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1959-02-19 第31回国会 参議院 商工委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月十九日(木曜日)    午前十一時二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     田畑 金光君    理事            上原 正吉君            小幡 治和君            島   清君            大竹平八郎君    委員            木島 虎藏君            鈴木 万平君            高橋進太郎君            堀本 宜実君            栗山 良夫君   政府委員    科学技術庁資源    局長      黒澤 俊一君    通算産業政務次    官       中川 俊思君    通商産業省企業    局長      松尾 金藏君    通商産業省鉱山    局長      福井 政男君    通商産業省鉱山    保安局長    小岩井康朔君    特許庁長官   井上 尚一君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○特許法等の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○商標法案内閣提出) ○商標法施行法案内閣提出) ○特許法等施行に伴う関係法令の整  理に関する法律案内閣提出) ○工場立地調査等に関する法律案  (内閣提出)   —————————————
  2. 田畑金光

    委員長田畑金光君) これより商工委員会を開会いたします。  本日は、まず特許法等の一部を改正する法律案商標法案商標法施行法案特許法等施行に伴う関係法令整理に関する法律案を一括して議題といたします。  これより各法律案提案理由説明を願います。
  3. 中川俊思

    政府委員中川俊思君) ただいま提案になりました特許法等の一部を改正する法律案提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  さき提案になりました特許法案実用新案法案意匠法案及び商標法案におきましては、いずれも特許料等を値上げすることといたしておりますが、その施行昭和三十五年四月一日からとなっており、公布と施行の間にかなり期間が予定されておりますので、あらかじめ現行法特許料等新法と同様の額まで値上げをすることにより新法への移行を円滑ならしめようとするものであります。  以上が本法律案提案理由及びその概要であります。何とぞ慎重御審議の上、可決せられますようお願い申し上げる次第であります。  ただいま提案になりました商標法案提案理由及びその概要を御説明いたします。  商標制度目的は、商標保護を通じて商標使用者の業務上の信用の維持をはかることにより産業の発達に寄与するとともに需要者利益保護することにあるのであります。  わが国の商標制度は、明治十七年の商標条例制定に始まり、以来七十五年の歴史を有するものであります。そして、この間明治三十二年の商標法制定並びに明治四十二年及び六一正十年の全面的な改正を経て今日に至っているのであります。  しかるに最近における経済の発展は著しいものがあり、その中に占める商標地位重要性を増して参り、このような事態に即応するため商標制度の全面的な再検討が必要となって参りました。政府昭和二十五年以来工業所有権制度改正審議会を設けこの問題を慎重に審議いたしました結果昭和三十一年にその結論が答申されたのであります。  本法律案はこの結論に基き、さらに関係方面意見をも取り入れて作成したものであります。  次に本法律案概要を主として現行法との相違という点から御説明いたします。  第一は、国際連合等国際機関を表示する標章及び国、地方公共団体公益団体等を表示する著名な標章を登録しない理由に加えたことであります。これは、これらの機関公共的性格にかんがみ、これらの標章商標権の対象に加えることは適当ではないとの判断によるものであります。  第二は、存続期間現行法の二十年から十年に短縮したことであります。これは、権利者が積極的に存続を希望しないような商標権整理を促進するためであります。  第三は、商標権営業と分離して移転すること、つまり商標権自由譲渡を認めることとしたことであります。現行法では商標権をその営業と分離して移転することが禁じられており、そのため商標権の財産権的な地位が十分に認められておりません。このたびの改正では経済界における実際上の必要にかんがみ商標権自由譲渡を認めることとしたのであります。  第四は、商標使用評語を認めることとしたことであります。現行法では、商標権自由譲渡が認められていないのと同様に他人に自分登録商標を使用させることも認められておりません。しかし、経済界の実情はこのような道を開くことを必要としておりますので、この制度を新たに作ることとしたのであります。  第五は、防護標章制度を設けたことであります。これは現行法による商標保護範囲が著名な商標については十分ではないので、このたびこの制度を設けて著名な商標信用保護に資することとしたのであります。  第六は、団体標章制度を廃止したことであります。これは、先ほど御説明いたしました商標使用許諾制度を設けることにより、団体標章制度を特に存置しておく実益がなくなったためであります。  なお、このほか、権利侵害に関する規定の整備、審判の審級の一審制登録料引き上げ等についても特許法案に準じて改正いたすことにしております。  以上が本法律案概要であります。何とぞ慎重御審議の上、可決せられますようお願い申し上げる次第であります。  ただいま提案になりました商標施行法案提案理由及びその概要を御説明いたします。  本法律案は、さき提案になりました商標法案が可決成立いたしまして施行する際に必要な経過的事項内容とするものであります。  商標法案経過約諾規定は、きわめて複雑多岐にわたりますので、特に独立法律として立案いたしたものであります。なお、関係諸法令改正につきましては、別途提案することにいたしております。  次に本法律案概要を御説明いたします。  第一は、新商標法施行期日昭和二十五年四月一日と規定したことであります。  第二は、現行商標法によって発生した商標権等新法施行後の取扱いについて規定したことであります。  第三は、新商標法施行の際特許庁に係属している商標登録出願等取扱いについて規定したことであります。  第四は、現行商標法によって発生した団体標章権使用者地位について規定したことであります。  これらの諸点はいずれも、さき提案になりました特許法施行法案同様既存権利の尊重と新制度への円滑なる移行を旨として規定いたしているものであります。  以上が本法律案概要であります。何とぞ慎重御審議の上可決せられますようお願い申し上げます。  ただいま提案になりました特許法等施行に伴う関係法令整理に関する法律案提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  本法律案は、さに提案になりました特許法案実用新案法案意匠法案及び商標法案が可決成立いたしまして施行する際に必要な関係諸法令改正内容とするものであります。  このような他法令整理に関する事項は、経過的事項規定した付則または施行法案において規定するのが通常でありますが、特許法案実用新案法案意匠法案及び商標法案に共通な事項が少くありませんので、特に独立法律として規定したものであります。  次に本法律案概要について御説明いたします。  第一は、他法令において引用されております特許法等条文を新特許法等該当条文に改めたことであります。  第二は、新法によって制度が廃止されあるいは創設されたことに関連して、関係諸法令中の表現を改めたことであります。  以上が本法律案概要であります。何とぞ慎重御審議の上、可決せられますようお願い申し上げる次第であります。
  4. 田畑金光

    委員長田畑金光君) ただいま御説明のありました四法案に対する質疑は後日行うことにいたします。   —————————————
  5. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 次に、工場立地調査等に関する法律案議題といたします。本案内容について御説明願います。
  6. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 工場立地調査等に関する法律案につきまして各項目の主な点を要約して御説明を申し上げます。  この法律目的を第一条に掲げておりますが、これは前に提案理由で御説明を申し上げました通りのものでございまして、工場立地適正化ということを目標といたしまして、このためにまず工場適地調査を行い、また必要な場合には助言を行うということで工場立地適正化目的とするのがこの法律最終目標であります。  第二条におきまして、工場立地の問題を解決いたしますのには、また工場適地を探しますのには、まず第一には十分な客観的な公正な調査資料がなければならないわけでありますが、その意味で第二条の第一項におきましては、通産大臣工場適地調査を積極的に実施する責任に任ずることを明確にいたしまして、またその調査内容調査をする地区調査方法というような重要事項につきましては、いずれもあとの方の条文に出ております工場立地調査審議会意見を聞いて行うということを明定いたしております。さらにその第二項におきましてその調査方法を書いておるのでありますが、この第二項でいっております意味は、前に申しました調査地域の中におきまして工場の用に供することが可能であると認められるような一定の広さを持った団地につきまして、その地区内の団地ごと実地調査をやるというのが第一の方法であります。さらに第二の方法といたしましては、ここに書いておりますようなその地区内の地形、地質その他の自然条件、あるいは工業用水その他の用水事情、あるいは輸送条件、そういうような立地条件に関する資料収集するのでありますが、これは実地調査だけではなくして、それ以外のその他の方法による資料収集ということで、これは関係各省ですでにそのような調査をしたものがございますれば、当然それを利用させていただくということを予定をいたしまして、そのような資料収集ということもあわせて調査方法としてここに規定いたしておる次第であります。  第三条におきましては報告義務、その調査地域におきまして、すでに事業を行なっておるものに対しまして報告義務を課しておるのであります。この内容は先ほど申しましたような実地調査をしたり、既存資料収集したりいたしまして調査資料を整えるのでありますけれども、そのような資料に基きまして、さらにその地区内の立地条件判断をし、また資料を整備いたしますのには、すでにその地区内で事業をやっておる人たちが一体どのような立地条件でやっておるかということを知る必要があるわけであります。たとえて申しますと、用水事情、その工場用水事情等判断をし、また資料を整備いたしますのには、その地区内において一体どれだけの用水供給可能量があるか、かりに地下水にいたしましても、地下水保存状況がどの程度であるかということを全体として調査をいたすのでありますけれども、その地区内においてすでに工場等がありまして、その既存工場等が一体どれだけ水を現在汲み上げ、使用しておるかということを報告をしていただきまして、その差し引き計算をいたしました残りのものが、今後その地区内において水を取り得る余裕量がある、ということを計算をして調査資料を整える、また判断をしなければならないわけであります。そういう意味で、その地区内の既存事業者からこのような報告を出していただくことを、ここに報告義務規定を設けたわけであります。しかしその場合にも、あまり過大な負担をかけることは趣旨ではございませんので、ここに書いておりますように、その報告を求める相手方をこのような製造業者というようなことで限定をいたしておるのであります。また、どのような報告を求めるかというようなことにつきましては、政令をもってその内容限定をして、必要以上の報告義務を課さないように運用をして参るつもりであります。なお、この報告義務につきましては、終りの条文で、十一条におきまして、報告をしない場合あるいは虚偽報告をされた場合には三万円以下の罰金という罰則をつけております。これによって正確な報告を出していただくように配慮されておるわけであります。  第四条におきましては、そのような調査結果を取りまとめまして工場立地調査簿というものを作るのでありまして、そのような調査結果を利用する段階に入るわけであります。御承知のように各工場が、事業者工場立地を探します際には、従来非常な費用手数がかかっておったことは御承知通りでありましてしかも相当な費用手数をかけても、なお個々事業者個々工場立地を探すという限りでは必ずしも十分なことができなかったと思うのでありますが、そのような費用手数を省き、またその立地を求めた結果が適正なところに落ち着くことをこの法律目的としているわけでありますから、ここに書いてございますような、つまりこのような資料を、現在すでに発足はいたしておりますが、工場立地指導室が現在通産本省及び各通産局にすでに設けられておりますが、その立地指導室にこの工場立地調査簿を備えまして、一般に閲覧利用していただくということを書いております。ただこのような調査をし、また一般に利用していただきます際にも、その第三条によって報告を受けた内容について、その報告をした事業者の方で、それぞれの工場においてそれを一般に公開されることは事業者利益上困るというような、秘密に属する事項がままあろうかと思います。そのような秘密に属する事項一般的に公開するわけには参りませんので、そのようなものは第四条第二項におきまして、調査簿には記載をしない、しかし、そのような、たとえば特定の事業につきまして、当該工場のその部分のことは調査簿に書くわけには参りませんので、記載してはならないということにいたしておりますが、そのような個々のことをある程度集計をして参りまして、それがその地域内の一般的な立地条件として表わされる場合には、これは個々工場秘密ということにはなりませんので、そういう場合にはそういうものをやはり一般の閲覧に供し得ると思いますが、個々工場秘密事項をなまで記載して一般に利用させることは適当てないということでこの第二項を設けておるわけであります。  さらに第五条におきまして、工場事業場を設置しようとする者が、通産大臣に対して資料提供または助言を求めることができることを規定いたしております。大部分の場合におきましては、それぞれの工場立地を求める企業は、自分に最もいい立地条件を探す。その探すための資料の公開によって、その利用によって間に合うと思うのでありますが、しかしただ一般に公開されている資料だけではその判断がつきにくいというような場合に助言を求めることができることにいたしております。  第六条以下におきましては、先ほど第二条について申しましたような内容のことにつきまして、工場立地調査審議会を設けまして、ここで立地調査に関する重要事項調査審議をいたすことになっております。十人以内の委員で、この委員学識経験者ということで、行政機関職員等委員には予定いたしておりません。法律にも学識経験者ということになっております。しかし第八条におきまして、専門委員という形で、学識経験者のほかに関係行政機関職員専門委員という形ではこの審議会に参画するようにいたしております。  法律のおもな内容点はそのようなところであります。
  7. 田畑金光

    委員長田畑金光君) これより本案に対する質疑に入ります。
  8. 島清

    島清君 大まかなやり方については、おくればせながら時宜を得た法案だと私どもも思いますけれども、通産省は今までにもそれに類したことをやっておられたのでございますね。報告を見ますると、かなりの実績をおさめておられるのですが、あえてこの法律に依存しなければならないという、今までの調査をおやりになりましたその障害というのはどういうところでございますですか。
  9. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) ただいまお話がございましたように、本年度におきまして約千百万の予算をもちまして新規工業地区五十六地区についてすでに調査をいたしております。大体の資料もすでに整備いたしまして、本年度分としては整備できたところまでを、先ほど申しました工場立地指導室に備えまして、資料提供をいたしておるのであります。今回の、本年度スタートいたしました調査の過程におきまして、その調査自体に非常な大きな障害があるような、障害にぶつかったというあまり大きな具体例はございません。大部分のところが、それぞれの工場もその国の調査に協力をしていただいております。現実には都道府県に委託して調査をいたしておりますので、都道府県が現地で、それぞれの工場は、話せば大部分の場合は大きな障害にはぶつかっていないと思います。ただしかし、やはり工場等におきましては、若干の工場におきましては、たとえば自分のところでくみ上げておる地下水量等につきましてなかなか報告をしたがらないというようなことも若干あるように聞いておりますが、現在までのところでは、そう大きな障害はなかったように聞いております。しかし今回のこの法律によりまして、報告義務法律上の義務として課す、またそれに罰則までもつけておるという意味は、そのような報告についてさらに正確な報告を聴取したいということが一つとさらにもう一つの点は、従来この調査は、本年度とりあえず予算措置をもちましてスタートいたしたのでありますが、その調査方法なり調査地区の選定の考え方なり、そういう点は、実はまあ私どもが事務的に考え得る限度でやって、事実上やってスタートしたのでありますが、このような重要な基本的な問題については、やはり法律制度として審議会のようなはっきり制度化された形で、各方面学識経験者を入れて運用の正確を期して参りたい、この二点がこの法律の特に法律事項として重要な点になっておると思います。
  10. 島清

    島清君 今御説明通り、今まで実施をしてこられた範囲内においてはそう大した障害にもぶつかっていないと、ただ仕事を遂行していく上において制度化していきたいということのようですが、何かこれを見ますと、やはり平面的で、これからの国土総合開発との関係をどうするか、それから工場配置というものはこういうものでなければならぬといったような立体的な構想というものが当然に含まれておるようでございますが、この第一条からしまいまでの条文を拝見いたしましても、なるほど、これは平面的であって、今までに個々障害がなければ別にこういったような法律制定を必要としないような気がするのですが、その裏には、将来国土開発との関係において、日本の工場はこうでなければならぬと、ないしは工場配置というものは、たとえば資本主義制度の終局的な形として、都市にだけ工場が集約されて、いろいろそこの都市的な障害というものが起ってくるので、そこで工場というものはこれからは農村の方に進出をして、そうして農村工業化をはからなければならぬといったような構想などが立体的に含まれているかどうか、もしあるとすればその辺の説明を伺っておきたい。
  11. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) この法律内容自体には、今御指摘のございましたような点を具体的に盛り込んでおるわけですが、規定条文上ではそうなっておりませんけれども、本来、今御指摘がございましたように工場配置、また適地通産という形を実現いたしますのには、その背後にさらに基本的ないわゆる総合開発国土総合開発計画というような基本的な構想が当然必要になって参るわけであります。御承知のように、国土総合開発法経済企画庁を中心にいたしまして、関係各省がこれに相協力して運営をいたしております。そしてその結果、その国土総合開発計画がだんだん整備されて参りますと、その計画背景といたしまして、あるいはそれをベースといたしまして、それぞれの工場配置の形を求めていくわけでありますが、しかし現状におきましては、御承知のように総合開発計画というのは、ある広い地域につきまして文字通り総合開発というように、非常に広い視野に立ったものであります。しかし、工場現実に、企業現実自分工場適地を探そうといたしますと、それだけではとうてい自分判断がつきにくいわけであります。そういうような立体的な総合開発計画背景といたしまして、工場は、企業体なり企業の側からこのような調査資料と一緒に判断をして、工場立地を探すということに相なっていくわけであります。
  12. 島清

    島清君 あの既存団地に指定をいたしまして、既存工場などと関連をいたしまして調査を必要といたしまする場合には、工場側善意なる報告、これを期待しておられるようでございますが、善意なる報告に疑いを持って、どうしてもやはり工場に立ち入ってまで調査をしなければならぬというような事態がかりにあったといたします場合、その立ち入り権については何か明文化されてないようでありまするが、そういう場合はどのように対処されるつもりなんでございますか。
  13. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 先ほど申し上げましたように、現在の状態では、かりに既存工場がこの報告義務に違反して、罰則規定にかかるような違反をしなければならぬというような事態には、従来の状況から見て、ないと思います。またこの法律にも、企業の特に秘密とする事項秘密を漏らさないように配慮されておりますし、この程度条文の用意がございますれば、報告をしない、あるいは虚偽報告をする、それを防ぐためにその工場に立ち入って特別な調査をしなければならないというようなふうには、従来の状態から見て、ないと思いますので、ここには特別に立ち入り云々という条文を用意しなかったわけでございます。
  14. 島清

    島清君 工場事業場を設置しようとする者は、大臣に、その所管をする事項に関して必要な助言を求めることができるわけなんですが、そういったような経過をたどって工場が設置されたといたしまする場合に、それは国家側の方の無料奉仕ということになるわけでございますか。それとも工場設置者はそれに対して何がしかの調査費といいますか、何といいますか、それを国に納めることになるわけでございますか。
  15. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) この法律目的自体が、個々企業の便益をはかるということと同時に、工場適地誘導ということを目ざしているわけでございますので、特別の手数料とか費用等は徴収いたしません。
  16. 島清

    島清君 これは、こういったふうな法律をするということは、私何かおそきに失したと思うのですが、欧米諸国ではどういうふうになっておりましょうか。
  17. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) ほかの欧米諸国等においては、それぞれその国の事情等がございまして、形はいろいろございますけれども、たとえば、アメリカにおきましては、これは主として国防的な見地からであろうと思うのでありますが、工場分散計画を作りまして、その工場分散計画に従った工場立地誘導をしているようであります。またその誘導をするために、そのような工場分散計画を前提といたしまして、それぞれの立地条件等につきまして、いわゆるインフォーメーション・サービスという意味立地情報室というものを作っておりましてここで各企業は、自分工場立地についてのインフォーメーションを受けるという形をとっております。  それから英国でありますが、英国は、これも英国特殊事情であろうかと思うのでありますが、ある地域について失業者がよけい出てくるおそれのあるような地域、まあ産業構造が変ってきたりその他で、そういう事情が起りそうな、失業者多発地域というような地域につきましては、特に工業化を促進する意味で、そのような地域工場を持っていくような工場配置法制定があるようであります。そしてやはり同じくインフォーメーション・サービスをやる意味におきまして立地計画室というものを作って、これも一つのサービスをいたしておるようであります。なおそのほか西独、オランダというような国におきましては、未開発地域の促進というような意味のやはり工場誘導措置がとられておるというふうに聞いております。
  18. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私も今の島君のお話のように、何か取り上げているテーマは決して悪くないのだけれども、深みのない制度を作るような気がするのですが、従いまして、その疑問がありますので、二、三お尋ねしたいと思います。  大体こういうようなある一つ調査事項法律できめていくという一つの内閣の方針といいますかね、そういうものが、何かこう作為的かあるいは不作為的か知りませんが、だんだんでき上っているのでしょうが、たとえば、これは憲法調査会なんか性格は違うのでしょうが、あれは一つの単独立法でもって作っているのでしょう。ですから、これは中川政務次官にお尋ねしなければいけませんけれども、今後こういうものをどんどん作る御用愚なのかどうか、その点伺いたい。
  19. 中川俊思

    政府委員中川俊思君) 私の聞いておるところではそういう別に作為があってやっておるわけじゃないと思います。今後またそういうことをどんどんすべての企業といいますか、産業構造の上にやっていくというようなことはないと思うのですが、何かそういうような御疑念がもしあって、具体的ないろいろなものがありましたら御指示をいただきたい。
  20. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうしますと、もう少し具体的に伺いますが、今この法案が目途としているような調査というものは、実際に今までの執務は全然やられていなかったのか。やっているとすれば、個々関係各省でどういうところでどんな仕事を大体やっておったか。そういう散発的にやったものを総合する機関がなかったからこういうものを作るというのか、その辺の点を明らかにしていただきたい。
  21. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 今御指摘のございましたように、関係各省でもそれぞれの立場からその目的のための調査はもちろんやっておるのであります。たとえば、建設省におきまして河川の水量調査をやりますとか、あるいは農林省で農地に関しての調査をやりますとか、それぞれの目的でやり、そのような調査資料はあるわけであります。ただ、この法律で私が考えておりまする点は、そのような資料工場側が、自分工場立地を探す際に、そういういろいろな条件のものを組み合せて、企業の立場から、企業の側から工場立地を探す際の資料というものはまとまったものがない。従いまして、ここで先ほど御説明をいたしましたように、そういう意味資料収集という形で利用させていただく。さらにそういう資料だけでは工場立地をきめるわけには参りませんので、さらに団地ごと調査もやって、企業の側からすぐに工場立地の大局的な大まかな判断ができるように資料を作りたい。現在、今年度から予算措置をもちまして五十六カ地点の調査を始めております。来年度同じく千四百万程度予算を用意いたしまして、さらに六十カ地点程度調査を進めていきたいということを考えております。予算措置で進めて参りますその調査をこの法律制度化したいというのが……。
  22. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それでいいんです。  それで、今の御答弁を伺いますというと、この法案がなさっておるような調査は今まで各省の所管の範囲内でやってきたと、ところが、それをまとめて、企業家の相談に応ずるような、そういう集約的な取りまとめをする機関がなかったのだと、それで、これでやるんだと、こういうお話なんですが、そういうことであれば、これなら、ほかに例があるのですが、審議会というものを通産省の中に置かないで、総理府に置くと、こういうことでなければ、役所の縄張り争いの古い習慣からいったって、なかなか実効が上らないのじゃないか、私はその疑問を一つ持つのです。で、それは疑問として、今ちょっと出しておきまして、あとに問題を進めていきます。  まず、第一に伺わなければならぬことは、この法律ができることによって、この法律のための特別予算というものは獲得されるのですか。予算措置は、どうなりますか。
  23. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 先ほど申し上げましたようなことで、工場立地調査費は、本年度千百万円程度、来年度千四百万円程度予算には組まれております。さらにこの法律施行費といたしまして、法律が成立するということの仮定で、五百万円程度法律施行費が、来年度予算に予定されております。
  24. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうしますと、ただいまの規模を伺うというと、この法律施行に従事する審議会委員を含めまして、専任者というものは何名くらいになるのですか。それで、しかも実際に、調査の実務を行う人は何名くらい、その実務を行う人の諸経費なんというのは、どういうことになりますか。
  25. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 先ほど御説明いたしましたように、この調査は、都道府県に委託調査をいたしますので、本省のこのための特別の定員としては、五名程度が従事いたしております。各通産局には、合計で十九名程度のこのための専任職員が、まあこれだけをやっておるわけではございませんが、この仕事を担当するのがおります。
  26. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうしますと、なおさら私は、何か形式的な法律案のような気がするのですが、特に通産省のもとに、審議会を置くのだけれども、第三条等によって、企業者には報告義務を負わせているのですが、各省との協力の態勢をどうするかということは一向に出ていないわけです。そういう点に、私は一つの盲点があると思いますが、これは私の指摘している点が間違いかどうかは別として、私はそういうふうに直感しているのです。  この点を、もう少し明確にしていただきたいと思うことと、その点は文章から言ってもきわめてあいまいなんですね。たとえば第二条に、「通商産業大臣は、あらかじめ、調査をする地区調査方法その他調査に関する重要事項」、これはどういう事項か知らぬけれども、「重要事項について工場立地調査審議会意見をきいて、工場適地調査」という具体的な行為を行うと、こう書いてある。そうすると、審議会というものは、通商産業大臣の諮問委員会みたいな傾向になっていますね。そうかと思うと、第六条の第二項には、「工場立地調査審議会は、この法律によりその権限に属させられた事項調査審議するほか、通商産業大臣の諮問に応じ、工場立地調査に関する重要事項調査審議する。」という自主行為になっているのですよ、具体的な。ですから、二条の調査審議会の権限とこれと、何か合わないような気がする。ですから第六条の第二項の「権限に属させられた一項」というのは、一体何なのか。これが私どもにはさっぱりわからないですね。ですから審議会の性格と機能というものがこれは、きわめて不明確なんです、この法律では。  それで第十条には、「審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、通商産業省令で定める。」とありますが、そういう不明確なものをわれわれが、この形式法案について、白紙委任するのだったら、何ら意味がない。ですから、第十条の省令という意味構想というものを話して下さいませんか、こういうことに、結果はなると思うのですが。
  27. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 今お話のございました六条なり、あるいは第十条の書き方でございますが、これは審議会の書き方として、いろいろあるのでありますが、こういう例えもあるということで、こういう書き方になっております。  内容は、ここにあります第六条の第二項の書いております意味は「この法律によりその権限に属させられた事項」というのは、第二条の第一項におきまして、「調査をする地区調査方法その他調査に関する重要事項について」「審議会意見をきいて、」と書いてございます。この「審議会意見をきいて、」というのが、この「権限に属させられた事項」というので、まあ審議会の形の書き方としては、こういう例えが多いのであります。  それから第十条も、これも、審議会については、やはりこのような例文が多いのでありますが、ここで「通商産業省令で定める。」というのは、書いておりますように、組織、運営のこまかなことについて、省令できめるというのでありまして、審議会の性格、内容等は、もちろんこの六条から九条までにうたわれている組織、運営について、たとえば運営についての議事規則を、どうするというようなことを通産省令できめることになっております。
  28. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 その、今の御答弁じゃ、どうもなんですよ、最近の法律条文というものは、なるべく平易でわかりやすく書く、回りくどく書かないというのが常識ですよ。ところが、今局長説明でお聞きいたしてみると、第二条と第六条の第二項を読んでごらんなさい。とても、そんなようには理解できないですよ。たとえば第二条の方は、「権限に属させられた事項」かどうか知らないけれども、とにかく、これこれしかじかのものについては、「審議会意見をきいて、」というのだから、通産大臣は、諮問機関である「審議会意見をきいて、」工場適地調査通産大臣みずから行うということです。  第二条は通産大臣が行うということですよ。ところが、第六条の第二項の方は、「属させられた事項」を審議会の方で調査するんでしょう。審議会を置くんだから、審議会調査をするほか、通商産業大臣の諮問に応じて、今度は応じて工場立地調査に関する重要事項調査審議するんだから、これは行為を行うんですよ、意見を聞くんじゃないのですね。
  29. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) この法律の、ここに書いております調査審議というのは、第二項の後段に書いてあります調査審議も、その前段に書いてあります調査審議も、調査をみずからやるというのではなくて、審議会が、そのような調査に関する重要事項について審議をする。その審議をする前提として、立地条件そのものを調査するのではなくして、審議をするために、いろいろ調査をやるという意味で、審議会の法文の書き方としては、大部分の場合が、調査審議するという言葉でいっておると思いますが、前段、後段とも、審議会自身が立地条件自体を調査するという、そういう意味ではないわけであります。
  30. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そこで、そうなると、ますますわからなくなるんだが、いかに工場立地の権威者でも、具体的なポイントをきめて調査するわけでしょう。  その場合に、第二条によって調査する地区は、これはわかるでしょう。地図を見ればわかる、調査方法ですね。山あり、川あり、谷ありで、わかるだろうと思うのです。そういうことについて全然調査能力を持たない、調査行為を持たない審議会意見を、まず抽象的に聞いて、そうして通商産業大臣が、ここで調査するというわけでしょう。そんな意見というものは、権威がありますかね。
  31. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) この法律におきましては、「調査をする地区調査方法その他」とこう簡単に要約して書いておりますが、工場適地を探しますのに、どういう条件が必要であるかということは、これは工場立地の基本論として、いろいろ見解や考え方があるわけでございます。  調査項目をどういうふうにするか、またその項目ごとに、どういう調査方法がいいか、また、調査地区を選定するのに、どういう考え方で調査地区の選定をやるかというような基本的な問題について、審議会学識経験者意見を聞いて、審議をしていただきたい、こういう意味で書かれておるのであります。
  32. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これは、どうもわかったような、わからないようなことだね。  それじゃ、もうちょっと方向を変えてお伺いしますが、これは、中川さんにお伺いますが、政府は、今度の国会に、工業地帯開発公団法案というものを提出される予定はありますか。
  33. 中川俊思

    政府委員中川俊思君) あれは御承知通り、出す予定でおったのですが、建設省その他農林省等との調整がつかなかったのです。
  34. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 いや、そうじゃない。大蔵省が反対した。
  35. 中川俊思

    政府委員中川俊思君) そういう関係各省との調整上の問題で、今、まだ出しておらないのです。
  36. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それで、出されるのですか。
  37. 中川俊思

    政府委員中川俊思君) いや、まだ、きまっておりません。調整がつくかどうか、予算措置もありますし。
  38. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それは、予算措置がつかないので、おそらく今国会には出さないだろうというのは、私は風のたよりで聞いておりますが、この法案とは、だいぶ問題があるでしょう。この法案を近く出さぬということであればいいのですが、大蔵省が、予算措置に対してOKを与えたときに出すということであれば、この法案の第四条には、きわめて明確に書いてありますね。読んでみますと、これは体裁が整っておって、公団の行う事業の基本となるべき計画というものがあるので、それが閣議の決定を求めて、この基本となる計画は、閣議決定事項なんです。  それで、基本となる計画とは、どういうものであるかというと、事業を実施すべき地帯及びその開発目的、二、地帯ごとの主業用水造成の規模、三、地帯ごとの工業用水に関連して整備すべき交通事業工業用水規模」、こういうものがあるのです。これは、はっきり閣議決定しなければならないもので、これは大事なことでしょう。これが、もし将来できるとすれば、これが一般制度法であって、その下に、こういう具体法があって、こちらの方がはるかに内容もできておって、重みがある。これは、おそらくナンセンスだと思います。  その辺の関連はどうなりますか。
  39. 中川俊思

    政府委員中川俊思君) ちょっと似通っているようですが、内容は違うんですよ。似て非なるものです。  具体的な問題は、局長から答弁させます。
  40. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 今のお話の工業地帯開発公団の構想は、通産、運輸、建設三省を中心といたしまして立案をいたしました。そして、来年度の財政投融資の資金ワクの要求として、大蔵省と財政投融資の要求で、最後まで復活要求で折衝いたしたのでありますが、現状では、まだ、そこまで財政投融資をつけて、今すぐ踏み切ることは早い、もう少し検討したらどうかというようなことになりまして、財政投融資のワクがついておりませんし、資金の予定がございませんので、法律だけ出すというわけには参りませんで、今回の提案には考えられていないわけでございますが、その方の法律は、御承知のように、今御指摘がございましたように、国が財政資金を相当投入して、新たな工業用地の造成をやる、国自身が仕事をやるのでありますから、その国自身がやる用地を造成するについて、国が、どこにどういう用地を造成したらいいかという判断がまず前提になり、その計画が前提になるし、法律案にも、そのように明確に番いてあるわけであります。  こちらのこの法律の方は、この内容で御説明をいたしましたように、工場立地を増加し、その決定なり判断をする最終決定は、あくまで企業の側にある。その企業が、自分の最も合理的立地を探すために、企業自分判断して、自分で決定するんだけれども、それについて政府が、なるべく客観的な公正な資料提供し、また必要なる助言をして、まあサービスをしていこうという建前でございますので、これの背後には、総合的計画があるのでございますけれども、これ自体に、あまり内容をうたい込んでないという関係はあると思います。  両方の法案は、直接には、関係はございません。
  41. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それは、両案の説明用の答弁でありまして、あなた、常識的に考えてごらんなさい。こういう法律を作って、工業用水調査をするんですよ。  その場合に、小さな中小企業の二十人や三十人の建家を作るような工場のことは、これはおそらくやらないと思う。相当大規模のものでしょう。こちらの、国がやる工場用地の造成は、大きなものでしょう。臨海工業地帯なり、山にしても、これをやることは、あなたが、どんな説明をされても一緒になりますよ。それを否定されれば、もう少し論争するが、一緒になりますよ。離れたものがくっついてしまう。  その場合に、こっちの方は、小さな企業にまかしてあるから、ただ調査した資料提供するだけだとおっしゃる。しかし、こちらのねらっている点は、日本の工業地帯というものが、だんだん少くなってきて、大都市に集中してきている。どこか適当な所に、新しく工場地帯を設けるように、国がみずから抜きん出てやらなければならぬ。これは無償提供するというわけではありません。公団だって、有償提供しているんだから、臨海工場用地を造成するか、あるいは山をくずして平地にするか、何かしらぬが、とにかく工場が建てられるような用地を造成して上げよう、そのためには、あらゆる調査が要るんですから、その調査もやるということです。  だから、あなた、両法案説明用の答弁をされているけれども、われわれは常識的に、そんなふうに二つを分けるわけにいきません。私は、そういうふうに直感するんですが、私の考えが間違っているかどうか。
  42. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 私が先ほど申しましたのは、法律の形の形式論だけで申し上げたと思いますが、実質は、今御指摘通りであります。  工業地帯開発公団法の内容は、公団の組織と目的とを響いておるわけでございますから、これは、造成計画は当然その事業内容目的として、なければならないわけであります。そのような造成計画は、既存の造成計画もあるでありましょうし、また今後造成計画を立てていくのに、工場側は、一体どういう所に、どういう土地を求めているかという調査が前提になります。その意味では、運営として、つながって運営されなければならないと考えます。
  43. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それで私の意見は、これは、私、不必要だというわけじゃないのですよ。現在の行政能力でできることなんですからね、これはどんどんおやりになってけっこうなんです。  ところが、今急ぐことは、工場田地の造成の方を急いでいるわけでしょう。実際、問題は工場用地ですよ。三十万坪、四十万坪まとまっている土地なんというものは、そう簡単にころがっていないから、これは何とかして作り上げなければならぬというので、具体的な問題になっておる、そのときに、今、予算は幾らでもないからいいようなものだけれども法律の権威からいえば、こちらはただ、何か格好がつかないからまとめておきたい、というような意味法律にとれるのですね。こちらは実際に今産業界が要求している希望にぴったり合うような要求なんです。ですから、重点皮を置いてやるとするならば、こういうことにまた審議会を作って、何かやるよりは、こちらの方に専心して、全力をあげていって、一カ所でもニカ所でもいいから、予算措置を講じて着手していくことが必要じゃないか。こういうことを意見として持っておるから、今のような質問が出てくるわけです。  その点はどうでしょうかね。
  44. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 私どもの考えも、御指摘通りであります。  ただ、先ほど申しましたように、財政投融資の折衝過程におきましても、来年の財政投融資が、原資に制約があった関係におきまして先ほど申し上げましたような経過をたどったわけであります。現状では、御承知のように、臨海工業地帯造成等は、各地方公共団体がやる場合が大部分であります。地方公共団体が起債のワクを受けてやっております。  従いままして、そういうことを非常に大きな計画に基いて全国的な造成計画ということでやる場合に、公団組織というようなものが考えられるのでありますが、とりあえず幾つかの地点をやろうという意味で公団を発足さすには、今作るのでは、公団の格好もつきにくい。その程度なら、従来の起債で、幾つかの点はやっておけばいいじゃないかという議論にもなります。相当な財政資金のワクがとれないと、公団法の提出というわけにはいかないということで、まあ私どもの気持からいいますと、ぜひそこまでいきたかったのでありますけれども、そこまでできなかったという実情であるわけであります。
  45. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それで政務次官、ほんとうは、これは大臣に、科学技術庁の長官でもあるし伺いたいと思うのですけれども、実際に、たとえば、今、日本の国内の財政投融資で、最右翼で仕事をしている電気事業を見て下さい。  あの電源開発法という基本法があるでしょう。あの電源開発法というものは、何も日本発送電の仕事を規制しているだけの法律ではないわけです。全国にある莫大な水利地点を全部調査し、それに足りない火力関係調査も合せて、電源開発の基本計画というものを——これは審議会の会長は、総理大臣ですからね。これが決定をしていく。そうして民間の電力会社にやらせるもの、日発にやらせるもの、その他都道府県に開発をさせるもの、それぞれ手分けして、電力需給の安定を得るようにやっていく一種の法律なわけです。法律というか、産業開発法なんですね。ですから、ああいう意味のスケールと権威のあるものであれば、私は意味があると思う。  従って、あれは電源開発法なんだが、工場地帯開発法というものがあれば、こんな工場地帯開発公団法なんというものでなく、工場地帯開発法というものを作って、そうして、今のこれの趣旨とこれの趣旨を一緒にして、そうして、その中で国が直接やるものについては、開発公団というものをこしらえてやるのだ、というような工合に、ああいう思想でいった方が、ほんとうに、何というか、実効が上るのじゃないかと思う。そこまでの構想はお持ちにならなかったのでしょうかね。
  46. 中川俊思

    政府委員中川俊思君) 大臣じゃありませんから、御不満かしりませんが、私も同感ですよ。実際もう、あんまり小細工をやらないで、やるのなら一つの柱を立ててやるべきだと思います。しかし、御案内の通り予算に制約されますし……。
  47. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 予算、ついてないでしよう、何も。
  48. 中川俊思

    政府委員中川俊思君) ついておりませんが、先ほど問題になっておる造成公団の問題なんか、これでもって、今おっしゃるように電源開発法みたような大きなものにして、そうしてこんなものは、ほんとういったら、その中でも、私はやってやれないことはないと思うのです。  だから、そういうものをやるべきだと思いますが、今申します通り予算的措置で、なかなか折り合いがつかない、こういうようなことで、かりにその今の造成公団法というものが、将来できても、これが、じゃまにはならぬと思うのですな。それができたとぎに、相当の資料になると思うのです。だからまあ、お説のように工場立地工場地というものはだんだん日本は不足しておりますから、大きな工場を建てようとすれば、なかなか容易でございません。そういうような見地から、将来こういう方向へ向っていかなければならぬことは、これは万人の認めるところだろうと思いますし、どうせ造成公団というものも、ことしは間に合わないかしりませんが、やるようになるだろうと思いますから、そういう場合の資料提供という意味からいっても、大して金のかかることでもなし、大いに将来役立つことだと思って、この法案を出したのだろうと思うのです、私は。事務当局は、そうじゃないかと思うのです。  どうぞ公団の予算を、ことしだめだったら次の機会には一つやれるように、社会党の諸君からも、一つ大いに応援していただいて、早くこれが計画にのるように御協力願いたいと思います。
  49. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今の岸内閣が、日本の産業立国ということについて、基本的にどういう腹がまえがあるかという判断をする一つの試金石なんですよ。日本だって、こういう生活水準でおるわけではないので、国民総生産にしたって、今の倍も、三倍も、四倍にもふやしていかなければならぬ、そうすれば、やはりイギリスや西ドイツと同じように、産業立国以外にないわけです。そういうことであれば、電源開発のようなことだけは、あれだけしっかりした組織でもって、内閣が責任を持ってやることになっているのだから、電気だけ作っても意味がないはずだ、やっぱり工場地帯の開発というものは、都市集中の弊を改めながら全国的に適当に工場を分布させて、そのためには造成をしていくという、そういう意味産業の日本の将来に占める重要度というものの根本認識があれば、こういうつぎはぎのような法案を作らなくたって、ここまで目が向いてきたならば、工場地帯開発法というような、りっぱなでかい法律を作って、総理大臣みずから責任を持って、そうして国みずからが団地の開発もやれば、それの払い下げもやるわ、あるいは普通の民有地に対する工場の適否の診断、あるいはそれに対する相談にも応じていく。そういうような総合された法案を作られてこそ意味があるので、こういう格好で作られても、何か深みがない気がするのだが、実際問題として、どうですか。
  50. 中川俊思

    政府委員中川俊思君) お説、まことにごもっともで、私が総理大臣だったらそれやります。そう思うのです。  しかし、なかなか簡単に——いろいろな先ほど申します通り予算的措置なんかのために、はばまれておるのだろうと思いますが、しかし通産省としても、私ども、よりよりそういうことを実は話をしておるわけです。あんまり小細工をやって、ちゃちなものをやるよりかは、一気に大きくもっていく、ことしできなかったら来年、とにかくそれに全力を注ぐべきじゃないかということを、いつも話をしておるわけです。全くもうあなたのおっしゃる通りなんですよ。  しかしそうかといって、それならこれは全然むだかというとそうでもないと思うのです。先ほども申します通り、将来、私はできるようになると思います。できた場合に、これは一つのデータとして役立つと思いますから、いろいろ御不満はありましょうが、一つ、まあよろしく通して下さい。
  51. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 不満じゃないのですよ。不満じゃないけれども政府構想が少しみみっちいではないかということを私は言っているのですよ。  たとえば、この前、工場用水の汚濁のあの法案をやったときに、私が指摘したのは今、工業用水のことがやかましく言われておりますがね、この何ですよ、世界的に工場の多い日本だと言われているけれども、もう工業用水の総勢というものは、よほど手を打たなければ、これは先が見えていますよ。これは通産省にあの法案を通すときに、私は、よく調査をして、この委員会に報告されたいと言ってあるのだが、そういうことであれば、今工場を作るのに、工業用水が何としても必要だ、特に近代工業はそうだということになれば、たとえば静岡県でいえば、天龍川とか、大井川とか、こういう大きな川でまだ工場のたくさん集っていないところがあるでしょう。そういうところに工場地帯をどんどん作っていく。これは民間にやれと言っても不可能なことですからね。政府が大きな工場地帯の造成をやって、さあここに工場をお作りなさいとお膳立をしなければうまくいきませんよ。従って、全体的な工業用水の分布状態から調べて、工場地帯の開発というものをやるということでなければ、これはできないのですよ。  そういう意味で、私は別に反対はしていないのだけれども、今通産省の説明を受けている程度のことをやっていたのでは、百年河清を持つようなもので、なかなかうまくいかないのじゃないか。やっぱりこういうことをどうせやるならば、抜本的な構想のもとに、一年やそこら、おくれたっていいのだから、抜本的な構想のもとに、出直すことが必要ではないか、こういうことを私は力説しているのです。
  52. 中川俊思

    政府委員中川俊思君) 全く同感ですよ。同感ですが、私先ほど申します通り、どうせ将来、そういうものはできると思います。来年になりますか、再来年になりますかしりませんが、そういうときにこれは必要ないかというとそうではないと思うのです。やっぱり基本的な法律に基いて、基本的なものの資料を整えておくことはむだではないと思いますから。  それから、その造成公団も、御承知通り、初年度十二億も財政投融資で金を要するというようなことから、一気にできなかったのだと思うのですが、しかし私もまあ常にそれを考えておりますし、今おっしゃるようなことを考えておるのですが、まあ政治の貧困でしような。後藤新平みたいな男がおったらやるかもしれませんよ。(笑声)  とにかくそういうようなことで、いろいろな意味一つ御協力を願ってやっていってもらいたいと思うのです。
  53. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それで、今の問題については、政務次官も、別に私の意見に異議がないようなんだけれども……。
  54. 中川俊思

    政府委員中川俊思君) 同感です。
  55. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そういう腹がまえで、とにかく体制を整える努力をせられるかどうかということを承わっておきたいと思うな、私は。これはほんとうは大臣が答弁すべきことなんだがね。
  56. 中川俊思

    政府委員中川俊思君) 私でいいですか。
  57. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 大臣は来週、この次の審議の際に出席願うことにしまして、とりあえず中川政務次官から御答弁を願っておきます。
  58. 中川俊思

    政府委員中川俊思君) 栗山さんのおっしゃる通りです。大いに通産省としましても、また政府関係機関といたしましても、そういうふうに努力をしたいと思いますし、また、私どもも、微力ではございますが、そういう方向に持っていきたいと思っております。
  59. 小幡治和

    ○小幡治和君 関連……。  今、栗山委員のいろいろの御意見、私もある程度賛成できるのですけれども、実は、この間関西の方をずっと視察しまして、そうして富士製鉄の広畑工場を見てきた。そのときに、あそこの幹部といろいろ話をしましたときに、各製鉄工場というものが、これは相当鉄鉱石を入れなくちゃならぬ、あるいは石炭を入れなくちゃならぬというので、それぞれ港湾の整備というものをやっておる。だけれども、今度は、そんなものが、まあよほど大きな規模でもってやっていかなければならぬということになると、それぞれの製鉄工場に港湾設備を完備していくということになると、どえらい金がかかる。それで日本に、数カ所なら数カ所そういう外国からの鉄鉱石を入れる一つの海湾というものを作って、そこに共同して集積しておくということ、そうして一つ一つの鉄工場に、どえらい金を使って、水深どれだけの、何メートルかの、二万トンや三万トンの船が入るようなものを作ることのむだを省くということを考えていかなければならぬというような話もあったわけです。  今度の工場立地調査法律案で、大本として、中途半端な工場立地というものをやらせて、各会社というものが中途半端なそういう製鉄所なり何なり作っちゃって、そうしていくようなことであっては、これはやっぱり日本経済産業全体からしてむだだというふうなことも考えられる。政府としては、やっぱり日本全国の工場立地適地というものを見た場合に、将来の鉄鋼業なり、あるいはそのほかのいろいろな産業の拡張計画なりを頭において、そういうような一つの指導的な、各工場にまかせないで、そうして統制をしてやっていくような、何か考えを持って、この立地調査の結果というものを指導していくというふうなことの程度は考えておられるのですか。  今、栗山さんは、それよりももっと大きなところを考えておられるようだけれども、その点どうですか。
  60. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 今、お話のございました鉄鉱石の基地を作って云々という構想は、御承知のように三ツ子島にそういう集積地を作っておる構想があるわけでございます。その辺のところは、工場立地の問題として、非常に重大な問題でありますが、今後の検討に待たなければならないと思います。  それから全体といたしまして、大きな工場建設というようなことになりますと、それぞれの企業としましては、おそらく社運を賭してやるような重大な問題になると思うのです。そういう際に、現在の状態で、現状において、まあ政府と申しますか、役所側で、どこどこの地点に来なさい、あるいはどこどこの地点に行ってはいけませんというようなことを、いきなり突きつけたような運び方というものは、よりむずかしいし、ただ、むずかしいというだけでなくて、現在までの立地調査では、そこまでの断定を下すのにはまだわれわれ自身の立地調査が不十分な状態にありますので、まず、そういう点は、客観的な公正な資料を整備した上で、だんだんと、そういう方向に考えていくということにならざるを得ないのではないかと思うのです。
  61. 島清

    島清君 関連の関連……。  今の小幡君は、調査に行った結果、そういう話が出たということでしたが、あの当時、小幡君がその意見を出されたので、私は奇異な感で聞いておったのですが、大体、外国から持って参りまするときには、船で持ってきた方が一番便利でそれを陸に積んでおいて、さらに陸上運搬するということは、国土の狭小である日本からすれば、どうもやっぱり日本の条件を無視した御意見だというふうに、そのとき私、拝聴しておったのですが、しかしそのときには、せっかくお客さんの前ですから、私の意見を差し控えておったのですが、しかしながら、調査団で行って、その結論的なことで、そうであったということについての御質問であれば、やっぱりこいつは、私は意見を異にしておったのですが、その点は調査に行って、その現場で経営者の諸君とわれわれと熟談をして、その総合的な結論が、そうであったからというような御質問の要旨は、大へんにまずいと思うのですね。その意味において、私は今の松尾局長がお答えになった答弁、非常に遠慮しながら答えておられたのですが、非常に名答弁だったと思っておるのですがね。
  62. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それで局長さん、ここで何ですか、役所の方で、第六条の「この法律によりその権限に属させられた事項」だとか省令だとかいうのは、大体もう草案は、できておるのですか。そういうこの法案の中で、抽象的に委任事項のような工合になっている事項は……。それが、もしあれば、一つ出していただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  63. 松尾金藏

    政府委員松尾金藏君) 一応の案は、すでにございますので、次の機会にでも、御配付したいと思います。
  64. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それから、この機会に私は、やはり工場立地関係あるのだが、最近、非常に問題になっている新潟の天然ガスに関係する地盤沈下の問題について二、三お尋ねしておきたいと思います。  天然ガスの問題は、たまたま今新潟が、すでに古い歴史を持っているので問題になっておりますけれども、これは新潟に限ったわけではない。関東にしても、中部地区にしても、あるいは北海道地区、あるいは関西地区にしても、天然ガス資源の探鉱というのは、今ずいぶん行われておるわけですから、方々に資源が順次開発されてくる場合には、これをやはり国土資源として利用していかなければならぬと思うのですよ。  そういう見地に立っているときに、一審先輩格である新潟の地盤沈下の問題が、天然ガスを採取することに直接原因がある、こういうようなことで今問題が起きていることは、私非常に残念だと思うのです。で、すでに去年の暮から天然ガスを利用しておった新潟の工場地帯のガス供給がストップをしておりますし、また、現在もストップを順次しつつあるのですね。従って現状が、一体どういう工合になっているかということをまず伺いたいことが一つ。  それから、まあ時間が十分ありませんから、一括して要点だけお尋ねしますが、今、その天然ガスを順次ストップさせつつあるのですが、これは、行政指導でやっておるのか企業者の自発的行為によって行われておるのかということが第二点。  それから、まあいずれの場合にしても、地盤沈下というものが、天然ガスの採掘に直接関係があるという断定の下にやられておるのか、あるいはまた、地盤沈下の原因がよくわからなくて、それをリサーチする一つ方法として、一時ストップをしているのか、その関係……。もし、そういうことであれば、いつごろになれば、工場が再開されるのか。地盤沈下が、全然天然ガスとは無関係な現象で起きておるという、何か科学的な探究の方法が、実際問題としてあるのかどうかということですね。天然ガスではないのだ、しかしほかに何か、つかめない原因がある、しかし地元の心理的な市民の気持としては、原因がよくわからなければ、やはり天然ガスだと、こういうことになって、工場の有用な資源が利用できないということになるということならば、国家的な損失が大きいわけです。  私もきのう、新潟に工場を持っている、実際に天然ガスを使っている工場の人に会ったのですが、私は、実はあした、これを質問するので、ちょっと話を聞きたいのだがと言ったら、どうも、もうめんどくさい、それに、実際言われているように、天然ガスで沈下するということであれば、工場自体が水にひたったのでは、元も子もなくなるから、もうとめてもしようがないじゃないかということから、非常に動揺していると思うのですが、その点を明確にしていただきたい。
  65. 福井政男

    政府委員(福井政男君) ただいまの栗山先生の御質問につきまして私から、天然ガスの所轄を鉱山局がいたしておりますので、まず私から御説明申し上げます。  新潟の天然ガスの開発状況でございますが、御承知のように天然ガスは、燃料用として従来使われておりましたのが、最近化学工業の原料といたしまして、非常に利用されて参っておるわけでございまして、この関係から、特に終戦後新潟地区を初めといたしまして秋田、この両地区が、最も大きい地区でございますが、そのほかに、千葉がございます。そういったところで、非常に化学工業の原料として使うということで、化学工業が非常に発達して参ったわけであります。そういうことで、全国の生産量も急激に伸びて参りまして、昭和二十五年の生産量は六千九百万立米でございましたものが、二十八年には一億一千万立米になり、二十九年には一億四千万立米となりまして、さらに三十年には一億五千五百万立米と上昇して参っております。これが特に三十一年、三十二年に急激に生産量がふえまして、三十二年では二億四千三百万立米、さらに三十三年には三億六千七百万立米というふうに上昇して参っております。まだ、私どもこの天然ガスの利用は、世界各国の最近の情勢から見まして、大いに全国的に開発して参らなければならない、かように考えて、いろいろ施策を研究いたしておりました矢先に、新潟地区の天然ガスと申しますか、地盤沈下問題が、大きく問題になって参りました。かようなことに相なっております。  全国の生産量の中で占めております新潟県の生産比率を申し上げますと、大体、六割から七割という生産状況になっておりまして、三十年についてみますと、約七〇%でございまして、一億七百万立米でございます。三十一年は七三%になっておりまして、三十二年も同じく七三%でございます。そういうようなことで、大体六、七割のところでございます。  さような状況になっておりまして、現在、地盤沈下問題が非常に激しくなりまして、現地で、いろいろガス業者が生産をとめまして、この原因究明に協力をしておるわけでありますが、原因究明の方につきましては、御承知のように科学技術庁が所管をいたしておりまして、科学技術庁の資源調査会に、この新潟地区の地盤沈下の原因究明の特別委員会が設置されておるわけであります。同時に、現地の被害状況を、ともあれ応急的に復旧する必要がございますので、経済企画庁の方に応急対策委員会が設置されまして、ここで各省の復旧予算を総括的にとりまとめるとか、そういった応急対策の関係のとりまとめをいたしております。現地の方で現在試験をいたしておりますのは、運輸省の所管いたしております観測井が一本、従来からございまして、ここで資料をとっております。ただ、問題がやかましくなって参りまして、一カ所の井戸だけで観測して参りまして、そのデータで、全体を判断することは、全く新しいケースでありますだけに、世界的にも初めてのケースでございますだけに不十分ではないかということで、昨年、三十三年度の予備費で、さらに井戸を掘るような措置をしたようなわけでございまして、これは、通産省が所管いたしまして、現在井戸を三本、別の地点に掘っております。この井戸も、今月一ばいから来月にかけまして、大体完成をいたしまして、観測し得るような事態になる手はずでございます。  現地のガス業者の方は、どういう状況であるかと申しますと、非常に問題がうるさくなりまして、特に企業者の方では、事業をやっております工場会社等で、これは新潟鉄工でございますとか、あるいは昭和石油でございますとか、北越製紙でございますとかいう会社でございますが、これは一つの被害者の連盟を作っておりますし、それから住民も、それぞれグループに分れまして、現在四つばかりの被害者の団体ができております。この被害者の団体が、市民大会をやるとか、あるいはまた政府当局に対して、原因と思われるようなものは、即時に全部とめてほしい。これは天然ガスの採掘も、そういうふうに嫌疑を受けておるようだが、あるいはまた港の浚渫も、そのようだしということで、毎日の沈下に対して原因と思われるようなものは、すべて排除するような措置をしてほしいというような要請を出しております。天然ガスの業界といたしましては、そういったような事態が非常に騒がしくなっておりますので、沈下状況の非常に激しい地区につきまして、昨年の十一月に、コスモス計画と申しまして一定の地域限定いたしまして、その地域内の井戸を逐次ずっと自発的にとめまして、政府の原因究明の研究に対応して協力して参りましたわけでありますが、それだけでは不十分だということで、今月になりまして、最も沈下の激しい地区でございますが、井戸の数にしまして、約六十本でございます。  これだけを全部、もう採掘をとめてしまうという決定をいたしました。  これは、先ほど先生の御質問に、自発的であるかどうかという御質問がございました第二点になるわけでございますが、業界の全く自発的な措置として六十本の井戸をとめることになっております。これは生産量にいたしまして十三万五千立米、新潟の生産量に対して約二割程度になるわけでございますが、これだけの井戸をとめるということで発表いたしたのでありますが、ただ、この中には、とめる会社としましては、帝国石油その他、生産業者としては四社があるわけでございますが、使う方の、需要者が、相当数多くございまして、工場としましては、被害者でありますと同時に、天然ガスを使っておるわけでありまして、これが御承知のようにエネルギーとしましても、石炭なり重油と比べましても、非常にコストが安くつくということで利用されておるわけでございますが、そのほかタウン・ガスにも使われておりますし、バスにも使われておりまして、新潟の交通機関は、全部この天然ガスでまかなわれておるというような事情でもございます。  これをとめますと、この六十木につながっております工場のエネルギーの供給として、直ちにとめるというと、あとの対策の手当がつかずに困るというような面もございまして、消費者側の、つまり工場側と生産者側と、円滑にその切りかえのできるように打ち合せて実施する段階になっておりますので、現在では、約四十本程度の井戸が現実に停止され、あとの二十本程度のものが、逐次工場側と打ち合せが完了次第とめられていく、こういう状況になっております。この措置は全く天然ガス業者の自発的なものでございます。  それから、天然ガスとの関係が明白であるかどうかという問題でございますが、このことは、先ほど来申し上げておりますように科学技術庁の資源調査会に特別委員会を作りまして、ここで、わが国のこういった方面の最高権威者が御検討されているわけでありまして、この方は、科学技術庁の資源局長から、あとで御説明があると思います。従いまして私の方としましては、直接結びつくというような、天然ガスの開発と地盤沈下というようなものが、どういうふうな関係にあるかというようなことは、通産省としましては、科学技術庁の御検討の結果を待っている、かような段階でございます。
  66. 黒澤俊一

    政府委員(黒澤俊一君) ただいま鉱山局長からお話がありましたが、科学技術庁資源局長とし補足説明をさせていただきます。  どういうことが地盤沈下の原因になっているかと申しますことにつきましては、現在のところ、次のような説がございます。  まず第一が、これは非常に長期的な話になるのでございますが、現在地球がだんだんに暖かになる方向にある。そのために北極、南極、あるいはヒマラヤというような所で雪が解けまして、その解けた雪が海に出てくるので、だんだん海面が上っている。世界全体として海が上りつつあるので、陸地が沈下しているように見えるのではないかという説。第二は、日本海沿岸は、全般に沈降して太平洋沿岸が上り、日本が、だんだん太平洋岸の方に移動するというとおかしいのでございますが、そういう傾向があるのじゃないか、これが一般の通説と申しますか、うわさみたいなものでございます。第三は、新潟地方のみの局部的の地殻の変動、地殻の変動と申しますのは、これは、人間がどうする、こうするという問題でなくて、ほんとうの天然現象という意味の地殻変動。第四番目は、地殻変動と申しますと、いろいろな地層が全部動くのでございますが、いろいろの地層でなくて、新潟の沖積層だけが自然に収縮するのではないか、こういう四つのいわゆる天然現象説でございます。  それから、次にございますのが、人為説でございまして、港湾浚渫に伴って、何かの異変が起ったのではないか。つまり、原因が港湾浚渫にあるのではないかという説が一つ。それから、原因は天然ガスの採取にあるのではないか、つまり天然ガスをとりますときに、地下水を汲み上げますので、それが原因になっているのじゃないかという説。それから、なおもう一つ、最近になりまして、あの地区で、ほかにも何か水脈に移動のあるような現象が起きたのではないだろうかということも取りざたされているようでございます。  それで、現在までのところ、これに対して、どういうところまでいっておるかと申しますと、いずれも非常にむずかしい問題なんでございますが、天然現象では、まあないらしい。と申しますのは、さっき申しましたように、地球全体が暖かくなって、氷河が溶けて、それで海が上るのだということになりますれば、地球上全体、どこでも海が上ってきて、だんだんにまあ地盤沈下と同じような現象が、世界至るところにできるのですが、どうも、そうではないらしい。それから日本海沿岸が下って、太平洋岸が上るというように、日本全体を二つに分けて裏と表という問題でも、これはないようでございます。  それで、現に調査してみましたところ、日本海沿岸の北の方は、山形県の酒田、それから鼠ヶ関、それから新潟県の柏崎、冨山県に参りまして伏木、この五つの港を調べてみましたところ、ほかの四つの港は、潮の高さがあまり変っておらぬのに、新潟だけが潮が高くなっておるということは、新潟だけが沈下しているので、ほかは沈下していないのだろうと、そういうような事象が観測されましたので、まず新潟地方のみの局地的の変化であろう。ただ、これが地殻変動であるかどうかということにつきましては、どうも地殻変動にしては、大き過ぎる。と申しますのは、ほかの地区の、いわゆる地殻変動と申しますのは、大地震があって、ぐっと上るとか、あるいはぐっと下るとか、そういうような地震のような変化、あるいは火山のような変化がない限り、あまりなかった。それで新潟には、そういうことが、ちょっとございませんので、そういうことでは説明ができない。じわじわと下るという自然圧密というようなもの、あるいは地殻変動というようなものは、年間、まあ数ミリの、これははっきりわかりませんのですが、三ミリとか、五ミリとかという程度の沈下ならば、天然現象としてあるかもしれないが、それ以上のものというと、ちょっと人為のものになるのじゃないかというようなことでございまして、現在のところ、天然現象ではなさそうである。たぶん人為現象であろうというところまではきておりますが、その人為現象のうちで、今の港湾浚渫であるか、あるいは天然ガス採取に伴う地下水の汲み上げであるか、あるいはそのほかに、たとえばあの付近で、だいぶん排水ポンプをつけまして、耕地の排水をやっておりますとか、あるいは信濃川の大河津で切りかえまして、向うに流しましたために、地下の水脈に移動が起ったんじゃないかというようなことにつきましては、まだ、いろいろ説がございまして、それをはっきりさせるためには、先ほどのお話がありました観測井、それから地下水の変化、あるいは水準測量、重力測定というようなものを、いろいろ資料を集めて結論すべきであるというので、現在運輸省でできました山ノ下の観測井というのが一組あるわけでございます。  これは、一本と申しますとおかしいので、一組でございまして、二十メートルの二本と、それから二百六十、三百八十、六百十、これだけが深さを異にしまして、大体一つの区画に置いてある。これが浅い方は別といたしまして、六百十メートルの一番深いのが、昨年の六月八日から動いております。それから三百八十メートルは、七月二十三日から動いております。二百六十メートルは、九月一日から動いております。この山ノ下にございます一組だけでは、先ほども、福井鉱山局長から話がありましたように、これだけでは、まだ一カ所だけでございますので、世界で初めてやる測定に対して、一カ所のデータだけでは、もう少し慎重にやろうじゃないかということで、予備費から、もう少し支出してもらうことになりまして、運輸省に、その山ノ下地区のところには、千二百メートルというのを一本追加してもらうことになりました。これは、六百十メートルに比べますと約倍の深いものでございますが、それを追加してもらいまして、これは、今年の三月末には計器が動き始める予定になっております。それから通産省の方の——今のは運輸省の方で掘りました山ノ下一カ所だけでは、ちょっとあれなので、少し離れまして大潟というところに五百二十メートルと四百四十メートルという二本を、それから、ちょうどそれに直属になりまして沼垂に五百六十七メートルというのを一本掘った、こういう予算を予備費からつけていただきまして、これがいずれも、二月末の予定でございます。このうちの大潟の一本と沼垂の一本は、これは、通産省の方から御説明があるのが至当かと思いますが、すでに掘り上りまして、現在計器の調整中でございます。二月末には、予定通りスタートして記録をとり始めるようになると思います。もう数日の問題にいっております。それから四百四十メートルは、現在大体掘り終りまして、これからセットにかかるというところでございまして、これも大体三月に入りましたら、記録が出始めるという段階だと思われます。  こういう工合でございまして、三月末になりますと、予備費で掘さくいたしました観測井が、すべてスタートするということになりまして、これで記録がはっきりとれ始めますと、そう長いことでなく、もっと確からしい、つまり説でなくて、皆さんの一致した、あるいは大多数が一致したというような程度の原因に対する説明が出てくるんじゃないかという工合に考えておりまして、今まで非常に長くかかったようでございますが、何しろ世界で最初の試みでございまして、また、こういうような現象が、世界で起っております所も、今のところでは、そう多くございませんので、しかも地下数百メートルというところに、そういう精密な計器をおろしまして、一日にコンマ何ミリというようなところをはかるということは、実は学者の間でも果してできるであろうかどうかというので非常に心配があったことでございますが、現在のところは、はなはだ順調に推移しております。  大体、それができまして、それからなおここで地下水の水位も、はかっておりますので、現在のコスモス計画では、全停止いたしましたのは三日間でありまして、三日間くらいですと、水位はわかりますが、それが沈下計にどう影響したかということは説明がついておりませんが、今後四十本あるいは六十本というものが、相当長期間とまってくるということになりますと、水位だけではなく、あるいは観測井の方にも、記録が出てくるかと思われるわけでございますが、その辺については、これらの問題でございますので、とめたら、出ることは確かだということも、まあ確言はできませんが、出てくる見込みもないわけでもないというくらいのところでございます。  なお、地下六百メートル、あるいは千二百メートルと申しますと、非常に深いところでございまして、たとえば東京のあの東京タワーは三百三十メートルでございますから、あれの倍くらい深い所に、直径わずかこれだけくらいのものをおろしまして、一日、コンマ一ミリとか、あるいはコンマ六ミリ、七ミリというところをはかろうというのですから、相当慎重にやらざるを得ないというようなところを御了解願いたいと思います。  ただし、決してこれを意識的になまけておるのではございませんで、いかにして早くつかまえるかということにつきましては、専門委員全部、非常に真剣に考えておるわけでございます。
  67. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 大体、よく説明はわかりましたが、通産省に、ちょっとお尋ねしておきますが、こういう新潟の事態の中で、新しく採掘を開始する井戸を掘りたいというようなものにつきましては、しばらくの間は許可しない方針でいかれますか、そういうことはありませんか。
  68. 福井政男

    政府委員(福井政男君) お尋ねの点につきましては、まあ私ども、沈下状況の非常にはなはだしい今の港湾を中心として、ごくわずかな距離でございますが、市街地になるわけですが、その市街地につきましては、新しい井戸は、ともかく原因がわかりますまで、掘ることはやめてほしいということをガス業界に要望いたしておりますし、また施業案として通産省に出て参りましたときにチェックをする。こういうことでやっております。現在、その点は実行に移しておるわけでございます。
  69. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それから、もう一つは、長い歴史を持っているわけですが、その歴史というのは、先ほど御説明があったように、燃料としての歴史だと思います。そして問題は、新しいガス化学工業としてスタートした工場が、ガスの供給がとまったために、これは相当な打撃を受けるだろうと思いますね。三菱化成のごときは、現に工場の建設を中止しているわけです。そういうものについて、何らかの補償要請とか、こういうものは、通産省にはきておりませんか。また、そういうものについては、補償要請だけでは、なかなか解決しないのだが、通産省は、どういうような行政指導をしようとしておられるか。  それから第三番目は、たまたま新潟で、こういう問題が起きたのですが、天然ガスと地盤沈下の問題は、一つの懸念として、天然ガスの開発問題が起るというと、すぐ地元で問題になっております。これは、そういうものに対して、将来天然ガスを採掘するという一つの意欲と意思と地元のそういう懸念というものはどういう工合に調整していくか。  これは、非常に問題だと思いますが、それに対しては、通産省としては、すでに方針がきまっているか、まだ新潟の問題が、ある程度固定しないうちは、きめられないのか。その辺は、どういうことになっておるのか。
  70. 福井政男

    政府委員(福井政男君) 第一点につきましては、非常に御指摘のように大問題だと思っております。まだ、現に工場を作らない、計画だけで着手していないところは、そう被害も出なかろうかと思いますが、いずれにしましても、補償の問題につきましては、まだ、私どもの方に、正式にどうごうということには参っておりません。それから、これをどういうふうにしていくかということにつきましては、まだ、確たる結論も持っておるわけでも何でもございませんが、ただ私ども、原料用としての天然ガスが、非常に需要度の高いものでございますし、また輸出産業にもつながっておるわけでございますので、何とか、これを合理的に開発していくようにしていただきたい、かような考えでおりますが、新潟地区についてみますと、市街地からずっと奥の方で、沈下の起さないような所で開発し得ないものであろうかということも考えておりますが、また県とも、原因の関係はともあれ、そういう懸念の起きないところで開発することが望ましいので、それについては、やはり問題になりますのは水溶性でございますので、非常に水を伴います。この排水問題が解決いたしませんと、開発ができないわけでございます。排水問題には、大きい排水路を作ることが先決問題でございますが、これには非常にむずかしい用地買収の問題でありますから、こういう問題がつきまといますので、今後県、市、地元と一緒になりまして、その打開に努力していかなければならないと、かように考えております。  同時にまた、そういう所から市街地の工場に供給いたしますには、ハイプ・ラインを作るというようなことも必要になって参ります。こういうものにつきましては、なかなか資金手当の問題も出て参りますので、場合によっては、国が借り入れ資金等の配慮もしてやらなければならないのではないか、こういうことで、いろいろ研究をいたしておりますが、具体的に、まだ確定した、こういう案を作るというところまでには参っておりませんのが実情でございます。  それから、開発を今後どうするかという問題でございますが、これにつきましては、新潟地区につきましては、さしあたり今のように考えておりますが、こういう問題がございますので、一つ全国的に、合理的に開発し得るような地点を一つ開発したい、かように考えて、広い地域にわたって開発をしていくというような方向で進みたいと、かような心組みでおります。  それからまた、水溶性の天然ガスは、水をほとんど天然ガスと同じ量を伴うわけでございます。石油系でございますと、ほとんど問題はないわけでございますので、石油系の天然ガスを開発するということになりますれば、非常に幸いでありまするのでこういった天然ガスの探査というものを全国的にやっていくというようなことは、大いに今後、力を注いでいきたいと、かように考えております。  わが国の水溶性と石油系の割合は、どういうふうになっているかということを、従来の実績について、御参考までに申し上げますと、水溶性のものが約八五%でございまして、石油系が約一五%、そういう割合に、現在の生産状況はなっております。
  71. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 暫時、休憩します。    午後零時五十八分休憩    〔休憩後開会に至らなかった〕