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国務大臣(
倉石忠雄君) もちろん
政府といたしましては、
完全雇用が望まれることは当然のことであります。しかし、
小柳さんも御
承知のように、
完全雇用が行われておるといわれている、たとえば西ドイツにしても
イギリスにしてもやはり
配置転換されていくようなときの
摩擦失業というものは、大体
労働力人口の何パーセントというふうなものはあるのでございまして、
日本の
労働力に比べて、今の実際の
失業者が非常に
外国に比べて、そういう率が多いかといえば、決して多くはない、率は。ただ、アメリカや
イギリスやドイツのように、
経済基盤というものが非常にしっかりしている国と、わが国のようなお互いの国民生活そのものがまだしっかりしていないところでは、かりに
摩擦失業というものであってもこれは決して楽なものではありませんし、ことにそれをできるだけ少くするということがやはり
政策のねらいだと思うのであります。そこで、昨年も六十万というものを見込むといたしましても、現実に出て参りましたものはそれほどになっておらなかった、現に五十四万とか五十七万とかいうところを上下いたしておることも御
承知の
通りであります。それならば、そういうものにさらに
完全雇用に向う
努力をしないのか、こういうことになりますというと、私
どもは決してそうではない、どうしたならばできるだけ
完全雇用に近づけることができるか、ことに私
どもは同じ
政府部内である
厚生省が発行いたしておる厚生白書などを読んでみましても、
昭和十九年ないし二十年ごろのつまり妊娠率といいますか、そういうものが現実に
労働力人口として今ごろようやく現われてきている。それで厚生白書によれば、
昭和四十年ごろでありますか、大体
日本人口はそういうところでピークにいくだろうといっております。従って私はいつでも申しておりますことは、われわれの
経済政策が非常に成功したとしても、なお
完全雇用の域に達するということには、もう非常な勢いで人口の増殖率というものを追っかけていかなければならない、絶えずそこまでは
努力していかなきゃならないことを
日本人としては
考えなくちゃならぬ。こういうことを言っているのでありまして、そこで、当面三十四
年度の問題につきましても、私
どもはできるだけ御
指摘のような
完全雇用に近づけていくためには、まず
諸般の
経済政策もさることながら、第一実際に人を使うという面で、現実に
数字を少しずつでもふやしていく
努力をしようではないかということで、先般来大蔵省、建設省等と相談をいたしまして、昨
年度より相当金額
伸びました、五千数百億円に上る
財政投融資、それから昨
年度予算に比較して増額いたしました公共事業費等を、これを実施に移すことによって、
労働力をどの
程度吸収し得るだろうかということも現場の
計算に即して
計算をいたしまして、大体出てきておる
数字は、両方合せて今までの経験から二十万八千人ほどの増を見込み得る、こういうように
一つ一つそういう点にわれわれは
努力を積み重ねまして、一人でも多く
雇用の
場所を拡大していきたい。ことに
労働省プロパーの問題で申し上げますというと、私は
労働省の安定行政というものを見ておりまして、
労働省も役所として非常に
努力はしておりますけれ
ども、もう一段突っ込んで、この実際の面をもう少し緊密にタイアップして、
雇用を拡大していく方法はないだろうかということで、たとえば三公社はもちろんでありますが、電力、石炭、紡績、河川、自動車、造船といったような各
産業ごとに協会がございます。そういう協会に参加しているのでございますから、おもな
産業というものは、そこでその
人たちを集めまして、その中で、協会で人事を担当いたしているような人々を幹事役にして、そういう人々に三十四年の三月受け入れるべき彼らの各種の
産業において、どういうようなものを必要として、どの
程度の人員を必要とするかというふうなことの研究を、昨年の秋から開始さしているのであります。こういうことは、その
雇用の面を観察いたすのに非常に効果的でありますし、同時にまた御
承知のように、
労働省の出先でいろいろ役所の
人たちも苦労してくれておりますけれ
ども、なかんずくまだ気の毒だと思うのは、職業安定行政でありまして、これはもう出先の
安定所なんかも、
場所によっては床もがたがたしている貧弱な所におって、しかもそれに殺倒してくる
失業者のお相手をいたしているのはなかなかやり切れない。このごろある人はこういうことを言っておりました。職業
安定所というのは
失業保険の応対だけで一ぱいだというようなことを言って、いる人もあるようなわけで、従って幸いなことに皆さんの御協力を得て三十四
年度予算には、この間御
説明申し上げましたように、その職業
安定所の設備等を改善したり、人員増をするようなことにはなってきました。ああいうふうなものをもっと有機的に活発に、実際に人を使ってくれる
産業の当事者と緊密な
連絡をとって、そうしてこれを
一つうんと利用してもらう、ほんとうのこの安定業務を効果的にその効力を発揮せしめるようにする、こういうようにして実際の
雇用、
失業者の窓口である
労働省の
事務を、ほんとうに人を使う方の側と緊密な提携、タイアップができて、その機能を増進できるようにしむけていく、こういうようなことで、われわれは一人でも多くの
雇用の
場所を拡大していくように努める、そういったようなことで
努力を続けているわけであります。