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長谷川(保)
分科員 それ以上あなたを責めてもなにですから、企画庁の長官とでも話してみましょう。どうもこの問題は、私が
現地でよく調べてみますと、
農林省は漁民の反対を甘く見ていると私は思うのです。先ほど来も
お話しのように、この水域は浜名湖周辺の十六の漁業協同組合の共同正漁業権が確立している
ところです。この十六の漁業協同組合のうちで、賛成しているのが十二組合でありますが、しかし問題は、数の上で十二組合といっても、実態はつかんでないのです。つまり十二組合は非常に小さな組合ということです。ではどうして十二組合が賛成しているかといえば、
現地で実際に調べてみますと、大体三つの理由で賛成しています。
一つは、この小さい漁業協同組合があります村あるいは部落というような
ところ、その地区では、農家の数が絶対的に多数だ。そのために、反対をあくまで主張すれば村八分になってしまうということだ。これで漁民が目をつぶってしまったということです。第二はこの地区の小さい漁業者でありますが、その漁民の大半は半農半漁で、必ずしも漁業に大きな経済的な依存をしておらぬというのが理由です。第三は、その大部分の組合の所在地が干拓地域から遠い、あるいは直接干拓地域に接しておって、畑になれば、田んぼになれば、すぐ先に
自分が入れるというようなこと、そしてそのために、その村では今まで漁業をやっておったよりもいい生活に必ずなるようにするから、こういうことを言っている。そういうような理由で、この地区の小さい漁業者はこれに賛成をするという形をとっているわけです。
ところが反対の方の四つの漁業組合は、漁業専業者が非常に多い。これは舞阪、新居、雄踏、入出という漁業組合ですが、専業者が非常に多い。干拓によって生活の全基盤を失うものがほとんどであります。この点は
農林省の資料でも、反対四漁業組合、もう
一つ村櫛という漁業組合を入れまして、五つで全水揚高の七〇%以上だ、こう書いてあるわけです。しかも賛成の方の小さい組合の方は、お宅の資料でも各組合それぞれ五%以下、五%以下でも、それは七〇%ですから――平均すれば三%くらいということがお宅の資料にも書いてある。これはだれが見ても一応認めていいわけです。さらにこの資料及び
現地の漁業協同組合から直接私が公式の文書としていただきましたのを調べて参りますと、
農林省の資料とおそろしく違っている。今の賛成の十二の組合で、正組合員と準組合員合せて三千四十八名というのが、お宅の資料です。この準組合員は主として肥料用のモを取っているというようにお宅の資料には書いてある。
ところが反対の四組合、これば二千百五十七名とお宅の資料にはなっております。漁協について今申しましたように公式文書による回答を私が求めまして、それによって調べてみますと、たとえば舞阪町の漁業協同組合だけでも、
農林省の資料では正組合員五百三十一、準組合員零となっております。
ところが今申しました公式文書による回答によりますと、湖面、つまり浜名湖の湖内と外洋に漁業者が分れておりますが、湖面の漁業者だけで、舞阪の漁業協同組合では正組合員が八百二十三、お宅の方でいえば五百三十一、その他の漁業従事者が、お宅の方では準組合員零となっておるけれ
ども、舞阪町漁業協同組合からの私に対します公式文書に書いてあるのを見ますと、その他の漁業従事者は千五百九十九とある。これは非常に違っている。入出の漁業協同組合で見ますと、正組合員、準組合員以外に、漁業従事者というものが五百十八人ある。これはお宅の資料に全然載っていない。正組合員と準組合員の別は、お宅の方は、準組合員というのは主としてモをとっているのだ、こう書いてありますけれ
ども、実際にそうではなくて、これは組合で違いますが、ここの地区では一年のうち七十日以上出漁するかどうかできめているわけです。いずれにいたしましても、ただいま申しましたような漁業従事者というものが、別にたくさんあるということをお
考えにならなければならぬ。これは反対の漁協の方はことに非常に多い。なぜこういうものができてくるかと申しますと、これは正組合員は組合費をかけられるからであります。それから税金の問題も当然ありましょう。そこで一軒の家で一人が正組合員だ、他はもぐりの漁業従事者である、こういう形になるわけであります。こういうものがお宅の方の資料では全然
考えられておらぬ。こういうように
考えて参りますと、この四つの漁業協同組今日は、大部分の方が漁業を専業にしているのです。もちろん半農の人もおりますが、言うに足りないほどの、
自分の家でほんのわずかのものをとるというほどの
農地でありまして、専業に近いのであります。こういうように
考えて参りますと、お宅の調査は実際とずいぶん違ったものになっている。これはお宅だけの
責任ではなくて、静岡県の
責任もあるかもしれません。静岡県があくまで県としてここをやりたいというような
ところからいっているのかもしれません。いずれにいたしましても、こういうようにこの問題の実情を調べて参りますと、この
仕事に反対の漁業従事者を含めます漁業者は五千人以上はある。お宅の方では二千何百人になっておりますが、五千人以上は確実にある。また賛成をする方の人々もしばしば私の
ところにやってきて、先生あくまで反対の交渉をしてもらいたい――賛成の漁業組合の諸君がですよ、夜しばしば私の
ところにやってきて、先生あくまで反対してもらいたい、私らはもう部落で言えないんだ、言えば村八分になる、何とか反対をしてくれ、こう言っているのがずいぶんあるわけです。これは非常におかしなことでありますけれ
ども、この賛成の湖東庄内の地区では、漁業者の方の
立場に立ってやる代議士が、政治家が一人もいないものだから、私が頼まれて一応この人たちの相談に乗っているわけです。そこで湖東庄内の地区では、私を悪魔のごとくに言うわけだ。しかるにもかかわらず、この地区で、
一つの村から選挙になると千票から千四百票ぐらい投票が出てくるわけです。このことは明らかにそれを示しているのです。その漁業者の数、そういう人たちがやはり私をあくまで支持しているという線があるわけです。それだから、
農林省の資料によると、どうも賛成の方が多いんだという
お話が先ほ
どもございましたが、事実はそうではないということを見なければだめですよ。漁業協同組合のほとんど全部は反対なんだ。けれ
ども村八分にされることをおそれて、小さい組合の人はものを言うことができない。先ほど言いました基本的人権を侵害するおそれがあるということ、生活権の問題になっているということは、このことを言っている。民主主義社会においてはそういうことであってはならない。
ところが事実はそうなっている、こういうように思うのです。私は調べて参りました資料と、
農林省の資料とがこういうように違うのだが、この点をもっと調べる御意思はないか。そうして実態を正確に把握することが大事だと思うが、その点はいかがでありましょうか。