○
政府委員(
小出榮一君) それでは
航空機工業振興法の一部を
改正する
法律案の
内容につきまして、
概略御
説明を申し上げたいと思います。
航空機工業振興法は、御
承知の
通り昭和三十三年
法律第百五十号として
施行されたものでございまして、この
法律の
終局の
目的はその総則の第一条にもございますように、要するに
日本におきまする
航空機工業の
国産化を
推進し、
国産の
航空機工業の確立をはかるということがねらいでございまして、それに必要な
各種の
振興措置をやって参るということでございます。
そこで、この
航空機工業の全般的な現況をまず申し上げますると、御
承知の
通り、
日本の
航空機工業は、戦争中におきましては、
戦時目的のために
相当の発達を示し、
世界の
最高水準にまで
技術的にも
能力の面におきまして達したのでございますけれども、敗戦後はほとんど
壊滅状態になりました。その
生産は全然禁止されておったのであります。それが
昭和二十七年にこれが再開せられまして、昨年の十二月末までの商の
航空機関係の
生産実績、これは
修理あるいは
部品の
生産面を含めまして、
総額累計四百十億円という
生産実積を示しております。昨年一年間だけで百八十八億円というような
生産の
状況でございます。その
航空機の
製造の
機数は六百四十六機、そのうち昨年たけで二百機以上を作っておりまして、ジェット機がそのうちの半分を占めております。
エンジン関係につきましては、これはまだ
試作の
段階で、御
承知の
通りの
日本ジェットエンジン株式会社というものがございまして、ここで
防衛庁の
練習機用の小型の
エンジンを作っておるという
段階でございます。
こういうような
漸次主として
米軍の特需あるいは
防衛庁関係等のものを
中心にいたしまして、
航空機の
製造修理か行われておるのでありまして、一方これらの
航空機につきましては、
航空機製造事業法という別の
法律がございまして、その
航空機製造事業法によって
製造修理の
許可をいたしておるのでありまして、その
許可事業者が現在十八社になっておるわけでございます。こういうようなことで、この
関連工場等に含めまするというと、おそらく全国で六百社というような数に産するものと思われます。こういうふうにいたしまして
航空機は、
工業的に申しまして、
産業の総合的な
工業といたしまして非常に重要な地位を今後ますます占めるだろう、こういうふうに考えるわけであります。ところがこれらの
生産、
修理につきましては、現在までのところ純粋の
国産化ということは、ほとんどその緒についたばかりでございまして、現在まで、これらにつきましては、
航空機関係は主として
機体なり
部品につきまして
輸入をしなきゃならぬという
状況でございます。それらの
輸入の外貨の
実績は、昨年末までに
累計一億一千二百万ドルというような
状況でございます。また一方この
製造修理のための
外国会社との
技術提携ということも行われておりまして、必要があるものでありまして、これにつきましては、四十七件の
技術提携が行われておるというような
状況でございます。しかしこういうような
状況で、いつまでもこの
航空機工業の
生産修理の
実態というものを、そういった
外国に依存しなきゃならぬということでは、
国産化の
推進にならないわけでありまして、そこでまずこの
航空機工業の
国産化ということをどうしても
推進し、かつて
国産の
技術として非常に
世界的に優秀な
技術を持っておりました経験を生かしまして、
総合工業としての
航空機工業を
日本国内において確立したい、こういうような
意味におきまして
航空機工業振興法というものができたわけでございます。そこでこの
航空機工業振興法に基きまして、まず、
国産の
航空機、これの
設計というところから入っていかなくちゃならぬということになりまして、そこで現在までのところ、
財団法人輸送機設計研究協会というものを設立いたしまして、これが
昭和三十二年の五月に
航空機工業界全般のあげての協力によりまして設立されました。この
財団法人輸送機設計研究協会を
中心として、
国産としての最も適当な形の
輸送機を
設計するという問題から着手いたしたのであります。で、この
輸送機設計研究協会に対しましては三十二年、三十三年、それぞれ
毎年度補助金を交付いたしまして、
設計研究に当らせまして、御
承知の
通り昨年末に
実物大の
木型の
設計を完了するというような
段階にまで進んで参ったのであります。そこでこれに対しましてさらに一歩を進めまして、いよいよこの
設計の
段階から、さらに精密な
設計、そして進んで
試作段階、そして
試作機ができました場合におきましては、これの
試験を行うということによって、最後は本格的な
国産機の
量産態勢に入ろうというのがいよいよ現在の
段階でありまして、
設計から
試作開発の
段階に入るということが、当面の緊急を要する問題になったわけであります。
そこで今回新たにこういった
航空機工業の
設計試作製造、そういったようなことをいたしまする
特殊会社を設立いたしまして、この
特殊会社を
中心といたしまして
日本の
航空機の
国産化を
推進しよう、こういう
趣旨の
法律改正をいたしたい、これが
航空機工業振興法の
改正の要点でございます。
従いまして
法律の
内容といたしましては
航空機工業振興法の中に一章を設けまして、
日本航空機製造株式会社という
名前の
特殊会社を設立するということに関する
規定を第十三条から
あとに入れたのでありまして、これが、この
振興法の
改正の一口に申しまして
内容でございます。
そこでその具体的な構想につきまして申し上げますると、こういったまず
特殊会社をなぜ設立しなければならないかということでございまするが、これは申すまでもなく、
航空機の
製造というのは、非常に
多額の
設備投資を必要とし、また各方面の
技術能力を集結しなくちゃならぬ。戦後
相当の期間の空白がございまして、これをうめまして、
各国との
国際競争の場に立ち向かうということになりますと、どうしても業界の
総力をあげなくちゃならぬということになりまして、これにつきましては、現在
航空機製造事業の
許可を受けておりまする各社のどの一社だけでも単独でできない仕事でございます。従いましてそれぞれの各
会社が、その
責任分野を分担いたしまして、その
総力をあげまして、ここに
政府の
相当の
出資を要求し、これに
民間出資を合せました
特殊会社によって
製造態勢をやっていく、こういうのがこの
特殊会社を作る
必要性でございます。
そこでこの
特殊会社の
内容でございまするが、とりあえず
資本金といたしましては約三十八億円という
資本金を
予定いたしておりまして、その
初年度におきまして、つまり三十四
年度におきましては、
政府出資三億円、
民間出資二億円、五億円ということで発足することになっております。
政府出資は
経済援助資金特別会計から
出資をする、こういう建前になっております。従いまして五分の三は
政府出資ということでスタートするわけであります。従って将来におきましても、
相当多額の
政府出資を継続して行なっていく、こういう
予定でございます。この
資本金は、
試験機を二機作り、それから
試作機を二機
製作する、それから
治工具の
製作の
費用、こういうものに充てる
予定でございます。この三十四
年度以降、
試作の第二号機が完成するまでの全体の総
経費は約三十九億五千万円でございまして、この三十九億、五千万円のうち、
資本金の三十八億円を、差し引きました残りの約一億五千万円、これが
補助金といたしまして計上する
予定でございます。この
補助金は要するに
精密設計、それから
各種部分の
強度試験、こういうものに要する
経費に充当する
予定でございます。
初年度といたしましては、さっき申しました
財政資金といたしまして、
政府出資三億のほかに、今中しました
補助金の部といたしまして五千万円、合計三億六千万円の
財政資金の手当をいたしておるわけでございます。こういうようなことで、現在すでに発足いたしておりまする
設計研究を、
木型製作というところまで一応三十三
年度においては終了し、さらにそれの精密な手直しというものを引き続き今後三十五年の半ばぐらいまで続けるわけです。精密な
設計は、大体三十五
年度末に完了すると。その間、三十四
年度、三十五
年度におきまして、
治工具の
設計、
製作をいたしまして、それから三十四
年度から三十五
年度の半ばぐらいまでに、
各種の
部分強度試験を行いまして、そうして、いよいよこの
強度の
試験機の
製作試験に入りまするのが三十六
年度の半ばぐらいまでの間にやると。それから、
疲労試験機の
製作試験が三十六
年度の半ばから三十八
年度の半ばぐらいまでの間にそういった
試験機を作ると、これをまあかりにゼロ一号機、ゼロ二号機というふうに申しております。そういたしまして、いよいよ
試作の第一号機にかかりまするのが、三十五
年度の半ばから三十八
年度にかけて行い、
試作の第二号機は三十六
年度から三十八
年度にかけまして行う、こういう
予定でございまして、結局
昭和三十八
年度までの間に、そういった
試作開発段階を終了いたしまして、いよいよ三十八
年度から
あと量産態勢に入る、こういうふうな
計画で一応
予定をいたしておるのであります。
で、こういうような
事業を行いまする
中核体といたしまして、
日本航空機製造株式会社というものを設立するのでありまして、その
会社の
目的につきましては、先ほど申しました
通りでございまして、これが第十三条に書いてございます。第十四条におきまして、
政府は
予算の
範囲内で
会社に対して
出資することができるということが第十四条の第二項に書いてございまするが、この
出資に
関連いたしまして、
附則の第三条におきまして、「
政府は、
会社が
最初に行う
輸送用航空機の
設計、
試作及び
試験が完了した
年度の翌
年度以降は、
会社に対して新たな
出資を行わないものとする。」と、こういう帆走が置いてあるわけであります。これは先ほど申しましたように、
昭和三十八
年度までで一応
試作開発段階が終りますが、その
試作開発段階が終るまでの間は
政府の
出資をいたそうと、こういう
趣旨でございまして、従って、
試作開発段階が終った
あとにおいては、新たな
出資をつけ加えることはしないと、こういう
趣旨のことが
附則の第三条に書いてあるわけであります。これはまあ、
量産段階に入りますれば、
相当のまあ収入も入ってくるということで、
あとは特に
出資ということによって
政府が特別なめんどうを見る必要も大体なくなってくるのではないかということで、一応そういう
規定が置いてあるわけでございます。
それから、この
会社の
役員でございますが、これはまあこういった
特殊会社の
通例に従いまして、取締役七人以内、
監査役二人以内というようなことで、この
役員については、兼職の
制限であるとかというような一般の例に従った
規定が置いてございます。
それから、
会社の行います
事業の
範囲は第十九条に書いてございますが、要するに、
輸送用航空機の
設計、
試作、
試験ということでございまして、そうしてそれらの
航空機なり
機体構造部品なりの
製造、
販売をする、そのほかに、さらに
関連の必要な
事業をやる、こういうようなことでございます。
会社はやはり
政府出資の
特殊会社でございまするので、
事業計画等につきましては、符に
政府の
転業計画、
資金計画、あるいは
収支予算等について、特別の
監督を受ける、
通産大臣の
認可を受けるというような
規定が赴いてございます。
財産の
譲渡等につきましても、そういう点において
制限が加えられております。それから、
社債、
借入金等につきましても、
社債の
募集等については
通産大臣の
認可が必要であるというような
規定が、二十条から二十二条にかけましてございます。
それから、第二十三条におきましては、
社債発行限度の
特例、これは商法の二百九十七条の
規定によりますというと、
資本及び
準備金の
総額または最終の
貸借対照表により
会社に現存する純
財産額というような
限度がございますが、それに対しまして、その
限度の二倍まで
社債発行の
限度を拡張いたしておりまして、これらの点について、
会社に対しまして特別の助成的な指揮をとっているということでございます。それから第二十四条におきましても、同じように
設計費用等の
繰り延べの
特別規定を設けておりまして、この
会社が、先ほど申しましたように、できましてから五年間というものは大体
試作開発でありまして、普通の
営業運転に入りませんので、従って、それまでの間は、そういう
設計とか
試作とか
試験に要しました要用を
貸借対照表の資産の部に計上することを認めました。そうして、五年たちまして、さらに
あと七年間、結局成立後十二年というような間におきまして償却を行うというふうな特別の
繰り延べ規定を設けまして、
会社に対する
助成措置をとっておるわけであります。反面におきましては、また当然五年間というものは
利益もございませんので、
利益配当はこれを禁止しております。その他定款の変更とか、あるいは一般的な
監督規定とかいうようなことは、通常の例に従って書いてあるわけでございます。
それから三十一条になりまして、
航空機製造事業法の適用という
規定がございますが、これはこの
会社は
製造、
販売という
製造事業をやる
会社ではございますけれども、その
実態は、いわば中央において
中核体としての
運用をするわけでありまして、実際の具体的な
製造というものは、それぞれ
設備を持っておりまする既存の各
会社に
責任の分担をいたしましてやらせておるわけでございます。従いまして、本来ならば、
航空機製造事業法の
規定をそのまま適用いたしますというと、いろいろ
設備の面の
制約等のむずかしい
規定がございますが、そういう
規定をそのまま適用いたしませんで、
航空機製造事業法の全部の要件を備えなくても、
航空機製造事業者とみなすというような
意味の
規定を置いておるわけであります。
そういうような大体
規定でございまして、それといろいろ
関連いたしましたこまかい
手続等の
規定もございます。あるいは
登録税の免除につきましては、
附則の方にも書いてあるわけでございまするが、こういうようなことで、要するに、
日本航空機製造株式会社という
特殊会社を設立し、これを
中心にして
航空機の
国産化の
推進をはかっていく。で、その
国産化をいたしまするにつきましての
予定されておりまする
最初の
飛行機と申しまするのは、いわゆる
中型の
輸送機でございまして、これは
実物大の
木型が、昨年末公開いたして、今横浜の追浜に置いてありますが、これをごらん願いますとわかりまするように、今までの
各種の諸
外国のいろいろの
実態、現に飛んでおります
飛行機をあらゆる点を総合いたしまして、非常に
日本人に適した
飛行機を作り上げるということで、約六十人乗りの
中型の
旅客輸送を
目的といたしました
輸送機を
設計した。ただ
エンジンにつきましては、これはまだ、いずれはこれを
国産化しなくちやならぬのだし、早急には
国産化は望めません。
研究は継続いたしますけれども、とりあえずはロールス・ロイスの
エンジンを
輸入いたしまして取りつける、こういうことでございます。双発の
プロペラ機でございますが、これらの
性能等につきましては、
現存世界各国で飛んでおりまするこういった同じような
目的の
飛行機といたしましては、
DC3、
DC4等がございますが、これらはいずれもそういったタイプのものでございます。しかもそれらはすでに
アメリカにおいては
生産を中止しておる。従って五年くらい先になりますと、
世界のそういった
輸送機が全面的に後退の時期がくると思われます。従ってそれに間に合わせるようにいたしまするためには、今から着手する必要がございます。そういたしまして、
日本の
国産化がスムーズに進みました場合におきましては、そういった諸
外国の
輸送機等と代替をいたします、リプレースをいたしますところに、
日本の
国産機が登場していくということになりますれば、
日本としては
輸送機の
輸入をしなくても済みますし、さらに進んでは東南アジア、その他にも
輸出をするということも考えておりまして、それらの
国内の
需要あるいは
輸出という
需要を想定いたしまして、しかもこの
国産機は、その
コストの面におきましても、
十分国際競争力を持ったものを作り得るという確信を持ちましたので、こういうふうな具体的な
計画を立てたわけでございます。
以上大へん簡単でございますけれども、
航空機工業振興法の一部を
改正する
法律案の
内容でございます。
それでは引き続きまして、
プラント類輸出促進臨時措置法案の
内容につきまして
概略お話を申し上げたいと思います。
プラント類輸出促進臨時措置法という
法律の
目的でございますが、これはこの
法律の
名前の
通り、いわゆる
プラント輸出を
促進するということが
終局のねらいでありまして、そのための
措置をやるということでございます。で、御
承知の
通り、この
日本の
貿易の
構造から申しまして、将来は
輸出品のウエートが、ますます機械を初めといたしました
重化学工業品に
重点が移りつつありまするし、またそこに
重点を置かなければ、
日本の
輸出は今後伸びないという
実情でございます。で、それらの
重化学工業品の中でも、特にいわゆる
プラント類の
輸出というものは、その
契約金額も非常に巨大でありまして、またこれに
関連いたしまして、いろいろ
日本の
技術あるいは
建設技術というようなものを海外にますます広めてゆくという
意味におきましても、非常に重要な
貿易拡大のための手段といたしまして、最も
重要性を今後ますます高めてゆくものの一つでございます。
ところが実際の
実情を見ますというと、
日本の
プラント輸出というものは
アメリカその他の
先進国に比べまして、まだまだきわめて低調でございまして、何かもっと強力な手を打ちませんというと、このままでは
プラント輸出というものは、そう急速に伸びるということは期待できないという事情にあるのでございます。で、もちろん
政府といたしましては、
プラント輸出の
振興のために、あるいは
日本輸出入銀行によりまする
協調融資の
比率を高める、あるいは
輸出保険制度の
運用をはかる、あるいは
租税特別措置法によりまして
輸出所得の控除に対して
特例を設ける、あるいは
プラント輸出につきものでありまする
延べ払いという問題につきましては、できるだけ
延べ払い条件を緩和するというような、いろいろな
優遇措置は講じて参ったのであります。その結果、大きなものといたしましては、ブラジルの
ミナス製鉄所でありますとか、あるいは
インドの
ルールケラーの
鉄鉱石の鉱山の
開発というような
計画もありまするし、あるいはパキスタンの尿素の
工場の
建設計画、
インドのレーヨン・パルプの
工場建設計画、そういった
工場の全体としての
建設の評価というものが
相当に進促されております。しかしまだ
日本の
プラント輸出が全体に占めまする
比率というものは、
米英あるいは西独というものに比べますというと、まことに微々たるものである
現状でございます。その
原因はどこにあるかということでございますが、いろいろな
原因はありましょうけれども、特に重要な問題といたしましては、こういった
プラント輸出をいたしまする際には、まず、そういった
工場の
建設等を
現地でいたしまするにつきましては、その
現地のいろいろな立地的な
条件、自然的、経済的な
条件の
調査というような
段階から、さらに進んでは、その
工場の
設計等につきまして、いわゆる
コンサルティングというものの
体制が非常に弱体であります。で、米国を初め、
先進国におきましては、すべて
国内の
工場建設においても同様でございまするが、まず、有力なる
コンサルタントというものが非常な
資本力と
信用力を持ったものがございまして、そこにまず委託をいたしまして、全体の
設計をやってもらいまして、
工場を運転するばかりになって、これを引き渡すというのが、
通例でございます。で、
日本はそういうような強力な
コンサルタントというものが、現在のところ、率直に申しまして、全体として弱体でございまして、従ってどうしてもそういった
コンサルティングという
体制が弱体であり、また
日本の
技術に対する国際的な
信用力が低いという面もございまして、
プラント輸出契約をするに当りましては、
相手国から非常に過大な
保証を、
ギャランティを求められる場合が多いのであります。従ってその
保証条件が、
ギャランティを求められる
条件が非常に過大でありまするために、どうしても
輸出契約を引き受けまする
企業者といたしましては、その
リスクを
自分で背負うだけの自信がないために
契約をまずちゅうちょするという例もございまするし、かりに
契約をすることに踏み切る場合におきましても、それらの
コンサルティングに伴いまする
リスクというものを
自分自身の
費用リスクにおいて負担しなければならないために、その
リスクを
輸出価格、
コストの中に加算いたしまして
契約に応じなければならぬ、従ってどうしても
応札価格が高くなるということによって、
国際競争の面において非常に不利な
条件をやむを得ず押しつけられておる、こういうようなのが
実態でございまして、そこでこの面を何とか打開いたしませんというと、
プラント輸出の
促進がむずかしいというのが
現状でございます。
従ってこれを打開いたしますためには、まず第一には強力な
コンサルタントを育成するという問題が一つございます。で、現
在社団法人日本プラント協会という代表的な
コンサルティング体制がございますけれども、これとてもまだ
相当強力な育成をはからなければならぬ状態でございまして、まず、
コンサルティング体制を強化するということと、それからもう一つは、今の
コンサルティングに伴いまする
保証リスク、これを何らかの方法によって
政府がその
リスクをある程度補償してやる、カバーしてやるという制度ができますれば、業者といたしましては、ある程度その
リスクを
政府によって負担してもらうということによって、安心して
輸出契約に応じられると、こういうことになるわけでございまするので、その面におきましてこの
プラント類の
輸出に伴う
保証損失、
ギャランティに対する損失を
政府が補償すると、こういう制度を確立したいというのがこの
法律の一口に申しまして骨子でございまして、そこでこの
プラント類輸出促進臨時措置法案におきましては、そういった面に関する
規定を置いてあるわけでございまして、まず第一条におきましては、そういう
趣旨において、
目的は今申し上げた
通りでございますが、第二条におきまして、プラントというような言葉、並びに
コンサルティングというような言葉、非常に耳新しい、
法律用語としては新しいものでございますので、これらに対する定義を書いたのでございますが、一口に申しますれば、プラントというのは、
各種の鉱
工業の
生産設備、あるいは通信施設、
研究施設、灌漑施設といふうな施設、
設備であって、しかもそれが全体としてまとまった機能を憎むように配置され組み合わされた総合体という、工作物、機械
設備の総合体という観念でございます。従って、一つの単体の機械としてたとえば船舶というような、非常に大きな
契約金額のものでございましても、そういう総合体と見られないものにつきましては、この中に入らない。こういうことでございます。
それから
コンサルティングというのは、要するにそういったプラントを
外国で
建設いたしまする場合の
調査、
計画、
設計というようなことを
コンサルティングと言っているわけでございます。
で、こういうような定義のもとにおきまして、ここに書いております
リスクの補償ということはどういうことであるかと申しますと、
プラント類を
輸出いたします場合に、そのプラントの
生産能力、あるいは性能とかというものにつきまして相手方と
契約をして、こういった
生産能力、こういった性能のものを、
工場を
建設するということを約束して、
設計をし、
建設にかかるわけでございます。ところが、できましてから、これを運転してみるというと、初めに約束いたしました、その性能なり、
能力と違った結果が出たという場合におきましては、その点につきまして違約金を払わなければならぬというような違約金の支払い義務を書いてある
規定も、この
保証条項の中に
相当あるのが
通例でございます。そこでそういうような違約金を払わなければならぬというような
保証条項のついた
プラント輸出契約をいたしました場合におきまして、そうして現実にそういった違約金を払わなれけばならぬというような事態が起った場合、あるいは違約金を現実には払わないけれども、そういった違約金を払わなければならぬような事態が起る前に、そのおそれが生じました場合においては、前もって機械なり、装置をリプレースする、取りかえるというような場合が
相当一般にあります。そういった場合においては、それらによって受けました
費用の損失というものを
政府がある程度補償してやろう、こういうことでございます。で、この補償をするにつきまして、これを——まあ補償という言葉は非常にわかりにくいのでございますが、損失補償
契約というものを
政府が締結するわけでございますが、それは
プラント類の
輸出契約をいたしまする人が、
政府に対して——申し出ました場合におきましてこれは、申し出るか申し出ないかは自由でございますが、そういった補償
契約を締結したいという申し出がありました場合には、その
内容を審査いたしまして、これらに対しまして一定の
条件によって補償
契約を締結できる。こういうことがございます。
そこでその補償
契約の
内容でございまするが、まず第四条におきまして、補償価額、その補償
契約の
目的になっておりまする価額、これを補償価額と名づけておりまするが、この補償価額は、結局最高
限度をやはり設ける必要がある。無
制限に補償価額を設けることは不適当でございまするので、結局その
プラント類の
輸出契約総額の二〇%、百分の二十ということを最高
限度といたしておるのであります。言いかえれば、百億円の
プラント輸出をするという場合におきましては、二十億円というものがこの補償
目的の価額になるのであります。
そういたしまして、その補償価額の中のさらに実際の補償金額はどこまで補償するかという、これも
限度を設けてあるのであります。その補償金額の
限度は第五条に書いてありまするように、今の補償価額に対する百分の七十、七〇%、言いかえますれば、百億円の
輸出契約の場合においては二十億円の補償価額、そのさらに七〇%でありまするので、十四億円まで
政府が補償をする。こういうことになるのでございます。
この補償
契約の制度というものは、従いまして毎
事業年度、
政府がこの補償
契約の対象として補償
契約を締結し得る金額の
総額というものを、会計
年度ごとに
予算総則にこれを計上する必要があるのであります。従ってそのことは第六条に書いてございまするが、これを受けまして、
昭和三十四
年度の
予算総則におきましては、三十四
年度中に
政府が補償
契約を締結し得る
限度というものを六十億円というふうに一応計上いたしておるのでございます。この六十億円ということは、これは大体まあ経済企画庁の五ヵ年
計画に織り込んでありますが、この
プラント輸出の対象の
契約金額を約四百億円というふうに想定いたしまして、それに見合う金額を一応計上したわけでございます。
それから次は、この制度はまあいわば相互保険的な運営をいたすわけでございまするので、
プラント類輸出者から一定の補償料を取るわけでございます。その補償料に関する
規定は第七条に書いてございます。この補償料のきめ方は、具体的には政令できめるわけでございまするが、この問題はどのくらい損失が発生するだろうか、
契約の件数に対しまして、事故が発生する割合、いわゆる事故率というものを何パーセントに見るかということによって非常に変ってくるわけであります。これにつきましては、
初年度、
昭和三十四
年度におきましては、事故率を一応一〇%というふうに定めまして、その一〇%ということによって計算をいたしました補償料をこれに払うということにいたしました。言いかえれば、補償料の率というものは、先ほど申しました補償価額、補償金額の
限度、それから事故率というものを掛け合せまするというと、一・四%という補償料を国庫に納付する、こういうことになると思います。しかしこれは政令でございまするので、
初年度以降の経験を積むに従いまして、漸次むしろ補償料は下げていくという方向で考えていきたいということに大体の了解ができております。
こういうようなことがこの制度の骨子でございまして、これによってこの補償
契約を締結し、一定の
条件に合致いたします場合には、審査をいたしました結果、補償
契約を締結し、さらに事故が発生した場合には、一定の
条件に従って補償金額を支払うわけであります。これらの業務は、実際には非常に
技術的な問題でございまして、
政府の役人だけではとうてい処理し切れない問題が非常に多いのであります。従いまして、先ほど来申し述べましたような、一般的な基準なり
運用の基本的な線につきましては、十分これはまず関係省と相談の上決定いたしまするが、具体的な個々の補償
契約の締結等に関する業務は、これは特定の機関に委託することができるという
規定を置きまして、これは第十六条でございまして、こういった業務は
政府の業務でございまするけれども、そういった非常に
技術的な面がございまするので、それに必要かつ適切な組織と
能力を持った公益法人にこれを委託することができるという
規定を置きました。この公益法人はさしあたりの具体的に考えておりまするのは社団法人
日本プラント協会でございますが、これに扱わせるということでございます。しかし、これは委託でございまして、委任ではございませんので、最終の決定権はあくまでも
政府が
自分で持っておる、こういうことでございます。
あとはこういうような委託機関として指定しました場合には、これを指定機関と称しておりまするが、この指定機関になりました、言いかえますれば、今の社団法人
日本プラント協会が指定機関になりました場合には、この業務に関する限りは、
政府の業務でございまするので、あるいは秘密の保持であるとか、その
役員に対する特定の
監督とかいう特別の
監督規定を第十七条以下に
規定をいたし、必要な罰則をこれにつけておる、こういうような
状況でございます。
最後に、この
法律は付則の第三項に書いてございまするように、この
法律は
昭和三十八年三月三十一日限り、その効力を失うということになっております。言いかえますれば、
昭和三十七
年度までの一応の限時法ということになっておりまして、その
意味におきまして臨時的なものでございまするが、その
趣旨は、
昭和三十七
年度というのは企画庁の経済五ヵ年
計画での最終
年度でもございまするし、そのころまでにこの
プラント輸出体制というものを早急に確立したいということでこれを
促進する
意味におきまして、一応はそこに期限を切った、こういうような
趣旨でございます。
大体
プラント類輸出促進臨時措置法案の
内容の
概略はそういうことであります。一応
説明を終ります。