○奥むめお君 私は今度の
法案が流通機構の適正化を期するというところにしぼられていると思うのですけれども、審議の
過程を通じまして、流通機構というのはどうも生産と販売、
小売商までにとどまっている流通機構ということで、生産、販売、消費までこれを流通機構というわけですから、そうしますと消費の面が非常に欠けている、大事な面が欠けている、こう思いますので、この
法案は非常に未熟であるし、不完全であるし、残念ながら反対せざるを得ない。
売る者と買う者が一体であって、共存共栄ということが売る者と買う者の一番のこれは原則になっていると思うのです。私どもが
小売商を立てていきたい、何とか繁栄してもらいたいという気持にはだれよりも熱意を持っている。今日の
委員会でも私はそのことを一番しみじみ感じました。やはり男の議員さんにはわからないんだなあと思いました。その点を私はここで強調したいと思うのです。
政治の貧困のしわ寄せを今は中小商
業者、工
業者が一番多く食っております。これはいろいろな商業対策の
法案が出まして、たとえば
中小企業団体法あるいは環境衛生法、そのほかの問題でも、もうまるで
中小企業者は自分が救いの水を求めるようにあわてて殺到しますけれども、私はそれらが
一つの精神のこもったものでない、ほんとうに具的体に救うものじゃないのに、どうしてこうみんなが期待をこんなに寄せるのかしらと、むしろ私どもこそほんとうに
考えていると言いたいところなんです。今日の中小商
業者の問題というものは、いろいろ規模が違います。仕入れ
関係だって決して
一つでありません。非常なさまざまな規模があり、また人的構成からいいましても、経営の規模からいいましても、また資金繰りからいいましても、そこに働くその賃金からいいましても、これくらいさまざまに、気の毒な者もあり、すぐれた者もあり、これをただ十把一からげに商
業者といわれてこの
法律が何を救うつもりであろうかというふうに
考えさせられます。
私どもから言いますと、ほんとうに流通機構の適正化ということは、
国民生活安定の上で一番必要なことで、一番急がなければならない問題だろうと思うのですけれども、それを
考えますのには、やはり
政府、通産省が真剣に抜本策を
考えるのでなかったら、こういうふうな表面的な
法案一つ作ることによって、資金を出すわけでもないし、それから店の
設備をよくするわけでもないし、あるいはその働いている人がもっと勤労意欲が高まるようにいろいろ
考えるわけじゃないし、余っている人をどこへ使ってやろうとするわけでもないし、また、あわのような表面に現われた現象だけをとらえて、そして中小商
業者を助けるのだと、こんなおこがましいことがあるかしらと思うのです。それが私の政治的にこれを反対する
一つの理由。
また、これは特に
政府に
考えてもらいたいのでございますけれども、今日生活協同組合はまことにわずかな量しか扱っておりません。これは私どもとしては、目ざめた
消費者がわざわざ資金を出し合って、そして共同購入をしようとしている。私ども十円牛乳を売っておりますけれども、これがこの
法律によれば、おそらく触れるでありましょうけれども、それでは、
消費者が安くていい牛乳をお互いの奉仕の中で飲もうとする生活協同組合に対して、今まで農林省は私たちの努力にもかかわらず、牛乳の手当を全然してくれない。私どものできる範囲の牛乳は一日一万六千本にすぎない。そうすると牛乳は余っているのに、なぜこれを売らないか。多くの商
業者の中には、少し働いて少しの苦労でたくさんの利益を確保しようとする大へん悪い
考え方が、また商業のそういうしきたりがある。そのために、余っている牛乳を庭へ捨てても、これを大衆に売るという道を閉ざしてしまう。これが、くだものが一貫目二十円で山元から売られても、町へ出てくれば一個二十円だ、二十五円という値段で売られているじゃないかと、地方から出てくる人たちは東京のくだもの屋の店を見て歎息して言うことなんです。こういういろいろ流通
過程にある間違い、不合理というものをどうして是正しないか。
消費者の家庭にほんとうに正しい値段で物が入るようにする、その道を
考えるということが、私は通産省の
一つの責任ではないかと
考えておるものでございます。そういう
意味におきまして、今日のどこの婦人のグループにも比べて、生活協同組合の中の婦人が一番自分の家計費を使います、買いものをすることに対して真剣に、物の値段を
考えたり、あるいは自分たちの使い方を
考えたり、家計簿活動を私どものグループでみんなで全国的にしておりますけれども、この仕事はもうこれからはほんとうに誇るに足る仕事であるし、全国的に推進されるものと思っております。
経済規模の拡大ということを軽くいわれますけれども、
経済規模の拡大は、単に金の面で広がって大きくなるだけじゃだめなんで、その金が有効に使われる道をみんなが
考えなければならぬ。有効に使われる道を、各家庭々々が
国民所得の八割を使っているというその有効な使い方を今せっせと家計簿中心に進めておるのです。実質賃金をほんとうに有効に使うということも、単に賃金が上ればいいのじゃなくて、その上った賃金あるいは上らない賃金を有効に使うということは、これは家計簿活動のほかには
考えられない。
政府はこういう面には全然手を出さない、
指導もしない、予算もくれない。しかし目ざめた
消費者の中からこういう運動が非常に盛んに行われてきている。これは国家の富を大事にすることからいいましても、物を生かして使うことからいいましても、
政府としては一番この点に心を注がなければならぬ問題だと、私はいつも思っているわけです。それにもかかわらず、まだ
日本の生協が微力だからといって、その微力な生協を真綿で首を締めるようにして、商
業者保護の名のもとに、これの仕事をしにくくなるようにしている。これは
日本の実際生活から
考えましても、まことに実態を知らないにもほどがあると私は言いたい。そういう点で、まず生活協同組合をこの
法律によって規制する、仕事がしにくくなる、
消費者が買いものをしにくくさせられるということに対して、この
法案の持っている趣旨というものは、私は反対せざるを得ないのでございます。
また、三番目に、私はこの
法案の審議を通して、今の
政府は、おそらく商
業者保護の名目をもって近い将来に商人の新しい開店を
登録制にして、あるいは許可制にでもしなければしょうがなくなるということを不安に思っております。これだけ人口が多く、そのはけ口を
考えないでいて、そうしてこういう
法律でお茶を濁している以上は、そこにいくよりほかにないと思います。また、あり余っている人口に、どうして勤労意欲を満足させるように働いていかせるかということが政治でございまして、単なるこういう
法律だけでそれが救われるものでないのでございますから、そういう点からいいましても、
中小企業の方が、ことに商業のこの
法律に希望をかけていらっしゃる人たちが、この
法案のその裏にひそむ意図を
考え、そして自分たちを救うものは結局自分たちよりほかないのだ。自分たちの協同の力によって自分たちが助け合う道を見出さなければならないのだということを私は
考えてもらわなければならないということをあえて言いたいと思うのでございます。
この気持から、この
法案に対して反対せざるを得ないことを、奥むめお個人として申し上げます。私、緑風会でございますけれども、
豊田先生は非常にこれを推進していらっしゃいますが、いつも
豊田先生と私とは
意見が違うのでございます。