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柳田委員 UPの四日発の電報によりますと、フィリピンのオカンポ議員は、これは野党の自由党ですが、フィリピン国会において、東京にあるところのフィリピン
賠償使節団幹部は、
賠償船舶の調達で巨額の金額を横領した。
日本の
業者は公開入札にしてくれと言っておるが、フィリピン
賠償使節団はこれを拒否しておる。
——従来フィリピンとかビルマの
賠償は公開入札になっておるのですが、どうもこういうのが四日発で出てきておるところを見ると、今のこの高速船の十二隻の中に、造船
会社でも船
会社でもない
商社がにょこっと三隻も入っておるということと、これはだれが
考えてみてもどうも関連があると思うのですね。そこで私は、本朝来特に
政府に対して、どういうように金が流れてだれがどう取ったかということをあまり追及せずに問題をずっと進めてきたのは、ほかでもないのです。ということは、今日、
日本の
賠償が国内的じゃなしに、もうすでにこのように国際的になっておる。そして国際的の汚職にまで発展する可能性が出てきておるのです。これは大へん大事なことです。
戦争に負けた
日本が、その
賠償によってあるいは相手国との間に、
日本の
業者との間に、
政府は関係ないかどうか知らぬが、少くとも
日本の
業者との間において、われわれ国会の野党が追及するだけじゃなしに、フィリピンにおける野党からも、あるいは
インドネシアにおける野党からも、あるいは軍部の方からも、ハッタ派の方からも、こういうふうに非常に国際的な
賠償汚職というものがアジアの一角に非常にはっきりと浮び上ってきた。これは私は非常に大事なんです。従って
日本としてはわれわれ
戦争に負けた者は、それこそ先ほど申しましたが、歯を食いばってでも
賠償は払います。しかし、その
賠償がかりそめにも相手国との間に
日本の
業者が暗躍して国際的の汚職になるようなことがあっては、われわれ敗戦
国民は浮び上れないと思う。
特定の一
業者やその他がもうける
——先ほど私は多少
数字にわたって突いていったが、それは
商談としておやりになって、そうして
向うが認証をとってくる。こっちの方
日本政府には何にもチェックする方法がないんだという。そうなってくると、今問題にしましたところの
インドネシア追加の二十隻なり二十一隻分にしても、あるいはフィリピンの高速船十二隻にしても、これは仮
契約たから、われわれ希望としては
——高碕さんは正論を言われる。単なる希望を承わっておくだけなのです。既成事実としてどんどんできていく。
インドネシアは、あるいはこれはコマーシャル・ベースの
取引だと言うでしょう。しかしこの
賠償を見ても、一億七千万
ドルの焦げつきは棒引きした。今日
インドネシアの
外貨保有量はほとんどありません。帳面上は一億何がしあるでしょう。しかし、実際は何もない。そんなところが過去にもうすでに焦げつきになっておる。
日本にそんなコマーシャル・ベースでかりに結んだところで、
インドネシアに払う能力があるわけではない。ことに政情は不安である。もう
一つ言いにくいことであるが、
インドネシアにしても、あるいはフィリピンにしても、私は、まだまだ
国家として、いわゆる国政がほんとうの民主主義のルールに乗って、しかもきれいな政治が行われるまでにはほど遠いと思う。ようやくにして苦難の道を歩んできて独立をかち得たところであって、まだ長い間の占領
国民として、
国民に訓練されていない。
日本の明治維新以前である。だから、これがかりに
日本と西ドイツとか、あるいは
日本とフランスとかいう国なら別です。相手を決して軽べつする意味ではありませんから誤解ないように聞いてほしいですが、まだそこまではいっていない。われわれは早くそこまで立ち上ってくれることをアジアの友だちとして望んでおる。だからこそ、われわれ敗戦
国民は
賠償を払うことは決してやぶさかでない。しかもその
賠償は、かりそめにもそういうような、フィリピンならフィリピン、
インドネシアなら
インドネシア当局と、あるいは時の政権をとっておるものと、あるいはそこらに暗躍するところの
第三国人ブローカーであるとか、
日本人の
業者であるとか、そういうものがこの陰にひそんで、あるいは汚職をやり、わいろを取り、リベートを取る、そういうことをされたのでは、これは許されない。結局そのことは、
日本がむしろ将来とも、
インドネシアにしても、フィリピンにしても、相手国に大きな迷惑をかけることになるのです。だから単に
協定がどうの、何がどうのでなしに、この際一ぺん、われわれは
賠償を払いますけれ
ども、ここでもう一度
日本の
賠償を
考え直す必要がある。
そこで私は岸さんにお尋ねしますが、そういう意味において、特に今日問題になっているのはどういうことかというと、まず
日本側が問題になっている。これは言いにくいことでありますけれ
ども、岸さんでも
永野さんでも、もう
一つ賠償に対するところの御
反省が足らぬというか、この国会における
答弁から見ては、あるいはそれは何らあなたに追及することではなかったかもしれない。しかし
国民は疑いを持っている。ことにあなたは先ほど申したように、あなたが
戦争責任者ならば、ことさらこの
戦争の跡始末に対しては、より以上あなたは身を持するに厳でなければならぬ。熱海の別荘にしても、一国の
総理大臣が別荘を持つことを云々するほどのやぼな社会党ではありません。あなたも日夜攻勢に忙しいから、週末くらい熱海の別荘でゆっくり休んで下さい。それぐらいわれわれは雅量がある。しかし、同じ別荘を作られるならば、何も世上うわさされておるような
木下商店との結びつきはやめて下さい。
賀寿老の
会談にしても、あなたは理屈を言われるけれ
ども、いやしくも国賓として呼んだところの一国の元首と
芸者の入る
料理屋において会うなんて不謹慎もはなはだしい。何らそこにやましいものがなかったといっても、そのことだけでは
国民は承知いたしません。だからあなたにしても、
永野さんにしても、そういうような
木下商店から
自動車を借りておりますが、それは前のことであります、あるいは隣で番地が違います、そんなことを言っててんとして恥じない態度で
国民が承知いたしますか。だから私は今日岸
内閣、特に
永野運輸大臣、このお二人がおられることが、言いにくいがはっきり言うが、お二人がおられることが、今日の
賠償というものが国際的の汚職に発展してきた原動力だと私は思う。
第二には、やはりこの中に暗躍するところのものは、私は
木下商店だと思う。こういうような
国民の
血税の中から
自分たちが多少なりとも私利をはかるというような
考え方、商人はもうければよいだけでは済まない。ほかの商売ならともかく、
賠償に当る商人はもうければよいだけでは済まない。そういうような
商社がいるということが、私は問題だと思う。私は何も
木下商店を憎むものではありませんが、こういうようなことはやはり国会を通じて明らかにしなければならぬというので、そういう点に焦点をしぼって私は
質問したのです。
もう
一つの問題は、やはりこれに対する監督官庁であるところの運輸省、大蔵省、あるいは通産省、そういうところの指導監督が、はなはだ不徹底であり不行き届きであるということです。
責任のがれであるということです。ここに問題がある。
第四は、こういう
賠償を受け入れる態勢におきまして、
日本側においてこの前の
用船のときの
用船委員会のごとく、しかるべき船主協会とか、造船工業会とか、そういう
業者のある一定の機関を作って、たとえ直接決済の方式であろうとも、一応は
業者の選定にしても何にしても、そういうようなトンネル機関を作って、だれが見てもガラスばりのような機構をまず
日本側において整備することが必要であると同時に、私は率直に
スカルノ政権に対してもガルシア政権に対しても、岸さんから、こういう問題はお互いに双方不利益になるから
国家としてこれはお互いに
考え合おうということを提案されてしかるべきだと思う。そのことがむしろフィリピン国、
インドネシア国に対するところの名誉であり、尊敬であると思う。その道をとらずに安易な道で、
向うさんにかってにやらしなさいということではいかぬと思う。そういう観点に立って今後の粛正のためにも
一つこの際問題になっているフィリピン、
インドネシアその他の
賠償は、これを払わぬというのではありませんが、これを進展せしむることはしばらく中止をされたら一番いいと思う。そうして双方お互いに検討する、機構も改める……。(「それは信義に反するじゃないか」と呼ぶ者あり)国際信義に反しない。そういうことを一ぺんやって、何も一月も三月も延ばそうというのではない。そうしてもう一ぺん再出発することが必要だと思いますが、その意思があるかどうか岸さんにお伺いいたします。