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辻原弘市君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
議長より許可されました勤評問題に関連する暴力問題等に関して、総理並びに関係各大臣に若干の質問をいたさんとするものであります。(
拍手)
ただいま同僚原田君の御質問を拝聴いたしたのでありますが、私の受けた感じを率直に出し上げますならば、これは、起っておる
暴力事件についての重大性を認識された御質問というよりは、むしろ、何かこれらの背景について肯定をせられるかのような印象を、私は率直に受けたのであります。(
拍手)これは私の受け取り方でありまして、原田君にははなはだ失礼かもわかりませんけれども、今回、去る十五日に起きました
高知県仁淀村の
事件というものは、私は、さような、事の理由を云々すべき問題ではないと思うのであります。きわめて重大な集団暴力的な
事件として、われわれは、あげて遺憾千万なりといわざるを得ないのであります。
この
事件の経過を見ますと、新聞紙上にも報道されておりまするように、ただ単なる偶発的
事件ではなく、「
教育父母の会」と称する一部
父兄住民の計画的犯行であると見られるのであります。
事件の概要は、当日たまたま同村
森小学校の縦休問題の実情
調査と
子供たちの慰問を兼ねて訪れた小林
委員長の一行に対して、これらの会員が騒ぎ立て、そのために慰問も
調査も行うことができず、一行は
仁淀高校に引き揚げ、七時ごろより二階の裁縫室で
父兄との懇談会を開催しておる最中に、酒気を帯びて約三百名近い会員が押しかけ、ついには乱入し、電源を切り、教室にピケを張り、口々に小林氏らの名前を呼ばわりながら、且つぶしを食わせ、火鉢、机、いす、アイロンなど、手当り次第に投げつけ、人事不省に至るまで、なぐる、けるの乱暴ろうぜきの限りを尽したというのであります。全く言語道断な、おそるべき計画的な集団暴行なりと申さざるを得ません。(
拍手)
ところが、不思議なことにはこのような計画的な犯行であり、当然、事前に不穏の空気が察知されておったはずなのに、警察は何らの予防
措置も講じていない。のみならず、この暴行が相当長時間にわたって行われているにもかかわらず、現地の警察はその門全くの無警察状態にあえて放置しておったということは、まことに了解に苦しむところでありまして、警察怠慢のそしりを免れまいと思うのであります。(
拍手)ところが、この警察当局が、当夜、
事件直後数時間後に、
県教組幹部十一人を、十一月二十九日のできごとから、
不法監禁、不退去罪等の名目で逮捕いたしておるのであります。一方において、事人命に関する
事件が起きている最中、その被害者の側である
教組の幹部を、時を同じくして逮捕するなどということは、およそ非常識であります。また、だれしも、そこに何らかの意図的なものを感ぜざるを得ないのであります。(
拍手)こう言えば、警察当局は、いや決してそうではないと言われるかもしれませんが、だれが考えても納得のできる事柄ではありません。私は、この際、警察の最高責任者より、
事件に対する処置を伺うと同時に、特にこれらの点を明瞭にしていただきたいと思うのであります。
同時に、また、先ほどの原田君の御質問の中に、何か警職法が改正できなければ予防
措置あるいはこれらの取締りができないような話がありましたが、事実そうであるかどうか、この点を明瞭にしていただきたいと思うのであります。そういうことは断じて私はないと思うのであります。これは現行法によって当然警察のとるべき
措置であると考えるから、あえてこの点を申し上げたいと思います。
さらに、警察当局に申し上げますが、この種の暴力的
事件は今回に限ったことではなく、また、
高知県のみならず、群馬においても発生しつつあるという事実であります。去る十一月十二日、沼田市で起きた「
教育振興会」なる一部住民の暴行
事件も同様のケースであります。また、直接の暴力行使ではないにしても、
高知県下、群馬
県下には、勤評問題をめぐって、これらの団体あるいは一部
父兄住民による教職員に対する数次の人権侵害が続発しているということを、当局は御存じであるかどうか。
たとえば、群馬県における最近の事例をあげれば、教職員個々に対して、「
教組よりの脱退上、「勤評賛成」、「一斉賜暇は行わない」などという条件を突きつけ、つるし上げ、強要をしているという事実、あるいは、
教員住宅等に上り込み、家族に対し即刻立ちのきを要求する等の村八分的な行為が、白昼公然と行われているのであります。このために、平和な
家庭生活を破壊せられ、幼い
子供の手を引いて夜陰にまぎれて避難しなければならないという、全くお気の毒な状態まで今日現われているのであります。不法行為は人権侵害だけにとどまりません。消防団を動員して
学校周辺にピケを張り、警鐘を乱打し、サイレンを鳴らし、教職員の登校を阻止し、のみならず、新聞記者などの第三者の
行動までを制約する。一体、このようなことが消防法及び消防組織法のどこに許されておりまするか。道路交通取締法の違反とはならないのであるか。私は、それぞれ
政府の見解をこの機会にただしておきたいと思うのであります。
このような人権じゅうりん、憲法違反、
法律違反が現存しながら、これまた警察がなすがままにほうっているというのは、一体いかなる理由でありますか。労働
組合の集会、運動、デモ等に対しては、事あらば道路交通取締法あるいは不退去罪等を振り回す警察当局が、これらの事実に目をつぶるということは何事でありますか。もはや、岸
内閣のもとでは民衆の警察、公正中立な警察はあり得ないとでも青木さんはおっしゃるのか、所信のほどを承わりたいのであります。(
拍手)
また、人権擁護、検察の立場に立つ法務大臣からも、横行しているこれらの事実について
調査したことがありますか、また、その結果に基いて人権擁護のためにいかなる
措置をとらんとするか、具体的に承わりたいと思うのであります。
次に、私は文部大臣に所信をただしたいと存じます。
今回の仁淀村
事件は、これが勤評というあの問題に関連して発生した
事件だけに、大臣としては大きな責任を感じてもらわなければならぬと思うのであります。この事態に至った原因は一体どこにあるのか。その責任はだれにあるのか。(「
日教組だ」と呼ぶ者あり)私がこう言えば、必ずあなた方はそうおっしゃる。大臣もまた、待っていましたと、それは
日教組だ、
教組の
反対闘争がその原因だと強調されるに違いないと思いますが、それは誤まりであり、考え直してもらわなければなりません。なぜか。仁淀村の場合、今原田君も言われましたように、十月末以来すでに五十日に及んで、一部
父兄が教職員の登校をはばみ、事実上正常な
教育が行われないという変則状態が続いているのであります。その間、
子供の登校拒否、村教委が勝手に代替
教員を雇い入れる等の問題が、
教育父母の会を中心にした一部のボス勢力によって行われているのであります。何ゆえ、このような事態に対して、文部省なり県教委なりが公正な立場においてすみやかな事態
解決をはからなかったのであるか。問題の本質はここにあるのでありまして、遺憾ながら、その
努力の跡を今日私どもは発見するのに苦しむのであります。(
拍手)
あるいは、文部当局は、先ほども大臣が言われましたように、現地から
関係者を呼んだ、また現地に係官を派遣したと言われるかもしれませんが、それらは、むしろ、一方をあおり、対立を激化させるに役立ったのであって、円満
解決には一向に力となっていないのであります。真に
解決への
努力を払ったというなれば、一部
父兄によってとられた
子供の登校拒否、さらには
教員の登校を妨害している行為、あるいは任命権者にあらざる地教委が
教員を任用するなどという不法行為に対して、何がゆえに、違法性を明らかにして、きぜんとした処置がとられなかったのでありますか。また、どうして
父兄に対して説得、警告を積極的に行わなかったのでありまするか。
かって、九月十五日の総評の統一
行動の際、総評がとらんとした登校拒否の戦術に対して、いち早く、これは
学校教育法の就学義務に違反する行為であり、処罰の対象とすると、声を大にして警告したのは、文部省、
政府ではなかったか。その文部省が、また
政府が、この仁淀の問題、いや、仁淀だけではありません。群馬県沼田市の場合でも、一向に知らぬ顔をしているということは、一体どうしたことでありまするか。こうしたことは、勤評賛成、
反対という根本問題とはおのずから別個の問題であります。賛成だろうが、
反対であろうが、違法は違法として処置してこそ、初めて公正な態度であり、信頼される文教行政と言い得るのであります。文部当局がこのようなへんばな態度に終始しているものだから、県教委、地教委がこれに追随し、現地での対立関係に油を注いでいるのであります。このことは、さらに地域住民に力を与え、勤評賛成であれば、どんな手段に訴えてもかまわないのだという安易感を次第に植えつけ、今回のような暴力行為等の背景を作ったと考えるのも、決してうがち過ぎているとは申せないのであります。(
拍手)この文部省の態度は群馬県の問題にもあり、全国的にその傾向が見受けられるということは、きわめて重大であると思うのであります。文部大臣の見解を私は承わりたいと思います。
次に伺いたいことは、今回の仁淀
事件でも、その中心となっているのは「
教育父母の会」という、一部の
父兄によって作られた団体であります。各地において、あるいは「
教育を守る会」、あるいは「
教育振興会」などと、名称は多少異なるが、その
性格はほとんど同一であります。これらの団体の傾向は、必ずしも純粋な
教育関係の団体とは受け取られがたい節のあることを、この際指摘いたしておきたいと思うのであります。(指手)一般地域住民が
教育目的のために団体を結成する、それ自体はまことに歓迎すべきことであります。しかし、それが特定の政党と結びつき、あるいは保守党議員の
選挙運動に利用され、また、片寄ったイデオロギーを掲げ、現実にそれを
教育の場に押しつけていくがごときは、もはや辞意の
教育団体とは理解できがたいのであります。(
拍手)群馬
県下の一例をあげれば、故意に
教組を誹謗し、
教組と共産党を結びつけ、悪意に満ちたビラを配布するなど、あたかも右翼団体が
教組を攻撃するそれと同一の姿であり、さらにはまた、現在自由民主党ときわめて密接な関係を持っておるといわれている自由文教人連盟の言うところと、ほとんど選ぶところがありません。かくのごとき実体を特って団体に対して、大臣はいかにお考えになるか。これが正常な
教育団体あるいは
父兄の団体のあり方だとお考えになっておりますかどうか、承わりたいのであります。
さらに伺いたい点は、勤評問題全般を通じての大臣の把握と今後の方針についてであります。大臣は、口を開けば、勤評はあくまでも実施するの強気一点張りで終始し、
教組並びに
勤評反対の世論に対してはほとんど耳をかさない、きわめて非民主的な態度をとり、
教組の
反対運動を外部の圧力による革命的の
行動だなどときめつけ、混乱の責任をあげて
反対運動の側になすりつけようとしておるのでありますが、こうした把握に根本的な誤謬があります。あれほど教職員
諸君の
反対している根強さは、私もいまだかつて知らないのであります。この根強さというものは、決して一部の指導者や外部の扇動によって保ち得るものではありません。その根底は、
教育的良心に発し、きわめて純粋であり、素朴であると思うのであります。それを今日この状態に追い込んだのは、文部省、
政府の無理解と極端な官僚性であったと私は思うのであります。なぜなれば、強い
反対のあることの問題について、諮問機関などの民下的
手続あるいは第三者の意見聴取等もほとんどなすことなく、長年はっておいたこの勤評問題を唐突として持わ出し、
教育長協議会案なるものをでっち上げ、都道府県教養を督励して強行さしているところに、その原因のほとんどがあるのであります。(
拍手)その結果、たとえば和歌山県のように、解雇八名を含む四十三名にも上る、不当な、非常識な行政処分が教委の手によって行われ、ますます事態を混迷に導いている結果まで今日招いているのであります。勤評問題の各地の紛争に対しては、必ず文部当局は背後から圧力を地方に加え、地方の自主的
解決を困難ならしめている事実がありますが、そのような権限が文部省には与えられていないはずだと思うが、大臣の見解はどうでありまするか。あくまで
法律の定むるところに従って、計画立案者である都道府県教委、また実施者である地方教委の自主性にゆだねていると、ここで断言ができますかどうか、はっきり伺いたいと思うのであります。(
拍手)
去る九日、神奈川県において自主的に
解決を見た独自の勤評案に対して、文部省は勤評にあらずときめつけ、
関係者を招致して干渉を加えているやに新聞は報じておりまするが、これは事実でありますか。事実でありとするなれば、全く不当というよりは不法な干渉と申さざるを得ないのであります。神奈川県のとった態度について大臣はいかに考えられるか、この機会に承わりたいと思うのであります。
私は、八カ月の長きにわたって四十回にも及び両者が真剣な検討を続け、あらゆる角度、あらゆる
法律を研究の上ようやく到達したこの結論は、まことに貴重なものであり、その
努力に深い敬意を表するものであります。陰惨な勤評問題の中で非常に明るいものを今日世論に与えていることは、疑いのない事実であります。(
拍手)こうした両者共同の
努力の上にこそ初めて真の
教育効果が期待し得ると私は確信すりるものであります。(
拍手)しかも、その内容とするところ、
教育基本法を初め、あらゆる
教育法規に準拠し、教師の自発的意欲を高めることによって
教育効果の向上を期待する行政
措置として、形式主義を排し、実践記録をもってこれに充てているところに深い意義を持つものであり、勤評問題
解決の方向を示唆するものであると考えまするが、大臣の御所見はいかなるものであるか承わりたいと思うのであります。(
拍手)
次に、今回の
事件に対して、
日教組は大臣に話し合いを求めております。ところが、文部当局は依然としてこれを拒否しているようでありますが、なぜこの際虚心たんかいに会って話し合いができないのであるか。当事者に会い、また、第三者の意見をも徴し、何ゆえ話し合いによる
解決への道を開かないのでありますか。心ある
国民は、何人もこれを今日期待しております。先般、各大学の総長、学長らのあっせんに対しても、大臣はきわめて冷淡な態度をとり、いたく
国民を失望せしめております。この際、
教育が正常な姿に立ち返るために、既往にとらわれず、積極的に事態
解決べの道を開かれる御決意ありゃいなや、大臣から率直に聞いておきたいと思うのであります。
最後に、私は
内閣の責任者である岸
総理大臣にお伺いをいたしたい。総理は、はなはだ失礼であるが、今日口頭禅になりつつあるとは言うものの、三悪追放を唱えられた御当人であります。しかも、今回の仁淀村の
暴力事件は勤評を強行しようとする岸
内閣の政策の中から発生した、きわめて皮肉な、また遺憾な問題であります。いかなる理由にもよれ、かかる暴力の横行は、法治
国家として断じて見のがすわけには参りません。私は、暴力追放を豪語する総理に、その具体的処置と所信のほどを承わりまして、今後の参考に資したいと思うのであります。同時に、また、かかる問題を惹起した根本原因は、先刻からるる申しておりますように、官僚独善的な勤評強行の
政府の態度にあるのであって、私、すみやかに
政府としてはその弊を改め、
教育の本質にかんがみ、事態
解決に当るよう総理の決断を求めてやまないものであります。われわれもまた、
教育正常化に対しましては限りない熱意を持っております。
政府にその決意があるなれば、われわれもまた、それに協力するに決してやぶさかではありません。その御決意がおありになりますかどうか、これを最後にお伺いをいたしまして、私の質問を終る次第であります。(
拍手)
〔国務大臣岸信介君
登壇〕