○栗山良夫君 高碕さんは申し上げるまでもなく産
業界のことはよくおわかりになっているので、大体常識的なことについては、おそらくどんな質問をいたしましても即答されると思いますが、私が今申し上げていることはそういうありきたりの、今お述べになったような常識的なことをここで述べていただこう、そういう御苦労を願おうと私は思っておりません。問題はわが国の科学技術の後進性というものを脱却するために、よほど強力な国の施策を行わないというと、模倣技術でもって外国の真似をして、そして世界の一流国であるという、そういうことは続けられるかもしれぬけれども、究極においては日本の産業というものは先進各国から置きざりにされてしまう、そういうおそれを持っておるので、やはり技術の導入であるとか大学の研究を進めるとか研究所を置くのだとか、そういうことはいずれも不必要だとは私は申しませんが、そういうことを行いながら、そこにバック・ボーンとして国として中心的にとるべき
一つの重要な施策というものが抜けていやしないかということを私は指摘したいのです。
私が今指摘をするまでもありませんが、たとえば最近の技術革新の動きを見ておりますと、世界的な規模において見ておるというと、あまりにも革命的な進歩が激しいので、従って戦争前でも若干そういう問題はありましたけれども、戦後においては特にどんなにその
一つの産業が努力し、
一つの
企業家が努力しましても、この世界的な技術革新の前には頭をたれて、もうおじぎをするよりしようがないという状態が随所に出ております。それは
一つのその
企業家の
責任の問題ではなくて、一度そういう波が来ればその
一つの産業全体がだめになる。その
一つの
業界全体がだめになってしまうというようなおそるべき技術革新の波が襲っております。たとえば一番いい例を
一つあげれば、私は五年ほど前に日立製作所の電子科学
部長に会って、そしてアメリカから初めて、あれはサイエンスか何かの雑誌にちょっと載っておりましたが、トランジスターの材料のゲルマニウムのことが書いてあって、私が持っていって見たときには、彼の机の上にはここから先くらいのトランジスターのアメリカから取り得せた見本の
一つがありまして。おそらくこれが日本での最初のものだと思う。それから五年たたないうちに日本がトランジスターのメーカーになってアメリカに輸出をするといって騒いでおるが、しかしトランジスターのアメリカの発明の特許を買って日本がやっておることについてどういう現象が起きておるかというと、巨額なロイアリティをアメリカに払っておるということが
一つ、もう
一つは国内にある真空管メーカーで特に、ミ二アチュア・バルブを作っておったメーカーが総なめに生産をやめてしまうという状態にきておる。このくらいはっきりした技術革新の影響を受けた最近の例はないと思います。それは天然繊維が化学繊維にかわり、さらに合成繊維にかわって、古いものが顧みられなくなったという現象は国民がこれはよく知っておることですけれども、それ以外にもこういうことがたくさんある。二、三日前の工業新聞を見ますというと、今アメリカの国内でおそるべき発明が研究段階にある。それが何かと申しますというと、今までは電気を起すのに水力ならばタービンを回して発電機を回して電気を起す、火力ならばボイラーで
石炭をたいて湯を沸かしてそれを蒸気タービンに入れてそれから電気を起す、こういう複雑な過程をとっておりましたが、熱から直接発電をするという研究が行われて、すでにアメリカにおいては四つの方式がほとんど実施直前の状態にきておるということを報じておる。全紙一面に写真入りで報道しております。そういう研究というものは日本で行われておるか。だれかやっておるかもしれませんが、あんなに写真入りで外国に宣伝されるほどは伸びていないと私は思います。もっと顕著な例は今四日前で作っておる、
政府が協力している合成ゴムの仕事でもそうです。アメリカなりドイツでもどんどん実施に入っておるのをおくればせながら買ってやっておる。もしあれが生産に入ってくれば日本のゴム工
業界は大変革を起すでしょう。そういう工合に最近の技術革新というものは、われわれが学校で学び、あるいは世の中で知識を受けた
程度のものでない恐るべきものがある。
一つの極端な言い方をすれば、単一業種で伸びてきている
一つの資本系統があるとすれば、その資本系統がもし研究を怠っておれば、それをこわしてしまう、それを壊滅に瀕せしめるくらいの力を持っている。そういう技術革新が進んでいる。そういう世界的の風潮の中でわが国が今
大臣がおっしゃったような、そういう技術革新の構想でよちよちやっておっては、世界的におくれをとりゃしないか、何か根本的の考えをここでまとめてやらなければいけないのではないか、こういうことを私は力説しているのです。その点についての考えを伺いたい。