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1959-03-03 第31回国会 参議院 商工委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月三日(火曜日)    午前十一時三十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     田畑 金光君    理事            上原 正吉君            小幡 治和君            島   清君    委員            木島 虎藏君            鈴木 万平君            高橋進太郎君            堀本 宜実君            阿具根 登君            阿部 竹松君            栗山 良夫君            岸  良一君            豊田 雅孝君   国務大臣    通商産業大臣  高碕達之助君   政府委員    人事院事務総局    給与局長    瀧本 忠男君    行政管理庁行政    管理局長    岡部 史郎君    通商産業政務次    官       中川 俊思君    通商産業省通商    局長      松尾泰一郎君    通商産業省企業    局長      松尾 金藏君    通商産業省重工    業局長     小出 榮一君    通商産業省繊維    局長      今井 善衞君    通商産業省鉱山    局長      福井 政男君    特許庁長官   井上 尚一君    特許庁総務部長 伊藤 繁樹君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   説明員    行政管理庁行政    監察局監察審議    官       井之上理吉君   —————————————   本日の会議に付した案件特許法案内閣提出) ○特許法施行法案内閣提出) ○実用新案法案内閣提出) ○実用新案法施行法案内閣提出) ○意匠法案内閣提出) ○意匠法施行法案内閣提出) ○特許法等の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○商標法案内閣提出) ○商標法施行法案内閣提出) ○特許法等施行に伴う関係法令の整  理に関する法律案内閣提出) ○工場立地調査等に関する法律案  (内閣提出) ○航空機工業振興法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○石油資源開発株式会社法の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送  付) ○繊維工業設備臨時措置法の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送  付) ○特定物資輸入臨時措置法の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送  付) ○プラント類輸出促進臨時措置法案  (内閣提出衆議院送付) ○軽機械輸出振興に関する法律案  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 田畑金光

    委員長田畑金光君) これより商工委員会開会いたします。  まず、特許法案ほか九件を一括して議題といたします。  これより本案の取扱いについて協議をいたすため、懇談に入ります。    午前十一時三十二分懇談会に移る    ——————————    午後一時一分懇談会を終る
  3. 田畑金光

    委員長田畑金光君) それでは懇談会を閉じます。午後二時まで休憩いたします。    午後一時二分休憩    ——————————    午後二時四十七分開会
  4. 田畑金光

    委員長田畑金光君) これより委員会を再開いたします。  工場立地調査等に関する法律案議題といたします。  本案は、去る二月二十六日質疑が終局いたしておりますので、これより本案討論に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 御異議ないと認め、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  6. 栗山良夫

    栗山良夫君 私は、ただいま案件になっておりまする工場立地調査等に関する法律案に対しまして、一応賛成をいたしたいと思います。一応という言葉を使いましたのは、わが国産業振興上マイナスになる法律案ではないと思いまするが、といって、非常に有益な内容を持った法案であるとも考えられないために、そういう意味の表現を用いたのであります。  そこで、あとで若干意見を申し述べたいと思いますが、さらに政府当局が、私がただいま意見として述べました点に深くおもんばかりをされまして、将来一段と工場立地の問題について積極的な施策をせられんことを期待して、付帯決議案提案いたしたいと思うのであります。同僚委員諸君の御賛成を得まして決議案成立いたしますように、切にお願いをいたしたいといたしますると、一方今後の工場には工業用水あるいは運輸、港湾その他いろいろな諸条件が整わなければなりませんが、とにもかくにも新しい工場地帯を造成し、そこに工場地帯としてのいろいろな施設を作り上げていく、こういうことでなければなりませんので、やはり国といたしましては、そういう方針というものを確定することがまず第一だと思います。そしてそのためにまあおそらく民間の個々の企業がそういう大きな仕事に取り組むことは至難であろうと思いまするから、国が政策として推進をしていかなければならぬと思うのであります。そういう考え方からいたしまするというと、ただいま案件になっておりまする法案というのは、今まで通産省が中心になってやられました工場立地調査事務というものを若干審議会中心にして法制化されたというのにすぎないわけであります。最も重要である工場立地開発公団という構想があったことは承知しておりますが、それのごときは予算がつかないという理由で、今国会には提出になっておりません。従って政府の意図せられておることがどの程度真剣性があるかということも、私どもはまだ十分わからないのであります。従いまして私としましては、ただいま申し述べましたような主張の下に政府が十分な配慮を将来にわたってせられんことを心から期待をいたしたいと思うのであります。特にこの付帯決議案の立案に当りまして、中小企業の問題が論ぜられたのでありますが、ただいま中小企業が大企業の圧迫あるいは資本力の劣弱、その他大企業と対抗し得ないようないろいろな劣勢な状態にありまするために、四苦八苦しておるのは御承知通りであります。そしてそのために政府を初め各政党においても中小企業の問題を口にいたしておりますが、なかなか今日まで政府施策ではほんとうに中小企業振興させるという効果を上げ得ない立場にあります。分けても中小企業企業意欲にかられまして新らしい工場のためにその土地を求めていくというような場合には、なかなか大企業等と違いまして異なった困難がまたあるわけであります。従ってそういう、工場立地の問題を処理せられる場合においても、中小企業に対してはより以上慎重な配慮、そして処置を加えて善処せられたいというのが、この決議案の中にも盛られておるわけであります。  以上きわめて簡単でありますが、決議案提案趣旨に合せまして本法案に対する賛成討論にかえたわけであります。
  7. 小幡治和

    小幡治和君 私も大体工場立地法律については、委員会における質疑応答を通じて賛成いたす次第でありますが、今の栗山委員付帯決議につきましても、この法律に盛ってある問題以上に受けて立つというか、工場から世話してくれと言われて世話するということ以上に、政府として全国的にこれを眺めて工場立地総合計画というようなものを立てて、そしてむしろ積極的に指導するという面も合せて考えていただきたいという趣旨と、それからもう一つは大工場だけを世話するのじゃなくして、やはり中小規模中小工場というものが調査能力もなくてうろうろしている、こういう人たちに対して、こういう場所にこういういいところがあって、こういういい条件もあるのだということを親切に一つお世話してあげていただきたいというふうな面も一つ希望いたしまして、この法律案賛成いたしますとともに、この付帯決議にも賛成いたす次第であります。
  8. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 他に御発言はございませんか。なければ討論を終局し採決に入り ます。  本案賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  9. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 全会一致と認めます。よって本案全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。  次に、先ほどの栗山君の討論中にありました付帯決議案議題といたします。  栗山提出付帯決議案を本委員会決議とすることに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  10. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 全会一致と認めます。よって、栗山提出付帯決議全会一致をもって本委員会決議とすることに決定いたしました。  なお、本会議における口頭報告内容、議長に提出する報告書作成等は慣例により委員長に御一任を願います。
  11. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいま工場立地調査等に関する法律案は皆様の御熱意によりまして、本日可決されましたことをまことに感謝いたしております。同時に、これに対する付帯決議案につきましても、政府といたしましては十分御趣旨をそんたくいたしまして、これが実現に努めたいと思います。ありがとうございました。   —————————————
  12. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 次に、航空機工業振興法の一部を改正する法律案石油資源開発株式会社法の一部を改正する法律案繊維工業設備臨時措置法の一部を改正する法律案特定物資輸入臨時措置法の一部を改正する法律案及びプラント類輸出促進臨時措置法案を便宜一括して議題といたします。  これより提案理由説明を願います。
  13. 中川俊思

    政府委員中川俊思君) 今回提出いたしました航空機工業振興法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び法律案要旨について御説明申し上げます。  航空機工業振興法は、昭和三十三年五月に制定されましたが、この法律は、輸送用航空機等国産化促進するための措置を講ずることにより、航空機工業振興をはかり、あわせて産業技術向上及び国際収支改善に寄与することを目的としたものであることは、御承知通りであります。  この法律施行以来、すでに一年近くを経過いたしましたが、この間、同法に基いて設置された航空機工業審議会において、中型輸送機国産化促進方策について調査審議した結果を参考とし、その具体的措置として、官民共同出資による特殊会社日本航空機製造株式会社を設立し、木会社中型輸送機その他輸送用航空機国産化促進のための中核体とすることを目的として、今回法律改正しようとするものであります。  中型輸送機国産化につきましては、昭和三十二年度以来、財団法人輸送機設計研究協会中心となり、昭和三十二年度三千五百万円、昭和三十三年度一億二千万円の政府補助金の交付を受けて、YS—一一型の設計研究を進めて参っておりますが、このたび設立されようとしている会社は、この研究を実質的に引き継ぎ、YS—一一型の設計試作等を行い、試作機完成後はさらに、量産、販売を行うことといたしております。このための予算的裏づけといたしましては、昭和三十四年度においては、本会社に対する政府出資金三億円、政府補助金六千万円が計上される予定になっております。  次に本法律案要旨を御説明申し上げます。  第一には、本法律により日本航空機製造株式会社を設立することとし、本会社は、輸送用航空機設計試作製造その他輸送用航空機国産化促進するため必要な事業を行うことを目的とするものといたしました。  第二には、政府は、予算の範囲内で、本会社に対して出資することができることとし、その特殊会社としての性格を明らかにいたしました。  第三には、会社社債発行について、その発行限度を商法に規定する制限の二倍まで認めることとし、また会社成立後五年間に支出した輸送用航空機設計試作及び試験の費用を繰り延べ経理することを認めるとともに、成立後五年間は利益配当制限をすることといたしました。  第四には、特殊会社としての性格上、会社の取締役の選任等決議通商産業大臣の認可にかからしめたほか、会社財務等について所要の監督を行うことといたしました。  以上、本法律案提案理由並びにその内容概要について御説明申し上げました。何とぞ慎重御審議の上、御賛同あらんことを切望する次第であります。  本日ここに、御審議を願います石油資源開発株式会社法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  第二十二国会におきまして石油資源開発株式会社法が制定され、同法に基き昭和三十年十二月石油資源開発株式会社が設立されたのでありますが、現在までに三年余りの年月を経過いたしまして、この間、同社探鉱活動も着々進められ、その成果も次第に現われて参りました。  しかしながら、同社資本金調達にもおのずから限度があり、しかも、この限られた資本金はあげて同社探鉱部門に投入されることになっておりますので、同社探鉱の結果発見いたしました油田の開発に必要な資金調達は、もっぱら銀行融資その他の借入金に依存せざるを得ない実情にありますが、現状では今後における開発資金調達についての困難等が予想されるに至りました。  このような事態に対処いたしますために、同社債務について政府保証することができるよう措置する等の必要が生じましたので、ここに石油資源開発株式会社法の一部を改正する法律案提出いたしました次第であります。  この法律改正点の第一は、先ほども若干触れましたが、石油資源開発株式会社債務について、政府保証をすることができる旨の規定を新しく設けることであります。なお、この点に関しましては、石油資源開発株式会社法が制定されました第二十二国会におきまして、政府債務保証について、必要に応じて可及的すみやかに所要措置を講ずるよう付帯決議がなされております。第二は、石油鉱業権評価審査会の廃止であります。石油資源開発株式会社は、設立時に帝国石油株式会社から、一時に多くの鉱業権を譲り受けることになっていたのでありますが、その際の評価を適正ならしめるため、臨時石油鉱業権評価審査会が設けられたのであります。しかし、同審査会は、現在すでにその使命を終了いたしておりますので、今回これを廃止することといたしました次第であります。  以上がこの法律案提案理由及び内容の概略であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同あらんことを切望いたす次第であります。  ただいま提案されました繊維工業設備臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  現行繊維工業設備臨時措置法は、昭和三十一年六月に公布され、同年十月より施行されて今日に至っております。  御承知通り、最近におけるわが国繊維産業は、国内経済の動向及び輸出不振の影響を受けまして需給均衡を失い長期にわたって不況状態を呈し、一部を除いて高率操業短縮を余儀なくされておりますが、これは繊維産業のみならず、関連産業にも悪影響を与え、国民経済の広範囲に由々しい事態を招来してきております。  政府といたしましては、昨年八月に繊維不況打開のための重点施策につきまして閣議決定を行い、鋭意これの実施努力いたすとともに、また、十月以降業界人学識経験者労働者代表等よりなる繊維総合対策懇談会を設け、繊維産業不況打開並びに長期的再建対策の樹立につきまして、総合的見地から種々審議を重ねて参りましたが、その審議の結果を尊重し、政府は、現行繊維工業設備臨時措置法改正による化学繊維製造設備調整の必要を認め、その線に沿って検討をいたしました上ここに成案を得ましたので、繊維工業設備臨時措置法の一部を改正する法律案として上程いたすこととなった次第であります。  本改正法案は、現在四、五割に及ぶ高率操業短縮を継続している人絹糸スフ綿製造設備登録制対象に追加し、もって輸出適当競争改善をはかり、あわせて操業度向上による輸出価格の低減および安定を期待し、また、合成繊維につきましても同様の登録制実施することにより、繊維製品全体の需給を勘案しつつ、その計画的伸長をはかることにより他の繊維部門のごとき設備過剰状態と、これによる輸出秩序の混乱を防止しようとするものであります。  次に、改正主要点につきまして御説明いたします。  第一は、科学繊維製造設備登録制実施であります。  現行繊維工業設備臨時措置法におきましては、精紡機及び織物幅出機について登録制実施されておりますが、前述の理由によって化学繊維設備規制が必要でありますので、今回精紡機及び織物幅出機と同様に、化学繊維製造設備のうち主要な機械である紡糸機登録制対象に追加しようとするものであります。  なお、既存設備は当然に登録をいたしますが、新規登録につきましては、繊維工業設備審議会意見を聴取して、目標年度繊維製品需給を参酌して、設備不足である場合にはその不足設備について、設備新規登録を認めていくものであります。  第二は、新規登録の場合における処理設備の優先であります。  政府といたしましては、需給調整をはかり、市況の安定を期するため現行法規定により、過剰設備格納等指示をいたす予定でありますが、過剰設備処理を円滑ならしめるために、政府指示に基いて、廃棄、格納等により処理された繊維工業設備につきましては、新規登録の場合に優先的に登録を認めようとするものであります。  第一は、仮登録事項変更であります。  新規登録を受ける際には、まず仮登録を受けなければなりませんが、現行繊維工業設備臨時措置法では、仮登録段階において、機械の種類、設置場所等変更は認められないため実務上支障をきたしておりますので、これらの変更も認めようとするものであります。  第四は、目標年度変更であります。  現行繊維工業設備臨時措置法におきましては、繊維工業設備の新増設を認め、あるいは過剰設備処理をはかるための需給見通し目標年度は、昭和三十五年度となっておりますが、計画的に設備調整をはかるためには、ある程度長期を見通す必要があり、特に、新たに設備調整対象となります化学繊維につきましては計画的伸長が望まれますので、本法の目標年度を二年延長し昭和三十七年度に変更しようとするものであります。  以上が改正主要点でありまして、各案につきましては、今後御審議の過程を通じ詳細に御説明申し上げるつもりでありますが、このたびの改正は、繊維製品の正常な輸出の発展に寄与するため、繊維工業設備に関する規制を行うことによって、繊維工業合理化をはかるためにぜひ必要なものと考えられます。  何とぞ慎重に御審議の上すみやかに可決あらんことを切望いたします次第であります。  特定物資輸入臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  わが国国際収支は、その改善への努力が結実して、最近、かなりな程度改善を見ましたが、わが国経済構造からみれば、なお、当分の間は外貨資金割当制度を存続する必要がある実情でございます。  この場合、不要不急物資につきましては、引き続き輸入数量制限されること等により、わが国における需給の不均衡が生じ、これら物資を輸入すれば、通常の利益以上の利益が反射的に生じてくるものと思われるのであります。  すなわち、現在、特定物資に指定されておりますバナナ、パイナップルカン詰、腕時計、筋子、コンニャクイモにつきましては、なお、当分の問輸入によって通常生ずる利益をこえて異常な利益を生ずると予想されますので、引き続き特定物資輸入臨時措置法に基いて輸入することが適当であると考えられるのであります。  また、これらの物資以外の物資につきましても、必要な際には、そのつど、政令により特定物資に指定し、よって法の弾力的運用をはかりたい所存であります。  しかしながら、特定物資輸入臨時措置法は、三年間の限時法でありまして、昭和二十四年六月四日限りで失効することになっております。  従いまして、政府としてはこの際、特定物資輸入臨時措置法有効期間を六年に改めて昭和三十四年度以降も存続させることといたしたく、ここに本法案提案いたした次第であります。  以上が本法案提案理由およびその概要でありますが、なにとぞ慎重御審議の上、可決せられるようお願い申し上げる次第であります。  ただいま上程されましたブラント類輸出促進臨時措置法案についてその提案理由説明いたします。  戦後における世界の貿易構造東電アジアを初めとする低開発諸国開発計画の進展に伴い、重化学工業品輸出重点が移りつつあることは、御承知通りであります。このような情勢に即応して、今後わが国貿易規模を拡大するために最も有力なものは、プラント類輸出であると確信する次第であります。すなわちプラント類輸出は、一件当りの契約規模が巨額であること、技術輸出を伴うものとして、外貨手取率附加価値率ともにきわめて高いこと、相手国に与える経済協力効果市場開拓効果がきわめて大きいこと等の理由から、その意義はきわめて重要であります。  このようなプラント輸出重要性にかんがみ、政府はすでに日本輸出入銀行による協調融資輸出保険制度運用租税特別措置法による輸出所得の控除、延払条件緩和等措置を講じ、プラント輸出促進努力を傾注してきたのであります。  それにもかかわらず、わが国プラント輸出の比率は米、英、西独等に比しなおきわめて低い現状であります。  このようなプラント輸出不振の原因は、日本コンサルティング体制が弱体であるため、相手側から過大な保証条件を要求される場合が多く、そのリスクのために契約をちゅうちょする例がきわめて多いこと、及び生産能力性能等保証と、これに伴う違約金支払についての保証リスクを、コストの中に算入するため、国際競争上不利となる結果を招いていることによるものであります。  この法律案の骨子は、以上申し述べましたようなわが国プラント輸出体制根本的弱点を是正するため、プラント類輸出に伴う保証損失を補償する制度を確立せんとするものであります。  すなわち、輸出者が海外における工場等の建設、設備輸出あるいはこれらについてのコンサルティングを行う場合、政府保証損失補償契約を締結し、所定の補償料を国庫に納入することによって、輸出者の負担すべき保証損失のうち、いわゆるコンサルティングの欠陥に基く保証損失一定割合を、政府が補償しようというものであります。  また、この制度運営は、高度の技術を要しますので、業務の一部を適当な機関に委託し得ることとし、本制度の円滑な運営に遺憾なきを期したい所存であります。  なお、本制度実施に伴う予算措置といたしましては、昭和三十四年度一般会計予算案におきまして、予算総則に、政府保証損失補償契約を締結できる補償金額の総額の限度を六十億円と定めるとともに、支払補償金として百万円、業務委託費として百万円をとりあえず計上しております。これによって昭和三十四年度におきましては、約四百億円に上るプラント類輸出にかかる補償契約の締結が可能となる見込みであります。  本法律案は、わが国プラント輸出体制を急速に確立するため、一応四年間の限時法といたしております。  繰り返して申し上げるまでもなく、プラント類輸出伸長こそ、今後におけるわが国貿易規模拡大のかぎであります。このような事情をおくみ取りの上、何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
  14. 田畑金光

    委員長田畑金光君) ただいま説明のありました諸法案に対する質疑は後日に譲ります。  ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  15. 田畑金光

  16. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 軽機械輸出振興に関する法律案議題といたします。本案は、去る二月三日、衆議院より修正議決されて送付されたものであります。これより本案内容説明を求めます。
  17. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) それでは軽機械輸出振興に関する法律案につきまして、先般提案理由の御説明は申し上げたわけでございまするが、さらにその内容につきまして、やや詳細に御説明を申し上げたいと思います。  この法律案は、要するに、いわゆる軽機械輸出振興をはかるということがその終局の目的でございます。そこで、いわゆる軽機械というものの範囲でございまするが、これにつきましては、いろいろな定義があろうかと思いますけれども、普通、機械を重機械、軽機械というふうに分かちました場合におきましては、一般的に軽機械といわれておりますものは、小型であり、かつ、軽量の機械でございまして、たとえばカメラとか双眼鏡、ミシン、時計、トランジスター・ラジオというふうに、その種類はきわめてたくさんあるわけでございます。そこで、これらのいわゆる軽機械というものの輸出振興を、この際強力に促進しなければならないという一般的な情勢につきましてまず御認識をお願いしたいと思うのでありまするが、御承知のように、日本輸出貿易の構造から申しまして、漸次日本の対外輸出重点は、過去の、特に戦前等においては繊維中心でございましたけれども、漸次重化学工業品にその重点が置かれつつあります。鉄鋼あるいは鉄鋼製品、機械関係というようなところに重点が移りつつありまして、将来の経済第二次五カ年計画の目標等におきましても、将来は機械輸出ということに相当の重点を置かなければならないという情勢になってきておるわけであります。そこで、この機械輸出の中におきまして、特にこの怪機械類というものは、御承知通り、現在非常に輸出品といたしまして重要でありますると同時に、またその輸出のホープといたしまして、現在その輸出の実績というものは着々上りつつあるのであります。たとえば資料として差し上げてあるかと思うのでありますが、ミシンにいたしましても、カメラにいたしましても、あるいは双眼鏡その他ラジオというふうな軽機械輸出額は、昭和三十二年におきまして、ミシンが四千七百万ドル、望遠鏡が一千三百万ドルというような状況でございましていわゆる軽機械輸出額全般を合計いたしますと、一億ドルに達するのでありまして、機械輸出全体の中で、船舶の占める額は、これはもちろん一件当りの金額が大きいわけでございまするので、巨額でございまするが、その船舶を除きました全機械輸出の三割、三〇%というものは軽機械輸出に依存しておる、こういうような状況であり、しかもそれが年々ますます増大する傾向にあります。しかも輸出をいたしまする相手国、仕向国が、その重点が主としてアメリカを中心といたしまする先進国、ドル地域が多いのでございまして、従って外貨収支の面におきましても、ドルの獲得という点におきまして、軽機械の果しておりまする役割は、きわめて重要でございます。その軽機械の中で、ミシンと双眼鏡につきまして申し上げますれば、アメリカに対しまするミシン、アメリカの方からみましての輸入でございまするが、これは日本から輸入するのが一番多いのでございまして、第一位が日本の千三百万ドル、第二位がドイツでございますが、ドイツは約その半分の六百万ドルというふうな状況でございまして、断然日本のミシンの進出が優位を示しておるわけでございます。双眼鏡につきましても、従来日本と競争相手でございました西ドイツ、これをついに凌駕いたしまして、アメリカにおきまする輸入の九〇%以上が日本からの輸入である、こういうふうな状況になってきておるのであります。で、こういうふうに軽機械輸出そのものは、実績といたしましては非常に伸長を示しておるのでございまするが、こういうふうに軽機械輸出が非常に伸びております原因というのは、一つにはこの軽機械製造というものが日本人にきわめて適した、いわゆる中小企業、手工業、手を用いまして組み立てをいたすアッセンブル形態であるというなことでございまして、従いまして、非常にその点におきまして、手先の器用な日本人といたしましては、対外競争力の面におきまして、本質的に非常に日本人に適した製品である。従って、その面から申しましても、本来非常に強い国際競争力を持っておるわけでございます。  従いまして、そういうふうな、本来その品質の面におきましても、またコストの面におきましても、非常に強い競争力を持っておりまする関係上、軽機械輸出というものは、本来放っておいても非常に伸びるわけでございます。ところが、その実態を見ますといえと、確かに輸出額は相当に伸びており、輸出量も相当に伸長をいたしてはおりまするけれども、実際に伸びておりまする輸出に比べまして、その輸出金額の面におきましては、総体的に漸次不利な状況になりつつあるのであります。と申しまするのは、結局輸出価格の面におきまして、もっと高い輸出価格でもって輸出ができるべきものであるにもかかわらず、その中間におけるバイヤーその他の面に利潤を吸収されるとか、あるいは価格を買いたたかれるというような結果、漸次輸出価格が低下しつつあるのでありまして、従って日本から輸出いたしました価格、それが相当の利潤によってアメリカ国内において小売価格として売り出されておる実態を見ましても、これが西ドイツの同じ品質同士の製品に比べますというと、非常に安い価格で売られておる。従いまして、国際競争の面におきまして、たとえば競争相手である西ドイツその他の製品と同等の品質の製品を同じくらいの価格まで持っていくには、まだ相当高く売っても十分売れる、こういうふうな余地があるわけでございます。その実態を申し上げますると、たとえば昭和二十三年ごろには、双眼鏡が、標準的な双眼鏡の例で申し上げますれば、アメリカに対しまして二十三ドルで売れておった。それが二十七年には十四ドルになり、三十一年には九ドルになり、最近では八ドルというふうな、きわめて安い価格で買い取られておる、こういうふうな実態でございます。    〔委員長退席、理事島清君着席〕 ミシンの場合といたしましても、昭和二十三年には二十二ドル半で輸出いたしておりましたものが、最近では十四ドルあるいはそれ以下というふうな状況でございまして、わが国のこういった輸出機械のFOB価格と外国市場価格との開きは、二倍ないし五倍といわれておりまして、いたずらに国内における過当競争の結果、中間のバイヤーその他の利潤のみが増大しておる、こういうふうな状況であり、ミシンの場合で申しますれば、十四ドルで輸出されましたものが、アメリカの小売価格では五十ドル、双眼鏡の場合は、八ドルで輸出されたものが二十ドルで売られておる。しかもそれだけの小売価格であっても、なおかつ競争相手である西独等のものに比べれば、非常に安い、こういうふうな状況であります。  それでは、なぜこういうふうに、本来ならばもっともっとドルをかせぐことができるはずである軽機械がもっと得べかりしドルを逆に失っている、こういうふうな結果になっておりますが、こういうふうな実態になっておりまするその原因でございます。原因はどういうところにあるかということを見ますると、結局は国内におけるその製造業あるいは輸出商社の実態というものからくるわけでございまして、シンとか双眼鏡というふうな業界におきましては、主として中小企業による非常に経営基盤の弱体な、家族労働を中心とする企業でございます。従ってこれらの小企業、零細企業におきましては、海外における市場の実態、実際に自分のところで作った品物がどういう方面に売れるのかというふうな、そういう海外のマーケットの実態を把握することはほとんど不可能であり、また海外に対して日本の製品それ自体を十分に宣伝するところの道も開かれていないという状況でございます。従いまして結局中間におけるバイヤー等の買いたたきによりましていわゆるめくら貿易という結果になっておることがその根本的な原因でございます。そこでこういうふうな同じく軽機械と申しましても、先ほど最初に申し上げましたようにカメラあるいはラジオその他いろいろございまするが、それらの中で特にそういうふうな弊害を痛感せられまするものがミシンと双眼鏡と、この二つの業界でございます。従いまして今回御提案申し上げました法律におきましては、その別表におきましてただいまこの家庭用、シンと双眼鏡という二つの品目を法律において指定をいたしまして、この法律の別表において指定をいたしました品目につきまして特に今回の輸出振興措置をとりたい、こういうことが終局のねらいであります。そういうような実態を背景といたしましてここに新たに特別の輸出振興措置をとろうというのがこの法律内容でございます。  そこで以下それではどういうふうな内容によりましてこの輸出振興措置をとるかという点でございまするが、これは要するに大きく分けまして二つの点にねらいがあるのでございまして、第一は登録制度、製造業者の登録制度を採用するということであり、第二は輸出振興措置を行いまするために輸出振興事業協会という特別の法人を設立する、この二つが要するにこの法律の主眼でございます。  そこでまず第一にその第一の主眼でございまする登録制度につきましては、第二章の第三条以下の「登録」という項に書いてございます。これは要するに軽機械または軽機械部品の製造事業を行おうとする者はその製造事業場ごとに通産大臣の登録を受けることができる、こういう趣旨規定で、登録制度をしこうということでございます。それではなぜこの軽機械製造業につきまして登録制度が必要であるかということでございますが、品質の向上ということがその第一のねらいでございます。もちろん先ほども申し上げましたように、日本の商品は、日本人のこの技術的な特性から申しまして、品質的にはきわめて優秀ではございまするけれども、しかし将来ますます国際競争が激化いたしまする中におきまして輸出振興いたしまするためには、いやが上にも品質の向上を常に怠らずにやる必要があるのでございまして、結局先ほど申しましたように中間のバイヤー等の買いたたきによりましてたたかれますと、結局安かろう悪かろうということに、品質を低下しなければコストを割るというぎりぎりまで追いつめられるおそれがあるのであります。従いましてどうしても品質の向上のためには不断の努力を払う必要があるのであります。もちろん品質の向上のためには輸出品の検査制度というものがございますけれどもしかしこれは要するに不良品を排除し得るという程度の消極的な一つの手段でございまして積極的に品質を向上するということのためには、やはり一定の品質の基準というものを設定いたしまして、その基準に合致するような製造をなし得るものをもって登録業者とし、そしてその基準を漸次高めて品質の向上に資していく、こういうふうにやっていくことが必要であろうと思うのであります。そういうような意味におきまして、最小限度の要件を一応定めまして、その登録基準に定められた、これは通産省令で定める予定でございますが、業界の実情に即するように十分配意をしながらその基準を設けまして、その基準に合うような業者を育成していくという趣旨が第一点でございます。  それからこういった品質向上のねらいが登録制度の第一のねらいでございますが、第二のねらいはこの登録制度によって業界の安定をはかろうということでございます。中小企業であると同時に、こういった軽機械数はいわゆるアセンブル、組立業でございまして、部品はそれぞれ別に専門メーカーが製造いた、しましてこれを組立てるということが主眼でございまするので、従ってほとんど設備らしい設備は必要としない。極端な場合におきましては、ドライバー一木あれば開業できるという簡単なものでございまするだけに、従って非常に業者が乱立するおそれがございます。すでにまたそういう実績を持っておるわけでございまして、当然に過当競争ということになるのであります。この過当競争を排除いたしますためには、もちろんすでに既存の制度といたしまして中小企業団体法というような法律がございましてこれの運用によって相当程度にその効果をあげ得るのでございますが、ただ最終的に新規の開業を抑制する、そして業界の安定をはかるという手段といたしましては、御承知のように中小企業団作法におきましては、設備制限命令という方法はございまするけれども、先ほど申し上げましたように、こういうセンブル業界におきましては設備制限することは全然無意味でございまして、設備そのものといたしましてはほとんど設備らしいものはございません。従って中核になるような設備を押え得ない。従ってこれにかわるべき措置といたしましては、やはり登録制度の運用によりまして、非常に業界の乱立、過当競争が極端な事態に立ち至りました場合におきましては、場合によりましては登録の停止という方法によりまして一時的にそういった新規開業を抑制するというような措置をとり得る道を開いておこうというのがこの登録制度の第二のねらいでありまして、これがやはり業界の安定ということを終局の目標といたしておりまする登録制度の第二のねらいでございます。  以上のことがこの第二章の登録に関する問題でございまして、具体的な登録基準その他の手続き等につきましては通産省令その他において定めるということがそれぞれの各条に書いてあるわけであります。あとは登録簿であるとか、登録証の交付だとか、あるいは変更届出というような手続的な規定がそれぞれ条文に書いてあるわけであります。  そこで次に、この軽機械輸出振興法案の第三の骨子でございまする輸出振興事業協会の問題でございます。これは第三章、二十四条以下にその規定が掲げてあるわけであります。これは輸出振興事業協会という一つの法人をそれぞれの業種ごとにと申しますのは、ミシンでありますればミシン協会を全国に一つ、それから双眼鏡でございますれば双眼鏡の輸出振興事業協会というのを一つ、そういう法人をそれぞれの業種別に設立をし事業を行うということがねらいでございます。そこでそれではその輸出振興事業協会というのはいかなる目的で何をするために作るかということでございまするが、これは先ほど来申し上げておりまするように輸出振興輸出は確かに振興はいたしておりまするけれども、その実態を見まするというと、結局は零細企業の海外に対するPRあるいは海外に対する市場の調査、実態把握というような点においてその手段がございません。従いましてそういった輸出振興目的に即応するための中核機関といたしまして新たにこういう協会を設立し、そして業界が全部平等の負担のもとに、全体が一緒になりましてメーカー自身の製品の輸出振興への対外的なつながりを持とうというのがこの協会の目的でございます。従ってその協会の行います事業といたしましてはそれぞれの製品に関しまする海外市場調査、宣伝あるいはアフターサービス、品質向上に関しまする試験、研究、指導、そういうような事業でございます。そこでこの海外市場の調査、宣伝、アフターサービス業務というような問題は、要するに海外市場における需要の動向、価格の状況を正確にかつ迅速に把握する。そうして日本の品物の実態を海外市場にほんとうの意味において認識せしめるということと同時に、輸出を済ませました商品につきましてそのアフター・サービスを十分徹底してやるということでありまして、これらはもちろん輸出業者といたしましても、そういう活動を当然やるべきでございますけれども、しかし輸出業者の行いまする活動というものは、むしろ相手国の輸入商社というものを対象といたしまして、これに対するマーケッティングに主力を注がれております。ところが最近の貿易の実態というものは軽機械に限らずすべて製品の最終の需要者アメリカにおいて実際に消費いたしまする最終のユーザーというものの動向を把握しなければ、需要分野の開拓なりその需要にマッチした製品というものはできないということでありまして、そういう意味においてマーケッティング活動をやってもらうということでございます。ところがそれにはやはり製造業者自体がそういうマーケッティング活動をしなければ、商社まかせではできないというのが実態でございまするが、ところが、シンなり双眼鏡の業界というのは、先ほど来申し上げておりますように、非常に零細でありかつ非常に多数の中小企業でありまして、自分自身のところでマーケッティングをするということは、これは不可能でございます。そこでこれにかわりまして一つの中核機関として業界全体が共同して一つの法人を設立し、それが業界にかわりましてそういった活動を行う、スイスにおける時計会議所というふうな運営をしていきたいということでございます。その業務につきましてはもちろん御承知通り日本貿易振興会1ジェトロというようなもの、あるいは輸出組合というようなものと十分協力し、特定の事業についてはジェトロに委託してこれを行なっていこうということでございます。  それからこの協会の第二の事業でございまする試験研究あるいは指導業務ということは今申しました海外に対するいろいろのPRの基礎といたしまして、それにマッチするような品質のいいものを絶えず研究し、指導をしていくというための必要な研究機関を整備し、またそれに必要な資金の確保等のあっせんをするということでございます。こういうような事業が主眼でございまして、そのほかに当面考えられまするものとしましては意匠、商標の保護であるとかあるいは外国の意匠、商標の盗用の防止であるとかいうような弊害を矯正するような事柄、それから場合によりましては、工業組合が現在できておりますが、その工業組合が協定によって特定の買い取り機関を経由して輸出をするというようなことを定めました場合には、その買い取り機関としての機能をこの協会が果すというようなこともやり得るということを考えておるわけであります。  こういうような目的をもちまして輸出振興事業協会を設立するわけでありますが、協会にはそれだけの活動をするための資金が必要でございまするが、これにつきましては負担金の徴収という制度を置いておるのであります。この負担金の徴収に関する規定は第四十九条にあるのでございまするが、これは要するに今申しましたような海外のマーケッティング、品質の向上ということは、業界全体の共同の利益になることであり、また業界全体として要望されておることでございまするので、しかもそれが全然不公平でない、公正に、いな平等な負担のもとに資金を集めていくという態勢ができることが最も望ましいことでございますが、そのための負担金の徴収ということを一定の基準によって行うということであります。これに対してはさらに政府からもある程度、協会に対する補助金も予算的に措置いたしておりまして、来年度の予算要求の中に、ジェトロの予算の中に特別のワクを設けまして、ミシン、双眼鏡の輸出振興事業協会のための補助金をそれぞれ一千万円計上しているわけでございます。  こういうようなことによりまして、協会の事業を行うわけでありますが、問題は協会の組織、運営の問題がさらにあるわけでございます。そこで協会の組織といたしましては、これは工業組合あるいは輸出組合というふうないわゆる団体ではございませんで、一つの事業機能を営みます単独の法人でございまして、従ってそういうような意味におきまして一種の特殊法人として設立をいたしました。それは負担金の徴収を登録業者全部から取るというようなこと、場合によっては一手買い取りという機能を営むというような意味におきまして、普通の団体あるいは従来の機関と異なった機能を持つ特殊の機能法人という形をとりました。運営につきましてはさらにできるだけ民主的な運営をはかっていくということで、運営中心は、役員と総代会と評議員会、この三つが中核になっておりますが、総代会は軽機械の組み立て業者から選挙で選びまして、そして負担金の使途の決定というふうなことを民主的に行う。評議員は会長指名の相談役という意味で広く学識経験者の中からこれを選ぶ、役員は実施機関になります。こういうふうな形をとっているのでございます。  こういうふうな内容によりまして輸出振興事業協会を設立し、そして別表に定めてあります品目につきましては、輸出振興事業協会の活動によってあるいは登録制度の実施によって軽機械輸出振興をはかろうということでございまして、とりあえず家庭用ミシンあるいは双眼鏡ということでございますが、もし同じような必要を生じました業態につきましては、さらに品目を追加することができるわけでございます。あるいは品目を削ることもできるわけでございます。しかしこれはすべて法律改正をしなければできない、行政官庁で勝手にこれを政令の改正等によってできないように、この法律において別表に特に規定したわけでございます。  以上がこの法律案内容でございますが、この際あわせて衆議院におきまして修正せられました点につきまして、便宜私から御報告をさせていただきたいと思います。  衆議院におきまして修正と付帯決議がございました。修正は実態的には付則の点でございまして、付則の条文の整理の点は別といたしまして、付則の第二条に「廃止」という規定がありまして、「この法律は、施行の日から五年以内に廃止するものとする。」こういう修正が行われました。  それからこれに関連いたしまして付帯決議がつけられました。その全文を読み上げます。  政府は、本法の立法の趣旨にかんがみその運営を民主的に行うとともに特に左の点に留意すべきである。  一、輸出振興事業協会に対し、その目的達成に必要な財政上、金融上特別の措置を講ずること。  二、登録の基準を定めるに際しては、関係者の意見を充分尊重して決定すること。  三、本法の施行により、関係車業の従業員の整理、労働の強化と賃金の低下を来さないよう、厳重に指導監督すること。 こういう付帯決議がつきました。この衆議院における修正と付帯決議が行われましたその経緯及びその理由内容等につきまして簡単に御報告申し上げまするが、衆議院におきまする審議の経過は、速記録等におきまして、十分御承知いただけると思うのでございまするが、このミシン、双眼鏡の業界の中で、双眼鏡につきまして業界の一部にこの法案に対する反対運動が昨年の暮れあたりから突然表一面に出て参りました。それらの関係もございまして、業界の実態を十分に把握し、かつその業界の実情に合うような趣旨においていろいろ議論がかわされたのでありますが、その論議の最終的な結論としまして、主として指摘されました点は、軽機械輸出振興のために現在このミシン、双眼鏡は業界におきましても中小企業団体法による工業組合あるいは輸出組合等があって、それぞれその法律に基く調整活動を行なっております。数量の調整であるとか、あるいは価格の調整であるとか、あるいは販売方法の制限というふうなそういう一種のコントロール的な組合活動が行われておりますけれども、経済中業はまだ見るべきものは行なっておりません。ところが中小企業団体法が、中小企業安体法から団体法に改正になって、経済事業も調整事業とあわせて行うという組織ができており、しかも輸出振興裏業協会が行う事業は大体工業組合の経済事業とも言えるのじゃないか、従ってそういう経済事業をまず工業組合にやらせてみて、その上でどうしてもうまくいかないならば輸出振興事業協会というふうな特殊法人もやむを得ないのではないかという議論が、主としてそういう御意見が出たのでございます。しかしながらその間におきまして、いろいろ業界の実情その他等も各委員におかれまして御検討いただきました結果、結論といたしまして、業界の実態等から見まして、またその行いまする経済事業の内容等から見まして、既存の工業組合を十分に、そういうふうな意味におきまして育成訓練するには相当に時間を要する、従いまして、とりあえずまずこの輸出振興というのは非常に焦眉の急を要するものであり、先ほど最初に申し上げましたような対外輸出の実態というものは今日手を打たなければほとんど手おくれになるというような事態にまで差し迫っておりまして、ミシン等におきましては、すでにアメリカ等におきまして関税等のいろいろな問題も起っております。従いまして早く手を打つ必要もあり、またその事業の性質等から見まして、まずこういった特殊法人を組織するということもやむを得ないだろう、しかしその間に既存の工業組合の育成指導を十分に行なって、それがほんとうの意味において民主的に訓練され、業界がほんとうに安定するような形になりました場合には、この方向に切りかえるようなことを含みといたしまして、とりあえず法律は五年以内に廃止する、こういうふうなことに意見が一致をみたわけでございます。これが修正の趣旨でございます。  それから付帯決議趣旨は、申すまでもなく輸出振興事業協会というものを作る以上は、これに十分政府としても財政、金融上の援助をしたければならぬ、とれ自体も育成しなければならぬということであります。それから第二は、登録制度については、一方的なことにならないように、十分業界の実態に即した形で登録基準を定めるということ、それから第三は、こういう法律施行するために、いろいろ事業の整理とか、あるいは労務者へのしわ寄せということの起らないように十分指導監督するということでございます。いずれもその御趣旨におきましてはごもっともなことでございます。その趣旨におきまして、政府といたしましてもお答えを申し上げたような次第でございます。  大へん急いで申し上げましておわかりにくかったと思いますが、一応法案内容と、衆議院における修正、付帯決議について申し上げました。
  18. 島清

    ○理事(島清君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  19. 島清

    ○理事(島清君) 速記を起して。
  20. 上原正吉

    ○上原正吉君 ちょっとお尋ねをしたいのですが、この間軽機械輸出振興法案の陳情を受けたのです。反対陳情がありました。全国双眼鏡懇話会という団体ですね、この団体は製造か組み立てかわかりませんが、その業者の中の全国双眼鏡懇話会という団体があるらしいのです。この団体のメンバーは全業者の中の何パーセントくらいに当るものか、わかっていたらお知らせ願いたいと思うのです。
  21. 小出榮一

    政府委員小出榮一君) 輸出双眼鏡懇話会というものがあるようでございまするが、この懇話会の内容につきまして調査いたしましたところ、懇話会のメンバーは約四十社でございまして、その全体としての社の数といたしましては約二百社でございまするが、全生産に占めます率は、今の懇話会のメンバーの四十社は一割弱になる。言いかえますれば、調整ワクと申しまして数量統制をしておりますが、そのワクとして小さなワクを持っているメンバーの方々ばかりでございます。  懇話会のできましたいきさつでございますが、先ほど衆議院における審議の過程におきまして、軽機械のこの法案に対する反対期成同というのが業界にできました。現在これが改組されましてその懇話会になったというふうに承わっております。で、当初はこの懇話会なり期成同盟というものは法案反対ということを主眼としておりましたが、最近におきましては、むしろ中小企業団体法によりまする生産制限方法の改革というようなところに主眼を置いた運動に変ってきているように承わっております。
  22. 島清

    ○理事(島清君) 本案に対する本日の質疑はこの程度をもって終了いたします。   —————————————
  23. 島清

    ○理事(島清君) 次に、特許法案ほか九件を一括して議題といたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 島清

    ○理事(島清君) 御異議ないものと認めます。
  25. 栗山良夫

    栗山良夫君 特許庁の方へ私いろいろ資料要求しておるので、従ってきているのもあるし、きていないものもありますが、きている分について、特に私が説明を求めた分について説明を、願いたいと思うのです。  その第一は、特許庁の環境設備改善についての構想と、それからもう一つは、特許庁の審査のスピードアップに対する具体的な構想ですね。    〔理事島清君退席、委員長着席〕 その二つについて、予算必要経費まで含めて、説明を資料に基いてお願いしたいと思います。
  26. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 速記をとめて。    〔速記中止
  27. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 速記を起して。
  28. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) 先般、栗山委員から御要求のございました資料をお手元にお配り申しましたので、この資料につきまして要点だけここに御説明を申し上げたいと思います。  まず、特許庁の審査審判促進処理計画でございますが「職員増員計画」、こういう資料がございます。これの一ページはそれの結論でございますので、順序といたしまして、その二ページをごらん願いたいと存じますが、今後の特許、実用新案、意匠、商標につきましての出願処理計画でございますが、ここに出願件数、三十四年度におきまして十七万六千二百十九件、これの処理件数、三十四年度の計画といたしまして十四万一千六百五十件、それの未処理が二十九万二千二百六十八という数字がございます。結局三十四年度におきましては、出願件数の増加に比べまして人員の増加、審査の能力が不十分でございます結果、この未処理という欄にございますように大体特許、実用新案につきましては二年八カ月、意匠につきましては一年五カ月、商標につきましては十一カ月という、これは平均でございますが、そういう状況でございます。今般二千四年度予算といたしまして二十名の増員要求を目下国会提出審議を願っておるわけでございますが、審査官の定員といたしまして四百四十一名ということに相なります。この審査の迅速化をできるだけ早く達成したい。がしかしながら、これまで長年の経験上一人の審査官が一年間に審査し得る能力というものはおのずから限界があり、また他方調査を要する文献の範囲というものが技術の進歩に応じまして刻々増加するという状況が他方にございますので、そういう事情を勘案しまして、今後毎年増員を続けて参りまして、八年計画といたしまして、四十一年度に特許、実用新案につきましては一二カ月、意匠につきましては三カ月、商標につきましては三カ月ということで、出願から権利の設定を見るように、この目標を想定いたしたわけでございます。そういうふうに持って参りますには、どうしても審査官定員という欄にございますように三十五年、三十六年、三十七年、毎年八十名ないし七十名というふうな年次別の増員計画もここにきめたわけでございます。ついでに申し上げますが、特許、実用新案につきまして一年二カ月というのは、非常にまだ長いではないかというようなお感じをお持ちになろうかと存じまするけれども、これは優先権主張制度というものが条約上ございまして、一国に出願しましてから一年以内に次の国に出願しました場合には、その後に出願された国に対する出願も、最初の国に出願した日に同時に出願があったものとみなすという条約の規定がございますので、言いかえますれば、一年以内に権利の設定ということに相なりました場合には、優先権主張を伴った出願——外国人出願によりまして、一たん生まれた権利があとからひっくり返るというようなことがあり得るわけでございまして、特許権につきましてそういう事態を生じますことはかえって混乱を来たすもとになりまするので、各国とも、大体審査制度をとっておりまする国々では、審査の促進化の計画の場合におきましても、一年一カ月とか二カ月とか、そういう今申しました優先権の主張期間というものを考慮に加えて審査の計画を作っているような実情でございます。  次に、審判処理計画でございますが、これも審査と同様に、一応八カ年計画といたしまして、三十四年度におきましては、審判、抗告審判が二年ないし三年二カ月を要しておるという実情を、四十一年には一年一カ月あるいは十一カ月にこれを短縮して参りたいという、そういう目標を想定いたしまして今後の増員計画をここに作ったわけでございます。こういうような結果、第一ページのが増員計画の合計でございますが、審査官は、特許、実用新案関係が二百五十名、意匠関係が十名、審判官が十五名、それから書記といたしまして、審査関係二十五名、審判関係二十九名、その他は、出願、登録、公報、資料館等に三十一名、なお関連しましてのいろいろ必要人員を加えまして合計三百七十五名。これに要しまする人件費が、五ページ目にございまする一億五千万円。増員に伴う必要経費が大体それくらいになる見込みでございます。以上が人員の増加計画でございます。  なお、これと並行しまして、特許庁の今の施設の整備改善を同時にぜひ講じたいと考えております。この関係の経費が一億二千二百万円。別の資料特許庁施設整備等に要する経費というのがございますが、この内容は、庁舎施設整備費、それから審査審判事務管理の整備に要する経費としまして、審査資料用公報のカード化による審査事務処理方式の近代化、能率向上関係器具備品、あるいは環境整備に要する経費、そういったものをここに考えたわけでございます。この内容としましては、ここに列挙してございまするように、事務処理合理化能率化に要する経費カード化等が中心でございます。それから環境整備に要する経費としまして、包袋等重要書類格納器具、あるいは審判廷の整備でございますとか、あるいは能率増進という見地からする面会室の整備でございますとか、あるいは資料の調査に必要な職員の閲覧室——サーチングルーム、そういう職員の閲覧室の整備、そういうものをここに考えたわけであります。なお、このほかに、公衆の便に供するためのいろいろ資料館関係の設備改善に要する経費、研修所関係の施設の整備に要する経費、そういうものを合計いたしますと、先刻申し上げました一億二千二百万円ぐらいになる、こういうような経費を予定いたしているわけでございます。なおこのほかに、英国公報の欠号分を購入しますに要する経費、そういう一時的な資料の購入費、これは四千三百万円程度が必要でございますが、これは今申しました人的、物的設備の増強に要する経費という中には入っておりません。別の数字としてわれわれは考えているわけでございます。非常に簡単でございますが、以上をもって御説明を終ります。
  29. 栗山良夫

    栗山良夫君 きょうは実は特許関係四法の審議に際して、特許庁の行政能力を増強して審査の促進をはかるのにはどうすべきかということについて、通産、大蔵、人事院総裁、行管の、長官に列席を願って所信をただしたいと思っておりましたが、衆議院の本会議の関係で私の期待通りにいかないことになりました。で、きょうは、各関係庁の政府委員の方に列席を願っているので、実は同じことを二度お尋ねすることに結果においてはなると思いますが、やむを得ませんので、政府委員からまずお尋ねをしたいと思います。  で、人事院、行政管理庁の方は私の質問の趣旨がよくわかっていただかないというと御答弁もまた適切でなくなるのじゃないかと思いますので、ごく簡単にその趣旨を申し上げます。  実は今度、この工業所有権法の改正案を審議しているときに、少くとも他の方も同感だろうとそんたくいたしておりますが、少くとも私個人は、特許庁がどうしてこんな行政を今までやつてきたかということについて、非常な疑問を持つに至りました。その一つは特許庁の収入としている諸料金、要するに歳入です。歳入と、特許庁が毎年使っている諸経費、いわゆる歳出と比較いたしますと黒字になっているのですね、現在。おそらく現業官庁ではないと思いますが、現業官庁を除いてこういう役所で、公務員の人件費まで含めて黒字になっているという役所はおそらくない、そういう意味では岸内閣が技術革新を唱えて科学技術振興を叫んでいるにかかわらず、その政策は一貫性を欠いているのじゃないか、もっと国民にこういう創意工夫の推奨についてはサービスすべきではないかということが第一であるわけであります。従って歳入が四億あった場合には、歳出はもっともっとふやして特許庁の拡充をすべきじゃないか、こういう素朴なる考えが一つ出てきました、今のやり方は間違いじゃないかということ。  それからもう一つは、特許庁の仕事の方を僕らが見てみますというと、昭和十年から十二、三年ごろに比較して、申請件数は倍になっている、あるいは数量が倍になっている、そうして従事している公務員諸君はその当時と同じです。従って審査のスピードが半減することは常識的に当然です。現に半減している。従って今国民の声は、あるいは特許庁に対する非難は審査がスローモーだということですから、スピード・アップをしなければならない。そこで一体どうしたならば、この特許庁の行政能力というものは拡充できるか、こういうことをお伺いしたい。役所の大体設備が非常に貧弱だ。今ここで、長官が一億二千二百二十五万六千円ですか、これが要るといわれましたが、私どもも実際見てみて、町工場設計室のような雑然とした中でああいう仕事をしておる。きわめて貧弱だということを考える。これは何でも思い切ってやりかえなければならない。通産大臣は特許庁を見ておられますか、まだその感じ、その意見を聞く機会がないわけですけれども、こういうことを思い切ってやらなければだめだろうと僕は考えるのです。  このことは直接今関係がありませんから、また別に伺うとしまして、問題は人員のことなんです。スピード化をやろうとすれば、人員をふやす以外に道はない。特許庁も特許庁で私はだらしないと思うのは、今度私が資料要求して初めてこういうような計画を出されているのだが、今まで人員補充に対して果して計画的なものがあったかどうかということを疑わざるを得ぬような状況です。昭和二十八年ごろからある程度人員の補充はついておりますが、ふえたりふえなかったりして、審査のスピード化をするのに一貫的な方針があったかなかったのか。全然そういう方針はなかったのじゃないか。ただ何となくふやしたいということで努力をしてふやしてきた、こういうことにすぎないのではないか。特許庁から海外の特許庁等を視察に大ぜいの係官が行っておられますが、そのレポートの、概略をとりまとめたのを資料としていただいて、私もそれを読んでびっくりしているのは、非常に整然と整っておると言われておる米国ですら、審査促進八カ年計画というものを立てて、そしてあらゆる部面にわたっての計画を推進しておるようです。従って、こういう進んでおると言われておる米国ですら、こういう八カ年計画を立ててやっているのに、日本の特許庁は一体何をやっているのだ、こういうことに疑わざるを得ないわけです。そこで私はこのネックは一体どこにあるのかということが知りたいわけなんです。行政管理庁はこの間勧告されましたが、まず最初に行政管理庁が勧告されたあれを見たのだけれども、そこまで突っ込んだ勧告にはなっていないように私は思う。どういう観点からの勧告をされたかということが第一点、それから特許庁の長官に伺いたいのだが、何といってもスピード化することは人員ということがついて回るのですが、増員というようなことについて、こういうような計画を立てて、そして今まで関係方面と強力に折衝をされたことがあるかどうかということ、そういうことが一つ、それから折衝された結果、どこがネックだったかということ、人事院が言うことを聞かなかったか、大蔵省が聞かなかったのか、そういう点を明白にしてもらいたい、こういうことです。
  30. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) 先日お配り申しました資料に特許行政促進措置要綱というのがあったわけでございますが、あれは三十一年八月に通産省省議をもって決定したわけでございます。私、特許庁長官としまして就任以来三カ年余になるわけでございますが、最近は毎年審査の処理計画というものを、その特許行政促進措置要綱決定と同時に作成しまして、そのときは五カ年計画ぐらいでもって計画を作り、そして増員要求をいたしたわけでございまして、そういうふうに毎年の特許、実用新案、意匠、商標法を通じての出願の件数及びこれの審査の実情、停滞ないし未済件数の実情及び審査官の審査能力、そういうものをファクターといたしまして審査処理計画を作り、そしてできるだけ審査、審判期間の短縮、迅速化をはかって参ったつもりでございます。で、増員の実績は栗山委員御指摘の通りに八十名、それから百名、それから三十三年度は十二名、三十四年度は二十名というふうに、その年その年によりまして増減のございますことはまことに遺憾でございますが、三十二年度は十二名で甘んじましたのは、八十名、百名という増員が続きまして、この際は数的増加よりも質的強化と申しますか、そういうことを考えまして、昨年春以来研修所を設け、その審査官の実力の涵養、研修の徹底をはかって参ったわけでございます。従来のその増員の実績は以上の通りでございますけれども、われわれの希望計画の方から申しますと、これに比べて実績ははるかに少かったわけでございますが、われわれとしましては、予算の問題でございますので、大蔵当局に対しましては、毎年われわれ事務当局ばかりでなく、大臣を通じましてもできるだけの折衝、交渉はいたしたわけでございますけれども、遺憾ながら今日までの実績は以上のようなことでございます。が、こういう審査の処理計画というものは、従来から右に申しましたように随時必要において作って参りましたし、そしてその計画に基きまして、増員要求をいたしてきた次第でございますが、これまでの古い処理計画はその実績と計画とがどうしても食い違いますので、アップ・ツー・デートなものでなくなる。そういう関係で、今般は先般栗山委員からの御指摘もあり、こういう新規処理計画を作ったわけでございますが、従来の経過は以上の通りであります。
  31. 岡部史郎

    政府委員(岡部史郎君) ただいまのお尋ねにつきまして簡単に申し上げます。栗山委員の質問の御趣旨につきましては、私ども根本的に全く同感でありまして、この問題は私が就任いたしまして以来、数年間真剣に考えており、ごくざっくばらんに申し上げますと、二十七年度におきましては七百人以下の定員でございます。そのときにおきましても、ただいまお話のありましたような持ち越し件数が多い、それから毎年の受付件数が激増してくる。これにどう対処するかということを特許庁としばしば検討いたしました結果、一面においては定員が足りないことは、これは明らかであるから、定員を計画的に増加、また他面におきましては、何か制度的にこれを緩和する方法というものが、いろいろな手があるはずだ。それについても十分検討していただこうということを考えて参ったわけであります。ざっくばらんに申しますと、二十八年以来、明年度で七カ年になると思いますけれども、この七カ年間に定員は約五割増加しております。この間にしばしば各省は行政整理をこうむっておりまして、かなり無理をしていただいておるわけでございますが、総人員が五割増加し、しかも各省は、他の行政機関はすべて減員を受けておるのにかかわらず、この七年間、不十分でございますが、特許庁は毎年必ず審査、審判関係の職員の増加をはかってきておるわけでございます。  そしてさらにざっくばらんに申し上げますと、その当初私どもが特許庁と考えましたところで、大体特許庁の心からの賛意を得たわけではございませんけれども、その当時の処理件数あるいは処理能力あるいは出願件数の傾向から見て、戦前の状態を考えて、大体千人程度になれば一応これを処理し得る態勢が整うのではないかということを、一応の目標にして考えておりますので、決して無計画にやったというわけではないように考えております。ただその後七年計画あるいは、八年計画ができ、予想外の出願の激増ぶりでもございますのでこれに対する対策、見通しというものをまた検討し直す余地はございますが、他におきまして、この審査官、審判官の能力の充実あるいは手続の改善というようなことも考えなければなりませんので、さらに研修機関も特に昨年からは設けるというようなこともやり、また特許法の大改正もやるというようなことで、われわれといたしましては、特許行政の重要性にかんがみまして、できるだけこれを迅速に時代の要請に合うように努力しつつ参っております。今後もそう考えております。
  32. 栗山良夫

    栗山良夫君 大体同じ政府の仕事でも、たとえば国鉄が切符売って満員だから汽車に乗せないということはできないですね。これはもうおそらくできないことだろうと思う。やはり列車をちゃんと増発して乗せなくちゃいけない。若干立ちん坊をするけれども、一応送り届けなければならない。ところが普通の役所の場合は、サボっておれば上司から怒られるかもしれぬ、目に見えぬ渋滞をするかもしれぬけれども一応それで済んでいる。ところが特許庁の仕事というものは、一件々々料金を取っているでしょう。やはり審査をする法律的な義務があるわけです。しかも料金を取って終始ペイしているのですから、今関係者から非常に痛烈な非難がきているのはここですよ。国家はサービスしてない。従って必要なる人員は大蔵省との折衝が成り立つとか成り立たぬとか、そういうことでなくて、国民の要望にこたえて、それは内部の充実、組織の改善も必要でしょう。必要でしょうが、そういうものを引っくるめて、処理のスピードアップを急速にやるという方針をきめて、それに断を下して実行に入るということでなくちゃいけないんじゃないですか。私はそう思いますが、どうですか。先ほどの番数を見てみるというと、申請件数より残っておる件数の方が多くなっているのですよ。これでは何のために料金取っているのですか。そういう点で、行政管理庁はこの間勧告をされたことは非常によかったと思いますが、まだ少しそういう基本的な点についての勧告の仕方としてはなまぬるかったのではないですかね。この点はお認めになりませんか。
  33. 井之上理吉

    説明員井之上理吉君) 私どもの今度特許庁を監察いたしましたのは、特許行政全般につきまして監察したのでございませんので、特許の許認可業務として世論がやかましいということで、通産省、農林省、運輸省関係を監察したわけでございます。その一環といたしまして、特許行政に対する許認可がどういう工合に行われているかという方面から見ましたので、若干特許行政全般をえぐるという点について、あるいは不足している点があるかと思うのでございますが、私どもの見ました点から申し上げますれば、先ほどいろいろお話がございましたが、出願件数より処理件数の方が少いという点にやはり問題があると思うのでございます。私どもといたしましては、新聞等でも発表いたしましたが、勧告といたしまして、やはり長期にわたり、現在未処理のものを何年間でどういう工合に処理するかという、具体的な長期計画というものを、特許庁としては、十分御検討になって樹立せらるべきであるということを勧告の項目にあげているのでございます。いま一つは、事務管理のもう少し強化でございます。これは事務の測定をして、それによって何人の人間が省けるかということにつきましての事務測定というのは、きわめてこれは困難な問題でございますし、若干その方面を強化したら、事務能率が今より増進するであろうということを私どもの方では見ているのでございます。いま一つは、むだな出願が非常に多いということでございます。これは国民大衆を相手にいたします関係、また日本の弁理士制度というものが必ずしもその特許の専門家だけでないというような点から、ややともすると形式的な、若干内容の不備なものがあってもやはり出願する。出願した以上は、先願主義の特許行政の建前から、特許法の建前から申しまして、やはりそれは受理しなければならぬ。受理したら、内容を審査してみると、なんでもないということで本人に訂正方を送らなければならない。それが東京の地元であったら、簡単に弁理士を呼んでできますが、東京以外の所であったら、やはり郵便等の方法を講ずる以外にないということでございまして、そこに大きな問題があるのでございます。出願者が、現に特許権を持っているものに対する認識が十分あり、また特許に対する科学知識というものが十分あれば、その内容等も、自分の願書が、すでに出ているところの特許権とどの範囲において抵触しているかということはわかるので。ございまするが、遺憾ながら出願者側におきましても、相当その点に不満足な状態があるということでございます。私どもの監察いたしました結果を数字で申し上げますと、そういうむだな出願のために返した件数が、三十二年度におきまして、これは補充訂正指令という言葉を特許庁では使っておられるようでございますが、約五万二千回あるということでございます。五万二千回という回数はかなり事務能率を阻害しているものと思うのでございます。この五万二千回が、若干でも特許庁の指導あるいは国民の、出願者側の自費と申しますか、勉強と申しますか、そういうことによって、若干でも五万二千回という数字を下回れば、それだけ特許の審査能力というものが増強するものと私どもは見ているのでございます。大体私どもが見ました点はそういうことでございまするが、また何か御質問等ございましたらばお答えいたします。
  34. 栗山良夫

    栗山良夫君 大体今度の監査の勧告が語句が不十分だと思っていましたが、その監査せられた経過を伺ってみ参るというと大体わかりました。で、問題は二つあるのですが、今指摘された第三点は私も同感ですけれども、これは何しろ法律でもって国民に自由な権利を与えている以上は、相手がそうだからといって今直ちにどうすることはできない。これは特許庁の窓口まで来る。そういう改むべき点は発明者あるいは途中に介在する弁理士その他いろいろな人のやはりこれはPRをする以外にないでしょう。これは問題として私は預けていいと思います。それはいいと思う。しかしそれだけに依存していた場合には、法律で保障しているこの特許申請というものに対して、国家的義務を国民に果していくことはできないわけであります。そこであなたにお尋ねしたいのは、千人程度に増員すれば大体いけるのではないかということを前に考えたことがあるとおっしゃいましたが、要するに審査能力を上げるのは、公務員の質的な向上はもちろんだけれども、質的な向上と同時に、やっぱり人員というものが重要なファクターになるわけですからね。だからその人員について、ただいま長官が説明されたこの増員計画ですね、これは中にある程度数字も入っておりますが、これが一応この程度ならばいけそうだとお考えになりますかどうでございますか。
  35. 岡部史郎

    政府委員(岡部史郎君) この今後の増員計画につきましては、先ほど来お示しの事情につきまして私ども十分承知しておりますし、この事柄の重要性につきましては、もちろんできるだけ優先的に考えなければならぬと思いますので、この計画を慎重に尊重するようにいたしたいと思っております。
  36. 栗山良夫

    栗山良夫君 私は何度も繰り返して申し上げます。先ほど汽車の例をとって申し上げましたが、もう切符は買っておるのですよ。これは乗せるでしょう。目的地まで運ばなければならない、そういうものですからね。普通の一般役所の村政とはちょっと違うのです。従って行政管理庁としては、今の人員の問題ですね、質的な問題は触れておられるようですが、特許庁としての人員の増員という言葉が悪ければ、何か適当な名前をつけていただいて一向かまいませんけれども、行政能力をとにかく増強するということについて、もう一度勧告を補完せられるということはできませんか。
  37. 井之上理吉

    説明員井之上理吉君) ただいまのお話、ごもっともなことと思うのでございまするが、私どもといたしましては、現在の能力で合理的におやりになったら相当進むのではないか、ことに審査官各位が事務的な面を若干やっておられる向きもございまするので、そういう点は完全に事務屋にまかして、ほんとうの技術者たる審査官の方は審査能力の増強に努められたら、かなりの増強ができるのではないかということを思っております。今の本年度の与えられた定員で、予算で完全にできるかどうかということにつきましては、私どもも相当これは困難な仕事とは思うのでございますが、特許庁も私どもの監察結果につきましては、非常に御熱心に御検討になっているようでございまするので、相当な効果はあるものと私どもは信じている次第でございます。
  38. 栗山良夫

    栗山良夫君 そこが問題なんですよ。私は今、アメリカとイギリス、ドイツ等の数字をこの間資料をいただいて、今ここに見当りませんけれども、申請件数とこれに関係している公務員との数を比較すると、日本がどれほどか少いのですよ。ですから、あなたはこの数でいけそうだとおっしゃるけれども、それは何を根拠でいかれるのか、私もわからない。それだから、そういうことでなくて、今一番困っているのは、あなたは人件費の問題だと言いますが、かりにこれだけの数字をきめても、現在の国家公務員の採用方針では、有能な技術官は役所に来ないということなんですよ。それをどうしようかということを、これは非常に大きな問題としてディスカッスしなければならぬという立場にあるのに、あなたが先ほどからあれだけ認めておられて、そうして今またこういうふうにこれでどうだ、勧告を補完する用意はないかと言えば、この人員で何とかやれるのだということになるから、いつまでたっても、役所の仕事というものはうまくいかないのですよ。私はそう思うのですよ。そのほかのイデオロギーや、あるいはその他与野党の政策の違いだとかいうようなことは、今式の水かけ論で済みますよ。これは予算委員会で幾ら議論してみたって、いつも平行線でいってしまうのですよ。しかしこれでは私はいけないのですよということを先ほどから断わっているでしょう。そういう考え方から、あなたの立場のあることは私は知っているけれども、もう少し正直に誠実に答えてもらいたいと思うのだな、僕は。
  39. 井之上理吉

    説明員井之上理吉君) 私どもの監察は一応まあ今度はそんなような格好でございますが、大体しばらく特許庁の相手官庁の出方を見まして、それを推進という言葉を使っておりますが、推進いたしまして、その結果第二段の方法を講ずるということをしているのでございます。ただいまのお話の点につきましては、私どもも特許が出願より許可の方がおくれるということは、ゆゆしきこれは問題だと思っているのでございます。大体審査官が数が足りない。またなかなか補充しても、そう優秀な人が来ないということは聞いているのでございます。しかし、特許庁も相当真剣に取っ組んでいらっしゃいますから、相当向上するということは、私どももまあ今のところ認めております。
  40. 栗山良夫

    栗山良夫君 真剣に取っ組んでおるといっても、やはり一番問題なのは、公務員の補充だとか、中の機械化だとかいうことは、なかなか特許庁だけの力ではでき得ない点があるように伺っているのですよ。それでまああなた方の一言というのはずいぶん影響力を持っているから、それでお尋ねしているわけなんです。たとえば私はかりに——あなた御存じかどうか知りません。かりに申しますと、特許の出願件品数だけ、実用新案その他をのけまして、特許の出願件数だけで一九五七年の比較をすると、日本が九万七千百七十件、ドイツが九万六千六百七十二件、アメリカが七万五千二百十一件、イギリスが三万九千七百三十件、これに対して職員はどういうことになっているかというと、日本が九百三十二人、ドイツが千八百人、アメリカが二千三百人、イギリスが九百三十八人、これは役所の大きさから何から、全部、大体そういうふうにいっておりますが、この数字を見た場合、あなたの先ほどおっしゃった、これでいけそうだという考え方は、常識的に僕ら理解できないんです。外人が非常に能率が悪いという前提なら知りませんよ。しかし、これは、手先が器用だとか器用でないとかいう問題でなくて、頭の問題です。頭の問題だから、日本人よりも欧米人の方が、こんなに頭が悪いわけはないでしょう。日本人もいいには違いないけれども、欧米人の方が日本人よりこんなに劣っているわけはないと思うんです。そういう点から考えてみた場合には、やはりもう少し、ああいう重要な問題のときには、掘り下げて、そうしてわれわれが伺ってもなるほどと思うような勧告を一つ出してもらいたいと僕は思う。  それから、先ほどは、特許庁全般のことをやったんではないとおっしゃいましたから、その点は私もわかります。わかりますが、そういう前提に立って、もう一度特許行政全体のことに関してどうしたらいいかということについて、再考慮を促したいというのが、私どもの願いなんです。ですから、もう一度重ねて申し上げますが、やはり所要人員の増員ということについては、真剣な検討を加えなきゃならぬと思う。こういうことについて、もう一ぺん、あなた方が私の意見に同調されるかどうか知らぬが、御意見を伺っておきたい、こういうことなんです。これは、事務員を若干技術員にしたらよくなるとかならぬとか、そのワクの外の数字が相当あると思うんです。
  41. 岡部史郎

    政府委員(岡部史郎君) お答え申し上げます。先ほど来のお話の通り、定員の増加ということも、これは慎重に考えていく。しかし同時にいろいろな手続き、制度、やり方の改善もあわせて、極力そちらの方もやっていく、こういう趣旨でございますから、その点、一つ御了承をいただきたいと思います。もちろんこの激増する出願件数に対しまして、現在の定員で間に合うというようなことは考えておりませんので、必要な、適正な定員を確保するように努力したい、こう考えております。
  42. 栗山良夫

    栗山良夫君 それでは次に、今度は人事院の方に伺いますが、お聞きのように定員の増加というものは、なかなか政府の方針でむずかしいわけです。むずかしいけれども、事、特許庁の問題については、どうもわれわれが説明を伺えば伺うほど、何らかの手を打たなければならぬとこう考えるのです。その場合に、特許庁の仕事の一番中心をなしている技術官が、今の人事院のおやりになっておる公務員の世帯等のワク内では、おそらく集まってこないのじゃないか、この公務員採用方針では。そういうふうにわれわれは考えるのですが、あなたは、この問題について、どういう考えをお持ちでしょうか。
  43. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) 現在、公務に技術職員を誘致することが非常にむずかしいということは、御指摘の通りでございます。これは特許庁の特許審査の業務に従事されまする技術官のみならず、研究所等を通じまして、非常に現在、人が得にくいという事情がございます。われわれといたしましては、この問題は非常に重要でございまするので、何とかいたさなければならぬということを考えておるのであります。ただこの技術官あるいは研究官等を優遇いたしまする場合に、本俸でこれを考えるというようなことも一つの方法ではあろうかと思いまするけれども、しかし本俸を操作するということは、これは退職給与等の基礎になる問題でもありまするので、なかなか本俸を軽々しく動かすということは、これはよほど慎重にやらなければならないのではなかろうかと思っております。従いまして何とか別途の方法によりまして給与の改善をいたしたい。現にわれわれは、三十四年度予算がきまりまする前に、研究官職等につきましてそういう優遇措置を講じたいというので、事務的にはずいぶん努力したのでございまするけれども、これはまあ結果においてもうまくいかなかったという問題がございます。また、昨年の勧告におきまして——今回、政府側から提案になっておりまする給与法におきましては、研究官職の初任給は、一般行政職に比しまして高い。一般行政職は千円、上級職試験に合格した者は千円上りでありますが、研究官職におきましては千二百円上りというようなことで勧告をいたし、それが政府側の案となって出ております。それくらいのことではしようがないじゃないかというお話があろうかと思うのでありまするが、これはわれわれ人事院といたしましては、やはり公務員全体の給与の公平ということを考えなければならぬ。ただ需給の点だけから見てみますると、これは非常に技術官をとることがむずかしいということはあろうかと思いまするけれども、やはり人事院といたしましては、公務員の各般のバランスをはかるということも、給与上非常に必要でございまするので、その両者をあわせまして、現在考えておる今後におきましても、研究官の処遇問題等は、人事院がまだ満足するような状態にございませんので、今後とも十分努力して参りたいと考えております。
  44. 栗山良夫

    栗山良夫君 そうすると、あなたの説を伺っていると、じゃ公務員全体の公平を期さなければならぬから、技術官の補充がだんだん減退していってもやむを得ないと、こういうことになりますか。もしそういうことであれば、私は大へんだと思うのですがね。政府機関の中には、やはり優秀な技術官というものが、相当いなければ、国家行政は行えないですよ。その場合に、技術者というものは、どんどん民間企業に流れてしまって、役所へは来ない。しかし、来るようにするには、給与の公平化をはかるためにはやむを得ないということで、できないということになれば、それはどういうことになるか。これはどういうふうに理解したらいいのですか。
  45. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) おっしゃるような問題があるわけでございます。従いまして、今後われわれといたしましては、技術官あるいは研究官の処遇問題につきましては考えたいということで、これは民間の給与調査等をやってみまして、そうして、そこにおいて民間とのバランスというようなことも考えて参りたいということで、いろいろ調査等も今後やるつもりでおるのでございまするが、やはり御指摘のように、全体的に見まして、需給の観点のみから給与をきめるということは、これはむずかしいのじゃないか、これはやはり別途何か特別の政策というようなことが出て参りませんと、やはり現在の給与法の範囲内におきましては、全体の公平をはかるという趣旨もございまするので、なかなかむずかしい点があるんじゃなかろうか。しかしその点につきましても、われわれは今後研究を重ねて参りたいと思います。
  46. 栗山良夫

    栗山良夫君 いや、その考え方が所管大臣の考え方なら、私はそれで了承するけれども、あなた方行政の実際の執行の、政府機関におかれる人の立場としては、私は少しまだ足りないんじゃないかと思いますがね。というのは、どの程度正確のものか私どもわかりませんけれども、私が持っておる諸外国の実態を見ますというと、ドイツとフランスが技術官の補充にはそう難渋していないようですね。ところが一番難渋しているのはイギリスとアメリカであります。イギリスとアメリカは━━日本の公務員制度というのはアメリカのシステムをまねたのですよ。まねたのだが、そのまねた御本家のアメリカにおいては、これはあなたの方は御専門だから、研究済みだろうと思うが、研究されているかどうか伺いたいのですが、研究されていなかったら、私ここでこれを読みますが、特別の措置を講じているのですよ、アメリカは。イギリスもそうです。そういうこと御承知ですか。
  47. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) 今ごらんになっております資料はあるいは事務的にわれわれの方から差し上げた資料かと存じますので、よく知っております。よく知っておりますが、アメリカ等におきまして特段の措置がとられておるのでございまするけれども、現在の日本におきまして、それを直ちにアメリカの通りにやるということが適当であるかどうか、その辺に多少の問題もございまするし、現在日本の体系といたしましては、技術官と事務官を区別しないという方針でわれわれはやっておるのであります。これは現在すでに課長以上のポジションについておられるような方につきましては、これは過去の積み上げがございまするので、事実勤続年数と申しますか、そういうことで給与を見ておりますと、場合によりましては事務系統の職員の方が進んでおるというような場合もございます。けれども、人事院が公務員試験を始めましてから後におきましては、その差別というのは割合ないのでございます。現在事務官と技術官とはなるべく差別しないという方針でわれわれは参りたいということでやっておる次第であります。
  48. 栗山良夫

    栗山良夫君 いや、それだからアメリカの方はやはり文官と技術官とちゃんとクラスが分れておるので、そうして技術官の方の補充をちゃんとつくように特別の措置を講じている。ところがイギリスの方は日本と同じように何も差がないようですね。差がなくてなおかつ技術官の補充がむずかしいというので、号俸をうんと上げたりいろいろな操作をやっているようですよ。だからあなたアメリカのシステムを日本はまねているのだが、その御本家のやり方をにわかに採用するわけにはいかんとおっしゃるが、イギリスのように全然そういう区別をしていないところでも、そういうことをやっているというのは、これはおそらくあなたの方から出ているのだろうと思うけれども、御承知の上なんだ、あなた方は。そうしてなおかつそういう御答弁しかでできないというのはどういうことでしょうか。
  49. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) われわれもいわゆる研究官職あるいは技術官の待遇をよくしたいということで考えておるのでございまするけれども、私が申し上げたことがあまりに否定的に聞こえたら、ちょっと訂正いたしたいと思うのです。ただ公務員の給与をきめます場合に、やはりあらゆる職種によります公務員の間の均衡をはかるという問題が別途ありまするので、それと合せて考えなければならぬということをまあちょっと申し上げたかったんでありますが、その点が少し強調され過ぎたきらいがあるかと存じますが、今後におきましても、われわれはやはり研究職あるいは技術官の処遇の改善ということにつきましては十分考えたいと思っております。  なお、イギリスの例でございまするが、これは余分のことかもしれませんが、イギリスではいわゆる行政管理職に属します者の給与は非常によろしいわけでございます。で、技術官をそこまでいくことができるように、それとそろえることができるようにしたということになっているように承知いたしております。
  50. 栗山良夫

    栗山良夫君 その人事院の仕事は給与の公平化をやられることも大きな任務かもしれませんがね、官庁が必要とする人材を充足するという、その充足の仕事をするということがより以上に重要な仕事じゃないですかね。給与の公平化をはかるということは私は必要だと思いますが、思いますけれども、それと同時に、あるいはそれ以上に重要なことは、諸官庁が必要とする国家行政の能力を維持するために必要な人材を適材適所に配置するということ、そういう仕事の方が重要じゃないですか。
  51. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) おっしゃる通り、人事院にはそういう機能がございまして、それは非常に重要なことだと考えております。
  52. 栗山良夫

    栗山良夫君 そうでしょう。
  53. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) ええ。ただしかし、それと給与とを結びつけまする場合に、それではわれわれは無手勝流にそれでは給与を考えればよろしいかというと、そういうわけには参りませんので、やはり公務員法なり給与法なりによりまして、それでそこにきめてありまする原則の範囲内に従ってきめるということになるのでございます。そういう観点から申しますると、公平といろ観念あるいは民間の給与とのバランスをはかるというようなものが出て参る、こういうことを申し上げた次第でございます。
  54. 栗山良夫

    栗山良夫君 そうすると、結論として、こういうことですか。ただいま技術員が役所への就職をきらって、民間へどんどん流れていく、これでは行政執行上工合が悪いので、民間等の給与あるいは待遇諸条件等を十分勘案しながら、民間の技術者の処遇と大体そろえるところまでそろえて、役所へ技術官が民間と同じように志望してくる、そういうような環境をも人事院としては作っていきたい、こういうふうに理解していいですか。
  55. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) そういうことを目標にやりたいというふうに考えております。
  56. 栗山良夫

    栗山良夫君 それではいずれ人事院総裁にも私は機会があるときにお尋ねしたいと思いますが、その点は総裁とよく一つ打ち合せをしておいていただきたいと思います。  それから行政管理庁の方も、いずれ長官にお尋ねする機会があろうと思いますから、この点は一つよく部内で検討して、考えをまとめておかれるようにお願いしたいと思います。
  57. 岡部史郎

    政府委員(岡部史郎君) 承知しました。
  58. 栗山良夫

    栗山良夫君 これであとは質問する人もないようですから。
  59. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 本日の委員会はこれで散会いたします。    午後五時九分散会