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会計検査院長(加藤進君)
昭和三十二
年度歳入歳出決算は、三十三年十月二十五日内閣から送付を受け、その検査を了して、
昭和三十二
年度決算検査報告とともに、三十三年十二月四日内閣に回付いたしました。
昭和三十二
年度の
一般会計決算額は、
歳入一兆三千九百九十八億余万円、
歳出一兆千八百七十六億余万円、各
特別会計の
決算額合計は、
歳入二兆三千七百六十二億余万円、
歳出二兆千三百九十三億余万円、でありまして、
一般会計及び各
特別会計の
決算額を総計いたしますと、
歳入三兆七千七百六十一億余万円、
歳出三兆三千二百六十九億余万円となりますが、各会計間の重複額及び前
年度剰余金受け入れなどを控除して、
歳入歳出の純計額を概算いたしますと、
歳入二兆六千五百三十九億円、
歳出二兆四千六百六億円となり、前
年度に比べますと、
歳入において千四百四十八億円、
歳出において千七百八十九億円の
増加となっております。
なお、
国税収納金整理資金の受払額は、収納済額一兆六百七十一億余万円、支払命令済額と
歳入組み入れ額の
合計一兆六百五十一億余万円、であります。
政府関係機関の
昭和三十二
年度決算額の総計は、
収入一兆千四百二十六億余万円、
支出一兆四十一億余万円でありまして、前
年度に比べますと、
収入において千六百四十七億余万円、
支出において千六百七十五億余万円の
増加となっております。
ただいま申し上げました国の会計および
政府関係機関の会計の
決算額のうち、
会計検査院においてまだ検査が済んでいないものは、総計百三十七億九千余万円でありまして、そのおもなものは、総理府の
防衛庁の項で八十六億四千七百余万円、同じく
艦船建造費の項で二十三億六千八百余万円などであります。
会計検査の結果、
経理上不当と認めた事項および是正させた事項として、
検査報告に掲記しました件数は、
合計五百一件に上っております。三十二
年度の
不当事項及び是正させた事項の件数が、三十一
年度の千百二十八件に比べて
減少いたしましたのは、主として補助金において
減少したためであります。
今、この五百一件について、不当
経理の態様別の
金額を概計いたしますと、
不正行為による被害
金額が六千五百万円、保険金の
支払いが適切を欠いたもの、または保険料の徴収額が不足していたものが一億七千七百万円、補助金で交付額が適正を欠いているため返納または減額を要するものなどが一億四千九百万円、災害復旧
事業に対する早期検査の結果、主務省において補助金の減額を要するものが一億八千六百万円、租税
収入などで徴収
決定が漏れていたり、その
決定額が正当額をこえていたものが五億四百万円、
工事請負代金、物件購入代金などが高価に過ぎたり、または物件売渡代金が低額に過ぎたと認めたものの
差額分が六千六百万円、不適格品または不急不用の物件の購入など
経費が効率的に
使用されなかったと認めたものが一億八千三百万円、その他が一億六千八百万円、
総額十五億円に上っておりまして、三十一
年度の二十五億二千四百万円に比べますと、十億二千三百万円の
減少となっております。
減少したもののおもなものは、補助金で交付額が適正を欠いているため、返納または減額を要するものにおいて三億二千万円、
工事請負代金、物件購入代金などが高価に過ぎたり、または物件売渡代金などが低額に過ぎたと認めたものにおいて二億三千三百万円であります。
検査の結果につきましては、租税、
予算経理、
工事、物件、役務、保険、補助金、
不正行為の各項目に分けて
検査報告に記述してありますが、これらのうち、会計
経理を適正に
執行するについて、特に留意を要する事態として、
予算の
効率的使用について、また、保険及び補助金に関して、その
概要を
説明いたします。
まず、
予算の
効率的使用について
説明いたします。
経費予算が効率的に
使用されないため不経済な結果と
なつたと認められる事例は、毎年多数これを
指摘して改善を求めてきたところでありますが、三十二
年度におきましても、
工事の
施行や物件の調達などにつきまして、
防衛庁、
日本国有鉄道などにおいて、なお、多数見受けられるのであります。すなわち、
工事の
計画または
設計が実情に沿わないため不経済となっているもの、
使用材料の数量などについての調査が不十分なため
工事費の積算が過大となっているもの、
工事の出来形が
設計と相違していたり、
施行が粗漏であるのに、そのまま竣工検査を了しているものなどが少くありません。また、物件の調達につきましては、購入
計画が適切でないため
使用時期を失し、または過剰保有となっているもの、規格もしくは数量の
決定、
予定価格の積算、または契約の締結にあたつて、十分な調査検討をしなかったため不利な結果をきたしているものなどの事例も、なお見受けられるのであります。
次に、保険について
説明いたします。国が、
特別会計を設けて
経営する各保険
事業における保険
事業の
運営、保険金の支払、または保険料の徴収などにつきましては、農林省、厚生省、労働省などの所管するものにつき、適正を欠いていると認められる事例を毎年多数
指摘して、注意を促してきたところでありますが、三十二
年度におきましても、改善への
努力の跡は認められますが、なお、保険
事業の
経理が好転しているとは認められない状況であります。すなわち、健康保険、労働者災害補償保険、失業保険などにおきましては、実施機関相互の連絡、および
事業主などに対する調査または指導監督が十分でないため、保険料の徴収不足をきたしているもの、受給要件の適否に対する調査が不十分なため、給付の適正を欠いたものが依然として見受けられるのであります。また、農業共済保険
事業におきましては、三十三年中には、従来から検査を実施しておりました主要農作物共済にかえ、主として蚕繭共済について検査を実施したのでありますが、その結果は、従来主要農作物共済にみられたと同様に、共済掛金の徴収、共済金の支払、及び保険金の基礎となる被害の評価など、
事業の
運営に関して、著しく適切を欠いているものが少からず認められるのであります。
最後に、補助金について
説明いたします。補助金の
経理につきましては、災害の発生が比較的少かったことに加え、
関係当局における指導監督の徹底、及び
事業主体の自覚が高まつてきたことなどによりまして、相当に改善の実があがつていると認められるのでありますが、なお、不当な事例は多数に上っているのであります。補助金のうち、公共
事業関係のものにつきましては、その
経理が当を得ないものとして、
会計検査院において毎年多数の事例を
指摘してきたところでありますが、三十二
年度におきましても、
事業主体において正当な自己負担をしていないため、ひいて
工事の
施行が不十分と認められるもの、また、
事業主体が補助の対象となる
事業費を過大に積算して査定を受けたり、または、
設計通りの
工事を
施行していないなどの事例が、依然として少くないのであります。
また、災害復旧
事業の
事業費査定の状況につきましては、三十三年におきましても、農林、建設、運輸各省所管の分について、
工事の完成前に早期に検査を行いましたところ、前年同様、採択された
工事のうちには、
関係各省間で二重に査定しているもの、災害に便乗して改良
工事を
施行しようとしているもの、現地の確認が不十分なため、
工事費を過大に見込んでいるものなどが多数ありましたので、これを
指摘して
工事費を減額させることといたしました。
さらに、公共
事業関係以外の補助金につきましても、前
年度に比べて相当改善の跡が見受けられたものもありますが、なお、農山漁村建設総合
施設事業関係、公衆衛生
関係などにおきまして、精算額を過大に
報告して補助金の交付を受けたり、補助の目的以外の
事業を
施行したり、
事業量が不足していたり、
事業の
計画が適切を欠いたため、不経済となっているなどの不当な事例が多数見受けられたのであります。
以上をもって
概要の
説明を終りますが、
会計検査院といたしましては、適正な会計
経理の
執行につきまして、機会あるごとに
関係各省に対し、是正改善の
努力を求め、不当
経理の発生する根源をふさぐことに努めてきたのであります。その結果は、近年相当に改善の跡が見受けられるようになってまいりましたが、なお、このように不当な事例が多数見受けられますので、主務省及び
関係者において、さらに特段の
努力を払うよう望んでいる次第であります。