運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1959-02-17 第31回国会 参議院 商工委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月十七日(火曜日)    午後二時一分開会   ―――――――――――――   委員の異動 二月十一日委員谷口弥三郎君及び田中 茂穂君辞任につき、その補欠として小 西英雄君及び森田豊壽君を議長におい て指名した。 二月十二日委員平島敏夫君、近藤鶴代 君、迫水久常君、高橋進太郎君及び高 橋衛辞任につき、その補欠として木 島虎藏君、小沢久太郎君、鈴木万平 君、林田正治君及び廣瀬久忠君を議長 において指名した。 二月十四日委員廣瀬久忠君及び林田正 治君辞任につき、その補欠として高橋 衛君及び高橋進太郎君を議長において 指名した。 二月十六日委員具根登辞任につ き、その補欠として藤原道子君を議長 において指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     田畑 金光君    理事            上原 正吉君            小幡 治和君            大竹平八郎君    委員            鈴木 万平君            高橋  衛君            堀本 宜実君            阿部 竹松君            栗山 良夫君            豊田 雅孝君   国務大臣    通商産業大臣  高碕達之助君   政府委員    科学技術庁長官    官房長     原田  久君    科学技術庁企画    調整局長    鈴江 康平君    科学技術庁調査    普及局長    三輪 大作君    通商産業省石炭    局長      樋詰 誠明君    特許庁長官   井上 尚一君    特許庁総務部長 伊藤 繁樹君    中小企業庁長官 岩武 照彦君    中小企業庁振興    部長      川瀬 健治君    工業技術院長  黒川 眞武君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○商工組合中央金庫法の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○中小企業信用保険公庫法の一部を改  正する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○経済自立発展に関する調査の件  (石炭産業対策に関する件) ○特許法案内閣提出) ○特許法施行法案内閣提出) ○実用新案法案内閣提出) ○実用新案法施行法案内閣提出) ○意匠法案内閣提出) ○意匠法施行法案内閣提出) ○派遣委員報告   ―――――――――――――
  2. 田畑金光

    委員長田畑金光君) ただいまより商工委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。  昨十六日、阿具根登君が辞任され、藤原道子君が選任されました。   ―――――――――――――
  3. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 本日の委員長及び理事打合会の結果について御報告いたします。本日の委員会の、案件は一、商工組合中央金庫法の一部改正、及び中小企業信用保険公庫法の一部改正について提案理由説明聴取、二、派遣議員報告、三、特許法案その他工業所有権関係法案に対する質疑、四、燃料対策に対する阿部委員質疑、以上でございます。   ―――――――――――――
  4. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 参考人出席要求についてお諮りいたします。  本件につきましては去る十二日の委員長及び理事打合会において協議決定いたしましたのでありまするが、ただいま本委員会において審議中の特許法案その他工業所有権関係法案法案重要性にかんがみまして、参考人出席を求め、参考意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、人選及び出席要求時日等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。   ―――――――――――――
  7. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 次に、商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案議題といたします。まず、提案理由説明を願います。
  8. 岩武照彦

    政府委員岩武照彦君) 私から提案理由説明させていただきます。  ただいま提案になりました商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  商工組合中央金庫は、中小企業者を主とする団体系統金融機関でありまして、最近の情勢にかんがみますとき、同金庫中小企業振興のために果す役割はいよいよ重要となってきておりますので、この際、商工組合中央金庫法の一部を改正して、その機能の強化、拡充業務円滑化をはかり、もって中小企業組織化を更に推進し、その一そうの振興に資することといたしたいと考える次第であります。次に、本法律案概要を御説明申し上げます。  第二は、政府商工組合中央金庫に対する出資金を増加することであります。  すなわち、商工組合中央金庫に対する政府出資は現在約二十六億円となっておりますが、これを今回さらに十二億円増額することであります。  御承知通り商工組合中央金庫貸出金利は最近の数次にわたる引き下げ措置にもかかわらずなお割高な現状にありますので、これを極力引き下げることによって中小企業者金利負担軽減に資することが当面の重要な課題であると考えられる次第であります。このためにはもとより金庫自身の経営の合理化に期待するところ大なるものかあるのでありますが、政府といたしましても、その最も有効な手段として、昭和三十四年度において政府出資増額を行い、もってその金利引き下げに資することとした次第であります。  第二は、預金受け入れ先を追加することであります。現在、商工組合中央金庫預金受け入れることのできる範囲は、中小企業者構成員とする団体及びその構成員公共団体との他営利を目的としない法人並びに主務大臣認可を受けた銀行その他の金融機関に限定されておりますが、同金庫貸出業務及び債券発行業務の円滑な運用を期するため、今回新たに次のような預金受け入れ先の追加を行おうとするものであります。  すなわち、その一は、中小企業者を主たる構成員とする団体またはその構成員事業の発達をはかるため必要な施設を行う法人であって、金庫主務大臣認可を受けて余裕金短期貸付を行なったものからの預金受け入れかできるようにすることであります。これは、余裕金貸付業務に付随して必要とされる預金業務をもあわせ行うことによって貸付先利便をはかるための措置であります。  その二は、商工組合中央金金庫貸付業務にかかる債権を保全する必要がある場合は、当該債権にかかる債務者のち命令をもって定めるものからの預金受け入れができるようにすることであります。  その三は、商工債券発行を円滑にするため必要かある場合は、その応募者または買い入れをしようとする者からの預金受け入れができるようにすることであります。  第三は、商工債券保護預り先を追加することであります。  現在商工債券保護預り先所属団体またはその構成員のみに限定されておりますが、商工債券発行機関としては、当然他の金融債発行機関と同様、その所有者利便をはかるため保護預りができるようにし、もって債券発行による資金調達を一そう円滑にする必要があると考えられますので、今回新たにその業務を追加することとする次第であります。  第四は、出資もしくは株式払込金受け入れまたは配当金支払い取扱先を追加したことであります。  現在、出資もしくは株式払込金受け入れまたは配当金支払いに関する受託業務の対象は、所属団体だけに限定されておりますが、本来これらの業務は、実質的には預金に付随するサービス業務と考えられますので、同金庫貸付及び預金業務に関する主たる取引先である所属団体構成員にまでその範囲を拡大し、もって所属団体構成員との取引についても一そうの緊密化をはかり、あわせて預金の増強にも資せしめるため、今回新たに所属団体構成員をその業務取扱い先に加えようとするものであります。  第五は、商工組合中央金庫に対する出資口数最高限度を引き上げることであります。  現在商工組合中央金庫に対する所属団体出資口数最高限度は一万口とされておりますか、この結果、有力組合の同金庫に対する出資の額もいきおい抑制され、金庫民間出資増額に関する計画も円滑に達成されがたい上、持ち分譲渡等にも困難を来たし、比較的小規模の組合出資負担がかかる懸念もありますので、相互扶助の理念によりまして負担能力の大きい有力組合出資負担する道を開くため、従来の一万口を五万口に引き上げようとするものであります。  なお、このほかに商工組合中央金庫の運営を円滑かつ適正にするため、金庫自己持ち分の取得についてその道を開くとともに、環境衛生同業組合について所属資格範囲を限定するための措置を講じております。  以上が本法律案概要であります。何とぞ慎重御審議の上、可決せられますよう御願い申し上げる次第であります。   ―――――――――――――
  9. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 次に、中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案議題といたします。まず提案理由説明を願います。
  10. 岩武照彦

    政府委員岩武照彦君) ただいま提案になりました中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  御承知通り中小企業信用保険公庫は、昨年七月政府出資八十五億円と旧特別会計承継資産約二十六億五千万円、合計約百十一億五千万円をもって発足し、信用保証協会業務上必要な資金貸付業務とその保証に対する保険を中心とする保険業務とを行なって着々その成果を上げております。  このうち、信用保証協会に対する貸付業務のため、同公庫はその基金のうち三十億円を充当してその保証業務に必要な資金貸付を行なっており、その貸出残高は、昭和三十三年十二月末現在、すでに三十億円に達しており、これによりまして信用保証協会保証規模の拡大、保証料率引き下げ等諸種の画におきまして顕著な功果をおさめつつあります。  しかしながら、最近におきましても、中小企業資金需要は依然として旺盛であり、これとともに保証需要も大幅な増加の傾向にありますので、信用保証協会保証原資をさらに大幅に増強して保証能力拡充を図る必要があると考えられるのであります。  このため、政府といたしましては、昭和三十四年度におきまして中小企業信用保険公庫に対し、産業投資特別会計から十億円を出資し、これを同公庫から信用保証協会に貸し付けることとし、その保証能力拡充をはかると同時に、その保証料率引き下げをも促進し、もって中小企業者負担軽減に資することとした次第であります。  次に、本法律案概要を御説明申し上げます。  第一は、中小企業信用保険公庫に対する政府出資金を十億円増額し、これを融資基金に充てるため同公庫法資本金および融資基金に関する規定改正しようとするものであります。  第二は、今回の中小企業信用保険公庫に対する政府出資産業投資特別会計から支出されることとなりますので、これに伴いまして必要とされる国庫納付金に関する規定を新たに設けようとするものであります。  すなわち、同公庫の毎事業年度損益計算利益が生じた場合は、その利益の額の百分の五十を、資本金の減額がなされているときは、当初の資本金に達するまでその利益資本金に組み入れ、なお残余があるときはその残余の額の百分の五十に相当する金額を国庫に納付することにしております。  以上が、本法律案概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、可決せられますようお願い申し上げる次第であります。
  11. 田畑金光

    委員長田畑金光君) ただいま御説明のありました二法案に対する質疑は後日行います。   ―――――――――――――
  12. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 次に、経済自立発展に関する調査議題といたします。  質疑の通告がございます。この際、発言を許します。
  13. 阿部竹松

    阿部竹松君 前回の委員会に御質問する予定でしたが、大臣が午後四時で御用がございまして中座されたので、きょうあらためて時間を三十分間、委員長理事さんのお計らいでいただいたわけですか、端的に、時間がありませんからお伺いいたしますが、御承知通り何度も大臣お話ししておる件なんですが、石炭は今一千百五十万トンから三百万トン近くございまして、もう毎日のように中小炭鉱がつぶれていくという実態のわけです。しかしその炭鉱側にとってみれば、大臣承知通り、昨年五千六百万トン必要であるというあなたの方の指示によって掘ったわけですね。しかし必ずしも経済の見通しが誤まったとか誤まらぬとかいうことは申し上げませんけれども、とにかくそういう実態で、石炭が現在四、五百万トン余っている。御承知通り中小炭鉱も次から次へと崩壊していく。大企業といえども、御承知通り操短をやらなければならぬ、まあこういうことですから、こういうことについて、御当局はどいうような方法を講じて処置をなされるか、端的に一つお伺いしたいと思うわけです。
  14. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) どうしてこんなにたくさんの貯炭ができたのか、初めの計画が狂ったかということにつきましては、今さら何べんも繰り返しても繰り言にすぎないのですから、これは私は申し上げません。今後どうしたらいいか、こういう問題でございますが、これは私ども非常に事の重大性にかんがみまして、去年来、その方法について没頭しておるわけでありますが、まず第一に、何としても現在のこの貯炭をできるだけ消費者の方にも負担してもらって生産者負担軽減してもらうということを第一に考えなければならぬ。それから同町に、石炭消費というようなものは、今のままでは、電力は水力が豊富であるために使わない、こういうことであるけれども、できるだけこの石炭をよけい使ってもらうということを考えなければならぬ。それからもう一つは、何べんも繰り返しましたように、ほかのエネルギー資源である石炭と競合する原油の輸入を押える、こういうふうなこと、もう一つはこの貯炭に対する金融をできるだけ今後力を注ぎたいということと、それからまあ来年度計画等もさらにもう一ぺん考え直して、また再びこれを繰り返さぬように相当減産をしていかなきゃならぬ、こういうふうなことを主体として、ただいままで業者、大炭鉱それから中小炭鉱等の方々の御意見も承わりまして、その対策を講じておるわけなんであります。それにいたしましても、根本的にはやはり来年度相当減産をしなければならぬ。それで本年度におきましても、最初にお話のごとく、五千六百万トンという莫大な、膨大な計画でありましたが、これは当初において五千二百万トンに下げるということになっておりましたが、これもだんだんだん縮まってきまして、本年の出炭は四千九百万トンそこそこになるだろうと、こう存じておりますので、来年度もまあそういうふうな数字に減さなければならぬというような状態であります。根本的な対策としては、どうしても不良の炭鉱を、つまり合理化していくために、石炭合理化法によりまして、従前三百三十万トンを整理するというあの数字をさらに百万トンふやしまして、四百三十万トンに整理をしようという考えで進むわけでありますが、そうなると当然起りますものは、ここに多数の失業者、六千人に近い失業者が出る、その中で少くとも急に救済を要する労働者に対しては、千人以上の労働者救済しなければならぬ。その救済はどういう方法でやるかということにつきまして、現在におきましても、ひとり通産省だけでなくて、建設省なりそれから農林省なりの協力を得まして、それで、どういうふうにそれを収容するかということを目下検討中でございますが、これはできますれば、大体の目安がつきますれば、とにかく三百三十万トンの石炭合理化法による炭鉱整理をさらに百万トンふやしていって、四百三十万トンにするということに持っていきたいということで、こういうようなことで、あの手この手を考えておるわけでございますから、それによりまして、どうしても石炭鉱業を一日も早く安定せしめたいと存じておるわけでございますが、なお詳細のことにつきましては、政府委員から御説明申し上げます。
  15. 阿部竹松

    阿部竹松君 大臣、そういうようなおざなりの答弁でなくして、そういうお話は何度も承わったわけですね。それで合理化法で三百万トンを四百万トンにするということも知っております。それで、労働者が八千人ほど街頭に放り出されるということは、これは通産省責任だけでなく、労働省というのがあるのですから、当然労働省当局にも責任を負ってもらわなければならぬということです。その点は私きょう触れませんけれども、現実に大きな――小さい数字はラウンドして、五百万トンとにかく理屈抜きにしてだぶついておるのですから、これを需要を増すとか、重油を入れないとかいっても、あなたの方の省でお出しになっておる統計を見ても、そんなに需要が増しておりませんよ。またそういう、安易な期待はできないということになれば、これは厳然と余っておるのですから、これを一体どう処置するのか。重油をストップするならストップも結構ですから、これは何トン入れないとか、外国炭を入れないなら何トン入れないとか、そういうことを具体的に――別に私たち大臣のおっしゃる通り、あなたたちの施策が間違っておったからどうだとかいうことは申し上げませんよ。去年経済企画庁局長さんと大いにここでやったのですが、君たちのは手放しの楽観論だと言っても笑っておった。今ここへ経済企画庁局長を呼んで、君の去年言ったことはけしからぬといっても始まりませんから、具体的にどうするのか。五百万トン厳然として余っておるのですから、その点を承わればとにかくいいわけです。
  16. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 目下の一番の急務といたしましては、お話のごとく、千百万トン以上の貯炭がございまして、これによって石炭を投げ売りされると困る。これを防止するということが一番の先決問題である、こう存じまして、そのうち、三百万トンを……まず民間出資によってこれを買い取る買い取り会社を作る。それで百万トンだけを買い取り会社によって買い取っていこう。こういう方針を、取っておるわけであります。私もやはり  策に過ぎないと思っておりますが、ある方がないよりはいいだろうと思って、差し迫ったものだけを、百万トンだけを一応買い取るということで値段の暴落を何したわけであります。差しとめたわけなんであります。
  17. 阿部竹松

    阿部竹松君 三百万トン買い取って百万トンは業者に持たせる。こういうお話ですが、そこをはっきりお尋ねしたいのですが。
  18. 樋詰誠明

    政府委員樋詰誠明君) 現在千百万トンの貯炭がありますことは御承知通りでございますが、大体現在の時期におきまして、過剰と思われる分は三百万トン程度じゃないかと、こう思われております。今の生産水準が続き、それから現在見通される消費が続いていきますと、大体本年の三月の末には、貯炭は千万トンを少し割る。九百万トンに一応落ち込むであろうというふうにわれわれは考えております。しかし、その場合でも、最も適正と思われる貯炭の量は、三月末に七百万トンくらい、こういうふうに一般に言われておりますので、三百万トン近いものがやはりそこで過剰になりはしないかということでございます。しかし、この三百万トンの過剰を一挙になくするということは、これは非常に困難なことでございますので、役所といたしましては、まず生産制限を、これは非常に炭鉱にとっては、御承知通り、好ましいことではありませんが、もう少し十分やれるようにお互いの申し合せを確実に守るようにという意味で、合理化法に基く指示をいたしまして、それに基く協定というものによって、生産制限をはっきり行うということによって、これ以上過剰なものが出るのをます防ぐということをやるのと同時に、需要家に対しましては、電力その他の大口需要家に対して、できるだけ長期契約を結び、場合によっては、一定の量以上買い取るという契約ができた場合には、重油と常に値段の点で比較されておりますので、そういう値段の点においても、一定限度以上のものについては値下げをするから、とにかくこれだけ買ってくれというような、いわゆるダンピングじゃなしに、業界同士の話し合いとしての、現在の価格をあまりこわさないような範囲内において、引き取りを増加するというような方向をとるごとによって、できるだけ過剰性をなくするという努力をさしたい。こう思っております。  そのほかに、ただいま大臣からお話ございましたような、いわゆる貯炭買い上げ機構の問題でございますが、御承知のごとく、現在貯炭を持っておりますのは、ほとんどが大手炭鉱でございます。中小炭鉱貯炭というのはせいぜい六十万トン以下、五十数万トンで、これはあまり大したことございません。大手のものが非常に多くの貯炭を持っているわけでございまして、これらの大手の間におのおの出炭規模等に準じまして出資をするということによって新しい貯炭会社を作り、その貯炭会社大手全体の信要をバックにして、金融機関から金融を受けることによって、過剰分を百万トンばかり買い上げたいといったような話が目下進行いたしております。われわれといたしましては、とにかく一番過剰を持っている大手自体自分の力で片づけるということができるのであれば、とにかくそれでまず片づけさせるということをやりたいと思いまして、そういう機構ができた場合には、大蔵当局あるいは日銀当局等を通じ、それらの機構に対して十分なる金融的のめんどうが見れるように、政府としてもめんどうを見ていくということにやりたいと思って、われわれといたしましても、できるだけ早くそういう買い上げ機関的なものができることを待っておるわけでございます。
  19. 阿部竹松

    阿部竹松君 樋詰さん、答弁もう少し早くやって下さいね。僕二十分しかないのだ。その二十分の中にあなたの答弁時間を入れられると、僕は質問することできなくなる。  今大臣数字をあげておっしゃったように僕は承わったのですが、僕の聞き違いでなければ、あなたの方は数字がないのですから、これも若干買い上げ機関のことと、それからもう一つ生産制限に入る場合に、あなた法律で押えるというのですから、法律をこれからお作りになるが、ある法律だったら、どの法律のどの条項でそういうことをやられるのか、その点をまずお尋ねします。
  20. 樋詰誠明

    政府委員樋詰誠明君) 買い上げしますのは、過剰トンと思われる部分の、とりあえず百万トン部分について、民間機関を作って買い上げたいという話を進めておりますので、大体さしあたり買い上げられるのは百万トンであろうというふうに考えております。  それから法律に基く指示でございますが、これは現在の石炭鉱業合理化法のたしか六十二条に、生産数量についての共同行為通産大臣告示で勧告するという規定がございます。で、この六十二条の規定によりまして今のままで放置しておいたのでは、将来の石炭基本計画にひびが入るかもしれないという認定のもとに申し合せをやって、早く生産制限お互いにするのだという申し合せをやりなさいという告示を、この現在の法律規定に基いて出そうというわけでございます。
  21. 阿部竹松

    阿部竹松君 しかしその現実の問題として、六十二条か六十三条かわかりませんけれども、大臣の勧告でやったか、あなたのとにかく指示であったかは別として、昨年の七月ごろからこれをやっておるけれども、守らぬのではないですか。
  22. 樋詰誠明

    政府委員樋詰誠明君) 今やっておりますのは、これは法律に基くものじゃございませんで、一応業界全体、大体二千五百万トン程度の下期の出炭規模に押えないと大へんなことになるぞということを警告いたしましたところが、大体それで自分らの方でやるから、しばらく自分らの力の自主的な努力を見て下さいというのが、大体大手、中小ともにそういう話しだったわけでございます。ところがその結果、必ずしも十分に行われておらないというので、今度は法律に基いて、法律上の一応勧告というものをいたすことによって、業界政府に対する責任と申しますか、そういうものをもう少しはっきり感じさせることによって、生産制限に本気にお互いに協力させることをやりたい、そう思っております。
  23. 阿部竹松

    阿部竹松君 昨年の春までは大いに掘りなさいといって激励して掘らして、今度出炭が余ったからといって法律でとめるということについて、僕はどうも穏当を欠くと思うけれども、そういうことは別として、大臣重油規制の問題を若干お話の中にございました、が、具体的にあまり小さい数字にこだわりませんけれども、大体去年とことしの差ですね、あるいは本年の見通しについて、若干もしおわかりであればお知らせ願いたいと思うのです。
  24. 樋詰誠明

    政府委員樋詰誠明君) 私、おくれて参りましたので、はなはだ失礼いたしましたが、三十三年度、三十四年度どう違うかというふうなお話でございますれば、現在一応三十四年度の外貨予算の編成の作業を始めたばかりでございますので、現在の石炭の事情、それから石油の状況等もにらみ合せまして、三月の末までに三十四年度の分については予算を組み、それによって規制していきたい、こう思っております。ただ念のために申し上げますと、石油、特にこの中で石炭と関連いたしますのは重油でございます。大体これはごく大ざっぱに申しまして年間千万キロ程度使っております。三十三年の例で申しますと、上期に四百万キロ、下期五百万使うという予定であったのでありますが、石炭の事情等も勘案いたしまして、大体四百五十万に押えて現在それを実行しておるわけであります。ところがその四百五十万の重油でございますが、その中で百五十万キロ程度はこれは運輸、水産といった関係のA重油でございまして、これは石炭とは競合関係に立っておらないのでございます。それから約四百五十万のうち百万キロ程度が公益事業、電気を主としておるものでございますが、これは一応石炭と大いに競合関係にあるというものでございます。それから残りの二百五十万キロが鉱工業全体として使われるものでありますが、そのうち約百五十万キロというものは特殊炉用、平炉用のサルファの少いいわゆるロー・サルファ、重油とかあるいは石油化学の原料というもので使われておりますので、これも一応石炭とは競合しないというふうに考えて参りますと、下期の数量で申しますと、大体公益事業で使われます百万キロ、それと一般工業で使われます特殊灯用等を除いた百万キロに、大体二百万キロ程度のものが一応石炭と競合する関係に立つ重油ではないか、そういうふうに考えるわけであります。これから、どれだけ引くかということでありますが、われわれといたしましては、現在の混焼ボイラー等にいたしましても、ピーク時に急にロードを増さなければいかぬといったような場合には、緊急的な作業をするということのためにはどうしてもある程度重油でなければならぬといったような面等もありますので、それらの点も考えまして二百万キロと思われるものから大体五十万キロばかり減らして、当初の五百万キロを四百五十万キロとしたのであります。
  25. 阿部竹松

    阿部竹松君 昨年の七月の委員会に本件を大臣にお尋ねしたときには、重油の問題、石炭の問題等について明確に直ちに処置するという御答弁がございました。しかし十カ月たった今日、まだ三月ごろにならなければわからぬというのは、きわめて不親切だと思うのですね。しかしこれは今あなたと論争しても始まりませんから、早く明確にやはり計画を立ててお知らせを願いたいということと、その次に本年度の外炭の大体の見通しですね、輸入される見通し、それからもう一つ合理化法の一年延長によって、さいぜん大臣からも話がございましたけれども、とにかく八千名か一万人の人がほかの炭鉱と別個になくなるのですから、八千名程度路頭に放り出されるということになりますと、労働省の問題になると思うのです。これについて、当然あなた方の力と、お話し合いがなされていると思うのですが、その点がどうなっているかということだけお尋ねします。  あと時間がございませんから、委員長理事会では、ほかの、案件審議の打ち合せもあるようですから、あと詳細な点につきましては、私別に石炭局長なり、あるいは課長から、直接業務を担当しておる方からお伺いすることにして、これで質問を打ち切ります。
  26. 樋詰誠明

    政府委員樋詰誠明君) 昨年の夏に大臣重油を切るという意思を御表明になりました。この御方針に従って下期五十万キロ切ったわけでございまして、これは大体石炭に換算しますと約倍になりますので、百万トン弱、石炭換算して九十万トン程度のものを半期で切ったということになっております。三十四年度はどうかということは、先ほど申し上げましたように、現在作業中でございますので、これから石油の需要石炭需要、全部総合勘案して、最も妥当な数字にきめたい、そういうふうに考えております。  それからもう一つの問題につきましては、お説の通り、大体われわれの計算では、百万トンの炭鉱で約七千五百人の人間が働いているということに考えておりますが、その中で問題は、何と申しましても一番重要な北九州でございます。この北九州で大体五千人弱、そういうふうに一応推定いたしておりますが、このうち労働省の従来の計算から申しますと、約二割、千人程度の人間について、とりあえず三十四年度政府として対策を講じなければならないということになっております。現在この千人程度の人間の吸収ということは、目下国会に審議をお願いいたしております三十四年度の公共事業費その他で十二分にわれわれとしては吸収できる、そういうふうに考えておりますが、さらにいろいろなこまかな点について、もう少し事務的に自信を持つまで掘り下げたいということで、今、折角検討をさらに加えておるということでございます。   ―――――――――――――
  27. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 次に、特許法案外公共所有権五法案を一括して議題といたします。前回に引き続き質疑を行います。
  28. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 大へん失礼なお尋ねですが、高碕通産大臣は特許庁の役所の中をずっとごらんになったことがございますか。
  29. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 大体長官から内容を承わっております。
  30. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうすると、実際は中をごらんになっていないわけですね。
  31. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) まだ時間がなくて、よく内容をずっと見ておりませんです。
  32. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私はたまたまこの法案審議に入りまして、やはりあの特許庁という役所は特許事務を行う一つの作業場でもあるので、見たいと思いまして、この間よく見せてもらいました。いろいろと感ずるところがたくさんありましたが、そのことについてお尋ねをしたいと思うのですが、近いうちにちょっとおひまを見て特許庁の役所の中をごらんいただけるように願えませんか。
  33. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 相なるべくは、早い機会に一ぺん拝見したいと思っております。
  34. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 この法案審議しなければなりませんから、その機会に一つぜひ見ていただきたい。百聞一見にしかずと申しますから、一ぺん見ておいていただきたい。いろいろなことをお尋ねいたしたいのですが、まず最初に科学技術庁の関係ですから長官としてお尋ねをしたいと思います。それで、この工業所有権の関係法案は、なるほど工業所有権そのものを保護する建前からいたしまして非常に重要な法案でありまするし、また技術の保全振興のためにももちろん重要な法律ではあります。しかしこの法律ができたから、根本的な改正を行なったから直ちに工合よくなるものではないわけでありますが、そこに私は問題のとらえ方として、二つを考えております。一つ法案を全面的に改正をして実施をした場合に、特許庁の仕事、行政というものが、この法案改正を意図した線に沿って実効をあげ得るかどうかという問題が一つ。この点は一ぺん大臣がごらんになってからお尋ねをしたいと思う。  それからもう一つは、第三の重要な問題は、なるほど、工業所有権法ができまするというと、国民がきわめて熱心に新規な発明考案をなさって、その成果というものは国によって権威づけられる。そういう一つのルートは開かれる。ところが問題なのは国民が新規な発明考案をすること自体にあるわけですね。発明考案をするその考案なり発明なりの質の問題、このことは法案とは直接関係のないことであります。一国のやはり科学技術行政に関すること、だと私は思います。この点を技術庁の長官としてあなたにお尋ねしておきたい。まあ今度の問題で大きく分けますとその二つの問題点があるわけでありまして、きょうは私がただいま申し上げました第二の方のお尋ねをいたしたいと思うわけであります。  そこでこまかいいろいろなことをお聞きいたします前に、ものの考え方として、ただいま生産性の向上を産業面では非常に叫ばれております。で、生産性の向上に貢献していくには、やはり技術の革新があるわけであります。技術の革新というものについて通商産業大臣はいかなる見識と抱負をお持ちになっているか、これをまず伺いたいと思います。
  35. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 技術の革新というものはやはり一つはその技術の革新によって生産を向上するということも一つありましょうが、これが必ずしもすべての目的でなく、世界的に考えてこの革新されたる技術によって生産されたる製品がその品質においてもその利用度においてもその将来性においても卓越しているというところに持っていくという、いわゆる数量だけでなくて、量だけでなくて質という問題にも重点を置いていかなきゃならぬ、こう存ずる次第であります。
  36. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 技術革新というものが量のみでなく質において卓越していなければならぬ、こういう工合におっしゃいましたが、まあその通りだと思います。が、その卓越しているということはどういう基準というか、水準をもとにして判断されようとしているのでしょうか。たとえばただいまの私の質問はあまり抽象的ですが、さらに具体的に申し上げれば、わが国の科学技術の世界的な後進性というものを早く脱却するというところに、私は基準を置かなきゃいかぬと思いますがね。そういう御発言がなかったようでありますが、卓越をしたもの、卓越をした質がほしい、こうおっしゃったのですが、その点はどの程度にお考えになっておられましょうか。
  37. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 全体から申しまして、科学技術というものは、私は日本だけを水準にすべきものではなくて、世界の水準というものをやはり水準におかなければならぬと存じておりますが、と言って、今の現在の日本の現状は世界の水準から比較いたしまして低い水準にあるということも事実でありますが、あるものによれば必ずしも低くないと私は考えておりますが、しかし大多数は水準が低いというわけでありますから、一日も早く世界水準に持っていくということにし、さらにそれ以上に、やはり水準を世界の水準よりも上げていくというところに根本方針を立てる必要があると存じます。
  38. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 大体まあ考え方の方向としては私も大臣のただいまのお考えに異存はございません。大体そういう方向でよかろうと思いますが、問題は世界の水準というものを一応基準において考えるというのでありますが、わが国がその世界的な基準というものを想定した場合に、まあ一、二例外的に進んでいるものがあるかもしれぬ、あるいはその基準にあるかもしれませんが、およそは不足している、この不足しているものをどうして基準まで引き上げ、さらにそれよりも上を越していくか、こういう努力を払うことが科学技術庁として今おやりにならなければならぬ一番大きな任務ではないかと私は考えるのです。そこでただいまの科学技術庁の行政の中に、そういう構想のもとに進められている仕事というものかどの程度あるか、これを伺いたいと思います。
  39. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 外国の技術を導入するということにつきましては、これは問題がありませんが、基本的な技術に科学技術庁としては力を注いでいく。それはやはり大学との提携を完全にし、国としては大学の、これは文部省関係でありますが、教授の研究費を十分見るとか、あるいはその教授陣営の強化をはかるということをいたしますと同時に、科学技術庁自身といたしましても、国立試験所の充実をはかりまして、その試験所の人員の養成及びこれに要する研究費の充実等はかっていきたいと、こう存じまして、基礎研究というものに相当の力を注いでいって、そしてやがてはこれが外国の水準を、世界的の水準を突破する一つの基礎になるということを考えると同時に、やはり現在遅れております科学技術を導入するために、外国の技術の導入等も並行的に考えていかなければならぬと存じております。
  40. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 高碕さんは申し上げるまでもなく産業界のことはよくおわかりになっているので、大体常識的なことについては、おそらくどんな質問をいたしましても即答されると思いますが、私が今申し上げていることはそういうありきたりの、今お述べになったような常識的なことをここで述べていただこう、そういう御苦労を願おうと私は思っておりません。問題はわが国の科学技術の後進性というものを脱却するために、よほど強力な国の施策を行わないというと、模倣技術でもって外国の真似をして、そして世界の一流国であるという、そういうことは続けられるかもしれぬけれども、究極においては日本の産業というものは先進各国から置きざりにされてしまう、そういうおそれを持っておるので、やはり技術の導入であるとか大学の研究を進めるとか研究所を置くのだとか、そういうことはいずれも不必要だとは私は申しませんが、そういうことを行いながら、そこにバック・ボーンとして国として中心的にとるべき一つの重要な施策というものが抜けていやしないかということを私は指摘したいのです。  私が今指摘をするまでもありませんが、たとえば最近の技術革新の動きを見ておりますと、世界的な規模において見ておるというと、あまりにも革命的な進歩が激しいので、従って戦争前でも若干そういう問題はありましたけれども、戦後においては特にどんなにその一つの産業が努力し、一つ企業家が努力しましても、この世界的な技術革新の前には頭をたれて、もうおじぎをするよりしようがないという状態が随所に出ております。それは一つのその企業家の責任の問題ではなくて、一度そういう波が来ればその一つの産業全体がだめになる。その一つ業界全体がだめになってしまうというようなおそるべき技術革新の波が襲っております。たとえば一番いい例を一つあげれば、私は五年ほど前に日立製作所の電子科学部長に会って、そしてアメリカから初めて、あれはサイエンスか何かの雑誌にちょっと載っておりましたが、トランジスターの材料のゲルマニウムのことが書いてあって、私が持っていって見たときには、彼の机の上にはここから先くらいのトランジスターのアメリカから取り得せた見本の一つがありまして。おそらくこれが日本での最初のものだと思う。それから五年たたないうちに日本がトランジスターのメーカーになってアメリカに輸出をするといって騒いでおるが、しかしトランジスターのアメリカの発明の特許を買って日本がやっておることについてどういう現象が起きておるかというと、巨額なロイアリティをアメリカに払っておるということが一つ、もう一つは国内にある真空管メーカーで特に、ミ二アチュア・バルブを作っておったメーカーが総なめに生産をやめてしまうという状態にきておる。このくらいはっきりした技術革新の影響を受けた最近の例はないと思います。それは天然繊維が化学繊維にかわり、さらに合成繊維にかわって、古いものが顧みられなくなったという現象は国民がこれはよく知っておることですけれども、それ以外にもこういうことがたくさんある。二、三日前の工業新聞を見ますというと、今アメリカの国内でおそるべき発明が研究段階にある。それが何かと申しますというと、今までは電気を起すのに水力ならばタービンを回して発電機を回して電気を起す、火力ならばボイラーで石炭をたいて湯を沸かしてそれを蒸気タービンに入れてそれから電気を起す、こういう複雑な過程をとっておりましたが、熱から直接発電をするという研究が行われて、すでにアメリカにおいては四つの方式がほとんど実施直前の状態にきておるということを報じておる。全紙一面に写真入りで報道しております。そういう研究というものは日本で行われておるか。だれかやっておるかもしれませんが、あんなに写真入りで外国に宣伝されるほどは伸びていないと私は思います。もっと顕著な例は今四日前で作っておる、政府が協力している合成ゴムの仕事でもそうです。アメリカなりドイツでもどんどん実施に入っておるのをおくればせながら買ってやっておる。もしあれが生産に入ってくれば日本のゴム工業界は大変革を起すでしょう。そういう工合に最近の技術革新というものは、われわれが学校で学び、あるいは世の中で知識を受けた程度のものでない恐るべきものがある。一つの極端な言い方をすれば、単一業種で伸びてきている一つの資本系統があるとすれば、その資本系統がもし研究を怠っておれば、それをこわしてしまう、それを壊滅に瀕せしめるくらいの力を持っている。そういう技術革新が進んでいる。そういう世界的の風潮の中でわが国が今大臣がおっしゃったような、そういう技術革新の構想でよちよちやっておっては、世界的におくれをとりゃしないか、何か根本的の考えをここでまとめてやらなければいけないのではないか、こういうことを私は力説しているのです。その点についての考えを伺いたい。
  41. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私はこれは全く同感でございまして、近来の科学技術の発達の状況は、とても私どもが想像する以上のものでありまして、これによって産業の革命が行われ、あるいは根本において経済機構が変わるというまでにいくべきものだと存じまして、科学技術こそ今日の政治あるいは経済のもととなる、こういう大きな使命を持っているものであろうと存ずるわけであります。ただ問題は何しろ技術のことでございまして、私どもがあれやこれや言うてもしようがない、要するに技術の人たちの、技術家諸君の意見を統合して、総合的に持っていくということが必要である。しからば今日何が技術の中心になっているものかと言えば、文部省所属の大学、一方は日本学術会議というものがありまして、これらと科学技術庁とが一体となって方針を定めてもらいたいというので、先般来提案した科学技術会議というものを総合的に開いてもらい、そこで一つの方針を立っていただきたい、こう思うわけでありますから、それに対して政府ができるだけ力を注いでいき、これを有力なものにする。しかもこれは内閣総理大臣の直轄に属させる、こう存じております。
  42. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そこまではよろしいのですが、しからばあなた方か頼りにしておられる日本学術会議は一体、どういうことをやっているかというと、これは最近私どもに送ってきたのですが、日本学術会議から声明書が出ておりまして、説明がついている。これは基礎科学を尊重しろということですが、大臣はこれをお読みになったかどうか知りませんが、これは結局全部読んでみるというと、今の政府のやっていることではだめだから、もっと思い切ったことをやってくれ、一口に申しますと、こういうことなのです。しかるにあなたは学術会議を頼りにして、これにまかせて置くのだといって、私が今力説したことに対して賛意を表せられて、そういう方向に日本の科学技術は伸びていくであろう、こういう工合におっしゃっている。しかしその頼りにしている御本尊はこういう意見を出している。それですから、根本的なやはり認識の上に立っての施策というものを、今までだれも国内ではあまりに荒唐無稽で議論しなかったと思われるほどの、そういうやはり十年なり、二十年なり、三十年なりの、あるいは金を注ぎ込んでも物にならないかもしれない、そういう雄大な構想で施策というものを、もうこの際、踏み切ってやる必要がありゃしないかということを私は力説している。この点についてはどうお考えになりますか、あなたは学術会議というものに大へん力を入れたいと言っているが、学術会議というものは大学と密接につながっているのですからね。
  43. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは学術会議にそういう意見があるということはやはりわれわれはこれを大いに取り上げていかなければならぬと思っておるわけでありまして、そういう工合に各方面の異なった意見を総合的に取り入れていくということが大事でございまして、元来この科学技術者という優秀な人ほど孤立に陥るという弊があるのでありますか、これは私は当然そうでなければならぬと思っております。いつも小さいながら自分の研究所を持っておりますから、よく仕事のできる人ほどとても猛獣のようなもので、猛獣と猛獣の寄る合いで、なかなかその間にけんかが起きる。この猛獣と猛獣との寄り合いをうまくやっていって一つの仕事になる、こういうわけでありますから、この間の意見の相違ということは当然覚悟していかなければならぬ、私はこう存じておるわけであります。それをどうして国としてむだのないように正しい道にいくかということは、今回発足した科学技術会議というものに私は非常な期待を持っておるわけであります。
  44. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そこで私も実は日本学術会議がこれだけの説明付の声明書を出されたので、おそらくこれは学術会議におけるいろいろな問題を討議された、その集約された結論としてこういう声明になったのだと常識的にそう考えたのです。そしてこの日本学術会議のこれらの声明を起草し、決定をされた責任の方にちょっと尋ねてみたのです。そうしたら、実はあまり心配なのでこういう声明を出した。そこにはこう書いてあります。もし今日のような状態に放置しておくならば、数年ならずして、わが国の科学技術は、多くの重要な部門において国際水準から脱落せざるを得ず、その前途はまことに憂慮すべきものがある。こう書いてあります。ですから私はいろいろな問題を討論をして、その結果、こういう結論が出たものだと想像して向うへ尋ねましたところが、いや、実は今各担当部門で一生懸命それは作業しておるのだ、そして近く技術白書ですか、そういうものを世に問いたいので、ただいま一生懸命執筆をしているのだが、今はまだまとまったものはない、こういうお話なんです。ですからこの声明なり説明書も、私ども現にそういう専門的な仕事をしていないものですら、非常にこれでいいのかということで心配をしておる、それと同じである、それよりも数等上でしょう、もっと専門家ですから。身近な問題として憂慮にたえないというので、まず声明書を出して世に警告しようということのようですけれども、従って私は政府としてこの際はやはり相当思い切った体制をとってもらわなければならない。今は世界的に世界をひっくり返してしまうような意味の効力を持っておる発明なり考案というものは、大体この基礎科学から発達しておりますから、大体大よその見当はついているわけです。それをただ世界各国の科学者が黙々として研究をしておる。そして五年か十年の間にぽんと発表したときには手おくれになっているということになるわけです。従って国としてそういう研究課題を学者の知恵をかりて世界的に科学技術をひっくり返すような、何といいますか、想像のできないような、そういう発明というものをしなければならぬものがあるでしょう。また発明の可能性のあるものがあるでしょう。そういう題目をとらえて、それに集中的な研究ですか、そういうことをさせるような、そういう機関というものを幾つかこの際新しく国の全責任において作り上げていく、科学技術を総合して作り上げていく、こういうことが欠けているのではないかということを申し上げているわけです。それをおやりになる御用意かございませんかと、こういうことなんです。
  45. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいま御指摘のこの日本学術会議というのは、今回発足された科学技術会議の有力なるメンバーでありまして、その方々の御意見もよく聞いて、それを総合的にやって実行に移していくということが、今回発足された科学技術会議の目的でありますから、ここにおいてほんとうに根本的の研究をして、それを着々と実行に移していきたいと、こう存ずるわけでありますが、特に科学技術庁といたしましても、基礎的研究は非常に重要視いたしまして、今回の三十四年度予算におきましても、比較的日本でよく発達しておる核分裂、核融合反応のごときも、これこそすべてのエネルギーの中心だと思いますから、わずかながらもその予算をとっていくという考えで進みたいと存じております。
  46. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そのとらえなければならぬ題目というものはわれわれがここで議論を今すべきものではないのでありまして、いろいろのものがたくさん専門家の中では頭の中に描かれておるでしょう。先ほどの熱からいきなり電気を起らすような装置なんというものをだれかが考えてやっておられると思いますが、そういうものはあれですね、国がやっぱりめんどうを見てやらなければできませんね。私は自分のおそわった先生で非常に敬意を表している方でテレビジヨンの大家の高柳健次郎という教授がありましたが、あの人が大正十一年ごろに自分の、教官の部屋の中に、テレビジョンを発明するのだというので装置を自分で作って、あらゆる世界の文献を集めて、世の中の人はだれも相手にしないときに、テレビジョンのテの字も知らないときに着手して、大正十二年ごろですか、それからずっときているわけです。そういう意味の遠大な研究なんというものは、どっかにあるかもしれませんよ、そういう研究はやはりもうこれだけスピーディになっておりますから、個人の発明意欲なり考案意欲にまかしておくべきではないので、国として必要なものはどんどん国がやはりマークして、大ぜいの学者の力を得てスピーディに成果を上げていく、そういうふうに施策をしていくべきではないかと考える。たとえば私はこれもお笑いになるかもしれませんが、今、日本で光合成の研究は、ほんとうに蛋白質なりあるいは炭水化物を工場で生産しようということで、今研究を責任をもってやっているのがどっかありますか、どっかそういうところがありますか。国が特別の費用をさいてやって、光合成に対する根本的な研究をやろう、世界の、どこの国よりも早く完成しようと、そういう熱意でやっているところがどっかにありますか、あれば大臣からお聞かせ願いたい。
  47. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは数年前から日本の食料を根本的に改革するというので、クロレラですか、ああいうものの研究をやっているというので、私どもも見に行ったのでありますが、これも最近は見ておりませんけれども、だんだん進みつつもるということでありますから、そういうふうな研究は国費が必要だと思っております。
  48. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今のクロレラはこれは光合成といっても太陽合成にあるのですから、ほんとうの意味の合成ではありませんから、あれはジャガイモが土の山で蛋白質を作るのとちっとも変らないわけでありますから、ただ単一細胞のああいうものを作るというだけですから……。そうでなくて、私の申し上げておるのは、蛋白質あるいは炭水化物を工場の中でどんどん生産しょうというのです。そういう研究が現に世界の有名国では真剣に問題として取り上げられて、相当の費用を投入せられているわけでしょう。これは悲しいかな、日本にはそういうものがないと思うのです。そういうこれは、科学技術庁の皆さんで、政府委員の方であれば、私が知識が足らないの、だから教えてもらいたいのですが、私はないと思うのですよ。そういうことでこれは基礎科学を含めて相当な熱情と費用を投入して、これはものになるかならないかわかりませんよ、私は必ずなると思います。これは五十年先か百年先か知らないが、だれかがやるということ、だけははっきりしている。とにかく澱粉が土の中でできるのですから、それはだれかがやる、それを日本でだれかやらないか、こういうことなんです。そういう意味の努力を、これは一例にすぎませんけれども、そういうことをおやりになる意思がないか。これ一つお聞きしておけば、大体科学技術庁の長官のお考えがどの辺にあるかということがわかる。そういう性格のものを幾つか取り上げて国でおやりになる用意がないか、こういうことなんです。
  49. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは私はどうしても絶対的に日本の食料が足らぬということから考えたときに、人工で蛋白質を作るということの方法を考えなきゃならぬ。そこでただいま日本ではそこまで研究を考えておらない。クロレラくらいは、私は望みを託しておるわけでございますから、世界においてそういう高度なものが進んでおるやいなやということにつきましては、これは検討を加えて、あるいはこれにならう、あるいはなくても日本にできるということを一つ検討したいと思います。最近の情勢等につきましては政府委員からお答え申し上げます。
  50. 三輪大作

    政府委員(三輪大作君) 光合成の研究につきましては、現在東京大学の理学部の江上不二夫教授が光合成、特に酵素関係の研究をやっております。これは非常にむずかしい問題で、どういうふうなメカニズムでできるかというのは、長年学者問でもわからない問題でございまして、今日に至っておりますけれども、江上教授がその問題に取り組んで、どういう酵素が関係して葉緑素ができるかという研究を現在進めておるということを聞いております。われわれが知っておるのはその程度でございます。
  51. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私は確かに一人の学者が気づいて研究をされておるということは貴重なるアイディアであり、努力だと思いますけれども、これは三輪局長政府委員としてお尋ねしたいのだが、そういう芽を国の意思で、きちんとした組織で、幾つかの、光合成だけに限ったことではありませんよ、その他エレクトロニクスにしてもいろいろな問題がありましょう。そういうものを五つでも十でも、将来世界を風靡し得るような発明ができれば、風靡し得るようなそういう題目というものをつかまえて、有力な資源と研究陣を動員して研究に没頭させて、そういうこをぜひとも私は実現すべきであると考えるのだが、そういうことを実現する熱情をお持ちになりませんかどうか、これを私は伺いたい。
  52. 三輪大作

    政府委員(三輪大作君) これは私から答弁するのは筋じゃないかもしれませんが、御指名がありましたのでお答えいたします。  先ほど長官が申し上げました科学技術会議ができますと、そこでまあ栗山先生のお話になったように、日本として取り上げるべき重要な研究課題――光合成であるとか、核融合であるとか、あるいはその他たくさんありますか、そういう特に重点的に相当の研究費と技術陣、あるいは学者あるいは民間の研究機関、国の研究機関、そういうものを動員して強力に進めるべきテーマというものを幾つか選びまして、これは順序があるかと思いますが、そういうものを会議で選んで、それに国として相当の予算をつけて総力をあげて進めていくということは、科学技術会議ができますればやる予定でございます。
  53. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 科学技術会議を中心にして、ぜひそういう工合に私は進められることを強く要望しておきたいと思います。おそらく今、何ですね、世界的にみんなをあっと言わせるような発明というものは、国の力でやったか、あるいは巨大な資本がやったか知りませんが、とにもかくにもドイツにしても、フランスにしても、アメリカにしても、イギリスにしても、そういうとにかく長い意欲的な研究の成果であるということは否定できない。それが日本にないものだから、従っていつまでも後塵を拝して、発明があれば買いにいって高額なロイアルティを払わされてそうして工場ですぐまねをして、りっぱななものを作るから、日本の産業界は世界一流水準だということで負け惜しみを言っていなければならぬ、こういうことも私はあると思う。この壁を何としても破らなければならぬ、そういう熱情を通産大臣は、ぜひとも持っていただきたい、これは強く要望したいと思います。  そこで問題は、まあ大体構想は理解できましたので、科学技術庁の方に……。何ですか、日本人が発明をした重要な発明で、日本の国内ではものにならなくて、外国でものになったもの、外国で実施化されてしまい、日本国内では政府を初め実業家の理解がなくて全然だめになった、外でものになった、そういう重要な発明にどういうものがあるか、また外国の発明で、画期的な発明で、今、日本が恩恵をこうむっているものがどのくらいあるか、そういうものはお調べになっておりますか。
  54. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) 日本の発明で、日本人の発明であって日本では実を結ばないで外国で認識されて、外国で技術として完成された、どういう例があるかということですが、ただいま私思いつきますところではフェライトなどがその適例ではないかと思います。  それから第二番目の御質問は、外国人の発明でもって日本の産業に非常に寄与したという例についての御質問であったかと存じますが、これは最近の外資導入、外国技術の導入で、最近数年間非常にその例が多いことはすでに御承知通りだと思います。
  55. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それでは特許庁の方のへ……。フェライトの問題は私は知っていますけれども、そのほかに、遺憾ながら日本人で優秀な発明をしたにかかわらず、外国の方にに特許権をとられてしまって、逆にロイアルティを出さなければならぬというものがあるわけです。いういうものは一体どのくらいあるか、一ぺんちょっと調べていただきたい。これだけでなしにまだあるはずです。八木アンテナでもそうです。いろいろあります。そういうものを一ぺん調べて下さい。
  56. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) 承知いたしました。
  57. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それから通商産業大臣にお伺いをいたしたいのは、これはいずれ特許庁を見ていただいてから重ねて伺いますが、私は見ていただきたいところを申して、ちょっとお尋ねしておきますが、まず第一に私ども行ったものが帰りに完全に意見が一致したのは、おそらく全国の役所の中であれくらいこまかい仕事を勤務時間中続けている、頭脳労働をきちんとしてやっている役所はあまりたくさんなかろうということです。とにかくよその人の発明したものを、どこに欠点があるか探しているのですから、大へんなものです。しかもドイツ語から、フランス語から、英語から、全部外国の文献をあさりながらやっているわけです。そういう点では非常に御苦労だと思いましたが、その特許庁の公務員諸君が仕事をしておる仕事場があまりにも貧弱ですね。それで中小企業の町工場の設計室といったようなものです。あんな貧弱な所で一流会社の、一流研究所の考案をしてきた特許を調べるなんて僭越だと思うのです。なおきわめて非能率の、まず採光はよくない、きたない。それで一人当りの面積なんておそろしく少いものですよ。資料を保管しているのだけれども、その資料たるや、あれは精一ぱい整理しているのだろうけれども、その探すのにしても、運搬するにしてもきわめて非能率ですよ。特に意匠登録の部屋なんて行くと、針金でこしらえたつい立みたいなものがあって、そこに一ぱいそれを並べかけておる。うしろを向きながら一生懸命やっているのですね。あれじゃとてもいかぬ。通商産業大臣に見てもらいたいというのは、それだけ見られてもわかると思うのです。従って、おそらく、聞きますと、あそこは今間借りしているので、連中が、局が出るのだそうですね。公益事業局も出れば、軽工業局も出る。特許庁オンリーの建物に大体なるらしいのですがね。そのときに抜本的な、ほんとうに特許庁とて、日本に一つしかない役所ですからね、もう設備万端、そういう設備関係をこの際相当の費用を投入して根本的に改める、こういうお考えをもっていただけるかどうか。これは私は別にあそこの人に頼まれたわけでも何でもありませんが、直接見てそう感ずるのですね。この点を大臣にお願いします。
  58. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 先刻の網質問のなにですね。日本でせっかく特許をもっておるものが外国で利用できて、日本で利用できないということははなはだ残念だ。これは私も全く同感でありまして、重要基礎研究ができてこれを工業化するためには相当リスクがある、なかなか手をつけられないという場合には、これに補助をしなくてはならぬとかいうので、今度から通産省といたしましても、来年度の予算に四億九千万円を出しておるというわけでございますし、また科学技術庁といたしましてはそういう方面の研究助成のために、これはわずかでございますが、四千五百万円を出しておるということになっておりますが、これは両方並行的に進めていきたいと思っておりますが、特許庁の問題は、私は長官から、私が昨年六月参りましたときに一番先にもってこられた問題でありまして、非常にたくさん仕事があってそうして設備は悪くて仕事ができなくて困る。それでなるべく早くこの結論を出したいと思うけれども、人手は足らなくて困るのだから、どうしても今度の予算にもっと人をふやしてもらわなければならぬということで、これは私は特許庁側の言うことは当然だと思いまして非常に大きな予算を出したのでありますけれども、ようやく十人か十四、五人の人間をふやしてもらったという、だけでありますが、特許庁の方は大体収支償っておって黒字が出ておるところだ。それを大蔵省に取られちゃう。これははなはだ不当な問題だから今度は特許料金等を倍ぐらいにしてもらって、来年からなるのだから、せめてそれだけの金ぐらいをどんどんあそこにつぎ込んでいかなきゃならぬというふうなことにつきましては、十分私は特許庁の長官が言うことが当然だと思いまして今後働いていきたいと思いますが、ただ御指摘のこと、実は私まだ見ていないわけでございますから、至急に拝見いたしまして御趣旨に沿うようにしていきたいと思っております。
  59. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これはあなた特許庁長官は、今の大臣の忘れられないうちに早く一つちゃんとすみからすみまで、書庫の中まで少しもほこりが多いけれどもちゃんと見ておいてもらって、そうして私は今人員のことだとかそういう行政能力の問題は、これはまだあとでずっとお尋ねしたいと思っているのですが、問題は今設備のことだけに限って申したのです。ただあの設備はとてもいけません、何としてもいかぬ。それですからおそらく、これは長官に伺いますが、公益事業局だとか軽工業局があそこから出ていくのはいつですか。
  60. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) これは通産省官房長の方からお答えすべき問題かと存じますが、われわれの聞いていますところでは、ことしの秋九月、十月のころというふうに承知しております。
  61. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私が自分の若干の乏しい経験からいいますと、あそこがあいたとしますね、必ずもう狭いのだから待ってましたとばかりにすぐぞろぞろと拡張しちゃうのです。そういう無計画なことをやられるとやはりきれいにならない。またフロアがあくということがわかっていますから、これは大臣の命令であの特許庁の建物全体を、世界的なアメリカなりドイツなりの特許庁に劣りをとらぬくらいの諸設備をするように計画してみろ、こういうことでちゃんと予算をとって、そして大蔵省の方もちゃんと承認を得て、その結果に基いてそのうちの一部分としてまずあいた所をちゃんときちんとして、それから順次全部に及ぼしていくというような、そういう構想で進めなければだめだと思うのですよ。あいたからといってすぐふさがったんじゃとてもきれいになりませんよ。だからこれはまあ私がそういうふうに感じましたから、出ております。で、私どももごもっともだと思う意見もあるし、ごもっともでないと思う意見もありますが、これは別にイデオロギーの法案ではないので、従って自民、社会が目の色を変えて論争しなければならぬものではないと思うのです。私はそう思いますが、そこで、当委員会で招致した参考人意見とかあるいはわれわれが改めてもよかろうと思うような意見、そういうものが具体化しました場合に、通産大臣はそういう点の修正に応じられるかどうか、われわれが修正しようと思った場合に通産大臣は反対だと、こう言われるとこれはやはり純技術行政の問題ですから、役所の方で修正反対だと言われるものを国会で無理に修正したところで、やはり工合が悪いと思います。従って、国会で民間意見あるいはわれわれの意見等を立てて与野党が一致した場合には、その点は修正に応じられるかどうかということをお尋ねしたい。
  62. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 大体においてこれは自民党の方とはいろいろ連絡をとりまして、清瀬さんが中心で検討してもらったわけでありますが、その意見はよく聞いておってやったわけでありますが、とにかくこれは社会党においても十分御検討願いまして、それはものによって正しいという判断をしたことは当然私どもは修正したい、こう存じております。
  63. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 どうも内容的なことでお尋ねしないで総括的にそういうことをお尋ねするのは失礼かと思いますけれども、やっぱり一応ものの考え方というものを伺っておきませんと、あとで徒労になってもいけないと思いまして、われわれもできるならば賛成をもちろんしたいと思っております。そういう意味でお尋ねしたわけであります。  私、それでは通産大臣に対するお尋ねはきょうはこの程度にいたしておきます。
  64. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 通産大臣並びに技術庁長官といたしまして二、三の点をお尋ねいたしたいと思います。まず技術庁長官として最初にお尋ねをいたしたいと思います。  本法律案に関連をむろんいたしてのことでありますが、最近これはアメリカの情報で、私も新聞を見た程度でむろん門外漢でありますから、実際の点については決して深く知っている者でもないのでありますが、アメリカの情報によると、ソ連で最近水爆以上の脅威的なものができた、しかもこのソ連でできたものは日本の科学陣の情報の提供によってできた、こういう言葉が新聞に報じられておるのであります。これは現在は御承知通り秘密保護法もございませんし、利敵行為云々で処罰される法律もございません。しかしながら国会におきましてもすでに現在も大きく問題になっておりまする核実験禁止の問題も、しばしば両院で論議をせられ、しばしばこの問題に対する停止の決議も両院でされておる。こういうときに少くとも水爆以上のものが日本の科学技術陣の情報の提供によって、これはどの程度かわかりませんが、できたということが、これは新聞紙上で伝えられているのでありますが、むろんわれわれの、耳に入るくらいでありますから、科学技術庁といたしましてはもうすでにこれは情報が十分とられておると思うのでありますが、その点につきましておわかりでしたら一つ腹蔵なく御報告願いたいと思います。
  65. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私は新聞で拝見したのでありますが、これは原子力局の問題でありますので、よく一ぺん、取り調べましてお話し申し上げたいと存じておりますが、おそらくは私は日本で比較的進んでおるものは核融合のものが相当基礎的に進んでおりますから、そういうものが情報を出したのではなかろうかと存じておりますが、私の申し上げたのは想像でありますから、あらためまして原子力局の当局と打ち合せまして御回答申し上げます。
  66. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 なるべく本案の審議中にできればわかった材料を一つ提供をしていただきたいと思います。このことを委員長にお願いをしておきます。
  67. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 承知いたしました。
  68. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 その問題に関連をいたしまして、この間大臣出席がなかったので、大臣にお尋ねすることも実は井上長官に二、三お尋ねをいたしたのでありますが、原子力が非常に世界中で大きな問題になっておることはいうまでもないのであります。日本は御承知通り原子力は非常に各国に対しまして出おくれと、こういう形になっておるのでありますので、そういう意味で、この原子力と今度の特許法の問題なんでありますが、たしか、この法律案はまだ読んでおりませんが要綱の中に、核変換により製造される物質の発明を、新しく特許しない発明の中に加えた、こういうことがあるのでありますが、これにつきまして、今申し上げたようなことは、事実かどうかわかりませんがありますので、特にこの原子力関係と今回のこの特許法という問題につきまして、一つ大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
  69. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) ただいま御指摘の通り不特許事由、特許しない対象としましての発明に、これまでの化学の方法により製造すべき物質と相並びまして、原子核変換の方法により製造すべき物質というものを加えたわけでございます。御意見通り最近の新しい科学技術の急速な進歩によりまして、原子核分裂、核融合、そういう原子核変換という方法によって製造になります物質というものは、これまでの化学物質には該当しないわけでございますが、そうかと申しましてこれを特許の対象とするということは、化学物質に対して特許を認めないという考え方に対する均衡の点から申しまして、また他方原子力政策という見地から申しましても、これを不特許事由に加えることが適当である、かように考えまして、今回の法律改正の機会にその項目を加えた次第でございます。
  70. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 そういう長官の御説明によって、先ほどのことはこれはあくまでも前提なんでありますが、先ほどソ連に日本の科学陣の情報が提供されて、そうしておそるべき核兵器ができたということになった場合、これはあなたのいわゆる長官としての立場でなく、国務大臣としてもどう対処すべきかという、こういうことについて一つ御信念を御開陳願いたいと思います。
  71. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私はこの科学技術というものは、やはりこれはもう国境を超越して公開さるべきものだと、こう存じておるわけでありますが、それがいやしくも殺戮用の兵器に使われるということにつきましては、非常に私は遺憾に存じております。
  72. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 その問題はまた具体化したときにお尋ねすることにいたします。  それから通産大臣としてお尋ねをいたしたいのでありますが、これもこの前、井上長官にちょっとお尋ねをいたしたのでありますが、非常に今まで大きな問題になっておりまするように、外国技術との提携によるいわゆるロイアルティが問題になっております。これは非常にそれぞれの立場からいろいろ論ぜられることも御存じの通りであります。三十二年度支払いを見ましても、特許の使用料が三千四百万ドル以上も支払われております。それから技術者招聘に対する支払いがなお加わりまして、約四千万ドル近いものを御承知通り支払われておるわけであります。一面日本は万国条約の中に入っておるわけでございまして、日本もまた世界のどこの国からもそういったロイアルティを取ることができるわけでありますが、悲しいかな、日本の技術陣はとうていアメリカやドイツに比較ができませんので、この表を一つ見ましても、三十二年におきましては、日本が特許権の使用料として受け取っておるものがわずかに八万七千ドルにすぎないわけであります。また技術者の招聘等の支払いから受けたもの、これも合計いたしましてわずかに十六万二千ドル、こういう貧弱なことでこれは貿易でいうならば非常な片貿易と、こういうような格好になるわけでありますが、大臣自身も今の核問題ですらもこれは世界的に開放しなければならぬと、こういった特許法の議論に立っての崇高な議論はよくわかりますが、しかし貧弱な現在の日本といたしまして、中には非常にロイアルティにむだが多いのです。これはちょっと長官にも例をあげて話をしたのでありますが、ある人絹の会社がどこからか大きなものを一応所有をしたところが、ほとんどその使用をせずしてもう次の発展に備えるためにまた新しいものを買った。そのために円にいたしましても七、八十億も損害をこうむっておる。これは最も著しい例の一つなんでありますが、そういうことが大なり小なり行われておるわけです。こういう点についてロイアルティとそれから今度の特許法と、こういう問題につきまして一つ大臣の御所見を承わりたいと思います。
  73. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 御説のごとくわれわれは非常に莫大なるドルを外国の特許の使用料のために使っております。これはひとり特許のみならずノー・ハウにも非常な大きな金を払っておるわけであります。これに対して日本から輸出するものはきわめて少い。これはまことに残念でありますが、しかしながらこれは過去十数年間戦争中及び戦後において、欧米各国の先進国からおくれをとった国が、急速にこれを取り戻すというのは、これまでのところでは、やむを得なかったかと思いますが、今後におきましては十分これを検討いたしまして、特に特許権なりノー・ハウを使う場合には、日本人がお互いに競争しあって、そして同じものに二重に支払いをするというようなことがままあるわけでありますが、今後外資法の適用等をよく検討いたしまして、また慎重にいたしまして、そしてそういうふうなものは逐次駆逐していくという方針で進んでいきたいと思っております。
  74. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 大臣の今の御答弁の中にあった通り、非常に同じものを屋上屋を重ねてそうしてむだな外貨を使っておるということ、これは私も材料を実は持っておるのでありますが、きょうは手元に持っておりませんが、特にそういう点においてこれは法律的に束縛するのか、あるいは省令でやるのかどうかしりませんが、実情をよく把握して、ぜひ一つ善処していただきたい、かように考えるわけであります。  それからいま一点大臣に伺いたいのでありますが、私どもも実は特許法が上程せられて、いろいろ実は初めて新しいものに接したのが非常に多いわけであります。特にこの問、今栗山委員からも申された、特許庁という内部を初めて参観させていただいて非常に教えられるところが多く、また私どもの実際生活のまわりに本案に関するいろんな問題がたくさんあるわけであります。ところが何か非常に山の上にあるものを見ておるような感じをもって、実は特許法を初め一連の今回出られた法案に対して、それほど私ども実は率直に言って無関心だったわけなのであります。そこでまあ今度の審議に当りまして非常に啓発をされたのでありますが、さらに私どもが日本にいろんな科学者がたくさんおるんでありますが、すぐれた世界的な科学者がたくさんおるんでありますが、どうもしかしその科学者によりましては、どっちかというと、何といいますか非常に非社会性と申しますか、あるいは非協力と申しましょうか、そういうような点で非常に名利にてんたんというのでしょうか、そういうような人がだいぶあるわけなんでありまして、そして特許制度の趣旨は、いうまでもなく個人の頭脳的な財産を、広く産業、科学の発展に寄与せしめるという、こういうところにあるわけなんでありますが、ところが従ってある程度法律にこれが保護されるということもこれは必然なんでありますが、それを一部におきましてはかえって知識の独占じゃないか、そうやって一人で独占をしておるということはおかしいのじゃないかというようなことで、せっかく持っておる技術というものを登録をしない、要するに協力をしない、こういうような面が割合に多いのでありますが、ことにそういった町の発明者は別でありますが、学者陣などに非常に多いのでありまして、そういう点で、まあ私ども自身も今申し上げたようなわけで、非常な特許という問題の重大性と社会性のあることを知ったんでありますが、そういう意味で将来PRの一つの問題なんでありますが、何か特許庁の中に一つの特許情報センターというようなものをお作りになって、金は割合に先ほど来質疑応答の中に出ていた通り、非常にとにかく特許庁としては大きな収入もあげておるのでありますから、むろん庁内の改造とかあるいは人員の増員とか、こういう問題もむろん必要なんでありますが、そういう方面にPRをするというような意味から、何か特許庁の内部に特許情報センターというようなものを作られて、そして科学技術庁あたりと十分連絡をとられて、そういうものを組織をせられてはどうか。まあ先ほど来の質疑の中にもあります通り、日本は非常に特許並びに実用新案の申請というものが多くて、最近の例がアメリカ、ドイツに次いで日本が第三番目だと、こういうふうに言われるくらいなんでありますので、そういう点について大臣のお考えを一つお聞きしたいのであります。
  75. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私はただいまの御意見は非常にけっこうだと思っておりまして、十分検討を加えていきたいと存じております。
  76. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私は大臣の質問はよろしいです。長官に少しお尋ねをいたしたいのでありますが、この要綱の中に「発明の新規性判断の基準」という問題があるのでありますが、これは非常にむずかしい問題で私どもにもよくわからないのでありますが、今までにない条項であります。この外国の刊行物等で判断して、初めてこれは新しい特許として認めるかどうかというこういう問題があるのでありますが、これは外国の刊行物といいましても、とにかく条約に加盟しているあれは四十四ヵ国あるわけでありますから、まあ四十四ヵ国でいろいろなデーターを出されることだと思うのでありますが、これを一体どういう工合に把握して、そうしてこの基準の判断というものをせられるのか、何か国際的にそういった特別調査機関というものが現在あって、そうしてそういう情報が交換できるのか、さらに今度の法案によって、日本の特許庁の内部にそういう特別な調査機関というものを新たに作るのか、この点一つ伺いたい。
  77. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) 御指摘の点は、発明の新規性判断の基準としまして、現行法と今度の改正点は、ただいま申されました通りに国内における公知、公用という点につきましては従前通りでございますが、従来国内に頒布されたり刊行物に記載されている事項というのが新規性判断の基準、言いかえれば国内に頒布された刊行物に記載されているようなアイデアについては、これは特許にならないということになっておったわけでありますが、今度の法律改正でこれを拡大しまして、外国において頒布された刊行物に記載されたアイデアも、これを特許の対象としないということになったわけであります。で、従来におきましても、国内に頒布された刊行物であります以上は、外国の文献も当然これを対象として考えて参ったわけでございます。で、その外国の文献を収集する努力が、今度の法律改正によりまして一そう強く要請されることになったわけでございます。これをどういうふうにして収集するかという点でございますが、まず何と申しましても、第一にわれわれ特許庁における審査の場合に見ます文献は、外国の特許公報でございますが、これは工業所有権保護同盟条約によりまして、お互い各国の特許公報を交換するという定めがございます。で、今日同盟条約の加盟国は四十数ヵ国でございますが、日本といたしましては、このうち二十六、七ヵ国とこの特許公報の交換をいたしています。で、この特許公報が交換によりまして日本特許庁に入ってきました瞬間に、これは国内において頒布された刊行物ということになるわけでございますからして、われわれとしまして、日本国内に到着しました限りにおきましては、これを審査の対象といたしておったわけでございますが、今後はこの外国の特許公報以外の各界のレポートでございますとか、その他一般の図書雑誌等につきまして、広くかつすみやかに収集する努力が必要でございますが、そういう問題につきましての国際的機関があるかどうかという御質問につきましては、これはただいままではそういう機構はございません。で、これを区分して申しますれば、国内に当着しました文献につきましては、これを特許庁内におきまして、できるだけすみやかに技術の種類に応じまして分類し、担当の審査官の用に供することができるように分類と並びに整理が、これは必要でございます。外国で頒布された刊行物であって、まだ国内に入荷していない、入っていないという場合につきましては、これは特許をすべきでない理由に該当するわけでございますので、かりに特許庁には入荷しておりませず、従って特許庁の審査官としてはそれを公告しまして、一般のいわゆる公衆審査に供するわけでございますが、この場合におきまして、関係民間におきましてはできるだけ異議申し立てという方法によりまして、この外国に頒布された刊行物を何らかの特定のルート等によって入手し、あるいはその内容を知っておる向きでは、その異議申し立ての機会に、この特許庁の公告に対して異議申し立てをすることによって、適正なる権利の設定に協力を願うということになろうかと存じます。また異議申し立てもなく、かりに権利になりまして後に、外国で頒布された刊行物に記載されてある事項に該当するということが、事後において発見されました場合には、これは特許の無効理由ということになりまするので、無効審判によって、そういう不適正に成立した権判を抹消する、というような手続きを講ずることになろうかと存じます。
  78. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それから、先ほどちょっと大臣にお尋ねした中に出た「核変換により製造される物質の発明」と、こういう項が要綱の中にあるのでありますが、これはむろんいわゆる原子関係をあらかじめ含めて、こういう法案をお作りになったのであるか、それからまたちょっとわれわれが解せないところが、だいぶあるのですが、一つこれを当局の御説明をいま一度お聞かせ願いたい。
  79. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) これは先ほども申しましたように、この第三十二条に列挙してない発明につきましては、特許せられることになるわけでございますが、最近新しい科学技術の発展、特に原子力関係の分野におきましてはアイソトープといった、「原子核変換により製造されるべき物質」が新たに生れて参ったわけであります。この原子核変換の方法により製造になりまする物質自体の発明に対して、特許を与えるかどうかということが問題になったわけでございます。従来はこの法律案の三十二条三号のように「化学方法により製造されるべき物質の発明」というものは、特許されない理由としてこれまでから入っておりましたが、この化学方法により製造されるべき物質については、特許を認めるべきでないかという議論が別にございます。これは将来の問題としましては、日本としましてもいわゆる化学物質の発明に特許を認めるべきである、そういう方向に漸次進むべきであるとは存じますけれども、今日の段階におきましては、一応われわれとしては、今回の法案には従来の方針を踏襲しまして、「化学方法により製造されるべき物質」についての発明というものを不特許理由といたしたわけでございます。そうなりますと、先ほど申しました「原子核変換の方法により製造されるべき物質」はどうなるか、特許をするのかどうかというここに問題が起きてきたわけでございます。「原子核変換の方法により製造されるべき物質」は、いわゆる化学物質というものには該当しないわけでございますので、この三十二条四号を加えることによって、従来の化学物質と同様に、これを特許しない対象としてここに加えたわけでございます。この理由は、先ほど申しましたように、化学物質に特許を認めないのと同趣旨で「原子核変換の方法により製造されるべき物質」に対しても特許しないという考え方と、もう一つは、原子力政策という見地から、こういう「原子核変換の方法により製造されるべき」新しい物質に対しては特許しないのが適当である、かような二つの考え方がこの背後にあるわけでございます。  なおついでに申しますが、これは物質自体の発明でございますので、その物質を製造する方法ないしは装置、そういう技術に関する発明につきましては、これは特許の対象になり得るわけでございます。
  80. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 はしょって申しますが、次に特許権の効力の問題なんでありますが、特許権の効力は、業としての行為のみしか及ばないことと、こういうことになっているのでありますが、しかし家庭ではむろん一向差しつかえない、こうわれわれ解釈しているのでありますが、しかしたとえばこのごろのようにアパートがたくさん建ってきている。そうして今は住宅難で困っているがやがて住宅も飽和状態になってくる。そうすると管理人か一つ住居人に対するサービスの意味でいろいろ多数の人に利用させる、というような場合もあり得ると思うのでありますが、そういう点もこれはいわゆる家庭の延長として使用しても差しつかえない、こういう御解釈をされるのかどうかこの点伺いたい。
  81. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) 現行法におきましては実用新案法では、業としての行為以外の行為にはこの権利の効力は及ばない、ということが法文上はっきりしているわけでございます。特許法につきましてはそういう明文がございませんでした。今回はこの「特許権の効力は業としての行為以外の行為には及ばない」という限定を設けたわけでございますが、ただいま例示として御指摘になりましたような、アパートにおける管理人がアパートの住居人にサービスとしましてやるような場合はどうかということでございますが、具体的事情によりまして違うかと思いますが、不特定多数を相手としまして生産ないしは販売あるいは使用するというような場合には、「業としての行為」ということに該当するのではないかと考えます。もちろんアパートに住んでおりまする住居人が、めいめいが家庭的行為としてやるものはこの特許権の効力の範囲外でございます。かように考えております。
  82. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それから「国以外の者も公益上必要な場合は他人の特許発明を実施」することができるということなんで、これは特許法の趣旨から申しましても、非常に私どもはけっこうと思うのでありますが、ただ、この「公益上必要」という場合なんでありますが、これは非常に解釈が広くわたるのじゃないかと思うのでありますが、何かそういう点について想定をせられておるような例がございましたら一つこの際お聞きいたしたい。
  83. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) 具体的の例として、現実に予見されていることではございませんが、たとえばダムに関しまする重要なる発明であるとかそういうような場合には、電気事業者にその特許発明の実施を認めることが公益上も適当であるというような事態があり得るわけでございます。従来は現行法の四十条で国だけがその強制実施等をなし得る主体になっていたわけでございますが、今後、国以外の一般事業会社においても、そういう公益上の見地からするところの他人の特許発明の実施ができる、という道をここに設けた方が適当であると考えたわけであります。もっともこれは非常に重要なケースでございますので、通産大臣の許可によってその相手方に対して協議を求める、そしてその協議が成立しないという場合には通産大臣が裁定をする。そしてその裁定の場合には一定審議会等の議を経てこれを決定するというふうな、その順序につきましては、慎重な手順を今回の法律中に規定したわけでございます。
  84. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それからこの特許料の料金の問題なのでありますが、これを見ますと物価水準が昭和九年から十一年に対して三百数十倍、こういうことを基準にいたしまして、そうしてなおいろいろ思いやりをいたしてこういう数字が出たと思うのでありますが、これはかりにこの法律が通って施行されるのがいつを目途にしておるかわかりませんけれども、たしか前納という制度があるように私どもは聞いておるのでありますが、そういう意味で、まあなるべく安い料金のうちにばっと一つやっていこう、というようなことが非常に多くなるかと私どもは考えられるのでありますが、そういうことは一応何ですか、御想定をせられてこの料金の問題をおきめになったかどうか、それを伺いたいと思います。
  85. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) 今回の特許法案では特許料の引き上げを考えているわけでございます。法律の施行は来年四月一日からと考えておりますことは、先般の特許法施行法案につきましても御説明申し上げた通りでございます。そうなりますとただいま御指摘のように、新法の公布の日から新法が施行になりますまでの間相当の期間がございますが、この間、新法による特許料の値上げを見越して特許料金等の前納がここに行われるのではないか、そういう混乱を予想しているかどうか、そういう御質問でございます。で、そういう事態をわれわれといたしましても考えました結果、実は、別に特許法等の一部を改正する法律案という法律案を、近く国会に提出いたす予定でございまして、本日の閣議の決定を見たわけでございます。で、今回は非常な制度の大きな改正でございますので、どうしましても、公布と施行との間に、新法準備のため、新法施行の準備の期間が必要であるわけでございますから、この期間中に生ずる問題の解決方法としまして、いろいろ検討しました結果、現行法中、やむを得ず現行法中の料金の部分に関しまする点だけを改正しまして、そして現行法から新法への移行が円滑になりますように、そういうふうに考えたわけでございまして、近くこの法律案につきましても、特許法等のこの関係法案の一環としまして御審議をわずらわしたいと考えております。
  86. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 最後にいま一点伺いたいんでありますが、この実用新案法と特許法というものは、これはむろん違いますし、それからまた片っ方は比較的簡便でいく、それから片っ方は相当な技術的なものと、こういうようなことで必ずしも一本にはできぬけれども、しかしまた中には実用新案か、あるいはこれは特許かわからないようなものもだいぶあるわけでありますが、これは特許料の関係もあり料金の問題もあるし、そういうことで一がいにはいえないのでありますが、この法案を出されるときに際しまして、むしろ実用新案とこの特許法と、こういうものを一本にひっくるめたらどうか、というような議論というものは役所にはなかったのでございますか。またそういう面も相当ちまたにはあるように聞いておるのでありますが、これをお伺いいたしましてきょうの質問を終りたいと思います。
  87. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) 実用新案権の対象は従来は物品の型ということになっていましたのを、今般は考案ということに改正しました結果、結局、特許法の対象と実用新案法の対象というものは同質のものになったわけでございます。で、そういうことになりますと、御指摘のように、実用新案法を廃止をして特許一本にまとめるべきではないかという意見は、この法律案審議の過程において実はございましたが、いろいろ慎重審議を続けました結果、結局、特許法案実用新案法案との併存がむしろ適当であるという結論に到達した次第でございます。その理由は、言いかえれば、実用新案法を廃止しなかった理由といたしまして、まず第一には、実用新案法というものは長年わが国において、特に日本のように中小企業者の多い産業界経済界におきまして、これはそれなりの効用を十分果して参ったわけでございまして、実用新案法の運用によりまして、申さば小発明といいますか、実用という価値ある考案というものを、この法律によって保護を加えることにより、技術の発達、産業の発展に寄与してきたという事実は、これは疑うべくもないわけでございます。それから次の理由としまして、もし実用新案法を廃止するとなりますれば、実用新案権の対象になりますような考案は、現実に日本に非常に多いということもこれは事実でございますから、これを無視するわけには参りませず、当然ある程度のものは特許法の対象の分野にこれが流れ込んでくるわけでございます。そうなりますと御承知のように、特許権は存続期間は十五年であり、実用新案権は十年だ、言いかえれば、実用新案権に相当するような、いわば程度の低い考案に対しまして、従来以上の保護の厚い、十五年という存続期間の長い権利をこれに認めるということになるわけでございまして、これは、技術の進歩をはかっていくという点から申しまして、むしろ感心しない。特に、なかんずく特許権の対象というものは、全体としてレベルが低下するということになるわけでございまして、これは、次から次からと新しい技術を、できるだけその特許制度の運用によって引き上げていこうというのが、特許制度の申すまでもなく趣旨でございますので、そういう点から申しまして、程度の低い考案に対して厚い保護を与えることになる、または特許権の対象が、全体としてそのレベルが低下するということは、むしろマイナスの影響が大きいというふうに考えまして、そういうような理由で、実用新案法は廃止することなく、従来と同様これに改正を加えまして、特許法と併存さすことがむしろ適当であると考えたのでございます。
  88. 上原正吉

    ○上原正吉君 長官に、ちょっと伺いたいんですが、日本が、世界一特許の出願数が多いと、しかし、実際に実施されて産業に、あるいは大衆の生活に寄与するものは、非常に少いように思うのです。ことに日本の特許は、少いように思うのです。  この数多い特許が、まあ自分の特許を保護するための特許というふうなものもありましょうけれども、実際問題としては、特許権になりそうだから特許を出願するというふうなものもたくさんあって、非常に国費を浪費させるにかかわらず、また、人に――特許の審査官に、非常な御苦労をかけるにかかわらず、一向に実施されないというものの数が非常に多いということは、これは国家的に見ても、大へんな損失だと思うのです。で、特許法を改正するに当って、何かそういうことを防御する方法をお考えになったかどうかということを伺っておきたいと思うのです。
  89. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) ただいま御指摘の点は、非常に重要な点でございます。それで、今度の法律改正において、むだな出願を防止するような方法を何か講じたかどうかというのが御質問の要点かと存じます。  この点につきましては、実用新案の改正ということが、これの一助になるものではないかと存じております。と申しますのは、先ほども申しましたように、これまでは特許権の対象は、抽象的な発明、技術的なアイデアである、実用新案権の対象は、具体的な物品の型であるということになっておりましたので、これが二つ、はっきり区別をして運用されて参りましたために、一方では、同じアイデアに基く型でございましても、一方では特許になり、一方ではそれがまた実用新案権になるという場合があったわけでございます。そういうわけで、ある新しい技術を発明した人は、自分のその新しい技術、アイデァとしましての、それについての特許を取るほかに、およそ予想される型というものについて、他人が実用新案権取ることを防護するために、自分で生産または販売する意図のないものについて、実用新案権の出願をたくさん出しておったという点があろうかと存じますが、今般、この点につきましては、先ほど申しましたように、特許法と実用新案法の対象を同質のものとし、かつ両者の先願後願関係も、これで見るということに相なりましたので、そういうふうに、従来のような必要以上のむだな不当な実用新案権の出願というものは、相当減少するのではないかと考えておるわけでございます。  このほかに、法律改正の問題ではございませんが、ただいま御指摘のにように、出願件数が非常に多いが、公告になる率、権利になる率、言いかえれば合格率というものは、日本では三五%――特許、実用新案を通じまして三五%ぐらいでございまして、六五%というものは、拒絶になり、かつその理由が、大体過去の文献、特許公報等に、すでに記載になっておるアイデアであるという理由の拒絶が、全体の六割五分でございます。われわれとしましては、出願人が出願前にできるだけ、いわゆる先行技術の調査と申しますか、どこにいかなる技術がすでにあるかということをできるだけ調査してもらうということが、これは単に特許の出願を、質のいいものに減少するというばかりでなくて、日本の全体を通じまして、随所に重複したむだな研究に、貴重な時間と労力と経費とが費されていくということに、これは結局なるわけでございますので、そういう技術調査と申しますか、そういった点につきましても、われわれとしましては、これは法律改正の問題ではございませんが、関係業界に要望いたしておるわけでございます。
  90. 上原正吉

    ○上原正吉君 いま一つ。  昔、専売特許という言葉があったのです。法律も、そういう用語だったと思うのです。それが特許というふうになっておりますね。そうして商標や意匠は登録――今度は、実用新案では許可になり、用語の統一がなされていないように思うのですが、考えてみると、特許という言葉自体が、専売特許とつながれば意味はわかりますけれども、特許という二字だけでは、われわれは意味を的確に想像し得ないのですけれども、そこで専売特許という言葉が、いつ特許になったか、と同時に、どんな理由で特許になったかということを伺っておきたいと思うのです。御記憶でなかったらけっこうです。御記憶でございましたら、どなたでもけっこうです。
  91. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) 特許法の沿革から申しますれば、明治十八年には、専売特許条例といい、これが明治二十一年に特許条例となり、三十二年に特許法になったわけでございます。  専売特許といういい方を特許といういい方に変えた理由は、私ども、必ずしもその当時の事情は、正確に承知しないわけでございますけれども、今度の法律でも、御承知のように特許権の効力というものは、専売ということでなく、生産あるいは販売、使用というものに、非常に広く及ぶことになりますので、かえって専売という文字がつく方が誤解を招きやすい言葉ではないか、そういうふうにわれわれとしては考えるわけでございます。
  92. 鈴木万平

    鈴木万平君 特許と民事訴訟の問題なんでございますが、特許法で特許が認められましても、また裁判で争われる事例が多いのです。その場合は、この特許とどういう関係になって参りますか。
  93. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) 特許権の設定の手続としましては、特許庁審査をいたしまして、そして審査の結果公告をいたします。そしてその特許について申しますれば異議申立期間というのがございまして、そしてその異議申立がないか、あるいは異議申立がございましても、異議申立の理由がないときには、これが特許権として成立するわけでございますが、しかしなから一旦成立しました特許権に対しましても、もしそこに無効の原因があるというような事情がございます場合には、無効審判でこれを争うわけでございまして、その審判も、特許庁の所管でございます。  それで、この特許庁の審判には、二段階ございまして、初審と抗告審とございます。それで初審の審決に対して不服である場合には、抗告審へ行って、なおこれを争う。そしてその結果に対しまして、なお当事者が納得しない場合には、東京高等裁判所へ行きまして、次いで最高裁へ行くというのが順序でございます。普通の民事訴訟で問題になる場合という御質問でございます、これは、おそらく権利侵害という問題が生じました場合に、その権利者と侵害者との問に、権利者の方から侵害者に対しまして、特許権侵害として訴え、損害賠償を請求する。これは当然、地方裁判所等の裁判訴訟になるわけでございますが、しかしながらその場合におきまして特許権は非常に権利の範囲が微妙でございますので、その侵害者の行為が、特許権の権利範囲に属するか属しないかということが、訴訟における先決問題になるわけでございます。そういう場合には、普通特許庁におきまして、従来は権利範囲の確認審判という制度がございました。その権利範囲の確認審判によりまして、当該侵害行為といいますか、その問題になっているその事実ないしは行為が、権利の範囲に属するかどうかを特許庁の審決でもってきめるわけでございます。その審決を地方裁判所等では、これを事実上尊重しまして、この特許庁の審決によって、結局裁判をやるという場合が通常でございます。もちろん地方裁判所等では、これとは並行しまして、別途鑑定人を呼んで、鑑定を命ずるというような方法を並行して講ずる場合もございます。
  94. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 本件に関しては、本日は、この程度といたします。   ―――――――――――――
  95. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 次に、先般大阪及び名古屋方面に委員派遣を行いましたので、この際、派遣委員報告を行います。名古屋班、栗山君。
  96. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 先般、委員派遣を命ぜられました名古屋班の調査概要を御報告申し上げます。  名古屋班は、古池委員と私が参加いたしまして、一月十九日から二十二日まで四日間、工場排水問題、工業用水問題の調査を中心にして、名古屋、四日市地区の産業事情を視察して参りました。  視察した個所は、東海染工株式会社、北伊勢工業用水道取入口、四日市臨海工業地帯、名古屋港、新名古屋火力発電所、新三菱重工名古屋航空機製作所、大曾根小売市場、瀬戸市、王子製紙春日井工場等でございます。  これらの詳細は、別に会議録に報告書として掲載させていただきたいと思いますので、ここにはごく簡単に感想を申し上げて報告にかえることといたします。  名古屋、四日市地区は、すでにわが国有数の工業地帯として知られておりますが、さらにこれらの地区では、現在臨海工業地帯計画により、工業地帯の造成が行われています。それと並んで港湾設備、工業用水、排水等が整備されることが必要であり、着々進んでいます。従って伊勢湾沿岸を一帯とする工業地帯は、今後その将来性が大いに期待されるわけであります。  この地区でもって、種々紛争の種となった工場汚水の問題は、大体工場側の浄化設備の設置をもって、一応の解決をみておりまするが、工場側では、その資金面で苦慮し、特に中小企業では、その傾向が強いように思われますので、融資等何らかの助成策が望まれるものであります。  工場用水法の地域指定を受けた四日市地区では、拡大する工場用水の需要を満たすため、北伊勢工業用水道が着々行われており、現在一期、二期工事が完成し、三期が工事中でありますが、早期完成のため、ここでも多くの国庫補助が望ましいと申しておりました。  以上、簡単ではありますが、詳細は、会議録に載せる報告書に譲ることとし、最後に、私どもの視察に当って、種々御配慮を下さいました関係者の各位に厚くお礼を申し上げ、この報告を終ることといたします。
  97. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 次に大阪班、小幡君。
  98. 小幡治和

    ○小幡治和君 関西班の概要を御報告申し上げます。  関西班の派遣委員は、島、海町、大竹委員のほか私と四名でありました。二月二日より四日間にわたって、工場立地、貿易、小売市場、航空機等の問題の調査を中心に、産業事情を順次視察して参りました。  視察個所は、富士製鉄広畑製鉄所、川崎航空機工業神戸製作所、美馬ミシン工業、西沢ミシン工業、日本レイヨン宇治工場、清水焼等でありまして、それに大阪市、布施市周辺地区の小売市場の乱立の状況、医薬品の乱売状況等も視察して参りました。その間、神戸において輸出入取引法の改正法律案について、貿易業者より意見を聴取し、また、軽機械の輸出の振興に関する法律案、小売商業特別措置法案についても、それぞれ関係者から意見を聞く機会を得たのであります。これらの詳細につきましては、会議録に報告書として掲載させていただくこととし、ここでは概略を申し上げて報告にかえることといたします。  まず工業立地、工業用水、工場排水等の見地から広畑製鉄所と日本レイヨン宇治工場を視察いたしました。広畑製鉄所は、恵まれた立地条件を背景とし、当初より臨海工場として計画的に造成されておりますが、港湾施設の整備と工業用水の確保ということが将来とも重要な課題でありましょう。  日本レイヨン宇治工場は、水量豊富な宇治川のほとりに建設されており、人絹糸の生産に必要な多量の水が消費されておりますが、この水が排水される際には、沈澱槽を通って完全に処理され、全然無害な水となって再び宇治川に放出されておりますので、何らの問題も生じておりません。  軽機械輸出振興法律上案に関連して、ミシン工場を視察し、法案に関する意見も聴取いたしましたが、ミシン業界としては、同法案の成立には異論かない旨の意見が述べられましたが、関連部品業界からは、完成品業者が主導性を持っているため、完成品業者に課せられる負担金も、部品業者に転嫁される可能性もあるため、一部に反対の空気もあったが、今は、大局的見地から業界として協力するとの発言がありました。  輸出入取引法の改正案に関する神戸の貿易業界からは、メーカー段階のカルテルを容認し、また実績主義等に基準をおく登録制度を設けることは、大企業を擁護し他面中小の貿易業者を圧迫することにはならないか、また行政官庁による協定の勧告を規定することは、官僚統制を招来するものではないか。貿易連合の制度は、結局中小貿易業者整理につながるものではないか等々の危惧を開陳された意見相当述べられたのであります。  次に、小売市場の問題については、大阪市と布施市に臨接した地区における小売市場の乱立状況と、それによる過当競争の実情を視察いたしましたが、乱立の防止には、ぜひ市場建築の場合に、距離的制限の措置を講じてほしい、しかも、これを知事の許可条件にしてほしいというような強い要請があり、また卸売業――これは医薬品についてでありますけれども、これの小売行為――卸売業であるが、小売行為をやっておるために、小売業者に非常に甚大な影響を及ぼしておるから、適切なる方策を講じてほしいとの要望も、非常に強くあったのであります。  航空機の問題については、次期戦闘機の機種を早く決定してもらいたいとの要請を受けたのであります。  以上、各方面の意見、要望等を中心に視察の概要を御報告申し上げましたが、最後に、今回の視察に当って、種々御協力賜わりました大阪通産局並びに関係会社、関係諸団体の各位に衷心より深く感謝の意を表しまして、私の報告を終ります。
  99. 田畑金光

    委員長田畑金光君) ただいまの報告にもありました通り委員長の手もとに、詳細なる報告書が提出されておりますので、これを会議録に掲載したいと存じますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 田畑金光

    委員長田畑金光君) それでは、さよう取りはからいます。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時四十三分散会