○
公述人(松岡三郎君) 私は
法律家の
立場で、今問題になっております
政府案を検討してみたいと思います。私はこの問題については、
政府のいろいろな
委員をしておりませんし、それからまた、
経営者や組合の
見解を直接に聞いたこともございません。純粋な
法律家の
立場で
意見を述べてみたいと思います。ただ私、そういう
立場から申し上げますと、この
法律案は、非常にまあ世にも不思議な
法律案だという印象を受けるのです。なぜかといいますと、
最低賃金法は、
労働者の
生活を保障するための
法律でありますから、
労働者がしのぎをけずって要求する形でかち取られたものなのです。しかるに今出されておる
最低賃金法案という名前の
法律案に対して、今、
早川さんも言われましたが、とにかく
経営者団体は賛成、
労働者団体は
反対、しかもただ
反対だけじゃありません。総評の一部の人たちはストライキをしても
反対というような形のものなのです。で、なぜそういうことになるか。これは諸
外国の例でありますと、
労働者は全面的に賛成、
経営者は一部
反対、しかしやむを得ず
法律案を通すという形のものが、これが大体の
手続面に現われる姿であります。にもかかわらず、こういう
労働者が皆が
反対しておるというのに、これが押し切られるということは、なぜだろうかというように私は第三者として非常な疑問を持ってくるのです。この点について、当局者の人たちのいろいろな
考え方を聞いてみますと非常に純粋です。また、それだけではありません。この
法律案ができるまでには、多くの人の知識あるいは肉体的なエネルギーが投下されておるのであります。この点について、ここまでできたことに対しては、私は非常な敬意を表したいのであります。しかし、この
法律を議論する場合には、単なるこの
法律をいかに解釈するかということが問題ではなくて、この
法律案がこの現代に適用された場合に、どういう実害が生ずるかということが一番大切であります。あるいはどういうプラスになるかということが大切でありますが、この実害というものを取り除かなければ、この
法律案にとうてい賛成する気がしないのです。もっとも、
政府当局者がこの
法案を出される提案理由についてはいろいろ聞きました。この問題についてはまた機会があればお聞きしたいと思いますが、積極的な理由、消極的な理由が二つあると思いますが、積極的な理由は、
業者間協定を出したのは、今までの事例で、
業者間協定が
労働者の
賃金を一割ないし二割引き上げた。だから、この点については
労働者のためのものだ。多くの
労働者がこれに
反対しておるのは知らないから、実際は
業者間協定によって
労働者が
利益を受けておるのだというように説得をしようとしております。私、この点について、確かにこの問題について、一割あるいは二割あるいは一割五分というような数字の点についても、もっと科学的に検討してもらいたいのでありますが、ここで私議論したいのは、この
業者間協定そのもののために一割から二割上ったのであろうかということなのです。もちろん
業者間協定のために上ったのです。しかし、
業者間協定が結ばれたむしろ背後の力がこういうものを賃上げを成功させたのではないかという疑問を持っております。この点について、各
業者間協定に私の知っておる限りの情報を集めてみましたが、
経営者の気持を率直に申し上げますと、
業者間協定には非常な労働基準局あたりからの圧力があった。この点は圧力だけではありません。サービスもあったということです。どういうサービスかと言いますと、
業者間協定を結ぶなら、これは新しいりっぱな労働力ができて能事の上る
基礎になる。それからまた、請負親会社に対してたたき売りを防ぐというような場合に、親会社に対して話をつける。ある所では、さらにこれに賛成してくれ、その場合には金融方面を
考えてやろう、これは非常にその真相ははっきりしませんが、そういうことも聞きました。今はどこへ行っても
労働基準法違反だらけですから、
中小企業が特にその基準法違反の秘密を持っておる。だからこれをやらないと、その基準法違反を摘発するぞとは言いません、とは言いませんが、
中小企業者たちは、そういうような受け取り方をする。ですからこの場合に賃上げが成功したのは、今まで非常に
賃金を搾取していたからか、もしくは今のような労働基準局のサービスのために支払いができるようになったためだというように私は受け取っております。ですから、
業者間協定のためではなくて、労働基準当局の事実上の指導あっせんというものがこういうものを
効果あらしめたので、
業者間協定のために賃上げが確立したというのは、これは私は形式論か三百代言じゃないかという気がするのです。この点については、今私の
意見を申し上げる前提として、むしろそういう印象を申し上げておきたいと思います。ですから、言ってみれば、
業者間協定が大きな役割を果したのは労働基準当局のサービスとおどしのためではないかというような気がするのです。今度の
法案が出ますと、もちろん労働基準当局のあっせんとか、そういう条項がありますが、今度の
法案の柱というものは、今度できてしまえば、やはり
最低賃金審議会その他の条項がありますから、実際上労働基準当局はそういうあっせん、サービスとおどしというものをやるかどうか問題だし、むしろ、私としては、それよりも正当な
労働基準法の順守、実際上の指導ではなくて、順守の方面で指導していただきたいというふうに
考えるのです。それからもう
一つの消極的な理由は、
社会党案になりますと、全国一律制というものに対して経済が混乱する、
中小企業はやっていけないというような言葉ですが、この言葉は、私は
法律家でありますからはっきりわかりませんが、一体そういうような形にするとどの程度経済が混乱し、どの程度
中小企業がつぶれるか、あるいは
中小企業がつぶれる場合に、それに対して
政府当局が税金を免除するとか、あるいは金融を世話するとか、あるいはまた、
失業者に対してはそのための予算、失業手当を
考えるとか、そういうこと、あるいはまた、全国一律制の
最低賃金にしますと、今度は労働基準局の実際上のあと押しでなくて、親会社のたたき売りというものを防止できる、そうすると、それについて
中小企業が利点を得られるでしょう。あるいはまた、
最低賃金制度がそのような形のものになりますと、りっぱな労働力を得られ、能率が上って
生産力が上るというような形のプラス、そういうプラス、マイナスを科学的に検討して数字を出してもらいたい。単なる抽象的に経済が混乱するとか、
中小企業がつぶれるという言葉で、ああそうですかと引き下ると、これはまったく抽象論になってしまうような気がします。
労働基準法を作られたときに、多くの
業者と私も会いましたが、
労働基準法は何ら
中小企業なんか問題にしないで、あるいは
事業態勢を
考えないで、一律八時間制とか、賃上げ一律に全
事業に適用とか、たくさんの問題を一律、この一律が悪い。この一律をやると
日本の経済が崩壊する。たとえば私鉄やなんか人件費が七〇%になって
日本の経済が崩壊に瀕するということを言われたことがありますが、この
労働基準法を使って
企業がつぶれたということはない。ずっと前に税金で自殺した人はありますが、労働基準監督署のために死んだ人は聞かないと言って、前の労働基準
審議会長の言われたことがありますが、この点やなんかも、どうも抽象論になるような気がするのです。当局者が相手の案を否定したり、
自分の案を
提出する場合は、特に事実上の証拠をあげて説明する
政治的な義務があるように思いますが、この
政治的な義務を履行しておりません。単なる経済は混乱する、
中小企業がつぶれるという形だけのもので、この点は私のような
法律家の目から見ると、もっと何とか説明してほしいというような気がしますが、しかし、この点、私の一番言いたいのは、この今の
政府案が提案——これが
法律になった場合にどういうような問題が起るかという、この点を私は申し上げてみたいと思うのです。この点についてたくさんのことがありますが、時間の
関係上、三つぐらいに分けて
考えてみたいと思いますが、第一に、この
法律案が通過した後には、私が
法律案の検討をやりますと、
結論としては、この
法律案が出ると、
労働者の
賃金が上って、幸福になるとまあ言われるのですが、私にはこの
法律案が出て、逆に
労働者が犠牲になって、あるいは中は救われるかもしれませんが、小
企業が犠牲になる可能性が十分にあるように思うのです。なぜかといいますと、この
最低賃金法案のバックボーンは、何としても
業者間協定です。その第九条に、
業者間協定が出る場合に
考えられることは、その
業者の「当事者の全部の合意による
申請があったとき」だから全部であります。一人でも
反対するということであればこれは成り立たない。全部でありますと、一番小
企業で線——小
企業がうんと言わなければこれは
業者間協定は成立しないのですから、支払い能力を
考えますと、一番小規模のところにこのくさびを打たれるという形のものです。この場合
考えられることは、一番貧しい小
企業の負担能力だけ
考えます。その場合には、
労働者の
生活は全く
考えられていないということなのです。で、この点が、
最低賃金法の第九条というものが問題です。いや、そうじゃないのだ、その次に
業者間協定の拡張適用がある。この十条というのは、拡張適用で、この拡張適用については、この小
企業というものについては、負担能力をある程度度外視するという形が
考えられるかといいますと、この点も十二条になりますと、
異議の申し立てができる。だから結局は、小
企業はこの
異議の申し立てで最後まで救われるなら、結局は一番最後の小
企業の負担能力だけ
考えられて、
労働者の
生活が何ら
考えられないという形のものがここに出てくるわけです。いやその場合に、
異議の申し立てばそんなにたやすくしないということであるならば、今度は小
企業がつぶれるということを前提にします。そうすると、中
企業が、どうもあの小
企業はダンピングをやるから
一つやっつけてやれということで、
異議の申立権を事実上封鎖して、
政治的に工作されますと、小
企業がつぶれるわけです。小
企業がつぶれるということになりますと、これを救うことは今の
政府当局は
考えているかというと、
政府当局は何ら責任を負わない。あれは
業者間協定で勝手にやっているのだから、われわれは知らない。その証拠には、予算
関係でこの方の失業手当というものは
考えられない。ここらあたり私は、たとえば労働協会
法案が出されたときに
公聴会に立ったのですが、十五億円で九千万円の予算です。この十五億円どころか一文も出さない。そして小
企業はつぶれていくという姿を目をつぶっていくという形のものが出てくる。小
企業が
一つ二つつぶれても問題にならない、勝手だという
考え方が
政治家として許されるでしょうか。この点は私は許されないと思う。ですからこの点は、もし小
企業を救うなら
労働者の
生活は全く
考えられない、そしてまた、
労働者の
生活をある程度
考えようとすると、小
企業がつぶれるのだ、つぶれても
政府当局は責任を負わないという形のものがここに出てくるわけです。いやそうじゃないのだ、今度はそれは十一条で
労働協約の一般的拘束、これでいくんだということがその次に議論が出てくるかもしれませんが、この十一条というのは、「
賃金の最低額に関する定」で最低額に関する定めをしている場合は非常に例としては少い。それで、これを拡張適用しますと、現実の問題として今申し上げたように、小
企業がつぶれても、
政府は責任を負わないか、もしくは
労働者の
生活を
考えないという形のものが出てくるわけです。
で、一番最後に
考えられるのが十六条です。これは
最低賃金を権力をもって施行するという形のものが出てくるわけですが、これは「
最低賃金を
決定することが困難又は不適当と認めるとき」に初めて出てくるので、これが出てくるのはなかなかで、むしろこの点は私初めに申し上げようと思ったのですが、この
法律案を解釈してみると、
一つ一つが何かうまいことになっているのです。たとえば、全
事業を全国に統一するかということになると、いや統一をしない……。いや統一することも
考えられている。たとえば第一条には「
事業」と書いてあって、
事業は全国
事業というものを含む余地がある。
労働者の参加を許さぬぞと言うと、
最低賃金委員会の中に
労働者委員があるじゃないか、
一つ一つうまいことになって、これは頭のいい
法律家が作られるとこういう形になるのですが、結果において、法
社会学的に検討すると、今申し上げたような実害が出てくるのです。この点が私としては第一に……もう一度申し上げますと、
労働者と小
企業というものが、ひどい目にあう可能性があるし、それに対して
政府が何ら責任を負わないという実害が第一に出てくるということを私は指摘したいのです。
それから第二は、これは今申し上げた
業者間協定というものが、何といってもバックボーンになっているわけです。ですから、この
業者間協定というものは、多くの人が言われましたように、
経営者のきめたことが労働契約の
内容になる、たとえばこの
法案の第五条で、
使用者がこの
業者間協定に違反すると、その違反した者が一万円の罰金をとられるだけではなくて、この第二項で、それが労働契約の
内容になってくるということです。
使用者が一方的にきめたものが労働契約の
内容になるというテクニックは、
労働基準法の中には一カ所しかありません。有名な就業規則です。就業規則は
労働基準法の八十九条で、
使用者が一方的に作って、それから監督署に届け出てやる、これに違反すると無効になる、その就業規則は労働契約の
内容になるという形のものなんです。
労働基準法の第二条には、
労働条件は
労使対等できめると書いてあるのですから、この点を操作するために、
労働基準法九十条では、
労働組合の
意見を聞くという形になっているのです。
労働組合の
意見を聞くと、そこで団体交渉が始まる、そうすると結局は、就業規則を団体交渉できめるという
労働基準法の第二条の誘いのために
意見を聞くという形のものになっておるのです。この
業者間協定については、何ら
労働組合の
意見を聞くということもなくて、しかもこれは
法律と同じように、一万円の罰金を課せられて、しかも契約の
内容になるという形のものです。そうだとすると、これは
労働条件は
労使対等できめるという
労働法の根本原理に反すると思いますし、
労働条件を
労使対等できめるということは、一口に言うと、団体交渉できめるということです。それは
労働組合法の第一条に書いてあるのでありますが、その団体交渉
方式というものも、これは全く採用していない、そうだとすると、ここでよくいうこの
法律案に対して、一橋の吾妻教授や、それから京都大学の片岡教授や、大体
政府の
委員になって一緒に仕事をやっていない一般中立の、そういう
意味の中立の学者が圧倒的多数と言っていいほど
反対しているのは、この点だというように私は
考えていいのだと思います。この点についても、しかし三百代言流に言うならいろいろ言われます。いやそれはこれは
最低賃金だから、基準法プラス
最低賃金だから、
賃金プラス・アルファで、努力で交渉してかちとればいいじゃないかと言われるのですが、元来そういうような議論をやるなら、
労働法も
労働基準法も要らないです。今の市民
社会においては、民法では契約の自由、
対等でやって、ところが契約の自由も
対等もないので、
労働基準法や
最低賃金が必要になってくるのであります。この今の
最低賃金がこの形で作られますと、現実の問題としては、これが最低ではなくて、
一つの契約の
内容に食い込んでくるというように私は心配するのです。だから、こういうことが心配なものですから、各国の法制を見ますと、
最低賃金審議会、これはいろいろ名前がありますから、
審議会というものが
最低賃金の
内容を
決定するという形のものです。これはやはり今の
審議会が
政府の単なる
諮問機関であろうとなかろうと、これは
賃金審議会が最後の
決定権を持っている。この
法律案を見ますと、
決定権を持っておりません。
業者間協定が
最低賃金制の場に出ますと、これはイエスかノーかと言うことのほかには、何ら
権限がない、しかもこの場合に、たとえば
最低賃金制がノーと言った場合に、
政府がこれをイエスと言う可能性も十分にあるのです。第十五条で、この
業者間協定をやる場合に、その
意見を尊重しなければならないと書いてありますが、その
意見を尊重するというときに、
最低賃金審議会がノーと言った場合に、ノーと言ったのだが十分に
意見を尊重してイエスというような形のものが、これはないとは限らない。いや、そういうのは力
関係で、現実の
政府を信用してもらいたい、今の
労働大臣を信用してもらいたいということの、信用だけが最後の担保になるということは、これは
法律としてはまずい
法律なんです。ですから、よそのどの
審議会を見ても、そのことがはっきり言われているのですが、たとえばイギリスのオー・カーン・フロイント教授なんかも、
賃金審議会というものの
決定が、実際上はこれが
最低賃金の
内容を作るのだが、その場合に中立
委員というものが、
労使双方で討論すると、その討論が
一つの団体交渉の過程で、その団体交渉を中立の
委員がサービスする、その結果、
最低賃金制が出てくるということは、この
最低賃金方式というものは団体交渉なんだということをフロイント教授が盛んに力説をしております。これが大体の今の世界の常識になっているということを非常に力説しておりますが、このことについては、もっとあとから時間があればお話をしてみたいと思います。でいずれにしても、今私が申し上げましたこの案でいきますと、
労働条件は
対等できめる、それを現実化したのは、団体交渉
方式なんだが、その
労働法の体系を根本から踏みにじる可能性が出てくる。三百代言流に言うならば一言々々納得できるのだが、それを
社会学的に見るならこういう
結論になるのじゃないかということを申し上げたいのですが、最後に、時間がありませんから、簡単に申し上げたいと思いますが、フロイント教授なんかが盛んに言っているのは、
最低賃金制というのは団体交渉の補充だ、あるいは労働運動のステップになるものだ。ところが、今度の
業者間協定は、そのステップを踏みにじる可能性もなきにしもあらずだというような気がするのです。なぜかと言いますと、今まで
労働組合法の十八条というのがあります。これは有名な地域的の一般的拘束力です。これは今までの例は非常に少い。例は少いのですが、
中小企業労働組合がいわゆる合同労組を作って、
労働組合法十八条というものを利用して、これでもって運動をやろうとした姿があちらこちらに、これはちょうど
業者間協定が起るような、それと同じ時期に現われました。ところが、今度
業者間協定をやりますと、地域的、一般的拘束力を適用するにはいろいろなルートがある。
使用者組合、あるいは労働
委員会、あるいは県知事というルートがあるのでありますが、
使用者の人が
業者間協定を作っているのだから、これをもう適用する必要はないじゃないかということになりますと、
労働組合法十八条をステップとした労働運動に対してくさびを打たれる可能性がある。もっとも、それに対した立案者がそうじゃない、読んでみたらわかるじゃないか、
労働組合法十八条は適用しないと書いてない、だから、これは
業者間協定と同じように二本建になるのだというような説明は、普通の
法律技術屋から言いますと納得がいきますが、現実に労働運動の面から見ると、この点はむしろ労働運動のステップというものを踏みにじるのではないか。だから、一見非常に多くの
労働者にとって幸福なプレゼントのように見えても、現実には
労働者の
生活は何ら
考えられないだけでなくて、
労働者の
対等で
決定するという
原則が踏みにじられる可能性があるだけではなくて、労働運動に対してくさびを打たれてくる、こういうような結果が
法律社会学的に見ると心配なんです。こういう心配がなぜ出てくるかということが最後の問題でありますが、この心配をなくするためには、どうしても私は、
最低賃金制の根本
原則というものを
考えなくてはならない。それは、第一は、やはり
業者だけのことを
考えて
労働者の
生活を
考えないという、そういう
法律案の
仕組みに対しては、再検討を要する。ですから、この
意味では、
業者の人が救わないなら、ほかの方法がたくさんあるでしよう。これは、技術的に言えば、今の予算案を見ればたくさんあるように、
中小企業に対しては、何らかの補助とか、あるいは失業保障の対策もあるでしょう。何かの形で
政府が責任を負うという形にして、やはり全国一律制、あるいは
産業別、
職業別の一律制というものは、やはり何らかの形で相当具体化するようにしなくてはなりません、この
法律案においては、単なる一地域とか、あるいは一
職業とか書いてあって、これは全国
職業、全国地域を含むのだというような、そういう
法律解釈では満足ができないだろうと思うし、それから第二に、
対等原則、団体交渉
方式というものの
原則はやはり打ち立てられなければならないというように思うのです。それから第三番目には、
労働組合法十八条というものの適用というもののパイプになるという
方式がやはり必要ではないかと思います。私が今言いますと、いやそういうものは、世界はそうだけれ
ども、
日本は
日本流でいくと、これは特殊な経済の
事情があるというようなことが出てくるかもしれません。確かにそのことも
考えなければなりませんが、私は今フロイント教授というものをあげましたが、フロイント教授というのは、今、世界の
労働法学会の
理事で、
労働法に対する発言が非常に強い人でありますが、この人の本を翻訳したことがありますが、私に手紙をくれました。その中で、イギリスの
制度はあまりそのままをまねをしてもよくないのだ、しかし、この点だけは、まねというのではなくて、各国がどうしても通さなくてはならない、それは何かというと、
最低賃金制だということを書いております。この点は世界をこえてどこの国でも提携をしなければ、結局は世界の
労働者が不幸になるだけではなくて、また、平和の
基礎が失われるということを言っておりますが、この点は、
日本流でやる場合と、世界並みでやらなければならぬ場合がありますが、この点はやはり世界の常識でやらなければならぬと思います。私は、
結論的に言いますと、今のままですと
反対です。今申し上げたような筋を通して、いい
法律案になることを祈るわけです。時間がございませんから、この程度で終ります。