○津田
政府委員 ただいま三田村
委員の御指摘の点は全く重々ごもっともでありまして、去る二十六国会におきますところの当時の衆議院のこの
委員会の附帯決議につきましては、十分私
どももこれを承知いたしますと同時に、非常に
裁判官及び
検察官に対する御理解の深いことを感謝いたしておる次第でございます。しかしながら、その後の給与改善につきましては、主としてベース・アップの形で推移して今日に至っております
関係上、やはり従来の、言葉は十分でございませんが、惰性というものがある程度つきまとって参っておるわけでございます。御承知かと存じますが、この
裁判官の俸給表並びに
検察官の俸給表ができました昭和二十三年当時は、二千九百二十円べースでございました。そのときは判事につきましては一号が一万四千円、五号が一万円、この五号というのが一般行政職の十四級六号の各省次官クラスに当っておった。すなわち判事の最下位が各省次官のクラスであった。これは、とりもなおさず、判事につきましては、行政職と四割の優位にあったわけです。
検事につきましては、判事の二号と
検事の一号が同じでありましたが、これにつきましては、特別の者につきましてはやはり一万四千円をやるということで判事の一号と同じ、俗称特号というものがあった、そういう形で出発いたしておるわけでございます。そのときの四割優位であるということの
考え方といたしましては、まずそのうちの一割五分、すなわち一五%は
裁判官、
検察官の勤務時間が事実上長い、自宅においてもいろいろ勤務をしなければならぬということからくるいわゆる超過勤務手当を織り込んだという
考え方であります。そのほかの四〇%から一五%を減じました二五%につきましては、これは
裁判官、
検察官の
仕事の権威と申しますか、任用資格等におきましても、他の行政官と異なった試験等を経なければならないという
仕事そのものに対する優位性と、さらにその職務に対する高度の廉潔性を要求しておるということに対する
一つの国家の温情であろうというふうに
考える次第であります。そういうわけでございまして、四割の優位を行政職の最高のものよりは持っておった、こういうことになったわけでございます。その後六千三百七円べースに上りました際に、判事の一号、
検事の特号につきましては、二万四千円を与えられた。それに対しまして、一般行政職の最高俸は二万三千六百二十円ということになりまして、わずか数百円の開きになった。このときに非常に問題を含んでおったということになるわけでございまして、このときに四割の優位ということを貫くことができなかったということに端を発しておると思うのであります。それから後、ベースの改定がいろいろあったわけでございますが、昭和三十二年の改定におきましては、結局最高額は判事におきましては七万二千円、
検事におきましても七万二千円、それから行政職におきましても七万二千円、こういうことになってしまったのであります。これはべースの改定ということだけで、
裁判官、
検察官の俸給そのものの根本的制度の改正ということにわたりませんいわば手直しの形で進んでおったために、ここに根本的に
裁判官、
検察官が行政職から俸給の面で優遇されるということができなかったというわけでございます。しかし、その理由はまだほかにもございまして、御承知のように、
裁判官並びに
検察官におきましては、
裁判官につきましては最高
裁判所長官のほか認証官たる判事がある。
検察官につきましては、
検事総長のほか認証官たる
検事がございます。これらの認証官につきましては、御承知のように、最高
裁判所長官につきましては総理
大臣と同格であり、同俸酬であるという建前ができております。また最高
裁判所判事につきましては国務
大臣と同格である、あるいは
検事総長も同格であるというような
——これはまあ同格であることがしかるべきであるかどうかということは別といたしまして、長くそういう慣行によって特別職の俸給が定められておるということから、もはや現在の状態におきましては、判事あるいは
検事のこれらの認証官以外のものは、俸給額はほとんど天井に近いということになるわけであります。そこで、かような認証官の
裁判官、
検察官につきまして、一般職と別個の俸給体系を
考えるように大方の御賛成を得なければ、とうていこの問題は解決しない問題だと私
どもは
考えておる次第であります。もとより
予算折衝等におきましては、非常な努力を
法務省におきましても、
裁判所事務当局におきましても払っておられるわけでありますけれ
ども、この特別職と認証官たる
裁判官、
検察官との
関係がなかなか理解が得られないということから生ずるいわゆる頭打ちの状態が、今日の状態であるということを申すことができると思うのであります。その
意味におきまして、まことに先般の決議の線にはなかなか沿いがたいことを遺憾といたしますると同時に、私
どもの努力の足りないことを恥じる次第でありますけれ
ども、
事情は右申し上げたような通りでございます。
そこで、今回の御
審議をいただいております法案におきましては、判事、
検事の最高は一般行政職の最高と一応並びまして、判事につきましては特別の者については一般行政職を上回る八万円という額を四月から認められることになるわけであります。これは今まで参りましたところの一般行政職の最高と同じという数年間の制度から申しますると、一歩前進したということは言えるだろうと思います。なお格段の努力を払いまして、
裁判官、
検察官の給与につきまして、ただいま御指摘のような在野法曹からも進んでその地位につき得るような待遇を与えられることについて努力を払いたいと思います。それらの点につきまして、あるいは職務の内容等につきまして、非常に大方の御理解を賜わるよう、また特に
法務省といたしては努力いたしたいと存じている次第であります。