京都市の佐野修二郎という方、三十一年三月八日大阪変圧機株式会社、三十一年三月二十日には鎌倉の保坂閑治、三十一年三月二十五日旧交易営団出資者四十九名、三十一年四月十六日渋江叶、三十一年五月十日写真感光材料工業貴金属地金協会、三十一年六月十日諸橋茂七郎、三十一年十一月二十六日小塩堅二、三十一年十一月三十日愛知起業株式会社、三十二年三月十日太田清二郎、三十二年三月二十七日小田平吉、三十二年四月四日芝橋きぬ、三十二年四月九日渋江叶、このときの資料はこれだけでございますが、そのあとにおきましてもいろいろ参っております。  ただ、その内容はまちまちでございまして、返してほしいというのもありますし、接収貴金属等処理に関する法律案の帰趨について心配して、どうなっているか、そういう内容のものもございます。
  174. 島清

    島清君 これは、今御説明にありました通り、政府当局がこの法案を提案した以後にすべてのものがなされているですね。私が先ほど申し上げたように、接収といおうと何といおうと、やっぱり取られた連中は没収されたと半ばあきらめておったものが、こういったような法案を政府当局か出してきたので、それは取れるものなら一つ取らなければ損だというので、訴訟になり、あるいは要請になって現われてきておるという判定をしても、私は誤まりじゃないと思うのです。接収された諸君が、自分のものであるから当然に返してもらわなければならないということの確信に立っておったとするならば、私は、この法案が出る前に、取られた当時から返してくれと言わなければならぬ問題だと思うのですね。ですから、先ほど申し上げたように、日本は敗戦したことを終戦と偽わって国民を欺瞞しましたけれども、とにかく敗戦に基いて没収されたのだと、こういうふうにあきらめておった連中に、さあ、お前たちのものを返してやるんだということは、むしろ敗戦処理に今もって未処理の問題がたくさんありまするときに、非常に不均衡といいますか、そういうものを返して、かえって国民層からいっても悪い影響を及ぼすのじゃないか、こういうことを申し上げている。そこで、そうじゃないんだというような考え方であるならば、では、百歩を譲って、それはごく狭い範囲において限られるべき問題ではないかというて、今度は議論をほかの方面からしておるわけなんです。  先ほどるる申し上げております通り、前二者においては、二件は慎重な態度でそういうふうに処理されたんだからして、その処理を、その残る部分において、そういう特別の立法をすべきじゃないか、あなたたちの議論に百歩を譲って、私はそういう議論をしたわけなんです。そうすると、これからはからずも訴訟要請になって現われてきておるということは、私が心配をしておったことが、要するに法律の提案がなされたので、接収された連中か取らなきゃ損だというて、要請になり訴訟になって現われてきたということ、これはもう明確に証明している。それは認識の誤まりでしょうかな。誤まりだとするならば、訂正をしていただいて、御説明を願いたいと思うのですが。
  175. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) まあこれは接収された人の心理の推測でございますので、どうとでも言えるわけでございますが、仰せのごとく、接収されました当座は、もうほとんど返ってこないものと思ってあきらめておった人も多いだろうということは、容易に想像できるのでございます。しかしながら、私どもの考えは、ところが、実際は没収をせずに、占領軍がもとの所有権者に返す計画を立ててもよいという意味の覚書をつけて、一括して政府に渡しました以上は、これはもとの所有権者に返すべきものであるという政府の憲法の所有権を尊重する思想から、そういう決心をいたしたのでございまして、陳情かおそくまで、法案を出すまではなかったではないかということでございますが、まあ接収されました以後、占領軍か管理いたしましたのが日本政府に引き継がれたというような事実が、一般国民に徹底しておらなかったというような関係もあったのではないかと思うのでございますが、まあ私どもはむしろその接収された人の心理いかんにかかわらず、むしろ返還されました以上は、現行憲法の所有を尊重いたしまして、所有権者のもとにこれを返すべきであるという思想に基きまして、この法案を立案いたしたわけでございます。
  176. 島清

    島清君 それでは、まあ方向を変えてお聞きをしますが、かりにこの法案が成立をしたと仮定をいたしましょうか。成立をして、その法律に基いていろいろな学識経験者によって審議会を作られるというて、その処理がなされる場合に、大体何年くらいかかって全部が完了する予定なのでございますか。それともまた、いろいろとその分類別にものは処理されていきましょうが、ダイヤなんというものはなかなか私はむずかしいと思うのですが、ダイヤの価値にいたしましても、これは非常に特定のものであるということの判定は非常に困難だと思うのですね。さらにまた、価値についてもそれは言い得るわけなんです。たとえば、一カラットであるといって一カラットのものを、ほんとうにそれと同一のような、接収されたものと同一の品質をもった一カラットのタイヤであったといたしましても、あるいは親の譲りであるとかというようなダイヤ、あるいはまた旅のみやげに持って帰ってもらったというようなダイヤとは、その値打において違うと思うのですね。貴金属というものは大体そういうものなんですね。ですから、ダイヤなどを特定せしめるということは非常な困難性があると思うのです。困難性があるものはあと回しになると思うのですが、一番やりやすいものは金であるとか、銀であるとか、そういうものが一番やりやすいと思うのですが、その一番やりやすいものに手をつけて、それが一応の完了の段階に来るまでに、何年くらいかかり、さらに全部の貴金属の処理が完了するまでには何年くらいかかる予定でございますか。
  177. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 大体特定いたしておりまして、処理のしやすいものを処理し終りますのに大体二年、残りの不特定物を処理いたしますのに二年、通計いたしまして四年程度の見込みでおりますが、まあこれも努力次第によっては、できるだけすみやかに処理をいたしたいと考えております。
  178. 島清

    島清君 一番処理のしやすいものは何であるというお考えでございますか。
  179. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 金銀等の特定物は、割合簡単に処理できるのではないかと考えております。
  180. 島清

    島清君 その金銀が処理が完了するのが大体二年くらい。そしてこれの用途は、何かお考えでございますか。
  181. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) これは一応貴金属特別会計の所属にいたしておるわけでございますが、まあ金は別段、これを民間に払い下げるとか何とかいうようなことは起らぬと思うのでございます。いわゆる正貨準備といたしましては、日本銀行が持っておる金が大部分でございますが、政府におきましても、金はできるだけ手元に残しておくのが至当であろうというふうに考えるのでございます。まあ銀は、これは御承知のように、通貨といたしまして百円硬貨は銀貨にいたしておるのでございます。その方の用途に充てることになろうかと考えます。そのほか白金、ダイヤモンド等がございますが、白金等は工業用に使われるわけでございまして、場合によって、御要求があれば、民間に売却処分するというようなことも考えられるわけでございます。またダイヤモンドも、場合によって民間に払い下げまして、その売却代金をそのときどきの国家の財政需要に充てるということか考えられるのでございますが、まあこういったダイヤモンド等の処分につきましては、一挙に払い下げるというようなことをいたしまして、時価に大きな変動を来たすというようなことは好ましいことではございませんので、まあ慎重に扱いたいと。また、その売ります場合に、国内で売るか、あるいは外国で売るかというようなことも、今後慎重に検討していきたいと思いますが、まだ判然と、どういうふうに幾ら、どういう時期において、どういう方法によって処分するかという点につきましては、きまった考え方を持っておりません。大体以上申し上げたようなばく然とした考えでございます。
  182. 島清

    島清君 銀の用途については、百円硬貨が流通をしておるので、その流通貨幣として役に立てたいというお考えだということは、御説明の通りでございまするが、ヨーロッパにおきましては、ヨーロッパの自由主義の経済機構が確立されましたので、それに伴いまして通貨の自由という問題が登場したわけでありますが、これはやはり通貨の自由制ということになりますというと、回復されて参りますというと、やはり今のような不換制ではなくして、いつでもこういったような金や銀にかえられるという本位制に私は返らなければならないと思うのです。そこで、この法案と関連をいたしまして、今この法律が成立をして、そして政府の所有権が確定されるといたしますと、何かそういったような金本位制であるとかというような問題と結びつけて考えておられるかどうか。もしそういうものを考えられて、こういったような立法を急いでおられるというならば、こういったような事情について御説明を願いたいと思います。
  183. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 将来のわが国の通貨制度をどうするかという問題は、なかなかむずかしい問題でございかして、これは御承知のように、わが国におきましては、通貨の大部分を占めますものは日本銀行の銀行券でございます。そこで、日本銀行の発券制度はどうなるかという問題でございますが、これにつきましては、中央銀行のあり方等とも関連いたしまして、政府におきましても研究はいたしておりますが、それは別に中央銀行制度をどうするかという見地からの検討でございまして、私どもも、ただいま出しております法案とは直接関係を持たない、また持たしてはおりません問題でございます。
  184. 島清

    島清君 何か、この法案が成立いたしますというと、公易営団ですかの方に、何がしかの金を支払わなければならぬのですか、というようなことの規定があったように記憶をするのですが、それは、公易営団というのは今は解散をしておるはずだと私は思うのですが、なぜそれに何かしかの金を支払わなければならないかということについて、御説明を願いたいと思います。
  185. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 先ほども申し上げましたように、公易営団は戦時中回収を政府委託を受けて担当した機関でございまして、これが政府にかわりまして回収いたしますに際しましては、供出者に対しましてその代金を支払っておるわけでございます。ところが、その回収をいたしまして、国家目的に使い果す前に接収をされました分は、今度法律が通りますれば、実質的な所有権者である国の帰属になるわけでございます。そこで、ただそれを取り上げっぱなしでいいかと申しますと、公易営団は、供出者から回収いたします際に、その当時の代金を支払っておるわけでございますから、それの費用はこれは当然公易営団に返還すべき筋合いのものでございますので、それを交付金という形で返還いたすために、この二十一条の規定を設けたのでございます。これによって返還いたします金額は大体四億程度と見込んでおります。  公易営団は、御承知のように、閉鎖機関に指定されておりまして、いわゆる特殊清算という、民法の一般の清算の例外といたしまして、特殊な方式によって清算を進行中でございまして、大体この関係を除きました債権債務の整理がつきまして、もうあとは、法案か通りまして、ただいま申し上げました四億ばかしの交付金が支払われるのを待っておるという状況でございまして、これが返って参りますと、なお残っております債務の弁済に充てまして最終的なケリをつけて清算結了ということになろうかと思うのでございます。
  186. 島清

    島清君 あとで公易営団の経理内容を資料にして出していただきたいと思います。出ておれば要りません。出ていなければ御提出をいただきたいと思いますが、この四億というのはどこから計算された四億でございますか。その計算の基準ですね、それをお知らせいただきたいと思うのです。
  187. 池中弘

    説明員(池中弘君) 計算の基準でございますが、法案の二十一条によりまして、公易営団等か取得した価格、それから手数料、それから加工費というものを交付金として交付するというようにこの法律案はなっておるわけでございます。で、その基準は政令で定めることになっておりまして、われわれといたしましても一応の検討はいたしておりますけれども、まだ最終的な段階には至っておりません。一応の検討はいたしております。
  188. 島清

    島清君 その最終的なものじゃなくてもいいのです、一応の検討をされた結果で。ここに四億というのが出ておりますので、この四億円として算定をされたその基準を、現段階において説明をできる範囲でよろしいのです。
  189. 池中弘

    説明員(池中弘君) 大体の基準でございますが、公易営団、中央物資活用協会、それから金銀運営会、こういう戦時中の回収機関等が二十条に規定してあるわけでございますが、こういうものにつきまして、金、銀、白金、ルテニウム、ロジウム、ダイヤモンド、エメラルド、ルビー、サファイヤ、ネコ目石というような貴石に至るまで、いろいろの貴金属があるわけでございますが、それについて、公易営団等が回収に当りまして持っております各種資料、またわれわれか検討いたしました各種資料によりまして、その取得価格を幾らにしたらいいか、またそれの手数料を幾らにしたらいいか、それから加工賃は幾らにしたらいいかということを、戦時中に民間に支払ったその当時の時価によりまして検討し、それによって幾ら接収されたかという認定数量に単価をかけたもので交付金の額をきめる、こういうような段取りになっております。  大体、二十七年に、接収金属等の数量等の報告に関する法律という法律を通しまして、大体の状況は把握してあるわけでございますが、最終的に、それではこれらの回収機関等が、幾ら、どのような貴金属を接収されたかということは法案が成立しました後、接収貴金属等処理審議会に諮りましてきまることでございますので、そのきまりました認定額にそれぞれの単価を乗じまして、総体の交付金の額を定める、こういう考えでおります。
  190. 島清

    島清君 交易営団も、それから中央物資活用協会も、これは閉鎖機関になっているわけですね。そして清算事務をやっていると思うのです。間違ったらあとで訂正して下さい。閉鎖されているのでしょう。それで、清算事務をとっておると思うのですが、この四億の中で、今この四億の入ってくるのを待っておる状態だというふうに言われましたが、人件費に行くという部分がどれぐらい、それからそうじゃなくして、純粋な収支決算の経理に回ると思われる部分幾らぐらいあるか、それをおわかりでしたら御説明いただきたいと思います。
  191. 池中弘

    説明員(池中弘君) 交易営団は閉鎖機関でございますけれども、中央物資活用協会は、民法によって設立されましたところの公益法人でございます。  それから、人件費に幾ら回るかどうかというお話でございましたが、この二十一条に規定いたします交付金によって交付いたします金額は、接収貴金属等に該当する部分だけを交付金でまかなおうということでございまして、交易営団は貴金属の回収だけをやったんではございませんで、本来の業務は、鉄、それから繊維、その他戦時中におけるあらゆる物資の総合的な流通機構の中心になっておったものでございます。それを利用いたしまして、貴金属等の回収を交易営団に委託したわけでございます。従って、その経理の内容は、接収貴金属以外のものが大部分でございまして、そのうち交付金でまかなうというのは、そのうちの接収貴金属の勘定だけを交付金によって実費弁償する、こういう考え方でございます。
  192. 島清

    島清君 その中には、その交付いたしまする四億の金には、別に日本銀行の発行紙幣以外にはスタンプが押してないわけなんですね。ですから、この交易営団の清算機関の中に入って参りますというと、それはどこへ使おうともいいわけなんですね。表口の方は、今おっしゃった通りで、玄関から入っていきまするけれども、玄関から入ったあとは、それはお座敷でどういうふうに消化され、どういうふうに使われるかということはわからないわけなんです。そこで、私はひっくるめて、清算機関になっておりまするその交易営団の純粋な経理に行くと見られる部分と、それから人件費に回るであろうと思われる部分とが、どういう比率になっておるかということをお尋ねをしておるわけなんでございます。  ということは、意地悪くもう少し掘り下げて裏の方から申し上げまするというと、いろいろの物資をそれは交易営団は扱いましたけれども、しかしながら、この四億以外には、今これがかりに赤字があったからといって、これを補てんをしてくれるところはないわけなんですね。ですから、結局はどういう形であろうとも、今日交易営団の玄関を訪れるものは、この金以外にはないということなんですね。ですから、この金がどういうふうに処理されていくであろうかということは、やっぱり国民の注目の的だと思うのです。私もその通り注目しているわけです。場合によりますと、疑惑が起らないとも限らないのですか、ですから、そういう意味でお尋ねをしておるわけなんです。
  193. 池中弘

    説明員(池中弘君) 御説の通り、まあ金に色はないわけでございますから、その交付金で交付いたします金額が、接収貴金属勘定の補てんにだけ使われるか、それともほかの方に使われるかということは、はっきりしないわけでございますか、現在、交易営団の清算の内容を見ておりますというと、未払い債務が約十億円あるわけであります。これは先ほども申しましたように、回収貴金属だけの問題じゃなくて、全体でございます。それで、交易営団の貸借対照表によりまして、接収商品勘定と申しますのは一億九千万円余りあるわけであります。で、四億円と申しますのは、交易営団も、中央物資活用協会も、金銀運営会も、全部合せての話でございまして、交易営団に限りますならば、一億七千万円接収勘定がございまして、この分が、交易営団は自分の金で国民に金を支払ったけれども、まだ国からもらっていない。従って、この法律に基きまして、その分を弁償しようということでございまして、それがどういう方面債務弁償に充てられるかということは、この接収貴金属の処理とはまあ直接関係ないわけで、私、現在のところ承知しておらないのでございます。
  194. 島清

    島清君 交易営団の未払い債務というのが十億余りあるとおっしゃいましたね。
  195. 池中弘

    説明員(池中弘君) はい。
  196. 島清

    島清君 大へんな巨額の額なんですが、かりに、未払いもある半面、それから債権もあるはずですね。取り立てられる債権と、取り立て不能の債権とあるはずですね。その債権はどういうふうになっていますか。
  197. 池中弘

    説明員(池中弘君) 債権債務と両方あるわけでございます。まあ現在のところ、取り立てられるものは取り立てておりまして、交易営団としましては、接収貴金属等処理がきまらないのでその清算の結了ができないという段階になっておるようでございます。
  198. 島清

    島清君 いや、まあそれはその通りのようですが、ですから、その取り立てられない債権ですね。それが幾らで、それから取り立て可能な債権額が幾らであるか、その十億のうちですね。それを御説明願いたいと思います。
  199. 池中弘

    説明員(池中弘君) 十億円と申しますのは債務でございます。そうして、どれだけか取り立てられない——どの債権が取り立てられないのかということについては、もう少し詳しく……。私、貸借対照表は一応持っておりますけれども、その内容についてさらに検討いたしませんと、正確な回答ができないような次第でございます。
  200. 島清

    島清君 それでは、先ほど私は、交易営団のこの交付金についてお話を伺いまする前に、資料の提出を要求したのでありますが、ついでに、その債権額のうちに、取り立て可能のものと、絶対これは取れないのだという不能なもの、こういうような区別で御提示願いたいと思います。それから、なぜ取り立てが不能であるか、こういう理由をつけて、資料の御提出を願いたいと思います。  委員長、ちょっと速記をとめて。
  201. 山本米治

    ○理事(山本米治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  202. 山本米治

    ○理事(山本米治君) それじゃ、速記を始めて。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十三分散会