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石村委員 その点重要な問題だと思いますが、もう時間もありませんからやめます。やめて今の
蓄積の問題ですが、通産大臣は、やはりこういう高い
資本の形成率はどんどん維持して、そうして輸出を
日本は大いにしなければならぬ、今たくさんできて過剰生産で困っておるが、これは操短をするとかあるいは外国へ売るとかで解決したい、
国民に買わせる気はないということなんですね。私は
国民が、高碕さんにしてもわれわれにしても相当の着物を着ておりますが、
国民一般の消費水準というものは、上も下も平均すればかなりの率に上るかもしれません。しかし
日本の現状では、低
所得者層というものが莫大におります。いつだったか、二、三年前だったか知らぬが、東京のどこやらには、子供の作文を見ると、うちには茶わんが一つしかない、妹が先に食べて順に回ってくるのを私はそばで見ておりますという作文を書いて、大へん同情を引いたことがあります。そのように一軒に茶わんが一つしかないという家庭がたくさんある。冬になっても着物のない者がたくさんある。こんな者も現在ではそのままにして、買わぬでもよろしい。
日本は輸出する。結局これでは
日本の輸出というものは、ハンガー・ダンピングとはいいませんが、ハンガー輸出、
国民生活から見ればハンガー輸出ということにならざるを得ないのであります。だから私の聞きたいのは、このような高い
資本形成率を依然として維持していかなければならぬというのが、
日本の
資本主義に与えられた今の運命であるとするならば、結局そういう低額
所得者に対しては、知らぬ顔をしているよりほかしようがないということになるのじゃないか、こう思うのです。時間がないからこっちの言いたいことを少し言いますが、
所得をふやすということになりますと、これも私の
意見ではなしに、
経済白書というものを
政府がお出しになっておりますからそれを見ますと、個人消費の基礎たる
個人所得の
増加率が、法人
所得の
増加率よりもかなり低いこと、これが現状だそうです。つまり個人は三二%しか
——これは個人全体でしょうが、
増加しておらぬが、法人は八九%も
所得が
増加している。そしてこの法人が社内留保をして
資本の
蓄積をどんどんやって、その結果二八%何ぼという高い水準になっている。また
個人所得の中でも、財産
所得が最近はますますふえている。賃貸料の
所得は六六%の
増加、これは三十年以降三カ年間の平均ですが、利子
所得は八三%も
増加している。そうしてさらに
経済白書の
指摘するところによりますと、
所得階層別分布が拡大して、そうして個人業種とか会社重役なんかは二三%もふえているが、勤労者は一七%しかふえない。農家は一五%しかふえておらない。また内部における格差はますます拡大しておって、二十八年から三十二年までの四カ年平均では、五分位階層別にしてみますと、一番低い低
所得者のところは二五・四%しかふえておらないが、上の方は四一%もふえている。こういう
所得階層別の分布があるわけです。これは最近の数カ年の平均です。こういう状態でさらに貯蓄を増強するということになると、やはりこうした連中にますます
所得を多くするという
方法をとらなければ
所得増加はできない。茶わんが一つしかない者へ金をやっても、これは
資本蓄積の方へ回す余裕はありません。低額
所得者はむしろ赤字になっているということは、今度の
経済月報の終りの方にもあるわけなんです。だから、あなた方が口では
社会保障、こう言われる。自民党の綱領というものは、福祉国家の建設を期すということだそうですが、
資本蓄積は依然として高い現在の水準を維持し、さらにこれを大きくしていかなければならぬという運命に
日本の
資本主義があるならば、どうしても
社会保障というものはあまりやるわけにはいかない。やはり給料の多い者によけい給料をやって貯蓄させる、そういうことをしなければ、
資本蓄積は高水準は維持できないし、ふえもしない。だから
社会保障、こう口では言っておるが、実はもしそれが必然的なものであるならば、
社会保障というものはあまりやるわけにいかぬということになるのじゃないか。従って今度の
予算でも
経済基盤の方はうんとおやりになるが、
失業保険の
国庫負担金の方は減らすとか、やれ
国民厚生年金の料率を上げるとか、日雇い健保の料率も上げるとかいう、さっき言ったような逆行をやって、
資本の形成率を高めるという政策を、あなた方の方ではとらざるを得ぬのじゃないか。いい悪いは別問題です。いい悪いはそれぞれの立場の者が
判断するでしょう。
資本家はその方がいいというし、われわれは悪いというが、とにかく今の状態ではそういうことにならざるを得ぬのじゃないか、これがいやなら
資本主義をやめてみんな社会党にでもなってくれなければどうにもならぬということになるわけですが、とにかくそういう傾向にあるということはお認めにならざるを得ないと思いますが、いかがですか。