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参考人(
大須賀矢薙君) 私、
日本建築家協会の
常務理事の
大須賀でございます。
本日、本
委員会に
出席して
意見を述べることができます機会をお与え下さいましたことに敬意を表します。
私ども、
一般民間の
設計者、
建築家の集りであります
協会として、今度の
改正についても、いろいろ研究いたしましたところがありますが、われわれの一番申し上げたいことは、現在の
社会一般の情勢及び
建築の
技術の進歩し、発展しましたということに
関係しまして、
基準法の
内容が、だんだん改善されなければならぬ時期にきているということは、これはどなたもお認めになっていることだと思いますが、この
改訂に当りましては、末梢的な
改正は避けて、
民間の
学識経験者等を中核として
調査会に類するものを設けまして、
都市計画と
建築技術等の面にわたり、十分な
検討をしたのちに、根本的にこれを改革して、
改正していただきたいというきわめて強い
希望がございます。これは、全般的の問題でございますが、今回行われようとしています
基準法の
改正に対しまして、さし
あたり、次のようなことを考慮していただきたいと思います。
それは、大体二つに分けまして、
一つは、全面的に
改正するということと、もう
一つは、今度の
改訂の
内容についての
希望でございます。
全面的の
改正の問題は、大体二つございますが、その
一つは、
建築基準法と
都市計画法との間の
関係を合理的に調整していくということ、これは、
建築基準法は、
現代都市として、合理的に発達していくことを計画する
都市計画との関連の中におきまして、現在、
都市計画法の方にも、いろいろ
実情に合わないものもございましょうし、
建築基準法の方にも、もちろんあるわけでありますが、これを
基準法と
都市計画法と両方を並行して
改正をやっていくということが望ましいと考えております。
それから第三は、法の
簡素化と
建築士の
判断の
範囲を拡張するということ、及び
建築審議会、
公聴会等を、もっと活発に運営していくということであります。
設計の水準も、だんだん向上して参りましたし、
建築士法の確立もされておりますので、法による規制というものは、立法の基本的な意思を表わすことを重点にいたしまして、きわめて簡略にしたい。そうしまして、
建築士としての
判断の
範囲を広く認める。そして、
技術の進歩だの、
時代の移り変り等によって変っていきますことに対処するためには、法は、ごく簡略にしておいて、
あと、
政令と
地方条例にこれをまかすという
方法をとっていただきたいということであります。そして公けの決定を必要とするような場合には、
公聴会、
審議会、
専門家等の
意見を十分聞かれて、民主的に、早くこれを結論を出していただきたい。
大体、これが全面的の
改訂の分でありますが、
内容的の
改訂の項につきましては、すでに今度の
改訂で、織り込まれている点もございますが、全然方向が違うものも、中にはございます。
まず、
内容的に
改正を
希望するものは、大体まとめまして、五つございますが、一番の大きな問題は、
建築物の面積と高さの
制限を、全面的に容積の規制に切りかえるということであります。都心の、非常に
交通の混雑しているのを
緩和し、また非常に小さい
敷地の統合によっての計画が合理化するような取扱いをするという観点からでありますが、こういう観点から処理しますのに、非常に有利であります。プレミアム法——まあここで、プレミアム法と申しましたが、プレミアム法——の精神のものを立法化していくということが望ましいと思います。それを
希望するのであります。プレミアムと申しますと、これは
アメリカの、ニューヨークだのフィラデルフィアで
市街地、
日本の、今、現状の
市街地で困ったようなことを
経験いたしました結果、編み出されたところの、プレミアム法と申しましたが、プレミアム・アクトではありませんで、こういうやり方というような意味で申し上げたのですが、そのプレミアム法は、ある一定の
敷地がありまして、その
敷地に建てられる面積、その面積は、公共的なパーキングだとか、あるいは歩道とかいうようなものに利用することができるというスペースを残すということにおいて、それだけのものを、上へ継ぎ足させるということであります。従いまして、高さの
制限、面積の
制限が、ここで根本的に変るのであります。
例をあげて申しますと、たとえば干平米の
敷地がありまして、現在で例をあげますと、それの八〇%
建築面積が許されている場合に、そうしますと八百平米の
建築面積を持てるわけでありますが、その場合に、今申しましたような方向に使うということにおいて、五百平米の
建築をしたという場合に、三百平米が残るわけであります。この三百平米をパーキングだとか、あるいは歩道とか、そういった公共的な、公用的なものに利用していく、その三百平米に建てられるだけの面積を、五百平米の
建物を建てたその上に載せてもよろしい、こういう意味であります。そうしてなおかつ、プレミアムと申しましたのは、その上にアルファ、若干の高さをまだ載せてもよろしいというような意味でございます。
こういうことによりまして、
市街地の
交通緩和とかというようなものが、非常に問題になっております駐電場等と同時に、解決されていくもとになるのじゃないかと思われるのであります。
それから
現行法の建蔽率とか高さとかというものの
制限が非常に行き詰まって、
方々で矛盾を起しているというようなことは、よくあることでありますが、広い
敷地が、狭い
道路にはさまれているために、大へん不経済な、
建築的に非能率なものができなければならないというようなことが、たびたび起っているわけであります。こういうことによって、
交通の
緩和をするというようなこと、同時に、特に都心でありますが、都心に、小さい
敷地があった場合に、これを一緒にし、数
敷地、数十
敷地を
一つにして、
建物を建てていくということの
方法として、やはりこのプレミアム法が非常に有効じゃないかと、こう考える次第であります。
その次に、居室の採光面積、換気面積と居室の床面積との
関係でありますが、天然採光とか、換気というものは、特に、そういうものを必要とする住宅とか、学校とか、診療所、寄宿舎、下宿というようなものに限りまして、その他のものに対しては、今、現在でも
地下建築物で認められておりますように、人工的の照明、換気ということを厳重にするということで、これを地上にでも認めるということであります。
地下で認めたのが、地上で認められないということも、はなはだおかしなことでありますが、特に窓を必要としないのじゃなしに、窓があっては、都合が悪いむしろ都合が悪いような
建物がたくさん出てきているわけであります。百貨店とか
工場とか研究所、講堂というようなものが、よくこういう問題にぶつかっておるわけでありますが、これは、もちろん
防火とかあるいは避難とか衛生とかいうような設備の面は、十分に厳にしていって、地上でも、これを認めてやるということが、実際に合ったものじゃないかと思います。これは、今度の
改訂で、これと同じような処置のできるようなふうに取り扱ってはあるようでありますが、はっきりこれをつけ加えていただくということが望ましいと思います。
第三番は、合理的な
都市計画の観点から、地域性の設定と、
建物の地域
制限及び
道路、それから計画
道路の中の
建物に対することを
検討して是正してもらいたいということであります。
今度の
改正にも出ておりますが、
簡易耐火構造というものを、
耐火構造と
防火構造の間に位されて取扱われて、一般的の
木造から、だんだん簡易
耐火の方向に持っていって、
都市を不燃化に持っていくという御趣旨は、これは非常にけっこうなことだと思います。
ただ、この計画路線、施行年度の未定であるとか、あるいは非常に先へ行ってのものとか、長い間かかるというようなものの場所に建てるものでありますが、これは
防火地域の場合でございますが、現在は、二階以上はいかんとかいろいろな
制限がございます。これは、
防火的なあるいは
耐火的な
建物を建てても、将来除くところと、将来残存させておく部分の接続させるところの取扱い方を考えたならば、別に不自由なく解決できるのじゃないか、従いまして二階であるとか、あるいは鉄骨であるとか、ブロックでなければいけないというようなことではない、ちゃんとした
耐火構造のものを建てても、あるいは三階でも四階でもよろしいということにされることを
希望するのであります。
それから第四は、許可
確認の迅速化と
建築行政業務の
簡素化ということであります。
まず
消防法とか、その他
建築に
関係しました法則法規等を一元化するということでありますが、現在の状態でありますと、非常に複雑でありまして、この許可
確認をとるまでに
相当長期な時間にわたることになります。これが
実情でありますが、これを今申しましたように一元化したならば、もっと、これが期間的に短かくすることができて、
建物を建てる方の側、
建築主の側からいいましても非常に利するところが多いと思います。
それからもう
一つ、各官庁に
建築に関してのいろいろな基準がございますが、これを統一していただきたいということであります。同じような問題に対して、官庁が違うために、その基準が、ごくわずか辿ったりしているというようなことがあるわけでありますが、そういうような点は、これを統一していただきたいということです。
それからもう
一つ、許可、
確認の
手続のことでありますが、
相当大きな
建物になりますと、現在要求されています許可申請、
確認申請の書類を作りますのは、膨大なものでありまして、
相当長期間かかるわけであります。これは
建築主の方の側から申しますと、その問、手はつけられない。六カ月も、長いのは一年もかからなければ、申請件数がなかなか完備しないことがありますが、それを、そういうことを除くと同時に、これを見られる方の側の官庁も、非常に手数が省けるだろうと思いますが、申請に要する一類というものは、審査に必要な最小限度の
設計書類にしていただいて、それによって、認可の見通しがはっきりつけられるようにして、細部の
設計は、その後にするということにして、必要によっては、分割的に申請することができるような形にしていただきたい。といいますことは、最初に、大体の計画をもちまして、大略の計画をもちまして、審査を願う、これでよろしいということになりましてから、初めてほんとうの
設計にかかっていくと、そして全部のものがまとまる前に、基礎なら基礎、あるいは
構造体なら
構造体というようなものが、切り離して考えることができるものは切り離して申請して、その許可をもらうということにしていただきたいということであります。
それから最後に、用語の
定義を明確にしていただきたいということです。これは、特殊
建築物というものの中に、鉄道とか
地下鉄の駅とかいうようなものが含まれていないように見受けられますが、これは、当然特殊
建築物として取り扱っていただかなければいけないんじゃないかということです。
それから法規、まあ法の中には、そういうことは比較的見受けられませんようですが、
政令その他では、同じようなことを意味するのに違う言葉が使ってあるということがありますですが、これはぜひ、どちらかに、きちっと統一していただきたい。
それからこれはごく小さいことになりますが、
構造の方で主要
構造部ということが出ておりますが、これは今度の
改正で、その意味が取り上げられて処理されておるようであります。主要
構造部と小ばりとの
関係でございますが、これを
改訂のものには処理されておるようでございます。
それから最後に
建築物と工作物の区分を、もっと明確にしていただきたいということであります。
それから、これは今度の
改正でも、実施できるようにはなったようでありますが——実際には、現在でも行われるはずになっておるものが行われていなかったようでありますが、特に特殊
建築物の定期的の
検査、これは、保守監理の面に、非常に
関係あることでありますが、これをきちっとやって、報告をとるならとる、これには、非常に手数のかかることでありますから、われわれ
建築士をこれに活用していただけたら、これは不可能なことではないのじゃないか。
それから、ごく一般的の問題に返りますが、われわれは水準法、
建築士法というような、はらばらな形でなく、これを
建築法という
一つの法の中に入れまして、今の水準法に合うものは、物法の方にもっていきまして、今の
建築士法に当るものを人法という形にして、現存の
建築士法というものの性格を、資格法であるか、業務法であるか、ちょっと
判断しにくいような点をはっきりさして、人法というものを確立してもらいたいということ、そのほかこまかい点もございますが、これは、時間がありましたら後ほど申し上げさしていただきます。