○
芹沢公述人 きょう私
公述を依頼されましたが、いつも教壇に立っておりますから
皆様方のように直接お詳しい方よりかえって何も知らない。ただ遠くの方からこういうものを見まして、
国民の一人としていろいろ申し上げることも、何か
皆様方が
予算を審議なさいますお役に立つのではないか、間違いでもございましたらむしろお教え願いたい。もうすでに新聞を拝見いたしますと、国会でも十分御論議なさいまして、実は私の申し上げることはあまりないような
感じがいたします。しかし私は私なりに、
政策を講義しておる学校の教員が勝手なことを申し上げたくらいにお聞き取り願いたいと思うのです。
予算を見ます場合でもいろいろ見方がございますが、大きい線からいって、国の
政策を実行するために、
経済的な
裏づけのないあるいは物的な
裏づけのない
政策というのはございませんから、勢い
予算にあらゆる
政策目標が盛り込まれてまとめられておると思います。その場合、われわれ
国民からして国のそういう
政策目標をどう考えるかということでございますが、大体私は
一つは
国民生活の安定とか
向上という面にしぼる行き方、これは戦後御
承知のように、各党でも
国民生活の
安定向上ということをおっしゃっております。最近は何か
資本の
蓄積というものが非常にやかましく論ぜられております。でありますから、結局
国民生活の
安定向上というのも
一つの大きな
政策目標でありますと同時に、もう
一つは
資本の
蓄積ということが、やはり少くとも
資本主義の
国家でございますから、当然これが表に出てくるし、それに対して
財政的な役割が問題になる。もう
一つといっても
一つじゃございませんけれ
ども、歴史を見ておりますと、国の
目的として非常に大きなもので絶えず論議されるのは軍備あるいは防衛でございます。大体常識的に分けまして三つあると思います。でありますから、そういうような
目的がどういうふうに
予算が現われておるか、あるいはまた結果がどうなるか、そういう点についていろいろ疑問と申しますか、そういう点を申し上げたいと思います。
従いまして、こういういずれの問題についても、特に
国民生活の問題あるいは
資本の
蓄積の問題になりますと、これはこのごろよくいわれる
経済の
成長であるとかあるいは
体質改善とか、今度の
予算にもうたわれ、あるいは
民間からお
出しになった問題でございますが、そういう点が
一つの問題、
つまり国民経済の発展とか
成長でございます。それがどうであるか。その中で
予算がどういう位置にあるかということを見きわめるのが、これは何かお役に立つのではないかと思います。そういう点で、ちょうど
政府から
参考資料にいただきました
国民経済計算といいますか、
国民所得の
分析見通し、
数字をいろいろ
計算してみたのですが、ちょっとおもしろい現象があります。それは
昭和三十年を基準にしまして、三十四年度
予算あるいは
見通しとあわせてみますと、大体
国民所得が三六・七%くらいふえております。
国民総生産も同じように大体三六・六%、
国民所得もほとんど同じとわれわれは考えればいいと思いますが、
国民所得は三六・七%ふえております。これに対しまして、
国民の
消費は三三・二、幾らかおくれております。ところがいわゆる間間
資本形成、
つまり資本の
蓄積に該当するものでございますが、これが全体で五九・八、約六割くらい三十年から見ると、ふえるという
見通しでございます。ただしこれは三十二年、例の
神武景気のときには、全体として八割九分、これは三十年から三十二年の二年間の間に猛烈に
蓄積がふえたということはよく
議論されておりますが、そういうふうにふえて、幾らか落ちましたけれ
ども、
国民所得、
国民総
支出から見てみるとぐっと上回っておる、その中で特にこれは常識的にもおわかりでしょうが、
生産者耐久施設といわれます、
つまり設備でございますね、これは一番ひどくて、三十年から三十二年にかけては二倍以上、
つまり二三八%という指数を示しております。私が
計算したのですから、あるいは多少違う。
計算尺の
程度です。これがことしの
予算の
見通しでは落ちておりまして一八一、それでも
国民所得が三六・七%に対して、
生産者耐久施設は八一%もふえるという
見通しであります。これがいいか悪いかの問題は別として、一応
政府のお
調べによるとそういう結論が出る。おかしいことには、
在庫品増、ストックでございますが、これは
景気論争としてよく論議されます。これは
神武景気のときでも三〇%くらいしかふえていない。三十四年の
見通しでは、三十年と同じ、正確に申しますと一〇六・二%という
見通しになっております。これはひどいアン
バランスでございまして、これは
財政の問題とか
景気の問題について
一つ問題になると思いますが、これはあまり深入りはいたしません。
それに対して
財政の動きでございますが、これと
国民消費は
神武景気のときにはずっとおくれておって、
あとからじわじわと追いついてきておりますが、大体
国民消費支出と同じ、少し
消費支出より上でございます。一三五%、
つまり三五%三十年よりふえておる。この辺は割方落ちついておると思います。これでいえば
予算について言うべきことはないと思いますが、こまかいことを幾らかしゃべらしてもらいます。
それから
所得についてでございますが、これは
勤労所得中
賃金俸給が四五・七%で非常にふえております。それに対して
個人業主所得が一二・九しか三十年から三十四年までの
見通し関係で伸びておりません。特に
農林水産は一〇〇・二ですから、〇・二%しかふえていない。これは
政府の
計算なさいます
見通しでございますが、少し少な過ぎやしないかと私は思いますが、まあ一応
政府のお
調べを信用すれば、全然
農林水産は
横ばいということになっております。ところが
個人賃貸料は八四・三%、八割四分ふえておる。
賃貸料、
つまり家主さんとか地主さんが八割四分、これは大体
景気のズレがございます。安定してくるとだんだん主局くなるから
所得がふえることは確かでございます。それから
個人利子所得が七割七分五厘、七七・五%ふえておる。それから
法人所得が六八%、
つまり会社所得、いわゆる
学者の学問の方で言うと
利札切りといいますか、レントナー、地代、
利子、
不労所得ですね。
不労所得者の
所得が一番大きな伸びを示しておる。こういう事実が一応
政府のお
調べからも出てくるわけであります。
これに対して
財政がどういう
影響を受けたかということは、過去のことを考えなければなりませんが、ここでは大体短期間の問題だけを取り上げたいと思います。ただここに現われておるのは、やかましく申しますと、いわゆる
階級分化といいますか、
つまりこのごろ厚生省あるいは企画庁の
国民生活白書あたりでも言われておりますように、
所得格差が非常に大きくなってきておるという事実が統計的にも出ておる。こういう中で
一体財政がどういうふうに
影響力を持つか、どういうふうに動くかという点を論じさせていただきたいと思います。
さっきの
国民生活の
向上、
資本の
蓄積、この二つに関する限りでは、いわば
国民所得の再分配に
財政がどう
影響するか、
つまり税金を吸い上げる、その他の流通と申しますか、これの吸い上げ方によって、いろいろ
国民所得が再分配されるという
政策、これは直接
予算の
支出項目の
政策ではありませんけれ
ども、
国民化活に非常に
影響する。この点から言えば国の
収入、
国民から申しますと自分の
ふところから持っていかれるものでございます。言うまでもなく、これが一番問題にされましたのは、
減税の問題でございまして、初年度五百三十三億、これは
地方税ともでございますが、平年度七百十七億というものを
予算にお
出しになっていらっしゃるようでございます。それで結局五百三十三億の
減税ではあるが、
自然増が千八十七億円あって、その他
税制上の
増収分を差引しまして、九百五十三億
政府の
財政収入がふえるということに
計算はお
出しになっていらっしゃるようでございます。
この点については私しろうとでございますけれ
ども、いろいろ
専門家も
計算されて、一千億円だけ
自然増収があるかどうか疑問だという御
意見もあるようでございます。私はどうも中性的に考えて、あるいはこれくらいはあるかもしれない
——景気というものはわかりませんので何とも言えませんが、一千億円の
自然増があれば一応ことしの
バランスはとれる。でありますから、結局全体としての問題は、疑問は持ちますけれ
どもそれほど大したことはないかもしれません。大体この予定通り行くかもしれません。
それと私疑問を持っておりますのは、今度の
所得税の
減税、
つまり扶養家族の
扶養控除で
勤労所得その他
一般の
個人所得が軽くなったということがうたわれておりますが、それにもかかわらずどうも私がわからないのは、二つ問題がございます。
その
一つは、
源泉所得と
申告を一緒にしまして、
戦前、
つまり昭和九—十一年
平均でございますが、たしか私の記憶では、
所得税納税者は九十六万人くらいであります。それが三十年くらいには
源泉所得納税者だけで九百七十四万人、約十倍になっております。それが
減税されても、今度のことしの
予算の
計算でいけば九百十一万、
片一方で
所得がふえてくるから、
所得単位が上ってくるから、結局
減税してもそう
納税人員は減らないということであろうと思いますが、
現行税制でいけば、三十四年度九百七十四万人の
納税者があって、これを改正すると九百十一万人になることになっておりますが、この点で
平均一人
当り現行ならば二万四百円の
税負担が、一万八千五百円になるという
計算のようでございます。幾らか軽くなったといわれますけれ
ども、やはり引き続き一千万近くの
勤労者が
源泉課税を
負担している。こういう事実がございます。これはどうも
戦前に比べて少し重くはないかという
一つ疑問がございます。
それからもう
一つは、アン
バランスの問題ですが、
申告所得は御
承知の通り、だんだん戦後減って参りまして、現在では三十二年度で
申告所得納税者が二百十八万人、それの
税額が五百七十八億、それから今度改正されますと三十四年度については二百一万人、十七、八万人減るわけで、幾らか減るわけです。それの
納税額も三十二年には五百七十八億納めたのが、二百七十八億になっている。半分になっている。
勤労所得がふえたというのはさっきの
国民経済計算から申しましても、確かに比例していると思いますが、少し
格差がひど過ぎはせぬかという疑問があります。これは特に
農家の方
——農家のことをどうこう申し上げるわけではございませんが、
農家は三十二年では大体六十三万戸ぐらいが
申告課税に入って、それで五十七億円ぐらい。
勤労所得者は全体でその当時千九百、約二千億円ぐらい
所得税を納めている。
農家はその当時五十七億円。それが今度やはり
控除になるものですから、
現行改正になりますと、四十九万
世帯、約五十万
世帯弱ぐらいしか
所得税を納めない。その
税額が三十六億円ぐらいに減ってくる。非常に開きがある。これで
一体負担が公平なりやいなや、私は疑問を持つわけであります。これは
勤労所得者は一人々々納めますし、
農家は一
世帯でございますから、じかに比較したのではわかりませんが、私が推算した
程度でございますが、五人
世帯とすれば、九百万人とすれば約百八十万
世帯になる。しかしそのうちには、
農家の方でもやはり
家族が
勤労所得を納めている。だから五十万
世帯を引きましても百三十万
世帯が
源泉所得税を納めております。
農家の方では五十万
世帯がそれに
税金を納めている。この
バランスがどうも秋気になりますが、これは
大蔵省でもう少しよく
調べていただいて、果して
負担が均衡であるのかどうかということを特にお
調べ願いたいと思っております。
これは
減税が非常にいったようでございますけれ
ども、全体的に外国と比べますと、まだまだ
日本の税は非常に高いのでございまして、これは時間がございませんから、そこまで比較は申し上げられませんが、非常に
負担が
日本はまだ高い。たしか
イギリスあたりでも、五十万円前後が
免税点になっております。しかし、これは
免税点をもっと上げられるかどうかということになりますと、
バランスの問題上むずかしいのでございます。とにかくそのことは別としましても、
負担について私自身がちょっと目の子算でやったところ、疑問がある点だけを申し上げたいと思います。
それからもう
一つの問題は、例の、いつも
議論されます
預貯金の
課税減免、これは今度
バランスをとられまして、
預貯金を少しふやす、
負担をふやして、
平均して一〇%これは
有価証券、投資の
配当でありますか、これは
バランスをされることになっておりますが、これもちょっと
いたずら——ということもないのですが、
計算をしてみたのですが、大体今度の
租税に関する
資料を拝見いたしますと、
源泉課税のうちで、
利子所得及び
配当所得の
課税額が三百十億円くらいになっております。ところが、一方
国民所得計算の方で、
利子所得が全部で三千百三十億でありますから、これは一〇%かけるとちょうど三百十三億で、暗算でしてもほぼ三百億くらいの辺が税でマッチしているから、この辺がほんとうだろうと思います。ところがこれは本則として二〇%でありまして、半分の一〇%に負けてやっておりますから、結局
利子とかそういうものを持っている方は、三百億円だけ
一般よりか
税金を軽くしてもらっているわけであります。これは、私
ども所得階層別の
数字を最近ほとんどいただけないのですが、
大蔵省さんでぜひわれわれの方にも
階層別の
所得や
税負担とかの新しい
数字を絶えずいただきたいのであります。われわれはつんぼさじきに置かれておりまして、最近は
税制に関する
参考資料なんかも
大蔵省がお
出しにならないで、われわれ
学者の
手元に全然入りません。お役所だけで、しかも
大蔵省の役人だけが
手元にこっそりお持ちになって、私
ども批評しようにも批評しようがないのでありますから、ここで三百億の
負担がどの辺で軽減されているかという判断もつきませんけれ
ども、おそらく
預貯金の
利子で得をするには、相当
高額所得者でなければ問題にならないと思います。ですから、
片一方で
所得税の
低額所得者の
減税をすると言いながら、片方で
預貯金の方が一〇%とられるから幾らかよくなったじゃないかという御説もあると思います。また
蓄積中心にすればそういうことになりますが、これは
あとで申し上げますけれ
ども、
神武景気はあまり
資本が
蓄積され過ぎてああいうことが起ったのですから、
蓄積が足りないという論拠は僕は成り立ち得ないと思うのであります。
なべ底景気の
あとこうなっておるときに、いまだに
蓄積々々と騒がれることは、国の
政策として少し
片一方に片寄り過ぎていないか。しかも
神武景気のときに、
基礎産業の大部分に、あれまでに
国家資金がつぎ込んであります。そのあげく工場ができ過ぎて、そうして不
景気になった。それの
責任は
一体、
民間だからとらなくていいとおっしゃればそうでありますけれ
ども、
民間といっても、戦後、
国民の
税金なり日銀の
貸付金の
負担が全然なしに、独立でやられた
産業というものは何もありません。
中小企業以下だろうと思います。
繊維なんか、私二、三年前
調べた
——これは
大蔵省のお
出しになった
数字でございますけれ
ども、たしか
昭和二十八年ごろまで合計しますと、
繊維関係に投下された
資本の二割五分ぐらいは
国家資金がつぎ込まれておる。いわんや製鉄であるとか電気だとかいうものは、ほとんど全部が
国家資金でございますから、そういう結果が
蓄積過剰となって、不
景気が起ったりする場合に、
国民に対してその後の
責任が全然ないということは、私は言えぬじゃないかと思います。この点が、特にいまだに
蓄積中心主義でやられることは、すでにちょっと時代おくれじゃないかという
感じがいたします。
これはちょっと別のこまかい問題に入りますけれ
ども、
目的税の
議論が、かなり
揮発油税については問題になっておるようでございまして、これはその方からすでにいろいろ
議論がなされましたけれ
ども、私はもちろん
国民負担の点から考えまして、案外こういう
税金は気がつかないが、結局
トラック、
タクシー——自家用車をお使いになる方はよろしゅうございますが、
一般が
タクシーに乗り、
トラックで物を運んだりすれば、結局
国民に
負担がくる。これは
現行でも、九千二百万人に割ってみますと、
現行税制でいっても、三十年度は一人
当り七百円の
負担になるわけでございます。そうすると五人
世帯ですと、
平均しますと一年間三千五百円の
ガソリン税を
負担することになる。それが今度値上げになりますと、一人
当り九百円になりますから、五人
世帯ですと四千五百円を知らぬ間に
負担することになります。案外知らぬ間に
——これは
間接税はすべてそうでありますが、ちびりちびりと取られるものですから、これは非常に不公平になる。
ついでのことに
学者は怒られることを言いますが、これは私だけの
意見ではないのですが、
源泉課税と
申告課税について私疑問を
出しましたのは、これは
納税心理でございまして、
月給袋をもらうとき天引されているとそう痛く
感じない。ところが一ぺん
ふところに入ったものを取り上げられると、人間は惜しくてしょうがない。従いまして
源泉課税に対しては
納税者の
抵抗が弱い。
申告課税においては
納税者の
抵抗が強い。それが自然的に
保険料にセルフ・セレクション、
自家選択をいたします。
納税に関しては
抵抗がどのくらい強いか、これは
プジャード党でなくても当然そうなりますが、そういうことが知らず知らずそういう
租税負担の不公平を起すのでありまして、できるならば
源泉課税は
戦前のようにみんな
源泉にした方が公平になる。しかしこれは社会党さんでも政権をとられると
税金を取らなければ困るから、
源泉課税をやめると
税収入がぐっと落ちるということは、これは税務署が一番御存じ、しかし
国民負担からいうならば、これは公平にしなければならぬ。これはちょっと脱線いたしまして、どうせ実現できぬだろうとお怒りになりますが、
学者はそんなことを申し上げるのでございます。
減税問題については以上要約いたしますと、大体
減税もここまできて、これ以上
減税することはむずかしいことは事実であるが、
負担の不公平はまだかなりあるのではないかという
感じがいたします。
それからもう
一つの
間接税、直接税についてどうだろうかということは、われわれ非常に興味を持っておりますが、確かに
所得税減免のおかげで、三十年度と三十四年度は、これは全部ではございませんが、
所得税だけを
租税収入予算から
計算しますと、三十年度が三〇%、三十四年度が約二二%でございますから、かなり
負担が軽くなる。それをどこで埋め合せられたかということが問題でございますが、これは大体
間接税として、酒、
砂糖、
揮発油、
専売益金、まあタバコがおもでございます。これを合計したパーセンテージをとりますと、三十年には三八・七%、それが三十一年に四〇%になりまして、そのまま
横ばい、
つまり間接税負担もほぼぎりぎりまで来ているのではないか。これは
政府もお考えでございましょうが、この中でふえているのはお酒でございます。お酒は
生活が安定したせいか、よけい飲むようになったのではないかと私は思いますが、まあカストリしょうちゅうから現在は二級酒ないしはビールくらいまでいっておりますから、
間接税でふえているのは酒だけでございます。
砂糖の方は今度も非常な
やりくり算段をしまして、関税をおふやしになったりして、実質上だんだんふやされる努力をおやりになりますし、
揮発油税の方は
税金を増税する。それだけやっても四〇%です。
法人税が二〇%から二七%ふえたので、これはおそらく
会社側から言わせると、
法人税が重過ぎるとおっしゃるかもしれません。この辺は非常にプラス・マイナスでございまして、私
どもに言わせれば、結局
会社側が非常に安定いたして、不
景気でもこれだけのもうけが出るからよくお納めになるという考え方も成り立つのでありまして、これは
法人上の
特別措置はだんだん減らせという世論も相当強いのでございます。そういうふうな
バランスから言いまして、いいか悪いか、私は疑点として申し上げるだけでございます。
要するに全体といたしましては、そろそろ
蓄積重点主義としての
予算というものをお考え直しになったらどうか、これは
歳出及び
財政投融資にも触れてもう一度繰り返したいと思います。
歳出の方でございますが、これは各方面からこまかく微に入り細にわたり御
議論もなさいます。議会でもこれを御
議論なさいましたが、私の気づいた点で割方害われなかったのではないかという点だけを特に申し上げます。
その
一つは
社会保障で、今年は
老齢年金で与党の
方々も野党の
方々も非常に奪い合いのような形になっております。これはけっこうなことでございますが、その前にどうも最近
なべ底景気が続きまして、
低額所得者、
つまりボーダー・ライン以下の人たちの
生活が非常に苦しくなっている。これは
つまり所得格差の結果として現われてくるのではないかと思います。
政府側でも、二百四十六万
世帯約一千万人以上がそのボーダー・ラインで見捨てられているといわれております。
片一方で
社会保障の中にあるのは例の
生活扶助、それから結核その他の医療保護、それから年金も入りますけれ
ども、そういう保護、それから児童に関する保護、いろいろの問題が山積いたしておりまして、
予算も確かに相当ふやしていただいたと思いますけれ
ども、しかしとてもこれだけでは、ボーダー・ラインにおる人たちの
生活は保障されていないのじゃないか。これが一番気になるわけであります。これは人口数からいえば一千万でございますが、社会的
発言力というのは非常に弱い線でございます。結局そういう社会福祉事業に参加されておる
方々、特に婦人の
方々、保母とか託児所のそういう
方々のごくわずかの人口の人たちが、この点非常に憂慮されておりまして、全体として確かに
勤労所得もふえておりますので、その人たちは楽になったかもしれませんが、しかしそれだけ逆にぐっと空活が下っておる人たちが、
なべ底景気の中に取り残されておるのじゃないか、この点が割方今度の
予算でもあまり考えられていない。これは
発言力が弱いからそれっきりだといわれれば、それまででございますけれ
ども、
国民全体の
生活の
バランスをとることが、少くとも
国家の
一つの大きな
目的であるならば、その点をお考え願いたい。これは根本の問題でございます。当然この中には
老齢年金制度、
国民皆保険もみな入るわけですが、問題はみなこういうのは拠出制度になります。あるいは保険になりましても、やはり患者
負担がございますので、ボーダー・ラインの人たちは
負担できないわけでございます。
負担できないからそういう、
つまり保険制度でやるような
負担の中には、ボーダー・ライン以下は全部見捨てられる、
あとは
生活扶助だけだ。
生活扶助というのは、これはちょっとでも内職があると、これをすぐ取り上げてしまう。実に過酷きわまることなんで、働こうとすれば
生活扶助はもらえない。むしろ働くよりはなまけることを奨励し、しかも飢え死にを奨励しておるような制度が残されておる。この点は
あとで
社会保障のお話があると思いますから、これ以上深入りいたしませんが、この
程度ちょっと申し上げておきます。
それから
老齢年金の制度でございますが、これはけっこうなことでありますが、今のようなことを先に
——順序があると思います。それから
老齢年金自体につきましても、拠出制度をよくやっていただく。これは大内先生あたりでおやりになっているので、当然
政府あるいは議会の
方々もお考え願いたいと思いますが、今のような
バランスのもとにおいてやっていたたきたい、こういうことでございます。
それからもう
一つ、ちょっとこまかい点でございますが、最近失対事業が、これはほんとうに不
景気に対するこそく的な対策だと存じますけれ
ども、東京あたりのニコヨンさんなんか見ておりますと、大体これらがきまった職業になって、なわ張りができてしまいまして、だんだんとお年寄りになっていく、
老齢年金のようなものになっておりますが、これは確かに
社会保障制度としていいことではありますが、失対は本来は生産的な要因が入らなければならぬので、この点も小さいことのようでありますが、やはりいろいろお考えいただきたい。
それからもう
一つ、これは来年の
予算でございませんが、長期にわたっていわゆる保障制度あるいは保険制度、このことについては私
どもは保障制度がいいと思いますが、いずれにいたしましても、物価が安定しませんと、こういうものはかけ損になる。これは
戦前生命保険をかけて、戦後もらう
方々にみな行われたことで、二百六十倍も物価が上ると、三百六十分の一の積立金しかもらえないのでありますから、これはいわば収奪です。人の貯金を奪い取ることになるから、こういう制度が社会的にできる前提条件としては、必ずインフレがないという条件を作っていただく。これが一番大事なことだと思います。
支出についてはいろいろございますが、おもだったことはそういう点です。
それからもう
一つ、これは私よくわかりませんが、国債償還計画によりますと、来年は百七億、
予算がぎりぎりでよく組み立てられたというのは、国債償還費が非常に少いということが、
一つ予算が作りよかった原因だと思いますが、再来年はたしか償還計画は六百二十七億と五百三十億以上来年よりふえることになります。これは
大蔵省の
方々に教えていただかなければわかりませんが、これは幾らか
やりくり算段ができると思いますが、計画としては再来年はそうなる。来年の
予算は組み立てよかったからといっても、再来年は組み立ていいとは言えないという心配があると思いますが、それはお教え願いたい点でございます。
一般会計のことはいろいろございますが、時間も制限されておりますので、重点だけこのくらいにいたしておきます。
それから
財政投融資でございますが、これもこまかいことを一々論ずる時間もございません。ただ原資の中に郵便貯金一千億増とありますが、これはきのうかおとといの新聞にも、八百億円くらいじゃないかというような、この原資が苦しいという問題が
一つありはせぬか。それよりか、私がさっき申しましたように、過剰投資の結果、不
景気になって、
景気がどうにか立ち直ろうというときに、再び投資をされるのは、大企業の方に投資される。これもすぐ大企業と断言するのはいささか危ないのでございますが、開発銀行とか、電源とか、輸出入銀行とか石油投資、帝都高速度、これらを合計しますと、ことしふえる
予算は約四百五十億円くらい。これに対して
中小企業の方に回される金は、
産業投融資の資金運用部を私
ども問題にいたしますが
——資金運用部というのは、零細な資金を集めた郵便貯金、保険がほとんど中心であります。これの大部分が、
つまり中分以上が、大企業に投下される。
中小企業は逆に五億減っております。それから農業の方は、これは百二十四億くらいふえておりますから、大体農業の方はかなり見ているが、大企業集中主義というのは、相変らずことしの
産業投融資にもやはり現われてきているのではないか。従って
なべ底景気の中で一番ひどい目にあった
中小企業、
勤労者の方は、いろいろやはり
出しておられますが、住宅であるとか、そういう問題がございますけれ
ども、いずれにしても大企業中心で、この不
景気の結果整理された面に対する見方は、非常に不親切ではないだろうかという疑問があるわけでございます。この点は、正確な
数字的な
資料が
手元にございませんので、
感じしか申し上げられませんが、理屈は幾らでも立ちますので、やはり輸出振興だから輸出入銀行には金を貸すんだ。これも何だか議会で、いろいろ輸出とからんで、あるいは賠償とからんで、輸出入銀行とか開発銀行とかの問題が出ておるようでございます。やはりこれはよほどお考え願いたい、こういうことなんです。
それからもう
一つ、これは
景気論争の中でよく出ることで、対
民間収支の問題でありまして、
政府の御
計算では、去年の外国為替特別会計を別にいたしますと、
一般会計、特別会計の払い超が、三十三年度が約九百億円、三十四年度は千四百三十九億円、それに貿易の方はこれはちょっとわかりませんで、推定でございますが、一千億円として、二千四百億円くらいの
計算、
つまり払い超であります。そのほか、問題は、今までため込んだ金を、貯金した金を一度に
出した場合にどうなるかという問題が、
景気の問題として問題になりますが、そうなりますと、過去の
蓄積資金がどれだけ放出されるか。これも
政府の御
計算でありますが、
一般会計の方では前年度の剰余金、これは半年なり一年なりのずれを持って出てくる。それからたな上げ資金、これも一年なり半年のずれを持って出てくる。吹い上げる場合と吐き出す場合があります。これはよく私申し上げますが、現在
財政の規模が非常に大きくなっておりますものですから、
つまり小さい池の中に鯨を入れたようなもので、
政府が金を吸い上げますと、池がたちまちからになって、
政府が金を吐き出すと、たちまち池があふれて水がこぼれるという現象が起るわけであります。とにかく二、三千億円の金が払い超になったり揚げ超になったりする。ちょうど池の中で鯨が水を吸ったり吐いたりするような格好で、ことしは今まで吸い込んだ水を吐き出す分、三十三年度までに吸い上げた資金を吐き出す分が、二千七十六億くらいあるという
政府の
計算であります。ただし外為を除きます。外為は一億六千万ドル黒字となっておりますが、外為の問題はこれは私
ども考えますと、結局手持ちの品物を外国に売り込んだ金でありますから、単なる
支出、
つまり財政上の
支出と違うのじゃないかと思います。これを除きますと、千五百億くらいふえる。このことが、おそらく過熱であるとか
横ばいであるとかいろいろ
議論なさる原因は、そこにあると思いますが、いずれにしても、十分金融上は御注意願いたい。というのは、それ自体は
景気の問題でありますが、さっき申しましたように、
社会保障とかそういう制度を安定し、
国民生活を安定するには、通貨価値を安定させなければならぬ。特に対外的に、ことしは国際的に為替の交換性が
一般化しつつある。ヨーロッパにある
日本の円を守らなければならぬ段階でございますから、こまかい御注意が必要じゃないだろうか。こういうことでございます。
全体としまして総括させていただきますが、これはさっき申し上げましたように、やはり
資本蓄積に重点を置かれ過ぎてはいないか。
国民生活の方もかなりお考えになっておりますけれ
ども、やはりまだまだ現在の
なべ底景気における
低額所得者に特に御注意を願いたい。それから
負担の公平がまだまだ完全に公平じゃないじゃないかという疑問があるという点でございます。
それから特に、今まで触れなかった問題といたしましては、どうも最近
予算の編成に圧力団体と申しますか、一部の力が強く作用する。これは選挙を通じては当然作用するのがほんとうでございますが、あまり裏の方で作用することは、
国民、われわれとしてははなはだ迷惑でございますから、これはずいぶん政治の方でお考えおきを願いたい。
それからもう
一つは、ことしの
支出は、こまかく分析するひまはございませんでしたが、公共事業費とか
財政投融資なんかに新しい
政策が盛り込まれておりますが、これはかつてシャウプ博士が来たときにも言っておったのですが、土木事業費などというものは、ざるで水を運ぶようなものであって、どれだけが
経済効果を持つか信用できないといわれておる。それだけに、この点は
支出をよほど注意してやっていただかないと、投融資でもそうでございますが、非常に危険がある。
国民の
負担においてそういう金を乱費されるなら、われわれ
国民としては、これはまことに遺憾きわまりない点でございますから、ぜひこれは政治を担当される
方々にお考えおきを願いたいのであります。
それからだんだん終りに近づいて参りましたが、大体ことしの
予算は、そういう事情であまり特徴がない。
体質改善というのですが、あまり
国民の体質は改善されそうもない。
会社側の方は、
財政投融資も一千億円以上お
出しになりますので、よほど改善ができると思いますが、われわれ
国民は、
扶養家族が幾らか助かった
程度で幾らか恩典にあずかったから、その点はお礼申し上げていいと思います。それより問題は、三十五年度以降の
予算がどうなるかという点でございます。私これは目の子算をやってみたのですが、
減税が、当然三十四年度が五百三十三億円でございますが、平年度七百十七億、この
数字は私たち国代はわからぬから信用いたしますが、来年はさらに百八十四億、また
税金が平年度減るわけでございます。
支出の方は、年金でございますが、今年は百億円で四カ月だけ。今年の
予算に組みにくいからお延ばしになったように承わっておりますが、来年は平年度でございますから、
政府の予定通りにいっても、人員その他を見て四倍と見ますと四百億円、ですから今年より三百億円ふえるわけです。それから事務費その他もふえます。これが目の子で八十数億円ふえますから、年金制度が
現行のものをふやすだけでも、三百八十億円ぐらい三十五年度はふえる
計算になります。それから
国民皆保険をおやりになる。これは非常にありがたいことでございますが、二割国庫補助される。さっき申しましたように、
国民が
負担する、できない人は結局捨てられるということを言いましたけれ
ども、全体的にはありがたいことでございますが、この
負担が、三十四年度六百十万人
予算、それから三十五年度厚生省あたりの御希望では二百三十万人入れたいということになりますから、四倍になります。そうしますと、これが事務費その他を合せますと五百三十一億円くらいふえます。この三つ。それにもし国債償還が予定辿り来年は、今年のように五百三十億ほどよけいにお返しになりますと、合計して一千六百二十五億円ほど今年より
予算の幅がふえるわけでございます。これは当然増といいますか、今の年金その他も当然増でありますが、それ以外に、いわゆる
予算が人件費その他で当然ふえるのがございますから、当然増を加えたら、おそらくは二千五百億から二千億円くらいの幅が広がるんじゃないか。そこで来年度の
予算をどうお組みになるかということは、来年になってから騒がれたのでは、われわれ
国民は迷惑するのでありまして、やはり今年の
予算を審議される間に、
大蔵省としては五カ年計画とか何カ年計画とかをおやりになっているならば、一番直接の
予算についても長期の計画をお立てになって、今年はやり繰りしたが来年は知らぬぞというようなことではなくて、来年もちゃんとやられるという
計算をわれわれ
国民にも教えていただきたいのでございます。
御迷惑をかけますからもう
一つだけで終りますが、これも現在は問題に、なりませんが、ちょうどことしなんかの
予算が、あらゆる点で、
減税の問題、社会事業の点、それから防衛関係は今のところ
横ばいといいますが、これが
一つの転機になっているのじゃないかと思います。この際
一体日本が本気で防衛をおやりになるか、あるいは平和
国家でおやりになるかという立場が決定されることによって、非常な運命の違いが出てくるのじゃないかと思いますが、現在本気の防衛をやるという覚悟をわれわれ
国民がせなければならぬとすると、大へんなことになるのじゃないか。それがちょっと気になりますので、ちょっと御
参考までに二、三
数字を御報告申し上げますが、
戦前軍縮会議
——私は軍縮会議の年代はすっかり忘れましたが、軍縮会議の
あとから第二次大戦に至るまでの間の軍事費の増大率を
昭和三年から十一年にかけて、古い本をひっくり返してみましたら出ておりましたが、
昭和三年から十一年、一九二八年から一九三六年でございますね、まだ問題が広がらぬ前ですが、それでもその間に軍事費はかなり大きくなっておる。たとえばフランスが五割六分ふえた。イギリスが三割九分、ソ連はその当時十六倍くらいになっておる。アメリカは三割八分、これはまだ余裕しゃくしゃくで、アメリカは戦争になると大急ぎで軍艦、大砲、飛行機を作っても間に合う国でありますから、アメリカは戦争になりますと、
国民出産はわずか三年間で二倍になっております。そういう力を持っておりますから、平時における軍事費の増大は割合に少かった。
日本はその間に二倍になり、
昭和十二年の
日本の
数字は三倍になっております。
昭和三年から十二年の間約九年くらいの間に三倍、これは過去の事実でございます。現在
日本は、今防衛費は御
承知のように二割弱、一九・九%くらいでございますが、アメリカは現在でも一九五七
——八年度
予算が、
日本でいえば三十三年度
予算と申しますか、これが軍事費は六二・五%、これに対して
社会保障関係の費用は四・五%でございます。ただし四・五%といいましても一大きさが違います。一人
当りにちょっと
計算してみますと、
日本の
社会保障が、
国民九千二百九十万人ということし
政府がお
出しになった
数字で割ってみますと、
日本の
社会保障費は一人
当り千五百九十円になります。国防費は二割で一人
当りが三千五十円になります。アメリカは
社会保障費は
予算のたった四・五%と申しましても、四・五%に三十三年度。三十四年度
つまり一九五八—九年
予算、
予算教書によりますと
——これを
日本の三十四年度と御比較願います。
社会保障費五・二%、アメリカ
国民一億五千七十万人という
計算で一人
当り社会保障が一万百円、
日本は千五百九十円、国の
予算から、少いといっても、
国民の一人
当りには一万円以上の
社会保障費が
支出されておる。ただし軍事費の方は驚くべきものです。全体で十六兆一千七百億円、一人
当りで十万七千二百円の軍事費でございます。これがおそらく理想的な軍事の段階でございますから、
日本で一人
当り十万七千二百円、十六兆一千七百億円の軍事費を払ったら、また
国民所得は八兆何千億としますと、われわれ
国民がせっせと一年間働いた二倍分使わなければ気に入った国防はできない、こういう結論になります。非常に無理をしておられるイギリスさんでも、防衛費が陸海空、原子力入れまして
——原子力といいましても平和じゃない方です。一兆四千億円であります。これは
日本の三十四年度
予算全体に
当ります。この場合でも、防衛費の
国民負担は一人
当り二万七千九百円でございます。それで
社会保障もイギリスは相当気ばっておりまして、一兆三百二十億円の
負担、これは一番大きな国としてはイギリスで、ほかの国はちょっとよくわかりませんものですから出せなかったのですが、一兆三百二十億円が三十四年度
予算でございますから、
社会保障費は
国民一人
当りに対しては約二万六百円、これはアメリカの二倍です。アメリカは一人
当り約一万円、イギリスは二万六百円、それだけの
社会保障をやりながら、やはり軍事費も一兆四千億払っておる。これは大へんな
負担だろうと思いますが、イギリスの
経済力でぎりぎりだ。
日本はそういうふうに
経済力が非常に弱いところでございますから、再軍備をおやりになるかどうかという問題、その点を特にお考えおき願いたい。
これは私自身がよく考えたのですが、私はかって、戦争の均衡理論という思いつきの論文をあるところに書いたことがございます。軍事力、戦闘力というものは、国の
経済力と無関係に
バランスするようにせよ、これは
当りまえなことです。わかりきったことを
学者は変な理屈を言うわけでございます。たとえばイギリスと
日本とアメリカが、たとえばアメリカは十倍の
経済力を持っておる。だから軍縮会議の場合でもいつも問題になったのは、向うが
日本の
経済力の十倍なら、軍艦も十倍持ってもいいじゃないか。
日本はアメリカさんから言わせると、お前はアメリカの十分の一しか
経済力がないから、軍艦も十分の一にしろ、戦争する場合は一対十の戦争はできないことはさまっておりますから、軍縮会議とすれば、必ず
経済力の弱い国が、おれの方は十万トンしか軍艦はできぬから、お前の国も十万トンしか作っちゃならぬというのです。そうすると、大きな国はせせら笑いする。お前の国よりおれの国は十倍の
経済力を持っているから、お前の貧乏国と同じなどと勝手なことを言うな。俺の方はできるだけ作ってみせるから……。戦争というものは、国が大きかろうと小さかろうと、戦争する場合には一対一でなければならぬ。精神力は十倍にならぬのです。
日本の軍人さん方は精神力一辺倒で、竹やりで飛行機を落そうとしたことは御
承知の通りでありますが、これは全くほうきで星を落すようなもので問題になりません。戦争の均衡理論から言えば、必ず均衡しなければならぬ。ですから本気で
日本が国防をおやりになるということになれば、かつて朝日新聞が戦争中に書いたように、骸骨が鉄砲をかつがなければならぬ。骸骨がミサイルを飛ばし、ジェットに乗る。最近はミサイルになりましょうが、骸骨はミサイルは飛ばせない。この問題がありますので、ちょうどことしの
予算あたりは転機になると思います。そうなりますと、こまかいことを、一兆何千億の
予算について申しましても、こんなことは一時に吹っ飛んでしまうのじゃないか。
大へんよけいなことを申しまして、所定の時間を延ばしましたが、どうか何かの御
参考になれば……。これで終らしていただきます。(拍手)