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福原政府委員 今朝の閣議で、このたびの
皇太子明仁親王の御婚儀に当り行われる
特別恩赦基準及び
復権令について決定があったように聞いております。ついては、私どもの
手元にはその案文がございますので、今係の者が本省の方と連絡しておりますので、参りましたらお届けいたしたいと思います。(「大体の
説明だけやったらどうですか」と呼ぶ者あり)
それでは、さっき申し上げました
特別恩赦基準案と、それから
復権令案の
概要を御
説明申し上げたいと思います。
このたびの
皇太子御
結婚恩赦の規模といたしましては、今申し上げました
二つの
種類に分れます。
一つは、
一般恩赦あるいは
政令恩赦と称するものでございまして、その部分は
復権令を発布することに内定しております。
それから次に
二つといたしましては、
特別恩赦を考えております。
特別恩赦につきましては、
恩赦法上きめられております特赦、
特別減刑、刑の
執行免除及び
特別復権の四
種類をいずれも行うことに内定しております。
その
範囲について申し上げます。
範囲は、
復権令につきましては、これを従来の例の
対象者の
全面復権と申しますか、その者の人の資格に関する法令の
制約を全面的に回復する
復権と、そのほかに、このたびは一部
復権と申しましょうか、今まであまり例がございませんので表現はいささか熟しませんが、一部
復権と申しますのは、
公職選挙法に
違反する罪について同法の二百五十二条で制限を受けます
選挙権及び被
選挙権についてのみの
復権を
考慮いたしました。それを順次申し上げます。従来の全面的な
復権としましては
公職選挙法外四法、これは
国連恩赦のときに大赦になりました法条として掲げられている
公職選挙法、その次に、旧
刑法の公選の投票の偽造に関する罪というものが残っております。それと、
政治資金規正法、
地方自治法の七十四条の四の
違反、それから最後には
最高裁判所裁判官国民審査法の
違反、この五つと、それからあとは
食糧管理法、それから
物価統制令、
地代家賃統制令、
食糧緊急措置令、この四つが現在残っております経済統制に関する法令のおもなるものでございますが、この四つについて、すなわち前の政治
関係のものが五つ、経済統制
関係のものが四つ、この九つの法令について一回のみ罰金に処せられている者については、全面的にこれを
復権するという考え方でございます。しかし、これには
制約がございまして、もしその
対象者が、これらの罪で二回罰金になっていればこれは
復権しない。それから、これらの罪で罰金以上の罪、すなわち禁固あるいは懲役に処せられていれば、これも
復権しない。それから、これらの罪以外のたとえば
刑法犯というものについて罰金または体刑に処せられておりますと、これも
全面復権はしない。こういう形をとりました。ところが、御承知でもございましょうが、他の罪で罰金または体刑に処せられている場合は、ほとんど
公職選挙法の
選挙権ないしは被
選挙権の
制約は受けないわけでございます。くだいて申しますと、たとえば窃盗罪を犯したという人でも、その刑が終りますならば、別にその人の
選挙権及び被
選挙権については何ら制限はないわけでございます。それとこの場合には統一的に考えまして、
公職選挙法で一回罰金に課せられた者は、ほかに罪があれば
全面復権しないといたしますのは、いわば公民権の
制約のない罪があって、
公職選挙法の
復権まで妨げているということになりますので、さっきちょっと申し上げました罪の一部
復権ということを考えたわけでございます。一部
復権と申しますのは、今申し上げました九つの法令のうちで、
公職選挙法に
違反する罪について一回罰金に処せられたけれども、ほかにその他の罪で処分されているという
理由で
全面復権にならなかった者に対しては、
選挙権、被
選挙権のみは回復させるというのが一部
復権でございます。この場合も例外をわかりやすいようにはっきり申し上げますと、
公職選挙法で二回罰金になっている者は、この一部
復権も受けられません。それから、
公職選挙法違反で体刑に処せられている者も、この一部
復権は受けられません。それから、他の罪で現に刑務所に入っている者は、御存じのように
公職選挙法の十二条でございますか、あそこで
制約されておりますから、これは当然のことです。現在刑務所に入っている者は一部
復権させる
理由はございませんので、その三者は例外でございます。以上が
復権令の大体の
概要でございます。
それから次に、
特別恩赦につきましては、
皇太子明仁親王の結婚の儀に当り行う
特別恩赦基準というものを内定いたしました。この
内容は、このたびの御婚儀に当って、内閣が慶祝の意を表して、この基準によりこれらの
恩赦を行うのであるという
趣旨を明らかにいたしまして、それから七項目にわたる――さらに付記もつけてありますが、七項目にわたる基準を定めております。そうして、この対象になる者は、四月十日当日を基準日といたしまして、その前日まで――本日までに有罪の裁判が確定している者に対して行うということの原則をきめました。しかしこれに対しましては、いろいろと事務的に
検討いたしまして、非常に不均衡を生ずる場合がございますので、基準日の前日までに略式命令の送達あるいは即決裁判あるいは第一次の判決の宣告を受けておりまして、基準日から起算してこれから三カ月以内にその裁判にかかる罪について、まさに有罪の裁判が確定した者に対しましても、この基準を行うことができるという例外
措置を講じてございます。従いまして、わかりやすく申し上げますと、本日確定している者はもちろんのこと、あす確定した者というものも、実はこの点で、ただし書きで例外的
措置として救われるという形式をとっております。
それから、従来この種の特赦基準というものは、実は新聞などに発表しますのもその要綱的なものしか出しておりませんでしたが、このたびは、
恩赦制度そのものの基本の考え方なども
考慮いたしまして、かようなものをいわば役人が自分のふところだけに置いておいて、これを尺度にするというのではいかがかと思いますので、これはおそらくあす公式に発表し、さらに官報その他にも掲載することになると思いますが、その
趣旨の
一つに、かようなありがたい
恩赦の制度というものを決定して
対象者に浴せしめるというところから、本人たちに出願をさせるということをかなり大幅に制度として認めております。しかし、何分にも特赦でございますので、この機会にするということでございますから、いつまでたっても期限をきめないというのはいけませんので、一応本人から出願するのは、基準日までに確定している者は基準日から三カ月以内に出願をせよ、さらにもし基準日以後確定した者については基準日から六カ月以内に出願せよというふうにいたしました。この点は多少大まかな割り振りをしておりますけれども、たとえば確定してから三カ月ということでは、実は事務的にその点の
調査をすることが繁雑でございますので、三カ月、六カ月ということにしてございます。
それから特赦基準でございますが、これは少年と七十才以上の者については特別に考えておりますが、そのほかに、懲役、禁錮の刑に処せられてから執行を終り、あるいは仮釈放をされてから五年以上を経過して非常に行状のよいというような者で、その刑に処せられていることがその人の
社会公共的生活の障害になっているということを
理由にして出願すれば、これを
審査するという形をとっております。さらに刑の執行猶予中の者で基準日の前日までに猶予期間の二分の一以上を経過した者についても、同様改俊の情が顕著であるならば、その人が
社会公共的生活の障害となっていることを
理由として出願できるということにしております。それからさらに、この点はそれらの
事情と違いまして、公職選挙または経済統制に関する法令に
違反した者について、その
違反することが
事情やむを得なかったと認められる者についてはその者が
違反して刑に処せられているということが現に
社会公共的生活の障害となっているということを
理由として特赦の出願ができるように定めております。
なお、かように画一的に定めておりますので、これらに準ずる者についても、特に特赦を相当とする者については、同様の取扱いができることをきめております。というのは、たとえば先ほど七十才以上と申しましたが、六十九才何カ月という者がございましたら、そういう者は同じくこの
恩赦の恩典に浴するというふうな
措置でございます。
次の
特別減刑の基準は、これもやはり特赦基準には当ったけれども、まだ特赦が受けられないという程度の者についても減刑が考えられますし、そのほかには少年について特に減刑を考えております。
それから刑の執行の免除は、これは病気その他の事由で長いこと執行ができなかったり、あるいは執行に着手してないとか、執行を停止しているという者について、この際なおこれ以上まだまだ執行することができないとか、あるいは長い間停止していたので、この際執行するということはいかにも
社会感情に合致しないというような者については、刑の執行を免除するということをきめました。
それから最後は
特別復権でございますが、
特別復権につきましては、従来の例を参照しまして、懲役または禁錮に処せられてその執行を終ってから四年以上、罰金につきましては二年以上経過した者で、就職とか立候補のため資格の回復が必要であることを
理由として本人から出願しますならば、これを
審査するということにしてあります。それからまた、もしその者が
社会公共に貢献するところがあったならば、さっきの四年とか二年とかいう期間の経過を待たずして、本人の資格回復の必要があることを
理由として
復権の出願ができるようにしてございます。
それから最初に申し上げました特赦の出願をしたが、これが特赦に当らなかったというような場合でも、これを
復権に回すことを考えております。
それからさっき御
説明申しました
復権令にいろいろと
制約がございます。たとえば二回罰金になればだめだと、こういうふうに書いてございますが、その二回目の罰金というものについて、非常に情状酌量すべきものがあれば、
復権令でこぼれた者を
特別復権で拾うということを
考慮してございます。
さらに最後に、この特別基準には珍しいことでございましょうが、付記と申しますか、つけたりをつけまして、この基準によって特赦とか減刑とか、刑の
執行免除または
復権を行うことが相当であるということに認められなかった者でも――この基準は御存じのようにいろんな
制約がありますから、その基準で認められなかった者についても、なお
恩赦を行うことが相当であるという者については、十分
恩赦の対象として情状を
考慮するということを付記に加えてございます。
以上が大体の
概要でございます。