○橋本国務大臣 私は戦後十四年にわたる教育
行政の実績から見て、今日非常に大事なことは、
関係者のそれぞれがきわめて腹蔵なくものを言いながら、議論のあげくには、やはり相互の善意とこれに対する信頼を持って、できるだけみんなでよくしていこうということが非常に大事だと私は考えておる次第でございます。今回の
社会教育法の改正案につきましても、ただいまも
お話のございましたようなことがいろいろ憂えられまして問題になったのでございます。参議院における御審議の過程におきましてもほとんど八、九割の御議論はそこにあったのでありますが、これは全く先ほど私の申し上げましたような、憲法、教育基本法を引いた
社会教育法の精神に従って、これをほんとうに効果あらしめるためには
組織も人も
予算も十分に手を貸していかなければならぬじゃないか、そういう趣旨で
運営するつもりで御提案を申し上げたものであります。むしろ不十分な
組織、不十分な人、不十分な金ということでおいた場合に、一つには社会教育活動というものが、ただいま御質問にもありましたようによどんだふうな形にもなるし、また一つには無理して片寄った方向にいく危険があるのでありまして、そういったような趣旨を結局は参議院におきましても
委員会において満場一致御理解を願いまして、二点の修正だけで衆議院に回されておるわけでございます。趣旨といたしましては、たとえば例のあがっておりました補助金の問題にいたしましても、憲法上の補助金に関しまする規制をさらに強い形でしぼるというふうなことは
意味のないことでありまして、社会教育をやる場合に、もちろん社会教育
団体がそれぞれ自分たちのふところ金の中から、みんなが、青年なり婦人なりが出し合ってやっていくということは非常にけっこうなことでありますが、なかなか活動が十分でないのであります。そうした場合、資金的の援助を求めていく場合に、民間で資金的援助を求めるとすれば、どの
団体も全然何らの制約も受けておらないのでありますから、あるいは右に片寄ったりあるいは左に片寄った
団体から金をもらったり、あるいはまた選挙にでも出るような底意のある人から金をもらったりというようなことにかえってなりがちであります。この
社会教育法十三条の規定を改めまして、憲法上許し得る最大限まで、とにかく社会教育
関係団体に対しても補助金を与えることができるということに相なりました場合に、国なり
地方公共団体なりはどういう
立場に立つかといえば、その補助金の与え方及び補助金によって動いて参りまする社会教育活動というものを、あくまでも憲法、教育基本法、
社会教育法の精神に従って、この
法律のワクの中におけるほんとうに色のつかない活動をさせなければならないし、それ以外の補助金を出すこともできないし、十分にその制約を
法律上受け、そしてこの
法律を適正に
執行しているかどうかということについて、国会の
監督を受けながらやっていくわけでありまして、一番間違いのない行き方でございます。
講習につきましても従来におきましてはまだまだ手が足りませんので、そこで文部大臣、
教育委員会といったようなところも最初の原案には提言をいたしました。その場合におきましても、これは文部大臣、
教育委員会といったときに、ちょうど戦前の文部大臣なりあるいは地方の学務
部長なりがやるようになりはせぬかという一まつの不安というものが
現実に存在しているということがいろいろな議論のもとになるわけでありますが、もうわれわれの提案の趣旨でもあるし、事実またそれ以外に行きようもないのは、原案にありました文部大臣なり
教育委員会なりというものはどこまでも
社会教育法第一条にありまする教育基本法の精神に基いてやっていくという厳格な戒律の中にこれをやって参るわけであります。ただこの点につきましては趣旨はわかったけれ
ども、しかしやはり従来の大学中心の主事の資格講習ということに対しては、新規に加えるところではその他の
教育機関というような程度にしておいた方がよろしいということで、そういうふうに御修正に相なりました。趣旨はあくまでもそうであります。そしてやはり戦後の社会教育活動があまり活発でなかったという点につきましては、どうも
文部省なりあるいは都道府県の
教育委員会なりが何か積極的にやりますると、ちょうど明治憲法下において国の大権事項としてやられた、
文部省あるいは学務
部長あたりがやったように誤解されやしないかということが、この
社会教育法に規定のありまする専門的技術的指導または助言であるとか、あるいはまた必要な物資や
予算を確保するというような問題でありまするとか、あるいは指導、資料の作成あるいは
調査研究の報告を求めるとかいうことについては、比較的遠慮しがちであったと思うのでありますが、これはやはりお互いにあくまでも憲法、教育基本法の精神に従いながらやるのだということが
社会教育法に明記をされてあるのでありまして、その戒律を守りながら与えられた職責というものは今までよりも
文部省は積極的に果すし、都道府県の
教育委員会にも果させるようにしたいというように考えておるのであります。私はそうした積極的な形で努力をしながら、これに関しては十分国会の御
監督を受け、またさらにその背後にある国民の
監督を受けるということが、社会教育というものをもっともっと振興をさせることができ、そうして地域社会の求めというものもむしろもっともっと活発に、いろいろな面で出てくるということにもなり、またそうした実際活動の面を通じて国、
地方公共団体と国民一般との間の善意と信頼とを増すということに相なると考えておるのでありまして、
社会教育法の改正がかりに両院の御承認を得たとして、その後における運用の方針というものは、従来におきまする
社会教育法の運用の基本方針と全然変ったことを考えておりません。むしろこうした基本方針の上になるべく活発に動けるようにいたしたい、こういうのが今回の改正を提案いたしました基本的な考え方でございます。