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1959-04-09 第31回国会 衆議院 法務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年四月九日(木曜日)     午後零時三十二分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 鍛冶 良作君 理事 小林かなえ君    理事 田中伊三次君 理事 福井 盛太君    理事 菊地養之輔君       綾部健太郎君    川島正次郎君       高橋 禎一君    竹山祐太郎君       辻  政信君    馬場 元治君       三田村武夫君    猪俣 浩三君       神近 市子君  出席政府委員         法務政務次官  木島 虎藏君         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 津田  實君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         検     事         (保護局長)  福原 忠男君  委員外出席者         検     事         (刑事局参事         官)      高橋 勝好君         法務事務官         (保護局恩赦課         長)      武安 将光君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局総         務課長)    海部 安昌君         判     事         (最高裁判所事         務総局経理局         長)      栗本 一夫君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件  請 願  一 占領軍不法行為等による被害者救済に関    する請願辻寛一紹介)(第二四七五    号)  二 同(早稻田柳右エ門紹介)(第二四七六    号)  三 同(江崎真澄紹介)(第二五〇五号)  四 同(江崎真澄紹介)(第二五二七号)  五 同(赤松勇紹介)(第二六〇九号)  六 同(鈴木正吾紹介)(第二六一〇号)  七 同(辻寛一紹介)(第二六一一号)  八 同(太田一夫紹介)(第二七一七号)  九 同(早稻田柳右エ門紹介)(第二八四二    号) 一〇 同外二件(辻寛一紹介)(第二八七八    号) 一一 同(丹羽兵助紹介)(第三二一四号) 一二 占領軍による被害補償に関する請願(松澤    雄藏君紹介)(第六一二号) 一三 同(中澤茂一紹介)(第八五三号) 一四 同(原茂紹介)(第八五四号) 一五 同(小沢貞孝紹介)(第九八〇号) 一六 同(松平忠久紹介)(第九八一号) 一七 同(下平正一紹介)(第一〇二〇号) 一八 同(吉川久衛紹介)(第一〇五五号) 一九 同(小川平二紹介)(第一二四八号) 二〇 同(羽田武嗣郎紹介)(第一四二八号) 二一 泥酔犯罪者に対する処罰法制定に関する請    願(柏正男紹介)(第六六二号) 二二 同(河上丈太郎紹介)(第一七一一号) 二三 同(今村等紹介)(第二〇七五号) 二四 同(片山哲紹介)(第二九八三号) 二五 盛岡地方法務局伊保内出張所庁舎等改築に    関する請願山本猛夫紹介)(第一四七    二号) 二六 松山地方法務局日吉出張所存置に関する請    願(木原津與志君紹介)(第二〇七六号) 二七 検察制度刷新に関する請願神近市子君外    十六名紹介)(第三一四六号) 二八 防府簡易裁判所及び防府検察庁庁舎建    設促進に関する請願小島徹三紹介)(    第三一六号) 二九 森吉米内沢簡易裁判所設置に関する請    願(鈴木一紹介)(第一一七三号) 三〇 布施市に大阪地方裁判所支部設置に関する    請願大倉三郎紹介)(第一八〇二号) 三一 宇都宮地方裁判所大田原支部等昇格に関    する請願高瀬傳紹介)(第二八四三    号)      ――――◇―――――
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  まず、本日は請願審査を行います。  請願審査は、紹介議員が御出席になっておりますものにつきましてはその紹介説明を聴取し、紹介議員の御出席になっておらないものにつきましては、その内容文書表によってすでに御承知のことと思いますので、朗読は省略し、直ちに関係当局所見を求むることといたしたいと存じます。これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認め、さように取り計らいます。  まず日程第一ないし第一一は、いずれも占領軍不法行為等による被害者救済に関する請願でありますので、一括議題とし、政府当局所見を求めます。
  4. 木島虎藏

    木島政府委員 平和条約発効前の占領軍不法行為による損害は、戦争軍事行為により国民が受けた被害と同視すべきものであって、その損害について国が賠償責任を負うべき法律上の根拠のないのはもちろんであるが、請願趣旨のように、この際新たに法律を制定して、占領軍不法行為による人的損害について国に補償をさせることとすることは、占領軍不法行為による物的損害との権衡からいって、さらに戦争国民がこうむった人的、物的損害との権衡からいって、慎重に検討を要するのみならず、平和条約発効後すでに相当の期間を経過した今日においては、立証上の困難があり、その実施支障を伴うことが考えられるので、請願にかかる特殊の被害者だけについて特別の立法措置を講ずることは、必ずしも当を得ないものと考えるのであります。     ―――――――――――――
  5. 小島徹三

    小島委員長 次に、日程第一二ないし第二〇はいずれも占領軍による被害補償に関する請願でありますので、一括議題とし、政府当局所見を求めます。
  6. 木島虎藏

    木島政府委員 平和条約発効前の占領軍不法行為による損害については、法律上当然に国に損害賠償責任があるとすることができないことは言うまでもありません。従って、これらの損害については、従来行政措置によって被害者見舞金を支給するにとどまったのであるが、請願趣旨のように、この際新たに法律を制定して、占領軍不法行為による人的損害について国に損害賠償義務を負わせることは、平和条約発効後すでに相当期間経過している今日においては、立証上の困難があり、その実施支障を伴うことが考えられるばかりでなく、占領軍不法行為による物的損害、さらに戦争国民戦争に起因してこうむったその他の人的、物的損害との権衡からいって慎重に検討すべき問題であって、請願にかかる特殊の被害者だけについて特別の立法措置を講ずることは、必ずしも当を得ないものと考えます。     ―――――――――――――
  7. 小島徹三

    小島委員長 次に日程第二一ないし第二四はいずれも泥酔犯罪者に対する処罰法制定に関する請願でありますので、一括議題とし、政府当局所見を求めます。
  8. 木島虎藏

    木島政府委員 わが国では飲酒の上の犯罪が放任されているといわれているが、実際には酒を飲んでいたというだけで無罪となるわけではなく、むしろこれを理由に重く処罰されることさえあるのであります。言うまでもなく、刑法故意または過失のある行為だけを処罰することにしているのであるから、飲酒の結果完全にめいていし、行為のときに自己の行動を全く弁識することができなかった場合には心神喪失中の行為として無罪とするほかはないのでありますが、その場合でも行為者があらかじめその行為を意図して進んで心神喪失の状態を招き、また自己酒癖が悪いことを知りながら、不注意でめいていしたような場合には、故意または過失責任を問われるものと解されているのであります。もちろん現在の法制無罪とするほかないような場合にも、本人の自覚を促し、酒癖を矯正することができるようにするため、刑罰や保安処分など何らかの措置をとり、また酒を飲んであばれたり人に迷惑をかけたりした程度の行為でも、これを軽い犯罪として取り締るようにすることは、社会家庭の平和にとって必要なことであると考えられるのであります。  飲酒犯罪者に対する保安処分として、一般監護矯正所等の施設へ収容して酒癖を矯正することが考えられているが、これについては個人の人権や医学上の効果あるいは刑法全体との関係など、慎重な検討を必要とする面が多々あるので、法務省では刑法改正準備作業において、各国の法制はもとより、わが国社会事情などをも十分考慮しつつ、その立法化について検討を進めているのであります。ただ、刑法改正事業に予想以上の時日を要する場合には、めいてい犯罪の取締りと、酒癖矯正保安処分だけを切り離して、特別の立法措置をする必要もあるのではないかと考えております。     ―――――――――――――
  9. 小島徹三

    小島委員長 次に、日程第二五、盛岡地方法務局伊保内出張所庁舎等改築に関する請願議題として、政府当局所見を求めます。
  10. 木島虎藏

    木島政府委員 伊保内出張所盛岡地方法務局管内出張所のうちでも、登記取扱い件数は比較的少く、他に優先的に新嘗を考慮すべき出張所が多数あるので、将来検討したいと存じます。  なお、同出張所庁舎の現況を調査して、その間適宜の措置を講じたいと存じております。     ―――――――――――――
  11. 小島徹三

    小島委員長 次に、日程第二六、松山地方法務局日吉出張所存置に関する請願議題とし、政府当局所見を求めます。
  12. 木島虎藏

    木島政府委員 現在法務省においては、激増する登記事件を適正迅速に処理する必要から、登記所の配置の現状について検討を加えている次第であります。日吉出張所松山地方法務局管内出張所のうちでも、登記取扱い件数が比較的少いのでありますが、交通事情等その他を十分考慮の上、慎重に検討したいと思います。     ―――――――――――――
  13. 小島徹三

    小島委員長 次に、日程第二七、検察制度刷新に関する請願議題とし、紹介議員説明を聴取いたします。神近市子君。
  14. 神近市子

    神近委員 この問題は前に質問主意書に対する御返事をいただきましたが、この請願者首藤雄平という人は、それに対して非常に不満の意を表して、再度こういう請願書を出したのでございます。  この前の御答弁によりますと、十分調査をしたいということをおっしゃっているのですけれども、被告訴人告訴人も一回も取調べを受けたことがないというのです。それを取り調べたかのごとく報告されたということによってそういう答弁をなさり、そうして法務次官からの御説明があったようですが、ここに書いてございますように、小松検事という人は、これは請願者告訴を取り下げさせた人でございますが、損害は補てんさせるから、お前さん、それを取り下げなさいというように言って、そして六月八日に取り下げさせまして、それから十八日に不起訴処分にしている。それでその不起訴処分になったときに、検察審査申し立て及び上級検察庁に対する不服申し立てのいずれもしていないということが理由一つになっているのですけれども、検事告訴を取り下げるように勧告して、必ず補てんをさせるからということを言って取り下げさせた、自由裁量というのですか、そういうことをやらせておいて、それを不起訴処分にした場合に、上申することができるかどうか。そういう点のルーズな検察庁の態度、そしてそれに対する監督上官が一応の説明というわけで、成規の手続を踏んだかのような偽装をしていることについて、請願者は非常に不満で、一種ノイローゼになっている。これにはもっともな点もあるのでございまして、なけなしの金の中から二、三百万の投資をしたシグマ商事というのがつぶれております。そのつぶれたときに、商品と債権とがあったものを、福井商事深瀬何がしほか二人が共謀してそれを運んで、隠匿してしまったというケースなんです。それを告発したのに、業務横領あるいは背任というようなことについて一回も調べていない。また告訴人申し立ても一回も聞き取りしていない。そういうようなやり方で一体いいものかどうか。これで泣き寝入りしなければならないかどうか。そういうことで、この前の陳情請願があったのに、それに対して非常に不誠意な調査に基いての御答弁であった、こういうことになっているので、その後御調査いただいたかどうか、ちょっと様子を聞かせていただきたいと思います。
  15. 小島徹三

    小島委員長 本請願に対する政府当局所見を求めます。
  16. 木島虎藏

    木島政府委員 本件告訴事実の概要は、ただいまお話がございましたが、被告訴人深瀬一之は当時シグマ商事株式会社代表取締役であり、同井上信同社取締役、同長井雄同社業務部長であったが、共謀の上、同会社を害せんことをはかり、任務にそむき、昭和二十五年一月末ごろより同年七月末ごろに至る間に、同社所有商品である数百万円の会社財産大阪所在文房具商福井商店及び東京都日本橋区小伝馬町所在文房具商東京福井商店等の利益のために納入し、同会社に対して財産上の損害を加えたものであるというにあるのであります。右告訴は、警視庁捜査二課において捜査の上、昭和三十一年三月二十八日東京地検において受理したが、被告訴人である井上長井の両名、告訴人及びその他の関係人検察官において取り調べた結果、特別背任罪業務横領罪その他の犯罪を構成することを認めるに足りる証拠がないので、同年六月十八日犯罪の嫌疑なしとして不起訴処分に付した。被告訴人の一人である深瀬一之氏を検察庁において取り調べたことは、記録上は認められないが、同氏については警視庁捜査二課において詳細な取調べをしており、さらに同氏自身が事のてんまつを具体的かつ詳細にしたためた上申書記録に添付されているので、検察官本件告訴事件処理に当って同氏供述内容をも十分に勘案して判断を下したことを推断するに十分であります。請願者は、検察官被告訴人の一人である深瀬氏の取調べを行わなかった点を指摘して、本件事件処理が不当であることを強調しておられるのでありますが、前述のごとく、本件警視庁からの送致にかかる事件であり、この種送致事件については警察において取調べ済み関係者のすべてを検察官において再度取り調べた上でなければ処理してはならないという筋合いのものではなく、検察官事務負担量の実情からすれば、検察官としては、犯罪の成否、起訴の当否、公訴維持についての見通しを決するに必要な限度において関係者取調べを行うことをもって足るものとしなければならないのであります。その意味において、請願者告訴にかかる事件は、検察官において十分な捜査を遂げ、それによって収集した証拠に基いて適正に不起訴処分がなされたものであります。  また、本件についての従前の法務政務次官答弁内容も、右の趣旨を申し述べたものであって、何ら虚偽ないしは不誠実な答弁をした事実はないのであります。  なお、告訴人において検察官の不起訴処分に不服がある場合には、現行法制検察審査申し立て及び上級検察庁に対する不服申し立ての道が存するのでありますが、本件請願者は現在までのところ、そのいずれをもなしておらぬのであります。  右のような次第でありまして、本件を資料として検察制度刷新を云々することは、当を得ないものであると思量するのであります。
  17. 神近市子

    神近委員 今御答弁あるいは御調査の結果の御報告を承わっても、結局同じところを問題がもたもた歩いているような感じがいたします。警察官調査があったから、それに基いて検察庁は判断するんだ、これはごもっともだと思うんです。けれども、比較になりますけれども、私の地区で、小さな二年生のシュロの木を一本とモチか何かの直径一寸くらいの枝を一本折ったということで、警察官調査したものを検察庁起訴になさったことがあるのです。これは二年生のシュロの木とかモチの枝一本とかいうのと比べて、二百万あるいは三百万という財物と労務を費した人のケースでございますから、私はそう軽々に取捨選択は行われるべきでなかったというように考えられるのでございます。この財物を失った人が、一種ノイローゼになって、検察庁に対する不信を表明しているというのも、第三者として何か非常にもっとものように感じますので、再調査をお願いしたわけでございますけれども、この問題は今御意見がございまして、この御報告の中に、まだ道は開けている、審査の不服を申し立てる道が開けているということが真実でございましたら、私はこの請願者にその方法をとるように勧めたいと考えます。ありがとうございました。     ―――――――――――――
  18. 小島徹三

    小島委員長 次に、日程第二八、防府簡易裁判所及び防府検察庁庁舎建設促進に関する請願議題とし、当局所見を求めます。
  19. 木島虎藏

    木島政府委員 防府検察庁は戦後同裁判所とともに市有建物を借り上げの上同居し、自来これが独立庁舎建設については、年々大蔵当局予算折衝を重ね、昭和三十四年度予算においてその実施が承認され、目下設計準備中のものでございます。
  20. 栗本一夫

    栗本最高裁判所説明員 防府簡易裁判所庁舎は、現在市から建物を借りまして運営いたしておるのでありますが、昭和三十四年度の予算でその建設が認められまして、昭和三十四年予算年度中においては建設が完了する予定でございます。
  21. 小島徹三

    小島委員長 次に、日程第二九、森吉米内沢簡易裁判所設置に関する請願議題とし、当局所見を求めます。
  22. 木島虎藏

    木島政府委員 ただいま議題となりました秋田北秋田森吉米内沢簡易裁判所設置されたい旨の請願趣旨は、十分了解いたします。秋田北秋田郡は全郡大館簡易裁判所管轄になっているのでありまして、交通その他不便の事情は十分了解されるのでありますが、予定区域内の事件数も現在のところでは比較的少数であり、かつ国家財政上の制約もきわめてきびしい現状でもありますので、早急に希望に沿うことは困難かと思われますが、最高裁判所とも協議いたしまして、なお十分研究いたしたいと存じます。
  23. 栗本一夫

    栗本最高裁判所説明員 米内沢簡易裁判所設置のことでございますが、管内交通事情から見ますと、設置の御要望もっとものように思われるのでありますが、われわれの方で検討いたしました予想されます受理件数は必ずしも多くないのでございまして、全国の簡易裁判所の順位に当てはめてみましても、そんなに受理件数等から見て高い地位にあるものではないのであります。しかしながら、やはり今木島次官お話がありましたように、なおよく裁判所といたしましても予算その他の面において慎重に検討いたしたいと考えております。     ―――――――――――――
  24. 小島徹三

    小島委員長 次に、日程第三〇、布施市に大阪地方裁判所支部設置に関する請願議題とし、最高裁判所当局意見を求めます。
  25. 栗本一夫

    栗本最高裁判所説明員 布施市に大阪地方裁判所支部設置の御要望は、同市の発展状況等から勘案いたしますと、ごもっとものように思われるのでありますが、同所に地裁支部設置いたしました場合の仮定新受件数等を調べてみますと、これも必ずしも少くはないように考えられるのでありますが、しかしながら、布施市と大阪市との地理的状況を考えますと、大阪市に参りますのにきわめて便利な状況でありますような、かような点から考えますと、なお検討を要する面があるのじゃないか。なお、地裁支部設置ということになりますと、相当な予算もかかる次第でございますので、われわれの方といたしましてなおよく十分検討いたしたい、かように考えておる次第でございます。     ―――――――――――――
  26. 小島徹三

    小島委員長 次に、日程第三一、宇都宮地方裁判所大田原支部等昇格に関する請願議題とし、最高裁判所当局所見を求めます。
  27. 栗本一夫

    栗本最高裁判所説明員 宇都宮地方裁判所並びに家庭裁判所大田原支部は、その管轄区域が割合に広いのでございまして、また管内各地から宇都宮本庁べの交通事情も必ずしもよくないのでありますので、かような交通事情の点から見ますと、御要望もっとものように思われるのでございますが、取り扱います事件数は必ずしも予想されるところでは多くないのでございまして、かような観点、並びに昇格となりますと、やはり種々の予算を伴いますので、かような点もにらみ合せまして、なお慎重に検討いたしたい、かように考えております。
  28. 小島徹三

    小島委員長 各請願について別に御意見はございませんか。
  29. 鍛冶良作

    鍛冶委員 この一から二〇の点ですが、これはもう実際においてまことに気の毒なものがたくさんあります。これは政府として何とかできるだけのことをしてやるように御考慮を願わなければならぬ重大な問題だと思うのですが、今当局答弁を聞きますと、なるほど立法としては考えないとおっしゃるが、ただ立法として考えないと言ってほっぽられたのでは、そんなものはどうでもいいので、かまわぬのだというふうに聞えます。これはやはり、立法はやらなくても、何かできるだけのことを考慮してやってもらわなければならぬものだと考えますので、この点に対してはいま一応一つ政府の方で十分御考慮の上、しかるべき御処置をとられることを希望いたしておきます。
  30. 小島徹三

    小島委員長 他に御発言はございませんか。――それでは、これより請願日程全部を一括議題として、その採否を決定いたしたいと思います。  お諮りいたします。各請願はいずれも採決の上、内閣に送付すべきものと決するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認め、さように決しました。  なお、当委員会に送付されました陳情書は、お手元に配付させてありますから御了承願います。  この際、暫時休憩いたします。本会議散会後再開することといたします。     午後零時五十七分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十九分開議
  32. 小島徹三

    小島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  法務行政に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。  猪俣浩三君。
  33. 猪俣浩三

    猪俣委員 皇太子殿下の御成婚に関しまして恩赦が行われるということであります。その具体的の内容を、もし決定されましたら御発表いただきたいと思います。
  34. 福原忠男

    福原政府委員 今朝の閣議で、このたびの皇太子明仁親王の御婚儀に当り行われる特別恩赦基準及び復権令について決定があったように聞いております。ついては、私どもの手元にはその案文がございますので、今係の者が本省の方と連絡しておりますので、参りましたらお届けいたしたいと思います。(「大体の説明だけやったらどうですか」と呼ぶ者あり)  それでは、さっき申し上げました特別恩赦基準案と、それから復権令案概要を御説明申し上げたいと思います。  このたびの皇太子結婚恩赦の規模といたしましては、今申し上げました二つ種類に分れます。一つは、一般恩赦あるいは政令恩赦と称するものでございまして、その部分は復権令を発布することに内定しております。  それから次に二つといたしましては、特別恩赦を考えております。特別恩赦につきましては、恩赦法上きめられております特赦、特別減刑、刑の執行免除及び特別復権の四種類をいずれも行うことに内定しております。  その範囲について申し上げます。範囲は、復権令につきましては、これを従来の例の対象者全面復権と申しますか、その者の人の資格に関する法令の制約を全面的に回復する復権と、そのほかに、このたびは一部復権と申しましょうか、今まであまり例がございませんので表現はいささか熟しませんが、一部復権と申しますのは、公職選挙法違反する罪について同法の二百五十二条で制限を受けます選挙権及び被選挙権についてのみの復権考慮いたしました。それを順次申し上げます。従来の全面的な復権としましては公職選挙法外四法、これは国連恩赦のときに大赦になりました法条として掲げられている公職選挙法、その次に、旧刑法の公選の投票の偽造に関する罪というものが残っております。それと、政治資金規正法地方自治法の七十四条の四の違反、それから最後には最高裁判所裁判官国民審査法違反、この五つと、それからあとは食糧管理法、それから物価統制令地代家賃統制令食糧緊急措置令、この四つが現在残っております経済統制に関する法令のおもなるものでございますが、この四つについて、すなわち前の政治関係のものが五つ、経済統制関係のものが四つ、この九つの法令について一回のみ罰金に処せられている者については、全面的にこれを復権するという考え方でございます。しかし、これには制約がございまして、もしその対象者が、これらの罪で二回罰金になっていればこれは復権しない。それから、これらの罪で罰金以上の罪、すなわち禁固あるいは懲役に処せられていれば、これも復権しない。それから、これらの罪以外のたとえば刑法犯というものについて罰金または体刑に処せられておりますと、これも全面復権はしない。こういう形をとりました。ところが、御承知でもございましょうが、他の罪で罰金または体刑に処せられている場合は、ほとんど公職選挙法選挙権ないしは被選挙権制約は受けないわけでございます。くだいて申しますと、たとえば窃盗罪を犯したという人でも、その刑が終りますならば、別にその人の選挙権及び被選挙権については何ら制限はないわけでございます。それとこの場合には統一的に考えまして、公職選挙法で一回罰金に課せられた者は、ほかに罪があれば全面復権しないといたしますのは、いわば公民権の制約のない罪があって、公職選挙法復権まで妨げているということになりますので、さっきちょっと申し上げました罪の一部復権ということを考えたわけでございます。一部復権と申しますのは、今申し上げました九つの法令のうちで、公職選挙法違反する罪について一回罰金に処せられたけれども、ほかにその他の罪で処分されているという理由全面復権にならなかった者に対しては、選挙権、被選挙権のみは回復させるというのが一部復権でございます。この場合も例外をわかりやすいようにはっきり申し上げますと、公職選挙法で二回罰金になっている者は、この一部復権も受けられません。それから、公職選挙法違反で体刑に処せられている者も、この一部復権は受けられません。それから、他の罪で現に刑務所に入っている者は、御存じのように公職選挙法の十二条でございますか、あそこで制約されておりますから、これは当然のことです。現在刑務所に入っている者は一部復権させる理由はございませんので、その三者は例外でございます。以上が復権令の大体の概要でございます。  それから次に、特別恩赦につきましては、皇太子明仁親王の結婚の儀に当り行う特別恩赦基準というものを内定いたしました。この内容は、このたびの御婚儀に当って、内閣が慶祝の意を表して、この基準によりこれらの恩赦を行うのであるという趣旨を明らかにいたしまして、それから七項目にわたる――さらに付記もつけてありますが、七項目にわたる基準を定めております。そうして、この対象になる者は、四月十日当日を基準日といたしまして、その前日まで――本日までに有罪の裁判が確定している者に対して行うということの原則をきめました。しかしこれに対しましては、いろいろと事務的に検討いたしまして、非常に不均衡を生ずる場合がございますので、基準日の前日までに略式命令の送達あるいは即決裁判あるいは第一次の判決の宣告を受けておりまして、基準日から起算してこれから三カ月以内にその裁判にかかる罪について、まさに有罪の裁判が確定した者に対しましても、この基準を行うことができるという例外措置を講じてございます。従いまして、わかりやすく申し上げますと、本日確定している者はもちろんのこと、あす確定した者というものも、実はこの点で、ただし書きで例外的措置として救われるという形式をとっております。  それから、従来この種の特赦基準というものは、実は新聞などに発表しますのもその要綱的なものしか出しておりませんでしたが、このたびは、恩赦制度そのものの基本の考え方なども考慮いたしまして、かようなものをいわば役人が自分のふところだけに置いておいて、これを尺度にするというのではいかがかと思いますので、これはおそらくあす公式に発表し、さらに官報その他にも掲載することになると思いますが、その趣旨一つに、かようなありがたい恩赦の制度というものを決定して対象者に浴せしめるというところから、本人たちに出願をさせるということをかなり大幅に制度として認めております。しかし、何分にも特赦でございますので、この機会にするということでございますから、いつまでたっても期限をきめないというのはいけませんので、一応本人から出願するのは、基準日までに確定している者は基準日から三カ月以内に出願をせよ、さらにもし基準日以後確定した者については基準日から六カ月以内に出願せよというふうにいたしました。この点は多少大まかな割り振りをしておりますけれども、たとえば確定してから三カ月ということでは、実は事務的にその点の調査をすることが繁雑でございますので、三カ月、六カ月ということにしてございます。  それから特赦基準でございますが、これは少年と七十才以上の者については特別に考えておりますが、そのほかに、懲役、禁錮の刑に処せられてから執行を終り、あるいは仮釈放をされてから五年以上を経過して非常に行状のよいというような者で、その刑に処せられていることがその人の社会公共的生活の障害になっているということを理由にして出願すれば、これを審査するという形をとっております。さらに刑の執行猶予中の者で基準日の前日までに猶予期間の二分の一以上を経過した者についても、同様改俊の情が顕著であるならば、その人が社会公共的生活の障害となっていることを理由として出願できるということにしております。それからさらに、この点はそれらの事情と違いまして、公職選挙または経済統制に関する法令に違反した者について、その違反することが事情やむを得なかったと認められる者についてはその者が違反して刑に処せられているということが現に社会公共的生活の障害となっているということを理由として特赦の出願ができるように定めております。  なお、かように画一的に定めておりますので、これらに準ずる者についても、特に特赦を相当とする者については、同様の取扱いができることをきめております。というのは、たとえば先ほど七十才以上と申しましたが、六十九才何カ月という者がございましたら、そういう者は同じくこの恩赦の恩典に浴するというふうな措置でございます。  次の特別減刑の基準は、これもやはり特赦基準には当ったけれども、まだ特赦が受けられないという程度の者についても減刑が考えられますし、そのほかには少年について特に減刑を考えております。  それから刑の執行の免除は、これは病気その他の事由で長いこと執行ができなかったり、あるいは執行に着手してないとか、執行を停止しているという者について、この際なおこれ以上まだまだ執行することができないとか、あるいは長い間停止していたので、この際執行するということはいかにも社会感情に合致しないというような者については、刑の執行を免除するということをきめました。  それから最後は特別復権でございますが、特別復権につきましては、従来の例を参照しまして、懲役または禁錮に処せられてその執行を終ってから四年以上、罰金につきましては二年以上経過した者で、就職とか立候補のため資格の回復が必要であることを理由として本人から出願しますならば、これを審査するということにしてあります。それからまた、もしその者が社会公共に貢献するところがあったならば、さっきの四年とか二年とかいう期間の経過を待たずして、本人の資格回復の必要があることを理由として復権の出願ができるようにしてございます。  それから最初に申し上げました特赦の出願をしたが、これが特赦に当らなかったというような場合でも、これを復権に回すことを考えております。  それからさっき御説明申しました復権令にいろいろと制約がございます。たとえば二回罰金になればだめだと、こういうふうに書いてございますが、その二回目の罰金というものについて、非常に情状酌量すべきものがあれば、復権令でこぼれた者を特別復権で拾うということを考慮してございます。  さらに最後に、この特別基準には珍しいことでございましょうが、付記と申しますか、つけたりをつけまして、この基準によって特赦とか減刑とか、刑の執行免除または復権を行うことが相当であるということに認められなかった者でも――この基準は御存じのようにいろんな制約がありますから、その基準で認められなかった者についても、なお恩赦を行うことが相当であるという者については、十分恩赦の対象として情状を考慮するということを付記に加えてございます。  以上が大体の概要でございます。
  35. 猪俣浩三

    猪俣委員 その基準についてちょっとわかりかねるのでありますが、四月十日を基準とする、四月十日までに刑の確定した者ということになりますと、裁判所がすでに結審をいたしまして、刑の言い渡しが四月二十日だというような場合の者は、その中に入らないことになるわけですか。
  36. 福原忠男

    福原政府委員 入らないことになります。
  37. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、四月十日、あすは休日になると思うのですけれども、たとえば中には上訴中の者が上訴を取り下げて、刑の確定をする者もあるだろうと思う。それは本日中にやらぬといけないことになるのですか。
  38. 福原忠男

    福原政府委員 先ほど私の説明が十分でなかったので、大へん申しわけありません。かりにもこの四月十日の前日までに略式命令の送達、それから即決裁判あるいは一審判決の言い渡しがあった者は、その確定のいかんを問わずに対象になるわけでございます。先ほど入らないと申し上げたのは、まだ全然そのような裁判の言い渡しがなかったというふうに聞いたものでございますから、もし一審判決がすでにある者なら、二審継続中に、二審の判決がなくてもそれはさっき申し上げた一審判決の宣告を受けるということになりますので、今後三カ月以内に確定するならば、この対象になります。
  39. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、四月十日までというのは、結局まだ一審の裁判中の者というわけで、控訴の者というわけじゃないのですね。そうすると控訴中の者は、四月十日から三カ月というと七月九日ですか、七月九日までの間に控訴審の判決が確定すれば、出願の権利がある、こういうことになるわけですか。
  40. 福原忠男

    福原政府委員 その通りでございます。
  41. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから先ほど聞き落しましたが、六カ月以内に出願すればいいというのは、どういう場合でありますか。
  42. 福原忠男

    福原政府委員 四月十日の基準日の前日までに有罪の裁判の確定している者は基準日から三カ月以内、そのときに言い渡しはあったけれども確定していない、四月十日以後に確定した者は六カ月以内、こういうふうに、出願の期間を大幅に二つに段落をつけております。
  43. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、控訴審で四月二十日に言い渡しがあり、そうして四月二十日以後において確定したという者は、六カ月以内に出願すればいい、こういうことになるわけですね。
  44. 福原忠男

    福原政府委員 その通りであります。
  45. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、四月九日に確定した者は三カ月だし、四月十一日なり十二日に確定した者は今度は六カ月だ、こういうことになるわけですか。
  46. 福原忠男

    福原政府委員 その通りでございます。一見奇異にお感じになると思いますが、さっき申し上げたように、基準日前の者はいろいろと準備その他もあるいは考えられますので、これから三カ月にし、これから後、少くともこれから三カ月以内に確定した者についての出願を考えたものですから、ぎりぎりのところ六カ月を認めればよろしいだろう、こう考えました。従って、御質問のように、四月のこの基準日の前後には、非常に時期的に長いのと短かいのと出て、あるいはと思いますけれども、それはさっき申し上げたように、事務の画一をはかった次第でございます。
  47. 猪俣浩三

    猪俣委員 今新聞あたりでも、相当この恩赦の問題につきまして、特に選挙違反の問題につきまして、非常に恩赦にすることに対して反対の意見が世論的に盛り上っていると思うのであります。そうしますと、四月十日の基準日前に確定した者、またその以後に確定した者でも、選挙違反につきまして、たとえば買収犯というようなものにつきましても、やはり基準としては買収犯なるがゆえに恩赦にはしないということじゃなしに、やはり特別恩赦の対象として、選挙違反の買収犯、悪質犯も考えておるということになるわけですか。
  48. 福原忠男

    福原政府委員 基準の文面上は悪質の者を除くというような趣旨のものは出ていないように存じております。しかし、御存じのように、特赦につきましては、犯情、行状、犯罪後の状況等にかんがみ、特赦に当る者について行うという趣旨でありますので、悪質の者を特赦するという趣旨のものはその基準の全文からはうかがえないことになっております。
  49. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、悪質なる選挙違反あるいは買収犯というようなものに対しまして、特別恩赦としてその対象に入れるかどうかということの判断は、結局あの審議会ですか、あそこの判断に全部まかせてしまうということになるわけですか。
  50. 福原忠男

    福原政府委員 今申し上げましたように、特赦は犯情、行状、犯罪後の状況等にかんがみ、特に赦免することが相当であると認められる者に対して行うのでございまして、その判断は一にかかって中央更生保護審査会において慎重審議の上なさることでございます。
  51. 猪俣浩三

    猪俣委員 この是非につきましては、大臣がいませんので事務当局にはこれ以上質問いたしませんが、こういう恩赦趣旨につきまして、一般の、つまり裁判になったような者に対しまして出願の機会を与えなければなりませんが、それはどういうふうにして周知せしめるのであるか。出願がなければ恩赦という手続は運ばれないわけですか。出願をさせるにはどういう――ほっておくのであるか、何かの出願を促すような行為があるのであるかどうか、そしてまたその手続は、各地方においてはどこがその出先機関としてやるのであるか、そういうことに対して伺いたい。
  52. 福原忠男

    福原政府委員 さっきもちょっと触れましたのですが、そのような基準というものを役人が持っておりまして、それを受けてから立つということではいけないので、今度の基準は初めてのことですが、官報にも載せますし、新聞にも全文を掲載していただくような措置を考えております。現在の恩赦法施行規則等を見ますならば、一般対象者が出願することができる制度がはっきりと明記されておるわけでございますが、必ずしも一般の方に周知徹底はされておりませんので、この特別恩赦基準を出します機会に、さっき申し上げたように情状恩赦というものもあるのだという付記までつけたのもそういう趣旨で、できる限りこの恩典に浴し得る者に対しての出願の機会を与えると申しましょうか、出願ということがあるのだということの周知徹底に努めたいと考えております。
  53. 猪俣浩三

    猪俣委員 地方におる人なんかの出願の届出の場所はどこですか。
  54. 福原忠男

    福原政府委員 事務的に恩赦の事務をつかさどりますものは、地方においては、各検察庁、それから刑務所に収容中の者につきましては、これは監獄の長、それから保護観察その他保護の措置を受けた者につきましては保護観察所長がこれをつかさどることになっております。従って、恩赦の事務につきましては、検察庁なり、刑務所なり、保護観察所というふうな法務省の出先機関に聞いていただくならば、直ちに了解できることなんであります。
  55. 小島徹三

    小島委員長 鍛冶良作君。
  56. 鍛冶良作

    鍛冶委員 今猪俣君からだいぶ聞かれましたが、もっと重大なことは、十日までに第一審判決を受けた者ということですが、私も実際当ってみてこういうことを漏れ承わったのはほんの二、二日前です。それから判決を急いでもらっても、事実上において十日までに判決のできないものが多々ある。そういうものは十日までに判決がないからといって、はまらぬではまことに気の毒だと思いますが、これはどういうことで御救済願えましょうか、まずそれを承わりたい。
  57. 福原忠男

    福原政府委員 この特別恩赦基準というものを公表いたしまして、そうして対象者を救うということを考えております。しかし、今申し上げたように、やはり恩赦の制度ですから、ある程度画一的な制度として規定を置かなければなりません。従って、御設問のような不均衡を生ずる場合も考えられます。それでさっき申し上げたように、付記として、この特別恩赦の基準に当らない者であっても恩赦を行うことが相当である者については、情状恩赦の対象として考慮するということを特記した次第でございまして、そういう情状恩赦による救済が考えられておる次第であります。
  58. 鍛冶良作

    鍛冶委員 抽象的にはそれでわかりますが、具体的にお聞きいたしたいのは、その点がどういうことならあなたのところでなにするか知らぬが、実際問題からすると、十日までに判決をしてもらいたいといって願い出たんだが、実際上、事実上において裁判所ではできなかった、こういうことを疎明もしくは証明すればいいのではないかと思いますが、それはどういうことでこの中へ当てはめてもらえるか、これもお差しつかえなければ、はっきり承わっておきたい。
  59. 福原忠男

    福原政府委員 御質問のように、そのような疎明資料があれば、それに越したことはございません。しかし、事案によっては、明らかに裁判が非常に遅延している。それからその地方の同種の事案というものが、たとえば特赦の対象に取り上げられているというものが、病気その他の事由で、その者の裁判のみがおくれたということが客観的にわかる事案があると思います。そういう場合には、特別に疎明資料がなくても十分考慮されることと考えられます。
  60. 鍛冶良作

    鍛冶委員 今の場合は、十日以前に判決をやってもらおうと思って努力したができない場合を私は問いました。ところが、世の中にはそういうことを知らぬで、これが十日に発布されてから、これはおれは十日前にやるんだった、こう思うて、それからあわてて裁判所に行く者もあると思うのだが、そういうものは一切救済できませんか、それとも何か疎明なり何かあれば救済できるか、これもこの際一つ明瞭にしておいてもらいたい。
  61. 福原忠男

    福原政府委員 そのような関係のものでも全く同様で、恩赦の対象になり得ると考えております。
  62. 鍛冶良作

    鍛冶委員 知らなかったということを何か申し出ればいいのですか、どうですか。これはやっていただけるだろうと思うけれども、この審査会で心証を得なければ大へんですから、どの程度のことをやれば得られるものか、もしおわかりになれば聞いておきたい。
  63. 福原忠男

    福原政府委員 この出願の場合には、その人が恩赦を受けたいといういろいろな理由がございます。さらにはまた、このような基準に乗れなかったというような酌量すべき事情もあると思います。そういうことはできる限り詳細にお書きになる方が、審査会の審査に際しては非常に参考になることでございますので、できますならばできるだけ書いていただく。別にそれは疎明資料とかなんとかいうやかましいことがなくとも、その点は客観的な事情で十分わかる場合もございましょうし、必ずしもやかましいものではない。むしろなぜこの恩赦の願いをしたかという事情がるる書いてあって、それがいわば審査会の委員の方々を胸打つというものがあれば、それは効果的だということが言えると思います。
  64. 鍛冶良作

    鍛冶委員 かって罰金以上の刑に処せられた者は、特赦にはまらぬとさっきおっしゃられましたが、それは何年前からですか。何十年前でもすでに一ぺん罰金を食っておればいかぬのですか。何年以内に罰金に処せられたということがありそうなものですが、これはどうですか。
  65. 福原忠男

    福原政府委員 この特別恩赦の基準の方にはそのような制約はございません。先ほど御説明したのは、復権令一般的に政令が出まして、そのまま復権する場合に、二度罰金があってはならない、こういう御説明をしたわけでございます。しかしその場合、復権令の場合でも二度というのは、御存じのように罰金は刑法の規定でもって五年たちますと言い渡しは効力を失う、いわゆる前科抹消の制度がございますので、大体においては五年以内の罰金というふうに考えられると思います。
  66. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 まず復権令の場合で一言お聞きしておきますが、まだ復権令の案をよく読んでいませんから、あるいはこれを研究すればおのずからわかることかもしれませんが、こういう場合、すなわち四月十日までにすでに罰金刑が確定しておって、そうして罰金を納める。すなわちその執行を終っておるならば、先ほどのお話のごとく復権することはわかりますが、もしも確定しておるけれども、罰金をまだ納めていない。すなわちその執行が終っていないというときに、四月十日後に罰金を納めた、すなわち刑の執行が終ったというようなときにどうなるのであるか。  それから、犯罪種類によりますと、御承知のように追徴金というのがあります。追徴金の問題の取扱いはどういうふうになるのか、その点を一つお聞きいたします。
  67. 福原忠男

    福原政府委員 最初の御質問の、現に有罪の罰金の刑が確定していて未執行である。これが基準日以後執行した場合はどうなるかという点につきましては、基準日から後二カ月以内にその執行を終りますならば、その執行を終りました翌日において復権することになります。  それから後段の御質問につきましては、これは刑事局長からお答えするのがいいと思いますけれども、追徴金につきましては、法制局あるいは刑事局ともまだ十分連絡はできていませんが、大体においては、追徴金の完納はしてなくても、罰金のみの執行が終ったならば、この復権令の対象になり得るというふうに大体考えられます。
  68. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 この裁判確定に関して、恩赦になるかならないかということは非常に影響するわけでありますが、四月の十日までに一回判決があって、それに対して最後の段階において検事が上訴しておる。被告人側としては早く裁判を確定さして、少くとも七月の十日までに確定をさして恩赦の恩典に浴したい、こういうにもかかわらず、検察官の方で上訴の取り下げをしないということのために、確定しないというような場合があり得ると思うのですが、しかし、そういうことがあると、この恩赦の精神に私は反すると思う。法務省あるいは検察当局において、そういう場合に検察官は七月十日までにその裁判が確定するように協力されるかどうか、されるような手はずになっておるのかどうか、そこのところをお聞きしたい。
  69. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 公平という立場あるいは復権令恩赦基準等の精神から、検察官は当然執行に当りましては今の点を考慮いたしまして、協力をするものと私ども確信いたしております。ただここで申し上げておかなければなりませんことは、基準日前に第一審の判決の言い渡しがあるということを前提といたしております。従って、控訴審は御承知のように事後審、いわゆる審査審でございます。従って、一審の判決の状態においてこの控訴で審査をするというのが建前でございますので、その判決基準日前に言い渡された判決に対して、その判決についての不服の申し立て検事側からいたしておる場合があるわけであります。この訴訟の形態から申しますと、そういうものについて、その判決当時の状態で議論をするわけでございますから、控訴を申し立てたことについていけないとか、あるいは取り下げろというようなことは、法律上は言えないわけでございます。しかしながら、また控訴審は、同時に継続審的な性格も一部分持っておるわけで、ことに法律に書いてありますように、刑の廃止とか大赦とかいうことがありました場合には、当然それを考慮しなければならぬということになっておりますし、これは昔からそういう規定になっております。それから昭和二十八年の改正によりまして、情状に関する資料をも控訴審において考慮することができるという規定に改正されております。そこで、検事控訴でございますが、いろいろ控訴の理由はあると思います。事実についての争いもありますし、あるいは量刑についての不当という点で争う場合もありますが、特に問題になりますのは公民権の不停止ということを理由にして検事控訴をしておるものが相当数あると存じます。このようなものが果して今の刑の廃止とかあるいは情状の資料というようなものに該当するかどうかということにつきましては、法律上若干の議論はあると思いますけれども、この復権令の精神等を見ますと、やはりそれらに準じて考えていい、つまり一審の判決以後において事情の変化というような意味においてこれは理解すべき事柄であろうと思います。そのような復権令なり恩赦基準なりが公表されましたあかつきにおいては、裁判所においても当然これらを控訴審において考慮するということになると思うのでございまして、そういたしますと、検察官としてもそれらの事情考慮することは当然なことなのでありまして、そういう点は良識を持って処理をするものと考えております。しかし、前段にも申しましたように、控訴審というのは一応原則としては一審の判決の当時の状況においての判断という建前になっておりますので、私どもから検察官に対してこうしろ、ああしろといったような指令めいたことは差し控えなければならぬと思いますけれども、その趣旨というものはよく伝えまして、善処をしてもらえるようにいたしたいと思います。
  70. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 なかなか詳細な御説明があったのですが、簡単にもう一度お伺いします。四月十日までに判決のあったものは、それが懲役刑に該当するものであっても、少くとも七月十日までに確定をすれば、それは審査の結果、精神としてはそれを特赦にしよう、こういうものだと思うのですね。そういうことになりますと、有罪になりかっ懲役刑に処せられても、それが特赦に該当するということがわかっておるのに、そうして被告人はそういうふうにしたいと念願しておるのに、ただいたずらに検察官が上訴したからというので、それを維持しておられるということは、全く私は恩赦の精神を無視するものだ、こういうふうに思うのですが、むしろ当らずさわらずでなくして、こういうときこそ私は法務省かもしくは検事総長から各検察官に対してその趣旨を徹底させるように配慮されることが相当だと思うのですが、そういうわけにいきませんでしょうか。
  71. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 先ほど詳しく理屈を申しましたが、そういう理屈があるので、改まった指令めいたものは差し控えた方がいいという考えを持っておりますが、事は今仰せのような次第でございますので、十分善処するというふうに私は確信いたしております。どうぞ一つそういう意味で御了解を願いたいと思います。
  72. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今そこの点をお尋ねしたのですが、今度はたとえばきょう一日というような判決の言い渡しというようなことはもうできないかもしらぬですけれども、こういう恩赦があるというようなことに関係して、先般も新聞等を見ますと、第一回の裁判が早くあるようにという裁判促進について検察官もえらく協力なさって、非常に恩赦に対して理解のある措置のように言われておりましたが、たとえばきょう一日そういう問題によってきわどい裁判があるかないかというような問題、確定するかしないかというような問題について、やほり今おっしゃったように、全国の検察官は協力するであろうというふうにお考えになっておりますでし、ようかどうですか。これは少しよけいなことですが、今までの配慮について、私はそれを伺えると思うから伺いたいのであります。
  73. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 協力をいたしておると思っております。
  74. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今度は事務の方ですが、保護局長にお尋ねします。監獄の長とか保護観察所長それから検察庁の地元の長等に恩赦の願いが提出されてから、そうして最後にその結論が出るまでの間、大体どういう手続を経て、そうしてどのくらいの日数がかかるのであるか、もちろんそれは特別の例外はあるでしょうけれども、大体の見通しというものをお示し願いたいのです。
  75. 福原忠男

    福原政府委員 もちろん御存じの通り事案が非常に多種多様でございます。従って、画一的にどのくらいの時間というようなものはなかなか申し上げられませんが、手続的には、出願がありますと、地元の検察官、あるいは刑務所に入っておる者でしたら刑務所の長、保護観察中の者でしたら保護観察所長がその出願の内容をよく調べて、それに対しまして意見をつけて、そうしてこれを中央更生保護審査会に上申する次第でございます。もちろん書式その他についてはそんなにやかましいことは言っておりませんので、できるだけその事案の真相が把握できるような措置をとっております。それですから、時間的には非常に長時間を要するのもございましょうし、あるいはきわめて簡明な事件なら非常に早いものもございます。それですから、今度の特赦の基準はおそでらくお尋ねの――ここにもあると思いますが、特赦基準の精神から言いましても、そういう慶事に際しての恩赦でございますので、これは審査会並びに出願を受けます各出先官憲もとにかくできるだけすみやかにその処置に当るということになっております。
  76. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 とにかくすみやかにやる、こうおっしゃるので、われわれとしては促進していただきたいということを希望するわけであります。  それからいま一つ復権令関係しまして、やはり事務の促進方に関してでありますが、御存じのように、地方選挙、参議院選挙等を目の前に控えておるわけであります。それでも地方選挙は、ある種類のものによりますと、非常にきわどい、復権すれば立候補でもしょうといったような人があって、しかもその立候補するための選挙名簿の確定といいますか、あるいは届出、それらに関連してここ二、三日というところに迫っておるわけであります。そこで、本日恩赦の点が閣議決定で明確になって、そうして明日この復権令が出る。あす復権令が出てから、罰金を例にとって申しますと、納めていなかったが罰金を納めて復権して、それから今度地方選挙にでも立候補しようという者があるとすると、その手続、訴訟の取り下げ、確定、罰金の納入、選挙関係の手続をしてということになりますと、よほど早くやらないと間に合わない。しかし、やりようによっては十分間に合う、こういうことになっておるわけです。そこで、裁判所の協力もさることながら、これはここで申し上げても、裁判所の方がいらっしゃらないので仕方がないのですが、しかし、それについても、法務省等から若干御交渉があるのか。たとえば検察庁等において罰金の納入に関しての証明書を出すとか、あるいは自治庁関係で選挙管理委員会の事務の取扱い等についても促進をはかるとかいうことを関係当局においてもう連絡がついておって、十分この精神が生きてくるというふうな結果が得られるかどうか、そこの辺のところ、もしおわかりでしたら、一つ……。
  77. 福原忠男

    福原政府委員 今の御質問につきまして、検察庁関係については刑事局の方でかなりいろいろな手はずをしておりますので、後刻刑事局長からお答えしたいと思いますが、その前に一言だけ保護局として申し上げたいことは、実は御質問のような点が今度の場合も一番問題になるかと思うのであります。そして先ほどお配りいたしました復権令なんかでも、非常にめんどうなことが書いてあるということをお感じになったと思います。実はそのめんどうに書いてあるのは、そのような意味から二、三日を争う選挙権、被選挙権の確保という点に留意しまして、そのような案文が出ているのだということだけ、一言申し上げたいと思います。というのは、御存じのように、他の犯罪につきましては、刑の執行を終りますと、これは少しもいわゆる公民権には影響がないのでございますが、公職選挙法違反の分に関しましては非常に影響がございます。ところが公職選挙法違反して一回のみ罰金に処せられた者を復権するといたしましても、その者に余罪があるかどうかということによって、その全面復権ができるかできないかということが非常に問題になるものですから、従って、それはせっかく復権令によって復権したのであろうが、あるいは余罪があるかもしれないということでもってその調査に非常に時間を要するわけであります。その調査をしないでも、その者の公民権というものは復権するぞと復権令に書いてございますと、少くとも選挙関係の権利の行使ということについては、この復権令一つでもって一応出先官憲としては了解できるわけでございます。従って、そういう精神で書いてございますので、これを受けまして、もっぱら問題は、検察庁が、その復権を得た人、あるいは公民権の回復を得た人をいかように自治庁の関係の選挙のレールに乗せるかということに問題があるわけでありまして、その点は刑事局長からお答え願った方が妥当かと思います。
  78. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 手続の煩瑣あるいは遅延のために、せっかくの恩典に浴し得ない場合が起っては非常に趣旨の没却をいたしますので、その点は私どもとして一番苦心をいたしておるところでございます。ことにこの案がなかなか確定いたしませんので、私どもも昨夜の省議で事務的にも最後の線が出るというような形でございました。従って、事前に十分打ち合しておくということは困難でございましたけれども、なお未定稿の状態で、幾たびか変更の電報を打ちながら、関係当局と連絡をとりまして、事務上の手違いが起らないように配慮いたしております。現に部内におきましては、検察庁関係その他監獄関係の職員との打ち合せ、あるいは裁判所当局に対しましても内意を――もちろん未定稿でございますが、そういうことで御協力を依頼する、あるいは自治庁関係との折衝におきまして、手続上の諸問題について私どももよく事情を明らかにしておくといったような処置を講じて参っております。そういうわけで最善の努力はいたしておりますけれども、なおそういうような点が起り得る可能性がないとも言えないので、数回にわたって通牒等も流しておる次第であります。
  79. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 この特別恩赦の基準の四のうで「事情やむを得ず公職選挙」云々というのがありますね。あれはもちろん刑の言い渡しを受けて確定して、まだ執行をしておらない者は恩赦になれば執行を受けなくてもいい、こういうことであると思いますが、そこで刑の執行を受けつつある者が恩赦の願い出をしたというようなときに、刑の執行をそこで停止をされるのかどうか。停止しないとこれは意味をなさぬと思うのです。それからまだ執行に着手されていない者については、出願をしたならば刑の執行はどういうふうにされるのか、すなわち出願と刑の執行との関係についていろいろな場合を御説明願いたいと思います。
  80. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 現に執行を受けております者について直ちに停止の措置をとるかどうかという点は、法律的にはその措置をとる必要はないわけでございます。従って、特赦が確定したときに当然放免ということになろうかと思いますが、執行前の者につきましてはどうか、これも執行を進めるということは、法律上は別に支障はないかと思いますが、しかし事柄の性質上、もし一方において特赦の審査をしておりながら、他面においてどんどん執行する、こういったようなことは不合理でございますので、私どもとしてはその点は通牒によりまして、恩赦の出願を受けました場合には、直ちにその旨を担当の検察官の方に通知いたしまして、執行については特段の考慮をするというような手はずをとっておるので、その点の間違いは起らないと思います。
  81. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今の前段の方ですね、刑の執行を受けつつあるでしょう。これはもう執行をしているのだから、出願したから停止しなければならぬというものではないかもしらぬ。ですけれども、執行に着手していない者は、執行に着手するなと言って、それを執行しないでおいて、特赦になったら許してしまうんでしょう。ところが執行中でまだ刑が残っておる者で、特赦の出願をして特赦になる可能性があるというような者を、そのまま刑の執行を続けたんじゃ、これは不公平だと思うのですが、そこのところ何か考えるべき道はないかどうか。私はやはり何とかそれを救う方法が必要だと思うのですが、いかがでしょう。
  82. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 これは事件によりまして、今お尋ねのような考慮を要するといったようなことも起ってくるかとも思います。しかし、特赦の基準は相当きびしいものでありますので、出願があったからといってすぐ当然特赦の恩典に浴するというような考え方をするのも、これまた早いので、その辺はたとえば条件になっておりますように、やむを得ずして犯行に及んだというような事情が客観的にもはっきりとうかがわれるような事案であるとか、あるいは現に公共生活の障害となっておるというようなことがはっきりとうかがわれるような例であるとか、また事案の性質上、犯罪の情状その他に照らして、なるほどこれは特赦相当だといったような特殊なケースにつきましては、それは今おっしゃるようなこともあるいは考慮される余地もあるんじゃなかろうかと思います。
  83. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 私の申し上げるのは、犯罪別に申し上げれば、たとえばこのうに当る公職選挙法違反のような場合を言うんですよ。それは公職選挙法で刑に着手しておらなかったから、懲役でも恩赦によって許されてしまうんですね。ところが不幸というのかどうか、裁判促進によって現に公職選挙法違反で懲役刑の言い渡しを受けて執行を受けている者がある、これが一番出るでしょう。そうして出願する。そうすると最後まで執行を受けさせられるということでは不公平ではないか、こういうことをお尋ねしておるのです。もちろん今おっしゃった答えの中には、そういう場合は何か考える道がある、刑の執行を停止されて適当な処置を講ぜられる可能性があるだろうということは言えますね。
  84. 小島徹三

  85. 小林錡

    ○小林(か)委員 私も大体よくわかりましたが、この復権令を見ますと、これは一人々々願いを立てるのではなくして、復権令というものの効力によって、罰金を完納しさえすれば当然復権するというわけですな。そうすると、基準日の四月十日以前、九日までに略式命令の異議申し立てて正式裁判をやっておるとか、あるいは控訴をしておるとかいうような事件を取り下げて罰金を完納するのと、それから基準日以後に同じようなことをするのとの差は、ただ復権のときが少しおくれるというだけでございますか。きょうまでに取り下げておかないでも、二日あとになれば二日、それだけおくれるというだけで、別にきょうあわてて取り下げる必要はないのですか、あるのですか。
  86. 福原忠男

    福原政府委員 御質問の通り、大して差はなくて、きょうまでに確定して執行済みならば四月十日に復権する、それから、四月十日以後に確定させて、そうして執行を終えたならば、それが三カ月以内ならば――もし確定しているならば二カ月以内、それから確定していないで確定させて執行させるならば三カ月以内になされれば、その翌日に復権するということでございます。日時の相違だけでございます。
  87. 小林錡

    ○小林(か)委員 そうすると、十一日に確定さして罰金を完納すれば十一日に復権するということになりますから、罰金を自分が行って完納したときが当然復権になるわけですな。そうすれば、手続は何も本人はしないでも、役所の方で全部やってもらえるのですか、その点を一つ……。
  88. 福原忠男

    福原政府委員 執行を終った翌日復権するのでございます。それから、復権は当然の復権でありますから、特別の役所の行為が要るわけではございません。ただ証明書その他の問題は別問題でございます。
  89. 小林錡

    ○小林(か)委員 そうすると、完納したという証明をもらって、その証明はどこかべ持っていって出すのですか。
  90. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 法律的な性格は今お答えした通りでございますが、その証明書をもらいまする理由は、もし立候補する場合は当然証明が要るわけです。それから選挙権を行使する場合には、御承知のように、基本人名簿というものに登載されていなければなりません。が、基本人名簿は選挙によって補充されることになっております。従って、その基本人名簿の作成確定を、十二月三十日から以後において公民権を停止した場合には、その人名簿に赤い札がつけてあるのだそうでございます。従って、もし復権をいたしましたならば、補充の期間内にその証明書を持っていけばその赤い札をとってくれて、従って選挙権行使の紙を配布する、こういうようなことです。
  91. 小林錡

    ○小林(か)委員 復権申請でなくて、証明申請ですね。
  92. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 証明申請であります。
  93. 小林錡

    ○小林(か)委員 わかりました。そうしますと、今言ったような基準日以前に確定し得るような状態にある事件は、急いで罰金完納をやれば、四月十八日に町村会議員の告示、町村長の告示がありますが、十分それに、立候補しようと思っても間に合うことになると思いますが、それで間違いございませんか。
  94. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 指定市以外の市の市長、議員のでございますか。これは四月十八日が告示のもので、三十日が期日になっているものでございますね。これはそれまでにやれば十分できると思います。
  95. 小林錡

    ○小林(か)委員 そうすると、私は罰金をとられる理由はよくわからないですな。国で収入があるからということになるかもしれないけれども、特赦の方は特赦という効力によって刑が全部効力を失ってしまうわけですが、体刑と罰金がくっついておった場合には、罰金を払わなくても、特赦ということで全面的な効力を失ってしまう。片方はもっと軽い犯罪であるのに、罰金を納めなければならないということで一ぺん確定しますから、やっぱり一つの前科というような形が残る。どういうわけでこれだけの差別をつけられたか、その点何か根拠はございますか。
  96. 福原忠男

    福原政府委員 御存じのように、復権というのは、恩赦法上、刑の執行を終らなければ復権はできないということになっております。罰金につきまして一律の復権をする場合に、その罰金の完納が条件になっておるのでございます。そして、特赦の場合は、それに比較いたしまして、さらに大きな恩赦の権能でございまして、有罪の言い渡しそのものの効力を失わせ、いわば赦免してしまうのでありますから、またそれだけ条件が重いのであって、一つ一つ事情を調べました上で、事情がどうしても赦免しなければならないものを特に特赦するのでありますから、従ってさっき言ったように、特赦に当らない場合に減刑したり復権する場合がありますが、復権する場合には、その者にやはり罰金を納めてもらうという形をとらざるを得ないという関係にあります。
  97. 小林錡

    ○小林(か)委員 私はあまり選挙法違反だけを聞いてはなはだなんですけれども、大体標準をそこに求めて質問をいたしたいのでありますが、罰金を一回しか受けていないような者は復権令でこういうふうにする。しかし罰金を納める。片方の方は特赦でいこう、こういうのだが、軽く見ておるならば、同じような特赦でいくわけにはいかぬものですか。一ぺん罰金だけのものは特赦でもって――罰金を払わぬでも、払っても、払ったものは取り返しはできませんけれども、特赦でいけない何か法律上の根拠がありますか。
  98. 福原忠男

    福原政府委員 御存じのように、今の特赦という制度は一つ一つ審査いたしまして、判決の効力を失わしめるものでございます。一律にそれをやるのをいわゆる大赦といいまして、大赦令を出さなければいかぬのでございます。先ほどから申し上げたように、特赦というのはかなり大きな効果を与えるものでございますから、これを一々やはり審査をしなければならな。それから片方の復権ならば、執行を終りますと、ある基準を置いてそのような復権令を出すことができる。それはただ一に事務的に、今度多くの選挙がございますから、その際の公民権の行使ということを考慮してかような措置を講じたのでございます。
  99. 小林錡

    ○小林(か)委員 他に罰金以上の刑に処せられているときはこの限りでないというのでありますが、あとになって――今のように罰金を完納さえすれば復権してしまうのですから、あとになって先ほどおっしゃったように余罪というか、ほかのものが出てきたというときには、これは取り消すことになりますか、当選無効になりますか、その点を……。
  100. 福原忠男

    福原政府委員 選挙法の解釈で、私ちょっと困りますが、復権だけの関係を申しますと、本来復権していないものを復権したような手続をしたということになるわけでございます。おそらくその場合は、選挙法の関係ではまたいろいろ問題がありましょうが、われわれの方としては結局復権を初めからしでいなかったのだという取扱いのほかはできないだろうと思います。
  101. 小林錡

    ○小林(か)委員 そういうふうになかなか厳格のように思いますから、この特赦のうですか、「事情やむを得ず公職選挙又は経済統制に関する法令に違反した者で」云々という規定がありますが、いわゆる実質上の罰金といえば戸別訪問とか形式犯というような軽いものが多いと思いますが、うのような、場合によっては買収といったようなものにこれは特赦の規定が適用されると思うのだが、そうすると、これは非常に範囲が狭いもののように解釈されて、数が非常に少いように思うのですが、どの程度までこれは行き得るものであるか。何かある程度の標準といっちや悪いが、目標をわれわれがつけられるような程度を示していただきたい。たとえば選挙法違反で体刑にはなっておるが、執行猶予はついておるというような場合は、情状しんしゃくする余地があるのですか。一方また何かその地方に有用な人で、公職につかなければならないというような立証をするとか、非常に窮屈なものであるのか、あるいはよほど広い、寛大な見方によって救っていただけるのか、この点を一つ。むずかしいことでしょうが……。
  102. 福原忠男

    福原政府委員 この基準の書き方というものは、文句をあまりしぼり過ぎますと動きませんし、そうかといって、あまり広げておりますと、基準の効果を生じない場合もございます。この場合特赦については事情やむを得ず公職選挙に関する法令に違反した者でということで、その「事情やむを得ず」にもピンからキリまであるのじゃないかと思います。それでおのずから、この犯情、行状、犯罪後の状況等にかんがみ、御指摘のように、その人がいわば社会公共的生活の上では大へん高いレベルの人だという場合には、かなり考慮されるものだと私たちは考えております。
  103. 小林錡

    ○小林(か)委員 そういう事情しんしゃくのいろいろな面を調べるためには、従来の普通の恩赦法などによってお願いをした場合でも、ずいぶん長いこと審査にかかるというわけで、これがたくさん出ると、今の中央更生保護審査会などは毎日のように開いてやっていただかないとなかなか進まぬだろうと思いますが、審査会というのは絶えず開かれるものですか、あるいは一週間に何度くらいときめて開かれるのですか。必要さえあれば徹夜してでもやってもらえるのか、その程度を一つ……。
  104. 福原忠男

    福原政府委員 審査会は平素は定例日といって一週間に二回ずつ開いております。しかし、普通の審査会と違いまして、予算措置その他でも大体十五日ないし二十日出ればよろしいというような予算措置が講ぜられてあるくらいでありまして、今度はさらにそれを日数の点なども加えまして、できる限り特赦基準を定めた趣旨に従って御期待に沿いたいというふうに事務的に考えております。
  105. 鍛冶良作

    鍛冶委員 ついでですから……。今のは特別恩赦のうの場合でしたね。これは公職選挙または経済統制に関する法令違反。その次の6は、「前各号に準ずる者」、こうなっておりますが、これはうにはまらぬでも、事情やむを得ず、もしくは社会公共的生活の障害となっているもの、こういうものも入れようという意味だろうと思いますが、この点いかがですか。
  106. 福原忠男

    福原政府委員 この特赦基準のうと6とを読み比べていただきますと御理解願えると思いますが、このうに「準ずる者と認めることが特に相当であるもの」ということは、やはり事情やむを得ず公職選挙あるいはこれと類似の法令に違反した者で、その刑に処せられたことがその人の社会的公共的生活の障害になっているというような場合をさすのであります。それですから、法令の種類が全く違う、いわば公職選挙あるいは経済統制と全然関係のない法令についても、その法令だけは違うが、ほかは同じだということで6に来るとはちょっと思えないように考えます。
  107. 鍛冶良作

    鍛冶委員 その次、さっき聞いておった罰金ですが、なるほど厳格にやるのだから、罰金は入るまいという御意見だが、そういう理屈は出ぬと思う。事情によっては罰金をまけてもいいのだ、しかし、よほどでなければないだろう、こういうふうに考えていいと思うのですが、これは絶対のものか相対のものかということを伺いたい。
  108. 福原忠男

    福原政府委員 先ほどもその趣旨で申し上げたのでありますが、特赦の場合には、罰金でありましても、執行を終らなくても、特赦の対象になり得ることが十分あります。ただ特赦というのは非常に程度の高いものですから、それにならない場合に、たとえば特別復権に回される場合には刑の執行が終らなければだめだということを御説明申し上げたわけであります。
  109. 鍛冶良作

    鍛冶委員 もう一つ重大なことですが、このたびの選挙のために急いで復権をやります。罰金の場合は罰金を納めればそれでいいのだ。執行猶予の場合、直ちに特赦申請をいたします。そのときに、黙っておれば今度の選挙に間に合うのですよ。それを急いで判決をやらさせますと、九日に判決が言い渡されますと、この二十三日に確定してなくなるのです。そのときに私は直ちに特赦の申請をさせますが、罰金の場合はやられたけれども、執行猶予の場合はやられぬということになると、よけいなことを教えて、早く判決させたがために、このたびの選挙に選挙権を失うことになります。これは先ほど言われたように、出ておる以上は考えると言うのだが、少くともこの選挙だけはさようなことがないことがほんとうだろうと思うのですが、どうですか。あまり詳しく言えないならばよろしいですが、実質的にはそうなりますよ。何か御考慮を願いたいと思います。
  110. 福原忠男

    福原政府委員 体刑の執行猶予の裁判が確定することのいわば可否ということでございましょうが、体刑で執行猶予の言い渡しが確定した上で、果して特赦になるものかどうかということの点については、私としてここでお答えできる範囲のことではございませんので、事案によると思いますから、御了承願います。
  111. 小島徹三

    小島委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  112. 小島徹三

    小島委員長 速記を始めて。  本日はこれにて散会いたします。     午後二時五十九分散会