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1959-02-09 第31回国会 参議院 社会労働委員会国際労働条約批准等に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月九日(月曜日)    午後一時二十四分開会   ————————————— 昭和三十四年二月六日社会労働委員長 において本委員を左の通り指名した。            勝俣  稔君            草葉 隆圓君            斎藤  昇君            柴田  栄君            片岡 文重君            藤田藤太郎君            山下 義信君            常岡 一郎君 同日社会労働委員長は左の者を委員長 に指名した。            藤田藤太郎君   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     藤田藤太郎君    委員            勝俣  稔君            斎藤  昇君            柴田  栄君            片岡 文重君            山下 義信君            常岡 一郎君   委員外議員            横川 正市君   政府委員    労働大臣官房長 澁谷 直藏君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    労働大臣官房国    際労働課長   宮本 一朗君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際労働条約批准等に関する件   —————————————
  2. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) それでは、国際労働条約批准等に関する小委員会を開会いたしたいと思います。  国際労働条約批准等に関する小委員会の任務は、非常に多くのものを——条約、勧告、決議という工合いに、多くの検討しなければならない仕事があると思います。で、本日は皆さんの御了解をいただきまして、労働省から、宮本国際労働課長澁谷官房長に来ていただいて、ILOそのもののおい立ち、状況、その他についてまず説明をいただいて、その後いろいろと今後の運営について議事を進めていただきたいと思うのですが、皆さん方にお諮りいたしたいと思います。よろしゅうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) それでは、そういう順序で議事を運びたいと思います。  一つお諮りしておきますけれども委員外議員として横川正市君から、質疑のときの、発言の申し出がございますが、これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 御異議ないものと認めます。  それでは労働省側澁谷官房長
  5. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) それでは、大体国際労働機関が発足いたしましてから今日に至るまで非常に大きな仕事をしているわけでございますが、それの概貌を御説明を申し上げます。  御承知のように、国際労働機関は前の第一次世界大戦の後に設立されまして、一九一九年の創立でございます。わが国は、言うまでもなく五大産業国一つとして常任理事国として国際労働機関に参加しておったのでございますが、一九三八年に脱退をいたしたわけでございます。で、今度の戦後一九五一年に再び加盟が許されまして、自来今日に至っておるわけでございます。その間、一九五四年に理事国に就任をいたしまして、常任理事国として参加をすることになった次第でございます。それで、ILO創立以来現在までに批准をいたしております条約総数を申し上げますると、資料が若干新しくなりましたので、現在それを更正いたしておりますから二、三日中に完備しました新しいものをお配りいたす予定にいたしておりますが、本日は資料が間に合いませんので、まことに恐縮でございますがお聞き取りを願いたいと思います。  条約総数が百十一でございます。わが国批准した数が二十四、それから未批准のものが五十五でございます。その他わが国に全然関係のない条約九つ、それから批准されて現在まだ発効していない条約が同じく九つ、それから新しい条約によって改正された条約が十四、こういうような状況になっております。  それで、世界各国批准状況を申し上げますると、ILOの現在の加盟国総数は八十カ国でございます。それで、採択された条約は、先ほど申し上げましたように百十一件、加盟国による批准された条約総数は千八百四十四、これは、各国ごとに計算いたしますると千八百四十四件が今この加盟国によって批准されておる。それで、一カ国当り平均批准数は二三・一でございます。これに対してわが国批准しました条約数戦前において十四、戦後において十、合計二十四でございます。一カ国当り平均数をわずかに上回っておるという状況でございます。参考までに主要国における条約批准数を申し上げますると、一番多いのがフランスでございまして、フランスが七十三、イタリア五十九、イギリス五十八、西独三十四、日本が二十四、インドが二十三、カナダ十八、ソ連十八、中国が十五、アメリカが七、こういう状況でございます。  国際労働機関が設立された動機でございますが、これは現在の国際労働機関憲章前文にはっきりと書いてあるわけでございますが、それを参考までにちょっと読み上げてみますると、「世界の永続する平和は、社会正義を基礎としてのみ確立することができるから、  そして、世界の平和及び協調が危くされるほど大きな社会不安を起すような不正、困苦及び窮乏を多数の人民にもたらす労働条件が存在し、且つ、これらの労働条件を、たとえば、一日及び一週の最長労働時間の設定を含む労働時間の規制労働力供給調整、失業の防止、妥当な生活賃金の支給、雇用から生ずる疾病・疾患・負傷に対する労働者保護、」等々と長く書いてございますが、こういったような「結社の自由の原則の承認、職業的及び技術的教育の組織並びに他の措置によって改善することが急務であるから、  また、いずれかの国が人道的な労働条件を採用しないことは、自国における労働条件の改善を希望する他の国の障害となるから、  締約国は、正義及び人道の感情と世界の恒久平和を確保する希望とに促されて、且つ、この前文に掲げた目的を達成するために、次の国際労働機関憲章に同意する。」  こういう長文の前文がうたわれているわけでございまして、すなわちこの大きな社会不安を起すような不正、困苦窮乏をもたらすような労働条件が存在することは、世界の永続する平和に対する大きな障害となる、従ってこの障害を除去するように各国が協調して努力していかなければならない、そういう趣旨でこのILO創立されたわけでございます。  それで、この前の第二次の世界大戦後におきまして、御承知のように国際連盟国際連合という新しい機関に脱皮をしたわけでございますが、その後におきましては、このILO国際労働機関の中の一つ機関として発展したわけでございます。しかしながら、現在の運営に見られるように、あくまでも運営そのものにつきましては独自の自主的な動きをしておるわけでございまして、従いましてただいま読み上げましたように、憲章におきましても国際労働機関憲章という独自の憲章をもって、その目的追求のために加盟国八十カ国に及ぶ世界的な規模におきまして精力的な活動を続けておるわけでございます。この国際労働機関に関するわが国関係は、先ほど簡単に御説明いたしましたように、創立以来その間、若干この前の大戦中脱退をいたしておった機関があるのでございますが、それを除きますると、創立以来戦前におきましては五大産業国一つとして、また戦後におきましても、一九五四年以来は十大産業国一つとして、常任理事国としてこの国際機関に参与をいたしておる、こういう状況になっておるわけでございます。
  6. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 今の報告に御質疑を願います。
  7. 横川正市

    委員外議員横川正市君) たまたま平均数でいくと、日本の場合には二三・一という平均批准からすれば平均を保っておるようなんですが、たとえばフランスと同様というふうに国際的に見ることは少し荷が重過ぎるとしても、イタリアとは大体肩を並べたぐらいなところにはおきたいものだというふうに私どもは考えておるわけなんですが、そういう国と国との関係批准の数が多い少いが即連合の作られた趣旨にそれだけ沿っている、沿っていないということに正比例するとは言うわれないまでも、大体批准数が多いということは、非常に好ましいということだというふうに私たちは思うのですが、その中で、アメリカソ連との七つと十八というふうに数的には非常に少いのでございますけれども、これはどういう事情でこう少いのかお調べになっておりますか。
  8. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) ソ連加入——今度の戦後に加入いたしておりまして、加入期間が少いというのが批准条約数が少い一つ原因になっているかと考えておりますが、アメリカにおきましては憲法の関係上、御承知のように、各州がそれぞれ州法を持ちまして、連邦法州法との関係が非常に特異な構造を持っているわけでございます。従ってこのILO条約批准するに当りまして、連邦法州法との調整がなかなか困難でできがたい、こういう事情のためにアメリカ条約批准の数が非常に少いという最大の原因になっておるように私どもは考えております。
  9. 横川正市

    委員外議員横川正市君) その場合ですね、単に連邦法州法との調整がいかないから批准が少いのだという単純な説明でいいのか、それとももっと根本的には、大体国際的な一つ労働関係諸法規のレベルがこの条約によってきめられるより以上にアメリカの場合は優遇処置がとられておって、これを批准することはかえってダウンするのだというふうな傾向があるためにこれは少いのだというふうな見方も成り立つのじゃないかと思いますが、その点はどうですか。
  10. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) その点はお説の通りでございまして、アメリカ労働条件というのは、言うまでもなく世界最高水準をいっておるわけでございます。従って、労働条件そのものの中から見れば、もう当然批准する、しないにかかわらず最高のところまでいっている、従って批准することが国内労働条件に及ぼすよい影響というものは他国に比べてはるかに弱いという事情は確かにあると思います。ただ、先ほど申し上げたように、法的に考えました場合に、批准をした以上は、その条約に合わせて国内法調整をすることが必要になるわけでございますが、それが連邦法州法との関係でほかの国よりも調整がなかなかできにくい事情があるのも一つの大きな原因になっておるかと考えております。
  11. 横川正市

    委員外議員横川正市君) これはフランスイタリア、それからイギリス等の例からいって、相当長い歴史を持っておりますし、日本のように脱退期間というのはありませんから、そういう関係でもこの条約批准に対する条件はよかったと思うのでありますが、大体日本批准をいたしておりますものと、それからフランスイタリアイギリス等批准しておるものとでは、大体同じものが批准され、それから相当時間的に経過をたてば、日本も当然批准すべきものがこの中に含まれているというふうに解釈していいですか。
  12. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) わが国脱退しておった期間があるということも一つのあれでございますが、大きな日本批准できにくい事情一つといたしましては、この欧米各国の法制と比べまして、日本法律の立て方が、特殊な立て方をいたしておる、その最も典型的な例が、労働基準法でございますが、またこの未批准条約で一番数の多いのが、労働基準関係でございます。その一番数の多い労働基準関係において、国内法の立て方が欧米の諸国と非常に異なっておるという関係上、批准できないというのが現状でございますが、しかも私どもこの未批准条約全般にわたって検討をいたしておるわけでございますが、ほんの、全体を十といたしました場合に、九割五分ぐらいまでは批准できるという条約が多いのでございます。ところが、わずかにその残りの五%程度がひっかかって批准できない、こういう条約の数が相当な数に及んでおるのでございます。
  13. 横川正市

    委員外議員横川正市君) そうすると、労働基準法関係部分になるわけですね。大体五%程度あるいは五%よりももっと少い一%程度、そういうことがひっかかっておって批准ができないというのは、その部分がこの国内法の整備をするのに非常に困難だということになるわけですか。
  14. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 結局その条約批准するということになりますると、基本法でその条約に抵触する部分について基準法改正を要するということになるわけでございます。それで、いろんなまあ事情があるわけでございますが、労働基準法条約に抵触するというものの改正ということは、相当これは及ぼす影響が大きいものでございますので、それで現在まで、なかなか条約批准が進まないということになっておるのでございます。
  15. 横川正市

    委員外議員横川正市君) ちょっとふに落ちかねるのは、日本労働基準法は非常に国際水準以上のものがきめられておるので、それでこれらのものを修正することは、かえって改悪になるおそれがあるからということが理由なのか、それとも労働基準法全般改正したいという国内的にはある一つ動きがあるようでありますが、それらの動きが、もしも部分改正するのならば全般改正すべしということがきっかけになりそうだから批准ができないというふうに、部分の修正ができないために批准ができないというふうにこう理解していいのか、どちらですか。
  16. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 一例を申し上げますると、ここに工業的的企業における労働時間を一日八時間、かつ一週四十八時間に制限する条約というのが、これは条約第一号でございますが、こういう条約があるわけでございます。それとわが国労働基準法を比較いたしますると、条約の規定する一日八時間、一週四十八時間という大原則については、労働基準法はまさにその通りを規定しておるわけでございますので、先ほど比喩的に申し上げました九五%、それ以上はこの条約批准して差しつかえない、こういうことになるわけでございます。ところが、この条約の中に労働時間の延長、それから時間外労働等についての規定があるわけでございますが、それはわが国基準法の立て方とわずかにその規制方法において異なっておるわけでございます。こういったきわめて技術的ともいうべき事項の障害のために批准できないと、こういうことになっておるわけでございます。それで私どもといたしましては、ILO加盟しており、ことに十大産業国一つとして常任理事国ともなっておるわけでございますので、できるだけこの夫批准条約批准を促進したいという気持で検討を進めておるわけでございます。それでただ、ただいま触れました労働基準法改正をどうするかと、ただいま御指摘のようにこの基準法をめぐりましては、いろいろな異なった主張が相当大きく動いておる問題でございますので、その辺とのかね合いと申しますか、その辺の事情も勘案しながらできるだけ批准を促進する方法で努力していきたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  17. 横川正市

    委員外議員横川正市君) そうすると、今のところの理解というものは、これはその批准をすることによって、条件からいけば大した問題はないけれども、運用上で実際面の違いがあるので、それをいじるということも必要だけれども、全体の問題もにらませなければならないのでおくれているのだと、こういうふうに解釈できるわけですかね。それでいいですか。
  18. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) はあ。
  19. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) ほかにどうでしょうか……。  お諮りしますが、今個々の問題が出てきておりますので、労働省の方からこの資料に基いて説明をしていただいたら、より詳しくなると思いますので、そうしていただきます。
  20. 宮本一朗

    説明員宮本一朗君) それでは一覧表に基きまして、ごく簡単に御説明申し上げます。  最初にお断わり申し上げておきます点は、ここにございますのは、きわめて簡単に未批准障害になっております点を書いてあるのでございまして微細な点につきましては、まだそれぞれ議論を尽くさない点あるいは資料に基いてはっきりしない点が多々あることでございます。  まず、条約一般の性格について申し上げますならば、御承知のように八十カ国という国情、民族、風習の違った国が集まっておりまして、しかも公用語といたしましては英文と仏文になっております。従いましてこれの言葉の上におきます意味あるいはその言葉の中に含まれました解釈上の意味関係につきましては、きわめて困難な点があることでございます。従いまして、条約そのもの意味を確定いたします作業と、その意味国内法との関連を確定いたします作業とは非常に困難な点があることでございます。そういうふうな前提のもとに、ただいまから申し上げる中心的な批准障害ということの点をお聞き取り願いたいと存じます。  まず二ページから始めて参りますが、ここに掲げてありますのは、労働時間の関係最初にまとめております。これは前後十項ございます。で、この国際的な全般的なことを申し上げますと、十項ございますうちで、二十以上の批准国がございますのは第一号条約、ただいま官房長から例にとって説明がありました第一号条約だけでございまして、きわめて各国におきまして低い批准数しか持っておりません。特にいまだ発効しないというものが二件もございます。従いまして労働時間の関係から申しますならば、ILO加盟国におきましてもきわめて批准数の少い条約の部類になろうかと思います。  まず第一に、第一号条約でございますが、ただいま申し上げましたように、一週四十八時間、一日八時間、この原則わが国法律においても認められておることでございますが、先ほど官房長から御指摘申し上げましたように、わずかな時間外労働、それから労働時間の延長ということについての基準法の立て方と異なっておると、こういうことでございます。  それからその次に、商業及び事務所におきます労働時間の規制、これは工業的な企業と相並びまして、やはり一日八時間、一週四十八時間の原則でございます。この原則におきましてはやはり労働基準法の定める通りでございますが、工業的企業におきます時間条約と同じ難点におきまして、わが国法律批准でき得ないということになるわけでございます。  それから次の三十一号、これはあとの方で四十六号条約に吸収されておりますので、そのときに申し上げたいと思います。  それから以下約七つございますが、これは一般的な労働時間の規制ではございませんで、各産業別におきますそれぞれの時間を規制したものでございます。  まず自動式板ガラス工場における時間の制限に関する条約でございますが、この条約におきましては一週間を平均して四十二時間ということに限定されておるわけでございますが、日本労働基準法におきましては産業全般にひっかかっておるものでございまして、各産業別にそれぞれの条件を緩和して事実上はやられておることではございますが、特に法律をもって特殊な時間制限をやっておるという実情がございませんので、そういう意味から申しまして、原則的に産業別で時間を制限をするというような条約現行労働基準法のもとにおいては批准でき得ないという障害があるわけでございます。  それから炭鉱におきましても同様でございまして、これは一日の在坑時間を七時間四十五分ということになっておりますが、これがやはり労働基準法関係で八時間、そこのところのわずか十五分というふうなことと、それから休日労働の禁止というふうな非常に厳しいことをやっておるわけでございますが、この点は現行法律に一致しない、かようなことでございます。  それから三ページに参りまして、四十七号条約、これは御承知のように一週四十時間ということを規定しておるわけでございまして、これは第一号条約からさらに一歩進めまして、一週四十時間制ということでございます。これは先ほど申し上げましたわが国労働基準法原則から申しまして、とうてい批准することができないかと思われます。なお、この四十時間条約批准しておる国は世界でわずか四ヵ国でございます。  それからガラスびん、それから公共事業繊維工場路面運送、これだけの各産業別労働時間につきましてそれぞれの時間制限をやっております。あるいは四十二時間、あるいは四十時間といったようなことを持ち込んでおりますが、結局先ほど申し上げますように、労働基準法の一週四十八時間、一日八時間、しかもオーバータイムを厳格に規制するというふうな原則から参りまして、批准でき得ない状況でございます。従いまして原則的な面においては、趣旨わが国法律においても実現されておるわけでございますが、そういった産業別というふうな観点、あるいは超過労働というふうな観点からの制約があるということでございます。  それから四ページに参りまして、休日及び休暇条約が三つございます。で、その三つの条約も、共通して申し上げられますことは、原則的には、たとえば四週を通じて四日というふうな、一週間が一日、四週を通じて四日というふうな原則的なことは、労働基準法においても認めておるところでございますが、それの四週間を通じて四日と申します場合におきましても、計算のいたし方なり、あるいは、たとえば管理監督の職務にありますものの休日休暇除外例と申しますか、特例と申しますか、そういったような点においてわずかにひっかかる現行労働基準法の立て方になっておるわけでございます。従いまして、下に簡単に書いておきましたような理由につきまして現在まで批准に至らないということでございます。  それから、その次に賃金関係法律が五つございます。この最初最低賃金決定制度の創設に関する条約、これは現在政府といたしまして国会に御審議をお願いしております法律が通過いたしました暁には、この条約趣旨を履行できるのではないかと考えております。従いまして法案が成立いたしました暁には、この条約批准手続をとり得るものと、かようにわれわれは考えております。  それからあとに、公契約における労働条項公契約におきます条約でございますが、これは現在日本にはかような法律がございません。で、こういうふうな立て方で、特殊な産業部門賃金関係個々にやっていくかどうかというふうな原則的なことにつきましてさらに根本的な問題はございますが、現在わが国にはかような法律はございませんので、この条約趣旨を満たすということはできないわけでございます。  それから、賃金保護に関する条約でございますが、これも条約趣旨労働基準法趣旨とはほとんど、先ほど官房長が比喩的に申し上げましたが、これはまあ九九%程度は実現できるのではないかとわれわれは考えておりますが、たとえば支払いの面におきます現物給与の面でございますとか、それから工場売店利用強制、かようなものをやはり法律的な制度としてわが国が持たなければならないというふうに条約趣旨を理解いたしますならば、その点におきまして多少欠陥があることになるわけでございます。従いまして、これもさような意味から現在まで批准に至っていないということでございます。  それから農業におきます最低賃金制度決定に関する条約、これは先ほど申し上げました一般的な産業におきます最低賃金決定制度ができますならば、これも現在国会に提出いたしております法案の中に含まれると解釈いたされますので、これもあわせて批准手続がとれるのではないか、かように考えております。  それからその次の百号条約同一価値労働に対する男女の同一報酬に関する条約でございますが、これも原則といたしましては、労働基準法に盛られております内容で差しつかえないとわれわれは考えております。ただ、この同一価値を評定いたしますための特殊な制度を法制的な意味合いにおきまして持たなければならぬというふうな解釈前提に立ちますならば、その点が欠陥になるということでございます。この点は、なお、われわれとしては検討を進めておるわけでございますが、現状におきましてはまだ批准いたしておらない状況でございます。  それからその次に、安全衛生関係に五つばかりございます。これもやはり大体のところ基準法の安全衛生規則、本法及び安全衛生規則に盛られております内容で大筋のところは実現されておるわけでございますが、それぞれの業態の中におきまして、わずかに、たとえば特定のものの禁止でございますとか、あるいは特定の物件に対する取扱いの違い、こういうような点で、現在の規定が積極的に規定されていないというふうな状況でございまして、わずかな点でこれまた批准でき得ない状況になっておるわけでございます。  それから婦人関係条約といたしましてやはり五つばかりございますが、この中で三つはあとからできました条約に吸収されておりまして、工業に使用される婦人の夜業に関する条約と母性保護に関する条約が二つ残っております。これはやはり深夜業の禁止時間の計算、あるいはその時間の取り方がわが国法律と立て方を異にしておるということが大きな未批准理由でございます。それから母性保護に関します条約につきましては、産後における就業禁止期間、育児時間、こういうものが具体的にかなり幅広く取られておるというようなことから、わが国労働基準法から参りまして、その点を具備することができていないという状況でございます。  それから児童年少者関係条約でございますが、これが約十件ばかりございます。この中で、年少者の夜業に関する条約、それから年令に関する条約あとからできた条約に吸収されておりまして、第五十九号の工業に使用し得る児童の最低年令の条約でございますが、これも原則といたしましての年令基準の取り方は、わが国基準法で満足させられておるわけでございますが、危険有害業務に関する最低年令につきまして、多少その部分的取扱いが異なっておると、かようなことでございます。  それから非工業的な労務におきます児童の最低年令、これにつきましては軽易労働の取扱い方がわが国法律と相異なっている、かようなところでございます。それから年少者の健康検査、これも年令の取り方によりまして多少範囲が違っておる、かようなことでございます。それから非工業的な面におきます年少者の健康検査、これもやはり年令の取り方によって違ってきておるということでございます。それから年少者の夜業に関する点、これも先ほどの女子と同じく深夜業の時間の取り方に違いがございまして、時間の取り方、区切り方、従って、就寝時間その他との関連におきます時間の長さ、これが違ってきておるわけでございます。  第九十号の工業に使用される年少者の夜業に関する条約も同様の趣旨のものでございます。  それから労使関係のものといたしまして二つ掲げてございます。これは結社の自由及び団結権の擁護に関する条約で、一般工業的産業労働者と農業労働者のものでございます。十一号と八十七号、これの内容につきましては、ただいま労働問題懇談会その他のあたりにおいて論議がなされておりますので、その点はよく御承知のことと存じます。  それから職業安定関係におきましての条約は、これはあとの九十六号に吸収されておりますが、これは批准いたしておりますので問題はございません。  それから、そのほかに社会保障関係といたしまして、災害補償それから農業における労働者の補償という条約がございます。この条約労働基準法の建前から申し上げますと、補償するということあるいは補償の内容という点におきましては、原則的にはこれは満たしているわけでございますが、支払い方法のやり方、これについて具体的にやはり条約が違った立て方をいたしております。従いまして、実質的においてはさほどの相違はございませんが、そういう立て方の面から現在の法律では工合が悪い、かようになっておるわけでございます。  それからその次の第四十四号の失業者に対する給付または手当の条約でございますが、現在のわが国の失業保険制度のワク内に入って参ります部分においては、大体においては大筋のところはこれでいけると思いますが、ただ一部的な失業者に対する給付という点につきまして特にいろいろ規定をいたしておりますが、その規定の解釈わが国の現在の取扱いにつきまして、多少の疑義が残っているということでございます。  それから最後の統計関係条約といたしましては、これはこの統計の条約の要求しております項目の細部の点につきまして、わが国が現在行なっております統計の項目と多少概念の違いがございますので、そういった点で厳密に解釈いたしました場合には、これもやはり条約条件を満たしていないのではないかということでございます。  大体ここに掲げておりますものについて簡単に御説明申し上げた次第でございます。
  21. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) これは大体一九五二年ごろまでのものが掲げられていると思いますが、五十二年以後出てきた条約の概略を一つ説明してもらいたいと思います。
  22. 宮本一朗

    説明員宮本一朗君) このものは五十六年ごろまでだと思いますが、一昨年五十七年にできました条約が二つございます。その一つは強制労働廃止に関する条約、それからもう一つは商業及び事務所における休日休暇に関する条約でございます。それから五十八年、昨年にできました条約は海員関係において二つできております。それから総会の際に採択になりました五八年の条約は、雇用における差別待遇禁止の条約、それからもう一つはプラティーション労働者労働条件に関する条約、この四つできております。この五七年にできました週休に関する条約につきましては、ただいま申し上げました休日休暇の立て方とやはり同じ立て方をとっておりますために、現行基準法からは批准できないのではなかろうかということで、昨年の国会におきましてその旨を御報告申し上げたわけでございます。  それからもう一つの強制労働廃止に関する条約につきましては、目下これを検討いたしておる次第でございます。それから五八年の条約につきましては、差別待遇廃止の条約並びにプランティーション労働者、プランティーション労働者と申しますのは、熱帯もしくは亜熱帯におけるコーヒー栽培とか農園とかといったようなところに従事する労働者保護という定義になっておりますので、これはわが国には関係がないのではなかろうかということを考えております。また、差別待遇廃止の条約につきましても、目下国内法との関係において検討いたしておるわけでございます。
  23. 片岡文重

    片岡文重君 今の御説明を伺っておると、基準法においては連続的に一致しておる、ただし若干のところということになっておるようですが、これで、この基準法原則的に一致しておるような問題は、もちろんそれ以外の問題についてもせっかく条約批准を求められておるのですから、当然これに対して政府としては国内法改正するなり何なりして、この条約批准の方向に持っていくような努力がなされておると思うのですが、この資料にあげられておる未批准条約の中で、この法改正に手をつけておるものは一体あるのかないのか。あるとすればどれとどれなのか、そういう点についておわかりですか。
  24. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) ただいまのところ、特定の条約批准するために、国内法規の改正に着手しておるものはございません。
  25. 横川正市

    委員外議員横川正市君) さっきの官房長の答えられた点ともちょっと関係するのですが、国際労働課長としては、この国際関係条約批准が必ずしも各国ともに非常にスムーズにいっておらないと数字の上では見受けられるわけなんですが、それはどういう事情なのか、これは各国が参加をして、大体満場一致ないしは相当数が賛成をして議決されて条約化されるものだろうと思うのでありますが、そういう意味では国際的には非常に批准の数から見るとおくれているというふうに見られるのですが、その辺の事情がおわかりならば、その点を一つお教えいただきたい。  もう一つは、今の質問とも関連をするわけなんですが、国際条約批准しなければならないという建前は日本もとっておるだろうと思うのですが、労働省としては批准をどの程度見られておるのか、これはこれだけ明らかにされて見たところでは、あまり今日改正をしなくても相当程度のものが批准できるというふうに見受けられるわけでありますが、全然国内法の整備が行われていないということになりますと、だいぶ条約に対するものの考え方というものは非常におろそかにしているような印象をずいぶん受けるわけなんです。その点は労働省としてはどうお考えになっておりますか。
  26. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 国際労働機関目的としておるところは、先ほども申し上げましたように、各国の共通的な最小公倍数的なところを条約の内容にいたしましてこの条約批准を促進することによって、世界各国労働条件を平準化していこうというところにねらいがあることは言うまでもないところであります。ただ、この加盟国国内事情、それから、たとえば労働に限定いたしましても労働の慣行等、これはもうそれぞれ独自でございますので、機関憲章としては、法律的には条約批准を義務づけてはおらないわけでございます。その点は各国の道義的と申しますか、精神に寄りかかっておるということになりまして、批准するかしないかは完全に加盟国の自主的な決定にゆだねられておるわけでございます。従いまして、各国別の条約批准数も先ほど申し上げましたように、非常なアンバランスが見られておる、こういう結果になるわけでございます。  わが国の場合におきましても、戦前加盟期間は長いわけでございますが、その間に批准いたしました条約の数が十四でございます。戦後は五四年から加盟いたしまして、しかも批准した数が十に及んでおる。この数を見ますると、戦後におきましては戦前に比べて、わが国条約批准に対する努力は数字の上から見ても強まってきているということが言えるのではないかと考えております。  それで労働省といたしましては、このILO条約の精神を全面的に尊重いたしまして、この線で労働行政を進めていくという基本的な考え方に立っておりますので、でき得る限り条約批准を促進していきたいという考え方に立っておることは言うまでもございません。ただ、先ほどから申し上げておりますように、現在までに批准ができないでおる条約につきましては、それぞれわが国国内法規との関係で抵触する事項があるわけでございます。従って国内法調整をしなければ批准はできないということになるわけでございますので、ただその批准障害になっておりまする国内法規の事項につきましても、ただいま御説明でおわかりのように、非常に基本的にも食い違っておるものから、それからごく技術的な非常な特定の一部分についてだけ食い違っておるというふうに、おのずから事柄の重要度が違っておる面が相当あるわけでございます。それでわれわれ事務当局といたしましては、基本的な問題をどうするかというような条約につきましては、これはおのずからいろいろな手続なり審議が必要なわけでございますが、ごく技術的なある部分をちょっと手直しすれば批准できるというようなものにつきましては、関係省と十分相談をいたしまして、できるだけ批准をするような方向に持っていきたい、こういうふうに考えて努力をいたしております。
  27. 横川正市

    委員外議員横川正市君) 労使関係の問題で十一号、一九二一年、それから八十七号、一九四八年、一九五七年の百五号というような条約があるわけですが、これに対して先ほど課長の方から説明があったように、労働問題懇談会などの審議を了して、これに対して手続をとりたいと言っておられるのですが、大体どこの国でもこういうような方法をとつて、批准に対して万全を期しておるという国がありますか。
  28. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 各国条約批准する際にどういった手続をとっておるかというようなことにつきましては、私ども十分つぶさに承知をいたしておりません。わが国の場合におきましても、過去において批准をいたしました条約につきましても、条約の内容の重要度に応じまして、それぞれ異なった取扱いをいたしております。ただ、現在問題になっております八十七号条約につきましては、御承知のようないろいろないきさつがございまして、しかも、その関係するところ、影響するところがきわめて重要な問題に触れておりますので、昨年来、労働問題懇談会にお願いをいたしまし、この条約国内法との関係についての御審議をお願いいたしておるような実情でございます。
  29. 横川正市

    委員外議員横川正市君) 労働省としては、そうするとこの条約締結に当っての国際会議に代表者を派遣させてそしてその事情を十分承知をして、帰ってこられてから報告を受けて労働省自体としてはこれに対して何らの結論らしいものをも出す能力がないというと大へん失礼でありますが、ある程度能力があったんだが、万全を期すためにこういうような審議会を作ったというふうにとれるのか、労働省としての意見は全然どこからも開陳されておらないのでありますが、それはどうですか。
  30. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) ただいま問題になっておりますこの八十七号条約は、わが国脱退しておる期間中に採択されました条約でございまして、日本政府としてはこれの審議には全く参加しておらない、こういう状況でございます。
  31. 横川正市

    委員外議員横川正市君) 五七年、五八年、復帰した後において、きわめて近い期間でいえば一年半ないし二年くらいの期間、同じように会議で審議をされた経過についても、これは参画しておらないのですか。
  32. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) この八十七号条約については参加いたしておりません。加盟いたした後の採択されました条約につきましては、これは当然参画をいたしておるわけでございます。
  33. 横川正市

    委員外議員横川正市君) 実際問題としては、先ほど澁谷さんがおっしゃったように、大体基本的にはILO条約の線に沿って国内法を整理して労使関係の正常化をはかっていきたいのだという、そういう熱意を持っておられることを明らかにされたわけなんですが、現在どの程度進捗をいたしておるのか、その点はどうでしょうか。
  34. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) この労働問題懇談公におきましては、昨年からずっと検討を続けておるわけでございまして、昨年の十一月ごろだったかと思いますが、条約委員会の中間報告がまとまりまして、労働問題懇親会に報告をいたしました。その中間報告の内容は、純粋にこの条約日本国内法規との関係に焦点をしぼりまして、どういう点が条約解釈わが国国内法規と抵触するのか、しないのかという点についての中岡報告をなされたわけでございます。それで、その中間報告の最も問題となっております点は、御承知の公労法の四条三項はこの八十七条約に抵触するおそれが濃厚であると、こういう中間報告がなされたのでございます。そこで労働問題懇談会におきましては、この中間報告を受けてどう、取り扱うかという点について御相談をしたわけなのでございますが、結局のところもう一回この中間報告を基礎にして、さらにもう少し批准という問題とからませて問題を整理する、こういうことにまとまりまして、それで東大の石井教授がその資料の整理を引き受けられまして、それで先月、一月の労働問題懇談会に石井委員からその資料の報告があったのでございます。そこで労働問題懇談会では、この石井報告を基礎にして結論をどうするかという話し合いになりまして、これをめぐっていろいろな議論の応酬があったのでございますが、使用者側と労働者委員の間に相当の意見の食い違いがございまするので、もう少し時間をおきまして、それぞれ十分この石井報告案について検討をお願いいたしまして、その結論を持ち寄って今度の十八日に総会を開くことにいたしておりますので、その総会で最終的な意見を持ち寄って、もう一回審議をする、こういう段取りになっております。
  35. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) ちょっとお尋ねしますけれども、大体ILO手続きとしては、この条約を作る前には、それだけだとは申しませんけれども、勧告という格好で議題を供し、それが一般的になると条約という格好になっていっているのが多いと思うのです。だから、勧告についてはどういう取扱いをするか、どういう工合にお考えになっているか、ちょっと聞かしていただきたい。
  36. 宮本一朗

    説明員宮本一朗君) ただいまのお尋ねはILO憲章十九条のことではないかと思いますので、十九条を見ながら御説明いたしたいと思います。この十九条の第一項には、「総会が議事日程中のある議題に関する提案を採択することに決定したときは、総会は、その提案が3国際条約の形式をとるべきか、又は、取り扱われた問題若しくはその問題のある面がそのときに条約として適当と認められない場合には事情に応ずる勧告の形式をとるべきかを決定する。こういうふうに書いてあるわけでございます。従いまして、ある事項をILO総会といたしまして議題にいたします場合には、あらかじめどの部分条約として可能なのか、またそれが適当なのか、どの部分を勧告にするのが適当なのかということを総会の意思自体できめるわけでございます。従いましてある条約を、たとえば今年の六月の総会におきまして、条約あるいは勧告、どちらかの形でどの部分を入れるかということは、そのときの総会によって審議されるわけでございます。従いまして在来わが国政府がこれに参画いたします場合には、あらかじめ議題を検討いたしまして、この部分条約にしてしかるべきものである、従ってその条約の場合にはこういう表現をとるべきものであり、こういう内容を盛るべきものであるというふうな意見を事前にきめて参るわけでございます。それから従いまして、勧告の場合にもそれが相関連してそういったような措置がとられるわけでございます。しかしながら、そのあとの第二項にございますように、「いずれの場合にも、総会がそれぞれ条約又は勧告を採択するための最終的の投票においては、出席代表の投票の三分の二の多数を必要とする。」すなわち満場一致の形式ではございませんで、三分の二の比較的多数によって採択されるということになるわけでございます。従いまして、ある場合には満場一致の場合もございましょうが、ある場合には三分の一以内の少数の反対があっても可決されるという場合もございましてしかもそれがいずれの部分条約にいたしますか、いずれの部分を勧告にいたしますかということもあわせてそこで決定されるわけでございます。従いまして、三分の一少数以内で投票が敗れるというケースも間々あるわけでございます。従いまして勧告についてどのような取扱いをしておるかということでございますが、同じ第十九条の5に、「条約の場合には、(a)条約は、批准のためにすべての加盟国に送付する。」と。従って、批准をしてもらいたいというふうな形でくるわけでございます。それから同じくその6の場合でございますが、これには、「勧告の場合には、(a)勧告は、国内立法又はその他によって実施されるようにすべての加盟国に審議のために送付する。」と、かような手続になっておるわけでございます。従いまして、条約として成立いたしました場合には、事務局から各国へ、これが将来批准をしてもらいたいというような形で送られて参るわけでございますし、勧告の場合には、その勧告の内容が国内において実現でき得るように加盟国が審議しろというふうなことで参るわけでございます。従いまして、それの、要請に応じまして、条約の場合には、政府といたしましては批准の可能性を国内法規との関連におきまして検討いたすわけでございますし、それから勧告の内容につきましては、それが実現できるやいなや、あるいは、いかなるようにして実現し得るやというような点を常に審議いたしておるわけでございます。
  37. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) そうすると、先ほどの片岡君の質問に対して、未批准条約については今検討をしていない、こういうお話があった、だから、勧告も、条約を作る予備手段といいましょうか、そういうものとして当然検討されていくなら、いろいろ、ここに努力をされるということが必要なわけですね。そうでしょう、国際信義の上から。これがどうも先ほどの答弁では少しぼけているような感じがするわけです。もう一つ、百五号の条約は、二十八国会で、大臣は、批准いたします、国内法整備を早急にやりますということを答弁されておるわけですが、今の労働大臣もそういうことを確認されておるわけですが、さしあたってその二つの点、どうでしょう。
  38. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 百五号の強制労働条約の廃止に関する条約につきましては、前回労働大臣が答弁いたしました通りでございまして、私ども批准の方向において関係各省の意見をまとめるように現在も努力いたしております。つい先般も会議を開きまして、また、近く法制局もまじえてもう一度関係各省間の話し合いをすることにいたしております。そこで結論が出ますならば、一つこれは早急に批准手続を進めたいというふうに考えております。  それから、先ほど片岡委員の御質疑に対しましてお答えいたしましたのは、少し言葉が足らなかったかと思いますが、この未批准条約批准するために国内法規の改正に着手しておるものがあるのかないのかという御質問だったように承わりましたので、具体的に条約批准のために国内法規の改正に着手しておるものはただいまのところございませんと、こういうふうに申し上げたわけであります。
  39. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) それじゃ、百五号は、いつ結論を出す予定ですか。
  40. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) できるだけ早い機会に結論を出したいと、これは八十七号条約のように、審議会を設けたり、あるいはまた、特定の機関にそれの検討を依頼するというようなことなしにいけると考えておりますので、できるだけ早く政府部内の意見をまとめまして手続を進めたいというふうに考えております。
  41. 片岡文重

    片岡文重君 そうすると、条約の場合には、先ほどそちらからお読みになったように「批准のためにすべての加盟国に送付する。」ということになっております。そして、しかも、送られてきた批准のための条約案なるものは、この憲章によって終了後十八カ所以内に権限のある機関に提出することを約束するということになっております。そうして、同じこの憲章によれば、この条約批准としては、たしか、六カ月以内に通常の場合は手続をしておそくも一年以内にはということに私なっておったと思うのですが、そういう批准手続を当然しなければならず、また、国内法規のためにその批准手続をとることができないんだというような場合には、当然法規の改廃にまで、手をつけなければならず、つけるべき努力を払うことが国際信義の上からいって当然だろうとわれわれは考えておりまするので、労働省としてもおそらくそういうお考えには間違いあるまいと考えてさっきお尋ねしたのですが、そういう努力は全然しておられないような御答弁である。この場合、労働省としては、そうすると、現行法規においてこれが批准できないというふうにお考えになったならば、その後における国内法規の整備改廃等について手をつけてまで批准を促進するというお考えはお持ち合せにならないのですか、それとも、そういう批准を早くしたい、そのためには国内法規の整備改廃を早くやりたいと考えておるけれども、それができないんだということであるなら、そのできない理由は那辺にあるのか、その二点についてもう一度お聞かせいただきたい。
  42. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 批准を促進したいという基本的な考え方に立っております点につきましては、先ほど申し上げました通りでございます。  それから、国内法規を改廃してまで批准をするという気持はないのかという御質疑であったかと思いますが、その点は、そうではございませんので、条約の内容によりましてこれがどうしても日本国内事情から見て批准をすべきであるという結論に立ちました場合におきましては、当然それに抵触する国内法規の改廃をやっても批准をすると、こういうことになるわけでございます。現に、最低賃金に関する条約につきましては、そういったような考え方に立ちまして、この国会にも最低賃金法案を提出いたしておるわけでございます。それから、問題になっております八十七号条約につきましても、これは今度の懇談会の総会の結論がどう出るかわかりませんけれども、今まで大臣もしばしば答弁いたしておりまするように、懇談会の結論が出ればそれを尊重して措置をするというふうに御答弁をしておるわけでございます。従いまして、私どもは、既成の国内法規に抵触したものはもう全然批准するような努力なしで放任しておくというような考えには立っておらないのでございます。
  43. 片岡文重

    片岡文重君 そうすると、今、国内法の改廃にも手をつけないし、それから批准手続も従って進めておらないというと、提示されましたこの資料に載っておるところの未批准の各条約については、日本労働事情からいって批准を必要としない、もしくは、国内法に手をつけてまで進める必要はない、こういうようにお考えになっておられるのですか。
  44. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 先ほどもちょっとお答えしたかと思いますが、労働基準関係に関する未批准条約の数が一番多いわけでございますが、これにつきましては、批准するためにはどうしても基準法の一部を改正しなければならないということになるわけでございます。それで、労働基準法改正問題につきましては、先生も御承知のように、非常に主張の相反対な、有力な主張が行われておる。それで、二年ほど前に、時の労働大臣が臨時労働基準審議会に、この問題について諮問をいたしたわけでございます。それで、の審議会の結論としては、ただいまのところいろいろ問題はあるけれども労働基準法改正はすべきでない、こういう結論の答申をされたのでございまして、労働省としては、その臨時労働基準審議会の御意見の線に沿って、ここ、現在のところとしては、労働基準法改正には手をつけない、こういう考え方に立っておりますため、この未批准条約批准のために基準法の一部を改正するということもなかなか着手しがたいというような事情にあるわけでございます。
  45. 片岡文重

    片岡文重君 そうすると、これは、まあ労働事情が必要とするかしないかの問題ではなくてもっぱら、その強力な反対勢力があるがために、それの政治的な観点に立って、今手をつけるべきではない、従ってこの批准もできていかない、こういうことになろうかと思うのですが、そういうふうに理解してよろしいですか。
  46. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) そういう意味で申し上げたのではございません。労働基準法改正につきましては、もう先生御承知通り、非常に相反する方向の有力な主、張がございましてなかなか結論が出にくいわけでございます。それで、労使、公益三者構成でなります審議会を臨時に設けまして、この問題についての取扱いをどうしたらいいかということを諮問いたしたわけでございますが、審議会におきましては、各般の角度から、この問題を検討した結論として、少くとも現在のところ、基準法改正には、手をつけるべきでないという結論が出されましたので、労働省としては、現在のところ労働準法の改正には手をつけないという態度をとっておる、こういうふうに申し上げたのでございます。
  47. 片岡文重

    片岡文重君 ですから、まああまり確認をするとあなたのお立場も因るかもしれないけれども、結局、この未批准条約が討議された際に、日本の代表はどういう態度をとられたか、一つ一つ検討していかなければわかりませんから、一括して御答弁を願うのもどうかと思いますけれども、少くともこの出された資料の中から見れば、労働基準法では原則的には認めておる、しかしということで、その一部に、そのまま批准をするわけにはいかないんだということが大部分のようです。従って、全部が全部、基準法改正しなければならぬということでもないでしょうし、またその他の法規を改正するためには、基準法からまず直していかなければならないというものももちろんあるでしょう。けれども労働省としては、この臨時基準審議会でしたかに諮問されたときも、当然この未批准条約はたくさんあるんだ、ということも考慮の上で、なおそういう結論が出されたと思うのです。従って労働省としては、その基準法改正に反対をする強力な意見というものがどういうところにあったかということも、もちろん聞いてはおりますけれども、だからといって、国際的な観点から見れば、国内におけるそういう今日の時勢にずれておる反対意見はそのままうのみするのではなくて、まあうのみと育ったら言葉は悪いかもしれませんが、それれを重視することなしに、むしろ国際的に多く主張されておる、あるいは共鳴をより多く呼んでおるところに日本の足並みをそろえていくということの方が、私は労働省としてとるべき姿ではなかろうかと思うのですが、この答申を尊重されて基準法改正に手をつけられなかったという結論を出されるときには、そういう国際情勢から見た日本労働事情などということも十分考慮されての上で、なおその国内の反対意見を尊重しなければならないという結論になられたのかどうか。もしそうだとすれば、今後もなおそういう態度が持続されるのかどうか。これは政治的な問題ですから、ちょっと無理かと思いますけれどもいかがですかね。
  48. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 事柄が非常に荒木的な事項でございまして私から答弁するのは不適当だと考えますが、臨時基準審議会におきまして諮問なされましたのは基準法改正をすべきであるかどうかという諮問でありました。私は当時この審議会の審議には直接タッチをいたしておりませんので、その詳細な事情はわかりませんが、国際労働条約批准と関連して改正すべきであるかどうかという諮問の仕方ではございませんでしたので、おそらくその点にはあまり重点を置いて審議はしておらないのじゃないかというふうに考えております。
  49. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) そこで、今の片岡君のお話のものを対象にして論議をすると非常にむずかしい論議になってくる。しかし何といっても、一つの面は労働保護というものが国際貿易その他の交流にどれだけ大きなウェートを持っておるかという問題がやはり論じなければならない問題だと思うのですね。だから、そういうことを労働省として条約検討されたときに、日本の経済、貿易、国際的な交わりの中で日本の位置、立場、そういうものを考慮して検討されたことがあるかどうか。ちょっとお聞きしたい。
  50. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) ただいま委員長から御指摘の点につきましては、まことにその通りでございまして、わが国が貿易で立っていかなければならない国柄でありますだけに、国際信義、特にこの貿易に直接関連する労働条件がどうであるかという点は非常に大きな関心事項であるわけでございます。従って私ども条約批准すべきかどうかという点を検討する際には、当然それが貿易に及ぼす影響がどうであるか、国際信義に及ぼす影響がどうであるかということは十分に重点を置いて検討いたしておるつもりでございます。
  51. 柴田栄

    柴田栄君 今のお話に関連してですが、今の労働基準審議会ですか、これはいつごろ審議されてそういう決定になったのですか。
  52. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) 西田労働大臣のときでございますので、今から三年くらい前。
  53. 柴田栄

    柴田栄君 そうすると、今その労働基準法改正等に関しての審議というものを、国際条約批准観点等をそれほど考慮されないで審議されたということも想像できるような気もするのですが、三年以上経過しておるとすれば、国内、国際ともに情勢はかなり急激に進展しておるという気がするのですが、そこで今片岡さんのお話も、まあ非常にわれわれ聞いておってももっともなところもあるし、大体わずかばかりニュアンスの相違でそれに照応して国内法の修正も支障なくできるとすれば、それを同時に検討してやはり国際条約を順奉していくということは、まあ権利でもあり義務でもあり、国際関係からいっても非常にその方が妥当だという気がするので、これはあなたにお聞きするのは筋ではないと思うのだが、もう少し大臣に時間を得て最高の方針をお聞かせいただいたり、あるいは御決意を願ったりするということの方が妥当じゃないですか。
  54. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) まあきょうは、大体の、ILOというものを認識して現状というものを知るために、主としてここに官房長、国際労働課長三人だけ来ていただいて現状を聞くということになったのです。手続だけの質問に終ってきたわけなんですが。
  55. 横川正市

    委員外議員横川正市君) さっき官房長の答えでちょっと私はいささか不満に思うのは、五十一年に日本ILOに復帰したときに、少くともILOが行なってきた歴史的な課題については、日本はこれは全部承認をして、できるだけすみやかに過去ないしは将来にわたって出てくるであろう条約勧告等については、日本としては、これはきわめて謙虚にまじめにこれを受け入れるという立場をとって復帰したのですね、復帰したときには。それで、ちょうど脱退中の条約だからということで、私は労働省として、その検討ないし批准、ないしは批准に対する努力というものが、加入した、ないしは加入当時の条約勧告等と差別をして取り扱おうとするようなことは万々これはないのが当然じゃないかと思うのですよ。その点どうですか。
  56. 澁谷直藏

    政府委員澁谷直藏君) その点は、もう横川議員の御指摘の通りでございまして、脱退中であったから、これはおれが関知しないというような態度をもっていないことは御指摘までもございません。現に、条約番号は忘れましたが、脱退中にできました条約批准しておる例もすでに二、三ございます。それですから、脱退中であるから、あるいはないからということで態度を異にするという考え方は全く持っておりませんので、この点は御了承いただきたいと思います。
  57. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) ちょっと速記をやめて。    〔速記中止〕
  58. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) それじゃ、速記を起して。  本日の会議は、これにて散会をいたします。    午後三時二分散会