運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1959-02-26 第31回国会 参議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月二十六日(木曜日)    午前十時三十一分開会   —————————————   委員異動 一月二十五日委員江藤智君辞任につ き、その補欠として野村吉三郎君を議 長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     杉原 荒太君    理事            井上 清一君            健児 祐輔君            苫米地英俊君            森元 治郎君    委員            鹿島守之助君            笹森 順造君            津島 壽一君            羽生 三七君            石黒 忠篤君            佐藤 尚武君   国務大臣    外 務 大 臣 藤山愛一郎君   政府委員    外務政務次官  竹内 俊吉君    外務省アジア局    長       板垣  修君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    外務省条約局長 川橋 通敏君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○所得に対する租税に関する二重課税  の回避及び脱税防止のための日本  国とパキスタンとの間の条約締結  について承認を求めるの件(内閣提  出) ○国際情勢等に関する調査の件  (国際情勢に関する件)   —————————————
  2. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。  昨日江藤智君が委員を辞任せられ、その補欠として野村吉三郎君が選任されました。
  3. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 所得に対する租税に関する三重課税回避及び脱税防止のための日本国パキスタンとの間の条約締結について承認を求めるの件(本院先議)を議題といたします。  政府より提案理由説明を聴取いたします。
  4. 竹内俊吉

    政府委員竹内俊吉君) ただいま議題となりました所得に対する租税に関するニ重課税回避及び脱税防止のための日本国パキスタンとの間の条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  御承知のようにわが国は、さきにアメリカ合衆国及びスエーデンとの問に二重課税防止条約締結しておりまして、引き続きアジア諸国その他の諸国ともこの種条約締結を促進しようとしておりましたが、まずパキスタンとの間に交渉妥結いたしまして、昨年十一月十日に仮調印を行いまして、パキスタン側で所要の国内手続をとるのを待つた上、本年三月十七自に署名調印いたした次第であります。  この条約内容は、基本的にはわが国さき締結した二重課税防止条約になろうものでありますが、わが国アジア諸国との間のこの種の条約最初のものでありまして、単に両国間の経済及び文化関係緊密化に貢献するだけでなく、他のアジア諸国とのこの種条約締結を促進するものと考えている次第であります。  よって、ここにこの条約締結について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、本件につき、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  5. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) ただいま聴取いたしました本件に関する質疑は、次回に譲ることといたします。   —————————————
  6. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 次に、国際情勢等に関する調査議題とし、藤山外務大臣に対し、質疑を行うことといたします。質疑のおありの方は順次御発言をお願いいたします。
  7. 森元治郎

    森元治郎君 初めに藤山外務大臣構想について、小さい点をただしておきたいと思います。  この新しい条約作つてこれが効力を発生すれば、今の安保条約自然消滅する、行政協定の方も自然消滅というような形になっていくのですか。
  8. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 行政協定の取扱いにつきましては、いろいろな方法が考えられると思います。が、しかし、現行安保条約の条文を引いておつたりなんかしておりますので、ある程度これらのものを修正して参らなければならないと思いますが、それらのものをどういうふうに扱っていくか、また、問題のありますような点について、どの程度の改善を加え、また長期にわたりまして検討しなければならぬ点もありますので、それらのものは、行政協定が新らしくできた後にやはり検討していくという場合もありましようし、それらの取扱い問題については、ただいま検討しております。
  9. 森元治郎

    森元治郎君 外交閣僚懇談会とかいうものができて、きょうから初会合があつて、おやりになるのですが、いろいろ各人、各派の意見が大へん藤山外務大臣構想政府構想開きがあるように伝えられておりますが、大臣は、これまで世間にお示しになり、また委員会等でわれわれの質問にお答えになつたその考えを突っぱっていくつもりか。また突っぱれると思われるかどうか。
  10. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この問題は大きな問題でありますので、いろいろ御議論のあるところも多々あると思います。また同町に、昨年の十月からすでに問題についてのいろいろな論議が行われておりますので、相当議論も出尽してきたのではないかとも思っております。従いまして、われわれとしては、この辺でもって意見の統一を見て、そうして実際の交渉に当つていくのが適当だと考えております。私は交渉責任者として、従来の論議を聞き、また、ただいままでの事務的ないろいろの折衝等もいたした立場から見まして、私としては一つ考え方を逐次固めております。大体その線に沿って、議会等でも御答弁を申し上げておりますけれども、最終的に私の意見がこうであって、これ以外の意見はあり得ないのだというような立場ではまだ申し上げておらないのであります。従って、最終的にも十分各方面の御意見をいれて、そうして考えるべき点は考えて参ることは、これは当然であります。しかし、大体今日までの事情から申して、私が議会等で答弁しております範囲のものは、当然適当な考え方であるのではないかと、こう思っておりますので、その線に沿って皆さんに十分な御理解を得ることに努めていきたいと、こう思っております。
  11. 森元治郎

    森元治郎君 十分御説明なさって、各人の意見が大体藤山さんの考えている線にまとめ得るという自信がおありになるかということを、もう一回伺いたいのです。というのは、大へん開きがあるように思います。たとえばこの条約区域の問題にしても、また廃棄条項の問題にしても、内乱条項の件、行政協定全面改定論とか、非常な隔たりがあるように思うので、今、外務大臣がおっしゃったように、十分説明をすれば納得得られるのではないかというような今のお話でありましたが、私は非常にむずかしいのではないか。もう一回、できるのか、まとめられるという自信がおありなのか、あるいはこれが流されてしまうということになれば、およそ藤山構想というものは根本的にひっくり返ってしまうような感じが、伝えられるところによれば、そういう印象を受けるので、いやしくも外交交渉をやるという場合には、こまかい字句の表現はともかくとして、根本的な構想というものは、外務大臣として当然持っているはずです。またなければそれはやれない、その点の自信のほどを一つ伺いたいと思います。
  12. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私としましては、むろんいろいろな意見を十分聞きますことは当然であります。まあ聞きました上で、今までの考え方その他について間違っているところがむろんありますれば、直すことは当然だと思います。しかし、過去半年のいろいろな論議を通じ、また、先ほど申し上げましたような私のこの問題を扱っておりますことからきて、あるいは議会等で御答弁申し上げた線に沿って私は皆さんの御理解を得なければならぬと強くそう思っておるわけであります。それについて最善努力はいたしておりますが、今どういうふうにこれを、自信を持って、ということになりますと、私も日本の国のためにある程度の一番いい考え方でやらなければならなぬ、そういう意味からいえば、私がだんだん考えてきておりますことについて、相当自信を持ってやらなければならぬというふうには考えております。
  13. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) あとからお見えになった委員の方に申し上げます。ただいま国際情勢等に関する調査議題として、藤山外務大臣に対し質疑を行なっております。
  14. 森元治郎

    森元治郎君 世間では、あるいは新聞紙上では、藤山外相独走というようなことが出ておるのですが、どうもこういうふうに同じ党内から各方面から勝手な意見が出てきたところを見ると、一体外務大臣はよく事前に政府の基盤である与党意見を参酌しておられたのかどうか、そういう点が少し危うい感じがするのと、それから与党の総裁であり総理大臣である岸さんとよく十分今日まで打ち合して進んでこられたのか。もしほんとうに世間で言うように独走であるならば、これはたたかれても仕方がないが、その間の事情一つ説明を願いたいと思います。
  15. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 総理とはこの問題の進め方につきまして、またその内容本質等につきまして、十分今日まで、話し合いをしてきておるのでありまして、その間、意見間隔があろうとも思いませんし、議論をむろん尽している上においては議論もありましたけれども、現在において間隔があろうとは私は思っておりません。従って、総理との間の打ち合せと申しますか、了解は相当についておると思います。また党内にもいろいろ御議論があることは事実でありますが、同時に、私は党内の各種の会合に出まして、相当この問題について話をいたしております。従って、全然党内と離れて私だけが何か独自にやっておるということはないのであります。ただ、そうした諸種の会合口に出ましていろいろな御意見はございますし、また御意見を伺うのも私としては当然の立場だと思いますので、御意見を伺ってもおるわけでありまして、決して独走しているというようなことだとは私自身は考えておりません。
  16. 森元治郎

    森元治郎君 それだけ御説明があって、なおかつ外務大臣の言う——これまでおっしゃったのは三月末ぐらいを目途として交渉調印をしたいというのが今日までわれわれ伺った構想でありますが、どたんばへ来て非常にすべての問題について根本的に違ったようなのが出てきたところを見ると、むしろこの際やらなくてもいいという方に持っていくか、あるいは問題をうやむやにずらしていく、その意図はいろいろ党内事情はあるのでしょうけれども、これを議論を沸騰させていくならば、おそらくまとまりっこないことが、これは大臣も心の中ではお感じになっておると思うのだけれども、そういうふうに外交閣僚懇談会なるものは、外交ではあるけれども、体のいい安保条約改定を阻止するか、あるいは流していくというふうにわれわれは見るんだが、今後のこの条約問題を国会でわれわれが論議をする上にぜひ必要なので、その点をお伺いいたしたい。
  17. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この問題は、かねて申し上げておりますように、重光外務大臣も数年前に行かれまして、この問題を提起されております。また総理も一昨年行かれましたとき、日米事態に対応してこの問題を取り上げておられるわけで、決してこの改定交渉自体が、自民党の方針から外れているとは私は考えておりません。また同時に、昨年、日本側から三たびこの問題を提起して、そうしてアメリカ側がこれを応諾したのでありまして、その信義の上からいいましても、私は、自分責任においてこの問題を遂行しなければならぬということを、固く信じておるわけであります。従って、今日までも、これを流すとかあるいは延期するとかいう考え方は持っておりません。できるだけ早い機会交渉妥結し、調印に持っていきたいと、最善努力をいたしておるわけで、その点においては、当初以来今日まで、少しも私の信念に変りはございません。いろいろな党内調整もございますし、そういう意味において外交問題に関していろいろな問題もございますので、外交閣僚懇談会を開催してもらいまして、そうしてその推進に当たり、あるいは調整に当っていくという意味において、外交閣僚懇談会ができるわけでありますから、外交閣僚懇談会ができたこと自体が、何か安保条約を流してしまうカモフラージュであるということは、全く外交閣僚懇談会を作りました趣意に反しておりまして、そういうことは全然ないと私は確信いたしております。
  18. 森元治郎

    森元治郎君 従来アメリカ側と折衝された経過から見て、外務大臣の決心がかたいことは、今伺いました。そのかたいというところに、これからの問題がむずかしくなってくるので、官房長官の方では夏ころまではむずかしいじゃないかと、党内情勢を一番よく知っておるたばね役である官房長官がむずかしいと言う。外務大臣国会等で三月下旬、このごろは四月あたりを目途としてやりたいと、こうなっておりますが、事態が非常にむずかしくなっていって、だんだんに四月が無理、五月が無理というふうに予測される場合、外務大臣立場は非常に苦しくなると思いますが、又アメリカ側との交渉に当る外務大臣としても、いつというような見当のない話というものは、これはむずかしいので、ある場合にはしばらくやめましょう、こういうこともあり得ると思うのですが、大臣は、どうしても四月くらいにめどをつけて見せる。つけなければそのときにはどうするということを、この際、腹の底では、かためておかなければ、党内調整もできないし、日米交渉外務大臣がよく言うように、国際関係の礼譲から見て、これにもとることになるという御心配から見て、当然なこっちゃないかと思いますが。
  19. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) こうした外交折衝両国同意のもとに始めたことでありますので、当然これをうやむやにしてしまうというわけには絶対に参りません。従って、私は、これを完全に交渉妥結に参りますように努力すること、もちろんであります。時期等につきましては、御承知のような諸般の事情のために、実は、大へんに私が最初目途しておりました口よりもおくれて参ったことは事実でありまして、交渉の初めに当りましては、少くも一月中旬もしくは下旬に妥結の運びに進めたいと、こういうことであったわけでありますが、当時の万やむを得ざる事情のために延びて参ったわけであります。一月末に、私は、大体当時の延びてきた事情から見まして、まずそれを勘案して、大体三月末、四月ということを申しておったのでありまするが、現在でも、そういう事情が若干ずつずれておりますことはむろんでございますが、しかしながら、できるだけこれを取り戻すと申しますか、できるだけ早い時期に妥結して参らなければならぬと考えております。従って、一応、若干現在としては事実上困難であろうと思われるような目標を置いて、そこに向って私自身はこの問題の進め方努力しておるわけであります。でありますから、必ずしも私の目標としております通りに参りませんで、若干時期はずれるかもしれませんと思いますけれども、しかし、私の目標を今さら変えていく必要はないと思っているわけであります。そういう意味において、できるだけの、最大努力をしていきたいというつもりでおります。
  20. 森元治郎

    森元治郎君 まあ藤山さんは、党内の派閥に入っておられないだろうから、そういうきれいな御意見が出るのだろうと思うのですが、何べんも言うように、どうもむずかしい情勢がだんだんはっきり表面化してきておるのであります。非常に苦しい立場に立ったときには、すなわち自分党内に提示した構想の根本がゆらぐ場合には、いかなる態度をおとりになるか。先の話ですが、今から伺っておきたいと思うのです。
  21. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は、この問題を取り扱いまして、自分として最善方法であろうということを考える線において、むろん討議はして参りますが、しかし、各方面意見を聞きまして、それをいれなければならぬ場合には、当然いれていく必要のある場合もあろうかと思います。しかし、こうした交渉をやります基本的な立場を、その意味においてはこわさない範囲であること、むろんでありまして、条約交渉でありますから、若干のゆとりは、どうしても私はこれは必要であろうかと思います。私としては、今お話しのようなことのないように党内について最大理解を得るように努力していくというのが、今の気持でございます。
  22. 森元治郎

    森元治郎君 話はもとに戻りますが、一体、藤山構想というものが、原則だけではなくて、条約地域の問題にしても内乱条項の問題にしても、すべてについて、ある程度、精密な表現まではいかなくとも、案という形になっておると了承してよろしいでしょうか。というのは、前々から、よく世論を聞いて、国会皆さんの御意見を聞いてという態度でずっとこられたこと、それからにわかに党内からすべての内容について問題が起きたところから見ると、一体、内乱条項についてはこう、廃棄条項についてはこうというような、ある程度文章になった、しっかりした案というものを持っていてやっておられるのか、ただ原則だけの了解を取りつけるまでの世論を聞く態度であったのか、その点を確かめておきたいと思います。
  23. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今日まで、各一方面世論を聞きながら、大体その大きな世論に沿い、また各方面の御意見をいれたところで、大体私の考え方というものがきまってきつつあることは、それはむろんでございます。また、事実こうした問題を最終的に討議するときに、外務大臣が一定の意見を持ちませんで、ただ問題点がここにあるからどういうふうにすればいいのだということだけでは、これは相済まぬと思うのです。ただ、そうしたものを文章に最終的に書いたものはまだございません。従来私の言っているところから推測して、世間の方々もおぼろげ藤山構想というのはこういう点にあるのじゃないか、地域の問題についてはこう考えているのじゃないか、あるいは内乱条項についてはこういうことを言っているが、こういうことだろうというふうに推測されておりますが、まだ書いたもの皆さんにお示ししたことはございません。
  24. 森元治郎

    森元治郎君 藤山構想というものが新聞に伝えられておりますが、最近ニ、三日前に共同通信が内容とおぼしきものを、だいぶ上手に書いたものを持っております。ごらんになったと思いますが、その中に、条約区域のところの表現に、藤山試案においては条約区域日本行政権下にある地域とし、こういうような表現があるのです。表現ですから何とでも変えられるでしょうが、行政権にある地域という御説明を伺います。
  25. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 新聞紙上に出ました藤山試案なるものが、最終的な私の案でも何でもございません。書いたもので出しますときには、ごく最終的の段階、また、ある程度私自身考え方を申しあげて、そうしていろいろ討議された上で、交渉に臨む場合に、藤山試案というものを書いたものとして出すと思います。従いまして、現在、今御指摘のような表現の問題ではありますけれども、どういうふうにそうした藤山試案というものを、もし紙に書く場合には書くかということについては、その通り表現になるかどうかということは、ちょっと申し上げかねます。ただ私としては、少くとも日本国の直接領であり、行政権を持っている地域ということを対象にしていきたい、こういうふうなことを考えております。
  26. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、沖縄小笠原という地域と、行政権下にある地域という観念は、どういうふうにわれわれは了解したらよろしいのですか。
  27. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大体、私の精神から申しますれば、沖縄小笠原というのは、現在必ずしも対象にすることは適当でないと思うので、それらの表現とか法律解釈とかいうものについては、今後、確定してからきめて参りたい、こう思っております。
  28. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  29. 羽生三七

    羽生三七君 韓国との問題は、これはまあきのうもあんなことがあってちょっとタブーなことかもしれませんが、その後どうなているのですか、お差しつかえなければ、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  30. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 北鮮帰還の問題につきましては、先般、日赤の井上外事部長ジュネーブに出発されまして、ただいま交渉を開始しておられますので、その交渉状況については、若干の電報が来ております。赤十字国際委員会もこうした問題を扱いますときに非常に慎重であるようでありますが、大体、日本側意向を了承してきておるように思われます。ですから現在、国際赤十字井上代表との間の話し合いたいうものは、順調に進んでおるのではないかと見ておりますけれども、国際赤十字も慎重でありますから、いろいろな観点から質問その他をやっておりますので、まだ最終的にも何とも決定したことはございません。それから同時に、井上代表がたちますときに、釜山に抑留されております漁夫の送還問題について国際赤十字に依頼をいたします手紙を持たしてやりました。この問題についても国際赤十字は、北鮮帰還の問題とは別個に、考慮を始めておるようでございます。従って、近く何か国際赤十字意思表示が出てくるのではないかということを期待しております。
  31. 羽生三七

    羽生三七君 それもそうですが、この問題を契機に、韓国との関係はどうなっておるのか、この点を伺いたいと思います。
  32. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この閣議了解を決定いたす前日に、私は柳公使を呼びまして、そうして日本政府方針をきめて、いよいよ閣議であした決定をするということを印したわけでございます。そうしてこの問題は全く人道上からきた居住地選択の自由という国際通念に基いてやるのだ、韓国側に対して非友好的である、あるいは日韓会談を決裂させる意味においてこれをやるわけではないということを十分に説明をいたしたのでありますけれども、当時柳公使は必ずしもそれに対して、私の意見同意をいたしておりませんのみならず、相当重大な結束が起ってきて、日韓会談もあるいは決裂するのではないかということを言っておったわけであります。なお、アジア局長等にも柳公使は面会して、相当強いことを言っておりましたが、翌日、日韓合談の問題については、澤田代表に会って、日韓会談のいわば決裂と申しますか、そういうことを話し合うということであったのでありますが、先々週のそれは土曜日でありますが、柳公使は病気であるということで、澤田代表のところに来られませんで、その翌日、日曜日の朝、韓国に帰られまして、一昨々日でしたか、一昨々日の晩、柳公使は東京に帰って来られましたけれども、いまだ柳公使自身からは直接何にも外務省に連絡をいたしてきておりません。そうしてこの問題について日韓会談をどうするかという点に対する申し入れをいたしてきておりません。外務省としましては、適当な時期に、澤田代表から柳代表の方に、日韓会談を進めていこうじゃないかという呼びかけをしてみたい、こう現在思っております。
  33. 森元治郎

    森元治郎君 何か新聞では、最後の機会日本に与える、日韓会談は継続しよう、しかし、北鮮送還はやめてくれ、こういうことが韓国側意向だというのが出ておりました。これはごらんになったと思うのですが、大体こういうふうに出てくると思うのですが、これに対してはどういう態度……。
  34. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は、初めから北鮮送還日韓会談とは全然別個の問題であって、北鮮送還国際通念による居住地選択の自由ということで、いわば日本が今日まで出国の査証を与えなかったのを与えるという単純な問題であって、日韓会談においては、それに何んらのかかわりもない別個日韓会談としての今日までの経緯からくる会談であるという立場をとっておりますので、これをからめた意味においての相談には乗れないのであります。
  35. 森元治郎

    森元治郎君 ジュネーブからの電報だと思うのですが、井上外事部長が行って日本側意向を伝えたところ、大体は聞いてくれたが、何か一、二点満足するものがなかったというようなことが出ておりました。どういう点がなかったのか。あるいはこちらが申し入れた通り向うが十分慎重に好意を持って取り上げたのか。
  36. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在までのところ、特にこちらから申したことについて、何か違った意思表示、特に違った意思表示をしておらぬようであります。まだ井上外事部長赤十字国際委員会に出まして話をしたのは約三時間ぐらいでありまして、そうして事情説明し、いろいろな質疑応答をやっております。こういう問題を扱います場合の質疑応答をやっております。それで、十分井上外事部長説明をされた。それで、井上外事部長から赤十字あてに来ております電報によりますれば、必ずしも特に非常に慎重ではあるようでありますが、この問題の扱い方については、しかし結論的に何か日本の言ったことについて反対の措置をする、あるいは不満足と考えるような結論もまだ出しておりません。いずれ数日中に、それらの井上外事部長との質疑応答、懇談の結果、赤十字自身意見をきめられるものと考えておりますけれども、今までの経過から見ますれば、そう特に不満足だというような点は、具体的に示されておりません。
  37. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) そちらの方聞こえますか、津島先生。
  38. 津島壽一

    ○津島壽一君 かすかに聞こえます。(笑声)
  39. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) かすかでなく聞こえるようにお願いします。どうぞ御質疑のおありの方は御発言願います。
  40. 森元治郎

    森元治郎君 一点だけ伺います。外交閣僚懇談会をおやりになる議題の中には、中共問題も入ることはもちろんのようですが、大臣として向うに書簡を出したり、日中関係打開に関する幹事長とか、しかるべき党の代表、あるいは政府部内からでも、そういう手紙を出してやるということが、一部河野一郎氏の意見であるようですが、こういうやり方についてはどうお考えになりますか。
  41. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日中貿易打開の問題につきましても、いろいろなまあ意見があることはもちろんだと思います。ただ現在のところ、直ちに書簡を出し、もしくは特使派遣をするというようなことは、必ずしも適当だとは私は考えておりません。特に社会党の訪中使節団も行かれることでありますし、その後の情勢等を見た上で、適当な時期がありますれば、そういうことも将来考える場合もありましょうけれども、現在直ちにそういうことは適当だとは思っておりません。
  42. 森元治郎

    森元治郎君 それから外務大臣機会を見て大使級会談というような形のものを開いてもいいというようなことは、かねがねおっしゃっておるわけです。ところが一部の人は、この際、対中共政策をじっくりと立てて、それからでもおそくないのだし、そうしなくちゃいかぬ、こういう意見が強く反主流といいますか、そういう方面から出ておりますが、そこらの関係について、外務大臣の腹は一体どうなのか、それが一つ。  それから今日まで対中共関係の自民党あるいは政府の大まな方針が固まっていないということが、ここで露呈されたと思うのですが、いやしくも隣国の大国をかかえておる日本として、随時その局面に適応した方針というものが確立されていなくちゃならぬと思うのですが、今日までされていないということが、先ほどの根本策をきめてからというような議論からもうかがえるのですが、一体、対中共政策についての根本策というものはできていないのか、その三点をお伺いしたいと思います。
  43. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大きな筋における自民党の対中共政策の考えが、党内いろいろあるということは、私考えておりません。ただ、これを取り運んで参りますいろいろな時期でありますとか、あるいは方法で、ありますとか、そういうような問題について、それぞれいろいろな御意見があるのだと思います。が、しかし、これもむろんいろいろの御意見があることは当然な場合があると思うのであります。ただしかし、それらのものが十分討議をされるということも必要だと思うのであります。その御意見をいろいろ討議し、そうして当面のそうした時期とか、処理方法とかというものについては、ある程度意見調整をいたしておくということは必要だと考えております。
  44. 井上清一

    井上清一君 存日朝鮮人の北鮮送還の問題がきまりまして以後発表になりましたそれ以後におきまして、日韓間の貿易でございますが、どういうふうになっておりますか。その間の事情を伺いたいと思います。
  45. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 何か初めはいろいろ船をとめるとか、あるいは貿易が全面的にとまるような状況に置かれるのではないかというふうに思っておりましたけれども、ただいま申し上げましたように、日韓会談ばかりでなく、他の面につきましても、特に韓国側が発表はいたしておりません。むろん船が、正常の貿易船が参りますことについて、日本の船舶業者なりあるいは乗り組員の中に若干の不安を持っておる人たちもおりますので、そういう点からいいますと、すぐに円滑にこちらから輸送されるという状況にはないと思いますが、私どもとしては、現状から見まして、そう危険がないのではないかと思いますので、民間船会社方面においても、できるだけわれわれも注意をいたしますけれども、あまり危惧もしくは疑念だけにとらわれないでやっていただきたい、こう考えております。
  46. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 他に御質疑はございませんか。
  47. 石黒忠篤

    ○石黒忠篤君 ブラジルの大統領が近い将来において来訪されるというような報道も伝わっておりまするし、岸首相、藤山外相等の南米訪問も、かつて報道せられておって、まだ実現をしておらぬのでありますが、そういう機会に、必ずや今度はブラジルとの移民協定の問題が実現せられることと思い、またせられることを私は希望しておるのでありますが、南米に対してはボリビアとの協定も先例はございますが、それらに数倍した重要なことだと思います。これの協定の内容については、当方より、移民政策実行土の種々なにおいて十分な研究をしておいて、取りつける要点は抜かりのないようにしなければいかぬと思いますが、それに対する御研究はむろん進んでおると思いますが、どういうものでありましようか。また、大統領の来訪というようなことは、ただいまのところで、どういうふうなことになっておるのでありましょうか。
  48. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大統領は、あるいは今春に来られるような意向があるのではないかと思っております。まだ最終的にそれらの問題について決定はいたしておりません。それから岸総理事情が許す限り南米を訪問したいということで、南米の各国からもそれぞれ招待状がきておりますので、機会がありますれば、行かれると思いますが、私は、ただいまのところ行く考えを持っておりません。  それから移住の問題につきましては、今お話のように重要でございますし、ことにブラジルとの移民の取りきめをいたしますことは必要だと思うので、若干準備を進めておるわけでございます。むろん他の国と特に違いますので、十分各方面の御意見を伺って、こうした取りきめができますときには大半をとって参りたい、こう思っておりますが、詳しいことは移住局長から移住局長はきょう来ておりませんので、この次来ましたときに御説明いたさせます。
  49. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 他に御質疑はございませんか。  それでは、本日の委員会は、これにて散会いたします。    午前十一時十九分散会