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政府委員(美馬郁夫君) それでは
土地区画整理法の一部を
改正する
法律案について、簡単に御
説明いたします。
お手元に御配付してありまする
法律案要綱でございますが、中身の実体は要綱の方がわかりやすいと思いますから、
法律案を
参考にしながら順次要綱の方から御
説明いたします。
最初は(宅地の立体化)という制度でございます。これは条文で申しますと九十三条になりますが、この趣旨を
説明いたします。九十三条は宅地の立体化についての
規定でありますが、これが通常立体換地といわれている制度でございます。立体換地と申しますのは、一般の土地区画整理
事業の平面換地に対するものでありまして、平面換地は従前の土地に照応する土地を換地として与えるのが、原則でありますが、立体換地の場合は、従前の土地のかわりに、その土地と同等の価値を打つ「
建築物の一部」とその「土地の共有持分を与える」ものであります。土地のかわりに与える
建築物でありますから、その
建築物は耐火
構造でなければならないとされており、また立体換地を拒む者には金銭清算の道が開かれているのであります。立体換地の必要があるのは、市街地の密集部分で平面換地の余裕がなく、しかもその地域が将来尚度利用を必要とするような場合であります。しかしながらこのような立体換地の制度は、現在
面積の小さな宅地を整備する場合と、権利者の用意がある場合吉だけに限られておりまして、市街地を、都市計画上土地の高度利用の必要、災害防止のための必要等の公共的見地から、全面的に立体換地を行う必要がある場合には認められていないので、この制度の運用が現在では困難であります。従いまして今回第九十三条に第二項を設け、市街地における土地の合理的利用と災害防止のため特に必要がある場合においては、防火地域であって高度地区内の宅地については、過小宅地の場合と同様に、個々の権利者の同意を得ることなく、権利者の代表機関であります土地区画整理審議会の同意があれば、立体換地のできるように
改正しようとするものであります。
次が(公共施設管理者の費用
負担)の問題であります。これは百十九条の二でございますが、本来土地区画整理
事業は公共施設の整備改善を目的とするものでありますが、最近道路河川等の大規模な公共施設の用に供する土地の確保が困難であるため、これらの公共施設の管理者からの申し出により土地区画整理
事業によってその用地を造成することが盛んになっているのでありますが、この場合当該公共施設は、もっぱら土地区画整理
事業の
施工地区内の居住者の用に供するものでないものが多く、かつその用地も大量であるから、この用地を造成するための
負担を、土地区画整理
事業の施行者のみで行うことは非常に過重になりますので、これにつきましては、従来も公共用地造成補償費という名目で、本来の公共施設の管理者から土地区画整理業業の施行者に支出されてきたのでありますが、会計法等の
関係を明確にするため、今回百十九条の二の
規定を新設したのであります。まず第一項には、土地区画整理
事業が、「都市計画として決定された幹線街路その他の重要な公共施設」の用地造成を主たる目的とした場合においては施行者は本来道路法その他の
法律に基づき、これらの「公共施設の新設又は変更に関する」
工事を行うべき者に対し、その者が当該公共施設の川に共する土地」を造成した場合に、当然要したのであろう「費用の額の
範囲内において」
事業費の「全部又は一部を
負担」させることを求めることができることとしようとするものであります。この
規定の適用がある重要な公共施設は
政令で定めることになるのでありますが、目下考慮いたしておりますものは、一級国道、二級国道、主要地方道、河川法適用河川または準用河川、都市公園、港湾施設である運河、護岸堤防のうち大規模なものであります。
次に第二項は、「施行者は、」第一項の「
規定により公共施設管理者に対し」第一項の費用の
負担「を求めようとする場合においては、あらかじめ」施行者と当該公共施設管理者が協議し、「
負担すべき慣用の額及び
負担の方法を
事業計画において定めておかなければならない」旨を
規定しようとするものであります。
事業計画において定めようとしましたのは、
事業計画のうち資金計画に
負担額、
負担項目及び
負担年度等を定めておいて、事後の紛争が生じないようにしようとするとともに、地区内の利害
関係人に縦覧して一般に知らしめようとするものであります。
第三は、(仮換地に指定されない土地の管理)、百条の二と八十条の両方にまたがります。御
説明いたします。土地区画整理
事業におきましては、各人の権利が確定する換地処分を行う前に、仮換地というものを指定して、かりにその土地を使用収益させるのが通用でありますが、この場合に将来公共施設となる予定の土地または
事業費に充当するため、換地処分後保留地として処分される予定の土地などは、仮換地に指定されずに残るのであります。これらの土地は、そのいずれも土地区画整理
事業を円滑かつ適正に施行していくために不可欠のものでありますので、現在第八十条の「土地区画整理
事業の施行のためにこれを使用することができる」という
規定によって施行者が管理しておりますが、法文上不明確でありますので、今回百条の二の
規定を設けて、これらの土地は仮換地が指定されたときから換地処分があるまでの間、施行者が管理するということを明確にいたしたのであります。従って施行者はこれらの公共施設予定地、保留地予定地等を
事業の目的に沿って維持管理し、または
事業施行のために第三者に使用収益せしめることがはっきりとしたのであります。
次に第四の(
委員等の任期の延長)でございます。これは
法律で参りますと一十七条、三十七条、五十八条になります。趣旨を御
説明いたします。土、地区画整理審議会の
委員、土地区画整理組合の役員及び総代の任期でありますか、土地区画整理審議会は「土地区画整理
事業ごとに、都道府県又は市町村に」置かれるもので、「換地計画、仮換地の指定、減価補償金の交付」に関する事項について、
法律の定める
規定に従って同意し、または
意見を述べる機関であり、組合の役員は業務を施行する
理事、業務を監査する監事であり、総代とは組合員が百名をこえる場合に、総会にかわってその権限を行うために設けられております総代会を構成するものであります。これらの
委員、役員、総代はすべて地区民または組合員の選挙によって選ばれるのでありますが、
現行法ではその任期はいずれも「三年をこえない
範囲内」で
事業の施行規程または組合の定款で定めることになっております。しかしながら土地区画整理
事業の実態は非常に長期間を要し、また
事業の内容、
手続等も複雑でございまして、特に審議会等の
委員の選挙については、公正を期するために公職選挙法に準じた詳細な
手続を設けておりますので、選挙には七十日くらいの期間を要し、その間
事業に空白を生ずることになるなど、その任期が三年に限られておりますことは、
事業の円滑なる施行上好ましくないのであります。御承知のように戦災復興
事業はその終息を目前に控えているにもかかわらず、
委員の任期が
昭和三十四年度で切れることになっておりますので、この際どうしても任期を延長する必要があるのであります。従いまして今回
事業の実態に合致せしめるために、組合の役員については第二十七条第五項、総代については第三十七条第三項、審議会の
委員については第五十八条第六項の
規定を
改正して三年を五年にいたすのであります。五年をこえない
範囲内で施行
規定または定款で定めるのでありますから、各
事業の規模等によりましては、五年以内で適宜その年限を定めるのであります。なお
委員、役員、総代につきましては、地区民または組合員からの解任請求が認められておりますので、これらの
委員等の任期が延長されたとしても、地区民または組合員の権利保全の措置は十分考慮してあるのであります。
次に(
事業計画の軽微な修正の
手続)、これは
法律の方で参りますと五十五条、六十九条でございます。御
説明いたします。土地区画整理
事業においては、公共
団体施行の場合、
事業計画を定める場合、
行政庁施行の場合は、
事業計画及び施行規程を定める場合に、二週間公衆の縦覧に供することになっておりますが、これらについては利害
関係人から
意見書が出て
事業計画等を修正いたす場合は、再び縦覧いたすことになっております。ところが
事業計画を変更する場合には、やはり再縦覧することになっておりますが、この場合には変更の軽微なものについては、再縦覧を省略することになっているにもかかわらず、最初の修正の場合にはこのような措置が認められていないのであります。従いまして今回第五十五条、第五項及び第六十九条第五項の
規定を
改正して、
事業計画及び施行規程を修正しようとする場合におきましても、計画の変更の場合と同様に
政令で定める軽微な修正については、再縦覧を省略できることとし、
事業の迅速な施行をはかろうとするものであります。この場合
政令で定める軽微な修正とは、現在変更の場合に軽微なものとして施行令第四条に認められている事項と同様なものを考えておりまして、たとえば
事業計画の場合には「
事業執行年度又は執行年度制の」修正、または幅員が「四メートル以下の道路の新設又は廃止」等を考えております。施行規程の場合は、たとえば
事業の名称、施行地区または工区に含まれる地区の名称、事務所の所在地などの修正を考慮しておりますが、これらはいずれも当初縦覧されており、修正の場合に縦覧を省略しても、利害
関係者の権利を害するおそれがないものであります。
次は第六の(予備
委員の数の特例)でありますが、法文で申しますと五十九条でございます。土地区画整理審議会には、本
委員のほかに欠員補充のために「施行規程で定めるところにより」予備
委員を置くことができるのでありますが、「予備
委員の数は」
事業「施行地区内の宅地の所有者から選挙すべき
委員の数又は」借地権者から「選挙すべき
委員の数の」それぞれの「半数をこえてはならない」ことになっております。本
委員は、所有者の総数と借地権者の総数とを比例して選出されますので、地区によりましては、所有者と借地権者の比率が偏向している場合がありまして、借地権者なり所有者から選挙された
委員が一人の場合がありますが、
現行法のままでは「半数をこえてはならない」という
規定により、予備
委員が置けないので、当該
委員が欠員になった場合には、直ちに補欠選挙という事態が生じますので、今回五十九条の第二項にただし書を設けまして「
委員の数が一人の場合に」おきましては、予備
委員を一人置くことができるということにしたのであります。
次が(権利異動の届出)、これは
法律で参りますと八十五条になっております。御
説明いたします。土地区画整理
事業におきましては、権利の申告制度が設けられておりまして、施行地区内の宅地について所有権以外の権利、たとえば地上権、賃借権等で登記のない権利を有する者は、当該宅地の所有者と連署するか、あるいは「権利を証する
書類を添えて」「権利の種類及び内容を」書面をもって申告することになっておりますが、一度申告した権利が「移転、変更又は消滅」した場合には、当初の申告の場合と異なり、当事者は連署しなければ、施行者に届け出ることができないこととなっております。従って、当事者の一方が行方不明である場合とか、正当な理由がなくして
相手方の承認が得られない場合には、権利異動の届出ができず非常に困っておるのであります。従いまして、今回第八十五条第三項を
改正し、当初の申告の場合と同様、当事者の連署のほかに「双方又は、一方から」権利を「証する
書類」によって届出を認めることにしようとするのであります。
次が八の(公共施設の用に供されている宅地に関する措置)であります。御
説明いたします。公共施設の用に供している宅地と申しますのは、たとえば道路、水路等の敷地になっている私有地をいうのでありますが、これらの私有地については、現在でも、第九十五条第一項の
規定によりまして、換地計画を定める場合に、換地照応の原則の例外として位置、地積等に特別の考慮を払って定めることができることとなっております。土地区画整理
事業は、公共施設の整備改善をはかって、これらの私有地をなくしていくのがその目的でもありますし、特に私道敷につきましては、適正な換地により生ずる公道に面するようにいたしますので、もはや私道敷は不要になるのであります。従いまして今回、第九十五条に一項を設けて
事業の施行によりまして、これらの私有地の上にある公共施設にかわる機能を持つ公共施設ができた場合、その他特別な事情がある場合には、当該私有地については換地を与えずに、適正な金銭により清算することができるようになったのであります。この
規定が適用されるのは特別な場合だけでありまして、この場合には、これらの事情をよく知っている地区民の代表機関である土地区画整理審議会の同意を必要とする、こういうことにいたしております。
次が第九の(保留地の処分方法)でございます。御
説明いたします。これは百八条、五十三条、五十六条に
関係して参ります。現在、保留地を処分する場合は、土地区画整理審議会の同意を得て定めた方法により処分することになっておりますが、この保留地は、第九十六条の
規定により、土地区画整理
事業の
事業費に充てるために、施行地区内の宅地の所有者及び権利を有する者の平等な
負担によって生み出されたものであるから、その処分方法については、これらの権利者は大きな関心を持っておるのであります。従って、この保留地の処分方法は、土地区画整理審議会の同一意によって定めるよりも、むしろ権利者の総意の反映によって決定されるよう施行規程であらかじめ定めることにした方が、より公平でかつ民主的であるので、今回百八条第一項の
改正をいたすものであります。
なお、施行規程は、公共
団体施行の場合は、条例で定めるものであります。
行政庁施行の場合は規則、建設
大臣施行の場合は省令で定めるのでありますが、この場合は、二週間利害
関係人の縦覧に供することになっており、利害
関係人はこれに対し
意見を述べることができるようになっております。
次に第十の(清算金の延滞金)等に関する
規定、百十条でございます。この百十条は(清算金の徴収及び交付)に関する
規定でありますが、
現行法では、清算金を滞納する者に対して、その延滞金を徴収することが認められておりませんので、清算金の徴収、交付事務を円滑にするため、今回、百十条に延滞金の徴収
規定を設けたのであります。それとともに従来の清算金の徴収、交付に関する
手続について再検討を加え、百十条第一項の徴収、交付の根拠
規定、第二項の分割の場合の利子の
規定はそのままにしまして、第三項以下の
手続規定を全面的に整備いたしました。すなわち第三、項を督促の
規定とし、第四項を督促
手数料と延滞金の徴収
規定とし、第五項を公共
団体と
行政庁の場合の滞納処分及びこれらの先取得権の順位の
規定とし、第六項を清算金等の充当順位の
規定とし、第七項及び第八項は組合施行の場合の強制徴収
手続、清算金等の時効及び特効中断の
規定といたしました。
なお、新たに設けました延帯金は、百円につき一日三銭の割合を乗じて計算した額の
範囲内としまして、地方税法等の税金の延滞加算金額と同様といたしたのであります。
次に十一の(土地区画整理
事業と農地等の
関係の調整)、条文で申し上げますと百三十六条でございます。御承知のように土地区画整理
事業が、市街地の造成を目的とするもので、区域内に農地が含まれる場合は、将来宅地化されることを原則といたしておりますので、農地との
関係が非常に深いわけであります。従いまして、本条は土地区画整理
事業と農地等の
関係の調整について
規定しておりますが、現在は、都道府県知事が、「農地の廃止を伴うものであるとき」は、
事業計画について、市町村農業
委員会の
意見を聞かなければならないことになっております。しかしながら、農地法の
規定によりますと、農地の改廃につきましては、市町村農業
委員会は、都道府県知事への農地伝用の申請の場合の経由機関にすぎず、農地法によって都道府県知事が農地の転用の許可を与える場合は、都道府県農業会議の
意見を聞くことになっておりますので、今回農地法の体系に従いまして、百三十六条を
改正して、市町村農業
委員会のかわりに、都道府県農業会議の
意見を聞くこととしようとするものであります。
以上が大体この
改正案の内容のおもなる点でございます。