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1959-03-13 第31回国会 衆議院 法務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十三日(金曜日)     午前十一時九分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 鍛冶 良作君 理事 小林かなえ君    理事 田中伊三次君 理事 福井 盛太君    理事 村瀬 宣親君 理事 井伊 誠一君       綾部健太郎君    川島正次郎君       高橋 禎一君    竹山祐太郎君       辻  政信君    中村 梅吉君       馬場 元治君    大貫 大八君       中村 高一君    志賀 義雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣 青木  正君  出席政府委員         警察庁長官   柏村 信雄君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      江口 俊男君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木 才藏君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤譽三郎君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁警備局         警備第一課長) 平井  學君         文部事務官         (初等中等教育         局地方課長)  木田  宏君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 三月十三日  委員綾部健太郎君辞任につき、その補欠として  大久保留次郎君が議長の指名で委員に選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件  検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。  鍛冶良作君。
  3. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私は、大阪府におけるいわゆる勤評奪還闘争なるものの実情を聞きまして、どうも教育界においてかようなことが起るということは、まことにゆゆしき問題であると考えまするが、これについて教育行政上並びに警察及び検察行政上、相当関心を持つべき問題が多々あると思いますので、その点について質問したいと思うのであります。  そこでまず承わりたいのは、概略でよろしゅうございまするが、昨年暮れから奪還運動というものが大阪府内において熾烈に行われたようでありまして、校長が十三人もついに病院に入らなければならぬほどの哀れなものになった、それらに対する概略だけを一つ文部当局から承わりたいと思います。
  4. 木田宏

    木田説明員 大阪府の、今年の一月になりましてからの勤務評定問題をめぐりましての動きでございますが、すでに御存じのように、大阪教育委員会としましては、二月一日をもちまして勤務評定の方針を定めまして、そして二月末までに勤務評定書提出する、こういうことで進めて参っておるのでございます。ところが、提出の前になりまして、大阪市内また衛星都市等の多数の学校におきまして、勤務評定書を書くなと校長に対しそれぞれ組合関係者から強く働きかけられ、こういう動きが出て参りました。特に、一月の下旬から主として高等学校、これも府立高等学校大阪の市立の関係定時制高等学校等を中心にいたしまして、勤務評定書提出しないようにという校長に対する強い働きかけが繰り返されるようになって参ったのでございます。この校長に対しまして、——手元にある程度報告を受けておりますのは、主として府立学校についてでございまするけれども、たとえば一例として生野高等学校等の例を取り出してみますと、十二月二十四日の午後四時半から午後の十一時三十分ころまで、分会員をまじえて十人くらいの人がずっと話し合いに入る。一月の八日の午後二時から午後八時三十分まで、校長を囲んで、また出さないという校長の言質を取るための話し合いが行われる。このときも大体八人から十人前後の組合員校長に面会をしておるわけでございます。一月の九日には、引き続きまして午後三時から午後十一時まで、分会員十人ぐらい、また一月の十九日には午前の十一時から午後の十一時四十分まで、他分会もまじえまして三十人ぐらいで、校長を取り囲んで、出すなという動きを示しております。またこの学校におきましては、ハンストを一月の十九日にいたしております。そして校長から、最後になりまして、現在の事態を収拾するため、勤務評定提出期について校長会に提案があった場合には協力する、こういうふうな確認書を取りつける。これは生野高校で起りました一例でございますけれども、そのほか多数の学校におきまして、校長を取り囲んで、繰り返し深夜に及ぶ交渉をいたしたのでございます。このために府立高等学校校長だけでも延べ十八人が入院しております。先月の下旬でございましたが、私の方の係員が大阪に参りましたときにも、そのとき現在なお九人の者が入院しておる。そういう激しい長期間にわたる交渉等がございました関係上、この勤務評定奪還闘争につきまして、PTA関係者の方々あるいは中学校校長定時制高等学校長等等からも、こうした不当な人権侵害と思われるような事態を早く解消してほしい、このような状態で放置しておいてはいけないじゃないか、こういうような要望書意見書声明等も発表されておるような状況でございます。  大へんまとめが十分でございませんけれども事例の一端を申し述べまして、お答えといたす次第でございます。
  5. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私の手元へ入っておりまする情報によると、二月十日現在で、校長入院したる者が十三名、それからいわゆる大教組において、今報告のあったように、一月から奪還闘争をやるについて、闘争項目を掲げておるものが情報として私の手元に来ておりますが、これによりますと、職員会議拒否校務分掌の一部拒否校務運営委員の辞職、校長不信任決議日直宿直拒否生徒への呼びかけ、卒業式等準備事務拒否、かようなものが掲げられて闘争をやっておるようであります。これらのことから考えて、私の最もおそれるのは、十三名の校長入院して、授業及び校務に当れない。その上このような項目指令に基いて先生方闘争をしておるとすれば、職員会議拒否職員仕事をせなくなる。校務分掌拒否するということになれば、校務はとらない。運営委員会委員を辞職する。それから何か機会があれば、校長不信任決議をする。日直宿直拒否する。生徒への呼びかけ、これはどういうことか知らぬが、要するに生徒を使って闘争をやるということだろうと思う。ゆゆしき問題だが、それから卒業式準備をやらぬ。こういうことを身勝手にやっているとすれば、おそれく校務は行われておらないのじゃないかと思うのですが、その点うまくいっておるのか、うまくいっておらぬとすれば、どの学校でどういうような事態が起っておるか、これをまず聞きたいと思うわけであります。
  6. 木田宏

    木田説明員 大阪府の教育長等からも、学校運営状況についてどうかということを、二週間ほど前でございましたか、直接会って聞いたことがございます。御指摘のように、いろいろの闘争項目を掲げてございますけれども日常学校授業は、ある程度、正規教員がその時間差しつかえて、代行でやりくりをするというふうな動きはございますけれども、実質的には授業は行われておる。また、大阪府におきましては、隣の京都兵庫ほど事務拒否の問題も、表立って現実に困るというような事態には立ち至っておらないように聞いておるのであります。しかし、一部におきましては、御指摘のございましたように、校長がこのように多数入院をしてしまっておりまして、事実学校責任者としての仕事がとれない。従いまして、校長入院先から電話で事務担当者あるいは補佐の教頭等連絡をとりまして、できるだけ学校との連絡に努めておる。こういう状況でございますけれども、これらはいずれも正規校長学校管理体系としては、きわめて異例なことでございまして、その間におきます学校管理実情というものは、必ずしもいい意味で適正に行われておるようには考えがたいものがあるのじゃないかと私どもも思っておるわけでございます。ただ、外形的には、授業が行われ、一応なさるべき事務というものは動いておりますけれども、激しい学校実情等にありましては、そういうような報告から推定いたしまして、事実上責任者のないような形で、そういうことがともかく何とか動いているというところもある、こう判断しなければならぬような学校も出ておる、このように思っております。しかし、それらのごく激しい学校も、病気校長が休んでおりました学校の全部というほどでもないようでございまして、特に拠点を設けまして激しく闘争をかまえておるところにありましては、今御指摘のありましたような正規学校管理秩序がこの間乱れる。こういうことは否定できない事実だろうと思います。
  7. 鍛冶良作

    鍛冶委員 抽象的に聞いてはいかぬから、もっと具体的に承わりましょう。これは二月十日現在における報告でありますが、その報告によると、十三人の校長ノイローゼになったというか、恐怖症にされて入院しておりますが、その後校長のそういうことがふえましたか。それともいつでとまったか。それから入院するようなことがとまったとすれば、現在何人入院しておって、現在どういうことになっておるか、これを聞きましょう。
  8. 木田宏

    木田説明員 二月末現在におきまして、病気入院しておりました者が十名でございますが、そのうち一名はこの闘争関係なしに入院しておるものでございまして、闘争関係で二月末に入院しておりました者が九名でございます。そのときまでに疲労その他ノイローゼとか持病がひどくなったり、いろいろな病気が発生して入院いたしました者が、合せて十八人でございます。
  9. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると、十八名の校長が入るとすれば、ひとり校長だけじゃなかろうと思う。学校の中は非常に乱脈になったものと思われるのですが、それらの学校で、あなたの今の報告を聞くと、事務に多少の差しつかえはあるが、やったというのですか、それともどうにもならぬが、何とかかんとか学校だけはやっておったというのですか、われわれとしてはそんなにうまくやれる道理はないと思うのだが、その点ははっきり言うてもらわぬと困るのですが、どうですか。
  10. 木田宏

    木田説明員 これらの学校にありましては、府の浜田教育長から私聞きました説明によりますと、子供たちをほうりっぱなしにしてしまうということは起っておらない。その事態までにはいっていない。しかし授業が減ったり欠けたりするという事例は、正式に幾つかというところまで報告をとれないでおるけれども、これはやはりある程度起っておることは否定できない。しかしながら、学校にありましては、特に高等学校でありますから、特定先生が欠けた場合に、他の職員を割り振りして何とか監督だけでもやる、そういう処置をとっておる。従って、子供たちがほうりっぱなしになってしまっておるという状態ではないけれども日常のスケジュールのように、学校運営がきちんと行われておる、こういう状態でないことは認めなければならぬということを、責任者教育長自身が申しておったのでございます。学校校長等学校をはずしておりましても、校務主任とかあるいはこれを補佐する校務分掌等も一応きまっておりまして、その二席、三席の指示によって職員が教室をとにかく担当するという一種の慣例もできておるわけでございますから、そういう意味で何とかやりくりをして、つじつまを合せるということはいたしておるようでございます。しかし、私どもは決してそれが正常の状態であるというふうには考えておりません。が、ただ曲りなりにも、やりくりをいたしまして、子供たち授業とそれから最低の事務というものだけは、何とかしのいでおるというのが、教育長から聞きました学校実情のようでございます。
  11. 鍛冶良作

    鍛冶委員 まことにどうも情ないことだ。もっと私は具体的に聞きたいが、——中山先生が見えておりますが、中山先生からの話によりますと、闘争指令の中に書いてある日直宿直拒否先生方宿直拒否したために、宿直する者がない。それで父兄がかわって宿直をやっておる、ところが、日教組が飲んであばれ込んでくる。そうして学校の中で乱闘が起っておるという。聞くだにおそろしい実情であるが、さようなことはあなた方御承知でしょうか。御承知であったら、それに対してどういう処置をしておられるのか承わっておきたい。
  12. 木田宏

    木田説明員 日宿直拒否した学校が部分的に出たということも聞きました。それからの学校におきましては、校長とかあるいは事務担当者がかわって相勤めるという事態も起っております。しかし、御指摘のように、大阪府立高等学校父兄が泊ったという話は、実は教育長からまだ聞いておらないのでございます。
  13. 鍛冶良作

    鍛冶委員 高等学校でも中学校でも、小学校でも……。
  14. 木田宏

    木田説明員 小中学校では、市内小中学校にありましては、校長が大体無理をして、その日宿直拒否闘争の数日間相勤めたということを聞いております。父兄がかわりまして学校日宿直をやるということは、これは京都でそういうことが起ったというふうに、かつて京都の方からの報告は聞いております。大阪からは日宿直拒否闘争闘争期間中、大阪市内小中学校長が無理をして自分で相勤めたという話を聞いておりますし、府立高等学校についてはまだ部外者を入れて泊めるという話を聞いておりません。しかしながら、日宿直拒否教員として許されない行為でありますので、そういうことの起りました場合には、事実に基いて厳正な処置をとるようにということは、繰り返し関係者に私どもから申し述べており、指導をいたしておる状況でございます。
  15. 鍛冶良作

    鍛冶委員 中山先生大阪で現に聞いてきて、私に報告しておられるのですが港区の学校でそういうところがあるそうです。そんなことではいけません。さっそく調べて、しかるべき手を打ってもらわなければ、ゆゆしき問題だと思う。  その次に承わりたいのは、生徒への呼びかけという指令がある。これはおそらく生徒を使って闘争をやろうということだと思う。これは公務員法で最も禁止しておる重大なことであるのだが、かような実例はおそらく起っておると思うが、あるかないか、あったらどういうふうに現われておるか、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  16. 木田宏

    木田説明員 大阪府立学校の件につきまして、現在生徒への働きかけ状況をまだつまびらかに報告を受けておりません。これは生徒に対しまして、勤務評定問題につきましての考え方を、教師特定教師の目的のために説明をし、また指導する等のことは当然あってはならないことでございますので、そういう事実があるといたしますれば、さっそくに調査をこちらからも依頼をいたしまして、その事態を明確にしたいと思っております。
  17. 鍛冶良作

    鍛冶委員 あなた方もおそらくこの指令はごらんになっておると思う。こういう指令が出ておれば、必ずあるのです。私は今の答弁では満足できません。必ずあるに違いありませんから、その宿直の点とこの点は至急お調べを願って、明瞭に、いずれ承わることにします。  その次には、卒業式等準備事務拒否となっておるが、これをやれば卒業式はできないと思うのですけれども卒業式はうまくいっておりますか。おそらく乱脈なものじゃないかと思うのですが、これはどうですか。
  18. 木田宏

    木田説明員 この妨害のために卒業式自体が全然できなくなったというところまでは聞いておりません。しかしながら、新聞の報道その他を見ておりましても、卒業式やり方を従来と変える、そして教育委員会なり関係者——従来府立学校でございますならば、私ども教育委員会から告示等が出るわけでございますけれども、そういう関係者出席を求めないで、学校職員父兄だけでやってしまう、こういうふうな従来と異なった様式の卒業式を行なっておるという事例を一、二承知をいたしております。しかし、卒業式を妨害したために卒業式自体ができなくなった、こういうところまでは、現在大阪兵庫京都関係からまだ聞いておりません。
  19. 鍛冶良作

    鍛冶委員 形式のことなど——第一、校長入院しておれば、校長のない卒業式ですね。私はまことにどうも哀れな卒業式だと思うのです。あなた方はそうは考えられないのですか。ただ形式だけが変っておる卒業式だ、それとも残念ながらこういう卒業式だ、こういうことですか、どっちです。
  20. 木田宏

    木田説明員 今申し述べましたような学校卒業式状況は、これはきわめて残念な事態だと思っております。ただ、指令通りに必ずしも学校の現場は動いてないんじゃないかというように考えられるのでありますが、少くとも勤務評定のこうした騒ぎのために、生徒の一番大事な思い出に残る卒業式に、責任者校長たちが欠席をしておるということも、これは非常にゆゆしい問題だと思うのでございます。ですから、私どもといたしましては、このような事態学校の終業を迎えたということはきわめて遺憾だと思いますし、またそうした卒業式やり方自体につきまして、校長が欠けた場合には、教育委員会の規定によりましてこれにかわる責任者教頭あるいは校務主任等の手で整然と行われておるものかどうか、そういう点は個々学校ごとにやはり十分調査をいたしまして、もしそうでなくて、学校管理の筋をはずしたものがございますならば、これについてははっきりした措置をとる、こういうことも進めて参らなければならぬと思っております。現在まで聞いておりますところによりますと、校長が欠け、また来賓とか祝辞を読む人が従来と異なる、こういう学校が一、二十たことを聞いておりますけれども、それが果して校長の欠けた場合に、正規の者の手によって一応の秩序のもとに行われたものか、あるいはまた全然別個に組合員管理という形で行われたものか等につきましては、もう少し個々学校ごとに具体的な資料によって判断しなければならぬ。いずれにいたしましても、こうしたことのために卒業期に非常に異例な事態が起っておるということについては、きわめて残念だと思いますし、指導すべきことだろう、このように考えております。
  21. 鍛冶良作

    鍛冶委員 異例なことだというが、異例なことについて特に承わらなければならぬことは、この間ラジオ放送を聞いておると、どこか大阪辺の五十一才の主婦の方というので、「私たちの言葉」に投書がありました。私は聞いて胸を打たれたのですが、卒業式をやるときに、警官に立ち会いしてもらわなければ卒業式がやれなくなった、立ち会いしてもらってやった、なぜかというと、生徒先生袋だたきにする。日ごろ団結権々々々というて教えるものだから、生徒団結をして、日ごろ気に入らぬ先生をたたくのには、卒業式が最もいい機会だというので袋だたきにするそうです。これはその学校だけじゃない。その御婦人の言われるのは、昔から卒業式というものは、長年お世話になった先生謝恩会をやることが日本の例であった。しかるに今日袋だたきをすることが例になったとすれば、これは学校と言われますか、これで教育はいいのですかという放送でした。私は胸を打たれて、その話を今中山先生にしたら、大阪でやはりそれがあったのだそうです。そのようなことはあなた方のお耳に入っておりますか。これは私は大臣にぜひとも聞いてもらいたい。もし耳に入っておらぬとすれば、大へんなことです。ラジオ放送にもなったり、中山先生も聞いてきておられる。あるとすれば、一体こういうことでどうするのですか。主婦の方の言われる通り、これで学校と言われますか。一体こういうことで教育の府ですか。これについて、大臣がおられませんから局長から、事実があるのか、あったとすればどういうことをしておられるか、今後どうするつもりであるか承わりたいと思います。
  22. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 ただいま鍛冶委員の御指摘になりました事例につきましては、遺憾ながらあるということを申し上げなければならぬと思います。私どもも非常にこの点についてに憂慮いたしておるのであります。先般私のところへ参りましたある教師の匿名の手紙の中にも、るるそういうことが述べられまして、これは結局教師指導力が足らないのだということが結論されておりました。私どもとしては、現在のような組合のあり方にも非常に問題があろうと思います。教員教師としての権威と自信を取り戻さなければならぬと思います。今後私どもといたしましては、積極的に教員研修を強化して参りたい。本年も実は三千数百万の予算を計上いたしまして、新指導要領趣旨徹底を三年間に全国の先生に実施したい。こういう面から新しい教育に対する理想あるいは理念というものをよく理解させ、また教員の資質を向上するように、今後一段とこの面については強化して参りたい。特に橋本大臣もこの点については大へん心配されまして、教員研修を本年は第一義にやるようにということで、目下私ども準備をいたしておるわけであります。
  23. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これは先ほど言ったように、生徒働きかけをやったり、集団の力で、学校内で暴力をふるって学生に見せる。学生がならうのは当りまえのことです。まことに私は重大なことだと思いまするから、とくと一つ心してもらいたいと思う。  それから、闘争についての具体的な事例でありまするが、一例をあげてみますると、私の手元に入っている情報によりますと、こういう事実は間違いないことだろうが、情報でありますから、確めますが、中小学校長に対する暴行です。A中学校長の場合は、一月二十三日午前九時より同四時三十分まで、七時間三十分校長つるし上げた。B中学校長の場合は、一月二十六日午後二時から翌朝九時まで十九時間、集団軟禁と書いてあるが、おそらく軟禁ではない。便所へ行くのにもあとをついていく。C中学校長の場合は、一月二十六日午後三時から同七時まで。右三校ともいずれも二十数名ないし三十数名の組合員に取り囲まれて、校長室軟禁軟禁と書いてあるが、われわれはそうは認めない。ばり、暴言を浴びせられた。食事もとることもできないし、便所へ行くのも監視つきでやられた。そうして勤評書提出の確約をしなければ出さないといって責められた、こういうことです。     〔委員長退席福井(盛)委員長代   理着席〕  D中学校長の場合は、一月二十七日午後一時三十分より翌朝十時三十分まで二十一時間、校医から、あの校長はそんなことに耐えないからだであるから、何とかせいと言ったが、どうしても聞かない、こういうことが出ております。それからF中学校長の場合は、一月三十日午後六時三十分より同八時三十分まで。これは大したことはないが、ただしこれは重大なことは、この先生血圧が高いものだから、これをつるし上げていると危ないというので、組合員みずからが血圧をはかるなにを持っていって、そうしてはかってみておって二百二十八になったら、これは危ないというのでようやくやめたという。それでなかったら、おそらく一晩やられただろうが、それで短かかった。どうも戦慄すべき問題である。その次に、深夜十二時ごろまで組合員校長の自宅を訪問してこれを強要する。近所の旅館に宿泊して、早朝から詰めかけて、ついに校長だけでなく、家族のノイローゼをねらってやっている、こういう実例があります。これは中学校の場合です。  それから高等学校の場合は、布施、吹田、寝屋川、高槻、茨木等が非常に激しいのでありまして、ことに旭高校においては綾仁信治郎校長連続つるし上げにあって、三日午後三時から四日午前零時までカン詰にされた。引き続いて日曜日PTA会出席したところをつかまえられてまたまたつるし上げを食って、PTA役員が心配して警察連絡して、やっとこれを救出した。市岡、三国丘校長も同様な目にあって、いずれも入院している。こういう事実があるのでありますが、これらはすべて事実でございましょうか。
  24. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 私どももその事実はよく承知しております。
  25. 鍛冶良作

    鍛冶委員 すべて今申し上げた通りですね。
  26. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 はい。
  27. 鍛冶良作

    鍛冶委員 どうもまことに情ないと思う。この中の旭高校つるし上げには、荒木参議院議員も加わっておった。それからやはり旭高校において府教組五、六十名とともに、前代議士野原覺君を先頭に綾仁校長つるし上げて、ついに入院させた、こういうこともあるのですが、これも事実でございますか。
  28. 木田宏

    木田説明員 今御指摘のございました旭高等学校におきましては、この校長先生は非常に態度のはっきりした方でございまして、この校長は何人来てもがんばられたようでございますが、二月に入って連日組合員多数が学校に押しかけまして、二月の六日は午前八時から午後三時まで、八日は午後三時から午後十一時まで、九日はお昼過ぎから夜の十一時五十分まで、十日は午前十時から午後九時まで、いずれも三十人あるいは六十人くらいの組合員交渉いたしまして、ついにくたびれて倒れてしまったという状況を聞いております。またこの高等学校であったかどうかちょっと忘れたのでございますが、大阪府立校長に対してのつるし上げでございますか、説得でございますか、その長時間にわたる交渉の中に、今御指摘のございました荒木参議院議員並びに前代議士の野原氏が一緒に入っていた、こういう状況を聞いております。
  29. 鍛冶良作

    鍛冶委員 かような事実が確認せられたとするならば、われわれとしてこれは大へんだと思います。そこで私は聞きたいのですが、ここまで起って参りまする以上は、刑法上の問題になることは当然だと思うのですが、かような事実を——まず警察でしょうが、警察で御承知ないわけはないと思うのですが、御承知あったとすれば、これに対してどういう手を打たれたか、さらにその後どのようなことをして、かような事実を防御するための警察としての手段方法をとっておられるかをまず三、三お聞きしたい。
  30. 江口俊男

    ○江口政府委員 お答えいたします。ただいま鍛冶議員並びに文部省側のお話がございましたような事態につきましては、私の方も大阪府警から報告を受けております。入院校長の数とか各高等学校等に起りました事案等につきましては、ただいま詳しい資料を持ちませんけれども概略を申し上げますと、そういうことが行われましても、それが刑法に触れるかどうかという事柄については、なかなか証言を得ることがむずかしいのでありますが、目下鋭意調査中でございます。特に旭高校のただいま仰せになりました事柄につきましては、ある程度事案もはっきりいたしておりますので、取調べに着手をいたしたのでありますけれども入院中の校長さんが現在被害者としての取調べに応ぜられる状態にない。二月二十日の状態で病伏が必ずしもよくないというようなことで、これも取調べが進捗しているというわけには参らぬのであります。しかしながら、こういうはっきりした事案につきましては、警察ももちろん看過することなく、本人及び参考人等について十分な調査をいたしておるのでありますから、後日、法に触れる部分については、もちろん所轄署において何らかの処置をするものと私たちは考えております。  それから、その後どういう警戒をしているかというお話でありますが、これも確かめてみないとわかりませんけれども、特別な警戒をしているということは、現在まで聞いておりません。とにかく学校の中で、一応校長さんと先生方との間で——これは結果において非常に長くなった事例は、仰せの通りたくさんございますが、一応話し合いという形でやっておられるものですから、警察としてはその話し合いが何時間になったからこれがどうであるという一つの標準がないわけでございまして、遅々としてその処置がはかどってないということはまことに遺憾でありますけれども、そういう事情でございますから、御了承願います。
  31. 鍛冶良作

    鍛冶委員 どうも今のお話は、大へん遺憾きわまると思うのです。なるほど話し合いをしておるんでしょうがね、午後三時から翌朝午前十時まで、話し合いと言えますか。そんなことはだれが見たって——それから、おそらくこの綾仁校長だけではない、こういう事例があれば、あなた方のところに報告しておる者もあるだろうと思う。また報告せぬでも、大てい各学校に起っておるのですから、何かそれは方法がありそうなものだと思うのだが、まことに遺憾である。きょう、私はあるところから聞いたのですが、ある国から日本に対して指令が出ておる。日本を赤化するのは最もやさしい、日本にはなまじっかの民主主義がはやっておる、これが一番やさしいところだ、こういうことを聞いて私は感動いたしました。あなた方にしても、民主主義だとか何とかだからということでやられるかもしれないが、さようなことの予防なり取締りなりできない日本ですか。その点は今だけじゃない、何べんも私は言っておるのだが、長官、これはどうでしょうか。
  32. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 大阪のみならず、各地でいろいろそうした不祥な事案が起っておることは承知いたしておりますし、非常に遺憾に思うわけであります。ただ、ただいまのごとき長時間にわたって話し合いが行われ、結果的には面会強要であるとか、あるいは不法監禁であるとか、はなはだしきは暴行というようなところまでいっておるものもあると思います。しかし、そうした事案について、警察が事前にこれを防ぐ、学校内の事件について防ぐということは、非常に困難なことではないか。むしろやはり校長なり、あるいは関係者——それは今のように非常に不当な行動に出る側の人だけではなくて、学校関係者でそういう事態を知っている人もあると思います。従って、被害者または被害者の関係者から、もうこういう状況ではとうてい単なる話し合いと言えない、不法が行われておると認められるということで、警察に対する要請がありますれば、そのときに適当な措置を講ずるということも可能な場合が多かろうと思いますけれども、一々学校について、どのくらいの態様においてどのくらいの時間行われるか、あらかじめわからないのに、警察が事前にその状況について監視をしていくというようなことは、ちょっとどうかというふうに考えておるわけでございます。警察も注意しなければならぬ問題が多々あるかとは思いますが、関係者がもっと勇気を持って、事態の拡大せざるうちに措置を講ずるような態度に出ていただきたいというふうにわれわれは考えておるわけであります。なお、警察として、そういう問題の事後捜査等については、十分努力をいたして参りたいと考えております。
  33. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これは一つ学校にぽかっとこういうことが起ったならば、私はそれほど言わないのですけれども、何十という学校に及んでおるんですよ。一日でできたんじゃない、何十日も続いておるんですよ。そんなことぐらいを、警察ともあろうものがお聞きにならないことはないと思うのです。そうしてみると、あの学校で夜おそくまでやっておるということなら、やはりこれはそこらまで保護してやらなければ、警察の保護に私はならないと思います。なるほどあなた方の言われるように、学校におる者から、こういうことが起っておりますとあなた方に知らせればいいんだろうが、知らせなければ捜査がやれない、検挙ができないというものじゃないでしょう。大ていあなた方はそのにおいをかいで、いろいろな者を検挙することが上手な警察なんだから、こんなことをきょうここの学校で夜中にやっておる、のぞいてみればずいぶん校長をまん中にしてやっておる、それくらいのことは私はやってしかるべきものだと思うのです。そこへいって、今言ったように、なまじっかの民主主義の尊重ということがはやって、そういうようなことをやるとまた民主主義を害したとかなんとか言われる、そういう何というか、憶病と言っちゃ悪いかしれぬが、そういうことをおそれてやられる。それでは、こういう問題は切りなく起りますよ。その点をとくとお考え願いたいと思います。  そこで聞きたいのは、一月三十一日に大教組の幹部十六名を逮捕されているのですが、これはどういうことでやられたのか、被疑内容はどういうものであったのか、その点聞きたいと思います。
  34. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 昨年大阪教組が行いましたいわゆる休暇闘争、ことに十一月五日の全日十割闘争について、これを地方公務員法違反の容疑があるものと認めまして、十一月六日、九日の二回、押収捜索を実施いたしまして、多数の証拠品を押収したわけでございます。自来、その検討を続けて参りました。他面、参考人等も多数取調べを行なって、いよいよ関係者の直接取調べに入る段階になりました本年一月三十一日、被疑者として片山執行委員長以下十六名でございますが、逮捕したわけでございます。
  35. 鍛冶良作

    鍛冶委員 その結果は、それじゃどういうことになっておりますか、そして現在どういうことをしておりますか。
  36. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 現在は捜査中でございまして、いずれも近く何分の処分が出ると思いますが、地公法違反容疑によりまして逮捕したわけでありますけれども、逮捕の後、二月二日に検察庁から十五名につきまして勾留請求をいたしました。ところが同日夜、全員につきまして、裁判所は勾留請求の却下をいたしました。これに対しまして検察官は不服の申し立てをいたしまして、その取り消しを求めるための準抗告の手続をとりました。同時に、ただいま却下になった勾留について執行の停止を求めたのでございます。しかるところ、同日夜、午後十一時十分という時間になりまして、執行停止の裁判をしない、こういう決定をいたしたのでありまして、検察庁といたしましては、やむなく十一時五十五分までに全員の釈放をいたしたのでございました。しかるところ、この準抗告につきましては、二月五日になりまして、一名を除いて、十四名について検察官の申し立てをいれたわけであります。準抗告が立ったわけであります。そこで身柄の問題は、勾留すべきものということになったわけでございまして、二月六日収監をいたしたのでございます。その後、十五名のうちの一名は、病気のために検察官の方から請求して釈放いたしました。二月十一日になりまして、弁護人側からこの準抗告の決定、つまり勾留の決定に対しまして、特別抗告の申し立てをいたしました。同時に勾留をするという裁判の執行停止を求めたのでございます。裁判所におきましては、この執行停止の申し立てをいれて決定をいたしましたために、二月十一日十三名について釈放の余儀なきに至ったわけでございます。その後、右特別抗告は最高裁において審理をしておりましたが、三月三日、この弁護人側からの抗告は棄却せられたのでございます。従いまして、再び勾留すべきものという裁判が確定したわけであります。ところが検察庁におきましては、すでに相当期間を経ておりまして、今申しましたように、逮捕したり釈放したりということが繰り返されておりますので、すでにその間に七日間の勾留期間をとって、あと残っておりますのは三日でございます。こういうような事情を考え、あるは諸種の事情を考えまして、もはや収監をして取り調べる必要なしという判断をいたしましたので、その旨を裁判所に通知いたしました結果、三月六日、裁判所から正式に職権をもって勾留を取り消すという決定が出ました。今日におきましては、勾留問題はそういうことで解決をいたしておるのでございますが、それとは別に、捜査は順調に進行しておる状況でございます。
  37. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると、結局二月十三日に執行停止が決定してから自由な身になっておる、こういうことでございますね。
  38. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 二月十一日に釈放いたしまして、自来そのままになっております。身柄についてはそういことであります。
  39. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると、これは私の推量ですが、察するに、出た連中は大手を振って、先ほどから言った闘争の仲間に入っておるだろうと思いますが、その点はどうですか。あまりお調べになっておりませんか。これは警察庁でもよろしゅうございます。
  40. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 報告には接しておりませんけれども、おそらくそうであろうと思います。
  41. 鍛冶良作

    鍛冶委員 われわれは、裁判所の裁判の内容についてはくちばしをいれたくないのでありますが、どういう理由であったかはわかりませんが、私は遺憾だと申し上げざるを得ません。こういう者を出せば、この闘争の最中に——これは初めからやらぬならいいですよ。やっておいて出せば、だれだってなおさらいばって大手を振って歩くものですよ。いわんや、こういう連中ですから当然のことだ。そこで私は裁判の内容についてはくちばしをいれませんが、先ほど私が言うように、いわゆるなまじっかの民主主義がはやりまして、それがあらゆる面にいって、こういう悪いことがあっても制裁しないことが民主主義だ、またこういうことがあっても拘束せられないようになったのだということが出たとすれば、これは私はゆゆしき問題だと思うのでありまして、裁判所に対しては文句を言うわけにはいかぬが、検察官の方において、裁判所に対する疎明ですか、立証ですか、それが足らなかったのじゃないかと思うのです。これは今さら言うたってしょうがないけれども一つ裁判所とよほど緊密にこういう事件をやってもらいたいと思いますが、この点についていかが考えておりますか。
  42. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 身柄の勾留の問題につきましては、ひとり大阪教組の問題だけではなくて、あるいは佐賀の教組、あるいは東京都教組、和歌山の教組、福岡の教組、群馬の教組京都教組、こういうふうに全国的に日教組の事件が発生しておるわけでございます。そのつど身柄勾留の問題が裁判官と検察官の間で意見の相違を来たしましたことは、捜査を主宰しております検察官にとりましては、はなはだ遺憾に存じておるわけでございますが、これは見解の相違でございますけれども、検察官としましては、手続の許します限りにおいてその主張を繰り返して参りまして、その結果といたしまして、第一審の勾留請求が却下されましても、あるいは準抗告で立ち、あるいは今申しましたような最高裁への特別抗告に対して検事の主張がいれられたというようなことで、結果的に今幾つかの事件を通覧してみますと、大体半分以上は検事の主張が最後的には認められたということになりました。この点につきましては、今後もこういう問題は起るわけでございますが、検察官側としましては、あらゆる事情を具しまして、裁判官の理解を深めるようにいたしたいと考えております。
  43. 鍛冶良作

    鍛冶委員 先ほど私が警察庁長官に述べたと同じことで、これは大阪旭高校で起ったこれだけを持っていくとある程度考え方が違う。今日の大阪における状態がこういうことになっているのだ、その中の一つだ、こういうことになれば、よほど考えるところがあると思うのです。私は、ある事件でこの前聞いたんですが、一つの事件だけ見ているからそういうことになるので、現実の社会情勢、現実の犯罪傾向ということの全般がわかれば、そういうことはないと思われることが多々ある。若い判事なんかにはそれがわからないので、やられるのではないかと私は想像するのです。あなた方にそんなことを言っては悪いかもしらぬが、一つそれらの点を十分説明して、今後遺憾なきを期せられることを希望申し上げておきます。  それから、今国家公安委員長がおいでになったのですが、先ほど来警察の方々とお話申し上げたのですけれども、今問題になっておる大阪勤務評定奪還闘争実情をここで詳しく聞きまして、まことに戦慄すべきものがあると思うのであります。ことに私の手元に入っておりまする情報によると、赤間大阪府知事の言でありますが、大阪府においては、今までにない暗黒な面が現われて、常識では考えられない、自由というものが絶対にない。校長は内からも外からも責められて暴行脅迫を受けておる。これらの人権を無視した行為は絶対に許さるべきではない。秩序の維持から、勤務評定は一分一秒おくらせることはできない、こういう言葉を言っておるのです。これは先ほど来聞いたところによると当然のことで、私も赤間知事と同様の考えを持つわけです。そこで問題は、一つ学校だけでぽかっと起った事件であればそうは言わないのですが、毎日々々大阪の三、四校でこういうことが起っておるのです。大てい午後三時から翌朝の九時、十時まで何十時間と校長つるし上げられておる。監禁されて、ばり雑言と浴びせられておる。なぐったり張ったりしなくても、ばり雑言だって暴行だと思う。こういうことがわからないわけはないと思うのです。かようなことが起らぬうちに、警察としての保護の方法があると思うのですが、どうも起ってからじゃないと、やれないようなお言葉で、私はまことに遺憾だと思うのですが、この点に対して委員長としてのお考えをここで聞いておきたい。
  44. 青木正

    ○青木国務大臣 申し上げるまでもなく、警察警察法第二条の規定するところによりまして、犯罪の予防の責任を持っておりますので、犯罪が起ってからこれを法に照らしてどうするということよりも、むしろ私どもは犯罪が起る前にできるだけ予防の措置を講ずべきものと考えるのでございます。そういう意味におきましては、平素からいろいろ情報の収集等をやりまして、そういう事態が起るおそれがある場合に、できるだけそういうことのないようにしなければならぬということは当然だと思うのでございます。そういう意味におきまして、警察当局としても十分犯罪の予防についていろいろ配慮をいたしておることと思うのでありますが、大阪における現実の問題等につきまして、もちろん大阪警察本部長がそういう立場に立って犯罪の予防、さらにまたそういう事態が起った場合に対する措置等につきまして、全力を尽しておると考えるのであります。その点に遺憾な点があるということでありますならば、今後大いに注意いたしまして、万一にもそういう違法の事態が看過されることのないようにしなければならない、かように考えております。ただしかし、現実の問題につきまして、一々私どもが指揮命令すべき問題ではありませんので、私ども警察本部長を信頼いたしまして、警察本部長が全責任をもってそういう違法な事態等に対しまして対処しておるもの、また今後も対処すべきものと考えております。
  45. 鍛冶良作

    鍛冶委員 先ほど言ったのですが、私はあるところで講演を聞きましたが、ある国は日本を赤化することは一番やさしい、最も赤化する糸口になるところは、日本になまじっかの民主主義がはやっておるからだという、民主主義というものはお互いの持っておる権利を尊重せられることであるが、そのかわり、自分の義務、及び間違ったことがあれば十分責められることこそ民主主義の本領であると思うものであります。しかるにやはりなまじっかの民主主義でありますから、民主主義を振り回して、多少のことはやっても差しつかえないものである、権利をどこまでも振り回して、義務はそれほどやらぬでもいいという考えを持っておる者がある。またそういう主張におそれて、これをあまりやると民主主義で押えられはしないかと考えておる。それぞれの局に当る人にも、そういうことがあるのじゃなかろうかと私は憂慮する。あれば大へんだし、なければけっこうだが、こういうことを未然に防ぐことができないと大へんだと考えるので、この点は一つ委員長として十分それらの点に遺憾のないように、今後指揮されんことを望んでおきます。  それからついでに人権擁護局長がおいでですから伺っておきたい。先ほど来お聞きの通り状態だが、これに対して大へん人権侵害があるのですが、これに対して人権擁護局としてどういうことをやっておられるか。第一にこういう事実をお知りになっておるかどうか、知っておればどういうことをやっておるか、伺っておきたいと思います。
  46. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 この事件が大阪で起きておりますので、大阪の法務局で新聞情報その他の資料を集めております。それからさらに校長の奥さんたちに直接当りまして、その校長がどういうような状態話し合いをされたか、そういう点を今調査いたしております。本件につきましても、私は今ここでお聞きした程度のことは、大体新聞その他今までの大阪法務局からの情報でわかっておりますが、人権擁護の立場といたしまして、たとい監禁状態あるいはつるし上げがありませんでも、いわゆる話し合いの過程におきましても、人間の耐え得る疲労度の限度を越えたような話し合いを一方的に強要することは、やはり人権の侵害ではないかつと思うのであります。こういう観点からこの問題をもう少しさらに深く掘り下げまして、正しい事の真相をつかみまして、適宜な措置を講じたいと考えております。
  47. 鍛冶良作

    鍛冶委員 もちろん正しいのをつかんでもらわなければ大へんだが、こういうものが起ってから二カ月余になっておるのです。これは大阪だけではないのですが、人権擁護局は、われわれから見ると、歯がゆいところがあるのです。私はいつも言うのですが、あなた方人権擁護局という大きな看板はあげておられるけれども、それをやれるほどのものがないのではないですか。この点は率直に言ってもらいたい。これはいつも言いたいことなんだが、始終起るが、和歌山で去年からやかましく言っておるものが、いまだに何しておらない。これでは人権擁護局の効力がないことになりますが、この点はどういうことですか。
  48. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 それではこの際私局長としてはっきりしたことを申し上げます。よく人権擁護局は大きな看板を掲げて何をしておるか、こういう声が聞かれるのであります。しかし、私局長自身といたしまして、今人権擁護局並びにその管下の地方法務局の人権擁護機関の仕事を見ておりますと、こういう大きな組織に関連した事件ではなく、ほんとうに声のない、訴えどころのない人たちの人権上の相談あるいはその人権問題というものは、皆様の御想像外の相当数の事件を処理し、そしてある程度の効果を上げておるように私は確信いたすのであります。ただ、こういうふうな組織の問題、たとえば苫小牧の労働争議に関して発生した人権侵害の件、あるいは今御指摘になりました和歌山の事件、それからまた和歌山の特殊なある学校で勤評反対運動に参加しなかったある先生を、非常に仲間はずれにし、あるいはつるし上げたという事件があるのであります。これも私の方で大阪法務局に指示いたしまして、和歌山にも直接参りまして、いろいろその真相を調べさしておるのでありますが、何分にも私どもは強制調査権を持っておりませんし、ちょうどあの学校におきましては、関係先生方の大半が他に転勤をされましたり、あるいはこちらから参りましたときに出頭もされませんし、非常に調査に時間をとられたのであります。そして、なかなかその真相がつかみにくい点があるのであります。特に、今御指摘になりました大阪のこの校長先生のいわゆる話し合いと称する事件でありますが、こういう事件も非常に広範囲にわたりまして、両当事者、たとえば被害者の方から聞きましてもまた一方的な資料になりますので、いわゆる加害者と申しますか、人権侵害をしたといわれる方の方をまた調査いたしましても、いろいろと言い分が違うのでありまして、なかなか真相把握に努めるのが困難に思うのであります。ただ、私の方の人権擁護局仕事というものは、刑事事件のごとくある人に制裁を加えるというのが目的ではないと私は思うのであります。ただ、特別の事件を通しまして、こういう場合は確かにこれは人権侵害になる、あるいはこれは人権に関係があるという一つの自覚を持っていただくならば、ある程度私の方の局の仕事というものは達成できるのではないかと思うのです。あまりに人権擁護局調査あるいはその結果の勧告等が制裁的な意味を持ちますと、場合によりますと、これはほんとうの意味の人権の擁護、いわゆる国民の人権の正しい自覚というものを植えつける結果とは逆の効果を生ずる場合もある、私はこういうように確信をいたしておるのであります。外部かも見ますると、非常に人権擁護局仕事が手ぬるいというふうな感じを受けるのでありますが、私が今申しましたように、法務省におきます人権擁護局あるいは政府機関における人権擁護の仕事というものは、特定の人に対して一つの制裁的な勧告をし、あるいはその処分を求めるというのが本来の仕事ではなく、徐々に正しい意味の人権を国民が自覚していくような、こういうふうなじみな仕事であろうと私は思うのであります。その意味におきまして、大規模の集団的な人権侵害が起きました場合には、確かに私の方の職員の力では、警察あるいは検察庁のような徹底した事実認定ができないということは、今はっきり私から申し上げていいと思うのであります。けれども、私は現在のこの政府の人権擁護機関の与えられました予算あるいはその活動能力のもとにおきまして、できる限り正しい意味の国民の人権擁護に尽してきたい、こう思っております。
  49. 鍛冶良作

    鍛冶委員 御趣旨は賛成でありますが、ただ、いつまでたっても調べができぬのではいかぬと思うのですな。それはどういう方法で本人に自覚を促されるか知りませんが、国会に報告せられて、こういうことはいかぬのだということをはっきりさせて、初めてあなた方のやられたことの効果が現われることだろうと思うのですが、どうも前から、私だけではなく、ずいぶんいろいろな人が質問しているのを見ても、はっきりしたお答えがないし、調査の結果を承わることができないのを遺憾に思うのであります。本部はどうかからないが、地方には、私は見ているが、腕のきいた職員がおらないからでもあろうと思いますから、それならばそういうものをこの機会に補って、大いにやってもらわなくてはいかぬと思うのであります。私は特に申し上げたいのですが、先ほどから校長自身のことを申し上げましたが、家族に対するものもいろいろ情報がございます。校長が帰ろうとした途中でつかまっちゃって、そうしていじめられた。それで、うちへ入る前に、おそろしくて近くの交番へ保護を求めていったという事実。それから、その後身の危険を感じて都島署の保護を受け、知人のうちに姿を隠して、校務連絡をとっているという者もあった。それから留守宅は、組合員から朝、昼、晩と、日に三回のデモ的訪問を強制的にされて、家族は恐怖心におののいている、近くの公衆電話には見張りがついておって、校長連絡することはできないようにされている、家の周囲には、電柱その他に、いやがらせ、校長誹謗のビラが無数に張られて、そのために家人は外出もちゅうちょせざるを得ない状況になった、こういうようなことが幾つもあるようでありますから、これらのことはやはり早く調べて、こういうことをしてはいかぬ、こんなことがあっては大へんだということをあなた方の方でやってもらわないといけない。それをやらなければ、こういうことはやってもいいものだと思っているだろうと思います。そういうところから大いに活躍していただきたい、そうしてその効果を上げてもらいたい、こう私は思います。  大体私はこれでよろしゅうございます。
  50. 福井盛太

    福井(盛)委員長代理 志賀義雄君。
  51. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 きょうは公安委員長が出ておられますので、公安委員長に伺います。本国会再開後、参議院で亀田得治議員から緊急質問がありました大阪のスパイ事件について、昨日来柏村警察庁長官に伺いましたが、てんで話になりませんから、特に公安委員長である青木国務大臣に御出席願ってお尋ねをしたいのでございますが、亀田議員が申しましたところの、大阪平野署の辻井警部補という人が落した文書は、秘密警察糾弾共闘会議というものが大阪で四十の民主団体によって持たれた、その会議で全部こういうふうに印刷物にして出しております。これが警察の文書であることは内容を見ても明らかであるし、また大阪で社会党の調査団と私とが一緒に聞いたことによっても明らかでありますが、その中には、実に奇怪千万なことがたくさん書かれておるのであります。そのことについてしばらく伺いたいと思うのでありますが、この文書は、警察、特に現在の公安警備警察という戦前の特高警察と同じものでありますが、いかに社会秩序を破壊してまでも警備情報調査活動をやっておるか、またそのためには市民の秩序やその生活を破壊する、こういうことまでもやっておるのであります。その証拠が山ほどここに出てきたのであります。ことに金でもって団体員を買収し、あるいは個人を買収して、その意思に反してだんだんとこれを堕落させていく。そして人権を侵害し、警察法に規定されている目的でなく、警察自体が一定の想定した目的を作っておる、その警察目的のために、憲法はもちろん、あらゆる法律を踏みにじって、またその手段も選ばないということが暴露されておるのであります。この文書によりますと、警察がわざわざ社会の中を対立させる方向へ持っていく。今も鍛冶委員から大阪勤務評定反対闘争についていろいろと質問がありましたが、そういうこともこの文書によりますと——これは十月二十日の警察文書であります。「最近の労働運動、大衆運動の焦点は勤務評定反対と、警職法改正反対になっているので、対象に対して」、この「対象」というのはこれはスパイという警察の隠語でありますが、「対象に対して此の問題について関心を持たせると共に、積極的に話題にするよう指導すること」、こういうことになっております。その内容については次々に申し上げるのでありますが、一体公安委員長として、こういうふうに人を金で買収するとかいうことは、指示してやらせておいでになるのでしょうか。いわゆる闘争にかこつけて、これを軌道をはずす方向へ持っていくような、こういう指示をされておるのでしょうか、そのことを合せてお尋ねいたしたいと思います。
  52. 青木正

    ○青木国務大臣 申し上げるまでもなく、警察警察法の規定によりまして、犯罪の予防、鎮圧等の責任を持っておるわけであります。しかしまたお話のように、同時に警察というものはあくまでも厳正公正な立場においてこれが職務を執行しなければならぬこと、これまた言うまでもないことであります。同時にまた、警察官の職務執行に当りましては、警察法にも規定されておるように、あくまでも憲法あるいはその他の法律に適合するあり方でなければならぬことは、言うまでもないのであります。ただ前段申し上げました警察本来の責務を果すために、やはり何と申しましても、平素からいろいろ情報を収集するという仕事も、これは警察の使命遂行上当然やらなければならぬ問題となってくると私ども考えるのであります。しこうして、そのことのために憲法を犯し、あるいは法律を犯すということがあってはならぬということは言うまでもないのでありまして、あくまでそれは合理的または妥当な方法でやらなければならぬと私ども考えております。ただいま協力者を依頼していろいろ内部を撹乱するようなお話があったのでありますが、警察といたしましては、そういうような本来の使命を達成するために平素からいろいろ情報収集の仕事をやらなければなりませんので、そういう意味におきまして、警察官自体ですべてのことをやるのが本来の姿でありましょう。しかしながら、警察官だけの力をもってしてはなかなかそういう仕事もでき得ませんので、必要によりましては協力者の協力を求めて、そういう警察本来の仕事をやるということは、私はこれはそうせざるを得ないこと、やむを得ないと私ども考えるのであります。なおまた申し上げるまでもなく、現在の警察機構におきまして、公安委員会がそういう問題について指揮命令をするような立場に立っておりません。あくまでも警察法第二条の責務は、それぞれの地方におきましての警察本部長がその責めに任じてやっておるのでありまして、本部から一々指図をしてどうというようなものでないことは、これはもう御承知通りであります。
  53. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 この間私が質問したところによりますと、そういう活動の法的根拠として警察関係の人があげるのは、警察法の第二条にある、こういうわけであります。しかも第二条の後半は忘れて、前半の第一項だけを引用される、つまり犯罪の予防とか、いろいろ項目をあげておりますが、「その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもってその責務とする。」これが拡大解釈されて、何でもできるというふうに言われるのであります。今の公安委員長の御答弁の内容は、やはりそういうところに落ちるきらいがありますけれども、ただ警察庁の役人諸子とあなたの違うところは、その第二項を引用されたことであります。あなたの方が法律の解釈はだいぶましなように思われますので、特にお聞きいたしますが、その第二条第二項には、「警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであって、その責務の遂行に当っては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を湿用することがあってはならない。」こうなっております。そこで去る二月十七日に、参議院の決算委員会において岩間参議院議員が岸首相に質問をいたしましたところ、こういうことが出ておるのであります。「共産党にこのようなスパイを作って入党させる、それを慫慂して、金をくれ、これを育成していく、こういうような方針は、これはどういうことになるんですか。」という質問に対して、岸首相は「もちろん、政府はそういう方針をとってはおりません。」、こう答弁をされておるのであります。ただいまのあなたの御答弁を伺うと、協力者を得ることも当然やらなければならないことだと言われておるのであります。こういうふうに金をくれてスパイを養成する。そういうことは政府の方針ではないと言われている。あなたのお話を伺うと、そういうこともやむを得ない。警察庁長官式の答弁に左袒されているような面もうかがえるのであります。あなたは今公安委員長として、一々指示はしない、それは警察庁でやっていると言われるのでありますが、閣僚の一人として首相のこの方針をどうお考えでしょうか。あなたの今の答弁では、首相の方針に合致するのか合致しないのか、その点疑問がわいてきましたので、お伺いします。
  54. 青木正

    ○青木国務大臣 岸総理の答弁も、私のただいま申し上げたことも、私は矛盾はいたしていないと思うのであります。総理が答弁いたしていること——どももスパイを買収してどうとかいうのでないのでありまして、先ほど申し上げましたように、警察としていろいろ情報収集を平素からやる必要がありますので、そういう場合に協力者を求めまして、協力者に対しまして——協力者はその仕事をやるためにいろいろ費用もかかることでもありますので、それに実費弁償をするということ、これはあり得ることであると私ども考えておるのでありまして、初めから買収してどうとかいうふうにわれわれは考えていないのであります。
  55. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そこで問題が起るのです。買収というようなことはない、費用がかかるから出すと言われるのですが、この文書の十一月八日の頃によりますと、こういうことが出ておる。「報酬として二、〇〇○円手交すること、手交に際しては種々協力を願って交通費やその他に特に費用がかかるので、足しにして貰いたいと言って渡すこと、」これは今あなたの御答弁のようなことです。これ自体も問題ですが、そのあとでこう言っております。「断っても無理に渡してしまうこと、」とあるのです。これがちゃんと大阪警察本部の会議で下の警察官に対する指示としていわれておるのであります。現にそのスパイにされた全逓大阪東住吉支部の執行委員である上田利男君というのに聞いてみますと、断っても断っても無理に渡された、それで、渡された金を持っているうちにそれを使って、知らぬ間に自分は人間としてあるまじき堕落をして、皆さんに何とも申しわけがない、かように申しておるのであります。その点についていかがお考えでしょうか。
  56. 青木正

    ○青木国務大臣 警察の方針として、私はそういうことは本部としての考えとしてあり得ないと思うのであります。ただ当事者である辻井という人でありますか、その人が自分で協力者を頼むという場合に、実費弁償のお金を渡す。渡しましても、相手の方が受け取らない、こういう場合、しかしいろいろ費用もかかっておることであるし、できるだけ受け取っていただくようにしてもらいたいというようなことを、仲間同士といいますか、その辻井氏の気持としてそういうことを考えることはあり得ると思うのであります。しかし、警察の立場として、それを無理にでも受け取らせてやらせるというような考え方は、警察としてはとっていない。ただ辻井氏としては、自分がいろいろ頼んでおるので、ぜひとも一つとってもらいたいということで費用を弁償したいということは、自分としては考えたかもしれませんが、警察としてそういう方針で、無理に渡してどうとかというふうには私どもは考えておりません。
  57. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そういうふうに実費がかかるから云々というような、そのこと自体非常に問題でありますが、それはあとに回しまして、事実あなたが言われることと食い違ったことが大阪府警本部から指示されてやられており、本人もそういうふうに大ぜい人の集まった前でそういうことを告白しておるのであります。     〔福井(盛)委員長代理退席、委員長着席〕 社会党のここにおられる井伊、大貫両委員調査に行っておられます。その前に本人もそのように告白しておるのであります。本人が明らかに、もう人間としてあるまじき堕落をしたといって後悔しておるようなことをやらしておる。こうなりますと、警察というものは人間を金で買収してこれを堕落させる、こういうことになってくるのであります。今あなたは、そういうことを警察はさせておらないと言われますけれども、現にこういうことがあるのです。ここに生証人が三人もおります。また地元には大ぜいの人がおります。警察の目的を遂行するために、個々の人間はこれを堕落させてもいいというようなやり方では、警察そのものが社会秩序を破壊する元凶になるのであります。こういうことをしていい、そういう人間を堕落させてもいいというような法律的根拠はどこにもないでしょう。あなたとしては、そういうことがあったらやめさせる、そういうお考えはないのでありますか。事実ここにおる井伊委員も大貫委員も、上田本人から親しくそういうことを聞いておられる。私も聞きました。本人が、心にもない堕落をして何とも済みません、大ぜいの人の前であやまるようなことを警察がやる。警察はそういうことをしてもいいものでしょうか。その点御答弁願いたいと思います。
  58. 青木正

    ○青木国務大臣 具体の問題につきまして私詳細に承知いたしておりませんが、申し上げるまでもなく、協力者をお願いする場合、あくまでも合理的かつ妥当なあり方でなければならぬことは、言うまでもないことであります。
  59. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうしますと、今言ったような事実があるとすれば、これは正しくないことですね。その点御答弁を願いたいと思います。
  60. 青木正

    ○青木国務大臣 協力者を堕落させたかどうかというようなお話でありますが、私も具体のことは詳しく承知しておりません。承知しておりませんが、しかし協力者の方がこの問題についてどういうお考えを持っておるのかわかりませんが、警察として協力者を求める場合は、どこまでも合理的また妥当なあり方でなければならぬことは言うまでもないのでありまして、先ほど引用になりましたように、やはり警察法第二条の後段にきめられております通り、また警察官自体が第三条によって宣誓もいたしておるのでありまして、警察官はそういう協力者を求める場合に、あくまでも合理的かつ妥当なあり方でなければならぬと私どもは考えておるのであります。
  61. 大貫大八

    ○大貫委員 関連して。今の国務大臣の御答弁になお念を押しておきますが、あなたのおっしゃるのをお聞きいたしますと、協力者を求めるということは、あくまでも合理的、妥当である、こういうふうな表現をされておるのです。そういたしますと、具体的にこの大阪の場合には、この上田利男という人に対して、共産党に入党を何回か執拗に勧めておるのです。そういうことが、この警察の落された警備資料の中に何カ所も出て参ります。執拗に勧めたとあります。少くとも国家公務員に対して共産党に入党を勧め、なおかつ、たとえば警職法の反対については、特に仲間の依頼の度を増すように、激烈に反対の先頭に立てというようなことが書いてある。そういう指示をしておる。とにかく組合内部においては過激でも同調しろというような、そうして共産党員の信頼を得て入党ができるようにというようなことを何回か勧めております。そういうことが、あなたは協力者として一体合理的かつ妥当な警察のあり方と考えるかどうか、その点を一つお答え願いたいのです。
  62. 青木正

    ○青木国務大臣 よく事情も調べてみなければわかりませんが、辻井という警部補でありますか、それが協力者にいろいろ情報収集を依頼するその場合に、辻井氏が、その目的を達するために、自分の考えとしていろいろ見解を述べることもあり得ると思うのであります。しかし、だからといって、強制してどうというようなことは、これはそうすべきものではありませんし、私どももまた辻井氏が強制したとは考えていないのであります。ただ、情報収集の効果をねらっていろいろ自分の見解を述べたということはあるいはあったかもしれませんが、しかし入党を強制するとかどうとかいうことは、私どもはそこまでのことはやっていないと承知いたしておるのであります。もちろんよく調べてみなければわかりませんが、そういうことはすべきものでもありませんし、ただ自分の希望的な意見を述べたということはあるかもしれませんが、強制したというようなことはないのじゃないか、私はかように考えております。
  63. 大貫大八

    ○大貫委員 もちろん強制とは私申し上げておりません。強制ではないけれども、少くとも警察の落した警備係の文書によりますと、たとえば結婚の問題についても、結婚をさせると入党の意思が鈍るから、結婚についてはなるべくしないような処置をとることとか、警察処置としてそういうことが何カ所も書いてある。つまり国家公務員に対して、かりに強制しなくとも、入党を勧める。しかも、これは文書には書いてございませんけれども、直接上田本人から私ども聞いたところによると、もし共産党に入党したことが明るみに出て首になった場合には、警察は一生めんどうを見る、こういうことまで言うておるのです。それは上田だけの言葉ですからしばらくおきましても、少くともこの文書から見ましても、共産党に入党を勧誘し、そういう指示を何回かしておることだけは明白です。そういうことは、警察活動の情報収集の限度を越えておると私は思うのですが、その点の見解はどうですか。あなたは非常に注意をされて、調べなければわからぬとおっしゃいますが、かりにさような事実があった場合、強制はしなくとも共産党に入党を勧めるというようなことは、警察活動の情報収集の限界を越えておると思うが、いかがでしょうか。
  64. 青木正

    ○青木国務大臣 その落しました文書に書いてある文言等、私も二、三は拝見もいたしたのでありますが、辻井氏が情報収集の効果をできるだけ上げたいというような気持から、それをいろいろメモ的に書いたような点もあるようであります。しかし辻井氏としては、相手の人に対しまして、入党をしてくれというような強い気持で言ったのではなくして、自分の気持として、入党してもらえればもっと情報収集が容易じゃないかという気持から言ったのじゃないかと私は思うのであります。しかし、いずれにいたしましても、警察官として、情報収集に当っての態度といたしましては、何人が聞きましても妥当な、そしてできるだけ合理的なあり方でなければならぬことでありますので、相手方に対してそういう強い印象を与えるようなあり方であったとすればまことに遺憾でございますが、おそらく辻井氏の気持としては、情報収集の効果を上げたいというような気持から、そのことを検討会等でいろいろ述べたというふうに私ども考えておるのであります。
  65. 大貫大八

    ○大貫委員 これは情報収集に対する単なる辻井警部補だけの気持なんというなまやさしい問題ではないのです。三十三年七月十五日付の作業報告書によりますと、処置というところに、「学習には積極的に参加してうの条件を積み重ねていくこと、」——この算用数字でマルの中にうと書いておるのは、どうもこれは入党勧誘の符号のようにとれるのです。「うの条件を積み重ねていくこと、特に当分南野が学習を主宰するので南野に積極的に接近し、階級意識を認識させるよう対象を指導すること辻井」となっております。そしてこの作業報告書は署長まで決裁をとっております。——決裁というか、とにかく署長の閲覧した判があります。ですからこれは単なる辻井警部補の個人的な、個人の成績を上げようなどというものではないのです。そういたしますと、少くともこの作業報告書の一項目を見ましても、これは辻井警部補個人の考えじゃなくして、警察活動として入党を勧めるという動きをしておるようです。こういうことはどうですか。これはあなたが再々おっしゃるいわゆる合理的、妥当という限界を越えておるのじゃないですか。遺憾であるとかなんとかじゃなく、越えておるか越えていないかを一つお答え願いたい。
  66. 青木正

    ○青木国務大臣 この処置と申しますか、これは辻井氏が自分でこういうふうにやりたいということを書いたものと考えるのであります。しこうして、もしお話のようにこの考え方、またこの考え方に基いてやるとか、これが入党を強制するというようなことになりますれば、そうあってはならぬので、行き過ぎになると私は考えるのであります。そうでなしに、これは自分の今後の方針といいますか、それを辻井氏が方針として書いたもの、こう考えるのでありまして、できるだけ協力者が信頼を得て、完全な情報がとれるようにというような気持から、こういうことを書いてあると思うのであります。しかし、そのことが入党を強制するようなあり方になりましては、もちろんこれは行き過ぎというように考えるのであります。
  67. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 大貫委員に質問を続けていただくために、ちょっと御披露しておくことが話を進める上にいいと思うのですが、今の公安委員長の答弁では、この文書が何だか辻井警部補個人のもので、彼の裁量でやったように言われておりますが、そうではないのです。彼が不覚にも落した文書の中に大学ノートがありますが、それにはこういうことが書いてあります。警職法反対、勤務評定反対の闘争その他についてです。「事件は本部の警備課でやっているという考えがあって、署には関係がないという考えが基盤になっているのではないか。警備課の事件ではなく、大阪府警全体の事件である。このような状態では、署に調べさせるように指示するかも知れない。」こうなっておるのです。これは昨年の十一月二十七日、午前十時から始まった警備係長会議警備課長があいさつしている、こういうことを言っているんです。平野署だけの問題ではない、また辻井警部補だけの問題ではない。大阪府警全体の問題である。その意識が少い。署でやっているんじゃない、府警の本部の警備課でやっておる、こういう考え方をするのは間違いだ、そういう考え方を持っている以上、各警察署、警察署の警備課に対して、府警の上の方からそれをやるように命令する、こういうように書いてある。こっちは証拠物件を持ってやっているのですから、もう少し正確な答弁をして下さいませんか。
  68. 青木正

    ○青木国務大臣 ただいま御指摘の問題は、何か違反事件の問題らしいのですが、ちょっと事務当局に説明をさせます。
  69. 平井學

    ○平井説明員 私警備第一課長でございます。説明いたします。ただいま御指摘の問題は、普通の情報収集活動に関連しての問題でございませんので、その書類の写しによりますと、これは当時の勤評事件に関連して起りましたいろいろの捜索事件の具体的な犯罪事件についての捜査過程を述べて、現在約九十名の者で捜査を実施しておる、しかも、刑事訴訟法に基いて百人余りの者を取り調べておる、この問題については各署だけでやるべきものではなしに、もう大阪全体で行われた事件であるから、大阪府警全体の事件だというふうにここに書いてでございます。これは決して先ほど冒頭にお話しになりましたような情報収集事件の問題ではございませんので、すでにもう逮捕を目ざしてやっておる具体的な当時の勤評事件その他に関連の事件でございますので、多少関連が違うように存じております。
  70. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 またうまく引っかかったようだ。九月十五日の項を見ますと「作業推進のため指示事項は必らず励行させ、その実践状況を確認し指導すること」とあります。これはスパイ工作に関してですよ。いいですか。九月十五日のところを見てごらんなさい。さらに九月二十九日には「九・二六本部指導班との検討結果に基き作業を推進されたい、尚学習は当方からの働きかけもありこの際積極的に参加し、対象が」——スパイが「自ら学習するという態度で南野を終始援助すること。」どうです、勤評闘争だけですか。本部指導班というのは一体何です。
  71. 平井學

    ○平井説明員 指導班というものがありますことは、これは大阪府本部の説明によりますと、いろいろこういう捜査事件、あるいはその捜査事件に備えての事前の情報収集のために、第一線の署の者がいろいろ技術的にまずいこと、あるいは誤まったこと、あるいは行き過ぎ、こういうことのないようにするためにできておるもののように聞いておるのでありまして、ただいまのお話のような問題につきましても、当時、昨年大阪では一年じゅう、やれ、全逓事件あるいはまた勤評闘争、こういういろいろな事件がございまして、あるいはまた隣の和歌山県にも八・一五を中心とするようなあの大規模な事件がございまして、それに対して、大阪地評傘下の各種労働組合にも動員をかけられておるし、現にそういう方面へ大阪からも行っております。そういう問題がございまして、そういう事件に関連し、いろいろと事前の情報収集や事後の情報収集をやっておりまして、そういった作業について、本部の指導班はやはり重要な問題についてはいろいろ指導する、こういうことでございまして、必ずしも御指摘の問題が直ちに、そのいろいろな問題を直接指導するというふうには、私ども報告を受けておりません。
  72. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ますますあなたはわなにかかった。八月十四日にはこう書いてあるのですよ。「本部指導班との検討結果に基き九月中にう」つまり入党工作ですね、「うを達成するよう配慮し、そのため、情報の提供より」——これは他の文書と比較してそうなります。「情報の提供よりう達成」入党達成「の作為的工作に重点を指向し、南野との交渉状況を具体化し、うの手がかりとなる言動を指導し、早期う実現を期すること。」こうある。あなたの言うことはみなうそじゃないですか。
  73. 平井學

    ○平井説明員 お答えいたします。ただいま申されました点につきましては、決してさような事実が全部ではございまんので、これは平野署の辻井警部補の立場で、平素から大阪につきましては府本部にも指導班はございまして、いろいろ相談にあずかりますが、何もかもこまかい点についてまで全部やるような能力は、むろん少数の府本部の指導班にはあるはずもございませんし、それを全部大阪五十幾つの署に対してやるような立場にもございません。従って、その辻井警部補の立場で書いたこのメモ、この文書には、いろいろといかようにも解釈できる表現はございますが、とにかくこういう具体的な、どういう方法で協力者の方から情報提供のための御協力を願うというところまではとうてい手は及んでおりません。またお話のうという問題につきましては、これは私どもも実は存じなかったのでありますが、これは大阪府本部が何でも独自で考え出した符号だそうでありまして、盛んに入党々々とおっしゃいますけれども、これは府本部のこの符号を作りました趣旨から申しますと、共産党員たる相手に信頼されて、いろいろと情報をいただけるような関係を作ることである、こういうふうに私ども大阪府本部から報告を受けております。
  74. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 どうも言いのがれですな。いいですか、もう一度八月十四日のところを読みますが、そこの文書と照らし合せて下さい。「本部指導班との検討結果に基き」となっておるので、決して辻井警部補たちの個人的な計らいじゃないのです。ちゃんと本部の指導班との検討結果に基いてやったことでありますから、あなたの言われるようなことじゃないのです。大体、公安委員長、おわかりでしょう。こういうことまでもやらかしておったのです。どうです。つまり、あなたのおっしゃるように、辻井警部補という一警察官が、上司の命令の範囲を越えて、あるいはその方針を誤解してやったことではなくて、上から、署でやらなければ上からやらせるぞ、こういうように言われて、やっておることなのであります。警察庁長官がどういう入れ知恵をしたか知りませんけれども、事実はその通りなんです。これは他にもいろいろ文書はございます。福島県でも、最近スパイに入った者が、最後は冷酷に警察から突き放されている。上田利男に対しては、いよいよばれたら一生めんどうを見てやる。骨を拾ってやるとまで警備課長は言っておるのでありますが、そうでないことは福島の例を見ましても、冷酷に突っ放してしまう。カルモチンをたくさん飲んで自殺未遂までもスパイがやったのでありますが、そういうことになりますと、これは方々の、全国のいろいろな文書、事実、証拠に基きまして、これは警察の方針でやらせておるということが明らかであります。菅生事件にしたってごらんなさい。戸高公徳君と警察庁、警視庁、警察大学がぐるになって隠しておるところを、共同通信社の諸君によってつかまっておるでしょう。そういうこともあるのです。あなたは一々は御存じないかもしれませんけれども、公安委員長として、あなたの下にいるところの警察では、そういうことをやっているのです。決して一人の警察官の誤まった措置ではないのです。これが今度の書類ではっきり出ておるのでありますが、そういう事実が判明した以上、あなたは公安委員長として、こういうやり方に対して今後どういう処置をとられようとするのか、その点を伺いたいのであります。
  75. 青木正

    ○青木国務大臣 先ほど来申し上げましたように、警察は犯罪予防の見地に立ちまして、その使命を達成するために平素からいろいろ情報収集等の必要があることはお認め願えると思うのであります。しかしながら、そのあり方におきましては、私どもあくまでも厳正公正でなければなりませんし、それからまた合理的であり、妥当でなければならぬ。これは言うまでもないことでありまして、それを逸脱いたしまして、たとえば入党を強制するとか、結婚を妨害するというようなことがあってはならないのであります。末端の第一線の警察官におきまして、職務に忠実なるあまり、そういう行き過ぎというようなことがあってはならぬのでありまして、私どもといたしましても、あくまで警察官は警察法の示す通り厳正公正に、そうしてまた憲法はもちろん、その他の諸法令に反することのないようにせなければならぬ。私どもはさように考えております。またそういう方針で警察管理いたす考えでおります。
  76. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 最後のお言葉でそういうふうにやられるということでありますが、さらに問題を進めてみます。  岸首相は、岩間委員がこういう質問をしたことに対して、答弁しております。「警察行政をやる者が、警職法にあくまで反対して戦えというような工作者を送っておるというようなことについて、これはどういうふうに一体お考えになりますか。これもやむを得ざるところの、公安を守るための一つの任務である、仕方がないんだ、こういうふうにお考えになりますか、この点明確にお答え願いたい。」答弁は、「その事実は全然承知いたしませんが、もちろん、私は、もしもそういうことが事実あるとするならば、それは政府の方針でないということは言うを待たないと思います。」こう答弁されておりますが、この問答について、公安委員長はどういうふうにお考えでございましょうか。
  77. 青木正

    ○青木国務大臣 警職法改正につきましては、政府の閣議の決定によりまして法案を国会に提出し、私どもはその通過を願っておったのでありますので、末端の警察官がそれに反するようなあり方であってはならぬと私は考えるのであります。またそういうようなことについて、政治問題について警察官が自己の判断に立って反対だとか賛成だとか言うべきものでもないと考えております。ただ、この場合、私詳しくは承知しておりませんが、おそらく先ほどの場合と同じように、協力者ができるだけ情報を入手しやすくするためには、警職法に対して共産党その他各方面で強い反対をいたしておりますので、その協力者が情報を得るのに、相手方の信頼度を高めるためには、そういうようなことをやる必要があるというふうな考え、判断と申しますか、一つの方便と申しますか、手段と申しますか、そういうことでそういうことを言ったのじゃないかという気がするのであります。
  78. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それはいいことですか。
  79. 青木正

    ○青木国務大臣 あり方として、それを果してその通り実行したのかどうか、自分たちがそういうふうに考えたというだけのことをメモに書いたものかどうか、その点は私よくわかっておりませんが、はっきりとそういうことを相手方に反対を言って協力を求めたのか、あるいはまた自分の判断としてそうした方が協力を求めやすいんじゃないかというようなことをメモ的に書いたものかどうか、そういうことは私どもまだ詳しくわかっておりません。
  80. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 今あなたの言われたように、メモ的に個人の感想なり構想なり、個人だけの行動について語ったものではございません。というのは、十一月八日の作業報告書でありますが、佐藤署長、三浦署長補佐、辻井係長、北村係員の判も押してあります。その中に平野署の検討会のことがあります。個人の考えでございませんよ。検討した結果です。それにはこういうふうに書いてあります。十月二十日午前十一時から午前十一時三十分まで開かれた検討会においてこういうふうに言っております。「最近の労働運動、大衆運動の焦点は勤務評定反対闘争と警職法改悪反対闘争にしぼられているので、対象から南野に対して、全逓東住吉支部としても反対闘争を強力にくむ必要があるのではないかと進言すると共に、警職法改悪案について話題させること。」つまり警察官が、労働組合の支部に警職法改悪案に反対せよと進言する。さらに奇怪千万なことに、その次にこう書いてある。「そのため、作業員が警職法改悪案の」——作業員というのは警察の人のことですが——「作業員が警職法改悪案の改悪要点を説明し、ひいては警察国家の再現であり、治安維持法の復活であるという点に結論を導くよう指導すること。但し、此の場合でも、ながながと南野に説明するのではなく、直接労働運動に関係ある条項について、南野の意見を求めながら、座談的に話して、「民主勢力に対する反動の不当な圧迫だ、飽くまで闘わねばならぬ」、と怒りをぶちまけるような態度で結ぶよう指示すること。」こう言っております。あなたのお考えになるように、決して個人の意見じゃございませんよ。検討会でこういうふうにやれ、しかもおまけに態度のことまで、怒りをぶちまけるような態度で結べとまで指示しておる。こうなりますと、公安委員長、あなたは前臨時国会の委員会において、警職法は改めることが必要であることを力説されておりました。ところがあなたが公安委員長として指導しておられる警察は、個人でなくて検討会を開いて、こういうことをやっているのです。一体公安委員会の立場と警察庁の立場とそういうふうに違うのですか。一方は警職法の改正はぜひ必要だとあなたが国会で汗を流して弁明される、下の方では、警察官があれは警察国家の再現だといって、怒りをぶちまけるようにみんなに訴えろと言っておる。どっちが一体ほんとうなんですか。それを一つ伺いたいと思います。
  81. 青木正

    ○青木国務大臣 警察官がそういう政治問題についてやること自体についても考えなければならぬ問題だと思いますが、いわんや警察官が警職法反対を他に呼びかけて働きかけるというようなことがあってはならぬことは言うまでもないと思います。ただこの場合は、おそらく協力者の情報収集の効果を上げるためにこういうふうにした方がいいんじゃないかということを、警察の仲間同士で話し合ったことか何かで出ているのじゃないかと思うのですが、私は果してそういうふうなことで、具体的にそういう働きかけ警察官がやったかどうか、そこまでは承知いたしておりませんが、おそらく半ば仲間の間でそういうような話し合いをしたというようなことで出ているのじゃないかと思うのです。そうしてまた方便として、方便と言ってはあるいは語弊があるかもしれませんが、できるだけ協力者が情報をとりやすいようにというような考え方で、そんなことを話し合ったということと考えておるのでございます。それでなしに、現実の行動として警察官が警職法反対の行動をするというようなことは、私はあってはならぬ、かように考えております。
  82. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 これはただいままで申し上げました通り、私どもこれは大貫委員も井伊委員も参りまして調査いたしました結果、全逓大阪東住吉支部でこういうことが現に、警察官が指示されたことがやられておるのです。この中には、みんな集まった者の中で最も過激なことを言えとまで書いてあります。そうなってきますと、あなたのおっしゃるように、中だけでそういうようなことをやろうかといって相談したのではなくて、明らかに大衆運動に影響を与えておるのであります。全逓東住吉支部という小さい分会一つでもこれであります。これは全国にこういうことが行われている。鍛冶委員は先ほど大阪勤務評定の反対闘争について戦慄すべきということを何回か言われておりますが、大体戦慄すべきことを言うようなのは、その背後に何があるかということを聡明な鍛冶委員も少し洞察された方がよろしかろうと思いますので御参考までに申し上げておきます。こういうことでございます。御承知通り、あなたは方便ということを言われるけれども、最高裁判所の判例を見ますと、国家公務員ことに警察あるいは税関当局、特に警察でありますが、麻薬取締りの場合に限っておとり捜査は合法的であるということが認められていることは御承知でございましょう。そのほかの場合には、そういう判例は一切ございません。このことも憲法その他法律との関係で非常に重要な問題になって、論議のあったことでございますが、警察が金を出してこういうことをやる、こういうことは明らかに憲法及び法律の域を脱しておるものであります。あなたはよもや警察官がそういうことをやっているとはお考えにならなかったでしょう。あなたの今の答弁は、非常に重大な一項を含んでおります。そういう政治に介入するようなことを警察官がやってはいけないと言われるが、現にやっている。これが政治警察であり、これが秘密警察であり、これが特高警察なんです。特高警察、政治警察、そういうものはございませんと柏村警察長官が百万べん言ったところで、ちゃんとやっているじゃありませんか。社会党や共産党が政治警察と言う場合に、政府当局は、そんなものはございませんと言う。あなたの今言った政治に関与してはならないということをちゃんとやっているでしょう。これについて、公安委員長として、今後そういう政治警察的なことはやらせないという方針でございましょうか。またやらせないだけの確信がございますか。あなたのように、方便でやったのだろう、ただ警察署の中でそんなことをついうわさ話か何かでやったんだろうというような御認識では、きれいにいかれますよ。あなたを上に置いといて、下では勝手なことをするんだ。警察というのはそんなものですよ。もうちょっとしっかりしていただかないと困りますな。御見解いかがでしょうか。
  83. 青木正

    ○青木国務大臣 私申し上げるまでもなく、新しい憲法のもとにおける日本の警察制度というものは、あくまでも中立性を確保しなければいかぬ、こういうことで制度的にも現在のようなあり方になっておるのであります。従いまして、国家公安委員会といたしましては、常に新しい警察制度の本旨に沿いまして、警察管理いたしておるのでありまして、私どもは現在の警察が政治的な動きをやったり、また中立に反するようなあり方があってはならぬし、また現にそういうことはないと考えておるのであります。ただしかし、情報収集に当りまして、やはり警察といたしましては、平素から社会のいろいろな事象につきまして犯罪予防の必要上、ときに協力者を求めるということは、いろいろな刑事事件につきましても聞き込みをとるのと同じような意味合いにおいて、やはり情報収集上の必要もあると思うのであります。しかし、そういう場合におきましても、しばしば申し上げる通り、あくまでもそのあり方は政治的な中立を守らなければなりませんし、また憲法はもちろんのこと、その他法令に違反してもなりませんし、合理的なあり方でなければならぬ、かように考えるのでありまして、私どもはそういう立場に立ちまして、警察管理と申しますか、国家公安委員会は全体の警察管理する立場に立っておりますので、警察が本来の立場に立って、逸脱することのないように、十分注意をいたして参りたい、かように考えております。
  84. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 もう一つ非常に重大なことがあります。それは警察が、あなたの言われるように、協力者を得てそれに金品を供与する。その裏にもう一つこういうことがあるのであります。それは何か。そのスパイにされた人の結婚を破壊しております。これも文書にはっきり出ております。文書の七月三十一日には、「対象の結婚問題については、種々相談にのってやることは必要であるが、作業遂行の面から考慮して、」スパイ活動遂行の面からして「破談になる方がプラスとなるので言動には特に注意すること。」こういうふうになっております。八月二十五日の項には、「結婚問題で相談をしたり、意見を求めたりすること。これは信頼と親密度を急速に高めるために役立つので、会議後にビヤホール等に誘うことが一番よい……」ビヤホールに誘って酒を飲ませて判断力の多少鈍った、あるいはゆるんだところで結婚問題を話し合う。そうしてその結婚をぶちこわしていく。こういうことは一体警察活動として許されるのですか。いかがでしょう、公安委員長
  85. 青木正

    ○青木国務大臣 結婚を妨害するようなことをしては、もちろんこれは許さるべきことでないということ言うまでもありません。しかし、辻井氏の場合、私どもの現在まで報告を聞いたところによりますと、いろいろ結婚問題についての自分たちの考え方と申しますか、いろいろ言ったことはあるかもしれませんが、しかし、そのことは結婚妨害というようなことでなしに、軽い意味で自分の気持をメモに書いておるのであります。強く結婚を妨害するというようなあり方ではなかった、こう私どもは聞いておるのであります。強く結婚を妨害するということであっては、もちろん許さるべきことではない、かように考えております。
  86. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 もし係員の一警察官北村君がそういうことをやったのなら、あなたのおっしゃるような場合もあり得るでしょうが、それに対して佐藤署長以下平野署の責任者五名が判を押した文書の中に——作業報告書として北村警官が出すのではなくて、出した報告書に対する処置として書かれておるのです。上司から書かれておる、こういうふうになっておりますものに、対象の、つまりスパイの結婚問題はできるだけうを実現してからするように作業を進めていくこと、つまり入党する前には結婚してはいかぬ、そのあとにしろということをちゃんと上官が指示してあるのです。あなたのおっしゃるように、一警官の個人的意思ではないのです。しかも先ほども読み上げましたように、八月十四日の文書には、「本部指導班との検討結果に基き九月中にうを達成するよう配慮し、」こういうふうになっております。つまり本部指導班と相談の上こういうことが行われているのでありまして、決してあなたのおっしゃるようなことではないのであります。警察がこんなことをしていいもんでしょうか。一警察官の個人の場合は行き過ぎがあろうとか何とかあなたは言われますけれども、その点お答え願いたいと思います。
  87. 青木正

    ○青木国務大臣 いろいろ御引用なさいます書類に処置とかいろいろ方針とか書いてあるようでありますが、それはどういう性格と申しますか、私わからない点がありますが、この辻井氏が処置として書いているのは、辻井氏個人の考え方と申しますか、それを書いたもので、署長の判等がありますが、これは書類を完結したということでそれを見ているというだけで、謀議に使ったものと私どもは考えていないのでありますが、その実際の文書の形式等につきまして、事務当局から一応説明を聞いていただけばわかると思います。
  88. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 いや、事務当局はよろしいです。先ほども申しました通り、あなたが言われるのはいいですが、そこであなたが今言われたことで重大なことが一つあります。というのは、署長の判があっても、それは見ただけということになると、署員がそういう人権じゅうりんにわたる非常な重大な問題をやるようなことが書いてある書類を見て判を押しますか。そうしますと、これはめくら判になります。公安委員長として、警察がこういう結婚破壊をやるようなことの書類を見ただけのしるしとして判を押していいことでしょうか。そういうふうにあなたは公安委員長、国務大臣として、警察指導されておりますか。重大問題ですがね。日本のお役所はとかくめくら判を押すというので問題になっているのですが、結婚妨害の文書を見て判を押してあるのは、それはやれと言ったのではなくて、ただ見ただけだ、そういう重大なことをやっている。見ただけで判を押して済むことでしょうか。その点を伺います。
  89. 青木正

    ○青木国務大臣 おそらく署長といたしましても、結婚を妨害するというようなあり方であったら、それは署長としてそういうものを認めてはならぬと思うのであります。これはおそらく辻井ですかが、協力者が仕事をやってもらうのに、結婚をもう少し伸ばしてくれればいいがなという気持を書いたのではないかと私は思うのでありまして、強制的に強く妨害をしようというような考え方に立っての問題ではないのではないか、私はそう見ているのであります。
  90. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ところが、上田利男君が、最初の人は警察の妨害で破談になったのですが、ある紡績会社に勤めておる遠縁に当る女性とまた二度目の見合いをしました。ところが先方から何も言って来ないのでまとまるかと思っておったら、平野署の方で何と言っておるか、非常にあくどいことを言っております。君は男前だし、女は幾らでもおるから、別にあせることはないぜ、前回はうまくいかなかったのだから、あせらずによく考えた方がいい。そうしてそのあとにこういうことが書いてある。これは原文のままです。「結婚を見合はすよう方向へ持ってゆくことが必要と思われた。結婚したらう作業の障害となる」、入党工作の障害となる。お前は男前だから女は幾らもおるから結婚するなというようにおだてるようにして、腹の底は今結婚されたら、せっかく金をかけたスパイが入党工作をやらなくなる、党へスパイとして入れるのに障害となる。だからこういううまいことを言って、お前は男前だからというように言っておだてて、一人の青年の結婚を二度も破壊しておるではありませんか。あなたのおっしゃるような甘いものではございません。公安委員長、今この「秘密警察の全貌」という本が売られて、これに全部出ておるのですから、御研究下さい。こういうことを言っておるのです。公安委員長の立場として、こんなことがあってよろしいものでしょうか。そこのところをお伺いして最後の一問に入ります。
  91. 青木正

    ○青木国務大臣 結婚妨害ということは、人権じゅうりんの重大な問題であります。大阪人権擁護局においても、この問題については十分いろいろ調べたようでありますが、人権擁護局側の見解も、そういう結婚妨害の事実はないというふうに私どもは聞いておるのであります。しかし、御指摘のように、結婚妨害というようなことがあってはなりませんので、そういうあり方につきましては、今後私としても注意しなければならないと思います。この問題について大阪人権擁護局におきましては、取り調べました結果については、結婚妨害という事実はない、こういうふうに私ども承知いたしております。
  92. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ところが、法務省の人権擁護局長は、大阪法務局からそういうふうに言ってきた、つまり結婚妨害という項についてだけは、事実として認めがたい疑いがあるというふうに言ってきたということを報告されております。それについて人権擁護局長は、そういう報告であるが、その点は疑わしいので、なお人権擁護局として調べたい。これは速記録を見ればわかる。これは柏村さん、あなたが出てないときのことですから、そこで耳打ちしてもだめです。ちゃんと速記録に書いてある。あなたの言われるようになまやさしいものではないのです。初めはこんな書類は全然事実無根だと言っておりましたが、辻井警部補が自分で落したものだからといって、返してくれと言ってきた。それで今度は全逓東住吉支部の方で証拠保全の手続をして、今裁判中にあります。もしこれがいいかげんなものであれば、証拠保全をいたしません。そういう手続までもとっております。返されて辻井君の手に返ったとたんに、その証拠保全の手続が裁判所によってとられた。  最後に私がお伺いしたいことは、この問題は、まだ公安委員長も十分御研究になっていないようでありますから、今後御研究を願いたい。この問題についてはいろいろ重大な問題が次々に起ってくると思いますから、もう少し御研究願った上で、また機会をあらためて——社会党の坂本泰良君も質問の意思を持っておられますし、次の機会に譲ることとします。問題は、警察法第二条をよく警察庁当局の方々も引用されます。あなたもきょう引用されました。しかし、これは警察の目的を規定したものであって、その目的に従って警察がどういう行動をやるべきかということは、この第二条には書いてございません。六法全書を見ましても、第一条、第二条というあたりは、警察の目的ということが書いてございます。その警察の目的の中に「個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもってその責務とする。」ということが書いてあります。警察当局が言われるように、第二条第一項を利用して、警察がやれば何でもやれるという問題ではないのです。警察法に基く警察活動としては、一般的には警察官職務執行法で、御承知通りどういう行動をしたらいいかということは規定されております。さらに刑事上の手続としては、刑事訴訟法によらなければ警察官は動けません。その他特別法としてあげてあるものは道路交通取締法、その他何が書いてあるかと申せば、特別法として警察行政の分野では故物営業法、質屋営業法などあります。政党活動に対して、労働組合の活動に対してスパイを放って、金品を供与し、そうして挑発に類するような言動をやっているということは、警察法を運用する上においては、どこにも書いてございません。しかるに警察がやったことは、先日来、亀田議員が参議院で緊急質問をしたことに始まって、参議院決算委員会、衆議院の法務委員会において問題になっておりますところについて、警察当局の答弁は、一般目的を規定したにすぎない、しかもその目的は厳重に第二項で制限しているにもかかわらず、その第二項を援用して言われるだけで、それに基く警察活動、今申し上げたような法律、これによって明らかに規定されていることから逸脱してやっておるのであります。それがやはり政治警察になり、秘密警察になり、特高警察になるもとであります。われわれは、戦前いかに特高警察に苦しめられたかということは記憶に新しいところでありまして、これは共産党だけではございません。ここにいる自由民主党の委員諸君も、その点では苦い目をなめておられますし、特に当法務委員会において、繰り返しその点について発言されるのは三田村武夫委員であります。こういうことを放置しておきますと、次々に警察というものの活動範囲が不法に広がっていきます。汚職と同じことです。これくらいやって気がつかない、これくらいは大して問題にならぬ、次の年にはこれくらいに汚職が広がる、またその次にはこれくらい広がる、これと同じであります。汚職と政治警察というものは相関関係のある現象であります。それにもう一つ、核兵器は絶対入れないと言っていたのが、オネスト・ジョンで核兵器をつけてもいいというようなことを、きのう、きょうの参議院の予算委員会では言い出すようなことになっています。今これを取り締られませんと、非常に重大なことになります。警察というものはそういうものであります。きょうの私の質問についての御答弁でも、あなたに言いのがれをすることばかり、そばから入れ知恵するでしょう。ところがあなたは事情を御存じないものだから、言うたびに、あとからあとから私の方でそうではないと言って、何も抽象論議をするのでなく、この書類の中にあることで私が申し上げるような始末であります。そういうわけであります。その点については十分御注意願いまして、きょうはもう二時近くであります。お互いに昼飯を食っておらないし、これ以上やると人権じゅうりんになりますので、これでやめます。
  93. 大貫大八

    ○大貫委員 時間がだいぶ過ぎておりますから、青木国務大臣、政府に対して、特にこの問題に関連して確かめておきたいと思うのですが、これは前会というのか、二月二十六日の当法務委員会で、江口警備局長が答弁をしておるのですが、今度の問題になっておりまする大阪の秘密警察の問題につきましては、視察の対象になっておりますのが非常に広い。これはもう労働組合から社会党に至るまで、非常に広い分野にわたって視察を行なっておったということが、この警備関係の文書で明らかになっておるのですが、一体そういう昔の特高警察式な活動を全国にわたって行なっておるのかどうか、その点について一つ
  94. 青木正

    ○青木国務大臣 大阪におきまして、先ほどのお話もありましたように、全逓のいろいろの問題があったり、あるいはまた和歌山県の勤評反対闘争と、いろいろ問題がありました。あるいは大阪府の警察の当局において、そういうような比較的広い範囲で情報収集をやったというようなこともあり得るかもしれますんが、全国的にそういうふうなことを国家公安委員会なり、あるいは警察庁なりで、そういう方針のもとにやらしたというようなことは絶対ないのであります。申し上げるまでもなく、警察法の第三十六条でありますか、第二条の責務を果すことにつきましては、すべて「都道府県警察は、当該都道府県の区域につき、第二条の責務に任ずる。」ということになっておりますので、私どもは現在の警察制度がいわゆる自治警から出発いたしまして、こういう現行制度になっておりますが、やはり自治警の精神は府県単位になっておりますが、その精神は尊重しなければなりませんので、私どもこれを指揮し、あるいは命令して全国的にそういうことをやらせるというようなことは決していたしていないのであります。
  95. 大貫大八

    ○大貫委員 時間もあまりありませんから、後日に質問することにいたしますけれども大阪府警平野警察署の警備係の落した文書から推定いたしますと、一地方の府警だけの考え方でやっているとはどう考えても思えない、このような大がかりな調査というものが全国的に行われているようにどうしても思えるのですが、これは単なる私どもの推定ではありません。この文書から見ての、この証拠を基礎にしての合理的な推定なんです。どうでしょう。
  96. 青木正

    ○青木国務大臣 私どもの、少くとも公安委員会の立場に立っておる私どもといたしましては、先ほど来申し上げましたような現行警察制度の根本の問題でありますので、国家公安委員会がそういうような一つの意図を持って指揮命令するというようなことは絶対いたしてないのであります。あくまでも警察法第三十六条の精神を尊重いたしまして、各警察当局がその地域における警察法第二条の責務を果すという線を守らなければなりませんので、私どもはそれを犯すようなことはしてはならぬ、かように考えておるのであります。従って、いろいろお話でありますが、大阪におきまして先ほど申し上げましたようないろいろな事案がありましたので、大阪府の府警として、警察本部として、警察本部の判断においてそういう情報収集をやる必要を感じ、そうしてやったことと私どもは考えておるのであります。
  97. 大貫大八

    ○大貫委員 これは根本的な問題になるのですが、どうも国務大臣はそういうふうな御答弁をなさっておりますけれども、大体今民主主義に逆行するいろいろな警察動きが全国的にあるのじゃないか。たとえば、労働組合運動に対しても、ものの考え方が何かしらん古い観点に立って、労働組合運動に対して犯罪視する傾向があるのじゃないか。先ほど鍛冶委員の質問の中にも、その底を流れるものには何かしらん労働組合運動を危険視する思想が私は流れているように聞き取れるのです。そういう流れが一つ警察庁自体にあるのじゃないか。そこで、労働組合運動に対して、共産党の視察に名をかりて、労働組合運動あるいは社会党にまで手を伸ばして、あれはどういう傾向であるかというような、昔と同じような特高活動をおやりになっているのじゃないですか。
  98. 青木正

    ○青木国務大臣 申し上げるまでもなく、警察官は国民全体に対する奉仕者でありますので、労働組合であるとかあるいは一党一派であるとか、そういうものに対して特別な態度、特別な考えを持つ、そういうことは許さるべきことではありませんし、また労働運動に対して警察が介入するということがあってはならぬことは、言うまでもないのであります。  ただ、私はこういう気持がいたすのでございますが、労働運動が正常な姿で行われれば、これはそうなければなりませんし、そういうあり方に対して警察が介入すべきものでないことは言うまでもないのであります。ところが、最近不法の、いろいろ違法、越軌の事案がありましたために、警察がそれに対して警察の立場においてそういう不法のことのないように、特別の関心を持つということがあるいは若干あったのではないか、こういうことのために、何か警察が労働運動に対して不当な介入をしたというような疑いを持たれる点があったのではないかと思うのでありますが、警察自体としては、あくまでも全国民に対する奉仕者でなければなりませんし、警察というものがあくまでも中立を守らなければならぬことは言うまでもありません。また労働運動というものが正しい姿において行われることに対しては、国全体の立場からいたしましても、これを伸ばさなければならぬのでありまして、これに対して抑圧するとかあるいは妨害するとか、こういうことがあってはならぬのであります。ただ前段申し上げましたように、最近そういうふうな事象があったために、警察が労働運動等に対して自然関心を持つ、そういうことから何か警察が不当な態度をとっているというような疑いを受けているのじゃないか、こういうふうな気もいたすのであります。しかし警察本来のあり方としては、そういうことは絶対にあってはなりませんし、私どももまたそういうことをあらしめないように警察管理して参りたい、かように考えております。
  99. 大貫大八

    ○大貫委員 最後に一つだけ質問してきょうはとどめておきますが、あなたの答弁をさっきから伺っておりますと、盛んに厳正公正という言葉が出、つまり今の警察というものは公正中立的にやらなくちゃならぬ、こういう言葉が再々出てきております。そこでお尋ねいたしますことは、共産党に対しては、その性格上十分な視察をしなければならぬということは、この前江口警備局長がさような趣旨の答弁をいたしております。そこで最近非常に頭をもたげてきたように言われております右翼の行動に対して、警察は一体どう考えているか。最近というか、あの警職法の論議のころでありましたか、国会の本会議場においてビラをまいた者もあり、最近では外務大臣の部屋へ行って——これは新聞だけのことで真相は警察の方がよく知っているでしょうが、つばを吐きかけたのか暴力をふるったのか、その辺は——ども朝日新聞ですかの写真と記事によって見ますと、私ども専門家の立場からすれば、もうりっぱな暴力事犯だと思うんですけれども、そういう右翼の最近の蠢動と申しますか、動きに対してどう考えているか、どういう手を打っているのか。つまり右翼というのは、本来の性格から、これは理屈も何もない、テロということが右翼の精神だ。これは戦前からそうであります。理論でくるならば民主的に説得の方法がありますけれども、これは話せばわかる人々じゃないです。直接行動に出る。五・一五事件だってそうだ。話せばわかるやからではない。ところが労働運動というものはそうではない。正確な理論の上に立って暴徒ではない、労働組合は。話せばわかる。そういうふうな右翼の活動に対して、どう一体警察は考えているのか。
  100. 青木正

    ○青木国務大臣 いわゆる右翼活動でありますが、左翼であろうが右翼であろうが、いやしくも法を犯すものにつきましては、法の命ずるところに従って警察がやらなければならぬことは当然でございます。ことに最近いわゆる暴力団と申しますか、古い形の暴力団、そういうものにつながる右翼というような問題につきまして、私どもは暴力団とも関連いたしまして十分査察もし、厳重に取り締るということは言うまでもないのであります。ことに最近における社会事象から見まして、青少年対策と暴力団という問題は、警察として最も重点を置かなければならぬ問題だと考えておりますので、そういう面からいたしましても、ことに暴力団につながる右翼というような問題につきましては十分注意をいたし、また警察でもしばしば打ち合せをいたして、その対策を立てておるようであります。つまり、今までのように、単に思いつきでやるということでなしに、もっと十分調査もいたしまして、いわゆる右翼というものが過激な行動に出るようなことのないように、またそういうことがあるおそれがありました場合には、事前にこれを防ぎ、また万一その行動に出た場合には、法に照らして厳重に処分する。御指摘の問題等につきまして、手ぬるいじゃないかというようなお話のようでありますが、現行法の示すところによって警察は措置いたしておりまして、別に特別に御指摘のような問題について、警察がこれを軽く扱っておるというようなことは絶対にないのであります。法の命ずるところによって措置している、かように私は考えております。
  101. 小島徹三

    小島委員長 それでは、本日はこれにて散会いたします。     午後二時一分散会