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1959-02-28 第31回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月二十八日(土曜日)     午前十一時十七分開議  出席分科員    主査 田中伊三次君       植木庚子郎君    川崎 秀二君       中曽根康弘君    山本 勝市君       加藤 勘十君    大西 正道君       北山 愛郎君    河野  密君       小平  忠君    兼務 井手 以誠君    兼務 石村 英雄君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君  出席政府委員         大蔵事務官         (大臣官房日本         専売公社監理         官)      村上孝太郎君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (管財局長)  賀屋 正雄君  分科員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         参事官)    大月  高君         大蔵事務官         (関東財務局         長)      稲田 耕作君         日本専売公社総         裁       松隈 秀雄君         日本専売公社塩         脳部長     小林  章君     ————————————— 二月二十八日  分科員岡田春夫君、山本勝市君及び松前重義君  委員辞任につき、その補欠として河野密君、北  村徳太郎君及び阿部五郎君が委員長指名で分  科員選任された。 同日  分科員河野密委員辞任につき、その補欠とし  て大西正道君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員大西正道委員辞任につき、その補欠と  して岡田春夫君が委員長指名分科員選任  された。 同日  第三分科員石村英雄君及び第四分科員井手以誠  君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十四年度一般会計予算皇室費国会、  裁判所会計検査院内閣総理府経済企画庁  を除く)法務省外務省及び大蔵省所管  昭和三十四年度特別会計予算総理府及び大蔵省所管  昭和三十四年度政府関係機関予算大蔵省所管      ————◇—————
  2. 田中伊三次

    田中主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和三十四年度一般会計予算中、皇室費国会裁判所会計検査院内閣経済企画庁を除く総理府法務省外務省及び大蔵省所管昭和三十四年度特別会計予算中、総理府及び大蔵省所管昭和三十四年度政府関係機関予算中、大蔵省所管を議題といたします。質疑を続行いたします。石村英雄君。
  3. 石村英雄

    石村分科員 大蔵大臣お尋ねいたしますが、時間の関係がありますので、ごく簡単に、この前一般質問をしたときのことを主としてお尋ねいたします。一般質問の最後に、国民金融公庫あるいは中小企業金融公庫に対する貸付金が、そのワクと申しますか、貸付額はもちろん年々増加はしておるわけですが、増加率が下っておるということを申し上げたところが、大蔵大臣は、毎年の貸付計画額と申しますか、貸付額は大体五%ずつ平均ふえているというやり方をしておって、お前の言うようにだんだん増加率が減るというような、そういうことはないのだ、ないというか数字のとらえ方が違う、こういう御答弁であったわけでございます。なるほど貸付計画という数字はあるいは五%か六%の平均でふえていっておるように思うのですが、現実に私がとらえました貸借対照表による年度末の貸付金額と前年度年度末の貸付金額との差、つまり増加率というものは、大蔵大臣も私の数字が間違いでないというようにおっしゃった。そのように増加率が減っておる。ところが、あなたの方では、増加率は減らない、平均の五%の水準でどんどんいっておるだけだ、こうおっしゃるのですが、どうもそういう考え方は、私にはわからないのです。なるほど計画量はそうかもしれないが、現実に貸し出されていく数字は、私の言うようなことになるのじゃないか、このように思うのです。その考え方の差について、もう少し御説明をお願いしたい。
  4. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 石村君のあげられた数字は、残高としては御指摘通り数字でございます。また数字が間違っておると申したような点がもしあったら、その点はすでに訂正をしたわけであります。問題は、融資ワクが一体幾らになっておるかということではないか、同時にまた、回転といいますか、その度数というものも一つの問題である、こういうように実は思うのであります。年度末の融資残高というものよりも、総ワクとその動き状況という方がもっと大事なんじゃないか、こういうので、大蔵省なり政府なりのいつも見ております数字は、いわゆる総ワクを基準にして説明しているという状況なものですから、その残高だけをとらえて、昨年の増加率よりも少いじゃないか、こう言われることがどうも私どもにはぴんとこない、こういう意味であります。前年に比べて、やはり残高も、わずかではあるが、必ずふえておるに違いないと思います。だから、その残高の方の多い少いということよりも、融資の総ワクは一体どうなっているか、それから融資の季節的な動きというものはどうなっているか、こういうことが問題なのでございます。
  5. 石村英雄

    石村分科員 やはり私にはその考え方がわからないのです。貸付ワクと申しますか、残高はどうでもいいというわけじゃないのですが、私も残高がふえていないと言っているわけじゃないのですよ。ただ、ふえる率が逓減しておる、その増加率が逓減しておるということは、政府国民金融公庫あるいは中小企業金融公庫に対する配慮の熱がだんだんさめてきておることを意味するのじゃないか、こう言っておるのです。ところが、大蔵大臣の今の説明を聞きますと、そんな年度末の残高というものはそう問題じゃない、こういうことをおっしゃるわけなんですが、その年間に貸したから年度末にその残高になるのじゃないですか。それとも、大蔵大臣の五%というのは、年間の毎日の残高平均が五%増になっておる、こういう意味なんですか。
  6. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 残高が五%増になっておるということじゃなくして、平均の総ワクが五%ふえておるということでございます。そこで、先ほどの石村さんのお話ですが、年度末における融資残高、もう少し詳しく説明いたしますれば、四半期ごと残高というものを一つ十分御検討願いたいと思うのでございます。ただいま、そういう資料でもあれば一つ説明しないかと事務当局に言っているのですが、そういう資料が今手元にないと申しております。私は、四半期ごと融資の実際を御説明することができれば、その金額がふえておるだけに、融資状況は円滑にまたふえておるものだ、かように信じております。今の年度末の残高そのものにしても、ふえる率が前年よりは少し減っている、こういうような御指摘かと思いますが、その点はお話のような数字になっておるかもわかりませんが、総ワクそのもの平均そのものがふえている、それをじっとそのまま使ってないというような状況じゃないのです。
  7. 石村英雄

    石村分科員 これはどうも大蔵大臣と押し問答したって話にならんのじゃないかと思うのです。これは事務当局の方から御説明願いたいと思うのです。三十四年度貸付計画の九百九億八千四百万円というものの中には、やはり六百五十九億八千四百万円という回収金を使うことが入っておるわけなんですね。それは年度末だけの数字では、お前の言うように、前年度年度末との比較においては増加率が減っておるかもしれぬが、年度途中にはふえておるときがあるぞ、こういう御説明かと思うのです。それは、毎日々々貸付額は変更されていきますから、多いときもあれば減るときもあるだろうが、どこかでとらえて比較しなければ話のしようがないのです。それとも毎日の貸付高年間の総平均でもお出しになっていただいたら、前年度の毎日の総平均比較して、あるいはどうこうということができるかもしれませんが、われわれがいただいておる資料では、年度末の比較しかできないわけなんです。回収金も、これは全然別個だ、ただ新しく財政投融資で突っ込む金だけを比較する、こういうことなら話はまた別なんです。あなた方の貸付計画にも回収金を使っていらっしゃるわけなんでしょう。何といっても、一つ年度末の時点でとらえて比較しなければ、比較のしようがないんじゃないですか。そのことは、やはりその年度貸付の増大の傾向というものを年度末の金額は示すんじゃないかと思うのです。こういうことが起るのは、結局公庫が今まで財政投融資を受けているものを返していかなければならぬからこんなことになるので、今度の運用部や簡保あるいは年金の二百五十億でも、毎年、前のは全然返さなくても、これだけつけ加わっていくなら、それはけっこうです。しかし、やはり今までの分を公庫は返さなければならぬでしょう、そこに問題が起ってくる。返すものを生み出さなければならぬ。そうすると、どこかで返すだけを引き出してこなければならぬ。そこで、増加率を逓減させないというなら、結局この財政投融資金額を、返す分を埋め合せた上にさらにふやしていかなければ、私の言うようなことはできないはずなんです。過去の分を返さなくていいというなら、それはけっこうです。これは返さざるを得ないのです。それに対する配慮がないから、だんだん増加率が逓減してくるんじゃないか。  時間がないから、私の見方をちょっと申し上げますが、これは、おそらく大蔵省としては、国民金融公庫も出発当時に比べれば相当資金量がふえておる、従って、当初ごろのような増加の仕方をしなくてもいい状態になっておる、こういう考え資金計画が作られた。その結果増加率が逓減してくるということになったのではないか、こう実は私は判断しておるわけなんです。大蔵省当局はそのような見解を持っていらっしゃるかどうか知りませんが、こういう現象を説明しようとすれば、そういう理屈を考えるよりほか手がないんじゃないか、このように考えるのですが、これは理財局長関係銀行局長関係——両方だろうとは思いますが、大蔵大臣より、あなた方から説明願いたい。あなた方の知恵の入れようが悪いから、大蔵大臣があんなことをおっしゃるのです。
  8. 大月高

    大月説明員 ただいまの点につきまして、事務的な見地からお答え申し上げます。  中小企業金融に対しまして政府が力を入れておりますことは、繰り返し申し上げておるところでありまして、いろいろな公庫以外の数字についても、それぞれ制度上あるいは金額上はっきりいたしておるわけであります。その数字をどの観点からとらえるかということだと思います。今の石村先生お話は、年度末におけるバランス上の純増をもって指標としていくのが適当じゃないか、こういうお話だと思います。われわれが考えておりますところでは、金融機関として中小企業のためにどれだけの金をその年度間に流すかということが、質的な面から申しまして、大切なことだと思うのであります。純増ベース考えますと、かりに新しく百貸し出しまして回収が九十あるといたしますと、十という差額が純増として出てくるということになろうかと思います。それに対してわれわれがとっております態度は、百という貸し出しがどういうように中小企業金融のために役立つかというように見ておるわけであります。その回収の九十という数字は、過去のある時点において中小企業のために役に立った金だと思いますが、それが役に立った結果、逐次御用済みということで返って参ります。その点は、特に中小企業金融に寄与しておる、寄与しておらないという点から申しますと、中立的に考えてもいい。しかし、ある時点において中小企業に対して役に立つ金というのは、新しく出ていく百に該当するものだと思いますので、そういう積極的な意味におきまして、純増ベースをとらないで、その年度における貸出総額をとる、こういう立場をとっておる次第であります。
  9. 石村英雄

    石村分科員 新しく追加された分だけだ、こういうことなんですが、中小企業の金を借りる方の者からいえば、以前役に立った金であろうが何であろうが、次に借りる人にはそれが役に立つわけなんです。やはり中小企業全体に対する貸付金がどれだけあるかということが問題だろうと思う。回収金は役に立ったものだから、それは考えなくてもいいというのはどうかと思うのです。あなた方は、何も十分だと考えてあまりふやさないようにしたわけではないと思う。新しく考え数字だけで、過去のものはそれで用事が済んだからどっちでもいいのだ、こういうことだと思う。しかし、その金はやはり中小企業に役に立っておるのです。また今後も役に立ててもらわなければならぬわけです。ある人は、金を借りてそれを返して、もう今後は借りる必要がないからこれでけっこうだということがあるかもしれませんが、まだ数多くの金のほしい人がいるわけです。国民金融公庫貸付希望額に対する充足率は一体どのくらいですか。
  10. 大月高

    大月説明員 大体におきまして、四〇から五〇%程度充足率になっております。
  11. 石村英雄

    石村分科員 四〇%ないし五〇%という充足率にすぎない国民金融公庫資金なんです。これは、私のような数字のとらえ方がいいか悪いかもっと検討を要するかもしれませんけれども、現在の中小企業、特に国民金融公庫のような中小企業というよりは零細企業生業資金というものを対象にしている公庫なんかは、年度末の残高での比較のそういう私の数字のとらえ方にしても、それが逓減でなしに逓増するという形に資金量をふやすことがむしろ必要ではないか、こう私は考えるわけです。大月さんは事務当局立場から見て、私のとらえる数字における逓増の必要はない、やはり逓減していい状態にある、こう御判断なんですか。
  12. 大月高

    大月説明員 中小企業全般といたしましては、必ずしも中小公庫あるいは国民公庫融資比率のみによって考えるわけにはいかないと考えるわけであります。他に民間金融機関もございまして、政府金融機関はむしろ補完的な作用を営むわけでございます。従いまして、その年度々々の特性に応じまして、中小企業のために政府の使う金は変ってくる、こういうふうに考えております。たとえば、三十二年度のように、金融の引き締めでもありますようなときには、民間中小企業に向う金はなかなか十分ではあるまい、そういう意味において特別に増額をしたということもございます。三十四年度見通しから申しますれば、金融は逐次緩慢な状況になる。そういたしますと、中小企業に回る金も相当潤沢になってくるであろうというのが一般的な見通しでございまして、そういう見通しのもとにおいては、補完的立場にございます中小公庫のウエートというものはある程度減ってもかまわない、しかし、政府立場といたしまして、中小企業に対する政策には力を入れるという意味におきましてさらに充実する、そういう意味におきまして本年度も五%増加を見ているわけでありまして、民間金融とあわせて考えますと、三十四年度中小企業金融はずっと楽になる、こういうふうに見通しているわけであります。
  13. 石村英雄

    石村分科員 河野さんが見えましたから、私の判断では大蔵省はきわめて冷淡であるという結論だけを申し上げて、次の問題に移りたいと思います。  いま一つ一般質問で問題になった点は、日本銀行銀行券発行保証限度、それぞれの担保物件の問題に対して大蔵大臣はきわめて消極的な御答弁をなさいました。日本銀行から相談があって初めてやるのだ、大蔵省がこの法律による措置で主導的に動くということは今まではなかった、こういう御説明なんです。今まではあるいはなかったかもしれませんが、日本金融政策大蔵省が直接やれる唯一といっていいものはこれだと思います。もちろん日本銀行に対する業務命令ができるというような条項もありますが、日本金融政策を根本的にきめてしまう唯一のよりどころは、日銀券発行保証限度担保物件の種類によって限度をきめるということ、これが金融情勢に及ぼす影響というものはきわめて大きいものだと思います。これに対して大蔵省が、日本銀行から言ってきたら、そのとき初めていいとか悪いとか返事をしますという態度は、やはり問題ではないかと思う。これでは、政府というものは金融政策に対して全く主導権を握っていない、一切がっさいあげて日本銀行だ、政府にはそういう消極的な責任しかないという判断で行動しておられるということになると思います。私は日ごろの通貨政策金融政策について日本銀行にまかしておかれるということはけっこうだと思うのですが、しかし、根本的な立場は堅持して日本銀行に臨まなければならぬのではないか、また一般金融界に臨まなければ、政府としての責任は果せないのではないか、こう考えるのです。大蔵大臣はやはり何もかも日本銀行のやることをあとで追認したり、認証というような、俗な言葉で言えば、ノーズロース的な態度金融政策に臨まれるのですか。一般通常の場合、日本銀行にまかされることはけっこうなことだと思います。根本的に将来を見通して、どうするかということは、やはりあくまで政府責任であると思います。決して日本銀行責任ではないと思います。その責任を果す、表現するものはこれだと私は考える。やはり消極的な態度でお進みになるのですか。
  14. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 別に消極的ではございません。御指摘通り政府責任において処理して参りたいと思います。
  15. 石村英雄

    石村分科員 そうすると、この間の一般質問のときの御答弁は、あれは言葉の表現がきわめてまずかったという意味に理解していいわけなんですね。
  16. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 通常状態においての普通の事務の取扱いのお話をしただけでございます。
  17. 石村英雄

    石村分科員 それに対する根本的な現在の情勢から見て、あの保証限度をどう変え、どういう方向に持っていこうとしておるか。最近のあの保証限度は、御承知のように、以前の内閣時代にあまり無定見無方針であったために、金融の現況にただ追従するためにああいうやり方をするよりしょうがなかったと思うのですが、大蔵大臣はしばしば金融正常化ということをおっしゃるわけですが、あの保証限度のそれぞれの比率について何か変ったことを近くおやりになるお考えがありますか。問題点は、貸付を保証充当する金額が、三十一年の終りから急激に増加しておるということが問題点だと思うのです。金融正常化考え、あるいはかつての三十一年、二年のようなことを繰り返さないというお考え大臣にあるのならば、あの分はどうするのか。あれが幾らでもあとから既成事実が作られて、貸付金を保証充当してやる分を追従的にどんどんふやしていくという措置は今後はとらない、現在非常にふえておるわけですが、あれをうんと減らす方向に持っていく、そうして安易にあの分はふやさないというお考えがあるかどうか、一つお示し願いたいと思います。
  18. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 安易にふやすかどうかという、別に言葉じりをとらえるわけではございませんが、そういう考え方はもちろんございません。問題は、こういう金融の問題あるいは通貨に関する問題という事柄については、その発言には十分注意をすることは申すまでもないことであります。ことに最近のような経済情勢の進展の状況等を勘案して参りますと、通貨のあり方あるいは御指摘になりますような問題について、いかに処置するかということは、十分慎重に情勢を見きわめて対処すべき問題でございます。今日非常にルーズにするとか、非常に厳重にするとか、引き上げるとか、引き下げるとか、こういう論議は、私としてはこの機会には慎しみたい、かように考えております。
  19. 石村英雄

    石村分科員 なるほどそういうことも言われると思うのですが、大蔵省は、金融状況について非常に心配して、いや正常化しなければならない、オーバー・ローンを解決しなければならないということをいっていらっしゃるわけです。ここで大蔵大臣が、あの保証限度充当限度についてはっきりしたことをおっしゃれば、銀行貸付態度というものは非常に変ってくると思うのです。それを今ここでは言わないというのでは、指導にならないと思うのです。これだとやはり銀行は今まで通りにうまく貸していこう、足らなければ日本銀行にかけつけて借りさえすればいいのだという考えになります。ですから、私は大蔵大臣を援護して申し上げているのですから、一つはっきりしたお考え方向をお示し願いたいと思います。
  20. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 抽象的また原則的なことはしばしば私どもの意見を申し述べております。従いまして、関係機関としては十分了承しているところであります。また、経済界におきましても、その傾向については十分了承しているのであります。また、私どもは、政府として検査なりその他の機会にそれぞれの指導をいたしておりますから、その点は万遺憾ないわけでございます。
  21. 石村英雄

    石村分科員 もうこれでやめますが、ただ今までというものが、すべて追随的に行われておって、あとから正常化とか何とか、たまに何か輸出がばかに多くて余ったときには、すぐ正常化したとか何とかいって、一カ月や二カ月ですぐひっくり返るようなことを喜んでいるというような状況だからこんなことを申し上げたわけですが、これ以上押し問答をしても、おっしゃらぬのでありますから、しようがない。これでやめておきます。
  22. 田中伊三次

  23. 河野密

    河野(密)分科員 私は簡単な問題を一つお尋ねをしたいと思いますが、昨年の九月二十六日の第二十二号台風によりまして、東京都内赤羽の旧被服廠跡の土手がくずれまして、死者八名、傷害二名、家屋全壊八戸、半壊五尺、一部損壊三戸という被害が出たのでありますが、その跡始末の問題について伺いたいと思います。  関東財務局が当面の責任者としてお当りになっておられるのですが、関東財務局では、この損害をどの程度に見積られたのでありますか、これをまず承わりたいと思います。
  24. 稲田耕作

    稲田説明員 お答えいたします。赤羽地区被害につきまして、御案内のように、がけがくずれましたので、いろいろ災害復旧のことについて各方面と相談をいたしまして、百八十三万円で一応二月十三日をもってその工事を完了いたしました。
  25. 河野密

    河野(密)分科員 私が伺いたいのは、工事を暫定的に百八十三万円でおやりになったということでなく、被害全体をどういうふうに推定されておりますかということを伺いたいのです。
  26. 稲田耕作

    稲田説明員 お尋ね被害全体の問題につきましては、なかなかむずかしい事情がございまして、たとえて申しますると、同じがけ地におきましても、国有のがけ地民有地が非常に入り組んでいるというような状況がございます。また、がけの上の方は、御案内のように、駐留軍に提供いたしておりました関係もございまして、被害の全貌の把握がきわめて困難でございます。われわれといたしましては、できるだけ災害応急復旧という点に重点を置きまして、百八十三万円で一応工事を行ったのでございます。
  27. 河野密

    河野(密)分科員 私のお尋ねしているのは、全体の損害額をどのくらいと見積っておられるかということなのですが、お答えがないのです。そこでお尋ねしたいのでありますが、百八十三万円で一応の防災工事をなさったというのでありますけれども、この防災工事は応急的なものであるとわれわれは見るのであります。これは根本的にやらなければ危険であるということはお認めになっておるわけでしょうか。
  28. 稲田耕作

    稲田説明員 災害復旧といたしましては、百八十三万円でできるだけのことをいたしたと思っております。しかし、百八十三万円で復旧をいたしましたが、がけ地のことでございますので、将来に対しましては、またこの間の二十二号のような異例な状況が起りました場合は、必ずしも安全とは言えないのではないかと存じます。
  29. 河野密

    河野(密)分科員 この間の二十二号台風は異例であるからがけくずれが起ったのであって、あそこは、そういう事態が起らなければ、大体今の防災工事で完全だとはお考えになっておるわけじゃないでしょうね。どうなんですか。
  30. 稲田耕作

    稲田説明員 お説の通りでございます。必ずしも安全だということは言い切れないのでございます。
  31. 河野密

    河野(密)分科員 現在、あのがけの下に百四十三世帯あるわけであります。私も現地を数度にわたって見たのですが、現在亀裂が生じていて、いつくずれるかわからない状態になっているので、百四十三世帯はいつも危険に瀕しているような状態であります。従いまして、もしあのままに放置しますならば、ことしの雨期を迎えたなら、また同じような災害が起らないとは何人も保障できない状態にある。これに対して、関財局としてはどういう処置をおとりになるつもりでありますか。どういう御計画でありますか。これを承わりたいのです。
  32. 稲田耕作

    稲田説明員 ただいまお話のありましたように、災害復旧をいたしましたほかに、亀裂を生じておるところがございます。警察の方面から、赤い旗で標示しておる地域があるのであります。あの団地は大体八万坪ございまして、いわゆる第三地区と申しておるところでございます。駐留軍に提供中でありましたが、この間解除になりました。非常な住宅適地でありますので、日本住宅公団、公営住宅、あるいは都の住宅協会というような関係機関より、住宅適地として払い下げをしてくれという申請が参っております。私どもといたしましても住宅適地であるということを十分考えまして、このがけくずれの地帯の第三地区につきましては、住宅関係機関に払い下げを予定いたしておるのでありまして、現に日本住宅公団より当面の地区につきまして早く予備調査をいたしたいという申し出がありましたので、立ち入りを許しました。ただいま住宅公団におきまして予備調査及びその他の関連工事において調査をいたしておるところであります。
  33. 河野密

    河野(密)分科員 問題は三つになると思うのですが、災害を受けたところの防災工事を早く完全にどうしてやるかという問題と、それから被害を受けた者に対する補償義務者は一体だれであって、補償するのかしないのかという問題、それから将来に対する対策をどうするかということでありますが、まずその防災工事については、今お話がありましたように、住宅公団等にまかせてやらせるのだ、こういうことでありますが、先ほどちょっと私が伺いましたように、あすこは非常に危ない状態にある。これだけ私がここで申し上げて、もし災害がこれから起ったならば、これはもう大蔵省責任を免れることはできないと私は思うのですが、この二十二号台風災害の原因はどこにあったかというふうにお考えになるか。さらにその補償の問題についてどういうふうに責任をおとりになるのか、この問題を一つお伺いしたいのです。
  34. 稲田耕作

    稲田説明員 ただいまのお尋ねの点にお答えいたします。災害の原因についてのお尋ねでありますが、実は、がけくずれの起りました地区につきましては、昭和二十四年でございましたが、一応土どめをいたしておったのでありますが、地盤が脆弱なために、今度あんな不祥事を起したものであります。あの地盤はいわゆる沖積層と申しますか、非常にやわらかい地盤になっておるように見るのであります。二十四年に一応の土どめの工事をやっておるのでありますが、足かけ十年たちまして、その間接収されて提供いたしておったのでありますけれども、三十一年の十二月十日に、がけの部分だけが返還になっておるような次第であります。  それから補償の問題でお尋ねでありますが、これは災害関係の一般の問題に関係がございますので、関係各省にいろいろ相談いたしまして、また本省において検討を加えておるところでございます。
  35. 河野密

    河野(密)分科員 あすこに進駐軍が駐留しておりまして、その間にいろいろあそこの木を切ったり排水溝を埋めたり、そういうことが今度の被害を大きくした大きな原因になっておるということを地元では言っておるのでありますが、大蔵省はそれはお認めになるのでしょうか。
  36. 稲田耕作

    稲田説明員 ただいまお尋ねの点ございますが、そういうお話も承わっております。調達庁と私ども一体になりまして、ただいまこういう原因がどうしてできたかということにつきまして徹底的に調査中でございまして、ひいてはこういうことが二度と起らない予防の対策につきましても何か得るところがあると思いまして、今徹底的に調査中でございます。
  37. 河野密

    河野(密)分科員 そうすると、補償の問題は現在大蔵省で調査するとともに考えていらっしゃるわけですね。准駐軍にも相当の責任があるという結果がおそらく出るのだろうと思うのですが、そういうことになれば、あなた方の方でも補償の問題をお考えになっておる、こう理解してよろしいでしょうか。
  38. 稲田耕作

    稲田説明員 ただいま調達庁各方面と私の方で調査いたしておりますのは、災害防止という点に重点を置きまして原因を調査中でございますが、補償の問題につきましては、これは問題がまた新たなる観点から検討されなければならないのではないかと思っております。一般災害につけまする補償の問題として、これは本省において研究中であると私ども承わっております。
  39. 賀屋正雄

    賀屋政府委員 ただいまの御質問について補足的に本省としてお答えいたしたいと存じますが、ただいま御質問のございました補償の点について、果して政府責任がありやいなやという法律的な見解につきまして、必ずしもはっきりとした結論が出ておりませんので、ただいま法務省とその点について協議中でございまして、政府責任が明確にあるという結論になれば、もちろん直ちに補償をいたしたいと考えております。
  40. 河野密

    河野(密)分科員 補償の問題はそれで非常に明確になりましたが、私たちの理解するところによれば、また地元民の考えるところによれば、先ほど私が申し上げましたように、土手をささえておる木を進駐軍が切ってしまった、あるいはそこの排水溝を埋めてしまった、石炭がらをそこに置いた、あらゆる悪条件が重なって、従来一ぺんも被害のなかったところが今度の二十二号台風に限ってその惨害を起した、こういうことになりますと、私は政府にその責任のあることはこれは明確だと思うのでありますが、なお、それは御調査になるのはけっこうでありますが、御調査になった上において適当の処置を講じていただきたい。  それから、将来の災害防止の点について、これは先ほど申し上げましたように、百三十四世帯の者が現在戦々きょうきょうとしてそこに住んでおるわけでありまして、あるいは住宅公団の住宅がその上に建てられた場合には、優先的にそれらの人々を入れるとか、あるいは何とか特別な考慮が払われるべきだと私は思うのでありますが、その前に百八十三万円ですかで応急的な復旧工事はしてある、それで満足すべきものではないということはお認めになっているわけですか。これは幾らになるか存じませんが、そのがけ下に住んでおる百三十四世帯の者が安心して生活ができるように十分なる対策を講ぜられなければならない、もし対策が講ぜられない前に何らかの事態が——現在亀裂が生じているのです。私も何べんも行って見ておりますが——起ったとすれば、今度は大蔵省責任はいや応なし、待ったなしだと思うのでありますが、どれだけの積極的な防災工事をなさるつもりであるか、そういう計画はどうなっておるのか、これを最後に一つ承わっておきたいと思います。
  41. 稲田耕作

    稲田説明員 災害復旧工事といたしましては、前に申し上げました百八十三万を使用しておりますが、ただいま、御案内のように、住宅適地でありますので、住宅公団からの申し込みがあります。従いまして、住宅公団の宅地造成の一環といたしまして、また関連工事といたしまして、住宅公団におきましても積極的にこの問題に協力する意思を示しております。この排水工事というものにつきましても、十分な注意をして行うということを住宅公団の関係者も言っておるような次第でありまして、今後住宅公団並びに関係の向きと密接な連絡をいたしまして、排水工事その他につきまして、再びこういうことが起らないように慎重に措置いたしたいと思っております。また時期の問題が非常に重要な問題でありますので、前に申し上げましたように、国有財産地方審議会の答申を待って、住宅公団に払い下げを決定するというようなことでありますが、立ち入りの許可がありましたので、事前の調査を兼ねまして、ただいま住宅公団が調査を行なっておるところであります。われわれとしましてもできるだけ早く方針を決定いたしまして、積極的に、現実に住宅公団において、関連工事あるいは宅地造成の工事として、排水工事その他が急速に行われるように措置したい、こう考えております。
  42. 河野密

    河野(密)分科員 念を押しておきますが、その住宅公団に払い下げるときに、現在ある災害復旧防災工事をするということを条件にする、それを期限を切っておやりになるということを当然おとりになる、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  43. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま、先ほど来の御意見なりまた当局の答弁なりを伺っておりまして、事態について私どもも十分知悉していなくて大へん御迷惑をおかけしておるように思いますが、現場について応急的な百八十三万の工事はしたということでございますけれども、なおそれが非常に不十分だという御指摘でございます。この点につきましては、私の方も至急調査をいたしまして、その実情に対していかなる措置をとるべきか、あるいは亀裂が生じておるといわれても、災害がすぐ起るというものでもないかもわかりませんし、そういう点は十分調べて、危険があるようでしたら直ちに措置をとるようにいたさせます。いずれにいたしましても、現地を十分把握いたしましてその措置をとることが第一のように思います。  それから第二の問題として、接収解除後の土地使用等の問題は、今後のいろいろな計画事項でございますから、その際にまた基本的なものを考えることは当然でございます。今日そのがけ下に住んでおられる人たちの生活の不安、そういうことを御指摘でございますが、そういうこととは別に、この方は恒久的な施設として十分考えて参りたいと思います。  それから先ほど補償の問題についてのお話がございました。大へん大きな被害を生じ、人命事故まで起しておる、大へんお気の毒に思いますが、先ほど来のお話で、原因等が那辺にあるかこれは別といたしまして、災害をこうむられた方については、心から御同情申し上げる次第であります。ただ、補償するかしないかということになって参りますと、やはり国でやります場合におきましては、十分筋の立つことでないとなかなか結論が出るものではございません。その点は先ほど管財局長が申し上げておりますように、関係のところと十分ただいま協議中でございますから、それはその方にしばらくおまかせを願いたい、かように思います。
  44. 河野密

    河野(密)分科員 けっこうです。
  45. 田中伊三次

    田中主査 次に北山愛郎君。
  46. 北山愛郎

    ○北山分科員 大臣はお忙しいようですから、簡単に要点だけ質問をします。  この前、税の問題についていろいろ押し問答をしたのですが、どうしても納得ができないのです。全体を通じて、今度の減税というのは実質から見れば減税じゃなくて、特に低額所得層に対しては逆に増税ということになるんじゃないか、こういうふうに思うのですが、大蔵省政府資料から見ましても、今度の改正案による所得税の負担額、これの軽減というのは三万円以上です。これが軽減の影響を受けているので、二万円以下というのはほとんど恩典がないのです。そういう資料が出ております。この資料によるとそういうことになっておる。一方ではガソリン税の大幅な増徴がある。これは当然バスとかあるいはその他の運賃あるいはまたガソリンを使うところの農業その他の産業にも影響してくる、大衆に転嫁される、こういうふうに思われるので、そういう点から見ると、今度の税制というのは大衆には恩典がないんじゃないか、低額所得層には恩典がないんじゃないかと思うのです。この前の三十二年のときの一千億減税にしても、当時の政府説明は、これは低額所得層を中心にしてやってきた、こういう説明でございましたが、そのあとで出した昨年の経済白書によると、やはり結果は六十万円以上の所得層が恩典を受けているのだ、こういう政府の報告があるわけなんです。ですから、政府の白書によって、当時の政府の言明というものは間違いであったということがはっきり言えるのですが、今度の場合も、こういう資料から見ても、どうも大衆には恩典がないんじゃないか、こう思うのです。そこで、この全体について今御指摘申し上げたように、大体所得税の軽減の方は、二万円以下の層にはほとんど軽減にはならないんじゃないかということを政府としても認められるのじゃないか、またガソリン税その他いろいろな物価の値上りという面から見ると、むしろ大衆の方の負担が苦しくなる、こういうふうに見えるのです、この予算案全体を見て。大蔵大臣その点はどうなんですか。
  47. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 減税と申しますのは、とにかく税金を納めておる人に対しての減税でございますから、今御指摘になりました少額所得者で今まで税を納めておらない人というものに対しては影響のないことは、これはもう御指摘通りであります。しかし、今回の減税によりまして、いわゆる税を納めなくて済む階層はとにかく拡大されるということでございますから、その意味において、個々の個人対象よりも、税を納める国民層といいますか、こういうものを見た場合に、やはり国民負担は総体として減税になっている、こういうように御理解をいただきたいと思います。しからば、零細収入の方々に対してどういう措置があるか。これに対しては、非常に極端なものに対しては、いわゆる生活保護から始まる各種の社会保障制度というものがそういうことに彼立っていくのだ、かように御理解をいただければ、この点はわかるだろうと思います。いわゆる減税という以上は、とにかく税を納めておる人が対象になる、これはその通りであります。そこで御指摘になりますガソリン税の引き上げ、これは納税者だろうが、納税者でなかろうが、同じように負担になるのじゃないかという御指摘で、今回の減税は相当の所得を取る人にのみ便益を与えて、その他の者にはこの意味では税制改革は災いする、こういう御指摘だろうと思います。今回のガソリン税の引き上げが運賃の値上げということに直ちになるといたしますれば、あるいはそういうような御批判もできるかと思いますが、もともと財政計画なり、あるいは予算の実施という場合におきまして、個々の階層についてどういうような対策を立てるかということももちろん具体的に考えて、先ほど申すような社会保障制度、最低は生活保護から出発して、あるいは各種の年金なり、あるいは保険制度なりというものが順次整備される、こういうことでカバーされるということで御了承いただきたい。同時にまた経済そのものを伸展させ、国民総所得を伸ばしていくというか、拡大していくという、この観点に立って総合的に一つ見ていただきたいと思うのであります。  そこで問題は、今回のガソリン税の引き上げが運賃値上げを直ちに招来するかどうか、こういう問題になると思います。私どもは、この点ではいろいろの議論をいたしておると思います。直接運輸業を取り扱っております運輸当局の意見はまだ私どもは聞いておりません。聞いておりませんが、運賃値上げの一つの基礎条件とでも申しますか、それが、ガソリン代が高くなれば、運賃構成上変るということもいえるのでありますが、同時に運賃構成には幾つもの条件がありますから、ときにプラスの条件もあるし、マイナスの条件もあると思います。たとえば、マイナスの条件といえば、車自身が安くなるとか、あるいは非常に耐久力が出てくるとか、あるいはまた道路が整備されてガソリンの総使用量が減っていくとか、あるいはモビール・オイルの使用も変っていくとか、あるいは部品の取りかえがよほど変っていくとか、こういうことになってみると、一面にやはりマイナスというか、減ぜられる面もあるわけでございますから、やはり総合的に、一体この負担はどういうふうに影響するかということを十分考えてみないと、直ちに運賃に転嫁して、その結果大衆負担の増になる、こういうことには実はならないと思うのであります。ことに、走っております場所にも非常によるのでありまして、山地と平坦地、あるいは都市と山村というようなことになると、いろいろ運賃の構成は、どういうことが適正かということは十分検討していかなければならぬと思います。この一面、ガソリン税を引き上げる場合においては、ガソリン税を引き上げた場合に、それがそれだけの負担力ありやいなや、こういうことが一つの問題になっておるのでございして、その負担力ありというところからガソリン税の引き上げを計画した。同時にまた、ガソリンを上げましても、ただいま申すように、これは真ちに運賃引き上げ、そういうことにはね返るということは、少し結論としては早過ぎやしないか、今回一五%程度のガソリンの値上りといわれておりますが、運賃構成に影響するところを見れば、まあ二、三%程度じゃないか、こういうようにも言えると思います。先ほど来申すように、減の面をいろいろ工夫してみますと、運賃構成、そういうところから判断をすべきものだ、かように考えます。従って、大衆の負担にならないような工夫は、当然私どもとしてもいたさなければならないし、そういう意味で十分留意して結論を出していくということでございます。御了承いただきたい。
  48. 北山愛郎

    ○北山分科員 了承はできぬですね。それはガソリン税だけの問題じゃなくて、どうも岸内閣というのは、あらゆる物価を、公共料金なんかをどれもこれもみな上げようとしておる。現在の経済の中で、国民の立場から見て一番問題なのは、賃金の格差、企業の格差、産業の格差、あるいは所得の格差がひどくなってきておることです。国民生活全体として非常に階級性が激化している。こういうことを緩和するのが政府の施策でなければならぬし、三十四年度予算というのは、そういう点に重点を置かなければならぬと思うのです。ところが、税については、ただいま大臣の言われた通りで、税を納めてない階級は減税の対象にならないと言うけれども、税の中には間接税もあるですから。そういう大衆に転嫁されるような方は遠慮なしに上げていく。そうして、所得税のようなものは、所得税を納めていない階層は当然関係がないというような格好でやっていくということは、私は納得できないと思うのです。すでにバスについても料金を上げちまったんですからね。それから私鉄の料金も上げた。私鉄会社の経理内容を見ると、一割三分から一割五分の配当をして、そうして百パーセントの償却をして、その上に東急のごときは、年間に百億くらいな投資を関係産業にやっておる。そういうような余裕がある企業に対して、運賃を上げさしておる。これは当然大衆に影響があるわけなんです。そのほかに大衆生活に関係のあるいろいろな問題があるのです。砂糖についても、砂糖の関税を上げて消費税を下げる、こういうことになっておるのです。これは一斤について二円ばかり違うのですが、そういうことはやはり砂糖の値上りを招くんじゃないか、こう思うが、この点もお伺いしたい。  それから、時間がありませんから急ぎますが、いわゆる所得の中でも、配当所得と勤労所得、こういうものを比べた場合に、あまりに不公平がひどいんじゃないか。夫婦と子供二人で百万円の年所得のあるものに対する税金は一体どうかという比較を聞きたいのです。配当所得の場合の百万円と、それから勤労所得の場合の百万円と税金はどれくらい違うのか。配当については、御承知のように税額控除が二〇%ありますから、ものすごく税金が安くなるはずなんです。一体どういう比較になるのか、そういう事態を残しておいていいのか。われわれからするならば、働いて得た所得に対する税金はできるだけ安くして、寝ておって、株の配当で得るような資産階級の所得に対する課税は高くするというのが常識じゃないかと思うのですが、その辺のところはどうなっておるか、その比較を示して、その理由をお聞きしたいのです。
  49. 原純夫

    ○原政府委員 ただいまの後段の百万円の所得に対する何でありますが、所得百万というよりも、給与所得の場合の収入百万円というような形でおっしゃっていると思います。そうしますと、いつぞや差し上げました「租税及び印紙収入予算の説明」というのの附表、三十七ページ以下に、給与所得、事業所得について出ております。まず、給与所得者で夫婦、子二人とおっしゃいましたが、これは三十八ページにありますごとく、現在十二万八千六百七十五円の負担であります。それが改正案によって平年度十一万八千六百七十五円となり、一万円軽減になるということであります。しからば所得百万円の事業者で同様な家族構成の場合はどうなるのかというのが、四十ページの終りにあります。現在十六万五千円。先ほど給与所得者について申し上げましたのは十二万八千円余りでありますが、これは十六万五千円の税がかかります。改正案によって一万円下りまして十五万五千円になるということであります。これは給与所得控除、社会保険料控除というようなもので勤労者に有利になっていることは、御存じの通りであります。第三の配当で百万円の収入があるというのは、これは御存じであろうと思いますが、配当控除というものがあります関係で、配当収入だけの人は所得税がかかりません。これも御存じだと思いますが、配当というのは、法人の企業で生れた所得を分けてもらう分である。その法人企業で生れた所得に対しては、やはり法人税で原則として三八%という税がかかっております。従って、その残りの配当であるから、さきに納めた法人税と通算して総体の法人税、所得税を合せての税負担率が、個人企業で納める場合とバランスがとれるように——この前提をとることの可否についてはいろいろ議論があると思いますが、そういう建前で配当控除というものができている。従って、改正前の現行法におきましては、配当だけの収入ですと、百四十九万円までは所得税がかからない。改正後になりますと、これはたしか百六十五万円程度になる予定でございます。ただいま申した建前のことで、この辺いろいろ問題があると思いますが、これはやはり税法として相当突っ込んだ理論に立った問題で、単純に悪いとも言い切れないので、今度税制調査会で検討いたします大きな項目の企業課税についての重大な問題点になろうかと思っております。  なお、最初にお話のありました砂糖に対する砂糖消費税と関税との振りかえの際に、一円九十六銭上るという点でございますが、確かにそうなるのでありますが、財政全般が非常にいろいろな財政需要をかかえておるという際でありまするし、本来この振りかえがテンサイ糖業を保護しようというためにスタートした——テンサイ糖業がだんだん伸びてはきておるけれども、食管にありましても、二、三十億の保護が要るという状態になってきたわけであります。そこで、これを税の振りかえで大きく、大らかに保護すると同時に、その際必要な二、三十億というものを一般財源から出すか。あるいは砂糖のワク内でまかなうかという、いずれをとるかを考えたわけでありますが、その結論としては、やはり一般財政需要は相当苦しい、三十五年度は特にまた苦しくなるというようなことも控えて、砂糖のワクの中でこれをまかなうということもお認め願えるのではなかろうかというふうに考えたわけです。つまり輸入糖が百十万トンから二十万トンある。テンサイ糖が十万トンくらいある。テンサイ糖を加えた全体の百二、三十万トンを減税いたしますと、やはりその分をカバーするには若干関税を高めに取らなければならない。結局そういうことで、テンサイ糖の保護費がその中で自動的にまかなわれるということに実質的にはなるわけであります。そのような考え方で、今回の措置をとりたいということでございます。
  50. 北山愛郎

    ○北山分科員 今の配当所得者と勤労所得者の場合の比較ですが、百六十五万円までの配当でやっていくような家では、所得税は一文も払わなくてもよろしい、しかし働いて百六十五万円の所得がある者は何十万円も税金を納めるということは、税の理論、取る方の理論からいえばいろいろ理屈はあるだろうけれども、取られる方の普通の国民の常識から言うならばおかしいのじゃないですか。真反対じゃないか。さかさまじゃないか。いずれにしても、こういうふうな税制は、資産家を擁護する税制になっておるわけであります。働いておる者には不利な税制なのです。従って今のように、所得の格差ができ、一方では富める者がふえ、その一方では貧乏な人がたくさんふえるというような現象を来たしておる一つの原因は、こういう税制にある、これだけははっきり確認できると思います。きょうはもう時間がありませんから申し上げませんが、いろいろ問題はあるのであります。とにかく、岸内閣というのは、どうも物価を上げることについては遠慮ないように思える。特に大衆の生活費が非常に上ってきておる。ことに住居費が上ってきておる。これは都市その他宅地がどんどん上ってきているせいなのです。税の上から宅地が値上りすることを防止するような方法がないかというふうに考えてみると、やはり不動産を譲渡する場合の超過所得分を税で捕促をするというようなことを考える必要があるのではないかと思う。ところが現在の税法から見れば、取得価格その他経費を差し引いたあとのたしか半分に対して課税をしておるのです。そういうことをせぬで、その土地の値上りによって受ける利益の相当部分を取り上げるというような税制にしたならば、不動産の投資であるとか、そういうものを防ぐことができ、自分は何もしないで、自分の土地が値上りをすることによって不労所得をする者を防ぐことができる、こういうふうに思われるのですが、こういう点について、宅地の値上りを防ぐという政策の上から、現在の制度を改正するお考えはないか、これをお伺いしておきます。
  51. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 どうも岸内閣は物の値をつり上げ、物価値上げをやる、バスも上るとか、私鉄も上るとか、ガソリンも上げた、こういうような話であります。非常に大衆について理解の薄い政治をしておるという御非難でございますが、御承知のように、今回は間接税の相当多額に上る減税もいたしております。物品税の改正、これはただいま御審議をいただいておりますが、これなどは、今御指摘になった点から見ると、なかなかよく考えてくれている点だろうと思います。あるいは入場税の軽減しかり、あるいはまた退職金についての大幅な基礎控除を考える、これこそは勤労階級の人たちからも非常に喜ばれるものだと思います。総体としての政治のあり方、これはもう社会党だろうが、自由民主党だろうが同様でございます。生活の向上、また福祉国家の建設というか、もっと楽な繁栄のできる社会を作るということが理想でございますから、一がいに何もかも引き上げて苦しめるのだという表現だけは、少し御訂正を願いたいと思います。  次に、宅地の問題について、これは御指摘通り、やはり土地というものが限定されている結果から非常に値上りを招来する、こういう意味で居住費の増加ということを御指摘になっております。これらに対しては、土地の値上りそのものもさることですが、やはり住宅を整備するということが——特に予算の面におきましても、今年は前年に比べて相当の増額をしておる。公営住宅なり、あるいは直接の政府自体の住宅施設なり、あるいは民間資金等につきましても、住宅金融公庫等の協力によってその方に特に力が入っているということを御了承いただきたいと思います。  また税そのものの問題から見まして、先ほど配当所得についての御批判がございました。一部において確かに御指摘になるような理論も成り立つように実は思います。しかし現在の建前は、先ほど主税局長が申しますように、配当所得そのものはすでに法人でも課税されておりますし、勤労階級に支払われる賃金の場合でありますれば、これは会社の経営費でございますから、税はやはり勤労者の手に移ってからかけるということであり、勤労者に対しては相当の生活向上等のめんどうを見ているという建前でございます。しかし、その建前ではいかにも納得がいかぬと言われる。これはそういうこともあろうかと思います。これは基本的にいろいろな理論もあることであります。今回預金利子について課税をするようにいたしましたのも、ただいま言われるような点から少しわれわれも考えてみようという一つの構想の現われであります。これだって税法のもとに返すということではございませんから、税の特別措置の観点に立ちましても、これは長くやるべきじゃないというので修正を加えたということをいたしておるのでございます。これらの点を総合的にお考えを願いまして、二、三の点についての評価などで全体の御批判を伺いましたので、一言申し上げざるを得ないという立場でございます。
  52. 北山愛郎

    ○北山分科員 しかし、物価については、昨年来岸内閣のやってきたところを見ると、当然そういう結論になると思うのですよ。米価から、国鉄の運賃から、バス料金から、私鉄の運賃から、あるいは今度電力もそうだというふうな、一連の系統から見るとそういうことになる。そういう点についてはもう遠慮をなさっておらない。入場税なんかの軽減もしたように見えますが、これなんかも百円以下あるいは五十円というような層については恩典がないというような案を出されておる。ですから、ちょっぴりそういうことはやるけれども、根本に配当課税におけるような基本政策があるから、これほど貧富の懸隔なり所得の格差が開いてきているのです。ですから、私ども立場からするならば、現在の日本経済というものは、全体として大きくなってきておるけれども、内部の構造においては非常なひずみを生じておる。このゆがみを直さなければならぬというのが政策の重点であるべきである。そういう点からするならば、今度の予算あるいは税制なんかは、まことに不十分どころか、やはり今までの方針を踏襲してきているのです。このままの予算では、さらに階級性がひどくなるのだ、こういうふうな印象を受けざるを得ない。  ほかにいろいろ問題がありますが、中小企業金融について大臣は、本年は千五百五十五億というような大幅な政府の機関による資金を出しておるのだ、こういうことを言われますが、これは知らない人が聞くと、千五百億ばかりふやすように聞えるのですけれども、中身を見るとそうじゃなくて、大部分が回収金の運用金がふえたのであって、政府資金を見るとはっきり出ておるのです。国民金融公庫中小企業金融公庫でたった十五億ですよ。数字を申し上げると、国民金融公庫は二百三十五億の政府資金が二百五十億になった。中小企業金融公庫の方は昨年の二百七十五億が今年も同じだということで、両方合せましてたった十五億円政府資金がふえただけなんだ。あとの部分は自己資金がふえたんだ。そういうふうな点を見るならば、中小企業金融については、ほとんど政府資金を出すというような配慮をしておらない。逆に開発銀行、電源開発、輸出入銀行というようなところに対しては、大幅にふやしておるわけなんです。特に輸出入銀行については、政府資金が、昨年が八十億であるものを三百六十億に何倍にもふやしておる。電源開発は三百四十四億に対してことしは四百億、開発銀行は三百二十五億に対して四百五十億というように、政府資金の配分については、いわばこういう大きな産業を対象にするような機関に対しては大幅にふやしておきながら、中小企業に対しては十五億しかふえておらない。これがこの数字の示すところじゃないですか。そうじゃないですか。
  53. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 数字は御指摘通りでございます。やはり中小企業に対する融資の総ワクというものが意味があるのでございまして、千五百五十五億は、いずれにいたしましても、その融資ワクとして意味のあることだ。それからもう一つ申し上げたいのは、中小企業と大企業を対立的にごらんになる、これもけっこうでございます。確かに対立的な分野もあるのでございます。しかしながら、同時に大企業と中小企業との関連性というものがございますから、言いかえますならば、たとえば電源開発の事業をやるといたしますと、大土木会社ばかりが事業がふえるわけではございませんので、やはり中小の土建業者もこういう工事費がふえることによって恩典を受ける、あるいは製鉄事業についても同様のことが言える。下請関連産業というものが、親産業の育成拡大によって、やはり恩恵を受ける、こういう点も見ていただきたいと私は考えるわけであります。
  54. 北山愛郎

    ○北山分科員 それは従来、今大臣がおっしゃったように、大企業のパイプを通じて中小企業にそれが流れてくるというようなコースをとるような政策がとられておったから、現在中小企業金融の窮迫がきているのです。政府資金としての金融政策からするならば、やはり中小企業直接の資金というものが必要なんです。そうでなくたって民間資金だって大銀行に集まる。そうしてそれが大企業の方に流れるという傾向にあるのですから、特に中小企業に対しては、政策としては中小企業直接の金融ワクをふやすということに中心が置かれなければ、大臣が千五百五十五億と言ったことは、少しおかしいんじゃないかと思う。この点は大臣御訂正願いたいと思うのです。
  55. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 なかなか訂正をいたしません。さらに私どもから申せば、農林や住宅関係資金も拡大している。これなどは、言われる中小企業というかそういう面に特に力をいたしておる結果だ、この数字一つお認めを願いたいと思います。
  56. 北山愛郎

    ○北山分科員 時間がありませんからこれ以上申し上げませんが、やはり今度の予算も本当の性格においては前と同じような予算であり、またある部分はひどくなってきているような感じがする。経済の企業の格差、産業の格差がひどくなっておる現状において、中小企業なりあるいは農林漁業なり、おくれたような産業に対しては、まことに冷淡な予算であるという印象は、大臣がどんなに言われましてもぬぐうことはできない。これだけを申し上げまして、私の質問を終ります。
  57. 田中伊三次

    田中主査 それでは午後は正二時から開会することといたしまして、暫時休憩いたします。     午後零時四十六分休憩      ————◇—————     午後二時十九分開議
  58. 田中伊三次

    田中主査 休憩前に引き続いて会議を開きます。  質疑を続行いたします。大西正道君。
  59. 大西正道

    大西分科員 きょう見えているのは大蔵省の監理官ですか。それから総裁と塩脳部長ですね。塩田整理の問題についてお伺いいたします。法案も出ておりますし、今回予算措置も講じられているのでありますが、塩田を整理されるようでありますが、これはどういう理由、どういう見通しでこの塩田の整理をされるのか、概括的な説明を聞きたいと思います。
  60. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 食料塩の全量を自給する必要があるというので、昭和二十五年の閣議決定がございまして、日本専売公社といたしましては、食料塩の増産に努力して参ったわけであります。その間、従来の入浜式塩田を新しい方式であるところの流下式枝条架式製塩に変更をいたしました。この流下式とか枝条架式というのは全く新技術でありまするし、また、天然現象にも支配されるというような関係上、そのヘクタール当りの生産量の見通しをつけることがなかなか困難であったわけであります。当時といたしましては、ヘクタール当り百八十トンくらいの見通しを立てておったのでありますが、次第に生産量が上って、二百トンもあるいは二百五十トンもとれるというようなことになって参りまして、最近におきましては、現在許可しております設備がフル稼働をいたしますと、百二十五万トンないし百三十万トンの国内塩の生産が上る、こういう状態になって参ったでのあります。一方、国内塩の需要の方面を見ますと、約百万トン程度でございますので、国内塩が過剰の状態になりました。もっとも、工業塩としては依然約二百万トン程度の需要がございますので、これに振り向ければ消化の余地はあるのでありますが、工業塩の方は、もっぱら安い輸入塩にたよっておりますので、内地塩をそれに向けるということになれば、それだけ公社の会計が赤字になるということになります。しかし、この過剰の状態を放置しておきますと、国内塩の生産全体が混乱をする。そうして公社は在庫がふえて非常に赤字が増大をする。これは国民経済にも大きなマイナスになりますので、この際、塩の過剰設備を整理いたしまして、そうして残った塩業者の基盤を強化する。それによりまして公社の塩会計の赤字も解消するというような大きな意味において、日本の塩業政策全体を見通しまして、非能率的な製塩業者から順次これを整理していく。残ったものは合理化された基盤の上に立って、将来塩業を続けていく上において明るい見通しが立て得るように、また、公社としての塩会計の面におきましても、合理化、正常化をはかる、こういうような趣旨から塩業の整理を計画いたしました。これにつきましては、公社総裁の諮問機関といたしまして塩業審議会というものが従前からございますので、それにも諮りまして、その意見も参酌して計画を立て、必要な予算を計上し、この国会に塩業整備臨時措置法という法案も提出をして御審議を願っている次第であります。
  61. 大西正道

    大西分科員 流下式に切りかえず、全部入浜式であったときには、年間幾らの生産量がありましたか。
  62. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 流下式に切りかえ始めましたのは昭和二十八、九年度からでございます。今割合がどうであったかということの数字は持っておりませんが、二十八年度は四十五万四千トン、二十九年度が四十五万三千トン、ほぼ同じでございます。枝条架式、流下式塩田がふえて成績が上って参りましたのは三十年、三十一年度にかけてであります。三十年度には五十九万四千トン、三十一年度には六十七万トン、こういうような収納実績をあげております。三十二年度は八十六万九千トンでございます。三十三年度の見込みといたしましては百八万トンということになっておりますので、とにかく入浜式から流下式、枝条架式に切りかえ、しかもそれがあとになるほどだんだん成績が向上してきた、こういうふうに考えられるわけであります。
  63. 大西正道

    大西分科員 入浜式でありますと年間四十五万トン、これではとうてい国内食料塩の百万トンはまかなえない。だからここに製塩の革命的な方式であるという流下式を採用し、また枝条架を採用し、そして百万トンに達する努力をした。これはまことにけっこうなんであります。そこで、入浜式を流下式に切りかえる際に、あなたの方では大体百八十トンの予想であったと言われるのでありますが、二十八年を単位といたしますと、全塩田を流下式に切りかえるとほぼ百万トンで国内の需要をまかなえる、こういう見通しであったのですか。
  64. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 入浜式よりも流下式の方が塩の生産量も多く、効率も高いからしてこれに切りかえることを勧めて参ったのでありますが、やはり公社が自分で事業を行うのでなくて、塩田業者に理解せしめて必要な経済的な援助を実行して参りますので、全部が全部なるというふうには考えられなかったのであります。
  65. 大西正道

    大西分科員 当時の構想として、既存の入浜式の塩田を全部流下式に変える——もちろん何年かの年次計画のもとにやるわけですが、そういう構想のもとにやられたのか、その幾らかでもやってみよう、そこそこのところで何とか手を打とうということではなかったと思うのでありますが、そこの見通し、計画であります。
  66. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 私からちょっとお答えさしていただきますけれども、流下式枝条架方式によって一ヘクタール当り百八十トンという生産力を推定いたしました当時におきましては、大体四千五百町歩程度の塩田の中で、単位として流下式にするのに不適当なもの二、三百町歩を除きまして、四千二百町歩前後を流下式や枝条架式に転換する。そうすると、大体百八十トンと計算しまして、大体七十五万トンくらいの計算になるわけであります。それに、当時問題になっておりました錦海湾が大体五百町歩、それで九万トン、それで大体塩田製塩としましては全部で八十五万トン、それに入浜式として流下式に転換し得ないような立地条件にあるものが一万五千トン、温泉熱利用が三万トン、それから機械製塩が公社の小名浜を加えまして九社で二十一万トン、そこで百十万トンという数字が出て参るわけでございまして、当時想定しました塩の需要は、大体人口がふえる程度にある程度ふえていくとすると、百十万トンくらいの需要になりはせぬかということで、需要、供給ともに百十万トンで均衡するというふうな予定であったようであります。今、当時の書類を繰り返してみますと、そういうふうな数字になっております。
  67. 大西正道

    大西分科員 それではもう一つ聞きますが、現在流下式に切りかえたのは、初めの計画通り四千五百町歩ですね。このうち初めの計画通り、二、三百町歩を除いて、ほぼ完了したということになるわけですか。
  68. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 大体そういうことになります。
  69. 大西正道

    大西分科員 ところが、今度は整理ということになりますと、一体どの程度の——これはトン数によって整理の基準が立てられておるのだが、これを塩田の広さで考えますと、どの程度の整理を考えておられるか。
  70. 小林章

    ○小林説明員 私からかわってお答えいたします。今回の整理の計画は、予算では三十万トンという計画になっております。そのうち十万トンは機械製塩で、二十万トンは塩田整理、従って塩田整理の方のヘクタールでは千四百町歩ということに相なっております。
  71. 大西正道

    大西分科員 そうしますと、塩田整理の対象は千四百町歩、こういうことですね。ところが今の監理官のお話では、四千五百町歩のうち、二、三百町歩を除いてほぼ流下式が完了した、こういうことになる。そうすると、この整理の千二百町歩の中には、すでに流下式に切りかえたものも含まれておるということになるが、その通りですか。それはどの程度見込まれておるか。
  72. 小林章

    ○小林説明員 ただいまの御質問はおっしゃる通りでありまして、先ほど監理官からお話ししました入浜で残っておるもの以外はすべて流下式になっております。
  73. 大西正道

    大西分科員 だから、それは何町歩ぐらいになるかということを聞いておるのです。
  74. 小林章

    ○小林説明員 流下式の方が約千町歩、あとが入浜式ということになっております。
  75. 大西正道

    大西分科員 そうしますと、たくさんの補助を出し、あるいは農林中金その他の低利融資をやって、そうしてせっかくこの流下式に切りかえたものを一千町歩も今回整理する、こういう不手ぎわは何としても私は納得がいかないのであります。早い話が、こういうふうに整理をするというのであれば、わざわざ金をかけて入浜式を流下式に切りかえる必要はなかったのではないか、私はそう思うのであります。この点についてはどういうふうにお考えですか。
  76. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 枝条架式、あるいは流下式というものは、先ほども申し上げました通り、全く新技術でありまするために、ヘクタール当りの生産量の見込みを立てまするのに非常に困難を感じたわけであります。しかもある程度自然条件にも左右されます。災害等がありますと、なかなか予定通りの生産も上らないというわけであります。それから当初はむしろ条件の悪い方を比較的早く流下式に切りかえさして、そうしてこの条件のいい方に少しでも早く追いつけさした方がいいということで、流下式を勧めた勧め方からいいますと、条件の悪い方が先であったように思います。従って、その当時においては流下式に変ったけれども、そう急激な上昇はなかった。だんだんその条件のいい地方に及ぼすに従ってますます流下式によるもののヘクタール当りの生産量がふえていったというわけでありまして、いずれにいたしましても、新しい製塩方法を採用するに当りまして、その生産量の的確な把握について遺憾な点があったということは認めざるを得ないのであります。
  77. 大西正道

    大西分科員 一ヘクタール百八十トンから二百五十トンというこの開きは大へんな開きであります。百八十トンというふうな推定をされる場合に、これは何かの厳格なテストをして、それを基礎にしてこの増産計画を立てさせなければならぬと思う。それが一トンや二トンや十トンくらいならいざ知らず、二百五十トンというような大きな開きというものは、これは私は塩業政策を立てる場合に、許すことのできない問題だと思う。それも、そのために千町歩——これは私はこれに要した国の補助金あるいはその他の低利融資によるいろいろな金高を計算いたしますと、どの程度になるか、これもまた一つお伺いしたいと思うが、これは莫大な経費であります。これが切りかえて一年か二年、いなもっと早くなればもう二、三カ月で整理の対象になることも考えられる。こういう不手ぎわは、私は見込み違いであったとか、あるいは条件の悪いものからやったから条件のいいのが出てきてどんどんたくさん塩ができたというようなことでは、説明にもならぬし、その責任も果せないと思うのです。私は総裁がタッチされる前から、この流下式に切りかえる場合の国の補助を出すことにつきまして、どういうところからまず補助を出すべきかということを論議したことがあるのです。社会労働委員会において、これは労働者を擁護する立場からいろいろ論議をしたのですが、そのときにも、条件の悪いものからまず流下式に切りかえてみよう、そうしてその条件のいいものに追いつくようにしようなんという、そんな方針を公社から承わったことは私はないのです。あるいは偶然に条件の悪いところが先に多く切りかえられたかもしれないけれども、そういうことでもって、この百八十トンから二百五十トンの見込みの違いから生じたところのこの国家の損失、業者の大きな犠牲というものを、単なる国の政策の転換だということだけで、補助金を出せばいいということでもってこれを説明し尽すことはできないと私は思う。あなたはこの前にも、たびたびわが党の委員からこの問題につきましての質問があったときに、まあ見込み違いであった、新しい試みであったからそれはやむを得ぬと言われるけれども、その影響するところがすこぶる大きいと私は思うのでありまするが、ただ単なる見込み違いで相済まぬということよりも、もう少し何か責任あるあなたの対処を私は望みたいと思う。御見解いかがですか。
  78. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 新しい技術でありますので、もちろん公社といたしまして、小さいプラントを作って試験をいたしまして、大体の見込みを立てたわけでありまするが、枝条架の場合等におきましては、枝条架の面積だけから生産量をはじき出すということが非常に困難であります。同じ枝条架でも、その間隔のいかんというようなことがかなり塩の生産量に響いて参るわけです。また土地によって季節風の影響も相当ございますので、その地方の平均風速というようなものから算出いたしましただけでは、実際に立てた枝条架が、局部的であって、その地方特有の季節風が吹くというようなことになりますとまた計算が違って出てくる、こういうような関係がございまするので、この辺非常にむずかしいということは御理解をお願いしたいと思うのであります。しかし、また結果的にこういうふうに違って参ったのでありますから、当時それを立案した者の生産力の把握が正しかったとは決して申し上げかねるのでございまするけれども、それにはいろいろな事情があったということと、それからやはり計画をする場合にはある程度の安全率というものも考えるのが普通でございまするし、さらに冒頭に申し上げましたように、当時はできるだけ早く食料塩の全量を自給しようという大きな命題を負荷されておりましたので、その目的達成ということが頭にこびりついておると、つい計画が、大きい方に間違うか小さい方に間違うかといえば、安全率を見積って早く達成したい、こういうようなことになりがちにならざるを得なかったのじゃないかと想像するわけでございます。
  79. 大西正道

    大西分科員 枝条架の間隔が狭かったとか広かったとか、季節風の問題などということは、それはもちろん影響することはありましょう。見込み違いということもありましょう。しかし二十八年に初めて流下式を実施してから今日まで数年たっておる。その間に、その生産がどのくらい上っておるかということに対して、全体として計画を絶えず検討することは当然なんです。それをやらなかったのですか。数年間何らそういうものに対して手直しをしなかったのですか。それは初めての計画であるからいろいろな思い違いもあることは当然です。だから当然そういうことが起きれば、これは初めの見込みが少し違っていやしないかという検討はされるべきです。その時間的な余裕は数年間あったのです。二十九年、三十年、三十一年、三十二年、その間一方では平気でどんどん流下式に切りかえるためのいろいろな補助政策をそのまま続けておる。これは、あなたの言われるような思いも寄らぬところの条件が出てきたからということでは、なかなか納得のできない問題です。これはあなたもお認めになってよろしいと思うのです。今日この整理のために、国は八十七億という莫大なる金を支出せざるを得ない。しかもそれだけではない。業者はやはり自己負担において市中銀行から金を借りて、それの減価償却もできない今日、さらにこれをぱっさりとやられる。こういうことになることを考えると、一つは国の経費の面から、一つは業者を守る立場からこういうずさんな計画をそのままやられた専売公社の責任というものをこの際とくとお考えにならなければならぬと思う。こういうことであるなれば、将来の塩業政策、今後機械製塩、それから合成樹脂膜の製塩、こういう新しいしかもコストの安い方法が続々と出てくるのに、そういう見通しも私は公社なんかにまかしておけないという感じがするのは当然だと考えるのであります。当時の責任ある地位にあなたはなかったかもしれない。しかし、今はあなたは専売公社の責任者として、この事態をどういうふうに考えられるのでありますか、言い抜けではなしに、責任ある態度の表明を願いたい。
  80. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 先ほども申し上げましたように、二十八、九年から流下式に転換したのでありまするが、塩が増産されまして食料塩の全量を自給し、それをオーバーするであろうという見通しがはっきりして参りましたのが、三十一年でございます。従って三十一年で食料塩の全量自給の目的は達したのであるからして、それから後増産になるような設備改良は差しとめる、それから新規の製塩の許可はしない。なお増産されて参り、しかも食料塩をオーバーする分についてどうしたらいいかという塩の対策というものは、三十二年の当初から公社として計画をして参ったのであります。しかし、これはなかなか関係するところも多いし、重大な問題でありまするので、にわかに結論が得られないで、三十二年の暮れに至って塩業者との間にある程度の話し合いと申しますか、了解事項ができまして、そのときに塩業者の方々も、この状態であればやはり過剰塩の整理は必要であるということを認めるに至った。それからどうしたら将来の塩業政策を確立することができるかということについて苦心を重ねて、ようやく成案を得て、国会に予算なり法律案なりを御審議を願うという段階に到達したというわけであります。
  81. 大西正道

    大西分科員 経過のことをあなたに聞いてるんじゃない。経過はそういう経過であっても、あなたの責任を聞きたいということを言っているのであります。しかし、これはこれ以上伺いますまい。今のお話ですと、三十一年にようやくこの調子ではオーバーするということがわかった、こう言っておるのであります。そうしますと、三十一年以降は流下式に切りかえる場合に、どの塩田も流下式に切りかえる要請さえしてくれれば、流下式に切りかえることを全面的に方針としては奨励してきた。しかしオーバーすることがわかったとすれば、流下式への切りかえに対して何かの指導をなさったのですか。将来弱小塩田は整理されなければならぬというような見通しのあるものについては、ことさらに流下式に切りかえる必要はないという、そういう指導はなかったんじゃないかと思いますが、いかがですか。
  82. 小林章

    ○小林説明員 三十一年五月に総裁談話を発表されまして、先ほど申しましたような、これで百十万トンの食料塩の全量は国内で自給できるということになりましたので、その後は新規の許可をしないということにいたした次第であります。なお流下式の転換につきましては、従来から計画のあった分は、これは当然——百十万トンになると今言いましたのも、そういう計画でいけば百十万トンになるということでありましたので、その計画の分はその後もやらしております。なお三十二年の末に塩業者との話し合いをつけました際にはっきり、今後は許可または許可に準ずるもの以外のものは許さない、こういうことにいたした次第であります。
  83. 大西正道

    大西分科員 許可というのは、入浜式を流下式に切りかえるという許可ですか、それとも新たに塩田を起すという許可ですか。
  84. 小林章

    ○小林説明員 その両方です。
  85. 大西正道

    大西分科員 そうしますと、今ほとんど流下式に切りかえられてしまっておるのですが、三十一年の末、すでに全塩田四千五百町歩のうち、あるいは二、三百町歩を除いては、全部塩田は流下式に切りかえ申請をし、そういう許可を与えておったわけですか。
  86. 小林章

    ○小林説明員 そういう計画になっておったということを申し上げたのであります。
  87. 大西正道

    大西分科員 計画と許可ということはだいぶ違うんですが、そういう計画であっても、許可は取り消しはできたんでしょうね。
  88. 小林章

    ○小林説明員 最後のこまかいことは私は一々ただいま存じておりませんけれども、百十万トンにつきましては、その計画にあるものを入れての百十万トンということを申し上げたのであります。
  89. 大西正道

    大西分科員 その三十一年の際に、これでオーバーするというときに、例の岡山の錦海湾の許可がされておる。これは業界からもいろいろと不信と疑惑の声があげられておるし、私どもも実に了解できないのであります。錦海湾の開発を入れて、九万トンの増産を計算に入れて、それでとんとんだ。こういう説明をおそらくなさるであろうと私は思うのであります。しかし、三十一年にオーバーするといいましても、その見通しはもう三十年、二十九年から徐々に見えていたはずです。新規の塩田を開発する必要はなくして、既存の塩田を切りかえることにおいてむしろこれはあり余るのでありますから、そういう観点から見ますと、三十一年のオーバーということがはっきり見えたときに、何がゆえに新たに膨大な錦海湾の塩田の開発を許可されたのか。
  90. 小林章

    ○小林説明員 ただいま先生のおっしゃった通りでありまして、百十万トンの中には錦海塩業の分も入れて百十万トンになる、こういう計画になっておりました。これで今後はもう許可する必要はない、こういうことに相なったのであります。
  91. 大西正道

    大西分科員 すでにそのときに既存の塩田でも百八十トンから二日五十トンの増産の差があるのです。ですから新たに錦海湾の塩田を開発しなくても、既存の塩田を開発して、これを統合して大規模なものにしていけば、優にあり余るということは容易に想見されるときに、こういうものを入れたということに対しては非常な疑惑が持たれる。これは当然であります。しかもこの錦海湾は、そういうふうに既存の設備でも流下式に切りかえることによって十分まかなえるというさなかに、これが突如として許可された。しかもこの膨大な金の半額は、全国の業者から半強制的な形でもって出資せしめておる。こういう事実を見ますると、私はこの錦海湾の開発というものは何としても納得できないのであります。錦海湾の資本金は幾らでありますか。その半額は全国の零細塩業者から半強制的な形で出資せしめておる。どうしてもできない者は、いまだに出し渋っておるところがあるが、これは私は業者から聞いたのですけれども、泣き泣き出しております。自分の首を締めるための出資であります。こういう事実に対してどういうようにお考えになっておるか、総裁に伺いたい。
  92. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 錦海湾が計画されましたのは二十八、九年のころでございます。そのころはまだ生産量が四十万トンから五十万トン台でありましたので、先ほども申し上げましたように、食料塩の全量自給を達成するという大使命から申して、これの計画を進めてもよろしいであろう。こういう考えに当時の関係者がなったわけであります。ただ、これは海面に堤防を作って、干拓をして塩田を作り、さらに煎熬工場を作るということでありまするので、計画をしてから実現するまでの間に相当の期間を要するということは免れない仕事だと思います。
  93. 大西正道

    大西分科員 出資の問題は……。
  94. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 出資につきましては四億円であって、非常に広く全国の塩業者が出資して成り立っておるということを承知いたしております。
  95. 大西正道

    大西分科員 どのくらいの割合ですか。
  96. 小林章

    ○小林説明員 ただいま総裁が申し上げましたように、現在の払い込みは四億でございますが、出資口数は六億になっております。組合員は二百数名でございます。どのくらいの割合か今覚えておりませんが、二百数名の組合員が出資いたしておる、こういうことになっております。
  97. 大西正道

    大西分科員 今の総裁の話では、計画は二十八年にやった。しかし許可は三十一年にやったのでしょう。もちろん計画は二十八年だから、そのときは海のものとも山のものともわからぬということは了とします。しかし、許可するときには、すでにオーバーするということはわかっておったと思う。だから、これは計画したからというて必ずしも許可する必要はないと私は思う。こういうふうに、一方では弱小塩田の整理ということが当然わかっておりながら、片一方ではこれを許可する。しかもその弱小塩田から出資せしめる。出資者二百何人という中の半数は、全国の弱小塩田業者です。こういうところに私どもは非常な疑惑を持つわけであります。そういうことをもっと政策的にいえば、統一した見通しのない塩業政策であったといわざるを得ないのであります。私はむしろ八十七億というたくさんの経費をかけて既存の流下式塩田を整理するよりも、この際まだ稼働していないところの錦海湾を中止したらどうか、こういうことを思うのですが、いかがでありますか。
  98. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 食料塩の全量自給を達成し、それがオーバーするという状態を確認するに至りましたのは、三十一年の末であります。従って、三十二年の初めから塩業対策を真剣に立てなければいかぬということで、関係方面との協議を開始したわけであります。なお今日の段階において、錦海湾を整理すると申しますか、あるいは工事を差しとめると申しますか、あるいは許可を取り消すという問題でありますが、このことは三十二年に塩の根本対策につきまして塩業者と協議いたして参りましたときにおいても、いろいろ問題が出たのでありますが、終局的には、既許可のものについては、稼働しておるものであろうとあるいは未稼働のものであろうと同一に取り扱っていく。そして整理は広い視野からして非能率、不採算的な塩業から整理したらいい、こういうような一つの方針が打ち出されましたので、公社としては、その方針を具体化するという方向で進んでおるわけであります。
  99. 大西正道

    大西分科員 塩業者との十分な了解のもとに計画を立てた。こう言われるけれども、御承知のように業者は専売公社の目の色を見て、戦々きょうきょうとしているのですよ。そういう業者に対してあなたがやんわりと言われても、それは半分命令に聞えるのです。そのことは十分おわかりの通りであります。ほんとうの声はわれわれに聞えてくる。こういうことをされて泣いておるのですよ。しかし、いやといえばすぐ圧迫がくる、こういうことをいうておるのですよ。ですから、業者との話し合いといっても、あなたの前で業者は自分らの思うままのことを言いませんです。だから、なんぼ業者と話し合いをしたからと言われても、これは民主的に業者の意見を十分尊重して聞いたというわけには参らぬと思う。それは公社が錦海湾の開発ということを強くいえば、それにたいして反対する者はおりませんよ。だからといって、それがすべて納得した非常によい姿だというふうに私はとれない。私はこの問題は、錦海湾の今の稼働していない事実を見て、むしろこれは他に転用すべきだ。そして既存の業者の整理というものを、統合とかその他の方法でもって生かすべきだと考えるのです。  それから、ここに八十七億の補償金が予算化されておりますが、この内訳はどういうふうな内訳になっておりますか。
  100. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 八十七億の整理に要する経費の中身といたしましては、事項としておもなものが五つばかりございます。その一つは施設の関係、これは塩田の土地の上にございます流下板あるいは枝条架等から煎熬設備に至るあらゆる施設でございますが、この設備の現在額から処分見込み額を引いたところの、いわゆる今度の整備によりまして施設が減価する部分につきまして積算をした金額が五十九億、約六十億ばかりでございます。それから従業員が離職することになるのでありますが、この従業員の退職金として積算されておる金が約四億五千万でございます。それから今度の整理に特に必要とする清算費用について約一億七千万円の金が積算してございます。その他塩田製塩業については、その特殊性にかんがみまして、これらにのみ特殊な二つの積算項目がございまするが、一つは塩田をその最も一般的な転用の形として農地に転換する場合を擬制しまして、その農地造成費の一部を見るということで十二億円ばかりが積算してございます。それから塩田製塩業者採鹹人という特殊な階層に対する転業資金のごとき意味において八億三千万ばかりの金額が積算してございます。その他金利に相当します——これは今度の整備につきまして、従来の整備の前例あるいは塩業審議会の答申によりまして、残存業者の共助金を引き当てにする分がございますが、これが実質的には塩業者が農林漁業金融公庫等の金融機関からの借入金の償還に充てられるわけでありますが、この金利として約三千万ばかり積算してございまして、合せて八十七億、こういうふうな内訳になっております。
  101. 大西正道

    大西分科員 その中で従業員に対しての云々の項目がございますが、これは四億数千万円でございましたね。これは従業員大体五千人と見ておられますか。一人あたりそれが給料のほぼ何カ月くらいなものになりますか。
  102. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 大体今度の整備によって離職いたします従業員三千人程度と踏んでおりますので、一人当り十五、六万円になろうかと存じます。それから今度の退職金を積算しました基準は、大体において勤続十年に対して一カ年分の退職金を給与する、こういうことになっております。真空式は大体十年くらいになるのでございますが、機械製塩はまだあまり稼働後時間がないものもございまして、平均すると約九年前後ではないかと思います。従って十二分の十二の十二カ月を平均勤続十年に対して交付する。こういたしますと、大体その平均九割くらいなものが積算されている。従って十カ月か十一カ月くらい、こういうふうに御了解になればけっこうだと思います。
  103. 大西正道

    大西分科員 もう一つ対比して伺いたいのは、業者に対する補償、従業員の退職金に見合うようなものが業者にも当然あると思う。労働者の給料にすれば、ちゃんと十年として十二月、こういうことになっておりますが、そういうふうな考え方のもとに立ちますと、業者に対してはどの程度の何年くらいの補償ということになりますか。
  104. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 ただいま私が申しました退職金の中には、たとえば機械製塩の会社の重役、そういうものもみな同じでございます。退職金の中に見られるのは、そういう給与所得者として見られます今度の離職者関係が全部入っておりますので、それらはすべて十年勤続十二カ月ということでございます。ただ塩田製塩業におきまするいわゆる採鹹人という階層は、一方から見ますると、大部分は給与所得者として救済もされないし、また他面機械製塩の投資家のごとく投資者としてもその投資額が非常にわずかであるために、将来の新しいたつきの道としては不十分であるということから、採鹹人に対しましては第二次塩田整理のときにおける前例にならいまして、一年の塩の水揚量の三割というものを組んでおります。これは先ほど申し上げました採鹹人に対する転業資金というものに相当するのでございまして、大体五十万から六十万くらいになろうかと思っております。これを先ほど申し上げました従業員の退職金に比べてどうだというふうな比較をせよというお話なのだろうと思うのでありますが、御存じのように今度やめまする塩田製塩業者は、ほとんど大部分が塩の専売制度創始以来家業としておるところでございまして、おそらく五十年に達する長い経歴を持った連中ばかりであろうかと思うのであります。中には父子相伝ということでございまして、当主からいいますと、必ずしも五十年という長い間従事していたとばかりは言い切れないかと思うのでありますが、たとえば平均二十年といたしますと、先ほどの従業員の退職金の割合から申しますると、二年分がもらえるわけでございます。二年分といたしますると五十万ないし六十万という今度の転業資金は、大体一カ月二万円前後の給与所得に対する退職金に見合うというふうに考えております。
  105. 大西正道

    大西分科員 あなたの説明じゃなしに、私の方の解釈では、労働者に対するような計算をいたしますと、業者に対しては、あなたは大体二カ年と言われるが、私は三カ年、それに相当するものだと見ております。もちろん、あなたは先祖代々のなにもみな計算に入れるようなお話でありまするが、そういうふうな補償とか賃金の計算は、私はちょっと聞いたことがないのでありまして、私どもは三カ年と見ております。二カ年といたしましても、従業員に対しては大体一カ年分の補償ということになっておる。ここに私はこの補償についてのアンバランスがあるのではないかと考えるのであります。あなたの方はそうではないという理論をお立てになってこの案を出されたのであろうと思うけれども、私どもはそういうふうに考えるのであります。これは一つ考え直しを願って、業者の方にも二年相当分なれば、やはり労働者に対しても二年相当分ということが私は妥当ではなかろうかと思う。業者の方は、それは先祖代々のこともあろうかと思います。しかし、彼らは転業するに際してはまた別の条件がある。しかし、従業員というものは給料を断たれたら裸一貫であります。そういう状況考えると、私どもはまた別な観点から、従業員に対してはもっと厚くしなければならぬという論を立てたいと思うのであります。それにしてもこの法案によりますと、第三条によって、この交付金の中に退職金を支払うための費用というふうに規定されておるのでありますが、これは今おっしゃったようなものに該当するわけですか。
  106. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 さようでございます。
  107. 大西正道

    大西分科員 そうしますと、額が少いということに対しても私は今不満を申し上げた。ところが、これによりますと、退職金を支払うための費用ということになりますと、従業員が退職する場合には、当然使用者との間に団体協約あるいは労働協約におきまして退職金の規定があろうと思う。それとは別個にこの交付金は充てられるべきものだ、業者が支払う財源にこれを充てるべきものではないと私は考えておるのです。そうしなければ非常な不合理が出てくると思うのですが、ここのところは一つ明確に願いたいと思う。
  108. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 今回の整理と申しますのは、いろいろ先ほどから問題があるようでございますが、少くとも公営専売制度の建前から申しますと、需給の均衡という、いわば専売制度の存立条件として必要な条件を満たすために過剰生産力を排除するという意味でございます。この過剰生産力を排除するという専売制度の本質的な要請からやめていただくわけでございますが、やめていただきました結果、各企業から離職される労務者の方々が、その退職金の原資において、あるところは非常に積立金を持っておるとか、あるところは非常に積立金がないとかいうことで、幸、不幸と申しますか、アンバランスが生じるということをわれわれは非常に心配したのでございまして、そういう意味から十年勤続者に対しては一カ年の退職原資があるようにというふうな配慮から、その原資を補足するということで今度の交付金の積算基準とされておるわけでございます。従って、これはその積算されました金額からそれぞれの企業において積み立てておりますところの積立金を差し引いて交付するということになるわけでございます。われわれもいろいろ塩業者の退職給与規則というものを調べさせていただいたのでありますが、これは各企業において差はございますが、いわゆる会社都合によってやめました場合の退職金給付の基準から申しますと、おおむね六カ月から一番多いところで十一カ月というのが勤続年限十カ年に対する退職給与基準になっておるわけでございます。
  109. 大西正道

    大西分科員 これはとんでもないことをおきめになったと思うのです。退職金の規定は労使間で当然きめるべきものなのです。あるところはよく、あるところは非常に悪い条件があるということは、これは現実の問題としてやむを得ない。悪いものを国家の力、政府の力でもって救うということは理屈はわかる。しかし、かなりの話し合いができているものを、そして業者の中にもかなりの資金的融通のつくものもあるのに、そのものもこの政府から出たものの中から差し引くというようなことは、私は少し行き過ぎではなかろうかと思うのであります。これは離職するところの従業員に対して、整理という国家的な一つの手段、行政に対して一律に労務者に支払うべきものであって、あえて業者の手を通じてやるべきものではない。ただ直接労務者に渡しても、そこにいろいろと手続的な問題についてのなにもあろうから、便宜的に業者の手を通ずるけれども、それはあくまで業者がこれに対してとやかく介入すべきものではないと思う。そういうふうな考え方から一つこの第三条を解釈していただかなければならぬ。私はそういうふうに思うのでありますが、いかがですか。
  110. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 これは大蔵委員会においてもいろいろ論議されたところでございまして、いろいろな考え方があろうかと存じます。もちろん、個個の企業の経営者と労務者たちが話し合うことについて拘束を加えようというわけではないのでございまして、各企業の退職金を支払う原資にアンバランスがないようにということで配慮したわけでございます。その原資を元にしていかに使うか、経営者と労務者との間で話し合って配分をきめるということは自由におやりになってもけっこうだろう、私はこういうふうに思うのであります。
  111. 大西正道

    大西分科員 あなたは、塩業者の企業と従業員との関係についての十分な御理解がないのじゃないかと思うのです。こういうことをいたしますと、これに依存してしまって、これよりもたくさん退職金を支払おうというような、そういうところもこれに右へならえしてしまいます。このことは明らかです。塩業者というのは、御承知のように零細なものが集まっておるのであります。寄り集まって、そうしてとやかくと従業員に対しての制限を加えるのですから、こういうふうなものが一たび出て、しかもこれがわずかに一カ年分、これが少くとも業者と同じように三カ年分も計上されておるならば、私はそういうことはまたそれでけっこうだと思う。一カ年です。しかもこれは、あなたの今の説明に対して私の研究を申し上げますと、二カ年分だ、こう言われますけれども、この中に「製塩業者に対しては、収納価格に納付塩量(最低一ヘクタール当り百五十トンを保証すること。)を乗じて得た額の三割に相当する金額。」そう出ておる。これは私明らかに三カ年だ、こう見てよろしいと思う。ところが片一方は一カ年である。しかも総裁は、業者の方は先祖代々だと言っておる。そして従業員は大体九年か十年の勤続年数だと見ておるけれども、これも事実と違う。従業員だって、かなり長年にわたって親から子供に対してただ塩田の労務者だけとして今日まできておるのがたくさんある。ところが九年、十年というふうに平均勤続年限を見られるのは、この前の塩田整理のときから考えられておるから九年ということになるのではないか。塩田業者の平均の勤続年数というものはそんなものではありません。これは計算の間違いではなかろうかと思う。昭和三年かに塩田の大整理をいたしましたそれ以来の計算を主にして雇用の何を切りかえておる。それを元に言われておるのではないか。積算の基礎に私は問題があると思う。また業者と従業員との退職金の基準の立て方も、片一方は二年ないし三年、片一方は一年ということは、やはり理屈に合わぬと考える。そういうような一年の非常に安いところの低い基準でもってこれを退職金の原資に充てる、そして業者にこれを自由にさせる。こういうことになったら、塩田の労務者は大体一年以上にはなりっこない。そういうような今回政府のとってきたところの塩田整理計画の補償としては、労務者に対しては間違っておるし、親切なやり方ではないと思う。お考え直しのほどを願いたい。
  112. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 先ほど私が勤続二十年とすれば同じような退職としてもこういう数字になる。こう申し上げたのが、納付塩量の三割に塩価をかけた金額をもって採鹹人に対する転業資金と申しますか、その三割、これは一年一割と見れば三年ではないかというその二つの数字のギャップを御質問になったのだろうと思います。これは確かに水揚料の一割が推定所得と考えられれば三カ年分と見られてけっこうであります。ただそこにも先ほど言及なさいましたように最低保証百五十トン、平均大体百六十トンくらいになるわけでありますが、現在の白塩価格一万二千円を乗じますと約十九万円くらいになりまして、これがもし一カ年分の退職金になるのだということになると、採鹹人と申しますか、塩の総営者は一万五、六千円の月給だということになりますので、そういう考え方をやめまして、今度転業資金として採鹹人がもらうものを、二十年勤続ということから逆算しますと二万前後になる。こういうふうに申し上げたわけでございます。  それから勤続年数が間違っているのではないか、昭和四、五年ごろの第二次塩田整理のころから数えておるのではないかというお話でありますが、それから数えるともう三十年近くになるわけでありますが、公社が昨年の九月に調査をしました数字によりますと、真空式九年、蒸気式八・五年、機械製塩三・九年というふうに平均の勤続年数が出ておりまして、私はこれを引用したわけでございます。もしこれからことしの十二月までの一カ年ちょっと足しますと、真空式は十年、蒸気式は九・五年、機械式は五年くらいになるわけでございまして、それぞれの比率で加重平均しますと大体九年前後になろうか、こういうふうに申し上げたわけであります。この調査の数字の真偽につきましては公社の方に御質問を願いたいと思うのでありますが、私は、実態調査に出ました数字であるために、これが現在勤続年数としてよるべき唯一資料ではないかということで、これをもとにしてお答え申し上げたわけであります。
  113. 大西正道

    大西分科員 あなたも、塩田労務者の生活の困窮の度合いあるいは低賃金の事情、福利施設の非常に不完全な様子はよく御存じのはずであります。そういう塩田従業員のことを考えられますると、業者に少しでも財源の許す範囲で厚い手当をしようということに対して、反対ではなかろうと私は思う。そういう気持であるならば、何もことさら、政府のこの交付金を、業者を通じて、その原資として渡すのだ、こういうふうに規定しなくてもいいのではないか、労使間での話し合いの、企業の実態を尊重される方がよろしいのではないか、そういうふうにお考え直しを願いたいというわけであります。  最後に一つだけ聞いておしまいにいたしますが、この法案の第十二条に臨時塩業整備審議会というのが掲げられております。この中にいろいろな人が加えられるわけでございますが、従業員の代表を加えられるということが私は当然であろうと思うのであります。総裁の御意見はいかがですか。今日まで、私は、この種の委員会が作られたときに、総裁にいろいろな立場から従業員の代表を加えられることがよろしかろうということを進言したのでありますが、てんとしてあなたはお聞きにならぬ。その結果、この間のこの委員会におきましても、わざわざ労働者の代表を呼んで意見を聞くというようなことまでせざるを得なかった。業界の代表を加る中に、一人くらい従業員の代表を加えるということは、私はこの審議会の趣旨を全うする上からも適当であろうと思うのでありますが、この点はいかがですか。
  114. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 塩業整備審議会を設けて、その委員は学識経験者をもって充てるということになっております。学識経験者の範囲としてどういう人を選考するかということは、塩業整備審議会の仕事とも関連する問題でありまして、当初は個々の塩業者に交付する補償金のようなものまで審議会に諮ってきめようかというようなことも考えたのでありますが、現在考えておりますのは、そういう個々の評価のようなものはむしろ鑑定人に評価してもらいまして、この審議会というものは、広い視野から、一般的に、塩業全体をどう持っていったらいいか、塩の将来の需給計画、それから法律で徴することになっておりまする三十七年以後に残ると思われる塩業者が出しまする企業の診断書、それを判定して整理の対象になるかならぬかという企業診断をする、それの基準を作るといったような広い意味の仕事をしますので、できるだけ直接利害関係の人でなく、一般的な立場から御意見を立て得る方を選考した方がいい、かように考えておりますので、今直ちに塩業労務者の代表を入れるかどうかというようなことは考えておりません。
  115. 大西正道

    大西分科員 直接関係しておる者からは入れない方針だ、こういうお考えでありますが、そうしますと、俗にいわれる業者の代表、それに準ずるものはお入れにならぬ方針ですか。
  116. 松隈秀雄

    ○松隈説明員 直接の塩業者は、入っても御本人もやりにくいだろう、こういうふうに考えられまするので、考えておりません。当面ならば、塩業者は組合を作っておって、塩業組合中央会というものがございます。その会長がどうかということでありまするが、まだ具体的な人選をいたしておりませんので、今直ちにそういう具体的な人について、これが入るかどうか、入らないであろうかどうかということは、ちょっと申し上げかねるのであります。
  117. 大西正道

    大西分科員 この中に、「学識経験のある者」というのがあります。私は、経験のある者ということになれば、塩業者であれ従業員であれ、直接生産に携わっておる者が一番経験があるのではないかと思う。消費の面ももちろんありますが、生産の面においては——そういう意味からいって、製造に参加する者を排除されるという理由が私はちょっとわからぬ。委員が七人ということになっておるのだから、その辺から入れてもいいのではないか。入れるとすれば、この前のように業者から二人も入れないで、業者の代表、従業員の代表を入れられた方が、私は何かと便宜であろうと思う。そんなにこわがらぬでもいいと思う。あなたの御趣味に合わぬのかもしれぬけれども。この前臨時の委員会がございましたが、この答申案を出すときにも、やはり従業員の意見を聞かなければならぬというので、代表を呼んで聞いておる。わざわざそういうことをやる必要はない。私は塩業者関係の者を入れられてよろしいと思う。それが経験者であろうと私は思う。もし業者関係を入れられるなれば、従業員についてもお考えを願いたい、こういうことを考えます。  それから今のお話の中に、補償金の額等についてはここには諮らないというようなお話でありまするが、これは二項に、「第七条第一項の規定による補償金の額その他」云々とあるのですが、これによりますと、個々のものはいざ知らず、全体の額は、すなわちまたそれが個々の問題にも触れるので、やはりこの審議会の権限の中に入るのではないですか。
  118. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 十二条にございまする審議会の諮問事項としての損失補償の額と申しますのは、第六条によって取り消された場合の通常生ずべき損失というものをいうのであります。そちらの方の通常生ずべき損失、すなわち取り消しによる相当因果関係はどうかということの判断をこの審議会にしていただく。これは法律の一つの慣用例になっております。そこで、先ほど申しました第三条の交付金というのは、自主的な廃業者に対して与えるものである。自主的な廃業者でも、三十万トンが十分達成されますと、もうそれで終るわけであります。従いまして、もし自主的な廃業だけで三十万トンに満たないとき、たとえば二十五万トンというときには、あとの五万トンは、能率の悪い業者から六条によって取り消すことになります。取り消した場合に、今言った相当因果関係通常生ずべき損失を見ていく。ところが通常生ずべき損失ということになりますと、今度われわれが交付金で積算しておりますところの償却未済だとか帳簿価格だとかいうふうなところまで見られるかどうか疑問でありますので、第七条による交付金よりも通常生ずべき損失の方が少いときに、その少い分を特別交付金として追加交付する、こういうふうになっておるわけであります。
  119. 大西正道

    大西分科員 これで終りますが、くれぐれも私はお願いをしておきますが、退職金の問題につきましては、政府の出す補助金は、業者と従業員との間で取りきめた退職金のワク以外のものであるというふうにお考え直しを願っておきたい、この点を再度お願いしておきます。
  120. 井手以誠

    井手分科員 ちょっと関連してお伺いいたしますが、この塩業整理に当って、残存業者から納付金を取られるような模様でありますが、その内容をちょっとお知らせいただきたいと思います。
  121. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 今回御提案申し上げております法案の八条に納付金の規定がございまするが、従来、たとえば石炭事業の整備に際しましても、あるいは漁船でもそういう例があったかと思うのでございますが、こういうふうな整理をいたしますときには、その整理によってやめる業者とそれから残る業者との間に、非常に運命の落差があるわけでございまして、そうした場合に残存する業者が、共助金を出して、やめる業者に対して援助をするというのが従来の例のようであります。昨年来答申を求めておりました塩業審議会におきましても、この点について、残存業者は今回の被整理業者に対する交付金の原資の一部を、応分の負担をすべきだというふうなことが書いてございまするので、今回の法案におきましても、トン当り二百円を限度としまして、政令で定める納付金を、昭和三十五年以降に残存する塩業者が納付します白塩一トン当りについて二百円納付していただく、こういうふうな制度になったわけでございます。
  122. 井手以誠

    井手分科員 そうしますと、今度の整理は、自由企業による過剰生産の統制とお考えですか。専売事業ということはお考えになっていませんか。専売事業とはおかしな言葉ですけれども、その辺はどういうふうに解釈なさっておるのですか。
  123. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 自由企業における残存業者と専売制度における残存業者と、もちろんわれわれとしましては、今度の塩の整備は専売制度のもとにおける企業の整理であると考えております。しかしながら、この塩専売制度というのは、御存じのように、発足当初におきましては財政専売から発足したのでありますが、その後いわゆる公益専売というものに転換しておりまして、公益専売の最も大事な条件というのは、需要供給の均衡ということでございます。過剰生産力の存在する限りにおいては、この公益専売制度というものの存立の基本が危ないわけでありまして、そういう意味からいいますと、今度の整備によりまして、残存業者というものが専売制度の傘下に残り得ることになるわけでございまするし、もしこれをこういう整備という形でやらずに、過剰生産力を排除するということになりますれば、非常に価格を下げてやらなければならぬということにもなります。これはいわゆる一般の自由企業における残存業者とそれから被整理業者というものと、専売制度の傘下における塩業者とは違っておりますけれども、その制度の差にかかわらず、残存業者と被整理業者との間の運命の落差といいますか、そういうふうなものについては、私は同じではないかというふうに考えております。
  124. 井手以誠

    井手分科員 出発が、あるいはいきさつがどうあろうと、塩は専売である、これは厳たる事実であります。公益のために国が専売制度をやっておるものが、生産過剰になったから整備をしようというならば、これは国策である、国の方針によって整備をするのであって、残存業者の一部の犠牲において整理をするというのは当らないと思うのです。専売制度の本質を間違っておると思う。そういう意味はわかります。わかるけれども、この専売という事実の前には、保険制度のようなこと、相互扶助のようなことは私は許されぬと思う。この点は今後とも非常に疑義が残ると思いますので、もっと明確な、専売制度における相互扶助のこと——これはほかの問題にも起って参ります。塩ばかりではございません。たばこの場合なんか、こんなことは考えていないのでしょうか。この点は明確に、一つもう一回お伺いをいたします。
  125. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 たばこの場合には、御存じのように毎年の許可によって面積を割り当てることになっておりまして、これについては許可が一年限りのものでございまするので、今申し上げた塩の場合とは事情が違うと思うのであります。おっしゃいますように、確かに、専売制度というふうなものがある以上、その整理は国の要請からやるのであろう。これはもちろん国の要請からやるわけでございますが、その整理によってやめるものと残るものとの間に先ほど申し上げたような運命の落差があり、やめるものによって初めて専売制度が存続し得ることになって、残存業者がその整理の特典を享受するという点において、残存する業者が整理される業者に対して、共助的な立場から原資を供給するということは、私は、その因果関係について、これを否定する必要はなかろうと思います。
  126. 井手以誠

    井手分科員 私は基本的に見解を異にいたしております。たとえば、自由企業の場合、今度石炭の合理化整備をやるわけです。この場合には、残存業者から金云々の問題は起さぬで、政府は、たとえば原料炭の北海道炭などは融資を少くする、そういう助成の方面において厚薄をつけておるわけであります。そういうことはでき得ると思うのでありますけれども、法律によって納付金の義務を課すということは、私は不当だと思う。  それではお尋ねいたします。今の残存業者はどのくらいもうかっておりますか。その点については確信がございますか。トン当り二百円までならば、適正な利潤が確保できるとお考えになりますか。その点の数字をお示し願いたい。適正な利潤ということは、大蔵省その他においてもいつも言われておることでありますが、企業については一定の利潤ということは一応の標準がありますから、それはお考えになっておりますかどうか、その点の見通しについて……。
  127. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 昨年の収納価格をきめます場合には、平均原価(平均生産費)プラス一割の利潤ということで、その利潤の中には他人資本に対する借入金の利子も入っております。それを差し引きまして、五百円という利潤が大体机の上からは出たのであります。
  128. 井手以誠

    井手分科員 あなたもおっしゃるように、机の上と実際とはずいぶん違うものですよ。それじゃ時間がありませんから進んでお尋ねいたしますが、将来の保証はどうなりますか。法律で規定して義務を課する以上は、法律の保証がなければならぬと思うが、その辺の利潤確保の保証です。
  129. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 これは将来の収納価格をどういう方式で決定するかということになろうかと思うのでありますが、現在この法案で想定しておりますのは、昭和三十七年度において塩価一トン当り白塩一万円というラインが目標になっております。今回の整備によって残ります業者の大部分は、私は一万円という塩価の中に入るというふうに見ております。しかし、これは今後の問題でございますし、それから昨年きめました収納価格の原価要素の中には、たとえば採鹹部門における労務原単位の問題にしましても、あるいは経費の問題にしましても、まだ企業の合理化すべき余地が相当あると思われるのでありまして、先ほど机の上からございますと申しましたが、実際はもっとあるのじゃないかと思います。
  130. 井手以誠

    井手分科員 当局の監理官がそんな言葉を使うものではありません。それでは時間がありませんので、後日にこの問題を譲りますが、適正利潤ということは——ただいまお答えになりました合理化が将来どのように進んでいくかわかりません、将来のことですから。——しかし、いかなる場合にでも、大蔵省考えているこの適正利潤というものは確保する価格におきめなさる御用意がございますかどうか、この点だけ確かめておきたいと思います。
  131. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 私が先ほど一割の利潤ということを申し上げましたが、その下に積まれますところの生産費をどうするかということにも関連してくると思うのでありますが、私は、一般の自由私企業におきましては、業者が能率が悪くて価格が高くなれば、需要者の方で需要を押えるということで需給曲線が下りまして価格が下ってきて、そこで需給がバランスをする、こういうふうになろうかと思います。ところが、専売制度のように、政府ができたものをみんな買わねばならぬといいます場合には、こうした需要者の選択によるところの供給者の面における能率の刺激ということがないわけでございますから、従って、これにかわるべき制度を考えねばならぬわけでございます。従って、生産費をもとにいたします場合におきましても、その生産費が最後の最も能率の悪い生産者の生産費であるべきかどうかについては、いろいろ問題があるわけであります。今まで七五%のバルク・ラインとか八〇%のバルク・ラインとか、あるいは平均生産費に利潤をとるとか、いろいろな方針があるわけでありまして、そういういわば一般の私企業のごとく、需要と供給との間にこうした能率の刺激といいますか、そういうもののあり得ない専売制度のもとにおいて生産費というものを考えるということで、そうした場合における生産費のあり方というものの前提の上に適正な利潤を考えるということは、差しつかえないのじゃないかと私は思っております。
  132. 井手以誠

    井手分科員 どうもあなたの方の常套手段というか、最後にはバルク・ラインの生産費を持ってこられた。それさえ引き下げれば、どんなにも細工ができるわけですよ。しかし、従来の一つの基準というものがありますから、今までは八〇%がバルク・ラインであった、今後は六〇なんというのは、私どもの方はそんなものは許しません。  もう一点だけお伺いをいたしますが、従来専売公社が見ておったいわゆる生産費の上に適正利潤を加えた価格は、残存業者に保証なさる用意があるかどうか、簡潔でいいですから、その点だけお伺いをいたします。
  133. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 従来と同じような収納価格決定方式というものの範囲内において、適正利潤というものは将来も考えられるだろうと思います。
  134. 田中伊三次

    田中主査 それではこれで質疑は終了をいたしました。  この際、お諮りをいたします。討論採決は委員会に譲りたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 田中伊三次

    田中主査 異議なしと認めて、さよう決定をいたしました。  これにて散会をいたします。     午後三時四十五分散会