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政府委員(
森誓夫君) ご尤もではございまするが、
国際競争に打ち勝つための
コストがどの
程度でいいか、ということはわれわれもできるだけ
引き下げるように
努力をいたし、研究を進めたのでございます。現在国際的に非常に安い
価格で
落札が行われておりまするこの現況は、二つの
要素に分けて考える必要があるかと思うのであります。それは実質的に
海外競争国の
コストが幾らかという問題、それに加うるに
海外の
輸出振興方策、国家的な
輸出助成策が加わって、それ以上安く売らせておる
要素がどれだけあるかということでございます。第一点の競争国の
コストにつきましては、これはなかなか詳細な
調査はできませんが、われわれはいろいろな雑誌書籍、あるいは現地
調査をした方々の報告等を総合してみますと、やはり
トン四十五ドル
程度でございます。で、
日本の場合に四十七ドルで、
コストが四十七ドルにいたしますと、これは実は国内
消費者の、もより駅に持っていくまでの
コストでありまして、国内運賃が相当入っております。国内の消費地までの輸送距離は、
工場から港に持っていく場合に比べると——
輸出する場合の話でありますが——非常に長いわけで、
輸出する場合にはその輸送距離が短縮されまして、大体FOB四十五ドルで出して、出血にはならぬというふうに見ております。従いまして外国もほんとうに
コストだけで競争してくるならば、
日本も四十七ドルでやって競争は大体できるだろうというふうに思います。特に東南
アジアを
中心にして考えますと、欧米の競争国からくる場合には、輸送距離が非常に長いのでありまして、その運賃差が四ドルないし七ドルというふうに開いております。
日本がそれだけ有利なわけであります。従いまして
日本がFOB四十五ドルで出せる態勢になれば、まず
コストの点だけで競争する場合には十分やっていけるのではないかというふうに考えております。ただ最近の競争国の入札
価格には、四十一ドルとか四十四ドルとか、まあその辺のところが多いのでございますが、なぜこのような安売りができるかと申し上げますると、ドイツでも、イタリアもそうですが、それぞれの
政府が、
消費者である農民に、二割の
肥料の購入補助金を与えております。従ってメーカーの手を離れるときの
肥料価格は相当高いのでございます。たとえば、西独について言いますと、ごく最近の、一九五八年二月から六月までの建値は、
トン六十三ドルでございます。またイタリアは一九五八年の三月から六月までの建値が大体六十六ドルというふうに、
わが国はこれが五十五ドルでございますから、
わが国よりも非常に高いのでございます。しかし、これが農民の手に渡るときには、この二割は、国が補助をされるということで、農民は安い
肥料が買えるわけです。結局農民に与える
肥料購入二割の補助金というものは、実はメーカーが補助を受けるということになって、これを財源にして出血
輸出をいたし、それに耐えることができるという状態でございます。西独ではこのための補助金年額、円に直しまして約二百八十億円でございます。
日本もそれに対抗する
輸出振興補助金を、もし出すといたしまするならば、ア系窒素
肥料だけで年間百億のものが必要でございます。で、こういう補助金につきましても、私ども研究をいたしたのでございますが、現在の
わが国の財政状態からいいまして、また、他の諸産業に対する
助成のバランスからいいまして、この案を採用するということは、当分見合わさなければならぬという
結論に達したのでございます。まあこのようにいたしまして、
コストだけの競争でいきまするならば、今後の五カ年
計画によって、
トン当り四十七ドルで十分やっていける。運賃の有利性を加えまして、十分やっていけると思うのでございます。ただ、そういう諸外国のやっております
輸出助成方策につきましては、
わが国一気にそこまでいけませんために、当分
わが国の
肥料工業は、相当苦しい立場に立たなければならないという状態でございます。