○
参考人(
引間博愛君)
交通事故防止についての所見を述べてみたいと思うのですが、昨年
神風タクシー問題というのがこの
委員会で取り上げられ、
世論がいろいろ巻き起り、乗
距離制限というような形で
運輸規則の中にも入れられることになるというようなことになりました。
神風タクシーというのは比較的世の中に知られ、
世論もいろいろな形で支持し、そういうような形でいったわけです。ところが一方で同じ
交通機関である、同じ
自動車を運行している
トラックの方については、比較的に
お客がすぐ乗るというようなものではなくて、荷を運ばなければならない、人のいないところで。あるいは人がすぐ直接乗らぬというような
関係から注目を引かないような
状況でした。ところが、内部に入ってみますと、
事故の件数なり、いろいろ調べてみますと、むしろ
タクシーより多いという
状況で、
事故の
被害も非常に大きい、
トラックはとにかく
タクシーと比べて比較にならない重さと大きさとを持っておりますから、
事故を起すと非常に大きなものになってくるという、こういう
状況があるわけです。比較的
世論が起らないのですけれ
ども、
内容としてはむしろ
神風タクシーより
——あまり自慢はできませんけれ
ども、まさるとも劣らないという
事故内容を持っております。私
どもは、人道上の問題としても、
社会福祉の問題としても重要な問題だというふうに考えております。これに対して私
たちの
労働組合でも、
事故防止という
観点、
社会のために
事故をなくすという
観点でいろいろ努力を続けてきたわけです。最近世の識者の認められるところとなって、この問題について取り上げられ、特にこの
委員会で取り上げられたことについては敬意を払う次第です。
交通事故をなくしていく道は何かという点については、すでに
神風タクシーの問題のときにこの
委員会でも十分各
先生方が検討されて結論が出されていると思うのです。重複するような面になると思うのですが、先ほどの
新井参考人の
意見につけ加えて申し上げますと、いろいろ
事故の
原因はたくさんあります。
交通量と
道路の
事情が一番問題になってくる。
道路と比較して、日本の
道路は悪いというのは世界でも定評があるわけですが、それに比較して
車両が多い。すでに
トラックだけでも八十数万両、九十万両になろうとする
車両数を持っておる、こういう
状況である。もちろんそれに
タクシー、バスが幅湊してきますから、
道路状況に見合う
車両の
状況になっておらぬこういう点がまず第一点にある。特に
トラックの
立場から言いますと、
道路というものが、単に道幅でそういう
交通量と見合わないばかりでなくて、
道路の基盤が非常に薄くて、常に
故障をして、補修しなければならぬという問題がある。こういう点が確かに政治的な問題として解決しなければならぬ問題であると思うのです。こういう
一つの問題と、次にはもちろん、
通行人並びに
運転者の
交通道徳なり
法規の知識がまだまだ欠けているところがあって、
通行人はもちろん、勝手に
横断歩道でないところから通行してしまう。あるいは
運転者の中にも技術の未熟な者、あるいは
教育の不徹底な者で、つい
交通違反をやってしまう、こういう点もあると思うのです。この点についてはわれわれの方でも鋭意……。先ほどの政治的な問題についてはもちろん各
政府当局においてこれは取り上げてもらうよりない、あるいは
国会においても努力していただきますが、
通行人の
交通道徳だとか
運転者の
教育については、それぞれの
立場でわれわれも努力してきたところです。
そこで、そういう問題があるとともに、もう
一つ重要な問題として、
労働組合の
立場から申し上げると、どうしてもその
運転する
労働者自体にその
環境を与えてもらうということが必要ではないか。
労働者が全く疲労こんぱいした形の中で大きな
トラックを
運転したり、あるいは
小型トラックもそうですが、めちゃくちゃに走らせるということではなくして、
お客がいないだけに、むしろ安易に突っ走るというようなことになると思うのですが、そういう
労働者に対して適切な
労働条件なり
労働環境を与えられておらぬ、この点が何といっても問題ではないか。
道路の問題なり、あるいは
交通量をどう規制するかという問題がすぐ根本的に片づくとは思わないので、そういうことをやらせる中で、さらに
労働条件について適切なものがあれば、幾らかでもわれわれの念願する
交通事故をこの面からなくしていくことができるのではないかと考えております。特に
神風タクシーの場合には、とにかく飛ばすというので、三百六十五キロに制限されたのですが、
トラックの場合は単に飛ばすだけではなくして、中に置かれている
条件というものは飛ばさざるを得ないものがあるとともに、さらに
荷物の量を多くする。
タクシーの場合には
荷物の量を多くするということはなかなかできないのですが、
トラックの場合は五トン車にたとえば十トンあるいは七トン車に十数トンの物を積むというような形でやります。こういうような大きな
荷物を積む、あるいは
スピードで走るということは、その
事故が大きな
被害になることは当然だと思うのです。そういう面で、私
たちは
労働条件を適正化するということの中でそういった
原因というものを取り除いていきたいというふうに考えているわけです。
具体的に現在私
たちが把握している限りにおいての
トラック労働者の実態を申し上げますと、これは
神風タクシーが
——何だかんだといっても、一日
交代で非番には休めるのです。ところが、往々にして
神風トラックといわれる、特に
長距離運送労働者の場合は、
公休制、
週休制があるというのは、よほど大きな
会社か
労働組合があるところでなければないという
状態があるのです。さらに
厚生施設な
どもタクシーに比べれば見るべきものがない。
仮眠所なり
睡眠所でも、
宿泊施設についても見るべきものがないという
状態があります。
賃金が、とにかく
タクシーは、
平均二万幾らといわれておりますが、
トラックにおける全
平均となりますと、
労働省統計によっても一番低いわけです。
道路交通運送業というのは、一九五三年三月の
労働省統計によってもそれは一万三千なにがしである。
長距離運行の場合はもちろんこれより若干高くて二、三万になると思います。ところがその
内容たるや、
労働時間が一週百時間をこえるものがざらである。時には二百時間をこすというような
状況にあって、どうやら二万、三万もらうというのが
状況です。そういうような長時間
労働がそういう
観点から問題になって、さらにそれに加って多い積荷、それから
スピードで飛ばすというようなことが加って
事故が起る。そういう面から私
どもはこの問題を取り上げていただきたいと思うのです。
これはさらに砕いて、どうしてそういうことになるかについてもっと立ち入って申し上げてみたいと思うのです。ある静岡県の
運送業者の
労働者について私
たちが調べたところによると、一カ月のうちに帰宅睡眠した時間がわずか十八時間という例がありました。これは組合に行っての話ですが、
労働者の要求の中に、どうしても
公休制をとってもらいたい、
週休制というものは
労働基準法できまっているのですが、週休が取れない。だから一カ月に一日でも二日でもいいから
公休制を取ってもらいたい。なぜかというと、毎日毎日
休みなしで働いて、家に帰らないので、家庭争議が起きる。海員
労働者みたいで全然家に帰れない。
長距離に乗ったら連続運行のし通しで、極端な場合には月に十八時間しか家にいない。帰ったとしても一、二日しか帰れない。これではかなわんから
公休制を実施してくれ。これは誇張ではなしに、静岡県というようなところに本拠を持つような
定期路線会社というようなものは大ていそういう
状態です。今の
新井さんのお話は、
東京に本拠を持ち比較的
近距離の運送
会社は、
東京にいて、地方に行ってまた
東京に帰ってきますから、自分の家で休めますが、途中から
東京、大阪をやるような
会社は、たとえば例を申しますと、静岡から
東京に上る、
東京から今度は大阪に行ってしまう。それから大阪から静岡に帰る。静岡に帰ってから休めればいいけれ
ども、五日に一ぺんぐらいようやく家に帰る。その一回もこれまた大ていの場合帰れない。定員が不足であるとか、いろいろの点がありますが、
賃金が低いために何といっても残業時間でも稼いで多くしなければならないというようなことになりまして、結局
会社からも言われるし、自分の
賃金の低さからくる要求からも、どうしてもまたやってしまう。そうするともう一回それに足したことには、十日目でなければ家へ帰れぬという
状況です。私
たちは
労働組合の
立場から定休制をはっきり取らせない限り、疲労の度合いというものが激しくなる。疲労すれば居眠り
運転も出てくるし、注意力も散漫になりますから、いろいろな形で
事故を起す、あるいは
法規違反を犯す、そういうようなことになると考えます。そういうような実態があります。
さらに、先ほ
ども申し上げましたように、どうして
スピードを
違反したり、あるいは積荷制限を
違反するかという問題ですが、これは
賃金体系に非常に
関係があると思うのです。
スピード違反の例を申し上げますと、これは
警察庁の方が来ているのですから、
あとで詳しく申し述べていただきたいと思うのですが、
東京—大阪間の例をとりますと、これは六百二十キロのキロ数がありますから、法定速度で行って、さらに休憩を取るという形で行っても、通常二十二、三時間はかかると見られているのです。前の十月以前の
法規改正になる前に私
たちが実地
調査したところ、前の法定速度においては大体二十九時間かかるというのが法定速度に従った場合です。さらに
労働組合のいろいろな
状況から適正な運行時間がどれくらいかと調べたところが、大体二十二時間という数字が出た。ところが実際に走っている時間はどうかというと、十五時間ぐらいのフル
スピードで走る。これは簡単な算術計算でわかるのですが、六百二十キロを十五時間で走るということは、
平均四十数キロで、箱根の山を越えて、さらに休憩時間を取り、
食事をしながらどうしてそんなに行けるかというふうに思えるぐらい摩訶不思議なことが行われている。十五時間よりもっと早く走る
会社もあると思います。ですから、どこの定期
会社のどこの看板を見ても、弾丸便だとか特急便だとか、神風便とは書いてありませんけれ
ども、(笑声)そういうふうないろいろな形で競い合っているわけです。ですから、もう
スピード違反というのは平気なことです。これがどうして起るかということは、やはりこれは歩合制に
関係がある。それから奨励金
制度というものがあって、早く着いた者は金がもらえる。あるいは往復を何回やれば、
東京—大阪の場合は、月に五回やるというのが標準で、普通四回ぐらいやると思いますが、五回、六回やれば一往復幾らという歩合給のところ、積み高幾らというところ、両方からいっても、やはり回数を多くやった方がいい
賃金ということになる。ですから残業時間が二百時間をこすというようなことになると思います。そういうふうなことが行われているので、
スピード違反を幾ら警察の方が取り締まっても、実際に十五時間でどんどん走っておるということになります。ですからある時点では法定速度の五十キロをこえて七十キロを飛ばさなければならない。あるいはある時点では三十キロか四十キロということになる。たとえば箱根の山は七十キロでは飛ばせませんから二、三十キロになる。そういうような
状況が出ているのです。積載制限の問題でどうしてそういうふうな
違反が起き、
事故が起きてくるかというと、これがやはり積み高歩合に
関係するわけです。何トン積んで何万円の品物に対して幾らという
賃金歩合になっているのです。ですから、積めば積むほど
労働者の収入になるという考え方がこびりついている。ですから無理しても積む、
会社の方もどんどん積み上げてしまう。ですから、五トン車に十トンぐらい積むのはわけない。現在では
定期路線というのは主として七トン車というのが走っております。七トン車にはもうどうしても十二、三トン積むというようなことになって、これは相当
警察庁でやかましく言っているので、だいぶそういう点についてはなくなったようですが、まだまだ横行していると思うのです。そういう形は、今申し上げたような
賃金体系にやはり問題があるのだというふうに考えます。それからまれでは、全部とは申し上げませんが、
東京—大阪間の
長距離運転で一人
運転をやらせるところがあります。先ほど
新井さんは百キロごとに
交代すると言っておりますが、そういう
会社というのはおそらく日通以外にはあまりないのではないか、乗り継ぎ制にしたり、途中で
交代にするということはあまりやらないでどんどんやってしまう。われわれは、もちろん二人乗り以上を主張しているわけですが、まれな
会社には一人
運転というようなところがある。一人
運転ですから、もう
東京—大阪でも、
東京—名古屋間ぐらいは一人で行ってしまう。これは疲労度からいって科学的に見ても大へんなものだというふうに私
たちは考えます。そういうような
状況があるから、やはり
事故を大きくしているというふうに私
たちは見ております。
厚生施設の面ですが、最近
長距離運行の
会社では、たとえば大阪や名古屋に割合大きな
ターミナルが建っている。げたばき住宅というやつですが、下で作業をしながら二階、三階、四階に寄宿舎なり
仮眠所を設けるというものがはやって参りました。これはいい傾向だと思うのです。そういう形になっておりますが、たとえば
東京の方を見ると、まだまだそういう点については完備しておらないし、
仮眠施設あるいは睡眠
施設というのは全く不十分です。基準法では、一人当り一・五畳の畳数がきめられたりいろいろしていると思うのですが、これは
タクシーの
状況を調べたならおわかりだと思いますが、
トラックはもっとひどいような
状況です。これは実際見ていただければわかることですが、
厚生施設として見るべきものはないという
状況です。
もう
一つは、
ターミナルを建てて、げたばき住宅を建てて、いいように見えますが、一方では
労働組合があり、あるいは
労働慣行が確立しているところではいいのですが、かえってむしろ寄宿舎の
制度がありまして、なまじっか
仕事場の上にうちがあるために、常に引っ張り出される危険性あるいは率が多いわけです。これは特に
運転手ばかりでなくて、そこに働いている集配する人とか、あるいは荷を扱う人などは年がら年中呼び出されてしまう。寮があるために便利なんで引っ張り出されて使われてしまうわけです。ですから積み込む人もみんな疲れ切ってしまうのです。そういう形の中で引っ立てられていく
運転手はなお疲れるという
状況です。
労働時間という観念については、
労働者自体がはっきりしておらないというようなことがあります。たとえば
定期路線の
労働者に、お前は一体一カ月どのくらいの
労働時間をやるかということを聞いても、すぐ答えができるのはよほどいい
会社です。普通のところでは、なかなか自分の時間についてはっきりできないような
状態になっている。なぜかというと、朝たとえば出てくる。普通朝八時か九時に出て晩五時に帰る。あるいは四時に帰るのが普通の勤務
状態ですが、
長距離路線の場合には、朝出てきて、たとえば車を直し、荷が運ばれてくるやつを積み込んでいく、そうして出発するのは、大ていそういう大きな東海道線なり
仙台線の場合は晩の九時か十時という
状況です。あるいは七時か八時というのがありますが、大体夜出ていくというのが多い、そうすると普通の
労働時間から考えても四時で帰らなければならないやつを、さらに延長して九時からいよいよ本腰の
仕事ということになる。ですからほかの
労働時間とは全く比較にならない。九時なら九時に出るのじゃないのです。朝の八時から出ていって、そうして夜の九時にようやく自分の本業に取りかかる、こういう
状態であります。そうして夜の夜中走って
向うへ行って、
向うへ着いたらそこで少しく
仮眠する。いい
会社では二十四時間ぐらい
仮眠させておりますけれ
ども、大ていの
会社はわずかの時間しか睡眠させない。そうして折り返しトンボ返しで帰ってくる。そうして自分の店へ帰ってくるけれ
ども、それからまたすぐうちへ帰るならいいのですが、先ほど静岡の例のようにまた行くという形です。静岡などは一番よくても、二往復で一回
休みというのが一番いいくらいです。ようやく二回行って一回
休みですから、どうしても四日か五日に一回ぐらいせいぜいうちへ帰れる。これは休日ではないと思います。休日でなくて非番制というか、とにかく二十四時間のうち八時間働いて、
あとの十六時間は自分の持ち時間のはずですから、これはうちへ帰っても
休みではないと思うのですが、これが
休みに代用されてしまうのです。こういう形になっている。そういう
状態が
定期路線、主として
長距離路線に対してですが、ほかの地場運送といわれるところ、あるいは
小型運送のところは、そういうような形の極端なものはありません。しかし
賃金が低いということ、歩合制が多くて、やはりかせがざるを得ないという形の中で
スピード違反をやり、積荷
違反をやって
事故を起していくという形が出てくるのだと思います。
私
たちは、そういう実態をぜひ
国会の
先生方に知っていただき、また
関係の当局にもそれぞれ前から申し入れてあるのですが、適切な指導をしていただきたいというように考えておるわけです。去年
労働省が調べた結果、
労働省でも驚いているのですが、事業所全部調べた結果、実に八割が
労働基準法
違反だという
状況が出ております。そういう点で
関係当局に一そうの指導をお願いしたいというように思っております。
いろいろ実態を申し述べたのですが、さらにもう
一つの問題で、
事故の負担金というものがあります。
事故を起すといろいろなことがあるのですが、まず企業の中では、
事故を起した
原因にもいろいろよると思いますけれ
ども、大体相当の負担をさせられる。
労働組合があってしっかりしたところでは、もちろん
事故弁償金というのは出しませんけれ
ども、そうでないところは、やはり一生ついて回るような
事故負担金を課せられてしまう。あるいは減俸、あるいはさらに
警察庁関係からは二重処分という形で行政、司法の処分を受ける、就業停止を食うというようなことになる。自分で、もちろん
事故を起すということはいけないことですから、われわれとしてもそういう点は注意しているわけですが、しかし今申し上げましたような
労働環境あるいは疲労度が加わっておればだれだって、
運転手自体は、
事故を起すとけがもするし損害も食うのですから、だれも望んでおらないのですが、結局そこへ陥れられてしまうというか、そのままにどうしてもそこにいってしまうという
状態があるということです。そういう中でさらに罰を食う。こういう例があります。
警察庁から罰金を食う、就業停止を食う、それを何とかまた月々のかせぎから、
賃金から支払わなければならない。あるいは家庭生活をまかなっていけないというために、なお今言ったように、フル
スピードで走る、
荷物をうんと積んで、
休みもないで走るというようなことになる、ここらが悪循環しておると思う。一生懸命働くから、さらにそういうようなことで
事故を起す。罰金を食う、
会社からは処分される。そうしてまたそれに追いつかなければならない。こういう悪循環を今繰り返しておると思うのです。大体こういう点が
トラックの実態だと思う。
私
たちは、この点について昨年来から運動を進めて、
関係当局にぜひ適切な指導をしてもらいたいという要請をいたしました。ただいま
運輸省については、
神風タクシーでやったように、
運輸規則の二十一条にぜひ具体的に、
定期路線に対しては、これこれの
運行ダイヤなら
運行ダイヤを、
運輸省の認可にしてやるべきである。そうしてその上でそういうようなむちゃくちゃな、定期事業は公益事業だといっておるけれ
ども、公共事業の役目を果さないような
状況をなくするようにしてもらいたい。
運行ダイヤに対して適切にやってもらいたいという形で出しております。ぜひ
運輸省としましては
運輸規則の中に、そういう形で定期に対する規制処置を入れてもらいたいというふうにしております。またさらに、歩合給なり、最低
賃金の保障がないという
状態からそういうことが出てくるのですから、そういう歩合給の
賃金体系についての改善の処置を、
労働省と相談して
運輸省もやってもらいたい。あるいは最低保障も出してもらいたい、こういう形において要請しておりますが、
運輸省必ずしもこれに熱心でなくて、今日まで見るべき成果がないというのが実態です。それから
労働省についてはもちろん監査という
立場でやっておられるわけです。
警察庁といたしましては、単に
運転手をびしびし取り締られても、実は私
たちの方でも困ってしまう。そういう
実情の中で出てくるのですから、根本的な策として、経営者あるいは
運輸省に対して、そういう処置を
警察庁から申し入れしていただきたいということをこちらからも申し入れている。さらにできることとして、
警察庁の方には、ぜひ、たとえば主要な街道の法定
スピードに乗った場合には何時間で運行するのが普通なのかというような基準をこしらえてもらいたい。今のように
東京—大阪間十四、五時間で走るなんということは、それが法治国だといっておりますが、全然法律が守られていない
状態を暗に認められているのだと思うのです。そういう
状態をなくして参りますために、ぜひ基準の時間を算定していただきたい、こういうふうに思っております。業者団体に対して、われわれはそういう点に対して業者の自覚を求める。大和の
新井さんなどの
会社にはある程度の
条件ができておると思うのですが、
定期路線は
全国では五百社あります。運輸業者は
全国で一万二、三千の数に上っております。そういう企業の中で、小企業が乱立し、競い合っているために、やはり
お互いに
会社自体、経営者自体もまず企業競争という形にどんどん追いやっておる。そこへさらに七十万も八十万も自家用がある。こういう
状態で競い合ってきていると思うんですが、まず当該業者団体が自粛自戒の策を講ずべきではないか、こういう形でいろいろ申し入れしているんですが、なかなかこれもうまくいっていないというのが
実情です。こういう点、ぜひ
国会において総合的に取り上げられて、総合的な対策というものを立てていただきたい。そういう中で、いわゆる
神風トラックといわれる
トラック部門における
事故は少しでも是正できるのではないかというふうに考えております。一番、実地
調査をしていただけばわかるんですが、ただ実地
調査する場合も、時間だとか、いろいろの点をよほど勘案しないと骨だと思う。たとえば
向うから
東京に入ってくる車というのは、大てい明け方に入ってきます。たとえば名古屋でも大阪でも大体夜仕立てて、夜立ってきて、こちらへは朝に入り込むという形になっておりますが、東海道で例を申しますと、箱根の山を通ってくるのが明け方なんです。そうしてこっちへ入ってくるのが八時、九時という
状況です。ですから一番、
労働者はほんとうは十五時間ないしは二十時間乗ってくる、そういう疲れ切っている中で実は
東京や神奈川県で
事故を起すのが多いのですから、実際そういう
状態を見ていただいて、業者に対する警告なり、
運輸省に対して正しい処置をとるように要求していただきたいと思っております。大体私
たちの方で前から運動を続けた中で、
事故防止をしてゆくには、根本的には
労働者の
条件、
労働環境をよくしてゆくことが、たくさんの施策の中の重要な施策の
一つだというように考えるんです。
その他増車の問題とか、交通
道路の問題とか、そういう点については、先ほど申し上げましたようなことで、ぜひまた総合的な
立場で
運輸委員会でお取り上げを願いたいというように思います。ともかく、今のところ手近な問題として解決できる方途としては、
労働者の
条件をよくしてゆく、
神風タクシーでとられた処置のように、はっきりした策でもって臨まれることがいいんではないかというように考えております。
大体、以上申し述べました全自運の
労働組合の
立場でそういう措置をお願いしたいと思います。