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1959-02-13 第31回国会 衆議院 本会議 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月十三日(金曜日)     —————————————  議事日程 第十二号   昭和三十四年二月十三日     午後一時開議  一 国民年金法案内閣提出)及び国民年金法案八木一男君外十四名提出)、一般国民年金税法案八木一男君外二十七名提出)、労働者年金税法案八木一男君外二十七名提出)、国民年金特別会計法案八木一男君外二十七名提出)、国民年金法施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案八木一男君外十四名提出)の趣旨説明     …………………………………  第一 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  国土開発縦貫自動車道建設審議会委員選挙鉄道建設審議会委員選挙土地調整委員会委員任命につき同意を求めるの件  国民年金法案内閣提出)及び国民年金法案八木一男君外十四名提出)、一般国民金税法案八木一男君外二十七名提出)、労働者年金税法案八木一男君外二十七名提出)、国民年金特別会計法案八木一男君外二十七名提出)、国民年金法施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案八木一男君外十四名提出)の趣旨説明及び質疑  日程第一 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案内閣提出)  捕獲審検所の検定の再審査に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案内閣提出)  中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案内閣提出)  国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣提出)     午後四時四十一分開議
  2. 加藤鐐五郎

    議長加藤鐐五郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 加藤鐐五郎

    議長加藤鐐五郎君) 国土開発縦貫自動車道建設審議会委員が四名欠員となっておりますので、この際その選挙を行います。
  4. 松澤雄藏

    松澤雄藏君 国土開発縦貫自動車道建設審議会委員選挙は、その手続を省略して議長において指名せられんことを望みます。
  5. 加藤鐐五郎

    議長加藤鐐五郎君) 松澤君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  6. 加藤鐐五郎

    議長加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。議長は、国土開発縦貫自動車道建設審議会委員に    中村 梅吉君  益谷 秀次君    竹山祐太郎君  増田甲子七君を指名いたします。……
  7. 加藤鐐五郎

    議長加藤鐐五郎君) 鉄道建設審議会委員が五名欠員となっておりますので、この際その選挙を行います。
  8. 松澤雄藏

    松澤雄藏君 鉄道建設審議会委員選挙は、その手続を省略して、議長において指名せられんことを望みます。
  9. 加藤鐐五郎

    議長加藤鐐五郎君) 松澤君の動議に御異議ありませんか。     [「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 加藤鐐五郎

    議長加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。  議長は、鉄道建設審議会委員に    中村 梅吉君  益谷 秀次君    竹山 祐太郎君を指名いたします。……。
  11. 加藤鐐五郎

    議長加藤鐐五郎君) お諮りいたします。内閣から、土地調整委員会委員山崎丹照君を任命したいので、土地調整委員会設置法第七条第一項の規定により本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出通り同意を与えるに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 加藤鐐五郎

    議長加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。……。
  13. 加藤鐐五郎

  14. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 国民年金法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。御承知のように、わが国公的年金制度には、厚生年金保険制度を初め、恩給、各種共済組合による年金制度など、すでに幾つかの制度がありますが、これらは、いずれも一定の条件を備えた被用者対象とするものでありまして、国民の大半を占める農民、商上業者、零細企業被用者などは、いまだに年金制度から取り残されたままになっているのであります。ひるがえって、最近のわが国人口趨勢を見まするに、国民死亡率は激減し、平均余命戦前に比べ飛躍的な伸びを見せ、その結果、老齢人口は、絶対数におきましても、また、国民全体の中において占める比率におきましても、著しい増加の傾向を見せております。しかるに、一方、これら老齢者の置かれております生活状態は、戦前に比べ、むしろきびしさを加えているのであります。このことは、程度の差こそあれ、身体障害者母子世帯の場合にも同様と言えるのであります。  このような事情からいたしまして、社会保障制度の一環として全国民年金制度を及ぼし、これを生活設計のよりどころとして国民生活の安定をはかって参ります体制を確立いたしますことが、国民の一致した要望となってきたのであります。  与党たる自由民主党におきましても、かねてからこの問題について研究しておったのでありますが、ついに、昨年春の衆議院議員選挙に際し、国民年金制度創設国民の前に公約いたしたのであります。社会党におかれましても、この問題を多年にわたって研究され、すでに数回にわたり国民年金法案国会に御提案になっておられるのでございます。  政府といたしましては、このような各方面の要望にこたえるため、昨年六月内閣総理大臣の諮問に応じて行われました社会保障制度審議会国民年金制度に関する答申を参考とし、鋭意、国民年金制度企画立案を急いで参ったのでありますが、ここに、これがわが国現状に最も即応し、かつ、実現性の強いものと考えまして、この法案提出した次第であります。  次に、国民年金法案基本的な立て方について申し上げます。  本法案におきましては、拠出制年金基本とし、無拠出制年金は経過的及び補完的に併用していく建前をとったのであります。拠出制基本といたしましたのは、第一に、みずから掛金をし、その掛金に応じて年金を受けるという仕組みをとることによりまして、老齢のように予測できる事態に対しましては、すべての人が、若いうちから、みずからの力でできるだけの備えをするという原則を堅持して参りたいと考えたからであります。年金制度におきましてこのような建前をとりますことは、制度が将来にわたって健全な発展を遂げて参りますための不可欠の前提と考えられるのでありまして、イギリス、アメリカ、西ドイツ等、諸外国における多年の経験も、このことを明らかに示しているのであります。さらにまた、わが国のように老齢人口の急激に増加して参ります国におきましては、無拠出制基本とした場合、将来における国の財政負担が膨大になり、それだけ将来の国民に対して過度負担を負わせる結果となるわけでありまして、これを避けますためにも、拠出制基本とした積立方式をとり、積立金及びこれから生ずる利子収入を有力な財源として給付費をまかなっていく仕組みが必要となるのであります。しかしながら、拠出制のみでは、現在の老齢者身体障害者または母子世帯、あるいは将来にわたって保険料拠出する能力の十分でない不幸な人々には年金支給が行われないこととなりますので、これらの人々にも年金支給いたしますために、無拠出制年金を併用することといたした次第でございます。  次に、本法案内容について、その概略を御説明申し上げます。  まず、基本的なものである拠出制について申し上げます。  第一に、その適用対象でありますが、これは二十才から五十九才までの全国民であります。現行公的年金制度適用者及び受給者適用除外とし、また、その配偶者及び学生につきましては任意加入を認めることといたしました、しこうしてこれらの者に対する将来にわたるこの法律適用関係につきましては、国民年金制度現行公的年金制度との関連を考慮して、引き続き検討することとしたのであります。これは、国民年金制度から現行公的年金制度適用者等を除外いたしますと、本制度現行公的年金制度との通算調整、さらには現行公的年金制度相互間の通算調整を行わなければ、各制度の被保険者でありながら、その間を移動いたしますと年金を受けることができないという者が多数生ずることになり、国民年金制度意義が減ずるおそれがありますので、これについて具体的方策を講ずべきことを法文に明記いたしたのであります。なお、本制度拠出制発足いたしますときに、すでに五十五才をこえている者は、たとい六十五才まで保険料納付したとしても年金を受ける資格を得ることができませんので、適用を除外し、五十才から五十五才までの者は、希望すれば保険料納付して拠出制年金を受けることができるよう、任意加入の道を開いたのであります。  第二に保険料でありますが、これは、二十才から三十四才まで月額百円、三十五才から五十九才までは百五十円としたのであります。この額は国民の大部分負担できるものと考えてきめたものでありますが、生活保護を受けている者とか、その他この保険料負担する能力の乏しいと認められる者については保険料免除の道を開く等、低所得階層に対する特別の措置を考慮いたしました。第三に年金給付についてでありますが、年金給付種類は、老齢障害母子遺児及び寡婦の五種類といたし、おります。まず老齢年金でありますが、これは、保険料を二十五年以上納付した者が六十五才になったときに支給するもりであります。しかしながら、さきに申し上げました保険料負担する能力が乏しい者につきましては、十年間だけ実際に保険料納付しますれば年金支給することにいたしました。また、拠出制発足いたしましたときに、すでに一定年令をこえていて、二十五年以上の保険料納付する期間がない者につきましては、この者の年令に応じて、この期間を十年ないし二十四牛に短縮いたすこととしております。年金の額は、保険料納付期間に応じて、保険料を二十五年納付した者には牛に二万四千円、二十才から五十九才まで四十年間納付した者には年に四万一千円を支給いたすことにしております。次に障害年金でありますが、これは、一定期間保険料納付した者が、日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度、すなわち、片手とか片足を失った程度障害になったときに支給し、その額は、保険料納付期間に応じて、二万四千円から四万二千円までとしております。これより重い程度障害、すなわち、両手とか両足を失った程度障害になった場合には、これに年額六千円を加算するごとにいたしました。  次に母子年金でありますが、これは、妻が一定期間保険料納付した後、一家の働き手である夫に死に別れて十八才未満の子を扶養しているような場合に支給するものでありまして年金額は、保険料納付期間に応じて、一万九千二百円から二万五千二百円までであります。なお、子が二人以上あるときは、これに第二子以降の子一人につき四千八百円が加算されることになります。  また、遺児年金は、父母いずれにも死に別れた十八才未満の子に支給し、年金額は、保険料納付期間に応じて、七千二百円から一万五百円までとしております。この額も、子が二人以上あるときは、これに第二子以降の子一人につき四千八百円が加算されるごとになります。  寡婦年金は、婚姻後十年以上経過した妻が、老齢年金を受けるに必要な期間保険料納付した夫と死別したときに六十才から六十五才まで支給し、年金額は、夫の受けるべきであった老齢年金額の半額としております。  次に、無拠出制年金について申し上げます。  初めに申し上げました通り、本制度拠出制基本といたすものでありますが、制度発足のときすでに七十才以上である者はもちろんのこと、このときすでに五十才以上である者も、原則として拠出制年金を受けることができないのであります。制度発足のときに、すでに身体障害とか、母子世帯状態にある者につきましても同様であります。これらの者に対しても年金支給いたすことによりまして、文字通り国民年金の実をあげますために、無拠出制による老齢障害母子の三つの援護年金を経過的に支給することとしたのであります。  まず老齢援護年金についてでありますが、これは、先ほど申し上げました通り制度発足のときすでに五十五才以上である者、五十才以上五十五才未満任意加入の道を選ばなかった者、または将来にわたって保険料負担能力が乏しいため拠出制老齢年金を受けるに必要な保険料納付を行い得なかった者に対し、七十才から一万二千円を支給いたします。  障害援護年金は、制度発足のとき二十才以上の者であってすでに両足とか両手を失った程度廃疾状態にある者、または保険料負担能力が乏しいか、または二十才未満でこれと同程度廃疾になることにより拠出制障害年金を受けるに必要な保険料納付を行い得なかった者に対して、一万八千円を支給いたします。  また、母子援護年金は、制度発足時すでに夫と死別して十六才未満の子を扶養している者、または保険料負担能力が乏しいため拠出制母子年金を受けるに必要な保険料納付を行い得ずして夫と死別し、十六才未満の子を扶養している者で、いずれも二十五才以上の子のない場合に一万二千円を支給いたします。なお、子が二人以上あるときは、第二子以降の子一人につき二千四百円を加算いたすことになっております。  これらの援護年金は、拠出制年金のように自分であらかじめ拠出しておいた者に対して支給するものではなく、すべて一般財源から支出するものでありますので、すでに現行公的年金制度による年金を受けている者でありますとか、一定程度以上の所得のある者など、比較的恵まれた状態にある1人たちに対しましては、この支給を制限いたすことになっております。  次に、この援護年金生活保護制度との関係についてであります。本制度による年金は、その建前上、生活保護法による被保護者に対しましても当然支給されるのでありますが、この年金支給いたしましても、生活保護制度運用において特別の措置を講じませんと、その人の受けまする年金のすべてが収入認定対象となり、従って、被保護者にとっては何ら実質的な意義がないという結果になりますので、この点、不合理のないよう措置いたす心算であります。  第四に、年金財政について申し上げます。本制度におきまする財政運営方式としては、積立式をとることにいたしておりますが、これは、財政運営方式賦課式といたしました場合、わが国現状におきましては、年金を無拠出制のみとした場合と同じように、将来の被保険者に対しまして過度負担を負わせる結果となるからでございます。なお、本制度積立金は、制度発足当初から次第に増加することになるのでありますが、これが運用はきわめて重要な問題でありまして今後とも慎重に研究いたして参りたいと考えております。  次に国庫負担でございますが、これは、毎年度の保険料収入総額の二分の一に相当する額を負担することにしております。このような国庫負担割合は、従来の社会保険、特に年金制度には見られないほど大きいものでありましてこれを見ましても、国民年金制度維持育成に対する熱意を肯定していただけるものと考えております。なお、援護年金給付に要する費用は、当然のことながら、全額国庫負担いたします。また、事務費につきましても、これを全額国庫負担することといたしております。  最後に、実施の時期でありますが、援護年金支給につきましては昭和三十四年十一月一日から、拠出制年金につきましては昭和三十六年四号一日から保険料の徴収を開始いたすことといたしております。  以上で国民年金法案趣旨の御説明を終りたいと存じます。(拍手
  15. 加藤鐐五郎

    議長加藤鐐五郎君) 提出者八木一男君。     〔八木一男登壇
  16. 八木一男

    八木一男君 私は、日本社会党を代表して、わが党提出国民年金法案国民年金法施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案一般国民年金税法案労働者年金税法案国民年金特別会計法案の互いに相関連する五法案に関して、一括して提案趣旨、理由並びに内容の大綱を御説明申し上げるものであります。  戦後、わが国国民平均寿命は大いに延び、六十才まで存命した人の寿命は、男子七十四才、女子七十七才に達しております。従って、人口老齢化現象が進み、総人口に対する比率も絶対数もともに相当に増加し、さらに増加する趨勢にあります。大ぜいの人が長生きすることができるようになりましたことは、まことに喜ばしいことでありますが、老後に、安定した、楽しい暮らしができるのでなければ、その喜びは激減するわけであります。  老後生活については、従来、それに備えてそれぞれ貯蓄をするなり、あるいは子供の世話を受けるということが常識になっておりました。ところが、その二つともあまりたよりにできないというのが現在の状態であります。  現在の老人が、若いころに、老後に備えて、ししとしてたくわえた貯蓄は、貨幣価値の変動により、実際上はほとんど役に立たなくなり、お年寄りはまことに気の毒な状態にあります。このようなことが将来も絶対に起らないとは断定できませんし、もし、幸い起らないとしても、老後の長さが予測できないとき、これを貯蓄のみで安くすることは、ごく一部の階層のみにしかできない相談であります。さらに、毎日の生活に苦しんで、貯蓄の見込みなどほとんどない大衆にとっては、この方法は夢物語であります。  次に、子供に世話になる方法でありますが、これも、戦前とは大きく事情を異にいたしております。現行民沖は、扶養の義務を明確に規定しているのでありますが、家族制度改革によって親に対する扶養の義務がないとする誤まった理解が行われて、老人を心細がらしており、さらに、わが国国民生活の貧困は、親孝行子供たちにも物質的には十分な親孝行ができない状態に追いやっております。子供たちの孝養のみにたより切れず、みずから備える方法としての貯蓄はまことに不完全な制度、これでは、老後生活を楽しいものにすることは、一部特権階級を除いては至難といわなくてはなりません。  一方、母子世帯においては、年収十八万円未満のものが全体の九〇%も占めており、まことに困難な状態のもとに子女の保育が行われております。身体障害者に至っては、障害のため特称な失費があるにかかわらず、所得の機会にはほとんど恵まれないで、その本部分最低生活の維持すら困難な状態であります。  このような事態を救い得る制度年金制度であることは申すまでもありません。ところが、わが国年金制度け一部勤労階級適用されているのみで、大部分国民はそのうち外に放置されております。勤労者の場合も、困給資格者公共企業体共済組合等適用者のうち、高級者である者を除いては、厚生年金等すべてが、はなはだ程度の低いものであり、また、通算がほとんどないという不備なものでありまして、老後を安心させ得るものではありません。  このような状態にかんがみまして、昭和二十五年、社会保障制度審議会の勧告が出たわけでありますが、自後、歴代の保守党内閣が何らの推進もしなかったことは、まことに怠慢きわまるものといわなくてはなりません。(拍手)  わが党は、以前より年金制度必要性を痛感し、その完成を主張して参りました。昭和三十一年、呼び水の意味で、慰老年金法案母子年金法案提出したのでありますが、一昨年、全国民のための、総合的な、根本的な年金制度を研究、決定し、その基本法として国民年金法案を、昨年の第二十八、第二十九、第三十国会提出いたしたのでありまして、さらに幾分の修正をして提出いたしましたのが本国民年金法案であり、即時実行でき得るよう、手続上の具体的な内容を決定しているのが関係法案であります。  本国民年金法案等を作るに当りまして私どもは、国民年金制度が完成までに長期間を要する性質のものであることにかんがみまして創設当時より完全な目標に向って進まなければならないと考えました。そして、その目標は、すべての国民に、憲法で保障された、健康で文化的な最低限度生活を維持できるようにすることに置いたわけであります。(拍手)  以上の目標を達成するため、具体的には、第一に、制度の完成した場合の老齢給付最低限度を現在の貨幣価値の月七千円、すなわち、年八万四千円と決定いたしました。第二に、この年金をすべての国民支給されるものとするため、拠出困難あるいは不可能な期間年金税を減額あるいは免除することとし、減免を何回受けた者でも年金額は完全に全額支給すべきだと考えました。(拍手)第三に、過渡期のものも、できるだけ早く月七千円の線に近づくようにし、第四に、無拠出年金については、必要の度の多い人に対する年金に厚みをかけ、また、生活保護と併給することにいたしまして、その目的に沿うよういたすべきものと考えた次第でございます。(拍手)  このような完全な考え方で、国民年金制度を作ることによって所得保障という本来の目的を果すとともに、他の重要な面に非常に大きなよい影響を与え得るものと考えております。国民年金制度を通じての所得再配分によって国民生活の不均衡が相当程度是正され、これによって継続的な有効需要が確保されることによって、諸産業の振興、安定に資するところ大なるものがあると考えられます。(拍手)このことは雇用の増大と安定を招来するものでありますが、さらに、完全な所得保障によって不完全就労を減少し、労働力化率の低下するという好ましい効果の面を加えまして、完全雇用への道を進めるものと信じます。(拍手)さらに、十分な年金制度は、雇用労働力の新陳代謝を促進し、鉱工業生産力を増大せしめるとともに、農業、中小商工業経営権を若き世代に移すことによって、その近代化への原動力と相なります。(拍手)  以上のごとく、完全な国民年金制度は、取得能力の少い国民に完全な所得保障をすることによって、国家がその一責任を果すという本来の効果のほかに、現代わが国における内政上の重要課題のほとんどすべてに解決の道を進める制度であると断言しても、あえて過言ではあるまいと信ずるものであります。(拍手)  以上の観点から、りっぱな国民年金制度を作り上げることに決心したわけでありますが、現在の国家財政個人経済状態から、そのことの実現のため多大の工夫を必要といたしました。その結果、国民年金には、積立金方式のほかに、賦課方式を取り入れることに踏み切ったわけであります。  現在年金を必要とする人々に無拠出年金支給し、現在生産年令にある人々年金完全積立方式とすれば、現在のゼネレーションが二重負担になり、年金のための負担は限界に達します。この障壁を乗り越えるために、われわれは、われわれの親達に親孝行をする、そのかわり、その分だけ子供連親孝行をしてもらうという考え方で、一部賦課方式を採用して、この困難を乗り越えることにいたしました。(拍手)そのほか、収入の多い者に年金税を多く負担させること、累進課税で徴収する分の多い一般財源からできるだけ多くの国庫支出をすること等に踏み切ってこの法案ができたわけであります。  以下、膨大な内容を、要点を抽出して御説明いたしたいと存じます。  本法案は、大分けにして、特別国民年金普通国民年金の二つの部分で構成されております。特別国民年金は、現在直ちに年金を必要とする老人母子家庭身体障害者に対して、無拠出、すなわち、一切の掛金負担金なしに年金支給して、これらの人々生活を援助する制度であります。普通国民年金は、現在の青壮年、さらに、以後続く国民に対して拠出、すなわち、国民年金税を納入して特別会計に積み立てる資金と、一般財政よりの賦課方式による大幅な国庫負担金とをもってその老齢障害、あるいは遺族に対する完全な生活保障をする制度であります。  まず、最初に特別国民年金の方から御説明いたしますと、これは、さらに養老年金母子年金身体障害者年金の三制度に分れております。  養老年金は、本人の年収十三万円以下の老人支給されるものでありまして、六十才から支給を開始するものであり、六十五才から倍額にして、自後、一生涯、毎年同額を支給いたすことにしております。年収十八万円未満の家庭の老人には、その金額は、六十五才以後に年二万四千円になり、従って、老夫婦の場合は、毎年四万八千円が支給されることに相成ります。年収十八万円から三十六万円の家庭は、右の半額が支給されるわけであります。  母子年金は、二十才未満の子女を有する母子世帯に対するものでありまして、年収十二万円未満母子家庭に年額三万六千円を支給し、子女が二名以上の場合は、第二子から、一名につき年額七千二百円の加算をいたすことになっております。年収十二万円以上十八万円未満母子家庭は、基本額、加算額、ともにそれぞれ半額を支給することにいたしております。なお、配偶者のない祖母、姉等が子女を保育する場合も支給することにいたしております。(拍手)  身体障害者年金は、障害程度によって支給金額が異なっており、年収十二万円未満身体障害者に対し、一級の場合は年額四万八千円、二級の場合は年額三万六千円、三級の場合は年額二万四千円を支給し、配偶者並びに子女に関して支給される加算は、等級にかかわらず、家族一名につき年七千二百円ずつ支給することに相なっております。年収十二万ないし十八万円の世帯の身体障害者に対しては、基本額、加算額、ともにおのおの半額を支給することといたしております。  以上、養老、母子身体障害者の三年金、すなわち、特別国民年金制度の全般を通じて申し上げておくべきことは、まず、三年金とも収入により給付を制限いたしておりますが、最初に適用されなくとも、後に、本人または世帯の収入が不幸にして減少した場合は、そのときから適用されるわけでありまして、その意味で、全国民のものということができると考えているわけであります。次に、この三年金は全然税金の対象としておりませんので、以上の年金が完全に対象者の手に入ることになり、また、生活保護と完全併給とすることにいたしておりますので、生活保護を受ける人々は扶助と年金を両方とも全額支給されることに相なるのであります。さらに、三年金に関して、世帯収入の境目について不均衡が起らないよう細目の規定をいたしております。すなわち、所得三十六万円の世帯の老人が一万二千円の年金を受けた場合、その世帯は三十七万二千円の総収入になるわけでありますが、それでは、所得が三十六万円をわずかにこえる老人世帯の方が総所得が少くなることになりますので、それを避けるため、総所得三十七万二千円に達するまでは、世帯所得三十六万円をこえても年金支給することにいたしております。三年金のすべての境目に同様の配慮をいたしておるわけでありまして従って、言いかえれば、本案によれば、養老は所得三十七万二千円、母子所得十九万八千円、身体障害者所得二十万四千円未満の世帯の対象者まで支給されることになるわけであります。  以上で特別国民年金説明を終り、次に、将来に備える根本的な普通国民年金について申し上げます。この制度は、一般国民年金と労働者年金に大別され、それぞれ老齢年金障害年金、遺族年金給付があります。主として老齢年金給付につき御説明申し上げることとし、まず、一般国民年金より御説明申し上げます。  この制度は、農漁民、商工業者、医師、弁護士等のすべての自営業者と、労働者の家庭も含めた全家庭の主婦等、すべての無職者に適用されるものであり、言いかえれば、労働者本人以外の全国民対象となるものであります。年金額は全部一律で、六十才か時、一名につき、本制度が完成されたあかつきには、年八万四千円あて、一生涯支給されます従って、老夫婦の場合は十六万八千円に相なるわけであります。この場合、もし、本人が六十才より早く、または、おそくから支給を受けたいと希望する場合は、五十五才から六十五才までの間において、希望の年からそれぞれ減額あるいは増額した年金支給できることにいたしております。国は、この八万四千円の年金給付の五割を一般財源より負担し、支払いの年に特別会計に払い込みます。また、別に、特別会計で積み立てておくため、対象者の属する世帯より一般国民年金税を徴収いたします。拠出期間は二十才から五十四才までの三十五年間、税率は、一般国民年金税法案第十条に規定してございますが、大体、一名平均月百六十六円に相なる計算であります。国民健康保険税の場合と似た方法で、均等割五、所得割三、資産割二という割合で徴収することになっておりますので、収入の少い人は、ずいぶんと安くなる見込みであり、さらに、納入困難あるいは不能の人については、減額あるいは免除をすることにいたしております。何回減免を受けた人にでも、年金支給さるべき際には、無条件で他の人と同じ年金支給するという、社会保障に徹底した考え方に立っていることを、重ねて明らかにいたしておきます。廃疾年金の場合は、一級は老齢年金と同額、二級はその四分の三、三級は二分の一に相当する金額を支給することといたしております。遺族年金は、老齢年金の半額、子供一名につき年一万四千四百円の加給をつけることにいたしております。  以上で、特に申し上げておかなければならないことは、年金については課税の対象としないこと、並びに、年金額が、スライド、すなわち、物価変動に応じて改訂されることであります。この場合、一般国民年金税もスライドされることは当然であります。  次に、労働者年金について申し上げます。本制度は、あらゆる職種の労働者本人に適用されるものであって、五八未満の事業所の労働者、日雇い労働有、山林労働者等にも適用されます。老齢年金は六十才から支給されるごと伊原則でありますが、炭鉱労働者、船員、機関車労働者等は五十五才開始といたしておりますことは、現行厚生年金と同様であります。  老齢年金額は、制度が完成した場合、一般国民年金と同額の八万四千円を基本額とし、それに標準報酬額に比例した金額が付加されます。その金額は、現在の賃金水準で平均年六万三千円になる計算でありまして合計、平均年十四万七千円に相なります。従って、将来賃金水準が上った場合には、この平均額は上昇いたします。  労働者年金税法案に規定されている労働者年金税は、もちろん、標準報酬の高低に従って定められております。一般国民年金の場合より年金額が多いのでありますから、年金税は当然高額に相なりますが、この場合、使用者が半分以上負担することに相なっておりますので、労働者負担はあまり重くなく、平均して月額二百円程度であります。低賃金労働者の負担は、標準報酬炉少いため、右の平均額よりはるかに少額に相なることは当然であります。拠出期間は、一般国民年金と同様、二十才より五十四才までの三十五年間であります。  この労働者年金の特徴は、異なる事業所間はもちろん、農林漁業、商工業、家庭の婦人等、一般国民との間にも完全通算をすることでありまして、基本給の八万四千円は、何回職業が変っても完全に確保され、平均六万三千円の標準報酬比例部分は、二十才れら五十四才までの間に労働者であった期間だけの割合で、それがたとい一年であっても加算されるわけであります。労働者年金への国庫負担率は二割であります。これは十四万七千円に対する二割でありますので、八万四千円に対する割合に換算いたしますと三割五分になり、将来賃金水準上昇を考まると、完成時には大体五割程度となり、一般国民年金と実質上同程度のものと相なるわけであります。その他、繰り上げ減額年金、繰り下げ増額年金制度、非課税年金及び年金税のスライド、免税、また障害、遺族給付については、一般国民年金と同様の内容、あるいは仕組みに相なっております。  以上、一般国民、労働者、両制度について申し上げましたが、その年金額は完成時のことを申し上げたわけであり、拠出期間が三十五年に満たない人は、その期間に応じて年金額が定められていることは申すまでもありません。御参考に途中の年金額を申し上げますと、施行時三十五才の人の年金額は、一般国民年金では年四万八千円、労働者年金では年八万四千円になる計算であります。  以上が本国民年金制度内容の大綱であります。実施に当っての既存年金との関係は、国民年金法施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案に規定いたしておるわけでありますが、既得権、期待権の尊重に十分の配慮を払うとともに、完全なる持ち分移管方式を採用して途中で制度が変る人、あるいは途中転職者の利益を完全に保護することにいたしました。制度の上では、厚生年金保険、船員保険の年金部分、農協役職員共済年金等は直ちに労働者年金へ統合、恩給、国家公務員、地方公務員、公共企業体等の各共済組合等は、新規採用者より労働者年金適用することに相なります。基本法施行期日は昭和三十四年四月一日、年金の支払い開始及び年金税の徴収開始は同年十月一日からであります。国民年金法施行に要する一般会計よりの経費は、平年計算にいたしまして、その第一年度約一千二百十二億円であり、そのうち、養老年金約七百九十八億円、母子年金約三百十六億円、身体障害者年金約四十五億円、国民年金税減免の補てん分約四十四億円、労働者年金の国家公務員並びに地方公務員に対する国の直接、間接の負担額、これは二十才以上の新規採用者分のみでありますが、約一億円、年金支払いに要する事務費約八億円と相なっております。  別に、労働者年金税法、一般国民年金税法施行に要する経費、すなわち、年金税徴収事務費はそれぞれ約八億七千万円、四十三億四千万円、計約五十二億一千万円であります。  以上のごとく、国庫支出は相当の額に達しますが、国民年金制度に対する全国民の非常なる期待、前段に申し述べましたように、完全な国民年金制度のきわめて大きな意義より見まして断々固として踏み切ってよい金額であると私どもは信じております。(拍手国庫支出は、賦課方式でありますので、自後逓増いたしまして本年金制度完成時、すなわち三十五年後には、年約四千二百億円になるものと推定されますが、それ以上は増加を停止し、平準化するものと推定せられます。このことに対して、私たちは心配はないものと考えております。その理由は、わが国の経済が逐年拡大し、国家財政もまたそれに従って拡大するからであります。かりに、最も控え目に考えて、明治以後のわが国の平均経済成長率四%と同率をもって今後の経済が拡大するとすれば、三十五年後には四倍に相なります、同じ率以上で財政が拡大し得ることは当然でありますが、これを、少なく、同率と見て、五兆六千億円とい与仮定が成り立ちます。そのうち、実際には四割が減税に回されたといたしましても、なお三兆三千億以上の財政規模に相なるわけであります。そのうちの四千二百億程度の支出は、この制度が全国民に対する完全なものであります以上は、国民も双手をあげて賛意を表されるものであると、かたく信ずるものであります。(拍手)  以上で本法案説明を大体終るわけでありますが、社会保障並びに国民年金に対する政府の態度について一言言及しておきたいと思います。  当然もっと早《取り上げられなければならない年金制度について政府が本年からやっと取り組み始めましたことは、まずまずといたしましても、医療保障、失業対策、生活保護、諸福祉対策等、他の社会保障部分は停頓あるいは実質上後退をいたしており、失業保険法の改悪まで行おうとしておる現状は、強く指弾されなければならないと存じます。(拍手)政府が宣伝これ努めております年金制度についても、その内容はきわめて不十分であり、また、社会保障の理念が貫かれてはおりません。基本的な年金制度において厚生年金等の労働者が放置され、厚生年金の改正案においても国庫負担が据置になっているということは、年金を特に必要とする労働者の立場を全く無視したものであり、労働者の配偶者国民年金を強制適用しないことは、男女同権の立場を忘れ去った態度でございます。(拍手)完成時の年金が月三千五百円以下、しかも、物価変動によるスライドの明確な保障がないものでは、憲法二十五条に規定する、健康で文化的な最低生活とはほど遠いものでございます。さらに、九年以下しか拠出でき得なかった者には減額年金適用すらないという内容は、年金を最も必要とする階層を年金から締め出すものでございます。(拍手)  これを要約いたしますると、制度統合の熱意は全く見られず、内容も範囲も国民年金の名に値しない不十分なものであり、組み立てば社会保険主義に堕し切って社会保障とはおよそ縁の遠い制度でございます。(拍手)三種類の援護年金は、無拠出年金とは言い切ることのできない、あいまいな制度でありましてその内容は、拠出制年金以上に魅力のないものであります。老齢援護年金七十才開始では、六十九才までに死亡される老人にとっては、この制度は絵にかいたもちでございます。(拍手母子世帯に月一千円、一級障害者に月一千五百円の援護年金では、全く涙金にひとしいものでございます。二級、三級の障害者、さらに内科障害の場合は、一級の人にさえも一文も支給しないなどということは、全くあきれ返って話になりません。(拍手)さらに、この制度の最大の欠点は、生活保護と併給の制度がとられていことであります。これでは、最も気の毒な老人、未亡人、身体障害者には、実際上援護年金制度は何らの役にも立ないことに相なるわけであります。  以上のように、政府案の内容は、よく検討してみますると、これでも国民年金のつもりか、これが社会保障かと声を大にして批判しないわけには参らないのでございます。(拍手)討論ではございませんので、これ以上の論評は差し控えることにいたしまするが、そのような態度の政府に対して、国民が真相を理解したならば、当然手きびしい批判が起るものと信ずるのでございます。政府がこの点を猛省されて、わが党のごとく社会保障に徹底した態度をとられることを強く要求するともに、与党の各位が、広やかなお気持をもって、わが党提出の五法案を建設品に御審議の上、すみやかに御可決あらんことを心から御要望申し上げまして御説明を終る次第でございます。(拍手)……。
  17. 加藤鐐五郎

    議長加藤鐐五郎君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があり“す。順次これを許します。  野田卯一君。     〔野田卯一君登壇
  18. 野田卯一

    ○野田卯一君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま政府より提案されました国民年金法案について若干の質問をいたしたいと思います。  わが党は、去る昭和三十一年の参議院選挙のときに国民年金創設準備を公約し、また、昨年五月の総選挙に際しては、老齢者身体障害者母子世帯に対する国民年金制度昭和三十四年度から漸次創設するとお約束をいたしました。今回、老齢母子障害の三年金同時実施、こういう、公約を上回る国民年金法案提出せられましたことは、まことに欣快にたえないところでございます。(拍手)また、これによって、骨組みといたしましては、わが国においても医療保障から所得保障にわたって社会保障制度を全面的に実施することに相なりましたことは、まさに歴史的な重要な意義を有するものといわざるを得ません。(拍手)  年金制度は、今日においては近代的国家がことごとくこれを有しておりまして、その形態は国によって各種各様でありますが、その内容いかんは、その国及び国民の持つ経済力の充実程度によって決定せられておるものと認められます。終戦後十有余年にいたしましてわが国社会保障制度の最大にして最後のものと認められる国民年金制度に取り組むことができるようになりましたことは、官民あげての努力による経済復興のたまものでありますが、経済力がいまだ十分でないわが国におきまして進んだ、高い程度国民年金制度の実施を、今にわかに期待し得ないことを、率直に認めざるを得ないのでございます。従って、このたび政府の提案いたしました国民年金法案は、経済面より大きな制約を受け、われわれの理想とするものから、かなり隔たりのあるものにならざるを得なかったことに深い理解を持ちながら、以下、数点にわたりまして、政府の見解をただす次第でございます。  質問の第一点は、制度基本的な立て方についてであります。政府案においては、拠出制年金基本とし、無拠出制は経過的、補足的にのみこれを認めていこうという根本原則を打ち出しておりますが、世間には、国民年金といえば、政府から一方的に支給される無拠出年金であると考えている向きもあれば、また、昨年の総選挙におけるわが党の公約は無拠出年金基本であるかのごとく誤解している人々も少くないのでございます。世界各国の実例を見まするとき、形こそさまざまではありますが、拠出制原則として認められており、国民生活設計のよりどころとなるに値する年金支給するためには、国家財政の立場においても、拠出制建前によらざるを得ないことと私は考えるのであります。ついては、拠出制建前とした場合と無拠出制建前とした場合との国庫負担の計数的な比較等をも示して、拠出制建前とすべき理由を、でき得る限り明快にお答え願いたいと存じます。  質問の第二点は、拠出金、すなわち保険料と、保険期間についてであります。政府案によりますと、拠出制年金において保険料は二十才から三十四才まで月百円、三十五才から五十九才までは月百五十円となっております。この、月百円ないし百五十円という金額は、経済力の豊かな地方では大した負担ではないかもしれませんが、貧弱なる農山漁村では、家族数も多く、一戸当り一年間に五千円前後の負担をせねばならないのでありますが、果してこれに耐え得るものでありましょうか。これについては農山漁民がすでに危惧の念を抱き、一部には国民年金制度に対する反対運動すらも起っておるのであります。これに対しまして、厚生大臣はいかに考えておられますか。また、いかに対処されんとするものでありますか。また、国民年金の額が保険料納付期間の長短により異なっているのは当然でありますが、二十五年以上かけないと老齢年金支給されないというのは長過ぎはしないか。社会保障制度審議会案では五年以上となっておりますが、これを短縮することはできないものであるか。この開きがあまりに大きいので、納得のいく答弁をお願いいたしたいのでございます。  質問の第三点は、保険料の徴収についてであります。拠出制年金が円滑に実施されるかどうかは、保険料が完全に徴収されるかいなかにかかっておりまして、これがうまくいかぬときは、拠出制年金の基礎はくずれてくるのでございます。政府案によりますと、国民年金手帳に国民年金印紙を張る方法によるということになっておりますが、果してこれが確実に行われるかどうかについては多分に疑問を抱かざるを得ないのであります。特に、若い世代の人々には国民年金についての関心が薄く、また、国民一般の者にあっても、老齢年金をもらうのがだいぶ先のことであるという観点から、納付を怠る者が多いのではなかろうかと懸念もされておるのであります。政府は、徴収の完璧を期するために、いかなる方法をとろうとしておられるのでありましょうか。また、国民年金印紙を張る方法にかえ、通常の税金と同じように、納入告知の方法によるべきであるとの意見もあるのであります。これらの点について御見解を明らかにされたいのであります。  第四点は、生活水準や貨幣価値の変動と年金制度との関係についてであります。この年金制度は、長らくの間保険料を払い込んだ後に年金支給されるという仕組みになっておりますので、きわめて長期的な制度であります。戦後のインフレーションを経験したわれわれ国民にとって、長い将来に受け取る年金額に一抹の不安を持たざるを得ないのであります。国民保険料拠出の意欲こそ、この制度を成り立たせる重要なかぎとなるものであります。政府は、果して、生活水準や貨幣価値の変動に対してどのような対策を考え、国民に安心を与えようとしておられるのか、明快な御答弁をお願いいたしたいのであります。  質問の第五点は、積立金の管理、運用の面についてであります。先ほども述べましたように、国民年金制度は、長期間保険料を納めさせた後給付を行いますので、当分の間は、おおむね積み立てられる一方であります。政府案による本制度では、毎年五百億円ずつ積み立てられ、積立金が最高に達するときは、その額が三兆円に及ぶと聞いておりますが、その管理、運用をどのようにされる考えであるか。国民年金制による積立金は、被保険者の福祉をはかるために積極的に運用さるべき性格のものと考えられるのであります。これが大部分普通の財政投融資に回されたのでは、果して、国民、特に地方農山村に居住する者が納得するかどうか疑問であります。国民年金積立金は、すべからく一部は大蔵省の資金運用部に預託し、その多くは自主的にこれが運用をはかり、有利なる運用、あるいは被保険者の福祉、一般地方民の福祉に資するような方途をとるべきであると考えますが、この点につき、大蔵大臣及び厚生大臣の所信を伺いたいのであります。  第六点は、国民年金制度と現行の公的年金制度との通算調整の問題であります。政府案によりますと、現行公的年金制度適用者国民年金制度適用より除外してあります。また、現行の公的年金制度の相互の間にも通算制度をほとんど欠いております。従ってこのままの姿で年金制度を実施して参りますと、農業に従事していた者が会社や銀行に勤め、また、役所に勤めていたものが銀行、会社や、あるいは農業、あるいは中小企業に入った場合、それぞれの年金制度に定めてある最低の保険料納付期間を満たさない場合には、どの年金ももらえなくなるという結果が起って参ります。これを解決するには、どうしても国民年金制度を含めた公的年金制度の間に通算処置を講ずる必要があるわけでございますが、この重大な問題を、政府は、いつまでに、また、いかなる方法により解決するつもりであるか、特に総理大臣の御見解をお聞かせ願いたいのであります。  第七点は、昭和三十四年度から実際に支給が開始されます援護年金についてであります。今回の政府案を見ますと、われわれが当初考えていたより支給の制限がきびしくなっております。それがために、政府案の国民年金は救貧的な色彩が強いのだと申されております。もとより、援護年金は無拠出であり、すべてが国民の血税によってまかなわれるものでありますから、すでに恩給とか年金を受けている人々適用除外することは一応当然とも考えられ、また、ある程度所得のある人々にも遠慮願うことはもっともなことと考えられるのでありますが、政府案はきびしきに過ぎるようにも考えられますので、今後この制限を緩和していく考えはないか、政府の見解をお答え願いたいのでございます。  最後に、本制度国家財政との関係をお尋ねいたします。国民年金制度は、一たび発足すると、将来中途でこれをやめることができなくなり、また、膨大な国庫負担を伴う制度でありますから、その出発に当ってはきわめて慎重を期し、むしろ、内輪目に打ち出していくべきであるというのが、内外を通ずる定説であります。政府案はこの考え方に基き立案されていると認められますが、平年度、拠出、無拠出を合せて五百数十億円に達する国庫負担が予定せられております。なお、今後国民からの要望にこたえて、本制度に対する改善は必至であり、それに伴って政府負担の増大は当然考えておかねばならぬところであります。このように、本制度国家財政に大いなる重圧を加えることとなるのでありますが、これに対して、いかに対処する考えであるか。また、これが財源を得るために特別の税を起すべしとの意見もあるのでありますが、あわせて、総理大臣及び大蔵大臣の御見解を承わりたいと思います。  なお、終りに、社会党提案国民年金関係法案につき一言いたしますが、社会党案は、はなはだずさんな、わが国現状に照らし実現性のきわめて乏しい案でありますことは、世論のひとしく指摘しておるところであります。(拍手)私といたしましては、これに対して何ら質問やあるいは意見の開陳の必要を認めません。かかる案の提案によって社会党がみずから政権担当の能力と意欲を欠く政党であることを天下に暴露されましたことは、同党のために、まことにお気の毒しごくに存ずる次第でございます。(拍手)これをもって私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣岸信介君登壇
  19. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 各種の点について詳細な御質問がございましたが、これらはそれぞれ担当の国務大臣からお答えをすることにいたします。  一点、私が特に指定されて、現在ある公的年金制度の間における調整ということができておらない、これによるいろいろな不都合が生ずるじゃないかという問題であります。この点は、御指摘のように、これが調整をすることは必要であると思います。法文にもそのことを認めて、調整についての根拠を示しておりますが、私どもは、拠出制度を実施いたしますまでにこれの調肇を実現したい、こう思っております。     〔国務大臣佐藤榮作君登壇
  20. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  まず、経済の変動あるいはインフレーションということを考えたり、あるいはまた、生活が非常に向上して所得がふえたというような場合に、こういう長期にわたる年金というものにどういう影響を持つかという点のお尋ねであったと思います。御承知のように、政府といたしましては、経済の健全な成長を意図いたしておりますが、同時に、絶えず通貨価値の安定ということに力を注いで参っておるのでございます。この種の問題は、年金制の実施に当りまして最も留意いたさなければならない点でございますので、通貨価値の安定に重点を置き、経済の健全な成長を期していく、そうして、同時に、調整の面におきましては、法案で第四条を設けまして、その調整をもはかることにいたしておるわけでございます。  次に、積立金運用についてのお尋ねであったと思いますが、この種の積立金は長期にわたりますので、金額もまことに多額に上るのであります。また、制度を有効にし、加入者の真の理解を得、協力を得ますためには、この積立金運用に当りまして、安全であること、また有利であること、同時にまた、これが福祉的な方向において使われなければならないことは、申すまでもない点だと思うのであります。財政投融資の資金として運用されると申しますが、財政投融資の資金は、申すまでもなく、わが国経済を健全に発達さすために使われるものでございまして、ひとり大企業のみにその資金が運用されるものでないことは、御承知の通りであると思います。中小企業なり農山村等の融資にも、あるいは住宅等、国民生活の福祉等にもこの金が使われ、当然還元方法をも考えて運用されねばならぬことも、御理解をいただきたいと思うのであります。  最後に、また、この年金が非常に多額に上るので、国家財政に対してどういう影響があるか、多大の悪影響をもたらすようなことはないであろうかという御懸念であったかと思いますが、もちろん、長期にわたる年金制度創設する際におきましては、この期間にわたる国家財政に対する負担というもの、これは十分考えていかなければならないことは、御指摘の通りでございます。今回の実施に当りましても、われわれは、まず三十四年度の実施に当って、無拠出年金援護年金を四カ月分予算の上に計上して、さらに来年度においてこれを平年度化していく、その次に拠出制の国庫金の積み立てを実施していく、こういうふうに、負担を順次財政収支とも見合せて計画を立てておりますのも、国に対する負担との調和をはかる考えで、この種の考え方をいたしておるのでございます。もちろん、長い期間にわたります、あるいは三十年後、五十年後等におけるこの積立金運用等は、先ほど申しましたような考え方運用して参りますので、これが同時に、わが国の経済の非常に遠い将来のことになりますと、今日からわが国経済の発展の姿などはなかなか想像もつかないところでございますから、長期にわたるこの財政計画ということをお話しするわけには参らないと思いますが、開設の当初において、年度を分けての実施をいたしておりますことは、ただいま申すように、財政に対する重圧をできるだけ避けるという考え方にほかならないのであります。さらにまた、このために特別な税を考えてはおらないかというお尋ねでございましたが、ただいまのところ、さような税を考えてはおりません。(拍手)     〔国務大臣坂田道太登壇
  21. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) お答えいたします。  最初は、制度基本的な立て方についてのお尋ねでございます。本制度におきまして拠出制基本といたしましたのは、まず第一に、みずから掛金を行い、その掛金に応じて年金を受けるという仕組みをとることによりまして、老齢のように予測できる事態に対しましては、すべての人が、若いうちから、みずからの力でできるだけの備えをするという原則を堅持して参りたいと考、えたからでございます。年金制度におきまして、このような建前をとりますことは、制度が将来にわたりまして健全な発展を遂げて参りますための不可欠の前提と考えられるのであります。さらに、わが国のように老齢人口の急激に増加して参ります国におきましては、無拠出制基本とした場合、将来における国の財政負担が膨大になり、それだけ将来の国民に対しまして過度負担を負わせる結果となるのでありましてこれを避けますためにも、拠出制基本とした積立方式をとり、積立金及びこれから生ずる利子収入を有力な財源として給付費をまかなっていく仕組みが必要となるのでございます。  拠出制建前といたしました場合と、無拠出制建前といたしました場合と、将来国庫負担がどのような数字を示すかというお尋ねでございますが、すなわち、政府案の場合におきましては、昭和三十六年度には約四百三十億円、昭和四十年度には四百六十億円、昭和五十年度では五百二十億円となり、自後、逓減をする見込みでございます。これに対しまして、無拠出制建前にいたしますと、昭和四十年度におきまして四百五十億円、昭和五十年には八百二十億円、昭和六十年には千二百六十億円、昭和七十年には二千億円、昭和八十年には三千五百億円、昭和九十年には、実に五千億円をこえる国庫負担が必要になるのでございましてこれを見ましても、無拠出制建前としてわが国国民年金制度を組み立てますことはきわめて困難であることが御理解いただけるものと思う次第でございます。  それから、保険料及び保険期間についてのお尋ねでございましたが、六十五才から月三千五百円の支給を確実に行いますためには、保険料額を百円、百五十円といたしまして、これを四十年間納めていただきますことが、保険数理計算上どうしても必要であるからでございます。この額を国民負担できるかどうかということにつきましては、二、三の必要な調査を行いまして国民負担能力につき究明いたしました結果、大部分がこの程度拠出を行うことができるという結論に到達いたしたのであります。しかしながら、現金収入の乏しい農山漁村におきましては、確かにお尋ねのような問題もございますので、この場合の保険料の徴収につきましては、できるだけ実情に即するような方法をとりたいと考えておる次第でございまして、今後とも実態調査を行うことによりまして十分研究を積みたいと考えておる次第であります。  次に、保険料拠出期間社会保障制度審議会の答申に比べて長過ぎるとのことでございますが、一般に二十才から五十九才までの年令の間にある者であるならば、この程度の探険料を拠出することができると考えられるのでございます。すなわち、二十才に達しますれば、学生等を除きましては、何らかの所得活動に入りますことが通例でございますし、また、六十才になります者は、被用者保険の場合と異なりまして所得を得ている場合がむしろ通例であると考えられるからでございます、イギリスの国民保険の例を引きますならば、この制度におきましては、実に十六才から六十五才まで五十年間にわたりまして保険料拠出義務づけられておるのでございまして、これを見ましても、拠出期間が必ずしも長期に過ぎるということはいえないのではない歩と考えるのでございます。  また、老齢年金の必要拠出期間社会保障制度審議会の答申と比べて長過ぎるとの御意見がございますが、およそ、老齢年金支給いたしますための拠出期間を五年間というような短かい期間とすることは考えられないのでございます。本法案におきましては、原則として二十五年双三の拠出を必要としておりますが、先ほど申し上げました保険料負担能力の乏しい方々につきましては、十年間だけ拠出を行いまするならば老齢年金を受けることができることにいたしておるのでございます。  次に、基準年金額を月三千五百円といたしましたのは、この額は、現在の生活水準を基準にしたものでございまして将来生活水準の向上等がございますれば、当然これに応じて引き上げられていくことになるのであります。この点につきましては、本法案の第四条において明記いたしてございます。被探険者が不安なく保険料を納めることができるよう考慮しておるのでございます。  それから、四十年間における払込保険料の総額と支給さるべき年金額との比較でありますが、被保険者は四十年間に六万三千円の保険料を払い込むことになります。これを複利計算いたしますと“六十五才のときには約二十五万円となります。これに対しまして六十五才から月三千五百円の支給をして参りますにはも六十五才のときに約三十六万円が用意されておらなければならないわけでございますから、その差額だけが国庫の負担になりまして、支給される側からいたしますれば、それだけ有利になるということになるわけでございます。  それから、保険料の徴収についてのお尋ねでございました。これは、御承知の通り徴収方法をスタンプ方式といたしたのでございますが、被保険者の側から見ますると最も簡便であり、徴収の経費は比較的少くて済むという利便があるからであります。この方式をとることによりまして、国民の自主的な納入を健透いたしまして制度の健全な発展に資することができると考えたからでございます。しかしながら、この方式をとって参りますには、本制度趣旨国民の各位に十分周知徹底させることが必要でありまして今後、特にこの点には注意を払いたいと考えておる次第でございます。またし十分に拠出能力がありながら故意に保険料を納めないという方々に対しては、これは、重点的に、国税滞納処分の例によって保険料の徴収を行うことができるようにいたしておりますが、また、反面におきまして、少額の滞納者の方々に対しましては、運用上、二年ごとに保険料債権の整理を行い得る特別の規定を設けた次第でございます、  積立金の管理、運用につきましては大蔵大臣からお話がございましたし、通算調整については総理大臣からお話がありました。  最後に、援護年金支給制限についてのお話で、これは救貧的なものではないかというお尋ねだったと思いますが、援護年金につきましては、拠出制年金のように、自分であらかじめ拠出をしておいたものに支給するのでなくて、すべて一般財源から支出するものでございまするので、すでに年金を受けておる者であるとか、一定程度以上の所得のある方など、比較的恵まれた状態にある方たちに対しまして支給制限を行いますことは、これまたやむを得ないことと考えるのでございます。  なお、本制度による支給制限がきびしいということでありますが、老齢援護年金について見ますと、所得があることによりまして支給を受けられなくなる人は、七十才以上の老人の中でも、すでに年金を受けております者を除きますと、わずかに二割足らずでございます。また、生活保護制度適用者に対する援護年金支給につきましては、現在のままでは、この年金がすべて収入認定対象になります。従って、何ら実質的な意義がなくなりますので、この点、不合理のないように、加算制度措置を講じますことによりまして、被保護者にもこの援護年金が実質的にわたるようにいたしたい所存でございます。(拍手
  22. 加藤鐐五郎

    議長加藤鐐五郎君) 滝井義高君。     〔滝井義高君登壇
  23. 滝井義高

    ○滝井義高君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました政府提案国民年金法案に対し、岸総理以下関係閣僚に対して質問をいたさんとするものでございます。  福祉国家の建設は、保守、革新を問わず、高く国民の前に掲げられた大理想でございます。私たちは、福祉国家の理想を達成するためには、経済の繁栄と祉会保障の拡充強化をはからなければならぬことは、岸総理がたびたびここで言明をせられる通り、言うまでもないことでござごます。  静かにわが国祉会保障現状を顧みてみますと、その一つの柱である医療保障の面におきましては、昨年十二月、新国民健康保険法が成立をするここによって、九千万の国民が、三十五年末までに国民皆保険の恩恵を受ける絵ができました。また、他の一方の重安な柱である所得保障制度については、現在雇用関係にある千九・百四十八万人のうち千三百六十三万人の諸君が、厚生年金、共済組合、恩給等で、小完全ながら老後保障せられております。これは、日本における全就労人口四千二百三十八万人の三割二分にしか当らないのであります。     〔議長退席、副議長着席]  言いかえまするならば、わが国の働いておる人口百人のうちで六十八人は、その老後、あるいは重大な疾患にかかった場合、あるいは一家の働き手が死亡したような場合には、その遺族、これらのものに対しては何ら保障がせられていないという不安な情勢に置かれておるというのが、現在の日本の姿でございます。このような中で、政権担当以来ニカ年、金のかからない道徳教育や勤務評定等の文教政策、あるいは警察官の職務を拡大しようとし、警察国家実現を招来しようとする、あの警察官職務執行法の反動的な政策の提案に狂奔をしたその岸内閣が、今、長期安定政権の夢が消え、与党の一部からも見放され、国民の大部分からあいそをつかされた現段階において、本国会国民年金法案提出し、わが党提出法案と対決して国民的討議を行うことができることを、国民とともに喜びたいと思います。(拍手)これによって所得保障制度は、全国民的な規模に発足をするその糸口を見出すことができたのでございます。  この機会に、私は、日本の貧弱な社会保障にまつわる根本的な二、三の重要な点について、岸総理の所見をまずお伺いいたしたいと思います。  そのまず第一は、日本の社会保障には体系がないということでございます。医療保障を見てみましても、病院、診療所の経営主体はばらばらでございます。しかも、その設立も無秩序、無計画に行われておることは、厚生大臣が身をもって体験をしている通りでございます。しかも、その制度は、国民健康保険あり、健康保険あり、日雇い健康保険あり、共済組合ありと、実にばらばらでございます。さらに、それらの制度の中における診療報酬の支払いも、甲、乙二木というばらばら制度をとっておるのでございます。  一方、所得保障の面を見てみますと、既存の法的な被用者年金各法、すなわち、厚生年金や共済組合等、十種に及ぶものが相並立、対立をして、国庫負担も、保険料率も、年金額もばらばらであります。そのばらばらな上に、今やここに国民年金制度が加えられたのでございます。  この日本の社会保障の姿は、まさに錯雑と混乱と継ぎはぎだらけの姿を呈し、そこに一貫した体系を見出すことができないというのが、現在の日本の社会保障の姿でございます。(拍手)しかも、そこに一貫した体系がないばかりではございません。その精神は一体いかなるものによって運営をせられておるかと言うと、愛情豊かな社会保障の精神が貫かれておらずして、冷酷無情なる保険主義によって貫かれておるというのが、これが現在の日本の社会保障の姿なのであります。(拍手)一体、岸総理は、この国民年金制度発足に当って日本の社会保障に体系を与えるだけの勇気があるかどうかを、まず第一にお尋ねをいたします。  第二には、わが国社会保障には、長期経済計画に見合う、総合的な、長期的な社会保障計画が欠除しておるということでございます。昨年未発表された厚生白書は、社会保障の役割は経済政策を推進させる上に欠くことのできない重要な要素であるといっています。すなわち、経済政策を進めるためにも、社会保障自体を前進させるためにも、社会保障の長期計画を樹立する必要があると思うのでございますが、岸総理並びに経済のヴェテランといわれる世耕経済企画庁長官は、財政的な数字の裏づけをもって、長期経済五カ年計画に見合う社会保障の五カ年計画を、ここに国民の前に数字をもって示していただくことを要望いたしておきます。  第三には、行政機構についてでございます。社会保障の行政機構は各省にまたがり、各省割拠の弊を露呈いたしております。このために、事務は複雑化し、組織の一元化が行われていません。従って、そこには、むだな金が乱費せられており、浪費が多いという姿でございます。この際、岸内閣総理大臣は、思い切って、日本の各省にまたがっておる、これら各省割拠の弊をなしておる社会保障関係の機構を一元化して、社会保障省を作る意欲があるかどうかを、お尋ねいたしたいのでございます。(拍手)  以上三点について、岸総理の明確な答弁を承わりたいと存じます。日本の社会保障の幾多の欠陥を是正することは、国民年金制度発足するに当って当然行わなければならぬ前提条件でございます。岸総理の答弁は、そつがなく、実にうまいといわれております。国民は、この岸総理の答弁を、ヤマブキの花だと言っておるのでございます。しかし、太田道灌の故知ではございませんが、みの一つだになきぞ悲しきと言われることのないよう、誠実なる答弁をもって、この国民年金制度発足に当って国民の前に明白にしていただきたいことを、私は特にお願いいたしておきます。  次に、国民年金法案の具体的な内容についてであります。  第一点は、現在の各種年金制度との調整の問題についてであります。すでに野田さんもこれに触れました。岸総理は、三十六年までに、すなわち、拠出制年金が行われる三十六年までにはこれは明白にすると申しました。一体、そういうことでいいでしょうか。年金制度を知らない人には、それでごまかしがきくかもしれません。しかし、国民年金制度発足したならば、その発足した翌日から、国民年金制度から公的年金制度に移る人があり、現在の公的年金制度から新しくできた国民年金制度に移る人があるのでございます。この通算の問題を解決せずしてどうして国民がこの年金制度についていくことができますか。この際、もっと具体的に、この議場を通じて政府は通算制をとるのか、それとも二重加入制をとるのか、どちらにしても、将来における年金制度の一元化されていく方向を国民の前に明白にしなければ国民はついていかない、この問題は解決をせられないのでございます。この際、あらためて、もう一回、明確なる政府の方針を、私は坂田厚生大臣並びに岸総理にお伺いをいたしておきます。  さらに第二点は、今回の拠出年金制度完全積立方式をとっております。底の浅い日本経済は、絶えず経済変動り波に洗われております。これをいかなる方法で乗り切っていくか。強剛適用で二十五年ないし四十年の保灰料を長い間支払い、それに見合う牛金額が確実に保証されないとするばらば、保険料の滞納は必至であります。国民生活水準の向上、並びに著しい経済変動の生じた場合には、一体、具体的にどのような方法国民に保証をするのか。佐藤大蔵大臣の野田ごんに対する答弁は、経済の変動による影響については、通貨価値の安定に里点を置くなんという、こういう抽象的な答弁では、われわれ国民は納得することができません。(拍手)少くとも、わが社会党の、案におけるがごとく、生計費その他諸事情の変化によっ、年金額が一割以上増減をするような場合には、厚生大臣のもとにある国民中金審議会の意見を聞いて直ちにその手続をとるというくらいの案を、政権を担当しておる政党が出すことができないというのが、これが国民年金制度の失態であるのでございます。(拍手)さらに、重要な点は、この国民年金積立金の問題でございます。積立金は、野田さんも指摘したように、一年五百億ずつ、最高時においては三兆ないし四兆円の金が積み立てられます。」の問題については、今、大企業ばかツではなくして、国民の福祉その他にも金をつぎ込むとおっしゃいました。当然そうであろうと思います。しかし、問題は、新しくできる国民年金だけにあるのではございません。現在の厚生年金において、すでに現在二千七百十八億円の積立金がございます。さらに、失業保険においても、三十四年度末には六百億をこえる積立金ができるのでございます。厚生年金は、そのピーク時には二兆億に上るのでございます。そうしますと、労働者の積立金、新しくできる国民年金積立金を総合するとき、そこにできるところの積立金の総額は、六兆をはるかにこえるという莫大な金になります。一体、政府は、このような莫大な金を、いかに総合的に日本の産業の発展と民生安定のために運営をしていくのか。この際、もっと具体的に、運用の方針を私は明らかにしてもらわなければならぬと思うのでございます。今までのような大資本奉仕の資金運用部を通じての運用の仕方では私たちは納得することができませんことをつけ加えておきます。大蔵大臣の明白な御答弁をお願いいたします。  さらに、政府の出しておる国民年金制度は、その年金額があまりに低いということでございます。一体、これで年金と言うことができるでしょうか。老後保障するという援護年金も、日本の平均寿命は、男女を通じて六十五才です。それを、七十才からわずかに千円を支給します、こういっております。そればかりではございません。拠出年金も、六十五才になって、二十五年ないし四十年の掛金をして、そして年額が二万四千円から四万二千円、月額にして二千円から三千五百円。自民党の皆さん、政権を担当せられておる岸総理大臣、東京都における成年男子の生活保護における基準額は、一体幾らとあなたはお考えになっておりますか。三千五百十円です。人事院の給与勧告における十八才の標準生計費は七千五百六十円になっております。老後保障する年金生活保護の三千五百十円にまで達しないというこの姿が、政権を担当しておる現実の政党一の打ち出す政策と言えましょうか。(拍手)断じて言えないのでございます。一体、岸総理、このような政府案の老後保障の、人間無視の思想を憤るのは私だけでしょうか。全国九千万の国民は、この年金を憤って、第二の生活保護と言っておるではありませんか。政府みずからも、立案をした人々は、きわめて謙虚に、これに援護年金とつけておるではありませんか。私をして言わしめるならば、今回政府が出したこの援護年金は、どろなわ式の、羊頭狗肉の政策であり、近く目前に迫った参議院選挙、地方選挙に対する選挙年金であると言っても過言ではないのでございます。(拍手)  さらに、老齢援護年金支給条件でございます。野田さんも正直に申しました。選挙のときには、われわれは無拠出年金をやるのだといってかねを鳴らして回った議員が、この中にも、一相当与党の皆さんの中にはおるはずでございます。ところが、今度の法案建前を見て下さい。決して無拠出原則になってはおりません。老齢年金支給条件は、保険料拠出期間あるいは拠出すべき期間建前にしておるのが、今回の政府案なのでございます。こういうごまかしをやることは選挙において公約したことに反すると思うのでございますが、厚生大臣、一体いかに考えておるのか、明白にこの議場を通じて御答弁を願いたいのでございます。  さらに第四点は、母子援護年金において、その対象児童は義務教育終了前でなければならぬということになっておることであります。これは、貧乏人の子供は、十六才になったならば、義務教育を終ったならば働けということなのでございます。かつて、与党の中には、貧乏人は麦を食えと言った大臣がございました。まさに、この、貧乏人は麦を食えという、冷酷無情な、あの一貫した思想によって貫かれておるのが今回の政府の母子援護年金であるということが、これによっても明白でございます。(拍手)もし、義務教育を終ったら貧乏人は働けということでないとするならば、この際、坂田厚生大臣は、この議場を通じて、十八才まで引き上げましょうという言明ができるかどうか、お尋ねをいたしたいのでございます。  さらに、障害援護年金については、外科的疾患を中心にして、きわめて重症の一級障害のみについて障害年金が与えられることになっております。一体、政府は、われわれが、臨時恩給等調査会を通じて、外科的な疾患ばかりではだめだ、恩給の問題においては内科的な疾患も考えてやるべきだという強い主張をして、これを取り入れました。しかるに、今回の障害援護年金においては、依然として、政府は、外科的な疾患を中心とした内臓疾患、精神障害、あるいは、あの業病といわれるハンゼン氏病——いわゆるレプラ、こういうものに対する思いやりが、一片のかけらとしても出ていないということを、ここに私は指摘いたしたいのでございます。これらに対する厚生大臣の所見を承わりたいと思うのでございます。  第六点は、今回の拠出年金制度は、二十才から三十四才までは月に百円、三十五才から五十九才までは月に百五十円出すことになっております。体、このような保険料がとれるかどうかという問題でございます。坂田厚生大臣の答弁は、きわめて抽象的でございました。御存じのように、すでに昨年末をもって、皆保険は大きく前進しようといたしております。現在、三十四年度においても、一世帯当りの国民健康保険の保険料は三千六百九十円と相なっております。この国民健康保険においてさえもが、その金額において一割、世帯において二割は脱落をしておるという、この現実を見落してはなりません。三十四年度において、三千六百九十円は、ウナギ登りに、今や医療内容の向上によって上りつつあります。その場合に、今回さらに百円ないし百五十円の月額の保険料、年間にして千二百円ないし千八百円がその三千六百山口の上に加わるということです。皆保険政策と国民年金制度とは、並行して今や進もうといたしております。貧しい日本の中小企業や農民が、果して、これをたえて、順当な保険料の納入が行われるかどうかという問題でございます。具体的にお聞きをいたします。一体、政府は、この国民年金に加入する対象人口を何人と見ておるか。そして、その対象人口の中の何割が順当に保険料の支出可能の数と見ておるかを、この際、この議場を通じて明白にしていただきたいと思います。日本においては、現在二百四十六万世帯、千日十三万人という、ボーダー・ライン層、低所得階層があることは、厚生白書か昨年天下に明示したところでございます。今や、日本におけるこれらの低所得階層は、太平洋における日本海溝の、あの海の水と同じように沈着をし、固定化の傾向をたどっておることは、厚生大臣もよく知っておると思います。もし、こういう状態で進むならば、拠出年金保険料の徴収というものは、きわめて低所得階層だけを限ってみても、困難な状態が出てくると思います。その場合、保険料を十年以上納めていなければ老後保障のためのこの国民年金額はもらえないということは、今坂田厚生大臣がここに言明をした通りでございます。そうすると、経済の浅い、そして浮き沈みの激しい日本において、果して、低所得階層の諸君がこの国民年金制度の恩典を受け得るという確信が厚生大臣におありかどうか、明白にしていただきたいと思うのでございます。  さらに、第七点の、国民年金と、いわゆる生活保護関係は、さいぜん答弁があったから抜かします。  第八点の、年金の財政問題に関してでございます。この問題については、特に岸総理と佐藤大蔵大臣の見解をお尋ねいたしておきたいと存じます。  三十六年におきましては、すでに、恩給、特に軍人恩給はピークに達します。三十六年においては、軍人恩給は千三百億に達するのでございます。先般、予算委員会において、岸総理大臣は、私の質問に対して、国民年金制度発足に当っては、日本の恩給制度、特に軍人恩給と国民年金調整は責任を持ってやると言明をせられたのであります。岸総理の答弁が、真に一国の総理としての答弁であり、国民に信頼される答弁であるとするならば、この機会に、恩給制度国民年金制度との調整をいかにするかを国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。  さらに、佐藤大蔵大臣にお尋ねをいたします。御存じのように、昭和三十六年には日本の皆保険政策が完了をいたします。皆保険のために政府の負担をしなければならない額は、すでにわれわれの社会労働委員会を通じて大蔵当局が言明をしたごとく、約四百億円の国庫支出が必要でございます。さらに、三十六年には、今申しましたごとく、恩給、特に軍人恩給がピークに達し、軍人恩給だけで千三百億に達します。さらに、木国民年金が、三十六年四月から拠出制が開始せられます。しかりとするならば、その財政負担は、四百億ないし四百五十億、少く見積っても、このくらいになるのでございます。これら三つのものの総計だけでもすでに二千百五十億、二千億をこえる金が要るのでございます。皆さん、昭和三十四年度予算書をひもといて見て下さい。三十四年度における、恩給も加えた広義の社会保障費は、二千七百億円でございます。過去の日本の社会保障の歴史を見てみても、一カ年間に予算の増額した額は、最高が百億程度でございました。今回、昭和三十四年度においては、国民年金に百十億の予算を組んだために、画期的な二百億の増加になったのでございます。しかるに、昭和三十六年の広義の社会保障費の総額を見てみますと、どんなに少く見積っても三千五百億かかるのでございます。昭和三十四年度に比較して七百億ないし八百億の歳出増、国庫負担増となることは、火を見るより明らかです。佐藤大蔵大臣、一カ年間に四百億だけ社会保障費を、三十五年、三十六年と増加するだけの腹がまえをこの際持っておるかどうかを、私は明らかにしておいていただきたいと思うのでございます。  なぜ私がこういう質問をあえてここに申すかというと、前厚生大臣橋木龍伍氏が、先般、東北の旅行先で、防衛費を削ってでも国民年金制度を実施する必要があるという談話を発表いたしました。帰るとともに、前防衛庁長官左藤氏からかみつかれたことは、すでに新聞が報じておる通りでございます。現在の日本においては、減税か国民年金かが議題となっておりますが、やがて、三十六年以降における日本の財政においては、減税か国民年金かではなくして、バターか大砲かが大きく日本の政治をゆさぶる問題となることは、火を見るより明らかであると申さなければなりません。(拍手)  さて今や、国民生活は大きな断層を作って、窮乏化しつつあります。厚生自書は、低所得階層の増大傾向を、国民生活の前途に立ちふさがる、黒々とした鉄の壁だと称しております。この鉄の壁を打ち破る計画と熱情を持たねぱならぬと思うのでございます。われわれがこの熱情を持たなければ、断じてこの年金は実施することができません。佐藤大蔵大臣は、これらの財政状態を勘案し、真に三十六年度から拠出制年金制度を漸進的な形において推進する意思があるかどうかを私はお尋ねいたします。  最後に、簡単に、年金の事務機構について特にお尋ねをいたしておきます。今回、年金の事務機構は、厚生省の年金局、都道府県の年金課、そして社会保険出張所、さらに市町村と、こういう工合になっております。しかも、別にその年金の支払い事務は郵便局が行うことになっておるのでございまするが、予算額を見てみると、末端の市町村においては、現在三千九百四程度の市町村がありますが、一億五千五百万円の予算です。一市町村当り五万円を割る状態です。自治庁長官は、一体、このような貧弱な財政で、責任を持って年金の事務を遂行ができるか、保険料の徴収が可能かどうか、この機会に、自治庁当局の立場として明白にしておいていただきたいと存じます。  さらに、郵政大臣についてでございます。郵政大臣は御存じの通り、現在、郵便局は一万五千九百二十三局あります。この郵便局に与えられる金は七千五百万円でございます。一郵便局当り五千円を割るという状態です。これで、政府支払い事務が、あの多忙な郵政事務の間で順当に遂行できるかどう炉、この機会に明白にしておいていだきたいと存じます。これをもって私の政府提案国民年並制度に対する質問を終りたいと存じます。岸内閣は、社会保障の体系化と、事務の簡素化と、そして経費のむだを省いて、国民的な福祉のための平金制度を遂行するために一切の情熱をささげることを特に要望いたして私の質問を終りたいと存じます。(拍手)     [国務大臣岸信介君登壇
  24. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。滝井君の御指摘されるように、社会保障制度、特に国民年金制度を実施するに当っては、非常な熱意を持って、あらゆる困難を克服していかなければならぬというお考えにつきましては、私ども全然同感でありまして、すでに、この点に関しましては、先ほど来御説明申し上げておりますように、わが国経済上の実情と、将来の経済の発展というものとを総合的ににらみ合せて、この実施に当ろうとしておるのであります。しかして、お尋ねになり供した第一点である、社会保障制度についての一貫した体系がないじゃないか。なるほど、医療保障につきましても、いろいろな健康保険の制度がございます。共済組合等の制度もあります。確かに、その点においては、給付内容もいろいろ違っております。また、所得保障につきましても、従来からいろいろな年金がありまして、その間において十分統一した形ができておるとは言いがたいと思います。私どもは、言うまでもなく、この社会保障制度の二大柱としては、医療保障所得保障の問題、国民皆保険の問題と国民年金の問題を中心にいたしまして社会保障制度を完備することが、近代国家の目ざすべき目標である、こう考えて、今回国民年金制度発足しようとするわけであります。ただ、こういうふうな各種の制度は、御承知の通り、それぞれ過去の沿革もありますし、いろいろな事情もございまして、今一時にこれを一本化するというようなことが困難であり、ほとんど不可能に近い困難であるということも、御承知の通りだと思います。この状況につきましては、先ほど申し上げましたように、十分検討をして、そして、いよいよ拠出制国民年金制度発足するときまでには、いろいろな点を検討してこれに対する調整を考えて参りたい、かように思っております。  また、行政機構がばらばらであるということも、制度そのものが、今申しましたような沿革上の理由からいろいろ分れていることは、御指摘の通りであります。これをできるだけ一元化していくということは望ましいことであります。  社会保障省をこの際作る意思があるかということでありますが、政府としては、行政機構の問題につきましては、この問題も重要な一課題として、行政制度全体の問題として十分に検討いたしたいと思います。今日直ちに社会保障省を作るということを明言するわけにはまだ参りません。  各種の年金や恩給とこの国民年金との関係につきましては十分検討をいたしまして、その調整について、先ほど申しましたような心組みで進んで参りたい、かように考えております。(拍手)     [国務大臣佐藤榮作君登壇
  25. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 三十六年度には、恩給や国民皆保険の実施のために、財政的には負担が増すことは、御指摘の通りでございます。しかし、国民年金制度を実施するということは政府の重要な施策でありますので、これらの事情を十分検討の上、今回、国民年金の実施、これを取り上げて先ほど説明いたしましたように、三十四年度におきましては、まず援護年金から始め、三十五年度はこれを平年度化していき、そして三十六年度におきましては拠出制を実施する、こういうように、順序を追って、財政負担の増加、これに対処して参る考えでございます。この機会に、申すまでもないことでございますが、政府におきましては、公約いたしました重要施策については、あらゆる困難を克服して必ず国民の期待に沿うようにこれが実現を期しておるのでございます。この意味におきまして、いろいろ負担がふえるからできにくいのじゃないかというような御懸念でございましたが、幸いにして、私どもは、これを必ず実現し得る信念を持っておるような次第でございます。  次に、国民年金積立金運用の問題でございますが、この積立金は、なるほど、昭和五十年になれば九千億になるという、まことに膨大な金になるのでございます。しかし、非常に多くなりました、たとえば三兆六千億円になった、こういうときの状態で、この運営をいかに考えるかと御指摘になったと思いますが、かような膨大な金額になるにいたしましても、年々増額いたして参るのでございます。従いまして、財政投融資の面から考えましても、年々その蓄積がふえていく、一方、それに伴ってわが国経済も発展して参るのでございまして、こういう意味から考えますれば、金額の非常に多い今後五十年先などをいろいろとやかく想像いたしますことは、わが国の経済の発展の状態から見ましても、非常に夢のようなお話のように実は考えるのであります。私どもは、この御指摘は、どこまでも年々蓄積されていく、その年々の積立金運用に当って、先ほど申しますように、安全にして有利で、しかも、福祉的な効果を上げるような方向にこれを使っていく、このことを特に配意して参るつもりでございます。  以上、簡単でございますが、お答え申し上げます。     〔国務大臣世耕弘一君登壇
  26. 世耕弘一

    国務大臣(世耕弘一君) お答えいたします。  国民年金制度の問題について、日本の経済の長期計画とどういうふうな関係にあるかというお尋ねのようでありましたが、ごもっともな御質問のように拝聴いたしました。政府がさきに策定いたしました長期計画は、経済基礎の強化をはかりつつ民生の安定と向上を期するという目標で進んでおる次第でございます。従って、当然、社会保障制度の拡充、生活保護制度の充実、医療皆保険の達成、国民年金制度の充実、並びにこれが早期実現をはかることは、お説の通りでありますが、右の計画につきましては、まだ、具体的な、総合的な諸機構が確立しておりません。こういう関係から、社会保障制度全般についての長期的計画の構想を発表する段階に至っていないということを遺憾に思うのであります。  なお、この機会に数字の点について明確にしろという御注文がございましたが、さきに厚生大臣が発表しました数字の点で御了解を願っておきたいと思うのであります。  次に、年次計画の問題について、いずれ次の年度において、この策定した目標を明確にして御発表いたしたいと思って、目下検討いたしておることを、御了承願いたいと思います。  なお、日本国民生活現状から見まして、老齢の人たちのことや、母性並びに児童、また、戦後の家族制度の変革等の関係から、扶養関係あるいは老人身体障害者、病人等の社会保障生活保障など、国家社会において、この施策が重大な施策であるということは、論を待たないことであります。特に貧富の格差につきましては、極力善政を行なってこれが是正、充実をけかって国民生活を確保せなくちゃならぬということは、言うまでもないことであります。この問題を解決するため政府は全力をあげておるということを御了承いただきたいのであります。ただ、この際、この大きな仕事、長期的に経済確立をするのには、どうしても深い国民の理解と協力が必要だということは言うまでもないのであります。最後に私が一言申し上げたいことは、先ほど社会党国民年金法案に関する八木さんの御説明の中に、経済の長期見通しについての御発言があったように記憶いたします。その日本の経済の見通しについての。パーセンテージを出されておりましたが、その。パーセンテージと、われわれが長期的に見通しておりますパーセンテージと、ほぼ一致するということを申し上げることができるのであります。かような関係から、現在経済的なあらゆる観点から見まして、今度の国民年金法案は、妥当な経済の基礎のもとにおいて実施計画を立てておるということを御了承を願っておきたいと思うのであります。(拍手)     〔国務大臣坂田道太登壇
  27. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) お答えいたします。  第一の問題は、通算調整についてのお尋ねでございます。他の現行公的年金制度との通算調整はきわめて重大な問題であるが、政府は、いつまでに、いかなる方法によってこの問題を解決するつもりか、先ほど総理大臣からお答えはいたしましたが、この法文にもそういうふうにやるということを明記をいたしておりますが、政府といたしましても、拠出制発足いたします昭和三十六年四月までには、これが具体的な方策を講じたいと考えておるわけでございます。しかしながら、御承知のように、この問題は非常に重要でございまして、また、技術的に申し上げましても、むずかしい問題をはらんでおりますので、やはり、社会保障制度審議会の答申をもとといたしまして、いわゆるじゅずつなぎ年金にするか、あるいは二重加入にするか、あるいはその他の方にするかをきめたいと考えておるような次第でございます。  それから第二は、国民年金適用範囲の問題についてのお尋ねでございますが、全国民対象といたしまして年金制度を考えます場合、現行各種公的年金制度を全部御破算にいたしまして一本の基本的な制度創設するという考え方も、これは当然あるのでございます。しかし、その行き方をとりますれば御趣旨のような結果になるのでございますが、現行各種年金制度には、やはり、それぞれ独自の沿革や目的がございまして、簡単にこれを御破算にするということはできないのでございまして、今直ちにこのような方法をとりますことには相当の困難が予想されるものであります。しかしながら、また、現行各種公的年金制度適用を受けております人々や、すでにこれらの制度によって年金を受けておる人々は一応国民年金制度で考えられておる以上の給付保障されておるのでございましてさしあたり、これらの人々を除外した制度創設いたしましても、特に不合理ではないものと考えられましたために、このような立て方をいたしたわけでございます。しかしながら、このままで、現行各種公的年金制度との間の通算調整、さらに、現行各種公的年金制度の間の通算調整の問題が解決されないままでおりますならば、確かに国民年金制度としましては完全なものとは言いがたいと思いまするので、御趣旨通り、われわれとしましても十分研究を積んで参りたいと考えておる次第でございます。  次は、援護年金についてのお尋ねでございます。千円ぐらいで老後保障が一体できるか、あるいは、生活保護でも、東京都の成年男子一人は三千五百十円であるというようなお尋ねでございますが、援護年金額の月額は、千円をもってしては老後生活がそれだけではできないということは、仰せの通りかと思います。しかしながら、この制度におきましては、あくまでも拠出制基本として援護年金はその経過的及び補完的なものとして認められたものでございますし、また、援護年金全額国庫負担でありまするために、国家財政の制約もありますようなわけで、このような額といたしたような次第でございます。しかしながら、たとい月額千円ないし千五百円程度でございましても、現在の老齢者身体障害者母子世帯の方々には十分喜ばれるものと思われますし、また、現金収入の少い農村におきましては、生活費の足しとしましても、かなりの意義を持つものと考えておるような次第でございます。(拍手)  それから、過般の総選挙においての公約の問題でございますが、これは、われわれといたしましては、現在年金を受けておらない七十才以上の老人に対し、月千円の年金支給する、さらに身体障害者母子世帯にも支給するということを約束いたしたわけでございまして、今度年金法をこのような形において出しましたということは、私どもが総選挙におきまして公約いたしましたことを、最も正しく実現に移していったものであると確信をいたしておる次第であります。  それから、母子年金の子の年令について、十六才では低過ぎはしないか、被用者年金十八才、身体障害は二十才であるから、もっと上げるべきであるという御趣旨でございます。母子年金と申しましても、拠出制年金の方は十八才となっておるのでございまして、無拠出制母子援護年金の方のみ社会保障制度審議会の答申と同じ十六才、すなわち、義務教育終了程度年令といたしておるのでございます。これは、援護年金が経過的、補完的制度であることとさらに全額国庫負担であります関係上、国家財政上やむを得ないものと考えるのでございます。  それから、障害年金障害の範囲について、精薄者あるいは内部疾患者、あるいはハンセン氏病の取扱いについてはどうなるか、障害の範囲に加えるべきではないかというようなお尋ねでございました。障害年金障害の範囲は、内科的疾患に基くものを含めまして、外部障害に限られ、結核、精神障害など、内部障害そのものは含まれないことにされております。これは、内部障害の場合におきましては、症状の固定するとしないとを問わず、その症状の重さの判定がなかなか実は大切なことでございますので、症状の固定を前提とした本制度におきましては、障害年金には性質上入れがたく、かたがた、病状がなおったかどうかも、固定したかどうかの認定がきわめて困難でございます。また、これを含めますと、その対象が相当膨大な数字になるのも予想されるわけでございますもので、制度発足当初におきましては、これを見送ることといたしまして、国民皆保険が改正されました後に取り上げることにいたしたのでございます。  それから、保険料の徴収について、国民皆保険が三十五年で完成をする、三十六年においてはいよいよ国民年金拠出制度が始まる、であるから、徴収はこの場合だけに取り上げていくと、百五十円であるけれども、国民皆保険の分を加えるならば、なかなか徴収は困難でありはしないか、この点は、私ももっともな点も十分あるかと思います。しかしながら、いろいろ研究をいたしました結果、この程度では何とか徴収が可能だというような結論に到達をいたしたわけでございます。  最後に、拠出年金の加入人口について、人口見込みはどうかというようなお尋ねでございました。拠出制年金の加入人口は、制度発足当初におきましては五十才から五十五才までの者の任意加入、五十五才以上の者は適用除外をされます関係上、強制適用者が約二千三百万人、任意適用者が、加入率を約三分の一と見まして約三百万人、計二千六百万人程度と見込んでおりますが、制度が恒常化いたします昭和五十年ごろには、人口の伸びもございまして、約四千三百万人程度となる見込みでございます。そのうち、保険料の徴収可能者は、手がたく七〇%程度に実は数字計算を行なったような次第でございまして、低所得者層につきましても、たと、えば、普通ならば二十五年でございまするが、非常に苦しい方々に対しましては、最低限十年お払い込みをいただきますならば年金がもらえるということにいたしまして、この点につきましても配慮をいたしておることを申し上げておきます。(拍手)     〔国務大臣青木正君登壇
  28. 青木正

    国務大臣(青木正君) 国民年金の実施に当って、明年度一億五千五百万円の予算で市町村が果してやっていけるか、こういう御質問と存じております。積算の根拠につきましては、一応国庫の場合と比較いたしまして大体その事務量が一二%程度と私ども考えておるのであります。しかしながら、最初のことでもあり、また、安全率を考えなければなりませんので、一二%の事務量、それに四倍の倍率をかけまして、そして一件五十円という額を算出いたしたのであります。なお、しかし、私もこれで十分やっていけると考えておるのでありますが、御承知のように本法第八十六条に、この事務費は必要額全額国が交付する、こういう建前になっておりますので、私どもは、これでやっていけない場合は、当然国が交付する、かように考えておる次第であります。(拍手)     〔国務大臣寺尾豊君登壇
  29. 寺尾豊

    国務大臣(寺尾豊君) お答えを申し上げます。  御指摘のように、郵政省といたしましての国民年金の支払い事務は全国の郵便局で行うことになっております。受給者から国民年金手帳と受領証書を提出いたしまして、それに対しまして給付金を支払う。そうして、受領証書は、全国二十八カ所の貯金局を経由いたしまして、都道府県に送って、都道府県では受給者原簿に記録をしよう、こういうのでありますから、普通の年金、あるいは恩給とか遺族年金等に比較いたしまして、郵政省といたしましては手数が相当軽減されます。また、この国民年金には、御承知のように、所得税等の公課もかけられておりませんし、一、口の支払金額がすべて一律になっておる、金額もまた普通の恩給よりは少額であるというようなことから、当省といたしましての事務は、かなり簡素化される。加えまして、三十四年度の支払いは一回きりになっている。そういうような関係からいたしまして、七千五百万円の歳入にはなっておりますが、大体これでまかなえる、かように考えております。
  30. 正木清

    ○副議長(正木清君) これにて質疑は終了いたしました。……。
  31. 正木清

    ○副議長(正木清君) 日程第一、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。法務委員長小島徹三君。   小島徹三君登壇
  32. 小島徹三

    ○小島徹三君 ただいま議題となりました裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、法務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本法案の改正点は、最近における民事、刑事事件の増加、裁判官の不足等のため、地方裁判所においては、本来合議体で扱うのが適当と思われる複雑困難な事件が単独の裁判官で扱われているばかりでなく、訴訟が著しく遅延している実情でありますので、この際、第一審を充実強化して裁判の適正と迅速な処理をはかるため、さしあたり必要最小限度の範囲で判事補二十名を増員しようとするものであります。本案は、一月二十六日当委員会に付託され、裁判官の欠員状況及びその補充、法曹一元化についての問題並びに書記官等の裁判所職員の増員等について熱心なる質疑がありましたが、その詳細は会議録に譲ることといたします。  かくて、二月五日質疑を終了し、討論なく、採決に付しましたところ、本案は全会一致をもって政府原案通り可決せられた次第であります。右、御報告申し上げます。(拍手
  33. 正木清

    ○副議長(正木清君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  34. 正木清

    ○副議長(正木清君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。    ————◇—————  捕獲審検所の検定の再審査に関する法律の一部を改正する法律案   (内閣提出参議院送付
  35. 松澤雄藏

    松澤雄藏君 議事日程追加の緊急動議提出いたします。すなわち、この際、内閣提出参議院送付捕獲審検所の検定の再審査に関する法律の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  36. 正木清

    ○副議長(正木清君) 松澤君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 正木清

    ○副議長(正木清君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。捕獲審検所の検定の再審査に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。運輸委員長塚原俊郎君。     [塚原俊郎君登壇
  38. 塚原俊郎

    ○塚原俊郎君 ただいま議題となりました捕獲審検所の検定の再審査に関する法律の一部を改正する法律案について、運輸委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、本法案趣旨を簡単に御説明いたします。  現行法は、日本国が、日本国との平和条約第十七条に規定する義務を履行するために、旧捕獲審検所が検定した事件に対しまして連合国より要請がありました場合に、これを国際法に従って再審査することを目的とするものでありますが、事柄の性質上、法律の有効期間は平和条約発効の日から七カ年間と規定されておりまして、本年四月二十七日限り失効することとなっているのであります。しかしながら、現在なお一、二の連合国政府との間に捕獲船舶について補償請求事件が懸案となっている事情等にかんがみまして、これらの事件についての再審査の要請も予想されますので、これが受け入れ態勢を存続させるため、法律の有効期間をさらに一カ年延長しようとするものであります。  本法案は、去る一月二十六日予備審査のため本委員会に付託され、二月三日政府より提案理由の説明を聴取し、二月六日本付託となり、二月十日質疑を行いましたが、その内容会議録により御承知願います。  かくて、討論を省略し、直ちに採決の結果、本法案は全会一致をもって政府原案通り可決いたしました。  右、御報告申し上げます。(拍手
  39. 正木清

    ○副議長(正木清君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     [「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 正木清

    ○副議長(正木清君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。……。
  41. 松澤雄藏

    松澤雄藏君 議事日程追加の緊急動議提出いたします。すなわち、この際、内閣提出商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  42. 正木清

    ○副議長(正木清君) 松澤君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 正木清

    ○副議長(正木清君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。商工委員会理事中村幸八君。     〔中村幸八君登壇
  44. 中村幸八

    中村幸八君 ただいま議題となりました商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果の概要を御報告申し上げます。  まず、商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案について申し上げます。  御承知の通り、商工組合中央金庫は、中小企業者の組合等の系統金融機関として、二十数年間にわたり中小企業振興のために重要な役割を果してきており、その貸付残高は、昨年末において約一千百億円に上っているのであります。しかるに、最近の中小企業金融の情勢からいたしまして、この商工組合中央金庫は、いよいよその機能の強化拡充が要請されておりますので、この際、懸案の金利引き下げを実現し、あわせて業務の円滑化をはかるため本改正案が提出されたのであります。  本案の内容を御説明いたしますと、第一に、商工組合中央金庫に対する政府出資は、現在約二十六億円でありますが、明三十四年度においてさらに十二億円を出資することとし、この出資によりまして、現在の割高な金利が平均一分五厘程度引き下げられる見込みでのるのであります。第二は、預金の受け入れ先その他を追加することといたしておる点であります。次に、中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案について申し上げます。中小企業信用保険公庫は、中小企業宿用補充制度の中枢機関として、昨年七月、約百十一億五千万円の資本金をもって発足したものでありまして中小企業信用保健法による保険業務と信用保証協会に対する貸付業務とを行ばっておるのであります。このうち、貝付業務につきましては、公庫は、その基金のうち三十億円をこれに充当ししおりますが、最近の中小企業の資金需要及びこれに伴う保証需要は大幅な増加の傾向にありまして信用保証協会の保証原資を一そう増強することが必要となって参りましたので、明三十四年度に、産業投資特別会計よりさらに十億円を公庫に出資しようとするのが本改正案の趣旨であります。右両案は、去る一月二十六日に当委員会に付託され、一旦一日に政府委員より提案理由の説明を聴取し、二月十日より両案を一括議題として質疑にくったのでありますが、本日質疑が終了いたしましたので、引き続き採決を行いましたところ、両案とも全会一致をもってこれを可決すべきものと決した次第であります。  審査の詳細につきましては会議録を御参照願うこととし、簡単ながら、右、御報告申し上げる次第であります。(拍手
  45. 正木清

    ○副議長(正木清君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  46. 正木清

    ○副議長(正木清君) 御異議なしと認めます。よって、両案は委員長報告の通り可決いたしました。
  47. 松澤雄藏

    松澤雄藏君 議事日程追加の緊急動議提出いたします。すなわち、この際、内閣提出国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  48. 正木清

    ○副議長(正木清君) 松澤君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  49. 正木清

    ○副議長(正木清君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます、文教委員長臼井莊一君。     〔臼井莊一君登壇
  50. 臼井莊一

    ○臼井莊一君 ただいま議題となりました国立学校設置法の一部を改正する法律案の要点と、文教委員会における審査の経過と結果について御報告いたします。  まず、本案の内容について簡単に申し上げますと、第一点は、鹿児島大学に医学に関する大学院を設置しようとしております。第二点は、新潟大学、富山大学及び岐阜大学に、それぞれ新潟大学商業短期大学部、富山大学経営短期大学部及び岐阜大学工業短期大学部を新たに設置しようとしております。そのほか、国立商船高等学校に包括されて、経過的に存続していた旧制の商船学校を廃止しようとするものでありまして、これらの諸点は本年四月一日より施行することになっております。以上が本案の概要であります。  さて、本案は、去る一月二十六日当委員会に付託され、一月三十日政府より提案理由の説明を聴取し、二月十三日、委員と文部大臣並びに政府委員との間に熱心な質疑応答がなされましたが、その詳細は会議録に譲りたいと思います。  かくして、同日討論を省略して採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定した次第であります。  右、御報告申し上げます。(拍手
  51. 正木清

    ○副議長(正木清君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  52. 正木清

    ○副議長(正木清君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。……。
  53. 正木清

    ○副議長(正木清君) 本日は、これにて散会いたします。     午後七時十三分散会