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1959-03-05 第31回国会 参議院 社会労働委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月五日(木曜日)    午前十時五十九分開会   —————————————   委員異動 本日委員大和与一君辞任につき、その 補欠として小柳勇君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     久保  等君    理事            勝俣  稔君            柴田  栄君            木下 友敬君    委員            有馬 英二君            草葉 隆圓君            紅露 みつ君            斎藤  昇君            谷口弥三郎君            西田 信一君            松岡 平市君            横山 フク君            小柳  勇君            藤田藤太郎君            光村 甚助君            中山 福藏君            竹中 恒夫君   国務大臣    労 働 大 臣 倉石 忠雄君   政府委員    労働政務次官  生田 宏一君    労働大臣官房会    計課長     松永 正男君    労働省労政局長 亀井  光君    労働省労働基準    局長      堀  秀夫君    労働省婦人少年    局長      谷野 せつ君    労働省職業安定    局長      百田 正弘君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    労働大臣官房労    働統計調査部長 大島  靖君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○小委員補欠互選の件 ○労働情勢に関する調査の件  (昭和三十四年度労働省関係予算に  関する件)   —————————————
  2. 久保等

    委員長久保等君) ただいまより社会労働委員会を開きます。  この際、小委員補欠互選についてお諮りいたします。委員外転出のため欠員となっておりました国際労働条約批准等に関する小委員補欠互選は、便宜上、今後委員長の指名とすることに御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。   —————————————
  4. 久保等

    委員長久保等君) 次に、労働情勢に関する調査一環として、昭和三十四年度労働省関係予算に関する件を議題といたします。御質疑を願います。  ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  5. 久保等

    委員長久保等君) 速記を始めて。
  6. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 労働情勢一般について、きょうは小柳君が質問いたしますので、今何ですが、三十四年度の今度の雇用計画をどう立てられるか、労働力配置をどういう工合に見ておられるか、こういう点を一つ私は節一番に質問をしたいのです。労働大臣から御意見を承わりたい。
  7. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 御承知のように、政府の策定いたしております長期経済計画の中で、その一環としての三十四年度に、政府からも発表いたしてありますように、三十四年度における産業伸び実質五・五%と計画をいたしまして、その伸びの率に昨年度計画を勘案いたしまして、今年は大体七十四万人程度雇用伸び計画する、また、そのように努力する、こういうことで策定いたしておりますが、御承知のように、去年のいわゆる景気経済調整のしわ寄せが雇用失業の面に出てきておりますので、そういうことも勘案いたしまして、私どもはさらにまた、財政投融資、それから公共事業等に特に雇用の面を重視いたしまして、財政投融資公共事業等でなるべく実質的に雇用拡大し得るような計画を立てさせる、こういうことも加味いたしまして、三十四年度における雇用計画を一応そういうことで立てて、これの実現を期する、こういうことに努めていきたいと思っております。
  8. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今年度経済伸びを五・五%に置く、財政投融資公共事業拡大によって、一応のメドを七十四万人程度雇用をやる、ところが実態はどうかというと、今年度学卒の就職困難は私が申し上げるまでもないと思います。昨年からこの労働力配置の問題についてはいろいろ議論をいたして参りました。しかし、労働省は、大臣がごあいさつをされた中にも述べられておりますけれども、一般的には雇用拡大をはかりたいという御発言がございます。しかし、昨年は雇用計画六十五万であって、自家就労というような問題が細密な説明のときには出てくるわけであります。今年は七十四万人の雇用計画があるとおっしゃるなら、一つ経済の問題、それから投融資公共事業からどういう工合就労機会をとる、そしてその中で就業状態がどういう状態にあるかというようなものの説明資料というものが出てこなければならないわけであります。私は非常に残念だと思っておる。で、失業対策の面を見ると、昨年からほとんど振幅がない、世の中というものは失業者がだんだんと私はふえこそすれ、減っている状態というものはあり得ないと思うのです。だから、そういう資料その他の説明が、今のような説明でなしに、もっとつぶさに私はここで労働行政の今一番失業問題というのは重大な問題でありますから、つぶさに御説明あってしかるべきだと、私は思っている。その点、今の労働大臣発言だけではなかなか私は理解がいけないですから、事務当局も含めて、今年の計画現状失業保険受給者がどれだけ、職安窓口に行くのがどれだけ、こういう説明一つしていただきたいと思います。
  9. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 今のお話、私どももおよそ労働政策の中の雇用失業の問題というものは一番大切な、われわれもまた重点を置いている問題でありまが、先ほど申しましたように、経済計画で私どもの五・五という産業伸びというものは、現状状態で申せば、私はむしろ産業伸びはそれよりいくのではないか、こういうふうに見ておりますが、いずれにしてもわれわれの計画によって、計画に即応して、労働力人口の中の雇用増が大体先ほど申し上げました程度にとれる。同時にまた、従って完全失業者というものの大よその想定は、大体昨年度と同じと見たらばよかろう。こういうことで、計画量としては六十万というものを見ているわけでありますが、しかもなお、後ほど御審議があると思いますが、三十四年度予算では、失業対策事業も御承知のように、予算の金額の増額をいたして、就労日数も若干の増加をいたしておるというふうなことでありますが、総合してこういうふうな計画でありますということについて、数字的に政府委員の方から、政府考えております内容について申し上げたいと思います。
  10. 百田正弘

    政府委員百田正弘君) ただいま御質問にございました、まず最近の雇用失業現状、それから三十四年度計画、これにつきまして申し上げたいと思います。  最近の雇用失業状況につきましては、おもな労働力資料について申し上げますと、就業者数につきましては、昭和三十三年の四月から十二月、つまり三十三年度に入りましたこの九カ月間を前年同期に比べますと、前年同期の四千三百九十一万人に対し四千四百十八万ということで、三十七万の増になっております。その内容について見ますと、農林関係就業者につきましては二十九万の増、非農林関係につきましては五十五万の増、切り上げ、切り捨ての関係で多少の誤差はございますが、五十五万の増でございます。完全失業者につきましては、三十二年の同期、四—十二月の平均で四十九万でございましたが、三十三年の四—十二月は平均五十四万、これは三十三年度の当初に見込みました六十五万を下回っておるわけでございますが、さらにこれを一般労働市場状況について見ますと、三十二年度の四—十二月におきましては有効求職者月平均にいたしまして百十万、それが三十三年は百三十四万、これは二十四万ばかり増大いたしております。求人は三十二年、四十二月に四十七万四千に対しまして、三十三年、四十二月には四十六万二千というようなことで、三十二年と三十三年を比べますと、一人当りのいわゆる求職者に対する求人の率というもののパーセンテージが前者の一六に対し三十三年度が一四というふうに多少低下しておる。就職の件数について見ますと、三十二年度月平均十八万に対しまして、三十三年度におきましては、十九万というふうに一万ばかり上回っておるような状況でございます。  それからさらに、今お尋ねのございました失業保険状況並びに企業整備等状況について申し上げますと、一般失業保険におきましては、特に初回受給者の数は、大体昨年度におきまする四十二月平均五万九千程度でありましたが、三十三年は七万七千と増大して参っております。これを月別に見て参りますと、三十二年の十月ごろから漸次増大して参りまして、本年三十三年の二月から七月ごろにかけましては、初回受給者が八万人をこすというような状況で、この時期において最も初回受給者が多かったわけでございますが、この七月を峠といたしまして、八月以降は六万四千、六万九千というふうに漸次八万台まで低下して参っております。そういうような状況を反映いたしまして、給付実人員につきましては、三十三年の三月当時は五十万程度でございましたが、昨年の終りには四十万程度に下って参っております。さらに企業整備について見て参りますと、三十二年の四十二月、それから三十三年の四十二月、これについて比較いたしますと、卒業所数におきまして、三十二年の三千六百八十に対して三十三年の四千四百、人員にいたしまして総計三十二年、十六万に対して、三十三年の十七万というようなことになっておりますが、これを月別にながめて見ますと、三十二年の九月以降から漸次増大して参りました企業整備人員も、三十三年の六月の二万四千を山といたしまして、昨年の十一月には一万台に下ったというようなことで、対前年比におきましては、三十三年の半ば以降においては、前年の状況を下回るというような状況になって参っておるわけであります。そこで三十四年度における大体の見通しといたしまして、先ほど大臣からお話がございましたように、就業者数におきまして、大体本年度経済計画見通しといたしましては、就業者数において約六十万の増とこれを見ておるわけでございます。六十万、農林で十万減、それが非農林で七十万の増、農林就業者は減るが、非農林の方では七十万の増、これを雇用者についてみますと、全体で、先ほどお話がございましたように、雇用者で七十四万、農林、非農林におきまして四万、七十万、しこうして完全失業者数につきましては、おおむね前年の実績見込みが六十万程度ということで、これは上期におきましてはまだ十分に改善されないし、また、雇用関係にはズレがございますので、下期に改善されたとしても、この点は少し固く踏んで六十万程度、本年も横ばいというふうにこの見通しでは作られておるわけでございます。   —————————————
  11. 久保等

    委員長久保等君) 途中ですが、委員異動を報告いたします。  三月五日付をもって大和与一君が辞任され、その補欠として小柳勇君が選任されました。   —————————————
  12. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 もう一つだけで、この問題はあとでまた質疑をしたいと思います。そこで、今の説明資料一つ至急に出してほしいと思います。  それからもう一つ聞いておきたいのですけれども農業労働者雇用労働者にどのように転換しているか、それが一つ。  それからことしの学卒就業状況一つ。  それから職安窓口で登録されている動向、これが一つ。  それから今単純におっしゃいましたけれども失業保険受給者状況というものが一つ。  それから経済政策雇用計画との関係、どういう工合に動いているかということを数字的に資料をお示し願いたい。  これだけの資料をちょうだいいたしまして、そして私は次の機会にこの問題の質疑をやりたいと思います。よろしゅうございますか、今の資料
  13. 百田正弘

    政府委員百田正弘君) 一番最初の点についてもう一回御説明願います。
  14. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 順番に言いますと、今年の学卒からくる就業状況ですね。それから失業保険受給者動向職安窓口における登録の状況、それからあとはわかりますね、それだけ申し上げれば。それで経済計画と見合った労働力配置の問題、どう計画されているかということです。
  15. 小柳勇

    小柳勇君 三十四年度予算をわれわれ審議するに当りまして、若干質問をいたしたいと思いますが、まず、この具体的な予算内容に入る前に、概論的な、全体的な問題を一、二質問しておきたいと思います。  第一は、三十三年度労働者予算を昨年説明されたものの速記録がここにございますが、それによりますと、「三十三年度労働省予算重点といたしましては、四つ事項を柱といたしてございます。第一は雇用安定政策の推進でございます。それから第二が給与対策の確立、第三が労働教育の強化、第四が労働者の保護と福祉の増進、この四つの柱を一重点事項といたしまして、予算要求をいたしてございます。」こういうように三十三年度予算を提案するときには、関係者並びに大臣の意向としてこういう説明がなされた。今年度予算説明の中で、私は今衆議院の速記録を持っておりまするが、その中で大臣が言われました発言の中で、こういうことが響いてございます。「労働者の中でも、わが国産業構造上多数を占める中小零細企業労働者や、職につくことのできない失業者の方々に対しましては、特にあたたかい手を差し伸べる必要があると存ずるのであります。そこで、まず私は、新年度労働行政を運営するに当りまして、特にこれら日の当らない労働者にあたたかい日の当るよう、あとう限りの努力を尽すことを基本的態度といたしております。」こういうような大臣説明があったのでございます。で、昨年度のこの予算内容と、今年、今提案されておる三十四年度予算内容を見ますというと、この大臣考え相当の相違があるように児受けられるわけです。昨年度は、いわゆる今年度予算でございましたけれども、大産業労働者に対しても、物価の値上り、生計費上昇などによって、相当賃金の引き上げが必要であるという前提に立って、そういう考えのもとに予算の中に組んである。若干そういう数字が見える。ところが、今年度予算では、今日大産業労働者というものは大体もうこれでいいのだ、これで一つ賃金はもう押えて、零細産業労働者あるいは日の当らない失業者方たちにということが基本政策である、こういうような考えでございます。私どもは、統計あるいは調査資料その他、いろいろ調べてみまして、大産業労働者も、今なお生活は苦しい。すでに各労働者とも新年度の賃上げの要求をいたしておりまするが、そういうような、いわゆる日本経済の中における、あるいは経済機構の中における大産業労働者賃金について、労働大臣は一体どのようにお考えであるか。現在の経済伸びその他については、いろいろ説明がございましたけれども、そういうものと関連して、労働者賃金についてどのような見解で今後の一年間の労働行政をされようとするか。その点から御説明を求めていきたいと存じます。
  16. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 本年度の、つまり三十四年度予算編成につきましての労働省としての考え方につきましては、予算案のときに申し上げておる通りでありますが、私は、大産業労働賃金というものがまだ低いではないかという今お話でありますが、全体としての勤労所得というものは、たとえば戦前個人所得である財産所得等が、戦前と戦後の割合というものは、戦後の割合がぐっと減って、そして勤労所得がぐっとふえてきております。従って、全体としての勤労所得分配所得のうちの勤労所得の占める割合というものは、戦前の率よりは、個人所得に比して勤労所得がずっと多くなっている。このことは統計の示す通りであります。そこで、日本のいわゆる低賃金が唱えられまするには、いろいろな見方があると思うのでありまするが、いわゆる今のお話の出ました大産業従業員労働者諸君と、それからまた、零細な企業労働者とは、その賃金格差において、やはり英米ドイツなどに比較してその格差が非常に大きい。そこで、私は、やはりその格差の多い、低いベース労働賃金をしか得られておらない人々に、さらに特段の手を差し伸べることが労働政策としてはきわめて大事なことである。私がいつも申しておりまするように、労働者購買力、すなわち賃金がふえるということ、そのこと自体は喜ぶべきことであると思いまするが、働く人々のふところに購買力がふえれば、従って貯蓄もふえるし、消費もふえるわけであります。その労働者購買力というものが景気を刺激する源泉をなすのでありますから、そのこと自体は非常にけっこうである。ただ、わが国が単独な経済を営んでおるわけではありませんから、第一には、日本産業力を維持して労働者所得源泉を培養するということから考えましたならば、やはり国際競争力というものを第一に念頭に置かなければ話になりません。  第二は、労働者購買力、すなわち賃金がふえるということは、そのこと自体はけっこうであるが、それが物価にはね返って国民経済全体にどういう影響を持ってくるかということも見のがすことのできないことであります。従って、諸外国に比べて日本平均賃金ベースが高いとか安いとかということについては、あながちそのことだけ取り上げて議論することは私は当らないと思います。なぜならば、国民所得全体が違うし、国民生活水準そのものベースが違っておるのでありますから、私は分配所得の中に占める勤労所得の率だけで賃金の高低というものを論ずることは、私は経済政策全般としては、あまり意味がないことだと思うのであります。基本的には、私どもはそういう考え方に立って、今の日本ではやはり賃金格差が比較的大きい、その低い方のレベルのベースをなるべく引き上げてあげるということが大事なことであるし、同時にまた、大産業の方の従業員は、それぞれ大産業自体の中にいろいろな福利施設等も考慮されておりますが、比較的零細企業従業員はそれが非常に劣っている、そこで、そういう人々にやはりできるだけ政治の面であたたかい手を差し伸べてあげるということが大事な労働政策である、こういうふうに考えまして、そういうところにも特段努力を払いたいということが、政府予算編成に当って考えました一つの事柄であります。
  17. 小柳勇

    小柳勇君 今の大臣の御答弁、まだ内容について若干質問ありますが、また具体的にあとで聞くことにいたします。  私は昭和二十六年をベースにして、鉱工業生産指数増加割合と、それから大産業労働者実質賃金上昇割合統計数字をもって今話を進めているのでございますが、大臣はここ数年間におけるそういうような鉱工業生産指数増加、あるいは実質賃金上昇についてどのように数字的に御判定になっているか御答弁願いたい。
  18. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私、今手元にそういう統計数字を持ち合せておりませんが、概括的に申しまして、日本鉱工業水準上昇は、これは一九五六年度における国際通貨基金の発表したものなぞを読んで見ましても、一九五六年度における鉱工業生産伸び日本世界第一であった、また同年度における貿易の伸張率日本世界一であると言っております。そういうふうな状態日本経済力が回復して参りましたことは御同慶にたえないのでありますけれども、その工業生産率賃金上昇の率とを比較すれば、賃金上昇率の方が少いではないかという今のお話のようでありますが、私は日本産業というものに一つの大事な点があるかと思います。それは見方によってそれぞれ違うかもしれませんが、われわれは第二次世界大戦で徹底的にたたきのめされた日本経済力を復興して参りますこの悩みは、西ドイツと日本は同様であります。そこで、これをどうして国際競争力を維持して、先ほど申しました労働者賃金を生み出す源泉を培養すべきかということにつきましては、やはり底の浅い日本経済基礎を強固ならしめるということがまず第一に必要である。従って、日本産業界に対して私たちが望みたいことは、いかにしてその基礎を強固ならしめ、資本蓄積を重視しなければならないか。それから資本蓄積が第一に大事でありますが、さらにわれわれが日本産業を見まして気のつきますことは、負担する税の比較的高いということ、それからまた、御承知のように、日本産業界というものは、戦前と違いまして戦後は自己資本というものが比較的その占めておる割合が少い、たとえばアメリカ資本構造を見れば、自己資本借入金とは六十対四十だといわれておりますが、日本ではその逆で、自己資本が四十で借入金が六十ということになっておる。従って、金利負担、しかも日本金利アメリカ等に比して高いことは御承知通りであります。従って、日本産業金利負担の面を占める面は、相当負担が大きい、そういうことを考えますというと、もちろん私は上げられたる利潤を分配するということについて、なるべく景気を刺激する原効力である労働者大衆購買力をふやすとともけっこうであるが、やはりそういう賃金を住み出すべき源泉を強固に培養するというその前提基礎が大切なことではないだろうか、私は一方に片寄った見方政府というものはすべきでないので、公平に考えまして、日本の今日の経済上の国際競争力ということを考えましたときに、今申し上げたように、日本産業というものが金利であるとか税であるとか、それからまた、最近は科学技術の発達によりまして、どんどん新しい施設を取り入れるにあらざれば、コスト・アップになって、国際競争力に負けてしまうということで、だんだん新しいものを入れる。従って、企業負担すべき減価償却費というものも相当大きい割合を占めております。こういうふうなことを総合的に考えますというと、やはりアメリカ英国等に比べて、日本産業の実力が上昇した割合分配所得の中に占める勤労所得の率が少い、こういうことも今私は数字を持っておりませんが、非常に少いというのではなくて、やや英米に比しては分配所得のうちの占める勤労所得分は若干劣っておると思います。しかし、そういうところに大きな原因がある、こういうふうに理解しているわけであります。
  19. 小柳勇

    小柳勇君 資本蓄積を増大するという点、それはまあ資本主義下における今の内閣の使命でありましょうからやむを得ないのですが、その資本金融資本とのいわゆる利子あるいは資本償却などに使われないで、その利潤というものが設備投資となって大部分が工場の新しい機械あるいはオートメーション化、そういうふうに使われて、それによって労働者の締め出しが起っておる現象、そういうものも大臣数字でいろいろ御調査になったことがあろうと思うのですが、そういう点についてどのような見解を持っていられるか、お聞かせ願いたいと思います。
  20. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 大へん大事なことで、またちょっとむずかしいことでありますが、一般財界金融界、政界などで話をされておりました通説に対して、私は若干の疑問を持っておる一人でありますが、それはいわゆる神武天皇以来の好景気ということで、これはテレビだとかラジオだとか、電気洗たく機というようなものがうんと売れるだろうという見込みを商売人が立てるのは、これは当然のことでありましょうが、そういうことの結果、非常に設価過剰になった、そのために外貨事情が悪くなったのだというふうなことを一がいに言っておりますが、私どもは、そういう安直な見方には少し粗雑過ぎるところがあるのではないかと思います。なぜかと申しますというと、その設備それ自体は、今小柳さんも御指摘になりましたように、やはりどこか、地球の一角のどこかでオートメーションシステムというものが取り上げられてきたというときに、それを自分の国だけはそんなものは関係ないということを言っておったのでは、自分の国が取り残されてしまう。一昨年私がILO総会の帰りにイギリスに行きましたときに、ちょうどそのILO総会でもイギリスの労働大臣は、オートメーションシステムと労働組合運動というふうなことで総会で演説をやっておりましたが、非常にこれは大問題であって、英国の労働組合会議でも大きな議題として、ブラックプールの総会では長い時間このようなことで論議いたしておったようであります。しかしながら、結論としてやはり今私が申し上げましたように、外国でほかの国でオートメーションシステムを取り入れるというようになって、自分の国だけそれをやらぬわけにはいかない。従って、TUCなどでもこのオートメーションを取り入れるということの結果、労働者生活がどうなるかということについてわれわれ自体が検討していくべきである、こういうこと々述べておりますが、私はやつはりそうだと思います。そこで今申し上げましたように、日本設備過剰というのは、二面においては設備過剰ではなくて、やむを得ずそういう新しい進歩した機械を取り入れるにあらざれば、日本のその一つ産業国際競争力に立ち向っていくことができない。簡単に考えますならば、労働省に総合職業訓練所というのがあります。あすこを私がたびたび見ますけれども、たまたま一つの工作機械を見ました。予算関係で、実に古くさいマシンツールを備えつけてある。あんな所で育てられた労働者が、近代的な工作機械を使っている所に行っても役に立たないのであります。それですら現在は非常に就職は、パーセンテージはいいのでありますが、そういうふうに、もう一つの工作機械自体でもどんどん新しいものが出てきているときに、古くさいものを使っておったのでは歯が立たない。従って、そういうものは、もう自分の事業を継続していくために、どうしてもやらなければならないと運命づけられておる設備の交換でありまして、そういうものは、いわゆるむだな設備投資とはいえない。それを一般に見のがしておられる人が多いと私は思うのでありますが、しかし、最後のところで、小柳さんの御指摘になりましたそういう科学技術の進歩に伴って設備された近代的機械設備を利用することによって余剰労働力がそこに出てくる、こういうことについてどう考えているか、これは非常に大事な問題であります。私は労働省雇用失業の問題を考えますときに、このことは非常に大事な問題であり、このことに対して対処していくことを考えなければならないと思うのですが、究極するところ、生産性本部などで皆さんが相談いたしており、労使双方の話を聞いてみましても、オートメーションそれ自体は一時的にはやっぱり摩擦的失業をその面で出すことは確かにあます。しかしながら、現在オートメーションシステムを取り入れた結果、大量にそのために失業者が続出してきているという現象は御承知通り、ございません。それはどういうことで救済されておるかといろいろ調べてみますというと、部分的にその面で新しい機械を設備した所で、その余った労働力というものが出て参りますけれども、その事業自体でもいろいろ私ども労働省も手伝いまして、そこで出てきた余剰労働力というものを他に転換をしていく、あるいはその企業内でほかの方の仕事の方に転換していくということで、それぞれの職業訓練をあるいは事業なり、あるいは私どもの方で引き取ったりしてやりまして、そういうものを他の方へ配置転換をしていく、それからもう一つは、そういう近代的な新しい機械を設備することによって、その産業国際競争力を増して、さらにまた、設備拡大されていく、そういうところに配置転換をされていく、こういうようなことで、一応今のところでは、そのために大きな問題になっているところはございませんが、しかし私は、やはり、小柳さんの御指摘になりましたような問題は、絶えずこれから起きてくることだと思う。従って、私どもは、そういうことを、実際に産業面と緊密な連絡をとらなければいけませんからして、労働省の中に、最近、昨年の秋ごろからでありますが、雇用懇話会というものを設けまして、あらゆる産業面の人々を集めまして、そして現実に、たとえば鉄鋼業界あるいは石炭業界あるいは造船業界というふうな業界が、いろいろ計画を立てますのに、ともに雇用計画を立てますからして、そういうものとほんとうにマッチした政策を労働省としても立てられるように、そういう実際に人を使ってくれる面との実際的協調を試みて、緒についたばかりでありますが、そういうふうなことで、今のお話のような、大事な日本産業の問題と労働力を善用していくという面について、極力努力をいたしておる、こういう最中であります。
  21. 小柳勇

    小柳勇君 新しい設備投資によって、生産能力が拡大される。そこまではいいわけですが、それで拡大されました生産の消費は、賃金ストップ政策によって、もう購買力がふえていかない。あるいは今、雇用懇話会という話をされましたけれども雇用懇話会で幾ら話しましても、消費がもうそれで限界があり、あるいは労働時間についても、すでにここ十数年の間、大体八時間ないし九時間です。そういうことで、労働時間も大体きまっておる。消費もきまっておる。そういうときに、いかに雇用懇話会をお作りになりましても、話し合っても、雇用拡大しないと私は思うんです。で、私は調査いたしまして、統計をいろいろ調べてみますと、昭和二十六年ごろから今日まで、鉱工業の生産指数増加は、一八六ないし七のように見受けました。実質賃金の向上は、そのベースにして大体一四五ぐらいのようです。その鉱工業生産指数増加と、それから実質賃金の向上、これはいわゆる生活賃金になって参りますけれども、そういうものの差ですね、それが今、あなたがおっしゃったように、世界のこのオートメーション化におくれないように、日本が新しい近代設備をするならば、それによって、目に見えてそれだけの利潤というものは、新しい機械となって工場に入っていくだろう。そのことによって判断すれば、労働者雇用懇話会では救えないと私は思うわけです。で、総評、全労などの労働者諸君が、労働時間短縮を盛んに昨年から要求し始めました。そういうような労働力の過剰、あるいは消費力の低下、そういうものに対して、大臣は、新年度労働行政についての所信として冒頭にこういうことを言っておられる。「昭和三十四年度わが国経済は調整過程を脱して先行き次第に明るい展望を持つようになりましたが、」こういうように言っておられます。私どもこれは、全体的な大蔵大臣などの発言ならば、聞きのがし得ますけれども、そういうような、労働力をとにかく調整しなければならぬ労働大臣発言としては、いささか軽佻に失しはしないかと思うが、そういう問題を具体的に、もう少し御説明願いたいと思うのです。
  22. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 労働者が得べき賃金というものは、政府事業は別といたしましても、民間産業においては、労働者賃金というものは、その従事いたしておる産業から得られるわけであります。従って、経済規模が拡大していくにあらざれば、雇用の増大もできません。そこで、政府が見ておりますように、昭和三十四年度の下半期の状況を判断いたしますというと、ある一方においては、いわゆる経済の過熱ということをおそれるというふうなことを言っておりますが、私は、千二百億円以上の増額をいたしました財政投融資、それから公共事業費等を見まして、それからまた、御承知のように、中小企業金融公庫や国民金融公庫等に対する政府出資の増額等、こういうことを見まして、一兆四千百九十億円という予算は、相当これは警戒するにあらざれば、下半期における散布超過というものをそのままにいたしておいたならば、相当やはりインフレ的要素を帯びてくる予算であると思っております。従って、財政当局としては、そういう面について、常に警戒をしていかなければならない。従って、政府が、三十四年度予算の編成大綱をきめまずときに、その大綱の最後に文句を一つ書き入れまして、この財政を運営していくについては、今、私が申しましたような、いわゆる過熱的な現象の起らないように、政府は十分なる考慮を払わなければいけない、こういうことをわざわざ書き添えたような次第でありまして、私どもも今、昭和三十四年度予算を見まして、若干そういうことについて心配をいたし、また警戒をしなければならぬと思っております。そういう経済、財政のあり方というものに即応して、やはり雇用の増大というものはある程度見込める、そういう見地に立って、雇用失業の政策を私どもは策定いたしたわけであります。従って、日本経済の目の前の将来、近い将来というものは、私はやはりどういうふうな角度から見ても明るいと、こういうことを打ち消すだけの原因は、他にないではないか、そういうふうに思っています。
  23. 小柳勇

    小柳勇君 私どものいわゆる労働力を守る、生活を引き上げるという立場から見るというと、非常に悲観的な資料が多いわけです。大臣は、そういう面でも行く先は明るいというような観点に立って、労働行政をやっておられる、こういう点に対して、私は、今年度予算の上には非常に問題がある、こういうことを第一に指摘しておきたいと思います。  次には、今の言葉の中で、これを云云する必要はないと思いますけれども、非常に認識不足があるので、指摘しておきたいのは、各事業所で、あるいは会社で、機械化、近代化するために、余剰になった労働力というものは、それぞれその企業内において消化しておるものと思う、こういうような発言がありましたけれども、これは非常に認識不足でございまして、各職場とも、目には見えないけれども、あるいは首切りを早めるとか、退職を慫慂するとか、いろいろな方法で労働者の数が目に見えるような速度で各職場とも減少しつつある。そのことは、あとで私が申し上げる失業問題と関連があって、各職場にそういうものが発生しつつあるということ、しかも、今、あなたが言われた、部分的これは消化しておるではないかという点については、相当労働者の上にしわ寄せがあるということも、この際認識しておいてもらいたいと思うわけです。そういうことで、私どもとしては、今の日本のこの経済情勢が、非常に労働者の上にしわ寄せになって、一方的に資本蓄積がなされておる、そういう見解に立っておることも、この際申し添えておきたいと思うんです。  次には、第二点の大きな問題は、この大方針の中で言われた労使関係の正常化、今までの前の大臣のときは、労使関係の正常化ということを言っておられましたが、今回はこの労使関係の「労使協力の体制を築き上げようとする効力に欠けるものがあります。」というようなことで、このように現在の労働者というものが賃金が低い、あるいは労働時間が長い、あるいは機械化、近代化によって職場がなくなっている。そういうぎりぎりの線に追い込まれた切迫した労働者のそのような運動を労働大臣がこれを押えつける方向に労働行政がなされておると見受けるわけです。ここにもそういうことが書いてありますが、そういうことについて、労働大臣はどのようにお考えかお聞かせ願いたいと思います。
  24. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 言葉づかいは違っておりますけれども、私はやはり労働運動の正常化ということを常に期待いたしておるのであります。かりに今あなたの御指摘になりましたように、この労働者の切実な要求があって、そしていろいろトラブルがそのために起ることもあり得るでありましょうが、やはり労働運動は労働運動であって、労働運動としてはやはり第三者の国民大衆が納得のできるような、理解と同情を得られるようなものでなければ、私は労働運動も政治活動も成功しないと思うのでありまして、そういう意味で、ひとり労働運動にだけ非常に模範的な民主主義運動を期待するということは無理だと思うわけであります。なぜならば、私ども戦後、民主主義的議会を運営して参りましても、私どもがみずから反省をしなければならないようなことがわれわれの議会内部でも行われる。一般国民でも、まだ民主主義を十分体得しておらないのでありますから、労働運動に対して民主主義を百パーセント期待するということは無理かもしれませんが、それなればこそ私は労働協会なんというようなものができまして、そうして国民全般に対して労働運動というものはどういうふうにやったらいいかということを、全体的な啓蒙指導ということをまだやっていくべき大事なときだ。そういう意味で労使関係を私はできるだけ正常化の方に持っていきたい、こういうつもりでありまして、弾圧などというようなことを労働大臣考えるべきことではないのであります。
  25. 小柳勇

    小柳勇君 ただいま言われた労働協会の問題についても、問題がありますが、これは具体的な予算案の中で質問していきたいと思います。  第三点は、失業問題てございますが、現在の日本経済情勢によって、失業問題は労働大臣としても重要に考えておられるようでありますが、この五十四年度予算を提出するときに、そのときの失業見込みあるいは失業対策費の予算要求、そういうものと、この出て参りました予算案における失業者見込み、そういうものが相当相違している。一体さっき第一点で申しました機械化などによってはみ出てくる労働者失業あるいは学校卒業者の失業、その他の事情によって発生する失業、そういうものを基本的にどのように考え数字的にどのようにお考えであるか、答弁願いたいと思います。
  26. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私は最初財政当局に要求いたしましたそういう失業見込みあるいはまた、それに要する対策費等についてそれが実際に現われているものは減少している。そういうことについて速記があって、どうも大ぜいのおられるところであまりこういうことを言うことは好ましくないことでありますが、大体その予算、これは小柳さんもおわかりの通りに、予算要求のときにはできるだけ取れればいいということで、まあそういう編成の仕方いい悪いは別として、正直に申し上げれば、どこの役所も削られることを予想してある程度のものを出すというふうなことが行われておるのでありまして、その間でもこれは最低線である。そういう最低線にきては困るということで大いに各省とも努力をする、こいうようなことで編成をいたしておるのでございまして、私ども産業伸び実質五五ということはまず大丈夫だ、私はむしろ下半期の情勢を見れば、おそらくわれわれの計画よりも上昇すると思っておりますが、そういう経済計画基礎にして雇用及び失業を見ましたときに、昨年度通りに、大体六十万人と想定すればまず間違いはあるまい、こういうことに基いて失対事業費も本来ならば同等に削られてもいたし方ないのを、全力をあげてとにかく昨年度よりは就労日数もふやすことができた、こういうことで、まずまず私どもといたしましては、三十四年度の失対対策としては、この程度でできるではないか、こういうふうに見ておるわけであります。
  27. 小柳勇

    小柳勇君 予算の問題についての技術的な問題は、大臣の言われることはよくわかりますが、ただほかの官庁が家を建てたいとか、あるいは道路を修繕したいという予算失業者の生きていかなければならぬ、人間が最低限度のぎりぎりの生活を見なければならぬ、この問題と平等に考えて、あるいは水増しとか、やむを得かったとか、こういうことは私は答弁にならないと思う。失業者の問題については、適確な資料を持っていろいろ大蔵省とも折衝されたと思うのですが、その資料労働省で使っている資料、あるいは経済企画庁で使っている資料相当の相違があるわけです。大臣は、一体どういうものを基礎にしてそういう予算要求をされるか。私どもとして非常にこれは心配なことですね。失業者が幾らおるということすら労働大臣が適確に把握しておらないとするならば、これはゆゆしい問題だと思うのですが、どういう資料を持って予算要求をされているか、御答弁願いたいと思います。
  28. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 政府経済計画を立てておりますことは先ほど申し上げた通りでありますが、その一環である昭和三十四年度における雇用失業予算要求につきましては、私はやはり今申し上げましたような産業伸び基礎にして、そして就業人員完全失業者というものを計算する、その計算の基礎経済企画庁も労働省も全く一致した見解のもとに想定をいたして、それに要する失業対策事業費というものを要求いたしておるのでありまして、政府の中にそういうことについての考え方の違いというものはないわけであります。
  29. 小柳勇

    小柳勇君 私、衆議院の委員会の労働大臣の答弁を読みながら、わかりながら実は質問していわるけですが、今労働省調査統計を強化しなければならぬということの中で、経済企画庁の統計あるいは総理府の統計などが違う、まちまちである、従って、もう少し強化して適確な資料をとりたいというようなことも言っておられるようだが、今言われた資料によりますと、内閣の中ではいろいろ考えは変らないと言っておられるが、一体資料はどういうようなものを基礎にして大臣自分考えをまとめておられるのか、はっきりしておいてもらいたいと思います。
  30. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私が、多分衆議院の予算委員会だと思いますが、そこで統計の話が出ました。統計につきましては、日本労働力人口統計は内閣統計局でいたしております。ただ最近若干の議論が出ましたのは、その内閣統計局における統計の取り方についてさらに正確を期するという意味で少し取り方を変えた、そういうことのために、たとえば非農林の労働就労者などが非常にふえたというような数字が出てきておる。そこで私は、昭和号十四年度労働省の中の統計調査部等の予算も増額をさせ、そうしてまた、特別の調査官二名を特に増員をいたしましたのは、労働統計については、やはり労働省のやっておりまする統計、これがまず大体安心して信頼し得るというふうなものを作らなければならない。こういうものをさらに強化するという意味で、そういうことを要求いたしたわけでありままが、内閣統計局の出しております統計、同時にまた、経済企画庁が経済計画考えておりますのも、労働力人口については、内閣統計局のものをとっておるわけでありますが、そういうことについてさらに万全を期したい。従って、政府部内で統計というものにさらに力を入れて、総合的なりっぱな権威のあるものを作りたいと思っております。そういうことを申し上げたのでありまして、その考え方は今も変っておりませんし、この席でも私の考え方を申し上げ、政府部内における統計をさらに正確なものにしていきたい、こう思うわけであります。
  31. 小柳勇

    小柳勇君 統計の問題については考え方わかりましたが、さっき言われた失業者が六十万という数字は、われわれから考えて、あるいはいろいろの資料を見てみまして、非常に寡少に過ぎると言わざるを得ないわけです。現在の、私どもがずっと今までの調査資料によって調べるところによると、あるいは私どもが小さい範囲ではあるけれども、各地、各県などの実情を調査したところによりましても、失業者六十万という数字でいろいろ労働行政をやり、あるいは失対事業をやるということは、あまりにもおざなり的な、労働者はこのようなことをやっておりますという申しわけ的なものにすぎないような気がしてならぬのです。たとえば大学を出る、仕事がない、高校を出ても仕事がない。皆さんもそうでありましょうが、各委員とも、相当学卒者の履歴書を送ってきて困っておられると思う。そういうものを考えてみますと、六十万失業者がおりますから、これについてこういうような失対事業をやっておりますから、これでというようなことには、私どもとしては納得ができない。新聞、その他の論潮によりましても、潜在失業者を含むと大体一百万あるだろう、そういうことをいっておる。完全失業者で六十万人あります、失対事業はこうだ、こういうようなことでなくて、そういう潜在失業者が三百万、そういう失業対策の方針はどういうようにお考えになり、今後どういう政策をもって対処していかれようとするか、御答弁願います。
  32. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 内閣統計局の労働力人口、それから政府部内でそれを基礎にして失業対策考えますときに、御承知のように、今やっておりますのは、調査の最終の一週間に一時間も働かないという者が完全失業者である、こういうのは気の毒ではないか、こういう御議論が出ておりました、私どもそう思います。そこで、そういういわゆる不完全就労者と申しますか、そういう者が私はやはりある程度日本には存在いたしておることを否定することはできないと思うのでありますが、そこで、先ほどお話のありましたように、まず、就労するということは、官庁でいえば、定員法もありますし、それからまた、公共企業体等でもそれと同じようなことをやっております。どうしても雇用を増大するという点から考えますというと、民間産業の活発なる運営ということに期待をされなければならない。従って、私は経済政策、その経済政策の中でも、政府が言っておりますのは、御承知のように、一番先に雇用の増大ということが長期経済計画の第一次の目標であると言っているのも、そういう点であります。今のような自由経済のもとにおける経済計画というものは、なかなかそれには困難が伴いますけれども、やはり私は今日の日本産業をどういうふうにして雇用を増大いたしていくか、こういうことについてはしばしば私が率直に申し上げておりますように、なかなかむずかしいことであります。しかしながら、政府もこれには全力をあげる。従って、国内の購売力をいかにして増大するか、同時にまた、日本の輸出をどのようにして増強して、その輸出にマッチするだけの産業構造を伸ばしていくかというところに雇用を増大するということを目標にした経済政策があると、従って、私はやはり経済政策の大きなねらいとしては、国内の雇用を増大するための産業規模の拡大、同時にまた、輸出に重点を置いて輸出を強化していくという経済政策と相待って雇用の増大をはかっていかなくちゃならない。これがやはり基本的な政府考え方であります。
  33. 小柳勇

    小柳勇君 特にこの私立大学を出た人など、あるいは秋の大学卒の試験に落ちたような人は非常に就職困難なわけです。単に雇用拡大というような、そういう表面上の言葉だけでなくて、具体的にこのような青年層が希望を持って学校を出て仕事をしなければならぬ、そういうものについても閣僚としていろいろ考えておられると思うけれども、そういうもので具体的にあれば一つお聞かせ願いたいと思う。
  34. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ことしは昨年度に比べて新規学卒者というものは、大体就業希望者が十五万人くらいであるということになっております。そこで、昨年の高等学校、大学の卒業者の就職率と、ただいままで行われております就職のほぼ確定いたした者、これを見ますというと、昨年度よりも高等学校等は率が上の方にきております。これは現実に学卒者が就職決定したものをそれぞれの機関を通じて調査いたしたものでありますが、私どもはそれで決して満足いたしておるわけではありませんが、昨年に比べては劣っておらない、こういうことだけは言えると思うのです。  そこで、小柳さんのお話にありましたように、それぞれ人によってはお気の毒な立場に立っておる者もあるわけでありますから、そういうものについて私どもは特に御承知のように、学校とわれわれの方と協力をして就職をあっせんすることに努めておるわけでありますが、ともかくも総括的に申して、この雇用拡大ということは非常に困難を伴う大きな大事な問題でありますから、なお一そう力を入れて参りたいと、こういうふうに思っております。  なお、ちょっと去年の数字とことしの数字があると思いますから「政府委員から申し上げます。
  35. 百田正弘

    政府委員百田正弘君) 学卒の問題につきましては、毎年労働省といたしましても一番の重点事項として就職あっせんに努めておるところであります。昨年度、三十三年三月学卒者につきましては、幸いにいたしまして九〇%以上の就職率を示したわけでございます。特に本年度におきまして、その後の情勢等心配されましたが、昨年、三十三年十二月末現在におきまして前年度と対比いたしますと、まだ現在就職あっせんのまつ最中でございまして、最後の馬力をかけておるところでございますが、十二月末現在で見ますと、昨年よりもやや率において就職率が上回っておるという状況になっております。特に昨年におきまして、三十三年の上期におきましての景気後退のために、たとえば高校等につきましても九月の就職の場合には求人がまだ先行き不安で見込みがなかったというのが、最近少し出て参った、そういう関係で少くとも新規労働力に関する需要は特に中学卒が一番でございますが、現在の見通しといたしましては、今後のわれわれの努力によりまして昨年程度、あるいは多少上回るというところまで行き得るのじゃないかというふうに考えております。なお正そう努力を必要とすると思います。  さらに、先ほど大臣からも話がありました大学卒業者の問題でございますが、これは現在まで、大体昨年の十一月ころまでに大どころが終っておる。ところで、これにつきましては、主要大学の所在地につきましてわれわれ従来の経験から見ましても、大体この三月期までになお就職の見込みがあるのでございますので、これにつきまして、主要な大学の所在地におきまして安定機関、それから学校、それから新聞関係、それから商工会議所その他、これで大学卒業生の就職あっせん協議会というものを作らせております。ここに全部持ち込むというようなことで、それぞれの機関が協力してやっております。ところで、特に最近の日経連等から発表されております、わずか一部の会社についてでございますけれども、大企業方面におきますよりも、ことしの状況といたしましては中企業方面、百人から五百人程度、この方面に多くの進出を見たのでございまして、これは学生のそうした状況の判断によると思いますが、漸次そうした方面、中企業方面におきまして、特に求人側におきましてもこれを希望するというような傾向が最近見えております。遺憾ながら、まだ学生の方におきましてなかなかそこまで思い切れないというようなことがあって、不一致、摩擦の面が相当ございます。それから特に科目によって相当これが違っておりまして、文科系統におきましては、最も就職が困難でございます。そうした面におきましても、いろいろな方面に現在あっせんの努力はいたしております。おそらく一番たくさん履歴書がたまってくるというのがこういう方面の人でございます。とにかくわれわれはそういう形で現在努力いたしております。
  36. 小柳勇

    小柳勇君 雇用懇話会というものを大臣がさっき言われましたが、雇用懇話会の性格についてもう少し詳しくお話ししてもらいたいと思いますが、なお、そういうような雇用を中心にした経済計画労働省としてどのようなことで具体的に進められようとするか、社会党では悪用基本法を今立案中でありまして、今国会にあるいは出るかと思いますけれども雇用中心にして経済計画をやらなければ、さっき大臣がるると言われたように、資本蓄積のために、この際一つ機械でもどんどんやってもうけようというようなことでは失業者はどんどんふえるだけだと思いますが、そういうような雇用中心にして経済計画をやるということについて、大臣はどのようにお考えであるか、お話し願いたいと思います。
  37. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) いろいろお考えの違う方もあるかもしれませんが、私ども雇用というのは、やはり先ほど申し上げました政府機関、地方公共団体というものもありますけれども、これも相当数ありますが、これは定員法というもので一定の拘束を受けております。それでもなおかつ毎年新規採用はもちろんありますけれども、私が考えます雇用の問題は、政府経済計画を策定いたしますときに、一番先に掲げておる雇用拡大、そういうことをなすべき経済政策ということで考えておるわけであります。従って、雇用問題もやはり全般の経済政策と見合って総合的に立案しなければ、これは成り立たないのでありまして、私どもは今の自由経済のもとにおいてどれだけの人間をどこに配置すべきであるというふうな計画経済ということは、今私どもはこれをとるべきであるとは思っておりませんが、政府の持って、おります雇用審議会等においても、やはり現在の機構のもとにおいて、雇用をどのようにしたならばふやしていくことができるか、こういうことを雇用審議会等で真剣に検討をしてもらっておるわけであります。最近出ました答申案、その中でもさらに雇用の面を増大いたしていくその一つの手段として、例の職安行政の強化刷新というふうなことも言われております。従って、昭和三十四年度予算にはこの機能がさらに一段と活発化して、そうして雇用面を増大するようにということで、その面の予算額は例年に比べて数倍の増額をいたしたということも御承知通りであります。同時にまた、政府のやっております仕事が、いわゆる官庁仕事でなくして実際に生きた活動をし得るようにということで、私が考えまして雇用懇話会といったようなものを作りましたのは、実際にこの人間を使ってくれる万の側の人々は、それぞれ年度をきめて来年度の仕事はわが社ではどうあるべきかということをどこでも計画するでありましょう。そういうものを一つ一つ拾い上げたのでは困難でありますから、先ほどもちょっと触れましたように、たとえば造船工業会あるいは鉄鋼連盟といったような、それからまた化繊協会、そういうものがありますからして、そのおもな業界を代表するような人たちを一応集めて、そうして労働省考え方説明いたしまして、その下に今度は幹事役的なものを集めまして、それは各業界の事務局長みたいなクラスであります、そういう人々の中に、たとえば綿紡なら綿紡の業界で、雇用の問題についてはどういうことを各社で計画しておるかということを研究させる。従って、私は、実際に雇用面に携わっておる人々とそれから雇用失業を扱っておる労働省の仕事とがそこで緊密な連絡がとれて、そうしてあなたのところで大体こういうふうな技術を学んだ者を、こういう計画を持っておるということであるならば、そういうものに即応したように一つ雇用面を広げていくことを考えよう、こういうようなことで雇用懇話会というものを今活用し始めている、こういうわけであります。同時にまた、今安定業務の中でも御承知のように、大きな産業で実際にこの職業安定所の機構を百パーセント利用してくれておるところもありますが、そうでないところもあります。従って、どのようにしたならば政府のやっておる職業安定業務というものを理解して、それを利用してもらえるかということについては、やはりそれだけの用意をしなくちゃいかぬ。たとえば地方で予算がないので、一日何回電話を使えばもうその日にはとまってしまう、また、安定所の所長が自転車で走り回っておるというようなことではだめだ。そこで、そういうものをまずお得意さんである、実際に使ってもらう人たちに対してもっとサービスできるように、そういうことだけでもうんと能率が上るのではないかというのが有沢教授を会長とする雇用審議会の答申でありまして、そういうように総合的な計画を立てて雇用量の増大をはかっていこうというのが労働省考えております実際の仕事であります。
  38. 小柳勇

    小柳勇君 失業問題について、あと一、二質問して先に進みますが、この間質問いたしました石炭合理化臨時措置法によって北九州に、われわれから言うと、大体九千ぐらいの失業者が出る予定でありますが、この前、大臣は、内閣の方で完全に対策ができるまではあの法律の発動をしないということを答弁されました。その後の経過並びに臨時措置法をどうしても今国会に出すかどうかということを御答弁願いたいと思います。
  39. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私は、通産省当局が、石炭政策でどうしても合理化法で百万トン買い上げをしなくては困る、こういうことの相談がありましたときに、その合理化法で百万トンふやすということになれば、当然失業者というものが考えられる、そういうものを総合的に計画を立てた上でなければそういう法案の提出には反対であるという立場をとって参りました。そこで、地元の北九州、一番大きいのは北九州でありますが、そこでやはり二つの陳情がありまして、早くこれをやってもらわなければ弱小炭鉱が困ると、こういうことを言って参りました面と、それから失対を考えてからでないと困ると、両方二つありましたが、結局県当局も呼びまして、そして何とかして百万トン買い上げは実施させてやりたいが、それに要する失対の計画を立てなさいということで、自治庁、大蔵省その他政府部内及び県当局等も招きまして相談いたしました結果、大体計画がこれならばけっこうでございますと、こういう話になりましたものですから、それならば皆さんがそれで納得するならばそれでよろしいと、こういうことで、それを実施に移す計画政府部内で立てまして、この百万トン買い上げの合理化法について私どもも同意いたしました。その内客については事務当局から一つ説明申し上げます。
  40. 百田正弘

    政府委員百田正弘君) 今度の百万トンの追加買い上げを実施いたしますと、どの程度失業者が出るかという見込みでございますが、大体全国で七千五百名、福岡県で四千九百名、約五千名、こういう見通しでございます。それが主として福岡、筑豊地区で出るわけでございます。ところで、従来の今までの三百三十万トンの買い上げがまだ九十万トンばかり残っておるわけでございますが、われわれは百万トンの追加買い上げで新たにこの程度失業者が出るからというそれだけの対策では困るので、現に相当数の失業者がおるわけでございます。さらに九十万トンの追加買い上げという問題がございますので、これも吸収し得るような計画でなければ、さらに新しい追加買い上げを急速に実施するということについては慎重でなければならぬということで、政府部内、関係省の間で相談したわけであります。その結果、今回の計画によりまして、総事業量におきまして、一般失対も含めまして、福岡地区だけで約七千五百名程度の吸収が可能な計画ができたわけであります。つまり年度におきましては、三十四年度計画におきましては、特にわれわれといたしましては、まず離職者に対しましての職業紹介あるいは職業訓練というものを安定所の努力によって極力いたさせることに現在具体的に計画を進めているのもございますが、それに対しましては、石炭事業団の方から、他に移っていくという者については移動資金を一カ月分出させるということもきめたわけでございます。これらの措置を講じましても、なおどうしても就職できないという人はどうしても地元で公共事業、あるいはその他の事業並びに失対事業、こういうことで吸収をはかる必要があるわけであります。  そこで、これがどの程度になるかということでございますが、従来の経験からいたしまして、昨年の十一月現在で、あの地区におきまして石炭関係の離職者として、特に今申し上げました公共事業等の対策を必要とするという人々が五千八百人でございます。これに、従来の石炭関係の離職者の二割程度、従いまして、今回の場合におきましても、十一月以降に出る失業者並びにこの追加買い上げによる分も含めまして、その二割を見込みまして、これと五千八百人を加えまして七千五百人が対象になっておるわけであります。従って、その増加分につきまして、公共事業等重点的に福岡県の筑豊地区においてつけていく、こういうことにいたしております。その結果、その過程におきましては、従来とかく失業者の発生する地域と事業が、施行される地区がだいぶマッチしないということのために、実効が上らなかったような面もございますので、今回の場合におきましては、特におおむね失業者の発生する地域の見込みに従いましてその事業を増加、実施するというようなことで話し合いがつきまして、三十三年度におきまして筑豊地区並びに北九州地区におきまして、公共事業費その他によりまして四十五億程度のものが、三十四年度においては七十九億ということで、約三十三億の増に相なったわけでございます。従いまして、この七十九億によりまして約四千三百人程度の人たちが吸収できる。そのほかにこれで吸収できない者につきまして、一般失対事業を増加いたしまして、これを三千二、三百人程度のワクにいたしますと、七千四、五百人程度の吸収は可能であると、一応こういうことで案がまとまったわけでございます。具体的な実施の面におきましてはいろいろな点もあろうかと思いますが、われわれといたしましては、これが完全に実施できるように努力いたしたい、こういうふうに思っております。
  41. 小柳勇

    小柳勇君 ただいまの問題並びにこの駐留軍離職者の問題など、労働大臣労働省だけでは完全に問題が処置できないところもあるようですから、閣議その他で大臣一つ極力これが約束されたことを完全に実施する方向に御努力願いたいと思います。特にこの駐留軍離職者の問題は、昨年十月三十日の当委員会で満場一致の決議もございますから、この線でまだ実施されておらないところもありますので、こういう点も各省との折衝により完全に実施できるように御努力願いたいと思います。  第四の質問に入りますが、今年度予算の中で約二十億何がしの予算を組んで、労働基準法の完全実施並びに労働行政を進めていくということで予算も計上してございます。労働基準法の完全実施の状況について、まず概況から大臣説明を求めたいと思います。
  42. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 労働基準法は御承知のように、施行後十一年を経過いたしました。大企業等においてはすでに法律を上回る労働条件が行われているところも多いわけでありますが、中小企業、なかんずく零細企業等におきましては、まだ相当の懸隔が存するという状況でございます。  基準法の実施状況につきましては、現在労働基準法の適用を受ける事業所は約百十三万事業所であります。また、労働者数は千四百万人に達しておるわけでございます。  今のような実施実情にかすがみまして、当面の基準行政監督の指導目標といたしましては、まず第一に、全産業にわたり週休制を確立すること、第二には、紡績業等における女子年少者の深夜業を次第に減少させていくということ、第三には、死亡ないし重大災害発生のおそれのある基準法違反を排除する、この三つを重点目標といたしまして、目下各基準局の監督署において事業所を監督しておるのでございます。
  43. 小柳勇

    小柳勇君 事務当局にそのものを聞くつもりではなかったわけです。大臣の決意を実は聞きたかったのです。  ここに、大臣は、「労働基準法の運用につきましては、」云々と書いて、なお「各般の施策により中小企業の振興を一段と推進し、中小企業のよって立って基盤の強化をはかり」云々と書いてございます。その労働基準法が大臣は一体どのくらい実施されておるとお考えになっておるのか。私どもが、地方など、基準監督署や基準監督局に参りまして調査するところによりますと、まだ非常に実施されておらない。そういうものを大臣はどのようにお考えであるか。その決意のほどを実は大臣からお伺いしたがったわけでございます。
  44. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 労働基準法は日本の持っておりますいわゆる労働三法の中でも、われわれが労働者の体位を向上し、そうしてまた、労働力というものを保護する意味において非常に大事な法律でありますから、これはあとう限り実情に応じて励行のできるように、ことに基準法が期待いたしております先ほど政府委員も申し上げましたように、たとえば週休制、それからまた、産業災害の防止というふうなことは、一般が注意をしてくれるとくれないでは非常に効果が違うのでありまして、そこで、私どもは順序を追うて、一つ一つ基準法の建前をさらに敷衍して、そして産業災害等を防止することによって日本労働力を保護し、日本産業のしっかりした基盤が築けるように、こういうことで新しい施策を推進して参って、そういうことの結果、日本産業界によい風潮をもたらすことができ、労働力保護にもなるのではないか、こういうことで、要は基準法の建前を十分に尊重し、これが実施ができるように努力し、推進していくという建前を労働省ではとっておるわけでございます。
  45. 小柳勇

    小柳勇君 昨年の三月十八日のこの社会労働委員会で、基準法が完全に実施されておらないいわゆる基準法違反の事実があるということで、相当問題になった記録がございます。それによりますと、全国六万軒の旅館がある。その全国六万軒の旅館の中で、六十分の一ぐらいしか実はまだその基準法などというものが実施されておらないというような報告もあるわけです。その後、調査するということ、あるいは監督を強化するということをるるとして述べてございますが、そういうような一つの例ですね、これは旅館業という一つの例にとってみましても、労働基準法というものが非常に実施されておらない、しかも監督が行き届いておらないというようなことが具体的に立証されておるわけです。  その後、そういうものについてどのように監督を進め、あるいは指導されておるか、答弁願いたいと思います。
  46. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) ただいま御指摘の旅館における基準法の実施の問題でございますが、基準法の実施事業所は、御承知のように、一人でも使っておればあらゆる業態について適用があるわけでございます。しかしながら、この旅館等におきますいわゆる旅館従業員というような業態につきましては、その仕事に特殊性がありまして、基準法の実施事業所の中では、率直に申しまして最も守られにくいところでございます。しかし、旅館の従業員の労働条件が明確でなく、また、基準法の実施についても遺憾な点が多いというようなことは事実でございますので、これらにつきましては、やはりわれわれといたしましても基準法の線に沿って労働条件を明確化し、その労働条件の向上をはかるということが使命であると思います。昨年の初頭以来、労働省から各基準局長あてに通達を出しました。旅館従業員の労働条件の明確化と基準法の線に沿う労働条件の是正につきまして相当強力に指導しておるわけでございます。最近におきましては、たとえば京都とかあるいは和歌山とかそういうところから始まりまして、東京でも、御承知かもしれませんが、上野を中心とする旅館に、おきましては、就業規則を明確に定めて労働条件を明確化していく、そうして週休等の問題についても、基準法の線に沿う運用をはかるということを最近実施を始めておる状況でございます。まだ地方におきましては、この線まで届かないところもありますが、われわれは、旅館の特殊性は考慮しつつ、しかし、やはり基準法の線に沿う労働条件の明確化をはかるために、今後もこの線に沿う指導を強力に進めるつもりでおります。
  47. 久保等

    委員長久保等君) 速記とめて。    〔速記中止
  48. 久保等

    委員長久保等君) 速記始めて。
  49. 小柳勇

    小柳勇君 まだたくさん問題がありますが、休憩するそうですから、これで休憩の何に入りますが、労働基準法が実施されてすでに十年余りたちますが、それでなおこのようなことです。事業所が百十三万事業所で、たった一つの旅館ということですね。その中でいろいろな仕事がございましょう、種類が——で、私どもが、これはまず次の将来の論議になりますけれども、二十億の経費を使って労働基準法を完全実施するために指導監督されておる。それでなおそのような情勢であるわけです。で私どもが——最低賃金法、こういうものが今国会でも問題になっておりますけれども、このような労働者の基本的な権利の水準あるいは労働条件の水準をきめた労働基準法がこのような情勢であって、地域における基準監督署なり基準監督局の活動と事業所のつながりというものを非常に危ぶんでおるわけです。そういうようなものがあればこそ、幾らきれいな法律を作りましてもなかなか実施するには相当の時日が必要じゃないか、そういうことを私は言いたいのでございますが、なお、今後このような労働基準法の完全実施の状態に対して、調査なり監督なり具体的にそういう計画があればお聞かせおきを願いたいと思います。
  50. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 先ほど申し上げましたように、ただいま三つの重点を置いて指導いたしております。また、違反が是正されなかった事業所につきましては、具体的に再監督の方法を強力に行うというような方向でその是正を進めたいと考えております。具体的な例を一、二申し上げますと、たとえば昨年の半期におきまするところの違反の是正状況を見てみますと、再監督を行なった場合に、完全是正の行われた事業所が労働者百人以上では六一・五%、十人から九十九人の事業所では六三%、一人ないし九人の事業所では五五・一%、平均五九・八%というような例を示しております。このような再監督を励行する。それとあわせまして世論等にもお願いいたしまして、報道機関等の協力をお願いいたしまして、たとえば週休制あるいは災害の防止あるいは紡績等におけるところの深夜業の排除というような問題につきましては、両面から強力な指導を行なっていきたい。三つの重点によりまして、具体的な方法といたしましては、再監督、それと指導をあわせまして強力に指導いたしたいと考えております。
  51. 久保等

    委員長久保等君) 暫時休憩をいたします。    午後零時三十九分休憩   —————————————    午後二時二十七分開会
  52. 久保等

    委員長久保等君) 午前に引き続き委員会を再開いたします。
  53. 光村甚助

    ○光村甚助君 けさ、小柳委員質問の中で労働大臣の御意見を承わったのですが、その中で資本の蓄積をやって、それで設備の投資をやらなければいけないというようなお話があったのですが、もうけた金は全部資本の蓄積にやって、労働者には配分せずにそれだけでいわゆる設備投資をやる、こういうお考えなのですか。
  54. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私が申し上げておりますのは、大体終戦後の日本経済で一番大事なことは、やはり経済上の国際競争力に打ち勝っていかなければならない。そういうことで日本産業が維持されていかなければ労働者賃金というものも上昇していくことができない。従って、各企業としては、企業努力によってやはり蓄積資本というものをふやしていかなければだめだ。しかし、あげられた利潤というものが全部もちろん資本の蓄積に回るというわけではありません。御承知のように、株主の配当もありますし、そういう社内積立金もありましょう、償却もありましょう。しかし、やはりある程度大きなパーセントを占めたものは資本の蓄積に回して企業基礎を強くしていく必要がある。同時にまた、現在の社会情勢ににらみ合わして労働者の待遇、福利施設等もふやしていく、要はやはりそういう諸般の施策をとりながら戦勝国などに比べて、やはりドイツやわれわれの方は資本の蓄積ということを大事に考えて、産業基盤を強化していく必要は特に強いのだ、私どもはそう見ると、こういうことを申しておるわけであります。
  55. 光村甚助

    ○光村甚助君 大臣の答弁の中で、たとえば、日本のいわゆる経済の面でもうかっても、労働者にこれを按分するんじゃなくして、生活水準に応じた賃金を支払えれはいいと、こういうお話も出ていたわけです。しかし、国民生活の水準に応じた賃金ということは、どういうことなんですか。アメリカのような生活水準の高い所は高くやって、たとえば末開国の裸で暮す所はそれに応じた賃金を払えばいいと、こういうような発言をされているんですが、しかし、私はこれはちょっとおかしいと思うんです。アメリカ日本と比べてみましても、アメリカの、たとえば郵便労働者に例をとりましても、十八才でこれは十万二千円ぐらいもらっている。日本あたりは八千円ももらっていない。労働者生活水準はそれなんだが、資本家の生活水準はどうかというと、日本資本家にしたって、自動車は持っているし、あるいは電気冷蔵庫から電気洗たく機から、全部日本資本家はこれは持っている。資本家同士の生活水準というのは、アメリカ日本生活水準というのはそう大して違わない。しかし、労働者生活水準というのは、アメリカ日本では相当差がある。それで、生活水準に応じた賃金を配分するということになると、非常に私はそこと矛盾した議論じゃないかと思うんですが、その尺はどうですか。
  56. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 先ほど私の申し上げましたことを、私の説明がうまくいきませんで、誤解をされた点もあるようでありますが、私は、この賃金ベースの高低というものは、その国の為替換算率だけで比較するのは意味がないと、こういう趣旨のことを申し上げるつもりでおったのであります。つまり、その国の国民所得生活水準とを比較して、やっぱり国民所得の率等を比較し検討してみて、やはり賃金ベースの高低というものも考えられるんではないか。たとえば、エアハルトが言った言葉で、まあ、だいぶ一ころ問題を投げましたけれども、為替換算率だけで計算すれば、なるほどアメリカ世界で一番高い。アメリカに比べて、ドイツの賃金ベースは低い。こんなことを比較しても意味がないと思うんです、結局、国民全体の生活水準というものが、われわれとアメリカ生活水準は違うのでありますから。そこで、私が申し上げましたのは、生活水準にマッチしたような賃金を払うべきだというふうなことを申し上げたんではないのでありまして、賃金ベースの比較というものは、やはり為替換算率だけで単に数字的な比較は意味をなさないのでありまして、賃金ベースが、やはり外国と比べて——賃金ベースばかりでなくて、すべてのものが国民所得に大体比例しているように見られる、こういう意味のことを申し上げたんでして、そこで、日本賃金は、やはり、さっき申しましたように、企業努力でできるだけ資本の蓄積はする必要があるが、同時にまた、労働者努力企業企業努力によって利潤がそれだけ多くなって、生産性が向上してきたという場合には、やっぱりそれ相当な配分があってしかるべきだ、この点は私もそう思います。従って、生産性が向上して当該企業利潤上昇してきたというときには、株主配当もふえるでありましょう。けれども、やはり労働者の待遇というものもそれに応じてよくなることは、これは好ましいことであろう、そういう意味のことを申し上げておるのであります。
  57. 光村甚助

    ○光村甚助君 もう一点だけ。その問題は後日質問するとしましても、生活水準というのがアメリカ日本と違うことは、これは私も認める。アメリカほどの賃金をくれなんということは言わない。その生活水準が、アメリカ労働者は高くて、われわれは低い、これはあなたも御存じだ。しかし、資本家は、日本資本家も向うの資本家もどれだけ生活水準が違いますか。同じですよ、これは。われわれだけが向うの労働者とこんなに間隔のある生活水準をとられると、非常に迷惑しますが、その点は、私、大臣に御注意だけ申し上げておきます。  最後の一点は、オートメーション化失業者がだいぶ出る。これはこないだも、衆議院予算委員会の分科会で、新聞に出ていたんですが、電電公社が電話で、私は金のことは今忘れましたが、何か数百億もうけているんだ、それを弾力条項によって労働者の方に分配せずに、どんどん設備資金に使っておられる。そんなにもうかるのだったら、電話料を安くしたらどうだという議論が出たということが新聞に出ておりました。これは新聞を見ての受け売りですから。だから、このようにして、もうかるのをどんどん設備資金に導入して、そうして弾力条項も発動しない。こういうことは、ほんとうに労働者だけの犠牲で資本を投下される一つの現われだと思うのです。まあ電電公社は、私は資本家とは言いませんが、資本家が資本を投下して利潤を追求するのだったら、借金の率が六〇%で多いとおっしゃるのですが、将来に向って利潤を追求するのだったら、自分の方の資力で投下するのがほんとうで、労働者に配当すべき弾力条項も発動せずにおいて、そういうので、どんどん設備に投資するのだったら、電話料を下げたらどうかという意見が出た。ここでは、オートメーション化によって、電電公社の交換手なり、毎年失業者が出ておる。労働者お話というのは、ただ、これが抽象的で、綴り方なんで、こういう企業内で努力して配置転換、あるいは他に転換しなければならないとか、労働者ではそういう綴り方のようなことをおっしゃるが、現に電電公社なんか、女の子など、企業内でそういう配置ができないのです。どんどんこれが毎年首になって問題になっておる。これはあなたの方の所管じゃないからあまり言いませんが、そういうこともあるので、ただここに書いてあるような抽象的な文章じゃなくて、ほんとうにどうしたら失業者が救われるか。きょうも駐留軍の労働者が来て心配しておりますが、あなたの方でここに書いてあるようなことでは、駐留軍の労務者は救われないのです。何人首になるか、そのうち何人は横浜のどこへ世話をする、それでなければ、ただ抽象的にここに書いてあるようなことじゃ、失業者救済はできません。関連質問ですからあまり申しませんが、そういう点を一つ希望して、もっと具体的に失業者救済の道を講じていただきたいということを、私は関連質問ですから希望だけしておきます。
  58. 小柳勇

    小柳勇君 午前中に一般的な問題について労働大臣の意見を聞きましたが、もう少しありますので、具体的に三十四年度労働省予算事項に触れながら、質問を、大臣並びに担当官にしていきたいと思います。  まず、失業対策事業費が労働省予算では大体三分の二以上になっておりますが、この失業対策事業費の中で若干は生活保護費の方に出そう、厚生省その他に話ができておるのではないかということを心配いたしておりますが、その点について大臣から答弁願います。
  59. 百田正弘

    政府委員百田正弘君) 失業対策事業といたしましては、御承知のように、失業者に対しまして暫定的に雇用機会を造出するという形で行われておるわけであります。そこで、本年度予算につきまして、これが一部、生活保護に出すのだ、生活保護にやるのだというようなお話でございますが、必ずしもそうではございませんで、一般的に申し上げまして、非常に労働能力のない人たちが、失業対策事業就労しなければ、生活保護を受けようとしても、なかなか向うで受けさしてくれないというようなことで、何とか失対事業でも働きたい、しかしながら、非常に老齢な人、虚弱な人等もありますので、それらの人がそういう失対事業で働きますのは非常にむしろ気の毒のような状態になりますので、われわれはそういう人たちについては、できるだけ生活保護でやっていけるようにということを厚生省に話しております。
  60. 小柳勇

    小柳勇君 厚生省に話をされたのが厚生省ではどういうふうにとっておるかといいますと、失業対策事業の中で、年をとった人とか婦人の人も働いておりますが、そういう人を職安などから若干慫慂しながら、あなたはもう生活保護を受けた方がいいんじゃないかと、こういうことで、失業対策事業の中にいたいけれども、同僚等との気がねもありましょう、そういうことで、生活保護法の方からの適用に、労働省の方が積極的に予算面でも話を進められておるように聞いておるが、その点もう少し正確に答弁願いたいと思います。
  61. 百田正弘

    政府委員百田正弘君) 私どもの趣旨といたしましては、先ほども申し上げましたように、労働能力のない人たちにつきまして、あるいは非常に低い人たちにつきまして、これを失業対策事業で働かせるということは、失業対策の事業自体につきましても、いろいろ考慮を要する面もございますし、また、本人の働く人たちにつきましても、私は決してそれがいいことじゃないというふうに考えられますので、従って、そういう人を、生活保護は受けられない、それじゃ失業対策の方の能力があるのだから失業対策へ行け、失業対策の万では生活保護を受けたらいいじゃないかということで、キャッチボールみたいにやりとりしておったのでは、そこの人が気の毒でございます。そういう人たちには一つ生活保護で、労働能力があるからというようなことで、そんなに年をとっても労働能力があるじゃないかというようなことで、失業対策事業におんぶされるというようなことは一つやめて、できるだけ家族数の多いところ等につきましては、むしろ生活保護法の方が相当程度のあれになるということもございますので、そういうことで話をしておるわけでございます。
  62. 小柳勇

    小柳勇君 大臣にお伺いいたしますが、大臣の演説の中でも、労働省の仕事は労働者の福祉をはかることであるということを言っておられるが、生活保護法など厚生省関係の社会保障法と失業対策事業との関連を大臣はどのように考えて閣内ではかっておられるか、御答弁願いたいと思います。
  63. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ただいま政府委員から申し上げましたようなことで、私ども失業対策によって支給する支出もすべて政府予算は国民の負担でありますからして、担税していただく、税を納めていただく国民に、いかにも政府のやっていることが不経済な、むだなことをやっておるのだという批判を受けることは厳に慎まなければならないと思っております。失業対策事業は、御承知のように、終戦直後非常なインフレーションで、また、職を失った者も多かった当時の社会環境にかんがみまして、当時の政府はとにかく現金収入を与えるために失対事業というものを計画して、ともかくも現金収入を失職者にあげるのだということを重点的にやっておりました。しかし、だんだん社会が安定いたして参りますというと、そういう仕事の中でも、先ほど申しましたように、税金を納めておられる多数国民からいわゆる失対事業というものについてとかくの批判が起きてきたことは御承知通りであります。そこで政府は、そういう国民の批判を受けないように、できるだけ経済効果の上る仕事を失対事業としても取り上げていくべきではないか。ことに、でき得べくんば失対事業というものは長期性を持たないことを理想とするのでありますから、できるだけ長期にわたるような失対事業は、これは経済効果の上るものをしていきたい、そういう考え方を社会一般も要求いたしますし、われわれもそういう考え方を持つようにしております。そこで、労働能力のある人々に向っては、とかくの非難を受けないように、もう少し賃金を増額し、それからまた、地方自治体の負担がかさまないように事務費、資材費等も増額して、そして失対の人々経済効果の上る道路事業その他建設的なことに使っていただくことが必要であるということで増額をいたしておるようなわけでありますが、そこで、しかしながら、なおかつ、現金収入を自分で働いて得たいと、しかしながら、いわゆる経済効果の上るような仕事にはからだの状態で不向きである、そういうような方々についてはどのようにすべきであるか。しかし、職安窓口においでになる個個の老齢者に見ましても、自分はやはり働きたいのだ、生活保護費なんかもらっていたくないのだという希望の者もあります。従って、そういう方々と労働能力を持っておられる人々を一緒くたにして、軽い仕事をさせるというふうなことがやはりとかく失対というものは何をやっておるかというような社会的非難を受けることでありますから、私どもとしては、どっちみちやはり国民の税金による国家の負担でありますから、これは一つ労働能力の薄い人たちにはむしろ生活保護的な立場で国家がお世話をすることの力が合理的ではないかというふうなことも考えまして、厚生省とも相談いたしておるわけでありますが、まだ結論を得ておるわけではございません。しかし、先ほど申しましたように、労働能力のある人々に向っては、若干の資材費等をふやして、そして経済効果の上る仕事をやって、納税者の負託にそむかないようにしたい、こういうことが昭和三十四年度のわれわれの方の失業対策に対する予算要求基礎的な考え方であります。
  64. 小柳勇

    小柳勇君 昨年よりも八千人だけ人員が一般失業対策事業がふえて見込まれておる。そうしますと、日にちにおいて〇・五日ふえた、そういうものをずっとやっていきましても、今言ったように、生活保護法の方に何パーセントか落していきますというと、実質的にはちっとも失対はふえないという現象になりますから、今大臣が言われたように、かりそめにも強制的に、職安などで懲悪するようなことのないようにくれぐれも一つ注意しておいてもらいたいと思いますが、次は、この失業対策事業費が二百二十一億あるが、公共事業と民間事業とに分けて、一体どのくらいの比率でこの失業対策事業というものがなされていくのか、お知らせを願いたい。
  65. 百田正弘

    政府委員百田正弘君) 三十四年度の失対予算を組むに当りまして、民間事業におきましては、月延べ三十三年度よりも約六%増の百六十万人を見込んでございます。さらに公共事業等につきましては、これも公共事業費は大幅に増額はいたしておりますけれども、従来の実績等も考えまして、三十三年度の月間見込み四十六万の約一〇%増五〇万、これを見込で失対の規模を計算しておる次第でございます。
  66. 小柳勇

    小柳勇君 午前中の質問で、大臣は北九州のある石炭の臨鉱措置などで公共事業相当ふやすというようなことがありましたが、今の担当官の説明では、わずか五万くらいしか公共事業の失対事業というものはふえていない。これでああいうような失業対策というものが一体できるのかどうか、御説明願いたいと思います。
  67. 百田正弘

    政府委員百田正弘君) 今申し上げましたのは、公共事業費としては四百七十一億ばかりふえたわけです。そこで公共事業就労人員といたしましては、大体二十万五千人くらいが三十三年度よりも増加を見込まれておるわけです。ただ、失対事業の対象となっております人をできるだけ公共事業等に向けるわけでございますけれども、今お話のありましたように、労働能力の低い人たちもおるというような関係で、公共事業が一般的にふえた程度に一律にこれがふえていくということは、われわれとしても少し固めに見て一割しか、四万人程度しかふやさないということでこの規模を計算してある。従って、今後は公共事業に向く人についてはどんどんこの吸収をこれ以上にやっていけるということになりますれば、ほかの一般の失対の面におきましてもさらによけいの吸収ができる。こういうようになると考えるわけであります。
  68. 小柳勇

    小柳勇君 何回もこれも前の委員会から言っておることですが、一般失業対策事業を特別失業対策事業と分けたことによって労働者間に非常な対立が生じておるわけです。特に公共事業などに、からだの悪い人とか婦人などは仕事の計画に追いつかないような面もあるかもわかりませんけれども、そういうことで、非常に労働者同士の間で対立も発生しておるし、職安などに、早い機会にそういうことの起らないように、働く意思のある者は皆働かせるようにして、この失業対策事業というものがスムーズにいくように要請して、次の質問に入りたいと思います。  第二の質問は、日雇い労働者の単価を三百六円と三十二年の十月に決定したのでございますが、単価が三百六円で、今年は全然増額を見込まれておらない。資材費の方は四円値上げしてある。あるいは事務費の方も三円値上げしてある。労賃だけが三十二年の十月から一円もふえてないということは一体どういうことでしょう。
  69. 百田正弘

    政府委員百田正弘君) 御承知のように、失業対策事業賃金につきましては、緊急失業対策法によりまして、同一地域における同一職種の賃金を基準としてきめることになっております。で、従来の予算の積算の基礎といたしましても、いわゆるPWを基礎としてやっておるわけであります。従って、従来も原則としてはPWの改訂のたびにそれに相応したところの賃上げを行なって参った。従いまして、現在のところ、PWの改訂がございませんので、本年度におきましては賃金を据え置くと、こういうことになったわけであります。
  70. 小柳勇

    小柳勇君 昨年の委員会でそういう同じ答弁をされておるわけです。PWの改訂を待ちまして増額をいたします。今調査中でございますという答弁でございますが、すでに一年たっておる。それは一体どういうことでしょうかね。積極的に午前中に労働大臣は日の当らない労働者、特に失業者などにはあたたかい手を差し伸べることが本年度労働行政の基本であると言われた。それにもかかわらず、昨年、一年も前と同じような答弁が担当官からなされておるということは、失業者というのはこれだけやっておるのだから、適当に生きておれというような、そういう恩恵的な失業対策事業であるならば私はもっと徹底的に究明しなければならぬ。今のPWの問題について、もう少し詳しく調査事実、調査資料など言明してもらいたいと思います。
  71. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 一般職種別賃金の結果につきましては、私の方で所管しておりますので、私からお答え申し上げます。  現行のPWは、昭和三十一年九月に実施いたしました職業別賃金調査の結果によりまして、昭和三十二年四月に改訂いたしたのであります。これによりまして、大体平均いたしまして二%を引き上げたのでございます。その後におきまして、昭和三十二年の九月に、同じく労働省統計調査部におきまして職種別賃金調査を実施されたわけでございますが、昭和三十二年九月の職賃調査と、三十一年九月の調査結果を比較いたしますると、上昇率はきわめて僅少であったわけでございます。そこで、昨年はPWの改訂は行なわかったわけでございます。しかしながら、これは毎年職賃調査を実施しておりますが、昭和三十三年の秋に、同じく統計調査部において職賃の調査を実施したわけでございまするが、その集計は近く出て参ると予想されておりまするので、昭和三十三年秋の職賃の調査の結果が判明いたしましたならば、これと現行のPWと比較いたしまして、改正する必要がありますれば改正を行いたいと考えております。
  72. 小柳勇

    小柳勇君 それは年度の途中においてもそういうふうな調査が出たならば、予算の改定をなさるということでございますか。
  73. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) これは職業安定局の方とも十分調査いたしまして、改定を実施したいと思っておりまするが、現在まだ統計調査部の職賃調査の結果は判明しておりませんので、これが判明いたしましたならば、集計を待ちまして比較しまして、もし改定することが必要と認められまするならば、適当な機会に改定を行いたい考えでございます。
  74. 小柳勇

    小柳勇君 この予算案は、来年の三月までこれは実施するわけですね。しかも今度は、来年の予算案で実施されて、これがもし単価が十円なら十円上ったとしても、せいぜい実施されるのは来年の四月あるいは五月からである。しかも普通の労働者は、国体交渉権があるし、いろいろ賃金も上って、あるいは昇給もする、そういうのに、この単価は、三十二年の十月に葦百六円にきまって、そうして去年の秋のPWの調査が判明しても、途中ではない、大かた来年の予算でしょう、そんなに自由労働者というものに対して何かこう冷たい、生活考えない、ただ事務的に労働者には、こういうふうにしておりますというふうな申しわけ的な単価にしか私ども受けとれない。これは一つ大臣の決意を私聞いておきたいと思う。
  75. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 今まで申し上げておりますPWの調査の結果がいつどういう形で出て参りますか、まだ今日私どもにはわかっておりませんが、それが出ましたならばどうするかということでありますが、今までも御承知のように、年度の途中でPWが改訂になりまして、それを基礎にして次の予算を組んでおるわけでありますが、いつごろこれが出ますか、そういう調査の結果を待って研究いたしたいと、こう思っております。
  76. 小柳勇

    小柳勇君 担当官に聞いておきますが、そのPW調査の結果というものは、大体今までの例から何カ月かかったらその結果が出て参るか、明らかにしておいてもらいたいと思います。
  77. 大島靖

    説明員(大島靖君) 職賃の昨年の結果発表は六月でございましたが、本年は少し急いで大体五月ごろにはできるものと予想いたしております。
  78. 小柳勇

    小柳勇君 大臣もお聞きのように、ことしの五月には大体の結果が出るようでございます。これで改定する必要を認めるというようなことは出ると思います。すでにもう三年、これは実施されていきますが、そういう場合には、補正予算はその他の方法で、単価の増加を考慮してもらえるかどうか、大臣の答弁を求めておきたいと思います。
  79. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) そのときに出ましたものを見て、財政当局ともよく相談して参りたいと思います。
  80. 小柳勇

    小柳勇君 今の単価の問題については、その調査の結果を待って、また、ここで私も大臣の意向を聞くこともございましょうから、次の問題に入りますが、毎年越年手当あるいは盆手当というものを全自労の諸君が要求しております。三十三年度は、越年手当が八日分、盆の手当が三日分出ておりますが、昨年のこの委員会の質疑の中で、藤田藤太郎委員発言しておりますのは、普通、常識上越年手当一カ月、あるいは盆の手当半月分くらいは、大体労働者には出すのであるから、このような労働者にも出さないかというような質問をなされておりますが、今年度はそういう予算はどのくらい組んでおるか、答弁を願っておきたいと思う。
  81. 百田正弘

    政府委員百田正弘君) 従来、昨年までの予算におきましては、夏季三日、暮れ八日ということでございまして、本年度予算におきましては、それをそれぞれ一日ずつ増加した予算で、四日、九日ということで、計十三日となっております。
  82. 小柳勇

    小柳勇君 その予算労働者としてはそのくらいでよかろうとお考えであるかどうか。もっとこれを私どもが昨年から、あるいは一昨年から言っておるように、増額する意思がないものであるかどうか重ねて答弁を求めておきたいと思います。
  83. 百田正弘

    政府委員百田正弘君) 従来の例によりまして、国家公務員につきましてのいわゆる夏季、年末手当の増額に一定の率によりましてこれを一日増加していきたい、○二五に対して一日増加していくということで従来からやって参ったわけでございまして、これを本年度におきましても、従いまして、何か別の観点から考えられないものかとわれわれもいろいろ考えてみたのでございますが、結局従来の例によって、今度は〇・一五でございますが、それを上回るということで、それでも一日ということで、三十四年度はそれぞれ一日と、こういうことに落ちついたわけでございます。
  84. 小柳勇

    小柳勇君 落ちついた結果はわかりましたが、さっきのこのPWの調査の結果その他も勘案しながら次にまた、そういう盆の手当なり越年手当についても一つ大臣も一緒になって十分に支給できるように検討していただきたいと思いますが、その点いかがでございますか。
  85. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 検討いたします。
  86. 小柳勇

    小柳勇君 次に、第三の質問に入りますが、失業保険費の国庫負担が三分の一から四分の一に減りました。これは一体どういうような根拠で労働省としては減らされたのであるか、その根拠をお示し願いたいと思います。
  87. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 三十四年度予算の編成に当りまして、失業保険その他一般社会保険についていろいろ政府部内で検討が行われましたが、私どもはかねがねこの社会保険というものはそれぞれ発生すべき原因があって終戦後ばらばらな時期にいろいろな社会保険が行われてきました。私ども理想といたしましては、社会保険全般について総合的にむだのないようになすべきである。それがよその国にありますように、社会保障省というふうな形で現われるか何かは別として、とにかく総合的な完備したものにしたいという考え方は私どもは持っておるわけであります。そこで、三十四年度予算の編成に当りましても、そういう意見もありまましたが、今早急の間に全般的調査検討ということはなかなか困難であります。そこで政府は、国民年金制度というような新しい社会保障制度というものを初めて出発するに当りまして財政的にもいろいろな負担もあることであるから、そこで、失業保険経済状態はきわめて順調である。そこで、この失業保険の労使双方の保険料も千分の十六を十四に引き下げよう、同時に、国庫負担の給付に対する補助も三分の一から四分の一にやってもい  いんではないだろうか。全体の社会保障全般について政府は前進いたしておるのであるから、その中のそろばんのとれるものは若干減らし、そろばんのとれないものは、たとえば日雇保険のごときはこれはよけいに出さなければならないようなことであるから、そういうかれこれ勘案して、一つ失業保険政府負担率も減らそうではないか、こういう考えが出て参つたわけであります。失業保険経済だけ取り上げますと、私ども労働省の立場から申しますならばそういうことはやりたくないと思っております。失業保険経済だけ考えれば、私はむしろそれよりもまだほかになすべき事柄があったではないかと思うのでありますが、国全体として社会保険を考えまましたときに、財政事情もやむを得ないからして、それでは一つ国庫の負担を三分の一から四分の一に減らすこともやむを得まいということで、今回その改正案を国会に提出して御審議を願う、こういうことに考えをきめたわけでございます。
  88. 小柳勇

    小柳勇君 失業保険は私が言うまでもなく、これは国庫負担はもちろんでありますけれども労働者が毎月掛金をやってたまる金ですね。それをまあそういう金があるから一つ労働者負担も若干減らしたかわりに、政府負担も三分の一から四分の一に減らそう、労働者の方の負担は千分の十六から千分の十四へのタウンですね。国庫負担は三分の一から四分の一のタウンですよ。そういうことを労働大臣自分で判定して、自分でこういうふうな予算を独断で組んでいいものかどうか、御答弁願いたいと思います。
  89. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 労働大臣が独断で組むわけではでありませんで、失業保険法三十九条にも命令してあります通りに、私どもがそういうことを、重大なことをする場合には、それぞれの審議会に諮問しなければならないということに法律で命令されております。従って、私どもは審議会にかけまして、さらに内閣にあります社会保障制度審議会等の御審議を経たわけであります。しかし、最初の失業保険の中央職業安定審議会の答申は、失業保険だけ考えればこういうことには賛成できないという御意見で、それは私どもも全く同感でありまして、そこでさらに、社会保障制度審議会にもかけまして、社会保障制度審議会においての答申はいろいろなことを書いておりますが、その結論としては、やはりこの国庫負担がもし実施していくことによって四分の一では間に合わない、赤字を生ずるようなことがある場合には、これは三分の一まで、つまり現行法の通り政府においてめんどうを見るというようなことはぜひしなければならないという意味のことで答弁が出されております。従って、御承知のように、実施して経過がわかりますのは二年ぐらい先からでありますから、その情勢を判断した上で、私どもは被保険者に対して現在よりも損にならないような深いおもんばかりをいたしまして、そして法案を提出いたしておる、こういうわけであります。
  90. 小柳勇

    小柳勇君 雇用審議会の答申は、そういうふうにするなということであったにもかかわらずやられた。それから社会保障制度審議会には最近諮問されたようであるけれども、その結論は出ておらない。にもかかわらず、大臣は、三分の一から四分の一にダウンしておる。私どもは、これは前からでありますけれども失業保険についてはもっと支給期間を延長してもらいたい、あるいは支給率を増加してもらいたいということを今まで長く主張し要求してきているわけであります。こういうふうに財源があって、政府の国庫負担を五分の一から四分の一にタウンできるならば支給期間を延長し、あるいは支給率を引き上げることこそ私は大臣としては検討すべきであろうと思う。それにそういうような雇用審議会の答申があったにかかわらず、これを無視して、社会保障制度審議会の方に諮問をし直して、今こういうような予算を出しておられる。そういうことについて、もう少し一つその内情なり大臣のお考え説明しておいてもらいたいと思います。
  91. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 御承知のように、今度の社会保険に関する法律はたしか四つの社会保険を総合的に判断をしていただくということでありますから、中央職業安定審議会は、失業保険法の命ずるところによって労働省が諮問をいたして、さらにほかの保険との関係もありますので、政府としては、社会保障制度審議会に諮問する必要があったのであります。そこで、そういうほかの厚生省関係の方の社会保険も同時に審議をしていただいた結果、先ほど私が申し上げましたような意味の答申が出て参ったわけであります。そこで、政府としては、今日の財政状態のもとにおいて国民年金というふうなもの、それからまた、その他の保険でも、やはりそろばんをとれないようなものについてどういうふうにするかということについて検討を加えた結果、やはり今年はただいま昭和三十四年度予算の編成のときに決定いたしましたような方針で進むよりいたし方がない、こういうことであります。従って、労働省の立場としては、先ほども御説明いたしましたように、これを実施してみて、必ず現在よりもマイナスにならないという建前を原則としてとっておるのでありますから、私は今日の財政事情で新たなる社会保障制度を出発するについては、やはり今回とったような手段はやむを得ないことではないか、こういうふうに解釈をいたして賛意を表しておるわけであります。
  92. 小柳勇

    小柳勇君 今度の予算の中に、新たに失業保険を終了した者の帰趨調査ということで新たな予算を計上されました。これは失業保険を終了して、なおその労働者が一体どこに行くだろうかということを知るための調査だと思うけれども失業保険を終って、その人がどこに行くかということを調査して一体何になるか。それよりも、むしろこういう財源があるならば、やはりなるべく失業保険の支給期間を延長し、そういう人の帰趨を知る前に、その人たち生活がもう少上安定できるような方向を考えるべきであろうと思うわけです。その失業保険の期間の延長あるいは率については、大臣はこの前の答弁で、大体今のでやむを得ないだろうという答弁がございましたけれども、この三分の一から四分の一にダウンされる考えの中で、そういうものを一度くらい検討されたことがあるのかどうか、もう一回ダブリますけれども答弁しておいてもらいたいと思います。
  93. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 最近、この失業保険統計というものは、日本経済界の変動の指数を知るのに最も的確な資料になるということで数十年前からやっております。たとえば三菱の経済統計、ああいうようなものでも、企画庁あたりでもそうでございますが、経済の帰趨を察知するのに失業保険統計というものは非常に貴重な資料と最近されているのであります。私どもは、この失業者の新規受給者を見ておりますというと、たとえば政府がやります経済調整の手段をとりましてから六カ月か七カ月目には正直にそういうところに数字的に表われてきております。従って、昨今非常に珍重されて参りました失業保険統計というものを、これから離職した者がどういう動き方をしてくるかというふうなことについて研究するということは、日本経済を研究するのに最も貴重な資料であるということで、特に労働省は力を入れておるわけであります。そこで、この失業保険のことでありますが、失業保険は前々からしばしばこの支給基準、それからまた、給付内容等について検討する必要があるのではないか、私どももりっぱな御意見だと思います。しかしながら、今日いろいろな情勢を考えてみまして、御承知のように、比較的長期に勤めた者の失業については六カ月から九カ月に延びているのでありまして、やはり現在のわが国状況では、現在のところは、この程度でまあがまんをするより仕方ないのではないか。しかし、将来日本の財政事情が許すようになれば、もちろん失業保険給付等について、また、その内容等についてできるだけ改善して参る考えを持つことは当然でございます。
  94. 小柳勇

    小柳勇君 帰趨調査についてわかりましたが、社会保障制度審議会の答申、せめてそれが出るまでは、私はこういうふうな予算案を提出されるべきではないと思う。しかも雇用審議会の答申がそうやりなさいということであるならば、これは国民の意思を代表したものとして、これはやむを得ないと思いますけれども、そうでない段階にことしの予算として先走って出される。第一われわれまだ解せないところですが、まあこの審議会今労働省でも、これは各省ですが、審議会というものの答申がその省や庁で利用になるときには審議会が非常に前面に出てくる、ところが、自分の意見と違うときは審議会の答申は適当に影を薄めて、あるいは無視される、そういう点について大臣は一体どうお考えになっておりますか。
  95. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 審議会はもちろん権威のある人たちを集めまして、そこでいろいろ検討していただく。これは行政府である政府が腹をきめるときの参考資料でありますから、できるだけその権威ある人たちの意見を尊重するということは当然でありまして、最低賃金審議会あるいは社会保障制度審議会、われわれはそういうところの御意見を十分尊重してやって参りましたが、もちろんしかしながら、審議会委員は行政官ではありませんで、最終的に行政の責任を負うのは政府でありますから、政府はやはりそういう尊重すべき御意見を参考にして政府の態度を最終的に決定し、国民に対して責任を負うのはどこまでも政府でありますから、政府はそれに基いてやはり政府としての意思決定をいたすことは当然であります。ただ、今この社会保険四法案の問題につきましては、失業保険法の命ずる職業審議会、同時に、そのあとで社会保障制度審議会にかけましたが、社会保障制度審議会の答申というものはすでに提出されております。その提出されました社会保障制度審議会の答申の趣旨を尊重して、その人たちお話を十分に取り入れて今度のような法案を作成するに至ったわけであります。
  96. 小柳勇

    小柳勇君 審議会の意向もまああまり尊重されないで、三分の一から四分の一にダウンされることについて私は反対でありますが、今大臣の意向だけは聞いておきまして、次の問題に入りたいと思います。
  97. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 関連……。今失業保険政府負担金が三分の一から四分の一になる問題が論議をされておるんですけれども、今失業保険の黒字ですね、これは幾らありますか。  それからもう一つあるんですが、昨年アメリカが非常に失業者がふえたときに、失業手当金を大統領命令で二十六州を三十九州にする処置をとっておるが、これは間違いないか、この二つを先に聞きたい。
  98. 百田正弘

    政府委員百田正弘君) 失業保険の積立金は、昭和三十二年度末におきまして約五百四十億、三十三年度におきましては大体今の見通しといたしまして七十億程度の剰余が出る見込みでございます。もっとも今の五百四十億程度の約半分は、これは昭和三十一、三十二年の二年間に蓄積されたもので、昭和三十二年度末で五百四十億、これが剰余金であります。  それから第二の問題でございますが、アメリカが昨年非常に不況のときに、一時的に二十六州を三十九州にふやした例がございます。そうしてこれはアメリカの場合は御承知のように、各州がそれぞれ失業保険をやっておるわけでございます。全部の州がこれについてやったというわけではございませんが、それに対しては連邦の方で補助をするといったようなことで昨年やったということは聞いております。
  99. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今の三十二年度五百四十億黒字が出た、三十三年度にはこれに七十億ふえる見込みです。そうすると六百億近くの金が日本では失業者が非常にたくさん一昨年から昨年にかけて出てきて、その方々が非常に生活に困っている。失業保険にこれだけの余裕金があるのに、片一方のアメリカでは二十大州を三十九州に伸ばして失業者の保護をする、日本は金が余ったら支出金を少くしてこの黒字を減らそうとする、これはどうなんですか。この根本的な考え方大臣に聞きたいのです。
  100. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 先ほどから申し上げておりますように、失業保険そのものだけ考えますというと、私どもは五分の一を四分の一に減らすということについては賛成いたしかねるという考え方であります。しかし、昭和三十四年度予算案から初めて日本でやる国民年金法というふうな社会保障も始めるということで、その財政的な問題で社会保険の全体について一つ総合的に研究しようと、こういうことで私どもも他に財源を物色して、やむを得ざればこれも社会保険全体としての考え方として新しい社会保障をやらないよりはやはりやる方がいい、しかも先ほど申し上げましたように、そのことによって、三分の一を四分の一にしたことによって、被保険者に対して今より不利な状態になるということならば、これはそういうことのないようにしなければいけないということで、今度提案いたしております法案の中にもそのおもんばかりをもってそういう取扱いをいたしておるのでありますから、われわれは社会保障全体についての考え方は後退は少しもしておらない、こういうふうに思っておるわけでございます。
  101. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今の労働大臣お話ですけれども、自民党や政府は大きい社会問題として社会保障をやる、その一環として年金の問題を出してこられたのだと私は思う。その年金の支出があるからといって、今のたくさんな失業者があるにもかかわらず、その保険財政が黒字になって、政府の支出は控えていこう、ちょうどこれは厚生行政にも同じようなことがあった。昨年の家族健康保険の政府管掌のときに、三十億政府負担するから病人の一部負担をしてくれ、極論は出ましたけれども、いずれにいたしましてもそういうことが出た。その保険経済に黒字が出てきたら、政府の出した三十億はさっさと引き揚げて一部負担はそのまま残っている。私は一貫してそういうものの考え方があらゆる施策に出てきているのではないかと思うのです。いかに大みえを切って、働く者を守るとか、貧困生活者の日の当らない所に日を当てる政策をやるとおっしゃっても、こういう現実の問題ですね、よく日本政府アメリカとの協力関係を言われる。しかし、アメリカとの協力願係を言われるそのアメリカが、失業者が出たから大統領命令で、向うは四十八州のことですから、各州で全部一時にそれが実施されたかどうかということの把握は私にはありませんけれども、少くとも政権を担当している今の政府が二十大州を三十九州にして失業者生活を守る、向うの失業者は摩擦失業です、その間に就職の機会を見つけて次への再生産の中に働く者の生活を守っていくという根本的な問題——世界はそう流れていると思うのです。ところが、今のお話を聞いていると、片一方では社会保障もやる、何もやる、民生安定もやるとおっしゃるけれども、この一つの具体的問題を見ても、黒字が出たから政府負担金を少くする、個々の労働者には支給の面では変りはないのだというけれども、今の失業保険は三カ月から九カ月です。これに何とかしてその支給期間を延ばして、失業して生活の困っている人を助けるというのが私は政治のうま味じゃないかと思うのです。大臣がよく言われるように、日の当らぬ所へ日を当てて労働行政をやっていくというここにも根本の問題があると思うのです。それを社会政策全般からいってやむを得ないのだということは、これはやはり私は労働者としては聞けないと思うのです。そういう点は、もっと私は真剣にこの問題は取り上げてもらわなければ——小柳委員質問の関連質問ですから私はあまり長くいたしませんけれども、根本的に私は、国民に訴えられることと、実際にやられることを一致させてやってもらいたい。そうでなければ、いかにうまく言われても信頼ができないということになっていく、私はそう思うのです。その点、御所見があったら承わっておきたいと思います。
  102. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 藤田さんのお話は、趣旨においては私ども全く同感でありまして、保険経済が潤沢になったら給付内容等についてできるだけのことをすべきだと思っております。しかし、先ほど来申し上げておりますように、基本的には、社会保険全体を総合調整をするということをしていく必要があるということをこのたびも決定をしております。どこの役所が中心になるかは別として、政府部内でそういう方向に進めていこうという大方針を立っておりますが、さて昭和三十四年度予算の編成に当りましては、やっぱり一方において七十才になられた老人が、いまだかつて日本になかったわずかばかりではありますけれども、やはり一カ月千円というものを政府から支出するという年金制度というものは、やはりそういう人たちには非常に喜ばれることであり、日本も初めて国民年金制度というものに踏み出したのでありますから、これをやっぱり一面非常に喜ぶ人たちのあることを考えてこれはやりたい、そういうことの結果、いろいろ財政的にもやりくりをいたしました結果、そうして失業保険は今お話のように、経済が潤沢であるからして、まず本年度はとりあえずこういう措置をして、そうして年金制にも出発しようじゃないか、これはまあ日本の乏しい財政の中からいろいろ考えますというと、これもやむを得ないということで、われわれも同調いたしておるわけでありますが、従って、くどいようでありますが、現在の受給者に不利になることは絶対にないという考え方で立っておりますからして、まず昭和三十四年度予算において、社会保障ということを進めていくためには、ある程度のことはやむを得ないことではないか、こういうことで同調いたしておるというふうに御了解を願いたいと思います。
  103. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 年金をおやりになって、これはもう日本は年金制度がおくれているのですから、大いにおやりになってもらうことはけっこうです上、今の法案以上にりっぱな年金を作らなければならぬという熱意は私たちも持っております。おやりになってけっこうですから、私はそれに反対をしているわけではないのです。内容については意見がありますけれども、年金制度を作ろうということについてはむしろ積極的に賛成をしておる立場でございます。であるからといって、この失業保険でこういう黒字が出ているのに、肝心の失業者が困っているのをおいでおいて、国家財源を減らし、この黒字を少くし、実際失業で因っている人をなぜお救いにならないのかということが反発したくなるわけです。いずれこれは私も機会を得て——関連質問ですからこの問題についてはあと質問いたしたいと思いますから、一応意見だけ申し上げておきます。
  104. 小柳勇

    小柳勇君 次は、職業訓練の問題ですが、今、定時制職業訓練と駐留軍離職者の職業訓練並びに身体障害者の職業訓練をやっておられますが、いいことですが、その訓練所を出た者の仕事の就労状態、あるいは、世間一般からどのように見られておるか、卒業した人、訓練を受けた人の現状について報告願いたい。
  105. 百田正弘

    政府委員百田正弘君) 職業訓練所につきましては、一般職業訓練所、総合職業訓練所、それから今お話のありました身体障害者職業訓練所、それぞれあるわけでございます。幸いにいたしまして、就職の状況は九三%、あるいは総合訓練所においてはもうちょっと上回っておる。それから特に心配をしておりまする身体障害者の職業訓練所におきましても、三十二年度におきましては九一・三%ということで、現在のこれも逐年向上してきているような状態であります。
  106. 小柳勇

    小柳勇君 大体の予算としては、三万一千円ぐらい年間予定、一般職業訓練所でやっておられますが、全体的に見ると約五、六万になるようですが、新学校卒業者との競合とか、あるいはその他失業問題のやかましいときに、そういう面で、就職の面でいろいろ問題が発生したことはないか、お伺いしておきたいと思う。
  107. 百田正弘

    政府委員百田正弘君) 新規学才の相当部分が、訓練所に入るというのが相当多数ございます。従いまして、これが一年等で卒業するわけでございますが、就職の場合におきましては、今の中卒の人たち、新規学卒の人たちと一緒に労働省としても就職のあっせんをしているわけでございますが、特にこの人たちは技術を身につけておりますために就職の状況が非常によろしい。特にその間にいざこざがあるとか、そのために職場が狭めらるれとか、こうしたことは現在ございません。
  108. 小柳勇

    小柳勇君 朝の大臣の答弁の中で、訓練所側の機械設備が時代おくれのために新しい機械にはマッチしないのではないかという心配のある言葉もございましたけれども、その訓練所に対する設備などは漸次よくなりつつあるのかどうか。予算の面あまり少いのでお聞きするのですが、その点、御答弁願いたいと思います。
  109. 百田正弘

    政府委員百田正弘君) 御指摘になりましたように、最近の生産、技術、その他がどんどん進歩して参ります。訓練もそれにマッチして行わなければならないのは当然でございます。従いまして、昨年皆様方の御協力によりまして職業訓練法が成立いたしたわけでございます。これに基きましてそれぞれの基準を作って、従って、職業訓練所におきまするところの設備の基準というものも作りまして、これまで引き上げていくということに努力いたしておるわけでございます。さしあたり昨年度におきましても、特に失業保険特別会計から一億円、本年度も同程度でございますが、昨年度から設備改善費といたしまして、昨年一億、ことし約一億ということで設備の改善には特別の努力をいたしておる次第であります。
  110. 小柳勇

    小柳勇君 身体障害者職業訓練所を出て、仕事がないために付設の共同作業場で、仕事につかない人がまだおるようでございますが、そういう人をどういうふうにされるか。今ここで予算を見ますというと、新たにまた職業訓練所を増設しようとされておるが、むしろこういう人こそもっとめんどう見てやるべきであると思うが、その点について、答弁願いたいと思います。
  111. 百田正弘

    政府委員百田正弘君) 身体障害者の訓練所は現存六カ所あるわけでございまして、本年度は特に増設の計画はございませんが、ただ予算上、特に施設の改善をはかろうということで、本年度におきまして約一、千五、六百万程度の増額をしておるわけでございますが今お話のございました共同作業所につきましては、これは全国八つの訓練所のうちに六つに付設されておるのであります。でこれにつきましては、国がその設備をしてやる、そうして経営は県に委託しておるわけでございます。これは訓練所を終了いたしましたものが就職できないから、そこに入れもというばかりではなくなって、本人の人たちがもう少し自分たちでここで腕をみがいていきたいというような方々もあるわけでございますので、これの運営につきましては府県に委託しておりますが、大体そこでいろいろな加工賃、販売収入等によりましてこの収支をまかなって、不足分は委託された府県がそれを補てんするというようなことで現在運営しておるような状態でございます。
  112. 小柳勇

    小柳勇君 さらに身体障害者の職業訓練所を一カ所増設するために、新たに三千四百七十五万円の予算を計上されました。これが出ましたところが失業保険の特別会計から出すようになっておる。こういうものこそ国が今おっしゃったように、国が費用を出して、一般会計から出して、こういうものを作るべきだと思うが、なぜこの失業保険特別会計から出されるのであるか、お伺いしておきたい。
  113. 百田正弘

    政府委員百田正弘君) これは身体障害者の職業訓練所を新たに一カ所増設するというのではなくて、宮城の身体障害者職業訓練所が相当古くなっておりまして、特に身体障害のある人たちが入っておられますために寄宿舎等が堅固なものでありませんと、非常に万一の場合に危険でございますので、特にこれは一般会計と失業保険特別会計と両会計から支出いたしましてやるということになっております。それから身体障害者職業訓練所におきましても失業保険の被保険者であった者等が入っておりますので、そうしたことから特に一部は失業保険特別会計から出すと、こういうことにしております。
  114. 小柳勇

    小柳勇君 それから、三十五年度から中央職業訓練所というものがまたできます。こう何か屋上屋を重ねるというようにわれわれとしては考えるわけです。この点について、新たにできるものについての構想、そういうものに  ついてお伺いしておきたい。
  115. 百田正弘

    政府委員百田正弘君) 現在職業訓練法の制定に伴いまして、先ほど申し上げましたように、いろんな訓練の基準を作るということで訓練内容を充実向上さしていこうということがねらいでございますが、その際一番大事なことは、その訓練生を指導する指導員の質の向上という問題でございます。中央職業訓練所は、従いまして、そうした指導員の訓練養成を中心としてやる、同時に、訓練方法の検討をここで行なっていく。いわば師範学校と申しますか、そういったものとして運営していくものでございます。
  116. 小柳勇

    小柳勇君 職業訓練所については、まだ細部の問題ありますけれども、これは後ほど事務当局から聞きたいと思いますが、次に、中小企業労働者並びに使用者に関して、これは労働大臣の演説からもうかがい知れますけれども、中小企業の労使関係労働省で動かしながら、何といいますか、この言葉、文章の上から、文字の上からいくというと態度測定というような言葉が使ってある。こういうことに相当の費用をとつておるが、これは一体どういうことをされようとしておるのか、御答弁願いたいと思う。
  117. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 態度測定という方法は、労務管理の一つの方法でございまして、主としてわれわれが今地方を指導しましてやっておりますることは、中小企業の中におきまして、労働者が一体経営に対しあるいは経営者に対してどういう点に不満をもっておるかという、不平不満を見出しまして、その不平不満をできるだけ早く是正することによってよき労使慣行を確立していきたいというのがねらいでございます。実施主体は各地方の労政課あるいは労政事務所の系統で行なっておるわけで、ございまして、従って、本省としましては、地方に対する委託費の形で予算を計上いたしております。
  118. 小柳勇

    小柳勇君 この問題と労働基準法の完全実施との——私は、指導監督ということで助言されると思いますけれども、中小企業に対する、その労働基準法を実施するための指導監督とこういうものとは、どのように結びつけて考えていいものであろうか、御説明願いたいと思います。
  119. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 労働基準局の所管のことにつきましては、基準局長から御説明いたすことになると思いますが、私どもとしましては、この機会にできるだけ兼準法の励行ということ——これはまあ監督官でなくとも、基準法の励行につきましては、何人といえどもこれを指導しあるいは助言をいたすことはできるわけでございます。私ども一としましては、この態度測定とあわせまして、そういう中小企業の一般の基準法順法の精神というものの涵養をはかっておるわけでございます。
  120. 小柳勇

    小柳勇君 中小企業の労使関係については、非常に大事な問題でありますので、われわれとしても、労働委員として関心を持っておりますが、労働省がそういうものを測定されることは必要と思います。ただ、調合資料その他において、ややもすれば労働省的な、政府的な資料をわれわれは見受けるわけです。さっき統計の話でも申し上げましたけれども経済企画庁の統計と皆さん方労働省で使っておる統計と違うとか、いろいろありまして、そこで、そういう問題についてもこれは一つの基準にもなると思いますので、私の言わんとするところも一つお聞きおき願いたいと思います。そして、正しい意味で、中小労使関係が前進するように希望いたしまして、次の質問に移ります。  次は、この間できました労働協会について、若干質問をいたしておきたいと思うのです。われわれは、労働協会についてはあまり賛成をしておりませんでした。非常に問題を持っております。私は、午前中の質問労働大臣に、あなたの労働行政は労働運動を押える労働行政であると極言して質問いたしましたが、大臣は、そうじゃないと言っておられました。この労働協会を作るときに私どもが心配をしたのは、労働協会といって、労働者側の委員も入っいるけれども、そのことが、労働省の出先機関となり、労働省がまた政府の出先機関となって労働運動を押えるならば、これは大へんなことである、こういう懸念をしておるわけです。この労働協会ができました後、週刊労働など雑誌が出ております。あるいは労働協会のニュースも出ております。そういうものを見ますと、何か、総評というような労働団体がございますが、それを、敵とまで言いませんけれども自分考えと少しでも違ったものは、全部これは出過ぎたものであるとかいうような烙印を押した書き方があるわけです。で、労働協会について、現在の動きと、将来一体これをどのように発展させようと考えておられるか、お聞きしたいと思います。
  121. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 労働協会につきましては、労働協会法の中で、御承知通り、労働協会の事業はすべて自主的に運営をされる建前をとっておりまして、政府がこれに干渉することを禁止しておりまする規定があるのであります。しかもまた、民主的な運営をはかりまするために、評議員会の中におきましては、労働者側の代表五名、使用者側の代表三名も入りまして、この民主的な運営をはかっておるわけでございます。従いまして、今先生のお話のございましたようなことは、おそらく私としましてはないと考えておるのでございます。しかも、労働問題の個々のいろいろな具体的なケース、ケースにつきまして、労働協会がこれを批判していくというふうな立場を目下とっていないのでございます。もっぱら基礎的な労働問題の調査研究と、その基礎的な訓告研究の結果から現われてきまするいろいろな資料というものを発表をいたしまして、それを、雑誌あるいは印刷物による場合、あるいはラジオを通ずる場合、あるいは講演会その他の講座を通する場合等、いろいろな手段方法をもちまして、国民一般あるいは労使に対しまして啓蒙していくという方法をとっておるわけでありまして、決して御懸念のようなことは現在日本労働協会は行なっていないと私は考えております。われわれもまた、そういう点の報告は受けていないのであります。労働協会の行なって参りましたのは、昨年の九月十五日から発足いたしておりましたので、まだ十分な成果を上げているというところまでには至っておりませんが、その発足した期間の短かい割には相当の成果を上げているように思うのであります。  労働協会は、総務部と調査研究部、広報部、教育協力部の四つに分れておりまして、総務部は一般的庶務の仕事、調査研究部は基本的な労働問題の調査研究について、広報部はその成果につきまして一般に広報していく仕事、それから教育協力部は講演、講座というふうなもので直接労使あるいは国民に接触して労働協会の業務を遂行していくという四つに分れております。調査研究部におきましては、すでに毎月一定の調査研究をいたして、その結果を発表いたしておりますのと、さらに各地方におきまして特別に労働問題を研究いたしております者に対して研究委託をいたしております。先般、その募集をいたしましたところ、百三十四件につきまして研究費を要請して参つたわけでございまして、これらのものについて、目下協会におきましていかなる問題をとらまえ、あるいはいかなる団体、個人に対して委託するかということを検討いたしているわけであります。そのほかに調査研究部の大きな仕事のうちでは、労働図書館を作ることでございます。本年度は一千万円の予算で、今、図書、資料の収集に当っておりますが、現在までに内外の著書三千六百部を整理いたしております。この仕事は今後も引き続き行われるものと思っております。なお、広報活動につきましては、短波放送並びにラジオ東京を通じまして、労働問題の時間を設けて、それぞれ国民あるいは労使にPRをしておりますほかに、労働協会のニュース、パンフレットというものを出しておりますが、三月から月刊雑誌を出す予定になっております。教育協力関係におきましては、各地方別に行われている労働教育の講座に対しまして講師を派遣する、あるいは共同してこれを開催するというような活動をいたしておりまして、相当の成果を上げているように考えております。来年度におきましても大体基本的には今年度に行なっておりますことについて、さらにこれを拡大していくという方向で進まれるのじゃないかと思います。
  122. 小柳勇

    小柳勇君 大臣にお尋ねいたしますけれども、労働協会の設置の目的の中に、労使関係についての啓蒙教育ということが書いてあります。特に私は、今、大臣の頭の中に、中小企業の労使関係というものがあるので具体的に質問いたしますが、中小企業、特に零細企業労働者は労働運動も理解できないし、非常に地位的にもあるいは人権的にも低い地位にあるわけであります。そういうものに対して、一体労使関係について啓蒙教育というものをどういうふうに具体的に発展させようとしているかお伺いいたしておきたいと思います。
  123. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 労働協会のやる仕事につきましては、ただいま労政局長から申し上げましたように政府は何の干渉もいたしておりません。会長を労働大臣が任命いたしまして、あとは自由に運営をさせるわけでございます。私は労働協会というようなものは、そう短かい期間に成果を上げるということにあせらないで、やはり国民全般に対して基礎的なところから労働問題というものを徐々に頭を植え込んでいくということが大切な仕事だと思っております。そこで、今の中小、ことに零細企業の従業興のことでありますが、これは中小、零細企業従業員のみならず、大産業従業員もそうでありますが、大体労使関係というものは大きく分けて二つに考えられると思うのです。御意見の違う方もあるかもしれませんが、私ども一つ産業をもり立てていってそれが一つの国の企業として発展し、同時にまた、その発展した企業の中の利潤の分配に当って、労働者もそれから一般社会もこの恩典に浴するようにするという立場から考えれば、労使というものは、言葉は違っておっても、終局的に目的は一致しているのであります。これが外国の少数の国でやっておりますように、すべての生産手段が国家が持っておるというところになりますと、これはおのずから別であります。私どもは、今の日本考え方日本の現在の産業機構においては、終局的に目的は一致している。そこで、その目的を成功させるために、労使が協力態勢に持っていく。そこで得られたる果実を分配するときに、今度はやはり企業を受け持っておる方と分配を要求する方とはやや対立したような立場に立たざるを得ない。そういうときのやや対立関係を持った労使関係、そういうふうに見られると思うのです。従って、そういう日本企業に協力をしていく労働者というものが、日本産業というものはどうなっているか、また、自分が同一目的のために推進しておる企業、また、それが日本の国内においてどういう立場をとり、また、それが大きく結成された日本産業というものが、国際的にどういう立場を持ってきておるかというふうなことが、労働者全般に対してそういう知識が普及するようになりましたならば、私はおのずから労使関係というものは正常化し、安定するものだと思うのです。そこまで私はやはり労働協会などというものは力を入れて、そして労使関係はかりじゃなくて、一般国民にもそういう意識を植え込むということが必要なことであって、私どもが労使政策と一品に申しておりますが、やはりそういう見地に立ってこの労働政策というものを進めていきたいと、こう考えておるわけであります。
  124. 小柳勇

    小柳勇君 次は、労働金庫に対して監督指導ということのために、労政局一般行政費を組んでございます。今労働金庫協会などの意見を聞きますというと、労働金庫が大きな金を持ち、組織が強くなれば強くなるほど、市中銀行なり、その他金融機関から圧迫がくるという報告を受けておるわけです。指導監督の立場にある労働省として、そういう問題について具体的にお知りになっておるかどうか、また、それに対してどのような方針をもって政、財界の中で発言されようとしているか、お聞きしたいと思います。
  125. 亀井光

    政府委員(亀井光君) 労働金庫と市中銀行との競合の問題、そういう具体的な話については私はよく知りませんが、この労働金庫の監督指導と申します面で、金融機関対金融機関の関係におきましては、もっぱら大蔵省がその衝に当っております。私どもといたしましては、もっぱらこの労働金庫が健全な発達をしていくという見地から、その経理の内容あるいは資金の運用の状態あるいは貸付の状態等につきまして監査をいたしておるのでございます。今お話の中の市中銀行との競合の問題はおそらく労働金庫も金融機関でございますので、そういう面の問題もありましょうが、しかし、ただ労働金庫は言うまでもなく、その資金の供給者あるいは資金の貸付の受け入れの方がすべて労働組合を主体といたしておりますので、おのずからそこに市中銀行と違う運用の仕方がございまして、具体的に申し上げますると、労働者生活資金等につきましては、市中銀行よりもよりよい貸付が受けられるというふうな優遇の道もございましょうし、あるいは労働組合その他の福祉関係のいろいろな活動につきましても、この労働金庫は貸付の援助をいたしておる次第でございます。従って、おのずから市中銀行と労働金庫と行います同じ金融機関でございましても、その業務の内容から違う点がございますので、必ずしも正面衝突的な競合はあり得ないというふうに考えております。
  126. 小柳勇

    小柳勇君 労働金庫は労働者生活資金なり、あるいは争議の場合の争議資金を扱うために設立するものですが、それであるがために、会計検査などで大蔵省や労働省は特別に故意に、そういう検査の方法などで不意打ちをやったり、あるいは何か別の意図でもってやられるような話をちらほら聞きますが、そういうものについては、一つこれは大臣から御決意のほどをお聞きしておきたいと思います。
  127. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私どもが数年前に労働金庫法というものを審議いたしましたときに、提案者であります政府の意向もいろいろ聞きました。法律に定めてありますような趣旨で、あの金庫法の目的に合うような趣旨で、現在も労働金庫については指導をいたしておるのは当然でありますが、今お話のように、これは労働者生活資金の貸し出しはいたしますが、争議資金についてこれを貸し出しするというようなことは、労働金庫法にはうたってございません。
  128. 小柳勇

    小柳勇君 次は、労働災害について質問をいたしておきたいと思います。  最近の新聞でも騒がれておりますように、神風タクシーがなお跡を断たない。それはさっきの労働基準法との関連もありますが、全国多数のタクシー会社などに対して、労働災害防止の立場から、政府としてどのような対策をお考えであるか。また、処置をやられようとするか、お聞かせおき願いたいと思います。
  129. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) タクシー運転手の問題につきましては、これは運輸省、警察庁と労働省と協力いたしまして、それぞれの所管の立場からいわゆる神風タクシー等の弊害を是正して参りたい、このような立場で指導しているわけであります。労働省の立場といたしましては、この原因は、一つにはタクシー運転手の労働条件が明確になっておらず、労働強化になるおそれがある、これが一つの大きな原因であると考えまして、昨年以来、こうした事故の間接的な原因と考えられる次のような事項について、重点的な監督指導を行うことを地方の基準局長、監督署長に指示いたしまして、指導を行なっておるところでございます。すなわちまず第一に、労働時間につきましては、一昼夜交代制の場合には、一勤務十六時間の範囲にとどめるように指導し、時間外労働に関する違反については、特に厳重に処理する、このような方針でございます。第三番目に、休日、年次有給休暇制度の確立をはかるということを主眼にしております。第三番目に、時間外休日労働に対するところの割増賃金は法律通り払うということでございます。第四番目に、仮眠等の施設、それから休憩等の施設につきましても、それぞれ基準法もしくは道路運送事業法に基くところに従いまして適正なる基準を設けさせる、その他、健康診断の励行、賃金台帳の整備を行わせるというような見地から監督指導を行なっておりまして、特に東京、神奈川、大阪等の大都会を中心にして強力な指導を行なっておるところでございます。
  130. 小柳勇

    小柳勇君 何か、たとえば何々協会とか何とかそういうもので、積極的に指導監督するというような具体案はございませんか。
  131. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) このタクシーの運転手の労働条件につきましては、やはり、基準局、監督署の系統で、基準法の線に沿った監督指導を行なっていくことが適当であろうと考えております。しかし、主管省の運輸省におきましては、まだそのほかに道路運送事業法に基く取締り、その他一般的な運輸行政の見地からの指導につきましては、いろいろなお考えを持っておられるところでございますので、これは内閣に設置されております交通災害防止対策本部に、われわれも参画いたしまして、各省間の連携を緊密にして指導を行なって参りたいと考えます。
  132. 小柳勇

    小柳勇君 次は、婦人少年労働保護に関して、二、三質問いたしておきたいと思います。  第一は、青少年ホームを一カ所設置するために五百万の予算をとっておられますが、一カ所——もちろんこれは一カ所でもいいことですけれども、われわれとしては申しわけ的にすぎないのではないかという気がするのですが、まずその設置の目的から、今後どのようにこれを発展しようとされるか、その点について局長から一つ
  133. 谷野せつ

    政府委員(谷野せつ君) 青少年ホームにつきましては、今から三年前に予算をちょうだいいたしまして、愛知県の名古屋に、一千万円の三分の一補助で、新しい試みとして作っていただきました。それは完成されまして、まだその効果がはっきりわかっておらないのでございますが、中小企業に働いております青少年が、休日のような場合に、あるいはまた、日ごろから十分に労働保護を受けながら将来の青少年としてりっぱに成育させますために、健康診断でありますとか、あるいはまた、教養の向上でありますとか、余暇利用でございますとか、さらにまた、身上の問題につきましていろいろ悩みのあるところでございますので、十分に相談に応じられますように、この青少年ホームがその地域の中心になって年少者を保護するところとして期待いたしておるわけでございます。まだ十分その効果について予測されませんのでございますが、一千万円という大きなお金をかけませんでも、さらにできるだけこの青少年ホームを小さな規模でもよろしゅうございますから、たくさん作っていくことが好ましいのではないかと存じます。今年は規模を小さくいたしまして、なるべく地域に密着いたしまして年少労働者のよりどころになるような青少年ホームを作って参りたいと存じまして、大きな施設にいたしましても、小さな施設にいたしましても、どちらも一つのモデルケースといたしまして両方の効果を見ながら、さらにこれを全国のおもな都市に増設していただきたいと思っております。そのために、私どもも一生懸命努力をいたして参りたいと存じます。
  134. 小柳勇

    小柳勇君 一カ所作って、これから模様を見て発展しようと考えておられるようですが、省内あるいは閣内で、将来一体どれくらいにこれを拡充しようとしておられるか。今おっしゃるのは、たとえば一千万円かけないでも、小さいのを全国に作りたいという構想でございますが、もう少し具体的に……。それは私が言うまでもなく、今、青少年に対して非常に問題があるわけです。そういう問題について、ただ一人の責任者である局長がもっと積極的にいろいろの方策をお持ちであろうと思いますから、なるべく一つ詳しくお話しおきを願いたいと思います。
  135. 谷野せつ

    政府委員(谷野せつ君) 青少年ホームにつきましては、国の予算を通しまして、地域の府県、市町村などに作っていただくように進めるやり力もございますが、さらに民間の事業団体が自主的に、新しくできました宵少年ホームの効果をごらんいただきまして、その上でできるだけ自分企業の実態の上に即した、よりどころを作っていただくことも大事なことではないかと存じます。そこで、私どもといたしましては、将来できるだけこの補助金を通しまして、青少年ホームを作っていただくことに努力いたしますが、さらに地域協同組合などと話し合いを進めまして、その上で具体的に必要なものを、その土地に適したものを、さらにたくさん作っていただくように進めたいと存じております。私ども婦人少年局におきましては、特に中小企業の年少労働者の福祉のために、地域においてその地域の実態に即した保護の進め力をしていただきますために協同組合の責任のおありになる方とか、行政官の力とか、さらに私どもの地方に婦人少年室協助員というものが全国千五百名ほど配置されておりますので、これらの方々を通しまして福祉問題協議会を作っていただき、さらにまた、地域協同組合に福祉委員というものをお願いいたしまして、この少年ホームの施設の足らないところを、さらに人の効きによって、年少者の保護が十分進められるようにいたして参りたいと努力をいたしております。
  136. 小柳勇

    小柳勇君 大体わかりました。私ども懸念いたしておりますのは、こういうようなりっぱな青少年ホームができますと、利用する者は、まあ学校でもりっぱなランクに属するような青少年が主として活用して、生活も十分できないような子供はなかなかこういうホームに寄りつかないという現象を方方で見るわけです。この青少年ホームを離れて、たとえば朝われわれが早く起きますと、いたいけな少年たちが新聞配達をやっております。ほんとうに小学校に通っているような少年がやっておりまするが、手っとり早く、こういうようないろいろ家庭的に恵まれない、みずから小学生でありながら新聞配達をしているような青少年に対して少年局長はどのような手っとり早い救済策をお考えであるか、お聞かせおきを願いたいと思います。
  137. 谷野せつ

    政府委員(谷野せつ君) 先ほど申し上げましたように、地方の婦人少年室に婦人少年室協助員が全国千五百名配置されております。この人たちが、第一線の婦人少年問題の相談機関になっておりますが、かたがた地域のさまざまな青少年を保護願っております機関の連絡調整に当りまして、たとえば先生のおっしゃいましたような学業の途中にあって、家庭の経済さまざまな事情で働いておりまして、学校を長期欠席しておりますような児童が見つかりましたような場合には、学校を訪ね、さらにまた、家庭を訪ね、あるいはまた、働く職場を訪ねまして、あるいはまた、福祉関係の機関を訪問いたしまして、家庭の経済の御相談から、さらにその子供を学校へやるためのさまざまな相談に応じて一人々々のケースについて救う方法をあちらこちらにお願いして歩いているような仕事をいたしております。これによりまして、現在では相当の子供たちが学校に行くことができるようになってきておりまして、私どもはさらにその協助員の活動を通しまして、そのような不幸な子供のないように努力をいたして参りたいと思っております。
  138. 小柳勇

    小柳勇君 次は、婦人問題について質問いたしますが、先日の衆議院の委員会の局長の答弁を見てみますというと、売春防止対策については、まあ、これぐらいの予算でございますと、ほかの省の方がやっておられるので、私の方は横から、側面から援助するのでございますから、この予算で十分でございますというような答弁をされておるようでございますが、一体、この売春防止対策あるいはその後の婦女の保護史生などをはかるために各省予算を集めましたら一体どのくらいになるものでございましょうか、お知らせ願いたいと思います。
  139. 谷野せつ

    政府委員(谷野せつ君) 各省予算の総額につきまして大へん申しわけございませんが、本日ここに資料を持ってきてございません。ただ婦人少年局の予算関係から申し上げますと、ことしは総額において幾分減っておりますが、これは一律の事務費の節約の程度でございます。労働省の婦人少年局におきましては、売春問題につきましては婦人の人権に関係する問題でございますので、かねてから特にこの問題の促進について、婦人の地位の立場から各省がどのようにしてこのことを進めていていただいておるかということを非常に注意をして参っていたのでございます。幸いこの売春防止の問題につきまして、昨年防止法ができまして以来、法律の施行に関する事柄につきましては、それぞれ厚生省、法務省の所管に入っておりまして、私ども労働省といたしましては、この問題につきましては、広く婦人の地位の観点からどのようにその法律が施行されているかということについて関心を寄せております。さらにまた、具体的に売春婦がどのような形で更生をしていくかということについて注意をいたしているのでございますが、特にそれらの問題を含めまして、私どもの持っております機能といたしましては、調査や啓蒙を通しまして、その調査や啓蒙の過程において社会の世論を高め、さらにまた、具体的にその過程や相談を通しまして売春婦の更生に援助をするようなことに努力をいたしております。売春防止の問題の総括的な運営につきましては、内閣にできました売春問題審議会がただいま政策を練っておられます。私ども労働省の婦人少年局の婦人の地位向上の観点から、さらに機能といたしまして、調査啓蒙、それから地方の婦人少年室の持っております相談機能を通しまして、売春問題の促進のために努力をいたしております。
  140. 小柳勇

    小柳勇君 まあ事務的にはわかりましたけれども、売春問題対策費として五百三十万も計上してありまして、しかも今の婦人少年局長の話では、審議会の方が中心になってやる。私ども一つのメンバーでございますという話でございますが、各省を見ましても婦人局長というのはまあお一人のようでございますが、積極的に転落婦女の保護史生などについて一体だれがほんとうに日本の中心になって計画を進めていくものでございましょうか。
  141. 谷野せつ

    政府委員(谷野せつ君) ただいま申し上げましたように、現在の段階におきましては、売春問題審議会が政策を練っておられるのでございますが、私ども婦人少年局といたしましては、売春問題が婦人の地位に関係いたしますので、総括的な立場から売春問題が一刻も早く解決されますように、私どもの機能を通しまして努力いたして参りたいと存じております。
  142. 小柳勇

    小柳勇君 きつい言葉を使いましたけれども、どうぞ一つ売春防止対策については積極的に一つ発言願いたいと思います。  次には、職業安定局長にお尋ね申し上げておきたいのですが、これは衆議院の方でも問題になっておりましたけれども、職業安定所が全国各地とも非常にお粗末な住居で、ごみごみしたところ、しかも湿気のあるところに住んでおられるようです。で、今年度の職業安定所の施設の経費なりあるいは定員増などの計画について御説明願っておきたいと思います。
  143. 百田正弘

    政府委員百田正弘君) 非常に職業安定所に対しまする御理解のあるお言葉をいただいてありがたいと存じますが、私どもにおきましても、現在職業安定所に課せられた任務が非常に大きくなってきておりますが、その安定所自体が非常に老朽な建物が、局庁舎が多くなったというようなことのために狭溢になってきている。さらにただでさえ離職した人たちがうっとうしいような古い建物に来るということは、それ自体としても非常に気の毒なことでございますので、われわれといたしましては、できるだけ古いものを早く能事的なものにしたいということで、かねがね努力しておったのでございますが、本年度におきまして、一般特別会計合せまして約三億一千万円、前年度は約四千万円程度でございましたので、庁舎におきまして約五倍近くの増額になったわけでございまして、これをわれわれといたしましては、約五カ年計画くらいで、漸次現在の老朽あるいは狭溢なものを整備して参りたいというふうに考えておる次第でございます。  それから増員の問題につきましても、最近の状況を見ますると、十分な相談もできない。従いまして、窓口をできるだけ拡張していきたいということで相当の数を要求いたしたのでございますが、本年度は庁舎関係重点を置きましたので、人員関係といたしましては、それでも全体として百六十名ばかりの増員を見たわけでございます。今後さらにこれを充実して参りたいというふうに考えております。
  144. 小柳勇

    小柳勇君 増員百六十名、現在夜桜窓口で職業就職あっせんの世話をなさっているのは大体概数どのくらいですか。
  145. 百田正弘

    政府委員百田正弘君) 現在御承知通り、安定所におきましては、窓口と申しますのが、一つは職業紹介の窓口、もう一つ失業保険窓口であります。さらに日雇い紹介に当りますいわゆる労働出張所の窓口あと調査関係と庶務関係でございまして、安定所約一万の人員の中に約七割が窓口職員ということになっております。
  146. 小柳勇

    小柳勇君 最後にもう一つ大臣官房の一般行政費が四億三千八百万円計上してありますが、見当でもよろしゅうございますから、もう少し具体的に御説明願いたいと思います。
  147. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 大臣官房の一般経費としまして四億三千八百二十三万八千円を計上してございまして、前年一度に比べまして八千四百六十四万七千円の増になっております。この増の内容といたしまして、人件費の増が五百十二万八千円でございます。これは昇給等に伴う自然増でございます。それからそのほかに、共通的な経費といたしまして七千九百六十一万四千円の増になっております。この共通的経費は、労働省内の各局並びに各出先機関を含めまして共通いたします経費を大臣官房で所管をいたしておるわけでございまして、内容は退官退職手当、これは職員が退職いたしました際に国家公務員退職手当法に基きまして退職手当を支給いたします予算、これが約三千万円塔になっております。それから共済組合負担金、これが約四千七百万円の増になっております。これは国家公務員共済組合法に基きまして、共済組合に対しまして国庫が負担をいたします負担金でございます。これが四千七百万円。大体八千四百六十万円の内容といたしましては今の人件費が五百万円、それから退官退職手当、共済組合負担金等が増になっております。
  148. 小柳勇

    小柳勇君 それから最後に、失業保険特別会計の金が今五百億くらい大体のところあるようですが、その金の運用をどうやっておられるか、お聞きしておきたいと思います。
  149. 百田正弘

    政府委員百田正弘君) 積立金五百四十億につきましては、これは資金運用部に預託してあるわけであります。
  150. 小柳勇

    小柳勇君 資金運用部の方に預託、全部そうなんですか。
  151. 百田正弘

    政府委員百田正弘君) 全額資金運用部に預託いたしておるわけでありまして、そうして、その積立金から生ずる運用収入があるわけであります。これが先ほどもいろいろ御指摘ございましたが、失業保険特別会計におきまして利子を財源といたしまして、これを被保険者の利益に還元いたしますために、総合職業訓練所の設置というような、あるいは日雇い労働者の簡易宿泊所、あるいは労働福祉館といいまして、これは日雇い労働者のための託児所でありますとか、食堂、そういったものにも、あるいは日雇い労働者のための簡易世帯住宅といったものの建設といったものに使っております。
  152. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今の予算関係質問を私も一つしておきたいと思います。国際労働、国際協力に必要な経費の中で、六千六百四十一万四千円ですか、国際労働機関の分担金と、国際労働会議の参加費というものをこの中から引くわけですけれどもあと残った九百三万二千円、これは本省の経費ということになっているのですけれども、この中で人件費が幾らか、そしてたとえばこれだけの国際労働機関の関係が中心だと思うのですけれども、国際労働関係のたとえば国内普及はどういう格好にやっておるか、それをちょっと行政の面から聞いておきたい。
  153. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 国際労働関係の人件費といたしましては約五百三十万円でございます。それからその他の事務費、印刷費といたしまして群万円、それから国際労働条約の関係の国内の協議会の経費といたしましてこれはわずかでございますが、七万八千円、それから国際労働関係資料の作成費といたしまして、これは主として総会、委員会等の議題、それからILOからの連絡事項、そういったものの印刷並びに国内におきますところのILO関係の普及宣伝に要します資料の作成費、これらを含めまして約二百三十万円でございます。
  154. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、総会、委員会に対する資料の作成ですね、この作成をされると、ILOの決議されたいろいろの問題、国際的な問題を国内に替及される費用というのはどれだけあるのですか。
  155. 松永正男

    政府委員(松永正男君) ただいま申し上げましたように、国際労働関係の協議会の経費のほかに、印刷費、資料作成費等が合せまして百万円と二百三十万円で三百三十万円あるわけでございます。その前に資料の広報費として百万円というのを申し上げた。
  156. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 広報費というのはどこにあるのですか。
  157. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 先ほどの九百三万三千円の内訳といたしまして人件費が五百三十万、それから協議会費が七万八千円、それから広報費といたしまして百万円、それから国際労働関係資料作成費として二百三十万。
  158. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、今の広報費というのは、普及される費用というのは百万ということですか。
  159. 松永正男

    政府委員(松永正男君) そうです。広報に要する費用が百万ということです。
  160. 光村甚助

    ○光村甚助君 基準局長にお伺いいたしますが、先ほど小柳委員の御質問では、神風タクシーの問題だけ災害として取り上げておったんですが、最近のあの炭鉱の状態ですね。あれを一体あなた方はどうお考えになっているのですか。
  161. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 先ほどは神風タクシーの御質問でございましたので、それについて御説明申し上げたわけでありますが、最近、炭鉱その他におきまして、いわゆる産業災害が増加の傾向にあるということは、まことに遺憾に存じておるわけでございます。昭和三十二年の一年間だけでも、これはきわめて軽いけがまで合せますると、一年間に死傷者七十一万名出しておるというような状況であります。このような状況では、労働者の生命の安全の保護という見地からきわめて遺憾である、このように考えまして、労働省といたしましては国民の各層と協力いたしまして、この際大々的に五年かかって災害を半減することを目標にして五カ年計画を立てて、これを推進しようではないか、このような考えをもちまして、昨年以来内閣に臨時産業災害防止懇談会を設置いたしまして、労働者、使用者、その他各方面の代表者にお集まりを願いまして、このような計画につきまして御意見を伺っておったのでありますが、これはぜひともやってもらいたい、こういうような答申がありました。それに基きまして労働省といたしましては、これは炭鉱関係は御承知のように、通産、その他の災害につきましてはあるいは警察、あるいは消防というような各省にまたがっておりまするが、政府一丸となりまして民間各層と協力をいたしまして、災害を半減することを目標に大きな運動を起したい、このように考えておる次第であります。
  162. 光村甚助

    ○光村甚助君 炭鉱のことはあなたの方の管轄じゃないとおっしゃいますが、産業災害の方は関係しておられるだろうと思う。この前も炭鉱で、十四人生き埋めになった私はあのテレビを見ましたがね、子供を抱いた若い未亡人がですよ、非常に泣いているところなんか出ている。これは人ごとじゃないと思うのですよ、実際です。去年だけでも二十人とか三十人生き埋めになったという例はたくさんある。これは単に失業しただけじゃなくて、命を取られるのです。これをただ総理府に設置された協議会でですよ、防止懇談会で五カ年計画をやりましたと、こういうことでは、この災害というものは簡単に防げないと思うのですよ。労働大臣は労使の点で非常にやかましく言っておられるので、われわれはひが目で見るわけではないのですが、非常に労働者だけが行き過ぎがあるように言っておられるのですが、先ほどのあなたの話じゃないが、資本の蓄積もいいですけどね、炭鉱で坑木がなくて露天堀りをしているようなところを見のがしているのは政府の非常に失態だと思う。だから、ここにも書いてあるように、自主的な安全運動を盛り上げるように努力いたしたいと存じますでは、ちょっとこれでは炭鉱に生き埋めになった人は救われない。具体的にどういう五カ年計画があるのか、この次まででけっこうですから、ただこういううたい文句だけでなくて、ほんとうに人の命を奪う問題ですから、もう少し真剣に努力していただきたいということを要望しておきます。
  163. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は時間がもうありませんので、ILOの問題、公労法の問題について、質問がしたいのですが、きょうは概念だけ聞いておきたいと思いますが、よろしゅうございますか、委員長
  164. 久保等

    委員長久保等君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  165. 久保等

    委員長久保等君) それでは速記を起して下さい。  本日はこれにて散会をいたします。    午後四時四十一分散会