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1959-03-05 第31回国会 参議院 商工委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月五日(木曜日)    午前十一時三十七分開会   —————————————   委員の異動 本日委員小沢久太郎君辞任につき、そ の補欠として稲浦鹿藏君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     田畑 金光君    理事            上原 正吉君            小幡 治和君            島   清君    委員            稲浦 鹿藏君            木島 虎藏君            鈴木 万平君            高橋進太郎君            高橋  衛君            堀本 宜実君            阿具根 登君            阿部 竹松君            栗山 良夫君   国務大臣    通商産業大臣  高碕達之助君   政府委員    通商産業政務次    官       中川 俊思君    通商産業省重工    業局長     小出 榮一君    特許庁長官   井上 尚一君    特許庁総務部長 伊藤 繁樹君    中小企業庁長官 岩武 照彦君    中小企業庁振興    部長      川瀬 健治君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   説明員    大蔵大臣官房財    務調査官    大月  高君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○軽機械輸出振興に関する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○中小企業信用保険公庫法の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送  付) ○商工組合中央金庫法の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○特許法案内閣提出) ○特許法施行法案内閣提出) ○実用新案法案内閣提出) ○実用新案法施行法案内閣提出) ○意匠法案内閣提出) ○意匠法施行法案内閣提出) ○特許法等の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○商標法案内閣提出) ○商標法施行法案内閣提出) ○特許法等施行に伴う関係法令の整  理に関する法律案内閣提出)   —————————————
  2. 田畑金光

    委員長田畑金光君) これより委員会を開会いたします。  高碕通産大臣より発言を求められております。
  3. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 昨日、本委員会におきまして審議中、政府委員である中川政務次官が、突然歯痛のためによく打ち合せもなくて医者に参りまして、つい審議を停滞いたしましたことは、まことに申しわけない次第でございまして、今後再びこういうことのないように十分注意いたしたいと思いますから、どうぞごかんべん願いたいと思います。  なお、詳細のことにつきましては、中川次官から弁明いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
  4. 中川俊思

    政府委員中川俊思君) 昨日委員会が始まります前に、決して行方不明ではないのでありますが、衆議院運営委員長室給仕に、国会歯医者に行くからということを言って出たので、いつも十分くらいで帰ってくるのでございますので、すぐ帰ってくるからということを申して出たのです。ところが、衆議院第一議員会館歯医者へ参りましたところが、満員でございましたので、銀座の滝口という歯医者へ参りました。そうして私は今まで、歯が実はこの年になるまで痛んだことはなかったのでございますが、ことしになって初めて歯が痛み出しましたので、これは炎症を起しておるから抜いたらいいだろうというので、何か麻酔薬みたいなものをつけましたところが、ちょっと何かにおいがして気分が悪くなったものですから、十分間ほど椅子にころんでおりました。それからきょうはもう抜かれても時間がかかっちゃ困るからというので帰って参りましたところが、玄関で上原さんにお目にかかって、今流会になったということを聞いて、まことに申しわけなく、最初から銀座歯医者に行くということがわかっておりますれば、議院運営委員長室給仕にそのように申し伝えて行くのでありますが、国会の方の歯医者で変更いたしましたために、大へん御無礼いたしました。今後は十分注意いたしまして、かようなことのないようにいたしますから、今回のところは格別なる思し召しをもってお許しを願いたいと思います。
  5. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 委員長からも強く申し上げておきますが、きのうのような事例はまことに遺憾に存ずるわけです。大臣次官発言事情はよく了承できますけれども、今後は連絡等十分なされて、再び昨日のようなことのないように十分御留意願いたい、件に立ってやっているわけです。そうすると、法律の中身が変ってこなければならぬという筋合いになろうと思います。法律は全部同じで、年限だけ切るというのは、五年たったら経済状態がぐるりと引っ繰り返るとか、海外貿易計画が五年後にぐるりと引っ繰り返るということになる。まあ五年たってから一応廃止というのなら別問題ですが、こういうことは法理論としても成り立たぬと思うのですが、ただあなたにお尋ねすると、法制局お尋ねしたところが差しつかえない、法制局のどなたがあなたにお答えになったかわかりませんが、そのようなりっぱな法律を作らなければならぬのに、永久法律で企画立案して、ぽつんと年限だけ修正するということは僕は了承できません、その点いかがですか。
  6. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) この前御説明申し上げましたように、こういうような修正衆議院において行われましたその趣旨なりいきさつでございまするが、御承知のようにこの軽機械輸出振興に関する法律は、軽機械という中にはこのほかにもいろいろな商品があるわけでございますが、とりあえず別表におきまして二品目だけ指定したわけでございまして、家庭用ミシン双眼鏡、この二つ法律に明記してあるわけです。その法律に関するその二つ商品に関する限り、この軽機械輸出振興の当面最も必要な品目を取り上げたわけであります。衆議院における審議経過から申しますると、主として双眼鏡業界等における一部の反対等に端を発しまして、基本的には既存の、中小企業団体法に基きます工業組合、あるいは輸出組合、そういう既存制度をもう少し活用するのが本筋ではないかというようなことが議論の根本になったわけであります。しかし実際のそれらの業界実態を見まするというと、工業組合を育成し、工業組合経済事情によってこれを行うということが、時間的にも非常に困難であり、またこの法律内容から申しましても、工業組合制度だけではカバーしきれない面も出てきたわけでございますので、従って取りあえず輸出振興事業協会というものを設立し、これの運営を行わしめますけれども、しかし五年という期限の間におきまして、既存工業組合制度その他の清川を十分はかって、業界態勢をもう少しととのえるための時間をかけて、そうしてそれらの態勢をととのえました場合におきましては、そういう既存制度の方に切りかえる、こういうことが適当であるというような趣旨におきまして、修正が行われたわけでございます。従いまして軽機械輸出振興ということそれ自体は、もちろん非常に恒久的なものであり、また特に別表に指定されております二品目につきましても、その業界実態というものから申しまして、今、問題になっておりまする二品目つきましては、施行の日からやはり五年以内ということで、一応その間に態勢をととのえるということになっておるのであります。従いまして阿部さんのおっしゃいましたように、五年たったときの状態におきましてどうなるかという問題がございます。ございますが、この法律の建前から申しますれば、五年、あるいは五年を待たずして、五年以内に廃止するということになりますけれども、それらの業界実態、あるいはそのときにおきまして、その状態によりましては、もちろんこの付則規定それ自身修正するという可能性はあるわけでございます。しかし法律性格といたしましては、法律全体が根本的に臨海的な性格のものに変ったかどうかというような点につきましては、これは法律論としては、いろいろ議論のあるところのようでございます。  それから今の法律の名称と、この付則期限を切りました点との関係につきましては、これはもちろん法律専門家意見、あるいは前例等、いろいろ相談いたしました結果、特に臨時という名前を入れる必要はないというようなことで、付則の点だけの修正にとどまった、こういうような経過であります。
  7. 阿部竹松

    阿部竹松君 今お尋ねしておるような点は、これは今申し上げました通り、私、局長お尋ねするのは穏当でなくして、やはり折を見て委員長に、衆議院商工委員会代表がおいでになったときに、もう少しお尋ねしたいと思うわけですが、ただそれに関連して、もう一つ局長お尋ねしたいことは、双眼鏡ミシンと一本になって、法律でとにかくしぼっているわけです。ところがミシンの方は問題なくして、双眼鏡の方に問題があった。従って双眼鏡のために五年という修正がなされたというように漏れ承わっているわけです。そうなってきますると、大体双眼鏡ミシンと一緒にこの法律規制するということが、そもそも問題の発端ではないか、こういうように考えておるわけです。従って軽機械とかいうことになれば、双眼鏡ミシンも同じかもしれませんけれども、相当その環境も違うし、今までやってきたあり方も違うわけです。それをたった一つ法律で、全然違うものを一つにしなければならぬというところに無理があるのではないかという懸念があるわけですが、そういう点はいかがでしょうか。
  8. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) 今回この法案修正されました経緯につきましては、確かに御指摘通り、最初非常に問題として取り上げられました点は、この品目の中で、双眼鏡協会につきまして業界の一部に非常な反対意見が出てきたということが問題の契機になっております。しかしながら、衆議院におきまする議論経過等をごらんいただきまするとわかりまするように、結局議論の焦点は、双眼鏡特殊性とか、あるいはミシン特殊性とかいう問題でなくて、すでに中小企業団体組織法によりまして、単なる調整活動のみならず、経済事業もやれるような形に工業組合制度というものが確立されておるのではないか。従って、その制度の運用を十分にやってみて、それがほんとうに熟したときにおいて、それがどうしてもうまくいかないということがわかったとき、初めて、その既存制度の活用では不十分だからということで、輸出振興事業協会を設立したらどうかと、こういうことが衆議院経過であります。従いまして、そういう意味におきましては、ミシン業界におきましても、あるいは双眼鏡業界におきましても、その工業組合制度との関連という点においては全く同じでございます。従って、双眼鏡業界だけのためにこういうふうな修正が行われたわけではないわけでございます。  それから、今御指摘になりました軽機械というのは、もちろん家庭用ミシン双眼鏡だけではございませんで、あるいはカメラでありますとか、時計であるとか、トランジスター・ラジオであるとか、いろいろあり得るわけでございます。しかも、この軽機械という中へいろいろなものをごっちゃに、無理に一つ法律の中に押し込めたような感がいたしまするけれども、実態はそうではなくて、これらに全部共通した業界実態があるわけでございまして、と申しまするのは、いずれも非常に小型軽量機械であるという商品それ自体特殊性が共通であることはもちろんでございますが、その製造の過程が、いずれも主として中小企業等の手によりましてアセンブル——組み立ての工程によって製品が仕上げられるという点に非常に特色があり、従って、日本人の手に最も適した国際競争力の非常に強い商品であるという意味におきましては、いずれも共通でございます。しかも、それらがいずれも輸出振興のホープとして最も期待されておる商品であるという意味におきましては、双眼鏡も、ミシンも、あるいはその他の品目も、みな同様でございまして、そういう意味で、これを一つ法律の中に入れたわけでございます。その中でなぜそれでは双眼鏡ミシンだけを、ほかにもいろいろ軽機械がある中で、この二つのものだけを取り上げたかと申しますれば、それは、この二つ品目につきましては、現在の輸出振興なり、業界実態というものが、早く手を打って輸出振興に関する措置をしなければ手おくれになるというような緊要性があるという意味におきまして、この二つ品目をここに取り上げたわけでございます。将来同じような実態あるいは情勢になりました品目が軽機械の中に出て参りますれば、それらの品目をこの法律修正によりまして、別表の中に追加をすることも可能でありますし、あるいはこれを削除するということも可能であるわけでございまして、両方大体共通した問題であるという意味におきまして、同じ法律の中に規定しておるわけでございます。
  9. 田畑金光

    委員長田畑金光君) ちょっと申し上げておきますが、大臣は、予算委員会関係もありますので、そちらの方に出席することも近く予想されますから、大臣質問があれば、まず大臣質問願いたいと思います。
  10. 島清

    島清君 大臣に御質問を申し上げる前に、ただいま阿部委員質問の最中に席を立たれたのでありますが、阿部委員質問に対しまして、私は局長から答える筋合いではないと先ほどから思って聞いておったのでありまするが、やはり局長よりも、もし衆議院側の方がお答えにならないとするならば、やはり大臣から答えられてしかるべきだったと、こういうふうに思っております。この点について大臣の御意見があれば承わっておきたいと思いますることと、さらに本案件についてお尋ねを申し上げたいことは、提案の理由と、並びにしばしば説明をされましたその内容を承わっておりまするというと、この法律は、登録制度と、さらに貿易振興事業協会を設立して貿易振興したいと、こういう二木柱に立っておるようでありまするが、私は貿易振興ということは、日本の国情からいたしまして非常に必要でもございまするし、これは政治におきまする殺し文句であると思っておりまするが、さりとて、何でもかんでもこういったような殺し文句によって片づけられていくということについては、はなはだわれわれの英知というものが承知をしないのであります。そこで、大臣お尋ねをいたしたいことは、大臣今期国会におきまして輸出入取引法改正案をお出しになっておるわけであります。これも、改正といたしましては、かなり広範な改正事項が含まれておるわけでございまするが、これを見まするというと、やはり現状の輸出入取引法においては輸出振興をはかることはできないと、もっとこれを伸張するためには、この一部の法律改正をしなければならないと、こういうふうに理由をうたっておられるのであります。そういたしまするというと、この輸出入取引法の一部を改正しただけで、この種法案のねらいでありまする貿易振興するために輸出振興事業協会を設立する必要はないと、こういうふうに思うわけでありまするが、この法案貿易振興に関する範囲内において輸出入取引法の一部の改正案とのねらいが一体私は非常に重複をしておるような気がするのでありまするが、この点について、私の認識の方が誤まりであろうかどうか、大臣からまずもって御説明をいただきたいと思います。
  11. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 第一の方の御質問の点につきましては、これはできますれば、やはり衆議院の方から御説明を願えれば非常にけっこうだと存じておるわけでございますが、幸いに皆さんの御了解によって小出政府委員が御説明いたしましたことについて御満足願えればさらにけっこうだと思っておるわけでございます。  それから第二の問題につきましては、輸出入取引法の一部改正ということにつきましては、これは全般の仕事につきましてうたっておるわけでございますが、特に軽機械類輸出振興に関する合同のこの法律案は、主としてこれは、中小工業というよりも、むしろ零細工業に属するわけなのでありまして零細な工業者が作ったものをアッセンブルして出すということになっているわけであります。零細企業がいろいろ競争をしてしまった結果、その製作の責任が明らかでないというふうなことが輸出の上において非常な欠陥を生ずると、こういうようなことでございますが、できるだけ零細企業の者の責任を明らかにするために、登録制をとって、そうしてその部分についても責任を明らかにすると、こういう方針で進みたいと思っておりますが、特に軽機械の中で双眼鏡とかあるいはミシンというふうなものを選定いたしましたことは、これは今アメリカにおいていろいろ問題になるわけでございまして、今後対米貿易の推進には、この軽機械が非常に重点的になると、このほかに、先ほど申しましたトランジスターとか、そういったものは今現にどんどん行っておるわけでありますが、そういうものは、一つの工場で作るのではなくて、各下請の業者が作ったものをアッセンブルするわけであります。その各業者責任を明らかにするということをはっきりしておきたい、こういうふうなことで今度この軽機械輸出振興に関する法律案が提案されたわけでありますから、さよう御承知願いたいと思いますが、もちろんこれは輸出入取引法の一部改正というものとは並行的に進んで行きたい、こういうふうに存じております。
  12. 島清

    島清君 その輸出入取引法の一部改正の中には輸出業者登録せしめるというふうな改正案があるわけですね。これはこの法律では生産者登録をするさらに輸出入の方では輸出業者登録を受けて、そしてその登録を受けてない者はその物資が扱えなくなる、こういうふうなことになるわけでありまして、これを見ますというと、まさに官僚統制時代に入ろうとする、これは狙いだと思うのです。現行において輸出振興がはかられていないと、それならば輸出入取引の面から、また輸出業者登録せしめようというだけの狙いであるとするならば、私たちはあるいは了解するのかもしれませんけれども、輸出振興をはかると称して輸出業者登録制をしき、さらにまたこの法律においては生産者登録せしめるということは、私はこれを総合的に判断をいたします場合には、これはただ輸出振興をはかるための狙いではなくして、なんか官僚統制と言いましょうか、そういうものが狙いだと、そういう感じを持つわけでございますが、一体この輸出入取引法の一部を改正しなければならないというお考え方と、さらに軽機械のこの法律制定しなければならないという考え方とは、いつごろから考えつかれたことなんでございますか。軽機械登録制にしなければならない、それの振興をはかるために事業協会を作らなければならないというて考えつかれたことと、輸出入取引法の一部を改正するという改正法案を考えられたこととは、どっちの方が先で、どういうふうなことなんでございますか。
  13. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この輸出入取引法をまず考え、輸出入不当競争等を防止いたしまして、そしてこれをある一定の基準の下に輸出して行くというためには輸出入取引法改正するということを考えたわけであります。そうしてみるというと、今後起ります問題はかりに輸出業者についてのある程度の規制を加えても、今度は生産する人の間におけるその責任が明確でなければ、さらにこれに対する規制を加えられない、こういうふうな点から考えまして、特にこのアメリカ向けに行くところの軽機械につきましては、その生産設備がきわめて簡単に、そしていろいろたくさんの人たちが無責任製品を作るというふうなことのために問題を起すことが多いわけでありますが、これをさらに取締り、さらにこれを善導して行くと、こういうふうな意味におきまして、この軽機械輸出振興に関する法案を考えたわけであります。
  14. 島清

    島清君 これは双眼鏡に限ってお答えいただいてけっこうですが、双眼鏡輸出アメリカ向けで過去においてキャンセルを受けたのは何件ぐらいございましたでしょうか。
  15. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) 双眼鏡につきましてキャンセルを受けました実際の数につきましては、ただいま私手元にその実数の資料を持っておりませんが、そういったキャンセルを受けるというような話は、私どもの方においてもぼつぼつそういう話があるということを聞いております。ただ実際にどのくらいの件数があったかということについては、ただいまここに資料を持っておりません。
  16. 島清

    島清君 大臣は、これからの輸出重要部分を占めるのは軽機械である。従ってこれを伸ばさなければならない。こういうお説でございましたが、そうしてその例としてトランジスターをおあげになったのでありますが、私もブラッセルの平和博覧会の方に参りまして、日本品ヨーロッパあたりにおけるところの進出というものは、これは軽機械だ、こういうふうに思ったわけでありますが、しかし双眼鏡におきましてはアメリカ市場の九二%を占めているようでございまして、アメリカ市場をほとんど独占的に支配している、こう申し上げて差しつかえないと思うのでありまするけれども、これからこういったような法律制定をされまして、どういったような世界市場を開拓されていく目的を持っておられるのか。これは衆議院審議段階においても問題になったようでありまするが、結局は、通産当局ミシン双眼鏡トランジスター等の軽機械類をかなり、五、六種目について、この品目の中に入れようというお考えであったようでありますが、しかしながら大メーカー生産いたしますトランジスター等においては、大メーカー等反対にあいまして、これからはずされた。そうして比較的弱小の中小企業の、なかんずく零細企業のワク内で作られますこの種のミシン双眼鏡に対してかかる種の官僚統制的な法律制定をもくろまれた、こういうことでございますが、今大臣の御説明がございましたように、これから日本機械類の発展を軽機械の方において大いに世界市場を開拓しなければならぬ、こういうことであるといたしますならば、当然に当初において予定されておったトランジスター等の軽機械類が入らなければならなかったはずだと思うのでありまするが、これはさておきまして、双眼鏡アメリカ市場で九二%を独占支配するのには、私はアメリカ消費市場日本生産品とがマッチしておったればこそ、九二%のアメリカ市場を支配することができたと思うのであります。アメリカ市場に関する限り、私は日本双眼鏡は必ずしも法律制定までして品質を変えなければならぬというような条件はなさそうに思いますが、世界市場のどこにこの双眼鏡等貿易拡大を考えておられるか、その具体的な国々の市場を挙げて御説明を願いたいと思います。
  17. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 大メーカーがある一つ基準を持って、そして責任をもってやっているものにつきましては、これは大メーカー自身の利益を擁護するというふうなことのためにやっておりますから、比較的問題は少いのでありますが、零細企業中小企業でやっておりますものにつきましては、その技術の発達とか、あるいは設備を近代化するとか、あるいはそれに対する品質を向上するとか、また海外事情等をよくにらみ合せて作るということのために、これは中小メーカー零細業者自身海外事情を知ってやるということになればこれは一番いいことであります。けれども、それだけの資力もなく、それだけの力もないというために、中に仲介業者がいろいろ入る。そのもののために誤まられるというふうなことがあっても困る。それがためにこれは官僚統制をやるのじゃなくて、つまり中小工業者を擁護するために通産省の仕事といたしまして、それなんかの間に立って、それらの代表となって話をきめるということのためには、いろいろ関係を密にしなきゃならぬということがあり、またその中小工業を助成する上におきましても、技術を指導する上におきましても、また中間における不正なる、不正と言いましょうか、不当な仲介業者を排除するというふうな意味におきましても、どうしても彼らの結束を強くしていくということは必要があると、こう存じまして、特にこの大メーカーで製造されているものでなくて、むしろ中小工業者においてされているものを助成していきたい、従いましてこれはひとり米国だけの市場じゃなくて、そういう方法によって中小メーカー製品ができましたときには逐次ヨーロッパ各国にも持っていきたいと、こういうふうな考えでございます。
  18. 島清

    島清君 ヨーロッパ各国とおっしゃいまするけれども、西ドイツにいたしましても、イタリアにいたしましても、フランスにいたしても、双眼鏡輸出をしているのでございますね。ですから、世界のどこの市場を、この法律制定をされることによって、政府の説明通りに、品質が改善をされて、品質が改善されることによって、向上することによってどこの市場が獲得でき、開拓できると思われるかということを承わっているわけなんです。
  19. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) もちろんこれはただいまのところ米国、カナダが主でございますが、この米国、カナダにおきましても、まだ多数の潜在の需要者があるわけでありますから、その方面の開拓をまずやりまして、次にヨーロッパ市場につきましては、御承知のごとくドイツにいたしましてもあるいは欧州各国においては輸出国でありますが、その間における潜在的なものをよく考える。同時に東南アジアなり、今後生活程度が改善されれば当然こういうふうなものは使われるわけでありますから、あるいはアフリカ、東南アジア、中近東等に向って進んでいきたいと存ずるわけでありますが、詳細の計画は政府委員から説明いたすことにいたします。
  20. 島清

    島清君 大臣、そのアメリカの潜在消費者を顯在ならしめて市場開拓をするとおっしゃいまするけれども、一国の商品が一国の市場において九〇%以上も支配しているということはこれはもうほとんど独占ですね。そうだといたしまするならば、アメリカの需要者に日本商品がマッチしているものと判断をして、私は良識的な判断の誤まりではないと思うのです。それは日本にもいろいろの高級品もあり、さらには大衆品もありまするけれども、その大衆品こそがアメリカ市場を独占しているのですね。安いからアメリカの子供たちがおもちゃがわりにそれを買っておるということも言い得るわけなんですね。もっと上等であると、値段を高くしなければならないし、値段を荷くしまするというと、子供たちがおもちゃがわりにこれを買って遊び物にしない。そうすると、市場開拓と言われながら、商品の需要量というものは減退していくと、こういうことが言い得るわけなんですね。さらに東南アジアの方の市場開拓をされたいとおっしゃいまするけれども、東南アジアにおいては、何と申し上げましても、その後進性というのが顕著でございまするので、手持ドル等の不足をしておりまする関係上、まだ双眼鏡というものを持って遊ぶだけの余裕がないのですね。ですから、私は、品質を向上して東南アジアの市場を開拓するというよりも、もっと手軽に作られて、そして安い値段で東南アジアの消費者が買いやすいような値段にしてこそ、私は東南アジア等の後進性市場においては開拓が可能であると、こういうふうに考えておるのです。ですから、大臣説明からは市場開拓をするというところの理論的な根拠と実際的な証明はなされないと思うのですがね。いかがでございましょうか。
  21. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) それは見方にもよりますが、私は決して価格を上げるということが目標でなくて品質を向上しつつ同時に価格を低下していくというわけでございますから、そういう方向にやはり持っていかなきゃならぬ。アメリカにおいても決してこれは日本双眼鏡がいいからということでなくて、値が安いということでありますから、値が安くていいものを作るということがやはり根本でなければならぬ、こう存じておるわけでありますから、品質を改良するということは一面において質そのものもよくいたしますが、生産原価ももっと安くする、こういう方法を考えていきたいと存じております。そういうふうに指導すべきものと考えております。
  22. 島清

    島清君 それはね、大臣、いわゆる組立て企業でございまして、ドライバー一つありさえすれば商売がやれるという……、簡単にできるから安く売れる。しかしながら簡単にできて安く売れるものを、基準を設けて簡単にしないで複雑にして、そうして品物を高くしょうというのでありまするから、私は説明と実際とはまるで反対のような気がするのです。それはまあ議論にわたりまするならば、あえて申し上げませんが、さらにその業者零細企業であるがゆえにめくら貿易をして、それで向く売れるものを高く売らないで、仲介業者にたたかれておるというような例でございましたが、それは必ずしもミシンとか双眼鏡に限らず、繊維品についても、日本輸出品に関しては大多数の品物において、雑貨品に関する限りはいい得ると思うのですね。過当競争がなされて、そうして当然に受け取るべくして受け取れないドルが外貨にかなりあるということはいい得ると思います。それゆえに私たち輸出入取引法の一部改正案が出されますると、そういうものを是正していかれようという考え方の発露であるというふうに是認してこれを受け取るわけです。それで貿易振興会ですか、これが先般の国会において提案をされまして、その今のジェトロではだめである、もっとこれを強化しなければならない、こういうような趣旨考え方法案が出されました場合にも、それに賛成を申し上げておるわけなんです。そうすると、この法律からは、貿易に関しては零細企業がめくら貿易をやっているのだからして、そうしてみずから輸出をするような、貿易をするような機関を作らなければならないと、こうおっしゃる。そういたしますると、貿易振興のためにジェトロでは弱い。そこで貿易振興会を作らなければならぬというて法律を作って、そうして二十億だったでしょうか、二十億の資金を国家財政の中から確保して、私たちはその貿易振興に期待を申し上げたわけなんでございまするけれども、それじゃこれでもだめであるというようなことになりまして、もう一年くらい前に考えられて、われわれの方に提案をなされて、われわれの方が賛成をして発足した貿易振興会ですか、こういうものに対しての能力の何か疑いを持っておられるような御答弁の趣旨のように拝聴したのですが、このジェトロにかわる貿易振興会ではこれはできないわけでございますか。
  23. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) もちろんこれは並行的に考えていくべきものと考えまして、貿易振興会は振興会でやっていく。さしあたりこの問題につきましては軽工業の軽機械類についてそういうような工合に一つの組織を作る、こういうわけでありますから、並行的に考えていただきたいと思います。
  24. 島清

    島清君 並行になりませんよ、大臣、私の質問に、誘導尋問に取られたようですが、並行にはならない。この会は事業体をお作りになって実際のものは貿易振興会に委託しようとおっしゃるのでしょう。実際の貿易業務は貿易振興会の方に委託しようとおっしゃるのですよ。そうすると、並行にならないのだ。
  25. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは振興会の中に一部分、部を設けまして、実際の運営振興会に頼むということでありますからやはり並行的とお考え願ってけっこうだと思うのです。
  26. 島清

    島清君 それではそういうようなお考えであれば、これ以上追及はいたしませんけれども、衆議院審議段階におきましても、団体組織法で十分にできるのじゃないか、工業組合を作り、そして調整事業ができるのでありまするから、この種の団体法を活用することによって目的を達成することができるのではないか。こういうようなことが論議されたようでございますが、私はこの種の議論は、この前小出局長から、これではいけなくて、こういったような積極的な面を取り入れたいのだというような説明がございましたので、そのことについてはあとで小出局長から説明をお聞きしたいと思っておりますが、団体組織法が国会議論になりましたのは、団体組織法におきましては、五十五条でございましたでしょうか、その組合員以外の者に対して組合加入を要請する、なお、それできかない場合には組合員以外の者に対しても統制をきかせる命令をすることができる、こういうようなことが憲法違反ではないかといって非常に議論がされたのであります。そこでそうすることによって、大体業界の安定が期待できる、そして中小企業の健全な発達と貿易振興が期待できるのである、こういうことが、総理大臣以下、そのときの通産大臣、政府当局の説明であったわけでございます。その五十五条をわれわれが設けるか設けないかということにおいてすら憲法違反ではないかという議論があったわけでございます。団体法はその当時憲法違反ではないかというような疑いが持たれた場合においてすらも、団体法の精神というものは自主的に運営されるというふうに民主的な考え方が根底をなしておるわけなんです。ところが今提案をされておりまする軽機械法案を見ますると、これを越えまして登録させて、そして官僚統制をやっていくというような三段飛びになっておるわけなんですね。そうしますと、この団体法を制定いたしまして団体法の活用をお忘れになりまして、非常に短兵急に、功をあせったといいましょうか、短兵急な成果を求めて、そして何かしらぬけれども、歴史的な流れを否定をいたしまして、三段飛びの官僚統制をねらっておられるというようなそしりを免れないと思うのです。私たちは団体組織法を審議いたしまして、あれは継続審議になりまして、二国会にまたがって審議をした重要法案でございましたが、現行の団体法でこれが政府当局の説明される通り目的を達成することが、かりに百歩を譲ってできないといたしますならば、私はそのどこができないか、そのできない部分はどこであるか、それならばこれを修正することが可能であるかどうかということをまずお考えになることが、私はあれだけの世紀の法典といわれております膨大な法律を与野党の衆知をしぼって作った法律制定者としては、当然やはり考えるべきだと思うのですが、今の現行団体法においてできない部分はどこができないのか、さらにそのできない部分についてこういう改正をすればできるのではないかというふうなことをお考えになったことがあるか。おありであるとするならば、その具体的なことをあげて御説明をいただきたい。こう思います。
  27. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 団体法ではどうしても及ばない、軽機械に関する範囲においては及ばないという点がわかった結果、こういうふうな法律を提案したわけであります。その詳細なことは政府委員から御説明いたします。
  28. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) 今中小企業団体法とこの法律におきまして、主として登録制の運用の問題に関連する御質問でございまするが、もちろん御指摘のように中小企業団体法という既存制度の運用によってまかなえるかどうかということは、むろんまずわれわれは検討してみたわけでございます。しかしながら、先ほど来申し上げましたように、今問題になっておりまする軽機械製品と申しますものは、主としてこのアッセンブル、組み立ての工程によってでき上るものでございまして、従って中核になるような設備を、製造業者としては、それ自体中核的な設備はございません。従いまして、中小企業団体法によりまして、もちろん非常に過当競争が激化いたしまして、弊害が出てきた場合におきましては、ある程度新規業者の続出を抑制するという意味におきまして規制を行うことができるようになっておりますけれども、それはあくまでも設備の制限というところに中心が置かれているわけでございます。従いまして、企業がこういった組み立て業におきましては、その中核になる設備を押えることができません。設備規制におきまして、そういう目的を達することができないというような特殊な業体でございますので、従いまして過当競争が非常に激化いたしました場合におきましては、一時的な登録の停止というような措置をとることによりまして、新規開業を抑制するという措置をとらざるを得ないのではないか。それらが営業の自由との関係におきまして、どうであるかというような基本的な憲法上の問題等につきましてももちろん検討いたしましたが、これは御承知のように、こういった製造業者以外の各種の業体等におきましても、非常にそういった事実上の開業と申しますか、新規事業の開始を抑制するような法制的な前例はたくさんございます。特に憲法違反というような問題はないというような解釈のもとに、こういうふうな措置をいたしたわけでございます。
  29. 島清

    島清君 だから、現行団体法を検討した上で、それではこの法律では今軽機械の目的とするこの種の効果を期待することができない。そこでどういったような個所を修正をし、改正をすればこの効果が期待することができるであろうかというようなことを検討し、どういう個所においてそれができないか、どういう個所を修正すればできるであろうという点を検討したことがあるかどうかということを聞いておるのです。
  30. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) もちろん今御指摘になりました中小企業団体法のそういった設備、新設の制限命令といったような規定をさらに範囲を広げまして、事業そのものの発生を抑制するような規制を行うというよう改正をいたすということも、もちろん一つの方法ではございます。しかし、これは中小企業団体法というものの本来の法律趣旨、これは単に軽機械の問題のみならず、いわゆる中小企業という中小企業業界の安定ということを主眼にいたしました法律でございまして、そういうような意味から申しまして、法律の体系と申しますか、趣旨というような面から申しまして、そこまで中小企業団体法改正するということは、これはもちろん技術的には可能かもしれませんが、法律の体系なり、趣旨なり狙いというようなところから申しましても相当問題ではなかろうかと思われます。  一方この軽機械輸出振興法律は、ねらいは輸出振興ということでございまして、先ほど御指摘になりました輸出振興というのは、単なる何と申しまするか、まくら言葉みたいなものではないかというお話でございますが、先ほど来大臣お話になりましたように、輸出振興というのは、単に輸出の量をふやす、あるいは新しい市場を開拓するということはもちろん輸出振興ではございまするけれども、その質的な内容と申しますか、アメリカ市場をほとんど独占的にいたしておりまする双眼鏡ではございまするけれども、しかしその非常に大きな最大の市場であるアメリカにおきましても、先ほど来問題がございまするように、もっと得べかりしドルをみすみす失っておるというような状態、そういったような実態、それから品質の面におきまして、西ドイツの製品と同じような、これに匹敵し、負けないだけの品質を持っておりますけれども、同じような品質のものを業者輸出価格あるいは国内小売価格等を比べますというと、格段の開きがございまして、従ってもっともっと高く売りましても十分に国際競争力があるにかかわらず、それらが国内における零細企業の集まりでございまする関係上、どうしても海外とのつながりあるいは市場の調査というようなことが不十分でありまして、中間のバイヤーその他によって利潤を吸収されておる、こういうような実態を救済しようという観点でございます。そういうような両方全く法律の根本的な趣旨の最終的なねらいが異なる精神の法体系でもございますので、従いまして、結果におきましては、中小企業業界の安定ということが出て参りまするけれども、直接的には輸出振興というねらいにおきまして考えました場合におきましては、やはりこういった特殊の業界についての特殊の法律の体系が必要ではないか、こういうふうに検討した次第であります。
  31. 阿具根登

    ○阿具根登君 非常に重要な問題、今、島君が質問されておるわけです。ちょっと私も関連して質問したいのですが、問題になっておりますのは、組立業者だけを非常に考えられておられる。いわゆる言われるように組立業者だけであれば、何も施設も要らないし、わずかな器具で組み立てできる。だからこれがまあ問題になっておるのであるけれども、この組立業者の下部には非常に大きな部品業者があるはずでございます。これは相当な設備をもって部品を作っておるに違いない。この部品業者に対する中小企業団体法、これを適用するとかあるいはこれを改正するとか、こういうようなことは考えられたことがあるかどうか、これを一つお伺いします。
  32. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) ただいま御質問の点は、やはり私どもといたしましても、非常に重要な問題として検討したわけでございまして、御指摘通り最終的にはアッセンブルの業態でございまするけれども、アッセンブルいたしまする個々の部品には、その背後にそれぞれ専門の部品業者があるわけでございます。それらはいずれも中小企業でございます。そういった部品業者についても、なぜ同じような登録の停止というふうな措置によって規制しないのかという問題もありましょう。業界の安定ということを考えまする意味におきましては、同じような問題ではないかというふうに考えられます。しかしながら先ほど来島先生も御指摘になりましたように、やはり既存制度で活用し得るものはできるだけそれを活用する、こういう趣旨におきまして、部品の業界につきましては、御指摘通り部品のメーカーといたしましての設備を持っておりまして、中核体になる設備はございますので、もしそういった部品の業界につきまして、過当競争が非常に激化するというような弊害が出て参りまする場合におきましては、これはすでにありまする中小企業団体法の五十八条の命令その他の発動によりまして、これを調整していくことが可能であると考えられます。従いまして部品の業界につきましては、設備を中心として規制ができまするので、これにつきましては、中小企業団体法の運用によってやっていくことが妥当であると、こういうふうに考えております。従って部品業界の安定のためにとりまする措置、過当競争防止ということの点につきましても、十分に並行してこれを運用し、検討していくつもりでございます。
  33. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうだろうと思うのです。そうしなければならないと思うのですが、それをほんとうに法の示すごとくに、これを強化していくならば組立業者をこれで規制することができる。私はこういうふうに思うわけなんです。いわゆる部品業者なるものが組立業者なるものに非常に食われておる。私はこういう弊害もあると思うのです。だから部品業者中小企業団体法によって十分整理され、そうして統制されておるなら、何も組立業者からそういう悪用されることはないのだと、ところがそれが完全にやられておらないからこそ、組立業者の——まあ極端な悪口でいえば食いものになっている。こういうようなことも言えると思うのですが、おっしゃるように中小企業団体法でこれを十分守ってあげておられるならば、私はこういう弊害出てこぬと思うのですが、この点いかがですか。
  34. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) お話しの通り部品業者と組立業者との関連におきましては、それはもちろんその間の対立関係あるいは支配関係、力関係等につきまして、いろいろの困難な問題がある実情は私どもも十分承知いたしておるつもりでございます。従いまして、それでは部品業者の過当競争について防止策をとれば、それで十分であるかどうかということにつきましては、やはりこれは最終的に輸出品として仕上げまするのは組立業者でありまして、従って、部品業者に関する過当競争の防止策はもちろんとらなければならないと思うのでありまするが、同時にやはり組立業界につきましても、やはり同様な特別な措置をとるということが最も中心にならざるを得ないのではないか、かように考えるわけでございます。それで、従いまして、部品業者と組立業者との意見の調整あるいは部品業者相互間におきまするいろいろ数量割り当て基準の作成というような問題につきましては、非常に数量が、確認することが困難であるというような事情もございまして、なかなか中小企業団体法による工業組合活動で、もちろんそれによってやっていくわけでございまするけれども、それも非常に困難な問題だと思います。しかし漸次業界態勢もととのいつつありまして、ただいま双眼鏡なりミシンにつきまして部品業者だけの工業組合を設立し、そして、その調整活動を行うというやはり準備に入っておる段階でございまして、しかし、それは部品業界自体の欠陥を是正し、適正な調整措置をとるためにできるわけでございまして、やはり組立業界といたしましては、組み立て関係につきましては別途特別な措置をし、それが最終的に輸出とつながる問題でございまするので、組立業界についての措置がこういう法律によって必要になるのではないかと、かように考えております。
  35. 阿具根登

    ○阿具根登君 そこで一点大臣に御質問申し上げますが、ただいまの御答弁でも明らかになりましたように、もちろんその中には中小企業団体法がまだ完全に実施できておらないという面もあるでしょうが、部品業者に対しましては中小企業団体法でこれを完全にやるならば十分にこれは規制できるのだと、こういうことが一応考えられるわけなんです。そういたしますと、この法案は、これは組立業者を一応規制する、これが一番の目的の法律案だと、こういうことに解釈できるのだと、私はこう思うわけですね。そういたしますと、この法案を見ていますと、この法案の骨子は輸出振興事業協会を作ることである。そうして、この事業協会が一手買い取り機関になって、そうして、価格の統制をし、まあ数量制限をするというような形になってくるのだ。これを作るためにこういう登録制度を作って、そうして、基準を設けて、そうして登録業者を作る、こうして、その登録業者によってこの協会を作る。こういうことになってきますと、この登録というものは、ただ協会を作るための、前の問題であろうと、こういう形になってくるわけです。しかも、その目的は組立業者を云々と、組立業者の問題を考えてやる。そういたしますと、この登録基準等も見てみますと、この基準はだれに当てはまる基準かといって見てみますと、これは組立業者に当てはまるのはほとんどないと思う。これは全部部品業者に当てはまる基準だと思うのです。そういたしますと、これはさか立ちしておる。いわゆる部品業者に対しては、これは中小企業団体法ででもいかれるのであるけれども、組立業者に対しては、中小企業団体法案では、まことにむずかしいところがある。ところが、この法律案では、この基準を見てみましても、組立業者にはほとんど当てはまらない私は基準であろうと、この基準を適用されるということになれば、部品業者だけが一番重点に見られてある法律になりはしないかと、こういうように考えてくるわけなんです。その点が一点。  それからもう一つは、いわゆるこの法案の目的は、過当競争を避けて、不良品の輸出を避け、極端な安い値段で乱売をすることを避けていく、まあこういう点にあると思うのでございます。そういたしますと、この登録基準からいっても、一番これにやすやすと通っていくのは組立業者である。そういたしますと、既存の組立業者を守るだけであって、新規の業者をこれでシャット・アウトする、これだけのものになってくるのではないか。最も技術を要しないと思われる、組立業者を守るだけの法律案になって参りはしないか。しかも、既存の組立業者だけを守る、こういうことになってくると思う。その点が一点。  もう一つは、この振興事業協会の中身をちょっと見てみましても、いわゆる総代というのを登録業者の中から出して、そうして、登録業者から出した総代の中から、役員の会長とか監事を互選で出す。しかし、肝心かなめの仕事をする理事の五名という人は、これは総代会に諮って総代会の同意を得て通産大臣がきめられる。ここで、いわゆる業者ということでなくて、理事五人の人が実質的な仕事をする人であって、この人が通産大臣の指令によってでき上る。そこで、先ほどの鳥委員の言われた官僚統制ではないかというにおいが、ここに非常に出てくる。こういうことになるのじゃないかと思うのですが、この三点について大臣の御答弁をお伺いいたしておきます。
  36. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) 私からお答え申し上げますが、第一点の、部品業界と組立業界との関連におきまして、御指摘通り、この法律は主として組立業界の問題を対象にいたしておりまするけれども、もちろん、部品業界における態勢を整えるということが非常に根本的に重要な問題であることは、申すまでもございません。従いまして、先ほど申しましたように、部品業部門につきましても、やはり過当競争の防止なりあるいは品質の向上なりということに対する措置は十分にとっていくわけでございまするけれども、しかし、登録基準の設定、登録制度の活用等におきましては、組立業者を対象といたしまする登録の場合につきましては、これはもちろん、設備的には、先ほど来申し上げましたように特別な設備はございませんので、設備面におきまする基準ということも、もちろんある程度の基準が必要でございまするが、その他技術面の点、製造面あるいは仕上げの面、あるいは検査の設備の点というふうな、やはり設備の点におきましてもある程度の基準が必要であり、また品質向上をはかりまする技術的な条件等につきましても、一つ基準を、たとえばこの受け入れの検査方法の確定の問題でありまするとか、あるいは品質管理の問題でありまするとか、中間の検査規格の問題でありまするとか、いろいろなやはり問題が、組み立ての面におきましてもあるわけでございます。それらの登録基準を省令において定めまして、もちろん、この基準を定めるにつきましては、十分協会なりあるいは関係方面の実情を調査し、意見を調整いたしました上において定めるわけでございます。従って、部品業界等との関連におきましても、十分その辺に意を用いて設定をすることになると思います。  そこで、次に御指摘になりました、この登録制度を運用するということは、結局、既存業者のみを擁護し、そうして新規の業者をシャット・アウトするという結果になるのじゃないかということでございますが、これはもちろん登録基準に適合いたしておりますれば新規に事業を始めることは差しつかえないわけでございまして、その基準も非常に既存の者だけに都合のいいように勝手な基準を作るというもの外はございません。やはり登録制度の運用の最初におきましては、やはり過渡的な段階でございますので、現在の業界品質実態等に合せまして、漸進的に品質の向上措置をとっていくということでございます。しかし半面たしかにこれは登録の停止という措置も場合によっては考えております以上は、やはり登録制度というものは、業界の安定ということが、品質の向上と並んで一つの大きなねらいであります関係上、新規の業者が続出するということは登録制度の意義が失われるということもございますので、そういう意味におきましては、やはり結果的に既存業界と申しますか、現在の業界の安定という面から考えれば、ある程度そういうように新規加入においてもやむが得ないということでございます。もちろんこれはやむを得ない措置でございまして、登録停止の内容は臨時的な措置にとどまるということになると思います。  それから登録制度輸出振興事業協会との関係でございますが、これはやはり輸出振興事業協会というのは登録業者登録制度というものがあって登録されました業者全体から負担金を徴収して、登録業者の全体の輸出振興に資する、こういうことでございますので、その間におきましては、やはり登録制度が前提になるというふうな考え方も考え得るかと思いますが、相互にはこういった意味における関連があろうかと思います。  そこで輸出振興事業協会につきまして、最後に御指摘になりました理事その他の執行機関の運営でございますが、これにつきましては、私どもはいわゆる官僚統制というような考え方は全然持っておりません。ただこれは通産大臣がこの理事につきまして関与するという措置を残しましたのは、この輸出振興事業協会は、業界を一丸といたしまして全体の登録業者から平等な公平な意味におきまして全体から負担金を取る、しかもそれが相当の総額におきましては金を扱って、そうして輸出振興の事業という海外活動につながってやっていくという意味におきましては、やはりその運営について相当公正な運営をする必要があろうということから、それらの理事の面につきましても、やはり監督官庁として関与する必要があるのじゃないか、こういうことでございます。そこで部品業者との関係におきましても、部品業者意見も当然反映し得るような措置を輸出振興事業協会運営の面におきましてもとらざるを得ないのであります。たとえば総代会はこれは負担金を出すときだけでございますが、評議員会等はこれは部品業者代表も入れまして、そうしてそういった関連業界全体、あるいは第三者の学識経験者も入れまして運営の公正を期していきたい、かように考えております。
  37. 島清

    島清君 ちょっと関連して。今、阿具根委員の核心に触れた質問でございましたが、それはこの法律のねらいというのは、結局小出さんは、団体法においては、組立業者設備がなかなか把握しにくいから団体法の適用はちょっと困難である、そうすると、部品業者設備等において十分に業態が把握できるから団体法でも可能である、しかしドライバー一つ持った組立業者というものは設備が把握しにくいから、これはちょっと団体法では至難であるということでございましたが、それでは製品においてこの部分品から組み立て、というと一貫メーカーと言いましょうか、これがおりましょうが、それで全国的には組立業者が二百八ですか、それから部品製造業者並びに細み立てをやっているのが二百六ですか、こういうふうに数字を示されておりますが、この製品については、部品業者が組み立てる製品と、それから部品製造並びに製品まで出しております一貫メーカーというのでしょうか、こういうものの製品別はどうなっておりますか。
  38. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) 御指摘になりました一貫メーカーというものは実はございません。
  39. 島清

    島清君 いや、ここに「業態別製造業者数」と書いて、一貫メーカー十六というふうに書いてあるのです。
  40. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) ただいまの御質問ミシンでございますか。双眼鏡でございましょうか。
  41. 島清

    島清君 双眼鏡というふうに書いてありますね、この資料には。十五表で「わが国双眼鏡製造業の零細状況」と書いて、(1)、(2)、(3)、(1)には「資本金規模別製造業者数」と、(2)には「従業員規模別製造業者数」、(3)には「業態別製造業者数」、こういうふうにちゃんと書いてある、十五表にある。
  42. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) 確かに資料には一貫メーカー十六と書いてございますが、これは多少書き方が悪かったかと思いまするが、部品の組み立てをいたしまする——すべての部品を一貫的にやっているメーカーという意味ではございませんで、部品の中の何種類かのものを組み立てのかたわら、一方においてある程度の部品を作っている、こういう意味でございまして、一貫メーカーというのは厳密な意味においてはちょっと表現が悪かったかと思います。
  43. 島清

    島清君 それではいいです。それでは十六表に「部品製造業者実態」と書いて、その(3)に「地理的分布状況」として、ことさらに組立業者と部品製造業者と、こういうふうに区別してあるのですね。区別してあることは、組み立て業者が二百八で、さらに部品製造業者が組み立てを合せてやって二百六あるというふうにしか解釈はできないのですね、これはどうなんです。
  44. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) 十六表の「地理的分布状況」の組立業者と部品製造業者は、これは欄は別に書いてございますが、もちろんこの中には組み立てと部品製造との兼業部門のものがこの中に含まれておる、こういう計算になります。
  45. 島清

    島清君 ですからその製品の比率はどうなっているのですか。組立業者が作る製品と、部品製造業者が最終製品までやる、その製品の率はどうなっているのですか。
  46. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) 今申しましたように、組立業者であって、ある程度の部品を兼業としてやっているというのがあることを申し上げましたが、実はこの表といたしましては、具体的な数字としては出ておりませんわけでございますが、ただいまその正確な数字を手元に持っておりませんけれども、全体の数といたしましては非常に少い数字である、かように考えていただいてよろしいかと思います。
  47. 島清

    島清君 そういうことでは了解することができないのです。ですから団体法では、いわゆる部品を製造する業者であれば把握できるし、団体法でも可能であると言った。しかし組立業者設備がなかなか把握しにくいから困難であるということだったのだから、ここで、それではその部分品を作っているいわゆる設備を持って組み立てして製品を出している業者と、単にドライバー一つを持っているいわゆる組立業者ですね、これの手によってどれくらいの製品が作られているかということがはっきりしないと——これがはっきりすることができないというようなことになりますと、この法律はずさんなものであるということになるわけですね。敵は本能寺にあって、非常にずさんなものであるということが言い得るわけですから、この数字を明確にしてもらいたいと思うのです。もしあなた方の手によって明確にすることができなければ、委員会の手によって明確にすることもこれまたできますので、それを私たちがやってもようございますけれども、責任をもってこの数字を明確にして御提出願いたいと思います。
  48. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) その数字は責任をもって明確に私どもいたしまするが、今御質問の中にございました部品部門については設備的に明確にとらえ得るけれども、組立業者については明確にとらえ得ないという点との関連の点でございますが、組立業者が同町にある程度の部品製造をいたしておりましても、それは部品部門に関する製造でございまして、組立部門そのものにつきましては、設備的にはこれは依然として把握しにくいという点においては、組立業者が部品製造をいたしておりました場合におきましても全く同じである、こういう意味に御了解いただきたいと思います。そして具体的に、いわゆるドライバー一本というふうな形だけでやっておりまするのは、第十五表の業態別製造業者の表の中の、最後に書いてございます調整のみと得いておりまする、そういう団体が百四十ございますが、これが純粋にそういったドライバー一本だけの業態、こういうふうに御了解いただければいいかと思います。で、なお兼業的な部門等につきましては、その実態資料をのちほど調整いたしまして御提出いたしたいと思います。
  49. 阿部竹松

    阿部竹松君 大臣に一点だけお尋ねいたします。  今の島委員、阿具根委員との質疑応答の中でお伺いしたわけですが、この法案全部を流れるものは、この今東南アジアの新地開拓とか、アメリカの新地開拓とかおっしゃいましたが、実際この法案のねらいは、これからアメリカに行って、十万台売れておったミシンを十五万台にするとか、あるいは一万台売っておった東南アジア——これは例ですがね、一万台輸出しておったミシンを一万五千台にするとかいうのが真のねらいでなくして、ほんとうのねらいは、一例をあげてみますと、ミシンが大阪で十四ドルから十六ドルくらいでできるのです。これは船賃もかかるでございましょうし、ほかのいろいろな手数料もかかるでございましょうけれども、その十四、ドルから十六ドルのミシンが、アメリカにいって大体七十ドルから百二、三十ドル、こういうことはこれは過当競争がやはり最たる原因でしょう。従ってこの法案は、総体的に見て海外で拡張しますとかなんぞとか言って、りっぱな言葉をおっしゃるけれども、過当競争を防ぐということが、とにかく大臣、真のねらいでないかと私は思うのですよ。そこで海外にいって新地開拓して、これからどうするとなると、こういう法案じゃうまくないと思う。それからもう一つ国内はどうするかということですね。従ってこの法案の真のねらいと、それから国内ではどうするのですかということ。もちろんこれは輸出振興法ですから、国内のものはかまいませんと言っても、われわれが知っているだけでも、三菱とか、ジューキとか、ブラザー・ミシンとか、蛇の目とか、たくさんございます。こういうのはやはり両方、国内と国外でやっているわけです。ですから輸出の力にばかり目を奪われて、国内をそのまま放置しておいてもうまくない。こういう国内をどうするかということと、真のねらいは、これは過当競争なんでしょうと私は思うのですが、局長の御答弁を伺っていると、いや、これから東南アジアにいって新地開拓して、安い品物をいい製品にするなどと、これは理想は美しいけれども、現実は冷厳ですよ。ですからそのものずばりの御答弁と法律の中身とは違う。このことを大臣、一点だけお伺いいたします。
  50. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 御質問趣旨がちょっとはっきり私把握できなかったのですけれども、輸出の方の振興の方から言って、不当競争をやるということはつまらないことであって、高く売れるものはもっと高く売って外貨を稼がなきゃならん、こういうことで、この法律はできているわけなんであります。それについては、生産責任を明らかにするために登録制をとる、こういうわけなんでございますが、そこは国内の消費との方の関係につきましては、もちろん国内におきましてはできるだけいいものを安く供給するという趣旨にやはりのっとっていかなきゃならないと、こう存じておるわけであります。
  51. 阿部竹松

    阿部竹松君 海外の場合ワクが大変な問題なんですよ。これはアメリカに今二つか三つのとにかくこの種のやはり組織がある。ところが一つのワクをとるのに東京都の自動車と一緒で、自動車の値段よりもナンバープレートの方が高い。これは現実に高いのです。ミシンだってアメリカヘいった場合、大臣ミシン一台が、今言う通り百ドルか百二十ドルか私わかりませんが、そのくらいするのです。しかし一台アメリカ輸出するワクをとるのには、シン一台の何十倍というとにかく値段をしているのですから、大臣は御承知かどうかわかりませんが、これは局長などは知っておるでしょう。そこらあたりをどうするかというのがねらいじゃないのですかということを僕はお尋ねしておるのです。大体天地の差がある問題なんですから、それを一緒の法律でしばっているのですから、聞く方もあいまい模糊で、答弁する方もあいまい模糊なんですよ。僕らしろうとが見てもおかしいのですから、これを研究した方はつまらぬ法律だなと、こうなると思うのですが、そこをお尋ねしているわけです。
  52. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) この法律のほんとうのねらいは何であるかということに関連する御質問だと思うのでございますが、結局輸出振興といっても、なかなか新規市場開拓というのはむずかしいのではないか、むしろ国内的な態勢として過当競争を阻止するというところに主眼があるのではないかというふうな御趣旨のように承わったのでございますけれども、御質問趣旨をそういうふうに承わったのでございますが、それて私どもの考えておりまするのは、輸出振興と申しますのは、これは先ほど来申し上げましたように、単に輸出の数量をふやす輸出はたしかに軽機械についてはふえておるわけでございます。ある意味におきましては輸出は盛んに行われておるわけであります。それでミシン業界につきましても、双眼鏡業界につきましても同様でございますし、それでは輸出振興しておるから放っておいてもいいんじゃないかという議論もあり得るわけでございまするが、しかしながら、たとえば、先ほど申し上げますように、アメリカ市場を支配している双眼鏡にしましても、中間にあるハイヤー等によって買いたたかれる。ほとんどコストを割るようなところまで安く売らざるを得ない。それを救済するためには品質を落さざるを得ない。それは結局結果において将来においては品質の低下というところに持ち込まれざるを得ないという情勢が、そういう弊害が目に見えてきておるというような現状でございます。従って、今アメリカ市場を支配しているから、これでいつまでも日本商品が西ドイツその他と十分太刀打ちできるというふうに安易に考えることは危険じゃないか。従っていやが上にも品質を向上し、そして適正な価格で輸出できるような、ほんとうの意味国際競争力を持つにはどうしたらいいのかというのがこの輸出振興法のねらいでございます。もちろんそのためには、輸出振興には、国内で生産するのでございますから、その国内の生産段階において十分な措置をとらなければならないということは当然でございまして、そういう意味におきまして、振り返って国内の態勢を見ますると、やはりそこに過当競争というものが非常に大きな欠陥をなしておるということが実態でございますので、そういう面につきましては登録制度というものの運営によりまして、業界の安定をはかり、しかも海外市場とのつながりというふうな点につきましては、輸出振興事業協会の活動による、そういうような二つのねらいを持った法案である、かように御了承を願いたいと思います。
  53. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 暫時休憩します。    午後一時四分休憩    —————・—————    午後二時五十一分開会
  54. 島清

    ○理事(島清君) これより委員会を再開いたします。  中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案並びに商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  これより内容説明を願います。
  55. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) それでは、両法案内容につきまして、詳細な御説明をいたしたいと思います。  最初に、中小企業信用保険公庫法改正法律案の点であります。  この保険公庫は、昨年の七月に政府出資の八十五億円、それからもとの中小企業信用保険特別会計からの承継資産の約二十六億五千万円、合計百十一億五千万円をもって発足したわけであります。業務といたしましては、各地にありまする信用保証協会の業務に必要な資金の貸付と、それからその保証に対しまする保険という三つの仕事をやっております。  この公庫に対しましては、発足当時二十億円の出資をいたして、この保証業務の方の基金といたし、なお六十五億円の出資を行いまして、これは保険基金といたしたわけでございますが、今回さらに十億円の出資をいたしまして、これを保証基金にいたしたのでありまして、各地の保証協会に貸付しまして、保証のワクの拡大、保証料率の引き下げということに資したいということで、その関係で本改正法案を提案した次第でございます。  なお、今回の十億円は、この産業投資特別会計から出資したわけでありまするから、同特別会計からの出資の趣旨に従いまして、国庫納付金という問題が起ります。前年までのは、これは一般会計からでございますから、その規定もなかったわけでございますが、今回のは、産業投資特別会計でございますので、一般公庫と同様に、政府に国庫納付金をするという筋合いに相なりまして、従いまして、その国庫納付金に関する規定も、今回の改正案に入れております。ただし、通常の公庫の場合には、利益があったら、その金額というふうに規定されておりまするが、この保険公庫は、他の公庫と違いまして、保険事故の発生、あるいはそれに対しまする代位弁済、あるいはその回収等が、かなりおくれて出て参りまするから、当該年度だけの損益で、これを処理しますことは不適当と思われますので、国庫納付金の額も、特に百分の五十というふうにきめてあるわけであります。  大体以上の二点が、この中小企業信用保険公庫法の一部改正法案内容でございます。なお、現在までのいろんな保険公庫の業務等につきましては、御質問に応じてお答えしたいと考えております。おります。  それから次に、商工組合中央金庫法の一部改正法案でございますが、この商工組合中央金庫は、御承知のごとく、昭和十一年に、中小企業金融対策の一環として発足しておりまして、当時、半官半民で政府と民間との出資おのおの二分の一ということで発足いたしまして、主としてねらいは運転資金、あるいは短期長期の運転資金等を組合——当時ありました商工組合、あるいは工業組合等の組合に貸す、あるいは組合員に貸す、そうして、いわゆる系統金融の疎通をはかるということが、この中央金庫の趣旨でございました。戦後、政府も累次出資いたしまして、また、それに応じまして、民間の出資もふえておりまして、現存におきましては、政府出資が二十六億円、民間出資が約二十一億円になっております。  それにつきましては、今回さらにこの金庫に対しまして、政府出資十三億円増額いたしまして、目下最も望まれておりまする貸出金利の引き下げに資したいということで、その趣旨の予算も組まれておりまするし、また、この法案改正をお願いしたわけでございます。  十三億円出資いたしまして、これと中央金庫自体の各種の自己努力とを合わせまして、大体、目標としましては、平均貸出金利におきまして二厘三毛から三厘近くという辺の金利引き下げを行いたいということで、目下具体的な措置は検討中でございます。  なお、この出資の増加の際に、従来から行なっておりまする業務につきまして、いろいろ付帯的な面で、さらに整備いたしました方が、この中金の運用上も適当かと思われることもございまするから、その点につきまして、三、四の改正をいたしたいと考えたわけでございます。  その第一は、預金の受入先を追加いたしたことでございます。現在まで商工中金に預金を受け入れることのできる範囲は、中小企業者を構成員としておりまする団体、つまりまあ組合とその構成員、それから公共団体、あるいはその他営利を目的としない法人並びに主務大臣の認可を受けた銀行、その他の金融機関、こういうふうになっておりまするが、この中金の方の業務の主体が、貸出業務あるいは債券発行業務ということが中心になっておりまする関係上、そういう業務に付帯しまして、預金の受入先を増加いたしました方が、これらの業務が円滑にいくということもございまするので、若干の追加をいたしたわけでございます。  その第一点としましては、現在、中金は余裕金の短期貸付を行なっておりまするが、それからの預金の受け入れば、現在はできません。これはやはり、貸付、預金というふうな関連した業務でございまするから、その関係で、こういう取引先から、預金を受け入れられるようにしたいということが、この第一点でございます。  その第二点は、これはいろいろ人的、物的の保証、あるいは手形の振り出しというようなことで、中金がいろいろ貸付を行なっておりまする債権に関係しまして、そういう付帯的といいますか、従属的な債務を負っておる人からの預金を受け入れるようにしたらよかろうということを考えたわけでございます。これは結局、そういう際に、そういう人からの担保、あるいは保証の提供等が、いろいろな経済の変動で十分にいかない場合がございます。そういうときに、預金があれば、それで満足な保証となるということもございまするし、また中小企業者が、組合員である中小企業者が手形割引を依頼されましたときに、中小企業者だけの信用ですと、なかなか手形が割りにくい場合もございまするが、そういう場合に、振出人の方の預金があれば、手形が割りやすいということもございますので、もっぱらそういうふうな、業務の円滑を考えて、この特定の債務者からの預金を受け入れるようにするということでございます。  それから、その第三点は、これは商工債券の発行を円滑にいたしまするために、債券の応募者あるいはまた買い入れしようとするものからの預金を受け入れられるようにしたらどうか。これは、結局この預金で振りかえて債券取得者となりまするので、債券の取得、発行を円滑ならしめるということでございます。  それから第三として、業務の範囲を広げました第二点は、商工債券の保護預り先の拡張の問題。これは、現在は、所属団体あるいはその構成員となっておりまするのを、若干広げまして、普通の金融債の発行機関と同様に、債券所有者のために保護預りができる、こういうふうにしたらどうかということでございます。これは、もっぱらサービス業務かと思っております。  それから第四でありまするが、これは、現在出資金あるいは株式払込金の受け入れ、配当受け入れ、あるいは配当金の支払い等につきまして、所属団体の組合の分の取扱いは認められておりまするが、組合員の分は、現在の法律では認められておりませんので、そこは、組合員に対する実際の仕事の便宜上、そこまで広げたらどうかということでございます。  それから第五は、これは業務の範囲の問題でございませんで、現在、商工組合中央金庫に対しまする出資の品数の最高限度が一万品に制限されております。これは、特定の出資者がたくさんの品数を持たないようにという配慮からかと思われまするが、いろいろ政府出資がふえますにつきまして、民間出資もふやして参らなければならぬわけでございまするし、そういうふうに全体の出資がふえて参りますると、この口数の制限は、むしろ出資の増加の円滑に行われないようなおそれもございます。それから、いろいろ能力のあるところが引き受けてもらえなくって、小規模の組合に出資を無理に頼むということになっても、まずいようなこともございまするから、これはこの際、全体の出資の増加に伴いまして、一万口というのを五万口まで上げたらどうか、こういうふうに考えたわけでございます。ちなみに、一口の金額は百円でございます。  それから小さい改正でございますが、この出資の持ち分の自己収得が、特殊の場合にはやはり必要になってくるわけでございまして、たとえば組合の整理、解散の場合、あるいはその他債権保全というような見地から、どうも自己収得ということが禁止されておる現行法のもとですと、なかなかその組合と商工中金との取引があります場合なんかには困ったことになることがありますので、これは、いわば自己取得を認めまして、そうして経済的な相殺ということにしたらどうかというふうに考えております。  それから、これは条文の整備でございますが、環境衛生同業組合が、先般法律として成立したわけでありますが、その際、この商工中金法も改正になりましたが、ほかの組合、たとえば塩業組合あるいは酒造組合等につきましては、中小企業者が、大半を占めておる組合というふうに限定がついておりましたが、環境衛生同業組合の改正のときに、それをどうしたわけですか、ついておりませんでしたので、今回、ほかの組合の例と歩調を合せまして、中小企業者を主とする環境衛生同業組合というふうに資格の範囲を限定したということでございます。  大体、以上が概要でございます。
  56. 島清

    ○理事(島清君) これより両案の質疑に入ります。発言のある方は順次御発言を願います。
  57. 小幡治和

    ○小幡治和君 中小企業信用保険公庫法の方で、保証料率の引き下げということを期待しておるわけなんですが、これは各府県の保証協会によって、保証料金も一定していないと思うのだが、この十億円というものを、各府県の信用保証協会に貸し付ける配分基準というものを、一つ保証料金の引き下げ可能なように、弱小といっちゃおかしいが、そういう弱いところを、少し助けてやるという意味における配分というものを考えられておるのか、それとも一律に、ただ配分するというのか、その点、どういうふうに考えられておられますか。
  58. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) この貸付の基準につきましては、今年度も、いろいろと検討いたしまして、御指摘のように、弱小といっては、言葉は非常にあれでございますが、比較的経営基礎の固まっていない組合の強化という点にも重点を置いたわけでございますが、他方、保証契約はどの程度利用しておるか、あるいは貸付金を利用して、どういうふうに保証料率を下げておるかというふうな点を加味して実はやったわけでございます。実は御承知のように、この貸付金は、二分五厘で貸しまして、そうして各保証協会におきまして、適当な金融機関にこれを預託しまして、まあいわば、その利ざやをもって、この協会の経営的基礎を固め、保証料率の引き下げに資するということになっておりますので、われわれとしましても、せっかくこの、国の金を、こういう協会に貸し付けるのでございますから、できるだけ有効にやりたいと思いまして、今申し上げましたような各種の基準を、それぞれあんばいいたしましてやっております。ただ機械的な基準でありますと、なかなか、まあいわば比率というようなことになりますれば、小さい協会には、あまり回ってこなくなりましては、かえって金の効果も薄れますので、そういう点は、かなり考慮いたして措置しております。
  59. 島清

    ○理事(島清君) 各委員にお知らせ申し上げます。ただいま大蔵省財務調査官の大月高君が見えておりますので、そのように御質問をお願いいたします。    〔理事島清君退席、理事上原正吉君着席〕
  60. 小幡治和

    ○小幡治和君 そうすると、各府県の信用保証協会というものは、大体十億円というものを運営して配分することによって、ある程度の、同率というわけにはいかんけれども、保証料率というものは一せいにどこも引き下げ得るようなことになると予想しておるわけですか。それと、それからどれくらい料率を引き下げられるか、その点……。
  61. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) これは御質問のように、一律に引き下げることは、なかなかむずかしいと思っております。  御承知のように現在保証料は年三分以下というふうに定めておりますが、現実の協会の業務方法雷その他を見ますると、二分五、六厘というものもありましたり、あるいは二分二、三厘というものもございましたり、中には、特別に府県が配慮されておるところでは一分五厘というところもあるようでありますが、これは特殊の例であります。平均いたしますと、約定の平均で二分二厘程度かと思っております。実績はやや下回りまして、二分一厘ぐらいになっております。それで本年度も、特にこの保証料の高い協会等に対しましては、どういうふうにこの貸付金を使って手数料を下げる見込みか、一つ計画書を出してくれというようなことで、具体的な指導をやっております。今回もこの十億は、そういうふうにしてできるだけ安くしたいと思っておりますが、まず第一は、やはりあまり高いところをなくしていくということが大事だろうと思います。  そういう、特に高い協会に重点を置いて考えております。
  62. 小幡治和

    ○小幡治和君 そうすると、まあ場所というか府県によっては、この資金が行かないところもで、きるというわけですか。それとも全府県にやって、ある程度の多い少いはあっても、全国それぞれ、少しずつでも料率を引き下げるというふうに持っていくというのか、どうなのですか。
  63. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 現在保証協会は、都道府県のが四十六、市のが六つございまして、合計五十二ございますが、本年度におきましても、二十億円は、五十二の組合に先ほど申しましたような基準で、いわば洩れなく配っておるわけでございます。今度の十億円も多分そういうふうに、いわば基準で、何ほどかの差はございましょうが、やはりどの協会にも貸し付けたいと思っております。その目的はやはり経理内容の健全化もございますし、それからこの基金の貸し付けによりまして、各組合の保証能力、いわば保証のワクが拡がるわけでございますが、これはやはり、各地とも、中小企業の信用保険制度をさらに拡大する必要がございますから、そういう見地から、やはり協会にはできるだけおっしゃるようにしたいと思っております。
  64. 小幡治和

    ○小幡治和君 今度は、商工中金の方をちょっとお聞きしたいのですが、その中で余裕金の短期貸付を行った者から、預金の受け入れができるようにする、この余裕金の短期貸付を行うものというのは、おもにどんな所ですか。
  65. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) これは現在やっておりますのは、例の都道府県の中小企業団体中央会、それから保証協会等にも余裕金を貸し付けることになりますれば、これらの預金も受け入れることになります。大体そういうところでございます。
  66. 小幡治和

    ○小幡治和君 それから商工債券の応募者または買い入れをしようとする者から預金の受け入れができる、こうなると、ほとんど一般市民全部になってしまうので、一般銀行と、これとの関係というものについて、大蔵省の方は、どういう考えを持っているのか、担当員は来ておりますか。
  67. 大月高

    説明員(大月高君) 現在、金融債を発行いたしております金融機関といたしましては日本興業銀行、それから日本長期信用銀行、それから日本不動産銀行、それから今の商工中金、農林中金、こういうことになっております。それで今度御提案申し上げました応募者または買い入れをしようとする者からの預金の受け入れにつきましては、一般の銀行におきまして、一般の興業銀行、長期信用銀行におきましても認めている制度でございまして、これは現に、たとえば金融債を発行しようとする、しかし四、五日先になる、しかし、それは確かに買うつもりだ、こういうような人からは、金融債と同じ金利でもって、その債券に応募するための特約預金を取るということを認めておるわけでございますが、現在商工中金には、その制度がございません。従って、単に応募したという一般大衆から預金を取るという意味でなしに、具体的に債券を持つという目的を持っている人から、条件付きで受け入れる預金、こういう意味でございます。
  68. 小幡治和

    ○小幡治和君 いろいろ伺って、預金の増高ということを、はかられることはけっこうだと思うのですけれども、今度、預金受け入れ先の追加を行うことによって、預金の増加額というものを、どのくらいみているのか。
  69. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 実は、商工中金は預金の増加が、非常に遅々たるものでございまして、これは、何とかふやしたいと思っておりますがこういう措置は、これは本来の業務——つまり本来の業務というと、あれでございますが、貸付と、それから債券発行に付帯した程度の量でございますから、おそらくこれは、そう期待するほどの額にはならぬだろう、もっぱら付帯業務で、いわば取引先の便宜という点が重点でございます。これで数億を期待するというわけには参らぬだろう思います。また性質上、比較的これは、短期の金になると思います。  それでございますから、この点は、現在三十四年度には三十数億の預金をふやしたいと考えておりますが、それにはあまりこの数字は影響しておらぬという程度でございます。
  70. 島清

    島清君 両案について、若干の御質問を申し上げたいと思いますが、今小幡委員質問もございましたので重複する面もあるかと思いますがちょっとお客さんが来られて、廊下へ出ておりましたので、小幡委員質問と、それに対する御答弁を承わっておりませんので、重複する面がありましたら、あとで速記録を拝見させていただいてけっこうですから、御答弁にならなくてもよろしゅうございます。  まず、信用保険公庫法の改正に対する御質問を申し上げたいのでありますが、今回、十億円が出資されて、保証協会の貸付に回される、ということは、保証協会の弱体を援助するという意味で、まことにけっこうな処置だと思うのです。その配付の基準は、どういうふうに考えておられるか。ややこの点は、小幡委員も御質問があったようでありますが、今までの貸付額と、それに今回の十億円の配付の計画をあわせて、一つ説明いただきたい、こう思うのです。
  71. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 配付の基準は、先ほども御説明したのでございますが、やはりせっかく国の財政資金を貸し付けるのでございますから、まず第一に、それを有効に利用してもらうということが一番の念願でございます。そういたしますと、おのおの協会につきまして、どの程度の保証契約が進んでいるか、あるいは貸付契約において、どういうふうに経理内容を健全化しているかという点を一番考えなければいけませんが、さりとて、こういうことだけで見ますと、五十二あります協会の中には、いろいろ大きい、小さい、あるいは経理内容に差がございますので、やはり、いわば一番小さいところにつきましては、単に、そういうことだけでは、いつまでたっても保証協会が健全になりませんので、いわば言葉は悪いですが、弱小保証協会の強化という点にも重点を置いて配っております。三十三年度に二十億を分けました基準も、大体そういうことでございますし、明年度も、大体そういうことを主として考えたいと思っております。  三十三年度の協会別の貸付の区分につきましては、ちょっと後ほど御説明したいと思います。
  72. 島清

    島清君 信用保証協会の債務保証の限度の額、保証料率は、各保証協会によりまして、多少の相違があるようでございますが、現在では、各保証協会の設立の当初の経過等にかんがみましても、また、地方財政の違いなどからいたしましても、これは、やむを得ないことだとは思うのですが、今後は保証協会の業務内容、さらに保証料率などについて、統一化をはかっていくことが必要じゃないかと、こう考えるわけでございますが、その点については、いかようにお考えでございますか。
  73. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 御趣旨、まさにごもっともでありまして、実はわれわれの指導の目標も、そういうところに置いております。  ただ御承知のように、この保証協会は、昭和十四、五年ごろから自然発生的に各地でできましたのが、戦後さらに拡がり、かつ法制化された次第でございまして、現在各地に五十二ございます。いろいろと各協会内容等について見ますると、異なった事情、異なったやり方をやっております。現に、この保証料率につきましても、最高は年三分で押えておりますが、協会によりまして二分六、七厘というのもございますし、あるいは二分二、三厘というのもございますし、中には都道府県から、一定の補助を出しまして、最高一分五、六厘というふうな安いところもあるようでございます。  そこで、われわれとしましては、やはり同じ保証協会というわけでもございませんが、事情は違うにしたところで、そうこの保証料の率がまちまちでは、これは困るわけでございまするから、何とかして高いところを下げたいということを考えております。そのために、まず一番必要なことは、やはり各協会の経理内容につきまして、もう少し改善をはかる必要があるだろうと思っております。幸いこの保険公庫もできましたので、実はまず経理内容を改善いたしますために、経理方法自体の統一といいますか、ということあたりから始めまして、同じような基準で各保証協会の経理を見まして、そうして手数料を下げられるものは下げていきたいというように思っております。  あといろいろこの保証の手続あるいは方針あるいは具体的にいいますれば、業務の運営等につきまして、できるだけ統一をはかって参りたいと、私、考えるのでございます。御指摘のところは、まさにその通りでございます。今後自然発生的にできましたまちまちの保証協会を、できるだけ画一というと言葉が悪うございますが、統一した業務運営方法で処理するように指導して参りたい、こういうように考えております。
  74. 島清

    島清君 今、お尋ねしたようなことも関連をするわけでございますが、保証協会は、中小企業に対する信用補完業務の第一線に立って、その仕事を担当しているわけでございまして、信用保証協会に対してその基盤を強化したいというような今の御答弁に対して、これは当然のことでございますが、政府資金を貸し付け、財政的な援助を行なっている、これは、今日においては当然のことでございまして、従来よりも、当然、公共性は要求されなければならないと、こう思うわけです。  その観点からいたしましても、今後の信用保証協会についての健全化のために、今のような御答弁よりは、やっぱり指導と監督について、もっと一歩進めた積極的な策がなければならないと思うのですが、一歩進めた積極的な指導監督についての御方針があれば、この際承わって置きたいと思います。
  75. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) ただいま申し上げましたのは、保証協会に対する業務運営の指導方針の考え方でございますが、考えてみますると、中小企業の金融の問題は資力、信用の薄いものが、簡単な手続で金を借りられるというところが、これは、まあ最終のねらいだと思います。  そういたましすると、保証協会等も、自分の保証は、できるだけこの中小企業者の要望に応じて保証をつける、しかしその危険については、これは国あるいは保険公庫が、保証保険という制度でカバーする、従って保証協会は、保証をつければ、必ず保険に付するということで、保証もしやすくし、また料率も安くなるので、中小企業者が希望に応じて、この金を借りられるということが最終のねらいでございまするが、行く行くは、やはり保証の仕事と、それから保証保険の仕事と、これはやはり緊密に結合いたしまして、両方の制度が、十分に解け合って動いて、始めて中小企業金融の目的を達するだろうと思います。  そういう趣旨におきまして、保証協会の業務通常の改善は、これは第一歩でございますが、それと並行いたしまして保証保険の問題も、重要な信用補完の一環として掲げたいと考えております。しかしまだ、なかなか保険の方は、おのおの保険制度発足後、日も浅いことでございまして、的確なデータ等も、まだつかめませんので、もう少しそういう具体的な事故率等のデータをつかみまして、改善しなければいかぬと思っておりますが、ねらいとしましては、そういう包括保険を中心にして、保証を拡大していこう、こういうふうにしたいと思います。
  76. 島清

    島清君 その保証業務を遂行して参ります当りまして、私たちが、その中間においてお聞きいたします声は、非常に時間がかかるということなんでございますね。  金を借りまする場合には、かなりやはり差し迫った場合が多いのです。大企業と違いまして、計画的に、この事業に対して資金量が幾ら要ると、こういったような、計画的なものがおろそかにされまして、とにかく必要になりますというと、足もとに火がついたように金を借りにいく、ところが、その能率が非常にのろいものですから、従って、こういったようなせっかくの金融機関に頼らずに、町の高利貸しの方へ頼ってみたりすると、こういったような弊害が、かなりあるように私たち承知しているわけなんです。  従いまして、これについては、せっかくのこの保証業務が、それで中小企業のためになって、その目的を十二分に発揮して参りまするためには、この能率化の問題が、やはり並行的に促進をしていかなければならないと、私はそう思っているわけなんですが、これからの保証業務の迅速な処理の仕方、こういうようなことについて、やはり格段の御指導が必要じゃないかと、こう思いますが、その点についてお考えを承わっておきたいと思います。
  77. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 全国にありまする五十二の保証協会内容を見ておりますると、協会によりましてはかりな事務員等も整備いたしまして、ある程度の事務量に耐えるような態勢もできておるようでございますが、まだ協会によりましては、きわめて事務陣容が貧弱で、とても、これでは大へんだろうと思うようなところが実はあるようでございます。これはやはり経理的な基礎が確立してないということにも、一つはよるだろうと思いまして、こういう面は、やはり国あるいは地方団体の援助が必要だろうと思いますが、こういうふうな貸付金の制度、これも国あるいは地方団体、それぞれ行なっておりまするが、こういうものによりまする事務陣容の整備ということも、これはまず目下、一番急がれているだろうと思います。  それからその次にありまする問題は、やはりお話のありましたような手続関係に、いろんな複雑さもあるかと思っております。これにつきましては、まだ各保証協会のあり方を一々つまびらかにしてもおりませんが、通常のところによりますると、やはり保証をお願いしますときには、各種の経理内容を示す書類でありますとか、あるいは金を必要としまする事業計画の内容でありますとか、あるいは最近の取引状況とかというふうな、いろんな書類を求められておるようであります。  それから、またその付保をするには、保険公庫に対する連絡、報告といったようなものも、いろいろあるようでございます。また金融機関に対するあれもありまするが、その辺のところを実はもう少し改善する必要もあるだろうと思います。まあ若干、何といいますか、改善のところを申し上げますると、従来、特別会計でやっておりまするときには、いろいろ報告書等もありまして、保証協会に手数をかけておったところが、今度は保険公庫になりまして、かなり書類の部数等も減らすとか、あるいは経理等も簡略化したということもございます。これは一つ、事務機構の整備と相まちまして、各種の書類あるいは手続の簡素化ということは、これは、ぜひ実現しなければいかんのだ、そういう方向へ指導して参りたいと思っております。
  78. 島清

    島清君 今あれなんですか、申し込んでから、大体決定するまで、時間的には、幾日ぐらいかかっていますでしょうかな。
  79. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) これは、各保証協会により、あるいはまた保証を申し込んだ人によって違うと思いますが、早い場合には、十日や二週間でいく場合もあるかと思います。いろいろ頭をひねるようなときには、長くかかるというのが偽わらざる実情だと思います。  そういうふうに頭を傾けますのは、実は保証対象として、必ずしも適当でないものも中にはあるかと思います。そういうことで時間がかかっているわけでございます。
  80. 島清

    島清君 商工中金の改正法案関係をして、二、三点実は質問さしていただきたいと思いますが、三十四年度におきまする資金計画と貸付計画について、これはどういうふうになっているかをお聞かせいただきたいと思いますが、提案理由にも、商工中金の貸出金利は、最近の数次にわたる引き下げ措置にもかかわらず、なお割高な現状にありますので、これが、極力引き下げることによって、中小企業者の金利負担の軽減に資することが、当面の重要な課題であると、まあ云々というふうに言われておりまするけれども、今回、政府出資を十二億円増額することによって、どのくらいの金利引き下げが可能であるのか、これを一つ、具体的に御説明をいただきたいと思います。
  81. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 現在の中金の貸し出し約定金利は、短期、つまり一年未満のものにおきまして、日歩二銭六厘五毛でございます。それから中期と申しますか、一年以上二年未満のものにおきまして年一割、それから長期、つまり二年をこえるものにつきまして一割五厘でございます。平均いたしますと九分九厘——年にしまして九分九厘くらいになるようでございます。これをなんとかして、まあ下げようということで、いろいろと検討いたしまして、その結果、たとえば従来から言われておりまするように、資金運用部の金を、まっすぐ中金に貸せば、下るんじゃないかとか、いろいろな意見もございましたが、いろいろ検討してみますと、結局、この無利子の政府出資を、まあ多額に行なった方が一番効果があるようでございます。  そこで政府出資の増加と現在までに二十六億でありますか、二十六億くらい出ておりますのを、さらに増加しようということで、いろいろと予算折衝等行いまして、まあ、やっと十二億ということになったのでございますが、十二億円出資いたしまするほかに、商工中金自体の自己努力、つまり経費面でございますとか、あるいはまあ各種の準備金、積立金の繰り入れを調整するというような措置、あるいは利息収入の増加をはかる。増加といいますか、約定に対しましての増加でございますから、約定通り利息を取るということでございます。相当各種の自己努力もあわせ行いまして、これをなんとか年三厘近くまで持っていこうということでやっております。大体現在のところでは、二厘五毛から三厘近くまでいきそうだと思っております。これをこの短期、中期、長期に、どういうふうに持っていきますか、この点につきましては目下研究中であります。  いずれにしましても、新年度から行いたいと思います。
  82. 島清

    島清君 もう一点……。  商工中金の三十四年度における資金計画ですね。それと貸出計画は、どうなっているかをちょっと御説明願いたいと思います。
  83. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) この商工中金は、御承知のように先ほど来申し上げましたが、短期金融が一番中心になっておりますが、三十三年度には、累計にいたしまして二千五百六十八億円程度大体貸し出す見込みでございます。それに対しまして三十四年度は二千八百二十八億、大体二百六十億円くらい増加するかと思っております。これは、もちろん累計でございまして、回転する金でございますから、そういうふうになるわけです。  それで純増、つまり年度末において、幾らふえるだろうかということでございますが、大体、三十四年度末において純増百五十億、そうしまして、年度末におきまする貸出残高が千百六十五億くらいになるんじゃないだろうかというふうに見込んでおります。まあ純増の増加率は、それほど大きくないかもしれませんけれども、この現実の貸し出しの金額は、まあかなりふえることになると思っております。
  84. 島清

    島清君 これは、小幡委員も少し質問で触れておられたように思うのですが、今度の改正法案一つのねらいでありまする預金者の範囲の拡充でございますね。一つには出資の増加がなされる。一つには、預金得意先の範囲の拡大がなされる。商工中金に預金が集らなくって、そのために資金コストが高くなるということは、はなはだ遺憾なことであって、そのために預金を集め得る範囲を拡大して、預金の増加に努めようとするその意図は、まあ、わからないでもないのです。私も、それは了解するにやぶさかではないのですが、しかしながら商工中金が、元来組合金融の中枢機関として、組合並びに組合員の資金を吸収して、相互扶助によって金融の円滑化に資せんとするものであったことは、これは申し上げるまでもないことなんです。まあ今回、預金者の範囲を拡充して、中小企業者と取引あるものにまで、預金吸収の手を伸ばされるということになりまするというと、他面においては、他の営業権と抵触するようなことにもなりかねないと思うのです。商工中金の持っている債権の保全のために必要とする限度という制約がついているけれども、従来からそういう業者を相手に金融してきた信用金庫や、それから相互銀行から反対の声が私たちの方にも起って参っておりまして、この改正法案が出されまするというと、陳情を受けているわけなんですが、商工中金が、一方には政府資金の援助を得て、半官半民的な色彩によって、大きな信用をもって資金吸収に乗り出す、純粋の民間事業である相互銀行とか、信用金庫については、強敵になるわけです。  そこで、商工中金に対するこれが業者の預金は、単に債権保全という役目だけのものであって、その役目が済めば、取り上げられるものかどうか、取り上げることについて、法律的また行政的の保障が、どんな形で行われているのか。この点を明らかにして、信用金庫や相互銀行との競合することが限定されている点を明確にしてもらいたいと、こう思うわけであります。  そうでないと、金融における事業分野の範囲というものが、なかなか混乱をしてくるのではないか、こういうふうに思っておりまするので、この法案の成立が、かえって中小金融の円滑化を阻害するようなことがあっては私はいけないことだと、こう思いまするので、この際、大蔵省の財務官も見えておられまするので、信用金庫であるとか相互銀行であるとか、こういったような金融機関との線といいますか、そういうものについての、一つ御見解を明らかにしていただきたいと思います。
  85. 大月高

    説明員(大月高君) 今回、改正いたそうといたしております点は、貸付債権の保全という目的のために、構成員以外から預金がとれる、こういうことでございます。目的が債権保全ということに限定されておりまするので、一般的に預金業務の範囲を拡げて、他の中小金融機関と競合するということはないものだと考えております。相互銀行、信用金庫の方面で、この改正案について危惧を抱かれておると思われまするのは、これが、むしろ商工中金の預金業務を拡張する目的を持っておると、こういうようにお考えになっておるからだろうと思うのでありまして、この制度趣旨といたしまして、これは単に債権保全の目的に直結すると、そちらの方に目的があって、預金を多く集めるのが目的ではないのだということをはっきり御理解願えれば、問題はないのではなかろうか。  従いまして、債権保全という目的でございますので、いかなる条件で、いかなる範囲からでも、預金がとれるということはないわけでございまして、具体的に、債務に関係がある範囲におきまして、預金をとると、こういうことでございますので、特に分野の競合というような問題はないものと思います。
  86. 島清

    島清君 改正法案の二十九条ノ二のところに、今の御説明のございました部分関係いたしまして、「当該債権ニ係ル債務者ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノヨリ預金ノ」云々とあるわけですが、この「命令ヲ以テ定ムルモノ」ということは、どのようなものであるか。これは命令の内容を、具体的に一つ、御説明いただきたいと思います。
  87. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 今考えておりまするのは、先ほど大月調査官が答弁いたしましたような範囲のものでありまして、具体的に申しますと、連帯保証人、それからまあ物上保証を含めました保証人、それから中小企業者が継続的に割引を持ち込むと思われる手形の振出人程度であります。大体それくらいの範囲で、あるいはまだ、もう少し研究の結果、若干ふえるかもしれませんけれども、大体、その程度のことでございます。
  88. 阿部竹松

    阿部竹松君 この保険公庫法の改正の点ですがね。御説明なさったこの第二の中の、「国庫納付金に関する規定を新たに設けようとするものであります。」云々から、最後に「その残余の額の百分の五十に相当する金額を国庫に納付することにしております。」と、こういうことに、最後なってございますね。そうしますと、はっきりわかりませんけれども、国有財産措置法でしたか、会計法に、こういうこの種の、とにかく剰余金、つまり益金ですね、これは、一切国庫に納めなければならぬ、こういう規定があったやに聞いているんですよ。私の記憶違いであれば別問題ですがね。もし、そういう法律があったとすれば、これと、どういう関係が生じてくるか、その点をまず、お聞きいたしたいと思います。
  89. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 私も、その法律の名前は、よく存じておりませんが、この法律の規定によりまして、この法律に対しまする特例ということになるかと思っております。
  90. 阿部竹松

    阿部竹松君 そうしますと、まあ長官も、よく御存じないと同じように、私も、法律の名前はわかりませんけれども、そういう法律がある。そうすると、それがあった場合、当然これは、この法律から除外される、こういうことになるわけですか。
  91. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 向うの法律の規定が、一般的な規定でございまして、この法律が、特例になりまして、従って残る百分の五十が、これは公庫に積立金として将来の保険関係の支払いに充てるために留保される、こういうふうに考えております。
  92. 阿部竹松

    阿部竹松君 そうしますと、当委員会で扱っておりませんけれども、国民金融公庫とか、あるいはこの商工中金の剰余金は、このようになっておりますね、剰余金が生じた場合、信用保険公庫のようになっておりませんけれども、同じような性質を持っているんですが、どうして、そういう差をつけなければならないかという点ですね。
  93. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 商工中金は、これは半官半民のあれでございまして、民間の機関でございますから、その規定の適用を受けないわけでございますが、中小企業金融公庫、あるいは国民金融公庫は、公庫の一般通則によって左右されるのであります。それで、なぜこういうふうな特例を保険公庫について認めるかという御質問でございますが、    〔理事上原正吉君退席、理野島清君着席〕 これは御承知のように、保証保険にいたしましても、それが期限が到来して、何といいますか、債務者が本来の債務の支払いが不能になりまして、そういたしますと、保証協会がかわって債権者に弁済する、いわゆる代位弁済をするわけであります。その時期が、かなり時間的に付保当時よりもずれるわけであります。それから代位弁済にいたしましたものを、今度は債務者に向って回収を開始するわけでありますが、これまた完全に回収されるわけでありますが、いろいろと回収がおくれることもありましょう。そういうときに回収不能事故ということで、保険金の請求を公庫に向ってするわけであります。そうしますと、かなり保険金の清求まで付保当時から期間がかかっておるわけであります。通常二、三年はやはりずれるというのが、今までの通例のようでございます。そういたしますと、保険公庫の経理は毎年々々の損益の決算をしておりますが、それが当該年度だけの経理でございまして、将来に向ってやはりある種の危険というか、損失が起る可能性を含んだ決算になるのであります。それで保険公庫の経営の一貫性を保ちますためには、やはり利益が出たらすぐに国が召し上げるということでは、翌年また通になるかもしれませんので、そういうことではまずいのでありますから、利益を国に納める程度は半分程度にいたしまして、残りの半分は公庫に留保しておいて、翌年以降の保険金の支払いに充てる、こういうのが保険経済の態勢だろうと思っております。そういう趣旨をくみまして、特に百分の五十、こういうふうにしたわけであります。
  94. 阿部竹松

    阿部竹松君 そこの御答辯ですね、商工中金は半官半民である。私の聞いているのは、半官半民であればルーズであっていいとか、シビアであっていいかということでなしに、半官半民である商工中金の方が、私は条文を読んでみますと、なおきついような気がするのです。これでいくと、確かに今岩武長官がおっしゃったように、組み入れると書いているわけでありますが、それは組み入れるのは資本金に達するまでということで、組み入れ以外は、五十は入れるがあとはどうするかということは書いてございません。商工中金ではこんなふうではない、何パーセントどうしなさいということを明確に書いてある。組み入れていいのと組み入れないでよろしいのと二段階あって、納付しなさいというのは五〇%でしょう。あなたは前段の方を御答弁なさったわけです、私は後段の方をお尋ねしているわけです。
  95. 大月高

    説明員(大月高君) 商工組合中央金庫につきましては、出資者に対する配当ということでございます。これは、商工中金自体が政府機関でございませんので、一般から出資者を求めまして、政府もまた出資者の一員として出資いたしている、こういうことでございますので、民間ベースにおける、いわゆる株式配光と同じ感覚で配当をいたすわけでございます。それに対しまして、政府機関でございます保険公庫あるいは中小公庫、国民金融公庫は、全額政府が出すと思いますので、いわば全部が、全体の株主、そういう関係で、税金と配当とを含めた意味におきまして納付金をとる、こういうことでございますので、いわゆる利益に相当するものがございますれば、これを全額納付する、こういうのが建前でございます。それぞれの公庫におきまして納付の規定を置いてございます。これは一般原則ということではなしに、それぞれの公庫にあるのでございますが、大体において金頭とっている、保険公庫につきましては、今長官からお話がございましたような特殊事情がございますので、それを五十ということにいたしまして、内部留保する、こういう形でございます。
  96. 阿部竹松

    阿部竹松君 今大蔵省の大月さんがおっしゃったようなことを僕が理解するがゆえに、百分の五十というものは納付するということは明確になっているけれども、あとの五十はどうしなければならぬという規定がないじゃないか、であるから、これは少しおかしいではございませんかという話なんで、これが正しいということであればそれでよろしいわけです。  次に、中央金庫法の一部を改正する法律案ですが、これについてお尋ねいたします。さいぜん島委員のお話にもございましたが、第一の項ですが、「金利引き下げに資することとした次第であります。」これは、十二億円出資することによって、大体現在よりどれだけ下るわけですか。
  97. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 政府出資の十三億と、それから商工中金自体の自己努力によりまして、大体平均の金利におきまして年三厘近く、二厘五毛から三厘ではないかと、こういうふうに考えております。具体的に短期の現在の日歩二銭六厘五毛を幾らにするか、あるいは中期の年一割を幾らにするかということは検討中でございます。いずれにしましても、大体引き下げの余裕としましては、年平均しまして三厘近くまでの余裕がありそうだということでございます。
  98. 阿部竹松

    阿部竹松君 そうしますと、この件では三木さんが前に経済企画庁の長官当時、三回ほどここで大いに論争したことがございますから、深くお尋ねしませんけれども、まだ何厘何毛下るということは明確におきめになっておらぬわけですね。結局政府の出資は十二億増額するということにきまったけれども、口数をふやすとか、ワクを広げたので、民間からどのぐらい大体増額するかということがまだ明確でない、一応御計画はあるでしょうけれども。従って、まだどれだけ下げるということは明確になっておらぬわけですね、大体このくらいだという今の御答弁ですね、そういうふうに理解してよろしいのですね。
  99. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) ただいままでの検討の結果は大体その通りでございます。
  100. 阿部竹松

    阿部竹松君 大月さんにお尋ねしますが、私金利のことなど全くしろうとで、質問というよりもお教えを願いたいのですが、私がとにかく調べたのでは、日本は世界で、八十何カ国、九十カ国近く全部調べたわけではないのですが、金利は、大体われわれの常識で数えるような国々の中で三番目ぐらいに金利が高いということを、僕はある本で読んだことがあるのです。とにかく金利の高いことでは世界のトップ、Aクラスなんですね、こういうことでしょうか、僕はきわめて不勉強なので、大体どのくらいの、日本はどういうべースだろうということをもしお教え願えれば一つお尋ねしておきたいと思います。
  101. 大月高

    説明員(大月高君) 日本の金利水準は、世界のいろいろな国に比べて高いのか低いのか、あるいは、もし高いとすれば一体どのくらいのところにあるかというお話でございます。  金利を比較いたしますのには、一つはいわゆる中央銀行の金利が非常に標準的なものでございますので、これは一つの指標になるかと思います。それから実際の経済に関係のございます、産業界に直接関係のある金利は、いわゆる市中金利と申しております金融機関から一般の企業その他のものに貸し出す金利でございまして、これが高いか低いかということの方が実態的に意味があるかと思うのでございます。しかし、あとの市中金利の実態につきましては、それぞれ国によりまして制度が違っておりまして、たとえば商業手形が中心になっている国と、あるいは保証というような貸し方、これが中心になっておりますとか、あるいは引受信用というようなものを中心にしている国とか、いろいろございます。それから相手の使途によってそれぞれ金利も迷うというようなこともございまして、実際は相当精密な調査をいたしましても、ほんとうにどの程度の水準かということは実は詳細にはわからないわけであります。  第一の公定歩合につきましては、今お話がございましたように、先般、日本銀行におきまして、基準割引歩合を下げまして、日歩二銭から日歩一銭九厘にいたしました。これは年利にいたしまして六分九厘三毛という数字でございます。この数字をたとえばほかの国々に比較して申し上げてみますと、アメリカは今二分五厘でございます。二五%でございますので、大体におきまして三分の一ぐらい、それからイギリスが今四分でございまして、アメリカより若干高うございますが、これも日本と比べますと、二分の一よりちょっと上に出ておる、こういう程度でございます。それからドイツがついこの間一月に下げまして、二七五%、二分七厘五毛こういうことでございます。その他フランスは四分三厘五毛ぐらいでございまして、そういう点から申しまして、日本の公定歩合は非常に高い。先ほどまあ世界で三番目ぐらいだろうかというお話でございますが、ほかの小国は別といたしまして、大体欧米先進諸国の公定歩合に比べますれば、何倍というような倍数に近いくらい高いわけでございまして、仰せの通りでございます。市中金利につきましても、大体公定歩合が中心になりますので、傾向は同じでございますけれども、ただ市中金利はこれほどはっきり差を示しておらないと思います。正確な調査はなかなかむずかしいのでございますが、たとえば最近のドイツからの電報によりますと、ドイツが一月に二分七厘五毛、これは三分から二分七厘五毛に引き下げたわけでございますけれども、そのときの市中金利が七分七厘五毛程度だというようになっております。これは標準の金利でございます。先般日本銀行の公定歩合を一銭九厘にいたしましたときに、市中の金利といたしましては標準金利という制度をとりまして、これが優良な貸し出しに適用になり、これが同じく一銭九厘ないし一銭九厘五毛と言っております。そういたしますと、大体において七分ちょっとという数字になっておりまして、そういう意味から申しますと、標準になる金利は、ドイツと比べましてそう高いわけではなかろう、こういうように考えます。    〔理事島清君退席、理事上原正吉君着席〕 ただドイツは、イギリスとかアメリカに比べましては、金利は相当商い国でございますので、英米におきましては、これよりさらに低いとわれわれは大体考えておりますので、今の水準から申しますと非常に優良なものにつきましては、ドイツよりまあやや低いくらい、それから英米あたりに比べての水準はまだ相当高い、このくらいの感覚でお考えになったらいいと思います。
  102. 阿部竹松

    阿部竹松君 それでですね、大月さん、イギリスが四分で、日本が四分と仮定しますね。しかし同じ四分であっても、その国の経済状態なり、その他の指数によって、必ずしも、四分であるからこちらが高くてこちらが安い、四分で同じだということにはならぬわけですね。その国の経済実態を把握しなければ、日歩何銭何厘とか、何分何厘では僕はとにかく割り切れない。従って、僕はあなたの御答弁がまあ大体僕と同じような考えですから、まあそれで僕の見たのは間違いなかったと思うのですが、ところで問題になるのは、何で日本の金利が高いかというと、政府が、中小企業が利用するこの種の金融公庫に金を出さないのですね。日本が一番少いそうです。これも僕の木を見た受け売りですから、明確に外国に行って調べたわけではないからわかりませんけれども、たとえば今回二十六億を十三億ふやして三十八億にする、こういうことですがね、これは例に当てはまるかどうかわかりませんが、世界銀行から一つの電気会社が金を借りてくる。百億でも二百億でも、これは、借主は確かに電気会社であるけれども、裏判は日本政府が押すわけですね。一つの電気会社が、これは筋が違うでしょう、しかし、一つの銀行のとにかく力をもってしても、百億も二百億も世界銀行から借りてくるのに、これは政府が裏判を押すということになって片方のとにかく何百万とある中小企業がおおむねお得意さんになるというこの種の金庫にたった三十八億とは、これはあまりにも岩武さん策がなさ過ぎるような気がするのですがね。これはいかがでしょうか。
  103. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 御指摘通り、いかにも策のないことでございますが、ただ、こういうことを一つ阿部委員におかれましても御検討を願いたいと思いますが。実は、政府関係金融機関が、現在貸出の残高におきまして、約三千億ぐらいになっております。これは、大体、中小企業者が各種の金融機関から借りておりますものの約一割弱でございます。つまり、三兆三、三千億ぐらいまで現在中小企業者が各金融機関から借りております。政府関係機関の占める比率はわずかに一割弱。ところが、都市銀行あるいは地方銀行もかなり貸し出しておりまするが、実は、先ほどお話のありましたのは、信用金庫、信用組合、それから相互銀行、これは中小企業の金融機関としては専門的なものでございますが、これらも、全体の残高におきまして約四割から五割ぐらいになっておろうかと思います。これらの金利がかなり実は高いのでございます。これは、商工中金も高い、高いといわれておりますが、さらに高いのがあるようでございまして、日歩三銭五厘とか四銭とかいうのがあるようでございます。実はわれわれの頭痛の種は、政府関係の金融機関の金利については、これはある程度政府が手を入れますれば、徐々にではございますが下って参りますし、これは金の量もふえて参りますけれども、一体、中小企業者が一審利用しておる金融機関の金利はどうしたらいいものだろうか、何とかいい方法はないものだろうかと思っておるわけでございますが、これはとても策のないことでございまして、困っておるわけでございます。その辺も一しょに考えると、中小企業者としてはなかなか金利の負担を軽減するということにはならぬわけでございまして、そこらあたりいろいろ問題があるということを、答弁になりませんがお答えする次第でございます。
  104. 阿部竹松

    阿部竹松君 それで、今、長官のおっしゃったことも実態としてよく理解できます。また私の、こういう法案の中身に賛成ですから、別にこの枝葉末節にこだわってどうしようというのじゃございませんけれども、しかし、今申し上げた通り、大体、政府が法律をたくさん作って中小企業を助けるのもけっこうでしょう。しかし、金ばかり出したからといって、中小企業が、直ちに全部が生き返るというようにもまた考えておりません。両々相待ってやはり中小企業を指導していかなければならぬと思うのですが、それにしても、あまりにも少な過ぎるのですね。極端な人はこう言いますよ。政府が財政投融資からどんどん中小企業のこの種の国民金融公庫、これもレベルは一段下ですね、国民金融公庫だとか、これだとか、あるいは農林中金、こういうような半官半民からとにかく政府が一手に引き受けてやられる。これに金を出すと、結局安い金利で貸さなければならぬから、大財閥といっておる三菱銀行、三井銀行、富士銀行、こういうのが出すのに反対して猛運動をやっておる、従って、政府は出さないのである、これはきわめてうがった話で、そこまでいけば何をかいわんやという話になる。そういううわさが飛んでおるほど政府がきわめて金を出さないわけなんです。これは合計、合わせて三十八億ということでなしに、何らか打つ手ないのですか。
  105. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) まあ、われわれ微力でございますが、できるだけこれをふやそうと思って毎年やっておるのでございますので、一つ皆様方の御協力によりまして、できるだけ厚く御指摘のように目的を達成したいと思っております。
  106. 阿部竹松

    阿部竹松君 まあ、それは政務次官お尋ねするのが正しかったのかもしれませんし、あるいは大臣お尋ねするのが至当であって、いかに長官といえども、閣議に出たり、大蔵大臣と直接交渉するわけじゃないでしょうから、これ以上あなたに——衆議院で予算も通ってしまったから、十二億が安いじゃないかといっても、どうも水掛論になってしまうおそれがあるのでこれはやめます。  その次に、一万口を五万口に拡大したのですね。五倍になった。これも大いにけっこうかと思いますが、これは政府が三十六億を十三億ふやして三十八億にしたということに原因があるのですか。  それとも広く民間の資金をこの種の金庫に集中さして利用させようとなさることでふえたのですか。そのあたりどうなんですか。それから団体ということですが、政府はおそらくこの団体に入らぬと思うのですが、やはり所属団体というものに政府も入るわけですか。
  107. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 初めの方のお話でございますが、これは端的に申しますると、出資をする組合のいろいろな経済的な力の差が出て参っておるかと思います。強固な組合で財政的基礎が固まっておりますければ、あるいはかなりな出資もできるものもあるようでございますが、中には微弱でございまして、なかなか大きな品の出資もできないところもあるわけでございます。それで建前としましては、これは民同出資もできるだけふやして参りましょうし、また政府出資もふえて参りますれば、それに応じて民間出資もふやして参りますときに、この品数の制限がありますと、引き受け能力のある組合に持っていく限度ができて参りますし、片方その尻があまり引き受け能力のない組合の方に回ることになってもまずいものでございますから、それでこういうふうに限度を上げて、能力のある組合は五万口まで喜んで引き受けてもらう、そしてその尻が力の弱い組合に回らないようにする、こういう考えでございます。五万口と申しましても、一口百円でございます。あまり大きな金額ではございません。
  108. 阿部竹松

    阿部竹松君 所属団体という方は。
  109. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 所属団体という中には政府は入りません。
  110. 阿部竹松

    阿部竹松君 最後にお尋ねいたしますが、金庫法の内容に最高幾らという額がきめてあったように記憶するのですが、これはどうであったでしょうか。たとえば貸し付ける場合にですよ。この法にあったような気がするのですが、どうですか。
  111. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 保険公庫の協会に対する貸しつけの場合は最高最低限はございません。これは予算の範囲内で先ほど申し上げました基準によっていたします。貸し出しの限度がございますのは、中小企業金融公庫の方でございます。これは貸出先に対しまして一応千万円、それ以上こしました場合には、特別な事項によった場合には承認によって出す、こういうようなことになっております。
  112. 阿部竹松

    阿部竹松君 私も、今長官のおっしゃった公庫と、国民金融公庫は最高額があったので、これもあったように記憶しておったのですが、ないわけですね。そうすると別に今度増資しても、口数がふえても、そういうことには全然かかりあいがない、こういうことになりますね。
  113. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 今のお話は商工中金でございますが、商工中金の方には貸し出しの限度は法律ではきめておりません。
  114. 上原正吉

    ○理事(上原正吉君) ほかに御質疑はございませんか……。  ないようでございますから本案に対する本日の質疑はこれをもって終ります。   —————————————
  115. 上原正吉

    ○理事(上原正吉君) 次に、特許法案外九件を一括して議題とすることに御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 上原正吉

    ○理事(上原正吉君) 御異議ないと認めまして、さよう決定いたします。  これより前回に引き続いて質疑を行います。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  117. 小幡治和

    ○小幡治和君 今いろいろ特許関係、実用新案、意匠、たくさんの法律が出ておりますが、この特許発明、実用新案それから意匠、この三つは一般には異った概念として見られておりますけれども、その境目というものが非常にあいまいだと思います。従って法案でも、特許で出願したものを実用新案にすることもできるし、また意匠で出願したものを実用新案に出願変更できるというふうな規定もあります。そこでまず理論的にどういう差異があるのか。その点理論的にはっきりしているのかどうか、まずお伺いしたいと思います。それから実例をもってどういうような場合に出願変更され得るのかどうか。それからどんな場合に特許なら拒絶されて、これを実用新案にすれば通るのか、これも実例で示してもらいたい。それらの点一つお伺いしたいと思います。
  118. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) 特許権の対象は発明ということになっておりまして、特許法の第二条の定義で、「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と、結局はこういう抽象的な表現になるわけでございます。この発明について定義をおくという例は、各国の特許法を通じまして、これまであまりございません。学説あるいは解釈によって従来はやって参りましたのが普通でございますが、今回の特許法等関係法律案改正の機会に最近のわが国の法制の大きな一つの方針としまして、できるだけ国民に対してわかりやすく明快な定義をおくというのが、これは最近のやり方になっておるわけでございますので、定義ということは非常にむずかしいことではございますが、われわれとしましては、できる限りそういうことを法文上明確にしたいと思って、第二条に定義をおいたわけでございます。しかしながらわれわれとしましても、この法律の定義でもって十分であるとは必ずしももちろん考えていないわけでございまして、今後の運用等を通しまして、判例または学説でもってこれを漸次補ってゆく、そうして今御質問の特許権、実用新案権、意匠権の対象というものを、運用を通して、具体的に、はっきりしたものに持っていこうという考えでございます。で今、特許の対象としての発明と実用新案権の対象としましての考案と、意匠権の対象、この三つの関連性でございますが、この三者のうち特許権の対象としましての発明と、実用新案権の対象としましての考案というものは、実用新案権の対象が従来の型というものから考案にこれを切りかえました結果、同質のものを対象とすることになったわけでございまして、この程度の違いだけがそこに残るということになるわけでございます。実用新案法の第二条で、「この法律で「考案」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作をいう。」ということになっておるわけでございまして、結局高度のものが特許の対象である発明であり、そうして高度のもの以外が実用新案権の対象としての考案ということで、そういうふうに同じ技術的、思想の創作とは申しましても、程度の比較的高度のものを特許の対象として考える、実用新案権の対象としましては、比較的低いものを対象としていくということでございますから、質的には同じようなものがこの対象になるわけでございます。ですから、従いまして今御指摘通りに出願人の側から申しますれば、自分の発明考案が特許権の対象になるのか、実用新案権の対象になるのか明確でない場合があるわけでございますので、今仰せの通りこの特許の出願と実用新案の出願との間に、相互の変更を認めたわけでございます。なお、意匠につきましては、これは性質がやや異なるわけでございまして、意匠法の第二条で同様意匠について定義を設けておるわけでございますが、「物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって視覚を通じて美感を起させるものをいう。」というわけで、結局目に訴えて美感を生ずるようなものが意匠になるわけでございます。具体的な実例としてという御質問でございますが、たとえばライターのような場合について考えてみますというと、デザインとして非常に見た目が、よいという場合にはこれは意匠権の対象になるわけでございますが、これと同時にライターの技術的効果の上に何らかのプラスがある、例として申し上げますれば、火が消えにくい、風が吹いても消えにくいように、まわりに防壁を作るが、同町にそれが意匠として見た目も非常にいいデザインになるという場合には、これは意匠の登録出願というように扱ってもよし、あるいは実用新案の出願として考えてもよいわけでございますが、このような例があり得るかと思います。あるいはまた扇風機について申しあげましても、見た目の美しい、見た目が非常に心理的に美しいという場合は意匠でございますけれども、これと何時に風力が強くなるとか、危険の防止になるとかというふうな技術的効果がこれに伴っておるというような場合には、実用新案、あるいは少し程度が高度の場合にはこれが特許権の対象としての発明にもなり得るということが考えられようかと存じます。
  119. 小幡治和

    ○小幡治和君 今度の改正法で発明の内容が要するに技術的思想の創作のうち、高度なるものが特許だということになっておるのですけれども、左来は工業的発明というものが特許なんだということになっておった。今度は特にそういう意味において差異をつけられたわけなんですが、特にそういうふうに両者の差異をつけた意義というものは、どういうところにあるのかということが一つと。  それから現行法の工業的発明というものだけを取り上げていたときは、農業的発明などは含まないということであったのですけれども、改正法では「自然法則を利用した技術的思想の創作」というようなことを言っておるのでありまして、そうなると農業的発明というか、たとえば改良品種の創作のようなものも特許を受ける発明と見られそうにも思うのだが、こういう点はどうなんですか。  それから商業的、芸術的発明を特許の対象としないのはどういう理由によるのか、それらの点一つ説明願いたい。
  120. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) 先刻は特許法第二条の発明に関する定義を中心として御説明申し上げたわけでございますが、特許の対象としましては、特許法の第二十九条というこの規定と両方合わせて考えるということによって特許権の対象というものが明らかになるわけでございます。  まず特許と実用新案の違いということから御説明を申し上げたいと存じます。すなわち今回特許法の第二条におきまして、特許法中の発明とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」というものの「高度のもの」というものを加えましたゆえんのものは、実用新案の対象としましての考案と区別をすることが、そのねらいでございます。実用新案法という制度を特許法以外にとっている国は、現在世界を通じまして、日本以外にはドイツ、スペイン、ポルトガル、ブラジル、イタリア等十数国でございます。今回の法律改正の機会に、いろいろ審議研究の過程には、実用新案権の対象を型から考案に改正するということによりまして、特許と実用新案の対象が同質の技術的アイディアということになる結果、実用新案法を廃止したらどうかというような意見もかなりあったわけでございますので、この点につきましては、日本の産業界の実情、特に中小企業者方面におきまして、実用新案、実用的な考案というものが、従来長年の間、相当産業の発達に寄与してきたという実用新案制度は、それなりに役割を果してきたという実績と、それからもう一つ理由は、もしこれを一本化しまする場合には、現に実用新案権の対象となってますようなものを、相当程度特許法の対象としてこれを包含していくということにならざるを得ないわけでございますが、そうなりますというと、比較的程度の低い考案というものに対しまして、特許権という期間も長い、そういう強い権利を与えるということになるわけでございまして、結果的には特許法の対象といいますか、結局全体といたしましての特許発明の水準がそれだけ低下するということになるわけでございます。こういう結果を生じますことは、技術の進歩を次から次へとできるだけこれを引き上げていく、向上させていくという特許制度の本来の趣旨に実は反するわけでございますので、いろいろ検討しました結果、やはり今中しましたような理由で特許法と相並んで実用新案法をやはり存続することが、従来の運用の経験に徴しましても、日本の産業界の実際というものから考えましても、むしろ適当であろうという結論になったわけでございます。そういうふうに特許法、実用新案法二本建ということになりますれば、何らかの方法で個々にその対象に区別を設けざるを得ないわけでございますが、その場合におきまして、元来同じような技術的アイディアでございますので、いろいろ法文上検討しましたけれども、結局高度のものというふうな、何と申しますか、やや比較的高度のもの、実用新案の対象としての考案に比べて、高度なものというような程度の表現にならざるを得なかったわけでございます。  次の問題としまして、従来は工業的発明となっていましたことは御指摘通りでございますが、従来の現行法第一条の規定を今般は新法案の第二十九条の本文のように書き直したわけでございまして、従来工業的発明という文字は使って参りましたけれども、これはやはり工業以外に、農業あるいはマイニングの鉱業、そういったものを包含するものとして解釈され、また運用されて参りましたので、今回これまでの解釈あるいは運用を法文上も明白にするという意味で、産業上というふうに今回は改正したわけでございます。でございますので、これは工業上利用することができる発明以外に、鉱山業、マイニングの鉱業に利用することができる発明ももちろん包含します。あるいは農業上利用することができる発明も、この中に入るわけでございます。そういうふうに御了解を願いたいと存じます。  なお、商業あるいは芸術的発明をこれに加えないのはどういう理由かという御質問であったかと存じますが、第二条の定義で申しましたいわゆる自然法則を利用した技術的思想の創作ということでございますので、自然法則を利用しないもの、たとえて例を申しますれば欧文文字あるいは漢字、かたかな、数字、記号、そういうようなものを組み合せて暗号の文字を作りますとか、そういうようなものは、普通、俗にはいい発明だというような言い方はいたしますが、特許権の対象としましての、特許法土の発明にはそれはならないわけでございまして、あくまでも特許の対象としましての発明というものは、自然法則を利用した技術的思想と、そういうことになるわけでございます。でございまするから、芸術的なものを、考案としましてはこれはある程度意匠権の対象として入ってくる場合があろうかと存じますけれども、特許または実用新案の対象としては、考えるということができないわけでございます。  なお農業に対しまして、ついででございますから申し上げておきたいと思いますが、品種改良方法に関する発明等は、これは特許の対象になるわけでございますが、いわゆる植物特許と申しますか、非常に大きなバラの栽培ができた、品種が生れたというようなそういう新品種自体を特許の対象に考えるということは、日本ではそういういわゆる植物特許というものは、農業技術の現段階においては認めがたいのではないかと考えております。これは結局技術的思想の創作というような点からも御理解がつきますように、繰り返し反覆継続する、そういう反覆、その技術を継続することによりまして、いわゆるこれを産業上利用するというような点が特許権の実体でございますが、そういう偶然的な、偶発的な結果としまして新しい優れた品種が生れた、その品種自体について特許としてこれを認めるということは、考えていないわけでございます。繰り返しになって恐縮でございますが、この場合におきましても、その品種改良の方法というものが反覆継続して利用できるという場合には、これは特許権の対象になり得るわけでございます。
  121. 小幡治和

    ○小幡治和君 そこで大体範囲の見当はついたのですが、そこで今度新しく外国における公知公用の問題が出てきたわけなので、特許法案及び実用新案法案などでは、特殊の欠格条件として二十九条に外国文献の記載という点がいわれておりまするし、また意匠法案では、外国における公知公用ということが上げられております。外国の文献に記載されたことや、外国において公知公用されておるというふうなことを欠格とすることは、これは今日の外国との交通、通信が頻繁であり、日進月歩の今日の御時世においては当然と意うのですけれども、これをそれでは現実に把握するということは、なかなか全世界隅々の問題でありまするので非常に困難だと思います。従って、無効審判の請求があって初めてそういうことがわかる、これは外国の公知公用であったということがわかるというふうなことになるきらいがあるのじゃないか。特許庁におきましては、要するにこれに対する調査能力といいますか、こういうものが十分あり得るのかどうか、要するにそれの調査の方法、実際こういう方法によって調査能力があるのだということがいえるのかどうか、その点一つお伺いしたいと思います。
  122. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) 今御質問の点は非常に重要なポイントでございまして、今回の特許法の改正の事項を通じましても、新規性判断の基準としまして、外国において頒布された刊行物というところにまでこれを拡大したという点は、最近の国際的、社会、経済情勢の現状から考えて重要な改正一つとして考えておるわけでございまして、今この改正理由については申し上げました通りでございます。その点について特許庁として十分な調査能力が果してあるかどうかという御質問、言いかえれば、こういうふうに法律改正した結果、特許庁としてどう善処していくかということでございますが、法律上外国において頒布された刊行物に記載された発明は特許の対象にはならない、不特許事由になるというふうに改正しました以上、当然従来にも増して特許庁としましての海外資料というもの、海外技術関係文献というものを一そう広範囲に一そうすみやかに収集する努力をしなければならないというふうにわれわれとしては考えておるわけでございます。そういうふうにしましても、なおかつ全部を日本国内に収集することはもちろんできないわけでございますが、そういう場合におきましては、特許庁といたしまして収集の努力の結果、これが入ってきました以上、これは日本国内において頒布された刊行物云々ということにもなるわけでございますから、特許庁の審査官が審査をします際に、特許庁の資料課にもきていない、あるいは日本の市中にもこの文献がないという場合は、外国において頒布された刊行物というものの問題が残るわけでございます。御承知通り、われわれとしましては、出願がございますと、慎重に従来の文献等によって審査するわけでございまして、審査の結果公知公用ないしは従来日本国内において頒布せられた刊行物に記載せられた発明ということに該当するということになりますれば、もちろんこれは拒絶になるわけでございます。これとは反対に公知公用、でない、日本国内において頒布された刊行物にも載っていないという場合には、審査官としましては一応特許を与えてよいというふうに判断しまして、これを公告いたします。その公告に対しまして異議申し立て期間というのは二カ月ありますので、もし産業界、学界等におきまして、きわめて特殊のルートで個人的の入手の方法でもって外国の文献が入ってきているという場合に、この問題の公告になりました特許発明に対しまして、異議申し立てを願う、異議申し立てによって、これは日本では広く頒布されてはいないが、現に外国において頒布された刊行物に書いてあるのだということで、その業界または学界の特定人からの異議申し立てによってこれをつぶす。そういうような方法によりまして、権利の設定につきましてできるだけ適正、正確を期して参りたい。そういう方法がこれが第一でございます。  それから第二の方法としまして、ただいま御指摘の公告期間中において異議申し立てがない、ついに権利になってしまったという場合には、後日になって何らかの方法で、あれは審査の当時、出願時において日本には頒布にはなってなかったけれども外国ではすでにこれが頒布された刊行物に書いてあったというような事実が、後日わかりました場合には、これが無効の理由になるわけでございますが、そういう場合には無効審判の請求という方法によりまして、これをつぶすということになろうかと存じます。  結局要約して申し上げますれば、特許庁としまして従来に比べて正そう海外文献の広範にして同町に迅速な収集に全力を尽くす、努力をするということ。また次には異議申し立てという方法によりまして、関係民間の一般の協力をまつ。それから第三には、無効審判の請求によって、こういう該当するような場合につきましては、特許権の設定をくつがえすような方法を講ずる、そういうようなことによりまして、適正なる特許権の設定ということに十分努力したいと考えております。
  123. 小幡治和

    ○小幡治和君 外国で登録されたものは、全部こっちには、いかなる外国からのも全部来ているわけでしょう、それれはこっちに全部……。分類はそれでもって全部、その書類はあるわけですね。
  124. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) これは特許権は各国々別々に与えられるわけでございます。米国人が米国で特許権を持っている事実が全部日本でも同時に特許権になっているということではございません。ですから、日本の特許関係の法例に従って日本に出願手続をして初めて日本で特許権になった場合だけは……。
  125. 小幡治和

    ○小幡治和君 そうじゃなくて、要するに外国で特許登録されているものが資料として、いかなる外国でそうなったものを日本にそれが全部資料としてきていて、これは外国でもって登録されているのだからということが一目瞭然とわかるように、それはちゃんとできておるのかということです。
  126. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) 誤解をいたして失礼いたしました。外国の特許公報は、要約でもって各国交換するというやり方になっております。現に二十数ヵ国から日本に参っております。
  127. 小幡治和

    ○小幡治和君 それにプラス今度は外国の特許の登録されたものでなくて、外国の文献に記載されたもの、文献ではないけれども公知公用だ、こういうものを文書にして特許庁が一つ資料としてまとめておくという必要が、今度の新しい法案によって生じてくるわけだと思うのですけれども、それについてはあれですか、事実上特許庁でもって、そういうものを全部集める、そうしてこれは外国で文書に載っているのだとか、これは公知公用なんだとかいう資料にし心、それを全部調査して特許庁に置くということをやるのですか。どうですか、その点……。
  128. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) これはなかなかむずかしいと思いますが、できるだけやりたいと思っております。
  129. 小幡治和

    ○小幡治和君 そこができないと、結局今私が申しましたように、結局無効審判の請求があって、初めてそうなるから、ああそうかというようなことで、ここには堂々と外国ではこういうものは特許しないと言っているけれども、実際は特許庁に能力がないのだ、無効の審判があって、初めてああそうかとわかるのだということでは、非常に頼りないというふうな気がするのだけれども、その点努力すると言われれば、大いに努力してやってもらいたいということよりしようがないと思います。  それともう一つ、今度の百一条によりますと、特許が物の発明についてされている場合に、その物を輸入する行為は特許権侵害とみなされる、こういうことになっているけれども、その物が同じ特許が外国で登録されている場合に、単にそれを輸入するということは侵害行為になるのかどうか。
  130. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) 外国では特許になっているが、日本では特許になっていない場合には、ここにいう「輸入する行為」が侵害するということになりません。
  131. 小幡治和

    ○小幡治和君 それはどういうことになりますか。百一条の……。
  132. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) ですから、百一条の第一項にいいます場合には、日本で特許になっている、外国では特許になっていない、そういう製品日本で輸入する。日本である製品について特許がございまして、そしてその特許になっている同じものが外国にある。これをこちらへ輸入する行為は、これは口一本における特許権の侵害になるわけでございます。
  133. 小幡治和

    ○小幡治和君 輸出する方は……。
  134. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) 輸出する行為は、ここにいいます生産または譲渡というふうに、それに該当するわけでございます。どれかに該当することになります。
  135. 小幡治和

    ○小幡治和君 まあ時間もありませんから、ここらでやめたいのですが、要するにそういう特許とか実用新案というものは、これは発明した者にとっては相当大きな利益、利権というふうになるけれども、その反面これを実施する工業者、特に中小工業や一般消費者にとっては、そういうまあ利権があるということは、他方においてはそういう連中にとっては大きな負担だ。従って真に発明であって、権利者が報酬を受けるとなれば差しつかえないけれども、真の発明でないものを権利として設定されて実施料を支払わされるいうことは、これは極力避けていかなくちゃならない。そういう意味において除斥期間の廃止というものもこのためにあるのだろうと思うのですが、そこで公告によって公衆審査が期待されるわけなんですけれども、公衆の審査必ずしも精密であるとはいえない。特にその特許が中小企業の分野に用いられておるものならば、中小企業にはその特許が公知公用のものであったかどうかを調べる機会もなければその余裕もない。そこで特許なり新案なりが公知公用であったかというのは調査する機関というものが生れる必要が生じやしないか。たとえば特許庁の中に監査部というような機構を設けて審査官が見のがしたような事実を発見するというふうな一つの常置機関というふうなものが必要じゃないか、あるいは試験所とか中小企業組合なんかの技術部門を強化して、こういう仕事を担当させるというふうなことはできないかどうか。要するに特許というものとと産業界の実情というものからみて、そういうようなものが特に必要になってこやせぬかという点については、特許庁どうお考えですか。
  136. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) 御同感でございまして、大体特に中小企業者におきましては、異議申し立ての機会あるいは無効審判の請求の機会を逸することが多いと思います。言いかえれば、いつどんな特許が生れているかということについて無関心ないしはそういうものについて調査しようという意欲、努力が十分でないというのが実情であろうかと存じますので、仰せの通りこういう事態を改善します方法としましては、中小企業等協同組合、そういう業種別団体がもう少し担当者を強化して参りますとか、あるいは発明協会のような民間団体が従来やって参りました相談業務といいますか、そういうものを拡大しますとか、あるいは公報の普及について一そう徹底を期するとか、そういうようなことをいろいろ方法を講じて参りたいと考えております。
  137. 小幡治和

    ○小幡治和君 もう時間もありませんので一応これで中止いたします。
  138. 上原正吉

    ○理事(上原正吉君) 本日の委員会はこれにて散会いたします。    午後四時五十五分散会