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1959-03-10 第31回国会 参議院 社会労働委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十日(火曜日)    午前十時四十九分開会   —————————————   委員の異動 三月五日委員草葉隆圓辞任につき、 その補欠として大谷贇雄君議長にお いて指名した。 三月六日委員大谷贇雄君辞任につき、 その補欠として草葉隆圓君を議長にお いて指名した。 本日委員横山フク辞任につき、その 補欠として重政庸徳君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     久保  等君    理事            勝俣  稔君            柴田  栄君            木下 友敬君            常岡 一郎君    委員            有馬 英二君            草葉 隆圓君            紅露 みつ君            斎藤  昇君            谷口弥三郎君            西田 信一君            松岡 平市君            片岡 文重君            小柳  勇君            藤田藤太郎君            光村 甚助君            竹中 恒夫君   国務大臣    郵 政 大 臣 寺尾  豊君    労 働 大 臣 倉石 忠雄君   政府委員    運輸省船員局長 土井 智喜君    労働政務次官  生田 宏一君    労働大臣官房長 澁谷 直藏君    労働大臣官房会    計課長     松永 正男君    労働省労政局長 亀井  光君    労働省労働基準    局長      堀  秀夫君    労働省職業安定    局長      百田 正弘君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    郵政大臣官房人    事部長     佐方 信博君   —————————————   本日の会議に付した案件公聴会開会に関する件 ○委員派遣承認要求の件 ○最低賃金法案内閣提出、衆議院送  付) ○労働情勢に関する調査の件  (昭和三十四年度労働省関係予算の  件)  (国際労働条約批准等に関する件)   —————————————
  2. 久保等

    委員長久保等君) これより社会労働委員会を開きます。  この際、公聴会開会等についてお諮りいたします。  三月六日の委員長及び理事打合会において、最低賃金法案審議は本日から入ることとし、三月二十日から二十三日までの間において公聴会及び地方における聴聞会を開き、各界の意見を聞き、その後も十分審議を行うことに決定いたしました。  そこでまず、公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。  最低賃金法案閣法第一三号)は一般的関心及び目的を有する重要案件でありますので、利害関係者及び学識経験者等から意見を聞いて審査参考に資するため、公聴会を開きたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認めます。公聴会日時、問題並びに公述人の数及び選定その他の手続等委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認め、最低賃金法案については、公聴会開会承認要求書議長提出することといたします。   —————————————
  5. 久保等

    委員長久保等君) 次に、委員派遣承認要求に関する件についてお諮りいたします。最低賃金法案閣法第一三号)審査上の参考に資するため、地方実情を視察し、本案に対する意見等を聴取するため、委員派遣を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認めます。よって委員派遣承認要求書議長あて提出することに決定いたしました。  なお、派遣地派遣委員の数及び人選、日時調査項目並びに手続等は、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認めます。よって委員長は、理事と協議の上、進めることといたします。   —————————————
  8. 久保等

    委員長久保等君) 最低賃金法案閣法第一三号)を議題といたします。提案理由説明を願います。
  9. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ただいま議題となりました最低貸金法案につきまして、その提案理由及び概要を御説明いたします。  終戦以来わが国における労働法制は、労働組合法労働関係調整法労働基準法など急速に整備されたのでありますが、これらの法制により近代的労使関係が確立され、また、産業合理化を促進し、わが国経済復興に寄与するところ少くなかったことは、否定し得ない事実であります。  労働基準法は、労働条件最低基準について詳細な規定を設けているのでありますが、同法に定め最低賃金に関する規定は、今日まで具体的に発動されなかったのであります。これが理由について考えてみますと、まず、終戰後経済混乱最低賃金制実施基盤をつちかえなかったことが指摘されるのでありますが、さらに基本的には、中小企業零細企業の多数存在するわが国経済の複雑な構成のもとにあっては、労働基準法規定する最低賃金制のみによっては、その円滑な実施を期し得ないものが存したからにほかなりないからであります。  昭和二十五年、労働基準法に基いて設置されました中央賃金審議会は、絹人絹織物製造業等業種に対する最低賃金実施について、昭和二十九年に政府答申を行なったのでありますが、これが実現を見るに至らなかったゆえんも、当時の経済情勢とともに、わが国経済における中小企業特異性に存したといえるのであります。  しかしながら、賃金労働条件のうち最も基本的なものであり、特に、賃金の低廉な労働者について、今日最低貸金制実施することは、きわめて有意義であると考えるのであります。  最低賃金制の確立は、ただに低賃金労働者労働条件改善し、大企業中小企業との賃金格差の拡大を防止することに役立つのみでなく、さらに労働力質的向上をはかり、中小企業公正競争を確保し、輸出港業国際信用を維持向上させて、国民経済の健全なる発展のために寄与するところが大きいのであります。  翻って世界各国に眼を転じますと、十九世紀末以来、今日までに四十数カ国が最低賃金制実施し、また、国際労働機関においてもすでに三十年前に最低賃金に関する条約が採択され、これか批准国も三十七カ国に達していることは御承知の通りであります。  経済復興労働法制整備に伴い、わが国国際的地位は次第に高まり、昭和二十六年には国際労働機関に復帰し、さらに、昭和三十一年には、心願の国際連合への加盟も実現されたのでありますが、また、それゆえに、世界各国は、わが国経済、特に労働事情関心を有するに至っているのであります。  なかんずく、諸外国において、特に大きな関心をもって注目しているのは、わが国賃金事情であります。過去において、わが国輸出産業が、ソーシャル・ダンピングの非難をこうむったのは、わが国労働者賃金が低位にあると喧伝されたからであります。かかる国際的条件を考えましても、この際、最低賃金制実施することは、きわめて意義があると考えるのであります。  しかしながら、諸外国における最低賃金制実施状況を見ても知り得るごとく、その方式、態様は決して一様のものでなく、それぞれの国の実情に即した方式が採用されておるのであります。従いまして、わが国最低賃金制もあくまでわが国実情に即し、産業企業特殊性を十分考慮したものでなければならないことは申すまでもないところであります。  政府といたしましては、最低賃金制の大きな意義にかんがみ、最低賃金制あり方についてはかねてから検討して参ったのでありますが、昭和三十二年七月、中央賃金審議会に、わが国最低賃金制はいかにあるべきかについて諮問したのであります。同審議会は、その後、真剣な審議を重ねられ、同年十二月に至り答申提出されたのでありますが、その内容については、一部の労働者側委員が賛成できない旨の意見を述べたほかは、他の労使公益委員が賛成されたのでありまして、さらに答申提出については、全員が一致されたのであります。同答申は、その基本的考え方として、産業別規模別等経済力賃金に著しい格差があるわが国経済実情に即しては、業種職種地域別にそれぞれの実態に応じて最低賃金制実施し、これを漸次拡大していくことが適当な方策であると述べているのであります。  今日においても、最低賃金制実施中小企業実情にかんがみ、時期尚早であるとの論も一部にはあるのでありますが、現実に即した方法によってこれを実施するならば、中小企業摩擦混乱を生ずるようなことはなく、その実効を期し得られるものであり、むしろ中小企業経営近代化合理化等わが国経済の健全な発展に寄与するものと考えるのであります。  以上の見地から、政府といたしましては、中央賃金審議会答申を全面的に尊重して最低賃金法案を作成し、第二十八回国会及び第三十回国会提出したのであります。両国会とも、衆議院においては政府原案通り可決されたのでありますが、参議院において審議未了となりましたのでここに重ねて、同内容法案提出いたした次第であります。  次にその主要点について御説明いたします。  その第一は、最低賃金決定は、業種職種または地域別にその実態に即して行うということであります。最低賃金制の基本的なあり方について、全産業一律方式をとるべきであるとの意見があります。しかしながら、わが国においては、産業別規模別等によって経済力が相当異なり、また、賃金にも著しい格差が存在しているのでありまして、かかる現状において全産業全国一律の最低賃金制実施することは、ある産業、ある規模にとっては高きに失し、他の産業規模にとっては低きに失し、これがため一般経済混乱摩擦を生じ、本制度実効を期し得ないおそれがあると考えるのであります。ここに対象となる中小企業実態を最も適切に考慮して最低賃金決定し得るごとく、業種職種地域別最低貸金決定し、漸次これを拡大していくこととした理由が存するのであります。  第二は、最低賃金決定について、当事者の意思をでき得る限り尊重し、もって本制度の円滑なる実施をはかるため、次の四つ最低賃金決定方式を採用していることであります。  すなわち、その第一は、業者間協定に基き、当事者申請により最低賃金決定する方式であり、第二は、業者間協定による最低賃金を、一定地域における同種労使全部に適用される最低賃金として決定する方式であり、第三は、最低賃金に関する労働協約がある場合に、その最低賃金一定地域における同種労使全部に適用されるものとして決定する方式であります。  これら三つ方式のいずれの場合も、政府は、中央地方に設けられる労使公益各同数の委員よりなる最低賃金審議会意見を聞いて最低賃金決定することといたしております。第四は、以上一ないし三の方式によることが困難または不適当である場合に、行政官庁最低賃金審議会調査審議を求めて、その意見を尊重して最低賃金決定する方式であります。  以上のごとく四つ決定方式を採用し、それぞれの業種職種地域実情に即して最低賃金制実施することとし、もって本制度の円滑にして有効な実施を期した次第であります。  第三は、決定された最低賃金の有効な実施を確保するため必要な限度において、関連家内労働について最低工賃定めることができることとしたことであります。  わが国中小企業零細規模のものが多く、その経営は下請的、家内労働的な性格を有するものが多いのであります。しかも、わが国においては、これら中小企業と併存する関連家内労働者が多数存在し、これら家内労働者労働条件には劣悪なものが少くないのであります。しかして、一般雇用労働者最低賃金適用され、これと関連する家内労働を行う家内労働者工賃が何ら規制されない場合には、家内労働との関係において最低賃金の有効な実施を確保し得ない事態を生ずるおそれがあるのであります。  もとより、家内労働については改善すべき幾多の問題がありますので、政府家内労働に関する綜合的立法のため調査準備を行うとともに、さしあたり、本法案中に必要な限度において最低工賃に関する規定を設け、最低賃金制の有効な実施を確保すると同時に、家内労働者労働条件改善に資することとした次第であります。  以上が本法案主要点でありますが、本法適用範囲は、原則として労働基準法及び船員法適用あるもの全部とし、これが施行に関する主務大臣労働基準法適用関係については労働大臣とし、船員法適用関係については運輸大臣としております。その他、最低賃金審議会設置運営に関する事項業者間協定締結等に対する援助、勧告、及び違反の防止等に関する所要の規定を設けるほか、関係法令に関する整備を行い、もって最低賃金制の円滑なる実施を期しているのであります。  最低賃金制法制化することは、わが国労働法制上まさに画期的なことであり、かつその意義もきわめて大きいと信ずるのであります。しかしながら、何分にも最低賃金制わが国においては初めての制度であります。いかにわが国実情に即した最低賃金制でありましても、これを円滑有効に実施するためには中小企業経営基盤の育成をはかることが必要であることは申すまでもないところでありまして、政府といたしましては、最低賃金制実施状況等を勘案しつつ、中小企業対策等について今後とも十分配慮を行なって参りたい所存であります。  また、いかに大きな意義を有する最低賃金制実施されたとしましても、法制定趣旨が十分認識されず、本制度があやまって運用される場合には、労使関係の安定が阻害されるのみならず、社会経済混乱を招くことにもなるのであります。政府といたしましては、本制度に対する労使の深い理解と絶大なる協力を期待するとともに、広く国民一般の支援を求め、これが円滑なる運営をはかりたいと存じている次第であります。  以上が最低賃金法案提案理由及び概要でございます。何とぞ慎重審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  10. 久保等

    委員長久保等君) 次に、政府委員から本案に対する細部説明を聴取いたします。
  11. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 最低賃金法案細部につきまして御説明申し上げます。  第一条は、本法目的規定したものでありまして、いわゆる全国産業一律方式をとらず、業種職種地域別にそれぞれの実情に即した最低賃金決定する方式をとることを明らかにしたと同時に、その目的は、第一義的には、賃金最低額を保障することによって労働条件改善をはかり、これによって労働者の生活の安定に資するとともに、あわせて労働力質的向上及び事業の公正な競争の確保に資し、ひいては国民経済の健全な発展に寄与することを目的とすることを明らかにしております。  第二条は、本法において使用される労働者使用者賃金委託委託者家内労働者工賃その他の用語の定義規定したものであります。本法でいう労働者使用者賃金とは、それぞれ労働基準法労働者使用者賃金と同義であることが明らかにされておりまするので、労働基準法におけるこれらの定義規定は、船員法適用を受ける船員についても適用されておりまするので、本法原則として基準法または船員法適用を受ける使用者及び労働者適用されることになるわけでございます。  次は第三条でございますが、第三条は、最低賃金決定に当って考慮しなければならない三つ原則を述べております。最低賃金定めるに当りましては、その最低賃金決定にかかる労働者の属する地域における労働者生計費が考慮されるべきことは当然でありますが、これと同時に、類似労働者賃金と通常の事業賃金支払能力が考慮されるべきことが必要であります。最低賃金定めるに当っては、これら三つの要素が勘案されなければならないことを規定しております。  第四条は、最低賃金額定め方について規定したものでありまして、わが国における賃金慣行実情にかんがみ、原則として、期間的単位によって定めることとし、その期間は、時間、日、週、月、いずれにもより得ることとしたのであります。しかしながら、当該最低賃金適用を受ける事業または職業において、一般賃金出来高払制その他の請負制定められている場合であって、労働時間を算定しがたい等のため、時間、日、週または月によって最低賃金額定めることが不適当であると認められるときは、出来高賃金率等労働省令定めるところにより、最低賃金額定めることができるとしております。  第五条は、最低賃金のいわゆる刑事的効力及び民事的効力規定するとともに、最低賃金対象とならない賃金範囲定めたものであります。  まず第一に、使用者は、その使用する労働者であって、最低賃金適用を受けるものに対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないという最低貸金効力規定したものであります。  第二に、最低賃金適用を受ける労働者使用者との間で締結された労働契約であって、最低賃金額に達しない賃金定めるものにつきましては、その労働契約のすべてを無効にするのではなく、その部分のみを無効とし、無効になった部分については、最低賃金と同様の定めをしたものとみなして、最低賃金補充的効力を認めることとしたのであります。  第六条は、現物給与規定でございます。いわゆる食事その他の現物給与の支給は、評価が適正に行われないものとなるときは、最低賃金適用に当りその実効を期しがたいので、これらのものが適正に評価されなければならないことを明らかにしたのであります。  第七条は、一人の労働者について、二つ以上の最低賃金が競合する場合におけるこれらの最低賃金効力優先関係規定したものでありまして、そのうちの最高のものにより第五条の規定適用されることとしたことであります。  第八条は、適用除外規定であります。一般労働者について最低賃金決定された場合、精神、身体の障害により著しく労働能力の低い者、試みの使用期間中の者、職業訓練法に基く事業内職業訓練を受ける者、所定労働時間の特に短かい者等もその最低賃金適用することといたしますると、これらの労働者雇用の機会を奪い、かえって労働者にとって不利益な結果を招くこととなりますので、許可を条件としてこれらのものについて適用除外を認めたものであります。  第九条は、業者間協定に基く最低賃金決定手続決定された最低賃金適用範囲等について規定したものでありまして、使用者または使用者団体の間に、賃金最低額について定め協定、または賃金最低額に関する定めを含む協定締結され、その協定当事者全部の合意により、その業者間協定における賃金最低額に関する定めによって最低賃金決定することを申請した場合に、労働大臣またはその地域を管轄する都道府県労働基準局長は、最低賃金審議会に諮問し、その意見を尊重して、当該業者間協定定めに基く最低賃金決定することができることとしたのであります。  第十条は、業者間協定に基く地域的最低賃金決定手続要件及び適用範囲等について規定したものでありまして一定地域において、第九条の規定により最低賃金決定された場合において当該地域においてその最低賃金適用を受けない使用者、すなわちアウトサイダーが存在するために当該最低賃金実施が確保されがたいとともに、それらアウトサイダーの使用する労働者労働条件改善する必要性がありますので、当該地域同種労使の大部分最低賃金適用されている場合に、その適用を受ける使用者の大部分申請に基き、その地域同種労使すべてに適用する最低賃金決定し得ることといたしたのであります。  第十一条は、労働協約に基く地域的最低賃金決定手続要件及び適用範囲等について規定したものであります。一定地域同種労使の大部分賃金最低額に関する労働協約適用されている場合におきまして、前条と同様の趣旨により、その地域アウトサイダーにも適用される地域的最低賃金決定し得ることを定めたものでございます。  第十二条は、第十条または第十一条の地域的最低賃金決定に際して、これによって本法による義務を負担することとなるアウトサイダー使用者に認められる異議の申し出の手続及びこれに対する救済方法について規定したものであります。  第十三条は、申請に基いて決定する第九条、第十条または第十一条の最低賃金に関する改廃手続について規定したものであります。  第十四条は、労働大臣または都道府県労働基準局長は、賃金の低廉な労働者労働条件改善をはかるために必要があると認める場合には、業者間協定及びこれに基く最低賃金申請の機運の醸成をはかるために、関係ある使用者またはその団体に対して、賃金最低額に関する業者間協定締結改正勧告ができることを定めたものであります。  第十五条は、労働大臣または都道府県労働基準局長が、以上のような決定勧告をしようとする場合には、事前に労、使、公益者構成最低賃金審議会に諮問し、その意見を尊重して決定または勧告を行わなければならないことを定めたものであります。  第十六条は、一定事業職業または地域賃金の低廉な労働者について、その労働条件改善をはかるために必要があると認める場合であって、前の方法によって適正な最低賃金決定することが困難、不適当であると認めるときには、労働大臣または都道府県労働基準局長は、最低賃金審議会調査審議を求め、最低賃金審議会提出した意見を尊重して、最低賃金決定することができることを定めたものであります。  第十七条は、最低賃金に関する決定公示及び効力発生時期について規定したものであります。  第十八条は、最低賃金効力の存続と、その基礎となった業者間協定または労働協約の変更、消滅との関係について規定したものであります。  第十九条は、最低賃金労働者に周知させるべき使用者義務について規定したものであります。  第二十条は、最低工賃決定について、その要件手続及び適用範囲並びに最低工賃改正または廃止の決定要件及び手続について規定したものであります。すなわち、一定地域内の事業場で使用される同種労働者と、これを使用する使用者が、第十条、第十一条または第十六条第一項の規定によって最低賃金適用を受ける場合には、その同一地域内に営業所を有し、当該使用者同一または類似事業を営む委託者委託契約締結している家内労働者のうち、当該労働者同一または類似の業務に従事しているものについては、労働大臣または都道府県労働基準局長は、かかる家内労働者労働条件改善をはかり、あわせて当該最低賃金が有効に実施されるため必要があると認めたときは、最低工賃決定をすることができる旨を規定したものであります。第二項は、これと同一視すべき家内労働者について、同じく最低賃金定めることができることを明らかにしております。  第二十一条は、最低工賃に関する決定公示及び効力発生時期について規定したものであります。  第二十二条は、最低工賃決定するについて、当該最低賃金との関係及び最低工賃額単位並びに最低工賃において定めるべき事項、について規定したものであります。  第二十三条は、最低工賃刑事的効力及び民事的効力規定するとともに、現物給与等評価が適正にされるべきことを定めたものでありまして、最低賃金の場合に、原則として準ずるわけであります。  第二十四条、第二十五条は、最低賃金実施を確保するための最低工賃額等の明示、帳簿の備付等の義務規定したものでございます。  第二十六条以下は最低賃金審議会規定でありまして、中央最低賃金審議会及び地方最低賃金審議会の設置、権限、組織、委員及び特別委員、会長及び会長代理、専門部会等につきまして、その内容規定し、労働大臣または都道府県労働基準局長は、本審議会意見を尊重して決定勧告を行うことを規定したものでございます。  次は第五章でございますが、第三十三条、第三十四条は、政府及び労働大臣は、関係者に対し、関係資料の提供その他最低賃金制度の円滑な実施に必要な援助を行い及び必要な調査を行うことについて努力すべきことを規定したものでございます。  第三十五条は、本法実施のために必要な報告義務について規定したものでございます。  第三十六条は、最低賃金及び最低工賃決定、その改正または廃止の決定並びに業者間協定締結改正勧告についての労働大臣の職権と都道府県労働基準局長の職権との配分について規定したものであります。  第三十七条、第三十八条、第三十九条は、本法実施の掌に当る労働基準監督署長、労働基準監督官の職務権限等について規定しておりまして、第四十条、第四十一条、第四十二条は、船員に関する事項についての規定でございまして、船員に関する本法適用については、運輸省が所管するものとし、また、最低賃金審議会の職務を船員労働委員会に行わせること等について規定したものでございます。  第四十三条は、本法実施のための省令について規定したものであります。  第六章は、最低賃金または最低工賃の不払いについての罰則を規定したものでございます。不払いについて、一万円以下の罰金に処することを規定す託るとともにその他の義務違反についての罰金について規定する、いわゆる両罰規定を設けております。  最後に附則でございますが、附則第一条は、本法の施行期日について規定したものであります。この法律は、公布の日から起算して九十日をこえない範囲内で各規定につき、政令で定める口から施行することを規定したものであります。  第二条、第三条、四条、五条、六条、七条は労働基準法国会職員法、船員法、国家公務員法、運輸省設置法、労働省設置法につきまして、最低賃金法の実施に伴い、必要な整備、改廃を行う規定でございます。  第八条は、労働組合法の一部改正でございまして、本法十一条は、一定地域内の同種労使の大部分最低賃金に関する一のまたは実質的に同一定めをする二以上の労働協約のいずれかの適用を受ける場合に、当該地域同種労使のすべてに適用する最低賃金決定できることとしたのでありますが、組合法十八条は、労働協約地域的拡張適用規定しておりますので、その間の連絡を労働組合法十八条第四項として規定を設けたものでございます。  第九条、第十条は、地方公務員法、自衛隊法の一部につきまして、最低賃金法の実施に伴う所要の整備を行うものでございます。  以上が、本法案細部についての御説明でございます。
  12. 久保等

    委員長久保等君) 御質疑を願います。
  13. 小柳勇

    ○小柳勇君 質問の前に……。小柳でございますが、この画期的といわれる最低賃金法が今上程されておりますが、船員法の担当大臣たる運輸大臣が御出席ないのはどういうわけであるか、御答弁願いたいと思います。
  14. 久保等

    委員長久保等君) すぐ出席するように手続をいたします。
  15. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ただいま提案理由の事務的な説明も終ったのでありますけれども、しかし、最低賃金法は、世界をながめてみましても、今日、四十九カ国が最低賃金制を、これは法律できめて実施しているというのが現状であります。そういう意味からいきまして、最低賃金制そのものをこしらえるということは、むしろおそい段階だと私たちは考えております。問題は最低賃金制をこしらえるということは、何といっても低所得労働者の生活を守る、ことに労働者の保護をして、いろいろの経済の面、その他の面にそれが繁栄の道をたどうしていくという、これは大きい意味におきまして、そういうりっぱなものを作らなければならぬと私たちは考えております。しかし、今提案されたこの最低賃金法を見てみますと、賃金そのものは、何といっても労働者が働く——そうして労働者の働いているものの意見というものが、どういう工合に賃金または最低賃金制もそうですけれども、反映をし、妥当な賃金制というものが作り上げられなければならぬかというところに根本の問題があると思うのであります。ところが、この法案の中心をなしているのは、何といっても業者間の協定という、業者間だけが賃金支払い協定をして、そしてそれが最低賃金法のこの中心的な柱になっている。こういうことになると、実際に、客観的に、世界で最低賃金制最低賃金というものを作る意義とは、少し私の考えから見ればはずれているような気がするわけであります。そこで、私たちは、この法案をめぐり十分な審議をして、よりよい最低賃金法を作らなければならぬと考えておるわけでございます。私はそういう意味からいきますと、きょう提案されたこの法案、それから今日、四十九カ国実施している世界の最低賃金、世界の人が最低賃金というものをどういうかまえでこしらえているか、こういう問題を十分にわれわれが知悉して、その上に立って私たちが、よりよい最低賃金をこしらえなければならぬ、こういう工合に考えるのでございます。そこで私は、多くの問題は、この審議するための資料の問題に入ると思いますけれども、しかし、私は何といってもここでお聞きしたいのは、最近の世界各国賃金決定方式が、最低賃金決定方式がどういう工合に進んでいるか、こういう問題でございます。で、そういう問題が私は、われわれ委員会としては十分に調査審議をいたしまして、そして非常に重要な、われわれの最低賃金法案をきめるのに重要な役割を持つと思いますから、その点についてのまず説明をお願いをしたい。
  16. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 最低賃金制は、御承知のように、十九世紀末、ニュージーランドとオーストラリアで初めて採用されて以来、各国においてそれぞれの沿革を経て採用され発展してきたものでございます。現在におきましては、日本を除く世界の主要七十八カ国のうち、最低貸金に関する法制を有しておることが明らかな国は四十九カ国であります。しかし、この中には、法制だけあって具体的に実施を見るに至っていない国が四カ国ありまするので、一応四十五カ国で実施されておるものと考えられます。また、最低賃金に関する法制を有しない国は十五カ国でございます。  次に、最低賃金決定方法につきましては、それぞれの国情に応じて種々の方式を採用しておるわけでございます、大体におきまして四つ方式が代表的なものでございます。  第一は、賃金委員会を設けて、この賃金委員会において最低賃金決定するか、あるいは賃金委員会の答申等に基いて行政機関が最低賃金決定する方式でございます。  第二は、仲裁裁判所方式でございます、これは仲裁裁判所を設けて、その裁定もしくは決定等によりまして、その際に最低賃金の拡張適用等を規定する方式でございます。  第一は、法律で最低賃金をきめておる方式でございまして、これは法律の中に、最低賃金額が幾らであるというようなことを直接規定する方式でございます。  第四番目は、団体協約の拡張適用方式でございまして、これは大陸系諸国等において通常設けられておりますが、団体協約等について同じ地域内の同種労使につきまして、その拡張適用政府機関が決定して行う、このような方式でございます。  大体におきまして以上のような四つ方式に分れるのでございますが、国によりましては、これらの方式をからみ合せて実施しておるところも相当ある実情でございます。
  17. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、今の御説明あったものを資料でお願いしたいのでありますけれども、今四つ賃金決定する方式というものがある。この四つ方式を見てみますると、今この最賃法案の骨子になっている業者間協定、要するに、労働者賃金決定に参加していないようなものを中心にして最低賃金方式をきめている国はないように思うのですが、その点はどうですか。
  18. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) 業者間協定方式と申しましても、これは、業者間協定に基いて、当事者申請によりまして、労、使、中立三者構成最低賃金審議会がこれを審議し、その意見によって労働大臣決定を行うものでございますので、これは、先ほど申し上げました第一の賃金委員方式に入るものである、このように考えております。なお、業者間協定についての例でございますが、これはニュー・ディール当時、アメリカにおきまして大統領が、業者の間でいわゆるコードをきめて、これを申請し、認可するというような方式をとった例がございます。
  19. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今の法案を見てみますと、そういう今の御答弁のあったようなニュアンスというものがなかなか出てこないのであります。それでは、ILOの二十六号、最低賃金条約というものは、どういう内容を持っているか、御説明を願います。
  20. 堀秀夫

    政府委員堀秀夫君) ILO二十六号条約は、御承知のように、各締盟国が、団体協約その他の方法による賃金の有効な規律のための施設が存せず、かつ賃金が例外的に低廉な若干の職業または職業部分において使用される労働者のため、最低賃金率を決定し得るための制度を創設し維持することを約したものでございまして、本条約を批准する各締盟国は、最低賃金決定制度の性質及び形態並びにその運用方法決定するの自由を有す、という工合に、各国の自由にまかせておるわけでございます。ただし、その中におきまして、最低賃金制を設けて運用する場合に、労働者使用者が対等の立場でこれに参加するごと及びこの最低賃金制実施につきまして、監督、制裁の制度により必要な強制力が加えらるべきことを述べておるわけであります。   —————————————
  21. 久保等

    委員長久保等君) 途中ですが、委員の異動を報告いたします。三月十日荷をもって、横山フク君が辞任し、その補欠として重政庸徳君が選任されました。   —————————————
  22. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ILOの二十六号条約、続いて出ました賃金決定に関する勧告というものについては、賃金決定は、こういう工合にやっていくのだということを非常に詳しく述べていると思うのです。そういう条項をつぶさに見てみますと、賃金をきめるのには、何といっても出発点から、働いている労働者意見が入らなければ意味がないのだということをILOの機関がきめたということは、世界の人がそれを承認している、そういう方向で賃金をきめていかなければいかぬ、そうしようじゃないかと、私はきめているものだと思うのです。それからみても、この業者間協定という問題に入ってくると、これが中心になる法案というものを見ますと、非常に片手落ちじゃないかという気がいたします。  そこで私は、資料の要求をしておきたいのでありますけれども、今お述べになりましたようなものを資料にしていただきたいと同時に、特にアメリカ、イギリス、フランス、フィリピン、ソ連また中国、こういう国の委員会または審議会構成、それからまた、権限、こういうものが一つであります。それから二番目は、発議者、要するに発議後決定までの期間、どういうものを規定しているか。三番目は、行政府関係、権限ある機関である国会との関係が、賃金決定としてどうなっているか。それから賃金決定に考慮する条件であります。これは何かというと、一応出発の方向としては、生活水準、地域労働者賃金水準、それから支払能力という問題が議題になっておりますけれども、しかし、今日の最低賃金をきめるほとんどの国は、労働者の生活水準、地域賃金水準というものを中心にして最低賃金をきめている。これから見ても、この法案から見ると、少し私は、今日の事態から見れば食い違いがあるじゃないか、こういう工合に思いますから、その点を一つ資料にして出していただきたいと思います。それから現在行われている賃金決定額というものを一つ出していただきたい。それから一般労働者に、意見聴取とか、そういう形の手続がどうされているか、こういう点もつけ加えて、そういう私が今申し上げましたようなことを一つ資料で出していただきたいと思います。それから資料は、本日から審議するのでありますから、気のつきました資料だけを先にお願いをしておきます。  そこで、私は労働大臣にお尋ねするのでありますけれども、「諸外国において、特に大きな関心をもって注目しているのは、わが国賃金事情であります。過去において」云々と、「ソーシャル・ダンピングが」云々と、こういうことがごあいさつの中に出てきております。問題は、私は、その国の賃金水準というのは、各国はよく知悉し、どういう形で生産というものが行われ、労使の状態がどういう状態にあるか、賃金の状態がどうか、労働条件の状態がどうか、こういうものは、昔と違って、今日では貿易の問題にまで非常に重要な要素を持っていると思います。そういう意味からいきますと、この最低賃金法案を見ますと、私の認識からすれば、今日の日本の政府経済政策というものは、独占資本といいますか、大資本といいますか、そういうところは保護されていますけれども、中小企業零細企業は保護されていない。そういう保護されていない、たとえばざつな言葉で言えば、そういうものを非常に困難な状態に置いておいて、困難な状態に置かれている中小一企業零細企業が、業者間同士で自分の支払能力というもので賃金をきめ、働いている労働者意見も聞かずに賃金をきめて、そうして業者間協定を作る、こういう形のものが最低賃金法へ発展していくということになりますれば、これは国内の問題だけでおさまらないと思う。何といっても、外国から見れば、ソシアルダンピングの非難をこうむったと大臣はおっしゃっていますけれども、この最低賃金立法がよし日本にできましても、同じ汚名をこうむるのじゃないかと私は思う。そういう点について、大臣はどういう工合にお考えになってこの提案をされたかということを聞きたい。
  23. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) お説のように、わが国産業構造は複雑でありまして、大産業中小企業、なかんずく零細企業との間における賃金格差というものは相当な開きがあります。そこで、元来賃金というものは法律で決定するというふうなことをすべきでないと私どもは思っております。しかしながら、労使自主的に賃金決定されるということに放置いたしておきましたならば、なお零細企業等においては救われないものがある。そこで、やっぱり私どもは最低賃金制というものの必要性をここに痛感をいたすわけでありますが、その最低賃金もやはり企業労働というものが一緒になって、零細なら零細なりにやはりそれをもり立てていかなければならない。そういう場合に、その零細企業を維持推進して参るだけの力をつけてやらなければならない、これは日本の産業政策として出然とらなければならないところであると存じます。従って、最低賃金制実施するに当りましては、一方においてはそういう支払い能力を考慮されるような、心配されるような零細企業については、特に最低賃金実施してもなおやっていけるというふうにこれを育成しなくちゃならない、従って、中小企業対策というものが、一方において並行的に重大な意味を持つものであります。  そこで、ただいま政府が提案をいたしまして御審議を願いますような程度の最低賃金法ですらなおかつ、地方の商工会議所等に参加しておられるいわゆる中小企業中の零細企業者はいまだに釈然といたさない、やはり反対を唱えておるものもあるのでありますが、そういう人々に、どのようにしてこの最低賃金の場合に、やはり支払い能力を維持してあげるかということに先ほど申しまたように一方において努力をし、同時に、最低賃金実施するように努力をしていきたい。そこで、日本の低賃金、なかんずく零細企業の方の低賃金、それもやはり輸出産業等にはもちろん影響のあることでもありますし、従って、そういうことにつきましては、私どもも重大な関心を持つものであります。しかしながら、賃金というのは、御承知のように、たとえばアメリカと日本の賃金のベースを比較すると、こういうときにやはりその国の国民所得、その国の経済実態等に応じてそれぞれの立場があるのでありまして、私は日本の平均賃金ベースが決してアメリカに比較して高いと申すのではありませんけれども、日本がたとえばアメリカに輸出をするという場合に、ただ一般的に、概念的に日本は低賃金であるからこれがソーシャル・ダンピングだというふうなことは当らないと思うのでありまして、従って、私どもは賃金そのものが上昇することは好ましいことでありますが、最低賃金というふうな、ただいま御審議を願っておるようなものが通過するということは、やはりそれだけ国際貿易上においても日本の信用力を増すことであって非常に望ましいことである、こういうふうに考えております。
  24. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今労働大臣は、国内においては中小企業の保護政策をとる、で、国際的にもこの最低賃金法ができれば信用を回復するという認識に立っておる、こういう工合におっしゃいました。しかし、私は何もアメリカの賃金に今せよと言っているのではく、問題は賃金決定するときに、どういう形で賃金決定されるかというところに問題の焦点が私はあると思うのです。たとえば、今国内の中小企業保護政策をとるとおっしゃったけれども、今日の中小企業零細企業が、今の政府経済政策の中でどれだけ苦しい状態に置かれておるか、私はもう説明する必要はないと思う。どういう方法中小企業零細企業の保護育成政策をとられたかということを議論せざるを得なくなってくるわけであります。  もう一つは、今の国際信用が、この最賃法ができたら回復するとおっしゃいますけれども、そのような状態で、またまた日本がチープ・レーバー、ソーシャル・ダンピングの、これと同じようなコースで、法による最低賃金をきめておるとしか外国人は私は見ないと思う。そういうときに、信用回復というものはどういう格好で出てくるのかということが、私は非常に疑問なんです。零細企業中小企業においても、ここで働いておる労働者労使対等の労働法の原理に立って賃金をきめていく、そういう中から賃金がきまる、またまた最低賃金というものがきまっていくというシステムであれば、それなりに国内の経済力その他において他の国は見るでございましょう。しかし、そういう形をとらないで、ここで、国内ではこうする、ああすると言われても、私はなかなか理解ができないと思う。先ほど私は、少し基準局長のときに質疑をしたんですけれども、たとえばアメリカに業者間協定のようなものがあったと、こうお答えがありました。しかし、アメリカの産業復興法の中の公正競争規約というものが一九三四年に出され、大統領命令によって業者間協定らしきものができております。しかし、一九三八年に公正基準法を作って、最低の生活、非常に低い生活をしている人を、何とかしてそこへある一定の生活のできる賃金を法できめようという目的があってそういうものがアメリカにはあった。日本ではそうじゃなしに、今のような業者間における協定だけでもって最低賃金事足れりというものの考え方には、アメリカのことをよくお言いになりますけれども、もう根本的にこれは最低貸金をきめようとする心がまえが問題だ、私はそう思う。先日もここで私は、よく政府がアメリカの関係を出されるから、言ったのでありますが、失業問題についてもそうであります。たくさんの失業者が出てくると、二十六週の失業保険手当を三十九週にする、そうして失業者を救済するという手続をとる、だから私はもう政治をやろう行政をやろうという根本的な心がまえがこの法案に露骨に現われておる、そういうことはいかに国内で隠そうとしても隠し切れない。これは何といっても国際的な環境の中で、この賃金そのもの、今度の最低賃金法からくる最低賃金そのものをどういう形で日本がきめておるかということを私は世界中の人はよく知ると思う。そうした場合に、ほんとうに世界の各国の人が、日本では最低賃金立法はできたけれども、そのできたことは、結局労働者の自主的な発意も入っていないし、ほんとうに働いておる者の生活が守れるコースで最低賃金ができておると認識する人は、私は世界の人にないと思う。そういう感じを持つわけであります。そういう点について重ねてお尋ねをしたい。
  25. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 最低賃金に関する決定要綱の非常に大切な問題か御指摘になったと思います。そこで私ども御審議を願っております法案は、先ほども申し上げましたように、業者間協定に重点が置かれておるわけではございませんで、申し上げたように、四つ方式を持っております。そこで、業者間協定というものがやや変った形式を第一にとるから、いかにもそこに重点が置かれるように感じられるかもしれませんが、業者間協定そのものが法的効果を持つということはありませんで、その協定は直ちにやはり賃金審議会という三者構成のものにかかりまして、そこを経て、その場合には、労働者代表もその決定審議に参加するわけでありますから、私は労働者意見というものが全然無視されておるものとも思いません。また、先ほど提案理由に申し上げましたように、団体協約もやはり決定の一つの方式であります。それからまた、同種業者が結びました協定というものに基いて、やはり政府もその地域決定をすることをいたしますのでありますから、これらの四つ方式というものは、やはり私は、最低賃金方式の現在の日本の段階においては、まずこの程度がいいではないか。従って、こういう御意見はわれわれが最低賃金法案を策定いたします参考に諮問をいたしました賃金審議会答申においても、現状においてはこれでよかろうと、私どもは、これが最終の案だとは決して思っておりません。逐次こういう問題は改善されて、その状況に、客観情勢に応じて改善せられるべきものであるとは思っておりますが、現在の段階においては、一律決定賃金というふうなことになりますというと、先ほど申しましたように、ある者には低きに失し、ある者には高きに失して、経済界に混乱を生ずるおそれがあると、こういうことでありますから、政府の立場としましては、本法案の程度がきわめて妥当である。しかも、このことが、最低賃金制として外国に出してどうかというお話でありますが、私は日本の現状に即して、まず最低賃金というものを実施して参る実際的な方向としては、諸外国はもちろんのこと、このようなやり方ももちろん是認せらるべきものである、こういうふうに確信をいたしております。
  26. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今労働大臣は、たとえば一律という方式が低きに失するとか高きに失するとかいうようなお言葉がありました。本来、賃金というものは、企業であろうと事業であろうと、そこで働いている人が、憲法でも保障され、労働法でも保障されている団体交渉によって自分の賃金をきめていく、こういうのが建前でございます。だから、低いとか高いとかいう問題が出てくるのじゃなしに、非常に低い生活、低賃金で生活しておられる方々を法律できめて、そしてその方々の生活を維持するというところに最低賃金の主目的があると私は思います。そういう意味からいきますと、方式にはいろいろあります。私たちは何といっても、一律なこの一定限度以下の賃金で働かしてはいけないという形の中で、非常に低い生活をしておられる方々をその線まで引き上げるという目的、組合も、残念ながら二千万の雇用労働者がおって、三分の一ちょっとぐらいしか組織はされておりません。未組織労働者の方々の生活というものを、何といたしましても、いろいろの条件の中で低い賃金または生活をされていることを引き上げるためには、一律これ以下には使ってはいけないという最低賃金をこしらえることが唯一の低生活者を救う道だと私たちは考えております。そういう意味からいきまして、ここで出て参りまする法案自身の問題をとって見ますと、たとえばこれは詳しくはまた質疑を行いますから何でございますけれども、根本的に私はやはりその一つは国内の状態、一つは国際的な関係という問題の心がまえというものを私はきょうは聞いておきたい。そしてあとは資料を出していただいて、よりつぶさに検討したいというのが私の本日の質疑のつもりでございます。だから、今の労働大臣が今一言触れられましたから、私は少し触れたのでありますけれども、もう一つ触れてみますと、たとえば、家内工業労働者最低工賃の問題にしても、最低賃金がきまった関連産業だけということをこう見てみますと、本来の意味を持ちます最低賃金立法の意義、要するに、低所得で働いている労働者をどうしてその人を守り、引き上げていくかという全体的な趣旨がこの法案には盛られていないように思う。そこに私はさっきから問題にしている問題点が出てくると思うわけでございます。だから、そこのところあたりをもう少し説明をしておいていただきたいと思うのです。
  27. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私どもも、どうぞなるべく早く御決定を願って、本法案が通過して、本法実施の経過を見、同時にまた、続けて研究して参らなければならないと思いますのは、家内労働であると思います。このことは、御承知のように、日本という国の家内労働実情というものは、きわめて複雑多岐でありまして、現在この状態を把握するということは非常に困難であります。従って、そういうものの実態をもう少し正確に把握して、その上で、家内労働に対する最低賃金というものをどうするかということを根本的に考えなければいけないと思いますが、ただいま御審議を願っております本法を通過さしていただくということになりますというと、とりあえずはやはりその関連する産業関係の家内工業について最低工賃決定するにあらざれば、画龍点睛を欠くことになるのでありますから、私は本法案をまず実施していただいて、そうしてその間において十分に調査検討をして、万全なものを考慮して参りたい、こういうふうに考えております。
  28. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この最低賃金法案をお出しになるときに、たとえば通産省だとか外務省との関係において日本の対外貿易、国際交易との関係について、どういう工合に影響するかどうかというようなことをどういう形で御相談されたか。それからまた、日本には、農業労働者がたくさんおりますけれども、その農業労働者の最低の生活をどうするかというような問題をどういう工合にお考えになったか。そういう点をお聞きしたい。
  29. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 政府本案を考え出しましたのは、もうすでに二、三年前から考えておったことでございまして、中審で御審議を願っておるのと並行いたしまして、政府部内において、それぞれただいま御指摘のような関係省とも打ち合せまして懇談をいたしました結果、本案を策定いたしたわけでございます。
  30. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、農業労働者の、要するに最低賃金ですか、そういうものについては、今見なくてもいい。それから国際貿易との関係から見ても、日本がむしろ汚名を受けたようなことは、この最賃法を作れば、これでそういうものは解消すると、こういう工合にお考えですか。
  31. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 第一の方のお話の、農業関係につきましては、やはり農業に働く、就業する人でも、雇用関係を持ちます方については本法実施されるとこういうふうに了解いたしております。しかし、御承知のように、日本の農村の産業は複雑でありますのでなかなかむずかしいと思いますが、一応雇用関係を持つものはそういうことであります。それから御承知のように、日本のガット加入などについて英連邦が異議を唱えましたことなども、やはりいろいろ日本の賃金問題などが論ぜられておりました。従って通産省とも十分にそういう点は懇談をいたしましたわけでありますが、私どもは、この法律が実施されることによって、日本はいわゆる低賃金、特に輸出産業に対する低賃金の攻撃というふうなものは、私はやはり本法実施することによって相当こちらの方の筋の通った主張ができる、こういうふうに解釈をいたしております。
  32. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうも私は、その国際感情といいますか、国際的な関係については、非常にラフにお考えになっておるのじゃないかと思う。この前のこの委員会で通産省、外務省から来ていただいて、ILOの国際労働機関条約とか勧告決議に対する見解を聞いてみたことがございます。外務省の代表の言われるのには、百七つ条約がある。世界の国が平均二十二批准しているから、日本は二十四批准しているのだからいいところだ、この内容について検討しようとすることなしに、そういうことをおっしゃいました。私はあきれた。それから通産省の方に来ていただいていろいろ論議をいたし、質疑をいたしましたところが、国内の労働者を保護する、そしてそれが経済繁栄の道に発展していくというような認識がほとんどなかった。だから、ILO条約とか勧告というものに対する認識というものはもう全然ない。全然ない状態でお答えを受けたわけであります。私が非常に残念に思うのは、そういう感覚で日本の経済政策や貿易関係をお持ちになっている通産省というものが、むしろ労働者を保護する担当省としては労働省だと思うのです。だから石田労働大臣倉石労働大臣、重ねて国の経済政策を立てるときにはその国の労働者を保護する雇用関係をどうするかという形において日本の経済政策を立てなければならぬ、これはりっぱにやり遂げるために大臣として決意を披瀝されたことを私は思い出すのでございます。で、そういうことを考えてみますときにも、何といっても私は、労働省が、今のような国際的な貿易の問題や、国の経済の繁栄の問題その他の問題についてはもっともっと労働者を保護するという立場から、深い理解と努力がされなければならぬ、私はそう考えております。今調整したとおっしゃいましたけれども、その調整というものがどの程度されたか私は知りませんけれども、今外国で日本の安い品物が入ってきて、貿易においていろいろの面からボイコットを食っておるところもありますけれども、多くのものを調べてみますと、苦汗労働によって作り上げた日本の品物をボイコットしょうという空気が、先進国の中には非常にみなぎっておるということは私は聞いておる。最低賃金立法ができることは私はけっこうだし、何とかしていい最低賃金立法を作りたいと思いますけれども、今御説明なさって提案されたような要素であったら、私はごまかし切れない。日本は最低賃金をきめたけれども、過去とってきた経済政策、ものの考え方から一歩も出ていないということに私はなり得るという心配をするわけでございます。だから重ねてお尋ねしておきますけれども、通産省やまたは外務省に対して、この国際的な関係を認識さすためのどういう努力をされたか、これを一つお聞きしておきたい。
  33. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 日本の低賃金のことにつきましては、ILO機構でもかなり前から論議されております。そこで、このILO機構においても、かつて一九三四年のILO機構で、その当時の事務局長は、「過去二年間に日本の海外市場侵略の成功は過度に低廉な賃金と劣悪な労働条件とに基因するソーシャル・ダンピングの一形態であると一般に主張されつつある。」、こういう工合に申しております。そこで、ILOはそのためにこれに関する真相調査目的で、同局の次長モーレットを日本に派遣しまして、そうしてその報告の中には、モーレット報告にはこういうことを報告しております。「大部分の輸出向け商品を生産する新しい大企業においては、日本においてはソーシャル・ダンピングは存在せず、労働時間、休日、貸金、保健、安全等々を含めて、労働条件は最高の水準にある。」こういうことをILOの年報にモーレット次長が報告をいたしております。その後、アメリカでも、やはりアメリカの議会で対外経済政策委員会というものの議会報告、これは一九五四年でありますが、日本の賃金のことが問題になりまして、そのときにもやはりその報告の中にこういうことを言っております。「不公正競争の最も明確な場合は、特定の商品生産に従事する労働者に対してその商品の輸出国において一般に承認されている賃金水準よりもはるかに低い賃金が支払われている場合である。」ソーシャル・ダンピングというのは、要するにそういうものである。「ソーシャル・ダンピングとは生産企業において労働条件を押し上げ、あるいはすでにそのような水準にあるならば、これらの条件を低水準に保ち、その結果として生産のコストを減じ、国民的生産物の輸出を助長する行為と定義されよう。」こういうことを報告いたしておるのでありまして、私どもはそれらの今申し上げましたILOのモーレット次長の報告等を見まして、やはりたとえば外国の人が日本に参って、そうして今やたとえばドイツと日本という国は、戦後、世界のマーケットにおいて非常な貿易上の競争相手であります。そういう人たちがばく然として日本の低賃金はつまり不公正競争であるというふうなことを論議いたすものがありますけれども、今モーレット報告にも言っておるように、特に一つの輸出品に向って不公正競争をするために賃金をそのために落しておる、こういうのがいわゆるソーシャル・タンピングである、こういうことを、言っておる立場から見ますというと、私はやはり、もちろん一般賃金水準の上昇は好ましいことではありますけれども、現在そういうことのために、日本が特に国際貿易マーケットにおいて排撃を受けなければならないということについては、にわかに賛同しがたいのでありまして、そういう意味で、私は今御審議を願っております最低賃金法というようなものが成立することによって、やはり貿易上の国際的な立場ははるかに有利に展開していくものである、こういうふうに理解しております。
  34. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ソーシャル・ダンピングの問題を大臣はここで言葉に述べられておるから、私は言ったのであって、問題はILOの次長がどう言おうとですね、ほかのところで日本はソーシャル・ダンピングがないといかにやってもらったところで、問題は実態なんだ。戦後十年もたってようやくガットに加入できた。それも十年間もほっておかれた。これは賃金の問題ばかりだとは私は申し上げませんけれども、そういう形の国際交流の歴史を日本は経ているわけであります。それじゃ低賃金でないということを大臣がおっしゃるならば、一つその外国賃金水準がどういう賃金であるかという資料を私は出してもらいたい。少くとも欧米諸国の賃金を見てみて日本と対比すればすぐできると思う。そういう賃金水準の具体的な案を一つ出していただきたいと思う、資料として。それでなければ、私は今のような議論にはならぬと思う。問題はそういうところに私はあると思います。だから、それだけ自信を持ってお言いになるなら、日本の貿易というものが世界市場で堂々と大手を振ってどこへでも自由に貿易が、たとえばソーシャル・ダンピングというような、まあ言葉はともかくとして、低賃金労働によってこういう製品ができているというような意見が、また批判が外国で出ないような状態というものにあるかどうか、ここが問題なんです。ただどこでどう言ったということだけじゃ私はないと思う。その実質の問題を私は先ほどから少しお尋ねしたわけなんであります。だから私は、何といっても、この法案自身の持つ政府側から言われる意義というものと、私たちが見ている意義というものには大きな食い違いがある。だから先ほどお尋ねしたように、直接の関係のある通産省や外務省に日本の将来の、六大産業国といわれている日本の姿というものが、将来国民の生活を守り、国の経済的繁栄を来たしていく、近代国家の道を聞いていくためには、賃金という問題、労働条件という問題がいかに大事なものであるか、そういうものとの関係において貿易というものをどういう工合に伸ばしていったらいいか、即国内の経済政策、こういうものの関連についてどういう工合にお話しになったか、どういう工合に労働省自身が積極的に教えられたというたらいけませんかしらぬけれども、そういう労働者保護の立場から活動をされたかどうかということを私はお聞きしたのです。それは的確なお答えがないようでございますから、非常に残念でございますけれども、その問題は、また通産省や外務省の方に来ていただいて、総理にも来ていただいてこの問題の理解と認識を私は尋ねてみたいと思います。  で、この今度の最低賃金法案の中心をなすものは、国内の問題はともかくとして、国際的にそういうたくさんの問題を持っているから、最低債金法自身は早く作らなければならぬけれども、問題は具体的に内容なんだ、その内容というものをよりよいものに作らなければならぬといって私たちは審議をいたしております。だから、そういう意味からいきましても、十分にあらゆる、先ほど要求いたしました資料については、詳しくみんなの委員がわかりますように御提出を私は願いたいと思います。  もう一つ私は聞いておきたいと思うのでございますけれども、たとえばこの中における業者間協定というものがたくさんたくさんじゃありませんけれども、骨干になっているのですけれども、なかなか業者間協定というものが国内であちらこちらにもできているようでございますけれども、これは最低賃金法とは全然関係のないものだと思っております。業者間で賃金をこしらえたって、労働者が自分の賃金をきめるために、自分の要求を入れて賃金がきまっていくというのは、法律できめられた原則でございますと、労働者は指導されても、そういうものが労働省の意見を入れるような貸金に発展させていかなければ意義はないと私は思っております。しかし、この法案が非常に重要に、業者間協定に基く当事者申請により最低賃金決定するという方式の第一点に立っておりますから、業者間協定ができていった経緯、それからどういうところに、どういう工合に業者間協定というものができているか、これは私から言えば法案には関係ないと思いますけれども、参考資料として出していただきたいと思います。それでなければ非常に困ると思いますから、その点はつぶさに出していただきたい、これをお願いしておきます。  それからもう一つの大まかな問題でございますけれども、政府は今度の案をお作りになるときに労働問題懇談会ですか——いや、三者構成の諮問機関の御意見——1中央賃金審議会の何を聞いておやりになったと思いますが、あの中央賃金審議会の議論の中を見てみましても、私はやはり低生活者を救うためには最低の一律をきめて賃金をきめなければいかぬというような、それが一番よい方式だというようなことも非常に意見として出ておりました。このいきさつ、それから答申、そういう点もぜひ資料に出していただきたいと思います。  それからもう一つの問題でございますけれども、われわれが審議するに当りましての資料としてお願いしたいのは、家内労働者の大まかな状態、これは一ぺんに全部出せといったって無理かもわかりませんけれども、できるだけの家内労働者実態というものを出していただきたい。  それからもう一つは、中小企業零細企業に対する保護をやっていくんだとおっしゃいましたが、今どういう保護政策をおとりになって、特にこの最低賃金の提案をされたこれに見合って、特に中小企業零細企業の保護というものについて強調されておりますから、今後どういう工合に保護政策をお立てになっていくか、こういう点をぜひ資料として出していただきたいと思います。  それからもう一つお願いしたいことは、先ほどお願いしたか、ちょっと記憶が何ですが、現代の各層別の賃金、国内の労働者賃金一般労働者賃金家内労働者賃金状態、こういうものをあわせてこの前から要求いたしておりますけれども、失業の状態、これはもう資料ができると思いますけれども、その点も一つぜひ、労働力の配置がどういう工合に行われているかという、この資料についてはぜひ出していただきたいと思います。私はこういういろいろの資料をお出しいただいて、委員会全体として、よりよい最低賃金を作るために審議をいたしたいと考えておるわけでございます。  それからもう一つだけお聞きしておきたいと思いますが、このきょう法案を出された内容については、大まかに、概念的に、資料の要求とそれからILOの二十六号条約というものをどういう工合に見ておられるかということは先ほど聞きましたが、この批准をどういう工合にしていかれるか、二十六号条約の批准というものはどういう工合にしておいきになるのか、それを一つ。
  35. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 本案が成立いたしましたならば、なるべく早期に批准をいたしたいと思います。
  36. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 二十六号条約を批准されるのはけっこうでございますけれども、たとえば二十六号条約条約案と、続いて出ている勧告案、これは、政府でよくお調べになっていると思いますが、あの両方を見てみましても、この法案ではなかなか私はむずかしいと思うのだが、どういう格好で批准しようとしておられるか。
  37. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 御承知のように、最低賃金に関する条約にうたっておりまする条文は、本案によって満たされておるという考え方のもとに、批准をして差しつかえない、こういうふうに解釈しております。
  38. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、大筋の問題と資料の要求をいたしましたから、あらためて、それに基いて次会に質疑を行いたいと思います。
  39. 久保等

    委員長久保等君) 本案に関する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 久保等

    委員長久保等君) 速記をやめて。   [速記中止]
  41. 久保等

    委員長久保等君) 速記を起して。  御異議ないと認めます。  暫時休憩いたします。    午後零時二十二分休憩    —————・—————    午後一時五十二分開会
  42. 久保等

    委員長久保等君) 午前に引き続き、社会労働委員会を再開いたします。  次に、労働情勢に関する調査の一環として、昭和三十四年度労働省関係予算に関する件を議題といたします。御質疑を願います。
  43. 片岡文重

    ○片岡文重君 私はこの際、職業訓練の問題について、この三十四年度予算を拝見した結果、少しお尋ねをしてみたいと思うのですが、現行職業訓練法が昨年の五月成立いたします際に、衆議院におきまして第十二条が新たに追加せられて、「市町村等の行う職業訓練」という一条が入ったわけでございます。これは大臣も御承知になっておられると存じますけれども、念のために読んでみますと、「市町村、民法第三十四条の規定により設立した法人、」つまり公益法人です。それから「法人である労働組合その他の営利を目的としない法人が職業訓練を行う場合において、労働省令で定めるところにより労働大臣の認可を受けたときは、この法律の適用については、その職業訓練は、公共職業訓練とみなす。」こういう一項が入っております。なお、この条文は第二項もあるわけですが、とりあえずこの第一項についてお尋ねしたいのですけれども、この条文が入りましたときに、これは議員修正であって、労働省としては関知せずというまでには御答弁はなかったのですけれども、当時の労働大臣石田博英君もこの修正については了承もせられ、そしてこの市町村等の行う職業訓練に対する取扱いについては善処することのお約束があったわけです。ところが、この三十四年度の予算案を拝見をすると、お約束のいわゆる善処というものがなされておらないのではないか。この十二条訓練に対してどういうふうにお考えになっておられるのか、一つお答えをいただきたいと思うのです。なお、大臣として的確な御答弁ができないということであるならば、担当局長から具体的な御説明をいただいて、それに大臣としての責任あるお立場からの御所見を伺いたいと思うのです。それでもけっこうです。
  44. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) ただいまの御質問の訓練法十二条の、「市町村等の行う職業訓練」という一条ができたいきさつは、先生のおっしゃる通りでございます。その当時におきましても、こういうものについての補助のことにつきましていろいろ議論があったように承わっております。われわれも職業訓練の発展のために、これらのものがますます水準が向上していくというようにやっていくというのはきわめて大事なことだと思います。現在のところ、十二条関係労働大臣の認可を受けたものはほとんどございませんが、市町村、それからその他の法人、それから労働組合、この三つのものについてはございませんが、ただ一番その当時にも問題になりましたのは、建築関係労働組合で従来から技能者養成を行なっているのでございます。これらの関係につきましては、従来ともいわゆる基準法に基く技能者養成というものをやっておったわけでございます。今回の場合には労働組合が行うということで、まともに十二条の適用を受けませんけれども、現在のところ、第三章の事業内職業訓練によりまして、共同職業訓練という形で現在補助いたしているような状況でございます。なお今後、労働組合あるいは市町村等の行う職業訓練制度が順次発達して参り、成長して参るという場合には、われわれも十分この実情に即して処置して参りたいと思いますが、現在の状況はそういう状況でございますので、お答えにかえたいと思います。
  45. 片岡文重

    ○片岡文重君 いわゆる事業内職業訓練ということで、企業団体が自発的にやっている職業訓練については補助している、こういうお話のようですが、事業団体のやっている職業訓練といっても、大企業のやっているような職業訓練と、それから今お話のように、土建総連等の傘下の組合がやっているような職業訓練とは、これはその規模において、組織においてももう雲泥の相違があるわけです。それで、今十二条の訓練の認可を受けたものがこの一年間に一つもないというお話ですが、あの訓練審議会答申を見ましても、私はむしろ認可を受けられないというのが実情でしょう。労働省令の求めている水準が、私は決して高過ぎるとは、言いませんが、これは理想としては訓練施設の恒久化がされ、水準の高いことが望ましいには違いありませんけれども、やはり大企業の行う訓練施設であるならば、それはいかに程度を高く求めても何とかこなしていける、あるいはその事業のためでもありますからやっていけると考えられます。しかし、土建総連の組合員であるいわゆる一人親方、こういう人たちが零細な資財を寄せ合ってやっていくというようなことでは、そう高きを求めてもこれは無理ではないか。聞くところによると、労働省におかれても、この点については答申を尊重せられて、なるべく近いうちに具体的な省令、その他の改正を行う用意があるやに伺ったのでありますが、ついでですから、それでは、その訓練施設の基準についてそういう具体的な措置が現に進行しつつあるのかどうか、その点を一つお伺いします。
  46. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) ただいまの御質問の点につきましては、この法律によってできました職業訓練審議会におきまして、昨年の九月に諮問をいたしました。その後、鋭意委員会におきましても、特に訓練基準部会というものを設けられまして検討していただいたのでございます。つい先般、この基準に関する答申が出まして、四月一日からこの基準で改正省令を施行していきたい、こういうふうに考えております。
  47. 片岡文重

    ○片岡文重君 その四月一日から、そうすると訓練施設の基準を改正されることによって、今局長が最初にお話しになられましたいわゆる事業内訓練の施設のうちで、たとえば土建総連、あるいはこれに類似するような、何といいますか、零細といっては何でしょうけれども、小さな規模の訓練施設が労働大臣の認可を受けられる数が多くなる。少くとも認可の申請をしようという気持になるような程度にまでその水準が改められるのかどうか。かりに四月一日からその省令の基準が直されたとしても、以前とあまり違わないような内容ではこれはどうにもならぬ。それで、訓練審議会答申を見ると、相当具体的にもなっておるようですから、この程度に引き下げてくれば、大体認可の申請をしようという意欲を持つものが相当出てくると私も思うのですが、その改正される水準というもののレベルは、この答申案に一致ということはどうか知りませんけれども、大体この期待に沿うものであるかどうか、重ねて一つ御答弁をいただきたい。
  48. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 今回のいろいろな改正の要点は、一つは訓練の種目等についてもう少し拡大していく必要はないか。あるいはまた、統合してやった方がいい。それから期間につきましても、たとえば事業内の場合において三年でやっておりましたものを二年でよろしいといったようなことで、いろいろの基準を作っておるわけです。われわれといたしましては、今先生のお話のように、一ぺんに、これが高いことは望ましいのでございますけれども、現状を無視してそこまで引き上げていって、ついてこれないようにするというのが職業訓練を発展させるゆえんではないと考えます。できるだけその基準に早く近づいていくように、行政官庁としてはいろいろな指導もしていかなければならぬ、援助もしていかなければならぬ、こういうふうに考えておりますが、今先生のおっしゃるように、そういう基準ができたために、ついていけないから認可もしないというようなことには私はならないと思います。
  49. 片岡文重

    ○片岡文重君 そうすると、この四月一日からの基準改正によって、若干といいましょうか、ある程度の認可を受ける施設もできてくると思うのですが、その前に、土建総連でやっておるような施設も当然これは認可の申請を私はするのではないかと思う。現行の施設を私はつぶさに視察をして参っておりませんから、具体的にどこがどうだというわけには参りませんけれども、少くともこの事業団体でやっておる訓練生は大体一万五、六千になるというお話です。従って、この一万五、六千になる子供たちの訓練を扱っておるところに対して、相当の国庫からの補助をなされることは私は当然ではないかと思うのですけれども、また、今若干の補助はされておるようです。しかし、その補助はあくまでもこの十二条にいうところの施設としての補助ではなくて、従来からの、いわゆる基準法における職業訓練の延長としてやっておったそのままの程度であって、あくまでもこの職訓法十二条による施設として認めるところのものではないようですから、この補助されるやり方について、少し現実に沿わないものがあるのではないかと私は思うのですが、この点、労働省としてはどういうふうにお考えになっておられましょうか。
  50. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) ただいまの土建総連等がやっておりますものが、従来の技能者養成でやっておったものの単なる引き継ぎであるというふうには考えておりませんので、職業訓練法に基いて事業内職業訓練として認定を受けております。これに対する事業内職業訓練の補助につきましては、特に普通の大企業もやるということではございませんので、個別的にやっておったのではやっていけないというところが共同してやるというものに対する助成金、補助金であるわけでございます。従いまして、三十三年度の予算につきましても、予算額といたしましては、従来の基準法時代の九百万円から三千万円まで引きしげましてそれから補助の率につきましても府県も補助する。従って、国が四分の一、府県が四分の一補助する。従来は大体直接補助が三分の一程度でございましたが、補助率もそれで半分になるということで、できるだけの措置は講じたつもりでございます。
  51. 片岡文重

    ○片岡文重君 今の御答弁ですと、土建総連等のやっておる、いわゆる事業団体がやっておる職業訓練を認めてそれに補助をされるということになると、それは十七条かなんかの施設としてその補助をしていくということに私はなると思う。私の言うのは、結局それはあくまでも市町村等の行う職業訓練として第十二条一項を明確に設けておるのであるし、しかもこの職業訓練を経た者は、国として公共職業訓練を修了した者としてその資格を認めておるわけですから、特に施設なり、公益法人なり、あるいは労働組合というものが自発的にこういう建設的な事業を行うのですから、これに対してやはり明確な、法に基いて的確な補助を予算の上に計上していく、そうしてその補助を不安なく続けていくということが私は好ましいことではないかと思うのです。結局この十二条によらないで、便宜的な措置を講ぜられておるところに若干現状に沿わないような点も出てくるのではないか。  私はここでお尋ねしたいのは、あくまでも明確な条文もあることだから、しかもその条文は明らかにそういう公益法人、労働組合等の設置するであろうところの訓練施設を目ざしているんですから、すなおにそれを取り上げて私は補助されてはどうかと思うのです。これは百田局長も当時担当しておられたんですからよく御承知になっておると思うのですが、前石田労働大臣もこれについては善処することを、「これは将来の問題として善処して参りたい」ということを、これは明らかに速記の上にも残しておられる。「施設に対してもできるだけ、また経費の面でもめんどう見ていくということは私どもも念願しておるところであります。」と、こういうことを、言っておるわけです。ですから、まあ多少議員修正という点もありますから、労働省当局としては、あるいは御不満があろうかもしれぬけれども、すでに法として成立をして実施される段階になったのですから、まあおそらく百田さんのことですから、そう腹の小さいことは私は考えておられないと思う。思うが、現実にこの予算の面から見てこの便宜的な措置を講じておられるということであるならば、この際明確にして、便宜的でなしに、法にのっとった補助をやっていただきたい。で、それならばこの法律を改正せねばならぬと、こういうことにもなろうかと思うのですが、せねばならぬということであるなら、私は、こういう法の改正については、与野党ともにそう御異論はなかろうと思うし、出していただければ、すぐにも審議に応ぜられるものではないかと思う。何よりも労働省当局のお考えがこれは左右する問題であろうと思う。この点について御見解いかがですか。
  52. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 先ほど申し上げましたように、現在この十二条による認可を受けたものというものがございません。これは昨年法が施行になりましてからまだ八カ月程度しかたっておりませんので無理もないことだと思いますが、われわれといたしましても、まだ法律施行早々でもございますし、できるだけこうしたものが発展していくようにこの実態を調べまして今後、これらのものが健全に発達していくような措置を講じて参りたいというふうに考えておりますが、何しろ施行早々でございますので、もう少し実態をながめさしていただきたいと思います。  なお、お話のございました現在労働組合でやっておりまする土建総連等の行なっておりますものにつきましては、現在のところ、そうした方法がございますので、それによって措置いたして、実害のない措置は講じてございますから、今後の問題として、十分私どもといたしましても研究いたしたいと思っております。
  53. 片岡文重

    ○片岡文重君 確かに今やっておられないというのじゃなくて、局長のおっしゃるように、補助はいただいておる。ただあくまでも便宜的であり、結局十六条に依存して便宜的にやっておるわけです。従って、その格差も非常についておりまするし、それから何よりもこの実情に沿わないのじゃないかというのは、結局事業団体として多数の人が集まって施設を作るわけです。しかし、実際にやっておるのは、むしろその団体ではなくて、労働組合がやっておるわけですね、この一万五千人のうちの約八千人というものは労働組合の直接の人がやっておる。いわゆる一人親方、こういう実情を見れば、これはやはりいつまでも便宜的な措置にまかすべきじゃなくて、やはり明確にこれに対応する措置をとるべきである、こう考えるのですが、いかがですか、重ねて一つ。
  54. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) その点は十分一つ研究して参りたいと思います。
  55. 片岡文重

    ○片岡文重君 大体労働大臣としても、今安定局長との質疑を通して事態の内容がおわかりいただけたと思うのですが、要は、現在若干の補助はその訓練施設にいただいておるわけです。いただいておるけれども、これはあくまでも便宜的な措置として従来から、この職訓法の制定される前から、基準法の中における職業訓練施設として与えられた補助の延長として私は与えられておるものと思うのです。しかし、職制法が制定せられ、その法の中においてそういう施設はあくまでも労働大臣の認可を受けてやれば、これは公共職業訓練と見なすのだということで、今でもその補助の対象となっておる事業者訓練とみなされておる。今の土建総連でやっておる訓練施設は、施設を終った者は公共職業訓練を履習した者として認めているわけですから、その施設に対しては、つまり十二条の職業訓練を履習した者として認めているわけですから、その施設に対しては当然その十二条に基いて補助を出すべきであると、これが私どもの今申し上げておる内容なんです。それに対して局長のおっしゃるのには、今までもやっておることであるし、また、その認可も、十三条による認可はしておられないからと、追って研究をしたいと、こういうことになっておるわけです。この職訓法のできたときに、このことは問題として取り上げてそれで今ここで修正を企図しておったのでは法律の成立が危ないから、この際は一つこのままでいって当局として便宜的な措置を考えるということであり、時の労働大臣も将来の問題として善処しますと、こういう約束をしておった。もちろん次の国会とはこの記録の上には残しておりませんけれども、プライベートの話し合いでは、大体次の国会等においては考えましょうと、こういうことになっておったわけです。これをあえて持ち出して私はどうこういうわけではありませんけれども、やはりこういう民間において実際に行われる訓練であり、いわば政府が全額を出して積極的にやってしかるべきところを民間のしかもこれは大工さん、左官屋さん、建具屋さん等の、言葉は悪いかもしれませんが、いわゆる零細な一人親方と言われるような人たちが集まって作ってやっておるところですから、これらに対してはやはり補助のよるべきところを明確にして、不安もなしに、そして現実にマッチするような方法で補助してはどうかと、こういうふうに考えるわけです。一つ大臣の御所見をこの際承わっておきたいと思います。
  56. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ただいまのお話し合いでよくわかりましたが、一ぺんよく部内で検討をいたしまして、なるべくそういうようにできるように努力をいたしたいと思います。
  57. 片岡文重

    ○片岡文重君 なるべく一つそうしてほしいのですが、これがいわゆる委員会における御答弁であって、今も速記を読み上げました通りに、来国会あるいはその次の通常国会というようなことではなくて、期限もなしに一応やりましょうと、要するに、反対をする根拠はないからやりましょうという程度では、はなはだ私どもとしてはたよりないわけです。やっぱり最近の機会にそういう点は具体化するという御決意を一つ私はやはり伺っておきたいと思うのです。問題が少しこまかい問題でもありまするし、補助される金額も、総額から見ればそう大きな金額ではないわけです。せいぜい一人当り千円程度ではないかと思う。これは十六条によれば、金属機械産業等の一年間一人当り年間当りは千四百十円であり、今問題に取り上げておる土建総連がやっておるところの訓練は建設、繊維産業等の部類に入っておるようですから、そうすると、一人当り年間当り千百八十円、ですから、これがかりに八千人あったとしても、その金額はそう大したことじゃないと思うのです。そういう金ですから、ぜひ一つできるだけ近い機会に、法律等でできない場合には、この訓練施設の基準がここでもって四月一日から改正されるわけですから、これを機会にぜひ実施していただきたいと思うのです。それで、なおこれを強く私たちが要望するゆえんは、分補助されておるのは、実際にやっておる土建総連にそのままいかないで、その傘下にあるところの幾つかの支部と申しましょうか、分会といいましょうか、そういうところにおけるところのいわゆる一人親方の団体にいくわけです。ですから、実際に仕事をしておる、実際にその施設を管理しておるこういう人のところにはいかないで、その一段上のところにいくわけです。間接的にその補助がなされておるわけなんです。そこに現実と若干ズレが出てくると思う。ですから、あくまでも私どもは現実にその施設を運営しておるところにその費用がいくように、補助がいくようにしてほしいと、こういうことですから、この点については、一つぜひ御考慮をいただきたいと思います。  それからもう一つ、これもまた最初に局長にお伺いをいたしますが、この十六条による補助金の格差です。これは一つ撤廃してはどうかと思うのですが、その理由はもう私が申し上げるまでもなく、十分御推察いただけることと思いまするので、時間もありませんからそうくどく申し上げませんが、この点、一つできるだけこれは御賛成いただいて、格差を撤廃してもらいたいと、こう思うのです。特に同じ施設を出てきても大工、左官というような人たちはいわゆる建設関係です。ところが、板金とか船大工さんとかいうようなものは、これは結局金属機械産業の方に入るわけです。同じ土建総連のやっておるところでも、こういう違いは出てくるし、同じ仕事に、まあ同じ仕事といっても、同じ職場に従事する人たちです。その中にこれだけの相違が出てくる。もちろん私はこの格差を撤廃せよと言って低きにつけよと、こういうことを言っているのではもちろんありません。これはやはり撤廃せよと言うからには、低いものをやはり格上げしなさいと、こういうことを要望しておるのですが、この点についていかがでしょうか。
  58. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) この格差をつけましたのは、従来の事業内の職業訓練の実態を見ますると、特に今後、職業訓練法のできた趣旨から考えまして、積極的に伸ばしていかなきゃならぬ方面の基幹産業部面における訓練、事業内職業訓練というのはきわめて微々たるものでございまして、一番多いのは、たとえば国民生活に直接関係のある、衣食に関係のある職種もございますが、また、工芸的なものとか、そういったものも非常に多かったわけです。従いまして、そうした従来からやっておったものはとにかくといたしまして、今後はできるだけ基幹産業部面における、特に中小企業におけるそうした金属、電気機械といったような面における職業訓練を奨励して参りたいということで、この格差をつけたような状況でございます。しかしながら、今御指摘のように、これはいろいろな職種をあげたのでございますけれども、掘り下げて参りますと、今先生のおっしゃったような事例も出て参ります。また、区分を違えた同じ職種によりましても、その訓練の方法内容等あるいは訓練時間等の問題でクラスの違う方でも、たとえば補助金の額が少くなっておる方でも、実際はそういった金額が多くなるという場合もあり得るわけです。また、労働市場の状況によっても、今おっしゃったように似たようなものもあれば、できるだけさらに伸ばしていかなきゃならぬ面、いろいろな面を考慮しなければなりません。この点もわれわれの方でも三十四年度以降また再検討したいと、こういうふうに考えております。
  59. 片岡文重

    ○片岡文重君 今の御答弁によって、三十四年度以降考慮して下さるということですから、一応その点はそれは了といたしましてできるだけ近い機会に考慮をいただきたい、具体化していただきたいことを要望しておきます。  次に、指導員の免許基準が依然として変らないようですけれども、土建総連等でやっておるような施設については、そう厳格な基準で、他の二次産業、三次産業等における高度の規制をすることも無意味とは言いません。また、必要はないとは言いませんけれども、やはりこれまた、あくまでもこういう問題は、従事しておる職域が職域ですから、なるべく現実にマッチするような方法がいいと思うのですが、この基準を一つ緩和することについてお考えは今のところありませんか。
  60. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) わが国のやっておる職業訓練の水準を向上させるというために一番必要なことは、指導員の質の向上という問題であろうかと思います。それによりまして、職業訓練の基準等も作ってございますが、そこまで引き上げていくというようにするためには、どうしても一定の資格以上を持った者が指導員としてやっていくということが必要であろうかと思います。もちろんその程度はどの程度にするかというような点につきましては、職種その他によって簡易なもの、複雑なもの、いろいろ違うかもしれませんが、考え方としては、できるだけこの指導員の質を向上していくということを考えていくべきであろうと思います。従いましてこれを実情に適した方法によってやっていくということは考えておりますけれども、現在引き下げていく、緩和していくということは適当ではないのではないかと、こういうふうに考えております。
  61. 片岡文重

    ○片岡文重君 私の言葉が緩和ではまずかったかもわかりません。確かに水準を引き上げていくということも必要です。それは確かに十分の補助もいただけない、いわゆる一人親方等の零細な諸君が集まってやっておる施設ですから、従って、施設が十分に労働省の認可も得られないくらいの施設ですから、当然これに招聘されるところの指導員もそうやはり高きを求めることもできないわけです。だからといって、低くてもいいのだということを私は言うわけにはいかない。あくまでも、先ほどからくどく主張いたしておりますように、十分な補助を与えて、これがしかも直接そこへいくようにして、与えられた補助が百パーセントに活用される、こういう態勢が作られていきますならば、これはできるだけ指導員も高級な指導員を招聘されることは望ましいことである。けれども、現在ではなかなかそこまでいかれないわけです。ですから、この基準等それから補助率等の改訂を行われる場合にも、これらの点について十分やはり御考慮いただいて、引き下げを要望するものではありませんけれども、あくまでも現実に沿うように、これは一ついろいろな便宜も考えられるでしょうからやっていただきたい。  それからいま一つお願いしておきたいのは、これもこの職業訓練法制定のときに問題になったのですが、この職業訓練の施設に入っており、あるいはこの訓練を履修された再少年が、勤学の意欲に燃えて定時制高校なりあるいは普通高校等に就学をする場合に、訓練施設において履修された科目は重複して履修せぬでも、単位さえとっておるならばこれは免除してもいいではないかというふうに考えられこれについては、労働省当局においても御異存はなかったはずです。当時の記録を見ますと、労働大臣も、この法律は、つまりこの法律というのは学校教育法の一部改正です。この履修科目を重複して履修しなくとも、単位さえとっておるものは免除しよう、この改正について学校教育法の一部を改正しなければならぬ。この学校教育法の一部改正は、他の問題と同時に、衆議院に提出されておる当時に、すこぶる難航しておったのですけれども、石田労働大臣は、これは難航はしておるけれども、通るでありましょう、必ず通りますからという、その上で善処するという御答弁のようでありました。ところが通らなかった。この国会にまた提出されております。これがまた、今衆議院で問題になって、これは与野党いずれにも問題があるようです。で、今のところ、三たび、これは廃案になるのではないか、はなはだ私どもとして憂うべき状態になっておる。で、もしそういうことであるならば、これは現に職業訓練所において履修しておる者あるいはこれから入学する者について、はなはだやはり大きな負担となることですから、どうしてもほかの問題のためにこの問題が解決しないということであるなら、私は一つ労働省当局が、特に労働大臣から文部大臣等ともよく御相談をいただいて、この分だけでも切り離してやっていただくなり、あるいは文部省令等で適宜、それこそ便宜的な措置をとられるように、一つ積極的に働きかけ下さるお考えはないかどうか。
  62. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) ただいまお話しの点は、職業訓練施設における職業訓練と、学校における課程との間の重複を、つまり職業訓練を受けておる人たちが、また定時制高校に通わなければならぬという二重の負担を避けるための措置といたしまして、片っ方で履修したものは、片っ方で学校の学校教育法の方でも履修したことにするといったような措置を講じてもらいたい。これは今お話しのように、本法案が前国会において審議されるときに十分にいろいろ御意見のあったところであります。われわれといたしましても、これはぜひ望ましいことであるという考えでございます。不幸にいたしまして学校教育法の一部改正法案が今お話しのようにまだ成立いたしておりません。われわれ実は今国会で成立するものと期待いたしまして、この四月一日から先ほど申し上げました実施いたしますところの職業訓練の解釈基準、これも文部省と話し合いで、ちゃんとこれが施行になりますれば、この面は履修したものとみなすというような工合で基準は作ったわけです。そこでまた、現在定時制教育あるいは通信教育等の課程の間の学科の免除、あるいは省略ということについてもすでに具体的な話を進めておる。いずれにいたしましても、これは学校教育法の一部改正ができませんと、学校教育法の方としては、われわれの方はとにかくといたしまして、これをちょっとそのまま学校の課程と認めるというわけには参らないと思います。ぜひ一つ成立することをわれわれは期待しております。
  63. 片岡文重

    ○片岡文重君 労働大臣に最後に、これはお尋ねというよりも御要望申し上げて、御所見を伺いたいのですが、大体御答弁としては、今安定局長の御答弁で私は尽されておると思うのですが、なおその際に、大体文部省でお考えになっておるところの重複履修の免除の内容については、必ずしも私は労働省でお考えになっているものと一致しておらないんじゃないか。かりに今おられるなら、それは双方譲り合ってのことだろうと思うのですが、やはりなるべく私は職業訓練所等に入る子供の生活環境なり、経済的な面を考慮していただいて、できるだけのやはりめんどうをみてやっていただきたい。従って、大幅に、それこそ大幅にできるものは重複を避けるように方法を考えていただいて、そういう点から一つ、労働大臣にも積極的にこれは文部省に一つ働きかけていただきたいと私は思うわけです。この要望を申し上げて、以上今までに御質疑申し上げました訓練施設に対する補助の明確化、そしてそれと補助方法の現実に即応するような方法をとっていただきたい。それから補助の、現在の十六条による補助ですと格差がA、B、Cに分れておるわけですから、この格差を一つなくしてやっていただきたい、同時に、もっと引き上げたらどうかというようなこと、それから今まで申し上げたその点は、結局労働大臣の一つあたたかいお志によってお考え下されば、必ず私は、私どもの要望するようなことに落ちつくと思うのです。それから最後の一つの、履修科目の問題については、これは一つ御苦労でも橋本文部大臣等ともよくお話し合いをいただきまして、この子供たちのせっかくの勉学の意欲を助長できるように一つ御努力願いたいと思うのですが、一括いたしまして御所見を伺っておきたいと思います。
  64. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 前段の方の補助の問題につきましては、至急に閣内で検討いたしまして努力いたしたいと思います。学校教育法の関係につきましては、文部省当局ともよく相談をいたしまして、私どもの方の考え方が通りますような努力をいたしたいと思います。
  65. 小柳勇

    ○小柳勇君 ただいまの片岡委員の質問に関連して一つ質問いたしておきたいと思います。  今の就職状況、新規学校卒業者の求職、就職状況の資料をここにもらいましたが、私が先日ここで学校卒業者の就職状況を質問した場合の数字と相当の開きがあるように見受けます。それは、ここで中学校の卒業者三十四年一月末、三八・一%、高等学校卒業者三十四年一月末、四三・五%、しかも一月から三月までは大体大きな会社は暮れに就職も決定いたして、三カ月の間にはさほどの拡張はなかったものと判断するが、この前のこの委員会における答弁との差を、なぜあのような差があったか、御説明願いたいと思います。
  66. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 私、この前御説明申し上げましたのは、昭和三十三年三月、つまり三十二年度の卒業生の最後の就職状況を申し上げたのです。現在これは就職あっせん中でございます。それで昨年同期の状況をここに書いてあるのをごらんになりますと、昨年一月末の状況と、ことしの一月末の状況を比べますと、昨年はこの前申し上げましたように、中学校で九〇何%という就職率でございましたが、一月までの間は三五・四%であったのです。この後二月、三月ということで、その後の就職が決定いたすわけであります。昨年に比べてこの点においても多少同期と同じ、さらにことしの一月末と昨年の一月末を比べますと、多少ことしの方がよくなっているような状況でございます。この前申し上げました九〇何%というものは、最終の締めくくりの数字でございます。これは中間の数字でございます。その点御了承願います。
  67. 小柳勇

    ○小柳勇君 そうしますと、この間の九〇何%というのは、三十三年の四月末の話ですか、それとも何月に一体あれを、何月と判断したらいいですか。
  68. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 三十三年三月卒業生につきましては、最後の締めくくりを六月末にすることになっております。それまでの報告が六月末にまとまりますので、六月末ということで安定所の特別な就職あっせん活動というものも、毎年六月末までやっております。六月末ということで御了承願いたいと思います。
  69. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 雇用の、私が要求した資料が出て参りましたが、あとは質疑の中で明らかにしていきたいのですが、ただ新規学卒の今の状況が出ておりますけれども、政府産業投融資、その他の産業労働力に対する雇用計画ですね。たとえば新規学卒を、政府経済計画の中でどういう雇用策を立てていくかというところの資料がないわけで、一つそれを出していただきたいと思います。
  70. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 政府の全般的な雇用の対策といたしましては、経済企画庁で出しております三十四年度経済計画の見通しということで尽されておるというふうに考えておりますが、なお、御要望によりまして資料を差し出したいと思います。
  71. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 これはどうも失礼いたしました。経済企画庁へ委員長の方で、その資料の提出を督促していただきたいと思います。
  72. 久保等

    委員長久保等君) 本件に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  74. 久保等

    委員長久保等君) 次に、国際労働条約批准等に関する件を議題といたします。御質疑を願います。
  75. 光村甚助

    ○光村甚助君 私の質問の内容に全逓信労働組合に関する問題がございますので、午前中に郵政大臣の出席を求めておいたのですが、いまだに出席ございませんが、どうなっておりますか。
  76. 久保等

    委員長久保等君) 郵政大臣は衆議院の逓信委員会の方へ出席中でございます。
  77. 光村甚助

    ○光村甚助君 それなら、私が労働大臣に質問している間に郵政大臣を呼んでいただきたいと思います。
  78. 久保等

    委員長久保等君) 連絡をとります。
  79. 光村甚助

    ○光村甚助君 先月の十八日に、労懇からILO条約は批准すべきものであるというような答申が出て、その後、衆議院ないし参議院の予算委員会で、この問題に対し総理大臣並びに労働大臣のお考えを、私も傍聴をして聞きましたし、速記録も拝見いたしましたが、まだ私どもの納得いかない点が多々ありますので、なるべく重複は避けたいと思うのですが、労働大臣にお伺いいたしたいと思います。労懇の答申案が出てから、もうすでに二十口になるのです。その間、政府の方では準備を進めておる、あるいは準備中であるというような答弁で一つも進展しておりませんが、その後どういう関係になっておりますか、お伺いしたいと思います。
  80. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 労働問題懇談会の答申が出ましたので、政府部内におきまして、この答申に盛られておる趣旨を実現するためにはどういう必要があるかということにつきましてそれぞれ関係者を集めまして、批准の準備をするために、あるいは法改正、あるいはその他、たとえば公労法を改正をするという場合に、その他にどういう影響をしてくるかというような事柄についてそれぞれ鋭意検討しているわけなんであります。それができましたならば、まず国内法の改正に着手をする、そういうふうな段取りを今つけて、鋭意研究を進めておる最中でございます。
  81. 光村甚助

    ○光村甚助君 私は労懇の答申案を見ても、公労法を改正しなさい、あるいは国内法を改正しなければ批准ができないということは書いてないと思うのです。これについての労働大臣のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  82. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 御承知のように、今までILO条約に限らず、いろいろな条約締結いたします、それを批准いたしますためには、まず国内法を、それに抵触しておるような面がありましたならばそれをまず修正しなければならない。従って私どもは国内法で抵触するといわれている面を修正しなければならない、そういうことについての研究を進めておる、こういうわけであります。
  83. 光村甚助

    ○光村甚助君 その国内法の改正とおっしゃるのは、つまり四条三項を削除すればいいということなんでしょう。だから労働問題懇談会でも四条三項、地公労法第五条三項を廃止しなければならないと書いてあるのですね。これは速記録にもありますように、私の方の河野さんからの質問にも、ただこれだけを削除すればいいんであって、あとの問題は申しわけ、つけたりだということなんです。このあとの問題は、大臣の方は石井報告の中にある問題を引用されますけれども、石井報告というのはただ個人の考えであってあれが労懇の付則につけなければならない問題ではないと私聞いているのですが、その点どうですか。
  84. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 申すまでもなく、御存じのように、条約を批准する手続政府がいたす場合においては、国会の承認を必要といたすわけであります。そうしてまた、その批准を手続をするためには法改正をやらなければならない、そういうことの行政上の責任は内閣が国民に対して負うておるわけでありますから、一つの法律を改正いたしますにつけても、やはりそこを一部分を動かせば他にどういう影響があるかというふうなことを慎重に検討することは行政府の当然の義務であります。そこで、私どもは今まで公共企業体等につきましても、すでに二年ほど前に公共企業体についての審議会を作りましてその答申も得ております。われわれとしては、第一そういうものをいかにすべきかということもついでに腹をきめる必要があります。それで、法律というものは私は朝令暮改をなすべきでないので、機会があって修正を必要とするようなときには、なるべくりっぱな法に完備する方がいい、こういうことを行政府が考えるのは当然でありますが、しかしながら、私は今そういう問題について、その意見政府決定するという段階はなかなか時間がかかることであろうと思いますが、そこで一つ答申にあります公労法関係のことを考えましても、御承知のように、職員でない者が今までは組合の役員になれなかった、それが削除されるということになると、職員にあらざるものも組合員となれる、そういうことになれば、四条三項だけではなくして、十七条にも影響があることは光村さんよく御存じの通りであります。公労法全体についてわれわれが検討をすることは当然のことでありますし、それからまた、一年半にわたって労働問題懇談会が慎重に検討せられましたその過程において小委員会が設けられた、その小委員会においてこういうような事項も当然検討をすべきであるという御意見については、行政府と正しては傾聴に値いするものであると存じまして、そういうものも十分検討した上で法改正に万全を期し、批准をすることによって国民の負託に沿うように考えなければならないと、こういうことでありますから、私どもは批准をなるべく早くしたいということで、今申し上げましたような意味を体して、政府部内において急いで検討を続行している、こういう現在は過程であります。
  85. 小柳勇

    ○小柳勇君 労働大臣のさっきの言葉の中に、労働問題懇談会で検討したのは、批准した後の関係法規がどのようにあるか、あるいはどのようにしなければならぬかというようなことで労懇を設けたというような発言がありましたが、われわれは、労働問題懇談会が結成されたとき、私もその一員でございましたけれども、あの八十七号条約を批准するか、しないかを検討するために懇談会ができた。しかも前労働大臣は、国会で批准問題が議題になって質問されたときに、現在、労懇に諮問中でございますが、批准するか、しないかは、その答申を待ってきめる。もし労懇の答申が批准せよと出たならばもちろん批准いたします、批准を尊重いたしますと発言しています。その点について今の労働大臣の発言は少し内容、ニュアンスが違うようでありますが、いま一回はっきり御答弁願っておきたいと思います。
  86. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 労懇の答申を尊重するという趣旨において、前内閣と現在の内閣とにおいて少しの差もありません。私が先ほど来申し上げておりますことは、労働問題懇談会というものは、権威者の集まりでありまして、そこで御検討願いました答申は、もちろん尊重いたすべきでありますが、国民に対して責任を負う行政府としては、やはり条約の批准あるいは法律改正ということは、政府が国民に対して責任を負うのでありますからして、権威者の集まりである答申の御趣意は、われわれの腹をきめるもちろん重大なる参考資料であり、尊重する建前に変りはありませんが、国民全体に対しての責任を負うべきものは政府でありますから、政府としてはやはりこの批准を行うために法律改正をする等の諸般の手続をやるためには、万全の調査研究をいたした上でないといけないということで、鋭意その研究を促進しておるという段階でありますから、御賛成願えることかと思います。
  87. 久保等

    委員長久保等君) 郵政大臣が御出席になっておりますので、お知らせいたします。
  88. 小柳勇

    ○小柳勇君 関連して質問いたしますが、労働大臣は、労懇の答申、たとえば石井報告、たとえば中山会長の答申については、あの条約を批准するか、しないかということにウエートをおいてとられたのか、あるいは批准をした場合の後の関係法規の修正なりあるいは手をつけなければならぬもろもろの法規にウエートをおいて答申をとっておられるのか、その点、答弁を願っておきたいと思います。
  89. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 政府労働問題懇談会に付議いたしましたのは、ILO八十七号条約の批准の可否であります。もちろんそのことを中心として御研究を願った。しかし、その御研究の過程において前田小委員会あるいは石井小委員会等においてきわめて傾聴すべき御議論が出ております。そういうものを、政府が行政府として批准をする場合の心組みを作るためには、そういう尊重すべき御意見も十分に承わって、行政府としては万全の策を講じていかなければならぬ。その準備を完了した上で批准の手続をとりたい、こういうわけであります。
  90. 小柳勇

    ○小柳勇君 重ねて質問いたしますが、それでは大臣もあの批准をせよということにウエートをおいて、あの答申を受けられたということについては確認してよろしゅうございますか。
  91. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 批准をせよということは、労働問題懇談会の原則的な意見でありまして、そこで批准をするとすれば、これこれのようなことの研究を要するであろうということが小委員会において論議をされ、石井小委員長から報告を受けたことでありますから、それらのことを勘案して諸般の準備を整備をしておる、こういうわけであります。
  92. 光村甚助

    ○光村甚助君 大臣の答弁を聞いておりますと、私は衆議院の予算委員会の答弁と今とはだいぶ違うように受け取れる。と申しますのは、衆議院の予算委員会における大臣の答弁は、さっきお話しがありましたように、四条三項あるいは五条三項を廃止しなければならない。しかし、その下にもろもろのことが書いてあるから、これを整備するのだ、こういうお話しだったのですが、しかし、きょうになると、こういう答申は受けた、受けたけれども、実施するしないは行政府が当然これを考えなければならないことだ。全面的にこれを採用するかしないかは、行政府の権限だというように私は受け取れるの  ですが、そういうお考えなんですか。
  93. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ほかの場所で御質疑がなくて、そういうことを申し上げたのかもしれませんが、政府が批准をする決意をして、これは労働政策として政府独自の考えを持つことは当然でありますが、その腹をきめるために、労働問題懇談会の専門家に御研究を願った。従って、それを全面的にわれわれはけっこうな御意見であるとして取り入れることにもちろんやぶさかなるものではございませんが、私がここで申し上げましたことは、国民に対して責任を追うのは政府、すなわち行政府である。従って、安直にただ批准手続だけをしていいものかどうか、そういうことについて私どもは国民の負託にそむかないように万全の措置を講じていかなければならない。たとえばILO条約八十七号について関係のあります労使関係である公共企業体、これは民間産業ではないのでありますから、その持っている公共性という独自の立場に立って、国民の期待にそむかないように、この公共性をどのようにして保持していくことができるかということに万全の措置を講ずることは、国民に対する政府義務でありますからして、私はそういうことを申しておるわけであります。
  94. 光村甚助

    ○光村甚助君 大臣はたびたびの答弁で公共性ということをよくおっしゃるのです。それと事業の正常な運営ということもよくおっしゃるのです。ILO条約を批准することと公共性とどう関係があるのですか。  それともう一つ重ねてお尋ねします。事業の正常な運営ということはわれわれだって考える。ILO条約の精神というものは、未開発国と言っては語弊がありますが、低開発国ですか、そういうところの労働水準を引き上げて、貧困を救済するというのがねらいなんですね。ただ資本家を擁護するという精神じゃないわけなんです。だから私たちは、この四条三項を削除して、すみやかにその批准をしてくれということなんです。  それとILOの結社の委員会で、事業の正常な運営だとかあるいはほかの問題には触れていない。日本ではすみやかに四条三項を削除して八十七号を批准するのが適当じゃないかといって注意を喚起しているのです。それに大臣の方はよく公共企業であるから、国民の財産を預かっているのだからという御答弁になるのですが、もちろん私たちは、公共事業というものが国民に負託された事業であるということはわかっております。しかし、働く労働者から見れば、資本家が経営している事業も、政府経営している事業もこれは変りはないのですよ。どこにそういう変りがありますか。
  95. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 基本的には、私は光村さんの考えておいでになることと、われわれとそう大して違いはないと思うのです。つまり、私が申しております公共性というのは、これは釈迦に説法のようでありますが、民間産業の個人資本で経営いたしているというものと性格的に違うということは何人も異議のないところだと思います。そもそも公共企業体というものを作りますときの、同時にまた、国鉄法あるいはそれぞれの専売公社等を作るときのそれぞれの公社法にもそのことを、公共性のことを言っている通りでありまして、とにかく国が持っているということはすなわち私は国民全体のものであると思うのです。それに従事いたしておる者はやはり公けに奉公するということで、労使関係という立場から言えば、民間産業と公共企業体と一応変らない形にはなっておりますが、その資本構成というものは、すべて国家の所有であることは、御承知の通りであります。従って、公けに奉公する従業員というものが特殊の取扱いを受けるということは、皆様方の御存じのように、諸外国でもそういうふうに変っておる国がたくさんおります。しかしながら、私は、ただ、四条三項というように労働者が団結する自由を拘束いたしておるということについて、そういう面において、ILOの結社の自由を、委員会においては、日本の政府の注意を喚起するということを申しました。私どもも、それはその限りにおいては正当であると思います。従って、でき得る限り、やっぱり、そういう自由なる結社の団結を阻害しておるようなものは改めるべきであるという労働政策の基本的立場に立って、八十七号条約を批准しようという見地におるのでありますから、そこで私は申しますのは、先ほどお話のありました正常なる運営、このことは、少くとも現在の法律においてやはりなすべからざる行為であると限定されておるようなことはしてもらっては困ると、こういうことを要求することは当然なことでありまして現在あります法律を労使双方ともに守らなければならないという建前は、私はくずすことはできないと思うんです。従って、国民は、やはり自分が形成しておる国家が所有しておる公共企業体の事業運営がしばしば不正常な状態に陥るということは、喜んではおらないのでありますからして、その国民の期待にそむかないように正常なる運営が行われることを期待すると、そういうことは、この答申にも明らかに申していることであり、私どももまた同感でありますので、この公共企業体の労使関係が正常なる運営ができるように、やはり労政当局としてはできるだけ指導していかなければならないと、こういうことを考えておるわけであります。
  96. 光村甚助

    ○光村甚助君 いや、その問題はもう少し議論しましょう。公共企業体に働く人たちが、一般の民間の労働組合の人たちより規制されておるということは、非常にこれは国民生活に重大な影響があるんだと、こういうことなんですね。だから、一般の民間の人のように罷業権もないわけなんです。ただ、しかし、これから国家が経営しているからといって、働く者から見れば一緒なんですね。あの専売公社がありますね。たばこを作っておる専売公社、これは公共企業体です。だから、公共企業体の専売公社の人たちがたとえば罷業をやった場合に、どれほど国民生活に影響がありますか。それからもう一つは、東京の地下鉄、これは罷業権があるんですね。大阪の地下鉄は罷業権がないんですよ。ただ、国が、大阪市が経営しているか、あるいは営団が経営しているかによって違ってるんですね。あるいはまた、ガスにしたって、電気事業にしたって、罷業権があるわけです。だから、そういうものと、いわゆる郵便事業とか、国鉄事業とかいうものと比べて——国鉄にしたって、それは非常に大きいから国鉄なんですね。私鉄でも、名古屋、大阪あたりにたくさん線路を持っているところの私鉄もあるんです。違うというのが私にはわからない。だから、わからないんだけれども、いわゆる公共企業体であると、やはり国家公務員と違うから、四条三項ははずしてやりなさいというのが、私はこのILOの精神だと思うんです。それにもかかわらず、あなたはすぐに、これは公共企業体だから、四条三項を取っ払うかわりに何か作らなくちゃならないという考え方自体が、あなた、間違っているんじゃないかということを私は申し上げているんです。
  97. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私が申しておるのは——四条三項をはずすから何かはかにやらなくっちゃならないということを特に強調されておられるようでありますが、私は冒頭に申し上げましたように、この公共企業体というものに国民の期待しているものは何であるかといえば、正常なる運営であることは間違いないことであります。従って、その運営を保持していくためには、政府としては万全の措置を講じていくべきであると、こういうことを申しておるのでありまして、しかしながら、労働者であるという立場に立っておられる人々にやはり結社の自由を阻害するようなことはなるべくすみやかに排除する方がよろしいと、こういう建前で、これを排除することに政府は決意をいたしたわけであります。そういうふうなことをいたした上で、国内法を改正した上で批准の手続に入りたい。その国内法を修正することについて目下研究をしておると、こういうわけでありますから、あなたのおっしゃることとちっとも違いはないことだと思います。
  98. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと関連して。  労働大臣は目下研究中だと言うのだが、国会の歴史を見ると、結社の自由と団結権の擁護のILOの条約の問題に関しては、二十八国会以来この問題は論議されている。結社の自由というものは、その国会以来論議されている焦点というのは、労懇に諮問機関として労働省は付託されたけれども、労懇の結論に従うという、こういう明確に二代の石田、倉石労働大臣が答弁をされている。そこで、私は、衆議院の予算委員会や参議院の予算委員会を聞いていると、国内の法律を尊重しなければいかぬという、この八十七号の八条の一項に明確だという、こういう議論をよくされるのです。しかし、今、何がそれじゃこの批准をするのに障害になっているか。八条二項には、「その国の法律は、この条約規定する保障を害するようなものであってはならず、また、これを阻害するような方法適用してはならない。」という、明確にこの条約の精神に違反するような法律を作っちゃいかぬという、これが前提条件であって、その違反するような条約を取り除いた上で、第一項の法律尊重論というものが私は論じられてしかるべきだと思う。八十七号を批准するということ、四条三項、地公労法五条三項が、この八十七号の結社の自由、団結擁護の基本的な問題に触れるということは、労懇も、八十七号を批准しなさい、あわせて四条三項を、五条三項を削除しなさい。この法律に関係しているのは四条三項と五条三項である。だから、これを批准すればこれを取り除かなければならぬということを、政府もたびたび言っておられる。ところが、最終段階になって話を聞いていると、八十七号の八条第一項をお出しになるけれども、問題の基礎は、二項にこの条約の精神に違反するような法律を作っちゃいかぬと、これが基礎なんじゃないかと私は思うのです。結局どこにその問題点があって、手続やその他で研究されることは行政府の責任云々ということ、それはそうでございましょう。しかし、今までの国会審議の歴史からいったら、労懇の結論が出たら従いますと、明確にこの国会に約束されているのです。だから、二十八国会から今日まで一年以上たっている、この条約ができてから十年以上たっている、その間に十分に研究なさってしかるべきものである。今言う、労懇の結論が出てから、一から研究される、私はとんでもないことだと思う。少し勘違いを政府はしておられるのじゃないかと私は思うのですがね、どうなんですか。
  99. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 八十七号条約は、もちろん、八条の一項も二項も、同時に、やはりわれわれは批准をするということになれば尊重しなければならぬ。どっちが重くてどっちが軽いというふうには考えません。そこで、わが国は八十七号条約を今批准していないのでありますから、何ら条約によって拘束を受けることはありません。そこで、八十七号条約を批准するという決意を政府が持って国会に御了承を願うということをするためには、行政府として諸般の準備が要ることは、ただいまも藤田さんの御了解下さった通りであります。私どもは、その準備を今続行している最中だと、こういうふうに申し上げておるのでありますから、そのことは御了解が願えると思います。
  100. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私の言っているのは、二項の問題は、その国の法律はこの条約規定する法律に違反してはいかぬ、そういう法律を作ってはいかぬということに明確になっている。ただ、今、労働大臣はまだ条約は批准していないから、これを批准しようとするのだ、そういうことなら、八条一項で国内の法を尊重しなきゃならぬとかするとかいうようなことをおっしゃらない方がいい。それを堂々とみえを切っておっしゃることから見れば、この八十七号はもう批准するのだ、批准する建前に立って私は意見を出しておられるのだと私は思うのです。  それからもう一つの問題は、手続とそれから研究といったって先月、一月に出た労懇の結論ですね、結論からもう今日、三月なんですよ、三月までたって、一カ月以上たっているこの結論をそれじゃどうなんですか。いつまでそれじゃ研究をなさる。この国会でこの批准をし、四条三項と五条三項を削除をする、公労法の改正案を出して処理するという心がまえと了解していいんですね。
  101. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) できるだけ早く部内の調査研究を終了してやりたいと思いますけれども、この国会が五月二日まででありますから、まあできるだけ間に合わせたいということで努力していると、こういうふうに御了解を賜わりたいと思います。
  102. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 できるだけ間に合わせたいという、私は今申し上げましたように、この条約ができて十年を過ぎている。この問題が国会で論議されてから、二十八国会、今三十一国会です、一年以上たっている。なぜそんな研究期間が要るんですか。きのうの予算委員会の話を聞いておっても、いろいろうわさにされるような、たとえば運輸省の関係、郵政省の関係を見たって、この八十七号の条約批准をめぐって、公労法、地公労法のこの四条三項、五条三項の問題をめぐって、両者の代表はこれをめぐって、私の方としては特別どうこうという問題はありませんと、こういう御返事を私は承わっている労働大臣は何をそれじゃ考慮されるのか、他の処置というのは。
  103. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 先ほども申し上げましたように、中山会長の答申というものに、一年半にわたる検討の結果のこれは集約でありまして、この集約は御承知のように、三つに分れております。第二項のところに、「右条約を批准するためには、公労法第四条第三項、地公労法第五条第三項を廃止しなければならない。この廃止にあたっては、関係諸法規等についての必要な措置が当然考慮されることになるであろうが、要は、労使関係を安定し、業務の正常な運営を確保することにあるので、特に事業の公共性にかんがみて関係労使が、国内法規を遵守し、よき労働慣行の確立に努めることが肝要である。」こういうことであります。こういうふうなものになって参りましたのは、前田委員会であるとかあるいは石井小委員会の報告等を参酌して、こういうものになったんだとわれわれは解釈をいたしておりますが、前田委員会あるいは石井小委員会の報告によりましても、これを批准すべきとすれば、これらの事柄について検討を要することが必要である、こういうふうにいろいろなことを述べております。そういう事柄について私どもは批准の手続をするまでにどういうことが必要であるかということを、今部内で検討を進めさせている、こういうことであります。
  104. 小柳勇

    ○小柳勇君 大臣の発言を聞いておりますと、批准する責任が一切政府にあるような錯覚をわれわれは受けるわけです。条約を批准するかしないかは国会が責任をもってこれを批准しあるいは批准しない、政府としてはその批准するという今までそういうふうな立場で労懇の答申を求めてきたのであるから、その労懇の答申が批准せよ、批准するためには公労法四条三項、地公労法五条三項を削除すればよろしい、そういうことであるならば、その答申を尊重して、直ちに批准の手続国会にとれば、批准するかしないかは国会の論議することでございます。それで国際的にはどうか、国際的には昨年の三月十一日ジュネーブで開かれたILOの百三十八回の理事会で、世界の代表が出て、その中で八十七号条約促進の決議をしている。賛成三十八、反対ゼロ、保留一で可決している。その保留一は日本政府であるという報告がもたらされている。そのときになぜ保留したかという理由を聞いたところが、日本の政府は「現在労働問題懇談会でその可能性について検討しているので、その答申を待って批准したい」と、そういうふうに発言している。そのあとで「事務総長は、それは国内的な理由であり日本は誤解しているのではないかと耳打ちをしていた。」という情報も報告されている。国際的には三十九カ国出ておって、反対はゼロ、そうして三十八が直ちに促進するようにという決議をしている。そういうようなところで、日本のいろいろの国内情勢なりあるいはもろもるの情勢を勘案して、政府は労懇に答申させている。その答申では会言ったように批准なさいと出ているのに、労働大臣はこれに、両手を広げて、批准待ったということで、その妨害をされているように、今われわれは受け取るわけです。その点に対して、いま一度労懇の答申について、どのくらい尊重されているか、御答弁を承わっておきたい。
  105. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 最初のお話でありますが、条約の批准の責任は明らかに政府にあります。その条約批准をする場合には、国会の承認を得ると、こういうことになっているわけであります。そこで、国会に御承認を求めるときには、やはり多数党である自由民主党の諸君にも、政府の考えを十分に徹底させなければなりません。私どもはそれも今やっている最中であります。そこで、労働問題懇談会の答申をどの程度に尊重しているかと、私どもの政府におきましては、この答申を拝見いたしまして、全面的に尊重をいたして、この御趣意に沿うように準備を鋭意続けている、こういうわけであります。
  106. 光村甚助

    ○光村甚助君 大臣は今までの質問に、後段の方を問題にしておられるのですね、整備するんだと、これは石井報告案をもとにしておられるのだろうと思いますがね。私もこの石井報告を読みました。この委員のやり取りの内容を見ますとね、公労法第四条三項と地公労法五条一三項の削除ということでIL O条約の批准はできる、それが主文じゃないかということを言っているのですね。そうすると石井さんは、まあ主文というそういうものだと言っている。主文というのは裁判所でよく使いますがね、被告人を無罪とする、これは全然罪がないのだというものと、それから疑わしいけれども疑わしきは罰しないというあれですね。このいわゆる批准すべきものであると、あとについているのはみなこれなんです。これはもう全然疑わしきじゃないのだ、あるいは疑わしいけれども疑わしきは罰しないのだということと同じことだと思うのです。それから考えると、あなたのおっしゃる石井報告やあるいは前田報告によって、国内法を整備しろとか、そう言っているから、それを研究されているということは、これはあなたの方の実際つけ足りでね、ごまかしじゃないかと思う。  それからもう一つはね、四条三項を削除するのに、あなたの方は担保を求めていないとおっしゃるけれども、確かにこの国内法を整備するということで、担保を求められていると思う。これは資本家ははっきり言っているのです。四条三項を無条件に削除するのは反対だ、それには、われわれは担保を求めるということを資本家代表は言っているんです。労働省というのは、これは資本家の代表なんですか。労働省ができたときには、いわゆる労働組合を保護育成して、労働者の生活がよくなるようにといってできたのが労働省なんです。それを、あなたの答弁をずっと聞いていると、資本家が懇談会で言っていることをずっと言っておられるんです。もう少し中立になって考えてもらいたいと思う。  それからもう一つはこの石井報告ですが、これも中立の熊本委員がこういうことを言っているんですよ。「石井さんの報告の先ほどから問題になった中で、345」——御存じだと思うんです。「345の項目も、これは石井さんの御説明通り、何にも主張しておられるのではなくて、批准することの最小限度は1だけでいいじゃないか」ということを、熊本さんでも言っておられるんです、中立委員が。それにもかかわらず、あなたの方は、石井さんの報告にあるようなあとの問題を直さなければならないという考え方は、私はどうしても納得できないんです。これはここの会議録を見てみても、みんな資本家の言っていることで、中立委員でさえもこういうことを言っていない。それはどういうふうにお考えになりますか。
  107. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 政府はもちろん中立的立場に立つものであります。そこで、労働問題懇談会に労、使、公益、三者構成で権威者に集まっていただいてやっておりますが、そのうちのどなたがおっしゃったことであろうとも、やはり政府の立場として、政府は多数国民の期待に沿うて政府を形成いたしておるのでありますから、その国民はやはり公共企業体の事業が正常に運営されるという保障を希望しておることは当然であると私どもは理解いたしておるのであります。従って、石井報告等においていろいろ述べられておりますことは、これはわれわれが参考として承わることである。従って、四条三項、地公労法、五条三項の削除に伴ってどういうことを考えるべきかということについて、非常に多くの示唆を与えられておるわけでありますから、最終的に国民が責任を負うのは行政府たる政府でありますから、国会に御承認を求めるときにもやはり政府の意思を国会に披瀝しなければなりません。そういう立場に立って、軽率な態度をとれませんので、これだけの人たちが集まって一年半にわたって研究をしていただいたものについては、十分にあらゆる角度から検討いたして、国民の期待にそむかないように、この事業運営が正常になるように努力をするということは、政府に与えられたる当然の義務であると、こういうことで一生懸命で今勉強しておる、こういうわけであります。
  108. 光村甚助

    ○光村甚助君 ちょっとね、あなた、ごまかしちゃいけないです。都合のいいときには石井さんの報告を引用してそして報告にあるからあとの方を整備しなきゃいけない、都合の悪い——私が指摘した都合の悪い点は、これは参考意見にすると、そして条約を批准するかしないかは政府の考えだ、こうおっしゃるんですがね。都合のいいところと悪いところと、実際に何といいますか、ごまかしがうまいんですが、そういうことじゃなくてほんとうに、これを読んでみても、石井さんは、これは私の個人の意見だと、強制しないと言っておられるんですね。別にこれがないからといって批准できないものではないということをはっきり言っておられるんです。  それからもう一つ、あなた、公共企業体ということを言われて、私もさっき言いましたが、われわれも公共企業体は認めているんです。民間産業よりかわれわれの方が取締りのひどいことは認めている。企業体だからといって四条三項のようなものがあっちゃいけないということをILOが言っているわけなんです、向うの方で。だから、早く日本政府としては全逓や国鉄、あるいは機労が提訴したような、ああいうことを早く取っ払ってやりなさいというのが、あの勧告趣旨なんですよ。さっき私が私鉄の例も引いて言いましたように、専売の例も引いて言いましたように、なるほど企業体だから、国家公務員よりか幾らかこれは今でも取締り規定というのは楽です。しかし、民間よりかうんとひどい。ただ、企業体というものは一般事業政府がやってるにすぎないんです。だから、四条三項を取っ払うかわりに、別に担保を求める必要はないじゃないかというのが私の議論なんです。どうして担保を求めなければこれは批准できないんですか。
  109. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) だんだんピントがしぼられてきました。私がかりにあなたのその席にいって、光村さんがここにおいでになって、そうして光村さんが政府を組織されたという立場に立ってお考え下されば、やはり私は私の申し上げることに十分に御理解をいただけると思うのであります。今あなたのおっしゃいましたように、公共企業体の公共性、このことも一致しておる。しからばそういう事業に従事しておる従業員のために四条三項というものを削除する、なるほど一応それだけで国内法に抵触をするものはなくなる、こういうことでありますが、政府が国民に対して行政上の責任を負うという立場からは、やはり労懇の一年半にわたる御論議の中で、傾聴に値いする御議論もたくさん出ておる、こういうことに対して国民に安心感を持っていただくために政府としてはどのようなことを考えるべきかということについて、私どもが慎重に検討するということは無理からないことだと御了解がいただけると思うのであります。そこで、私どもは、その準備を今鋭意急がしておるということでありますから、もう結論は一致してきたと思うのであります。
  110. 光村甚助

    ○光村甚助君 なかなか結論が一致しないから質問しているのです。国内法を整備するとおっしゃいましたけれども、それにはやはりあなた、石井報告の3、4、5を問題にしておられるだろうと思う。石井さんのおっしゃる十七条、十八条を直すということは実際上意味ないのです。十七条はそこの職員とか役員が教唆、扇動をしてはいけないということなんです。じゃこのあとに、その組合の組合員あるいは役員と今度全然…たとえばかりに私が全逓の役員になったとしますね。私が扇動したり教唆したらどうなりますか、何もできないじゃありませんか、解雇も何も。だからこれは全然必要ない、意味ないじゃないかということも言われておる。そうすると、十八条にきて、じゃ私を首切ることができないのはどうなるんです。  それからもう一つ、解雇以下の処分を考えたらどうか、これは現に郵政省でもやっている。停職とかそれから減給でありますとかもやっておる。だから石井さんが考えておるように、十七条、十八条を直すといっても、全然意味のないことなんです。あなたが幾ら検討されたってだめなんです。十七条に関しては、罰則規定を設けない限り意味ないのです。私が全逓の委員長になればつまり解雇も何もできないのです。だからあなたの方は、じゃいわゆる十七条に罰則規定でも入れようというお考えですか。
  111. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 今いろいろなお話がございましたけれども、諸般のことについてあらゆる角度から資料を出して、そういうことを土台にして検討しておる。結論はすみやかに八十七号条約を批准するのだ、こういうのでありますから、ちっともあなたと食い違いはないと思います。
  112. 小柳勇

    ○小柳勇君 国内の、国民の安心感を持つように政府が責任をもって国内法の整備などをやっておるというが、その国民は一体何を不安がっておるか、そのためにどういうふうな手続をしようとしておるのか、大臣からお答えおき願いたい。
  113. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 国民はやはり正常なる運営で、常時安心して公共企業体が運営されることを期待いたしておると考えております。  それからまた、どういうようなことをする考えであるかということにつきましては、ただいまそのことについて、政府部内においてそれぞれの担当者を集めて鋭意研究中である、こういうわけであります。
  114. 小柳勇

    ○小柳勇君 衆議院の速記録など見ると、たとえば事業法の改悪などを企図しながら、公労法で取り締れない、極端に言うと、罰が与えられない面は事業法をもって罰していこうというようなことすら意図されておるように聞くのであるが、ILOの八十七号条約というのは、団結権を擁護し、それから結社の自由を確保する協約であって、そういうものを批准するという反面、逆に事業法などで罰則を強化し、いわゆる取り締ろうというような労働運動——労働者の要求によってもろもろの運動をやるだろうが、それを取り締ることによって国民の安心感を得ようとするならば、それは批准することの意思に反する、逆行したいわゆる事業法の改悪ではないかと思うが、そういう点について、大臣はいかように考えてそのような罰則の強化などを考えておるか、御答弁願いたい。
  115. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私が先ほど来申し上げておりますような、政府部内における調査研究に対して何か影響力を持つようなことを申すことは自由なる検討を阻害することになると思いますので、私は部内においても何も差し出がましいことをもちろんいたしておりません。しかしながら、石井報告の5というところに「公共企業体等の業務の適正な運営を確保するため、事業法中の諸規定についての不均衡等につき、その調整をはかることについて検討する必要がある。」と、こういうことを述べられております。こういうようなことについては、この非常に時代おくれのものをこの際どうすべきであるか、労懇の石井小委員長の報告にもあるので、こういうことも当然これは再検討を要することであるということは私どもも認めておりますけれども、どういうふうな調整をしようとしておるかというふうなことは、今一生懸命でやっている最中でありますから、私からは別段何とも申し上げかねる事情であります。
  116. 小柳勇

    ○小柳勇君 事業法などの時代おくれだということとこのILO条約の八十七号批准、あるいは四条三項なり、五条三項の削除というものと一体どのような関係があるのですか。
  117. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 自由民主党の政務調査会の中には、公労法に罰則規定を設けて、国民が期待いたしておるような業務の正常なる運営を側面から援助すべきであるという意見もあります。しかし、私どもは労働関係法にはなるべく罰則規定というものはない方がいいという考え方を持っておりますが、しかしながら、そういうようなことについて政府部内でいろいろな角度から検討しておる、こういうことでありますが、私は本来公益事業事業法というものは、その事業それ自体の公共性をみずから保持するために設けられた規定であると存じております。その事柄がたとえば労働運動に端を発して、事業法の違法行為が行われたといたしましても、労働組合法上の保護を受けるべき事項というものは、明らかに労働組合法上に明記されておることでありまして、それを逸脱したる違法行為が法益を優先的に受けられるということはあり得ないことでありまして、憲法の命ずるところによって国民の法益は平等である。でありますからして、労働組合運動なるがゆえに特段なる違法行為を保護されるということはあり得ない。しかし、労働組合運動として組合法に規定されておる特殊な恩典、これは当然守らるべきである。しかし、それ以外は法益は平等である。ことに先ほど来お話のありました公共企業体の事業の公共性はやはり絶対多数の国民の期待を裏切らないような正常なる運営が行われるように政府として努力することは、これは当然だと思うのでございます。
  118. 小柳勇

    ○小柳勇君 公益事業労働者労働争議などについていわゆる争議権についての制限の問題と、罰則を加えて刑罰を加えることの問題とは、私はおのずから別個の問題であろうと思う。あなたはそれを混同して、たとえば同じ労働運動にしても違うということは、もちろん公益事業とその他の一般産業労働者とは違うというようなことを言われた。そのようなことは、さっき光村委員も言っておるように、大体理解はつくが、だからといってそういうようなものの、たとえば仕事をしたくないという、そういう意思に刑罰を加えるということはこれは強制労働ではないかということです。そのような強制労働を、あなたは今強制労働させるようなことを事業法などで改悪をされようとしておる。そういう危険性があるので、重ねて私はその点をお聞きしておきたいと思います。
  119. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 政府、ことに私が天下に表明いたしております労働政策をごらん下されば、今小柳さんのおっしゃったような御心配は毛頭ないということを理解していただけると思います。
  120. 小柳勇

    ○小柳勇君 言葉を返すようだけれども、倉石労働大臣労働行政の担当であるがゆえに、私は非常に心配しながらこういうことまで言わざるを得ないわけです。今までの労働大臣が、かつて自民党の労働問題の調査会の責任者であったころからの私も労働運動の責任者の一人であって、そういうようなもろもろの弾圧の数々の施策を承知しており、私自身そういう弾圧を受けてきた一人であるので、再びそういう悲惨なことが日本の労働運動に起らないように、私は今労働大臣に質問をいたしておるのでございます。  そこで、四条三項の削除、五条三項の削除だけをやれはILOの批准をすべきであると、このような答申案に基いて、そのあとの方の第三項の方を重点にして事業法などの改悪を今考えられつつあるようである。もう一つ極端に言うならば、これも正式の場面で大臣の発言をまだ私聞いておらないのであるが、われわれが、自民党などの労働問題に対する考えを仄聞するところによると、全逓などの役員の解雇の問題すら批准の問題と関連して論議されておるようであるが、もしそういうことであるならば、われわれとしては、もっと別の角度から大臣に対していろいろの問題を提起し、これをただしておかなければならぬが、その点についてどのように考えておるか、御答弁願っておきたい。
  121. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 先ほど来申し上げておりますように、公共企業体の労使関係の正常なる運営が行われることを期待すると、これは政府が申しておるのではありません。国民が皆そういうことを考えておるわけであります。そこで、公労協の中でもいわゆる国鉄労組は、先年藤林あっせんというものを尊重して労使がこれに服した。私は、国労があのようにだんだん正常化の方向に進んでいかれることは敬意を表しておる次第でありますが、同じ公労協の中でそういうものがある一方において、わざわざ法に禁じてあるような態度をとられる全逓というものの行動については、労政を担当しているものから見てまことに遺憾であります。同時にまた、ILO八十七号条約を批准することによって、今まで不法な行為をとっておったものが、これは合法化するのであるというふうな考え方は、これはやはりおとなの組合ではとらないところだ、従って、労政担当の私どもの立場からあえてよけいな御注意を申し上げませんけれども、やはりILO条約を批准するというのは、ILO憲章にいっておるように、平和なる産業を推進していかれる労使の正常な運営を期待する、同時に、そのことによって国の産業も維持しながら労働者の生活待遇をどのようにして向上していくことができるか、これがILO憲章の趣旨であり、日本政府もその趣旨を尊重してこれに協力いたしておるのでありますから、私は相当良識のある指導者がそろっておる全逓の労働組合の諸君は、政府のこの堂々たる態度に対して、やはりILO条約に参加しておる日本の労働組合の諸君としては、もちろん正常化に進まれることを期待いたしておるのでありまして、私どもは別段これについて、とやこういうことを申し上げることは遠慮しておるわけであります。
  122. 小柳勇

    ○小柳勇君 はっきりものを言われないので、もう少し質問しておきたいと思うが、昨年十一月二十日にILO理事会で満場一致採択されて日本の政府に対する勧告が出ておる。その中で「日本政府労働組合の自由を保証するということを条件として日本がILO復帰を許された事実に注意を喚起すると共に、日本政府がすみやかに現法規を改めるよう希望すると言明した。」と、こういうようなことで四条三項があるからといって、そのように全逓の三役の解雇、従って、団交拒否と、このような一方的な日本政府の解釈に対しては、ILOの理事会としても満場一致そういうことをすべきでないという精神が貫かれておるが、労働大臣は一体どのようにそういうふうなものを感じておられるか、受け取っておられるか、お答え願いたいと思います。
  123. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ILOの結社の自由委員会で、公労法四条三項がこの条約趣旨に抵触しておるという注意を喚起するということを申され、それが理事会に提出され、理事会からはこういうことがあると、そこで日本政府労働問題懇談会に今研究を依頼しておるようだが、その答申が出たならばそれを通報してもらいたい、こういうことを日本政府に申し入れてきております。日本政府は八十七号条約を批准するという決意をしたということを即刻ILO事務局に通報いたしまして、事務局からは、日本政府の態度を大いに歓迎する、その批准の国内準備をされることを期待いたしておる、こういうことであります。従って、ILOの精神についてわれわれが協力するという態度については、大いにILO事務局も歓迎する、本年はILO創立四十周年記念に当るので、世界十大産業国の一つとして日本政府代表もぜひ出席してもらいたいという、それに加えて歓迎の言葉を言ってきております。私どもは、ILO条約を批准するという建前をここで確認いたしておるわけでありますから、そのために先ほど来申し上げましたような諸般の準備を政府はしておる、そういう段階であります。
  124. 小柳勇

    ○小柳勇君 大臣は、ことしのILOの総会に出る前に批准決議案を国会に出す、承認を求めて出る決意ですか。
  125. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ただいまそういう招請状があらためてモース事務総長から参っておるわけでありまして、日本の政府労働大臣が出席するかどうかはまだきまっておりません。
  126. 小柳勇

    ○小柳勇君 このような大事な時期であって、しかも記念すべきそういうふうな総会であるので、大臣は個人の意思でもいいが、とにかく批准してその総会に出席するような御意思をここに持たれないものかどうか、いま一度質問しておきたいと思います。
  127. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ILOに協力するという建前で、一昨々年初めて私が当時の日本の労働大臣として出席いたしまして以来、その次の労働大臣もたしか御出席になりました。しかし、本年は日本の政府労働大臣が出席するかしないかということについて、また政府部内で意見がきまっておりません。
  128. 光村甚助

    ○光村甚助君 先ほど全逓の問題が出ましたが、全逓が今の解雇三役を取りかえなければ、あなたの方はこれを批准しないとおっしゃるのですか。
  129. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私は、やはり現行法というものはどこまでも法律は尊重してもらわなければならない、こういう建前をとっております。個々の労働組合の行動についてはいろいろなことを私どもから申し上げるよりも、先ほど申し上げましたように、皆さん良識を持っておられるりっぱな方が大ぜいおられるのでありますから、おそらく国民の期待を裏切らないような御態度に出るであろうと、こう考えております。
  130. 光村甚助

    ○光村甚助君 それは大臣のお考えなんですがね、先月の十八日に、この答申案が出た明けの日だったと思います。朝日新聞ですか、全逓が解雇三役を取りかえない限り批准しないという意味が出ていた、そうなると、ほかの組合で非常に迷惑するのですね。だからあなたの方のお考えを端的に聞いているわけです。全逓の解雇とILOの批准と私は全然関係がないと思っているのです。解雇の問題については今争っているのですが、解雇三役を抱えているから批准しないなんということは、非常に私は言いがかりだと思うのです。
  131. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) きわめて、人間の社会でありますから、事柄はデリケートでありますから、私のような立場の者がいろいろ申し上げない方がいいと思うのでありますけれども、私はさっき申し上げておりますように、ILO憲章を尊重するという建前を皆がとるのでありますから、ILO憲章はやはり時の国内法は尊重すべきものであるということを明らかにいっているのでありますから、このILO条約の批准を強く熱望される方々は、ほかのILO条約の、憲章の他の部分をもちろん尊重されるということを予期しておるわけであります。どうぞ一つそういうふうに推進されるように何分お願いいたします。
  132. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ずいぶん勝手なことが言えたものだと私は思うのですが、ILOの宣言、憲章というものの一番冒頭にうたっていることは、結社の自由ということです。世界宣言でも、二十条の1に人はすべて平和的集合及び結社の自由を享受する権利を持つと世界宣言でもいっているし、旧憲法から今日の憲法においても結社の自由というものが、これは世界中の人がこれを申し合せて認識をして、そうしてよりよい世の中を作っていこうじゃないかという申し合せ、これは歴史的に続いている、そうでしょう。この続いていることに違反した法律を作っておいて、私は法律に違反してよろしいとは言いませんよ、しかし、憲章を守るということ、世界宣言というような世界の申し合せを守るということがむしろ法的には先行するのじゃないのですか。あなたのおっしゃることを聞いていると、けしからぬ、けしからぬと、ILOの憲章を守るということはいかなるものによっても従わなければならぬという言い方ならば、この結社の自由というものを先に確立してもらいましょうや、日本の憲法はこれは基本法でありますけれども、労働三権が明確に保障されている。いろいろとそれについて制限法を出しておるけれども、憲法の論議を私はいたそうとは思いませんけれども、しかし、ILOの、たとえば憲章にしても宣言にいたしましても、一番冒頭に出てくるのは結社の自由なんですよ。これが人間社会の発展の基礎であるというふうに明確に言われている。私は今の大臣の言葉を、それだけではどうも納得いきませんよ。
  133. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私はいつも申しておりますように、労使関係というのは二つある、二通り考えられると思うのです。一つの事業労使双方で協力してもり立てていく、そうして得たる果実を分配するときには、今度は対立といってはおかしいのですが、違った立場でやはりできるだけ要求するというときに、今度は対立的な労使関係というものが生まれる。それをうまく運営していくというところに労働政策というものの妙味があると思うのでありまして、せっかく政府は労懇の答申を尊重して、そうして大乗的見地に立ってILO条約八十七号を批准する、こういうことになったわけでありますから、二本の手をぽんと打ったときにどっちの手が鳴ったかとかいうような理屈は言わないで、両方鳴るのでありますから、一つ八十七号条約の批准をされると同時に、それに関係のある労働組合もさっと同じように正常化になる、こういうことになりましたならば、日本の労働運動界には、非常に明朗な空気が漂ってくると思うのであります。そういう意味で、私は、良識ある人たちも、やはり政府のILO条約批准という堂々たる立場に協力をしていただく、こういうようにやっていただくことがいいのじゃないかと思っているわけです。
  134. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 手をぽんと鳴らして八十七号批准に踏み切る……。八十七号という、結社の自由、団結権の擁護というようなものは、私は、批准する、せぬと、よその国から言えば、そういう言い方はちょっとどうかしれませんけれども、こういうことが国内で支障を来たしているというところはないと思うのだ、実際問題として。こういうことが日本はおくれているわけですよ。世界人類の共通した生活の中で、世界宣言でもILOの憲章でも、結社の自由ということはもうこれは世界中の常識なんですよ。これを、たまたま全逓の人が、今の制限された法律の中で云々と言われますけれども、四条三項と五条三項をおとりになれば、これは何にも違反をしているわけでも何でもないので、当然に結社の自由という姿が表われるだけじゃないですか。まるでこれを、労使関係で均衡——大乗的見地から譲歩云々という、これはあなた、中立的な労働行政を担当される大臣としては、そういう言い方じゃなしに、もっと世界共通の結社の自由というものを、行政府の長たる大臣は、どうして確保しようかというような形で私は進んでもらいたい。
  135. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) どうも、先ほどから私の申し上げておることを、わかっていておっしゃるのか、私の言い方が下手だから理解していただけないのか、よくわかりませんけれども、私は、今藤田さんのおっしゃっておられるように、批准しないと言っているのじゃないのでありますから、批准のための準備を今していると、こういうことでありますから、その点についてはもう食い違いがないわけです。従って、それならば、やはり、今違法行為をしておるといわれて団交を拒否されているような方々も、せっかくこういうふうな大乗的見地に立って政府も批准しようといたしておるのだからして、これは一つ、国民の期待を裏切らないように労使関係を正常に復そうと、こういう気持になってもらいたいと念願するのは、私一人ではないと思うのです。
  136. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 あなたはいろいろおっしゃいますけれども、しかし、問題の基本というのは、私は、結社の自由、団結権の擁護という国際的発展の、世界の人みんなが努力してきた姿だと思う。公共性云々という話がさっきからありますけれども、それじゃあどうですか、イギリスの今の交通関係やその他、あそこはほとんど国営です、基幹産業は。働いて生産をするという意識、その生産したものが自分の生活へ返ってくるという意識、そういう面から考えてみまして、おのおの、私は、各種分野その他において、全体の生活を上げるために努力をしていくものだと思う。そういう努力をしていく者が、やはり自由にものを言い、自由に結社ができ、それに参加し、おのずから自由に自分の意思をよりよく反映してくれる人を選ぶという、これは私は国際常識の初歩だと思うのですよ。この初歩の問題を作るために努力されるのが、私は、労働者を保護される労働省の大臣の役目ではないかと思うのです。それが、どうも今のように、その話を聞いていると、まるで調整あっせんをしているようなものの言い方のように僕は聞える。労働大臣というのは、調整あっせん機関でも何でもないと思う。行政府というものは、世界の流れの中において、九千万の国民がどれだけ幸福になっていくかという中において、あらゆる世界のおつき合いもありますから、その中でだんだんと進歩的な近代的な国家を作るために努力される立場にある、私はそう思う。ところが、その点がどうもちょっと理解がしにくい、どうもそういうお気持がないのかもしれませんが、こちらはこうだからこちらもこうだという格好で手をたたいてきれいにいきたい云々じゃ、ちょっと筋が通りにくいと思いますが。
  137. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 公共企業体の経営者というのはだれであるかということは、全逓の方々が交渉相手とされる者は郵政大臣であり、あるいはまた、国労は国鉄総裁、しかし、その国鉄総裁が、自分たちの持っている株式によって運営をされているものじゃないことはもちろんでありまして、だれが経営しているか、これは国民であります。われわれは国民の負託を受けて国営事業というものをやっている、そこでそういうふうな事業に従事しておられる方々の労使関係というものが正常化でなければ、国民に対して相済まぬということを、行政を担当している者が考えることも理解をしていただけると思うのであります。従って、そういう事業の公労協に従事しておられる方々が、わざわざ法律に許されておらないようなことをなさるということについてはまことに残念である、従ってせっかく結社の自由ということの条約、これは皆さん方も御承知のように、ILO参加のうちの三十五カ国が批准しているだけであります。日本が今度それに加わるわけであります。そういうふうに非常に少いところにも日本が喜んで参加するということでありますからして、私は、やはりそれに関係のある労働組合としては、国民の期待しているような正常化にともに努力することを期待するのも行政当局としては当然じゃないか、こういうふうに思うのであります。
  138. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今、公共事業についてその経営の主体になる者がだれであるかという議論がありました。しかし、たとえば、私は先ほどのイギリスの例をとりますけれども、国営ですから、交通機関にしても電気にしても、いずれの場合も国営でございます。国営ということは、国民が選んだ国民の事業であり、その労働者は団結権の自由、結社の自由を制限されるわけじゃなしに、罷業権まで持っているのです。このことは、私は、大臣もILO総会に行かれ、欧州各国を回ってこられてよく御存じのはずだと思います。その点はどうなんですか、今いろいろな問題を言われますけれども、そういう非常に苛酷な、団体交渉もせない、こういう形で組織を認めないというふうなものが、この世界の流れに順応して行政を立て、国政をお立てになりますればたとえば今引っかかっている問題の四条三項、五条三項を削除しなさいという労懇でも結論を出しているのは、私は世界の多くの国がこうやっているからこそ、こういう結論が出たのだと思います。たとえば今批准の問題をおっしゃいました、三十五カ国、日本がすれば三十六カ国だとおっしゃる、たとえばアメリカの例をとりますと、アメリカは団結権の自由云々という問題は、私はまだ批准をしてないんじゃないかと私は思うのです。間違っていたら訂正をいたしますけれども、そのアメリカに結社の自由とか、団結権擁護というような問題で制約や制限がありますか。単に批准をしているという三十五カ国のみでなしに、結社の自由、団結権の擁護なんていう問題は、今日の近代国家の中ではそういうものはもう過去の問題で、私は労働省当局にはたくさんな有能な方がおられる、これはもう私がここで説明せぬでもわかり切っている問題だと私は思う。
  139. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 政府はすでにILO八十七号条約を批准するという建前をとったのでありますからして、結社の自由を阻害しておるというお話につきましては、われわれはそれを削除することに決意をいたしておるのでありますから、それはその御意見は私どもと一致しておりますから申し上げません。ただ公共性を持っておる日本の事業というものについて国民の期待するところを裏切ることのないように、できるだけ政府というものは努める義務がある。それからまた、存在いたしております法律というものは、どこまでもこれは国家意思として決定されたものが法律なんでありますから、それは守ってもらわなければならない、こういうことを申しておるわけであります。
  140. 光村甚助

    ○光村甚助君 先ほどから全逓が違法をやっている限りは批准しないというような——批准しないとはおっしゃらないのですけれども、良識に待つというようなことを言っておられるのですけれども、四条三項ができた趣旨は、あんた予算委員会でだいぶ得々として言っておられましたが、もう一度ここで聞かしてもらいたい。
  141. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) どういうことであるか忘れましたが、四条三項について、多分四条三項ができた当時の話だと思いますが、初めは四条三項を私どもは、これは御承知のように、占領中にマッカーサー司令部から英文で原案を持ってきました。つまり二・一ゼネストを禁じられましたあとで、政府の現業はこれは公共企業体というものにしよう、公共企業体というものができて、そしてそれには公共企業体等労働関係法というものを作ろうではないか、そこでそういう案が出されまして、私どもはそれに基いて、どなたが大臣であったかはっきり記憶しておりませんが、両院において審議をいたした当時は、その英文で書いてきたものには、四条三項みたようなものはありませんでした。そのうちに国鉄の経営者も労働省側も同じ意見であると言って、そしてその従業員でないものは組合へ入れないというふうにしてもらいたいという話がありまして、それからまた、光村さんも御承知のように、大体組合自体の規約を読んでみましても、この組合には、この従業員が組合員になるというふうなことを、規約の中でも申しておりました。従って、われわれとしては、当時レッド・パージを受けました激しい共産党的運動をしておるものを排除するという考え方が両方にありましたから、それをわれわれは国会の中で入れることになりました。そういう過程で、そういう沿革でこういう法律が、四条三項というものが、ここに浮んできたんだというお話を申し上げたのであります。
  142. 光村甚助

    ○光村甚助君 一部分はなるほど私も当時組合の役員だったからわかりますがね、その司令部の英文の中に、四条の三項のような規定はなかったとおっしゃるのですが、あったのです。これはあなたの何かの間違いじゃないかと思う。この公労法四条の三項は、英米その他連合国の占領下において、一九四八年十二月、そのGHQの強力な指導のもとに制定された公労法の中に設けられた規定で、その後、引き続き存続するに至ったものである。この規定は共産主義ないし極左指導者がその中心勢力を占め、組合運動がきわめて過激な傾向を示した当時の労働情勢にかんがみ、これらのものから組合運動を守るために設けられたものであり、このような過激な組合運動の傾向に反対した組合内部の民主勢力も賛成した。さような段階をあなたはおっしゃるのです。これは強力なGHQの指導文書の中にあったのです。この点はあなたと違う。しかし、それはそれでいいとしまして書いてあるように、当時の情勢下にはこれを作らなければならなかった、これは政府の文書ですよ。私はあなたにうそを言っているのじゃない。あなたの間違いです、あなたの方の。政府の指導者も当時の共産主義ないし極左指導者が中心勢力を占めて組合運動が過激な方向になるからというので、当時これを入れたのです。その後、組合運動がどうなっていますか。だんだん一時は実際上きばを抜かれたように、穏健な民同組合というものになってしまったのですよ。そうすると、当時こういう強力に組合運動を弾圧するような——弾圧するといいますか、当時われわれはこれは便利だと思ったかもしれません。しかし、時代が変ってきているのですよ。もう二十四年からことしは三十四年ですから、十年一昔と言っているのですね、時代が変ってきているのに、あなたはまだこの法律が現在適法だなんておっしゃるのですか。全逓は、今の解雇されたのは去年なんです。これはもうずっと前から四条三項は削除してくれということ運動をやっている。倉石さん、二十八年か九年かも労働大臣だったですね、何年ですか、二十九年か八年だったと思います。そのときに、私は、全逓の副委員長をしておりましたがね、この臨時公労法審議会なんていうものがあったときも、四条三項はもう取っ払ってしまおうじゃないかという意見が出たくらいなんです。最後にこれを取っ払うことを反対されましたが、その時分から問題にしているので、今全逓の三役が解雇されているから、第四条三項をのけてくれということを言っているのじゃないのですよ、われわれは一つも。きのうも朝日新聞を見ますと、日経連の弘報委員長の今里という人が「公共企業体の労組で違法行為の故に解雇された組合役員をヒゴ(庇護)し、これを合法化しようとした動機から出たものである」、政府もそういうことを言っている。われわれは決してそういうことを言ってるんじゃない。もう二十何年かの解雇されないずっと前から、これは今の労働運動の状態に合わないから変えてくれということを言っているのです。それが一つと、さっき言いましたような二十四年の当時のあの私が読み上げたああいうひどいときと今と情勢が違うというのですね。そういう何が合わないから、この四条三項をはずしてくれと、こういうことを言っている。  それから全逓の人たちが首になったのも、違法行為だと言っておられますけれども、これは全逓の三役自体が、こういういわゆる指令を簡単に出すのじゃなくして、二十何万の中から四百何十人という代表者を選んで、大会を五日も開いて、運動方針で二日も三日も審議して、ことしはこういう闘争をやろうじゃないかと言ってきめるのですね。それに従って全逓の三役が指令を流したのに、解雇されるのは不当だということをわれわれは言っているわけなんです。この問題は今裁判所で争っていますから、不当か不当じゃないかはいずれ判決も出ると思いますが、だからわれわれは、決して全逓が違法な行為をやってるのじゃないということを申し上げているのです。一応長くなると、あなたごまかすから——これについて一つ、その時代と今は情勢が違うのじゃないか。
  143. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 全逓労組の個々の活動について、私は申し上げることは遠慮いたしますが、要するに、現在の全逓労組というものは、法に定めたる代表権を持つものでないと、こういうことで団交を拒否されることは私は正しい行為であると思っております。従って、ILO八十七号の条約を批准することによって、非合法だと言われているものが合法化するようなことになるということになりましたならば、法治国家としてはゆゆしいことでありますから、現行法はどこまでも守ってもらわなければならない、こういう建前を変えるわけにはいかないのであります。
  144. 光村甚助

    ○光村甚助君 それを言ってるんじゃなくて私がさっき言いましたように、二十四年当時、占領軍の強力な指導のもとに作られたこの四条三項は、時代に合わないというのです。それと、大臣は、今までの発言の中に、日本はこの二十四年ごろと今とはだいぶ——工業も先進国家になっているということをおっしゃっている。これは、資本家だけの私は功績じゃないと思うんです。労働組合自体も、あの過激な労働運動の行き過ぎを直して、民主化同盟なんてものができて、そうしてほんとうに一時は資本家の御用組合だと言われるぐらい資本家と協力して、今日の日本の産業が成り立ったということを、あなた御承知だと思うんです。産業がどんどん発達して、日本は先進国家になった、こんなに違うんです。それにかかわらず、こういう労働組合を弾圧するような法規を今まで置いておく、これが矛盾していないかということを私は聞いているんです。どうです。
  145. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ILO八十七号条約を批准するという建前をとった以上は、私どもはやはり結社の自由というものはたとえ公企体であってもなるべく拘束をするようなことは早く排除した方がいいと、こういうことは考えております。しかしながら、その法律のよって来たるところの淵源は別といたしまして、やはり時代がそれぞれ変ってきたから法律を改正する必要があるではないかという御意見については、私どもも傾聴することができると思いますが、それだからといって、現在存在いたしておる法律を無視してそれを許容するということは、法治国家としてはできない、こう思います。
  146. 光村甚助

    ○光村甚助君 全逓は適法な代表者を持っていないから団交を拒否するのが当然だとおっしゃるんですが、裁判所の判決の中に——これは機労がやったんだと思うんですが、「当該労働組合は、憲法による労働組合としての資格を有し、その委員長は組合の代表者であることは認める。」と言っているんですね。ただ、「しかし、従業員のみを組合員とするものでなく、解雇された者を含めた労働組合は公労法上の組合とはみなすことはできない。」こう言っているんです。憲法上の組合と認めて、そして委員長は組合の代表者であるということを憲法上認めているんです。これを私は団体交渉を拒否するということは、これはどうも不穏当だと思うんです。これはどうですか。
  147. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ただいまのお話のように、たとえ解雇された者が出て参りましても、組合というものは他にたくさん組合員があるのでありますから、その組合というものの存在を否定するということにはならないと思います。しかし、法に定めた正当なる代表権を持つ者がない、こういうものとは交渉ができないと、こういうことであります。
  148. 光村甚助

    ○光村甚助君 この代表権は、全逓はさっきも言いましたように、四百何十人という代議員を集めて、首になってから——三役が解雇されてから、これを大会で正式に二十四万の人が選んでいるんですね。これを正式な代表と認めないということは、これはいわゆるILO条約の精神に反するんじゃないですか。
  149. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ILO条約を批准してなおかつそういうことが行われるということならば、これは問題であると思いますが、現行法のもとにおいて、やはり解雇三役を代表者として選んでこられても、当局としてはこれを正当なる法上の代表者として認めて団交することはできないと思います。
  150. 光村甚助

    ○光村甚助君 それは、日本の四条三項には抵触するかもしらぬが、ILOの精神には私は反していると思う。反しているから、日本は早く批准をしなさいという勧告が出ているんです。これは全逓や機労、国鉄が提訴して、そして確かにこういうやり方は不当だといって認めて、で、日本でもこれを批准されるまでに踏み切られたのは、あなた方の自主的じゃなくて、これはいわば世論の袋だたきにあったようなものです、言葉はひどいようですが。  まあそれはそれとして団体交渉を拒否しているのが当然だとおっしゃるんですが、郵政省は都合のいいときには団体交渉をやられている事実がある。去年の十一月ですか、二四協定というのがあって、郵政省が郵政従業員で互助会というものを組織しているんです。その互助会のいわゆる掛金を従業員から徴収することを団体交渉でやっておられる。解雇された委員長の野上元と、人事部長の佐方さんの名前ですか、どちらかで団体交渉をやられている事実があるんです。これはどうですか。
  151. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 事務的な御質問でございますから私から申し上げます。  二四協定というのは御承知の通り労働基準法二十四条の協定でございまして、基準法上の協定と申しますると、いわゆる団体交渉——労働協約締結するための団体交渉と手続が違うのでありまして、われわれとしましては二四協定あるいは三六協定というようなものは基準法上特別な手続だという解釈をとっております。その場合に野上元の名前で、郵政当局ともし正式なそういう協定書ができておるとすれば、それは法律的な問題があろうと思いますが、そういう内容につきましては私はよく存じておりません。
  152. 光村甚助

    ○光村甚助君 文書は出ておるでしょう。文書を契約したでしょう。
  153. 佐方信博

    説明員(佐方信博君) 当時の関係者として御説明申し上げますが、御承知のように、二四協定は、基準法に基きまして各事業場ごとに結ぶということになっておりますので、われわれといたしましては全部現場で結んでほしいということで現場を指導いたしました。しかし御承知のように、二四協定というのは俸給から天引きする問題でございますので、互助会、弘済会等の金につきましては、全逓本部が、中央で何らかの話もないとみんなが納めないので、何とか話をしようということで持ってきた。私たちはそれはもちろん困るのだ、二四協定というものは当然現場でやることだから、そんな必要はないということを強く申したのであります。しかし、みんなの月給から引くのでありますから、何らかの文書がほしいということでしたので互助会、弘済会というものは何ら郵政事業関係のあるものではない。従って、労使紛争の外に置こうじゃないか。だから、労使間の紛争と全く関係なく、その紛争の外に置こうという文句まで書いたのでありますが、そこまで書かぬでもいいじゃないかということで、今後、郵政省と全逓とは互助会、弘済会の育成をはかるために俸給から引いていこうということを宣言したわけであります。今までの協定というのは、御承知のように、俸給から削除するところの協定である。それから第一条にその目的をはっきり書き、第二条に内容を書き、第三条に期間定め等もしておりますけれども、何にもそういうことをしておりません。労使紛争の外に置く。全く関係のないところの法人を労使紛争の犠牲にするのはいかぬからということでいたしました。それから組合としても、そういう前例となるものじゃないということをはっきり明言しております。従って、私は何ら団体交渉であるとか協定であるとかいうことはない、こういうふうに考えております。
  154. 光村甚助

    ○光村甚助君 あなたの方はそうおっしゃるけれども、正式文書をかわしたということは労政局長、認めますね。これはいいです。これはわかったのです。  それからもう一つ、お年玉はがきの問題で、全逓と郵政省とが話し合いをしたことがあるが、これも団体交渉じゃないとおっしゃるのですか。ちゃんと話をして、ことしは年賀はがきを配達することをやりましょうということを約束しておるのです。これは団体交渉じゃないとは言わせませんよ、郵政大臣が交渉室でやらなかったかもしれませんが、自分たちの都合のいいときには全逓に呼びかける……まあどっちが呼びかけたということは別といたしまして、やはり団体交渉——文書にはなっておりませんが、自分たちの都合のいいときにはお年玉はがきは国民が希望しておるからやってくれないかという話し合いをして、そうしてことしの正月は、年賀はがきというものはほんとうに労働大臣の言われるように、業務の正常な運行を示したのです。こういう自分たちの都合のいいときにはやっておるのです。都合の悪いときには団体交渉に応じませんなんということは、郵政大臣どういうことですか。
  155. 寺尾豊

    国務大臣(寺尾豊君) 光村さんから、今お年玉のときには団体交渉をやっておる、こういう御指摘でありますが、全然やっておりません。これは年末始に非常なる郵便物の滞留、遅配、あるいは年賀郵便を取り扱わない、こういうような、全逓労組が非常に国民の迷惑になるようなことをやるかのごとき行為があったのでありますから、十二月の十日に、最後の私の警告といたしまして、幹部を呼びまして、そしてこのことに対して最後の自分は注意を促し、警告する、こういうことを申したときに、幹部諸君が快く、それでは大臣がそう言うことであれば、いさぎよく一つこれから実力行使も中止をし、そうした郵便物の遅配等のないように努力すると、まことに私としては全逓労組のその態度には非常に感激をしたのでありますが、そういうことによって私の注意、警告を聞き入れて、進んで全逓がその責任を果していただいた、こういうことでございます。
  156. 光村甚助

    ○光村甚助君 良識のない組合だと言ってみたり、つまらぬところでおだててみたり、あなたのおどかしで全逓の幹部がびっくりしてやめますと言ったのですか。少くとも超過勤務の分け方から、いろんな問題をやっているのじゃないですか。ここじゃ言えないから私も追及しません。おそらく全逓の三役もあなたにおどかされて、はいそうですかと言ったのじゃないのでしょう。まああなたの立場を考えて追及しませんが、そういうごまかしを言ってはだめですよ。  もう一つは、きのう予算委員会で荒木さんからも問題が出ましたが、日本の全逓は世界郵便電信電話労働組合というのに加入しているわけです。これに今まで分担金を送っていたわけです。ところが、送れないのです。きのう郵政大臣も労働大臣も、おれはそういうことを知らない、こういうことをおっしゃっているのですが、PTTIヘドルで送金するためには主務大臣である労働大臣の認可を必要とし、認可がなければ送金できないことになっておる。組合の認可申請に対して労働大臣は、組合代表の名が被解雇者である執行委員長野上元となっていることを理由に認可申請を却下しているのです。これは私は相当これだけはもう国際情勢上大きな問題だと思うのです。さっき私が言いましたように、裁判所でさえも憲法上の組合であるとし、これは全逓の代表者として認めている。それから郵政省も団体交渉はしないが、全逓という組合は認めているのです。ましてこのPTTIに加盟している分担金まで送らせないようにするということは、私はこれこそ世界の信用を失う大きなもとだと思うのです。これは大臣、一つ考え画す必要はありませんか。
  157. 亀井光

    政府委員(亀井光君) その経過につきまして一応申し上げたいと思います。先ほど冒頭で、PTTIに会費を納めるについては労働大臣の承認を要するというお話でございましたが、そういうことは全然ございません。すべて日銀の外貨の割当できめるわけでございます。労働省として今までそういう認可の申請を受けたこともございませんし、認可をしたこともございません。ただ全逓の場合におきましては、昨年の九月、中央執行委員長野上元の名前をもちまして、送金するについての申請書に副申をつけてくれという実は申し入れがあった。この副申自体は、法律上は何ら要件でも何でもないのでございます。ただ日銀がそういう割当をするにつきましても、一つの心証として書かれておった程度のものだと私は考えております。ところが今申し上げまするように、今回の郵政の委員長野上元は公労法上いない法律上の建前になっておる。そこで公文書でなく、われわれとしましては、口頭で野上元の名で持ってこられてもわれわれは返答しかねるから、適当な、たとえば解雇されないだれかの名前で持ってくれば、われわれとしましては十分日銀方面への連絡をしてあげましょうという実は回答をいたしたわけでございます。ところが、その後、全逓としては何らの音さたがない。昨年の十二月の十五日になりまして野上元の名による申請書に副申をつけてくれるか、あるいはそうじゃないかというような直接的な申し出がございましたので、われわれとしましては、公労法の建前上、その野上元の名前で申請されたものについてわれわれとしては判断することはできないのだということを重ねて申し上げたのでございます。それに対しまして、全逓としましては、日本銀行に対して事情を説明したいのでその申請書を戻してくれということで取って帰ったというようないきさつはございます。従って、その後、全逓の組合が送金したかどうかということにつきましては、組合内部のことでございますので、われわれ何ら関知しないのでございます。
  158. 光村甚助

    ○光村甚助君 今大臣もお聞きの通りだと思う。国内法であなたの方では認めないとおっしゃるかもしれませんが、世界各国ではやはり八十七号を批准している国もたくさんある。三十四カ国もあるのですから、幾ら解雇されたからといって外国の組合に送ることまで認めないということは、実際上私は非常に行き過ぎだと思う。一つ労働大臣の注意を喚起しておきます。  それからもう一つ、最後に労働大臣に、これは言わなくてもいいことですが、労働大臣は、日本が条約に加盟したのは四番目だと予算委員会でおっしゃっているが、これは大臣もう少し勉強してもらいたい。私は資料を持ってきておりますが、二十七番目です。今後はああいう公式の席上では、もう少し事務当局も注意して大臣に答弁させないと、大きな物笑いになりますから、この点は最後に一本取った形で注意しておきます。
  159. 小柳勇

    ○小柳勇君 さっきの光村委員の質問に関連してですが、私も個人的には大臣を尊敬しておりますから郵政大臣を追求したくありませんが、事実は事実として究明しておきませんとなんですから、このILOの批准の問題と関連があるから明らかにしておきたいのですが、昨年の暮れの十二月二十三日の決算委員会で、私は郵政大臣に、全逓労組と団体交渉をされた事実を確かめました。そのときに大臣は、暮れの混乱を収拾するために全逓本部の役員と話し合って団体交渉をやって問題が円満に解決したということをはっきり証言された。その席で、私は、ILO八十七号条約批准の問題も目の前に控えているのだから、そのときには閣僚として、政府部内でILO条約批准のため一つ現在の実情を勘案して御協力願いたいということまで要請しておきました。そのときに、大臣の言われたのは、いろいろの紛争はあったけれども、本部役員と自分といろいろひざをつき合せて話をして、自分の気持もわかってくれたし、組合の言い分も聞いてこの紛争を解決した。従って、私は、語を継いで、あなた方はたとえば代表者はだれだと言うけれども、組織というものは、二十万の組織は、その大会で選出した役員というものを、あなた方は無視して、組合員と話をすることはできないだろう。その事実をもって今問題になっている団体交渉や、ILO八十七号条約批准云々という問題については、あなたは考えを改めてほしいということまで付言しておきましたが、この点についてイエスかノーか、郵政大臣からここで新たに発言しておいてもらいたいと思います。
  160. 寺尾豊

    国務大臣(寺尾豊君) 小柳さんの今のお話とは若干私は違うと思っております。これは速記録をお調べいただいてもわかることであろうと思いますが、私は、この会見には確かに全逓労組に対して感激を覚えました。私が注意をしたこと、これはここに人事部長もおりますけれども、人事部長も立ち会って、私が公共事業として国民から預ったこの郵便事業、こういうものがこの年末始を控えて正常に取扱われないということであれば非常に、不幸である。だから、私は皆さんに最後の注意を促し、また、警告を申し上げるのだということによって、これは光村さんがいろいろ今表現されましたが、まことにいさぎよく、実にりっぱに幹部諸君から、わかりました、やりましょうということであったので、私はその日の感激を——小柳さんの、どういう者が来たかということのお尋ねをいただいたと思いますが、私は、幹部を呼んでくれということであって、そこにどなたがいらっしゃったか、どういう……。大体、団体交渉等も行なっておりませんから、とにかく幹部を呼んでほしいというて、十名ほどの幹部が参りましたときに、私は郵政省の分室で会見をいたしまして、そして私の労組への注意、また、この事業の重大さというものを説明をいたしました。そのとき非常にいさぎよく、それでは実力行使も取りやめるし、大臣のその言葉によって、われわれも一つ積極的に責任を果すということで、これはまあ非常に劇的なシーンとでも申しましょうか、決して、これをこうしてやるからどうだとか、あれがこうだからどうだというようなことはみじんも申しておりません。ただ、私は、さすがどうも全逓労組だ、よくわかってくれたのだという、いまだにこれは感激を持っておることでございます。これは団体交渉とか何とかいうものを超越をした、ほんとうにこれはもう、国民の負託を受けたこの事業、年末を控えてどうするか、どうしてもやってもらわにゃいかぬじゃないかという、一つの私の決意、また、注意を促したということでありますから、決して私がそれにえさを出したとか、あるいは要求を聞いてやるとかというようなこと等は一言もございません。
  161. 小柳勇

    ○小柳勇君 まあ個人の問題にわたりますから深く追及しませんが、そのとき会いました幹部は、三役外おもなる全逓の幹部であったということをあとで私は調査をしてわかりました。それから私が今申し上げましたことは、決算委員会の速記録を見ていただきますとその通りに言っておりますから、郵政大臣違ったと言われますけれども、違わないのです。あらためて申し上げておきます。そのことが、郵政大臣は一つそのときの感激をもって、このILO条約が一日も早く締結できるように促進してもらいたいと思います。  それから次は、労働大臣に申し上げ、なお、最後に質問しておきたいのですが、第一に、申し上げる点は、さっき国鉄機労が三役を交代して、四条三項に沿うようになって、労使関係が正常化したという発言がございましたので、その点について、そのときの実情と考えが、大臣の考えが違っておるということを申し上げておきたいと思うのです。国鉄労働組合並びに機関車労働組合が三役を交代したのは、国鉄の場合にはあっせん案を受諾したという形、機労の場合には大会で決戦投票でかわったという形、これはあくまでも組合組織の自主的な委員会並びに大会の決定に従って組織の問題を処理していったということであります。それから四条三項の不当性については、国鉄並びに機労とも前もってこれはわかっておったことであるので、あっせん案受諾の前に、委員長交代の前にすでに裁判所に提訴いたしまして、憲法上違反であるという訴訟をしておったことも大臣御承知の通りです。四条三項のような、この法律が公労法の中にあるということは、団結権並びに団体交渉権などを侵害し、労働者の利益を侵害するものであるという立場は前からずっと今日まで変っておらない。そういうことも申し添えておきたいと思います。従って四条三項があるからそれにマッチしょうと、合わせようと、そういう意図で三役の交代がなされたものでない。あくまでも組織の問題として、これはそうすることが大会の意思であり、組織を確立し、労働者の生活並びに権利を守ることであるという観点に立って組合みずから決定したものであるということを御認識おき願いたいと思う。  それから次に、なぜあのような紛争が起きたか、大臣は、公労法の組合などが国民の期待に反して、国民の心配になるから四条三項について今問題がある。あるいは事業法を改悪しなければならぬと言っておられますが、ずっと過去の数年間の国労並びに機労の紛争の状態を見てみるというと、あるときは調停案を政府が軽視し、ある場合には裁定を履行しなかった。そういうことが直接の原因であった。特に一昨年の三月二十三日の汽車がとまった場合は、一切これは国鉄当局並びに大蔵大臣の責任です。それにもかかわらず、当時の組合の代表であった私以下十九名を首切っておる。もう少し詳しく言いますならば、三月十六日に国鉄総裁と私との間に年度末手当の支給が約束されて、一週間以内に大蔵大臣が決裁しなかった。そのために、三月二十二日に自然発生的に職場では紛争が発生した。そういうものを収拾するために中央執行委員会は闘争指令を出した。ところが、午後四時になりまして、総理大臣から支給の命令が大蔵大臣に指示されて、大蔵大臣がこれを運輸大臣の責任によって支給したから列車が動き出した、闘争は解決した。大蔵大臣の責任ですら、労働組合として公労協の組合があれだけああやったからといって組合の責任として問題を処理された。しかもそういうものが、今大臣の頭の中にはこのまま条約を批准したらとんでもないことになるということによって、いろいろ、事業法の改正などあれだけの親切な委員会の諮問が出たにかかわらず、それをあえて引き延しながらいろいろこう工作を考えておられる。  従って、私最後に質問いたしたいのは、ILO八十七号条約というこの国際憲章が十年前にすでに各国で批准され始めておって、現在十年後、日本がなお批准しておらない。その批准する段階になりまして、労働問題懇談会の答申はあのように出たにかかわらず、なお労働大臣は、条件をつけようとしておる。そのような批准は、この労働条約の八十七号というこの条約の精神に反するのではないか、そういうふうに私は思うのです。従って、今私は、第一か第二を大臣はとられる立場にあるのだと思う。第一は、今一切のそういうような手続とか条件ということよりもまず先に、条約を批准すべきであるということを国会に承認を求められる。それはその懇談会の委員の中にも発言がありましたように、条約を批准することが先だ、国内法の問題についてはその後でもできるのではないかという発言もあった。第二には、手続をいろいろやろうとしておるが、その手続は四条三項と五条三項の削除で十分ではないか、その後の問題については各省おのおの担当の方で不便な点があれば、営業法の不便な点があればその不便な点は結局改正するから、そういうように各省にまかせなければならぬ、それを労働問題と関連して労働大臣がいろいろと各省に連絡をとりながら事業法の修正をやることは、大臣としては行き過ぎではないか。従って、今労働大臣として考えることは、第一の立場をとるならば、直ちに労懇の答申そのまま批准することを国会に承認を求める。第二は、最小限度四条三項の削除、五条三項の削除をもって直ちに批准に踏み切られる。この立場こそが、今大臣のとられることであり、条件つきの批准ということは条約八十七号に違反すると思うが、その点はいかがであろうか。この点を最後に質問して私の質問を終ります。
  162. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) いろいろ御意見がありましたけれども、政府は、ILO八十七号条約を批准するということを方針を決定いたしました。その方針を決定するということについて、その方針通りに批准を求めるにつきましては、行政府としての責任上諸般の研究をいたしておる、その研究を急がせて、なるべく早期に批准が行われるように努力をいたしたい、こういう考え方であります。
  163. 久保等

    委員長久保等君) まだ質疑も尽きないようでありますが、本件に対する本日の調査はこの程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  164. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十九分散会