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1959-03-05 第31回国会 参議院 決算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月五日(木曜日)    午後一時四十六分開会   —————————————   委員の異動 二月十八日委員江藤智辞任につき、 その補欠として白井勇君を議長におい て指名した。 二月二十日委員小西英雄君は退職者と なった。 二月二十一日議長において井上知治君 を委員に指名した。 二月二十七日委員松岡平市君辞任につ き、その補欠として森田豊壽君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     西川甚五郎君    理事            仲原 善一君            西岡 ハル君            平島 敏夫君            小柳  勇君            棚橋 小虎君    委員            稲浦 鹿藏君            松村 秀逸君            相澤 重明君            大矢  正君            大河原一次君            島   清君            鈴木  壽君            森中 守義君            竹中 恒夫君            岩間 正男君   国務大臣    国 務 大 臣 伊能繁次郎君   政府委員    防衛庁人事局長 山本 幸雄君    防衛庁経理局長 山下 武利君    防衛庁装備局長 小山 雄二君    調達庁長官   丸山  佶君    調達庁次長   眞子 傳次君    調達庁総務部長 大石 孝章君    調達庁総務部会    計課長     鐘江 士郎君    調達庁労務部長 小里  玲君  事務局側    常任委員会專門    員       池田 修蔵君  説明員    防衛庁実施本部    長       武内 征平君    会計検査院事務    総局第二局長  保岡  豊君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十二年度一般会計歳入歳出決  算(内閣提出) ○昭和三十二年度特別会計歳入歳出決  算(内閣提出) ○昭和三十二年度国税収納金整理資金  受払計算書内閣提出) ○昭和三十二年度政府関係機関決算書  (内閣提出)   —————————————
  2. 西川甚五郎

    委員長西川甚五郎君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず委員の変更を御報告申し上げます。二月十八日江藤智君が辞任いたしまして白井勇君、また小西英雄君が退職せられましたために井上知治君、二月二十七日に松岡平市君が辞任せられまして森田豊壽君が、補欠として選任せられました。   —————————————
  3. 西川甚五郎

    委員長西川甚五郎君) 審議に入る前に調達庁に申し上げておきまするが、この決算委員会は予定を組みまして、すでに相当の期間以前にこの委員会政府委員出席を求めておりまして、そうして調達庁も十分に了承しておられたので、ありまするが、本日長官並びに次長出席がおくれておるということは大へんまずいことでありますから、今後そういうことのないように、きつく申し上げておきます。
  4. 相澤重明

    相澤重明君 今委員長から、もうすでにお話があったから、まあ私も深く追及はしませんが、きょうのこの決算委員会通知がどういうふうに調達庁になされておったか、次長から一つ答弁を私は求めたいと思います。
  5. 眞子傳次

    政府委員眞子傳次君) 前もってすでに本院からお知らせを受けておりまして、本日の決算委員会を開かれることは十分承知いたしておったところでございますが、出席のおくれましたことはまことに申しわけございません。今後は十分注意いたしまして過誤のないようにいたしたいと思いますから、どうぞ御了承願いたいと思います。
  6. 相澤重明

    相澤重明君 陳謝のことは私も認めます。認めますが、きょう調達庁長官は、お話に聞くと、日米合同委員会出席をされておるやに聞いておるのでありますが、その通りでありますか。
  7. 眞子傳次

    政府委員眞子傳次君) お尋ねの通りでございまして、合同委員会に引き続いて、なお駐留軍労働組合との団体交渉が、どうしても長官でないとできないことがございますので、その方に参っておりまして、遺憾ながら本日出席できませんことを御了承願いたいと思います。なおそれが終りますれば本委員会出席するはずになっております。
  8. 相澤重明

    相澤重明君 今のそういう日米合同委員会とか、あるいは労働組合との団体交渉ということは、おのずから国会審議とそれぞれ重要点関係ということは十分御承知だと思います。そこでそれ以上のことは私申し上げませんが、少くとも長官出席ができないという場合に、長官を代理する者は次長で私はあると思うのだが、そのことを本院の決算委員長にあなたは御通知になったかどうか、この点を明らかにしていただきたい。
  9. 眞子傳次

    政府委員眞子傳次君) その点御通知申し上げるのをおくれておりましたが、今後十分注意いたしまして手落ちのないように努力いたしたいと思います。
  10. 岩間正男

    岩間正男君 日米合同委員会の日取りは定期的なものですか。それとも偶発的な何か事件を扱っておりますか。
  11. 眞子傳次

    政府委員眞子傳次君) 定期的なものでございます。
  12. 岩間正男

    岩間正男君 これがかね合ってこちらに出席不能だということについては、あなたたち処理する事前にこれを通達して日を変えてもらうとか、何とか方法はあり得たと思うのです。それから合同委員会が優先するのですか、国会出席に。これは私もずいぶん合同委員会の問題については今までも再々質問をしておる、日米合同委員会性格そのものがやはり問題である。国会の関連で、どっちかということをあなた方はどういうふうに把握しておりますか。この点を明らかにしていただきたい。
  13. 眞子傳次

    政府委員眞子傳次君) 調達庁といたしましてはどうしても長官仕事がいろいろございまして、長官でないとどうしてもそのときの会議仕事ができないようなことがありまして、そのときの都合によって処理するほかはない次第でございますから、どうかその点も一つ御賢察を願いたいと思います。
  14. 岩間正男

    岩間正男君 合同委員会が定期的にきょう開かれるということがわかっておって、国会出席通達もおそらくこれは二、三週間とか十日前になされたと思う。当然かち合うものです。そのときに合同委員会もあるのだから何とも国会の方は出られないのだから仕方がないのだ、こういう考え方で今後はやはりこういう問題を処理されてはまずいのじゃないか。これはわれわれとしてはやはり国会出席を優先すべきだと考える。合同委員会の問題もあるかもしれぬけれども、そういうことを錦の御旗みたいにしてあなたたちが掲げておるとすれば重大問題だ。調達庁そのもの性格が問題だ。私たちはしばしば論議した。その点についてあなた方はどういうふうに考えておられるか。これからの審議に入る上にも重要であるからこの点を明らかにしてもらいたい。
  15. 眞子傳次

    政府委員眞子傳次君) もちろん私どもといたしましては国会審議の重大なことはよく存じておる次第でございます。従いまして心がけといたしまして国会審議を軽んずるようなつもりは毛頭ございませんので、御了承をお願いいたしたいと思います。   —————————————
  16. 西川甚五郎

    委員長西川甚五郎君) 昭和三十二年度一般会計歳入歳出決算昭和三十二年度特別会計歳入歳出決算昭和三十二年度国税収納金整理資金受払計算書昭和三十二年度政府関係機関決算書を議題といたします。本日は調達庁の部と防衛庁の部を審議いたします。まず調達庁の部を審議いたしたいと存じます。検査報告批難事項は五号及び六号であります。  本件に関し御出席の方は会計検査院保岡第二局長眞子調達庁次長大石調達庁総務部長小里調達庁労務部長鐘江調達庁総務部会課長であります。  まず会計検査院から概要説明を願います。
  17. 保岡豊

    説明員保岡豊君) 二十五ページ五号から説明いたします。調達庁借料を払って提供しております東富士演習場の一部に、東電と電源開発会社送電線の用地としている部分があります。このうち鉄塔敷地等大きな部分借り上げの要はありませんけれども線下地都分電気工作物規程によりまして山林経営が制限される部分で、会社の方からも使用料を支払っておりますので、調達庁は他の部分と同様の借料を支払う筋はないというものであります。  次の六号は、提供する必要がなくなったので所有者返還する場合、原状回復等補償をいたしますが、その際なお値下げにより過去に支払った借料に過渡しがあれば返納させなければならない。本件の場合国費で設置した暖房設備があったことが判明し、過去に支払った借料にはこれに対する分を含めていたので、その過渡し分を返納させるべきであったのに、部内の連絡不十分のためその処置をとっていなかったものであります。  以上で概要説明を終ります。
  18. 西川甚五郎

    委員長西川甚五郎君) 調達庁概要説明を願います。
  19. 眞子傳次

    政府委員眞子傳次君) 昭和三十二年度における決算関係におきまして、調達庁関係部分を御説明申し上げます。  御承知通り調達庁昭和三十三年八月一日付をもって防衛庁に統合されましたが、調達庁におけるおもなる業務といたしましては、わが国を米国との安全保障条約第三条に基く行政協定を実施するために、米駐留軍に対する施設及び区域提供をし、またこれに伴う諸般の補償に関する業務労務提供業務等に携わっているものでございます。すなわち調達庁行政協定に基いて施設および区域提供業務を履行しながら、国民の財産権その他の権利との調整をはかりつつ、いろいろ複雑なまた困難な仕事を遂行しつつあるところでございますが、常々円満なる業務の運営と予算執行の適正につきましてできるだけの努力を傾けつつあるとこでございますがこのたび昭和三十二年度決算報告にございます通り、このたびの決算において会計検査院指摘を受けました批難事項等につきまして、国会の御審議を相わずらしますことは、まことに遺憾に存ずる次第でございます。  調達庁関係批難事項不当事項是正事項おのおの一件でございまして、不当事項東冨士演習場における一部の土地借料重複払いについて指摘されたものでございます。また是正事項は、横浜市所在建物返還補償金の支払いに当り、部内における事務上の連絡不十分のため、処置に妥当を欠き指摘されたものでございます。これらの事項につきまして、調達庁といたしましては、会計検査院指摘通り是正すべき点につきましてはこれを是正し、またすでに生じた重複払いについては遅滞なくそれぞれ回収措置を講じまして、相手方から返納せしめた次第でございますが、今般の指摘にかんがみまして今後は一そうの努力と研究を重ねまして、予算執行の適正を期する考えでございますから、何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げる次第でございます。個々の事項につきましては、私なりあるいは担当職員から御説明を申し上げるつもりでございます。
  20. 西川甚五郎

    委員長西川甚五郎君) それではこれより質疑を行います。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  21. 岩間正男

    岩間正男君 ちょっと最初に総括的にお聞きしたいのですが、現在この調達庁を通じまして米軍提供している施設区域、それから労務者数こういうものについて、今から七年前になりますか昭和二十七年ですか、行政協定発効以来日米合同委員会ができまして、調達庁事務が開始されてからその当時の比較におきましてどういうふうになっているかこの増減、これを大略お聞きしたい。
  22. 大石孝章

    政府委員大石孝章君) 私から岩間委員質問のまず第一点、施設及び区域関係について御説明いたします。  昭和三十三年末現在でもほとんど同じでございますが、まず第一点、陸上の施設関係につきましては件数が二百九十二件、土地面積が一億五千三十八万坪、建物面積が百九十二万坪、それから海上演習場は合計で三十五カ所、以上のような現況でございますが、これを講和発効以降の推移を振り返ってみますと、講和発効当時、昭和二十七年四月二十八日当時の現況で申し上げますと、施設区域の数は二千八百二十四件、現在が二百九十二件、それから土地面積講和発効時は四億九百十七万坪、建物面積は四百十万坪、施設区域関係につきましては概況以上のような状況でございます。なお労務者の数等につきましては担当部長から御説明申し上げます。
  23. 小里玲

    政府委員小里玲君) 講和発効当時の労務者数数字をここに持ち合わしておりませんが、一番最近のはっきりした労務者数は今年の一月一日現在で七万七千七百五十六名であります。講和発効当時の数字は約二十二万人でございます。
  24. 岩間正男

    岩間正男君 そうしますと施設区域でも、件数からいっても、面積からいってもだいぶこれは返還されているわけです。労務者に至っては三分の一というようなことになっているわけですが、この処理状況について概略でけっこうですが、ここで説明していただくと同時に、どうでしょうか決算委員会として資料を、今の概略でいいのですが、平和発効当時のものと最近の比較と、それからそれに対しての処理状況について、一応資料的なものをほしいと思うのですが、いかがでしょうか。
  25. 鐘江士郎

    政府委員鐘江士郎君) 先ほど総務部長が御説明いたしました施設提供に伴う買収あるいは借料等の経費の支出の実績を、講和発効昭和二十七年度以降の決算額を申し上げますと、昭和二十七年度の防衛支出金決算額は約四十一億四千八百万でございます。それから二十八年度の防衛支出金決算額は百一億七千三百万、二十九年度の決算額は八十七億一千一百万、三十年度は七十億七千六百万、三十一年度は七十四億四千六百万、三十二年度は大十一億五千一百万、これが当庁で支出いたしました防衛支出金概略決算額でございます。
  26. 岩間正男

    岩間正男君 ありがたいことに、これは質問しなかった点なんですが、この決算額を出していただきましてこれは非常に参考になりますが、先ほど申しましたのは、これをどのように返慣した分を処理したか、その処理の仕方について大体の資料があるだろうと思う。これは膨大なものの詳細を求めているわけではありません。いろいろの返還とか自衛隊に移管とか大綱でいけると思う、こういうもの。それから当時の施設の個所、面積労務者の数、そういうものの変遷状況、そういうものについて、何かいただけますね、この点はどうですか。まず最初にその点。
  27. 眞子傳次

    政府委員眞子傳次君) ただいま御指摘施設変遷概略につきましては、後日できるだけわかりやすい資料を整えて提出いたしたいと思います。
  28. 岩間正男

    岩間正男君 この処理概要について今ここでお話しいただけますか。
  29. 大石孝章

    政府委員大石孝章君) 施設区域処理概要年度別に、また内訳としまして用途別にいろいろある関係上、次長から申し上げましたように資料で尽したいと思いますが、概略の現在の傾向は民有、公有関係につきましてはそれぞれ所有主の方に返還する。国有関係につきましては返還になってそのまま他の用途に供されたのもございますが、ただいま岩間委員から御指摘のように自衛隊の方に引き継いでおるというものもございます。そういう関係でございますので資料で尽したいと思います。
  30. 岩間正男

    岩間正男君 三十二年度の施設並びに労務者の数、これはおわかりですか。
  31. 鐘江士郎

    政府委員鐘江士郎君) お答え申し上げます。三十二年の四月一日現在の労務者は十二万八千五百九十名でございます。それから三十二年の四月一日現在の施設の数はちょっとただいま手元にございませんからわかりませんが、国有地が一億八千五百八十五万坪、国有建物が二百五十五万六千坪、それから民公有地土地が一億一千六百七十九万九千坪、建物が三十万一千坪。かようになっております。
  32. 岩間正男

    岩間正男君 これはあとで詳細な資料をいただいて検討したいと思うのですが、先ほど二十七年度の決算からずっと三十二年度まで出していただいたわけですが、施設がだんだん減ってきたと思うのです。労務者の数も十二万というと半分になってるわけですね、三十二年度は。それなのに分担金はそれに伴って大して減っていないというふうに感ずるのですが、どうでしょうか。もっとも二十八年の百一億に対して三十二年度六十二億ということになってますが、施設労務者はほとんど半分ぐらいに減ってるわけですね。そうすると、施設件数は減ってるけれども、その実際の現存しているものは非常に金がかかっておる、こういうような、概括してそういうことが言えるのですが、そういう点どうでございますか。
  33. 大石孝章

    政府委員大石孝章君) ただいま会計課長から御説明申し上げました年度別防衛支出金決算額施設区域の数なり、労務者の数なりというものを対比しまして、必ずしもそれが正比例でないという御指摘はごもっともでございます。ところが防衛支出金の内容は施設区域民公有から借り上げをします場合に、それに支払いいたしますところの借料関係やなんかは確かにその通りになりますが、それが逐次返還になった場合には、御承知通り契約に基きまして原状回復の義務を負います。そういう関係で、むしろ返還になった際にその補償額が増大するといったような傾向がございます。従いまして必ずしも正比例関係がその通りにならないといったような事情にありますので御了承いただきたいと思います。
  34. 岩間正男

    岩間正男君 いずれこれは資料をいただいてから検討したいと思いますが、そういう性格の中に、やはり現存のやつは性格的に変化を始めておるのじゃないか、つまり講和発効後における基地性格と、それからその後ここ二、三年後の性格というものは、私たちもこれはアメリカの戦略上の変化と即応して、内容的に変ってきておるのじゃないか。そんなところをやはり明確にしなくちゃいけないというふうな感じを持ってるものですから、そういう点については、あとでなお資料をいただいてからこれは詳細にもっと御質問申し上げたいと思うのです。  そこでどうですか、返還された所ですが、これが自衛隊に相当使われていると思うのですが、民公有、そういう所で返還された所がうまくいっておりますか。いろいろ問題をその後起しておるようなこともわれわれ二、三耳にしているのでありますが、どうですか。原状回復がうまくいって、そして果して返されているかどうか。この点が非常に不十分で、どうも住民の意思に沿わない、こういう所で現在懸案になっておるような、係争しているような、そういう所はございませんか。万事うまくこれは円満に解決しておりますか。
  35. 大石孝章

    政府委員大石孝章君) 大体の傾向を申し上げますと、私ども契約に基きましてあるいは施設提供するに当りまして、当初原住民あるいは土地の方方とお約束しました点はこれは履行いたしておりますので、概略うまくいっているというふうに思っておりますが、いろいろ御批判はあると思います。  ただ海上演習場であるとかあるいは北海道のような場合に、土地等原状復旧といったような問題はきわめて技術的にも困難な問題等がございますので、そういったような所につきましては、若干地元方々と長い時間の折衝を保ちつつ契約を履行する、というような形をとっているような次第でございます。
  36. 岩間正男

    岩間正男君 この原状回復の問題で私たちもいろいろ聞いているわけです。たとえば山形県の大高根の問題、弾道下の村として非常に問題になっている。当時私たちも積雪一メートル余というような所を踏んで現状を見たわけですが、住民たちはもう生活に窮してたま堀りをやっている。ところがたまたま不発弾が爆発して何人か血みどろになって死んだ。こういう事情があるが、その後何万発の砲弾が山に打ち込まれたかわからない。それを原状回復といっても大へんなことだと思いますが、こういう問題について、現在どうでしょうか。現地の農民たちはこういう山に対して再び元のような生産の状態を回復するということは非常に困難な状況になっている。そういう点について、果して調達庁だけの責任かどうか私はわかりませんが、少くともこういう点では調達庁が一番当面の責任者としての責任を遂行しなければならないと思うのですが、こういう点どうですか。ことに演習場で一番非常に問題が残っていると思うのですが、こういう所はどうなっておりましょうか。
  37. 大石孝章

    政府委員大石孝章君) 岩間委員指摘のような関係は、確かに演習場について若干ございます。ただし例を大高根にとられましたが、大高根の場合につきましても、返還後に地元方々と話し合いまして、大体そこに埋没されたりあるいは遺棄されたりした不発弾等は、詳細な調査の上これを除去するというような作業を完了いたしまして、御納得をいただいておるような次第でございます。  なおそのほかに、演習場が荒らされたために灌漑用水あるいは用水等に支障を来たしたといったような事案につきましては、ため池の改修あるいは河川の改修、道路の復旧その他いろいろな施策を講じまして、おおむね地元方々の御納得をいただいているというふうに確信いたしております。
  38. 岩間正男

    岩間正男君 これは今の御説明でありますけれども、なかなか現状回復については問題もある所です。けれども今後そういうような要望があり、それに対して責任所在が不明確になると、今後、大体あれで話しがついたのだということで、これがもうピリオドが打たれたということで持って行き場がなくなるとまずいと思いますが、大体そういう問題について苦情処理のような機関はあるのかないのか知りませんが、そういうものでこれを引き受けて、これを調達庁の範囲でできなければ、これはやはり政府の問題としてあくまで、やはり大きな犠牲を払わしたのでありますから、これについて補償をするという建前をとるべきだと思いますが、その点はいかがでございますか。長官にお伺いしたいと思います。
  39. 丸山佶

    政府委員丸山佶君) 現状回復を中心にいたします施設あと処置、ただいま総務部長が御説明申し上げたように、十分地元の方の御満足いくような補償措置をとる方針で参っております。今御質問ののちのちになっても円満、完全解決にならないものは調達庁でいつも話をお引き受けし、それによって必要な措置は常にまあとると、この体制であります。
  40. 岩間正男

    岩間正男君 まあそうやっていただきたいと思います。  次にお聞きしたいのは労務者の問題ですね。これはほとんど三分の一に現在減っているわけです。しかもこの労務者の場合は、私はくどくど申し上げる必要がないのだけれども、非常にこれは一般労働者とまた違った立場で犠牲を払わされておると思うのです。つまり日本労働法の的確な適用がなかったわけです。これは米軍の規則でほとんど縛られてしまった。そしてしかもこの施設返還、さらに労務者がそれだけ必要がないということで大量のこれは首切りを何回かにわたって出しておるわけですね。これについての一体保障は現在どういうふうにこれはなっておるのですか。この今までの方針とそれからいろいろこれについて今もお聞きますと、長官がおくれたのは実は駐留軍労務者とのいろいろな折衝の問題だとこういうことを聞いたのでありますが、これはまあ現職の方があるかと思うのでありますが、まあすでに退職した人の中にもこれは非常に大きな生活の要求があり、処置に対しては不満がある。それから現職人たち一体先に行ってどうなるか先行き不安でたまらないと思うのです。これは相当、二十何万という莫大な労働者です。日本労働組合から考えましても駐留軍労働組合というのは十指を屈する、その中でも相当大量の組合員を擁しておる労働組合になっておるのです。そういう点について、しかも国策の面からあれだけのいろいろな今まで戦争や何といいますか、戦争体制に対して、アメリカ基地労務提供する行政協定のこの拘束に従いまして、相当な犠牲を払ってきたわけです。しかしこういう段階でぽっと投げ出されて、そのあとにおける保障というのは非常にやはり不十分ではないか、こういうふうに考えられるのですが、こういう点についてお伺いしたい。
  41. 小里玲

    政府委員小里玲君) ただいま御指摘がございましたように、現職労務者といたしましてもいつ解雇になるかわからない。それから解雇になりました先の生活の安定をいかにするかということで、例の岸・アイク声明が発表されまして以来、多量の労務者解雇になっておりまする実情からいたしまして、非常な不安があることは御指摘通りでございます。政府全体といたしましてもこの問題を大きく取り上げまして、岸・アイク声明以後この駐留軍労務者の離職者対策をいかにするかということで、内閣にこれの協議会を設けまして、いろいろ施策を練ったわけでございます。そして一昨年閣議決定という形をもちましてこれの救済対策をはっきりいたしたのでございまするが、それでもまだ不十分であるというところで、昨年の国会におきまして駐留軍離職者等臨時措置法という法律ができまして、これによって離職をする労務者に対する生活の安定に資するということのために、まあ関係行政機関それぞれの立場においてできるだけの手を差し伸べよう、ということで法律に従って現在それぞれ対策を講じておるわけであります。  ただ駐留軍離職者はもう長年も基地の中で働いておりまするので、ちょっとほかの会社等と事情が異なり、社会に出てからすぐに職場で覚え得た技能なり経験を生かすということが、なかなかむつかしいというような事情にもございますが、基地を離れて離職をする労務者に対して、政府としてあらゆる角度からこの救済の措置を講じようという、まあ各関係行政機関努力にもかかわらず、その意図のようには参っていないことは認めざるを得ないと思いますが、ただ漸次この政府の施策が末端に滲透いたしまして、地方の府県におきましても、法律に基きまして地方の臨時的なこの地方協議会ができております。これに諮りましてできるだけの救済を講じようということで、着々まあその成果をあげておるわけであります。ただ非常に高年令であり、しかもまた先ほど申しましたように技術経験関係が直ちに社会に適用しないというような特別な面もございまするので、非常に全部の労務者に対して全部が就職ができるようにということで、まあ骨折ってはおりまするが、その通りにはいっていないというのが実情であります。やめた人たちの新しい再就職先、あるいはやめた人たちがお互いに相談をし合いまして、企業組合を作って金融の道を講ずるとか、あるいは事業の認可許可を与えてもらうとか、その他各般の措置は講じておりまするが、政府といたしましては今後とも関係行政機関の協力のもとにこれが措置に万全を期して参りたい。かように考えておる次第でございます。
  42. 岩間正男

    岩間正男君 これは非常にやはり国民感情の上から重大問題を含んでいると思うのです。米軍がいる間にそれに協力して、それで米軍向きの仕事でなければちょっとできない、専門化してきているわけです。そういう人たちがここで転職をする。そうするとその間になかなかつながりがうまくいかない。これは御説明通りであります。それに対する一体保障、それから退職に伴っての手当、それから生業に就業するまでの保障、一体こういうものについてこれの万全の措置が講じられているというふうには私たち考えられないわけですね。これは日本一般労務者よりもこの点で非常に特殊な労務者であり、いわば犠牲者であります。こういう形の、しかも戦略が変ると、とにかく頂上の会談で声明でも一ぺん出されるとそれで何万人もの人が首切りに引っかかる。こういう形のものでそれに対する抵抗のしようもない。生活権を守る保障もない。こういう点で非常にいわば日米関係における現在の特殊な、今あまり望ましくない条件からくるところの、これは国民に対する大きなしわ寄せなんだ。この点についてこれはあなたたちだけをむろん責められないわけでありますが、現在の政府の政策全般に関する問題でありますから、その点についてはわれわれも今まで力説してきたんですけれども、こういうところでどうでしょうか、万全の措置というようには考えられないのですが、具体的に言いますと転業するまでの保障は一体どうなっているのか。それから退職のときの手当はどうなのか。それから就業するまでのそういう保障について、これはいろいろお考えがあるのかどうか、具体的にこういうようなことについてお聞かせ願いたいと思います。
  43. 小里玲

    政府委員小里玲君) 退職時におきまする駐留軍労務者の取扱いでございまするが、これはまず退職手当であります。退職手当につきましては、一応現在の駐留軍離職者の退職手当に関しまする規定から申しまして、国家公務員が退職になりまするときよりも有利な条件で手当を払っております。特に一昨年岸・アイク声明が発表されまして、大量の離職者が出るということがございました際に、調達庁米軍折衝をやりました結果、それまででも国家公務員よりも有利な退職手当であったのでありますが、そのときにそれをもっと有利にしようという話し合いができまして、退職手当の増額の日米間の協定ができたわけであります。従ってまあ相当国家公務員に比較しまして有利な退職手当が払われております。
  44. 岩間正男

    岩間正男君 具体的にはちょっとわかりませんか。これは有利といってもどの程度どうなっているか、数字でちょっとわかりませんか。
  45. 小里玲

    政府委員小里玲君) 大体国家公務員に比較いたしまして……、ちょっと数字を持っておりませんが……。
  46. 岩間正男

    岩間正男君 あとでそれじゃまた資料をいただいて……。
  47. 小里玲

    政府委員小里玲君) それから退職するときに、これは退職手当とは別に、離職をいたしますときに、これは日本政府から特別給付金というのを出しております。先ほど申しました退職手当は、これは手当として労務者に払いますと、それを米軍日本政府に償還をしてくる形になっております。それとは別に退職の際に特別給付金を労務者に出す。講和発効以後に就職をいたしまして三年以上の者に三千円、それから講和発効以前に就職をして三年以上の者に六千円、それから十年以上たちました者に一万円、こういう特別な給付金を、先ほど説明を申しました駐留軍離職者等臨時措置法によってこれは支給しております。それから国家公務員には該当はございませんが、退職手当の一種ともいえば一種になりますが、国家公務員でいいます夏期手当、あるいは年末手当の、何といいますか、六月までにやめた労務者には、たとえば五月にやめますと六月に支給すべき夏期手当の五カ月分を出すと、こういうようなことで、年末手当でも同じことなんですが、途中でやめた場合に、年末手当なり夏期手当の分割払いという形で、これも退職手当の一種として支払っております。これも国家公務員には該当事項がないと思います。  まあ以上申しましたように、相当有利な取扱いをいたしておりまして、これが具体的に、離職をいたしました際には、普通の労務者と同じように失業保険をもらうわけであります。従って失業保険の受給期間中は、駐留軍労務者の平均ベースが相当一般よりも高い関係上、失業保険の額も相当高額な額になっております。従って公共事業等に働くというような場合にも、失業保険の受給期間ですと、なかなか希望者が出ないというような実情も一部にはございます。まあ一般比較しますると、相当高額の失業保険をもらっておるということが言えると思います。まあそういうふうにして、失業保険がいよいよ切れる時期になりますると、どうしても将来の生活のために何らかの職を見つけるなり、あるいは自分で事業を始めるなりということになるわけでありまして、その職を見つけたりあるいは事業を始める場合に、先ほど申しました臨時措置法に基いて国家としてはあらゆるめんどうを見よう、こういう仕組みになっておるわけであります。
  48. 岩間正男

    岩間正男君 今のも、これは労務者に対する退職後の処理として、ちょっと資料的にこれはちょうだいしたいと思うのです。  で、まあ今お聞きしましたけれども、有利な面というのをあげられたのですが、しかしまあその額はこれは全く大したものじゃないので、政府の出している特別手当なんかは一万円、六千円、三千円というような額だけれども、普通の公務員と比べてこれは年金はないのだろうと思うのですね。いわゆる恩給方面のそういうものはないわけですから先いき非常に不安だ。そこへもってきてなかなか職業の転換が困難だ。こういう困難な条件があるので、いろいろな点でこれは労務者から今まで要求が出され、また組合としても団体交渉されたと思うのですが、これはどうでしょうか、長官にお聞きしたいのですが、こういう問題を、調達庁の段階でむろん折衝に応じて当の責任者になるわけですが、しかしこういう問題、特にそういう問題について政府と相談されるという、そういう態勢になっておりますか。つまりあなたたちの限界では、なかなか壁に突き当ってやりきれないという問題も起ってくるだろうと思います。臨時措置法が一応作られて名目的にはこれでいいのじゃないかということになるが、しかしそれは使用者側の考え方だ。実際はそれで生活を長年やってきた、そういう人たち労務者の立場からいえば、そういうことではなかなかこれは将来の安全を保ち得ない。それを調達庁をとにかく交渉相手として交渉をやる。しかしそういう問題について調達庁段階だけでこれを食いとめるということでは、やはり非常に私はまずいのじゃないか。国民感情ともつながった重大な問題ですが、これは何か政府とこういう問題について相談されるとか、そういう仕組みになっておりましょうか。これをもっと国家的な立場からこの問題を私は全面的に見てやる、こういう点が非常に重要だと思うのです。そうでないと、全くいわば占領の政策の孤児というような格好になる。占領政策の孤児に落してはならぬ大量のこれは労務者であります。さらに現職の七万以上の諸君の先行き不安の問題も絡まってくる、この点いかがでしょう。
  49. 丸山佶

    政府委員丸山佶君) お説の通り駐留軍労務者の離職ということは、軍という特殊なものの関連において、なかなか整理を食いとめる等の措置が十分にのきかねます。私実はちょっと委員会出席がおくれて申しわけありませんが、前々からきょうの一時よりということで、労働組合の全駐労と団体交渉出席がおくれて申しわけありませんが、本日においてもそれらの整理の延期等の問題、またただいま国会審議中の公務員の初任給の改定、これらに関連して駐留軍労務者の給与をいかにするかというようなことが、きょうの全駐労との団体交渉の議題でございますが、その他もろもろのことにつきまして、私が雇用主という立場で直接に労働組合と話をし、それに基く処置、対軍折衝をすべきことは対軍折衝をしている、また国内問題は国の関連機関と協議するという態勢でありすが、これをもっと具体的に申しますというと、離職に対するところのお話のような困難な事情、これは雇用主の立場の調達庁だけではできかねます。実際にやっておるのは次の職を求めるための基地内における職業補導訓練というようなことを、軍との話し合いをつけて調達庁がやる。また特別給付金等の処置もするが、あとのすべてのこと、これは労働省を初め、いろいろな政府機関に関連があるわけでございます。そのために臨時措置法にも中央協議会というものができておりまして、内閣、総理府を中心にしまして各省の次官クラスが委員になり、またその下に幹事会を設けて担当局長がなる、これがありますので、常に私ども調達庁だけでもって処置のつかない困難なような事情、これを総理府の各省を集めた協議会に持ち出しまして、そこで協議を進め、それぞれの処置をとっていく、このような態勢ができております。
  50. 相澤重明

    相澤重明君 長官に、中に入っていく前に、今お答えがあったけれども、きょうの日米合同委員会というのはどういう問題を御審議なさったのでしょうか。
  51. 丸山佶

    政府委員丸山佶君) きょうの日米合同委員会のおもなる事項としましては、これは実は今のお話駐留軍労務者にも関連する事項でありまして、労務者の身分に関しまして、軍側が整理、解雇その他の処置が講ぜられる、これに対して日本側も同意の上でそれらの適正の措置をとる、この基本原則が新しく一昨年作りました基本労務契約というものにあるのでございますが、そういうような仕組みでも、日米双方の意見が一致しない場合にはどうするか、しない場合には合同委員会に持ち上げてきめるのだ、こういう規定を設けております。その合同委員会で、さればそれらの事項をどういう工合に審議していくか、非常に今全体会議でやってみましたが、なかなか法律的角度あるいは実質からいいまして、専門的な事項が多々含まれておる。そのためにこれは特別なる小委員会と申しますか、専門委員会を設けたらよかろう、このようなことが本日の議題のおもなものでございます。
  52. 相澤重明

    相澤重明君 こういう点については、今のあなたのお話の中で出ませんでしたか。たとえば先ほどの御答弁いただいた中には、特別給付金の問題がありますね。そういう問題で講和発効前の人と講和発効後の人とでは違うわけですね、先ほどの御説明では。その基準は三千円と六千円ですか、一万円……。それについて一カ月くらいのところで、ほんとうに違う人がだいぶあるわけですね。そういうような点は、これは少くともさっきも岩間委員がおっしゃるように長い間御苦労されたこの日本戦争に負けたという中に置かれた立場の人たちのことでありますから、相当国として考えなければならぬ問題があると思う。しかし、事は米軍の予算にも関係をするところもあるでしょう、中には。あるいは国自体だけでできるものもありましょう。そういう面もあって、幾分でもこの際やめていただくことについてはよくしてやりたい、こういうような点で何か具体的にそういう面はお話し合いに上らなかったでしょうか、いかがでしょうか。
  53. 丸山佶

    政府委員丸山佶君) 労務部長説明しました特別給付金というのは、この離職者に対する臨時措置法に従ってきめられた事項でございまして、これは実は米軍とは関係なく、日本政府として非常に御苦労をかけた労務者、それが両国の関係においてやむを得ず退職されるということに対して、日本政府として特別に給付しようという趣旨でございます。米軍との関係では、先ほども説明しました退職金の規定、これは公務員よりもはるかに私も有利に契約を締結したつもりでございますが、それによって処置する。従いまして米軍との間の日米合同委員会等でやります事項は特別給付金というような問題を含まないものです。
  54. 相澤重明

    相澤重明君 私は例をあげたのであって、別に特別給付金、これが米軍から出ているとは思っておりません。  そこで、そういうことで退職金制度について努力されたことは私も非常に敬意を表していいと思います。それから、いま一つはこういう点はいかがでしょうか、たとえば米軍の予算が削減されて、そうして事業場を閉鎖しなければならぬ、この場合に、そのあとにPD切りかえといいますか、こういうような問題について調達庁としてはどういう措置をとっているか。私ども考えるならば、当然米軍としては一応予算を削減されてPDにかえなければならぬということはわかっても、そこに働いておる労務者については当然私は引き継いでもいいのじゃないか、こういうことを考えるのであるが、こういうような点については調達庁長官といたしましては、どういうふうにされておるのか、ちょっと御説明をいただきたい。
  55. 丸山佶

    政府委員丸山佶君) いわゆるPD切りかえの問題は、昨年一年間を通じての労務者関係では重大問題でございました。私といたしましては、そういう政策をとられることは、はなはだ適当でない。これをやめる、やめられないまでもできる限り縮小するのは当然だ、こういう態度をもって軍側と折衝を続けて参りました。相当大きい数十件のそれらの該当の事項を軍側で計画しておったのでございますが、努力の結果、実際に措置をとられたものは十数件と思います。それに該当者が一千三百名ほどの人間が該当をいたしました。これについて今後はかかる政策をとらないように強く今でも折衝を続けておりますのであります。御説にありましたように、それらのために整理された人も、その仕事がある限り、そこに移りかわるのは当然であり、これは軍側もまことにその通りであるということで、仕事を請負いました会社に就職のあっせんを私どもとともにやっておるわけであります。実は、そこに一つの困難なる問題は、従来、軍側の要員であったときに相当な給与をもらった。ところが、その仕事会社の方に移りまして、会社がその仕事をする場合に、いかにもその人がなれておられるし、働いてほしい、来て下さいということですが、給与問題の調整ということが非常にむずかしいのでございます。実際的には、全部が全部その新会社の方に移られるということもない。相当数の人がもちろん移っておられますが、そのような困難な事情もあるのが実情でございます。
  56. 相澤重明

    相澤重明君 それから、今の点については人員とかあるいは予算も私承知いたしておりますから、省略しまして、基本的な問題として、一つ長官にお尋ねしておきたいのは、調達庁業務のあり方、こういう点について、先ほども、いわゆる昨年の八月から防衛庁に統合されたのであるけれども、調達業務というものは一体どういうあり方であるか、こういう点を、丸山調達庁長官は、政府の任命であるからなかなか言えないと思うが、しかし、少くとも調達業務に従事しておる職員の立場、これをお考えになれば、毎年々々調達庁の職員が首を切られておるということについては、もっと私は別の角度でお考えがあってしかるべきじゃないか、こう思うわけです。単に米軍仕事に携わっておる、予算の削減というだけでは、私は、日本調達庁としてのあり方について問題があるわけです。むしろ私は、実は前年度も、決算委員会の中で申し上げましたが、軍の中で、軍艦であるとか、あるいは飛行機であるというものについては、あるいはこれはその調達をさせるということについても、正しいか正しくないかということについては、これは別でありますが、少くとも日本政府が使う一般の什器類であるとか、あるいはそういう土地であるとか、いろいろ大蔵省との関連もありましょうし各省との関連もあるけれども、そういう調達業務というものを一本化する考え方というものは持てないものかどうか。こういう点について調達庁本来の——今までの奇型的な存在でなくて、調達業務というものについての、国の調達業務についてはどうあるべきか、こういう点についてお考えになったことがあるか。それとも政府部内において、あなたはそういうことを献言したことがあるかどうか、この点について一つお答えをいただきたいと思います。
  57. 丸山佶

    政府委員丸山佶君) お話通り、実は私を含めまして調達庁の職員そのものも駐留軍労務者とほぼ同じような状況にありとも言えると思うのでございます。従いまして、軍が逐次引き揚げ、撤退する、基地の数が減る、労務者の数も御承知通り減ってくる、従って現在の調達庁仕事は縮小してくる、そのために年々人員整理等も調達庁自体において行われる、こういう事態でありますので、私ども調達庁の幹部といたしましては、数年前から真剣にこの問題を検討して参ったのでございます。今お話の出ましたオール官庁の調達をやるような問題、あるいはもう一つ米軍の調達を占領時代はやっておりました。戦後は今の不動産と労務に限られてしまいましたが、占領時代はいろいろなものを一手に引き受けてやっておる。これを元のようにするような仕事はいかぬ。これらの問題を真剣に検討し、各方面とも協議を続けて参ったのでございますが、結局のところ、やはり調達庁が駐留米軍というものに直接関連する仕事をしておる、この駐留米軍日本の防衛という観念から駐留をしておる。日本の防衛の責任庁は防衛庁である。これらの大きな大局的見地から調達庁防衛庁と統合するのが最も至当な処置方針である、そういうことで一昨年そのような法案が御承知通り国会を通過いたしまして、昨年の八月からその傘下に入っておるわけでございます。この現状において考えますならば、やはり今後の仕事の調整という問題は防衛庁の中において検討され処置すべきものである、このように考えて目下検討を続けておるわけでございます。  なお、その職員の整理の対策といたしましは、これは政府全体としましても調達庁の職員が今まで長いこと占領時代から苦労されておる。さらに仕事が縮小したから、それでやめてもらえばいいのだ、こういう処置はとるべきでない。やはりそれの配置転換なり何なりによって処置をはかるべきである、こういうことの下に来年度も三百二十名の定員減があるのでございますが、防衛庁内部あるいはほかの政府の方において増員のできるところ、それらのところに配置がえをいたしまして、いわゆる出血整理というような事態はおこらないように、これは政府関係機関が協議済みになっておりますので、私はその点は安心しておるのでございます。
  58. 相澤重明

    相澤重明君 今の長官お話を聞いておると、三十四年度の三百二十人の定員減についても十分職員の心配のないようにしていく、こういうお話だと思いますが、これは本人の意思を尊重をして、そうして調達庁職員組合の人たちと十分お話し合いができる、こういうことを確認をしてもよろしゅうございますか。
  59. 丸山佶

    政府委員丸山佶君) この数日前にも、うちの職員組合の全国から集ってきました代表者ともよくお話し合いをいたしたいのでございますが、もちろん、できる限り本人の意思、希望を尊重して処置する、そのつもりでおります。
  60. 相澤重明

    相澤重明君 次に、会計検査院にお尋ねいたしたと思うのでありますが、この不当事項の第五ですね。第五の「過大な土地借料支出しているもの」というところに「東京電力株式会社所有のもので同社が鉄塔敷地として使用しているものについては原野の坪当り借料年〇円八四」こういうのであるのでありますが、これは電気工作物規程第百六条の規定により算出されたように思うのでありますが、ゼロ円八十四というと、これは八十四銭のことですかね、こういうのは地域によって違うのか、それともこのことは全般的に国内の山林原野の場合に通商産業省令として第十三号の適用ということでやっておったのか、この点の御説明をいただきたいと思います。
  61. 保岡豊

    説明員保岡豊君) これは調達庁の方で東富士の原野についてゼロ円八十四銭をきめておりまして、その原野なみの八十四銭を東京電力が所有しておる土地の鉄塔敷地に原野なみの借料を適用として払っていた。これに対しまして、この案では、それは必要ない、こう言っておるわけでございますが、今の御質問の点のゼロ円八十四銭はこの東富士のほかの原野なみのもので、ほかの方では必ずしも八十四銭ときまつておるわけではございません。
  62. 相澤重明

    相澤重明君 私は東富士であるからどうということでなくて、今たとえどういうことであろうとも、現在の補償も含んでそうでありますが、原野の借料が八十四銭というのはこれは実に前時代的な金銭の考え方ではないか、こう思うのです。しかしこれが東富士だけであって、よその地域ではそういうことがないといえば、これまた考えられることでありますが、どうもそういう点に少しお役所の考え方が、国民生活というものから遊離しているのじゃないか、こういう点をちょっと心配をしたものですから、会計検査院が調査をされた際に、通商産業省令十三号に基くところの電気工作物規程、これによる適用というものがどういう解釈がとれるものか、私はそれを、会計検査院が調査をされたと思うから、実はまず第一点にお尋ねをしたかったのです。  第二点の問題の借料が、電力会社あるいは電源開発株式会社が使っておったから、調達庁がそれを二重払いをした、こういうことについてはこれは指摘された通りでけっこうだと私は思うのです。そういう調査の足りなかった点は、やはり調達庁の職務の怠慢だったと私は思うのです。そこで調達庁に今度お尋ねするのは、返納さしたというのでありますが、いつこれは返納をされておるのか、過払金をとっておるのか、この日時を明かにしていただきたいと思うのです。
  63. 鐘江士郎

    政府委員鐘江士郎君) この返納につきましては昭和三十三年十二月二十七日に収納いたしました。
  64. 相澤重明

    相澤重明君 会計検査院の方はどうですか、私の最初申し上げた点は、先ほど申し上げたように、通商産業省令第十三号に基く点について、〇・八四円、(八十四銭)というのは実に前時代的な借料だと思うのですよ。そういうようなことがあなたの方で調査をした場合に、どんなふうにあなた方はお考えになったか。これは調査したでしょう。調査したからこそこの答案が出たのだからその点いかがでしょう。御見解を一つ承わっておきたいと思うのです、これは会計検査院に。
  65. 保岡豊

    説明員保岡豊君) 工作物規程と無関係に鉄塔敷地についてその辺の原野並みの八十四銭、この八十四銭、この八十四銭が非常に少いという感じがいたしますけれども、八十四銭を払っていたということで、工作物規程の制限のところではこれはございまいませんのでございます。今、原野並みのものが八十四銭はいかにも少いとおっしゃることはあれでありますけれども、前からの、終戦直後からずっといろいろ改訂をいたしまして、現在こういうふうになっておるわけでございます。
  66. 西川甚五郎

    委員長西川甚五郎君) ちょっと私から会計検査院の方に参考に伺いたいと思いますが、この調達庁の検査は大体延べ何時間くらいおやりになったのですか。
  67. 保岡豊

    説明員保岡豊君) 検査は、御承知のように書面検査と実地検査がございますが、書面検査は部屋におりますときに、ずっとやっておりまして、実地検査は、実地に検査に参りました。本庁のほかに各調達局がございまして、各調達局に、四、五人参りますものが十日ほど行っております。東京、横浜——本件五号、六号とも横浜でございますが、この扱い量の多いところは二へんやっております。
  68. 西川甚五郎

    委員長西川甚五郎君) そういたしますと、この報告書にあります不当事項並びに是正させた事項ニ件ですが、この事務官同士忠告されたというような件数はどのくらいに上っておりますか。
  69. 保岡豊

    説明員保岡豊君) 忠告いたしましても、いろいろ調達庁の方でもお考えがありまして、その通りにはいかないということが非常に調達庁は多いのであります。われわれ会計的に申しましても、そうでないものが非常に多いので、たとえば会計的にもう間違っているとか、違法であるとかいうものであれば、すぐ忠告してその忠告通りに直りますけれども、この調達庁の方は照会を発しまして、それからその回答は取りますけれども、これはこっちの言う通りにはむずかしくてできないのじゃないかということがたくさんありまして、照会の件数は今ここに持っておりませんけれども、先ほど申しました各調達局に行って帰って参りますと、平均四、五件は実地検査として照会を発しております。
  70. 西川甚五郎

    委員長西川甚五郎君) ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  71. 西川甚五郎

    委員長西川甚五郎君) 速記を始めて下さい。  ほかに御質疑はございませんか。御質疑はないと認め、これをもって調達庁の部、検査報告批難事項第五号、第六号の質疑は一応終了したものと認めることに御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  72. 西川甚五郎

    委員長西川甚五郎君) 御異議ないと認めまして、さよう決定いたします。  暫時休憩いたします。    午後三時九分休憩    —————・—————    午後三時二十一分開会
  73. 西川甚五郎

    委員長西川甚五郎君) ただいまより休憩前に引き続き委員会を再開いたします。  昭和三十二年度決算のうち、防衛庁の部を審議いたします。検査報告批難事項は第十一号から第二十三号までであります。  まず会計検査院から概要説明を願います。
  74. 保岡豊

    説明員保岡豊君) 十一号から説明いたします。十一号は、潜水艦潜航練習装置の製作代金を支払うに当りまして、さきに債権の譲渡を認めておきながら、債権譲渡契約を解除したという製作会社の口頭の申し入れを信用いたしまして、事実の調査を十分しないで全額支払ってしまいました。しかし事実は依然として債権は譲渡されたままでありましたので、やむなく債権者が製作会社に負っていた債務額を除きまして三百五十一万をさらに支払う結果となったものであります。またこの代金のうちには十九万五千円が付掛してありまして、これを物品購入代などに充てております。  次の十二号は、イタリアのスタッキーニ株式会社にロケット弾を注文いたしまして、その前払金二千二百余万円を銀行保証状と引きかえに支払うことを契約していたものを、会社からの要請によりまして、保険会社の保険証券と引きかえに支払うことといたしまして支払いましたが、契約上の船積時期が五月ということになるのに、保険証券の有効期限はそれよりも早期の三月になっていたなど、前払金の保全に関する処置が適切を欠いたと認めたものであります。しかして現在まだ船積みされていませんで、前払金の返還についてはすでに失効したと保険会社がこれを拒否している状況であります。  次の「工事」、十三号は、工事の予定価格の問題でありまして、諸経費を材料費、労務費などに割り掛けまして見積りする場合に、製品となっている材料の価格に対しましては取扱い経費程度にするという考慮が払われていなかったものであります。  次の十四号は、T—43練習機、これは二十九年に国産いたしましたプロペラの練習機でありますが、その部品の購入に当りまして、その部品の製造会社が直接米国と技術提携をしていたり、独自に研究開発している部品を航空機会社を通して買ったために、一般管理費や特許使用権及び治工具等の償却費を割り掛けされたもので、現に直接購入したものもあるのだから、直接購入して経費を節減すべきであるというものであります。  次の十五号は、海上自衛隊員の正帽について、関係法規の改正も行われず、予算においても認められないのに、従来より貸与数をふやしてきめた購入数によって購入したものであります。それで従来通り貸与しているので、在庫もあり余っている状況で、本件は全然購入する必要がなかったものであります。  その次の十六号は、航空基地の整備用として万能研摩盤、工具研摩盤、平面研摩盤を購入しましたが、基地における工作機械の設備状況から見て、この三種類の研摩盤をとりそろえる必要はなく、万能研摩盤だけで十分な状況でありますから、工具研摩盤及び平面研摩盤は購入する必要はなかったものであります。  次の十七号は、海上艦艇のエンジンのオーバーホール上の交換部品を米国の海軍補給処から購入していますが、国産品でも使用上支障ないものでありますから、国産品を購入して経費を節減すべきであるというもので、(ア)は、調達計画の通達をもっと早くすれば、国産品を購入しても修理時期に間に合ったはずである。(イ)は、調達関係資料が早く整わなかったという理由でありますが、資料が整った時期に購入しても十分修理に間に合ったものであります。  次の十八号は、ジェットエンジン運転検査に使用するテストスタンドについて輸入品を購入していますが、これは一年前から実際に現物が配備されておりまして、これを見ましても、国産品で十分と認められるものでありますから、高価な輸入品を購入する要はなかったというものであります。  次の十九号は、航空基地の野外整備隊機械工場で使用するフライス盤を購入しましたが、基地の整備作業内容からいいまして、二馬力程度のものが適当であるのに、七・五馬力のものを買ったことは作業内容に適当せず、従って本件は高くて不便なものを買ったことになります。  次の二十号は、普通実包の予定価格の作成に当りまして、会社の既往の実績を資料として作成されたものでありますが、過去の実績を利用するのに修正が足りず、調査が不十分で、現状の把握が足りないために予定価格が過大に積算されていると認めたものであります。  二十一号は、羽田空港に自衛隊の航空機が着陸する際に給油するガソリンの価格につきまして、空港における本件ガソリンの販売価格をもととしないで、その上に鶴見—羽田間の輸送費まで加えて買ったというのは、空港の販売価格の調査不十分の結果であると認められます。  次の二十二号は、航空機搭載用の電子機器の点検修理につきまして、(ア)、レーダー等の修理について前回に請け負わせた際の原価を調査して、これを反映させて契約すれば価格を減額できたというもので、(イ)は、領収検査に要する燃料費について、試験飛行用のものが、同時に請け負わせた機体の方にも領収検査の試験飛行用の燃料費を計上してあり、電子機器と機体とは、同時に領収検査の試験飛行を行うことができるので計上の必要なく、また機器運転試験用の燃料も過大に計上されていたものであります。  次の二十三号は、松島航空基地の用地買収に当りまして、そのうち十一万余坪の分は、基地内の土地を代替地としてあっせんすることとして、離作補償を別に支払った上、田を坪当り四百三十円、宅地を坪当り千二百円で買収し、一方代替地は、財務局で坪当り百五十円で売り渡しているけれども、耕地はともかく、少くとも宅地だけは等価交換でき得たというものであります。というのは、国道や駅や学校など、代替地の宅地化や電灯線移設費、水道取付費を防衛庁で持っておりますので、同等以上と認められるからであります。またナシ畑の作物補償額の算出について、反当り補償額を出すのに、小さい面積を使って大きい面積をその反当りに掛けて補償総額を算出したり、複利年金現価率を掛けて算出していなかったりして、評価額が過大になっているというものであります。  以上各号の要点を説明いたしました。  なお、不当事項、十一号の前に、繰越額、不用額が前年に比べ減少したということや、その他の留意事項などを述べております。  以上で概要説明を終ります。
  75. 西川甚五郎

    委員長西川甚五郎君) 次に、防衛庁から概要説明を願います。
  76. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) 昭和三十二年度決算検査報告の御説明を申し上げます前に、一言ごあいさつを申し上げたいと思います。  私、今回はからずも防衛庁長官を拝命いたしまして、まことに責任の重大なことを痛感する次第でございまするが、何分微力でございまするので、今後わが国の防衛という重要な職務に対してあらゆる努力をいたして御期待に沿いたい、かように存じておる次第でございまするが、所管事項等につきましてもいろいろ問題のあることもございまするので、どうぞ従前に倍しまして皆様の御協力と御指導を賜わりたいと思う次第でございます。  それでは、ただいまから昭和三十二年度の防衛庁経費の決算概要について御説明を申し上げます。  昭和三十二年度の防衛庁経費の当初の歳出予算額は千十億円でありまして、これに前年度から繰り越した金額二百三十六億六千百八十万円、大蔵省所管より移しかえを受けた金額八百八十二万円を加えますると、歳出予算現額は千二百四十六億七千六十二万円と相なるのであります。この歳出予算現額のうち、支出済み歳出額は千百十九億八千六百五十六万円でありまして、これを歳出予算現額に比較いたしますると百二十六億八千四百六万円の減少と相なっております。右の減少額のうち、翌年度に繰り越した金額は、財政法第十四条の三の規定によりまして七十六億六千四百三十四万円、財政法第四十二条ただし書きの規定によりまして十一億千五百九十五万円、財政法第四十三条の二の規定によりまして六億九千二百六十七万円、計九十四億七千二百九十七万円でありまして、不用となった金額は三十二億千百九万円であります。  これを昭和三十一年度の決算比較いたしますと、昭和三十一年度は、翌年度への繰り越し金額が二百三十六億六千百八十万円、不用と相なった金額が六十億四千三百九十七万円でございましたので、繰越額におきまして百四十一億八千八百八十三万円、不用額においては二十八億三千二百八十八万円の減少でございます。  従来繰越額及び不用額が多額であったことにつきまして、本委員会においてもしばしば御指摘、御警告を受けたところでありまするが、昭和三十二年度におきましては、その警告の趣旨を体しまして、まず実行可能、かつ確実な経費のみを歳出予算として計上いたし、所要の経費につきましては国庫債務負担行為を活用する等、予算計上自体を適正化するとともに、その執行に当っては、年度当初よりできるだけ予算の計画的、合理的な執行に相努めました結果、右のように繰越額を圧縮することができた次第でございます。なお、昭和三十三年度におきましては、さらに改善の実をあげるものと考えておる次第であります。  右に申し述べました繰越額九十四億七千二百九十七万円のうち、おもなものは、器材費五十三億四千四百三万円、艦船建造費十九億六千四百四十七万円、施設整備費十二億三千七百三十万円等でありますが、この繰り越しを生じました理由の概要を申し上げますると、器材費につきましては、装備品の大部分一般市販品と異なり、特殊の規格、性能が要求されておりまするし、調達に際しましては規格の決定、仕様書の調整に慎重を期する等、発注までの準備段階に相当の日時を要しましたため、契約が遅延したことによるものであります。艦船建造費につきましては、要求性能の決定及び基本設計の作成に意外の日時を要しましたこと、また塔載武器のアメリカよりの供与が遅延いたしたため、建造に不測の日時を要したこと等に基くものであります。施設整備費につきましては、用地取得に際し所有者等の納得を得ることが困難な場合がきわめて多く、また補償価格の折衝に意外の日時を要しましたこと、また米軍施設返還が遅延いたし、従って工事の着手が遅延したこと等に基くものであります。  また、不用額のおもなものは、人件費十六億七千二百四十四万円、器材費八億六千八十七万円、糧食費四億六百四十六万円等でありまするが、この不用額を生じました理由を申し上げますれば、人件費につきましては、予算編成の基礎として定員の充足率に実行上若干の余裕を生じましたためであり、器材費につきましては、航空機の購入契約が予定額より少かったこと及び米国よりの航空機の供与が遅延いたしましたため、航空機用燃料費に不用額を生じたこと、並びに経費節約の結果によるところであります。糧食費につきましては、右の定員の充足遅延に伴うものであります。  次に、会計検査院昭和三十二年度決算検査報告におきまして御指摘を受けましたものは、第十一番以下第二十三番に至る十三件であります。これらを大別いたしますと、物品購入代金の支払いに当り処置当を得ないというもの、工事の予定価格の積算が過大と認められるもの、物資の購入に当り処置当を得ないというもの等に相なっております。  これらの案件につきましては、それぞれの政府委員及び説明員から十分御説明を申し上げるつもりであります。  当庁における物資の調達や予算の経理につきましては、一般国民から重大な関心を寄せられておりまするので、特にこれが執行に当っては、諸法規を順守することはもちろん、最も効果的に運用するよう戒め、また綱紀の粛正にも特に留意いたし、もって国民の負託と信用にこたえるべく努力をいたしておる次第であります。  今回、会計検査院の御指摘の次第もありますので、今後さらに一そうの反省を加えまして、その趣旨をよく部下一同に徹底せしめ、将来再びかような過誤を繰り返さないよう万全の措置を講ずる所存でございます。なお、このたびの会計検査院指摘事項につきましては、十分にその事実を究明いたしまして厳正な処分をいたした次第でございます。  以上をもちまして御説明を終る次第でございます。
  77. 西川甚五郎

    委員長西川甚五郎君) なお、補足説明がありましたらお願いいたします。
  78. 山下武利

    政府委員(山下武利君) 昭和三十二年度の防衛庁決算につきまして会計検査院から御指摘を受けましたものにつきまして、防衛庁といたしましての概略の御説明を申し上げます。  御指摘を受けましたものは、「不当事項」として十三件、十一番から二十三番まででございます。この十三件の内訳は、予算経理関係が二件、工事関係が一件、物件関係が八件、役務関係一件、その他一件となっておりますが、これらにつきまして以下概略の御説明を申し上げます。  まず第十一番、「物品購入代金の支払にあたり処置当を得ないもの」という件でありますが、本件につきましては、会計検査院指摘通りでありまして、まことに遺憾であります。事故の防止につきましては指導監督を厳にいたしますとともに、隊員の教育、事務取扱いの改善等によりましてその根絶を期しております。  次に、第十二番、「ロケット弾および発射装置の購入にあたり処置当を得ないもの」という件であります。本件は、契約の相手方でありますスタッキーニ社の長期にわたる不利のストライキによりまして、ついに契約不履行となり、会計検査院指摘のような状態に立ち至っているということはまことに遺憾でありますが、当庁といたしましては目下イタリーの法廷に訴訟を提起いたしている次第であります。  次に、第十三番、「飛行場照明施設工事の予定価格の積算が過大と認められる」という件についてであります。本件につきましては、会計検査院指摘通りでありまして、まことに遺憾でありますが、今後この種経費率の取扱いにつきましては十分注意するように措置いたしておりますので、御了承願います。  次に、第十四番、「「T—34」練習機機体部品の購入にあたり処置当を得ないもの」という件についてでございますが、T—34練習機は、富士重工が親会社として、ピーチクラフト社と技術提携のもとに開発生産した戦後最初の国産機でありまして、これに装着する計器類等も、親会社たる富士重工の技術開発指導を要するものがあり、また、親会社を経由して一括購入することによりまして、調達事務が簡素かつ円滑に運ばれるものと認め、同社を通じて一括購入したものでございます。しかしながら、会計検査院指摘通り、親会社を通じて購入した計器類等のうちに、製造業者から直接購入することが可能であったと思われるものが一部あったことは遺憾であります。なお、今後は、親会社の指導を要しない程度に技術が向上し、規格の安定した製品については、調達体制の整備ともにらみ合せまして、会計検査院指摘の趣旨に沿って直接購入するよう検討いたしたいと存じます。  次に第十五、「不急の正帽を購入している」件についてでありますが、当時の状況からいたしまして関係法規の改正すなわち貸与基準三年に一個を六年に二個とすることを見込みまして、円滑なる補給を期するために調査したものでありますが、会計検査院指摘のような結果となったことは遺憾であります。今後はこのようなことのないように注意いたす所存であります。  次に、第十六、「不用の工具研ま盤および平面研ま盤を購入しているもの」という件についてでありますが、航空地における航空機等の整備作業内容の検討及び野整備の実情把握が不十分でありましたために工具及び平面の両研ま盤を購入したことは遺憾であります。しかしながら、購入いたしました研磨盤は、すでに再配分いたしまして、工具、平面の両研磨盤はジエット基地に、また、万能研磨盤はレシプロ基地にそれぞれ配備いたしましたので、今後は技術員の充足と練度向上に意を用い、さらに一そう研磨盤を活用するように改善いたしたいと存じております。  次に第十七番、「艦船用造修材料の購入にあたり処置当を得ない」件についてでありますが、会計検査院指摘のような結果となったのは、オイルシール外三十三点については、当時需給統制隊が未発足の状態にあり、調達計画策定の前提となる在庫量の調査集計が遅延したためであり、またシールリング外六十五点については、調達時期に関係資料が整うことが困難であると判断したことによるものであります、今後はこのようなことのないように十分注意する考えであります。  次に第十八番、「ジェットエンジンテストスタンドの購入にあたり処置当を得ない」という件についてでありますが、調達所要分の二台については輸入品の調達要求をしたのでありますが、検討した結果、昭和三十三年二月に至り、推力測定装置及び計器類等を除き国産が可能であるとの見込みを得たのであります。しかるに、本件ジェットエンジンテストスタンドはわが国最初の国産品でもあり、高価品でもあるので、調達に慎重を期し、前記二台のうち一台を国内で調達することとしたものであります。しかしながら、結果において会計検査院指摘通り、高価な輸入品を買い付けるに至ったことは遺憾であります。  次に、第十九番、「使用目的に適しない規格のフライス盤を購入した」という件についてでありますが、当時二馬力のもので所要の性能を有する国産品が得られないものと速断したため、能力過大のフライス盤を購入したことは遺憾であります。しかしながら、今後は、部隊の整備能力の向上に努めるとともに、整備すべき他の工作機械ともにらみ合せ本件フライス盤の効率的使用をはかるように特に留意いたしたいと存じます。  次に、第二十番、「普通実包の予定価格の積算が過大なため購入価額が高価と認められる」というものでありますが、会計検査院の御指摘の点は、予定価格の積算に当り調査検討が不十分であったため高価となっているというものであります。本件予定価格の計算方法につきましては、実は当庁としても会計検査院指摘のような方法を一応は考えたのでありますが、当時は会社側の原価計算上の資料が十分整備されていなかったので、そのような方法を採用することができなかったものであります。しかして、本件は当庁としては最初の弾丸発注でもありますので、予定価格の作成に当っては、指名業者二社について信頼し得る資料はできる限り収集し、これに慎重な検討を加えて積算したものであります。しかしながら、会計検査院の御指摘も、計算方法の考え方としては貴重な御意見と思いますので、できる限りその線に沿うように努める所存であります。  次に、第二十一番、「航空揮発油の予定価格の積算が過大なため購入価額が高価と認められるもの」という件についてでありますが、予定価格の積算の方法について調査不十分の点があったと思われますので、今後は十分注意する所存であります。  次に、第二十二番、「電子機器点検修理の予定価格の積算が過大なため点検修理費が高価と認められるもの」という件についてでありますが、レーダーの修理費については価格の実積調査を行わなかった点、また、材料費については燃料費の積算に当り機体関係工事との関係の調整を考慮しなかった点、その他に会計検査院指摘のような点のあったことは遺憾であります。今後は十分注意したいと思います。  次に、第二十三番、「用地の取得にあたり処置当を得ないもの」という件でありますが、本件につきましては、土地の交換等について、会計検査院指摘通り措置をとることができなかったこと及び作物補償に当り資料の内容検討に不十分な点があったことについてはまことに遺憾に存じます。土地の買収に当りましては、今後十分配慮するようにいたしておりますので御了承を願います。  以上をもちまして会計検査院の御指摘に対する一応の御説明を終ります。
  79. 西川甚五郎

    委員長西川甚五郎君) 以上をもちまして説明を終ります。  これより質疑を行います。出席者会計検査院第二局長防衛庁長官防衛庁経理局長防衛庁建設本部長防衛庁調達実施本部長防衛庁装備局長防衛庁人事局長の諸氏であります。御質疑のおありの方は、順次、御発言を願います。
  80. 相澤重明

    相澤重明君 防衛庁長官にお尋ねいたしたいと思うのでありますが、毎年国家予算の中で一番不正不当事項が多いのは防衛庁を横綱とするわけでありますが、特に私は毎年決算委員会で警告を発せられておるのに、どうしてこれが改善ができないものかという点を非常に疑問に思うわけです。確かに繰越金あるいは不用額の漸減をしておることは私も数字的にこれは認めます。しかし、会計検査院の検査そのものが全部行なっておるとは私は思っておりません。やはり防衛庁予算執行の中においてのこれは一部である。こう私どもは理解をするのであります。従って、単にこの数字が漸減をしたから、これでもう批難事項はなくなるのだということには私はなっていかないと、こう思うのでありまして、国会における警告、あるいは会計検査院批難事項、こういうものに対してどういう防衛庁としての運営をして改善をはかっていくのですか。この点についてまず基本的に防衛庁の態度というものをお尋ねをいたしたいと思うのです。
  81. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) ただいま御指摘をいただきました点についてはまことに恐縮に存じ、また遺憾に存じており、常にこの点については庁内をあげて戒心をし、これが改善整備に当っておるのでありまするが、御指摘通り数字的に逐次漸減の傾向にありまして、これまた庁内職員の努力の一端ではあると私ども存じておりまするが、それにもかかわりませず、ただいま会計検査院から御指摘のありましたような、十一番から二十三番に至ります十三件等の内容のものを出しましたことについては、まことに申しわけない。かように考えておりまするが、私もこの種の仕事にはかつて従事いたした経験もございまするので、発注をする要求側と調達をする購入側、その間に当庁におきましては装備局、あるいは金銭の面におきましては経理局の中間に、その要求の当否、または購入の当否というものについては、それぞれ審査の機構をもって万全を期しておる次第でございまするが、いまだ努力足らずしてと申しまするか、なお、この種の指摘事項を受けましたことは、まことに遺憾と存じますが、今後におきましては、ただいま申し上げましたような各幕の要求は、調達本部長以下購入側と、その間に属する審査の担当部局である装備局、あるいは経理局等の機構につきましても、全体が能率的にかつ適正に行われるようなことについては、とくとさらに研究を加えまして、今後御指摘のような点の絶滅を期したい。かように考えておる所存でございますが、御指摘のような点については、現に私参りました当初から、それぞれ研究を命じておりますが、これらの点についてなお研究の上、いずれさらにこれらの点についての改善方についても意見を申し上げる、かように存じます。
  82. 相澤重明

    相澤重明君 そこで先ほど実は調達庁決算も行なったのでありますが、昨年の八月以来、調達庁防衛庁の中に統合されたわけです。そこで防衛庁としては、調達部は別に持っておるわけでありますが、もちろん戦略的な艦船であるとか、あるいはまた砲弾であるというものは、これはまあ別かもしれぬけれども一般の調達業務について、傘下になった調達庁にそういうものを調達させる考え方というものは、長官は持つか持たぬか、こういう点について、新しくあなたおいでになったわけですから、そういう点について、庁内の考え方、あるいは今までの、防衛庁の、いつも会計検査院から指摘されるのは、積算の過大な見積り、あるいは調査の不十分という点があるわけです。いわゆるどろなわ式に、予算がたくさんあるから、これはこういうふうに使えばいいんだというふうなことがそういう結果に陥る。ですからそういう専門的な立場の人たちが十分に調査をされ、あるいは調達業務担当されれば、そういう点は、私はなくなると思うのでありますが、調達業務について、調達庁にそういう点をやらせるお考えはあるかないか、この点を、これは設置法のことは別として、あなたの指揮下に入ったのでありますから、その点を一つお尋ねをいたしたいと思う。
  83. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) お答え申し上げます。ただいまの御意見については、私どもも鋭意研究中でござまいまして、御承知のように、形式的な問題については、相澤委員指摘のように、調達庁職員は一般公務員であり、防衛庁職員は特別公務員であるというような関係は別といたしましまして、御指摘のごとく昨年調達庁防衛庁の外局として、防衛庁傘下に属するように相なりましてから、御承知のように調達庁仕事は対米軍関係という内容が主でございまして、その結果、米軍の撤退あるいは在米軍仕事が逐次セットして、落ちついて参りますにつれて、調達庁仕事は漸減をして参ったということについては申し上げるまでもないところでありますが、これらの有能な職員を、今後いかに運用していくかということにつきましては、当面、来年度の問題といたしましては、約三百二十名ほど調達庁職員が減員をされるわけでございますが、これについては政府部内といたしまして、来年度増員される向き、また御指摘のような調達業務に練達堪能な者を本庁内の調達方面、あるいは地方建設部等の同種の仕事というその中に吸収をいたしまして、これが適正な処理を計画をいたしておりますが、これは当面来年度における暫定措置でございまして、根本的な問題といたしましては、今御指摘のような点について、調達庁仕事をどういうように持っていくかということにつきましては、御承知のように主としてかっては米軍の委託調弁、米軍所要の品物を国内において調達庁がかわって購入をいたし、これを米軍提供をしたというような事実がございまするが、最近はそういう仕事がほとんど減少をして参りまして、一部は御承知のように米軍が直接契約をやるというような形に逐次移向して参りましたので、この点をまたもとへ戻してほしいというような希望も調達庁側ではありますが、これはまあ実際問題としてなかなか困難ではなかろうかと、かように存じますので、私どもとしては調達庁仕事またこれに類する防衛本庁の仕事、さらに大きく見まして管財業務というようなものについて、一番関連深いものは大蔵省の管財関係、かようにも考えられまするし、また一部調達庁側としては、政府全般の物資購入について、調達庁の知識経験を活用する道はないかと、かような意見も出ておりまするが、これらの問題は、御承知のように同じ政府機関でありましても、部局を異にし、省を異にすることによって、やはりその間に割拠主義ということではございませんが、それぞれ各役所の特色また伝統というものもございますので、これらを将来どういう形に改編をして参り、また当面さしあたり大きな問題として、調達庁と防衛本庁との間において最も合理的な方法を打ち立てる道はないか、その上で何ともやりようのないものについては、広く政府部内全体に仕事の配分を求める、こういうことで考えるのが一番地についた現実的な計画ではなかろうか、かように考えまして、先般調達庁長官次長の意見も十分聴取をいたしました。また職員組合側とも二度私は懇談をいたしまして、この点について双方で一つ意見を出し合って、正式の意見を出し合った上で、最もいい合理的な方法を研究しようではないか、その上で対策を立てよう、ただし調達庁の職員がまじめに一生懸命働けば働くほど、現在の米軍の撤退の現状米軍仕事の落ちついてきた現状からいって、仕事の内容が減るということは、まことにお気の毒のことであるから、そういうことによって調達庁職員の業務意欲の減退しないように、安んじて仕事をしてもらうことについては、自分として責任を持つ、従ってそういうことについては安心をして一つ将来のほんとうにどういうふうにしたら一番能率が上り、円満にこの仕事を吸収できるかという道を検討しようということで、目下研究中でございます。
  84. 相澤重明

    相澤重明君 次にお導ねをいたしたいのは、この調達の中で国産品と外国へ発注する問題との関連性です。これについては会計検査院指摘事項の中にも、たとえば十七の「艦船用造修材料の購入にあたり処置等を得ないもの」という項が上っておりますが、他にもこの点が大へん見受けられると思うのです。そこで今までの会計検査院の検査の指摘事項、あるいは私どもが伺うところによると、どうも防衛庁はやはり米軍の隷属下にあるのではないかというような、どうもくさみを感ずるというふうに思う。そこでこういうことをなくするためには、やはり国産品を奨励をして、そうして国産品をできるだけ多く使うというのが、今日の私は日本経済にとっても大事なことではないかと思うのでありますが、国産品と外国に発注する場合のこの考え方を、防衛庁はどういうふうにまずとっておるのか、この点をお尋ねをいたしたいと思う。
  85. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) 詳細の問題につきましては、いずれ主管の調達本部長その他から御説明を申し上げるかと存じますが、基本的には、御指摘のように日本の現在の国力と申しますか、財政事情、また産業育成上の立場から、日本ででき得るものは、これは当然国産をもって充当すべきもの、かように考えておりまするが、御承知のように防衛庁の装備品の内容は、従来国産でかつて作りましたものでも、戦後におきましてはなかなか作り得ないというような実情にかんがみまして、さらにまたMSA協定その他軍事援助等の関係によりまして、米軍から供与、貸与を受けておるものが、年々最近減少いたしたとはいえ、本年度等においても四百数十億円というような額にも上っておりますので、それらのものの調達について国内において調達をし得ないもの、あるいは国内において調達をし得るとしても、相当の年月を要しまするようなものについては、やむを得ず外国に発注をする、あるいはアメリカのそれぞれの主管の軍から購入をしてもらう、こういうような措置をとっておりますが、基本的には御指摘のように、もうでき得る限り国産を持っていく、と同時に、その底に流れる日本の科学技術の振興、この問題が根本的に基礎となる、かように考えておる次第でございまして、最近においては航空用ガソリン等につきましても、和歌山の東亜燃料等において新しい技術的な施設をやって、ジエット・エンジンの航空用ガソリン等のごときは、国産で処理するだけの能力を持つというような努力はいたしておりますが、何分、わが国が自衛隊の装備をいたしましてから、たかだか七年というようなところでは、いかに日本の科学技術が従来優秀であったとは申せ、一躍世界的な水準に達するということも困難でございまするので、やむを得ず一部外注をいたす、その結果、会計検査院指摘のような事実を惹起し、また、各委員諸公から御叱正を受けるような事態も間々あるのでございますが、基本的な観念としては、ただいま申し上げたようなつもりで、極力国産化、同時に国産購入という方針をとって参りたいと存じております。  なお、具体的な各般の問題につきましては、主管の調達本部長の方から御説明申し上げます。
  86. 相澤重明

    相澤重明君 こまかい点についてはあとでお尋ねいたしますが、一応基本的な問題だけを長官に御説明いただきたいと思うのですが、そこで、今、長官お話のように、やむを得ず外注しなければならぬ航空機であるとか、ロケットであるとか、艦船であるとかということがあると思うのでありますが、そこで三十三年十二月末で、今、米軍から供与あるいは貸与されているもの、そういうものはどの程度あるのか、数字的に、あるいは金額的に、おわかりになったら御説明をいただきたい。それから、これから三十四年度の予算も間もなく通るわけで、大体予算が通ったならば、今年度はどういうものを発注しようとするのか、その内容を御説明いただきたい。
  87. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) 三十三年末と、本年度三月末と、分けまして、米国から軍事供与を受けておりまする総額は、さいぜん御説明申し上げましたが、昨年十二月末で約四百億、それから本年の三月末で四百三十億の直接軍事供与を受けております。また来年度の予算に対応して、軍事援助を受けようと目下折衝中のものが約四百三十六億、そのうち航空関係——いずれ後刻経理局長その他から詳細な御説明を申し上げると思いますが、私が承知しているところでは、航空関係では約百二十六億程度、米軍から供与を受ける。その他は艦船、あるいは部品類等に相なると思いまするが、来年度どの程度のものを予算上外注に待つかという問題等については、相当に詳細な資料がととのいませんと、あるいはお答えが不正確になるのではないかと存じますが、もしただいままで調べがついておりますれば、経理局長その他当局の者から御報告を申し上げます。
  88. 西川甚五郎

    委員長西川甚五郎君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  89. 西川甚五郎

    委員長西川甚五郎君) 速記をとって下さい。
  90. 相澤重明

    相澤重明君 今の長官の御説明になった中で、三十四年度に四百三十六億の直接交渉をしておるようでございますが、その中の具体的に航空関係、艦船関係、あるいは部品関係ですね、そういうものについて、経理局長の方からおわかりになったら、一つお知らせをいただきたいと思います。
  91. 山下武利

    政府委員(山下武利君) 来年度予算の前提といたしまして、来年度に米軍から援助を期待しておりますいわゆるマップの内容、これは総計におきまして、ただいま長官からお答えしましたように、四百六十五億円と相なっております。この価格はほんの概算でございまして、価格の算定方式は、米軍の軍事価格から適当な償却を見込みまして、それに輸送費を加えたものでございます。この四百六十五億の内訳を陸海空別に申し上げますと、陸上自衛隊につきましては、装備品甲類、これが約二十七億円、それから装備品乙類が約二億円、その他十六億円、合計いたしまして四十五億円余りであります。海上自衛隊につきましては、航空機が六十四億円、艦船が百十三億円、艦艇装備品等が七十二億円、航空機関係部品その他が四億円、合計二百五十四億円ばかりでございます。このほかに、P2V対潜哨戒機の国内生産に伴いまして、米軍から相当の援助を受ける予定になっておりますが、これはまだ額が確定いたしておりませんので、この中には入っておりません。それから航空自衛隊は、航空機が百二十億円、内訳は、F86D全天候戦闘機、これが六十機、C46輸送機が十三機でございます。その他四十五億円ばかり、合計いたしまして百六十五億円、この三つの合計が四百六十五億円と相なるわけでございます。
  92. 相澤重明

    相澤重明君 そこで、いま少し、大変恐縮ですが、陸上の甲類、あるいは乙類、それから海上の六十四億とか、航空の百何億とかありましたが、その中で陸上関係についてのいま少し具体的な品名があげられませんか。もし今お答えがむずかしければ、あと資料として御提出をいただきたいと思うのですが、これは米軍のですね。それから、そのほかの国に現在防衛庁として発注をしておるものがどの程度あるのか、それを一つ説明をいただきたいと思います。たとえば、これはあとでイタリアのスタッキーニの問題をやりますが、そのほかの国のがあるのかないのか、この点を一つ説明いただきたいと思います。
  93. 小山雄二

    政府委員(小山雄二君) ただいまのお尋ねは、三十四年度のことだと思いますが、三十四年度の調達計画につきましては、まだ具体的にどこから買うというようなことは、予算が通りましてから、各幕の要求を聞きましてきめるわけでございまして、大体現在の提出しております予算を前提として考えますと、調達総額は、予算の中から要するにいろいろなものを買う費用を合せますと、六百五、六十億程度になるかと思います。そのうちで、外国から——先ほど長官が申されましたような意味で、技術的に、あるいは数量的にまとまらぬために、やむを得ず外国から買わなきゃいかぬだろうと予想される数字は、大体四十億程度じゃないかと考えております。その中で、具体的などこにどういうものを発注するかということは、今後計画を立てたいと思っております。
  94. 相澤重明

    相澤重明君 イタリアのスタッキーニ会社のを別にして、現在まで発注しておるのはほかにはありませんか。
  95. 小山雄二

    政府委員(小山雄二君) 輸入は、三十三年度で——まだ年度が済みませんが、大体三月までの見込みで約三十億、三十二年度で約二十六億、要するに外貨を使いまして外から買うものは大体そういう見当でございます。現在具体的に発注しておりますものについては、調本部長から申し上げます。
  96. 武内征平

    説明員(武内征平君) 今年度は、大体三十億ぐらいが輸入になります。この中に、一般コマーシャルの発注と、MSAによる有償援助と二種類ございまして、MSAによる有償援助は大体六億程度、あとはコマーシャルでございます。MSAの有償援助は、御承知のように、アメリカの軍専用品を有償で、しかも安く分けるというのがMSA援助の趣旨で、ございまして、従いまして、戦闘機の部品でございますとか、あるいは練習機の部品でございますとか、そういった種類のものであります。それ以外のものは輸入に待っているのでございますが、現在輸入に待っておりますところの大きいものは、たとえばヘリコプターでございます。S55シコルスキーのヘリコプター、これをユナイテッド・エア・クラフト社から契約をいたしております。これは約十六億で、三菱を通じております。そ以外に、イギリスのオルヒウズ・ジェット・エンジン、これはただいまT—F2という練習用のジェット機を試作いたしておりますが、これにつけますエンジンはイギリスのオルヒウズ社のジェット・エンジンを調達しております。一機約六千万円になりますが、これを十数機調達するといったようなものが大きなもので、ございまして、それ以外に、航空機の部品をテストいたしますテスト・スタンドといったような非常に精密な検査を要するといったものでわが国でできないものが相当ございます。これあたりはアメリカの製品を輸入をいたしておるのであります。従いまして、大部分アメリカの輸入またはMSAでございまして、それ以外はイギリスが一部でございまして、たまにスイス、たとえばエリコンのごときスイスから輸入する、あるいはイタリアのスタッキーニ社から輸入するというような状況でございます。
  97. 相澤重明

    相澤重明君 この発注をする場合の契約等が非常に私はやはり重要な問題になるかと思うのです。それは、会計検査院指摘事項の中にもあるように、調査が十分に行われておらない。たとえば、輸送経費等の問題についても、二重に加算をしなければならぬというような問題も——これは一つの例ですが、そういうことも起り得るわけですね。そこで、防衛庁として対外国との契約をする場合には、どこのところで契約が行われるのか、これは調達本部長が行われるのか、それとも一応長官を中心に首脳部会議等も持って、そうして最終的に決定されたものを調達本部長として出すのか、その一つの機構の中における運営ですね、そういったものを御説明いただきたいと思う。
  98. 武内征平

    説明員(武内征平君) この点は、防衛庁につきましては、他の官庁と違います機構であるように思いますので、詳しく御説明を申し上げたいと思います。  調達実施本部長は、各幕から要求せられました性能のものをきまった数量を、きまった期限に、きまった場所に、一定の予算の範囲内において契約し、検査し、納め、そして金を支払う、こういう権限に防衛庁の訓令でままっているのであります。従いまして、いかなるものを幾ら買うかということは、長官の配下の総務局、あるいは経理局、あるいはそれをもとに要求しますところの各幕でおきめになるわけでございます。一般のものでございますと、大体各幕できまりますけれども、重要なるものは、すべてその仕様書について長官の御決裁が必要でございます。長官がテスト・スタンドはこれにする、あるいはこの品物については、このスペックのものを買うということは、ものによりますと装備審議会というものにかけまして、装備審議会を通しまして長官が御決裁になる、そしてその御決裁になりましたものを関係の各幕が、あるいは海関係のものとしては海幕長が、陸関係のものとしては陸幕長が、航空関係のものとしては空幕長が、予算を先ほど申しました納期、数量、金額を添えまして、調達実施本部長に要求してくるのであります。  従いましてスペックは各幕できめられたものを、それを実施するというのが調達実施本部長の権限でございます。
  99. 相澤重明

    相澤重明君 そういたしますというと、昨年本院の野村参議院議員も、米国へおいでになって、そしていろいろ防衛問題についてもお話もされ、あるいは研究もされたと思うのでありますが、そういう際に、防衛庁の職員が随行をされたとか私は聞いておるのですが、そういう際には、まあ野村先生のおいでになることは、これは別の問題として、防衛庁の職員がおいでになる場合は、これは、それぞれの長官が——長官と言いますか、空幕とか、あるいは陸幕とかでありますが、そういう幕僚長がきめるのか、それとも防衛庁長官がそういうふうなことをおきめになるのか、あるいは担当部長でそういうことはおやりになるのか、こういう点についてはどういうことでしょうかね。
  100. 山本幸雄

    政府委員(山本幸雄君) 海外出張の例は、防衛庁には相当あるわけでございますが、階級の上の者につきましては、長官が直接出張命令を出すというものもございますし、それぞれの所属長限りでするというものも中にはあります。  ただし、その場合におきましても長官の承認を要する、こういうことに相なっております。
  101. 相澤重明

    相澤重明君 そこで私は、一つお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、昨年防衛庁から今は大蔵省の主計官になっておるわけですが、吉村真一君というのが防衛庁におったと思うのですが、人事局長は、これはどういう使命を持ち、またどこでどなたがおきめになってこれは派遣をされたのか、内容について、またきめられたことについて、一つ説明をいただきたいと思います。
  102. 山本幸雄

    政府委員(山本幸雄君) 吉村真一という人につきましては、防衛庁には在籍をしておったことはございません。  おそらく私の聞いておりますところでは、これは国防会議事務局の参事官でございまして、防衛庁とは関係のないということでございます。
  103. 相澤重明

    相澤重明君 その通りですね。国防会議事務局の参事官ですね。  しかしこれは、少くとも防衛庁関係事項というものが主たる目的で、私は国の防衛問題等について、あるいはいろいろな先ほどのMSA協定ではないけれども、貸与を受ける問題についても、御相談をされたというように考えられるのだが、そういう点については、国防会議出席をされ、あるいはそれを統率する防衛庁長官に、あとでお尋ねをするのでありますが、そういうことは、防衛庁の中ではお聞きにならなかったかどうか、この点は人事局長では、ちょっと無理かと思うのですが、もしあなたがお聞きになっておったらお聞きになっておったという、あるいは知らなければ知らないというふうにお答えをいただきたいと思うのです。
  104. 山本幸雄

    政府委員(山本幸雄君) 私の存じております限りにおきましては、さようなことはございません。
  105. 相澤重明

    相澤重明君 その点については、それでは別な点で、またあとで御質問申し上げたいと思うのでありますが、防衛庁の今の人事の中で、たとえば海幕にしろ、あるいは陸幕にしろ、相当組織的に人事の運用が行われると思うのでありますが、これは、それぞれの系統のいわゆる責任者があり、会議等についても、統率をしているのか、それとも、ある程度は、人事局長だけで人事の問題はおやりになるのか。もっと具体的にいうと、この前、私は総理大臣に質問したのでありますが、防衛庁会議をやる場合に、部内でやるか、外部でやるか、こういう問題があるわけです。これの監督というのは、人事局長が持っているのか、それとも、それぞれの幕僚長が持っているのか、この点についてどういうふうに運営されているのか、その点をお伺いしたい。
  106. 山本幸雄

    政府委員(山本幸雄君) それぞれの職員につきましては、それぞれ所属の長が、一次的には監督権を持っており、最終的には長官に帰着するということには間違いはございません。人事局長は、長官の補佐機関である立場で、長官を補佐しているということに相なっております。
  107. 相澤重明

    相澤重明君 長官も、じきお見えになるでしょうから、きょうは、あまり細部に入らないで、基本的なものだけでやっていきたいと思いますから、私もあと、まだたくさんありますが、次の一点だけで、長官の来たときにやりますが、一つだけ人事局長に、お尋ねしておきます。  占領当時に、日本人が占領軍によって死傷事故が起されておった例がたくさんあります。これはむろん所管事項からいえば調達庁関係になるかとも考えられるのでありますが、現状防衛庁に統合された今日では、やはり防衛庁として、日米合同委員なり、あるいは防衛庁の組織の中で考えてもいい問題ではないか、こう思うのでありますが、そういう人たちが、占領期間中に、米軍の車によって負傷せられた人たちが、全国にかなり私はあると思うのですが、そういうことはお調べになったことがあるかどうか。そういう声を聞いているかどうか。  この点はいかがですか。
  108. 山下武利

    政府委員(山下武利君) お尋ねの点は、調達庁の所管に属することでございまして、防衛庁といたしましては、さような調査をいたしたことは、ございません。
  109. 相澤重明

    相澤重明君 これは、あとでそれでは長官の所掌事項としてやりますが、私はやはり、今日、調達庁の所管事項であるからとばかりは規定はできないのじゃないか、現状では。すでに米軍との折衝自体においては、非常に防衛庁が多くの問題を持っていると私は思うのです。そういう点で、少くとも日本人が、この占領下において不幸にして、そういう負傷事故による心身の傷害を受けた場合には、当時の見舞金をもらっておったことについては、これはもう、やはり今日の段階では考えてやるべき時期に来ているのではないか、こう私は思うのです。  しかし経理局長の言うように、調達庁の所管事項であるといってしまえば、それまででありますが、私はこれはいずれあとで、長官とやりたいと思いますから、この点は、保留をいたしておきたいと思います。  そこで、一つ経理局長にお尋ねしておきたいのですが、この前も私は申し上げたのですが、例のイタリアのスタッキーニ会社に対するロケット弾の発注の問題でありますが、会計検査院指摘事項でいけば、当然この保険会社との契約の問題について、有効保証期限というものが明らかにされなければならない。にもかかわらず有効保証期限が三十三年の三月三十一日となっておるのに、その納入期間というものは、もっと先に結んである。  一体、この契約というものを防衛庁は、どうお考えになっておったか、経理局長は、これは経理局でやるのか、それとも、さっきの調達本部でやったのか、これをどこでやったのか、ちょっとあわせてお答えをいただきたいと思います。
  110. 山下武利

    政府委員(山下武利君) スタッキーニの問題についてのお尋ねでございますが、防衛庁といたしましては、このような状態になりましたことを非常に遺憾に存じておることは先ほど御説明いたした通りでございます。  これは、スタッキーニが遠隔の地にありました関係から、現地にこちらの常駐の者がいなかったために、状況の把握が思うようにまかせませず、ついに、同社が破産になったためでございまして、防衛庁が善意でもって契約の履行完遂を待っておったということが、かえって不測の事態となったものでございまして、この点まことに遺憾に存じておる次第でございます。  当方といたしましては事務上におきまして、相当手を尽して努力してきておったのでございますが、今から考えますというと、やや事務上につきまして、こうすればよかったという点もあるのでございます。たとえばただいま御指摘になりましたような点でございますが、昭和三十二年の十月十五日に当初の契約におきましては、保証のために銀行保証を取るということが条件になっておったのでございますが、スタッキーニの方の申し出でもって、十月十五日におきまして保険会社の発行しますところの保険証券でもいいということに契約の更改をいたしたのでございます。今から考えますというと、このときに三月三十一日、つまりこの保険証券の期限になっておりますところの翌年の三月三十一日以前に、最終納期というものを確定いたしまして、契約条項に加えておけば、こういう問題がなかったのではないかと思うのでございまして、その点につきましては、非常に遺憾に存じておるわけでございます。詳しいことにつきましては、調達実施本部長から御説明いたすと思います。本件のもとの契約担当官は、調達実施本部の石井副本部長でございます。
  111. 武内征平

    説明員(武内征平君) 御説明申し上げます。  本件は、非常に複雑いたしておりますので、詳しく御説明申し上げたいと思いますが、契約が御承知のように三十二年の三月二十九日でございます。当時は、本契約は特異な契約でございまして、ロケット弾というのは、御承知のように開発中の、現在もそうでございますが、開発中の品物でございますので、最終の納期をきめることができないということが、向うの主張でございまして、スタート・オブ・デリバリー、すなわち荷渡しの始めというものは、契約調印後七カ月後に始める、こういうことになっておりまして、そしてこの最終の納期というものは、いずれ契約調印後二カ月以内にLC、すなわち信用状を組むときにきめるという条件でスタートいたしたのでございます。それで一カ月以内に半金を前金で送り、二カ月以内にあとの差額を信用状を組んで送るやり方というのが本契約のスタートでございます。  ところが、その前金の支払いにつきまして、先ほど経理局長からお話がございましたように、銀行保証状にかえて前金を払うということでございましたけれども、いろいろの関係で、銀行保証状ができないので、保険保証状にかえてきて、もし保険保証状にかえても、その期間に不履行の場合においては、前金を防衛庁に払うという条項が入っておれば差しつかえないということで契約を更改いたしたのでございます。そうしてこれが、十月十五日でございまして、十月十八日には、スタッキーニ会社に金が渡っておる。そのときに、その前金をリリーズしました後にスタッキーニ社と当方とは、電報を交換いたしまして、最終納期はいつにするかということを交渉いたしまして、これは三十三年の三月十六日にする、そうしてLC、信用状のエキスパイア・デート、すなわち執行日は、三十三年の三月三十一日ということに両者ではきめたのであります。そうしてそれに基きまして、信用状を組んである。従いまして調本とスタッキーニ社との間におきましては、最初のスタートにおきましては、最終納期がきまっておりませんけれども、しかしその段階において、最終納期を三十三年三月十六日と決定したのでございます。従いましてオルトリポー社の保険証券に書いてありますところの三十二年の九月一日から三十三年の三月三十一日までの間に、本件の品物が不履行になった場合におきましては、その前金は、防衛庁に返すということが保険約款に書いてあるのであります。従いまして、当方におきましては、三月十六日ということに最終納期をきめ、しかもその保険保証の期間が三月三十一日までになっておりますから、十五日さらにあるわけであります。従ってそれで十分、われわれは不履行の場合にカバーできるというふうに考えて、現在もおりますし、また当時考えておったわけであります。従いましてオルトリポー社が、保証保険債務が失効したというような主張は、何ら理由なしというふうに、ただいま私どもは考えております。この点につきましては、イタリアのダンテ氏——ダンテという弁護人に、われわれのデータを与えまして、イタリア法の判断をしていただきまして、防衛庁に追及する権利ありということで、ただいま訴訟を提起しておる次第でございます。
  112. 相澤重明

    相澤重明君 これは今の調達本部長説明はもっともらしいように思いますけれども、どうも、その間が私どもとしては、会計検査院の報告を読みまして、あなたの説明を聞いてみると、どうも、まだぴんとこない。  実際に契約をしたときの取扱い方が、その会社の実情というものを御調査をされた結果、そういう三十三年の三月十六日には納期になるのだというようなことが、どうも、私どもにはぴんとこない。ここの中に、ずさんな相手との契約がされておるように私は思います。  しかしこれは先ほどの長官説明では、現在訴訟中である、こういうことでありますから、それは後刻そういうことで、結果を御報告いただきたいと思うのでありますが、こういう結果をしでかした石井元副長官ですか、副部長ですか、この人は、今何をやっておるのですか。それからまた防衛庁長官はこういう不始末をしでかした者の処分については、どういうふうにされておるのか、その結果を一つ御発表いただきたい。
  113. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) 当時の石井部長は、目下出向いたしまして、現職は、通産省へ復帰いたしまして、名古屋の通産局長の勤務をいたしておる、かように伺っております。  それから、この問題についての結末、処分をいかにするかというお話でございまするが、私としては、後ほど全般の御質問が終りました際に、この点についての所見を申し述べたいと思っておりましたが、今、相澤委員からのお尋ねでございまするが、結末につきましては、御承知のように目下訴訟中でございまするので、率直に私申し上げまして、かなり対裁判所において微妙な点もあるかと存じますので、事態の不始末につきましては、もちろん十分事態を明らかにして、しかるべき厳正な処理をいたさなければならぬ、かように考えておりますが、早急に処分をいたしますことは、訴訟等にも必ずしもいい影響を与えないんではないかと、かように存じまして、この点の処理だけは、実は保留をいたしてございます。  それから、ただいまいろいろと相澤委員から御指摘があったかと思いますが、私どもといたしましても、スタッキーニ会社が遠隔の地にあるという点が一点、非常に、実際の調査を一佐をして調査を命じました。しかし実際に遠隔にあったということと、現地に常駐の人がおらなかったという問題、また状況把握について、率直に申し上げまして、御指摘通り、思うにまかせなかった点があると思いますが、従ってついに同社が破産になったために、当方が当事者一同誠意をもって事に当ってはおりましたんでございますが、契約の完全履行をいたずらに待ったということが、かえって不測の事態を来たしたと、この点については、私はほんとうにこの機会に皆様に申しわけないと、遺憾の意を表する次第でございます。  また当方といたしましては、事務上はあらゆる手を尽しまして努力をいたして参ったのでありますが、今日、これらの事態を反省してみますと、次の点等においては、われわれの処理が決して十全でなかったということを反省いたしておりますが、その第一点は、昭和三十二年十月十五日の契約更改に際しまして、単に保証状に関する契約条項を改めただけでなく、双方合意に達した三月三十一日、すなわち保証期限前におきまして、最終の納期を確定をいたして、契約条項に加えなかったと、この点は、また契約条項に加えるか、あるいは同年十一月二十六日の最終納期を三十三年三月十六日に合意ができたとき、その際に、これを契約条項に明定して、納入開始期限の条項を削除するなど、契約履行の責任をはっきりさせるということは、やはり当然やるべきこととして、私どもとしては、この点の足らなかったということを深く遺憾に存じておる次第でございます。  また第二点といたしましては、スタツキーニ会社のストライキの発生によって、納入が御承知のように三十三年三月の年度末を越えて、予算の事後繰り越しもやむを得ないと認められた際に、単に相手方スタッキーニ会社とのみ折衝をしておるだけでなく、オルトリポー保険会社に対しても、直接連絡をいたしまして、通報を当然やるべきであった等の迅速な処置をとることが望ましかったと存ずるのでありまするが、本件について、スタッキーニ会社を信用し過ぎて、オルトリポー保険会社との直接連絡をいたさなかったという点については、私ども全く反省いたしておる次第でございます。  しかし当方としては、御承知のようにオルトリポー保険会社の主張は、法律上根拠がない、かように考える。またダンテ弁護人は、イタリア大使、太田大使の推薦に基く一流の弁護人でありまして、この人の判断に基きますと、イタリア民法上、返還請求は当然根拠があると、かようなことでありますので、目下イタリア裁判所に訴訟を提起中でありますので、かような現在の微妙な情勢を考慮いたしまして、いましばらく時日をかしていただいた上で、事態を明確にいたして処断をいたしたい、かように存じておりますので、御了承たまわりたいと存じます。
  114. 相澤重明

    相澤重明君 あと、先ほど質問したことだけで、譲りますから……。  実は、占領期間中に日本人が、米軍の車輌等のために非常に多くの死傷事故が起きているわけです。特に現在その生命、傷害を受けている人たちの見舞金等を当時は受けたのでありますが、これはもう非常にささいなものであります。しかし、からだは今日、やはりその傷害のために働くことができないという人も、かなり私は全国にはあると思います。  これは、おそらく防衛庁の中に入った調達庁業務とは思うのですが、しかし、これは一応、私はやはり防衛庁長官として、この問題に真剣に取り組んでもらいたいと思うのですが、今まで、そういう点について、防衛庁としてお調べになったことがあるか、あるいはまたあるとすれば、どの程度の人が、そういう災難にあっているということがおわかりになっているか、この点を一つ長官からお答えいただきたい思います。
  115. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) 御指摘の問題につきましては、私は、まだ実は詳細、当面の責任者から聞いておりませんが、時々調達庁長官等に会いました際、先般の電車中でピストルによって死亡した青年、ああいうような問題等につきましては、弁務等の基準の賠償額と申しましょうか、見舞額と申しましょうか、それらの点について調達庁長官みずから弁務当局と、しばしば折衝を重ねまして、当初の額よりも、はるかにこえた額について、いろいろ折衝をして、ある程度成功をおさめようとしているとかいうような努力は、当局としては、いろいろやっておるようでございます。  また、実はこれは何と申しますか正式の話し合いではございませんが、今回の日米安全保障条約の改訂に伴う行政協定の改訂等の問題につきましても、この種の、当然米国側が義務として処理すべきもの等について、現に処理せられていないものも決して少くない、こういうようなものについては、条約上の改訂はもちろんであるが、義務としては、当然米国側が今後履行すべきもの等については、この機会に、条約改訂の際に日本側の立場を明らかにして、処理すべきものについては、できるだけ処理の方向を明らかにしようというような外務大臣からの話もありまして、私も、それは当然、そうしてもらわなければならぬというような話もいたしておりますので、今、私詳細、どの程度に、そういう事態があるかということは、あるいは調達庁長官が調査をいたしておりますれば、長官からお話をさしたいと思いますが、基本的には、御指摘のような考えで、日本政府としては努力をいたしたい、かように存じております。
  116. 岩間正男

    岩間正男君 時間がありませんので、二、三の点で、これは長官の意見を質しておきたい。  第一の問題は、予算委員会なんかでも問題になっているのですが、安保条約の改定、これをやろうとしておられる。そういうことで行政協定の問題、これと付属して一体改定をするのか、しないのか、これは、だいぶ論議の的になっています。  しかしどうでしょうか、実質的には、安保条約の内容というものは行政協定です。安保条約、御承知のように五条、そうして実際の運営は、行政協定でやられている。しかも安保条約が改定されれば、必ずそれは行政協定との間に食い違いが出てくる、現実的に……。こういう問題から考えると、安保改定と、行政協定の改定——われわれは認めませんけれども、かりに、そういう事態をやるとすれば、この問題について、実は非常に粗雑だと思う、今のやり方……。これは防衛庁長官の御意見を伺いたい。
  117. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) 日米安全保障条約の改定につきましては、私から申し上げるまでもなく、皆さん政府の見解、国会における論議等において、十分御承知のことと存じまするが、これに関連いたしましての行政協定の改定につきましては、岩間委員指摘のごとく、日米安全保障条約第三条に安保条約の一部の処理のものについては、行政協定に譲る、こういう形になっておりまして、従って最前、相澤委員の際にも私は申し上げたのでありますが、日米安全保障条約の改定もしくは新条約の締結ということに基きまして生ずる問題につきましては、政府としては、行政協定についても適切な改定をいたしたいという意向を明らかにいたしておる次第でございます。
  118. 岩間正男

    岩間正男君 それは、そうなんですが、これは、まあこの前、行政協定国会では、これは論議できませんでしたが、しかし外務委員会、その他予算委員会では、これは実質的には、ずいぶん審議した。その中で、非常に問題になったのは、まあ公述人なんかの意見を聞きましても、ほとんど行政協定あるいは安全保障条約というのは、御承知のように、三くだり半みたいなもので、ああいうことで、実際の運用はできない。行政協定そのものが、もう一つの大きな条約なんで、このものについて徹底的に、これは国会でも審議をすべきだということは、当時一つの論点になりました。われわれも当時予算委員をやっておりまして、だいぶ公聴会なんかも開いて、これをやったわけです。  従って安保条約だけを、上っつら……。これは、どういうものになるか。とにかくそれを改定したとして、さて行政協定が現行のままでやっていかれれば、必ず私は食い違いができるだろう、こういうふうに思うのです。  そういう点から見れば、行政協定現状に合わないのが非常に多いわけです。行政協定によって、先ほどのお話のロングプリーですか、この問題が起っている。ジラードの問題も起っている。その他無数の国民を苦しめている問題も、実は行政協定で起っている。そうなりますと、安保条約改定だということで、行政協定の問題を等閑に付して、あと回しにするということは、本末転倒になるのではないか。これはどうしても理屈が合わぬ。  これは実は予算委員会でやる論議かもわからぬけれども、予算委員会でやれないから、ここで一応聞いておくのだが、どうもその点は、これは筋が通らない。まずその点で、かりに、あなた方の言うのは、われわれは絶対に反対だが、しかし、あなた方がやろうとしたって、これは筋が通らないじゃないか。この点は議論になるが、この点、今のお話だけでは、あとでこうやるんだと言っても、これは事後処理で、まことにおかしいですね。盲腸みたいなものをぶらぶら下げながら、これは何年になるかわからぬ。半年になるか、一年になるか、二年になるか……。これは御承知のように、二十何条からのものですから、これは、どうなるのか。一体、よくわかっていないんじゃないか。この点政府の態度としても、私は首尾一貫しないんじゃないかとこういうふうに考えるのですが、この点、もう一回、長官の意見をただしておきたい。
  119. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) 条約改定の問題につきましては、政府の見解は、すでに明らかにいたしておると申し上げた通りでありまするが、所管でない私から申し上げる域を越えておると思いますが、私が承知いたしております範囲においては、行政協定の日米安全保障条約改定に伴う所要の改正は、私どもも希望するとこであり、また政府の主管当務者においてもその趣旨で改定をする意向のように聞いております。
  120. 岩間正男

    岩間正男君 これは、まあしかし、われわれ新聞報道ですけれども、自民党さんの中でさえも、行政協定をやはり一緒にやらなくちゃならぬという意見は相当強いだろうと思うわけです。そういうところに、今まで私が申したような首尾一貫しないものがあるのだろうと思う。  しかしこれは、ここでの論議の中心問題でありませんから、一応意見だけ述べておきます。  次にお聞きしたいのは、最近の自衛隊の募集の状況です。できれば私は、あれは保安隊ですか、あの時代からの大体募集人員、それに対する応募者、そうして何人を採用したか、それを暦年で、七カ年間かにわたって出せると思うのです。こういうデータをいただきたいと思うのですけれども、これは、ことに最近の状況はどうですか、三十年あたりからの何はわかると思うのですが、募集人員と応募者と、それから実際の採用人員。この数について一応、ちょっとお聞きしたい。
  121. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) 主管の政府委員から説明さしたいと思います。
  122. 山本幸雄

    政府委員(山本幸雄君) 暦年で申しますと、二十五年から始まりまして、二十五年が応募数が三十八万二千、これが一番始まったときでございますが……。
  123. 岩間正男

    岩間正男君 募集人員と、それから実際採用したのをはっきりやって下さい。募集した人員があるでしょう、あなたの方で、何名募集というやつ、それに対して応募したのが幾ら、それに対して採用したのが幾ら、この数字をはっきり出していただきたい。
  124. 山本幸雄

    政府委員(山本幸雄君) 二十五年応募人員三十八万二千、採用者七万五千四百、二十六年応募人員五万四千、入隊者数八千五百、二十七年応募人員二十一万四千、入隊者数六万二千、二十八年応募人員七万六百、入隊者数九千六百、二十九年応募人員十七万、入隊者数五万、三十年応募人員二十万二千、入隊者数三万五千七百、三十一年応募人員二十万一千、入隊者数三万八千、三十二年応募人員十四万五千、入隊者数の総計は約三万七千、これが三十二年度までの、いわゆる一般隊員、任期制隊員二十の採用数でございます。
  125. 岩間正男

    岩間正男君 これは今、私のお願いした募集人員はどれだけ、つまりそれがはっきりしないので、ちょっと私の要求した資料にはならぬわけですが、何人を募集して、応募者が何人あって、結果において採用は幾らになったか。これは、できれば海空陸に分けて三軍別に、これは資料の作成できますね、これはいただきたい。  それで、それをいただいてから、なお調査になりますが、ここで、決算との関係でお聞きしたいのは、三十二年度の繰越額ですね——不用額。これは、少しは減っておるけれども、三十二億という膨大なものになっておるわけです。その理由は、説明によりますというと、自衛官の採用の予定に不足したということになっておるわけです。これは暦年の姿が、ずっとわからないわけですけれども、特に三十二年で、募集人員だけ集めることができなかった。  今お話によりますと、十四万五千というような応募者がいたのだが、実際は三万七千ですか、実際、そのときに募集したのが何人なのだか、三十二年度、これはわかりますか、これはわかるでしょうな。ちょっとその点だけ明らかにして下さい。
  126. 山本幸雄

    政府委員(山本幸雄君) 三十二年度の二十の採用計画は、三万五千ほどであります。
  127. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、三万五千人採用の計画を立てておいて、実際採用したのは三万七千だったら、何も、この指摘事項が出てこないじゃないですか。つまり三十二億の不用額を出したというのは、最初の予定に満たない、人員が最初の計画よりも足らなかった、こういうことで起っておるわけでしょう。  ちっと、今の数字じゃおかしいですが、これは、どういうことなんですか。
  128. 山下武利

    政府委員(山下武利君) ただいま三十二年度の不用額についてのお尋ねでございますが、三十二年度の不用額三十二億のうちで、人件費の不用額は十六億四千五百万円ということになっております。  で、どうして人件費に不用額が出たかというとお尋ねでございますが、実は、この人件費のもとになっております予算は幾らであったかと申しますと、四百二十二億でございます。その割合は、大体、まあ三%から四%程度。で、これは各省におきましても、人件費は、他の物件費との流用を認めておりません関係から、その程度の余裕を持っておりませんというと、実際の人事運用ということはできない次第でございまして、十六億というのは、非常に大きい数字のように見えますけれども、これは、もとになる人件費が非常に防衛庁の場合は膨大であるということから出るのでございます。  御参考までに、予算をどういうふうにして積算するかということを申し上げますというと、大体、予算は、予算定員というのがきまっております。そして、また、その年度に採用するところの人員というのがきまって参ります。そこで、前からおりますところの人員につきましては、十二ヵ月の予算が必要なわけでございますが、その年度にふえるところの人員につきましては、充足率を平均的にとりますというと、まあ六カ月程度あればよいということになるわけでございます。ただ、しかし、これは一年間通じてみますというと、それが完全に埋まっておるということはあり得ないわけでありまして、若干そこに不足、まあ未充用のものが出るということは、当然でございます。そこで、その未充用、つまり、裏から申しますというと、充足率というものを幾らに計算するかということが、常に予算編成のときに問題になるわけでございます。  三十二年度について申しますというと、その充足率は、これは予算編成のときに、過去の実績等を参酌して、こまかく大蔵省と打ち合せるわけでございますが、三十二年度は、陸上につきましては、幹部が九〇・〇八%、曹士につきましては九八・三六%、平均いたしまして九七・四%。それから海につきましては九八%、空につきましては、やはり九八%、こういうことでもって組んであるのでございまして、これに対しまして、三十二年度の決算におきましては、約三%ばかりの余裕が出たわけで、それがこの十六億の不用額ということのもとになったわけでございます。それが率で申しますというと、大体、今の三%から四%程度ということになるわけでございます。  なお、三十三年度の予算につきましては、そういう点も勘案いたしまして、陸上につきましては、幹部を九〇%、曹士を九七%、平均いたしましてやはり九七%程度。それから三十四年度予算につきましては、幹部を九三・八%、曹士を九六・六八%、平均いたしまして九六・四%。若干充足率を下げて参っておりますが、これは過去の実績からして、大蔵省と相談の上で精密に計算をいたしておるという次第でございます。
  129. 岩間正男

    岩間正男君 どうも、これは資料が全般的にそろわないので、私の質問も、十分数字の上に立脚しないということになるわけですが、今の充足率の話がありましたが、そうすると、毎年の不用額のおもな原因は、充足率が一〇〇%に達しない、そのことによって、結局、ずいぶん予算を使わないと、こういうことになりますか。
  130. 山下武利

    政府委員(山下武利君) ただいま申し上げましたのは、予算を組みますもとの充足率でございまして、不用額を生じますのは、そうやって見た充足率に対して、さらに何パーセント余裕を生じてくるということから出て参るわけでございます。  この余裕が出て参ります原因は、必ずしも充足だけから来るのではございませんで、たとえば現員現給というのがございまして、たとえば昭和三十二年度につきましては、陸上自衛官の一人頭の予算単価を幾らに見るかというようなことについても、相当精密な計算をいたすわけでございますが、そういうものが、若干、予算と変ってくるという面もございます。また、年度の途中におきまして、若干の給与改訂とが、あるいは年度末手当の増額というふうなことが行われる場合もございます。そういったことで、予算を組みます場合に、予期しなかったような予算単価積算上の差上の差というものが、不用額として現われてくるわけでありまして、これは、必ずしも募集の不振ということに直接つながっておるというものではございません。
  131. 岩間正男

    岩間正男君 これは資料をいただいて、十分、私たち検討したいと思うのですが、特に三十二年度、これは実際の応募の絶対額を見ましても、たとえば二十五年度の三十八万、これは一番劈頭にやったことですが、その後、例年のなにから見ましても、非常に少かった。これはどういう原因ですか。  これは私は、不用額の問題が関係があるように、自分で資料がなかったものですから、類推したわけですが、しかし、非常に三十二年度は少かったわけですね。これは最初の募集計画が、人員が少くて、こういうような応募者も少かったのか、それとも、ほかに何か原因があったのか、この点について、原因はどういうことになっておるか、明らかにしていただきたい。
  132. 山下武利

    政府委員(山下武利君) 三十二年度につきまして、特に募集が不振という事実はございませんでした。不用額を生じます原因は、ただいま申し上げましたようなことでございます。
  133. 岩間正男

    岩間正男君 しかし、そう言ったって、二十万、二十万と来て、三十年度は応募者が二十万ですか、三十一年度は二十万、そうして三十二年度になりますと、十四万五千人というように、応募者の数が、がたっと落ちておる。これは自衛隊の質にも関係するだろうと思う。応募者の数が多ければ質がよくなるということが考えられますけれども、応募者の数が少ければ、やはり質は低下するということは、当然相対的に起ってくるだろうと思う。  私は、ここで記憶を思い起しますことは、なくなった小滝防衛庁長官の時代、あの時代に、私は質問したことがある。というのは、読売新聞が、自衛隊の応募がはなはだ芳ばしくない、例年の半数を下回っておる、こういう実情、われわれが二、三耳にしたところでも、そうだ。この原因について、どういうところから来たかということを質問したわけであります。その形は、この統計に出ておるわけですね、実際問題として。  これはどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、これは長官、この点、まだ御検討がないかもしれませんが、どうですか。
  134. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) 御指摘の点については、お話のように、私、実情はまだ当務者から聞いておりませんので、的確なお答えはできないかと存じまするが、御承知のように、本年度は、陸上自衛隊一万名の増員、海上自衛隊、航空自衛隊等についても、それぞれの増員をいたしております。また、来年度につきましては、陸上自衛隊については主として装備その他の質的改善をはかるということで、自衛隊の画期的な増員はいたしておりませんで、航空自衛隊について六千数百名というような、それぞれ重点を指向して、全体の装備の均衡をとっておるわけでありますが、過去において、三十二年、三十一年、三十年等の間に自衛隊の増員の数がどうであったかという点等も調査いたしました上で、今お尋ねの点等は明白に解明いたしたいと思いますので、次回までに調査いたしてお答えいたします。
  135. 岩間正男

    岩間正男君 今長官にそういう約束をしていただいて、実はこれで検討を要することは、当時問題になったことで、やはり神武以来の景気であったということがあったわけです。あのとき、政府が鳴りもの入りで宣伝をした。その中で、農村の次三男の諸君なんかは、やはり命をかけるような危険のある自衛隊というものに参加をしたくないという気持もあったのじゃないか、こういうことがだいぶ論議になった。ところが、小滝君が、そういうことはないということでだいぶ怒ったわけです。しかし、現実は、やはりそういうところがあった。自衛隊そのものについてのこれは性格の問題と関連してくるわけですが、不況になれば集まり、景気がよくなると集まらないというところに、一つの大きな考慮すべき問題があるのじゃないか。実はこれが募集の面でどういうふうになるのか、こういう問題の性格を十分検討して、それでその後、昨年この法案の改正をされて、何か一部、あの見学に行った父兄には飯を食わせるという法案もたしか通ったように私は記憶しているのです。そうして何とか自衛隊のPRをやって、国民のこれに対する賛同を得てというような格好になっている。ここにやはり自衛隊の、今いろいろ国民の間にまだ納得し切れない、憲法との関係なんかで問題がはっきりあるという点、こういう問題を私は相当性格的に明確にしていく、そうして、これは国策の一つとして十分に考えていく、こういう点から御質問申し上げている。  やはりこれは資料をいただきます。そうして、増員されていくこの計画を、さっきの募集人員と応募者とそれから採用の人数と、こういうものを出されましたが、さっき申されましたような充足率の問題とか、なるだけ詳細にわかるような資料をいただきたいと思うのですが、ずっと歴年の増員された定員の増加の何が出てくると思うのです。どれだけの応募者があって、それがどれだけ充足されて、退職者が一体どういうふうになって、残留している人はどうなっているか、そういう数も、全体的に、自衛隊の中の一つの大きな性格ですから、この問題について私は検討したいと思うので、これはいずれ詳細にその資料をいただいてから、また私どもで詳細な研究をして論議をしたいと思います。
  136. 島清

    ○島清君 時間がないそうでございまするので、きょうは一、二点だけ御質問を申し上げたいと思います。  自衛隊の方は、国土の防衛をそのおもなる任務としておると思うのでありますが、国土防衛ということになりますと、マッカーサーの言ではございませんが、内外の守りということになると思うのであります。北の備えに対しましては十分に機動演習なんかをおやりになりまして、おさおさ怠りないということを私たちは仄聞をしておるのでありますが、しかしながら、本土からかなり海上の方に離れておりまする奄美大島等南の方については、ほとんど、がらあき状態であると聞かされておるのであります。こうもこれは国土防衛上からいたしますというと、非常に片手落ちのような気がするのであります。そこで国土防衛ということは、一体どういう地域とどういうような所に配置をして、そうして国土を守ろうとしておられるのか。この点について配置状況並びにその重点を置いておられまする防衛地域ということについて御説明願えるならば御説明を承わりたいと思います。  それから、内の守りということになりますというと、これは現政体を守り抜くというようなことだと思うのでありまるが、現政体を守って、さらに社会の秩序と安寧を守っていくということでありまするならば、私どもは警察の力だけでよろしいのじゃないかと考えておりますが、しかしながら、今問題になっておりまする安保条約の中には、内乱についてもアメリカが出動することができることになっておりますので、こいつは不都合だというので、何か直さなければならぬかという改定の御希望が政府当局にあるようでありまするが、果して今自衛隊の当局といたしましては、日本にかりに内乱が起ったと仮定いたしますというと、アメリカ軍の出動を待たなければ鎮圧することができないとお思いになるのかどうか。それだけの国費とアメリカからの巨額な援助資金を受けておりまして、そうしてなおかつ、これだけの戦力を持ちながら、内乱ともなります、アメリカ軍の出動を待たなければならないというようなことでありまするならば、はなはだ私は不安な力のような気がするわけでございます。そこで、でき得るならばこのことについて御解明をいただきたい。さらに、これだけの巨額な国費をお使いになりまして、一朝有事といいましょうか、それに備えて訓練をされておるのでありますから、これは内乱に対する訓練と、それから外敵に対する訓練等があろうと思うのであります。従いまして、その訓練はどちらの方に重点を置いてやっておられるのかという点について明らかにしていただきたいと思います。  これは、私はまた次の機会にあらためてお聞きいたしたいと思いますが、かなり優秀なジェット機を購入しようという考え方がおありになりまして、かなりジェット機の購入については社会の疑惑を招いておるようでありますが、一体、今ああいったような世界の優秀なジェット機を購入されて、これを操縦し得るような航空士が何人ぐらいいるのか、こういう点をあわせて明らかにしていただきたいと思います。  以上でございます。
  137. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) 現在の自衛隊の配備につきましては、自衛隊法施行令の別表第二に詳細に御承知のように明示をいたしてあるわけであります。別表第二以下、第三、第四、第五、第六、第七、第八と、この点については時間がかかりますので、後刻申し上げたいと思います。  第二点の安保条約の改定につきまして、いわゆる内乱条項の問題でございまするが、現在の自衛隊、また日米安全保障条約——当時の状況におきましては、島委員承知のごとく、わが国は自衛力を持たなかったということで、あの第一条にいわゆる直接もしくは間接の大きな擾乱もしくは内乱という項目が挿入せられて、駐留軍の援助を得ると、こういう条項であったかと存じますが、最近のわが国の自衛力は御承知のごとく陸上自衛隊十七万、海上自衛艦約十万トン、航空自衛隊約千機という程度の整備を見ました今日におきましては、私はすでに国会等においてもまた政府部内においても見解を明らかにいたしておりまするが、単なる内乱については現在わが自衛隊をもって十分これを処理し得る、かように考えておる次第でございます。従いまして直接もしくは間接の大きな擾乱、他国の教唆扇動による直接間接の擾乱もしくは内乱、いわゆる間接侵略という言葉を使っておりまするが、かような大規模な間接侵略につきましては、事態によっては米軍の援助を受けなければならぬ場合が起るということで、それらの問題については私の聞くところによりますれば、日米安全保障条約においては協議事項とするというような方向に、政府としては目下いろいろと折衝準備を進めておる、かように考えておる次第でございます。  またわが自衛隊の訓練の重点と申しますか、訓練の実施方法等についていずれに重点を指向しているのかということでございますが、これは申し上げるまでもなく一朝有事に際して自衛の目的をもって外敵に当る、ということを中心にもっぱら訓練をいたしておる次第でございまして、自衛隊法第三条によりましても、あわせて公共の安全秩序の維持に当るということを規定しておりますので、現在の段階におきましては私どもは、通常の場合においては当然警察官が国家の治安維持に当るべきであり、警察官をもって当り得ないような大規模な騒擾、内乱については、自衛隊が公共の安全秩序を維持するという法律上の見地からこれを支援するという、そういう方向で現在訓練をいたしております。重点はもちろん他国からの不当な武力侵略に対処すべく、あらゆる訓練をいたしておる次第でございます。  それから第四点の、最近新しい機種の航空機購入というお話でありましたが、もちろん購入の問題もございまするが、日米共同生産方式、T33あるいはF86Fにとりましたような方式を、今後の新しいジェット機等についてとりたい、かようなことで、先般来政府として考究いたしておりましたが、昨年国防会議によりまして、一応の内定をみたのでありまするが、その後の各般の状況に基いて、目下さらにいろいろな方面からの検討を加えて機種の決定をいたしたい、かように考えておる次第であります。従って現在ジェット機の航空乗員として養成せられておる者が何人くらいであるかというようなお話でございまするが、本年度におきましては二百三名、そのうち減耗二十三名を考慮いたしますると、乗員可能養成人員は百八十名。来年度におきましては三百六十七名のジェット・パイロット乗員を養成いたしまして、減耗その他を考慮いたしまして三百十八名というような乗員養成を考慮いたしておる次第でございます。  なお今第一点に御指摘になりました点でございまするが、ここでこまかく御報告を申し上げますと大へん時間がとれる次第でありますが、御承知のように陸上自衛隊は十七万人実員は現在のところ十六万五千強、また非制服隊員が一万二千百三十九名、実員は一万一千八百十二名。これでその配備につきましては御承知通り部隊は方面隊、管区隊、混成団、その他長官直轄部隊からできておりまして、いわゆる北海道北部方面隊は北海道を警備区域といたしまして、北部方面総監部並びに第二管区隊、第五管区隊、第七混成団、第一特科団、高射特科群一、等からなりまして、第一特車群、第一施設群、その他の部隊からなっております。それで北海道に駐留いたします自衛隊は四万八千六百五十二名、実員は四万五千二百二十八名、かような状況でございます。また西部方面隊におきまして、これは九州でございますが、西部方面隊は九州及び山口県を警備区域といたしまして、西部方面総監部並びに第四管区隊、第八混成団、第三特科群、第二施設群、その他の部隊からなっておりまして、自衛官の定員が二万五千八百三十九人、実員が二万五千五百五十四人。それから内地の管区隊といたしましては、北部方面隊所属の二個管区隊及び西部方面隊一個管区隊のほかに、長官直轄部隊といたしまして第一、第三、第六の三管区隊があります。管区隊所有の兵力はいずれも一管区隊あたり一万二千七百人を基準といたしておりまして、管区総監部及び普通科連隊三、特科連隊一、特車大隊一、施設大隊一、衛生大隊一、航空隊一、その他の部隊からなっている次第であります。  内地全体といたしましては、地域別に申し上げますと、第一管区隊においてその所管は東京都にございまするが、茨城、栃木、群馬、千葉、埼玉、東京、神奈川、新潟、山梨、長野、静岡の各県を含みまして、長官直轄部隊として一万四千百八十八名、実員は一万四千三百四十八名、また第三管区隊といたしまして、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、徳島、香川、愛媛、高知の各府県、定員といたしまして一万四千八百七十九名、実員は一万五千二百八十一名、その他第四管区隊が山口、福岡……これはすでに申し上げました。第六管区隊が宮城、秋田、山形、福島の各県で、定員が長官直轄部隊として一万五千百五十六名、実員が一万三千四百八十九名、さらに第九混成団、青森岩手の両県におきまして、長官直轄部隊として六千五百六名、実員が六千三百五十二名、第十混成団は富山、石川、福井、岐阜、愛知、三重の各県で、長官直轄部隊として五千七百十九名、実員が五千百二十六名。陸上自衛隊の配置はかような状況に相なっておりまして、ただいま申し上げましたように、重点は北海道、九州等に指向されているわけでございます。その他海室等についても大体そういうような基準で、重点を北部と西部とに指向いたしまして、それぞれ配置をいたしている、かような状況でございます。
  138. 森中守義

    ○森中守義君 資料を少しお願いいたしたいと思います。  第一は、防衛本庁及び各種隊別の、全国的な納品別の指定業者の氏名、その業者の所在地、代表者、それと、三十三年度、二年度、一年度、この三カ年間における発注額、さらに新年度における発注額、さらに新年度における発注計画、三十四年度の発注計画。それから職員及び隊員の宿泊の施設、官舎、これらのものの状況をお知らせいただきたい。それは貸与というのですか、あるいは借り上げというのもあるようですね。こういう一切のものを含めていただきたい。  さらにこの際それに対する三十一年度以降各年度ごとの予算の要求額、査定額、予算成立額、実行額。  それから三番目が職員及び隊員の海外への派遣状況、それは出張及び駐在、この二つに分類をしていただきたい。さらに派遣国別、氏名、派遣者の地位、所属、派遣先における職務の内容、それについては外務省参事官とかあるいは書記官とか、こういうように身分を外務省に移して出ておる人もあるようですが、これらのものもお願いしたいと思います。  それから第四番目が三十一年度以降外国旅費の予算要求額、査定額、成立額、実行額。  それから庁員は、主として隊員になると思いますが、こういうものが存在するかどうか知りません。しかし私が承わったところでは、熊本で、ある種のビルを作り、あるいはまた借り上げるか何かで、慰安施設を作りたいということを熊本で、八混ですね、八混だと思いますが……。
  139. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) 八混だと思います。
  140. 森中守義

    ○森中守義君 八混の方からそういう話があったというようなことを聞いておりますが、こういうものが果して存在しておるものかどうか。それを地域別に御調査いただいて調べていただきたい。  それから訴訟の問題ですが、現在係争中のものも含めて、三十一年度以降発生をした訴訟の件数、事案の内容、依頼した弁護士、さらに地検、あるいはまた地裁等、法廷に出されているその地域別のものをお願いしたい。さらに弁護士の謝礼額。事案別です。  それから三十一年度以降、庁員が懲戒処分にかなり付されておると聞いておりますので、その件数と、件数ごとの懲戒の内容、それから懲戒処分の結末。  それから庁内における各種通信施設の状態。有線、無線一切のものを含みます。それからマイクロウエーブ等が電電公社に依頼をされていると思いますが、電電公社に対してマイクロウエーブの使用料を幾ら年間に支払っておるか。それの協定書。さらに郵政、電電公社、その他日本放送協会、国際電電、こういう防衛庁以外の通信機関を依頼しておるとするならば、その依頼の状態。こういうものを資料として、できるだけすみやかに、防衛庁関係決算審議を行う際に、早目に御提出をいただきたいと思います。  以上の資料をお願いしたいと思いますが、委員長の方から正確にお願いしたいと思いますが……。
  141. 西川甚五郎

    委員長西川甚五郎君) いかがですか。
  142. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) 大へん広範であり、かつ詳細をきわめておりますと同時に、地方的にわたる資料も、第一点等においては、各地方の調達部の関係、それの納入、承認、納入願というようになりますと、非常に詳細をきわめまして、若干の時間を要すると存じますので、でき上りましたものから逐次できるだけ早く本委員会に提出したいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
  143. 森中守義

    ○森中守義君 長官の御答弁でけっこうです。問題は、防衛庁決算が子、う、さして早目に本委員会で終了するとも思いませんし、そのつもりも持っておりません。従ってかような資料が、たとい広範にわたり長期にわたっても、出ない限りは審議を促進できませんので、そのおつもりでお願いしたいと思います。
  144. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) わかりました。
  145. 森中守義

    ○森中守義君 それから、まあこれは次回にでもと思いましたが、事のついですから一つだけ。例の防衛秘密保護法の九条の二項か三項に、非常に極刑をきわめた、十年以下の懲役だったと思いますが、そういう罰則条項があるようです。おわかりですか、全条文が十二、三条の非常に短いものですよ、それの九条の二項か三項です。
  146. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) 施行令でございますか。本法には第七条までしかございませんが……。
  147. 森中守義

    ○森中守義君 七条でしたかな。ちょとそれは私が記憶違いかもわからんが……。
  148. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) しかしここにも罰則が出ておりますが、第六条には……。
  149. 森中守義

    ○森中守義君 十年以下の懲役というのがあります。防衛の機密を漏らすという……。
  150. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) ええ、わかりました。三条に、「左の名号の一に該当する者は、十年以下の懲役に処する。一 わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもって、又は不当な方法で、防衛秘密を探知し、又は収集した者 二 わが国の安全を害する目的をもって、防衛秘密を他人に漏らした者 三 防衛秘密を取り扱うことを業務とする者で、その業務により知得し、又は領有した防衛秘密を他人に漏らしたもの 2 前項第二号又は第三号に該当する者を除き、防衛秘密を他人に漏らした者は、五年以下の懲役に処する。3 前二項の未遂罪は、罰する。」第三条です。
  151. 森中守義

    ○森中守義君 今大へん丁寧に長官がお読みになった通りです。その中に、たとえば日本放送協会あるいは朝日新聞、その他取材関係の諸君が、防衛の秘密を漏洩するという目的ではなくて、あくまでも国際連合における言論の自由を守る決議というのがありますから、その精神にのっとっていわゆる防衛庁としては厳秘に付されておる、しかも正式にスポークスマンを通じて公表されない、手段を用いて取材をして新聞に出した、あるいは電波に乗った、こういう場合に、その条文の適用はどういうことになりますか。それが第一点。  おそらく——私の見解はのちほどまた申し上げますが、現行法において非常にそういう事態が予見されるという場合において、その条項の適用が困難であると仮定するならば、将来その条文を何かの方法で考慮するというお考えがあるのか。さらには岸総理がしばしば本院の本会議等で言明をしておりますように、防衛機密保護法ないしは軍機保護法等の制定が、もはや今日のように国際間の緊張した状態においては必要であるということを言明をしておりますが、それらとの関係において、その諸条項に対する新聞の自由、報道の自由、こういう問題について長官の見解を承わっておきたい。
  152. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) ただいまお尋ねの件につきましては、放送協会もしくは新聞等というお話がございましたので、それに限定してお答えをいたしたいと思いまするが、ただいま知読み上げましたうち第一号「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもって」かような目的をもって、「又は不当な方法で、防衛秘密を探知し、又は収集した者」この目的を持たない者は本条に該当しない。第二号につきまして「わが国の安全を害する目的をもって、防衛秘密を他人に漏した者」安全を害する目的があったかなかったかということが、犯罪要件の重大な案件になろうと思いますので、その意味においては、私は今の森中先生御指摘の通常の業務、それが以上の目的を持ったものでないというお話であればこれには該当しない。ただ第三号の「防衛秘密を取り扱うことを業務とする者」この者については主として庁内の者、あるいはすでに指定せられた特殊の者を意味すると思いますが、この者については「その業務により知得し、又は領有した防衛秘密を他人に漏した」場合には十年以下の懲役に処せられるということと私は考えております。  それから第二段の、現在の国際情勢下において日本の防衛秘密保護法の問題については、政府としては目下今後の、何と申しまするか、日米安全保障条約の改定がかりになされると仮定いたしまして、また現状において、逐次陸兵は御承知のように全員補給部隊を除いては米軍は撤退をいたしました。また航空部隊も逐次、急速な撤退ではございませんが、逐次撤退の方向にあるかと存じまして、そういう際にわが国の防衛を、御承知のように現在の国力、国情をもっては独力で防衛をし、防衛装備を整備するということは私は困難だろうと思います。従いまして、政府として最新の装備を持つためには、当然アメリカの兵器機密というようなものにも触れてくる問題が多かろうと存じます。そういう際に、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の範囲で、そういった日本の画期的な装備の改善、あるいは最新兵器の装備というようなものができるかどうかという点等については研究中でございまして、当面のこの問題に関する限りは、今御指摘の点について問題が起らないのじゃないか。私はかように考えます。
  153. 森中守義

    ○森中守義君 大へんおそくもなっておりますからあまり深追いをしませんが、やはり安全保障条約の改定というのが今当面している重要な問題で、この問題とそれらの諸法を切り離して考えることは困難だと思いますが、私がこの際非常に現実的な問題として現在の時点から判断してお尋ねをしておきたい問題は、防衛庁長官という立場、その立場において新聞記者が言論の、報道の自由が保障されておる。こういうことで防衛庁局長の部屋も、あるいは幕僚長の部屋も、長官の部屋も、機密室も、自由にこれは入ることが私は保障されておると思う。そういう際に、どうもこれでは工合が悪い、こういうお気持にはおなりになりませんか。ことに現代における、たとえば作戦要務等に参画をすべき立場にある人たちが、取材人のために逐一国民の前にそれが報道されたという場合に、作戦上支障を来たさない、そういうお気持ですか。それともそれが当然であるか。どちらをお選びになりますか。
  154. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) 最初の記者の人々が長官の部屋、官房長の部屋、あるいは例示をされました防衛庁局長等の部屋に自由に入ることを保障されておるという問題については、これはまあいろいろ論議がありまするが、常識をもって処理しなければならぬと存ずるのでありますが、一応指摘のような問題等については、防衛庁としては、先般来特に大きな問題等についてではございませんが、若干の問題等については取材等で明らかにせられて、一部の機密が漏れるというような事態がないとは申し上げません。従って、これらの処理につきましては、苦慮研究しておるということを率直に申し上げます。
  155. 森中守義

    ○森中守義君 苦慮研究中ということで全貌が私はよく理解できました。それでこれは実在する問題かどうか知りません。私はそういう事実を今ここに立証すべき何ものもないので、そのことは申しませんが、たとえばですよ、今日放送法というものがある、放送は郵政大臣が所管をしておる。そこで日本放送協会が、あるいは民間放送の記者諸君が、どうしても防衛庁ではこれだけは機密に付しておきたい、一切公表は困るという事態が、正当な手段でなくて、しかも取材記者の立場からするならば、ただいま申し上げたように、これは一つおわかりでなければ、国連における言論報道の自由に関する決議というのがありますから、これを一つぜひ長官は、一度翻訳したものを外務省は持っているようです、ごらんになっていただきたい。こういうようなときに不幸にして、あるいは幸いにしてかどちらかわかりませんが、あるいは幸いにしてかどちらかわかりませんが、防衛庁が忌みきらっている公表ということでとうとう表に出てしまう、そういう際に、郵政大臣に対してこれじゃ困るということで、政府機関を通じて、日本放送協会あるいは民間放送等にあの記事を落してくれ、あるいは取材記者に対して注意勧告をしてほしい、こういったような問題が、法律上の問題とは別に、なるほど先刻長官がお読みになった各条文の限りにおいては、さようなことを罰し得る方法はありません。ないけれども一種の行政行為としてそういうものが行われやすい私は環境にあると思う。しかも今日のように、長官指摘されたようでしたが、漸次新兵器というものが、わが国の防衛上真に必要であるということを仮定をして考えた場合に、やはり行政行為はその辺まで私は及ぶのではなかろうか、こう思う。そのことが即わが国の言論と報道の自由を法律に保障なき状態において制限を加えられる、こういうことに相なるかと思います。ややもすると、そういう事件が地域的に、あるいは中央において二、三発生しておるかもしれません。これはわれわれが具体的に先刻申し上げたように立証すべき素材を持っておりませんから、何とも言明の限りじゃないがあり得ると思う。そういう際に対して長官はどういう見解をお持ちですか、あくまでも法律が保障する限りにおいて、郵政大臣にも関係の閣僚にも、さようなことで取材を押える、あるいは関係ある各報道機関に対して苦情の申し立てをやる、取材記者の変更をさせる、そういう措置はおとりになりませんか。
  156. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) きわめて重要な御質問でございまして、これらの問題につきましては、すでに先般政府において秘密保護法等の問題が論議になりました際、報道機関その他からいろいろ批判がありまして、現在政府の当初考えられましたいろいろな形の秘密保護法というような法律が出るに至りませんことも、ただいま森中先生御指摘の実情を物語っておるとかように私は考えまするが、現在においては本法律に基かないものを行政措置によって防衛庁長官が要求するということは、私は不可能だろうと思います。
  157. 森中守義

    ○森中守義君 今不可能であろうということを聞いて、いささか安堵しましたが、それはかたくお約束できるということでなければ私は困ると思う。あくまでも言論と報道は防衛庁がみずからの立場でこれを制約することは断じてできません。従って、いかなる機密事項といえども、取材記者がたとい正当な方法ではなくても、いろいろな方法をもって防衛秘密を探知しこれを国民に公開しても、これはやはり保障する、こういったようなことをここで一つ言明をしていただきたい。非常に、今こういう言論報道の自由をいかにして保障するかということは、きわめて重要な問題であり、かつまた防衛機密保護法等の制定が意図されている今日においては、最も私どもとしては関心を持たざるを得ない問題でありますから、そういうことは不可能で、あろうでなくて、不可能である、行政行為としてさようなことはしないということを言明をしていただきたい。
  158. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) 私はただいま法律に基かないものは不可能であると申し上げました。今、森中先生の指摘された中に、不当な方法をもって、正当な方法でなくて、というお言葉がございましたが、この点については法律上当然触れる条項がございます。読み上げますと「第三条左の各号の一に該当する者は、十年以下の懲役に処する。一わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもって、又は不当な方法で、防衛秘密を探知し、又は収集した者」この項目に該当したる場合においては、当然法律の処断を受けると私は考えております。
  159. 森中守義

    ○森中守義君 そういう御答弁になりますと論争の余地が大いに残るわけです。なぜなれば、不当であるか不当でないかというような法律上の認定は、なるほどこれは法律によらなければならない。しかしそこにいう当か不当かという問題は単に防衛庁の立場からいうのであって、取材陣、報道陣は、不当であろうと不当でなかろうと、防衛庁の立場に立っていない。いわんや戦後におけるプレス・コードも何もないのですから、それは取材関係、報道関係には適用しない。これがたとえば訴訟が起きて法廷で争う場合も、防衛庁はこの行為については不当である、かような認定をしても、いわゆる完全な自由人である報道記者諸君が、そういう防衛庁の規定を適用されるということは、私は法理論的にも成立をしない、こう思うのです。従って今防衛庁長官がそういう御答弁になりますと、ますます問題はこじれて参るのですが、要するに、これはこれから先ゆっくりこの会期中楽しみたいと思っているから、ここで結論は出しませんが、やはり私が申し上げる要点は、現行法では言論報道はあくまでも自由である、防衛庁は不当だと言っても新聞記者は不当じゃない。また防衛庁の正式な手段によっては、率直に申し上げてこれはもう取材できないのですね。新聞記者が独自のニュアンスで、独自のセンスで、独自の方法で記事をとらなければ、国民に知らしたいこと、しかも国家的に一番大事な防衛の機密というものは探れない。そんなことをやっていたら新聞あるいはラジオなんというものの記事はどれません。これは私は常識だと思っている。だから新聞社は正当だ、防衛庁は不当だ、こういうことを論争し、かつまた法廷等で争う場合も、今防衛庁長官が言われるような議論はちょっと成立をしない。こういうような見解を私は持つのですが、あくまでも、そういう防衛の機密が漏れたからといってそれで、われわれから言わしむるならば、不当な方法というので行政行為としてこれを制約されないように、かたくここで一つ長官の言明を私は求めておきたいと思います。
  160. 伊能繁次郎

    ○国務大臣(伊能繁次郎君) ただいま御指摘の不当であるかないかの問題は、これは防衛庁が認定するでもなく当事者、相手方が認定するでもなく、裁判所が事実問題として決定するものであると思うのであります。従って、私どもが不当と認めました場合においてこれはまた議論の対象になるかと思いまするが、告訴、告発をした場合において、それが事実不当であるかどうかは裁判所の決定するところであり、私は、裁判所の決定に従ってこの問題の処理をいたしたい、かように考えております。
  161. 西川甚五郎

    委員長西川甚五郎君) 本日の防衛庁に対する質疑はこの程度で終ることにいたします。本日の審議はこれにて終了いたします。次回は公報をもって御通知申し上げます。  これをもって委員会を散会いたします。    午後五時五十五分散会