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1959-02-24 第31回国会 参議院 建設委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月二十四日(火曜日)    午前十時三十七分開会   —————————————   委員の異動 二月二十一日委員泉山三六君は辞任し た。 本日委員小山邦太郎君及び松野孝一君 辞任につき、その補欠として草葉隆圓 君及び紅露みつ君を議長において指名 した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     早川 愼一君    理事            稲浦 鹿藏君            田中  一君    委員            石井  桂君            草葉 隆圓君            紅露 みつ君            西岡 ハル君            武藤 常介君            内村 清次君            重盛 壽治君            安部 清美君   政府委員    建設政務次官  徳安 實藏君    建設省住宅局長 稗田  治君   事務局側    常任委員会専門    員       武井  篤君   参考人    横浜建築局長 内藤 亮一君    日本建築家協会    常務理事    大須賀矢薙君    清水建設株式会    社専務取締役  吉川 清一君    日本大学助教授 市川 清志君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○建築基準法の一部を改正する法律案  (内閣提出)   —————————————
  2. 早川愼一

    委員長早川愼一君) これより建設会員会を開会いたします。  まず委員の変更について御報告いたします。  二月十九日佐野廣君が委員を辞任され、その補欠として泉山三六君が委員に選任されましたが、同君は二月二十一日委員を辞任されました。   —————————————
  3. 早川愼一

    委員長早川愼一君) それでは、これから建築基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本法律案についての参考人方々から、意見を聴取することになっております。  まず、参考人方々に御挨拶申し上げます。本日は、御多忙中のところ、委員会のためにわざわざ御出席をいただき、厚く御礼を申し上げます。当委員会は、目下建築基準法の一部を改正する法律案審議中でありますが、この際、専門方々から、本法案についての御意見を伺い、法案審議に遺憾なきを期したいと存じ、本日御出席をお願いした次第でありますが、それぞれのお立場から、本法案についての忌憚のない御意見をお述べ願いたいと思います。  これから、さっそく参考人方々から御意見を伺いたいと存じますが、議事の整理の都合もございますので、御意見をお述べ願う時間は、御一人当り十五分程度にお願いいたし、その後委員からの御質問に対して、お答えをいただきたいと存じます。  それでは、まず横浜市の建築局長内藤亮一君にお願いいたします。
  4. 内藤亮一

    参考人内藤亮一君) 私、横浜市役所建築局長内藤でございます。建築基準法の一部を改正する法律案につきましての参考意見を申し上げたいと思います。  建築基準法昭和二十五年に制定されましてから、今日まで八年余りを経過しておりますが、その間、今日までに数次にわたる改正がございましても、それはほとんど他の法律、たとえば消防法だとか、清掃法だとか、他の法律改正に伴う附随的な改正であったわけであります。今日まで、これという改正は行われていなかったのでございます。これを第一線で施行しておりますところの地方公共団体はもちろん、学界、建設業界設計監理協会、その他からも、相当改正を要望する声が従来からもあったわけでございます。今回の改正案法律基本的事項にわたる改正ではないと思うのでございますが、施行後八年にわたる経験によりまして、各方面から要望のありました点につきまして、政府ができるだけ、これに沿おうというものでございまして、われわれ地方公共団体施工担当者といたしましては、なお一部の、若干の問題点もございますし、今後検討を要する面もございますが、原則的には、この法律案賛意を表するものでございます。  以下、法改正要項の各項目につきまして、主として地方公共団体担当者立場からの意見を申し上げまして、なお時間が十五分という委員長さんのお示しでございますので、時間の余裕がございましたら、お許しを願いまして、なお今後の基本的な問題点について、二、三参考に御意見を申し上げたいと思います。  まず要項にございます防火とか耐火に関する規定のことでございますが、建築基準法制定当時は、昭和二十五年ごろは、まあ相当わが国工業生産の回復がございましたけれども、まだセメントとか、鋼材等防火あるいは耐火の材料の生産も、今日ほど十分ではなかったのでございます。しかしながら、今日におきましては、工業生産並びに国民経済力も発展いたしまして、今日においては、今回の改正案は、おおむね適切なものであると思うわけでございます。特に劇場、映画館等特殊な建築物、あるいは地下建築物、それから無窓工場建築物などの内装の制限、つまり外部の防火耐火ばかりでなくて、内部の防火制限でございますが、これは、今後予想される災害防止のためにも必要なものと思うわけでございます。一方準防火地域内の機械工場横浜にも、古河電線とかあるいは三菱の横浜造船所など準防火地域内の大規模な建築物は、現行法では耐火構造が要求されております。現行法でも卸売市場の上家その他これに類するものは、不燃構造でも——つまり鉄骨構造でもいいわけでございますが、これは、その他これに類するものという規定がございまして、横浜市のごときも、非常に苦しい解釈をいたしておりまして、その、これに類するものとして、緩和的な扱いをいたしておったわけでございますが、今回の改正によりまして、機械工場という字句が挿入されまして、第六十一条のただし書きに明記されておるということは適切なことと思うわけでございます。  その他各地方公共団体によりましては、準防火地域におきまして、階数三を超えるといったような建物耐火構造、この階数が、地階を含めるのか含めないのかといったようなことで、多少取扱いがまちまちなように聞いておるわけでございますが、今回、ある場合は地階を除くとかいうようなことが、その階数の算定には、地階を除くというようなことが明記されておりまして、こういう点も、細部にわたる点でございますが、妥当なものと思うわけでございます。  今回この簡易耐火構造という新しい構造定義も定められまして、実際の建物についてのある場合は、従来木造のものを耐火構造を要求し、ある場合には、従来、耐火構造でなければならなかったものが、簡易耐火構造でいいというように、ある面では強化され、ある面では緩和された面もございますが、これは、大都市よりは、むしろ中小都市不燃化促進には相当役立つのではないかと思うわけでございます。  この字句のことでございますが、建築学会あたりでも、むしろ不燃構造という名前の方がいいんじゃないかという意見もあったのでございます。事実、アメリカ建築法規などでは、不燃構造、あるいは三十分耐火構造、一時間耐火構造、三時間耐火構造というように、相当、何といいますか、理論的に耐火構造を分けておるわけでございます。現在のわが国段階におきましては、すでに住宅金融公庫法、その他の関係法規でも、簡易耐火構造という字句が使われておりますので、現在におきましては、今回のような定義の仕方が適当しておるのではないかと思うわけでございます。今後の問題点といたしましては、やはりだんだん耐火構造とか不燃構造というのも、もう少し精密に規定することが必要になってくるのではないかと思うわけでございます。現在の段階では、今回のような規定で適切と思うわけでございます。  次に、道路に関する規定でございますが、これは要項には、何か道路に関する規定整備とございますが、これは整備というのは、一つ緩和的な措置だろうと思います。法律規定緩和と思います。横浜あたりでは、あまりこの必要を痛切には認めておりませんが、地方中小都市、特に漁港など傾斜地にある一つ市街地でありますが、都市状況によりましては、市街地敷地面積が非常に不足するわけでございますが、そういう都市におきましては、現在六尺ないし八尺くらいの道しかないというところがありまして、四メートルをすぐさま要求するということは、現実には、火事で一軒焼けましても建築不可能になる、敷地がとれないといったような例も、広い日本市街地にはあるわけでございます。これは極端な例を申し上げましたが、そういうような緩和も必要であり、また大都市におきましても、不整市街地で、ちょっと困難だと思うものが多数の中にはないでもございません。これらを必ずしも四メートルにまで拡幅しなくてもいいと、これは市街地建築物法の当初の時代では、一間半からスタートしたのであります。途中におきましても、市街地建築物法が四メートルに拡充され、現在の建築基準法は、それをそのまま受け継いでおるわけでございますが、建築基準法適用区域相当全国に広がりますと、同じ都市計画区域内の一部においては、やや厳に過ぎるという面が今までないでもないように思うわけでございます。そういう意味で、若干緩和するということは、地方都市特殊性によっては、適切な措置だとは思うわけでございます。ただこれも、そういう都市は、えてして火災その他災害の危険が非常に多いわけであります。中には、消防ポンプも入らないというような漁港市街地なんかもあるわけでございますから、これらを法律緩和するのも、けっこうでございますが、別途に、そういう非常に災害の危険な都市の根本的な災害防止をどうするかということを、あわせて検討いたしませんと、片手落ちになるのじゃないかという点が考えられまして、そういう点を、つまりそういう都市の、都市なりの都市の改造だとか、根本対策を樹立することが、あわせて望まれるわけでございます。  第三番目には、用途地域に関する規定でございますが、用途地域内の制限、すなわちこの法律では、別表について、いろいろな業態のものが、あるものは住居地域に原則的に禁止される、いろいろ、まあ別表にあるわけでございます。建築基準法当時は、市街地建築物法規定を十分には検討されなかったきらいがあるわけでございます。しかしながら今日におきましては、戦後非常に産業の発達に伴いまして、一部においては、実情に合わないものが相当見られるようになったわけでございます。  一例を申し上げますと、たとえば横浜市内において、鶴見のある住居地域内の金属のつち打ち加工、これは自動車工業の下請の小さな工場でございますが、これが現在では、住居地域内において制限されておりません。ところが行って見ますと、相当の七、八十ホーンの騒音がある。付近では、なるほどこれではとても夜も眠れないし、昼だって困るだろうというのがあるわけでございまして、これが裁判になりまして、そういう建築を取り締らぬのはけしからんというので、平沼市長も訴えられて訴訟を起されておる事態もあるわけであります。ところが現在では、どうにもそれはしようがない。少くとも建築基準法では、制限がないのであります。今回これらが、金属のつち打ち加工、プレス、裁断、そういうものが、住居地域内において新しく制限される。それから商業地域内のドラムカンの洗浄とか再生、これらも横浜市内で、騒音関係で問題になった例もあるわけでございます。これらも、今回新しく帆走されておるようでございます。  一方、たとえばガソリンスタンドとか、ドライクリーニング工場などは、最近ガソリンスタンドが、非常に多いのでございますが、これらは、地下ガソリン・タンクを設置いたしまして、相当消防当局も、厳重な試験をしております。そうしますと、ほとんどガソリンスタンド火災の危険は、全国的に見ても、その例がないくらいでございまして、そんなに危険物処理に神経質にならなくてもいいんじゃないか。現に商業地域あたりにおきましては、もうほとんどが許可されておる。ところが公聴会をいたしますと、むしろ反対が、やはり相当ありまして、中には、ガソリンスタンドがふえ過ぎまして、同業者からの反対もあるといったようなことも見られるわけでございまして、これらは、つまり設備さえ十分にすれば、災害の危険は、もうほとんどなくなるわけでございますから、こういうものは、もう制限から少くとも商業地域制限からは、はずしてもいいんじゃないかと、こういうふうに思うわけでございます。  むしろ別に取り締るならば、交通信号等のある、ゴー・ストップのある近くは、交通上の妨害になるというようなことで別の方面から制限する方が正しいのではないかと思うわけでございます。  またドライクリーニングなんかも、なるほど一部使用する洗剤によっては、危険の場合もございますが、これも作業場耐火構造にするというようなことをすれば、住居地域はともかくとして、商業地域ドライクリーニング制限するのは過酷ではないか、そういう場合には、木造ではいけないけれども、作業場耐火構造にすればいいといったような方法で認めていく、許可の対象からはずすということも、合理的ではないかと思うわけでございますが、これらは、詳細は政令に譲られておるようでありますが、法律改正案に考慮されておるということは、けっこうなことだと思うわけであります。  また、ある塗料の焼きつけとか、あるいは加熱乾燥、それにはアクロレインという有毒の、有害のガスが発生して、商業地域内では禁ぜられておるようでございますが、最近は、赤外線乾燥なんかをするようになりまして、これらは、対象からはずしてもいいと、われわれかねがね思っておりましたが、今回、そういうような措置がとられておりますことは、一歩合理化されたものと思っておるわけでございます。  また、この用途地域に関連いたしまして、特別用途地域といって、今回規定されておりますが、これは、たとえば川口市のごときは、ほとんど鋳物工場で成り立っておるような次第であります。現在工業地域とかということになりますと、ただ鋳物工場があるために、工業地域にするというようなことになってはまずい点もあるわけでございます。これらの特殊な産業で成り立っておる市につきましては、特別な用途地域性も考えてもいいのじゃないか。これは地方自治の精神からいっても、そういうことはあり得ると考えなければならないと思っておるのでありまして、そういう制度が立てられましたことは、地方公共団体の側からいえば、それだけ地方自治の推進ということになるわけでございますから、これを政府の指導のもとに適切に行うなれば、いい制度だと思っておるわけでございます。  それから次は、建築物の高さと空地規定でございますが、正直に言って、今回の改正案は、まだ根本的な解決をされておらない点があるわけでございます。いわば空地につきましても、高さの制限についても、若干の緩和はされております。この高さの問題、空地の問題は、まだ今回の改正では十分——非常にむずかしい問題で無理からぬ点もございますが——検討されておらない。これは高さとか空地規定は、実はアメリカビルディング構造には規定されておりません。アメリカビルディング構造は、大体耐震の問題、耐風、それから防火、つまり災害防止と衛生的な問題が主でございますが、荷さだとか空地では、アメリカでは都市計画に基きました地域条例、すなわちゾーニング・オーディナンスで規定されておるわけでございます。これは、建築基準法の第一条に言う「国民の生命、健康及び財産の保護」というのは、アメリカビルディング構造には、そういうことがうたってありますけれども、都市計画といいますと、もう少し高度の文化の問題でございます。高さがどれだけあるから、地震に危ないだろうとか、どれだけ空地があるから、健康が保持できるのだというような問題を離れまして、もう少し高度の都市計画からの規定でございます。この問題は、なかなかむずかしい問題でございまして、今回、十分解決されておりませんが、一部、若干緩和されておりまして、地方によっては、空地制限が、横浜市内の一部にもございますが、少しきつ過ぎるという面も、広い市街地の一部にはございます。そういう場合の緩和には、役立つわけでございますが、反面におきまして、郊外地におきましては、果して今のような制限でいいかどうかという点が問題があるわけでございます。時間の関係で、詳細は申し上げませんが、今後の研究問題だと思います。  第五番目は、違反是正措置でございますが、第九条の規定に、違反建築についての緊急必要のある場合には、聴聞等手続を経ないで工事の停止を命ずることができる。  それから罰則、第九十八条に、現行法罰金刑に加えて六カ月以下の懲役も課することができる。これは、まあ違反是正措置としては、地方公共団体立場といたしましては、賛意を表するものでございます。  次は、建築手続に関する規定整備でございますが、このうち相当国民生活に、建築手続きする方に関係もあり、地方公共団体にいたしましても、最も深い関心を持っておりますものの一つは、この手数料についてでございます。横浜市の、実例を申し上げますと、横浜が、神奈川県から行政事務の委譲を受けましたのは、昭和二十六年の秋でございます。発足当初の昭和二十七年度の予算を見てみますと、手数料収入が六百万円、支出が七百万円でございまして、うち六百万円が人件費、百万円が事務費でございます。市費持ち出しはわずか百万円でございます。ところが三十二年の予算を見てみますと、手数料収入は約八百万円、それから支出人件費が千五百万円、約二倍になっております。これはベース・アツプ——約二倍くらいのべース・アップになっております。それと、職員の増加でございます。事務費が三百万、差し引きいたしまして市費持ち出しが一千万、これは地方行政事務をただ手数料だけでまかなうというのは、私はいけないと思っております。少くとも手数料と同額くらいは、地方公共団体は経費を支出すべきであるという点から考えますと、これはやはり、この程度手数料増額は、地方公共団体立場からしましては、お願いいたしたいというふうに思っております。  ただ、ここにわれわれ注意しなければいけませんことは、第七条の規定竣工検査を、建物がでぎますと、担当する建築主事は、竣工検査をしなければならない。えてして人不足によりまして、竣工検査を省略するような場合がありますと、これは手数料は、確認手数料だけでございますけれども、やはり市民サービスとして、こういうことを今回の手数料増額とともに、一そう励行しなければならないし、また建設省あたりからも、各地方公共団体手数料値上げと同時に、確認事務はもちろん、現場をよく検査をすること、そうしてあとから建物を直すというようなことのないように、途中においても、よく十分に指導するというようなことを、あわせて考えなければいけないのではないかと思うわけでございます。  以上が大体の要項についての意見でございますが、なお、今後相当の面について、まだ大幅な改正検討せられなければならない。先ほど、一例として高さの問題、空地の問題を申し上げましたが、私が最も最近関心を持っておりますのは、郊外地宅地開発の問題でございます。  これは、最近のある週刊雑誌に載っておりましたが、宅地分譲業者、よく新聞なんかで広告しておりますが、郊外地開発をいたしますときには、将来、ふたたびそれを都市計画的にも、あるいは区画整理だとか、公けの金を投じて改良しなくてもいいだけの自信を持って開発しなければいけないわけでございますが、この宅地分譲業者の現状を見ますと、また一般的に、宅地分譲業者開発ばかりではございません。一般郊外地開発状況を見ますと、非常に遺憾の点があるわけでございまして、アメリカでは、連邦政府住宅庁が各地方公共団体にサプディビジョン・オーディナンス、これは私なりに、これを上地分譲条例と訳しておりますが、こういう条例地方公共団体が作ることを、連邦政府住宅庁が、つまり政府が勧告しております。これは、宅地分譲する場合には、将来の都市計画なり、地方公共団体の施設に適合しないものは、分譲を慰めない、開発を認めないというようなことが主たる内容でございますが、こういうような問題を、これは建築基準法対象にすべきか、別途の法律を必要とするかいなかは別といたしまして、一つの大きな問題点でございます。現在私の聞き及ぶところによりますと、宅地分譲業者は、建設省所管法律といたしましては、宅地建物取引業法があります。ところが郊外地農地は、農地法でできませんから、山林をおもに開発するわけでございます。山林として売るのであって、宅地として売るのではないから、宅地建物取引業法対象にならないというようなことも聞いております。これらの問題は、今後の研究問題の大きな問題だと思うわけでございます。  その他今後の問題も相当ございますけれども、一応、時間も超過いたしましたので、この程度で終ります。
  5. 早川愼一

    委員長早川愼一君) ありがとうございました。  参考人に対する質疑は後刻一括してお願いしたいと思います。もうしばらくお待ち願います。  次は、日本建築家協会理事大須賀矢薙君にお願いいたします。
  6. 大須賀矢薙

    参考人大須賀矢薙君) 私、日本建築家協会常務理事大須賀でございます。  本日、本委員会出席して意見を述べることができます機会をお与え下さいましたことに敬意を表します。  私ども、一般民間設計者建築家の集りであります協会として、今度の改正についても、いろいろ研究いたしましたところがありますが、われわれの一番申し上げたいことは、現在の社会一般の情勢及び建築技術の進歩し、発展しましたということに関係しまして、基準法内容が、だんだん改善されなければならぬ時期にきているということは、これはどなたもお認めになっていることだと思いますが、この改訂に当りましては、末梢的な改正は避けて、民間学識経験者等を中核として調査会に類するものを設けまして、都市計画建築技術等の面にわたり、十分な検討をしたのちに、根本的にこれを改革して、改正していただきたいというきわめて強い希望がございます。これは、全般的の問題でございますが、今回行われようとしています基準法改正に対しまして、さしあたり、次のようなことを考慮していただきたいと思います。  それは、大体二つに分けまして、一つは、全面的に改正するということと、もう一つは、今度の改訂内容についての希望でございます。  全面的の改正の問題は、大体二つございますが、その一つは、建築基準法都市計画法との間の関係を合理的に調整していくということ、これは、建築基準法は、現代都市として、合理的に発達していくことを計画する都市計画との関連の中におきまして、現在、都市計画法の方にも、いろいろ実情に合わないものもございましょうし、建築基準法の方にも、もちろんあるわけでありますが、これを基準法都市計画法と両方を並行して改正をやっていくということが望ましいと考えております。  それから第三は、法の簡素化建築士判断範囲を拡張するということ、及び建築審議会公聴会等を、もっと活発に運営していくということであります。  設計の水準も、だんだん向上して参りましたし、建築士法の確立もされておりますので、法による規制というものは、立法の基本的な意思を表わすことを重点にいたしまして、きわめて簡略にしたい。そうしまして、建築士としての判断範囲を広く認める。そして、技術の進歩だの、時代の移り変り等によって変っていきますことに対処するためには、法は、ごく簡略にしておいて、あと政令地方条例にこれをまかすという方法をとっていただきたいということであります。そして公けの決定を必要とするような場合には、公聴会審議会、専門家等の意見を十分聞かれて、民主的に、早くこれを結論を出していただきたい。  大体、これが全面的の改訂の分でありますが、内容的の改訂の項につきましては、すでに今度の改訂で、織り込まれている点もございますが、全然方向が違うものも、中にはございます。  まず、内容的に改正希望するものは、大体まとめまして、五つございますが、一番の大きな問題は、建築物の面積と高さの制限を、全面的に容積の規制に切りかえるということであります。都心の、非常に交通の混雑しているのを緩和し、また非常に小さい敷地の統合によっての計画が合理化するような取扱いをするという観点からでありますが、こういう観点から処理しますのに、非常に有利であります。プレミアム法——まあここで、プレミアム法と申しましたが、プレミアム法——の精神のものを立法化していくということが望ましいと思います。それを希望するのであります。プレミアムと申しますと、これはアメリカの、ニューヨークだのフィラデルフィアで市街地日本の、今、現状の市街地で困ったようなことを経験いたしました結果、編み出されたところの、プレミアム法と申しましたが、プレミアム・アクトではありませんで、こういうやり方というような意味で申し上げたのですが、そのプレミアム法は、ある一定の敷地がありまして、その敷地に建てられる面積、その面積は、公共的なパーキングだとか、あるいは歩道とかいうようなものに利用することができるというスペースを残すということにおいて、それだけのものを、上へ継ぎ足させるということであります。従いまして、高さの制限、面積の制限が、ここで根本的に変るのであります。  例をあげて申しますと、たとえば干平米の敷地がありまして、現在で例をあげますと、それの八〇%建築面積が許されている場合に、そうしますと八百平米の建築面積を持てるわけでありますが、その場合に、今申しましたような方向に使うということにおいて、五百平米の建築をしたという場合に、三百平米が残るわけであります。この三百平米をパーキングだとか、あるいは歩道とか、そういった公共的な、公用的なものに利用していく、その三百平米に建てられるだけの面積を、五百平米の建物を建てたその上に載せてもよろしい、こういう意味であります。そうしてなおかつ、プレミアムと申しましたのは、その上にアルファ、若干の高さをまだ載せてもよろしいというような意味でございます。  こういうことによりまして、市街地交通緩和とかというようなものが、非常に問題になっております駐電場等と同時に、解決されていくもとになるのじゃないかと思われるのであります。  それから現行法の建蔽率とか高さとかというものの制限が非常に行き詰まって、方々で矛盾を起しているというようなことは、よくあることでありますが、広い敷地が、狭い道路にはさまれているために、大へん不経済な、建築的に非能率なものができなければならないというようなことが、たびたび起っているわけであります。こういうことによって、交通緩和をするというようなこと、同時に、特に都心でありますが、都心に、小さい敷地があった場合に、これを一緒にし、数敷地、数十敷地一つにして、建物を建てていくということの方法として、やはりこのプレミアム法が非常に有効じゃないかと、こう考える次第であります。  その次に、居室の採光面積、換気面積と居室の床面積との関係でありますが、天然採光とか、換気というものは、特に、そういうものを必要とする住宅とか、学校とか、診療所、寄宿舎、下宿というようなものに限りまして、その他のものに対しては、今、現在でも地下建築物で認められておりますように、人工的の照明、換気ということを厳重にするということで、これを地上にでも認めるということであります。地下で認めたのが、地上で認められないということも、はなはだおかしなことでありますが、特に窓を必要としないのじゃなしに、窓があっては、都合が悪いむしろ都合が悪いような建物がたくさん出てきているわけであります。百貨店とか工場とか研究所、講堂というようなものが、よくこういう問題にぶつかっておるわけでありますが、これは、もちろん防火とかあるいは避難とか衛生とかいうような設備の面は、十分に厳にしていって、地上でも、これを認めてやるということが、実際に合ったものじゃないかと思います。これは、今度の改訂で、これと同じような処置のできるようなふうに取り扱ってはあるようでありますが、はっきりこれをつけ加えていただくということが望ましいと思います。  第三番は、合理的な都市計画の観点から、地域性の設定と、建物の地域制限及び道路、それから計画道路の中の建物に対することを検討して是正してもらいたいということであります。  今度の改正にも出ておりますが、簡易耐火構造というものを、耐火構造防火構造の間に位されて取扱われて、一般的の木造から、だんだん簡易耐火の方向に持っていって、都市を不燃化に持っていくという御趣旨は、これは非常にけっこうなことだと思います。  ただ、この計画路線、施行年度の未定であるとか、あるいは非常に先へ行ってのものとか、長い間かかるというようなものの場所に建てるものでありますが、これは防火地域の場合でございますが、現在は、二階以上はいかんとかいろいろな制限がございます。これは、防火的なあるいは耐火的な建物を建てても、将来除くところと、将来残存させておく部分の接続させるところの取扱い方を考えたならば、別に不自由なく解決できるのじゃないか、従いまして二階であるとか、あるいは鉄骨であるとか、ブロックでなければいけないというようなことではない、ちゃんとした耐火構造のものを建てても、あるいは三階でも四階でもよろしいということにされることを希望するのであります。  それから第四は、許可確認の迅速化と建築行政業務の簡素化ということであります。  まず消防法とか、その他建築関係しました法則法規等を一元化するということでありますが、現在の状態でありますと、非常に複雑でありまして、この許可確認をとるまでに相当長期な時間にわたることになります。これが実情でありますが、これを今申しましたように一元化したならば、もっと、これが期間的に短かくすることができて、建物を建てる方の側、建築主の側からいいましても非常に利するところが多いと思います。  それからもう一つ、各官庁に建築に関してのいろいろな基準がございますが、これを統一していただきたいということであります。同じような問題に対して、官庁が違うために、その基準が、ごくわずか辿ったりしているというようなことがあるわけでありますが、そういうような点は、これを統一していただきたいということです。  それからもう一つ、許可、確認手続のことでありますが、相当大きな建物になりますと、現在要求されています許可申請、確認申請の書類を作りますのは、膨大なものでありまして、相当長期間かかるわけであります。これは建築主の方の側から申しますと、その問、手はつけられない。六カ月も、長いのは一年もかからなければ、申請件数がなかなか完備しないことがありますが、それを、そういうことを除くと同時に、これを見られる方の側の官庁も、非常に手数が省けるだろうと思いますが、申請に要する一類というものは、審査に必要な最小限度の設計書類にしていただいて、それによって、認可の見通しがはっきりつけられるようにして、細部の設計は、その後にするということにして、必要によっては、分割的に申請することができるような形にしていただきたい。といいますことは、最初に、大体の計画をもちまして、大略の計画をもちまして、審査を願う、これでよろしいということになりましてから、初めてほんとうの設計にかかっていくと、そして全部のものがまとまる前に、基礎なら基礎、あるいは構造体なら構造体というようなものが、切り離して考えることができるものは切り離して申請して、その許可をもらうということにしていただきたいということであります。  それから最後に、用語の定義を明確にしていただきたいということです。これは、特殊建築物というものの中に、鉄道とか地下鉄の駅とかいうようなものが含まれていないように見受けられますが、これは、当然特殊建築物として取り扱っていただかなければいけないんじゃないかということです。  それから法規、まあ法の中には、そういうことは比較的見受けられませんようですが、政令その他では、同じようなことを意味するのに違う言葉が使ってあるということがありますですが、これはぜひ、どちらかに、きちっと統一していただきたい。  それからこれはごく小さいことになりますが、構造の方で主要構造部ということが出ておりますが、これは今度の改正で、その意味が取り上げられて処理されておるようであります。主要構造部と小ばりとの関係でございますが、これを改訂のものには処理されておるようでございます。  それから最後に建築物と工作物の区分を、もっと明確にしていただきたいということであります。  それから、これは今度の改正でも、実施できるようにはなったようでありますが——実際には、現在でも行われるはずになっておるものが行われていなかったようでありますが、特に特殊建築物の定期的の検査、これは、保守監理の面に、非常に関係あることでありますが、これをきちっとやって、報告をとるならとる、これには、非常に手数のかかることでありますから、われわれ建築士をこれに活用していただけたら、これは不可能なことではないのじゃないか。  それから、ごく一般的の問題に返りますが、われわれは水準法、建築士法というような、はらばらな形でなく、これを建築法という一つの法の中に入れまして、今の水準法に合うものは、物法の方にもっていきまして、今の建築士法に当るものを人法という形にして、現存の建築士法というものの性格を、資格法であるか、業務法であるか、ちょっと判断しにくいような点をはっきりさして、人法というものを確立してもらいたいということ、そのほかこまかい点もございますが、これは、時間がありましたら後ほど申し上げさしていただきます。
  7. 早川愼一

    委員長早川愼一君) ありがとうございました。  次は、清水建設専務の吉川清一君。
  8. 吉川清一

    参考人(吉川清一君) 私は、清水建設の専務であります吉川清一であります。  ただいままでの他の参考人のお方のお話、まことに専門でございますが、私も、建築の学問はいたしましたけれども、請負業、建設業の実際実務に携わりまして、すでに三十三年、こういう各一項目につきましての意見を申し上げますことは専門家でございませんので、三十三年にわたりまして、長年改正されました物法から始まって、二十五年に制定されました基準法を当てはめられた建物を建って参りましたものの立場と申しますか、建てておりますときに、周辺の関係をする市民、ないしはこれを建てていきます施主、この間におきまして、トラブルをだいぶ感じて参ったわけであります。その中で、現在改正、一部なさいます法律案を拝見いたして参りますと、まことに、一つ一つ思い当る節がございます。これらを一つ一つ説明申し上げますことは、もう常識論でありまして、皆様先刻御承知の通りでありまするから、概括的なことを先に四、五分申し上げさしていただきまして、特に気づきの点だけを補足さしていただきたいと思います。  法律改正案の出ました御趣旨にございますように、結局、目的はは、法は最低の水準を認めて、一般大衆と申しますか、国民の生命やら、健康やら、あるいは財産やらの保護をはかるという御趣旨であります。なお公共の福祉も増進するということを目的として、この改正が起きたと承知するわけであります。  そういう観点がら申し上げますと、まことに、ただ二部の改正にとどまる。もっと諸般設備の発達、あるいは人口密度の集中、あるいは交通の問題などを勘案いたしますと、これを建築的な用語で基準法の項目に従うと、そこに、現わされているようなことになりまするけれども、一番、何と申しても大事なことは、何と申しますか、ある特定の人だけが、非常にこの規則があるために、合理的であって、しかも利得をしている、しかしそうでない資力のない、そういう境遇にない方が、特定の個人の迷惑をこうむるという問題が、あまり解決されていないんじゃないか。そういう問題によって、いろいろのトラブルが、最近非常に多いのであります。  まあ早く申しますと、都心に大きなビルができる。まあ、これは商業地域だから、みな覚悟はしておったとは申しながら、一歩住宅地域に近づいて参りますと、昨今ごらんの通り、旧、一流の住宅地と申されました青山南町一帯、あるいは麹町一帯、そういう所は、まだ大きな家がありまするが、目白とか、目黒とか、あの周辺、市川方面に行きましても、零細な家屋、住宅が櫛比しているわけであります。たまたまそこに、大きな土地でもありますと、いきなり四階建から、もうひどいのは、五階雄が思う存分建てられる。そうすると、一ぺんに十軒院、十五軒が、日陰に入ってしまう。こういう問題で——私ども、注文を受けて建てる立場から、もう注文をいただけば、やむを得ずスタートはいたしまするが、その日除になる方からのいろんな苦情を伺いますと、板ばさみになる。ある場合には、お願いをして、施主から、一、二階を削って、五階の物は、三階にしていただいたり、ないしは六階の物を四階にしていただいたり、たまたま施主の方に理解がありますれば、そういう御近所と申しますか、公共の福祉も考えるという企業者もございます。中には、いやもう、何が何でも建ててしまう。これは合理的である。建ててしまうと、そのあとの結果としましては、もう日がかげった場所に、十軒前後の小住宅がおおわれてしまう。こういうようなことは、何とかならぬものかと脅えているわけであります。  申しますならば、純粋の住宅地域内における高層建築は、現在二十メートルでございましたかになっているそうでありまするが、せめて、まあ昔でも、そう高い建物は、なくも済んだのでありますから、暫定的にでも、高さは三階建にするとか、あるいは日陰をあまり作らぬとか、何か工夫が考えられないかと、かように考えているのであります。まあ、そういう問題。  また先ほど出ましたように、災害防火、特に防火の点で、災害という項目から、窓の少い、あるいは窓のない建物、あるいは逆に、窓だらけの建物、これは窓だらけのことは書いてございませんけれども、何か、どっちにしても、建築が国際的になりましたためか、地震のあります日本も、地震のない外国も、あるいは防火設備の完備している外国も、それほど完備してない日本も、建築の意匠というものが、どんどん国際的になりまして、あるいは窓がないといえば、まるで窓がない。あるいは窓があると申せば、窓だらけの、ガラスだらけであるというようなことも、現在の一部改正ということに、さらにつけ加えて、あまりにガラスばかりであった場合には、どういうことが予想されるだろうか。防火の点についても、あまり賛成もできないように思うし、まして地震のときは、大きな構造体は全部耐震的でありますから、建物は微動だもせぬでありましょうけれども、大正十二年のときの例によりますと、当時ありました第一相互の前の星製薬の建物におりました私どもの同輩の話では、窓のガラスが内外にはぜて飛んだそうであります。建物自体は微動だもいたしませんけれども、商機建築のガラス張りの建物がゆれて、これが割れて上からも落ちる、通行人はけがをする、こういう状態が予想されますし、あるいはガラスというものは、御案内の通り非常に火に弱いものです。昭和二十年の東京の爆撃のときにたまたまおりますと、ビルディングに向けて炎がいぎますと、窓からガラスがどんどん割れて火が通る。また階下から火が出ましても、階上へ外の窓を伝って入ることもいとやすいということもありますので、防火に関する規定、そこにお書きいただいた改正案はまことにごもっともなことでありますので、この際はこれにとどめても、どうかこの次の機会、常に新しい材料、新しい意匠の進歩もいたしますことでありまするから、次の機会に常にこういう問題をお取り上げいただいて、ひとり防火だけでなしに、耐震の問題も同様に、国民の健康を保護するという意味からお取り上げをいただきたいと思うのであります。また、用途地域は、先ほど申し上げました通りでございまして、いろいろな産業がどんどん発達し、それに対する災害の除去が構ぜられて参りますれば、そういう事業がはずされていくのは当然でございます。また予想もできない新しいものがふえてくることも考えられまするので、将来ともこういう問題はお取り上げいただき、研究を願う委員会なりを御設置願うことが非常によろしいかと思うのであります。  これは蛇足でございまするが、違反是正措置をお書きになられました意味は、おそらく戦後、不法占拠による都市計画の実施不円滑ということから特にお取り上げになったのではないかと思うのでありますが、こういう明らかに悪質なる違反、あるいは不法占拠の上に無免許の建物を建てる、あるいはまるきり違反の建物を、がんとして、何度勧告をされても建てていくという、きわめて明白な悪質なものは、大いに、この法を設置して、停止命令なりあるいは体刑なりはけっこうでありまするが、ただ、こういう問題が、どの審査を経ずに体刑になりますと、正直申して、請負会社はほとんど全部ひっくくられるのではないかと実は思うのであります。極端な例を申すと、最近急工事が非常に多くなり、施主の都合もありますが、また国家の要請もありますし、公共団体の要請もありまして、諸手続が全部完了して工事にかかる例が多いのでありますが、そうでない了解事項で、黙認といいますか、了解事項でかかるものがありますから、手続自体がまだおくれている、役所に出てない、こういうケースも非常にふえて参りました。未手続建物をやっているからといって、いきなりぶち込まれますと、建設業者はいなくなってしまうおそれもありますので、これはどうかこの法を実施なさいますときの体刑をどうするかということについては、くれぐれも実情に即したお取扱いを希望する次第であります。  以上、非常に専門でなくて、参考人の責任が果せなかったかも存じませんが、長年こういう規則のもとに作られた設計によって建物をやって参りました経験者といたしまして、近隣との問題、特に最近トラブルのふえております近隣との問題、工事を行いますための騒音、工事を完成するための近隣に対する光線、その他日が当らなくなるとかいう近隣との問題、こういう問題を痛切に感じておりまするので、どうか実情に即して今後とも御審議をしていただきたいと、かように考えます。
  9. 早川愼一

    委員長早川愼一君) ありがとうございました。  それでは、次に日本大学助教授の市川清志君にお願いします。
  10. 市川清志

    参考人(市川清志君) 私は、日本大学で都市計画及び建築法規という講座に属しております市川清志でございます。  今度の建築基準法の一部を改正する法律案、全般的には、学会でも専門委員会がございまして、そこでの検討を経ておりますことでもありますし、私もこの改正案に賛成でございます。けれども、部分的にはいろいろと意見がございますので、それについて若干意見を述べさしていただきたいと思います。  たとえば、初めの防火に関する規定整備、ある面では一見緩和されたようではありますけれども、実質的には、現在よりも防火に関する条件というものはよくなるものというふうに考えられます。御承知のように、日本の大部分の市街地建物というものは木と紙で作られております。日本は、ヨーロッパやアメリカに比べまして、火災の出火の件数というものは非常に少い。ところが、一件当りの被害額というものは、アメリカあたりに比べても、非常に日本は高い。そういうことから考え合せますと、こういう防火に関する規定というものは、ふだんは何でもなくても、一朝事があったときの被害ということを考えますと、ただでさえ資源の少い日本のことでございますから、むしろ厳に過ぎるというふうに思われるくらいの程度にまで引き上げるということが望ましいので、そういう意味合いにおいては、建築基準法実施以来八年間の実績にかんがみて、あまり高い水準の規定のために、防火地域あるいは準防火地域というようなものの構造制限をする区域が日本全体では非常に少い、都市の西横に比べて非常に少いという実情から考えまして、少し規定緩和することによって、むしろ地域を拡大しようという今回の意図に対しては全面的に賛意を表するものでございます。  それから次の道路あるいは用途地域建築物の高さと空地、こういう一連のものは、いずれも都市計画と密接な関係にあるものでして、特に道路関係というものは、今もお話し申し上げましたように、大体こういう道路幅の狭いというような所は地方中小都市に多いわけでございまして、そういう所は、家屋も密集しておりますし、しかも、その家屋というものは、ほとんどが木造建物といってよろしいと思います。それで、建築基準法実施以来、むしろこの道路幅員ということが、足物を建てるということの一つのブレーキになっていたということが実情ではないか。それを緩和するということは、敷地を遊ばしておくとか、あるいは増改築に非常に支障を来たすということが一方にあるとは思いまするが、それと同時に、緩和するからには、先ほどのお話にもありましたように、都市計画的に、特に火災の際の消防あるいは避難ということの措置のために、適当な間隔で消防道路をつけるとか、あるいは個々の建物自体を少くとも準防火地域内における建物構造のようにレベルを引き上げる方向へ指導するとか、何らかの反対給付といいますか、一方で緩和するかわりには一方でそれを予防できるような措置をあわせて講じられるというようなことが必要だというふうに考える。  それから用途地域、それから形体、建物の高さと空地、これは先ほどからたびたびお話の出ておりますように、元来その建物の形体といいますか、容積といいますか、敷地に対する割合、これは都市内での位置というものと関連すべきものが一方にあり、また一方では建物個々の用途について考えるべきであって、ある用途地域をきめたと、現行のようにたとえば商業地域であれは、そこに建つものがたとい住宅であろうと工場であろうと、応じような建蔽率が認められるというようなやり方自体が無理があるので、その無理をいかにしてカバーするかということがこの今回の改正案ではないかというふうに考えられるわけです。ですから、根本的には容積地域性と用途地域性というものを分離して別々に書ける。そうすれば、先ほどからいろいろお話が出ている、ことにこのあとに五十五条、あるいは五十八条というようなところに出てくる今度の緩和というような問題も、容積地域というような書き方をすれば、そういう問題もそうむずかしくなく解決がつくではないかというふうに考えるわけでございます。で、用途地域内での建築制限のこまかいことというのは、これはまだいろいろ研究の余地があると思います。たとえば商業地域というものを一本にしてしまって、都心部の、あるいは副都心の商業地域あるいは住宅地内に出てきそうないわゆる店舗地区といいますか、もう少し規模の小さい商業地域も、一連の商業地域という一つの地域性の中で建築制限をしてしまうというようなことでのいろいろな無理どいうようなこともあると思いますが、これにはまだまだわれわれ自体としても、もう少し研究をしなくちゃいけないという問題もございますので、今回の改正案については、これ以上に特別の意見を申し上げる資料がございません。  それで、今建築の違反の中でといいますか、建築の水準の中で一番守られにくい、また、あとから調べにくいというのが、この建築物敷地に対する空地の割合といいますか、これは確認申請当時の敷地の状態と、それ以後の建築が建ってしまって実際に使われ出してから何年かたってしまったあととの状態というものが非常に一致しにくい。早い話が、初めは非常に敷地が大きかった。で、確認申請を受けたときには、十分空地があった。ところが資金その他のいろいろな事情で土地を分割する。細分化されてしまえば、その新しい土地の所有者に対して従前のことは無関係になりますから、またその空地に対してというようなことになってしまって、空地はどんどん減っていく一方なんです。ですから、こういうことに対しては、これは現在の建築行政担当の事務を取り扱っておられる方々の人数ではとてもできないこととは思いますが、土地の構図を用意することによって、その建物に使った土地というものをチェックしてしまう。そうしてその後にそういうふうに使った場合には、土地の分割はかまわないけれども、あと建築は認めないというような方向へ持っていくような措置を講ずるなり何なりして、建蔽率というものをしっかり守りやすいようにすることが一つのことだ。これは先ほどからお話がありましたが、建築基準法という個々の建物に対する問題ではなくて、都市全体としての地域的な社会生活を営むための問題としての空地が必要なんであって、ですから、そういう点での配慮ということがもう少し講ぜられるような方法を、今後の改正の心期において考えていただきたい。  それから、今回の改正案の中にはないのですが、現行法では八十六条で、総合的設計による一団地の建策物に対する取扱いというようなことがございますが、これはあくまでも一団地の土地についてでありまして、道路をまたがった幾つかの敷地と、道路によって区切られている幾つかの敷地というものに対する措置は、これではどうにもできない。ところが、最近のように都市の再開発というようなことで、特に都心部の問題ということになってきては、幾つかの街衢を総合的に設計して、言いかえますと道路の上にある程度のクリアランスを残した、その上はやはり建築物として使用したいというような場合も出てくるわけでございます。これはもう自動車交通が非常に輻湊して参りまして、道路を広げたいにも敷地がないと、下をどかせるからには、その反対給付として上へ建てさせて上げたいというような場合が出てくると思う。それからそういうようなこと、いわゆるスーパー・ブロックというようなことについても、特定行政庁の許可というようなことで、そういう道が開かれるような改正案を盛り込んでいただきたい。  あと違反是正措置の強化とか、あるいは手続等の規定に関する整備、こういうふうなことは、私あまり専門でございませんで、よくわかりませんから、特別に意見を申し述べるということはございませんが、建築基準法が悪法だといわれる一つは、確認申請のときからあとの問題ではないかというふうに考えられる節が非常に多いわけでございます。それは行政事務を担当する技術者の数が非常に少いのではないか。ですから、先ほど内藤さんのお話にもございましたように、竣工検査にも時とすると行われない場合も出てくる。竣工検査に行かれなかったものが、それからあとの維持保全ということがどうであるかというようなことは、できないのは当然だと思う。ですから行政事務担当者の数をふやすということを、法律的に何らかの形で保障されるような方途を講ぜられることが一つと、もしそれができなければ、今度の法律で、改正案の中にありますように、そういう建築士その他の人を使ってのインスペクト・システムといいますか、そういうことがもっと大幅に取り入れられる、それに相当の権限を与えられるというような方向に持っていかれたらいいのではないか、こういうふうに考えます。  非常に時間もないので、私の意見、これで終らしていただきます。
  11. 早川愼一

    委員長早川愼一君) 以上をもって参考人各位の一応の陳述は終りましたが、御質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 田中一

    ○田中一君 内藤さんと大須賀さんに伺いますが、法律はあらゆる法律が基本的な基本法という性格を持って、後に地方的な条件によって政令で決定的な実施をするという形が望ましいのでありますけれども、建築基準法では、相当法律の中にも大幅にこまかい点までも指摘しておるように見受けられるのです。そこで、先ほど大須賀さんは、なるべく基本的なものを書かれて、あと地方的な条例等で実施することが望ましいとか言っておりましたけれども、内藤さんはもともとこの法律を作った人なんだから、そこで方向としては、この基準法を立案する場合にどういうものをねらっておったかということです。今言う通り、あなたは今まで行政官庁というか中央官庁におったけれども、今地方へ行ってみると、いろいろ問題があって、相当政治的な法の活用を善用か悪用か知らぬけれども、やっておるらしいけれども、立案するときにはどういうことをねらっておりましたか。今大須賀さんのような方向にですね、そういうものに対しては、今後どういうふうな方向に向ったらよろしいということに考えているかです。
  13. 内藤亮一

    参考人内藤亮一君) 私が建築基準法制定当時、建設省の担当課長としてこの政府案としての立案の一人であったわけでございますが、当時から特に設計監理協会建築士事務所の方もあまりこまかく書かないで、良識ある建築家にまかせようという声があったわけです。そのときわれわれが考えましたのは、一つアメリカ建築法規を——当時駐留軍に占領されておったのでありまして、皆英文官報にして向うに提出して、アプルーブがなければ国会へ提出できなかったのであります。そこでアメリカの法規なんかを大いに参考にしたのでありますが、アメリカの法規も相当こまかく書いておるわけであります。ただ非常に例外が多い、ただエグゼプションとして非常に例外が多い。除外建築物として、ただし行政官庁必要なしと認められるときとか、支障ないと認められるときは知事の一方的解釈でどんどんできたのであります。アメリカ法律はいろいろな除外例もありますけれども、一々どういう場合にと詳しく条件を書いて、ただし書きを適用しているわけであります。やはりアメリカ相当こまかく規定をしております。また当時法制局で——当時は法制意見長官でしたかな、意見局長官としても、今日の法制局で御審議いただくと、やはり政令にまかせるということは、条例ならともかく、政令にまかせるということは、それだけ公務員にまかしてしまうことで、やはり法律である程度書かなければいかぬというので、当時政府の原案は相当大幅に、もう少し法律に、こういうことは法律事項だということで相当法律に引き上げられたことがあります。たとえば天井の高さとか床の高さということはもう技術的でいいじゃないかと思いましても、やはり当時の法制局の意見では、法律で詳しく書け、書いた方がいいと、こういう意見であったのであります。今日でもある程度、現在程度のことがやはり法律で書かれなければならないというふうに思っております。その点は遺憾ながら大須賀参考人とはちょっと意見が違うのでございます。  そこで、しからば条例の問題でございますが、現行法でも法律の四十条と四十一条に、四十条では、地方公共団体がその土地の特殊な状況によって、この法律規定の内答をもってしてもなおかつ安全だとか、衛生確保が期せられないというときはプラスすることもできます。それから四十一条では、ある地方では少しこの制限がきつ過ぎるということは条例をもって緩和することもできるわけであります。  私が当時考えましたのは、一つのスタンダードである基準法でもって全国一律にやるには、なかなか困難な点もあるから、相当一定の範囲内において地方公共団体でプラス、マイナスしてもいいじゃないかということを考えたわけでございます。アメリカは各市で、御承知のように自由な立場地方自治からビルディング・コードを作っておるわけであります。各都市まちまちでございます。わが国では市街地建築物法時代から中央集権的な法律になっている。まあどちらがいいかということは問題でございまして、アメリカでもやはり最近あまり各都市がまちまちでありますから、なるべくこれを統一したいという運動も起っておるわけでありまして、まあそこの両方の中庸をとらなければいけないということで、四十条と四十一条が準備されているわけでございますが、ただ残念なことに、四十条と四十一条は第三章以下、つまり道路用途地域、それから高さとか空地という都市計画的な面ではプラス、マイナスができないのであります。それでアメリカは、ビルディング・コードは——日本法律ではまあ一章、ニ章、せいぜい三章まで、道路までのことは書いてございますが、ほんとうの意味の都市計画的な面のことは、先ほど申し上げましたように、ゾーニング・オーディナンスでやっている。これはもう完全にアメリカでは地方自治であります。ある都市ではもう少し建物を立体化しようという場合も起りましょうし、ある非常にいい住宅都市ではそんなに高くては困る。つまり先ほど清水建設の吉川さんもおっしゃいましたように、アメリカでやっているように、もういい住宅地域、つまり一戸建、二戸建の住宅地域ではアパート建築なんかを制限している地域もあるのでございます。そういうようなことをやはりこれはまあ地方条例でできるようにしないと、日本のいい都市の建設というのは、まあ非常にこれは極端な言い方でありますけれども、建築水準法自身がそれを阻害しているのではないかという点がないでもないと思うのであります。そういう点はある程度、まあ今度でも特に用途地域だとか、若干地方条例にまかせるような規定もございますけれども、今後は——まあ今回はこれでやむを得ないと思いますけれども、今後はこういう点はもう少し地方条例にまかしていかないと、ほんとうの日本のいい都市計画はできない。それには第一条が、アメリカのビルディング・コードに書いてある生命、健康、財産、それを確保するための最低の水準と書いてある。それから美観地区だとか、それから非常に快適な住宅地域だとか、それからある場所は非常に高層化しようだとかというような都市計画的な面は、第一条にははっきりと出てこないのであります。承わりますと、建設省でも第一条の改正を、つまり都市計画的な制限もするのだ、ただ実利的な、生命、健康、財産、地震に大丈夫、また火事にも安全といったようなこと以外にもう少し文化国家としての気のきいた都市日本に二つ三つあってもいいじゃないかという点からいいますと、そういうような制限は第一条からは出てこないのであります。ほんとうはこれもまあ改正が期待されるわけでありますが、今回はできなかったのであります。今後の問題として大いに期待するわけであります。
  14. 田中一

    ○田中一君 それからこの防火に関する規定整備、今私たちはもうこの基準法の施行令なんというものは全然読んだこともなくて、ある場合に調べてみるという程度なんです。そこで先ほど四人の方々皆さん言っているように、建築材料の進歩というものは相当なものなんです。そこで基準法の施行令には、たとえば耐火木材ということがあって、そんなものはどこでも作ったことがないのです。ところが基準法には耐火木材というものが書いてあるのです。ところが日本耐火木材を作っているメーカーが一人もないのですよ。にもかかわらず書いてある。そのために一部の耐火木材を持っている者が不当な利益を得ているという場合もあるのです。そこでまた日本の場合は自由な資本主義経済ですから、どんなものを作ろうと自由なんです。そこで建築材料に関する規定と申しますか、これを使えばこうだ、あれを使えばこうだ、というようなことが施行令に数々入った方がいいというお考えか。ただ基本的な不燃村料とか何とか、抽象的なものでそれを示そうとするか、これはいろいろな問題があると思うのです。これは直接に建築材料を販売しているメーカーにいい影響も悪影響もあるわけです。そういうものを示さなければこれはならぬわけですね。だからこうした問題のないうち、防火に関する指示の問題のときに、そういうものを入れた力がいいと思うか、そういうものは避けた方がいいと思うか、その点どうか四人の方に伺いたいと思うのです。四人の方にですよ。
  15. 大須賀矢薙

    参考人大須賀矢薙君) 私最初にちょっと申し上げます。  先ほどお尋ねになりました点でありますが、これは法をできるだけ簡潔にするということを申し上げましたのは、今度、現在われわれが直面しておりますように、法を改定するということはなかなか容易なことではないと思うのです。それで法というものはごく簡潔にして、そう変えなくてもいいような形にしておく。そして時々刻々といったら大げさでありますが、変ります建築技術の向上、水準が高まっていくということ、建築材料の新しいもの、あるいは現在あるものが改良されていって、非常に優秀な性質を帯びてぎたというようなものに対して、そのときどきにすぐ間に合うように、非常にいいものが出ても、これが建築基準法に出てないからこれは使えないのだというようなことのないように、そういうものは政令とか地方条例で取り扱って敏速にそれに合うようにする。これがためには先ほど内藤さんがおっしゃったように、いろいろ弊害もございますと思いますが、その弊害を除くために、官民及び学識経験者、中には一般の方を加えてもけっこうだと思いますが、調査機関を、調査会のようなものをこしらえまして、そういう法規を作る前に十分検討していただいて、その上でこれを作るということをしていただきたいと思う。  それから地方条例にまかせると、非常に乱雑になってひどいものになりはしないかという懸念もあるように伺いましたが、これはそういうことをされないように本案に規定しておけば差しつかえないのじゃないか。特に都市計画法では各地方々々にも地方委員会があるようでありますが、そういうものと向い合った形で、今の建築の方に関係した法案審議されていってできていく、という形が望ましいと思うのです。  それから後ほどの御質問に対してはほかの方々あとでいたします。
  16. 市川清志

    参考人(市川清志君) 私の意見は、建築技術というもの、あるいは材料の生産というようなものは非常に進歩が早い。で法律やあるいは政令というようなものに盛り込んでおくと、どうしても実情から一歩ずつずれていくということが実際だろうと思う。そうかといってそれを地方の公共団体にゆだねるというのも、今の日本実情からいいますと、地方の各都市というか各都道府県ごとに、そういう材料を試験したりなんかをする機関が十分にございますればよろしいのですが、実情必ずしもそうとはいいがたい。そこでやはり省令によって告示をしていく、そういう方向をとった方がいいのではないか。ですから法律政令の中でも比較的ばく然とした表現をしておいて、具体的な表現はむしろ告示その他に譲る、省令にゆだねるといういき方の方がいいのではないかというふうに私は考えます。
  17. 吉川清一

    参考人(吉川清一君) ただいま田中さんからの御質問ありましたが、今お三方申しましたように、建築材料というものは、かりに防火というものを取り上げると防火材であるとか、あるいは耐火材であるとかいう言葉はいろいろありますが、今日まで非常に長い間いろいろなものが変って参りました。あるいは防火塗料も最近できてきたようでありまするし、今後もおそらくできるであろうと思います。従って、そういうものの名前を列挙いたしますよりも、何を耐火といい何を防火材というかというようなことは、この文章で十分だと思いますので、それを、日本に、JISというスタンダードがあります、建設省の技術研究所もございますので、昔のように戻って、そういうところで国の検査を通った材料を必ずJISの判を押して、耐火度何度までを耐火材とし、何度までを何にするというようなことは、建築研究所のようなところにJISをきめていただいて、官民共同で協議の結果スタンダードを一つきめておきますれば、あとどういう新材料が出ましても、試験方法を同一にいたしますれば、国家試験に通るか通らぬかというようなことで材料の証明になりますと、全国と申してもまあ日本の全国はカリフォルニア州にもならないような狭い所ですから、あっちこっち設けなくても十分その点間に合うように考えます。
  18. 大須賀矢薙

    参考人大須賀矢薙君) 今吉川さんが申されましたことに関連しておりますが、現在の法規の中にいろいろ品名が出ております。たとえば防火材とか耐火材とかいうのが出ております。これを一々品名をあげずに、耐火材なら耐火材、防火材なら防火材というだけに示されて、あとはJISの何々というような現わし方に統一していただいたら、新しいものが出てきた場合でも、JISによって規定されるものでない以上は使用ができない、JISでこうというふうにきめられたものは自由に使ってよろしい、という考え方に切り換えていただくと、これからいろいろな技術方面も材料の方面も新しく進んでいくと思いますので、それに合せるのには、むしろそういう方法のきめ方をとっていただいた方が都合がいいのじゃないか。しかもこれを使いますのは普通一般の大衆でなくて、一般の方々でも特にこれに関心を持っておられる方は別としましても、大体においてこの法規を使いますのは専門家が多いと思いまするので、そういう形にしていただいた方が非常に繁雑でなくなる、将来の変化発達筆にも順応していけるというふうに考えておるのであります。
  19. 内藤亮一

    参考人内藤亮一君) 大須賀さん、吉川さんのJISもけっこうでございますが、現在の建築基準法でも第三十八条に「特殊の材料又は構法」という見出しで、新しい材料とか構造方法が出てきました場合に、建設大臣が、その建築材料または構造方法が、規定と同等以上の効力があると認めた場合においてはさし支えない、という条文がございますから、これでもやっていいし、JISできめるのも一つ方法でけっこうだと思います。
  20. 田中一

    ○田中一君 これはかく競争が激しい建築材料メーカーにとって一大事なわけなんですよ。たとえばJISにしても日本規格協会が扱っているようですが、これは通産省関係で扱っているんですね。だから結局、建築研究所がそういう機関をもって、建築に関する一切の材料というものは、建築研究所がJISをきめるということならいざしらず、通産省が主管して、単なる用途等については十分考えておりますけれども、そのものずばりの問題は考えても、応用の問題になるとなかなかそこまでの方がいるかいないかわからぬということになるんです。それから使う方の側もそうですよ。新しい工夫で別の用途に使っている場合もたくさんあるんです。だからこの問題は、非常に今後……、現在の施行令にいろいろな表わし方をしているということは、一体あなたが作った時分にどういう考えでやったかということなんです。この前も私は指摘したんですが、今ではそういうものを作っているメーカーがひとりもおらない。材料を指定してあるんです。たとえば防火木材か耐火木材かということを指定してあるんです。これはちょっと認定というものがそれになければ、それに似たようなものを一つ一つ規定しておくことになるわけです、法律できまっているから。そうすると、たくさん出てくるんです。そうすると、今内藤君の言うように、あなたの方に法規を扱っておる建築技術家がおるでしょうが、それが材料のことまでわかりますか。おそらくわかりませんよ。自分で使ったことがないんですからおそらくわからぬと思うんです。それくらいりっぱな者だったら行政官になりゃしませんよ。(笑声)だから今JISとかあるいは一定の機関で公示せよということなら基準が表われますが、あなたの言うように、法規を扱う行政官が認定するなんということはこれは不可能、かえって危険です。内藤君が、まさかやたらに新材料を横浜市でもって採用しているわけじゃないだろうけれども、そういう考え方は僕はいかぬと思う。だからこの点は今、住宅局長も指導課長もいるんだから、その点をどういうふうに扱うか、これはいずれは法律審議で聞きますけれども、あなた方の御意見はこれでわかりました。  それから許可、認可の確認というか、申請手続簡素化ということをおっしゃっているようですが、実情はどうなんです。実情は非常におそいからそういうような御意見が出ると思うんですが、それで一方、内藤君が、人間がおらない、人件費が、予算が足りないんだ、こういうことなんですが、これは全体の政治の問題であって、だから少しでも人間をふやすために手数料を上げてくれということになってくるのか、その点はさっきの内藤君の御意見で考えたわけなんです。だから手数料が上れば、予算がたくさんもらえるというのか、あるいは予算がもらえるから、人件費もとって定員がふえるというのか、その点内藤君どうなんです。
  21. 内藤亮一

    参考人内藤亮一君) どこの地方公共団体も、やたらに、やたらにというと語弊がありますが、職員の数がだんだんふえがちでございますから、上層部はできるだけそれを制限しよう、われわれもそれは当然だと思っておるわけであります。そこで横浜市の実情を申し上げますと、各主事が自動車をみずから運転して検査をして回るというまでには至っておりませんが、今度各区に全部スクーターなんかを一台配置することにしております。それから本部にはジープを置きましてできるだけ能率化するというような、そういう費用なども、これは人件費とは直接関係はございませんが、そういう方面で行政をできるだけスピード・アップするというように考えております。もちろん現在絶対数は不足しております。どこの公共団体も必ずしも十分と思っておりません。従って、やはり手数料増額というものの全部が人件費に回るのはどうかと思いますが、たとえば神奈川県庁あたりでもスクーターを置くとかいうことで、そういうサービス面にこれは投入しなければいけないというふうに思っております。まあいろいろお尋ねもございましたが、その点だけちょっとお答えいたします。
  22. 田中一

    ○田中一君 戦後は木造建築も届出して許可制度になっている。これは建築物そのものに対するというものではなくて、不法建築とか他の方の要素でそういうことをしたのだと思います。今では届出制になっていますね、木造建築のある一定の規模以外は認可制でございませんね。今はそうでしょう。そうするとこれは前進したわけです。こういうのは一応正常化した、建築そのものも一応良心的になったと思うのです。そうすると、さっきも大須賀さんが言っているように、一級建築士相当な権限を委譲する形はどうなんですか。
  23. 内藤亮一

    参考人内藤亮一君) 簡単な建物につきましては今、田中委員さんのおっしゃるようなことも考えられると思います。どういうふうにするかと申しますと、これは一つの案でございますが、建築士に第一次的な責任を持ってもらう、そこでただ、建築士ももし設計とか工事の監理を誤まりますと、建築主に不測の損害を与えるわけでございます。そこで念のために法焼に合っているかどうか、あるいは強度計算に、構造計算に間違いがないかどうかということをチェックしてもらう、それで、もしこれは自分が絶対自信があるからチェックは要らぬと思へば、ただどこどこにどういう建物を建てるという、青写真も何も要らないで何か一枚の紙に届出をしておく、そうしてそのかわりに、もし法規に合わないいろいろな事故が起った場合には、一切建築士が責任を持つということを第一次的にしまして、そうしてただ、多数の中には間違いということもあり得るわけでありますから、念のために建築主事がチェックする、建築士希望すればチェックするという制度を考えられることとは思います。まあそこまで行っていいかどうかということは、これは建築士にも相当幅があるわけでございます。特に木造建物になりますと、二級建築士になる。最近に一つの例を申しますと、横浜である一級建築士が二十何坪のブロック造の住宅を建てました。これが地盤が丘陵地でありますけれども敷地の一部が盛り土であったわけであります。そのために、竣工して建築主が入りましてから一月足らずでだんだん不同沈下が起きた。とうとうどうしても危険というわけで建築主がそこに住んでいない。今あき家になっておるわけでございます。これは建築主事も最初現場へ一度行っております。ただそのときに、山の上でございますから、土地が切った土地であって盛った土地でないというふうに判定して、特に注意を与えなかった、しかし工事途中に基礎工事をやりましたときに、もし建築主事が行っておれば、あるいは建築士がついておれば、これは一部盛り土があるから、くいでも打つとか基礎を深くするということを、そのとき適切な措置をとればよかったのであります。そういう適切な措置がとられなかったために今、県の建設業審議会の紛争処理委員会に、建築主から百万円の損害賠償がかかっておるわけでございます。そういう場合もあるわけでございまして、まあ一律にはいかない問題でございますが、今、田中委員さんのおっしゃったようなことは、やはり研究の余地はあると思います。
  24. 市川清志

    参考人(市川清志君) 先ほど申しましたように、建築基準法自体の持っている性格が、建物の個々のものに対しての構造とか設備に対する規定と、それから都市計画的な規制という二つの面を持っているために、非常にむずかしい問題を含んでいるのじゃないかというふうに考えます。私が考えますのには、建物の個々の構造とか設備、そういうものについてのことは建築士に責任を持たせるということで、これは省いてよろしいと思うのです。けれども都市計画的な規制というものは、これは建物個々の問題じゃないので集団的な規制なのですから、これはやはり行政官庁が一応見るということが必要だというふうに考えます。
  25. 田中一

    ○田中一君 問題は、強度計算とか構造計算というものは、もし場合によったらば県庁いわゆる行政官庁、これは特定の行政官庁ですが、そこを中心にしてそういう機関を持てばいいので、そこでやったものは全部いいのだとなれば役人の手は省ける、また申請の費用も市役所に行かないでそこでやはり経費をとればりっぱにできる。そんな手数料を上げるということは望ましいことじゃないのです。法律は千円以下になっていますね、だからどのくらい上げるか政府にただしていませんけれども、どのくらい取るつもりでございますか。その計算の場合はどのくらい取るのが望ましいと考えておられますか。
  26. 内藤亮一

    参考人内藤亮一君) 現在でも小住宅、特に住宅金融公庫融資の住宅とか十五坪とか二十坪の住宅は、地方公共団体として住宅緩和の一役も建築士は買っているわけですから、これは増額することは望ましくないと思っております。できれば望ましくない。ただアメリカの例を申し上げますと……
  27. 田中一

    ○田中一君 アメリカの例は聞かないよ、日本の例でいい。
  28. 内藤亮一

    参考人内藤亮一君) 建築工事費の何パーセント。日本ではそこまでいっていないので、まあ坪数によってやっておる。大きな、たとえば土地によっては一万坪のビルもあり、五千坪のビルもあるわけであります。そういうような場合には事実相当職員はそれをチェックし、また現場でも工事監理をコンクリートのテストとかそういうことをしているわけです。それらに対して最高は現在の三千円が一万円になるわけで、これはその程度の負担は、そういうような建築主から見れば、相当建築士に委嘱して、設計とか工事監理を委嘱しましても、とにかく何億と資金を投じて一つの半永久的な資産を得るわけですから、それらをチェックするという点に対して、この程度手数料というものは当然であると、またこういう法律が制定されましたなれば、そういうような建物につきましては、法律の限度一ぱい手数料をいただきたいと横浜市は思っております。
  29. 田中一

    ○田中一君 横浜じゃ年間手数料どのくらい取っておりますか。
  30. 内藤亮一

    参考人内藤亮一君) 先ほど申し上げましたが、昭和三十二年度の決算によると八百万円であります。
  31. 田中一

    ○田中一君 小さなものですね、そうなってみると。そこで私たちは手数料とかそうしたものの増額ということは、今の社会の状態から見ても望ましくないという考え方を持っているのです。で、当然これはあなた方はサービス・ボーイなのだから、何も決して手数料をもらわなければいかぬというようなことは考えなくていいのです。だからそういうきまりきっている構造とか、そうした計算はきまっているのですから、そんなものは横浜市がしなくたって、東京都がしなくたっていいのですよ、学者その他が集まって機関を作って、そこでみんな通ればあなた方の方も非常に手続簡素化されて、今言ったように、建築主事がそうした間違いを犯すということはなくなってくるわけです。それは例外でしょうから。それが建築士に責任を持たしてそのかわり、建築士が大きな間違いをしたら、建築士の一切のものを停止するということの罰則を適用すればいいのであって、今のような世の中では、ことに商業建築というものは一刻を争うものだから、だからさっきの清水の吉川さんのような議論が生まれてくる、これは当然そういうことを要請されるからです。これは一つ、今伺ってみると、相当手続というものは簡素化されないで、ごもっともらしいチェックをやって、そうして高い手数料を取っているのではないかということになるといかぬから、値上げの問題については一つ十分に委員会政府にただしてみます。  それから吉川さんに伺いますが、罰則の問題はあなたは非常に心配していらしたが、私もそう思っているのです。市川さんも言っていましたが、申請当時のものと現状というものとが同じものであるという建前は、実際いえばまず一〇%もないのじゃないかと思うのです。そう思うのです。大邸宅なら大邸宅らしく、また申請当時のものと違っている。変貌しているということが事実だと思うのです。そこでこれは今の法律では全部工事中にも中止を命ぜられることになっておりますが、しかし、事実において建築基準法違反を犯しているものに対してはどういう処置をとるべきだと思っておりますか、内藤君どう思いますか。
  32. 内藤亮一

    参考人内藤亮一君) 建築基準法各条項への違反の建築物もいろいろありまして、つまり手続がちょっとおくれているといったようなことで、内容実質は規定に合っている、ただ手続がおくれているといったような程度のものについて、市当局建築主事建築主にかれこれいっておりません。むしろ非常に横浜にも一部に例がございますが、簡易宿泊所、部屋の中を二段ベットに仕切りまして、ちょっとそとから見ると四階建に見える木造建物で非常に危険なものがあって、中にはそれが一人の労務者が入るのではなくて家族持ちも入っている、非常に危険な場合もあるのであります。これは条例でそういう建物制限して、そういうものは二階建にすればブロック構造あるいは耐火構造、鉄筋コンクリート構造、平家建しかいけない、平家建といいましても二段ベッドでありますから二階建のようなものであります。そういう制限をしております。ところがこれを無視して主として、ここで申し上げていいがどうかわかりませんが、第三国人なんかもそういうものを強引にやる場合があるのであります。こういう場合はほんとうに生命財産に一朝火災でも起りますと不安があるわけでございますから、こういうようなものは即座に中止し、あるいは告発する、横浜市でも年に告発いたしまして罰金刑が二、三件ございます。一罰百戒で、全部に対して違反を告発するとかいうようなことは考えておりません。それだけの人員の余裕もございません。だからごく悪質で放置できないというものだけに限っているわけでございまして、通常の場合にはただ口頭で注意する、特に単なる手続違反で実質的には差しつかえないというようなものに至りましては、むしろ違反建築物として扱っていないのであります。
  33. 田中一

    ○田中一君 どうもおかしな話なんで、たとえば建蔽率にしても基準法相当オーバーしている建築物が多いのです。それは違反建築物じゃないのですか。
  34. 内藤亮一

    参考人内藤亮一君) 今私が単なる届出違反の例を申し上げまして、実質的には空地が足りないという問題は、実質的に違反建築でありますから、これは建築主に注意いたしましたりしておりますけれども、現在そういうものに対して告発している例は自分の記憶にありません。
  35. 田中一

    ○田中一君 だからそういうものが、私は横浜市内でも木造の場合は九割以上あるのじゃないかと思うのです。推定するのですがね、この推定は間違っていないと思うのだ。逆に一割きりしかないということは言えない。九制以上は違反だと私は見るのですが、むろん清水建設や大きなものはそういうことはないと思うのでございますけれども、町の大工さん等がやる場合、これは注文主が違反を承知でやれということからやるのですね。それを一々引っくくられちゃかなわぬわけなんですよ。そういう点は横浜なんかでも、届出制のものでも完成したら見にいくかどうか、やっぱり見にいっていると思う。これはそのうちに二月もたてば、もうこないなとなれば、ちゃんと余分に建て増ししているのですね。それでそれをあなたきっと届出違反だと思うのです、届出がおくれているというのですよ、その場合にはね。三年たっても、十年たっても届け出ていないなら届出違反だ、軽微なものだというけれども、事故があった場合には大へんなことになるのですよ。たとえば火災があった場合には大へんなことになる。そうするとまたあわてて今度の法律のようにすぐ改正しなければならぬということになる。これは東宝劇場からこういうことになったのだと思いますけれども、そういう点は建築工事というものはどこの役所に何人もいないですよ。ほかの者がいったのでは取締りの権限がないわけですからね。そういう違反建築といいますか、いわゆる通常違反建築でございますね、違反建築というものの取締りはどの程度に、どうするかということは、またいずれ委員会で聞きますが、どの程度が望ましいと思うのですか。あなたが今言ったように、建築の進行に一応立ち会って、よろしいということになったら、あと建て増ししょうが何しようが差しつかえないわけです。これはそれで済むかしりませんが、りっぱな下に土台を築いて建て増ししているものがたくさんあるのですよ。そういう場合それをどうするかということを伺っているわけなんですよ。
  36. 内藤亮一

    参考人内藤亮一君) どの程度違反建築物を告発するかというようなことは、これはちょっとここで一言では、具体的の事例によって判断するのでございまして、具体的に今申し上げられませんが、大ざっぱにいえば、たとえば行政代執行法によっても建物を除去するのだというような場合、特に火災の問題なんかは切実で、火災災害防止、特に極端な場合には居住者が焼け死ぬ場合があるのでございます。そういうような悪質の場合には告発する。  空地の問題はこれは先ほども申しましたように、都市計画的の見地からやっていることでございますから、これを一々告発するということは行き過ぎである。しかしこれを放置すればやはり都市全体の環境は悪くなる。やはり大火災の場合には延焼の危険もあるようでございます。しかし延焼防止のことは防火構造にもできるわけでございます。問題は日本国民あるいは横浜市民が都市計画相当の理解を持つということ、それが期待されるわけでございまして、放置してはございませんが告発までいっていない、こういうことを申し上げたのであります。
  37. 田中一

    ○田中一君 吉川さんに伺いますが、あなたの質問というか御意見に対して、的確な解明が今後なされると思うのですけれども、まあ悪質というものの考え方の問題です、認定の問題ですね、今ある人から注文されて急げと言われる。ところが届出がなかなかうまく進まない。そのためにさっきも大須賀さんでしたか、部分的にまず基礎なら基礎を許可してくれ、基礎の図面を出して許可する。それからコンクリート主体構造というか、鉄骨を許可してくれというようなことは現在も私はやっているものと思うのですが、その点はどうです。
  38. 吉川清一

    参考人(吉川清一君) 今の御質問の通りでございまして、現在行われております施工者のやり方は、監督官庁に事前に連絡して、オーバー・ブリッジを建てるときからシート・パイルを打つことから、あるいは根伐に着手するところまでは持ち回りの了解事項で、格別の場合に限り便宜をはかってもらってやっております。これは各社同様だろうと思います。また事業は民間と官庁とを問いません。基礎を打ちいよいよ構造体を作り始めるまでには全部の構造のチェックは済んでいないといかぬ、これはその通りであります。それからそういうことは法律には何もないのですが、ひょいと見て実はびくっとしたのは、何もかも全部規則通りになると、これはとてもものが進まないから、了解事項でやってきた慣行についてはよろしいとか、何か本委員会のときにもう少し詳細な方法を立てていただければけっこうだと思います。  悪質がどこにあるかということはこれは非常にむずかしいのでありまして、それは知らなかったというようなことも言う場合もありましょうけれども、そういうことを承知の上で計画的にやったと思われる場合と、私はそう解釈するのであります。
  39. 田中一

    ○田中一君 御承知のように、東京都にはずいぶん汚職々々と汚職がありますから、手心をして甲地でよくても乙地にはいかぬということもあり得るので、その点を委員会で念を押して、政府のどういう方針でいくかということをただしてみます。  そこで、そうすると吉川さんの御意見の第一の問題、これは非常に重要な問題なんですよ。住宅地域に大きな高層建築ができたからその近所の人が迷惑するという、これは法律ではどうにもならない合法的なものだろうと思うのですが、そういう場合は、これは単なる建築基準法の問題ではなくて民法上の問題になってくると思う。そこでそういう御意見を出したというのは、吉川さんどこに意図があるのかちょっともう少し伺いたいのです。あなたの良心的な気持は非常によくわかるのですよ。
  40. 吉川清一

    参考人(吉川清一君) 先ほど申し上げました点は、最近住宅難になりまして、また物納されたお屋敷跡に、どんどん住宅公団はもちろんでありますが、営業的なアパートが建ち始めた。広大なお屋敷町でありますと、アパートのニ棟や三棟建ちましても一向に周辺に支障がないのでありますが、これが家並みの込んだ——実は私は家並みの込んだ所におるのでありますが、家並みの込んだ所に前面にでも空地があると実は毎日心配なのであります、というような話をみんなしてみると、現実に建てられた人、また建てられるかもしれぬ空地の前におる人、あるいは二十メートル建てられたらえらいことになる、というのが町場の今話題になっております。それでは困るとかいうことじゃなくて、そうなったらしょうがないから逃げ出しだな、というようなことが話題になっておることを御披露申し上げたわけであります。先ほど雑談をしておりましたときに伺いますと、英国にもあるいはアメリカのどこか特定の地域でありましょうか、何か純粋のそういった住宅区域内においては三階ぐらいの高さでとめる、という規則があるのだそうであります。三階でしたか何階ですか存じませんが、詳しいことは他から御説明があると思います。また三階がいいか四階がいいかは別として、結局日陰になってしまうからある距離だけ離して風致が悪くなるとかならぬということは、これは金持でも貧乏人でも同じですが、ただ日陰になってしまうとつらいわけです。そういう民間に話題がふえてきたということを御披露申したわけであります。
  41. 大須賀矢薙

    参考人大須賀矢薙君) 今吉川さんがおっしゃいましたことにつきまして、私の知っていますことを申し上げて御参考にしたいと思います。それはたしかロンドンだと思いました。ある一つの窓へたしか二十年と思いましたが、二十年あかりが入っていた場合は、それを勝手にあかりを入れなくすることはできないというような規定があります。これなんかは細い道の南側に高い建物が建っても、その道の反対側の北側はそういう何の影響も受けない、というようなこととあわせてお考え願えれば大へんけっこうだと思います。
  42. 田中一

    ○田中一君 非常におもしろい。おもしろいというか非常にいいと思うのですね、そういう考え方も。なぜそういう考え方を建設省に持ち込まないのですか、日本建築家協会としては。もう一つ、プレミアム法ですか、これも非常におもしろいと思うのですよ。  そこで、これはむろん今の問題と関連があって、これは逆に高くしろ、片っ方は低くしろ、こういうことなんです。高さも、低さも、制限々々ときびしいのを両方やってみようというのですが、これはどういう自信をもって建設省が法案を出そうとするか、今後調べてみますけれども、これは一つ、片っ方は何というか自分の所有地を公用に供するのなら高くしてもいい、また同時に既得権を持って二十年間太陽をもらっておったのだからこいつは権利があるのだ、こういうことだと思うのです。非常におもしろいと思うのですよ。そういう問題は、あなた方日本ではとても不可能だといって学会は当時政府に要求しなかったのですか。大須賀さんでも市川さんでもどうですか。
  43. 市川清志

    参考人(市川清志君) そういう意見は学会の委員会なんかではしばしば出るわけですけれども、行政的に非常に日本ではまだむずかしいだろうというようなことで、いつもお流れになるので、ですからそういう意見は学会の中でも大ていの人は御存じです。
  44. 大須賀矢薙

    参考人大須賀矢薙君) これは何と申しますか、現在の基準法を根本的に組みかえていくというようなときにこういうことが考慮されていく。現在のままではこれをそのまま生かして使うということにはなかなかむずかしいのじゃないか、こんなふうに考えます。
  45. 内藤亮一

    参考人内藤亮一君) 今吉川さんのおっしゃったことは横浜でも起っておりました。そこで、しからば現在の建築基準法でそれができないかということ、若干はできるのであります。それは、横浜市も、郊外の環境のいい住宅地においては今調査をいたしておりますが、高さの最高限度を押える規定が現在の建築基準法にございますので、逆に、横浜市内では、高い建物が建ってほしい所は、四階以下はいけないというような高度地区の指定もできますし、郊外においては三階までが限度であるというような制限もできるのでございます。そういう地区を指定した所が、せっかく基準法にありながら、あまり地方公共団体ではやっていない。これは、一つは、建設省には申しわけないのですが、政府地方公共団体の指導が足りない。調査その他がめんどうではございますが、現行法で若干できないことはないのでございます。しかし、根本的には先ほど申し上げましたように、イギリスの例は、エインシェント・ライトといって慣行法になっておる。私も詳しいことは知らないのですけれども、エインシェント・ライトといって慣行法になっておるのです。それから、御承知のように、緯度の関係で太陽が日本よりも恵まれていない、土地の状況で。また、緯度が高いために、冬なんかだと、相当高い建物が建ちますと陰の範囲が大きくなるわけです。だから、相当昔から、今から何百年も前からそういう慣行法がある。日本でそこまで踏み切るかどうかという問題は今後の研究問題だと思います。しかし、現在の建築基準法でもやれないことはございません、徹底すれば。アメリカのお話をすると、また田中先生からおしかりを受けるかもしれませんが、アメリカでは、先ほども申しましたように、一戸建、二戸建の住宅しか建てられないような用途地域もあるわけでございます。これはただ日光をさえぎるばかりでなくて、高いアパートから、特に横浜でも例がございますが、日本鋼管の独身者宿舎の五階建が今計画されております。建築基準法では現在のところ何ら制限ございません。高度地区も現在指定してございません。そういう高い所から住宅を見おろされるということ自体も、付近から反対陳情が出ているわけでございます。こういう問題は今後の研究問題として、私も学会の席上でもいろいろ発言をいたしましたけれども、今度の改正はそういう根本問題にはあまり触れていないので、今後はそういう方向に向うべきだと思っております。
  46. 早川愼一

    委員長早川愼一君) ほかに御質疑のある力はございませんか。——御質疑もございませんようですから、参考人方々に対する質疑はこの程度で終了いたしたいと思います。  参考人方々には長時間貴重な御意見をお述べ願いまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  それでは本日はこの程度において散会いたしたいと思います。    午後零時五十七分散会