運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1959-05-09 第31回国会 衆議院 法務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年五月九日(土曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 小林かなえ君 理事 福井 盛太君    理事 村瀬 宣親君 理事 菊地養之輔君       秋田 大助君    一萬田尚登君       竹山祐太郎君    三田村武夫君       淺沼稻次郎君    猪俣 浩三君       大貫 大八君    神近 市子君       中村 高一君    志賀 義雄君  委員外出席者         警察庁長官   柏村 信雄君         警 視  監         (刑事局長)  中川 董治君         警  視  長         (保安局防犯課         長)      町田  充君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         検     事         (刑事局刑事課         長)      河井信太郎君         検     事         (人権擁護局調         査課長)    金井 友正君         専  門  員 八小木貞一君     ――――――――――――― 五月九日  委員犬養健辞任につき、その補欠として秋田  大助君が議長指名委員に選任された。 同日  委員秋田大助辞任につき、その補欠として犬  養健君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月二日  一、裁判所司法行政に関する件  二、法務行政及び検察行政に関する件  三、国内治安及び人権擁護に関する件  四、最高裁判所機構改革上訴制度を含む)    に関する件  五、外国人の出入国に関する件  六、交通犯罪に関する件  七、青少年犯罪に関する件  八、売春防止法の施行に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月二十八日  占領軍による被害者損害補償に関する陳情書  (第七二六号)  同(第七二  七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件  検察行政に関する件  青少年犯罪に関する件      ――――◇―――――
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。  猪俣浩三君。
  3. 猪俣浩三

    猪俣委員 今までの選挙におきまして、選挙運動がいわゆる公明選挙の筋と大へん違つたような運動が行われたことは、相当世論を刺激しておると思うのであります。これは政党関係ある者はお互いに自粛、自戒しなければならぬ問題だと存じまするが、なお、第一線において取り締つておられるところの警察庁の諸公にも、特に私どもはお尋ねかつ要請があるわけです。  今回の選挙に限りませんけれども、近ごろだんだん露骨になって参りますることは、買収供応という昔ながらの不公明な選挙方法はもちろんでございまするが、なお近来非常に目立って私どもを刺激いたしまするのは、公職選挙法の二百二十一条の二号の違反であります。「当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもって選挙人又は選挙運動者に対しその者又はその者と関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の直接利害関係を利用して誘導をしたとき。」という罰則規定があります。     [委員長退席三田委員長代理着席〕 私は昭和五年ごろ一ぺん衆議院議員選挙をやつたことがありますが、その当時は相当地方的利益誘導ということが厳重に取り締られておりまして、ことに当時の民政党でありましたかの候補者が、その地方鉄道を敷くということを言つたというだけで起訴せられまして有罪判決を受けて失脚した。それは橋本という日本石油の社長の御曹子でありました。ですから私は印象が特に深かったのでありますが、どうも近ごろはまるつきりこれを無視した演説が、ことに政府与党諸君、あるいは政府の閣僚の諸君の中に多い。私は先般予算委員会におきまして、岸総理大臣が仙台に知事選挙応援に行つたときのことを質問したのでありますが、こちらも十分な証拠固めをしておったわけじやありませんのでそのままになっておりますけれども、近ごろはどうも警察庁取締りでも、先般何か自民党と社会党に対して警告をなされたようであるが、もちろんああいうこともいけないことでありましようけれども、連呼したとかオンパレードしたとか、そういうようなことは私は末梢的なことじゃないかと思う。中心はやはり買収供応、あるいは地方的利益誘導、ここへ鉄道を敷いてやる、ここの道を直してやる、それには自分たちの党に入れなければだめだというような演説をやる。こういうことに対する取締りがはなはだ緩慢であり、おそらくやつていないのではないかと思う。だから、でたらめ、言いほうだいなことを言っておる。ある代議士は、自分たちの推しておる候補者に投票しなければ、すぐ電報を農林省、大蔵省に打って、この護岸工事予算はすぐ差しとめてしまうという演説をして歩いておる。そうするとその村の人は非常に驚きまして、部落会を開いてどうするこうするという相談をしたという実例もある。そういうことを警察に言っていっても全然取り上げない。上は大臣からいろいろの政党関係者がみなそういうことを言って選挙演説をぶつて回る。警察もこれに対しては何か不感症のような態度である。私は、ことに参議院議員選挙とかいうような国家全体の政策に関して争わるべき選挙に際しましては、さような地方的利益をもって投票をさせるような方法がとられておるとしますならば、選挙の本質を非常に阻害するものだと思う。そして、やはり政権を持っておる人たちはその地位を利用しやすいわけであります。ですから、野党ももちろん気をつけなければなりませんが、政府与党方々はなおさらそういうことには気をつけるべきじゃないか。これが利権政治につながり、政界の腐敗の一つになることは明白であります。  そこで私がきようお尋ねいたしますことは、一体警察庁はこの公職選挙法二百二十一条の二号のような地方的利益誘導行為に対してどういう取締りをしておられるか。それに対する違反数というものは何件あるのか。大臣にしろ、代議士にしろ、もうほとんど全部さような遊説をして歩いていることは事実です。警察が知らぬというなら、はなはだもってけしからぬ、怠慢だと思わなければならぬ。そうして買収供応はこれは典型的なものでありますが、あまり長い聞こういう演説をして歩いても、何の取締りがないために、おそらく新しい代議士候補者の中には、この規定を知らぬ者があるのではないか。二百二十一条の二号の規定なんか知らぬ者があるのじゃないか。知らずして言っていることがほんとうにあるのじゃないかと思われる。裁判所判例を調べましても、買収供応というものはありますが、この利益誘導というものはあまり数ない。ところが、現実としては実にこれが多い。これではいつも政府党が勝ちを占めるということになります。ほんとう民主政治選挙の精神を阻害するものだと思う。そこで、警察庁取締り方針、今までの実績、さようなものにつきまして御答弁いただきたい。ただ、数の問題につきましては、私質問内容を前もって通告しておきませんでしたので、今直ちにお調べができませんならば、後刻の報告でもよろしゅうございますが、一体今までどういう方針で取り締つていられたのか、どういう違反数が出てきておるのか。今回の選挙に当りましても、買収供応はもちろんでありますが、この点についていかなる方針をもって取り締られるのであるか、抽象論でありますが、まずこの点について、警察庁の御方針を承わりたいと思うのであります。
  4. 柏村信雄

    ○柏村説明員 先般の地方選挙、また今回行われまする参議院選挙におきましても、公職選挙法違反というものができるだけ行われないように私ども念願をいたしておるわけでございます。しかしながら、先般の地方選挙におきましては相当違反の疑いのある事項が多く現われておりまして、非常にわれわれは遺憾に思っておるわけでございます。特に、ただいま御指摘のような買収供応のみならず、利益誘導等についての悪質な事犯につきましては、警察といたしましてできるだけこういうものについては徹底的な追及をいたしたいと考えておるわけでございます。ただ、私現在どの程度の違反があったか、そういうことにつきまして資料を私自身持ち合せておりませんが、おっしゃるまでもなく、形式犯についていろいろ警察がやかましく言うというような世間の批評もございますけれども形式犯を含め、とにかく国会において作られた公職選挙法というものが政治家自身によって破られていくというようなことはまことに遺憾しごくでありまして、そういうものについて、この間も異例の警告というような措置をとらざるを得なかった事情があるわけでございます。われわれとしては、悪質な犯罪につきまして、十分に徹底して取締りを励行して参りたいという考えでおります。  なお、こまかい点につきましては、刑事局長からお答えを申し上げます。
  5. 中川董治

    中川説明員 ただいまの猪俣委員の御指摘のありました公職選挙法二百二十一条第一項第二号の罪でありますが、お話のように、二百二十一条の罪は買収及び利害誘導罪でございますので、悪質というふうな点から言えばまことに悪質な犯罪だと考えるのであります。それで、われわれといたしましては、もちろん形式犯についても必要な取締りをいたしますけれども、二百二十一条の罪の違反捜査につきましては大へん努力いたしている次第でございます。  それで、先ほど犯罪統計についての御質問もありましたが、私ども各地におきまして選挙違反取締りに従事いたしております警察職員犯罪捜査によって検挙いたしました数字は、犯罪統計によりまして私の方に集まるのであります。ところが、御案内のように、公職選挙法の罪は種類が非常に多うございますので、統計の取り方といたしましては、同種の犯罪一つにまとめて報告する建前に相なっておるのであります。たとえば文書図画制限違反のごときは、条文は数条あるのですけれども、それを文書図画制限違反というふうにまとめる、こういう立場をとるのであります。二百二十一条の罪も、正確に申しますと、一項二号の罪、三号の罪、四号の罪、五号の罪、六号の罪、こういうふうに相なるのでありますけれども買収関係につきましては、買収利害誘導というものは類似の犯罪であります関係上、同じ条文規定されている関係もございますので、まとめてこれを買収及び利害誘導罪として報告を取つておりますので、その内訳ということになります。内訳になりますと、御案内のように、一つ犯罪行為買収にからみ、また利害誘導にからむ、こういうことになろうと思いますので、二号だけの罪を摘出することが困難な情勢であります。それで、その点も一つ御了承おき願いたいと思うのであります。それが第一点であります。  第二点で、警察利害誘導の罪、正確に申せば、二百二十一条一項二号の罪の犯罪捜査につきましては努力しておるか、こういうことにつきましてお答えいたしたいと思います。確かに、猪俣委員の御指摘のごとく、二百二十一条一項二号に当る罪につきましては、最近できた罪ではないのでありまして、旧衆議院議員選挙法時代からの犯罪として規定された罪でありますので、判例につきましても、大審院時代からの判例も相当ございますし、その後この条文につきましては、形式上は変つたかもしれませんけれども、実質は変つておりませんので、内容判例等もわれわれつまびらかに承知いたしておるのであります。従いましていかなる行為が二百二十一条第一項第二号の罪に当るかにつきましては、判例等にもよりまして、特殊の直接の利害関係を利用して誘導した——構成要件としては、御案内のごとく、特殊の直接の利害関係、特殊の利害関係でなければなりませんし、直接の利害関係でなくてはならぬ、こういうことを証明するように努力いたしておるのであります。特殊の直接の利害関係誘導する方法にいろいろあろうかと思いますが、猪俣先生の御指摘の問題は、演説という行為によって特殊の直接の利害関係を利用して誘導する、こういう行為を御指摘なのでありますが、演説という方法によって特殊の直接の利害関係を利用して誘導することももちろん罪でございます。従いまして、警察としてはその捜査に努むべきは当然でございまして、その努力をいたしております。それで、われわれといたしましては、他の犯罪と同様に、またことに二百二十一条の一号から六号までの罪につきましては、その重要性にかんがみ、捜査努力をいたしておるのでありますが、旧法時代と、われわれ立場は全然一緒なんですけれども、実務的な立場から申しますと、旧大日本帝国憲法時代におきましては治安警察法がございまして、御案内かと思いますけれども選挙演説会等におきましては、警察官臨監等措置が許されておつたのでございますが、現在は、治安警察法の廃止によりまして臨監等がありませんので、その臨監によって発見するということはもちろんあり得ません。そうすると、一号の罪、他の買収の罪と同様に、住民方々からの聞き込みあるいは関係者の、演説を聞いた人からの話、こういうものを集積いたしまして二号の罪を立証する、こういう立場が多かろうと思うのでございます。それで、選挙犯罪全般に通ずる問題でございますが、すべての犯罪警察で見つかるように努力はしておるのでございますが、結局警察のコントロールのもとに選挙が行われることは適当でございませんので、国民監視のもとに選挙が行われて参る、そうしてその間において行われる犯罪につきましては、ビラとか看板とかいうように、すぐ目につくようなものについては比較的わかりやすいのでありますが、二百二十一条の各号の罪は、すぐ目につきにくい罪である。たとえば一号の罪のごときは、暮夜ひそかに金円を交付するという場合が多うございますので、そういった点につきましては、警察としていわゆる内偵というものを強化いたしまして、犯罪捜査努力いたしておるのであります、その関係で、利害誘導の罪も、そういう意味合いにおいての苦心を重ねておるのでございますので、その点御了解いただきたいと思うのであります。  それからこの種の、二百二十一条一項の罪が、言論による場合におきましては、直接または特殊の利害関係を利用して誘導しない場合があるのであります。たとえば、これも判例において認められておるのでありますが、政策を発表する——甲なら甲の候補者、乙なら乙の候補者政策を発表した結果、その政策の作用として有権者方々利害が及ぶ、こういう場合におきましては、判例等消極でございますので、そういう場合は、これは消極でございます。ところが、当該地域の特殊の住民だけの利害関係を利用して誘導した場合は有罪でございますので、そういう場合に当るか当らないかという点については、解釈によって異なろうと思うのでございます。たとえば、一つ選挙が行われた場合、県全体の選挙が行われた場合、県全体の利害を言うということは、これはこの罪に当らない。たとえば県会議員選挙におきまして、ある特定の村の土木なんかにつきましては有罪でございますが、全体のことについては無罪である、こういう関係等もございますので、そういう点も御了承おき願いたいと思うのであります。
  6. 猪俣浩三

    猪俣委員 今の御答弁でありますが、法の解釈上疑義のあるものまでも捜査せよというのではないのです。そんなことは明々白々で、常識を備えている者ならすぐ違反であることが明らかな事実を放任しておくからわれわれは言うのです。そんなことは天下周知の事実であります。この二百二十一条の一項の二号に対して警察は全然取締りをやつておらぬ。諸君が何と言おうとも、事実はやりはしない。われわれが事実を明らかにして訴えても取り上げないのです。私はきようは具体的なことは申しませんが、実は選挙を争つたわれわれ自身といたしましては、非常に言いにくいのです。反対党の、しかもしよつちゆう顔を合せている人がこういうことを言うた、ああいうことを言うたといって摘発することは、事実上はなかなか困難であります。これは警察が、ある程度超党派的に、厳正な立場で、法を守るという立場でやらなければ、政党人にまかせておけば反対党をやつつける意味において非常にいいと皆さん考えになるかもしれませんが、事実はそうじゃないのです。これはやはり同じ国会議員といたしまして、しよつちゆう顔を合せている人をやつつけようとして、こういう演説をぶつて歩いたというようなことをわれわれが一々摘発して歩くということは、ちょっとできにくい点が多々ある。これは警察がしつかりしてもらわぬと空文にひとしくなる。今日最も悪質犯罪として「三年以下の懲役若しくは禁錮又は五万円以下の罰金に処する。」という二百二十一条に列記されている一号と二号は同じ次元に基いた取締りであります。買収供応も、その具体的な、住民自身利害関係が及ぶ利権に対して誘導することも、せんじ詰めれば、公明選挙ということからくると、この二百二十一条の一号も二号も同じ次元に基いての観念であります。そこで、買収供応というようなこと、これに対しては相当捜査なさつておることは私ども認めます。しかし、何がゆえに——これは価値判断からすれば同じ次元であるのみならず、弊害はなおひどいのです。それは突き詰めるというと、政党政治の功罪にまで及ぶところの重大意味を持っておるこの二号について、ほとんど不干渉、これは取締りの盲点です。昔よりもだんだん最近になってひどい。ことに岸内閣になってからひどくなっている。私どもは、今回は警察にまかしておくことができずして、全国的に摘発をする決心をもって臨んでおりますが、これに対して警察ただ通り一ぺんの御答弁なら——ことに今刑事局長のお話しになつたように、隠密にやる行動についてはこれはなかなか困難なことはわかります。しかしまず第一に、堂々と白昼大衆を集めて演説をぶつておるじやありませんか。それが捜査困難だと言わせません。なぜかといったら、どこに個人演説会があるか、それを届けさしておる。街頭演説もわかつておる。それに対して私ども演説会には必ず村の駐在が来ております。傍聴という形できつと来ております。自民党諸君演説会には行っていないかもしれぬが、われわれの演説会には必ず駐在は来ているのです。それは来ていいのです。巡査といえども、一選挙民として傍聴に来ることは差しつかえないから、私ども歓迎しておる。ですから適当な指示を与えるならば、この捜査をすることができない道理がない。私どもはその隠密にやつておることをまず言うのじゃない。公々然として公衆の面前に選挙違反演説をぶつておるもの、このくらい明らかなところの違反はない。現行犯ではありませんか。それに対して今日まで何の取締りもやつていない。おそらく二百二十一条の二号についての特別の指令なんかは出していないと思う。目に余るものがあるじやありませんか。警察庁はこの二号について特別の指示を出したか出さぬか、それを一つお聞かせ下さい。
  7. 中川董治

    中川説明員 この二百二十一条の一号、二号以下六号までの罪につきましては、重要な犯罪でございますので、二百二十一条全体について、いろいろこういった点について犯罪捜査の工夫をしろ、こういう点については、努力各地に促している次第でございます。
  8. 猪俣浩三

    猪俣委員 ただ努力を促しただけではだめですよ。証拠を固める方法をとらなければ、これはおざなりなことになります。こういう演説会において二百二十一条の一項二号に違反するような利益誘導的な演説をしたかしないか、まず証拠を固める努力がなければならない。どういう方法において努力されたか。今日相当機械も発達しているはずであります。証拠保全の道は、やろうと思えばやれるはずだ。どういう努力をなされておつたか、御答弁願いたい。
  9. 中川董治

    中川説明員 猪俣先生の御指摘は、言論によるところの二号の罪をおっしゃっていると思いますが、言論によるところの証拠につきましては、たとえば、録音機録音する、こういう方法が確かにございます。しかし、すべての演説会、すべての街頭演説会警察官録音機を持って回るということはいかがかとも考えます。すべての演説会、すべての街頭演説会録音をするということはいたしておりません。ところが、言論による犯罪は、聴取者も多いことでありますので、聴取者の中で、警察官の聞く場合もありますが、警察官以外の有権者方々の聞く場合もありますので、そういった方々の聴取なさった事柄について参考人として聴取した事項を録取する、こういう方法を講じておる次第でございます。
  10. 猪俣浩三

    猪俣委員 今回は、地方選挙知事、市長、県会市町村会選挙が多数あった。そうして、実にはなはだしい利益誘導演説があった。私どもは白昼公然と行われる演説中心として言っているのです。それすら取り締らぬから、いわんや穏密にやることなんかは、皆さんが取り締つているはずはないと思う観点から、まず演説を言っているわけなんです。     〔三田委員長代理退席菊地委員長代理着席〕 この今回のおびただしい選挙におきましての最も特徴的なことは、この二百二十一条一項二号の違反が実に全国的にあることです。枚挙にいとまがないくらいです。一体これに対して違反なりとして警察捜査し、これを立件した案件が何件ありますか、それを一つ答弁願いたい。
  11. 中川董治

    中川説明員 ただいまの御質問ですが、冒頭にお答えしたのでございますが、この二百二十一条一項の各号ごと統計を取つておりませんので、二百二十一条の罪全体の統計はございますが、各号ごと統計は、統計規則でも改正しないと出て参らないのです。現在としては、二百二十一条各号の罪全体について力点を置いて捜査している、こういう実情であります。
  12. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは繁雑でも、やはり各号についての違反件数を御調査願いたい。そうしないと、取締りの重点をどこにおくべきかということの皆様の判定もつかぬと思う。ことに二百二十一条の一項の二号のごときことは、はなはだ捜査が不十分であることは天下明白の事実です。おそらくおびただしいこの地方選挙においては、この違反なんて一件も捜査なさつておらぬと思う。おそらくないでしよう。これを取り上げて起訴したものもないと思う。私が戦後調べた判決一つある。これは市会議員選挙である。その市に必ず市の予算をとつて道路をつけてやる、市の予算がとれない場合には自費でもやつてやるという演説をしたというのが引つかかっている。あとはほとんど見当らぬ。ほとんど違法の認識なしでやつている人が大多数ではありませんか。聞く者も、こんなことが選挙法違反だなんて思わぬで聞いているのが大部分ではないかと思う。このために、候補者自身も実にみにくいことをやつている。どこそこの橋は私が奔走してかけたのだと甲の候補者が言う。乙もそこに行って、実はあれは自分が奔走したのだと言う。丙もそこべ行って、甲と乙の言うことは全部うそで、実は私がやつたのだ、こう言うのです。これがどのくらい選挙の信用を落すかわからない。これは皆さんだけ責めてはもちろんいかぬ。お互い政党人がまず第一に自粛自戒しなければならぬのでございますが、先ほど言つたように、われわれが選挙運動をやりながら反対党を摘発することは容易ではありません。やはり警察にやつていただかなければならぬのです。しかし、事実警察はこの捜査をほとんどやつていません。皆さんが何と言おうともやつておらぬ。そこで、やつておつたならばやつておつたという例証を出していただきたいと私は聞いたのだが、統計が出ておらぬとすれば仕方がない。全国的に今回の選挙くらいこの利益誘導が公々然と行われたことはない。これは総理大臣初め言うているのですから、一般の人はあんなことは違反になるとは思わぬで、言う人も言うているかもしれぬし、聞いている人も聞いているかもしれぬ。昔はこの問題はやかましかった。これは三田村さんなんかも御経験があると思う。近ごろ、ことに岸内閣になってから、総理大臣初め先頭に立ってやつておるのですから、あとの議員、陣がさ諸君なんというものは、違法の認識なしでやつているのではないかと思う。また、警察も、ほとんどこれが公職選挙法の最も重大なる犯罪一つとしての態度をもって臨んでおりません。懲役三年というような重罪ではありませんか。いかなる捜査方法をとつておつた質問しても、諸君は答えられないと思う。現に私どもは数件警察に言ってある。しかし、ほとんど取り上げない。全国に向つてテープ・レコーダーを用意して片つ端からやれとは申しません。また、やり過ぎますと言論自由との関係がある。それはむずかしい問題でありましようけれども、しかし、一国の総理大臣とか、建設大臣とか、農林大臣とか、そういう重要なポストにある人の演説くらいについては、皆さんは注意しなければならぬと思うのです。それを大臣が率先して違反行為をやつておるのです。そして、それがあまりに公々然として頻繁に行われるがゆえに、選挙法の違反などという認識が薄れているような状態である。私はこれが今日の政党政治の宿弊のもとだと思う。今回の参議院選挙は一大国策によって争うべきもの、憲法改正是か非か、中国外交はどうか、経済政策はどうか、そういう全国的な政策について争わるべきものを、この村に橋をつけてやる、どぶ掃除をしてやる、そういうふうなことで演説をぶつて歩くということは、実に政党政治を混濁させるものだと私は思うのです。そこで、今度の参議院選挙におきましてこの二百二十一条一項二号に対し、警察庁はどういう用意があるか、その用意を聞かして下さい。
  13. 中川董治

    中川説明員 先ほど来しばしば申し上げておりますように、二百二十一条の罪は、重要な選挙の公正を担保する角度から申せば、大へん重要な犯罪でございますので、各地方警察におきましてそれぞれこの犯罪の起るような事案について相当内定を強化する、こういう点につきましては措置いたしておるのであります。御指摘言論によるところの二号の罪につきまして、われわれもいろいろ地方においての捜査の状況を聞くのでありますが、その言論内容が特殊の直接の利害関係に当る場合と当らない場合とにおいて、大へん苦心して、その当る場合であるということの証明に努力していることは事実でございますが、政策演説などはもちろん合法でございますが、政策演説の範囲を出て、特殊の直接の利害関係を利用して誘導したということを証明する内容であるかどうかということは、疑義のある場合が多いのであります。その間の事情をさらに正確に調査して、これに当るものにつきましては捜査を進行する、こういう立場をとりたいと思っておるのでございます。
  14. 猪俣浩三

    猪俣委員 法律的に疑義のあることをお考えになる前に、どういう演説をしたかという証拠を固めることが大事じやありませんか。そのはっきりした事実の上に立って、それが二百二十一条の一項二号に違反するものなりやいなや、あなたが言うように、直接の利害関係に関するものかどうか、それから検討してもいいわけです。そんな法理論よりも、どういう演説をしたかの証拠を何も固めずして、法理論もへちまもあったものじゃないと思う。どれだけ諸君はそういう捜査をなさつて、どういう事実をつかんでいますか。おそらく何の立件もないでしよう。事実をつかまずして法理論というものはありはしません。ある特定の事実が違反なりやいなや、事実を確定した上にのみ法律の解釈は出てくるわけです。私が今申し上げることは、まず事実を確定してもらいたい、捜査してもらいたい——どういう演説が行われておるか、今までは野放しですよ。連呼もよくないかもしれぬ、オンパレードもよくないかもしれぬけれども、そんなことは末の問題だと私は思うのです。この二百二十一条の一項の一号、二号というようなこと、これが不公明の選挙中心課題である。なぜ私がこれをしつこく申すかというと、皆さんが両大政党に対して厳重な警告を発することはいいことだと思うのですが、その中にこれが入っておらない。社会党が伸び悩んだのも、社会党の欠点はございましょうが、しかし金銭の、金力選挙であるということ、そして利益誘導選挙であるということが、非常に政権をとつている政党にプラスしていることは明らかなことではありませんか。それが実に露骨なんだ。今言つたように、自分の電報一本で予算がとまるような演説をして歩く。それを信ずるやつも実に愚かでありますけれども、白昼そういうことを言って歩く。それに対して全然何らの干渉がない。あなた方がこの参議院選挙に対してそういうことに力点を置かないことは、あの警告を見ても、そういうことが一つも出ていない。あれは最もはなはだしい不公明な選挙運動であったと僕は思うのです、地方的特別利益誘導というのは。それに対してなぜ政党に対して警告を発しなかったのですか。私は、警告を発するには、確固たる違反の事実がたくさんあつて、その調査の上であなた方は警告を発せられたと思うのです。しかし、それを警告の中に入れていないのは、警告を発する基礎資料が乏しかったのではないかと思うのです。こういう二百二十一条の一項の二号のようなことに対する全国的な捜査資料というものが乏しかったのではないか、その意味において警告を発する材料がなかったのではないかと私は思わざるを得ない。そのくらい実に取締りの盲点として放置されてきておる。どういうわけでそれを警告の中に入れなかったか、御答弁願いたい。
  15. 中川董治

    中川説明員 去る五月七日に当庁長官より両政党に対して警告した中にそれは入っておりません。その理由を申し上げます。公職選挙法の各条の罪は、すべて国民の方々の御協力のもとに、これが違反防止に努めなければならぬことは当然でございますが、あの七日の警告につきましては、政党に対しましては、とりあえず政党の政治活動についての違反をまず考皇ていただく、その以外の犯罪は、もちろん政党の党員の方がなさる場合承ありましようし、それ以外の方がなさる場合もありましようが、政党警告する場合は、政党の政治活動という範疇に制限して警告した方がまず妥当であろう、とう考えた次第であります。
  16. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこで、私がるる申し上げましたように、これが選挙取締りの盲点になっておると思いまするが、もう参議院選挙も始まつておる。そこで警察庁として、何らかの形で、この二百二十一条の一項の二号に違反するような行動のないよう天下に向つて警察庁の断固たる意思表示をしてもらいたい。もちろん一号も不都合でありますから、買収供応がはなはだけしからぬ選挙違反であることは三才の童子といえどもわかつております。しかし、先ほど申し上げましたように、二号については、終戦後選挙に対するこの点についての取締りというものはほとんどゼロにひとしい。そのために違法の認識さえ欠いている人があるのじゃないかと思われる程度であります。ですから、特別なる警告を発するとするならば、この際この点について何らかの形で警察庁の意思を徹底せしめて、事前に違反者の起らないように措置を講ずべきじゃないかと私は考える。これに対して長官は一体どういう御構想がありますか、御発表願いたい。ただし、この二号の違反などというものは大したことはないのだ、それだから今までやらなかったのだ、だから今後も特別にこれに対して考えておらぬというのなら仕方がない。しかし、一号と二号とは必ず不公明選挙次元を同じくする価値のあるものであつて、場合によっては二号の方がなお重大であるというなら、この際私は今までの捜査方法について——十分今までやつておられたかもしれませんが、なお実効が上っておらないことだけは事実なんです。これに対して断固たる警察の態度を僕は天下に明らかにしてほしいと思う。どういう御構想がありますか、発表していただきたい。
  17. 柏村信雄

    ○柏村説明員 ただいま御指摘のような犯罪につきましては、先ほど来刑事局長から申し上げておりますように、警察としても非常に苦心をして捜査に努めておるわけでございます。悪質な犯罪取締りということにつきまして、われわれとしてはこれをないがしろにするというような気持は毛頭持っておらないのでありまして、非常に苦心をして努力をいたしておるわけでございます。今度の参議院選挙につきましても、警察の局長以下幹部を各地方に派遣いたしまして、十分そうした面についても指導徹底をいたすようにいたしておるわけでございます。ただ、すべての法律につきまして、一々問題が起りそうなことについて、警察が公けにして特に警告をして、その励行を期するというようなことは、必ずしも適当なことではないのではないか。われわれとしては、きようこの国会において猪俣委員からのお話しもあり、またこれに対してのわれわれの態度もはっきりいたしておるわけでございまして、特にこの問題だけを取り上げて警察が世間一般に向つて警告を発するというような措置をとるということまでは考えておりませんが、十分御趣旨の存するところは警察部内にわれわれとしては徹底いたしますし、国民もまたそういうことについて理解を深めてもらいたいという気持は、先生と同じ考えでおるつもりでございます。
  18. 猪俣浩三

    猪俣委員 私が特にこの利益誘導罪を強調いたしますゆえんのものは、先ほどから申しますように、買収供応というようなことは、その違法性が普遍化しております。けれども、この利益誘導罪というのは、今まで取締りが緩慢であったために、普遍化しておらない。ですから、これにつきまして、少くともあなたの部下である警察官に対しまして、この一号と同じように、二号の違反についてももっと鋭敏な取締り感覚を喚起して、十分やるような指令を出しておいていただきたい。私どもが事実をつかんで警察に申告した際には、今までのようにそんなものをというような顔をせずしてもう少し私はこのことの重大性にかんがみて、活発な警察活動をお願いしたいのです。そういう意味において特別に警察庁長官としての方針を部下に徹底していただきたいと思うのです。あなたの答弁でわかりますが、なおその点について——これはあなた方の答弁としてはそう言わざるを得ないかもしれませんが、事実として今までこの二百二十一条の二号ということはあまり問題にしておらないのです。これは僕は非常にいけなかったと思うのです。ですから、特にその点に対して警察官の注意を喚起していただきたい。その意味において、この二号だけに特に注意を喚起するような手段を講じていただきたいとあなたに言うわけであります。それに対してはどうですか。
  19. 柏村信雄

    ○柏村説明員 先ほど申し上げましたように、近々幹部を地方に派遣しまして、いろいろ注意も与え、地方の実情を聴取いたしたいと考えておるわけでありまして、そういう際に、御趣旨の点は十分徹底するように特にはかりたいというふうに考えます。
  20. 菊地養之輔

    ○菊地委員長代理 次に、青少年犯罪に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許可いたします。  三田村武夫君。
  21. 三田村武夫

    三田委員 御承知のように、去る五日から児童週間といいますか、青少年保護のためにいろいろの施策が行われておるわけでございますが、最近の新聞、特に近ごろ書店にはんらんいたしておりまする週刊誌を見ますと、毎号々々青少年犯罪を扱つていない事例はないのであります。この青少年犯罪と関連して、実にいやな感じがいたしますものは、いわゆる性犯罪であります。売春防止法施行以来一年余を経過したのでありますが、実際、新聞、雑誌などに現われてくる記事を見ますと、読む方の感覚から申しますならば、処置なしという気がするのではないかという感なきを得ないのであります。これはまことに重要な問題でありまして、私が申し上げるまでもなく、当局としては十分お考えのことと思いますが、青少年の将来と性犯罪による社会的悪の蔓延というものは、国の将来を考えた場合、私は実に重要な問題だと思うのであります。警察庁もとより御苦心のほどはよくわかりますが、くめども尽きぬ性犯罪、また青少年犯罪をどうしたらいいかということは、私は今日の段階に来ますと、もはや単なる警察事務的な感覚だけじやだめだと言わざるを得ないのであります。よほど大きく掘り下げて、ただ法的措置とか、あるいはまた取締りとかいう段階だけでなくて、どうしたらこれにより完全な、より有効な手当ができるかということをお考え願わなければいけないのだと私は思うのであります。私は昭和三十三年以来毎国会、この問題を当局に切実に訴えている。中央青少年問題協議会もありますが、率直に申しますならば、私は非常に事務的な傾向に流れていはしないかというような感じもするのであります。ひとり警察だけの責任ではもとよりありませんが、こういった問題を実際に現実の問題として取り扱つておられる場合、どこに穴があるのか、どこに欠陥があるのかということは、現場で扱つている人はよくわかると思う。二年ぐらい前ですか、私が委員長をしておるときに、淀橋の警察に行ってみたり、方々に行って第一線の人の話を直接聞いてみたことがあります。これは一つ警察庁あたりも、言葉に語弊があるかわかりませんが、警視庁の部長とか、あるいは地方の部長とかいう人の参集を求めて対策をおきめになることもけつこうですが、それとは別個に、長年の経験を持っておる第一線の担当者、たとえばこの問題について実に熱心に毎日々々苦労しておる盛り場の警部とか係長とか、あるいは第一線の巡査とか、こういう人を集めて十分その実態を把握された上、対策を立てていただきたい。これは警察庁で十分な資料が得られた場合は、私は公然と、堂々と政府に要請されてしかるべきだと思う。これが必要だと思うのです。それは警察庁も検察庁も同様でありますが、警察庁で作られた資料もときどき私は拝見するのであります。ただ、ここで資料をいただくだけでは意味をなさない。私たちがここでどれだけ議論をしても、それが具体的に効果的な方向に向いてこなければ意味をなさない。毎年々々二十数万、三十万になんなんとする青少年が警察の門をくぐる。同時に、これがとにもかくにも一応検察庁にいって取調べを受ける、あるいは家庭裁判所、少年鑑別所に持っていかれる。しかもその非行行為内容たるや、ほとんど性犯罪関係を持つ。こういう状態はどうしたらこれがなくなるかということを私は真剣に考えてみたいと思うのであります。警察当局もいろいろ御苦心になっていることと思いますが、私が申し上げたことは、申し上げるまでもなく、御心配の点だと思われます。これからどういうふうにとの問題についてお考えになっておりますか、まず伺つておきたいと思います。
  22. 柏村信雄

    ○柏村説明員 ただいまお話しの青少年の問題は、私は実に現在の深刻な問題であろうと思います。終戦のあとに起りましたいろいろな問題の中で、特に将来の日本の運命をになう青少年が、犯罪、あるいは犯罪までいかなくても、非行の傾向に陥りつつある、これはもちろん全部とは申しませんが、そういうものが非常に多くなっておるということはゆゆしき問題であると思います。ただいま御指摘のように、この問題は警察だけで解決できる問題とも思っておりません。私は、中央青少年問題協議会にも、次長以来委員として出席をいたし、いろいろと協議も続けて参り、また部内におきましても、この問題につきましては特に熱心に検討を続けておるわけでございますが、やはり青少年問題につきましては、関係の各機関がほんとうに心魂を打ち込んで総合的な対策を立てていかなければ、解決できない問題ではないかと思います。まあ私自身考えから申しますと、戦後国民の中において心のよりどころというものが失われ、特におとなにおいて子供をしつけるという自信が失われておる。家庭というものが非常に無秩序な状態に置かれたということ、また経済の非常な混乱というような問題が、その非常に深い根源をなしているのではないかというふうに考えるのでありますが、そういう点につきましては、中央青少年問題協議会を初めといたしまして、関係機関ができるだけ検討を続けていかなければならない問題と思います。ただ、警察といたしましては、この点は、警察のやり得る範囲においてはもちろんでありますが、警察がして差しつかえないと思われる範囲には、むしろ積極的に飛び出してまでも力を注いでいかなければならないというふうに考えておるわけであります。まず一つとしては、青少年の環境をよくしていく、そういう悪に染むような環境を取り除いていくということが大事な問題ではないかと思います。しかし、ただいまお話しのように、各雑誌であるとか、あるいは映画であるとか、いろいろな面でわれわれの期待するものとは反するような現象が非常に多い。しかし、こういうものにつきましての取締り警察の直接の取締りというものを考えるということになりますと、一方において、言論であるとか意思の発表というようなものについての制限をするというようなことから、非常に問題視されるわけでございますが、そうした国の法律によっての警察の規制という問題でなしに、そういうことについて非常に関心の深い府県におきましては、こういう出版物であるとか映画というようなものについて、青少年にこれを見せないというような措置を講じておる県もだんだんふえて参っておるようなわけでございます。しかし、何と申しましても、こういうことについては、取締りという面からよりも、むしろそういうことを実際に行なって、営業としておる人たち、あるいは世間の批判というものが、この青少年問題について深い理解のもとに考えていただくという状況にならなければなかなか解決できない問題と思います。府県においては、十数府県と私記憶しておりますが、そういう点でだいぶ努力をいたされておるような状況でございます。また、警察だけでなしに、いろいろな関係機関との協力関係という点につきましても、できるだけ連絡を密にして、こういう予防あるいは事後の措置についての努力をいたしておるわけでございます。最近風俗営業法を改正しまして、深夜喫茶についての取締りを励行するようにいたしましたのも、そういう趣旨に出ておるわけでございます。警察庁といたしましては、昨年、皆様方の御努力によりまして、警察庁に保安局を新設いたしたわけでございますが、これも、主たるねらいは、今の青少年問題と、それから交通問題についての主管の局を設けたわけでございます。また、最近の警察法の改正によりまして、科学捜査研究所を科学警察研究所にいたしまして、特に少年防犯部を設け、そうしてこの少年の不良化防止の研究を専門的にさせるということにいたしたのも、御指摘のような趣旨に基いてわれわれとつた措置でございます。警察といたしましても、できるだけこの点は、先ほど申し上げましたように、やり過ぎるくらいに積極的にやつていきたいというふうに考えておりますが、何分にも警察の限界というものがございます。関係機関、あるいはむしろそれよりも広く世間一般、特におとなが、良識というか、この青少年問題に十分に関心を深め、これに善処し得るような、啓蒙と申しますか、そういう点に警察以外の方面においても十分力を注いでいただきたいというふうに考えておるわけでございます。この問題は、たびたび申し上げますが、われわれとしましても、ほんとうに将来の日本のために最も重要な問題というふうに考えておりますので、今後ともできるだけの努力をして参りたいと思います。
  23. 三田村武夫

    三田委員 今長官の御意見、私もよく了承いたしたのでございますが、私非常に心配をする点があるのであります。それは、現在のような状態がこのまま続いて参りますと、今長官が言われたことと逆なことが出てくるわけであります。それはどういうことかといえば、青少年犯罪がこれほど拡大し、世上大きな問題になってくれば、ほつとけないという声が出てくるのですね。そうすると、そのほつとけないという声がどこに集約されてくるかといえば、やはり取締り法規を作れとか、あるいは厳重な対策を立てろとか、こういうことになりがちなのであります。これは、私もかつて警察の下つ端の仕事をしたことがあるのでありますが、決して有効適切な処置にならないのです。この間も、今国会でしたかの初めに——国会じゃない、前の通常国会でありますが、荒川の通り魔事件がやかましい問題になつたときに、私やはりここでこの問題を取り上げたことがあるのです。小倉警視総監が出てこられて、青少年が人を傷つけたりいたずらするような刃物、ナイフだとかあいくちだとか、そういうものはなるべく店頭に出ないようにしたらどうか、こういう意見があると言われましたが、結局そこにいってしまうのです。これは刃物中の刃物です。そういうところに持ち出されるものは、全体の正常な需要の、それこそ何百分の一、何千分の一にしか当らない。警察立場からすると、そういったごく少数の例外的事実をとらえてこれを原則に戻すということがありがちなんです。こういうことになると、それはひとりその刃物、凶器という問題だけでなくて、やがては映画の検閲もやれ、あいは言論取締りもやれ、出版の取締りもやれ、こういうことになりがちなんです。そうすると自由というものは根こそぎ失われてしまつて、こういう大きなまた逆の弊害が出てくる。だからこれは今長官が言われたように、警察の範囲、間口だけではとても処理できない問題で、要するに根底になるものは、家庭及び社会の愛情が足りないということになるので、その家庭及び桂会の愛情が足りないのをどうやつて補つていくか。そのあたたかい、豊かな愛情というものをどうして作り出していくかということに国の責任と政治の任務がなければいけないのであります。だから先ほど申しましたように、警察庁はあらゆる角度から事情を調査されて、これを政府の施策の上に強力に押し出してもらいたい。そのために必要な予算なら、よし二百億かかろうと三百億かかろうと、これは国の将来のために当然やらなければならないことですから、われわれも大いにこの点は強力に推進いたしたいと思いますが、われわれはここで議論することが単なる議論にならないように、強力なデータをそろえてもらつて、青少年問題の根源はここにあるのだ、これをどうして解決するか。つまり家庭の足りない愛情、社会の足りない愛情、つまり青少年の環境をどうしてよくするかということについては、こういう点、こういうデータがあるのだから、これを基礎にして、こういうことをやつてもらいたい。これはあるいは文部省の所管になるかもしれませんし、あるいは内閣直接の総理府の所管になるかもしれませんし、ときには厚生省、労働省の所管になるかもわかりません。そういった問題が全体に大きく展開していく基礎的なデータは、やはり取締りの第一線にある警察庁で作つてほしい、こう私は申し上げるのです。そのために先ほど申しましたように、一つ何か画期的な、そのデータが非常に有効に、なるほどこれだと思われるようなものを作つてもらいたい。作るためには今の日本の警察活動の面から出てくる資料ではなくて、第一線の東京とか大阪とか名古屋とか、そういうところ、あるいはいなかの地方警察、そういった第一線におる人でも呼んでもらつて、三日でも五日でも一週間でもいいですから、分科会でも作つてもらつて、十分そこでそれぞれの相当の地位にある人がこれを担当して、検討を加えて、そこで一つ資料を整えてもらいたい。そういう資料が私たちの委員会にでもいただけるならば、われわれもまた当然国会として、あるいは党として強力にこれを推進する道が開けてくると思うのであります。今までのように、ただ統計だけ見て、あるいは新聞、雑誌に出てくるものだけを読んで論議しても、もはや事足れりとは言えないと思う。     〔菊地委員長代理退席委員長着席〕  三十三年の二月でしたか、警察庁に要請して作つてもらつた資料によりますと、昭和十一年を一〇〇にして、昭和三十年は五〇〇なんです。戦前よりも戦後十年を経た昭和三十年に青少年犯罪が五倍にふえるということは、これは実に大きな問題だと思う。いろいろレポートを見ますと、そういう道に走る青少年、ことに年の足りない十四、五才から十七、八才くらいまでの少年の行為を見ていると、悪という認識が全然ない、悪いことをしているという考え方が全然ない。これは大へんなことだと思う。それから私はよく言うのですが、近ごろのように人の命が粗末にされる時代はいまだかつてないような気がするのです。何の責任もない、何の因果関係のない者の生命を傷つける、こういうことが世の中にはんらんする。人間の社会というものは、経済的に豊かだということだけではいけないので、一番大切なもの、基本人権の最たるものは生命と自由ですから、何の因果関係のない、何の責任もない者が生命の危険に脅かされるという社会はまことに好ましくない社会で、これをなくしていくことが警察の大きな責任であり、検察の仕事、司法警察の仕事だと思う。これは当然のことでありますが、そういう点についても深き考慮を払つていただいて、抜本的な対策を立てるための基礎的な調査活動を一つやつてもらいたい。これを特に私はお願いする。この点について御意見を伺つておきたいことが一つ。  それから法務省の刑事局長が来られましたから、あわせて伺いたいのでありますが、これはもしお手元にありましたら、この次の機会にでも一つ出してもらいたいと思いますし、なければ調べてもらいたいのですが、戦前の犯罪と戦後の犯罪統計、私の感じではどんどん犯罪がふえるような気がするのです。ことに粗暴犯ですね、窃盗犯なんというものは、これは石川五右衛門のせりふじやありませんが、人間の欲望のある限りなかなか尽きないと思います。けれども、殺人とか傷害とか、あるいは性犯罪、強姦とかいったものが戦後著しくふえてきたような気がするのです。そういった犯罪統計をぜひ調べてもらいたいと思うのです。と申しますのは、今も申しますように、近ごろあまりにも人の命が粗末にされ過ぎるという感を持つのです。きのうは人の身、きようはわが身ということがありますが、新聞記事にデカデカと殺傷記事が出る。物取りのための殺傷事件なら、多少因果関係があるかもわかりませんが、そうでない、いきなり何の因果関係もない者をばつさりやる、こういう事件が非常に多いのです。そういったことが全体に対して不安感を与える点は、これはちょっとものさしではかれぬと思う。そういう点をわれわれは非常に心配いたしますので、当委員会としても、こういった一つ犯罪傾向については、抜本的な対策を考えなければならぬと存じます。こういう角度から私は所見の一端を申し上げて、当局の御見解なり今後の善処を要望したいと思います。  今申し上げた二点について、警察当局と法務省当局の御意見をお伺いいたしたい。
  24. 柏村信雄

    ○柏村説明員 ただいまお話しのような総合的な調査を徹底してやるということは、現在努力をいたしております。青少年の犯罪について、戦前、戦後のお話がございましたが、大体戦後のいわゆる虚脱状態のときに非常にふえまして、たしか昭和二十六年が非常に大きな山を築いたわけであります。その後だんだん経済状態も落ちつき、社会も冷静になって参りましてずっと減つてきておつたのでございますが、先ほど御指摘の三十年ごろを谷としまして、さらにまた最近はふえる傾向にある。特に数においてよりも、凶悪犯、粗暴犯、特に性犯罪において非常なふえ方をいたしておるわけであります。たとえば、強姦罪につきまして申しますれば、成年、未成年を全部含めた全犯罪の五四%というのが未成年者によって行われているというような状況でございます。そうした傾向につきまして、ただいま御指摘のような警察だけの取締りを強化するというようなことでいかないことは、もう申すまでもないことであります。ただ、警察自体としましても、この前警職法に盛りましたような保護の規定でありますとか、あるいはその他若干の警察自体で措置すべき補導あるいは取締りというような点についての規定の整備ということは必要ではないかと私は考えますが、しかし、こういうものは、全体から見ればごくさまつな問題でございまして、要は、帰するところ家庭と学校というようなものにおけるしつけというようなことが非常に重要な意義を持つのではないかというふうに考えるわけであります。そのためには、やはり世間一般がこの問題についての深い関心を持って、いやしくも青少年を毒するようなものについては、徹底的な糾弾をしていくというような態勢になっていかなければならないのではないかと思います。個々の青少年問題についての非行化の原因であるとか、そういうようなことについては、せつかく目下調査を進めておる次第でございまして、こういうものがある程度まとまりますれば、また先生方にごらんをいただいていろいろと御指導をいただきたいというふうに考えております。
  25. 神近市子

    ○神近委員 関連して。——今青少年者の犯罪のことが出ておりまして、これは売春防止法にも関係のあることなんですけれども、やくざとか愚連隊とか、今ちようどそういう一件が私のところに持ち込まれております。やくざや愚連隊につかまると、青少年がどうしても犯罪に深く落ち込んで、そうして更生しようとしても、ひもというか、全国的なつながりがあつて、よほど外国にでも逃がさなければ更生ができないというようなきわめて困離な状態に追い込まれておるということがわかるのです。私が伺つてみたいということは、たとえば何々一家とか何々組とか、極東組とか町田一家とか、そういうようなものが歴然としてリストに上っている。それはなんとか処置ができないものでしょうか。外国にもそういうギャングの仲間がいるということですが、そういう者に対してなんとか打つ手はないものでしょうか。それは警察の方ではどう考えておいでになるか、ちょっとその対策といいますか、お伺いしたい。私ずいぶんこれが青少年を毒している大きな要素だと考えます。それの案を何かお持ちになっているか、あるいはこうしたならというようなお考えがあったら聞かしていただきたい。
  26. 柏村信雄

    ○柏村説明員 青少年問題につきましては、確かに今お話のような暴力団等に入り込む、あるいはひもがつくということになれば抜けられない、そうして悪の道に落ち込む、だんだん深みに入っていくということは確かにそうであろうと思います。従いまして、青少年問題については、何といっても一番大事なことは非行化の防止といいますか、きざしが見える初期においてこれをよく導いていくという処置がとられるということが望ましいと思います。ただ、今のお話のやくざと申しますか、あるいは暴力団といいますか、そういうようなもの自体につきましては、われわれも社会にそういうものがあることを好ましいものとはもちろん考えておりません。できるだけそういうものがなくなることが社会の正常な運営に好ましいことであることは申すまでもないことでございますが、しかし、こういうものがただ存在するということは、警察としてはどうにもいたし方ない、これが犯罪を犯すということに相なって初めてそれを追及する、これを鎮圧するということでございまして、そういうものが社会のどこかに存在してあるときに犯罪を犯すということがあつても、犯すことが必然であるということの前提においてこれを散らすというわけには参らないことは、現在の法制上やむを得ないことであろうと思います。警察といたしましては、従いまして、そういうものの犯罪が起つたときに、ちゆうちよなく徹底して取り締るということによって、その悪の根を次第に断っていく。従って、長期、継続的にそういうものが犯罪を犯さないように追い込んでいくというところで警察の責務は遂行して参らなければならぬというふうに考えるわけでございまして、そういうものがあるということ自体については、これを世間は非常にそういうものはいかぬことであるというふうに考えても、警察自体としてこれを措置するということは、これはできない問題だと思います。しかしながら、そういうものが存在して、継続して存在するというためには、生業以外において何らかの生活の手段を得るということになれば、犯罪とつながる面が非常に多くなって参ると思います。そういう犯罪をわれわれは追及して、そういうものが存在し得ないような社会になることを念願し、またそういうことに努力を続けなければなりませんが、犯罪を犯さずにとにかく存在するということ自体については、これに対して警察としての措置はできないということに相なろうと思います。
  27. 竹内壽平

    ○竹内説明員 犯罪統計について三田村先生から御要望がございましたが、私どもの手元に整備されておりますので、戦前と戦後の比較表を調製いたしまして後刻お手元へ差し出したいと思います。御指摘の通り、戦前と戦後とを比較いたしますと、非常に犯罪の量におきまして少年犯罪がふえておりますことは事実でございます。特に最近数年間というものは激増の一途をたどつておるのでございます。内容におきましても、御指摘の通り、凶悪犯、特に性犯罪、強制わいせつ、あるいは強姦、あるいは殺人、傷害といったような凶悪犯がふえておりますことも事実でございます。ついでながら申し上げたいと思いますが、このような著しい少年犯罪の増加と悪質化というものは、ひとり敗戦国である日本が背負つておる現象だけではなくして、戦勝国であるアメリカやイギリスにおきましても、同様な傾向がこの第二次戦争以後顕著に現われておるのでございます。刑事政策あるいはクリミノロジー、犯罪学という学問も少年犯罪中心として著しい発達を遂げておるのであります。この学問の中心が、原因論が中核になっておると思うのでございます。この犯罪原因論を探求をいたして参りますと、そこに初めて科学的な合理的な対策が生まれると思うのでございますが、この原因論も犯罪の動機とか直接の原因になつたものというのではなくして、さらにこれを幼時にまでさかのぼつて、原因の調査その他を徹底していくというのが刑事政策学の大きな目標でございます。そして、それによりまして、今まで私ども考えておりました治療対策と申しますか、犯罪を犯してから後の改過遷善とか、社会復帰、更生といったような点の対策よりも、犯罪を犯すことにならないように予防対策と申しますか、犯罪を早期に発見してこれを未然に防ぐという対策にまで学問的にも進歩しておるのでございまして、私どもも今までの検察強制保護といったいろいろな行政面におきましても、考え方の根本を予防対策あるいは犯罪予測というような面に大きく重点を移していかなければならぬと思うのでございましてその意味において検察面におきましても、犯罪原因をさらにさかのぼつて探求するという対策をすでに現実に移しつつあるのでございます。一例を申しますならば、従来のようなやり方で原因を探求いたしますと、たとえば一時間でできた仕事が、さらにその少年の生まれ故郷、あるいは学校の先生、親、親類というところまで、少くとも九才ごろまでさかのぼつて参りますと、事案によって違いますけれども、一時間で済んだものが六時間もかかるというような非常に手間を要するのでございます。このような困難も克服してその原因の探求に努めつつあるのでございます。そういう意味におきまして、私どももこの問題につきましては真剣に取り組んでおる状況であります。
  28. 三田村武夫

    三田委員 お話の通り、戦後の犯罪、ことに青少年犯罪の激増は日本だけではありませんが、しかし、戦勝国であるアメリカその他の国にも青少年犯罪はたくさんあるから、これはやむを得ないという論理にはならないので、日本は日本で当然やらなければならぬ問題であると思います。今のような犯罪科学の面からの対策もぜひ必要でありますが、先ほど来申しましたように、やはりこれは大きな政治の面で解決しなければならぬ問題だと思うのです。これなくして単に犯罪科学の面からだけでは解決しないということをとくとお考え願いたいと思うのであります。  最後につけ加えますが、近ごろの青少年犯罪、特に青少年の性犯罪については、そのつど思い出して胸の痛む経験があるのです。今からだいぶ前でありますが、たしか昭和八年か九年ごろ、私は南洋方面にニカ月ばかり旅行したことがある。たまたまその船に乗り合せた年十九才の京都のある相当の家庭のお嬢さんの投身寸前に、その人の命を救い出したことがあるのです。これは船に乗つていて、どうもおかしいと思って注意しているうちに、これは自殺を目的にしてきた人だということで発見したのでありますが、だんだん聞いてみると、それは実に深刻な問題なんです。六つか七つごろに、うちにしよつちゆう出入りしている年若い坊さんにいたずらされたということが、だんだん長ずるに従って自分の記憶によみがえつて、自分自身がきたなくてきたなくてしようがないという気持で、ついて自己の生命を絶とうとする心境にまでなつたのです。合意による性行為というものは、当然自分自身で責任を負うべきものだから問題外だと思いますが、近ごろのように、たまたまいたいけな子供を連れてきてこれを犯すというようなことは、ほんとうに許しがたい最高の罪悪だと思います。     〔委員長退席、神近委員長代理着席〕 これは単なる刑法に書いてあるどれだけの罪だというようなことではかり得るものではないのです。何らの抵抗力も何らの判断力も意思も持たない七つ、八つの少女を暴力で犯していることは、ほんとうに許しがたい人間の社会における最高の罪悪だと思います。こういう者についてどうするかということです。そのときは本人に自意識がありませんから、ただ自分がけがをしたというくらいのことで済みますが、だんだん長ずるに従って、それが何であったかということを自覚したときにみずからを葬る。これは人間として知性の程度が高まれば高まるほどそうなるのです。そういう点を一つ十分考えて、この問題については最善、最高の努力をしなければいかないと私は思う。単なる刑事政策という面だけでなく、また警察手当ということでなくて、その悪の根源はどこにあるのだ、穴があるなら一つ一つ小さな穴でもふさいで、そういうことをなくするということをしませんと——被害者自身何らかの責任のある場合は別ですよ。別ですが、何らの責任のないいたいけな少女を犯すというようなことについては、絶対に許すことができないと私は思う。第一そのくらいの年ごろの子供を持つ親の立場になってみたら、これは何としても耐えがたいことです。こういう点を一つ十分御考慮の上、平面的な対策でなくて立体的な、うんと掘り下げた対策を御検討願いたいことを、特にこの機会に申し上げておきたい。冒頭に申しましたように、今児童週間で、全国で青少年、ことに少年の不良化というものをどうしたら防止できるかということを一生懸命やつておるのですが、これは単なる行事に終つては意味をなさぬ。児童週間だから何か一つ講演会でもやろうとか、レクリエーションでもやろうという行事に終つては意味をなさぬ。その中に何を求めていくか、何を掘り下げていくかということを、私は政府として真剣にお考え願いたい。警察当局も法務当局も真剣にお考え願いたい。そして、その対策の発動力は、やはり直接こういった犯罪についての責任官庁である法務省、警察庁にあるということを十分自覚していただいて、権威あるデータをそろえて、政府がどうしてもこれを取り上げて、必要ならば十分なる予算措置をして、十分な施設をして、こういうことにこたえるということをぜひこの機会に要望しておきます。  これだけ申し上げてきようの私の質問を終ります。
  29. 猪俣浩三

    猪俣委員 検察庁にちょっとお尋ねしたいと思います。一点は、徳島市におけるラジオ商殺しとして相当新聞にも報道されておりますところの、数人の少年のうちほとんど全部が検事の強要によって偽証したということに相なりまして、法務省の人権擁護局の活動ともなって、先般当法務委員会における擁護局長の報告によりましても、相当検事が無理をしておるというふうな結論が出ておるわけであります。ところが、最も重要なる証人は、当時十六才と十七才の西野という少年と阿部という少年ですが、これが二人とも口裏を合したように同じような証言をしている。そのうち最も重大なのは、殺したということで裁判になつたが、殺された人の妻、これが夫と格闘しているところを見たという証言を二人はしておる。ところがこれは全くのうそであったということを裁判所の法廷で、偽証罪に基く損害賠償請求訴訟を起されたときにも、判事の尋問で、全く検事の強要によって心ならずもそういうふうに陳述とたことを述べた。そこで検察庁はこれを偽証罪の容疑として調べられたところが、二人のうち一人はやはりどこまでもあれは偽証である、そんな格闘なんか見たのはうそであるということを言っておりますが、一人の男は、いや裁判所で偽証したというのはうそだというので、またもう一ぺん反転したということになっておるわけです。ところが、その男を調べるに際しまして、取調べの主任検事は、高等裁判所でその裁判に立ち会つた検事が主任となって調べた。そうして、いつも警察なり検察庁が軟禁することを常習としておりますある旅館で、その取調べの検事と一緒に三日間軟禁せられた。そうして、聞くところによれば、三度の食事も検事と一緒にしておった。そうして、とうとう最後にやはり偽証だと言うたのはうそで正しいことを言つたのだというふうに、彼はもう一ぺん直した、こういう事案です。私は近く四国へ参りますので、現地においても事実を調査してみたいと思いまするが、当法務委員会においても一度私は問題にいたしましたし、日本弁護士連合会で今徹底的に調査をしておるわけです。それから、これはいろいろ法律問題といたしましても、検事はその地位によって強要して偽証させた。その偽証の結果有罪になって服役した。再審の道としては、それは偽証であるということが犯罪となって、それが確定しなければ、再審の道が開かれない。そこで、その道を開くために、検事の強要に基く偽証であるということを本人は認めたがゆえに、偽証罪でもって告訴した。ところが検事が再びそれを調べて、いや偽証したんじゃないと不起訴にした。そこでやはり犯人は再審の道を開くことができないという状態になっておる。これは立法問題としても私どもは考慮すべき余地があると思うのですが、これに対しまして、不起訴にしたことにつきましては、検察調査会なりその他に訴えるはずでありますが、二人のうち一人だけはそういうふうに偽証じやなかったんだと言うが、一人は相変らずどこまでも偽証であると言うてやつているのであります。それでさえもこれは偽証であるということを言っておるけれども、どうも真実性がないというようなことで不起訴にしてしまつた。偽証であるとみずから認めて、そうしてそれらの証言によってこれが有罪になっておるのです。そこで偽証としてこれを告訴しているにかかわらず、どこまでも偽証だという陳述をしておるにかかわらず、これを偽証じゃないといって不起訴にしたことはわからない。こういうことでは、偽証ということで確定判決をひっくり返す道が絶望になってしまう。そこでこれは大きな一つの問題だと思うのであります。民事の法廷においても、検事の調べにおいても、阿部という男は、格闘をしておったというのを見たなんてうそであるということをどこまでも立証しているにかかわらず、そうしてこちらが偽証罪で告訴しているにかかわらず、そういうふうに偽証だと言うけれども、それは信ずるに足りないということでこれを不起訴にしてしまつている。私はこの点については理解ができない。これに対しまして検察庁にはどういう報告がきておりますか、ここでお述べいただきたいと思うのであります。
  30. 竹内壽平

    ○竹内説明員 ラジオ商殺しの事件につきましては、猪俣先生からもこの議場でるる御質疑もあった次第でございますし、人権擁護局におきましても、当時事情を調査しまして、検察庁に対してもう一回調べてみる必要はないかという勧告と申しますか、そういうものもあったやに聞いておるのでございます。さような次第で、検察庁としましても、この事件につきましては、適当な方法でよく審査してみなければならぬという考えになっておるやさきに、今お話のございましたように、西野らの証言は偽証であるという告発が出ておるのでございます。その告発事件の捜査といたしまして先般来捜査をいたしたわけでございます。その結果、ただいまお話のあったように、不起訴になつたということを私は承知いたしておりますが、その不起訴の理由につきましては、まだこまかい報告を私ども見ておりませんので、いずれその報告を見ました上で、御質疑にお答えをいたしたいと思います。  ただ、申し上げておきたいことは、ラジオ商殺し事件の捜査に当りました当時の検事長、検事正——もちろん主任検事も、また問題になりました次席検事もすでにいずれも四国管内にはおりませんのみならず、こういったような疑惑を受けた事件であるということから、その点は全く独自の立場で再検討するという考え方でこの事件の捜査に当つたと伺つておりますので、その処分の結果につきましては、理由は今詳しくは存じませんけれども、結論につきましては、私としては信頼をいたしておるのでございます。いずれこまかい報告が参りました上で御質疑にお答えいたしたいと思います。
  31. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお調査されると申されますから、私はこの点を一つ調査していただきたい。ただいま申しましたように、偽証罪の取り調べの主任になつたのが高等検察庁の検事である。もちろん地検の検事じやありません。ラジオ商殺しの事実捜査の第一線に立つた人ではありませんが、ラジオ商殺しの控訴審において原審の主張を支持された立ち会い検事であるから、全く無関係とは申されない。今のあなたのお話によると、全然関係のない検事がやつておるということですが、そうじゃない。控訴審において控訴を主任し、第一審を支持し、殺人の事実を主張いたしましたその当の検事が主任として調査されたかという点と、それからもう一人の検事があったそうですが、もう一人の検事というのは知りませんけれども、とにかく偽証じやなかったんだと言って、検事の要望通りの陳述に変えました西野という被疑者を三日間旅館に泊めた事実があるのかないのか。その同じ旅館にその検事が起居をともにしておった事実があるのかないのか、それをお調べ願いたい。私の情報では、その旅館というのは警察や検察庁がしよつちゆう使う旅館である。表面は逮捕という形でないが、事実は軟禁する一つの手段として旅館をお使いなさることは、竹内さんも御存じであると思う。これは私は脱法行為だと思うのですが、よくそれをやつておる。毎日通わせるのは気の毒だし、泊まりたいというから泊めてやつたんだということを申しますけれども、これは一種の軟禁です。出入りにはちゃんとおまわりさんがついておつて、軟禁しているのですから、脱法行為をやつているわけです。そして、とにかく三日間それをやつた。聞くところによれば、えらいごちそうをして待遇が大へんよかったそうです。その費用はだれが払つたかわかりませんが、その点も調べていただきたい。その検事と一緒に旅館に泊まつておつたのかどうか、それを一つお調べ願いたい。二人の重要な証人のうち一緒に見たと称する男が、自分が罪になつたとしても、間違つたことを言って一人の女性を罪に陥れたことは万死に値するから、どんな裁きも受けますと言って彼はどこまでも偽証であることを主張しているにかかわらず、その西野というもう一人のふらふらしている男の方は——この男は初めからふらふらしているんですが、それが一たん偽証であると人権擁護局の調べにも言うておるし、いわゆる民事訴訟上における損害賠償事件の法廷における陳述でも偽証であったということを認めている。そうしておりながら、いよいよ検事の調べを受けると、偽証じやなかったというふうにまたひっくり返つた。二人のうち一人は偽証であると言い、一人は最後にはまたないといってもとに返つた、こういう事案だ。その偽証したと言うている一人を何がゆえに不起訴にしたか。その理由も聞いていただきたい。それを起訴していただけば、それが有罪になるなり、既定の犯罪となるなら再審の道が開かれると私は思う。その道も封じてしまつた。私はここに問題があると思うのです。明らかに本人が自白し、しかもあとの五人、六人の証人がことごとく偽証であることを今日まで主張し続けておる、ただ重要な証人のうちの一人がひっくり返つただけなんです。客観的に見るならば、偽証ということが相当であると思われる環境なのであります。しかるにかかわらず、殺人事件の偽証をしたというのは相当重かるべきはずであるにもかかわらず、不起訴として起訴しないじまいということにつきましては、私ははなはだ疑問なきを得ない。何がゆえにその男を、事実明白であるにかかわらず、検事の便宜主義に基いて不起訴処分にしたのか。それは権利の乱用じゃないかと私は思う。事が自分たちの取調べにかかってくる。利害関係がなければいいが、利害関係があるのです。そういう検察庁として、検察官として利害関係のある問題について、はなはだ不透明な態度をとつたと私は思う。その点についても、法務省としてもう少し調べていただきたい。私も最近徳島へ参りますから、私自身も調査いたしますが、本省としても、これは大きな一つの人権問題で、すでに日本弁護士連合会が非常に関心を持って調査をやつておる事件でありますので、私はなお法務省としても万全を期していただきたいと思う。場合によっては、立法関係に及ぶことでありますので、その点のいきさつをよく調べて、今度の国会に明らかにできるようにしておいていただきたいと思います。私も唐突な質問でありますから、十分報告が来ておりませんなら、これ以上いたし方がないと思います。要望だけにとどめておきます。  いま一点、さっき警察庁長官にお尋ねいたしましたが、検察庁のお考えも承わりたい。きよう大臣もおいでにならぬので、あるいはお答えにくいかも存じませんけれども、事務当局といたされましての覚悟をお尋ねしたいことは、公職選挙法違反が非常に今度の選挙で多かったことは、検察当局としてもお認めだと思う。百年前のイギリスと同じように、こういう状態では日本の民主政治が成り立ちません。あらゆる不正手段をもって選挙をやつている。これは自民党ばかりを責めるわけではありません。わが党にもあろうかと思います。政党全体が自粛自戒しなければならぬ問題であると思うのであります。一つ取締り官憲の取締りについても、私どもはどうもそこにはなはだ妥当ならざるものがあるのではなかろうかと思われる節がある。先般から警察庁長官質問をしておるのでありますが、それは公職選挙法の二百二十一条の一項二号の問題です。一号の買収供応、これはその違法性はもう一般の市民に浸透しておりますが、二号の問題です。これは戦後私の調べたところによると、最高裁判所判例一つしかない。非常に摘発の数が少いのではないか。そのためにこの二号の問題で犯罪とせられて裁判になつたというものが非常に少いのじゃないか。そのために、一般市民はもちろん、候補者自身においても特別なる利益誘導というようなことが重い罪に当ることを知らぬ者があるわけです。もちろん、国会議員たる者が知らぬということでは私は許せないと思いますけれども、一般市民の中には知らぬ者がある。また、相当選挙通の人間の中にも、こういう法規について忘れてしまつておる者がある。これは昔は非常にやかましかった。この問題で現に私の郷里の選挙区から出ておる人で、これにひつかかって失脚して、非常に気の毒な状態に陥つた人もあるくらいでありまして、昔の取締りは非常に厳重であったにかかわらず、この第二号の取締りについてはだんだんこれが取締りの対象からほとんどはずれてしまう。ことに岸内閣になってからひどい。総理大臣を初めとして、そういう特殊な地方的利益誘導する演説をやつておる。これに対して、われわれの困難なところは、選挙の最中でありまして、直ちにその証拠を固めて相手を摘発するということは非常に困難であるし、また証拠が固まりましても、今自分選挙を争つている相手をやるというのは、実ははなはだできにくい点があるのであります。そういうわけでありますから、やはり超党派的な公正な取締り立場に立っている検察庁と警察が活動していただかぬと十分でない。それについては、私どもは隠微の間に行われることまではなかなか容易じゃないと思いますが、ちゃんと届けをして行われております個人演説会あるいは街頭演説会、これは白昼堂々とやることでありますから、それに対して調査ができないというはずはない。何らかの方法において、特別な利益誘導に対する事実を調査していただいて、そうしてそれが法の違反になるものはどんどん摘発していただくということにして、こういう法律があるのだぞということの趣旨を市民に徹底しなければいかぬと思う。私はこれはどの党が政府党になっても同じことだと思うのであります。ことに今二大政党といいながら、イギリスのような二大政党の形になっておりませんで、自民党と社会党の力があまりに違い過ぎているところが日本の政党政治の最大の欠陥だと私は思う。二大政党の力のバランスの上に立つた政治が行われないところが、国会がスムーズに運営できない理由だと私は思うんですが、その原因はいろいろありましょう。社会党にも反省すべき点がありましようけれども、こういう公職選挙法公明選挙が、金力によってか、特別の利益誘導によってかこれが汚されておる。その事件は同じです。選挙というものが利害というものを対象にして行われていくところに同じ価値があるものだと思うのですが、それが、一方は警察でも関心を持って買収とか供応については相当調査せられているようでありますが、一方の問題についてはまことに野放しの状態になっておると私は思う。これに対しまして、法務省といたしましても、検察庁を督励いたされまして、今回の参議院選挙を控えてその意味において私は方針を打ち出していただきたい。今まで野放しになっておつたのをどうしてこれを取り締まるか、そうしてどうして違反の事実を証拠固めするかについて、特別に私は御考慮願いたいことをさっきから申し上げておるのでありますが、法務省の御所見を承わりたいと思うのであります。
  32. 竹内壽平

    ○竹内説明員 前のラジオ商殺しの調査につきましては、御要望の点を調査してお答え申し上げたいと思います。  それから、利害誘導の罪についての法務省、検察庁側の所見ということでございます。これも先ほど来先生の御所見は伺つておつたわけでございますが、限られた人員で比較的短期間に多発いたしますこの選挙違反に対して、どういうふうにやるかということになりますと、自然あらゆる罪をひとしく一斉にやるということは困難でございましてどうしても重点的に取締りをするということになろうかと思います。その重点の中におきましても、買収供応利害誘導その他暴力等によって選挙妨害をする、こういったような罪は最も重点の基本とすべきものでございます。この点は、過般の検察長官会同におきましても、検察官の一致したところでございます。従いまして、買収供応利害誘導とが違つたランクにある犯罪であるというような考え方は、検察官といたしてはとつておらないのでございます。同列に置いておるのみならず、違反中の最も悪質なる違反一つであるというふうに考えておるのでございます。ただ問題は、この利害誘導の罪が、近年の選挙におきまして、比較的検挙される者が少いという点につきましては、私も全く統計を見ておりまして、同感に存ずるのでございます。特に戦前におきまして、私どもが一線で活動しておりますころには、利害誘導の罪は相当あった。私も取り扱つた経験を持っております。そのときにもそうでございましたが、利害誘導の事実を認定いたしますための証拠収集というものは、非常にむずかしいのでございます。     〔神近委員長代理退席委員長着席〕  ただいま先生は公然とやつておるのだからはっきりしておるじゃないかという御所見でございますが、これは非常にたくさんの一つ利害誘導罪を固めますために、非常に多くの人からその事実を集めて認定をしなければならないのでございますが、たまたまそこに聞き合せておつた者がだれだれであるかということを確認し、さらにその人たちからその趣旨の証言を得るということはなかなか捜査といたしましては、むずかしいのが現状でございます。さようなことでなかなか検挙がしにくいと思います。ことに戦後におきましては、警察官選挙の会場に臨監しておるというようなことはないようでございますし、かりに私服で入っておつたといたしましても、警察官みずからが証言するというのではなくて聞いておつた人からその証言をとるということでございますので、非常に捜査が、つまり証拠収集が困難であるということがいわれるように思うのでございます。しかしながら、困難であるからといってそれを軽視しておるわけではなく、先ほど申しましたように、基本的な悪質犯の一つであるというふうな考えで、私ども地方選挙に、さらにまた来たるべき参議院選挙にもこういう態度で取締りをいたして参りたい、かように考えております。
  33. 猪俣浩三

    猪俣委員 証拠収集が困難である、私どももさようだと思いますが、しかし今は機械が発達しておりましてその証言を聞かぬでも、たとえばテープ・レコーダーというものに吹き込んだり、明白な証拠が得られる。さればといって全国の候補者にテープ・レコーダーをつけるということはできますまい。またテープ・レコーダーをつけるということに対しては、よほどの支障がそこにあるだろうと思いますけれども、その点は私は何か捜査技術として検察庁と警察庁とよく相談の上でおやり願いたい。皮肉のことを言うようであるが、わからなかったら公安調査庁に相談なさったらいい。公安調査庁はやつておるのです。みんなひそかに傍聴器を備えつけてやつております。全国にたくさんそういう例が出ておる。そういう技術を持っておつて、公々然としてやつている演説会において、それがとれないはずはない。ひそかに一室に会合をしておるものをちゃんと証拠をとつておる。だから、技術的にむずかしいということはちょっと私ども皮肉のようであるが、ふに落ちない。それから全部の候補者にやれというわけではありません。まず総理大臣から各省の大臣だけやつて下さい。いやしくも大臣ともあろうものがさような地方的利益演説をして歩くということはとんでもない行動だと私は思う。大臣みずからが公職選挙法違反しているようなことをやつて、どうして一般に取り締ることができますか。一罰百戒の態度をとつていただきたい。ですから、全部の候補者ではない。それこそ一つを罰することによって百人を警戒し、その気魄を天下に明らかにしていただけば、皆さんの気魄だけでも非常にいいと思います。そこで今御意見を徴して、何とかしてこれを天下に公表するということは、犯罪の予防のためなんです。公職選挙を争うような人たちは、検察庁が徹底的に取り締るという態度をとつている際に、なかなか公々然とはやれない心理状態を持っております。ですから皆さんの態度が非常に明白であつてそれが候補者なり一般市民に徹底しておりますならば、この犯罪は非常に減ると思う。ところが総理大臣以下の各省大臣が公々然としてやつても何にもおとがめがないということになれば、続く陣がさがやるのはきまつておりますよ。ですから、私はまず第一に総理大臣に一台くつつけてもらいたいと思う。どうも岸さんという人は、はなはだ露骨な演説をして歩いておる。話にならぬ。総理大臣にくつつける。建設大臣、農林大臣、通産大臣、こういうおもなる産業大臣一つテープ・レコーダーをつける。今小型の非常にいいものがある。公安調査庁にお聞きなさい。ちゃんと人にわからぬような小型のがあるのですから、それを備えつけてやつて下さい。やる意思さえあればやる技術は皆さん御存じのはずなんです。二百人も三百人も聴衆を調べなければ証拠がとれたいというようなものではないと思う。ですから、その辺の技術を一つ御相談なさつて何とかいう形で、あるいは選挙取締りの検事の会同のときの訓示でもいいし、あるいは警察官の会同のときの訓示でもいい。それを新聞に一つこういう訓示をしたということを明らかに出すことによって予防的態度をとつていただきませんと、中には全くそれを選挙違反と思わなくてやつているものがある。何もおとがめをこうむつたことがないから、何でも口から出ほうだいのことを言って歩いております。話にならぬですよ。一ぺんよく内偵してごらんなさい。話にならぬ行動をやつておる。それが全然問題になっておらない。これはやはり政権を持っているものの言うことがほんとうだと思うのです。だから、野党の言うことよりも、与党の人の言うことの方が弊害が多くなることはそこから来るのです。そうして民衆というものはみな事大思想、利害関係が厚いものですから、この道を直してやるとか、橋をかけてやるということになれば、あの人に投票するとそれができないということになつたらしようがない——現にあるのです。部落会でわざわざ相談して、街頭演説を聞いてから急に態度を豹変したという部落があるのです。私どもそういうことを明白に皆さんにすればいいかもしれませんが、なかなか自分ですぐ相手の候補者には言いにくい点があるのであります。だから、私ども警察にそれを申告した際には、警察はやはり買収供応と同じような悪性の認定のもとにそれをやつていただきたいと思う。今は実際そうではないのです。買収供応については相当鋭敏にやつていらつしやるけれども、この二号の問題なんかは聞きおく程度であまりやらないのです。それが習い性となってしまつて、連呼と同じように、そんなものは何でもないじゃないかということになってしまう。連呼も、あまり取締りが容易じやなく、できないものだから、やるのでありますが、それで合法になつたつもりになってやつておりますが、連呼は相当とめられるのです。しかし二百二十一条の二号の問題は、ほとんど私はこれによって注意を受けたというものを聞いたことがない。これでは私はいかぬと思うのですが、その点について、くどいようでありますが、申し上げておきたいと思う。私どもがこの事実を知って、そうして申告いたしましたら、どうか敏速に、その点について、警察なり検察庁は活動していただきたい。これを強く要望しておきます。
  34. 小島徹三

    小島委員長 神近市子君
  35. 神近市子

    ○神近委員 時間が大へん切迫しましたから、私は簡単に一、二のことをお伺いしておきたいと思います。今、公職選挙法の問題が大へん続きまして、法の守られない時代はおそらく、これはあとにも先にもない時代だろうと思うのですけれども売春防止法でもやはり同じことが言えると思うのです。さきに青少年問題のときに、深夜喫茶の条例改革で、だいぶきびしく取締りが行われるようになっておるという——条例だけは改革されたということは事実でございますけれども、あれも、私どもがあそこへ立ち入ることはなかなかできないので、新聞あるいは週刊誌で読むのでございますけれども、あまり変りがないという——警察だけをおとがめするのは、非常にそちらも手不足だとかなんだとかいうことで、限界があると思うのですけれども、多少取締りの効果は上っているのかどうか、深夜喫茶の点をもう一度先に伺いたいと思うのです。
  36. 柏村信雄

    ○柏村説明員 風俗営業法の改正によりまして、いわゆる深夜喫茶の取締りをいたすことに相なつたわけでございますが、四月一日施行で、われわれの取締りの行き方としましては、四月中はできるだけ業者に法律の趣旨を徹底させて、もし風俗営業に転業するようなものは、その間において許可の申請をさせる、それから従来通り喫茶店として経営をするものは明るくする、あるいは個室を設けないというような指導をいたすことにいたしておるわけであります。これに四月一ぱいを当てまして五月になりましてから、法律の目的とするような取締りを励行して参るという建前をとつておるわけでございます。遺憾ながら、現在まで、風俗営業に転業すべき業態でありながら、転業の申請をいたしてきておる者が率としてわれわれの見るところでは十分になっておりませんが、この五月以降もう十分に趣旨も徹底されたことと思いますので、今度は違反の向きに対しては厳重な取締りを励行して参るつもりでございます。御指摘のように、あるいは新聞に報道されておりますように、現在の段階においては、まだ法の趣旨は徹底して励行されておらないということは言えますが、これは今後十分に取締りをいたしまして、法律の意図するところを徹底して参りたいというふうに考えております。
  37. 神近市子

    ○神近委員 私は一度だけ深夜喫茶の実態を見せていただいたことがあるのですけれども、今三田委員からるるお話があったように、深夜喫茶は、私どもから見ますと、廃頽的な状態でしてあの環境の中に入ってあそこの雰囲気にとらわれた場合に、とてもあそこから抜け出るということはよほど強い意思がなければできないと思うのです。どうか今の風俗営業法に律しまして、厳重な取締りをしていただきたいということが私の要望の一点。  それから売春防止法でございますけれども、この方も一時はちょっとしゆんとなつたというようなことを聞きますけれども、その後の状態では、隠れ売春がなかなか盛んであり、特にさっき申し上げたような愚連隊ややくざのひもからなかなか脱出することができない、それで結局あの人たちの生活の手段として、女が非常にたくさんつかまつているという事例がときどき摘発されて出てくる、審議会で私ども売春そのものをとがめないで、あるいは買いに行く人たちをとがめないで、ただ環境を整備するだけでこれが効果が上るかどうかということをずいぶん疑問にしたのですけれども、今日一年間の状態を見ていますと、どこか改正する点があるのじゃないかというふうなことが感ぜられるのですが、そういうようなこと、これは中川さんに前にお尋ねしたことがあつて売春処罰法の出たときに、中川さんがおっしゃった、私今でも覚えている言葉が一つあるのです。そのものずばりというようにやれないことが非常に困るというわけで、そのものずばりというのは何かと考えますと、やはり売春行為そのものを何とかしなければならないとおっしゃったように私は感じてお尋ねしたことがあったのですけれども、そのときは、今度の防止法の場合でしたから、中川さん大へんお困りになって、何か言いくるめられたような感じがするのですけれども、今日あれを実施なさつてみまして、その期待した効果が上っているかどうかということで、私は皆さんの方にも何か疑問をお持ちになっていやしないかと思うのです。そこで防止法が十分な効果を上げ得ないという点で、何か改正するというような必要をお感じになっているかどうか、それからあのままでよいのだ、あれをどういうふうにして実施させればもっと効果が上るのか、こういうふうなお考えがあるのか、御関係のどなたでもけつこうですから、一つ御意見を伺わせていただきたい。
  38. 柏村信雄

    ○柏村説明員 売春防止法は、昨年の四月から全面実施に相なっておるわけでございますが、なかなかこの問題はむずかしい問題だと思います。もちろん売春防止法の全面実施になります前におきましても、売春防止法に盛られております内容に近いものは、取締りの対象になっておつたわけでございます。しかし、これがなかなか徹底しないということで、売春防止法が成立したわけでございますが、その施行後非常に顕著に現われて参りましたものは、売春防止法施行前におきましては、むしろ町にうろついておるいわゆる散娼というものをできるだけ取り締るということに警察力の関係その他から重点が置かれまして、そうして集娼の方がやや取締りが鈍いということが率直に申して事実であったと思うのです。ところが売春防止法ができますと、とにかく世間一般にわかるような形における売春業態というものは、これは影をひそめざるを得ない。またこれは十分わかりますから、取締りの対象としてすぐに摘発もできるということで、この面はまず一応一掃された。ところが保護施設でありますとか、その他環境の整備というようなことが十分できない。また社会のごみためと申しますか、そういうような社会的な要求——これはよいか悪いかは別問題としまして、要求というような点から葉娼の方は終つたが、さてそうした現象はなかなか根絶に至らない。従って、散娼的な存在が相当に目立ってきておるということが現在の実情ではないかというふうに思うのであります。われわれとしましては、この売春防止法ほんとうの精神とします婦女の売買であるとか、あるいは強制による売春であるとか、あるいはこれに場所を提供して営利をむさぼるというような悪質なものについて、もちろん根本は売春そのものがなくなっていくということをねらいとしなければならぬわけでありますが、まずもってそうした悪質な犯罪について追及を進めておるようなわけでございます。従いまして、今御摘指のように、決してあとを絶たないという状況、これは、やはり当分統かざるを得ないのじゃないか、しかし、続くことを望んでおるわけではなくて、警察としてはこれを発見することに努め、また発見するたびにこれを取り締つていく、これも長期、継続的に追及をいたしていって、逐次法の根本の趣旨とするところに沿うようにいたして参りたいというふうに考えておるわけでございます。日本のみならず、世界各国、古くから行われている問題でございますので、非常に解決はむずかしい問題と思いますが、次第にそういう方法によって、悪質なものから逐次これを退治していくということで進めて参りたいというように考えておるわけでございます。従いまして、現在あの売春防止法をさらに改正して、新たなる角度から取締り考えていくとかいうようなことは、われわれとしては考えておらない。もちろん売春防止対策委員会でありますか、ああいう委員会は現在も存続をいたしておりまして、十分御研究になっておることと思いますが、警察当局としては、法に定められた趣旨に基いて、悪質なものからびしびし取締りをしていくということにいたしておるわけであります。取締りの件数は相当に多く上っておるわけであります。しかし、なかなか根を絶たないということは、率直に申し上げざるを得ない状況であります。
  39. 小島徹三

    小島委員長 それでは、本日はこれにて散会いたします。     午後一時三分散会