運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1959-03-06 第31回国会 衆議院 法務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月六日(金曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 鍛冶 良作君 理事 小林かなえ君    理事 田中伊三次君 理事 村瀬 宣親君    理事 井伊 誠一君 理事 坂本 泰良君       綾部健太郎君    川島正次郎君       高橋 禎一君    辻  政信君       中村 梅吉君    猪俣 浩三君       大貫 大八君    田中幾三郎君       志賀 義雄君  出席政府委員         警  視  監         (警察庁警備局         長)      江口 俊男君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木 才藏君  委員外出席者         検     事         (人権擁護局調         査課長)    斎藤  巌君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件  検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  本日は法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。  高橋禎一君。
  3. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 法務大臣それから警察庁長官出席を求めておりましたが、後刻おいでになるということですから、御出席になっている方々に対してお尋ねをいたします。そのことは、法務大臣なり警察庁長官等に御連絡下さって、そして後の私の質問に対して、法務大臣なり警察庁長官から御答弁をなさる資料にしていただきたいと思います。  そこで、本日お尋ねしたいと思いますことは、御存じの王子製紙争議関連してのことでありますが、その中でも特に北海道苫小牧工場における問題であります。この問題はもうすでに新聞等報道して、当局においてはいろいろとその対策を講じられたことと思うのでありますが、何と申しましても昨年の七月無期限ストに入って百四十五日間のストを継続して、そうして昨年の十二月九日でありましたか、中労委中山会長からのあっせんで一応ストは終結をいたしました。中山あっせんによりますと、今月の末までの間冷却期間を置く、その間に苫小牧工場における平和を回復させる、こういうふうなお考えが案の上に出ておるのであります。ところが、その後の模様について新聞報道なりあるいは職場方面からうかがわれる情報等によりますと、なかなか平和がよみがえってこないという状態であります。そこで私の質問は、昨年の七月から今日までのうちで、特に昨年の十二月九日の中山あっせん以後、ことに同月の十五日生産開始をした、それから後の模様についてまず先にお尋ねをいたしたいと思うのであります。私どもその内容を十分知ることができないのでありますが、まず率直に御報告をいただきたいと思いますことは、最近法務省人権擁護局の方から、苫小牧状態を視察されるためにおいでになったように漏れ聞いたのでありますが、その調査された模様についてここで一つ人権擁護局関係者がいらっしゃれば、御報告を願えればけっこうだと思います。
  4. 斎藤巌

    斎藤説明員 王子製紙争議関連いたします人権侵害事件につきまして、私が現地へ参りまして一応の事情を視察いたしましたので、御報告申し上げます。ただ、まだ帰ってきたばかりでありまして、記録を十分整理しておりませんので、ごく印象的なことしか報告できないかと思いまするけれども、御報告申し上げます。  特に就労後というお話でございましたが、本件人権侵害につきましては、特に就労前に多くの侵害が行われたという事情がありますので、ごく概略に前からの事情を御報告申し上げたいと思います。  本件について札幌法務局におきまして事件を受理いたしましたのは昨年の八月十六日で、これは苫小牧市の人権擁護委員をしておられる遠山という方から、口頭で法務局申告がございました。そのごくあらましの内容は、第二組合の方がいやがらせをされたいろいろな事例をたくさんあげておられたのであります。その中には、糞尿をかけられたとかあるいは犬であるというような落書きをされたとか、あるいは喪中の張り紙をされたとか、洗濯デモをかけられたとかいうようなことの通報がありました。それで、札幌法務局調査いたしましたが、ただ御承知のように、法務局人権擁護部人員が非常にわずかでありますので、地元苫小牧市の人権擁護委員の方の協力を得まして、数回にわたって調査をいたしたのであります。私どもの方は、主としてそういう居住地区などにおける私生活圧迫とかあるいは村八分、あるいは名誉侵害、そういうことに限定いたしまして人権侵害の事実があるかどうかを調査いたしました。ところが、先ほど申しましたような通報の事実は大体認められたのでございますが、加害者がだれであるか確認できなかったのであります。しかしながら、その調査のつど、関係者に対しまして、そのような人権侵害がないように警告を発しておったのであります。  その後、先ほどお話が出ましたように中労委あっせん案受諾によりまして、昨年の十一月二十九日に受諾になりまして、十二月十五日から苫小牧工場就労ということになったわけでございます。その後あっせん条項にありますように、本年の三月三十一日までを平和回復への努力期間といたしまして、その期間に懸案を解決するということになったわけでございますが、しかし、就労直後、むしろその期間組合態勢を整えて四月に臨もうというような関係かと思われまするが、そういうようなことから職場闘争が行われまして、それに関連しまして、いやがらせとか暴力行為が非常に行われた模様でございます。これらの事実は、御承知のように、新聞報道などに盛んに書かれましたし、私どもの方の札幌法務局でも会社側からいろいろ通報がございましたので、地元人権擁護委員を通じまして、第二組合被害状況調査をいたしておったのでございます。  その後、本件については、本省人権擁護局におきましても調査する必要があると認めまして、去る二月二十四日に私が現地に参りました。二十五、六と苫小牧市の市役所をお借りしまして調査をいたしたのでありますが、札幌法務局職員——地元委員は今回は調査に加わっていただかなかったのであります。これは土地の委員の方でありますので、いろいろ誤解があってもと思ったのであります。そのときに協力願いました委員は、札幌協議会の所属の委員の方、砂川市、室蘭、小樽周辺の都市の委員の方に協力を願いまして、いろいろ第二組合の方、あるいは第一組合の方から事情を聴取したのであります。そのほか工場模様あるいは警察その他関係方面からも事情を聴取したのでございます。その結果によりますと、先ほども申し上げましたように、就労後この工場現場、特に原質部調木現場、ここは第一組合の方が非常に多い職場でございまして、第二組合員はごくわずかでございます。その職場でいろいろつるし上げがあり、暴行事件がございましたが、しかし、この事件につきましては、第二組合員の方から警察の方に告発がございまして、警察では、職場におけるつるし上げ暴行事件捜査をいたしまして、十数名を容疑者として捜査した模様でございます。そのうち二名は二月六日に逮捕になっておるようでございますが、二月十八日に、札幌地検から札幌地裁の方に、暴力行為等処罰に関する法律違反として起訴されておる模様でございます。この刑事事件の処理によりまして、会社工場違法行為と申しますか刑事事件と申しますか、そういう事件がここに一掃されまして、一応私ども調査に参りましたときには、平穏に来ておった模様でございます。工場内部でも、組合員の方が特につるし上げをやられるような模様は見られませんし、また関係者から聞きましても、そういうような状況は一応なくなったような模様でございます。ただ、長年の対立したしこりがまだ残っておるようにも見受けられました。なお、冷戦の状態が続いておるので、警戒を要するのではないかと考えられるわけでございます。  それからまた、特に私ども人権侵害ということになりますと、社宅居住地私生活関係がどうなっておるかということが問題になるわけでございますが、その関係も、両方の主婦の方に来ていただきましていろいろ聞きましたが、最近では積極的な村八分をするとか名誉を侵害するとか、そういう事態はない、ただ、道で会ってもあいさつをしないとか、あるいは従来つき合いをしておった者で、結婚式があっても呼ばれなくなったとか、どちらかと申しますと、積極的な沈黙の闘争が行われておるというようでございます。しかし関係者の方からいろいろ聞きますと、争議中の人権侵害、特に居住地における人権侵害は非常に深刻なものがございましたので、今でもその関係が根強く残っておるのじゃないかと思うわけでございまして、調査が終了した後に、関係者に対してこの人権侵害事件を再燃しないように私の方から一応警告しておいたわけでございます。  それから、今後何か事態が発生したときには、札幌法務局なりあるいは札幌人権擁護委員連合会においてそういう事件を取り上げるから、連絡してもらいたいという旨を関係者の方に通じておいた次第でございます。今後私どもといたしましても、この争議関連いたします人権侵害については、札幌法務局なり私の方なり、あるいは札幌人権擁護委員連合会において十分これを看視し、取り上げる態勢を整える次第でごいます。
  5. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今のお答えは非常に前後にわたってばく然としてしまって、一つ一つの問題についてよくわからないのですが、昨年の十二月十五日就労以来今日まで、人権侵害事件というのはあるのですか、ないのですか。
  6. 斎藤巌

    斎藤説明員 お尋ね人権侵害事件があったかなかったかということでございますが、居住地区におけるいわゆる私生活圧迫とか、村八分というような事態が現在でも残っているように見受けられました。それから、暴力行為などの刑事事犯については、先ほど申し上げましたように、ございまして、それが警察検察庁の処置で一応処理されているということでございます。
  7. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 この新聞報道によると、最近まで毎日いわゆる人権侵害と思えるような行為が繰り返されておる。そして被害者はそれをあなたの方あるいは警察検察庁の方に事情を述べて救いを求めるということすら、今もってなかなか周囲の空気、すなわち後難をおそれてそれができないといったような事態があるように、私どもの耳に入ってくる面もあるのですが、せっかく捜査おいでになって、前のことは別として、それが刑事事件になる問題——これは警察なり検察方面お尋ねをするわけですが、あなた方の担当の人権侵害の問題として取り上げるようなものが具体的にあるかないか。そこのところを私は伺いたいのです。というのは、人権侵害されている人たち、いわゆる被害者側申告を待っておっただけでは、解決のつかない問題が苫小牧にはあると思えてならない。犯罪ならばその通り。そうでない人権侵害問題については、今の制度からいうと、一般の世論によって解決をするか、そうでなければ人権擁護の衝に当っておられるあなたの方で解決をされる以外に道はないわけです。私はいわゆる被害者側立場に立って、これをこのまま放置しておくことはとうてい許されない、しかもその人たちの間では、とても公けの機関にたよることができないじゃないかと、信頼感が非常に薄らぎつつあるような状態さえ耳にするので、この際一つあなた方の力をあげてこの問題を究明し、そして苫小牧に平和が来るようにやってやらなければならないということを痛感するものですから、それでお尋ねしているわけです。ただ、そういう話があるというだけでは、どうにも解決方法がないのでありまして、人手が足りなければ応援に行くとか、あるいはまた警察とか検察庁とか、ことに適当なのは地元人権擁護委員とか、そういう人たちと密接な連絡をとって、じっとすわって申告を待っておるというのではなくして、これは特殊なものであるから、積極的にこちらから調査に乗り出して、解決をつけようという意図が必要だと思うのです。調査おいでになったのはそういうつもりだと思うのですが、それにしては人権侵害事件というものはあまりなさそうな感じがするが、実際はそうじゃないのじゃないかというところに私ども非常に心配するところがあるわけでありまして、これまで調査された、そして事件になって取り扱われた問題については、書面によってはっきりと報告をしていただきたいと思います。今お聞きしておった程度では、とても私ども安心できないわけです。あなた方の調査の線に上ってこないものが、まだまだたくさんあるように思えてならない。これは一々、ここでこういうことがある、ああいうことがあるということを読み上げることは省略します。そして名前なんか出されたのでは困るというような人も私はあると思うのです。だから力を入れて解決をしてやるというだけの、すなわち解決希望が持てなければ、ただ訴えただけではどうにもならぬ、われわれに迫害がますます加わってくるのだというふうに思っている人が相当いるのじゃないかと思います。今の御報告をいただいたのでは、どうも私ども安心できない、こう思うのです。ですから、今までのことは書面によって御報告をしていただきたい。  それから、今後どうするかという問題についてであります。私は苫小牧の問題は、私どものこれから大いに力を入れて解決すべき問題だと思うのです。というのは、先ほども申し上げました昨年の十二月のあの中労委あっせんによってまずまず解決した、一応こう見るのです。世間もそう見がちなんです。ところが、実際はそうでなくして、表面はそういうふうになったけれども工場内においては第一組合の人と第二組合の人との間に、特に第一組合員による第二組合員に対する迫害というものは毎日々々続けられておる。しかもそれがますます激化していくのじゃないか、今日においてこれを解決しなければ、大へんだというような傾向にある。その傾向が非常におそろしいわけです。これらのことを参考にしていただいて、本腰を入れていただきたい。ただ消極的に待っておるというのでなくて、積極的に一つ乗り出していただきたい。こういうわけであります。その点についてどうですか。局長意見を伺いたいのは、今申し上げた苫小牧の今の実情等から見て、あなた方の所管の人権擁護という点について、ありきたりのすわって申告を待っておるということでは用をなさないわけですから、積極的に解決しようという意図のもとに行動されるかどうか、そこの決意をお伺いしたいのです。私は、この点は法務大臣にもよく申し上げ、かつ所信をお伺いいたしたいと思うのでありますが、何と申しましても事務中心責任者はあなたですから、予算が少いの、人員がどうのというようなことでなくして、ほんとう被害者はかわいそうなんですよ。そしてそれはいろいろの職場にも影響のあることでありますし、また将来の大きい意味においては、日本労働秩序ということを確立するかどうかという問題についても私は非常な関連があると思う。一カ所を徹底的に問題を解決して、そこにほんとう意味の平和が打ち立てられるということになれば、私は将来各所にこういう問題でも起った場合に、非常にいい影響を及ぼすし、またそういうことも漸次なくなってくると思う。ところが、手をつけたけれども、さっぱり効果が現われない、あいまいだ、ほんとう通り一ぺんな、悪くいえば責任逃れ程度のことでお茶を濁しておるということでは、この問題は解決つかないのです。私は、これをうまくやられたら、非常な功績だと思うのです。局長は就任されてからそう長くもならないのですが、このあたり法務省人権擁護局仕事のやりどころでもあるし、一つやられて、ほんとう人権擁護局が必要であり、その仕事のたっといゆえんを国民にはっきりさせてもらいたい、こう思うのですが、それらについてのほんとう決意をお伺いいたしたい。
  8. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 この北海道苫小牧事件につきましては、私の方でも、新聞情報その他によりまして、相当人権問題上深刻なものがあることはよく察知をいたしておったのであります。私の方からも、しばしばその調査につきまして札幌法務局にも指示を与えておったのでありますが、今申しましたように、法務局人員が少いものでありますから、——人権擁護委員というものがおられるのであります。従いまして、従来私の見たところでは、この各地区におられる人権擁護委員の動員と申しますか、その活用というものが少しなまぬるいものがあったように私は見受けるのであります。この点は私としておわびをいたさなければならぬのであります。それで、先ほど私の方の調査課長が参りまして、現地模様法務局態勢、または人権擁護委員をどういうふうに動かしておるか厳密に見まして、この問題に対処する法務局人権擁護委員の心がまえにつきまして、しっかりとした一つの道をつけてきたと私は思うのであります。今後におきましては、できる限りこの機関を動員いたしまして、厳重な監視のもとに、また相当耳目を引いておりますこの問題、特に労働運動関連いたしますこの人権問題につきまして、できる限りの措置を講じていきたいと思うのであります。ただ問題は、今積極的に一つやってもらいたいというお話でございます。じっとして事なかれ主義ではいかないという御忠告がございました。これは確かに外部から見ますともっともな御忠告であろうと思うのであります。けれども、こういう労働関係、特に組織組織との間において人権問題が起りました場合には、その処置なり、われわれが臨みます態度方法が非常に微妙な関係を持つのであります。できる限り妥当な、適正な方法によりまして、今御要望の御趣旨に沿うように、私も決意を新たにしてこの問題に対処して参りたいと存じます。
  9. 坂本泰良

    坂本委員 関連して——人権擁護の方で調査をしてもらうのは私も賛成です。しかし、それについてただいま高橋委員がおっしゃったのとは違った立場から、私は現場に行って二度調査をしておりますことがありますから、そのことを参考に申し上げます。人権擁護局は公平無私に、いささかも資本家である会社側の有利になるような解決はできないと思いますから、その点について関連して申し上げておきたいと思います。さらに御意見も承わっておきたいと思います。十二月九日に中労委あっせんによる仲裁裁定に基いて、百四十五日間にわたる無期限ストライキが解かれまして、そうして第一組合員職場に帰ったわけであります。ところが会社部課長は、争議中数々の不当な行為組合員に加えまして、ことに脱落に対する支配介入のはなはだしいものがあるわけであります。しかしながら、労働組合員は、就労しまするや、まずこれらの不当行為を謝罪させて、今後行わない誓約をとり、さらに職場を明朗にして安心して働けるように、これは職場が違いますから、各職場において諸要求を出して、労働者の権利を認めさせるために、職場部課長不当支配介入に対して交渉を進めておるわけであります。しかしながら、会社側は、日がたつにつれまして職場要求を拒否して、そうして職場交渉に一切応ぜずに、また事あるごとに脱落者との差別的取扱いを行う…。
  10. 小島徹三

    小島委員長 坂本君、関連した質問にして下さい。
  11. 坂本泰良

    坂本委員 だから、調査するについてこれを十分考えてもらわなければいかぬ。今、高橋君が言われたことだけではいかぬから…。
  12. 小島徹三

    小島委員長 関連質問だから…。
  13. 坂本泰良

    坂本委員 そこで、会社のかような動向が、常に組合を挑発的な態度に陥れて、そうして職場の中の解決というのがおくれて、——おくれるどころか職場闘争を激化させる、こういうような状況になっておるわけであります。またあとでも、関連してあれしますが、そういうようなことがありまするから、この解決が長引いておるし、人権問題を調査するに当っては、会社がかような支配介入によって、基本的な解決をしないから、やはりいろいろな問題が起きてくる。ことに高橋氏はどういうところを調査されたかわかりませんが、やはり脱落者を使って、そうして正常な第一組合就労に際していろいろなことをやるものだから解決がおくれておる、こういうのが一番ガンをなしておる、こういうふうに考えるわけです。従って、人権擁護調査を進められる上においては、このような点を——やはり労働者は、団結しなければ、会社資本家権力権力の対抗はできないし、憲法二十七条、二十八条の保障もここにあるわけですから、その基本的な問題を解決すれば、人権擁護の問題もなくなると私は思う。だから調査される上においては、今私が申し上げましたのは、一部にすぎませんが、そういう労使双方間の争いがどこにあるか、また中労委あっせん後に就労しておる者に対して会社支配介入をどうやっておるかとい点が、ひいては各労働者間の生活に非常な脅威を与えておる、生活が困難になっておる、こういう人権的の問題が起るわけでありますが、どうぞそういう点を十分研究もされ、実情も把握されまして、調査されんことを望むわけですが、いかがでございますか。
  14. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 今御指摘の事情も、私たちはよく了承しております。御趣旨に沿いまして、できる限り公正な立場でこの人権問題を取り扱っていく覚悟でございます。
  15. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今局長の話の中でも、私の特に考えますのは、確かに積極的にやるということに賛成であるけれども、やはり労働争議等関連しての人権問題というのは、よほど慎重にやらなければならぬ、それはおっしゃる通りでありまして、私はその方法、時期というものはよほど賢明にやらないと、これまたますます争いが深刻になってくるというようなこともあり得ると思うのです。従って、中山あっせん案等を見ましても、そういう問題についての配慮がなされておるように見受けますが、しかし、争議の間におけるいわゆる暴力と申しますか、暴行とか脅迫その他人権侵害する行為というものは、これは許すべきでないでしょう。その許すべきものでないものを利用して、それによって、簡単にいえば勝負がきまるというようなことは、これまた日本の将来のこういった問題を考えますときによろしくないと思うのです。ただ、目先だけのことを考えないで、大きい立場に立って、ほんとうに根本的にこれらの問題を解決していくにはどういう態度かという、そこをよく考えてやっていただきたい、こういうわけであります。それはもちろん局長もつよくおわかりだと思うのですが、ただそういうことに名をかりて、よくあることですが、予算が少い、人員が少い、そしてこういう場合は慎重にやるなんと言っておいて、結局何にもしないで終るということが非常に多いわけであります。そこに私は人権擁護局あたりの存否に関する問題がいろいろ出ると思う私は、人権擁護という問題が非常に大切である、しかも今のいろいろの機構等からいたしますと、法務省に置かれておるということもやむを得ないと思うのですが、もっと独立した大規模のものがあればそれも一つの考え方だと思うのですが、とにかく人権擁護局仕事が不徹底ということは、こんなものがあっても価値のないものだ、こういう印象を与える。それは非常におそるべきことなのであって、特に今度の苫小牧問題等については、その活動される面が非常に多く、そうしてひとり被害者だけでなくして、町の人でも、公平な第三者、いわば国民からも何とかこれを解決するような努力をしてもらいたいということを希望していると思うのです。つまり、仕事のやりがいのある場面だと思うのです。ところが、この調査の結果をお伺いいたしますと、そんな調査では私自身は全くちょっと希望が持てないのです。そこで、これは局長さんにそういう趣旨希望を述べておきます。大臣にもよく話していただいて、これは法務省としては相当大きな仕事ですし、これからの新しい法務省仕事の苗の一つだと思うのですが、力を入れてやっていただきたい。  課長にお尋ねいたしますが、私どもの調べによりますと、苫小牧人権擁護委員会に相当の訴え、申し立てがなされたということですが、それはどのくらい今までに出ておりますか。法務局関係でなくて、苫小牧人権擁護委員会に対して人権侵害の訴えをした件数とかその内容とか、これは大ざっぱなところでいいのですが、お調べになりましたか。お調べになっておらなければ仕方がないから、今後調べていただきたい。
  16. 斎藤巌

    斎藤説明員 お答えいたします。先ほど申し上げました通り、一番最初、八月十六日に遠山委員から通報がございました。その後委員と共同して調査札幌法務局でいたしております。本年の二月に入りまして、苫小牧市の保利という委員の方から被害者の通告を受けております。これは十数名の被害届であります。
  17. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 総数でどのくらいありますか、数をお知らせ下さい。
  18. 斎藤巌

    斎藤説明員 全部で二十数件のように報告になっておりますが、また追ってよく調査いたしまして御報告いたします。
  19. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 われわれの耳に入っておるところでは、苫小牧市の人権擁護委員会に訴えたというのが五十件をこえておる。それでも大した効果は上っていないらしいのですが、もしわれわれの耳に入っておるところが正しいとすれば、あなたの調査とは非常な開きがあるわけです。この問題と真剣にとっ組むということになれば、市の人権擁護委員会はどういうふうにしておるか、法務局の方にはどのくらい事件が来たか、そして内容はどうか、その処置はどうなっておるかというようなことを徹底的に調べていただかないといかぬわけです。そして、その表面に現われたもの以外に、申告することもできないで苦しんでおる人が、どうも私の考えではあるように思えてならないのです。申告もできないでおるというような人、その人たちつるし上げられ、食事のときには非常ないやがらせをやられる。ばり雑言を受け、休憩室に入ればそれを占領されて、自分たちは腰かけるところもない。それから検察庁で証言をすれば、それをまた取り消せといって非常に迫害を受ける。あるいは女子の第二組合員に対しては、塩を振りかけてまっ白くなるくらいの暴行を加えるなど、ここに書いてあるのをあげればたくさんありますが、そういったようなことを一つ一つ私は検討してみていただきたいと思うのです。大ざっぱにやったのじゃ一件も解決がつかないのですから。それであなたたちに対しての信頼感を失って、せっかく申告しても、あとから周囲の者からいじめられるだけであって、侵害者側、はっきり言えば第一組合員の人からさんざん迫害を受け、申告をしても何ら救ってもらえない、解決をつけてもらえない、前よりもますます迫害が強くなってくるというだけだから、どうにもならないという世の中、これでは困るでしょう。大体苫小牧の町は、御存じのように、ほとんどあそこの工場関係のある人たちで立っておる町です。一つの町が二つに分れて争っておるという、実に気の毒な状態なんです。だからやはりわれわれとしては何とかして解決をつけなければならぬ。しかも先ほど坂本君の話では、何だか不公平なやり方を云々と言いますけれども、われわれはそういうふうなことを考えていないのです。一部に、団結を乱したら大へんだというので、もしもそれを乱す者があれば、こんな迫害を加えて殺しても差しつかえないんだというような言葉を使って、いろいろなことをやっておる。そういうふうなことは今の世の中で許さるべきものじゃないのです。だから、労働運動についても、暴力は絶対にいかぬぞということを明らかにしておるのでしょう。それをわんさ、わんさやって、暴力によって戦い取ったものをその手中におさめさせるということはよろしくない。だから、平和手段によって、すなわち暴力を排除しつつ——私は労働問題の専門家でもなんでもないのですけれども、とにかく暴力はいかぬということだけはちゃんと言っておるのです。これは法律に規定するところであり、国民の良識でもあると思うのです。それだけは関係当局においておさめてやらなければならないのです。そうしないと、正しい労働争議の結論が出ないと私は思うのです。私は労働争議の問題が早く両者円満に妥結するようになることを希望しております。だから、仕事は公平でなければならぬ。もちろんあなた方が不公平なことをなさろうとは思わない。ただ、おそれるのは、あまりにも消極的にして、何らなすことなくして終るのじゃないかということです。だから、そこのところを一つはっきりしてもらいたい。     〔発言する者あり〕
  20. 小島徹三

    小島委員長 お静かに願います。
  21. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そこでこれ以上あなた方に申し上げませんが、もっと調査されたところを書類にして出していただきたい。そうして、人権擁護関係しておられるのは市の人権擁護委員の方もそうで、これは同じ仕事をなさっておられるのです。法務大臣がちゃんと人権擁護委員をきめていらっしゃるのですから。そうして、なお警察なりその他の方面からも、よく事情を聴取していただきたい。そうびくびくすることはないんです。正しいことをやる、しかも合法的な手段によってやるのですから、それらのことを活発に積極的にやっていただきたい。一つあなた方の力で苫小牧人権侵害事件がなくなるように、ほんとう意味の平和が来るように、最善の努力をしてもらいたい。きょうあたり大臣が出てこられるかどうか知りませんけれども、もし来られなかったら日を変えて申し上げますが、局長からもよく言っておいて下さい。  次に、刑事局長お尋ねしましょう。昨年の七月スト開始以来今日まで、刑事事件として検察庁が処理された事件は何件であるか、どういう内容であるか、後日わかりやすい書面にでもして出していただけばなおけっこうですが、この席では一応その概要を御報告願いたいと思います。
  22. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 長期にわたった王子製紙争議関連いたしまして、多数の越軌行為、法律に触れる違法な行為が発生いたしましたことは、はなはだ遺憾でございます。この間に、就労開始前に刑事事件として取り上げられましたものは、苫小牧支部の関係におきまして検察庁が受理したものは三百九十名の多数に上っております。その処理の結果は、公判請求を見た者が十一名、家庭裁判所送致になりました者が一名、略式命令の請求が五名、不起訴処分が六十名、残りの三百十三名につきましては未処理になっております。この関係につきましては、中山あっせん案の趣旨等も含んで、処理を若干意識的に見合わせている点もあろうかと存じます。  それから就労後における状況でございますが、これは先ほど人権擁護局の方からも御報告がありましたように、三月三十一日までの平和回復期間におきまして、労働組合の間で組織、勢力の拡大強化をはかろうという動き方があるようでございまして、それに関連いたしまして特に第一組合側においては、脱退者、つまり新組合の方の人たち組織復帰を個々的に要求する、その中に説得と称して行き過ぎが生ずるという事態が起っておるのでございます。その関係におきまして、検察庁が犯罪事件として捜査をいたしておりますのは六件でございます。そのうちの一つは、これも先ほどちょっと報告の中に出て参りましたが、本年の一月二十一日に、五十嵐泰ほか五名の者が被疑者になっておりますが、この人たちが、多数の者、特に原質部の調木課というのでございますが、この人たちと会同いたしまして、新労組員である松浦憲保氏を同工場の調木係の食堂内に連れ込みまして、欠勤中にもかかわらず、出勤カードが押されている、その理由を追及いたしますとともに、裏切り者というような罵声を浴びせて脅迫し、あるいは暴行を加える、またはその部屋の入り口周辺に人がきを作って、退去不能にして、いわゆる不法監禁をした、こういったような事案であります。この事件につきましては、五十嵐ともう一人田村という両名につきましては、逮捕勾留をいたしまして取調べをいたしました結果、去る二月十八日にこの両名に対しまして公判請求をいたしております。その他の者につきましては、処分留保になっております。  なおそのほか五件につきましては、これはいずれも被疑者は第一組合員でございまして、第二組合員被害者の方から所轄警察に対して告発が出ております。この告発に基いて警察では捜査をいたして、さらに検察庁にも事件を書類送致しております。目下捜査中でございます。
  23. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 あとでまた書面一つ詳しく報告をお願いいたします。  今の御答弁のうちで注目すべき問題は、未処理の事件、しかもその未処理の事件を将来いかに取り扱うかということです。これはお話にもありましたように、中山あっせん案の中にも、今次の争議関連して現在行なっている告訴、告発等は取り下げるというような趣旨が出ておると私承知しておるのです。ところが、こういう問題は他の条件とともにうまく解決さるべき問題なんで、そういう措置で苫小牧ほんとう意味の平和が訪れれば、それはまことにけっこうだといえないこともない。しかし、ただ刑事事件の処理だけが非常に寛大であって、そのほかの問題は解決しないのみならず、むしろそれに勢いを得て、刑事処分なんというものは大したものじゃないというような印象を与えることによって、暴行、脅迫、侮辱その他の犯罪行為、及びそこまでいかないにしても、諸般の人権侵害事件が起るというようなことがあったら大へんでしょう、そこが問題なんです。     〔発言する者あり〕
  24. 小島徹三

    小島委員長 お静かに願います。
  25. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そこに私はほんとうの刑事政策の賢明な遂行というものが必要だと思う。従いまして、その処置については、中山あっせん案の真の精神というものはどこにあるかということを究明しなければならぬ。ただ、部分的な観察のみにおいては、大へんな間違いを起す。むしろ中山あっせん案の意図を遂行することすらできない、かえって阻害になるということが含まれている、こういうことをよく考えてやっていただきたいということです。私は、本日あなた方に、すべてに対してこの席で御報告を求めるということは、これは会社側組合側、特に第一組合、第二組合というようなものは、いわば一つの問題について対立的な立場にあるから、そして、いろいろ私どもの手元に集まっておりまする資料も、やはりそういう面からですから、あなた方がほんとうに公平な立場に立っての職務執行という観点において取り扱われたその見方、その認められる事実というものが一番公平だと思うから、事実関係の御報告を、あなた方に期待をして求めておるわけであります。そういう趣旨報告していただきたいということ。  それに今度は犯罪の原因ですね。原因はどこにあるか。単なる出合いがしらの感情的なものもあるでしょう。あるいはまた深い意図を持ってされるものもあるでしょう。検察庁仕事の一番大きな問題は、私はそこだと思う。その原因が一体どこにあるのかということの追及です。それらの原因についても、ああだこうだといういろいろの見方がありますが、これはあなた方がそれを追及される責任があるわけですから、検察庁において捜査をされた結果、一体これらの事件はどういう原因によって起ったものであるかということですね。一時的の感情というようなことではないと私は見ておるのですが、それらについて徹底した観察がなされておるかどうか、一応ここでお答え願って、なおまたあとで書面等によって報告していただきたい。この苫小牧の問題は、法務委員会で取り上げるのは初めてでしょう。これからですよ。この問題をほんとう解決するためにわれわれとしてもでき得る限り協力をしなければならない。もっとも、労働争議の問題については、それぞれの線があるわけでありますから、私どもはそれを尊重しつつ、そしてあなた方がなさるべき分野をほんとうに慎重にしかも賢明に遂行していかれるように、私ども希望もし監視もしなければならない立場にあるということを特に強調するわけであります。今の原因に関して、ここで今御報告いただけるならば一つしていただきたい。それには個々いろいろあるでありましょう、あるいは共通なものがあるかもしれません。そういうことが大きな意味のある問題だ。すなわち苫小牧においていろいろ起っておる犯罪事件人権侵害事件の深い原因はどこかというそれを一つ報告願いたい。
  26. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 この事件の全般的なことにつきましては、書面をもちまして概況を御報告申し上げることにいたしたいと思います。  それから、未処理の事件につきまして、これをどう処理するか、これは仰せの通り、非常に大事なことでございます。ただ申し上げておきたいことは、警察における警備活動はもちろんのこと、また検察庁事件処理に当りましても、労使の中に介入して、ことさら一方にへんぱな取扱いをするというようなことは極力避けなければならない、厳正公平な態度で臨まけなればならないことは申すまでもございませんが、しかしながら、暴力というものは、組合法第一条にはっきり書いてございますように、これはもういかなる組合活動においても許されないところでございますので、この種の越軌行為につきましては、法の命ずるところによって処理するわけでございます。本件につきまして未処理になっておりますこの関係者について、もし平和回復のために、検察が、時期のおくれた後において、つまり発生直後から時間がたってから、このあっせん案をのんでから後の状況という事情の変化に伴いまして、これを取り上げることの可否につきましては、慎重に検討をいたし出ておるのでございます。その点は、今申しました基本的には厳正公平な態度でいくことにあるわけです。そうして、平和回復のために検察面からこれを阻害することのないようにいたしたい、こういう気持は基本的に抱いておるわけであります。  それから、この種の事件が、いかなる原因によって起るかという犯罪原因論の問題でございますけれども、これは労働検察——そういう言葉を使っていいかどうかわかりませんが、これはまだ科学的にも刑事政策的にも未開拓の分野に属するのでありまして、いわゆる大衆心理と申しますか、公衆心理と申しますか、一種の大衆犯罪でございますので、こういう問題につきましては、非常に個人的な感情によって不必要にあおりたてられるという面もあると思いますし、一般の刑事犯の個々的な犯罪とは、発生の態様も違いますし、その原因もいろいろ検討すべき余地があるわけでございます。私どもといたしましては、慎重にこの原因を探求いたしまして、適切な検察庁の処置をはかっていきたい、かように考えております。
  27. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 刑事局長の、まだなかなか原因等についてはっきりした態度がきわまっていないというお話でありまして、一般論、抽象論として確かに研究の余地のある問題ですけれども、しかし、個々の犯罪はこういう原因で、こういう意図で行われたものだということはわかっておると思うんです。しかし、こういうことは十分調査されて、間違いのないところをやっていただかないと、これはなかなか、いろいろ意見も出るわけでありまして、あとで、あれは間違っていましたというようなことじゃ、これはいかぬわけですから、よく研究して、後日報告していただいていいんです。われわれは、本日をもってこの問題とさよならしようと思っておりませんから…。  それから一般的、集団的な犯罪に関して、特にそれが労働争議等関連しておる問題について、それをどう処理するかということは、確かに困難であり、慎重であり、そしてその道に知識の豊富な学識経験者等の意見もよく聞く必要があると思うんです。ただ、大ぜいでやったんだから、うやむやになってしまう。労働争議の問題だったら、うやむやになってしまう。せっかくそれは憲法が国民一人々々の人権を尊重するという態度をとり、労働争議の場合において、暴力はこれは絶対に排除するという法の精神があるにもかかわらず、さっぱりそういうことは無視されて、それがじゅうりんされて、何でもおかまいなしだ、大ぜいでわからぬようにやりさえすればそれでいいんだ、そしてあとで争議解決するときには、こういうものは御破算だというようなことが果していいか悪いか、私はそれはもう問題だと思っているんですが、それらについて大いにこれから検討するというのでありますから、労働争議に関する集団的な犯罪行為等の取扱いについて、これから法務省はこういう政策で進むんだというようなことを一つ研究なさって、それを確立しておかぬと大へんでしょう。それができていないところに、いろいろ方々で起ってきて、何だかうやむやになってしまう事件が多いんじゃないですか、と私は思うんですから、その点は刑事局長から一つ大いにこれからやるということで、大臣にもよく話して、そんなことは今これから研究するということじゃおそいですけれども、これからでも大いにやっていただきたい。むずかしい問題ですよ。日本の治安維持の問題、日本国民人権擁護という問題、これは大へんなことですから、徹底してやっていただきたいということを申し上げておきます。  それから、警察の方にお尋ねしますが、長官がおいでにならぬようでありますから、長官には後日お尋ねするとして…(坂本委員関連々々、関連質問をさせなさい」と呼ぶ)発言中はあまり興奮なさらないで、私は冷静かつ公平にやっているのでありますから、発言の妨害にならないように一つ…(坂本委員委員長関連です」と呼ぶ)よく整理してもらいたいと思うのです。     〔坂本委員関連質問をさせたらいいじゃないか、発言を一方的に限って、そんな   ことをするなら、われわれは退場する」と呼ぶ〕
  28. 小島徹三

    小島委員長 ちょっと速記をやめて。     〔速記中止〕
  29. 小島徹三

    小島委員長 速記を始めて下さい。
  30. 坂本泰良

    坂本委員 議事進行。——私が関連質問をお願いいたしますのは、今刑事局長は非常に公平なお話をされた。しかし、高橋君の発言は、一方的、資本家的に会社の方に行って調査されてやっていると思う。だから高橋君がされて、返答があったから、その返答に関連してわれわれとしての公平な質問関連して許していただいて、そうして進行しなければ、この真相ははっきりされないと思うのです。そういう意味で私は関連を求めているわけですから、それはぜひ一つお許し願いたいと思う。それができないようなら、私たちはどうも信頼できないと思う。
  31. 小島徹三

    小島委員長 坂本委員にお答えしますが、各委員がどういう方法で、どういう手段で調べてこられたか、どういう思想を持っておられるか、そういうことは私には全然無関係なことでありまして、委員はやはり委員の発言の自由で質問されているわけです。その背後まで私は関係ないのです。だから一応委員が満足されるように、満足といっても、自分が満足されるという意味でなく、質問応答をされて、それでもし坂本委員としてそういうことで満足されないなら、坂本委員は発言を登録されておるのでありますから、坂本委員の満足されるような質疑応答を堂々とされる。私は内容がどうだこうだと言うのではない。委員は、少くとも委員として聞きたいことを聞くんだというふうなことはやっていただきたい。関連することもいいのですけれども先ほど関連質問も、御意見の中に入ってくるものですから、長くなってしまう。質問している委員の気持が途中でくずれてしまうということもありますから、しばらく待って下さい。
  32. 坂本泰良

    坂本委員 議事進行。——法律案の審議については、今委員長の申されたように、やはりずっと研究もし、やっているわけです。法務行政検察行政に関する問題は、質問者が質問されると、そのときにそれと違う考え方を持っている者には、そこでやはり発言を許していただいて、そうして公平に検察官の活動に対して判断する。だから、先ほど人権擁護局長の調査も、高橋委員が言われただけで調査をされたんじゃ不十分であるし、これは平和というけれども、平和を確保するためには、やはり労働争議をなくさなければなりらない。その前提には何が立っているか、やはり使用者側から労働者の分裂工作が行われて、そうして、いわゆる脱落者に対しては会社が使嗾して、ほんとうに弱い者同士の戦いによって資本家側が勝利をおさめようというのが、現在の日本労働運動の姿、考え方の違う人もあるだろうが、われわれはそう見ているわけです。だから、今の刑事局長に対する高橋君の立場高橋君の立場として言えるだろうと思う。しかしながら、われわれの立場として、やはり大衆の犯罪に対する考え方その他については、こういう考えをもって公平にあとで報告すると言われるから、やってもらいたいというその私は関連質問ですから、やはり法務行政検察行政については、そういう運営を希望するわけです。
  33. 小島徹三

    小島委員長 ちょっと速記をやめて。     〔速記中止〕
  34. 小島徹三

    小島委員長 速記を始めて。  坂本君、関連質問をやって下さい。
  35. 坂本泰良

    坂本委員 関連質問を許していただきましたから申し上げますが、この苫小牧の問題は、これはとにかく労働者が多いから、労働者間のあつれきを一々取り上げて、それをもって平和を回復するとか、そういうようなことに持って参るわけにはいかぬと思うのです。基本はこれはやはり中山試案ができたから、先ほど私もちょっと申しましたように、労働者側が就労をしまして、そしてその職場々々で問題を解決してやろう、そういうふうに言っておるわけなんです。それを部課長職場の団体交渉はせずに、さっき一例も出たのですが、職場に行きたくない脱落者の人が出勤のあれをやって、そうしていなくなったという事実があるから、そういうことはいかぬじゃないかという話がもつれて、そういうふうになってくるわけなんです。基本的には、中山あっせん案によって三月一ぱいが平和期間になって、その間に平和を回復するように双方が努力しなければならない。というのは、なぜ会社側努力しないかというと、この争議の基本は、ユニオン・ショップを廃止する会社側意図から出ておる労働争議なんです。だから、従来のように、ユニオン・ショップを認めたあの労働協約によって新しい協約を作って進んでおれば、こういう争議も起らないし、あの苫小牧の悲惨な問題も起きないはずなんです。官権の発動もなくて済んだはずなんです。そこが一番基本の問題になって、争議が百四十日も続いたわけです。それが中山あっせん案によって、告訴、告発は取り下げて、とにかく平和に返れ、そしてユニオン・ショップも新しい協約の中に織り込んでやれというのが、今、私は全部は承知しておりませんが、この中山あっせん案の趣旨で、あっせん案こそが平和をもたらす、またひいては争議解決するゆえんだ、われわれはそう思ってやはり労働者の指導もするし、就労もさせてやるのを、それを会社側部課長のいい頭で脱落者を使ってやる。そこに非常に悲惨な日本の生産工程における、また労使双方における問題があるわけなんです。従って、この刑事事件について先ほど高橋君が、その原因はどこにあるか、こう言われるわけなんです。その原因を探求するのには、労働者の一人々々が感情に行き過ぎて、びんたを一つ張ったのを暴行罪、傷害罪として取り上げて刑事処分するのが、これは法の目的じゃないわけなんです。やはり基本的に、会社がみずから究明するようにやらなければならない。だから、法務大臣が来ておれば、それは法務大臣の政治的の考え方に立ってそこを究明しないことには、苫小牧の平和なんかはできやしないのです。そういうような考え方に立って、この刑事事件の処理にも当らなければならぬし、またあとで高橋氏が質問されようが、警察権の発動の問題にしても、三月何日かの警察官の主婦に対する弾圧の問題も、私なんか資料をここにたくさん持っておる。そういうのをないようにするのが、われわれの基本の問題なんです。  さらにこの問題は、第一組合で逮捕された中には、市会議員が二人おるわけです。それからもう一つは、その脱落者の告発者の方に、今度市会議員に立とうというのがおるのです。その政治問題で、会社側脱落者の市会議員を上げようというので——高橋氏もいろいろ話があったかも、これは私は想像ですからわからないのですが、そういうような問題があるから、一つ刑事事件の取扱いについては、もちろん治安のためには当面の暴力その他をやめさければならぬけれども、お前がなぐった、お前がなぐられたということで、告訴、告発によって一々それを取り上げてやると、公平であるべき検察庁の行動が、やはり資本家側を擁護し、労働者を弾圧して、労使双方の正しい行き方を乱すということになるわけなんです。だから、検察権の発動も、その点に重点を置いてこの問題の取扱いに当らなければならない。犯罪の原因も、そこに思いをいたして究明してもらいたいというのが私の関連質問です。その点についていかがですか。
  36. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 御意見の存しますところを十分に尊重しまして、事件処理に慎重を期したいと思います。
  37. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 私が刑事局長に犯罪の原因についてお尋ねしたのは、今まで刑事事件捜査したとおっしゃるから、それで、した事件ならその原因をよく検討してあるはずだから、それを報告してもらいたい、しかもそれは正確を期する意味において、後日書面でもけっこうですとまで言ったわけです。そこでこれからの事件をどうする、こうするということは、これはもう慎重にやっていただきたい。ですが、中山あっせん案というのは、いわば苫小牧に対する一つの平和宣言です。ところが、その後の状態はどうかというと、それを私は非常に重視しておる。果して平和が訪れたか、そうして傾向としてはどうか、その原因は一体何かということをよく究明しないと解決がつかぬ問題で、ただ片手落ちのことをやっておったのでは、かえって災いになる。そこでさっき、未処理の事件をどう取り扱うかということが非常に大きな作用を営むということを申し上げたわけであります。これは刑事局長も御同感でありますから、それについて今もう質問はいたしません。  そこで、時間もだいぶたちましたから、警察庁の方にお尋ねをいたしますが、警察が非常に手薄であって、いかにも完全に職責を果し得なかったというような印象を受ける資料があるわけです。その点に関連してお尋ねをするのです。警察は、犯罪の検挙だけではなくして、その予防というようなこともあるわけです。従って、ああいうふうな大集団的な動きの中に、これは理屈ではいろいろ言えるでしょうけれども、実際問題としては、多数人が対立しておるときには、非常に犯罪行為が起りやすい危険があることは申し上げるまでもないのです。そうして、それが一つの犯罪行為に移行をしたその処置をどうするかという問題については、あまり警察官が手薄ではどうにもならないだろうと思いますが、苫小牧の場合においては、現実はどうであったか。警察官が手薄であって、警察の本来の職責、すなわち、犯罪の予防及びその検挙に関して十分の措置がとれなかったようなことはなかったか、人員の数をあげて御説明願いたいと思います。
  38. 江口俊男

    ○江口政府委員 お答えいたします。ただいまの御質問は、おそらく中山あっせん案が出る前の争議中における警察の出動が十分であったかどうかということと関連する問題だと思うのでありますが、もちろん御指摘のように、北海道警察におきましては、全部を合わせましても五千数百しか警察官の力がございません。しかしながら、苫小牧争議に関しましては、ただいまも御意見のございましたように、犯罪が起ってからこれを指摘するというよりも、犯罪のなからぬようにこれを予防するということには、道警察として人員的にきわめて無理があったほどの動員をいたしております。たとえば、九月十五日の実力行使の際、二千人余を相当遠いところまで集めてやっております。それから、普通の日におきましても、三百ないし六百という数は、争議中は常時出ておったということで、ただいまはっきりした数字は私存じませんけれども、おそらく七、八方になんなんとする延べ人員を使っておるのじゃないか、こう思うのでありまして、この点、人員が足りたかどうかということにつきましては、私たち人員が非常に不足であったからやるべきことができなかったというふうには聞いておらぬわけであります。しかしながら、ああいう人員を寄せ集めるという事柄につきましては相当の無理をいたしておりますので、全体的にもっとたくさんの人数があった方がいい、その方が運営上きわめてやりいいという事柄につきましては、私も同様に感じておるのであります。それで、御指摘のように、警察力が十分に働いてなかったというような批判に対しましては、それはもちろん十分でなかった点も間々ございましょうけれども、全体としては、法規の建前が、一般の方々が思われるように、すぐ警察がそれに出ることが適当でないような分もありますし、また、ああいうところになれない人間が多数それに従事したというような点もございましてそういう感じを受けたと思いますが、私の手元にあります統計で申し上げますと、争議発生後、例のあっせん案に至ります間に、私たちが、これは犯罪として目すべきであろうと考えた件数が全部で百四十九件ございます。そのうち、告訴事件が七十七件、告発事件が十二件、合わせて八十九件でありますけれども、その以外にも警察官が目撃したとか、あるいは人から聞いたというようなことで、約百五十件くらいのものが犯罪として行われたものだ、こういうふうに見ております。そのうち現在までに警察として一応その取り調べが済んで検察庁に送ったという事件が、先ほどの竹内局長の御説明と数が少し違いますけれども、これは検察庁警察の件数の数え方が、単位が違うというふうに御了承願いたいと思いますが、その百四十九件のうちで百十五件、四百一名を検察庁に送っておるのであります。従いまして、なお三十数件につきましては未解決でございますけれども、とにかく立検送致ができているという点において、警察がやるべきことは一生懸命——その時期的な点は議論がございましょうけれども、とにかくやったというふうに私たちは思っておるわけであります。なお、先ほど、こういうことをやるときに、警察資本家会社側だけに立って仕事をやっているというお話がちょっとあったように考えますが、この百十五名のうち、第一組合のみならず、第二組合事件もやはり立検しているのでありまして、その点、事件があった場合は公平にやったものと私は考えております。
  39. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今の問題に関連して、当時あそこへ警察官をどんなにたくさん動員されても、せいぜい三千人くらい、もうこっちはそれよりうんと数が多いんだからそうおそれる必要もないし、なんというようなことで、ちょっと警察がなめられたような印象を受けるようなことがあった。こういうふうに耳に入っておるのですが、それはそれとして一般的なことをお伺いしますが、かりに今の警察制度からいいますと、そこにそうたくさんの警察官を置くわけにいかない。ある事態に対しては少くとも応援に行く。特に警察本庁としては、非常に重大な問題については、そういうことも配慮されるようなことがあると思うのです。すなわち警備に関して、あるいは犯罪検挙に関しての警察力不十分なところへ、県外から応援にいって、そしてその事態に対処するというようなことについては、どういう配慮がなされておるのですか、それをお伺いしりたいのです。
  40. 江口俊男

    ○江口政府委員 ただいまの御質問のうちで、北海道は御承知のような地勢でございますので、応援には他の府県から参っておりません。しかしながら、内地といいますか、本土、本州、九州あるいは四国等隣接した府県がございます際には、各県の公安委員会が平時から協定を結んでおりまして、自分の県だけで人数が足らないという場合には、隣接の府県から応援にいくという仕組みになっております。
  41. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そうすると、北海道等に対しての応援というようなことは、いわゆる非常事態の宣言でもあるというような事態でないと、それができないわけですか。それとも、そうでなくとも、何かある種特別な必要があるときには、そういうことが委員会同士で協定をしてなし得るような道が講ぜられるものかどうか、そこはどうなんですか。
  42. 江口俊男

    ○江口政府委員 平常の場合でも、法規的にはなし得ます。しかしながら、ただいま申し上げましたように、北海道が他の府県と共助協定を結ぶということになると、勢い青森とか岩手ということになるのでございましょうけれども、これは実情上応援ということができないから、あるいはただいまの場合においては協定をしていないのかもわからないと思います。しかしながら、御警衛とかなんとか前もってわかります場合で、しかも人数がたくさん要るときは、他の府県がそれを差し出してもかまわないということであれば、そういう個々の場合においては協定をしてもかまわないと私は思います。
  43. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 いま一つ、これは刑事局長に対してもあわせて申し上げたいと申うのでありますが、特に警察は第一線にあって最初の事件検挙に当られるわけですから、特に御意見を伺っておきたいのであります。犯罪には、一度に相手に対して大きな被害を与えるという種類のものもあります。それから一度にはそうでもないのだけれども、一カ月間あるいは二カ月間継続してじくじくいじめていくというような、その一つ一つをとれば被害としては比較的少いようだけれども、それが集まってくると人の命をもとる、あるいは精神異常者も出すというようなおそるべき方法もあるわけです。だからそれらの点をよく考えられて、一つ一つは非常に軽微のように見えるけれども——従って、私が先ほど申し上げた犯罪の原因論に関係があるわけですが、どういう意図を持ってやっておるかということが非常に重大な問題なんです。だから、継続して大きな意図のもとに、それに向って進んでいくとういう犯罪のやり方についての検挙方法については、この散発的な偶発的なものの取扱いとは意味が違うと思うのですが、これらについての考え方をお二人からお伺いいたしたいと思います。
  44. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 仰せの通り、偶発的なものと、ある意図を持って広地域にわたって多発する場合と違うわけでございまして、ことに後の場合におきましては、そのこと自体はきわめて軽微でございましても、全体といたしますと、これはゆゆしい治安上の問題になるということもあり得るわけでございます。そういう点につきまして、ことに公安検束と申しますか、大衆的な犯罪につきましては、そういう点の考慮が非常に必要でございますので、処理に当りまして、そういう点を十分考慮いたしまして、全体としてこれを取り上げて考えるということは現に私どもいたしておるのでございますが、なお先ほど仰せになったように、一般論としてこうあるべきだというふうなことになりますと、これは刑事政策的にも科学的にもう少し実証的に研究してみなければならぬことでございましょう。ただいまの段階は、無定見にやっておるのではなくて、やはり一つの積み上げと申しますか、幾つかの事例を積み上げていって、全体的に一つの考え方を引き出そうというような刑事政策的な考慮を払っておるつもりでございます。
  45. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 きょうは法務大臣警察庁長官おいでになりませんからこの程度にとどめて、日をあらためてまたお尋ねをしたいと思います。  なお、委員長を通じ、理事会等において御相談願いたいことは、たとえば中山さんであるとかあるいは会社側の方とか両組合の方とか、そういった方方の意見を聞くような機会を与えていただきたいということを考えておりますので、一つ御相談をお願いいたします。
  46. 小島徹三

    小島委員長 理事会でよく相談してみます。  次は大貫大八君。
  47. 大貫大八

    ○大貫委員 実は本日は大阪府警のスパイ工作事件についてお尋ねするつもりでございましたけれども警察庁長官もお見えになっていないようでありますから、これは後日に譲りまして、人権擁護局長に二点だけお尋ねをしておきます。  二月二十六日のこの法務委員会で、大阪府警スパイ工作事件について、上田君に対する共産党に入党強要の事実及び結婚妨害の事実、このような人権侵害の問題についてすでに調査が終っておる、二、三日中に報告書が着くというお答えであったのですが、その報告書が着いておるかどうか、その報告書の内容はどのようになっておるか、それをお尋ねしておきます。
  48. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 大阪法務局人権擁護部の今お尋ねの点に関する調査は一応終りまして、それは前会で御報告申し上げた通りであります。その関係書類が先週の終りに着きまして、その内容につきましては、今私の方で最後の結論を出すべく検討中であります。大阪法務局人権擁護部の中間報告のあらましは、上田君に対する平野警察署の警備情報活動に従事する職員の結婚妨害の事実は確認しがたい。それからもう一つは、上田氏に対する共産党入党強要あるいは共産党員に接近してその情報を集めることについて強要があったかどうかの点でありますが、その点について相当の疑いがある、人権上問題である、こういうふうな結論を出してきております。私の方では送られました資料に基きまして、今検討中でありますが、今申しました大阪の二つの意見につきましては、事実上また意見上における問題につきまして、さらに私の方で慎重検討を要すべきものがあるように思いますので、ただいま警察の警備情報活動の限度あるいはそのあり方との関連において慎重に検討中であります。これだけ御報告申し上げます。
  49. 大貫大八

    ○大貫委員 これは中間報告というのですが、中間報告というのは、今の結婚妨害に対しては確認しがたいというんですか、そのことは最終的な結論なんですか。今までの調査の段階では確認しがたい、こういうんですか、どっちなんです。
  50. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 その点について、私の方の機構に関連いたしますので少し御説明いたします。地方法務局あるいは法務局人権関係におきましては、その調査報告を本省の方に出すのであります。私が今申しましたのは、大阪の法務局人権擁護部調査報告書であります。そしてこれはわれわれの方で勧告すべき事案であるかどうか、あるいは地方の機関が認定した事実が、添付された資料に基いて正しく確認できるかどうかを慎重に私どもの方では検討するのであります。なぜかと申しますと、人権侵害につきまして一つの結論を出します、それには事実の認定と、その認定された事実に基きます一つ意見があるのであります。ところが、この勧告に対しまして、あるいは最後の措置につきまして不服の人は、上訴的なアッピール的な方法がないのであります。従いまして、私の方で、最後の結論を出すのには、できるだけ地方の、ローカルの人権—擁護機関意見あるいは認定に左右されず、独自の立場でさらに検討を加えることにいたしております。従いまして、先ほど申しましたのは、この事件については、一種の中間的な報告だと考えざるを得ないということであります。
  51. 大貫大八

    ○大貫委員 どうも中間報告意味がよくわからぬのです。そうすると、大阪の地方法務局としては、調査はもう最後的なものである、ただ法務省人権擁護局自体としてこれを確認するかどうかということの調査が残っておる、こういう意味なんですか。そういう意味で中間報告であるというのですか。
  52. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 必ずしも大阪法務局の最終意見ではございません。私の方では送られました資料と意見に基きましてさらにこの点を確かめるように、あなたの考えたこの事実認定については、これこれの点がまだ不足しておりはしないか、添付された資料についてはこの点が認定できないのではないか、さらに調査していかがか、こういうふうな指示を出す場合もあるのであります。
  53. 大貫大八

    ○大貫委員 結婚妨害の事実について確認しがたい、こういうているのですけれども、大阪法務局報告はそうだというんですけれども、現に平野警察署の辻井警部補の紛失したという警備書類の中には、二、三カ所出てきておるのです。結婚すると闘志が鈍るからなるべく結婚はさせないというようなことが推定できるような、そういう個所が二、三カ所出ておるのです。そういうことに立脚してそういう証拠書類——一体そういうことに対しての調査をしておるのでしょうか。事実上は、今の機構では、そう書いてあっても、法務局警察官に対してそういう取調べをする権限も何も法規上はないわけですから、なかなか困難だとは思いますが、そういう調査を一応はしておるのでしょうか、どうでしょうか。
  54. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 御指摘の点につきましては私の方でも、資料その他をよく調べましたところ、やや御指摘のような疑問を持っております。  それから、その結婚妨害につきましては、各関係者の答弁がまちまちでありまして、もう少し調査を進めなければ、結婚妨害をしたかしないか、この点についての結論が出しにくい状態であります。
  55. 大貫大八

    ○大貫委員 その資料に疑問があるというのは、落された資料そのものが疑わしいというのですか。どういうのですか。
  56. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 いや、私の答えが少しまずかったかもしれませんが、あらゆる資料を総合いしまして、大阪法務局人権擁護部の出しました結婚妨害についての結論につきましては、やや疑問があるのではないか、こういう意味調査をいたしております。
  57. 大貫大八

    ○大貫委員 それでは法務省人権擁護局としては、単にこの大阪地方法務局報告だけにとらわれず、なおこの問題については調査をされる意思があるのですね。これは非常に重大な問題だと思うので、特に伺っておきます。
  58. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 それは私の方から直接参りまして調査をいたしますか、ある問題点を指摘いたしまして、この点をさらに調査をするようにと大阪法務局人権擁護部に指示いたしますか、今検討中であります。
  59. 大貫大八

    ○大貫委員 それではそういうことでありますから、この問題はそれといたしまして、もう一つ伺っておきますことは、これは最近の新聞をにぎわしておるようでありますが、栃木県の美田村というところがありまして、そこの吉田石松という七十九才になります老人ですが、この人が大正二年八月十三日に名古屋方面に起った強盗殺人事件の嫌疑を受けて処罰をされた、二十三年間刑務所に入っておったという人なんでありますが、この人がずっと無実であるということを四十五年間も叫び続けておる、こういう事件であります。しかも、吉田石松という人が、昭和三十二年というからもう二年前ですが、名古屋の高等裁判所に再審の申し立てをしておるという。このことについて人権擁護局では調査になっておるでしょうか。非常に深刻な事件のように思えるのですが。
  60. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 この点につきましては、東京法務局人権擁護部におきまして、相当綿密な調査をいたしました。これが結局名古屋の裁判所に対する再審請求の原因になっておるのであります。東京法務局人権擁護部では相当苦心をいたしまして、関係の共犯者といわれました海田、北川の所在調査をいたしまして、ようやく海田氏の所在がわかったのであります。さらに当時吉田老人の控訴審の事件を担当いたしました管野弁護士、それからその事件当時の担当立会検事徳江氏につきまして当時の事情調査し、それからその事件当時の記録も種々調査いたしまして、ようやく一審、二審の判決の原本が名古屋地裁で発見されたのであります。こういうふうに相当苦心をいたしまして調査をいたしておるのであります。さらに海田という人の陳述につきまして、綿密な事件当時の調査をいたしております。さらにこの事件につきまして関係をいたしました当時の新聞記者、たとえば青山、藤田、中島という三人の方につきましても徹底的な調査をいたしているのであります。昭和二十九年ごろに一応法務局の取り調べは終ったのであります。ところが翌年の三十年に至りまして、吉田老人の住んでおります村の村長の方が非常に吉田老人に好意を持ちまして、法務局に、さらにもう一度徹底的な調査がほしい、そしてまた無罪を叫んでいる同老人の人権を擁護してもらいたいという陳情があったのであります。その結果、いろいろ海田老人の再尋問等に調査を向けたのでありますが、必ずしも吉田老人の言うところと、考えなりあるいは記憶が一致しないのであります。その後吉田老人から当時の法務大臣であります中村法務大臣に対しても直接の陳情がございました。この事件を法律扶助協会において扱ってはどうかという問題もあったのでありますが、法律扶助協会においては、どういう理由でございますかわかりませんが、ちょっと無理であろうということになりまして、現在では石島弁護士が再審の手続をとっておられます。最近新聞の情報によりますと、名古屋の裁判所におきましても、その再審の手続を進めるかどうかについて、さらに調査をされているようであります。大体以上のような状態であります。
  61. 大貫大八

    ○大貫委員 今すでに裁判所で再審をするかどうかというような段階にあるようでありますから、あまり内容に立ち至ってはお尋ねしないつもりですが、ただ一つ海田という共犯者はどう言っているのでしょうか。これは海田という男がいろいろ変わってきているというふうにも聞いているのですが、その辺のことも一つお答え願いたい。
  62. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 きょうこの御質問があると存じませんで、実はその書類を持って参りませんので、右の報告しか覚えておりませんから、もし間違った報告をしては悪いと思いますので、できましたら次会にでも一つ報告いたしたいと存じます。
  63. 坂本泰良

    坂本委員 人権擁護局にこれは調査をお願いする案件ですが、あとで請願書を差し上げますが、その要旨をちょっと申し上げてみたいと思います。  昭和三十四年二月七日付で、衆議院の法務委員会に請願書が参っているわけでありますが、それは熊本県球磨郡免田町、代表者の恒松義国、今村敏外四十名の連名で当法務委員会に来ているわけであります。その要旨は、昭和二十三年十二月三十日、熊本県人吉市願成寺町の祈祷師夫婦殺しの殺人被告事件があったのでありますが、その事件の被告人の免田栄、これが昭和二十六年十二月二十五日、福岡高等裁判所において上告棄却になりまして、死刑の判決が確定したわけであります。それに対して被告人が再審の請求をいたしまして、昭和三十一年八月十日、福岡高等裁判所において再審開始の決定があり、確定判決による死刑執行停止の決定がありまして、そのまま今日に及んでいる。これは請願書によりますると、被告人が真犯人でないということをいろいろ書いてあるわけでありますが、この再審の事件が現在までそのままになっておりますから、それは被告人に対する人権の尊重と裁判の公正を期するのに遺憾があるのではないか、人権の尊重と裁判の公正のために一つ調査をしてもらいたい、こういう請願であります。当時警察に逮捕された際は、ほかの遠い離れた山の中におりましたから、そこには時間的に行けないというアリバイその他詳細なことがこの請願書に書いてあるわけですが、いずれにしても昭和三十一年の八月から再審決定になったままで、本人は福岡の刑務所に死刑の執行が停止になっているわけですから、その要旨は再審の取り調べをすみやかにやってもらいたい、こういうことであります。やはりこれも人権の問題に関連すると思いますから、一つ調査をお願いしたいと思います。その点いかがでしょうか。
  64. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 どういう点でございましょうか、再審の手続がおくれているという意味でありますか、事件の実態についてでありますか。
  65. 坂本泰良

    坂本委員 これは内容を見ますと、再審がおくれているという点が一つあります。これは裁判手続の問題だと思いますので、裁判所の方にお聞きしたいと思っているのです。  それからもう一つは、人権尊重の点と、今のアリバイの点で、誤判の主張があるようですが、これもやはり再審を執行すれば、その中に入ると思うわけですが、三十一年から三カ年間そのままになっていますから、やはり再審の裁判の促進と、こういうふうに放置されて死刑の判決を受けながら刑務所にいるから、その人権の擁護という立場から一つ調べてもらいたい。こういう二つの意味の請願だと思いますから、人権擁護の点から御調査願えるかどうかということであります。
  66. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 それでは、その請願の内容を見まして検討いたします。
  67. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 関連して人権擁護局長にお伺いいたしますが、大阪のスパイ工作事件について、辻警部補が落した文書ですね、その写しなんかは人権擁護局にございますか。
  68. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 全部はございませんが、その結婚妨害とかそれから入党強要に関する部分の写しは送って参っております。
  69. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 大阪の総評の中にある秘密警察糾弾人権擁護共闘会議というのが全部の書類を出しておりますから、これは東京の総評でも売っておりますし、総評の本部には警官立ち入るべからずと書いてありますが、人権擁護局の方が行って事情を話されたら、喜んで売ってくれると思いますから、ただ部分的だけじゃだめです。全部見て下さい。結婚妨害という嫌疑がないというようなことを言われましたが、これを見ますと、二度までも警察に妨害されて——名前が出ておりますが、ここでは婦人の名誉のために名前を伏せますが、名前を出しておるのです。二度妨害されているのです。この中には五カ所そういうことが出ております。これを見れば、どう考えても大阪法務局の判断は非常に不当のものと言わなければなりません。あなた方の結論を出される前にこれをさっそく手に入れて——高いものじゃありませんから、たった五十万しか今度予算がふえないそうですけれども、これくらい買えるでしょうから、一つそれをやっていただきたいと思います。そうでないと、非常に判断が間違っております。それで、二度目の結婚妨害のときには、結婚をすると、入党してスパイをやるのに困るから、これをやめさせるために、警察官は、何お前は男前だから、女は幾らでもできるから待てと言って妨害しているわけです。ちゃんとこれに出ています。だから、大阪の法務局のなには、よほど目が変なところについているのでなければ、そんな判断はできないはずであります。  それからもう一つは、有名な映画の木下監督が、たしか朝日新聞に出しておりました。松竹の助監督に採用される早稲田大学を出た平井守君という人に対して、警察会社に行きまして、その就職を妨害している事件があります。木下監督のその発表した記事を読みまして、私どもちょうど松竹の解雇された人々の陳情を受けましたときに聞いてみますと、明らかにそういう事実があったということであります。このことについて、人権擁護局でお調べになって、今国会中にその事件内容も明らかになるようにしていただきたいと思います。警察は悪いことばかりしているんだ、これを落したのも、一人の木南というスパイは、ここに金を渡したと書いてあるのに、おれはそんな金をもらった覚えがないという、そうなってくると、スパイにやるべき金を警察官がピンはねをして、酔っぱらうからこんな物も落すことになるわけです。そういうこともありまして、今の松竹の助監督に採用されるべき人の訴えもあるようでありますから、あと御連絡下されば、私の方からも申し上げますし、その事件の真相の究明には協力いたしますから、よく御調査願いたいと思います。きょうはこれで終ります。
  70. 小島徹三

    小島委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後零時五十四分散会