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1959-03-19 第31回国会 参議院 社会労働委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十九日(木曜日)    午前十時五十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     久保  等君    理事            勝俣  稔君            柴田  栄君            木下 友敬君            常岡 一郎君    委員            有馬 英二君            草葉 隆圓君            紅露 みつ君            谷口弥三郎君            西田 信一君            松岡 平市君            横山 フク君            阿具根 登君            片岡 文重君            小柳  勇君            藤田藤太郎君            光村 甚助君            竹中 恒夫君   国務大臣    労 働 大 臣 倉石 忠雄君   政府委員    総理府総務長官 松野 頼三君    調達庁長官   丸山  佶君    調達庁労務部長 小里  玲君    労働省労働基準    局長      堀  秀夫君    労働省職業安定    局長      百田 正弘君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    労働大臣官房労    働統計調査部長 大島  靖君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○最低賃金法案内閣提出、衆議院送  付) ○労働情勢に関する調査の件  (駐留軍労務者離職対策に関する  件)   —————————————
  2. 久保等

    委員長久保等君) これより社会労働委員会を開きます。  まず最低賃金法案を議題といたします。御質疑を願います。
  3. 小柳勇

    小柳勇君 きょうは最低賃金法を論議する基礎的な問題について質問いたしておきたいと存じます。先日、現在の日本における労働者の低賃金階層実態について資料を求めておきましたところ、労働省の方で資料提出になられましたので、低賃金労働者生活実態を中心にして、この資料概要を重点的に御説明願いたいと思います。
  4. 大島靖

    説明員大島靖君) 提出いたしました「賃金資料(二)」という印刷物について簡単に御説明申し上げたいと思います。第一ページの第一表でございますが、これはいわゆるわが国就業構造ないしは産業構造特異性についての表でございますが、第一表は、就業者従業上の地位別に見まして、日常業主家族従業者雇用者、これらの割合就業者総数の中でどういうふうになっておるか、雇用者が四五・五%であります。この点、西欧諸国ないしアメリカあたりに比べまして、雇用者のパーセンテージが非常に低いという点が特徴的であります。  第二表は、その就業者産業別にどうなっているかという点は、第一次産業が三七・四%であります。第二次産業が二五%、第三次産業が三六%、第一次産業がなお相当大きな部分を占めておるということが特徴的であります。  第三表は、事業所及び従業者規模別にどういうふうに分れておるかということであります。事業所の方を見ますと、総数の中で就業者が四人以下のところが八〇・二%、五人から二十九人のところが一七・八%、大体百人以下のところが事業所の数から言いますと、大体九九%になるわけであります。その従業者労働者の方がどういうふうに分れておるかと申しますると、大体百人以下のところで七割六分ぐらいになっておるわけであります。この点が、この三表によってわが国就業構造産業構造特異性を表象したものであります。  その次、二ページの第四表、これは産業別地域別賃金格差、この賃金地域別にどういう格差を持っておるかという点を示したものであります。この上の欄に全産業製造業、その他産業別の分類が出ておりますが、たとえば全産業で、全国平均を一〇〇といたしますと、高いところでは、たとえば東京は上から三段目のまん中にありますが、一一四になります。大阪が一二、それから福岡が下から二番目の欄で一一四になります。この辺が高いところになります。低いところでは、四段目のまん中の福井は六七というふうな数字になっております。下から二番目の徳島が六八、この程度地域別賃金格差が出て参るわけであります。ただ、これが各産業によってかなりこの数字はでこぼこがありますが、大体におきましては、高いところと低いところは一致してくるわけであります。  第五表は、今申しましたのは全労働者平均賃金地域別格差でありますが、これを生産労働者だけとってみた場合、事務職員だけをとってみた場合、さらに男と女とを分けてみた場合、どういうふうになるかということであります。これによりますと、総平均で見ました場合よりも格差が縮まるところもありますし、また、逆にふえるところもあるわけなのであります。従って、地域別格差を見ますときにおきましても、やはり労働者職種別性別に見なくては、詳しい点はわからないわけであります。  その次の第六表、これも同じく地域別賃金格差を、今度は企業規模を同じくして考えたらどうか、企業規模を三十人以下のところ、小規模だけをとって各府県で比較してみた場合はどうか、さらにその中で職種を同じくしてとってみた場合はどうか、それから企業規模千人以上の大企業をとってみた場合はどうかという点、これは東京を一〇〇としておきますと、大体こういうふうなあれで、これまた全労働者平均で見ました場合とかなりの偏差が出てくるわけであります。以上が地域別賃金格差についての代表的な表でございます。  それから第七表は職種別にみた賃金というものはどういうふうになるかという点であります。で、これは毎年労働省におきまして、職種別賃金調査というのを実施いたしまして、相当たくさんの職種についての賃金を調べているわけなんです。ただ、職種別賃金格差を見ました場合に、やはり年令の点——性別の点はもちろんでありますが、年令の点、勤続年数経験年数、これらを勘案して比較しないと、正確な比較にはならないわけなんです。そういう点で、ここに職種別平均給与額をあげまして、かつ平均年令平均勤続年数平均経験年数と、平均労働時間、これらをあげて御参考に供したわけです。これが十三ページの第七表の(9)まで、各種の職種について一応表示しておきました。  十四ページの第八表は、今度は産業別賃金格差の表でございます。その左側の欄は実額を書きまして、右側に産業別格差を、総数一〇〇と置いた場合、産業別にどうなるかという数字を出したわけです。それをさらに規模を同じくして見た場合、産業別格差がどうなるかということを出しております。これによりますと、調査産業総数を一〇〇といたしまして、規模、計のところでごらんいただきますと、高いところが一番下の電気ガス水道業、それから運輸・通信業あたりが高い、金融保険業が高い、それから鉄鋼業が高い、輸送用機械器具あたりが高いわけであります。それから石油製品石炭製品あたりが高い。逆に低いところは、上から二欄目繊維工業衣服その他の繊維製品木材・木製品、家具装備品、このあたり産業別に見ますと大体低いところなんです。  そこで、これは大企業も小企業もひっくるめての数字でございますので、今度はその小規模のところをとって見ますと、やはり低いところは大体繊維工業衣服その他の繊維製品、この辺が低くなって参ります。高いのは電気ガス水道業金融保険業、このあたりが高く出て参ります。もっともこの統計事業所単位になっておりますので、電気ガス水道業等におきましては、小規模と申しましても、実質的には大企業に入っているものもあるのでありますが、大体の傾向としては繊維衣服木材家具と、その辺が低い、産業別にはそういう数字が出て参ります。  十五ページの第九表、それは男女別賃金格差であります。一番右の欄でごらんいただきますと、産業総数男子を一〇〇といたしまして、女子賃金はどの程度になるかと申しますと、四一・四%程度になります。大体四割から六割の間を占めておるわけなんであります。ただこの点につきましても、性別賃金格差についても、やはり全部ひっくるんでの勘定でございますから、たとえば女子の場合は、年令の若い者が労働者構成としては多いというような点、勤続経験年数が短かいというような点、これらの点は別に考慮に人っていないわけなんであります。そこで、ある特定の職種につきまして、年令を同じくし、勤続経験を同じものと仮定しまして比較をいたしますと、これは大体七割から八割、場合によっては男よりも商いという数字も出てくるわけなんです。ここに示しましたのは一応総平均数字でございます。  その次の第十表、十六ページでありますが、規模別賃金格差の表であります。ここには一応賃金実額を掲げております。格差は別の表で出しております。  さらに十一表におきまして、所得階級別雇用者数分布を掲げております。これは雇用者総数千七百万人のうち、所得階級別にどの程度分布になっておるかという表であります。この左の端の総数というところが、これは従来ときどき御説明申し上げた数字でありまして、大体千七百万人のうち、六千円未満所得の者が約二割、八千円未満の者が約三分の一という表であります。  これを産業別に分けますと、農林業、漁業、水産業鉱業建設業、その他、こういうふうな分布になるわけであります。  その次の十八ページの第十二表、これが規模別賃金格差の表示でありまして、昭和二十六年から三十三年——昨年までに、規模別格差はどういうふうに推移してきたかということであります。五百人以上のところを一〇〇にしまして、三十人から九十九人——百人以下の小企業賃金は、二十六年の六一・七%、これが三十三年には五四・七%と、逐次低下して参りました。ということは、賃金格差が毎年拡大してきておるということであります。  その次の第十三表、産業別に見た場合は規模別賃金格差はどうかという点でありますが、この産業計の一番上の点でごらんをいただきますと、五百人以上の規模の大企業を一〇〇と置きまして、百人から四百九十九人の八二・二%、七一・七%、五四・二%、三五%と、こういうふうに落ちて参るわけであります。大体四人以下のところで三割台に落ちて参るわけであります。ただ、これも今申しましたように、労働者構成を全部ひっくるめての平均賃金格差でありますから、たとえば同質の労働が、大企業と小企業でどの程度違うかという精密な比較については、さらに年令構成とか、男女構成とか、勤続経験年数構成を固定して考えなくちゃいかぬのでありますが、それを若干の例で調べてみますと、必ずしもこういうふうに五割、四割と落ちるものではないのでありまして、職種によりましては一定年令のある職種男子労働者について調べたところでは、たとえば七割とか八割程度にしか落ちないという数字も出て参るわけであります。  その次、十九ページの十四表、これは今申しましたように、規模別賃金格差職種を同じくし、また学歴を同じくし、また年令を同じくして比較してみた場合どうなるかという数字であります。たとえば石炭鉱業の男の採炭夫年令三十才から三十五才までの労働者賃金が、大企業と小企業でどう違うか、これは五〇程度に落ちるわけであります。ところが、紡織業の女の織布工の二十才から二十五才というところでは七三になるわけであります。こういうふうに職種により、年令により、学歴によりあるいは勤続経験年数によって格差は非常に違うわけなんですが、総じてこういうふうに固定して考えてみますと、平均のごとく三割、四割と落ちるものではないわけであります。  その次、二十ページの規模別に見た全産業事務職員賃金分布であります。これは男子事務職員だけをつかまえて、それを規模別に区分いたしまして、賃金階級別に表示した表であります。  二十一ページの第十五表は、事務職員の女の賃金分布であります。  二十二ページの十六表は、先ほど申しました年令別に固定して考えてみた場合の規模別賃金格差であります。  それから二十三ページの十七表は、勤続年数を固定いたしまして考えてみた規模別貸金格差であります。この辺になりますと、かなり千人以上の大規模と、十人—二十九人の小企業との幅は狭くなって参ります。  それから二十四ページの十八表は、前歴別の入職者構成規模別比較であります。  十八表以下は、先般来労働大臣から賃金規模別格差というものは、最も大きくは生産性規模別格差によるということを申し上げておるのでありますが、と同時に、また、大企業と小企業零細企業労働者構成と申しますか、質がかなり違うわけでありまして、その辺の点を若干の統計でもって表示したものであります。この十八表は新しくその企業に入ってきた者が未就業であるか既就業であるか、すなわちフレッシュマンであるか、それとも転々として変ってきた者であるか。未就業者割合は、五百人以上の大企業が四七・二%、五人—九人になりますと三九・六%、既就業者は五二・八%に対して六三二%であります。こういうふうにフレッシュマンが大企業において多く、転々として移り変ります者が小企業において多いということであります。  その次のページの第十九表は新しく入ってきます場合にどういうふうな経路で、安定所で紹介されてきたか、学校で紹介されたものか、あるいは縁故募集かというふうな率であります。これによって見ますと、大企業の方が安定所からきた者が圧例的に多く、学校紹介もまた然りでありますが、逆に縁故募集につきましては、小規模の方が非常に多いという数字が出ております。  第二十表は規模別労働異動率、これは規模別に見ますと、その企業に新しく入ってきます者、離職いたします者、この辺の激しさはどういうふうに違うか、この入職率は新しく入ってきます者の数を全労働者で割った数、離職本離職者を全労働者で割ったもの、異動率はこの両者を合計した数でありますが、これで全常用労働者について見ますと、五百人以上の大企業では、わずかに二二・四%でありますが、五人—九人の小規模事業所におきましては八八%と、非常に小規模におきましては異動事が高いということが表示されております。  二十一表は、勤続年数経験年数はどういうふうに規模別に違うか。鋳物工をたとえばとってみますと、大企業におきましては勤続年数は十年、十人—二十九人の小規模で五年間、旋盤工におきましても大企業で九・九年、小規模で四・二年、約倍も勤続年数は違うのであります。経験年数そのものは、ほとんど大差はないわけであります。これは転々として変りましても、経験そのものは同じでございますので、勤続年数が倍程度違うということであります。  それからその次の二十六ページの二十二表は、年令別労働者構成がどういうふうに違うかということであります。これでごらんいただきますと、千人以上と一番右の端の十人—二十九人をごらんいただきますと、二十才未満の若いところが、大企業では一六・三%、小規模は二・九%、逆に五十才以上のところ、一番下をごらんいただきますと、大規模では四・五彩、小規模で一〇・三%、こういうふうな数字になっております。すなわち小規模におきましては若年労働者が多いのでありますが、しかし同時に、高齢労働者も非常に多いということであります。従って、中略層労働者は大規模の方が多い、こういうふうな大体の傾向でございます。  第二十三表は、学歴別構成はどうなっておるか、これは小学、新中卒は小規模の方が多いわけであります。逆に大学卒業者になりますと大規模が多い、これはまあ常識通り数字であります。  第二十四表は、家内労働概況につきまして、先般来基準局長から申し上げておりますように、家内労働の実情については、今後なお詳細に調査を要しますし、また、調査を行なっていく予定になっておるわけなんでありますが、三十一年に基準局の手によりまして一応概況を調べたところによりますと、家内労働者世帯の概数といたしまして五十七万世帯家内労働者総数は八十三万人、そのうち男が十一万人、女が七十二万人、大体こういうふうな調査になっております。ただしこれはごくあらましの数字でございます。詳細確実のところを、さらに内容の詳細にわたっては今後の調査に待たなければならないかと思います。  以上、概要を御説明申し上げました。
  5. 小柳勇

    小柳勇君 簡単に一、二質問いたしますけれども、第一は、船員法適用関係海上労働者の、低賃金労働者実態については何か資料はございますか。
  6. 大島靖

    説明員大島靖君) 運輸省労働省と同じく毎月勤労統計と同じ船員についての調査がございますが、これは運輸省で実施しております。
  7. 小柳勇

    小柳勇君 この前の委員会で、私は運輸省からの出席を求めておりましたが、きょうもおいでであると思いますが、資料提出を求めておきたいと思います。ただいま言いましたような資料を、次の委員会まで御提出願いたいと思います。  次に、今の表で、賃金関係は三十二年の四月に統計をとっておられますが、今ちょうど二年たっておりますが、この数字にどのくらいのパーセントアップしたものと考えてみたらよろしいか、お答えおきを願いたいと思います。
  8. 大島靖

    説明員大島靖君) 今お話の統計につきましては、職種別賃金調査というのを毎年四月に実施いたしております。ただ、この調査の主たる目的は、賃金構造調査することにあります。従って、その実額そのものの毎年の変動は、むしろ毎月勤労統計、これによって毎年、毎月の賃金水準の動きをごらんいただくことになっております。主としてこの賃金構造、すなわちここで申しましたように賃金格差とか、こういうふうな点に利用されることを主たる目的といたしておる調査であります。従って、三十二年度の調査、三十三年度の調査、この結果におきましては必ずしも大きな変化はないと考えております。若干の個別的な変動はもちろんございますが、大まかなところは、大体こういうふうなところで見当をつけていただいて間違いないのではないか、かように考えております。
  9. 小柳勇

    小柳勇君 それじゃ貸金格差については、この表をもって考えて、現在の情勢を判断して大した違いはないということでございますか。
  10. 大島靖

    説明員大島靖君) 先ほどちょっと御説明申し上げましたように、たとえば規模別賃金格差につきまして、毎年若干拡大して参っておるわけであります。従って、そういう若干の変動についてはもちろん予想しなければいかぬのでありますが、しかし、大まかなところの見当といたしましては、大体こういうふうな賃金構造として御理解いただいてけっこうじゃないかと思います。
  11. 小柳勇

    小柳勇君 次に、外国の最低賃金法についても、あとでいろいろ討論し、質問したいと思いますので、幸いここに資料がありますから、国際的な低賃金労働者の状態について、この表によって御説明願いたいと思います。
  12. 大島靖

    説明員大島靖君) この賃金資料という表の第三表と、第五表、第六表をごらんいただきたいと思います。昭和三十四年三月、賃金資料労働省、目次となっております、一番最初の資料であります。これの第三表をごらんいただきたいと思います。この第三表は、日本米英独と三国の各国規模別賃金格差及び生産性格差を表示した表であります。上の表に日本米国英国、西ドイツとありまして、その下にA、Bとあります。Aは一人当り付加価値、すなわち企業産業全部の付加価値総顔を従業員総数で除したもの、一人当り付加価値格差であります。これはすなわち生産性格差と考えられるのであります。それからBは賃金格差であります。賃金規模別格差でございます。これによってごらんいただきますと、日本におきましては生産性格差、すなわちAは大規模に比べまして四人—九人のところで二七・五に落ちるわけであります。すなわち生産性が小規模は非常に低いということ、と同時に、Bの賃金格差におきましても四人—九人のところで四〇・〇まで落ちるわけであります。米国におきましては生産性格差、Aは一人—九人の小規模におきましても七割程度にしか落ちないのであります。と同時に、賃金もまた六三%にしか落ちないわけであります。イギリスにおきましては十人—四十九人のところで生産性は九一・四、ほとんど落ちない、と同時に、貸金も八二・五%となっております。ドイツにおきましては、生産性は七六・四%までしか落ちないし、また、賃金も八一・七%である。すなわちこの表で見ますと、米英独に比べまして、わが国規模別賃金格差というものは非常に大きいということであります。と同時に、生産性の一人当り付加価値の額の規模別格差もまた非常に日本が大きいということであります。従って、大体賃金格差生産性格差というものはパラレルに考えられるものであります。従って、日本規模別賃金格差の縮小という問題については、どうしても中小企業生産性の向上ということが主たる軸になるということがこの表からもうかがわれると思うのであります。  それからその次に第五表をごらんいただきたいと思います。第五表は、賃金水準国際比較であります。先般来、たびたび御質疑の中に出て参ります問題でありますが、この各国賃金を単純に為替換算して比較いたしますと、日本を一といたしまして、米国九・一、英国二・八、西独二・二、こういう数字になるわけであります。そこで、これは単純な名目賃金を為替換算いたしました数字でありますので、今度は食料購買力賃金食料購買力、すなわち賃金各国におきましてどの程度食料を購買し得るかということ、まあ、大体実質貸金国際比較とお考えいただいていいわけなんでございますが、これによりますと、日本を一といたしまして米国が三・四、イギリスが一・八、ドイツが一・四と、名目賃金為替換算比較よりも、この格差は縮まって参ります。さらに先般来、労働大臣からしばしば申し上げておりますように、各国の一人当り国民所得、これと賃金とを相関して考えなくちゃいかぬという点につきまして、一人当り国民所得国際格差比較してみますと、日本を一としまして、米国は九・六、英国が四・五、ドイツが二・四、大体こういう数字になっておるわけなんです。従って、名目賃金比較におきましても、やはりこの国民所得国際比較をあわせ考慮していくことが必要だと思うのであります。と同時に、第六表で、各国賃金水準上昇率、これを一応表示しておきました。一九五一年と一九五七年、昭和二十六年から三十二年までの間の上昇率を見ますと、日本は四七・五%上昇いたしました。その間アメリカは三〇・二%、イギリスが五〇・三%、ドイツが四六・九、フランスが五七・六、イタリアが二七・七、こういう数字になっております。アメリカドイツイタリア日本よりも上昇率が低く、イギリスフランスが若干高目に出ておるわけであります。と同時に、このイギリスフランスというのは、御承知の通り、現在ヨーロッパにおきまして、コスト・インフレの問題が最もやかましく論ぜられておる国であります。大体以上が国際比較関係資料の御説明であります。
  13. 小柳勇

    小柳勇君 ただいまの説明で若干質問いたします。  第一は、この米国英国ドイツが、賃金格差日本に比べて非常に少さいのですが、その理由をどのように御判断されておるか、お聞かせおき願いたいと思います。
  14. 大島靖

    説明員大島靖君) 先ほど来御説明申し上げましたように、この規模別賃金格差がなぜ生ずるかという問題、これは究極的には、各企業生産性の度合いに応ずるものだと考えざるを得ないのであります。従って、ドイツその他企業別賃金格差の少いところは、やはりその生産性が小規模においても高いから、従って、それだけの賃金を支払う能力がある、また、そこに参ります労働者も必ずしも大企業に比べて遜色のない質の労働者が集まる、こういうふうな観点からいたしまして、賃金格差は必ずしもそう大きく開かない。逆に日本の場合は、中小企業生産性が著しく低い。従ってまた、それが集まって参ります労働者につきましても、年令構成とか学歴構成その他におきましても、大企業と相当な違いを生じて参る、こういうふうな解釈をいたしております。
  15. 小柳勇

    小柳勇君 抽象的な説明でありますので、よくわかりませんが、もう少し数字的に御説明ができるように、次の機会に一つ資料によって御説明願いたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  16. 大島靖

    説明員大島靖君) このあとで御説明申し上げましたこの三表の一人当り付加価値賃金格差、この辺がまず一番明瞭にその間の事情を説明する数字であると思いますので、この統計表によって一つ御了承願いたいと思います。
  17. 小柳勇

    小柳勇君 このような国は、みな最低賃金法が制定されておる国でございますが、最低賃金法並びにその制度と、このような格差が少いということの関連について御調査されておるかどうか、お聞かせおきを願いたいと思います。
  18. 大島靖

    説明員大島靖君) これらの国においては、かなり以前から最低賃金制が実施されておるわけでありますが、この最低賃金制が実施されたから、こういうふうに格差が小さくなったというわけでもないのでありまして、本来格差があまり大きくないというような基盤の上に最低賃金制も打ち立てられまして、また同時に、その最低賃金制の実施によりまして、さらに規模別格差というものが縮まってくると、まあそれぞれの因果関係もあろうかと思います。
  19. 小柳勇

    小柳勇君 最低賃金法並びに制度と関係がないという何か資料ございますか、あるいは御説明できますか。
  20. 大島靖

    説明員大島靖君) 最低賃金制とこの規模別賃金格差の小さいという点が関係がないと申し上げたわけではないのでありまして、規模別格差が小さいことが最低賃金をより早く実施せしめたであろうし、また、最低賃金制が実施されることによって、さらに規模別格差が縮小するというような関係になっておるのであろうと、かように考えます。
  21. 小柳勇

    小柳勇君 その点の問題につきましても、いま少し調査なり御説明された基礎的なものを一つ資料として御提出願いたいと思います。よろしゅうございますか。
  22. 大島靖

    説明員大島靖君) 各国の最低賃金の実情につきましての詳細な調査をいたしました書き物も私どもの方で作っておりますので、そういうものをまたお手元にお届け申し上げたいと思います。
  23. 阿具根登

    ○阿具根登君 関連。第五表の名目賃金国民所得は、一応バランスはとれておるように見えるのですけれども、実質賃金が非常に差が縮まってきておる、しかもこれは食料購買力ということで表示してございますから、これは各国の食糧事情も多分あると思うので、これはカロリー計算で出しておられると思うのですが、そうですか。
  24. 大島靖

    説明員大島靖君) これは昨日もちょっと御説明申し上げたのでありますが、食料賃金なり、食料購買力表示なりで、実質賃金の購買比較というものは非常に困難なんです。困難なんではありますが、かつてアメリカ労働省で、アメリカ賃金とヨーロッパ各国賃金とを実質的に比較した試みがある、それは同じ賃金でどれだけの食料を購入できるかということなんでありますが、ところが、各国労働者の生活内容というものが非常に違うわけです。従って、大体同じような生活内容を持つものでないと、比較が困難なわけです。従って、アメリカ賃金食料購買力と、ヨーロッパの賃金食料購買力比較する場合におきましても、一方におきましてはヨーロッパがこれこれの資金で、もしアメリカ労働者と同じような食生活内容を持ったとしたらどうなるか、それぞれの国の物価でどうなるか、今度は逆にアメリカ労働者が、これこれの賃金額でヨーロッパの食生活内容を持ったとしたらどうなるかという計算をいたしまして、それを両者彼我平均いたしまして、これによって一応アメリカとヨーロッパ各国賃金食料購買力比較いたしたのであります。その場合、日本比較は入ってないのです。それは食生活の内容が著しく異なりますので、非常に困難なためであったろうと思うのでありますが、そこで、私どもの方で、さらに日本アメリカ賃金食料購買力を同じような方式で比較いたしましたそれを、その調査に接続いたしましたのが大体こういう結果になっておるのであります。で、実費賃金国際比較というものは技術的にも非常にむずかしいものなんでありまして、まずこの程度比較より現状ではちょっと困難であろうかと、かように考えております。
  25. 阿具根登

    ○阿具根登君 そういう比較でなくて、為替換算比較で見て、日本が一の場合にアメリカは九・一と、英国は二八と、これが出ておって、為替換算では完全なる賃金の対比はできないということを大臣も言っておるので、だからそれでは購買力はどうだということになったわけです。それを食料の購買力で表わしていただくならば、カロリーを、たとえば三千カロリーなら三千カロリーですね、これをとるためにどのくらいの金が向うは要るのだ、日本はどのくらいだ、ドイツは幾らぐらいだ、これを出さなければこういう購買力では私は統計にならないと思うのですが、そういうものは何かありますか。
  26. 大島靖

    説明員大島靖君) ただ同じカロリーをとるにいたしましても、たとえば穀類でとりますか、脂肪でとりますか、牛乳でとりますか、これによって値段が非常に違ってくるわけです。従って、先ほど申し上げましたように、その食生活の内容が非常に違ってきます場合、比較が困難になる。たとえば穀類から摂取いたしますカロリーは、わが国なんかは非常に大きいわけなんでありますが、逆に牛乳とか脂肪になりますと下る、こういう関係なんであります。従って、そういうふうな比較をいたします場合は、今私が御説明申し上げました方法で、総括的に食料購買力比較をいたすよりほかにちょっと方法は困難であろうかと考えております。
  27. 阿具根登

    ○阿具根登君 それは物価の指数なり食糧事情が違うから、なかなかむずかしいとは思うのだけれども、一番わかるのは、これは最低賃金を審査するための資料だから、だから最低賃金とは何ぞやという問題はきのう三時間もやったのだから、十分御承知でしょう、もう三回もこの法案に取り組んでおられる皆さんだから十分御承知のことで、同じ労働者、同じ労働者がどのくらいの生活を維持しているかということを見るわけなのです。そうすると、こういうような比率を出される場合には、日本労働者がどのくらいのカロリーが必要であるか、アメリカ労働者がどのくらいと、同じような一つのカロリーを出した場合に、アメリカではどのくらいの金が要るのだ、日本ではどのくらいの金が要るのだという、これを出してもらわなければ比率にならないわけなのです。そうしませんと、その前の為替換算比率でこれを出せば、向うは非常に高い賃金を持っておりますので、購買力がこんなに低いですよと、こういうふうに言われるけれども、向うはたくさんのカロリーをとっている。こっちでは低いカロリーをとっているとすれば、これは食料換算の比率にならないわけなのです。私のいうカロリー計算で比率を出していただきたい。
  28. 大島靖

    説明員大島靖君) 先ほど来、私が申し上げておりますように、ここに出ております食料購買力は、各国労働者の食生活の内容は各国で違っておるものでありますから、これを同じものと仮定しまして、そこでその国で、その国の物価で、これを買った場合にどの程度買えるか、こういう調査なんであります。従って、先生のおっしゃいますような点はこの中に含まれてくるわけなのであります。しかもアメリカ日本を比べます場合、日本労働者の食生活内容をアメリカと同じにした場合と、今度アメリカ労働者日本へもってきて日本の食生活と同じようにした場合とでこれはかなり計算がまた違ってくるわけであります。従って、その両方の偏差があってはいけませんので、この両者をフィッシャー式で計算をいたしましたという方式をとっているわけなんで、従って、カロリーの点を、同じような食生活をするものと仮定しておるわけなんでありますから、従って、カロリーの点も同じものと考えられておるものと御理解いただいてけっこうだと思います。
  29. 阿具根登

    ○阿具根登君 それではその資料を出していただけばいいでしょう。たとえばアメリカだったら肉はどのくらい、パンはどのくらい、野菜はどのくらいと、とにかくカロリーを一日にどのくらいとっておるのだ、そうすると、その同じカロリーをとれば日本は穀類がどのくらい要るのだ、肉がどのくらい要るのだとわかるはずなんです。だからカロリーの計算で出したやつを出して下さい。人間が生活をして労働力の再生産をしていく、そのためにどのくらいのカロリーが要るかということははっきりしている。そのカロリーを計算して出していただけばいい。それを出していただけばはっきりわかるから、その計算を資料で出していただきたい、こう言っているわけです。
  30. 大島靖

    説明員大島靖君) 国際労働機構——ILOにおきまして、もちろん各国の供給食料食料の種類別にカロリー計算であれいたしました統計は、ILO統計年鑑に出ているわけであります。しかし、それとこれとが直ちに結びつくかどうか、ちょっと疑問であります。
  31. 阿具根登

    ○阿具根登君 そういうことをあなた方考える必要はない。私が要求している資料を出して下さい。それができるかできないか聞いているので、それを出しても何もならないとか、そんなことはよけいなことです。私はそういう面からいろいろの労働者の生活水準というものを見てみたいのです。賃金は出ているのだから、その賃金はおのおのの国の食生活ではこれだけのものしか買えないという、その数字は出ているので、それが非常に下っているから、だから私の言うのは、アメリカの人は五千カロリーも六千カロリーも食っている、日本は三千カロリーだという場合に、購買力が違ってくるというわけです。だから、同じカロリーにならして購買力を見なければ平均にならないのです。あなたがILOの数字がどういうところで参考になるならぬと言うことは、それはあなたの感覚で、私はそれがほしいのです。それを出してくれと言っているわけです。
  32. 大島靖

    説明員大島靖君) ILOの統計年鑑にあります数字は、別に写しましてお手元に届けさせたいと思います。
  33. 阿具根登

    ○阿具根登君 それはILOのやつもけっこうですけれども、いずれにしても、私の言っている、労働者——平均でいいのです。一人々々ということはできないから、平均でやればわかる。物の値段を一致させたらアメリカで何千カロリーとるには幾ら要る、日本では幾ら要る——これは食料購買力ですから、この資料は。この食料購買力というのが出てくれば、同じようなカロリーをとった場合にどういうふうになるか、また、これはあるいはアメリカ人は日本人よりもカロリーをうんととらなければだめだということもあるかもしれない。それはそれでいいから、同じような人間でこのカロリーを一応きめた場合、その数字がありますから、その数字に当てはめて、肉は幾ら、パンは幾ら、こういう数字はすぐ出てくるわけです。それを出して下さい。
  34. 大島靖

    説明員大島靖君) 可能な限り調査いたしたいと思います。
  35. 久保等

    委員長久保等君) それではちょっと委員長の方から申し上げておきたいと思うのですが、この五表、六表のこういう数字が簡単に出ているのだけれども、この出てきた資料が一体どこから出たのか、それからもしそれがいろいろあちこち集められて厚生省でお作りになったならば、これの前提になる資料を、結論的なものがここにぽつぽつと出ているけれども、こういった結論がどういう資料に基いて出たのか、そういったことは出せると思うのですが。統計部長どうですか。
  36. 大島靖

    説明員大島靖君) 資料の出所については、ここに掲記いたしておりませんが、もちろん出所があるわけでございますのでお出しできると思います。
  37. 久保等

    委員長久保等君) それでは資料は、今阿具根委員から要請のあった点、それから今私が申し上げたようなことについての資料を御提出願います。
  38. 小柳勇

    小柳勇君 今資料の要求がありましたから、その追加を私も申し上げておきたいと思うのですが、これは西欧民主主義諸国だけで、社会主義諸国との比較が全然ないわけです、それがなぜないか、ついでにそれも今のような方法で一つお出し願いたいと思うのですが、いかがですか。
  39. 大島靖

    説明員大島靖君) 社会主義諸国の労働統計につきましては、大体こういうような計算をいたしますときも、大体ILOの統計局で収集いたします資料によってあれするわけなんですが、ただILOの資料収集におきましても、社会主義諸国からはあまり資料が出て参らない、最近はちょくちょく出だしたようですが、まだ全般的には出て参りませんので、社会主義諸国との対比というのは統計上ちょっと困難かと思います。
  40. 小柳勇

    小柳勇君 けしからぬですね、今までもう四年も前からアジア大陸の社会主義諸国についても、それから東南アジアの方にも、相当日本の代表が行っておるはずです。労働省統計部は熱意を持ってそのようなことをやる腹があれば相当のことが今までできていたと思う。そういうことで私どもとしては、西欧民主主義諸国だけと比べてもほんとうの今後の論議になりませんので、でき得る限り一つ、正確な、皆さんで今までおできになつたところ、あるいはその努力をしていただきまして、そういうものを出していただきたいと思いますが、いかがですか。
  41. 大島靖

    説明員大島靖君) もちろん私ども、今後とも海外の労働事情について調査をいたして参りたいのでありますが、残念ながら現在までのところ、国際的にある程度比較にたえ得るような統計ができていない場合もございますし、かつまた、かりにできておるといたしましても、まだ国際的な機関に発表されるなり、一般的に発表されるなりいたしておらない場合が多いのであります。従って、現在のところ、統計的な比較は困難であります。しかし、今後ともできるだけ私どもも努力をいたしまして、そういうふうな調査もいたしたい、かように存じます。
  42. 阿具根登

    ○阿具根登君 ちょっと追加して、むずかしいかもしれませんけれども、同じようなこういう統計数字を出していただく場合に、為替換算率は、一九五七年のやつを出して、食料購買力はその五年も前のを出していただくと、これはちょっと比較のしようがまずいですね、だから為替換算率が一九五七年ならば、なるべくその一九五七年のを出していただくか、できなければ一年くらいの違いならいいけれども、五年ぐらい前の購買力と五年もあとの名目賃金とこれはちょっと比較になりませんから、その点をもう少し親切にしていただきたいのであります。
  43. 大島靖

    説明員大島靖君) その点につきましては、食料購買力比較は、先ほども申し上げましたように、かつてアメリカ労働省が実施いしたましたのが「マンスリー・レーバー・レビュー」というのに載っておりまして、それがまず実質賃金国際比較としましては、まず世界的に見まして唯一の資料なんです。で、その後、これ以上の比較というものはできていないのでありまして、従って、五七年に近い年における比較というものは困難なんで、現在利用し得る限りの範囲で、その間のものにつきましてはできるだけ一番新しい年次をとっておるわけなんです。その点は一つ御了承願いたいと思います。
  44. 阿具根登

    ○阿具根登君 これはそういうやつであったかもしれませんけれども、私が要求しておるものは、新しいのができるはずですから、アメリカならアメリカ英国なら英国で肉が一ポンド幾らするということはわかるのですが、五年も十年も前のを持ってこないでも、カロリーを計算すればわかるのですから、新しいので、一つお願いします。
  45. 小柳勇

    小柳勇君 もう一つは、すでに社会制度の進んだ国、たとえばニュージーランド、オランダなどのその問題と、最低賃金法の問題、格差の問題、非常に大事でありますので、社会保障制度の進んだあるいは生活保護に関して非常に意を用いておるところの国の賃金格差の問題についてもできるだけの資料を御提出願いたいと思うのですが、いかがですか。
  46. 大島靖

    説明員大島靖君) 総体的に、労働経済の国際比較については資料が非常に限られておるわけです。従って、限界はあろうと思うのですが、可能な限り、できるだけ努力いたしてみたいと思います。
  47. 小柳勇

    小柳勇君 労働大臣に質問いたしますが、今数字の上から最低賃金法のある国の賃金格差が非常に少い。日本に比べまして半分くらいに格差が小さくなっておりますが、労働大臣は、各国労働事情調査で相当歩いておられるし、ILO総会にもおいでになりましたので、最低賃金法とその賃金格差の問題について、大臣は、どのように考えているか、お考えを伺いたいと思います。
  48. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) しばしば私が申し上げておりますように、日本賃金産業構造の二重、三重ということで、日本のこれは独特の状態であろうと思いますが、この統計にも示しておるように、非常に零細な企業が多い、従業員の数で言えば、いわゆる零細というものが約八〇%というところにきておるようでございます。従って、そういうところの生産性が落ちて、そのことが賃金格差を生ずる大きな原因である、こういうふうに私どもは思っております。
  49. 小柳勇

    小柳勇君 最低賃金法格差との関連についてはどのようにお考えですか。
  50. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 最低賃金制のあるところはもちろんそれなりに賃金格差を縮めることにあるいは役立っているかもしれませんが、日本規模別賃金格差というものがあるというのは、やはり産業構造が大きな原因をなしており、その生産性の劣悪なところに大きな原因がある、こういうふうに思っております。
  51. 小柳勇

    小柳勇君 そうしますと、現在なお日本では最低賃金法を持たない、従って、直結いたしませんで、最低賃金法のあるところは賃金格差が小さいが、日本の方は最低賃金法がまだないので賃金格差が多いということも考えられる、と理解していいですか。
  52. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 最低賃金制というものは、やはり賃金格差を縮める一つの役割を果すことはあり得ると思いますし、また、それなるがゆえに、私どもも最低賃金制をなるべく早く実施する方がよいと思っておるのでありますが、日本零細企業、これの一人当り付加価値を見ましてもこの数字が示しておるような状態であります。従って、しばしば私どもが申し上げておるように、政府としては最低賃金制というものを実施すると同時に、それに並行して一人当り付加価値生産性をどのようにして高め得るか、こういうことが非常に大事な問題でありますと同時に、この零細な企業をなるべく早く合理化して、そうしてその堅実な運営を力づけてやるということによって賃金格差は当然縮まってくる、両々相待って努力をしなければならない、こういうふうに考えております。
  53. 小柳勇

    小柳勇君 その問題については、あとでまた重ねて資料が出ましてから大臣の御見解をいろいろただしていきますので、きょうはそれだけにしておきたいと思いますが、この生計費関係資料が出ておりますが、私は、日本労働者の現在における生計費、最低の生活をするための費用、そういうものについてこの表によって説明をしておいていただきたい。
  54. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 生計費関係資料について御説明申し上げます。  第一表は、人事院が昭和三十三年の七月に給与勧告の説明資料として作成いたしたものでございますが、東京における独身の成年男子の標準生計費でございます。同じような調査を三十二年三月にもいたしておりますので、三十二年三月、三十三年三月とを比較して二つの欄にいたしてございます。これによりますと、昭和三十三年三月には独身成年男子一人一日当りの基準カロリーは二千四百九十カロリーという算定をしております。これは昭和三十二年度の東京都の国民栄養調査の結果を考慮いたしまして、従来二千四百七十カロリーとしていた基準カロリーを二千四百九十カロリーに改めておるわけであります。このカロリーを摂取するに足るマーケット・バスケットを作成いたしまして、東京都の家計調査三月の価格を組み合せて算定いたしますと、独身成年男子一人一日当り食料費は一日百十四円三十一銭ということになるわけでございます。以上のことから一カ月当り食料費を算定いたしましたのが、月額という方の欄にあるわけでございまして、これによりますると、月額の食料費三千四百八十円、それからそのほかの必要な衣服費、住居光熱費、雑費等を合計いたしますと七千五百六十円ということになるわけでございまして、これが東京における独身成年男子の標準生計費であるという人事院の調査でございます。  それから第二表でございますが、第二表は厚生省におきまして、生活保護法による保護基準として策定したものでございます。この生活保護法の生活扶助の基準額表でございますが、全国を四つの地域に分けております。この四つの地域と申しますのは、このあとの方の第四表——七ページと八ページに記載してございますが、このような基準で全国を四つの地域に分けてございますが、この分けました一級地、二級地、三級地、四級地につきまして、それぞれ算定の基礎を作っておるわけでございます。そうしてそのそれぞれの地域につきまして、第一類と書いてありますのは年令別男女別の基準額でございます。それから第二類は世帯人員別によるところの基準額でございます。これに電灯料、水道料を加算する。それから地区別にこれは全国を六つの地区に分けまして、冬はいろいろ出費もかさむので、その関係の金額を加算するということになっておるわけでございます。これらのものを組み合せまして、第六ページにございますが、第三表のような計算になるわけでございますが、独身男子生活保護金額、これにつきまして生活扶助の今のような算式によって算定いたしましたものに住宅扶助——これは五ページの一番下についております住宅扶助基準額表で、これも地区別に家賃の級地区分というものを世帯人員別に作っております。この住宅扶助額を合せますと、たとえば一級地における独身男子生活保護金額は三千五百十円、二級地は三千二百四十円、三級地は二千八百九十円、四級地は二千四百九十円。これは十四才から二十四才のところに相当する金額でございます。冬季加算額は含まれておりませんが、生活保護の基準といたしましては、以上のような算出の基礎になるわけでございます。  それから第五表は、これは統計調査部において、国際労働統計年鑑一九五七年からとりました各国の家計消費支出の国際比較、労務者について比較したものでございますが、これは、ここにございますように、調査時期がそれぞれやや異なっておりますが、なるべく最近の資料によりまして、それによって年間の消費支出を算定しておるわけでございます。それからこの年間消費支出を、全体を一〇〇といたしました場合に、その中に含まれる食料費、それから地代賃貸料、光熱費、家具維持設備費、それから被服費、その他というような費目がどの程度のパーセントを占めるかというのを計算いたしましたのが次の欄の数字でございまして、この食料費のところを見ますると、日本は全体を一〇〇として四〇・七ということになっております。一番高いのはインドの八四というような数字でございます。それから一番低いのはアメリカの都市におけるところの三〇・八というような数字になっておるわけでございます。
  55. 小柳勇

    小柳勇君 標準生計費を計算してみますと、エンゲル係数が四六です。今の国際比較で四〇・七になっておりますが、四〇・七にしますと、今の七千五百六十円というのは八千円をこすのではないかと思うのですが、いかがですか。
  56. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) この四〇・七と申しますのは、労務者の平均数字で何といいますか、標準の数字でございます。それからこちらの方は生活保護の扶助をきめるものでございまして、まあ昨日も御説明申し上げましたように、きわめて軽作業を行なって食べていけるというだけの数字の基礎金額になっておるものでございまして、その意味におきまして、この生活保護の方はエンゲル係数が高くなっておるということに相なるかと思います。
  57. 小柳勇

    小柳勇君 私は前提で申し上げたように、最低賃金法を論ずる基礎資料として、今労働省から説明を受けておるわけです。標準生計費についてもエンゲル係数四六というのは、国際標準の四〇・七よりも悪いですね。そういうようなことで、しかも軽作業というようなことで最低賃金法をお考えになるということについては、これは根本的な誤まりだと思いますが、いかがですか。
  58. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 私は、昨日も御説明申し上げたのでありますが、これらの生計費についてはいろいろな問題点があるわけでございます。たとえば厚生省の生活保護の基準というものはきわめて軽易な作業を行う程度のきわめて低いカロリーを消費するという程度のものとして記載してございます。これをそのまま最低賃金の場合の生計費ということに起算すべきかどうかということは、これはいろいろ問題がございます。これらのいろいろな問題点につきまして、現在ある資料はこのようなものでございますから、これらのものを参考とし、さらに具体的な問題になりました各地区、各業務、各職種の労務者の生活にどれだけの労働力の消耗があり、それについてどれだけの再生産のための費用が必要であるかというような具体調査をあわせましてそういうようなものを比較検討しつつ、適当なる最低賃金額を最低賃金審議会で御審議願い、それを尊重して最低賃金額を労働大臣が決定する、このような考え方で参りたいと考えておるわけでございます。
  59. 小柳勇

    小柳勇君 この生活保護法の基準をここの論議の資料として持ってこられたこと自体が私は問題だと思うけれども、今お話を聞きましても、それを基礎にして、それに何かプラス・アルファーして最低賃金法を論ずるときの基礎資料とするようなふうに今基準局長の頭の中にあるようだが、そのように確認していいですか。
  60. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 生活保護の保護基準というのは一つの参考資料にすぎないのでありまして、われわれはこれを基準にしてこれに最もウエートをおいて審議会に検討していただきたいというような気持はありません。本日お出しいたしましたのは、昨日の御質問の際に、この人事院の標準生計費とかあるいは生活保護の保護基準の内容について資料として出せ、こういう御要望でございましたので御提出した次第でございます。
  61. 小柳勇

    小柳勇君 それから地域格差についても、これは東京都における独身成年男子標準生計費と書いてございますが、さっきの賃金については相当都市、地方に格差がございましたけれども、標準男子の生計費についての地域格差については一体どのようにお考えになっているか、お聞きしておきたいと思います。
  62. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 生活保護の保護基準におきましては、全国を四つの地域に分けまして、それぞれの格差を設けておるわけでございます。人事院の算定いたしました独身成年男子の標準生計費と申しますものは、これは東京についてだけ実施しておるわけでございます。これを各地にどのように及ぼしていくかということは、これはまたそれに値する調査をいたさなければなりませんが、これはたとえば公務員等におきまして地域差を若干設けているというようなものも一つの参考になると思います。しかし、それだけをもって算定することはもとより危険であると思いますので、これは各地区におきましてそれぞれ問題になりました業種、業態と地区につきまして具体的な調査を行なって、これを参考資料として検討していく、こういう方法をとらなければならないと考えております。
  63. 小柳勇

    小柳勇君 具体的な調査を行なってとおっしゃいますけれども、各地域のものは、もう相当長い調査資料があるわけですね。従って、そういうような各地域の成年男子なり、あるいは標準家族なりの生計費の格差などの表、そういうような資料も次の機会にお出し願いたいと思います。それはよろしゅうございますね。  次は、最低賃金を決定する場合、四つの方法がございますけれども、最終的に、たとえば業者間協定などで決定しない場合は、中央賃金審議会の答申を待って、労働大臣が決定することになっておりますね。そのように労働大臣が御決定になるときに、この生活指数なりあるいは生計費というものを、どのような基礎において判定されていくか、その基礎的なものをお教え願いたいと思います。
  64. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 具体的に最低賃金を検討いたします場合には、まず最低賃金審議会におきまして、三者の委員の方から十分な御検討を願った上で、その意見を伺って、これを最大限に尊重いたしまして決定したいと考えております。その最低賃金の策定に当りましては、賃金審議会においてはもとより、それからわれわれの方の、意見を尊重して決定する際の基準といたしましては労働者の生計費、類似の労働者賃金、それから通常の事業の賃金支払い能力、この三つの基準を考えあわせまして、そうしてこれらをもとにして御検討を願い、われわれもまたそれをもとにして判断をする、このような態度で進んでいきたいと考えております。
  65. 小柳勇

    小柳勇君 中央賃金審議会並びに地方賃金審議会というものが、相当の今後勧告なり決定なり、申請権を持つわけでございますが、地方におけるそういうような労働者実態に対する判定の基準、そういうものについては、中央は一体どのような対策を持ってこれを基準化していくか。各地方基準局長がばらばらに資料を持っておったんでは、これは何も全体的な最低賃金といえないんですが、このことについて、具体的にどのような考えを持っているか、お聞きします。
  66. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) これはまず第一次的には、各府県内だけの問題につきましては、各都道府県基準局長が、同じく各府県ごとに設けられております三者構成の地方最低賃金審議会に御検討を願いまして、その御意見を尊重して決定する、このような考え方であります。ただその場合に、問題がその地域だけでなしに、ほかの地域、全国的に波及するというような関連があると思われるような問題につきましては中央賃金審議会、そうして行政官庁としては、労働大臣がみずからその御意見を伺って決定する、このようなことで調整していきたい。なお、さらに各都道府県だけの問題につきましても、これを全国的な観点から調整する必要があるかどうかというような重要な問題につきましては、これは中央最低賃金審議会を、この法律が実施の暁には、さっそく開催いたしまして、これらの問題もあわせて御検討願う必要があれば、それに伴う措置を行う、こういう考えで進みたいと思います。
  67. 小柳勇

    小柳勇君 衆議院の答弁などを聞きますと、業者間協定については、すでに二年有余指導してこられたようであるが、各県の基準局などに対して、そのようなものを、今までこの基礎的な判定の事情なり基準について、どのように指導してこられたか、お聞きしておきたい。
  68. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 業者間協定の援助につきましては、昨日も御答弁申し上げましたが、一昨年の二月、労働問題懇談会から、全会一致で意見書が労働大臣に出されました。その中には、一つは中央賃金審議会が休会中であるが、これをすみやかに招集して、最低賃金制はどのようなものがわが国においては適当であるかという検討を開始すべきであるということと、もう一つは、業者間協定の中に、最低賃金条項を織り込ませて締結するということは、最低賃金制の基盤を形作る上からいって、きわめて有意義と考えられるので、政府はこれに対して必要な援助を行うべきである、このような意見書があったわけであります。これを受けまして、労働省から各地の基準局長あてに、業者間においてそのような動きがあった場合には、必要な援助を行うように、こういう通達をいたしたわけでございます、ただし、これはあくまでも法律に基くものではなくて、事実上の援助でございます。われわれといたしましては、業者間締結の援助につきまして、たとえば賃金分布調査してくれ、あるいは経営状況の調査をしたいが、それについていろいろな資料を提供してくれというような御依頼がありました場合には、これを提供するというような援助の仕方をしておりまして、内面的にどの程度の金額が妥当であるというような援助はいたしておらないわけでございます。
  69. 小柳勇

    小柳勇君 ただいままでずっと要請いたしました資料については、早急に一つお出し願いたいと思います。それから概論的なものとして、なお国際労働事情とこの法案との関係について質問していきたいと思いますけれども、時間が参りましたので、私はきょうはこれで質問をやめまして、次の機会まで質問を保留いたします。
  70. 久保等

    委員長久保等君) ちょっと速記をやめて。    〔速記中正〕
  71. 久保等

    委員長久保等君) 速記を始めて。  暫時休憩いたします。    午後零時十七分休憩    —————・—————    午後二時九分開会
  72. 久保等

    委員長久保等君) 休憩前に引き続き午後の会議を開きます。  最低賃金法案について御質疑を願います。
  73. 小柳勇

    小柳勇君 午前に引き続いて概論的なものを、特に国際労働事情と政府が提案いたしました最低賃金法との関連を論議するに当りまして、一、二質問しておきたいと思います。  第一は、午前中に、西欧民主主義諸国の労働事情については質問いたしましたが、そのような国で現在最低賃金法がどのように実施され、労働者の生活を保護しておるかという点について、この労働省資料がございますから、重点的にこの資料によって御説明願いたいと思います。
  74. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 資料としては二つをお配りしてございます。「諸外国における最低賃金制の概要」、「主要国最低賃金法制一覧」、この二つに分れております。  そこで、まず第一に、この諸外国における最低賃金制の概要、これにつきまして御説明申し上げます。  第一は決定方式でございまして、先日御説明申し上げましたように、決定方式といたしましては大体四つの方式が考えられるわけでございます。第一は賃金委員会方式でございます。第二は仲裁裁判所方式、第三は法定最低賃金方式、第四は団体協約の一般的適用方式でございます。  賃金委員会方式は、労使を含む賃金委員会を設置いたしまして、この賃金委員会が決定機関であるものと諮問機関であるものと二種類ございますが、この資金委員会において最低賃金を決定するか、あるいは賃金委員会の意見によって行政官庁が決定するか、その二つに分れております。これに属するものといたしましてはフランスイギリスがありますが、決定機関と認められるものはイギリス、ノルウエーで、イギリスは農業賃金委員会が決定機関と認められております。諮問機関と認められるものはフランス、スイス、インドそれからフランス家内労働委員会がございます。  それから仲裁裁判所方式は、仲裁裁判所が労使の争議に裁定を下し、裁定に含まれる最低賃金条項を裁判所の宣言により、同種産業の一般労働者に適用せしめるものというような方式でございます。この例といたしましてはニュージーランド、オーストラリア等がこの方式を採用しております。  次に、法定最低賃金方式は、直接成文法の中に最低賃金率を規定するものでございまして、これはアメリカ、フィリピン等にその例がございます。ただし、アメリカの連邦公正労働基準法はこの方式をとっておりますが、いわゆる州際産業でない州内企業につきましては、各州によりまして各州が規制しておるのであります。この各州の規制方式は、賃金委員会方式をとつておるものが大多数であるように考えられる。州によりましては最低賃金法を設けておらない州もあるわけでございます。  次に、団体協約の一般的適用方式でございますが、これは国家関係機関が宣言によって特定労働協約の賃金条項を同種産業労働者に対して法的拘束力を持たせる拡張適用方式でございます。これは大陸諸国におきましてその例が多く見受けられるところであります。フランス、西ドイツ、スイス等がこの例でございます。  次に、決定基準でございますが、これはいろいろな基準を設けておりますが、同種産業の一般賃金率等を明文に設けておるものはフランス家内労働法があります。  次に、労働者の生活費を明文に設けておりますのはアメリカフランス、ブラジル、フィリピン、メキシコ、コロンビア等でございます。  産業の支払能力等の経済事情を基準としてきめると明文に掲げておりますのは、アメリカ、フィリピン、南アフリカ、コロンビア等が立法せられております。  その他の要素を考慮して定めるものにはアメリカフランス等の立法例が三つございます。  それから適用区分でございますが、全国全産業について定めるものはアメリカの連邦公正労働基準法、フィリピンの最低黄金法、フランス労働法典中の、これは団体拡張適用方式と併用しておりますが、全国最低保障賃金がこれに当るわけでございます。  次に、業種別、職業別、地域別に定めておるもの、これはいろいろな国で採用しておりますが、例といたしましては、イギリス、西ドイツ、インド、ブラジル、メキシコ等がこれに該当するわけでございます。  次に、横書きの方について御説明申し上げます。  これはアメリカイギリスフランス、フィリピン、スイス、インド等につきまして、その概要を記載したものでございます。  アメリカにつきましてまず御説明申し上げます。この表はまずその法律の名前と、制定、改正月日を一番左に記載しております。その次に概要、それから委員会等の権限、行政庁の権限、国会との関係、それから意見聴取、決定基準、周知方法、それから例といたしまして、最低賃金をきめているものにつきましては、その最低賃金額の例を一番右に記載しております。  アメリカの公正労働基準法は一九三八年に制定され、その後累次の改正を経まして一九五五年に改正をされております。最低賃金額は法律の中に規定されているわけでございます。法律によって現在は一時間一ドルという規定が設けられているわけでございます。これは先ほど申し上げましたように、州と州との間の精算取引がまたがるようないわゆる州際産業に適用があるわけであります。  次に、イギリス賃金審議会法でございますが、これは一九四五年に制定され、一九四八年に改正されておりますが、賃金審議会が作成した賃金規制案に基き、労働大臣賃金規制命令を公布するということになっております。賃金審議会は中立委員三名以内、当該産業労使代表については、そのつど大臣により同数が任命されるが、おのおの十五名以内とされております。次に、行政庁と賃金審議会との関係につきましては、これは諮問機関でございますが、賃金審議会の提出した賃金規制案につきまして、大臣がこれは実行しがたいと認めたときは、理由を付して再審議に付することができるという規定が設けられております。なお、そのほか慣行といたしましては、法律にはございませんが、再び同じ意見を提出して参りましたときには、これに従って措置をするような慣行になっていると承知しております。  次は、同じくイギリスの農業賃金法でございます。これは一九四八年に制定されまして、先の賃金審議会法が一般の産業に適用されるのに対しまして、農業につきましては、農業黄金法があります。これも同じような委員会組織になっておりますが、委員会の権限は決意機関ということになっているのが、一般の産業の場合と違うわけでございます。  次に、フランスでございますが、フランス労働法典の中に最低貸金の規定があるわけでございます。そしてその第一といたしましては、全国全職業最低保障賃金があるわけでございますが、これは団体協約最高委員会が理由を付して労働社会保障大臣に意見を提出する、労働社会保障大臣と経済事情を担当する大臣が、この委員会の意見と、一般経済事情を考慮して閣議に報告を提出し、閣議で全国の最低保障賃金を決定する。これは地域に分けて決定するわけでございます。  それからその次のページに参りまして、同じ労働法典の中に、団体協約による最低賃金の規定があるわけでございます。これは労働社会保障大臣が最も代表的な団体の一つの請求に基きまして、または職権により団体協約最高委員会に諮問し、団体協約最高委員会が理由を付した意見を出しますと、これを得た上で、労働社会保障大臣が労使に対する拡張適用命令を決定して拡張適用を行う、こういう考え方であるわけでございます。  同じく家内労働につきましては、同じく労働法典の中にありますが、県知事または労働社会保障大臣が県委員会または全国委員会の意見を聞いた後、作業所要時間及び時間賃金率を定めるということになっております。  それから次はフィリピンでございますが、フィリピンは、アメリカの公正労働基準法にならいまして、一九五一年に最低賃金法が制定されてあります。ただし、これにつきましては五人以上の労働者を雇用する非農業及び十二ヘクタール以上の農企業に従事する労働者の最低賃金を決定しているのでありまして、それ以外のものには適用除外があるわけでございますが、これにつきましてはやはり法律で最低賃金額を規定しております。マニラ周辺とそれ以外に分けて規定しているわけでございます。  次に、スイスでございますが、これは先ほど御説明申し上げましたように、大陸系諸国に属しまするので、団体協約の拡張適用方式をとっておりますが、法制といたしましては一九四三年に制定いたしました団体協約の適用範囲の拡張を承認する連邦法というのがございます。これは全協約当事者の申請により州の指定する当局または連邦参事会が利害関係者、並びに州の意見、並びに中立専門家の意見を聴取した後、団体協約の拡張を決定するということになっております。  それから一九四〇年に、家内労働につきまして家内労働法を制定しておりますが、これは連邦参事会は職業委員会及び関係各州の意見を聴取した後、最低工賃を決定する。それから家内労働につきましても同じく団体協約の拘束力宣言によって拡張適用を行うというような規定があるわけでございます。  最後に、インドでございますが、これは一九四八年に制定されました最低賃金法がございます。これによりますると、最低賃金率を初めて決定する場合は、中央政府あるいは州政府が委員会を任命し、最低賃金事について勧告させ、その勧告を審議した後、または政府が原案を作成した後、官報に掲載し、関係者に申し立てを提出させる。これを審議した後、最低賃金率を決定することになっております。最低賃金率改正の場合は、同じく中央政府または州政府が諮問委員会を任命し、最低賃金率の改正について勧告すると、その勧告を検討して改正の決定をすると、大体こういう仕組みになっておるわけでございます。
  75. 小柳勇

    小柳勇君 今たくさんの国の最低賃金法説明ありましたが、この中でこの産業構造なりあるいは労働者実態なりで、日本と似通っている点、特にこの日本の今提案されておりまする最低賃金法を作られるに当って、どういうところを一番重く参考にされたか、お聞きしておきたいと思います。
  76. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) この点につきましては、中央賃金審議会においてこのような資料をお配り申し上げまして、そうしてこれ等を参考にして御検討を願ったのでありますが、各国の例を見てみますると、このここに掲げました例を見てもおわかりになりまするように、一つの賃金決定方式をとるよりは、幾つかの決定方式をからみ合せて実行しておるというような法制が多く見受けられるのでございます。そこでわが国におきましては、結局いろいろな方式を組み合せてすることが、わが国中小企業実態、経済の実態に照らしまして、適当ではないかと考えられる結果、結局柱を四本立にして、業者閥協定に基く最低賃金、業者間協定に基く地域的最低貸金労働協約に基く地域的最低賃金、それから最後に賃金審議会の意見を尊重して労働大臣が職権で決定する方式と、この四つをからみ合せて決定することが妥当であろうと、こういう御意見が出て参りましたので、これに基きまして本法案を作成した次第でございます。
  77. 小柳勇

    小柳勇君 今のその中央賃金審議会の答申については、あとでまた論議いたしますが、ただいまのこの外国の最賃法の説明を受けた中では、業者間協定を主とした最賃法というのは見受けないように思いますが、ほかにどこか日本のようなところがございますか。
  78. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 業者間協定方式に似た例といたしましては、アメリカの公正労働基準法のもとになりました全国産業復興法の中で、労働大臣が業者間のコードを作成さして、これを認可することによって、この業者間コードの中にある最低賃金条項が最低賃金になるということを始めましたわけでございます。これがもとになりまして漸次進展いたしまして、アメリカの現在の連邦法ができておるわけでございます。なお、これはこの最低賃金法案におきまする業者間協定方式と申しますのは、名前はそのようになっておりますが、結局におきましては業者の申請に基きまして、労・使・中立三者構成賃金審議会が審議をいたしまして、その意見を尊重して、労働大臣が最終的に決定するということになっておりまするので、貸金委員会方式の中に入れて差しつかえないものではないかと、このように考えております。
  79. 小柳勇

    小柳勇君 今のその案に似たような法案ですら、三者構成委員会で決定するようになっておりまするが、今、政府から提案されている業者間協定の第一に問題とする点は、業者が同種産業の、同じ地域の業者が最低賃金を決定するというところでありますが、今の例に言われたアメリカのその委員会の性格と、業者間協定できめようとする性格にはどのような似た点があるのですか。
  80. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) アメリカの業者間協定の例として申し上げました先ほどの事例は、これは最低賃金審議会というような三者構成の審議会の諮問意見は経ないわけでございます。要するに、業者間協定を結びまして、これを大統領が認可する、こういう形になっております。従って、これはやはりあくまで業者間協定のなまのものがそのまま出てくる、こういう形になるわけでございます。現在提出しております最低賃金法案はそうではなくて、それを三者構成賃金審議会において十分御審議を願い、それでその御意見に対して労働大臣が最低賃金を決定する、このような方式をとっているわけでございまして、この賃金審議会の場において労働者、使用者、中立の意見が反映され、十分検討が戦わされるということを期待しているわけでございます。
  81. 小柳勇

    小柳勇君 次の問題は、この各国の法律の中で一番問題としなくちゃならぬ点は、労働者並びに使用者の意見を対等に聞いてきめているという点でございますが、この日本の今回提案される法律では、その点が非常にないがしろにされている、こういうふうに感ずるのですが、その点いかがですか。
  82. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 業者間協定に基く最低黄金も、労・使・中立三者同数構成賃金審議会において御検討願いまして、そうしてその結果出て参りました意見を尊重いたしまして、労働大臣が決定する、このような仕組みになっているわけでございます。この賃金審議会において、労働者及び使用者の意見を反映させていただくという考えでおります。なお、さらに、必要があります場合には、賃金審議会に専門部会を設ける規定もございます。この専門部会におきましては、さらにそれより下の段階のなまの企業関係者、それから企業従業員、あるいはそのほかの利害関係者等もお集まり願いまして、専門部会において、まず専門的な十分の検討をした上で、賃金審議会の総会に出し、賃金審議会がそれによって意見を提出する、このようなことになっております。  まあ以上のように、業者間協定の場合におきましても、賃金審議会の意見を十分尊重する、こういうことになっておりまするし、それからそのほかに、労働協約に基く最低賃金、最後に職権決定に基く最低賃金の議決がございまするので、これら四つの方式をからみ合せて実施していくことが、現段階では適当な方策ではないかと、考えているわけでございます。
  83. 小柳勇

    小柳勇君 そうしますと、第九条から第十条、第十一条などの賃金決定の順序というものは、逆にしてもよろしいということになると思うが、いかがですか。
  84. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 九条、十条、十一条は、全部同じ考え方でできているわけでございます。ただこの場合におきまして、九条は業者間協定に基く最低賃金、それから十条はそのいわば拡張適用的な最低賃金、それから十一条は労働協約に基く、やはり拡張適用的な最低賃金、こういうことになっておりまするので、順序はこの順序になっておりまするが、その間のウエートと申しまするか、それは全然同じ考え方でおるわけでございます。
  85. 小柳勇

    小柳勇君 各論について後日また討論いたしますから、先の問題に返りまして、国際労働事情に入っていきまするが、最低賃金など賃金を決定するということは、各国とも労使対等の発言力をもってきめるという原則については御異議ございませんか。
  86. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 各国でもそのような原則で、そのような考え方で実施しておりまするし、そのような考え方で最低賃金法が運営されることが望ましいと考えております。
  87. 小柳勇

    小柳勇君 そのような考え方は、政府提案の今回の最低賃金にも一貫しておりますか。
  88. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) そのような考え方を十分取り入れて策定したものと考えております。
  89. 小柳勇

    小柳勇君 十分取り入れてということでは、この文章の中には、ずっと読んでみますと、一貫した表現の中ではそのようにとれないのですが、それがあなた方が考えているように、労使対等の立場で賃金を決定するという原則、労使対等の立場で最低賃金をきめるという原則が貫かれておるとするならば、この表われた文字の修正なり変更、そういうものについては政府としても考えるという余地がございますか。
  90. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 政府といたしましては、この法案を策定するに当りまして、約半年の長きにわたりまして労・使・中立三者から構成される中央賃金審議会におきまして、わが国の実情に適した最低賃金制はいかにあるべきかという点について御討議を願ったわけでございます。この中央賃金審議会において非常に御熱心な御議論が展開されましたが、半年の後に、御承知のような中央賃金審議会の答申が労働大臣提出されたわけでございます。労働省といたしましては、これをそのまま尊重いたしまして本法業を作成したわけでございまするので、政府といたしましては、この中央賃金審議会において十分御検討を願った上で、労働大臣提出された最低賃金に関する中央賃金審議会の答申を尊重してこの法案を決定したわけでございまして、この法案が中央賃金審議会の御意見に最も合致する法案である、内容である。将来の問題といたしましては、いろいろ理想論といたしましてもいろいろな問題が出てくると思いまするが、わが国の現段階にお章ましては、以上のような過程を経まして提出された答申の線に沿って作成いたしましたこの法案をまず実施するということが、現実の現段階におきましては適当な措置ではないか、このように考えておる次第でございます。
  91. 小柳勇

    小柳勇君 適当な法案であるかどうかについては、後日討論いたしますが、中央賃金審議会の精神というものも、諸外国における労働者賃金決定は労使対等の立場で決定するという立場に貫かれておるということについては確認してよろしゅうございますか。
  92. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 中央賃金審議会におきましては、そのような各国の事情も十分御検討になりました。これと日本の経済の実情をからみ合わせまして、両者を並行して検討された上あのような答申を出されたわけでございます。もとよりそのような配慮は答申の中にも入っておると私は考えております。
  93. 小柳勇

    小柳勇君 この国際労働関係で、各国労働最低賃金法が制定されておるところの国の賃金格差というものは少いということが午前中わかりました。私どもとしては、私どものいろいろの調べによりますると、最低賃金法を制定しておるところの国は、零細企業中小企業もあるいは大企業の間においても、賃金格差というものは非常に少くて、また、全体的な、国全体の男女間あるいは地域的な賃金格差というものは非常に少いと理解いたしておりまするが、その点についてはそう確認してよろしゅうございますか。
  94. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) ただいま御提出いたしました中で、たとえばアメリカイギリスフランスというようなところにつきましては、確かにお話のような賃金格差も少いという点が見受けられます。それからドイツでも同様でございますが、これは賃金格差が非常に少いという点が、最低賃金制の早期の実施を可能ならしめたという点もございましょうし、また、逆に最低賃金制が賃金格差の縮小に役立ったと、こういう二つの——まあどちらが卵か鶏かという議論はしばらくおきまして、両面の作用があったとわれわれは考えております。その他、現在最低賃金制を実施しております各国は大体四十数カ国あるわけでございますが、それらの国、他のいろいろな国の実情につきましては、これは残念ながらわれわれのところへその賃金事情までの資料は集まっておりませんので、その点についてどうかということまでは申し上げられませんが、たとえばアメリカイギリスフランス、西独というようなところにおきましては、ただいま申し上げましたように、最低賃金制の早期実施と、それから同時に、賃金格差の開きが少いという点がからみ合っておるということは、お説の通りであろうと私は考えます。
  95. 阿具根登

    ○阿具根登君 関連。前の問題ですが、中央賃金審議会の諮問に完全に沿っておると言われますが、中央賃金審議会は満場一致でこれはきめて答申したものですかどうですか、お尋ねいたします。
  96. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 中央賃金審議会は約半年の長きにわたりまして、いろいろ御検討を願ったわけでございます、その間におきまして、一時は労働者、使用者側の意見が全然対立するというような過程もございましたが、最後の段階に至りまして、現実的な最低賃金制をすみやかに実施するためには、もう少し両者腹を割って話し合う必要があるのではないかという考えに基きまして、賃金委員会を中央賃金審議会の中に設けまして、この小委員会でもいろいろ熱心な御議論が述べられたわけでございます。そうしてその結果、中央賃金審議会におきましては、ここにありますような答申を労働大臣提出することにつきまして意見が一致したわけでございます。この点は全員の一致があったわけでございます。ただし、その内容につきましては、実は労働者側の意見の中には、この答申の内容そのものに全く賛成であるという立場の方もおられましたし、一部の委員の中には、内容には賛成できない点があるという御意見もございました。しかし、全員ともこの答申を労働大臣提出するということについては、満場一致で異議なくこの答申が提出されたものでございます。
  97. 阿具根登

    ○阿具根登君 そういたしますと、答申には賛成であるけれども——労働大臣に対して中央賃金審議会として答申することには賛成であるけれども、中身には反対であるというのがある、こういうわけですね。
  98. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 労働者側の一部の委員にはそのような御意見があったわけであります。
  99. 阿具根登

    ○阿具根登君 一部の委員というのはどういうことで使い分けになっておられるか。
  100. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 具体的に申し上げますと、この最低賃金制に関する答申を最終の総会で検討されましたときに、同委員からは、ただいま申し上げましたような、内容には賛成できない、しかし、答申を出すことには異議はない、こういう御意見があったわけでございます。反対に全労系の委員の方々は、この答申の内容にも賛成である、答申を出すことにももちろん賛成である、こういう御意見であったわけでございます。
  101. 阿具根登

    ○阿具根登君 その中央賃金審議会の内容の詳細は私どもにはわかりませんけれども、現実に起つておる問題として見る場合に、ただいま全労系と言われましたけれども、全労糸にしても、この最低賃金法案に反対であって修正の意見を強く打ち出しておられるということは、これは御承知の通りでございます。そういたしますと、答申は労働者側は全員賛成したけれども、この法案に対してはこれは全員反対だということになるわけですね。現在出されておるものは、総評系にしたところで、中立系にしたところで、全労系にしたところで、およそ労働者を代表する組合というものは、全部、これを、あなたがおっしゃるように、これを内容を認めておると、そうじゃなくて、非常な強い修正の意見なり反対の意見なりがあるということは、労働者の意見がそっくりこれに入っておらないということは、お認めになりますね。
  102. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 中央賃金審議会の過程は、先ほど御答弁申し上げた通りでございまして、この中央賃金審議会の意見に基いて、これをそのまま尊重して政府の法案を作成したわけでございます。その後のいろいろな情勢につきましては、阿具根先生も御承知のような情勢でございます。しかし、私どもは、政府案に反対と、絶対反対ということではなくて、修正すべきであると、こういう御意見であるとわれわれは拝承をしております。
  103. 阿具根登

    ○阿具根登君 そういう意味合いも含めて大臣に答申されたものだと、その答申の含みとしては、国会で十分審議してもらって最良の線に直してもらいたいというのが、賛成された側の意見もそういうふうに集約できると、私はかように思いますが、どうです。
  104. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) そのような御意見を当時持っておられたかどうか、これはそのような御発言は別にございませんでしたので、私ども、それはそのような意見が内心おありであったかどうかという点については、承知しておりません。あるいはそうであったかもしれませんし、そうでなかったかもしれませんが、そういうような御意見は、そのときは出ておりませんでしたので、私ども、それについてはちょっとお答え申しかねます。
  105. 阿具根登

    ○阿具根登君 委員会の答申としては、おっしゃる通りだと思うんです。しかし、現実の問題といたしましては、およそ組織されておる労働組合がこれに対して非常な不満があるということだけは、これはいろいろな手を通じて皆さんのところにも陳情をしてきていると思いますが、それはお認めになりますね。
  106. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) われわれの手元にも、労働者労働組合各界からいろいろな陳情なり要請なりが参っております。しかし、その中には、こういうような原則には絶対反対だというようなお考えの方もございまするし、修正してとにかくこの国会で必ず成立さしてくれと、こういう御意見の方もあるようにわれわれは拝承しております。しかし、いずれにしましても、そのあとの方の御意見も、修正して成立さしてくれ、こういう御意見であると拝承しております。
  107. 阿具根登

    ○阿具根登君 わかりました。
  108. 小柳勇

    小柳勇君 あと二つだけ、この国際的な問題について質問いたします。第一は、労働団体がどのようにこの最賃法について協力してきたかという点について、できるだけ詳しく御説明願っておきたい。
  109. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) この各国の法制におきましては、この最低質金法制を制定するに当りまして、労働組合を含む各界の代表者の意見をいろいろ聴取されて実施されているわけでございます。それからこの賃金委員会等があります国におきましては、賃金委員会の中に労働組合の代表者がお入りになっておりまして、これらの御意見がその場を通じて、十分運営に反映されているとわれわれは承知しております。
  110. 小柳勇

    小柳勇君 インドの、今第二次五カ年計画に入っておりますけれども、初めに作りました最低賃金法賃金統制のために、組合が、初め賛成していた労働組合も、第二次五カ年計画に入りますと、最低賃金法について反対の意思を表明して、今日に及んでおりまするが、このインドの最賃法の情勢について、少し政府側の、あなたが今お考えの点をお聞きしておきたいと思います。
  111. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) インドの実情につきましては、ここに要点を記入してありますような法制が実施されているという点を承知しておりますが、そのほかのこまかな法制外の事情につきましては、われわれまだ調査いたしておりません。
  112. 小柳勇

    小柳勇君 外国の最低賃金法労働者の問題については、質問以上で打ち切りまして、第二の問題は、ILOの条約と勧告との問題、それと今回政府が考えられた最低賃金法との関連について質問いたします。  第一点は、ILOの二十六号の条約並びに三十号の勧告で、これをたとえば批准するとすれば、この提案された今回の政府の最賃法で大丈夫であろうという見解を衆議院で述べておられるが、その点についていま一度確かめておきたいと思う。
  113. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) ILOの二十六号条約につきましては、現在提案しております政府の最低賃金法案が、その趣旨を満たしていると、このように考えます。従いまして、この法案が成立いたしました暁には、なるべくすみやかに二十六号条約の批准の手続をいたしたいと、このように考えている次第でございます。
  114. 小柳勇

    小柳勇君 一九二八年最低賃金決定制度勧告の第二に、最低賃金決定制度は、そのとれる形式のいかんを問わず、影響を受くる利害関係者、すなわち使用者及び労働者と協議してこれを運用すべく、いかなる場合においても最低賃金率の決定に関する一切の事項については、使用者及び労働者の意見を求め、かつその意見に対しては十分にして均等なる考慮を払うべしと書いてあります。この勧告と提案された政府の法案というものが抵触しないかどうか。
  115. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 二十六号条約につきましては、この法案がその要件を満たしていると考えます。勧告につきましても、二十六号条約及び三十号の勧告等の趣旨は、十分尊重してこの法案を作成いたしたものでございます。ただし、三十号の勧告と申しますのは、これは条約ではございません、勧告でございます。従いまして、なぜこれが勧告になったかと申しますると、これを条約として規定するのでは、各国がやはりそのままでは批准できないような面が多分にある。しかし、できるだけこのような内容を、その国の事情の許す限り取り入れていく方向で努力するのが望ましいという形が、この条約でなしに、三十号の勧告の形になって表われてきたところであると思います。三十号の勧告の内容につきましても、この法案の運用につきましては、なるべくその趣旨を生かしまして、尊重して実施するように考えたいと思っております。細目につきましては、三十号の勧告につきましては、政府の法案も必ずしも細目まで一致しているわけではございません。二十六号の条約については一致しております。従いまして、この法案が成立いたしました暁には、二十六号条約の批准をなるべく早くいたしたい、こういう考え方でございます。
  116. 小柳勇

    小柳勇君 その二十六号条約を批准するとすれば、この法律で大体大丈夫だろうということについて、ILOに照会されたようなことはございますか。
  117. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) この点につきましては、政府部内におきまして十分検討をいたしました。また、中央賃金審議会において御審議を願う際におきましても、二十六号条約をこの最低賃金法が実施された暁には批准できるということが必要であると、こういう配慮の上に立ってこの答申が出されたものでございます。その点を中央賃金審議会で十分御検討になっておるわけでございます。従いまして、われわれはその答申をそのまま生かしまして作成しました本法案は、二十六号条約の線に合致しておると、こういうふうに考えております。
  118. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと関連して。二十六号条約の三条の(1)にいうところの概念と、今あなたのおっしゃった説明と、どういう工合に理解するのですか。
  119. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 最低賃金審議会を中央、地方に設けまして、そうしてこの賃金審議会において労・使・中立三者同数の構成をもって十分御検討を願う、こういうことになっておりまするので、この三条の要件は満たされる。しかも業者間協定に基く最低賃金のみならず、労働協約に基く地域的最低賃金、職権決定に基く最低賃金も併用されておるところでございまするので、三条の内容は本法案に合致すると、このように考えます。
  120. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その四つの法案の、これはどうせあとで審議することになりますけれども、(1)は省略しましょう、長いですから。(2)は「関係ある使用者及労働者は、当該国の法令又は規則に依り定めらるべき方法及範囲に於て、尚如何なる場合に於ても同一の員数に依り且同等の条件に於て、該制度の運用に之を参与せしむべし。」ということは、労使対等の賃金をきめるという建前をこの(2)項で貫いている。それとあなたの四つの方式というものの出発点のおもなるもの、たとえば労組法の十八条、これはいろいろ説明がありましたけれども、基準法の二十八条でも必要ある場合できるというのは、その必要ある場合と認めなかったからやらなかっただけであって、それはわれわれにはなかなか理解できないのだけれども、そういう法律の上に今度のやつは、その業者間の申請、業者間の拡大云々と、その賃金を審議する条件の母体になる賃金そのものの格好が業者間だけできめてきたことになれば、いかなる条件においても、いかなる場合においても、労使が対等で賃金決定制度に参加するという形のものと大よそ遠いじゃないですか。
  121. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 中央、地方の最低賃金審議会において、三者同数の委員から構成されるこの審議会において検討を願って、それに基いて労働大臣が決定するということでありまして、業者間協定がそのまま最低賃金になるわけではありません。三者同数構成賃金審議会において十分御審議を願う、この場においてこの原則は生かされておると考えます。
  122. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その審議会そのものはそうでしょう、三者構成でおやりになるという。しかし、審議会自身が審議する前提として表われてくるのは業者間協定じゃないですか、いかなる場合にも労使が対等の立場において、いかなる場合においても同じ条件において参加するというこの条約なんでしょう、これは。
  123. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 各国の事例について見ますると、この運用につきましては、賃金委員会あるいは賃金審議会というものを設けまして、そこに三者が同数参加して、この審議会において十分審議し、あるいはこの審議会が決定機関になる場合もありましょうし、それから審議機関の場合もございます。いろいろな例もありまするが、要するに、この場において同数の員数、同等の条件で審議されるということでこの条約を批准している国が非常に多いわけでございまして、そのほかにわが国の現在提出しております最低賃金法案によりますれば、業者間協定が申請の初めになる場合もありますし、労働協約が申請の初めになる場合もありましょうが、要するに、三者同数構成賃金審議会において十分審議することになっておるわけでございまするから、この賃金審議会の場において同数同等の条件で検討を願う、それを尊重して政府がきめるということになるわけでございまするから、三条の趣旨に合致しておると、このように考えます。
  124. 阿具根登

    ○阿具根登君 ちょっと……。その前の問題ですね。きのうの問題をもう蒸し返しませんけれども、その三者構成の審議会で審議するとおっしゃられたけれども、その前の条件があるわけなんですよ。それは生活費と、それから他産業との比較、支払い能力、こういうものが入っておるわけなんですよ。そうすると、これは矛盾している。しかも業者間で出される場合には業者だけでやるから支払い能力に一番ウエートがかかってくるじゃないか。形はあなた方は審議会があるから労働者の意見もそこで入るじゃないかと言っておられるけれども、その前提になっているものが入らないようになっているじゃありませんかと、こういうことが問題になるわけなんですね。
  125. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) これは昨日も御答弁申し上げておりまするように、生計費、それから類似の労働者賃金、それから通常の事業の賃金支払い能力と、この三つがやはり同じウエートにおいて最低賃金決定の際に勘案されなければならない基準として設けられておるわけでございます。そこで、通常の事業の賃金支払い能力というものも勘案されるわけでございます。これは昨日も御答弁申し上げましたように、別に個々別々の企業が、自分のところでは最低賃金をこれじゃ支払えないというような言いわけを許す趣旨ではありません。事業が正常なる運営をなしておる場合に期待される賃金支払い能力のことでございます。そうしてこの三三つの原則を基準にいたしまして最低賃金を決定する、このような条件を設けたわけでございまして、各国の事例を見てみましても、この三つの基準を設けている国は相多当いわけであります。また、最低貸金論の最低賃金に関しまする国際的な通説といわれておりますリチャードソンの最低賃金論を見ましても、三つの基準を最低賃金の決定基準としてあげておるところでござ、いまして、通常の事業の賃金支払い能力という点を勘案することは、これは国際的にも認められておるところであると考えます。
  126. 阿具根登

    ○阿具根登君 ちょっとその点違うと私は思うのですがね。もちろんそれは三十年も四十年もこの三つの柱で論争されたことは事実です。この三つの問題が論争されたことは事実であるけれども、その終局においては、この法律は労働者保護であるのか何であるのかという点になって参りまして、これは労働者保護の立法である、いわゆる通常の場合の賃金支払い能力と、それから生計費というのはあくまで平行線である。必ずこれは相いれないところがある。その審議の結果、この法律案は、これは労働者保護立法であるから、生活費がもちろんこれはウエートを占めなければならないということが出されておるわけなんですよ。それを御承知ならリチャードソンのそれをそういうふうに解釈されるのはおかしいと私は思うのですがれ。違いますか。
  127. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 最低賃金法案の第一義的な目的は、低賃金労働者の保護にあることはお説の通りでありまして、われわれもそれについては全然同じ意見でございます。ただ、これを実施していく場合の方法でございまするが、わが国のように、中小企業が非常に多いと、しかもこれに非常に低い賃金労働者が多数に分布しておる、しかもその原因と考えられまするものは、これはまあいろいろな御議論もございましょうが、何と申しましても付加価値と申しまするか、あるいは生産力の差というようなものが一つの大きな原因になっておるわけでございます。そこで、そのような実情にあるわが国におきまして——もとよりこれは最低賃金の額を高いところに定め、これをだんだんと向上さしていく、この方向についてはわれわれも全然同意見でございまするが、最初の出発点から通常の事業の支払い能力をこえるというようなところに最低賃金をきめて、そのため中小企業が多数破産して失業者を出すというようなことになりましては、これはやはり佃をためて牛を殺すような弊害も出てくると思うのであります。漸進的に理想に向って前進していくと、こういうことが必要であろうかと思うわけでございます。その意味におきまして、この三つの基準というものはやはり考慮して、これらの三つの条件を勘案して、三者の意見を十分そこで戦わせていただいて、おのずから妥当なところに額を求めていくということが適当なやり方ではないかと考えるわけであります。
  128. 阿具根登

    ○阿具根登君 それが違うところでございまして、それは日本よりも後進国のところでもこの最低賃金をきめる場合に、あなたが説明になりましたように、業者間協定というのは、賃金格差の少い、それもいろいろある一部に、アメリカにこれに似たようなものがある。それも全部の問題じゃありません。アメリカの一部の問題をとらえておるわけですよ。そこだけしかないようなものを、なぜ日本がそういうことを非常に強く書わなければならないか。どこの国が業者間協定というのを認めておるかですね。どこが認めておるか。いろいろ小柳君の質問に対しては、アメリカの一部がこうでありますと言いますけれども、アメリカはそれだけじゃないのですよ。そうすると、フランスにしたところで、イギリスにしたところで、ドイツにしたところで、どこがそういうことを認めておるか。しかし、やはり保護立法であるから、あるいはそういう場合もあるかもしれない。極端な場所ではこれは非常に賃金支払い能力に欠けるところがあるかもしれない。しかし、それをウエートに持っていくならば、これは最低賃金法という精神は、これで踏みにじられてしまう。いわゆる安い賃金で、失業者は、日本のように多いところはそれに食いつくのはわかっております。だから、そういうことのないように、生活を保護するために、労働力の再生産力を培養するためにこういうものを作るわけなのですよ。それに業者間協定というものをうたうならば、しかも、その前提が支払い能力というのであるならば、賃金審議会に上ってくる場合には、業者の気持が入ってこない、こういうことになるのじゃないか。だから、これは労働者の意見が入ってこないじゃないか、こういうことになるわけですね、考え方そのものが。あなた方にそれをいえば、これはつぶれるじゃないか、つぶれるものに対しては何ら措置を考えずにただほうりっぱなしで、こういうことをすればつぶれるのだ、こういう意見であるのか。それじゃそのアメリカのその問題を抜かした、別の諸外国の三十数カ国というものが最低賃金というものを認めておるのだから、最低賃金を認めた場合につぶれたのか、つぶれなかったのか、つぶれた場合には政府はどういう手を打ったのか、それでなかったらつぶれるはずです、あなたの意見からいくならば。なぜつぶれなかったのか、そういう点、一つ詳細に御説明を願いたいと思います。
  129. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 業者間協定そのものをそのまま審査もしないで、最低賃金として告示するというようなことではお説の通りであろうと思うわけでございます。そこで、この法案におきましては、同数の労働者を含む賃金審議会において十分御検討を願って、そこで御審査を願い、その御意見を尊重して労働大臣が最低賃金を決定する。こういう仕組みになっておるわけでございますから、私は個々の企業者が自分のところは払えないのだというような気ままな使用者がありといたしますれば、そういうような不適当なものは、当然賃金審議会において、それは適当でないと、こういうことになると思うのでございます。賃金審議会において、十分労働者側の意見は反映されると思います。
  130. 阿具根登

    ○阿具根登君 今の答弁は納得できぬのです。あなたは、日本の問題だけ言われたのですよ。諸外国であなたの言われるようなILOのそういう精神であるならば、アメリカの一部を抜かした以外に、全部業者間協定なんかないですよ。そうすると、あなたは、私らが言うのに対しては、企業がつぶれるだろう、こういうことを言っておられるわけですよ。そんならほかの三十数カ国は、企業がつぶれたところがあるでしょう。それを教えて下さいというのです。つぶれてないとするならば、政府はどういう措置をとっておられるか、それを二つ御答弁願いたい。こういうことを言っているのですから、その答弁をしてもらわぬと困る。
  131. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) アメリカにおきましても、先ほど御説明申し上げましたように、全国産業復興法におきまして、業者にコードを作らせてこれを大統領が認可する、こういう形で最低賃金を発足させたわけでございます。それがいろいろな変遷を経まして、現在のところまで進歩しておるわけでございます。現在のところは、公正労働基準法で一時間一ドルというような、いわば各国の中では最も進んだような制度になっておる。わが国の場合におきまして、最低賃金制がまだ今まで全然実績がない、このようなわが国の実情におきまして、最低賃金を発足させて、これを漸進的に拡大していくということにつきましては、これはいろいろな御意見があろうと思いまするが、われわれは、やはり中央賃金審議会が御答申になりましたように、業者間協定を一つの柱として織り込み、それに労働協約に基く最低賃金、職権決定に基くところの最低賃金をからみ合せて実施していくというこの方式が妥当であると私は考えるわけであります。
  132. 阿具根登

    ○阿具根登君 あなたか妥当と考えられるのを、それをわれわれがどうと言っているわけじゃないのですよ。それで、この関連質問の冒頭から申し上げておりますように、この三本の柱というもので論議されたのはもう三十年、四十年昔のことである。しかし、そのときに至ってさえもこれは労働保護立法であるということで、業者間協定というものはほとんどの国はしてないのだと、日本だけそれをやればつぶれるのだと、こう言っておられるわけなんですよ。業者間協定でなかった場合には、支払い能力をこえた最低賃金ということがきめられるならば業者がつぶれるじゃないか、こういうことを言っておられるから、それじゃあとの三十数カ国のところはつぶれたところはあるでしょうか、業者間協定というのはないのだから、だから一つその点を教えて下さいと、アメリカのを聞こうと思っておりません。賃金格差の少くてあれだけ経済に恵まれて、一般国民の生活水準が上っているところの問題をわれわれは言っておらぬ。日本はもっと深刻だから私は言っているわけなんですよ。わが日本と同じような国がたくさんあるわけです。そこでは業者間協定がなくて最低賃金ができておる。それなら、そこでは業者がそのためにつぶれましたか、業者間協定がないからつぶれましたなら、どこがどういうふうにつぶれたのだと、また、つぶれなかったならばどういう施策をとったからつぶれておらないのだと、こういうことをお聞きしておるわけなんですよ。それで、それによって日本の状態も一つ判断をしていかねばならぬだろう、だから、三十数カ国の業者間協定を結んでおらないところの状態を教えていただきたい、こういうことです。
  133. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) これにつきましては、各国の実情につきましては、法制を調べて現在のような資料を作っているわけでございますが、それに伴ってどのような影響が生じたかというにつきましては、残念ながらその調査をまだいたしておりません。ただ、いろいろな各国によりまして影響の調査をした例がございます。これは実は三十五カ国と申し上げましたが、実は中小国におきましては、その法制を作ってそのあとがどうなっておるかというような報告も全然ないわけでございます。そこで、われわれは残念ながらその資料は手に入らない、アメリカにおきましては、公正労働基準法に基きます最低賃金額を改正いたしましたときにどのような影響が生じたかという点が、たとえばアメリカ労働省から発表しておるマンスリー・レーバー・レビューあたりにあるわけでございまするが、それを見てみますと、アメリカにおいては比較賃金格差が御承知のように少かったわけで、影響があまり大きくないはずでございますが、南部等の諸州におきましては、最低賃金率が改正になった際に、やはり犀川者が減った、こういうような報告は記載されております。
  134. 阿具根登

    ○阿具根登君 その資料がないからそういうことをおっしゃっておるので、アメリカのことは私は承知しておるからお聞きしなくてもよろしいと言ったわけなんです。その考え方が、これは労働保護立法であるから、それはむちゃはもちろんできませんけれども、それを作る場合に、業者間の支払い能力の一つが、これが三本柱の一つに入っておる、ところが、よそは入っておるにしろ、入っておらないにしろ、業者間協定というものはないのだ、その考え方というのはこれは保護立法であるから、あくまでも審議会に持ってくる場合にも、委員会に持ってくる場合にも、これは労使双方の意見が入って上ってきておるのだ、こう私は思っているわけなんですよ。そうすれば、支払い能力のないところはつぶれるから、だから支払い能力というものをうたって、しかもこれを最初答申するところは業者間であると、日本だけ特別なこういうことをやられておる。よそはもう何十年も前にそういうことをやっておらない。だから、私はよそのやったやつをどういう状態であったのか、そういう点をお聞きしたいのです。日本だって、こういう法律案を作るならば、やはり各国でなぜ業者間協定というのをよそは作らなかったのだろうか、フランスはどうだろうか、英国はどうだろうか、ドイツはどうだろうかと、必ずお調べになっておるものと思うのですよ。同じような国の機構の中で、——それは経済がよかったり悪かったりするところもあります。しかし、日本だけが悪いというわけでもない。そうするならば、そこは業者間協定でも入れておらない、日本はなぜ入れなければいかぬか、その点を私は非常に疑問を持つわけなんです。だから、それを一つ調査していただきたい。今それがなかったならば、おそらくこれだけ一年間かかって審議されたので、しかも業者に対しては非常に働きかけて八十も作っておられるのだから、資料を持っておられると思いますから、あとで御提出を願います。
  135. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) アメリカの事例につきましては、影響の調査の報告がございまするから、これは後ほど提出いたします。ほかの国の例につきましては、これは残念ながらその国からその影響調査をいたしたという事例がないのでございまするので、これはちょっとわれわれの方で短時日間で調査はできないわけでございます。
  136. 阿具根登

    ○阿具根登君 それは無理でしょう。私の言ったのが無理でしょう。アメリカだけをまねてやつておられるということに今はっきり言っておられたからですね。アメリカのやつだけを見て、参考にされてこういうのをお作りになったと。しかも、御承知のように、アメリカ賃金格差が非常に少くて、生活環境も非常にいいところである。日本賃金格差が非常に高くて、そして、仕事をしながらも生活ができないと、こういう環境にあるのに、アメリカで一部、業者間協定に似たようなものがあったから、それで作ったと、よその、三十数カ国の最低賃金調査になっておらないと、こういうことになれば、それは御無理でございます。そういうアメリカだけの問題を考えてお作りになりましたならば、それで私はまた考え方を新たにして御質問を後日やりたいと、かように思います。
  137. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今は、このILOの条約の問題に抵触するかしないかというところから出発して、それがどうも業者間協定らしきものがアメリカにあったと……。どこをさしているのかしらぬけれども、一九三三年の六月十六日発効した産業復興法の第三条の、公正競争規約をさしておられるのだろうと私は思うのです。それから四条には、協定及び特許という条項があります。これにあわせて、再雇用協定という大統領の指示が出ております。これはお読みになったと私は思うのですけれども、今おっしゃったような要素とは非常に異なっているということだけは認識してお答えを願わないと、私は非常に混乱をすると思うのです。賃金というもの、それから最低賃金の条件にアメリカが業者間協定をやったんだ、やったんだと言われても、産業復興法の再雇用協定と、それから一九四五年には完全雇用法というものをアメリカは出しております。その関係から見ても、これはなかなか今おっしゃったようなことでは私はないと思う。これは一つ私は、この論議はあとでしたいと思います。きょうはやめます。  労働省のお出しになった各国最低賃金法制の中の冒頭に四つの方式があって、本来労働者の生活水準と類似労働者の要するに賃金ベースとの関係、支払い能力はあったけれども、最近の最低賃金をきめるときには支払い能力というものは中心的な考慮の外だといって労働省の概念には結論をつけております、これも一つ御記憶願いたいと思うのです。  それから今のILOとの関係ですけれども、これは今までのやつはあとでまた意見をお聞かせ願いたいと思います。この今の最低賃金決定制度の創設に関する条約の二条の問題の中の御説明のときに、たとえばよその国は審議会が発議するとか、審議会に個々に申請があるとかして賃金を決定しておるから、そこで労使の意見が十分に取り入れられておるから、そういう概念で——いろいろさまざまであるけれども、条約を批准しておるとおっしゃいました。しかし、私は、よその国の四十九カ国の条約をつぶさにここで言えといえば、私もそこまでは勉強いたしておりませんから言えませんけれども、たとえばイギリスの例をとってみたところで、問題が明らかになったら上の組織から下の労働者を加えて、そこで労働者賃金はどうあるべきかという形で審議会が発足する、こういう形であるわけであって、その前提条件に一つの固定したものを、三者構成とかをそういうところに持ち込むというようなところはおそらく私はないと思うのです。先ほどから聞いておると、中央最低賃金審議会、地方最低賃金審議会というものは三者構成だとおっしゃいますから、それはその通りでございましょう。その通りで、そこであらゆるものがきめられるというなら、前提を法文に書く必要は何もないのじゃないですか。そこだけ主張して二十六号の三条の二項に合致するのだ、するのだとおっしゃるなら、業者間の協定の申請、これの拡大云々というようなことは法文にお響きになる必要はないじゃないですか、私はそう思うのです。それを書いておる以上は、そこに目的があってお書きになっておるから、ILOの関連についてはそこを直さない限り、この二十六号批准ということは無理じゃありませんかということを言っておるのです。これは批准との関係を言っておるわけであって、意見はあります——意見はありますけれども、批准の関係だけを見ても無理じゃありませんかと言っておるのです。
  138. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 業者間協定に基く最低賃金を取り入れましたのにつきましては、これは中央賃金審議会で、わが国の実情では業者間協定に基く最低賃金を採用することが今の段階では適当である、こういう答申が労働大臣に対して出されましたので、それをそのまま取り入れてあるわけでございます。しかもアメリカの場合には、三者の委員会にかけるというようなことはありませんが、わが国では三者同数の審議会にかけてその御意見を尊重してきめる、こういう方式をとっておるわけでございます。労働省統計調査部で出しましたこの資料につきまして、産業の支払い能力が基準として採用されることは少いと書いてあるじゃないか、こういうふうなお尋ねでございますが、おそらくこれは十四ページのことを言っておられると思いますが、ここに書いてありますのは、「各国の法律においても、実際に産業の支払能力が唯一の基準として採用されることは少く、労働者の最低生活水準の保持、他に比べて不当に低い賃金の引上げなどと併用されているのが普通である。」こう述べておるところでありまして、産業の支払い能力だけを唯一の基準として採用しておることは少い、こう書いておるわけでございます。三つの基準を同時に掲げるというような事例は他国にもあることは御承知の通りであります。
  139. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だからその議論はあとにいたします。しかし、方向としては、各国の実情はそういう方向にあるということを、ここに書いておるということを覆ったので、これはまあきょうの問題にいたしませんけれども、問題は、あなたはさっき、条約でもいろいろ今私が申しあげたような問題がある。勧告ならなおさらはっきりしておる。ILOに再加盟するのには一生懸命になる。常任理事国——十大産業国の理事国になるときには一生懸命になる。しかし、その精神や実態をどういう工合につかんで理事国になるか。ことしは聞くところによると、理事会議長にまで立候補を日本がしておるということを聞いておるのだけれども、私はなかなかもってそういうところだけはえらいものだと思っている。この点は一つ世界の傾向に沿うようにしてもらわないと、ただ権利だけ主張しても、みんなの義務というものはたな上げするということでは、私は国際間のつき合いということはなかなかむずかしい、こう思うわけです。きょうは関連で今の問題だけで、だからきょうはやめておきます。
  140. 小柳勇

    小柳勇君 衆議院の速記録を見てみましても、今の発言を聞きましても、私どもは、政府案は業者間協定をおもにこう前面に出した最低賃金法だと言っている。このプリントにも書いてあるのです。「業者間における最低賃金協定の状況」、これは労働省から出たプリントに書いてある。このように、この政府の法案というものは、世間のほとんど一般の学者も、労働省自体が業者間における最低賃金だと言っている。ところが、局長の話を聞いておると、地方最低賃金審議会、あるいは中央最低賃金審議会ということが前面に出ております、全部網にかかるのですからということで。それだったら業者間協定と言われたって、地方賃金委員会方式、こういうふうに看板を書きかえて条文を整理しても差しつかえございませんか、そこを一つ説明していただきたい。
  141. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 業者間協定の状況報告というものをお出しいたしましたのは、最初御要求がございまして、業者間協定に関する資料を出してくれという御要求がございましたので、提出いたした次第であります。ですから、ただいまの、しからばそういうことであるならば、字句を訂正したらどうか、こういうような御意見でございますが、これにつきましては、やはり私どもといたしましては、中央賃金審議会の最低賃金制に関する答申、これをお読みいただきますればわかりますように、政府案と同じ文句を使って書いておるわけでございます。そこで、それによりまして、この法案の内容をきめたわけでございます。私どもは、中央賃金審議会の答申の線を尊重して、そのまま法案を作成するということが、中央審議会に諮問をして、半年間御苦労なさいまして、きわめて御熱心に御討議の上御答申があったわけでございますので、それに従いまして法案を作成して提出した次第であります。
  142. 小柳勇

    小柳勇君 何度言っても堂々めぐりをしておりますので、これは各論のところで再討論いたしますが、今私が主として問題にしておりますのは、ILOの二十六号条約に違反しませんでしたかと申しましたところが、いやもうこの政府の原案通りでもすぐ批准できるのだということでございますから、それはそれとして、私は意見としては、このような法律では労使対等で、労働者と使用者が対等で賃金をきめるというような原則にもとっておる、このような見解を持っております。  次に、私さっきインドの最賃法を発言いたしましたのは、一九五三年のアジア地域会議の賃金決議というものがございますが、これは東京で開催されておりますので、日本労働省としては特にこの主役を演じておりまするが、一九五三年九月二十四日、東京において次の決議を採択した。第四項に、「最低賃金または賃金一般の規定を目的とする立法手段による賃金の決定及び調整は、三者構成機関を通じてこれを取りきめるべきものであり、こうしてきめられた賃金は、必要に応じまた定期的に検討されなければならないしと、こう書いてあるのですね。このようなことで、アジアの中における日本の最低賃金決定の方式というものが、私どもが今法律を見るときにおいては、業春闘協定の言葉の通りに、業者間、地域における同種の業者がきめて、そうしてそれを申請すれば、中央賃金審議会も地方賃金審議会もおそらく変更できないのではないか、そのままこれが、あるいは当分という言葉を使うかもしれない、あるいはやむを得ずという言葉を使うかもしれない。そういうことで、それがその地域の、あるいはその種の産業労働者の最低賃金となっていき、今度次にまた、地域が違った場合には、若干違ったものがその地域の最低賃金となっていく、午前中の質問では、私が質問いたしましたのに、たとえば標準生計費というものについても、各地域においても、相当うんと、日本中において格差はありましょうとも、全国的に見たらそう大した違いはないだろう、そのようなものがわかっておりながら、なお、この業者間協定を、業者間協定というこの法案というものは、こういうようなアジアの決議、あるいはILOの勧告、そのようなものに相当の隔たりがあるのではないか、そう私どもは考えるわけです。その点について、もう一度局長並びに大臣の一つ見解も聞いておきたいと思う。
  143. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) アジア地域会議の決議を私手元に持っておりませんが、そういう事情を記憶しております。あの決議の趣旨はもとより尊重されなければならないと考えております。たしか原文でスルー・トライパタイト・マシーナリーという言葉が使ってあったと思いますが、三者構成の機関の審議を通じて決定されなければならない、このようなことになっておったと思います。私は、その意味で、この中央最低賃金審議会、それから地方最低賃金審議会、この三者同数の審議会の審議を生かして、そうしてこれを尊重して労働大臣が決定をいたすということによりまして、この趣旨に沿えるのではないかと考えます。なお、その運用につきましては、さらにこの決議の線、さらに条約のみならず、ILOの三十号勧告の趣旨の線についても十分尊重して、できるだけこれを生かすようにして運営されなければならないのではないか、このように考えておる次第でございます。
  144. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 政府委員の申し上げた通りであります。
  145. 小柳勇

    小柳勇君 次に、ILOの第三十号の勧告の中に、三条に「如何なる場合に於ても、関係ある労働者をして適当なる生活標準を維持することを得しむるの必要を考慮すべし。」と書いてあります。午前中の答弁の中で、生活保護というようなものを基準とは言われませんでしたけれども、そういうものを参考にするということを発言しておられる。私どもは生活保護基準というものはぎりぎりの生きる線であって、労働者が再生産する生活ではないと考える、その点についての、このILO勧告と、この法案の関係についてどう考えておられるか。
  146. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 私どももこの労働者の生活費と申しましても、生きるためのぎりぎりの基準と、たとえば生活保護法による保護基準並みということで決定されたのでは、生活保護法の場合はやはり職もなくて、あるいは多少何か仕事をしたにいたしましても、きわめて軽い程度の仕事を営む程度のものでありますから、それと異なった職種なり作業なりにつきまして、相当高度の作業、あるいは中程度の作業を営みます場合には、その労働者の再生産に要する費用という点がもとより加味されなければならないことは当然であろうと考えます。そのILOの三十号の勧告の趣旨につきましても、これは今後の運用の問題になるわけでございますが、十分に考えて審議会でも御検討をいただかなければなりませんし、それから労働大臣あるいは都道府県局長も決定の際に十分検討しなければならないところであると考えます。
  147. 小柳勇

    小柳勇君 生活費標準については資料提出を要求しておりますので、資料で再び論議いたしまするが、中央質金審議会並びに地方賃金審議会というものが一貫した生活費標準というものを持っておって、それによってこのようなあとの賃金決定をやっている四つの方法がございますけれども、その判定する場合の基準というものはみな同じである。業者間協定で出ましたのも、あるいはそれか労働協約で出てきたものも、あるいは最終的に最賃委員会できめるものも、その基準というものはみな同じである、そのように確認しておいてよろしゅうございますか。
  148. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 同じ地区の、同じ種類の、同じ態様の作業、職種に従事しておる労働者の最低賃金ということになりますれば、もとよりそれは同じ線で線が引かれるべきである、このように考えます。
  149. 小柳勇

    小柳勇君 この最低賃金法を論議する前提となる概論的なものを討論いたしまして、時間が参りましたから、各論的なものはまた後日に質疑することにいたします。
  150. 久保等

    委員長久保等君) 総務長官も見えましたので、本案に対する本日の質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  151. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  152. 久保等

    委員長久保等君) それでは次に、労働情勢に関する調査の一環として、駐留軍労務者の離職対策に関する件を議題といたします。御質疑を願います。
  153. 小柳勇

    小柳勇君 先ごろ来、駐留軍労務者の離職問題について質問をいたしておりますが、三月中にまた首切りが発生いたしておりますし、四月以降についても首切りが予定されているように承わっておりまするが、関係者の方から、その実情について報告をお願いいたします。
  154. 久保等

    委員長久保等君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  155. 久保等

    委員長久保等君) 速記を起して。
  156. 小柳勇

    小柳勇君 それでは労働大臣に質問をいたしますが、軍直用労務者を調達庁で保護するものか、労働省で保護するものかというこの区分が明らかでないわけです。そのようなことで、先日も総務長官にいろいろ質問しておきましたけれども、なお決定を聞いておりません。私どもとしては、当然労働省が一般的な労働者として保護していくものだと理解いたしておりまするが、労働省でそのような御論議がなされたのかどうか、お聞きをしておきたいと思います。
  157. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 軍の直用あるいは間接雇用を問わず、いずれも労働者に対する一般的な保護については労働省がなすべきであると、そういうふうに考えております。
  158. 小柳勇

    小柳勇君 離職する者が続出しておりまするが、離職対策については木部でいろいろ協議されておりまするが、たとえば職業訓練なりその他失業対策について、労働省として、あるいは労働大臣としてお考えがあれば、お聞かせを願いたいと思います。
  159. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 軍関係に働いておる者は、今申し上げましたように、直接たると間接たるとを問わず、その保護については私どもの方で一貫して受け持っておる、そういうわけであります。従って、今お話がありましたように、離職者対策等については、御承知のように、総理府の中に特別な委員会を設けまして特に力を入れておるわけでありますが、労働省はもちろんそのことについて離職者に対する職業訓練、それからまた、配置転換等については私どものの方も一生懸命で協力をいたす、こういうことでございます。
  160. 小柳勇

    小柳勇君 細部の問題はあとで担当官から聞きまするので、大臣には、最後に、駐留軍労務者からこのような切なる要求があるわけです。国民金融公庫、商工組合中央金庫に対する融資の額を増額して駐留軍労務者の離職対策として特別に考えてもらえないものだろうかという要請がございますので、経済閣僚として閣議などでそのような問題が出ました場合に、特別に一つ労働大臣からも、そのような労働者の保護の政策の一環として融資できるように御発言願いたいと思いまするが、いかがでございましょうか。
  161. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) このことも先ほど申し上げましたように、政府部内で連絡協議会を持っておりますので、できるだけそういうことについては、労働省の立場から協力いたしたいと、こう思っております。
  162. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣に一つ御質問申し上げておきますが、前大臣のときにですね、駐留軍の数万名の失業者が出るということがわかっているから、それに対する対策を御質問申し上げましたときに、たとえば米市が引き揚げたあとの施設、いわゆる国有の財産については、地方の特殊性により企業誘致その他がある場合には優先的にそれは払い下げをやる、そうして駐留軍の失業者がそういうところに就業できるようにと、こういうことが、言われておったのでございますが、その後、国有のそういう施設がどっかに譲渡されたことがあるかどうか、また、それによってどのくらの失業者が吸収されたか、それをお尋ねいたします。
  163. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のように、ずっと前は調速庁を労働大臣が担当いたしておりました。それからこの問題はやはり対外関係が非常に多いし、また、政府の各機関が総合的に検討する必要があるということで、内閣に先ほど申し上げました離職者対策の連絡協議会というものも設けまして、従って、総理府の方で総合的調整のそういう努力をいたしております。詳細なことは私はよく記憶いたしておりませんが、連絡協議会を担当いたしておる方で、それぞれの施設について非常な努力を継続いたしておる、こういうふうに承知しております。
  164. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣帰られるからくどく尋ねませんが、当時は軍が引き揚げたあとの施設というものは優先的に払い下げるのだ、譲渡するのだ、しかもそれに対して、その地方にマッチした企業を誘致していただく、こういうことで、しかもそれに対する雇用の人はこの駐留軍の失職をした人を優先的に考える、こういうことをはっきり言っておられたのでございますから、大臣がかわったからその政策が変ったのだと、こうなればまた別な方面から質問申し上げなければできないのですが、そのときのものはやはり引き継がれておるものと思う。そうなると、その後一年にもなりますが、どこかそういうことがあったかどうか、また、そういう大量就業するような企業ができたかどうか。その問題も御存じであったら一つ説明願いたい。そのあとでまた松野長官に質問したいと思います。
  165. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 政府のやっております駐留軍労務者の離職者対策につきましては、担当大臣がかわりましても、前の閣僚がここで申し上げたことについては、少しも後退はありませんで、むしろ前進するように政府は努力をいたしております。従って、総務長官お見えでありますから、私よりも総務長官がよく実際のことは御存じであると思います。ただ一言申し上げておきたいと思いますのは、政府は労働省だけでなくて、特にこれは力を入れるということをやっております。また、もう一つは、労働省でも御承知のように、集約的に一カ所で大量の離職者が出るわけであります。そういう場所に向いましては、特にそこの施設に働いておった人々に向くような配置転換、あるいはまた、安定所でそこに出張所を設けまして、そうして特別にその人々の就労あっせん、職業補導等についてやっておるわけであります。
  166. 阿具根登

    ○阿具根登君 それでは、今の問題につきまして、昨年の通常国会で駐留軍の労務者の失業対策に対する法律ができ上ったんですが、それから二万六千名の人が首切られているのです。そうすると……
  167. 久保等

    委員長久保等君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  168. 久保等

    委員長久保等君) 速記を起して。
  169. 光村甚助

    ○光村甚助君 私も前の石田労働大臣のときにこの問題で質問したことがある、内閣委員会に出てもらって。毎年これは起ることなんですね。だんだん駐留軍が少くなるから。そのときも努力する、委員会を作っていくというようなことをおっしゃるから、大体あなたの言うことはつづり方教室じゃないか、これは小学校や中学校のつづり方なんだと、離職する人を職業訓練をやって失業救済をするんだというようなことじゃあ何にもならないじゃないかということを言ったら、非常に怒ったんです。つづり方教室とは何だと。毎年こうなんです。毎年こういうことが繰り返して起るのは、内閣に委員会ができたからといって安心しておったって、私は松野さんに聞いたんですが、これは救われないだろうと思うんです。労働省というところは、失業者を救済したり、職業紹介のあっせんをするところなんですから、ただつづり方のように、松野さんのところで委員会を作って検討するじゃ、あしたでもあさってでも失業する人は救われないと思うんです。こういうことをほんとうに根本的対策を立てて、たとえば例を引けば、あるいはその横浜コムに何人紹介するとか、あるいは住友電機に何人紹介するとかということをきめなければ、これは離職する人は何か私は安心できないと思うんですよ。こういう点を前の大臣にも言ったら、大臣が非常に怒ってしまって、そういうことは努力するんだと、何がつづり方教室だと言って盛んに私に食ってかかられたけれども、やはりあなたの言われることも松野さんのこれから言われることと同じことだと思うんです。そういうことじゃあ駐留軍に働いている人は安心できないから、ほんとうに私がさっき言ったように、根本政策を立ててもらいたいということを希望しますが、それに対して何か一つ具体策ありますか。つづり方じゃあだめなんだ、実際。
  170. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 前の労働大臣の名誉のために一ぺん私から釈明いたしたいと思いますが、前労働大臣が申し上げましたあの当時も、私ども自民党の党内へも、地元の、御承知のように、駐留軍関係にまあ二つの労働組合がありますけれども、両方の方々がおいでになりまして、私どもにも切実なお話をいただきましたが、特に私は、一年余にわたって調達庁担当大臣をいたしておりまして、若干駐留軍労務者の知識を持っておりましたので、党も政府に協力をいたしたわけであります。石田労働大臣が申し上げましたその趣旨は、やはり私が先ほど申し上げましたように、もちろんこの離職者の直接の対策は労働省がやるべきでございますけれども、やはり相手方が外国の政府でありまして、そういうものと折衝いたします諸般の事柄は、やはり御承知のように、合同委員会というふうなものに労働省も出ておりますが、外務省も出ておるというふうなことで、これはやはり総理府の中に総合的な施策をするものを設けた方が効果がより多いだろうということで、そういう計画を立てたわけであります。で、労働大臣が申し上げましたのは、そのことを申し上げたんでありまして、決してつづり方ではなく、現にそれがございます。で、私はもし間違うといけませんから、具体的なことは総務長官のお答えにお譲りする方がいいと思ったのでありますが、今、お話しのございましたような点につままして、私自身も先般来、たとえば相模原の軍司令官にも会いまして、私がやっている当時から希望しておったのだが、アメリカ人のものの考え方というのは、やはり勤めている人がそこで離職すると、離れる力も、ここで閉鎖されたのだから出ていくのは当然だといったふうな、安直な考え方をもっているようでありますが、また、解雇させる方でも、比較的安直な考えをもっている、けれども、日本の終戦以来ああいう駐留軍という特別なところに勤務しておられた人々であって、大量に一カ所で失職するというふうなことは、われわれの方としては大問題だから、軍の方に計画もおありだろうからして、事前に一つ通報してもらいたいというようなことを軍司令官に申して、ごもっともなことだといったようなことで、われわれが非常に先方に要望もいたし、それからまた、期待もいたしているのでありますが、しばしば問題になります追浜の軍施設等につきましても、目下松町長官の方でいろいろ具体的に計画をお進めになっておる。それからまた、そのほかに現にそこで出ております労務者につきましては、たとえば三十四年において、引き続き、間接労務者約二万名を初めとして相当数の離職者が発生されるものと私どもは見ておるわけであります。政府におきましては、駐留軍関係離職者等臨時措置法がございますが、これに基いて設置されております先ほど申し上げました中央駐留軍関係離職者対策協議会、これがさきに石田君の申し上げましたものでありますが、これは中心に自立のための企業の育成、これは阿具根さんがさっきお触れになりました軍施設を日本の民間企業に払い下げて、そうなれば、その同種事業が行われるということになれば、そこに働いておるものも比較的よけいそこにそのまま就職できると、そういうようなことをつまり考え、またもう一つは、駐留軍に勤めております労務者というのは、特殊な技能をもっている者が非常に多いのでありますから、そういうことで本人が自立できますような育成、それからまた、さっき申しました職業訓練、あるいはまた、職業紹介活動の強化、そういうふうにいたしまして、できるだけ、多発地帯のこういうところに対して、労働省は特別な努力をいたしておるのでありまして、私の申し上げますことで——時間がかかりますので、あとで必要がございましたならば、今申し上げましたようなことで努力をいたしましたその数字的なことも、政府委員から御報告をいたして参考にしていただきたいと思います。
  171. 阿具根登

    ○阿具根登君 先ほど質問を中止しておりましたので、関連ですから、長くやりませんが、去年の通常国会から一年間の間で二万六千名の駐留軍の労務者が失業したわけです。実際私どもの知る範囲内においては、そのうちの一割か二割足らずがやっと仕事についた、こういう実情だと思うのです。そういたしますと、先ほど倉石労働大臣が言ったように、石田さんのときに駐留軍離職者対策委員会というのができて、これ一本で駐留軍の離職者に対する対策を立てるんだ、こういうことでその責任者に松野さんがおられるわけなんですが、それからどういう対策をお立てになりまして、どういうことで吸収していきたいとお考えになっているか、その基本的な考え方をお尋ねしておきたいと思います。
  172. 松野頼三

    政府委員(松野頼三君) 昨年一年に、この法律の施行後と、施行前と多少ズレがございますが、昨年、三十三年六月からことしの一月までの報告が今きておりますから、この八カ月間を御報告いたします。人員整理が一万八千、退職者総数が二万四千、この差額は、多少中間的な希望退職という名前になるかもしれませんが……。就業状況は、職安による就業者が約一万七十一名、企業組合団体、事業団体の結成によるものが約一千名、自衛隊職員の募集が百四十名、合せまして一万一千二百数十名の者が一応就職というか、職を得たという形になりまして、残余の者がいまだ就業ができておらない。これをパーセンテージにしますと、総数から割りますと、約四割七分、いわゆる人員整理の数から割りますと約六割という者が、一応就業状況が昨年以後は順調にできております。なお、お尋ねのごとく、過去の例をとりますと相当低い年もございまして、その前は約二割九分という年もございました。その次に三割六分と多少ずつ上ってきておりますが、まだ完全とはいきませんけれども、昨年の後半期の八カ月間はある程度、今までのところまあ順調ではございませんが、一応努力の跡は私は見えたと、こういうふうに考えます。
  173. 阿具根登

    ○阿具根登君 ただいまのお話だと、二万四千人のうち一万七十一名が職安の窓口を通って就職をしておる、こういう報告でございますが、私どもが受けておる報告では約二割に足りない、二割程度だとこういうことが言われておるのですが、この一万何がしという数字は一体どういう仕事についておるのか。ただその日その日の日用についたのを言っておるのか、紹介しただけなのか、実際それによって生計を営んでおるかどうかというのが問題だろうと思うのです。数字だけこう出てくれば五割近い数字になっている。しかし、実際私が知った範囲内においては、生活ができないで苦しんでおる。そうすれば窓口を通って一つの紹介だけの姿で現われたのではなかろうか、この数字は。そうでなければ、何か一日、二日の短期間の仕事にありついたものも就職だと、こういう統計であげられているのではないかと思うのですが、その点はどうですか。
  174. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) これは私の方からお答えした方がいいかと思いますが、これは安定所における統計でございます。統計というよりも業務の実績でございます。そこで、これにつきましては、この数につきましては、これは全部常用のでございまして日雇いは入っておりません。それから常用については紹介だけではございません。紹介はこの三倍くらいになっておる。で、就職として確認した数字でございます。ただ、今先生のおっしゃったように、昨年の就職者と比べるとそうなる。しかし、それ以前からの方もおられるのですから、これは安定所の窓口で常用者として紹介した数の正確なものであると私は確信しております。
  175. 阿具根登

    ○阿具根登君 職安局長がそうおっしゃるので、これはまあ正しい数字だというふうに思わなければなりませんが、私の方にきておるのは、それは、今おっしゃるように、それ以前の数字も含めておるのかもしれません。私はその点までは明らかにしておりませんが、それは今後そういうふうにただ職安の窓口を通して就職をお世話する、こういう計画なのか、あるいは先ほど追浜の問題が出て参りましたが、追浜はすでにこれは駐留軍の手を離れておるとこう思うのです。これに対する工業誘致をどういうふうにされておるのか。もう一つたとえば立川基地なら立川基地を見てみる場合に、これは軍の使用しておる所が一部であって、大部分は使用しておらない。しかし、軍が使用しておるからあとの半分ぐらいになるか、三分の一になるか、三分の二になるか、よく現場へ行っておりませんからわかりませんけれども、そういうのは遊休施設として遊んでおる。それらに対してどういうふうな考えを持っておられるかですね。いずれにしてもこれは特殊な技能を持っておるということになれば、何かそういうせっかくの施設があるのに、しかもそれを優先的に民間に譲渡するのだということは一貫した政策のようでございますから、何かそれに対する対策が、抜本的なものがあるかどうか、松野長官にお尋ねいたします。
  176. 松野頼三

    政府委員(松野頼三君) 昨年の三十三年度一年のだけ申し上げます。三十三年の九月が仙台のキャンプ・苦竹十四万坪、これはただいま企業誘致中であります。キャンプ尾島キャンプ・ベンダー・キャンプ尾島の方は三菱電機に企業誘致の予定がきまっております。キャンプ・ベンターは富士重工に大体これは話が内定しております。キャンプ小倉、これは十七万坪で一番大きい面積でございますが、これも企業誘致を昨年以来やっておりますし、福岡県としてもこの誘致運動をやっておりますけれども、まだこの小倉の場合は、地域的な意味で応募者がまだ率直に言ってございません。応募者がないので、私どもの方としては、企業誘致に相変らず努力をしておりますが、これは地域的な問題と地理的な状況、主としてこれは工業用水の問題と聞いておりますが、そういう地域的なもので工場敷地としての問題がまだございますので、これは話が進んでおりません。追浜の問題はちようど実は一番新しい、ことしの三月三十一日までには全部完了、いわゆる地域的に一部は軍が使いますから、使わない残余のものは返還ということで、三月三十一日までには全部手続が完了する予定になっております。その後において一月に返還という意思がきまりましたので、約二カ月間かかりましたけれども、三月三十一日までには全部手続を完了いたす予定でございますので、これも企業誘致をして、ただいまのところ、応募者が三社くらい今日は来ておりますから、三月三十一日から応募者の資格と状況を見合せながら、主としてこれはやはり駐留軍の問題ですから、駐留軍労務者をいかに吸収するかということが当然企業誘致の大きな理由になりますので、そういう計画もあわせて三社の中からこれは拾い上げたい。大体三カ月もすれば一応国有財産としての整理ができますので、夏ごろまでにはこれは決定できると、こういう見通しでおります。進行状況は古いのはたくさんございますけれども、まあ三十三年、昨年一年間の状態だけ御報告申し上げておきます。
  177. 阿具根登

    ○阿具根登君 まことにけっこうな御答弁をいただいたのですが、それではたとえばキャンプ仙台・苦竹、尾島、ベンダー、こういうところはすでに企業誘致がきまっておる。こういうことになりますと、それに対する駐留軍離職者の吸収人員はどのくらい考えておられるか。これはその富士重工なら富士重工、三菱電機なら三菱電機等は、この企業誘致される場合に、相当その問題を話されておると思うので、どういう状態になっておるか。それからまた、追浜の問題は近いうちにそれがきまるということですから、まことにけっこうですが、そういう場合にもどのくらいの駐留軍の離職者を吸収できるのかお話し合いをして下さるものと思いますので、その点、お知らせ願います。
  178. 松野頼三

    政府委員(松野頼三君) 離職者の数として、正確に今日のところ、まだ私ども調べて参りませんので、あらためて御報告いたします。  追浜の場合は、やはりあそこの立地状況から希望者が多いのでございますから、希望者が多ければ、私どもの方もなるべくよけい使っていただきたい。一社だけしかないときは、ある程度向うが応募者が少いときは、なかなか無理も言えませんが、ここは三社が正式に来ておりますから、三社の中で収容者の多いものが優先順位に入るのだ。そのあとで企業の内容が検討されるのだと考えます。ことに私は、追浜の問題につきましては、なるべく収容人員の多いものを私の立場としては優先順位にとって参りたい。これは私だけではございませんで、通産省及び各省の問題がありますから、以上の見地から、やはりほかの意見も出ましょうが、私はやはり吸収人員の多いものを推進して参りたい。三つありますから、三つのうちで、一番多いものを推進して参りたい。あとのものは実はどちらかというと、誘致することに一生懸命になっておりますので、必ずしも条件ということまで言っておりません。いずれわかりますれば、あらためて後日御報告申し上げます。
  179. 阿具根登

    ○阿具根登君 ありがとうございました。
  180. 小柳勇

    小柳勇君 一番初めに申しましたように、三月中あるいは四月以降のこの首切りが発生いたします状況について御報告を願います。
  181. 小里玲

    政府委員(小里玲君) お答えいたします。三月中に千六百五十二名、これはすでに解雇になってしまった者も含んでおります。四月中に六百四十一名でございます。
  182. 小柳勇

    小柳勇君 私の方で調べたのとちょっと違いますが、県別に発表願いたいと思います。
  183. 小里玲

    政府委員(小里玲君) 三月を申し上げます。青森県が四名、それから岩手県が八名、埼玉百十八名、千葉六名、それから東京二百九十名、神奈川千四十名、石川二十六名、島根一名、広島八十九名、福岡五十六名、長崎十四名、合計千六百五十二名でございます。  それから四月は、青森が五十一名、それから岩手はございません。福島に二十六名、それから埼玉に九十六名、東京四十四名、神奈川八名、新潟七名、石川九名、大阪四名、和歌山二名、広島三百十二名、福岡八十二名、計六百四十一名でございます。
  184. 小柳勇

    小柳勇君 この三月中に首切られる者が、四月の二十八日になりますと満七年になって、退職金の増額率がよくなるわけですが、そういうものを勘案して当然やるべきだ。これは、首切りについてはもちろん反対でありますけれども、軍の移動その他の問題についてはまたあとで聞きますが、最悪の場合、首切るにしても、三月中にやるのはあまりに理不尽であると思いますが、その交渉の経過について御報告願います。
  185. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) お話の通り、四月の二十八日になりますと勤務年数が七年ということになりまして、退職金において有利な取扱いができるのでございます。従いまして、今月、来月、その期日の到達間近の者について格別の配慮をしてそれまで延期をする、このことにつきまして、実は調達庁といたしまして先月の末以来、各三軍、また、統合司令部と折衝を重ねて参っているのであります。府県におきましても、各キャンプにおいてそれぞれ交渉を続けて参っているのであります。本日も実は午前中、日米合同委員会がありましたので、その会議の席上においても私この問題で折衝に努めたのでございます。概括的に申しますと、一二のもので、かようなことで延期の措置のとられた個所もございますが、全般としまして、向うとしてもその点の配慮も加えて、できるだけ解雇数を少くすることに努めてきている——今までの解雇数の数字から見ても、特に四月については少い数字になっている状況……。それからなお、仕事自身がほんとうになくなっているような個所、また、そういうものに対する労務者の給与に関する予算問題、さような問題等で、現状においては、どうにもこれ以上の延期措置のとれないのはまことに遺憾である、全般的につきましては、今のところ、遺憾ながらそういう状況になっているのでございます。しかしながら、なおこれに関して特別の工夫なり、配慮なりを加えれば、今の問題の考慮ができやせぬかという技術的の問題、あるいは法律問題等のものも検討を加えまして、現在、また引き続きこれからも、まあこの問題の折衝に鋭意進みたい、こういうように私は思っております。
  186. 小柳勇

    小柳勇君 今からまだ交渉されますが、その見通し、それから金額は——これで今千六百五十二名という数字ですが、私の方では二千四百二名になっておりますが、これはまたあとで数字は確かめますが、そういうものですね。たとえば米軍予算——最悪の場合、たとえば調達庁など、ほかの方で何か考えるということまで、今の発言の中には含まれておるわけですか。
  187. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 数字の点は、その概数のうちの、いわゆる七年勤続に該当する者は、合せまして千三百名程度かと思っております。それが現在のところ、配慮を加えて整理数を少くした結果もこうである。なお、これに対する延期ということについては、この予算の捻出のしようがないということで、いよいよもってこの要望の受け入れができないのが実情なので、非常に見通しとしては困難のわけでございます。  そこでたとえばその予算上の点等についてなお配慮して、幾分でもこれらの要望に沿えるような処置ができないかどうかというような点、また、もっと大きくは、特別な処置方法を軍全体として取り得るかどうかというような交渉を続けるつもりでおりますが、現在のところの見通しとしては、非常に困難な状況にあるわけでございます。
  188. 小柳勇

    小柳勇君 これは調達庁長官が一人で米軍と今交渉しておられるわけですか。
  189. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 先ほども申し上げましたように、キャンプごとには各府県において知事さんがやっておられ、中央においては私が直接にやっておるわけでございます。しかしながら、たとえば本日の委員会等におきましては、もちろん私のみならず、日本側の委員も、私とともに話に乗っておるというわけでございます。
  190. 小柳勇

    小柳勇君 松野長官、どうでしょうね。この問題を一つ離職対策本部の問題として——四月二十八日と言いますと、もう一カ月ですね。一カ月のことで、退職金が一割も、一割五分も違うということについては、七年、あるいはもうそれ以上長く働いてきた人もいるのですけれども、それを首切る場合に、それくらいの取扱いは米軍もやるべきであるし、日本の政府としても当然努力してやるべきだと思いますが、離職対策本部の問題として、単に調達庁長官だけの問題でないことにして、御努力願いたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  191. 松野頼三

    政府委員(松野頼三君) 相手が米軍のことでございますから、日本政府だけで決定もできませんが、たしかこれはこの二年くらい前に、満五年になるときも同じようなことがございまして、あと一カ月で五年になるという方に対して、日本労働法そのものよりも、労働慣習から考えて、米軍に対して善処をしてもらいたいということも、過去においてやった記憶もございますので、今回はことに七年というと、相当長期なことでありますので、私もその状況を見て、そのことを非常に心配しております。もちろん調達庁長官離職者対策の一員でございますので、私の方の離職者対策そのものも調達庁長官が代表してやっておりますが、より以上私自身においても努力したいと考えておるわけでございます。
  192. 小柳勇

    小柳勇君 次は、離職者対策について質問いたしますが、今ここで四割ぐらいしかまだ就労しておりませんので、多数の離職者がおりますが、根本的にたとえば今の国民年金も今度の国会を通りましょうが、軍と政府との雇用関係でなくて、全部たとえば政府の雇用にしておいて、そして雇用転換をする、それが軍の仕事がなくなったら、すぐ国民年金の方とか何とか、こういうような政府の仕事がまだありますから、それにプールで使えるように、軍が移動したから直ちに首切りという制度を根本的に検討すべきであろうという段階と思いますが、この点どうでしょう。
  193. 松野頼三

    政府委員(松野頼三君) 御趣旨のように、いきなり首切ったからといってそのまま放置せずに、できるだけ吸収できる政府機関に吸収することが第一義だと思っております。一番大きな問題がやはり自衛隊が跡へ入った場合は、主として自衛隊の企業者として、企業組合を作っての御用商人によってこれを吸収するとか、あらゆる面をやりまして、大体二千名くらいはいわゆる企業組合によって自衛隊の仕事を引き継いでやっておられる方もたくさん出ております。なお、今後あらゆる面において自衛隊のみならず、自家営業として政府の認可、許可によってタクシーをやりたいという方もたくさん出ておりますし、ことに最近は、東京あたり一番多いのではなかろうか、近々のうちに、自家用自動車、営業用タクシーの許可台数が今審査をしておりますが、近いうちに増車の結論が出ますれば、私はこの問題も政府の認可、許可にかかわることですから、駐留軍の方を優先的にとるように、すでに運輸大臣には申し入れをしております。そのほか、政府の他の機関におきましても、当然御趣旨のように、あらゆる面においてこの離職者を優先的に使うことが妥当だと考えております。ことに離職者の方は非常に技術が一般労務者の方よりも高いレベルに達しておられますので、あるいはその通り一般労務者の中にぶち込んでできる仕事もあれば、非常に商いレベルと知識を持たれる方もありますので、そういう職種によって一がいにはできませんけれども、私は適材の方は優先的に使うことは当然だと思うし、また、それが労務対策上当然なことだと考えております。
  194. 阿具根登

    ○阿具根登君 関連して。ちょっと考え方について松野長官にお尋ねするのですが、長官の話を聞いておれば、ただ米軍に対して交渉をするが、相手はアメリカの兵隊であるからというような考えがあるようですが、これは特に間接雇用の労務者は政府の責任で雇用されておるものと私は思っているのです。そういたしますと、もっと考え方が違ってこなければならないのではなかろうかと思います。もちろん使っておるのはアメリカであるけれども、雇用の責任者は政府にあるのだ、そうするならば、先ほどの質問でも、来月の二十八日までおれば一割からの退職金がふえる、そういうのをまあ交渉するのだと、調達庁長官の話ではえらい先行きが暗いような話をしておられる。そうすると、責任は駐留軍だけにあって政府にはないのですか。政府はただ交渉をしてやるだけの責任があるのですか。どうもその点がもっと私は身近に感じてもらわなければいかぬと思うのですが、どうですか。
  195. 松野頼三

    政府委員(松野頼三君) ちょうど間接雇用と直接雇用のお話だと存じますが、ただいま調達庁長官の話しました米軍に交渉するのは、いわゆる間接雇用形式による方がちょうど七年になられる、こういう方に対する退職金の問題でありましたから、間接雇用は当然形式上は調達庁の長官、政府がこれを雇用し、供給の義務があるわけでございます。ただし、解雇の権利は米軍にあるわけで、これは供給も雇用もすべての関係は調達庁長官が持っておるわけではありません。供給の義務が調達庁にあるわけで、日本政府を代表して。そういうのが今日の労務供給の義務でありますので、契約を自由にできないことが、今日アメリカ日本の政府との間にあるわけでございます。雇用者は政府との雇用契約ですけれども、義務としては、日本政府はアメリカに直接において供給する義務だけしかないものですから、ここに今日の条約による規定が変っておりますので、従って、アメリカがこれを要らないと言ったときに、それを日本政府の雇用として直ちに残すことが今日できませんので、それで米軍の意向がなければ、この間接雇用につきましても、形式は政府ですけれども、日本政府が直ちにほかの一般の役所の公務員の政府関係雇用とは違う、ここに問題が存在するという話を申し上げたわけであります。なお、直接雇用につきましては、もちろん政府が全然関与しないわけじゃありませんが、契約当事者が米軍でありますので、従って、採用も米軍が御自由であるし、解雇も米軍が自由である。多少直接契約と間接契約とは、どうしても責任の度合いがおのずから生じてくる、こういう意味であります。
  196. 阿具根登

    ○阿具根登君 そこで間接雇用の場合に、雇用主は政府にあるので、労働力を米軍に提供するのだ、米軍がこれを解雇した場合は、政府としてはやむを得ないのだ、こうなると直用と同じような姿になってくるのですね。直用よりももっとたちが悪くなってきはしませんか。政府が雇用しておって、そうしてそれを労働力を米軍に供給します。直用の場合は、米軍が勝手に自分たちが雇用して、それで首を切るので、これは少し違うと思うのですよ。間接の場合とは違う。これは首を切られたが、雇用主は政府にある、使用者はこれは米軍にある、こういうような場合には、私はもっと身近な問題として感じなければならないと思うのです。今度は間接と直接の仕事の内容を見てみると、ほとんど変らないようですね。そうなってくると、そういう二つのあり方がいいのか悪いのか、いずれにしても政府としては、これは相当なやはり責任があるのではなかろうか、こういうふうに考えるわけです。政府が雇って、政府が首を切る場合には、これは特別な退職金が出ております。その点から考えてみて、もう少し政府が、日本に外国の軍隊がある特殊な事情にあるという立場にあるのだから、政府がもっとそれを一つ身近に感じて、対策を立ててもらわなければ、ただ相手が米軍だから、米軍だからということでは、おそらく慣習その他も違う米軍としては責任を非常に回遊するのではなかろうか、こういうふうに感じるのですが、その点どういうふうにお考えでしょうか。
  197. 松野頼三

    政府委員(松野頼三君) おっしゃる通り、政府が雇用契約の一応は管理者になっておりますから、政府がその場合における責任は当然ありますが、今日の支払い義務というもの、あるいは賃金の支払いは全部米軍が実は持っております。それで、米軍の予算に影響するところが非常に大であり、それ以外にもしも米軍が支払いをしない、解雇した者は調達庁で雇用するというプール的契約ができないものですから、それであくまでやはり予算の支出権というものを全部間接雇用にいたしましても、米軍が持っておるために、米軍の予算にこれが影響されるというので、日本政府の予算でこれを支払っておりませんので、そこに実は非常にむずかしい問題がある。もちろん政府が雇用者である以上、ただペーパーだけで責任を負うわけじゃありません。当然契約をしている以上、日本労働慣習で契約を守るためには、政府は最大の努力をしなければならない。あえて日本政府だけでそれを決定することができないという意味を申し上げているので、どうかその辺を御了解願いたい。
  198. 阿具根登

    ○阿具根登君 それはわかります。それで小柳さんの質問の関連になっているのですが、そうすると、約一カ月足らずで四月の何日か前にやめさせられる人ができてくると思うのです、今のままでいけば。しかし、調達庁長官の話では、この交渉をやっておるけれどもむずかしいのだと言っておられる。今後も努力すると言っておられるけれども、非常に先行きが暗い暗示を与えておられるようなんですが、そういう場合に、一体どうしてやればいいのか、交渉はしたけれども、だめでしたという結果になるのか、あるいはこれはどういうふうな処置をすればいいのだということで考えが別個にあるのか、それを聞いておきませんと、ただ現実交渉はやっておる、しかし、非常に交渉は難航しておる、来月の二十八口は刻々に迫ってくる。その前にばさばさ首切られる。これじゃどうもこうもしようがないので、何とか考え方別になかろうか、こう思うのですが、それに対してはどういうふうにお考えでしょうか。どちらからでもけっこうですが。
  199. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) お話の通り、この交渉の結果、米軍側が格別な配慮をするということにならないというと、お話のように、その期日前に今の予定のような解雇が行われてしまうようなわけでございます。それについての、今交渉上、これをもっとこの事の性質から見てみますというと、米軍と日本政府間の契約上の、いわゆる義務的なものとして必ずこういうような状況があるのであるから、こうすべきであるというふうな議論になっている問題じゃないので、もっぱら大きい観点から、長年駐留軍のために働いた労務者が、ある時期を目前に控えて解雇になっている、そのためにせっかくのいい制度にも浴せない、これに対する格別なる温情的措置ということが非常なポイントになる問題なんでございます。従って、なかなか今の理論的な折衝というようなことで措置のつく問題じゃない。そこで、今までの交渉経過から見ましても、その事情は十分にわかる。従って、それに沿うように努力して、実は今出ておる数字というものも相当少くしたつもりであるということと、なお、これ以上に考慮を促されても、予算の制約等からとうていでき得ないであろうということから、はなはだ暗い見通しと申しますか、難問題の交渉であると申し上げたわけなんでございます。今の段階で、それでもどの程度までどういう工夫、工面によりまして目的の何分の一かでも達することになるかどうか、なお、引き続いての折衝を続けてみないとわからないのが実情なんでございます。
  200. 阿具根登

    ○阿具根登君 これはいずれの日かアメリカの人はこれは帰ってもらうのですから、これはほとんどの人は全部失業するわけなんです。そうすると、それに対してそういうような話を聞いておれば、あまり感じのいいことでないのです。ところが、松野長官が言われたように、二年前にそういう問題があったときに、政府と私どもの間で一定の金額を相当長い間交渉したことがございます、政府にも責任があるのだ、追っぽり出すのに、アメリカのような冷たい人が、そんな七年も勤めて、あと何日かすれば一割でもふえるから、せめてもの一割をくれ、そういう切ない要求でも、けるような人であるから、そこは日本の政府はそれをそのまま認めて、これは理論的にはやむを得ぬのだというようなことではなかろうと私は思うのです。二年前ではそうでもなかった。しかし、それに対しても一定の金額で相当長い間これは論議をして、それに対して政府も相当考慮を払っていただいた。そうなって参りますと、ただ理論的に、米軍と交渉するだけではなくて、そこまでの責任を持ってもらって、交渉をやっていただくならば、もっと私は血の通った交渉になるのではなかろうか、こう思うのですが、そういう点は、松野長官は非常によく御理解下すっておると思ったので、一つ御答弁願います。
  201. 松野頼三

    政府委員(松野頼三君) この前も非常にまあ紛争がありましたが、これもどうやら円満に解決いたしましたので、今回もなお前回に負けないように……、なお、非常に今度は状況が変っておりまして、二年前と非常に、どちらかというと、今日残っておられる方は相当技術も優秀であることは明らかであります。しかも七年というならば、より以上労務者からいうならば必要なものである。しかし、米軍の引き揚げ状況も最近非常に急速になって参りましたので、米軍からいうならば一日も早くと、こういうところですが、政府といたしましても一つ全力をあげて、この問題が円満に解決できるように努力いたします。  なお、これは法律的にいろいろいいましても、なかなか法律条文では、御承知のごとくなかなかむずかしいところがございますので、なお好意的に協議会の方々も一緒に御協力いただいて、政府も十分その意を体して、この問題はあと数目になりますので、努力をなお一そう続けて参りたいと存じております。
  202. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それで松野長官に私はちょっと、あなたの方に行っていると思うのだが、この中央協議会というのがなかなか、労働者の側から見ればもう一つ力を入れてもらいたいということになるわけですがね、これはどうでしょうか。たとえば労組の代表といいますかね、労働者の代表もここに入れるとか、この中央協議会に。または厚生省の代表を入れるとか、何かもう少し血の通った方法で中央協議会を運営するというお気持はどうでしょうかね、あなたの感じは。
  203. 松野頼三

    政府委員(松野頼三君) 厚生省の方は入っておらないそうであります。幹事にも入っておらないそうでありますが、これはぜひそういうふうに努力いたします。  なお、代表者の方も、私もぜひそういう感じでおりますが、実は私も運営上は過去の仕事を引き継いだままでありますから、私が就任して以来は、代表者の方となるべくより多く、機会あるごとにお会いしておりますし、なお、幹事の方もより以上に会うということで、まだメンバーに入っておりませんが、私は今日まで十カ月の間は連絡が非常によくいっているというふうに感じますが、まだメンバーには入っておらぬようであります。厚生省の方も幹事会のメンバーに入れて、さっそく私ども考えてやって参りたいと、こう考えております。
  204. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だから、労働組合の代表もここへ入れて、そうして共通の目標のために、離職した人をどう援護していくかというのだから、これは別にここでお前に聞かれたら悪いという話じゃなしに、一緒になってよい方法を考えていくというなら、そういう労組の代表を入れるということがいいのじゃないか、駐留軍関係離職者等対策臨時措置法の協議会に……。そういう感じがいたします。  それからもう一つは、市町村にも具体的にやっぱり対策協議会みたいなものを作る必要がないかという感じを持っておるわけですが、この点はどうですか。
  205. 松野頼三

    政府委員(松野頼三君) 府県ではそういうふうに対策協議会ができているところもありますが、市町村までは私もまだ聞いておりませんが、ことに大きなところの市あたりは、あるいはお説のように、集団的な地域があるところは考えていいかと思います。ただいまこれは市町村までは今考えておりません。
  206. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だから私は、より円滑にするためにその関係ある市町村に対策委員会を置いたらどうですかということ……。考えていないということだけれども、そういうことはできませんか。
  207. 松野頼三

    政府委員(松野頼三君) 今までの考え方は——よしあしは別ですが、協議会という感じでやってきたものですから、市町村が連合ならばこれは協議会という問題もありましょうが、市町村単独というものは今までの構想ではありませんので、まあ市町村の連合体というわけで府県に作ったわけで、あくまでこれが総理府にあります中央問題も、これは協議会でして、実施するのは各省にまたがるものですから……、そういう考えで今までやって参りましたので、推進上非常に支障があるならば考えますけれども、やはり何といっても協議会ですから、実施機関は別に——各省別実施になっておりますから、市町村の連合体という意味で、府県という考えで今までやって参りました、
  208. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこなんですよ、一番大事なところが。今おっしゃった協議会ということ——府県協議会、中央協議会。で、協議会と委員会とどう違うかという議論ではなしに、その、協議会だからという、非常に軽い気持でこの運営をやられているのじゃないか、懇談に終っているのじゃないかという感じが、労働者からすればするわけなんで、だから、私が言ったのは、中央協議会にも労働者の代表を入れるということをしていただいて、また、一番関係のある市町村が結局めんどうを見ることになりますから、市町村に対策委員会みたいなものを作って、中央と地方の協議会と市町村の対策委員会というような格好の中で、血の通ったと申しましょうか、対象になった人も理解するような格好の運営というものを、やはり地方から生み出していただいた方がいいじゃないかという感じを持っているから、ちょっと尋ねたわけです。
  209. 松野頼三

    政府委員(松野頼三君) なお、私ももう一度研究して、その必要があればその方向にしたいと存じます。
  210. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この前の特別金の——あれでは困るという面もあるけれども、国連軍のまだ特別金の支給が解決してないようですね。これはやっぱり松野さん、一つ努力してもらわないとこれはちょっと困るんじゃないかな。これは相当長い間の問題で、私らももう今時分はこの問題が解決して、あれだけじゃいかぬから、今度出てくる人にはもっと多額な——所期の要求をしていました問題まで今ここで議論を蒸し返しませんけれども、もう少しあたたかい行政の妙味をここで見せてもらいたいというぐらいに思っていたんだが、国連軍がまだ解決していないというのは、これはやはり早く解決してもらわなくちゃ困るじゃないですか。
  211. 松野頼三

    政府委員(松野頼三君) 国連軍は、実は私の引き継ぎ事項の中の一番問題の多い引き継ぎ事項でして、引き継ぎ事項の実は明文さがまず第一である。引き継ぎ事項の文書的書類が残っておらないのです。しかし、そういう問題があることは当然わかっておりましたが、閣議決定も調べて参りました、法律も調べて参りましたけれども、なかなか法文的なものが何も残っていないのです。そのまま私は引き継ぎまして、非常に実は前任者の話を聞きながら苦労をしておったのです。なお、そのほかにもう一つは、いろいろな案が出まして、一時は呉に会館を作るのだからとか、いろいろ実は案も出ておりましたけれども、その案の方もなかなか実は決定した案でもなかったようで、私たちも何らかそういう未解決の問題を明確に解決したいというので、就任以来今日まで、ずっと念頭に描きながら、たびたび協議会では議題を出しておりますが、なかなか証拠物件と申しますか、閣議決定と、法律案に入っておらなかったためにその明文がいまだに解決しておりません。それからどういうことをなさるのだとお話を聞きましたけれども、一、二の話を聞きましたが、その案も決定的なものでなかったようでありますので、そのままに実はなっております。まだ出すとも出さぬともきめたものでもありませんし、そのままになっておって、おっしゃればいろいろありましょうけれども、まだ解決をいたしておりません。
  212. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だから、解決いたしておりませんということを聞くのじゃなしに、これを何とか解決をして下さい、する方法がないか。あなた松野さんは対策本部長なんだから、あなたが協議会で裁定を下して、これだけはやらなければならぬという今までの努力をここで花を持たしてもらいたい、それを一つ努力していただきたいのです。重ねてお願いしておきます。
  213. 小柳勇

    小柳勇君 特別給付金の問題で、この前言いました軍直の——メイドとは言いませんけれども、軍直労務者に対する特別給付金の問題はどうなりましたか。
  214. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) メイドの関係は、これは実は日本政府雇用の形ではございませんで、軍の各家庭等が直接雇用しておるというような実質的な違う実情がございまして、法律制定当時からそういうものが除外されるという形になっておって、そのままでございます。
  215. 小柳勇

    小柳勇君 メイドでなくてPXなどの軍直の労務者の特別給付金をこの前から再三再四要請しておるのだけれども、検討するということでまだ具体的に支給されていないので聞いたのです。
  216. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 今申しましたように、あの特別給付金の支給対象の議論におきましては、明確に政府自身が雇用しまして、そうして軍の仕事に従事させる、これに対しては、雇用の主たる日本政府において、特に占領時代等においては非常に困難なる状態のもとに働いたこの方々に対して慰謝申し上げなければいけない、この趣旨からできましたものでございますので、実はその方たち、つまり日本政府の雇用形態のないいわゆる直用と申しますかのものには範囲が及ばないということでございます。
  217. 小柳勇

    小柳勇君 及ばないという話であったので、それを及ぶように検討してもらいたいというのがこの前の要請であったわけです。それからもう一つは、政府の雇用の労働者で、講和発効時点を越えているために、三千円で金額の変更がないようになっておるので、あの政令の改正については検討されたことがありますか。
  218. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 政令によりますと、あの額につきまして、実施以後について、労働組合その他諸先生方とも、いろいろな御意見で、改定のことのお話も承わっております。検討を関係者で加えて参りました。あるいは政令の制定のときから実は大きく議論された問題でありまして、重点は先ほど申しましたが、平和条約が発効される前、いわゆる占領時代において格別に困難なる状況において苦労をした方々に対する政府の賠償、これが一番の中心になるのでございます。それとの均衡、つまり平和条約発効後といえども、相当の年数になっておる人に何も措置がないというのはあまりに均衡を失するという意見、こういう事情からああいう一定の時期を区切りました差別の政令の金額ができたわけでございまして、その後の検討におきましても、やはりその当時の議論が適当であろう、またなお、それに基く実施、まだ始めたばかりの状況である、こういうことから直ちにこれを改定するということには遺憾ながらなっておりません。
  219. 小柳勇

    小柳勇君 駐留軍労務者というものはだんだん減少されていきますし、ほかの労働者と環境が違いますので、法律上とか理屈上とかということでなくて、生活が幾分でも希望が持てるような方向に今までも善処しておられますけれども、さらに一つ検討して努力していただきたいと思います。  それから離職者対策で、たとえば企業組合を作るには金が要る。その金も、もう退職金は使い果してないというような方もたくさんあるようで、さっき労働大臣にお願いしたように、金融公庫などから融資のワクを特別にふやして融資しようというようなことも対策本部の方で十分御検討願いたいと思いますが、長官いかがでしょうか。
  220. 松野頼三

    政府委員(松野頼三君) 公庫の運営の問題で、今日まで駐留軍の方に対しては、特に必要なものは政府の政令できめましたような方向に努力するようにしておりますが、現実に内容を見て参りますと、事業そのものの性質によって金融機関は貸しておりますので、企業がいい計画があるならば、もちろん今日でも今の資金が足りないというわけではございませんが、今までの調査の結果は金額そのものが足らないというよりも、いい企業そのものの申請によって多少貸し出しがおくれておったというわけでありますので、量そのものよりも、私は申請する企業そのものによっていい企業といい計画をお出しになるならば金が出せるのではないか、こういう報告を今日受けております。なお、詳細についても、たとえば一応つい先般も報告を聞きましたけれども、仕事そのものが立ちいく仕事ならば、もちろん駐留軍労務者のことですから、より以上優先的に貸し付ける。しかし、事業そのものが非常に今日の産業の中では立ちいかないというものについてはお貸しできないというふうな報告を受けておりまして、別ワクを設けるといいましても、資金そのものの量が足りないわけでもなさそうでありますので、なお、この問題は運用の問題ですから、もう少し私も内容を調べまして、個々の企業別にもう一ぺん検討さしてみたい、こう考えております。
  221. 小柳勇

    小柳勇君 先日運輸委員会で、白ナンバーのハイヤー、タクシーを調査いたしましたところ、各市とも相当動いておるわけです。東京なども莫大にありますが、福岡で今具体的に百八十両くらい白ナンバーが動いておる。そういうのにかかわらず、一社五両か十両のハイ・タクの企業申請をしておっても陸運局がなかなかうんと言わない、こういうような矛盾があるんです。白ナンバーを退治して、たとえば百五十両を持ったタクシー会社を作るならば、駐留軍労務者も相当吸収できるような気がするわけですね。東京では相当の白ナンバーが動いておる。白ナンバーの退治については運輸委員会も相当がんばらなければなりませんが、これは警視庁その他とも連絡してやらなければなりませんが、タクシーを今申請している駐留軍の離職者のタクシーにすら申請がなかなか許可されない。しかも申請いたしますと、同業者がどんどん必要がないのに設置申請をして妨害するような実情もある。私、陸運局と運輸省に行ってやかましく言ったこともありますが、ほんとうに首を切られてあすの生活も苦しいような不安の中で申請している。そういうような事業に対しては対策本部なども、あるいは調達庁なども積極的に運輸省などに働きかけてもらって、申請の許可が一日も早くおりて、退職金を使い果さない前に事業転換ができるように、重ねて働いていただきたいと思いますが、そういう問題について御論議があったかどうか、お聞きしたい。
  222. 松野頼三

    政府委員(松野頼三君) 政府機関のハイ・タクの免許問題については、つい昨年も大阪で出ましたので、私も特にその問題が許可をするというならば、駐留軍にもぜひ優先的にやれと、希望通り数は参りませんでしたが、許可は昨年の秋ごろから許可をいたしました。その後各社から出て参りますが、そのたびに私はケース、ケースごとに陸運事務所及び運輸省の大臣及び局長を通じまして、こういう申請はぜひやれよということは、たびたび個別にしておりました。今回、東京でも八十台の申請があったということを聞きましたから、これはいずれも審議会において結論が出たら、特に先に扱えよと、もちろん許可がおりますれば、これに対する資金のあっせんということは私は当然やるべき問題だと、許可がおりた以上この事業が成り立つんだということは一応筋が出ますので、そういう考えで個々に、より以上にやっております。なお、地方において、私のなかなか目の届かないところがあると思いますので、駐留軍の方も率直に申し出ていただいて、そのたびたびにケース、ケースによって努力して参りたい。そうして実績を上げて参りたい。現実はそういう方向に進んでおります。
  223. 小柳勇

    小柳勇君 地方の方で、私どもがタッチできる問題については私どもも協力いたしますので、今のように一つ長官も今後とも御努力願いたいと思います。  最後に、行政協定の改定に伴いまして、いま少し軍と雇用関係なり、あるいは国内法でもっと駐留軍労働者の生活が保護されるようにしておきませんと、日本労働者の保護と相当の距たりがあるように思いますし、外国の例を見ましても、日本のような切り捨てごめんのような契約でないような気もいたしますので、これは大臣、担当は違いますけれども、あらためてまた別の機会に発言いたしますが、内閣などで問題が出ました場合は、行政協定の改定の場合、もっと駐留軍労働者が法律的に保護できるように、一つ調達庁長官も、総務長官も閣議の中で働いていただきたいということを要請いたしまして、質問を終ります。
  224. 久保等

    委員長久保等君) 本問題に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  225. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認めます。  なお、国際労働条約批准等に関する件が、本日は時間の関係でできませんでしたので、次回にこれを譲りまして、本日は、これにて散会いたします。    午後四時四十八分散会