運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1959-02-27 第31回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月二十七日(金曜日)     午前十時三十九分開議  出席分科員    主査 大平 正芳君       小坂善太郎君    床次 徳二君       山崎  巖君    淡谷 悠藏君       石村 英雄君    小松信太郎君       佐々木良作君    永井勝次郎君       西村 力弥君    兼務       井手 以誠君    小平  忠君  出席国務大臣         農 林 大 臣 三浦 一雄君  出席政府委員         農林政務次官  石坂  繁君         農林事務官         (大臣官房長) 齋藤  誠君         農林事務官         (大臣官房予算         課長)     丹羽雅次郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      須賀 賢二君         農林事務官         (農地局長)  伊東 正義君         農林事務官         (振興局長)  増田  盛君         農林事務官         (畜産局長)  安田善一郎君         農林事務官         (蚕糸局長)  大澤  融君         食糧庁長官   渡部 伍良君         林野庁長官   山崎  齊君         水産庁長官   奧原日出男君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   高木 文雄君         農林事務官         (農林経済局金         融課長)    太田 康二君         農林事務官         (畜産局畜政課         長)      藤波 良雄君         北海道東北開発         公庫総裁    松田 令輔君     ————————————— 二月二十七日  分科員永井勝次郎君及び西村榮一委員辞任に  つき、その補欠として西村力弥君及び小松信太  郎君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員小松信太郎君及び西村力弥委員辞任に  つき、その補欠として西村榮一君及び黒田寿男  君が委員長指名分科員に選任された。 同日  第一分科員小平忠君及び第四分科員井手以誠君  が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十四年度一般会計予算農林省及び通商  産業省所管  昭和三十四年度特別会計予算農林省及び通商  産業省所管      ————◇—————
  2. 大平正芳

    大平主査 これより会議を開きます。  昭和三十四年度一般会計予算、同特別会計予算農林省及び通商産業省所管一括議題として審査を進めます。  まず農林省所管について質疑を続行いたします。永井勝次郎君。
  3. 永井勝次郎

    永井分科員 最初食糧庁長官ビート耕作関係についてお尋ねいたしたいと思います。政府の方ではビート増産計画、十年後にはこうなるという計算のもとに国内生産体制を強化する、こういうようなことで一つ計画を発表しておられますが、その計画の大きなワクに対する年次計画というようなものをお示し願いたいと思います。
  4. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 私の方で甘味資源自給力強化総合対策というものを作りまして、その中で十年後には砂糖消費量を百五十二万トンと考え、そのうちテンサイ糖で四十万トン、カンショ糖で沖縄を含めて二十万トン、結晶ブドウ糖で十五万トン、合計七十五万トンを国内生産でまかないたい。こういう目標を立てております。その中でテンサイ糖が一番大きいのでありますが、これは北海道で三十万トン、内地で十万トン、こういうふうに考えております。北海道で三十万トンを作りますのには、ビートの反収を相当上げまして、反当四千八百斤ということにいたしますれば、七万八千町歩耕作面積が要る。そうしますとこれを五年輪作とすれば四十万町歩、六年輪作とすれば約五十万町歩の畑地が必要になる、こういう予定でございまして、それに見合いますように、土地改良あるいは土壌改良というような施策を進めていって、目標量を達成するようにいたしたい。内地につきましても東北等は大体北海道と同じやり方でいいと思いますが、いわゆる暖地ビートの問題につきましては、今後まだ研究する余地がございます。これらは別に御審議を願っております日本てん菜振興会法案振興会特殊法人として作りまして、そこで急速に試験研究あるいは原種、原々種の改良等をはかることによって目標量を達成していきたいと考えております。
  5. 永井勝次郎

    永井分科員 増産計画はいいのでありますが、それは十年後にはこうなるからこういう数字が必要だ。必要量数字ははじけるわけでありますが、その必要の数字を裏づける基礎が確実にならなければ、それは絵にかいたぼたもちみたいなものでありまして、どうも期待だけ大きくして、現実がこれに伴わないという実情ではないかと思うのです。それで何年輪作にすると、こうなるああなるという数字計算はいいのでありますが、十年後にはこうなって十年後にはこれだけのものを国産でやるからには、十年後の経過的な措置というものを科学的に積み上げるのでなければ、これは単に架空なものになる。ですから北海道で三十万トン増産するというからには現在耕地が六十万町歩、そのうちビート適地が二十万町歩加工地が四十五万町歩内外でありますけれども、その加工地適地にしますためには、土地改良その他のことが進められなければ適地にはならないわけであります。でありますから、その関係を一体どうするのかということが一つ。それから暖地ビートについてはなおまだ研究余地があるというのでありますが、若干試験管の中でやっているという程度であって、これから暖地ビートは本格的に研究していかなければならないという段階ではないか、こう考えるのです。ところが長官の話では、なお研究余地がある、相当でき上っていて、若干が残っておるというような話でありますが、北海道における土地造成のの問題、適地造成の問題、それから暖地におけるビート増産遂行の問題、この二つを、長官なり振興局長から御答弁願いたいと思います。
  6. 増田盛

    増田政府委員 まず第一点の御質問でありますが、私どもの方の最終的な目標面積は七万八千町歩の作付を予定しておるのであります。これに対しましてこれの背景となっております耕地面積でございますが、大体加工適地といたしましては五十万町歩から五十五万町歩程度面積考えております。従いましてこの五十万町歩ないし五十五万町歩の中には、既耕地並びに開拓地が含まれるわけであります。しかも開拓地に対しましては将来におきます開拓地も含まれております。これに対する御指摘土地改良を初めといたしまして、土壌改良計画でございますが、大体この半分程度のものが土壌改良ないし土地改良を必要とするのではないか、かように考えております。その場合にこの土壌構成内容をなしておる一番大きいのは不良火山性土であります。このほかに重粘土というようなものが入っておるわけであります。さらに不良火山灰の中でも、粗粒性火山灰あるいは泥炭地、こういうものは一応対象面積の中から除外いたしたい、かように考えております。従いまして私ども考えております土壌改良の場合におきましても、改良経費等も種々経費がかかるのでありますが、平均しまして現在のところ反当五千円程度のものがかかるであろうということでございます。従いまして五千円程度の費用といたしますと、二十万町歩といたしますとちょうど百億でございます。あるいは二十五万町歩といたしますと百二十五億、こういう金額がかかるわけでございます。しかもこれを実施しなければならない時期といたしましては、おそらくこれだけの面積輪作が完成する場合を考えて実施すればいいわけでありますから、十五年ないし二十年間で完成できるように計画的に実行して参りたい、こういう方向で現在道庁側数字経費あるいは実施計画などにつきまして、打ち合せをしております。  第二点の暖地ビートの問題でございますが、この問題は昭和三十二年度から国で正式に取り上げまして、試験研究を実施しております。これに対しまして農林省以外の関係機関におきましても、急速に試験研究を実施しておりまして、大よその問題点は現在つかみ得ておるのでありますが、しかし、大ざっぱな平均を申し上げますと、反当収量が四千円程度のところが非常に多いわけでございます。従いまして、この平均反当収量がなかなか上らないということには、まだ研究すべき問題が多々あるわけでありまして、この点に関しましては、国といたしましても、従来の試験研究に対する補助を大幅に拡大していく、こういう方向をとると同時に、このビート企業化するという面に関しましても、てん菜振興会法の成立を待ちましてこれを急速に進めたい、かように考えております。
  7. 永井勝次郎

    永井分科員 国内生産ビート四十万トン、三十万トンは北海道で十万トンは暖地ビートということになると、十年後にはこう大きくなるのですし、工場建設でも二年くらいかかるのですから、もう耕作計画というものが進んでいなければならないはずです。ただいまの話でいくと、三十二年から試験をやった。三十二年からの試験というとまだ非常に短かい期間です。しかも御承知のように、ビート試験というのは相当長期にわたった、少くも一期十年くらいの期間をかけた実験でなければ、作物の性質上、信用あるいは安心できる試験の結果というわけにはいかないことは、おわかりの通りであります。しかも、これを従来耕作になれている農家に拡大していくという場合は容易でありますけれども、全然経験のない農家に少くも十万トンの生産体制基礎づける耕作の拡大をしていくということのためには、その前提となるべきいろいろの問題がたくさんある。試験だけでなしにいろいろの問題があると思う。でありますから、北海道の場合は十五年から二十年にわたっての土地改良の具体的な計画があるというのですけれども、私は、現在その十年間という目標について、どういう具体的な年次計画が立てられておるか、土地がどういうふうに改良を促進されていくのか、あるいは暖地ビートについては具体的にこれがどういうふうに進められておるのか、こういうことをお聞きしておるのであります。抽象的に、具体的とか計画とか協議中とかいうことでなしに、もう出発しているのですから、具体的にそういうものがどうなっているかということをお示し願いたい。
  8. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 これは十年後の目標目標として掲げておるのであります。その目標に到達するかしないかということは、御指摘のように具体的の計画を待たなければならないのでありますが、私どもの具体的の計画ということになりますれば、どこの村でどういう土地改良をやり、どの地域についてはどういう土壌改良を何町歩やるかということでございます。その計画は今詳細を作っておるのでありまして、これは先ほど私なり振興局長お話しいたしましたように、ラウンドの数字でこれをブレーク・ダウンしまして、市町村におろして具体的な計画にかかる、こういう段階でございます。暖地ビートの方は、それが北海道よりもおくれている。しかし、一方ではもうすでに特定の会社が、これは新聞等にも出ておりますから具体的に申し上げますと、新光製糖が大分県で工場を建設するという具体的な計画で、県当局と今栽培契約等の話を進めております。そのほか岡山県とか、企業会社と県が中心になって相当具体的に進んでおるのがございます。これはなぜかと申しますと、一つは、いわゆる暖地ビートが一番盛んなのはイタリアでございます。これは数年前にビート糖国内需要をまかなうまでになっております。それからまたイギリスでは、一九二〇年代から三〇年代まで十数年の間に、数万トンから七十万トン以上のビート生産を上げておるのであります。そういうふうに、従来北海道日本ビート研究をした時代とは違って、土壌、肥料の関係、あるいは農薬の関係品種改良関係とか非常に進んでおりまして、これは役所の方の研究もさることながら、台湾を失って以来、従来の製糖関係の方々が、やはり内地砂糖を作ろう、そのためには欧米先進国の進歩の例を研究されまして、むしろ役所の方のけつをひっぱたいておるというような点もあるのでございます。それを一方では取り入れ、役所といたしましても急速に北海道のみならず、内地ビート生産も確立した方がいいじゃないか、こういうので十年後の目標を掲げておるのであります。
  9. 永井勝次郎

    永井分科員 お話を伺いますと、他力本願で達しよう、そうして十年先の目標は単なる目標で、それが達成できるかどうかはやってみなければわからない、こういうような話でした。やれるだけやるんだということなら、ここでどういうふうに年次計画を立ててどういうふうにやるのかということを論議する必要はないと思うのであります。そんなあいまいな目標でおやりになるのか、もっとしっかりした腹がまえでおやりになるのか、事務当局でアドバルーンを揚げて、そしてそのときどきの変化に応じて態度を変更していけばそれで済む、こういうふうにお考えになるかもしれないが、現地においてこれを耕作し、あるいは工場を建てて企業経営するという立場にある者からいたしますと、国の糖業政策というものが一定方針で進んで、たとえば一定採算線までは国の補助でやるのか、あるいは関税措置でその範囲においてこれを成立させるように指導するのかということが、もうすでにこのビートが始まってここ二、三年の間にがらんがらん態度が変っておる。たとえば、最初現地工場に対しては全量買い上げだ、各工場別採算計算して成立させるようにやる、こういう方針でいったと思ったら、今度は全量買い上げは中止だ、関税でいく。そうしたら今度は暖地ビートまで入れて十年後にはこういうふうにする、こういう安定性のない、方針のきまらない、腰のきまらない態度でふらふらやっていくことによる現地の迷惑は大へんなものだと思う。今長官から示された十年後というのは、単なる目標なのか、あるいは目標に達するためにこれを積み上げていくのか、そういう点をもう一度はっきり伺っておきたいと思います。
  10. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 私どもは、ビート四十万トン国内生産は、日本の全体的な畑作面積なりあるいは農業経営の観点からいって可能である。しかし、その可能を実現するためには、先ほど申し上げましたように、土壌改良でありますとか、土地改良でありますとか、あるいはその他の作物等経営内における組み合せでありますとか、あるいは砂糖価格の安定に対する諸般の対策であるとか、そういうものを一つ一つ積み上げていかなければならぬ。もしそれができるならば四十万トンは可能であろう。こういうことで目標を掲げておるのであります。幾らそういういろいろな制度考えましても、その制度で可能の限界というものがございますから、現在の段階ではその可能の限界が大体四十万トンくらいじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。  そこでちょっと触れられましたが、砂糖関税を上げて消費税を下げる、こういうのでちょっと政策の転換で、ビート生産者なり砂糖製造業者にいろいろな不安を与えているということでありますが、これは従来の関税消費税関係でございますと、現在の国際砂糖相場をもとにいたしまして関税込み価格は、どうしても四十六、七円になると思うのです。砂糖相場を七十円とすれば、消費税が二十八円でありますから四十二円、七十三円とすれば四十五円、こういうことになる。この砂糖相場ですれば、一番生産費の安い日本テンサイ糖コスト計算しても、四十五、六円の値段をつけなければどうしても売れない。従って現在の二十八円の消費税、八円八十銭の関税という制度のもとでは買い上げを強行しなければならぬ。これは一方では関税をとると同時に一方で買い上げをすれば政府財政支出になりますから、この際関税消費税を振りかえることによって政府財政支出をしなくてもいいという条件を出すことが、テンサイ生産の将来に対して明るい見通しを与えるのではないかということで、関税消費税の振りかえをやったのであります。しかしそれは、振りかえたとたんからすべてのものを買い上げないというのではなくて、買い上げをしようとするものあるいは買い上げを希望するものは買い上げてやる、こういう経過的措置考えておりますから、お話のように生産者なり砂糖業者に不安を与えるということはないと思います。ただ案の作成の途中においていろいろな事項が報道されまして、それに基いていろいろな不安を与えていることは認めておりますけれども、私どもは今最終的に国会に出しておる案、それのもとをなす運用方針からいけば、従来よりもよくなっている、こういうように考えております。
  11. 永井勝次郎

    永井分科員 ビート生産現地から国のやり方を見ていますと、方針がきまらずにまことにふらふらした状態、ことしはこうだが来年はどうなるのかお先まっ暗というような状態、そういうこの先どうなるのかわからないということが現地の不安となり、あるいはそれが方針の上にいろいろなそごを来たしておると思うのであります。たとえば長官の言うように、十年後には三十万トンの生産を道内で確保するのだ、こういう一定目標のもとに、土地改良から耕種肥培管理から積み上げていって実現するのだ、こういうことになれば三十万トンのキャパシティ、大ワクの中で工場配置というものが地域的にきまってくると思います。そういうものを持たないで、めくらめっぽうに工場をあっちこっちに自然発生的に作っておいて、そしてまた三十万トンの何だとか四十万トンの何だとか、こういう、から鉄砲を撃っても、現地は今何をしていいのかわけがわからないのです。そうじゃないですか。たとえば北見関係で、ほんとうに合理的な一つコストを引き下げるのだという水準で工場配置をしていく、あるいは生産体制を整備していく、こういう基礎があるならばやり方がはっきりするわけです。だれでも計算すればこうなればこうなるであろうという、そういう目標が立つだろうと思う。ところが現地から見れば、今長官は低いところにコストを下げることを目標にして合理化基準をそこに置くのだと言うのだが、それでは工場配置の何はどうかというと、安く生産させるところには工場をやらせないで、コストの高くつくところに作ってやっている。そして一つのところに競合するようにがばがばと工場を建てて競合させている。これを実行するためには適年次があると思う、適地性があると思う。そういう点と何も結びつかないで動いているのが現状ではないかと思いますが、これはいかがでしょう。
  12. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 政府やり方がそうだとおっしゃいますけれども、これはそうではなくて、テンサイ糖を製造したいという申請がまちまちに出てきているので、それが地元工場誘致運動と関連していろいろな不安を与えている。そこでこういう状態では、お話のように地元でどう処理すればいいかということは見当がつかないであろうから、私の方では、十年間の目標を掲げ、それに合うような年次計画を作りまして、その年次計画に応じて、この地方には何年に工場を作っても原料集荷にマッチする、こういう結論を出そうというのが、今度私どもテンサイ糖振興措置案を作ったゆえんであります。全くお話通りでありまして、たとえば今の帯広近辺十勝平野に六工場新しく申請しております。これは私の方で各工場から村別集荷計画をとってみますと、ある村では畑のほとんど全部を一年間に使わなければ栽培できないような面積が出ております。そこで私どもとしては、これを一つにして申請各社を同時に呼びまして、こういうふうになっているのだから幾らビートを作りたいと言っても作れない、農林省なり道なりが立てる長期年次計画に合うように工場申請計画をお互いに相談すべきではないか、こういうことでその調整をとりつつあるのであります。一つビート生産が、欧米諸国の例、その後の日本の中における研究で可能であるということが、製糖業者自身にもはっきり認識されたので、結局ビート生産ができれば従来の製糖業者はそれだけ輸入糖精製が減るわけでありますから、それではかなわぬというのでビート糖製造に乗り出してきているのじゃないか、そういう点、これから年次別ビート生産計画に合わすように工場設置を調整したいというのが私どものねらいであります。
  13. 永井勝次郎

    永井分科員 長官お話によると、非常な勢いで工場設置の要求が起って現地がわき立ったような状況である。このことは長官の説明によると、これから、従来輸入糖に依存していた会社関係国産糖に転換するのだ、そのための競合だ、こういうふうに簡単に、これをドライに割り切っているようですが、そんな簡単なものじゃないと思うのです。やはり私はここに現地が、各工場がわあっと八つも九つも、われもわれもとせり合っているというのは、過去にできた工場には出来高によって買い上げてやる、利益を保証してやるとこういう有利な条件が保証されておるからわあっと来るのだ。そしてまた政府考えによってこういうふうな状態になるよりは、業者自身の動きだというが、それならそれで業者にまかしておけばよい。農地転用というような、そういう工場敷地に手をかけてそれでにらみをきかして、実質において工場配置の問題あるいは工場許可の問題、これはもう政府意図によってこれが行われているのじゃないですか。これは会社意図によって工場配置がきまったり何かという条件はどこにもないですよ。農地転用という権力にものを言わせてそうしてここに、ここにと、お前のところは許可しない、こういうことで許可しているのじゃないですか。ですから現在のような、たとえば北見地方にできた工場配置を適正とお考えになりますか。ああいう工場配置というものはどういう所見に基いて、国内製糖合理化という基準に合う配置だったか、その合理性をそれじゃ一つ説明していただきたい。
  14. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 テンサイ糖製造工場工場それ自体の設置については、直接法制的に、役所の方で許可するとかなんとかいうことはできませんが、一つ工場敷地農地転用、それから一つは機械の外貨割当一つ公庫資金等財政資金の融通、この三つの点からその工場についての適否を審査する権能があるわけであります。それからもう一つは、これは根本の問題で、役所の問題というよりも工場自身の問題かもしれませんが、その工場を建ててその地域原料が集まるかどうか、こういう問題もあります。そこで政府として先ほど申し上げました三つ態度をきめますのには、その工場が成り立つが成り立たぬかということから、三つの、政府が有権的に処理しなければならぬことをきめなければならぬことになるだろうと思います。従って最近出ております八工場十勝平野だけで六工場でありますが、これにつきましては十勝の中にそんな多数の工場が同時に入るということは、もうどなたが見てもはっきりしておるのであります。どうしても適地を従来の地方から新しい地方に拡大していかなければならぬ。その拡大する間において、一年間にぽこっと一工場当り現在では六千町歩必要とする、こういうことを言っておりますが、それを一年間でやるというわけにはいきませんから、順次新しい土地に従来の工場耕作面積を広げていったところへ、生産農家がなれたところへ、一方では先ほど来申し上げたような土地改良とか土壌改良とかいうものをやって、一年後であるか二年後の間隔でございますか、ともかく新しい適地工場単位に可能の見込みが立ったときに工場が運転できるように、政府のいろいろな許可措置をしていったらどうか。その際に従来の工場集荷地域の中にどうしても新しい工場を作るということになりますから、従来の工場が成り立っていって、それから新規に工場ができた場合に、それに原料を供給できる適地可能性がはっきり立たなければ工合が悪いわけでありますから、それを見当をつけてやるわけです。  そこで具体的の問題として北見の三工場の問題でございますが、これはその工場を認めた当時、北見、網走、十勝、根釧、こういう地域生産可能性をにらみ合せて、最初に芝浦の北見工場許可したときはこの地域、斜里の北連の工場許可したときはこの地域、日甜の美幌工場が動き出すときはそれをまた再調整してこの地域から出荷する、こういう一つの三者間の協定、それに北海道庁と農林省が参与しまして許可しておるのであります。
  15. 永井勝次郎

    永井分科員 そこのそういう配置基礎には、コストを引き下げるという合理的な基準というものがなければならぬと思います。どうでも一つ工場配置して、そうして面積をやって原料工場とが動けばいいのだ、これだけでは済まぬと思うのです。そこにはやはりコストを引き下げていくとか、あるいは農耕と結びついた農産加工というような、いろいろな農業経営の立場からする総合的な所見に立っての合理性というものが、そこに内容となってこなければならぬと思うのです。今の話ではその合理性というものが何も聞かれないのです。こうするのだ、ああするのだと手続方法だけであって、こういうふうにしたのはどういう合理的な基準に基いてこういうふうなことになったのか、このゆがめられたものを長官があとで口先だけで合理的に説明をしようとしたってだめなんです。現地で私はよく知っているのですから。それは悪ければ悪いで、今まで起きたことを二度と繰り返さないためには、現状における正直な一つの誠意のある分析をし、現状把握というものを正直にして、こういう状態を二度、三度繰り返してはならないという、再出発を僕はすべきだと思う。そうして現状に対してはどういうところが間違っているから、こういうふうにがたがたして大騒ぎをやるのだ、そういうものの修正はすみやかに政府の責任においてこれをやるのだというぐらいな決意がなければならぬ。ただこういうことをやったのだ、ああいうことだと口先で合理性を説得しようと思ったって、私はあなたがこれから言おうとすることぐらい大体見当がついているのです。そんなことであなたには説得力はないし、私はそんなことは承知しませんから、それよりは正直に現状を認めて、それを現状においてどう修正するか、これからどういうふうに合理的な配置の上に再びこういうあやまちを犯さないようにやっていくか、こういう一つの決意を聞くことの方が時間のむだがなくていいと思います。
  16. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 今の合理性の問題は二つあると思います。一つ工場経費を下げる合理性一つ生産農家農業経営ビートを入れることによって輪作体系を確立する合理性、この二つがあります。これは必ずしも最終的に一致しないと思います。どうしても地域を広げますと、新しい地域では栽培を始めたのでありますから、やはりその原料コストとしては必ずしも合理化の線に沿わない。しかしそれはどうしても農業経営の中に入れて、農業経営合理化するという、こういうことでどうしても取り上げなければならぬわけであります。そういう見地から、最近、北見、網走、美幌の三工場を検討して許可したのであります。ところが、一つはこれは最初に日甜以外の工場が起るときにも問題があったのであります。せっかく、この地域は自分の方で開拓したのだから、そこへほかの会社から工場を作られてはかなわぬという排斥運動があった。今度は日甜が新しい工場を作りますと、そのときに割り込んだことを忘れて、せっかくおれの方でこれだけつちかったのだから、それをもとべ返すのはいやだ、こういうところが紛議の種になっておるのでございます。私の方で、その当時、北見、網走、十勝、根釧の四地域と、それぞれ帯広、磯分内、斜里、美幌、北見と按分しておるのでありますが、その後の栽培の発展の様相も、多少、当初とは違っておるようでもありますから、今度三十四年に美幌の工場が動き出しますから、どうしても責任を持って、これは私の方で調整をしなければならないと思っております。ただ、御指摘のように、少し新しい三工場を、年次を早め過ぎたのじゃないか、あるいは、立地的に少し無理があったのじゃないか、こういう批評もございます。しかし、もしかりにそうでありましても、もう工場はできておるのでありますから、あとはそれに合うように、どうしても調整しなければならぬ。これは私の方でも、三十四年産のビートの作付開始時期が間近になっておりますから、さっそく北海道庁と協議いたしまして、これを調整する手はずを整えております。そういうわけでありますから、これから新たに工場を建設する場合には、今まではまだ楽だったのでありますが、これからは、テンサイ生産基礎条件、すなわち北海道土壌改良のはっきりしためどが立たなければ、新しい工場をすぐぼかぼか許可するわけにはいかない、慎重にやらなければならない、こういうふうに考えております。
  17. 永井勝次郎

    永井分科員 長官食糧庁長官の立場だけでなくて、農政一般の上からいろいろ所見を述べられた、それはその通りだと思います。消費の方だけ担当していればそれでいいというのじゃなくて、これはやはり主管がそこへ移ったわけですから、一つ角度を変えて、今のようなお考えは妥当だと思います。そうすると、三十四年度の地域配分というのは、新たな角度で再修正する、こういうお考えですか、あらためて伺います。
  18. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 そういう方針で、今段取りを組んでおります。
  19. 永井勝次郎

    永井分科員 ビートの件ではなおいろいろお伺いしたいのですが、公庫の総裁も見えられましたし、簡単に済む話ですから、長く席におとめするのは恐縮だと思いますので、それに関連する質問を先にしておきたいと思います。  公庫の設立の趣旨から申しましても、公庫は北海道の開発の上に、普通の私企業では成り立たないというような金融、あるいは必要であるが、現在では成り立たないというようなものとか、北海道の開発の基礎となる、採算を度外視してもそれを盛り上げていく、そういう関係の金融を主としてやる、こういうようなことがこの公庫設立の趣旨ではなかったかと思うのでありますが、その後における実際の公庫の貸し出し運営というようなものを見ておりますと、当初の趣旨とは違って、何かこうゆがめられた形の金融が実行されておるのではないか、こう思う点があるのであります。それは出発早々であるししますから、必ずしも百パーセント適正を期するというわけにはいかない分もあるかもしれませんが、この分はまずかった、あの分はなお伸ばしていかなければならぬという、発足以来数年間の経験にかんがみて、反省があるべきだと思うのでありますが、その反省を一つ伺いたいと思います。
  20. 松田令輔

    ○松田説明員 ただいまの御質問に対しまして、私ども考え方を申し上げます。公庫設立の趣旨は、結局北海道の開発のために必要なる長期資金を供給するということであったのでありまして、ただいまの御批判につきましては、これを私どもが承わっておりますいわゆる具体的な事柄に直して申し上げますと、大体において、一つは、私どもやり方の中で、中小企業に対する金融が不十分であるというような事柄、それから大企業に対する貸し出しが多いじゃないかというような批判、これらの点が今まで承わってきたことでありまして、ただいまのお言葉もややそれらの点を申されたものと思うのでありますが、中小企業の点につきましては、私どものいたしておりますのは、すべて直接貸しの方法によっておるのであります。従いましておのずから人員その他の制約がございまして、私どもに与えられておる予算並びに人員については、これまでも相当に力を入れてやってきたと思うのでありますけれども、これは今後さらにできるだけそちらの方に力を入れて参りたいと思っております。事実三十一年度以来の実績を考えてみますと、中小企業に対する貸し出しの金額は漸次増加いたしております。これは今後中小企業北海道等におきまして開発が進むにつれて、中小企業問題がさらに起ってくると思うのであります。それに応じて私どもの方はさらに金融の方を進めていきたいと、かように考えております。  それからその半面の大企業に対する貸し出しの点でございますが、これは北海道の開発という使命におきまして、その使命の大きさその他からいたしまして、これを開発するのには、やはり技術、経験、資力を持たねば開発のできないものがたくさんあるのでありまして、これらのものにおきましては、どうしてもやはり大企業をもって開発するということが行われるのでありまして、その点につきまして必ずしも大企業なるがゆえにというよりも、産業開発上必要なものにと、かように考えまして、融資をいたしておるのであります。  一例を申し上げますと、ただいまお話がございましたが、テンサイ糖のごときものも、やはりどうしても技術、経験、資力というものが相当なければならないものの一例でございまして、その他、紙、パルプないしはセメントというようなものはどうしてもさようなふうになることもやむを得ぬかと思います。御趣旨の点につきましては今後も十分に注意いたしたいと思います。
  21. 永井勝次郎

    永井分科員 ただいまのはそういう反省があってしかるべきだと思います。それはまあいろいろな情勢や運営の立場からそういう傾向に陥っていくこともやむを得ない——やむを得ないというよりは、そういう傾向をたどるような情勢であることも認めざるを得ないわけでありますが、今後大企業偏重のなには十分注意していただかなければならぬと思う。  もう一つ聞きたいのは、与党代議士に、お前には幾らワク、お前には貸し出し幾らワクと割り当てて、だれだれ代議士の口ききでどれだけのワクを与えているというようなことが一部で流布されておるのですが、そういうことはないのですか。そういうような公庫でありましたら、これは大へん問題があると思うのですが、その点についてはどうですか。これは一つ間違っても、運営の上で出てくる一つの善意の傾向ではなくて、積極的な悪の一つの事象でありますから、そういう事象があればわれわれは見のがすことがでないと思います。この点いかがですか。
  22. 松田令輔

    ○松田説明員 お答え申し上げます。さような事柄は絶対にございません。今お話のありましたようなことは聞かぬでもありませんけれども、おそらくその点は今問題になっております澱粉その他に関係してのことではなかろうかと思っておりますが、私どもは、現在のところにおいては、この澱粉の新式工場の問題につきましては、組合並びに既存業者の各方面に多数の計画がありまして、いろいろと混乱を来たしておるかのようなことを聞きますので、この点につきましてはむしろ地元もしくは道等の行政官庁において調整が加えらるべきであって、われわれはそれに従ってやりたい、かように考えておるのでありまして、一定ワク考えておるというようなことは毛頭ございません。
  23. 永井勝次郎

    永井分科員 総裁のところでも、代議士に金融のワクを出しておるというようなことも聞かぬではないということですから、そういう事実はあるということでありましょう。それからお察しの通り、澱粉の問題についてもその一つであります。これはすべてではございません。澱粉の問題について私が変だと思うのは、総裁御承知のように、たとえば小清水の二つの工場に対して公庫は金を貸しております。上田という工場は伊藤郷一君のワクできまった工場であります。伊藤郷一君が作るなら今度はおれのワクでというので、松田鉄蔵君が斜網工場を建設した。銀行なら信用程度で金融のワクがきまるのですが、政治的ななにであれば、政治的手腕、力量によって、中隊長級にはこれだけのワク、大隊長級にはこれだけのワクと、政治的な金融のワクがつけられるのかもしれませんが、そういうことであなたの方はおやりになっておるかどうか、これはわかりません。わかりませんが、一つ工場にあなたの方で金融をつけて澱粉工場をやらした、そうすれば、経済的な所見からいっても、企業安定性からいっても、そこにさらに競合するようなものをやって、前に貸した工場経営を不安定にするような措置というものは、普通の金融ではやるべきはずのものではないと思います。ところが、五千万円なら五千万貸して、ここで企業をやらしているその足元へ、今度は一億ですか、一億二千万ですか、金をどんと貸して、原料の取り合いをやらせたり、二つの競合するものをそこに作って、行政庁が調整すればいいといったって、金を貸す方は、やはりコマーシャル・ベースで計算するものは計算しなければならぬと思う。そういうような措置は、単にコマシャル・ベースによってやったものか、あるいはそうでなくして、さっき言った政治家のワク、これは伊藤郷一君の顔を立てなくちゃいかぬ、こういって上田工場を作る、こちらの方には松田代議士の顔を立てなくちゃいかぬというので斜網工場を作る、こういうようなことをやっておるのですか、これは率直に伺いたい。
  24. 松田令輔

    ○松田説明員 今御指摘の二工場につきましては、その土地における原料イモの量から考えて、おのおの工場の規模を調整して、あの地区には二つのものがあってもよろしいということで、両方の工場に、それぞれ二十五万俵を処理目標にして金融をいたしたのであります。おのおのに対して五千万円出ておりますが、実績に徴しますると、いずれも約二十五万から二十六、七万程度のものを処理いたしておりまして、現在のところは両方ともかなり良好な成績にあるかのごとく承わっております。これも決してだれそれに対するワクというようなことでやったわけではありません。またワクなどをきめておるというようなことはございませんので、その点御了解を願いたい。
  25. 永井勝次郎

    永井分科員 そうしますと、小清水における二つの澱粉工場に対してあなたの方で五千万円ずつ貸し出したというのは、全くコマーシャル・ベースで貸したのだ。コマーシャル・ベースで貸したとするならば、たとえば現状において二十五万トンの処理をやるだけの原料がある。しかし農業経営の上からいえば、必ずしもその原料が固定した条件で安定するものではない、あるいはいろいろ相場に基いて多くなったり縮んだりする移動性のあるものであることは、金を貸してそろばんをとっている以上先刻御承知のことだろうと思う。二十五万トンの一つ工場のキャパシティというものが、経済的な一番安定した線であるかどうかということも考えなければならぬ。これはもっと大きくした方が採算性が高くなっていく。そうすると、その工場がそこで成立する条件というものは、最初はそうであっても、だんだん経営の安定度とともに、規模を一番採算制のある適正な規模にまで発展させようという過程における一つ段階だ、こういうふうに見なければいけない。それを、もうそこで規模を固定してしまうような、原料が減れば二つの工場が操短をしなければならぬというような、そういうぎりぎりの線でやることが、コマーシャル・べースで金融を出す場合、そろばんの高い公庫がやる性質のものですかどうですか。私が現地で聞いたのでは、これは伊藤君が口をきいた、こちらにはなにしたから両方一つ——ほんとうはこういうことはしたくないのだけれども、そういうことで貸しておるというのがほんとうじゃないですか。これはもうほんとうに率直に、悪かったら悪かった、二度とこういうことをしないということではっきりすればいいので、そういうようなことをコマーシャル・べースでちゃんとあなた方がそろばんを置いてやったのだとするならば、こういう事例について、こういうそろばんで、こういうものの考え方、こういう経済的な見識でやるとするならば、私は北海道の開発公庫というものは非常に危ないものであると思う。総裁がこういう頭でいれば、末端は、そういう総裁のもとにある人人でありますから、さらに危ないものだと思う。でありますからその点はどうなんですか、ほんとうに純粋なコマーシャル・ベースですか、政治的ベースなんですか、その性格を一つはっきり伺っておきたい。
  26. 松田令輔

    ○松田説明員 私どもの調査いたしました結果、また道庁の意見も伺いました結果としましては、工場の規模は原料集荷面積というものにおのずからなる制約がある。それの最も経済的な範囲というものは、直径三里から五里くらいのところのものを集めるのが適当であろう。そういたしますと、大体二十五万からせいぜい三十万程度までのものが一番現在のものとすると経済的なものである。こういうふうな面を伺いまして、それで今の規模、配置というものが経済の面から見て最も合っている、かように考えてやったのでございます。従いまして今後問題がおそらく各地において既存業者に起ると思いますけれども、その場合はどの程度の規模、またどういう配置になるかということについては、それはまたその人によって多少意見は違うかもしれませんが、一応今までのところでは、私どもはほぼそのくらいの規模ないし配置が妥当なものであろうという考えを持っておりまして、今後もさような考え方で具体的な事例に当って参りたいと考えております。
  27. 永井勝次郎

    永井分科員 小清水という小さなところヘバレイショを原料とする大規模な工場を二つ建てた、それだけでも非常識とわれわれが考えているところに、さらにその隣の村にまた公庫はさらに大規模な工場建設に対して金融の予約をしている、こういうことでありますが、それは今度はどういうコマーシャル・べースですか、一つ伺いたい。
  28. 松田令輔

    ○松田説明員 まだそれを予約をしておるというようなことはございません。先ほどもちょっと申し上げましたが、その付近に既存業者並びに組合の各方面に新式工場の設立の計画が競合しておるという話を私ども伺っておるのでありまして、従いましてこの点についてはいかにこれを調整さるべきかという問題がある。それを地元ないしは道あたりで調整してもらいたい。調整した結果、あるいは組合か業者がどの規模でどの土地に起されるかというような事柄が出て参るのでありまして、それを待ってからわれわれは初めて金融問題として取り上げていく、今日はまだその時期でない、かように考えておりまして、それをただいま待っておるような状況でございます。
  29. 永井勝次郎

    永井分科員 食糧庁長官に伺いたいのですが、斜里で今澱粉工場新設の動きがある。北連がこの工場を建てる。それに対しましてさっき総裁の方に尋ねたように網細工場の第二工場申請は第二工場と言っているが、事実は一応相談して中身は違う形になってくるだろうと思うのですが、そういうことは別としまして、そういう申請に対して外貨の割当及び土地の転用、こういうものに対して当局の方では北連の工場と斜網の第二工場と一緒に書類を出さなければ農地転用許可も与えられないし、外貨割当もできない、一緒に持ってこい、こういうような行政指導といいますか、そういうようなことをおやりになっておられるのでありますが、実際においてはそういうことで申請書類が途中でとまっておるし、外貨割当が停滞していて、ことしの秋、機械を動かさなければならないという運びのときに、外国から輸入をしなければならない機械がこの時期をのがしたらことしは間に合わないという事態になっておるときに、そういう書類の押え方をしておるということを聞くのでありますが、それはいかがでありますか。
  30. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 この件に関しましては、北連関係外貨割当申請が三十四年二月十一日、それからもう一つの方の会社関係申請が三十三年の十二月二十六日に来ております。従って、もしお話のように地元で紛争があるとすれば、その関係の事実を調べるためにおくれておることがあるかもしれません。
  31. 永井勝次郎

    永井分科員 紛争を調べるというのは、どういう方法でどういうふうにしてお調べになるのですか。
  32. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 これは先ほど来の質疑応答にありますように、そちらの工場を起せば原料がこちらの工場に足りなくなる、だからその間の調整をどうするかということが紛争であると思います。しかし斜里の問題につきましては、三十四年二月二十日に斜里農業委員会の会長から、この地域原料集荷に関しましては「北連工場では七十万俵のバレイショを処理し得る工場とするも、当分の間は原料バレイショ五十万俵の処理とする。なお七十万俵のバレイショの操業に際しては、本町バレイショ百万俵、かつその他の工場の操業に影響を与えざることとする。及び同時申請にかかる関係者の話し合いにおいて一工場、他の一工場は三十万俵、それから二十万俵を既存の工場において処理する。」こういうふうに農業委員会がきめて、二月の二十日付で書類が出ておりますから、紛争は解決したものと考えられますので、今度は具体的に所要の機械が必要であるかどうか、こういう審査に入ることになるのであります。
  33. 永井勝次郎

    永井分科員 この問題は、農民が自分の生産したものを協同組合で処理しようということは、農林当局がこれを育成助長していかなければならぬ立場にある。そういうことで一年前に組合総会の決議をして、その間いろいろな準備をして、そうしてことしいよいよその着工に入るという段階になったときに、民間の方から——民間の方というよりは松田鐵藏代議士がまた澱粉を小清水でやった手で民間の工場を作って、そうしてやらせる。それも現地では工場が必要としてやらせるというのではなくて、その工場の主になる者に、お前はおれの選挙にずいぶん骨を折ってくれたから、お前におれは公庫の金でやらせるのだ、そして北連の工場はおれがつぶしてやるのだ、こういうことを言って出てきて、そうして当局の方に働きかけたと思うのです。そういう働きかけによって、そういう動きによって、こういう正しい主張が停滞する。あるいは押えられる。こういう一つの行政のやり方というものを私は問題にするのです。私は小さい一地域の一工場の問題を問題にするのではなくて、そういう問題が、どういう政治的な背景、あるいは正しい行政のあり方というものに対してそういう圧力なりどうかつに屈して、ゆがめられたことをやるということを、私は問題にしなければならない、こう思うのです。しかもそういうふうにして書類を押えておいて、陰でどういうことを言っているかというと、取引を始めておるのです。おれの方の機械を買え。いいですか。日精会社、これはドイツのウエストフアリアという機械を一手に取り扱っている。この会社に松田代議士の娘婿が勤務しておる。それでこの機械を買えと言って、お前、おれの方の機械を買わなかったら、お前の方の工場はつぶれるのだ。それだから役所へ行っても、書類を一緒に持ってこいと言う。人の方の会社まで北連が世話して地元でごたごたしてまとまらない会社を、一緒に書類を持ってこなければ、土地転用も与えない、外貨の割当もしない、こういうことで押えておる。理不尽な押え方をして、陰では機械を買え、何を買えと言っておる。あるいは原料の澱粉の配分を修正せよ、こういう取引をしているのですよ。どぶネズミのこういうやり方を支持するような、裏づけするようなあなた方の行政のやり方というものは、事は小さくてもこれは重大であると思うのです。ですからどういう理由で書類を今まで押えてきたのか。書類を一緒に持ってこなければ許可しないとかいうようなことをやっておられるのか、その真意を伺いたい。
  34. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 先ほど申し上げましたように、地元のバレイショ生産業者に悪影響を及ぼすような結果が出ては困るのでありまして、バレイショの生産、その集荷地域をにらみ合せて製糖工場があるのが望ましい。ただいま御指摘のいろいろな点は、よくわからぬところがだいぶありますが、もしかりに、私の方の係が書類を急速に処理しなかったとすれば、先ほど申し上げましたように、同じ地域に先に申請してくる。その審査中にあとのやつがきて、これはおかしい。その間にいろいろな話が耳に入ってくる。結局どちらの処理も、もっと事実を調査して、果して両方を許可したら原料集荷が適正にいくものか、あるいは一工場だけに限らなければいかぬものか、あるいは既存工場との関係はどういうものか、こういうことを審査するのにひまをとったのであろうと思います。そのほかのことは、私にはよくわかりません。
  35. 永井勝次郎

    永井分科員 そのほかのことは調査するまでのこともありませんでしょう、僕の速記録によってお考えになれば。陰でそういうことが行われるために、表でこの書類を押えて威力を示して、そして原料の取引をする。機械の取引をする。こういうことが行われている。もっともっと話せばありますが、私も同じ選挙区で、しかもライバルとして、何か人の個人的なことを言うようで、私もいさぎよしとしませんし、不愉快です。私は今までかってこういうことを公式の場所で言ったことはないのですが、現地におけるいろいろな動きというものは、単にこの問題だけでなくて、たとえば、十勝における製糖工場、この製糖工場は、松田代議士がかねがね、この製糖工場は農林大臣がきめるのじゃない、河野がきめるのだ、おれがきめてやるのだ、こう言っておる。そういう個人のどうかつやなんかによって農林省やなんかの動きがゆがめられるというような事態を私は重大と考えるのであります。こういう小さな問題、これを達成するために現地の農民の人はどのくらい苦労し、どのくらいむだなことをしておるか。もう少し行政の府にある者は良心的に反省し、そうして正しいものは正しいという一つの行政基準をきちっとしてやるべきであると思う。陰の個人的なきたならしい仕事の裏づけをするようなことはすべきでない、こう思う。そうしますと、土地転用の問題及び外貨割当の問題、この問題については正しく処理する、迅速にお運びになる、おくれますとことしの秋に間に合わない。ですから事実を調査することがあればどんどん事実の調査を進められたらよろしい。急ぐ問題であるという前提に立ってお運びになるかどうか。そうしてそういう陰のどうかつに屈することがないかどうか、あらためて伺いたい。
  36. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 地元にいろいろな紛議があれば、私の方としては最初に道庁に聞きます。道庁に聞きまして調整する必要があれば道庁でやってもらいます。その上で今度は、機械がその工場に必要であるかどうか、これはもちろん数年前に士幌の工場に新しい機械を入れて非常に歩どまりがいい、こういうことでおそらくこういうものを作られると思いますが、しかし一方からいえば、数年前に入れて、いいならば、それに相当する国産機械もあるということが当然通産省の方から指摘されるだろうと思います。そういう点もさらに技術的な見地から検討されることになると思います。  地元の調整は、ただいま言いましたように、地元から話がついた、こういうことがありますれば、それによって処理できるので、あとは技術的な問題で、お話のようにいろいろな雑音といいますか、そういうものにはかかわりなく行政的に処理いたしたいと思います。
  37. 永井勝次郎

    永井分科員 地元はちゃんと調整がついて、決議文もついてきておるのですし、道庁の方には、やはりそういうどうかつがあってこの書類を上げちゃいかない、また中央から何か行政系統で話があったら動く、そういうことで停滞したようでありますが、書類は現地の状況はおさまっておるわけでありますから、そういう事柄を正しく進捗されるように期待しておきます。  それから総裁の方は、現地のある政治家の政治的ベースで金融しないように、ワクをしないように、もっとコマーシャルならコマーシャル一本でりっぱにやって、北海道開発に寄与するような公庫であってほしいということを期待しておきます。  次にビートの問題ですが、今度特別利益納付法案ですか、これが新しく出たようでありますが、これは一キロについて六円を納付させる。その金額は、総額はどのくらいになって、この金をどういうふうに処理されるか、その点をお聞きしたい。
  38. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 この特別納付の制度は、法律第一条に書いてありますように、関税及び消費税の振りかえによって、先ほどちょっと説明いたしましたが、従来切りかえ前では、どうしても政府買い上げなければならない、てん菜生産振興臨時措置法では、買い入れることができるという条文があるにもかかわらず、買い入れなければ事業が成り立っていかないような実態であったのであります。それが関税消費税の振りかえによりまして、この法律の条文通りに運用されるとすれば、政府に売り渡さなくてもいいような状況ができました。しかしその中で、特定の会社では、従来から長く事業を継続しておって、その工場の償却費等の負担が非常に少い関係から、関税消費税を振りかえた、制度を切りかえたことによって、非常な利益が出てくる。その非常な利益を放置しておくということは、同じテンサイ糖製造業者の間のいろいろなトラブルのもとになってくる、こういうことです。すなわち制度の切りかえによって特殊の利益が出てくる。しかもそれを放置することがこの業界のためによくないということから、法律で納付をいたさせるということであります。これは具体的には、日本甜菜製糖の従来の三つ工場生産されるものを対象とすることになります。これを五カ年間に、一キログラム当り六円の割合で納付させますと、約十六億六千万円見当になります。
  39. 永井勝次郎

    永井分科員 そういたしますと、これはどこへ収納するわけですか。
  40. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 政府に収納します。
  41. 永井勝次郎

    永井分科員 歳入のどこの部分に入れるわけですか。
  42. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 雑収になります。
  43. 永井勝次郎

    永井分科員 最初は、この問題は予算の支出の面で振興会に一千万円計上して、これは寄付によってまかなうのだというようなお考えではなかったのですか。会社の方から利益分を振興会に寄付させて、それで振興会を運営していく、こういうようなお考えではなかったのですか。
  44. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 案を立てる経過においては、寄付で、これもやはり雑収へ入れていくというような考え方もございました。
  45. 永井勝次郎

    永井分科員 そうすると、やはり寄付によって、国の金庫に雑収入として収納する、最初はそういう計画だったのですか。私は、振興会を作って、そこへ直接寄付をさせる、こういうような措置ではなかったかと思うのですが、それはいかがですか。
  46. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 そういうことは、普通の個人間では、話し合いがつけばあり得るのでありますが、一つ制度として考える場合には、そういうことは成り立たない。寄付の場合でも、私ども通常、指定寄付といっておりますが、政府の雑収に入れて、そうしてもし必要が売れば、あらためて政府から支出をする。今の納付金と寄付は、法律に基いて強制的にやるかあるいは任意的にやるか、この区別があるのであります。
  47. 永井勝次郎

    永井分科員 そういたしますと、予算の雑収入の面には、最初からこれの歳入を予定していたのですか。
  48. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 これは、御承知のように制度が三十四年度から始まりまして、三十四年産のテンサイ糖をもとにして、それ以後の問題として処理いたす、こういうことでありますから、雑収として処理する第一年度は三十五年になるわけであります。三十五年度につきましてはそうしようということになっております。
  49. 永井勝次郎

    永井分科員 そういたしますと、三十四年度の予算には、これの収入も何も見ていない、寄付も見ていない、こういうことですか。
  50. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 そうであります。
  51. 永井勝次郎

    永井分科員 最初長官は、寄付としてこれを見ているという話だったが、それはやはり三十五年度の誤まりですか。
  52. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 もちろんそうです。
  53. 永井勝次郎

    永井分科員 最初は寄付として予定し、あとでこの法案を出してそれを収納するということになれば、財政法第十七条の二項及び第十八条で問題だと思ったのですが、その点はほんとうに間違いないですか。
  54. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 間違いありません。
  55. 永井勝次郎

    永井分科員 午前中は何時までやりますか。
  56. 大平正芳

    大平主査 あと七人の方から質疑の通告がありますから、できるだけしぼってお願いします。
  57. 永井勝次郎

    永井分科員 それじゃできるだけ簡単に……。  ビート試験研究のこれからのやり方の問題でありますが、これは振興会を作ってそこでいろいろなことをおやりになるという関係と、従来から既存の試験場及び調査研究、こういうものとの結びつき——今後いろいろな品種の育種をやっていく、あるいは新しい品種を作る、あるいはいろいろな研究を進めるということについて、既存のそういう機関と新設の機関と、どういう関係でやっていくのか。その関係をちょっと……。
  58. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 これは振興会の業務のところにも書いてございますが、「てん菜に関する試験研究」とか「てん菜の原原種及び原種の生産及び配布」とか「国内産のてん菜糖の製造に関する技術の企業化に関する試験研究をてん菜糖の製造業者及び農林大臣の指定するその他の者に委託して行う」ということをいっておるのであります。原則といたしましてはできますればテンサイに関する試験研究振興会が重点を置いてやってもらう。農業経営とか育種、他の作物との関係とか、そういう基本的な問題は従来通り国の試験研究機関でやってもらいますが、テンサイそれ自身に関するものは重点を振興会に移したい、こういう考えであります。
  59. 永井勝次郎

    永井分科員 ビート関係は、従来とも北海道関係では長い間の試験研究が進められてきたが、新たな機構で新たに出発するということになると、過去のいろいろな試験、統計上のいろいろな問題は新たな出発になるし、あるいはこのビートの問題は非常に地域性のあるものですが、そういう地域と結びついた試験研究振興会でどのような形でやるか。そういう二重三重のやり方をするよりも、既存の研究機関を活用して、またその技術、学問、経験というものを生かしていく方向においてなされた方が、効率的、効果的ではないかと思うのですが、その点について特にその分だけ独立させて、従来の試験研究と別にやらなければならないという理由はどこにあるのか。そういうことの効果をどのように評価しておるのか、伺いたい。
  60. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 これは先生が非常によく御存じでありますが、ビート試験研究としては農林省はあまり自慢できないのであります。それが結局、欧米諸国ではこれだけビート生産が振興しているにもかかわらず、日本ビートが伸びなかった一つの大きい理由だったといわれている。御承知のようにNRAのドクター・レオナードが占領中から指摘して、特別な指導を受けて新しい品種の導入とかいろいろな点を指摘されたのであります。その後ビートの問題がほんとうに取り上げられるようになったのは、二十八、九年等の冷害でビートの耐冷作物である特色がはっきり認識された。そういうことからビート試験研究についても、非常に重点を置かなければならないということでございますが、農業関係試験研究については、米麦等まだまだ重点をそらすわけにいかないものがたくさんある。そこで今までビートに対する試験研究の施設の拡張ができなかった。従って御承知のようにビートの技術者の数も非常に少い。むしろ暖地ビートにつきましては、府県なり砂糖の製造関係の方々の試験研究の方が進んでおるようにも見受けられるのであります。そういうわけでありますから、ビート生産を取り上げますのには、どうしてもビート品種改良でありますとか、ビート適地の造成でありますとか、そういうものについて相当大規模に急速にこれを推進する必要がある、こういうふうに考えられるのであります。そのためには民間の技術者を動員するとか、あるいは場合によれば外国の技術者も招聘する、こういうふうなことが必要になってくると思うのであります。現在の役所の機構ではそういうことが手っとり早く行われないような面もあります。定員法の関係でありますとか、あるいは人事院規則の関係等でいろいろな支障がありますから、この際この振興会を作って、相当な予算をもちまして急速に進めたらいいのじゃないか。その予算は、先ほど申し上げましたように納付金が五年間に十六億円余り予定されますから、それを雑収入でもほかの方へ回さずにそっちの方へ回してくれ、こういう話し合いがつきましたから、振興会という特殊法人を作りまして、役所一つの別働隊という運営の仕方で急速に進めていった方がいい、こういうふうな考え方であります。
  61. 永井勝次郎

    永井分科員 そうであればあるほど国なり道なり、そういう公的な機関で試験研究をすべきではないか。試験は中立性のものでありますから、たとえばビートの場合に非常に大きな形体のものは糖分が少い、農民の方は目方が多い方を希望する。しかし形体が小さい方は糖分が多い。これは会社が非常に期待する。たとえば品種一つ作るにいたしましても、農民の側の方向に動くか、会社側の方向に動くかということは、やはりこの方向をきめるという場合、中立的な立場においてこれを処理していくというようなものでなければならぬと思うのですが、会社の息のかかったようなところでやるといたしますならば、いろいろな内容において問題が起ってくるのと、もう一つは技術者がそこらに非常に遊んでいるわけじゃありませんから、国なり道の試験機関からこれを抜いて持っていくか、そういうものを中心にして新たに陣容を整備するか。そうしますと、二重な試験の系統になってくるのじゃないか。試験研究の体系というものをもっと考えてやるべきではないか。こういうことが言えると思うのであります。この扱いの問題についてはいろいろありますが、とにかくこういう問題をやる場合には、試験研究、調査が土台であります。科学的な基礎というものをきちっと確立するためには、分散しないで一つのところに——予算がなくては国なり道なりは研究できないのでありますから、諸外国がやっておるようにそこに大きな予算を加えてやりますれば、効果のある実績というものが出てくると思うのです。それをやたらに窓口を広げて、ここでだめだからというので、またこういうものというように、やたらにセクションだけを作って、そしてろくな予算もやらないで結果を期待するというようなことはどうかと思います。この問題についてはあとの機会にいろいろなにしたいと思います。  なお北海道では今工場新設の問題で、その地域は大へんな騒ぎになっておることは御承知の通りであります。昨年エアハルトが日本に来たときに日本やり方を見て、日本はいろいろな税金とかなんとか歳入、歳出の面に政治が参加しておる、そして正常な経済活動というものをそういうもので官僚がゆがめておるというようなことを言っておるのでありますが、そういう点がたくさんあると思う。土地転用だとか外貨割当とかそんなもので——総合的な経営というような見地に立って問題を考えるのじゃなくて、そういう権力でゆがめたものがたくさんできていっておる。だからもし北海道の三十万トンを十年後にやるというなら、そういう工場配置で、そういう農業経営の体制をどういうふうに持っていくか、こういうような計画的なものでなければならぬ。自然発生的に作って、あとでゆがんだものを直す、しかも自然発生的なものも、ほんとうにすなおな形における自然発生ならばいいが、そこに利権的なものがさらに加わって、おかしなゆがめられたものになってくる。このビート糖業というものが今新しく発足しようというときでありますから、将来に悔いを残さないようにしっかりした体制で一つ処理していただきたいということを希望しておきます。
  62. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 今の振興会は、先ほどからお答えいたしますように政府の全額出資の機関でありまして、お話のように製造業者との直接関係はないわけでありますから、その点は御心配ないと思います。それからまた、試験研究機関の窓口をたくさんにするという考えは毛頭ないのでありまして、今までばらばらであったのをこの振興会でまとめるということでありまして、その点も御了承いただきたいと思います。新設工場関係は、先ほど申しましたように生産計画にマッチするように、企業の自由に放置しない、こういうつもりでやりますから、その点も御了承願いたいと思います。
  63. 大平正芳

    大平主査 午後一時より再開することにして、暫時休憩いたします。     午後零時十九分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  64. 大平正芳

    大平主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林省所管について質疑を続行します。  なお、政府委員に申し上げておきますが、質疑の通告者がまだ六名残っておりますから、御如才がないこととは思いますが、御答弁は簡明に、かつ要旨をついてお願いいたしたいと思います。  石村英雄君。
  65. 石村英雄

    ○石村分科員 農林大臣にお尋ねしますが、私は農林行政については全くしろうとで、何も知らないものでございます。しかし地方をいろいろ歩いてみて、農林政策と申しますか、農業政策と申しますか、こういうものを見た感じからいうと、きわめて印象的な批評になるかもしれませんが、現在の農村に対して、あまりに商品生産に重点を置き過ぎておるのではないかという感じがいたすのでございます。たとえば今後の農業は酪農でなければならぬ、こういうと、あっちでもこっちでもみんなてんやわんやで乳牛を入れてくる、入れたと思うと、すぐいろいろ経済変動でどうにもならなくなる。今日の農村は、見ようによれば、全く乳牛で農民が食い殺されておるというような感じがします。またビニール栽培がはやればみんなそれをやる、やった結果がまたビニールで圧殺される。あるいはトラクターが要るというのでトラクターを入れて、またトラクターでひき殺されるというのが、現在の農民の状況のように思います。従ってそんなことをして、いろいろな変動に耐え得る相当の余裕のある農家は、それで生き延びていくと申しますか、むしろ大きくなっていく。しかしそれに耐え得ない連中はますます窮乏化していく。農村における階層分化というものは、近ごろはきわめて激烈に進んでおるように考えるわけですが、今日の資本主義経済のもとで、商品生産中心をどうこうというのは、あるいは逆行かもしれません。農村に昔のように自給自足経済というようなことをいうのは、間違っておるかもしれませんが、現在の農民の実態から考えますと、非常に無理なことが行われておるのではないか、このように考えますが、農林大臣は政策の重点についてどのようにお考えになっておりますか。
  66. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 石村さんの御質問でございますが、これは農政の基本に触れる重大問題でございますので、私たちの考え方を一通り申し上げたいと思います。  私は何も旧套を墨守して、農村方面の問題につきましても進歩を求めない、こういう立場じゃございません。しかしながら農政のほんとの根本は、農民というものは、みずから耕し、みずから養い、同時に国民を養うという基本的な考えを持って、そしてその間に農民としての自覚とその使命をはっきり持ってやっていただくということが、大切であろうと思うのであります。従いましてわれわれとしましては、常にその基本に触れつつ、情勢の推移に応じて適切な措置を講ずるということに進まなければならぬと思っております。従いましてわれわれの基本的政策は、営農の問題にいたしましても、そのほか林業、漁業につきましても、基本的な問題をつかまえまして、そこに一つの安定したものを求める、それによって基本を培養しつつ、時世並びに時期の変化に即応して参りたい、こういう考えでございます。  私は農家の農業の基本は、今申し上げたように考えますけれども、同時にまた、他面、農家の収入を高めなければならぬということでありますから、いろいろな施策をしておるのでございますが、酪農等の問題につきましても、きょうも御審議をいただくことでございますが、従来の苦い経験にかんがみまして、対応の政策も講じ、同時にまた、今度は酪農振興法等の改正によりまして、もう少し安定して、農家経営に不安を来たさないというふうに進んで参りたいと思うのであります。同時にまた、その他の農作物等につきましても、御承知の通り価格支持政策は相当広範にとっておるわけでございます。これらを中心にし、農業生産なり、あるいは林業、水産業の基本的な施策を拡充しつつ、同時に他の商品経済に直面する方面につきまして、一つの安定したものをとりつつ、農山漁村の振興をはかって参りたい、こういうふうに考えておるわけございます。従前の施策等において足らざるところ、同時にまた具体的に当面しておりますものの解決に急な余り、農政の基本を忘れないように努めていきたい、かように考えております。
  67. 石村英雄

    ○石村分科員 私の質問が抽象的なので、御答弁も自然抽象的になったのかと思いますが、そういう抽象的な答弁で、あなたのおっしゃることはごもっともでございますだけでは困るわけなのですが、時間もありませんからあまり深く触れませんが、こうした点はやはり農林大臣としても、根本問題として考えていただきたいと思います。たとえば酪農関係でも、人に言わせると、現在一、二頭しか飼っていない、酪農経営からいえば赤字経営の連中がたくさんいるからいかぬのだ、こういうような批判をする人もあるようでございます。純然たる経済という立場から見ると、そういうことがあるかと思います。実質的には赤字でも、幾ら乳価が下ろうが、一、二頭の連中はしぼって売りに出すということで、乳価の安定ということは依然不可能であるということがあるかもしれませんが、だからといって、一、二頭しか飼わない農家をつぶすという方針になっては困るんじゃないか。よく世間では、このごろの農民は配給になってからみんな米を食い過ぎまして、昔のように麦飯を食わぬ、けしからぬというようなことを言いますが、今の乳の問題も、やはりそういう考えに基いておるんじゃないかと思う。一頭あるいは二頭しか飼わない農家は、やはりそれをしぼって全部売ってしまうというような生活状態に置かずに、そういう人はその一頭なり二頭なりの乳を自分の家で飲んで、余ったものを売るというだけの状態に置いて、酪農の振興というものも考えてもらわなければならぬ。一頭しか持たない者が、自分の家じゃ全然乳も飲まない、せっかくある乳も飲まないで、赤字だろうが何だろうが、どうしてもそれを売らなければならぬという状況に置いて、酪農振興だ、そんな者が売り出すからけしからぬというような考えは、根本的に間違いではないか。今日農村金融のことも多く言われますが、われわれが見ますと、農村の金融というものは、なるほど金融が必要だとは思いますが、現実にはほんとうに金のほしい人は借りることができないわけです。多くの制度金融なんかも、窓口は全部が農協だと思いますが、そこで保証人を立てる。その保証人につきましても、農協はそれぞれ保証限度というものを考えておりますが、みんなもうそれがつつ一ぱいになっておる。保証人を立てても、保証人としての新しく借りる資格がある保証人というものは全くない。従って農民はたといわずかな金を借りるにも、全然制度金融のものでも借りることができない。結局ああした制度金融から流れる金は、極端な言い方をすれば、金の必要のないところにその金が流されて、結局高利貸し資金に制度金融の金がなっておる。その村内の高利貸から、保証人とかなんとか農協が見て適当な保証人がない連中が借りる。その高利貸の資金はどこから来ておるかというと、結局は国の金がそこに行っておるというような状況を非常に見るわけです。こうしたことも、今の農林政策というものが根本的に農村の現状というものを考えてやられていないということが原因ではないか、このように考えますが、いかがですか。
  68. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 第一の酪農の問題でございますが、これは地帯によりまして相当に特殊性が出ていると思うのです。全部が全部だとはいわれませんが、北海道あるいは東北等の比較的酪農の早く入りました地帯におきましては、ただ単に売るだけをしておらぬのでありまして、やはり自家用としても相当消費しておる。現にわれわれが見たところでは、牛乳の自家用がだんだん進んだために、体位が向上したり、あるいは米の消費量を非常に減らした。そして一面においては現金の収入を得るということで、ほんとうにねらっております酪農の事情に即応して進歩しているところもあるわけでございます。しかし、これは長い間の農家の食生活そのものを急激に変えるということにはなかなかいかぬものでございますから、われわれとしましてはなお一そうその指導を加えながら、同時にまた、商品生産面につきましても指導の適正を期さなければならぬかと考えるわけであります。特にわれわれが農家における食生活なり生活を改善させるということにつきましては、年来国民性等もありますから、一朝一夕ではなりませんけれども、特に修練農場であるとか、あるいは農事講習所、ことに最近農林省としまして重視しております農村の青壮年の指導等につきましては、この点について特に重点を置いておるわけであります。これをだんだん進めて参るということにして、いやしくも酪農がただ単に経済的にも非常に危機に瀕するようなことがないようにして参りたい。それから同時に、一、二頭飼っておりましても、農業経営の全一な問題とした場合には有効に働くようにしなければならぬということが、酪農の基本的な考え方でございまして、今度の酪農振興法の改正の要旨もそこにあるのでございますから、御指摘の点は一そう今後改善いたしたいと考えます。  なお農村に対しまする金融問題でございますが、一面御指摘のような弊害が出ておると私も率直に思うのであります。はなはだしきに至っては、災害等に必要な資金等を借りたり、あるいはまた積極的な施設を拡充するといって金融を受けておりながら、これを他に転用するがごとき、全く法規に反し、融資条件に反しておるような事例もあるのでございまして、むしろほんとうに必要とする面にこの制度金融が流れていくようにいたさなければならないことは当然であります。今後も普及員等の活動に待ちまして、その適正を期するのほか、金融機関等につきましても細心の注意を払って、その弊害が出ないようにいたしたい。昨日もいろいろ御議論がありましたが、保証人等をとりましても、実態はこれを返済すべきところの生産性の向上に待たなければならないことでありますから、その面につきましても農業経営なり、あるいは農家の経済そのものに即して、改善を指導する。そうして生産を高め、所得水準を高めて、金融に応ずるというふうにすることは当然のことであります。現行の各種の制度金融等につきましても、非常に窓口が多い、あるいは貸付条件の多岐にわたるようなことは今後とも改めまして、ほんとうに農村としまして融資を必要とする面に適切に流れるようなことを基本的に考えるように取り進めて参りたい、かように考えております。
  69. 小坂善太郎

    ○小坂分科員 私はこの際酪農振興の根本問題について少し伺いたいのですが、現在乳の検査の基準が、脂肪で換算せられておるように聞いております。脂肪率三・二%というものが乳検査の基準になっておるということでございますが、これはどういう基準でそういうものをはじき出されておるのでありましょうか。
  70. 藤波良雄

    ○藤波説明員 私はただいまよく存じませんのですが、担当の課長に来ていただきまして、お答えいたしたいと思います。
  71. 小坂善太郎

    ○小坂分科員 それは困るのです。酪農振興というものの根本的な問題は、乳をどうして買い上げるかということです。その根本問題の基準をどこへ置いておるかということは、担当の課長は知っておらなければ因る。これは大臣一つよく聞いておいていただきたいのですが、乳を持っていく場合に、脂肪に換算されるわけです。脂肪が三・二%なければならないということになりますと、どうしても濃厚飼料を食わせなければならない。牛乳の栄養分は脂肪だけでなくて、何といっても動物性蛋白質である。それが脂肪で換算されるために、草地だけではやっていけない。濃厚飼料を食わせなければならない。従って引き合わないということになってくるのだ。この点は農林省に根本的にメスを入れていただかなければならないと思う。私、与党だから黙っておればいいのですが、今日は特に御質問しておるわけです。一つ担当課長に早く来てもらって、局長にも来てもらいたい。これをやっていただくと、酪農家はずっと楽になるのです。そういうことをして初めて酪農振興は大きく取り上げられてくると思うのです。根本問題ですから、一つ大臣から……。
  72. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 これは小坂さんも御了承下さると思うのですが、日本の乳の扱い方というものは、明治に入ってからの新しい問題になっておって、おのずから先進地の前例に従ってその扱いをやってきたと思うのです。従いましてその場合には乳の取引は、従来とても脂肪を中心にしてきたことは免れざる実情であったと思うのですが、私も小坂さんと同じように考えるのでありまして、蛋白の量なり、あるいは脂肪なり、その他の全体の栄養素を見て決定することは好ましいことである。ただ商慣習で——特に大メーカーではこれを生乳だけにして処理いたしておりません。勢い乳製品等をとる場合に、脂肪を中心にして、いわば片寄ったる一つの商慣習ができ上ったと思うのですが、今技術的にどういうふうに見ておるかは別として、今後の問題としましては、よく十分に再検討を重ねて、適切な方法を見出さなければならないと思っております。
  73. 小坂善太郎

    ○小坂分科員 大へんわかったお話をいただきまして、私の質問の趣旨をよく御了解いただいたので、その点満足いたしますが、今お話のように、何となく商慣習上そういうことになっておる。そうすると、酪農というものは、大メーカーに依存しているということになるのです。数個の大メーカーがどうにでもこれを縛るということで、酪農価格を引っぱっていくことができるということにしておきますと、ひいては、濃厚飼料というものは国内ではそうできないのですから、外国から飼料を輸入しなければならぬ。そういう点に非常に桎梏があるので、これはぜひ一つ、担当課長にも、担当局長にも出てきていただいて、はっきり乳の買い上げ基準というものを変えるということを、言明していただきたいと思います。  なお関連してお伺いいたしますが、このいただきました三十四年度農林関係予算についてという資料の、六ページの上から十番目のところに、また乳製品の品質改善事業を引き続き五十二カ所実施する。こういうふうに乳製品の品質改善事業をやるのだということもうたっておるのですが、品質改善というからには、やはりその基準がなければいけないと思います。こういうことを予算にも要求しておられるのですから、どうぞ一つ適当なる御答弁をわずらわしたいと思います。
  74. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 これは先ほどもお答え申し上げましたが、従来のやり方はマンネリズムに陥っていると私は思っておるのです。従いまして、今小坂さんから御指摘になりました通りに、むしろ本質的にはそう考えなければならぬと思うのであります。従いまして、技術方面におきましてもいろいろ研究はありましょうが、先ほど申し上げましたような線で、だんだん改善をして参るということにぜひいたしたい、こういうふうに考えます。同時にまた、今四大メーカーは相当な力は持っておりますけれども、そのほかにも、重大な力を協同組合系統のものも持っておりますが、今後この方面に相当発展を期待すべきだと思いますので、両々相待って、合理的な取引の基準を求めていくというふうにいたして参りたいと思います。同時にまた、生産地によりましては、あまり濃厚飼料に偏せずに、青草その他の飼料によって、りっぱな成果をおさめているところもあるのでございますから、今小坂さんの御指摘になりました点は、当局としましては十分に翫味して、これを採用して、改善するように方途を講じたい、こういうふうに考えます。
  75. 小坂善太郎

    ○小坂分科員 ちょっと一言つけ加えさせていただきます。ジャージーというのは、非常に脂肪分の多い乳が出るわけです。そこでジャージーをどうしてもほしいということを農民が言い、政府も非常に貴重な外貨をジャージー輸入のために費しているのですが、そういう点が結局脂肪率で買い上げるということになってきておるので、ホルスタインは飼いなれているけれども、無理にジャージーを輸入するという面もあり、飼料の面とか、そうした品種の面というのが、根本になりますので、ぜひ一つ早急に酪農農家のためにお考え願いたいと思います。
  76. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 実はジャージーを特に最近取り上げましたことはこれは御説明するまでもなく、ホルスタインの方になりますと、資源的にも種畜等を取りにくい、そこで次善の策としてジャージーを選んだ。これは同時にまた、粗飼料でもって飼えるというようなことも指摘されているのであります。しかしこれは御承知の通り、アメリカなり、豪州なり、あるいはニュージーランド方面で飼います場合、放牧をもってやる種類でございます。ところが日本でやりますと、放牧する余地がない。おのずからホルスタイン的飼養をするということになっておると思うのでございます。これはきのうも御議論があったのですが、日本に入ってくると体型がだんだん変ってくる。脂肪の出方も変遷があるというようなお言葉もあったのでございますが、これも一環として十分に考慮した上で、改善の道を講じて参りたいと思います。
  77. 石村英雄

    ○石村分科員 それでは金融について少し聞きますが、私が先ほど申したように、現在の金融は、農村にはたとい流されても、あまり役に立たぬ、金を借りても、借りてする仕事がないという状況だと考えるのです。一応農林中金だのいろいろあって、やっておられることは御承知の通りでございますが、農林中金に対する世間の非難というものを聞いてみますと、金をたくさん持っていながら、農民に貸さないで、短期貸しだの、あるいはコールなんかに非常に出している。まことにけしからぬ農林中金であるということに、世間の評判が一応なっているわけですが、これも私のしろうと判断では、農林中金の金というものは季節的に非常に変動するというようなことから、ああいうことが行われているのではないかと考えるのでありますが、農林省の方ではこの問題をどのように理解し、どのように解決しようとしておいでになりますか。
  78. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 農林中金の資金運用の状況についてのお話でございますが、最近の、特に昨年以来の組合系統金融全般の傾向につきましてまずお話を申し上げる方が、御理解をいただく上に便利かとも思いますので、その点からもお話を申し上げます。  ここ数年来の豊作その他で、特に昨年上半期以来、非常に組合系統の金融は充実をして参りまして、昨年末で単協の預金が大体五千六百億に相なっているわけでございます。そのうち単協が自分で貸し出しているものが二千四百三十億、上部機関その他の金融機関に預け入れておりますものが、二千九百八十四億というようなことになっているわけでございます。それらを受けまして、信連でも貯金が去年の暮れで三千二百六十二億、貸出が千五十七億で、信連の上部への預け入れが千九百三十五億というようなことになっているわけでございます。このことは、単協、信連段階におきまして非常に資金が充実して参る、いわゆる自まかない態勢がだんだん整って参ったわけでございまして、これらが上へ上りまして中金の資金を構成いたしているわけでございますが、中金の本来の原資は簡単に申し上げますと、下部からの預金と農林債券の発行によるものとの二つになるわけであります。本年一月末で預金は千七百四十七億、それから発行債券は三百四十七億と相なっております。貸出の方は、信連その他の系統へ流しておりますものが五百六億、系統外が千四百七十六億と相なっておりまして、千七百四十六億の内訳は、関連産業貸出と申します、いわゆる農林水産関係に第一次的に関連しております部面に、貸し出しておりますものが五百八十二億、それから銀行貸し出し、インター・バンクと称しておりますものが六百四十億、それからコールに出しておりますものが二百十五億、こういうような状況になっておるわけでございます。中金の貸し出し態度といたしましては、できる限り系統の資金需要に応じて参りますことはもちろんでございます。これを充足いたしまして、いわゆる余裕になるものを、できるだけ有利に運用いたしまして、資金効率を上げるように、そういう考え方で運用いたしておるわけでございます。
  79. 石村英雄

    ○石村分科員 今の数字を法律によって一つお答え願いたいのですが、十五条の四号に該当するものが幾らですか。
  80. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 十五条の四のいわゆる関連産業貸し出し——われわれの用語では甲短と称しておりますが、五百八十二億でございます。
  81. 石村英雄

    ○石村分科員 それから五号及び十五条の二による貸付額……。
  82. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 四号、五号合せて甲短でありまして、これが五百八十二億でございます。それから六号がイン夕ー・バンクとコールでございますが、これは先ほど申しましたように、インター・バンクが六百四十億、それからコール・ローンに出しておりますものが二百十五億、なお右以外に、長期で貸し出しておりますものが別に三十九億ございます。これは十五条の二でございます。
  83. 石村英雄

    ○石村分科員 これは一月末の数字なんですね。
  84. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 さようでございます。
  85. 石村英雄

    ○石村分科員 年平均はどのくらいになりますか。三十三年の暦年平均、それぞれ甲あるいは六号、十五条の二によるもの……。
  86. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 金融課長から説明いたさせます。
  87. 太田康二

    ○太田説明員 それでは私からただいまの御質問に対して御答弁申し上げます。  御承知のように、中金の金は、大体七月から十二月くらいにふえまして、一月から六月に減る、こういうことになっておるわけでございます。ちなみに三十三年度をとって申し上げますと、貸出金が三十三年の六月で千百八億八千二百万、それが十二月末には先ほど局長が申し上げましたように千九百八十三億五千二百万、こういうことになっております。これを所属団体と非所属団体別に申し上げますと、所属団体の三十三年六月末の貸し出しが七百七十三億七千百万、これに対しまして十二月末が五百二十八億四千八百万ということになっております。さらに先ほど申し上げました甲短、乙短、コール、それから十五条の二の長期貸し出し、非所属団体への貸し出し、これを見ますと、三十三年六月末が三百三十五億一千万、それが十二月末には非常にふえまして千四百五十五億三百万、こういう数字でございます。
  88. 石村英雄

    ○石村分科員 この短期貸し——甲短とか乙短とか言っておられるようですが、こういうものを外部から見ると、何か特殊な理由でそういうところへ貸し出されておるのではないか、従って結局農民に直接貸さないことになるのである、こういう批判が生まれてくるわけですね。六月末でも甲短が三百三十五億あるということになると、まず六月末は最低の数字だと思うのですが、この三百三十五億は、一般の貸し出しには回せない金額なんですか。
  89. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 この甲短、特に関連産業貸し出しにつきましては、もちろんこれは余裕金運用でございますので、中金の余裕金のピーク及びその底の状況によりまして、相当幅の出て参りますことは当然でございますが、この関連産業貸し出しとして現在中金が貸しておりまする対象は、以下申し上げますようなものが主なる対象業種になっておるわけでございます。  おもなるものといたしましては、肥料、アルコール、澱粉、農産加工、それから畜産、水産、林業、そういうものでありまして、これらの企業につきましては、相当長い期間にわたって中金の資金に依存いたしておるものもあるわけでございます。従いまして、一定の額はやはりこれらの企業に対して貸し付けて参りませんと、これらの企業が現実に資金繰りに困るというような事態もあるわけでございますので、余裕金の金繰りとの関係におきましてできる限りの調節をいたすわけでございますが、一定額は、やはり少いときでも残高として残っておるわけであります。
  90. 石村英雄

    ○石村分科員 なるほど関連産業には違いませんが、これは一般的な資本主義の大企業が大部分ではないかと思うのです。世間に伝えられるところによりますと、ある特殊な乳業会社に何十億とか短期貸付名義で出ておる。あるいはこれは手形切りかえで、表面は短期かもしれませんが、実質的には長期資金となっておるというようなうわさもあるわけです。これに対しては、資料をあとから出していただきたいと思いますが、そういう事実はありませんか。
  91. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 先ほど申し上げましたように、中金の金融に相当以前から依存をしておりまするものもございまするので、相当長期にわたって貸し出しをいたしておるものもございます。
  92. 石村英雄

    ○石村分科員 余裕金といっても、一方コールもあるわけです。これも余裕金の運用で、純粋な短期運用だと思います。今までの因縁があるからということですが、そういう貸付対象というものは、農林中金の性格から見て妥当な対象だとお考えなんですか。
  93. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 われわれといたしましては、甲短の実際の貸出業種及び個々の企業対象は、農林中央金庫の業務運営にまかしておるわけでございますが、それぞれ農産物加工、あるいは農業資材の確保、その他農林水産業と直接関連をいたしますものに対しまして、中金として必要額を審査をして貸付をいたしておるわけでございます。
  94. 石村英雄

    ○石村分科員 なるほど、それは明治でも森永でも農業に関係はありましょう。あるいは大肥料会社でも農業に関係がありましょう。しかし、そういうところへ資金を出すために農林中金というものはできているわけじゃないんじゃないですか。それは農林中金のやることだという今の御説明ですが、こうしたものは法律によりますと、主務大臣の認可を受けて初めてやることになっているんじゃないですか。農林中金が勝手に業務運営でできることじゃないはずでしょう。
  95. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 短期のものにつきましては、一定ワクはいわゆる総額のワクでございますが、甲短として貸し付けまする総ワクの範囲内におきまして、短期のものにつきましては、農林中金限りで処理をいたすわけでございます。初めから相当長期にわたりまするものにつきましては、個々に農林大臣及び大蔵大臣が認可を与えることになっておりますが、短期のものにつきましては、農林中金限りで処理をいたしております。
  96. 石村英雄

    ○石村分科員 そうすると、これは私の法律解釈が間違っているのかと思うのですが、十五条の四号を見ますと、——私は古い金融法令集を見たものですから、その後改正になっておるのかもしれませんが、四号は「第五条第一項二掲グル団体ノ発達ヲ図ル為必要ナル施設ヲ行フ法人ニ対シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ短期貸付ヲ為スコト」、この法律に対し主務大臣の認可を受けるというのは、総ワクの認可でいい、こういうことなんですか。
  97. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 現在、短期貸付に関しましては、総ワクの認可をいたすことによりまして運用いたしているわけであります。
  98. 石村英雄

    ○石村分科員 これは法律の解釈からいって変じゃないですか。私が読んだとき解釈したのは、十五条の二の関係、これに対して施行規則を見ますと、四条の二項に「前項ノ貸付ニ付テハ毎事業年度ノ始其ノ金額ノ最高限度ヲ定メ農林大臣及大蔵大臣ニ届出ヅベシ」こうあるのです。この文は総体の額の最高限度という意味かと思っておったのですが、本法の十五条の四号でも「施設ヲ行フ法人ニ対シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ」というのは、個々の法人じゃないわけなんですか。もしそのような総ワクだというなら、そういうように法律では書かれるのが当然じゃないかと思う。
  99. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 金庫法十五条の四号、五号を含めまして、現在ワクで承認をいたしております。
  100. 石村英雄

    ○石村分科員 それはこの法律ができた当初からそういうやり方なんですか。法律解釈でそういう解釈はどうも無理のように思うのですが……。
  101. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 当初と現在と全然同じ運営方法をしておるのではないようでありまして、過程の間におきましては、いろいろやり方を変えておるようでございますが、現在では先ほど来申し上げておりまするように、順次農林中金におきましても、大体の貸付の基準等もできて参りましたので、現在はワクで認可をいたしておるわけであります。
  102. 石村英雄

    ○石村分科員 現在そういうやり方をしておるということは、先ほどからの再々の御説明でわかっておるのです。そんなことは繰り返される必要はない、私は、この法律ができたときには、これをすなおに読めば、個々の法人について貸付の認可を主務大臣から受けて貸しておったのではないか、それがこの法律を読むすなおな読み方だと思う。三つあろうが五つあろうが、総ワクだとは、ちょっとこの法律では解釈できぬ。これは私の法律解釈が全然間違いかもしれませんが、やはりあなた方は、この法律はあくまで総ワクで差しつかえないという解釈だということなんですか。
  103. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 現在の余裕金運用のやり方といたしましては、総ワクをきめます際に、農林、大蔵両省で、金庫の資金繰り等も十分検討いたしましてきめております。現在の段階におきましては、総ワクで運用して参って差しつかえないと私ども考えております。
  104. 石村英雄

    ○石村分科員 それは総ワクというのは、結局四号に対する総ワク幾ら、あるいは五号に対する総ワク幾ら、あるいは十五条二の関係の総ワク幾ら、こういうワクなんですか。
  105. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 現在は十五条の四号と五号をひっくるめましてワクを設定いたしまして、認可をいたしております。
  106. 石村英雄

    ○石村分科員 それはどの法人というような指定は全然なしに、金額全体が幾らだという認可だけが行われておるわけなんですね。
  107. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 貸付業種ないし対象を指定してワクを設定しておるのではございません。十五条の四号、五号通じまして幾らというワクをきめるわけでございます。金額できめておるわけであります。
  108. 石村英雄

    ○石村分科員 では、法人はどの法人とかなんとかいうことは全然ないわけなんでございますか。
  109. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 それは現在の中金法できめられておりまする貸付対象になり得るものに貸すということに相なっているわけでございます。
  110. 石村英雄

    ○石村分科員 貸付対象になり得るというのは、農林中金が独自で判断すれば差しつかえない、こういう趣旨なんですね。
  111. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 第四号で、ここに書いてあります「第五条第一項ニ掲グル団体ノ発達ヲ図ル為必要ナル施設ヲ行フ法人」五号で「食糧営団其ノ他農林水産業ニ関スル事業ヲ営ム法人」このそれぞれの主体の認定につきましては、農林中央金庫でやっておるわけであります。
  112. 石村英雄

    ○石村分科員 法律解釈の問題になりましたから、それは私は大へん疑義のある法律の解釈、運用だと考えますが、これは法制局なり何なりに後ほどまた尋ねてみたいと思います。  そこで、それでは資料として出していただきたいのですが、いの十五条の四号、五号あるいは十五条の二の関係、同時に施行規則の四条の規定がいろいろあるわけですが、実際に最近貸し付けられておる法人の名称と、そうしてそれに対する貸付額、あるいは手形は三カ月か二カ月かしれないが、それが順次切りかえられて一年以上に及ぶ分の貸付額、これを御提出願いたい。
  113. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 金融機関の通常の例といたしまして、個々の貸出先及び貸出額を公表いたしますことは、いろいろの関係もありまして、やらないことになっておりますので、農林中金の場合におきましても、個々の会社名及びそれに対する貸出額を資料としてお出しいたしますことは、ちょっとむずかしいと思います。ただどういう業種に対してどの程度貸しておるかということにつきましては、手元にも資料があるので、それを申し上げたいと思います。三十三年十二月末で、肥料につきましては百四十三億でございます。それから農業資材につきまして二十九億、アルコール、酒につきまして五十七億、澱粉、アメ等につきまして十六億、農産加工につきまして三十一億、繊維産業につきまして、これは生糸関係だと思いますが十六億、それから青果の関係で五億、畜産関係で八十六億、水産関係で八十一億、林業関係で二十一億その他が約五億ございまして、これで合せまして四百九十四億でございます。そのほかに、昨年蚕糸対策といたしまして、日本生糸輸出保管株式会社に生糸の金融をつけておりますが、これが八十七億ございまして、全部合せまして五百八十二億となっておるわけであります。
  114. 石村英雄

    ○石村分科員 なるほど普通の金融機関なら、その内容を明らかにするということは問題があるかもしれません。しかし農林中央金庫というものは、単純な一般の私企業じゃないはずなんです。これがしかも世間から、この貸し出しの内容については大きな疑惑の目をもって見られておる。それが発表ができない。これが富士銀行だ、三菱銀行だというなら、私は聞きません。しかし国が関係しておる、国の資金が相当扱われる、この農林中央金庫の問題のある点が、国会に明らかにされないというような場合、一体どうなるのか。そんなことは困ると思うのです。これはわれわれは富士銀行にこんなものを出せとは言いません。三菱銀行にも言いはしません。そんな銀行、金融機関がやっていることなら、これは資本主義がどうだとかこうだとか、一般的なことでケリがつくわけです。農林中央金庫の内容について、農民の立場から非常に疑惑をもって見られておる。そうして世間に伝えられるところでは、さっき申したように、一大乳業会社に何十億とか何億とかいうものが長期的に出されておる。なるほど乳業は農業に関係がある、酪農に関係があることかもしれませんが、それは純然たる営利機関であります。大資本を持って運用されておる営利機関であります。それに農林中金が長期にわたって大金を出すということでは問題だと思うのです。農林中央金庫の性格から考えて、それを明らかにしてもらいたいといえばそれは答えられませんじゃ——これが一般の金融機関ならそれは御答弁の通りだと思いますが、農林中金についてそういうことがあっては困ると思うのです。どうしてもこれはできないのですか。もちろん農林省には内容はわかっていますね。
  115. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 農林省では承知いたしております。
  116. 石村英雄

    ○石村分科員 発表できないのは、どういうわけでできないのですか。
  117. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 特に発表いたしていろいろ支障があるというわけのものでもございませんけれども、やはりそれぞれ営業上の関係もありますし、金融機関通常の例といたしましては、こういう明細は発表しないのが一般の例でございます。従いましてわれわれといたしましては、個別貸し出しの資料を差し出すことはいかがかと存じまして、先ほどお答え申し上げたのでありますが、貸し出し内容等につきまして御不審等の点がありますれば、われわれといたしましてもできる限りの調査といたしまして、御説明を申し上げたいと思います。なお、先ほど申し上げました業種及び金額に応じまして、大体どういうところが借りておるかという程度の資料でございますれば、用意をいたしても差しつかえないと思います。
  118. 石村英雄

    ○石村分科員 そんなものは、ただばく然と乳業に関係があるとか、肥料に関係があるとかいうことは、問題の中心じゃないのです。私営の、普通の民間の金もうけを目的とする大企業に、農林中金が本来農民に貸すべきはずの金を貸しておるということが問題なわけです。それをばく然と乳業に幾ら、肥料に幾ら——肥料は小さな農業なんかでも作るかもしれません、小さな会社でも作るかもしれません。しかし問題は、そんなところにあるわけじゃない。大資本の肥料会社に農林中金が金を出しておる、あるいは乳業会社に金を出しておる、しかもそれが相当長期にわたっておる、金額も大きいというところが問題なんです。それをばく然と業種ならお出ししますというのじゃ、こっちの言うことはまるで聞かない話になる。それじゃ意味をなさない。そういう会社の貸付金を明らかにしちや困るということですが、困るはずはないと思う。その会社は借入金が幾らあるということは、貸借対照表で天下に公表しておる。その内訳が、あるいは民間銀行あるいは農林中金ということが出てなぜ悪いのです。悪いということは、借りるべき相手でない農林中金から借りておるから、それが都合が悪いというのにすきない。借入金を秘密にしなければならぬということはないはずである。また実際もう天下に公表されておる。どの会社にしても借入金がある。その内訳が、個々の銀行から幾ら借りておるというのじゃない。問題の農林中金から幾ら借りておるかということを明らかにしたい。それは一般金融機関としては困る。一般金融機関としてはそういうことをすべきじゃないでしょう。しかし農林中金のような性格のものは、少くともこれを明らかにする義務があると私は思う。政府はそれを国民に対して明らかにしなければならぬ義務があると私は思う。普通の金融機関と同列に論じて、出せません、都合が悪いから出せないと言われるが、どうなんですか。個々の名前は控えてもいい。甲でもAでもイでも何でもいい。しかし資本金がどの程度以上のものについてはこのくらいだという、企業の規模がある程度判断できる範囲の記載でいいから、金額を出してもらいたい。何も私は明治が借りておるとかどこが借りておるとか、そんなことは全然知らないのです。そんな名前を私は別にほしいわけじゃないのです。相当な大企業に金を出しておるということが問題なわけです。個々の名前をどうこうとか、それを征伐するとか、そんなことを考えているわけじゃないんです。その程度の発表ならどうですか。
  119. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 固有名詞を避けまして、私の方でも貸付状況が詳しくわかりまするような資料をできるだけ早く用意をいたします。全部の貸付状況でございますから、今手元に全部その資料を持っているわけでございませんので、若干の時間の余裕をいただきたいと思います。
  120. 石村英雄

    ○石村分科員 何も千万円や百万円の分まで出してもらわぬでもいいわけです。かなり大きな金額、一億以上のものでいいですから、これはそう数はたくさんないと思います。——それでは、なるべく早く予算委員会が終らぬまでくらいに出してもらいたい。早く出してもらわぬと意味をなしませんからつ……。
  121. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 一件一億以上の貸付につきまして、固有名詞を避けまして、貸付明細がわかりますような資料をできるだけ早く用意いたします。
  122. 石村英雄

    ○石村分科員 それと念のために、これは十四条の五号該当、これは何号該当というように、法律的に区別して出していただきたい。
  123. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 その区別はいたします。
  124. 石村英雄

    ○石村分科員 それでは次に、金融関係でお尋ねしますが、われわれが地方を歩いてみて感じることは、特に一番ひどいのは漁村だと思うのです。零細漁民の生活はお話になりませんが、この零細漁民に対する政府としての金融措置というものは、どのようなことが考えられているか。いろいろ話を聞きますので、国民金融公庫なんかへ時には話を取り次いでやることもあるのですが、そうすると国民金融公庫では、国民金融公庫は国民全般のものだから、拒絶はいたしませんが、漁業はなるべく漁業の方で考えてもらいたい、こういうことが座談的にも出てくるわけなんです。そうして、実際この零細漁民に対する措置というものは、これは金融以外の面においても問題が多い。水産庁からも御答弁願いたいと思うのですが、金融だけにしぼりますと、何か特殊な措置が行われておりますか。
  125. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 水産関係の金融について、詳しくは水産庁当局からお話を願いますが、概して申しますと、特に農林中金の面から見てみますと、現在農林中金の融資原資は、先ほど申し上げたように、主として農協関係の原資でございますが、これを貸付運用しておりますのは、林業及び水産業に非常に重点がかかって運営いたしておるわけであります。現在農林中金の運営の実態として、農業系統の金で相当額水産関係の金融を見ておるというような実態になっております。
  126. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 ただいま御答弁がございましたように、今日単協の預金が昨年三月末現在で百十三億、中金、信漁連及び漁協、これから出ております貸付金の重複分を相殺しますと、約四百億、これは結局、農林中金におきまして、ただいまお話がありましたような操作をすることによって、このオーバー・ローンがとにかく間に合っておる次第でございます。そこで漁民に対する金融をどうするかということに関しましては、まず今日の沿岸漁業対策自身を申し上げなければならないと存ずるのでございますけれども、これはまたいずれお尋ねがあると存じまして、差し控えまして、われわれとしてはやはり漁民に金融が浸透していく態勢を作っていきますためには、漁業協同組合を強化育成していくことに力を注がなければならない、かように考えるのでございます。そういうことのために、あります問題につきましては、今日の漁業協同組合の法制自身にもいろいろ問題がある次第でございまして、これにつきましてはこの前の通常国会で御承認をいただきました漁業制度調査会におきまして、目下検討いたしておる最中でございます。ことしのうちには中間的な結論を出しまして、次の通常国会にはぜひ何らかの制度的な、中間的なものででも改正をいたして参りたい、かように考えておるのでございます。しかし、一方におきまして基本的制度の改正を待ついとまがないのでありまして、今日できる限り漁協の共同経済活動を促進することに努めたいと考えておるのでございます。沿海の漁協が三千百ございますが、その中で、ほんとうに総合的な経済協同組合として動いておるものは約三分の一でございまして、約七百ばかりのものは地区が狭小であって、あるいは漁業権の管理だけにとどまっておりまして、とうてい経済協同組合としての体をなさない。また六百有余のものは赤字組合でございます。そこで、これに対しましてやはり新しい漁協の再建整備ということをぜひやっていかなければならないのではないか、かような観点から、目下その中の一部分を取りかかっておるような次第でございます。  さらに金融の円滑化をはかりますために、信用保険の制度をしいておりまして、昭和二十八年から動いておるのでありますが、幸いにいたしまして非常に業績は上っておりまして、今年度に入りましてから国の保険をいたします保険料の引き下げもできるような状態に立ち至っておるのでございます。今後信用保険自身を、漁村の漁協からの借入金にまで浸透させるというようなことについてのいろいろな問題をやはり解明しなければならぬのではないか、かように考えておる次第でございます。
  127. 石村英雄

    ○石村分科員 その信用保険ですが、この信用保険は、制度としては一応は大へんけっこうな制度だと思います。しかし、ああして各県に漁業信用基金協会というものが設けられて、それでやられておるわけなんですが、これができてからの実態を見ますと、あれは法律では出資の五倍になっておったかと思うのですが、出資の五倍まで保証する、こういうことになっている。従って今後金を借りるというときには、この信用基金協会の保証をとらなければならない、こういうことになっておるのでありますが、その結果、出資金を相当出させられておる。これは個々の漁民なんというものは、実際は問題がないと思うのですが、一口大体五万円くらいかと思うのですが、それが五十一万円だ、百万円だというように出している。そうして五倍というのですが、実際は三倍くらいしか借りられない。百万円出資して、借りるときには三百万円、そうして保証料だの何だの計算して金利というものを考えますと、三百万円借りたが、実際に自分が使える金は二百万円ということになる。保証料なんか含めて、金利と考えて一割といたしましても、実際にはその利子は一割五分、一割二分なら一割八分、五〇%ほど実質的には利子が高くなるわけであります。世の中にこれほどおかしなありがたい制度はないというのが、地方の声なんです。中小企業には別に信用保険なんかがありますが、これなんか何も出資をたくさんしてその三倍しか貸さぬとかなんとかいうことはないわけなんです。漁業というものは、それほど金のもうかる仕事かどうか私は知りませんが、いずれにしても、こういう制度ができた結果、趣旨は大へんけっこうで、大いに融資ができるかもしれませんが、金利がべらぼうに高くなっておるという結果が生まれておるというように聞くわけなんです。これはどうなんですか。
  128. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 確かに、信用保険事業の発足の早々におきましては、非常に事故率も高く、しかもこの保険事業を、国の繰り入れました特別会計の基金を基礎にして、自主的に運営していきますためには、ただいまお話の出ましたようないろいろな副次的な現象も、経過的にはあったかと思うのでございます。しかしながら、かつては一五%こしましたという高い事故率も、現在では八%くらいにまで下って参っております。またこれが運営の状況も非常に好転して参りましたので、保険料も今年は年三分を二分に引き下げた。さらに今後の模様によりましては、ただいまお話のありましたような出資の問題、あるいは保険料の問題等についても、検討いたしたいと考えております。  さらに、先ほどもちょっと触れましたように、今日金融機関としては、漁協が組合員に貸し付けるものは、実はこの保険の対象としては取り上げられておらない次第でございます。この辺あたりに、今後のこの借用保証制度の改善すべき一つ問題点があるのではないか、かように考えまして、これが堅実なる育成のために努力をいたす所存でございます。
  129. 石村英雄

    ○石村分科員 政府の保険料率も二分に下げられるというようなことでした。これもけっこうだと思うのですが、やはり非常な高額な出資ですね、あれはどうなるのです。大へんたくさん出資をして、そうして三倍しか借りられないということでは、今言ったように、少々保証料が高過ぎる。これは協会が納める政府への保証料だと思うのですが、その協会の保証により、直接借りる人たちの金利というものはやはりさっき言ったように、三倍の場合なら五〇%増しという実際の金利になるわけなんです。あのような大きな出資金をとってやるという制度は、どうしても必要なんですか。
  130. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 信用保証制度は、これは債務者が団結いたしまして基金協会を結成して、そうして債権者から借り入れまする債務についての保証を協会にさして、これを国が七割についての保険をする、こういう制度の建前でございます。従いましてやはり保証をいたします基金協会がすかんぴんでは、保証の機能は金融機関から認められ得ないのでございます。ある程度の資金を必要とする、かように考えるのでございます。そういう意味におきまして、今日おそらく三十八億円ばかりの資金が造成されておりますが、その三分の一は公共団体、三分の二は漁協方面、かように考えておる次第でございます。今後基金協金の運営が漸次改善して参りますれば、ただいまお話のような出資の率等についても、今後検討し得る余地が出て参るのではないか、かように考えまして、目下これが堅実なる育成に努めておる次第でございます。
  131. 石村英雄

    ○石村分科員 堅実な育成はけっこうですが、政府として、もっとこれに対する資金を出してやるとかなんとかいう考えはないのですか。中小企業の保険の場合と比較して、あまりに漁業というものが冷遇されておるというように考えます。私は、何も中小企業の一般の商工業の方を漁業並みに下げろという意味じゃありませんが、漁業の方はあるいは危険が多いということでこういう制度がとられたのかもしれませんが、あまりに差がひどい、冷遇されておるというように考えるのであります。中小企業なんかも、もちろん地方にある信用保証協会に県や市が出資いたしております。そうしてそれの何倍を保証するということになっておりますが、漁業の方は関係者が非常にたくさんの出資をしておる。これはもっと国の方の出資でも多くしてやるということをすれば、三倍なんということでなしに、五倍も六倍も現実に保証ができるということになって、金利面も安くなるということになると思うのです。政府の方ではそういう意図はないのですか。ただ自然お前たち力がついたらよくなるだろう、そのように指導いたしますじゃ、まことに人のすることで政府はいい顔をしようというふうにしかとれませんが、いかがですか。
  132. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 政府といたしましては、特別会計の徴収いたします保証料の引き下げという方角において検討をいたすべきではないか、かように考える次第でございます。個々の基金協会にまで政府の出資を考えるというところまでは、現在においてはまだ踏み切っておらない次第でございます。しかしながら私は、問題は、信用保証を受けないでも資金が貸し付け得るというふうな体制を作っていくということを、一方において強力に進めなければならぬと存ずるのでございまして、そういう意味におきまして、先ほども申し上げましたように、漁業協同組合の育成、特に新しい再建整備という問題を、今後ぜひとも解決していかなければならないのではないか、かように努力をいたしておる次第でございます。
  133. 石村英雄

    ○石村分科員 それでは大へんいいお話ですから、お手並みを拝見することにいたしまして、時間がありませんから、次の問題に移りたいと思うのですが、それは非補助の小団地に対する土地改良の事業助成基金の関係ですが、私は山村が非常に困っておると先ほど申しましたが、山村における土地の問題、この土地改良はきわめて緊要ではないかと思うのです。これはいずれも二十町以上というようにまとまってはおりません。みんな二十町以下の小さなところばかりですが、しかしこれが非常に湿潤で、米のできも悪い、麦ももちろんできない、こういう状況なんですが、この小団地、まあ政府もそれに対して昨年は基金六十五億出して、その利子によって、公庫の金利を一分五厘下げる、こういう方針をとられたのであります。そのことは、不十分とはいえ一つの方法だとは思いますが、ところが三十三年度にいたしましても、六十五億の出資によってその運用益が、三十三年度の予定では二億七千三百何ぼあって、実際の一分五厘の金利引き下げに充当するのは四千五百万円、二億七千万円も利益をあげて、実際には四千五百万円しか引き下げに充てない。三十四年度計画を見ましても、基金が六十七億二千八百万円になっておりますが、その運用益が四億三百七十一万円、四億から運用益が上っておるにもかかわらず、一分五厘ほど引き下げる、三分五厘にするための金は九千五百八十六万円、これが予算書に出ておる数字でありますが、なぜ、四億の運用益があるなら、こういう最も恵まれぬ山村の、しかも経済効果の最も高い小団地の土地改良を促進するために、四億の金を全部つぎ込まないのですか。その四分の一しか使わない。これでは、去年の通常国会にあの経済基盤の法律は最初出たわけですが、私は当時大蔵委員でその審議に加わりましたが、われわれしろうとの判断で、六十五億の運用益、それから上る利子は、全部この非補助の小団地の土地改良事業のための金利引き下げに回されるものと——実際の運用においては少々の剰余金が出るかもしれない。その剰余金はもちろん基金の方へ回すということは法律でできておるわけですが、制度の趣旨からいえば、基金から上る金は全部金利引き下げに使われるもの、こう実は即断いたしておったのでございます。ところが実際は、今数字をあげて申しますように、三十四年度では基金の利益から、利益の四分の一足らずしか充てんしない、これはどういうわけなんですか。
  134. 伊東正義

    ○伊東政府委員 御質問でございますが、ことしは、三十三年度は予算でも二十七億五千万というものを対象にいたしまして、利子補給一分五厘を下げまして三分五厘にするということで、予算で二十七億五千万でございます。これは三十三年でございます。来年度はそれが六十三億ということになるのでございますが、これは基金を取りくずす、これは初年度から相当多額なものに利子補給をして参りますと、基金の取りくずしということが非常に早く行われまして、結局ねらいましたある一定期間これで一分五厘の利子補給をしていくという制度がくずれて参りますので、われわれとしましては、計画的にこの制度を運用している面から考えまして、三十三年度は二十七億五千万、三十四年度はこれを広げまして六十三億というものを対象にいたしまして、利子補給をするということを考えたわけでございます。
  135. 石村英雄

    ○石村分科員 時間がありませんから、簡単にやっていきたいと思うのですが、つまり利子補てんに全部この基金の運用益を充当すると、そのうち貸倒れが出て参るだろう、そうなると基金をくずさなければならぬ、そういう考えで利子補てんを少くしていく、こういうことなんですか。
  136. 伊東正義

    ○伊東政府委員 貸し倒れということではございませんで、毎年、対象にしてこの融資をいたしていくのでございますが、これが当年度から非常な大きな融資をいたしますと、これはしり細りになりますから、期間として長く持ちませんで、ある期間が来ますと、融資の対象になる金額が減ってしまうというようなことになりますので、われわれは大体ことしの計算で参りますと、六十三億というものをべースにして考えますと、約十年間はこの基金を取りくずさぬで、それから出てきます運用益で一分五厘の利子補給をやっていくというような計画でやっております。
  137. 石村英雄

    ○石村分科員 ちょっとしろうとにはわからないのですが、六十五億の基金の利益を利子補てんに充てる、こういうのでしょう。これがしり細りになるというのは、六十五億が少くなるというのは、どういうわけですか。
  138. 伊東正義

    ○伊東政府委員 これはたとえばことし二十七億やりまして、これが償還期限がだいぶ長いのでございます。来年は六十三億でございますが、これが加算されまして、その分だけ毎年々々利子補給をしていくわけになりますので、ある期限が来ますと、運用益ではこの一分五厘がまかない切れなくなる、元金まで食い込まれてしまうということになりますので、われわれとしましては、基金の取りくずしということをなるべく避けまして、ある期間は取りくずさないで、その中で計画的に利子補給をやっていきたいということを考えておるわけでございます。
  139. 石村英雄

    ○石村分科員 大体その点はわかりましたが、そうすると、ちょっとさっきお話になりましたが、何年ぐらいの計画ですか。
  140. 伊東正義

    ○伊東政府委員 今の計画では、来年六十三億ということを申し上げたのでございますが、そういうべースで参りますと、九年ないし十年ぐらいで基金に一応食い込むというような形になるわけです。
  141. 石村英雄

    ○石村分科員 こうしたことは、結局こういう山村の——山村とは限らぬわけでしょうが、私は主として山村だと思うのですが、山村の、しかも大部分の非補助の小団地の土地改良というものを、早くやらなければならぬという観点から考えれば、いつまでも六十五億のこの出資しかやらぬということでなしに、早く使ってしまって、また次は次で資金を出したらどうなんです。大蔵省のあの国の予算か何かをいつか見ましたが、いろいろ経済効果の判定が土地改良についてありますが、大蔵省の土地改良の経済効果の一番上っておるのも、こういう小さなところなのです。大きなところよりも、経済効果はこの方が大きい。また個々の小さな零細農家の生活水準を上げるということから考えれば、これはもっとどんどんやるべきだと私は考える。ほかの水のありもせぬようなところへ干拓なんかやるよりは、この方へもっと金を重点的に使う方が効果的だと思う。先ほど冒頭に私はあまりに商品製産に重点を置かれておるというようなことを申しましたが、こういうことをしっかりやらなければ、結局農林省のやることは、三割農政だということにならざるを得ないと思う。大臣どうですか。もっと勇ましく、非補助の小団地の改良を急速に完成するというお考えはありませんか。
  142. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 スピード・アップしまして中小団地を早くやるということは、趣旨として賛成でございます。ただ現在三分五厘の低利資金をもってやらせるというためには、一つには、事業の分量が、ことしは六十三億で、飛躍した相当大きい分量でございますが、これは累増していくのです。ですから、ことしの分だけ六十三億程度では非常にスケールが小さいとおっしゃるのですけれども、これは二年、三年になると相当大きくなります。従って効果を上げると思うのです。同時にまた、ピークになったときに利子補給もできない、そこでお手上げということも、計画的なことではございませんので、それらをにらんで運用しておるのでございまして、おおむねこれによって相当の効果を上げ得ると考えております。
  143. 石村英雄

    ○石村分科員 それは農林大臣が、ただいま六十五億を一ぺん出したら、あとは追加も何も考えぬ、一生これを後生大事にかかえておるという考えですから、さっき答弁があったように、九年間にこれをやる。この六十五億をまた来年もやるというようにすれば、そう心配することはない。大体農林大臣は、何でも今度の予算では、五十億案外よけいきてどうしようかと困られたそうですが、実にそういう考えですものね。二十八年のあの目的別に見た予算の農林漁業費でしたか、産業経済費のあの中は、八百三十四億か何ぼかあった。ことしは幾らになるか、計算しなければわからぬ。しろうとにはできませんが、三十三年度は四百五十億で、二十八年の半分余りになってしまった。この四百五十億も六十五億が入っての話ですが、こういうように二十八年度程度の産業経済費の中の農林水産費をふやさないところで、二十八年の水準を維持するというお考えを農林大臣が持っていらっしゃるならば、六十五億は毎年でも幾らでも出ます。四百五十億とか五百億とか、二十八年よりもうんと少いので、さあそれが少しふえた、どうしようかというようなけちなお考えだから、そんなことになる。ほんとうに日本の困っている農民、生活が困難である農民を何とかしなければならぬという考えならば、二十八年程度の農林水産費を出したらどうですか。ただ額面の農林省の予算が千億をこしたとかなんとかいっておる。あんな目的別に整理した金額は幾らです。三十四年度おそらく私は五百億程度だと思う。大体農林大臣は、冒頭にはあなたのおっしゃることは大へんいいことをおっしゃったのですけれども、具体的にはどうも非常に小心だと思うのです。三十四年度予算は政府とすれば今さらどうもしょうがないと思いますが、今後二十八年程度に復活するというくらいの意気込みはないわけですか。
  144. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 今の六十五億の基金をどうするかということで、石村さんの財政計画だと、一ぺんに使ってしまって拡大せい、こういうことでございますが、それはそれとしまして、この運用によって、最高限度までこれを利用していきたいという考えであります。それから予算のワクでございますが、これは農林省は多々ますます弁ずでございまして、私の努力の及ばざるところに御非難がございましたが、これは今後も努力しなければならぬと思います。同時に、将来の農業政策の行き方でございますが、だんだん農業生産は絶対量は高まっていくけれども、他産業の関係から見ますと、だんだん格差が出てきておる、こういうことでございまして、基本的ないろんな問題と取り組まなければなりませんが、国家投資といいますか、財政支出といいますか、これは相当に拡大してやりませんと、日本の農業の地位というのは非常に落ちるものでございますから、われわれとしましては、決して逃げるわけではございませんが、基本的な調査等もいたしまして、それに対応して、将来は相当拡大した国家投資等によって、農業の育成と強化をはかって参りたい、こういう所存でございます。
  145. 石村英雄

    ○石村分科員 これでやめますが、とにかくせめて二十八年程度くらいの農林水産費を出すという意気込みで、大臣は一つやっていただきたいと思います。
  146. 大平正芳

  147. 井手以誠

    井手分科員 農林関係で二、三点お伺いをいたします。  最初の二点は開拓資金の問題、あとは食糧の関係。まず三十二年度の災害について、開拓者に幾らの融資がきまったのか、今日それがどのくらい決定されたか、事務当局でよろしいのですが。
  148. 伊東正義

    ○伊東政府委員 天災融資関係で一応三十三年度に割り当てましたのは、約十二億でございます。これに対しまして、現実に決定いたしましたのは約一億七千万くらいでございます。
  149. 井手以誠

    井手分科員 一億七千万円きまったものは、それは何県分で、その融資のワクは、幾らのうちで一億七千万円になったのか、その点をお願いします。
  150. 伊東正義

    ○伊東政府委員 県名で申し上げますと、出ましたのが、東北で福島県でございます。それから関東に参りまして、茨城県、栃木県、群馬県、それから山梨県、静岡県、岐阜県、兵庫県、島根県、岡山県、福岡県、佐賀県、長崎県、大分県でございます。  今申し上げました県の割当と、大体決定しました額を申し上げます。福島県の割当は……。
  151. 井手以誠

    井手分科員 いや、総計でいいのです。
  152. 伊東正義

    ○伊東政府委員 総計で申しますと、出ました総計は一億七千六百万円でございまして、今の県だけを拾いますと、割当の県は、ちょっと今計算しますから、後ほど御答弁申し上げます。
  153. 小坂善太郎

    ○小坂分科員 畜産局長がお見えになりましたので、その間に先ほどの続きを伺いたいと思いますが、先ほど私は、酪農振興の根本の問題として、生乳の買い上げ基準になっている、脂肪率で三・二%ということになっておるのを、私の気持としては、もう少し引き下げたらどうかという気持で御質問していたのですが、この三・二%というものをきめた基準は、どういうことになっているのですか。
  154. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 農家が生乳の生産をいたしまして、その買手方でありますものと売買取引をいたします場合に、脂肪率によりまする取引が一般的な慣習になっていることは事実であります。その一般的慣習になっておりまする脂肪率の基準は、三・二%になっておるのがまた一般であります。これは法律または行政官庁がきめたのではございませんで、売買当事者が自由売買契約によって取引しております場合の慣習的なものになっておるわけであります。  一応私どもが特別な意思を表明しておりませんところと、その他の事情等をもって目下理解をしておるところを申し上げますと、日本の酪農は、市乳、すなわち比較的大きい消費地を中心にしました飲用牛乳を中心に明治初年以降発達しまして、これにまた比較的適したホルスタインという種類の乳牛が、日本には多いわけでございます。最近におきまするホルスタインという種類の乳牛の平均脂肪率が三・二%でありますことから、商慣習が出てきておると思います。ただし、最近北海道その他におきまして、あるいは試験的に国におきましても、乳牛の経済能力検定といいまして、飼料の給与の仕方と牛乳の生産量及び牛乳の品質というものとの関係を、なるべく経済能力を発揮するように見きわめまして、生産指導をすることをやっておりますが、この事業は、来年度からは予算をもちまして、県の事業としてかなり広く実施するようにいたしております。今までやりました施策によりますと、最近におきますホルスタイン種乳牛の生産する牛乳の平均脂肪率とおおむね認められまするものは、各種の努力改良の結果、三・二を少しは上回って三・三強くらいであります。ただしこれは少数の事例であります。他方、それでは産業政策としてでなしに、何か法律に基き、または行政官庁がタッチしたもので、そういう脂肪率に関しまして、生乳あるいは牛乳は三・二%が基準である、こういうことがあるかないかという点でございますが、これは、厚生省の食品衛生法の見地からいたしまして、飲用牛乳として販売するものは、脂肪率が三・二%以上ということが出ておる次第でございます。  なお、脂肪率に関しまする取引の一般的商慣習による基準と申しましたが、生乳の取引をいたします場合、乳価の支払いは、たとえば脂肪率が上下に〇・一%ずつ違いますと、その差に応じまして、同じ一合なら一合、一升、あるいは一グラム、一キログラム単位当りについて、脂肪率の差で価格の差をつけるようになっておるのが、通例の慣習になっておるのであります。乳価がある程度上下しましたり、取引当事者間の申し合せ、契約の締結条件によりましてはそうでない場合もありますが、ごくまれな例であると了解をいたしておる次第であります。
  155. 小坂善太郎

    ○小坂分科員 お話はわかりましたが、お話の中に、明治以来の商慣習で、三・二%という脂肪が基準になっておるということがございましたが、最近に至るまで、酪農というものは、いわゆる牛乳屋さんというのが市の近在にあって、ちょうど小鳥でも飼うように、えさをやり、また濃厚飼料を与えてやっておった。その結果が脂肪率三・二というものになってきたのだろうと思う。最近酪農を奨励するという見地から、できるだけ農家に牛を持たせるということになりますと、農家がやっていくためには、どうしても草地を持って濃厚飼料をできるだけ少くしてやっていくということにならないと、牛の寿命にも関係しますし、コストが高くなるわけであります。そこで、そういうふうに酪農を非常に奨励されて、今までの牛を飼うというやり方農家経営一つの単位に入ってきたというこの事態で見ますと、やはり従来の明治以来の慣習というものは、農林省が指導しておやりになって、もう少し農家経営が行き立つように改めさせるということが必要じゃないかと私は思う。厚生省の方の基準で三・二%ということになっておるというお話がありましたが、実は私も厚生省の方に聞いてみた。環境衛生部長の申しますには、厚生省はそういうことはないので、農林省の方の酪農の取引の基準に三・二%というものがあるので、これは別に科学的な根拠も何もないのだということであった。牛乳というものは、脂肪だけが養分じゃなくて、動物性蛋白が大きな栄養源になっておるのだから、牛乳が安いとか高いとかを論ずる前に、この脂肪についての判断を若干変えることによって、酪農農家がずっと利益するのではないかというふうに私は考えるに至ったので、この点も先ほど大臣にも質問したところが、それはやはり新事態に即するように全般的に考えようというお話があったのであります。今の安田局長のお話は、商慣習としてあるのだというお話でしたが、酪農というものを、やはり政府として大きく取り上げて農林省が指導される——予算書の中にも生乳の品質改善事業を引き続き五十二カ所について実施するというふうに、品質改善ということもあなたの方ではうたっておられる、指導監督するという立場をはっきりとっておられるのだから、こういうことは、一つ農林省として、酪農農家も行き立つように、根本の基準を変えてやるということをお考えになる必要があるんじゃないかと思うのです。いろいろな補助金を出すとかなんとかいうことよりも、無理な高い飼料を買ってやらなくても、牛を飼う農家が自然に行き立つようなやり方考えてやるというふうに御指導になるお考えはないか、私はぜひそういうふうにしていただきたいと思う。
  156. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 結論を先に申し上げますと、小坂先生のもって基調としておられるお考えは、その通りに私どもも思いまして、今後これを具体的施策において、制度または予算等を通じましてどうやっていくかということを研究して、来年度からは、本年度までやっておること以上につけ加えて努力するように費用も計上しておるのでありますが、なお一そう研究するつもりでございます。ただ先ほど私が申しました、市乳中心に日本の酪農が発達したと申しましたことは、小坂先生がお受け取り下さったことと意味が違いまして、日本の乳牛が大部分ホルスタイン種であるということで、市乳中心に発達したのだ、飲用牛乳にはホルスタイン種の牛乳が割合適したために、牛乳が昔から三・二%の平均脂肪率であったというのではございませんで、最近の平均脂肪率が三・二であったのが、商慣習にとられておると了解しておるということでございます。私どもの続けておる研究では、それがかなり上昇をしてきつつあるわけであります。  それから第二は、環境衛生部長が言ったと一応おっしゃいましたが、その通りでございましたら、環境衛生部長が間違いだと思います。明らかに食品衛生法の衛生上、消費者に向って販売をする場合の飲用牛乳という——簡単に例を申しますと、一合びんへ詰めて、低温殺菌して、冷蔵して売る場合の規格を衛生上からきめておりまして、脂肪率は三・二%以上としておるようであります。私ども農林省はそういうものがいいとか悪いとか言ったことはございません。統計調査上、牛乳生産量とか乳牛の調査上の基準にとったことはあるようであります。取引は目下脂肪率をバブコック法というので検査して、売買の当事者が抜き取り検査したところで判定して、脂肪率の差に応じまして、三・二%を基準にしました乳価をもとにしまして、取引価格を上下させておる、そういう慣習であると申し上げたのでございますが、本来牛乳は単に脂肪ばかりでありませんで、中の固形物でありますとか、灰分でありますとか、特にカルシウム等は他にないようなもの、乳糖等も貴重なものでありまして、取引の基準にするならば、他の栄養内容と申しますか、牛乳の中の構成要素の内容も、取引基準にする場合には、その規格で取引されることが望ましいと思っております。農産物の規格法というのがございまして、取引の基準を奨励的にきめていく法律でございますが、その中に入れます際には、お話の点をよく研究しまして、早くそういうことが実現して取引がリードできるようにしたいと思います。また次に、たとえばニュージャージー種の乳牛は、一頭当り泌乳量は少いのですが、脂肪率がホルスタイン種の乳牛のものよりも高いのでございまして、この脂肪率が高いときは、脂肪率の差に応じて乳価を変える、すなわち脂肪率が高いときは、高い容量または重量当りの乳価にすることを指導して、表面の脂肪率を抜きにした重量または容量の乳価というものをもって一律に実施することはできないことは、業界との話し合いで指導いたしておる次第であります。
  157. 小坂善太郎

    ○小坂分科員 ではけっこうですが、私は実はちゃんと聞いたことを言っておるのでございますから、一つ厚生省と至急にお話し合い下さって、今のお話の趣旨で、農産物の規格法というものに至急入れるということはけっこうですが、とにかくそれが旧来の基準に縛られて、新しい営農方法がうまくいかないような場合がありますので、どうかそういうものをできるだけ除くように御配慮願いたいと思います。
  158. 井手以誠

    井手分科員 三十三年度の開拓者に対する災害資金で、今日まできまった分は幾つの県で、その融資のワクの額と決定の額と、総額だけでけっこうですから、お示しいただきたい。
  159. 伊東正義

    ○伊東政府委員 先ほど県数を申し上げましたが、県数を先ほど読み上げました県は十四県でありましたが、ちょっと間違っておりまして、きまりましたのは九県でございます。金額は、先ほどのその九県で決定いたしましたのは一億七千六百万円でございます。先ほどの通りでございます。その県に割り当てました金額でございますが、これは二度にわたっております。三月から五月までの災害と、それからあとの九月までの災害というふうに、二回にわたっております。第一回の災害の割当が今の九県で三億二千万円であります。その三億二千万円のうち一億七千六百万円だと御了解願えればいいと思います。二度目の割当は十二月にやったのでございますが、これは時期的におそいのでございます。これを今の九県分三億二千万円にプラスして考えますと、九県だけで五億七千六百万円という金額でございます。
  160. 井手以誠

    井手分科員 第二回の融資の決定はまだしていないのですか。
  161. 伊東正義

    ○伊東政府委員 まだでございます。
  162. 井手以誠

    井手分科員 災害を受けた県は三十一県だと思っております。総額は先刻お話のように十二億。昨年の春の災害の資金に対して、どうしてこんなにおくれますか。災害資金というものは、非常に急を要することは申すまでもありません。どうしてこんなふうにおくれておりますか。
  163. 伊東正義

    ○伊東政府委員 割当は先ほど申し上げたように、二度にわたって始めております。最初の分が、五億でございます。この五億に対しまして、今申しました一億七千六百万円が決定したのであります。この事情でございますが、これは実は金融機関等といろいろ折衝もし、われわれも現地に行っておるのでございますが、若干考え方に違いました点がございまして、実はおくれた点がございます。それは金融機関の考え方といたしまして、この天災の融資をします際に、ところによりましては、今までの負債があるところには貸さぬ、全部負債を償還してくれ、その上で貸すというようなところもございます。また御承知のように開拓営農振興臨時措置法で振興計画を作っておるのですが、これを変更をして、個々の農家について改善計画を作っておりますのを変更してほしいという話があったことでございます。またそのほかに国の債権がございます。国の債権につきまして、履行延期ということをはっきり知事なり何なりが確認してほしいというようなことを言われたところもございます。そのほか償還計画をはっきりしてほしい、開拓農協でありますので、系統利用を百パーセントやってほしいというように、地方によりまして若干ニュアンスがありますが、そういうことが金融機関から話が出まして、そういう関係でおくれたところがだいぶございます。われわれとしましては、これにつきまして、実は現地にも金融機関とわれわれも一緒に参りまして、たとえば政府の債権の履行延期の問題につきましては、これは来年度の予算にも相当程度考えておるので、これは手続をとったというだけでいいのではないか、再確認をして国がオーケーを言うまで貸さぬというのではなくて、手続をとったということだけでいいのではないかというようなことを話したこともございます。また滞っております債権につきましても、たとえば先日御審議願いました開拓融資保証法で保証いたしておりますような債権もございます。こういうものが滞っておりましても、これは保証しておるのだから、それはそれとしてこちらで貸していいのではないかというようなことを話しまして、最近に至りまして、実は今申しましたように数県につきましては金が出ましたということがございますので、われわれとしましては、今後とも金融機関と十分話し合いまして、なるべく早く来年の肥料その他営農に支障のないようにしまして、今せっかく努力いたしておるところであります。
  164. 井手以誠

    井手分科員 災害資金が急を要することは申すまでもありませんが、いつごろまでにおきめになるつもりですか。今もお話のように、肥料の手当その他があるはずですが、昨年の春のものが、今日まで九県三億二千万円のワクに対して一億七千六百万円しか決定していない。あとのものはいつごろまでにおきめになるのですか。精一ぱい最大限いつごろまでにおきめになるつもりですか。
  165. 伊東正義

    ○伊東政府委員 これは実は昨年の三、五月それから九月のものもございます。われわれとしましては、年度内には何とかある程度のものを解決したい。これは昨年も、年度内に決定いたしましたものはたしか約八割くらいでございます。われわれは、三月一ぱいまでにはある程度のものは何とか解決したいということで、今金融機関その他と話し合っております。
  166. 井手以誠

    井手分科員 それは十二億のワクに対して、三月一ぱいにはほとんど解決をしたい、かようなことでございますか。
  167. 伊東正義

    ○伊東政府委員 何割までということは申し上げかねますが、われわれとしましては、極力割当に近いものが貸し出されるというようなことに、結果としてなりますように努力いたしたいと思っております。
  168. 井手以誠

    井手分科員 九県分三億二千万円に対して一億七千六百万円では、五割近くしか融資は決定しておりません。十二億という総ワクは、地方から積み上げたものを査定した最小限度のワクであると私は心得ておりますが、そのワクに対してすら、五割近くしか今まで決定したものはないのでありますが、それはどういうわけですか。
  169. 伊東正義

    ○伊東政府委員 これは先ほど申し上げましたように、この問題は、昨年の十二月ごろから実は問題になったのでございます。われわれとしましては、実は八月から現地にも出ましたりして、いろいろ努力いたしておるところでございます。三億という割当に対して一億七千万じゃないかというお話でございますが、これは今申し上げました、たとえば延滞になっております債務の問題とか、あるいはその債権管理の問題とかいろいろございまして、そういう事情になっておりますので、その件については、それしか出ないのだというふうにはわれわれ考えませんで、今後とも、もっと融資が円滑にいくように折衝したいというふうに考えております。     〔大平主査退席、石村主査代理着席〕
  170. 井手以誠

    井手分科員 そういうふうにやかましい中金を、どうして指定なさったのですか。ほかの資金を用意なさるお考えはなかったのですか。
  171. 伊東正義

    ○伊東政府委員 われわれとしましては、この金融につきまして系統機関ということを考えまして、中金、それから信連というところもございます。これはどちらでもいいようになっております。そういう形でやっております。
  172. 井手以誠

    井手分科員 先刻も中金の問題でお話がございましたが、中金についてはとかくの批判がある。私は中金のやり方に対しては、何年をつぶしても民主化のために主張したいと思っております。きょうはその点に触れませんけれども開拓地がどんなに困っておるかは御承知の通りであります。にっちもさっちもいかぬ状態にあるのに、災害資金がまだきまっておらない。しかもきまったものは五割そこそこだ。私はこんなことで済まされぬと思うのです。三億二千万に対してきまったものが一億七千六百万円、そうすると、残額は別途お考えなさるつもりでございますか。
  173. 伊東正義

    ○伊東政府委員 これは個々の開拓農協の問題でございますので、三億割り当てまして、現実にきまったものは一億七千六百万円でありますが、それ以上は全然出ぬというふうには考えておりません。その農協個々につきまして、まで貸し出す余力がある、たとえば債務保証をいたしております債務が、履行されたということがその後出てくるところも当然ございますし、一億七千六百万円でとまるのじゃなくて、まだほかにも割当の範囲内である程度は極力出してもらうように考えております。
  174. 井手以誠

    井手分科員 一億七千六百万がきまるまでには、かなり厳格な審査があったと思う。その上にきまったことでありますから、ちょっと考えると、残額は、簡単に見込みがあるとは思えないのでありますが、それでは、あなたの方では相当あるとお考えですか。
  175. 伊東正義

    ○伊東政府委員 一億七千六百万が決定いたしましたのは、実はわれわれが現地に参りましたりなんかするより前のものが、大部分でございます。その後交渉いたしまして、国の債権の履行の延期の問題でありますとか、あるいは債務保証の問題でありますとか、あるいは改善計画についての変更の便宜的な話し合い、そういうことをいたしておりますので、それだけにとどまるというふうには考えておりませんので、われわれとしましては、そのワクの範囲内でもっと融資をしてほしいということを話しておる次第でございます。
  176. 井手以誠

    井手分科員 中金に対する交渉、これは個別の、あるいは組合等を中心としての交渉では、なかなか簡単にはさばけぬと思うのですが、それでは結局、話し合いができなかったものについては別途考慮をして、十二億円に達するようにあなたの方ではお考えなさるつもりでございますか。
  177. 伊東正義

    ○伊東政府委員 この割当が全部消化するかどうかの問題でございますが、先ほど申し上げましたように、昨年も割当全部消化はいたしておりません。これはその後の事情で、ほかの資金で間に合うということも出て参りましょうし、また今われわれとしましては、このほかに自作農資金等も相当大幅に考えておりますので、そういうお金、あるいはほかの総合農協から金を借りるというようなこともございましょうし、全部消化しなければ営農に絶対支障があるというところまでは、言えぬじゃなかろうかと思います。われわれとしましては、なるべく開拓農家が困りませんように、極力そういうワクに近いところまでは融資ができるように、何とか中金なり信連と話し合いをしていきたいと考えておる次第でございます。
  178. 井手以誠

    井手分科員 中金に話しても、もうあまり見込みはないじゃございませんか。そういう条件のうるさいところに災害資金を指定することが間違っておりはせぬかと思うのですが、その点についてはどうお考えですか。
  179. 伊東正義

    ○伊東政府委員 中金と話し合いをいたしまして、その話し合いの直後にまた出たようなところもございます。なるべく条件を緩和してほしいということを話しまして、ある程度話がついたところもございますので、われわれは現在のところは、この天災資金につきましても、やはり系統機関を通じて考えていくのが一番いいんじゃなかろうかと考えておりますが、将来の問題としまして、中金、公庫、あるいは特別会計、いろいろい金融をいたしておるわけでございますので、この三者で、どうしたら一番いいかということを、天災資金につきましても検討はいたしたいと思っております。
  180. 井手以誠

    井手分科員 石坂政務次官がお見えでありますので、政務次官にお尋ねをいたしますが、昨年の開拓地の災害に対して、災害資金を十二億きめられておる。ところが、なかなか交渉がさばけぬで、今日まできまったものが、三十一県十二億のうち、九県分三億二千万円のワクに対して、一億七千六百万円しかきまっていない。災害資金が非常に急を要することは、政務次官も十分御承知だと思っておりますが、このように資金の融通がおくれ、また、きまったものも、ワクの五割そこそこしか決定をしていない。私はこういう災害資金であってはならぬと考えるのであります。十二億という総ワクも、これは各県から積み上げた、そうして厳重に査定されたぎりぎり必要な金額であると心得ておるのであります。ただいま農地局長は、ほかに自作農資金もある、あれもあるとおっしゃいますけれども、それも無制限にあるものじゃなくて、自作農資金だって、各町村に二件か三件しか回らないものである。災害資金として絶対に十二億は必要だというのできめられている金額である。それが今日までなかなかきまらないし、きまったものも予定の半分にしか達してない。こういうことは、結局中金のやり方が非民主的であり、条件がむずかしいからだということが、はっきりしておるのでありますが、この際一つこの災害資金は、別途の政府資金に切りかえられるお考えはございませんか。その点が一つ。第二には、せっかくきまった十二億でございますので、いつごろまでに——一銭も違わないようにとは申し上げませんけどれも、十二億のうちの大部分は、やはり早急に決定してもらわなくてはならぬわけでありますから、その辺のあなたの方の決意を、何月ごろまでには必ずこの程度は私の方で確信を持ってやれます、こういうことを一つこの際政務次官からお答えを願いたいと思います。
  181. 石坂繁

    ○石坂政府委員 井手委員の御説の通りに、災害資金はきわめて急を要する問題であり、またできるだけ要望の線に沿うような金額であることが望ましいことは言を待たないのであります。しかるにただいま御指摘通りに、積み上げた総額十二億、しかもそれもまだ全額きまらず、のみならず五割程度しかきまっておらぬじゃないか。現実の状態は被災者に対しまして私どももまことに気の毒に存じております。そこで井手委員の第一の質問でありますが、中金を相手にしておっては、どうも早急にいかないから、他の政府資金を回したらどうかという御質疑のようでありますが、この点はいろいろ検討を要する点もございまして、これはなかなか困難な問題だと思います。  第二の、大部分を早急に決定して支出するように、ついては何月何日までどの程度出すようになるか、決意を問うという御質問であります。この点につきましては、先ほどから農地局長が今までの実績などを御説明申し上げまして、ぜひともこの年度内に相当率の決定を見るように極力努力いたします、こういう趣旨をお答えいたしておるのであります。実はここで何月何日までどの程度ということをはっきり申し上げることができれば、井手さんもある程度御満足であろうかと思いますけれども、先ほどから農地局長が申しております通りに、年度内にできるだけ決定するように十分の努力をいたします。これだけ申し上げておきます。
  182. 井手以誠

    井手分科員 まじめな政務次官のお言葉でございますので、私は信頼いたしたいと思っております。ぜひ三月一ぱいには、年度内には大部分が融資できるように一つ格段の御努力を願いたいと思っております。  もう一点お伺いしておきたいのは、こういう中金のやり方でございますから、今まできまったのはワクに対して半額そこそこ、そういうことを考えますれば、簡単にワクの全額に近いものが融資できるとは、甘くは見られないと思っております。あなたの方は努力されても、そんなむずかしい条件の中金でありますれば、私は条件の悪い、担保力の少い開拓農家に対する融資交渉は、簡単に進まないと思うのです。そういう事情で、大部分は済ませるということでありますけれども、済まなかった場合は、別の資金に乗りかえられるお考えがございますかどうか、この点を念を押しておきたいと思います。
  183. 石坂繁

    ○石坂政府委員 済まなかった場合のことにつきましては、なお数字関係もあり、事務的の折衝の段階もあろうと思いますので、一応農地局長から答弁させます。
  184. 伊東正義

    ○伊東政府委員 われわれみな最善の努力をいたすつもりでありますが、済まない場合に、それじゃ営農に支障を来たすかどうかという問題でございます。われわれはその点は十分注意いたしまして、開拓者の人がこれからの春の営農に支障がありませんように、この処置だけでなくて、いろいろ金融面その他で十分な手を考えていきたい、努力をいたすつもりでございます。     〔石村主査代理退席、大平主査着席〕
  185. 井手以誠

    井手分科員 もっと確かめたいのですが、時間の関係がありますし、政務次官や局長を信頼してこの程度にとどめておきたいと思いますが、国会は五月二日まであることになっております。なおお伺いする機会も何回もあろうかと思います。一つ会期中には解決を見るように格段の努力をお願いいたしておきます。  次にお伺いいたしますのは、先刻局長が答弁の中で触れられましたように、開拓資金に対する履行延期の問題であります。その前にお伺いしておきますが、ことしの三十四年度の開拓資金の融通予算は幾らでございますか。償還分だけでいいです。
  186. 伊東正義

    ○伊東政府委員 償還分は三十四年は九億八千七百万予定しております。三十三年度が十三億九千、約十四億でございます。
  187. 井手以誠

    井手分科員 この回収がなかなか困難だというので、この割合を引き下げられたことはけっこうでございます。これは各委員会で要望されたことをいれられまして、緩和されたことは私も敬意を表しますが、しかし従来の実績によりますと、償還された実績は六億程度であります。従来は十一億とか十四億とかいわれておったけれども、いかに督促をいたしましても、六億が限度になっておるようであります。それほど苦しいのです。苦しいことがある以上は、この前、昨年の分科会でも申し上げましたので、私は今日は申し上げませんが、たとい昨年より四億円以上減らしましても、六億が限度であるとするならば、そこに四億ばかりの金が赤字になるではないか、せっかく立てられた融通計画もここにそごを来たすではないか、こういう点を私は懸念いたしておりますが、その点についてのお考え計画を伺いたい。
  188. 伊東正義

    ○伊東政府委員 今先生御指摘のように、償還の問題でございますが、償還の率をわれわれ検討して参りますと、三十年ごろは六〇%台であったのでございますが、三十一年、二年と落ちて参りまして、五〇、四〇、おそらく三十三年は三十数%ということになろうかと思います。それで昨年の予算は、実は七〇%くらいは返ってくるであろうということで、三十三年は踏んだのでございますが、私どもは過去の率から見まして、三〇%くらいが実情にあるのではなかろうかということで、一応予算の計上をいたしまして、実情に合うものに持っていきたいということで、実は計上したわけでございます。
  189. 井手以誠

    井手分科員 実情に合うように償還金の収入を少く見積られたという考えはわかりますが、私は六億程度限界であると思う。今のお話のように三〇%程度しか償還できないであろうということから考えますと、九億八千七百万円を計画した融資計画というものは、狂ってくるわけであります。そうなりますと、そこに四億以上の金が開拓者には融通できないという結果になりますが、それはすでにあなたの方では織り込み済みでありますか、織り込み済みのために、片一方の二十八億円という借入金をお考えになったわけですか。
  190. 伊東正義

    ○伊東政府委員 今の三〇%でございますが、ここに先ほど申し上げました九億八千七百万というのは、三十四年度の調定になります十三億については、たとえば三〇%しかあるいは償還ないかもしれぬという率で計算をしました結果が、九億八千七百万ということになってきたわけでございます。大体過去の率からいたしまして、われわれはこの三〇%の率であればそう問題にならぬ、現実と離れるという率ではないんじゃなかろうかということから、三〇ということで計算しました金額が、九億八千七百万であります。
  191. 井手以誠

    井手分科員 三十四年度到来の償還分三〇%、これはわかります。しかしその分については、四億程度の金でありまして、そのほかになお三十二年度の償還分、あるいは三十一年度に到来した償還分、これが入っているわけですから、これが簡単に、三十四年度三〇%同様に私は入るとは思わないのです。もちろんあなたの方では全部三〇%で見てはないようでありますけれども、私は三十一年度、三十二年度、三十三年度に到来して延納されたものを、二〇%とか一〇%とか見られるその数字に狂いが出てくるんじゃないかと考えますが、その点はあなたは確信ございますか。
  192. 伊東正義

    ○伊東政府委員 今の数字井手先生がおっしゃいましたように、過去のもので、たとえば一〇%入ってくるだろう、あるいは三〇%というような、いろいろ計算基礎はあります。三〇%と私申しましたのは、大体でございまして、年度によって若干率は違っております。われわれの考え方といたしましては片方では昨年三十三年度と比べまして、預金部資金からの借り入れは十八億を二十八億ということにして、極力貸し付ける方につきましては考えていこう、振興資金につきましては、昨年は確か十八億でございましたが、ことし二十三億ということで、貸付のワクはかなり大幅に片方ではふやしました。それと同時にわれわれ考えておりますのは、履行の延期につきましても、国の債権の管理等に関する法律を弾力的に運用しまして、どうしても返せぬ、延期してほしいという人につきましては、この法律を弾力的に適用して延期をしていくということをやりまして、返せる人については、一つこの程度のものは期待したいということで、予算の計上をしたわけであります。
  193. 井手以誠

    井手分科員 なかなか見込みは困難だけれども、期待はいたしたい、しかし借入金で十億ふやしておる、こういうふうな意味のようでありますので、額面と——公定とやみとはやはり世の中にあるものでありますし、そういう意味を含めて、十億ふやしてあったのだというふうに私は理解をいたします。一つせいぜい今後は、償還が困難であるという前提の認識を深められて、借入金その他の操作によって資金のワクをどんどんふやしていただきますように、開拓者が生活ができるように、営農ができるように、一つ御努力を願いたいと思います。そこであなたがおっしゃいましたその履行延期の問題でありますが、いろいろ工夫をしておるとおっしゃいますが、その工夫の点を一つお示しいただきたいと思います。
  194. 伊東正義

    ○伊東政府委員 これにつきましては、北海道につきまして、実は最初一定基準を作りまして履行の延期の手続をしたわけでございます。北海道を除きます内地につきましては、ある一定基準を通知しましたのは最近でございますが、考え方は大体知らせまして、手続をするようにということをやっております。それでこの基準でございますが、これは三十三年度の基準でございまして、三十四年度につきましては、予算の計上の仕方も、先ほど申し上げましたように、履行が現実に合うようにということで、三〇%というふうに落してきておりますので、基準をもう少しゆるめたいということで、目下大蔵省とは交渉いたしております。これは三十四年度分でございます。三十三年度でございますが、作りました基準は、これは御承知の国の債権の管理等に関する法律の二十四条にございます。これに一項に一号から六号まで債権の種類を書いてございます。これにつきまして、たとえば生活扶助を受けている人でありますとか、あるいはその年に償還する元利の金額が農家の全所得額の一割以上に達する、そういう人で一時に支払うということになりますと、生活保護法の扶助規定の生活扶助の基準に該当するというような人につきましては、まず履行の延期をしよう、それから同じく二号に該当する人につきましては、これは現在開拓営農振興臨時措置法で振興計画を作っておりますが、こういう振興計画を作った人でございまして、その農家の所得額から優先債務額を引いてしまいますと、厚生大臣がきめております生活扶助の基準額の一・四倍というような低いものしか残らぬというような人については、これは履行の延期をしよう、あるいはそれと同じことが、天災なり、あるいは災害なり、またはその債務者と生計を一にする人で療養しているというような人がございまして、やはりその債務者の所得額から優先弁済額を引きました額が、さっき申し上げましたような生活扶助の基準の一・四倍より低くなるというような人につきましては、これは履行の延期をするというような基準を設けまして、五年から十年というような範囲にわたって、国の延納利子もとらぬということの基準を作りまして、北海道について実は始めまして、一億数千万円の履行延期の手続がとられたわけでございます。これは三十三年度の基準でございまして、われわれは三十四年度につきましては先ほど申し上げましたように、予算の組み方を現実に合うようにという考えをとりましたので、今申し上げました基準の中で、たとえば生活扶助の基準の一・四倍というようなものはもう少しゆるめまして、現在の学校給食の費用の免除になっております範囲の一・七倍ぐらいにしたらどうか。それから優先弁済の債務も、現在では非常に範囲を狭めておりますが、それはこれからの営農経営上どうしても必要な債務があれば、それも優先の債務に考える、あるいは営農改善計画に借りかえました金を弁済していくわけでございますが、こういうものも優先債務に考えるというようなワクを広げまして、もう少し基準をゆるやかにしまして、履行の延期の手続はやっていきたい。どうしても返せぬという人につきましては、そういう基準でやっていったらどうだろうというふうに考えております。
  195. 井手以誠

    井手分科員 今お話のありました生活扶助基準の一・七倍、これは生活費だけですか。再生産の点は含まっておりますか。
  196. 伊東正義

    ○伊東政府委員 一・七倍につきましては、実は決定でございませんで、先ほど申し上げましたように、大蔵省と目下折衝いたしておりますが、これは経営に必要な経費その他は差し引いてございますので、大体生活費というふうに考えております。一人当りにしますと、三千四百円程度でございます。
  197. 井手以誠

    井手分科員 三千四百円というのは、それはどこの地区ですか。それは土地によって違いやせぬですか。それは高いところを申されておるのじゃありませんか。
  198. 伊東正義

    ○伊東政府委員 今、もう少し調べまして、御報告申し上げます。三千四百円取りましたのは、ちょっと高い地区でございますので、もう少しならした地区で計算いたします。
  199. 井手以誠

    井手分科員 開拓地というのは低いはずであります。そうしますと、生活だけになりますと、この基準の債務の猶予では、そういう農家は再生産ができないということになるわけです。全然できないというわけじゃありませんけれども考えていないということになります。再生産考えていないということになりますと、開拓営農振興法の趣旨は別になると思う。反するものだと思いますが、その点はどんなふうにお考えですか。
  200. 伊東正義

    ○伊東政府委員 われわれ、経営費と考えて今大蔵省と話しておりますのは、履行延期中の経営を維持していくという費用でございまして、この中には、もしも耕地を拡張するというような場合には、その拡張された分も含むということでわれわれは考えていきたいということで、今大蔵省と話しておりますが、肥料費とか、農薬とか、種苗とか、農業共済というものは、経営費でほとんど網羅いたしまして、そういうものの購入費等もそのほかに考えられるというようなことで、それは経営費として差引きまして、残ったものがという考えでやっておりますので、経営の維持には支障ないというふうに思います。
  201. 井手以誠

    井手分科員 私は、営農振興法の趣旨に反すると思っております。債権管理法というのは、いわゆる自由企業の一般債務についての債権管理だと心得ておるわけでありまして、国策として開拓入植させる、営農を指導する、この開拓団に対して、一般の債権同様に扱うべきものではないと思う。そこに私は、考え方の出発点の違いがあると思っております。従って、この債権管理法の特例によるというよりも、これは、やはり単独立法によって、せっかくできた営農振興法によって、営農を確保しようとする期間は延期を認めてやるという構想が、私は正しいと思うのですが、いかがでございますか。
  202. 伊東正義

    ○伊東政府委員 先ほど申し上げましたことでございますが、現在は、今の優先弁済額というのを非常に狭く考えておりますので、先生の御指摘のようなこともあるかと思いますが、われわれ三十四年度からは、今の予算に即しました基準の交渉をします場合には、営農改善計画達成上どうしても不可欠な負担額というものは、控除の範囲に入れて、そういうものは見ていくのだという考え方でいたしたいと思います。  それからもう一つ、営農改善計画の達成が不可能になるのじゃないかというお話でございますが、これにつきましては、先ほど申し上げました振興計画に基きまして、十二万八千という追加投資をしているわけでございます。これは、こういう人々にも当然追加投資していくということを考えておりますので、この措置によりまして何とか計画の達成ということができるのじゃなかろうか、またそういうふうにしたいということで、今大蔵省と話し合いをしております。
  203. 井手以誠

    井手分科員 御努力はぜひお願いしたいのでありますが、今の見込みで、あなたの方のお考えになっている履行延期の基準の生活扶助基準の一・七倍、これは大蔵省で大体認めておるのですか。
  204. 伊東正義

    ○伊東政府委員 今大蔵省と折衝いたしております段階でございまして、まだ、最終的な決定には至っておりません。
  205. 井手以誠

    井手分科員 あなたの方では、開拓資金というものの性格からいって——今開拓者が一人当り十五万円平均でございますか、借金を負っている。この一番重荷になっている負債を一時軽くして、営農ができるようにというこのやり方、こういうときに、さっき言った債権管理法の一般的なものでなくして、開拓者資金融通法ですか、そういう単独法で特例を設けて、延期してやるというお考えはございませんか。
  206. 伊東正義

    ○伊東政府委員 先生のお考え一つ考えでございますが、実はわれわれ今、開拓営農振興臨時措置法で振興計画を作って、知事の承認を受けるという段階になっております。まだ若干出て参りません、約十万戸くらいこの振興計画が出て参りまして、この振興計画に基きまして、開拓不振地区の振興をはかっていくということを考えているわけでございます。開拓者からは、全部一括して五年なり十年なり債務をたな上げをする、そしてまた履行延期をしてほしいという要望があるのでございますが、われわれといたしましては、今申し上げましたような振興計画を中心にしてやっていこうということでやりつつありますし、国の債権につきましては、やはり個々の人について、これは返せる能力があるのかないのかという判断の上に立ってやっていった方がいいではないかということで、来年の予算につきましても、一応現行の法規のもとで、これを弾力的に運用しまして、所期の目的を達成したいということで実はやっている次第であります。
  207. 井手以誠

    井手分科員 個々の開拓者がとてもやり切れない実情であるので、振興法ができているわけです。今十万戸というお答えでありましたが、そうでありますならば、大部分の開拓者が困っておるこの債務の履行について、ほんとうに開拓営農振興法を生かすためには、この営農振興法を改正して、営農振興の期間中は債務の履行を延期してやる。私は特例を設けてやることが、ほんとうに営農振興法を生かす道だと考えておりますが、そのお考えはございませんか。
  208. 伊東正義

    ○伊東政府委員 その点は今申し上げましたように、振興計画が今出つつある段階でございますので、三十四年度は今の法規の体系、予算のもとでやっていきたいというふうに考えております。先生のおっしゃることは、将来の問題として十分調査もし、そして検討いたしたいというふうに考えております。
  209. 井手以誠

    井手分科員 将来の研究の問題ではなくて、開拓者は悲鳴を上げているのです。こういう委員会では何回も申しておりますから、繰り返しませんけれども、今地方では、営農のよい農家がよい開拓者ではなくして、借金を返すものがよい開拓者と言われている。開拓地には草ぼうぼうとおえても、日雇人夫になって借金を返す。そういうものがよい開拓者だとすら地方では言われている。どのくらい借金に困っているか。これはほんとうに身につまされるような話を私どもはよく聞くのであります。将来の貴重な参考資料というような程度ではなくして、三十四年度は履行延期の基準について大蔵省と交渉する、あなたの方の態度としてやむを得ないかもしれませんけれども、三十五年度からはもっと開拓者の実情に沿うような特段の工夫を別途お願いしたいと思いますが、参考資料でなくて、もっと根本的に考えるというお考えなり熱意はございませんか。
  210. 伊東正義

    ○伊東政府委員 重ねての御質問でございますが、われわれ実は三十四年は今までよりもかなり意欲的に、不振地の対策というものを考えようと思った次第でございます。その結果、三十四年度の予算を計上いたしておるわけでございますが、その結果も見、また先ほど申し上げました法の弾力的運用の結果も見まして、どうするかということは十分検討いたしたいと思います。
  211. 井手以誠

    井手分科員 大蔵省が見えませんので、この程度で打ち切りますが、私はきのうも四分科でずいぶん文句を言ったのでありますが、問題の造船界に対する政府の助成、あの開銀の融資に対しましては、元金で百八十数億円、利息で約四十億円の滞納があっております。滞納というよりも、延期を認めております、利息の返還まで。ここに私一々会社別に表を持っております。先刻は何か中金の問題で、見せるとか見せぬとかいう話がありましたけれども、私は開銀の会社別の利息延期あるいは元金の納期延期の表を持っております。一流の大きな商船会社が何十億と滞納を認められておるのです。きのうも言いましたけれども、そういう会社は、赤坂あたりに毎晩車を横づけにして飲んでおる。一方開拓者はどのくらい悲惨な生活をしておるか、これはもう申し上げるまでもございません。こういう実態でございますから、一つ特段の御努力を願いたいと思う。大蔵省と差し違えでやるくらいの気魄を持ってやってもらいたい。  幸い大蔵省が見えましたから……。もうちょっとおそければよかったのですが……。(笑声)高木主計官はかねて開拓については非常に御高配願っておるようであります。開拓者の貸付金の償還が非常に悪い。悪いのは私は当然だと思っております。これは非常に困難な生活状態、営農状態でございますから、なかなか返せないのです。今日あなたの方では、農林省から債権管理法の特例について交渉を受けられておるようであります。あなたも非常に御配慮いただいて、生活補助基準の一・七倍までは認めてやろうというお考えのようだそうでありますが、それはいつから実施していただけるものでございましょうか。
  212. 高木文雄

    ○高木説明員 開拓関係の融資の償還の問題につきましては、問題が二つございます。一つは、現在の開拓についての融資がかなり混乱した形になっておりまして、開拓者資金融通特別会計からする融資と、それから農林漁業金融公庫からする融資と、さらに農中資金によりまして、それを保証して農中で貸す場合と、さらには災害資金というふうに、若干混乱した形になっております。そこで、今の非常に困窮した開拓者に対しての免除の問題につきましては、私どものほんとうの気持としましては、できるならば、ある程度その四つの種類のものの交通整理と申しますか、整理をしながら考えていかなければならないのじゃなかろうか。その問題はしかし、早急に結論を得ることがなかなかむずかしいので、御存じの通り、昨年からとりあえず生活保護法の生活基準の一・四倍というのを一つ基準にしてやって参ったわけでございますが、ただいまお話通り農林省からそれを一・七倍に引き上げろという御要望がございまして、実はこれは直接私どもの方の担当でございませんのですが、今検討させております。それについてどういう結論になりますか、実は検討の結果を私自身はまだ聞いておりませんので、ここでお答えはいたしかねますけれども、一般論として申し上げられますことは、三十四年度の予算におきましては、農林省内にもいろいろ御異論はありましたけれども、新規の入植は若干押えぎみにしても、既入植者の対策についてはできるだけ力を入れていきたいという気持で予算を組んでおりますので、従って気持としましては、既入植者対策についてはできるだけのことはいたしたい。ただ去年一・四倍というような基準ができましたゆえんのものは、一つは、初めてのことであるからというような機運もあったかもしれませんが、同時に、私詳しくは承知しておりませんが、他の制度との関係がございまして、そこで一・四倍という数字が出ましたので、ほかのいろいろな行政との関係でどこまでできるかということ、主計局としてはほかの制度とのバランスの問題をどうしても考えなければならないことになりますので、そこらの調整をどうするか、何か知恵を出さなければいかぬのじゃないかというふうに考えております。
  213. 井手以誠

    井手分科員 時間がございませんし、また主計官は係が違うということでございますので、この程度にとどめますが、今お話になった一般の関係、振り合いもあるということでありますけれども、債権管理法による問題、自由企業のもの、一般の債務関係、債権関係というものと——国策によって入植した者が今日非常に困っておる、償還金は三〇%しか望めないという今日の状態においては、一般の債権同様に取り扱われることは無理だと思うのです。今国会の両党においても、また開拓者自身からも、開拓者資金融通法あるいは開拓営農振興法に特例を設けて履行延期の措置をとるような動きも表面化して参り、今までずいぶん農林省には私どもも主張を申し上げたつもりでありますので、十分開拓者の窮状を御配慮になって、できるだけ——というよりも、農林省の意向を十分尊重して、御決定になるようにお願いを申し上げております。  それから最後に、食糧庁長官に一言お尋ねかたがたお願いしておきたいと思いますが、これは前から問題になっております予約期限の問題であります。それはおそ場地帯といわれる九州、四国地方は、早場地帯とは一カ月ほど何が違うわけであります。農林省でもあなたの方でも、一カ月くらいおくらす必要があるというお考えのようでありますが、三十四年については時期もだんだん迫って参りましたので、この機会に一つ食糧庁長官のお考えを承わっておきたいと思います。
  214. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 予約の期限は通例は八月十五日であります。昨年度はそれを八月二十五日まで延ばしました。その際にも議論がありましたし、ことしの実際の予約の進行状況、その後の売り渡し状況を見ますと、どうしても早場とおそ場と終期を変えた方がいいのじゃないか、こういうふうな考え方をいたしております。具体的に何日まで延ばすかということにつきましては、今後一つ関係団体等とも相談をいたしまして、早場とおそ場の実情に合う結論を出したいと思っております。
  215. 井手以誠

    井手分科員 九月十日か十一日が二百二十日に当るわけでありますが、九州、四国は災害常襲地帯といわれておるほどに、二百二十日あるいは二百三十日を過ぎなくては作の見通しは立たないわけでありますし、予約の見通しも立たなくなるわけです。従ってその後に期限をきめていただきたい、これが一般的な要望であります。一つその線に沿うように、今後関係団体とも協議を進めて御決定になるようにお願いいたしておきたいと思います。
  216. 大平正芳

  217. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 私は昨年の秋の補正予算の際に繭糸価格の安定問題につきましてお尋ねいたしたわけでありますが、あれ以降相当な動きがあるようであります。これにつきましてまず伺いたいと思いますが、先たちまして去る二十四日の新聞は、前橋の乾繭取引所の相場はキロ当り千二百円を突破して千二百三十九円となったと報じております。これをなま繭に換算をいたしますと、千八百円以上にもなろうかと思うわけでありますけれども、一方今度は横浜の生糸相場を同日のもので見ますと大体十七万四千円程度、千八百円の繭を買ってそれに俵当り四万円くらいの加工賃を加えますと、生糸に換算しますと俵にして二十二万円くらいになろうかと思う。こういう暴騰が乾繭取引所で行われておるわけでありますが、大臣はこの現象をどういうようにごらんになっておりますか。
  218. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 昨年以来の繭糸価の問題でありますが、われわれの方の期待いたしておりましたのは、安定した繭糸価を持ちたい。糸価におきましても繭価におきましても安定しなければいけない。それからまた昨年の春のように異常な高値に支持することが、結局生糸の実際の需要を減退させ、市場を失うということにもなりますので、いろいろの御論議がありましたけれども、改訂したわけであります。従いましてこのような異常な繭糸価の暴騰というものは、今後よほど注意して見ていかなければならないと考えております。すなわち当局としましては、どこまでも市場の実際の需要にマッチしました安定したものに維持したい、かように考えております。
  219. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 大臣の意図と反しましてこういう暴騰を来たしておることにつきまして、昨年以来の施策の失敗なりあるいはこれに対する対策なりをお考えになっておりますか。失敗をお認めになりますか。
  220. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 失敗だとおしかりでございますが、われわれの方としましては、昨年の春以来非常に停滞した、しかも切りかえて参らなければならぬ繭糸価の問題等につきましては、昨年の措置が必ずしも失敗だとは考えておりません。新しい態勢に応じて今後これに対処いたしたいと考えております。
  221. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 昨年の夏秋蚕に対しまして、御承知のようにわれわれ警告いたしましたにもかかわらず、乾繭の三百万貫分だけにつきましては千二百円で買い取ることにされて、あと残された千三百万貫については需給状況に応じて放置するという方法をとられたと思うのです。従いまして、農家から現実に手放された値段は千円そこそこ、よくて千百円ぐらいだったろうと思います。農家の手を離れてからこういう暴騰を来たしておる。こういうことに対しましては失敗でないと言うのは、どういう意味でありましょか。
  222. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 われわれの方としましては、当時三百万貫のたな上げをする、買い上げることによってこれをささえたわけでございまして、これに応じまして、当局といたしましても、養蚕団体等を通じまして繭価協定等につきましても、有利な態勢のもとに製糸家方面との折衝をし得る素地を作ってやったのであります。しかるところ、養蚕団体におきましては、団体の組織は持っておらぬ、それを裏づける経済力におきしても足らぬものでございますから、えてして先を急ぎ、不当に繭価を低目に取引するという遺憾な点があったのでございますけれども、われわれとしましては、この三百万貫のたな上げによって、底値をささえ、同時に安定の基盤を作りましたことにつきましては、私はやはりその方面の繭価の維持には相当奏功したものと考えております。
  223. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 これはあまりにも詭弁の答弁だと私は思います。繭糸価を安定しようという最初のねらい、最大のねらいは、御承知のように転業不可能な養蚕農家の所得を安定させることにあったと思います。そうして支持価格として三十三年度にきまったのは、当時論議いたしましたように、御承知のように千四百円であった。千四百円がだんだんと持てなくなって、むしろ価格を安定させるための支持価格であったのが、持てなくなってとうとうボロを出して、千円そこそこに落してしまった。落してしまったから仕方なしに、もう持っておったってしょうがないと思って百姓ははき出した。はき出したあとにこういう千八百円になんなんとする暴騰を来たしておる。繭の生産農家に対する政策としては、昨年とられた政策は明らかに間違いであったということをお認めにならないのですか。
  224. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 いろいろな推移はございましたけれども、われわれの方としましては繭価維持のために三百万貫のたな上げ措置も講じて、いたしたのでございまして、佐々木さんのいろいろな御批判はございますけれども、この点は今申し上げた通りであります。なお蚕糸局長からも実際の事情をよく申し上げさせます。
  225. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 佐々木先生からお話がありました前橋の乾繭相場が非常な高値を示し、また横神の取引市場で糸価が十七万円少々のところまでいったということでございますが、また昨年の繭価協定千円とおっしゃいましたが、御承知のように大体千百円から千二百円くらいのところでまとまっておるわけであります。ただいま乾繭相場にいたしますと、いささか異常な格好を示しております。これはいろいろな理由もあると思いますが、私ども、先ほど先生からも御指摘がありましたように、農家の所得ということも考え、また貿易というようなことも考えて、今の安定法があるわけであります。その趣旨からいって、昨年十九万千四百円といういわば維持のできない不自然な値段、そのままにしておけば生糸が町に出るということではなくして、全部が政府の倉の中に入ってしまうというような、いわば何のために繭の生産をするのかわからないというような異常な格好になっておったわけです。これを年末、ただいま大臣からお話がありましたように、また法律の趣旨にものっとりまして、実際の繭、またそれからできた糸が売れるという値段に安定をさして参ったわけであります。そのとき私どもが糸の最低価格にいたしまして貫にして十四万百円、こういうことになるわけでございますが、これをきめました場合、大体価格の適正水準としては十六万円水準というようなことを考えてああいう措置をとったわけでございます。十六万円水準と申しますと、今まで十九万円、最高価格が二十三万円、こういう幅があったわけでございますが、大体そのときのことも考えますと、今の程度の横神の相場が出ることも、多少は思惑的なものがありましょうけれども、異常な値段だということはないわけです。昨年やりましたああいう措置が失敗ではないかというお話でございますが、今の現象面だけをごらんになってこういう御意見でございますが、私どもはそう見ておりません。
  226. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 責任回避の答弁を何ぼつついたってどうしようもないと思いますけれども、それなら逆に何らかの方法で、生産農家に千百円程度で売らしたものを今まで持たしておく措置ができたら、十分その目的が達したじゃありませんか。その目的を達せさせずしておって、支持価格千四百円を割って千百円で売らして、今千八百円もしておるということに対して、その政策が間違いでなかったと言われても、これはどう言われたって農家のための政策ではない。むしろもっと悪くわれわれが考えるならば、秋にとられた措置は、逆に、値段を落さしておいて、そうして生糸業者の思惑を助長さして、今のようにつり上げる措置であったというふうに見てもそう大きく間違ってないような見方にもなり得ると思う。私は、三浦農林大臣に昨年の秋の補正予算の際に非常に強く要望いたしまして、繭糸価格の安定のための措置が、農家経済の安定措置とともにそれを行おうとするならば、当然需給面の安定を来たさなければならぬこと、そして輸出の問題が出ましたけれども、現に私は行って見てきて、あなた方の出先の人々の話も聞き、商社の話も聞き、アメリカの向うの取扱い業者の話も聞いて、そして一貫した支持価格制度をとられるならば、十分にその予期した成果を上げ得るような状況にあったことを当時お話ししたのであります。そうしてあなたのところにもニューヨークにおられる出先の方々から同じ報告が行っておったはずであります。私はその報告を向うで見てこっちで話したのでありますから。従って、根本的な考え方からするならば、本格的に繭糸価格を安定させようと思い、そしてそれが斜陽産業といえども、その生産農家があくまでも転業不能な状態のために仕方ない部分を相当大量に持っておる生産家であるという建前に立っての蚕糸政策を進められるならば、私はこういうようなことはあり得ないだろうと思う。従いまして、これ以上追求いたしましても、責任のあるなしを言ってもどうしようもないと思いますが、ここで重ねてお伺いをいたしておきたいと思いますことは、これはどうも農林委員会が始まることでありますから詳しくお伺いをいたそうとは思いません。しかしながら昨年の例にかんがみまして、ともかくも千四百円から出発してどさくさやって、千百円に下って、下ったとたんに千八百円に上った。しかも農家の手を離れたとたんに千八百円に上った。こういう状態で、しかも今度三十四年度の価格安定政策としてとられようとしておる政策は、夏秋蚕の対策として立てられたあのときの状況をそのまま踏襲しておられるように思いますけれども、それと違った措置でありますか。あるいはそれを踏襲された措置であるとするならば、三十四年度はどういう見積り計画をもってこの蚕糸価格安定に対処せられようとしておりますか、伺いたいと思います。
  227. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 御承知のように、ただいま、昨年六月ですかから実施しました臨時措置法を一年延長して、来年も価格安定に対処したいというふうな考え方をとっているわけであります。この臨時措置法が生まれましたゆえんのものは、価格安定法よりはもっと弾力的な方法でぜひ対処して参りたい、そういう需給事情の変化に対応した、こういうことでやっておるわけでございます。そこでこの根底になりますところの需給事情のいわば構造的変化と申しますか、そういうようなものは、輸出にいたしましても昨年価格があるべき水準にやや安定を始めたというお話がございましたが、十月ごろから六千俵台の輸出にも伸び、あるいはことしの一月に入りましては昨年の一月の実績を越えている。あるいは国内引き渡しと申しますか、内需にいたしましても越えておるというような需給事情の回復はして参ったわけでございます。しかし需給事情の底がかたく固まってきたということはなかなか判断し切れないと思います。そこで一方ことしの補正予算また来年度の通常予算で御審議願っておりますが、桑園の整理もやって参ります。それから来年度の事態に対しましては、ただいま法律を提案しておりますが、蚕繭処理事業団というものを作ってこれに対応して参ろう、こういうことにしております。そこで来年度はこうしたいろいろな手を打ちながらやってみて、需給事情がどういうふうに確定しておくかということを待って、一年間今いわば眠っている安定制度をどういうふうに持っていくかということを検討してかかっていこう、そのために今申しましたような事情で臨時措置法を一年延長していきたい、こういう形で考えておるわけであります。
  228. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 予算書によりますと、事業団は十億円の政府出資で、そうして十倍程度の融資をやりたいということらしいのでありますけれども、三十四年度におきまして操作資金は大体どれくらい予定されておりますか。
  229. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 操作資金と申されますが、一つは臨時措置法で保管会社を通じて繭や糸を買うわけでありますけれども、それらのワクといたしましては五十億、それから蚕繭処理事業団の方では資本金十億、かりに一割のものをこれで処理するとすれば、約五十億というような金を動かしてやるということになろうと思います。
  230. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 その資金をもちまして、繭糸を大体どのくらいの値段で安定させるおつもりでありますか。
  231. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 最低価格十四万円と先ほど申し上げましたが、その十四万円の考え方を基礎にして来年の予算は組んでございます。
  232. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 そうしますと、見通しといたしましては、大体系で十四万円、繭で千円という程度を見込んでおられるわけでありますか。
  233. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 考え方としてはさようでございます。
  234. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 そこでもう一ぺん元に戻りたいと思います。そういたしますと、昨年の暮れに現実に農家から買い取った、あるいは農家が売り渡した値段は千百円そこそこ、それを本年度はもう一つ下げて千円程度で落ちつかせたい、現実に今動いておる相場は千八百円、こういうふうになるわけでありますけれども、そういう動きでもって何を一体目ざしておられるのでしょうか。農林省として一番最初考えられる蚕糸対策としては、あくまでも生産農家の安定ということから出発されるのだろうと思う。それは農林省でやろうと思っても大蔵省が金を出さないからやれないのですか。あるいはまた農林省としては、もう蚕糸業というものはどうせ斜陽産業だということで捨てられたのですか。三十二年から出発しましたところの三千五百万貫を目標とする増産五カ年計画を指導されて、そしてまだ一ぺんもこの指導を廃棄されたことがない。そしてとたんに臨時措置のようなものを出そうとされておる。しかしながら農林大臣の口からまだ一ぺんも減産計画に踏み切ったという話を聞いたことはない。増産計画は棄てられて、はっきりと減産計画に踏み切られたのか。秋の補正予算のときに、何ぼ追及してもはっきりとはとうとう答えられないままに済んだ。私の非常におそれるのは、農家にとってみれば、まあ役所の言うことというものは神様みたいなもの、一たん増産といえば本気になってからに家、屋敷を抵当に入れても、今度よくなるのだというようなことでやっていく。そしてそれを知らぬ間にぽかっと落してしまって、景気の悪い減産計画にいった場合には何も言いはしない。あるいは徹底措置を欠く。そのための犠牲が次から次にむしろ累加されて生産農家にいく。このことを一番心配しておるわけです。従って今この予算を組まれる際に、三十四年度の目標を繭について大体千円、そして糸について十四万円という見当をつけられておりますならば、その指導方針を端的に農家に流される所存であるか伺いたい。
  235. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 ただいまの御質問でございますが、昨年の年末に価格安定審議会を開きまして、千円、十四万円ということはことしの一月に告示として出したわけでございます。今後一体政府幾らで繭を支持し、幾らで生糸を支持するのかということを早く農家に明らかにしなければならないことと思っております。そこでいろいろの価格の実勢がどういうふうになるかという見きわめも必要でございまして、もっと早くそういう政府のめどを出したいということでございましたが、昨年の年末にいって機熟してあのような態度を示したのであります。今申しましたのは来年度の問題でございますが、これは法律にもありますように、三月から五月までの間に、価格安定審議会を開いて来年の最低価格はきめることになっておるわけであります。ですから来年度どういうふうにするのだということは、安定審議会に諮って初めてきまることでありまして、ただいまは予算でございますので、先ほどの千円、十四万円、そういう考え方を基礎にして、多少のゆとりも持って組んでおるわけでございます。
  236. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 大臣に伺いますが、一体この蚕糸安定を目的とする表題にも書かれ、一昨日も読まれました説明書にも書かれておりますところの、蚕糸業の安定に要するいろいろな施策を考えておられるのでありますが、その基本的な方針はどういうところにあると考えるか。つまり私の見るところでは、農林省として立てられる安定政策なるものは、一応出発点は転業不可能の農家救済のための、いわば半分社会保障あるいは社会政策的な意味をもって養蚕を奨励される。ところがそういうような生産を突っぱって指導されておきながら、今度は需給面に入りますと、農林省はどれだけの働きをされるのか知りませんけれども、需給面、消費面に入ってきますと、完全な自由経済を原則とする経済原則に基く需給に動かされていって、瞬間的な動きによって、そのはね返りは常に長期計画で対処しなければならないところの生産農家にはね返ってくる、私はこういう結果になっていると思いますが、それならばそれで、生産の奨励だとか、自信のない方針を流されない方がいいと思う。農家はそのために非常に迷惑していると思いますけれども、ほんとうに農林省として、そうしたいと思っているのではなくして、できる見通しとして、蚕糸業というものに対してどういうふうにお考えになっておられるのですか。
  237. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 昨年の経緯にかんがみまして、従来とっておりました価格支持政策は実情に合わなかった、経済事情に合わなかったということで、第一にわれわれは再検討をしたのでございます。従いまして糸自体も最近における新興繊維等の比率から考えますと、これは高値ではとうてい生産の増加はできない。それでそれに見合うところのものはぜひとも見なければならない、こういうことであります。しかしながらこれを全然放置するわけに参りませんから、従来やっておりました糸価安定の方法等も、先ほど蚕糸局長が説明申し上げました通り、激動期にありますこのような事情、瞬間的な現象を直ちに取り上げるわけにいきませんから、臨時措置法を一年間延長しておきまして、そうしてその事情の推移に従って、さらに今までとってきたところの糸価安定の方策をとって参りたい。しかしこれを実行する場合においての具体的なきめ方は、臨時措置法の適用をして、その推移によって具体的にとり進めて参りたい。それはおおむね一年間の臨時措置の推移を見てやりたい、こういうことでございます。同時にこれは社会保障的な生産をするという考えはございません。やはり経済的に見て、どこまでもそれに合うようにして参りたい。従って今後の養蚕に対する対策は、高値の千四百円とかあるいは千八百円という高値の生産を期待せずに、やはり他の新興繊維との見合い等を考えまして、それに応じてやはり商品として売れるような経済性を持たせたい、こういう考えであります。従いまして今後桑園の転換等につきましてもこれは助成し、その要望にこたえ、同時にまたでき上ってきました糸になったものも、今申し上げた十四万円は一応の暫定的な措置でありますけれども、最低の保証はこれにしておく、こういう考え方でございます。将来におきましての蚕繭の方向としましてこれが他の繊維に比較しまして対応するだけの生産費に、合理的な切り下げもあるいはできるような措置を講じていくということ、第二には、糸の値段もこれに見合うものとして、しかも最低は十四万円程度の支持は絶対にする、こういう方針で進めたい考えであります。
  238. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 繰り返しませんけれども、昨年の補正予算のときに、私はあなたに非常に強く事情を説明したはずであります。日本の生糸がアメリカ市場で次々に下っていったのは、他繊維との競合で下っておるのではない。あなたの出先からもその報告が来ておるはずであります。日本側の商社を中心とした売りたたきによって下っておる。現に絹織物を見て比較いたしましても、ヨーロッパ物で、フランス物ならばヤール三ドル以上、イタリア物で二ドル半、日本物でありますと、それがただの六十五セント、そういう状態で、特にニューヨークの日本の生糸を扱っている商社並びに織物業者は、それが次々に日本側から売りたたかれ、売りたたかれて、不安定で不安定でしようがない。一定の数量が一定の値段で安定してくれるならば、十九万円でもそろばんが合うと言っておる。絹はもう他繊維との競合状態でなく、特殊奢侈需要にかわっているといっておる。従って安定の措置を講じてくれれば、むしろ逆に二倍にふえるといっておる。同じ報告があなたのところにも行っているはずです。もしそれが違うならば——そしてどれだけの値段に下げたならば売れると考えておられるか、おそらく減りはしないでしょう。それを下げさせれば何とかなるだろうと思うぐらいでしょう。そこで端的にお伺いしますが、農林大臣の立場から、ほかにかわるものの何もない養蚕農家に対しまして、一体蚕は見込みはあるんだろうか、今期はどうしましょうかと逆に言われたならば、あなたはやりなさいと言われるか、あきらめなさいと言われるかお伺いいたしたい。
  239. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 困難な事情はありましても、これに対応する施策を講じて改善して参るということでありまして、養蚕につきましては先ほど申し上げました通り、あるいは転換の余地がある場合には、これの転換に応ずる。同時にまた立地的にどうしても転換のできないものは、その生産面におきまして、今申し上げましたような価格支持政策をとりまして、支持をするのはかなかろう、こう考えている次第であります。
  240. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 幾ら追及いたしましても、これは水かけ論みたいなことになろうと思いますから、中止をいたしますけれども、今年千円なら千円といわれましても、今の養蚕農家にとってみれば、去年も同じ意味で春蚕のときに千四百円、現実に秋になったらとつべこべいわれましたけれども、あのときには三十三年度の繭は千四百円で買い取る、こういうふうに百姓は理解しておった。そのためにあのような結果になった。今度千円といわれるときは、よほどうまい指導をしなければ無理だろうと思います。むしろ百姓にうそをついた結果にならないように最初からこういうふうに切り下げられたのではないかと思いますけれども、その辺の指導よろしきを得なければ問題は非常に深刻であることを御承知願いたいのであります。  同時にまたこの事業団を中心として行われますところの繭糸価格安定政策なるものは、本質的にいうならば、昨年までとられようとしたところの支持価格制度を放棄され、支持価格制度の特色がこれによってすりかえられて崩壊するのではないか、むしろ最高価格に押えるような格好になってくる危険性を私は感じているわけであります。しかしながらまだその点につきましては、いろいろ内容を検討してみなければ私も結論を出しかねておりますから、従って私は今即断はいたしません。おそらくこれは農林委員会を中心に論ぜられることであろうと思いますけれども農家というものは今のように経済事情が変ったからといって、一般の流通面のように、きのうきょうで、ふわふわしたようなものに対応できるような、そういう可動性、弾力性は持っていないということを前提にして考えられなければ困るわけであります。むしろそのことを前提にされたからこそ、最初に蚕糸価の安定政策というものを打ち出されたのだと思う。それが何の役にも立たぬ、逆向きな効果しか持っていないということに対しまして、農林大臣としてもっと強い責任を感じられたいと思うわけであります。  同様な意味におきまして、これもサンプル的にお伺いしたいと思いますが、最近御承知のように酪農の振興政策を強く打ち出しておられます。ところが私も少々調べてきたわけでありますけれども、酪農の振興政策の内容になっております酪農の長期計画なるものは、あるときには十年計画として数字が出ておったかと思うと、今度は五カ年計画ということで数字が変っておる。そうしてまた昨年の夏のような状態が出てくると、また何だか話がおかしくなってしまって、結局酪農を振興しようと思われても、どういう計画を持って進んでおられるのか理解に苦しむわけであります。従いまして、私は論議の前提としまして、少くとも今政府で持っておられます、五年なら五年でよろしいわけでありますから、そういう五年程度計画を、たとえば三十四年度、三十五年度各年度別に乳牛をどれだけずつふやして、結局乳牛が何頭になり、従ってそれに見合う生産量が大体どういうふうに上昇をし、同時にそれに対応するところの消費見込みをどういうふうにつけておられるか。もし可能でありますならばその消費を喚起する費用も含めて、今の増産計画のための政府の負担分になるところの出費の年度別の計画を提示されたいと思いますが、出ますか。
  241. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 結論を先に申し上げますと、本日参議院で予備審査、また衆議院で本審査の提案理由を申し上げます酪農振興法の一部改正法律案を御審議いただきまして、それに伴いまして、運用といたしまして一番基礎になる国の計画——をお話のようにその通りにいかない部分もあるかと思いますが、大よそその方向でいたして、目安を国でも立て、酪農家の方も、乳業者の人も、消費関係の方も、相当目安を持って健全な酪農が発達するように持っていきたいと思っております。  今まではどうかということを申し上げますと、農林水産の計画は経済企画庁を中心としまして策定いたして、政府が決定いたしております長期経済五カ年計画の一部に各計画要素を整調しながら織り込んでおります。それが明らかにされておる程度で明らかにしてあります。その点について触れて申し上げますと、三十七年が最終年次の五カ年計画でございまして、三十七年度の計画目標が出ておる。年別の年次計画は立てない建前で、その計画全体ができておるのであります。その扱いでありますが、農林省といたしましてはその計画に照応するようにいかに考えたかという年次計画基礎資料と申しますか、そういうものは取っておるわけであります。そのうちの畜産、特に御指摘の酪農で申し上げますれば、乳牛の増産の年別の算出資料及び最終年次の目標頭数、牛乳の生産量についてのことが出ておるのであります。消費につきましては、その計画を国民の食糧構成の姿としまして畜産食品別に表わしておりますが、これはお話のような明確なものかどうかは、消費の性質、購買力、国民所得と可処分所得、そのもとである総生産、それはいろいろ関係がございますし、また財政投融資計画生産から消費までどのようにつくかということについては明確にはきまっておりません。農業部面では、簡単に申せば公共事業として扱っております農地局関係の大部分が概計されておるだけであります。それを酪農審議会の審議の運用等によりまして今後御期待に近く持っていきたいと思っておる次第であります。
  242. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 畜産局長は有名な答弁上手で、大へんうまく答弁されたわけでありますが、結局私は何が何やらわからない。私の聞いたのは、少くとも今酪農振興を政策一つに入れて推進しておられる。そうしますならば、今の長期計画に当然に見合うか見合わぬか知りませんけれども、農業生産というものは、普通の商業関係あるいは普通の産業関係のように、機敏に需要に応じて生産を動かするという底のものではないはずであります。従いまして、長期的に大体見ていって三十三年度何頭、三十四年度何頭、その生産量は大体こうこうこうなるというふうな見方で初めて私は奨励ということになり得るだろうと思う。そのときは当然にこれくらいな牛乳は消費できるという見込みをつけてでなければ話ができないはずです。従って、私は端的にもう一ぺん聞きますけれども、今私が言ったような数字は、あとからでもいいですけれどもいただけますか。三十四年度なら三十四年度を中心としまして、今の三十七年度の最終目標、その間における乳牛の増産数量並びにその生産見込み、それにできれば、その牛乳の消費の対策を含めた政府の出費。
  243. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 私の御説明をよく御了解下さる前提ならばお出しいたします。
  244. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 それはどういうことですか。数字を見せてくれというのに、よく聞いていただくならというのはどういう意味ですか。
  245. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 長期計画の中に織り込んだ計画の策定方法とか策定事項が、先生御承知のように制限的にできているのでございますので、たとえば、消費については、牛乳のみならずその他のものでもなかなか見積りがたいものもありますし、そのための財政支出との関連等について、先生の御質問のようにきちんと合うかどうかなどの取扱いもございます。従って私が申し上げましたような意味での数字はございますから、別に先生のもとに御説明に上ってもけっこうであります。
  246. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 私の今要求いたしております資料は、今そこで作り得る資料を前提としておるのです。従いまして、増加傾向に従って出てきたところの生産された牛乳が完全に消費できるという見込みはつかぬと思う。そうでなくて、むしろ生産数量の方はずっと出るでしょう。そこで、それと同時に学校給食に対してこれだけふやしていく、そのための費用がこれだけ、それから牛をふやすのにこれだけ、それから衛生設備の改善のためにこれだけ、つまり酪農振興をする計画に対する全体の政府の負担分にかかる費用が全部でこれだけに押えてある。その結果牛がこれだけふえる、牛乳がこれだけふえる、従ってこの生産に見合う消費が行われなければならないはずだという資料です。それは出ますか。
  247. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 三十四年でございましたらお出しいたします。
  248. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 佐々木先生からのお尋ねでございますが、御承知の通り、経済計画等も、一応数年の将来を見通しての目標ということで政府並びに企画庁等が策定しておるわけでございまして、基本的に皆さんが御理解になっておるような計画経済的な意味合いでの策定はしないわけでございます。ただ、今御指摘になりました通り、畜産局といたしましては、従来の生産の上昇性もしくは特定の地域に対しまして牛を導入するという場合に、局所的にはこれこれの輸入をしたい、あるいは増産をしていきたいというめどはありますけれども、今御指摘になりましたことが、もしもそれが計画経済的な資料でございますと遺憾ながらございません。そこでもしも趨勢等を見る場合、もしくはことに財政の投資等になりますと、将来のことはある程度の希望は持つでございましょうけれども計画としてお示しすることはなかなか困難であろうと思いますが、それを一つ工夫しまして、畜産局の内部の作業として、一応試案程度のものでよろしい、こう御理解下さいますならば畜産局をして作成せしめて、そうしてお手元にお届けさしていただきたい、こういうふうに考えます。
  249. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 今の大臣の言われた資料でけっこうでございますから、先ほどの石村さんのお話にありましたように、なるべくならばこの予算審議のうちに出していただくようにお願いをいたします。  それから重ねて言うわけでありますが、私は何も今計画経済のような立場から論じておるのではないのです。問題は農業生産に関する限りは、今の経済界の変動のような形で需要に合わしてすぐに生産を調節したり、そういうタイミングな弾力性を持った指導はできないわけであります。従いましてこの畜産の計画に対しても当然にそごができることは私どもも予想いたしております。問題は先ほどの蚕糸価格の安定の場合と同じような意味に皆さんの方は今答弁をされたような形で、これは単なる目標だと言われる、しかしながら農林省から係官を連れて、一番下の技術指導員のところまで行ってごらんなさい。それはむしろわれわれが言う以上の計画性を持って、こうなるのだということで押しつけておる。そうしてそれがとんでもない、五カ年計画のまん中にいかないうちに今度は減産計画だ、しかも先ほどのように、桑苗を植えて葉っぱが出るか出ないうちに——農林省の指導でことしは桑苗を植えるのに奨励金を出す、来年は桑苗を整理するのに奨励金を出す、そんなべらぼうなことはない。そういうことは計画経済だとかなんとかいうことでなしに、一番基本になる農林政策長期性を予定されておることだと思います。従って私はここで強調したいのは、今繭糸価格の問題で、はっきりと前轍を踏まないような形で今の酪農振興をはかられたいというわけであります。私はおそらく日本農家を見まして、養蚕がこのような状態になったときに、これにかわり得るものというならば酪農以外にはないと思っております。従っておそらく今の畜産局長以上に私は酪農奨励論者なんです。ところが一緒になって奨励論者でいくと、先ほどのように、去年の夏のような滞貨の圧力をかぶって、一ぺんにそのしわが生産農家にかかってくる。しかもそれが弾力性を持っておるならいいけれども、御承知のように家、屋敷を抵当に入れてやっと牛一匹飼い始めているような状態で、どうしようもないという結果になってくる。このことに対しては強い指導性を要求いたしたい、こういうわけであります。先ほども長期計画お話が出ましたけれども長期計画で見ますと、大体生産量で見て今のところ一二、三%程度の上昇を見込んでおられるように思いますけれども、そんな程度でしょうか。
  250. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 乳牛頭数は——生産量で、計画当初に立てましたものそのままで一三%、対前年比が一〇%、五年目は一九五、六%になっております。
  251. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 そういう目標計画を立てて奨励されるためには、それと並行的に、これはおそらく農林省の所管ではないかもしれませんけれども、その牛乳の消費拡大についての特段の努力がなされなければならないということが言いたいわけなんです。御承知のように、現在の日本の経済成長率から見ますと、普通常識的には五%程度の経済成長率になっておる。五%程度の経済成長率であって、しかも所得が一割ふえるというと、大体二、三%の需要がふえるというのが常識みたいに思われますけれども、その計算でいきますと、五%の普通の経済成長率であった場合には、そのままの伸びとして牛乳の消費量がふえるのはせいぜい七、八%になるはずである。その七、八%に対しまして今の計画目標はその倍になっておるはずであります。従ってこれを常識的な経済原則の行われておる需給市場にほっぽり出すなら頭を打つにきまっておる。そうでしょう。今の経済成長率の常識的な見方にしても、国内の牛乳の消費量、生牛乳に全部換算いたしましてその消費は五%ないし七、八%だ、それに対して今の計画は一三%前後だとするならば、大体半分くらいです。そうするならば、農林省で畜産奨励計画を立てられて指導される限り、閣内をリードされて、文部省の学校給食も含めあるいはまた厚生省の試験研究機関の充実も含めて、政府として一貫した消費拡大の政策を推進されるのでなければ、今のようにちょうど蚕糸と同じような意味で犠牲が生産農家に回ってくるということを感ずるわけです。従いましてこれは議論になりますからやめますけれども、時間もなさそうでありますから、先ほど要求いたしました資料を検討いたしまして、今度は農林省が推進力になって、各省に対してその消費の拡大のための特段の措置を特別に要請されること。私はこの特段の措置の内容をおそらく次の予算委員会だろうと思いますから、一年たつかもしれませんけれども、それの中で十分検討を進めて、そうして酪農の振興政策が今の繭の安定計画増産計画の轍を踏まないような努力を政府に要請したいと思います。そういう意味で資料を要求いたしますから、一つお願いいたしたいと思います。時間がありませんから、これで終ります。
  252. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 先ほどちょっと間違いましたので訂正いたします。五カ年計画年次別の成長率に関して申し上げましたのは、乳牛の乳の方でございまして、牛乳の生産は年率の増産量または三十七年度の目標生産量は、一頭当りの出乳量の増加を見ましてもっと多いのであります。年々多いし、最終の三十七年度は三十一年度を基準にいたしますと、二一五ぐらい大きいわけであります。
  253. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 そうであるならば、一そうその傾向が出てくると思いますから、善処をお願いいたします。
  254. 大平正芳

    大平主査 小平君。
  255. 小平忠

    小平(忠)分科員 過日も予算委員会におきまして時間の都合上、私の質問の中で分科会にゆだねた点があるのでありますが、それをこの際二、三点お伺いをいたしたいと思います。  第一点は、水産関係でありますが、政府当局は口を開けば、特に零細漁民、沿岸漁民の振興のために積極的な施策を講ずるのだとおっしゃるのでありますが、どうも三十四年度の予算を見ますと、どう見ても積極的な施策が講ぜられておるとは思えないのであります。特に沿岸漁民の切実な要求である浅海増殖のごときは二億一千五百五十六万円でありますから、前年度から見ますと二百八十五万円減っております。こういうようなことで一体沿岸漁業振興を積極的にやるのだと私には思えませんが、大臣の所見いかがでございますか。
  256. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 実は予算の各項目は必ずしも零細漁民対象というふうに文字的には表現しておりませんけれども、基本的にやはり漁港での拡充であるとか、あるいは今度は沿岸漁業の漁村に対しまして新農村建設計画に準じた方式をもって相当の支出をいたしておるわけであります。これらも浅海増殖とあわせて施行することによりまして、相当効果を上げ得ると考えておるわけでございますが、その詳細等につきましては水産庁長官から一応御説明いたします。
  257. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 明年度の予算の面におきまして沿岸漁村の振興につきましては、私は決してこれで満足をしておるわけではございませんけれども、相当に大きな柱を立て得たのではないか、かように考えております。漁港の面におきましては臨特の関係を考慮して、実質的に対比いたしますれば、今年度に比べまして事業量といたしまして九億、約二割七分の増を見まして、四十三億の漁港修築関係経費の計上を見ることができたのであります。また一般行政費に関しましても、形式的には前年度限りの、たとえば漁船の建造費等の経費が多額にございましたので、減っておりますけれども、実質的には一億増額をいたしたのでございます。しかも沿岸漁業振興対策費あるいは漁価の支持に関しまする経費、または改良普及事業に対しまする新しい柱等、若干の前進を見ることができた次第でございまして、この点決して満足はいたしておりませんが、後退は毛頭いたしておらないつもりでございます。ただいま水産増殖の経費についてのお話が出たのでございますが、これは実は河川漁業の面におきまして、アユ等の種苗の放流費が若干金額が減額になりました関係から、これが減って参った次第でございます。しかし海岸に関しまする限りにおいては若干の増額を見ておるのでございます。それのみならずこれと関連いたしました沿岸漁村振興対策というものに関しましては、前年度は実質的には六千五百万円でございましたものを、明年度は一億の大台に乗せることができました次第でございます。これも有効なる実施を今後努力いたしたい、かように考えております。
  258. 小平忠

    小平(忠)分科員 お伺いをしないものまで御説明をいただきましてありがとうございました。私は浅海増殖の予算がどうして減ったのかということを聞いたのですが、そうなって参りますと、それはただいまの説明で私は理解できないのです。大臣も水産庁長官もそんな説明を農林水産委員会に行っておやりになりましたら、専門家からつるし上げを食いますよ。というのは、大体水産庁関係の全体の予算を見ますと、七十七億五千六百五十七万七千円で、前年度に比べてわずか二億しかふえておりません。これも確かに漁港関係は伸びております。漁港関係を除いたら、逆に今年度は一億七千五百万円減っておるわけです。ともあれこれは数字の上で、全体のトータルでいっておりますが、一般会計全体の予算のワクから参りますと、三十三年度は一兆三千百二十一億三千万円で、三十四年度は一兆四千百九十二億です。大幅にワクがふえておるのです、それは総額から見ますれば。これは全体的に水産行政を軽視しておる、こう申し上げて過言ではないのです。ですからやはりこの点に関しては一体水産庁の政治力がなかったのか、あるいは農林大臣の政治力がなかったのか。きょうは大蔵省の主計局長や主計官が来てないから何もならぬのだけれども、これはやはり日本の水産行政というものに対して、もっと積極的な施策をとってもらわなければならぬと私は思うのです。そこで具体的に浅海増殖というのは、これは沿岸漁民の生活の基本をなす非常に大事な面です。ですから、これはむしろ大幅に増額すべきであろうと私は思うのです。ですから、今の長官の説明では私はわからないのです。
  259. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 私も浅海増殖、ことに魚礁投石等が漁民の所得の増大に寄与いたしておるのでありまして、これはこれで非常に伸ばしていかなければならないと考えておる次第でございます。しかし先ほども申し上げましたように、実は実質的には浅海増殖と一本になりまして沿岸漁業振興対策費を計上いたしておるのでございますが、この経費の性格は、それぞれの海区の立地に即しまして、既定の予算の助成項目以外によりまして、真にその立地に必要とする事業に対しまして総合的な助成をしていく、こういう観点から計上しておる経費でございます。これもあわせてお考えいただきますれば、決して十分とは申し上げませんけれども、相当な沿岸漁村の振興に関しまする伸びが達成されたということを御理解いただけると思うのであります。
  260. 小平忠

    小平(忠)分科員 それは腹では非常に不満足であると思っておられるのだからそのままおっしゃればいいのだけれども、どうもそう答弁できないらしいが、実際浅海増殖の面では岩礁とか、投石ということは最近海面に流出する河川の汚水、濁水、それによって侵される部面が非常に多くて、どんどんとこれは岩礁なり、投石をして浅海増殖に積極的な施策を講じていかないと、非常にコンブなんか参っているわけです。この浅海増殖は、陸でいえば土地改良に匹敵することなんでありますから、そんなことは説明するまでもないことなんです。ですから、陸の土地改良や開拓を推進しておりますこのことを考えると、日本は四面海に面しておるのですから、そういう面ではやはりもっと積極的な考え方を、施策を講ずべきである、こう思います。このことは私は強く要望いたしておきます。それから沿岸漁業振興対策事業費補助金は幾らになっておりますか、その内訳はどうなっておりますか。
  261. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 一億一百万円計上いたしております。これは前年度は有明及び北海道の根室周辺地帯を主要な地点といたしまして、その他におきまして岩手、千葉、愛媛、茨城等若干県で小規模な総合助成をいたした次第でございます。明年度の問題といたしましては、まだ具体的に実施地点は決定をいたしておりませんが、大蔵省との間におきましていろいろ打ち合せをいたしておりますのは、瀬戸内海、北海道のニシンの凶漁地帯、日本海の北部、奥羽地方の西海岸の凶漁地帯、大規模なものとしてはその程度にいたしまして、その他具体的に必要のあります地点について実行をいたしたい、かように考えておる次第であります。
  262. 小平忠

    小平(忠)分科員 一億百万の内容はまだわかりませんか。
  263. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 内容は、調査費がたしか二百万見当だったと思いますが、あとは全部補助費でございます。
  264. 小平忠

    小平(忠)分科員 まだ内容の、使途がわからないような予算を国会に出して、これを審議しろという方が無理ですよ。御承知のように、昨年はこれは八千万、それも今長官は、有明海——これは大型の魚礁にも持っていったと聞いておりますが、こういう不明確な予算を与党の政治家のいわゆる圧力や意向によってゆがめられて使われては大へんです。これは国民の血税です。少くともこの一億の予算を、国会の承認を得るのならば、内容は何かということを明確に示さなければならぬと思います。
  265. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 私は、予算を編成いたします際には、必ずしもはっきりと個々の地点についての内訳まできめる必要はないのではないかと思います。これは立地に応じまして必要な額を計上して、実施面において十分実態に即応した実施をしていけば十分なのではないか、かように考えるのであります。それではどういうふうな仕事について助成をしていくかということにつきましては、われわれといたしましては、二十数項目にわたります助成の項目を予定いたしておる次第でございます。しかしながら新農山漁村の総合振興においてもそうでございますように、結局その立地のほんとうに必要とするというものについては、これらの柱以外にもやはり助成をする余地は残しておく必要があろうか、かように考えておるのでございまして、今年度実行いたしました主要なるものを申し上げますれば、有明海につきましては、人工採苗施設及びノリ漁場の育成ということに重点を指向した次第でございましたが、北海道の根室周辺地帯につきましては、コンブの乾場の造成ということに重点を指向した次第でございます。
  266. 小平忠

    小平(忠)分科員 私も長い間予算をやっておりまして、具体的な内容についても、おのずから国会に説明をする項目も知っております。かりに言うと、土地改良などで、具体的な個所づけ、あるいは道路、河川、そういった具体的な個所づけについて、予算の総額をどう振り分けていくというようなことについては、国会で予算の審議をし承認を得るまでにきまらぬ場合があるのであります。そういうことを私は言っているのではないのです。結局沿岸漁業振興対策費という、この事業費の補助という大きなワクで、この一億百万の予算の中で、調査費二百万もけっこうですが、少くともあとの補助金は大体どういうふうに振り分けられるのだということがなければならぬと思う。この点、具体的な個所まで私は聞いているのではない。あなたの冒頭に説明されたことはあまりにも抽象的なことです。ところが、私は実は調べているのですが、これは実際はきまっていないのですよ。それを後において一部の人たちの意向によって、これがゆがめられて使用されてはいけないということを指摘しているのです。これは少い。もっとふやすべきです。  そこで私は次にお伺いいたしますが、最近の沿岸漁民のいわゆる生活の実態というものは、だんだんと沿岸が荒されまして、漁業協同組合の運営は非常に困窮化しております。そこで先般の全国漁業協同組合の大会のときも強い要請があって、これは農協同様に漁協の整備のために利子補給をしてもらいたい、こういう要望があるのですが、この点は現在どのようにお考えですか。これは一つ大臣にお伺いしたいと思います。
  267. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 漁業協同組合に対する融資に対して利子補給の道を開け、こういうことでございますが、ただ一般的に利子補給をするということはわれわれとしましては今考えられないと思うのであります。具体的な事項を見まして、そして利子補給の必要が緊切であればそうしなければならない、こう考えておるわけであります。たとえば他の利子補給の面におきましても、今回打ち出したものは、たとえば水産関係でございますと、大衆魚の製品を保管しまして魚価の低落を防ぐというような施設に対しましては、その行う漁業協同組合なりあるいは県なりに対して、利子補給等の道を開くということをいたしておりますけれども、一般的に利子補給をやるということにつきましては、ただいまのところまだ案はできておりません。
  268. 小平忠

    小平(忠)分科員 かって農業協同組合の整備特別措置法制定の際に、これは漁協に対しましても将来必ず考えるということがあの当時の付帯条件にもなっているのであります。現に今年も水産庁としては大蔵省に要求しているのじゃありませんか。仄聞するところによるとそれを削られたということです。大臣は今全然考えていないというのですが、どうですか。
  269. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 私が今申し上げたように、具体的な場合は別として、一般的に漁業協同組合に対する融資に対して利子補給の道を開くということについての案はできておらぬ、こういうことです。
  270. 小平忠

    小平(忠)分科員 今年度、農林省からそういったことについて大蔵省に説明したり要求したことはありませんか。
  271. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 われわれは、今日の漁業協同組合の状況は新しい再建整備の総合的な対策を必要とする状態にある、かように考えておる次第でございます。今日沿岸の漁協が三千百という中で、ほんとうに総合的な漁協として動いておりますのは千でございます。約七百ばかりのものは地区が非常に狭小で、あるいは漁業権の管理だけやっておる。約六百が赤字の組合で、てこ入れをしますれば事業は伸びるけれども、現状においては負債に悩んでおる、こういう状況にあると考えておるのでございます。そこでこれに関しまする対策といたしましては、かつて農協について行われました整備促進の特別措置が漁協についても当然当てはまる面があると考えておるのであります。しかしながら漁協につきましてはそれだけでは足らないのでありまして、やはり漁協の実態に即しました対策を講じなければならない、かように考えておる次第でございます。漁協の振興の問題に関しましては、今の漁業協同組合の制度自身に根本的に考えるべき点があるように思うのでございます。一方におきまして、前の通常国会で成立いたしました法律に基きまして、漁業制度調査会を作りまして、漁協の振興に必要な制度的な面についての検討を今いたしておる次第でございます。今年中には中間的な取りまとめをいたしまして、明後年度の予算には、そういう観点からの総合的な対策をぜひ織り込みたい、かように考えておる次第であります。しかしながら、その根本的解決を待つまでもなく、現在の段階におきましてできる限りのことはやって参りたい、こういう観点から、駐在指導及び巡回指導につきましては、明年度におきましては、今年度よりもさらに五割方事業量を拡張をいたしました次第でございますが、さらにまた漁協の経済的な活動を促進いたしますために、特に共同販売面につきましては、ただいま大臣のお話がございましたように、大衆魚の価格の維持ということに寄与いたしますために、これが加工品の漁協の系統によりまする共同保管に必要な資金に対する利子補給の予算も計上をいたしております次第であります。
  272. 小平忠

    小平(忠)分科員 ただいまの長官の説明は大臣も了承でございますか。
  273. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 その通りでございます。
  274. 小平忠

    小平(忠)分科員 これはもちろん、漁協の再建整備促進のために、結局、融資に対する利子補給だけで解決できるものではなくて、漁協の実態に即した根本的なものによって整備しなければならないものではないかと思います。そういう意味で、来る年も来る年も予算審議の際には、そのときの責任者がそういう答弁をされますけれども、なかなか進捗しないのであります。長官は責任をもって、あなたが今言明されたことを、本年は準備をして、三十五年度には必ずこれを織り込むように、それから漁協に対しまする融資の利子補給も実現できるように大いに一つがんばってほしいと思います。  最後に、沿岸漁業振興のために水産改良普及事業の予算がきわめて少いのです。三十四年度わずか二千二百四十四万円ですが、この程度では、改良普及事業というものは単に形式だけに流れてしまうと思うのです。これに対して、この程度でいいとおっしゃるのか、それとももっと考えなければならぬと思うのか、その点は大臣いかがですか。
  275. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 沿岸漁業の振興策を拡大すると同時に、普及員の整備拡充等をあわせて推進したい考えでございます。
  276. 小平忠

    小平(忠)分科員 この件に関しまして最後にお伺いしたいことは、先ほどの沿岸漁業振興対策事業費補助金の一億一百万円の内容はいつごろまでに決定される予定でありますか。それで、これは予算審議を終りますまでにこの内容を——私の申し上げているのは、同じ項目の中で具体的にこれこれの予算を地域的にはどこにつけたらいいかという個所づけまで言っておるのではありません。大きな柱として、この大体の使途、どういうふうに使うかということをいつごろまでにおきめになる予定か、それを伺いたい。
  277. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 今年度は初年度でありました関係もありまして、事業の実施が非常におくれた次第でございますが、明年度に関しましては、実態調査を取り急ぎまして、年度に入りましてから、できるだけ早く具体的な地点についての事業内容を決定いたしたいと考えております。  なお、どういう仕事を考えておるのかということに関しましては、今年度二十四の項目を対象として取り上げた次第でございますが、これはまた別に資料として先生のお手元までお届けいたすようにいたします。
  278. 小平忠

    小平(忠)分科員 最後にもう一点お伺いをいたしたいのですが、それは最近畑作の振興、特に寒冷地農業の飛躍的な発展をいたしておりまする中のきわめて重要な問題として、テンサイ生産の増強と、これに対する施策の問題であります。この件は、先般も私は時間がないために分科会にゆだねました。本日も本分科会におきまして永井委員から質疑があったはずでありますが、二、三この点に関しましてさらにお伺いをいたしたいと思います。  政府は今度日本てん菜振興会法案を国会に提出して参りました。さらに臨時てん菜糖製造業者納付金法案を提出して参りました。これは従来積極的にテンサイの生産増強を意図されておりまする施策に相当な変更を加えるものでありますので、この点に関して、政府は一体自信をもって今後の生産の増強と国内の甘味資源の培養ということについて、さらにこれを推進強化できるとお考えになるのか、その点を大臣にまずお伺いしたいのであります。
  279. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 今度甘味資源に対しまする総合対策、なかんずくテンサイに対しまする政策を一応部内で決定いたしたのでございますが、この要旨は、従来やっておりますものを整備強化し、基本的には改悪しておることはございません。むしろ安定したものでございますので、テンサイの奨励のためには一そう確実に前進するものと確信しておる次第であります。
  280. 小平忠

    小平(忠)分科員 この法案によりますと、いわゆるテンサイ糖買い上げは、一部買い上げ、一部中止、こういう形になるのですが、その通りでございますか。
  281. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 テンサイ糖買い上げは、てん菜生産振興臨時措置法、これに基いて買い上げるのであります。その第四条で「特に必要があると認めるときは、省令の定めるところにより、てん菜糖の製造を業とする者からてん菜糖の買入をすることができる。」こういうふうになっておるこの条項で買い上げるのであります。ただ従来は、先般の委員会で申し上げましたように、消費税が非常に高いものですから、その消費税のもとでは、一番生産費の安い日本テンサイ糖といえども自由に売るような価格ではできなかった。今度その消費税を斤当り二十八円から十円六十銭に下げることによりまして、販売余力ができることになりましたから、普通の状態では、最近操業を始めました工場を除きましては、この条文の通り、必ずしも強制的に買い上げなくてもいい、こういう状態が現出されるので、日本甜菜糖のものは買わなくて済む、こういうことになっております。
  282. 小平忠

    小平(忠)分科員 そうすると一部の会社からは買い上げる、一部の会社から買い上げないということでありますね。大臣は、今度の考え方は従来のやり方をさらに整備強化いたしまして、決してそれがテンサイの生産増強にマイナスになるようなことはないとおっしゃった。特に寒地農業を確立しなければならぬという意味で、政府の施策の中でこのテンサイの施策はまさに画期的なものがあったし、ここ数年に第一北海道に四工場もの工場ができるなんということは、これは成功だったと私は思うのです。これは何といっても、ビートこそ寒地に適した作物だからなんです。あの三十一年の開道以来の冷害のときも、ビートは冷害にあっていないのです。国内に砂糖資源が足りない。そういうことからいっても、これはまことに施策が成功したのです。それは全量を買い上げ、最低価格を維持して価格を保証しているというところに、農家が安心をして生産に従事でき、だんだん生産が高まったという原因があるのです。それを一部は買い上げしないで一部は買い上げる、やがては全部自由にするんだ、こういう考え方では、大臣のおっしゃったような趣旨には絶対に参らぬと私は思いますが、その点はどうなんですか。
  283. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 保証すべきものはちゃんと保証しておるし、同時にまた糖価が見合って、もって自由に販売できるものまで政府買い上げる必要は私はないと思う。しかしテンサイ糖買い上げについては十全の制度をしてちゃんと保証しておるのですから、私はその点は懸念がなかろうと考えております。
  284. 小平忠

    小平(忠)分科員 大臣はそうおっしゃいましても、この要綱に、「ただし生産費が著しく低いなどの事情により買い上げを必要としないものを除く」とあるのです。これはことしは日甜、二年後には北通も台糖も買い上げない、自由になるのです。いかにもそれはいわゆる関税消費税の振りかえ操作によって、価格は保証されている。どこに保証するのですか。それは従来てん菜振興法によって全量を買い上げているところに、農家が安心をして生産に従事できのです。価格制度というものは、どの場合でもそういうことが言い得るのです。同時に日甜は結局非常にコストが低いのだ、減価償却もできているんだ、だから生産費が著しく低いからいいんだ、それならば、ほんとうにそういうならば、他の工場より低い分だけ原料価格を引き上げ、それを生産農家に返してやるというような方法はできなかったのですか。
  285. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 先ほど申し上げましたように、従来の関税消費税制度であるからどうしても全量を買い上げなければならなかった。今度関税消費税を振りかえることによって、買い上げしない方が有利であるという見方もできる状態がととのえられたのであります。従いまして、新しい会社と従来からやっておる日本甜菜糖との関係では、非常なコストの開きがございますから、このてん菜振興臨時措置法第四条を変えない限り、強制的に日甜から私の方で買うということはできないだろうと思います。そういうことがございますから、一方ではその他の会社については、だんだん砂糖生産になれまして、今の関税消費税の振りかえによれば自由に売ることができる条件が出てきても、今までは政府が買っておったのですから、これから販売網を組織するとか、いろいろな手続で、すぐ売れないかもしれない。そういう場合には希望があれば全部買い上げる、こういうことでございますから、先ほど大臣が申し上げましたように、今度の制度の方がテンサイの振興についてはよろしいのじゃないか、こういう考えであります。  さらに第二点の、しからば日甜にそれだけの余剰利益が出るならば、それだけ原料テンサイの価格を高く買ったらいいじゃないか、こういう問題でございます。この問題は非常にデリケートな問題でございまして、今後新しく砂糖工場を作りたい、作ることによってテンサイの生産面積を増加する、テンサイの生産面積を増加するから当然新しい工場を作らなければいかぬということになります。その際に原料価格の相違が起りますと、これは今後のテンサイ生産の振興に非常なむずかしい問題を起してくる。現在は原料テンサイ千斤当り二千五百五十円で政府は臨時てん菜振興措置法で保証しております。それ以上払うということになれば、そこに原料を売りたがる、そうしますと、新しくできる工場生産がぺイしなくなる、こういう現象ができてくる。その点が今度の切りかえの場合にも非常に問題になりまして、たまたま関税消費税の振りかえで特別の利益が出る、その特別の利益分だけを国に納付せしめるということにして、そういう不当の競争が出ないように措置しておるのであります。
  286. 小平忠

    小平(忠)分科員 私の申し上げているのは、何も特定の生産ビートのほかに買上原料を高くするというのではなく、あくまでそれは公平な措置がとり得るはずであります。そういうことを申し上げておる。今度関税消費税の振りかえによって、特に日甜などが余剰利潤として大体三億三千万ほど国に納付する。これが納付金法案ですね。そうでございますね。三億三千万を、新たにてん菜振興会という特殊法人を作って、三十四年は政府から一千万円支出する、またその三億二千万を振り向けて、テンサイのいわゆる試験研究機関を強化していこう、振興会にやらせる、こういう意味ですね。私は先般予算委員会の一般質問の際もちょっと触れたのですけれども、大体試験研究というもの、これは国家みずからが責任をもってやるべきです。現在北海道農業試験場あるいは十勝の支場でやっておりますのをどうするんです。試験研究機関というものは民間と国が分れたならば、非常なそごを来たす大きなもとになる。なぜこういうことをお考えになるのですか。
  287. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 その点は多少誤解があられるのじゃないかと思いますが、今度もくろんでおります日本てん菜振興会法案日本てん菜振興会は全額政府出資による特殊法人ということでございます。従って、これは政府一つの代行機関的な性格を持たす仕組みになっております。たまたまこれの財源として、一方で幸いにして関税消費税の振りかえによりまして、納付金を納めることになりますれば、それを一般の収入にしないで、テンサイ振り興に使わしてくれということで、その納付金をてん菜振興会の方に出資し、または補助として振り向けることにいたしておるのであります。しこうして、なぜてん菜振興会にテンサイの試験研究、その他テンサイの振興についてやらすことにし、政府みずからやらないか、こういうお話ですが、これは小平先生もうすでに御承知のように、日本のテンサイの歴史は古いのであります。これは率直に私どもも認めざるを得ぬのでございますけれども北海道試験場におけるテンサイの試験研究の施設等についても非常に不十分であります。これは午前中にも永井先生の御質問のときに、そういう問題でお答えいたしたのでありますが、一つは、最近に至るまで、テンサイに関して日本の国の試験研究というものは、少し極端な言葉になりますが、私をして言わしめれば、米麦に比較しますと、あまりにも経費なり、施設なりあるいは事務的な備えが不足している。それが御指摘のように、耐冷作物としてはっきり出てきている。その裏には、欧米諸国のテンサイに関する研究、それから現実の生産の増強、こういうものに刺激されまして、それと同時に一方では、土壌、肥料なり品種の改良、そういうものも日本で進んでくる、こういうことがありまして、どうしても日本では作らなければいけない、これは先進国の例を見れば必ずできることだ、こういうことで問題になってきたのでありますが、実際には試験研究の施設も整備できなかったのが実情でございます。これにはいろいろな理由があるのでございますが、御承知のように、米は世界一と自負しておりますけれども、畑作に関する日本の技術の水準というものはそう高くない。そうしますと、やはり急速にテンサイの試験研究をいたしますのには、場合によったら外国の技術者を招聘して指導を受けることも必要だし、それからまた民間の研究者を動員するということも必要である。しかし、それがあくまでも一つの統一的な方針のもとにやられる必要がある。そうなって、急速にやるとしますと、役所でやるとすれば、役所の他の試験研究との振り合いとか、あるいは公務員の給与の関係とか、あるいは人事院規則等の関係、あるいは定員法との関係等で、急速にはそういう施設が整備できないのは、いつも経験している例であります。そういう際に、相当の財源が見つかりましたので、これで急速に衆知をしぼって、試験研究が急速に、確実にできるようにした方がいいのじゃないか、そういう意味で特殊法人振興会を作って、これによって政府の統一的な指導方針のもとに急速に試験研究をやらせたい、こういうのがねらいでございます。
  288. 小平忠

    小平(忠)分科員 全額国が出資をする特殊法人たる振興会を作って、政府一つの代行機関的なことをやらせるという。これは場合によっては非常にそれがうまくいく場合もありますけれども、何せ現在発展途上におります場合に、私は運営やその他が非常にむずかしいと思うのです。ですからわれわれの意図するところは、てん菜振興会法の時限立法の期限である昭和三十七年、せっかく今その緒についたこの段階では、その三十七年度までくらいは、やはり全量買い上げをやるべきであるというのが、全ビート生産農家の願望です。また団体の一致した意見であります。それについては、関税消費税の振りかえによって非常に会社によってでこぼこになるのだ、余剰利得が起きてどうするのだ、これは現振興法を変えなければできないのだというのでありますれば、振興法を変えればいいのです。振興法を変えて、生産コストの低いところは、いわゆる国が適正価格買い上げればいいのです。そうすることによってもし利潤があれば食管でもうかるのですから、それは食管でもうければいいのです。それで、別に今振興会を作るようなことなく、食管がもうければ、そのもうけた金で、私は現在の北海道農業試験場なりあるいは支場を強化して、やはりテンサイ部面の強化の機関を作るということに持っていくのが至当だと思う。しかしそれでは関税消費税の振りかえによってどうにもならないというけれども、国内の甘味資源を擁護することは、当然やるべきことです。そういう形において、今日現に北海道の強力なる農民組織である農民同盟も、あるいは農村連盟も、さらに農協中央会も、あるいは農業会議も一致して、全量買い上げという施策を持続すべきであるということを要望し、要求しているのも、そういうことからくるのです。ですから、もし農林大臣がこの施策を強行された場合には、せっかく今日築いたテンサイ振興方策というものが、大へんな混乱に陥ると思いますので、このことは、さらに農林水産委員会におきましても、あるいは衆参両院においても熾烈な問題になることでありましょう。分科会でありますから、私はこれ以上触れませんが、一つ大臣に重大な警告を発して私の質問を終ります。
  289. 大平正芳

  290. 小松信太郎

    ○小松(信)分科員 私はただ一点綿羊の問題についてお尋ねしたいと思いますが、この綿羊は、今日わが国で大体百万頭くらい飼っておる、こういうように聞いておりますので、まことに小さな問題であります。しかしながら、農業全体の面から見ますればまことに小さな問題でございますけれども、それを飼っている農家の立場から見ますと、御承知のように綿羊というものは、どこでも、どの地方でも飼っているものではございません。限られた地方で、しかも限られた村で飼っている。こういう立場でございますので、万が一という言葉がございますけれども、しかしその万が一の場合の一に当った人は、結局においては万が万で同じなんです。こういう意味におきまして、綿羊を飼っているその農家にとりましては、実に大きな問題でございます。と申しますのは、かつては——と申しましても戦争後でございますが、原毛として一貫目六千幾らにきまった。しかしながら二十七年に統制が撤廃されますと、がたがた落ちて参りまして、一昨々年は二千三百円くらい、昨年は二千円、今年に至りますととたんに千二、三百円になってしまった。こういうことでございまして、今農村におきましては奇妙な現象が起きております。と申しますのは、新しく綿羊を飼う農家がふえて参りました反面、いわゆる先進地といわれているような地方におきましては、これまで飼っていた綿羊をだんだんやめてしまう。これはどういうことかと申しますと、農村におきまして、これまでの農業経営やり方ではとてもやっていけない、一つ家畜でも導入して新しい道を発見しよう、こういうつもりでそういう方面へ目をつけてみましても、御承知のようにふところ工合が非常に悪い。従いまして大家畜を購入する資力がない。幸いに綿羊は至って手軽に手に入る。こういうことから、その綿羊を飼うことに新しい道を見つけようと努力するわけでございますが、しかしそれは綿羊のことを知っての上で、そういう道を選ぶのでなくて、よくは知らない。知らないからそういうことになってしまうので、ほんとうに知っている人は、先ほども申し上げましたように、だんだん変えていってしまう、こういう状態であるのでございます。ところが来年度の予算を見ますと、有畜農家創設特別措置法による綿羊の導入が、昨年は一万五千頭、ところが来年度は一万七千五百頭、それから中小農家に貸し付けるものは、これは今年度は六千頭であります。それが来年度におきましては一万二千八百二十五頭、こういうふうに非常に多くなっておるのでございますが、今のような価格状態を今後もたどって参りますと、これはせっかく農家経営を楽にしてあげようというお気持かもしれませんけれども、現実の問題といたしましては、かえって貧乏を督励するような結果になりはしないかということもおそれるのでございます。しかしながら、こういうふうな予算を立てられたからには、それらにつきましてりっぱな成算がおありと思いますので、どういうお考えのもとにこういうものをおやりになるのかということを一つお答え願いたい。
  291. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 綿羊についての御質問でございますが、お答えを申し上げます。綿羊はなかなか将来性と発展性がある畜産でありますが、御質問いただけないのを残念に思っておりました。中小の農業経営を豊富、高度化して、狭い耕地でも実質上規模の大きい農家にするのには、綿羊は比較的適地であればよろしいかと思う。濃厚飼料が比較的要りませんこととか、最近の養蚕の転換に応じまして、養蚕農家の中から綿羊の導入希望が多いところから、来年度の予算は本年度の予算よりも、補助をもってする中小農の方を倍以上にいたしまして、利子補給、損失補償をいたします上おいても相当の増加をいたしました。政府が助成をいたしまして合計約三万頭は、導入いたしたいと思っておるわけでございます。そのうちの綿羊を飼う場合の農家の飼育、経営採算のことを考えなければいかぬのじゃないか、その羊毛の値段が価格変動がひどくて、去年よりも下り、また終戦後の異常に高い——と私は思っておりますが、高いときよりはひどく下っておる点ではどうだろうかということでございますが、やはり当面は副業的に綿羊を飼ってもらう。そして一頭ではいけません。一頭で一貫の羊毛ができますが、五頭くらいを基準にして飼うようにしていただきたい。あわせまして、この綿羊は日本では食肉はどちらかというと不足でありますから、肉綿羊の方もまぜて、それの方のウエートを多くして飼っていただきたい。しかし羊毛をとる目的の場合も、農家の衣料生活上の必需品に充てたり、また販路の相当確実な場合において飼っていただきたい。なお肉用羊毛のほかに、生産物としては子綿羊の生産販売があるわけであります。そういう考えをもちまして、羊毛の場合は東洋紡とかその他二カ所に緬羊協会、緬羊株式会社等の農業団体が組織する会社があっせんすることによります販路を確実にしつつ入れていきたいと思っておるわけであります。その飼育する指導はどうかということでございますが、終戦前農林省農業経営に二百万頭計画というのを立てたのでございますが、その当時からも技術員が相当中央及び地方におりますので、研修、講習さらに普及員等に教えまして、畜産会、農協等の尽力によりまして、いい農業経営の中に上手に入れた飼育を指導させることができるのじゃないだろうか、こう思っておりますが、着実にやって参るのがいいと思っております。
  292. 小松信太郎

    ○小松(信)分科員 今の局長さんの御答弁は、農家の実態をおわかりになっておらない。一頭飼うより二頭、三頭飼うように、こういう言葉もありましたようですが、そんな金がある人は酪農をやるのです。おそらく綿羊を飼う人は、農家のうちでも経済的に一番低い人なんです。ですからその一頭でさえも、決して楽に飼うというわけじゃないのです。そこから考え方が違っている。それと実は今お話しになったほかに、何か綿羊を飼うことによって、農家経済を高くしていくんだというような方策は、別にお考えになっておらないのですか。今御答弁下さっただけですか。
  293. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 第一の点は、中小農に対する家畜導入という点でございますが、お話のような点がございますから、農業協同組合がその資金で共同事業として飼いまして、農家に貸付していく。農家は現金支出が要らないような方向でいくというところに重点を置いているわけでありまして、そのような向きには、そっちの方法の範囲でお勧め申し上げたいと思うのであります。  第二の点は、御質問の意味がちょっとわかりませんが、羊毛の価格支持か、もっと値段を上げよということについての政府措置はどうかということかと思いますが、私が以上申し上げた通りであります。
  294. 小松信太郎

    ○小松(信)分科員 私の言葉が少し足りなかったのですが、羊毛は原毛がにわかに下りましたときに、今局長さんも言われました日本緬羊株式会社ですか、そこで原毛のままで農家が手離すよりも、それを毛糸のように製品として売り渡した方が、大体一頭につきまして五、六百円くらいの差額が出たわけですね。そういうふうなこともやっておるそうだという話は聞いております。しかしながらそういうことをやってくれているのは、大体今のところ日本緬羊株式会社だけらしいですね。そこで農家の希望といたしましては非常にたくさんあるらしいのですけれども、その会社の引き受け能力という面から見ますと、大体希望者の一割二、三分、せいぜい五分くらいしか応じきれない、こういう話を聞いております。この問題につきまして政府といたしましては何か援助というか、助成するような方法は考えておられるのですか。
  295. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 国産の羊毛を農家が販売されたり委託加工をされたりする場合に、政府の予算、政府資金の融資ということを三十四年度においては考えておりませんが、農林中金の資金あっせんによりお話申し上げました会社が活動力を増しますとか、紡績会社あるいは毛糸の会社等が、委託加工してまた農家へ戻って農家が自分で使用される以外は買い取らなくちゃいけませんが、買い取るような会社をごあっせんするような努力はしたいと思っております。その範囲でございます。
  296. 小松信太郎

    ○小松(信)分科員 今わが国で先ほど申し上げましたように国内には百万頭くらいしかいない、こういうように聞いておりますが、相当量の原毛の輸入があるわけですけれども、どのくらいございますか。
  297. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 国産が三十二年度で七百五十万ポンド生産されると推定されますに対しまして、輸入量は二億八千万ポンドでございます。
  298. 小松信太郎

    ○小松(信)分科員 そんなにたくさん輸入されるわけですね。そうしますと日本の毛の質と輸入する羊毛の毛の質は、輸入する羊毛の大体三分の一くらいはコリデール種ですか、日本内地のと同じもの、このような話を聞いておりますが、その通りですか。
  299. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 私は詳細には存じませんが、通説として、常識としてはそのようでございます。
  300. 小松信太郎

    ○小松(信)分科員 そうだとすると、その羊毛の奨励というものは、まだまだ当然政府としてはとるべきじゃないか。しかしながら、繰り返して申し上げますが、今のように政府として見殺しにするというわけではないですけれども、何らかの援助の手を伸べてくれぬと、これは伸びようがない。こういう形になるわけです。そこで輸入毛と内地の毛の値開きというのはどういうことになっておりますか。
  301. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 御質問に対してお答えが逆のようになるかもしれませんが、綿羊の頭数は戦前、昭和十年で五万頭でございますが、ただいま農林統計で九十一万頭、実際はこれを数割上回るような説も多いのであります。私が先ほど申しました製絨所という軍部の施設があって、国産は全部買うから、飼え飼えといった時代も、二けたの綿羊は日本ではできませんでした。その後飼育の数とか方法はそれほど十分とは思っておりませんが、農林統計に九十一万頭載っておるほどでございますから、先生がおっしゃるほど——例外も立地状況、経済状況いろいろありましょうけれども、綿羊の着実なる増加はそう心配はないのではないかと思います。  第二の点は輸入の羊毛と国産の羊毛との値段の関係はどうかということであったと思いますが、これはこの三カ年は絶えず国産羊毛の方が高いようになっておりまして、三十一年は羊毛一貫目輸入が千六百円、国産が二千円、三十二年は輸入が二千二百円、国産が二千三百円、三十三年は輸入が千四百円、国産が千八百円、こういうふうになっておると存じております。
  302. 小松信太郎

    ○小松(信)分科員 どういう理由がそういうような格差を作ったかわかりませんが、今のところ農村の現状を見ると、科学的な飼育法というものはほとんどとられていないのではないか、このように考えられるわけであります。とにかく先ほど御答弁がありましたほどの大量の輸入をしないことにはまかない切れないという現状であります限り、そうしてことに今農家考え方としても、とにかく酪農を初め畜産というものを、もっともっと大きく経営の構造の中に入れてこなければいけない、こういう非常な熱意を持ってき始めた状態なんです。ですから政府がもっと真剣に、少くとも酪農に対するくらい身を入れて、綿羊問題をやっていただけば、大きな発展を期し得るのではないか、かように考えるわけなんですけれども、そういうふうなお考えは、今のところはお持ちになっておられないのですか。
  303. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 国産品が高いのは、国産品は毛糸のシャツでありますとか、毛糸そのものとかの方に回るものが多うございまして、毛糸の手織りのものをみなが着るということが、都市、農村を通じてふえましたようなことが相当関係があると思います。またその他の関係もあると思います。用途からくる価格差が出てきておると思います。これももし大工業の輸入品を大量に使っておる工業生産の方に回しますと、輸入品より規格その他の点からいたしまして、かえって安くなるおそれもあるかと思いますが、なお研究をよくいたします。一般奨励は必要な時期において逐次着実に発達いたしますように努力すべきだと考えております。
  304. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 ちょっと私からも一言……。ただいまの御質疑によりまして、綿羊を飼う場合にいわばユニットをどうするか、単位をどうするか。今畜産局の方では一頭くらいでは何だから数頭飼わしていきたい。そのためには購入資金の供給であるとか、そういうようなものは措置ができますから、そこである程度の頭数を持たせて、その上に、御指摘がありましたが、指導よろしきを得るならば経済的に立っていきはせぬか、その方針で畜産局等も進んでおる、こういうことに御了承を得たいと思います。  そこで問題は、生産されました毛なり——主として毛でありますが、従前は製絨所で全部一手に買い上げた、しかも高価に買い上げたということで有利であったと思いますが、終戦後はそういうこともありませんので、そこで一般市場に自由な価格でもってやられますと非常に困る段階になるわけであります。でございますから、将来の問題といたしましては、経営の内部にわたっては今の通り規模をどうするか、そのやり方をどうするかということを、今後の指導方針として確立すること。第二には、生産されたものを売る場合に、綿羊組合等を総合して組織的なものにして、共同販売なり、有利な方法を今後とるべき方策として考えなければならぬと思うのでございますが、今小松さんが御指摘になった通り、福島等は非常に綿羊が多いところでございまして、非常に示唆を受けました。今後その方向でわれわれも改善の道を講じていきたいと考えます。
  305. 小松信太郎

    ○小松(信)分科員 それでは大臣にお伺いしたいと思うのですが、入ってくる毛の値段が非常に安いという問題につきましては、できるならば、外国から入ってくるうちの国内産の毛の質に似ている分くらいは——大体三分の一というようなお話もさっきあったのですから、そのくらいのところまで国内産をふやしていくためには、たとえば一つの方法といたしまして、関税を設けることによって援助する、その関税関係はどういうことになっておりますか。
  306. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 これは、輸入量と国内の生産量の比重を見ましても、片方は七百五十万ポンド、片方は二億何千万ポンド、しかもこれは国内の重要な産業でございますので、角をためて牛を殺すということになっても、日本の重要産業を阻害することになるのでございますから、やはり農村の問題は、当面の解決点としましては、共同施設等を強化してそれを指導し、その利益を増進させるということがむしろ適切ではないか、こう考えるわけであります。
  307. 大平正芳

  308. 西村力弥

    西村(力)分科員 私はちょっととっぴなことをお聞きするようになるかもしれませんが、農林行政は農民が冬休めるようなことを基礎にしているかどうか、冬休んでもいいということを基礎にして考えているのかどうか、こういうことを大臣にお聞きしたい。
  309. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 農民が過重な労働に苦しみ、いわゆる生活の面でも非常に苦しい点が多々あるわけでございますから、われわれの理想としましては、農業の作業等の能率を上げ、経営を改善しまして、朝は暗いうちから夜はおそくまで働くというようなことを避けまして、時間があまりかからないようにするということは理想であろうと思うのでございます。にわかにその理想に到達し得ないことは遺憾でございますが、農業政策としてはそういうようなことを目ざすべきじゃないかと思っております。
  310. 西村力弥

    西村(力)分科員 そういうことを目ざしておられるようですが、なかなか到達されないどころか、ますます逆行しているではないか、こう私は思うのです。農村の実情なんか見ると、冬分休めば来年の春から働くのにからだが休まっていいということになるのですけれども、そうは参らぬという工合で、ことしなんかは例年になく出かせぎに出ております。しかもその出かせぎの口のよいところがなかなか見つからないということなんです。せっかく見つけたと思うと、東京なんかに来ている人の例を見ますと、ビルディング工事のあの足場の上に上ってふるえながらやっておる。あの仕事で一日の日当が二百三十円です。このような状態なんです。私のところにたくさん来ますが、私たちはもう映画も見られない、百円も百五十円もとられるのでは惜しくて映画も見られないと言うのです。そんな状態で三カ月も四カ月も危険を冒して低賃金で働いて、一万か一万そこらの金を持って国に帰る、そういうことで農家の経済をどうにか補う、こういうようなことが深刻になってきておるのですよ。だから、ほんとうからいうと、農林省が真剣に考えられて、生産あるいは流通あるいは価格対策、そういうものによって冬の間は休んでも十分にやっていけるという方向でいくならば、そういう出かせぎや何かはやらぬでもいいはずです。そんな危険な仕事をやらなくてもいい。ところが現状ではそれがますます深刻化している。しからばいろいろな副業なんかはどうであるかといいますと、むしろやかますなんか織ったってなかなかはけない。私の県は山形県ですが、ぞうり表なんかは、一地域では、昔から相当伝統的にやっておるのですが、そのぞうり表が十足作って八十円、手間も何もありやせぬのです。わらを抜いて、それをさらす、その分はおやじがやって、あと編む方は母親とか娘とかが分担してやって一日十足どうやらというところなんです。それで八十円。そういう工合になっておるのですから、今目ざす方向というものを目ざされるならば、どうしてももっと徹底した施策をとってもらわなければならぬし、現実に冬分は休業状態で暮し得るということができない現状ならば、何とか冬季間の農業労働分には現金化する方法を農林省考えなければならぬじゃないか、ただ夏分の生産とか流通とか価格、そういうことだけで、それで農林行政が行われたというふうにはいわれないじゃないかと僕らは思う。そういう点については、年間を通じての農林政策、こういう考え方でいかなければならないと思うが、実際に、現在どういうような研究なり対策考えておられるか、そこの点について大臣の御所見を伺いたいと思う。
  311. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 農村における冬季間の労働力をどう活用するか、その間に収入を得させる道ということでございますが、これは率直に申し上げて非常に困難な問題でございまして、これが解決するなら、日本の農村はほんとうに楽しい農村になることと思うのであります。ことに御指摘になりました西村さんの御郷里の山形は、昔から出かせぎの多いところでございます。東北全体もさようであります。またがっては冬季間には、あるいは森林の作業のために北海道あるいは樺太等、さらには沿海州等に行けたような時代もあったのでございますけれども、これはもうはばまれてしまっておる。こういうことで、冬季間における農業労働の実態が非常に変って参ったということでございます。われわれとしましても、できるだけ雇用を拡大いたしたいと考えます。ことに東北方面につきましては、国有林等もありますから、その方面の配分等も考えなければならぬと思うのでありますが、率直に申し上げて、今にわかにそのように結論が出ない、ただしわれわれの方としましては、先ほど申しましたようなことを目ざして、今後この問題はどうしても基本的に考え直すということにしていきたい、また冬季間に限らず、家族労働は老若男女働くわけでございますが、その場合に、これが生活的に収入を得させるような方法も考えていきたい、これはとうてい農政のワク内だけでは解決できぬ問題でございますので、基本問題としても取り上げていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  312. 西村力弥

    西村(力)分科員 大臣のお考えが、具体的にどこの局でどういう計画として行われているか、担当の部局がありましたら一つ
  313. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 労働の配分だとか、そういう問題につきましては、今とっさの間にお尋ね下さいましても私は材料を持っておりません。従いまして、農林省等におきましても、これらの研究をしておる部局もしくは研究機関等があると思いますが、きょうは遺憾ながらとっさの間でございますので、適切な資料を出し得ないことを遺憾とします。
  314. 西村力弥

    西村(力)分科員 そういう御答弁では、意欲だけは持たれておりましても、実際上は何ら着手、進捗を見ないという工合にとれるのですが、とにかく冬季間休んでも、あの激しい労働ですから、一年間十分に生活ができるという、こういう基本的な方向でいくのが正しいと思うのですが、現実にはそういかないのですから、早急に検討して、この問題は内閣全体にわたる問題ですけれども、直接担当は農林省ですから、こちらの方で御研究をぜひ進めていただかなければならぬのじゃないか、こう私は希望申し上げます。大臣も今の答弁において御了承いただいたと思うのですが、よろしゅうございますか。
  315. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 今回法案を提出いたしまして、農林漁業の基本問題調査会等の法案も出しているわけですが、まさにこの調査会等で取り上げるべき重要な課題だと考えております。
  316. 西村力弥

    西村(力)分科員 次に、よく道路の拡張とか道路の新設、ことに都会地では道路の改修はできないものだから迂回する、そういうことから必ず農民とのトラブルが起きるのです。それについて、私たち、農民の立場だけを支持するわけには参らない。しかしまた農民の立場も、零細規模の農家ですからやはり尊重しなければならない。こういうジレンマに陥るのです。そういう場合につくづく考えるのですが、農林省では土地改良にずっと力を入れてやっていらっしゃるが、道路の新設や何かで耕地を削減される、そういう農民に対しては、そこに接続する農地の土地改良を同時に行なって、そして余裕土地を、道路のために土地を取られる農民に与えるというような工合にやったならば非常に好都合じゃないかとよく考えるのです。そうすれば新しい土地が入るのですから、道路改修のための土地買収費を土地改良の方に向けてやることもできるのじゃないか。地形によって土地改良のできないところもあるでしょうけれども、そういう気持で建設省当局と連係してやっていけば、土地改良もうまくいき、道路の新設、拡張もうまくいく。農民も自分の耕作地が減らないので喜んで協力する、こういう工合にいくのではなかろうか。こういうふうに私よく考えるが、そういう点についてはどういう工合になさっていらっしゃるか、お答えを願いたい。
  317. 伊東正義

    ○伊東政府委員 御指摘の点でございますが、道路、鉄道その他の公共施設等ができます場合の、そこで農地が壊廃しました人の問題、また残りました農地が、道路ができますことによって水路が中断されますとか、あるいはまた農道が中断されるというような問題も出て参ります。今典型的な問題としまして名神国道の問題が出ておるのでございますが、これにつきましては、われわれは予算でもある程度考えるというようなことをいたしまして、土地がそれでつぶれる人に対しましては、近所で開拓すべき土地があるなり、あるいはまた干拓地に入る希望があるなら、そういうこともする。また残った人の営農に支障がありませんように、補償でやります水路とか農道を直すほかに、農林省でも、それが原因になりましていろいろ区画整理とか何かをやった方がいいのではないか。その結果土地を生み出して、つぶれた人に与えるというようなことも考えようということでやっております。これは関係省と連絡をとってやっております。鉄道その他道路につきましても、なるべく関係省と相談して、そこに残った人の営農、またそのために土地を失った人につきましても、私の方でできるだけ世話をしてやるということも連絡してやっておるわけでございます。
  318. 西村力弥

    西村(力)分科員 代替地ということですが、代替地では——もう日本の事情からいうと、あるといえばある、ないといえばない代替地によって農民の納得を得るということは、ほとんど見込みがない状態が多いのです。補償金の問題は、これは農民の心理を十分おわかりでしょうけれども、補償金ではなかなか話がつかない。それに今伊東局長もおっしゃいましたが、今私が申したようなときに同時に連係して土地改良の工事をしたという例がありますか。私の県ではちょっと見たことがないのですが、どういう例でありますか。
  319. 伊東正義

    ○伊東政府委員 私も今すぐここで実例で出せといわれますと、もう少し調査しませんと直接のお答えにならぬのでありますが、今名神国道でやっておる例を申し上げますと、この道路を作るために、近所からこれに関連しまして区画整理をして——これは既耕地の区画整理でございます。土地を生み出しまして、土地が減った人に与える、そういうやり方一つ耕地の整備をしたいというような要求が近辺から出ております。またそれに関連しまして農道のつけかえをしてほしいというような希望も実は出ております。われわれこういうものを取り上げまして、土地改良を団体営の適債土地改良としてやっていこうということで、具体的な問題として今考えております。
  320. 西村力弥

    西村(力)分科員 せっかくそのような工合にそれぞれの仕事が省によって違っているわけですが、そういう連係はぜひ一つ大臣頼みたいと思うのです。そうすれば相当のトラブルを解消して、道路運送のふん詰まりもだんだんと解消する、こういうことになりますので、その考え方を推進してもらわなければならぬのじゃないかと思います。  もう一点だけ農地局長にお尋ねしたい。明日も百里原の諸君があなたのところに陳情に来ますが、農家が残っておるときに、その農家の通学あるいは作業に行くための道路、そういうようなものは、農家が存在する限りこの転用の許可は認めない、こういうきぜんとしたる方針を、農林省はとってもらいたいと思うのですが、いろいろな場合にぶつかってみますと、どうしても防衛庁その他調達庁、そういうところの要請に、役所の内輪同士というか、政府部内というか、そういうような立場から、農林省の農民の農業経営を守ろうという方針が軟化する、ゆがんでいるという実際によく私たちはぶつかって残念に思っているのです。極端に言えば、こういうことは軍事優先ということになる危険性を持つ。防衛庁や調達庁の方針は農民を押えていく軍事優先の傾向にいくことも疑われる。私が申しましたように、農家が存在する限り、他のいろいろの必要があろうとも農家の生活と経営の必要上農道は確保する、こういうきぜんたる態度をとっていただきたい。その点どなたからでも一つ御答弁願いたい。
  321. 伊東正義

    ○伊東政府委員 今御質問の点でございますが、私どもも、農家が残っておりまして営農に差しつかえないようにということは全然同感でございまして、農家が残りました場合に、たとえば農地解放、農道の問題でありますとか、そういう面につきましては極力便宜をはかっていくということは、これは当然考えるべきことだと思います。しかし若干つけかえましてもさして支障がないというような場合におきましては、これをつけかえるということを考えることもあると思います。また遠くに採草地が、たとえば仮定の問題でございますが離れております場合に、近所に採草地を移してやるということも考えられましょうし、なるべく便宜ははかってあげるという基本的な態度はその通りだと思います。
  322. 西村力弥

    西村(力)分科員 そのような工合につけかえをやる、あるいは遠隔の採草地、耕地というものを別の部面に、支障がないような近距離なら近距離に移すという場合に、そういう場合には関係農民の了解というものをとらなければならぬと思うのですが、そういうようなところは了解をとらずに農林省の見解で一方的に決定づける、そういうことはできるのですか。
  323. 伊東正義

    ○伊東政府委員 これはわれわれとしましては極力了解といいますか、御本人にも何かしますときには通知をするというような手段をとりまして、やっていきたいというふうに考えております。今具体的な問題となっております農道の問題につきましても、残っておる人には、何か若干の変更をするというような場合には、適当な機関を通じて知らせるというようなことをした上でやるということを考えております。
  324. 西村力弥

    西村(力)分科員 私は質問を終ろうと思ったのですが、やはり私たちが懸念しておるような工合に政府部内の一つ役所同士のなれ合い的なことで、最後は知らせるだけでそういう措置をやるということになってくると、農林省頼むに足らずという事態になってくるのじゃないかと思います。もっとはっきり了解をとってからやるのだ、こういう工合にいきませんか。そうして大臣にも僕は言いたいのだが、百里原において農地の転用を許可した去年の十二月でしたか、許可した場合条件を付した。その条件を四つばかり付しましたが、転用許可をやった。それを許可した、ただし条件は四つ、こういう出し方は、許可さえとれば条件なんか足げにされるのです。ですからそれは農林省の立場を、面子を保つための条件にすぎない、こういう条件ではだめだ。条件が満たされたならば許可するぞというような、条件の充足状況を見て許可するというのがほんとうじゃないかと思うのです。そうでなければこれはやはり一方的な強圧的な行政ということになって、しかも本来農民の味方であるべき農林省の行政としてはあるべき姿じゃないと思うのです。今の局長のお話でも、適当な機関によって知らせてやるのだ、これだけでは天下り式であって、これはいかぬと思う。私たち思うには、国家の権利というものと個人の権利というものは対等だ、はっきりそう考えなければいかぬ。そういうときに国家の必要によってただ知らせるだけで、この国民の、農民の権利というものを一方的に侵害するということは、これはあり得てはならないことだと思う。今の点についてもう一度私たちの期待するようなきぜんとした、はっきりした立場を御表明願いたい。
  325. 伊東正義

    ○伊東政府委員 農地の転用の返事を出しましたのがたしか三十三年ごろだったと思います。あるいは記憶間違いであれば訂正いたします。そのときの条件一つにありますものは、たとえばAならAという人に売り渡した農地、これをほかにかえるというようなときにはその人の承諾を得た上でやって下さいということを防衛庁に返事を出しております。今問題になっております農道は、AならAという人に売り渡したときは農地ではないのであります。これは別でございます。われわれはそのAという残った人に売り渡した農地の転用の許可の問題、これは当然防衛庁の方でその人の承諾を得た上でやっていくというふうに今でも了解いたしております。ただ農道はその人に売り渡した農地ではないのであります。これは開拓財産で国が持っておるものでございます。これを若干つけかえましても営農にわれわれが支障がないという判断をいたしました場合には、若干変更して、道のつけかえということも考えられるのじゃないかというようなことで、本人にはそれは適当な機関を通じまして通知をした上でやった方がいいのじゃないかという考えでございます。
  326. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 どうも今の農道と農地の関係ですが、こういう考え方は非常に危ないと思うのです。もうすでにこの土地は個人々々に売り渡した土地でしょう。そうしますとその土地の値打というものは、農道の位置とかあるいは学校の距離とか、そんなことに大へん影響があるのです。それを売り渡した土地だけあれば、あとは農道はどうつけかえてもいいという考えならば、これはとんでもない個人の権利の侵害になります。たとえば町の住宅なんかでも袋路に建てることは禁止されているでしょう。また道路等において非常に地価の変化が起る。それを全然農地が切り離されて、あとの環境を無視して存在するのだということを農地局長考えられるのでは、とてもこれは承服ができない。むしろこれは売り渡した当時から全部の計画ができるまでは、農林省として許可すべきではないと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  327. 伊東正義

    ○伊東政府委員 あるいは言葉が足りなかったかもしれませんが、全然その事情を無視してものを考えるということは私考えておりません。どの程度の変更かという程度の問題でございますが、今問題になっております農道というのは、実はわれわれ見ましたところでは、ほとんど営農には使っていない道なのでございます。それでその道につきまして若干つけかえをいたしましても、営農される農地はうちのすぐそばにございまして、これはその農道を使わぬでも営農できるというところにございまして、問題の農道といわれておりますもの、むしろ営農ということ以外の道であるというふうに私は了解いたしております。若干それをつけかえるということは、私どもは営農に支障ないのではなかろうかというような判断を実はいたしたのであります。
  328. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 あなたは防衛庁の局長じゃないでしょう。農林省農地局長でしょう。もう少し農民の立場に立ってものを考えてもらいたい。あなたは今の農道は使ってないと言いますけれども、一体今百里原の演習地というものは使っておりますか。個人の権利で、最後の何名かが承諾しなければ飛行場になるかならないか、わからないのです。むしろ農林省の場合は、はっきりした、買収が済んで全体の設計ができ上った場合にはこれは変化させてもいいでしょうけれども、今防衛庁が無理をして工事しておるものは、果して演習地になるかならないかのせとぎわなんです。そのとき、あるいは道路にし、あるいは他の方に牧草地なんかを持ってきて孤立させる形にしたら、あなたは防衛庁について、残っている農家を圧迫することになりますよ。これは逆だと思う。岡山県の日本原における農林省態度は非常にりっぱでしたが、茨城県の百里原に対する農林省態度はゼロです。あれではまるで防衛庁の使い者ですよ。農林省農地局長であるならば、もう少し農民の立場に立って——現にこの演習地はまだきまっていないのですから、滑走路ができていない。滑走路ができていない演習場と、農地を持っておる農家と、どっちが現実的に使っているかということを、もう少し正しい認識をもって処理してもらいたと思う。そんなことを考えているのでは、とんでもないことになります。どうですか、この点は。
  329. 伊東正義

    ○伊東政府委員 この演習場の問題でございますが、東富士演習場も実は現にいろいろ問題を解決いたしました。これも現地の方々が中に入られ、ある程度私は農民の要求も聞いて解決したと考えております。もう一つの百里原の問題でございますが、これは農林省としましては包括的にそこが飛行場として使用されることはやむを得ないというような結論に三十二年ごろでございましたか、日は少し違うかもしれませんが、そういう見地に立ちまして、ただし残っている人に売りました土地を転用する場合は御本人の承諾を受けて、その上でやって下さいという条件を防衛庁につけたわけでございます。その点につきましては私の態度は従来のままでございます。今問題になっております道の問題でございますが、これにつきましては、道ともう一ついわゆる採草地がございますが、これはむしろ私は家のそばに持ってきた方がその人の営農上便利じゃないかというふうに実は考えまして、農道を若干つけかえるということにつきましては、営農上支障はないだろうというふうに考えた次第でございます。
  330. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これ一点だけで私はやめますけれども、農道というのは残った農地所有者の便利によってつけたのではありませんか。それを農林省は勝手に多分これは使ってないからと勝手にするということでは、これは個人の権利侵害になります。やはり農道所有者に対しましても関係のある農民と十分相談して、納得の上で農道をつけかえるなり、あるいは納得の上で採草地をかえるなり、それをしなかったら残った農地は少いかもしれませんが、個人の持っておる農地の便宜をはなはだしく阻害するということが起りますから、その点十分一つ注意して処置してもらいたい。
  331. 西村力弥

    西村(力)分科員 私もやめたいと思いますが、農地局長農林省としては、防衛庁があそこに基地を設定するのはやむを得ないという判断で事を処せられる、こういうお話でございましたが、そういうことに全然無関係にやはりなさるべきではないか。あなたの方でそういう前提をはっきりきめて農地行政をやられるということになると、これは公正を欠く場合がたくさん出てくるであろう。今の御答弁からその点だけははっきりしてもらわなければならぬのではないかというふうに思います。それから原則としてはいろいろな解決策として採草地を近間に持ってきて、また農道を別に移してもよろしいという解決策の構想は、あなたの構想でいいと思うのですが、これが決定的なものだという工合に考えられると、私はいかぬのではないかと思います。防衛庁の基地設定というものと無関係考えて、これはやむを得ないのだ、それは正当なのだという前提を置かないでやってもらいたいと思う。それからいろいろな構想を立てられるのはけっこうですが、そういう構想のもとに誠心誠意あなたの方は努力せられて、そのようにいくことならば私たちは何らかまわぬですが、その構想それ事態がそのまま着手せられる、こういうような構想だけは避けていただきたい、すなわち関係住民と相談ずくで問題を解決する、かようにどこまでも進んでいかなければならぬ、こう思うのです。以上の二点について再度農林省当局としてのそういった立場に立った明確な御答弁をお願いしたい。
  332. 伊東正義

    ○伊東政府委員 その点の前提を置いて考えなければならないということでございますが、われわれの方でも防衛庁から演習場にしたいという申し入れがありました場合も、全部聞いておるわけではありません。断わっておる地点もございます。ただ百里原につきましては、だいぶ前にこれは包括的な意思表示をしておるわけでございます。ただ条件現地に住んでおる人に納得——変えます場合にはその人の承諾を得てやってほしいという条件をつけておりますが、それは踏み切ったわけですから、それはそれとしてわれわれはそれを前提として考えておるわけであります。  それから第二点でございますが、これは私どもいろいろ考えまして、これは農地転用の問題でございますが、公用の場合の考え方の問題でございますが、先ほど申しましたように今問題になっております道は、農道としての使用はしておらないというのが現状であるという認識の上に立ちまして、若干つけかえても支障はないだろうという判断をいたしまして、適当な機関を通じまして御本人にも通知するということをいたした次第でございます。
  333. 西村力弥

    西村(力)分科員 やめたいと思いますけれども農林省はあそこに開拓民として入れた。これはあなた方の方針で入れられたはずなんです。それは間違いはない。きょうあそこの青年たちが来て、平和大会で切々と訴えておりましたが、戦後家族と一緒にあそこに入って十何年の間努力をしてきた、それは言葉に尽せない努力だった、ところが、防衛庁は必要上からくるのだろうけれども、われわれを開拓民として入植することを勧めて援助してくれた農林省自体までが、私たちの立場を無視する方向にくるということは認められないと強く青年たちは発言しておった。そういう気持は何であるかというと、政治というものがほんとうに一貫した立場にないということ、あるいは私がさっき申したように国家の権利と国民の権利とが対等だという考え方、そういう考え方に立っていない。やはり国家権力が優先するという考え方に立って強引に押してきておる。あなた方がそういう工合にやられれば、行政というのはたしかにこれは法律学的にいうと強制力といいますか拘束力を持つわけです。それに対して異議を申し立てれば、強制執行の訴訟なんかやったり、さまざまなことをしなければならないことになるわけですが、しかしあなた方がそうやれば、拘束力を持ってくる。それが不当だというように国民が考えたときに、その拘束力をはねのけるためには、政治力で解決するか、しからずんば力をもって解決するか、いずれかの方法をとらなければならない。あの諸君が行政訴訟をやっても、内閣総理大臣が異議を申し立てれば執行停止はできない。内閣総理大臣は必ず異議の申し立てをする。あの特例法に基く訴訟なんかできない。そうなれば結局力をもってあなた方の権力行使を排除しなければならないということになってくるのです。だからそういう点からいっても、事を穏便におさめるためには——今おっしゃったようにこうする方が都合がいいと思うからおれたちの持っておる権限、権力をもって通告だけで実施するのだということになれば、やはり力でもって対決せざるを得ないことになるので、これはかえって解決をおくらす道であると思うのです。ですから私がここで願いたいことは、その関係住民の納得を得て、あなた方の構想はそれでよろしいと思うのですが、その構想通り解決を得た上で実施するという立場をとってもらいたい。私はその点を強く希望する。私が今申しましたことに対して答弁がありましたら、そのような答弁をしていただきたいと思うのですが、これ以上言っても前の答弁と同じようになると思いますので、私は強く要請しておくだけにとどめたいと思うのです。御答弁は局長の次第によってお願いします。
  334. 伊東正義

    ○伊東政府委員 前の答弁と一緒でございます。
  335. 西村力弥

    西村(力)分科員 それでは私たちは農林省のそういう農地行政に対して一つの疑義を持っていくだろうし、また現地住民の相当のレジスタンスがあるということをあなた方自体覚悟してもらわなければならないこう申し上げまして私の質問を終ります。
  336. 大平正芳

    大平主査 ほかに質疑はございませんか。——なければ農林省所管に対する質疑はこれで終了いたします。  明二十八日は午前十時より会議を開き、通商産業省所管及び経済企画庁所管に対する質疑を行うこととし、本日は、これをもって散会いたします。     午後七時十分散会