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1959-02-26 第31回国会 衆議院 本会議 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月二十六日(木曜日)     ―――――――――――――  議事日程 第十七号   昭和三十四年二月二十六日     午後一時開議  第一 奄美群島復興特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出)  第二 市町村職員共済組合法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  第三 公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案内閣提出)  第四 国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  第五 下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  第六 法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提出)  第七 文部省設置法の一部を改正する法律案内閣提出)  第八 運輸省設置法等の一部を改正する法律案内閣提出)  第九 農林省設置法の一部を改正する法律案内閣提出)  第十 開拓融資保証法の一部を改正する法律案内閣提出)  第十一 森林開発公団法の一部を改正する法律案内閣提出)  第十二 盲学校、聾(ろう学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  第十三 郵便貯金の旧預金者等に対し旧預金部資金所属運用資産増加額の一部を交付するための大蔵省預金部等損失特別処理法第四条の臨時特例等に関する法律案内閣提出)  第十四 石油資源開発株式会社法の一部を改正する法律案内閣提出)  第十五 繊維工業設備臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出)     ――――――――――――― ○本日の会議に付した案件  最低賃金法案内閣提出)  日程第一 奄美群島復興特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第二 市町村職員共済組合法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  日程第三 公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第四 国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第五 下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  日程第六 法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第七 文部省設置法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第八 運輸省設置法等の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第九 農林省設置法の一部を改正する法律案内閣提出)  郵政省設置法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第十 開拓融資保証法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第十一 森林開発公団法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第十二 盲学校、聾(ろう学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)     午後二時三十五分開議
  2. 加藤鐐五郎

    議長加藤鐐五郎君) これより会議を開きます。      ――――◇―――――
  3. 加藤鐐五郎

    議長加藤鐐五郎君) この際、御紹介申し上げます。  ただいまニュージーランド内閣総理大臣ウォルター・ナッシュ氏が貴賓席にお見えになりました。本院に同氏をお迎えいたしましたことは、まことに喜びにたえません。ここに、諸君とともに心から歓迎の意を表します。     〔拍手〕      ――――◇―――――  最低賃金法案内閣提出
  4. 松澤雄藏

    松澤雄藏君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、この際、内閣提出最低賃金法案議題となし、委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  5. 加藤鐐五郎

    議長加藤鐐五郎君) 松澤君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 加藤鐐五郎

    議長加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  最低賃金法案議題といたします。委員長報告を求めます。社会労働委員長園田直君。     …………………………………     〔園田直登壇
  7. 園田直

    園田直君 ただいま議題となりました最低賃金法案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。  戦後、わが国労働法制は急速に整備され、近代的労使関係の確立と産業合理化を促進し、わが国経済復興に寄与するところ少くなかったのであります。しかし、労働条件のうち最も基本的なものである賃金について、労働基準法に定める最低賃金に関する規定は、中小企業零細企業の多いわが国経済の複雑な構成のもとにおいては、今日までその実施を見るに至らなかったのでありますが、各種の国内的事情並びに国際的条件にかんがみまして、中央賃金審議会答申を全面的に尊重しつつ、産業別規模別等経済力賃金に著しい格差のあるわが国経済実情に即した最低賃金制実施し、多くの日の当らない労働者の要望にこたえようとするのが、本案提出理由であります。  以下、その内容を簡単に御説明申し上げます。  第一に、最低賃金決定は、業種職種または地域別に、その実態に即して行うこととし、全産業全国一律方式を採用しないこと。第二に、最低賃金労働者生計費、類似の労働者賃金及び通常の事業賃金支払い能力を考慮して定めることとし、最低賃金決定された場合、使用者はその最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないことにしたこと。第三に、最低賃金決定については、当事者の意思をでき得る限り尊重し、もって本制度の円滑なる実施をはかるため、業者間協定による最低賃金業者間協定による地域的最低賃金労働協約による地域的最低賃金及び最低賃金審議会調査審議に基く最低賃金四方式によることとしたこと。第四に、家内労働については、決定された最低賃金の有効な実施を確保するために、必要な限度において行政官庁最低賃金審議会意見を聞いて最低工賃を定め得るようにしたこと。第五に、最低賃金審議会中央及び地方に置き、委員は労、使、公益各同数とし、ほかに特別委員として関係行政機関職員を加え得ること。また、必要に応じて業種別職種別専門部会を置くことができることなどのほか、本法の有効な実施を確保するため所要の規定を設けておるのであります。なお、本法適用範囲原則として労働基準法及び船員法適用あるもの全部とし、これが施行に関する主務大臣は、それぞれ労働大臣及び運輸大臣としておるのであります。  本案は、さきの第二十八回国会及び第三十回国会提出され、両国会とも、衆議院においては政府原案の通り可決いたしたのでありますが、参議院におきまして審議未了に終ったため、三たび本国会提出された次第でありまして、去る十二月十六日本委員会に付託され、同月十七日倉石労働大臣より提案理由の説明を聴取した後、慎重なる審議を行なったのであります。  そのおもなる質疑応答について申し上げます。  まず、「最低賃金決定については労働者生計費を特に重視すべきであり、全産業全国一律に決定しなければその実効を上げ得ないのではないか」との質疑に対しては、「将来の理想形態としては全産業全国一律方式が望ましいが、中小企業の多いわが国経済実情においては、まず業種別職種別地域制最低賃金決定する方が適当である」との答弁がなされ、また、「いわゆる業者間協定最低賃金の実を持たないのではないか」との質疑に対しては「業者間協定は、最低賃金審議会に諮問し、その意見を尊重して法律上の最低賃金とされるのであって、業者の自由に決定した額がそのまま最低賃金となるわけではない」との答弁がなされたほか、業者間協定実施実情などについて質疑応答がなされたのでありますが、それらの詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。  かくて、本月十九日の委員会において、二階堂委員動議により質疑を終了し、次いで、すでに印刷配付されておりました本案に対する多賀谷真稔君外二名提出修正案質疑を終了した後、修正案並びに政府原案について討論を省略して直ちに採決に入りましたところ、まず修正案は否決せられ、続いて本案政府原案の通り可決すべきものと議決した次第であります。  なお、右案に関し、一作二十四日及び本日の委員会におきまして、小林進君、多賀谷真稔君、齋藤邦吉君、伊藤よし子君の各委員から本案並びに修正案に関して発言が行われた次第でありまして、その結果、日本社会党委員諸君は、本案に対する修正案に賛成し、政府原案に反対であることが明らかになりましたので、その旨委員会において明確にいたした次第であります。従って、本案に対する賛成者は多数であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     ―――――――――――――
  8. 加藤鐐五郎

    議長加藤鐐五郎君) 本案に対しては勝間田清一君外十四名から成規により修正案提出されております。この際、修正案趣旨弁明を許します。多賀谷真稔君。     …………………………………     …………………………………     〔多賀谷真稔登壇
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷真稔君 ただいま議題になりました最低賃金法案に対する修正案につきまして、その提案理由及び内容の概要について説明申し上げます。  政府は、最低賃金決定方法として、第一に、業者間協定によるもの、第二に、業者間協定地域的拘束力によるもの、第三に、労働協約による地域的拘束力によるもの、第四に、審議会調査審議に基くもの、の四つを掲げております。第三の方式は、すでに労働組合法第十八条の労働協約一般的拘束力規定の適用によって十分であり、第四の方式も、労働基準法第二十八条以下によって十分なし得るところであります。ゆえに、政府案の真のねらいは、第一、第二方式である業者間協定に基く最低賃金の新設にあることは明らかであります。  業者間協定は、求人難であるということ、企業者地域的にまとまっておるという条件企業の質が均一であるということ、過当競争業種で、不公正競争排除の必要があるということ、業者組合が強力で、かつ統制力があるということの条件がそろっている場合に、初めて締結されるのであります。今後、果してどの程度推進されるか、百年河清を待つの思いがいたすのであります。(拍手)  第二に、たとい任意的業者間協定ができましても、わざわざ罰則の伴う法的手続をとるかどうか、これまたきわめて疑問であり、任意の業者間協定中、法的手続をとるものはごく少く、暗夜に星を探すのたぐいになることが予想されるのであります。(拍手)  第三に、業者間協定申請せられ、その最低賃金額が不当に低くとも、労働大臣並びに労働基準局長には何らの修正権能もないのであります。これこそ、何のため行政官庁申請をさせ、決定をするのか、全く意義がないものであると思うのであります。工場や商店の店先に、法的最低賃金実施商店という看板を出さなければきき目がないと思うのであります。  第四に、さらに奇異に感じますことは、却下された最低賃金業者間協定というものが、民事的契約としては有効であり、政府は、これに対し何らの介入もできないということであります。いやしくも、申請をして不当として却下されたものが民事的には有効な協定であるということ自体問題であり、かかる業者間協定は、不当賃金カルテルとして認むべきでなく、無効として禁止すべきであると考えるのであります。現実に締結された業者間協定は、政府は一〇%ないし一五%アップになっておると説明しておりますけれども、しさいにこれを検討いたしますと、あるいは、従来のどんぶり勘定を改めたにすぎないものがあり、あるいは、住み込みの場合におきましては食事代の価格の評価がえをしたにすぎないものがあり、大体は八時間労働でやっと食事代が出て、その他の生活費は時間外労働でかせぐという程度のものでありまして、これをもってしては労働者の生活の改善は期し得られないと思うのであります。  業者間協定について、さらに重要なことは、労働条件決定使用者に一方的にまかし、それをそのまま法によって保障するということであって、これはどうしても労働立法としてはうなずけないのであります。労働基準法第二条に、「労働条件は、労働者使用者が、対等の立場において決定すべきものである。」とうたい、たとい組合組織のない場合でも、労働基準法は、時間外及び休日の労働協定就業規則作成等の場合には、「労働者過半数組織する労働組合がない場合においては労働者過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。」と規定しており、労働条件決定には当該労働者の代表の意見を反映すべく、非常な努力と苦心をしておることを、私たちはうかがい知ることができるのであります。  国際労働条約、ことに最低賃金決定制度実施に関する勧告におきましては、「最低賃金決定制度は、そのとれる形式のいかんを問わず、主として影響を受ける利害関係者、すなわち、当該事業に従事する労働者及び使用者と協議してこれを運用すべく、いかなる場合においても、最低賃金率決定に関する一切の事項については右使用者及び労働者意見を求め、かつその意見に対しては十分にして均等なる考慮を払うべし」と規定しておるのでありまして、本法案がこの勧告に抵触することは、政府みずから認めておるのであります。ただ、政府は、この法案は、最低賃金決定制度の創設に関する条約には何ら抵触することがないと強弁しておりますけれども、本条約の第三条ただし書きの規定に適応しておるかどうか、きわめて疑問であります、業者間協定に基く最低賃金は、原案の作成には何ら労働者は参与せず、しかも、最低賃金審議会原案を承認するかいなかの判断しかできず、原案を修正する権限のない場合、果してこの条約に抵触せずと言い切れるかどうか。本条約の批准をめぐって、今後、国際労働機関で論議せられ、労働者意見の反映のない業者間協定を含む最低賃金法案は、国際労働場裏で批判を受けることは火を見るより明らかであります。やがて、また業者間協定の削除を勧告されるような事態が惹起するならば、それこそ、国際的信用を失墜する結果になるでありましょう。  かように、低賃金を固定化し、労働法の大原則に違反し、国際労働条約に抵触するおそれのある業者間協定に基く最低賃金につきましては、本院におきまして政府よりいろいろ御答弁を得ましたけれども、遺憾ながら納得することができず、ここに業者間協定に基く最低賃金を排除する修正案提出いたしたわけでございます。(拍手)  わが国賃金は、国際的に比して著しく低いといわれております。賃金国際的比較というものはなかなか困難でありますが、わが国賃金の低いということは、単に賃金一般水準の低いということだけでなく、ほかに賃金分布に問題があるわけでございます。諸外国と、高賃金のもの同士を比較いたしますならば、その差は非常に僅少でありますが、低賃金のもの同士を比較いたしますれば、その差は非常に拡大をしておるのであります。賃金分布の不平等というところに、きわめて問題があると思うのであります。すなわち、わが国賃金構造は、広範な低賃金階層の存在と、種々の賃金格差の拡大にその特色を見出すことができるのでありますが、その賃金格差の特色も、実は、産業別または職業別賃金格差というよりも、企業規模別賃金格差にあるのであります。諸外国が、五百人以上の事業所労働者賃金に対して、十人未満の事業所労働者賃金が八〇%ないし九〇%であるのに対して、わが国は四〇%程度という状態になっておるのであります。この企業規模別格差の要因を、私は、わが国資本主義構造的特質と、わが国労働組合組織あり方から分析してみたいと思うのであります。  欧米の諸外国では、大企業と小企業との間の付加価値の違いが二〇%をこえないのに、わが国では五〇%という大きな開きを持っていることは事実であります。しかし、付加価値の相違の中には、単に労働生産性の違いだけでないということであります。下請関係及び原料供給関係を通じて行われる大企業中小企業に対する不当な収奪、それをささえておる政府財政金融面での諸政策全般が含まれていることを知らなければなりません。(拍手)すなわち、わが国産業構造後進性と、それを打破せんとする政府政策の欠除が、中小企業付加価値を不当に低め、企業間の賃金格差を拡大せしめておるのでありまして、政府が大資本家優先政策をとり出しました昭和二十五年ごろより、その格差は一そう激しくなっておることを、われわれは知ることができるのであります。(拍手)  次に、規模別賃金格差を拡大せしめておる原因といたしまして、わが国労働組合組織あり方をあげることができると思うのであります。諸外国におきまして、企業間賃金格差の少いことは、決して自主的にできたのではございません。むしろ、労働運動も発展せず、最低賃金制も確立していない時期におきましては、賃金格差は意外なほど大きかったということを、われわれは過去の資料において知ることができるのであります。しかし、賃金格差の大きいこの賃金を現在のごとき形に変化せしめたものは、経済構造の変化だけではなくて、実に労働組合運動最低賃金制であったのであります。  御存じのごとく、諸外国組合産業別組合であろうと、職業別組合であろうと、いずれも企業外横断組合であります。その中小企業労働者を包含いたしました産業別あるいは職業別組合が、その経営者団体統一交渉を行なって最低基準の設定を行なってきておるのであります。これらを通じまして統一的な労働市場が形成せられ、企業間賃金格差は縮小されてきたのであります。しかるに、わが国労働組合組織は、これと全く異なり、ほとんど企業内組合であります。しかも、中小企業の労組の組織率はきわめて低く、三十人より百人未満までの組織率はわずかに二割、三十人未満は、まことにりょうりょうたるものであります。現状では、中小企業労働組合はとうてい賃金格差を縮小するだけの力を持ち得ません。わが国労働組合が、企業別従業員組合から脱皮いたしまして、産業別労働組合を確立し、その産業別労働組合の内部に中小企業労働者を包含して、中小企業の低賃金を緩和する必要があると思うのであります。  しかるに、政府は、産業別労働組合組織化を指導するどころか、逆に、日経連とともに、電産を初め多くの単産の切りくずしに狂奔し、労働次官通牒をもって、「上部組織は、むちと拍車だけで、手綱を忘れた騎手である」と、上部組織を最大限に誹謗しておるのであります。わが国組織企業組合にとどめた責任の大半は政府にあると、私は断ぜざるを得ないのであります。(拍手)現に、職員でなければ組合組合員または役員にすることができないというこの公労法第四条第三項は、政府の従来の政策を明白に現わすものであり、これがILOを初め国の内外の批判を受けたことは、皆さん御承知の通りであります。(拍手)  さらに、男女別または年令別賃金格差のはなはだしいことも、わが国賃金構成封建的慣習性を物語っておるものであります。  かように、わが国賃金構造をながめて参りますと、低賃金階層は、全産業、全職業にわたって中小零細企業に群集し、婦人及び年少者の低賃金は、また全企業にわたって広範に分布しておるのであります。このわが国賃金構造組合の状態においては、政府案のごとき事業別職業別地域別最低賃金だけでは所期の目的を達することはできず、その賃金構造最低部に統一的な一線を画する必要があると考えるのであります。かくして、初めて事業別職業別最低賃金も意義を持ってくるのでございます。よって、わが党は、全国産業一律の最低賃金を底辺として、その上に、労働の質と量に応じ、事業別職業別最低賃金をあわせ設定することにいたしたのでございます。  以下、修正案主要点について説明申し上げます。  第一に、最低賃金決定方式につきましては、政府案の「業者間協定に基く最低賃金」及び「業者間協定に基く地域的最低賃金」の項を削除し、それにかわり、「すべての労働者についての最低賃金」の項を設け、その最低賃金額決定につきましては、中央最低賃金審議会の議決を経て労働大臣が定め、国会の承認を受けることにいたしました。  第二に、全国一律最低賃金額をこえることを相当とする労働者最低賃金につきましては、労使及びその団体の申請最低賃金審議会の勧告により、一定の事業または職業ごとに、全国もしくは地域に応じ決定することにいたしました。  第三に、労働協約一般的拘束力に基く最低賃金につきましては、一定の地域だけでなく、全国的にも拡張できるようにいたしたのであります。  第四に、家内労働者最低工賃決定につきましては、政府案におきましては、一定の家内労働者にのみ適用することになっておりますので、これを広く全家内労働者を対象とすることにいたしたのでございます。  第五に、最低賃金審議会の性格につきましては、諮問機関ではありますが、従来、この種の機関の答申は十分尊重されず、しばしば政府の裁量により変更されて参りましたので、最低賃金決定は議決を経て行うことにいたしますとともに、みずから発議し、勧告できるようにいたしたのであります。  以上、修正案について述べましたが、最後に、与党諸君に若干申し上げたいのであります。  私が与党諸君に申し上げたい第一の点は、政府最低賃金制度を真に確立する意思があるならば、何ゆえ政府みずからできることをおやりにならないのか。ことわざに、隗より始めよということがあります。アメリカ政府は、民間に最低賃金を強制する前に、みずから模範を示しておるのであります。すなわち、公契約法というものを制定いたしまして、政府に対し一万ドルをこえる物品を納入する商社、工場、二千ドル以上の公共建物等を請負う請負人に対しましては、公正労働基準法規定する以上の高い最低賃金を定めてこれを支払わなければならないとし、もし違反をするならば、その商社、工場、請負人に三ヵ年間契約の停止をすることにいたしておるのであります。(拍手わが国政府も、公契約法を作って、政府みずから率先して最低賃金実施し、最低賃金の地ならしをするのが妥当であると思います。この点を私は強調いたしたいと思うのであります。ところが、わが国政府は、一般職種別賃金をきめてはおります。しかし、公共事業に従事する労働者にこれをこえる額の賃金を支払ってはならないという、逆に最高賃金をきめておるのでありまして、このPW政策こそ、政府の低賃金政策を端的に現わすものと考えるのであります。賃金政策に対するアメリカ政府の態度は、まさに雲泥の差異があるといわなければなりません。政府及び自民党諸君は、一体、真の最低賃金を設定する意思があるかどうか、再考を促したいのであります。(拍手)  私が与党諸君に申し上げたい第二の点は、わが国人口構造就業構造産業構造を見て、諸君は、現在よりもさらに高い水準の賃金決定することをあるいはちゅうちょされるかもしれません。しかし、あすの労働の再生産も確保できず、生存権すら脅かす賃金を、どうして黙認することができるでありましょうか。世帯主が働いていて、生活保護を受けなければならないような、この実態を、われわれは直視しなければならないと思うのであります。いかに、社会保障において、労働者に健康、失業、厚生という社会保険の中軸をなす三保険が成立しておりましても、その前提条件としての最低賃金が確立していなければ、傷病手当も、あるいは失業手当も、まことに僅少になり、その意義の大半は失われ、社会保障制度は全く奇形的なものにならざるを得ないのであります。岸総理福祉国家の建設を唱え、諸君は今や国民年金制度を樹立せんとし、中小企業労働者に対する任意退職積立金国庫補助金まで出さんとするときに、何ゆえ最低賃金だけはサボろうとするのか。自民党社会保障制度は低賃金をカムフラージュするためのものであるという非難を受けてもいたし方ないと思うのであります。(拍手)  私が与党皆さんに申し上げたい第三の点は、この修正案は、各界の労働者をそれぞれ代表する総評、全労、新産別、中立組合の統一的見解に基く、いわば、わが国のすべての労働者の一致した要求に基き作成されたものであります。最低賃金法は、労働立法の中でも最も基本的なものの一つであり、それは大多数の労働者の支持と納得に基いて立案されてこそ、初めて大きな意義があると思うのであります。もし政府案がこのまま通過をするようなことがあるならば、それこそ、わが国労働立法史上最大な汚点を残すことになるでありましょう。一九一九年、日本労働組合総同盟友愛会が、友愛会という労資協調的な名称を振り捨てて日本労働総同盟となり、最低賃金制を要求して以来ここに四十年、ILO最低賃金制条約をめぐって、政府使用者代表反対の中に、労働者代表、故米窪滿亮氏が、わが国の低賃金実情を訴え、最低賃金制採用の急務を強調し、賛成投票をして以来ここに三十年、まさに、政府の似て非なる最低賃金法案が本院を通過するか、全労働者の統一したわが党修正案が通過するかという、重大なる段階であります。  与党皆さん皆さんに、もし、真にわが国労働者を救済し、わが国中小企業を振興し、わが国産業構造を近代化せんとする意思があるならば、何とぞ本修正案に御賛同賜わらんことをお願いし、修正案提案の理由の説明にかえたいと思います。(拍手)     ―――――――――――――
  10. 加藤鐐五郎

    議長加藤鐐五郎君) これより討論に入ります。  八田貞義君。     〔八田貞義君登壇
  11. 八田貞義

    ○八田貞義君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました内閣提出最低賃金法案について、社会党の修正案に反対し、政府原案に賛成の討論をなさんとするものであります。(拍手)  そもそも、最低賃金制は、十九世紀の末葉、オーストラリア、ニュージーランドで初めて実施されて以来、現在四十数ヵ国において実施を見ているのでありますが、その内容については決して一様ではなく、それぞれの国情によって非常な違いがあるのであります。従って、わが国において最低賃金制実施する場合、それはわが国実情に適したものでなければならないことは申すまでもありません。御承知の通り、わが国は、資源の乏しい狭隘な国土に多数の人口を擁しており、しかも、中小零細企業が圧倒的に多いという特徴によって、諸外国に例を見ない複雑な産業構造を有しているのであります。これは中小零細企業は大企業に比して著しく経済力が劣っており、かかる経済力の差が、また賃金の面においても規模別、産業別地域別等に著しい格差を生ずるに至っておりますことは、周知の事実であります。  内閣提出最低賃金法案は、かかるわが国経済の複雑な構成という現状に即して、最低賃金制はいかにあるべきかということにつき、労、使、公益の三者よりなる中央賃金審議会が六カ月の長き期間を通じて慎重に審議し、取りまとめられた答申を、全面的に尊重して作成されたものであり、きわめて妥当なものであると考えるのであります。(拍手)  すなわち、政府案におきましては、業種別職種別地域別に、それぞれの実態に応じて最低賃金制実施し、これを漸次拡大していくように取り計らい、しかも、最低賃金決定方法として、業者間協定による方式労働協約による方式、職権による方式などの四つの方式を採用し、これらの方式を適宜活用することにいたしておりますることは、まことにわが国実情に即した有効適切な方策であると考えるのであります。  これに反しまして、社会党から提出された修正案は、全国産業一律の最低賃金を制定するとともに、業種職種地域別最低賃金制をあわせ実施しようとするものであり、このような、いわば二重最低賃金制は、わが国の現状に照らし、実現性のきわめて乏しい案でありますることは、申すまでもありません。(拍手)  私としては、これに対し何ら意見の開陳の必要を認めないのでありまするが、社会党は、なぜ、さきの国会に提案したみずからの最低賃金法案を撤回して、この修正案を突如として提出したのでありましょうか。新聞紙の伝うるところによれば、総評などの労働組合の申し入れに基いたものといわれております。(拍手)これでは、社会党が公党としての自主性を失い、特定の労働組合の駆使に従っているとの印象を否定するわけには参らぬのであります。(拍手)しかも、この修正案は、中央賃金審議会審議の過程において、労働者意見として出されたものと内容が同一であり、これに対して社会党としての自主的意見が加えられておる点が何ら認められないのであります。(拍手)これでは、労働者側の意見に一方的に盲従し、審議会意見を無視したものと申さなければなりません。果して社会党に最低賃金制に対する熱意と誠意があるのかと疑わざるを得ないのであります。(拍手)  申すまでもなく、わが国中小企業実態はきわめて複雑多岐であり、その経済力にも著しい格差が存するのであります。かかる現状において、全国産業一律の最低賃金制実施することは、最低賃金の額が高きに失すれば、経済力の乏しい多くの中小企業の支払い能力を無視するものとなり、もし、それが強行されるならば、いたずらに経済に摩擦と混乱を生ずることになります。また、他面、低きに失すれば、低賃金労働者労働条件の改善に何ら役立たないばかりでなく、すでに大企業などにおいて得ておる賃金をかえって引き下げることにもなって、労働者労働条件の低下になるおそれさえあるのであります。従って、かかる方策は、わが国の現状においてはとうてい採用し得ないのであります。  なお、政府案に定める業者間協定に基く最低賃金は、労働者意見を反映せず、ILO条約労使対等の原則にも反し、また労働者の低賃金を固定化させるものであるというような誤解が一部に行われております。しかしながら、本法案におきましては、業者間協定が直ちに最低賃金となるのではなく、労、使、公益の三者で構成される最低賃金審議会に諮り、その意見を尊重して最低賃金とするのでありますから、この審議会の場において、労働者側は使用者側と対等の立場に立って十分に意見を反映させることができるのであります。決してILO条約の趣旨、精神に反するものでもなく、また、賃金の固定化のおそれもないことは明らかであります。また、現在各地で実際に行われておる業者間協定の現状を見ましても、協定賃金以下の労働者賃金は、おおむね一割ないし二割の上昇を見ているのでございます。従って、これを業者間の自主的規制にとどめないで、法的に拘束力のある最低賃金制の一環として取り入れて参りますることは、わが国の現状に即した有効適切な方策であると思うのであります。(拍手)  次に、最低賃金制実施わが国経済実情に照らしてまだ早いのではないかというような意見や危惧が、産業界の一部には、なお根強く残っておるのでありまするが、本法案は、今まで申し述べたところからも明らかなように、わが国中小企業実情に沿うよう十分に工夫を加えたものであります。本法案実施によって中小企業に悪影響を与えるようなおそれはなく、むしろ、労働力の質的向上、公正競争の確保、ひいては中小企業合理化、近代化に役立ち、その経営基盤の強化にも資するものであると信ずるのであります。  なお、労働保護法としての画期的な本制度が円滑に運営され、低賃金労働者生活の真の安定を期するなど、その実効を具体的に期するためには、この上とも、雇用政策、経済政策などの面において、強力にして適切な施策の実施に待たなければなりません。政府におかれましても、この点についてに十分心を配り、本制度の実効ある実施に当られんことを、ここに強く要望するものであります。  顧みますると、昭和二十二年以来、労働基準法の中に最低賃金に関する規定がありながら、今日まで実施を見るに至らなかったのは、戦後の混乱した経済事情や、わが国中小企業の特異性などによるものと思います。しかるところ、ようやく年来の努力が実り、ここに最低賃金法が制定されんといたしますることは、わが国労働法制上、まことに意義あることであります。  最低賃金制を最も必要とするのは、わが国中小零細企業で低い労働条件のもとに営々として働く労働者諸君であります。これら中小企業労働者諸君は、たとい漸進的なものであれ、本法案実施を待望しておるのでありまして、一日も早く本法案が成立することを望むものであります。(拍手)しかしながら、最低賃金制は何分にもわが国初めての制度であります。本法案の成立の暁には、労使のみならず、広く国民一般の理解と協力のもとにこの最低賃金制が円滑かつ有効に実施されることを望んで、内閣提出最低賃金法案に対して賛成し、社会党の修正案に反対するものであります。(拍手)  以上、私の討論を終ります。(拍手)     ―――――――――――――
  12. 加藤鐐五郎

    議長加藤鐐五郎君) 小林進君。     〔小林進登壇
  13. 小林進

    小林進君 私は、ただいま上程されております最低賃金法案に対し、日本社会党を代表し、社会党修正案について賛成、政府原案について反対の意思を表明し、以下、その理由を申し述べんとするものでございます。  そもそも、最低賃金制労働者保護の制度でございます。日本に広範に存在する低賃金を解消し、それによって、労働者生活改善と、健康にして文化的な生活を保障せんとするのが、最低賃金法制定の本来の目的でございます。周知の通り、労働保護については、すでに労働基準法を初めとして、労働組合法労働関係調整法等、一連の保護立法が制定され、労働時間の制限、女子、年少者の保護、安全衛生の管理、災害補償の法的規制が講ぜられてきましたが、賃金に関する限り、何らの規制も保護も講ぜられず、もっぱら経営者の一方的判断にゆだねられ、低賃金を押しつけられるままに今日に至ったのでありまして、そのために、せっかくの労働保護立法もその意義大半が失われ、労働者生活安定はこの点から全くしり抜けになっていることは、皆様御承知の通りでございます。(拍手)低賃金、すなわち食えない賃金が、直ちに労働者及びその家族を窮乏と饑餓と頽廃に追い込んで、そうして今日の社会不安をかもし出している現状より見て、賃金に適正なる一線を画して、それ以下の低落を阻止することは、労働保護法が何をおいてもなすべき第一の任務であり、最も重要なる使命であると申し上げなければなりません。(拍手)しかるに、政府は、この唯一緊要なる労働立法の目的を捨て去り、労働者生活を守るという立場をすりかえて、資本家、経営者の利益を守るという立場に立って、ごまかしの最低賃金法を制定せんとしている。これが、われわれの反対せねばならぬ第一の理由でございます。(拍手)  そもそも、最低賃金制の必要を政府が言い出すに至った初めは、昭和二十四年、鈴木労働大臣の時代でございました。当時日本を占領しておったGHQのエーミス労働課長が、同年十月二十三日、「日本の物価もほぼ安定し、補給金の制度も廃止された今日、英、米は日本のソーシャル・ダンピングを警戒している。このような情勢にある以上、最低賃金制につき考慮すべき段階にある」と言明をしており、日本政府は、この占領軍の示唆に基いて、翌昭和二十五年、労働省内に中央賃金審議会を設置するに至ったのでございます。従って、政府の意図するところは、まず対外的考慮に基いてなされたことは、これをもっても明らかでございます。  戦前、ソーシャル・ダンピングの非難を招いた日本の植民地的低賃金が、戦後、毫も改善されぬのみか、むしろ、相対的に低下していることは、多くの人々の指摘いたしておるところでございます。このため、戦後再び日本のソーシャル・ダンピングに対する諸外国の懸念が増大し、そのため少からず海外貿易に支障を来たしていることは、先刻御承知の通りでございます。ここにおいて、日本が国際的孤児たるに甘んじない限り、その植民地的低賃金について政府並びに資本家の側から何らかの自衛策を講じなければならぬことは、避けることのできぬ明らかな事実でありまして、これが、政府をして、そもそもこの法案を発意させるに至った根本の理由でございます。外国の非難に対処して、独占資本の立場を擁護するために作り上げられた、このごまかしの最低賃金法案は、その出発の当初から、断じて労働者のためのものでもなければ、労働者生活を守るものでもなく、最低賃金法案本来の目的から全くかけ離れた偽わりの法案である点、われわれのあくまでも反対をしなければならぬ基本問題でございます(拍手)  以下、この思想的根拠に立って、政府原案の持つ矛盾を追及いたしたいと思うのであります。  まず、この法案を見るに、四十三条にわたる条文の中に、労働者を保護するという立法の趣旨を明確にいたしておるところはどこにも見当らぬのであります。この法律を制定する目的は多様性にあるのであると呼称して、一、経営者の不当競争を防止する、二、経営基盤の育成強化をはかる、三、労働力の質的向上をはかる、四、国民経済の健全なる発展に寄与する、五、外国の非難に対処して資本家の国際的信用を維持する等々、もっぱら資本家や経営者側の保護育成強化のための条項のみを羅列いたしまして、労働者に関しては、わずかに、労働条件の改善をはかり、労働者生活の安定に資す等の若干の規定を、資本家擁護のそれと並立的に書いているにすぎないのであります。これをもっていえば、政府のこの法案は、最低賃金法という言葉を盗んだ資本家擁護法であり、経営者受益法にほかならぬのでございます。(拍手労働者の立場を軽く、資本家の立場を重く擁護せんとする意図のあまりにも露骨に示されている点、われらのとうてい賛成し得ざる第一の矛盾でございます、(拍手)  われわれの反対をしなければならぬ第二の点は、最低賃金決定基準がいささかも明らかに示されておらず、一方的に低賃金を押しつけて、労働者をだまし打ちにする危険が隠されておるということであります。法案の第三条には、「労働者生計費、類似の労働者賃金及び通常の事業賃金支払能力を考慮して定めなければならない。」と規定し、一応生活賃金、公正賃金、支払い能力の三原則によることを記載いたしておるのでございまするが、しからば、その生活賃金とは何ぞというに、これが全然明らかにされておらぬのでございます。     〔議長退席、副議長着席〕  試みに、外国の立法例を一、二見まするならば、アメリカの公正労働基準法において、第二条に、「健康、能率及び一般的福祉に必要な最低生活水準を維持するに足る賃金でなければならぬ」ことを規定し、第六条において、「その賃金とは一時間一ドルを下らぬ額である」と定めておるのでございます。日本よりさらに後進国であると見られているメキシコにおいてさえ、連邦労働法第九十九条において、「最低賃金とは、労働者世帯主であること並びに各地域の諸条件にかんがみ、労働者の生存、教育及び適当な娯楽に対する正常な要求を満たすに足りると思われる賃金をいう」と、具体的に、家族をも含めた生存費、教育費、娯楽費を合算したものが最低賃金であることを決定いたしておるのでございます。アルゼンチン国においては、さらに進んで、健康的な住居費をも含んだものであることを明記いたしておるのであって、同国一九四五年命令第三三三〇二号には、「最低賃金とは、労働者及びその家族の食糧、健康的な住居、衣服、子女の教育、医療、交通費、年金、休日及び娯楽を確保するに足る報酬」と、明確にきめているのであります。(拍手)フランスの一九五〇年の団体協約法は、わが日本社会党修正案と共通点を有し、全国一率の最低保障賃金を定め、その上に業種別職種別賃金を積み重ねる方式をとっているのであります。  これら諸国に比較して、日本政府原案には、この生活賃金内容がいささかも具体的に示されておらぬのであります。わが党委員の追及に、やむを得ず答えた政府側の説明によれば、「業者が一方的に定めた賃金がすなわち生活賃金であり、それがそれぞれの業種によって六千円の場合も二千円の場合があろうとも、一応正当なる生活賃金と称するのほかなく、労働者側に不満があっても、賃金審議会の判断にゆだねるほかはない」というのであります。人間が、時には豚になり、時には鶏にもなることができるならば、八千円で生活することも三千円で生存することも可能でございましょうが、人間が人間である限り、その働いている業種職種に違いがあろうとも、生きていく最低生活費に、そう開きがあろうはずはないのであります。(拍手)しかるに、政府は、資本家の支払い賃金は、それが五千円でも二千円でも最低生活賃金であるから、それで生きるためには、豚にもなれ、鶏にもなれ、と言うのであって、労働の価値を認めず、労働者を人間以下に取り扱わんとする、まことに許し得ざる暴言であるといわなければなりません。(拍手政府原案は、こうしたおそるべき労働軽視、人間軽視の思想を秘めながら、しいて生活賃金内容をぼかしているのでございまするから、この賃金法が発動した場合には、現在あるがままの賃金が、みな最低賃金として法的根拠を与えられる危険のあることを見のがしてはならないのであります。(拍手)  人事院勧告に基く最低標準生活費は、満十八才の労働者にして七千二百五十二円であると発表されております。これをもってはかるならば、日本の全労働者過半数は、今日なお最低標準生活以下の飢餓的賃金しか与えられておらず、大半労働者が、最低生活賃金法によらなければ人間として生きていけぬことを、人事院みずからが証明してくれたといわなければなりません。(拍手)  なお、生活保護法第三条には「この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。」と規定しており、生活保護者といえども、一応健康的にして文化的な生活水準を維持することが保障されておるのでございますが、政府のこの最低賃金法案には、この生活保護法に見合うべき低賃金救済の規定さえ見当らず、一体、どの程度の最低生活労働者に保障してくれるのかという最も重要な一点は、全く空白のまま、ごまかしのままに投げ出されておるのであります。(拍手)しかも、その裏には、生活保護者が受けておる保護費よりもはるかに低い賃金でその労働力を搾取されておる低所得者、女子や年少者賃金、すなわち、その奴隷的賃金をも正当化しようとする企図が隠されておるのであって、これがわれわれの断じて承服できない第二の点でございます。(拍手)  政府原案を最も排撃しなければならない第三点は、もちろん、業者間協定に関する条項でございます。すなわち、経営者の賃金協定を国家権力によって法定賃金と定め、これを関係労働者に一方的に押しつけんとするこの無謀なる規制は、いまだ世界のどこにもその類例を見ないところでございます。しかるに、政府原案は、この業者間協定に最も重点を置き、政府案を強行するねらいも、またこの業者間協定を成立せしめたい一点にあり、他の二つの方式、すなわち、労働協約及び行政官庁による決定方式は、単に補助的に設けたにすぎぬのであります。今や、全資本家もあげて政府案を支持し、この業者間協定に基く最低賃金決定方式の通過に狂奔いたしております。  申し上げるまでもなく、業者間協定とは、経営者間において勝手に協定した賃金を、労働大臣または労働基準局長が、賃金審議会意見を聞いて、法の認める最低賃金とするというのであって、その賃金決定は、あくまで業者の自由であります。ただ、業者が自主的にきめることができない場合のみに限って、副次的に、国家みずからが賃金決定するというのであって、国家の賃金規制は制度の片すみに追いやられ、労働者は締め出され、資本家だけで勝手にきめた私的賃金取引や、やみの賃金協定をそのまま正当化しようというのが、すなわち政府案の骨子となっておるのであります。このやみ取引や私的賃金協定をなすに際して、資本家側には、法的義務も、守らなければならない法的基準も、受けなければならない政府の指導監督もありません。全く野放しにされて、自分たちの思うままの賃金さえ決定すれば、その押しつけ賃金政府が国家権力で守って労働者に強制してくれるという、まことにありがたい規定になっておるのでございます。(拍手)これは、労働者側にとっては、きわめて危険であるといわなければなりません。これによって極度に低い賃金が正当化され、それを労働者に押しつけ、法の拘束力でもって押えつけようというがごとき、もしこれが通過した暁には、労働者は、その不当な低賃金をはねのけるために、今後は、資本家のほかに、あわせて政府をも相手にして戦わなければならず、一たんこの協定による最低賃金がきめられれば、将来への改正、向上は全く至難とならざるを得ないのであります。現在の業者間協定賃金最高賃金、頭打ち賃金の役割を果しておる事例に照らしても、われわれは、このおそるべき政府、資本家の遠大な低賃金政策の意図を決して見のがしてはならないのでございます。  天網かいかい疎にして漏らさず、と申しましょうか、政府は、この業者間協定を立案するに当って、明白なる法律違反を犯すに至りました。労働基準法第二条には「労働条件は、労働者使用者が、対等の立場において決定すべきものである。」という厳格な規定を設けており、この労使対等の原則は、今や万国共通の原則となっており、何人も犯し得ざる、最も崇高なる常識となっておるのでございます。しかるに、労働力の提供に対する反対給付として支払われる賃金は、一切の条件の中で特に重要かつ基本的な条件であり、労使対等の立場に立ってのみ決定せらるべきにもかかわらず、この業者間協定は、その賃金決定に当り、労働者を全く参画させず、ただ使用者の一方的判断によってのみ決定しているということは、これ労働基準法違反であると断じても一分の疑いをはさむ余地もないのでございます。(拍手)もし与党自民党が多数の威力をもってこの法案を強引に通過せしめられたる場合には、われわれは、国の法律を守る立場から、あくまでもその違法性を断々固として戦い取るであろうことを宣言するものでございます。(拍手)  なお、さらに政府に重大なる勧告を与えておかなければならぬことは、国際労働条約との関係においても、また、この法案が明らかに間違いを犯しているということでございます。ILO第二十六号、最低賃金決定制度の創設に関する条約第三条第二項第二号には、「関係ある使用者及び労働者は、なお、いかなる場合においても、同一の員数により、かつ同等の条件において、該制度の運用にこれを参与せしむべし」とあって、労使同一の員数と同一の条件によってのみ賃金決定は進められなければならぬことを明らかにいたしておるのであります。この条文に照らして、この業者間協定がILO条約に違反していることも、これまた多言を要せざるところであります。  労働大臣は、本法案の通過成立次第、ILO第二十六号の批准をすることを言明しておられますが、その際、必ず今日政府が遭遇していると同じ事態が再び起るであろうことを、私は心から忠告せざるを得ないのでございます。(拍手)すなわち、政府、現在、ILO八十七号批准に際し、労働者の団結の自由を奪っている反動的な国内法を整備して、その自由権を復活せしめなければ仲間に入れることができないという厳重なる勧告を受け、世界から嘲笑をこうむっているというがごとき事態が再び繰り返され、国際的世論と圧力の前に、この業者間協定を泣く泣く削除しなければならぬ急場に追い込まれるであろうことは、これまた火を見るよりも明らかなる事実であります。(拍手)  最低賃金法は、申すまでもなく、国際的性格を持つ法律でございます。労働者の国際的連帯性から見ても、また、国際的貿易の競争の条件を平等化する上からも、労使ともども、今、世界各国が最も関心を寄せておる法律であります。それがためにも、日本の法律は、戦争の贖罪を兼ねて、世界の平和勢力の信頼をかちとるためにも、あくまでも国際的条件を満たす進歩的法律でなければならないのであります。  かような、政府のごまかし法案が世に出る場合、ILOの非難はもとより、世界の反響おそるべきものあるを憂えるのでございまして、政府におかれましては、すみやかにこの悪法案を撤回し、わが党修正案をもってそれにかえられんことをお勧めいたしまして、私の討論を終りといたします。(拍手
  14. 正木清

    ○副議長(正木清君) これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、本案に対する勝間田清一君外十四名提出修正案につき採決いたします。この採決は記名投票をもって行います。本修正案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。  氏名点呼を命じます。     〔参事氏名を点呼〕     〔各員投票〕
  15. 正木清

    ○副議長(正木清君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れはありませんか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 正木清

    ○副議長(正木清君) 投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。  投票を計算いたさせます。     〔参事投票を計算〕
  17. 正木清

    ○副議長(正木清君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。     〔事務総長朗読〕  投票総数 三百六十   可とする者(白票)  百二十六     〔拍手〕   否とする者(青票)  二百三十四     〔拍手
  18. 正木清

    ○副議長(正木清君) 右の結果、勝間田清一君外十四名提出修正案は否決されました。     ―――――――――――――  勝間田清一君外十四名提出修正案を可とする議員の氏名       赤路 友藏君    茜ケ久保重光君       飛鳥田一雄君    淡谷 悠藏君       井伊 誠一君    井岡 大治君       井手 以誠君    伊藤卯四郎君       伊藤よし子君    猪俣 浩三君       池田 禎治君    石川 次夫君       石野 久男君    石橋 政嗣君       石村 英雄君    石山 權作君       板川 正吾君    今澄  勇君       受田 新吉君    内海  清君       小沢 貞孝君    大西 正道君       大貫 大八君    大原  亨君       大矢 省三君    太田 一夫君       岡  良一君    岡本 隆一君       加賀田 進君    加藤 勘十君       春日 一幸君    片島  港君       片山  哲君    勝澤 芳雄君       勝間田清一君    角屋堅次郎君       金丸 徳重君    上林與市郎君       神近 市子君    河野  正君       木下  哲君    木原津與志君       菊川 君子君    北山 愛郎君       久保 三郎君    久保田鶴松君       久保田 豊君    栗原 俊夫君       栗林 三郎君    黒田 寿男君       小平  忠君    小林  進君       小林 正美君    小牧 次生君       小松信太郎君    小松  幹君       兒玉 末男君    五島 虎雄君       河野  密君    佐々木良作君       佐藤觀次郎君    佐野 憲治君       坂本 泰良君    阪上安太郎君       櫻井 奎夫君    實川 清之君       島上善五郎君    島口重次郎君       下平 正一君    東海林 稔君       鈴木茂三郎君    田中幾三郎君       田中織之進君    田中 武夫君       田中 稔男君    田万 廣文君       多賀谷真稔君    高田 富之君       楯 兼次郎君    館  俊三君       塚本 三郎君    堤 ツルヨ君       土井 直作君    堂森 芳夫君       中井徳次郎君    中島  巖君       中原 健次君    中村 時雄君       中村 英男君    永井勝次郎君       成田 知巳君    西尾 末廣君       西村 榮一君    西村 関一君       西村 力弥君    芳賀  貢君       長谷川 保君    原   茂君       原   彪君    平岡忠次郎君       廣瀬 勝邦君    帆足  計君       北條 秀一君    松尾トシ子君       松平 忠久君    松前 重義君       松本 七郎君    三鍋 義三君       三宅 正一君    水谷長三郎君       武藤 武雄君    門司  亮君       森本  靖君    八木 一男君       八木  昇君    矢尾喜三郎君       安井 吉典君    柳田 秀一君       山口シヅエ君    山崎 始男君       山下 榮二君    山中 吾郎君       山花 秀雄君    山本 幸一君       横山 利秋君    吉川 兼光君  否とする議員の氏名       安倍晋太郎君    相川 勝六君       逢澤  寛君    愛知 揆一君       青木  正君    赤城 宗徳君       赤澤 正道君    秋田 大助君       秋山 利恭君    足立 篤郎君       天野 公義君    天野 光晴君       綾部健太郎君    荒木萬壽夫君       荒舩清十郎君    新井 京太君       五十嵐吉藏君    井原 岸高君       飯塚 定輔君    生田 宏一君       池田 清志君    池田正之輔君       石井光次郎君    石坂  繁君       石田 博英君    一萬田尚登君       稻葉  修君    今井  耕君       岩本 信行君    植木庚子郎君       臼井 莊一君    内田 常雄君       江崎 真澄君    遠藤 三郎君       小川 半次君    小川 平二君       小澤佐重喜君    大久保武雄君       大久保留次郎君    大倉 三郎君       大坪 保雄君    大野 市郎君       大野 伴睦君    大平 正芳君       岡崎 英城君    岡部 得三君       岡本  茂君    奧村又十郎君       押谷 富三君    加藤 精三君       加藤 高藏君    加藤常太郎君       鹿野 彦吉君    鍛冶 良作君       金子 岩三君    上林山榮吉君       亀山 孝一君    鴨田 宗一君       川崎末五郎君    川崎 秀二君       川島正次郎君    川野 芳滿君       菅家 喜六君    菅野和太郎君       簡牛 凡夫君    木倉和一郎君       木村 俊夫君    木村 守江君       菊池 義郎君    岸  信介君       北澤 直吉君    北村徳太郎君       吉川 久衛君    清瀬 一郎君       久野 忠治君    倉石 忠雄君       倉成  正君    藏内 修治君       黒金 泰美君    小泉 純也君       小枝 一雄君    小金 義照君       小島 徹三君    小平 久雄君       小林  錡君    小林 絹治君       小山 長規君    河野 孝子君       河本 敏夫君    纐纈 彌三君       佐々木盛雄君    佐藤 榮作君       佐藤虎次郎君    齋藤 邦吉君       坂田 道太君    櫻内 義雄君       笹山茂太郎君    始関 伊平君       椎熊 三郎君    重政 誠之君       島村 一郎君    進藤 一馬君       周東 英雄君    鈴木 正吾君       砂原  格君    世耕 弘一君       瀬戸山三男君    關谷 勝利君       園田  直君    田口長治郎君       田中伊三次君    田中 榮一君       田中 角榮君    田中 龍夫君       田中 正巳君    田邉 國男君       田村  元君    高石幸三郎君       高碕達之助君    高瀬  傳君       高橋清一郎君    高橋 禎一君       高橋  等君    高見 三郎君       竹内 俊吉君    竹下  登君       竹山祐太郎君    武知 勇記君       谷川 和穗君    中馬 辰猪君       津島 文治君    塚田十一郎君       塚原 俊郎君    辻  寛一君       辻  政信君    綱島 正興君       寺島隆太郎君    渡海元三郎君       徳安 實藏君    床次 徳二君       富田 健治君    中井 一夫君       中島 茂喜君    中村 梅吉君       中村 幸八君    中村三之丞君       中村 寅太君    中山 マサ君       永田 亮一君    永山 忠則君       灘尾 弘吉君    楢橋  渡君       南條 徳男君    二階堂 進君       丹羽喬四郎君    西村 英一君       西村 直己君    野田 卯一君       野田 武夫君    野原 正勝君       馬場 元治君    橋本登美三郎君       橋本 正之君    橋本 龍伍君       長谷川四郎君    八田 貞義君       濱田 幸雄君    濱田 正信君       濱地 文平君    濱野 清吾君       早川  崇君    林讓  治君       林  唯義君    原田  憲君       平塚常次郎君    平野 三郎君       廣瀬 正雄君    福家 俊一君       福井 順一君    福井 盛太君       福田 赳夫君    福田 篤泰君       福田  一君    福永 健司君       藤枝 泉介君    藤本 捨助君       藤山愛一郎君    船田  中君       古井 喜實君    古川 丈吉君       保利  茂君    坊  秀男君       細田 義安君    堀内 一雄君       堀川 恭平君    本名  武君       前尾繁三郎君    前田 正男君       益谷 秀次君    増田甲子七君       松澤 雄藏君    松田 鐵藏君       松野 頼三君    松村 謙三君       松本 俊一君    三池  信君       三浦 一雄君    三木 武夫君       三田村武夫君    三和 精一君       水田三喜男君    南好  雄君       村上  勇君    村瀬 宣親君       毛利 松平君    粟山  博君       森   清君    森下 國雄君       八木 徹雄君    保岡 武久君       柳谷清三郎君    山口喜久一郎君       山口六郎次君    山崎  巖君       山下 春江君    山手 滿男君       山中 貞則君    山村庄之助君       山村新治郎君    吉田 重延君       早稻田柳右エ門君    渡邊 本治君       渡邊 良夫君    亘  四郎君      ――――◇―――――
  19. 正木清

    ○副議長(正木清君) 次に、本案につき採決いたします。本案委員長報告は可決であります。本案委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  20. 正木清

    ○副議長(正木清君) 起立多数。よって、本案委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)      ――――◇―――――
  21. 正木清

    ○副議長(正木清君) 日程第一、奄美群島復興特別措置法の一部を改正する法律案日程第二、市町村職員共済組合法の一部を改正する法律案日程第三、公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。地方行政委員会理事渡海元三郎君。     …………………………………     …………………………………     〔渡海元三郎君登壇
  22. 渡海元三郎

    ○渡海元三郎君 ただいま議題となりました奄美群島復興特別措置法の一部を改正する法律案外二件について、地方行政委員会における審議の経過及び結果の概要を御報告申し上げます。  まず、奄美群島復興特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、奄美群島復興事業の進展を促進し、現在その隘路となっている障害を除去するため、本法の一部を改正することによって、特定の港湾については、国がみずから港湾工事を行うことができることとし、また、同群島内における金融が円滑に行われるよう、資金融通の特別措置を講ずることを目的とするものであります。  本案は、一月二十八日本委員会に付託せられ、翌二十九日黒金自治政務次官より提案理由の説明を聴取し、自来、慎重審議いたしましたが、これら詳細については会議録に譲ります。  二月十九日本案に対する質疑を終了、その際、委員保岡武久君より、本案に対し次のごとき附帯決議を付すべしとの動議提出され、その趣旨の説明がありました。附帯決議の案は次のごときものであります。     附帯決議   政府は、奄美群島復興特別措置法制定の本旨及び復興事業計画施行の現状にかんがみ、速かに復興計画を完遂して、その実をあげるため、特に左記事項に留意して産業の開発、金融の円滑を図り、同地域住民の経済力を強化しその福利を増進するよう、格段の努力をいたすべきである。   一、復興計画の完全遂行に必要な予算措置を講ずること。   二、復興信用基金制度を更に拡充強化すること。   三、群島の主要農産物たる黒糖の生産につき、税負担の軽減、価格の安定等必要な措置を講ずること。   右決議する。  かくて、討論を省略し採決を行いましたところ、本案は全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決し、また、附帯決議も全会一致をもって可決せられました。  次に、市町村職員共済組合法の一部を改正する法律案について申し上げます。  現行の市町村職員共済組合法規定におきましては、市町村職員共済組合のいわゆる附加給付及び短期給付に要する費用についての市町村の負担金に関する特例が昭和三十四年十二月三十一日まで認められているのでありますが、本案は、目下、地方公務員を通ずる統一的な共済制度について検討が進められている情勢とも見合せまして、この際、これらの特例期間をさらに一年延長して、昭和三十五年十二月三十一日まで認めようとするものであります。  本案は、参議院の先議となり、本委員会には一月二十六日予備審査のため付託され、二月十三日参議院より送付、同日本委員会に付託されました。十七日青木国務大臣より提案理由の説明を聴取し、慎重審議、十九日本案に対する質疑を終了し、討論を省略して採決を行いましたところ、本案は全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決しました。  最後に、公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、公営企業金融公庫に対する政府の出資金を増額し、これによって公庫の運営を一そう充実して、その本来の使命遂行に便ならしめようとするものであります。すなわち、昭和三十二年六月に設立された本公庫は、他方公共団体がその住民の福利増進のために経営する水道、交通等の公営企業の整備のために低利かつ安定した資金を供給することを目的とするもので、発足以来きわめて順調な経営を行い、所期の目的を果しつつあるのでありますが、今後、地方公共団体の公営企業を円滑に推進するためには、同公庫の運営を一そう充実し、経営の健全化をはかる必要がありますので、今回、政府は、その出資金を従前の十億円より十五億円に改めるとともに、同公庫の業務が設立当初と比較して拡充されてきたことに伴い、同公庫の理事長を、他の金融公庫と同様、総裁に改めようとするものであります。  本案は、二月十四日本委員会に付託され、十七日青木国務大臣より提案理由の説明を聴取し、自来、慎重審議いたしました。これら詳細については会議録に譲りますが、ただ、農林漁業金融公庫の融資業務として行うようになった公有林整備のための長期低利の融資は、本来、公営企業金融公庫の業務とすべきものであるから、将来同公庫の所管として扱い得るよう措置すべきであるとの意見がありましたことを申し添えておきます。  昨二十五日本案に対する質疑を終了し、討論を省略して採決を行いましたところ、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決しました。  右、御報告申し上げます。(拍手
  23. 正木清

    ○副議長(正木清君) 三案を一括して採決いたします。三案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 正木清

    ○副議長(正木清君) 御異議なしと認めます。よって、三案は委員長報告の通り可決いたしました。      ――――◇―――――
  25. 正木清

    ○副議長(正木清君) 日程第四、国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。公職選挙法改正に関する調査特別委員長早稻田柳右エ門君。     …………………………………     〔早稻田柳右エ門君登壇
  26. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田柳右エ門君 ただいま議題となりました国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、委員会審議の経過並びに結果の概要を御報告申し上げます。  本案は、最近におけるこの法律施行の状況にかんがみまして、国会議員の選挙、最高裁判所裁判官国民審査等の執行について国が負担する経費で、都道府県及び市区町村に交付するものの基準を、実情に即するよう改正しようといたしておるものであります。  この法律案内容は、第一に、投票管理者、開票管理者及び投票立会人、開票立会人、選挙立会人、選挙分会立会人の費用弁償額並びに人夫賃、嘱託手当の額が最近の実情に適合しないので、その金額を引き上げたこと、第二は、昨年の四月の公職選挙法の改正によりまして、衆議院議員の選挙における選挙運動期間が二十五日から二十日間に短縮されたことに伴い、選挙会経費及び事務費に不用額が生ずることとなりますので、これらの経費の基準額を改訂したこと、第三は、国会議員の再選挙、補欠選挙等の執行に要する額は、従来基準額の三分の二に相当する額とされておりましたが、これを事務費についてのみ三分の二に相当する額とし、その他の経費は全額を交付するよう改正し、地方公共団体の負担金額を逓減したこと等であります。  委員会におきましては、去る二月十八日青木国務大臣より提案理由の説明を聴取した後、質疑を行い、慎重に審議を進めましたが、去る二十四日討論を省略して採決をいたしました結果、本案は全会一致をもて原案の通り可決すべきものと議決いたした次第でございます。  以上、簡単ながら、御報告申し上げます。(拍手
  27. 正木清

    ○副議長(正木清君) 採決いたします。本案委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 正木清

    ○副議長(正木清君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告の通り可決いたしました。      ――――◇―――――
  29. 正木清

    ○副議長(正木清君) 日程第五、下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。法務委員長小島徹三君。     …………………………………     …………………………………     〔小島徹三君登壇
  30. 小島徹三

    ○小島徹三君 ただいま議題となりました下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について、法務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  この法律案の改正の要旨は、最近における市町村の廃置分合、名称の変更並びに交通の利便等に伴い、第一に、二俣簡易裁判所外二ヵ所の簡易裁判所の名称を、第二に、竹原簡易裁判所外三ヵ所の簡易裁判所の管轄区域をそれぞれ変更し、第三に、この法律の別表第四表及び第五表について所要の整理を行おうとするものであります。  本法案は、一月二十六日当委員会に予備付託となり、二月十三日参議院より送付され、慎重審議の上、二月二十四日質疑を終了し、討論を省略して採決に付しましたところ、本案は全会一致をもって政府原案通り可決せられた次第でございます。  右、御報告申し上げます。(拍手
  31. 正木清

    ○副議長(正木清君) 採決いたします。本案委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 正木清

    ○副議長(正木清君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告の通り可決いたしました。      ――――◇―――――
  33. 松澤雄藏

    松澤雄藏君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、この際、日程第六ないし第九とともに、内閣提出郵政省設置法の一部を改正する法律案を追加して、五案を一括議題となし、委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  34. 正木清

    ○副議長(正木清君) 松澤君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 正木清

    ○副議長(正木清君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  日程第六、法務省設置法の一部を改正する法律案日程第七、文部省設置法の一部を改正する法律案日程第八、運輸省設置法等の一部を改正する法律案日程第九、農林省設置法の一部を改正する法律案郵政省設置法の一部を改正する法律案、右五案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。内閣委員会理事平井義一君。     …………………………………     …………………………………     〔平井義一君登壇
  36. 平井義一

    ○平井義一君 ただいま議題となりました五法案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  詳細につきましては会議録によって御承知を願うこととし、簡潔に要点を申し上げます。  まず、法務省設置法の一部を改正する法律案の要旨は、第一に、法務省の付属機関である法務研修所を法務総合研究所に改め、これまでの職員に対する研修のほか、新たに刑事政策に関する総合的な調査研究をもあわせ行う機関とすること。第二に、東京婦人補導院の位置を八王子市に改めること。第三に、千葉市ほか四カ所に入国管理事務所の出張所を設けること。第四に、市町村の廃置分合等に伴い、法務局及び地方法務局の管轄区域等を定めている別表について所要の整理を行うことであります。  次に、文部省設置法の一部を改正する法律案の要旨は、第一に、文部行政における調整事務の増加に伴い、これらの事務の処理、推進機能を強化し、官房の所掌事務をより効率的に運営するため、大臣官房に官房長を置くこと。第二に、団体宿泊訓練を通じて、健全な青年の育成をはかるための機関として国立中央青年の家を設置するものであります。  右二法案は、一月二十六日本委員会に付託されたのであります。  次に、運輸省設置法等の一部を改正する法律案の要旨は、第一に、民間航空の発達が最近著しい実情にかんがみ、航空機の運航の監督、その他の行政事務を迅速かつ合理的に処理するため、本省の付属機関である航空保安事務所を地方支分部局に改め、航空局の所掌事務の一部をこれに分掌させるとともに、従来の航空標識所をその地方機関とすること。第二に、航空交通管制業務が在日米空軍よりわが国へ移管されることに伴い、新たに、航空交通管制本部を地方支分部局として、埼玉県入間郡武蔵町に設置すること。第三に、航空法に基く運輸大臣の権限の一部を、航空保安事務所長または航空交通管制本部長に行わせることができるとすることであります。  次に、農林省設置法の一部を改正する法律案の要旨は、第一に、農地行政関係事務の増加に対応し、これを円滑に処理するため、名古屋建設事務所を格上げして、岐阜、愛知、三重の三県を管轄する名古屋農地事務局を設置すること。第二に、森林資源の造成をはかるため、林木の種苗の生産と配布を行う林木育種場を林野庁の付属機関として設置することとし、これを北海道、岩手、茨城、岡山、熊本の各県に一カ所ずつ設けること。第三に、農林大臣は所要の地に林業講習所の支所を設けることができるとすることであります。  右二法案は、一月二十九日本委員会に付託されたのであります。  以上四法案につきまして、二月三日政府よりそれぞれ提案理由の説明を聴取いたしたのでありますが、本委員会には各省設置法関係法案が多数付託されておりますので、同日、特に各省設置法改正案等審査小委員会を設け、自来、慎重に審議を進めて参ったのであります。二月二十四日質疑を終了し、討論の通告もなく、直ちに一括して採決いたしましたところ、全会一致をもって右四法案はいずれも原案の通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、郵政省設置法の一部を改正する法律案の要旨は、第一に、郵政省が郵政事業を行うほか、電気通信及び電波に関する行政事務をも遂行する実体に相応するよう、省名を逓信省に改めること。第二に、大臣官房の事務の質的及び量的発展に伴い、省外との接触、総合調整その他内外にわたる官房の事務を一そう適切に行うため、官房長を置くことであります。  本案は、一月二十三日本委員会に付託され、二月三日政府より提案理由の説明を聴取し、二月二十四日質疑を終了し、本日、討論の通告もなく、直ちに採決いたしましたところ、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  37. 正木清

    ○副議長(正木清君) 五案を一括して採決いたします。五案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 正木清

    ○副議長(正木清君) 御異議なしと認めます。よって、五案は委員長報告の通り可決いたしました。      ――――◇―――――
  39. 正木清

    ○副議長(正木清君) 日程第十、開拓融資保証法の一部を改正する法律案日程第十一、森林開発公団法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。農林水産委員会理事吉川久衛君。     …………………………………     〔吉川久衛君登壇
  40. 吉川久衛

    ○吉川久衛君 ただいま議題となりました、内閣提出開拓融資保証法の一部を改正する法律案外一件について、農林水産委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。  まず、開拓融資保証法の一部を改正する法律案について申し上げます。  政府は、昭和三十三年度までに中央開拓融資保証協会に対して、開拓者の必要とする肥料、家畜、飼料等の購入のための短期資金の融通を円滑ならしめるため、三億一千万円を出資いたしておりますが、開拓者の資金需要の増大に対応して、昭和三十四年度においても、一般会計からさらに八千万円を追加出資するため、本案提出を見たのであります。  本法案は、一月二十六日付託され、二月四日提案理由の説明を聴取し、二月十八日、二十四日及び二十五日の三日間にわたり質疑を行い、同二十五日質疑を終了し、討論を省略して直ちに採決をいたしましたところ、全会一致をもって政府原案の通り可決すべきものと議決した次第であります。  なお、本案に対しまして、久保田委員から、自由民主党並びに日本社会党を代表して附帯決議を付するの動議提出されましたところ、全会一致をもってこれを付することに決した次第であります。すなわち、   政府は、引き続き経営の不振と生活の不安定に悩む開拓者の現状を率直に認め、開拓政策の今日までのあり方について徹底的な再検討を加えるとともに、開拓融資一般にわたり思い切った改善を施し、これを簡易かつ強力な制度に再編成すべきであるが、当面、開拓者が返還に苦しんでいる政府資金については、その将来における合理的な償還を確保するため、できるだけ近い機会に、現在数口乃至十数口に及ぶ各種融資金の整理統合を行い、これが償還期限の延期等条件の緩和につき、所要の措置を講じ、もって開拓営農振興計画の達成に遺憾なきを期すべきである。  次に、森林開発公団法の一部を改正する法律案について申し上げます。  森林開発公団は、昭和三十一年設立せられ、自来四年間の予定をもって熊野川水系及び剣山周辺の奥地未開発林の開発を行なって参ったのでありますが、本事業も明三十四年度をもって完成することに相なったわけであります。しかしながら、全国にはまだ公団方式により開発することが適当な地域が多く残されており、その多くは国有林と民有林が相接して存在しているのであります。しこうして、この両者を同時に開発することが経済上有利でありまするので、国有林の民有林行政に対する協力の意義をも加味いたしまして、今回、国有林野事業実施困難な一定規模以上の地域につき、国が公団に対し林道開発事業を委託して実施することと相なり、公団の設立目的、その所掌業務の一部に改訂を加えますために、本改正案が提出せられたものであります。  本法案は、一月三十一日付託され、二月四日提案理由の説明を聴取し、二月十八日、二十四日及び二十五日の三日間にわたり質疑を行い、同二十五日質疑を終了し、討論を省略して採決いたしましたところ、全会一致をもって政府原案通り可決すべきものと決した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  41. 正木清

    ○副議長(正木清君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 正木清

    ○副議長(正木清君) 御異議なしと認めます。よって、両案は委員長報告の通り可決いたしました。      ――――◇―――――
  43. 正木清

    ○副議長(正木清君) 日程第十二、盲学校、聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。文教委員長臼井莊一君。     …………………………………     〔臼井莊一君登壇
  44. 臼井莊一

    ○臼井莊一君 ただいま議題となりました、内閣提出にかかる、盲学校、聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その要旨及び文教委員会における審議の経過と結果を申し上げます。  まず、本案の要旨について申し上げます。  御承知の通り、従来、都道府県は、公立及び私立の盲学校ろう学校及び養護学校の高等部に就学する者の保護者等の経済的負担を軽減するために、教科用図書の購入費及び学校給食費を支弁しており、国はこれに要する経費の二分の一を負担しておりますが、今回、これらの学校の高等部に就学する生徒の通学または帰省に要する交通費をも就学奨励の対象に加えて、都道府県がその全部または一部を支弁しなければならないこととし、国はそれに要する経費の二分の一を負担するように、現行法を改正しようとするものであります。  本案は、去る一月二十六日当委員会に付託せられ、同月三十日文部大臣から提案理由の説明を聴取し、自来、各委員は、特殊教育の対象が盲、ろう、精神薄弱、身体不自由等、心身に故障のある者であり、その家庭状況等からして未就学者が非常に多い実状にかんがみ、これが解消のための施策について、さらにまた、これらの児童、生徒に対する職業教育について、熱心かつ慎重に審議されたのであります。  かくて、二月二十五日に至り、本案に対する質疑を終了し、討論を省略して採決の結果、起立総員をもって本案原案の通り可決されました。  引き続いて、総員を代表して、「この特殊教育については、さらに一そうの拡充、強化を必要とするものであると認めるにより、政府はこれに関してすみやかに適切な措置を講ずべきである」旨の希望の意見が述べられ、橋本文部大臣は、これに対して、「十分その趣旨を尊重して善処する」旨の答弁をせられました。  それらの詳細については会議録によって御承知願うことといたし、以上をもって御報告といたします。(拍手
  45. 正木清

    ○副議長(正木清君) 採決いたします。本案委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 正木清

    ○副議長(正木清君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告の通り可決いたしました。      ――――◇―――――
  47. 松澤雄藏

    松澤雄藏君 残余の日程は延期し、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  48. 正木清

    ○副議長(正木清君) 松澤君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 正木清

    ○副議長(正木清君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十九分散会